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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-17
(54)【発明の名称】多層電気デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01C 1/14 20060101AFI20240110BHJP
   H01C 7/02 20060101ALI20240110BHJP
   H01C 17/28 20060101ALI20240110BHJP
   H01C 7/18 20060101ALI20240110BHJP
   H01G 2/06 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
H01C1/14
H01C7/02
H01C17/28
H01C7/18
H01G2/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023541011
(86)(22)【出願日】2022-01-05
(85)【翻訳文提出日】2023-09-04
(86)【国際出願番号】 US2022011249
(87)【国際公開番号】W WO2022150342
(87)【国際公開日】2022-07-14
(31)【優先権主張番号】63/134,316
(32)【優先日】2021-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505441524
【氏名又は名称】ボーンズ、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 克博
(72)【発明者】
【氏名】スー、 チェ-イ
(72)【発明者】
【氏名】チエン、 ジェフ
(72)【発明者】
【氏名】チュウ、 ステラ
(72)【発明者】
【氏名】チュン、 サイモン
【テーマコード(参考)】
5E028
5E032
5E034
【Fターム(参考)】
5E028AA10
5E028BA30
5E028BB09
5E028CA02
5E028DA01
5E028JA12
5E028JB00
5E032AB10
5E032BA22
5E032BB09
5E032BB11
5E032CA02
5E034AA07
5E034AB07
5E034DA07
5E034DB16
5E034DC10
(57)【要約】
いくつかの実施形態において、多層電気デバイスは、温度変化に起因する各々の電極の分離距離の変化に適応するために互いに対する相対的な移動を可能にし、かつ多層電気デバイスが実装面の上にはんだ付けされるときに、はんだが多層電気デバイスと実装面との間の接続を提供することを可能にするように構成された少なくとも2つの特定端子を備えた、それぞれの端子に接続された複数の電極を有してもよい。いくつかの実施形態において、多層電気デバイスは、隣接する一対の電極の各々の間に実装された温度依存電気特性を有する層をさらに有してもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれの端子に接続された複数の電極を有する多層電気デバイスであって、少なくとも2つの特定端子が、温度変化に起因する各々の前記電極の分離距離の変化に適応するために互いに対する相対的な移動を可能にし、かつ前記多層電気デバイスが実装面の上にはんだ付けされるときに、はんだが前記多層電気デバイスと前記実装面との間の接続を提供することを可能にするように構成されている、多層電気デバイス。
【請求項2】
隣接する一対の電極の各々の間に実装された温度依存層をさらに有する、請求項1に記載の多層電気デバイス。
【請求項3】
前記温度依存層は温度依存電気特性を有する材料を含み、前記温度依存層は前記温度変化に伴って前記隣接する一対の電極のそれぞれの前記分離距離の変化を生じさせる、請求項2に記載の多層電気デバイス。
【請求項4】
前記温度依存電気特性を有する材料は、前記隣接する一対の電極のそれぞれの前記分離距離が温度の上昇に伴って増加するように構成されている、請求項3に記載の多層電気デバイス。
【請求項5】
前記複数の電極は、第1、第2及び第3の端子のそれぞれに接続された第1、第2及び第3の電極を含み、第1の温度依存層が前記第1の電極と前記第2の電極との間に存在し、第2の温度依存層が前記第2の電極と前記第3の電極の間に存在し、前記第1の電極は、前記多層電気デバイスが前記実装面の上に実装されたときに前記実装面に最も近くなる、請求項2に記載の多層電気デバイス。
【請求項6】
前記少なくとも2つの特定端子は前記第1の端子と前記第3の端子とを含む、請求項5に記載の多層電気デバイス。
【請求項7】
前記第1及び第3の端子は前記多層電気デバイスの第1の面の上に実装され、前記第2の端子は前記多層電気デバイスの第2の面の上に実装されている、請求項6に記載の多層電気デバイス。
【請求項8】
前記多層電気デバイスの前記第1及び第2の面は、前記多層電気デバイスの対向面上にある、請求項7に記載の多層電気デバイス。
【請求項9】
前記第1及び第2の温度依存層の各々は、それぞれの温度依存電気特性が温度の上昇に伴って増加する抵抗を含むように正温度係数(PTC)材料を含む、請求項6に記載の多層電気デバイス。
【請求項10】
前記正温度係数材料は、ポリマー正温度係数(PPTC)材料を含む、請求項9に記載の多層電気デバイス。
【請求項11】
前記電気デバイスはリセット可能なヒューズである、請求項10に記載の多層電気デバイス。
【請求項12】
前記第1及び第2の温度依存層は同じ材料で形成されている、請求項6に記載の多層電気デバイス。
【請求項13】
前記第1及び第2の温度依存層の各々の寸法の変化が、前記第1の電極と前記第3の電極との間の分離距離の変化を生じさせる、請求項6に記載の多層電気デバイス。
【請求項14】
前記温度変化は温度の増加を含み、前記第1の電極と前記第3の電極との間の分離距離の変化は前記第1の電極と前記第3の電極との間の分離距離の増加を含む、請求項13に記載の多層電気デバイス。
【請求項15】
前記第1及び第3の端子はそれぞれの隙間部分を含むように構成され、前記第1の端子の前記隙間部分は前記第3の端子の前記隙間部分に対して隙間寸法を保ち、当該隙間寸法は、前記相対的な移動の間、選択された範囲内にある、請求項6に記載の多層電気デバイス。
【請求項16】
前記隙間寸法の前記選択された範囲は、はんだ材料がはんだ付けプロセス中に一方の隙間部分から他方の隙間部分へ流れ、それによって前記第1の端子と前記第3の端子とが電気的に接続されることを可能にするように選択されている、請求項15に記載の多層電気デバイス。
【請求項17】
