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特表2024-502234抗CD3含有分子の拡散勾配アッセイ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-18
(54)【発明の名称】抗CD3含有分子の拡散勾配アッセイ
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/10 20060101AFI20240111BHJP
   C07K 7/00 20060101ALI20240111BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20240111BHJP
   C07K 16/46 20060101ALN20240111BHJP
   C07K 14/705 20060101ALN20240111BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20240111BHJP
【FI】
C12N5/10 ZNA
C07K7/00
C07K16/28
C07K16/46
C07K14/705
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537296
(86)(22)【出願日】2021-12-21
(85)【翻訳文提出日】2023-08-15
(86)【国際出願番号】 US2021064546
(87)【国際公開番号】W WO2022140344
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】63/128,959
(32)【優先日】2020-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500049716
【氏名又は名称】アムジエン・インコーポレーテツド
(71)【出願人】
【識別番号】513105328
【氏名又は名称】アムジェン リサーチ (ミュニック) ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】タン,グレン・クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ザサジンスカ,イベリーナ
(72)【発明者】
【氏名】ホフマン,パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ウー,ビン
【テーマコード(参考)】
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA01
4B065BB19
4B065CA25
4B065CA44
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA13
4H045BA14
4H045BA15
4H045BA16
4H045BA17
4H045BA70
4H045CA40
4H045DA50
4H045DA76
4H045EA54
4H045FA10
4H045FA74
4H045GA22
(57)【要約】
本開示は、Fc非含有生体分子を発現及び分泌する細胞を識別し、選択し、且つ特徴付ける材料及び方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CD3ペプチドに結合することができる生体分子を分泌する細胞集団から少なくとも1つの細胞を単離するための方法であって、
(a)ナノ流体チップのナノ流体チャンバー内の細胞集団から単一細胞を収集する工程であって、前記細胞は前記生体分子を発現することができる発現コンストラクトを含む、工程と;
(b)クローン増殖並びに前記生体分子の発現及び分泌を可能にする条件下で前記単一細胞を培養し、それによって単一細胞クローンから複数の細胞を生成する工程と;
(c)前記CD3ペプチドを含む組成物を、前記CD3ペプチドが前記単一細胞クローンの前記複数の細胞によって分泌された前記生体分子と接触することを可能にする条件下で前記ナノ流体チップに投与する工程と;
(d)CD3ペプチドと前記生体分子との結合を検出する工程と;
(e)CD3ペプチドに結合することができる生体分子を分泌する工程(b)の複数の細胞から少なくとも1つの細胞を単離する工程と
を含む方法。
【請求項2】
前記細胞集団は細胞株である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記細胞集団は2つ以上の細胞株の混合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
単一細胞株の前記複数の細胞によって分泌された前記生体分子の量を定量する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記細胞は、哺乳動物細胞、昆虫細胞、細菌細胞、真核細胞、植物細胞、酵母細胞及び真菌細胞からなる群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒト胚性腎臓(HEK)細胞、マウス骨髄腫(NS0、Sp2/0)細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、ヒト胚性腎臓(293)細胞、線維肉腫(HT-1080)細胞、ヒト胚性網膜(PER.C6)細胞、ハイブリッド腎臓及びB細胞(HKB-11)、CEVEC羊膜細胞産生(CAP)細胞、並びにヒト肝臓(HuH-7)細胞からなる群より選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記生体分子はポリペプチドを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ポリペプチドは組換え体である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ポリペプチドは、抗体、ペプチボディ、多重特異性タンパク質、二重特異性タンパク質、二重特異性T細胞エンゲージャー、半減期延長二重特異性T細胞エンゲージャー、並びにそれらの生物学的に活性な断片、アナログ及び誘導体からなる群から選択される、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記生体分子はBiTEであり、またCD33、EGFRvIII、MSLN、CDH19、DLL3、CD19、FLT3、CDH3、BCMA、PSMA、MUC17、CLDN18.2、EpCAM、CEA、Her2、CD20及びCD70からなる群から選択される標的分子に結合することができる、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記CD3ペプチドは、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20個のアミノ酸を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記CD3ペプチドは10個のアミノ酸を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記CD3ペプチドは、ピログルタミン酸-DGNEEMGGC(配列番号1)のアミノ酸配列を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記CD3ペプチドは、少なくとも1つの修飾を含むCD3ペプチドコンジュゲートである、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記修飾は、選択された検出部分の結合を含み、前記検出部分はフルオロフォアである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記フルオロフォアは、AF594及びAF488からなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記AF594は、マレイミドリンカーを使用して、配列ピログルタミン酸-DGNEEMGGC(配列番号1)のC末端システインに結合している、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記発現コンストラクトは、ベクター、プラスミド、及び線状化DNA発現配列からなる群から選択される、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
14日以内に完了する、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記ナノ流体チップは、1,000~2,000のナノ流体チャンバーを含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記ナノ流体チップは、1758個のナノ流体チャンバーを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
CD3ペプチドに結合することができる二重特異性T細胞エンゲージャーを分泌する細胞集団から少なくとも1つの細胞を単離するための方法であって、
(a)ナノ流体チップのナノ流体チャンバー内の単一細胞を収集する工程であって、前記細胞は前記二重特異性T細胞エンゲージャーを発現することができる発現コンストラクトを含む、工程と;
(b)クローン増殖並びに前記二重特異性T細胞エンゲージャーの発現及び分泌を可能にする条件下で前記単一細胞を培養し、それによって単一細胞クローンから複数の細胞を生成する工程と;
(c)前記CD3ペプチドを含む組成物を、前記CD3ペプチドが前記単一細胞株の前記複数の細胞によって分泌された前記二重特異性T細胞エンゲージャーと接触することを可能にする条件下で前記ナノ流体チップに投与する工程と;
(d)CD3ペプチドと前記二重特異性T細胞エンゲージャーとの結合を検出する工程と;
(e)CD3ペプチドに結合することができる二重特異性T細胞エンゲージャーを分泌する工程(b)の複数の細胞から少なくとも1つの細胞を単離する工程と、
を含み、
前記CD3ペプチドはCD3ペプチドコンジュゲートであり、且つアミノ酸配列ピログルタミン酸-DGNEEMGGC(配列番号1)を含み、AF594が前記配列のC末端システインに結合している、方法。
【請求項23】
CD3ペプチドに結合することができる生体分子を生成する方法であって、
(a)ナノ流体チップのナノ流体チャンバー内の細胞集団から単一細胞を収集する工程であって、前記細胞は前記生体分子を発現することができる発現コンストラクトを含む、工程と;
(b)クローン増殖並びに前記生体分子の発現及び分泌を可能にする条件下で前記単一細胞を培養し、それによって単一細胞クローンから複数の細胞を生成する工程と;
(c)前記CD3ペプチドを含む組成物を、前記CD3ペプチドが前記単一細胞株の前記複数の細胞によって分泌された前記生体分子と接触することを可能にする条件下で前記ナノ流体チップに投与する工程と;
(d)CD3ペプチドと前記生体分子との結合を検出する工程と;
(e)CD3ペプチドに結合することができる生体分子を分泌する工程(b)の複数の細胞から少なくとも1つの細胞を単離する工程と;
(f)前記少なくとも1つの細胞を前記細胞株から容器に移し、前記生体分子の産生を可能にする条件下で前記細胞を培養する工程と
を含む方法。
【請求項24】
CD3ペプチドに結合することができる生体分子を分泌する細胞集団から少なくとも1つの細胞を単離するための方法であって、
(a)ナノ流体チップのナノ流体チャンバー内の細胞集団から単一細胞を収集する工程であって、前記細胞は前記生体分子を発現することができる発現コンストラクトを含む、工程と;
(b)クローン増殖並びに前記生体分子の発現及び分泌を可能にする条件下で前記単一細胞を培養し、それによって単一細胞クローンから複数の細胞を生成する工程と;
(c)前記CD3ペプチドを含む第1の組成物及び生体分子結合試薬を含む第2の組成物を、前記CD3ペプチドが前記単一細胞株の前記複数の細胞によって分泌された前記生体分子と接触することを可能にする条件下で前記ナノ流体チップに投与する工程と;
(d)CD3ペプチド及び生体分子結合試薬と前記生体分子との結合を検出する工程と;
(e)CD3ペプチド、及び任意選択により生体分子結合試薬に結合することができる生体分子を分泌する工程(b)の複数の細胞から少なくとも1つの細胞を単離する工程と
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
電子的に提出された資料の参照による組み込み
配列表は、本開示の一部であり、テキストファイルとして本明細書と同時に提出している。配列表を含むテキストファイルの名称は、「55333_Seqlisting.txt」であり、これは、2021年12月7日に作成され、835バイトのサイズである。配列表の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
