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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-17
(54)【発明の名称】ハイブリッド電源を有する航空機
(51)【国際特許分類】
   B64D 27/24 20240101AFI20240110BHJP
   B64C 29/00 20060101ALI20240110BHJP
   B64D 27/10 20060101ALI20240110BHJP
   B64D 47/00 20060101ALI20240110BHJP
   H02J 1/00 20060101ALI20240110BHJP
   H02J 9/06 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B64D27/24
B64C29/00 A
B64D27/10
B64D47/00
H02J1/00 304G
H02J1/00 304H
H02J1/00 309
H02J9/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023541085
(86)(22)【出願日】2022-01-04
(85)【翻訳文提出日】2023-09-01
(86)【国際出願番号】 FR2022050014
(87)【国際公開番号】W WO2022148926
(87)【国際公開日】2022-07-14
(31)【優先権主張番号】2100099
(32)【優先日】2021-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522194072
【氏名又は名称】アセンダンス・フライト・テクノロジー
【氏名又は名称原語表記】ASCENDANCE FLIGHT TECHNOLOGIES
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ディネル,クレマン
(72)【発明者】
【氏名】フェラン,ブノワ
【テーマコード(参考)】
5G015
5G165
【Fターム(参考)】
5G015FA01
5G015GB06
5G015JA56
5G015JA66
5G165BB00
5G165DA01
5G165EA02
5G165EA10
5G165JA04
5G165MA01
(57)【要約】
ハイブリッド電源を有する航空機に関する。該航空機は、2つの水平駆動ユニット(6,24,26)と、4つの垂直駆動ユニット(10,42,44,52,54,50)と、電力供給バスを含む垂直駆動ユニット(10)と、を備える。電力供給バスの出力は、スイッチ(28)を介して、少なくとも2つの垂直駆動ユニット(10)に接続され得る単一の水平駆動ユニット(6)に接続されてもよい。また、該航空機は、一方では対応する垂直駆動ユニット(10)の入力を介して各電力供給バスに接続され、他方では各垂直駆動ユニット(10)の対応する出力を介して各水平駆動ユニット(6)にそれぞれ接続された2つの発電源(18)を備える。また、該航空機は、垂直駆動ユニット(10)および/または水平駆動ユニット(6)の電力要件に従って発電源(18)に電力コマンドを送信するように配置された電力供給制御部(4)を備える。発電源(18)は、垂直駆動ユニットの電源(50)を再充電するのに適している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイブリッド電源を有する航空機であって、
電気モータ(24,34)によってそれぞれ駆動され、少なくとも2つの水平駆動ユニット(6,8)をそれぞれ形成する少なくとも2つの水平駆動スラスタ(26,36)と、
電気モータ(52,54,56,58,82,84,86,88)によってそれぞれ駆動される少なくとも4組の垂直離着陸ロータ(42,44,46,48,72,74,76,78)、および対応する1組の前記垂直離着陸ロータ(42,44,46,48,72,74,76,78)の対応する前記電気モータ(52,54,56,58,82,84,86,88)にそれぞれ接続された少なくとも4つの電源(50,60,80,90)であって、前記ロータ(42,44,46,48,72,74,76,78)の各組は、対応する前記電気モータ(52,54,56,58,82,84,86,88)および前記電源とで垂直駆動ユニット(10,12,14,16)を形成し、前記垂直駆動ユニット(10,12,14,16)の各々は、電力供給バスを備え、前記電力供給バスの出力は、1つの前記水平駆動ユニット(6,8)に接続可能であり、前記垂直駆動ユニット(10,12,14,16)の数は、前記水平駆動ユニット(6,8)の各々が、前記水平駆動ユニット(6,8)の入力に配置された対応するスイッチ(28,38)を介して少なくとも2つの前記垂直駆動ユニット(10,12,14,16)に接続可能であるようになっている、垂直離着陸ロータおよび電源と、
