(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-17
(54)【発明の名称】プロピレンの製造を最大化するための流動触媒変換方法
(51)【国際特許分類】
C07C 4/10 20060101AFI20240110BHJP
C07C 11/06 20060101ALI20240110BHJP
B01J 38/22 20060101ALI20240110BHJP
B01J 29/80 20060101ALI20240110BHJP
B01J 29/90 20060101ALI20240110BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240110BHJP
【FI】
C07C4/10
C07C11/06
B01J38/22
B01J29/80 M
B01J29/90 M
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023541768
(86)(22)【出願日】2021-06-24
(85)【翻訳文提出日】2023-09-07
(86)【国際出願番号】 CN2021101926
(87)【国際公開番号】W WO2022147971
(87)【国際公開日】2022-07-14
(31)【優先権主張番号】202110032113.X
(32)【優先日】2021-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202110296904.3
(32)【優先日】2021-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503191287
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】523143774
【氏名又は名称】中石化石油化工科学研究院有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】許友好
(72)【発明者】
【氏名】左巌芬
(72)【発明者】
【氏名】舒興田
(72)【発明者】
【氏名】汪燮卿
(72)【発明者】
【氏名】羅一斌
(72)【発明者】
【氏名】張雲鵬
(72)【発明者】
【氏名】韓月陽
(72)【発明者】
【氏名】杜令印
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169BA07A
4G169BA07B
4G169BA10C
4G169BB04C
4G169BC38A
4G169BC49A
4G169BC65A
4G169BC69A
4G169CC07
4G169DA07
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4G169ZF07A
4G169ZF07B
4H006AA02
4H006AB84
4H006AC26
4H006BA02
4H006BA09
4H006BA30
4H006BA55
4H006BC10
4H006BC11
4H006BC19
4H006BC34
4H006BD30
4H006BD33
4H006BD52
4H006DA12
4H039CA29
4H039CG50
(57)【要約】
1)重質原料油を、反応のために650℃以上の温度を有する接触変換触媒と接触させる工程;2)50重量%以上のオレフィン含量を有する炭化水素油原料を、工程1)の反応後に接触変換触媒と接触させる工程;3)得られた反応石油ガスから第1の接触分解留出油および第2の接触分解留出油を分離する工程;4)第1の接触分解留出油からオレフィンリッチなストリームを分離する工程;ならびに、5)オレフィンリッチなストリームを再循環させる工程、を含む、プロピレンの製造を最大化するための流動触媒変換方法。本願の方法は、プロピレンの収率を効果的に改善して、石油資源の有効利用を実現することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の1)~6)の工程を含む、プロピレンの製造を最大化するための流動触媒変換方法:
1)重質原料油を流動触媒変換反応器の第1の反応ゾーンに導入し、650℃以上の温度を有する接触変換触媒と接触させ、第1の触媒変換反応条件下で反応させる工程;
2)50重量%以上のオレフィン含量を有する炭化水素油原料を、前記第1の反応ゾーンの前記流動触媒変換反応器の下流の第2の反応ゾーンに導入し、工程1)の反応後に、前記第1の反応ゾーンからの前記接触変換触媒と接触させ、第2の触媒変換条件下で反応させる工程;
3)前記流動触媒変換反応器の流出物を分離して、反応生成物および使用済み触媒を得、前記反応生成物に対して第1の分離を行って、エチレン、プロピレン、ブチレン、第1の接触分解留出油、および第2の接触分解留出油を得;前記第1の接触分解留出油の初留点は20℃超であり、前記第2の接触分解留出油の終点は550℃未満であり、前記第1の接触分解留出油と前記第2の接触分解留出油との間のカットポイントは、140℃~250℃の範囲内である工程;
4)前記第1の接触分解留出油に対して第2の分離を行い、少なくとも50重量%のC5+オレフィン含量を有するオレフィンリッチなストリームを得る工程;
5)前記オレフィンリッチなストリームの少なくとも一部を、さらなる反応のために工程2)に再循環させる工程;ならびに
6)工程3)で分離された前記ブチレンの少なくとも一部を、前記重質原料油が導入され、第3の触媒変換条件下で、反応のために前記接触変換触媒と接触する位置である前記流動触媒変換反応器の上流に再循環させる工程、
ここで、前記第1の触媒変換条件は以下を含む:
500~800℃、好ましくは510~780℃の反応温度;
0.05~1MPa、好ましくは0.1~0.8MPaの反応圧力;
0.01~100秒、好ましくは0.1~80秒の反応時間;
(1~200):1、好ましくは(3-180):1の、前記重質原料油に対する前記接触変換触媒の重量比率;
前記第2の触媒変換条件は以下を含む:
400~680℃、好ましくは450~650℃の反応温度;
0.05~1MPa、好ましくは0.1~0.8MPaの反応圧力;
0.01~100秒、好ましくは0.1~80秒の反応時間;
(1~100):1、好ましくは(3-70):1の、前記炭化水素油原料に対する前記接触変換触媒の重量比率;ならびに
前記第3の触媒変換条件は以下を含む:
650~800℃、好ましくは680~780℃の反応温度;
0.05~1MPa、好ましくは0.1~0.8MPaの反応圧力;
0.01~10秒、好ましくは0.05~8秒の反応時間;
(20~200):1、好ましくは(30-180):1の、前記ブチレンに対する前記接触変換触媒の重量比率。
【請求項2】
さらに以下の2a)の工程を含む、請求項1に記載の方法:
2a)酸素含有有機化合物を、前記流動触媒変換反応器の前記第2の反応ゾーンに導入して、以下を含む第4の触媒変換条件下で、反応のために前記接触変換触媒と接触させる工程:
300~550℃、好ましくは400~530℃の反応温度;
0.05~1MPa、好ましくは0.1~0.8MPaの反応圧力;
0.01~100秒、好ましくは0.1~80秒の反応時間;
(1~100):1、好ましくは(3-80):1の、前記酸素含有有機化合物に対する前記接触変換触媒の重量比率、
好ましくは、前記酸素含有有機化合物は、メタノール、エタノール、ジメチルエーテル、メチルエチルエーテル、およびエチルエーテルのうちの少なくとも1つを含む。
【請求項3】
さらに以下の7)の工程を含む、請求項1または2に記載の方法:
7)前記第2の接触分解留出油に対して水素化処理を行い、水素化された接触分解留出油を得、前記水素化された接触分解留出油を、さらなる反応のために前記流動触媒変換反応器の第1の反応ゾーンへ再循環させる工程、
好ましくは、前記水素化処理の条件は以下を含む:3.0~20.0MPaの水素分圧、300~450℃の反応温度、300~2000の、油に対する水素の体積比率、および0.1~3.0h
-1の体積空間速度。
【請求項4】
さらに以下の8)の工程を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法:
8)工程3)における前記分離によって得られた前記使用済み触媒を、コークスを燃焼させることによって再生して、650℃以上の温度を有する再生された触媒を得、次いで、前記再生された触媒を、前記接触変換触媒として使用するために、前記流動触媒変換反応器の前記第1の反応ゾーンの上流に再循環させる工程。
【請求項5】
工程1)で使用される前記重質原料油は、石油炭化水素および鉱油からなる群から選択され;前記石油炭化水素は、真空軽油、雰囲気軽油、コークス化軽油、脱アスファルト油、真空残油、雰囲気残油、重質芳香族ラフィネート、またはそれらの組み合わせから選択され;前記鉱油は、石炭液化油、オイルサンド油、シェール油、またはそれらの組み合わせから選択され;ならびに
工程2)で使用される前記炭化水素油原料は80重量%以上、好ましくは90重量%以上のオレフィン含量を有し;より好ましくは、前記炭化水素油原料は純粋なオレフィン原料であり;
より好ましくは、前記炭化水素油原料中の前記オレフィンは、アルカン原料の脱水素によって生成されるC4+留分、油精製装置において接触分解ユニットによって生成されるC4+留分、エチレンプラントにおいて水蒸気分解ユニットによって生成されるC4+留分、MTOプロセスのC4+オレフィンリッチな副生成物留分、およびMTPプロセスのC4+オレフィンリッチな副生成物留分から得られる、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
工程4)の前記第2の分離は、さらに、前記オレフィンリッチなストリームを、より低い沸点を有する第1のオレフィンリッチなストリームと、より高い沸点を有する第2のオレフィンリッチなストリームとに分割する工程を含み;前記第1のストリームと、前記第2のストリームとの間のカットポイントは、140~200℃の範囲であり;ならびに
前記工程5)は、前記第1のオレフィンリッチなストリームを、さらなる反応のために前記流動触媒変換反応器の前記第2の反応ゾーンに導入する工程、および前記第2のオレフィンリッチなストリームを、さらなる反応のために前記第2の反応ゾーンの前記流動触媒変換反応器の下流の第3の反応ゾーンに導入する工程、をさらに含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記流動触媒変換反応器は、ライザー反応器、流動化床反応器、上昇移送ライン、下降移送ライン、またはそれらの2つ以上の組み合わせから選択され;好ましくは、ライザー反応器、より好ましくは直径変換ライザー反応器である、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記接触変換触媒が、前記接触変換触媒の重量に基づいて、1~50重量%のモレキュラーシーブ、5~99重量%の無機酸化物、および0~70重量%の粘度を含み;
