(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-17
(54)【発明の名称】稼働時に二弾性率挙動を有する動力伝達ベルト
(51)【国際特許分類】
F16G 1/08 20060101AFI20240110BHJP
F16G 5/06 20060101ALI20240110BHJP
F16G 1/10 20060101ALI20240110BHJP
D02G 3/44 20060101ALI20240110BHJP
D02G 3/04 20060101ALI20240110BHJP
D02G 3/28 20060101ALI20240110BHJP
D02G 3/36 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
F16G1/08 A
F16G5/06 A
F16G1/10
D02G3/44
D02G3/04
D02G3/28
D02G3/36
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023541064
(86)(22)【出願日】2021-12-17
(85)【翻訳文提出日】2023-07-05
(86)【国際出願番号】 FR2021052386
(87)【国際公開番号】W WO2022148916
(87)【国際公開日】2022-07-14
(32)【優先日】2021-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100156982
【氏名又は名称】秋澤 慈
(72)【発明者】
【氏名】ル クレル クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ブルソー マガリー
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー ナタン
(72)【発明者】
【氏名】マク コーミック エリック
【テーマコード(参考)】
4L036
【Fターム(参考)】
4L036MA05
4L036MA39
4L036PA21
4L036PA46
4L036RA24
4L036RA25
4L036UA07
(57)【要約】
【課題】本発明は、取り付けが容易であるが、耐久性の面でトルク伝達の観点で良好な性能を呈するベルトを得ることを課題とする。
【解決手段】本発明は、ポリマー性組成物(20)中に埋設された1つ又は複数の補強要素(R)を含む、動力伝達ベルト(P)に関する。ベルトは、- ベルト(P)によって発現される1~10%伸びの範囲内の最大接線係数MP2と、ベルト(P)によって発現される1%伸びにおける接線係数MP1との比、MP2/MP1が、2.00以上であり、- ベルト(P)の幅にわたってベルト(P)によって発現される2%伸びにおける力が、120.0daN/cm以下である。ベルト(P)は、ポリマー性組成物(20)中に1つ又は複数の補強要素(R)を埋設するステップ、続いて硬化させてベルト(P)を形成するステップを含み、補強要素(R)が、- 補強要素(R)によって発現される1~10%伸びの範囲内の最大接線係数MR2と、補強要素(R)によって発現される1%伸びにおける接線係数MR1との比、MR2/MR1が、2.00以上であり、- 補強要素の直径にわたって補強要素(R)によって発現される2%伸びにおける力が、厳密に11.0daN/mm未満である、方法によって得られる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー性組成物(20)中に埋設された1つ又は複数の補強要素(R)を含む動力伝達ベルト(P)において、
ベルト(P)によって発現される1~10%伸びの範囲内の最大接線係数MP2と、ベルト(P)によって発現される1%伸びにおける接線係数MP1との比、MP2/MP1が、2.00以上であり、
ベルト(P)の幅にわたってベルト(P)によって発現される2%伸びにおける力が、120.0daN/cm以下であり、
ベルト(P)が、ポリマー性組成物(20)中に1つ又は複数の補強要素(R)を埋設するステップ、続いて硬化させてベルト(P)を形成するステップを含み、補強要素(R)が、
補強要素(R)によって発現される1~10%伸びの範囲内の最大接線係数MR2と、補強要素(R)によって発現される1%伸びにおける接線係数MR1との比、MR2/MR1が、2.00以上であり、
補強要素の直径にわたって補強要素(R)によって発現される2%伸びにおける力が、厳密に11.0daN/mm未満である、
方法によって得られることを特徴とする、ベルト(P)。
【請求項2】
ベルト(P)の幅にわたってベルト(P)によって発現される2%伸びにおける力が、100.0daN/cm以下、好ましくは80.0daN/cm以下である、請求項1に記載のベルト(P)。
【請求項3】
各補強要素(R)が、芳香族ポリアミド又は芳香族コポリアミドの少なくとも1本のマルチフィラメントストランドと、脂肪族ポリアミド又はポリエステルの少なくとも1本のマルチフィラメントストランドとを含む集合を含む、請求項1又は2に記載のベルト(P)。
【請求項4】
