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特表2024-502215ナノ粒子膜、ナノ粒子膜の製造方法及び表示パネル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-18
(54)【発明の名称】ナノ粒子膜、ナノ粒子膜の製造方法及び表示パネル
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/20 20060101AFI20240111BHJP
   H10K 50/115 20230101ALI20240111BHJP
   H05B 33/14 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
G02B5/20
H10K50/115
H05B33/14 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021577692
(86)(22)【出願日】2021-12-17
(85)【翻訳文提出日】2022-02-10
(86)【国際出願番号】 CN2021139294
(87)【国際公開番号】W WO2023103054
(87)【国際公開日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】202111505322.8
(32)【優先日】2021-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519182202
【氏名又は名称】深▲セン▼市▲華▼星光▲電▼半▲導▼体▲顕▼示技▲術▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】趙 金陽
(72)【発明者】
【氏名】陳 黎暄
(72)【発明者】
【氏名】石 志清
【テーマコード(参考)】
2H148
3K107
【Fターム(参考)】
2H148AA05
2H148AA07
2H148AA09
2H148AA18
2H148AA27
3K107AA05
3K107BB01
3K107CC45
3K107DD57
3K107FF14
(57)【要約】
本発明は、ナノ粒子膜、ナノ粒子膜の製造方法及び表示パネルを提供する。ナノ粒子膜の製造方法は、溶媒と、前記溶媒中に分散しているナノ粒子とを含むナノ粒子溶液を提供するステップであって、前記ナノ粒子の表面に界面活性剤配位子が結合しているステップと;前記ナノ粒子溶液を電着によりナノ粒子膜に形成するステップと、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒と、前記溶媒中に分散しているナノ粒子とを含むナノ粒子溶液を提供するステップであって、前記ナノ粒子の表面に界面活性剤配位子が結合しているステップと;
前記ナノ粒子溶液を電着によりナノ粒子膜に形成するステップと、を含むナノ粒子膜の製造方法。
【請求項2】
前記溶媒が非極性溶媒であり、前記界面活性剤配位子の濃度が臨界ミセル濃度よりも大きい請求項1に記載のナノ粒子膜の製造方法。
【請求項3】
前記界面活性剤配位子の前記ナノ粒子に対する質量比が1%~50%である請求項2に記載のナノ粒子膜の製造方法。
【請求項4】
前記ナノ粒子溶液を電着によりナノ粒子膜に形成する前記ステップは、
前記ナノ粒子溶液に入れる電極を提供することと、
前記ナノ粒子溶液を前記電極上に堆積させて前記ナノ粒子膜を形成するように、前記電極に50V~150Vの駆動電圧を印加することと、を含む請求項2に記載のナノ粒子膜の製造方法。
【請求項5】
前記溶媒が極性溶媒であり、前記界面活性剤配位子の前記ナノ粒子に対する質量比が1%~50%である請求項1に記載のナノ粒子膜の製造方法。
【請求項6】
前記界面活性剤配位子の前記ナノ粒子に対する質量比が1%~5%である請求項5に記載のナノ粒子膜の製造方法。
【請求項7】
前記ナノ粒子溶液を電着によりナノ粒子膜に形成する前記ステップは、
前記ナノ粒子溶液に入れる電極を提供することと、
前記ナノ粒子溶液を前記電極上に堆積させて前記ナノ粒子膜を形成するように、前記電極に1V~10Vの駆動電圧を印加することと、を含む請求項5に記載のナノ粒子膜の製造方法。
【請求項8】
前記ナノ粒子溶液を提供するステップは、
初期配位子が表面に結合している初期ナノ粒子を提供することと、
前記初期ナノ粒子を界面活性剤と混合して配位子交換反応させ、表面に界面活性剤配位子が結合しているナノ粒子を得ることと、
前記表面に界面活性剤配位子が結合しているナノ粒子を溶媒に溶解して、ナノ粒子溶液を形成することと、を含む請求項1に記載のナノ粒子膜の製造方法。
【請求項9】
前記ナノ粒子溶液を提供するステップは、
初期ナノ粒子と前記界面活性剤とを溶媒に溶解して、表面に界面活性剤配位子が結合しているナノ粒子を得て、ナノ粒子溶液を形成すること、を含む請求項1に記載のナノ粒子膜の製造方法。
【請求項10】
前記ナノ粒子が量子ドットである請求項1に記載のナノ粒子膜の製造方法。
【請求項11】
前記界面活性剤配位子が、有機スルホン酸塩系界面活性剤、金属石鹸系界面活性剤、有機アミン系界面活性剤、N-ビニルピロリドン重合体、有機リン酸塩系及びリン酸エステル系界面活性剤から選ばれる少なくとも1つである請求項1に記載のナノ粒子膜の製造方法。
【請求項12】
表面に界面活性剤配位子が結合しているナノ粒子を含むナノ粒子膜。
【請求項13】
前記界面活性剤配位子の前記ナノ粒子に対する質量比が1%~50%である請求項12に記載のナノ粒子膜。
【請求項14】
前記界面活性剤配位子の前記ナノ粒子に対する質量比が1%~5%である請求項12に記載のナノ粒子膜。
【請求項15】
前記ナノ粒子が量子ドットである請求項12に記載のナノ粒子膜。
【請求項16】
前記界面活性剤配位子が、有機スルホン酸塩系界面活性剤、金属石鹸系界面活性剤、有機アミン系界面活性剤、有機リン酸塩系及びリン酸エステル系界面活性剤から選ばれる少なくとも1つである請求項12に記載のナノ粒子膜。
【請求項17】
請求項12に記載のナノ粒子膜を含み、前記ナノ粒子が量子ドットである表示パネル。
【請求項18】
前記界面活性剤配位子の前記ナノ粒子に対する質量比が1%~50%である請求項17に記載の表示パネル。
【請求項19】
