(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-17
(54)【発明の名称】2つの過負荷防止カップリングを備えるスプリングダンパ、およびパワートレイン
(51)【国際特許分類】
F16F 15/134 20060101AFI20240110BHJP
F16D 7/02 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
F16F15/134 A
F16D7/02 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023541101
(86)(22)【出願日】2022-01-19
(85)【翻訳文提出日】2023-07-05
(86)【国際出願番号】 DE2022100048
(87)【国際公開番号】W WO2022174861
(87)【国際公開日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】102021103932.0
(32)【優先日】2021-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515009952
【氏名又は名称】シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies AG & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Industriestr. 1-3, 91074 Herzogenaurach, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ ワルス
(72)【発明者】
【氏名】マチュー ベルテレーム
(57)【要約】
本発明は、自動車のドライブトレイン(2)用のスプリングダンパ(1)であって、主要部(3)と、主要部(3)に対してばね緩衝式に、回転可能に受容されている補助部(4)と、補助部(4)とハブ要素(5)との間に動作可能に挿入されている第1の過負荷防止カップリング(6)であって、第1の過負荷防止カップリング(6)は、閾値より低いトルクを伝達するべきときには恒久的に閉鎖され、当該閾値より高い少なくとも急激な場合のトルクを伝達するべきときには、補助部(4)とハブ要素(5)との間の相対的回転を解放する、第1の過負荷防止カップリング(6)と、を備え、第2の過負荷防止カップリング(7)は、第1の過負荷防止カップリング(6)の出力部(8)とハブ要素(5)との間に、径方向で第1の過負荷防止カップリング(6)内に動作可能に挿入されている、スプリングダンパ(1)に関する。本発明は更に、当該スプリングダンパ(1)を備えるパワートレイン(2)に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のドライブトレイン(2)用のスプリングダンパ(1)であって、主要部(3)と、前記主要部(3)に対してばね緩衝式に、回転可能に受容されている補助部(4)と、前記補助部(4)とハブ要素(5)との間に動作可能に挿入されている第1の過負荷防止カップリング(6)であって、前記第1の過負荷防止カップリング(6)は、閾値より低いトルクを伝達するべきときには恒久的に閉鎖され、前記閾値より高い少なくとも急激な場合のトルクを伝達するべきときには前記補助部(4)と前記ハブ要素(5)との間の相対的回転を解放する、第1の過負荷防止カップリング(6)と、を備える、スプリングダンパ(1)において、第2の過負荷防止カップリング(7)は、前記第1の過負荷防止カップリング(6)の出力部(8)と前記ハブ要素(5)との間に、径方向で前記第1の過負荷防止カップリング(6)内に動作可能に挿入されていることを特徴とする、スプリングダンパ(1)。
【請求項2】
前記補助部(4)は、ダンパスプリング(9)上に、周方向に直接的に支持されたフランジ要素(10)を有し、前記フランジ要素(10)は、前記第1の過負荷防止カップリング(6)の入力部(11)を更に直接的に形成することを特徴とする、請求項1に記載のスプリングダンパ(1)。
【請求項3】
