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  • 特表-低せん断強度基油の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-17
(54)【発明の名称】低せん断強度基油の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C10M 105/38 20060101AFI20240110BHJP
   C10M 101/02 20060101ALI20240110BHJP
   C10M 107/02 20060101ALI20240110BHJP
   C10M 105/32 20060101ALI20240110BHJP
   C10M 107/34 20060101ALI20240110BHJP
   C10M 107/06 20060101ALI20240110BHJP
   C10M 107/50 20060101ALI20240110BHJP
   C10M 105/42 20060101ALI20240110BHJP
   C10N 20/02 20060101ALN20240110BHJP
   C10N 20/00 20060101ALN20240110BHJP
   C10N 30/04 20060101ALN20240110BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20240110BHJP
   C10N 40/04 20060101ALN20240110BHJP
【FI】
C10M105/38
C10M101/02
C10M107/02
C10M105/32
C10M107/34
C10M107/06
C10M107/50
C10M105/42
C10N20:02
C10N20:00 A
C10N30:04
C10N30:00 Z
C10N40:04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023541008
(86)(22)【出願日】2021-12-28
(85)【翻訳文提出日】2023-09-05
(86)【国際出願番号】 US2021073126
(87)【国際公開番号】W WO2022150254
(87)【国際公開日】2022-07-14
(31)【優先権主張番号】63/134,335
(32)【優先日】2021-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/380,768
(32)【優先日】2021-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521161314
【氏名又は名称】ヴァンテージ サントルブズ リサーチ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】フォーバス,トーマス,レジナルド,ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】ペルナ,サルバトーレ,マイケル
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104BA07A
4H104BB31A
4H104BB34A
4H104BB36A
4H104BB41A
4H104CA03A
4H104CJ02A
4H104DA02A
4H104EA01A
4H104EA02A
4H104EA04A
4H104EB05
4H104EB07
4H104EB08
4H104EB09
4H104EB10
4H104EB11
4H104EB13
4H104EB15
4H104LA01
4H104LA20
4H104PA02
(57)【要約】
基油を含む潤滑流体であって、カルボキシル二末端基封鎖ポリエチレングリコールのカルボン酸エステル、又はこれとカルボキシル二末端基封鎖ポリテトラメチレングリコールのカルボン酸エステルとの混合物を利用して、低温性能を改良し、並びに弾性流体力学せん断強度を最小限に抑え、潤滑において弾性流体力学レジームで動作する機械又は機械要素のための向上した低温特性を有する高効率流体の製造を可能にする潤滑油。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑流体であって、

【化1】
を有するポリエチレングリコールのカルボキシルジエステルと、

【化2】
を有するポリテトラメチレングリコールのカルボキシルジエステルと、
を備え、
式中、R及びRは、それぞれ独立して、それぞれ5~11個の炭素原子を有する直鎖アルキル基を含み、mは2~12の範囲であり、
及びRは、それぞれ独立して、それぞれ5~11個の炭素原子を有する直鎖アルキル基を含み、nは2~6の範囲である、潤滑流体。
【請求項2】
前記ポリエチレングリコールのカルボキシルジエステルの各ポリエチレンオキシドセグメントが、200g/モル~400g/モルの範囲の平均分子量を有し、前記ポリテトラメチレングリコールのカルボキシルジエステルの各ポリテトラメチレンオキシドセグメントが、200g/モル~300g/モルの範囲の平均分子量を有する、請求項1に記載の潤滑流体。
【請求項3】
及びRは、それぞれ独立して、オクタンカルボン酸及びデカンカルボン酸の混合物から誘導されるか、又はヘキサンカルボン酸から誘導される、請求項1に記載の潤滑流体。
【請求項4】
及びRは、それぞれ独立して、オクタンカルボン酸及びデカンカルボン酸の混合物から誘導されるか、又はヘキサンカルボン酸から誘導される、請求項1に記載の潤滑流体。
【請求項5】
前記潤滑流体は、1~3m/sの引き込み速度、40℃~120℃、1.0GPaの最大接触応力、190パーセントの滑り対転がり比で測定した場合に、0.026μ~0.008μの範囲のトラクション係数を有する、請求項1に記載の潤滑流体。
【請求項6】
前記潤滑流体は、13cSt~21cStの範囲の40℃動粘度を有する、請求項1に記載の潤滑流体。
【請求項7】
前記潤滑流体は、183~213の範囲の粘度指数を有する、請求項1に記載の潤滑流体。
【請求項8】
前記潤滑流体は、-7℃未満の凝固点を有する、請求項1に記載の潤滑流体。
【請求項9】
酸化防止剤、金属分散剤、非金属分散剤、金属清浄剤、非金属清浄剤、腐食防止剤、防錆剤、金属不活性化剤、金属摩耗防止剤、非金属摩耗防止剤、リン含有摩耗防止剤、非リン含有摩耗防止剤、硫黄含有摩耗防止剤、非硫黄含有摩耗防止剤、金属極圧添加剤、非金属極圧添加剤、リン含有極圧添加剤、非リン含有極圧添加剤、硫黄含有極圧添加剤、非硫黄含有極圧添加剤、焼付き防止剤、流動点降下剤、ワックス調整剤、粘度調整剤、シール適合性剤、摩擦調整剤、潤滑剤、防汚剤、発色剤、消泡剤、抗乳化剤、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの添加剤をさらに含む、請求項1に記載の潤滑流体。
【請求項10】
鉱油、ポリアルファオレフィン、エステル、ポリアルキレングリコール、エチレンプロピレン油、シリコーン油、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの潤滑基油をさらに含む、請求項1に記載の潤滑流体。
【請求項11】
2つの部品と、前記2つの部品の間に塗布された請求項1に記載の潤滑流体と、を備える機械。
【請求項12】
請求項1に記載の潤滑流体を使用する方法であって、機械に含まれる2つの部品の間に前記潤滑流体を塗布することを含む、方法。
【請求項13】
潤滑流体であって、

【化3】
を有するポリエチレングリコールのカルボキシルジエステル
(式中、R及びRは、それぞれ独立して、それぞれ5~11個の炭素原子を有する直鎖アルキル基を含み、mは2~12の範囲である)と、

【化4】
を有するポリエチレングリコールの複合カルボキシルジエステル
(式中、R及びRは、それぞれ独立して、それぞれ5~11個の炭素原子を有する直鎖アルキル基を含み、Rは、24~36個の炭素原子を有する直鎖アルキル基を含み、oは2~12の範囲であり、pは2~12の範囲である)と、

【化5】
を有するポリエチレングリコールとポリテトラメチレングリコールとの複合カルボキシルジエステル
