(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-18
(54)【発明の名称】カテーテル挿入システムにおける流体経路の最適化
(51)【国際特許分類】
A61M 25/06 20060101AFI20240111BHJP
【FI】
A61M25/06 500
A61M25/06 580
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537342
(86)(22)【出願日】2021-12-21
(85)【翻訳文提出日】2023-07-31
(86)【国際出願番号】 US2021064642
(87)【国際公開番号】W WO2022140406
(87)【国際公開日】2022-06-30
(32)【優先日】2020-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511300891
【氏名又は名称】バード・アクセス・システムズ,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100116322
【氏名又は名称】桑垣 衛
(72)【発明者】
【氏名】スパタロ、ジョー
(72)【発明者】
【氏名】マッキノン、オースティン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ヘイモンド、ブライアン
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA02
4C267AA12
4C267AA24
4C267AA32
4C267BB04
4C267BB11
4C267BB39
4C267CC08
4C267HH08
4C267HH20
(57)【要約】
細長い血液フラッシュ流路は、表示時間を遅らせ、真空の効力を低下させ、または凝固の可能性を増加させるので、カテーテル留置システムの動作にとって障害になり得る。本明細書に開示される実施形態は、近位方向に摺動可能なシリンジバレルと、システムのハウジングに固定して取り付けられたプランジャとを有する血液フラッシュインジケータを含む、血液フラッシュ流体経路が短縮されたカテーテル留置システムに関する。血液フラッシュインジケータのシリンジの動作を逆にすることによって、医師は、針先端とシリンジバレルとの間の血液流路を短縮しながら、視覚および触覚フィードバックの利点を維持する。また、血液フラッシュ流体経路をさらに短縮するよう構成される針インターフェース構造が開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテル挿入システムであって、
カテーテルルーメンを画定するとともに、縦軸に沿って延在するカテーテルと、
針ルーメンを画定するとともに、前記カテーテルルーメンの一部内に配置された針と、
前記カテーテルまたは前記針の一方を支持するハウジングと、
前記針ルーメンと流体連通する血液フラッシュインジケータであって、前記ハウジングに固定して取り付けられたプランジャと、前記縦軸に沿って前記プランジャと摺接可能に係合されたシリンジバレルとを含む血液フラッシュインジケータと、を備えるカテーテル挿入システム。
【請求項2】
前記シリンジバレルは、前記プランジャまたは前記ハウジングの一方に対して近位方向に摺動することで真空を生成するとともに、前記針ルーメンを通って前記シリンジバレル内に血流を取り入れるよう構成される、請求項1に記載のカテーテル挿入システム。
【請求項3】
前記シリンジバレルは、血液の色または拍動流の観察を可能なように、透明な材料で形成される、請求項1または2に記載のカテーテル挿入システム。
【請求項4】
前記シリンジバレルは、把持機構を含むとともに、前記縦軸に沿ったシリンジバレルの摺動を容易にするよう構成されたクレードルによって支持される、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のカテーテル挿入システム。
【請求項5】
前記ハウジングは、針チャネルおよび血液フラッシュチャネルを画定する針インターフェースを含み、前記針チャネルは、前記針チャネルを通して延在する前記針の一部を受容するよう構成され、前記血液フラッシュチャネルは、前記針チャネルと前記シリンジバレルとの間の流体連通を提供する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のカテーテル挿入システム。
【請求項6】
前記針は、前記針ルーメンと前記針チャネルとの間に流体連通を提供するように、前記針の壁を通って延在するノッチを含む、請求項5に記載のカテーテル挿入システム。