前記第1の過負荷防止カップリング(6)の前記出力部(8)は、マルチピース支持セグメント(12)により形成され、同時に、前記出力部(8)は、前記第2の過負荷防止カップリング(7)の入力部(13)を形成することを特徴とする、請求項1または2に記載のスプリングダンパ(1)。
【請求項4】
前記支持セグメント(12)は、第1のディスク領域(14)と、前記第1のディスク領域(14)に接続された第2のディスク領域(15)と、を有し、前記補助部(4)は、前記第1のディスク領域(14)と前記第2のディスク領域(15)との間で軸方向にクランプ把持されていることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のスプリングダンパ(1)。
【請求項5】
前記第1のディスク領域(14)および前記第2のディスク領域(15)はそれぞれ、前記補助部(4)を支えている摩擦ライニング(16a、16b)を受容することを特徴とする、請求項4に記載のスプリングダンパ(1)。
【請求項6】
前記第1のディスク領域(14)はまた、摩擦装置(17)を介して前記主要部(3)と接触していることを特徴とする、請求項4または5に記載のスプリングダンパ(1)。
【請求項7】
前記支持セグメント(12)は、前記第2のディスク領域(15)に接続された第3のディスク領域(18)を有し、前記ハブ要素(5)は、前記第2のディスク領域(15)と前記第3のディスク領域(18)との間で軸方向にクランプ把持されていることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のスプリングダンパ(1)。
【請求項8】
前記第2のディスク領域(15)および前記第3のディスク領域(18)はそれぞれ、前記ハブ要素(5)を支えている摩擦ライニング(16c、16d)を受容することを特徴とする、請求項7に記載のスプリングダンパ(1)。
【請求項9】
自動車用のドライブトレイン(2)であって、請求項1~8のいずれか一項に記載のスプリングダンパ(1)を有し、前記主要部(3)は、原動機の出力シャフトに接続され、前記ハブ要素(5)は、トランスミッション入力シャフトに接続されている、ドライブトレイン(2)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用車、トラック、バス、または他の商用車などの、自動車のドライブトレイン、好ましくは自動車のハイブリッド式ドライブトレインのためのスプリングダンパであって、主要部と、主要部に対してばね緩衝式に、回転可能に受容されている補助部と、補助部とハブ要素との間に動作可能に挿入されている第1の過負荷防止カップリングであって、第1の過負荷防止カップリングは、閾値より低いトルクを伝達するべきときには恒久的に閉鎖され、閾値より高い少なくとも急激な場合のトルクを伝達するべきときには補助部とハブ要素との間の相対的回転を解放する、第1の過負荷防止カップリングと、を備える、スプリングダンパに関する。また、本発明は、このスプリングダンパを有するドライブトレインに関する。
【背景技術】
【0002】
ドライブトレインにおいて使用される関心対象のタイプのスプリングダンパは、既に先行技術において周知である。例えば、欧州特許第2 765 331(A2)号は、緩衝コンポーネントと、ヒステリシス発生コンポーネントと、スピード制限コンポーネントと、を有するパワートランスミッション装置を開示している。
【0003】
このように、過負荷防止カップリングの形態のトルクリミッタを備えるスプリングダンパが既知であり、トルクリミッタは、異なる位置で使用することもできる。しかしながら、使用されるスプリングダンパは、複雑な構造を有している場合が多いことが判明しており、その構造は、多数のコンポーネントおよび比較的大きな慣性質量を有する。トルクリミッタはまた、可能な限りダンパスプリングの近くに通常配置されて、万一、トルクのインパルスが発生した場合には、この領域を適切に保護する。しかしながら、これが意味するのは、動作中にトランスミッション入力シャフトに更に接続されているスプリングダンパのコンポーネントは、比較的大きな質量慣性モーメントを有し、この質量慣性モーメントは更に、トランスミッション入力シャフトのその部分に対して、またその部分から更にトランスミッション内に対して比較的大きなトルク負荷をもたらし得るということである。