(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-17
(54)【発明の名称】放射線照射システム及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
A61N 5/10 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
A61N5/10 H
A61N5/10 P
A61N5/10 K
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023540520
(86)(22)【出願日】2021-12-22
(85)【翻訳文提出日】2023-08-10
(86)【国際出願番号】 CN2021140429
(87)【国際公開番号】W WO2022143333
(87)【国際公開日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】202011637729.1
(32)【優先日】2020-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520417207
【氏名又は名称】中硼(厦▲門▼)医▲療▼器械有限公司
【氏名又は名称原語表記】Neuboron Therapy System Ltd.
【住所又は居所原語表記】No.2060 Wengjiao West Road, Haicang District Xiamen, Fujian Provance, 361026 P.R.China
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100219117
【氏名又は名称】金 亨泰
(72)【発明者】
【氏名】▲鐘▼万兵
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼江
【テーマコード(参考)】
4C082
【Fターム(参考)】
4C082AA01
4C082AC07
4C082AE01
4C082AG22
4C082AN02
(57)【要約】
本発明の実施例に係る放射線照射システム及びその制御方法は、元素の、人体内の重量割合と、中性子及び光子との反応強度とを総合して、放射線照射システムの適用シーンにおいて中性子及び光子のシミュレーション計算結果に対して影響力を有する元素をスクリーニングし、シミュレーション過程において、スクリーニングされた元素のみをシミュレーションすることにより、計算速度を大幅に向上させ、計算時間を減少させることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線照射システムであって、
治療用ビームを発生させ、前記治療用ビームを被照射体に照射して被照射部位を形成するビーム照射装置と、
前記治療用ビームのパラメータ及び前記被照射部位の医用画像データに基づいて線量シミュレーション計算を行い、かつ治療計画を作成し、元素の、人体内の重量割合と、中性子及び光子との反応強度とを総合して、前記放射線照射システムの適用シーンにおいて中性子及び光子のシミュレーション計算結果に対して影響力を有する元素をスクリーニングし、シミュレーション過程において、スクリーニングされた元素のみをシミュレーションする治療計画モジュールと、
前記治療計画に基づいて前記ビーム照射装置の照射を制御する制御モジュールと、を含むことを特徴とする放射線照射システム。
【請求項2】
前記治療計画モジュールによってスクリーニングされた元素は、H、He、Li、Be、B、C、N、O、F、Na、Mg、Al、Si、P、S、Cl、Ar、K及びCaから選択される1つ又は複数の元素である、ことを特徴とする請求項1に記載の放射線照射システム。
【請求項3】
前記治療計画モジュールによってスクリーニングされた元素は、H、He、Li、Be、B、C、N、O、F、Na、Mg、Al、Si、P、S、Cl、Ar、K及びCaである、ことを特徴とする請求項2に記載の放射線照射システム。
【請求項4】
前記治療計画モジュールは、各元素の対応する中性子断面積データベースから、294K及び0K以外の温度に対応するデータベースを除去する、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の放射線照射システム。
【請求項5】
中性子捕捉療法システムであり、前記ビーム照射装置は、中性子発生装置、ビーム整形体及び治療台を含み、前記中性子発生装置は、加速器及びターゲットを含み、前記加速器は、荷電粒子を加速して荷電粒子線を発生させ、かつ前記ターゲットと作用して中性子線を発生させ、前記ビーム整形体は、前記中性子発生装置により発生した中性子線を所定のビーム品質に調整可能であり、前記中性子発生装置により発生した中性子線は、前記ビーム整形体を通過して前記治療台上の前記被照射体に照射される、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の放射線照射システム。
【請求項6】
放射線照射システムの制御方法であって、前記ビーム照射システムは、治療用ビームを発生させ、前記治療用ビームを被照射体に照射して被照射部位を形成するビーム照射装置と、前記治療用ビームのパラメータ及び前記被照射部位の医用画像データに基づいて線量シミュレーション計算を行い、かつ治療計画を作成する治療計画モジュールと、前記治療計画に基づいて前記ビーム照射装置の照射を制御する制御モジュールと、を含み、
前記放射線照射システムの制御方法は、元素の、人体内の重量割合と、中性子及び光子との反応強度とを総合して、放射線照射システムの適用シーンにおいて中性子及び光子のシミュレーション計算結果に対して影響力を有する元素をスクリーニングし、シミュレーション過程において、スクリーニングされた元素のみをシミュレーションするステップを含む、ことを特徴とする放射線照射システムの制御方法。
【請求項7】
前記治療計画モジュールによってスクリーニングした元素は、H、He、Li、Be、B、C、N、O、F、Na、Mg、Al、Si、P、S、Cl、Ar、K及びCaから選択される1つ又は複数の元素である、ことを特徴とする請求項6に記載の放射線照射システムの制御方法。
【請求項8】
前記治療計画モジュールによってスクリーニングされた元素は、H、He、Li、Be、B、C、N、O、F、Na、Mg、Al、Si、P、S、Cl、Ar、K及びCaである、ことを特徴とする請求項7に記載の放射線照射システムの制御方法。
【請求項9】
治療計画モジュールが、各元素の対応する中性子断面積データベースから、294K及び0K以外の温度に対応するデータベースを除去するステップをさらに含む、ことを特徴とする請求項6~8のいずれか一項に記載の放射線照射システムの制御方法。
【請求項10】
前記放射線照射システムは、中性子捕捉療法システムであり、前記ビーム照射装置は、中性子発生装置、ビーム整形体及び治療台を含み、前記中性子発生装置は、加速器及びターゲットを含み、前記加速器は、荷電粒子を加速して荷電粒子線を発生させ、かつ前記ターゲットと作用して中性子線を発生させ、前記ビーム整形体は、前記中性子発生装置により発生した中性子線を所定のビーム品質に調整可能であり、前記中性子発生装置により発生した中性子線は、前記ビーム整形体を通過して前記治療台上の前記被照射体に照射される、ことを特徴とする請求項6~8のいずれか一項に記載の放射線照射システムの制御方法。
【請求項11】
治療用ビームを発生させ、前記治療用ビームを被照射体に照射して被照射部位を形成するビーム照射装置と、
前記治療用ビームのパラメータ及び前記被照射部位の医用画像データに基づいて線量シミュレーション計算を行い、かつ治療計画を作成する治療計画モジュールであって、異なる線源粒子のシミュレーションタスクを異なるプロセス又はスレッドに割り当て、各プロセス又は各スレッドの計算タスクを完了した後にまとめて、最終的な計算結果を取得する治療計画モジュールと、
前記治療計画に基づいて前記ビーム照射装置の照射を制御する制御モジュールと、を含むことを特徴とする放射線照射システム。
【請求項12】
中性子捕捉療法システムであり、前記ビーム照射装置は、中性子発生装置、ビーム整形体及び治療台を含み、前記中性子発生装置は、加速器及びターゲットを含み、前記加速器は、荷電粒子を加速して荷電粒子線を発生させ、かつ前記ターゲットと作用して中性子線を発生させ、前記ビーム整形体は、前記中性子発生装置により発生した中性子線を所定のビーム品質に調整可能であり、前記中性子発生装置により発生した中性子線は、前記ビーム整形体を通過して前記治療台上の前記被照射体に照射される、ことを特徴とする請求項11に記載の放射線照射システム。
【請求項13】
CPUのプロセス並列、スレッド並列及びGPU加速により粒子をシミュレーションし、プロセス並列及びスレッド並列は、いずれもマルチコアCPUを使用して並列計算を実現し、CPUのプロセス並列及びスレッド並列の計算過程は、まず、システムがプロセス数又はスレッド数を取得して、値nを取得するステップと、次に、システムが、シミュレーションすべき粒子をn個に均一に分けるステップと、そして、各スレッド又は各プロセスにおいてそれぞれ1個の粒子を独立してシミュレーションし、かつカウントするステップと、最後に、システムが各プロセス又は各スレッドにおいて取得されたカウント数を統計して、最終的な線量を取得するステップと、を含む、ことを特徴とする請求項11又は12に記載の放射線照射システム。
【請求項14】
GPU加速は、GPUのマルチコアプロセッサの並列計算により実現され、GPU加速によるシミュレーション計算の過程は、まず、システムが乱数、断面積データなどをCPUメモリからGPUグラフィックメモリに伝送し、次に、GPU中の各プロセッサが単一の粒子をシミュレーションし、計算し、カウントし、かつカウント結果をグローバルカウントに統計するステップと、そして、システムが、シミュレーションされていない粒子があるか否かを判断し、シミュレーションされていない粒子がない場合、カウント結果をGPUメモリからCPUメモリに伝送し、シミュレーションされていない粒子がある場合、前のステップに戻り、全ての粒子のシミュレーションが完了するまで、シミュレーションされていない粒子をシミュレーションし続け、カウントするステップと、を含む、ことを特徴とする請求項13に記載の放射線照射システム。
【請求項15】
放射線照射システムの制御方法であって、前記ビーム照射システムは、治療用ビームを発生させ、前記治療用ビームを被照射体に照射して被照射部位を形成するビーム照射装置と、前記治療用ビームのパラメータ及び前記被照射部位の医用画像データに基づいて線量シミュレーション計算を行い、かつ治療計画を作成する治療計画モジュールと、前記治療計画に基づいて前記ビーム照射装置の照射を制御する制御モジュールと、を含み、
前記放射線照射システムの制御方法は、異なる線源粒子のシミュレーションタスクを異なるプロセス又はスレッドに割り当て、各プロセス又は各スレッドの計算タスクを完了した後にまとめて、最終的な計算結果を取得するステップを含む、ことを特徴とする放射線照射システムの制御方法。
【請求項16】
CPUのプロセス並列、スレッド並列及びGPU加速により粒子をシミュレーションする、ことを特徴とする請求項15に記載の放射線照射システムの制御方法。
【請求項17】
プロセス並列及びスレッド並列はいずれも、マルチコアCPUを使用して並列計算を実現する、ことを特徴とする請求項16に記載の放射線照射システムの制御方法。
【請求項18】
CPUのプロセス並列及びスレッド並列の計算過程は、まず、システムがプロセス数又はスレッド数を取得して、値nを取得するステップと、次に、システムが、シミュレーションすべき粒子をn個に均一に分けるステップと、そして、各スレッド又は各プロセスにおいてそれぞれ1個の粒子を独立してシミュレーションし、かつカウントするステップと、最後に、システムが各プロセス又は各スレッドにおいて取得されたカウント数を統計して、最終的な線量を取得するステップと、を含む、ことを特徴とする請求項17に記載の放射線照射システムの制御方法。
【請求項19】
GPU加速は、GPUのマルチコアプロセッサの並列計算により実現される、ことを特徴とする請求項16に記載の放射線照射システムの制御方法。
【請求項20】
GPU加速によるシミュレーション計算の過程は、まず、システムが乱数、断面積データなどをCPUメモリからGPUグラフィックメモリに伝送し、次に、GPU中の各プロセッサが単一の粒子をシミュレーションし、計算し、カウントし、かつカウント結果をグローバルカウントに統計するステップと、そして、システムが、シミュレーションされていない粒子があるか否かを判断し、シミュレーションされていない粒子がない場合、カウント結果をGPUメモリからCPUメモリに伝送し、シミュレーションされていない粒子がある場合、前のステップに戻り、全ての粒子のシミュレーションが完了するまで、シミュレーションされていない粒子をシミュレーションし続け、カウントするステップと、を含む、ことを特徴とする請求項19に記載の放射線照射システムの制御方法。
【請求項21】
治療用ビームを発生させ、前記治療用ビームを被照射体に照射して被照射部位を形成するビーム照射装置と、
前記治療用ビームのパラメータ及び前記被照射部位の医用画像データに基づいて線量シミュレーション計算を行い、かつ治療計画を作成する治療計画モジュールであって、光子の半吸収厚さが第1所定の値以下である場合、光子に対するシミュレーションを停止する治療計画モジュールと、
