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特表2024-502196少なくとも1台の車両、特に少なくとも1台の鉄道車両のブレーキ装置またはブレーキシステムの取得チェーンの校正方法
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  • 特表-少なくとも1台の車両、特に少なくとも1台の鉄道車両のブレーキ装置またはブレーキシステムの取得チェーンの校正方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-17
(54)【発明の名称】少なくとも1台の車両、特に少なくとも1台の鉄道車両のブレーキ装置またはブレーキシステムの取得チェーンの校正方法
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/172 20060101AFI20240110BHJP
   B60T 17/22 20060101ALI20240110BHJP
   B60T 13/66 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B60T8/172 Z
B60T17/22
B60T13/66 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023541773
(86)(22)【出願日】2022-01-11
(85)【翻訳文提出日】2023-08-03
(86)【国際出願番号】 IB2022050179
(87)【国際公開番号】W WO2022153173
(87)【国際公開日】2022-07-21
(31)【優先権主張番号】102021000000428
(32)【優先日】2021-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516351289
【氏名又は名称】フェヴレ・トランスポール・イタリア・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
【氏名又は名称原語表記】FAIVELEY TRANSPORT ITALIA S.p.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100137095
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 武史
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】インベルト, リュック
(72)【発明者】
【氏名】フレア, マッテオ
(72)【発明者】
【氏名】ルカレッリ, ステファノ
【テーマコード(参考)】
3D048
3D049
3D246
【Fターム(参考)】
3D048AA04
3D048BB21
3D048CC43
3D048HH66
3D048HH70
3D048RR01
3D048RR06
3D048RR13
3D048RR25
3D049AA04
3D049CC03
3D049HH03
3D049HH47
3D049HH51
3D049RR01
3D049RR04
3D049RR06
3D246AA17
3D246BA03
3D246DA01
3D246GA22
3D246HA35A
3D246HA39A
3D246HA42A
3D246HA64A
3D246HC13
(57)【要約】
少なくとも1台の車両、特に少なくとも1台の鉄道車両のブレーキ装置またはブレーキシステム(102)の取得チェーン(100)の校正方法が記載され、係る構成方法は、a)所定の閾値よりも高い精度を有する校正手段(114)によって物理量の所定の基準値(116)を測定するステップと、b)前記取得チェーン(100)によって前記物理量の前記所定の基準値を測定するステップと、c)前記校正手段(114)によって測定された前記所定の基準値を、前記取得チェーンによって測定された前記所定の基準値と比較することによって前記取得チェーンの測定誤差を決定するステップと、d)前記校正手段によって測定された前記所定の基準値と前記取得チェーンによって測定された前記所定の基準値との前記比較に基づいて、前記取得チェーンの前記制御手段の前記伝達関数の前記少なくとも1つの係数を修正することにより、前記取得チェーンの前記測定誤差が最小限に抑えられるか、またはゼロになるステップと、を含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1台の車両、特に少なくとも1台の鉄道車両のブレーキ装置またはブレーキシステム(102)の取得チェーン(100)の校正方法であって、
