(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-17
(54)【発明の名称】CD55に対する新規抗体及びその用途
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20240110BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20240110BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20240110BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240110BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240110BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20240110BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240110BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240110BHJP
A61K 31/506 20060101ALI20240110BHJP
A61K 31/5377 20060101ALI20240110BHJP
C12P 21/08 20060101ALN20240110BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C07K16/28
C07K16/46
A61P35/00
A61K39/395 E
A61K39/395 T
A61K47/68
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K31/506
A61K31/5377
C12P21/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023541074
(86)(22)【出願日】2022-01-12
(85)【翻訳文提出日】2023-07-05
(86)【国際出願番号】 KR2022000551
(87)【国際公開番号】W WO2022154472
(87)【国際公開日】2022-07-21
(31)【優先権主張番号】10-2021-0004196
(32)【優先日】2021-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0001356
(32)【優先日】2022-01-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521302906
【氏名又は名称】エスジー メディカル インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】510273880
【氏名又は名称】コリア ユニバーシティ リサーチ アンド ビジネス ファウンデーション
【氏名又は名称原語表記】KOREA UNIVERSITY RESEARCH AND BUSINESS FOUNDATION
(71)【出願人】
【識別番号】597060645
【氏名又は名称】コリア アトミック エナジー リサーチ インスティテュート
【氏名又は名称原語表記】KOREA ATOMIC ENERGY RESEARCH INSTITUTE
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジ チョル
(72)【発明者】
【氏名】パク,ヘ イン
(72)【発明者】
【氏名】ミン,ソン-ウォン
(72)【発明者】
【氏名】クォン,ヒョン ソン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,サン テク
(72)【発明者】
【氏名】イム,ジェ チョン
(72)【発明者】
【氏名】ド,ソ ヒ
(72)【発明者】
【氏名】チョ,ウン ハ
(72)【発明者】
【氏名】イ,ソ-ヨン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,ソン ヒ
【テーマコード(参考)】
4B064
4C076
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064CE12
4B064DA01
4C076AA95
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4C084NA05
4C084ZB261
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4C084ZC751
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB01
4C085BB11
4C085BB31
4C085BB41
4C085BB43
4C085CC03
4C085CC31
4C085DD62
4C085EE01
4C085EE03
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC50
4C086BC73
4C086GA07
4C086GA08
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4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086ZB26
4C086ZC75
4H045AA11
4H045AA30
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、CD55に特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片;及びこれを含む癌の予防、治療及び/又は診断用組成物に関する。本発明の抗体は、補体免疫メカニズムを抑制し、腫瘍の増殖を促進するCD55タンパク質に対して高い結合力及び抑制力を示すことによって、CD55で媒介される多様な疾患の効率的な治療組成物として利用可能である。また、本発明の抗体は、CD55の過剰発現によってCDC(complement dependent cytotoxicity)を作用メカニズムとする治療剤に対する耐性が誘導された多様な疾患において、薬物の耐性を根本的に除去し、治療反応性を著しく改善する効率的な治療補助剤として有用に利用可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式1で表されるアミノ酸配列を有するHCDR1領域;配列リストの第1配列のアミノ酸配列を有するHCDR2領域;及び下記一般式2で表されるアミノ酸配列を有するHCDR3領域;を含む重鎖可変領域を含む、CD55に特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片:
一般式1
D-R-G-M-X
1;
一般式2
N-A-X
2-A-G-G-W-H-A-A-Y-I-D-A、
前記一般式1におけるX
1は、Ala又はValで、前記一般式2におけるX
2は、Val、Ala、Ile、Leu、Phe及びMetで構成された群から選ばれる。
【請求項2】
前記X
1は、Alaであることを特徴とする、請求項1に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項3】
前記X
2は、Valであることを特徴とする、請求項1に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項4】
前記抗体又はその抗原結合断片は、配列リストの第2配列のアミノ酸配列を有するLCDR1領域;下記一般式3で表されるアミノ酸配列を有するLCDR2領域;及び配列リストの第3配列のアミノ酸配列を有するLCDR3領域;を含む軽鎖可変領域をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の抗体又はその抗原結合断片:
一般式3
W-N-X
3-K-R-P-S、
前記一般式3におけるX
3は、Asn又はAspである。
【請求項5】
前記X
3は、Aspであることを特徴とする、請求項4に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項6】
下記の軽鎖可変領域及び重鎖可変領域を含む、CD55に特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片:
a)配列リストの第4配列の軽鎖可変領域;又は前記配列リストの第4配列の軽鎖可変領域において、32番目のアミノ酸配列であるY(Tyr)のF(Phe)への置換、及び48番目のアミノ酸配列であるD(Asp)のN(Asn)への置換で構成された群から選ばれる1以上の置換を含む軽鎖可変領域、及び
b)配列リストの第5配列の重鎖可変領域;又は前記配列リストの第5配列の重鎖可変領域において、5番目のアミノ酸配列であるV(Val)のA(Ala)への置換、23番目のアミノ酸配列であるA(Ala)のV(Val)への置換、25番目のアミノ酸配列であるS(Ser)のR(Arg)への置換、35番目のアミノ酸配列であるA(Ala)のV(Val)への置換、40番目のアミノ酸配列であるA(Ala)のS(Ser)への置換、68番目のアミノ酸配列であるA(Ala)のT(Thr)への置換、85番目のアミノ酸配列であるS(Ser)のN(Asn)への置換、及び101番目のアミノ酸配列であるG(Gly)のV(Val)、L(Leu)、I(Ile)、F(Phe)、M(Met)又はA(Ala)への置換で構成された群から選ばれる1以上の置換を含む重鎖可変領域。
【請求項7】
前記抗原結合断片は、scFv、Fab断片、F(ab’)断片、F(ab’)2断片又はFv断片であることを特徴とする、請求項1又は請求項6に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項8】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項の抗体又はその抗原結合断片をコーディングする核酸分子。