前記第1及び第2の温度依存層の各々の寸法の変化は、前記第1の電極の平面に対して垂直な第1の方向における厚さ寸法の変化を含む、請求項15に記載の多層電気デバイス。
【請求項18】
前記第1及び第3の端子の各々の前記隙間部分は、前記第1の方向とほぼ平行な方向に延びる縁を含む、請求項17に記載の多層電気デバイス。
【請求項19】
前記第1及び第2の端子の各々の前記縁は、幅を有するそれぞれのタブの一側を画定している、請求項18に記載の多層電気デバイス。
【請求項20】
前記第1の端子の前記タブの前記幅は、前記第3の端子の前記タブの前記幅とほぼ同じである、請求項19に記載の多層電気デバイス。
【請求項21】
前記第1の端子の前記タブの前記幅は、前記第3の端子の前記タブの前記幅よりも大きい、請求項19に記載の多層電気デバイス。
【請求項22】
前記第1の端子は前記第1の電極の平面とほぼ平行な平面を画定する平坦部を含み、当該平坦部は内縁、外縁、厚さ及び取付面を有している、請求項17に記載の多層電気デバイス。
【請求項23】
前記第1の端子の前記平坦部の前記内縁は、前記第1の電極の縁に接続部によって接続されている、請求項22に記載の多層電気デバイス。
【請求項24】
前記第2の端子は前記第2の電極の平面とほぼ平行な平面を画定する平坦部を含み、当該平坦部は内縁、外縁、厚さ及び取付面を有している、請求項23に記載の多層電気デバイス。
【請求項25】
前記第2の端子の前記平坦部の前記外縁は、前記第2の電極の縁に接続部によって接続されている、請求項24に記載の多層電気デバイス。
【請求項26】
前記第1の端子の前記平坦部は、前記外縁に沿ってカットアウトを画定し、前記第3の端子は、前記第3の端子から延びるタブを有する終端縁を含み、前記タブは、前記カットアウトが前記第1の端子の前記隙間部分を形成し、かつ前記タブが前記第3の端子の前記隙間部分を形成するように、前記第1の端子の前記平坦部の前記カットアウト内に少なくとも部分的に存在するように寸法決めされている、請求項23記載の多層電気デバイス。
【請求項27】
前記第3の電極の上に実装された第3の温度依存層と、
前記第3の温度依存層の上の第4の電極であって、当該第4の電極は前記多層電気デバイスの第2の面上の第4の端子に電気的に接続されており、前記第2の端子と前記第4の端子とは、温度変化に起因する前記第2及び第3の温度依存層の各々の寸法の変化に適応するために互いに対する相対的な移動を可能にし、かつ前記多層電気デバイスが実装面の上にはんだ付けされるときに、はんだが前記多層電気デバイスと前記実装面との間の接続を提供することを可能にするように寸法決めされている、前記第4の電極と、
をさらに有する、請求項1に記載の多層電気デバイス。
【請求項28】
多層電気デバイスを製造する方法であって、
それぞれの端子に接続された複数の電極を実装することと、
少なくとも2つの特定端子を、温度変化に起因する各々の前記電極の分離距離の変化に適応するために互いに対する相対的な移動を可能にし、かつ前記多層電気デバイスが実装面の上にはんだ付けされるときに、はんだが前記多層電気デバイスと前記実装面との間の接続を提供することを可能にするように寸法決めすることと、
を含む、方法。
【請求項29】
各々の隣接する一対の電極の間に温度依存層を形成又は提供することをさらに含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記温度依存層は温度依存電気特性を有する材料を含み、前記温度依存層は前記温度変化に伴ってそれぞれの前記隣接する一対の電極の分離距離の変化を生じさせる、請求項29に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、「MULTI-LAYER ELECTRICAL DEVICE」の名称で2021年1月6日に出願された米国仮出願第63/134,316号の優先権を主張し、その開示は、その全体が参照により明示的に本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、表面実装可能な多層電気デバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
多くの電子デバイスは、回路基板の表面に実装されるように構成されている。そのようなデバイスは、一般に表面実装デバイス(SMD:Surface-Mount Devices)又は表面実装技術(SMT:Surface-Mount Technology)デバイスと称される。
【0004】
一部のSMD又はSMTデバイスは、各層が電気特性を有する材料で形成されている複数の層を含む多層電気デバイスとして実装される。そのような複数の層の各々は、多層電気層が所望の電気的機能を提供するように、それぞれの層間に実装され得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
いくつかの実施態様において、本開示は、それぞれの端子に接続された複数の電極を有する多層電気デバイスであって、温度変化に起因する各々の電極の分離距離の変化に適応するために互いに対する相対的な移動を可能にし、かつ多層電気デバイスが実装面の上にはんだ付けされるときに、はんだが多層電気デバイスと実装面との間の接続を提供することを可能にするように構成された少なくとも2つの特定端子を備えた多層電気デバイスに関する。
【0006】
いくつかの態様において、多層電気デバイスは、隣接する一対の電極の各々の間に実装された温度依存層をさらに有してもよい。温度依存層は、温度依存電気特性を有する材料を含んでもよい。温度依存層は、温度変化に伴って隣接する一対の電極のそれぞれの分離距離の変化を生じさせ得る。温度依存電気特性を有する材料は、隣接する一対の電極のそれぞれの分離距離が温度の上昇に伴って増加するように構成されていてもよい。
【0007】
いくつかの態様において、第1の温度依存層が第1の電極と第2の電極との間に存在し、第2の温度依存層が第2の電極と第3の電極の間に存在し、第1の電極は、多層電気デバイスが実装面の上に実装されたときに実装面に最も近くなるように、複数の電極はそれぞれの第1、第2及び第3の端子に接続された第1、第2及び第3の電極を含んでもよい。少なくとも2つの特定端子は第1の端子と第3の端子とを含んでもよい。第1及び第3の端子は多層電気デバイスの第1の面の上に実装され、第2の端子は多層電気デバイスの第2の面の上に実装されてもよい。多層電気デバイスの第1及び第2の面は、多層電気デバイスの対向面上にあってもよい。
【0008】
いくつかの態様において、第1及び第2の温度依存層の各々は、それぞれの温度依存電気特性が温度の上昇に伴って増加する抵抗を含むように正温度係数(PTC)材料を含んでもよい。正温度係数材料は、ポリマー正温度係数(PPTC)材料を含んでもよい。電気デバイスはリセット可能なヒューズであってもよい。
