(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-17
(54)【発明の名称】バイタルサインモニタリングデバイス
(51)【国際特許分類】
A61B 5/00 20060101AFI20240110BHJP
A61B 5/1455 20060101ALI20240110BHJP
A61B 5/08 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
A61B5/00 102A
A61B5/1455
A61B5/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561919
(86)(22)【出願日】2021-12-21
(85)【翻訳文提出日】2023-08-18
(86)【国際出願番号】 EP2021087099
(87)【国際公開番号】W WO2022136438
(87)【国際公開日】2022-06-30
(32)【優先日】2020-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523233031
【氏名又は名称】ノルディック・プロダクツ・アクシェセルスカプ
【氏名又は名称原語表記】Nordiq Products AS
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【氏名又は名称】岡部 英隆
(74)【代理人】
【識別番号】100189544
【氏名又は名称】柏原 啓伸
(72)【発明者】
【氏名】ヘットリング,マッツ
(72)【発明者】
【氏名】ランデバルク,リーセ リングスネス
(72)【発明者】
【氏名】ディトレフセン,ロベルト
(72)【発明者】
【氏名】アブショルンスレット,エーミル
(72)【発明者】
【氏名】セレスバック, ロルフ
(72)【発明者】
【氏名】ボンメール,グレゴワール
【テーマコード(参考)】
4C038
4C117
【Fターム(参考)】
4C038KK01
4C038KL05
4C038KL07
4C038SS08
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4C117XJ48
4C117XL01
(57)【要約】
患者の首に取り外して取り付けるように構成されたモニタリングデバイスは、一つ以上のバイタルサインをモニタするための光学ユニット(10)と、一つ以上のバイタルサインをモニタするための音響ユニット(20)とを備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の首に取り外し可能に取り付けるように構成されたモニタリングデバイスであって、
1つ以上のバイタルサインをモニタする光学ユニットと、
1つ以上のバイタルサインをモニタする音響ユニットと
を含む、モニタリングデバイス。
【請求項2】
前記モニタリングデバイスは、
1つ以上のバイタルサインの測定値が、1つ以上のバイタルサインに対して夫々予め定義された範囲内にあるか、若しくは範囲外にあるか、を判定するように構成されている、請求項1に記載のモニタリングデバイス。
【請求項3】
前記モニタリングデバイスは、
1つ以上のバイタルサインの測定値の変化率をモニタするように構成され、及び、
1つ以上のバイタルサインの測定値の変化率が、1つ以上のバイタルサインの測定値の変化率について、夫々予め定義された範囲内にあるか、若しくは範囲外にあるか、を判定するように構成されている、
請求項1又は2に記載のモニタリングデバイス。
【請求項4】
前記モニタリングデバイスは、
1つ以上のバイタルサインが、夫々の予め設定された制限時間を超える期間について、夫々の予め定義された範囲外にある場合にアラートを発するように構成されている、請求項2に記載のモニタリングデバイス。
【請求項5】
前記モニタリングデバイスは、
1つ以上のバイタルサインの測定値の変化率が、夫々の予め設定された制限時間を超える期間について、夫々の予め定義された範囲外にある場合にアラートを発するように構成されている、請求項3に記載のモニタリングデバイス。
【請求項6】
前記モニタリングデバイスは、
光学ユニットと音響ユニットとによって測定された1つ以上のバイタルサインが予め設定された制限時間を超える期間について、閾値量を超えて発散する場合にアラートを発するように構成されている、請求項1~5のいずれか一に記載のモニタリングデバイス。
【請求項7】
アラートが聴覚アラートであり、モニタリングデバイスが聴覚アラートを出力するスピーカを含む、請求項4、5、又は6に記載のモニタリングデバイス。
【請求項8】
アラートが視覚アラートであり、モニタリングデバイスが視覚アラートを出力するディスプレイスクリーン及び/又は可視光源を含む、請求項4~7のいずれか一に記載のモニタリングデバイス。
【請求項9】
アラートの履歴を保存するように構成された統合記憶手段を含む、請求項4~8のいずれか一に記載のモニタリングデバイス。
【請求項10】
前記モニタリングデバイスは、
1つ以上のバイタルサインを分析するプロセッサを含む、
請求項1~9のいずれか一に記載のモニタリングデバイス。
【請求項11】
前記モニタリングデバイスは、
1つ以上のバイタルサインを表示するディスプレイを含む、
請求項1~10のいずれか一に記載のモニタリングデバイス。
【請求項12】
前記光学ユニットが反射パルスオキシメータを含む、
請求項1~11のいずれか一に記載のモニタリングデバイス。
【請求項13】
前記音響ユニットがマイクロフォン又は圧電センサを含む、
請求項1~12のいずれか一に記載のモニタリングデバイス。
【請求項14】
前記光学ユニットによってモニタされるバイタルサインが、血中酸素飽和度、脈拍数、および呼吸数のうちの1つ以上を含む、
請求項1~13のいずれか一に記載のモニタリングデバイス。
【請求項15】
前記音響ユニットによってモニタされるバイタルサインが、呼吸数、脈拍数、および気道開通性のうちの1つ以上を含む、
請求項1~14のいずれか一に記載のモニタリングデバイス。
【請求項16】
患者の首に前記モニタリングデバイスを取り外し可能に取り付けるための粘着性のパッドを含む、
請求項1~15のいずれか一に記載のモニタリングデバイス。
【請求項17】
患者の首にモニタリングデバイスを取り外し可能に取り付けるためのストラップを含む、
請求項1~16のいずれか一に記載のモニタリングデバイス。
【請求項18】
1つ以上のバイタルサインの履歴記録を保存するように構成された統合記憶手段を含む、請求項1~17のいずれか一に記載のモニタリングデバイス。
【請求項19】
さらに、
外部デバイスおよび/または遠隔ストレージサーバと通信するための無線インタフェースを含む、
請求項1~18のいずれか一に記載のモニタリングデバイス。
【請求項20】
前記モニタリングデバイスは、
1つ以上のバイタルサインの、および/またはアラートの履歴を、遠隔ストレージサーバに送信するように構成されている、
請求項1~19のいずれか一に記載のモニタリングデバイス。
【請求項21】
モニタリングデバイスを用いて患者の1つ以上のバイタルサインをモニタする方法であって、
前記モニタリングデバイスは、
1つ以上のバイタルサインをモニタするための光学ユニットと、
1つ以上のバイタルサインをモニタするための音響ユニットを含み、
前記方法は、
患者の首にモニタリングデバイスを取り外し可能に取り付けるステップと、
音響ユニットと光学ユニットとを用いて1つ以上のバイタルサインをモニタするステップと
を含む、
方法。
【請求項22】
モニタされているバイタルサインが、予め決定された範囲内か、若しくは範囲外かを、判定するするステップを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記1つ以上のバイタルサインが、夫々の予め設定された制限時間を超える期間、予め決定された範囲外にある場合、前記方法は更に、アラートを発するステップを含み、
該アラートは、聴覚アラートおよび/または視覚アラートである、
請求項22に記載の方法。
【請求項24】
光学センサによって測定されるバイタルサインの第1の値を、音響センサによって測定される同じバイタルサインの第2の値と比較するステップを含む、
請求項21、22または23に記載の方法。
【請求項25】