【請求項9】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項の抗体又はその抗原結合断片を有効成分として含む癌の予防又は治療用薬剤学的組成物。
【請求項10】
前記組成物は、抗CD20抗体及びチロシンキナーゼ抑制剤で構成された群から選ばれる一つ以上の薬理成分をさらに含むことを特徴とする、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記抗CD20抗体は、リツキシマブであることを特徴とする、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記チロシンキナーゼ抑制剤は、イマチニブ及びゲフィチニブで構成された群から選ばれる一つ以上の抑制剤であることを特徴とする、請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
前記癌は、CD55陽性である癌であることを特徴とする、請求項9に記載の組成物。
【請求項14】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項の抗体又はその抗原結合断片を有効成分として含む癌の診断用組成物。
【請求項15】
前記癌は、CD55陽性である癌であることを特徴とする、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項のCD55に特異的に結合する抗体の抗原結合断片、及びCD20に特異的に結合する抗体の抗原結合断片を含む二重特異的抗体又はその機能的断片。
【請求項17】
前記CD20に特異的に結合する抗体は、リツキシマブであることを特徴とする、請求項16に記載の二重特異的抗体又はその機能的断片。
【請求項18】
前記CD55に特異的に結合する抗体の抗原結合断片は、scFvを含むことを特徴とする、請求項16に記載の二重特異的抗体又はその機能的断片。
【請求項19】
前記CD55に特異的に結合する抗体の抗原結合断片は、VL-リンカー-VH-CH2-CH3形態であることを特徴とする、請求項16に記載の二重特異的抗体又はその機能的断片。
【請求項20】
前記CD20に特異的に結合する抗体の抗原結合断片は、Fabを含むことを特徴とする、請求項16に記載の二重特異的抗体又はその機能的断片。
【請求項21】
前記CD20に特異的に結合する抗体の抗原結合断片は、VL-CK-リンカー-VH-CH1-CH2-CH3形態であることを特徴とする、請求項16に記載の二重特異的抗体又はその機能的断片。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CD55を特異的に認識する新規抗体又はその抗原結合断片及びこれを用いた癌の予防、治療及び/又は診断用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
全世界の抗癌剤市場は、過去10年間に年平均10%~13%の成長率を示しており、2022年には総2,000億ドルに達すると予想される。2020年、現在の全世界において、男性は5人のうち1人、女性は6人のうち1人が一生に1回以上の癌発病を経験しており、男性8人のうち1人と女性11人のうち1人が癌で死亡しているほど癌の有病率及び死亡率は持続的に増加している。
【0003】
全世界の抗癌剤市場においては、1世代化学療法を始めとして、2世代標的抗癌剤と3世代免疫抗癌剤までパラダイム転換がなされている。初期の単純な癌の縮小・抑制を目的としていた治療方法から逸脱し、正常に速く分裂する細胞に対する損傷がなく、癌細胞のみを選択的に攻撃する標的抗癌治療技術が活発に研究されており、このような標的抗癌治療技術の開発は、癌細胞を選択的に標的化できるようにする、癌細胞で特異的に発現される受容体の選別、及び受容体と結合する標的化化合物の開発の二つの段階からなる。
【0004】
一方、CD55(Decay-accelerating factor、DAF)は、補体免疫メカニズムを抑制する受容体であって、大腸癌、肺癌、胃癌、乳癌、卵巣癌、白血病、頭頸部癌などの多様な固形癌で高発現し、体内の補体免疫体系が癌細胞を死滅させることを抑制することによって癌細胞の増殖を促進する。したがって、CD55は、標的抗癌治療のターゲット分子として活発に研究されている。
【0005】
特に、CD55が高発現する固形癌では、補体依存性細胞毒性(complement dependent cytotoxicity、CDC)を作用メカニズムとする多様な抗癌剤に対して低い治療反応性を示すので、より高い親和度及び特異性でCD55に結合し、その活性を効率的に抑制できる優れた抗体治療剤の開発が要求されている。
【0006】
本明細書全体にわたって多数の論文及び特許文献が参照され、その引用が表示されている。引用された論文及び特許文献の開示内容は、その全体が本明細書に参照として挿入され、本発明の属する技術分野の水準及び本発明の内容がより明確に説明される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】大韓民国特許登録第10-1800774号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者等は、補体免疫メカニズムを抑制する受容体であるCD55タンパク質を特異的に認識し、その活性を特異的に抑制することによって、CD55によって阻害された免疫メカニズムを効率的に復旧できる優れたCD55抑制剤を開発するために鋭意研究・努力した。その結果、可変領域内の核心抗原認識部位の一部のアミノ酸を置換した抗体を用いた場合、著しく増加したCD55結合力及び抑制力により、癌細胞などに対する補体媒介細胞溶解(complement-mediated cell lysis)活性が有意に回復されることを発見し、本発明を完成するに至った。
【0009】
したがって、本発明の目的は、CD55に特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片;及びこれを含む癌の予防又は治療及び/又は診断用組成物を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、CD55に特異的に結合する抗体の抗原結合断片、及びCD20に特異的に結合する抗体の抗原結合断片を含む二重特異的抗体を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的及び利点は、下記の発明の詳細な説明、特許請求の範囲及び図面によってより明確になる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一様態によると、本発明は、下記一般式1で表されるアミノ酸配列を有するHCDR1領域;配列リストの第1配列のアミノ酸配列を有するHCDR2領域;及び下記一般式2で表されるアミノ酸配列を有するHCDR3領域;を含む重鎖可変領域を含む、CD55に特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片を提供する:
【0013】
一般式1
【0014】
D-R-G-M-X1;
【0015】
一般式2
【0016】
N-A-X2-A-G-G-W-H-A-A-Y-I-D-A、
【0017】
前記一般式1におけるX1は、Ala又はValで、前記一般式2におけるX2は、Val、Ala、Ile、Leu、Phe及びMetで構成された群から選ばれる。
【0018】
本発明者等は、補体免疫メカニズムを抑制する受容体であるCD55タンパク質を特異的に認識し、その活性を特異的に抑制することによって、CD55によって阻害された免疫メカニズムを効率的に復旧できる優れたCD55抑制剤を開発するために鋭意研究・努力した。その結果、可変領域内の核心抗原認識部位の一部のアミノ酸を置換した抗体を用いた場合、著しく増加したCD55結合力及び抑制力により、癌細胞などに対する補体媒介細胞溶解(complement-mediated cell lysis)活性が有意に回復されることを発見した。
【0019】
本明細書において、「抗体(antibody)」という用語は、免疫学的に特定の抗原との反応性を有する免疫グロブリン分子を含む、抗原を特異的に認識する受容体としての役割をするタンパク質分子を意味し、多クローン抗体及び単クローン抗体を全て含む。
【0020】
抗体は、完全な全長(full-length)抗体形態のみならず、抗体分子の抗原結合断片(抗体断片)を含む。完全な抗体は、2個の全長の軽鎖及び2個の全長の重鎖を有する構造であって、それぞれの軽鎖は重鎖と二硫化結合で連結されている。重鎖定常領域は、ガンマ(γ)、ミュー(μ)、アルファ(α)、デルタ(δ)及びエプシロン(ε)タイプを有し、サブクラスとしてガンマ1(γ1)、ガンマ2(γ2)、ガンマ3(γ3)、ガンマ4(γ4)、アルファ1(α1)及びアルファ2(α2)を有する。軽鎖の定常領域は、カッパ(κ)及びラムダ(λ)タイプを有する。
【0021】
本明細書において、「抗体の抗原結合断片」という用語は、全体の抗体分子内で抗原を特異的に認識し、抗原-抗体結合機能を保有する断片を意味し、単一ドメイン抗体(sdAb)、単一鎖抗体(scFv)、Fab、F(ab’)、F(ab’)2及びFvなどを含む。断片の例としては、VL、VH、CL及びCH1ドメインで構成された1価断片(Fab断片);ヒンジ領域で二硫化物橋によって連結された2個のFab断片を含む2価断片(F(ab’)2断片);VH及びCH1ドメインで構成されたFd断片;抗体の一つのアーム(arm)のVL及びVHドメイン、及び二硫化物-連結されたFv(sdFv)で構成されたFv断片;VHドメインで構成されたdAb断片;及び分離された相補性決定領域(CDR)又はリンカーによって選択的につながり得る二つ以上の分離されたCDRの組み合わせ;を含む。また、scFvは、VLとVH領域がペアをなし、1価分子を形成した単一タンパク質鎖をなすようにリンカーによってつながり得る。このような単一鎖抗体も抗体の断片に含まれる。また、前記抗体又は抗体の断片は、2個の重鎖分子及び2個の軽鎖分子を含むテトラマー抗体;抗体軽鎖モノマー;抗体重鎖モノマー;抗体軽鎖ダイマー、抗体重鎖ダイマー;イントラボディ;1価抗体;ラクダ抗体;及び単一ドメイン抗体(sdAb)を含む。
【0022】