【0009】
いくつかの態様において、第1及び第2の温度依存層は同じ材料で形成されていてもよい。
【0010】
いくつかの態様において、第1及び第2の温度依存層の各々の寸法の変化が、第1の電極と第3の電極との間の分離距離の変化を生じさせてもよい。温度変化は温度の増加を含んでもよく、第1の電極と第3の電極との間の分離距離の変化は第1の電極と第3の電極との間の分離距離の増加を含んでもよい。
【0011】
いくつかの態様において、第1の端子の隙間部分は第3の端子の隙間部分に対して隙間寸法を保つように、第1及び第3の端子はそれぞれの隙間部分を含むように構成されてもよい。隙間寸法は、相対的な移動の間、選択された範囲内にあり得る。隙間寸法の選択された範囲は、はんだ材料がはんだ付けプロセス中に一方の隙間部分から他方の隙間部分へ流れ、それによって第1の端子と第3の端子とが電気的に接続されることを可能にするように選択されていてもよい。
【0012】
いくつかの態様において、第1及び第2の温度依存層の各々の寸法の変化は、第1の電極の平面に対して垂直な第1の方向における厚さ寸法の変化を含んでもよい。第1及び第3の端子の各々の隙間部分は、第1の方向とほぼ平行な方向に延びる縁を含んでもよい。第1及び第2の端子の各々の縁は、幅を有するそれぞれのタブの一側を画定してもよい。第1の端子のタブの幅は、第3の端子のタブの幅とほぼ同じであってもよい。第1の端子のタブの幅は、第3の端子のタブの幅よりも大きくてもよい。
【0013】
いくつかの態様において、第1の端子は第1の電極の平面とほぼ平行な平面を画定する平坦部を含んでもよく、平坦部は内縁、外縁、厚さ及び取付面を有している。第1の端子の平坦部の内縁は、第1の電極の縁に接続部によって接続されていてもよい。第2の端子は第2の電極の平面とほぼ平行な平面を画定する平坦部を含んでもよく、平坦部は内縁、外縁、厚さ及び取付面を有している。第2の端子の平坦部の外縁は、第2の電極の縁に接続部によって接続されていてもよい。
【0014】
いくつかの態様において、第1の端子の平坦部は、前記外縁に沿ってカットアウトを画定してもよく、第3の端子は、第3の端子から延びるタブを有する終端縁を含んでもよい。タブは、カットアウトが第1の端子の隙間部分を形成し、かつタブが第3の端子の隙間部分を形成するように、第1の端子の平坦部のカットアウト内に少なくとも部分的に存在するように寸法決めされてもよい。
【0015】
いくつかの態様において、多層電気デバイスは、第3の電極の上に実装された第3の温度依存層と、第3の温度依存層の上の第4の電極とをさらに有してもよい。第4の電極は、多層電気デバイスの第2の面上の第4の端子に電気的に接続されてもよい。第2の端子と第4の端子とは、温度変化に起因する第2及び第3の温度依存層の各々の寸法の変化に適応するために互いに対する相対的な移動を可能にし、かつ多層電気デバイスが実装面の上にはんだ付けされるときに、はんだが多層電気デバイスと実装面との間の接続を提供することを可能にするように寸法決めされてもよい。
【0016】
いくつかの実施態様において、本開示は、多層電気デバイスを製造する方法に関する。方法は、それぞれの端子に接続された複数の電極を実装することを含む。方法は、少なくとも2つの特定端子を、温度変化に起因する各々の電極の分離距離の変化に適応するために互いに対する相対的な移動を可能にし、かつ多層電気デバイスが実装面の上にはんだ付けされるときに、はんだが多層電気デバイスと実装面との間の接続を提供することを可能にするように寸法決めすることをさらに含む。
【0017】
いくつかの態様において、方法は、隣接する一対の電極の各々の間に温度依存層を形成又は提供することをさらに含んでもよい。温度依存層は、温度依存電気特性を有する材料を含んでもよい。温度依存層は、温度変化に伴って隣接する一対の電極のそれぞれの分離距離の変化を生じさせ得る。
【0018】
本開示を要約する目的のために、特定の態様、利点、及び本発明の新規な特徴が本明細書に記載される。このような利点は、本発明の任意の具体的な実施形態にしたがって必ずしも全て達成される必要はないことが理解されるべきである。したがって、本発明は、本明細書に教示又は示唆され得るように、必ずしも他の利点を達成することなく、本明細書で教示されるような一つの利点又は一群の利点を達成又は最適化するように具現化又は実施することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】2つの層を有する多層電気デバイスを示す図である。
図2】3つのそれぞれの電極に関連付けられた3つのノードが2つのノードに電気的に接続されている構成例を示す図である。
図3】3つの層を有する多層電気デバイスを示す図である。
図4】4つのそれぞれの電極に関連付けられた4つのノードが2つのノードに電気的に接続されている構成例を示す図である。
図5A】表面実装技術(SMT)デバイスとして実装された多層電気デバイスの一例を様々な視点から見た図である。
図5B】表面実装技術(SMT)デバイスとして実装された多層電気デバイスの一例を様々な視点から見た図である。
図5C】表面実装技術(SMT)デバイスとして実装された多層電気デバイスの一例を様々な視点から見た図である。
図5D】表面実装技術(SMT)デバイスとして実装された多層電気デバイスの一例を様々な視点から見た図である。
図5E】表面実装技術(SMT)デバイスとして実装された多層電気デバイスの一例を様々な視点から見た図である。
図6A】実装面上に配置されたときの多層電気デバイスの、図5Bと同じ図である。
図6B図6Aの多層電気デバイスの第1の側面から見た端面図である。
図6C図6Aの一部の拡大図である。
図6D図6Bの一部の拡大図である。
図7A】温度上昇により熱膨張中の図6Aの多層電気デバイスを示す図である。
図7B】熱膨張中の多層電気デバイスの図6Bと同様の端面図である。
図7C】多層電気デバイスが熱膨張状態にあるときの図7Aの一部の拡大図である。
図7D】多層電気デバイスが熱膨張状態にあるときの図7Bの一部の拡大図である。
図8A】はんだ付けプロセスによって実装面に取り付けられた図7Aの多層電気デバイスを示す図である。
図8B】実装面に取り付けられた多層電気デバイスの、図7Bと同様の端面図である。
図8C】多層電気デバイスが実装面に取り付けられたときの図8Aの一部の拡大図である。
図8D】多層電気デバイスが実装面に取り付けられたときの図8Bの一部の拡大図である。
図9A】いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるような1又は2以上の特徴を有する多層電気デバイスが、実装プロセス中に複数の端子の各々と実装面との間に良好な係合を望ましくは成すように構成され得ることを示す図である。
