(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-17
(54)【発明の名称】タイヤのトレッド溝の疎水性パターン
(51)【国際特許分類】
B60C 11/13 20060101AFI20240110BHJP
B60C 11/03 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B60C11/13 A
B60C11/13 B
B60C11/03 100A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023541081
(86)(22)【出願日】2021-12-23
(85)【翻訳文提出日】2023-08-08
(86)【国際出願番号】 EP2021087575
(87)【国際公開番号】W WO2022148674
(87)【国際公開日】2022-07-14
(32)【優先日】2021-01-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518333177
【氏名又は名称】ブリヂストン ヨーロッパ エヌブイ/エスエイ
【氏名又は名称原語表記】BRIDGESTONE EUROPE NV/SA
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100174023
【氏名又は名称】伊藤 怜愛
(72)【発明者】
【氏名】前田 晋平
(72)【発明者】
【氏名】パスクァーレ アゴレッティ
(72)【発明者】
【氏名】ジュゼッペ ロドリケズ
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131AA02
3D131BB11
3D131BC20
3D131BC31
3D131EB14V
3D131EB14X
3D131EB18V
3D131EB18X
3D131EB34V
3D131EB34X
3D131LA28
(57)【要約】
空気入りタイヤ用トレッドであって、複数の溝を含み、溝は、溝表面(122)と、溝表面(122)における配置において互いに間隔を空けている複数の要素(410)とを含む。各要素(410)は、容積を定義する形状を有し、形状は、溝表面(122)に平行な平面(420)における第1断面形状(425)と、溝表面(122)に垂直な平面(430)における第2断面形状(435)とを含む。配置は、要素(410)間の空間における空隙容積と、0.5~0.75の空隙率とを含み、空隙率は、配置における要素(410)の全容積に対する空隙容積の比率として定義される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気入りタイヤ用のトレッドであって、
複数の溝を含み、
前記溝は、
溝表面と、
前記溝表面における配置において互いに間隔を空けている複数の要素と、
を含み、
前記要素は、それぞれ、容積を定義する形状を有し、前記形状は、
前記溝表面に平行な平面における第1断面形状であって、前記溝表面において定義される前記第1断面形状の最小寸法は、前記要素の底部の幅wを定義し、0.1mm≦w≦3mmである、第1断面形状と、
前記溝表面に垂直な平面における第2断面形状であって、前記溝表面における前記底部から頂部の前記第2断面形状の最大寸法は、前記要素の高さhを定義し、0.1mm≦h≦3mmである、第2断面形状と、
少なくとも1であり、かつ最大30である、前記高さhを前記幅wで割ったアスペクト比と
を含み、
前記配置は、
前記要素間の空間における空隙容積と、
0.5~0.75の空隙率であって、前記配置における前記要素の全容積に対する前記空隙容積の比率として定義される空隙率と、
を含む、トレッド。
【請求項2】
前記第2断面形状は、前記幅wおよび前記高さhを含み、前記第2断面形状の前記底部における前記幅wは、前記第2断面形状の前記頂部における対応する幅w’より大きい、請求項1に記載のトレッド。
【請求項3】
空気入りタイヤ用のトレッドであって、
複数の溝を含み、
前記溝は、
溝表面と、
前記溝表面における配置において互いに間隔を空けている複数の要素と、
を含み、
前記要素は、それぞれ、
前記溝表面に平行な平面における第1断面形状であって、前記溝表面において定義される前記第1断面形状の最小寸法は、前記要素の底部の幅wを定義する、第1断面形状と、
前記溝表面に垂直な平面における第2断面形状であって、前記溝表面における前記底部から頂部の前記第2断面形状の最大寸法は、前記要素の高さhを定義する、第2断面形状と、
を含む形状を有し、
前記第2断面形状は、前記幅wおよび前記高さhを含み、前記第2断面形状の前記底部における前記幅wは、前記第2断面形状の前記頂部における対応する幅w’より大きい、トレッド。
【請求項4】
前記第2断面形状は、概して、前記底部から前記頂部へと先細になる、請求項1~3のいずれか一項に記載のトレッド。
【請求項5】
前記第2断面形状は、曲線状の、フィレットを付けた、丸みを帯びた、または面取りをした頂部を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のトレッド。
【請求項6】
前記第2断面形状は、概して、放物線状または双曲線状である、請求項1~5のいずれか一項に記載のトレッド。
【請求項7】
前記第1断面形状は、前記幅wより大きい長さlを有する、請求項1~6のいずれか一項に記載のトレッド。
【請求項8】
前記第1断面形状は、前記幅wよりずっと大きい長さlを定義する細長いストリップである、請求項1~7のいずれか一項に記載のトレッド。
【請求項9】
前記要素は、それぞれ、約0.1mm
3より大きい容積を定義する形状を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載のトレッド。
【請求項10】
前記複数の要素の前記配置は、規則的なパターンである、請求項1~9のいずれか一項に記載のトレッド。
【請求項11】
前記要素は、50μm~1.5mmの典型的なまたは平均的な間隔で、前記配置において互いに間隔を空けている、請求項1~10のいずれか一項に記載のトレッド。
【請求項12】
成形技術を使用する、請求項1~11のいずれか一項に記載のトレッドの作成方法。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか一項に記載のトレッドを作成するために構成された金型。
【請求項14】
レーザ彫刻技術を使用する、請求項1~11のいずれか一項に記載のトレッドの作成方法。
【請求項15】
空気入りタイヤ用のトレッドであって、
複数の溝を含み、
前記溝は、
溝表面と、
前記溝表面における配置において互いに間隔を空けている複数の要素と、
を含み、
前記要素は、それぞれ、容積を定義する円柱または三角柱の形状を有し、
前記配置は、
前記要素間の空間における空隙容積と、
0.5~0.75の空隙率であって、前記配置における前記要素の全容積に対する前記空隙容積の比率として定義される空隙率と、
を含む、トレッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤのトレッド溝の疎水性パターン、ひいては排水性の高いトレッドに関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤの分野における研究の一部は、ウェットグリップに関する性能を向上させたトレッドを得ることに集中している。
【0003】
当業者には知られているように、濡れた状態の路面におけるトレッドのグリップは、路面とトレッドとの間に生じる水の層を除去する、トレッド自体の能力の作用である。この水の層は、必然的に路面でのトレッドの効果的なグリップに支障を来す。
【0004】
水の層の除去を促すため、トレッドには溝が備わっている。実際、トレッドの溝により、排水工程が実施される。
【0005】
この点に関して、トレッドと路面との間にある水の層がトレッドから除去される第1排水工程と、トレッドのブロックが路面に付着する接触工程とを、空気入りタイヤの濡れた状態での性能がどのようにもたらすかを説明することが重要である。排水工程が短くなり、より多くの水が除去されるほど、ウェットグリップはより効率的になる。
【0006】