一方では対応する前記垂直駆動ユニット(10,12,14,16)の入力を介して前記電力供給バスの各々に接続され、他方では前記垂直駆動ユニット(10,12,14,16)の対応する出力を介して前記水平駆動ユニット(6,8)の各々に接続された少なくとも2つの発電源(18,20)と、
前記垂直駆動ユニット(10,12,14,16)および/または前記水平駆動ユニット(6,8)の電力要件に従って前記発電源(18,20)に電力コマンドを送信するように配置された少なくとも1つの電力供給制御部(4)であって、前記電源(50,60,80,90)は、前記垂直駆動ユニット(10,12,14,16)および/または前記水平駆動ユニット(6,8)の電力要件と、前記電力コマンドに基づいて前記発電源(18,20)によって出力された電力との間の差に応じて電力を供給し、前記発電源(18,20)は、前記電源(50,60,80,90)が受動的に制御されるようにその電源(50,60,80,90)を再充電するのに適している、電力供給制御部と、
を備える航空機。
【請求項2】
前記垂直駆動ユニット(10,12,14,16)の電源(50,60,80,90)は、バッテリである、請求項1に記載の航空機。
【請求項3】
前記発電源(18,20)は、タービン発電機(100,102)と、AC/DCコンバータ(104,106)と、を備える、請求項1または2に記載の航空機。
【請求項4】
前記発電源(18,20)は、水素燃料電池(100,102)と、DC/DCコンバータ(104,106)と、を備える、請求項1または2に記載の航空機。
【請求項5】
前記水平駆動ユニット(6,8)、前記垂直駆動ユニット(10,12,14,16)、および前記発電源(18,20)をそれぞれ前記航空機の電気回路の残りの部分に接続する電気接触器をさらに備える、請求項1~4のいずれか1項に記載の航空機。
【請求項6】
前記水平駆動ユニット(6,8)、前記垂直駆動ユニット(10,12,14,16)、および前記発電源(18,20)の要素の各々は、電気接触器によって、それが属する前記水平駆動ユニット(6,8)、前記垂直駆動ユニット(10,12,14,16)、または前記発電源(18,20)の他の要素に接続される、請求項5に記載の航空機。
【請求項7】
前記水平駆動ユニット(6,8)、前記垂直駆動ユニット(10,12,14,16)、および前記発電源(18,20)のそれぞれの入力および/または出力において、それらを接続する電気バスに接続するダイオードをさらに備える、請求項1~6のいずれか1項に記載の航空機。
【請求項8】
前記ダイオードは、前記発電源に対して前記電気接触器の上流側に配置される、請求項7と組み合わされた場合の請求項5または6に記載の航空機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機の分野に関し、より詳細には、電動垂直離着陸機の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、航空産業では、環境に関する要件の変化や電動航空機の開発に部分的に関連する様々な激変の中にある。VTOL(垂直離着陸)の分野は新しい移動手段として非常に興味深い展望を提供しており、特にダイナミックである。
【0003】
VTOL自体はかなり古い分野であるが(1921年には開発が始まっていた)、その電動化により、提供される新しい解決策およびその規制が爆発的に増加した。特に、最新の規制(例えば、2019年7月2日発行の「SC-VTOL-01 SPECIAL CONDITION Vertical Take-Off and Landing (VTOL) Aircraft」)では、故障が発生した際の緊急着陸だけでなく、飛行の継続性(「安全な連続飛行と着陸」とも呼ばれる)を確保できるように、エンジン、電源、および電気系統全体に至るまで、推進と飛行に関連するすべてのシステムの冗長性が要求されている。これは、「ワンフェールセーフ(one-fail-safe)」とも呼ばれ、「1つの故障に耐えることができる」ことを意味する。
