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特表2024-502116ターボチャージャにおけるタービンハウジング
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-17
(54)【発明の名称】ターボチャージャにおけるタービンハウジング
(51)【国際特許分類】
   F02B 39/00 20060101AFI20240110BHJP
   F04D 29/44 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
F02B39/00 D
F04D29/44 V
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023541025
(86)(22)【出願日】2021-01-08
(85)【翻訳文提出日】2023-07-05
(86)【国際出願番号】 IB2021050121
(87)【国際公開番号】W WO2022148993
(87)【国際公開日】2022-07-14
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】316015888
【氏名又は名称】三菱重工エンジン&ターボチャージャ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】ファン ベンメル アーヤン
(72)【発明者】
【氏名】ファン デン ブルーク ジェフリー
【テーマコード(参考)】
3G005
3H130
【Fターム(参考)】
3G005EA04
3G005EA16
3G005FA11
3G005FA45
3G005GB24
3H130AA12
3H130AB27
3H130AB42
3H130BA14A
3H130CA10
3H130DD09Z
(57)【要約】
本発明は、ホイール筐体空間(120)と、入口(130)と、少なくとも1つの渦巻室(140)と、分離壁(160)から突出する舌部(150)とを備える、ターボチャージャでの使用のためのタービンハウジング(100)に関する。舌部(150)は、タービンハウジング(100)によって収容されるタービンホイールの誘導領域が位置付けられるホイール筐体空間(120)の区域(121)に排気ガス流を案内するように構成される。舌部(150)および分離壁(160)の少なくとも一方が、排気ガス流の一部分を、舌部(150)および分離壁(160)の少なくとも一方の上流側から舌部(150)および分離壁(160)の少なくとも一方の下流側への漏れ流として通過させることができるように構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターボチャージャにおいて使用され、タービンホイール(110)を収容するように構成されるタービンハウジング(100、200)であって、
エンジンの排気ガス流を前記タービンハウジング(100、200)へと導入するように構成される入口(130)と、
前記入口(130)から、前記タービンハウジング(100、200)によって収容される前記タービンホイール(110)が位置付けられる前記タービンハウジング(100、200)におけるホイール筐体空間(120)に向けて、前記タービンハウジング(100、200)を通る前記排気ガス流の流路を定める少なくとも1つの渦巻室(140)と、
前記少なくとも1つの渦巻室(140)の一部分を画定する分離壁(160)から突出し、前記タービンハウジング(100、200)によって収容される前記タービンホイール(110)の誘導領域(111)が位置付けられる前記ホイール筐体空間(120)の区域(121)に前記排気ガス流を案内するように構成される舌部(150)であって、前記舌部(150)および前記分離壁(160)の少なくとも一方が、前記排気ガス流の一部分を、前記舌部(150)および前記分離壁(160)の前記少なくとも一方の上流側(H)から前記舌部(150)および前記分離壁(160)の前記少なくとも一方の下流側(L)への漏れ流として通過させることができるように構成される、舌部(150)と
を備えるタービンハウジング(100、200)。
【請求項2】
前記舌部(150)および前記分離壁(160)の前記少なくとも一方は、前記舌部(150)および前記分離壁(160)の前記少なくとも一方の前記上流側(H)と、前記舌部(150)および前記分離壁(160)の前記少なくとも一方の前記下流側(L)との間で延びる少なくとも1つの開放流路(171、173)を備える、請求項1に記載のタービンハウジング(100、200)。