周知のように、排水工程を短縮し、排出される水の量も増加させるための解決策は、トレッド内の溝の容積を増加させることである。本解決策は、排水工程を短縮し、より効果的にすることには成功するが、トレッドと路面との間の接触面を減少させ、接触工程自体、ひいては制動および操縦動作に不利益をもたらす。さらに、溝の容積の増加がトレッドの耐磨耗性に悪影響をもたらしうることが知られている。
【0007】
タイヤ産業において、トレッドの溝の特定の構造が水をより迅速に排出することに有利に働きうることが知られている。そのような解決策は、溝表面にのみ介入し、溝の数および/または寸法には介入しないため、従って、トレッド自体と路面との間の接触面を減少させないため、非常に有利である。
【0008】
より良好な疎水性を付与し、排水性を高められるように、タイヤトレッドの溝表面を改良する必要性が残っている。
【発明の概要】
【0009】
本発明の第1態様によれば、空気入りタイヤ用トレッドが提供され、トレッドは、
複数の溝を含み、溝は、
溝表面と、
溝表面における配置において互いに間隔を空けている複数の要素と
を含み、
各要素は、容積を定義する形状を有し、形状は、
溝表面に平行な平面における第1断面形状であって、溝表面において定義される第1断面形状の最小寸法は、要素の底部の幅wを定義し、0.1mm≦w≦3mmである、第1断面形状と、
溝表面に垂直な平面における第2断面形状であって、溝表面における底部から頂部の第2断面形状の最大寸法は、要素の高さhを定義し、0.1mm≦h≦3mmである、第2断面形状と、
少なくとも1であり、かつ最大30である、高さhを幅wで割ったアスペクト比と
を含み、
配置は、
要素間の空間における空隙容積と、
0.5~0.75の空隙率であって、配置における要素の全容積に対する空隙容積の比率として定義される空隙率と
を含む。
【0010】
発明者らは、空気入りタイヤにおけるトレッドの溝の表面の少なくとも1つにおいて、間隔を介して要素を配置することにより、溝表面の物性を変更することが可能であると理解した。特に、溝表面に要素を組み込むことにより、溝表面の疎水性を変化させることが可能である。
【0011】
本発明の意味の範囲内で、表面の疎水性は、前記表面と接触したときに水の静滴により形成される接触角に対応する。従って、90°より大きい接触角は、疎水性を有する表面に対応し、90°未満の接触角は、親水性を有する表面に対応する。
【0012】
要素間の空間は、配置における要素間で、すなわち、溝表面の平面と要素の頂部を横切る平面(これらの2つの平面は、高さh分だけ離れている)との間で利用可能な3次元空間により定義されることが理解されるであろう。要素は、それらが初期の溝表面から材料を取り去ることにより、すなわち、溝表面を低下させて作成されたとしても、溝表面からの突起と見なされてよい。溝表面は、トレッドを外側から見たときに、溝内で最も低い表面である。空隙容積は、そのため、要素の全容積のマイナスと見なされてよい。言い換えれば、空隙容積は、要素間の利用可能な全面積をその高さhで乗じたものとして定義される。空隙容積は、要素が初期の溝表面に材料を追加することにより、または初期の溝表面から材料を取り去ることにより形成されたかにかかわらず、定義されうる。
【0013】
空隙率は、配置における要素の全容積に対する全空隙容積の比率、例えば、溝表面における配置の任意の全容積における全要素容積で割った全空隙容積として定義されることが理解されるであろう。例えば、空隙率が0.5であれば、要素の容積は、配置内の空隙容積の2倍となる。空隙率が増加するにつれ、全空隙容積が増加し、隣接する要素間の空間が増加するため、少なくとも配置が新しく形成されるとき、要素によりもたらされる接触角が大きくなることが期待される。
【0014】
しかしながら、要素の相対容積が空隙容積より大きいままとなるように、空隙率を0.75までに制限することが有益であることが分かっている。発明者らは、要素の容積はそれらの耐久性にとって重要であり、それらの容積を増加させることにより経年劣化への耐性がもたらされ、さもなくば、経時的な要素の腐食が溝表面の疎水性を低下させる傾向があることに気が付いた。従って、空隙率は、0.5から0.75の間で選択される。これにより、配置が新しく形成されたときの良好な疎水性と、トレッドの耐用期間にわたる経年劣化への耐性との間に均衡がもたらされることが分かっているためである。好適ないくつかの実施形態において、空隙率は、例えば、0.55から0.75の間、例えば、0.6から0.75の間、例えば、0.65から0.75の間、例えば、0.7から0.75の間、例えば、0.5から0.7の間、例えば、0.5から0.65の間、例えば、0.5から0.6の間、例えば、0.5から0.55の間で選択される。
【0015】
複数の要素が溝表面に配置されているとは、それらが溝表面と物理的に異なること、例えば、表面から突出しているか、表面にエンボス加工して作成されているかを意味している。溝表面に存在する要素は、表面の疎水性を修正する効果を有する。実施形態によっては、複数の要素は、複数の溝表面の内、少なくとも2つ、例えば、少なくとも3つに配置される。実施形態によっては、複数の要素は、溝表面の実質的に全てに配置され、例えば、溝表面は、要素で完全に覆われる。好適な実施形態においては、要素は、溝表面から突出している。好ましくは、要素は、溝表面において突出している要素の配置において、互いに間隔を空けている。
【0016】
溝が1つまたは複数の溝表面を有してよいことが理解されるであろう。例えば、溝は、底面と2つの側壁面とを有してよく、溝は、タイヤトレッドの表面に垂直な平面において、実質的にU字形の断面を有する。しかしながら、溝は、任意の適切なおよび/または望ましい断面を有し、ひいては任意の適切なおよび/または望ましい数の表面を含んでよいことが理解されるであろう。実施形態によっては、溝は、例えば、多角形の断面を有する直線面のみを含んでよい。実施形態によっては、溝は、曲面、例えば、半円形の断面を含んでよい。実施形態によっては、溝は、曲線状のおよび/または直線の面の任意の適切なおよび/または望ましい組み合わせ、例えば、直線の側面と曲線状の(例えば、ドーム型の)底面とを有する弾丸形を含んでよい。
【0017】
溝表面の疎水性は、要素の大きさ(例えば、要素容積)、要素の形状(例えば、第1および第2断面形状、アスペクト比)、および隣接する要素間の空間(例えば、空隙容積)の1つまたは複数の影響を直接受けうることが理解されるであろう。空隙率は、従って、要素の容積と、要素間の空間により定義される空隙容積とを結び付けるため、対象の主要パラメーターと見なされてよい。
【0018】
実施形態によっては、第2断面形状は、任意の適切なおよび/または望ましい形状であってよい。要素の全体形状は、例えば、概して、円筒形、円錐形、立方体、直方体、多角形、ピラミッド形、放物線状、または双曲線状であってよい。一連の実施形態において、第2断面形状は、正方形または長方形である。よって、要素の全体形状は、円柱または三角柱であってよい。
【0019】
本発明の第2態様によれば、空気入りタイヤ用トレッドが提供され、トレッドは、
複数の溝を含み、溝は、
溝表面と、
溝表面における配置において互いに間隔を空けている複数の要素と
を含み、
各要素は、容積を定義する円柱または三角柱の形状を有し、
配置は、
要素間の空間における空隙容積と、
0.5~0.75の空隙率であって、配置における要素の全容積に対する空隙容積の比率として定義される空隙率と
を含む。
【0020】
本第2態様の実施形態において、溝表面の配置は、円柱および/または三角柱状の複数の要素を含む。これにより、水滴と表面との間の接触角が、より短い排水工程を確保するポイントまで大きくなることが確認されている。実際、当業者には知られているように、水滴と表面との間の接触角が大きくなるほど、より多くの水が表面から排出される傾向にあり、従って、排水工程が短縮される。
【0021】
本第2態様に係る少なくともいくつかの実施形態は、第1態様の特徴の1つまたは複数を含んでよい。本第2態様に係るいくつかの実施形態において、円柱または三角柱の形状は、溝表面に平行な平面における第1断面形状を含み、溝表面において定義される第1断面形状の最小寸法は、要素の幅wを定義し、0.1mm≦w≦3mmである。本第2態様に係るいくつかの実施形態において、円柱または三角柱の形状は、溝表面に垂直な平面における第2断面形状を含み、溝表面からの第2断面形状の最大寸法は、要素の高さhを定義し、0.1mm≦h≦3mmである。本第2態様に係るいくつかの実施形態において、円柱または三角柱の形状は、少なくとも1であり、かつ最大30である、高さhを幅wで割ったアスペクト比を含む。