前記取得チェーンは、
-物理量(106)の値を測定し、その値が前記物理量の値の関数であるアナログ信号(108)を提供するように構成されたセンサー手段(104)と、
-前記アナログ信号をデジタル信号に変換するように構成されたアナログ/デジタル変換手段(110)と、
-少なくとも1つの係数を含む伝達関数(113)に従って、前記デジタル信号から前記物理量の値を決定するように構成された制御手段(112)と、を有し、
前記校正方法は、
a)所定の閾値よりも高い精度を有する校正手段(114)によって前記物理量の所定の基準値(116)を測定するステップと、
b)前記取得チェーン(100)によって前記物理量の前記所定の基準値を測定するステップと、
c)前記校正手段(114)によって測定された前記所定の基準値を、前記取得チェーンによって測定された前記所定の基準値と比較することによって前記取得チェーンの測定誤差を決定するステップと、
d)前記校正手段によって測定された前記所定の基準値と前記取得チェーンによって測定された前記所定の基準値との前記比較に基づいて、前記取得チェーンの前記制御手段の前記伝達関数の前記少なくとも1つの係数を修正することにより、前記取得チェーンの前記測定誤差が最小限に抑えられるか、またはゼロになるステップと、を含むことを特徴とする校正方法。
【請求項2】
前記ステップa)~d)が、緊急ブレーキに関連する物理量を測定するように構成された前記少なくとも1台の車両の各取得チェーン(100、100'、…)に対して繰り返される請求項1に記載の校正方法。
【請求項3】
前記ステップa)~d)が、常用ブレーキに関連する物理量を測定するように構成された前記少なくとも1台の車両の各取得チェーン(100、100'、…)に対して繰り返される請求項1または2に記載の校正方法。
【請求項4】
前記取得チェーンを用いて前記物理量の前記所定の基準値を測定するステップが、さらに、
-圧力センサーを用いて前記物理量の前記所定の基準値を測定するステップ、または、
-力センサーを用いて前記物理量の前記所定の基準値を測定するステップ、または、
-トルクセンサーを用いて前記物理量の前記所定の基準値を測定するステップ、または、
-速度センサーを用いて前記物理量の前記所定の基準値を測定するステップ、を含む請求項1ないし3のいずれか1項に記載の校正方法。
【請求項5】
前記ステップa)~d)が、使用開始前の前記取得チェーンの製造段階中に実行される請求項1ないし4のいずれか1項に記載の校正方法。
【請求項6】
前記ステップa)~d)が、使用開始後の前記取得チェーンの校正段階中に実行される請求項1ないし5のいずれか1項に記載の校正方法。
【請求項7】
前記校正方法は、さらに、
-環境試験条件の値の範囲について前記取得チェーンの前記制御手段の前記伝達関数の前記少なくとも1つの係数を修正するために、少なくとも2つの前記環境試験条件について前記ステップa)~d)を繰り返すステップを含む請求項1ないし6のいずれか1項に記載の校正方法。
【請求項8】
前記少なくとも2つの環境試験条件は、2つの異なる温度条件である請求項7に記載の校正方法。
【請求項9】
前記物理量の前記所定の基準値は、前記センサー手段により測定され得る最大値と最小値との間の平均値である請求項1ないし8のいずれか1項に記載の校正方法。
【請求項10】
前記ステップd)が、さらに、
-前記デジタル信号の解釈を可能にするように構成された解釈パラメーターに従って、前記取得チェーンの前記制御手段の前記伝達関数の前記少なくとも1つの係数を修正するステップを含む請求項1ないし9のいずれか1項に記載の校正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、車両、特に鉄道車両用の校正システムの分野に属する。特に、本発明は、少なくとも1台の車両、特に少なくとも1台の鉄道車両のブレーキ装置またはブレーキシステムの取得チェーン(acquisition chain)の校正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術は、特に鉄道車両の分野を参照して以下に説明される。これから説明する内容は、可能な場合には他の分野の車両にも適用されてもよい。
【0003】
過去50年にわたり、鉄道車両などのブレーキシステムは、空圧システムから電空システムに変化した(油圧システムや機械システムにも同じことがいえる)。この変化の結果、これらのブレーキシステムによって加えられる力を監視できるようにする制御測定(control measurements)に依存する必要性がますます高まっている。