【請求項3】
前記少なくとも1つの開放流路(171、173)は、前記舌部(150)の先端部分(151)に位置付けられ、前記タービンハウジング(100、200)によって収容される前記タービンホイール(110)の前記誘導領域(111)が位置付けられる前記ホイール筐体空間(120)の前記区域(121)へと開口しているスリット(171)を備える、請求項2に記載のタービンハウジング(100、200)。
【請求項4】
前記舌部(150)の前記先端部分(151)における前記スリット(171)の底面(172)が、前記少なくとも1つの渦巻室(140)によって定められる前記排気ガス流の方向(F)において概して延びる、請求項3に記載のタービンハウジング(100、200)。
【請求項5】
前記スリット(171)の前記底面(172)は前記ホイール筐体空間(120)と同心である、請求項4に記載のタービンハウジング(100、200)。
【請求項6】
前記ホイール筐体空間(120)に中心のある軸(C)への前記スリット(171)の前記底面(172)の半径(r)が、前記ホイール筐体空間(120)の半径(R)と、前記ホイール筐体空間(120)の前記半径(R)の130%との間である、請求項5に記載のタービンハウジング(100、200)。
【請求項7】
前記スリット(171)の前記底面(172)は、前記舌部(150)の前記先端(152)の上流60°から前記舌部(150)の前記先端(152)の下流20°までの範囲において測定されるような、前記スリット(171)の前記底面(172)の半径(r)に対して80°から100°の間の方向に延びる接線(T)に従って概して延びる、請求項4に記載のタービンハウジング(100、200)。
【請求項8】
前記少なくとも1つの開放流路(171、173)は、前記舌部(150)および前記分離壁(160)の一方を通じて延びる通路(173)を備える、請求項2に記載のタービンハウジング(100、200)。
【請求項9】
前記通路(173)は、前記舌部(150)の前記先端(152)の上流で90°に沿って延びる領域に位置付けられる、請求項8に記載のタービンハウジング(100、200)。
【請求項10】
前記舌部(150)は、前記舌部(150)の前記上流側(H)と前記舌部(150)の前記下流側(L)との間で延びる少なくとも2つの開放流路(171、173)を備える、請求項2から9のいずれか一項に記載のタービンハウジング(100、200)。
【請求項11】
単一の渦巻室の設計または複数の渦巻室の設計のものである、請求項1から10のいずれか一項に記載のタービンハウジング(100、200)。
【請求項12】
二重の渦巻室の設計のものであり、分離壁(160)および前記分離壁(160)から突出する舌部(150)の2つのセットを備え、前記舌部(150)および前記分離壁(160)の少なくとも一方が、分離壁(160)および前記分離壁(160)から突出する舌部(150)の前記2つのセットの各々において、前記排気ガス流の一部分を、前記舌部(150)および前記分離壁(160)の前記少なくとも一方の上流側(H)から前記舌部(150)および前記分離壁(160)の前記少なくとも一方の下流側(L)への漏れ流として通過させることができるように構成される、請求項1から10のいずれか一項に記載のタービンハウジング(200)。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載のタービンハウジング(100、200)と、前記タービンハウジング(100、200)によって収容されるタービンホイール(110)であって、前記タービンハウジング(100、200)の前記ホイール筐体空間(120)に位置付けられるタービンホイール(110)とを備えるターボチャージャ。
【請求項14】
タービンハウジング(100、200)と、前記タービンハウジング(100、200)によって収容されるタービンホイール(110)とが存在するターボチャージャのタービン部を通してエンジンの排気ガス流を方向付ける方法であって、
前記排気ガス流を、前記タービンハウジング(100、200)を通じて、前記タービンハウジング(100、200)の入口(130)から、前記タービンホイール(110)に向けて進行できるようにするステップと、