【0022】
発明者らは、概して、要素の容積が増加するにつれ、要素の頂部の表面積が増加し、(例えば、要素を含む溝表面の)接触角が小さくなり、要素が新しく形成されるとき、見かけの溝表面の疎水性が低下することを見出した。従って、要素の容積を最小化することにより、接触角が大きくなり、ひいてはトレッドの疎水性が向上することになると見なされてよい。要素の容積を減少させることにより、要素間の空間が増加し、それにより空隙率が増加する傾向もある。
【0023】
しかしながら、発明者らは、例えば、道路上でのタイヤの使用による、タイヤトレッドの経年劣化に伴って要素が腐食するにつれ、要素により溝表面に付与される疎水性が変化しうることも理解した。発明者らは、要素の容積が空隙容積と比べて少なすぎないように、空隙率を制限することが有益であることを見出した。要素の容積が大きい方が、概して、接触角の経時変化が小さいことがわかった。
【0024】
従って、発明者らは、要素の容積が小さいほど、要素の経年劣化に対する耐性が低下し、ひいてはより急速に要素が腐食し、要素により付与される疎水性が影響を受けうることを理解した。しかしながら、経年劣化が、要素の幾何学形状、ひいては溝表面の疎水性にどのような影響を与えるかを予測することは単純なことではない。発明者らは、要素の容積を最大化し、経年劣化耐性を向上させることと、突起の頂部の表面積を最小化することとの間で妥協点を見出すことができることを理解した。
【0025】
第1態様のいくつかの実施形態においては、第2断面形状は、任意の適切なおよび/または望ましい形状であってよい。しかしながら、発明者らは、驚くべきことに、頂部(例えば、水と接触することになる表面)よりも(例えば、溝表面に隣接する)底部の寸法が広い第2断面形状を有するように要素を選択することにより、妥協点が見出されうることを見出した。発明者らは、要素の底部を広くすることにより、例えば、要素の頂部の表面積を減少させることにより、表面の疎水性にマイナスの影響を与えることなく要素容積を増加させうることを見出した。その結果、発明者らは、驚くべきことに、(例えば、要素の底部から頂部まで一定の幅を有する要素形状ではなく)要素が非柱状構造であるような、長方形ではない第2断面形状を有するように要素を構成することが望ましいことを見出した。そのような要素は、円筒形または三角柱の形状を有さない。
【0026】
各要素は、例えば、第1断面形状が幅および長さの両方を有する場合、溝表面に垂直な平面において1つより多い第2断面形状を含みうる形状を有する。溝表面の疎水性に最も影響がある第2断面形状は、溝表面において定義される最小寸法を含む第2断面形状、すなわち、その底部において要素の幅wを含む第2断面形状である。従って、好適な実施形態においては、第2断面形状は、幅wと高さhとを含み、第2断面形状の底部における幅wは、第2断面形状の頂部における対応する幅w’より大きい。言い換えれば、第2断面形状は、(溝表面における)その底部から(溝表面から最も離れた)その上面へと先細になる。好ましくは、第2断面形状は、長方形または正方形ではないように選択される。
【0027】
これは、それ自体が新規かつ独創的であると見なされる。従って、第3態様から見たとき、本発明は、空気入りタイヤ用トレッドを提供し、トレッドは、
複数の溝を含み、溝は、
溝表面と、
溝表面における配置において互いに間隔を空けている複数の要素と
を含み、
各要素は、
溝表面に平行な平面における第1断面形状であって、溝表面において定義される第1断面形状の最小寸法は、要素の底部の幅wを定義する、第1断面形状と、
溝表面に垂直な平面における第2断面形状であって、溝表面における底部から頂部の第2断面形状の最大寸法は、要素の高さhを定義する、第2断面形状と
を含む形状を有し、
第2断面形状は、幅wおよび高さhを含み、第2断面形状の底部における幅wは、第2断面形状の頂部における対応する幅w’より大きい。
【0028】
要素の底部を広くすることにより、第2断面形状の頂部によりもたらされる表面の疎水性にマイナスの影響を与えることなく、それらの容積を増加させることができる。発明者らは、そのような要素により、経年劣化への耐性が向上することを見出した。従って、有利なことに、広い底部を有する第2断面形状を有する要素の配置が、要素の容積を最大化して経年劣化への耐性を向上させることと、要素と静的水滴との間の接触面積を最小化することとの間の良好な妥協点を実現することが、発明者らにより見出された。第2断面形状の頂部における対応する幅w’は、底部における幅wと同一の向きで測定されるものであることが理解されるであろう。
【0029】
本第3態様に係る少なくともいくつかの実施形態は、第1態様の特徴の1つまたは複数を含んでもよい。本第3態様に係るいくつかの実施形態においては、各要素の形状は、容積を定義し、配置は、要素間の空間における空隙容積と、0.5~0.75の空隙率とを含み、空隙率は、配置における要素の全容積に対する空隙容積の比率として定義される。本第3態様に係るいくつかの実施形態においては、要素の幅wは、0.1mm≦w≦3mmとなるように選択される。本第3態様に係るいくつかの実施形態においては、要素の高さhは、0.1mm≦h≦3mmとなるように選択される。本第3態様に係るいくつかの実施形態においては、形状は、少なくとも1であり、かつ最大30である、高さhを幅wで割ったアスペクト比を含む。
【0030】
さらに、発明者らは、要素の上面(例えば、水滴と接触する表面)における屈曲度が大きいほど、静的水滴の接触角が大きくなることを見出した。従って、例えば、発明者らは、静的水滴と(例えば、長方形の第2断面形状を含む)柱状の要素の配置を含む溝との間に形成される接触角は、静的水滴と、曲線状の、フィレットを付けた、丸みを帯びた、または面取りをした頂部を有する第2断面形状を含む要素の配置との間に形成される接触角より小さい(例えば、疎水性が低い)ことを発見した。この効果は、フィレットの曲率半径(例えば、頂部の丸みの程度)が増加する、または(例えば、面取りした面または曲面の)斜面の勾配が減少するにつれ、さらに観察される(例えば、丸みが増加する、または斜面勾配が減少するにつれ、静的水滴と要素との間に形成される接触角が大きくなり、例えば、疎水性が高くなる)。
【0031】
実施形態によっては、第2断面形状は、例えば、真っすぐな側面を有し、概して、その底部からその頂部へと先細になる。例えば、第2断面形状は、概して、三角形、先端を断ち切った三角形、または台形であってよい。しかしながら、発明者らは、第2断面形状の側面と頂部との間では角を避けることが有益であることを更に見出した。上記のように、いくつかの好適な実施形態においては、第2断面形状は、曲線状の、フィレットを付けた、丸みを帯びた、または面取りをした頂部を含む。少なくともいくつかの実施形態において、第2断面形状は、その底部からその頂部へと先細になり、底部から頂部に延びる側面と、側面と頂部との間の曲線状のまたは角度のついた移行部とを含み、頂部は平坦である。側面は、底部から頂部に約90°の角度で(例えば、フィレットを付けたまたは面取りをした頂部を有する柱状)、または25°~85°の内角で(例えば、先端を断ち切った頂部を有する三角形)延びてよい。側面は、真っすぐでも曲がっていてもよい。
【0032】
いくつかの好適な実施形態においては、第2断面形状は、概して、半円形、放物線状、双曲線状、または半楕円形であってよい。実施形態によっては、第2断面形状は、概して、放物線状または双曲線状である(例えば、要素の全体は、放物面または双曲面の形状であり、例えば、底部において先端を断ち切った、連続した曲線状の構造である)。
【0033】
実施形態によっては、第2断面形状は、多角形であり、好ましくは、(例えば、形状の側面から頂部に段階的変化を作り出すため)頂部が扁平である、または丸みを帯びている。実施形態によっては、第2断面形状は、4つの辺を持つ多角形、例えば、90°より大きい4つの内角と90°以下の2つの内角を有する正方形または長方形(例えば、好ましくは、90°以下の2つの角は、溝表面に隣接する断面の底部にある)、例えば、台形である。実施形態によっては、第2断面形状は、丸みを帯びた台形である。実施形態によっては、第2断面形状は、6つの辺を持つ多角形、例えば、要素の上面に面取りをした縁がある正方形または長方形である。実施形態によっては、第2断面形状は、側面から頂部に移行する曲線縁、例えば、要素の側面から上面に段階的変化を作り出すため、例えば、頂部にフィレットを付けた正方形または長方形を含む。実施形態によっては、第2断面形状は、先端を断ち切ったまたは扁平な双曲線状であり、例えば、双曲線の形状は、例えば、最も狭い部分で先端を断ち切った平坦な頂部を含み、断面の底部の幅が断面の頂部より広くなるようにする。実施形態によっては、第2断面形状は、先端を断ち切ったまたは扁平な放物線状であり、例えば、放物線の形状は、平坦な頂部を含む。実施形態によっては、第2断面形状は、少なくとも1つの真っすぐの縁と少なくとも1つの曲線縁とを含んでよい。