図9B】いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるような1又は2以上の特徴を有する多層電気デバイスが、実装プロセス中に複数の端子の各々と実装面との間に良好な係合を望ましくは成すように構成され得ることを示す図である。
図9C】いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるような1又は2以上の特徴を有する多層電気デバイスが、実装プロセス中に複数の端子の各々と実装面との間に良好な係合を望ましくは成すように構成され得ることを示す図である。
図10図4の例と同様に、3つの温度依存層と、電極が2つのノードに電気的に接続されるように構成された4つの電極とを有する多層電気デバイスを示す図である。
図11】第1、第2及び第3の端子を有する多層電気デバイスであって、図5図9の例と同様に第1及び第2の端子が実装面との接触を提供するように構成されている多層電気デバイスの下面図である。
図12A図1及び図2の例と同様に2つの温度依存層と3つの対応する電極とを有する多層電気デバイスの斜視図である。
図12B】非膨張状態における図12Aの多層電気デバイスの端面図である。
図12C】膨張状態における図12Aの多層電気デバイスの同じ端面図である。
図13A図12A図12Cの多層電気デバイスと同様であるが、その第3の端子が実装面から分離されたときの転倒の可能性を低減するように構成された多層電気デバイスの非膨張状態及び膨張状態を示す図である。
図13B図12A図12Cの多層電気デバイスと同様であるが、その第3の端子が実装面から分離されたときに転倒する可能性を低減するように構成された多層電気デバイスの非膨張状態及び膨張状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書に見出しがある場合、それは便宜上のものにすぎず、特許請求の範囲に記載した発明の範囲又は意図に必ずしも影響を与えるものではない。
【0021】
本明細書では、特に、改良された実装プロセスを提供するように構成された多層電気デバイスに関する例を説明する。説明の目的のために、多層電気デバイスは、各層が電気的特性を有する材料で形成されている複数の層を含み得ることが理解されるであろう。そのような複数の層の各々は全て同じ材料で形成してもよく、各層は異なる材料で形成してもよく、又はそれらの任意の組み合わせで形成してもよい。各層は、第1及び第2の面(例えば、対向面)を有してもよく、電極は、そのような面の各々の上に設けられてもよい。
【0022】
例えば、図1は、2つの層91,92を有する多層電気デバイス70を示している。第1の層91は、第1及び第2の面(例えば、図示のように向けられたときの下面及び上面)を有するように示され、電極が、そのような第1及び第2の面の各々の上に設けられるように示されている。より詳細には、電極81が第1の層91の第1の面上に実装されるように示され、電極82が第1の層91の第2の面上に実装されるように示されている。同様に、電極82が第2の層92の第1の面上に実装されるように示され、電極83が第2の層92の第2の面上に実装されるように示されている。
【0023】
上述の例では、第1及び第2の層91,92の間の電極82は共通電極として構成されている。しかしながら、第1及び第2の層91,92の間の領域には、電気的に接続されていてもいなくてもよい分離電極を設けてもよいことができることが理解されるであろう。
【0024】
図1の例では、3つの電極81,82,83は、それぞれのノード(ノード1,ノード2,ノード3)に電気的に接続されるように示されている。いくつかの実施形態において、そのような3つのノードは、多層電気デバイス70が回路基板に実装される場合、電気的に別個のノードであってもよく、あるいは2つのノードに電気的に接続されてもよい。
【0025】
図2は、それぞれの電極81,82,83に関連付けられた3つのノードが2つのノードに電気的に接続された構成例71を示している。より詳細には、第1及び第3の電極81,83に関連付けられた第1及び第3のノード(ノード1及びノード3)が電気的に接続されるように示され、第2の電極82に関連付けられた第2のノード(ノード2)がそれ自体のままであるように示されている。
【0026】
他の例において、図3は、3つの層91,92,93を有する多層電気デバイス72を示している。第1の層91は、第1及び第2の面(例えば、図示のように向けられたときの下面及び上面)を有するように示され、電極が、そのような第1及び第2の面の各々の上に設けられるように示されている。より詳細には、電極81が第1の層91の第1の面上に実装されるように示され、電極82が第1の層91の第2の面上に実装されるように示されている。電極82は第2の層92の第1の面上に実装されるように示され、電極83が第2の層92の第2の面上に実装されるように示されている。電極83は第3の層93の第1の面上に実装されるように示され、電極84は第3の層93の第2の面上に実装されるように示されている。
【0027】
上述の例では、第1及び第2の層91,92の間の電極82は共通電極として構成され、第2及び第3の層92,93間の電極83は共通電極として構成されている。しかしながら、第1及び第2の層91,92の間の領域には、電気的に接続されていてもいなくてもよい分離電極を設けてもよく、及び/又は、第2及び第3の層92,93の間の領域には、電気的に接続されていてもいなくてもよい分離電極を設けてもよいことが理解されるであろう。
【0028】
図3の例では、4つの電極81,82,83,84は、それぞれのノード(ノード1,ノード2,ノード3,ノード4)に電気的に接続されるように示されている。いくつかの実施形態において、そのような4つのノードは、多層電気デバイス72が回路基板に実装される場合、電気的に別個のノードであってもよく、あるいは2又は3以上のノードに電気的に接続されてもよい。
【0029】
図4は、それぞれの電極81,82,83,84に関連付けられた4つのノードが2つのノードに電気的に接続された構成例73を示している。より詳細には、第1及び第3の電極81,83に関連付けられた第1及び第3のノード(ノード1及びノード3)が電気的に接続されるように示され、第2及び第4の電極82,84に関連付けられた第2及び第4のノード(ノード2及びノード4)が電気的に接続されるように示されている。
【0030】