前記界面活性剤配位子の前記ナノ粒子に対する質量比が1%~5%である請求項17に記載の表示パネル。
【請求項20】
前記ナノ粒子が量子ドットである請求項17に記載の表示パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ材料の技術分野に関し、特にナノ粒子膜、ナノ粒子膜の製造方法及び表示パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
ナノ材料とは、構成単位のサイズが1ナノメートル~100ナノメートルにある材料を指す。そのサイズが電子のコヒーレンス長に近いため、強いコヒーレンスによる自己組織化が、ナノ材料の特性を大きく変化させる。また、ナノ材料のスケールは、光の波長に近いため、体積効果、表面効果、量子サイズ効果、マクロ量子トンネル効果などを有し、融点、磁気、光学、熱伝導、電気伝導特性などの点に独特の性質を有するため、多くの分野で重要な応用価値を有する。
【0003】
量子ドット(Quantum Dots,QDと略称する)は、典型的なナノ材料であり、小型、高エネルギー変換効率などの特徴を具備し、照明、表示技術、太陽電池、光スイッチ、センサ及び検出などの分野で非常に重要な応用が期待されている。さらに、量子ドットは、高輝度、狭出射角、発光色の調整可能、安定化などの特性をさらに有し、表示技術分野における超薄型、高輝度、高色域、高色飽和の発展傾向によく合致しているため、近年、最も潜在力のある表示技術の新しい材料となっている。
【0004】
量子ドットなどのナノ材料のパターニング技術の開発は、発光ダイオード(light-emitting diode,LED)、表示技術、太陽電池、光スイッチ、センサ及び検出などの分野での応用に重要な価値を有する。現在、量子ドットのパターニング技術は主にインクジェット印刷及びフォトリソグラフィを有し、フォトリソグラフィ工程において、高温加熱、紫外線硬化、及び現像液のリンスがいずれもナノ粒子の安定性に影響を与え、印刷工程において、印刷インクに対する要求性能が高すぎ、現在のところ、成熟して安定した量産材料系を有しておらず、また、インクジェット印刷する量子ドットの再現性が悪く、製造時間が長い。上記の欠点は、いずれも量子ドットの開発及び応用を大きく制限する。従来の量子ドットのパターニング技術として、電着法を利用して量子ドットパターニング薄膜を加工することが知られているが、市販されている量子ドットの帯電量が低いため、電着するのに必要な駆動電圧が高くなり、さらなる応用が制限されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これに鑑みて、本発明は、ナノ粒子の帯電量を高めて、ナノ粒子膜を堆積させるのに必要な駆動電圧を低減することができるナノ粒子膜の製造方法及びナノ粒子膜を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
溶媒と、前記溶媒中に分散しているナノ粒子とを含むナノ粒子溶液を提供するステップであって、前記ナノ粒子の表面に界面活性剤配位子が結合しているステップと;
前記ナノ粒子溶液を電着によりナノ粒子膜に形成するステップと、を含むナノ粒子膜の製造方法を提供する。
【0007】
一実施形態において、前記溶媒が非極性溶媒であり、前記界面活性剤配位子の濃度が臨界ミセル濃度よりも大きい。
【0008】
一実施形態において、前記界面活性剤配位子の前記ナノ粒子に対する質量比が1%~50%である。
【0009】
一実施形態において、前記ナノ粒子溶液を電着によりナノ粒子膜に形成する前記ステップは、
前記ナノ粒子溶液に入れる電極を提供することと、
前記ナノ粒子溶液を前記電極上に堆積させて前記ナノ粒子膜を形成するように、前記電極に50V~150Vの駆動電圧を印加することと、を含む。
【0010】
一実施形態において、前記溶媒が極性溶媒であり、前記界面活性剤配位子の前記ナノ粒子に対する質量比が1%~50%である。
【0011】
一実施形態において、前記界面活性剤配位子の前記ナノ粒子に対する質量比が1%~5%である。
【0012】
一実施形態において、前記ナノ粒子溶液を電着によりナノ粒子膜に形成する前記ステップは、
前記ナノ粒子溶液に入れる電極を提供することと、
前記ナノ粒子溶液を前記電極上に堆積させて前記ナノ粒子膜を形成するように、前記電極に1V~10Vの駆動電圧を印加することと、を含む。
【0013】
一実施形態において、前記ナノ粒子溶液を提供するステップは、
初期配位子が表面に結合している初期ナノ粒子を提供することと、
前記初期ナノ粒子を界面活性剤と混合して配位子交換反応させ、表面に界面活性剤配位子が結合しているナノ粒子を得ることと、
前記表面に界面活性剤配位子が結合しているナノ粒子を溶媒に溶解して、ナノ粒子溶液を形成することと、を含む。
【0014】
一実施形態において、前記ナノ粒子溶液を提供するステップは、
前記初期ナノ粒子と前記界面活性剤とを溶媒に溶解して、表面に界面活性剤配位子が結合しているナノ粒子を得て、ナノ粒子溶液を形成すること、を含む。
【0015】
一実施形態において、前記ナノ粒子が量子ドットである。
【0016】
一実施形態において、前記界面活性剤配位子が、有機スルホン酸塩系界面活性剤、金属石鹸系界面活性剤、有機アミン系界面活性剤、有機リン酸塩系及びリン酸エステル系界面活性剤から選ばれる少なくとも1つである。
【0017】
本発明は、表面に界面活性剤配位子が結合しているナノ粒子を含むナノ粒子膜をさらに提供する。
【0018】
一実施形態において、前記界面活性剤配位子の前記ナノ粒子に対する質量比が1%~50%である。
【0019】
一実施形態において、前記界面活性剤配位子の前記ナノ粒子に対する質量比が1%~5%である。
【0020】
一実施形態において、前記ナノ粒子が量子ドットである。
【0021】
一実施形態において、前記界面活性剤配位子が、有機スルホン酸塩系界面活性剤、金属石鹸系界面活性剤、有機アミン系界面活性剤、有機リン酸塩系及びリン酸エステル系界面活性剤から選ばれる少なくとも1つである。
【0022】
本発明は、上記のいずれか一項に記載のナノ粒子膜を含む表示パネルをさらに提供し、前記ナノ粒子が量子ドットである。
【0023】
一実施形態の表示パネルにおいて、前記界面活性剤配位子の前記ナノ粒子に対する質量比が1%~50%である。