前記モレキュラーシーブは、マクロ多孔性モレキュラーシーブ、メソ多孔性モレキュラーシーブ、およびミクロ多孔性モレキュラーシーブのうちの少なくとも1つを含み;ならびに
前記接触変換触媒は、さらに、前記接触変換触媒の重量に基づいて、0.1~3重量%の活性金属を含み;前記活性金属は、第VIII金属、第IVA金属、および希土類金属からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記酸素含有有機化合物は、前記炭化水素油原料と混合された後に、前記流動触媒変換反応器の前記第2の反応ゾーンに供給されるか、または前記酸素含有有機化合物は、前記炭化水素油原料が導入される位置である前記流動触媒変換反応器の下流の前記第2の反応ゾーンに供給される、請求項2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔関連出願への相互参照〕
本出願は、「プロピレンの製造を最大化するための触媒変換方法」と題され、2023年1月11日に出願された中国特許出願第202110032113.X号、および「プロピレンの製造を最大化するための触媒変換方法」と題され、2023年3月19日に出願された中国特許出願第202110296904.3号の優先権を主張する。その内容は、それらの全体における参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
〔技術分野〕
本出願は流動触媒変換の分野に関し、特に、プロピレンの製造を最大化するための流動触媒変換方法に関する。
【0003】
〔背景技術〕
石油化学産業は重要な柱産業であり、産業、農業、交通、国防などに大量の化学原料を提供する。プロピレンおよびエチレンは現代の石油化学産業にとって最も重要な2つの基本原料である。しかし、油田の生産量が増加するにつれて、従来の原油の利用可能な収率は徐々に減少し、原油の品質は不良になり、原油は劣化し、重くなる傾向がある。プロピレンは重要な有機化学原料であり、主にアクリロニトリル、プロピレンオキサイド、アセトンなどの調製に用いられる。エチレンおよびプロピレンは、様々な重要な有機化学原料、合成樹脂、合成ゴム、様々な微ケミカルなどを調製するための重要な化学中間体として、ますます使用されている。
【0004】
水蒸気分解によってエチレンおよびプロピレンを調製する従来の方法は、ナフサなどの軽質炭化水素に対する需要が大きい。既存の原油は通常は重質であり、軽質化学油はエチレン原料およびプロピレン原料の需要を満たすことが困難である。研究機関は、ガソリンプールの世界的な年平均成長率が2018年から2026年にかけて1%未満になるが、プロピレンは約4%増加すると予想している。分解によってエチレンおよびプロピレンを調製する精製装置プロセスにおける高炭素オレフィンの適切な使用により、石油化学企業の品質向上および効率化、ならびにエネルギー転換に要する時間といった目標を達成することができる。
【0005】
CN101092323Aは、C4-C8オレフィンの混合物からエチレンおよびプロピレンを調製する方法を開示している。該方法は、前記混合物を400~600℃の反応温度および0.02~0.3MPaの絶対圧力で反応させる工程、ならびにさらなる分解のためにセパレータ内で分離させた後に、30~90重量%のC4留分を反応器に再循環させる工程を含む。該方法は、主にC4留分を再循環させることによってオレフィンの転化率を改善し、得られるエチレンおよびプロピレンがオレフィン原料の総重量の62%以上を占める。しかし、該方法は、比較的低いエチレン/プロピレン比率を含む問題に悩まされ、市場の需要、低い反応選択性、生成物中の高いブチレン含量、およびC4分離のためのエネルギー消費に応じて柔軟に調整することができない。
【0006】
CN101239878Aは、C4+オレフィンがリッチな混合物を原料として使用する方法であって、400~680℃の反応温度、-0.09MPa~1.0MPaの反応圧力、および0.1~50h-1の重量空間速度で反応させる工程を含み、得られる生成物は0.41未満のエチレン/プロピレン比率を有し、温度が上昇するにつれて、エチレン/プロピレン比率は上昇し、水素、メタンおよびエタンの生成が増加する、方法を開示する。
【0007】
したがって、当技術分野では、エチレンおよびプロピレンの生成を増加させ、エチレンおよびプロピレンの選択性を改善するための新規な流動触媒変換方法が必要とされている。
【0008】
〔発明の概要〕
本出願の目的は、炭化水素含有原料からのプロピレンの生成を最大化するための方法を提供することである。これは、エチレンの収率が高く、選択性が高く、乾燥ガスの収率が低い一方で、プロピレンの収率を高めるのに有効である。
【0009】
上述の目的を達成するために、本出願は、以下の1)~6)の工程を含む、プロピレンの製造を最大化するための流動触媒変換方法を提供する:
1)重質原料油を流動触媒変換反応器の第1の反応ゾーンに導入し、650℃以上の温度を有する接触変換触媒と接触させ、第1の触媒変換反応条件下で反応させる工程;
2)50重量%以上のオレフィン含量を有する炭化水素油原料を、前記第1の反応ゾーンの前記流動触媒変換反応器の下流の第2の反応ゾーンに導入し、工程1)の反応後に、前記第1の反応ゾーンからの前記接触変換触媒と接触させ、第2の触媒変換条件下で反応させる工程;
3)前記流動触媒変換反応器の流出物を分離して、反応生成物および使用済み触媒を得、前記反応生成物に対して第1の分離を行って、エチレン、プロピレン、ブチレン、第1の接触分解留出油、および第2の接触分解留出油を得;前記第1の接触分解留出油の初留点は20℃超であり、前記第2の接触分解留出油の終点は550℃未満であり、前記第1の接触分解留出油と前記第2の接触分解留出油との間のカットポイントは、140℃~250℃の範囲内である工程;
4)前記第1の接触分解留出油に対して第2の分離を行い、少なくとも50重量%のC5+オレフィン含量を有するオレフィンリッチなストリームを得る工程;
5)さらなる反応のために、前記オレフィンリッチなストリームの少なくとも一部を工程2)に再循環させる工程;ならびに
6)工程3)で分離された前記ブチレンの少なくとも一部を、前記重質原料油が導入され、第3の触媒変換条件下で、反応のために前記接触変換触媒と接触する位置である前記流動触媒変換反応器の上流に再循環させる工程であって、
ここで、前記第1の触媒変換条件は、500~800℃の反応温度、0.05~1MPaの反応圧力、0.01~100秒の反応時間、および(1~200):1の、前記重質原料油に対する前記接触変換触媒の重量比率を含み;ならびに
前記第2の触媒変換条件は、400~680℃の反応温度、0.05~1MPaの反応圧力、0.01~100秒の反応時間、および(1~100):1の、前記炭化水素油原料に対する前記接触変換触媒の重量比率を含む、工程。
【0010】
第3の触媒変換条件は、650~800℃の反応温度、0.05~1MPaの反応圧力、0.01~10秒の反応時間、(20~200):1の、前記ブチレンに対する前記接触変換触媒の重量比率を含む。
【0011】
好ましくは、本方法が、さらに以下の2a)の工程を含む:
2a)酸素含有有機化合物を、前記流動触媒変換反応器の前記第2の反応ゾーンに導入して、以下を含む第4の触媒変換条件下で、反応のためにその中の接触変換触媒と接触させる工程:
300~550℃の反応温度、
0.05~1MPaの反応圧力、
0.01~100秒の反応時間、
(1~100):1の、前記酸素含有有機化合物に対する前記接触変換触媒の重量比率。
【0012】
好ましくは、本方法が、以下の7)の工程をさらに含む:
7)前記第2の接触分解留出油に対して水素化処理を行い、水素化された接触分解留出油を得、前記水素化された接触分解留出油を、さらなる反応のために前記流動触媒変換反応器の第1の反応ゾーンに再循環させる工程。
【0013】
本出願の流動触媒変換方法では、重質原料油およびオレフィンリッチな炭化水素油原料をそれぞれ高温分解に供し、さらなる反応のために、分離した生成物中のブチレンおよびオレフィンリッチなストリームを反応器に再循環させる。その一方で、分離した生成物中の高い沸点を有する接触ガス油は水素化処理に供され、次いで、さらなる反応に供されてもよい。化学処理で生成された低付加価値オレフィンを特定の経路で精製することによって、プロピレンの収率を効果的に増加させることができ、石油資源の有効利用を実現することができ、高いエネルギー消費を伴う水蒸気分解によってプロピレンを調製する従来のスキームを置き換えることができる。その一方で、本出願による方法はまた、高いエチレン収率、高い選択性、および低い乾燥ガス収率という利点も有する。
【0014】
本出願の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明において詳細に説明される。
【0015】
〔図面の簡単な説明〕
本明細書の一部を形成する図面は、本出願の理解を助けるために提供され、限定的であるとみなされるべきではない。本出願は、以下の詳細な説明と組み合わせて図面を参照して解釈されてもよい。図面において:
図1は、本出願の流動触媒変換方法の好ましい実施形態の概略フロー図を示し;
図2は、本出願の流動触媒変換方法の別の好ましい実施形態の概略フロー図を示し;および
図3は、本出願の流動触媒変換方法のさらに別の好ましい実施形態の概略フロー図を示す。
【0016】
【0017】
〔発明の詳細な説明〕
本出願は、図面およびその特定の実施形態を参照して、以下でさらに詳細に説明される。本出願の特定の実施形態は、説明の目的のためにのみ提供され、いかなる方法でも限定することを意図するものではないことに留意されたい。
【0018】
本出願との関連において記載される数値範囲の端点を含む任意の特定の数値は、その正確な値に限定されない。しかし、前記正確な値に近い全ての値、例えば、前記正確な値の±5%以内の全ての値をさらに包含すると解釈されるべきである。さらに、本明細書に記載される任意の数値範囲に関して、範囲の端点の間、各々の端点と範囲内の任意の特定の値との間、または範囲内の任意の2つの特定の値との間で任意の組み合わせを行い、1つ以上の新しい数値範囲を提供することができる。ここで、前記新しい数値範囲はまた、本出願において具体的に記載されているとみなされるべきである。