前記排気ガス流のうちのより多くの一部分を、前記タービンハウジング(100、200)における分離壁(160)、および、前記分離壁(160)から突出する舌部(150)に沿って進行できるようにすると共に、前記舌部(150)によって前記タービンホイール(110)の誘導領域(111)へと案内される一方で、前記排気ガス流のうちのより少ない一部分を、前記舌部(150)および前記分離壁(160)の前記少なくとも一方にわたる圧力差の影響の下で、前記舌部(150)および前記分離壁(160)の前記少なくとも一方の上流側(H)から前記舌部(150)および前記分離壁(160)の前記少なくとも一方の下流側(L)への漏れ流として、前記舌部(150)および前記分離壁(160)の少なくとも一方に通過できるようにするステップと
を含む方法。
【請求項15】
前記舌部(150)および前記分離壁(160)の前記少なくとも一方は、前記舌部(150)および前記分離壁(160)の前記少なくとも一方の前記上流側(H)と、前記舌部(150)および前記分離壁(160)の前記少なくとも一方の前記下流側(L)との間で延びる少なくとも1つの開放流路(171、173)を備え、前記方法は、前記排気ガス流のうちの前記より少ない一部分を、前記少なくとも1つの開放流路(171、173)を通じて進行できるようにするステップを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記少なくとも1つの開放流路(171、173)は、前記舌部(150)の先端部分(151)に位置付けられ、前記タービンホイール(110)の前記誘導領域(111)へと開口しているスリット(171)を備え、前記方法は、前記排気ガス流のうちの前記より少ない一部分を、前記スリット(171)を通じて進行できるようにするステップを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記少なくとも1つの開放流路(171、173)は、前記舌部(150)および前記分離壁(160)の一方を通じて延びる通路(173)を備え、前記方法は、前記排気ガス流のうちの前記より少ない一部分を、前記通路(173)を通じて進行できるようにするステップを含む、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターボチャージャにおいて使用され、タービンホイールを収容するように構成されるタービンハウジングであって、エンジンの排気ガス流をタービンハウジングへと導入するように構成される入口と、入口から、タービンハウジングによって収容されるタービンホイールが位置付けられるタービンハウジングにおけるホイール筐体空間に向けて、タービンハウジングを通る排気ガス流の流路を定める少なくとも1つの渦巻室と、少なくとも1つの渦巻室の一部分を画定する分離壁から突出し、タービンハウジングによって収容されるタービンホイールの誘導領域が位置付けられるホイール筐体空間の区域に排気ガス流を案内するように構成される舌部とを備えるタービンハウジングに関する。
【0002】
さらに、本発明は、本明細書において先に記載されているようなタービンハウジングと、タービンハウジングによって収容されるタービンホイールとを備えるターボチャージャであって、タービンホイールはタービンハウジングのホイール筐体空間に位置付けられる、ターボチャージャに関する。
【0003】
なおもさらには、本発明は、タービンハウジングと、タービンハウジングによって収容されるタービンホイールとが存在するターボチャージャのタービン部を通してエンジンの排気ガス流を方向付ける方法に関する。
【背景技術】
【0004】
ターボチャージャは、大気を上回る圧力(過給圧)で空気を内燃エンジンの吸気へ供給するためのよく知られているデバイスである。概して、ターボチャージャは、エンジンの排気ガス流によって駆動されるように配置および構成されるタービンホイールを備える。タービンホイールは、回転可能なシャフトに搭載され、タービンハウジングに収容される。コンプレッサホイールが、シャフトの他方の端に搭載され、コンプレッサハウジングに収容される。したがって、コンプレッサホイールは、タービンホイールと共に回転するように配置される。コンプレッサホイールは、圧縮空気をエンジン吸気マニホールドに送るように供する。従来、ターボチャージャのシャフトは、タービンハウジングとコンプレッサハウジングとの間の位置に存在する中心軸受筐体に位置付けられる、適切な潤滑システムを含むジャーナル軸受およびスラスト軸受によって支持されている。
【0005】
ターボチャージャの動作の間、エンジンの排気ガス流は、タービンハウジングの入口を通じてタービンハウジングへと導入され、少なくとも1つの渦巻き形の渦巻室を介してタービンホイールに向けて流れる。タービンホイールは、排気ガス流の影響の下で回転させられ、それによってシャフトおよびコンプレッサホイールの回転も引き起こすように構成されている。この方法では、コンプレッサホイールは、想定されているようなターボチャージャの機能性、つまり、エンジンに供給される空気を圧縮する機能性を実現するように可能とされている。