【0004】
純粋な空気圧から電空圧への変化は、精度の向上、重量と体積の削減など、多くの利点をもたらした。
このシステムのタイプの変化に加えて、自動車メーカーの制動距離に対する精度要件も変化しており、これに伴い、ブレーキシステムのブレーキシリンダ内の圧力に対する精度要件も変化している。ブレーキシリンダ内の圧力精度は、以前は+/-250mbarであった。現在、ブレーキシリンダの精度は、シリンダ内で+/-100mbarとなっている。
【0005】
ブレーキの精度、ひいては制動距離の精度は、以前はブレーキシステムのさまざまな空気圧部品を手動で校正することによって確保されていた。例えば、これらの部品には、VCAV(空負荷バルブ、フランス語の「vide-charge auto-variable」に由来)、LPV(負荷比例バルブ)、またはディストリビュータ(distributor)が含まれる可能性があった。
【0006】
この校正方法は、所定の負荷圧力に対するブレーキシリンダの圧力を測定し、ブレーキシリンダの圧力が所定の伝達関数を満たしていることを検証することにより行われていた。この圧力が提供された値より低い、または高い場合に、正または負の不感帯間隔(+/-)も考慮して、校正対象の機械的オブジェクトが物理的に校正され、この校正が適切なメンテナンスファイルに記録されていた。
【0007】
ブレーキシステムのライフサイクル全体を通じて、機械サブアセンブリ/機械部品は摩耗、振動、温度変動にさらされ、その結果、内部に微視的/巨視的変化が生じる。これらの変化は、サブアセンブリまたは機械部品のパフォーマンスに影響を与える。これらの変化により、ブレーキのシリンダ内の圧力が増加または減少する可能性がある。ブレーキシリンダ内の圧力がこのように変化すると、ブレーキシステムが通常提供する安全な制動距離を保証できなくなる可能性がある。この欠点を考慮して、上記で説明したキャリブレーションが実行された。
【0008】
例えば、電空ブレーキシステムの電子部品に関しては、電子センサーにはメーカーの初期精度オフセットがあり、時間、使用状況、温度変動、および測定値の変化の大きさに応じて実際の値からずれる可能性がある。センサーの出力を読み取る電気回路の特性も同様の要因によって変化する。これらすべての要因により、取得チェーン(acquisition chain)の精度が低下し、緊急ブレーキ機能と常用ブレーキ機能の精度が低下してしまっていた。
【0009】
不利なことに、電空システムは純粋な機械部品やサブアセンブリのみで構成されているわけではないため、空圧システムに使用される校正方法を電空システムには使用できない場合がある。
【0010】
例えば、国際公開第2017/194512号には、絶対圧力値ではなく、シリンダの充填時間および吐出時間に基づいて自動校正を実行することができる方法およびブレーキシステムが記載されている。しかしながら、電空ブレーキシステムのブレーキ精度を維持するという課題は解決できていない。
【0011】
別の例では、国際公開第2019/048261号には、圧力を調整する装置の出口圧力に基づいてシリンダの圧力を推定するオブザーバ(observer)およびモデルを組み込んだブレーキ装置が記載されている。この場合も、電空ブレーキシステムのブレーキ精度を維持するという問題は解決されていない。
したがって、新しい校正技術が必要とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第2017/194512号
【特許文献2】国際公開第2019/048261号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、本発明の目的は、電空装置または電空システムでの使用に適した校正方法を提供することである。この校正方法は、電空ブレーキシステムのブレーキ精度(制動精度)を維持するという問題の解決にも適している。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前述の目的および利点および他の目的および利点は、本発明の一態様によれば、請求項1に定義された特徴を有する、少なくとも1台の車両、特に少なくとも1台の鉄道車両のブレーキ装置またはブレーキシステムの取得チェーンの校正方法によって達成される。本発明の好ましい実施形態は従属請求項において規定され、その内容は本明細書の一体的な部分として理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
