(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-18
(54)【発明の名称】Nav1.8電位依存性ナトリウムチャネルを阻害するためおよびNav1.8介在疾患を治療するために有用な化学化合物
(51)【国際特許分類】
C07F 9/09 20060101AFI20240111BHJP
A61K 31/517 20060101ALI20240111BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20240111BHJP
A61K 31/675 20060101ALI20240111BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20240111BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240111BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240111BHJP
C07D 401/04 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
C07F9/09 U CSP
A61K31/517
A61K31/519
A61K31/675
A61P25/04
A61P29/00
A61P9/00
C07F9/09
C07D401/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536951
(86)(22)【出願日】2021-12-16
(85)【翻訳文提出日】2023-08-16
(86)【国際出願番号】 EP2021086101
(87)【国際公開番号】W WO2022129283
(87)【国際公開日】2022-06-23
(32)【優先日】2020-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513032275
【氏名又は名称】グラクソスミスクライン、インテレクチュアル、プロパティー、ディベロップメント、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GLAXOSMITHKLINE INTELLECTUAL PROPERTY DEVELOPMENT LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100172557
【氏名又は名称】鈴木 啓靖
(72)【発明者】
【氏名】グアン、ジー
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド、グレン、ウォッシュバーン
【テーマコード(参考)】
4C063
4C086
4H050
【Fターム(参考)】
4C063AA01
4C063BB02
4C063CC31
4C063DD12
4C063EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086DA38
4C086GA07
4C086GA08
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZA08
4C086ZA21
4C086ZA36
4C086ZC02
4H050AA01
4H050AB20
4H050AD17
4H050BA66
4H050BB17
4H050BC10
(57)【要約】
可変基のそれぞれが本明細書に定義される通りである式(I)の化合物が記載される。また、式(I)の化合物を含有する医薬組成物、Na
v1.8電位依存性ナトリウムチャネルを阻害し、疼痛および疼痛関連疾患、障害および病態ならびに心血管疾患、障害および病態といったNa
v1.8介在疾患、障害および病態を治療するための化合物および医薬組成物の使用も記載される。
【化1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物:
【化1】
[式中、
X
1は、NまたはCHであり;
R
1は、-P(O)(OH)
2であり;
R
2は、水素、-(C
1-6)アルキル、-NR
aR
b、ハロまたは-(C
1-6)ハロアルキルであり;
R
3およびR
4のそれぞれは独立に、水素、ハロ、シアノ、-NR
aR
b、-(C
1-6)アルキル、-(C
1-6)ハロアルキル、-O-(C
1-6)アルキルまたは-O-(C
1-6)ハロアルキルであり;
各R
5は独立に、ハロ、-(C
1-6)アルキル、-O(C
1-6)アルキルまたは-O(C
1-6)ハロアルキルであり;
R
6は、水素または-(C
1-6)アルキルであり;
R
7は、水素、-(C
1-6)アルキル、ハロまたは-(C
1-6)ハロアルキルであり;
R
aおよびR
bのそれぞれは独立に、水素または-(C
1-6)アルキルであり;かつ、
nは、0、1または2である。]
またはその薬学上許容可能な塩。
【請求項2】
X
1がNである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
X
1がCHである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
R
2が-(C
1-6)アルキルである、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
R
3およびR
4のそれぞれが独立に、水素、ハロまたは-(C
1-6)ハロアルキルである、請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
R
3およびR
4のそれぞれが、水素、-Clまたは-CF
3である、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
R
3およびR
4の一方が水素であり、R
3およびR
4の他方がハロまたは-(C
1-6)ハロアルキルである、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
R
3およびR
4の一方が水素であり、R
3およびR
4の他方が-Clまたは-CF
3である、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
各R
5が独立に、ハロまたは-O(C
1-6)ハロアルキルである、請求項1~8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
各R
5が独立に、-Fまたは-OCF
3である、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
R
6が-(C
1-6)アルキルである、請求項1~10のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
R
6が-CH
3、-CH
2CH
3または-CH(CH
3)
2である、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
X
1がNであり;
R
1が-PO(OH)
2であり;
R
2が-CH
3であり;
R
3およびR
4の一方が水素であり、R
3およびR
4の他方がハロまたは-(C
1-6)ハロアルキルであり;
R
5がハロまたは-O(C
1-6)ハロアルキルであり;
R
6が-(C
1-6)アルキルであり;
R
7が水素であり;かつ、
nが1である、請求項1に記載の化合物。
【請求項14】
式(I)の化合物の薬学上許容可能な塩である、請求項1~13のいずれか一項に記載の化合物であって、
R
1が、-P(O)(OH)O
-M
+、-PO(O
-)
2・2M
+または-PO(O
-)
2・D
2+であり、
各M
+が独立に、薬学上許容可能な一価陽イオンであり、かつ、
D
2+が、薬学上許容可能な二価陽イオンである、請求項1~13のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項15】
以下の化合物:
リン酸二水素(5-(1-(4-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-オキソ-6-(トリフルオロメチル)-1,4-ジヒドロキナゾリン-3(2H)-イル)-6-メチル-2-オキソピリジン-1(2H)-イル)メチル;
リン酸二水素(5-(1-(4-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-オキソ-7-(トリフルオロメチル)-1,4-ジヒドロキナゾリン-3(2H)-イル)-6-メチル-2-オキソピリジン-1(2H)-イル)メチル;
リン酸二水素(5-(6-クロロ-1-(4-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-オキソ-1,4-ジヒドロキナゾリン-3(2H)-イル)-6-メチル-2-オキソピリジン-1(2H)-イル)メチル;および
リン酸二水素(6-メチル-5-(1-(2-メチル-4-(トリフルオロメトキシ)フェニル)-4-オキソ-6-(トリフルオロメチル)-1,4-ジヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-3(2H)-イル)-2-オキソピリジン-1(2H)-イル)メチル
からなる群から選択される化合物またはその薬学上許容可能な塩。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載の化合物と、薬学上許容可能な賦形剤とを含んでなる医薬組成物。
【請求項17】
静脈内投与用に調合される、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
それを必要とする対象においてNa
v1.8電位依存性ナトリウムチャネルを阻害する方法であって、
前記方法が、前記対象に、請求項1~15のいずれか一項に記載の化合物もしくはその薬学上許容可能な塩もしくはその互変異性体または請求項16もしくは17に記載の医薬組成物を投与することを含んでなる、前記方法。
【請求項19】
それを必要とする対象において疼痛または疼痛関連疾患、障害もしくは病態を治療する方法であって、
前記方法が、前記対象に治療上有効な量の、請求項1~15のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学上許容可能な塩および/もしくはその互変異性体または請求項16もしくは17に記載の医薬組成物を投与することを含んでなる、前記方法。
【請求項20】
前記疼痛が急性疼痛または慢性疼痛である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記疼痛または疼痛関連疾患、障害もしくは病態が、外傷により引き起こされる疼痛;医原性医療処置もしくは歯科処置により引き起こされる疼痛;または術前もしくは術後関連疼痛である、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記疼痛または疼痛関連疾患、障害もしくは病態が、神経因性疼痛、侵害受容性疼痛、炎症性疼痛、筋骨格痛、内臓痛または特発性疼痛である、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記疼痛または疼痛関連疾患、障害もしくは病態が、小径線維神経障害、小径線維介在糖尿病性神経障害、特発性小径線維神経障害、有痛性糖尿病性神経障害および多発神経障害から選択される神経因性疼痛または慢性神経因性疼痛である、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記疼痛または疼痛関連疾患、障害もしくは病態が、変形性関節症、慢性変形性関節症疼痛および慢性炎症性脱髄性多発神経障害から選択される炎症性疼痛である、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
それを必要とする対象において心房細動を治療する方法であって、
前記方法が、前記対象に治療上有効な量の、請求項1~15のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学上許容可能な塩および/もしくはその互変異性体または請求項16もしくは17に記載の医薬組成物を投与することを含んでなる、前記方法。
【請求項26】
前記対象がヒトである、請求項18~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
療法における使用のための、請求項1~15のいずれか一項に記載の化合物もしくはその薬学上許容可能な塩もしくはその互変異性体または請求項16もしくは17に記載の医薬組成物。
【請求項28】
疼痛または疼痛関連疾患、障害、もしくは病態の治療における使用のための、請求項1~15のいずれか一項に記載の化合物もしくはその薬学上許容可能な塩もしくはその互変異性体または請求項16もしくは17に記載の医薬組成物。
【請求項29】
前記疼痛が急性疼痛または慢性疼痛である、請求項28に記載の化合物もしくはその薬学上許容可能な塩もしくはその互変異性体または医薬組成物。
【請求項30】
前記疼痛または疼痛関連疾患、障害もしくは病態が、外傷により引き起こされる疼痛;医原性医療処置もしくは歯科処置により引き起こされる疼痛;または術前もしくは術後関連疼痛である、請求項28に記載の化合物もしくはその薬学上許容可能な塩もしくはその互変異性体または医薬組成物。
【請求項31】
前記疼痛または疼痛関連疾患、障害もしくは病態が、神経因性疼痛、侵害受容性疼痛、炎症性疼痛、筋骨格痛、内臓痛または特発性疼痛である、請求項28に記載の化合物もしくはその薬学上許容可能な塩もしくはその互変異性体または医薬組成物。
【請求項32】
前記疼痛または疼痛関連疾患、障害もしくは病態が、小径線維神経障害、小径線維介在糖尿病性神経障害、特発性小径線維神経障害、有痛性糖尿病性神経障害および多発神経障害から選択される神経因性疼痛または慢性神経因性疼痛である、請求項28に記載の化合物もしくはその薬学上許容可能な塩もしくはその互変異性体または医薬組成物。
【請求項33】
前記疼痛または疼痛関連疾患、障害もしくは病態が、変形性関節症、慢性変形性関節症疼痛および慢性炎症性脱髄性多発神経障害から選択される炎症性疼痛である、請求項28に記載の化合物もしくはその薬学上許容可能な塩もしくはその互変異性体または医薬組成物。
【請求項34】
心房細動の治療における使用のための、請求項1~15のいずれか一項に記載の化合物もしくはその薬学上許容可能な塩もしくはその互変異性体または請求項16もしくは17に記載の医薬組成物。
【請求項35】
疼痛または疼痛関連疾患、障害もしくは病態の治療のための医薬の製造における、請求項1~15のいずれか一項に記載の化合物もしくはその薬学上許容可能な塩もしくはその互変異性体または請求項16もしくは17に記載の医薬組成物の使用。
【請求項36】
前記疼痛が急性疼痛または慢性疼痛である、請求項35に記載の使用。
【請求項37】
前記疼痛または疼痛関連疾患、障害もしくは病態が、外傷により引き起こされる疼痛;医原性医療処置もしくは歯科処置により引き起こされる疼痛;または術前もしくは術後関連疼痛である、請求項35に記載の使用。
【請求項38】
前記疼痛または疼痛関連疾患、障害もしくは病態が、神経因性疼痛、侵害受容性疼痛、炎症性疼痛、筋骨格痛、内臓痛または特発性疼痛である、請求項35に記載の使用。
【請求項39】
前記疼痛または疼痛関連疾患、障害もしくは病態が、小径線維神経障害、小径線維介在糖尿病性神経障害、特発性小径線維神経障害、有痛性糖尿病性神経障害および多発神経障害から選択される神経因性疼痛または慢性神経因性疼痛である、請求項35に記載の使用。
【請求項40】
前記疼痛または疼痛関連疾患、障害もしくは病態が、変形性関節症、慢性変形性関節症疼痛および慢性炎症性脱髄性多発神経障害から選択される炎症性疼痛である、請求項35に記載の使用。
【請求項41】
心房細動の治療のための医薬の製造における、請求項1~15のいずれか一項に記載の化合物もしくはその薬学上許容可能な塩もしくはその互変異性体または請求項16もしくは17に記載の医薬組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、Nav1.8阻害剤化合物またはそれらの薬学上許容可能な塩または互変異性体、対応する医薬組成物または製剤、化合物調製の方法または工程、疼痛ならびに疼痛関連疾患、障害および病態、ならびに心血管疾患、障害および病態の治療における使用のための方法、化合物、そのための使用および/または併用療法に関する。
【背景技術】
【0002】
疼痛は、動物が潜在的な組織損傷を回避する防御機構であるが、疼痛がその有用性を失い、不自由な負担となる数多くの疾患兆候が存在する。疼痛がその有用性を失う適応症は、神経損傷または傷害がトリガーとなるもの(神経障害性疼痛)、炎症反応または代謝異常が疼痛反応を増感するもの(炎症性疼痛)および傷害または外科的処置が短期的な疼痛反応の上昇をもたらすもの(術後/外来性疼痛)に大別することができる。
【0003】
電位依存性ナトリウムチャネルは、活動電位の閾値を設定し、立ち上がりの基礎をなすことで、総ての興奮性組織における電気シグナル伝達を支えている。電位依存性ナトリウムチャネルには9つの異なるアイソフォームがある。Nav1.1、Nav1.7、Nav1.8およびNav1.9と呼ばれるものは主に末梢神経で発現し、ニューロンの興奮性を制御している。Nav1.5は心筋細胞で発現する基本的なナトリウムチャネルアイソフォームであり、Nav1.4は骨格筋で発現して機能し、Nav1.1、Nav1.2、Nav1.3およびNav1.6は中枢神経系(CNS)およびある程度は末梢神経系に広く発現している。これら9つの電位依存性ナトリウムチャネルの主な役割は、細胞内へのナトリウム流入を制御するという点では同等であるが、その生物物理学的特性は様々であり、それぞれの細胞タイプの生理学的プロファイルに大きな影響を与える(Catterall, 2012)。
【0004】