【0004】
これらの規制は、特に妥当なコストを維持しながら実現可能かどうかという点で、多くの問題を引き起こしている。実際、すべての要素を2倍にした場合、追加の重量に対応するように大型化する必要があり、重たくなった機体の飛行能力をすべて見直す必要があるので、コストは2倍以上になる。
【0005】
そのため、他の解決策を見出す必要がある。ほとんどの解決策は、場合によっては併用もされる以下の2つの原理に基づいている。
・ バッテリパックの動作点を詳細に管理する専用のモジュールを用いた、バッテリパックのレベルにおける極めて高度なエネルギー管理。米国特許第9586690号には、このタイプの解決策が記載されている。
・ 水平スラスタを駆動するために発電源を使用して、離着陸時のみにバッテリを使用する。この場合、電動の解決策の航続距離および耐久性を向上させることができる。国際公報第2020/016510号および欧州特許出願第3628593号には、このタイプの解決策が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これらの解決策は、完全に満足のいくものではなく、特に、ワンフェールセーフな解決策を達成することができない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、このような状況を改善することを目的とする。この目的のために、本発明は、ハイブリッド電源を有する航空機を提供する。該航空機は、電気モータによってそれぞれ駆動され、少なくとも2つの水平駆動ユニットをそれぞれ形成する少なくとも2つの水平駆動スラスタを備える。また、該航空機は、電気モータによってそれぞれ駆動される少なくとも4組の垂直離着陸ロータ、および1組の垂直離着陸ロータの対応する電気モータにそれぞれ接続された少なくとも4つの電源を備える。ロータの各組は、対応する電気モータおよび電源とで垂直駆動ユニットを形成する。垂直駆動ユニットの各々は、電力供給バスを備え、電力供給バスの出力は、単一の水平駆動ユニットに接続可能である。垂直駆動ユニットの数は、水平駆動ユニットの各々が、水平駆動ユニットの入力に配置された対応するスイッチを介して少なくとも2つの垂直駆動ユニットに接続可能であるようになっている。また、該航空機は、少なくとも2つの発電源を備える。少なくとも2つの発電源の各々は、一方では対応する垂直駆動ユニットの入力を介して各電力供給バスに接続され、他方では各垂直駆動ユニットの出力を介して各水平駆動ユニットに接続される。また、該航空機は、垂直駆動ユニットおよび/または水平駆動ユニットの電力要件に従って発電源に電力コマンドを送信するように配置された少なくとも1つの電力供給制御部を備える。電源は、垂直駆動ユニットおよび/または水平駆動ユニットの電力要件と、電力コマンドに基づいて発電源によって出力された電力との間の差に応じて、電気を供給する。発電源は、電源が受動的に制御されるように電源を再充電するのに適している。
【0008】
この航空機は、そのアーキテクチャにより冗長性を作り出すことができるので、要素のサイズを最適化しながらワンフェールセーフを保証することができ、特に有利である。このように、本発明による航空機は、ワンフェールセーフの実現に関連する追加のコストを最小限に抑えることができ、飛行の各段階において電源が真に補完的である真のハイブリッドアーキテクチャを実現する。
【0009】
本発明の様々な実施形態によれば、本発明は、以下の特徴のうちの1つまたは複数を有してもよい。
・ 垂直駆動ユニットの電源は、バッテリである。
・ 発電源は、タービン発電機と、AC/DCコンバータと、を備える。
・ 発電源は、水素燃料電池と、DC/DCコンバータと、を備える。
・ 航空機は、水平駆動ユニット、垂直駆動ユニット、および発電源をそれぞれ航空機の電気回路の残りの部分に接続する電気接触器をさらに備える。
・ 水平駆動ユニット、垂直駆動ユニット、および発電源のそれぞれの要素は、電気接触器を介して、その要素が属する水平駆動ユニット、垂直駆動ユニット、または発電源の他の要素に接続される。
・ 航空機は、水平駆動ユニット、垂直駆動ユニット、および発電源のそれぞれの入力および/または出力において、それらを接続する電気バスにそれらを接続するダイオードをさらに備える。
