(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-18
(54)【発明の名称】低BH4バイオアベイラビリティーと関連する障害の処置
(51)【国際特許分類】
A61K 31/519 20060101AFI20240111BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240111BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20240111BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240111BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20240111BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20240111BHJP
A61P 13/00 20060101ALI20240111BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
A61K31/519
A61P9/00 ZNA
A61P1/16
A61P25/00
A61P9/12
A61P3/00
A61P13/00
A61P43/00 121
A61P43/00 111
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537676
(86)(22)【出願日】2021-12-21
(85)【翻訳文提出日】2023-08-17
(86)【国際出願番号】 GB2021053382
(87)【国際公開番号】W WO2022136851
(87)【国際公開日】2022-06-30
(32)【優先日】2020-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2021-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】518188566
【氏名又は名称】オックスフォード・ユニバーシティ・イノベイション・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】キース・シャノン
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB09
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA52
4C086MA55
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA36
4C086ZA42
4C086ZA75
4C086ZA81
4C086ZC02
4C086ZC21
4C086ZC51
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は、BH4欠損、又は低BH4バイオアベイラビリティーと関連する障害を予防する又は処置するための、任意選択でテトラヒドロビオプテリン(BH4)又はその前駆体と組み合わせた、5-MTHF(5-メチルテトラヒドロ葉酸)などの還元型葉酸の使用に関する。そのような障害は主に、血管内皮病理を有する、又はアミノ酸代謝若しくは神経伝達に影響を及ぼす疾患、特に妊娠高血圧腎症などの妊娠関連障害を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害の予防又は処置における使用のための還元型葉酸であって、以下のいずれか:
- アスピリン
- ハーブ抽出物
と組み合わせた投与のためのものではない、還元型葉酸。
【請求項2】
BH4、その前駆体、又は機能的等価物と組み合わせた、請求項1に記載の還元型葉酸。
【請求項3】
還元型葉酸、及び任意選択でBH4、その前駆体、又は機能的等価物が、唯一の活性医薬物質である、請求項1又は2に記載の還元型葉酸。
【請求項4】
還元型葉酸が唯一の活性医薬物質である、請求項1に記載の還元型葉酸。
【請求項5】
低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害の予防又は処置における使用のための、還元型葉酸とBH4、その前駆体、又は機能的等価物の組合せ。
【請求項6】
低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害の予防又は処置における使用のための1つ又は複数の有効活性成分を含む組成物であって、有効活性成分が還元型葉酸及び任意選択でBH4、その前駆体、又は機能的等価物からなる、組成物。
【請求項7】
有効活性成分が還元型葉酸からなる、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
還元型葉酸がその天然の立体異性体である、請求項1から7のいずれか一項に記載の還元型葉酸、組合せ、又は組成物。
【請求項9】
還元型葉酸がBH4レベルを増加させる又は回復させる、請求項1から8のいずれか一項に記載の還元型葉酸、組合せ、又は組成物。
【請求項10】
還元型葉酸がBH4の酸化を予防する、請求項1から9のいずれか一項に記載の還元型葉酸、組合せ、又は組成物。
【請求項11】
還元型葉酸が、DHF;5-FTHF;THF;5,10-CH-THF;5,10-CH