(式中、R及びR10は、それぞれ独立して、それぞれ5~11個の炭素原子を有する直鎖アルキル基を含み、Rは、24~36個の炭素原子を有する直鎖アルキル基を含み、qは、2~12の範囲であり、rは、2~6の範囲である)と、
これらの混合物と、
からなる群から独立して選択されるカルボキシルジエステル組成物を含む、潤滑流体。
【請求項14】
式(1)、(3)、及び(4)の各ポリエチレンオキシドセグメントは、200~400g/モルの範囲の平均分子量を有し、式(4)の各ポリテトラメチレンオキシドセグメントは、200~300g/モルの範囲の平均分子量を有する、請求項13に記載の潤滑流体。
【請求項15】
及びRは、それぞれ独立して、オクタンカルボン酸及びデカンカルボン酸の混合物から誘導されるか、又はヘキサンカルボン酸から誘導される、請求項13に記載の潤滑流体。
【請求項16】
及びRは、それぞれ独立して、オクタンカルボン酸及びデカンカルボン酸の混合物から誘導されるか、又はヘキサンカルボン酸から誘導される、請求項13に記載の潤滑流体。
【請求項17】
及びR10は、それぞれ独立して、オクタンカルボン酸及びデカンカルボン酸の混合物から誘導されるか、又はヘキサンカルボン酸から誘導される、請求項13に記載の潤滑流体。
【請求項18】
及びRはそれぞれ、24~36個の炭素原子を有するジカルボン酸から誘導される、請求項13に記載の潤滑流体。
【請求項19】
前記潤滑流体は、1~3m/sの引き込み速度、40℃~120℃、1.0GPaの最大接触応力、190パーセントの滑り対転がり比で測定した場合に、0.026μ~0.008μの範囲のトラクション係数を有する、請求項13に記載の潤滑流体。
【請求項20】
前記潤滑流体は、-7℃未満の凝固点を有する、請求項13に記載の潤滑流体。
【請求項21】
酸化防止剤、金属分散剤、非金属分散剤、金属清浄剤、非金属清浄剤、腐食防止剤、防錆剤、金属不活性化剤、金属摩耗防止剤、非金属摩耗防止剤、リン含有摩耗防止剤、非リン含有摩耗防止剤、硫黄含有摩耗防止剤、非硫黄含有摩耗防止剤、金属極圧添加剤、非金属極圧添加剤、リン含有極圧添加剤、非リン含有極圧添加剤、硫黄含有極圧添加剤、非硫黄含有極圧添加剤、焼付き防止剤、流動点降下剤、ワックス調整剤、粘度調整剤、シール適合性剤、摩擦調整剤、潤滑剤、防汚剤、発色剤、消泡剤、抗乳化剤、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの添加剤をさらに含む、請求項13に記載の潤滑流体。
【請求項22】
鉱油、ポリアルファオレフィン、エステル、ポリアルキレングリコール、エチレンプロピレン油、シリコーン油、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの潤滑基油をさらに含む、請求項13に記載の潤滑流体。
【請求項23】
2つの部品と、前記2つの部品の間に塗布された請求項13に記載の潤滑流体と、を備える機械。
【請求項24】
請求項13に記載の潤滑流体を使用する方法であって、機械に含まれる2つの部品の間に前記潤滑流体を塗布することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年1月6日に米国特許法第119条(e)の下、出願された米国仮特許出願第63/134,335号の利益を主張し、その内容は、全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本教示は、概して、潤滑流体に関し、より具体的には、低せん断強度及び良好な低温性能の潤滑剤のための基油に関する。
【背景技術】
【0003】
弾性流体力学機械要素は、互いに接触する、名目上滑らかで、転がり滑り、弾性的に変形し、不適合(non-conforming)表面間の流体の薄膜で動作する機械装置である。弾性流体力学接触における流体は、典型的には、粘性流体としてではなく、通常の転がりせん断運動に対する降伏強度又はせん断強度を有する弾塑性固体として挙動する。接触内でのせん断は、接触している2つの表面が、接触表面の形状や、機械要素の自然動作におけるそれらの相対運動によって引き起こされ得る、それらの相対速度の差を有するときにのみ生じる。
【0004】
これらの機械要素の効率は、これらの高応力で弾性変形した不適合接点の表面を潤滑にするために使用される流体の高応力せん断強度に大きく依存する。接触動作条件下での流体のせん断強度特性は、潤滑の弾性流体力学的条件下での合わせ面間の滑り運動の程度に応じて、それらの効率に実質的に影響を及ぼす可能性がある。したがって、低い弾性流体力学せん断強度を有する流体は、これらの接触における転がり滑り運動又は純粋な滑り運動において、より低い流体せん断損失でより良好な効率を可能にする。
【0005】
米国特許第9,879,198号は、カルボキシルジエステルポリテトラメチレンエーテルグリコールと密接に関連した複合エステルとの混合物からなる低せん断強度潤滑流体を記載している。潤滑流体の低い弾性流体力学せん断強度であるものの、それらは、低温性能(例えば、流動点、凝固点)が低いという問題があり、これによって、流体が-7℃未満の温度に曝露される用途が制限される。米国特許第9,879,198号の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0006】
したがって、上記の問題に対処する改良された潤滑流体が必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
本明細書に記載される必要性、並びにさらなる及び他の必要性及び利点は、以下に説明される解決策及び利点を示す本実施形態によって対処される。
【0008】
本教示の目的は、その弾性流体力学(EHD)せん断強度を最小限に抑える潤滑剤用の基油を提供することである。
【0009】
本教示の別の目的は、潤滑剤の低温性能を改良するための潤滑剤用の基油を提供することである。
【0010】
本教示の別の目的は、機械要素が-7℃以下の温度などの低温環境(例えば、自動車、風力タービン、代替エネルギー)で動作し得る全ての用途において潤滑を可能にする潤滑剤用の基油を提供することである。
【0011】
本教示のさらなる目的は、潤滑において弾性流体力学レジームで動作する機械又は機械要素のための、向上した低温特性を有する高効率流体の生産を提供することである。
【0012】
本教示のこれら及び他の目的は、以下の式
【0013】
【化1】
を有するポリエチレングリコールのカルボキシルジエステルと、式
【0014】
【化2】
を有するポリテトラメチレングリコールのカルボキシルジエステル(式中、R及びRは、それぞれ独立して、それぞれ5~11個の炭素原子を有する直鎖アルキル基を含み、mは2~12の範囲であり、R及びRは、それぞれ独立して、それぞれ5~11個の炭素原子を有する直鎖アルキル基を含み、nは2~6の範囲である)と、を含む潤滑流体を提供することによって達成される。ポリエチレングリコールのカルボキシルジエステルの各ポリエチレンオキシドセグメントは、200g/モル~400g/モルの範囲の平均分子量を有し、ポリテトラメチレングリコールのカルボキシルジエステルの各ポリテトラメチレンオキシドセグメントは、200g/モル~300g/モルの範囲の平均分子量を有する。R及びRは、それぞれ独立して、オクタンカルボン酸及びデカンカルボン酸の混合物から誘導されるか、又はヘキサンカルボン酸から誘導される。R及びRは、それぞれ独立して、オクタンカルボン酸及びデカンカルボン酸の混合物から誘導されるか、又はヘキサンカルボン酸から誘導される。
【0015】
潤滑流体は、1~3m/sの引き込み速度、40℃~120℃、1.0GPaの最大接触応力、190パーセントの滑り対転がり比で測定した場合に、0.026μ~0.008μの範囲のトラクション係数を有する。潤滑流体は、13cSt~21cStの範囲の40℃動粘度を有する。潤滑流体は、183~213の範囲の粘度指数を有する。潤滑流体は、-7℃未満の凝固点を有する。
【0016】
潤滑流体は、酸化防止剤、金属分散剤、非金属分散剤、金属清浄剤、非金属清浄剤、腐食防止剤、防錆剤、金属不活性化剤、金属摩耗防止剤、非金属摩耗防止剤、リン含有摩耗防止剤、非リン含有摩耗防止剤、硫黄含有摩耗防止剤、非硫黄含有摩耗防止剤、金属極圧添加剤、非金属極圧添加剤、リン含有極圧添加剤、非リン含有極圧添加剤、硫黄含有極圧添加剤、非硫黄含有極圧添加剤、焼付き防止剤、流動点降下剤、ワックス調整剤、粘度調整剤、シール適合性剤、摩擦調整剤、潤滑剤、防汚剤、発色剤、消泡剤、抗乳化剤、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの添加剤をさらに含む。潤滑流体は、鉱油、ポリアルファオレフィン、エステル、ポリアルキレングリコール、エチレンプロピレン油、シリコーン油、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの潤滑基油をさらに含む。