現在開発中の治療用生物製剤候補の数の増加に伴い、これらの医薬品を送達するためのプロセス開発業務からの革新的なソリューションに対する要求が高まっている。かなりの数の生物製剤が、生細胞系を用いて製造され、哺乳動物のチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞は主に、モノクローナル抗体又は他の抗体フォーマットなどの組換えタンパク質治療薬の製造に使用されている(Wurm,FM.,Nat Biotechnol 2004,22(11).1393-8)。典型的な哺乳動物細胞株開発(CLD)プロセスは、目的の導入遺伝子をコードするDNAコンストラクトを用いた宿主細胞トランスフェクションから始まり、その後、所望の治療用タンパク質を発現する細胞の安定なプールを送達するために(必要であれば)選択及び増幅が続く。治療用タンパク質の生産における規制要件を満たすとともに安全で頑健なプロセスを保証するためには、プロセス細胞株は、単一細胞に由来しなければならない(Frye,C.;et al.,Biologicals 2016,44(2),117-22;及びLe K,Tan C,Le H,et al.Assuring Clonality on the Beacon Digital Cell Line Development Platform.Biotechnol J.2020;15(1):e1900247)。単一細胞のクローニングに使用される細胞のプール集団は、非常に不均一であり、そこでは、満足する製品品質プロファイルを有するタンパク質を大量に産生する細胞はあまり示されない。したがって、経験的スクリーニング努力によって、所望の産物品質特性を有する高品質クローン細胞株を特定し単離する必要がある。一般的には、臨床的及び商業的製造に適した高品質の細胞株候補を特定するためには、数百から数千のクローンを評価する必要があるので、クローンスクリーニング試験はかなり困難であり、資源集約的である(Wurm,F.M.,Nat Biotechnol)。
【0003】
最近開発されたBerkeley LightのBeacon(登録商標)技術プラットフォームは、細胞株の開発操作に適しており、単一細胞レベルでの増殖及び所望の分泌プロファイルの評価が可能である。Beacon(登録商標)機器は、単一のナノ流体チップ上で最大1758個のクローン細胞株を単離することができる完全統合型ナノ流体細胞培養システムである。BLIプラットフォームは、内蔵の蛍光顕微鏡機能を備えており、チップ上で増殖した細胞集団を特徴付けるナノスケールの蛍光アッセイを開発することができる。ナノ流体チップにロードされた細胞を個々のペンで単離し、同時に培養し、組換えタンパク質分泌をアッセイすることができる。クローン候補を所望の増殖及び分泌プロファイルに基づいて選択し、チップから取り出し、スケールアップに供する。最近、Beacon(登録商標)プラットフォームを使用して、クローン性が高度に保証された、臨床的及び商業的製造に適した高品質クローンの濃縮が行われた(Le K,et al.,Biotechnol Prog.2018;34(6):1438-1446;及びLe K,et al.,Biotechnol J.2020;15(1):e1900247)。
【0004】
BLIプラットフォームを利用する標準的なCLDワークフローにより、ヒトFcドメイン又はヒトカッパ軽鎖ドメインをタンパク質配列中に有する治療用生物製剤を発現する産生性の高い細胞株を選択することができる。ナノ流体チップ上のタンパク質検出を可能にし、個々のクローンの分泌能力を評価する、BLIの拡散に基づくSpotlightTMHu3又はSpotLightヒトカッパアッセイによって、所望の分泌表現型を示す細胞株のスクリーニングを促進することができる。Berkeley Lightの拡散アッセイ試薬には、モノクローナル抗体などの治療法のサブセットに存在するヒトFcドメイン又はヒトカッパ軽鎖ドメインに結合する蛍光標識プローブが含まれる。このアッセイはペン内の蛍光試薬の差次的保持に依存しており、これは、蛍光顕微鏡法によって検出することができ、組換えタンパク質分泌の定量的尺度を提供する。蛍光プローブの低分子量は、その迅速な拡散及び効率的なオンチップ平衡化を可能にする。アッセイ試薬は培地で希釈され、チップ上に潅流され、そこで各ペン中に拡散し、分泌タンパク質産物中に存在する標的ドメインに結合する。その結果、標的タンパク質及び拡散アッセイ試薬からなる高分子量複合体が形成される。平衡に達すると、チップは培地でフラッシュされ、このプロセスの間、未結合のアッセイ試薬は、急速にペンから拡散する。対照的に、分泌タンパク質と複合体化した拡散試薬は、そのより大きい分子量によって引き起こされるそのより遅い拡散速度のために、ペン内に保持される。SpotlightTMHu3-Fcドメイン又はSpotLightヒトカッパ-カッパ軽鎖複合体に対応する蛍光強度が、ペンにおいて検出され、組換えタンパク質分泌レベルを測定することが可能になる。
【0005】
細胞株スクリーニングのためにBerkeley Lights拡散アッセイを利用することに対する大きな制約は、それらが、抗体又は他のヒトFc若しくはヒトカッパ軽鎖含有抗体フォーマットなどの組換えタンパク質のサブセットを発現する細胞にのみ適用可能であることである。しかしながら、分子フォーマット又はタンパク質配列工学のために、Berkeley Lightsによって提供される市販の試薬に適合しない、相当量の組換えタンパク質治療薬が存在する。二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE(登録商標)分子は、2つの抗体の単鎖可変フラグメント(scFv)からなる組換え融合タンパク質であり、以下の2つの抗原を特異的に認識するように設計されている:CD3受容体に対する親和性によってT細胞表面上に存在するもの、及び標的腫瘍細胞上に存在する第2の抗原(Baeuerle PA,et al.,Curr Opin Mol Ther.2009;11(1):22-30;Frankel SR,and Baeuerle PA.Curr Opin Chem Biol.2013;17(3):385-392;及びYuraszeck T,et al.,Clin Pharmacol Ther.2017;101(5):634-645)。BiTE((登録商標)療法は、患者自身の免疫システムを働かせて疾患と闘うように設計された抗癌治療である。BiTE(登録商標)が投与されると、患者自身のT細胞は、選択された腫瘍関連抗原を発現する癌細胞に繋がれ、その結果、腫瘍に対する免疫応答を誘導する。BiTE(登録商標)技術は、固形悪性腫瘍及び血液悪性腫瘍の両方に対する治療の開発に有望な解決策を提供する(Baeuerle PA,et al.,Curr Opin Mol Ther.2009;11(1):22-30)。
【0006】
したがって、当該技術分野においては、カノニカルBiTE(登録商標)分子などの非Fc含有生体分子を発現し分泌する細胞を特徴付ける方法を開発することが要望されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Wurm,F.M.,Nat Biotechnol 2004,22(11),1393-8
【非特許文献2】Frye,C.;et al.,Biologicals 2016,44(2),117-22
【非特許文献3】Le K,Tan C,Le H,et al.Assuring Clonality on the Beacon Digital Cell Line Development Platform.Biotechnol J.2020;15(1):e1900247
【非特許文献4】Le K,et al.,Biotechnol Prog.2018;34(6):1438-1446
【非特許文献5】Baeuerle PA,et al.,Curr Opin Mol Ther.2009;11(1):22-30
【非特許文献6】Frankel SR,and Baeuerle PA.Curr Opin Chem Biol.2013;17(3):385-392
【非特許文献7】Yuraszeck T,et al.,Clin Pharmacol Ther.2017;101(5):634-645
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に記載されるように、本開示は、様々な実施形態において、CD3ペプチドに結合することができる生体分子を分泌する細胞の集団から少なくとも1つの細胞を単離するための方法を提供する。一実施形態では、本開示は、CD3ペプチドに結合することができる生体分子を分泌する細胞集団から少なくとも1つの細胞を単離するための方法であって、(a)ナノ流体チップのナノ流体チャンバー内の細胞集団から単一細胞を収集する工程であって、前記細胞は前記生体分子を発現することができる発現コンストラクトを含む、工程と;(b)クローン増殖並びに前記生体分子の発現及び分泌を可能にする条件下で単一細胞を培養し、それによって単一細胞クローンから複数の細胞を生成する工程と;(c)前記CD3ペプチドを含む組成物を、CD3ペプチドが単一細胞クローンの前記複数の細胞によって分泌された前記生体分子と接触することを可能にする条件下で前記ナノ流体チップに投与する工程と;(d)CD3ペプチドと前記生体分子との結合を検出する工程と;(e)CD3ペプチドに結合することができる生体分子を分泌する工程(b)の複数の細胞から少なくとも1つの細胞を単離する工程と、を含む方法を提供する。
【0009】
一実施形態では、細胞集団は細胞株である。別の実施形態では、細胞集団は2つ以上の細胞株の混合物である。さらに別の実施形態では、単一細胞株の前記複数の細胞によって分泌された前記生体分子の量を定量する工程をさらに含む、前述の方法が提供される。
【0010】
さらに別の実施形態では、本開示は、細胞が哺乳動物細胞、昆虫細胞、細菌細胞、真核細胞、植物細胞、酵母細胞及び真菌細胞からなる群から選択される前述の方法を提供する。いくつかの実施形態では、細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒト胚性腎臓(HEK)細胞、マウス骨髄腫(NS0、Sp2/0)細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、ヒト胚性腎臓(293)細胞、線維肉腫(HT-1080)細胞、ヒト胚性網膜(PER.C6)細胞、ハイブリッド腎臓及びB細胞(HKB-11)、CEVEC羊膜細胞産生(CAP)細胞、並びにヒト肝臓(HuH-7)細胞からなる群より選択される。
【0011】
別の実施形態では、本開示は、前記生体分子がポリペプチドを含む前述の方法を提供する。一実施形態では、このポリペプチドは、組換え体である。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、抗体、ペプチボディ、多重特異性タンパク質、二重特異性タンパク質、二重特異性T細胞エンゲージャー、半減期延長二重特異性T細胞エンゲージャー、並びにそれらの生物学的に活性な断片、アナログ及び誘導体からなる群から選択される。
【0012】
さらに別の実施形態では、本開示は、生体分子がBiTEであり、またCD33、EGFRvIII、MSLN、CDH19、DLL3、CD19、FLT3、CDH3、BCMA、PSMA、MUC17、CLDN18.2、EpCAM、CEA、Her2、CD20及びCD70からなる群から選択される標的分子に結合することもできる、前述の方法を提供する。
【0013】
さらに別の実施形態では、本開示は、前記CD3ペプチドが5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20個のアミノ酸を含む、前述の方法を提供する。一実施形態では、CD3ペプチドは10個のアミノ酸を含む。別の実施形態では、CD3ペプチドは、ピログルタミン酸-DGNEEMGGC(配列番号1)のアミノ酸配列を含む。
【0014】
さらに別の実施形態では、本開示は、前記CD3ペプチドが少なくとも1つの修飾を含むCD3ペプチドコンジュゲートである、前述の方法を提供する。一実施形態では、修飾は、選択された検出部分の結合を含み、前記検出部分はフルオロフォアである。一実施形態では、フルオロフォアは、AF594及びAF488からなる群から選択される。さらに別の実施形態では、AF594が、マレイミドリンカーを使用して、配列ピログルタミン酸-DGNEEMGGC(配列番号1)のC末端システインに結合している。
【0015】
さらに別の実施形態では、本開示は、前記発現コンストラクトがベクター、プラスミド、及び線状化DNA発現配列からなる群から選択される、前述の方法を提供する。さらに他の実施形態では、前述の方法は、14日以内に完了する。
【0016】
別の実施形態では、本開示は、ナノ流体チップが1,000~2,000のナノ流体チャンバーを含む、前述の方法を提供する。一実施形態では、ナノ流体チップは、1758個のナノ流体チャンバーを含む。
【0017】