比MR2/MR1が、2.50以上、好ましくは3.00以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載のベルト(P)。
【請求項5】
比MR2/MR1が、20.00以下、好ましくは15.00以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載のベルト(P)。
【請求項6】
補強要素(R)の直径にわたって補強要素(R)によって発現される2%伸びにおける力が、8.0daN/mm以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載のベルト(P)。
【請求項7】
補強要素(R)の直径にわたって補強要素(R)によって発現される2%伸びにおける力が、0.50daN/mm以上、好ましくは1.00daN/mm以上である、請求項1~6のいずれか1項に記載のベルト(P)。
【請求項8】
ベルト(P)が、摩擦式動力伝達ベルトである,請求項1~7のいずれか1項に記載のベルト(P)。
【請求項9】
補強要素(R)の直径が、2.00mm以下、好ましくは1.00mm以下、より好ましくは0.50mm以下である、請求項1~8のいずれか1項に記載のベルト(P)。
【請求項10】
各補強要素(R)が、芳香族ポリアミド又は芳香族コポリアミドの単一のマルチフィラメントストランドと、脂肪族ポリアミド又はポリエステルの単一のマルチフィラメントストランドとで構成された集合を含み、ストランドが、互いの周りにらせん状に一緒に巻きつけられている、請求項1~9のいずれか1項に記載のベルト(P)。
【請求項11】
各補強要素(R)が、芳香族ポリアミド又は芳香族コポリアミドの2本のマルチフィラメントストランドと、脂肪族ポリアミド又はポリエステルの単一のマルチフィラメントストランドとで構成された集合を含み、ストランドが、層を形成するように、らせん状に一緒に巻きつけられている、請求項1~9のいずれか1項に記載のベルト(P)。
【請求項12】
ベルト(P)中の補強要素(R)の密度が、1デシメートルのベルト(P)当たり96~250本の補強要素、好ましくは1デシメートルのベルト(P)当たり140~220本の補強要素の範囲内である、請求項1~11のいずれか1項に記載のベルト(P)。
【請求項13】
ポリマー性組成物が、ポリウレタン型組成物である、請求項1~12のいずれか1項に記載のベルト(P)。
【請求項14】
補強要素(R)が、ベルト(P)の方向(Y)に垂直な方向(X)に、最終的なZ撚りとS撚りとで交互に配列されている、請求項1~13のいずれか1項に記載のベルト(P)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、動力伝達ベルトの分野、特に摩擦によって駆動される動力伝達ベルトの分野である。
【背景技術】
【0002】
Twaron 2100の商品名で公知であるアラミドの3本の168texマルチフィラメントストランドと、Enka Nylonの商品名で公知であるナイロン6,6の1本の94texマルチフィラメントストランドとの集合を含む補強要素を含むベルトプライを含む動力伝達ベルトは、先行技術、特にWO97/06297号から公知である。この補強要素の直径は0.85mmであり、補強要素の直径にわたってベルトプライによって発現される2%伸びにおける力は、12.0daN/mmである。
しかしながら、取り付けが容易な、すなわち、低い負荷のもとで十分な伸びを呈するベルトプライを有することは、ベルトに設置できるためには望ましく、プライが稼働中であるときは、滑りが低くクリープが低減した、トルク伝達の観点で良好な性能を呈することが望ましい。
角度を付けたベルトプライのスタックを含む、低い初期弾性率による弾性挙動を有するベルトを記載している米国特許出願公開第20030171181号の出願も、先行技術において公知である。これらは、次の欠点を有する:製造中にベルトプライを切断、配向及びスタックしなければならず、製造されれば、切断された補強要素がベルトの端部と同一平面にあり、ベルトの稼働耐久性という問題が生じている。
【発明の概要】
【0003】
本発明の目的は、取り付けが容易であるが、耐久性の面でトルク伝達の観点で良好な性能を呈するベルトを得ることである。
本発明の主題は、ポリマー性組成物中に埋設された1つ又は複数の補強要素を含む、動力伝達ベルトである。ベルトは、
- ベルトによって発現される1~10%伸びの範囲内の最大接線係数MP2と、ベルトによって発現される1%伸びにおける接線係数MP1との比、MP2/MP1が、2.00以上であり、
- ベルトの幅にわたってベルトによって発現される2%伸びにおける力が、120.0daN/cm以下である。
【発明を実施するための形態】
【0004】