Fvは、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域のみを有している最小の抗体フラグメントであって、Fv断片を生成する組換え技術は、PCT国際公開特許出願WO88/10649、WO88/106630、WO88/07085、WO88/07086及びWO88/09344に開示されている。二重鎖Fv(two-chain Fv)は、非共有結合で重鎖可変領域と軽鎖可変領域が連結されている。そして、単鎖Fv(single-chain Fv)は、一般に、ペプチドリンカーを介して重鎖の可変領域と単鎖の可変領域が共有結合で連結されたり、又はC-末端で直ぐ連結されており、二重鎖Fvと同様に、ダイマーのような構造をなすことができる。このような抗体断片は、タンパク質加水分解酵素を用いて得ることができ(例えば、全体の抗体をパパインで制限・切断するとFabを得ることができ、ペプシンで切断するとF(ab’)2断片を得ることができる)、遺伝子組換え技術を通じて製作することもできる。
【0023】
本明細書において、「重鎖」という用語は、抗原に特異性を付与するための十分な可変領域配列を有するアミノ酸配列を含む可変領域ドメインVH、及び3個の定常領域ドメインCH1、CH2及びCH3を含む全長の重鎖及びその断片を全て意味する。また、本明細書において、「軽鎖」という用語は、抗原に特異性を付与するための十分な可変領域配列を有するアミノ酸配列を含む可変領域ドメインVL及び定常領域ドメインCLを含む全長の軽鎖及びその断片を全て意味する。
【0024】
本明細書において、「CDR(complementarity determining region)」という用語は、免疫グロブリンの重鎖及び軽鎖の超可変領域(hypervariable region)のアミノ酸配列を意味する(Kabat et al.Sequences of Proteins of Immunological Interest,4th Ed.,U.S.Department of Health and Human Services,National Institutes of Health(1987))。重鎖(HCDR11、HCDR2及びHCDR3)及び軽鎖(LCDR1、LCDR2及びLCDR3)には、それぞれ3個のCDRが含まれており、これらCDRは、抗体が抗原又はエピトープに結合する際に主要な接触残基を提供する。
【0025】
本発明の抗体又は抗体断片の範囲には、CDR領域に保存的アミノ酸置換を有する変異体が含まれ、CD55を特異的に認識できる範囲内で添付した配列リストに記載のアミノ酸配列に対する変異体を含むことができる。例えば、抗体の結合親和度以外に、半減期、生体適合性及びその他の生物学的特性をより改善するために、抗体のアミノ酸配列に追加的な変化を与えることができる。このような生物学的均等活性を有する変異を考慮した場合、本発明の抗体又はこれをコーディングする核酸分子は、配列リストに記載の配列と実質的な同一性(substantial identity)を示す配列も含むものとして解釈される。前記実質的な同一性は、前記本発明の配列と任意の他の配列を最大限に対応するようにアラインし、当業界で通常用いられるアルゴリズムを用いてアラインされた配列を分析した場合、最小61%の相同性、特定の一例によると70%の相同性、特定の他の例によると80%の相同性、特定の更に他の例によると90%の相同性を示す配列を意味する。配列を比較するためのアラインメント方法は、当業界に公知となっている。アラインメントに対する多様な方法及びアルゴリズムは、Smith and Waterman,Adv.Appl.Math.(1981)2:482 Needleman and Wunsch,J.Mol.Bio.(1970)48:443;Pearson and Lipman,Methods in Mol.Biol.(1988)24:307-31;Higgins and Sharp,Gene(1988)73:237-44;Higgins and Sharp,CABIOS(1989)5:151-3;Corpet et al.Nuc.Acids Res.(1988)16:10881-90;Huang et al.Comp.Appl.BioSci.(1992)8:155-65及びPearson et al.Meth.Mol.Biol.(1994)24:307-31に開示されている。
【0026】
本明細書において、「親和度(affinity)」という用語は、抗体又はその抗原結合断片と抗原との間の結合強度を意味し、これは、「結合力」としても表現され得る。
【0027】
本発明の具体的な具現例によると、前記一般式1のX1はAlaである。
【0028】
本発明の具体的な具現例によると、前記一般式2のX2はValである。
【0029】
より具体的には、本発明の重鎖可変領域は、次のHFR1乃至HFR4で構成された群から選ばれる一つ以上のフレームワーク領域(FR)を含む:
【0030】
HFR1:EVQLY1ESGGGLVQPGGSLRLSCY2AY3GFTFS(Y1は、Val又はAlaで、Y2は、Val又はAlaで、Y3は、Ser又はArgである。)
【0031】
HFR2:WVRQY4PGKGLEWVS(Y4は、Ala又はSerである。)
【0032】
HFR3:RY5TISRDNSKNTLYLQMNY6LRAEDTAVYYCAK(Y5は、Ala又はThrで、Y6は、Ser又はAsnである。)
【0033】
HFR4:WGQGTTVTVSS
【0034】
より具体的には、本発明の重鎖可変領域は、配列リスト19乃至22で構成された群から選ばれるアミノ酸配列を有する。
【0035】
本発明の具体的な具現例によると、本発明の抗体又はその抗原結合断片は、配列リストの第2配列のアミノ酸配列を有するLCDR1領域;下記一般式3で表されるアミノ酸配列を有するLCDR2領域;及び配列リストの第3配列のアミノ酸配列を有するLCDR3領域;を含む軽鎖可変領域をさらに含む:
【0036】
一般式3
【0037】
W-N-X3-K-R-P-S、
【0038】
前記一般式3におけるX3は、Asn又はAspである。
【0039】
より具体的には、前記X3はAspである。
【0040】
より具体的には、本発明の軽鎖可変領域は、次のLFR1乃至LFR4で構成された群から選ばれる一つ以上のフレームワーク領域(FR)を含む:
【0041】
LFR1:SYELTQPPSVSVSPGQTASITC
【0042】
LFR2:WY7QQKPGQSPVTVIY(Y7は、Phe又はTyrである。)(F又はY)
【0043】
HFR3:GIPERFSGSKSGNTATLTISGTQAMDEADYYC
【0044】
HFR4:FGGGTKLTVL
【0045】
より具体的には、本発明の軽鎖可変領域は、配列リスト4又は18のアミノ酸配列を有する。
【0046】
本発明の他の様態によると、本発明は、下記の軽鎖可変領域及び重鎖可変領域を含む、CD55に特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片を提供する:
【0047】
a)配列リストの第4配列の軽鎖可変領域;又は前記配列リストの第4配列の軽鎖可変領域において、32番目のアミノ酸配列であるY(Tyr)のF(Phe)への置換、及び48番目のアミノ酸配列であるD(Asp)のN(Asn)への置換で構成された群から選ばれる1以上の置換を含む軽鎖可変領域、及び
【0048】
b)配列リストの第5配列の重鎖可変領域;又は前記配列リストの第5配列の重鎖可変領域において、5番目のアミノ酸配列であるV(Val)のA(Ala)への置換、23番目のアミノ酸配列であるA(Ala)のV(Val)への置換、25番目のアミノ酸配列であるS(Ser)のR(Arg)への置換、35番目のアミノ酸配列であるA(Ala)のV(Val)への置換、40番目のアミノ酸配列であるA(Ala)のS(Ser)への置換、68番目のアミノ酸配列であるA(Ala)のT(Thr)への置換、85番目のアミノ酸配列であるS(Ser)のN(Asn)への置換、及び101番目のアミノ酸配列であるG(Gly)のV(Val)、L(Leu)、I(Ile)、F(Phe)、M(Met)又はA(Ala)への置換で構成された群から選ばれる1以上の置換を含む重鎖可変領域。
【0049】
本発明の他の様態によると、本発明は、上述した本発明の抗体又はその抗原結合断片をコーディングする核酸分子を提供する。
【0050】
本明細書において、「核酸分子」という用語は、DNA(gDNA及びcDNA)及びRNA分子を包括的に含む意味を有し、核酸分子において基本構成単位であるヌクレオチドは、自然のヌクレオチドのみならず、糖又は塩基部位が変形した類似体(analogue)も含む(Scheit,Nucleotide Analogs,John Wiley,New York(1980);Uhlman及びPeyman,Chemical Reviews,(1990)90:543-584)。本発明の重鎖及び軽鎖可変領域をコーディングする核酸分子の配列は変形可能である。前記変形は、ヌクレオチドの追加、欠失、非保存的置換又は保存的置換を含む。
【0051】
本発明の核酸分子は、前記ヌクレオチド配列に対して実質的な同一性を示すヌクレオチド配列も含むものとして解釈される。前記実質的な同一性は、前記本発明のヌクレオチド配列と任意の他の配列を最大限に対応するようにアラインし、当業界で通常用いられるアルゴリズムを用いてアラインされた配列を分析した場合、最小80%の相同性、特定の一例では最小90%の相同性、特定の他の例では最小95%の相同性を示すヌクレオチド配列を意味する。
【0052】
本発明の更に他の様態によると、本発明は、上述した本発明の抗体又はその抗原結合断片を有効成分として含む癌の予防又は治療用組成物を提供する。
【0053】
本発明の更に他の様態によると、本発明は、上述した本発明の抗体又はその抗原結合断片の薬剤学的有効量を対象体に投与する段階を含む癌の予防又は治療方法を提供する。
【0054】
本発明の更に他の様態によると、本発明は、上述した本発明の抗体又はその抗原結合断片の治療用途(for use in therapy)を提供する。
【0055】
本明細書において、「予防」という用語は、疾患又は疾病を保有していると診断されたことはないが、このような疾患又は疾病にかかる可能性のある対象体における疾患又は疾病の発生を抑制することを意味する。
【0056】