そのため、トランスミッション入力シャフトと、またその結果、トランスミッション内で接続されている、ギアなどの要素とは、ある動作状態において、過負荷状態となり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の目的は、可能な限り頑丈でかつ耐久性があり、トルクのインパルスが発生した場合であっても、動作中に接続されているトランスミッションが過負荷状態となるのを防止するスプリングダンパを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、本目的は、第2の過負荷防止カップリングが、第1の過負荷防止カップリングの出力部とハブ要素との間に、径方向で第1の過負荷防止カップリング内に動作可能に挿入されていることによって実現される。その結果、ここでは、第2の過負荷防止カップリングは、先の第1の過負荷防止カップリング内に、直列に挿入されている。言うまでもなく、第2の過負荷防止カップリングはまた、閾値よりも低いトルクを伝達するべきときには、恒久的に閉鎖され、上記の閾値よりも高い少なくとも急激なトルクの場合のトルクを伝達するべきときには、特に、牽引動作においては、出力部とハブ要素との間の相対的回転を解放するように構成されている。
【0006】
このことは、1つの過負荷防止カップリング、この場合には第1の過負荷防止カップリングが、スプリングダンパの緩衝機構、すなわち、ダンパスプリングの可能な限り近くに挿入され、かつ別の過負荷防止カップリング、この場合には第2の過負荷防止カップリングが、トランスミッション入力シャフトの可能な限り近くに挿入されるという利点をもたらす。これにより、トランスミッション入力シャフトとスプリングダンパの緩衝機構との両方に対して、信頼性の高い保護が提供される。別の肯定的態様は、ダンパスプリングを、従来既知の種類のダンパスプリングと比べてより弱くなるように、したがってより小型であるように構成することができることである。
【0007】
更なる有利な実施形態は、従属請求項とともに特許請求され、以下により詳細に説明される。
【0008】
トルク負荷を更に低減するためには、補助部が、ダンパスプリング上に直接的に周方向に支持されたフランジ要素を有し、更にそのフランジ要素が、第1の過負荷防止カップリングの入力部を直接的に形成する場合にもまた有利であると考えられる。
【0009】
第1の過負荷防止カップリングの出力部が、マルチピース支持セグメントによって形成され、同時に、第2の過負荷防止カップリングの入力部を形成するという場合には、それらの過負荷防止カップリングはまた、可能な限り容易に製造することができる。
【0010】
支持セグメントが、第1のディスク領域と、第1のディスク領域に接続されている第2のディスク領域と、を有し、補助部、好ましくはフランジ要素が、第1のディスク領域と第2のディスク領域との間で、軸方向にクランプ把持されている場合にもまた有利である。更に好ましくは、第1のディスク領域および第2のディスク領域は、それぞれ、シート状金属要素として形成される/金属シートから形成される。これは、ディスク領域を、可能な限り容易に製造することを可能にする。
【0011】
第1の過負荷防止カップリングが可能な限り効果的であるためには、第1のディスク領域および第2のディスク領域がそれぞれ、(直接的に)補助部を支えている摩擦ライニングを受容する場合に有益である。
【0012】
第1のディスク領域および第2のディスク領域がそれぞれ、単一のシートによって形成され、摩擦ライニングの領域内で軸方向に離間され、フランジ要素を収容し、また摩擦ライニング内で径方向に互いに接触しかつ/または軸方向に互いに支持されかつそこで互いに直接的に、好ましくはリベット結合による接続により接続されている場合に、製造は更に簡便になる。このことにより、効率的に組み立てることが可能になるとともに、第1のディスク領域および第2のディスク領域を互いに効率的に取り付けることが可能になる。
【0013】
第1のディスク領域がまた、摩擦装置を介して主要部に接触している場合には、スプリングダンパの緩衝効果が更に改善される。
【0014】
更に、支持セグメントが、第2のディスク領域に接続されている第3のディスク領域を有し、ハブ要素が、第2のディスク領域と第3のディスク領域との間に、軸方向にクランプ把持されている場合に有利である。更に好ましくは、第3のディスク領域はまた、第2のディスク領域のシートに直接的に接続されている単一のシートによって形成される。このことはまた、第2の過負荷防止カップリングの組立および構造に、肯定的な効果をもたらす。