【請求項7】
前記針チャネルは、前記針の周囲に環状に配置されかつ前記針ノッチの遠位方向に配置された第1のOリングと、前記針の周囲に環状に配置されかつ前記針ノッチの近位方向に配置された第2のOリングとを含み、前記第1のOリングおよび前記第2のOリングはそれぞれ、前記針の外面と前記針チャネルの内面との間に延在することで、前記外面と前記内面との間に液密シールを提供する、請求項6に記載のカテーテル挿入システム。
【請求項8】
前記針は、前記針チャネルと摺接可能に係合される、請求項5乃至7のいずれか一項に記載のカテーテル挿入システム。
【請求項9】
前記血液フラッシュチャネルの一部は、可撓性チューブで形成される、請求項5乃至8のいずれか一項に記載のカテーテル挿入システム。
【請求項10】
前記カテーテルは、中心静脈カテーテルまたは迅速挿入型中心静脈カテーテルである、請求項1乃至9のいずれか一項に記載のカテーテル挿入システム。
【請求項11】
カテーテル留置システムであって、
カテーテルルーメンを画定するとともに、縦軸に沿って延在するカテーテルと、
針ルーメンを画定するとともに、前記カテーテルルーメンの一部を通って延在する針と、
前記針の近位端部から遠位の点において前記針ルーメンと血液フラッシュチャネルとの間の流体連通を提供するための針インターフェース部を含むとともに、前記カテーテルおよび前記針の一方または両方を支持するハウジングと、
前記血液フラッシュチャネルと流体連通する血液フラッシュインジケータであって、前記ハウジングに固定して取り付けられたシリンジバレルと、近位位置と遠位位置との間で前記シリンジバレルと摺接可能に係合されたプランジャとを含む、血液フラッシュインジケータと、を備えるカテーテル留置システム。
【請求項12】
前記プランジャは、前記近位位置から前記遠位位置まで摺動することで前記シリンジバレル内に真空を生成するよう構成される、請求項11に記載のカテーテル留置システム。
【請求項13】
前記針インターフェース部は、前記血液フラッシュチャネルと連通する針チャネルを画定し、前記針チャネルは、前記針チャネルを通して延在する前記針の一部を受容するよう構成される、請求項11または12に記載のカテーテル留置システム。
【請求項14】
前記針は、前記針ルーメンと前記針チャネルとの間に流体連通を提供するように、前記針の壁を通って延在するノッチを含む、請求項11乃至13のいずれか一項に記載のカテーテル留置システム。
【請求項15】
前記針チャネルは、前記針の周囲に環状に配置されかつ前記針ノッチの遠位方向に配置された第1のOリングと、前記針の周囲に環状に配置されかつ前記針ノッチの近位方向に配置された第2のOリングとを含み、前記第1のOリングおよび前記第2のOリングはそれぞれ、前記針の外面と前記針チャネルの内面との間に延在することで、前記外面と前記内面との間に液密シールを提供する、請求項11乃至14のいずれか一項に記載のカテーテル留置システム。
【請求項16】
前記針は、前記針チャネルと摺接可能に係合される、請求項11乃至15のいずれか一項に記載のカテーテル留置システム。
【請求項17】
前記血液フラッシュチャネルの一部は、可撓性チューブで形成される、請求項11乃至16のいずれか一項に記載のカテーテル留置システム。
【請求項18】
前記カテーテルは、中心静脈カテーテルまたは迅速挿入型中心静脈カテーテルである、請求項11乃至17のいずれか一項に記載のカテーテル留置システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、カテーテル挿入システムにおける流体経路の最適化に関する。
【発明の概要】
【0002】
簡潔に要約すると、本明細書に開示される実施形態は、カテーテル挿入システムにおける流体経路最適化、およびそれに関連した方法に関する。CVC(中心静脈カテーテル)、RICC(迅速挿入型中心静脈カテーテル)等の細長カテーテルを留置する際には、高度な挿入システムが望ましい。これらの挿入システムは、脈管構造へのアクセス、正しい血管アクセスの確認、挿入部位の拡張、およびカテーテルの留置をするよう構成された、ハウジング、針、ガイドワイヤ、拡張器、または血液フラッシュインジケータを含み得る。有利には、挿入システムは、複数の装置を繰り返し挿入および離脱させることを減少させ、かつ病原体の導入を軽減するために、閉鎖環境内で上記の構造を有してよい。
【0003】