2-THF、5-MTHF、及び10-FTHF、又は薬学的に許容されるその塩から選択され、好ましくは、還元型葉酸が、5-MTHF又は薬学的に許容されるその塩である、請求項1から10のいずれか一項に記載の還元型葉酸、組合せ、又は組成物。
【請求項12】
BH4、その前駆体、又はその機能的等価物が、GTP;NH2TP;PTP;オキソ-PH4;7,8-BH2;HO-BH4;q-BH2;L-アルギニン及びL-シトルリンから選択される前駆体である、請求項1から11のいずれか一項に記載の還元型葉酸、組合せ、又は組成物。
【請求項13】
BH4、その前駆体、又はその機能的等価物が、ネオプテリン、セピアプテリン、ビオプテリン、及びプリマプテリンから選択される機能的等価物である、請求項1から11のいずれか一項に記載の還元型葉酸、組合せ、又は組成物。
【請求項14】
低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害が、プテリン生合成経路内の1つ又は複数の酵素の損なわれた活性により引き起こされる、請求項1から13のいずれか一項に記載の還元型葉酸、組合せ、又は組成物。
【請求項15】
プテリン生合成経路内の1つ又は複数の酵素が、GTPシクロヒドロラーゼI(GTPCH)、6-ピルボイル-テトラヒドロプテリン合成酵素(PTPS)、セピアプテリン還元酵素(SP)、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)、ジヒドロプテリジン還元酵素(DHPR)、プテリン-4a-カルビノールアミン脱水酵素(PCD)、及び内皮NOS(eNOS)から選択される、請求項14に記載の還元型葉酸、組合せ、又は組成物。
【請求項16】
低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害が、BH4欠損症(テトラヒドロビオプテリン欠損症)、フェニルケトン尿症(PKU)、GTPシクロヒドロラーゼ欠損症、ドパ反応性ジストニア、6-ピルボイル-テトラヒドロプテリン合成酵素欠損症、セピアプテリン還元酵素欠損症、ジヒドロ葉酸還元酵素欠損症、ジヒドロプテリジン還元酵素欠損症、及びプテリン-4a-カルビノールアミン脱水酵素欠損症から選択される、請求項1から15のいずれか一項に記載の還元型葉酸、組合せ、又は組成物。
【請求項17】
低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害が、心臓疾患、肝臓疾患、神経疾患又は血管疾患である、請求項1から16のいずれか一項に記載の還元型葉酸、組合せ、又は組成物。
【請求項18】
低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害が妊娠関連障害である、請求項1から17のいずれか一項に記載の還元型葉酸、組合せ、又は組成物。
【請求項19】
低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害が妊娠関連血管障害である、請求項1から18のいずれか一項に記載の還元型葉酸、組合せ、又は組成物。
【請求項20】
低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害が妊娠における高血圧である、請求項1から19のいずれか一項に記載の還元型葉酸、組合せ、又は組成物。
【請求項21】
低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害が妊娠高血圧腎症である、請求項1から19のいずれか一項に記載の還元型葉酸、組合せ、又は組成物。
【請求項22】
還元型葉酸が、妊娠関連血管障害と診断された後での対象への投与のためのものである、請求項1から21のいずれか一項に記載の還元型葉酸、組合せ、又は組成物。
【請求項23】
還元型葉酸、組合せ又は組成物が、後の世代における不十分なBH4レベルに関連する障害の予防に効果的である、請求項1から22のいずれか一項に記載の還元型葉酸、組合せ、又は組成物。
【請求項24】
予防又は処置が不十分なBH4レベルに関連する障害に以前罹ったことにある対象においてである、請求項1から23のいずれか一項に記載の還元型葉酸、組合せ、又は組成物。
【請求項25】
予防又は処置が妊娠における高血圧に以前罹ったことにある対象においてである、請求項1から24のいずれか一項に記載の還元型葉酸、組合せ、又は組成物。
【請求項26】
予防又は処置が妊娠高血圧腎症に以前罹ったことにある対象においてである、請求項1から24のいずれか一項に記載の還元型葉酸、組合せ、又は組成物。
【請求項27】
還元型葉酸が、1日当たり1mg~50mg、好ましくは1日当たり2mg~30mg、好ましくは1日当たり3mg~25mg、好ましくは1日当たり4mg~20mg、好ましくは1日当たり5mg~15mgの投薬量での投与のためのものである、請求項1から26のいずれか一項に記載の還元型葉酸、組合せ、又は組成物。
【請求項28】
還元型葉酸が、1日に1回又は2回の投与のためのものである、請求項1から27のいずれか一項に記載の還元型葉酸、組合せ、又は組成物。
【請求項29】