前記治療計画に基づいて前記ビーム照射装置の照射を制御する制御モジュールと、を含むことを特徴とする放射線照射システム。
【請求項22】
中性子捕捉療法システムであり、前記ビーム照射装置は、中性子発生装置、ビーム整形体及び治療台を含み、前記中性子発生装置は、加速器及びターゲットを含み、前記加速器は、荷電粒子を加速して荷電粒子線を発生させ、かつ前記ターゲットと作用して中性子線を発生させ、前記ビーム整形体は、前記中性子発生装置により発生した中性子線を所定のビーム品質に調整可能であり、前記中性子発生装置により発生した中性子線は、前記ビーム整形体を通過して前記治療台上の前記被照射体に照射される、ことを特徴とする請求項21に記載の放射線照射システム。
【請求項23】
前記治療計画モジュールは、式(1-1)で光子の半吸収厚さtを計算し、
【数1】
式中、μは、光子の線減衰係数であり、光子が通過する材料及び光子エネルギーにより決定される、ことを特徴とする請求項21又は22に記載の放射線照射システム。
【請求項24】
第1所定の値は、1つの細胞のサイズであり、好ましくは、第1所定の値は、0.2mmであり、光子エネルギーが第2所定の値以下である場合、光子エネルギーに対応する光子の半吸収厚さは、第1所定の値以下であり、第2所定の値は、10KeVである、ことを特徴とする請求項21又は22に記載の放射線照射システム。
【請求項25】
放射線照射システムの制御方法であって、前記ビーム照射システムは、治療用ビームを発生させ、前記治療用ビームを被照射体に照射して被照射部位を形成するビーム照射装置と、前記治療用ビームのパラメータ及び前記被照射部位の医用画像データに基づいて線量シミュレーション計算を行い、かつ治療計画を作成する治療計画モジュールと、前記治療計画に基づいて前記ビーム照射装置の照射を制御する制御モジュールと、を含み、
前記放射線照射システムの制御方法は、光子の半吸収厚さが第1所定の値以下である場合、光子に対するシミュレーションを停止するステップを含む、ことを特徴とする放射線照射システムの制御方法。
【請求項26】
前記治療計画モジュールは、式(1-1)で光子の半吸収厚さtを計算し、
【数2】
式中、μは、光子の線減衰係数であり、光子が通過する材料及び光子エネルギーにより決定される、ことを特徴とする請求項25に記載の放射線照射システムの制御方法。
【請求項27】
第1所定の値は、1つの細胞のサイズである、ことを特徴とする請求項26に記載の放射線照射システムの制御方法。
【請求項28】
第1所定の値は、0.2mmである、ことを特徴とする請求項26に記載の放射線照射システムの制御方法。
【請求項29】
光子エネルギーが第2所定の値以下である場合、光子エネルギーに対応する光子の半吸収厚さは、第1所定の値以下である、ことを特徴とする請求項25に記載の放射線照射システムの制御方法。
【請求項30】
第2所定の値は、10KeVである、ことを特徴とする請求項29に記載の放射線照射システムの制御方法。
【請求項31】
治療用ビームを発生させ、前記治療用ビームを被照射体に照射して被照射部位を形成するビーム照射装置と、
前記治療用ビームのパラメータ及び前記被照射部位の医用画像データに基づいて線量シミュレーション計算を行い、かつ治療計画を作成する治療計画モジュールであって、分散減少により粒子をシミュレーションする治療計画モジュールと、
前記治療計画に基づいて前記ビーム照射装置の照射を制御する制御モジュールと、を含むことを特徴とする放射線照射システム。
【請求項32】
前記分散減少は、暗黙吸収と、ウェイトウインドウゲームと、ロシアンルーレット及びスプリッティングとを含み、前記放射線照射システムは、中性子捕捉療法システムであり、前記ビーム照射装置は、中性子発生装置、ビーム整形体及び治療台を含み、前記中性子発生装置は、加速器及びターゲットを含み、前記加速器は、荷電粒子を加速して荷電粒子線を発生させ、かつ前記ターゲットと作用して中性子線を発生させ、前記ビーム整形体は、前記中性子発生装置により発生した中性子線を所定のビーム品質に調整可能であり、前記中性子発生装置により発生した中性子線は、前記ビーム整形体を通過して前記治療台上の前記被照射体に照射される、ことを特徴とする請求項31に記載の放射線照射システム。
【請求項33】
放射線照射システムの制御方法であって、前記ビーム照射システムは、治療用ビームを発生させ、前記治療用ビームを被照射体に照射して被照射部位を形成するビーム照射装置と、前記治療用ビームのパラメータ及び前記被照射部位の医用画像データに基づいて線量シミュレーション計算を行い、かつ治療計画を作成する治療計画モジュールと、前記治療計画に基づいて前記ビーム照射装置の照射を制御する制御モジュールと、を含み、
前記放射線照射システムの制御方法は、前記治療計画モジュールが分散減少により粒子をシミュレーションするステップを含む、ことを特徴とする放射線照射システムの制御方法。
【請求項34】
前記分散減少は、暗黙吸収と、ウェイトウインドウゲームと、ロシアンルーレット及びスプリッティングとを含み、分散減少により粒子をシミュレーションするステップは、1つの線源粒子を取得するステップS1と、粒子が格子セル内で衝突するか否かを判断し、衝突すると判断した場合、ステップS3、S4を順に実行し、衝突しないと判断した場合、ステップS5、S6を順に実行するステップS2と、暗黙吸収処理を行うステップS3と、重みがウェイトウインドウより低いか否かを判断し、低いと判断した場合、ステップS7を実行し、低くないと判断した場合、ステップS2に戻る、ステップS4と、ロシアンルーレット及びスプリッティング処理を行うステップS5と、ロシアンルーレット処理を行うか否かを判断し、ロシアンルーレット処理を行うと判断した場合、ステップS7を実行し、ロシアンルーレット処理を行わないと判断した場合、ステップS2に戻る、ステップS6と、消滅させるか否かを判断し、消滅させると判断した場合、ステップS8を実行し、消滅させないと判断した場合、ステップS9を実行した後にステップS2に戻る、ステップS7と、粒子の処理が完了するか否かを判断し、完了すると判断した場合、フローを終了し、完了しないと判断した場合、ステップS1に戻る、ステップS8と、重みを消滅確率で割るステップS9と、を含む、ことを特徴とする請求項33に記載の放射線照射システムの制御方法。
【請求項35】
前記ロシアンルーレット及びスプリッティングは、各格子の格子空間インポータンスを計算し、かつ記録するステップS1と、粒子を取得するステップS2と、粒子に対してウェイトウインドウ検出及び操作を行うステップS3と、粒子が格子境界を跨ぐ前後の格子空間インポータンスI
n及びI
n+1を計算するステップS4と、I
nがI
n+1より大きいか否かを比較し、大きくない場合、ステップS6を実行した後にステップS3に戻り、大きい場合、ステップS7を実行する、ステップS5と、粒子をスプリッティングし、かつ粒子の重みを低下させるステップS6と、粒子を消滅させるか否かを判断し、粒子を消滅させると判断した場合、ステップS9を実行し、粒子を消滅させないと判断した場合、ステップS8を実行した後にステップS3に戻る、ステップS7と、粒子の重みを増加させるステップS8と、粒子のシミュレーションが完了するか否かを判断し、シミュレーションが完了していないと判断した場合、ステップS2に戻り、シミュレーションが完了したと判断した場合、終了するステップS9と、を含む、ことを特徴とする請求項34に記載の放射線照射システムの制御方法。
【請求項36】
前記暗黙吸収は、粒子を取得するステップS1と、粒子が格子セル内で衝突するか否かを判断し、衝突すると判断した場合、ステップS3を実行し、衝突しないと判断した場合、ステップS1に戻る、ステップS2と、重みに散乱発生確率をかけるステップS3と、粒子の重みが最も低い重みより小さいか否かを判断し、小さいと判断した場合、ステップS5を実行し、小さくないと判断した場合、ステップS2に戻る、ステップS4と、粒子を消滅させるか否かを判断し、粒子を消滅させると判断した場合、ステップS7を実行し、粒子を消滅させないと判断した場合、ステップS6を実行した後にステップS2に戻る、ステップS5と、重みを消滅確率で割るステップS6と、粒子のシミュレーションが完了するか否かを判断し、シミュレーションが完了していないと判断した場合、ステップS1に戻り、シミュレーションが完了したと判断した場合、終了するステップS7と、を含む、ことを特徴とする請求項34に記載の放射線照射システムの制御方法。
【請求項37】
ウェイトウインドウゲームは、粒子運動をシミュレーションするステップS1と、粒子の重みがウェイトウインドウ範囲内にあるか否かを判断し、範囲内にあると判断した場合、ステップS1に戻り、範囲内にないと判断した場合、ステップS3を実行するステップS2と、重みがウェイトウインドウより大きいか否かを判断し、大きいと判断した場合、ステップS4を実行した後にステップS1に戻り、大きくないと判断した場合、ステップS5を実行するステップS3と、粒子をスプリッティングし、重みを低下させるステップS4と、消滅させるか否かを判断し、消滅させると判断した場合、終了し、消滅させないと判断した場合、ステップS6を実行した後にステップS1に戻る、ステップS5と、粒子の重みを増加させるステップS6と、を含む、ことを特徴とする請求項34に記載の放射線照射システムの制御方法。
【請求項38】
格子空間インポータンスは、下式の随伴輸送方程式を解くことにより取得され、
【数3】
式中、Φ
*は、随伴束であり、S
*は、随伴線源であり、vは、粒子運動の速度であり、Ωは、粒子運動の方向であり、Σ
tは、粒子と物質とが衝突する反応断面積であり、Σ
sは、散乱断面積であり、rは、粒子の所在する位置であり、Eは、粒子のエネルギーであり、tは、時間である、ことを特徴とする請求項35に記載の放射線照射システムの制御方法。
【請求項39】
粒子は、格子空間インポータンスがI
nの格子から格子空間インポータンスがI
n+1の格子に運動し、I
n+1>I
nであれば、m=I
n+1/I
nにし、粒子をm個の粒子にスプリッティングし、各粒子の重みを元の重みの1/mに低下させ、I
n+1<I
nであれば、粒子に対してロシアンルーレット手法を行い、P=I
n+1/I
nにし、0~1から1つの乱数xをサンプリングし、xがPより小さければ、粒子が生き残り、重みに1/Pをかけ、そうでなければ、粒子を消滅させ、粒子のシミュレーションを終了する、ことを特徴とする請求項38に記載の放射線照射システムの制御方法。
【請求項40】
粒子の重みは、上限が10で、下限が0.25であり、粒子の重みwが10より大きい場合、wの整数部分をw1にし、小数部分をw2にし、0~1から1つの乱数xをサンプリングし、xがw2より小さい場合、w=w1+1にし、xがw2より大きい場合、w=w1にし、次に、1つの粒子をw個の粒子にスプリッティングして、各粒子の重みが1に低下するまでシミュレーションを行う、ことを特徴とする請求項34~39のいずれか一項に記載の放射線照射システムの制御方法。
【請求項41】
治療用ビームを発生させ、前記治療用ビームを被照射体に照射して被照射部位を形成するビーム照射装置と、
前記治療用ビームのパラメータ及び前記被照射部位の医用画像データに基づいて線量シミュレーション計算を行い、かつ治療計画を作成する治療計画モジュールであって、非一様格子を使用してシミュレーション計算を行う治療計画モジュールと、
前記治療計画に基づいて前記ビーム照射装置の照射を制御する制御モジュールと、を含むことを特徴とする放射線照射システム。
【請求項42】
前記治療計画モジュールは、重要領域の格子の寸法を非重要領域の格子の寸法より小さく設定する、ことを特徴とする請求項41に記載の放射線照射システム。
【請求項43】
前記治療計画モジュールは、腫瘍の所在する領域の格子の寸法を0.4mm以下に設定する、ことを特徴とする請求項41に記載の放射線照射システム。
【請求項44】
前記治療計画モジュールは、血液、空気、骨の所在する領域の格子の寸法を1.6mm以上に設定する、ことを特徴とする請求項41に記載の放射線照射システム。
【請求項45】
前記治療計画モジュールは、正常な筋肉の所在する領域の格子の寸法を0.8mmより大きく1.6mmより小さく設定する、ことを特徴とする請求項41に記載の放射線照射システム。
【請求項46】
中性子捕捉療法システムであり、前記ビーム照射装置は、中性子発生装置、ビーム整形体及び治療台を含み、前記中性子発生装置は、加速器及びターゲットを含み、前記加速器は、荷電粒子を加速して荷電粒子線を発生させ、かつ前記ターゲットと作用して中性子線を発生させ、前記ビーム整形体は、前記中性子発生装置により発生した中性子線を所定のビーム品質に調整可能であり、前記中性子発生装置により発生した中性子線は、前記ビーム整形体を通過して前記治療台上の前記被照射体に照射される、ことを特徴とする請求項41~45のいずれか一項に記載の放射線照射システム。
【請求項47】
放射線照射システムの制御方法であって、前記ビーム照射システムは、治療用ビームを発生させ、前記治療用ビームを被照射体に照射して被照射部位を形成するビーム照射装置と、前記治療用ビームのパラメータ及び前記被照射部位の医用画像データに基づいて線量シミュレーション計算を行い、かつ治療計画を作成する治療計画モジュールと、前記治療計画に基づいて前記ビーム照射装置の照射を制御する制御モジュールと、を含み、
前記放射線照射システムの制御方法は、前記治療計画モジュールが非一様格子を使用してシミュレーション計算を行うステップを含む、ことを特徴とする放射線照射システムの制御方法。
【請求項48】