次に、本発明にかかる、少なくとも1台の車両、特に少なくとも1台の鉄道車両のブレーキ装置またはブレーキシステムの取得チェーンの校正方法のいくつかの好ましい実施形態の機能的および構造的特徴について説明する。添付の図面を参照する。
図1図1は、取得チェーンの一例を示す図である。
図2図2は、前記取得チェーンを備えるブレーキシステムの一例を示す図である。
図3図3は、本発明にかかる、少なくとも1台の車両、特に少なくとも1台の鉄道車両のブレーキ装置またはブレーキシステムの取得チェーンの校正方法を実行するのに適したセットアップ例を示す図である。
図4図4は、電空ブレーキ装置/システムの一例を示す図である。
図5図5は、図4の電空ブレーキ装置/システムを表す制御ブロック図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の複数の実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その出願において、以下の説明に提示されるか、または図面に示される構成要素の設計詳細および構成に限定されないことを明らかにすべきである。本発明は他の実施形態を想定することができ、異なる方法で実際に実施または構築されることができる。また、表現および用語は記述的な目的を有し、限定的なものとして解釈されるべきではないことを理解されたい。「含む(include)」および「備える(comprise)」の使用およびそれらの変形は、以下に記載される要素およびそれらの均等物、ならびに追加の要素およびそれらの均等物を包含するものとして理解されるべきである。
【0017】
最初に図1を参照すると、取得チェーン(acquisition chain)100は以下を含む。
-物理量106の値を測定し、その値が前記物理量の値の関数であるアナログ信号108を提供するように構成されたセンサー手段104、
-前記アナログ信号をデジタル信号に変換するように構成されたアナログ/デジタル変換手段110、
-少なくとも1つの係数を含む伝達関数113に従って、前記デジタル信号から前記物理量の値を決定するように構成された制御手段112。
【0018】
例えば、制御手段は、プロセッサー、コントローラー、FPGA、マイクロコントローラー、マイクロプロセッサーなどのうちの少なくとも1つであってもよく、またはそれを含んでもよい。
【0019】
明らかに、センサー手段はそれ自体の伝達関数を有してもよい。センサー手段は、前記物理量の値およびそれ自体の伝達関数に基づいてアナログ信号を提供してもよい。アナログ/デジタル変換手段も、それ自体の伝達関数を有してもよい。アナログ/デジタル変換手段は、それ自体の伝達関数に従ってアナログ信号をデジタル信号に変換してもよい。
【0020】
取得チェーン100は、測定によって決定された物理量の解釈を可能にするすべての要素として定義してもよい。換言すれば、取得チェーンは、センサー、電気インターフェース(アナログ/デジタル変換手段)、および(制御手段によって実行される)ソフトウェアコードを備えてもよい。各要素は独自の伝達関数を持っていてもよい。例えば、センサー手段の伝達関数は物理量の値をアナログ電気信号に変換し、電気インターフェースの伝達関数はアナログ電気信号をデジタル信号に変換し、ソフトウェアコードSWはデジタル信号を解釈された物理量の値に変換する。
【0021】
第1の実施形態では、本発明にかかる校正方法は以下のステップを含む。
a)所定の閾値よりも高い精度を有する校正手段114によって前記物理量の所定の基準値116を測定するステップ、
b)前記取得チェーンによって前記物理量の前記所定の基準値を測定するステップ、
c)前記校正手段によって測定された前記所定の基準値を、前記取得チェーンによって測定された前記所定の基準値と比較することによって前記取得チェーンの測定誤差を決定するステップ、
d)前記校正手段によって測定された前記所定の基準値と前記取得チェーンによって測定された前記所定の基準値との前記比較に基づいて、前記取得チェーンの前記制御手段の前記伝達関数の少なくとも1つの係数を修正することにより、取得チェーンの前記測定誤差が最小限に抑えられるか、またはゼロになるステップ。
【0022】
例えば、校正手段によって測定された値と取得チェーンによって測定された値とを比較して、許容可能な偏差範囲内の差異が生じた場合、校正を継続してもよい。あるいは、校正手段によって測定された値と取得チェーンによって測定された値とを比較して、許容偏差範囲外の差が生じた場合、校正方法が実行されることなく、取得チェーンおよびそれに関連するユニットが使用不能になってもよい。この許容可能な偏差範囲は、典型的には、センサー手段の最大年間誤差増加(maximum annual error increase)およびアナログ/デジタル変換手段の最大年間偏差に基づいていてもよい。