動力伝達ベルトは、閉じたベルト又は開いたベルトとして理解される。ベルトは、好ましくはプーリとともに、ときとして張力調整システム、例えば、テンショナーローラ又はプーリの置換物とともに使用される。閉じた、すなわち連続型ベルトは、実質的に固定のサイズを有するプーリシステムにおいて使用でき、開いたベルト(すなわちエンドレスベルト)は、切断し、システムのサイズに適合させること、並びに熱の効果及び/又はコネクタの付加によって溶接、再付着させることによって使用できる。四角形、台形(「Vベルト」)、六角形又は円環状断面の平型摩擦式動力伝達ベルトが存在し、対にし、又は長さ方向に線条を付け、これによってプーリとベルトとの間の接触面積が非常に増大し、歯がプーリをグリップすることによって機能する、台形摩擦式動力伝達ベルト(「リブドVベルト」)も存在する。横方向に線条を付けた摩擦式動力伝達ベルトも存在し、これによって、ベルトが曲がることによるエネルギーの放散が限定される(「コグドベルト」)。ベルトは、歯付きであってもよい。歯付きベルトとは、グリップによるのではなく、噛み合いによって伝達を確保する、歯のあるベルトである。
好ましくは、動力伝達ベルトは弾性ベルトであり、そのため、低い初期弾性係数を有する。これらのベルトは取り付けが、ときとして手作業でも、容易である。これらのベルトは、しばしば張力調整システムを有せず、そのため、実装が比較的単純である。ベルトの長さ及び張力調整システムの複雑さに応じて、0.5~6%、大多数の場合は1から3%の間だけ、弾性ベルトを伸ばすことが必要である。2%伸びにおいてベルトによって発現される張力は、ベルトをプーリの溝に容易に配置するための能力の代表である。
【0005】
この使用に限定するものではないが、これらのベルトは、固定の距離に配置されたプーリを有する駆動システムに特に関係する。
補強要素とは、この補強要素を埋設することが意図されるマトリックスを、機械的に補強するための要素であると理解される。
本発明の記載では、別段の明白な指示がない限り、「aからbの間」という表現によって表されるあらゆる値の範囲は、「a」超から「b」未満の値の範囲を表し(すなわち、極限a及びbは除外される)、一方で、「a~b」という表現によって表されるあらゆる値の範囲は、「a」から「b」まで値の範囲を意味する(すなわち、厳密な極限a及びbを含む)。
本記載において言及される化合物は、化石由来であっても、バイオベースであってもよい。後者の場合、これらは部分的に又は全体的に、バイオマスから生じてよく、又はバイオマスに由来する再生可能な原材料から得ることができる。同様に、言及される化合物は、既に使用された材料の再利用から生じてもよく、これは、化合物が部分的に又は全体的に、再利用プロセスから生じてもよく、それ自体が再利用プロセスから生じた原材料から得られてもよい。ストランド、フィラメント、ポリマー、可塑剤、充填材等は、特に関係がある。
【0006】
図5は、2016年の標準ASTM D 378を適用した、本発明によるベルトの力/幅-伸び曲線を示す。この標準に、次の修正を適用する:試験機は、試験するベルトに適合する、25.4mmの直径を有する2つのプーリを備え、ベルトの噛み合い部を差し込まず、使用する引張速度は50.8mm/分である。
補強要素によって発現される1~10%伸びの範囲内の最大接線係数MP2は、2016年の標準ASTM D 378を適用することによって得た力/幅-伸び曲線から得られる、1%~10%伸びにおける力-伸び曲線の導関数を計算することから得られる、最大接線係数であると理解される。
補強要素によって発現される1%伸びにおける接線係数MP1は、2016年の標準ASTM D 378を適用することによって得た力/幅-伸び曲線の、1%伸びにおける導関数を計算することから得られる、接線係数であると理解される。
ベルトによって発現される2%伸びにおける力は、力/幅-伸び曲線から得られる2%において測定される力であり、この同じ曲線の2%横座標点に、2016年の標準ASTM D 378を適用することによって得られる、力であると理解される。
【0007】
ベルトによって発現される1~10%伸びの範囲内の最大接線係数MP2と、ベルトによって発現される1%伸びにおける接線係数MP1との比の、本発明による範囲は、駆動トルクの伝達を可能にする、ベルトの伸張中の稼働ドメインに対応する。動力伝達の増加時は、ベルトとプーリとの間の滑りによって、伝達効率の低下が生じる。出願人は、この範囲内で規定される二弾性率挙動によって、同じ動力伝達による滑りがより少なかったことを観測した。さらに、経時的に、先行技術の弾性ベルトは、クリープを起こす、すなわち、不可逆的に可塑的に伸びて、稼働可能でなくなる傾向にある。出願人は、上に規定した範囲内の顕著な二弾性率挙動の場合、クリープが非常に限定的となり、これによって、ベルトのより長い稼働寿命が確保されることを観測した。経時的に、このクリープによって、弾性ベルトにおける張力の損失が生じることがある。2.0以上の比MP2/MP1によって表される、上に規定した範囲内のこの二弾性率挙動によって、高いトルク伝達を有するベルトプライにおけるクリープを低減することができる。
ベルトの幅にわたってベルトによって発現される2%伸びにおける力は、その良好な取り付け性に必要な力である。
有利には、ベルトの幅にわたってベルトによって発現される2%伸びにおける力は、100.0daN/cm以下、好ましくは80.0daN/cm以下である。
【0008】
本発明によれば、動力伝達ベルトは、ポリマー性組成物中に1つ又は複数の補強要素を埋設するステップ、続いて硬化させてベルトを形成するステップを含み、補強要素が、