前記治療計画モジュールが重要領域の格子の寸法を非重要領域の格子の寸法より小さく設定するステップをさらに含む、ことを特徴とする請求項47に記載の放射線照射システムの制御方法。
【請求項49】
前記治療計画モジュールが腫瘍の所在する領域の格子の寸法を0.4mm以下に設定するステップをさらに含む、ことを特徴とする請求項47に記載の放射線照射システムの制御方法。
【請求項50】
前記治療計画モジュールが、血液、空気、骨の所在する領域の格子の寸法を1.6mm以上に設定し、正常な筋肉の所在する領域の格子の寸法を0.8mmより大きく1.6mmより小さく設定するステップをさらに含む、ことを特徴とする請求項47に記載の放射線照射システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、放射線照射システムに関し、本発明の別の態様は、放射線照射システムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子科学の発展に従って、コバルト60、線形加速器、電子ビームなどの放射線療法は、既にがん治療の主な手段の1つとなった。しかしながら、従来の光子又は電子療法は、放射線そのものの物理的条件の制限で腫瘍細胞を殺すとともに、ビーム経路上の数多くの正常組織に損傷を与える。また、腫瘍細胞の放射線に対する感受性の度合いが異なるため、従来の放射線療法では、放射線耐性の高い悪性腫瘍(例えば、多形神経膠芽腫(glioblastoma multiforme)、黒色腫(melanoma))に対する治療効果が高くない。
【0003】
腫瘍の周囲の正常組織への放射線損傷を低減するために、化学療法(chemotherapy)における標的療法の構想が、放射線療法に適用されている。また、放射線耐性の高い腫瘍細胞に対し、現在では、陽子線治療、重粒子治療、中性子捕捉療法などの、生物学的効果比(relative biological effectiveness、RBE)の高い放射線源が積極的に開発されている。このうち、中性子捕捉療法は、上記2つの構想を組み合わせたものであり、例えば、ホウ素中性子捕捉療法(Boron Neutron Capture Therapy、BNCT)では、ホウ素含有薬物が腫瘍細胞に特異的に集まり、高精度なビームの制御と合わせることで、従来の放射線に比べて、より良いがん治療オプションを提供する。
【0004】
ホウ素中性子捕捉療法は、ホウ素(10B)含有薬物が熱中性子に対して大きい捕捉断面積を持つという特性を利用し、10B(n,α)7Li中性子捕捉と核分裂反応により、4Heと7Liという2種の重荷電粒子を生成する。2種の粒子の総飛程が約1つの細胞のサイズに相当するため、生体への放射線損傷が細胞レベルに抑えられる。ホウ素含有薬物が腫瘍細胞に選択的に集まり、適切な中性子ビーム源と合わせることで、正常組織に大きな損傷を与えない前提で、腫瘍細胞を部分的に殺すという目的を達成することができる。
【0005】
放射粒子ががん細胞をできる限り多く殺すとともに正常細胞に対する損傷を低減するために、通常、患者を治療する前にCT又はPETの画像診断を行い、画像診断結果に基づいて人体の組織材料情報を取得し、材料情報及び放射線源に基づいて計算モデルを確立し、放射粒子の人体内の輸送過程をシミュレーションし、最終的に放射粒子の人体内の線量分布を取得し、そして患者に対する線量分布の最適な計画を患者の治療スキームとして選択する。
【0006】
現在、放射線治療計画システムにおける線量計算モジュールは、主に、モンテカルロ法で放射粒子をシミュレーションして取得されたものである。従来の放射線治療は、光子及び電子の運動過程をシミュレーションする必要があるのに対して、放射線照射治療は、中性子及び光子の運動過程をシミュレーションする必要がある。現在、モンテカルロ法は、線量計算の最正確な方法であるが、計算は、時間がかかり、メモリ消費量が大きい。
【0007】
現在、放射線治療の計算には、MCNP、Geant4のような汎用性モンテカルロプログラムが使用されることが多く、MCNPは、最初に原子炉設計計算に使用され、Geant4は、最初に高エネルギー物理計算に使用され、設計初期に放射線治療の物理シーンが考慮されないため、放射線治療の計算に対して特殊な最適化を行わない。放射線治療計画の作成は、通常、所定の時間内に完了する必要があり、例えば、放射線照射治療は、放射線治療計画システムが1時間内に治療スキームを作成できることが要求され、線量計算過程は、放射線治療計画の作成時間の大部分を占めるため、放射線治療計画の作成時間を減少させるために線量計算方法を最適化する必要がある。
【発明の概要】
【0008】
従来技術の欠陥を解消するために、本発明の第1態様に係る放射線照射システムは、治療用ビームを発生させ、治療用ビームを被照射体に照射して被照射部位を形成するビーム照射装置と、治療用ビームのパラメータ及び被照射部位の医用画像データに基づいて線量シミュレーション計算を行い、かつ治療計画を作成し、元素の、人体内の重量割合と、中性子及び光子との反応強度とを総合して、放射線照射システムの適用シーンにおいて中性子及び光子のシミュレーション計算結果に対して影響力を有する元素をスクリーニングし、シミュレーション過程において、スクリーニングされた元素のみをシミュレーションする治療計画モジュールと、治療計画に基づいてビーム照射装置の照射を制御する制御モジュールと、を含む。
【0009】
他の実施例において、治療計画モジュールによってスクリーニングされた元素は、H、He、Li、Be、B、C、N、O、F、Na、Mg、Al、Si、P、S、Cl、Ar、K及びCaから選択される1つ又は複数の元素である。
【0010】
より具体的には、治療計画モジュールによってスクリーニングされた元素は、H、He、Li、Be、B、C、N、O、F、Na、Mg、Al、Si、P、S、Cl、Ar、K及びCaである。
【0011】
別の実施例において、治療計画モジュールは、各元素の対応する中性子断面積データベースから、294K及び0K以外の温度に対応するデータベースを除去する。
【0012】
放射線照射システムは、好ましくは、中性子捕捉療法システムであり、ビーム照射装置は、中性子発生装置、ビーム整形体及び治療台を含み、中性子発生装置は、加速器及びターゲットを含み、加速器は、荷電粒子を加速して荷電粒子線を発生させ、かつターゲットと作用して中性子線を発生させ、ビーム整形体は、中性子発生装置により発生した中性子線を所定のビーム品質に調整可能であり、中性子発生装置により発生した中性子線は、ビーム整形体を通過して治療台上の被照射体に照射される。
【0013】
本発明の第2態様に係る放射線照射システムの制御方法において、ビーム照射システムは、治療用ビームを発生させ、治療用ビームを被照射体に照射して被照射部位を形成するビーム照射装置と、治療用ビームのパラメータ及び被照射部位の医用画像データに基づいて線量シミュレーション計算を行い、かつ治療計画を作成する治療計画モジュールと、治療計画に基づいてビーム照射装置の照射を制御する制御モジュールと、を含み、放射線照射システムの制御方法は、元素の、人体内の重量割合と、中性子及び光子との反応強度とを総合して、放射線照射システムの適用シーンにおいて中性子及び光子のシミュレーション計算結果に対して影響力を有する元素をスクリーニングし、シミュレーション過程において、スクリーニングされた元素のみをシミュレーションするステップを含む。
【0014】
他の実施例において、治療計画モジュールによってスクリーニングされた元素は、H、He、Li、Be、B、C、N、O、F、Na、Mg、Al、Si、P、S、Cl、Ar、K及びCaから選択される1つ又は複数の元素である。
【0015】
より具体的には、治療計画モジュールによってスクリーニングされた元素は、H、He、Li、Be、B、C、N、O、F、Na、Mg、Al、Si、P、S、Cl、Ar、K及びCaである。
【0016】
別の実施例において、制御方法は、治療計画モジュールが、各元素の対応する中性子断面積データベースから、294K及び0K以外の温度に対応するデータベースを除去するステップをさらに含む。
【0017】
放射線照射システムは、好ましくは、中性子捕捉療法システムであり、ビーム照射装置は、中性子発生装置、ビーム整形体及び治療台を含み、中性子発生装置は、加速器及びターゲットを含み、加速器は、荷電粒子を加速して荷電粒子線を発生させ、かつターゲットと作用して中性子線を発生させ、ビーム整形体は、中性子発生装置により発生した中性子線を所定のビーム品質に調整可能であり、中性子発生装置により発生した中性子線は、ビーム整形体を通過して治療台上の被照射体に照射される。
【0018】
本発明の実施例に係る放射線照射システム及びその制御方法は、元素の、人体内の重量割合と、中性子及び光子との反応強度とを総合して、放射線照射システムの適用シーンにおいて中性子及び光子のシミュレーション計算結果に対して影響力を有する元素をスクリーニングし、シミュレーション過程において、スクリーニングされた元素のみをシミュレーションすることにより、治療計画モジュールの計算速度を大幅に向上させ、計算時間を減少させることができる。
【0019】
本発明の第3態様に係る放射線照射システムは、治療用ビームを発生させ、かつ前記治療用ビームを被照射体に照射して被照射部位を形成するビーム照射装置と、前記治療用ビームのパラメータ及び前記被照射部位の医用画像データに基づいて線量シミュレーション計算を行い、かつ治療計画を作成する治療計画モジュールであって、異なる線源粒子のシミュレーションタスクを異なるプロセス又はスレッドに割り当て、各プロセス又は各スレッドの計算タスクを完了した後にまとめて、最終的な計算結果を取得する治療計画モジュールと、前記治療計画に基づいて前記ビーム照射装置の照射を制御する制御モジュールと、を含む。
【0020】
放射線照射システムは、好ましくは、中性子捕捉療法システムであり、前記ビーム照射装置は、中性子発生装置、ビーム整形体及び治療台を含み、前記中性子発生装置は、加速器及びターゲットを含み、前記加速器は、荷電粒子を加速して荷電粒子線を発生させ、かつ前記ターゲットと作用して中性子線を発生させ、前記ビーム整形体は、前記中性子発生装置により発生した中性子線を所定のビーム品質に調整可能であり、前記中性子発生装置により発生した中性子線は、前記ビーム整形体を通過して前記治療台上の前記被照射体に照射される。
【0021】
一実施例において、CPUのプロセス並列、スレッド並列及びGPU加速により粒子をシミュレーションし、プロセス並列及びスレッド並列は、いずれもマルチコアCPUを使用して並列計算を実現し、CPUのプロセス並列及びスレッド並列の計算過程は、まず、システムがプロセス数又はスレッド数を取得して、値nを得るステップと、次に、システムがシミュレーションすべき粒子をn個に均一に分けるステップと、そして、各スレッド又は各プロセスにおいてそれぞれ1個の粒子を独立してシミュレーションし、かつカウントするステップと、最後に、システムが各プロセス又は各スレッドにおいて取得されたカウント数を統計して、最終的な線量を取得するステップと、を含む。
【0022】
一実施例において、GPU加速は、GPUのマルチコアプロセッサの並列計算により実現され、GPU加速によるシミュレーション計算の過程は、まず、システムが乱数、断面積データなどをCPUメモリからGPUグラフィックメモリに伝送し、次に、GPU中の各プロセッサが単一の粒子をシミュレーションし、計算し、カウントし、かつカウント結果をグローバルカウントに統計するステップと、そして、システムが、シミュレーションされていない粒子があるか否かを判断し、シミュレーションされていない粒子がない場合、カウント結果をGPUメモリからCPUメモリに伝送し、シミュレーションされていない粒子がある場合、前のステップに戻り、全ての粒子のシミュレーションが完了するまで、シミュレーションされていない粒子をシミュレーションし続け、カウントするステップと、を含む。
【0023】
本発明の第4態様に係る放射線照射システムの制御方法において、前記ビーム照射システムは、治療用ビームを発生させ、前記治療用ビームを被照射体に照射して被照射部位を形成するビーム照射装置と、前記治療用ビームのパラメータ及び前記被照射部位の医用画像データに基づいて線量シミュレーション計算を行い、かつ治療計画を作成する治療計画モジュールと、前記治療計画に基づいて前記ビーム照射装置の照射を制御する制御モジュールと、を含み、前記放射線照射システムの制御方法は、異なる線源粒子のシミュレーションタスクを異なるプロセス又はスレッドに割り当て、各プロセス又は各スレッドの計算タスクを完了した後にまとめて、最終的な計算結果を取得するステップを含む。
【0024】
一実施例において、CPUのプロセス並列、スレッド並列及びGPU加速により粒子をシミュレーションする。
【0025】
好ましくは、プロセス並列及びスレッド並列はいずれも、マルチコアCPUを使用して並列計算を実現する。
【0026】
一実施例において、CPUのプロセス並列及びスレッド並列の計算過程は、まず、システムがプロセス数又はスレッド数を取得して、値nを取得するステップと、次に、システムが、シミュレーションすべき粒子をn個に均一に分けるステップと、そして、各スレッド又は各プロセスにおいてそれぞれ1個の粒子を独立してシミュレーションし、かつカウントするステップと、最後に、システムが各プロセス又は各スレッドにおいて取得されたカウント数を統計して、最終的な線量を取得するステップと、を含む。
【0027】
好ましくは、GPU加速は、GPUのマルチコアプロセッサの並列計算により実現される。
【0028】