還元型葉酸及び任意選択でBH4、その前駆体又は機能的等価物を用いた処置から恩恵を受ける可能性のある対象を選択する方法であって、対象において低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害の1つ又は複数のマーカーのレベルを決定する工程、マーカー又はそれぞれのマーカーのレベルを健康な対象における参照レベルと比較する工程、及び対象が参照レベルと比べて低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害の1つ又は複数のマーカーの異常なレベルを示す場合、処置にむけて対象を選択する工程を含む方法。
【請求項30】
選択された対象に処置を提供する工程を更に含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
処置が、還元型葉酸及び任意選択でBH4、その前駆体、又は機能的等価物を含む、請求項29又は30に記載の方法。
【請求項32】
還元型葉酸がその天然の立体異性体である、請求項29から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
還元型葉酸が妊娠前に、選択された対象に提供される、請求項31又は32に記載の方法。
【請求項34】
還元型葉酸が、妊娠の最初の3カ月間に、選択された対象に提供される、請求項31から33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
還元型葉酸が、妊娠の第2の又は第3の3カ月間に、選択された対象に提供される、請求項31から34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
還元型葉酸が、対象において低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害の1つ又は複数のマーカーの異常なレベルを測定した後に、選択された対象に提供される、請求項31から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
還元型葉酸及びBH4、その前駆体、又は機能的等価物を含む医薬組成物。
【請求項38】
- 還元型葉酸;及び
- BH4、その前駆体、又は機能的等価物
を含むキット。
【請求項39】
BH4、その前駆体、又は機能的等価物の酸化をin vitroで予防するための還元型葉酸の使用。
【請求項40】
還元型葉酸がその天然の立体異性体である、請求項37に記載の医薬組成物、請求項38に記載のキット、又は請求項39に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全身的に、又は特定の細胞若しくは組織において局所的に発生することがある、BH4欠損、又は低BH4バイオアベイラビリティーと関連する障害を予防する又は処置するための、任意選択でテトラヒドロビオプテリン(BH4)又はその前駆体と組み合わせた、還元型葉酸、好ましくは5-MTHF(5-メチルテトラヒドロ葉酸)の使用に関する。そのような障害は主に、血管内皮病理を有する、又はアミノ酸代謝若しくは神経伝達に影響を及ぼす疾患を含む。本発明は、任意選択でBH4又はその前駆体と組み合わせた、前記還元型葉酸を用いての処置のために患者を選択する方法、還元型葉酸及びBH4、その前駆体又は機能的等価物を含む組成物及びキット、並びにBH4又はその前駆体の酸化の防止における還元型葉酸、好ましくは5-MTHFのin vitro使用に更に関する。
【背景技術】
【0002】
内皮機能不全は、還元型血管一酸化窒素(NO)バイオアベイラビリティー及び酸化ストレスのマーカーと関連している。一酸化窒素(NO)の欠如は、循環器疾患などの血管内皮に関連する多くの疾患、又は妊娠誘発高血圧、胎盤機能不全、胎児発育遅延及び妊娠高血圧腎症(pre-eclampsia)などの妊娠の障害の要因であることが知られている。
【0003】
妊娠中、血管リモデリングは、胎児発育を保証する胎盤灌流に十分な血流を提供するためには、正常発生の必要条件である。妊娠での血管適応は、体血圧の増加を引き起こさずに子宮血流の大幅な増加を提供するのに十分な子宮動脈のリモデリング及び胎盤脈管構造の成長が必要である。正常な妊娠では、増加した子宮動脈内径は、血管内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS)、及び一酸化窒素(NO)バイオアベイラビリティーの増強された活性と関連がある。
【0004】
この増加した血流に対処する子宮胎盤血管リモデリングが不十分では、妊娠誘発高血圧及び胎児発育遅延、又は妊娠高血圧腎症が引き起こされる。これらの症状は、母親と子の両方にとって有害な妊娠結果の主因であり、世界規模ですべての妊娠の約7%に影響を及ぼす。アフリカ及びアジアでのすべての母体死亡のほぼ10分の1並びにラテンアメリカでのすべての母体死亡の4分の1が、妊娠高血圧腎症を含む妊娠中の高血圧性疾患と関連している。これらの状態では、子宮及び胎盤血管は、増加した中膜(medial)血管平滑筋細胞(VSMC)肥大及び減少した内径を示す。NO依存性血流依存性血管拡張(NO-dependent flow-mediated vasodilatation)は、妊娠高血圧腎症妊娠から単離された動脈では更に減少している。これにより胎盤機能不全が生じ、この機能不全は、胎盤増殖因子(PIGF)(4)、sEng、及びsFLT-1などの内皮細胞障害及び異常な血管形成に関係する血漿バイオマーカーの増加に関連する。そのような内皮障害は、多くの妊娠関連障害における一貫した所見である。
【0005】