さらに別の実施形態では、本開示は、CD3ペプチドに結合することができる二重特異性T細胞エンゲージャーを分泌する細胞集団から少なくとも1つの細胞を単離するための方法であって、(a)ナノ流体チップのナノ流体チャンバー内の単一細胞を収集する工程であって、前記細胞は前記二重特異性T細胞エンゲージャーを発現することができる発現コンストラクトを含む、工程と;(b)クローン増殖並びに前記二重特異性T細胞エンゲージャーの発現及び分泌を可能にする条件下で単一細胞を培養し、それによって単一細胞クローンから複数の細胞を生成する工程と;(c)前記CD3ペプチドを含む組成物を、前記CD3ペプチドが前記単一細胞株の前記複数の細胞によって分泌された前記二重特異性T細胞エンゲージャーと接触することが可能にする条件下で前記ナノ流体チップに投与する工程と;(d)CD3ペプチドと前記二重特異性T細胞エンゲージャーとの結合を検出する工程と;(e)CD3ペプチドに結合することができる二重特異性T細胞エンゲージャーを分泌する工程(b)の複数の細胞から少なくとも1つの細胞を単離する工程と、を含み、前記CD3ペプチドはCD3ペプチドコンジュゲートであり、且つアミノ酸配列ピログルタミン酸-DGNEEMGGC(配列番号1)を含み、AF594が前記配列のC末端システインに結合している、方法を提供する。
【0018】
さらに別の実施形態では、本開示は、CD3ペプチドに結合することができる生体分子を生成する方法であって、(a)ナノ流体チップのナノ流体チャンバー内の細胞集団から単一細胞を収集する工程であって、前記細胞は前記生体分子を発現することができる発現コンストラクトを含む、工程と;(b)クローン増殖並びに前記生体分子の発現及び分泌を可能にする条件下で単一細胞を培養し、それによって単一細胞クローンから複数の細胞を生成する工程と;(c)前記CD3ペプチドを含む組成物を、前記CD3ペプチドが単一細胞株の前記複数の細胞によって分泌された前記生体分子と接触することを可能にする条件下で前記ナノ流体チップに投与する工程と;(d)CD3ペプチドと前記生体分子との結合を検出する工程と;(e)CD3ペプチドに結合することができる生体分子を分泌する工程(b)の複数の細胞から少なくとも1つの細胞を単離する工程と、(f)前記少なくとも1つの細胞を前記細胞クローンから容器に移し、前記生体分子の産生を可能にする条件下で前記細胞を培養する工程と、を含む、方法を提供する。
【0019】
さらに別の実施形態では、本開示は、CD3ペプチドに結合することができる生体分子を分泌する細胞集団から少なくとも1つの細胞を単離するための方法であって、(a)ナノ流体チップのナノ流体チャンバー内の細胞集団から単一細胞を収集する工程であって、前記細胞は前記生体分子を発現することができる発現コンストラクトを含む、工程と;(b)クローン増殖並びに前記生体分子の発現及び分泌を可能にする条件下で単一細胞を培養し、それによって単一細胞クローンから複数の細胞を生成する工程と;(c)前記CD3ペプチドを含む第1の組成物及び生体分子結合試薬を含む第2の組成物を、前記CD3ペプチドが単一細胞株の前記複数の細胞によって分泌された前記生体分子と接触することを可能にする条件下で前記ナノ流体チップに投与する工程と;(d)CD3ペプチド及び生体分子結合試薬と前記生体分子との結合を検出する工程と;(e)CD3ペプチド、及び任意選択により生体分子結合試薬に結合することができる生体分子を分泌する工程(b)の複数の細胞から少なくとも1つの細胞を単離する工程と、を含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、前述の方法は、細胞若しくは細胞株の混合物又は細胞若しくは細胞株の混合集団から少なくとも1つの細胞を単離することを可能にする。いくつかの実施形態では、細胞の集団は、1つの細胞株に由来する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1A図1は、CD3結合を模倣するアッセイ試薬の設計及び開発を示す。図1A.拡散勾配アッセイのためのBiTE(登録商標)特異的試薬設計の概略図。図1B.CD3-AF488ペプチドコンジュゲートを補充した培地から精製した組換えBiTE(登録商標)タンパク質に対応するSECプロファイル。検出された組換えBiTE(登録商標)タンパク質の種を矢印で示す。図1C.CD3-AF488ペプチドコンジュゲートを補充した分泌培地に由来する試料に対応するSECプロファイル。検出された組換えBiTE(登録商標)タンパク質の種及び非結合CD3-AF488試薬を矢印で示す。図1D.示された濃度のCD3拡散アッセイ試薬との24時間のインキュベーション後に測定されたCHO細胞の生存率を示すグラフ。
図1B図1は、CD3結合を模倣するアッセイ試薬の設計及び開発を示す。図1A.拡散勾配アッセイのためのBiTE(登録商標)特異的試薬設計の概略図。図1B.CD3-AF488ペプチドコンジュゲートを補充した培地から精製した組換えBiTE(登録商標)タンパク質に対応するSECプロファイル。検出された組換えBiTE(登録商標)タンパク質の種を矢印で示す。図1C.CD3-AF488ペプチドコンジュゲートを補充した分泌培地に由来する試料に対応するSECプロファイル。検出された組換えBiTE(登録商標)タンパク質の種及び非結合CD3-AF488試薬を矢印で示す。図1D.示された濃度のCD3拡散アッセイ試薬との24時間のインキュベーション後に測定されたCHO細胞の生存率を示すグラフ。
図1C図1は、CD3結合を模倣するアッセイ試薬の設計及び開発を示す。図1A.拡散勾配アッセイのためのBiTE(登録商標)特異的試薬設計の概略図。図1B.CD3-AF488ペプチドコンジュゲートを補充した培地から精製した組換えBiTE(登録商標)タンパク質に対応するSECプロファイル。検出された組換えBiTE(登録商標)タンパク質の種を矢印で示す。図1C.CD3-AF488ペプチドコンジュゲートを補充した分泌培地に由来する試料に対応するSECプロファイル。検出された組換えBiTE(登録商標)タンパク質の種及び非結合CD3-AF488試薬を矢印で示す。図1D.示された濃度のCD3拡散アッセイ試薬との24時間のインキュベーション後に測定されたCHO細胞の生存率を示すグラフ。
図1D図1は、CD3結合を模倣するアッセイ試薬の設計及び開発を示す。図1A.拡散勾配アッセイのためのBiTE(登録商標)特異的試薬設計の概略図。図1B.CD3-AF488ペプチドコンジュゲートを補充した培地から精製した組換えBiTE(登録商標)タンパク質に対応するSECプロファイル。検出された組換えBiTE(登録商標)タンパク質の種を矢印で示す。図1C.CD3-AF488ペプチドコンジュゲートを補充した分泌培地に由来する試料に対応するSECプロファイル。検出された組換えBiTE(登録商標)タンパク質の種及び非結合CD3-AF488試薬を矢印で示す。図1D.示された濃度のCD3拡散アッセイ試薬との24時間のインキュベーション後に測定されたCHO細胞の生存率を示すグラフ。
図2A図2は、Berkeley Lightsナノ流体チップ上でのCD3バインダー分泌のための拡散勾配アッセイの最適化を示す。図2A.CD3結合タンパク質のカノニカルBiTE(登録商標)タンパク質産物の分泌を検出するためのオンチップCD3拡散勾配アッセイの概略図。図2B.CD3拡散アッセイを示すBLIプラットフォームで取得された画像により、ペンにおける蛍光プローブの差次的保持に基づいて、カノニカルBiTE(登録商標)モダリティを分泌するクローンの識別することができる。
図2B図2は、Berkeley Lightsナノ流体チップ上でのCD3バインダー分泌のための拡散勾配アッセイの最適化を示す。図2A.CD3結合タンパク質のカノニカルBiTE(登録商標)タンパク質産物の分泌を検出するためのオンチップCD3拡散勾配アッセイの概略図。図2B.CD3拡散アッセイを示すBLIプラットフォームで取得された画像により、ペンにおける蛍光プローブの差次的保持に基づいて、カノニカルBiTE(登録商標)モダリティを分泌するクローンの識別することができる。
図3A図3は、CD3拡散アッセイが、Berkeley Lightsナノ流体チップ上の2つのBiTE(登録商標)フォーマットに対する高い特異性を実証することを示す。図3A.CD3バインダー拡散アッセイの特異性及び効率を示すBLIプラットフォームで得られた代表的画像。画像は、BLIプラットフォームに構築されたアッセイ分析ツールから抽出した。CD3バインダー及びSpotlight(登録商標)Hu3アッセイ画像取得に使用される曝露時間は、アッセイパラメーターの違いのため同じではない。カノニカルBiTE(登録商標)、BiTE(登録商標)-Fc融合体又はIgG融合タンパク質を発現する3つの独立して生成された細胞株を、1つのチップ上の交互の切片にロードし、5日間培養した。CD3バインダーアッセイ及びSpotlight(登録商標)Hu3アッセイを5日目に実施した。図3B.分泌スコアの定量とAに示すアッセイ結果を示すグラフ。図3C.A及びBに示す細胞株によって発現した3つのモダリティについてのCD3拡散アッセイスコア対Spotlight(登録商標)Hu3アッセイスコアの相関。表示したR値は、CD3拡散アッセイの結果とSpotlight(登録商標)Hu3アッセイの結果との間の相関の程度を示す。
図3B図3は、CD3拡散アッセイが、Berkeley Lightsナノ流体チップ上の2つのBiTE(登録商標)フォーマットに対する高い特異性を実証することを示す。図3A.CD3バインダー拡散アッセイの特異性及び効率を示すBLIプラットフォームで得られた代表的画像。画像は、BLIプラットフォームに構築されたアッセイ分析ツールから抽出した。CD3バインダー及びSpotlight(登録商標)Hu3アッセイ画像取得に使用される曝露時間は、アッセイパラメーターの違いのため同じではない。カノニカルBiTE(登録商標)、BiTE(登録商標)-Fc融合体又はIgG融合タンパク質を発現する3つの独立して生成された細胞株を、1つのチップ上の交互の切片にロードし、5日間培養した。CD3バインダーアッセイ及びSpotlight(登録商標)Hu3アッセイを5日目に実施した。図3B.分泌スコアの定量とAに示すアッセイ結果を示すグラフ。図3C.A及びBに示す細胞株によって発現した3つのモダリティについてのCD3拡散アッセイスコア対Spotlight(登録商標)Hu3アッセイスコアの相関。表示したR値は、CD3拡散アッセイの結果とSpotlight(登録商標)Hu3アッセイの結果との間の相関の程度を示す。
図3C図3は、CD3拡散アッセイが、Berkeley Lightsナノ流体チップ上の2つのBiTE(登録商標)フォーマットに対する高い特異性を実証することを示す。図3A.CD3バインダー拡散アッセイの特異性及び効率を示すBLIプラットフォームで得られた代表的画像。画像は、BLIプラットフォームに構築されたアッセイ分析ツールから抽出した。CD3バインダー及びSpotlight(登録商標)Hu3アッセイ画像取得に使用される曝露時間は、アッセイパラメーターの違いのため同じではない。カノニカルBiTE(登録商標)、BiTE(登録商標)-Fc融合体又はIgG融合タンパク質を発現する3つの独立して生成された細胞株を、1つのチップ上の交互の切片にロードし、5日間培養した。CD3バインダーアッセイ及びSpotlight(登録商標)Hu3アッセイを5日目に実施した。図3B.分泌スコアの定量とAに示すアッセイ結果を示すグラフ。図3C.A及びBに示す細胞株によって発現した3つのモダリティについてのCD3拡散アッセイスコア対Spotlight(登録商標)Hu3アッセイスコアの相関。表示したR値は、CD3拡散アッセイの結果とSpotlight(登録商標)Hu3アッセイの結果との間の相関の程度を示す。
図4A図4は、CD3拡散アッセイに基づいて選択されたクローンがサブクローニングに使用された親細胞株と比較して同様の性能を示すことを示す。図4A図4B.CD3拡散アッセイに基づいて選択され、図3に示されるチップからエクスポートされたBiTE(登録商標)-Fc融合発現クローンについての10日間のフェドバッチ実験によって評価された正規化力価測定値(A)及び比生産性(B)を示すグラフ。本研究で作製したBLIエクスポートクローンを丸で示し、サブクローニングに使用した親細胞株を三角で示す。A及びBに示す細胞株によって得られた力価及びQpは、親細胞株で測定された値に対して正規化した。図4B.A及びBに示す10日間のフェドバッチ実験中の生存細胞密度及び生存率を示すグラフ。
図4B図4は、CD3拡散アッセイに基づいて選択されたクローンがサブクローニングに使用された親細胞株と比較して同様の性能を示すことを示す。図4A図4B.CD3拡散アッセイに基づいて選択され、図3に示されるチップからエクスポートされたBiTE(登録商標)-Fc融合発現クローンについての10日間のフェドバッチ実験によって評価された正規化力価測定値(A)及び比生産性(B)を示すグラフ。本研究で作製したBLIエクスポートクローンを丸で示し、サブクローニングに使用した親細胞株を三角で示す。A及びBに示す細胞株によって得られた力価及びQpは、親細胞株で測定された値に対して正規化した。図4B.A及びBに示す10日間のフェドバッチ実験中の生存細胞密度及び生存率を示すグラフ。
