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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-17
(54)【発明の名称】合成プロセス
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/06 20060101AFI20240110BHJP
   A61K 38/12 20060101ALI20240110BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
C07K7/06
A61K38/12
A61P31/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023541725
(86)(22)【出願日】2022-01-10
(85)【翻訳文提出日】2023-09-05
(86)【国際出願番号】 EP2022050354
(87)【国際公開番号】W WO2022148868
(87)【国際公開日】2022-07-14
(31)【優先権主張番号】PA202100027
(32)【優先日】2021-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505371232
【氏名又は名称】クセリア ファーマシューティカルズ エーピーエス
【氏名又は名称原語表記】Xellia Pharmaceuticals ApS
【住所又は居所原語表記】11 Dalslandsgade,DK-2300 Copenhagen S,DENMARK
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】ビョルンスタ、ヴィダル
(72)【発明者】
【氏名】ボニー、カール ジェームズ
【テーマコード(参考)】
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA06
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA17
4C084CA04
4C084CA59
4C084DA43
4C084NA20
4C084ZB351
4C084ZB352
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA05
4H045BA14
4H045BA50
4H045DA83
4H045EA20
4H045FA10
(57)【要約】
ダルババンシンを合成する最適化された方法を提供する。その方法において、A-40926のエステル化生成物を沈殿させるため、tert-ブチルメチルエーテル(TBME)またはジメトキシエタン(DME)などの有機貧溶媒が用いられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)式Iの化合物またはその塩を提供する工程と、
【化1】

(ii)式IIの前記化合物を得るために、酸を含むアルコール溶液を式Iの前記化合物に添加することによってエステル化工程を行う工程と、
【化2】

ここでXはCl、Br、HSO、SO、HPO、HPO、PO、NO、FCCO、FCSO、HCSOまたはp-トルエンスルホン酸塩であり、RはC~Cアルキル基であり、
(iii)tert-ブチルメチルエーテルまたはジメトキシエタンを適量添加することで沈殿物を形成させる工程と、
(iv)式IIIの化合物を得るペプチドカップリングを行うため、前記沈殿物に3-(ジメチルアミノ)-1-プロピルアミンを添加する工程と、
【化3】

ここで、RはC~Cアルキル基であってもよく、
(v)ダルババンシンまたはその塩を得るエステル加水分解工程を行う工程と、
を含むダルババンシンの合成プロセス。
【請求項2】
tert-ブチルメチルエーテルを用いて沈殿工程(iii)を行う請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
工程(ii)における前記酸が酸無水物である請求項3に記載のプロセス。
【請求項4】
前記アルコール溶液にアシルハロゲン化物を添加することにより直接前記アルコール溶液中で工程(ii)における前記酸が生成される請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記アルコール溶液に塩化アシルを添加することにより前記酸が生成される請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
前記アルコール溶液に塩化アセチルを添加することにより前記酸が生成される請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
XがClである請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
XがBrである請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記アルコール溶液に臭化アシルを添加することにより前記酸が生成される請求項4に記載のプロセス。
【請求項10】
前記アルコール溶液に臭化アセチルを添加することにより前記酸が生成される請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
工程(ii)における前記アルコール溶液がメタノール溶液である請求項1~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