【0006】
タービンハウジングの少なくとも1つの渦巻室の一部分は、タービンハウジングの内部に配置された分離壁によって画定される。舌部が、分離壁から突出するように配置され、排気ガス流をタービンホイールの誘導領域に案内するように構成される。舌部と分離壁とが全体として提供される場合、実用的である。舌部は、その先端に向けて概して先細りとされた形を有し得る。
【0007】
二重の渦巻室の設計のタービンハウジングでは、舌部とタービンホイールとの間のクリアランスが、タービン性能に大きな影響を有する。これは、クリアランスの位置における、送り込み渦巻室、つまり、排気ガス流が導入される渦巻室と、送り込みのない渦巻室との間の漏れによって、もたらされる。それを考慮して、小さいクリアランスを有することが望ましい。しかしながら、小さいクリアランスの欠点は、翼通過騒音の音圧レベルの増加、つまり、タービンホイールの翼が舌部を通過することから起こる騒音の音圧レベルの増加である。この点において、翼通過騒音の一部は、舌部の下流の分離された後流の領域をタービンホイール翼が通過することによって引き起こされると考えられている。舌部の先端と、それぞれのタービンホイール翼の先端との間の小さい隙間は、より小さくなると、分離された後流の領域を通るタービンホイール翼のより長い経路を伴うため、翼通過騒音を増大させる。
【0008】
タービンホイール翼の数が通常は多いという事実を考慮すると、臨界ターボチャージャ速度は比較的低く、60,000~110,000rpmの範囲にある。比較的低いターボチャージャ速度は低エンジン負荷条件においてしばしば起こり、その条件では、エンジン騒音は、ターボチャージャ騒音がしばしば隠されないほど低くなる。
【0009】
低エンジン負荷条件を伴う車両動作の典型的な例には、
- 車の駐車、
- 駐車場ゲートにおける運転(チケットのために窓が開いている)、
- 人が見ている間の車での出発/到着、
- 交通渋滞における運転、
- 屋内および/またはトンネル通過の運転
がある。
【0010】
「通常の」車両では、運転室は騒音から隔離され、翼通過騒音は(まだ)重大ではない。しかしながら、翼通過騒音は、コンバーチブルの車についての重大な設計基準として示される(コンバーチブルのルーフは騒音遮断がより劣るため、開ルーフ状態と閉ルーフ状態との両方に関して)。翼通過騒音は、1つまたは複数の窓が開状態にある選択肢を考慮するときも、重大な設計基準として示される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
高価な対策を適用する必要なく、および、タービン性能に(相当に)影響を与えることなく、翼通過騒音のレベルを低減するように設計されるタービンハウジングを提供することが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の態様は、添付の独立請求項および従属請求項に述べられている。従属請求項からの特徴は、請求項において明示的に述べられ、以下の記載に説明されているだけでなく、必要に応じて、それぞれの独立請求項からの特徴と組み合わされてもよい。
【0013】
前述のことを考慮して、本発明は、ターボチャージャにおいて使用されるように、および、タービンホイールを収容するように構成されるタービンハウジングであって、タービンハウジングは、排気ガス流をタービンハウジングへと導入するように構成される入口と、入口から、タービンハウジングによって収容されるタービンホイールが位置付けられるタービンハウジングにおけるホイール筐体空間に向けて、タービンハウジングを通る排気ガス流の流路を定める少なくとも1つの渦巻室と、少なくとも1つの渦巻室の一部分を画定する分離壁から突出し、タービンハウジングによって収容されるタービンホイールの誘導領域が位置付けられるホイール筐体空間の区域に排気ガス流を案内するように構成される舌部であって、舌部および分離壁の少なくとも一方が、排気ガス流の一部分を、舌部および分離壁の少なくとも一方の上流側から舌部および分離壁の少なくとも一方の下流側への漏れ流として通過させることができるように構成される、舌部と、を備えるタービンハウジングを提供する。
【0014】