【0024】
一実施形態の表示パネルにおいて、前記界面活性剤配位子の前記ナノ粒子に対する質量比が1%~5%である。
【0025】
一実施形態の表示パネルにおいて、前記ナノ粒子が量子ドットである。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、界面活性剤配位子を用いてナノ粒子の表面を修飾し、界面活性剤配位子を溶媒中で電離させることにより、ナノ粒子の表面の帯電量を高め、ナノ粒子膜を電着させるのに必要な駆動電圧を低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
本発明における技術的手段をより明確に説明するために、以下の実施形態の説明で使用する必要がある図面を簡単に紹介し、以下の説明における図面は、本発明の幾つかの実施例に過ぎなく、当業者にとっては創造的努力なしにこれらの図面から他の図面を導き出すこともできることは明らかである。
図1図1は本発明のナノ粒子膜の製造方法のフローチャートである。
図2図2は本発明の第1実施形態のナノ粒子膜の製造方法のフローチャートである。
図3図3は本発明の第2実施形態のナノ粒子膜の製造方法のフローチャートである。
図4図4は本発明のナノ粒子膜の製造において、電圧を印加しない場合に、電極の概略図である。
図5図5は本発明のナノ粒子膜の製造において、電圧を印加した場合に、量子ドットを電極に堆積させる概略図である。
図6図6は本発明の表示パネルの第1実施形態の構造概略図である。
図7図7は本発明の表示パネルの第2実施形態の構造概略図である。
図8図8は本発明の表示パネルの第3実施形態の構造概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態における図面を参照しながら、本発明における技術的手段を、明確かつ完全に説明する。説明した実施形態はすべての実施形態ではなく、本発明の一部の実施形態であることは明らかである。本発明における実施形態に基づいて、当業者が創造的努力なしに取得したすべての他の実施形態は、いずれも本発明の保護範囲に属している。
【0029】
本発明において、別途明確な規定及び限定がない限り、第1特徴が第2特徴の「上」または「下」にあることは、第1特徴及び第2特徴が直接接続されていてもよいし、または第1特徴及び第2特徴が直接接続されておらず、それらの間の他の特徴を介して接触されていることを含んでいてもよい。さらに、第1特徴が第2特徴の「上」、「上方」及び「上面」にあることは、第1特徴が第2特徴の真上及び斜め上方にあることを含み、又は単に第1特徴の高さが第2特徴よりも高いことを示してもよい。第1特徴が第2特徴の「下」、「下方」及び「下面」にあることは、第1特徴が第2特徴の真下及び斜め下方にあることを含み、又は単に第1特徴の高さが第2特徴よりも低いことを示してもよい。また、「第1」、「第2」という用語は、単に説明するためのものであり、相対的な重要性を指示又は示唆するか、又は示される技術的特徴の数を暗示すると理解されるべきではない。したがって、「第一」、「第二」によって限定されている特徴は、1つ又は複数の特徴を含むことを明示又は暗示することができる。
【0030】
本発明は、ナノ粒子膜の製造方法を提供する。図1を参照されたく、ナノ粒子膜の製造方法はステップ101~ステップ102を含む。
【0031】
ステップ101:溶媒と、溶媒中に分散しているナノ粒子とを含むナノ粒子溶液を提供するステップであって、ナノ粒子の表面に界面活性剤配位子が結合している。
【0032】
ステップ101において、溶媒は極性溶媒であってもよいし、非極性溶媒であってもよい。後の揮発成膜を容易にするために、溶媒は無色透明の低沸点、易揮発性の有機溶媒又は無機溶媒であってもよい。
【0033】
ナノ粒子膜を製造するためのナノ粒子は、非金属無機ナノ粒子、金属ナノ粒子、コロイドナノシート、コロイドナノロッドなどのナノ粒子から選ばれてもよい。所望により、ナノ粒子が量子ドットであってもよい。本発明に係る量子ドットがコアシェル型量子ドットから選ばれてもよい。コアシェル型量子ドットの発光コアは、ZnCdSe、InP、CdSse、CdSe、CdSeTe、InAsの1つから選ばれてもよく、無機保護シェル層は、CdS、ZnSe、ZnCdS、ZnS、ZnOの少なくとも1つから選ばれてもよく、量子ドット材料は、例えば、ハイドロゲル担持量子ドット構造、CdSe-SiOなどの高安定性複合量子ドットから選ばれてもよく、ペロブスカイト量子ドットなどであってもよい。なお、本発明で使用される量子ドット材料が、上記のものに限定されるものではないことを理解されたい。以下、量子ドットを本発明のナノ粒子の例として説明するが、本発明のナノ粒子は量子ドットに限定されるものではない。
【0034】
界面活性剤としては、溶媒中で電離しやすいカチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、両性界面活性剤及び一部の非イオン性界面活性剤から選ばれてもよい。カチオン界面活性剤としては、1級アミン塩、2級アミン塩、3級アミン塩界面活性剤等のアミン塩型カチオン界面活性剤、4級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤、窒素含有モルフォリン環、ピリジン環、イミダゾール環、ピペラジン環及びキノリン環の複素環を含む複素環型カチオン界面活性剤、又はオニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム、オニウム化合物等のオニウム塩型カチオン界面活性剤であってもよい。具体的には、カチオン界面活性剤としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライド、ジアルキルジメチルアンモニウムクロライド、トリメチルドデシルアンモニウムクロライド、セチルピリジニウムクロライド又はブロマイド、ドデシルピリジニウムブロマイド、セチルピリジニウムクロライド、セチルピリジニウムブロマイド等であってもよい。
【0035】