前記第1の値と前記第2の値が、夫々の予め設定された制限時間を超える期間について、閾値を超えて発散する場合に、アラートを発するステップを含む、
請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記1つ以上のバイタルサインの測定値の変化率をモニタするステップと、
前記1つ以上のバイタルサインの測定値の変化率が、前記1つ以上のバイタルサインの測定値の変化率について、予め定義された範囲内にあるか、若しくは範囲外にあるかを、判定するステップと
を含む、請求項21~25のいずれか一に記載の方法。
【請求項27】
前記1つ以上のバイタルサインの測定値の変化率が、夫々の予め設定された制限時間を超える期間について、夫々の予め定義された範囲外にある場合に、アラートを発するステップを含む、
請求項26に記載の方法。
【請求項28】
光学センサを用いて、血中酸素飽和度、脈拍数、及び呼吸数のうちの、1つ以上をモニタするステップを含む、
請求項21~27のいずれか一に記載の方法。
【請求項29】
音響センサを用いて、呼吸数、脈拍数、及び気道開通性のうちの、1つ以上をモニタするステップを含む、
請求項21~28のいずれか一に記載の方法。
【請求項30】
請求項1~20のいずれか一に記載のモニタリングデバイスを使用するステップを含む、
請求項21~29のいずれか一に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者のバイタルサインをモニタするために、患者の首に取り外し可能に取り付けられるように構成されたモニタリングデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
病院または病院前のケア、救命救急、救急医療、麻酔など、あらゆる種類の医療において最優先されるのは、気道の確保である。気道開通性が短時間で失われるだけでも、患者の生命を脅かす可能性があるため、呼吸やその他のバイタルサインのモニタリングは極めて重要である。
【0003】
患者の気道を手動でモニタリングしてバイタルサインが適切かどうかを判断するには、かなりの臨床訓練と認識が必要であり、気道開通性の低下を検出するために気道を継続的に評価する必要がある。さらに、ストレスの多い緊急事態や、混雑した病院、野戦病院、大量死傷事件、院内搬送、軍事施設などで一度に複数の患者をモニタする必要がある場合には、これは困難である。
【0004】
モニタリングデバイスは医療従事者が気道をモニタするのに役立つ可能性があるが、通常、これらはかさばるか、気道の信頼できるリアルタイムの直接のモニタリングを提供しない。代わりに、これらのデバイスは通常、気道不全が検出されたときにアラームをトリガするが、この検出はしばしば遅すぎて、患者が酸素飽和度低下や不整脈などの複雑な状態に苦しむことにつながる可能性がある。
【0005】
(指先で測定する)従来のパルスオキシメトリーモニタは、気道閉塞の徴候が遅いため、低体温、ショック、低血圧の患者では信頼できない。
【0006】
カプノグラフィは、より堅牢なモニタリング方法の1つであり、高価なセンサを必要とするため、多くの状況ではあまり適していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そのため、緊急時・非緊急時を問わず、医療従事者が容易にモニタできるように、バイタルサインを容易かつ確実に検出・モニタできるモニタリングデバイスが求められている。また、気道開通性が失われることをより早期に、より決定的に警告するためのデバイスも必要である。使いやすさと汎用性を兼ね備えたデバイスが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の観点から見ると、患者の首に取り外し可能に取り付けられるように構成されたモニタリングデバイスが提供され、モニタリングデバイスは、1つ以上のバイタルサインをモニタするための光学ユニット、および1つ以上のバイタルサインをモニタするための音響ユニットを含む。
【0009】
光学ユニットは、光学センサを含むことができる。例えば、光学センサは反射パルスオキシメータであってもよい。
【0010】
光学センサによって測定されるバイタルサインには、血中酸素飽和度、脈拍数、呼吸数 (呼吸数)のうち1つ以上(できれば全て)が含まれる場合がある。
【0011】
血中酸素飽和度を測定するために、光学センサは2つ以上の波長の光の反射率を測定する場合がある。第1波長は酸素化ヘモグロビンと脱酸素化ヘモグロビンで光吸収が同じ波長であり、第2波長は酸素化ヘモグロビンと脱酸素化ヘモグロビンで光吸収に大きな差がある波長である。既知のアルゴリズムを使用して、反射率の測定に基づいて血中酸素飽和度を決定することができる。
【0012】
光学センサを用いて脈拍数を測定するには、単一波長の光の反射率の測定で十分な場合がある。心臓が拍動すると、血液は心拍と同じ周波数で毛細血管を脈動する。この脈動は、毛細血管内の血液量が変化していることを意味する。体積の変化によって血液に吸収される光の量、つまり反射される光の量が変化する。したがって、パルスレートの推定は、反射光の時間依存的な変動を測定することによって、光学センサによって得られる。既知のアルゴリズムを使用して、反射率の時間依存変動に基づいてパルスレートを決定することができる。
【0013】
呼吸活動は得られる光電脈波波形に影響を与えるため、光学センサを用いて呼吸速度情報を抽出することも可能である。既知のアルゴリズムを使用して、光電脈波波形に基づいて呼吸速度を決定することができる。
【0014】
光学ユニットは、少なくとも2つの異なる波長範囲の光を皮膚に放出することができる照明ユニットを含むことができる。照明ユニットは、少なくとも2つの異なる波長範囲の光を放射するように制御できる単一の光源を構成することができる。光源はLEDの場合もある。あるいは、光学ユニットは、それぞれが異なる波長範囲の光を放出するように構成された2つの光源から構成されていてもよい。光源はLEDでもよい。一例では、第1の波長域は805nmにピークを持ち、第2の波長域は660nmにピークを持つ。
【0015】
音響ユニットは音響センサを含むことができる。例えば、音響センサは圧電センサであっても、マイクロフォンであってもよい。音響センサがマイクである実施形態では、マイクはMEMSマイクであってもよい。音響センサが圧電センサである実施形態では、圧電センサは、患者の皮膚に向かって配置された膜を持つカップ内の圧電ディスクを含むことができる。
【0016】
音響センサによって測定されるバイタルサインには、呼吸数、脈拍数、気道開通性のうちの1つ以上(できれば全て)が含まれる。
【0017】
気道開通性は、気道がどの程度閉塞しているかを示す指標である。モニタリングデバイスは、気道が部分的に閉塞しているか、完全に閉塞しているかの徴候をモニタする場合がある。
【0018】
気道が部分的に閉塞している場合の呼吸音は、気道が開放されている場合の呼吸音とは異なる。気道開通性が低下すると、気道を通過する空気の通常のささやきの音が小さくなり、喘鳴、ガタガタ、いびきのような他の音が聞こえることがある。そのため、(通常の呼吸音に比べて、)比較的大きな音や、いびき、喘鳴、ガタガタという音を繰り返すことで、気道が侵されている可能性があることを示している場合がある。そのような音は、例えば、そのような音を含むデータで訓練された訓練された機械学習/ディープラーニングモデルを使用して識別することができる。
【0019】
気道が完全に閉塞している場合は、呼吸数が0に低下したことを検出することで、気道開通性の低下を判断することができる。
【0020】
気道開通性が失われると、最初は脈拍数が増加し、血中酸素飽和度が低下すると脈拍数が減少する。呼吸努力の速度も最初は上昇し、その後下降するが、気道が閉塞しているため実際の呼吸は発生しない。結果として横隔膜が収縮し、胸の内部が陰圧になるだけである。気道開通性が失われると、最終的には心停止に至る。これは、患者の年齢や状況などに応じて、呼吸が停止してから早ければ2分後、遅ければ10分後に起こることもある。モニタリングデバイスは、気道開通性の喪失を検出することで、患者の状態が悪化する前に治療を受けることを保証する。
【0021】