図1図4の例のいずれか1つのような多層電気デバイスが温度変化を受けると、様々な部品の一部又は全部が熱膨張又は熱収縮し得ることに留意されたい。例えば、温度の上昇により、多層電気デバイスの一部が熱膨張することがある。様々な例が正の熱膨張(温度の上昇が寸法の増加をもたらす)のような文脈で説明されているが、本開示の1又は2以上の特徴は、負の熱膨張(温度の上昇が寸法の減少をもたらす)を伴う状況でも利用できることが理解されるであろう。
【0031】
また、多くの用途において、(図1図4の例のいずれか1つのような)多層電気デバイスのそれぞれの電極間の各層は、所望の電気特性を呈する材料(例えば、非金属材料)で形成されることに留意されたい。例えば、そのような層は、ポリマー正温度係数(PPTC)材料等のポリマー又はポリマーベースの材料で形成することができる。そのようなPPTC材料は、通常の使用温度では低い抵抗率(したがって高い導電率)を有し、温度の上昇に伴って抵抗率が増加する(したがって導電率が低下する)という温度依存電気特性を含む。例えば、PPTC材料からなる層を有する多層電気デバイスは、第1のノード(例えば、図2において電気的に一緒に接続されているノード1及びノード3)と第2のノード(図2におけるノード2)との間にリセット可能なヒューズ機能を提供するように構成されてもよい。
【0032】
本明細書に記載された1又2以上の特徴を有する多層電気デバイスは、上述のPPTC又は他のポリマーベースの材料以外の材料を含むように構成されてもよいことが理解されるであろう。例えば、金属酸化物層を有する多層電気デバイスが金属酸化物バリスタとして実施され得る。他の例では、誘電体層を有する多層電気デバイスがキャパシタとして実装され得る。
【0033】
また、多層電気デバイスの熱膨張を生じさせる上述の温度上昇は、PPTC材料等の材料からなる関連付けられた層の電気特性の変化の兆候をもたらす温度上昇と同じである場合もあれば、そうでない場合もあることが理解されるであろう。例えば、多層電気デバイスの熱膨張は、多層電気デバイスが回路基板の上にはんだ付けされるときにプロセス中に加えられる熱によって起こり得る一方で、多層電気デバイスのPPCT材料の抵抗率の増加は、多層電気デバイスを通る電流の増加に伴う温度の上昇によって起こり得る。
【0034】
いくつかの実施形態において、多層電気デバイスは、多層電気デバイスが回路基板の上に実装されているときにプロセス中に発生する熱膨張に適応するように構成することができる。そのような構成を提供する多層電気デバイスの様々な例が、本明細書においてより詳細に説明されている。
【0035】
いくつかの実施形態において、多層電気デバイスは、プリント回路基板(PCB)等の回路基板の表面上に実装されるように構成された表面実装技術(SMT)デバイスとして実装することができる。多くの用途において、そのようなSMTデバイスは表面実装デバイス(SMD)とも称される。本開示の1又は2以上の特徴は、非SMT電気デバイスにも実装できることが理解されるであろう。
【0036】
いくつかの実施形態において、多層電気デバイスは、それぞれの端子に接続された複数の電極を含み得る。温度依存層が、隣接する一対の電極の各々の間に実装され得る。少なくとも2つの特定端子が、温度の変化に起因するそれぞれの電極の分離距離の変化に適応するために互いに対する相対的な移動を可能にし、かつ多層電気デバイスが実装面の上にはんだ付けされるときに、はんだが多層電気デバイスと実装面との間の接続を提供することを可能にするように構成され得る。そのような多層電気デバイスに関連する例が、本明細書においてより詳細に説明されている。
【0037】
図5A図5Eは、表面実装技術(SMT)デバイスとして実装された多層電気デバイスの一例を様々な視点から見た図である。図5Aは、デバイス100が実装面上にあるときの多層電気デバイス100の上部平面図である。図5Bは、図5Aの多層電気デバイス100の側面図100であり、図5Cは、図5Aの多層電気デバイス100の端面図であり、図5Dは、図5Aの多層電気デバイス100の他の端面図であり、図5Eは、図5Aの多層電気デバイス100の下面図である。
【0038】
図5A図5Eを参照すると、多層電気デバイス100は、それぞれの第1,第2及び第3の端子111,112,113に接続された第1,第2及び第3の電極101,103,105を含むように示されている。より詳細には、第1の電極101は接続部材116を介して第1の端子111に接続され、第2の電極103は接続部材117を介して第2端子112に接続され、第3の電極105は接続部材118を介して第3の端子113に接続されている。
【0039】
図5A図5Eの例では、第1及び第3の電極101,105は、実装面にはんだ付けされて電気的に接続されて第1のノードを形成すると電気的に接続されるようになっており、第2の電極103は、それ自体が第2のノードに電気的に接続されるようになっている。第1及び第3の電極101,105間のそのような電気的接続は、本明細書で説明するように、第1及び第3の端子111,113を介して成され得る。
【0040】
隣接する一対の電極の間には、温度依存層が実装されている。より詳細には、第1の温度依存層102が第1及び第2の電極101,103の間に実装され、第2の温度依存層104が第2及び第3の電極103,105の間に実装されるように示されている。このように、電極101,103,105と温度依存層102,104との交互配置によって多層構成が形成される。
【0041】
いくつかの実施形態において、第1及び第2の温度依存層102,104の各々は、ポリマー正温度係数(PPTC)材料等のポリマー又はポリマーベースの材料で形成され得る。そのようなPPTC材料は、通常の使用温度において材料が低い抵抗率(したがって高い導電率)を有し、温度の上昇に伴って抵抗率が増加する(したがって導電率が減少する)温度依存電気特性を含み得る。
【0042】
図6Aは、実装面124上に配置されたときの多層電気デバイス100の図5Bと同じ図である。図6Cは、図6Aにおいて概ね120として示された部分の拡大図である。図6Bは、第1及び第3の端子111,113の配置構成(概ね122として示されている)を有する多層電気デバイス100の第1の側面から見た端面図である。図6Dは、図6Bの配置構成122の拡大図である。
【0043】
図5及び図6に示す例では、第3の端子113は、第3の電極105を第3の端子113に接続する接続部材118の下縁から下方に延びるタブ108を含むように示されている。第3の端子113のそのようなタブは、第1の端子111の外縁に形成されたカットアウト107内に配置されるように示されている。
【0044】
上述のように構成され、図6C及び図6Dの拡大図に示されているように、表1に示すような種々の寸法が提供され得る。
【0045】
【表1】
【0046】