本発明によるタービンハウジングの上記の大まかな定義から、本発明が、排気ガス流が舌部および分離壁の上流側から舌部および分離壁の下流側へと通過する位置において機能するということになる。本発明によれば、舌部および分離壁の少なくとも一方が、排気ガス流の一部分を、舌部および分離壁の少なくとも一方の上流側から舌部および分離壁の少なくとも一方の下流側への漏れ流として通過させることができるように構成される。したがって、本発明が実施させられるとき、排気ガス流の一部分が、通常の場合のように、舌部とタービンホイールとの間で通過させられる一方で、ターボチャージャの性能が、最小の度合いだけまで低減させられるように、または、実際には全く低減させられないように、好ましくははるかにより少ない一部分である排気ガス流の他の部分が、漏れ流として舌部および分離壁の少なくとも一方を通過させられる。本発明は、舌部および分離壁の少なくとも一方が、言及されているような漏れ流を定めるように構成される方法に関連する。明確性のために、本書で使用されているような「下流」および「上流」という用語は、排気ガス流の方向に関連付けられていることが留意される。
【0015】
本発明の背景の上記の説明を参照すると、舌部および分離壁の少なくとも一方を通る漏れ流を可能とすることによって、舌部の下流の分離された後流の領域の強度/発生の低減をもたらすことが留意される。それを考慮して、本発明は、翼通過騒音のレベルを低減させることができる点において有利であり得るだけでなく、タービンホイール翼の耐久性を向上させることができるように、それぞれのタービンホイール翼の先端における材料応力のレベルを低減させることができる点においても有利であり得る。
【0016】
舌部および分離壁の少なくとも一方が、舌部および分離壁の少なくとも一方の上流側と、舌部および分離壁の少なくとも一方の下流側との間で延びる少なくとも1つの開放流路を備える場合、実用的である。タービンハウジングの製造過程の間、このような開放流路は、鋳造ステップなど、製造過程の従来のステップにおいて部分的または一体的に作り出すことができる、または、機械加工ステップなど、追加のステップにおいて部分的または一体的に作り出すことができる。
【0017】
タービンハウジングの実施形態において、少なくとも1つの開放流路は、舌部の先端部分に位置付けられ、タービンハウジングによって収容されるタービンホイールの誘導領域が位置付けられるホイール筐体空間の区域へと開放しているスリットを備える。排気ガス流の攪乱をできるだけ回避するために、舌部の先端部分におけるスリットの底面が、少なくとも1つの渦巻室によって定められる排気ガス流の方向において概して延びる場合に有利であることが留意される。この点において、少なくとも以下の2つの選択肢が存在する。すなわち、
-スリットの底面が、ホイール筐体空間と同心であり、ホイール筐体空間において中心にある軸へのスリットの底面の半径が、ホイール筐体空間の半径と、ホイール筐体空間の半径の130%との間である場合、実用的であり得る、または、
-スリットの底面が、舌部の先端の上流60°から舌部の先端の下流20°までの範囲において測定されるような、スリットの底面の半径に対して80°から100°の間の方向に延びる接線に従って概して延びる。
【0018】
タービンハウジングの他の実施形態では、少なくとも1つの開放流路は、舌部および分離壁の一方を通じて延びる通路を備える。このような通路は、例えば、舌部および分離壁の一方における孔として提供されてもよい。通路は貫通孔と称されてもよい。概して、言及されているように、通路が舌部および分離壁の一方を通じて延びるようにされてもよく、通路は、その2つの反対の開放端において外部からアクセス可能なだけであり、舌部および分離壁の一方の材料によって包囲される。通路が、舌部の先端の上流で90°に沿って延びる領域に位置付けられる場合、有利であり得る。完全性のために、舌部の先端の上流または下流での角度の値の指示は、ホイール筐体空間の概して円形の輪郭に関連するように理解されることが留意される。
【0019】
少なくとも1つの開放流路は、スリットを備えるか通路を備えるかに関係なく、タービンハウジングの舌部が舌部の上流側と舌部の下流側との間で延びる少なくとも2つの開放流路を含むようにされ得る。そのように望まれる場合、スリットおよび通路に関係する先に言及された選択肢の任意の適切な組み合わせが適用され得る。
【0020】
本発明は、単一の渦巻室の設計のタービンハウジング、および複数の渦巻室の設計のタービンハウジングを含め、様々な設計のタービンハウジングを網羅する。
【0021】
複数の渦巻室の設計のものであるタービンハウジングの選択肢に関して、タービンハウジングが、二重の渦巻室の設計のものであり、分離壁および分離壁から突出する舌部の2つのセットを備えるタービンハウジングの実施形態が実現可能であり、舌部および分離壁の少なくとも一方が、分離壁および分離壁から突出する舌部の2つのセットの各々において、排気ガス流の一部分を、舌部および分離壁の少なくとも一方の上流側から舌部および分離壁の少なくとも一方の下流側への漏れ流として通過させることができるように構成される。