【0019】
特に明記しない限り、本明細書で使用される用語は当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有し;用語が本明細書で定義され、その定義が当技術分野における通常の理解と異なる場合には、本明細書で提供される定義を優先するものとする。
【0020】
本出願において、用語「C4+」は、少なくとも4個の炭素原子を有することを意味し、例えば、用語「C4+オレフィン」は、少なくとも4個の炭素原子を有するオレフィンを指し、一方、用語「C4+留分」は、化合物が少なくとも4個の炭素原子を有する留分を指す。対応して、用語「C5+」は、少なくとも5個のC原子を有することを意味する。
【0021】
本出願との関連において、明示的に述べられた主題に加えて、言及されていない主題(any matter)または主題(matters)はいかなる変更もなしに、当技術分野で知られているものと同じであると見なされる。さらに、本明細書に記載される実施形態のいずれもが、本明細書に記載される1つ以上の実施形態と自由に組み合わせることができる。そのようにして得られる技術的な解決策または考えは、本出願の元の開示または元の説明の一部とみなされ、そのような組み合わせが明らかに不合理であることが当業者に明らかでない限り、本明細書に開示または予想されていない新規事項であると見なされるべきではない。
【0022】
教科書および学術論文を含むが、これらに限定されない、本明細書に引用される特許および非特許文献の全てが、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
【0023】
上述のように、本発明は、以下の1)~6)の工程を含む、プロピレンの製造を最大化するための流動触媒変換方法を提供する:
1)重質原料油を流動触媒変換反応器の第1の反応ゾーンへ導入し、反応のために650℃以上の温度を有する接触変換触媒と接触させる工程;
2)50重量%以上のオレフィン含量を有する炭化水素油原料を、第1の反応ゾーンの前記流動触媒変換反応器の下流の第2の反応ゾーンに導入し、反応のために工程1)の反応後に前記第1の反応ゾーンからの前記接触変換触媒と接触させる工程;
3)前記流動触媒変換反応器の流出物を分離して、反応生成物および使用済み触媒を得、前記反応生成物に対して第1の分離を行って、エチレン、プロピレン、ブチレン、第1の接触分解留出油、および第2の接触分解留出油を得;第1の接触分解留出油の初留点は20℃超であり、前記第2の接触分解留出油の終点は550℃未満であり、前記第1の接触分解留出油と前記第2の接触分解留出油との間のカットポイントは140℃~250℃の範囲内である工程;
4)前記第1の接触分解留出油に対して第2の分離を行い、少なくとも50重量%のC5+オレフィン含量を有するオレフィンリッチなストリームを得る工程;
5)前記オレフィンリッチなストリームの少なくとも一部を、さらなる反応のために工程2)に再循環させる工程;ならびに
6)工程3)で分離された前記ブチレンの少なくとも一部を、前記重質原料油が導入され、反応のために前記接触変換触媒と接触する位置である前記流動触媒変換反応器の上流に再循環させる工程。
【0024】
好ましい実施形態では、工程1)の反応は、500~800℃の反応温度、0.05~1MPaの反応圧力、0.01~100秒の反応時間、および(1~200):1の、前記重質原料油に対する前記接触変換触媒の重量比率を含み得る第1の触媒変換条件下で実施され;工程2)の反応は、400~680℃の反応温度、0.05~1MPaの反応圧力、0.01~100秒の反応時間、および(1~100):1の、前記炭化水素油原料に対する前記接触変換触媒の重量比率を含み得る第2の触媒変換条件下で実施される。
【0025】
さらに好ましい実施形態では、前記第1の触媒変換条件は、510~780℃の反応温度、0.1~0.8MPaの反応圧力、0.1~80秒の反応時間、および(3~180):1の、前記重質原料油に対する前記接触変換触媒の重量比率を含み得;前記第2の触媒変換条件は、450~650℃の反応温度、0.1~0.8MPaの反応圧力、0.1~80秒の反応時間、および(3~70):1の、前記炭化水素油原料に対する前記接触変換触媒の重量比率を含み得る。
【0026】
本出願によれば、工程1)で使用される重質原料油は、当技術分野で一般的に使用されるものであってもよく、本明細書で厳密に限定されない。例えば、重質原料油は、石油炭化水素および/または鉱油であり得;前記石油炭化水素は、真空軽油、雰囲気軽油、コークス化軽油、脱アスファルト油、真空残油、雰囲気残油、重質芳香族ラフィネート、またはそれらの組み合わせからなる群から選択され得;前記鉱油は、石炭液化油、オイルサンド油、シェール油、またはそれらの組み合わせから選択され得る。
【0027】
好ましい実施形態では、工程2)で使用される炭化水素油原料は、80重量%以上、好ましくは90重量%以上のオレフィン含量を有してもよく;より好ましくは、炭化水素油原料は、純粋なオレフィン原料であってもよい。
【0028】
本出願によれば、炭化水素油原料は様々な供給源から得ることができ、本明細書では特に限定されない。いくつかの実施形態では、炭化水素油原料中のオレフィンは、アルカン原料の脱水素によって生成されるC4+留分、油精製装置において接触分解ユニットによって生成されるC4+留分、エチレンプラントにおいて水蒸気分解ユニットによって生成されるC4+留分、MTOプロセスのC4+オレフィンリッチな副生成物留分、およびMTPプロセスのC4+オレフィンリッチな副生成物留分から得ることができる。好ましい実施形態では、脱水素化のためのアルカン原料は、ナフサ、芳香族ラフィネート、軽質炭化水素、またはそれらの組み合わせから選択され得る。
【0029】
本出願によれば、アルカン原料の脱水素化は、アルカン原料を脱水素触媒と接触させることによって実施することができる。ここで、使用される脱水素化条件は、400~700℃の反応器の入口温度、200~5000h-1のアルカンの体積空間速度、および0~1.0MPaの反応圧力を含み得る。
【0030】
好ましくは、脱水素触媒は、担体と、担体上に担持された活性成分およびプロモーターとからなり;担体は60~90重量%の量で存在してもよく、活性成分は8~35重量%の量で存在してもよく、プロモーターは脱水素触媒の総重量に基づいて、0.1~5重量%の量で存在してもよい。
【0031】
さらに好ましくは、担体は改質剤を含むアルミナであってもよく;ここで、脱水素触媒の総重量に基づいて、改質剤は0.1~2重量%の量で存在してもよく、改質剤はLaおよび/またはCeであってもよく;活性成分は白金および/またはクロムであってもよく;プロモーターはビスマスおよびアルカリ金属成分の組成物、またはビスマスおよびアルカリ土類金属成分の組成物であってもよく、ここで、活性成分に対するビスマスのモル比率が1:(5~50)であり;アルカリ金属成分に対するビスマスのモル比率が1:(0.1~5)であり;アルカリ土類金属成分に対するビスマスのモル比率が1:(0.1~5)である。特に好ましくは、アルカリ金属成分は、Li、NaおよびKから選択される1種以上であってもよく;アルカリ土類金属成分は、Mg、CaおよびBaから選択される1種以上であってもよい。
【0032】
本出願によれば、さらなる反応のために流動触媒変換反応器に導入されたブチレンを、重質原料油の前に高温の接触変換触媒と接触させる。炭化水素を分解することの難しさは炭素原子の数の減少と共に増し、かつブチレンの分解に必要なエネルギーは比較的高いので、ブチレンを高温の接触変換触媒と最初に接触させる。結果として、ブチレン転化率、ならびにエチレン生成物およびプロピレン生成物の選択性を向上させることができ、ブチレンと重質原料油との共供給に起因する副生成物の発生を回避することができ、資源の高効率での利用を実現することができる。
【0033】
好ましい実施形態では、工程6)の反応は、650~800℃の反応温度、0.05~1MPaの反応圧力、0.01~10秒の反応時間、および(20~200):1の、ブチレンに対する接触変換触媒の重量比率を含み得る第3の触媒変換条件下で実施される。さらに好ましくは、第3の触媒変換条件は、680~780℃の反応温度、0.1~0.8MPaの反応圧力、0.05~8秒の反応時間、および(30~180):1の、ブチレンに対する接触変換触媒の重量比率を含む。
【0034】
いくつかの好ましい実施形態では、本出願の流動触媒変換方法は、2a)酸素含有有機化合物を流動触媒変換反応器の第2の反応ゾーンに導入して、その中で反応させるために接触変換触媒と接触させる工程をさらに含む。
【0035】
好ましくは、工程2a)の反応は、300~550℃の反応温度、0.05~1MPaの反応圧力、0.01~100秒の反応時間、および(1~100):1の、酸素含有有機化合物原料に対する接触変換触媒の重量比率を含み得る第4の触媒変換条件下で実施される。さらに好ましくは、第4触媒変換条件は、400~530℃の反応温度、0.1~0.8MPaの反応圧力、0.1~80秒の反応時間、および(3~80):1の、酸素含有有機化合物原料に対する接触変換触媒の重量比率を含む。
【0036】
本出願のそのような好ましい実施形態では、酸素含有有機化合物は、単独で、または他の原料と混合して供給され得る。例えば、酸素含有有機化合物は炭化水素油原料と混合され、次いで、流動触媒変換反応器の第2の反応ゾーンに供給されてもよく、または酸素含有有機化合物は、炭化水素油原料が導入される位置である流動触媒変換反応器の下流の第2の反応ゾーンに供給されてもよい。
【0037】
特に好ましくは、酸素含有有機化合物は、メタノール、エタノール、ジメチルエーテル、メチルエチルエーテル、およびエチルエーテルのうちの少なくとも1つを含む。例えば、メタノールまたはジメチルエーテルなどの酸素含有有機化合物は、石炭ベースまたは天然ガスベースの合成ガスから得ることができる。
【0038】
いくつかの好ましい実施形態では、本出願の流動触媒変換方法が、7)工程3)で得られた第2の接触分解留出油に対して水素化処理を行って水素化された接触分解留出油を得、かつ、水素化された接触分解留出油を、さらなる反応のために流動触媒変換反応器の第1の反応ゾーンに再循環させる工程をさらに含む。この実施形態では、第2の接触分解留出油が水素化処理に供され、次いで、さらなる反応に供される。結果として、低分子アルカンおよびコークスを生成する副反応をより低減し得、エチレンおよびプロピレンの収率を向上させることができ、炭素原子の有効利用を実現することができる。