呼吸数と脈拍数はそれぞれ、単に息の出し入れに伴う音と脈拍の音を聞くことによって、音響センサによって測定することができる。測定された音から呼吸数と脈拍数を決定するために、既知のアルゴリズムが使用されることがある。
【0022】
モニタリングデバイス内で2つの異なるセンサタイプを使用することは、測定されたバイタルサインの信頼性を向上させるのに役立つ。各センサは、もう一方のセンサによって測定された値のバックアップまたはチェックとして機能する。たとえば、各センサで測定された同じバイタルサインの値が異なる場合、モニタリングデバイスからいずれかのセンサに障害がある可能性を示すアラートが発行されることがある。例えば、音響センサからの呼吸数と脈拍数の測定は、光学センサによって測定された呼吸数と脈拍数に対するチェックとして使用することができる。
【0023】
首の上にモニタリングデバイスを置くことで、かさばるモニタリングデバイスを必要とせず、呼吸数、脈拍数、血中酸素飽和度、気道開通性をより正確かつタイムリーに測定することができる。
【0024】
音響ユニットは、第1の音響センサによって測定された信号からそのような望ましくない環境ノイズを差し引くことができるように、望ましくない環境ノイズ(すなわち、患者のバイタルサインとは無関係なノイズ)を測定するように構成された環境ノイズセンサを含むことができる。環境ノイズセンサは、例えばマイクである。
【0025】
音響ユニットは、音響センサを含み、音響センサによって検出された音を増幅してデジタル信号に変換するように構成されたデータ取得モジュールを含むことができる。
【0026】
同様に、光学ユニットは、光学センサを含むデータ取得モジュールを含むことができる。
【0027】
モニタリングデバイスは、光学ユニットおよび音響ユニットのデータ取得モジュールからデジタル信号を受信することができる信号処理モジュールを含むことができる。
【0028】
信号処理モジュールは、光学ユニットおよび音響ユニットのデータ取得モジュールからデジタル信号を受信し、デジタル信号をフィルタリングしてデジタル信号からノイズを除去するように構成することができる。
【0029】
モニタリングデバイスは、呼吸数、脈拍数、血中酸素飽和度、および気道開通性を決定するように構成されたデータ分析モジュールを含むことができる。必要に応じて、データ分析モジュールは、信号処理モジュールから出力されたデータに基づいて、呼吸数、脈拍数、血中酸素飽和度、および気道開通性を決定する。
【0030】
モニタリングデバイスは、音響ユニットおよび光学ユニットのデータ取得モジュール、信号処理モジュールおよびデータ分析モジュールによって実行される処理を実行するように構成された単一のプロセッサを含むことができる。
【0031】
上記では、モニタリングデバイスが光学センサと音響センサの両方からデータストリームを受信する単一のプロセッサを含む実施形態について説明する。別の実施形態では、モニタリングデバイスは2つのプロセッサで構成され、各プロセッサは単一のデータストリームの分析専用である。第1のプロセッサは光学ユニットからのデータの分析専用であり、第2のプロセッサは音響ユニットからのデータの分析専用である。その後、各プロセッサは、データ取得モジュール、信号処理モジュール、データ分析モジュールで構成される。
【0032】
モニタリングデバイスは、患者の頸部に装着して作動させると自己較正するように設定される場合がある。例えば、モニタリングデバイスはセンサ信号を内部または外部参照と比較することができる。
【0033】
モニタリングデバイスは、あらかじめ決められたサンプリングレートで測定を行うことにより、1つ以上のバイタルサインをモニタすることができる。音響センサと光学センサでサンプリングレートが同じ場合もあれば、それぞれのサンプリングレートが異なる場合もある。予め決定されたサンプリングレートは、1秒あたり5から50の測定値、たとえば1秒あたり10から30の測定値の範囲にすることができ、任意で1秒あたり約20の測定値とすることもできる。
【0034】
モニタリングデバイスは、所定の測定時間間隔(例えば、10秒から20秒)のデータを使用して1つ以上のバイタルサインの値を再計算してもよく、所定の間隔で(例えば1~5秒で)ローリングベースで値を再計算してもよい。これらの値は、バイタルサインごとに同じ場合も、異なる場合もある。
【0035】
例えば、モニタリングデバイスは、直前の20秒間に取得したデータに基づいて、5秒ごとに呼吸数の値を再計算する。脈拍数は呼吸数よりも頻度が高いため、脈拍数は呼吸数と比較して、より頻繁に、より少ない時間で取得されたデータに基づいて更新される場合がある。したがって、例えば、モニタリングデバイスは、直前の10秒間に取得したデータに基づいて、1秒ごとに脈拍数の値を再計算することができる。
【0036】
前述のように、血中酸素飽和度を測定するために、光学センサは2つ以上の波長の光で反射率を測定する場合がある。そのため、血中酸素飽和度の測定には、さまざまな波長の光のシーケンスを適用し、そのシーケンス中の反射率を測定してから、各シーケンスの最後に血中酸素飽和度の更新値を計算することが含まれる場合がある。
【0037】
モニタリングデバイスは、1つ以上のバイタルサインの測定値を表示するためのディスプレイを含むことができる。上記からわかるように、ディスプレイはモニタリングデバイスに統合されており、患者の首に取り付けられたデバイスにも存在する。
【0038】
モニタリングデバイスは、バイタルサインの測定値がデバイスに表示される前に、最初の期間バイタルサインをモニタするように構成することができる。これにより、測定値を表示する前に、バイタルサインの正確な測定値が得られるという利点がある。
【0039】
モニタリングデバイスは、所定の表示間隔で1つ以上のバイタルサインの表示測定値を更新してもよい。予め決定された表示間隔は、5秒から30秒の範囲、たとえば5秒から20秒である。
【0040】
モニタリングデバイスと結果を首に表示するディスプレイを備えているため、医療従事者は定期的に手動で気道を再評価することなく、患者のバイタルサインを簡単に見ることができる。したがって、医療従事者は、患者のバイタルサインが許容できるレベルにあるかどうかを確認することができ、そうでない場合は、患者は直ちに注意を払う必要がある。
【0041】
モニタリングデバイスは、複数の患者を同時にモニタする必要があり、各患者に専用のモニタリングデバイスを提供する場合に特に有用である。
【0042】
モニタリングデバイスは、粘着性のパッドを使用して患者の首に取り外して取り付けることができる。これにより、モニタリングデバイスを非侵襲的に患者に取り付けることができる。また、粘着性のパッドによりモニタリングデバイスの取り付けが容易になり、臨床実習が不要となる。これは、かなりの設備を必要とする気道をモニタするための複雑な侵襲的手順よりも望ましい。
【0043】
モニタリングデバイスは、患者の首からデバイスを引き抜くことによって取り外すことができる。その後、粘着性のパッドを取り外し、必要に応じて新しい粘着性のパッドに交換する。
【0044】
モニタリングデバイスは、ストラップまたはバンドを使用して患者の首に取り付けることができる。ストラップやバンドは首を絞めないものもあれば、シンプルで取り付けやすいものもある。これは、患者が搬送されている場合や、モニタリングデバイスが脱落するように患者を移動させる可能性がある処置が行われている場合など、粘着性のパッドが十分でない状況や十分な安全性が確保されていない場合に有益である。
【0045】
非絞扼性ストラップまたはバンドは、首の全周を囲まないような大きさにすることができる。
【0046】
モニタリングデバイスは簡単であるため、訓練を受けていない人が装着して患者のバイタルサインをモニタすることができる。これは家庭用に特に有益であり、多くの機器を必要とするカプノグラフィーベースのシステムよりも有利である。さらに、モニタリングデバイスは小型で軽量であるため(首に装着することを考えると重要である)、持ち運びが可能であり(すなわち、介助なしで人の手で簡単に運ぶことができる)、保管も容易である。モニタリングデバイスは片手だけで操作することもできる。
【0047】