Rがメチル基である請求項1~11のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(本発明の分野)
本発明はダルババンシン(dalbavancin)を合成するための方法に関連する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
ダルババンシンは半合成リポグリコペプチド(lipoglycopeptide)であり、細胞壁の生合成をかく乱することによって殺菌効果を発揮する。ダルババンシンは成長中のペプチドグリカン鎖上のD-アラニル-D-アラニル残基に結合し、ペプチド転移が起こらないようにすることでペプチドグリカンの伸長および細胞壁形成を妨げる。
【0003】
ダルババンシンは、天然グリコペプチド複合体A-40926を生成するNonomuraea選抜株の発酵によって製造される。その後、この前駆体はその前駆体の糖部分におけるカルボキシル基が選択的にエステル化され、その前駆体のペプチジルカルボキシル基がアミド化され、N-アシルアミノグルクロン酸カルボキシル基のエステルがけん化される。この産物は、密接に関連する2つの構造ファミリー(AおよびB)の化合物混合物であり、さらに計5つのサブタイプに細分できる(下表参照)。
【0004】
【化1】
【0005】
【表1】
【0006】
前駆体A-40926をダルババンシンに変換する様々な方法が存在しており、すべてエステル化工程、アミド化工程および加水分解工程を含む。
米国特許第6900175号(特許文献1)には、0℃の硫酸メタノール溶液を用いたエステル化工程の後、トリエチルアミンを用いたpH調整により当該生成物の双性イオン形態を沈殿させることでその生成物を単離し、続いて遠心分離および真空オーブン乾燥することが記述されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6900175号明細書
【発明の概要】
【0008】
(概要)
本発明は、前駆体A-40926からダルババンシンを合成する代替・改良プロセスを提供する。前記プロセスは、以下の工程を含む。
【0009】
(i)A-40926とも称される式Iの化合物またはその塩を提供する工程。
【0010】
【化2】
【0011】
(ii)式IIの前記化合物を得るためエステル化工程を行う工程。
【0012】
【化3】
【0013】
ここでXはCl、Br、HSO、SO、HPO、HPO、PO、NO、FCCO、FCSO、HCSOまたはp-トルエンスルホン酸塩であってもよく、RはC~Cアルキル基であってもよい。
【0014】
(iii)tert-ブチルメチルエーテルまたはジメトキシエタンを適量添加することで沈殿物を形成させる工程。
(iv)式IIIの化合物を得るペプチドカップリングを行うため、前記沈殿物に3-(ジメチルアミノ)-1-プロピルアミンを添加する工程。
【0015】
【化4】
【0016】
ここで、RはC~Cアルキル基であってもよい。
(v)ダルババンシンまたはその塩を得るエステル加水分解工程を行う工程。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(詳細な開示)
本発明で記述されるプロセスでは、天然に存在する化合物A-40926からダルババンシンは調製される。A-40926は下記の式Iで表現される。A-40926中の2つのカルボキシル基のうちの1つを(ジメチルアミノ)プロピルアミドに変換することを経てダルババンシンは調製される。
【0018】
本発明によるプロセスでは、ダルババンシンは式Iの化合物から合成される。
【0019】
【化5】
【0020】
式Iから分かるとおり、A-40926は2つのカルボキシル基(carboxylic group)と1つのペプチジルカルボキシル基(peptidyl carboxylic group)と1つのN-アシルアミノグルクロン酸基とを有する。ダルババンシンを得るためペプチジルカルボキシル基をアミド化する。したがって、N-アシルアミノグルクロン酸基をアミド化から保護するためにN-アシルアミノグルクロン酸基の選択的なアルキルエステル化を行う必要があり、合成プロセスの第一工程は式IIの化合物を得るためのエステル化工程である。
【0021】
【化6】
【0022】
エステル化工程は酸を含むアルコール溶液にA-40926を添加することで行われる。酸としては、例えばHCl、HBr、HSO、HPO、HNO、FCCOH、FCSOH、HCSOHまたはp-トルエンスルホン酸のうちのいずれかの酸である。
【0023】
したがって、用いた酸により式IIのXはCl、Br、HSO、SO、HPO、HPO、PO、NO、FCCO、FCSO、HCSOまたはp-トルエンスルホン酸塩となりうる。
【0024】
「アルコール溶液」という用語はアルコールを含みかつ最大2%しか水が存在しない溶液と理解される。ある実施形態においては最大1.9%、1.8%、1.7%、1.6%、1.5%、1.4%、1.3%、1.2%、1.1%、1.0%、0.9%、0.8%、0.7%、0.6%、0.5%、0.4%、0.3%、0.2%、0.1%または0.05%である。
【0025】
ある実施形態においてアルコール溶液における水の量は0.05%から2%の範囲内である。
アルコールはメタノール、エタノールまたはC~Cアルコールであってよい。
【0026】
用いたアルコールによって式IIのRはC~C6アルキル基となりうる。
「C~Cアルキル基」という用語は例えばメチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基またはそれらの分岐構造の化合物を意味する。