【0039】
好ましくは、水素化処理条件は、3.0~20.0MPaの水素分圧、300~450℃の反応温度、300~2000の、油に対する水素の体積比率、および0.1~3.0h-1の体積空間速度を含み得る。
【0040】
本出願によれば、工程7)で使用される水素化触媒は、当該技術分野で一般的に使用されるものであってもよく、本明細書では特に限定されない。例えば、水素化触媒は、担体と、金属成分と、任意に担体上に担持された添加剤と、を含むことができる。好ましくは、水素化触媒は、水素化触媒の総重量に基づいて、20~90重量%の担体と、10~80重量%の担持された金属と、0~10重量%の添加剤とを含む。さらに好ましくは、担体がアルミナおよび/または非晶質シリカ-アルミナであり、金属成分が第VIB族金属および/または第VIII族金属であり、添加剤がフッ素、リン、チタンおよび白金から選択される少なくとも1つであり;さらにより好ましくは、第VIB族金属がMoおよび/またはWであり、第VIII族金属がCoおよび/またはNiである。特に好ましくは、水素化触媒の総重量に基づいて、添加剤が0重量%から10重量%までの量で存在し、第VIB族金属が12重量%から39重量%までの量で存在し、第VIII族金属が1重量%から9重量%までの量で存在する。
【0041】
好ましい実施形態では、本出願の流動触媒変換方法は、8)コークスを燃焼させることによる工程3)での分離によって得られた使用済み触媒を再生して、650℃以上の温度を有する再生された触媒を得る工程、および、その後に、再生された触媒を、接触変換触媒として使用するために、流動触媒変換反応器の第1の反応ゾーンの上流に再循環させる工程をさらに含む。
【0042】
好ましい実施形態では、本明細書で使用される接触変換触媒は、触媒の重量に基づいて、1重量%から50重量%までのモレキュラーシーブ、5重量%から99重量%までの無機酸化物、および0重量%から70重量%までの粘土を含み得る。
【0043】
さらに好ましい実施形態では、接触変換触媒中、モレキュラーシーブは活性成分として機能し、モレキュラーシーブは、マクロ多孔性モレキュラーシーブ、メソ多孔性モレキュラーシーブ、およびミクロ多孔性モレキュラーシーブのうちの少なくとも1つを含み得る。
【0044】
いくつかのさらに好ましい実施形態では、メソ多孔性モレキュラーシーブは、ZSMモレキュラーシーブであってもよく、例えば、ZSMモレキュラーシーブは、ZSM-5、ZSM-11、ZSM-12、ZSM-23、ZSM-35、およびZSM-48からなる群から選択される少なくとも1つであってもよく;ミクロ多孔性モレキュラーシーブは、SAPOモレキュラーシーブおよび/またはSSZモレキュラーシーブであってもよく、例えば、SAPOモレキュラーシーブは、SAPO-34、SAPO-11、およびSAPO-47からなる群から選択される少なくとも1つであってもよく、SSZモレキュラーシーブは、SSZ-13、SSZ-39、およびSSZ-62からなる群から選択される少なくとも1つであってもよく;マクロ多孔性モレキュラーシーブは、REYモレキュラーシーブ、REHYモレキュラーシーブ、超安定Yモレキュラーシーブ、高シリカYモレキュラーシーブ、ベータモレキュラーシーブ、および類似の構造の他のモレキュラーシーブ、またはそれらの混合物から選択されてもよい。
【0045】
特に好ましい実施形態では、モレキュラーシーブは、モレキュラーシーブの総重量に基づいて、40重量%から100重量%まで、好ましくは50重量%から100重量%までのメソ多孔性モレキュラーシーブと、0重量%から30重量%まで、好ましくは0重量%から25重量%までのミクロ多孔性モレキュラーシーブと、0重量%から30重量%まで、好ましくは0重量%から25重量%までのマクロ多孔性モレキュラーシーブとを含む。
【0046】
さらに好ましい実施形態では、接触変換触媒中、無機酸化物は結合剤として機能し、好ましくは、無機酸化物はシリカ(SiO2)および/またはアルミナ(Al2O3)から選択され得る。
【0047】
さらに好ましい実施形態では、接触変換触媒中、粘土はマトリックスとして機能し、好ましくは、粘土はカオリンおよび/またはハロイサイトから選択され得る。
【0048】
さらに好ましい実施形態では、接触変換触媒はまた、接触変換触媒の性能をさらに改善するために変性元素を含んでもよい。変性元素は、非金属元素、遷移金属元素、および希土類金属元素から選択される少なくとも1つであってもよく;さらにより好ましくは、非金属元素はリンであってもよく、遷移金属元素は、鉄、コバルト、およびニッケルから選択されてもよく、変性元素の含量は接触変換触媒の0.1~3重量%である。
【0049】
好ましい実施形態では、工程4)で分離されたオレフィンリッチなストリームは80重量%以上のオレフィン含量を有し、より好ましくは、80重量%以上のC5+オレフィン含量を有する。オレフィンリッチなストリーム中のオレフィン含量が高いほど、精製の効果はより良好であり、資源の利用はより良好である。
【0050】
いくつかの好ましい実施形態では、工程4)の第2の分離がさらに以下を含む:第1の接触分解留出油から、オレフィン枯渇ストリームと、より低い沸点を有する第1のオレフィンリッチなストリームと、より高い沸点を有する第2のオレフィンリッチなストリームとを分離する工程;第1のストリームと第2のストリームとの間のカットポイントが140~200℃の範囲にあり;ならびに、工程5)が、第1のオレフィンリッチなストリームを、さらなる反応のために第2の反応ゾーンに導入する工程、および第2のオレフィンリッチなストリームをさらなる反応のために第2の反応ゾーンの流動触媒変換反応器の下流の第3の反応ゾーンに導入する工程をさらに含む。
【0051】
本出願の発明者らは、多数の実験の後、長い炭素鎖を有するオレフィンが短い炭素鎖を有するオレフィンと比較して、分解によってプロピレンを生成しながらメタンの形成を阻害する能力が乏しいことを見出した。例示のために目的の生成物としてプロピレンを挙げると、接触分解に供されるオレフィン分子の炭素鎖が長いほど、分解はより容易である。副生成物(長い炭素鎖の小分子への1度の分解によって引き起こされる生成物中のメタンなど)の増加を回避するために、長い炭素鎖を有するオレフィンは、比較的穏やかな状態で第4の反応ゾーンにおいて分解されて、短い炭素鎖を有するC5~C9オレフィンを得てもよく、次いで、C5~C9オレフィンは、さらなる分解のために反応器に再循環される。プロピレンの収率を向上させ、メタンの収率を低下させることは有益である。上述の好ましい実施形態では、異なる蒸留範囲を有するC5+オレフィンを含む第1のストリームおよび第2のストリームがそれぞれ異なる反応ゾーンに導入される。具体的には、より低い沸点を有する第1のストリームが第3の反応ゾーンに導入され、より高い沸点を有する第2のストリームが第4の反応ゾーンに導入される。結果として、より長い炭素鎖を有するオレフィンが1度に小分子に分解されることを防止することができ、プロピレンの収率を向上させることができる。
【0052】
さらに好ましい実施形態では、第3の反応ゾーンに導入される第1のストリームのさらなる反応のための条件は、600~750℃の反応温度、0.05~1MPaの反応圧力、0.01~100秒の反応時間、および(1~140):1の、第1のストリームに対する接触変換触媒の重量比率を含み得;第4の反応ゾーンに導入される第2のストリームのさらなる反応のための条件は、400~650℃の反応温度、0.05~1MPaの反応圧力、0.01~100秒の反応時間、および(1~100):1の、第2のストリームに対する接触変換触媒の重量比率を含み得る。
【0053】
好ましい実施形態では、流動触媒変換反応器が、等径ライザー反応器または直径変換ライザー反応器であり得るライザー反応器、等線速度流動床反応器または等径流動床反応器であり得る流動床反応器、上昇移送ライン、下降移送ライン、またはそれらの2つ以上の組み合わせから選択されてもよく、直径変換ライザー反応器は、例えば、中国特許CN1078094Cに記載されているようなライザー反応器であってもよい。
【0054】
好ましい実施形態では、
図1に示されるように、本出願の流動触媒変換方法は、以下のように実施される:
プレリフト媒体は、流動触媒変換反応器(ライザー反応器)102の底部からパイプライン101を通って導入され、パイプライン117からの再生された接触変換触媒が、プレリフト媒体のリフト作用の下で流動触媒変換反応器102に沿って上方に移動し、重質原料油は、パイプライン104からの霧化水蒸気と共にパイプライン103を通って反応器102の第1の反応ゾーンIの底部に注入され、そこで650℃以上の温度を有する高温触媒と接触して反応し、さらに上方に移動する。
【0055】
50重量%以上のオレフィン含量を有する炭化水素油原料は、パイプライン105を通ってパイプライン106からの霧化水蒸気と共に流動触媒変換反応器102のより低い中間部に注入され、第2の反応ゾーンIIにおいて第1の反応ゾーンIからのストリームと混合され、炭化水素油原料は高温触媒と接触して反応し、上方に移動する。
【0056】
得られた反応生成物および不活性化された使用済み触媒は、排出部107を通って分離器内のサイクロンセパレータ108に送られ、使用済み触媒と反応生成物との分離を行い、反応生成物はプレナムチャンバ109に送られ、微細触媒粉末はディップレッグを通って分離器に戻される。分離器内の使用済み触媒は、ストリッピング部110に送られ、そこでパイプライン111からのストリッピング蒸気(stripping steam)と接触させる。使用済み触媒からストリッピングされた生成物蒸気(product vapor)は、サイクロンセパレータを通過した後、プレナムチャンバ109に送られる。ストリッピングされた使用済み触媒はスタンドパイプ112を通って再生器113に送られ、主空気はパイプライン116を通って再生器に導入され、使用済み触媒上のコークスを燃焼させて、不活性化された使用済み触媒を再生する。排ガスは、パイプライン115を介して排ガスタービンに送られる。再生された触媒は、パイプライン117を介して反応器102に送られる。
【0057】