これらの挿入システム内のツールの連続的な性質によって、血液フラッシュインジケータに到達するまで血流にとって長く複雑な経路になり得る。例えば、カテーテルのルーメン内に配置された針に対して、血液は、出て観察される前に、カテーテルの少なくとも近位端部にまで流れる必要がある。さらに、血液フラッシュインジケータは、観察が容易になるように、挿入部位の近くで挿入装置の遠位端部側に配置され得る。したがって、血流は、観察されるまでにカテーテルの長さの2倍の距離を移動しなければならない。
【0004】
このような細長い流路は、様々な問題を引き起こしかねない。例えば、流路が長くなると、血液フラッシュインジケータに到達して観察される前に、システムを通って流れる血液の体積は増加する必要がある。このような細長い流路は、拍動流の性質を不明瞭にすることで、動脈流と静脈流との間の差を不明瞭にする可能性がある。移動時間の増加によって引き起こされる遅延は、脈管構造にアクセスしたにもかかわらず、ユーザが挿入を継続することにつながり得るので、血管を「バックウォール」する、つまり、血管の遠い方の壁を通して針を挿入することになりかねない。血液フラッシュシステムが、血流を取り入れるための真空を有する場合、複雑な流路は、真空の力を低減または損なう可能性がある。さらに、細長い血流経路は、血液フラッシュインジケータに到達する前に血液凝固のリスクを増大させる可能性がある。本明細書で開示される実施形態は、前述の問題を解決することを目的とする。
【0005】
本明細書に開示されるカテーテル挿入システムは、カテーテルルーメンを画定するとともに、縦軸に沿って延在するカテーテルと、針ルーメンを画定するとともに、カテーテルルーメンの一部内に配置された針と、カテーテルまたは針の一方を支持するハウジングと、針ルーメンと流体連通する血液フラッシュインジケータであって、ハウジングに固定して取り付けられたプランジャと、縦軸に沿ってプランジャと摺接可能に係合されたシリンジバレルとを含む血液フラッシュインジケータと、を備える。
【0006】
いくつかの実施形態では、シリンジバレルは、プランジャまたはハウジングの一方に対して近位方向に摺動することで真空を生成するとともに、針ルーメンを通ってシリンジバレル内に血流を取り入れるよう構成される。シリンジバレルは、血液の色または拍動流の観察を可能なように、透明な材料で形成される。シリンジバレルは、把持機構を含むとともに、縦軸に沿ったシリンジバレルの摺動を容易にするよう構成されたクレードルによって支持される。ハウジングは、針チャネルおよび血液フラッシュチャネルを画定する針インターフェースを含み、針チャネルは、針チャネルを通して延在する針の一部を受容するよう構成され、血液フラッシュチャネルは、針チャネルとシリンジバレルとの間の流体連通を提供する。
【0007】
いくつかの実施形態では、針は、針ルーメンと針チャネルとの間に流体連通を提供するように、針の壁を通って延在するノッチを含む。針チャネルは、針の周囲に環状に配置されかつ針ノッチの遠位方向に配置された第1のOリングと、針の周囲に環状に配置されかつ針ノッチの近位方向に配置された第2のOリングとを含み、第1のOリングおよび第2のOリングはそれぞれ、針の外面と針チャネルの内面との間に延在することで、外面と内面との間に液密シールを提供する。針は、針チャネルと摺接可能に係合される。いくつかの実施形態では、血液フラッシュチャネルの一部は、可撓性チューブで形成される。カテーテルは、中心静脈カテーテルまたは迅速挿入型中心静脈カテーテルである。
【0008】
さらに、本明細書に開示されるカテーテルを留置する方法は、針ルーメンを画定するとともにハウジングによって支持される針で脈管構造にアクセスする工程と、シリンジバレルを縦軸に沿ってハウジングに対して近位方向に摺動させる工程と、シリンジバレル内に真空を生成する工程と、血流を針ルーメンを通してシリンジバレル内に取り入れる工程と、を備える。
【0009】
いくつかの実施形態では、方法は、シリンジバレルと摺接可能に係合されたプランジャをさらに含む。プランジャは、ハウジングに固定的に取り付けられることで、プランジャとハウジングとの間の相対的な縦軸方向の移動が防止される。いくつかの実施形態では、方法は、シリンジバレルと結合されるとともに、把持機構を含むクレードルをさらに含む。いくつかの実施形態では、本方法はさらに、シリンジバレル内で血流の色または拍動流を観察する工程を含む。シリンジバレルは、透明な材料で形成される。いくつかの実施形態では、ハウジングは、針チャネルおよび血液フラッシュチャネルを画定する針インターフェースを含み、針チャネルは、針チャネルを通して延在する針の一部を受容するよう構成され、血液フラッシュチャネルは、針チャネルとシリンジバレルとの間の流体連通を提供する。