本明細書において、「治療」という用語は、(a)疾患、疾病又は症状の発展の抑制;(b)疾患、疾病又は症状の軽減;又は(c)疾患、疾病又は症状を除去することを意味する。本発明の組成物を対象体に投与すると、CD55受容体の活性を抑制することによって補体免疫メカニズムを回復し、癌細胞の増殖を抑制することによって癌の進行を阻害したり、これによる症状を除去又は軽減させる役割をする。よって、本発明の組成物は、それ自体が癌治療用組成物になることもあり、或いは、他の薬理成分、例えば、CDC(complement dependent cytotoxicity)を作用メカニズムとする治療剤と共に投与され、その治療反応性を向上させる治療補助剤として適用されることもある。そこで、本明細書において、「治療」又は「治療剤」という用語は、「治療補助」又は「治療補助剤」の意味を含む。
【0057】
本明細書において、「投与」又は「投与する」という用語は、本発明の組成物の治療的有効量を対象体に直接投与することによって、対象体の体内で同一の量が形成されるようにすることを意味する。
【0058】
本発明において、「治療的有効量」という用語は、本発明の薬剤学的組成物を投与しようとする個体に組成物内の薬理成分が治療的又は予防的効果を提供するのに十分な程度に含有された組成物の含量を意味し、これは、「予防的有効量」を含む意味である。
【0059】
本明細書において、「対象体」という用語は、制限なしで、ヒト、マウス、ラット、ギニーピッグ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、サル、チンパンジー、ヒヒ又はアカゲザルを含む。具体的には、本発明の対象体はヒトである。
【0060】
本発明の具体的な具現例によると、前記組成物は、抗CD20抗体及びチロシンキナーゼ抑制剤で構成された群から選ばれる一つ以上の薬理成分をさらに含む。
【0061】
より具体的には、前記抗CD20抗体はリツキシマブ(Rituximab)である。
【0062】
より具体的には、前記チロシンキナーゼ抑制剤は、イマチニブ(Imatinib)及びゲフィチニブ(gefitinib)で構成された群から選ばれる。
【0063】
本発明の具体的な具現例によると、本発明の組成物で予防又は治療可能な癌は、CD55陽性である癌である。
【0064】
本明細書において、「CD55陽性癌」という用語は、CD55受容体を発現する癌細胞で構成された癌腫を意味し、具体的には、対象体内での補体免疫活性が測定可能な程度に阻害されるほどにCD55が発現される癌を意味する。そこで、「CD55陽性癌」という用語は、「CD55過剰発現癌」を含む意味である。本発明によると、本発明の組成物は、CD55の過剰発現により、治療剤に対する耐性が誘導された多様な癌腫において薬物の耐性を除去し、治療敏感性を増進させることができる。
【0065】
CD55陽性癌は、例えば、黒色腫、リンパ腫、肺癌、甲状腺癌、乳癌、大腸癌、前立腺癌、頭頸部癌、胃癌、肝臓癌、膀胱癌、腎臓癌、子宮頸部癌、膵臓癌、白血病、骨髓癌、卵巣癌、子宮頸部癌、肉腫、胆管癌及び子宮内膜細胞癌を含むが、これに制限されなく、CD55を発現する全ての固形癌及び血液癌を含む。
【0066】
本発明の更に他の様態によると、本発明は、上述した本発明の抗体又はその抗原結合断片を有効成分として含む癌の診断用組成物を提供する。
【0067】
本発明で使用される抗体又はその抗原結合断片と対象になる癌については既に詳細に説明したので、過度な重複を避けるために、それについての記載は省略する。
【0068】
本明細書において、「診断」という用語は、特定の疾患に対する個体の感受性(susceptibility)の判定、特定の疾患を現在の個体が有しているかどうかの判定、及び特定の疾患にかかった一つの客体の予後(prognosis)の判定を含む。
【0069】
CD55受容体は、正常組織に比べて癌組織で高い発現水準を示す典型的な癌診断マーカーであって、CD55に特異的に結合する本発明の抗体は、生物学的試料内の腫瘍の存在を正確に判定することができる。併せて、本発明の抗体は、多様な免疫アッセイ方法を通じて腫瘍内のCD55の発現水準を正確に測定し、該当の腫瘍のCDC薬物に対する治療敏感性を予測することによって、癌の性格に合わせたオーダーメード型治療戦略を早期に樹立する際に有用に利用可能である。
【0070】
本明細書において、「診断用組成物」という用語は、対象体の癌発病の有無を判断したり、CDC薬物に対する治療敏感性を予測するために、CD55タンパク質の発現量測定手段として本発明の抗体を含む統合的な混合物(mixture)又は装備(device)を意味し、これは、「診断用キット」として表現されることもある。
【0071】
本明細書において、「生物学的試料」という用語は、組織、細胞、全血、血清、血漿、唾液、尿、リンパ液、脊髓液、組織剖検試料(脳、皮膚、リンパ節、脊髓など)、細胞培養上澄み液、破裂された真核細胞及び細菌発現系を含むが、これに制限されない。
【0072】
生物学的試料において、CD55タンパク質の検出は、比色法(colormetric method)、電気化学法(electrochemical method)、蛍光法(fluorimetric method)、発光法(luminometry)、粒子計数法(particle counting method)、肉眼測定法(visual assessment)又は閃光計数法(scintillation counting method)を用いた抗原-抗体複合体形成の検出を通じて行うことができる。本明細書において、「検出」という用語は、抗原-抗体複合体の形成有無を判定するための一連の過程を意味する。検出は、酵素、蛍光物、リガンド、発光物、微小粒子又は放射性同位元素を含む多様な標識体を用いて実施することができる。
【0073】
検出標識体として使用される酵素は、例えば、アセチルコリンエステラーゼ、アルカリホスファターゼ、β-D-ガラクトシダーゼ、ホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ及びβ-ラクタマーゼを含み、蛍光物としては、フルオレセイン、Eu3+、Eu3+キレート又はクリプテートなどを含み、リガンドとしてはビオチン誘導体などを含み、発光物としては、アクリジニウムエステル及びイソルミノール誘導体などを含み、微小粒子としては、金コロイド及び着色されたラテックスなどを含み、放射性同位元素としては、57Co、3H、125I及び125I-ボルトン(Bolton)ハンター(Hunter)試薬などを含むことができる。
【0074】
本発明の一具現例によると、抗原-抗体複合体は、酵素免疫吸着法(ELISA)を用いて検出することができる。本発明の抗体は検出標識を有することができ、検出標識を有さない場合は、本発明の抗体を捕獲することができ、検出標識を有する更に他の抗体を処理して確認することができる。
【0075】
本発明の更に他の様態によると、本発明は、上述した本発明の抗原結合断片、及びCD20に特異的に結合する抗体の抗原結合断片を含む二重特異的抗体又はその機能的断片を提供する。
【0076】
本明細書において、「二重特異的抗体」という用語は、相違するアミノ酸配列によって定義される相違する2個の抗原-結合領域を含む抗体を意味する。典型的には、二重特異的抗体に含まれた2個の抗原結合領域は、それぞれ相違する抗原又はエピトープに対して特異的である。
【0077】
本発明の二重特異的抗体は、上述した本発明のCD55特異的な抗原結合断片と、CD20を特異的に認識する更に他の抗原結合断片とが結合された一つの抗体(CD20 x CD55)分子であって、本発明によると、それぞれの抗CD55抗体(例えば、後述する実施例のEP-10H)と抗CD20抗体(例えば、リツキシマブ)を併用投与した場合に比べて、リツキシマブ抵抗性腫瘍に対してさらに優れた治療効果を示す。
【0078】
本発明の具体的な具現例によると、前記二重特異的抗体に含まれた抗CD55抗体の抗原結合断片はscFv形態である。
【0079】
本発明の具体的な具現例によると、前記CD55に特異的に結合する抗体の抗原結合断片はscFvを含む。
【0080】
本発明の具体的な具現例によると、前記CD55に特異的に結合する抗体の抗原結合断片は、VL-リンカー-VH-CH2-CH3形態である。
【0081】
本発明の具体的な具現例によると、前記二重特異的抗体に含まれた抗CD20抗体の抗原結合断片はFab形態である。
【0082】
本発明の具体的な具現例によると、前記CD20に特異的に結合する抗体の抗原結合断片はFabを含む。
【0083】
本発明の具体的な具現例によると、前記CD20に特異的に結合する抗体の抗原結合断片は、VL-CK-リンカー-VH-CH1-CH2-CH3形態である。
【0084】
本発明の具体的な具現例によると、前記CD20に特異的に結合する抗体はリツキシマブである。
【0085】
本発明の二重特異的抗体は、安定的に会合できる第1及び第2サブユニットからなるFc領域を含むことができる。本明細書において、「Fc領域」という用語は、全長抗体の定常領域のうち少なくとも一部分を含有する抗体重鎖のC-末端領域を意味し、これは、野生型配列Fc領域と変異体Fc領域を全て含む。IgGのFc領域は、IgG CH2及びIgG CH3ドメインを含む。本発明の二重特異的抗体のCH3領域は、野生型又は変異体CH3ドメイン(例えば、その一つの鎖に導入された「突出部」(「ノブ」)及びその他の鎖に相応する導入された「空洞(cavity)」(「ホール」)を有するCH3ドメインであり得る。
【0086】
本発明の具体的な具現例によると、本発明の二重特異的抗体は、CD20 XCD55の重鎖同士の所望でないペアの結合を防止するためにノブ-イントゥ-ホール(knob-into-hole)方法を使用することができる。「ノブ-イントゥ-ホール」方法[US5,731,168;US7,695,936;Ridgway et al.,Prot Eng 9,617-621(1996);Carter、J Immunol Meth 248,7-15(2001)]は、異種二量体の生成を促進し、同種二量体の生成を阻害するために、突出部が空洞に位置し得るように第1ポリペプチドの界面に突出部(「ノブ」)を、第2ポリペプチドの界面には相応する空洞(「ホール」)を導入する。突出部は、第1ポリペプチドの界面から小さいアミノ酸側鎖をより大きい側鎖(例、チロシン又はトリプトファン)に置換することによって構成される。大きいアミノ酸側鎖をより小さい側鎖(例、アラニン又はトレオニン)に置換することによって、突出部と同一又は類似する大きさの相互補完的空洞が第2ポリペプチドの界面に生成される。