図6A図6Dを参照すると、第3の端子113は、表1に記載された複数の隙間の少なくとも一部をある程度の許容範囲内に維持しながら、第1の端子111に対して相対的に移動可能であることがわかる。
【0047】
例えば、図7Aは、(例えば、はんだ付けプロセスのための加熱による)温度(126)の上昇により熱膨張中の図6Aの多層電気デバイス100を示している。図7Bは、熱膨張中の多層電気デバイス100の図6Bと同様の端面図である。図7Cは、多層電気デバイス100が熱膨張状態にあるときの、図7Aに概ね120として示されている部分の拡大図である。図7Dは、多層電気デバイス100が熱膨張状態にあるときの、図7Bに概ね122として示されている配置構成の拡大図である。
【0048】
図7C及び図7Dにおいて、温度依存層102,104の膨張を含む膨張に起因する熱膨張状態は、それぞれの厚さの増加につながる。従って、第1及び第2電極101,103間の分離距離d4はΔd4だけ増加し、第2及び第3電極103,105間の分離距離d2はΔd2だけ増加する。第2の電極103に接続された第2の端子(図6Aの112)は、それ自体が第2のノード用であるため、第2の端子112の相対的な移動は懸念する必要がない。しかしながら、第1及び第2の温度依存層102,104の膨張は、全体として、第1及び第3の電極101,105が分離されることにつながり、したがって、それぞれの第1及び第3の端子111,113は、同一ノード(第1のノード)電極のそのような分離の増大に適応するように、本明細書に記載されるように構成され得る。
【0049】
表2は、図7Dの熱膨張状態における表1の種々の寸法を示す。
【0050】
【表2】
【0051】
図7C及び7D並びに表2の膨張状態の例において、電極101,103,105及びそれぞれの端子111,112,113に関連する膨張は、温度依存層102,104に関連する膨張と比較すると、無視できるか、又は十分に小さいと見なされる。例えば、電極として用いられる金属又は合金は、通常、20より低い線熱膨張係数値(α,単位:10-6m/(m℃))を有するのに対し、PPTC材料等のポリマー材料は、はるかに高い線熱膨張係数値(例えば、50又は100よりも高い)を有する。電極及び端子に関連する膨張が無視できない場合でも、本開示の1又2以上の特徴が依然として実施され得ることに留意されたい。
【0052】
図7C及び図7Dの熱膨張状態及び表2の対応する寸法を参照すると、多層電気デバイス100を実装面124に実装するためにはんだ付けプロセスを適用することが可能である。そのようなプロセス中にはんだを流すと、熱膨張状態にある隙間の少なくとも一部ははんだ材料で充填されるのに十分小さいままであり続けることができ、それによって第1及び第3の端子111,113を互いに固定し、さらにそれにより第1及び第3の電極101,105を電気的に接続する。
【0053】
例えば、図8Aは、はんだ付けプロセスによって実装面に取り付けられた図7Aの多層電気デバイス100を示している。図8Bは、実装面に取り付けられた多層電気デバイス100の、図7Bと同様の端面図である。図8Cは、多層電気デバイス100が実装面に実装されたときの、図8Aに120として概ね示されている部分の拡大図である。図8Dは、多層電気デバイス100が実装面に実装されたときの、図8Bに122として概ね示されている配置構成の拡大図である。
【0054】
より詳細には、図8C及び図8Dの拡大図を参照すると、はんだ材料130が、第3の端子113のタブ108を第1の端子111及び実装面124に固定するように、十分な高さ(例えば、少なくともd13+Δd13)で第1の端子111のカットアウト107内にリフローしたことが示されている。はんだ材料130は、第3の端子113のタブ108と第1の端子111のカットアウト107のそれぞれの部分との間の隙間の一部又は全部を充填するようにより高くに流れることもできる。例えば、図7C及び図7Dにd12及びd14として示されている隙間をはんだ材料130で充填することができる。
【0055】
図7及び図8を参照して上述した例では、第1及び第2の端子111,112は、それぞれのリフローはんだ構造によって実装面124に固定されることに留意されたい。第3の端子113は、それぞれのリフローはんだ構造によって第1の端子111に固定される。したがって、第3の端子113も実装面124に固定され、それによって多層電気デバイス100を実装面124に固定している。
【0056】
また、図8A図8Dの例のように、多層電気デバイス100が実装面124に実装されるとき、温度依存層102,104(PPTC層等)は膨張状態にあり、電極101,103,105及びそれらのそれぞれの端子111,112,113は温度依存層102,104の膨張状態に適応する相対位置にあることに留意されたい。実装プロセス後に多層電気デバイス100が冷却されると、PPTC層102,104は温度が低下するにつれて収縮する傾向がある。(例えば、PPTC層の各面上の界面表面ではんだペーストにより形成されるはんだ接合と、それに続く、好ましくはPPTC層の膨張状態をもたらす温度よりも高い温度でのリフロープロセスによって)各PPTC層が両側の電極に接合される場合、収縮するPPTC層102,104は、電極101,103,105に関連付けられた電極/端子アセンブリの一部又は全部に導入される機械的応力が生じることとなる。
【0057】
しかしながら、いくつかの実施形態において、温度依存層(PPTC層等)が膨張状態にある間に多層電気デバイスが実装面に固定されることは、(冷却の結果生じる上述の機械的応力があっても)実装プロセス中に温度依存層が自由に膨張できない状況よりも好ましい。例えば、温度依存層がPPTC層である場合、正温度係数(PTC)効果は、少なくとも部分的には、所定のPPTC層を通る導電経路を分断するポリマーマトリックスの体積膨張に起因して生じることに留意されたい。したがって、PPTCの体積が制約されると、PTC効果のレベルは低くなる。さらに、低いPTC効果を伴うそのような制約されたPPTC体積により、リーク電流がより高くなり、したがって対応する多層電気デバイスの早期の損傷や破壊につながり得る。
【0058】
図6図8を参照して上述した例では、電極101,103,105及びそれらのそれぞれの端子111,112,113の構成により、温度依存層102,104(PPTC層等)は実装プロセス中に膨張することが可能となる。さらに、端子111,112,113は、温度依存層102,104が膨張状態にある間に多層電気デバイス100を実装面に実装及び固定できるように、本明細書に説明されているように構成されてもよい。
【0059】