・ ダイオードは、発電源に対して電気接触器の上流側に配置される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明の他の特徴および利点は、例示的かつ非限定的な目的のために提供された実施例および添付の図面を参照した以下の説明により、より明確になるであろう。
図1】本発明による航空機の電気的アーキテクチャの模式図である。
図2】どの要素がどの段階でアクティブであること、および関連する電荷レベルを示すフライトシーケンスの一例を示す図である。
図3】離着陸時に垂直駆動ユニットを失った場合の構成例を示す図である。
図4】発電源を失った場合の構成例を示す図である。
図5】水平駆動ユニットを失った場合の構成例を示す図である。
図6】航空機で実現される電力制御管理アルゴリズムの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
添付の図面および以下の説明には、本発明の特定の要素が実質的に含まれる。したがって、これらは、本発明をよりよく理解するのに役立つだけでなく、その定義にも適宜貢献する。
【0012】
本明細書は、著作権で保護される対象となる要素を含む可能性がある。権利者は、公報に記載されている本願またはその説明の、誰による同一の複製に対しても異議を唱えない。それ以外の部分については、権利者がその権利を全面的に保有する。
【0013】
図1に示すように、本発明による航空機2は、制御部4と、2つの水平駆動ユニット6および8と、4つの垂直駆動ユニット10,12,14および16と、2つの発電源18および20と、を備える。
【0014】
本明細書に記載の実施例において、水平駆動ユニット6(ならびに8)は、DC/ACコンバータ22(ならびに32)と、電気モータ24(ならびに34)と、例えばプロペラを有するスラスタ26(ならびに36)と、を備える。スラスタ26(ならびに36)は、航空機が実質的に水平方向に前進することができるように配置される。本明細書に記載の実施例において、スラスタ26(ならびに36)は、飛行中に80kWの電力を消費する。
【0015】
水平駆動ユニット6(ならびに8)は、入力においてスイッチ28(ならびに38)に接続されており、これにより、後述するように、この入力を垂直駆動ユニット10(ならびに14)または12(ならびに16)の出力に接続することができる。
【0016】
垂直駆動ユニット10(ならびに12,14,16)は、モータ52(ならびに56,82,86)によって駆動されるロータ42(ならびに46,72,76)と、モータ54(ならびに58,84,88)によって駆動されるロータ44(ならびに48,74,78)と、を備える。モータ52および54は、DC/ACコンバータ62および64(ならびに66および68、92および94、96および98)によってそれぞれ駆動される。DC/ACコンバータ62および64(ならびに66および68、92および94、96および98)は、垂直駆動ユニット10(ならびに12,14,16)の電気バスに接続され、この電気バスには、バッテリ50(ならびに60,80,90)と、発電源18の配電バスに接続された入力と、発電源20の配電バスに接続された入力と、が接続される。各垂直駆動ユニット10および12(ならびに14および16)の電気バスは、垂直駆動ユニット10および12(ならびに14および16)のそれぞれの出力に接続され、この出力は、スイッチ28(ならびに38)に接続される。後述するように、バッテリ50,60,80および90は、100%の容量で合計600kWを出力する。
【0017】
本明細書に記載の実施例において、発電源18(ならびに20)の各々は、タービン発電機100(ならびに102)と、AC/DCコンバータ104(ならびに106)と、を備える。本明細書に記載の実施例において、タービン発電機の各々は、100%の容量で40kWを出力することができる。代替的に、発電源は、他のDC発電源またはAC発電源、ならびにそれに続くAC/DCコンバータまたはDC/DCコンバータであり得る。例えば、これらの発電源は、従来の燃料、バイオ燃料、または合成燃料によって駆動されるターボジェネレータに基づくことができる。さらに代替的に、燃料電池などの水素ベースの水素ベースのエネルギー源を使用することができる。
【0018】