【0017】
本教示はまた、式
【0018】
【化3】
を有するポリエチレングリコールのカルボキシルジエステル(式中、R及びRは、それぞれ独立して、それぞれ5~11個の炭素原子を有する直鎖アルキル基を含み、mは2~12の範囲である)と、式
【0019】
【化4】
を有するポリエチレングリコールの複合カルボキシルジエステル(式中、R及びRは、それぞれ独立して、それぞれ5~11個の炭素原子を有する直鎖アルキル基を含み、Rは、24~36個の炭素原子を有する直鎖アルキル基を含み、oは2~12の範囲であり、pは2~12の範囲である)と、式
【0020】
【化5】
を有するポリエチレングリコールとポリテトラメチレングリコールとの複合カルボキシルジエステル(式中、R及びR10は、それぞれ独立して、それぞれ5~11個の炭素原子を有する直鎖アルキル基を含み、Rは、24~36個の炭素原子を有する直鎖アルキル基を含み、qは、2~12の範囲であり、rは、2~6の範囲である)と、それらの混合物と、からなる群から独立して選択されるカルボキシルジエステル組成物を含む潤滑流体を提供する。式(1)、(3)、及び(4)の各ポリエチレンオキシドセグメントは、200~400g/モルの範囲の平均分子量を有し、式(4)の各ポリテトラメチレンオキシドセグメントは、200~300g/モルの範囲の平均分子量を有する。R及びRは、それぞれ独立して、オクタンカルボン酸及びデカンカルボン酸の混合物から誘導されるか、又はヘキサンカルボン酸から誘導される。R及びRは、それぞれ独立して、オクタンカルボン酸及びデカンカルボン酸の混合物から誘導されるか、又はヘキサンカルボン酸から誘導される。R及びR10は、それぞれ独立して、オクタンカルボン酸及びデカンカルボン酸の混合物から誘導されるか、又はヘキサンカルボン酸から誘導される。R及びRは、それぞれ24~36個の炭素原子を有するジカルボン酸から誘導される。
【0021】
潤滑流体は、1~3m/sの引き込み速度、40℃~120℃、1.0GPaの最大接触応力、190パーセントの滑り対転がり比で測定した場合に、0.026μ~0.008μの範囲のトラクション係数を有する。潤滑流体は、-7℃未満の凝固点を有する。
【0022】
潤滑流体は、酸化防止剤、金属分散剤、非金属分散剤、金属清浄剤、非金属清浄剤、腐食防止剤、防錆剤、金属不活性化剤、金属摩耗防止剤、非金属摩耗防止剤、リン含有摩耗防止剤、非リン含有摩耗防止剤、硫黄含有摩耗防止剤、非硫黄含有摩耗防止剤、金属極圧添加剤、非金属極圧添加剤、リン含有極圧添加剤、非リン含有極圧添加剤、硫黄含有極圧添加剤、非硫黄含有極圧添加剤、焼付き防止剤、流動点降下剤、ワックス調整剤、粘度調整剤、シール適合性剤、摩擦調整剤、潤滑剤、防汚剤、発色剤、消泡剤、抗乳化剤、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの添加剤をさらに含む。潤滑流体は、鉱油、ポリアルファオレフィン、エステル、ポリアルキレングリコール、エチレンプロピレン油、シリコーン油、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの潤滑基油をさらに含む。
【0023】
本教示の他の特徴及び態様は、本教示の実施形態による特徴を例として示す添付の図面と併せて、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。概要は、本明細書に含まれる特許請求の範囲によって定義される本教示の範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本教示による潤滑流体の一実施形態について、1.0GPaの最大接触応力、190%の滑り/転がり比、並びに1及び3メートル/秒の引き込み速度で測定された、温度対トラクション係数μのプロットを示す図である。
図2】本教示による潤滑流体の使用方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本教示を、以下、本実施形態が図示されている添付の図面を参照しながらより十分に説明する。以下の説明は、本教示を例として示すものであり、本教示の原理を限定するものではない。
【0026】
本教示は、構造的特徴に関して多少具体的な言語で記載されている。しかしながら、本明細書に開示される製品及び/又は方法は、本教示を実施する好ましい形態を含むため、本教示は、図示され、説明される特定の特徴に限定されないことを理解されたい。
【0027】
一般に、特許請求の範囲で使用される全ての用語は、本明細書で別途明示的に定義されない限り、当該技術分野におけるそれらの通常の意味に従って解釈されるべきである。単数で示された要素、装置、構成要素、手段、ステップなどへの全ての言及は、別途明示的な定めがない限り、要素、装置、構成要素、手段、ステップなどの少なくとも1つの例を指すものとしてオープンに解釈されるべきである。実施例以外で、又は別途指示がある場合を除き、本明細書で使用される成分の量又は反応条件を表す全ての数字は、全ての場合において「約」という語によって修飾されるものとして理解されるべきである。
【0028】
本教示は、弾性流体潤滑のための高いエネルギー効率及び改良された低温特性の潤滑流体の製造のための、低い弾性流体力学せん断強度及び良好な低温性能の配合潤滑剤のための基油を提供する。
【0029】
基油
本教示は、カルボキシル二末端基封鎖ポリエチレングリコールのカルボン酸エステル、又はこれとカルボキシル二末端基封鎖ポリテトラメチレングリコールのカルボン酸エステルとの混合物を利用して、潤滑流体の低温性能を改良し、並びにそれらの弾性流体力学(EHD)せん断強度を最小限に抑え、潤滑の弾性流体力学レジームで動作する機械又は機械要素のための向上した低温特性を有する高効率流体の製造を可能にする。
【0030】
本教示は、ポリエチレングリコールのカルボキシルジエステルを含む潤滑基油を提供する。一実施形態において、ポリエチレングリコールのカルボキシルジエステルは、式(1)
【0031】
【化6】
の構造を有する。
【0032】
式中、R及びRは、それぞれ独立して、それぞれ5~11個の炭素原子を有する直鎖アルキル基を含んでもよい。他の例において、R及びRは、それぞれ独立して、それぞれ7~9個の炭素原子を有する直鎖アルキル基を含んでもよい。さらに、他の例では、R及びRはそれぞれ、5~11個の炭素原子又は7~9個の炭素原子を有する分岐アルキル基を含んでもよく、R及びRの組み合わせにおける分岐アルキル基の量は、ポリエチレングリコールのカルボキシルジエステルの全重量の10重量%未満、5重量%未満、又は1重量%未満である。
【0033】
いくつかの例において、R及びRは、それぞれ独立して、オクタンカルボン酸及びデカンカルボン酸の混合物から誘導され得る。さらに、他の例では、R及びRは、それぞれ独立して、ヘキサンカルボン酸から誘導される。
【0034】
式(1)のいくつかの実施形態では、mは2~12、好ましくは3~11の範囲である。
【0035】
式(1)のポリエチレングリコールのカルボキシルジエステルの各ポリエチレンオキシドセグメントは、200g/モル~400g/モルの範囲の平均分子量を有する。式(1)のポリエチレングリコールのカルボキシルジエステルは、25℃で液体であってもよい。
【0036】
式(1)のポリエチレングリコールのカルボキシルジエステルを含む潤滑流体は、低粘度を有する。
【0037】
式(1)のポリエチレングリコールのカルボキシルジエステルを含む潤滑流体は、弾性流体力学滑り接触及び転がり滑り接触において極めて低いせん断強度を有し、したがって、低いせん断損失から高いエネルギー効率を有する弾性流体潤滑において使用される流体を製造することを可能にする。一実施形態では、式(1)のポリエチレングリコールのカルボキシルジエステルを含む潤滑流体は、1~3m/sの引き込み速度、40℃~120℃、1.0GPaの最大接触応力、190パーセントの滑り対転がり比で測定した場合に、0.026μ~0.008μの範囲のトラクション係数を有する。