図9A図9Cは、いくつかの実施形態において、本明細書に記載されているような1又は2以上の特徴を有する多層電気デバイスが、実装プロセス中に複数の端子の各々と実装面との間に良好な係合を望ましくは成すように構成され得ることを示している。例えば、図9Aは、非熱膨張状態で実装面124上に配置された多層電気デバイス100の、図6Aの例と同様の側面図である。そのような構成例では、電極101,103,105、それぞれの端子111,112,113及びそれぞれの接続部材(図6Aの116,117,118)は、第1及び第2の端子111,112の表面が実装面124と同一平面(又はほぼ同一平面)となるように寸法決めすることができる。
【0060】
このような構成に対して、図9Bは、実装プロセスのために加えられた熱に起因して温度依存層102,104が膨張した熱膨張状態の多層電気デバイス100を示している。従って、第1及び第2電極101,103の間の分離距離は第1の温度依存層102の膨張により増加し、第2及び第3電極103,105の間の分離距離は第2の温度依存層104の膨張により増加する。
【0061】
本明細書において説明されているように、電極101,103,105の上述の分離距離の正味の効果により、第1及び第3の端子111,113の間の相対的な移動がもたらされ、そのような端子は、そのような動きに対応し、かつ両方の端子を実装124に固定することを可能にするように構成され得る。図9Bでは、第1及び第2の電極101,103の間の分離距離の増加の影響が、第2の端子112と実装面124との間に設けられた隙間140として描かれている。
【0062】
図9Cは、図9Bの隙間140によって多層電気デバイス100が第2の端子(112)側に傾いた状態を示している。従って、多層電気デバイス100は、傾いた姿勢において2つの接触位置141,142を依然として維持している。より詳細には、第1の接触位置141は第1の端子111の一方の縁に沿うように示され、第2の接触位置142は第2の端子112の一方の縁に沿うように示されている。
【0063】
第1及び第2の端子111,112の表面が(図9Aのように)実装面124と同一平面でなくなっても、第1及び第2の接触位置141,142は実装面124と同一平面のままであることに留意されたい。したがって、リフロープロセス中に、それぞれの接触位置141,142を介して第1及び第2の端子111,112に対して効果的なはんだ構造を形成することができる。
【0064】
図9A図9Cの例では、多層電気デバイス100は、非膨張状態のときに、係合端子(例えば、111,112)の表面と実装面の平面との共平面性をもたらすように構成されている。本明細書に記載されているような1又は2以上の特徴を有する多層電気デバイスは、他の態様で構成することもできることが理解されるであろう。例えば、多層電気デバイスは、非膨張状態にあるときに予め傾けられ、膨張状態にあるときに端子の表面と実装面との同一平面の配置構成を成すように構成されてもよい。
【0065】
図5図9を参照して説明した例では、多層電気デバイスは、2つの温度依存層と3つの電極とを含むように示されている。いくつかの実施形態において、他の数の温度依存層及び電極を実装できることが理解されるであろう。
【0066】
例えば、図10は、3つの温度依存層102,104,106と4つの電極101,103,105,107とを有する多層電気デバイス100を示している。いくつかの実施形態において、そのような多層電気デバイスは、図4の例と同様に、電極101,103,105,107が2つのノードに電気的に接続されるように構成することができる。
【0067】
したがって、図10の例において、それぞれの第1及び第3の電極101,105に関連付けられた第1及び第3の端子111,113は、図5図9を参照して本明細書で説明したように構成することができる。いくつかの実施形態において、それぞれの第2及び第4の電極103,107に関連付けられた第2及び第4の端子112,114もまた、温度依存層102,104,106の膨張に起因する第2及び第4の端子112,114の間の相対的な移動を可能にするために同様の態様で構成され得る。
【0068】
図5図9を参照して説明した例では、多層電気デバイスは、複数の温度依存層の熱膨張に適応する一方で、そのような端子を実装面に固定することを可能にするように構成された一対の端子を含むように示されている。このような例では、実装面に接触する端子111は、他方の端子113のタブ108を受け入れ、温度依存層が熱膨張するときにタブ108がカットアウト107に対して相対的に移動できるように寸法決めされたカットアウト107を含む。そのような例示的なカットアウトは、カットアウト107が開放面を有するように、端子111の外縁に沿って存在しているように描かれている。上述の例示的なカットアウト107及びタブ108と同様の機能を提供するカットアウト及びタブが、異なる態様で構成され得ることが理解されるであろう。
【0069】
例えば、図11は、第1、第2及び第3の端子111,112,113を有する多層電気デバイス100の下面図を示しており、第1及び第2の端子111,112は、図5図9の例と同様に、実装面との接触を提供するように構成されている。しかしながら、図11の例では、第1の端子111のカットアウト107’は、カットアウト107’の全ての面が第1の端子の領域内に横方向に存在するように実装されることが示されている。従って、カットアウト107’は、図5図9の例のカットアウト107のように開放面を有していない。
【0070】
図11の例では、囲まれたカットアウト107’は、図5図9の例と同様に、第3の端子113のタブの相対的な移動を可能にするように寸法決めすることができる。その結果、多層電気デバイス100がはんだ付けプロセスを経るとき、リフローはんだは、本明細書に記載されているように、第3の端子113を第1の端子111に固定することができる。
【0071】
図5図11を参照して本明細書で説明した様々な例において、各々の多層電気デバイス100は、平坦な取付面を有する2つの端子を含んでいる。より詳細には、各々の多層電気デバイス100は、概ね平坦な取付面を有する第1の端子111と、概ね平坦な取付面を有する第2の端子112とを含み、少なくとも第1の端子111は、第1の端子に対する他の端子(例えば、第3の端子113)の移動を可能にするように構成されている。
【0072】
いくつかの実施形態において、多層電気デバイスは、上述の端子の平坦な取付面を持たずに、しかも1つの端子を他の端子に対して相対的に移動させることを可能にし、それによってはんだ付けプロセス中にリフローはんだによって2つの端子を互いに固定することを可能にするように構成してもよい。図12及び図13は、そのような多層電気デバイスの例を示している。
【0073】