【0034】
好ましくは、第2断面形状の頂部は、とがった角がない平坦な頂部を含み、例えば、頂部は、曲線状の側面または丸みを帯びた縁を含み、3次元の要素が平坦な要素上面から側面に移行する丸みを帯びた形状を含むようにする。例えば、実施形態によっては、平面の頂部は、正弦または円錐関数によって形状の底部へと移行し、要素の底部の幅が要素の頂部より大きくなるようにしてよい。
【0035】
実施形態によっては、第2断面形状は、溝表面に垂直かつ周方向に垂直な平面にある。実施形態によっては、第2断面形状は、溝表面に垂直かつ周方向に平行な平面にある。
【0036】
実施形態によっては、高さhは、少なくとも0.2mm、0.3mm、0.4mm、0.5mm、0.6mm、0.7mm、0.8mm、または0.9mmである。実施形態によっては、高さhは、最大0.5mm、0.6mm、0.7mm、0.8mm、0.9mm、または1mmである。実施形態によっては、高さhは、0.1mm~1mmである。いくつかの他の実施形態においては、高さhは、最大1.5mm、2mm、2.5mm、または3mmである。
【0037】
実施形態によっては、要素のアスペクト比は、1より大きく、例えば、第2断面形状は、第1断面形状の幅、wより大きい、高さ、hを有する。好適な実施形態において、要素のアスペクト比は、実質的に1より大きく、例えば、幅、wに対する高さ、hの比率は、少なくとも1.5、2、3、または4である。
【0038】
各要素は、溝表面に平行な平面における第1断面形状を含む。実施形態によっては、第1断面形状は、任意の適切なおよび/または望ましい幾何学的形状であってよい。例えば、第1断面形状は、正方形、円、楕円形、長方形、三角形、多角形、数学記号、代数記号、不規則な多角形、例えば、ポリオミノ、例えば、テトロミノ、例えば、ペントミノであってよい。第1断面形状は、第2断面形状とは独立して選択または変更されてよく、結果として、要素はさまざまな異なる3次元形状となりうることが理解されるであろう。
【0039】
実施形態によっては、幅wは、少なくとも0.2mm、0.3mm、0.4mm、0.5mm、0.6mm、0.7mm、0.8mm、または0.9mmである。実施形態によっては、幅wは、最大0.5mm、0.6mm、0.7mm、0.8mm、0.9mm、または1mmである。実施形態によっては、幅wは、0.1mm~1mmである。いくつかの他の実施形態においては、幅wは、最大1.5mm、2mm、2.5mm、または3mmである。
【0040】
実施形態によっては、第1断面形状は、概して、一定の幅を有し、例えば、点状の要素であってよい。いくつかの他の実施形態においては、第1断面形状は、幅wより大きい長さlを有してよい。例えば、第1断面形状は、(任意に、曲線状の、フィレットを付けた、丸みを帯びた、または面取りをした頂部を有する)引き伸ばされた長方形であってよい。より一般的に、実施形態によっては、第1断面形状は、幅wよりずっと大きい長さlを定義する細長いストリップである。実施形態によっては、長さlは、少なくとも1mm、2mm、3mm、4mm、または5mmである。実施形態によっては、長さlは、最大5mm、10mm、15mm、または20mmである。実施形態によっては、長さlは、最大30mm、40mm、50mm、60mm、70mm、80mm、90mm、または100mmである。実施形態によっては、長さlは1mm~100mmである。
【0041】
実施形態によっては、細長いストリップは、部分的にまたは全体に、溝の周方向に沿って延びてよい。例えば、実施形態によっては、第1断面形状は、それ自体につながり、溝表面に沿って輪を形成する、引き伸ばされた長方形またはストリップであってよい。実施形態によっては、ストリップは、7:1以上の、例えば、10:1以上の、例えば、15:1以上の幅wに対する長さlのアスペクト比を有してよい。実施形態によっては、引き伸ばされた長方形は、7:1~X:1のアスペクト比を有してよく、Xはπd/wと等しく、dはトレッドの直径であり、wは溝幅である。これは、約1000mmの直径と20mmの例となる溝幅とを有する大きなトレッドの場合、Xは157であることを意味する。いくつかの他の実施形態においては、細長いストリップは、溝の周方向に対して0以外の角度で、例えば、少なくとも30°、40°、45°、50°、60°、70°、80°の角度で、または約90°の角度で(すなわち、溝の周方向に垂直に)延びてよい。
【0042】
より一般的に、第1断面形状は、溝表面に対して任意の適切なおよび/または望ましい向きを有してよいことが理解されるであろう。実施形態によっては、第1断面形状は、タイヤの外周および溝表面に平行に配向される長手方向軸を有してよい。例えば、第1断面形状が長方形であるとき、長方形は、タイヤの外周の周りに延びる一続きの線を形成するように、配向されてよい。実施形態によっては、第1断面形状は、溝の壁面に垂直に調整された長手方向軸を有してよく、例えば、第1断面形状は、溝の幅に渡って延びてよい。実施形態によっては、第1断面形状は、溝に渡って対角線上に延びてよく、例えば、線または引き伸ばされた長方形は、溝表面に渡って対角線上に延びてよい。
【0043】
要素が経年劣化への耐性を確実に示すため、好ましくは、要素容積は、約0.1mm3より大きい。実施形態によっては、要素は、0.2mm3より大きい、例えば、0.25mm3より大きい、例えば、0.3mm3より大きい、例えば、0.35mm3より大きい、例えば、0.4mm3より大きい、例えば、0.45mm3より大きい、例えば、0.5mm3より大きい、例えば、0.55mm3より大きい、例えば、0.6mm3より大きい要素容積を有してよい。発明者らは、要素容積を0.1mm3より大きくすると、タイヤが経年劣化したときでも比較的大きな接触角を維持しやすくなるが、容積が大きすぎると、効果は頭打ちになる傾向があることを認めた。要素容積が大きくなると、以下に述べるように、パターンの空隙率が影響を受けうる。そのため、要素は、最大約0.5mm3、例えば、最大約0.6mm3、例えば、最大約0.7mm3、例えば、最大約0.8mm3、例えば、最大約0.9mm3、例えば、最大約1.0mm3、例えば、最大約1.1mm3、例えば、最大約1.2mm3、例えば、最大約1.3mm3、例えば、最大約1.4mm3、例えば、最大約1.5mm3の要素容積を有してよい。実施形態によっては、要素は、0.1~1.5mm3の要素容積を有してよい。
【0044】
実施形態によっては、上記のように、要素は、点状ではなく、代わりに、幅wよりずっと大きい長さlを有する細長いストリップのように延びてよい。そのような要素の場合、要素容積は、0.1~1.5mm3の範囲のX倍となり、Xは、トレッドの直径dに対してπdである。
【0045】
空隙容積は、要素の間隔を介した配置、すなわち、要素間の間隔によって決まることは理解されるであろう。配置における隣接する要素間の間隔は、少なくとも第1最近接間隔、sにより定義されてよい。実施形態によっては、配置は、第2最近接間隔、s2により更に特徴付けられてよく、第2最近接間隔は、第1最近接間隔より大きい。そのような最近接間隔は、ランダムなまたは規則正しい配置のいずれかに対して定義されうる。
【0046】
実施形態によっては、複数の要素の配置は、ランダムな配置である。そのような配置において、要素は、配置がランダムであるにもかかわらず、定義された平均的な間隔で互いに間隔を空けてもよい。実施形態によっては、複数の要素の配置は、規則正しい配置である。規則正しい配置が単独で生じることもあれば、規則正しい配置が、例えば、パターンで、繰り返されることもある。いくつかの好適な実施形態においては、複数の要素の配置は、規則的なパターンである。要素は、任意の適切なおよび/または望ましいパターンで配置されてよいことが理解されるであろう。実施形態によっては、パターンは、例えば、全方向で同一な、等方性パターンであってよい。実施形態によっては、パターンは、異方性であってよく、例えば、パターンは、さまざまな方向に異なる最近接間隔を有してよい。