反応生成物(反応生成物蒸気)は反応器蒸気ライン119を通って後続の精留塔120に送られ、分離された水素、メタンおよびエタンはパイプライン121を通って抜き出され、エチレンはパイプライン122を通って抜き出され、プロピレンはパイプライン123を通って抜き出され、ブチレンはさらなる反応のためにパイプライン124を通って反応器102の底部に再循環され、プロパンおよびブタンはパイプライン125を通って抜き出され、第1の接触分解留出油はパイプライン126を通ってオレフィンセパレータ128に送られ、分離されたオレフィン枯渇ストリームはパイプライン129を通って抜き出され、オレフィンリッチなストリームはさらなる反応のためにパイプライン130を通って反応器102の第2の反応エリアIIの底部に送られ、第2の接触分解留出油はパイプライン127を通って水素化処理器131に送られ、軽質成分および水素化された接触分解留出油は水素化処理の後に得られ、軽質成分はパイプライン118を通って抜き出され、水素化された接触分解留出油はパイプライン114を通って抜き出され、任意に、さらなる反応のために反応器102の第1の反応ゾーンIに導入される。
【0058】
図2は本出願の別の好ましい実施形態を示し、流動触媒変換反応器は第2の反応ゾーンIIの下流に第3の反応ゾーンをさらに備え、第3の反応ゾーンは外部供給源からのオレフィンリッチな原料が比較的多い場合に適切に拡大される。
【0059】
本実施形態では、
図2に示されるように、本願の流動触媒変換方法は、以下のように実施される:
プレリフト媒体は、流動触媒変換反応器202の第1の反応ゾーンIからパイプライン201を通って導入され、パイプライン217からの再生された接触変換触媒はプレリフト媒体のリフト作用の下で反応器202に沿って上方に移動し、重質原料油はパイプライン204からの霧化水蒸気と共にパイプライン203を通って反応器202の第1の反応ゾーンIの底部に注入され、そこで650℃以上の温度を有する高温触媒と接触して反応し、上方に移動する。
【0060】
50重量%以上のオレフィン含量を有する炭化水素油原料はパイプライン205を通ってパイプライン206からの霧化水蒸気と共に流動触媒変換反応器202のより低い中間部に注入され、第2の反応ゾーンIIにおいて第1の反応ゾーンIからのストリームと混合され、炭化水素油原料は高温触媒と接触して反応し、上方に移動する。
【0061】
反応器202で生成された反応生成物および不活性化された使用済み触媒は排出部207を通って分離器内のサイクロンセパレータ208に送られ、使用済み触媒と反応生成物との分離を行い、反応生成物はプレナムチャンバ209に送られ、微細触媒粉末はディップレッグを通って分離器に戻される。分離器内の使用済み触媒は、ストリッピング部210に送られ、そこでパイプライン211からのストリッピング蒸気と接触させる。使用済み触媒からストリッピングされた生成物蒸気は、サイクロンセパレータを通過した後、プレナムチャンバ209に送られる。ストリッピングされた使用済み触媒はスタンドパイプ212を通って再生器213に送られ、主空気はパイプライン216を通って再生器に導入され、使用済み触媒上のコークスを燃焼させて、不活性化された使用済み触媒を再生する。排ガスは、パイプライン215を介して排ガスタービンに送られる。再生された触媒は、パイプライン217を介して反応器202の底部に再循環される。反応生成物は反応器蒸気ライン219を通って後続の精留塔220に送られ、分離された水素、メタンおよびエタンはパイプライン221を通って抜き出され、エチレンはパイプライン222を通って抜き出され、プロピレンはパイプライン223を通って抜き出され、ブチレンはさらなる反応のためにパイプライン224を通って反応器202の底部に再循環され、プロパンおよびブタンはパイプライン225を通って抜き出され、第1の接触分解留出油はパイプライン226を通ってオレフィンセパレータ228に送られ、オレフィン枯渇ストリーム、第1のオレフィンリッチなストリームおよび第2のオレフィンリッチなストリームは分離によって得られ、ここで、第1のストリームと第2のストリームとの間のカットポイントは140~200℃の範囲内である。オレフィン枯渇ストリームはパイプライン229を介して抜き出され、より低い沸点を有する第1のオレフィンリッチなストリームは、さらなる反応のためにパイプライン230を介して反応器202の第2の反応ゾーンIIに導入され、より高い沸点を有する第2のオレフィンリッチなストリームは、さらなる反応のためにパイプライン231を介して反応器202の第3の反応ゾーンIIIに導入される。第2の接触分解留出油はパイプライン227を通して水素化処理器232に導入され、軽質成分および水素化された接触分解留出油は水素化処理後に得られ、ここで、軽質成分はパイプライン218を通して抜き出され、水素化された接触分解留出油はパイプライン214を通して抜き出され、任意に、さらなる反応のために反応器202の第1の反応ゾーンIの底部に送られる。
【0062】
さらに別の好ましい実施形態では、
図3に示されるように、本出願の流動触媒変換方法は以下のように実施される:
プレリフト媒体はパイプライン301を通して流動触媒変換反応器(ライザー反応器)302の底部から導入され、パイプライン317からの再生された接触変換触媒はプレリフト媒体のリフト作用の下で流動触媒変換反応器302に沿って上方に移動し、重質原料油はパイプライン304からの霧化水蒸気と共にパイプライン303を通して流動触媒変換反応器302の第1の反応ゾーンIの底部に注入され、そこで、反応のために650℃以上の温度を有する高温触媒と接触して反応し、さらに上方に移動する。
【0063】
50重量%を超えるオレフィン含量を有する炭化水素油原料は、パイプライン305を介して、パイプライン306からの霧化水蒸気と共に流動触媒変換反応器302の下部中間部に注入され、第2の反応ゾーンIIにおいて第1の反応ゾーンIからのストリームと混合され、炭化水素油原料は、高温触媒と接触して反応し、上方に移動する。
【0064】
酸素含有有機化合物(例えば、メタノール)は、炭化水素油原料が注入される位置であるパイプライン307の下流を通って第2の反応ゾーンIIのより低い中間部に注入され、その中のストリームと混合される。酸素含有有機化合物は触媒と接触して反応し、上方に移動する。
【0065】
得られた反応生成物および不活性化された使用済み触媒は排出部308を通って分離器内のサイクロンセパレータ309に送られ、使用済み触媒と反応生成物との分離を行い、反応生成物はプレナムチャンバ310に送られ、微細触媒粉末はディップレッグを通って分離器に戻される。分離器内の使用済み触媒は、ストリッピング部311に送られ、そこでパイプライン312からのストリッピング蒸気と接触させる。使用済み触媒からストリッピングされた生成物蒸気は、サイクロンセパレータを通過した後、プレナムチャンバ310に送られる。ストリッピングされた使用済み触媒はスタンドパイプ313を通って再生器314に送られ、主空気はパイプライン316を通って再生器に導入され、使用済み触媒上のコークスを燃焼させて、不活性化された使用済み触媒を再生する。排ガスは、パイプライン315を介して排ガスタービンに送られる。再生された触媒は、パイプライン317を介して反応器302の底部に再循環される。
【0066】
反応生成物(反応生成物蒸気)は分離のために反応器蒸気ライン319を通って後続の精留塔320に送られ、分離された水素、メタンおよびエタンはパイプライン321を通って抜き出され、エチレンはパイプライン322を通って抜き出され、プロピレンはパイプライン323を通って抜き出され、ブチレンはさらなる反応のためにパイプライン324を通って反応器302の底部に再循環され、プロパンおよびブタンはパイプライン325を通って抜き出され、未変換の酸素含有有機化合物はパイプライン326を通って抜き出され、任意に、さらなる反応のために反応器302の第2の反応ゾーンIIのより低い中間部に再循環され;第1の接触分解留出油は、分離のためにパイプライン327を通ってオレフィンセパレータ329に送られる。結果として、オレフィン枯渇ストリームおよびオレフィンリッチなストリームを得、オレフィン枯渇ストリームはパイプライン331を通して抜き出され、オレフィンリッチなストリームは、さらなる反応のために、パイプライン330を通して反応器302の第2の反応ゾーンIIの底部に送られ;第2の接触分解留出油は、パイプライン328を通して水素化処理器332に送られ、軽質成分および水素化された接触分解留出油は分離後に得られ、軽質成分はパイプ318を通して抜き出され、水素化された接触分解留出油はパイプライン333を通して抜き出され、任意に、重質原料油と混合され、次いで、さらなる反応のために反応器302の第1の反応ゾーンIの底部に送られる。
【0067】
特に好ましい実施形態では、本出願は、以下の技術的解決策を提供する:
A1、以下のS1~S3の工程を含む、プロピレンの製造を最大化するための触媒変換方法:
S1、重質原料油を650℃以上の温度を有する接触変換触媒と接触させ、触媒変換反応器の第1の反応ゾーンで第1の触媒変換反応を実施して、第1の混合されたストリームを得る工程;
S2、50重量%以上のオレフィン含量を有する炭化水素油原料を、前記触媒変換反応器の第2の反応ゾーンで第1の混合フローと接触させる工程、および第2の触媒変換反応を実施して、反応生成物蒸気および使用済み触媒を得る工程;前記第2の反応ゾーンは、前記第1の反応ゾーンの下流に位置する;
S3、前記反応生成物蒸気に対して第1の分離を実施して、エチレン、プロピレン、ブチレン、第1の接触分解留出油、および第2の接触分解留出油を得;前記第1の接触分解留出油の最初の点は20℃超であり、前記第2の接触分解留出油の最後の点は550℃未満であり、前記第1の接触分解留出油と前記第2の接触分解留出油との間のカットポイントは140℃~250℃の間であり、前記第1の接触分解留出油に対して第2の分離を実施してオレフィンリッチなストリームを得;ならびに、さらなる反応のために、前記ブチレンおよび前記オレフィンリッチなストリームを別々に前記接触変換反応器に導入する工程。
【0068】
A2、工程S3において、さらなる反応のために前記触媒変換反応器に導入された前記ブチレンを、前記重質原料油の前に前記接触変換触媒と接触させる、項目A1に記載の方法。
【0069】
A3、前記オレフィンリッチなストリーム中の前記オレフィンはC4+オレフィンである、項目A1に記載の方法;
前記オレフィンリッチなストリームの前記オレフィン含量は、50重量%から100重量%までである。
【0070】
A4、前記ブチレンは、反応のために前記触媒変換反応器の前記第1の反応ゾーンに導入され、前記オレフィンリッチなストリームは、反応のために前記触媒変換反応器の前記第2の反応ゾーンに導入される、項目A1に記載の方法。
【0071】
A5、前記触媒変換反応器は、反応ゾーンAおよび反応ゾーンBをさらに含み;前記反応ゾーンAおよび前記反応ゾーンBは、前記第2の反応ゾーンの下流に順次配置され;