【0023】
例えば、これに限定されるものではないが、比較は、校正手段によって測定された値と取得チェーンによって測定された値との間の減算演算、またはその逆を含んでもよい。
【0024】
図3の構成中の例によって、校正手段の一例を示す。校正手段は、例えば、校正システムまたは校正装置である。校正手段は、校正される取得チェーンの複製をその中に含むことができる。その中で復元された取得チェーンは、校正手段が所定の閾値よりも高い精度を有することを保証することができる。
【0025】
例えば、物理量は圧力であってもよい。この圧力は、例えば緊急ブレーキおよび/または常用ブレーキを実行するように構成された電空ブレーキシステムのブレーキシリンダの圧力であってもよい。この場合、センサー手段は圧力センサーであってもよい。他の物理量についても同様である。例えば、物理量が温度である場合には、センサー手段は温度センサーであってもよい。物理量が力である場合には、センサー手段は力センサーであってもよい。物理量がトルクである場合には、センサー手段はトルクセンサー等であってもよい。
【0026】
ステップa)~d)は、好ましくは、緊急ブレーキに関連する物理量を測定するように構成された少なくとも1台の車両、特に少なくとも1台の鉄道車両の各取得チェーンに対して繰り返されてもよい。例えば、2台の車両、例えば2台の鉄道車両があり、それぞれが非常ブレーキを実行するように配置された2つのブレーキシリンダを有する場合、ステップa)~d)を前記ブレーキシリンダのそれぞれに対して4回繰り返すことができる。
【0027】
ステップa)~d)は、好ましくは、常用ブレーキに関連する物理量を測定するように構成された前記少なくとも1台の車両、特に少なくとも1台の鉄道車両の各取得チェーンに対して繰り返されてもよい。例えば、2つの車両、例えば2つの鉄道車両があり、それぞれ常用ブレーキを実行するように配置された2つのブレーキシリンダを有する場合、ステップa)~d)を前記ブレーキシリンダのそれぞれに対して4回繰り返すことができる。
【0028】
取得チェーンを用いて物理量の所定の基準値を測定するステップは、以下のステップを含んでもよい。
-圧力センサーを用いて前記物理量の前記所定の基準値を測定するステップ、または、
-力センサーを用いて前記物理量の前記所定の基準値を測定するステップ、または、
-トルクセンサーを用いて前記物理量の前記所定の基準値を測定するステップ、または、
-速度センサーを用いて前記物理量の前記所定の基準値を測定するステップ。
【0029】
換言すれば、取得チェーンのセンサー手段は、少なくとも圧力センサー、力センサー、トルクセンサー、または速度センサーであってもよいし、それらを含んでもよい。
【0030】
ステップa)~d)は、好ましくは、使用開始前の前記取得チェーンの製造段階中に実行されてもよい。例えば、本発明にかかる校正方法は、車両、特に取得チェーンを含む少なくとも1台の鉄道車両の、運行開始前のブレーキシステムの初期構築段階中に使用することができる。
【0031】
ステップa)~d)は、好ましくは、ブレーキシステムが使用開始された後、ブレーキシステムの前記取得チェーンの校正段階中に実行されてもよい。例えば、本発明にかかる校正方法は、車両、特に少なくとも1つの鉄道車両が運行を開始した後、実際の値からずれた結果として取得チェーンの再調整を実行する必要がある時に使用することができる。
【0032】
校正方法は、好ましくは、次のステップも含むことができる。
-環境試験条件の値の範囲について取得チェーンの制御手段の前記伝達関数の少なくとも1つの係数を修正するために、少なくとも2つの前記環境試験条件について前記ステップa)~d)を繰り返すステップ。
前記環境試験条件は、2つの異なる温度条件であることが好ましい。
【0033】
前記物理量の所定の基準値は、前記センサー手段により測定され得る最大値と最小値との間の値であることが好ましい。
【0034】
ステップd)は、好ましくは、前記デジタル信号の解釈を可能にするように構成された解釈パラメーターに従って、取得チェーンの制御手段の前記伝達関数の少なくとも1つの係数を修正するステップを含んでもよい。
【0035】
校正のために用いられる点数は、校正中の取得チェーンの制御手段の伝達関数、およびそのライフサイクル中にどのように精度がずれるかによる。
【0036】
1点校正によりオフセットを補正することができる。