GPU加速によるシミュレーション計算の過程は、まず、システムが乱数、断面積データなどをCPUメモリからGPUグラフィックメモリに伝送し、次に、GPU中の各プロセッサが単一の粒子をシミュレーションし、計算し、カウントし、かつカウント結果をグローバルカウントに統計するステップと、そして、システムが、シミュレーションされていない粒子があるか否かを判断し、シミュレーションされていない粒子がない場合、カウント結果をGPUメモリからCPUメモリに伝送し、シミュレーションされていない粒子がある場合、前のステップに戻り、全ての粒子のシミュレーションが完了するまで、シミュレーションされていない粒子をシミュレーションし続け、カウントするステップと、を含む。
【0029】
本発明の実施例に係る放射線照射システム及びその制御方法は、異なる線源粒子のシミュレーションタスクを異なるプロセス又はスレッドに割り当て、各プロセス又は各スレッドの計算タスクを完了した後にまとめて、最終的な計算結果を取得することにより、計算速度を大幅に向上させ、計算時間を減少させることができる。
【0030】
本発明の第5態様に係る放射線照射システムは、治療用ビームを発生させ、かつ前記治療用ビームを被照射体に照射して被照射部位を形成するビーム照射装置と前記治療用ビームのパラメータ及び前記被照射部位の医用画像データに基づいて線量シミュレーション計算を行い、かつ治療計画を作成する治療計画モジュールであって、光子の半吸収厚さが第1所定の値以下である場合、光子に対するシミュレーションを停止する治療計画モジュールと、前記治療計画に基づいて前記ビーム照射装置の照射を制御する制御モジュールと、を含む。
【0031】
放射線照射システムは、好ましくは、中性子捕捉療法システムであり、前記ビーム照射装置は、中性子発生装置、ビーム整形体及び治療台を含み、前記中性子発生装置は、加速器及びターゲットを含み、前記加速器は、荷電粒子を加速して荷電粒子線を発生させ、かつ前記ターゲットと作用して中性子線を発生させ、前記ビーム整形体は、前記中性子発生装置により発生した中性子線を所定のビーム品質に調整可能であり、前記中性子発生装置により発生した中性子線は、前記ビーム整形体を通過して前記治療台上の前記被照射体に照射される。
【0032】
一実施例において、前記治療計画モジュールは、式(1-1)で光子の半吸収厚さtを計算し、
【数1】
式中、μは、光子の線減衰係数であり、光子が通過する材料及び光子エネルギーにより決定される。
【0033】
第1所定の値は、1つの細胞のサイズであり、好ましくは、第1所定の値は、0.2mmであり、光子エネルギーが第2所定の値以下である場合、光子エネルギーに対応する光子の半吸収厚さは、第1所定の値以下であり、第2所定の値は、10KeVである。
【0034】
本発明の第6態様に係る放射線照射システムの制御方法において、前記ビーム照射システムは、治療用ビームを発生させ、前記治療用ビームを被照射体に照射して被照射部位を形成するビーム照射装置と、前記治療用ビームのパラメータ及び前記被照射部位の医用画像データに基づいて線量シミュレーション計算を行い、かつ治療計画を作成する治療計画モジュールと、前記治療計画に基づいて前記ビーム照射装置の照射を制御する制御モジュールと、を含み、前記放射線照射システムの制御方法は、光子の半吸収厚さが第1所定の値以下である場合、光子に対するシミュレーションを停止するステップを含む。
【0035】
一実施例において、前記治療計画モジュールは、式(1-1)で光子の半吸収厚さtを計算し、
【数2】
式中、μは、光子の線減衰係数であり、光子が通過する材料及び光子エネルギーにより決定される。
【0036】
第1所定の値は、1つの細胞のサイズである。
【0037】
好ましくは、第1所定の値は、0.2mmである。
【0038】
光子エネルギーが第2所定の値以下である場合、光子エネルギーに対応する光子の半吸収厚さは、第1所定の値以下である。
【0039】
好ましくは、第2所定の値は、10KeVである。
【0040】
本発明の実施例に係る放射線照射システム及びその制御方法は、光子の半吸収厚さが第1所定の値以下である場合、光子に対するシミュレーションを停止することにより、計算精度を保証する前提で、計算時間を減少させることができる。
【0041】
本発明の第7態様に係る放射線照射システムは、治療用ビームを発生させ、治療用ビームを被照射体に照射して被照射部位を形成するビーム照射装置と治療用ビームのパラメータ及び被照射部位の医用画像データに基づいて線量シミュレーション計算を行い、かつ治療計画を作成する治療計画モジュールであって、分散減少により粒子をシミュレーションする治療計画モジュールと、治療計画に基づいてビーム照射装置の照射を制御する制御モジュールと、を含む。
【0042】
さらに、分散減少は、暗黙吸収と、ウェイトウインドウゲームと、ロシアンルーレット及びスプリッティングとを含み、放射線照射システムは、中性子捕捉療法システムであり、ビーム照射装置は、中性子発生装置、ビーム整形体及び治療台を含み、中性子発生装置は、加速器及びターゲットを含み、加速器は、荷電粒子を加速して荷電粒子線を発生させ、かつターゲットと作用して中性子線を発生させ、ビーム整形体は、中性子発生装置により発生した中性子線を所定のビーム品質に調整可能であり、中性子発生装置により発生した中性子線は、ビーム整形体を通過して治療台上の被照射体に照射される。
【0043】
本発明の第8態様に係る放射線照射システムの制御方法において、ビーム照射システムは、治療用ビームを発生させ、治療用ビームを被照射体に照射して被照射部位を形成するビーム照射装置と、治療用ビームのパラメータ及び被照射部位の医用画像データに基づいて線量シミュレーション計算を行い、かつ治療計画を作成する治療計画モジュールと、治療計画に基づいてビーム照射装置の照射を制御する制御モジュールと、を含み、放射線照射システムの制御方法は、治療計画モジュールが分散減少により粒子をシミュレーションするステップを含む。
【0044】
さらに、分散減少は、暗黙吸収と、ウェイトウインドウゲームと、ロシアンルーレット及びスプリッティングとを含み、分散減少により粒子をシミュレーションするステップは、1つの線源粒子を取得するステップS1と、粒子が格子セル内で衝突するか否かを判断し、衝突すると判断した場合、ステップS3、S4を順に実行し、衝突しないと判断した場合、ステップS5、S6を順に実行するステップS2と、暗黙吸収処理を行うステップS3と、重みがウェイトウインドウより低いか否かを判断し、低いと判断した場合、ステップS7を実行し、低くないと判断した場合、ステップS2に戻る、ステップS4と、ロシアンルーレット及びスプリッティング処理を行うステップS5と、ロシアンルーレット処理を行うか否かを判断し、ロシアンルーレット処理を行うと判断した場合、ステップS7を実行し、ロシアンルーレット処理を行わないと判断した場合、ステップS2に戻る、ステップS6と、消滅させるか否かを判断し、消滅させると判断した場合、ステップS8を実行し、消滅させないと判断した場合、ステップS9を実行した後にステップS2に戻る、ステップS7と、粒子の処理が完了するか否かを判断し、完了すると判断した場合、フローを終了し、完了しないと判断した場合、ステップS1に戻る、ステップS8と、重みを消滅確率で割るステップS9と、を含む。
【0045】
さらに、ロシアンルーレット及びスプリッティングは、各格子の格子空間インポータンスを計算し、かつ記録するステップS1と、粒子を取得するステップS2と、粒子に対してウェイトウインドウ検出及び操作を行うステップS3と、粒子が格子境界を跨ぐ前後の格子空間インポータンスIn及びIn+1を計算するステップS4と、InがIn+1より大きいか否かを比較し、大きくない場合、ステップS6を実行した後にステップS3に戻り、大きい場合、ステップS7を実行する、ステップS5と、粒子をスプリッティングし、かつ粒子の重みを低下させるステップS6と、粒子を消滅させるか否かを判断し、粒子を消滅させると判断した場合、ステップS9を実行し、粒子を消滅させないと判断した場合、ステップS8を実行した後にステップS3に戻る、ステップS7と、粒子の重みを増加させるステップS8と、粒子のシミュレーションが完了するか否かを判断し、シミュレーションが完了していないと判断した場合、ステップS2に戻り、シミュレーションが完了したと判断した場合、終了するステップS9と、を含む。
【0046】
さらに、暗黙吸収は、粒子を取得するステップS1と、粒子が格子セル内で衝突するか否かを判断し、衝突すると判断した場合、ステップS3を実行し、衝突しないと判断した場合、ステップS1に戻る、ステップS2と、重みに散乱発生確率をかけるステップS3と、粒子の重みが最も低い重みより小さいか否かを判断し、小さいと判断した場合、ステップS5を実行し、小さくないと判断した場合、ステップS2に戻る、ステップS4と、粒子を消滅させるか否かを判断し、粒子を消滅させると判断した場合、ステップS7を実行し、粒子を消滅させないと判断した場合、ステップS6を実行した後にステップS2に戻る、ステップS5と、重みを消滅確率で割るステップS6と、粒子のシミュレーションが完了するか否かを判断し、シミュレーションが完了していないと判断した場合、ステップS1に戻り、シミュレーションが完了したと判断した場合、終了するステップS7と、を含む。
【0047】
さらに、ウェイトウインドウゲームは、粒子運動をシミュレーションするステップS1と、粒子の重みがウェイトウインドウ範囲内にあるか否かを判断し、範囲内にあると判断した場合、ステップS1に戻り、範囲内にないと判断した場合、ステップS3を実行するステップS2と、重みがウェイトウインドウより大きいか否かを判断し、大きいと判断した場合、ステップS4を実行した後にステップS1に戻り、大きくないと判断した場合、ステップS5を実行するステップS3と、粒子をスプリッティングし、重みを低下させるステップS4と、消滅させるか否かを判断し、消滅させると判断した場合、終了し、消滅させないと判断した場合、ステップS6を実行した後にステップS1に戻る、ステップS5と、粒子の重みを増加させるステップS6と、を含む。
【0048】
一実施例において、格子空間インポータンスは、下式の随伴輸送方程式を解くことにより取得され、
【数3】
式中、Φ
*は、随伴束であり、S
*は、随伴線源であり、vは、粒子運動の速度であり、Ωは、粒子運動の方向であり、Σ
tは、粒子と物質とが衝突する反応断面積であり、Σ
sは、散乱断面積であり、rは、粒子の所在する位置であり、Eは、粒子のエネルギーであり、tは、時間である。
【0049】
より具体的には、粒子は、格子空間インポータンスがInの格子から格子空間インポータンスがIn+1の格子に運動し、In+1>Inであれば、m=In+1/Inにし、粒子をm個の粒子にスプリッティングし、各粒子の重みを元の重みの1/mに低下させ、In+1<Inであれば、粒子に対してロシアンルーレット手法を行い、P=In+1/Inにし、0~1から1つの乱数xをサンプリングし、xがPより小さければ、粒子が生き残り、重みに1/Pをかけ、そうでなければ、粒子を消滅させ、粒子のシミュレーションを終了する。
【0050】
他の実施例において、粒子の重みは、上限が10で、下限が0.25であり、粒子の重みwが10より大きい場合、wの整数部分をw1にし、小数部分をw2にし、0~1から1つの乱数xをサンプリングし、xがw2より小さい場合、w=w1+1にし、xがw2より大きい場合、w=w1にし、次に、1つの粒子をw個の粒子にスプリッティングして、各粒子の重みが1に低下するまでシミュレーションを行う。
【0051】
本発明の実施例に係る放射線照射システム及びその制御方法は、分散減少により粒子をシミュレーションすることにより、計算精度を保証する前提で、計算時間を減少させることができる。
【0052】
本発明の第9態様に係る放射線照射システムは、治療用ビームを発生させ、治療用ビームを被照射体に照射して被照射部位を形成するビーム照射装置と、治療用ビームのパラメータ及び被照射部位の医用画像データに基づいて線量シミュレーション計算を行い、かつ治療計画を作成する治療計画モジュールであって、非一様格子を使用してシミュレーション計算を行う治療計画モジュールと、治療計画に基づいてビーム照射装置の照射を制御する制御モジュールと、を含む。
【0053】
さらに、治療計画モジュールは、重要領域の格子の寸法を非重要領域の格子の寸法より小さく設定する。
【0054】
さらに、治療計画モジュールは、腫瘍の所在する領域の格子の寸法を0.4mm以下に設定する。
【0055】
さらに、治療計画モジュールは、血液、空気、骨の所在する領域の格子の寸法を1.6mm以上に設定する。
【0056】
さらに、治療計画モジュールは、正常な筋肉の所在する領域の格子の寸法を0.8mmより大きく1.6mmより小さく設定する。
【0057】
放射線照射システムは、好ましくは、中性子捕捉療法システムであり、ビーム照射装置は、中性子発生装置、ビーム整形体及び治療台を含み、中性子発生装置は、加速器及びターゲットを含み、加速器は、荷電粒子を加速して荷電粒子線を発生させ、かつターゲットと作用して中性子線を発生させ、ビーム整形体は、中性子発生装置により発生した中性子線を所定のビーム品質に調整可能であり、中性子発生装置により発生した中性子線は、ビーム整形体を通過して治療台上の被照射体に照射される。
【0058】