テトラヒドロビオプテリン(BH4)は、NO生成に必須の役割を有する内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS)に対するレドックス補因子である。他の循環器疾患における異常なeNOS活性の一般的特徴は、GCH1遺伝子によりコードされる酵素GTPシクロヒドロラーゼIにより内皮細胞において合成される必須のeNOS補因子テトラヒドロビオプテリン(BH4)の消失である。しかし、BH4は、妊娠高血圧腎症などの妊娠関連障害の処置において潜在的治療標的として調査されたことがない。
【0006】
血管内皮病理から生じる妊娠関連障害に対する治療は、今までのところでは、胎児を分娩できるようになるまで、典型的には血圧を下げることにより、状態の症状を処置することに重点を置いてきた。妊娠高血圧腎症が妊娠20週目以前に起こることはめったにない。大半の症例は24~26週後、通常は妊娠終わり頃に起こる。多くはないが、状態は、誕生後最初の6週間ではじめて発症することもある(=分娩後妊娠高血圧腎症)。大半のヒトは軽い症状を経験するだけであるが、重い症状又は合併症が発症する場合に備えて状態を管理することが重要である。一般に、妊娠高血圧腎症の発症が早期であればあるほど、状態はそれだけ重くなる。妊娠高血圧腎症の最終的処置は、例えば、胎児及び胎盤の分娩である。分娩に先立って血圧を下げるのに使用される一次医薬は、アスピリン(軽症例では)、ラベタロール、ニフェジピン又はメチルドパである。英国では、そのうちの1つ、ラベタロールだけが妊婦での使用が認可されている。胎児の安全という第1の関心事を考慮すると、医薬を開発し、妊婦の処置での承認を得るのは困難である。硫酸マグネシウムなどの抗痙攣薬物は発作を予防するために投与されることもある。そのような処置を用いてさえ、そのような状態に関わるリスクを考慮すると、多くの母体が、綿密なモニタリングのために胎児を分娩する、又は早期分娩を受けるまで在院せざるを得ない。
【0007】
低用量のアスピリンを飲むより他はそのような妊娠関連障害のために利用可能な証明済みの予防治療法はない。しかし、高血圧を予防する一助とするのにこれが唯一効果的である。この治療法は、不十分な胎盤形成及び成長、並びに低酸素症などのこれらの状態のその他の影響には対処しない。これらの状態の根底にある血管原因を解決する治療法は現在存在しない。
【0008】
内皮型NO生成でのその機能に加えて、テトラヒドロビオプテリン(BH4)は、他の酵素、特に、アミノ酸トリプトファン、フェニルアラニン及びチロシンを転換するアミノ酸水酸化酵素のグループに対するレドックス補因子である。これらの酵素は、アミノ酸フェニルアラニンの分解において並びに神経伝達物質セロトニン(5-ヒドロキシトリプタミン、5HT)、メラトニン、ドーパミン、ノルエピネフリン(ノルアドレナリン)、及びエピネフリン(アドレナリン)の生合成において使用される。
【0009】
多数の障害がこれらの水酸化酵素の機能障害と関連があり、この機能障害は、必須の補因子BH4の欠損、又はBH4のバイオアベイラビリティーの減少によっても引き起こされることがある。そのような障害は、例えば、BH4欠損症そのもの及びフェニルケトン尿症(PKU)を含む。更に、神経伝達物質の産生でのその役割のせいで、BH4は自閉症、ADHD、うつ、及びパーキンソン病などの神経障害にも関係している。特定の細胞及び組織でのBH4の低アベイラビリティーは、全身BH4レベルに関係する可能性があるだけではなく、局所的BH4酸化又は再利用、及び、例えば、細胞取込み又は輸送によるBH4の分布により影響を受ける可能性もある。
【0010】
しかし、循環器及び妊娠関連障害の処置の場合と同様に、これらの疾患の多くが、BH4の関与に基づいていない他の治療法に頼っている。
【0011】
BH4を含む唯一の市販の治療薬はサプロプテリン二塩酸塩(BH4*2HCL)の形で入手可能であり、PKUの処置での使用が承認されている。しかし、PKUを有する大半の人がこの薬物からほとんど又は全く恩恵を被っていない(Camp KM, Parisi MA, Acosta PB, Berry GT, Bilder DA, Blau Nら、(2014年6月) Molecular Genetics and Metabolism. 112(2):87~122頁)。更に、BH4の経口型での投与は、既存の血管疾患及び内皮機能障害を有する患者では何の利点もなかった(Cunnington Cら、Circulation 2012年)。BH4を使用することに伴う別の重大な問題は、BH4が酸化を受けやすいことである。
【0012】
本発明は、以下の態様のうちの1つ又は複数により上記問題のうちの1つ又は複数を解決することを目的とする。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Camp KM, Parisi MA, Acosta PB, Berry GT, Bilder DA, Blau Nら、(2014年6月) Molecular Genetics and Metabolism. 112(2): 87~122頁
【非特許文献2】Cunnington Cら、Circulation 2012年
【非特許文献3】Yuら、Hypertension 2016年; 68:749~59頁