- 補強要素によって発現される1~10%伸びの範囲内の最大接線係数MR2と、補強要素によって発現される1%伸びにおける接線係数MR1との比、MR2/MR1が、2.00以上であり、
- 補強要素の直径にわたって補強要素によって発現される2%伸びにおける力が、厳密に11.0daN/mm未満である、
方法によって得られる。
図4は、先行技術の補強要素と、本発明による補強要素との力-伸び曲線を示す。この曲線は、取り付け中、わずかに負荷をかけた、すなわち、小さな変形(0から2%の間の伸び)に供した場合と、稼働中の最大負荷、すなわち、1から10%の間の伸びに供した場合とに、ベルトに起こることを表す。
【0009】
補強要素によって発現される1~10%伸びの範囲内の最大接線係数MR2は、補強要素に対する0.5cN/texの標準引張予備負荷後、2014年の標準ASTM D 885/D 885M-10aを適用することによって得た力-伸び曲線から得られる、1%~10%伸びにおける力-伸び曲線の導関数を計算することから得られる、最大接線係数であると理解される。
補強要素によって発現される1%伸びにおける接線係数MR1は、補強要素に対する0.5cN/texの標準引張予備負荷後、2014年の標準ASTM D 885/D 885M-10aを適用することによって得た力-伸び曲線から得られる、1%伸びにおける力-伸び曲線の導関数を計算することから得られる、接線係数であると理解される。
補強要素の場合、接線係数は、ベルトプライに補強要素を埋設するステップの前に直接測定され、すなわち、最終形成ステップ(撚り又は熱処理)と、ポリマー性組成物中に埋設するステップとの間に行われた、接線係数の特性を変化させるあらゆる他のステップを伴わない。
補強要素によって発現される2%伸びにおける力は、2014年の標準ASTM D 885/D 885M-10aの条件下で得られる力-伸び曲線から、この同じ曲線の2%横座標点において得られ、補強要素に対する0.5cN/texの標準引張予備負荷の直後に行う、2%において測定される力であると理解される。
【0010】
定義により、補強要素の直径とは、内側に補強要素が外接する最小の円の直径である。
補強要素によって発現される1~10%伸びの範囲内の最大接線係数MR2と、補強要素によって発現される1%伸びにおける接線係数MR1との比の、本発明による範囲は、駆動トルクの伝達を可能にする、ベルトのストランドの伸張中の稼働ドメインに対応する。動力伝達の増加時は、ベルトとプーリとの間の滑りによって、伝達効率の低下が生じる。出願人は、この範囲内で規定される二弾性率挙動によって、同じ動力伝達による滑りがより少なかったことを観測した。さらに、経時的に、先行技術の弾性ベルトは、クリープを起こす、すなわち、不可逆的に可塑的に伸びて、稼働可能でなくなる傾向にある。出願人は、上に規定した範囲内の顕著な二弾性率挙動の場合、クリープが非常に限定的となり、これによって、ベルトのより長い稼働寿命が確保されることを観測した。経時的に、このクリープによって、弾性ベルトにおける張力の損失が生じることがある。2以上の比MR2/MR1によって表される、上に規定した範囲内のこの二弾性率挙動によって、高いトルク伝達を有するベルトプライにおけるクリープを低減することができる。
補強要素の幅にわたって補強要素によって発現される2%伸びにおける力は、ベルトの良好な取り付け性に必要な力である。
【0011】
有利には、ベルトは、複数の補強要素を含む重合体20で構成された、単一のベルトプライを含む。補強要素は、ベルトプライの補強要素が延在する全体的方向Yに実質的に垂直な、長手方向Xに互いに平行に並んで配列されている。
したがって、ベルトの製造は、単一のベルトプライと、実質的に0度において2通りの弾性挙動を有する補強材とによって、より容易となる。
有利には、各補強要素は、芳香族ポリアミド又は芳香族コポリアミドの少なくとも1本のマルチフィラメントストランドと、脂肪族ポリアミド又はポリエステルの少なくとも1本のマルチフィラメントストランドとを含む集合を含む。
芳香族ポリアミド又は芳香族コポリアミドの少なくとも1本のマルチフィラメントストランドと、脂肪族ポリアミド又はポリエステルの少なくとも1本のマルチフィラメントストランドとの集合を含む、混成補強要素を使用することの1つの効果は、二弾性率曲線、すなわち、小さな変形においては相対的に低い弾性率と、大きな変形においては相対的に高い弾性率とを有する曲線が得られることである。具体的には、ベルトプライは、小さな変形においては、この例では脂肪族ポリアミドのストランドの弾性率によって制御される、相対的に低い弾性率を有し、良好な取り付け性が可能になる。さらに、ベルトの補強要素は、大きな変形においては、この例では芳香族ポリアミド又は芳香族コポリアミドのストランドの弾性率によって制御される、相対的に高い弾性率を呈し、滑りを回避することが可能になり、高負荷のもとでトルクを良好に伝達できる。
【0012】