【0087】
本発明の具体的な具現例によると、本発明の二重特異的抗体は、VL-リンカー-VH-CH2-CH3形態の抗CD55抗体の抗原結合断片と、VL-CK-リンカー-VH-CH1-CH2-CH3形態の抗CD20抗体の抗原結合断片とが結合された形態であり得る。
【0088】
本発明の具体的な具現例によると、本発明の二重特異的抗体は、CD20 X CD55の重鎖同士の所望でないペアの結合を防止するために、10個乃至100個、より具体的には15個乃至60個のGly及びSerで構成されたリンカーを使用することができる。
【0089】
具体的には、本発明の二重特異的抗体は、CD55-scFv-ノブ(VL-linker20-VH-CH2-CH3)と、CD20-Fab-ホール(VL-CK-linker40-VH-CH1-CH2-CH3)とが結合された形態であり得る。
【0090】
linker20は、前記Gly又はSerを20個含むものであって、その例としては、Gly Gly Gly Gly Ser Gly Gly Gly Gly Ser Gly Gly Gly Gly Ser Gly Ser Gly Gly Serを含み得るが、これに制限されるものではない。
【0091】
linker40は、前記Gly又はSerを20個含むものであって、その例としては、Gly Gly Gly Gly Ser Gly Gly Gly Gly Ser Gly Gly Gly Gly Ser Gly Ser Gly Gly Ser Gly Gly Gly Gly Ser Gly Gly Gly Gly Ser Gly Gly Gly Gly Ser Gly Ser Gly Ser Serを含み得るが、これに制限されるものではない。
【発明の効果】
【0092】
本発明の特徴及び利点を要約すると、次の通りである:
【0093】
(a)本発明は、CD55に特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片;及びこれを含む癌の予防、治療及び/又は診断用組成物を提供する。
【0094】
(b)本発明の抗体は、補体免疫メカニズムを抑制し、腫瘍の増殖を促進するCD55タンパク質に対して高い結合力及び抑制力を示すことによって、CD55で媒介される多様な疾患の効率的な治療組成物として利用可能である。
【0095】
(c)また、本発明の抗体は、CD55の過剰発現により、CDC(complement dependent cytotoxicity)を作用メカニズムとする治療剤に対する耐性が誘導された多様な疾患において薬物の耐性を根本的に除去し、治療反応性を著しく改善する効率的な治療補助剤として有用に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【
図1】4-1HとG4-1HのCD55に対する親和度を測定したELISA分析結果を示す図である。
【
図2】G4-1H可変領域の遺伝子に無作為突然変異が導入されたライブラリから選別して製作した抗体のCD55に対する親和度を測定したELISA分析結果を示す図である。
【
図3】結合力向上核心部位を疎水性アミノ酸に置換して製作した抗体のCD55に対する親和度を測定したELISA分析結果を示す図である。
【
図4】リツキシマブとEP-10H併用処理によるBJAB細胞の死滅効果を分析したFACSアッセイ結果を示す図である。
【
図5a】RamosとRamos-RRにおいてCD20及びCD55の発現量を比較分析したFACSアッセイ結果を示す図である。
【
図5b】リツキシマブとEP-10H抗体の併用処理によるRamos-RR細胞の死滅効果を分析したFACSアッセイ結果を示す図である。
【
図6a】K562とK562-IRにおいてCD55発現量を比較分析したFACSアッセイ結果を示す図である。
【
図6b】イマチニブとEP-10H抗体の併用処理による562-IR細胞の死滅効果を分析したFACSアッセイ結果を示す図である。
【
図7a】PC9とPC9-GRにおいてCD55発現量を比較分析したFACSアッセイ結果を示す図である。
【
図7b】イマチニブとEP-10H抗体の併用処理によるPC9-GR細胞の死滅効果を分析したFACSアッセイ結果を示す図である。
【
図8】本発明のCD20 X CD55二重抗体であるSBUと、Macorが報告した二重抗体形態とを比較した抗体の模式図である。
【
図9】本発明のSBU形態のCD20X CD55二重抗体に対するSDS-PAGE分析結果を示す図である。
【
図10a】CD20 X CD55二重抗体のCD20(
図10a)及びCD55(
図10b)に対する親和度を測定したELISA分析結果をそれぞれ示す図である。
【
図10b】CD20 X CD55二重抗体のCD20(
図10a)及びCD55(
図10b)に対する親和度を測定したELISA分析結果をそれぞれ示す図である。
【
図11a】CD20 X CD55二重抗体によるBJAB細胞の死滅効果を分析したFACSアッセイ結果を示す図である。
【
図11b】リツキシマブ単独処理、リツキシマブとEP-10H抗体の併用処理及びCD20 XCD55二重抗体処理時のそれぞれのBJAB細胞死滅率を比較した結果を示す図である。
【
図12a】CD20 X CD55二重抗体によるRamos細胞の死滅効果を分析したFACSアッセイ結果を示す図である。
【
図12b】リツキシマブ単独処理、リツキシマブとEP-10H抗体の併用処理及びCD20 XCD55二重抗体処理時のそれぞれのRamos細胞死滅率を比較した結果を示す図である。
【
図13a】CD20 X CD55二重抗体によるRamos-RR細胞の死滅効果を分析したFACSアッセイ結果を示す図である。
【
図13b】リツキシマブ単独処理、リツキシマブとEP-10H抗体の併用処理及びCD20 XCD55二重抗体処理時のそれぞれのRamos-RR細胞死滅率を比較した結果を示す図である。
【
図14】Ramos-RR細胞にリツキシマブ、SBU形態のCD20X CD55二重抗体を処理した上澄み液内のC4d生産量を確認した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0097】
以下、実施例を通じて本発明をさらに詳細に説明する。これら実施例は、本発明をより具体的に説明するためのものに過ぎなく、本発明の要旨により、本発明の範囲がこれら実施例によって制限されないことは、当業界で通常の知識を有する者にとって自明であろう。
【0098】
【実施例】
【0099】
実施例1:4-1Hのヒト化
【0100】
大韓民国特許出願第10-2016-0132333号に開示された4-1Hの免疫原性を減少させるために、次のような方法でヒト化を行った:
【0101】
4-1Hのヒト化のために、4-1Hの軽鎖可変領域内の3個のFR(LFR1、LFR2、LFR3)をIGLV3-1*01のFRに置換し、重鎖可変領域内の3個のFR(HFR1、HFR2、HFR3)をIGHV3-23D*02のFRに置換した。その後、アミノ酸の物理化学的性質の類似性又は非類似性を考慮した上で、特定のアミノ酸を親抗体(4-1H)のアミノ酸に再び置換した。親抗体(4-1H)に再び置換されたアミノ酸は、軽鎖可変領域ではL46T、N66Kで、重鎖可変領域ではF68Aであった。抗体ドメインのアミノ酸残基番号は、当業界で通常使用されるカバットEUナンバリングシステム(Kabat EU numbering system,Kabat et al.,「Sequences of Proteins of Immunological Interest」,5th Ed.,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91-3242,1991と同じEU指数番号に従う)によってナンバリングした。軽鎖可変領域のJ geneは、US2010-0056386を参考にしてFGGGTKLTVLで固定し、重鎖可変領域のJ geneは、US2014-0206849を参考にしてWGQGTTVTVSSで固定した。ヒト化4-1H抗体をG4-1Hと命名し、その塩基配列を表1に表示した。
【0102】
【0103】
G4-1Hの重鎖及び軽鎖可変領域のアミノ酸配列
【0104】
前記表において、下線を引いた文字はCDR領域を示し、ボールド体は、親抗体(4-1H)に再び置換されたアミノ酸を示す。
【0105】
実施例2:G4-1Hクローンの完全抗体の転換及び発現/精製
【0106】
実施例1で製作したG4-1H抗体の可変領域のDNAをscFv形態で合成し(Cosmogenetech、韓国)、PCRを通じて完全抗体(full-length IgG)に転換した。まず、scFvを含むpUCベクター(Cosmogenetech、韓国)から、重鎖及び軽鎖の可変領域と定常領域の切片を下記表2のVH、CH及びVL、CKプライマーの組み合わせを用いてPCRを通じて収得した。収得した抗体の可変領域と定常領域を用いて、下記表2のHC及びLCプライマーの組み合わせを使用してPCRを行った結果、G4-1Hの重鎖と軽鎖を確保した。重鎖は、EcoRIとNotI(New England Biolab、イギリス)酵素を用いて処理し、同様に、同一の制限酵素で処理された動物細胞発現用ベクターであるpCMVベクター(ThermoFisher Scientific、米国)にライゲーションした。また、軽鎖は、XbaI(New England Biolab、イギリス)酵素を用いて処理し、同様に、同一の制限酵素で処理されたpCMVベクターにライゲーションした。ライゲーションが完了したプラスミドは、DH5αコンピテントセル(competent cell)(New England Biolab、イギリス)に熱衝撃を加えて形質転換し、確保したコロニーを大量培養することによってプラスミドを収得した。
【0107】
【0108】
G4-1H完全抗体クローニングに使用されたプライマー
【0109】