本発明の第10態様に係る放射線照射システムの制御方法において、ビーム照射システムは、治療用ビームを発生させ、治療用ビームを被照射体に照射して被照射部位を形成するビーム照射装置と、治療用ビームのパラメータ及び被照射部位の医用画像データに基づいて線量シミュレーション計算を行い、かつ治療計画を作成する治療計画モジュールと、治療計画に基づいてビーム照射装置の照射を制御する制御モジュールと、を含み、放射線照射システムの制御方法は、治療計画モジュールが非一様格子を使用してシミュレーション計算を行うステップを含む。
【0059】
該制御方法は、治療計画モジュールが重要領域の格子の寸法を非重要領域の格子の寸法より小さく設定するステップをさらに含む。
【0060】
該制御方法は、治療計画モジュールが腫瘍の所在する領域の格子の寸法を0.4mm以下に設定するステップをさらに含む。
【0061】
該制御方法は、治療計画モジュールが、血液、空気、骨の所在する領域の格子の寸法を1.6mm以上に設定し、正常な筋肉の所在する領域の格子の寸法を0.8mmより大きく1.6mmより小さく設定するステップをさらに含む。
【0062】
本発明の実施例に係る放射線照射システム及びその制御方法は、非一様格子を使用してシミュレーション計算を行うことにより、計算時間を顕著に増加させない前提で、重要領域の計算精度を向上させ、かつ非重要領域の計算正確度を満たすとともに計算時間を減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【
図1】本発明の実施例のホウ素中性子捕捉療法システムのモジュールの概略図である。
【
図2】本発明の実施例のホウ素中性子捕捉療法システムの概略構成図である。
【
図3】本発明の実施例におけるCPUのプロセス並列及びスレッド並列計算のフローチャートである。
【
図4】本発明の実施例におけるGPU加速によるシミュレーション計算のフローチャートである。
【
図5】本発明の実施例における分散減少法で粒子をシミュレーションするフローチャートである。
【
図6】本発明の実施例におけるロシアンルーレット及びスプリッティングのフローチャートである。
【
図7】本発明の実施例における暗黙吸収のフローチャートである。
【
図8】本発明の実施例におけるウェイトウインドウゲームのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0064】
以下、図面を参照しながら本発明の実施例をさらに詳細に説明することにより、当業者であれば、明細書の文字を参照して実施することができる。
【0065】
中性子捕捉療法は、効果的ながん治療の手段として、近年ではその適用が増加しており、そのうち、ホウ素中性子捕捉療法が最も一般的なものとなった。ホウ素中性子捕捉療法に使用される中性子は、原子炉又は加速器によって供給することができる。ホウ素中性子捕捉療法(Boron Neutron Capture Therapy、BNCT)は、ホウ素(10B)含有薬物が熱中性子に対して大きい捕捉断面積を有するという特性を利用し、10B(n,α)7Li中性子捕捉と核分裂反応により、4He及び7Liという2種の重荷電粒子を生成し、2種の重荷電粒子は、平均エネルギーが約2.33MeVであり、高い線エネルギー付与(Linear Energy Transfer、LET)及び短い飛程という特徴を持ち、α粒子の線エネルギーと飛程は、それぞれ150KeV/μm、8μmであり、7Li重荷電粒子の場合は、それぞれ175KeV/μm、5μmであり、2種の粒子の総飛程が約1つの細胞のサイズに相当するため、生体への放射線損傷が細胞レベルに抑えられる。ホウ素含有薬物が腫瘍細胞に選択的に集まり、適切な中性子ビーム源と合わせることで、正常組織に大きな損傷を与えない前提で、腫瘍細胞を正確に殺すという目的を達成することができる。
【0066】
ホウ素中性子捕捉療法の中性子源が原子炉又は荷電粒子とターゲットとの原子核反応によるものに関わらず、生成するのはすべて混合放射線場であり、即ち、ビームは、低エネルギーから高エネルギーまでの中性子及び光子を含み、深部腫瘍のホウ素中性子捕捉療法について、熱外中性子を除き、他の放射線の含有量が多ければ多いほど、正常組織での非選択的線量沈着を引き起こす割合も大きくなるため、これらの不必要な線量沈着を引き起こす放射線をできる限り低減する必要がある。エアビームの品質要素の他、中性子による人体における線量分布をさらに理解するために、本発明の実施例は、人間の頭部組織の人工器官を使用して線量分布の計算を行い、そして人工器官におけるビームの品質要素を中性子ビーム設計の参考とする。
【0067】
国際原子力機構(IAEA)は、臨床ホウ素中性子捕捉療法に使用される中性子源に対して、エアビームの品質要素に関する5提案を出しており、この5提案は異なる中性子源の利点と欠点を比較するために利用できる他、中性子生成経路の選定及びビーム整形体の設計をする時の参考として利用できる。この5提案はそれぞれ以下のとおりである。
【0068】
熱外中性子束Epithermal neutron flux>1x109n/cm2s
高速中性子汚染Fast neutron contamination<2×10-13Gy-cm2/n
光子汚染Photon contamination<2×10-13Gy-cm2/n
熱中性子と熱外中性子束との比thermal to epithermal neutron flux ratio<0.05
中性子流とフラックスとの比epithermal neutron current to flux ratio>0.7
注:熱外中性子エネルギー領域は、0.5eV~40KeVであり、熱中性子エネルギー領域は、0.5eVより小さく、高速中性子エネルギー領域は、40KeVより大きい。
【0069】
図1に示すように、本実施例における放射線照射システムは、ホウ素中性子捕捉療法システム100であり、中性子ビーム照射装置10、治療計画モジュール20及び制御モジュール30を含む。中性子ビーム照射装置10は、治療用中性子ビームNを発生させ、治療用中性子ビームNを被照射体200に照射して被照射部位を形成する。治療計画モジュール20は、中性子ビーム照射装置10により発生した治療用中性子ビームNのパラメータ及び被照射部位の医用画像データに基づいて線量シミュレーション計算を行い、かつ治療計画を作成し、治療計画に基づいて照射治療時の中性子ビーム照射装置10に対する被照射部位の位置及び対応する照射時間を決定する。治療計画に基づいて決定された位置に被照射体200を位置決めした後、治療を開始することができ、制御モジュール30は、治療計画モジュール20から現在の被照射体200に対応する治療計画を呼び出し、かつ治療計画に基づいて中性子ビーム照射装置10の照射を制御する。制御モジュール30は、他のデータ情報、例えば、中性子ビーム照射装置10のデータ、被照射体200のデータなどを受信してもよい。
【0070】
図2に示すように、該実施例において、中性子ビーム照射装置10は、中性子発生装置11、ビーム整形体12、コリメータ13及び治療台14を含み、中性子発生装置11は、加速器111及びターゲットTを含み、加速器111は、荷電粒子(例えば、陽子、デューテリウム原子核など)を加速し、陽子線のような荷電粒子線Pを発生させ、荷電粒子線Pは、ターゲットTに照射されて、ターゲットTと作用して中性子線(中性子ビーム)Nを発生させ、ターゲットTは、好ましくは、金属ターゲットである。必要な中性子収率及びエネルギー、提供可能な加速荷電粒子のエネルギー及び電流、並びに金属ターゲットの物理的・化学的特性などにより、適切な原子核反応が選択され、一般的に検討されている原子核反応は、
7Li(p,n)
7Be及び
9Be(p,n)
9Bであり、これらの2種の反応は、いずれも吸熱反応である。2種の原子核反応は、エネルギー閾値がそれぞれ1.881MeVと2.055MeVであり、ホウ素中性子捕捉療法の理想的な中性子源がkeVエネルギーレベルの熱外中性子であるため、理論的には、エネルギーが閾値よりわずかに高い陽子を金属リチウムターゲットに衝撃させることで、比較的低いエネルギーの中性子を生成することができ、あまり多くの減速処理を必要とせずに臨床的に使用することができるが、金属リチウム(Li)及び金属ベリリウム(Be)の2種のターゲットは、閾値エネルギーの陽子と作用する断面が高くなく、十分に大きな中性子束を発生させるために、一般的に比較的高いエネルギーを持つ陽子を選択して原子核反応を引き起こす。理想的なターゲットは、中性子収率が高く、生成した中性子のエネルギー分布が熱外中性子エネルギー領域(以下、詳細に説明する)に近く、強い透過性を有する放射線があまり多く発生せず、安全で、安価で、操作しやすく、かつ耐高温などの特性を有するが、実際には全ての要件を満たす原子核反応を見つけることは不可能であり、本発明の実施例においてリチウム金属で製造されたターゲットを使用する。当業者に周知のように、ターゲットTは、リチウム、ベリリウム以外の金属材料で製造されてもよく、例えば、タンタル(Ta)又はタングステン(W)などで形成され、ターゲットTは、円板状であってもよく、他の固体形状であってもよく、液体材料(液体金属)を使用してもよい。加速器111は、線形加速器、サイクロトロン、シンクロトロン、シンクロサイクロトロンであってもよく、中性子発生装置11は、加速器及びターゲットを使用せず、原子炉であってもよい。ホウ素中性子捕捉療法の中性子源が原子炉又は加速器による荷電粒子とターゲットとの原子核反応によるものに関わらず、生成するのは実際にすべて混合放射線場であり、即ち、ビームは、低エネルギーから高エネルギーまでの中性子及び光子を含む。深部腫瘍のホウ素中性子捕捉療法について、熱外中性子を除き、他の放射線の含有量が多ければ多いほど、正常組織での非選択的線量沈着を引き起こす割合も大きくなるため、これらの不必要な線量を引き起こす放射線をできる限り低減する必要がある。また、被照射体の正常組織について、様々な放射線が多すぎて、同様に不必要な線量沈着を引き起こすことを回避すべきである。
【0071】
中性子発生装置11により発生した中性子ビームNは、順にビーム整形体12とコリメータ13を通過して治療台14上の被照射体200に照射される。ビーム整形体12は、中性子発生装置11により発生した中性子ビームNのビーム品質を調整可能であり、コリメータ13は、中性子ビームNを集め、治療中に中性子ビームNに高い標的性を備えさせる。理解できるように、本発明は、コリメータを有さずに、ビームがビーム整形体12から出た後に治療台14上の被照射体200に直接的に照射されてもよい。
【0072】
ビーム整形体12は、反射体121、減速体122、熱中性子吸収体123、放射線遮蔽体124及びビーム出口125をさらに含み、中性子発生装置11により発生した中性子のエネルギースペクトルが広く、治療需要を満たす熱外中性子の以外、他の種類の中性子及び光子の含有量をできる限り減少させて、操作者又は被照射体に損傷を引き起こすことを回避する必要があるため、中性子発生装置10から出た中性子は、減速体22を通して高速中性子のエネルギー(>40keV)が熱外中性子エネルギー領域(0.5eV~40keV)に調整され、かつ熱外中性子(<0.5eV)をできる限り減少させる必要があり、減速体22は、高速中性子と作用する断面が大きく、熱外中性子と作用する断面が小さい材料で製造され、好ましい実施例として、減速体122は、D2O、AlF3、Fluental(登録商標)、CaF2、Li2CO3、MgF2及びAl2O3のうちの少なくとも1種で製造され、反射体121は、減速体122を囲み、かつ減速体122を通過して周囲に拡散した中性子を中性子ビームNに反射して中性子の利用率を向上させ、中性子反射能力が高い材料で製造され、好ましい実施例として、反射体121は、Pb又はNiのうちの少なくとも1種で製造され、減速体122は、後部に熱中性子吸収体123があり、熱中性子と作用する断面が大きい材料で製造され、好ましい実施例として、熱中性子吸収体123は、Li-6で製造され、減速体122を通過した熱中性子を吸収して中性子ビームNにおける熱中性子の含有量を減少させ、治療時に浅層正常組織に対して多すぎる線量を与えることを回避し、理解できるように、熱中性子吸収体は、減速体と一体であってもよく、減速体の材料にLi-6が含まれ、放射線遮蔽体124は、ビーム出口125以外の部分からしみ出る中性子及び光子を遮蔽し、放射線遮蔽体124の材料は、光子遮蔽材料と中性子遮蔽材料のうちの少なくとも1種を含み、好ましい実施例として、放射線遮蔽体124の材料は、光子遮蔽材料の鉛(Pb)と中性子遮蔽材料のポリエチレン(PE)を含む。コリメータ13は、ビーム出口125の後部に設置され、コリメータ13から出た熱外中性子ビームは、被照射体200に照射され、浅層正常組織を通過した後に熱中性子に減速されて腫瘍細胞Mに到着する。理解できるように、ビーム整形体20は、さらに他の構造であってもよく、治療に必要な熱外中性子ビームを取得すればよく、説明しやすくするために、コリメータ13が設置された場合、コリメータ13の出口は、後述するビーム出口125と見なすこともできる。本実施例において、被照射体200とビーム出口125との間に放射線遮蔽装置15がさらに設置され、ビーム出口125から出たビームの被照射体の正常組織に対する放射線を遮蔽し、理解できるように、放射線遮蔽装置15が設置されなくてもよい。
【0073】