芳香族ポリアミド又は芳香族コポリアミドのマルチフィラメントストランドに関して、周知の通り、これは、その少なくとも85%が、2つの芳香環に直接接続しているアミド結合によって繋がった芳香族基で形成される直鎖状高分子の、より特定的にはポリ(p-フェニレンテレフタルアミド)(又はPPTA)で構成された繊維のフィラメントであり、非常に長い間、光学的に異方体の紡糸組成物から製造されていることが想起される。芳香族ポリアミド又は芳香族コポリアミドの中でも、ポリアリールアミド(若しくはPAA、Solvay社の商品名lxefによって特に公知である)、ポリ(メタキシリレンアジポアミド)、ポリフタルアミド(若しくはPPA、Solvay社の商品名Amodelによって特に公知である)、又はパラ-アラミド(若しくはポリ(パラフェニレンテレフタルアミド若しくはPA PPD-T、Du Pont de Nemours社の商品名Kevlar若しくは帝人社の商品名Twaronによって特に公知である)を挙げることができる。
脂肪族ポリアミドのマルチフィラメントストランドは、アミド官能基を含有し、芳香環を有せず、カルボン酸とアミンとの間の縮合重合によって合成できるポリマー又はコポリマーの直鎖状高分子のフィラメントであると理解される。脂肪族ポリアミドの中でも、ナイロンPA4.6、PA6、PA6.6又はPA6.10、特にDuPont社製のZytel、Solvay社製のTechnyl又はArkema社製のRilsamidを挙げることができる。
【0013】
ポリエステルのマルチフィラメントストランドに関して、これは、エステル結合によって繋がった基で形成された直鎖状高分子のフィラメントであることが想起される。ポリエステルは、ジカルボン酸又はその誘導体の1種と、ジオールとの間のエステル化による、縮合重合によって製造される。例えば、ポリエチレンテレフタレートは、テレフタル酸とエチレングリコールとの縮合重合によって製造することができる。公知のポリエステルの中でも、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリプロピレンテレフタレート(PPT)又はポリプロピレンナフタレート(PPN)を挙げることができる。
有利には、比MR2/MR1は、2.50以上、好ましくは3.00以上である。
有利には、比MR2/MR1は、20.00以下、好ましくは15.00以下である。
有利には、補強要素(R)の直径にわたって補強要素(R)によって発現される2%伸びにおける力は、8.0daN/mm以下である。
【0014】
有利には、補強要素(R)の直径にわたって補強要素(R)によって発現される2%伸びにおける力は、0.50daN/mm以上、好ましくは1.00daN/mm以上である。
有利には、ベルトは、摩擦式動力伝達ベルトである。
有利には、補強要素の直径は、2.00mm以下、好ましくは1.00mm以下、より好ましくは0.50mm以下である。
第1の実施形態では、各補強要素は、芳香族ポリアミド又は芳香族コポリアミドの単一のマルチフィラメントストランドと、脂肪族ポリアミド又はポリエステルの単一のマルチフィラメントストランドとで構成された集合を含み、ストランドは、互いの周りにらせん状に一緒に巻きつけられている。
有利には、各カーカス補強要素は撚り平衡である。
芳香族ポリアミド又は芳香族コポリアミドのマルチフィラメントストランドと、脂肪族ポリアミド又はポリエステルのマルチフィラメントストランドとは、一緒に集合しており、互いの周りにらせん状に巻きつけられている。
【0015】
第2の実施形態では、各補強要素は、芳香族ポリアミド又は芳香族コポリアミドの2本のマルチフィラメントストランドと、脂肪族ポリアミド又はポリエステルの単一のマルチフィラメントストランドとで構成された集合を含み、ストランドは、層を形成するように、らせん状に一緒に巻きつけられている。
「構成された集合」という表現は、集合が、芳香族ポリアミド又は芳香族コポリアミドの2本のマルチフィラメントストランドと、脂肪族ポリアミドのマルチフィラメントストランドと以外のマルチフィラメントストランドを含まないことを意味するものと理解される。
有利には、各カーカス補強要素は撚り平衡である。
以下の特色は、2つの上記実施形態に適用される。
「構成された集合」という表現は、集合が、芳香族ポリアミド若しくは芳香族コポリアミドの2本のマルチフィラメントストランド、又はポリエステルのマルチフィラメントストランド以外のマルチフィラメントストランドを含まないことを意味するものと理解される。
【0016】
本発明の2つの実施形態における「撚り平衡」という表現は、マルチフィラメントストランドが、実質的に同一の撚りで巻きつけられ、最終的な集合における各マルチフィラメントストランドのモノフィラメントの撚りが、実質的にゼロであることを意味するものとして理解される。具体的には、これらのカーカス補強要素を製造するための方法は、先行技術において周知であり、モノフィラメントの各紡績糸(より適切には「ヤーン」と称する)をまず、所与の方向D’=D1’=D2’=D3’(認められている術語によれば、それぞれS又はZ方向であり、S又はZの横棒と比較した回転の方向を表す)に、個々にそれ自体で撚り(初期撚りR1’、R2’、R3’を有し、R1’=R2’=R3’である)、モノフィラメンが変形して、ストランドの軸の周りにらせん状になった、ストランド又は撚り強(より適切には「ストランド」と称する)を形成する、第1のステップを含む。次に、第2のステップ中、補強要素(より適切には「コード」と称する)を得るために、ストランド同士を続いて一緒に、方向D’=D1’=D2’=D3’(それぞれZ又はS方向)とは反対である方向D4に、R4=R1’=R2’=R3’となるように、最終撚りR4に撚る。この補強要素は、このとき、撚り平衡であると言われる。R4=R1’=R2’=R3’であり、方向D’=D1’=D2’=D3’は方向D4と反対であるため、R1’=R2’=R3’であり、この残留撚りはゼロ又は実質的にゼロであるため、ストランドのモノフィラメントが、最終的な補強要素において、同じ残留撚りを呈するためである。「実質的にゼロの残留撚り」という表現は、残留撚りが、厳密に撚りR4の2.5%未満であることを意味すると理解される。