【非特許文献4】Remington's Pharmaceutical Sciences、第18版(1990年、Mack Publ. Co, Easton Pa. 18042)pp 1435 1712。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第1の態様によれば、低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害の予防又は処置における使用のための還元型葉酸であって、以下のいずれか:
- アスピリン
- ハーブ抽出物
と組み合わせた投与を目的としない、還元型葉酸が提供される。
【0015】
一実施形態では、還元型葉酸は、BH4、その前駆体、又は機能的等価物と組み合わせた投与用である。
【0016】
一実施形態では、還元型葉酸、及び、任意選択でBH4、その前駆体、又は機能的等価物は、唯一の活性医薬物質である。一実施形態では、還元型葉酸は唯一の活性医薬物質である。
【0017】
本発明の第2の態様によれば、低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害の予防又は処置における使用のための還元型葉酸とBH4、その前駆体、又は機能的等価物の組合せが提供される。
【0018】
本発明の第3の態様によれば、低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害の予防又は処置における使用のための1つ又は複数の有効活性成分(active pharmaceutical ingredients)を含む組成物であって、有効活性成分が還元型葉酸及び任意選択でBH4、その前駆体、又は機能的等価物からなる組成物が提供される。
【0019】
一実施形態では、有効活性成分は還元型葉酸からなる。
【0020】
本発明の第4の態様によれば、低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害を有する対象を処置する方法であって、前記対象に還元型葉酸を投与する工程を含み、還元型葉酸は以下のいずれか:
- アスピリン
- ハーブ抽出物
と組み合わせて投与されない、方法が提供される。
【0021】
一実施形態では、還元型葉酸は、BH4、その前駆体、又は機能的等価物と組み合わせて投与される。
【0022】
一実施形態では、還元型葉酸、及び任意選択でBH4、その前駆体、又は機能的等価物は、唯一の活性医薬物質である。一実施形態では、還元型葉酸は唯一の活性医薬物質である。
【0023】
本発明の第5の態様によれば、低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害を有する対象を処置する方法であって、前記対象に還元型葉酸及びBH4、その前駆体、又は機能的等価物を投与する工程を含む方法が提供される。
【0024】
本発明の第6の態様によれば、低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害を有する対象を処置する方法であって、前記対象に1つ又は複数の有効活性成分を含む組成物を投与する工程を含み、有効活性成分が還元型葉酸及び任意選択でBH4、その前駆体、又は機能的等価物からなる、方法が提供される。
【0025】
一実施形態では、有効活性成分は還元型葉酸からなる。
【0026】
第4、第5又は第6の態様のいずれかの一実施形態では、方法は、対象における低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害の1つ又は複数のマーカーのレベルを決定する工程、及び適切にはマーカー又はそれぞれのマーカーレベルを健康な対象の参照レベルと比べる工程を更に含む。一実施形態では、方法は、対象が低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害の1つ又は複数のマーカーを示す場合、処置にむけて対象を選択する工程を更に含む。
【0027】
本発明の第7の態様によれば、低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害の処置用の医薬であって、以下:
- アスピリン
- ハーブ抽出物
のいずれも含まない、医薬の製造における還元型葉酸の使用が提供される。
【0028】
一実施形態では、還元型葉酸は、医薬の製造においてBH4、その前駆体、又は機能的等価物と組み合わせて使用される。
【0029】
一実施形態では、還元型葉酸、及び任意選択でBH4、その前駆体、又は機能的等価物は、医薬の製造において使用される唯一の活性医薬物質である。一実施形態では、還元型葉酸は、医薬の製造において使用される唯一の活性医薬物質である。
【0030】
本発明の第8の態様によれば、低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害の処置用の医薬の製造におけるBH4、その前駆体、又は機能的等価物と組み合わせた還元型葉酸の使用が提供される。
【0031】
本発明の第9の態様によれば、低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害の処置用の医薬の製造における1つ又は複数の有効活性成分であって、還元型葉酸、及び任意選択でBH4、その前駆体、又は機能的等価物からなる、有効活性成分の使用が提供される。
【0032】
一実施形態では、有効活性成分は還元型葉酸からなる。
【0033】