被照射体200は、ホウ素(B-10)含有薬物を服用するか又は注射された後、ホウ素含有薬物が腫瘍細胞Mに選択的に集まり、次にホウ素(B-10)含有薬物が熱中性子に対して高い捕捉断面積を有するという特性を利用して、10B(n,α)7Li中性子捕捉及び核分裂反応により、4He及び7Liという2種の重荷電粒子を生成する。2種の荷電粒子は、平均エネルギーが約2.33MeVであり、高い線エネルギー付与(Linear Energy Transfer、LET)及び短い飛程という特徴を持ち、α粒子の線エネルギー付与と飛程は、それぞれ150keV/μm、8μmであり、7Li重荷電粒子の線エネルギー付与と飛程は、175keV/μm、5μmであり、2種の粒子の総飛程が約1つの細胞のサイズに相当するため、生体への放射線損傷が細胞レベルに抑えられ、正常組織に大きな損傷を与えない前提で、腫瘍細胞を部分的に殺すという目的を達成することができる。
【0074】
ホウ素中性子捕捉療法システム100は、コンクリート構造の建築物内に全体的に収容され、具体的には、ホウ素中性子捕捉療法システム100は、照射室101及び荷電粒子ビーム発生室102をさらに含み、治療台14上の被照射体200は、照射室101において中性子ビームNの照射による治療を受け、荷電粒子ビーム発生室102は、加速器111を少なくとも部分的に収容し、ビーム整形体12は、照射室101と荷電粒子ビーム発生室102との仕切り壁103内に少なくとも部分的に収容される。理解できるように、仕切り壁103は、照射室101と荷電粒子ビーム発生室102とを完全に隔てるものであってもよく、照射室101と荷電粒子ビーム発生室102とを部分的に隔てるものであってもよく、照射室101と荷電粒子ビーム発生室102とが連通する。ターゲットTは、1つ又は複数であってもよく、荷電粒子線Pは、選択的にそのうちの1つ又はいくつかのターゲットTと作用するか又は同時に複数のターゲットTと作用して、1つ又は複数の治療用中性子ビームNを発生させる。ターゲットTの数に応じて、ビーム整形体12、コリメータ13及び治療台14は、1つ又は複数であってもよく、複数の治療台は、同一の照射室内に設置されてもよく、各治療台に個別の照射室が設置されてもよい。照射室101と荷電粒子ビーム発生室102は、コンクリート壁W(仕切り壁103を含む)で囲まれた空間であり、コンクリート構造は、ホウ素中性子捕捉療法システム100の動作過程において漏れた中性子及び他の放射線を遮蔽することができる。
【0075】
がん細胞を最大限に殺すとともに正常組織への放射線損傷を低減できるために、治療計画モジュール20の設定において、熱外中性子及び光子の線量分布の精度が非常に重要になる。放射線照射システムの適用シーンにおいて、線量計算は、光子及び中性子断面積データベースに読み込まれ、中性子の断面積データベースが非常に大きいため、放射線照射システムの治療計画を作成するソフトウェアのインストールは、大きい記憶空間を占め、かつ該ソフトウェアを使用して線量計算シミュレーションを行う場合に占められたメモリ空間が大きく、かつ計算時間が長くなる。本発明の以下の実施例は、一連の治療計画モジュールの最適化方法を提供し、実行メモリを低下させるとともに線量計算時間を減少させて、放射線治療計画スキームを迅速に作成する要求を満たす。以下、図面を参照しながら各最適化方法を説明する。
【実施例1】
【0076】
治療計画モジュール20においてデータベースを最適化する。
【0077】
人体内に合計60種あまりの元素が含有され、そのうち、20種あまりの元素が必須要素であり、人体の正常な生理学的機能を維持することに重要な意義を有する。人体内の含有量が高い元素は、炭素、水素、酸素、窒素、リン、塩素、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウムなどであり、炭素、水素、酸素、窒素は、人体の有機物を構成する主要な元素であり、人体総重量の96%を占め、人体内の0.01%より大きい残りの大量元素は、それぞれカルシウム、カリウム、リン、硫黄、塩素、マグネシウム、ナトリウムであり、それらが人体総重量を占める百分率は、それぞれ1.5%、0.35%、1%、0.25%、0.15%、0.05%、0.15%である。以上より、炭素、水素、酸素、窒素、カルシウム、カリウム、リン、硫黄、塩素、マグネシウム、ナトリウムの含有量は、既に人体総重量の99.45%に達し、モンテカルロに100種あまりの元素のシミュレーション及び計算システムが記憶され、毎回、モンテカルロを使用してシミュレーション及び計算を行う場合、いずれも各元素をシミュレーション及び計算するため、かかる時間が長い。また、多くの元素に対応する計算及びシミュレーションシステムが記憶されているため、モンテカルロのデータベースが非常に大きい。しかしながら、放射線照射システムの適用シーンにおいて、モンテカルロにより人体内の光子、中性子などの粒子に対してシミュレーション計算を行う場合、人体総重量を占める百分率が大きい(0.01%より大きい)人体内の元素に対してシミュレーション計算を行うだけで正確な計算結果を取得することができ、いくつかの微量元素に対するシミュレーション計算は、長い時間がかかり、該計算結果は、人体総重量の万分の一以上を占める元素に対してシミュレーション計算を行って取得された結果に比べて、差値が0.001%以内にある。
【0078】
また、ある元素、例えば、Feは、人体内の占める重量比が大きいが、中性子及び光子と反応せず、又は中性子及び光子との反応強度が大きくないため、このような元素のシミュレーション計算結果による総体的な計算結果への影響を無視してもよい。ある元素、例えば、ホウ素は、人体内の占める重量比が小さいが、放射線照射システムの適用シーンにおいて人体に大量のホウ素薬物を注射し、かつ中性子との反応が激しく、最終的な計算結果への影響が大きい。
【0079】
元素の、人体内の重量割合と、中性子及び光子との反応強度とを総合して、放射線照射システムの適用シーンにおける、中性子及び光子のシミュレーション計算結果に対して影響力を有する元素(H、He、Li、Be、B、C、N、O、F、Na、Mg、Al、Si、P、S、Cl、Ar、K及びCaから選択される1つ又は複数の元素)をスクリーニングし、シミュレーション過程において、スクリーニングされた元素のみをシミュレーションすることにより、計算精度を保証する前提でシミュレーション計算時間を減少させて、モンテカルロの実行効率を向上させることができ、また、スクリーニングされたこれらの元素に対応するデータベース容量は、元のデータベース容量の2%~3%のみであり、磁気ディスクのメモリ要求が大幅に低下し、製造コストが低減される。
【0080】
一方では、各元素に対応する中性子断面積データベースにおいて、モンテカルロシステムに、選択のために、多くの温度、例えば、0K、1200K、2500K、250K、294K、600K、900Kに対応する断面積データが記憶されているが、放射線照射システムの適用シーンにおいて、人体モデルのみに対してシミュレーション計算を行うだけでよく、人体の正常温度が310K~315Kである。モンテカルロの実行原理に基づいて、温度が入力された後、システムは、記憶されている多くの温度において、入力された温度に最も近い温度を自動的にマッチングし、かつ該温度をシミュレーションパラメータとしてシミュレーション計算を行うため、人体の温度が入力された後、システムは、データベースに記憶されている温度294Kをマッチングし、かつ294Kをパラメータとしてシミュレーション計算を行う。また、ドップラー効果の計算時に、使用される温度は、0Kである。つまり、放射線照射システムの適用シーンにおいて、データベースに記憶されている温度のうち、294K及び0Kの2つのみが使用され、他の温度は、放射線照射システムの適用シーンに対して余分であるため、294K及び0K以外の他の温度に対応するデータベースを除去し、シミュレーション計算構造に影響を与えない前提で、データベースのサイズを約元の三分の一に減少させ、データベースの実行コストが低減される。
【0081】
表1は、それぞれ294K、310K及び330Kの温度で、モンテカルロシステムが同一の人体モデルに対して中性子線量シミュレーション計算を行った結果である。
【0082】
【0083】
表1のデータから分かるように、温度の小範囲の変動による中性子線量の最終的な計算結果への影響を無視してもよく、放射線照射システムの適用シーンにおいて、システムに記憶されている294Kに対応するデータベースを保留するだけで、使用要求を満たすことができ、かつ最終的な計算結果の誤差が許容可能な範囲内にある。
【実施例2】
【0084】
粒子のシミュレーション過程においてプロセスを遮断して粒子のシミュレーション時間を減少させる。
【0085】
放射線照射システムの適用シーンにおいて、線量計算は、中性子線量計算及び光子線量計算を含む。光子は、被照射体の体内の運動過程において、光子エネルギー及び光子の半吸収厚さが徐々に低下するが、光子の吸収断面積が光子エネルギー及び光子の半吸収厚さの低下につれて迅速に増大する。光子の半吸収厚さが1つの細胞のサイズより小さい場合、光子がその所在する細胞内に吸収される確率は、非常に大きく、この場合、光子がその所在する細胞内に全てのエネルギーが沈着することを直接的に設定し、そのシミュレーションを継続せず、このような処理後に算出した線量分布と光子のシミュレーションを継続して算出した線量分布との誤差が0.1%以内にある。
【0086】
人体の細胞のサイズが2~200μmであり、通常、放射線照射システムの適用において、モデルの格子の最小寸法が0.8mmであると、光子の半吸収厚さが格子の最小寸法の四分の一より小さい場合、光子のシミュレーションを停止することができる。
【0087】
具体的には、式(1-1)で光子の半吸収厚さtを計算し、
【数4】
式中、μは、光子の線減衰係数であり、光子が通過する材料及び光子エネルギーにより決定される。
【0088】
以下、人体の骨格を例として、異なる光子エネルギー値の骨格での半吸収厚さを計算する。
【0089】
【0090】
表2から分かるように、骨格において、光子エネルギーが10KeVより小さい場合、光子の半吸収厚さが0.2mmより小さく、つまり、光子エネルギーが10KeVより小さい場合、光子がその現在所在する格子内に吸収される可能性が非常に大きいため、この場合、光子のシミュレーションを停止して取得された線量と、光子をさらにシミュレーションして取得された線量との差が許容可能な範囲内にある。
【0091】
光子の細胞組織での半吸収厚さが、光子が通過する材料及び光子エネルギーにより決定されるため、各種の材料に対応するカットオフエネルギーを設定することができ、光子エネルギーがこのカットオフエネルギーより低い場合、光子のシミュレーションを停止することができる。以下、人体モデルにおいてシミュレーション計算を行うことにより、設定された異なる光子カットオフエネルギーに対応する光子線量を取得する。
【0092】
【0093】
表2から分かるように、光子エネルギーが10KeV以下である場合、光子のシミュレーション計算を停止し、最終的に算出した光子線量と、光子のシミュレーション計算を継続して取得された線量分布との誤差が0.1%以内にある。
【0094】
以上より、光子のシミュレーション計算の過程において、光子エネルギーが所定のカットオフエネルギーより小さい場合、光子の半吸収厚さが1つの細胞のサイズより小さく、この場合、光子のシミュレーションを停止し、線量分布の計算結果に影響を与えない場合に光子線量の計算時間を減少させることができる。
【0095】
他の実施例において、実際のシミュレーション精度の要求に応じて第1所定の値及び第2所定の値を設定し、光子の半吸収厚さが第1所定の値以下である場合、或いは、光子エネルギーが第2所定の値以下である場合、光子のシミュレーションを停止し、第1所定の値は、1つの細胞のサイズより大きくてもよく、1つの細胞のサイズより小さくてもよく、第2所定の値は、12KeV、16KeVなどであってもよい。
【実施例3】
【0096】
並列技術を使用して線量計算モジュールを加速する。
【0097】
放射線照射システムの治療計画モジュールは、モンテカルロ法で、異なる線源粒子のシミュレーション過程が完全に独立するものであり、つまり、異なる粒子のシミュレーション順序が計算結果に影響を与えず、このような計算特性に基づいて、異なる線源粒子のシミュレーションタスクを異なるプロセス又はスレッドに割り当て、各プロセス又は各スレッドの計算タスクを完了した後にまとめて、最終的な計算結果を取得する。コンピュータは、CPUのプロセス並列、スレッド並列という2種の並列及びGPU加速を提供することができる。
【0098】
図3に示すように、いわゆるCPUのプロセス並列及びスレッド並列の計算過程は、まず、システムがプロセス数又はスレッド数を取得して、値nを取得するステップと、次に、システムがシミュレーションすべき粒子をn個に均一に分けるステップと、そして、各スレッド又は各プロセスにおいてそれぞれ1個の粒子を独立してシミュレーションし、かつカウントするステップと、最後に、システムが各プロセス又は各スレッドにおいて取得されたカウント数を統計して、最終的な線量を取得するステップと、を含む。粒子を異なるプロセス又はスレッドに割り当てるとともにシミュレーションし計算し、シミュレーション及び計算の時間を、1つのプロセス又はスレッドを使用して全ての粒子をシミュレーションし計算することに必要な時間のn分の1(プロセス)又は2n分の1に減少させる。
【0099】
プロセス並列及びスレッド並列はいずれも、マルチコアCPUを使用して並列計算を実現し、GPU加速は、GPUのマルチコアプロセッサの並列計算により実現される。プロセス及びスレッド並列効果は、CPUのコス数によって限定され、一般的なスタンドアローンの場合、コア数が4つであり、このように、プロセス並列及びスレッド並列は、速度を最大限4倍(プロセス)又は8倍(スレッド)に向上させ、1つのGPUは、複数のプロセッサが集積され、論理的に計算速度は、複数倍向上することができる。