針は、針ルーメンと針チャネルとの間に流体連通を提供するように、針の壁を通って延在するノッチを含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、針チャネルは、針の周囲に環状に配置されかつ針ノッチの遠位方向に配置された第1のOリングと、針の周囲に環状に配置されかつ針ノッチの近位方向に配置された第2のOリングとを含み、第1のOリングおよび第2のOリングはそれぞれ、針の外面と針チャネルの内面との間に延在することで、外面と内面との間に液密シールを提供する。針は、針チャネルと摺接可能に係合される。いくつかの実施形態では、血液フラッシュチャネルの一部は、可撓性チューブで形成される。カテーテルは、中心静脈カテーテルまたは迅速挿入型中心静脈カテーテルである。
【0011】
さらに、本明細書に開示されるカテーテル留置システムは、カテーテルルーメンを画定するとともに、縦軸に沿って延在するカテーテルと、針ルーメンを画定するとともに、カテーテルルーメンの一部を通って延在する針と、針ルーメンと血液フラッシュチャネルとの間の流体連通を提供するための針インターフェース部を含むとともに、カテーテルおよび針の一方または両方を支持するハウジングと、針の近位端部から遠位の点において血液フラッシュチャネルと流体連通する血液フラッシュインジケータであって、ハウジングに固定して取り付けられたシリンジバレルと、近位位置と遠位位置との間でシリンジバレルと摺接可能に係合されたプランジャとを含む、血液フラッシュインジケータと、を備える。
【0012】
いくつかの実施形態では、プランジャは、近位位置から遠位位置まで摺動することでシリンジバレル内に真空を生成するよう構成される。針インターフェース部は、血液フラッシュチャネルと連通する針チャネルを画定し、針チャネルは、針チャネルを通して延在する針の一部を受容するよう構成される。針は、針ルーメンと針チャネルとの間に流体連通を提供するように、針の壁を通って延在するノッチを含む。針チャネルは、針の周囲に環状に配置されかつ針ノッチの遠位方向に配置された第1のOリングと、針の周囲に環状に配置されかつ針ノッチの近位方向に配置された第2のOリングとを含み、第1のOリングおよび第2のOリングはそれぞれ、針の外面と針チャネルの内面との間に延在することで、外面と内面との間に液密シールを提供する。針は、針チャネルと摺接可能に係合される。いくつかの実施形態では、血液フラッシュチャネルの一部は、可撓性チューブで形成される。カテーテルは、中心静脈カテーテルまたは迅速挿入型中心静脈カテーテルである。
【0013】
添付の図面に示される特定の実施形態を参照することによって、本開示はより詳細に説明される。これらの図面は、本発明の典型的な実施形態のみを示しており、したがって、その範囲を限定するものと見なされるべきではないことを理解されたい。本発明の例示的な実施形態は、添付の図面を使用してさらに具体的かつ詳細に、記述および説明される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1A】本明細書に開示される実施形態による、例示的なカテーテル挿入システムの斜視図。
【
図1B】本明細書に開示される実施形態による、例示的なカテーテル挿入システムの側面図。
【
図1C】本明細書に開示される実施形態による、例示的なカテーテル挿入システムの平面図。
【
図2】本明細書に開示される実施形態による、例示的なカテーテル挿入システムの分解図。
【
図3A】本明細書に開示される実施形態による、例示的なカテーテル挿入システムの切欠き側面図。
【
図3B】本明細書に開示される実施形態による、
図3Aのカテーテル挿入システムの針インターフェースの断面図。
【
図4A】本明細書に開示される実施形態による、例示的なカテーテル挿入システム用の血液フラッシュシステムの概略図。
【
図4B】本明細書に開示される実施形態による、例示的なカテーテル挿入システム用の血液フラッシュシステムの概略図。
【
図4C】本明細書に開示される実施形態による、例示的なカテーテル挿入システム用の血液フラッシュシステムの概略図。
【
図5】本明細書に開示される実施形態による、例示的なカテーテル挿入システムの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
いくつかの特定の実施形態をより詳細に開示する前に、本明細書に開示される特定の実施形態は、本明細書において提示される概念の範囲を限定しないことを理解されたい。本明細書に開示される特定の実施形態は、その特定の実施形態から容易に切り離すことができ、本明細書に開示される複数の他の実施形態のうちの任意の実施形態の特徴と任意選択で組み合わせまたは置換することができる特徴を有する場合があることも理解されたい。