前記第2の分離は、前記第1の接触分解留出油から第1のオレフィンリッチなストリームおよび第2のオレフィンリッチなストリームを分離する工程を含み;前記第1のストリームと前記第2のストリームとの間のカットポイントは、140~200℃の間であり;
前記ブチレンは、反応のために前記第1の反応ゾーンに導入され;
前記第1のストリームは、さらなる反応のために前記反応ゾーンAに導入され;
前記第2のストリームは、さらなる反応のために前記反応ゾーンBに導入される、項目A1に記載の方法。
【0072】
A6、前記方法は、コークスを燃焼させることによって前記使用済み触媒を再生して、再生された触媒を得る工程;および
前記再生された触媒を予熱し、次いで、前記触媒変換反応器に再循環させる工程、をさらに含む、項目A1に記載の方法。
【0073】
A7、前記方法はさらに以下を含む、項目A1に記載の方法:
前記第2の接触分解留出油に対して水素化処理を行って水素化された生成物を得、前記水素化された生成物から水素化された接触分解留出油を分離する工程;
前記水素化された接触分解留出油を、さらなる反応のために、前記第1の反応ゾーンに導入する工程。
【0074】
A8、前記水素化処理の条件は、3.0~20.0MPaの水素分圧、300~450℃の反応温度、300~2000の、油に対する水素の体積比率、および0.1~3.0h-1の体積空間速度を含む、項目A7に記載の方法。
【0075】
A9、前記触媒変換反応器は、ライザー反応器、等線速度流動床、等径流動床、上昇移送ライン、および下降移送ライン、または直列に接続されたそれらの2つの組み合わせから選択されるものであり;前記ライザー反応器は、好ましくは、直径変換ライザー反応器である、項目A1に記載の方法。
【0076】
A10、前記第1の接触変換反応の条件は、500~800℃の反応温度、0.05~1MPaの反応圧力、0.01~100秒の反応時間、および(1~200):1の、前記重質原料油に対する前記接触変換触媒の重量比率を含み;
前記第2の接触変換反応の条件は、400~680℃の反応温度、0.05~1MPaの反応圧力、0.01~100秒の反応時間、および(1~100):1の、前記炭化水素油原料に対する前記接触変換触媒の重量比率を含み;
好ましくは、前記第1の接触変換反応の条件は、510~780℃の反応温度、0.1~0.8MPaの反応圧力、0.1~80秒の反応時間、および(3~180)の、前記重質原料油に対する前記接触変換触媒の重量比率を含み;
前記第2の接触変換反応の条件は、450~650℃の反応温度、0.1~0.8MPaの反応圧力、0.1~80秒の反応時間、および(3-70):1の、前記炭化水素油原料に対する前記接触変換触媒の重量比率を含む、項目A1に記載の方法。
【0077】
A11、前記触媒反応器に導入される前記ブチレンの前記さらなる反応のための条件は、650~800℃の反応温度、0.05~1MPaの反応圧力、0.01~10秒の反応時間、および(20~200):1の、前記ブチレンに対する前記接触変換触媒の重量比率を含み;
好ましくは、前記条件は、680~780℃の反応温度、0.1~0.8MPaの反応圧力、0.05~8秒の反応時間、および(30~180):1の、前記ブチレンに対する前記接触変換触媒の重量比率を含む、項目A1に記載の方法。
【0078】
A12、前記炭化水素油原料は、80重量%以上、好ましくは90重量%以上のオレフィン含量を有し、より好ましくは、前記炭化水素油原料は純粋なオレフィン原料であり;
前記重質原料油は石油炭化水素および/または鉱油であり;前記石油炭化水素は、真空軽油、雰囲気軽油、コークス化軽油、脱アスファルト油、真空残油、雰囲気残油および重質芳香族ラフィネートから選択される少なくとも1つであり;前記鉱油は、石炭液化油、オイルサンド油およびシェール油からなる群から選択される少なくとも1つである、項目A1に記載の方法。
【0079】
A13、前記炭化水素油原料中の前記オレフィンは、アルカン原料の脱水素によって生成されたC4+留分、油精製装置における接触分解ユニットからのC4+留分、エチレンプラントにおける水蒸気分解ユニットからのC4+留分、MTOプロセスのC4+オレフィンリッチな副生成物留分、およびMTPプロセスのC4+オレフィンリッチな副生成物留分から得られ;
前記アルカン原料は、ナフサ、芳香族ラフィネート、および軽質炭化水素からなる群から選択される少なくとも1つである、項目A1またはA12に記載の方法。
【0080】
A14、前記接触変換触媒は、前記接触変換触媒の重量に基づいて、1~50重量%のモレキュラーシーブ、5~99重量%の無機酸化物、および0~70重量%の粘土を含み;
前記モレキュラーシーブは、マクロ多孔性モレキュラーシーブ、メソ多孔性モレキュラーシーブ、およびミクロ多孔性モレキュラーシーブのうちの1つ以上を含み;
前記接触変換触媒は、前記接触変換触媒の重量に基づいて、0.1~3重量%の活性金属をさらに含み;前記活性金属は、第VIII族金属、第IVA族金属、および希土類金属からなる群から選択される1つ以上である、項目A1に記載の方法。
【0081】
B1、以下のS1~S4の工程を含む、プロピレンの製造を最大化するための触媒変換方法:
S1、重質原料油を650℃以上の温度を有する接触変換触媒と接触させ、接触変換反応器の第1の反応ゾーンで、第1の触媒変換条件下で、第1の触媒変換反応を実施して、第1の混合されたストリームを得る工程;
S2、50重量%以上のオレフィン含量を有する炭化水素油原料および酸素含有有機化合物原料を、前記触媒変換反応器の第2の反応ゾーンで前記第1の反応ゾーンからの前記第1の混合されたストリームと接触させ、第2の触媒変換条件下で第2の触媒変換反応を実施して、反応生成物蒸気および使用済み触媒を得る工程;
S3、前記反応生成物蒸気に対して第1の分離を実施して、エチレン、プロピレン、ブチレン、酸素含有有機化合物、第1の接触分解留出油、および第2の接触分解留出油を得;前記第1の接触分解留出油の初留点は20℃超から140℃未満までであり、前記第2の接触分解留出油の終点は250℃超から550℃未満までであり、前記第1の接触分解留出油と前記第2の接触分解留出油との間のカットポイントは140℃~250℃であり;
前記第1の接触分解留出油に対して第2の分離を実施して、オレフィンリッチなストリームを得る工程;
S4、前記オレフィンリッチなストリームを、さらなる反応のために、前記触媒変換反応器に再循環させる工程。
【0082】
B2、前記方法が以下の工程を含む、項目B1に記載の方法:
前記反応生成物蒸気を第1の分離のために生成物精留塔に通し、エチレン、プロピレン、ブチレン、前記酸素含有有機化合物、前記第1の接触分解留出油、および前記第2の接触分解留出油を分離する工程;
前記第1の接触分解留出油を第2の分離のためにオレフィンセパレータに通し、前記オレフィンリッチなストリームを分離する工程;
前記オレフィンリッチなストリームを、さらなる反応のために前記触媒変換反応器の前記第1の反応ゾーンに再循環させる工程。
【0083】
B3、前記方法がさらに以下の工程を含む、項目B1またはB2に記載の方法:
前記分離されたブチレンを、さらなる反応のために前記触媒変換反応器の前記第1の反応ゾーンに再循環させる工程;
好ましくは、さらなる反応のために前記触媒変換反応器に再循環される前記ブチレンを、重質原料油の前に、前記接触変換触媒と接触させる工程。
【0084】
B4、前記触媒反応器に再循環される前記ブチレンの前記さらなる反応のための条件は、650~800℃の反応温度、0.05~1MPaの反応圧力、0.01~10秒の反応時間、および(20~200):1の、前記再循環されるブチレンに対する前記接触変換触媒の重量比率を含み;
好ましくは、前記条件は、680~780℃の反応温度、0.1~0.8MPaの反応圧力、0.05~8秒の反応時間、および(30~180):1の、前記再循環されるブチレンに対する前記接触変換触媒の重量比率を含む、項目B3に記載の方法。
【0085】
B5、前記第1の触媒変換条件は、500~800℃の反応温度、0.05~1MPaの反応圧力、0.01~100秒の反応時間、および(1~200):1の、前記重質原料油に対する前記接触変換触媒の重量比率を含み;
好ましくは、前記第1の触媒変換条件は、510~780℃の反応温度、0.1~0.8MPaの反応圧力、0.1~80秒の反応時間、および(3~180):1の、前記重質原料油に対する前記接触変換触媒の重量比率を含む、項目B1に記載の方法。
【0086】
B6、前記第2の触媒変換条件は、300~680℃の反応温度、0.01~1MPaの反応圧力、0.01~100秒の反応時間、および(1~100):1の、前記炭化水素油原料に対する前記接触変換触媒の重量比率;(1~100):1の、前記酸素含有有機化合物に対する前記接触変換触媒の重量比率を含み;
好ましくは、前記第2の触媒変換条件は、400~650℃の反応温度、0.05~1MPaの反応圧力、0.1~80秒の反応時間、および(3~70):1の、前記炭化水素油原料に対する前記接触変換触媒の重量比率;(3~50):1の、前記酸素含有有機化合物に対する前記接触変換触媒の重量比率を含み;
好ましくは、前記第1の接触変換反応の前記反応温度は、前記第2の接触変換反応の前記反応温度よりも0~380℃高く、さらに好ましくは前記第1の接触変換反応の前記反応温度は、前記第2の接触変換反応の前記反応温度よりも10~370℃高い、項目B1またはB5に記載の方法。
【0087】
B7、前記第2の反応ゾーンは、前記反応ストリームの流れ方向に沿って、前記第2の反応ゾーンの上流部分と、前記第2の反応ゾーンの下流部分とに分けられ、前記酸素含有有機化合物原料の供給位置によって境界付けられ、前記第2の反応ゾーンの前記下流部分は、前記酸素含有有機化合物原料の前記供給位置の下流であり;前記方法は、さらに以下の工程を含む、項目B1またはB5に記載の方法:
前記第1の反応ゾーンからの前記第1の混合されたストリームを、前記第2の反応ゾーンの前記上流部分において50重量%以上のオレフィン含量を有する前記炭化水素油原料と接触させ、接触変換反応を実施して、第2の混合されたストリームを得る工程;次いで、前記第2の混合されたストリームを、前記第2の反応ゾーンの前記下流部分において前記酸素含有有機化合物原料と接触させ、接触変換反応を実施して、反応生成物蒸気および使用済み触媒を得る工程。
【0088】
B8、前記炭化水素油原料と、前記第2の反応ゾーンの前記上流部分における前記第1の混合されたストリームとの間の反応のための前記触媒変換条件は以下を含み:
400~680℃、好ましくは450~650℃の反応温度;
0.05~1MPa、好ましくは0.1~0.8MPaの反応圧力;