アニオン界面活性剤としては、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩及びリン酸エステル塩の4種類を含む。カルボン酸塩型アニオン界面活性剤としては、高級脂肪酸のカリウム、ナトリウム、アンモニウム塩及びトリエタノールアンモニウム塩、例えば、アルカリ金属石鹸(一価石鹸)、アルカリ土類金属石鹸(二価石鹸)及び有機アミン石鹸(トリエタノールアミン石鹸)、コバルト、アルミニウム、鉄等の金属のナフトエ酸塩又はステアリン酸塩等の金属石鹸系界面活性剤等を含む。スルホン酸塩型アニオン界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、α-スルホモノカルボン酸エステル、脂肪酸スルホアルキルエステル、コハク酸エステルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、石油スルホン酸塩、リグニンスルホン酸塩、アルキルグリセリルエーテルスルホン酸塩等、例えば、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ジノニルナフタレンスルホン酸バリウム等の有機スルホン酸塩系界面活性剤を含む。硫酸エステル塩型アニオン界面活性剤としては、脂肪族アルコール硫酸エステル塩(第一級アルキル硫酸エステル塩ともいう)と第二級アルキル硫酸エステル塩との2種類を含む。アルキルリン酸エステル塩は、アルキルリン酸モノ、ジエステル塩を含むとともに、脂肪族アルコールポリオキシエチレンエーテルのリン酸モノ、ジエステル塩、アルキルフェノールポリオキシエチレンエーテルのリン酸モノ、ジエステル塩を含む。
【0036】
両性イオン界面活性剤としては、レシチン両性イオン界面活性剤、アミノ酸型両性イオン界面活性剤、ベタイン型両性イオン界面活性剤を含む。アミノ酸型両性イオン界面活性剤及びベタイン型両性イオン界面活性剤は、アニオン部が主としてカルボン酸塩であり、カチオン部が第4級アンモニウム塩又はアミン塩であり、アミン塩からなるものがアミノ酸型であり、第4級アンモニウム塩からなるものがベタイン型である。例えば、アミノ酸型両性イオン界面活性剤としては、オクタデシルジヒドロキシエチルアミンオキシド、オクタデシルアミドプロピルアミンオキシド、ラウラミドプロピルアミンオキシドを含む。ベタイン型両性イオン界面活性剤としては、ドデシルエトキシスルホベタイン、ドデシルヒドロキシプロピルスルホベタイン、ドデシルスルホプロピルベタイン、テトラデカンアミドプロピルヒドロキシプロピルスルホベタイン、デシルヒドロキシプロピルスルホベタインを含む。
【0037】
ノニオン性界面活性剤としては、N-ビニルピロリドン重合体(ポリビニルピロリドン)等であってもよい。
【0038】
所望により、いくつかの実施例において、界面活性剤としては、量子ドットとの結合力の強いドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ジノニルナフタレンスルホン酸バリウム等の有機スルホン酸塩系界面活性剤、コバルト、アルミニウム、鉄等の金属のナフタレン酸塩やステアリン酸塩等の金属石鹸系界面活性剤、オクタデシルジヒドロキシエチルアミンオキシド等の有機アミン系界面活性剤、N-ビニルピロリドン重合体、有機リン酸塩系及びリン酸エステル系界面活性剤の少なくとも1つが好ましい。
【0039】
本発明で使用される界面活性剤は、溶媒中で電離可能であり、量子ドットの表面と結合力を有する。量子ドットと界面活性剤との結合力を確保するために、所望により、量子ドットの表面が酸性基である場合に、塩基性界面活性剤を選択し、量子ドットの表面が塩基性基である場合に、酸性界面活性剤を選択する。なお、量子ドット表面には、界面活性剤配位子のみが含まれていてもよいし、その他の配位子、例えば、オレイン酸、チオール、カルボン酸、有機アミン配位子などが含まれていてもよい。
【0040】
従来の量子ドット表面に結合している、オレイン酸、チオール、カルボン酸、有機アミン等の配位子は、溶媒中で解離しにくいか、又は解離度が低いことで、量子ドット溶液中の量子ドットの帯電量が低くなる。電着法によって量子ドット薄膜を製造する場合に、量子ドットの帯電量が低過ぎるため、量子ドットを堆積させて成膜するのに必要な駆動電圧が高過ぎる。本発明は、溶液中で解離度合いの高い界面活性剤配位子を量子ドットの表面に修飾することにより、量子ドットの表面を帯電させ、配位子の電離度合いを高めることにより、量子ドットの帯電量を高め、電着法により量子ドット薄膜を形成する場合に、駆動電圧を低下させることができる。
【0041】
本発明の界面活性剤配位子が量子ドットを修飾する方法は、極性溶液系及び非極性溶液系において適用される。以下、極性溶液系及び非極性溶液系についてそれぞれ説明する。
【0042】
溶媒が非極性溶媒である場合に、逆ミセルを形成するように、溶液中の界面活性剤リガンドの濃度が臨界ミセル濃度(critical micelle concentration,CMC)よりも高くなる。界面活性剤は、溶液中で所定の濃度を超えると、単一のイオンや分子から会合してコロイド状の凝集体、即ちミセルを形成する。溶液の性質が急に変化したときの濃度、即ちミセルが形成され始めるときの溶液の濃度を臨界ミセル濃度という。界面活性剤は非極性の有機溶媒に溶解し、その濃度が臨界ミセル濃度を超えると、有機溶媒内で形成されるミセルは、逆ミセル(reversed micelle)と呼ばれるか、又は逆相ミセルとも呼ばれる。非極性溶媒は、n-オクタン、イソオクタン、n-オクタノール等の有機溶媒であってもよい。通常、n-オクタン、イソオクタン、n-オクタノール等の有機溶媒を逆ミセル系の有機相として用いることができる。非極性溶液系では、例えばオレイン酸、チオール、カルボン酸、有機アミンなどの量子ドットに通常用いられる配位子は、電離されにくい。また、例えばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、リン酸エステル系界面活性剤などの界面活性剤系配位子を量子ドットの表面に修飾し、界面活性剤の濃度が臨界濃度、即ち臨界ミセル濃度を超えると、複数の界面活性剤分子が集合して逆ミセルを形成する。界面活性剤は、極性部分が内向きになって極核を形成し、極核内に少量の水や他の不純物を含んでいてもよい。非極性界面活性剤の尾部は、非極性溶媒に外向きに向いており、配位子が表面に結合している量子ドットを非極性溶媒に溶解しる。