【0016】
本明細書で使用する用語に関しては、各用語はいくつかの特定の実施形態を説明するためのものであり、本明細書において提示される概念の範囲を限定しないということも理解されたい。序数(たとえば、第1、第2、第3等)は、概して、複数の特徴または工程の群の中で互いに異なる特徴または工程を区別または識別するために使用され、順番の限定または数的な限定を加えるものではない。たとえば、「第1」、「第2」、および「第3」の特徴または工程は、必ずしもこの順序で現れる必要はなく、またそのような特徴または工程を含む特定の実施形態は、必ずしも3つの特徴または工程に限定される必要はない。「左」、「右」、「上」、「下」、「前」、「後」等の表記は、便宜的に使用されており、たとえば、いかなる特定の固定的な位置、向き、または方向も意味するものではない。むしろ、こうした表記は、たとえば相対的な位置、向き、または方向を示すために使用される。文脈からそうでないことが明らかに示されていなければ、「a」、「an」、および「the」で表す単数形は、複数形を含む。
【0017】
「近位」に関しては、たとえば本明細書に開示されるカテーテルの「近位部分」または「近位端部分」は、カテーテルのうち、カテーテルを患者に使用するときに医師の近くにあるものである部分を含む。同様に、たとえばカテーテルの「近位長」は、カテーテルを患者に使用するときに医師の近くにあるものであるカテーテルの長さを含む。たとえばカテーテルの「近位端部」は、カテーテルを患者に使用するときに医師の近くにあるものである、カテーテルの端部を含む。カテーテルの近位部分、近位端部分、または近位長は、カテーテルの近位端部を含んでもよいが、カテーテルの近位部分、近位端部分、または近位長は、カテーテルの近位端部を含む必要はない。つまり、文脈からそうでないことが示唆されていなければ、カテーテルの近位部分、近位端部分、または近位長は、カテーテルの終端部分または終端長ではない。
【0018】
「遠位」に関しては、たとえば本明細書に開示されるカテーテルの「遠位部分」または「遠位端部分」は、カテーテルのうち、カテーテルを患者に使用するときに患者の近くまたは体中にあるものである部分を含む。同様に、たとえばカテーテルの「遠位長」は、カテーテルを患者に使用するときに患者の近くまたは体中にあるものであるカテーテルの長さを含む。たとえばカテーテルの「遠位端部」は、カテーテルを患者に使用するときに患者の近くまたは体中にあるものである、カテーテルの端部を含む。カテーテルの遠位部分、遠位端部分、または遠位長は、カテーテルの遠位端部を含んでもよいが、カテーテルの遠位部分、遠位端部分、または遠位長は、カテーテルの遠位端部を含む必要はない。つまり、文脈からそうでないことが示唆されていなければ、カテーテルの遠位部分、遠位端部分、または遠位長は、カテーテルの終端部分または終端長ではない。
【0019】
本明細書で説明される実施形態の説明を補助するために、
図1Aに示されるように、縦軸は、カテーテルの軸方向長さに実質的に平行に延在する。横軸は縦軸に対して垂直に延在しており、横断軸は縦軸および横軸の両方に対して垂直に延在する。別段の定義がない限り、本明細書に用いるあらゆる技術的用語および科学的用語は、当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。
【0020】
図1A乃至
図2は、針110、カテーテル120、ハウジング130、および血液フラッシュインジケータ150を一般的に含む、例示的なカテーテル挿入システム(「システム」)100を示す。選択的に、挿入システム100は、1つまたは複数のガイドワイヤ(図示せず)を含んでよい。針110は、針ルーメン114を画定してよいとともに、その近位端部に配置されたニードルハブ112によって支持されてよい。針110は、カテーテル120のルーメンの少なくとも一部を通り延在するよう構成されてよい。針110の遠位先端116は、カテーテル120の遠位先端から遠位方向に延在することができ、皮膚穿刺および血管アクセスのために構成された鋭利な先端を画定してよい。
【0021】
カテーテル120は、CVC(中心静脈カテーテル)、RICC(迅速挿入型中心静脈カテーテル)、または患者の脈管構造へのアクセスを提供するよう構成された類似の細長カテーテルであってよい。
図2に示されるように、カテーテル120は、第1直径を画定するアクセス部位162と、拡張部位164と、第1直径より大きい第2直径を画定するカテーテル本体部位166とを含む、RICCカテーテル120であってよい。