0.01~100秒、好ましくは0.1~80秒の反応時間;
(1~100):1、好ましくは(3~70):1の、前記炭化水素油原料に対する前記接触変換触媒の重量比率;
前記酸素含有有機化合物原料と前記第2の反応ゾーンの前記下流部分における前記第2の混合されたストリームとの間の反応のための触媒変換条件は以下を含み:
300~550℃、好ましくは400~530℃の反応温度;
0.01~1MPa、好ましくは0.05~1MPaの反応圧力;
0.01~100秒、好ましくは0.1~80秒の反応時間;
(1~100):1、好ましくは(3~50):1の、前記酸素含有有機化合物原料に対する前記接触変換触媒の重量比率;
前記第2の反応ゾーンの前記上流部分における反応温度は、前記第2の反応ゾーンの前記下流部分における反応温度よりも0~250℃高く、好ましくは前記第2の反応ゾーンの前記上流部分における反応温度は、前記第2の反応ゾーンの前記下流部分における反応温度よりも10~240℃高い。
【0089】
B9、前記方法は、前記分離された酸素含有有機化合物を、さらなる反応のために前記触媒変換反応器の前記第2の反応ゾーンに再循環させる工程をさらに含む、項目B1に記載の方法。
【0090】
B10、前記触媒変換反応器は、ライザー反応器、好ましくは直径変換ライザー反応器である、項目B1~B9のいずれか一項に記載の方法。
【0091】
B11、前記方法は、コークスを燃焼させることによって前記使用済み触媒を再生し、再生された触媒を得る工程;前記再生された触媒を前記接触変換触媒として前記触媒変換反応器の前記第1の反応ゾーンに再循環させる工程をさらに含む、項目B1に記載の方法。
【0092】
B12、前記重質原料油は、石油炭化水素および/または鉱油であり;前記石油炭化水素は、真空軽油、雰囲気軽油、コークス化軽油、脱アスファルト油、真空残油、雰囲気残油および重質芳香族ラフィネートから選択される少なくとも1つであり;前記鉱油は、石炭液化油、オイルサンド油、およびシェール油からなる群から選択される少なくとも1つであり;
前記炭化水素油原料は、80重量%以上、好ましくは90重量%以上のオレフィン含量を有し、より好ましくは、前記炭化水素油原料は純粋なオレフィン原料であり;
任意に、前記酸素含有有機化合物原料は、メタノール、エタノール、ジメチルエーテル、メチルエチルエーテル、およびジエチルエーテルのうちの少なくとも1つを含む、項目B1に記載の方法。
【0093】
B13、前記炭化水素油原料中の前記オレフィンは、アルカン脱水素化ユニットによって生成されるC5+留分、油精製装置において接触分解ユニットによって生成されるC5+留分、エチレンプラントでの水蒸気分解ユニットによって生成されるC5+留分、MTOプロセスのC5+オレフィンリッチな副生成物留分、およびMTPプロセスのC5+オレフィンリッチな副生成物留分のうちの少なくとも1つから得られ;
任意に、前記アルカン脱水素化ユニットの前記アルカン原料は、ナフサ、芳香族ラフィネートおよび他の軽質炭化水素の少なくとも1つから得られる、項目B1またはB12に記載の方法。
【0094】
B14.前記接触変換触媒は、前記接触変換触媒の重量に基づいて、1~50重量%のモレキュラーシーブ、5~99重量%の無機酸化物、および0~70重量%の粘土を含み;
前記モレキュラーシーブは、マクロ多孔性モレキュラーシーブ、メソ多孔性モレキュラーシーブ、およびミクロ多孔性モレキュラーシーブのうちの1つ以上を含み;
前記接触変換触媒は、前記接触変換触媒の重量に基づいて、0.1~3重量%の活性金属をさらに含み;前記活性金属は、第VIII族金属、第IVA族金属、および希土類金属からなる群から選択される1つ以上である、項目B1に記載の方法。
【0095】
B15、前記方法は、以下の工程をさらに含む、項目B1に記載の方法:
前記第2の接触分解留出油を水素化条件下で水素化処理して、水素化された接触分解留出油を得る工程;
前記水素化された接触分解留出油を、さらなる反応のために前記接触変換反応器の第1の反応ゾーンに導入する工程;
ここで、前記水素化処理条件は、3.0~20.0MPaの水素分圧、300~450℃の反応温度、300~2000の、油に対する水素の体積比率、および0.1~3.0h-1の体積空間速度を含み;
任意に、前記水素化触媒は、前記水素化触媒の総重量に基づいて、20~90重量%の担体、10~80重量%の担持金属、および0~10重量%の添加剤を含み;
前記担体がアルミナおよび/または非晶質シリカ-アルミナであり、前記添加剤がフッ素、リン、チタン、および白金からなる群から選択される少なくとも1つであり、ならびに前記担持金属が第VIB族金属および/または第VIII族金属であり;
好ましくは、前記第VIB族金属がMoまたは/およびWであり、前記第VIII族金属がCoまたは/およびNiである。
【0096】
B16、前記オレフィンリッチなストリーム中の前記オレフィンがC5+オレフィンであり;
前記オレフィンリッチなストリームは、50重量%以上、好ましくは80重量%以上のC5+オレフィン含量を有する、項目B1に記載の方法。
【0097】
〔実施例〕
以下、実施例を挙げて本願をさらに詳細に説明する。実施例で使用される原料は、全て市販されている。
【0098】
原料および触媒
以下の実施例で用いた重質原料油aおよび重質原料油bの特性を、それぞれ表1-1および表1-2に示す。
【0099】
【0100】
【0101】
以下の実施例および比較例において使用される様々な触媒の調製または供給源は、以下の通りである:
接触変換触媒A
ハロイサイト(China Kaolin Clay(株)製、固形分含量73%)969gを脱イオン水4300gでスラリー化し、擬ベーマイト(CHALCO Shandong(株)製、固形分64%)781gと塩酸(濃度30%、比重1.56)144mlとを加え、均等に攪拌し、混合物を60℃で1時間、pH値を2~4に維持しながら放置して熟成し、混合物を室温に冷却し、調製したスラリー5000gを加えた。スラリーは1600gのメソ多孔性ZSM-5ゼオライトとマクロ多孔性Yモレキュラーシーブ(Sinopec Catalyst(株)社のQilu Branch製)とを含み、マクロ多孔性Yモレキュラーシーブに対するメソ多孔性ZSM-5ゼオライトの重量比率は9:1であった。混合物を均一に撹拌し、噴霧乾燥し、洗浄して遊離Na+を除去して触媒を得た。得られた触媒を800℃、100%水蒸気で熟成し、熟成した触媒を触媒Aとした。触媒Aの特性を表2に示す。
【0102】
接触変換触媒B:Sinopec Catalyst(株)社のQilu BranchからCEP-1の商品名で利用可能な工業製品であり、その特性を表2に示す。
【0103】
接触変換触媒C:Sinopec Catalyst(株)社のQilu BranchからCHP-1の商品名で利用可能な工業製品であり、その特性を表2に示す。
【0104】
水素化処理触媒D
メタタングステン酸アンモニウム((NH4)2W4O13・18H2O、化学的に純粋)および硝酸ニッケル(Ni(NO3)2・18H2O、化学的に純粋)を秤量し、水と混合して200mlの溶液を得た。該溶液を50gのアルミナ担体に添加し、室温で3時間含浸させ、含浸の間、含浸溶液を超音波で30分間処理し、冷却し、濾過し、電子レンジで約15分間乾燥させた。触媒は以下の成分:30.0重量%のWO3、3.1重量%のNiO、およびアルミナの残りを含み、触媒Dとした。
【0105】
水素化脱硫触媒E
Sinopec Catalyst(株)のChangLing Branch製擬ベーマイト1000gを秤量し、硝酸(化学的に純粋)10mlを含む水溶液1000mlを加え、二軸押出機で押出成形し、120℃で4時間乾燥し、800℃で4時間焼成して、触媒担体を得た。得られたものを、フッ化アンモニウム120gを含む水溶液900mlに2時間含浸し、120℃で3時間乾燥し、600℃で3時間焼成した;室温まで冷却した後、得られたものを、メタモリブデン酸アンモニウム133gを含む水溶液950mlに3時間含浸し、120℃で3時間乾燥し、600℃で3時間焼成した。室温まで冷却した後、得られたものを、硝酸ニッケル180gおよびメタタングステン酸アンモニウム320gを含む水溶液900mlに4時間含浸し、フッ素化アルミナ担体を、触媒担体に比して0.1重量%のメタモリブデン酸アンモニウム(化学的に純粋)および0.1重量%の硝酸ニッケル(化学的に純粋)を含む混合水溶液に4時間含浸し、120℃で3時間乾燥し、600℃で4時間焼成して、触媒Eを得た。
【0106】
【0107】
実施例1
ライザー反応器のパイロットプラントについて、
図1に示すスキームに従って、以下のように実験を行った:
重質原料油を、600℃の反応温度、0.1MPaの反応圧力、3秒の反応時間、および5:1の、原料に対する触媒の重量比率を含む条件下で、反応のための第1の反応ゾーンの底部で接触変換触媒Aと接触させた。1-ペンテン原料を、530℃の反応温度、0.1MPaの反応圧力、10秒の反応時間、および45:1の、1-ペンテン原料に対する触媒の重量比率を含む条件下で、反応のための第2の反応ゾーンの底部で第1の反応ゾーンからの接触変換触媒Aと接触させた。
【0108】
得られた反応生成物を使用済み触媒から分離し、使用済み触媒を再生器中でコークスを燃焼させることによって再生し、反応生成物を分離して、エチレン、プロピレン、ブチレン、オレフィンリッチなストリーム、沸点が250℃を超える第2の接触分解留出油などを得た。
【0109】
第2の接触分解留出油を、350℃の温度、18MPaの水素分圧、1.5h-1の体積空間速度、および1500の、油に対する水素の体積比率を含む条件下で、水素化触媒Dと反応させ、水素化された接触分解留出油を得た。
【0110】
分離されたブチレンを、650℃の反応温度、100:1の、ブチレンに対する触媒の重量比率、および0.2秒の反応時間を含む条件下で、さらなる分解のためにライザー反応器の底部に再循環させ;オレフィンリッチなストリームを、さらなる分解のために第2の反応ゾーンの底部に再循環させ;水素化された接触分解留出油を重質原料油と混合させ、次いで、反応のために第1の反応ゾーンに再循環させた。反応条件および生成物の分布を表3に列挙する。
【0111】
比較例1
1-ペンテンが第2の反応ゾーンの底部で添加されず、オレフィンリッチなストリームがライザー反応器に再循環されないことを予想して、以下のように、実施例1に記載されるようなライザー反応器のパイロットプラントで実験を実施した:
重質原料油aを、600℃の反応温度、0.1MPaの反応圧力、3秒の反応時間、および5:1の、原料に対する触媒の重量比率を含む条件下で、反応のために第1の反応ゾーンの底部で接触変換触媒Aと接触させた。