完全抗体に転換した重鎖と軽鎖のそれぞれのプラスミドをポリエチレンイミン(PEI)(Polysciences、米国)と150mMのNaClを用いてExpi293F細胞(Invitrogen、米国)に形質導入し、Freestyle 293発現培地(Invitrogen、米国)で37℃、8%のCO2及び55%の湿度条件下でErlenmeyerフラスコで7日間浮遊培養した。発現細胞培養液を4,000rpmで10分間遠心分離した後、上澄み液を採取してから0.22μmのフィルターでろ過した。ろ過された上澄み液は、4℃でMabSelect sure(GE Healthcare、米国)レジン1mlに結合するように誘導した。結合されたレジンは、10cv(column volume)の20mMの第二リン酸ナトリウムと500mMの塩化ナトリウム(pH7.0)溶液で洗浄し、100mMのクエン酸(pH3.0)溶液を用いて結合された抗体を溶出した後、1Mのトリス-HCL(pH9.0)で中和した。Slide-A-Lyzer透析カセット(ThermoFisher Scientific、米国)を用いてpH7.2-7.4のPBSで緩衝液の交換を行った後、SDS-PAGEを通じて精製された抗体の軽鎖と重鎖の大きさ及び純度を最終的に確認した結果、理論的計算値と一致する分子量と高い純度を確認できた。
【0110】
実施例3:CD55に対する4-1HとG4-1Hの親和度分析
【0111】
前記実施例2で製作したG4-1H単クローン抗体のCD55に対する結合力を間接ELISAで確認した。間接ELISAは、50μlのPBSに1μg/mlで組換えヒトCD55(R&D Systems、米国)を希釈してから96ウェル免疫プレート(Corning、米国)に入れ、4℃で保管して一晩中吸着させた。3%のウシ血清アルブミン(Millipore、米国)が含まれた緩衝溶液で常温で1時間反応させた後、0.5%のTween 20(Amresco、米国)が含まれた緩衝溶液で3回洗浄し、順次的濃度(0.0001、0.0003、0.001、0.003、0.01、0.03、0.1、0.3、1、3、10nM)で希釈したそれぞれの抗体を1ウェル当たり50μlずつ処理した。抗原に抗体が結合できるように常温で2時間反応させた後、0.5%のTween 20(Amresco、米国)が含まれた緩衝溶液で3回洗浄した。抗ヒト免疫グロブリンFc-HRP抗体(Jackson Immunoresearch、米国)を1:3,000で希釈してから1ウェル当たり50μlずつ処理した後、常温で1時間反応させた。反応が終了した後、0.5%のTween 20(Amresco、米国)が含まれた緩衝溶液で3回洗浄した後、3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)(ThermoFisher Scientific、米国)を50μlずつ入れて10分間発色させた。分光光度計(Biotek、米国)を用いて450nmで吸光度を測定した結果、G4-1Hは、4-1Hに比べてCD55に対して低い親和力を示した(
図1)。
【0112】
実施例4:可変領域の遺伝子に無作為突然変異が導入されたライブラリ製作
【0113】
G4-1HのCD55に対する親和度を改善するために、G4-1H抗体の可変領域遺伝子に、エラープローン(Error prone)PCR過程を通じて無作為突然変異が導入されたライブラリを構築した。具体的には、G4-1H scFvを含むpComb3xベクターにscFvシーケンシングプライマー1とプライマー2、校正機能のない重合酵素(Takara、日本)、重合酵素緩衝液、dATP、dTTP、dCTP、及びdGTPを入れ、塩濃度及びマンガン量を調節することによって変異頻度を調節した。エラープローンPCRは、94℃での5分間の事前予熱、91℃での1分間の二重らせん分離、55℃での1分間のプライマー結合、72℃での3分間のDNA合成反応の手順を30回繰り返し行い、最後に72℃で5分間DNA合成反応を行った。精製されたPCR産物とファージミドベクターであるpComb3xベクターをSfiI(New England Biolab、イギリス)制限酵素を用いて切断した後、これをライゲーションし、ER2738大腸菌に形質転換した後で培養した。
【0114】
【0115】
エラープローンPCRに使用されたプライマー
【0116】
実施例5:4-1Hに比べてCD55に対する親和度が改善されたクローンの選別
【0117】
前記実施例4で製作したライブラリを用いたバイオパニング(biopanning)を通じて、G4-1H及び4-1HよりCD55に対する親和度が改善されたクローンを選別した。
【0118】
まず、マグネチックビード(Invitrogen、米国)に組換えヒトCD55(R&D Systems 2009-CD/CF、米国)2.5μgを接合させた。ファージライブラリとマグネチックビードに接合されたCD55を常温で2時間にわたって反応させることによって、CD55に対して親和力を有するファージを結合した後、これを4-1H抗体と常温で30分間反応させることによって4-1Hと競争させた。その後、0.5%のTween 20(Amresco、米国)が含まれた緩衝溶液で洗浄し、酸性溶液を用いて溶出した。溶出されたファージは、次のラウンドパニング(panning)のために大腸菌ER2738に感染させた後、一晩中培養して増殖させた。このような過程を4回繰り返し、バイオパニングを行った。1次で1回、2次~3次で3回、4次で5回洗浄し、パニング回数が増加するほど洗浄回数を増加させ、結合力の高いファージを蓄積した。
【0119】
3次と4次バイオパニング結果物のプレートから選別された192個のクローンを、96ディープウェル(deep well)プレートで100μg/mlのカルベニシリン、70μg/mlのカナマイシン及びVCSM13ヘルパーファージを入れてから37℃で一晩中培養し、抗体が発現されたファージの増殖を誘導した。前記収得した培養液の遠心分離を通じてファージを含む培地上澄み液を獲得し、これを組換えヒトCD55(R&D Systems 2009-CD/CF、米国)がコーティングされているELISAプレートに入れてから37℃で2時間にわたって培養し、HRPが接合されている抗M13抗体(Merck、米国)を二次抗体として用いて、CD55に結合する抗体をELISAで確認した。対照群として4-1Hクローンのファージを使用し、これより結合力の高い5個のクローンを選別した。
【0120】
実施例6:選別されたクローンの完全抗体の転換及び発現/精製
【0121】
EP-1E、EP-1F、EP-9B、3R-2-1H及びEP-10Hを全長の完全IgG形態に作るためのクローニングを行った。前記EP-1E、EP-1F、EP-9B、3R-2-1H及びEP-10Hは、下記表4のCDR配列を有する。
【0122】
【0123】
選別されたクローンの軽鎖及び重鎖可変領域のアミノ酸配列
【0124】
前記表で下線を引いた部分はCDR領域を示し、ボールド体は、G4-1Hと互いに異なるアミノ酸をそれぞれ示す。前記実施例5で選別された抗体であるEP-1E、EP-1F、EP-9B、3R-2-1H及びEP-10HはscFv形態であるので、これらを完全抗体に転換し、完全抗体の転換及び発現/精製は、上述した実施例2と同一の方法で行った。
【0125】
【0126】
選別されたクローンの完全抗体クローニングに使用されたプライマー
【0127】
実施例7:選別して製作した完全抗体のCD55に対する親和度分析
【0128】
前記実施例6で製作した抗体のCD55に対する親和度を間接ELISAで確認した。間接ELISAは、上述した実施例3と同一の方法で行った。
【0129】
ELISAの結果、実施例6の抗体は、4-1Hに比べて高いCD55に対する親和度を示した(
図2)。EP-1E、EP-1F、3R-2-1H及びEP-10Hは、類似する親和度を示し、EP-9Bは、4-1Hよりは高いが、他の抗体より低い親和度を示した。4-1Hに比べてCD55に対する親和度が高い各抗体は、各種の癌診断や薬学的治療組成物の製造に非常に有用に使用され得る。
【0130】
実施例8:結合力向上核心部位のアミノ酸置換
【0131】
表4に記載の各クローンにおいては、いずれもG4-1HでカバットEUナンバリングシステムによるH100A位置のGがVに置換された。この部分は、抗体の抗原結合に重要なHCDR3領域に含まれる。本発明者等は、この部位を結合力向上のための核心部位として把握し、その部位をV以外の疎水性アミノ酸に置換するためにクローニングを行った。H100A位置のみがG4-1Hと異なるEP-10Hを基本バックボーンとして製作した10H(A)、10H(I)、10H(L)、10H(F)及び10H(M)は、下記のCDR配列を有する(表6)。
【0132】
【0133】
動物細胞発現用ベクターであるpCMVベクター(ThermoFisher Scientific、米国)にクローニングされた完全IgG形態であるEP-10Hの重鎖可変領域のうち、G4-1Hと異なる突然変異が起こった重鎖の相補性決定領域のアミノ酸を疎水性アミノ酸に置換した。
【0134】
まず、EP-10Hの重鎖可変領域を含むpCMVベクターから、表4のHC1、HC2プライマーの組み合わせを用いて重鎖の可変領域と定常領域をPCRを通じて収得した。PCRを通じて得られた重鎖可変領域と定常領域は、HC3正方向プライマーとHC2逆方向プライマーを用いてオーバーラップPCR過程を経ることによってVH-CH1-CH2-CH3形態を得た。このように得た重鎖は、EcoRIとNotI(New England Biolab、イギリス)制限酵素を用いて切断し、同様に、同一の制限酵素で処理された動物細胞発現用ベクターであるpCMVベクター(ThermoFisher Scientific、米国)にライゲーションした。ライゲーションが完了したプラスミドは、DH5α大腸菌(New England Biolab、イギリス)に熱衝撃を加えて形質転換した後、大量培養することによってプラスミドを得た。
【0135】
【0136】
結合力向上核心部位のアミノ酸置換のために使用したプライマー
【0137】
クローニングを完了した後、EP-10H軽鎖プラスミドと表6の重鎖プラスミドを用いた完全抗体の発現/精製は、上述した実施例2と同一の方法で行った。
【0138】
実施例9:結合力向上核心部位を置換して製作した完全抗体のCD55に対する親和度分析
【0139】
前記実施例8で製作した抗体のCD55に対する親和度を間接ELISAで確認した。間接ELISAは、上述した実施例3と同一の方法で行った。
【0140】
ELISA分析の結果、結合力核心部位を疎水性アミノ酸に置換して製作した抗体は、4-1Hに比べて高いCD55に対する親和度を示した(