モニタリングデバイスは、1つ以上のバイタルサインのそれぞれについて、(バイタルサインがその範囲内に収まるべき上限と下限を含む)予め定義された許容範囲で設定することができる。あるいは、患者および/または環境に応じて、(必ずしも医療従事者が所有しているとは限らない)一定レベルの権限を持つユーザによって許容範囲が設定される場合もある。これにより、特定の患者のバイタルサインが通常は期待範囲外である場合に、許容範囲を変更することができる。あるいは、環境によっては期待値が異なる場合があり、また、バイタルサインが他の状況では既に注意を必要としていたであろう特定のポイントに到達して初めて患者に対応できるように、医療従事者が過度の時間的圧力の下で働いている場合もある(例えば、救急状態で複数の患者に対応することがある)。
【0048】
1つ以上のバイタルサインが許容範囲を超えた場合、タイマが開始されることがある。バイタルサインがあらかじめ設定された制限時間内に許容範囲内に戻らない場合、モニタリングデバイスはアラートを発することがある。これにより、患者の気道が閉塞している可能性があり、直ちに注意する必要があることを医療従事者に直ちに警告することができる。バイタルサインの重大な変化がアラートを引き起こすことを知っているので、医療従事者は患者を常にモニタしたり、頻繁に手動で気道を評価したりする必要はない。これは、1人の介護職員が複数の患者を同時にモニタしている場合に特に有用である。気道開通性が失われていることを早期に発見することで、患者の生存率を大幅に向上させることができる。
【0049】
モニタリングデバイスによって同じバイタルサインの2つの値が得られる(例えば、脈拍数と呼吸数であり、それぞれ音響センサと光学センサで測定することができる)場合、一実施形態では、音響センサと光学センサの両方からの所定のバイタルサインの値は、タイマが開始する前に範囲外になる必要がある。または、音響センサまたは光学センサのいずれかからの値のうち1つだけが範囲外に出ることによってタイマが開始される場合もある。
【0050】
モニタリングデバイスには制限時間が設定されている場合があるが、患者や環境に応じて、一定のレベルの権限を持つユーザが制限時間を設定する場合もある(すなわち、必ずしも医療従事者が所有しているとは限らない。)(すなわち、制限時間はカスタマイズ可能である)。
【0051】
血中酸素飽和度の許容範囲は、例えば90%から100%である。血中酸素飽和度がこの範囲を超えた場合はタイマを開始し、予め設定した制限時間(例えば15秒)内に血中酸素飽和度が許容範囲に戻らない場合は、アラートを発することがある。
【0052】
脈拍数の許容範囲は、例えば50から120拍/分である。血中脈拍数がこの範囲を超えた場合はタイマが起動し、予め設定した制限時間内(例えば15秒)内に脈拍数が許容範囲に戻らない場合は、アラートが出されることがある。
【0053】
呼吸数の許容範囲は、例えば毎分8から27呼吸である。呼吸数がこの範囲を超えた場合はタイマが起動し、予め設定した制限時間(例えば15秒)内に呼吸数が許容範囲に戻らない場合は、アラートが出されることがある。
【0054】
バイタルサインがあらかじめ設定された制限時間内に許容範囲内に戻った場合、タイマが0に再設定されることがある。その後、バイタルサインのモニタリングを通常通り継続してもよい。
【0055】
モニタリングデバイスは、バイタルサインの測定値の変化率、例えば、それらの時間に関する一次微分をモニタするように構成することができる。バイタルサインの測定値の変化率が予め設定された許容範囲外にある場合、または予め設定された期間にわたって所定の制限値を超える場合に、アラートが発行されることがある。脈拍数と呼吸数については、予め設定された範囲が変化率の負の値から変化率の正の値までの場合がある。つまり、バイタルサインの減少値と増加値の両方が、予め設定された範囲外であれば、アラートがトリガされる。血中酸素飽和度については、低下のみが懸念される場合があるため、予め設定された期間を超えて、絶対値(モジュラス)が所定の制限値を超える負の変化率が発生した場合にアラートが出されることがある。
【0056】
モニタリングデバイスによって同じバイタルサインの2つの値が得られる(例えば、脈拍数と呼吸数であり、それぞれ音響センサと光学センサで測定することができる)場合、一実施形態では、音響センサと光学センサの両方からのバイタルサインの測定値の変化率の値は、タイマが開始する前に範囲外に出る必要がある。または、音響センサまたは光学センサのいずれかからのバイタルサインの測定値の変化率の値のうちの1つだけが範囲外に出ることによってタイマを開始することもできる。
【0057】
バイタルサインの測定値の変化率が所定の許容範囲外、または所定の限度を超えたときにタイマを開始することができる。
【0058】
たとえば、患者の呼吸数が±30%を超えて変化した場合(任意ではあるが、10分間この範囲外のままの場合)、アラートが発行されることがある。
【0059】
たとえば、患者の脈拍数が±40%を超えて変化した場合(任意ではあるが、10分間この範囲外のままの場合)、アラートが発行されることがある。
【0060】
たとえば、患者の血中酸素濃度が5%を超えて低下した場合(任意ではあるが、10分間この制限を超えたままの場合)、アラートが発行されることがある。
【0061】
バイタルサインの測定値の変化率があらかじめ設定された制限時間内に所定の許容範囲/制限内に戻った場合、タイマを0に再設定することができる。その後、バイタルサインのモニタリングを通常通り継続してもよい。
【0062】
モニタリングデバイスには、バイタルサインの測定値の変化率について、あらかじめ決められた許容範囲とあらかじめ決められた制限値、およびその期間が設定される場合があるが、患者や環境に応じて、一定のレベルの権限を持つ利用者が設定する場合もある(すなわち、必ずしも医療従事者が所有しているとは限らない)。
【0063】
上記の場合、1つ以上のバイタルサインの値が、その値に対して所定の許容範囲内であっても、アラートを発することができる。
【0064】
光学センサと音響センサで記録された1つ以上のバイタルサイン(例えば、呼吸数や脈拍数など)があらかじめ設定されたしきい値を超えて発散した場合、タイマが開始されることがある。光学センサと音響センサで記録されたバイタルサインの乖離が、あらかじめ設定された制限時間内にしきい値以下に戻らない場合、モニタリングデバイスからアラートが出されることがある。これは、いずれかのセンサに障害があることを医療従事者に示すことができるため、有益である。モニタリングデバイスは、各センサからの1つ以上のバイタルサインがどれだけ発散するかのしきい値を設定することができる。バイタルサインの予め定義された許容範囲と同様に、発散のしきい値と制限時間はモニタリングデバイスに格納される。バイタルサインによって、しきい値や制限時間が異なる場合がある。
【0065】
呼吸数の許容される発散は、例えば1分間に3回の呼吸である。光学センサと音響センサで測定した値がこれ以上乖離した場合、タイマが起動することがある。予め設定された制限時間(例えば1分)内に発散がしきい値を下回らない場合は、アラートが発行されることがある。
【0066】
脈拍数の許容される発散は、例えば12拍/分である。光学センサと音響センサで測定した値がこれ以上乖離した場合、タイマが起動することがある。予め設定された制限時間(例えば30秒)内に発散がしきい値を下回らない場合は、アラートが発行されることがある。
【0067】
設定した制限時間内に設定したしきい値以下に発散が戻った場合は、タイマを0にリセットすることがある。その後、バイタルサインのモニタリングを通常通り継続してもよい。
【0068】
モニタリングデバイスは、気道開通性の低下または喪失を検出するように構成されることもある。いびき、喘鳴、ガタガタ音が1つ以上検出された場合、タイマを開始し、所定の時間、いびき、喘鳴、ガタガタ音が続いた場合にアラートを発することがある。所定の時間は、例えば5分から10分である。時間帯は、あまりにも頻繁にアラームを発行しない方が有利であることを考慮して設定されることがあり、特に、アラームが正当化されない場合(例えば、患者が意識混濁している場合、アラームを引き起こす可能性のある音を発する可能性がある)は、医療従事者がアラームに対応することに疲れることもあり、アラームを無視することにもつながる可能性もある。
【0069】
気道が完全に閉塞している場合は、呼吸数が0に低下したことを検出することで、気道開通性の低下を判断することができる。呼吸数が0に低下した場合、タイマが開始され、設定された時間(通常は約20秒)後にアラートが発行されることがある。