現在、非選択的ナトリウムチャネル阻害剤は、抗不整脈薬および抗痙攣薬として臨床的に利用されており、これらにはリドカイン、カルバマゼピン、アミトリプチリンおよびメキシレチンが含まれる。しかし、これらの薬剤は異なるナトリウムチャネルアイソフォーム間の選択性を示さないため、その治療的有用性は、主にCNSと心臓における活性によって媒介される有害な副作用のために大きく低下している。このことは、CNSと心臓血管系における副作用を回避するために、特定のナトリウムチャネルアイソフォームに選択的な新規薬剤を開発する努力を促した。
【0005】
Nav1.8チャネルは後根神経節(DRG)のニューロンで発現し、痛みを感知するC神経線維およびAδ神経線維を形成するこの組織の小径ニューロンで発現が高い(Abrahamsen, 2008; Amaya, 2000; Novakovic, 1998)。このチャネルは、ラットDRGから最初にクローニングされて(Akopian, 1996)すぐに、この組織種でのその顕著な生理学的役割および限定された発現プロファイルのために、鎮痛の治療標的として提唱された。その後、Nav1.8はヒトのDRG組織から同定され、クローニングされ、特性決定された(Rabart 1998)。Nav1.8に最も近い近縁分子はNav1.5であり、その配列相同性は60%程度である。Nav1.8は、以前はSNS(sensory neuron sodium channel)、PN3(peripheral nerve sodium channel type 3)として知られており、また、テトロドトキシンによる遮断に対する抵抗性という特徴的な薬理学的特性を示すことから、TTX抵抗性ナトリウムチャネルとも呼ばれている。
【0006】
Nav1.8が疼痛適応症の治療標的であるという裏付けは、いくつかの情報源から得られている。Nav1.8は、DRGニューロンの活動電位の立ち上がり中に大部分の電流を流すことが示されており(Blair & Bean, 2002)、その再プライミングの速度により、これらのニューロンが反復発火する能力にとっても重要である(Blair and Bean, 2003)。Nav1.8の発現および機能の亢進は、炎症性メディエーター(England 1996 & Gold 1996)、神経損傷(Roza 2003 & Ruangsri 2011)および有痛性神経鞘腫(Black 2008 & Coward 2000)など、有痛刺激に応答して起こることが報告されている。マウスでNav1.8をコードする遺伝子をノックアウトすると、疼痛表現型、特に炎症性抗原投与に対する疼痛表現型が減少した(Akopian 1999)。また、Nav1.8をコードするmRNAをノックダウンすると、齧歯類モデル、特に、神経障害モデルにおいて疼痛表現型が減少した(Lai 2002)。選択的低分子阻害剤による薬理学的介入は、炎症性疼痛ならびに神経障害性疼痛の齧歯類モデルにおいても有効性を示した(Jarvis 2007 & Payne 2015)。Nav1.8に関する遺伝学的根拠は、慢性神経障害性疼痛患者にも存在し、複数の機能獲得変異が偶発性の疼痛性神経障害(episodic painful neuropathy)および小径線維神経障害の原因であることが報告されている(Faber 2012, Han 2014 & Eijkenboom 2018)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明の概要
よって、溶解度が改善され、従って、静脈内投与などの別の投与経路により有利な新規な化合物、特にNav1.8阻害剤化合物の開発の必要がある。本発明は、Nav1.8阻害活性を有する化合物のプロドラッグ、ならびに疼痛および疼痛関連疾患、障害および病態の治療、ならびに心血管疾患、障害および病態の治療におけるこのようなプロドラッグの使用を提供することによってこの必要を満たす。本発明のプロドラッグは、それらの各親化合物に比べて溶解度が改善され、従って、静脈内(IV)投与、ならびに急性疼痛の治療におけるなど、IV投与が有益なまたは好ましいものであり得る疼痛ならびに疼痛関連疾患、障害および病態の治療に有用であり得る。
【0008】
1つの態様において、本発明は、式(I)の化合物:
【化1】
[式中、
X
1は、NまたはCHであり;
R
1は、-PO(OH)
2であり;
R
2は、水素、-(C
1-6)アルキル、-NR
aR
b、ハロまたは-(C
1-6)ハロアルキルであり;
R
3およびR
4のそれぞれは独立に、水素、ハロ、シアノ、-NR
aR
b、-(C
1-6)アルキル、-(C
1-6)ハロアルキル、-O-(C
1-6)アルキルまたは-O-(C
1-6)ハロアルキルであり;
各R
5は独立に、ハロ、-(C
1-6)アルキル、-O(C
1-6)アルキルまたは-O(C
1-6)ハロアルキルであり;
R
6は、水素または-(C
1-6)アルキルであり;
R
7は、水素、-(C
1-6)アルキル、ハロまたは-(C
1-6)ハロアルキルであり;
R
aおよびR
bのそれぞれは独立に、水素または-(C
1-6)アルキルであり;かつ、
nは、0、1または2である。]
またはその薬学上許容可能な塩に関する。
【0009】
1つの態様において、本発明は、本明細書で定義される化合物またはその互変異性体またはその薬学上許容可能な塩と、薬学上許容可能な賦形剤とを含んでなる医薬組成物に関する。
【0010】
1つの態様において、本発明は、それを必要とする対象においてNav1.8電位依存性ナトリウムチャネルを阻害する方法であって、対象に本明細書で定義される化合物もしくはその互変異性体もしくはその薬学上許容可能な塩または本明細書で定義される医薬組成物を投与することを含んでなる方法に関する。
【0011】
1つの態様において、本発明は、それを必要とする対象における疼痛または疼痛関連疾患、障害または病態を治療する方法であって、対象に治療上有効な量の、本明細書で定義される化合物もしくはその互変異性体もしくはその薬学上許容可能な塩または本明細書で定義される医薬組成物を投与することを含んでなる方法に関する。
【0012】
1つの態様において、本発明は、それを必要とする対象における心房細動を治療する方法であって、対象に治療上有効な量の、本明細書で定義される化合物もしくはその互変異性体もしくはその薬学上許容可能な塩または本明細書で定義される医薬組成物を投与することを含んでなる方法に関する。
【0013】
1つの態様において、本発明は、疼痛または疼痛関連疾患、障害もしくは病態の治療における使用のための、本明細書で定義される化合物もしくはその互変異性体もしくはその薬学上許容可能な塩または本明細書で定義される医薬組成物に関する。
【0014】
1つの態様において、本発明は、心房細動の治療における使用のための、本明細書で定義される化合物もしくはその互変異性体もしくはその薬学上許容可能な塩または本明細書で定義される医薬組成物に関する。
【0015】
1つの態様において、本発明は、疼痛または疼痛関連疾患、障害もしくは病態の治療のための医薬の製造における本明細書で定義される化合物もしくはその互変異性体もしくはその薬学上許容可能な塩または本明細書で定義される医薬組成物に関する。
【0016】
1つの態様において、本発明は、心房細動の治療のための医薬の製造における、本明細書で定義される化合物もしくはその互変異性体もしくはその薬学上許容可能な塩または本明細書で定義される医薬組成物に関する。
【0017】
1つの態様において、本発明は、療法における使用のための、本明細書で定義される化合物もしくはその互変異性体もしくはその薬学上許容可能な塩または本明細書で定義される医薬組成物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
様々な刊行物、論文および特許が、背景および明細書に引用または記載されている。本明細書に含まれる文書、行為、材料、装置、物品などについての議論は、本開示の文脈を提供するためのものである。このような議論は、これらの事項の一部または全部が本開示に関する先行技術の一部をなすことを認めるものではない。
【0019】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される総ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の熟練者に一般に理解されているのと同じ意味を有する。それ以外の場合、本明細書で使用される特定の用語は、本明細書に示される意味を有する。
【0020】
本明細書で使用する場合、また添付の特許請求の範囲において、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、内容が別段のことを明示しない限り複数の指示対象を含むことに留意されたい。
【0021】
本明細書で使用する場合、複数の引用された要素間の接続語「および/または」は、別個の選択肢および組み合わされた選択肢の両方を包含するものと理解される。例えば、2つの要素が「および/または」によって接続されている場合、第1の選択肢は、第2の要素を含まずに第1の要素を適用可能であることを指す。第2の選択肢は、第1の要素を含まずに第2の要素を適用可能であることを指す。第3の選択肢は、第1の要素と第2の要素を一緒に適用可能であることを指す。これらの選択肢のいずれか1つは、本明細書で使用される「および/または」という用語の意味内に含まれ、従って、その要件を満たすと理解される。2つ以上の選択肢の同時適用可能性もまた、「および/または」という用語の意味の範囲内であり、従ってその要件を満たすと理解される。
【0022】
別段の記載がない限り、いずれの数値、例えば、本明細書に記載される濃度または濃度範囲も、総ての場合において「約」という用語によって修飾されると理解される。よって、数値は一般に、記載された値の±10%を含む。例えば、「10倍」という記載は、9倍および11倍を含む。本明細書で使用する場合、数値範囲の使用は、文脈が別段のことを明示しない限り、総ての可能な部分範囲、例えば、その範囲内の総ての別個の数値(その範囲内の整数およびその値の端数を含む)を明示的に含む。
【0023】
本発明は、式(I)の化合物またはその薬学上許容可能な塩、対応する医薬組成物、化合物調製の方法または工程、ならびに、Nav1.8介在疾患、障害および病態、例えば、それぞれ疼痛および/または疼痛関連疾患、障害もしくは病態ならびに心房細動における使用のための方法、化合物、そのための使用および/または併用療法に関する。
【0024】
本明細書で提供される、本明細書に開示されるいずれかの式またはその薬学上許容可能な塩および/もしくは対応する互変異性体の種々の基および置換基の定義は、本明細書に開示される各化合物種を、別個に、ならびに1または2以上の化合物種の基を特に記載することを意図している。
【0025】
本明細書で使用する場合、アルカリ金属という用語は、限定するものではないが、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)またはカリウム(K)などを含むI族元素を意味することを意図する。アルカリ土類金属という用語には、限定するものではないが、カルシウム(Ca)またはマグネシウム(Mg)などを含み得る。
【0026】
本明細書で使用する場合、「アルキル」または「直鎖または分岐鎖アルキル」などという用語は、飽和の、直鎖または分岐鎖炭化水素部分を表す。例示的アルキルとしては、限定するものではないが、メチル(Me)、エチル(Et)、プロピル(例えば、n-プロピル、イソプロピル)、ブチル(例えば、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル)およびペンチル(例えば、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル)などが含まれる。アルキル基は、指定された数の炭素原子を有し得る。数字が記号「C」の後に下付き文字で見られる場合、この下付き文字は、より具体的には、特定のアルキルが含み得る炭素原子の数を定義する。例えば、「C1-C6」および「C1-6」という用語は、1~6個の炭素原子を含むアルキルを指し、「C1-C4」および「C1-4」という用語は、1~4個の炭素原子を含むアルキルを指す。
【0027】
「ハロアルキル」または「ヒドロキシアルキル」など、「アルキル」という用語が他の置換基と組み合わせて使用される場合、「アルキル」という用語は、二価飽和の、直鎖または分岐鎖炭化水素基を包含することを意図する。
【0028】
例えば、「ハロアルキル」または「直鎖または分岐鎖ハロアルキル」という用語は、1または2以上のハロゲンで置換された飽和の、直鎖または分岐鎖炭化水素部分を意味することを意図し、ここで、ハロゲンは、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードから独立に選択される。ハロアルキル基は、指定された数の炭素原子を有し得る。例えば、「(C1-C6)ハロアルキル」および「(C1-6)ハロアルキル」という用語は、1~6個の炭素原子を有する飽和の、直鎖または分岐鎖ハロアルキルラジカルを指す。同様に、「(C1-C4)ハロアルキル」および「(C1-4)ハロアルキル」という用語は、1~4個の炭素原子を有する飽和の、直鎖または分岐鎖ハロアルキルラジカルを指す。「フッ化アルキル」または「フルオロアルキル」は、特に、少なくとも1個のフルオロ原子、例えば、1~3個のフルオロ原子、例えば、1個、2個または3個のフルオロ原子で置換された、上記で定義されるような任意のアルキル基を指す。代表的なハロアルキルとしては、限定するものではないが、トリフルオロメチル(-CF3)、テトラフルオロエチル(-CF2CHF2)、ペンタフルオロエチル(-CF2CF3)などが含まれる。
【0029】
「ヒドロキシアルキル」という用語は、1または2個以上のヒドロキシ基で置換された飽和の、直鎖または分岐鎖炭化水素部分を指す。
【0030】
本明細書で使用する場合、「ハロゲン」および「ハロ」という用語は、フルオロ(-F)、クロロ(-Cl)、ブロモ(-Br)およびヨード(-I)を意味する。
【0031】
「ヒドロキシ」または「ヒドロキシル」は、ラジカル-OHを意味することを意図する。
【0032】
「オキソ」は、二重結合した酸素部分を表し、例えば、炭素原子に直接結合している場合は、カルボニル部分(C=O)を形成し、あるいは、NまたはSと結合している場合は、オキシド、例えば、N-オキシド、スルホンまたはスルホキシドを形成する。
【0033】
「シアノ」という用語は、-CNを指す。
【0034】
「アミノ」という用語は、-NH2を指す。アミノ基の1または2個以上の水素原子は、アルキル基などの置換基で置換することができ、「アルキルアミノ」と呼ばれる。アルキルアミノ基は、アルキル基で置換されたアミノ基の一方または両方の水素原子を有し、アルキルアミノ基の窒素原子への結合を介して親分子と結合している。例えば、アルキルアミノは、メチルアミノ(-NHCH3)、ジメチルアミノ(-N(CH3)2)、-NHCH2CH3などを含む。
【0035】
「アルコキシ」は、酸素連結原子を介して結合されたアルキルラジカルを含む基を指し、ここで、アルキルは上記で定義される通りである。アルコキシ基は、指定された数の炭素原子を有し得る。例えば、「(C1-C6)アルコキシ」および「(C1-6)アルコキシ」という用語は、酸素連結原子を介して結合した、1~6個の炭素原子を有するアルキルラジカルを指す。同様に、「(C1-C4)アルコキシ」および「(C1-4)アルコキシ」という用語は、酸素連結原子を介して結合した、1~4個の炭素原子を有するアルキルラジカルを指す。例示的アルコキシ基としては、限定するものではないが、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、s-ブトキシおよびt-ブトキシが含まれる。
【0036】
「ハロアルコキシ」は、アルキル部分が1または2個以上のハロゲンで置換されたアルコキシ基を指し、ここで、ハロゲンは、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードから独立に選択される。ハロアルコキシ基は、指定された数の炭素原子を有し得る。例えば、「(C1-C6)ハロアルコキシ」という用語は、酸素連結原子を介して結合された、1~6個の炭素原子を有するハロアルキルラジカルを指す。代表的なハロアルコキシ基としては、限定するものではないが、ジフルオロメトキシ(-OCHCF2)、トリフルオロメトキシ(-OCF3)、テトラフルオロエトキシ(-OCF2CHF2)などが含まれる。
【0037】
当技術分野で使用される規則に従い、
【化2】
は、本明細書の構造式において、コア、骨格または親分子構造への基、部分または置換基の結合点である結合を表すために使用される。
【0038】
置換基への結合が環の2個の原子を接続する結合をわたるように示される場合、そのような置換基はその環上のいずれの原子とも結合することができる。
【0039】
本明細書で使用する場合、「本発明の化合物」という用語は、任意の形態、すなわち、任意の塩または非塩形態(例えば、遊離酸もしくは塩基形態として、またはその薬学上許容可能な塩として)、任意のその互変異性体、および任意のその物理的形態(例えば、非固体形態(例えば、液体または半固体形態)、および固体形態(例えば、非晶質形態または結晶形態、特定の多形形態、水和物(例えば、一水和物、二水和物および半水和物)を含む溶媒和物))ならびに種々の形態の混合物である、本明細書に開示される式のいずれかの化合物を意味する。
【0040】
本明細書で使用する場合、「置換されていてもよい」という用語は、基(例えば、アルキルなど)が非置換であっても、またはその基が本明細書で定義される1もしくは2個以上の特定の置換基で置換されていてもよいことを意味する。「置換されている」という用語は、基(例えば、アルキルなど)に関して本明細書で使用する場合、総ての正常な原子価が維持され、置換により安定な化合物が得られることを条件として、少なくとも1個の水素原子が非水素基で置換されていることを意味する。基が複数の代替基から選択され得る場合、選択された基は同一であっても異なっていてもよい。例えば、本発明に定義される化合物式の種々の置換基は、置換されいてもよく、限定するものではないが、ハロ、シアノ、アミノ、アルキル、ハロアルキル、アルコキシなどの置換基がある。
【0041】
置換基またはヘテロ原子に関して本明細書で使用される場合「独立に」という用語は、2個以上の置換基またはヘテロ原子がそれぞれ複数の可能性のある置換基またはヘテロ原子から選択される場合、これらの置換基またはヘテロ原子は同一であっても異なっていてもよいことを意味する。