【0022】
本発明は、タービンホイールと、本明細書において先に記載されているようなタービンハウジングとを備えるターボチャージャであって、タービンホイールはタービンハウジングのホイール筐体空間に位置付けられる、ターボチャージャにさらに関する。本発明の背景の上記の説明を参照して、ターボチャージャの動作の間、コンプレッサハウジングに収容されているコンプレッサホイールの回転がタービンホイールの回転に直接的に関連付けられることが実現されるように、タービンホイールがエンジンの排気ガス流によって駆動されることが留意される。
【0023】
方法に関して、本発明は、タービンハウジングと、タービンハウジングによって収容されるタービンホイールとが存在するターボチャージャのタービン部を通してエンジンの排気ガス流を方向付ける方法に関する。
【0024】
方法は、
- 排気ガス流を、タービンハウジングを通じて、タービンハウジングの入口から、タービンホイールに向けて進行できるようにするステップと、
- 排気ガス流のうちのより多くの一部分を、タービンハウジングにおける分離壁、および、分離壁から突出する舌部に沿って進行できるようにすると共に、舌部によってタービンホイールの誘導領域へと案内できるようにする一方で、排気ガス流のうちのより少ない一部分を、舌部および分離壁の少なくとも一方にわたる圧力差の影響の下で、舌部および分離壁の少なくとも一方の上流側から舌部および分離壁の少なくとも一方の下流側への漏れ流として、舌部および分離壁の少なくとも一方に通過できるようにするステップと
を伴う。
【0025】
舌部および分離壁の少なくとも一方が、舌部および分離壁の少なくとも一方の上流側と、舌部および分離壁の少なくとも一方の下流側との間で延びる少なくとも1つの開放流路を備える実用的な場合では、方法は、
- 排気ガス流のうちのより少ない一部分を、少なくとも1つの開放流路を通じて進行できるようにするステップをさらに含み得る。
【0026】
これは、少なくとも1つの開放流路が前述のスリットを備える場合、方法が、排気ガス流のうちのより少ない一部分を、スリットを通じて進行できるようにするステップを含むことと、少なくとも1つの開放流路が前述の通路を備える場合、方法が、排気ガス流のうちのより少ない一部分を、通路を通じて進行できるようにするステップを含むこととを暗示している。
【0027】
本発明による方法に関する様々な選択肢が、本発明によるタービンハウジング、および本発明によるターボチャージャに関連する前述の選択肢に関連する可能性があり、同じ特徴または特徴の組み合わせを伴う可能性があることは、理解され得る。したがって、先の検討および説明の態様は、本発明が方法に関して述べられているときにも適用可能である。
【0028】
本発明のさらなる特徴および利点は、ターボチャージャのタービンハウジングの例示の非限定的な実施形態を用いて、本発明の記載から明らかになる。
【0029】
当業者は、本発明によるタービンハウジングの記載されている実施形態が、本質的に単なる例示であり、請求項に定められている保護の範囲を何らかの形で限定するとして解釈されるものではないことを理解するものである。当業者であれば、タービンハウジングの代替および等価の実施形態が、本発明の保護の範囲から逸脱することなく実施するために想到され、減縮され得ることに気付くであろう。
【0030】
添付の図面における図が参照される。図は、本質的に概略であり、必ずしも一定の縮尺で描かれていない。さらに、同一の符号は、同一の部品または同様の部品を指示している。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】タービンハウジングがターボチャージャにおいて適用されるように意図されている、本発明の実施形態による単一の渦巻室の設計のタービンハウジングの断面図である。
図2】タービンハウジングによって収容されるタービンホイールの側面図である。
図3】タービンハウジングの舌部に位置付けられるスリットを含むタービンハウジングの実施形態の一部分の図である。
図4】スリットの底面の第1の可能な設計の図である。
図5】スリットの底面の第2の可能な設計の図である。
図6】タービンハウジングの舌部に位置付けられる2つの通路を含むタービンハウジングの実施形態の一部分の図である。