図5A図5は、低レベルで分泌されるBiTE(登録商標)モダリティのためのデュアルターゲティング拡散勾配アッセイの開発を示す。図5A.B及びCに示す実験計画の概略図。図5B.CD3拡散アッセイ、Spotlight(登録商標)Hu3及びデュアルターゲティングアッセイ結果の定量化を示すグラフ。BiTE(登録商標)-Fc発現細胞株は濃い灰色の円で示され、空のペンは薄い灰色の円で示される。分泌スコア(Auスコア)を、各データセット内の空のペンについて計算された平均Auスコアに対して正規化した。図5C.デュアルターゲティング拡散勾配アッセイの効率を示す、BLIプラットフォームで取得された代表的な画像。CD3拡散アッセイ/デュアルターゲティングアッセイ及びSpotlight(登録商標)Hu3アッセイ画像取得に使用した曝露時間は、アッセイパラメーターの違いのために同じではない。
図5B図5は、低レベルで分泌されるBiTE(登録商標)モダリティのためのデュアルターゲティング拡散勾配アッセイの開発を示す。図5A.B及びCに示す実験計画の概略図。図5B.CD3拡散アッセイ、Spotlight(登録商標)Hu3及びデュアルターゲティングアッセイ結果の定量化を示すグラフ。BiTE(登録商標)-Fc発現細胞株は濃い灰色の円で示され、空のペンは薄い灰色の円で示される。分泌スコア(Auスコア)を、各データセット内の空のペンについて計算された平均Auスコアに対して正規化した。図5C.デュアルターゲティング拡散勾配アッセイの効率を示す、BLIプラットフォームで取得された代表的な画像。CD3拡散アッセイ/デュアルターゲティングアッセイ及びSpotlight(登録商標)Hu3アッセイ画像取得に使用した曝露時間は、アッセイパラメーターの違いのために同じではない。
図5C図5は、低レベルで分泌されるBiTE(登録商標)モダリティのためのデュアルターゲティング拡散勾配アッセイの開発を示す。図5A.B及びCに示す実験計画の概略図。図5B.CD3拡散アッセイ、Spotlight(登録商標)Hu3及びデュアルターゲティングアッセイ結果の定量化を示すグラフ。BiTE(登録商標)-Fc発現細胞株は濃い灰色の円で示され、空のペンは薄い灰色の円で示される。分泌スコア(Auスコア)を、各データセット内の空のペンについて計算された平均Auスコアに対して正規化した。図5C.デュアルターゲティング拡散勾配アッセイの効率を示す、BLIプラットフォームで取得された代表的な画像。CD3拡散アッセイ/デュアルターゲティングアッセイ及びSpotlight(登録商標)Hu3アッセイ画像取得に使用した曝露時間は、アッセイパラメーターの違いのために同じではない。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本開示は、Fc非含有生体分子を発現し分泌する細胞の特徴付けに有用な方法及び材料を提供することによって、当該技術分野における前述の必要性に対処する。この必要性をさらに増強すると、カノニカル及び半減期が延長されたFcコンジュゲートBiTE(登録商標)分子はいずれも、CHO細胞においてモノクローナル抗体よりも低いレベルで発現する。BiTE(登録商標)分子を高レベルで発現するクローンを識別するためのスクリーニング方法は、低発現プールのハードルを潜在的に回避する。
【0022】
一実施形態では、本開示は、Beacon(登録商標)プラットフォームを使用する細胞株開発ワークフローに適合する、CD3結合モダリティに特異的なアッセイを提供する。この実施形態では、CD3-ペプチドコンジュゲートを調製し、ナノ流体チップ上のCD3結合治療用生物製剤を分泌するクローンを識別するために、最適化オンチップ拡散勾配アッセイを実施した。この戦略は、高レベルのCD3バインダーを分泌するクローンを、低産生クローンから、またナノ流体チップ上の他のモダリティを分泌する細胞株から区別することを可能にする。さらに、このアッセイを用いて選択された細胞株は、標準的なワークフローにより誘導されるクローンと比較した場合、同様の増殖及び分泌プロファイルを示す。したがって、本明細書で提供されるCD3拡散アッセイは、ナノ流体チップ上の高分泌細胞株の識別を可能にし、一実施形態では、BLIプラットフォームを使用する早期のクローン選択を支持する。他の実施形態では、本開示は、他のマイクロ流体デバイス、細胞ベースのマイクロアレイ、マイクロタイタープレートベースのスクリーニングアッセイ(例えば、ELISA)、並びにリソグラフィベースのマイクロアレイ及びナノウェル支援細胞パターニングプラットフォームを含むビーズカプセル化技術を使用する液滴ベースのスクリーニング(Love et al.,Nat.Biotechnol.,24(6)703(2006);及びOzkumur et al.,Materials Views,11(36),4643-4650(2015))に使用することができる方法及び試薬を提供する。
【0023】
細胞株開発キャンペーンには、増殖され、所望の治療用生物製剤の分泌を評価される何千もの単一前駆細胞株が含まれる。Berkeley Light Beacon(登録商標)プラットフォームは、ユーザが単一のナノ流体チップ上で最大1758個のクローン細胞株を同時に培養し、アッセイし、増殖させることを可能にする完全に統合されたナノ流体細胞培養システムである。本明細書に記載されるように、一実施形態では、Beacon(登録商標)プラットフォームは、細胞株開発(CLD)操作を進め、単一細胞レベルでの増殖及び所望の分泌プロファイルの評価を可能にする。これにより、標準的なアッセイを使用して生産スケール及びスクリーニングに何千もの候補をスケールアップする必要なしに、高品質クローンを選択することができる。オンチップ分泌評価のために、Berkeley LightsはヒトFcドメイン又はヒトカッパ軽鎖ドメインにそれぞれ結合するSpotlightTMHu3及びSpotlightヒトカッパアッセイ試薬を開発したが、このアプローチは組換えタンパク質治療薬のサブセットにのみ適用される。したがって、本開示は、一実施形態において、カノニカル二重特異性T細胞エンゲージャーなどのCD3バインダーによって特異的に認識されるフルオロフォアコンジュゲートペプチドを利用するオンチップ拡散ベースのアッセイを提供し、ナノ流体チップ上の高分泌クローンの識別を可能にする。本明細書に開示されるように、アッセイは、様々なCD3結合剤を検出するための特異性を提供する。さらに、別の実施形態では、本開示は、2つの蛍光プローブを使用して組換えタンパク質分泌を検出し、標準的な拡散勾配アッセイの感度を高めることを可能にするデュアルターゲティングアッセイ戦略を提供する。
【0024】
一実施形態では、本開示は、CD3ペプチドに結合することができる生体分子を分泌する細胞集団から少なくとも1つの細胞を単離するための方法を提供する。「少なくとも1つ」という語句は、本明細書で使用される場合、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれ以上であり得る。いくつかの実施形態では、数千個もの個々の細胞が単離され、アッセイされる。例えば、いくつかの実施形態では、約10個、100個、1,000個、5,000個、6,000個、7,000個、8,000個、9,000個、10,000個又は11,000個若しくはそれ以上の細胞が単離される。いくつかの実施形態では、ナノ流体チップは、単離すべきこれまで以上の数の個々の細胞、例えば、最大85,000個又は250,000個の個々の細胞を収容することができる。一実施形態では、1758個の細胞がナノ流体チップ上で単離される。一実施形態では、「細胞の集団」は、単一細胞株の細胞の集団である。本開示の一実施形態では、単一細胞株をクローニングすることができる。他の実施形態では、細胞の集団は、細胞株の混合物(例えば、2つ以上)(例えば、細胞の混合集団)由来である。
【0025】
本明細書で提供される生体分子は、CD3タンパク質又はCD3ペプチドに結合することができる。一実施形態では、本明細書に記載のCD3タンパク質及びCD3ペプチドは、UniProt番号P07766に対応する。(本明細書で企図されるCD3のさらなる情報及び配列については、Clevers et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.,85,8156-8160(1988)及びBorroto et al.,J.Immunol.,163,(1),25-31(1999)も参照されたい)。CD3ペプチドには、本明細書に記載の方法における結合を促進するのに十分な内因性ヒトCD3イプシロンタンパク質の一部が含まれ得る。いくつかの実施形態では、CD3ペプチドは、完全長CD3アミノ酸配列の5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個又は20個若しくはそれ以上の連続するアミノ酸である。いくつかの実施形態では、CD3ペプチドは、完全長CD3アミノ酸配列の9個、10個、11個、12個、13個又は14個の連続するアミノ酸である。いくつかの実施形態では、CD3ペプチドアミノ酸配列は、修飾されていてもよい(例えば、置換、欠失及び/若しくは挿入変異を含んでもよく、且つ/又は化学修飾を含んでもよい)。いくつかの実施形態では、CD3ペプチドアミノ酸配列は、一方又は両方の末端に担体タンパク質を含むように修飾されていてもよい。本明細書に記載されるように、ペプチドは、任意選択により、ピログルタミン酸に合成的にコンジュゲートさせることができる。別の実施形態では、化学修飾を容易にするために、1つ又は複数のシステイン(C)残基を、内部又は1つ若しくは複数のペプチド末端に付加してもよい。例として、CD3ペプチドは、配列DGNEEMGGC(配列番号1)を含む。いくつかの実施形態では、C末端システイン及び/又はフルオロフォア部分の付加は、ペプチドの溶解度を改善する。例えば、未修飾のペプチド単独は不溶性であり得るが、システインの付加は、フルオロフォアコンジュゲーションを可能にし、溶解度を増加させ得る。
【0026】
したがって、本明細書に記載されるように、CD3ペプチドは、以下の配列又は以下の配列の部分(CD3εの最初の27個のN末端アミノ酸)に対する修飾(例えば、以下に限定されないが、1つ又は複数の置換、欠失及び/若しくは挿入変異、並びに/又はタグ若しくは化学修飾)を含んでもよい:QDGNE EMGGI TQTPY KVSIS GTTVI LT(配列番号2)。
【0027】
CD3ペプチドへのフルオロフォアなどのレポーター分子のコンジュゲーションもまた、本開示によって企図される。いくつかの実施形態では、フルオロフォアは、コンジュゲートペプチドを溶解性にするために、荷電又は高度に荷電される。いくつかの実施形態では、フルオロフォアは、硫酸基と交換されたカルボキシ基を有し、したがって、低いpHでも高い溶解度を有する。いくつかの実施形態では、Alexa Fluor(登録商標)色素又はAmershamTMCyDyeTMフルオール又はVivoTag(登録商標)蛍光色素(Perkin Elmer)又はDyLight(登録商標)蛍光色素が、本明細書に記載の方法において使用される。例として、ペプチドは、ALEXA-FLUOR(登録商標)色素(ThermoFisher Scientific)、例えばALEXA-FLUOR(登録商標)488、ALEXA-FLUOR(登録商標)594、ALEXA-FLUOR(登録商標)555、ALEXA-FLUOR(登録商標)647にコンジュゲートすることができる。いくつかの実施形態では、ALEXA-FLUOR(登録商標)350、ALEXA-FLUOR(登録商標)405、ALEXA-FLUOR(登録商標)532、ALEXA-FLUOR(登録商標)546、ALEXA-FLUOR(登録商標)568、ALEXA-FLUOR(登録商標)、ALEXA-FLUOR(登録商標)700、ALEXA-FLUOR(登録商標)750、BODIPY FL、クマリン、Cy3、Cy5、Cy2、Cy3.5、Cy5.5、Cy7、フルオレセイン(FITC)、Oregon Green、Pacific Blue、Pacific Green、Pacific Orange、PE-Cyanine7、PerCP-Cyanine5.5、テトラメチルローダミン(TRITC)、及び/又はテキサスレッド(それぞれThermoFischer Scientificから入手可能)が本明細書において企図される。
【0028】
いくつかの実施形態では、ALEXA-FLUOR(登録商標)488又はALEXA-FLUOR(登録商標)594は、マレイミド媒介化学によってペプチドにコンジュゲートされる。
【0029】
他の実施形態では、本開示によるペプチドは、以下の例示的な技術の1つ以上を使用して修飾され得る:クリックケミストリー、ペプチド合成中の化学的に活性化されたフルオロフォアの包含による直接的なコンジュゲーション、ペプチド合成中に使用される人工アミノ酸へのフルオロフォアの共有結合、及び/又はN末端リシンの付加。
【0030】