【0022】
アクセス部位162は、単一のルーメンを画定してよいとともに、カテーテル本体部位166よりもデュロメータで硬質な材料で形成されてよい。カテーテル本体部位166は、1つまたは複数のルーメンを画定してよいとともに、アクセス部位162よりも軟質で柔軟な材料で形成されてよい。拡張部位164は、アクセス部位162または第3の材料のいずれかと同じ材料で形成されてよい。第3の材料は、カテーテル本体部位166の材料よりもデュロメータで硬質であってよい。拡張部位164は、アクセス部位162の第1直径とカテーテル本体部位166の第2直径との間にテーパ状の移行部を提供してよい。アクセス部位162および拡張部位164は、カテーテル本体部位166よりも、比較的に高い剛性の機械的特性を有してよいとともに、軸方向の力が加えられた際に、ねじれまたは崩壊に対して比較的に高い耐性を有してよい。カテーテル本体部位166は、蛇行した血管経路を通り抜けることを容易にするように、比較的に柔軟であってよい。一実施形態では、カテーテル120は、ハブ168、分岐部170、および/またはカテーテル120のルーメンとそれぞれ連通する1つまたは複数の延長脚部172をさらに含んでよい。一実施形態では、針110は、延長脚部172を通り、カテーテル本体部位166のルーメンを通り、さらにアクセス部位162のルーメンを通り、カテーテル120の遠位先端から遠位方向に延在してよい。
【0023】
使用の際、医師は、針先端116およびアクセス部位162の遠位部分を脈管構造に挿入することによって、RICCカテーテル120を使用して脈管構造にアクセスすることができる。血流は、針ルーメン114を通って血液フラッシュインジケータ150まで近位方向に流れ得る。正しい血管アクセスを確認するために、色および拍動流を観察してよい。不正確な血管アクセスの場合には、アクセス部位162の直径が比較的小さいので、アクセス部位162を後退させるとともに、圧力を加えることによって挿入部位を閉じてよい。正しい血管アクセスが確認された場合、カテーテル120は、拡張部位164が挿入部位に入り、挿入部位をカテーテル本体部位166の第2直径まで拡張するまで、選択的にガイドワイヤ上を前進してよい。次いで、カテーテル本体部位166は、カテーテル120の遠位部分が脈管構造内の標的位置に来るまで前進してよい。RICCカテーテル、関連する挿入システム、およびその関連する方法のさらなる詳細は、米国特許第10376675号、米国特許出願公開第2019/0255294号、同第2021/0069471号、同第2021/0085927号、同第2021/0113809号、同第2021/0113810号、同第2021/0121661号、同第2021/0121667号、同第2021/0228843号、同第2021/0322729号、同第2021/0330941号、同第2021/0330942号、および同第2021/0361915号に見出すことができ、これらのそれぞれは、参照することによってその全体として本出願に組み込まれる。
【0024】
理解されるように、カテーテル挿入システムの構成に応じて、血流は、カテーテル120を出て血液フラッシュインジケータまで遠位方向に流れる前に、針先端116から針ルーメン114を通って実質的にカテーテル120の近位端部まで移動しなければならない。本明細書に開示される実施形態は、針先端116と血液フラッシュインジケータ150との間の移動距離を減少することに関する。
【0025】
血液フラッシュインジケータが装置の遠位端部に向かって配置される実施形態では、血液フラッシュインジケータ150を近位方向に配置することによって、流体経路を短縮させてよい。より具体的には、血液フラッシュインジケータ150をカテーテル120の質量中心から近位方向に配置することによって、血液フラッシュ流体経路の長さを20%から30%短縮させてよい。
【0026】
一実施形態では、
図3A乃至
図3Bに示すように、カテーテル挿入システム100は、針110の壁に配置されたノッチ118によって、針ルーメン114と血液フラッシュインジケータ150との間に流体連通を提供するよう構成された針インターフェース140を含んでよい。針ノッチ118は、ニードルハブ112の近位端部の遠位方向に、距離(x)分だけ位置してよい。したがって、針先端116と血液フラッシュインジケータ150との間の流体経路距離は、距離(2x)分だけさらに短縮し得る。
【0027】