【0070】
アラートは、アラームなどの聴覚アラートである場合がある。あるいは、アラートは、たとえば、インジケータライトなどの、視覚アラートである場合もある。さらに別の方法として、プロセッサが音声と視覚の両方のアラートを発行することもある。聴覚アラートは、医療従事者が視覚アラートよりもそれに気付きやすいという点で有益である。ただし、軍事状況などの特定の環境では、音声によるアラートは望ましくない場合がある。この場合、聴覚アラートは非アクティブ化され、医療従事者はインジケータライトなどの視覚アラートのみに頼ることができる。
【0071】
モニタリングデバイスの電力が不足している場合は、モニタリングデバイスがメンテナンスのアラートを発することがある。このメンテナンスのアラートは、聴覚アラートや視覚アラートを使用している場合がある。
【0072】
このアラートは、デバイスが正常に動作していることを医療従事者に通知するためにも使用できる。たとえば、モニタリングデバイスは定期的にアラートを発行する場合がある。
【0073】
1つ以上のバイタルサインおよび/またはアラートの履歴は、モニタリングデバイスの統合記憶手段に保存することができる。これにより、医療従事者は患者のバイタルサインを長期間にわたってモニタし、アラートがいつ発生したかや、対応の速度をモニタすることができる。
【0074】
モニタリングデバイスはさらに、外部デバイスと通信するための無線インタフェース(例えば、Bluetooth(登録商標)インタフェース)を含むことができる。外部デバイスには、たとえば、携帯電話、ラップトップ、デスクトップコンピュータ、タブレットなどがある。外部デバイスを使用して、(例えば、医療従事者が必ずしも所有しているとは限らない、高いレベルの権限を持つユーザによって)前述の予め定義された範囲としきい値をカスタマイズできる。単一の外部機器が複数のモニタリングデバイスと通信できる場合があり、複数の患者を同時にモニタしている場合に有用である。無線インタフェースは、1つ以上のバイタルサインおよび/またはアラートの履歴を外部デバイスに送信するために使用することもできる。
【0075】
モニタリングデバイスは、1つ以上のバイタルサインおよび/またはアラートの履歴を、Wi-Fiまたは3G/4G/5Gネットワークを介して遠隔ストレージサーバに送信することもできる。遠隔ストレージサーバは、複数のモニタリングデバイスから同時にデータを受信できる。これにより、多数のモニタリングデバイスから完全なデータベースを形成し、中央の場所から遠隔モニタリングを行うことができる。遠隔ストレージサーバは、中央の場所でモニタされる場合がある。たとえば、野戦病院や軍事作戦の場合、すべての患者と同時に手を合わせることができない最も近い医師や看護師の場所にある場合がある。
【0076】
モニタリングデバイスは、1つ以上のバイタルサインやアラートの履歴を遠隔ストレージサーバに直接送信するのではなく、外部デバイスにデータを送信することがあり、外部デバイスはデータを遠隔ストレージサーバに中継することがある。
【0077】
第2の態様から見ると、モニタリングデバイスを用いて患者の1つ以上のバイタルサインをモニタする方法が提供され、モニタリングデバイスは、1つ以上のバイタルサインをモニタするための光学ユニットと、1つ以上のバイタルサインをモニタするための音響ユニットを含み、この方法は、モニタリングデバイスを患者の首に取り付けることを含む。1つ以上のバイタルサインをモニタする。
【0078】
この方法では、医療従事者による継続的な再評価を必要とせずに、患者の気道開通性、呼吸数、脈拍数、血中酸素飽和度をモニタすることができる。
【0079】
1つ以上のバイタルサインは、予め決められたサンプリングレートで測定を行うことによってモニタすることができる。音響ユニットと光学ユニットでサンプリングレートが同じ場合もあれば、それぞれでサンプリングレートが異なる場合もある。所定のサンプリングレートは、毎秒5から50回の測定、例えば毎秒10から30回の測定、任意で毎秒約20回の測定とすることができる。
【0080】
この方法は、所定の測定時間間隔(例えば、10秒から20秒)からのデータを用いて、所定の間隔(例えば1~5秒)でローリングベースで、1つ以上のバイタルサインの値を再計算することを含むことができる。これらの値は、バイタルサインによって同じ場合と異なる場合がある。
【0081】
例えば、5秒ごとに、直前の20秒間に取得したデータに基づいて呼吸数の値を再計算する方法が考えられる。脈拍数は呼吸数よりも頻度が高いため、脈拍数は呼吸数と比較して、より頻繁に、より少ない時間で取得されたデータに基づいて更新される場合がある。したがって、たとえば、この方法では、直前の10秒間に取得されたデータに基づいて、1秒ごとに脈拍数の値を再計算できる。
【0082】
前述のように、血中酸素飽和度を測定するために、光学センサは2つ以上の波長の光で反射率を測定する場合がある。そのため、血中酸素飽和度の測定には、さまざまな波長の光のシーケンスを適用し、そのシーケンス中の反射率を測定してから、各シーケンスの最後に血中酸素飽和度の更新値を計算することが含まれる場合がある。
【0083】
この方法は、バイタルサインの測定値がデバイスに表示される前に、最初の期間バイタルサインをモニタすることを含むことができる。これにより、測定値を表示する前に、バイタルサインの正確な測定値が得られるという利点がある。
【0084】
この方法は、1つ以上のバイタルサインが予め定義された許容範囲内にあるか、または範囲外にあるかを判断することを含むことができる。
【0085】
1つ以上のバイタルサインがそれぞれの予め定義された範囲外にある場合、タイマを開始することができる。バイタルサインが予め設定された制限時間内に許容範囲内に戻らない場合、その方法はアラートを発行することを含み、そのアラートは聴覚アラートおよび/または視覚アラートであってもよい。これにより、患者が気道開通性の喪失の兆候を示した時点で医療従事者にアラートが出され、患者は即座に注意を受けることができる。聴覚アラートを使用するということは、医療従事者がモニタリングデバイスを直接モニタする必要はなく、聴覚アラートを聞くことができるように近くにいるだけでよいということである。聴覚アラートはアラームの場合もある。
【0086】
視覚アラートは、軍事環境など、聴覚アラートが適さない状況で有益である。
【0087】
血中酸素飽和度の許容範囲は、例えば90%から100%である。血中酸素飽和度がこの範囲を超えた場合はタイマを開始し、あらかじめ設定した制限時間(例えば15秒)内に血中酸素飽和度が許容範囲に戻らない場合は、アラートを発することがある。
【0088】
脈拍数の許容範囲は、例えば50から120拍/分である。脈拍数がこの範囲を超えた場合、タイマが開始され、あらかじめ設定された制限時間(例えば15秒)内に脈拍数が許容範囲に戻らない場合は、アラートが発行されることがある。
【0089】
呼吸数の許容範囲は、例えば毎分8から27呼吸である。呼吸数がこの範囲を超えた場合はタイマが起動し、あらかじめ設定した制限時間(例えば15秒)内に呼吸数が許容範囲に戻らない場合は、アラートが出されることがある。
【0090】
この方法は、音響センサと光学センサのそれぞれによって測定される1つ以上のバイタルサイン(例えば、呼吸数や脈拍数など)の発散をモニタすることをさらに含んでもよい。
【0091】
音響センサと光学センサのそれぞれでモニタされている1つ以上のバイタルサインがしきい値を超えて発散した場合、タイマが開始されることがある。光学センサと音響センサによって記録されたバイタルサイン間の発散が予め設定された制限時間内にしきい値未満に低下しない場合、この方法はさらにアラートを発することを含む場合がある。上記のように、アラートは聴覚アラートまたは視覚アラートである場合がある。
【0092】
呼吸数の許容される発散は、例えば1分間に3回の呼吸である。光学センサと音響センサで測定した値がこれ以上乖離した場合、タイマが起動することがある。予め設定された制限時間(例えば1分)内に発散がしきい値を下回らない場合は、アラートが発行されることがある。
【0093】