【0038】
式(1)のポリエチレングリコールのカルボキシルジエステルを含む潤滑流体はまた、潤滑流体の低温性能を改良する極めて低い凝固点を有し、これは、機械要素が低温環境で動作し得る全ての用途(例えば、自動車、風力タービン、代替エネルギー)において使用することができる。一実施形態では、式(1)のポリエチレングリコールのカルボキシルジエステルを含む潤滑流体は、-25℃~-38℃の範囲の凝固点を有する。
【0039】
本教示はまた、上記のようなポリエチレングリコールのカルボキシルジエステル及び下記のようなポリテトラメチレングリコールのカルボキシルジエステルの混合物を含む潤滑基油を提供する。一実施形態において、ポリテトラメチレングリコールのカルボキシルジエステルは、式(2)
【0040】
【化7】
の構造を有する。
【0041】
式中、R及びRは、それぞれ独立して、それぞれ5~11個の炭素原子を有する直鎖アルキル基を含んでもよい。他の例では、R及びRは、それぞれ独立して、それぞれ7~9個の炭素原子を有する直鎖アルキル基を含んでもよい。さらに、他の例では、R及びRはそれぞれ、5~11個の炭素原子又は7~9個の炭素原子を有する分岐アルキル基を含んでもよく、R及びRの組み合わせにおける分岐アルキル基の量は、ポリテトラメチレングリコールのカルボキシルジエステルの全重量の10重量%未満、5重量%未満、又は1重量%未満である。
【0042】
いくつかの例において、R及びRは、それぞれ独立して、オクタンカルボン酸及びデカンカルボン酸の混合物から誘導され得る。さらに、他の例では、R及びRは、それぞれ独立して、ヘキサンカルボン酸から誘導される。
【0043】
式(2)のいくつかの実施形態では、nは2~6、好ましくは2~4の範囲である。
【0044】
式(2)中のポリテトラメチレングリコールのカルボキシルジエステルの各ポリテトラメチレンオキシドセグメントは、200g/モル~300g/モルの範囲の平均分子量を有する。式(2)のポリテトラメチレングリコールのカルボキシルジエステルは、25℃で液体であってもよい。
【0045】
ポリエチレングリコールのカルボキシルジエステル及びポリテトラメチレングリコールのカルボキシルジエステルは、所望のISO粘度グレードを有する生成物を得るための比率でブレンドされる。いくつかの実施形態では、式(1)のポリエチレングリコールのカルボキシルジエステルと式(2)のポリテトラメチレングリコールのカルボキシルジエステルとの混合物を含む潤滑流体は、低粘度を有する。
【0046】
式(1)のポリエチレングリコールのカルボキシルジエステルと式(2)のポリテトラメチレングリコールのカルボキシルジエステルとの混合物を含む潤滑流体は、弾性流体力学滑り接触及び転がり滑り接触において極めて低いせん断強度を有し、したがって、低いせん断損失から高いエネルギー効率を有する弾性流体潤滑において使用される流体を製造することを可能にする。一実施形態では、式(1)及び式(2)の混合物を含む潤滑流体は、1~3m/sの引き込み速度、40℃~120℃、1.0GPaの最大接触応力、190パーセントの滑り対転がり比で測定した場合に、0.026μ~0.008μの範囲のトラクション係数を有する。
【0047】
式(1)のポリエチレングリコールのカルボキシルジエステルと式(2)のポリテトラメチレングリコールのカルボキシルジエステルとの混合物を含む潤滑流体はまた、潤滑流体の低温性能を改良する極めて低い凝固点を有し、これは、機械要素が低温環境で動作し得る全ての用途(例えば、自動車、風力タービン、代替エネルギー)において使用され得る。一実施形態では、式(1)及び式(2)の混合物を含む潤滑流体は、-11℃~-34℃の範囲の凝固点を有する。
【0048】
本教示はまた、ポリエチレングリコールの複合カルボキシルジエステルを含む潤滑基油を提供する。一実施形態において、ポリエチレングリコールの複合ジエステルは、式(3)
【0049】
【化8】
の構造を有する。
【0050】
式中、R及びRは、それぞれ独立して、それぞれ5~11個の炭素原子を有する直鎖アルキル基を含んでもよい。他の例では、R及びRは、それぞれ独立して、それぞれ7~9個の炭素原子を有する直鎖アルキル基を含んでもよい。さらに、他の例では、R及びRはそれぞれ、5~11個の炭素原子又は7~9個の炭素原子を有する分岐アルキル基を含んでもよく、R及びRの組み合わせにおける分岐アルキル基の量は、ポリエチレングリコールのカルボキシルジエステルの全重量の10重量%未満、5重量%未満、又は1重量%未満である。
【0051】
いくつかの例において、R及びRは、それぞれ独立して、オクタンカルボン酸及びデカンカルボン酸の混合物から誘導され得る。さらに、他の例では、R及びRは、それぞれ独立して、ヘキサンカルボン酸から誘導される。
【0052】
は、24~36個の炭素原子を有する直鎖アルキル基を含んでもよく、ジカルボン酸から誘導されてもよい。いくつかの例において、Rは、26~34個の炭素原子を有する直鎖アルキル基を含んでもよく、ジカルボン酸から誘導されてもよい。いくつかの例では、Rは、28~32個の炭素原子を有する直鎖アルキル基を含んでもよく、ジカルボン酸から誘導されてもよい。
【0053】
式(3)のいくつかの実施形態において、oは、2~12、好ましくは3~11の範囲である。式(3)のいくつかの実施形態において、pは、2~12、好ましくは3~11の範囲である。
【0054】
式(3)のポリエチレングリコールのカルボキシルジエステルの各ポリエチレンオキシドセグメントは、200g/モル~400g/モルの範囲の平均分子量を有する。式(3)のポリエチレングリコールのカルボキシルジエステルは、25℃で液体であってもよい。
【0055】
式(3)のポリエチレングリコールのカルボキシルジエステルを含む潤滑流体は、高い粘度を有する。
【0056】
式(3)のポリエチレングリコールのカルボキシルジエステルを含む潤滑流体は、弾性流体力学滑り接触及び転がり滑り接触において極めて低いせん断強度を有し、したがって、低いせん断損失から高いエネルギー効率を有する弾性流体潤滑において使用される流体を製造することを可能にする。
【0057】
式(3)のポリエチレングリコールのカルボキシルジエステルを含む潤滑流体はまた、潤滑流体の低温性能を改良する極めて低い凝固点を有し、これは、機械要素が低温環境で動作し得る全ての用途(例えば、自動車、風力タービン、代替エネルギー)において使用することができる。一実施形態では、式(3)のポリエチレングリコールのカルボキシルジエステルを含む潤滑流体は、-31℃~-40℃の範囲の凝固点を有する。
【0058】
本教示はまた、ポリエチレングリコール及びポリテトラメチレングリコールの複合カルボキシルジエステルを含む潤滑基油を提供する。一実施形態において、ポリエチレングリコールとポリテトラメチレングリコールとの複合カルボキシルジエステルは、式(4)
【0059】
【化9】
の構造を有する。
【0060】
式中、R及びR10は、それぞれ独立して、それぞれ5~11個の炭素原子を有する直鎖アルキル基を含んでもよい。他の例において、R及びR10は、それぞれ独立して、それぞれ7~9個の炭素原子を有する直鎖アルキル基を含んでもよい。さらに、他の例では、R及びR10はそれぞれ、5~11個の炭素原子又はR及びR10炭素原子を有する分岐アルキル基を含んでもよく、R及びR10の組み合わせにおける分岐アルキル基の量は、ポリエチレングリコールのカルボキシルジエステルの全重量の10重量%未満、5重量%未満、又は1重量%未満である。
【0061】
いくつかの例において、R及びR10は、それぞれ独立して、オクタンカルボン酸及びデカンカルボン酸の混合物から誘導され得る。さらに、他の例では、R及びR10は、それぞれ独立して、ヘキサンカルボン酸から誘導される。
【0062】
は、24~36個の炭素原子を有する直鎖アルキル基を含んでもよく、ジカルボン酸から誘導されてもよい。いくつかの例では、Rは、26~34個の炭素原子を有する直鎖アルキル基を含んでもよく、ジカルボン酸から誘導されてもよい。いくつかの例において、Rは、28~32個の炭素原子を有する直鎖アルキル基を含んでもよく、ジカルボン酸から誘導されてもよい。
【0063】
式(4)のいくつかの実施形態において、qは、2~12、好ましくは3~11の範囲である。式(3)のいくつかの実施形態では、rは2~6、好ましくは2~4の範囲である。