逆ミセルを形成しない界面活性剤は、逆ミセルの極性核内に存在することができ、極性核内の極性サイトで電離し、電離した界面活性剤の量子ドットの表面と相互作用できる基が量子ドットの表面に結合することで、電離された界面活性剤を量子ドットの表面に吸着させて、量子ドットを帯電させることができる。また、界面活性剤濃度が高いほど、形成される逆ミセルが多くなり、界面活性剤の電離が多いほど、量子ドットの表面に吸着できる帯電界面活性剤が多くなり、量子ドットの帯電量が大きくなる。量子ドットのシェルをCdSとし、界面活性剤配位子をドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムとすると、複数のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムが逆ミセルを形成し、非極性溶媒に溶解する。逆ミセルを形成していないドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムは、逆ミセルの極性核で電離する。界面活性剤の電離は動的交換反応であり、動的交換の際に、例えば陽イオンNaのような極性イオンが極性核の極性サイトで電離して、極性核に捕捉され、例えば量子ドットの表面と強い結合作用を有するドデシルベンゼンスルホン酸イオンのような電離した非極性イオンが量子ドットの表面に吸着され、ドデシルベンゼンスルホン酸が電離して負に帯電することにより、量子ドット表面の帯電量を増加させる。
【0043】
非極性溶媒中では、量子ドット表面の帯電量を高めるために、界面活性剤の量子ドットに対する質量比が1%~50%であってもよい。界面活性剤が高くなるにつれて、量子ドットの帯電量も高くなる。しかしながら、量子ドットの光電特性に対する影響を同時に考慮すると、量子ドットによって異なる種類及び異なる含有量の配位子が必要である。界面活性剤配位子の量が多すぎると、量子ドットの光電特性に影響を与える恐れがあるため、界面活性剤の量子ドットに対する質量比を50%にする。好ましくは、界面活性剤の量子ドットに対する質量比が20%~50%であってもよい。
【0044】
界面活性剤の量子ドットに対する質量比が1%~50%である場合に、量子ドット膜を電着する駆動電圧を50V~192Vまで低下させることができ、界面活性剤の量子ドットに対する質量比が20%~50%である場合に、非極性溶媒中で、量子ドット膜を電着する駆動電圧を50V~150Vまで低下させることができることが実験により確認されている。
【0045】
本発明のナノ粒子膜は、極性溶液系で形成することもできる。極性溶媒は、エタノール、水又はプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)などから選ばれてもよい。例えばオレイン酸、チオール、カルボン酸、有機アミンなどの量子ドットに通常用いられる配位子は、極性溶液中で電離することができるが、電離度合いや配位子の含有量が低いため、量子ドットの帯電量が低くなる。したがって、極性溶液系においても、界面活性剤を用いて量子ドットを修飾することができ、極性溶媒中では界面活性剤が直接電離し、電離度合いが従来の量子ドット配位子よりもはるかに高く、量子ドットの帯電量が高くなる。極性溶液中の界面活性剤の電離度合いが高いため、非極性溶液系と比べて、界面活性剤の濃度は高すぎる必要がなく、界面活性剤の量子ドットに対する質量比が1%~5%であってもよい。もちろん、帯電量をより高めるために、界面活性剤の量子ドットに対する質量比を1%~50%とすることもできる。
【0046】
界面活性剤の量子ドットに対する質量比が1%~50%である場合に、量子ドット膜を電着する駆動電圧を1V~48Vまで低下させることができ、界面活性剤の量子ドットに対する質量比が20%~50%である場合に、量子ドット膜を電着する駆動電圧を1V~10Vまで低下させることができることが実験により確認されている。
【0047】
市販されている量子ドット材料は、溶媒中に分散しやすいように、表面に初期配位子を有する。したがって、表面に界面活性剤配位子が結合しているナノ粒子は、量子ドットと強い結合力を有する界面活性剤、例えば、リン酸エステル系界面活性剤を用いて量子ドットの表面の初期配位子と配位子交換反応させるか、又は初期配位子の代わりに界面活性剤を量子ドット溶液に直接添加することによって形成することができる。配位子交換反応を利用して、量子ドットの表面の初期配位子を界面活性剤配位子で完全に置換することができる。なお、ここでの完全置換とは、機器検出範囲内で、初期配位子の存在が検出されないことを意味し、完全置換とみなされる。また、量子ドット溶液に初期配位子の代わりに界面活性剤を直接添加することにより、得られる量子ドットの表面の界面活性剤配位子の初期配位子を置換する置換率は低いが、本発明の要求を満たすこともできる。例えば、リン酸エステル系界面活性剤は、例えばCdS/ZnSなどの量子ドットと強い結合力を有する。この点を利用して、コアシェル型量子ドットは、例えば、シェルの材料がCdS/ZnSである場合に、初期配位子がカルボキシル基又はアミン系配位子であり、初期配位子は一端がメルカプト基であり、他端がカルボキシル基及びアミノ基である。量子ドットの表面は、S原子と初期配位子のメルカプト基との相互作用により初期配位子と結合し、端部のカルボキシル基及びアミノ基が遊離する。しかしながら、リン酸エステル系界面活性剤は、メルカプト基とS原子との結合力よりもS原子との結合力が強いため、CdS/ZnSのS原子と初期配位子との結合部位を奪うことにより、初期配位子の代わりに量子ドットの表面に結合する。
【0048】
具体的には、ナノ粒子溶液を提供するステップは、
初期配位子が表面に結合している初期ナノ粒子を提供することと、
初期ナノ粒子を界面活性剤と混合して配位子交換反応させ、表面に界面活性剤配位子が結合しているナノ粒子を得ることと、
表面に界面活性剤配位子が結合しているナノ粒子を溶媒に溶解して、ナノ粒子溶液を形成することと、を含むことができる。
【0049】
非極性溶媒は、逆ミセルを形成してナノ粒子の表面の帯電量を高めるために、ナノ粒子の表面に結合している界面活性剤の濃度への要求が高いため、配位子交換反応により界面活性剤配位子が表面に結合しているナノ粒子を形成することが好ましい。
【0050】
又は、ナノ粒子溶液を提供するステップは、