【0047】
実施形態によっては、パターンは、等方性であってよい。例えば、パターンは、立方体パターンであってよく、例えば、各要素(例えば、中心的な要素)は、4つの最近接要素から等しく間隔を空けて配置され、3つの最近接要素は、90度の角度または180度の角度のいずれか、例えば、繰り返し正方形パターンを形成する。実施形態によっては、パターンは、繰り返しダイヤモンドパターンであってよく、例えば、各要素(例えば、中心的な要素)は、4つの最近接要素から等しく間隔を空けて配置され、3つの最近接要素は、90度未満または180度未満のいずれかの角度を形成する。実施形態によっては、パターンは、繰り返し六角形パターンであってよく、例えば、各要素は、6つの最近接要素から等しく間隔を空けて配置される。
【0048】
実施形態によっては、パターンは、異方性であってよい。例えば、パターンは、長方形パターンであってよく、例えば、各要素(例えば、中心的な要素)は、中心的な要素に対して180度の2つの最近接要素と、中心的な要素に対して180度の2つの第2最近接要素とを有し、第1最近接間隔は、第2最近接間隔より小さい。例えば、パターンは、平行四辺形パターンであってよく、例えば、各要素(例えば、中心的な要素)は、中心的な要素に対して180度の2つの最近接要素と、中心的な要素に対して180度の2つの第2最近接要素とを有し、任意の第1最近接要素と、中心的な要素と、任意の第2最近接要素との間に形成される角度は、90度ではない。
【0049】
パターンは、第1最近接間隔、sが、第1断面積の中心から計算されるなど、第1断面形状の中央の位置に対して定義されてよいことが理解されるであろう。従って、パターン配置は、要素の第1断面形状とは完全に無関係である。
【0050】
実施形態によっては、要素は、配置において、50~500μmの典型的なまたは平均的な間隔、例えば、100~500μm、例えば、100μmより大きい、例えば、200μmより大きい、例えば、300μmより大きい、例えば、400μmより大きい、例えば、500μm未満、例えば、400μm未満、例えば、300μm未満、例えば、200μm未満、例えば、100μm未満で、互いに間隔を空けている。実施形態によっては、要素は、配置において、0.5mm~1.5mmの典型的なまたは平均的な間隔で互いに間隔を空けている。いくつかの他の実施形態においては、要素は、配置において、最大2mm、2.5mm、または3mmの典型的なまたは平均的な間隔で互いに間隔を空けている。さまざまな実施形態において、配置は等方性パターンであり、この間隔は第1最近接間隔である。
【0051】
要素は、任意の適切なおよび/または望ましい方法により形成されてよいことが理解されるであろう。例えば、要素は、例えば、ドリリング、ミリング、イオンミリング、機械加工、放電加工、レーザ彫刻、レーザエッチング、プラズマエッチング、化学エッチング、フォトリソグラフィ、X線リソグラフィ、電子ビームリソグラフィ、プラズマ、気体、または液体によるエッチング、プローブ顕微鏡法、原子間力顕微鏡法、ナノインデンテーション顕微鏡法、または蒸発により、溝表面から材料を取り去ることにより、溝表面に形成されてよい。例えば、要素は、例えば、エンボス加工、スタンピング、成形、鍛造により、溝表面において材料を取り換えることにより、溝表面に形成されてよい。例えば、要素は、例えば、化学蒸着、物理蒸着、電気めっき、3D金属印刷、積層造形、エレクトロスピニングにより、溝表面に材料を堆積させることにより、溝表面に形成されてよい。
【0052】
実施形態によっては、レーザ彫刻技術が使用される。本発明は、そのため、レーザ彫刻技術を使用する、本明細書において開示される実施形態のいずれか一項に係る、トレッドの作成方法にまで及ぶ。
【0053】
実施形態によっては、成形技術が使用される。本発明は、そのため、成形技術を使用する、本明細書において開示される実施形態のいずれか一項に係る、トレッドの作成方法にまで及ぶ。本発明は、本明細書において開示される実施形態のいずれか一項に係る、トレッドを作製するために構成される金型にまで更に及ぶ。
【0054】
実施形態によっては、要素は、成形または鋳造技術を使用して溝表面に形成されてよく、金型は、任意の適切なおよび/または望ましい技術により作成される要素パターンのネガを含む。例えば、金型は、ドリリング、ミリング、イオンミリング、機械加工、放電加工、電気めっき、レーザエッチング、3D金属印刷、積層造形技術、プラズマエッチング、化学エッチング、フォトリソグラフィ、X線リソグラフィ、電子ビームリソグラフィ、エンボス加工、スタンピング、成形、鍛造、プラズマ、気体、または液体によるエッチング、プローブ顕微鏡法、原子間力顕微鏡法、ナノインデンテーション顕微鏡法、化学蒸着、物理蒸着、蒸発、エレクトロスピニングなどの1つまたは複数の適切な技術により形成されてよい。
【0055】
実施形態によっては、複数の要素の配置は、溝表面に渡って実質的に同一である。これは、信頼性のある疎水性能を確保するのに役立ちうる。実施形態によっては、複数の異なる配置が、単一の溝内に存在してよい。例えば、溝の底面(例えば、空気入りタイヤの外面に実質的に平行な溝表面)は、要素の第1配置を含んでよく、溝の壁(例えば、空気入りタイヤの表面に実質的に垂直な溝表面)は、要素の第2配置を含んでよく、第1配置および第2配置は異なっている。実施形態によっては、第1および第2配置は、同一の第1および/または第2断面形状および/またはアスペクト比および/または容積を有する要素を含んでよいが、要素は、第1および第2配置において異なった間隔を介してよい。実施形態によっては、第1および第2配置は、要素の間隔が同一であってよいが、要素は、異なる第1および/または第2断面形状および/またはアスペクト比および/または容積を有してよい。これらのパラメーターは、空隙率に対して定義された範囲により相互に関連しうることが理解できるであろう。
【0056】
実施形態によっては、単一の溝表面が、要素の複数の配置を含んでよい。例えば、溝表面は、配置の配列を含んでよい。例えば、溝表面は、溝の周方向に沿って延びる第1配置と、第1配置に平行に延びる第2配置とを含んでよく、溝表面は、(例えば、タイヤの外周の周りに)溝の周方向に沿って延びる2つの異なる配置を含む。実施形態によっては、第1配置は、溝の幅に渡って延びるように配置され、第2配置は、第1配置に隣接する溝の幅に渡って延びるように配置され、配列は、溝の周方向に沿って2つの異なる配置を交互に含む。さまざまな実施形態において、溝表面は、任意の適切なおよび/または望ましい数および構成の配置、1つ、2つまたはそれ以上の配置を含んでよい。
【0057】
実施形態によっては、複数の溝は、トレッドの周方向に沿って延びる(例えば、夏タイヤ)。実施形態によっては、複数の溝は、例えば、V字形レイアウトの溝で、トレッドの周方向に対してある角度を成して延びる(例えば、冬タイヤ)。
【0058】
実施形態によっては、溝は、それぞれ、0.2~20mmの範囲の幅を有する。実施形態によっては、溝は、それぞれ、少なくとも1mm、好ましくは少なくとも1.6mm、さらに好ましくは少なくとも2mmの深さを有する。実施形態によっては、溝は、それぞれ、2~3mmの深さを有する。
【0059】
本明細書における開示は、空気入りタイヤのトレッドに形成される溝に関する。溝表面の疎水性は、そのため、ゴム材料またはゴム系ポリマー材料から成る溝表面に照らして検討される。実施形態によっては、トレッドは、ジエン系ゴム化合物から成る。天然ゴム、イソプレンゴム、およびブタジエンゴムなどのジエン系ゴムは、共役炭素間二重結合を有するジオレフィンに由来する繰り返し単位を含む。合成ジエン系ゴムの特性は、ジオレフィンモノマーと他のモノマーとの共重合により特別に調整することができ、合成ジエン系ゴムは、タイヤトレッドを含む幅広い用途で使用される。スチレンブタジエンゴム(本明細書において「SBR」と呼ばれる)は、スチレンとブタジエンとの重合により作成されるブタジエンゴムの一例である。実施形態によっては、トレッドは、SBR-シリカ化合物などのシリカ含有ジエン系ゴム化合物から成る。
【0060】
典型的なSBR-シリカゴム化合物は、以下の組成に従って作成される(ここで、「phr」は、ゴム重量100に対する重量である)。