【0017】
好ましくは、芳香族ポリアミド又は芳香族コポリアミドのマルチフィラメントストランドの番手は、10tex以上、好ましくは20tex以上である。
好ましくは、芳香族ポリアミド又は芳香族コポリアミドのマルチフィラメントストランドの番手は、100tex以下、好ましくは80tex以下、より好ましくは60tex以下である。
好ましくは、脂肪族ポリアミド又はポリエステルのマルチフィラメントストランドの番手は、10tex以上、好ましくは20tex以上である。
好ましくは、脂肪族ポリアミド又はポリエステルのマルチフィラメントストランドの番手は、100tex以下、好ましくは80tex以下、より好ましくは60tex以下である。
各ストランドの番手(又は線密度)は、標準ASTM D1423に準拠して決定される。番手は、texで与えられる(備忘のため記すと、製品の1000mの質量(グラム):0.111texは1デニールに等しい)。
有利には、補強要素の各マルチフィラメントストランドの撚りは、1メートル当たり200~700回転、好ましくは1メートル当たり250~650回転の範囲内である。
【0018】
補強要素の撚りは、当業者に公知の任意の方法を使用して、例えば、2014年の標準ASTM D 885/D 885M-10aに準拠して決定することができる。
有利には、ベルト中の補強要素の密度は、1デシメートルのベルト当たり96~250本の補強要素、好ましくは1デシメートルのベルト当たり140~220本の補強要素の範囲内である。
ベルトプライ中の補強要素の密度とは、補強要素が互いに平行に延在する方向(Y)に垂直な方向(X)において、1デシメートルのベルトプライに含まれる補強要素の数である。
ベルトプライの製造を可能にしながら、補強材を効率的に使用するために、補強要素同士の間の端から端の距離は、典型的には、補強要素の直径の10~50%の値を表す。直径の30%という典型的な値では、補強要素の直径が0.3~0.8mmの範囲内の場合、ベルトプライは、1デシメートル当たり96~250スレッドの密度を有して、製造され、動力伝達ベルトに使用することができる。当業者は、製造上の制約(ポリマー性組成物の粘度)又は使用条件に準拠して、この値を設定することができる。
好ましくは、ポリマー性組成物は、ポリウレタン型組成物である。
【0019】
当業者には馴染みの通り、ポリウレタン型組成物は、ジアミン又はジオールによって硬化するジイソシアネート末端プレポリマーからなり、他のポリマー性ジオール又はジアミンによって増量することができる。硬化触媒、可塑剤、帯電防止剤、着色剤及び充填材を含めて、様々な特性を与えるために他の添加剤が含まれてもよく、このリストは限定するものではない。
有利には、補強要素は、ベルトの方向(Y)に垂直な方向(X)に、最終的なZ撚りとS撚りとで交互に配列されている。
第1の代替形態では、ベルトは、台形、長手方向若しくは横方向の線条若しくはリブを有する台形、円形、半円形、長円、四角形型又はその形状の組み合わせの外面の外形を有する、連続型の形状を有する。
第2の代替形態では、ベルトは、四角形、台形、長手方向若しくは横方向の線条若しくはリブを有する台形、円形、半円形、長円又はその形状の組み合わせの外面の外形を有する、溶接されたエンドレス型の形状を有する。
半円形又は四角形の形状を有する本発明による動力伝達ベルトは、特に、
図6に図示されるように描かれる。
本発明は、以下の記載を考慮し、図面を参照してより良好に理解されるが、以下の記載は、もっぱら非限定例として与えるものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明による動力伝達ベルトPを描写した図である。
【
図4】先行技術のベルトの補強要素EC、並びに本発明によるベルトの補強要素R1、R3、R4及びR5の力-伸び曲線を図示したグラフである。
【
図5】本発明によるベルトP4の力-伸び曲線を図示したグラフである。
【
図6】本発明による他の動力伝達ベルトを描写した図である。
【実施例】
【0021】
本発明によるベルトP4の実施例