図12Aは、図1及び図2の例と同様に、2つの温度依存層102,104と3つの対応する電極101,103,105とを有する多層電気デバイス100の斜視図である。図12Bは非膨張状態の多層電気デバイス100の端面図であり、図12Cは膨張状態の多層電気デバイス100の同じ端面図である。
【0074】
図12A図12Cを参照すると、第1の電極101は接続部材116を介して第1の端子111に接続されるように示され、第2の電極103は接続部材117を介して第2の端子112に接続されるように示され、第3の電極105は接続部材118を介して第3の端子113に接続されるように示されている。3つの端子111,112,113の各々は、多層電気デバイス100が実装面124上に配置されたときに、実装面124に係合するか、あるいは実装面124に近接する縁を有する足部を含むように示されている。
【0075】
図12A図12Cの例では、第1及び第3の端子111,113の接続部材116,118は、それぞれ、多層電気デバイス100の熱膨張中に2つの端子間の相対的な移動を可能にする隙間150を形成するように構成され得る。このように構成されることにより、多層電気デバイス100が図12Bの非膨張状態にあるとき、3つの端子111,112,113の各々の足部の少なくともいくつかが、実装面124と係合するように示されている。膨張状態の図12Cでは、第1及び第2の端子111,112の各々の足部は実装面124と係合するように示されているのに対し、第3の端子113の足部は温度依存層102,104の膨張により実装面124から(隙間152を形成するように)持ち上げられたように示されている。
【0076】
いくつかの実施形態において、第1及び第3の端子111,113の接続部材116,118間の隙間150は、はんだ付けプロセス中に、はんだ材料が一方の端子(例えば、第1の端子111)から他方の端子(例えば、第3の端子113)に流れることを可能にする範囲内になるように寸法決めすることができ、それにより、一方の端子(例えば、第3の端子113)が実装面124に直接接触していなくても、2つの端子が実装面124に電気的に接続され、かつ固定されることを可能にする。
【0077】
図12Cの膨張状態における向きの例では、多層電気デバイス100の第3の端子113が実装面から分離して隙間152が生じるように示されている。従って、はんだ材料のリフロー前に、多層電気デバイス100を第3の電極113の側に向けて傾けてもよいし(例えば、図12Cのように見たときに右側を下方に傾ける)、傾けなくてもよい。多層電気デバイス100を傾けない場合、第1及び第2の端子111,112によって2つの接触位置を提供することができ、第3の端子113は、本明細書で説明されているように固定することができる。多層電気デバイス100を傾ける場合、第1、第2及び第3の端子111,112,113によって3つの接触位置を提供することができ、第3の端子113は、本明細書で説明されているように第1の端子111にさらに固定することができる。
【0078】
いくつかの実施形態において、多層電気デバイスは、膨張状態にあるときであって、リフロープロセスの前に、傾けないことが好ましい場合がある。例えば、図13A及び図13Bは、図12A図12Cの多層電気デバイス100と同様であるが、その第3の端子113が(図13Bのように)実装面124から分離したときに傾く可能性を低減するように構成された多層電気デバイス100の非膨張状態及び膨張状態を示している。いくつかの実施形態において、第1の端子111の足部は、幅がより狭い第3の端子113が実装面124から分離されても、幅がより広い第1の端子111が比較的安定した姿勢を成すするように、第3の端子113の足部よりも広くなるように寸法決めされ得る。
【0079】
文脈で明確に必要としない限り、明細書及び特許請求の範囲を通して、「備える」「備えている」等の語句は、排他的又は網羅的な意味とは対照的に、包括的な意味、すなわち、それに限定されるのではなく「含む」という意味で解釈されるべきである。一般的に本明細書で使用される、「結合」という用語は、2つ以上の要素が直接接続される、又は、1つ又は複数の中間要素を介して接続されることを意味する。また、「本明細書に」、「上記の」、「下記の」の語句及び類似の語句は、本出願において使用される場合、本出願の任意の特定の部分ではなく本出願の全体を指す。ここで、文脈が許すところで、明細書中の単数形又は複数形による単語は、それぞれ、複数又は単数を含むことができる。2つ又はそれ以上の項目のリストを参照する「又は」の語句は以下の解釈のすべてを包含する:リスト内の項目のいずれか、リスト内のすべての項目、及びリスト内の任意の組合せ。
【0080】
本発明の実施形態の上記の詳細な説明は、網羅的であることを意図したものではなく、また、本発明を上記に開示された詳細な形態に限定することを意図したものではない。本発明の特定の実施形態、及び本発明のための実施例は、例示目的で上記に記載されているが、関連する技術の当業者であれば認識するであろうように、本発明の範囲内で様々な均等な改変が可能である。例えば、プロセス又はブロックが所定の順序で示されているが、代替的な実施形態は、ステップを有するルーチンを実行してもよく、又はブロックを有するシステムを別の順序で用いてもよく、いくつかのプロセス又はブロックは、削除、移動、追加、細分化、結合、及び/又は変更されてもよい。これらのプロセス又はブロックの各々は、様々な異なる方法で実施されてもよい。また、プロセス又はブロックが直列に実行されるように示されることがあるが、これらのプロセス又はブロックは、代わりに並列して実行されてもよく、又は時を異にして実行されてもよい。
【0081】
本明細書で提供される本発明の教示は、必ずしも上述したシステムに限らず、他のシステムにも適用することができる。上述した様々な実施形態の要素及び作用は、さらなる実施形態を提供するために組み合わせることができる。
【0082】
本発明のいくつかの実施形態が記載されているが、これらの実施形態は例示のためだけに示されており、本開示の範囲を限定することを意図していない。実際、本明細書に記載された新規な方法及びシステムは、様々な他の形態で実施されてもよく、さらに、様々の省略、置換、及び本明細書に記載された方法及びシステムの形態の変更は、本開示の趣旨から逸脱することなく行うことができる。添付の特許請求の範囲及びそれらの均等物は、本開示の範囲及び趣旨に含まれるであろうそのような形態又は修正をカバーすることを意図している。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図7C
図7D
図8A
図8B
図8C
図8D
図9A
図9B
図9C
図10
図11
図12A
図12B
図12C
図13A
図13B
【国際調査報告】