初期ナノ粒子及び界面活性剤を提供し、初期ナノ粒子と界面活性剤とを溶媒に溶解して、表面に界面活性剤配位子が結合しているナノ粒子及びナノ粒子溶液を得ることを含むこともできる。
【0051】
初期ナノ粒子の表面に初期配位子が結合していてもよく、表面に初期配位子が結合している初期ナノ粒子は購入により入手可能であってもよく、初期配位子が結合していないナノ粒子であってもよく、初期配位子が結合していないナノ粒子は実験室により得ることができる。初期ナノ粒子の表面に配位子がない場合に、界面活性剤は、初期ナノ粒子の表面との原子相互作用によりナノ粒子表面に結合する。初期ナノ粒子の表面に配位子がある場合に、界面活性剤と初期ナノ粒子の表面との原子の結合力は、初期ナノ粒子の表面と初期配位子との結合力よりも大きく、界面活性剤が初期配位子の代わりにナノ粒子の表面に結合し、界面活性剤配位子が表面に結合しているナノ粒子を得る。
【0052】
極性溶媒は、ナノ粒子の表面に結合している界面活性剤の濃度への要求が低いため、界面活性剤を量子ドット溶液に直接添加して界面活性剤配位子が表面に結合しているナノ粒子を形成することにより、配位子交換反応を省略し、製造コストを削減することが好ましい。
【0053】
ステップ102:ナノ粒子溶液を電着によりナノ粒子膜に形成する。
【0054】
ステップ102において、具体的には、ナノ粒子溶液を電着によりナノ粒子膜に形成するステップは、
ナノ粒子溶液に入れる電極を提供することと、
ナノ粒子溶液を電極上に堆積させてナノ粒子膜を形成するように、電極に駆動電圧を印加することと、を含む。駆動電圧は、溶液系の極性及び配位子の含有量に応じて調整することができる。電極は、金属電極であってもよいし、例えば酸化インジウム(ITO)電極などの透明酸化物電極であってもよい。
【0055】
本発明は、界面活性剤配位子を用いてナノ粒子の表面を修飾し、界面活性剤配位子を溶媒中で電離させることにより、ナノ粒子の表面の帯電量を高め、ナノ粒子膜を電着するのに必要な駆動電圧を低下させることができる。
【0056】
これは、電着技術の量産性向上にとって重要な価値がある。溶媒系によって異なる界面活性剤配位子の種類及び配位子の濃度を選択することができる。非極性溶媒中では、界面活性剤により逆ミセルを形成して極性サイトを形成し、界面活性剤の電離を促進し、電離した界面活性剤の一端がナノ粒子の表面に接続することにより、ナノ粒子を帯電させ、界面活性剤の濃度が高いほど、形成される逆ミセルが多くなり、ナノ粒子の帯電量が高くなる。極性溶媒中では、界面活性剤が直接電離することができるので、極性溶媒の量子ドット系に適切な界面活性剤を直接添加することができ、量子ドットの帯電量を高めることができる。
【0057】
図2を参照されたく、本発明の第1実施形態のナノ粒子膜の製造方法はステップ201~ステップ205を含む。
【0058】
ステップ201:初期配位子が表面に結合している初期ナノ粒子を提供する。
【0059】
ステップ202:初期ナノ粒子を界面活性剤と混合して配位子交換反応させ、表面に界面活性剤配位子が結合しているナノ粒子を得る。
【0060】
ステップ203:表面に界面活性剤配位子が結合しているナノ粒子を溶媒に溶解して、ナノ粒子溶液を形成する。界面活性剤配位子の溶液中の濃度は、その臨界ミセル濃度よりも高い。
【0061】
ステップ203において、溶媒は非極性溶媒であり、界面活性剤配位子はナノ粒子の表面に逆ミセルを形成し、ナノ粒子の表面の帯電量を高める。
【0062】
ステップ204:ナノ粒子溶液に入れる電極を提供する。
【0063】
ステップ205:電極に通電してナノ粒子を電極上に堆積させ、乾燥してナノ粒子膜を形成する。界面活性剤の量子ドットに対する質量比が1%~50%である場合に、駆動電圧が50V~192Vである。所望により、界面活性剤の量子ドットに対する質量比が20%~50%である場合に、駆動電圧が50V~150Vまで低下されてもよい。
【0064】
図3を参照されたく、本発明の第2実施形態のナノ粒子膜の製造方法は、極性溶液系でナノ粒子膜を製造するために用いられ、ステップ301~ステップ303を含む。
【0065】
ステップ301:初期ナノ粒子と界面活性剤とを溶媒に溶解して、表面に界面活性剤配位子が結合しているナノ粒子及びナノ粒子溶液を得る。
【0066】
ステップ301において、溶媒は極性溶媒である。
【0067】
ステップ302:ナノ粒子溶液に入れる電極を提供する。
【0068】
ステップ303:電極に通電してナノ粒子を電極上に堆積させ、乾燥してナノ粒子膜を形成する。界面活性剤の量子ドットに対する質量比が1%~50%である場合に、駆動電圧が1V~48Vである。所望により、界面活性剤の量子ドットに対する質量比が20%~50%である場合に、駆動電圧が1V~10Vまで低下されてもよい。
【0069】
以上、本発明のナノ粒子膜の製造方法を、それぞれ非極性溶液系及び極性溶液系を例に挙げて説明した。なお、本発明の第1実施形態及び第2実施形態のナノ粒子膜の製造方法は、いずれも非極性溶液系及び極性溶液系に適用される。
【実施例
【0070】
次に、本発明のナノ粒子膜の製造方法を具体的な実施例により説明する。
【0071】
[実施例1]
初期配位子をオレイルアミンとするコアシェル型量子ドットCdSe(コア)/ZnS(シェル)とイソオクチルアルコールポリオキシエチレンホスフェート(リン酸エステル系界面活性剤)とを100:1の質量比で混合して配位子交換反応させ、表面にイソオクチルアルコールポリオキシエチレンホスフェート配位子が結合している量子ドットを得た。なお、コアシェル型量子ドットCdSe(コア)/ZnS(シェル)とイソオクチルアルコールポリオキシエチレンホスフェートとの質量比とは、初期配位子の質量を含まない量子ドットと界面活性剤との質量比をいう。
量子ドットをオクタンに溶解する。図4を参照されたく、非通電時に、量子ドットはオクタンに分散している。電極に電圧を0Vから徐々に印加し、電圧がある程度高くなると、図5を参照されたく、量子ドットが電極に堆積し始めて図中の縞パターンを形成し、このときの電圧が電着するのに必要な駆動電圧となり、量子ドットの帯電量をある程度示す。
【0072】
[実施例2]
初期配位子をオレイルアミンとするコアシェル型量子ドットCdSe(コア)/ZnS(シェル)とイソオクチルアルコールポリオキシエチレンホスフェート(リン酸エステル系界面活性剤)とを100:10の質量比で混合して配位子交換反応させ、表面にイソオクチルアルコールポリオキシエチレンホスフェート配位子が結合している量子ドットを得た。