【0042】
化合物
本発明の式(I)の化合物は、Nav1.8阻害剤化合物であるそれらの各親化合物のプロドラッグである。プロドラッグを投与すると、プロ薬物成分が切断され、それにより親化合物が生じる。よって、プロドラッグの投与時のNav1.8阻害活性は、主としてプロドラッグの切断からの親化合物の形成によるものである。
【0043】
本発明のプロドラッグは一般に、対応する親化合物よりも高い水性溶解度を有する。このより高い溶解度は、より高用量のプロドラッグの投与を助け、単位用量当たりの薬物積載量を高める。従って、本発明の式(I)の化合物(すなわち、プロドラッグ)は、静脈内(IV)用製剤および静脈内(IV)投与に有利であり得、よって、急性疼痛の治療など、より高用量の投与またはIV経路による投与が有益であり得る疼痛ならびに疼痛関連疾患、障害および病態の治療における使用に有益である。
【0044】
「プロドラッグ」という用語は、投与および/または吸収の後にin vivoで代謝プロセスを経て親化合物を放出する薬物前駆体である化合物を指す。一般に、プロドラッグは、親化合物よりも生物活性が低い。プロドラッグはまた、低毒性および親化合物の吸収、血液レベル、代謝分布および/または細胞取り込みの制御の向上による望まれない効果の低減など、親化合物の物理的特性および/または有効性も改善し得る。プロドラッグはまた、対応する親化合物よりも高い溶解度を有し得る。
【0045】
「親化合物」および「親薬物」という用語は、代謝もしくは異化プロセスの酵素作用を介して、またはプロドラッグの投与後に化学的プロセスを介して放出される生物学的に活性な実体を指す。親化合物はまた、対応するプロドラッグを調製するための出発物質であり得る。
【0046】
1つの態様において、本発明は、式(I)の化合物:
【化3】
[式中、
X
1は、NまたはCHであり;
R
1は、-PO(OH)
2であり;
R
2は、水素、-(C
1-6)アルキル、-NR
aR
b、ハロまたは-(C
1-6)ハロアルキルであり;
R
3およびR
4のそれぞれは独立に、水素、ハロ、シアノ、-NR
aR
b、-(C
1-6)アルキル、-(C
1-6)ハロアルキル、-O-(C
1-6)アルキルまたは-O-(C
1-6)ハロアルキルであり;
各R
5は独立に、ハロ、-(C
1-6)アルキル、-O(C
1-6)アルキルまたは-O(C
1-6)ハロアルキルであり;
R
6は、水素または-(C
1-6)アルキルであり;
R
7は、水素、-(C
1-6)アルキル、ハロまたは-(C
1-6)ハロアルキルであり;
R
aおよびR
bのそれぞれは独立に、水素または-(C
1-6)アルキルであり;かつ、
nは、0、1または2である。]
またはその薬学上許容可能な塩に関する。
【0047】
式(I)の化合物またはその薬学上許容可能な塩のある実施形態では、X1はNである。
【0048】
式(I)の化合物またはその薬学上許容可能な塩のある実施形態では、X1はCHである。
【0049】
式(I)の化合物またはその薬学上許容可能な塩のある実施形態では、R2は水素である。
【0050】
式(I)の化合物またはその薬学上許容可能な塩のある実施形態では、R2は-(C1-6)アルキルである。
【0051】
式(I)の化合物またはその薬学上許容可能な塩のある実施形態では、R2はCH3である。
【0052】
式(I)の化合物またはその薬学上許容可能な塩のある実施形態では、R2は-NRaRbである。
【0053】
式(I)の化合物またはその薬学上許容可能な塩のある実施形態では、R2は-NH2である。
【0054】
式(I)の化合物またはその薬学上許容可能な塩のある実施形態では、R3は、水素、ハロまたは-(C1-6)ハロアルキルである。
【0055】
式(I)の化合物またはその薬学上許容可能な塩のある実施形態では、R3は、水素、-Cl、または-CF3である。
【0056】
式(I)の化合物またはその薬学上許容可能な塩のある実施形態では、R3は水素である。
【0057】
式(I)の化合物またはその薬学上許容可能な塩のある実施形態では、R3は-Clである。
【0058】
式(I)の化合物またはその薬学上許容可能な塩のある実施形態では、R3は-CF3である。
【0059】
式(I)の化合物またはその薬学上許容可能な塩のある実施形態では、R4は、水素、ハロまたは-(C1-6)ハロアルキルである。
【0060】
式(I)の化合物またはその薬学上許容可能な塩のある実施形態では、R4は、水素、-Clまたは-CF3である。
【0061】
式(I)の化合物またはその薬学上許容可能な塩のある実施形態では、R4は水素である。
【0062】
式(I)の化合物またはその薬学上許容可能な塩のある実施形態では、R4は-Clである。
【0063】
式(I)の化合物またはその薬学上許容可能な塩のある実施形態では、R4は-CF3である。
【0064】
式(I)の化合物またはその薬学上許容可能な塩のある実施形態では、R3およびR4の一方は水素であり、R3およびR4の他方はハロ、シアノ、-NRaRb、-(C1-6)アルキル、-(C1-6)ハロアルキル、-O-(C1-6)アルキルまたは-O-(C1-6)ハロアルキルである。
【0065】
式(I)の化合物またはその薬学上許容可能な塩のある実施形態では、R3およびR4の一方は水素であり、R3およびR4の他方はハロまたは-(C1-6)ハロアルキルである。
【0066】
式(I)の化合物またはその薬学上許容可能な塩のある実施形態では、R3およびR4の一方は水素であり、R3およびR4の他方は-Clまたは-CF3である。
【0067】
式(I)の化合物またはその薬学上許容可能な塩のある実施形態では、各R5は独立に、ハロまたは-O(C1-6)ハロアルキルである。
【0068】
式(I)の化合物またはその薬学上許容可能な塩のある実施形態では、各R5は独立に、-Fまたは-OCF3である。
【0069】
式(I)の化合物またはその薬学上許容可能な塩のある実施形態では、nは1であり、R5は-Fである。
【0070】
式(I)の化合物またはその薬学上許容可能な塩のある実施形態では、nは1であり、R5は-OCF3である。
【0071】
式(I)の化合物またはその薬学上許容可能な塩のある実施形態では、
【化4】
は、構造:
【化5】
を有し、ここで、R
5aは、ハロ、-(C
1-6)アルキル、-O(C
1-6)アルキルまたは-O(C
1-6)ハロアルキルである。
【0072】
式(I)の化合物またはその薬学上許容可能な塩のある実施形態では、R5aは、ハロまたは-O(C1-6)ハロアルキルである。
【0073】
式(I)の化合物またはその薬学上許容可能な塩のある実施形態では、R5aは、-Fまたは-OCF3である。
【0074】
式(I)の化合物またはその薬学上許容可能な塩のある実施形態では、R5aは-Fである。
【0075】
式(I)の化合物またはその薬学上許容可能な塩のある実施形態では、R5aは-OCF3である。
【0076】
式(I)の化合物またはその薬学上許容可能な塩のある実施形態では、
【化6】
は、
【化7】
である。
【0077】
式(I)の化合物またはその薬学上許容可能な塩のある実施形態では、R6は水素である。
【0078】
式(I)の化合物またはその薬学上許容可能な塩のある実施形態では、R6は-(C1-6)アルキルである。
【0079】
式(I)の化合物またはその薬学上許容可能な塩のある実施形態では、R6は、-CH3、-CH2CH3または-CH(CH3)2である。
【0080】
式(I)の化合物またはその薬学上許容可能な塩のある実施形態では、R6は-CH3である。
【0081】
式(I)の化合物またはその薬学上許容可能な塩のある実施形態では、R7は水素である。
【0082】
式(I)の化合物またはその薬学上許容可能な塩のある実施形態では、R7は-(C1-6)アルキルである。
【0083】
式(I)の化合物またはその薬学上許容可能な塩のある実施形態では、R7はハロである。
【0084】
式(I)の化合物またはその薬学上許容可能な塩のある実施形態では、R7は-Fまたは-Clである。
【0085】
式(I)の化合物またはその薬学上許容可能な塩のある実施形態では、
X1はNであり;
R1は-PO(OH)2であり;
R2は水素または-(C1-6)アルキルであり;
R3およびR4の一方は水素であり、R3およびR4の他方はハロまたは-(C1-6)ハロアルキルであり;
R5はハロまたは-O(C1-6)ハロアルキルであり;
R6は-(C1-6)アルキルであり;
R7は水素であり;かつ、
nは1である。
【0086】
式(I)の化合物またはその薬学上許容可能な塩のある実施形態では、
X1はNであり;
R1は-PO(OH)2であり;
R2は-CH3であり;
R3およびR4の一方は水素であり、R3およびR4の他方はハロまたは-(C1-6)ハロアルキルであり;
R5はハロまたは-O(C1-6)ハロアルキルであり;
R6は-(C1-6)アルキルであり;
R7は水素であり;かつ、
nは1である。
【0087】
式(I)の化合物またはその薬学上許容可能な塩のある実施形態では、
X1はNであり;
R1は-PO(OH)2であり;
R2は-CH3であり;
R3およびR4の一方は水素であり、R3およびR4の他方は-Clまたは-CF3であり;
R5は-Fまたは-OCF3であり;
R6は-CH3であり;
R7は水素であり;かつ、
nは1である。
【0088】
式(I)の化合物またはその薬学上許容可能な塩のある実施形態では、
X1はCであり;
R1は-PO(OH)2であり;
R2は水素または-(C1-6)アルキルであり;
R3およびR4の一方は水素であり、R3およびR4の他方はハロまたは-(C1-6)ハロアルキルであり;
R5はハロまたは-O(C1-6)ハロアルキルであり;
R6は-(C1-6)アルキルであり;
R7は水素であり;かつ、
nは1である。
【0089】
式(I)の化合物またはその薬学上許容可能な塩のある実施形態では、
X1はCであり;
R1は-PO(OH)2であり;
R2は-CH3であり;
R3およびR4の一方は水素であり、R3およびR4の他方はハロまたは-(C1-6)ハロアルキルであり;
R5はハロまたは-O(C1-6)ハロアルキルであり;
R6は-(C1-6)アルキルであり;
R7は水素であり;かつ、
nは1である。
【0090】
式(I)の化合物またはその薬学上許容可能な塩のある実施形態では、
X1はCであり;
R1は-PO(OH)2であり;
R2は-CH3であり;
R3およびR4の一方は水素であり、R3およびR4の他方は-Clまたは-CF3であり;
R5は-Fまたは-OCF3であり;
R6は-CH3であり;
R7は水素であり;かつ、
nは1である。
【0091】
別の態様では、本発明は、本発明は、以下から選択される化合物またはその薬学上許容可能な塩に関する。
【0092】
【0093】
塩
それらは薬剤で使用される可能性があるため、式(I)を含む本明細書に開示される式のいずれかの化合物の塩は、好ましくは薬学上許容可能な塩である。薬学上許容可能な塩には、とりわけ、Berge, Bighley and Monkhouse J.Pharm.Sci (1977) 66, pp 1-19に記載されているもの、またはPH Stahl and CG Wermuth, editors, Handbook of Pharmaceutical Salts; Properties, Selection and Use, Second Edition Stahl/Wermuth: Wiley-VCH/VHCA, 2011に列挙されているものが含まれる。薬学上許容可能でない塩も、例えば、本明細書に開示される式のいずれかの化合物またはその薬学上許容可能な塩の調製における中間体として使用可能である。
【0094】
好適な薬学上許容可能な塩としては、酸付加塩または塩基付加塩を含み得る。このような塩基付加塩は、本発明の式(I)を含む本明細書に開示される式のいずれかの化合物と適当な塩基を、場合により有機溶媒などの好適な溶媒中で反応させて塩を得ることにより形成することができ、これを結晶化および濾過を含む種々の方法により単離することができる。
【0095】
このような酸付加塩は、本発明の式(I)を含む本明細書に開示される式のいずれかの化合物と、適当な酸を、場合により有機溶媒などの好適な溶媒中で反応させて塩を得ることにより形成することができ、これを結晶化および濾過を含む種々の方法により単離することができる。
【0096】
塩は、本発明の式(I)を含む本明細書に開示される式のいずれかの化合物の最終的な単離および精製中にin situで生成される場合もある。本発明の式(I)を含む本明細書に開示される式のいずれかの塩基性化合物が塩として単離される場合、その化合物の対応する遊離塩基形態は、塩を無機塩基または有機塩基で処理することを含む当技術分野で公知の任意の好適な方法によって調製され得る。同様に、リン酸基などの酸性官能基を含む、本発明の式(I)を含む本明細書に開示される式のいずれかの化合物が塩として単離される場合、その化合物の対応する遊離酸形態は、塩を無機酸または有機酸で処理することを含む当技術分野で公知の任意の好適な方法によって調製され得る。
【0097】
例えば、本発明の化合物が塩基である(塩基性部分を含む)場合、所望の塩形態は、遊離塩基を、無機酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸など)または有機酸(例えば、酢酸、トリフルオロ酢酸、マレイン酸、コハク酸、マンデル酸、フマル酸、マロン酸、ピルビン酸、シュウ酸、グリコール酸、サリチル酸、ピラノシジル酸(例えば、グルクロン酸またはガラクツロン酸)、α-ヒドロキシ酸(例えば、クエン酸または酒石酸)、アミノ酸(例えば、アスパラギン酸またはグルタミン酸)、芳香族酸(例えば、安息香酸または桂皮酸)、スルホン酸(例えば、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸)など)で処理することを含む、当技術分野で公知の任意の好適な方法によって調製され得る。
【0098】
発明の塩基性化合物が塩として単離される場合、その化合物の対応する遊離塩基形は、塩を無機または有機塩基、好適には、化合物の遊離塩基形態よりもpKaが高い無機または有機塩基で処理することを含む、当技術分野で公知の任意の好適な方法によって調製され得る。
【0099】
本発明の化合物が酸である(酸性部分を含む)場合、所望の塩は、遊離酸をアミン(第1級、第2級または第3級)、水酸化アルカリ金属または水酸化アルカリ土類金属などの無機または有機塩基で処理することを含む、当技術分野で公知の任意の好適な方法によって調製され得る。好適な塩の具体例としては、グリシンおよびアルギニンなどのアミノ酸、アンモニア、第1級、第2級および第3級アミンならびに環状アミン(例えば、エチレンジアミン、ジシクロヘキシルアミン、エタノールアミン、ピペリジン、モルホリンおよびピペラジン)から誘導される有機塩、ならびにナトリウム、カルシウム、カリウム、マグネシウム、マンガン、鉄、銅、亜鉛、アルミニウムおよびリチウムから誘導される無機塩が含まれる。
【0100】
本発明のある種の化合物は、1当量またはそれ以上の酸(化合物が塩基性部分を含む場合)または塩基(化合物が酸性部分を含む場合)と塩を形成することができる。本発明は、その範囲に可能性のある総ての化学量論および非化学量論塩形成を含む。本明細書で定義される式(I)を含む本明細書に開示される式のいずれかの化合物が2または3つ以上の塩基性部分を含む場合、塩形成の化学量論は1当量、2当量またはそれを超える酸を含み得ると理解される。このような塩は、1個、2個またはそれを超える酸対イオンを含み、例えば、二塩酸塩である。本発明の式(I)を含む本明細書に開示される式のいずれかの化合物の薬学上許容可能な塩の化学量論および非化学量論形態は、例えば対イオンが2つ以上の酸性プロトンを含むような亜化学量論塩を含め、本発明の範囲に含まれる。
【0101】
本発明の化合物は酸部分および塩基部分の両方を含み得るので、薬学上許容可能な塩は、これらの化合物をそれぞれアルカリ試薬または酸試薬で処理することによって調製され得る。よって、本発明はまた、本発明の化合物のある薬学上許容可能な塩、例えば塩酸塩の、本発明の化合物の別の薬学上許容可能な塩、例えばナトリウム塩への変換を提供する。
【0102】
代表的な薬学上許容可能な酸付加塩としては、限定するものではないが、4-アセトアミド安息香酸塩、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩(ベシル酸塩)、安息香酸塩、重硫酸塩、重酒石酸塩、酪酸塩、エデト酸カルシウム、樟脳酸塩、カンファースルホン酸塩(カンシル酸塩)、カプリン酸塩(デカン酸塩)、カプロン酸塩(ヘキサン酸塩)、カプリル酸塩(オクタン酸塩)、桂皮酸塩、クエン酸塩、シクラミン酸塩、ジグルコン酸塩、2,5-ジヒドロキシ安息香酸塩、ジコハク酸塩、ドデシル硫酸塩(エストール酸塩)、エデト酸塩(エチレンジアミン四酢酸塩)、エストール酸塩(ラウリル硫酸塩)、エタン-1,2-ジスルホン酸塩(エジシル酸塩)、エタンスルホン酸塩(エシル酸塩)、ギ酸塩、フマル酸塩、ガラクタル酸塩(ムチン酸塩)、ゲンチジン酸塩(2,5-ジヒドロキシ安息香酸塩)、グルコヘプトン酸塩(グルセプト酸塩)、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、グルタミン酸塩、グルタル酸塩、グリセロリン酸塩、グリコール酸塩、ヘキシルレゾルシン酸塩、馬尿酸塩、ヒドラバミン(N,N’-ジ(デヒドロアビエチル)-エチレンジアミン)、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヨウ化水素酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、イソ酪酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩(メシル酸塩)、メチル硫酸塩、ムチン酸塩、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸塩(ナパジシル酸塩)、ナフタレン-2-スルホン酸塩(ナプシル酸塩)、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、p-アミノベンゼンスルホン酸塩、p-アミノサリシクラート(p-aminosalicyclate)、パモ酸塩(エンボン酸塩)、パントテン酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、フェニル酢酸塩、フェニルエチルバルビタール酸塩、リン酸塩、ポリガラクツロン酸塩、プロピオン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩(トシル酸塩)、ピログルタミン酸塩、ピルビン酸塩、サリチル酸塩、セバシン酸塩、ステアリン酸塩、スバセチン酸塩、コハク酸塩、スルファミン酸塩、硫酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクル酸塩(8-クロロテロフィリン酸塩)、チオシアン酸塩、トリエチオジド、ウンデカン酸塩、ウンデシレン酸塩および吉草酸塩が含まれる。