【0027】
ある実施形態においては、用いたアルコールはメタノール、エタノールまたはプロパノールであり、RはそれぞれCH、CHCHまたはCHCHCHである。
ある実施形態においては、用いたアルコールがメタノールであり、RはCHである。
【0028】
上述の通りアルコール溶液はさらに酸を含んでもよい。酸としては例えばHCl、HBr、HSO、HPO、HNO、FCCOH、FCSOH、HCSOHまたはp-トルエンスルホン酸などである。
【0029】
ある実施形態において酸は酸無水物の形態でアルコール溶液に添加されてもよい。
しかし、すべての酸が酸無水物として利用可能ではない。ある実施形態において、前記アルコール溶液にアシルハロゲン化物を添加することによりアルコール溶液中で(in situ)酸が生成されてもよい。
【0030】
「アシル基」という用語はC~Cの直鎖または分岐アルキル鎖を含むものを意味する。
酸性水溶液を添加することに対し、アシルハロゲン化物を用いて酸を溶液中で(in situ)生成することでより速い反応が可能となる。なぜなら大量の水が存在するとエステル化反応が遅くなるためである。
【0031】
ある実施形態においてハロゲン化物は塩化物であり、前記アルコール溶液に塩化アシルを添加することにより前記酸(HCl)は生成される。
ある実施形態においてアシル基はアセチル基であり、前記アルコール溶液に塩化アセチルを添加することにより前記酸は生成される。
【0032】
本発明におけるある実施形態では前記アルコールはメタノールであり、HClを溶液中で(in situ)生成するために塩化アセチルを加える。
ある実施形態においてハロゲン化物は臭化物であり、前記アルコール溶液に臭化アシルを添加することにより前記酸(HBr)は生成される。
【0033】
ある実施形態においてアシル基はアセチル基であり、前記アルコール溶液に臭化アセチルを添加することにより前記酸は生成される。
本発明におけるある実施形態では前記アルコールはメタノールであり、HBrを溶液中で(in situ)生成するために臭化アセチルを加える。
【0034】
エステル化工程は温度-20℃から10℃で行われてもよく、例えば-15℃から5℃、-14℃から5℃、-13℃から5℃、-12℃から5℃、-11℃から5℃、-10℃から5℃、-10℃から4℃、-10℃から3℃、-10℃から2℃、-10℃から1℃、-10℃から0℃、-9℃から0℃、-8℃から0℃、-7℃から0℃、-7℃から-1℃、-7℃から-2℃、-7℃から-3℃、-7℃から-4℃などで行われてもよい。
【0035】
ある実施形態において前記反応は温度5℃、4℃、3℃、2℃、1℃、0℃、-1℃、-2℃、-3℃、-4℃、-5℃、-6℃、-7℃、-8℃、-9℃または-10℃で行われる。
【0036】
反応時間は適用温度に依存することとなり、1時間から50時間であってよく、例えば1時間から45時間、2時間から40時間、2時間から30時間、2時間から24時間、3時間から23時間、4時間から22時間、5時間から21時間であってもよい。
【0037】
エステル化工程は塩化アセチル:A-40926のモル比が30:1から5:1までで行われてもよく、例えば25:1から5:1まで、20:1から5:1まで、25:1から10:1まで、20:1から10:1までなどであってもよい。
【0038】
ある実施形態において前記反応は塩化アセチル:A-40926のモル比が20:1、19:1、18:1、17:1、16:1、15:1、14:1、13:1、12:1、11:1または10:1で行われる。
【0039】
エステル化反応後には、結果生じる中間体をアミド化工程用に準備する必要がある。当技術分野で周知のダルババンシンを合成する方法において、エステル化工程からの中間体は、あらゆる望ましくない溶媒を除去する目的で、沈殿させ、結果生じる固形物を分離し、乾燥させることにより、アミド化工程用に準備される。しかしながら、これは望ましくない不純物形成の増加につながる可能性があり、特に分解生成物であるマンノシルアグリコン(mannosyl aglycone(MAG))およびデマンノシル誘導体(demannosyl derivative)が(pHに応じて)形成されうる。加えて生成物を沈殿させるためのpH調整が行われる当技術分野で周知の方法は、迅速なろ過に適さない固形物を生じる可能性があるし、後続のアミドカップリング前に、痕跡量の溶媒水および痕跡量の溶媒アルコールをすべて除去するため加熱真空オーブンで完全に乾燥する必要があろう。
【0040】
【化7】
【0041】
本発明者は驚くべきことにtert-ブチルメチルエーテル(TBME)やジメトキシエタン(DME)などの有機貧溶媒を適量用い式IIの化合物を沈殿させることで、結果生じる沈殿物を、ろ過工程後さらに真空オーブンなどのオーブンで乾燥させる必要なく、後続のアミド化反応に直接用いることができることを見つけた。本発明者はTBMEやDMEを用いることで簡単にろ過できる沈殿物が形成されることを見つけた。その沈殿物はより容易なかつ時間効率がより高いろ過に適しており、それにより遠心分離の必要がなくなる。本発明者は、本方法が簡単にろ過できる沈殿物を生成するため特にスケールの大きい合成プロセスでの使用に適すること、および、開始化合物A-40926が500グラムまたはそれより大きなスケールにおいて成功裏に本プロセスが用いられたことを見つけた。他の先行する周知方法では、小スケールではろ過可能であるが大スケールではろ過不能であるか実用的ではない沈殿物を生成する可能性がある。
【0042】