図1は、台形型の外面の外形を有する、連続型の本発明による動力伝達ベルトPを示す。動力伝達ベルトPは、回転において任意の部材を駆動することが意図される。動力伝達ベルトPは、ベルトプライを形成するための、補強要素Rが埋設されている、ポリウレタンマトリックスから作製された重合体20を含む。動力伝達ベルトPはまた、重合体20と接触している、同様にポリウレタンで作製された機械的駆動層22を含む。機械的駆動層22は複数のリブ24を備え、その各々は、ベルトPの長手方向Xに実質的に垂直な、全体的方向Yに延在する。各リブ24は、断面に台形の形状を有する。リブ24の全体的方向は、実質的に互いに平衡である。リブ24は、ベルトPの長さ全体にわたって延在する。これらのリブ24は、例えば、ベルトを取り付けることが意図されるプーリが有する、相補的な形状の溝又はスロットに係合することが意図される。
この場合、ベルトPは、補強要素R4を有するベルトP4である。
図1からの重合体20を、ここで、
図2を参照して記載する。ベルトPは、
図2に図示される通り、複数の補強要素R4を含む重合体20で構成された、単一のベルトプライN4を含む。
【0022】
重合体20は、複数の補強要素R4を含む。補強要素は、ベルトプライのこれらの補強要素が延在する全体的方向Yに実質的に垂直な、長手方向Xに互いに平行に並んで配列されている。
動力伝達ベルトP4は、ベルトP4によって発現される1~10%伸びの範囲内の最大接線係数MP2と、ベルトP4によって発現される1%伸びにおける接線係数MP1との比、MP2/MP1が、2.00以上であり、この場合、MP2/MP1=3.5であり、ベルトP4の幅にわたってベルトP4によって発現される2%伸びにおける力は、120.0daN/cm以下、好ましくは100.0daN/cm以下、よりいっそう好ましくは80.0daN/cm以下であり、この場合、2%におけるF=74.7daN/cmである。
ベルト補強要素R4及び対応する集合を、以下に記載する。
【0023】
補強要素のストランドの性質
図2に模式的に示す通り、補強要素R4は、芳香族ポリアミド又は芳香族コポリアミドのマルチフィラメントストランドと、脂肪族ポリアミドのマルチフィラメントストランドとで構成された集合を含み、2本のストランドは、らせん状に一緒に巻きつけられている。ベルト補強要素P4は、撚り平衡である。
選択される芳香族ポリアミドは、この場合、好ましくは、帝人社の商品名Twaron 1000又はTwaron 2040によって公知であるパラ-アラミドである。
脂肪族ポリアミドは、Nexis社の商品名TYP632 470f68によって公知であるナイロンである。
【0024】
補強要素R4の番手
補強要素において、芳香族ポリアミド又は芳香族コポリアミドのストランドの番手は、10tex以上、好ましくは20tex以上であり、100tex以下、好ましくは80tex以下、より好ましくは60tex以下である。この場合、アラミドのストランドの番手は、55texに等しい。
補強要素において、脂肪族ポリアミドのストランドの番手は、20tex以上、好ましくは30tex以上、より好ましくは40tex以上であり、100tex以下、好ましくは80tex以下、より好ましくは60tex以下である。この場合、ナイロンのストランドの番手は、47texに等しい。
補強要素R4の撚り
補強要素R4において、補強要素の各マルチフィラメントストランドの撚りは、1メートル当たり240~700回転、好ましくは1メートル当たり250~650回転の範囲内である。この例では、補強要素R4の各マルチフィラメントストランドの撚りは、1メートル当たり350回転に等しい。
補強要素R4の直径は、2.00mm以下、好ましくは1.00mm以下、より好ましくは0.60mm以下である。この場合、補強要素R4は、D=0.43mmの直径を有する。
【0025】
補強材R4の力-伸び曲線
補強要素R4によって発現される1~10%伸びの範囲内の最大接線係数MP2と、補強要素R4によって発現される1%伸びにおける接線係数MP1との比、MP2/MP1は、2.00以上、好ましくは2.50以上、より好ましくは3.00以上であり、この比MP2/MP1は、20.00以下、好ましくは15.00以下である。この場合、MP2/MP1=9.3である。
補強要素の直径にわたって補強要素R4によって発現される2%伸びにおける力は、厳密に11.00daN/mm未満、好ましくは8.00daN/mm以下であり、この力は、0.50daN/mm以上、好ましくは1.00daN/mm以上である。この場合、補強要素の直径にわたって補強要素R4によって発現される2%伸びにおける力は、2.3daN/mmに等しい。
ベルトプライN4の外形の特色
ベルトP4中の補強要素R4の密度は、1デシメートルのベルトP4当たり96~250本の補強要素、好ましくは1デシメートルのベルトP4当たり140~220本の補強要素の範囲内である。この場合、補強要素R4の密度は、1デシメートルのベルトP4当たり179本の補強要素R4に等しい。
【0026】
補強要素R4を製造するための方法
上記の通り、補強要素R4は撚り平衡であり、すなわち、2本のマルチフィラメントストランドは、実質的に同一の撚りで巻きつけられており、各マルチフィラメントストランド中のモノフィラメントの撚りは、実質的にゼロである。一実施形態では、第1のステップにおいて、モノフィラメントの各紡績糸(より適切には「ヤーン」と称する)をまず、1メートル当たり350回の撚りに等しい初期撚りで、所与の方向に、この場合はZ方向に、個々にそれ自体で撚って、ストランド又は撚り強(より適切には「ストランド」と称する)を形成する。次に、第2のステップ中、補強要素の集合(より適切には「コード」と称する)を得るために、2本のストランド同士を続いて一緒に、S方向に1メートル当たり350回転に等しい最終撚りに撚る。