【0064】
式(4)のポリエチレングリコール及びポリテトラメチレングリコールのカルボキシルジエステルの各ポリエチレンオキシドセグメントは、200g/モル~400g/モルの範囲の平均分子量を有し、式(4)のポリエチレングリコール及びポリテトラメチレングリコールのカルボキシルジエステルの各ポリエチレンオキシドセグメントは、200g/モル~400g/モルの範囲の平均分子量を有する。式(4)のポリエチレングリコール及びポリテトラメチレングリコールのカルボキシルジエステルは、25℃で液体であってもよい。
【0065】
式(4)のポリエチレングリコール及びポリテトラメチレングリコールのカルボキシルジエステルを含む潤滑流体は、高い粘度を有する。
【0066】
式(4)のポリエチレングリコール及びポリテトラメチレングリコールのカルボキシルジエステルを含む潤滑流体は、弾性流体力学滑り接触及び転がり滑り接触において非常に低いせん断強度を有し、したがって、低いせん断損失から高いエネルギー効率を有する弾性流体潤滑において使用される流体を製造することを可能にする。
【0067】
式(4)のポリエチレングリコール及びポリテトラメチレングリコールのカルボキシルジエステルを含む潤滑流体はまた、潤滑流体の低温性能を改良する極めて低い凝固点を有し、これは、機械要素が低温環境で動作し得る全ての用途(例えば、自動車、風力タービン、代替エネルギー)において使用され得る。一実施形態では、式(4)のポリエチレングリコール及びポリテトラメチレングリコールのカルボキシルジエステルを含む潤滑流体は、-31℃~-40℃の範囲の凝固点を有する。
【0068】
基油の合成方法
以下の実施例は、本教示の範囲内の例示的な実施形態をさらに記載及び実証する。本発明の精神及び範囲から逸脱することなく多くの変形が可能であるため、実施例は単に例示のために提供されたものであり、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。例えば、ノルマルC8カルボン酸及びノルマルC10カルボン酸の混合物は、以下で使用される60/40又は80/20の例とは異なる重量比を有してもよく、60/40~80/20の重量比を有してもよい。
【0069】
実施例1:式(1)のポリエチレングリコールのカルボキシルジエステルの調製(例えば、nC6酸を有するPEG 300)
オーバーヘッドメカニカルスターラー、ガス分散管、及び冷水凝縮器を取り付けたディーン・スタークトラップを備えた1000mLの5つ口丸底フラスコを合成反応器として使用した。この容器に、299.2グラム(1モル)のポリエチレングリコール300(300ダルトンの公称平均分子量のポリエチレングリコール)、255.5グラム(2.20モル)のヘキサン酸(例えば、ノルマルC6カルボン酸)、10グラムのキシレン、0.7グラムの次亜リン酸ナトリウム、及び0.05グラムのジブチルスズオキシドを添加した。ここで、キシレンは共沸剤であり、次亜リン酸ナトリウムは酸化防止剤であり、ジブチルスズオキシドは触媒である。窒素は、およそ30mL/分の流量で反応物を覆い、反応及びストリッピングを通して使用された。フラスコ内容物の温度を165℃に上昇させ、理論量の水がディーン・スタークトラップに回収されるまで165℃に維持した。
【0070】
混合物のヒドロキシル含量を確認し、ヒドロキシル価が1mg KOH/g未満になったときに反応が完了したとみなす。次いで、過剰のキシレン及びヘキサン酸を減圧下(5mmHg)で粗生成物から除去する。次いで、粗生成物を炭酸カルシウム(又は炭酸ナトリウム、任意の適切なアルカリ金属炭酸塩、プロピレンカーボネート、又はグリシジルネオデカノエート)で処理して、酸価(すなわち、カルボン酸含量)を0.1mg KOH/g以下に低下させる。次いで、得られたスラリーを濾過して、479g(収率97%)の生成物を得る。得られた生成物は、100℃で3.8cStの動粘度、183のVI(粘度指数)、及び-38℃の凝固点を有する。
【0071】
なお、ここでは、ヘキサン酸(例えば、ノルマルC6カルボン酸)を用いているが、オクタン酸/デカン酸(例えば、ノルマルC8カルボン酸とノルマルC10カルボン酸との重量比が60/40又は80/20の混合物)を代替又は補充として用いてもよい。
【0072】
実施例2:式(2)のポリテトラメチレングリコールのカルボキシルジエステル(例えば、nC8~10を有するPTMEG 250(60/40又は80/20のnC8~10重量比)酸)と、式(1)のポリエチレングリコールのカルボキシルジエステル(例えば、nC8~10を有するPEG 300(60/40又は80/20のnC8~10重量比)酸)との混合物の調製
オーバーヘッドメカニカルスターラー、ガス分散管、及び冷水凝縮器を取り付けたディーン・スタークトラップを備えた1000mLの5つ口丸底フラスコを合成反応器として使用した。この容器に、145.4グラム(0.57モル)のポリテトラメチレングリコール250(250ダルトンの公称平均分子量のポリテトラメチレングリコール)、145.4グラム(0.49モル)のポリエチレングリコール300(300ダルトンの公称平均分子量のポリエチレングリコール)、340グラム(2.20モル)のオクタン酸/デカン酸(例えば、60/40又は80/20の重量比のノルマルC8カルボン酸及びノルマルC10カルボン酸の混合物)、10グラムのキシレン、0.7グラムの次亜リン酸ナトリウム、及び0.02グラムのジブチルスズオキシドを添加した。ここで、キシレンは共沸剤であり、次亜リン酸ナトリウムは酸化防止剤であり、ジブチルスズオキシドは触媒である。窒素は、およそ30mL/分の流量で反応物を覆い、反応及びストリッピングを通して使用された。フラスコ内容物の温度を165℃に上昇させ、理論量の水がディーン・スタークトラップに回収されるまで165℃に維持した。
【0073】
混合物のヒドロキシル含量を確認し、ヒドロキシル価が1mg KOH/g未満になったときに反応が完了したとみなす。次いで、過剰のキシレン、オクタン酸、及びデカン酸を減圧下(5mmHg)で粗生成物から除去する。次いで、粗生成物を炭酸カルシウム(又は炭酸ナトリウム、任意の適切なアルカリ金属炭酸塩、プロピレンカーボネート、又はグリシジルネオデカノエート)で処理して、酸価(すなわち、カルボン酸含量)を0.1mg KOH/g以下に低下させる。次いで、得られたスラリーを濾過して、562g(579.4グラムの理論収量の収率97%)の生成物を得る。得られた生成物は、100℃で4.6cStの動粘度、200のVI(粘度指数)、及び-15℃の凝固点を有する。
【0074】
なお、ここでは、オクタン酸/デカン酸(例えば、ノルマルC8カルボン酸とノルマルC10カルボン酸との重量比が60/40又は80/20の混合物)を用いているが、ヘキサン酸(例えば、ノルマルC6カルボン酸)を代替又は補充として用いてもよい。
【0075】
実施例3:式(3)のポリエチレングリコールの複合カルボキシルジエステル(例えば、オレインダイマー酸及びnC8~10(60/40又は80/20 nC8~10重量比)を有するPEG 300)の調製
オーバーヘッドメカニカルスターラー、ガス分散管、及び冷水凝縮器を取り付けたディーン・スタークトラップを備えた1000mLの5つ口丸底フラスコを合成反応器として使用した。この容器に、294.9グラム(1モル)のポリエチレングリコール300(300ダルトンの公称平均分子量のポリエチレングリコール)、281.8グラム(0.5モル)のオレインダイマー酸、10グラムのキシレン、及び0.7グラムの次亜リン酸ナトリウムを添加した。ここで、キシレンは共沸剤であり、次亜リン酸ナトリウムは酸化防止剤である。窒素は、およそ30mL/分の流量で反応物を覆い、反応及びストリッピングを通して使用された。フラスコ内容物の温度を185℃に上昇させ、185℃で維持した。混合物の酸価を確認し、酸価が18mg KOH/gになったら、触媒として0.05グラムのジブチルスズオキシドをフラスコに添加し、温度を195℃に上昇させる。酸価が0.4mg KOH/gと確認されるまで、温度を195℃に維持する。次いで、温度を100℃に下げ、167.7グラム(1.1モル)のオクタン酸/デカン酸(例えば、60/40又は80/20の重量比のノルマルC8カルボン酸及びノルマルC10カルボン酸の混合物)を、10グラムの追加のキシレンと共にフラスコに添加する。次いで、温度を195℃に上昇させ、理論量の水がディーン・スタークトラップに回収されるまで維持する。