呼吸数の許容される発散は、例えば1分間に3回の呼吸である。光学センサと音響センサで測定した値がこれ以上乖離した場合、タイマが起動することがある。予め設定された制限時間(例えば1分)内に発散がしきい値を下回らない場合は、アラートが発行されることがある。
【0094】
脈拍数の許容される発散は、例えば12拍/分である。光学センサと音響センサで測定した値がこれ以上乖離した場合、タイマが起動することがある。予め設定された制限時間(例えば30秒)内に発散がしきい値を下回らない場合は、アラートが発行されることがある。
【0095】
このシステムは、いずれかのセンサに障害がある場合に医療従事者に通知されるが、小さなエラーや不一致はアラートを出さずに無視できることを意味する。
【0096】
2つの異なるセンサを使用すると、1つ以上のバイタルサインをモニタする方法の信頼性が向上する。これは、1つのセンサのエラーが他のセンサで測定された値と大きく異なる場合に検出されるためである。センサを1つだけ使用した場合、手動で気道を評価しなければ、センサが正しい結果を表示しているかどうかを判断することはできない。
【0097】
この方法は、バイタルサインの測定値の変化率、例えば時間に関するそれらの一次微分をモニタすることを含むことができる。この方法は、時間に関するバイタルサインの測定値の変化率が(変化率の正および負の値を含む)予め設定された許容範囲の外にある場合、またはそれぞれの予め設定された期間について予め設定された制限を超える場合にアラートを発することを含むことができる。脈拍数および呼吸数については、所定の範囲は、変化率の負の値から正の値までの範囲であってもよい。すなわち、バイタルサインの減少値または増加値の両方が所定の範囲外であれば、アラートがトリガされる。血中酸素飽和度については、低下のみが懸念される場合があるので、予め設定された期間よりも長い間、所定の制限よりも大きい絶対値(モジュラス)を有する負の変化率に対してアラートが発せられる場合がある。
【0098】
バイタルサインの測定値の変化率が所定の許容範囲外、または所定の制限を超えたときにタイマを開始することができる。
【0099】
たとえば、患者の呼吸数が±30%を超えて変化した場合(任意ではあるが、10分間この範囲外のままの場合)、アラートが発行されることがある。
【0100】
たとえば、患者の脈拍数が±40%を超えて変化した場合(任意ではあるが、10分間この範囲外のままの場合)、アラートが発行されることがある。
【0101】
たとえば、患者の血中酸素濃度が5%を超えて低下した場合(任意ではあるが、10分間この制限を超えたままの場合)、アラートが発行されることがある。
【0102】
この方法は、気道開通性の減少または喪失のモニタリングを含むことができる。いびき、喘鳴、ガタガタ音が1つ以上検出された場合、タイマを開始し、所定の時間、いびき、喘鳴、ガタガタ音が続いた場合にアラートを発することがある。
【0103】
気道が完全に閉塞している場合は、呼吸数が0に低下したことを検出することで、気道開通性の低下を判断することができる。呼吸数が0に低下した場合、タイマが開始され、設定された時間(通常は約20秒)後にアラートが発行されることがある。
【0104】
この方法は、1つ以上のバイタルサイン、バイタルサインの変化率、2つのセンサの両方によって測定されたバイタルサインの発散、またはこれらのそれぞれについてのそれぞれの期間について、1つ以上のカスタマイズされた許容範囲を設定することを含むことができる。これらは、一定の高いレベルの権限を持つユーザによってのみ設定される場合があり、たとえば、医療従事者自身によって設定されない場合がある。
【0105】
第2の態様による方法は、第1の態様に関連する特徴のいずれかをさらに構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0106】
ここでは、特定の好ましい実施形態について、以下に示す添付図面を参照して、例のみによってより詳細に説明する。
【0107】
【
図1】
図1は、2つのセンサからなるモニタリングデバイスの概略図である。
【
図2】
図2はディスプレイを含むモニタリングデバイスの透視図である。
【
図3】
図3は患者に装着されたモニタリングデバイスを示している。
【
図4A】
図4Aはモニタリングデバイスを取り付けるための粘着性のパッドを示している。
【
図4B】
図4Bは、モニタリングデバイスの背面に貼られている粘着性のパッドを示している。
【
図5】
図5は、遠隔サーバと対話する2つのセンサで構成されるモニタリングデバイスの概略図を示している。
【
図6】
図6は、モニタリングデバイスの使用方法を示している。
【発明を実施するための形態】
【0108】
図1は、患者のバイタルサインをモニタするために使用され、患者の呼吸数、脈拍数、血中酸素飽和度および気道開通性を継続的にモニタするモニタリングデバイス1を示している。
【0109】
モニタリングデバイスは、第1のセンサ10と第2のセンサ20から構成され、どちらもプロセッサ100と相互作用する。プロセッサ100は、第1のセンサ10と第2のセンサ20からの読み取り値を解釈し、その結果を記憶手段50に格納することができる。記憶手段50はまた、各バイタルサイン測定値の予め定義された範囲、バイタルサイン測定値の変化率の許容範囲/限界、二つの異なるセンサからの同じバイタルサインの測定値が発散する可能性のある量、およびこれらのそれぞれに適用される時間を記憶する。
【0110】
第1のセンサ10は光学センサであり、この場合は反射パルスオキシメータセンサである。
【0111】
技術的に知られているように、反射パルスオキシメータ10は、酸素が豊富な血液は酸素の少ない血液とは異なる波長の光を吸収するという原理で動作し、血液中の酸素飽和度を光学的に測定することができる。血中酸素飽和度を測定するために、光学センサは2つ以上の波長の光の反射率を測定する。第1波長は酸素化ヘモグロビンと脱酸素化ヘモグロビンの光吸収が同じ波長であり、第2波長は酸素化ヘモグロビンと脱酸素化ヘモグロビンの光吸収に大きな差がある波長である。
【0112】
また、反射パルスオキシメータ10を使用して脈拍数を測定することもできる。パルスレートを測定するには、単一波長の光の反射率の測定で十分である。心臓が鼓動すると、血液は心臓の鼓動と同じ周波数で動脈を脈動する。この脈動は実質的に動脈内の血液量が変化していることを意味する。体積の変化によって血液に吸収される光の量、つまり反射される光の量が変化する。したがって、パルスレートの推定は、反射光の時間依存的な変動を測定することによって得ることができる。
【0113】
また、反射パルスオキシメータで得られる光電脈波波形に呼吸活動が影響するため、反射パルスオキシメータから呼吸数情報を抽出することも可能である。この波形の小さな変化は、プロセッサ100によって分析され、機械学習アルゴリズムを使用して、その変化を呼吸速度の決定に使用することができる。呼吸数を決定するために、他の様々な種類の信号処理手段を使用できることは理解されるだろう。例えば、高度なフィルタリング技術は、ニューラルネットワークだけでなく信号の分解も可能にする変換を行う。詳細は、「ウェアラブル反射パルスオキシメータセンサからの呼吸数情報の抽出」、W.S.Johnston、Y.Mendelson、Department of Biomedical Engineering and the Bioengineering Institute、Worcester Polytechnic Institute、2004年9月に開示されている。
【0114】
反射パルスオキシメータが必要な測定を行えるようにするため、モニタリングデバイスは、それぞれ異なる波長範囲の光を放射するように構成された2つのLED(図示せず)で構成されている。最初のLEDは805nmに波長のピークを持つ光を放ち、2番目のLEDは660nmに波長のピークを持つ光を放つ。
【0115】
第2のセンサ20は、マイクロフォンまたは圧電センサからなる音響センサで構成される。音響センサ20は気道をモニタし、呼吸数と脈拍数の値を提供することができ、これは光学センサ10からの同じ測定値と比較するための第2の推定値として使用することができる。音響センサ20はまた、気道が健康で閉塞していないか、部分的に閉塞しているか完全に閉塞しているかなど、気道開通性の評価を提供する。
【0116】