本発明におけるある実施形態ではTBMEを用いて沈殿を行う。エステル化に用いられるアルコールのTBMEに対する比は約1から5.0までであってよく、例えば1から4.9まで、1から4.8まで、1から4.7まで、1から4.6まで、1から4.5まで、1から4.4まで、1から4.3まで、1から4.2まで、1から4.1まで、1から4.0まで、1から3.9まで、1から3.8まで、1から3.7まで、1から3.6まで、1から3.5まで、1から3.4まで、1から3.3まで、1から3.2まで、1から3.1まで、1から3.0まで、1から2.9まで、1から2.8まで、1から2.7まで、1から2.6まで、1から2.5まで、1から2.4まで、1から2.3まで、1から2.2まで、1から2.1まで、1から2.0までなどであってよい。
【0043】
沈殿した式IIの化合物を含む溶液は工程(iv)の前にろ過されてもよい。
沈殿した式IIの化合物を含む溶液は重力のみによりろ過されてもよい。
したがって、実施形態においてろ過工程はフィルターに加圧せずまたは減圧せず行われる。
【0044】
ろ過工程は、エステル化プロセスの生成物をフィルター上でガス流にさらすことにより、その生成物を後続のアミド化反応用に準備することによって完了してもよい。ガスとしては例えば乾燥した窒素ガスが挙げられる。このプロセスは早く1時間ほどで完了でき、それにより真空オーブンで乾燥させる場合などと違って分解生成物の形成が回避される。
【0045】
沈殿した式IIの化合物を含む溶液はヌッチェフィルター(Nutsche filter)を用いてろ過されてもよい。ある実施形態においては重力下でろ過し、かつ/または乾燥した窒素ガスでフィルター上流にて加圧しつつろ過し、かつ/またはヌッチェフィルター(Nutsche filter)下流にて減圧しつつろ過する。
【0046】
沈殿した式IIの化合物を含む溶液のろ過後、適した溶媒に沈殿物を溶解させる。溶媒としては例えばDMSO(ジメチルスルホキシド)、DMF(ジメチルホルムアミド)、DMA(ジメチルアセトアミド)、THF(テトラヒドロフラン)、NMP(N-メチル-2-ピロリドン)またはそれらの混合物などが挙げられる。得られた溶液に標準アミンカップリング試薬および3-(ジメチルアミノ)-1-プロピルアミンが添加された。これは式IIIの化合物を得るためである。
【0047】
【化8】
【0048】
ここで、RはC~Cアルキル基であってもよい。
用いられうるアミンカップリング試薬の例としてはDCC(dicyclohexylcarboiimide、ジシクロヘキシルカルボイイミド)、DIC(ジイソプロピルカルボジイミド)、EDC(N-エチル-N’-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド)、HOBt(ヒドロキシベンゾトリアゾール)、HOAt(1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール)、PyBOP(ベンゾトリアゾール-1-イル-オキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロリン酸)、HATU(O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸)が挙げられる。
【0049】
アミンカップリング工程の後、沈殿させ、ろ過し任意で真空乾燥することにより式IIの化合物を得てもよい。
ダルババンシンを得るためにはN-アシルアミノグルクロン酸カルボキシル基にエステル化工程で付加したアルキル基を除去する必要がある。これはエステル加水分解工程によって行われる。
【0050】
本明細書で説明した合成プロセスにより得られるダルババンシンは、残存発酵に関連する不純物および/または合成およびプロセスに関連する不純物を除去するために、さらに精製されてもよい。
【0051】
本明細書および請求項のすべての数字は「約」という用語で修飾される。これは問われている数値または範囲の±10%で定義されるわずかな変動を各数字が含むことを意味する。
【0052】
(実施例1)
(a)乾燥した窒素雰囲気下0℃でA40926(645g)をメタノール性塩酸溶液(0.55M、10.0L)に少しずつ添加した。その速度は温度が4℃を超えないことを保証する速度である。温度をその後4℃に調節し反応の進行をHPLCで一定時間ごとに監視した。反応が完了したとHPLCで判断したら、生成物を沈殿させるため約1時間かけてTBME(32.0L)を添加した。固形物質をヌッチェフィルター(Nutsche filter)を用いてろ過し追加のTBMEで洗浄した(3×5L)。そのフィルターの固形物(filter cake)は、乾燥した窒素ガス流を用いて固形物質が一貫して粉状になるまで乾燥させた。半乾燥物質は直接次の反応に用いた。
【0053】
(b)半乾燥物質(1当量)をDMF(75mM)に溶解させ0℃に冷却し、トリエチルアミン(2.0当量)とHATU(1.0当量)とを加えた。10分後、3-(ジメチルアミノ)-1-プロピルアミン(1.0当量)を添加し前記混合物をさらに30分かき混ぜた。酢酸エチルを加えて生成物を沈殿させ、ろ過し、追加の酢酸エチルで洗浄した。固形物質を30℃真空オーブンで乾燥させ、さらなる精製なしに次の反応に用いた。
【0054】
(c)カップリング生成物(667g)と水(12.5L)とのスラリーを2℃に冷却し、4℃より低い温度を維持するために5分かけて水酸化ナトリウム水溶液(2M、1.4L)を添加した。温度をその後6℃に調整し、この温度で反応混合物を3時間かき混ぜた。
【国際調査報告】