針インターフェース140は、針チャネル142を画定してよい。針チャネル142は、縦軸に沿って延在するとともに、針チャネル142を通して針110の一部を受容するよう構成される。針110は、針チャネル142と摺接可能に係合されてよい。針インターフェース140はさらに、針110の周囲に環状に延在しかつ針110の外面とチャネル142の内面との間に配置されることで、外面と内面との間に液密シールを提供する、1つまたは複数のOリング144を含んでよい。
【0028】
針インターフェース140は、針チャネル142と血液フラッシュインジケータ150との間を連通する血液フラッシュチャネル152をさらに含んでよい。血液フラッシュチャネル152は、血液フラッシュインジケータ150に向かって延在するまで、針チャネル142から実質的に垂直に延在してよい。使用前に、針ノッチ118は、針チャネル142内で、第1のOリング144Aと第2のOリング144Bとの間に配置されるとともに、血液フラッシュチャネル152に合わせて整列されてよい。針先端116が脈管構造の中へ前進すると、血流は、針ルーメン114およびノッチ118を経て、血液フラッシュチャネル152の中を通り、血液フラッシュインジケータ150まで近位方向に流れ得る。第1のOリング144Aおよび第2のOリング144Bは、針110の外面と針チャネル142の内面との間で流体の流れが漏洩することを防止し得る。正しい血管アクセスを確認するために、血流の色または拍動流を観察してよい。次いで、針チャネル142を通して針110を近位方向に後退させるとともに、選択的に離脱させてよい。一実施形態では、針ノッチ118から遠位方向にある針110の一部分は、血液フラッシュチャネル152の開口部を針チャネル142で閉塞して、その中の流体を封止してよい。
【0029】
一実施形態では、血液フラッシュインジケータ150は、その中に血流を受け取るよう構成された容器を含んでよい。容器は、ユーザがその中に配置された色および拍動流を観察することが可能なように、透明な材料で形成されてよい。一実施形態では、血液フラッシュインジケータ150は、針ルーメン114、および針ノッチ118を通してバキュテナー(vacutainer)内に近位方向に血流を取り入れることを容易にするように、内部に真空を維持するよう構成されたバキュテナーを含んでよい。一実施形態では、針110の一部が血液フラッシュチャネル152を閉塞することによって、真空をバキュテナー内に維持してよい。ユーザが血管アクセスをチェックする準備ができているとき、針110は、ニードルハブ112がハウジング130に当接するとともに、針ノッチ118を血液フラッシュチャネル152に合わせて整列するまで、ハウジング130に対して前進してよい。したがって、次に、バキュテナーの真空は、針ルーメン114と流体連通して配置されるとともに、針ルーメン114を通って近位方向に血流を取り入れることを容易にしてよい。
【0030】
一実施形態では、血液フラッシュインジケータ150は、シリンジバレル154と、シリンジバレル154と摺接可能に係合されるとともに、針ルーメン114を通ってシリンジバレル154内に近位方向に血流を取り入れるための真空を生成するよう構成されたプランジャ156とを含んでよい。一実施形態では、シリンジバレル154およびプランジャ156の動作は逆でもよい。例えば、プランジャ156は、ハウジング130と固定的に係合されることで、ハウジング130に対する縦方向の移動が防止されてよい。プランジャ156は、締まり嵌め、スナップ嵌め、圧入、接着剤、溶接、接合等でハウジング130と係合されてよい。シリンジバレル154は、バレルクレードル158によって支持されてよい。バレル154およびバレルクレードル158のアセンブリは、プランジャ156およびハウジング130のアセンブリに対して摺動可能であってよいとともに、バレル154およびクレードル158のアセンブリを近位方向に摺動させた際にバレル154内に真空を生成し得るよう構成されてよい。一実施形態では、バレルクレードル158は、バレルクレードル158中の血流の観察を容易にするように、透明な材料で形成されてよい。
【0031】
有利には、血液フラッシュインジケータのシリンジバレル154およびプランジャ156の動作を逆にすることで、針先端と血液フラッシュインジケータ150との間の流体経路をさらに短縮させてよい。例えば、
図4A乃至
図4Cに示すように、
図4Aに示す開始位置から、血液フラッシュ流体経路は、針先端116からシリンジバレル154まで延在する第1距離(d1)を画定し得る。