【0015】
この点について、第2のディスク領域および第3のディスク領域が、またはこれらの第2のディスク領域および第3のディスク領域を形成しているシートが、第2の過負荷防止カップリングの複数の摩擦ライニングの径方向外側で、互いに直接的に支持し、そこで好ましくはリベット結合によって互いに取り付けられている場合、更に有利である。
【0016】
したがって、第2のディスク領域および第3のディスク領域がそれぞれ、ハブ要素を支持している摩擦ライニングを受容する場合にもまた有利である。
【0017】
更に、本発明は、上述した実施形態のうちの少なくとも1つによる、本発明のスプリングダンパを有する、自動車用のドライブトレインであって、主要部は、原動機の出力シャフトに接続され、ハブ要素は、トランスミッション入力シャフトに接続されている、ドライブトレインに関する。
【0018】
言い換えれば、スプリングダンパ、好ましくは弓形のスプリングダンパは、本発明により、上記のようにして実装され、そのスプリングダンパは、弓形スプリング(ダンパスプリング)の近くに配置されている第1の径方向外側スリップカップリング(第1の過負荷防止カップリング)と、出力シャフトの近く(すなわち、トランスミッション入力シャフトの近く)に配置されている第2の径方向内側スリップカップリング(第2の過負荷防止カップリング)と、を有する。両方のスリップカップリングは、直列に接続されており、弓形スプリングフランジ(フランジ要素)と、トランスミッション入力シャフトとが、各々のケースにおいて、衝撃を受けた場合に非常に小さい質量慣性モーメントでスリップし得るように調整されている。
【0019】
以下において、本発明は、図面によって、より詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】唯一の図である
図1は、本発明の好ましい例示的一実施形態によるスプリングダンパの長手方向断面図を示し、挿入された2つの過負荷防止カップリングの詳細な構造が明瞭に見られる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1に示す本発明によるスプリングダンパ1は、動作中に、原理的に示した自動車のドライブトレイン2、この場合には、ハイブリッド式ドライブトレイン2内に挿入されている。スプリングダンパ1は、原動機、好ましくは内燃機関(図の明瞭さのために図示せず)の出力シャフトと、トランスミッションのトランスミッション入力シャフトとの間に、動作可能に挿入される。その結果、スプリングダンパ1は、動作中に原動機とトランスミッションとの間に発生するトルクのある一部のピークを緩衝するように機能する。
【0022】
他方で、
図1によるスプリングダンパ1は、主要部3のようなハウジングを有するが、これは、動作中、好ましくは直接的に、回転不能に原動機(更に図の明瞭さのために図示せず)の出力シャフトに接続されている。主要部に加えて、スプリングダンパ1はまた、ばね緩衝式に、主要部3に対して相対的に回転可能に受容されている補助部4を有する。主要部3および補助部4は、ここでは弓形スプリングの形態の、周方向に分配されて配置された数個のダンパスプリング9によって、ばね緩衝式に、互いに対して支持されている。
【0023】
ダンパスプリング9による補助部4に対する主要部3の弾性的支持に加え、追加的な摩擦装置17が、必要な緩衝効果を生成するように、すなわち、運動エネルギーを廃熱に変換するように機能する。摩擦装置17は、主要部3と補助部4との間に動作可能に挿入され、それらが互いに対して回転するのを阻止する効果を有する。
【0024】
補助部4は、ダンパスプリング9に接触している領域から遠ざかるように径方向内側に延在するフランジ要素10によって実質的に形成される。第1の過負荷防止カップリング6は、フランジ要素10上に、直接的に配置される/挿入される。フランジ要素10は、このように、第1の過負荷防止カップリング6の入力部11を直接的に形成し、2つの(第1および第2の)摩擦ライニング16a、16bを介して、第1の過負荷防止カップリング6の出力部8に、動作可能に接続されている。第1の過負荷防止カップリング6は、従来のスリップカップリングとして実装され、閾値より低いあるトルクを伝達するべきときには恒久的に閉鎖され、その状態において、フランジ要素10を、第1の過負荷防止カップリング6の出力部8に、摩擦係合により回転不能に、恒久的に接続する一方で、この閾値が超えられる場合、特に、この閾値を上回るトルクのインパルスが発生した場合に、フランジ要素10と第1の過負荷防止カップリング6の出力部8との間の相対回転を解放する/可能にする。