上記態様のいずれかの一実施形態では、低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害は妊娠関連障害である。
【0034】
上記態様のいずれかの一実施形態では、還元型葉酸はBH4レベルを正常化する又は回復させる。上記態様のいずれかの一実施形態では、還元型葉酸はBH4レベルを増加させる。一実施形態では、BH4レベルは内皮細胞で測定される。
【0035】
上記態様のいずれかの一実施形態では、還元型葉酸はBH4の酸化を減少させる又は予防する。
【0036】
上記態様のいずれかの一実施形態では、予防又は処置は、対象の、適切には低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害の1つ又は複数のマーカーを有する対象の予防又は処置である。一実施形態では、対象は、適切には第10の態様の方法により、低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害の1つ又は複数のマーカーについて検査されている。
【0037】
本発明の第10の態様によれば、還元型葉酸及び任意選択でBH4、その前駆体又は機能的等価物を用いた処置から恩恵を受ける可能性のある対象を選択する方法であって、対象において低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害の1つ又は複数のマーカーのレベルを決定する工程、マーカー又はそれぞれのマーカーのレベルを健康な対象における参照レベルと比較する工程、及び対象が参照レベルと比べて低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害の1つ又は複数のマーカーの異常なレベルを示す場合、処置にむけて対象を選択する工程を含む方法が提供される。
【0038】
低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害の適切なマーカーは下に記載されている。適切には、用語「異常な」は、マーカーのレベルが健康な対象でのマーカーのレベルとは有意に異なることを意味する。適切には、マーカーの「異常な」レベルは、健康な対象でのマーカーのレベルと比べて増加することも減少することもある。
【0039】
第10の態様の一実施形態では、低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害の1つ又は複数のマーカーは、対象において少なくともBH4レベルを含む。適切には、そのような実施形態では、方法は、対象でのBH4レベルを決定する工程、及び任意選択で対象での低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害の1つ又は複数のさらなるマーカーのレベルを決定する工程を含む。
【0040】
第10の態様の一実施形態では、方法は、選択された対象に処置を提供する工程を更に含む。一実施形態では、処置は、還元型葉酸及び任意選択でBH4、その前駆体、又は機能的等価物を含む。
【0041】
本発明の第11の態様によれば、還元型葉酸及びBH4、その前駆体、又は機能的等価物を含む医薬組成物が提供される。
【0042】
本発明の第12の態様によれば、
- 還元型葉酸、及び
- BH4、その前駆体、又は機能的等価物
を含むキットが提供される。
【0043】
本発明の第13の態様によれば、BH4、その前駆体、又は機能的等価物の酸化をin vitroで予防するための還元型葉酸の使用が提供される。
【0044】
第13の態様の一実施形態では、還元型葉酸はその天然の又は非天然の立体異性体でもよい。
【0045】
上記態様のいずれかの一実施形態では、還元型葉酸はその天然の立体異性体である。適切には、医学的使用に関係する態様では、還元型葉酸はその天然の立体異性体である。
【0046】
上記態様のいずれかの一実施形態では、還元型葉酸は、5-MTHFなどの完全還元型葉酸を含む。
【0047】
上記態様のいずれかの一実施形態では、低BH4バイオアベイラビリティーとは、BH4バイオアベイラビリティーの減少、適切には健康な対象でのBH4のレベルと比べて低レベルのBH4のことである。適切には、低いBH4バイオアベイラビリティーは、全身性低BH4バイオアベイラビリティー、又は局所的低BH4バイオアベイラビリティーを含む。適切には、局所的低BH4バイオアベイラビリティーは、組織レベル又は細胞レベルでのBH4の減少、例えば、特定の組織又は細胞での低組織BH4バイオアベイラビリティー又は低細胞BH4バイオアベイラビリティーを含んでいてよい。適切には、低いBH4バイオアベイラビリティーは、BH4欠損から生じる場合がある。代わりに又は更に、低BH4バイオアベイラビリティーは、例えば、細胞内への損なわれたBH4輸送若しくはBH4取込み、又はBH4の増加した酸化若しくは減少に起因していてもよい。
【0048】
本発明者らは、BH4が、妊娠高血圧腎症などの妊娠関連血管障害の病理、並びに循環器、肝臓及び腎臓疾患などの血管内皮病理に関係する潜在的に多くの他の障害に関与している機序を発見した。
【0049】
本発明者らは、BH4レベルを増加させる効果的な治療法を更に発見し、この治療法は、低BH4バイオアベイラビリティーにより媒介されるいかなる障害にも適用することができる。
【0050】
妊娠関連血管障害に関して、本発明者らは、BH4の消失は母体内皮機能障害を媒介し、妊娠関連血管病態形成の主要な誘因であることを見出した。本発明者らは、驚くべきことに、内皮細胞におけるBH4の欠如はそのような状態の重要な原因であり、BH4が実行可能な治療標的になることを見出した。