線形伝達関数の場合、2点校正によりオフセットとゲイン偏差を補正することができる。
非線形関数の場合、多点校正により非線形偏差を補正することができる。
本発明の考えられる使用例を以下に説明する。
【実施例
【0037】
実施例1-解釈パラメーターの使用
以下の実施例は、線形伝達関数を備えた「取得チェーン」に基づく。ここでは、実施例を説明するのに座標(X,Y)を持つ2点で十分である。
【0038】
解釈された物理量を計算するために、テストされる取得チェーンの制御手段のソフトウェアは、デジタル信号を解釈できるようにするために解釈パラメーターにアクセスすることができる。これらのパラメーターは、シャットダウン後に係数が確実に利用できるようにするために、EEPROMまたはフラッシュメモリに存在してもよい。
【0039】
解釈パラメーターのデフォルト値として選択される値は、センサー手段のデータシートに基づくことができる。
次の表は、特定の取得チェーンの解釈パラメーターを示す。
【0040】
【表1】
【0041】
制御手段のソフトウェアは、一次方程式(制御手段の伝達関数)の係数aおよびbを計算するために、取得チェーン1のデフォルトの解釈パラメーターを使用することができる。
【数1】
【0042】
min(X最小値)とXmax(X最大値)の間の未知の値Xについては、解釈された物理量の値を計算するために係数aおよびbを用いることができる。
【数2】
取得チェーンの線形伝達関数のキャリブレーションが実行される場合、2つの異なる基準値が入力され、キャリブレーション手段(Y1’およびY2’)によって読み取られてもよい。同時に、取得チェーンは同じ2つの基準値の測定を実行し、センサー手段はこれらのそれぞれに対してアナログ信号を生成し、アナログ信号は、制御手段のソフトウェアによって読み取られるデジタル信号(X1およびX2)に変換されてもよい。
【0043】
2つの異なる基準値は、必ずしもセンサー手段の測定能力の最小値と最大値である必要はなく、状況によっては、周囲のデバイスまたはシステムが理由でこれらの値に到達できないこともある。いずれの場合も、線形関数の場合、最高点と最低点の間に少なくとも10%の差がある2つの異なる値により、偏差を修正できる可能性がある。次いで、校正手段によって解釈された物理量の値を解釈パラメーターに代入して、EEPROMまたはフラッシュメモリ内の以前の値を永久に消去することができる。この動作は、テスト対象の取得チェーンによって解釈される物理量の値を補正し、そのデジタル信号と物理量の値とを校正手段の精度で一致させる。
【0044】
【表2】
【0045】
この技術は、校正手段の機能を利用して、取得チェーン内の解釈パラメーターにアクセスし、異なる取得チェーンを校正する。
更新された式を以下に示す。
【数3】
【0046】
センサー手段の供給者は通常、極端な温度によりセンサー手段の精度が低下する特定の温度範囲の精度範囲を指定する。この影響を相殺するために、温度に応じて異なる解釈パラメーターを使用することができる。
【0047】
この動作温度範囲は、有効温度に応じて、例えば3つの温度範囲に分割して、解釈パラメーターの特定のセットが選択されてもよい。
【0048】
解釈パラメーター((X1,Y1’),(X2,Y2’))を使用する代わりに、制御手段の伝達関数の係数(a’、b’)を使用して、取得チェーンの更新された情報を校正および保存することができる。
【0049】
実施例2-鉄道車両のブレーキシステムに適用される校正
図4は常用ブレーキ機能を実行する電空ブレーキ装置/システムの一例を示す。
【0050】
この電空ブレーキ装置/システムには以下を含むことができる。
-エアサスペンション(AS)圧力:鉄道車両にかかる負荷を表す。
-シリンダの圧力(Cyl):車軸にかかる力を表す。
-取得チェーン1(AC1):伝達関数、圧力から解釈された圧力値。
-取得チェーン2(AC2):伝達関数、圧力から解釈された圧力値。
-アクチュエータ(A):シリンダ内の圧力を制御する。
-シリンダの意図された圧力へのSW負荷圧力(SW_L2T):圧力から圧力への伝達関数。
-コントローラー(C):シリンダの意図した圧力とシリンダの圧力のフィードバックとの間の誤差を最小限に抑える閉ループでアクチュエータにコマンドを与える。
【0051】
図5は、図4に示したブレーキ装置/システムを表す制御ブロック図である。
各制御ブロックは独自の伝達関数を有する。本発明の目的では、灰色のブロックのみが対象となる。
【0052】
AC1は取得チェーン1の伝達関数を表す。その入力はエアサスペンション圧力であるP_ASであり、その出力は解釈されたエアサスペンション圧力であるIP_ASである。