【0025】
第1の過負荷防止カップリング6の出力部8については、これもまた、マルチピース支持セグメント12によって形成されていることが、更に示されている。支持セグメント12は、第1のディスク領域14と、第1のディスク領域14に固定的に接続されている第2のディスク領域15と、を有する。第1のディスク領域14および第2のディスク領域15は、第1の摩擦ライニング16aおよび第2の摩擦ライニング16bの内部を互いに径方向に誘導され、軸方向ショルダー部19を(第1のおよび第2の)ディスク領域14、15ごとに形成し、互いに接触している。2つの、第1のディスク領域14および第2のディスク領域15は、この接触領域で、第1のリベット結合20によって一体に接続されている。
【0026】
この第1のリベット結合20の径方向外側には、ショルダー部19の形成を通じて、2つのディスク領域14、15が、更に、軸方向に互いに離間しており、またそれらの間には、フランジ要素10を、それぞれ対応する摩擦ライニング16a、16bを挟んで軸方向に受容している。フランジ要素10はこのように、2つのディスク領域14と15との間にクランプ把持されている。
【0027】
第1のディスク領域14については、摩擦ライニング16a、16bの径方向外側に連続しており、摩擦装置17のコンポーネントを形成していることもまた明らかである。第1のディスク領域14はまたこのように、主要部3に摩擦接触している。
【0028】
支持セグメント12はまた、第2の過負荷防止カップリング7の入力部13を形成しているため、第2の過負荷防止カップリング7は、第1の過負荷防止カップリング6と直列に配置されている。第2のディスク領域15の、第1のディスク領域14とは逆側の軸方向側部には、第3のディスク領域18がこの第2のディスク領域15に、この目的のために取り付けられている。第2のディスク領域15は、第3のディスク領域18に、更なる(第2の)リベット結合21によって接続されている。本実施形態では、第2のリベット結合21は、径方向では、第1の摩擦ライニング16aおよび第2の摩擦ライニング16bと同じレベルに配置されている。
【0029】
第2のリベット結合21の径方向内側で、第2のディスク領域15および第3のディスク領域18は、それぞれのショルダー部19が形成されていることによって、軸方向に互いに離間され、それらのディスク領域の間に、ハブ要素5またはハブ要素5のフランジ領域22をそれぞれ軸方向に受容している。第1のリベット結合20は、径方向で、第3の摩擦ライニング16cおよび第4の摩擦ライニング16dのレベルに位置していることに留意されたい。
【0030】
フランジ要素10が、第1のディスク領域14と第3のディスク領域18との間にクランプ把持されているのと同様の様式で、フランジ領域22は、第2のディスク領域15と第3のディスク領域18との間にクランプ把持されている。その結果、フランジ領域22は、第2のディスク領域15と第3のディスク領域18との間に、第3の摩擦ライニング16cおよび第4の摩擦ライニング16dの中間位置に、軸方向にクランプ把持されている。
【0031】
第2の過負荷防止カップリング7の機能は、第1の過負荷防止カップリング6の機能と同様である。伝達されるべきトルク/トルクインパルスのある閾値が超過されるとき、第2の過負荷防止カップリング7が自動的に開き、それにより、ハブ要素5が、支持セグメント12に対して相対的に回転し、その結果、補助部4に対して相対的に回転するのを可能にする。一方で、この閾値を下回る場合には、回転不能な接続が、ハブ要素5と支持セグメント12との間に成立する。その結果、ハブ要素5は、第2の過負荷防止カップリング7の出力部23を形成する。
【0032】