気道が部分的に閉塞している場合の呼吸音は、気道が開放されている場合の呼吸音とは異なる。気道開通性が低下すると、気道を通過する空気の通常のささやきの音が小さくなり、喘鳴、ガタガタ、いびきのような他の音が聞こえることがある。そのため、(通常の呼吸音に比べて)比較的大きな音や、いびき、喘鳴、ガタガタという音を繰り返すことで、気道が侵されている可能性があることを示している場合がある。
【0117】
気道が完全に閉塞している場合は、呼吸数が0に低下していることを検出することで、気道開通性が失われていることを示す。
【0118】
プロセッサ100は、データ取得モジュール、信号処理モジュール、データ分析モジュールから構成される。
【0119】
データ取得モジュールは、光学センサ10と音響センサ20からの信号を受信する。
【0120】
その後、信号処理モジュールはデジタル信号をフィルタリングし、ノイズを除去する。その後、処理された信号はデータ分析モジュールに転送される。
【0121】
プロセッサ100のデータ分析モジュールは、各センサからの測定値を分析し、第1および第2のセンサ10、20の両方の呼吸速度と脈拍数の値を提供することができるだけでなく、光学センサ10からの血中酸素飽和度と音響センサ20からの気道開通性も提供することができる。
【0122】
プロセッサ100は、その後、モニタリングデバイス1のディスプレイ5に、ケア提供者が閲覧するデータを表示させることができ、また、測定データをモニタリングデバイス1内の統合記憶手段50に保存することもできる。
【0123】
モニタリングデバイス1の透視図を
図2から
図4に示す。
図2に示すように、モニタリングデバイス1は、第1のセンサ10と第2のセンサ20からの読み取り値を表示するディスプレイ5を備えている。ディスプレイ5には、第1のセンサ10と第2のセンサ20の両方で測定した呼吸数が表示される。
【0124】
呼吸速度の音響センサ測定値200は、前述のように音響センサ20を使用してプロセッサ100によって決定される。ディスプレイ上では、呼吸速度の光学センサ測定値300が音響測定センサの読み取り値200に隣接して提供され、光学センサ10を使用してプロセッサ100によって決定される。
【0125】
ディスプレイ5は、前述のように光学センサ10を使用してプロセッサ100によって決定される血中酸素飽和度400の測定値も提供する。ディスプレイ5はまた、光学センサ10と音響センサ20の両方を使用してプロセッサ100によって決定できるパルスレート500を表示することができる。通常、光学センサ10は脈拍数500の一次読み取り値を提供し、音響センサ20は二次推定値を提供する(また、光学センサ10に異常が発生した場合は、クロスチェックを行う。)。
【0126】
モニタリングデバイス1は、ケア提供者に警告するための、聴覚アラーム120とビジュアルインジケータライト140とから構成される。聴覚アラーム120とビジュアルインジケータライト140は、デバイスが調整されたこと、患者のバイタルサインが予め定義された許容値の範囲外にあること、バイタルサインの変化率が予め定義された許容範囲外にあること、各センサからの測定値が大幅に乖離している(乖離が予め定義されたしきい値を超えている)ことを示すなど、さまざまな異なるアラートに使用できる。聴覚アラーム120は、例えば軍事環境などの特定の状況では非活性化することができる。
【0127】
何らかのアラートが発生した場合、プロセッサはどのアラートが発生したかの表示と時刻をモニタリングデバイス1内の統合記憶手段50に格納する。
【0128】
また、モニタリングデバイス1の電池残量が少なくなると、聴覚アラーム120またはビジュアルインジケータライト140が点灯する。
【0129】
図3は患者の首190に取り付けられたモニタリングデバイス1を示している。首に装着することで、モニタリングデバイス1を患者に簡単に装着することができ、呼吸数、脈拍数、血中酸素飽和度、気道開通性を継続的にモニタすることができる。さらに、モニタリングデバイス1を首190に配置することで、従来のモニタリングデバイスよりも正確でタイムリーな測定が可能となる。
【0130】
モニタリングデバイス1は、
図4Aおよび
図4Bに示すように、使い捨ての粘着性のパッド180を使用して首190に取り付けられる。パッド180には取り外し可能な保護カバー185が設けられており、これを取り外すと接着面が現れるため、患者の首190にモニタリングデバイス1を置くことができる。
【0131】
モニタリングデバイスには、使い捨ての粘着性のパッド180に加えて、モニタリングデバイス1の両側にある取り付けポイント160に取り付ける、非絞扼性のストラップまたはバンド165を設けることもできる。モニタリングデバイス1は通常、粘着性のパッド180のみを使用して取り付けられるが、粘着性のパッド180が不十分な場合はストラップ165を使用してモニタリングデバイス1を固定することができる。ストラップ165は、患者が搬送されている状況や、モニタリングデバイス1が首190から落ちる可能性のある方法で治療する必要がある状況でも使用できる。
【0132】
モニタリングデバイス1は、絆創膏と同様に、粘着性のパッド180を首190から引き離すことで、取り外すことができる。その後、モニタリングデバイス1の表面を清掃し、新しい粘着性のパッド180を貼り付け、モニタリングデバイス1を再利用する準備が整う。
【0133】
図5は、遠隔ストレージサーバ30および/または外部デバイス40と対話できるモニタリングデバイス1のさらなる概略図を示している。プロセッサ100によって記録された測定値とアラートは、統合記憶手段50に転送されるだけでなく、ワイヤレスネットワークインターフェイスを介して遠隔ストレージサーバ30にも転送される。複数のモニタリングデバイス1を遠隔ストレージサーバ30に接続することができるため、複数の患者を同時にモニタする医療従事者にとって特に有用である。
【0134】
モニタリングデバイス1はさらに、携帯電話やコンピュータなどの外部デバイス40との通信を可能にするBluetoothインタフェース60を備えている。外部デバイス40は、モニタリングデバイス1からの測定をモニタするために使用でき、プロセッサ100によって発行されたアラートは、外部デバイス40で発行することができる。
【0135】
また、外部デバイス40は、患者のバイタルサインに対して予め定義された許容範囲、バイタルサインの変化率に対して予め定義された許容範囲、両センサで測定されたバイタルサインの測定値の発散を許容する閾値をカスタマイズするなど、モニタリングデバイス1を制御することもできる。
【0136】
また、外部デバイス40はモニタリングデバイス1の電池寿命をモニタし、それに応じて警報を発することができる。
【0137】
外部デバイス40は、複数のモニタリングデバイス1に同時に接続することができる。プロセッサによって記録された測定およびアラートは、Bluetoothインタフェース60を介して外部デバイス40に直接送信することができる。
【0138】
外部デバイス40は、無線ネットワークインターフェースを介して遠隔ストレージサーバ30に接続し、プロセッサ100が記録した複数のモニタリングデバイス1のデータにアクセスすることもできる。これにより、複数のモニタリングデバイス1の結果を同時にモニタすることができる。
【0139】
図6は、モニタリングデバイス1を使用して患者の気道をモニタリングする方法を示している。ステップ610で、粘着性のパッド180と、必要に応じてストラップ165を使用して、デバイスを患者の首190に非侵襲的に配置する。
【0140】
デバイスが作動すると、ステップ620で(例えば、センサの信号を内部または外部の基準と比較し、必要に応じて調整することによって)自己較正を行い、プロセッサ100は第1のセンサ10と第2のセンサ20からの信号の処理を開始する。モニタリングデバイス1は、プロセッサ100への信号が適切な場合にアラートを出し、患者のバイタルサインの自動モニタリングが開始される。警報は、聴覚アラーム120またはビジュアルインジケータライト140のいずれかによって提供される。
【0141】
モニタリングデバイス1は、バイタルサインをモニタし続け(ステップ630)、患者の気道、呼吸数、脈拍数、血中酸素飽和度を、常時注視しつつ手動で再評価する、という必要なく、医療従事者が確認できるように測定値200、300、400、500をディスプレイに表示する。