【0103】
代表的な薬学上許容可能な塩基付加塩としては、限定するものではないが、アルミニウム、2-アミノ-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール(TRIS、トロメタミン)、アルギニン、ベネタミン(N-ベンジルフェネチルアミン)、ベンザチン(N,N’-ジベンジルエチレンジアミン)、ビス-(2-ヒドロキシエチル)アミン、ビスマス、カルシウム、クロロプロカイン、コリン、クレミゾール(1-pクロロベンジル-2-ピロリルジン-1’-イルメチルベンズイミダゾール)、シクロヘキシルアミン、ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、ジエチルトリアミン、ジメチルアミン、ジメチルエタノールアミン、ドーパミン、エタノールアミン、エチレンジアミン、L-ヒスチジン、鉄、イソキノリン、レピジン、リチウム、リシン、マグネシウム、メグルミン(N-メチルグルカミン)、ピペラジン、ピペリジン、カリウム、プロカイン、キニーネ、キノリン、ナトリウム、ストロンチウム、t-ブチルアミンおよび亜鉛が含まれる。
【0104】
特定の実施形態では、本発明は、式(I)の化合物の薬学上許容可能な塩を提供する。例えば、R1(-PO(OH)2)のリン酸基は、陽イオン種との塩形成(すなわち、塩基付加塩)に特に関与しやすい酸性部分である。上記に挙げた塩基付加塩はいずれも、本発明の式(I)の化合物の薬学上許容可能な塩を形成するために使用可能である。それに加えてまたはその代わりに、式(I)の化合物の他の官能基も、上記のものなどの酸および/または塩基付加塩との塩形成に関与し得る。
【0105】
式(I)の化合物の薬学上許容可能な塩のある実施形態では、R1は、-P(O)(OH)O-M+、-PO(O-)2・2M+または-PO(O-)2・D2+であり;
各M+は独立に薬学上許容可能な一価陽イオンであり;かつ、
D2+は薬学上許容可能な二価陽イオンである。
【0106】
いくつかの実施形態では、本発明における使用に好適な一価陽イオン(M
+)は、限定するものではないが、アルカリ金属イオン、例えば、リチウム(Li
+)、ナトリウム(Na
+)、カリウム(K
+)など;アンモニウムイオン(例えば、-N(R
a)
4、ここで、各R
aは独立に、水素、シクロヘキシルまたは-(C
1-6)アルキルであり、-(C
1-6)アルキルは、1個または2個以上の、好適には1~6個の-OH基で置換されていてもよい)、例えば、NH
4
+、エタノールアミンイオン:
【化8】
、N-メチル-D-グルカミンイオン、ジシクロヘキシルアミンイオンなどが挙げられる。2つのM
+が存在する場合、各M
+は独立に一価陽イオンであり、各M
+は同じまたは異なり、好ましくは、各M
+は同じである。
【0107】
ある実施形態では、各M+は独立にアルカリ金属イオンである。
【0108】
ある実施形態では、各M+は独立にLi+、Na+またはK+である。
【0109】
ある実施形態では、各M+は独立にNH4
+である。
【0110】
ある実施形態では、各M
+は独立に
【化9】
(エタノールアミンイオン)である。
【0111】
いくつかの実施形態では、本発明における使用のために好適な二価陽イオン(D2+)としては、限定するものではないが、アルカリ土類金属イオン、例えば、マグネシウム(Mg2+)、カルシウム(Ca2+)、ストロンチウム(Sr2+)など;二価アルミニウムイオンなどが挙げられる。
【0112】
ある実施形態では、D2+はアルカリ土類金属イオンである。
【0113】
ある実施形態では、D2+はMg2+またはCa2+である。
【0114】
本発明における使用のために好適な他の一価および二価陽イオンとしては、アルギニン、リシン、オルニチンの一価または二価イオンなどのアミノ酸イオンの一価または二価イオンなどが挙げられる。塩基性窒素含有基を含む一価および二価陽イオンは、低級アルキルハリド(例えば、メチル、エチル、プロピルおよびブチルの塩化物、臭化物およびヨウ化物)、硫酸ジアルキル(例えば、硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、硫酸ジブチルおよび硫酸ジアミル)などの薬剤で四級化することにより調製することができる。
【0115】
鏡像異性体、ジアステレオマーおよび多形体
式(I)を含む本明細書に開示される式のいずれかに従う化合物または本発明のその薬学上許容可能な塩は、1または2以上の不斉中心(すなわち、キラル中心とも呼ばれる)を含んでもよく、従って、光学形態で(例えば、別個の鏡像異性体、ジアステレオマーもしくはその他の立体異性体として、またはそれらの混合物として)、およびラセミ形態で存在し得る。これらの別個の化合物、立体異性体およびそれらの混合物は総て、本発明の範囲に含まれる。
【0116】
キラル炭素原子などのキラル中心はまた、アルキル基などの置換基に存在してもよい。式(I)を含む本明細書に開示される式または本発明のその薬学上許容可能な塩のいずれかまたは本明細書に示される任意の化学構造に存在するキラル中心の立体化学が明示されていない場合、その構造は総ての個々の立体異性体および総てのその混合物を包含することを意図する。よって、1または2以上のキラル中心を含む本発明の化合物またはその薬学上許容可能な塩は、ラセミ混合物、鏡像異性体的に富化された混合物または鏡像異性体的に純粋な別個の立体異性体として使用され得る。
【0117】
1または2以上の不斉中心を含む、式(I)を含む本明細書に開示される式のいずれかに従う化合物、または本発明のその薬学上許容可能な塩の別個の立体異性体は、当業者に公知の方法によって分割され得る。例えば、このような分割は、
(1)ジアステレオ異性体塩、複合体もしくはその他の誘導体の形成;
(2)立体異性体特異的試薬との選択的反応、例えば、酵素的酸化もしくは還元;または
(3)キラル環境における(例えば、キラルリガンドが結合したシリカなどのキラル支持体上での、またはキラル溶媒の存在下での)、気液クロマトグラフィーもしくは液体クロマトグラフィー
により行うことができる。当業者ならば、所望の立体異性体が上記の分割手順の1つによって別の化学実体(chemical entity)に変換される場合、所望の形態を遊離させるためにさらなる工程が必要とされることを認識するであろう。
【0118】
あるいは、特定の立体異性体は、光学的に活性な試薬、基質、触媒もしくは溶媒を使用する不斉合成によって、または不斉変換により一方の鏡像異性体をもう一方の鏡像異性体に変換することによって合成され得る。
【0119】
開示される化合物またはその塩が構造によって命名または描写される場合、その化合物または塩(その溶媒和物(特に、水和物)を含む)は、結晶形、非結晶形またはそれらの混合物で存在し得ることが理解されるべきである。化合物またはその塩もしくは溶媒和物(特に、水和物)はまた、多形(すなわち、異なる結晶形で存在する能力)を示し得る。これらの異なる結晶形は一般に、「多形体」として知られる。
【0120】
構造によって命名または描写される場合、開示される化合物またはその溶媒和物(特に、水和物)はその総ての多形体の含むことが理解されるべきである。
【0121】
多形体は同じ化学組成を持つが、パッキング、幾何学的配置、および結晶固体状態のその他の記述的性質が異なる。従って、多形体は、形状、密度、硬度、変形性、安定性および溶解特性などの物理的性質が異なる場合がある。多形体は通常、異なる融点、IRスペクトルおよびX線粉末回折パターンを示し、これらを同定に使用することができる。当業者ならば、例えば、化合物の結晶化/再結晶に使用する条件を変更または調整することにより、異なる多形体を製造できることを認識するであろう。
【0122】
溶媒和物
本発明の化合物またはその薬学上許容可能な塩は、溶媒和形態および非溶媒和形態で存在し得る。結晶形にある、本発明の化合物またはその薬学上許容可能な塩の溶媒和物について、当業者は、結晶化の際に溶媒分子が結晶格子に組み込まれた薬学上許容可能な溶媒和物が形成され得ることを認識するであろう。溶媒和物は、エタノール、イソプロパノール、DMSO、酢酸、エタノールアミンおよび酢酸エチルなどの非水性溶媒を含む場合もあるし、または結晶格子に組み込まれる溶媒として水を含む場合もある。水が結晶格子に組み込まれる溶媒である溶媒和物は、一般に「水和物」と呼ばれる。水和物としては、化学量論水和物ならびに種々の量の水を含む組成物が含まれる。
【0123】
重水素化化合物
本発明はまた、式(I)を含む本明細書に開示される式のいずれかの化合物または本発明のその薬学上許容可能な塩の種々の重水素化形態を含む。炭素原子と結合している各利用可能な水素原子は、重水素原子で独立に置換されてもよい。
【0124】
当業者ならば、式(I)を含む本明細書に開示される式のいずれかの化合物または本発明のその薬学上許容可能な塩の重水素化形態を合成する方法を知っている。例えば、アルキル基などの重水素化材料は、従来の技術(例えば、Aldrich Chemical Co.、ミルウォーキー、WI、カタログ番号489,689-2から入手可能なメチル-d3-アミン)によって調製可能である。
【0125】
同位体
本発明はまた、1または2以上の原子が自然界に最もよく見られる原子質量または質量数と異なる原子質量または質量数を有する原子で置換されていること以外は、式(I)を含む本明細書に開示される式のいずれかに列挙されているものまたは本発明のその薬学上許容可能な塩と同一である同位体標識化合物も含む。
【0126】
本発明の化合物に組み込むことができる同位体の例としては、水素、炭素、窒素、酸素、フッ素、ヨウ素および塩素の同位体、例えば、3H、11C、14C、18F、123Iまたは125Iが含まれる。
【0127】
上述の同位体および/または他の原子の他の同位体を含む本発明の化合物およびその化合物の薬学上許容可能な塩は、本発明の範囲内にある。本発明の同位体標識化合物、例えば、3Hまたは14Cなどの放射性同位体が組み込まれているものは、薬剤および/または基質組織分布アッセイにおいて有用である。トリチウム化、すなわち、3H同位体、および炭素-14、すなわち、14C同位体は、調製が容易で検出力があるために特に好ましい。11C同位体および18F同位体は、PET(陽電子放射断層撮影法)において特に有用である。
【0128】
純度
本発明の化合物は医薬組成物での使用を意図しているため、それらはそれぞれ実質的に純粋な形態、例えば少なくとも純度60%、より好適には少なくとも純度75%、好ましくは少なくとも純度85%、特に少なくとも純度98%の形態で提供されることが好ましいことが容易に理解されるであろう(%は重量対重量基準である)。化合物の不純調製物は、医薬組成物に使用されるより純粋な形態を調製するために使用することができる。
【0129】
式(I)を含む本明細書に開示される式のいずれかの化合物または本発明のその薬学上許容可能な塩は、立体異性体、位置異性体またはジアステレオ異性体の形態で存在し得ることが認識されるであろう。
【0130】
互変異性体
さらに、本発明の化合物は、互変異性体または互変異性体形態として存在し得る。互変異性体は、容易に相互変換する化学化合物の構造異性体または構成異性体であると、化学技術分野では従来から理解されている。この反応は一般にプロトンの再配置をもたらす。構造異性体または構成異性体(IUPACによる)は、同じ分子式を持つ分子が異なる結合パターンおよび原子構成を持つ異性体の一種であり、分子結合が常に同じ順序で空間的配置のみが異なる立体異性体とは対照的である。互変異性化という概念は、互変異性(tautomerism)と呼ばれる。この2つを相互に変換する化学反応は互変異性化と呼ばれる。互変異性体を、化学共鳴における「寄与構造」の描写と混同しないよう注意が必要である。互変異性体は別個の化学種であり、従って分光学的データの違いによって識別することができるが、共鳴構造は単に利便的な描写であって物理的には存在しない。
【0131】
合成スキームおよび調製の一般法
本発明はまた、式(I)を含む本明細書に開示される式のいずれかの化合物または本発明のその薬学上許容可能な塩を作製する工程に関する。
【0132】
本明細書に開示される式のいずれかの化合物または本発明のその薬学上許容可能な塩は、以下のスキームに記載されるような、より具体的には、本明細書の実施例のセクションに従う例示的化合物により例示されるような従来の有機合成を用いて、または有機化学者の知識を利用することにより、任意の数の工程により作製することができる。好適な合成経路は、以下の一般反応スキームで表される。
【0133】
これらのスキームに示される合成は、本明細書で概要を示した反応との適合を得るために必要であれば適宜保護された適当な前駆体を用いて、定義される様々な異なる官能基を有する本明細書に開示される式のいずれかにより定義される本発明の化合物を生成するために適用できる。これらのスキームはそこに定義される化合物でのみ示されるが、それらは本発明の化合物を作製するために使用可能な工程の例示である。
【0134】
中間体(本発明の化合物の調製において使用される化合物)はまた、塩としても存在し得る。よって、中間体に関して、「式(数字)の化合物」という句は、その構造式を有する化合物またはその薬学上許容可能な塩を意味する。
【0135】
本発明の化合物は、以下のスキームに示される手順を用いて、または当業者に公知の適当な合成有機化学手順および方法論を適用することにより得ることができる。
【0136】
これらのスキームに示される方法は、適当な前駆体を用いて、様々な異なるX1、R1、R2、R3、R4、R5およびR6基(式(I)の化合物に関して上記に示される説明)を含む本発明の化合物を調製するために使用可能である。
【0137】
当業者ならば、本発明の化合物(例えば、式(I)の化合物またはその薬学上許容可能な塩)の調製において、望ましくない副反応を避けるために、分子または適当な中間体の1または2以上の感受性基を保護することが必要であるおよび/または望ましい場合があることを認識するであろう。当業者ならば、本明細書に記載の置換基が本明細書に記載の合成方法と適合しない場合、その置換基はそれらの反応条件に対して安定である好適な保護基で保護してもよいことを認識するであろう。保護基は、所望の中間体または目的化合物を提供するために一連の反応の適切な時点で除去することができる。本発明に従って使用するために好適な保護基は当業者に周知であり、従来の方法で使用可能である。例えば、T.W. Green and P.G.M Wetsによる“Protective Groups in Organic Synthesis”(Wiley & Sons, 1991)またはP. J. Kocienskiによる“Protecting Groups”(Georg Thieme Verlag, 1994)。必要であれば、次に脱保護により、一般に開示されている性質の化合物が得られる。
【0138】
場合によって、置換基は、使用する反応条件下で反応性があるように特に選択することができる。これらの状況下で、これらの反応条件は、選択された置換基を中間体化合物として有用であるかまたは目的化合物における所望の置換基である別の置換基に変換する。
【0139】
以下に示すスキームは式(I)の化合物を調製するための代表的な方法であるが、それらは本発明の化合物を作製するために使用可能な工程の例示であることを意図するにすぎない。
【0140】
化合物名は、マサチューセッツ州ウォルサム、ウィンターストリート940のPerkin Elmerから入手可能なソフトウエア命名プログラムChemDraw Ultra v12.0(http://www.perkinelmer.com/)を用いて生成した。
【0141】
【0142】
本発明の化合物の調製は一般に、N-置換-2-アミノ芳香族酸誘導体I-4の合成で始まる(スキームI)。適宜置換された2-ハロ芳香族酸を標準的な条件下でエステル化すると対応するエステルI-2が得られる。一般に、エステル化反応は、酸性条件でアルコールの存在下、または塩基性条件で、好適なアルキルハリドの存在下で行われる。2-ハロ芳香族エステルI-2(X2=Cl、BrまたはI)を適当なアニリンまたはアミン(R5’-NH2、ここで、R5’は置換フェニル基である)と反応させると、対応するN-置換-2-アミノ芳香族エステルI-3が得られる。一般に、この反応は、高温下、標準的な加熱またはマイクロ波照射を用い、適当な溶媒中(例えば、1,4-ジオキサン、トルエンまたは2-エトキシエタノール中)、触媒(例えば、Pd2(dba)3またはCu/CuO)、好適なリガンド(例えば、BINAPまたはXantphos)および無機塩基(一般にCs2CO3またはK2CO3)の存在下で行われる。
【0143】
エステルI-3の対応するN-置換-2-アミノ芳香族酸誘導体I-4への鹸化は一般に、標準的な塩基性条件下、好適な溶媒または溶媒系、例えば、メタノール/H2O、エタノール/H2O、またはTHF/H2O中、LiOH、KOHまたはNaOHなどの塩基を用いて行われる。このような条件は当業者に周知である。
【0144】
【0145】
スキームIに示されるように調製された中間体N-置換-2-アミノ芳香族酸誘導体I-4は、スキームIIに概説するように化合物II-2に変換することができる。当業者に公知の種々のアミドカップリング条件下で、I-4と置換メトキシピリジルアミンII-3をカップリングすると、対応するアミドII-1が得られる。例えば、好適な溶媒、一般にDMF、DMAまたはアセトニトリル中、トリエチルアミンまたはューニッヒ塩基(ジイソプロピルエチルアミン)のようなアミン塩基の存在下で、EDC/HOBT、HATU、HBTUまたはT3Pのような標準的なカップリング試薬を使用することができる。あるいは、塩化チオニルまたは塩化オキサリルなどの試薬を用い、酸を対応する酸塩化物に変換し、次に、ジクロロメタンまたはピリジンなどの適当な溶媒中、ピリジン、2,6-ルチジン、トリエチルアミンまたはヒューニッヒ塩基などの酸スカベンジャーまたは塩基の存在下で、この酸塩化物を置換メトキシピリジルアミンII-3と反応させて所望のカップリング生成物II-1を得ることができる。