【0100】
図4に示すように、いわゆるGPU加速によるシミュレーション計算の過程は、まず、システムが乱数、断面積データなどをCPUメモリからGPUグラフィックメモリに伝送し、次に、GPU中の各プロセッサが単一の粒子をシミュレーションし、計算し、カウントし、かつカウント結果をグローバルカウントに統計するステップと、そして、システムが、シミュレーションされていない粒子があるか否かを判断し、シミュレーションされていない粒子がない場合、カウント結果をGPUメモリからCPUメモリに伝送し、シミュレーションされていない粒子がある場合、前のステップに戻り、全ての粒子のシミュレーションが完了するまで、シミュレーションされていない粒子をシミュレーションし続け、カウントするステップと、を含む。
【0101】
GPUのプロセッサが多いため、GPU加速によるシミュレーション計算は、計算速度を大幅に向上させ、計算時間を減少させることができる。また、CPUは、価格が約6000元のIntel Xeon processor with 2.27GHzを使用し、GPUは、価格が約9000元のNVIDIA Tesla C2050を使用し、各GPUは、合計448個のプロセッサを有し、該448個のプロセッサは、448個のCPUに相当する。CPUの計算時間は、GPU計算時間の50~70倍である。これにより、CPUに比べて、GPUを使用してシミュレーション計算を行うと、価格及びかかる時間の面で大きい優位性を有する。
【実施例4】
【0102】
モンテカルロの分散減少法を使用して加速及び収束を行う。
【0103】
モンテカルロ法は、プログラムの計算速度を向上させるために豊かな分散減少法を有し、治療計画システムに使用可能な分散減少法は、暗黙吸収、ウェイトウインドウゲーム、ロシアンルーレット及びスプリッティングなどを含み、ロシアンルーレット及びスプリッティングは、ロシアンルーレット手法及びスプリッティング手法で構成される。以下、分散減少法のロシアンルーレット手法、スプリッティング手法、格子空間インポータンス、暗黙吸収及びウェイトウインドウゲームを解釈する。
【0104】
ロシアンルーレット手法について、通常、粒子の重みは、上限が10に設定され、下限が0.25に設定される。粒子の重みwがある所定の値より小さく(例えば、0.25)に低下する場合、0~1から1つの乱数xをサンプリングし、xがwより小さい場合、粒子が生き残り、粒子の重みが1に戻り、xがw以上であれば、粒子を消滅させ、粒子のシミュレーションを終了する。
【0105】
スプリッティング手法について、粒子の重みwがある値(例えば、10)より大きい場合、wの整数部分をw1にし、小数部分をw2にし、0~1から1つの乱数xをサンプリングし、xがw2より小さい場合、w=w1+1にし、xがw2より大きい場合、w=w1にし、次に、1つの粒子をw個の粒子にスプリッティングして、各粒子の重みが1に低下するまでシミュレーションを行う。
【0106】
格子空間インポータンスについて、モデルの異なる領域にある粒子による線量の寄与は、差異があり、空間インポータンスで粒子による線量の寄与を表し、シミュレーションを行う前に、腫瘍の位置、モデル特性などのパラメータに基づいて、各格子の格子空間インポータンスを計算する。粒子は、格子空間インポータンスがInの格子から格子空間インポータンスがIn+1の格子に移動し、In+1>Inであれば、m=In+1/Inにさせ、粒子をm個の粒子にスプリッティングし、各粒子の重みを元の1/mに低下させ、In+1<Inであれば、粒子に対してロシアンルーレット手法を行い、P=In+1/Inにし、0~1から1つの乱数xをサンプリングし、xがPより小さければ、粒子が生き残り、重みに1/Pをかけ、そうでなければ、粒子を消滅させ、粒子のシミュレーションを終了する。
【0107】
格子空間インポータンスの計算方法について、格子空間インポータンスは、随伴束を計算することにより取得され、随伴束は、下式の随伴輸送方程式を解くことにより取得され、
【数5】
式中、Φ
*は、随伴束であり、S
*は、随伴線源であり、vは、粒子運動の速度であり、Ωは、粒子運動の方向であり、Σ
tは、粒子と物質とが衝突する反応断面積であり、Σ
sは、散乱断面積であり、rは、粒子の所在する位置であり、Eは、粒子のエネルギーであり、tは、時間である。
【0108】
暗黙吸収について、粒子と物質とが相互作用する場合、粒子は、散乱するしかなく、吸収されず、衝突するたびに粒子の重みにP散乱/P総をかける。粒子の重みがある値(例えば、0.25)に低下する場合、ロシアンルーレット手法で粒子を処理する。
【0109】
ウェイトウインドウゲームについて、粒子の重みがある値、例えば、10より大きい場合、スプリッティング手法を行い、粒子の重みがある値、例えば、0.25より小さい場合、ロシアンルーレット手法を行う。ここでの2つの値は、ソフトウェア性能に基づいて設定される。
【0110】
まとめて言えば、粒子は、格子空間インポータンスが小さい箇所から格子空間インポータンスが大きい箇所に運動する場合、粒子の重みが向上し、粒子が消滅せず、重みが低下する場合について、粒子は、格子空間インポータンスが大きい箇所から格子空間インポータンスが小さい箇所に運動する場合、粒子の重みが低下し、粒子に対してスプリッティング又は暗黙吸収処理を行う。熱中性子の人体内での吸収断面積(主に、N、Bなどの元素)が大きいため、中性子源から離れた箇所の格子の線量計算収束速度を加速するために、暗黙吸収により粒子がこれらの格子に運動するべきである。粒子が治療領域から離れる場合、粒子のシミュレーションを継続することは、治療領域の線量計算に対する意義が大きくなく、この場合、計算を継続すると、計算リソースを浪費するため、格子空間インポータンスを設定することにより、このような状況の発生確率を低減することができる。粒子の重みが小さすぎる場合、粒子によるカウントの寄与が非常に小さく、シミュレーションを継続すると、計算リソースを浪費し、粒子の重みが大きすぎる場合、単一のカウントが大きすぎることを引き起こし、間違った結果が生じるリスクがあるため、ウェイトウインドウを設定して粒子の重みを適切な範囲にするべきである。したがって、暗黙吸収と組み合わせて、格子空間インポータンス及びウェイトウインドウゲームを合理的に設定することによりモンテカルロプログラムの収束速度を加速する必要がある。
【0111】
図5に示すように、分散減少法で粒子をシミュレーションするフローは、1つの線源粒子を取得するステップS1と、粒子が格子セル内で衝突するか否かを判断し、衝突すると判断した場合、ステップS3、S4を順に実行し、衝突しないと判断した場合、ステップS5、S6を順に実行するステップS2と、暗黙吸収処理を行うステップS3と、重みがウェイトウインドウより低いか否かを判断し、低いと判断した場合、ステップS7を実行し、低くないと判断した場合、ステップS2に戻る、ステップS4と、ロシアンルーレット及びスプリッティング処理を行うステップS5と、ロシアンルーレット処理を行うか否かを判断し、ロシアンルーレット処理を行うと判断した場合、ステップS7を実行し、ロシアンルーレット処理を行わないと判断した場合、ステップS2に戻る、ステップS6と、消滅させるか否かを判断し、消滅させると判断した場合、ステップS8を実行し、消滅させないと判断した場合、ステップS9を実行した後にステップS2に戻る、ステップS7と、粒子の処理が完了するか否かを判断し、完了すると判断した場合、フローを終了し、完了しないと判断した場合、ステップS1に戻る、ステップS8と、重みを消滅確率で割るステップS9と、を含む。
【0112】
図6に示すように、ロシアンルーレット及びスプリッティングのフローは、各格子の格子空間インポータンスを計算し、かつ記録するステップS1と、粒子を取得するステップS2と、粒子に対してウェイトウインドウ検出及び操作を行うステップS3と、粒子が格子境界を跨ぐ前後の格子空間インポータンスI
n及びI
n+1を計算するステップS4と、I
nがI
n+1より大きいか否かを比較し、大きくない場合、ステップS6を実行した後にステップS3に戻り、大きい場合、ステップS7を実行する、ステップS5と、粒子をスプリッティングし、かつ粒子の重みを低下させるステップS6と、粒子を消滅させるか否かを判断し、粒子を消滅させると判断した場合、ステップS9を実行し、粒子を消滅させないと判断した場合、ステップS8を実行した後にステップS3に戻る、ステップS7と、粒子の重みを増加させるステップS8と、粒子のシミュレーションが完了するか否かを判断し、シミュレーションが完了していないと判断した場合、ステップS2に戻り、シミュレーションが完了したと判断した場合、終了するステップS9と、を含む。
【0113】
図7に示すように、暗黙吸収のフローは、粒子を取得するステップS1と、粒子が格子セル内で衝突するか否かを判断し、衝突すると判断した場合、ステップS3を実行し、衝突しないと判断した場合、ステップS1に戻る、ステップS2と、重みに散乱発生確率をかけるステップS3と、粒子の重みが最も低い重みより小さいか否かを判断し、小さいと判断した場合、ステップS5を実行し、小さくないと判断した場合、ステップS2に戻る、ステップS4と、粒子を消滅させるか否かを判断し、粒子を消滅させると判断した場合、ステップS7を実行し、粒子を消滅させないと判断した場合、ステップS6を実行した後にステップS2に戻る、ステップS5と、重みを消滅確率で割るステップS6と、粒子のシミュレーションが完了するか否かを判断し、シミュレーションが完了していないと判断した場合、ステップS1に戻り、シミュレーションが完了したと判断した場合、終了するステップS7と、を含む。
【0114】
図8に示すように、ウェイトウインドウゲームのフローは、粒子運動をシミュレーションするステップS1と、粒子の重みがウェイトウインドウ範囲内にあるか否かを判断し、範囲内にあると判断した場合、ステップS1に戻り、範囲内にないと判断した場合、ステップS3を実行するステップS2と、重みがウェイトウインドウより大きいか否かを判断し、大きいと判断した場合、ステップS4を実行した後にステップS1に戻り、大きくないと判断した場合、ステップS5を実行するステップS3と、粒子をスプリッティングし、重みを低下させるステップS4と、消滅させるか否かを判断し、消滅させると判断した場合、終了し、消滅させないと判断した場合、ステップS6を実行した後にステップS1に戻る、ステップS5と、粒子の重みを増加させるステップS6と、を含む。
【0115】
分散減少法による線量計算への加速効果を比較するために、暗黙吸収を使用する場合と暗黙吸収を使用しない場合との計算時間及び結果の標準偏差を比較する。同一の人体モデルに対して、1千万個の粒子を計算し、暗黙吸収手法を使用する場合の計算時間が1584sであり、線量計算の標準偏差が11%であり、暗黙吸収手法を使用しない場合の計算時間が1258sであり、線量計算の標準偏差が14.5%であり、標準偏差を暗黙吸収手法を使用する場合の標準偏差と同じになるように低下させるために、シミュレーションされる粒子数を1600万個に増加させ、シミュレーション計算時間を2045sに増加させる必要があり、暗黙吸収手法を使用する場合の計算時間より461s増加し、すなわち、暗黙吸収法を使用すると、計算時間が約20%低下する。
【実施例5】
【0116】
非一様矩形格子を使用してシミュレーション計算を行う。
【0117】
従来の人体モデルの計算は、一様格子を使用することが多く、ある場合に部分領域の精密な計算のために、格子の数を増加させなければならないため、計算時間が長くなり、実行メモリが指数関数的に増加することになる。CT又はPETから読み取られたモデルにより取得されたものは、一様格子であることが多く、多くの接続領域の材料は同じであり、例えば、空気、血液などであり、これらの領域のうちのいくつかに対して、細かい線量分布を正確に計算する必要がないため、粗い格子で細い格子を代替することができ、腫瘍などの重要な位置に対して、より精密な計算を実現するように、より細い格子を分ける必要がある。非一様格子を使用して線量を計算し、計算精度を向上させるとともに、計算時間及び実行メモリが顕著に増加せず、計算時間を顕著に増加させない場合に重要領域の計算精度を向上させ、かつ非重要領域の計算正確度を満たす場合に計算時間を減少させることができる。
【0118】
以下、異なる寸法の格子を設定してシミュレーション計算を行い、異なる格子寸法によるシミュレーション時間及び計算精度への影響を比較する。
【0119】
【0120】
本実験において、使用された混合格子は、中性子の入射方向にあり、前の5cmの部分は、0.4mmの格子で構成され、中間の5cmの部分は、0.8mmの格子で構成され、残りの部分は、1.6mmの格子で構成され、表3から分かるように、非一様格子を使用することにより、格子の総数が元の0.4mmの格子の数の2/5に低下し、格子に必要なメモリも元の1/3に低下し、計算時間が元の34.7%に減少することができ、0.4mmの格子を使用して計算して取得された結果を基準として、混合格子を使用して計算して取得された結果における中性子の誤差が0.1%より小さく、光子の誤差が0.2%より小さい。
【0121】
混合格子の構成パターンは、以上に挙げられたパターンに限定されず、被照射体の具体的な状況に応じて設定することができる。一般的な場合、格子の寸法は、該領域の重要度により決定され、例えば、腫瘍の所在する領域の格子は、寸法が小さく、4mm以下の格子に設定され、血液、空気及び骨の所在する領域の格子は、寸法が大きく、1.6mm以上に設定され、他の正常筋肉などの組織の所在する領域の格子の寸法は、0.8mmより大きく1.6mmより小さく設定される。