【0061】
【0062】
S-SBRは、10~45%のスチレン含有量および20~70%のビニル含有量で、それぞれ、800~1500×103および500~900×103の平均分子量での溶液重合過程を経て得られるポリマーである。
【0063】
BRは、ポリブタジエンから成るポリマーである。
【0064】
シリカは、約170m2/gの表面積を有するフィラーであり、EVONIK社によりUltrasil VN3という名で販売されている。
【0065】
カーボンブラックは、N134である。
【0066】
シラン結合剤は、EVONIK社よりSI75という名で販売されている。
【0067】
TBBSは、加硫促進剤として使用される化合物、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミドの略称である。
【0068】
DPGは、加硫促進剤として使用されるジフェニルグアニジン化合物の略称である。
【0069】
本発明のいくつかの実施形態について、以下の非限定例および添付の図面を用いて更に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【
図1】複数の溝を含む空気入りタイヤのトレッドを示す図である。
【
図2】
図1に示したトレッドの詳細図であり、溝は、溝表面における配置において複数の要素を含む。
【
図3A】A-A距離に沿った、
図1および
図2に示したトレッドの溝の詳細図である。
【
図3B】3つの表面:2つの壁および底部を含む、
図1および
図2に示すA-A距離に沿った溝の断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に従った、溝表面における配置における要素の形状を示す図である。
【
図5】表面における要素が新しいときの、表面と相互作用する水滴の接触角と、表面に配置された要素の容積との関係を示す図である。
【
図6】要素が経年劣化した後の、表面と相互作用する水滴の接触角と、表面に配置された要素の容積との関係を示す図である。
【
図7】
図5および
図6に示すデータの組み合わせを示す図である。
【
図8】要素の真実接触面積と、水滴と前記要素を含む表面との間に形成される接触角との関係を示す図である。
【
図9】本発明の一実施形態に従った、第1断面平面における要素の配置を示す図である。
【
図10】Aは、本発明の一実施形態に従った、Bに示す要素の配置により形成される対応する空隙容積を示す。
【
図11】表面と相互作用する水滴の接触角と、その表面における要素の配置についての間隔パラメーターとの関係を示す図である。
【
図12】表面と相互作用する水滴の接触角と、その表面に配置される要素により形成される空隙率との関係を示す図である。
【
図14】Aは、本発明の一実施形態に従った溝表面における要素を示す図である。Bは、要素の第1断面形状を示す図である。Cは、要素の第2断面形状を示す図である。Dは、第2断面形状の頂部の詳細図である。
【
図15】Aは、本発明の一実施形態に従った溝表面における要素を示す図である。Bは、要素の第1断面形状を示す図である。Cは、要素の第2断面形状を示す図である。Dは、第2断面形状の頂部の詳細図である。
【
図16】Aは、本発明の一実施形態に従った溝表面における要素を示す図である。Bは、要素の第1断面形状を示す図である。Cは、要素の第2断面形状を示す図である。Dは、第2断面形状の曲線状の側面の詳細図である。
【
図17】Aは、本発明の一実施形態に従った溝表面における要素を示す図である。Bは、要素の第1断面形状を示す図である。Cは、要素の第2断面形状を示す図である。Dは、第2断面形状の側面および頂部への移行の詳細図である。
【
図18】Aは、本発明の一実施形態に従った溝表面における要素を示す図である。Bは、要素の第1断面形状を示す図である。Cは、要素の第2断面形状を示す図である。Dは、第2断面形状の側面および頂部への移行の詳細図である。
【
図19】Aは、本発明の一実施形態に従った溝表面における要素を示す図である。Bは、要素の第1断面形状を示す図である。Cは、要素の第2断面形状を示す図である。Dは、第2断面形状の側面および頂部への移行の詳細図である。
【
図20】Aは、本発明の一実施形態に従った溝表面における要素を示す図である。Bは、要素の第1断面形状を示す図である。Cは、要素の第2断面形状を示す図である。Dは、第2断面形状の側面および頂部への移行の詳細図である。
【
図21】Aは、本発明の一実施形態に従った溝表面における要素を示す図である。Bは、要素の第1断面形状を示す図である。Cは、溝の一平面における要素の第2断面形状を示す図である。Dは、溝の第2平面における要素の第2断面形状を示す図である。
【
図22】Aは、本発明の一実施形態に従った溝表面における要素を示す図である。Bは、要素の第1断面形状を示す図である。Cは、溝の一平面における要素の第2断面形状を示す図である。Dは、溝の第2平面における要素の第2断面形状を示す図である。Eは、第2断面平面における要素を示す図である。
【
図23】周方向に沿った長手方向軸により配向された
図22の要素を有するタイヤトレッドの溝を示す図である。
【
図24】周方向に垂直な長手方向軸により配向された
図22の要素を有するタイヤトレッドの溝を示す図である。
【
図25】A~Gは、本発明のさまざまな実施形態に従った複数の要素の第1断面形状、第2断面形状、および3D形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0071】
図1は、周方向130に平行なトレッド110の外周に沿って延びる複数の溝120を含む、空気入りタイヤ100のトレッド110を示す。
【0072】
図2は、
図1に示されたトレッド110の詳細を示し、溝120は、溝120内にドットとして示される、溝表面に沿って配置された複数の要素を含む。
【0073】
図3Aおよび
図3Bは、
図1および
図2に示すA-A距離に沿った溝120の詳細を示す。溝120は、円周軸に垂直な軸においてU字形の断面を有するため、溝120は、3つの溝表面122:2つの壁122b、122cおよび底部122aを含む。溝120は、周方向に垂直な幅124と、周方向に沿って延びる126とを有する。
【0074】
図4は、溝表面122上の配置400における要素410の一実施形態を示す。要素410は、第1断面平面420と第2断面平面430とにおけるそれらの断面形状について説明されてよい。第1断面平面420は、溝の表面に平行な平面であるため、要素410の第1断面形状425は、基本的に、溝表面における要素の接地部分の面積であり、それにより要素410の幅wが定義される。第2断面平面430は、溝表面に垂直かつ円周軸に垂直な平面であるため、要素410の第2断面形状435は、要素410の高さhを定義する。本実施形態において、要素410の第2断面形状435は、第2断面平面430が90°回転しても同一である。言い換えれば、要素410は、細長くはなく、点状である。
【0075】
図4に示す実施形態において、第1断面形状425は正方形であり、第2断面形状435は、滑らかで連続的な曲線状の側面と2つの平行な上端および底縁とを有する、先端を断ち切った双曲線状である。これは例として挙げるが、要素410は、以下の記載から分かるように、さまざまな異なった形状を有してよい。
【0076】
図5は、新しく形成されたときの、要素容積と、静的水滴と複数の要素410を含む溝との間に形成される接触角との逆関数関係を示す。
【0077】
図5から分かるように、要素容積が増加するにつれ、要素410と静的水滴との間に形成される接触角は小さくなり、例えば、表面の疎水性は次第に低下する。
図5に示す傾向から分かるように、最終的に、要素容積の大きさは、容積の更なる増加が接触角の大幅な減少につながらない容積に到達し、例えば、関数関係は、
図5に示すデータではおおよそ136度で頭打ちになる。これは、容積が非常に大きくなると、要素から見たとき、表面は基本的に連続的となり、接触角は、要素が何もない場合に観察されたであろう接触角に近づくためであると考えられる。
【0078】
図5に示す関係から、良好な疎水性を示す溝表面122を得るためには、最小の要素容積を有する要素410が望ましく、例えば、0.1mm
3未満の容積を有する針状の構造に近づくことは明らかである。
【0079】
図6は、
図5に示すものと同一の関係(例えば、要素容積と、静的水滴と複数の要素との間に形成される接触角との関係)を示すが、(