本明細書に記載されるように、一実施形態では、本開示によって提供される組成物及び方法は、CD3タンパク質又はCD3ペプチドに結合することができる生体分子の識別を可能にする。関連する実施形態では、生体分子は、CD3タンパク質又はCD3ペプチドと本明細書に記載の抗原標的とを結合することができる二重特異性生体分子である。
【0031】
本明細書で使用される場合、「生体分子」という用語は、本明細書に記載されるCD3ペプチドなどの結合試薬に結合することができる細胞によって産生される分子を指す。本開示の様々な実施形態による生体分子としては、抗体、ペプチボディ、融合タンパク質、ムテイン、多重特異性タンパク質、二重特異性タンパク質、並びにその生物学的に活性な断片、類似体、誘導体及びバリアント、並びにそれらのバイオシミラーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
「多重特異性タンパク質」及び「多重特異性抗体」は、本明細書では、少なくとも2つの異なる抗原又は同じ抗原上の少なくとも2つの異なるエピトープに特異的に同時に結合し、中和し、且つ/又は相互作用するように組換え改変されているタンパク質を指すために使用される。例えば、多重特異性タンパク質は、標的化細胞傷害性薬剤と組み合わせて免疫エフェクターを腫瘍又は感染性因子に標的化するように改変され得る。本明細書において「二重特異性タンパク質」及び「二重特異性抗体」と称される、2つの抗原に結合する多重特異性タンパク質は、多重特異性タンパク質の最も一般的で且つ多様な群である。二重特異性抗体を含む二重特異性タンパク質のフォーマットとしては、クアドローマ、ノブ・イン・ホール、交差-Mab、二重可変ドメインIgG(DVD-IgG)、IgG-一本鎖Fv(scFv)、scFv-CH3 KIH、二重作用Fab(DAF)、半分子交換、κλ-ボディ、タンデム型scFv、scFv-Fc、ダイアボディ、一本鎖ダイアボディ(scダイアボディ)、scダイアボディ-CH3、トリプルボディ、ミニ抗体、ミニボディ、TriBiミニボディ、タンデム型ダイアボディ、scダイアボディ-HAS、タンデム型scFv-毒素、二重親和性再標的化分子(DART)、ナノボディ、ナノボディ-HSA、ドック・アンド・ロック(DNL)、鎖交換改変ドメインSEEDボディ、Triomab、ロイシンジッパー(LUZ-Y)、Fab-アーム交換、DutaMab、DT-IgG、荷電対、Fcab、直交性Fab、IgG(H)-scFv、scFV-(H)IgG、IgG(L)-scFV、IgG(L1H1)-Fv、IgG(H)-V、V(H)-IgG、IgG(L)-V V(L)-IgG、KIH IgG-scFab、2scFV-IgG、IgG-2scFv、scFv4-Ig、Zybody、DVI-Ig4(4-in-1)、Fab-scFv、scFv-CH-CL-scFV、F(ab’)2-scFv2、scFv-KIH、Fab-scFv-Fc、四価HCAb、scダイアボディ-Fc、ダイアボディ-Fc、イントラボディ、ImmTAC、HSABody、IgG-IgG、Cov-X-Body、scFv1-PEG-scFv2、XmAb(登録商標)技術を用いて作られた分子、二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE(登録商標))及び半減期が延長された二重特異性T細胞エンゲージャー(HLE BiTE(登録商標))(Fan 上記;Spiess 上記;Sedykh 上記;Seimetz et al.,Cancer Treat Rev 36(6)458-67,2010;Shulka and Norman,Chapter 26 Downstream Processing of Fc Fusion Proteins,Bispecific Antibodies,and Antibody-Drug Conjugates,in Process Scale Purification of Antibodies Second Edition,Uwe Gottswchalk editor,p559-594,John Wiley & Sons,2017;Moore et al.,MAbs 3:6,546-557,2011)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
多重特異性タンパク質にはまた、複数の標的に結合できる三重特異性抗体、四価二重特異性抗体、ダイアボディ、トリアボディ又はテトラボディなどの抗体成分を伴わない多重特異性タンパク質、ミニボディ、及び一本鎖タンパク質などが含まれる。Coloma,M.J.,et.al.,Nature Biotech.15(1997)159-163。
【0034】
いくつかの実施形態では、二重特異性タンパク質には、ブリナツモマブ、カツマキソマブ、エルツマキソマブ、ソリトマブ、targomiR、ルチキズマブ(ABT981)、バヌシズマブ(RG7221)、メムトルマブ(ABT122)、オゾラリズマブ(ATN103)、フロテツズマブ(MGD006)、パソツキシズマブ(AMG112、MT112)、lymphomun(FBTA05)、(ATN-103)、AMG211(MT111、Medi-1565)、AMG330、AMG420(B1836909)、AMG-110(MT110)、MDX-447、TF2、rM28、HER2Bi-aATC、GD2Bi-aATC、MGD006、MGD007、MGD009、MGD010、MGD011(JNJ64052781)、IMCgp100、インジウム標識IMP-205、xm734、LY3164530、OMP-305BB3、REGN1979、COV322、ABT112、ABT165、RG-6013(ACE910)、RG7597(MEDH7945A)、RG7802、RG7813(RO6895882)、RG7386、BITS7201A(RG7990)、RG7716、BFKF8488A(RG7992)、MCLA-128、MM-111、MM141、MOR209/ES414、MSB0010841、ALX-0061、ALX0761、ALX0141;BII034020、AFM13、AFM11、SAR156597、FBTA05、PF06671008、GSK2434735、MEDI3902、MEDI0700、MEDI7352、並びにそれらの分子又はバリアント若しくはアナログ及び上記のいずれかのバイオシミラーが含まれ得る。
【0035】
本明細書で使用される場合、「生物学的に活性な誘導体」又は「生物学的に活性なバリアント」には、結合特性などの前記分子の実質的に同じ機能的及び/若しくは生物学的特性、並びに/又はペプチド骨格若しくは塩基性ポリマー単位などの同じ構造基盤を有する分子の任意の誘導体又はバリアントが含まれる。
【0036】
「バリアント」又は「誘導体」などの「アナログ」は、構造が実質的に類似し、場合によって程度は相違するが、天然に存在する分子と同じ生物学的活性を有する化合物である。例えば、ポリペプチドバリアントは実質的に類似の構造を共有し、参照ポリペプチドと同じ生物学的活性を有するポリペプチドを指す。バリアント又はアナログは、それらのアミノ酸配列の組成が、(i)ポリペプチドの1つ以上の末端における1つ以上のアミノ酸残基及び/又は天然に存在するポリペプチド配列の1つ以上の内部領域の欠失(例えば、断片)、(ii)ポリペプチドの1つ以上の末端における1つ以上のアミノ酸の挿入若しくは付加(典型的には「付加」若しくは「融合」)、及び/又は天然に存在するポリペプチド配列の1つ以上の内部領域の挿入又は付加(典型的には「挿入」)、或いは(iii)天然に存在するポリペプチド配列における1つ以上のアミノ酸の他のアミノ酸への置換を含む1つ以上の変異に基づいて、アナログが由来する天然に存在するポリペプチドと比較して異なっている。例として、「誘導体」は、アナログの1つのタイプであり、例えば化学的に修飾された参照ポリペプチドと同じか又は実質的に類似した構造を共有するポリペプチドを指す。
【0037】
バリアントポリペプチドは、アナログポリペプチドの1つのタイプであり、1つ以上のアミノ酸残基が本発明の生体分子アミノ酸配列に付加される挿入バリアントが含まれる。挿入は、タンパク質の一方若しくは両方の末端に位置してもよく、且つ/又は治療用タンパク質アミノ酸配列の内部領域内に位置してもよい。一方又は両方の末端にさらなる残基を有する挿入バリアントとしては、例えば、融合タンパク質及びアミノ酸タグ又は他のアミノ酸標識を含むタンパク質が挙げられる。一態様では、生体分子は、任意選択により、特に分子がE.コリ(E.coli)などの細菌細胞において組換えにより発現される場合、N末端Metを含有する。別の態様では、生体分子に、ヒスチジンタグ(Hisタグ)が含まれる。
【0038】
欠失バリアントでは、本明細書に記載の生体分子ポリペプチド中の1つ以上のアミノ酸残基が除去される。欠失は、治療用タンパク質ポリペプチドの一方又は両方の末端で、且つ/又は治療用タンパク質アミノ酸配列内の1つ以上の残基の除去によって行うことができる。したがって、欠失バリアントには、治療用タンパク質ポリペプチド配列の断片が含まれる。
【0039】
置換バリアントにおいては、生体分子の1つ以上のアミノ酸残基が除去され、代替残基で置換される。一態様では、置換は本質的に保存的であり、このタイプの保存的置換は当該技術分野でよく知られている。或いは、本発明は、非保存的でもある置換を包含する。例示的な保存的置換は、Lehningerの[Biochemistry,2nd Edition;Worth Publishers,Inc.,New York(1975),pp.71-77]に記載されており、すぐ下に記載する。
【0040】
本明細書で使用される際、「特異的に結合する」は、「抗原特異的」であるか、抗原標的「に対して特異的」であるか、又は抗原と「免疫反応性」である生体分子は、同様の配列の他の抗原より高い親和性で抗原に結合する生体分子を指す。一態様では、生体分子、又はその断片、バリアント若しくは誘導体は、ヒト抗原に対し、他の、すなわち非ヒト種の同様の抗原に対する結合親和性と比較してより高い親和性で結合するが、標的のオルソログを認識し、結合するポリペプチド結合剤は、本発明の範囲内にある。
【0041】
「エピトープ」という用語は、生体分子によって認識され、結合することができる任意の分子の部分を指す。エピトープは、通常、アミノ酸又は炭水化物側鎖などの分子の化学的に活性な表面群からなり、特定の三次元構造特性及び特定の電荷特性を有する。本明細書において使用されるエピトープは、連続的又は非連続的であり得る。
【0042】
本明細書において企図される生体分子には、完全長タンパク質、完全長タンパク質の前駆体、完全長タンパク質の生物学的に活性なサブユニット又は断片、並びにこれらの形態の治療用タンパク質のいずれかの生物学的に活性な誘導体及びバリアントが含まれる。したがって、生体分子には、(1)参照核酸によってコードされるポリペプチド又は本明細書に記載のアミノ酸配列に対して、少なくとも約25、約50、約100、約200、約300、約400又はそれ以上のアミノ酸の領域にわたって、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%又は約99%若しくはそれ以上のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を有するものが含まれる。本開示によれば、用語「組換え生体分子」には、組換えDNA技術により得られた任意の生体分子が含まれる。特定の実施形態では、この用語は本明細書に記載のタンパク質を包含する。
【0043】
いくつかの実施形態では、目的の生体分子は、CD3タンパク質若しくはペプチド、並びに1つ以上の他のタンパク質、例えばHER受容体ファミリータンパク質、CDタンパク質、細胞接着分子、成長因子、神経成長因子、線維芽細胞増殖因子、トランスフォーム成長因子(TGF)、インスリン様成長因子、骨誘導性因子、インスリン及びインスリン関連タンパク質、凝固及び凝固関連タンパク質、コロニー刺激因子(CSF)、他の血液及び血清タンパク質血液型抗原;受容体、受容体関連タンパク質、成長ホルモン、成長ホルモン受容体、T細胞受容体;神経栄養因子、ニューロトロフィン、リラキシン、インターフェロン、インターロイキン、ウイルス抗原、リポタンパク質、インテグリン、リウマチ因子、免疫毒素、表面膜タンパク質、輸送タンパク質、ホーミング受容体、アドレシン、調節タンパク質及びイムノアドヘシンに特異的に結合し、中和し、且つ/又は相互作用する。
【0044】