量子ドットをオクタンに溶解し、電極に電圧を0Vから徐々に印加し、電圧がある程度高くなると、量子ドットが電極に堆積し始め、このときの電圧が電着するのに必要な駆動電圧となる。
【0073】
[実施例3]
初期配位子をオレイルアミンとするコアシェル型量子ドットCdSe(コア)/ZnS(シェル)とイソオクチルアルコールポリオキシエチレンホスフェート(リン酸エステル系界面活性剤)とを100:20の質量比で混合して配位子交換反応させ、表面にイソオクチルアルコールポリオキシエチレンホスフェート配位子が結合している量子ドットを得た。
量子ドットをオクタンに溶解し、電極に電圧を0Vから徐々に印加し、電圧がある程度高くなると、量子ドットが電極に堆積し始め、このときの電圧が電着するのに必要な駆動電圧となる。
【0074】
[実施例4]
初期配位子をオレイルアミンとするコアシェル型量子ドットCdSe(コア)/ZnS(シェル)とイソオクチルアルコールポリオキシエチレンホスフェート(リン酸エステル系界面活性剤)とを100:30の質量比で混合して配位子交換反応させ、表面にイソオクチルアルコールポリオキシエチレンホスフェート配位子が結合している量子ドットを得た。
量子ドットをオクタンに溶解し、電極に電圧を0Vから徐々に印加し、電圧がある程度高くなると、量子ドットが電極に堆積し始め、このときの電圧が電着するのに必要な駆動電圧となる。
【0075】
[実施例5]
初期配位子をオレイルアミンとするコアシェル型量子ドットCdSe(コア)/ZnS(シェル)とイソオクチルアルコールポリオキシエチレンホスフェート(リン酸エステル系界面活性剤)とを100:50の質量比で混合して配位子交換反応させ、表面にイソオクチルアルコールポリオキシエチレンホスフェート配位子が結合している量子ドットを得た。
量子ドットをオクタンに溶解し、電極に電圧を0Vから徐々に印加し、電圧がある程度高くなると、量子ドットが電極に堆積し始め、このときの電圧が電着するのに必要な駆動電圧となる。
【0076】
[比較例1]
初期配位子をオレイルアミンとするコアシェル型量子ドットCdSe(コア)/ZnS(シェル)をオクタンに溶解し、電極に電圧を0Vから徐々に印加し、電圧がある程度高くなると、量子ドットが電極に堆積し始め、このときの電圧が電着するのに必要な駆動電圧となる。
【0077】
【表1】
表1から、量子ドットの表面に界面活性剤を修飾することにより、電着時の駆動電圧を低下させることができることがわかる。また、界面活性剤の含有量が増加するにつれて、駆動電圧の低下が速くなる。界面活性剤の量子ドットに対する質量比が1%~50%である場合に、駆動電圧が50V~192Vである。界面活性剤の量子ドットに対する質量比が20%~50%である場合に、駆動電圧が50V~150Vまで低下されてもよい。
【0078】
[実施例6]
初期配位子をSH-PEG-COOH(メルカプト-ポリエチレングリコール-カルボキシ)とするコアシェル型量子ドットCdSe(コア)/ZnS(シェル)とイソオクチルアルコールポリオキシエチレンホスフェートとを100:1の質量比で極性溶媒PGMEAと混合して、表面にイソオクチルアルコールポリオキシエチレンホスフェート配位子が結合している量子ドット溶液を得た。
電極を量子ドット溶液に入れ、電極に電圧を0Vから徐々に印加し、電圧がある程度高くなると、量子ドットが電極に堆積し始め、このときの電圧が電着するのに必要な駆動電圧となる。
【0079】
[実施例7]
初期配位子をSH-PEG-COOHとするコアシェル型量子ドットCdSe(コア)/ZnS(シェル)とイソオクチルアルコールポリオキシエチレンホスフェートとを100:10の質量比で極性溶媒PGMEAと混合して、表面にイソオクチルアルコールポリオキシエチレンホスフェート配位子が結合している量子ドット溶液を得た。
電極を量子ドット溶液に入れ、電極に電圧を0Vから徐々に印加し、電圧がある程度高くなると、量子ドットが電極に堆積し始め、このときの電圧が電着するのに必要な駆動電圧となる。
【0080】
[実施例8]
初期配位子をSH-PEG-COOHとするコアシェル型量子ドットCdSe(コア)/ZnS(シェル)とイソオクチルアルコールポリオキシエチレンホスフェートとを100:20の質量比で極性溶媒PGMEAと混合して、表面にイソオクチルアルコールポリオキシエチレンホスフェート配位子が結合している量子ドット溶液を得た。
電極を量子ドット溶液に入れ、電極に電圧を0Vから徐々に印加し、電圧がある程度高くなると、量子ドットが電極に堆積し始め、このときの電圧が電着するのに必要な駆動電圧となる。
【0081】
[実施例9]
初期配位子をSH-PEG-COOHとするコアシェル型量子ドットCdSe(コア)/ZnS(シェル)とイソオクチルアルコールポリオキシエチレンホスフェートとを100:30の質量比で極性溶媒PGMEAと混合して、表面にイソオクチルアルコールポリオキシエチレンホスフェート配位子が結合している量子ドット溶液を得た。
電極を量子ドット溶液に入れ、電極に電圧を0Vから徐々に印加し、電圧がある程度高くなると、量子ドットが電極に堆積し始め、このときの電圧が電着するのに必要な駆動電圧となる。
【0082】
[実施例10]
初期配位子をSH-PEG-COOHとするコアシェル型量子ドットCdSe(コア)/ZnS(シェル)とイソオクチルアルコールポリオキシエチレンホスフェート(リン酸エステル系界面活性剤)とを100:50の質量比で極性溶媒PGMEAと混合して、表面にイソオクチルアルコールポリオキシエチレンホスフェート配位子が結合している量子ドットを得た。
電極を量子ドット溶液に入れ、電極に電圧を0Vから徐々に印加し、電圧がある程度高くなると、量子ドットが電極に堆積し始め、このときの電圧が電着するのに必要な駆動電圧となる。
【0083】
[比較例2]
初期配位子をSH-PEG-COOHとするコアシェル型量子ドットCdSe(コア)/ZnS(シェル)と極性溶媒PGMEAとを混合して、量子ドット溶液を得た。
電極を量子ドット溶液に入れ、電極に電圧を0Vから徐々に印加し、電圧がある程度高くなると、量子ドットが電極に堆積し始め、このときの電圧が電着するのに必要な駆動電圧となる。