後述するように、制御部4は、一方では発電源18および20、他方ではスイッチ28および38、ならびに図1に示されていない様々な保護要素を制御するように配置された低電圧装置である。これらについては、図2図6を参照して後述する。
【0019】
図1を参照すると、モータと電気要素がすべて重複していることがわかる。これにより、後述するように、ワンフェールセーフを保証することができる。実際、2つの水平駆動ユニットと、その水平駆動ユニットに接続された2つのサブグループを構成する4つの垂直駆動ユニットと、2つの発電源が設けられている。
【0020】
しかしながら、このような従来の重複にとどまらず、各垂直駆動ユニット固有の電気バスと、各発電源固有の配電バスとによって、本発明の利点を得ることができる。
【0021】
実際、後述するように、図1に示す航空機の特殊な構造により、電源の並置に関する既存の解決策とは異なり、電源の真のハイブリッド化が可能になる。これにより、電力要件に応じて、バッテリと発電源の両方を併用することができる。そしてそれ以上に、このアーキテクチャにより、バッテリを単に「エネルギーバッファ」として扱うことができるようになる。バッテリは、完全に受動的なものとして扱われ、例えば保護機能の作動やステータスの報告などのために、バッテリ管理システム(BMS)によるバッテリシステムの動作に必要な基本的なインテリジェンス以外のソフトウェアまたはハードウェアのインテリジェンスを設ける必要がない。これは、バッテリの動作を最適化するように特別に設けられた要素が制御部の役割を果たす既存の解決策、あるいはバッテリの弱点を補うように設けられた要素が排他的に交互に、すなわち、バッテリとこの要素とが同時に動作することがないようになっている既存の解決策すべてに完全に逆行するものである。
【0022】
図2は、図1に示す航空機による飛行中のエネルギー消費サイクルを示す。図に示すように、飛行は、航空機が垂直に離陸する最初の動作200から開始する。この段階において、垂直駆動ユニットのロータは、作動しながら消費されるエネルギーの大半を占める。水平駆動ユニットは、安定性の理由から作動する場合があるが、エネルギー消費はわずかである。これらには、バッテリから最大600kW、発電源から最大80kWが供給される。これにより、飛行開始時に75%以上90%以下の容量となっているバッテリは、55%以上70%以下の容量まで減らされる。この段階の最後には、航空機は、離陸地点から約50フィート、すなわち約15mの高度差にある。
【0023】
その後、動作210において、航空機は、50フィート以上150フィート以下で垂直飛行から水平飛行に徐々に移行し、次に従来の航空機と同様の方法で上昇する。この段階において、ロータは徐々に停止され、航空機が水平巡航に達すると、消費電力が680kWから80kWに低下する。バッテリと発電源は、フル稼働し続ける。バッテリは、消耗し続け、水平巡航の段階に達すると、10%~30%まで低下する。
【0024】
水平飛行は、バッテリが使用されない動作220において実施される。発電源は、フル稼働し続け、発電された80kWは、制御部によって制御される水平駆動ユニットの間で分配され、水平駆動ユニットで消費されなかった電力は、バッテリの再充電に使用される。この段階により、高度1000フィート(約300m)超において、バッテリを約50%まで再充電することができる。
【0025】
その後、動作230において、降下が実施され、発電源を100%で使用してバッテリが再充電される。これにより、バッテリが100%まで再充電される。この段階において、モータ要素は、エネルギーを消費しない。
【0026】
その後、動作240において、水平飛行から垂直飛行への移行が実施される。ここで、消費電力が約340kWに徐々に移行し、バッテリの充電量が100%から85%~95%まで徐々に移行する。
【0027】
最後に、動作250において、離陸と同様にロータのみを用いて、ただし重力も有利に利用して、垂直着陸が実施される。これにより、バッテリは、動作200の開始時点と同様に、75%以上90%以下まで放電され続ける。
【0028】
そのため、航空機は、2回の飛行の間に地上で再充電される必要がなく、使い勝手が向上する。また、発電源は、常にフル稼働しており(図6に示すような例外もある)、発電源が十分な電力を供給できない場合は、バッテリがそれを補う役割を果たしている。同様に、着陸に十分な電気エネルギーを確保するために、バッテリは可能な限り且つ迅速に再充電される。