いくつかの実施形態では、目的の生体分子は、単独で又は任意の組み合わせで、CD3タンパク質及び以下の1つ以上に結合し、中和し、且つ/又は相互作用する:CD4、CD5、CD7、CD8、CD19、CD20、CD22、CD25、CD30、CD33、CD34、CD38、CD40、CD70、CD123、CD133、CD138、CD171及びCD174を含むがこれらに限定されないCDタンパク質、例えばHER2、HER3、HER4を含むHER受容体ファミリータンパク質、EGF受容体であるEGFRvIII、細胞接着分子、例えばLFA-1、Mol、p150,95、VLA-4、ICAM-1、VCAM、アルファv/ベータ3インテグリン、例えば血管内皮成長因子(「VEGF」)を含むがこれらに限定されない成長因子;VEGFR2、成長ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、成長ホルモン放出因子、副甲状腺ホルモン、ミュラー抑制物質、ヒトマクロファージ炎症性タンパク質(MIP-1-アルファ)、エリスロポエチン(EPO)、NGF-ベータなどの神経成長因子、血小板由来成長因子(PDGF)、例えばaFGF及びbFGFを含む線維芽細胞成長因子、上皮成長因子(EGF)、クリプト、数ある中でも、TGF-β1、TGF-β2、TGF-β3、TGF-β4、又はTGF-β5を含むTGF-α及びTGF-βを含むトランスフォーム成長因子(TGF)、インスリン様成長因子-I及び-II(IGF-I及びIGF-II)、des(1-3)-IGF-I(脳内IGF-I)及び骨形成促進因子、インスリン、インスリンA鎖、インスリンB鎖、プロインスリン及びインスリン様成長因子結合タンパク質を含むがこれらに限定されないインスリン及びインスリン関連タンパク質、数ある中でも、第VIII因子、組織因子、フォンウィルブランド因子などの凝固及び凝固関連タンパク質、プロテインC、アルファ-1-アンチトリプシン、ウロキナーゼ及び組織プラスミノーゲンアクチベーター(「t-PA」)などのプラスミノーゲンアクチベーター、ボンバジン、トロンビン、トロンボポエチン及びトロンボポエチン受容体、数ある中でも、M-CSF、GM-CSF及びG-CSFを含むコロニー刺激因子(CSF)、アルブミン、IgE、及び血液型抗原を含むがこれらに限定されない他の血液及び血清タンパク質、例えば、flk2/flt3受容体、肥満(OB)受容体、成長ホルモン受容体及びT細胞受容体を含む受容体及び受容体関連タンパク質、骨由来神経栄養因子(BDNF)及びニューロトロフィン-3、-4、-5又は-6(NT-3、NT-4、NT-5又はNT-6)を含むがこれらに限定されない神経栄養因子;リラキシンA鎖、リラキシンB鎖、及びプロレラキシン、例えばインターフェロン-アルファ、-ベータ及び-ガンマを含むインターフェロン、インターロイキン(IL)、例えばIL-1~IL-10、IL-12、IL-15、IL-17、IL-23、IL-12/IL-23、IL-2Ra、IL1-R1、IL-6受容体、IL-4受容体及び/又はIL-13から受容体であるIL-13RA2、又はIL-17受容体であるIL-1RAP;AIDSエンベロープウイルス抗原、リポタンパク質、カルシトニン、グルカゴン、心房性ナトリウム利尿因子、肺サーファクタント、腫瘍壊死因子-アルファ及び-ベータを含むがこれらに限定されないウイルス抗原、エンケファリナーゼ、BCMA、STEAP1、IgKappa、ROR-1、ERBB2、メソセリン、RANTES(regulated on activation normal T-cell expressed and secreted)、マウスゴナドトロピン関連ペプチド、Dnase、FR-アルファ、インヒビン及びアクチビン、インテグリン、プロテインA又はD、リウマチ因子、免疫毒素、骨形成タンパク質(BMP)、スーパーオキシドディスムターゼ、表面膜タンパク質、崩壊促進因子(DAF)、AIDSエンベロープ、輸送タンパク質、ホーミング受容体、MIC(MIC-a、MIC-B)、ULBP 1-6、EPCAM、アドレシン、制御タンパク質、イムノアドヘシン、抗原結合タンパク質、ソマトロピン、CTGF、CTLA4、エオタキシン-1、MUC1、CEA、c-MET、クローディン-18、GPC-3、EPHA2、FPA、LMP1、MG7、NY-ESO-1、PSCA、ガングリオシドGD2、グラングリオシドGM2、BAFF、OPGL(RANKL)、ミオスタチン、Dickkopf-1(DKK-1)、Ang2、NGF、IGF-1受容体、肝細胞増殖因子(HGF)、TRAIL-R2、c-Kit、B7RP-1、PSMA、NKG2D-1、プログラムされた細胞死タンパク質1及びリガンド、PD1及びPDL1、マンノース受容体/hCGβ、TNF、TL1A、C型肝炎ウイルス、メソセリンdsFv[PE38コンジュゲート、レジオネラニューモフィラ(lly)、IFNガンマ、インターフェロンガンマ誘導タンパク質10(IP10)、IFNAR、TALL-1、胸腺間質性リンパ球新生因子(TSLP)、プロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)、幹細胞因子、Flt-3、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)、OX40L、α4β7、血小板特異的(血小板糖タンパクIib/IIIb(PAC-1)、トランスフォーミング成長因子β(TFGβ)、透明帯精子結合タンパク質3(ZP-3)、TWEAK、血小板由来成長因子受容体アルファ(PDGFRα)、スクレロスチン、並びに前記のいずれかの生物活性断片又はバリアント。
【0045】
いくつかの実施形態では、生体分子には、二重特異性タンパク質、特にCD19、CD33、EGFRvIII、MSLN、CDH19、DLL3、FLT3、CDH3、PSMA、MUC1、CLDN18.2、CD70、EpCAM、CEA、BCMA、Her2、及びCD20と組み合わせてCD3に特異的に結合するBiTE(登録商標)分子、及びHLE BiTE(登録商標)分子が含まれる。
【0046】
本開示はまた、それぞれが本明細書に記載される異なる結合試薬を含む2つ以上の組成物を使用する組成物及び方法を企図する。いくつかの実施形態では、CD3ペプチドを含む第1の組成物が、目的の生体分子の異なる部分又はエピトープに結合する結合剤を含む1つ又は複数の組成物と組み合わせて使用される。ここで、結合剤は、(異なる)フルオロフォアにコンジュゲートされるか、又は本明細書に記載されるように他の方法で修飾され得る。様々な実施形態において、CD3ペプチドに加えて、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10若しくはそれ以上の結合剤が、本明細書に記載の方法において使用される。
【0047】
本明細書で使用される場合、「細胞」は、様々な実施形態において、真核細胞、原核細胞、酵母細胞、真菌細胞、昆虫細胞、単核細胞、末梢血単核細胞、骨髄由来単核細胞、臍帯血由来単核細胞、リンパ球、単球、樹状細胞、マクロファージ、T細胞、ナイーブT細胞、メモリーT細胞、CD28細胞、CD4細胞、CD8細胞、CD45RA細胞、CD45RO細胞、ナチュラルキラー細胞、造血幹細胞、多能性胚性幹細胞、誘導多能性幹細胞、又は植物細胞であり得る。さらなる例示的な細胞株としては、SV40によって形質転換されたサル腎臓CVl株(COS-7、ATCC CRL 1651);ヒト胚腎臓株(293細胞、又は懸濁培養での増殖用にサブクローン化された293細胞、(Graham et al.,J.Gen Virol.36:59,1977));ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL 10);マウスセルトリ細胞(TM4、Mather,Biol.Reprod.23:243-251,1980);サル腎臓細胞(CVl ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76、ATCC CRL-1587);ヒト頸癌細胞(HELA、ATCC CCL 2);イヌ腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL 34);バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75);ヒト肝細胞癌細胞(Hep G2、HB 8065);マウス乳癌(MMT 060562、ATCC CCL51);TRI細胞(Mather et al.,Annals N.Y Acad.Sci.383:44-68,1982);MRC5細胞又はFS4細胞;哺乳動物骨髄腫細胞、ヒト肝臓(HuH-7)細胞、CEVECの羊膜細胞産生(CAP)細胞、ハイブリッド腎臓及びB細胞(HKB-11)、線維肉腫(HT-1080)細胞、ヒト胚性腎臓(HEK)細胞、ヒト胚性網膜(PER.C6)細胞、及びチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、並びに臨床的及び/又は商業的製造に使用される任意の他の細胞が挙げられる。一実施形態では、細胞又は細胞株は、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)であり得る。
【0048】
本明細書で使用される場合、「ナノ流体チップのナノ流体チャンバー」は、単一の細胞を単離することができるナノ流体デバイスの一部又は一セクションを指す。例として、ナノ流体チャンバーは、本明細書に記載されるBerkeley LightのBeacon(登録商標)技術プラットフォームに関連であり得る。いくつかの実施形態では、ナノ流体チップ又はデバイスは、各々が単一の細胞を単離することができる数百又は数千の個々のペン又はチャンバーを含む。いくつかの実施形態では、ナノ流体デバイス又はチップは、1758個のチャンバー(又はペン又はウェル)、3,500個のチャンバー又は11,000個のチャンバーを含む。
【0049】
さらなる単一細胞選別及び分析プラットフォームもまた、本開示の試薬及び材料とともに使用するために企図される。一実施形態では、リソグラフィベースのマイクロアレイ又はナノウェル支援細胞パターニングプラットフォーム(Love et al,Nat.Biotechnol.,24(6)703(2006);及びOzkumur et al.,Materials Views,11(36),4643-4650(2015))が企図される。したがって、いくつかの実施形態では、ナノ流体デバイス又はチップは、1758個のチャンバー、85,000個又は250,000個のチャンバーを含むことが、本明細書で企図される。
【0050】
本明細書で使用される場合、「発現コンストラクト」という用語は、タンパク質の組換え発現のために当該技術分野で日常的に使用されるベクター、プラスミド、又は線状化DNA発現配列を指す。
【0051】
生体分子を産生するための方法もまた、本開示によって企図される。例えば、一実施形態では、CD3ペプチドに結合することができる生体分子は、ナノ流体チップのナノ流体チャンバー内の細胞の集団から単一の細胞を収集することによって生成され、細胞は生体分子を発現することができる発現コンストラクトを含む。単一細胞を、クローン増殖並びに生体分子の発現及び分泌を可能にする条件下で培養した後、本明細書に記載のCD3ペプチドを含む組成物を、CD3ペプチドが分泌された生体分子と接触することを可能にする条件下でナノ流体チップに投与する。次に、CD3ペプチドに結合することができる生体分子を分泌する少なくとも1つの細胞を単離し、生体分子の産生を可能にする条件下で培養するための容器に移す。様々な実施形態において、「容器」には、マルチウェルプレート、振盪フラスコ、スピンチューブ、ローラーボトル、ガス透過性培養バッグ、ガス透過性バイオリアクター、ガス不透過性バイオリアクター、流動床バイオリアクター、中空糸バイオリアクター、及び所望の生産レベルに適した大きさの撹拌タンクバイオリアクターを含む、細胞培養に適した容器が含まれ得る。
【0052】
本発明をさらに説明する前に、本発明は、説明されている特定の実施形態に限定されず、したがって、当然のことながら多様であり得ることを理解しなればならない。また、本明細書で使用されている用語法は、特定の実施形態を説明することだけを目的とするものであって、限定することを意図していないことも理解しなければならず、なぜならば、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるからである。
【0053】
値の範囲が記載されている場合には、この範囲の上限と下限との間の介在値(別途文脈が明確に示す場合を除き、下限の単位の10分の1まで)、及びこの指定された範囲のあらゆる他の指定の又は介在する値は、本発明に包含される。これらのより小さい範囲の上限及び下限は、独立して、この小さい範囲に含まれ得、またこの指定された範囲で具体的に排除された任意の制限を条件として、本発明に包含される。指定された範囲が、限界の一方又は両方を含む場合には、含まれているこれらの限界の一方又は両方を除く範囲も、本発明に含まれる。
【0054】
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者により一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書で説明されているものと類似の又は同等のあらゆる方法及び材料もまた、本発明の実施又は試験で使用し得るが、好ましい方法及び材料を本明細書で説明する。本明細書で言及されている全ての刊行物は、この刊行物の引用に関連する方法及び/又は材料を開示して説明するために、参照により本明細書に組み込まれる。
【0055】