【0122】
線量計算に使用されるアルゴリズムは、モンテカルロアルゴリズムであり、モンテカルロアルゴリズムは、利点として計算精度が高く、欠点として収束速度が遅く、計算時間が長いため、計算効率の最適化は、最も重要な一部である。本願の実施例1~実施例5の最適化方法は、異なる程度で計算効率を向上させ、演算時間を減少させることができる。
【0123】
以上に本発明の例示的な具体的な実施形態を説明して、当業者が本発明を理解することを容易にするが、明らかに、本発明は、具体的な実施形態の範囲に限定されず、当業者にとって、様々な変化が添付の特許請求の範囲で限定及び決定される本発明の精神及び範囲内にあれば、これらの変化が明らかで、いずれも本発明の特許請求の範囲内にある。
【手続補正書】
【提出日】2023-08-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療用ビームを発生させ、前記治療用ビームを被照射体に照射して被照射部位を形成するビーム照射装置と、
前記治療用ビームのパラメータ及び前記被照射部位の医用画像データに基づいて線量シミュレーション計算を行い、かつ治療計画を作成する治療計画モジュールであって、光子の半吸収厚さが第1所定の値以下である場合、光子に対するシミュレーションを停止する治療計画モジュールと、
前記治療計画に基づいて前記ビーム照射装置の照射を制御する制御モジュールと、を含むことを特徴とする放射線照射システム。
【請求項2】
中性子捕捉療法システムであり、前記ビーム照射装置は、中性子発生装置、ビーム整形体及び治療台を含み、前記中性子発生装置は、加速器及びターゲットを含み、前記加速器は、荷電粒子を加速して荷電粒子線を発生させ、かつ前記ターゲットと作用して中性子線を発生させ、前記ビーム整形体は、前記中性子発生装置により発生した中性子線を所定のビーム品質に調整可能であり、前記中性子発生装置により発生した中性子線は、前記ビーム整形体を通過して前記治療台上の前記被照射体に照射される、ことを特徴とする請求項1に記載の放射線照射システム。
【請求項3】
前記治療計画モジュールは、式(1-1)で光子の半吸収厚さtを計算し、
【数1】
式中、μは、光子の線減衰係数であり、光子が通過する材料及び光子エネルギーにより決定される、ことを特徴とする請求項1に記載の放射線照射システム。
【請求項4】
第1所定の値は、1つの細胞のサイズであり、好ましくは、第1所定の値は、0.2mmであり、光子エネルギーが第2所定の値以下である場合、光子エネルギーに対応する光子の半吸収厚さは、第1所定の値以下であり、第2所定の値は、10KeVである、ことを特徴とする請求項1に記載の放射線照射システム。
【請求項5】
放射線照射システムの制御方法であって、前記放射線照射システムは、治療用ビームを発生させ、前記治療用ビームを被照射体に照射して被照射部位を形成するビーム照射装置と、前記治療用ビームのパラメータ及び前記被照射部位の医用画像データに基づいて線量シミュレーション計算を行い、かつ治療計画を作成する治療計画モジュールと、前記治療計画に基づいて前記ビーム照射装置の照射を制御する制御モジュールと、を含み、
前記放射線照射システムの制御方法は、光子の半吸収厚さが第1所定の値以下である場合、光子に対するシミュレーションを停止するステップを含む、ことを特徴とする放射線照射システムの制御方法。
【請求項6】
前記治療計画モジュールは、式(1-1)で光子の半吸収厚さtを計算し、
【数2】
式中、μは、光子の線減衰係数であり、光子が通過する材料及び光子エネルギーにより決定される、ことを特徴とする請求項5に記載の放射線照射システムの制御方法。
【請求項7】
第1所定の値は、1つの細胞のサイズである、ことを特徴とする請求項6に記載の放射線照射システムの制御方法。
【請求項8】
第1所定の値は、0.2mmである、ことを特徴とする請求項6に記載の放射線照射システムの制御方法。
【請求項9】
光子エネルギーが第2所定の値以下である場合、光子エネルギーに対応する光子の半吸収厚さは、第1所定の値以下である、ことを特徴とする請求項5に記載の放射線照射システムの制御方法。
【請求項10】
第2所定の値は、10KeVである、ことを特徴とする請求項9に記載の放射線照射システムの制御方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0004
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0004】
ホウ素中性子捕捉療法は、ホウ素(10B)含有薬物が熱中性子に対して大きい捕捉断面積を持つという特性を利用し、
10
B(n,α)
7
Li中性子捕捉と核分裂反応により、4Heと7Liという2種の重荷電粒子を生成する。2種の粒子の総飛程が約1つの細胞のサイズに相当するため、生体への放射線損傷が細胞レベルに抑えられる。ホウ素含有薬物が腫瘍細胞に選択的に集まり、適切な中性子ビーム源と合わせることで、正常組織に大きな損傷を与えない前提で、腫瘍細胞を部分的に殺すという目的を達成することができる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
本発明の第2態様に係る放射線照射システムの制御方法において、放射線照射システムは、治療用ビームを発生させ、治療用ビームを被照射体に照射して被照射部位を形成するビーム照射装置と、治療用ビームのパラメータ及び被照射部位の医用画像データに基づいて線量シミュレーション計算を行い、かつ治療計画を作成する治療計画モジュールと、治療計画に基づいてビーム照射装置の照射を制御する制御モジュールと、を含み、放射線照射システムの制御方法は、元素の、人体内の重量割合と、中性子及び光子との反応強度とを総合して、放射線照射システムの適用シーンにおいて中性子及び光子のシミュレーション計算結果に対して影響力を有する元素をスクリーニングし、シミュレーション過程において、スクリーニングされた元素のみをシミュレーションするステップを含む。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0023
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0023】
本発明の第4態様に係る放射線照射システムの制御方法において、前記放射線照射システムは、治療用ビームを発生させ、前記治療用ビームを被照射体に照射して被照射部位を形成するビーム照射装置と、前記治療用ビームのパラメータ及び前記被照射部位の医用画像データに基づいて線量シミュレーション計算を行い、かつ治療計画を作成する治療計画モジュールと、前記治療計画に基づいて前記ビーム照射装置の照射を制御する制御モジュールと、を含み、前記放射線照射システムの制御方法は、異なる線源粒子のシミュレーションタスクを異なるプロセス又はスレッドに割り当て、各プロセス又は各スレッドの計算タスクを完了した後にまとめて、最終的な計算結果を取得するステップを含む。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0034
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0034】
本発明の第6態様に係る放射線照射システムの制御方法において、前記放射線照射システムは、治療用ビームを発生させ、前記治療用ビームを被照射体に照射して被照射部位を形成するビーム照射装置と、前記治療用ビームのパラメータ及び前記被照射部位の医用画像データに基づいて線量シミュレーション計算を行い、かつ治療計画を作成する治療計画モジュールと、前記治療計画に基づいて前記ビーム照射装置の照射を制御する制御モジュールと、を含み、前記放射線照射システムの制御方法は、光子の半吸収厚さが第1所定の値以下である場合、光子に対するシミュレーションを停止するステップを含む。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0043
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0043】
本発明の第8態様に係る放射線照射システムの制御方法において、放射線照射システムは、治療用ビームを発生させ、治療用ビームを被照射体に照射して被照射部位を形成するビーム照射装置と、治療用ビームのパラメータ及び被照射部位の医用画像データに基づいて線量シミュレーション計算を行い、かつ治療計画を作成する治療計画モジュールと、治療計画に基づいてビーム照射装置の照射を制御する制御モジュールと、を含み、放射線照射システムの制御方法は、治療計画モジュールが分散減少により粒子をシミュレーションするステップを含む。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0058
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0058】
本発明の第10態様に係る放射線照射システムの制御方法において、放射線照射システムは、治療用ビームを発生させ、治療用ビームを被照射体に照射して被照射部位を形成するビーム照射装置と、治療用ビームのパラメータ及び被照射部位の医用画像データに基づいて線量シミュレーション計算を行い、かつ治療計画を作成する治療計画モジュールと、治療計画に基づいてビーム照射装置の照射を制御する制御モジュールと、を含み、放射線照射システムの制御方法は、治療計画モジュールが非一様格子を使用してシミュレーション計算を行うステップを含む。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0072
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0072】
ビーム整形体12は、反射体121、減速体122、熱中性子吸収体123、放射線遮蔽体124及びビーム出口125をさらに含み、中性子発生装置11により発生した中性子のエネルギースペクトルが広く、治療需要を満たす熱外中性子の以外、他の種類の中性子及び光子の含有量をできる限り減少させて、操作者又は被照射体に損傷を引き起こすことを回避する必要があるため、中性子発生装置11から出た中性子は、減速体122を通して高速中性子のエネルギー(>40keV)が熱外中性子エネルギー領域(0.5eV~40keV)に調整され、かつ熱外中性子(<0.5eV)をできる限り減少させる必要があり、減速体122は、高速中性子と作用する断面が大きく、熱外中性子と作用する断面が小さい材料で製造され、好ましい実施例として、減速体122は、D2O、AlF3、Fluental、CaF2、Li2CO3、MgF2及びAl2O3のうちの少なくとも1種で製造され、反射体121は、減速体122を囲み、かつ減速体122を通過して周囲に拡散した中性子を中性子ビームNに反射して中性子の利用率を向上させ、中性子反射能力が高い材料で製造され、好ましい実施例として、反射体121は、Pb又はNiのうちの少なくとも1種で製造され、減速体122は、後部に熱中性子吸収体123があり、熱中性子と作用する断面が大きい材料で製造され、好ましい実施例として、熱中性子吸収体123は、Li-6で製造され、減速体122を通過した熱中性子を吸収して中性子ビームNにおける熱中性子の含有量を減少させ、治療時に浅層正常組織に対して多すぎる線量を与えることを回避し、理解できるように、熱中性子吸収体は、減速体と一体であってもよく、減速体の材料にLi-6が含まれ、放射線遮蔽体124は、ビーム出口125以外の部分からしみ出る中性子及び光子を遮蔽し、放射線遮蔽体124の材料は、光子遮蔽材料と中性子遮蔽材料のうちの少なくとも1種を含み、好ましい実施例として、放射線遮蔽体124の材料は、光子遮蔽材料の鉛(Pb)と中性子遮蔽材料のポリエチレン(PE)を含む。コリメータ13は、ビーム出口125の後部に設置され、コリメータ13から出た熱外中性子ビームは、被照射体200に照射され、浅層正常組織を通過した後に熱中性子に減速されて腫瘍細胞Mに到着する。理解できるように、ビーム整形体12は、さらに他の構造であってもよく、治療に必要な熱外中性子ビームを取得すればよく、説明しやすくするために、コリメータ13が設置された場合、コリメータ13の出口は、後述するビーム出口125と見なすこともできる。本実施例において、被照射体200とビーム出口125との間に放射線遮蔽装置15がさらに設置され、ビーム出口125から出たビームの被照射体の正常組織に対する放射線を遮蔽し、理解できるように、放射線遮蔽装置15が設置されなくてもよい。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0093
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0093】
表3から分かるように、光子エネルギーが10KeV以下である場合、光子のシミュレーション計算を停止し、最終的に算出した光子線量と、光子のシミュレーション計算を継続して取得された線量分布との誤差が0.1%以内にある。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0119
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0119】
【手続補正11】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【国際調査報告】