【0029】
代替的に、航空機のバッテリは、時間的に十分に離れた2回の飛行の間に地上で再充電されてもよい。この場合、制御部4は、エネルギー供給の配分を変更して航続距離を増加させるためにタービン発電機の動作点を上げるため、または騒音公害や汚染物質の排出を制限するためなど、様々な段階での電力供給についてより高度なトレードオフが実施されてもよい。
【0030】
バッテリの制御は、本発明のアーキテクチャにより受動的に管理される。ロータまたは水平駆動ユニットの消費電力が80kW未満の場合、バッテリは当然使用されず、余剰電流がバッテリの再充電にも使用され得る(例えば動作220または230のように)。それ以上の電力が必要な場合、バッテリは当然使用される。
【0031】
また、本発明のアーキテクチャにより、バッテリの大型化を大幅に抑制することができる。実際、動作220の終了時にバッテリに10%~30%の電荷が残っているのは偶然ではない。これにより、故障によるバッテリの損失が生じた場合であっても、ワンフェールセーフを維持することができる。
【0032】
図3は、1つの垂直駆動ユニットのバッテリまたは他の電気要素が故障した場合の例を示している。図を簡潔にするために、発電源18および垂直駆動ユニット12からのエネルギー出力のみが示されているが、他の要素も同様に動作する。
【0033】
図に示す例において、モータ52および54の一方に電気的な故障が生じたため、第1の垂直駆動ユニット10はオフに切り替えられている。これは、動作200,210,240および250のうちの1つの間に無効とされる。
【0034】
まず、電気要素の各々は、回路の残りの部分から隔離するように制御可能な接触器によって保護されていることに留意されたい。本実施形態では、各発電源固有の配電バスに接続された入力における2つの接触器(図示せず)により、垂直駆動ユニット10(ならびに12,14,16)が隔離されており、外部から垂直駆動ユニット10(ならびに12,14,16)に向けて電気的問題が伝播するのを回避することができる。これは、スイッチ28および38を有する水平駆動ユニット、ならびにスイッチ(図示せず)を有する発電源についても同様である。また、これらの電気的サブセット内の要素の各々は、スイッチ(図示せず)を介して、その要素が属する電気的サブセットの残りの部分にも接続される。これにより、例えばバッテリ50が故障した場合であっても、垂直駆動ユニット10の残りの部分から直ちに切り離されることなく、隔離されることが可能である。
【0035】
本明細書に記載の実施例において、接触器は、ダイオード(図示せず)の存在によって二重にされている。これは、電気的問題、特に短絡が発生した場合に、垂直駆動ユニットを受動的に隔離し、垂直駆動ユニット10(ならびに12,14,16)から外部への電気的問題の伝播を防止することができる。
【0036】
また、バッテリ50,60,80および90は、大型化されている。そして、制御部4は、スイッチ28が垂直駆動ユニット12の出力に接続されるようにする。そのため、バッテリは、最大100kWまで使用される。また、発電源は、通常の動作点を超えて、110%または120%で数分間使用され得る。これとバッテリの過剰使用により、垂直駆動ユニット10の切り離しによる80kWの損失を補うことができる。発電源18から出力された電気がたどる経路は、図において太い矢印で示されている。
【0037】
これにより、バッテリをわずかに大型化しても、リスクを負うことなく離陸(ならびに緊急着陸)を保証および実施することができる。
【0038】
図4は、発電源の1つが失われた場合の別の故障の例を示している。ここでも、電力要素の一部のみが示されているが、他の要素は同様に動作する。
【0039】
図に示すように、発電源10の配電バスに接続された垂直駆動ユニットの入力は、制御部4によって開かれた接触器によって隔離されている。また、残りの発電源は、通常の動作点を超えて使用され、バッテリは、約70kWの電力供給、すなわち、水平駆動ユニットによって通常消費される電力の90%を維持するために使用される。
【0040】
着陸前の降下段階でバッテリを再充電できるので、ここでもワンフェールセーフが保証されている。また、バッテリを25%大きくすることで、通常の90%の容量で水平飛行を続けるのに十分なエネルギーを保証することができる。
【0041】