【0051】
本発明者らは、これらの状態が、BH4生合成での律速酵素であるGTPシクロヒドロラーゼIタンパク質の減少により媒介される、減少した内皮細胞BH4レベル、損なわれたeNOS活性、及び減少した内皮細胞増殖と関連していることを見出した。妊娠マウスでの研究中、本発明者らは、母体内皮細胞BH4欠損が、Gch1遺伝子(合成酵素GTPシクロヒドロラーゼIをコードしている)の標的欠損から生じ、妊娠中の進行性高血圧及び胎児発育遅延を引き起こしたことを明らかにした。更に、本発明者らは、母体内皮細胞Gch1欠損が、子宮動脈において及びらせん動脈において機能的及び構造的リモデリングの欠損を引き起こし、胎盤機能不全をもたらすことを明らかにした。
【0052】
本発明者らの研究に先立って、妊娠関連血管障害におけるNO媒介血管リモデリングの機序は解明されてはいなかった。BH4がそのような状態の病理に関与していることは知られておらず、BH4が正常な胎盤発達に必要な血管リモデリングにおいてそのような重要な役割を有することも知られていなかった。本発明者らは、妊娠中の子宮胎盤血管リモデリングでの母体内皮細胞BH4生合成についての決定的な要件を特定した。
【0053】
BH4欠損それ自体又はフェニルケトン尿症(PKU)などのBH4に関連する他の障害を処置する以前の試みは、患者を経口BH4錠剤で直接処置する工程を含んでいた。
【0054】
しかし、本発明者らは、BH4に関連する障害を、医薬としてBH4それ自体を提供しても必ずしも処置できるわけではないことを更に見出した。本発明者らは、BH4が急速に酸化されて非有効形態のBH2になることを発見した。妊娠内皮細胞Gch1欠損マウスでの高血圧及び胎児発育遅延は、BH4からBH2への全身的酸化(systemic oxidation)のせいで経口BH4補充によっても救済されなかった。BH2へのそのような急速な酸化は対照マウスでも起きており、直接BH4補充が低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害を処置するのに効果的ではないことを示している。
【0055】
この問題を解決するため、本発明者らは、BH4を還元型葉酸と一緒に併用療法として提供することがこの問題を解決し、BH4をその効果的な還元状態で保持することを見出した。完全還元型葉酸 5-メチルテトラヒドロ葉酸(5-MTHF)を提供すると、BH4酸化が防止され、血圧が正常レベルまで下げられ、胎児発育が正常化された。
【0056】
驚くべきことに、還元型葉酸の効果は、身体内に存在する既存のBH4に作用することも発見され、還元型葉酸が医薬として単独で使用されることが可能になっている。
【0057】
関連する化学的葉酸である、完全に酸化された形態の葉酸は、長い間妊婦用の栄養補助剤として推奨されてきたが、臨床試験は、妊娠高血圧腎症を有する女性で葉酸補充の恩恵を全く示していない。実際、本発明者ら自身の研究では、葉酸は、Gch1欠損マウスに提供された場合、全く治療効果を示していない。葉酸は化学還元による5-MTHFへの転換が必要なので、本発明者らが完全還元型の5-MTHFを用いて観察したBH4レベルに対して有益なレドックス効果を発揮することができない。細胞でBH4利用能を増加させ、本発明者らが発見したBH4酸化を妨げることにおける5-MTHFの新規の効果は、驚くべきことに、葉酸媒介古典的ワンカーボン葉酸経路、又はホモシステイン低下の前に知られていた効果のいずれとも無関係である。
【0058】
したがって、驚くべきことに、本発明者らは、有効活性成分が還元型葉酸及び任意選択でBH4からなる医薬の提供は妊娠関連血管障害を予防し処置するのに効果的であることを見出した。還元型葉酸を用いた内皮細胞BH4の回復は、妊娠関連高血圧、胎盤機能不全、及び関連胎児発育遅延に介入する効果的な治療法を提供する。有利なことに、この治療法を使用すれば、特に、その高血圧症状を軽減するだけよりはむしろ、根底にある内皮病理に対処することにより、現在効果的な処置がない妊娠高血圧腎症を処置する又は予防することができる。妊娠高血圧腎症の予防は、妊娠後の20週前、好ましくは妊娠後の16週前、更に好ましくは妊娠後の12週前のいつでも開始し、妊娠の全期間プラス誕生後の12週間持続することができる。
【0059】
更に驚くべきことに、本発明者らは、有効活性成分が還元型葉酸及び任意選択でBH4からなる医薬の提供は、再発及び遺伝性妊娠関連血管障害を予防するのに効果的であることを見出した。
【0060】
BH4は、身体中の他の機序の重要な構成要素でもある。BH4は一酸化窒素合成酵素による一酸化窒素(NO)の生成のための補因子であり、これは妊娠高血圧腎症を含む血管障害などの内皮障害を引き起こすことへのBH4の関与を説明しうるが、BH4は、他の酵素、例えば、アミノ酸を神経伝達物質に転換する、又はフェニルアラニンなどのアミノ酸を代謝する芳香族アミノ酸水酸化酵素のグループに対する補因子でもある。本発明者らは、他の細胞又は組織型内でBH4利用能の回復又は増加は、これらの酵素の機能不全が重要な役割を果たすことが知られている他の疾患、例えば、BH4欠損それ自体、PKU、又はパーキンソン病、自閉症及びADHDなどの神経障害の処置に有益な効果を与えることを更に予測している。有利なことに、有益な効果を有するBH4それ自体の提供に頼らない異なる治療法を発見は、これらの障害に非常に有用になり得る。これは治療薬としてBH4を単独で使用することに伴う問題を回避する。BH4の単独使用は、処方し投与するのがもっと費用がかかり難問である可能性があり、効果のない形への急速な酸化のせいで実際にはin vivoでは全く有益な効果を与えない可能性があることが研究により明らかにされている。