【0142】
プロセッサ100は、第1のセンサ10と第2のセンサ20からの信号を連続的に処理する。データは統合記憶手段50に格納され、無線ネットワークインターフェースを介して外部デバイス40および/または遠隔ストレージサーバ30に送信される。データはディスプレイ5を直接見るか、パソコンやタブレット、携帯電話などの外部デバイス40でデータを見ることでモニタすることができる。後者は、例えば複数の場所で複数の患者がモニタされている場合に有用である。
【0143】
ステップ640で、プロセッサ100はバイタルサインを継続的にモニタし、それらがそれぞれの予め定義された範囲内にあるかどうかを判断する。それらが予め定義された範囲内にある場合、プロセッサ100はバイタルサインを通常どおりモニタし続ける。
【0144】
第1および第2のセンサ10、20によってモニタされる測定値200、300、400、500の一つ以上が予め定義された範囲外である場合、これは患者の気道が閉塞されている可能性があるか、または呼吸が停止していることを示している可能性がある。一つ以上のバイタルサインが予め定義された範囲外である場合、タイマが開始される(ステップ642)。ステップ644では、あらかじめ設定された制限時間内にバイタルサインが許容範囲内に戻るかどうかを判定する。バイタルサインが予め設定された制限時間内に許容範囲内に戻らない場合、プロセッサはステップ646で、聴覚アラーム120またはビジュアルインジケータライト140の一方または両方を介してアラートを開始する。どのアラート方法を選択するかは環境によって異なる。たとえば、軍事用途では、聴覚アラートは望ましくない場合があるため、無効にすることができる。外部デバイス40でもアラートが発行される場合がある。設定した制限時間内にバイタルサインが許容範囲内に戻ると、タイマは0にリセットされる(ステップ648)。
【0145】
血中酸素飽和度が90%から100%の範囲を超え、15秒以内にこの範囲に戻らない場合、アラートが出される。脈拍数が50から120拍/分を超え、15秒以内にこの許容範囲に戻らない場合は、アラートが発行される。呼吸数が1分間に8回から27回の範囲を超え、15秒以内にこの範囲に戻らない場合、アラートが発行される。
【0146】
ステップ660で、プロセッサ100は、同じバイタルサインについて、第1のセンサ10と第2のセンサ20によって測定された値の間に不一致があるかどうかも継続的にモニタする(すなわち、第1のセンサ10と第2のセンサ20で測定した脈拍数を比較することができ、第1のセンサ10と第2のセンサ20で測定した呼吸数を比較することができる。)。通常の操作では、2つのセンサで測定された呼吸数と脈拍数の値が同じ(または相互に所定の範囲内)である必要があり、両方のセンサが正常に動作していることを示す。
【0147】
第1のセンサ10と第2のセンサ20で記録された呼吸数と脈拍数の値が異なる場合、いずれかのセンサに関連するエラーを示している可能性がある。ステップ662で、プロセッサ100は、(脈拍数と呼吸数の)第1および第2のセンサのそれぞれからの測定値の差が、予め定義された閾値を下回っているかどうかを判断する。その場合、モニタリングデバイスは動作を継続することが許可される。予め定義されたしきい値は、デバイスに予めプログラムすることも、(医療従事者が所有しているとは限らない、高いレベルの権限を持つユーザによって、)Bluetoothインタフェース60を介して外部デバイス40を使用してカスタマイズすることもできる。
【0148】
第1と第2のセンサ10、20からの測定値の差があらかじめ設定された閾値を超えるとタイマが起動し(ステップ664)、第1のセンサ10と第2のセンサ20で記録されたバイタルサインの発散があらかじめ設定された制限時間内に閾値以下に戻るかどうかを判定する(ステップ666)。第1のセンサ10と第2のセンサ20によって記録されたバイタルサインの発散が予め設定された制限時間内にしきい値未満に戻らない場合、ステップ668で、聴覚アラーム120またはビジュアルインジケータライト140のいずれかを使用してアラートが発行される。これにより、近くの介護福祉士にモニタリングデバイス1が故障していることが通知され、交換できるようになる。予め設定された制限時間内にダイバージェンスの低下がしきい値を下回ると、タイマは0にリセットされる(ステップ670)。
【0149】
呼吸数の許容発散は1分間に3回である。第1のセンサ10と第2のセンサ20の測定値がこれ以上乖離した場合、タイマが開始される。分岐が1分以内にしきい値を下回らない場合は、アラートが発行される。
【0150】
脈拍数の許容発散は12拍/分である。第1のセンサ10と第2のセンサ20の測定値がこれ以上乖離した場合、タイマが開始される。30秒以内に発散がしきい値を下回らない場合は、アラートが発行される。
【0151】
この方法は、センサによって記録された一つ以上のバイタルサインの時間に対する変化率をモニタするステップ680をさらに含む。1つ以上のバイタルサインはほぼ一定のレベルを維持し、それぞれの変化率はそれぞれの予め決められた範囲内でなければならない。
【0152】
プロセッサ100は、ステップ682で、バイタルサインの変化率がそれぞれ(変化率の正と負の値を含む)予め決定された許容範囲内にあるか、または予め決定された制限を超えているかを判断する。一つ以上のバイタルサインの変化率が所定の許容範囲外、または所定の限度を超えた場合、タイマを開始する(ステップ684)。ステップ686では、一つ以上のバイタルサインの変化率が、それぞれ予め設定された時間内に、予め設定された許容範囲/限界値に戻るかどうかを判断する。そうでない場合は、ステップ688でアラートが発行される。それ以外の場合、タイマは0にリセットされる(ステップ690)。
【0153】
患者の呼吸数が±30%を超えて変化した場合(及び、10分間この範囲外の状態のままの場合)、アラートが発行される。
【0154】
患者の脈拍数が±40%を超えて変化した場合(及び、10分間この範囲外の状態のままの場合)、アラートが発行される。
【0155】
患者の血中酸素濃度が5%を超えて低下した場合(及び、10分間この制限値を超えている場合)、アラートが発行される。
【0156】
この方法はまた、気道開通性の減少または喪失を検出することを含む。いびき、喘鳴、ガタガタ音の一つ以上を検知するとタイマが起動し、所定の時間(5分から10分)いびき、喘鳴、ガタガタ音が続くとアラートが発せられることがある。所定時間内に(呼吸が正常に戻って)いびき、喘鳴、ガタガタ音が止まれば、タイマは0にリセットされる。
【0157】
気道が完全に閉塞している場合は、呼吸数が0に低下したことを検出することで、気道開通性の低下を判断する。呼吸数が0になるとタイマが起動し、20秒後にアラートが出される。
【0158】
モニタリングデバイス1を使用する上記の方法は、呼吸不全のより決定的かつ早期の警告を提供する。
【0159】
モニタリングデバイス1は、病院や救急医療の分野で多くの用途がある。複数の死傷者が出た事故では、事故現場と搬送時の両方で、同時にトリアージ、治療、患者の頻繁なチェックが必要となる。モニタリングデバイス1は、患者の気道、呼吸数、脈拍数、血中酸素飽和度を継続的にモニタリングしながら、近くの介護職員が他の作業や患者に対応できるようにする。モニタリングデバイス1はコンパクトであるため、患者が病院に搬送されているときや、病院内で患者が移動しているとき、特に患者が鎮静剤を投与されているときにモニタすることができる。
【0160】
救急救命士などの救急隊員は、他の多くの作業に対応しながらモニタリングデバイス1を使用することができる。モニタリングデバイス1を取り付けることで、救急隊員がすぐに他の緊急作業を開始できるようにするための時間はほとんど必要ない。さらに、必要に応じてモニタリングデバイス1によってアラートがトリガされるため、救急隊員が患者の気道を常に手動で再評価する必要はない。
【0161】
緊急事態の際には、病院が過剰になり、常設病院と同じレベルの設備を利用できない臨時の野戦病院が必要になることがある。このような状況では、モニタリングデバイス1を用いることで、比較的容易に多数の患者を同時にモニタすることができる。
【0162】
モニタリングデバイス1は、専門の介護福祉士を必要としないため、在宅モニタリングにも利用できる。
【国際調査報告】