【0076】
混合物のヒドロキシル価を確認し、ヒドロキシル価が10mg KOH/g以下になったときに反応が完了したとみなす。次いで、過剰のキシレン、オクタン酸、及びデカン酸を、減圧下(5mmHg)、195℃~205℃の範囲の温度で粗生成物から除去する。次いで、粗生成物を215℃の温度でプロピレンカーボネート(又は炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、任意の適切なアルカリ金属炭酸塩、又はグリシジルネオデカノエート)で処理して、酸価(すなわち、カルボン酸含量)を0.1mg KOH/g以下に低下させる。次いで、得られたスラリーを濾過する。得られた生成物は、100℃で65cStの動粘度、191のVI(粘度指数)、及び-31℃の凝固点を有する。得られた生成物は25℃で液体である。
【0077】
なお、ここでは、オクタン酸/デカン酸(例えば、ノルマルC8カルボン酸とノルマルC10カルボン酸との重量比が60/40又は80/20の混合物)を用いているが、ヘキサン酸(例えば、ノルマルC6カルボン酸)を代替又は補充として用いてもよい。
【0078】
実施例4:式(4)のポリエチレングリコール及びポリテトラメチレングリコールの複合カルボキシルジエステル(例えば、オレインダイマー酸及びnC8~10(60/40又は80/20 nC8~10重量比)を有するPTMEG 250 & PEG 300)の調製
オーバーヘッドメカニカルスターラー、ガス分散管、及び冷水凝縮器を取り付けたディーン・スタークトラップを備えた1000mLの5つ口丸底フラスコを合成反応器として使用した。この容器に、148.9グラム(0.5モル)のポリエチレングリコール300(300ダルトンの公称平均分子量のポリエチレングリコール)、148.9グラム(0.6モル)のポリテトラメチレングリコール250(250ダルトンの公称平均分子量のポリテトラメチレングリコール)、280.4グラム(0.5モル)のオレインダイマー酸、10グラムのキシレン、及び0.7グラムの次亜リン酸ナトリウムを添加した。ここで、キシレンは共沸剤であり、次亜リン酸ナトリウムは酸化防止剤である。窒素は、およそ30mL/分の流量で反応物を覆い、反応及びストリッピングを通して使用された。フラスコ内容物の温度を195℃に上昇させ、195℃で維持した。混合物の酸価を確認し、酸価が18mg KOH/gになったら、触媒として0.05グラムのジブチルスズオキシドをフラスコに添加する。酸価が0.4mg KOH/gと確認されるまで、温度を195℃に維持する。次いで、温度を100℃に下げ、166.5グラム(1.1モル)のオクタン酸/デカン酸(例えば、60/40又は80/20の重量比のノルマルC8カルボン酸及びノルマルC10カルボン酸の混合物)を、10グラムの追加のキシレンと共にフラスコに添加する。次いで、温度を195℃に上昇させ、理論量の水がディーン・スタークトラップに回収されるまで維持する。
【0079】
混合物のヒドロキシル価を確認し、ヒドロキシル価が10mg KOH/g以下になったときに反応が完了したとみなす。次いで、過剰のキシレン、オクタン酸、及びデカン酸を、減圧下(5mmHg)、195℃~205℃の範囲の温度で粗生成物から除去する。次いで、粗生成物を215℃の温度でプロピレンカーボネート(又は炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、任意の適切なアルカリ金属炭酸塩、又はグリシジルネオデカノエート)で処理して、酸価(すなわち、カルボン酸含量)を0.1mg KOH/g以下に低下させる。次いで、得られたスラリーを濾過する。得られた生成物は、100℃で75.2cStの動粘度、196のVI(粘度指数)、及び-35℃の凝固点を有する。得られた生成物は25℃で液体である。
【0080】
なお、ここでは、オクタン酸/デカン酸(例えば、ノルマルC8カルボン酸とノルマルC10カルボン酸との重量比が60/40又は80/20の混合物)を用いているが、ヘキサン酸(例えば、ノルマルC6カルボン酸)を代替又は補充として用いてもよい。
【0081】
添加剤を含む又は含まない基油の特徴
本教示の潤滑流体は、当業者に公知の種々の標準試験によって特徴付けられ得る。潤滑流体のエネルギー効率は、潤滑流体の粘度及び潤滑流体のトラクション係数によって影響され得る。潤滑流体の粘度は、固体表面間の接触における摩擦を低減するその能力に密接に関連する。潤滑流体のトラクション係数は、特定の負荷によるエネルギー損失に関連する。
【0082】
トラクション係数は、PCS Instruments,Ltd.製のPCS Mini-Traction Machine(MTM)を使用して、様々な滑り対転がり比(例えば、0.1%~200%)、温度、及び20N~70Nの範囲の負荷、又は0.5GPa~1.5GPaの最大ヘルツ接触応力で測定し得る。
【0083】
図1を参照すると、トラクション係数は、190%の様々な滑り対転がり比、40℃、60℃、80℃、100℃及び120℃の異なる温度、1.0GPaの最大ヘルツ接触応力、並びに1及び3メートル/秒の引き込み速度で測定される。図1で試験された潤滑流体は、nC6酸を有するPEG 300を有する式(1)のポリエチレングリコールのカルボキシルジエステルである。図1に示すように、潤滑流体は、最大接触応力1.0GPaの鋼同士の点接触(PCS MTM装置)において、引き込み速度1メートル/秒で、40、60、80、100及び120℃で測定した場合に、それぞれ0.026、0.022、0.020、0.018及び0.017の限界せん断応力(190%滑り時)、並びに引き込み速度3.0メートル/秒で0.022、0.016、0.012、0.009及び0.008のトラクション係数を有する。
【0084】
しばしば動的粘度(DV)と呼ばれる粘度は、動粘度(KV)を用いて測定することができる。動粘度(KV)は、ASTM D445-06の、透明及び不透明液体の動粘度のための標準試験法(及び動的粘度の計算)によって決定することができる。動粘度は、式
【0085】
【数1】
(式中、ρは密度である)を用いて、低せん断速度及び密度での動的粘度(DV)の測定から計算することもできる。
【0086】
粘度指数(VI)は、温度変化に対する潤滑流体の粘度変化の単位のない測定値である。VIが高いほど、粘度は温度変動にわたってより安定したままである。粘度指数は、ASTM D2270-04の、40℃及び100℃での動粘度から粘度指数を計算するための標準手法によって決定されてもよい。
【0087】
以下の表1~4は、DV、KV、VI、及び凝固点の測定において、既存技術と比較した本教示の潤滑流体のいくつかの例を示す。
【0088】
【表1】
【0089】
【表2】
【0090】
【表3】
【0091】
【表4】
【0092】
添加剤
本教示による潤滑流体の様々な実施形態は、いくつかの実施形態において、分散剤、洗浄剤、消泡剤、酸化防止剤、防錆剤、摩擦調整剤、腐食防止剤、極圧添加剤、耐摩耗添加剤、流動点降下剤、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され得る少なくとも1つの添加剤をさらに含み得る。
【0093】
本教示による無灰分散剤を含む分散剤の例としては、ポリブテニルコハク酸イミド、ポリブテニルコハク酸アミド、ベンジルアミン、コハク酸エステル、コハク酸エステル-アミド、又はそれらのホウ素誘導体に基づくもののうちの1つ以上が挙げられ得る。無灰分散剤は、通常、潤滑流体の全重量の0.05重量%~7重量%で組み込まれ得る。
【0094】
本教示に係る金属系清浄剤を含む清浄剤としては、例えば、カルシウムのスルホネート、フェネート、サリチレート、リン酸塩、マグネシウムのリン酸塩、バリウムのリン酸塩等を含むもののうちの1つ以上が挙げられ得る。酸価の異なる過塩基性、塩基性、中性塩等から任意に選択することができる。金属清浄剤は、必要に応じて、潤滑流体の全重量の0.05重量%~5重量%で組み込まれる。
【0095】
本教示に係る消泡剤としては、例えば、ポリジメチルシリコーン、トリフルオロプロピルメチルシリコーン、コロイダルシリカ、ポリアルキルアクリレート、ポリアルキルメタクリレート、アルコールエトキシ/プロポキシレート、脂肪酸エトキシ/プロポキシレート、ソルビタン部分脂肪酸エステルのうちの1つ以上が挙げられ得る。消泡剤の配合量は、通常10~100mg/lであってもよい。