図7】タービンハウジングがターボチャージャにおいて適用されるように意図されている、本発明の実施形態による二重の渦巻室の設計のタービンハウジングの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、タービンハウジング100がターボチャージャにおいて適用されるように意図されている、本発明の実施形態による単一の渦巻室の設計のタービンハウジング100の断面図を示している。図2は、タービンハウジング100によって収容されるタービンホイール110の側面図である。タービンハウジング100の大まかな設計は、ターボチャージャにおける使用のための一般的に知られているタービンハウジングの一般的な設計と同等であり、そのため、本書では手短に述べるに留められる。
【0033】
タービンハウジング100は、タービンハウジング100によって収容されるタービンホイール110が位置付けられるホイール筐体空間120を備え、入口130と渦巻室140とをさらに備える。入口130は、エンジンの排気ガス流をタービンハウジング100へと導入するように供する。渦巻室140は、入口130からホイール筐体空間120に向けてタービンハウジング100を通る排気ガス流の流路を定める。図1では、渦巻室140によって定められる排気ガス流の方向は、矢印Fによって示されている。
【0034】
タービンハウジング100は、分離壁160から突出する舌部150も備え、分離壁160は渦巻室140の一部分を画定し、舌部150は、タービンホイール110の誘導領域111が位置付けられるホイール筐体空間120の区域121へと排気ガス流を案内するように構成されている。
【0035】
図示されている実施形態では、舌部150には、舌部150の上流側Hと舌部150の下流側Lとの間で延びる開放流路を構成するスリット171が設けられている。スリット171を含むタービンハウジング100の一部分が、図3においてより詳細に示されている。スリット171が、舌部150の先端部分151に位置付けられており、タービンホイール110の誘導領域111が位置付けられるホイール筐体空間120の区域121へと開口している。先端部分151におけるスリット171の底面172が、排気ガス流の方向Fにおいて概して延びている。舌部150におけるスリット171の存在に基づいて、舌部150は、排気ガス流の一部分を、上流側Hから下流側Lへの漏れ流として通過させることができるように構成されている。タービンハウジング100が含まれ得るターボチャージャの動作の間のこのような漏れ流を実現する利点は、タービンホイール110が回転するときに発生する翼通過騒音のレベルの低減を得ることができる一方で、漏れ流がターボチャージャ性能の著しい低減を回避するのに十分な小ささであり得ることである。具体的には、様々な関連する寸法が、タービンハウジング100の設計において、排気ガス流のうちのより多くの一部分が舌部150によってタービンホイール110の誘導領域111へと案内される一方で、排気ガス流のうちのより少ない一部分が、舌部150にわたる圧力差の影響の下で、舌部150の上流側Hから舌部150の下流側Lへの漏れ流として、舌部150におけるスリット171を通過するように選択され得る。
【0036】
図4は、スリット171の底面172の第1の可能な設計を示している。この設計では、底面172はホイール筐体空間120と同心である。底面172は、ホイール筐体空間120における中心である軸Cへの半径rを有する。実用的な選択肢によれば、言及されているような半径rは、ホイール筐体空間120の半径Rとホイール筐体空間120の半径Rの130%との間で定められ得る。
【0037】
図5は、スリット171の底面172の第2の可能な設計を示している。この設計では、スリット171の底面172は、舌部150の先端152の上流60°から先端152の下流20°までの範囲において測定されるような、底面172の半径rに対して80°から100°の間の方向に延びる接線Tに従って概して延びている。
【0038】
図6は、タービンハウジング100の代替の実施形態の態様を示しており、具体的には、スリット171の代わりに通路173を用いて実現される舌部150を通じて延びる開放流路を有することが可能であるという事実を示している。図示されている実施形態では、舌部150には、上流側Hと下流側Lとの間にわたって舌部150を通じて延びる2つの通路173が設けられている。通路173が、図示されている例における場合のように、舌部150の先端152の上流で90°に沿って延びる領域に位置付けられる場合、実用的である。大まかに言えば、少なくとも1つの通路173は、少なくとも1つのスリット171と同じ機能、つまり、排気ガス流の一部分を、漏れ流として、舌部150および分離壁160の少なくとも一方を通過させることができる機能を有するように構成されている。
【0039】