図3)。しかし、10H(A)、10H(I)、10H(L)、10H(F)及び10H(M)は、EP-10Hより低い親和度を示した。これは、H100A位置においてGがVに置換されることが、結合力向上に最も効率的な結果を示すことを意味する。
【0141】
実施例10:CD55が過剰発現された薬剤耐性癌細胞株でのEP-10Hの治療効果
【0142】
実験例10-1:バーキットリンパ腫細胞株BJABでのリツキシマブとEP-10Hの併用効果
【0143】
BJABは補体-抵抗性を有し、これは、CD55の発現に起因する(Golay,et al.,Blood,95(12):3900-8,2000)。このような理由により、CDC(complement dependent cytotoxicity)が主な治療メカニズムであるリツキシマブに対する反応性が低い。B細胞リンパ腫のうち悪性として知られているバーキットリンパ腫に対するリツキシマブの治療効果の改善可能性を確認するために、バーキットリンパ腫細胞株であるBJABにおいてEP-10Hとの併用を通じた細胞死滅能を確認した。1サンプル当たり5×10
5個のBJAB細胞には、リツキシマブを20μg/mlの濃度で、そして、併用投与効果の確認のために4-1H又はEP-10Hとリツキシマブをそれぞれ50μg/mlと20μg/mlの濃度で50%の補体血清ヒト(complement sera human)(Sigma、米国)が添加されたRPMI培地で希釈し、最終的に100μlを処理した後、37℃、5%のCO
2条件下で1時間にわたって培養した。その後、FITCアネキシン(Annexin)Vアポトーシス検出キット(Apoptosis Detection Kit) with 7-AAD(BioLegend、米国)を用いてFACS分析装備であるAttune NxT(ThermoFisher Scientific、米国)で死滅細胞を確認し、CDCを観察した(
図4)。従来に報告されたように、BJAB細胞は、リツキシマブに対する反応性が低かったが、抗CD55抗体(4-1H及びEP-10H)との併用投与時にその効果が増加し、増加した効果の幅は、リツキシマブと4-1Hとを組み合わせた場合に比べてリツキシマブとEP-10Hとを組み合わせた場合にさらに大きかった。このような結果は、CD55の発現がリツキシマブのCDC効果を阻害するが、抗体を用いてCD55を抑制した場合に阻害された効果が回復されることを意味し、このような効果は、CD55に対する親和度にさらに優れたEP-10Hによってより著しく発揮されることを示す。
【0144】
実験例10-2a:リツキシマブ耐性細胞株であるRamos-RRでのCD55の発現確認
【0145】
Ramosは、リツキシマブ反応性B細胞リンパ腫細胞株としてRamosを用いて製作したリツキシマブ耐性細胞株であるRamos-RRでのCD55発現を確認するために、下記のように実験を行った。
【0146】
1サンプル当たり5×10
5個のRamos及びRamos-RRを、10μg/mlの濃度のEP-10H単クローン抗体が含まれたり又は含まれていないPBSで懸濁し、4℃で1時間にわたって培養した。培養液を4,000rpmで5分間遠心分離した後、PBS 100μlで洗浄し、4,000rpmで5分間再び遠心分離した。PBSを用いて1:100の比率で希釈したヤギ抗ヒトIgG抗体、Alexa Fluor 488(ThermoFisher Scientific、米国)を細胞に処理し、遮光した状態で4℃で30分間培養した。蛍光染色された細胞をPBSで洗浄した後、PBS 400μlで懸濁し、FACS分析装備であるAttune NxT(ThermoFisher Scientific、米国)を用いて分析し、その結果を
図5aに示した。
【0147】
その結果、Ramosに比べてRamos-RRのCD55の発現が増加することを確認できた。これは、リツキシマブの薬剤耐性にCD55が関与することを意味する。
【0148】
実験例10-2b:リツキシマブ耐性細胞株であるRamos-RRに対するリツキシマブとEP-10Hの併用効果
【0149】
CD55が過剰発現され、リツキシマブに対する耐性を示すRamos-RRにおいて、実験例10-1の方法でリツキシマブとEP-10Hの併用投与を通じて細胞死滅能を確認した(
図5b)。リツキシマブはRamosで細胞死滅を誘導した一方で、Ramos-RRでは細胞死滅誘導程度がRamosに比べて低かった。しかし、EP-10Hと4-1Hの併用は、Ramos-RRで細胞死滅を増加させ、BJABと同様に、EP-10Hとの併用が4-1Hとの併用に比べてリツキシマブの細胞死滅能をさらに著しく増加させた。このような結果は、B細胞リンパ腫での原発癌(BJAB細胞株は、原発癌細胞株である)のみならず、既存の治療法に対して耐性を獲得した癌腫でもEP-10Hが治療効果を示すことを意味する。
【0150】
実験例10-3a:イマチニブ耐性細胞株であるK562-IRでのCD55の発現確認
【0151】
K562は、チロシンキナーゼ抑制剤であるイマチニブに対して反応性を有する白血病細胞株である。K562を用いて製作したイマチニブ耐性細胞株であるK562-IRにおいて、CD55発現を実験例10-2aと同一の方法で確認した。その結果、K562に比べてK562-IRのCD55発現が増加することを確認できた(
図6a)。これは、イマチニブの薬剤耐性にCD55が関与することを意味する。
【0152】
実験例10-3b:K562-IR細胞株でのイマチニブとEP-10Hの併用効果確認
【0153】
K562とCD55が過剰発現され、イマチニブに対する耐性を示すK562-IRを12ウェル細胞培養プレートに1ウェル当たり2×10
5個で分注した直後、イマチニブを2μMの濃度で、そして、併用投与効果を確認するためにイマチニブ2μMと4-1H又はEP-10Hをそれぞれ10μg/mlの濃度でRPMI培地で希釈し、最終的に500μlを処理し、37℃、5%のCO
2条件下で24時間にわたって培養した。その後、7-AADとFITCアネキシンVアポトーシス検出キットを用いてFACS分析装備であるAttune NxTで死滅細胞を分析した(
図6b)。
【0154】
イマチニブは、K562細胞株で細胞死滅を誘導した一方で、K562-IRでは効果を示さなかったが、EP-10H又は4-1Hと併用投与すると、K562-IRで細胞死滅を誘導した。また、EP-10Hとイマチニブの併用は、4-1Hとイマチニブの併用に比べてさらに大きい細胞死滅効果を示した。このような結果は、チロシンキナーゼ抑制剤であるイマチニブの耐性の原因がCD55であることを実験例10-3aの結果と共に立証し、EP-10Hを用いたCD55の阻害は、イマチニブの耐性を克服する効果的な戦略であることを意味する。イマチニブは、白血病の治療に広く使用される長期服用薬物であって、長期服用によって誘導され得る薬物の耐性克服戦略が切実に必要である。そこで、EP-10Hを用いたイマチニブの耐性克服戦略は、白血病の治療に非常に効果的なものとして期待される。
【0155】
実験例10-4a:ゲフィチニブ耐性細胞株であるPC9-GRでのCD55の発現確認
【0156】
PC9は、チロシンキナーゼ抑制剤であるゲフィチニブに対する反応性を有する非小細胞肺癌(NSCLC)細胞株である。PC9を用いて製作したゲフィチニブ耐性細胞株であるPC9-GRにおいて、CD55発現を実験例10-2aの方法で確認した結果、PC9に比べてPC9-GRのCD55発現が増加することを確認できた(
図7a)。これは、ゲフィチニブの薬剤耐性にCD55が関与することを意味する。
【0157】
実験例10-4b:PC9-GRでのゲフィチニブとEP-10Hの併用効果確認
【0158】
NSCLC細胞株であるPC9とCD55が過剰発現され、ゲフィチニブに対する耐性を示すPC9-GRを12ウェル細胞培養プレートに1ウェル当たり1×10
5個で分注した後、37℃、5%のCO
2条件下で培養した。分注してから24時間後に、ゲフィチニブを5μg/mlの濃度で、そして、併用投与効果を確認するためにゲフィチニブ5μg/mlと4-1H又はEP-10Hをそれぞれ5μg/mlの濃度でRPMI培地で希釈し、最終的に500μlを処理した後、37℃、5%のCO
2条件下で24時間にわたって再び培養した。その後、7-AADとFITCアネキシンVアポトーシス検出キットを用いて、FACS分析装備であるAttune NxTで死滅細胞を分析した(
図7b)。
【0159】
ゲフィチニブは、NSCLC細胞株であるPC9細胞株で細胞死滅を誘導した一方で、PC9-GRでは効果を示さなかったが、EP-10H又は4-1Hとゲフィチニブの併用は、PC9-GRで細胞死滅を誘導した。また、EP-10Hとゲフィチニブの併用は、4-1Hとゲフィチニブの併用に比べてさらに大きい細胞死滅効果を示した。このような結果は、標的抗癌剤のうちチロシンキナーゼ抑制剤であるゲフィチニブの耐性の原因がCD55であることを実験例10-4aの結果と共に立証し、EP-10Hを用いたCD55の阻害は、ゲフィチニブの耐性を克服する効果的な戦略であることを意味する。ゲフィチニブは、治療剤が多くないNSCLCに効果的な薬物であって、治療剤の他のオプションが多くない状況で薬物の耐性が現れると2次薬物の選択が難しいので、薬物の耐性を克服する戦略が切実に必要である。EP-10Hを用いたゲフィチニブの耐性克服戦略は、NSCLC治療に非常に効果的なものとして期待される。
【0160】
実施例11:EP-10Hを用いた二重抗体の製作及び効能確認
【0161】
実施例10において、EP-10Hと多様な薬物の併用効果を確認した。実施例10の実験例10-1、2で確認したリツキシマブとの併用効果結果に基づいて、互いに異なる抗原をターゲットとする二つの抗体を併用する方法と、一つの抗体で二つの抗原を同時にターゲットとし得る二重抗体の癌細胞死滅能とを比較するために、リツキシマブとEP-10Hを用いてCD20 x CD55二重抗体を製作し、二重抗体の癌細胞死滅能力を併用投与と比較して確認した。
【0162】
実験例11-1.動物細胞発現のための二重抗体(CD20 XCD55)クローニング
【0163】
本発明では、従来に報告されたCD20とCD55を同時にターゲットとする二重抗体(Macor,et al.,Leukemia,29(2):406-14,2014)とは相違する新規の二重抗体を開発したので、本発明者等は、二重抗体の形態による効能を比較するために、リツキシマブとEP-10Hの遺伝子を用いてCD20とCD55を同時にターゲットとする二重抗体をクローニングした。本発明で製作された二重抗体は、SBU(SpecificBi-functionalUnit)と命名した(