図5に示すような)新しい表面ではなく、経年劣化した表面の場合である。
図6に示すデータから分かるように、要素容積が0.15mm
3を下回ると、静的水滴と本発明の要素410との間に形成される接触面積は、急速に減少する(例えば、疎水性が低下する)。
【0080】
図6に示されるデータポイントは、
図5に示されるデータポイントに直接対応する。例えば、
図5のデータポイントAおよび
図6のA’は、要素410が、おおよそ0.15mm
3の容積を有して、新しく形成されたとき(
図5)と、要素410が経年劣化し、その材料容積の75%が失われ、おおよそ0.03mm
3の容積を有するとき(
図6)との2つの異なる期間における同一の要素410についての接触角を測定する。
【0081】
図7は、
図5および
図6から組み合わせたデータを示し、要素容積と、静的水滴とともに形成される接触角との関係が、要素容積とともにどのように変化するのかを示す。
【0082】
図5、
図6、および
図7は、従って、新しいときに容積が小さい要素410のほうが、疎水性に対する経年劣化の影響が大きいことを示し、要素容積が小さいほう(例えば、データポイントA/A’、B/B’、およびC/C’)が、初めは疎水性が最も高い(
図5)が、容積が大きい場合よりも疎水性は急速に低下する。このように、経年劣化の影響と、表面122が新しいときの疎水性とは、要素容積に相反する要求をする。
【0083】
一方、新しいときに要素容積が大きいほう(例えば、データポイントDおよびEにより示されるように0.5mm
3超)が、経年劣化の影響が小さいため、(データポイントD’およびE’により示されるように)経年劣化後の疎水性の変化は小さい。例えば、
図6は、経年劣化後、要素410のD’およびE’は、おおよそ75%の要素容積が失われた後でも、おおよそ同一の疎水性(例えば、水との接触角)を維持していることを示す。
【0084】
図7から、0.1mm
3未満の容積を有する要素410は、トレッド110の経年劣化後、接触角の劇的な低下に見舞われることが分かる。そのため、要素容積は0.1mm
3より大きいことが有益である。
【0085】
発明者らは、経年劣化耐性を向上させ、タイヤトレッドが経年劣化しても疎水性を維持するためには、要素410の容積を最大化することが重要であることを理解した。本発明の目的は、従って、要素410と水滴との間の接触面積(ひいては接触角)を最小化する一方で、要素容積を最大化する、溝表面122についての配置(例えば、パターン)の提供である。
【0086】
本発明により想定される解決策は、例えば、傾斜した側面および/または曲線状のもしくは角度のついた上面(例えば、フィレットを付けた側面、例えば、面取りをした、例えば、勾配付きの)を含む、頂部より広い底部を有する形状の要素410を提供することである。各要素の上面は、溝と接触する水滴に対するその真実接触面積を表すと見なされてよい。
【0087】
図8は、平坦な頂部を含む柱表面に対して正規化された、要素410の真実接触面積と、静的水滴とともに形成された接触角との関係を示す。従って、100%の表面積とは、真っすぐな縁の柱形状の要素の構造と、(例えば、長方形または正方形の第2断面形状を含む)平坦な上面とを表すことが理解されるであろう。従って、真実接触面積は、水滴と接触する表面における断面形状の角に丸みをつけ、平坦な頂部が徐々に減少させることにより減少する。
【0088】
以上のように、要素の第2断面形状の角の丸み付けの程度が大きくなり、接触面積が減少するにつれ、接触角は大きくなる(例えば、上面の疎水性が次第に高まる)。
【0089】
発明者らは、従って、要素形状の側面に丸みをつけたり、角度をつけたりすることにより、好ましい疎水性を有する表面が得られる一方、経年劣化耐性を向上させる大きな要素容積も維持されることを理解した。
【0090】
図9は、本発明の一実施形態に従った要素のパターンの、(溝表面に平行な第1断面平面420における)断面を示す。図示されるパターン(例えば、立方体のパターン)において、要素411は、第1最近接要素412と第2最近接要素413との両方を有するように示され、第1最近接要素は、第2最近接間隔s’より短い間隔距離sを有する。図示される立方体のパターンの場合、第2最近接要素413は、中心的な要素411の周囲の正方形を定義し(例えば、中心的な要素411は、正方形の中心に位置し)、第1最近接要素412は、第2最近接要素413により定義された正方形の辺の中点に沿って位置する。
【0091】
最近接間隔s、s’は、要素411の第1断面形状の中心間の距離、例えば、中心的な要素411の第1断面形状の中心と、第1および/または第2最近接要素の断面形状の中心との間の距離として定義される。
【0092】
図10のBは、溝表面122と、(例として)溝表面122における突出した配置における複数の円錐形の要素410との3次元表現を示す。本例において、配置は、立方体のパターンを含む。配置における要素410の全容積は、全ての円錐形の要素410についての(1/3)Ahの合計であり、ここで、Aは溝表面122における底部の面積であり、hは円錐形の要素410の高さであることが分かる。
図10のAは、全要素容積のマイナスの容積として形成される3次元の空隙容積415を示し、例えば、空隙容積は、要素410間の空間により形成される容積である。
図10のAに示すように、空隙容積415は、全要素容積と同一の容積または空間は占有せず、空隙容積415は、要素410の周囲に適合し、溝表面122に渡って、高さhまでの実容積を形成すると見なされてよい。例えば、空隙容積および要素容積は、鍵と鍵穴適合を有する。空隙容積415は、全要素容積と組み合わせて、溝(例えば、
図3Aおよび
図3Bに示されるような溝)の利用可能な容積を完全に埋めなくてもよいことは理解されるであろう。
【0093】
図11は、静的水滴と本発明の一実施形態に従った複数の要素410との間に形成される接触角と、要素410間の空間との関数関係を示す(ミリメートル単位)。示されたデータから分かるように、空隙面積が減少するにつれ、例えば、要素410間の間隔sが減少し、静的水滴と要素410との間の接触角が小さくなる。このように、発明者らは、驚くべきことに、本発明に従った要素410間の空隙容積を増加させることが有利であることを理解した。
【0094】
図12は、静的水滴と本発明の一実施形態に従った複数の要素410との間に形成される接触角と、表面に配置された要素パターンの空隙率との関数関係を示す。
図11と同様に、空隙率が増加し、要素410が次第に間隔を空けるにつれ、接触角は大きくなり、表面の疎水性が高くなることが分かる。
【0095】
図11および
図12の両方から、接触角と、表面における要素間の1次元および3次元空間との関係は、正弦の形状であることが分かる。従って、要素間の間隔と、最適な空隙率を可能にする要素容積とを選択することが好ましいことが理解できる。
【0096】
図13は、
図12および
図6のデータを組み合わせ、空隙率と要素容積との間の最適化がどのように判定されるかを示す。
図13から分かるように、空隙率と要素容積との最適な範囲は、空隙率と接触角との関係に対応する曲線が、要素容積と接触角との関係に対応する曲線と、どこで交差するかを判定することにより得られてよい。そのため、
図13に示す例の場合、最適な範囲は、50%~65%の空隙率と、0.2~0.6mm
3の要素容積とを含むパターンとなるように判定されてよい。
【0097】
図14~
図22は、本発明のいくつかの実施形態に従ったさまざまな断面および角度における、要素形状のさまざまな実施形態を示す。本明細書において描かれる全ての要素は、ほんの一例として、0.6mmの高さhを有する。
【0098】
図14のAは、1.2mmの第1最近接間隔sを有する、本発明の一実施形態に従った溝表面122における要素410aを示す。
図14のBは、0.6mmの幅wを有する正方形である、第1断面平面420における要素410aの第1断面形状425aを示す。
図14のCは、2組の平行な側面と2つの面取りをした角を有する不規則な六角形である、要素の第2断面形状435aを示し、例えば、第2断面形状は、実質的に、面取りをした頂部(すなわち、側面と頂部との間の2つの面取りをした角)を有する四角柱状である。
図14のCは、第2断面形状435aの底部における幅wは、第2断面形状の頂部における対応する幅w’より大きいことも示す。