図5は、さらに別の故障の例を示している。ここでは、水平駆動ユニットが失われた場合を示している。この場合、その損失を考慮した高度と速度プロファイルで水平巡航を維持するために、残りの水平駆動ユニットが最大容量まで使用される。バッテリは、急激な消費過多の場合のバッファとして使用されてもよい。
【0042】
図6は、様々な状況における電力コマンドを管理するために制御部4によって実現され得るアルゴリズムを示している。
【0043】
これは、ロータおよび/またはスラスタの動作点を受信する、動作600から開始するサイクルを含む。
【0044】
その後、動作610において、ロータおよび/またはスラスタは、その動作点に対応する電流を引き込む。この動作に続く動作620において、タービン発電機が100%で制御されているかどうかを判定するテストが実施される。制御されていない場合、動作630において、制御部4は、タービン発電機を最大まで押し上げ、タービン発電機が速度を上げている間、バッテリが必要な電流を補う。タービン発電機が最大まで押し上げられている場合、動作640において、制御部4は、その発電が動作610の電流の引き込みに十分かどうかを判定する。十分でない場合、次の動作点まで全負荷が維持され、バッテリに負荷がかけられる。十分である場合、動作650において、制御部4は、バッテリの充電が必要かどうかを検証する。充電が必要な場合、全負荷が維持され、次の動作点まで余剰電力がバッテリの充電に使用される。それ以外の場合、動作660において、制御部4は、次の動作点までタービン発電機の動作点を減少させる。
【0045】
上述した消費電力は、純粋に目安として示したものであり、これに限定されるものではない。この電気的アーキテクチャは、航空機の飛行に関連する実際の要求に応じて適合させる必要がある。
【0046】
以上のことから、電源が高出力・低用量タイプのものであり、発電源が高容量・低出力のタイプのものであることがわかる。これは、電源がエネルギーバッファとして使用され、発電源が水平飛行の消費電力に応じて、またエネルギーバッファを充電できるように、サイズが決められているためである。
【0047】
この二重性は、すべての電気回路が相互接続されており、それらが保護により独立している上述したアーキテクチャによって実現されている。これにより、要素のサイズを最適化しながら、ワンフェールセーフを保証する冗長性を作り出すことが可能になる。このように、本発明による航空機は、ワンフェールセーフの実現に伴う追加のコストを最小限に抑えることができ、飛行の各段階における電源が真に補完的である真のハイブリッドアーキテクチャを実現することができる。
【0048】
また、図は、航空機の電気回路図を表していることにも留意されたい。そのため、図ではロータ42および44、46および48、52および54、ならびに56および58が並んで示されているが、これは必ずしも機械的な観点から示されているものではない。実際、ロータは、故障によって航空機が不安定にならないように、垂直駆動ユニットにおいて対になって組み立てられている。そのため、同じ垂直駆動ユニットのロータは、一般に、航空機の中心に関して対称に配置される。
【0049】
また、図には、2つのスラスタ、8つのロータ、および2つのタービン発電機を有する航空機が示されているが、これらの数は異なっていてもよい。実際、スラスタが3つ以上設けられてもよく、水平駆動ユニットごとに垂直駆動ユニットが3つ以上設けられてもよい。同様に、制御部4も、弾力性を高めるために2倍になっていてもよい。
【0050】
最後に、1つの垂直駆動ユニットが1つの水平駆動ユニットにのみ接続可能であるので、アーキテクチャの制御を簡素化することができる。実際、この原理により、同じ水平駆動ユニットに接続された異なる垂直駆動ユニットの数によって、冗長性と大きさを制御することができる。また、弾力性は、水平駆動ユニットのスイッチによって調整され、容易に実現される。これは、定常モードでも劣化モードでも制御上大きな問題となり得る、1つの垂直駆動ユニットが複数の水平駆動ユニットに接続される方式よりもはるかに効率的である。
【0051】
代替的に、上述したように、離陸時に電源が100%になるように航空機を地上で充電することもできる。これにより、他の飛行方式が可能になり、航空機の航続距離を延ばし、低高度での離着陸時の騒音および汚染物質の排出を抑制することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】