【0096】
本教示に係る酸化防止剤としては、例えば、アルキル化ジフェニルアミン、フェニル-α-ナフチルアミン、アルキル化フェニル-x-ナフチルアミン等のアミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、例えば、2,6-ジ-t-ブチルフェノール、4,4’-メチレンビス-(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)、イソオクチル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート等、及び/又は硫黄系酸化防止剤、例えば、ジラウリル-3,3’-チオジプロピオネート、及びジチオリン酸亜鉛のうちの1つ以上が挙げられ得る。酸化防止剤は、通常、潤滑流体の全重量の0.05重量%~5重量%で組み込まれ得る。
【0097】
本教示に係る防錆剤としては、例えば、脂肪酸、アルケニルコハク酸ハーフエステル、脂肪酸石鹸、アルキルスルホン酸塩、多価アルコール/脂肪酸エステル、脂肪酸アミン、酸化パラフィン及びアルキルポリオキシエチレンエーテルのうちの1つ以上が挙げられ得る。防錆剤は、通常、潤滑流体の全重量の0重量%~37重量%で組み込まれ得る。
【0098】
本教示に係る摩擦調整剤としては、有機モリブデン系化合物、オレイルアルコール、ステアリルアルコール等の高級アルコール、オレイン酸、ステアリン酸等の脂肪酸、オレイルグリセリンエステル、ステリルグリセリンエステル、ラウリルグリセリンエステル等のエステル類、ラウリルアミド、オレイルアミド、ステアリルアミド等のアミド類、ラウリルアミン、オレイルアミン、ステアリルアミン、アルキルジエタノールアミン等のアミン類、ラウリルグリセリンエーテル、オレイルグリセリンエーテル等のエーテル類、油脂、アミン、硫化エステル、リン酸エステル、酸性リン酸エステル、酸性亜リン酸エステル、リン酸エステルのアミン塩のうちの1つ以上が挙げられ得る。摩擦調整剤は、通常、潤滑流体の全重量の0.05重量%~5重量%で組み込まれ得る。
【0099】
本教示による極圧添加剤の例としては、硫黄-リン及び硫黄-リン-ホウ素化合物を含む有機硫黄、リン又は塩素化合物のうちの1つ以上が挙げられ得る。これらは高圧条件下で金属表面と化学的に反応する。
【0100】
本教示による耐摩耗添加剤の例としては、ジチオリン酸亜鉛、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、リン酸トリクレジル、ハロカーボン(塩素化パラフィン)、モノオレイン酸グリセロール、及びステアリン酸のうちの1つ以上が挙げられ得る。
【0101】
本教示に係る腐食防止剤の例としては、ジチオリン酸亜鉛が挙げられ得る。
【0102】
本教示に係る流動点降下剤の例としては、エチレン/酢酸ビニル共重合体、塩素化パラフィンとナフタレンとの縮合物、塩素化パラフィンとフェノールとの縮合物、ポリメタクリレート、ポリアルキルスチレン等のうちの1つ以上が挙げられ得る。流動点降下剤は、通常、潤滑流体の全重量の0.1重量%~10重量%で組み込まれ得る。
【0103】
さらに、極性添加剤を通常より極性の低い又は非極性の基油に溶解するために使用される可溶化剤(すなわち、共溶媒)が、本教示に従って含まれてもよい。
【0104】
本教示の潤滑流体組成物中の添加剤(複数可)の総含有量は限定されない。しかし、1つ以上の添加剤(上記の可溶化剤を含む)は、潤滑流体の全重量の1重量%~30重量%、好ましくは潤滑流体の全重量の2重量%~15重量%で組み込まれ得る。
【0105】
図2を参照すると、本教示による潤滑流体10は、機械100、例えばモータ又はエンジンの2つの機械部品11、12の間に塗布され、使用される。潤滑流体10は、改良された低温性能、並びに最小化された弾性流体力学せん断強度を有し、機械部品11、12が潤滑において弾性流体力学レジームで動作することを可能にする。したがって、本教示は、2つの部品と、これら2つの部品の間に塗布された潤滑流体と、を備える機械を提供し、機械に含まれる2つの部品の間に潤滑流体を塗布することを含む潤滑流体を使用するプロセスを提供する。
【0106】
本教示による潤滑流体は、酸化防止剤、金属分散剤、非金属分散剤、金属清浄剤、非金属清浄剤、腐食防止剤、防錆剤、金属不活性化剤、金属耐摩耗剤、非金属耐摩耗剤、リン含有耐摩耗剤、非リン含有耐摩耗剤、硫黄含有耐摩耗剤、非硫黄含有耐摩耗剤、金属極圧添加剤、非金属極圧添加剤、リン含有極圧添加剤、非リン含有極圧添加剤、硫黄含有極圧添加剤、非硫黄含有極圧添加剤、焼付き防止剤、流動点降下剤、ワックス調整剤、粘度調整剤、シール適合性剤、摩擦調整剤、潤滑剤、防汚剤、発色剤、消泡剤、抗乳化剤、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの添加剤を含んでもよい。
【0107】
本教示による潤滑流体は、少なくとも1つの他の潤滑基油をさらに含んでもよく、そのような基油(複数可)の少なくとも1つは、鉱油(すなわち、グループI、II、II+、III、III+)、ポリアルファオレフィン(PAO)(グループIV)、エステル(グループV)、ポリアルキレングリコール(PAG)、エチレンプロピレン油、シリコーン油、並びに潤滑剤及びグリース配合において使用される任意の他の潤滑基油からなる群から選択される。
【0108】
本教示は、式
【0109】
【化10】
を有するポリエチレングリコールのカルボキシルジエステルを含む潤滑流体を提供する。式中、R及びRは、それぞれ独立して、それぞれ5~11個の炭素原子を有する直鎖アルキル基を含み、mは2~12の範囲である。ポリエチレングリコールのカルボキシルジエステルの各ポリエチレンオキシドセグメントは、200g/モル~400g/モルの範囲の平均分子量を有する。R及びRは、それぞれ独立して、オクタンカルボン酸及びデカンカルボン酸を含む混合物から誘導される。R及びRは、それぞれ独立して、ヘキサンカルボン酸から誘導される。潤滑流体は、90℃で20N~70Nの負荷で40パーセントの滑り対転がり比で測定した場合に、0.001μ~0.015μの範囲のトラクション係数を有する。潤滑流体は、13cSt~18cStの範囲の40℃動粘度を有する。潤滑流体は、183~205の範囲の粘度指数を有する。潤滑流体は、-25℃~-38℃の範囲の凝固点を有する。潤滑流体は、酸化防止剤、極圧添加剤、耐摩耗添加剤、摩擦調整剤、防錆剤、腐食防止剤、洗浄剤、分散剤、消泡剤、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの添加剤をさらに含む。ポリエチレングリコールのカルボキシルジエステルは、25℃で液体である。
【0110】
本教示はまた、式
【0111】
【化11】
を有するポリエチレングリコールのカルボキシルジエステルと、式
【0112】
【化12】
を有するポリテトラメチレングリコールのカルボキシルジエステルと、を含む潤滑流体を提供する。式中、R及びRは、それぞれ独立して、それぞれ5~11個の炭素原子を有する直鎖アルキル基を含み、mは2~12の範囲であり、R及びRは、それぞれ独立して、それぞれ5~11個の炭素原子を有する直鎖アルキル基を含み、nは2~6の範囲である。ポリエチレングリコールのカルボキシルジエステルの各ポリエチレンオキシドセグメントは、200g/モル~400g/モルの範囲の平均分子量を有し、ポリテトラメチレングリコールのカルボキシルジエステルの各ポリテトラメチレンオキシドセグメントは、200g/モル~400g/モルの範囲の平均分子量を有する。R、R、R、及びRは、それぞれ独立して、オクタンカルボン酸及びデカンカルボン酸の混合物から誘導される。R、R、R、及びRは、それぞれ独立して、ヘキサンカルボン酸から誘導される。潤滑流体は、90℃で20N~70Nの負荷で40パーセントの滑り対転がり比で測定した場合に、0.001μ~0.015μの範囲のトラクション係数を有する。潤滑流体は、13cSt~21cStの範囲の40℃動粘度を有する。潤滑流体は、183~213の範囲の粘度指数を有する。潤滑流体は、-7℃~-38℃の範囲の凝固点を有する。潤滑流体は、酸化防止剤、極圧添加剤、耐摩耗添加剤、摩擦調整剤、防錆剤、腐食防止剤、洗浄剤、分散剤、消泡剤、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの添加剤をさらに含む。ポリエチレングリコールのカルボキシルジエステル及びポリテトラメチレングリコールのカルボキシルジエステルのそれぞれは、25℃で液体である。