図4Bに示すように、血液フラッシュインジケータ150が、従来の方法で構成されたシリンジバレル154およびプランジャ156を含む場合、プランジャ156は、シリンジバレル154から遠位方向に引かれることで真空を生成する。しかしながら、そうすることで、流体経路は、第1距離(d1)から、第1距離(d1)よりも大きい第2距離(d2)まで延びる。
【0032】
対照的に、
図4Cに示すように、本明細書に開示される実施形態は、プランジャ156を固定することで縦軸に沿った移動を防止するとともに、シリンジバレル154が近位方向に摺動することで真空を生成する。したがって、流体経路の長さは、第1距離(d1)から、第1距離(d1)よりも短い第3距離(d3)に短縮される。シリンジ血液フラッシュインジケータ150の動作を逆にすることによって、シリンジバレル154を、針ノッチ118に向かって近位方向に摺動させて真空を生成することで、血液フラッシュインジケータ150と針先端116との間の流体経路の長さを減少させてよい。
【0033】
有利には、シリンジバレル154およびプランジャ156の動作は、依然として、医師が、シリンジベースの血液フラッシュバックシステムを介して提供される触覚および視覚フィードバックを利用することを可能にする。有利には、シリンジバレル154を近位方向に移動させることによって、バレル154を挿入装置100の遠位端部から離れるように移動させて、挿入部位においてより明確な視線を提供し、動作、例えば、ガイドワイヤ前進アセンブリ、カテーテル前進アセンブリ、ヒンジハウジング部分等の追加的な操作が行われることを可能にする。
【0034】
一実施形態では、バレルクレードル158は、シリンジバレル154を把持してバレル154を近位方向に付勢することを容易にするために、1つまたは複数の把持機構を含んでよい。把持機構は、1つまたは複数の当接部、指ループ、指パッド、隆起、リブを含んでよい、またはゴムもしくはシリコーン等の高い摩擦係数を有する材料を含んでよい。一実施形態では、針ノッチ118とシリンジバレル154との間の流体連通を提供する血液フラッシュチャネル152の一部は、可撓性チューブなどを含んでよい。有利には、可撓性チューブは、シリンジバレル154が針インターフェース140に対して近位方向に摺動することを可能にしてよい。
【0035】
一実施形態では、
図5に示すように、挿入システム200は、従来の方法で使用されるシリンジを含む血液フラッシュインジケータシステム250を含んでよい。挿入システム200は、一般的に、ハウジング230と、カテーテル220(例えば、CVCカテーテルまたはRICCカテーテル)と、針210とを含んでよい。選択的に、挿入システム200は、1つまたは複数のガイドワイヤ(図示せず)を含んでよい。血液フラッシュインジケータシステム250は、ハウジング230と結合されたシリンジバレル254を含むことで、それらの間の相対的な縦軸方向の移動を防止してよい。プランジャ256は、シリンジバレル254と摺接可能に係合されてよいとともに、シリンジバレル254内に真空を生成するよう遠位方向に前進してよい。図示されるように、プランジャ256は、プランジャの把持を容易にする指パッドを含んでよい。シリンジバレルの近位端部は、本明細書に説明されるように、針ノッチ(図示せず)および針インターフェース240に合わせて隣接して整列されてよい。
【0036】
使用の際、挿入システム200は、針先端216が患者の脈管構造に入るまで前進してよい。プランジャ256は、ユーザがハウジング230の遠位部分を把持しながらプランジャ256を操作することが可能なように、遠位方向に延在してよい。プランジャ256を遠位方向に前進させることで、シリンジバレル254内に真空を生成するとともに、血流を針ルーメンを通り針ノッチへ、針インターフェース240を通り、血液フラッシュチャネルを通り、シリンジバレル254内へと取り入れてよい。図示されるように、シリンジバレル254は、血流の色および拍動流の観察を容易にするように、透明な材料で形成されてよい。有利には、シリンジバレル254の近位端部を針インターフェース240に合わせて隣接して縦軸方向に整列させて、血液フラッシュチャネルの長さを短縮することで、血液フラッシュ流体経路の全長をさらに短縮させてよい。
【0037】
いくつかの特定の実施形態が本明細書に開示されるとともに、特定の実施形態がある程度詳細に開示されているが、特定の実施形態は、本明細書で提供された概念の範囲を制限することを意図するものではない。追加的な適応および/または変更が当業者に理解され得る。より広い態様では、これらの適応および/または変更もまた包含される。したがって、本明細書で提供される概念の範囲から逸脱することなく、本明細書で開示される特定の実施形態から逸脱してよい。
【国際調査報告】