別の実施形態では、第1のステップにおいて、モノフィラメントの各紡績糸をまず、1メートル当たり350回転に等しい初期撚りで、所与の方向に、この場合はS方向に、個々にそれ自体で撚って、ストランド又は撚り強を形成する。次に、第2のステップ中、補強要素の集合を得るために、2本のストランド同士を続いて一緒に、Z方向に1メートル当たり350回転に等しい最終撚りに撚る。
【0027】
本発明によるベルトを製造するための方法
ベルトを製造するための方法は、当業者によって従来使用される方法である。
ベルトP4は、型内で、S及びZ方向に集合した補強要素の介在を上記の通りにして、複数の補強要素R4をポリマー性組成物中に埋設することによって製造される。埋設するステップ中、補強要素は、ポリマー性組成物中、例えばポリウレタン中に埋設される。最後に、ベルトP4を得るために、このようにして得た未処理形成物を架橋させる。
測定及び比較試験
比較例として、それぞれ、包括参照PEDT及びPCと表す、先行技術の2種のベルトを採用した。3種の対照ベルトC1、C2及びC3も使用した。
対照ベルトC1、C2及びC3、先行技術のベルト(PEDT及びPC)、並びに本発明によるベルトP1~P6の外形の特色を、下の表1及び2にまとめる。
【0028】
下の表1及び2には、ベルトをプーリに取り付けられるように、ベルトの取り付け性の結果、すなわち、低負荷のもとでの伸びも示す。
NCという用語は、これらの様々なベルトにおいて、測定値が取得されなかったことを意味する。
【表1】
【0029】
【0030】
ベルトの比較
ベルトの比較分析を行うため、
図3に図示されるように、機械において引張試験を行う。これらの試験の原理は、2つのプーリを介してベルトを駆動し、一方が駆動トルクを有し、他方が制動トルクを有することである。伝達されるトルクは、これらの2つのトルクの間の差であり、滑りは、これら2つのプーリの回転速度における差である。異なる試験を、1750rpmの回転速度において行った。
引張試験の3種の変形を行った。
- プーリを互いに対して自由に運動させ、試験中、課された22.7kgの引張予備負荷PTを固定されたままにする、第1の変形。この場合、100時間の間、2.71N.mのトルクを課すことによって、プーリの位置の経時的な変動、したがってベルトの伸び(%)をモニタリングすることができる。
- 最初に22.7kgの引張予備負荷PTを課し、プーリを固定して保たれた距離にする、第2の変形。結果として、100時間の間、ベルトに2.71N.mの固定トルクを課すことによって、引張予備負荷PT(%)と比較した、ベルトにおける経時的な張力の減少をモニタリングすることができる。
- 互いに対して自由に運動するプーリの構成において、第3の変形を最後に行った。22.7kgの引張予備負荷を課し、2.71N.mから7.45N.mの間のトルクの変動を課した。滑り、すなわち、駆動プーリと制動プーリとの間の回転速度における変動を測定した。従来の稼働条件下では、滑りは、5%未満、好ましくは3%未満である。
【0031】
結果を下の表3に集約する。
固定プーリによる、試験したベルトにおける試験中の張力の減少への耐性を、表3に示す。張力の減少への良好な耐性は、100秒から400000秒の間の張力損失の百分率を測定することにより、ある時点において起こりうる最低値によって示される。10000秒から400000秒の間に課された張力及び可動プーリによる、試験中のクリープ、すなわち伸びへの耐性も、この表において示される。
同様に、5%及び10%未満の滑りを得るための最大許容トルクがそれぞれ示され、駆動プーリと制動プーリとの間のトルクの良好な伝達は、起こりうる最高値によって示される。
【0032】
【0033】
これらの結果は、本発明によるベルトP4及びP5が、先行技術のベルトNC及び対照ベルトC3を超える、張力の減少への耐性と、さらに、先行技術のベルトNCと比較して有意に良好なクリープへの耐性との両方を呈することを示している。ベルトP4及びP5はまた、所与のレベルの滑り(5%又は10%)について有意なトルクを伝達する、より高い能力を呈する。
そのため、本発明によるベルトは、非常に良好な張力の減少への耐性、改善されたクリープへの耐性、及び改善された機械的トルクを伝達する能力を呈する。
【0034】
したがって、上の結果が示す通り、本発明は明らかに、ポリマー性組成物中に埋設された1つ又は複数の補強要素を含む、動力伝達ベルトにある。ベルトは、
- ベルトによって発現される1~10%伸びの範囲内の最大接線係数MP2と、ベルトによって発現される1%伸びにおける接線係数MP1との比、MP2/MP1が、2.00以上であり、
- ベルトの幅にわたってベルト(P)によって発現される2%伸びにおける力が、120.0daN/cm以下である。
本発明は、上記実施形態に限定されない。
異なる実施形態及び上記の又は上で想定される変形の特色は、これらが互いに適合性であり、本発明に準拠している限り、組み合わせることもできる。
【国際調査報告】