【0084】
【表2】
表2から、量子ドットの表面に界面活性剤を修飾することにより、電着時の駆動電圧を低下させることができることがわかる。また、界面活性剤の含有量が増加するにつれて、駆動電圧の低下が速くなる。界面活性剤の量子ドットに対する質量比が1%~50%である場合に、駆動電圧が1V~48Vである。界面活性剤の量子ドットに対する質量比が20%~50%である場合に、駆動電圧が1V~10Vまで低下されてもよい。
【0085】
本発明は、ナノ粒子膜をさらに提供する。ナノ粒子膜は、QDCF(Quantum Dot Color Filter,量子ドットカラーフィルタ)、QD LGP(Quantum Dot Light Guide Plate,量子ドット導光板)、QLED(Quantum Dot Light-emitting Diode,量子ドット発光ダイオード)、QD-OLED(Quantum Dot Organic Light-emitting Diode,量子ドット有機発光ダイオード)などの量子ドット表示分野に適用されてもよく、他の種類のナノ粒子パターニングプロセスに関わる、例えば太陽電池、分光器などの他の分野に適用されてもよい。
【0086】
ナノ粒子膜は本発明のナノ粒子膜の製造方法により製造されてもよい。ナノ粒子膜は、表面に界面活性剤配位子が結合しているナノ粒子を含む。ナノ粒子は、非金属無機ナノ粒子、貴金属ナノ粒子、コロイドナノシート、コロイドナノロッドなどのナノ粒子から選ばれてもよい。所望により、ナノ粒子が量子ドットであってもよい。本発明に係る量子ドット材料がコアシェル型量子ドットから選ばれてもよく、発光コアは、ZnCdSe、InP、CdSse、CdSe、CdSeTe、InAsの1つから選ばれてもよく、無機保護シェル層は、CdS、ZnSe、ZnCdS、ZnS、ZnOの少なくとも1つから選ばれてもよく、量子ドット材料は、例えば、ハイドロゲル担持量子ドット構造、CdSe-SiOなどの高安定性複合量子ドットから選ばれてもよく、ペロブスカイト量子ドットなどであってもよい。なお、本発明で使用される量子ドット材料が、上記のものに限定されるものではないことを理解されたい。
【0087】
界面活性剤は、溶媒中で電離しやすいカチオン界面活性剤又はアニオン界面活性剤から選ばれてもよい。具体的には、界面活性剤は、ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ジノニルナフタレンスルホン酸バリウム等の有機スルホン酸塩系界面活性剤、コバルト、アルミニウム、鉄等の金属のナフタレン酸塩やステアリン酸塩等の金属石鹸系界面活性剤、N-ビニルピロリドン重合体等の有機アミン系界面活性剤、有機リン酸塩系及びリン酸エステル系界面活性剤の少なくとも1つから選ばれてもよい。本発明で使用される界面活性剤は、溶媒中で電離可能であり、量子ドットの表面と結合力を有する。量子ドットと界面活性剤との結合力を確保するために、所望により、量子ドットの表面が酸性基である場合に、塩基性界面活性剤を選択し、量子ドットの表面が塩基性基である場合に、酸性界面活性剤を選択する。
【0088】
なお、量子ドット表面には、界面活性剤配位子のみが含まれていてもよいし、その他の配位子、例えば、オレイン酸、チオール、カルボン酸、有機アミンが含まれていてもよい。
【0089】
所望により、界面活性剤配位子のナノ粒子に対する質量比が1%~50%である。又は、界面活性剤配位子のナノ粒子に対する質量比が1%~5%である。
【0090】
本発明に係るナノ粒子膜は、低い駆動電圧で電着することにより得られる。
【0091】
本発明は、上記に記載のナノ粒子膜を含む表示パネルをさらに提供し、ナノ粒子膜が量子ドット膜である。
【0092】
図6を参照されたく、表示パネルの第1実施例はQLED表示パネルである。量子ドット膜10はQLEDの発光層である。具体的には、表示パネル100は、第1電極20と、第2電極30と、第1電極20と第2電極30との間に設けられる量子ドット膜10とを含む。なお、表示パネル100は、正孔輸送層、正孔注入層、電子輸送層、電子注入層等の膜層をさらに含むことができる。
【0093】
図7を参照されたく、表示パネルの第2実施例はLCD表示パネルであり、量子ドット膜10はLCDのバックライトモジュールの色変換層とされる。具体的には、表示パネル100は、液晶セル40と、液晶セル40の非出光側に設けられたバックライトモジュール50とを含む。バックライトモジュール50は、光源51と、導光板52と、量子ドット膜10とを含む。光源51は、導光板52の側面に設けられている。光源51は、青色光源又は白色光源であってもよい。量子ドット膜10は、導光板52と液晶セル40との間に設けられている。量子ドット膜10は、光源51から導光板52に入射するとともに、導光板52から出射された光を、表示に必要な色、例えば、緑色や赤色などに変換するためのものである。
【0094】
図8を参照されたく、表示パネルの第3実施例はLED表示パネルであり、量子ドット膜10はLEDの色変換層とされる。具体的には、表示パネル100は、発光基板60と、発光基板60に対応して設けられた色変換基板70とを含む。発光基板60には、マトリックス状に配列された複数の発光素子(図示せず)が設けられており、発光素子はmini-LED又はmicro-LEDであってもよい。色変換基板70は、基板71と、基板71の発光基板60に向かう側に設けられたカラーフィルタ層72と、カラーフィルタ層72の発光基板60に向かう側に設けられた量子ドット膜10とを含む。カラーフィルタ層72と量子ドット膜10とを合わせてQDCF膜と呼ぶこともできる。
【0095】
本発明の表示パネルは、ナノ粒子膜を利用し、ナノ粒子膜の表面に界面活性剤配位子が結合しているため、低い駆動電圧で電着により製造することができる。
【0096】
以上、本発明の実施形態を詳細に説明したが、本明細書では具体的な実施例を用いて本発明の原理及び実施形態について説明し、以上の実施形態の説明は本発明を理解するためのものに過ぎない。一方、当業者であれば、本発明の構想に基づき、具体的な実施形態及び適用範囲に変更を加えることがあり、要約すると、本明細書の内容は本発明を限定するものとして理解されるべきではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】