【0112】
得られた反応生成物を使用済み触媒から分離し、使用済み触媒を再生器中でコークスを燃焼させることによって再生し、再生した触媒をライザー反応器の底部に再循環させ;反応生成物を分離して、エチレン、プロピレン、ブチレン、および沸点が250℃を超える接触分解留出油を得た。
【0113】
接触分解留出油を、350℃の温度、18MPaの水素分圧、1.5h-1の体積空間速度、および1500の、油に対する水素の体積比率を含む条件下で水素化触媒Dと反応させ、水素化された接触分解留出油を得た。
【0114】
分離されたブチレンを、650℃の反応温度、100:1のブチレンに対する触媒の重量比率、0.2秒の反応時間を含む条件下で、さらなる分解のためにライザー反応器の底部に再循環させ;水素化された接触分解留出油を重質原料油と混合し、次いで、反応のために第1の反応ゾーンに再循環させた。反応条件および生成物の分布を表3に列挙する。
【0115】
実施例2
ライザー反応器のパイロットプラントについて、
図1に示すスキームに従って、以下のように実験を行った:
重質原料油を、600℃の反応温度、0.1MPaの反応圧力、3秒の反応時間、および5:1の、原料に対する触媒の重量比率を含む条件下で、反応のために第1の反応ゾーンの底部で接触変換触媒Aと接触させた。
【0116】
得られた反応生成物を使用済み触媒から分離し、再生器中でコークスを燃焼させることによって使用済み触媒を再生し、再生した触媒をライザー反応器の底部に再循環させ;反応生成物を分離して、エチレン、プロピレン、ブチレン、オレフィンリッチなストリーム、250℃を超える沸点を有する第2の接触分解留出油などを得た。
【0117】
第2の接触分解留出油を、350℃の温度、18MPaの水素分圧、1.5h-1の体積空間速度、および1500の、油に対する水素の体積比率の条件下で、水素化触媒Dと反応させ、水素化された接触分解留出油を得た。
【0118】
分離されたブチレンは、650℃の反応温度、100:1の、原料に対する触媒の重量比率、および0.2秒の反応時間を含む条件下で、さらなる分解のためにライザー反応器の底部に再循環され;オレフィンリッチなストリームは、530℃の反応温度、0.1MPaの反応圧力、および10秒の反応時間を含む条件下で、さらなる分解のために第2の反応ゾーンの底部に再循環され;水素化された接触分解留出油は、重質原料油と混合され、次いで、反応のために第1の反応ゾーンに再循環された。反応条件および生成物の分布を表3に列挙する。
【0119】
比較例2
ライザー反応器のパイロットプラントについて実験を行った。重質原料油aを、610℃の反応温度、0.1MPaの反応圧力、6秒の反応時間、および16.9:1の、原料に対する触媒の重量比率を含む条件下で、反応のためにライザー反応器の底部で接触変換触媒Bと接触させた。
【0120】
得られた反応生成物を使用済み触媒から分離し、再生器でコークスを燃焼させることによって使用済み触媒を再生し、再生した触媒をライザー反応器の底部に再循環させ;反応生成物を分離した後、水素化処理またはさらなる反応に供さなかった。反応条件および生成物の分布を表3に列挙する。
【0121】
実施例3
より重い重質原料油bを用い、250℃を超える沸点を有する第2の接触分解留出油を、水素化脱硫反応器中で水素化脱硫触媒Eと接触させ、ならびに、6.0MPaの反応圧力、350℃の反応温度、350の、油に対する水素の体積比率、および2.0時間の体積空間速度を含む条件下で反応させて、さらなる反応のためにライザー反応器に再循環させることなく軽油成分として回収した、低硫黄水素化された接触分解留出油を得たこと以外は、実施例2に記載のように実験を行った。反応条件および生成物の分布を表3に列挙する。
【0122】
比較例3
ライザー反応器のパイロットプラントについて実験を行った。重質原料油bを、530℃の反応温度、0.1MPaの反応圧力、6秒の反応時間、および5:1の、原料に対する触媒の重量比率を含む条件下で、反応のためにライザー反応器の底部で接触変換触媒Cと反応させた。
【0123】
得られた反応生成物を使用済み触媒から分離し、再生器でコークスを燃焼させることによって使用済み触媒を再生し、再生した触媒をライザー反応器の底部に再循環させ;分離後に得られた反応生成物は、さらなる反応のためにライザー反応器に再循環させず、第2の接触分解留出油の水素化処理は、実施例3と同じであった。反応条件および生成物の分布を表3に列挙する。
【0124】
実施例4
表3に示す反応条件を用いたこと以外は、実施例1に記載のように実験を行った。反応条件および生成物の分布を表3に列挙する。
【0125】
実施例5
表3に示す反応条件を用いたこと以外は、実施例1に記載のように実験を行った。反応条件および生成物の分布を表3に列挙する。
【0126】
実施例6
表3に示す反応条件を用いたこと以外は、実施例1に記載のように実験を行った。反応条件および生成物の分布を表3に列挙する。
【0127】
【0128】
表3に示す結果から、高温でのオレフィン原料の分解はより高いプロピレン収率をもたらし、同時にエチレン収率が増加し、原料中のオレフィン含量が高いほど、改善の効果がより良好であることが分かる。
【0129】
実施例7
ライザー反応器のパイロットプラントについて、
図2に示すスキームに従って、以下のように実験を行った:
重質原料油を、600℃の反応温度、0.1MPaの反応圧力、3秒の反応時間、および5:1の、原料に対する触媒の重量比率を含む条件下で、反応のために第1の反応ゾーンIの底部で接触変換触媒Aと接触させた。1-オクテン原料を、530℃の反応温度、0.1MPaの反応圧力、10秒の反応時間、45:1の、1-オクテンに対する触媒の重量比率を含む条件下で、反応のために第2の反応ゾーンの底部で第1の反応ゾーンからの接触変換触媒Aと接触させた。
【0130】
得られた反応生成物を使用済み触媒から分離し、使用済み触媒を再生器でコークスを燃焼させることによって再生し、再生された触媒をライザー反応器の底部に再循環させ;反応生成物を分離して、エチレン、プロピレン、ブチレン、第1のオレフィンリッチなストリーム、第2のオレフィンリッチなストリーム、250℃を超える沸点を有する第2の接触分解留出油などを得た。
【0131】
第2の接触分解留出油を、350℃の温度、18MPaの水素分圧、1.5h-1の体積空間速度、および1500の、油に対する水素の体積比率を含む条件下で、水素化触媒Dと反応させ、水素化された接触分解留出油を得た。
【0132】
分離されたブチレンを、650℃の反応温度、100:1の、原料に対する触媒の重量比率、0.2秒の反応時間を含む条件下で、さらなる分解のためにライザー反応器の底部に再循環させ;140℃未満の沸点を有する第1のオレフィンリッチなストリーム(すなわち、小分子オレフィンを含むストリーム)を、さらなる分解のために第2の反応ゾーンの底部に再循環させ;140℃を超える沸点を有する第2のオレフィンリッチなストリーム(すなわち、大分子オレフィンを含むストリーム)を、500℃の反応温度、および10秒の反応時間を含む条件下で、さらなる分解のために第3の反応ゾーンの底部に再循環させ;水素化された接触分解留出油を重質原料油と混合させ、次いで、反応のために第1の反応ゾーンに再循環させた。反応条件および生成物の分布を表4に列挙する。
【0133】
実施例8
ライザー反応器のパイロットプラントについて、
図3に示すスキームに従って、以下のように、実験を行った:
重質原料油aを、600℃の反応温度、0.1MPaの反応圧力、3秒の反応時間、および5:1の、原料に対する触媒の重量比率を含む条件下で、反応のために第1の反応ゾーンの底部で接触変換触媒Aと接触させ;1-ペンテン原料を、530℃の反応温度、0.1MPaの反応圧力、6秒の反応時間、および45:1の、1-ペンテンに対する触媒の重量比率を含む条件下で、反応のために第2の反応ゾーンの底部で第1の反応ゾーンからの接触変換触媒Aと接触させた。メタノールを、500℃の反応温度、0.1MPaの反応圧力、3秒の反応時間、および10:1の、メタノールに対する触媒の重量比率を含む条件下で、反応のために第2の反応ゾーンのより下部の中間部に導入した。
【0134】
得られた反応生成物を使用済み触媒から分離し、使用済み触媒を再生器中でコークスを燃焼させることによって再生し、反応生成物を分離して、エチレン、プロピレン、ブチレン、オレフィンリッチなストリーム、250℃を超える沸点を有する第2の接触分解留出油などを得た。
【0135】
第2の接触分解留出油を、350℃の温度、18MPaの水素分圧、1.5h-1の体積空間速度、および1500の、油に対する水素の体積比率を含む条件下で、水素化触媒Dと反応させ、水素化された接触分解留出油を得た。
【0136】
分離されたブチレンを、650℃の反応温度、100:1の、ブチレンに対する触媒の重量比率、0.2秒の反応時間を含む条件下で、さらなる分解のためにライザー反応器の底部に再循環させ;オレフィンリッチなストリームを、さらなる分解のために第2の反応ゾーンの底部に再循環させ;水素化された接触分解留出油を重質原料油と混合させ、次いで、反応のために第1の反応ゾーンに再循環させた。反応条件および生成物の分布を表4に列挙する。
【0137】
【0138】
表4に示されるデータから分かるように、本出願の実施例7および8の方法は、実施例1と比較して、プロピレンおよびエチレンの全収率、特にエチレンの収率をさらに改善し、水素、メタンおよびエタンの全収率を低下させた。
【0139】
本出願は、好ましい実施形態を参照して上記で詳細に説明されているが、これらの実施形態に限定されることを意図するものではない。本出願の発明概念に従い、様々な変更を行うことができ、これらの変更は本出願の範囲内である。
【0140】
上記実施形態で説明した様々な技術的特徴を矛盾なく適宜組み合わせることが可能であり、不必要な繰り返しを避けるために、本出願では様々な可能な組み合わせについて説明しない。しかし、そのような組み合わせも本出願の範囲内である。
【0141】
また、本出願の様々な実施形態は本出願の趣旨を逸脱しない範囲で任意に組み合わせることが可能であり、これらを組み合わせた実施形態を本出願の開示内容とする。
【図面の簡単な説明】
【0142】
【
図1】
図1は、本出願の流動触媒変換方法の好ましい実施形態の概略フロー図を示す。
【
図2】
図2は、本出願の流動触媒変換方法の別の好ましい実施形態の概略フロー図を示す。
【
図3】
図3は、本出願の流動触媒変換方法のさらに別の好ましい実施形態の概略フロー図を示す。
【国際調査報告】