【0113】
本教示はさらに、潤滑流体を製造する方法を提供する。この方法は、ポリエチレングリコールを提供することと、酸を提供することと、前記ポリエチレングリコールと前記酸とを、ポリエチレングリコールのカルボキシルジエステルを形成する混合物に混合することと、前記混合物を濾過して、前記潤滑流体のためのポリエチレングリコールのカルボキシルジエステルを形成することと、を含み、前記ポリエチレングリコールのカルボキシルジエステルは、構造
【0114】
【化13】
を有し、式中、R及びRは、それぞれ独立して、それぞれ5~11個の炭素原子を有する直鎖アルキル基を含み、mは2~12の範囲である。酸は、オクタンカルボン酸及びデカンカルボン酸の組み合わせを含んでもよい。酸は、ヘキサンカルボン酸を含んでもよい。この方法は、前記ポリエチレングリコール及び前記酸を、触媒、酸化防止剤、及び共沸剤と混合することをさらに含む。触媒はジブチルスズオキシドを含み、酸化防止剤は次亜リン酸ナトリウムを含み、共沸剤はキシレンを含む。この方法は、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、又は任意の適切なアルカリ金属炭酸塩、プロピレン炭酸塩、又はグリシジルネオデカノエートを使用することによって、前記混合物を処理して酸価を低下させることをさらに含む。処理及び濾過は、酸価が0.4mg KOH/g以下になったときに完了する。
【0115】
本教示はさらに、潤滑流体を製造する方法を提供する。この方法は、ポリテトラメチレングリコールを提供することと、ポリエチレングリコールを提供することと、酸を提供することと、前記ポリテトラメチレングリコールと、前記ポリエチレングリコールと、前記酸とを、ポリエチレングリコールのカルボキシルジエステル及びポリテトラメチレングリコールのカルボキシルジエステルを形成する混合物に混合することと、前記混合物を濾過して、前記潤滑流体のためのポリエチレングリコールのカルボキシルジエステル及びポリテトラメチレングリコールのカルボキシルジエステルを形成することと、を含み、前記ポリエチレングリコールのカルボキシルジエステルは、式
【0116】
【化14】
を有し、前記ポリテトラメチレングリコールのカルボキシルジエステルは、式
【0117】
【化15】
を有し、式中、R及びRは、それぞれ独立して、それぞれ5~11個の炭素原子を有する直鎖アルキル基を含み、mは2~12の範囲であり、R及びRは、それぞれ独立して、それぞれ5~11個の炭素原子を有する直鎖アルキル基を含み、nは2~6の範囲である。酸は、オクタンカルボン酸及びデカンカルボン酸の組み合わせを含む。この組み合わせは、ノルマルC8カルボン酸とノルマルC10カルボン酸を60/40~80/20の重量比で含む。酸は、ヘキサンカルボン酸を含む。この方法はさらに、前記ポリテトラメチレングリコール、前記ポリエチレングリコール、及び前記酸を共沸剤と混合することを含む。共沸剤はキシレンを含む。混合は、酸価が1mg KOH/g以下になったときに完了する。本方法は、炭酸カルシウム又は炭酸ナトリウムを使用することによって酸価を低下させるために前記混合物を処理することをさらに含む。処理は、酸価が0.1mg KOH/g以下になったときに完了する。
【0118】
本教示はさらに、潤滑流体を製造する方法を提供する。この方法は、ポリエチレングリコールを提供することと、二酸を提供することと、酸を提供することと、前記ポリエチレングリコールと前記二酸とを第1の混合物に混合することと、前記第1の混合物と前記酸とを、ポリエチレングリコールの複合カルボキシルジエステルを形成するための第2の混合物に混合することと、前記第2の混合物を濾過して、前記潤滑流体のためのポリエチレングリコールの複合カルボキシルジエステルを形成することと、を含み、前記ポリエチレングリコールの複合カルボキシルジエステルは、構造
【0119】
【化16】
を有し、式中、R及びRは、それぞれ独立して、それぞれ5~11個の炭素原子を有する直鎖アルキル基を含み、Rは、24~36個の炭素原子を有する直鎖アルキル基を含むジカルボン酸であり、oは2~12の範囲であり、pは2~12の範囲である。二酸は、オレインダイマー酸を含む。この方法は、前記ポリエチレングリコール及び前記二酸を触媒、酸化防止剤、及び共沸剤と混合することをさらに含む。触媒はジブチルスズオキシドであり、酸化防止剤は次亜リン酸ナトリウムであり、共沸剤はキシレンである。ポリエチレングリコールと二酸との混合は、酸価が0.5mg KOH/g以下になったときに完了する。酸は、ヘキサンカルボン酸を含むか、又はオクタンカルボン酸及びデカンカルボン酸を含む。第1の混合物と酸との混合は、ヒドロキシル価が10mg KOH/g以下になったときに完了する。この方法は、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、又は任意の適切なアルカリ金属炭酸塩、プロピレン炭酸塩、又はグリシジルネオデカノエートを使用することによって、前記第2の混合物を処理することをさらに含む。処理及び濾過は、酸価が0.4mg KOH/g以下になったときに完了する。
【0120】
本教示はさらに、潤滑流体を製造する方法を提供する。この方法は、ポリエチレングリコールを提供することと、ポリテトラメチレングリコールを提供することと、二酸を提供することと、酸を提供することと、前記ポリエチレングリコールと、前記ポリテトラメチレングリコールと、前記二酸とを、第1の混合物に混合することと、前記第1の混合物と前記酸とを、ポリエチレングリコールとポリテトラメチレングリコールとの複合カルボキシルジエステルを形成するための第2の混合物に混合することと、前記第2の混合物を濾過して、前記潤滑流体のためのポリエチレングリコールとポリテトラメチレングリコールとの複合カルボキシルジエステルを形成することと、を含み、前記ポリエチレングリコールとポリテトラメチレングリコールとの複合カルボキシルジエステルは、構造
【0121】
【化17】
を有し、式中、R及びR10は、それぞれ独立して、それぞれ5~11個の炭素原子を有する直鎖アルキル基を含み、Rは、24~36個の炭素原子を有する直鎖アルキル基を含むジカルボン酸であり、qは2~12の範囲であり、rは2~6の範囲である。二酸は、オレインダイマー酸を含む。この方法は、前記ポリエチレングリコール、前記ポリテトラメチレングリコール、及び前記二酸を、触媒、酸化防止剤、及び共沸剤と混合することをさらに含む。触媒はジブチルスズオキシドであり、酸化防止剤は次亜リン酸ナトリウムであり、共沸剤はキシレンである。ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、及び二酸の混合は、酸価が0.5mg KOH/g以下になったときに完了する。酸は、ヘキサンカルボン酸を含むか、又はオクタンカルボン酸及びデカンカルボン酸を含む。第1の混合物と酸との混合は、ヒドロキシル価が10mg KOH/g以下になったときに完了する。この方法は、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、又は任意の適切なアルカリ金属炭酸塩、プロピレン炭酸塩、又はグリシジルネオデカノエートを使用することによって、前記第2の混合物を処理することをさらに含む。処理及び濾過は、酸価が0.4mg KOH/g以下になったときに完了する。
【0122】
本教示は、特定の実施形態に関して説明されているが、開示された実施形態に限定されないことを理解されたい。多くの修正及び他の実施形態を、当業者であれば想達し、これらは本開示及び添付の特許請求の範囲の両方によって意図され、包含される。例えば、場合によっては、一実施形態に関連して開示される1つ以上の特徴は、単独で、又は1つ以上の他の実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせて使用することができる。本教示の範囲は、本明細書及び添付の図面における開示に依拠する当業者によって理解されるように、任意の請求項及びそれらの法的均等物の適切な解釈及び構成によって決定されるべきであることが意図される。
図1
図2
【国際調査報告】