単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、別途文脈が明確に示さない限り、複数の指示対象を含むことに留意しなければならない。そのため、例えば、「コンフォメーションスイッチングプローブ」への言及は、複数のそのようなコンフォメーションスイッチングプローブを含み、「マイクロ流体デバイス」への言及は、1つ又は複数のマイクロ流体デバイス及び当業者に既知のその等価物への言及を含み、以下同様である。さらに、特許請求の範囲が、任意の要素、例えば任意の任意選択的要素を除くように書かれている可能性があることにも留意されたい。したがって、この記述は、特許請求の範囲の要素の列挙又は「消極的」限定の使用に関連して、「だけ」、「のみ」などのそのような排他的用語法を使用するための先行詞として役立つことが意図されている。
【0056】
本開示を読む際に当業者には明らかであるように、本明細書で説明され、例示されている個別の実施形態のそれぞれは、本発明の範囲又は精神から逸脱することなく他のいくつかの実施形態のいずれかの特徴から容易に分離され得るか又は特徴と容易に組み合わされ得る別個の成分及び特徴を有している。任意の列挙された方法を、列挙された事象の順に、又は論理的に可能である任意の他の順に実行し得る。これには、そのような組み合わせの全てを支持することが意図されている。
【実施例
【0057】
以下の実施例1に関連して、以下の材料及び方法を使用した。
【0058】
CD3ペプチド蛍光色素コンジュゲートの設計及び合成
天然のヒトCD3eペプチドアミノ酸配列のn末端の最初の9個のアミノ酸を使用した(使用したCD3ペプチド配列:QDGNEEMGG(配列番号1))。ペプチドをMetabion GmbH、Planegg、Germanyで合成し、以下の修飾を含めた:N末端グルタミン(Q)をピログルタミン酸に変換し、ペプチドのC末端にシステインを付加し、C末端をアミド化した。合成したペプチドを、85%の水、10%のジメチルホルムアミドDMF、5%のアセトニトリルの混合物に溶解した。Alexa Fluor C5 488マレイミドをDMFに溶解した。溶解したAlexa Fluor C5 488 マレイミド蛍光色素を、蛍光色素2対ペプチド1のモル比で添加した。反応容器を暗所において室温で1時間混合することによってインキュベーションを行った。Superdex Peptide10/300GLカラム(GE Healthcare、Freiburg、Germany)をAekta Explorer FPLCシステム(GE Healthcare、Freiburg、Germany)に接続し、5%のDMSOを含むリン酸緩衝生理食塩水PBSからなる緩衝液で0.5ml/分の流速で平衡化した。検出は、280nm及び490nmの波長でのオンライン光吸収に設定した。1mlの反応混合物を、接続された試料ループに注入し、カラムに適用し、その後、0.5ml/分のフローを使用して定組成溶出を行った。接続されたフラクションコレクターを用いて、溶出量を0.5mlサイズのフラクションに集めた。コンジュゲートしたペプチド-蛍光色素を含有する最初の溶出ピークをプールし、アリコートした。
【0059】
細胞培養上清中のカノニカルBiTE(登録商標)の検出
ヒトCD3e結合バインダーを特徴とする発現BiTE(登録商標)コンストラクトを含有する0.2μm濾過哺乳動物細胞培養試料100μlを、2.5μlのペプチド-蛍光色素コンジュゲートと混合し、オートサンプラーバイアルに移した。バイアルを、蛍光検出器を特徴とする超高速液体クロマトグラフィーACQUITY UPLC装置(Waters、Eschborn、Germany)に接続されたオートサンプラー上に置いた。分析用サイズ排除クロマトグラフィーBEH200 SECの1.7μmカラム(Waters、Eschborn、Germany)をUHPLCに接続し、pH7.0に調整した10mMクエン酸、75mMリシンHClを含有する水性緩衝系で平衡化した。調製した各試料10μlをカラムに適用し、定組成溶出により溶出させた。励起波長490nm及び発光波長520nmでの蛍光検出を用いて検出を行った。評価は、精製された単量体及び二量体のカノニカルBiTE(登録商標)コンストラクトの注入から得られたクロマトグラムにおける溶出時間を、異なるカノニカルBiTE(登録商標)種の溶出時間を基準として比較することによって行った。
【0060】
Berkeley Lights Beacon(登録商標)機器を使用した細胞クローニング
単一細胞クローニング法を、以前に記載された手順に従って実施した。(Le K,et al.,Biotechnol Prog.2018;34(6):1438-1446;及びLe K,et al.,Biotechnol J.2020;15(1):e1900247)。簡潔に記載すると、安定な細胞株を、Beacon(登録商標)機器を使用し、Berkeley Lights、Emeryville、CAによって提供されている標準的な細胞株開発ワークフローを利用して、OptoSelectチップ(Design 1758、Berkeley Lights、Emeryville、CA)上に単一細胞でロードした。細胞を、Beacon(登録商標)プラットフォームに組み込まれた一体型4×対物レンズ及びカメラを使用して、細胞増殖をモニターする画像化に供した。独自の増殖培地及び製造業者が推奨する設定を用いて、細胞を潅流培養に供した。
【0061】
Spotlight(登録商標)Hu3アッセイ
Spotlight(登録商標)Hu3分泌アッセイは、Berkeley Lightsによって提供されたSpotlight(登録商標)Hu3アッセイ用試薬を使用して実施し、試薬は製造業者によって推奨される濃度で使用した。アッセイワークフローは、Berkeley Lights Incによって確立された推奨に従って実行した。図4Bにおいて、アッセイデータは、Beacon(登録商標)プラットフォームに統合されたBerkeley Lights CASソフトウェアによって空のペンについて計算された平均Auスコアに対して手作業で正規化した。
【0062】
CD3拡散アッセイ
CD3拡散アッセイペプチド試薬をDMSO中に1mg/mlで再懸濁し、長期保存のために-20℃で光から保護して保存した。短期保存のために、アッセイ試薬をPBS中、4μg/mlにさらに希釈し、4℃で保存した。ナノ流体チップ上のBiTE(登録商標)分泌を検出するために拡散勾配アッセイを実施する前に、CD3拡散アッセイ試薬を細胞培養培地中、0.2μg/ml濃度に希釈し、22μmフィルターを通して濾過し、96ウェルプレートに移し、チップに入れた。アッセイ試薬を、45分間、0.014μl/秒の流量でチップ上に潅流した。図4において、平衡化工程が完了したところで、アッセイ試薬を250μlの細胞培養培地で2μl/秒の流量で洗い流し、続いて細胞培養培地で0.1667μl/秒の流量で20分間さらに洗い流した。次いで、900msの露光時間及び100%の照明設定を使用して、TREDフィルタキューブを通してチップを撮像した。
【0063】
図2において、CD3拡散アッセイ試薬を0.125μg/mlの最終濃度で使用した。図2及び3において、平衡化工程が完了したところで、アッセイ試薬を500μlの細胞培養培地で2μl/秒の流量で洗い流し、続いて細胞培養培地で0.1667μl/秒の流量で24分間さらに洗い流した。次いで、1000ms(図2)又は750ms(図3)の露光時間、及び100%の照明設定を使用して、TREDフィルタキューブを通してチップを撮像した。
【0064】
拡散勾配分析及びAuスコア正規化
図3及び4に示すCD3拡散アッセイでは、チップ位置効果及びバックグラウンド蛍光シグナルに対してCD3拡散アッセイスコアを正規化するために使用する参照画像を生成するために、参照アッセイを空のチップで実行した。参照データセット生成した後、ナノ流体チップに細胞をロードし、TREDフィルタキューブを900msの露光時間及び100%照明設定(図4)又は750msの露光時間及び100%照明設定(図3)で使用した。ナノ流体チップにCD3拡散アッセイ試薬を入れることによって、「バックグラウンド」画像シーケンスを事前に生成した。試薬をチップに入れ、拡散勾配アッセイの平衡化工程が完了した後に、「Fluoref」画像シーケンスを生成した。図4のデータでは、「DiffusionRef」画像シーケンスは、拡散勾配アッセイのフラッシュ工程が完了した後に生成した。参照画像をCASソフトウェアによって使用して、バックグラウンド及びチップ位置効果に対して個々のペンごとにCD3拡散アッセイスコアを正規化した。
【0065】
デュアルターゲティングアッセイ
CD3拡散アッセイ試薬をDMSO中に1mg/mlで再懸濁し、長期保存のために-20℃で光から保護して保存した。短期保存のために、アッセイ試薬をPBS中、4μg/mlにさらに希釈し、4℃で保存した。拡散勾配アッセイを実施する前に、CD3拡散アッセイ試薬及びSpotlight(登録商標)Hu3アッセイ試薬をそれぞれ、Berkeley Lightsによって推奨される細胞培養培地中0.2μg/ml濃度及び1×濃度に希釈した。次いで、アッセイ試薬を22μmフィルターを通して濾過し、96ウェルプレートに移し、チップに入れた。アッセイ試薬を、45分間、0.014μl/秒の流量でチップ上に潅流した。平衡化工程が完了したなら、アッセイ試薬を250μlの細胞培養培地で2μl/秒の流量で洗い流し、続いて細胞培養培地で0.1667μl/秒の流量で20分間さらに洗い流した。次いで、900msの露光時間及び100%の照明設定を使用して、TREDフィルタキューブを通してチップを撮像した。
【0066】
拡散勾配分析及びAuスコア正規化
チップ位置効果及びバックグラウンド蛍光シグナルに対してデュアルターゲティングアッセイスコアを正規化するために使用する参照画像を生成するために、参照アッセイを空のチップで実行した。「バックグラウンド」、「Fluoref」及び「DiffusionRef」を含む参照データセットを生成した後、ナノ流体チップに細胞をロードし、TREDフィルタキューブを900msの露光時間及び100%照明設定で使用した。測定領域に明るい蛍光物体が位置するペンは、アッセイ画像の目視検査時にアーチファクトとして識別された。
【0067】
10日間のフェドバッチ生産
24ディープウェルプレートを用い、1ウェル当たり3.5mLの作業量でフェドバッチ実験を行い、細胞懸濁培養物を36℃、5%CO2、85%相対湿度でインキュベートした。生産培養物を、8×10細胞/mLの標的細胞密度で接種し、10日間培養し、その間、3、6、及び8日目にボーラス供給した。分析のため、0、3、6~10日目にプロセス内試料を採取した。細胞数及び生存率を、Vi-CellBlu細胞カウンター(Beckman Coulter、Brea、CA)を用いて決定した。タンパク質力価は、プロテインAアフィニティ高速液体クロマトグラフィー(HPLC)(プロテインA、Waters、Milford、MA)によって測定した。積算生存細胞密度(IVCD)を、培養時間に対するVCDの台形公式によって計算した。比生産性(Qp)を、力価をIVCD計算値で除すことによって決定した。
【0068】
実施例1
CD3拡散モダリティに特異的な拡散勾配アッセイ
A.CD3結合を模倣するCD3バインダー分泌アッセイ試薬の設計及び開発
本実施例は、いくつかの実施形態ではBerkeley Lights機器を含む既存の技術を使用することができるCD3バインダーの検出を容易にするように設計されたアッセイを提供する。CD3結合組換えタンパク質によって特異的に認識されるフルオロフォアにコンジュゲートしたCD3ペプチドからなる試薬を設計した(図1A)。試薬の特異的結合は、内因性ヒトCD3イプシロンタンパク質の最初の9個のアミノ酸の配列の存在によって付与される。この短いペプチドは、その不溶性のために、合成が困難であることがわかった。ペプチドの溶解性を改善するために、C末端にシステイン残基を加え、これにより、マレイミド媒介化学を介したALEXA-FLUOR(登録商標)488又はALEXA-FLUOR(登録商標)594フルオロフォアへのCD3ペプチドの共有結合性コンジュゲーションが可能になった(図1A)。ペプチドをこのアミノ酸誘導体に合成的にコンジュゲートさせた。これらの修飾により、以下の配列(配列番号1):ピログルタミン酸-DGNEEMGGC-AF594(又はAF488)を有する約2kDaのサイズのペプチドコンジュゲートが最終的に得られた(図1A)。
【0069】
このCD3ペプチドを、CD3バインダーである細胞培養培地中に分泌される組換えカノニカルBiTE(登録商標)タンパク質への結合について試験した。scFvベースのBiTE(登録商標)組換えタンパク質を発現する細胞株から収集した分泌培地を集め、CD3-AF488試薬と混合し、捕捉クロマトグラフィーに供した。その後、未精製分泌培地及び精製材料の両方を、蛍光検出器を備えたサイズ排除クロマトグラフィーによって分析した(図1B、C)。この設定により、分析された試料中に存在する全タンパク質含量との関連で、CD3-AF488ペプチドとその結合タンパク質複合体の溶出プロファイルをモニターすることが可能になった。精製材料のUV吸光度(A280nm)溶出プロファイルにより、BiTE(登録商標)モノマー、ダイマー及びHMW種の識別が可能になった(図1B)。蛍光CD3-AF488ペプチドの溶出プロファイル(254nm)は、BiTE(登録商標)溶出プロファイルと重なり、CD3-ペプチドがBiTE(登録商標)組換えタンパク質と複合体を形成し、BiTE(登録商標)モノマー、ダイマー及び凝集種の検出が可能であることを示している(図1B)。未精製試料で検出された蛍光溶出プロファイルは、精製材料で検出されたSECプロフィールに類似しており、CD3ペプチドコンジュゲート試薬が、細胞培養培地中のCD3バインダー分泌の検出に使用することができることを示している(図1C)。