【0146】
中間体II-2の場合と同様に、このジヒドロキナゾリノン環系の形成は、中間体II-1とホルムアルデヒドまたは好適な等価物との反応を含む。例えば、この反応は、酸、好ましくは、PTSAまたは硫酸の存在下、気体ホルムアルデヒドとしてのホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒドまたはs-トリオキサンを用いて行うことができる。あるいは、このジヒドロキナゾリノン環系は、ホルムアルデヒド等価物としてのジヨードメタンまたはクロロヨードメタンを用いたII-1の反応によって形成することができる。環化反応のこの変形形態では、好適な溶媒、多くの場合、アセトニトリルまたはDMF中で、塩基、一般にCs2CO3またはNaHを使用する。ホルムアルデヒドまたはジヨードメタンの使用の選択は、中間体II-1の特定の反応性の特徴によって異なる。
【0147】
【0148】
’
スキームIおよびIIに記載の方法の変形形態では、本発明の化合物は、スキームIIIに示すように調製することができる。当業者に公知の種々のアミドカップリング条件下での中間体III-1(一般に、商業的供給源から得られる)と置換メトキシピリジルアミンII-3のカップリングにより、対応するアミドIII-2が得られる。アミドを形成するための一般条件は、スキームIIに記載されている。次に、スキームIでI-2からI-3への変換に関して記載したものと同様の条件下で、アミドIII-2を適当なアニリンまたはアミン(R5’-NH2)と反応させて中間体II-1を得ることができる。その後、スキームIIに示す方法に従って、中間体II-1を化合物II-2に変換することができる。
【0149】
【0150】
スキームIVに示されるように、化合物II-2からピリドンIV-1への変換は、高温下、アセトニトリルのような中性溶媒中で、化合物II-2と、TMS-クロリドおよびNaIの混合物またはTMS-ヨージド溶液とを反応させることにより達成することができる。EtOAcおよびDMFなどの好適な溶媒中、DABCOなどの有機塩基の存在下、化合物IV-1をクロロギ酸クロロメチルと反応させてクロロメチルピリドンIV-2を得ることができる。高温下、溶媒DMF中、TBAIなどの相間移動触媒の存在下、化合物IV-2をリン酸カリウムジ-tert-ブチルと反応させると化合物IV-3が得られる。アセトニトリルおよび水中、酢酸などの酸性条件下でtert-ブチル保護基を除去すると、本発明のプロドラッグ化合物が得られる。
【0151】
医薬組成物、投与経路および用量
本発明の化合物は、対象に投与する前に医薬組成物中に調合することができる。1つの態様によれば、本発明は、本発明の化合物(すなわち、式(I)を含む本明細書に開示される式のいずれかによって定義される化合物または本発明のその薬学上許容可能な塩)および1または2以上の薬学上許容可能な賦形剤を含んでなる医薬組成物を提供する。1つの態様によれば、本発明は、本発明の化合物(すなわち、式(I)を含む本明細書に開示される式のいずれかによって定義される化合物またはその薬学上許容可能な塩)および薬学上許容可能な賦形剤を含んでなる医薬組成物を提供する。
【0152】
別の態様では、本発明は、式(I)の化合物または本発明のその薬学上許容可能な塩;薬学上許容可能な賦形剤;および場合により、1または2以上の他の治療成分を含んでなる医薬組成物または製剤に関する。
【0153】
本明細書で定義される医薬組成物または製剤は一般に、1種類の本発明の化合物を含有する。しかしながら、特定の実施形態では、医薬組成物は、2種類以上の本発明の化合物を含有してもよい。さらに、本発明の医薬組成物は場合により、1または2以上の付加的な薬学上有効な化合物をさらに含んでなり得る。
【0154】
薬学上許容可能な賦形剤は、非毒性であり、有効成分の有効性に干渉してはならない。好適な薬学上許容可能な賦形剤は、選択される特定の投与形、投与経路などによって異なる。好適な薬学上許容可能な賦形剤としては、以下のタイプの賦形剤:希釈剤、担体、増量剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、流動促進剤、造粒剤、コーティング剤、湿潤剤、溶媒、補助溶媒、沈殿防止剤、乳化剤、甘味剤、香味剤、矯味剤、着色剤、固化防止剤、保湿剤、キレート剤、可塑剤、増粘剤、抗酸化剤、保存剤、安定剤、界面活性剤および緩衝剤が挙げられる。薬学上許容可能な賦形剤の例は、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences (Mack Publishing Company)、The Handbook of Pharmaceutical Additives (Gower Publishing Limited)およびThe Handbook of Pharmaceutical Excipients (the American Pharmaceutical Association and the Pharmaceutical Press)に記載されている。
【0155】
医薬組成物は、任意の適当なまたは好適な経路、例えば、全身投与(例えば、経口投与、非経口投与、経皮投与、直腸投与、吸入)、局所投与などによる投与に適合させることができる。非経口投与は一般に注射または注入による投与であり、静脈内、筋肉内および皮下注射または注入が含まれる。吸入は、口腔を介した吸入であれ鼻道を介した吸入であれ、患者の肺への投与を指す。一般に、投与は、経口経路または非経口経路を介する。
【0156】
経口投与に適合した医薬組成物は、錠剤、カプセル剤、カプレット剤、トローチ剤、丸剤等の固体投与形;散剤;または溶液、懸濁液、シロップ、エリキシルまたはエマルションなどの液体投与形として提供することができる。非経口投与(例えば、静脈内投与)に適合した医薬組成物は、溶液、懸濁液および再構成用粉末として提供することができる。
【0157】
一般に、本発明の医薬組成物は、従来の材料および混合、ブレンドなどの技術を用いて調製される。当技術分野で慣用される方法のいくつかは、Remington’s Pharmaceutical Sciences (Mack Publishing Company)に記載されている。
【0158】
錠剤およびカプセル剤などの固体経口投与形は、本発明の化合物を希釈剤および増量剤(例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムなど)、結合剤(例えば、デンプン、アラビアガム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、結晶性セルロースなど)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルクなど)などの賦形剤と混合することにより調製することができる。
【0159】
非経口投与に適合する医薬組成物は、散剤、顆粒剤または錠剤から、蒸留水、生理食塩水などの担体と混合することにより調製された注射溶液であり得、pH調整に塩基などを使用することができる。
【0160】
1つの実施形態では、本発明の医薬組成物は、経口投与用に調合される。
【0161】
別の実施形態では、本発明の医薬組成物は、非経口投与、特に静脈内投与用に調合される。
【0162】
本発明はまた、0.5~1,000mgの本発明の化合物(すなわち、式(I)を含む本明細書に開示される式のいずれかの化合物または本発明のその薬学上許容可能な塩)と0.5~1,000mgの薬学上許容可能な賦形剤とを含んでなる医薬組成物も提供する。
【0163】
本明細書で定義される本発明の化合物および医薬組成物は、1回投与することができ、あるいは、複数の用量が様々な時間間隔で所与の期間投与される投与計画に従って投与することができる。例えば、用量は、1日に1回、2回、3回または4回投与することができる。用量は、所望の治療効果が達成されるまでまたは所望の治療効果を無期限に維持するために投与することができる。本発明の化合物の用量は、0.001mg/kg~100mg/kg、例えば、0.001mg/kg~50mg/kgであり得る。好ましくは、選択される用量は、経口または静脈内投与される。
【0164】
製造および/または疾患の治療における使用のための方法、使用、化合物
一般に、本発明はまた、医薬としての使用または療法における使用のための本明細書で定義される本発明の化合物および/または医薬組成物に関する。
【0165】
本明細書で定義される本発明の化合物は、電位依存性ナトリウムイオンチャネル、特に、電位依存性ナトリウムイオンチャネルNav1.8の阻害剤である。Nav1.8の阻害剤として本発明で使用される化合物の活性は、一般に本明細書の実施例に記載される方法に従って、または当業者に利用可能な方法に従ってアッセイすることができる。
【0166】
よって、1つの態様において、本発明は、電位依存性ナトリウムイオンチャネル、特に、Nav1.8の阻害剤としての本発明の化合物および医薬組成物に関する。
【0167】
1つの実施形態では、本発明は、それを必要とする対象において電位依存性ナトリウムイオンチャネルを阻害する方法であって、対象に有効量の本明細書に記載される本発明の化合物または本発明の医薬組成物を投与することを含んでなる方法に関する。1つの実施形態では、電位依存性ナトリウムチャネルはNav1.8である。
【0168】
実施形態では、本発明は、電位依存性ナトリウムイオンチャネルの阻害における使用のための本発明の化合物または本発明の医薬組成物に関する。1つの実施形態では、電位依存性ナトリウムチャネルはNav1.8である。
【0169】
1つの実施形態では、本発明は、電位依存性ナトリウムイオンチャネルを阻害するための医薬の製造における本発明の化合物または本発明の医薬組成物に関する。1つの実施形態では、電位依存性ナトリウムチャネルはNav1.8である。
【0170】
いずれの特定の理論にも縛られるものではないが、本発明の化合物および組成物は、Nav1.8の活性化または活性亢進が疾患、病態または障害に関与する疾患、病態または障害を治療するために特に有用である。Nav1.8の活性化または活性亢進が特定の疾患、病態または障害に関与する場合、その疾患、病態または障害は、「Nav1.8介在疾患、病態または障害」とも呼ぶことができる。例示的なNav1.8介在疾患、障害および病態には、疼痛ならびに疼痛関連疾患、障害および病態、ならびに心血管疾患、障害および病態、例えば心房細動が含まれる。
【0171】
よって、別の態様において、本発明は、疼痛または疼痛関連疾患、障害もしくは病態を治療するため、ならびに/または心血管疾患、障害および病態を治療するための方法および医薬における本発明の化合物および医薬組成物の使用に関する。
【0172】
本明細書で使用する場合、それを必要とする「患者」または「対象」は、ヒトまたは哺乳動物を指す。「哺乳動物」という用語は、本明細書で使用する場合、いずれの哺乳動物も包含する。哺乳動物の例としては、限定するものではないが、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ネコ、イヌ、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、および非ヒト霊長類(NHP)、例えば、サルまたは無尾猿、ヒトなどが挙げられる。好適には、治療される対象はヒトである。
【0173】
本明細書で使用する場合、疾患、障害または病態に関して使用される「治療(“treat”, “treating”, and/or “treatment”)」という用語は、病態もしくは病態の生物学的発現の1もしくは2以上を改善もしくは予防すること;病態に至るもしくは病態の原因となる生物学的カスケードの1もしくは2以上の点に干渉すること;病態に関連する症状もしくは効果のうち1もしくは2以上を緩和すること;病態もしくは病態の生物学的発現のうち1もしくは2以上の進行を緩徐化すること;または病態もしくは病態に関連する1もしくは2以上の症状もしくは影響の重症度を弱めることを意味する。前述のように、疾患、障害または病態の「治療」には、病態の予防を含む。当業者ならば、「予防」は、絶対的な用語ではないことを認識するであろう。医学において、「予防」は、病態またはその生物学的発現の可能性または重篤度を実質的に低減するため、またはそのような病態またはその生物学的発現の発症を遅延させるための薬物の予防的投与を指すものと理解される。
【0174】
本明細書で使用する場合、「有効量」および「治療上有効な量」は互換的に使用される。本発明の化合物に関して有効量は、健全な医学的判断の範囲内で患者の病態を治療するのに十分であるが、重大な副作用を避ける(合理的なベネフィット/リスク比で)のに十分低い化合物の量を意味する。化合物または本発明のその薬学上許容可能な塩および/またはその対応する互変異性またはその対応する医薬組成物の有効量は、選択される特定の化合物(例えば、化合物の効力、有効性および半減期を考慮する);選択される投与経路;治療される病態;治療される病態の重症度;治療される患者または対象の年齢、大きさ、体重および身体的状態;治療される患者または対象の病歴;治療の期間;併用療法の性質;所望の治療効果などの因子によって異なる。
【0175】
本発明の実施形態によれば、疼痛関連疾患、障害または病態は、本開示に記載されるような様々な病因の種々の疾患のいずれかにより引き起こされる疼痛である。いくつかの実施形態では、疼痛または疼痛関連疾患、障害もしくは病態は、神経因性疼痛、慢性疼痛、急性疼痛、侵害受容性疼痛、炎症性疼痛、筋骨格痛、内臓痛、癌性疼痛、特発性疼痛、多発性硬化症、シャルコー・マリー・トゥース症候群または失禁(incontinence)である。
【0176】
いくつかの実施形態では、疼痛または疼痛関連疾患、障害もしくは病態は急性疼痛である。
【0177】
いくつかの実施形態では、疼痛または疼痛関連疾患、障害もしく病態は、神経因性疼痛または慢性神経因性疼痛である。
【0178】
いくつかの実施形態では、疼痛または疼痛関連疾患、障害もしくは病態は、小径線維神経障害、小径線維介在糖尿病性神経障害、特発性小径線維神経障害、有痛性糖尿病性神経障害または多発神経障害から選択される神経因性疼痛または慢性神経因性疼痛である。
【0179】
いくつかの実施形態では、疼痛または疼痛関連疾患、障害もしくは病態は、帯状疱疹後神経痛、糖尿病性神経痛、有痛性HIV関連感覚神経障害、三叉神経痛、口内灼熱症候群、切断後疼痛、幻痛、有痛性神経腫、外傷性神経腫、モートン神経、神経陥入損傷、脊柱管狭窄症、手根管症候群、根性痛、坐骨神経痛疼痛、神経剥離損傷、腕神経叢剥離、複合性局所疼痛症候群、薬物療法誘発神経痛、癌化学療法誘発神経痛、抗レトロウイルス療法誘発神経痛、脊髄損傷後疼痛、特発性特発性小径線維神経障害、特発性感覚神経障害または三叉神経自律神経性頭痛から選択される神経因性疼痛である。
【0180】
いくつかの実施形態では、疼痛または疼痛関連疾患、障害もしくは病態は、糖尿病性末梢神経障害、神経障害、神経学的損傷またはニューロン損傷により引き起こされる疼痛、疼痛関連神経損傷、神経痛および関連の急性または慢性疼痛、帯状疱疹後神経痛、疼痛関連神経根剥離、有痛性外傷性単神経障害、有痛性多発神経障害、紅痛症、発作性激痛症(PEPD)、口内灼熱症候群、神経系レベルの病変、外傷性神経損傷、神経圧迫または神経陥入により引き起こされる中枢痛症候群、先天性疼痛不感症(CIP)、月経困難症、一次紅痛症、HIV末梢感覚神経障害、陰部神経痛、脊髄神経損傷、慢性炎症性脱髄性多発神経障害(CIDP)、手根管症候群および血管炎性神経障害から選択される神経因性疼痛または慢性神経因性疼痛である。
【0181】
いくつかの実施形態では、疼痛または疼痛関連疾患、障害もしくは病態は内臓痛であり、内臓痛は、炎症性腸疾患疼痛、クローン病疼痛または間質性膀胱炎疼痛である。
【0182】
いくつかの実施形態では、疼痛または疼痛関連疾患、障害もしくは病態は筋骨格痛であり、筋骨格痛は、変形性関節症疼痛、背痛、感冒疼痛、火傷痛または歯痛である。
【0183】
いくつかの実施形態では、疼痛または疼痛関連疾患、障害もしくは病態は特発性疼痛であり、特発性疼痛は、線維筋痛症疼痛である。
【0184】
いくつかの実施形態では、疼痛または疼痛関連疾患、障害もしくは病態は、慢性もしくは急性術前関連疼痛または慢性もしくは急性術後関連疼痛である。術後関連痛には、外来術後痛が含まれる。外来患者手術としても知られる外来手術は、病院または他の医療施設で一泊する必要のない同日の手術を指す。いくつかの実施形態では、術前関連疼痛は、神経因性疼痛もしくは慢性神経因性疼痛、慢性変形性関節症疼痛、歯痛痛または炎症性疼痛から選択される。いくつかの実施形態では、術後関連疼痛は、外反母趾切除痛、ヘルニア修復痛(hernia repair pair)、乳房手術痛または美容外科手術痛から選択される。
【0185】
いくつかの実施形態では、疼痛または疼痛関連疾患、障害もしくは病態は、外傷または医原性医療処置または歯科処置により引き起こされる疼痛である。本明細書で使用する場合、「医原性」という用語は、外科医または歯科医などの医療または歯科医療従事者が、医療もしくは歯科治療中または診断処置中に不注意に誘発した疼痛を指し、これには、限定するものではないが、術前(すなわち、医療処置または歯科処置の「前」)、周術期(すなわち、医療処置もしくは歯科処置「中」、または非外科的もしくは手術処置中に医学的に誘発された疼痛)、および術後(すなわち、医療処置もしくは歯科処置の後、または術後にもしくは外科的に誘発された疼痛)によって引き起こされた疼痛が含まれる。
【0186】
いくつかの実施形態では、疼痛または疼痛関連疾患、障害もしくは病態は、侵害受容性疼痛であり、侵害受容性疼痛は、術後疼痛、癌性疼痛、背および頭蓋顔面痛、変形性関節症疼痛、歯痛または糖尿病性末梢神経障害である。
【0187】