図14のDは、面取りをした角の1つの詳細を示し、角は、形状の側面と上端とに対して45°の角度で切り取られ、面取りの深さは0.15mmである。
【0099】
図15のA~Dは、溝表面122における要素410bを示す。
図15に示す要素は、
図14に示す要素と実質的に同一であるが、(
図14に示すように)面取りをするではなく、0.15mmの曲率半径を有する丸みを帯びた(例えば、フィレットを付けた)頂部の角を有することのみ異なる。しかしながら、曲率半径が面取りの深さと等しい(例えば、0.15mm)ため、平坦な上面の接触面積は、
図14および
図15に示す両要素で同一である。
図15のCに示す第2断面形状435bは、フィレットを付けた頂部を有する柱状であり、第2断面形状435bの底部における幅wは、第2断面形状435bの頂部における対応する幅w’より大きいことが分かる。
【0100】
図16は、
図14および
図15と同様に、1.2mmの第1最近接間隔と0.6mmの幅とを有する正方形の第1断面形状425cを有する、溝表面122における要素410cを示す。
図14および
図15とは異なり、要素410cは、例えば、2つの非平行な凹曲線縁により接続される2つの平行な縁を有する、先端を断ち切った双曲線に対応する第2断面形状435cを有する。
図16のCは、第2断面形状435cの底部における幅wは、第2断面形状435cの頂部における対応する幅w’より大きいことを示す。
図16のDは、曲線状の側面は0.15mmの深さを有し、要素410cの底部は0.3mmの幅を有する(例えば、要素410cの上面の面積は、底部の面積の4分の1である)ことを示す。
【0101】
図17は、
図14および
図16に示す要素の組み合わせである、溝表面122における要素410dを示し、例えば、第2断面形状435dは、面取りをした上端を有する、先端を断ち切った双曲線状を含み、面取りの深さは0.15mmである。第1断面形状425dは、0.9mmの幅を有する正方形であり、上面の幅(例えば、水滴と接する要素の表面積の平方根)は、0.3mmである。
図17のCは、第2断面形状435dの底部における幅wは、第2断面形状435dの頂部における対応する幅w’より大きいことを示す。
【0102】
図18は、
図15および
図16に示す要素の組み合わせである、溝表面122における要素410eを示し、例えば、第2断面形状435eは、0.15mmの曲率半径を有するフィレットを付けた上端を有する、先端を断ち切った双曲線状を含む。第1断面形状425eは、0.9mmの幅を有する正方形であり、上面の幅(例えば、水滴と接する要素の表面積の平方根)は、0.3mmである。
図18のCは、第2断面形状435eの底部における幅wは、第2断面形状435eの頂部における対応する幅w’より大きいことを示す。
【0103】
図19のAは、1.0mmの第1最近接間隔sを有する、本発明の一実施形態に従った溝表面122における要素410fを示す。
図19のBは、0.6mmの幅wを有する正方形である、第1断面平面420における要素410fの第1断面形状425fを示す。
図19のCは、扁平な放物線状、例えば、断面形状が、溝表面122に平行な2つの平行な縁と、0.15mmの深さを有して頂部と側面との間を延びる2つの凸曲面とを有するような扁平な頂部を有する放物線状の、要素の第2断面形状435fを示す。
図19のCは、第2断面形状435fの底部における幅wは、第2断面形状435fの頂部における対応する幅w’より大きいことを示す。
【0104】
図20は、
図19に示すものと同じ要素410gを示し、2つの実施形態間の違いは、第1最近接間隔sが、(
図19の1.0mmと比較して)
図20では1.2mmであることのみである。
図20のCは、第2断面形状435gの底部における幅wは、第2断面形状435gの頂部における対応する幅w’より大きいことを示す。
【0105】
【0106】
図21は、(
図21のBに示す)0.4mmの第1最近接間隔sと2mmの第2最近接間隔s’とを有する、本発明の一実施形態に従った溝表面122における要素410hを示す。
図21のBは、0.2mmの幅wと1.8mmの長さlとを有する長方形の細長いストリップである、第1断面平面420hにおける要素410hの第1断面形状425hを示す。要素の長手方向軸は、任意の適切なおよび/または望ましい方向に、例えば、トレッドの周方向に平行にまたは垂直に配向されてよいことが理解されるであろう。
【0107】
図21のCおよびDは、溝表面122に垂直な2つの平面における要素410hの異なる第2断面形状を示す。要素410hが周方向に平行な長手方向軸により配向される場合、
図21のDが第2断面形状435hを表すことが理解されるであろう。一方、要素が円周軸に垂直な長手方向軸により配向される場合、
図21のCが第2断面形状435hを表す。
図21のDにおいて、第2断面形状は、約5のアスペクト比を有する長方形である。図示しないが、長方形の頂部は、本明細書に開示されているように、丸みを帯びていてもよいし、面取りをしていてもよい。
【0108】
図22は、0.4mmの第1最近接間隔sと2mmの第2最近接間隔s’とを有する、本発明の一実施形態に従った溝表面122における要素410iを示す。
図22のBは、0.2mmの幅wと1.8mmの長さlを有する長方形の細長いストリップである、第1断面平面420における要素410iの第1断面形状425iを示す。要素の長手方向軸は、任意の適切なおよび/または望ましい方向、例えば、トレッドの周方向に平行にまたは垂直に配向されてよいことが理解されるであろう。
【0109】
図22のCは、溝表面122に垂直な平面の1つにおける要素410iの第2断面形状は、長方形であることを示す。
図22のDおよびEは、溝表面122に対して垂直な他の平面における要素410iの第2断面形状は、台形であることを示す。
図22のDおよびEにおいて、第2断面形状は、約4のアスペクト比を有する台形である。図示しないが、台形の頂部は、本明細書に開示されているように、丸みを帯びていても、面取りをしていてもよい。
図22のDおよびEは、第2断面形状435iの底部における幅wは、第2断面形状435iの頂部における対応する幅w’より大きいことも示す。
【0110】
図23および
図24は、溝表面における
図21および
図22に示す要素の2つの可能性がある向きを示す。例えば、引き伸ばされた長方形の要素は、第1断面形状の長手方向軸がタイヤの外周に平行になるように配向されてよい(
図23)。代わりに、第1断面形状の長手方向軸は、タイヤの外周に垂直に配向されてもよく、例えば、溝壁から溝壁に延びる、および/または底部からトレッド表面に延びる。
【0111】
図25のA~Gは、本発明のさまざまな実施形態に従った複数の要素の第1断面の形状(左)、第2断面の形状(中央)、および3D形状(右)を示す。全ての要素は、第1断面形状(左)に対して定義される幅wと、第2断面形状(中央)に対して定義される高さhとを有して示される。従って、幅wは、第1断面形状の最小寸法として定義され、高さhは、第2断面形状の最大拡張寸法として定義されることが理解されるであろう。
【0112】
図25のAは、正方形の第1断面形状と扁平な放物線状の第2断面形状とを有する要素(例えば、
図19および
図20に示す要素と類似の形状の要素)を示す。
【0113】
図25のBは、長方形の第1断面形状と、先端を断ち切ったまたは扁平なガウシアン第2断面形状、例えば、平坦な頂部を有するガウシアン曲線、または異なる幅の2つの平行な表面およびその2つの間を移行する正弦形状の縁とを有する要素を示す。
【0114】
図25のCは、円形の第1断面形状と、(例えば、底部において先端を断ち切った)放物線状の第2断面形状とを有する、丸みを帯びた円すいにも類似する要素を示す。
【0115】
図25のDは、3次元の形状が丸みを帯びた三角形のピラミッド状であるような、三角形の第1断面形状と、丸みを帯びた頂部を有する実質的に三角形の第2断面形状とを有する要素を示す。
【0116】
図25のEは、六角形の第1断面形状と、(例えば、底部において先端を断ち切った)放物線状の第2断面形状とを有する要素を示す。
【0117】
図25のFは、3次元の形状が円柱であるような、円形の第1断面形状と、長方形の第2断面形状とを有する要素を示す。
【0118】
図25のGは、3次元の要素形状が三角柱であるような、三角形の第1断面形状と、長方形の第2断面形状とを有する要素を示す。
【国際調査報告】