【0070】
アッセイ試薬が細胞毒性を導入するかどうかを決定するために、BiTE(登録商標)-Fc融合分子を発現するCHO細胞を、0μg/mL~1μg/mLの範囲の濃度でCD3-AF594コンジュゲートを補充した培地に曝露した。細胞を試薬とともに24時間インキュベートし、培地で洗浄し、細胞生存率を分析した。CD3アッセイ試薬による処理に応じた細胞生存率の欠陥は観察されなかった。これらのデータに基づいて、CD3ペプチドコンジュゲートは細胞培養培地中のCD3バインダー分泌の検出に適しており、細胞毒性を誘導しないと結論付けられた(図1A~D)。
【0071】
B.ナノ流体チップ上のCD3バインダー分泌のための拡散勾配アッセイの最適化
次に、Berkeley Lightのナノ流体チップ(図2A)上の組換えCD3バインダーの分泌を検出する拡散勾配アッセイに使用されるCD3-AF594ペプチドコンジュゲート能力を評価した。BiTE(登録商標)モダリティを発現する細胞を、標準的な細胞株開発ワークフローを用いてBLIプラットフォームにロードした。単一細胞をNanopensTMにデポジットし、続いて潅流下で6日間培養した。本明細書に記載のような最適化された設定を使用して、CD3試薬を拡散勾配アッセイにおいて使用した。このアッセイにより、収集された蛍光画像の目視検査に基づいて、高レベルのBiTE(登録商標)組換えタンパク質を分泌する細胞株の識別が可能になった(図2B)。BiTE(登録商標)組換えタンパク質を発現する細胞を集めたペンにおいて高い蛍光シグナルが検出され、これは、陰性対照として使用した空のペンとは対照的であった(図2B)。これらのデータは、CD3アッセイ試薬がBLIプラットフォームを利用するBiTE(登録商標)分泌の検出に適していることを示している。
【0072】
次に、BiTE(登録商標)拡散勾配アッセイの特異性を評価した。BiTE(登録商標)、BiTE(登録商標)-Fc融合又はIgG融合タンパク質を発現する3つの異なる細胞株を、BLIプラットフォームにおいて単一細胞ロードワークフローで使用した(図3A)。細胞を5日間増殖させ、SpotlightTMHu3アッセイ及びCD3拡散アッセイを用いて組換えタンパク質分泌についてアッセイした。BiTE(登録商標)-Fc融合体は、CD3及びFcドメインの両方が存在するため、CD3タンパク質に結合する能力並びにSpotlightTMHu3試薬に対する親和性を有するので、本試験において陽性対照として機能した。予想通り、BiTE(登録商標)-Fcタンパク質産物の分泌は、SpotlightTMHu3及びCD3拡散アッセイの両方で検出された(図3A、B)。両方のアッセイで測定された分泌スコア(Auスコア)は相関し、0.96のR値が得られ、CD3拡散アッセイは市販のSpotlightTMHu3アッセイと同程度効率的にBiTE(登録商標)-Fc分子を検出し得ることが示された(図3C)。CD3拡散アッセイは、IgG融合タンパク質の分泌を検出することができず、これはSpotlightTMHu3アッセイとは対照的であり、CD3ペプチド試薬の高い特異性が実証された(図3A~C)。CD3拡散アッセイ及びSpotlightTMHu3アッセイの両方で測定された分泌スコア(Auスコア)は、IgG発現細胞株の場合、相関性は低かった(図3C)。CD3拡散試薬は、BiTE(登録商標)発現細胞株の分泌を効率的に検出した(図3A~C)。これらのデータは、本明細書で開発されたCD3拡散アッセイが様々なBiTE(登録商標)フォーマットの検出に適用することができ、CD3バインダーに対して高い特異性を有することを示している。
【0073】
C.CD3バインダーアッセイに基づいて選択されたクローンは、標準的な方法に由来するクローンと比較して同様の性能を示す。
次に、エクスポート手順(すなわち、選択されたクローン候補を、その後の増殖及びスケールアップのために、ナノ流体チップから96ウェルプレートに移す)の後、CD3バインダーアッセイに曝露したクローンの性能を評価した。BiTE(登録商標)-Fc融合分子(図3)を発現するクローン親細胞株に由来するクローンを選択し、エクスポートに供した。19個のクローンをスケールアップし、ディープウェルプレートで実施した10日間の小規模フェドバッチ実験により評価した。培養物を、増殖、生存率及び最終力価、並びに比生産性(qp)についてモニターし、BLIチップ上の細胞をサブクローニングするために使用した親細胞株と比較した(図3)。1つの例外を除いたクローンは全て、同様の増殖及び生存プロファイルを示した(図4B)。エクスポートされたクローンによって得られた力価及び比生産性は、サブクローニングに使用された親細胞株によって得られた値と比較した場合、それぞれ110~47%及び155~50%の範囲内であった。これらのデータを総合すると、クローニング中にCD3拡散アッセイ試薬に曝露された細胞株は、標準的な方法により誘導された細胞株と比較した場合、同等の性能を有することが示された。さらに、CD3拡散アッセイを用いて、標準的なCLDワークフローにより選択された細胞株と同等の性能を示すクローンを識別し、濃縮することができる。
【0074】
D.低レベルで発現されるCD3結合モダリティのためのデュアルターゲティング拡散勾配アッセイの開発
オンチップ拡散勾配アッセイは、ナノスケールでのタンパク質分泌を検出するための有望なツールであるが、そのようなアッセイの検出限界は、低レベルで治療用生物製剤を発現する細胞株にとって課題を提示する。2つの蛍光プローブが重ならないタンパク質ドメインを同時に標的とするアッセイを利用して、ペン内に保持される蛍光シグナルの増加を観察することができた。
【0075】
これを試験するために、拡散勾配アッセイを、低レベルで発現されるBiTE(登録商標)-Fc融合タンパク質の検出のために最適化した。BiTE(登録商標)-Fc融合タンパク質は、BiTE(登録商標)-Fc融合タンパク質のCD3結合能力及びFcドメインの存在にそれぞれ起因して、CD3拡散アッセイ及びSpotlightTMHu3の両方で認識することができる。この実施形態では、両方のアッセイ試薬を使用した。CD3ペプチド試薬及びFcアッセイ試薬は、スペクトルが重なるAF594又はTRED(テキサスレッド)フルオロフォアにコンジュゲートされ、したがって、同じ蛍光キューブを使用して同時に励起され、検出され得る。
【0076】
BiTE(登録商標)-Fcタンパク質を発現する細胞をBLIプラットフォームにロードした。単一細胞をNanopensTMにデポジットし、続いて潅流下で4日間培養した。次いで、両方の蛍光プローブの組み合わせを使用するデュアルターゲティングアッセイ、又はCD3拡散アッセイ及びSpotlight(登録商標)Hu3アッセイを、個々に実施した(図5A、B)。ペンに存在するあらゆる残留蛍光シグナルを除去するために、各アッセイの間に、チップを5mlの細胞培養培地でフラッシュした(これは、約1000×チップ容量に相当する)。Spotlight(登録商標)Hu3、CD3拡散アッセイ及びデュアルターゲティングアッセイ間の画像捕捉に使用される露光時間の差異により、アッセイの各々についてBLIソフトウェアによって計算された分泌スコア(Auスコア)を、各データセット内の空のペンで検出された平均Auスコアに対して正規化した(図5A)。この正規化工程により、チップ上で実行される各アッセイの分泌スコアとの直接比較が可能になった。各蛍光プローブが1:1の比で標的分子に結合するCD3拡散アッセイ及びSpotlight(登録商標)Hu3アッセイの場合、ペンにおいて検出される蛍光シグナルは低い。これは、両方の蛍光プローブが同時に標的タンパク質産物に結合し、フルオロフォア:標的タンパク質の比が2:1となるデュアルターゲティングアッセイとは対照的であった。チップ上に分泌された組換えタンパク質のこの二重認識は、個々のペンで検出される蛍光強度の増加をもたらした(図5A、B)。
【0077】
アッセイを実施する順序及びその間に実施された広範なフラッシングがペンで検出されるタンパク質レベルに影響を及ぼし得るかどうかを決定するために、図4で使用された同じBiTE(登録商標)-Fc融合タンパク質を発現する細胞株をナノ流体チップにロードし、培養の4日目にSpotlight(登録商標)Hu3アッセイを実施し、その後、培地で5mlフラッシュした。デュアルターゲティングアッセイを実施し、チップ上で検出された分泌プロファイルを分析した。デュアルターゲティングアッセイを実施している間に検出された蛍光シグナルは、Spotlight(登録商標)Hu3試薬単独の場合と比較して増加しており、高度に分泌するクローンが容易に識別された。
【0078】
これらの観察に基づいて、2つのアッセイ試薬を組み合わせることにより、より高い感度及び蛍光シグナル増幅がもたらされ、低レベルで分泌されるBiTE(登録商標)-Fc融合タンパク質をより効果的に検出することができると結論付けられた。さらに、Spotlight(登録商標)Hu3及びCD3拡散アッセイ試薬の両方を利用することによって検出される分泌表現型はより多様性を示し、所望の生産性プロファイルを有するクローンの選択を可能にした。
【0079】
E.考察
組換えタンパク質治療薬を発現する細胞株の開発は、多くの資源及び時間を必要とするプロセスである。Berkeley lights技術プラットフォームは、細胞株開発活動を小型化するための有望な解決策を提供し、商業的製造に適したクローン由来の細胞株候補を識別するためにスクリーニングする必要があるクローンの数を著しく減少させる。Beacon(登録商標)プラットフォームはまた、詳細なクローン性データパッケージを用いて高品質クローン細胞株を送達するために必要とされる資源を大きく減少させる(Le K,et al.,Biotechnol Prog.2018;34(6):1438-1446;及びLe K,et al.,Biotechnol J.2020;15(1):e1900247)。Beacon(登録商標)プラットフォーム上の細胞株開発ワークフローは、所望の生産性プロファイルを有するクローンの選択を補助する蛍光アッセイの実施を可能にする。市販の試薬はFc含有分子の検出が可能であるか、オンチップ分泌アッセイを非Fcモダリティに実施する能力は制限される。
【0080】
本明細書で提供されるCD3拡散勾配アッセイは、蛍光標識されたCD3ペプチドを介してCD3結合モダリティの分泌を検出することができる。CD3拡散アッセイで評価された分泌プロファイルに基づいてサブクローニングされた細胞株は、単一前駆体に由来する親細胞と比較した場合、同様の性能を示す。さらに、本開示の本実施形態において提供されるアッセイ試薬は、完全に合成的に誘導され、細胞毒性を誘導せず、CD3結合モダリティフォーマットに対して高い特異性を示し、臨床的及び商業的製造に適合する細胞株を開発するのに適している。
【0081】
組換えタンパク質フォーマットのサブセットは発現が困難であることが証明されており、それらの分泌は低レベルで起こる。そのような場合、分泌された組換えタンパク質産物の検出は、単一細胞又は少数の細胞レベルで課題を提示する。本明細書に示されるように、複数のアッセイ試薬を組み合わせることにより、Beacon(登録商標)プラットフォーム上のCLDワークフローに関連して使用される拡散勾配アッセイの感度を改善することができ、シグナル増幅をもたらす。
【0082】
上記で説明されている様々な実施形態を組み合わせて、さらなる実施形態を提供し得る。本明細書で言及されている及び/又は本出願データシートで列挙されている全ての米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願、及び非特許刊行物は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本実施形態の態様は、様々な特許、出願、及び刊行物の概念を採用するために、必要に応じて改変されて、さらなる実施形態を提供し得る。
【0083】
これらの及び他の変更を、上記の詳細な説明を考慮して実施形態に行ない得る。一般的に、下記の特許請求の範囲において、使用される用語は、この特許請求の範囲を、本明細書及び特許請求の範囲で開示されている具体的な実施形態に限定するように解釈されるべきではなく、そのような特許請求の範囲が権利を有する等価物の全ての範囲とともに全ての可能な実施形態を含むように解釈されるべきである。したがって、本特許請求の範囲は、本開示により限定されるものではない。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
【配列表】
2024502234000001.app
【国際調査報告】