いくつかの実施形態では、疼痛または疼痛関連疾患、障害もしくは病態は、炎症性疼痛である。炎症性疼痛は、様々な生理学的起源の疼痛であり得る。いくつかの実施形態では、炎症性疼痛は、変形性関節症、関節リウマチ、リウマチ障害、腱滑膜炎および通風に関連する疼痛、肩腱炎または滑液包炎、痛風関節炎、およびリウマチ性多発筋痛症に関連する疼痛、一次痛覚過敏、二次痛覚過敏、一次異痛症、二次異痛症、または中枢感作により引き起こされる疼痛;複合性局所疼痛症候群、慢性関節痛および関連する神経痛または急性疼痛から選択される。いくつかの実施形態では、炎症性疼痛は、関節リウマチ、変形性関節症、リウマチ性脊椎炎、通風関節炎または若年性関節炎に関連する疼痛から選択される。いくつかの実施形態では、炎症性疼痛は、関節リウマチ;リウマチ性脊椎炎;通風関節炎;若年性関節炎;リウマチ障害;通風;肩腱炎または滑液包炎;リウマチ性多発性筋痛;一次痛覚過敏;二次痛覚過敏;一次異痛症;二次異痛症;または中枢感作により引き起こされる疼痛、複合性局所疼痛症候群、慢性または急性関節痛および関連する神経痛から選択される。
【0188】
いくつかの実施形態では、炎症性疼痛は、関節リウマチ疼痛またはヴルヴォディニアから選択される。
【0189】
いくつかの実施形態では、炎症性疼痛は、変形性関節症、慢性変形性関節症疼痛(例えば、腰もしくは膝)または慢性炎症性脱髄性多発神経障害から選択される。
【0190】
いくつかの実施形態では、疼痛または疼痛関連疾患、障害もしくは病態は、筋骨格痛である。いくつかの実施形態では、筋骨格痛は、骨および関節痛、変形性関節症;腰痛および頸部痛;物理的外傷または切断から生じる疼痛から選択される。いくつかの実施形態では、筋骨格痛は、骨および関節痛、変形性関節症(例えば、膝、腰)、腱鞘炎(例えば、肩)、滑液包炎(例えば、肩)、腱滑膜炎、腰痛および頸部痛、捻挫、肉離れ、または物理的外傷もしくは切断から生じる疼痛から選択される。
【0191】
いくつかの実施形態では、疼痛または疼痛関連疾患、障害もしくは病態は、神経障害、疼痛関連神経損傷、疼痛関連神経根剥離、有痛性外傷性単神経障害、有痛性多発神経障害、紅痛症、発作性激痛症(PEPD)、口内灼熱症候群から選択される疾患により引き起こされる神経学的損傷もしくはニューロン損傷に関連する疼痛障害、または関連の疼痛障害;神経系レベルの病変により引き起こされる中枢痛症候群;外傷性神経損傷、神経圧迫または神経陥入、先天性疼痛不感症(CIP)、月経困難症、一次紅痛症;HIV末梢二次神経障害;陰部神経痛、精髄神経損傷、慢性炎症性脱髄性多発神経障害(CIDP)、手根管症候群および血管炎性神経障害である。
【0192】
いくつかの実施形態では、疼痛または疼痛関連疾患、障害もしくは病態は、外傷により引き起こされる疼痛、または医原性、医療処置または歯科処置により引き起こされる疼痛により引き起こされる疼痛である。
【0193】
いくつかの実施形態では、疼痛または疼痛関連疾患、障害、もしくは病態は、筋筋膜痛;筋炎または筋炎症;反復運動痛;複合性局所疼痛症候群;交感神経的に維持される疼痛;癌、毒素および化学療法に関連する疼痛;術後疼痛症候群および/または関連する幻肢痛;術後医療または歯科処置または治療痛;HIVに関連する疼痛またはHIV治療により引き起こされる疼痛である。
【0194】
いくつかの実施形態では、疼痛または疼痛関連疾患、障害もしくは病態は、末梢神経因性疼痛、中枢神経因性疼痛、遺伝性紅痛症(IEM)、小径線維神経痛(SFN)、発作性激痛症(PEPD)、有痛性糖尿病性神経障害、慢性腰痛、神経因性背痛、坐骨神経痛、非特異的腰痛、多発性硬化症疼痛、HIV関連神経障害、帯状疱疹後神経痛、三叉神経痛、ヴルヴォディニア、物理的外傷から生じる疼痛、四肢切断後疼痛、神経腫疼痛、幻肢痛、癌、毒素、または慢性炎症性病態から選択される神経因性疼痛またはその他の疼痛関連疾患、障害または病態である。
【0195】
いくつかの実施形態では、疼痛または疼痛関連疾患、障害もしくは病態は、急性疼痛、慢性疼痛、神経因性疼痛、炎症性疼痛、関節炎、片頭痛、群発性頭痛、三叉神経痛、帯状疱疹性神経痛、一般神経痛、癲癇、癲癇病態、神経変性疾患、精神障害、不安、鬱病、二極性障害、筋緊張、不整脈、運動障害、神経内分泌障害、運動失調、多発性硬化症、過敏性腸症候群、失禁、内臓痛、変形性関節症疼痛、帯状疱疹後神経痛、糖尿病性神経障害、根性痛、坐骨神経痛、背痛、頭痛、頸部痛、重症疼痛、難治性疼痛、侵害受容性疼痛、突出痛、術後痛、癌性疼痛、脳卒中、脳虚血、外傷性脳損傷、筋萎縮性側索硬化症、ストレス誘発性狭心症、運動誘発性狭心症、動悸、高血圧症または胃腸運動異常である。
【0196】
いくつかの実施形態では、疼痛または疼痛関連疾患、障害もしくは病態は、大腿骨癌性疼痛;非悪性慢性骨痛;関節リウマチ;変形性関節症;脊柱管狭窄症;神経因性腰痛;筋筋膜疼痛症候群;線維筋痛症;顎関節痛;慢性内臓痛、腹痛;膵臓痛;IBS痛;慢性および急性頭痛;片頭痛;群発性頭痛を含む緊張型頭痛;慢性および急性神経因性疼痛、帯状疱疹後神経痛;糖尿病性神経障害;HIV関連神経障害;三叉神経痛;シャルコー・マリー・トゥース神経障害;遺伝性感覚性ニューロパチー;末梢神経損傷;有痛性神経腫;異所性近位および遠位放電;神経根障害;化学療法誘発性神経因性疼痛;放射線療法誘発性神経因性疼痛;乳房切除術後痛;中枢痛;脊髄損傷痛;脳卒中後疼痛;視床痛;複合性局所疼痛症候群;幻痛;難治性疼痛;急性疼痛、急性術後痛;急性筋骨格痛;関節痛;機械的腰痛;頸部痛;腱炎;傷害/運動痛;急性内臓痛;腎盂腎炎;虫垂炎;胆嚢炎;腸閉塞;ヘルニア;胸痛、心臓痛;骨盤疼痛、腎疝痛、急性産科痛、陣痛;帝王切開痛;急性炎症、火傷および外傷痛;急性間欠痛、子宮内膜症;急性帯状疱疹痛;鎌形赤血球貧血;急性膵炎;突出痛;副鼻腔炎痛、歯痛を含む口腔顔面痛;多発性硬化症(MS)痛;鬱病における疼痛;らい病疼痛;ベーチェット病痛;有痛脂肪症;静脈炎痛;ギラン-バレー痛;痛む脚と動く足趾症候群(painful legs and moving toes);ハグルンド症候群;紅痛症痛;ファブリー病痛;尿失禁を含む膀胱および泌尿生殖器疾患;過活動膀胱;有痛性膀胱症候群;間質性膀胱炎(IC);前立腺炎;I型およびII型複合性局所疼痛症候群(CRPS);広範囲にわたる疼痛、発作性激痛、掻痒症、耳鳴、または狭心症誘発性疼痛である。
【0197】
別の態様では、本発明は、心房細動および心不整脈を含む心血管疾患、障害および病態を治療するための方法および医薬における本発明の化合物および医薬組成物の使用に関する。
【0198】
いくつかの実施形態では、心血管疾患は、本来の特発性であるか、または本明細書で定義されるような疾患によって引き起こされる心房細動である。心房細動は、発作性心房細動、持続性心房細動、長期心房細動、心不全を伴う心房細動、心臓弁疾患を伴う心房細動、または慢性腎臓疾患を伴う心房細動であり得る。特定の実施形態では、心房細動は、発作性、持続性または長期の心房細動から選択される。
【0199】
いくつかの実施形態では、心血管疾患には心不整脈が含まれる。
【0200】
1つの態様において、本発明は、それを必要とする対象において本明細書で定義される疼痛または疼痛関連疾患、障害もしくは病態を治療する方法であって、対象に治療上有効な量の本明細書に記載される本発明の化合物または本発明の医薬組成物を投与することを含んでなる方法に関する。
【0201】
ある実施形態では、それを必要とする対象において急性疼痛または慢性疼痛を治療する方法であって、対象に治療上有効な量の本明細書に記載される本発明の化合物または本発明の医薬組成物を投与することを含んでなる方法が提供される。
【0202】
ある実施形態では、それを必要とする対象において急性疼痛を治療する方法であって、対象に治療上有効な量の本明細書に記載される本発明の化合物または本発明の医薬組成物を投与することを含んでなる方法が提供される。
【0203】
ある実施形態では、それを必要とする対象における外傷により引き起こされる疼痛;医原性、医療処置もしくは歯科処置により引き起こされる疼痛;または術前もしくは術後関連疼痛を治療する方法であって、対象に治療上有効な量の本明細書に記載される本発明の化合物または本発明の医薬組成物を投与することを含んでなる方法が提供される。
【0204】
ある実施形態では、それを必要とする対象において神経因性疼痛、侵害受容性疼痛、炎症性疼痛、筋骨格痛、内臓痛または特発性疼痛を治療する方法であって、対象に治療上有効な量の本明細書に記載される本発明の化合物または本発明の医薬組成物を投与することを含んでなる方法が提供される。
【0205】
ある実施形態では、それを必要とする対象において小径線維神経障害、小径線維介在糖尿病性神経障害、特発性小径線維神経障害、有痛性糖尿病性神経障害および多発神経障害から選択される神経因性疼痛または慢性神経因性疼痛を治療する方法であって、対象に治療上有効な量の本明細書に記載される本発明の化合物または本発明の医薬組成物を投与することを含んでなる方法が提供される。
【0206】
ある実施形態では、それを必要とする対象において変形性関節症、慢性変形性関節症疼痛および慢性炎症性脱髄性多発神経障害から選択される炎症性疼痛を治療する方法であって、対象に治療上有効な量の本明細書に記載されるような本発明の化合物または本発明の医薬組成物を投与することを含んでなる方法が提供される。
【0207】
1つの態様において、本発明は、それを必要とする対象において本明細書で定義される心房細動を治療する方法であって、対象に治療上有効な量の本明細書に記載される本発明の化合物または本発明の医薬組成物を投与することを含んでなる方法に関する。
【0208】
1つの実施形態では、心房細動を治療する方法が提供され、心房細動は、発作性心房細動、持続性心房細動、長期心房細動、心不全を伴う心房細動、心臓弁疾患を伴う心房細動、または慢性腎臓疾患を伴う心房細動である。
【0209】
別の態様では、本発明は、本明細書で定義される疼痛または疼痛関連疾患、障害もしくは病態の治療における使用のための、本明細書に記載されるような本発明の化合物および本発明の医薬組成物を提供する。
【0210】
ある実施形態では、急性疼痛または慢性疼痛の治療における使用のための、本発明の化合物または本発明の医薬組成物が提供される。
【0211】
ある実施形態では、急性疼痛の治療における使用のための本発明の化合物または本発明の医薬組成物が提供される。
【0212】
ある実施形態では、外傷により引き起こされる疼痛;医原性医療処置もしくは歯科処置により引き起こされる疼痛;または術前もしくは術後関連疼痛の治療における使用のための本発明の化合物または本発明の医薬組成物が提供される。
【0213】
ある実施形態では、神経因性疼痛、侵害受容性疼痛、炎症性疼痛、筋骨格痛、内臓痛、または特発性疼痛の治療における使用のための本発明の化合物または本発明の医薬組成物が提供される。
【0214】
ある実施形態では、小径線維神経障害、小径線維介在糖尿病性神経障害、特発性小径線維神経障害、有痛性糖尿病性神経障害および多発神経障害から選択される神経因性疼痛または慢性神経因性疼痛の治療における使用のための本発明の化合物または本発明の医薬組成物が提供される。
【0215】
ある実施形態では、変形性関節症、慢性変形性関節症疼痛および慢性炎症性脱髄性多発神経障害から選択される炎症性疼痛の治療における使用のための本発明の化合物または本発明の医薬組成物が提供される。
【0216】
別の態様では、本発明は、心房細動の治療における使用のための本発明の化合物または本発明の医薬組成物に関する。
【0217】
1つの実施形態では、心房細動の治療における使用のための本発明の化合物または本発明の医薬組成物が提供され、心房細動は、発作性心房細動、持続性心房細動、長期心房細動、心不全を伴心房細動、心臓弁疾患を伴う心房細動または慢性腎臓疾患を伴う心房細動である。
【0218】
別の態様では、本発明はまた、本明細書に記載される疼痛および疼痛関連疾患、障害または病態の治療のための医薬の製造における本明細書に記載されるような本発明の化合物または本発明の医薬組成物の使用を提供する。
【0219】
ある実施形態では、急性疼痛または慢性疼痛の治療のための医薬の製造における本発明の化合物または本発明の医薬組成物の使用が提供される。
【0220】
ある実施形態では、急性疼痛の治療のための医薬の製造における本発明の化合物または本発明の医薬組成物の使用が提供される。
【0221】
ある実施形態では、外傷により引き起こされる疼痛;医原性、医療処置もしくは歯科処置により引き起こされる疼痛;または術前もしくは術後関連疼痛の治療のための医薬の製造における本発明の化合物または本発明の医薬組成物の使用が提供される。
【0222】
ある実施形態では、神経因性疼痛、侵害受容性疼痛、炎症性疼痛、筋骨格痛、内臓痛または特発性疼痛の治療のための医薬の製造における本発明の化合物または本発明の医薬組成物の使用が提供される。
【0223】
ある実施形態では、小径線維神経障害、小径線維介在糖尿病性神経障害、特発性小径線維神経障害、有痛性糖尿病性神経障害および多発神経障害から選択される神経因性疼痛または慢性神経因性疼痛の治療のための医薬の製造における本発明の化合物または本発明の医薬組成物の使用が提供される。
【0224】
ある実施形態では、変形性関節症、慢性変形性関節症疼痛および慢性炎症性脱髄性多発神経障害から選択される炎症性疼痛の治療のための医薬の製造における本発明の化合物または本発明の医薬組成物の使用が提供される。
【0225】
別の態様では、本発明はまた、心房細動の治療のための医薬の製造における本明細書に記載される本発明の化合物または本発明の医薬組成物の使用を提供する。
【0226】
ある実施形態では、心房細動の治療のための医薬の製造における本発明の化合物または本発明の医薬組成物の使用が提供され、心房細動は、発作性心房細動、持続性心房細動、長期心房細動、心不全を伴心房細動、心臓弁疾患を伴う心房細動または慢性腎臓疾患を伴う心房細動である。
【0227】
別の態様では、本発明は、療法における使用のための本明細書に記載される本発明の化合物または本発明の医薬組成物に関する。
【0228】
併用療法および療法のための使用
本明細書に記載される本発明の化合物および医薬組成物は、1または2以上の付加的治療薬と併用可能することができる。このような付加的治療薬は、本明細書に記載される本発明の化合物または医薬組成物による処置と同時に、処置の前に、または処置の後に投与することができる。
【0229】
本明細書の文脈で、「同時に」という用語は、化合物または治療薬の同時投与に言及する場合、化合物および付加的治療薬が単一の調製物に配合される場合、例えば実施形態の場合、または化合物と付加的治療薬が別個にではあるが、短い期間もしくは時間内に投与される場合に同時を意味する。
【0230】
上記に鑑みて、本発明はまた、本発明の化合物または医薬組成物と1または2以上の付加的治療薬との組合せの同時投与もしくは併用投与、または逐次投与からなり得る併用療法に関する。このような併用療法は、本明細書に定義されるような疼痛もしくは任意の疼痛関連疾患、障害もしくは病態、または心血管疾患、障害もしくは病態の治療のために使用することができる。
【0231】
本発明の化合物および医薬組成物との併用使用に好適な治療薬としては、限定するものではないが、アセトアミノフェン、アセチルサリチル酸、Nav1.7阻害剤、Nav1.9阻害剤、抗鬱薬(すなわち、限定するものではないが、デュロキセチンまたはアミトリプチリンなど)、抗痙攣薬(すなわち、限定するものではないが、プレガバリンおよびガバペンチンなど)、オピエート(すなわち、限定するものではないが、ヒドロコドン、コデイン、モルヒネ、オキシコドン、オキシモルフォン、フェンタニルなど)などが挙げられ、上記の投与もそれぞれ当業者によって決定される。1つの態様において、本発明で使用するために好適なNav1.7阻害剤またはNav1.9阻害剤としては、限定するものではないが、化学文献で公知のNav1.7阻害剤またはNav1.9阻害剤が挙げられる。
【0232】
治療目的で使用される組合せの各成分(例えば、本発明の化合物または医薬組成物および付加的治療薬)は、経口、静脈内もしくは非経口的に、またはそれらの組合せで投与され得る。治療用組合せの各成分は、限定するものではないが、同時投与、併用投与もしくは連続投与;および/または同一もしくは異なる投与経路もしくは投与経路の組合せによって投与され得る。特定の実施形態において、各同一もしくは異なる投与経路または投与経路の組合せは、経口投与、静脈内投与または非経口投与から選択される。
【実施例】
【0233】
実施例
以下、実施例により本発明を説明する。これらの実施例は、本発明の範囲を限定することを意図するものではなく、本発明の化合物、組成物および方法を調製および使用するために当業者に指針を与えるためのものである。
【0234】
本発明の特定の態様または実施形態が記載されるが、当業者ならば、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく様々な変更および改変が行えることを認識するであろう。
【0235】
合成例
精製方法(酸性または塩基性改質剤を使用)または化合物後処理手順(酸性または塩基性条件を使用)は、標題化合物の塩(例えば、標題化合物の臭化水素酸塩、ギ酸塩、塩酸塩、トリフルオロ酢酸塩またはアンモニア塩)の形成をもたらし得ることが当業者により理解されるであろう。本発明は、このような塩を包含することを意図する。
【0236】
最終的化合物は、GCMSおよびLCMS(以下に挙げる条件)ならびにNMRで特性決定した。1H NMRまたは19FNMRスペクトルは、Bruker Avance III 500 MHz分光計、Bruker Avance 400 MHz分光計およびVarian Mercury Plus-300 MHz分光計を用いて記録した。CDCl3はジューテリオクロロホルムであり、DMSO-d6はヘキサジューテリオジメチルスルホキシドであり、CD3ODはテトラジューテリオメタノールである。化学シフトは、内部標準テトラメチルシラン(TMS)またはNMR溶媒から低磁場側への100万分の1(ppm)で報告する。NMRデータの略語は次の通りである:s=一重線、d=d二重線、t=三重線、q=四重線、m=多重線、dd=二重の二重線、dt=二重の三重線、app=明瞭、br=幅広。Jは、ヘルツで測定されるNMRカップリング定数を示す。
【0237】
分析方法:
1)LCMS法:45℃で、水中0.1%TFA(溶媒A)およびアセトニトリル中0.1%TFA(溶媒B)で、以下の溶出勾配:流速1.3mL/分で1.85分かけて1~100%(溶媒B)を用いて溶出させるCSH C18カラム(30mm×2.1mm、i.d. 1.7μm充填径)を備えたエレクトロスプレー陽性[M+H+を得るためのES+ve]を用いるWaters Acquity QDa質量検出器搭載Acquity UPLC
【0238】
2)LCMS法:45℃で、水中ギ酸(溶媒A)およびアセトニトリル中ギ酸(溶媒B)で、以下の溶出勾配:流速1.3mL/分で1.85分かけて1~100%(溶媒B)を用いて溶出させるCSH C18カラム(30mm×2.1mm、i.d. 1.7μm充填径)を備えたエレクトロスプレー陽性[M+H+を得るためのES+ve]を用いるWaters Acquity QDa質量検出器搭載Acquity UPLC
【0239】
3)LCMS法:45℃で、25%水酸化アンモニウム溶液でpH=10に調整した水中10mM重炭酸アンモニウム(溶媒A)およびアセトニトリル(溶媒B)で、以下の溶出勾配:流速1.3mL/分で1.85分かけて1~100%(溶媒B)を用いて溶出させるCSH C18カラム(30mm×2.1mm、i.d. 1.7μm充填径)を備えたエレクトロスプレー陽性[M+H+を得るためのES+ve]を用いるWaters Acquity QDa質量検出器搭載Acquity UPLC
【0240】
4)LCMS法:25℃で、水中0.1%ギ酸(溶媒A)およびアセトニトリル中0.1%ギ酸(溶媒B)で、以下の溶出勾配:流速1.0mL/分で3.1分かけて0~100%(溶媒B)および100%で0.8分間保持を用いて溶出させるSunfire C18カラム(30mm×2.1mm、i.d. 3.5μm充填径)を備えたマルチモード(ESIおよびAPCI +veおよび-ve)を用いるAgilent MSD 6125B/6130搭載Agilent 1290 Infinity II LCシステム
【0241】
5)LCMS法:25℃で、水中0.1%TFA(溶媒A)およびメタノール(溶媒B)で、以下の溶出勾配:流速1.0mL/分で5.0分かけて5~95%(溶媒B)および95%で1.5分間保持を用いて溶出させるAtlantis dC18カラム(50mm×4.6mm、i.d. 5.0μm充填径)を備えたマルチモード(ESIおよびAPCI +veおよび-ve)を用いるAgilent MSD 6125B/6130搭載Agilent 1290 Infinity II LCシステム
【0242】
6)LCMS法:25℃で、水中10mM酢酸アンモニウム(溶媒A)およびアセトニトリル(溶媒B)で、以下の溶出勾配:流速1.0mL/分で溶媒B:3.5分かけて10~95%(溶媒B)および95%で1.0分間保持を用いて溶出させるZorbax XDB C18カラム(50mm×4.6mm、i.d. 3.5μm充填径)を備えたマルチモード(ESIおよびAPCI+veおよび-ve)を用いるAgilent MSD 6125B/6130搭載Agilent 1290 Infinity II LCシステム
【0243】
7)LCMS法:25℃で、水中10mM重炭酸アンモニウム(溶媒A)およびアセトニトリル(溶媒B)で、以下の溶出勾配:流速1.0mL/分で4.0分かけて10~95%(溶媒B)および95%で1.0分間保持を用いて溶出させるXbridge C8カラム(50mm×4.6mm、i.d. 3.5μm充填径)を備えたマルチモード(ESIおよびAPCI+veおよび-ve)を用いるAgilent MSD 6125B/6130搭載Agilent 1290 Infinity II LCシステム
【0244】
8)GCMS法:250℃で、流速2mL/分および実施時間10分で、以下のクロマトグラフィー実施条件:120℃で1分間、40℃/分で300℃まで昇温、4.5分間保持でヘリウムを用いて溶出させるHP-5カラム(30m×0.32mm、フィルム厚0.25μm)を備えたEIを用いるAgilent MSD 5977B搭載Agilent 7890B GCシステム
【0245】
以下の実験説明において、以下の略語が使用される場合がある。
【表2】
【0246】
中間体1
2-ブロモ-4-(トリフルオロメチル)安息香酸エチル
【0247】
【0248】
DMF(100mL)中、2-ブロモ-4-(トリフルオロメチル)安息香酸(10.0g、37.2mmol)の撹拌溶液に、K2CO3(5.65g、40.9mmol)、次いでヨウ化エチル(3.60mL、44.6mmol)をN2下、25℃で滴下した。この反応混合物を同じ温度で3時間撹拌した。水(150mL)を加え、この反応物をEtOAc(2×250mL)で抽出した。合わせた有機抽出液をブライン(150mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、濃縮した。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(Biotage、100g SNAPカラム、40分にわたって10%EtOAc/石油エーテル)により精製し、標題化合物を無色の油状物として得た(9.3g、31.3mmol、収率84%)。GCMS (m/z) 296.0 (M)+。
【0249】
中間体2
塩化2-クロロ-5-(トリフルオロメチル)ニコチノイル
【0250】
【0251】
DCM(500mL)中、2-クロロ-5-(トリフルオロメチル)ニコチン酸(50g、222mmol)の撹拌溶液に、塩化オキサリル(23.28mL、266mmol)およびDMF(1.716mL、22.17mmol)を0℃で加え、反応混合物を1時間室温で撹拌した。この反応混合物を減圧下で濾過し、N2下で乾燥させ、標題化合物を褐色のガム質として得た(52g、213mmol、収率96%)。
【0252】
中間体3
2-クロロ-N-(6-メトキシ-2-メチルピリジン-3-イル)-5-(トリフルオロメチル)ニコチンアミド
【0253】
【0254】
DCM(300mL)中、6-メトキシ-2-メチルピリジン-3-アミン(32.4g、234mmol)およびTEA(89mL、639mmol)の混合物を、0℃で、DCM(300mL)中、塩化2-クロロ-5-(トリフルオロメチル)ニコチノイル(52g、213mmol)の撹拌溶液に加え、この反応混合物を2時間撹拌した。この反応混合物を氷冷水(500mL)でクエンチし、DCM(3×500mL)で抽出した。合わせた有機相を水(500mL)およびブライン(500mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、真空濃縮した。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(Biotage、340g SiO2カラム、40分にわたって0~30%EtOAc/石油エーテル)により精製し、標題化合物を褐色固体として得た(37g、106mmol、収率49.9%)。MS (m/z) 346.0 (M+H+)。
【0255】
中間体4
2-((4-フルオロ-2-メチルフェニル)アミノ)-5-(トリフルオロメチル)安息香酸メチル
【0256】
【0257】
窒素下、室温で、1,4-ジオキサン(20mL)中、2-ブロモ-5-(トリフルオロメチル)安息香酸メチル(2g、7.1mmol)および4-フルオロ-2-メチルアニリン(1.06g、8.48mmol)の溶液に、炭酸セシウム(4.60g、14.13mmol)およびBINAP(0.44g、0.71mmol)を一度に加えた。この反応混合物を窒素で10分間パージした後、この反応混合物にPd2(dba)3(0.324g、0.353mmol)を加えた。反応混合物を100℃で16時間撹拌した。この反応混合物を室温に冷却し、セライト(登録商標)パッドで濾過し、濾液をSiO2上で濃縮した。溶離剤として石油エーテル中0~30%EtOAcを用いるSiO2(25g)でのフラッシュクロマトグラフィーにより精製し、標題化合物を無色の固体として得た(2.3g、7.0mmol、収率99%)。MS (m/z) 328.0 (M+H+)。
【0258】
中間体5~6は、示されたアリールハロゲンおよびアニリンから、中間体4に関して記載したものと同様の方法で調製した。
【0259】
【0260】
中間体7
2-((4-フルオロ-2-メチルフェニル)アミノ)-5-(トリフルオロメチル)安息香酸
【0261】
【0262】
N2下、THF(20mL)中、2-((4-フルオロ-2-メチルフェニル)アミノ)-5-(トリフルオロメチル)安息香酸メチル(2.3g、7.03mmol)の溶液に、LiOH(1.68g、70.3mmol)を加えた。この反応混合物を80℃で4時間撹拌した。反応混合物を室温に冷却し、濾液を真空濃縮した。粗材料を100mLのDCMで抽出し、50mLの水で洗浄した。水層を1.5N HCl 20mLで酸性化し、DCM(100mL)で2回抽出した。合わせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、真空濃縮し、標題化合物を黄色固体として得た(2.1g、6.7mmol、収率95%)。MS (m/z) 314.0 (M+H+)。
【0263】
中間体8~9は、示されたエステルから、中間体7に関して記載したものと同様の方法で調製した。
【0264】
【0265】
中間体10
2-((4-フルオロ-2-メチルフェニル)アミノ)-N-(6-メトキシ-2-メチルピリジン-3-イル)-5-(トリフルオロメチル)ベンズアミド
【0266】
【0267】
窒素下、室温で、DMF(20mL)中、2-((4-フルオロ-2-メチルフェニル)アミノ)-5-(トリフルオロメチル)安息香酸(2.1g、6.7mmol)、DIPEA(2.34mL、13.4mmol)およびHATU(3.82g、10.1mmol)の溶液に、6-メトキシ-2-メチルピリジン-3-アミン(1.02g、7.4mmol)を1分かけて滴下した。この反応混合物を室温で12時間撹拌した。この反応混合物を氷冷水(100mL)でクエンチし、得られた固体を濾過し、真空下で乾燥させ、標題化合物を褐色固体として得た(2.4g、5.5mmol、収率82%)。MS (m/z) 434.0 (M+H+)。
【0268】
中間体11~12は、示されたアミンおよびカルボン酸から、中間体10に関して記載したものと同様の方法で調製した。
【0269】
【0270】
中間体13
N-(6-メトキシ-2-メチルピリジン-3-イル)-2-((2-メチル-4-(トリフルオロメトキシ)フェニル)アミノ)-5-(トリフルオロメチル)ニコチンアミド
【0271】
【0272】
磁気撹拌子を備えた1Lの丸底フラスコに2-クロロ-N-(6-メトキシ-2-メチルピリジン-3-イル)-5-(トリフルオロメチル)ニコチンアミド(37g、107mmol)および2-メチル-4-(トリフルオロメトキシ)アニリン(30.7g、161mmol)を投入した。トルエン(500mL)、次いで炭酸セシウム(69.7g、214mmol)を加えた。得られた反応混合物を窒素で15分間パージした後、Xantphos(6.19g、10.70mmol)およびPd2(dba)3(4.90g、5.35mmol)を加えた。得られた暗褐色の反応混合物を100℃で16時間撹拌した。反応混合物を室温まで放冷し、セライト(登録商標)ベッドで濾過し、EtOAc(1L)で洗浄した。濾液を真空濃縮し、粗生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(Biotage、330g SiO2カラム、90分にわたって0~30% EtOAc/石油エーテル)により精製し、標題化合物を褐色固体として得た(35g、36.5mmol、収率34.1%)。MS (m/z) 500.8 (M+H+)。
【0273】
中間体14
1-(4-フルオロ-2-メチルフェニル)-3-(6-メトキシ-2-メチルピリジン-3-イル)-6-(トリフルオロメチル)-2,3-ジヒドロキナゾリン-4(1H)-オン
【0274】
【0275】
窒素下、室温で、アセトニトリル(25mL)中、2-((4-フルオロ-2-メチルフェニル)アミノ)-N-(6-メトキシ-2-メチルピリジン-3-イル)-5-(トリフルオロメチル)ベンズアミド(2.4g、5.5mmol)およびCs2CO3(7.22g、22.2mmol)の溶液に、ジヨードメタン(1.340mL、16.61mmol)を5分かけて滴下した。この反応混合物を80℃で16時間撹拌した。この反応混合物を室温に冷却し、セライト(登録商標)パッドで濾過した。濾液をSiO2上で濃縮した。溶離剤として0~100%EtOAc/石油エーテルを用いるSiO2(50g)でのフラッシュクロマトグラフィーにより精製し、標題化合物を無色の固体として得た(2.0g、4.1mmol、収率74%)。MS (m/z) 446.0 (M+H+)。
【0276】
中間体15~17は、示されたアミドから、中間体14に関して記載したものと同様の方法で調製した。
【0277】
【0278】
中間体18
1-(4-フルオロ-2-メチルフェニル)-3-(2-メチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリジン-3-イル)-6-(トリフルオロメチル)-2,3-ジヒドロキナゾリン-4(1H)-オン
【0279】
【0280】
窒素下、室温で、アセトニトリル(10mL)中、1-(4-フルオロ-2-メチルフェニル)-3-(6-メトキシ-2-メチルピリジン-3-イル)-6-(トリフルオロメチル)-2,3-ジヒドロキナゾリン-4(1H)-オン(0.6g、1.4mmol)の溶液に、ヨードトリメチルシラン(0.54g、2.7mmol)を5分かけて滴下した。この反応混合物を80℃で12時間撹拌した。反応混合物を室温に冷却し、真空濃縮した。粗残渣をDCM(100mL)に溶解させ、飽和チオ硫酸ナトリウム(20mL)で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、セライト(登録商標)で濃縮した。溶離剤として水中0.1%ギ酸中アセトニトリル中0.1%ギ酸を用いる0~100%勾配を用いるC18(40g)での逆相クロマトグラフィーにより精製してクリーンな画分を得、これを濃縮し、得られた沈殿物を濾過し、水で洗浄し、乾燥させ、標題化合物を無色の固体として得た(0.21g、0.5mmol、収率36%)。MS (m/z) 432.1 (M+H+)。
【0281】
中間体19~21は、示された中間体から、中間体18に関して記載したものと同様の方法で調製した。
【0282】
【0283】
中間体22
3-(1-(クロロメチル)-2-メチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリジン-3-イル)-1-(4-フルオロ-2-メチルフェニル)-6-(トリフルオロメチル)-2,3-ジヒドロキナゾリン-4(1H)-オン
【0284】
【0285】
N2下、酢酸エチル(16.23mL)およびDMF(1.623mL)中、1-(4-フルオロ-2-メチルフェニル)-3-(2-メチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリジン-3-イル)-6-(トリフルオロメチル)-2,3-ジヒドロキナゾリン-4(1H)-オン(0.878g、2.035mmol)およびDABCO(0.183g、1.628mmol)の懸濁液に、クロロメチルカルボノクロリデート(0.452mL、5.09mmol)を滴下した。反応物を60℃で約6時間、次いで室温で2.5日撹拌した。反応物を飽和NaHCO3(20mL)でクエンチし、EtOAcおよびDCM(2×)で抽出した。合わせた有機抽出液をNa2SO4で乾燥させ、濃縮した。残渣を1:2/EtOAc:ヘプタンの溶液でトリチュレーションし、標題化合物を灰白色固体として得た(0.749g、1.561mmol、収率77%)。MS (m/z) 480.3 (M+H+)。
【0286】
中間体23~25は、示されたアミドから、中間体22に関して記載したものと同様の方法で調製した。
【0287】
【0288】
中間体26
((5-(1-(4-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-オキソ-6-(トリフルオロメチル)-1,4-ジヒドロキナゾリン-3(2H)-イル)-6-メチル-2-オキソピリジン-1(2H)-イル)メチル)リン酸ジ-tert-ブチル
【0289】
【0290】
N2下、3-(1-(クロロメチル)-2-メチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリジン-3-イル)-1-(4-フルオロ-2-メチルフェニル)-6-(トリフルオロメチル)-2,3-ジヒドロキナゾリン-4(1H)-オン(0.749g、1.561mmol)、リン酸カリウムジ-tert-ブチル(0.581g、2.341mmol)およびテトラブチルヨウ化アンモニウム(0.029g、0.078mmol)の混合物にDMF(7.29mL)を加え、この反応物を70℃で3時間撹拌した。反応物を室温に冷却し、氷水(40mL)でゆっくりクエンチした。反応物をEtOAcで抽出し、水(2×)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濃縮し、標題化合物を泡状物として得た(0.846g、1.294mmol、収率83%)。MS (m/z) 542.3 (M-112)+。
【0291】
中間体27~29は、示された中間体から、中間体26に関して記載したものと同様の方法で調製した。
【0292】
【0293】
実施例1
リン酸二水素(5-(1-(4-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-オキソ-6-(トリフルオロメチル)-1,4-ジヒドロキナゾリン-3(2H)-イル)-6-メチル-2-オキソピリジン-1(2H)-イル)メチル
【0294】
【0295】