図6に示されているタービンハウジング100の実施形態において、舌部150は、舌部150の上流側Hと舌部150の下流側Lとの間で延びる2つの開放流路を備える。本発明の構成において、舌部150および分離壁160の少なくとも一方を通る開放流路の数が自由に選択できることと、数が少なくとも2つとなるように選択される場合、スリット171だけを有すること、通路173だけを有すること、または、少なくとも1つのスリット171と少なくとも1つの通路173の適切な組み合わせを有することが可能であることとは、当業者には明らかとなる。
【0040】
図7は、タービンハウジング200がターボチャージャにおいて適用されるように意図されている、本発明の実施形態による二重の渦巻室の設計のタービンハウジング200の断面図を示している。二重の渦巻室の設計では、タービンハウジング200は、隔壁141によって分離された2つの渦巻室140を備え、渦巻室140は、タービンホイール110の誘導領域111が位置付けられるホイール筐体空間120のそれぞれの区域121に排気ガス流を方向付けるように供する。この構成では、タービンハウジング200は、分離壁160と舌部150との2つのセットを備える。本発明によれば、一方のセットまたは両方のセットのいずれかにおいて、好ましくは両方のセットにおいて、舌部150および分離壁160の少なくとも一方には、それを通じて延びる少なくとも1つの開放流路が設けられ得る。単一の渦巻室の設計のタービンハウジング100に関連して先に検討されているような、および、図1および図3図6に示されているような排気ガス流の漏れ流を可能にする機能性に関する特徴または特徴の組み合わせのすべてが、この機能性が実現される二重の渦巻室の設計のタービンハウジング200の少なくとも1つのセットに等しく適用可能であることが理解される。
【0041】
本発明の範囲が、前述において検討されている例に限定されないことと、そのいくつかの修正および変更が、添付の特許請求の範囲によって定められるような本発明の範囲から逸脱することなく可能であることとは、当業者には明らかとなる。具体的には、本発明の様々な態様の特定の特徴の組み合わせが行われてもよい。本発明の態様が、本発明の他の態様に関連して記載されている特徴を追加することで、さらに有利に高められてもよい。本発明が図面および明細書において詳細に図示および記載されているが、このような図示および記載は、単なる図示または例示と見なされ、限定として見なされない。
【0042】
本発明は、開示されている実施形態に限定されない。開示されている実施形態への変形が、図面、明細書、および添付の請求項の検討から、請求されている発明を実施するとき、当業者によって理解され、もたらされ得る。請求項において、「備える」という言葉は他のステップまたは要素を排除しない。特定の方策が相互に異なる従属請求項において提唱されているという単なる事実は、これらの方策の組み合わせが有利に使用できないということを指示しているのではない。請求項における参照符号は、本発明の範囲を限定するとして解釈されるべきではない。
【0043】
本発明の特筆すべき態様は、以下のようにまとめられる。本発明は、ホイール筐体空間120と、入口130と、少なくとも1つの渦巻室140と、分離壁160から突出する舌部150とを備える、ターボチャージャでの使用のためのタービンハウジング100、200に関する。舌部150は、タービンハウジング100、200によって収容されるタービンホイール110の誘導領域111が位置付けられるホイール筐体空間120の区域121に排気ガス流を案内するように構成される。舌部150および分離壁160の少なくとも一方が、排気ガス流の一部分を、舌部150および分離壁160の少なくとも一方の上流側Hから舌部150および分離壁160の少なくとも一方の下流側Lへの漏れ流として通過させることができるように構成される。
【符号の説明】
【0044】
100 単一の渦巻室の設計のタービンハウジング
200 二重の渦巻室の設計のタービンハウジング
110 タービンホイール
111 タービンホイールの誘導領域
120 ホイール筐体空間
121 ホイール筐体空間の区域
130 タービンハウジングの入口
140 渦巻室
141 隔壁
150 舌部
151 舌部の先端部分
152 舌部の先端
160 分離壁
171 スリット
172 スリットの底面
173 通路
F 排気ガス流の方向
r スリットの底面の半径
R ホイール筐体空間の半径
T 接線
C ホイール筐体空間において中心にある軸
H 舌部および分離壁の上流側
L 舌部および分離壁の下流側
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】