図8)。
【0164】
SBU形態のCD20 X CD55二重抗体は、重鎖同士の所望でないペアと結合することを防止するためにノブ-イントゥ-ホール技法を使用し、軽鎖同士の誤った結合を防止するためにはGly及びSerで構成されたリンカーを使用した。CD55-scFv-ノブ(VL-linker20-VH-CH2-CH3)とCD20-Fab-ホール(VL-CK-linker40-VH-CH1-CH2-CH3)形態でそれぞれクローニングを行い、CD55-scFv-ノブの場合は、実施例6で製作したEP-10Hを鋳型として使用し、表8のプライマーの組み合わせを用いてPCRを行った。増幅された遺伝体は、BssHIIとXbaI(New England Biolab、イギリス)酵素を処理し、同様に、同一の制限酵素で処理された動物細胞発現用ベクターであるpMAZベクターにライゲーションした。ライゲーションが完了したプラスミドは、DH5αコンピテントセル(New England Biolab、イギリス)に熱衝撃を加えて形質転換し、確保したコロニーを大量培養することによってプラスミドを収得した。
【0165】
CD20-Fab-ホール(VL-CK-linker40-VH-CH1-CH2-CH3)形態の製作のために、Drug Data Bankに公開されたリツキシマブ配列に基づいて表9のプライマーの組み合わせを用いてPCRを行った。増幅された遺伝体は、BssHIIとXbaI酵素を処理し、同様に、同一の制限酵素で処理された動物細胞発現用ベクターであるpMAZベクターにライゲーションした。ライゲーションが完了したプラスミドは、DH5αコンピテントセル(New England Biolab、イギリス)に熱衝撃を加えて形質転換し、確保したコロニーを大量培養することによってプラスミドを収得し、配列分析(表10)を完了した。
【0166】
【0167】
CD55-scFv-ノブクローニングに使用されたプライマー
【0168】
【0169】
CD20-Fab-ホールクローニングに使用されたプライマー
【0170】
【0171】
SBU形態のCD55-scFv-ノブとCD20-Fab-ホールの可変領域のアミノ酸配列
【0172】
実験例11-2.動物細胞での発現及び精製
【0173】
前記実験例11-1で製作したDNAの発現は、上述した実施例2と同一の方法で行った。SBU形態のCD20X CD55二重抗体は、配列番号47、48のそれぞれのプラスミドをポリエチレンイミン(PEI)(Polysciences、米国)と150mMのNaClを用いてHEK293F細胞(Invitrogen、米国)に形質導入し、Freestyle 293発現培地(Invitrogen、米国)で37℃の温度、8%のCO
2及び55%の湿度条件下で7日間培養した。SBUと類似する形態の二重抗体が報告されたが(Moore,et al.,A robust heterodimeric Fc platform engineered for efficient development of bispecific antibodies of multiple formats.Methods,154:38-50)、前記文献に開示された二重抗体の場合、発現時に3種のDNAが必要である。3種のDNAが必要である従来の二重抗体の製造方法と異なり、本発明のSBUは、軽鎖同士の誤った結合を防止するためにGly及びSerで構成されたリンカーを使用することによって、2種のDNAで二重抗体の発現が可能である。発現細胞培養液を4,000rpmで10分間遠心分離した後、上澄み液を採取してから0.22μmのフィルターを通じてろ過した。ろ過された上澄み液は、4℃でKappaSelect(GE Healthcare、米国)レジン1mlに結合するように誘導した。結合されたレジンは、10cv(column volume)のPBS溶液で洗浄した後、100mMのグリシン-HCl(pH2.7)溶液を用いて結合された抗体を溶出した後、1Mのトリス-HCL(pH9.0)で中和した。pH7.2-7.4のPBSで緩衝液の交換を行った後、SDS-PAGEを通じて精製された抗体の軽鎖と重鎖の大きさ及び純度を確認した結果、理論的計算値と一致する分子量及び高い純度を確認できた(
図9)。SBU形態の二重抗体は、CD20結合部位がFabで、CD55結合部位がscFvであるヘテロ形態である。FabのCカッパ(kappa)部分を用いてプロテインLで精製すると、二重抗体の精製時に生成可能性が最も高いと知られているノブ-ノブホモダイマー又はノブモノマー(Giese,et al.,Biotechnol Prog,34(2)397-404)の生成を抑制し、所望の形態であるヘテロダイマーのみを得ることができる。
【0174】
実験例11-3.ELISAを通じた二重抗体の結合力確認
【0175】
前記実験例11-2で製作したCD20X CD55二重抗体がターゲットとするそれぞれの抗原であるCD20及びCD55に対する親和度を間接ELISAで確認した。間接ELISAは、前記実施例3の方法で行い、CD20とCD55の全てにおいて優れた結合力を示した(
図10a及び
図10b)。特に、SBU形態のCD20X CD55二重抗体は、CD20に対してMacorが著述した先行文献に開示された形態のCD20 XCD55二重抗体より高い親和度を示し、CD55に対してMacorが著述した先行文献に開示された形態であるCD20 XCD55二重抗体と類似する親和度を示した。CD20が過剰発現される血液癌治療剤として使用可能なCD20 XCD55二重抗体としては、CD20に対する親和度がさらに高いSBU形態のCD20 X CD55二重抗体がさらに効果的である。
【0176】
実験例11-4.BJABでのCD20X CD55二重抗体の細胞死滅能確認
【0177】
前記実験例10-1の方法でCD20X CD55二重抗体の細胞死滅能を確認した。1サンプル当たり5×105個のBJAB細胞にリツキシマブを20μg/mlの濃度で、併用投与効果を確認するためにEP-10Hとリツキシマブのそれぞれを20μg/mlの濃度で、そして、CD20X CD55二重抗体のうちMacorが著述した先行文献に開示された形態とSBU形態をそれぞれ20μg/mlの濃度で20%の補体血清ヒト(complement sera human)(Sigma、米国)が添加されたRPMI培地で希釈し、最終的に100μlを処理した。それ以外は、実験例10-1と同一の方法で行った。
【0178】
その結果、リツキシマブに対して反応性が低いBJAB細胞でのCD20 X CD55二重抗体は、補体血清ヒト(complement sera human)のみを処理した対照群(control)に比べて有意な差の細胞死滅能を示し、SBUは、特にリツキシマブに比べて有意な差の細胞死滅能を示した(
図11a及び
図11b)。このような結果は、互いに異なる抗原をターゲットとする二つの抗体を併用投与する場合に比べて、二つの抗原を同時にターゲットとし得る一つの二重抗体が癌細胞に対するCDC誘導により効果的であり、代表的なCD20 X CD55二重抗体であるMacorの二重抗体よりも本発明のSBUが癌細胞に対するCDC誘導により適していることを意味する。また、SBU形態のCD20X CD55二重抗体は、B細胞リンパ腫のうち悪性と知られているバーキットリンパ腫の効果的な治療剤になり得る。
【0179】
実験例11-5.RamosでのCD20X CD55二重抗体の細胞死滅能確認
【0180】
前記実験例11-4の方法を用いてRamos細胞株でのCD20X CD55二重抗体の細胞死滅能を確認した(
図12a及び
図12b)。その結果、リツキシマブ反応性Ramos細胞でのCD20 X CD55二重抗体は、リツキシマブに比べて有意な差の細胞死滅能を示した。また、Macorの二重抗体より本発明のSBUが優れた細胞死滅能を示した。このような結果は、CD20X CD55二重抗体が、リツキシマブ反応性癌腫でリツキシマブより効果的な抗癌効果を示すことができ、CD20が発現された血液癌でのSBUは、CD20 X CD55二重抗体のうち効果的な治療剤として適用され得ることを意味する。
【0181】
実験例11-6.Ramos-RRでのCD20X CD55二重抗体の細胞死滅能確認
【0182】
前記実験例11-4の方法を用いてRamos-RR細胞株でのCD20X CD55二重抗体の細胞死滅能を確認した(
図13a及び
図13b)。その結果、リツキシマブに対して反応性を示さないRamos-RR細胞でのCD20 X CD55二重抗体は、リツキシマブに比べて有意な差の細胞死滅能を示した。BJAB細胞株の結果と同一に、二重抗体のうちMacorの二重抗体より本発明のSBUが遥かに優れた細胞死滅能を示した。このような結果は、SBU形態のCD20 XCD55二重抗体が、CD20が発現された血液癌のうちリツキシマブ耐性を示す癌腫に効果的な治療剤として適用され得ることを意味する。
【0183】
実験例11-7.SBU形態のCD20X CD55二重抗体のCDC活性化分析
【0184】
前記実験例11-5において、Ramos-RR細胞ペレットのフローサイトメトリー前のリツキシマブとSBU形態のCD20X CD55二重抗体を処理した上澄み液を採取し、CDC活性化を分析した(
図14)。CDCメカニズムは、C1qが抗体と結合することを媒介にして起こる反応であって、その副産物であるC4dの生産量に基づいて全体のCDC過程中の中間段階で活性化分析が可能である。それぞれの上澄み液でのC4d生産量を確認できるELISAキット(Quidel、米国)を通じて分析したとき、SBU形態のCD20X CD55二重抗体を処理した上澄み液では、リツキシマブを処理した上澄み液に比べて多くのC4dが生産され、その差は有意的であった。このような結果は、SBU形態のCD20X CD55二重抗体の優れた細胞死滅能がCDC活性化メカニズムによることを明らかに示す。
【0185】
以上では、本発明の特定の部分を詳細に記述したが、当業界で通常の知識を有する者にとって、このような具体的な技術は好適な具現例に過ぎないので、本発明の範囲がこれに制限されないことは明らかである。よって、本発明の実質的な範囲は、添付の特許請求の範囲及びその等価物によって定義されると言えるだろう。
【配列表】
【国際調査報告】