第3の摩擦ライニング16cおよび第4の摩擦ライニング16dは、径方向で、第1の摩擦ライニング16aおよび第2の摩擦ライニング16bの内側に位置している。また、第1の摩擦ライニング16aおよび第2の摩擦ライニング16bを有する摩擦ライニングアセンブリは、第3の摩擦ライニング16cおよび第4の摩擦ライニング16dを有する摩擦ライニングアセンブリと、少なくとも部分的に軸方向で重なって配置されている。
【0033】
ディスク領域14、15、18については、それらがそれぞれ、金属シートから形成されるということに留意されたい。この点について、ショルダー部19は、好ましくは、冷間成形を用いて製造される。
【0034】
言い換えれば、本発明によれば、ダブルトルクリミッタ(第1の過負荷防止カップリング6および第2の過負荷防止カップリング7)を備えているダンパ(スプリングダンパ1)が実装されている。この場合では、トランスミッション入力シャフトを保護する1つのトルクリミッタ(第2の過負荷防止カップリング7)と、弓形スプリング(ダンパスプリング9)を保護する別のトルクリミッタ(第1の過負荷防止カップリング6)と、が存在している。
【0035】
その概念は、次のように構造化されている:ハブ(ハブ要素5)は、トルクリミッタ内の回転部分として機能する。ハブは、2つのカップリングライニング(第3の摩擦ライニング16cおよび第4の摩擦ライニング16d)の間に配置され、万一、衝撃が発生した場合には、スリップ機能が確実に作用することができる。カップリングライニングは、支持シート(第2のディスク領域15および第3のディスク領域18)上に取り付けられている。支持シートどうしは互いに、リベット結合(第2のリベット結合21)によって接続されている。これらの部分は、上述の(第2の)トルクリミッタを形成し、トルクリミッタは、トランスミッションを保護するように機能する。
【0036】
支持シート(第2のディスク領域15)は、リベット結合(第1のリベット結合20)により、支持シート(第1のディスク領域14)に接続されている。2つのカップリングライニング(第1の摩擦ライニング16aおよび第2の摩擦ライニング16b)は、支持シート(第1のディスク領域14および第2のディスク領域15)上に取り付けられている。弓形スプリングフランジ(フランジ要素10)は、2つのカップリングライニング(第1の摩擦ライニング16aおよび第2の摩擦ライニング16b)の間に位置している。弓形スプリングフランジは、トルクリミッタ内の回転部分として機能して、万一、衝撃が発生した場合には、スリップ機能が確実に作用することができる。これらの部分は、(第1の)トルクリミッタを形成し、このトルクリミッタは、ダンパの弓形スプリングを保護する。
【0037】
両方のトルクリミッタは、支持シート(第2のディスク領域15)を介して互いに接続されて、通常の牽引動作においては、一体部分(剛性接続)を形成する。したがって、牽引動作においては、部分5、18、15、20、16c、16d、14、21、16a、16b、10の質量慣性モーメントが、トランスミッション入力シャフトに作用する。
【0038】
万一、衝撃が発生した場合(例えば、急ブレーキをかけている間)には、トランスミッション入力シャフトおよびハブが、トランスミッション入力シャフトにかかる質量慣性モーメントが非常に小さい状態でスリップすることが可能である。並行して、弓形スプリングフランジもまた、弓形スプリングにかかる質量慣性モーメントが非常に小さい状態で、別個にスリップすることが可能である。この概念によって、最適で柔軟であり、最適な保護機能を備えた弓形スプリングの特性を構成することが可能となる。
【符号の説明】
【0039】
1 スプリングダンパ
2 ドライブトレイン
3 主要部
4 補助部
5 ハブ要素
6 第1の過負荷防止カップリング
7 第2の過負荷防止カップリング
8 第1の過負荷防止カップリングの出力部
9 ダンパ要素
10 フランジ要素
11 第1の過負荷防止カップリングの入力部
12 支持セグメント
13 第2の過負荷防止カップリングの入力部
14 第1のディスク領域
15 第2のディスク領域
16a 第1の摩擦ライニング
16b 第2の摩擦ライニング
16c 第3の摩擦ライニング
16d 第4の摩擦ライニング
17 摩擦装置
18 第3のディスク領域
19 ショルダー部
20 第1のリベット結合
21 第2のリベット結合
22 フランジ領域
23 第2の過負荷防止カップリングの出力部
【国際調査報告】