【0053】
SW_L2Tは伝達関数、すなわちシリンダの意図した圧力に対する負荷であり、車両のサスペンションの種類、ブレーキシステムの種類などに依存するため、設計に依存する。
その入力は解釈されたエアサスペンション圧力であるIP_ASであり、その出力はシリンダの目標圧力であるP_ターゲット(target)である。AC1に起因する誤差は、伝達関数SW_L2Tに従って変調される。
【0054】
AC2は取得チェーン2の伝達関数を表す。その入力はシリンダの圧力であるP_Cylであり、その出力はシリンダの解釈された圧力であるIP_Cylである。
次に、AC2の出力誤差がSW_L2Tの誤差から「減算(subtracted)」され、P_ターゲット(意図された圧力)とIP_Cyl(解釈されたシリンダの圧力)との差を表す出力Δが作成される。
【0055】
コントローラーCの入力は、差のΔ付近の不感帯を使用してもよい。不感帯は、減算の結果として生じる誤差によってシフトされる。コントローラーは、シリンダの圧力であるP_Cylを制御するためにアクチュエータにコマンドを送信してもよい。
【0056】
以下の表は、常用ブレーキ圧力誤差を計算するために使用される、センサー手段と制御手段のデータ例を示す。
センサーのフルスケールFSは10barである。
【0057】
【表3】
【0058】
これらの設計データは、図5に示す制御ブロック図における誤差の伝播を特徴付けるために用いることができる。
【0059】
以下の表は、本番稼働を終了するときのシステムに沿った誤差の伝播を示す。結果として生じるシリンダ内の最大誤差は+/-123.92mbarである。
【0060】
【表4】
【0061】
以下の表は、1年間の使用後のシステムに沿った誤差伝播を示す。結果として生じるシリンダ内の最大誤差は+/-166.16mbarである。
【0062】
【表5】
【0063】
上に示したいずれの表においても、表3で定義された特性を持つ部品を備えた単一のブレーキ装置/システムは、シリンダ内で+/-100mbarの精度要件を満たしていなかった。
【0064】
本発明による校正方法により、関連する装置の取得チェーンは、使用開始前に校正することができる。
このキャリブレーションにより、取得チェーンの精度が向上する。
【0065】
+/-0.05[FS]に等しい校正ツールによって校正されたセンサー手段の精度により、結果として得られる制動パラメーターの表が得られる。
【0066】
【表6】
【0067】
上の表に示したように、結果として得られる取得チェーンの誤差は、校正された取得チェーンの精度と等しくなる。
誤差の伝播への影響を以下に示す。
【0068】
【表7】
【0069】
上の表で見られるように、P_Cylでの最大誤差は+/-57.04mbarであり、目標の+/-100mbarを下回っている。
【0070】
【表8】
【0071】
上の表では、P_Cylでの誤差は+/-99.28mbarであり、目標の+/-100mbarにかなり近いため、ブレーキシリンダの精度を保証するには毎年の校正が必要になる。
【0072】
したがって、達成される利点は、電空装置または電空システムでの使用に適した校正方法を提供することである。
【0073】
したがって、達成されるさらなる利点は、電空ブレーキシステムのブレーキ精度を維持するという問題を解決するのに適した校正方法を提供したことである。
【0074】
上述したように、本発明は、鉄道の線路上を走行する少なくとも1つの鉄道車両に好適に適用される。例えば、本明細書で言及される車両は、機関車または客車であってもよく、コース/ルートには、機関車の車輪が転がる軌道が含まれてもよい。また、本明細書に記載される実施形態は、鉄道上の車両に限定されるものではない。例えば、車両は、乗用車、トラック(例えば、高速道路セミトレーラートラック、鉱山トラック、木材輸送用トラックなど)、オートバイなどであってもよく、ルートは、舗装された道でも、または舗装されていない道であってもよい。
【0075】
本発明にかかる、少なくとも1台の車両、特に少なくとも1台の鉄道車両のブレーキ装置またはブレーキシステムの取得チェーンの校正方法の様々な態様および実施形態について説明した。各実施形態は、任意の他の実施形態と組み合わせることができることを理解されたい。さらに、本発明は、記載された実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲によって規定される範囲内で変更されてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】