室温、N2下で、アセトニトリル(1.5mL)および水(1.5mL)中、リン酸ジ-tert-ブチル((5-(1-(4-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-オキソ-6-(トリフルオロメチル)-1,4-ジヒドロキナゾリン-3(2H)-イル)-6-メチル-2-オキソピリジン-1(2H)-イル)メチル)(0.3g、0.459mmol)の懸濁液に、酢酸(0.5mL、8.73mmol)を滴下し、反応物を70℃で3時間撹拌した。反応物を冷却し、濃縮した。泡沫残渣を水ですすいだ。残渣を逆相(EZ Prep Isco、C18 Aq 15.5g Gold カラム、30~80%勾配、0.1%ギ酸を含むアセトニトリル/0.1%ギ酸を含む水、流速30mL/分、全実施時間12.3分)により精製し、標題化合物を白色固体として得た(64.7mg、0.120mmol、収率26.0%)。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ:11.60 (br s, 2H), 8.09 (d, J=2.4 Hz, 1H), 7.66 (br d, J=8.3 Hz, 1H), 7.52-7.38 (m, 2H), 7.37-7.28 (m, 1H), 7.26-7.15 (m, 1H), 6.43-6.30 (m, 2H), 5.80-5.60 (m, 2H), 5.55 (d, J=9.3 Hz, 0.6H), 5.1-5.2 (m, 0.8H), 4.75 (br d, J=9.3 Hz, 0.6H), 2.3-2.4 (m, 3H), 2.25 (br s, 3H)。MS (m/z) 542.0 (M+H+)。
【0296】
実施例2~4は、示された中間体から、実施例1に関して記載したものと同様の方法により調製した。
【0297】
【0298】
生物学的アッセイ
本発明のNav1.8阻害剤化合物またはその薬学上許容可能な塩は、それぞれ、本願に定義されるものなどの疼痛、疼痛障害もしくは病態、疼痛関連障害もしくは病態または疾患により引き起こされる疼痛の治療に有用である。
【0299】
本発明の化合物の生物活性は、このような阻害を測定するアッセイおよびin vitroまたは感染動物モデルにおいて電位依存性ナトリウムチャネルNav1.8を阻害する化合物の能力を評価するアッセイなど、好適なアッセイを用いて判定することができる。
【0300】
生物学的アッセイ例1:
ヒトNav1.8、ヒトNavβ1およびヒトTREK1を発現するヒト胎児腎臓293細胞(HEK293)(HEK293-Nav1.8)を150cm2フラスコにて37℃、5%CO2で増殖させた。HEK293-Nav1.8は、2~3日ごとに、コンフルエンシーが80~90%に達した際にT175細胞培養フラスコに継代培養した。
【0301】
本発明の化合物の薬理学的評価は、QPatch 48 HTX電気生理学的システムで開発したアッセイとHEK293-Nav1.8を併用して行った。HEK293-Nav1.8は、使用当日に、培養培地を除去し、DPBSで洗浄し、アキュターゼを添加し(表面を覆うように2mLを添加し、1mLを吸引した後、37℃で1.5分)、次いでCHO-SFM IIを添加して酵素消化を停止させ、3×106細胞/mLの懸濁液を得ることにより調製した。
【0302】
化合物は以下の組成:NaCl(145mM)、KCl(4mM)、CaCl2(2mM)、MgCl2(2mM)、HEPES(1mM)、グルコース(10mM)、pH7.4 NaOHモル浸透圧濃度300mOsM/Lの細胞外溶液で調製した。細胞内溶液は、以下の組成を用いた:CsF(115mM)、CsCl(20mM)、NaCl(5mM)、EGTA(10mM)、HEPES(10mM)、スクロース(20mM)、pH7.2 CsOHモル浸透圧濃度310mOsm/L。
【0303】
QPatch 48HTXシステムのボルテージクランプモードを利用して、Na
v1.8イオンチャネルにおける本発明の化合物の薬理活性を測定するために、半不活性化状態の電圧プロトコール(V
1/2)を使用した。V
1/2プロトコールは以下の電圧ステップで利用した:-100mVの保持電圧が確立、次いで0mVへの20msの電圧ステップ(P1)、次いで-46mVでの8秒間の不活性化電圧ステップ、次いで-100mVへの20msのステップ、その後0mVへの20msのステップ(P2)、その後-100mVの保持電圧に戻す。この電圧プロトコールを0.07Hzの周波数で繰り返し、電流の大きさは記録中P2ステップで定量した。測定された電流振幅の本発明の化合物による阻害は、50%阻害濃度(IC
50)の決定を可能にする6~8点の用量反応曲線を当てはめることによって分析した。QPatch HTXソフトウエア内で、P2電流は、ベースライン時、化合物後および陽性参照化合物後に得た測定値に従って正規化し、下式に当てはめた:
【数1】
【0304】
実験経過の電流のランダウンを評価するため、ビヒクルのみのウェルを利用し、ビヒクルのみで正規化した電流
【数2】
を求めた。ランダウンについて化合物応答を補正するために、電流を下式に従って補正した:
【数3】
【0305】
本発明の化合物および対応する親化合物(構造については表1Aを参照)を、上記のアッセイにおいてNav1.8ナトリウムチャネルに対する活性について1回または2回以上の実験回数で試験し、それらの結果を以下の表1に示す。本発明の化合物の効力をpIC50値として報告する。pIC50値は、IC50値の負の対数であり、IC50値は、モル(M)で測定された半最大阻害濃度である。本発明の化合物の効力は、親化合物の効力に匹敵する。2回以上の実験で試験された化合物については、pIC50値は平均値として報告する。
【0306】
【0307】
【0308】
生物学的アッセイ例2:
Charged Aerosol Detector(CAD)を用いた速度論的溶解度の測定。pH7.4における水溶液の速度論的溶解度は、DMSOストック溶液から沈殿させた後の溶液中の溶質の濃度を測定することにより求めた。DMSOストック溶液をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)pH7.4で20倍に希釈し、化合物の溶解度は、室温で1時間平衡化した後にHPLC-CADで測定した。ケトコナゾールとプリミドンの検量線標準物質は、0.016~4.5mg/mLの範囲の濃度で、DMSOで連続希釈することで調製して検量線を作成し、これを、参照により本明細書の一部とされるMax W. Robinson et al, Use of Calculated Physicochemical Properties to Enhance Quantitative Response When Using Charged Aerosol Detection, Anal. Chem., 2017, 89 (3), pp 1772-1777に従前に記載されているように、化合物の溶解度を決定するために使用した。
【0309】
本発明の化合物および対応する親化合物のCAD溶解度を上記のように測定し、結果を下表2に示す。
【0310】
【0311】
生物学的アッセイ例3:ラットIV/PO試験
本発明のプロドラッグ化合物が投与時にそれぞれの親化合物に変換されるかどうかを決定するために、in vivoラット薬物動態試験を実施した。ラット薬物動態試験は、各試験日間に1日の回復期間を置いた2試験日のクロスオーバーデザインで実施した。二重カテーテル留置(大腿静脈および頸動脈)した3匹の雄Han Wistarラットを試験に用いた。各ラットには経口投与用の胃カテーテルも留置した。ラットに60分間の静脈内(IV)注入(大腿静脈カニューレ)により1mg/kgを投与し、その後、投与セッション間に48時間をおいて、胃カニューレを介して2mg/kgを経口投与した。実施例3の化合物の投与溶液として、20%Cavitron/5%DMSO/75%水(IV)および6%Cavitron/5%DMSO/89%水(PO)をpH調整することなく調製した。投与溶液は0.22μフィルターを用いて濾過した。最終投与溶液のpHは6.0であった。
【0312】
静脈内試験区では、実施例3の化合物の静脈内注入開始後、目標時点15分、30分、60分(注入終了時)、65分、75分、90分、120分、240分、360分、480分、720分および1440分に、頸動脈カテーテルから血液サンプルを採取した。経口投与試験区では、投与前ならびに経口投与後、目標時点15分、30分、60分、90分、120分、180分、240分、360分、480分、720分および1440分に血液サンプルを採取した。100μLの血液サンプルを100μLのホスファターゼ阻害剤と混合し、血液と阻害剤の混合物の50μLアリコートをヘパリン非含有チューブに移し、分析まで約-80℃で保存した。濾過した投与溶液の濃度は、まず0.1%ギ酸を含む50%アセトニトリル水溶液で、次にヘパリン処理した雄Wistar Han血液:阻害剤で段階希釈液を調製することにより所定の公称濃度に達していることを確認した。50μLの3反復アリコートを取り出し、後述のようにLC-MS/MSで分析するまで約80℃で凍結保存した。
【0313】
LC-MS/MSを使用して、上述のin vivo試験で生成した生体サンプル中の実施例3の化合物および実施例3Aの対応する親化合物を定量した。サンプルは、タンパク質沈殿によって調製し、次いで、同じマトリックス中で調製した化合物の較正標準セットに対してポジティブモードイオン化を用いてLC-MS/MS分析を行った。本研究の薬物動態パラメーターは、濃度対時間のプロファイルから導き出された。実施例3の化合物について、AUC0-∞(血中濃度-時間曲線下外挿面積)、AUC0-t(薬物が定量可能な最後の時点までの血中濃度-時間曲線下面積)、Cmax(最大濃度)、Tmax(Cmaxが達成される時間)、CL(全身血液クリアランス)、Vdss(定常状態分布容積)、MRT(平均保持時間)、t1/2(半減期)などの主要な薬物動態パラメーターを決定した。AUC0-∞、AUC0-t、Cmax、Tmax、MRTおよびt1/2(半減期)などの主要な薬物動態パラメーターは、親化合物実施例3Aについて決定した。平均および標準偏差(SD)を含め、薬物動態パラメーターの記述統計データは、Microsoft Excelを使用して計算した。
【0314】
これらのデータを以下に表3Aおよび3Bで示す。データは平均±SD(N=3)で報告する。
【0315】
【0316】
【0317】
本発明は、以上に示した実施形態に限定されるものではなく、示された実施形態および以下の特許請求の範囲に含まれるすべての改変に対して権利が留保されることを理解されたい。
【手続補正書】
【提出日】2023-08-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物:
【化1】
[式中、
X
1は、NまたはCHであり;
R
1は、-P(O)(OH)
2であり;
R
2は、水素、-(C
1-6)アルキル、-NR
aR
b、ハロまたは-(C
1-6)ハロアルキルであり;
R
3およびR
4のそれぞれは独立に、水素、ハロ、シアノ、-NR
aR
b、-(C
1-6)アルキル、-(C
1-6)ハロアルキル、-O-(C
1-6)アルキルまたは-O-(C
1-6)ハロアルキルであり;
各R
5は独立に、ハロ、-(C
1-6)アルキル、-O(C
1-6)アルキルまたは-O(C
1-6)ハロアルキルであり;
R
6は、水素または-(C
1-6)アルキルであり;
R
7は、水素、-(C
1-6)アルキル、ハロまたは-(C
1-6)ハロアルキルであり;
R
aおよびR
bのそれぞれは独立に、水素または-(C
1-6)アルキルであり;かつ、
nは、0、1または2である。]
またはその薬学上許容可能な塩。
【請求項2】
X
1がNである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
X
1がCHである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
R
2が-(C
1-6)アルキルである、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
R
3およびR
4のそれぞれが独立に、水素、ハロまたは-(C
1-6)ハロアルキルである、請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
R
3およびR
4のそれぞれが、水素、-Clまたは-CF
3である、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
R
3およびR
4の一方が水素であり、R
3およびR
4の他方がハロまたは-(C
1-6)ハロアルキルである、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
R
3およびR
4の一方が水素であり、R
3およびR
4の他方が-Clまたは-CF
3である、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
各R
5が独立に、ハロまたは-O(C
1-6)ハロアルキルである、請求項1~8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
各R
5が独立に、-Fまたは-OCF
3である、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
R
6が-(C
1-6)アルキルである、請求項1~10のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
R
6が-CH
3、-CH
2CH
3または-CH(CH
3)
2である、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
X
1がNであり;
R
1が-PO(OH)
2であり;
R
2が-CH
3であり;
R
3およびR
4の一方が水素であり、R
3およびR
4の他方がハロまたは-(C
1-6)ハロアルキルであり;
R
5がハロまたは-O(C
1-6)ハロアルキルであり;
R
6が-(C
1-6)アルキルであり;
R
7が水素であり;かつ、
nが1である、請求項1に記載の化合物。
【請求項14】
式(I)の化合物の薬学上許容可能な塩である、請求項1~13のいずれか一項に記載の化合物であって、
R
1が、-P(O)(OH)O
-M
+、-PO(O
-)
2・2M
+または-PO(O
-)
2・D
2+であり、
各M
+が独立に、薬学上許容可能な一価陽イオンであり、かつ、
D
2+が、薬学上許容可能な二価陽イオンである、請求項1~13のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項15】
以下の化合物:
リン酸二水素(5-(1-(4-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-オキソ-6-(トリフルオロメチル)-1,4-ジヒドロキナゾリン-3(2H)-イル)-6-メチル-2-オキソピリジン-1(2H)-イル)メチル;
リン酸二水素(5-(1-(4-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-オキソ-7-(トリフルオロメチル)-1,4-ジヒドロキナゾリン-3(2H)-イル)-6-メチル-2-オキソピリジン-1(2H)-イル)メチル;
リン酸二水素(5-(6-クロロ-1-(4-フルオロ-2-メチルフェニル)-4-オキソ-1,4-ジヒドロキナゾリン-3(2H)-イル)-6-メチル-2-オキソピリジン-1(2H)-イル)メチル;および
リン酸二水素(6-メチル-5-(1-(2-メチル-4-(トリフルオロメトキシ)フェニル)-4-オキソ-6-(トリフルオロメチル)-1,4-ジヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-3(2H)-イル)-2-オキソピリジン-1(2H)-イル)メチル
からなる群から選択される化合物またはその薬学上許容可能な塩。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載の化合物と、薬学上許容可能な賦形剤とを含んでなる医薬組成物。
【請求項17】
静脈内投与用に調合される、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
療法における使用のための、請求項1~15のいずれか一項に記載の化合物もしくはその薬学上許容可能な塩もしくはその互変異性体または請求項16もしくは17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
疼痛または疼痛関連疾患、障害、もしくは病態の治療における使用のための、請求項1~15のいずれか一項に記載の化合物もしくはその薬学上許容可能な塩もしくはその互変異性体または請求項16もしくは17に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記疼痛が急性疼痛または慢性疼痛である、請求項
19に記載の化合物もしくはその薬学上許容可能な塩もしくはその互変異性体または医薬組成物。
【請求項21】
前記疼痛または疼痛関連疾患、障害もしくは病態が、外傷により引き起こされる疼痛;医原性医療処置もしくは歯科処置により引き起こされる疼痛;または術前もしくは術後関連疼痛である、請求項
19に記載の化合物もしくはその薬学上許容可能な塩もしくはその互変異性体または医薬組成物。
【請求項22】
前記疼痛または疼痛関連疾患、障害もしくは病態が、神経因性疼痛、侵害受容性疼痛、炎症性疼痛、筋骨格痛、内臓痛または特発性疼痛である、請求項
19に記載の化合物もしくはその薬学上許容可能な塩もしくはその互変異性体または医薬組成物。
【請求項23】
前記疼痛または疼痛関連疾患、障害もしくは病態が、小径線維神経障害、小径線維介在糖尿病性神経障害、特発性小径線維神経障害、有痛性糖尿病性神経障害および多発神経障害から選択される神経因性疼痛または慢性神経因性疼痛である、請求項
19に記載の化合物もしくはその薬学上許容可能な塩もしくはその互変異性体または医薬組成物。
【請求項24】
前記疼痛または疼痛関連疾患、障害もしくは病態が、変形性関節症、慢性変形性関節症疼痛および慢性炎症性脱髄性多発神経障害から選択される炎症性疼痛である、請求項
19に記載の化合物もしくはその薬学上許容可能な塩もしくはその互変異性体または医薬組成物。
【請求項25】
心房細動の治療における使用のための、請求項1~15のいずれか一項に記載の化合物もしくはその薬学上許容可能な塩もしくはその互変異性体または請求項16もしくは17に記載の医薬組成物。
【国際調査報告】