【0061】
本発明は、ここで以下の図を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【
図1】正常血圧及び妊娠高血圧腎症妊娠由来の内皮細胞におけるGTPCHタンパク質、BH4レベル、NOS活性及びin vitro内皮管形成を示す図である。ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)は、正常血圧(NT)又は妊娠高血圧腎症(PE)妊娠由来の胎盤の臍帯から単離した。HUVECは内皮細胞増殖培地で培養し、ビオプテリン、GTPCHタンパク質レベル及びNOS活性の分析のために回収した。(a-b)正常血圧(NT)及び妊娠高血圧腎症妊娠(PE)由来のHUVECでのビオプテリンのHPLC分析。ビオプテリンは、細胞タンパク質1mg当たりで表される(*P<0.05;n=群当たり12~14);(c)NP及びPE妊娠由来のHUVECでのGTPCHタンパク質を示す代表的免疫ブロット。バンド密度はβチューブリンローディング対照と比べて定量化した(*P<0.05;n=群当たり9);(d)血管内皮型一酸化窒素合成酵素活性(eNOS)は細胞培養での14Cアルギニンの転換により、続いて14Cシトルリン生産の放射化学HPLC定量化により測定した。eNOS活性は、基本条件下及びカルシウムイオノフォア(A23187)で刺激した場合、NTと比べてPE由来のHUVECにおいて大幅に減少した。セピアプテリン(Sep;1μM、細胞プテリンサルベージ経路によりBH4に転換される)での処置により、NTとPE HUVECの両方でeNOS活性が有意に増加し、そのためeNOS活性はもはや群間での違いはなかった。非選択的NOS阻害剤NG-メチル-L-アルギニン(L-NMA)は、すべての群でeNOS活性を消滅させた(*P<0.05 n=群当たり6~8);(e)1μMのセピアプテリンで又はなしで処置されたNT及びPE由来のHUVECでのBH4のレベル;(f)セピアプテリン(1μM)の存在下又は非存在下、増殖因子減少マトリゲルに蒔いたNT及びPE由来のHUVECの代表的顕微鏡写真;(g)内皮分岐点及び総管長の定量化を、Angiosysソフトウェアを使用して実施し、フィールドごとにマイクロメートルで表した。PE由来のHUVECは、NT由来のHUVECよりも少ない内皮細胞増殖及び管形成を示したが、セピアプテリンの補充により救済された(*P<0.05 n=群当たり6);(g)内皮分岐点及び総管長の定量化を、Angiosysソフトウェアを使用して実施し、フィールドごとにマイクロメートルで表した。PE由来のHUVECは、NT由来のHUVECよりも少ない内皮細胞増殖及び管形成を示したが、セピアプテリンの補充により救済された(*P<0.05 n=群当たり6);(h)細胞外小胞は、正常血圧妊娠(NT)の女性由来又は妊娠高血圧腎症(PE)を有する女性由来の二重ローブ胎盤灌流(dual-lobe placental perfusion)及び胎盤からの超遠心分離により単離した。BH4、BH2及び全ビオプテリン(すなわち、BH4+BH2+ビオプテリン(B))のレベル並びにBH4の酸化ビオプテリン種に対する比「BH4/全ビオプテリン比」(すなわち、BH4/(BH2+B))はHPLCにより測定した。正常血圧妊娠の女性と比べて妊娠高血圧腎症妊娠の女性から単離された細胞外小胞では、BH4、全ビオプテリン及びBH4/全ビオプテリン比は有意に減少していた(*P<0.05;n=群当たり6)。
【
図2】内皮細胞におけるin vitro内皮管形成に対するGch1ノックダウンの効果を示す図である。sEnd.1マウス内皮細胞(a~e)及び一次ヒト子宮微小血管内皮細胞(HutMEC)(f~h)を、Gch1を標的にして向けられたsiRNAプール又は非ターゲティング(NS)スクランブルされた対照siRNAでトランスフェクトした。次に、細胞を回収し、ウェスタンブロッティングによりGTPCHタンパク質発現について、又は電気化学的及び蛍光検出を備えたHPLCを使用してビオプテリンレベルについて分析した。(a)非特異的Gch1 siRNA(NS)又は特異的Gch1 siRNA(Gch1 siRNA)を用いて処置したsEnd.1マウス内皮細胞株におけるGTPCHタンパク質についての代表的ウェスタンブロット。特異的Gch1 siRNAを用いて処置したsEnd.1では、GTPCHタンパク質はウェスタンブロッティングにより検出可能ではなく、非特異的Gch1 siRNAを用いて処置したsEnd.1ではGTPCHは容易に検出された。ブロットは、4つの別々の実験を表す;(b)HPLCにより測定した、細胞内BH4、BH2、全ビオプテリン(すなわち、BH4+BH2+B)及びBH4の酸化ビオプテリン種に対する比「BH4/全ビオプテリン比」(すなわち、BH4/(BH2+B))は、非特異的siRNA細胞と比べてGch1特異的siRNA細胞では有意に減少していた(*P<0.05 n=群当たり4);(c)セピアプテリン(1μM)の存在下又は非存在下、増殖因子減少マトリゲルに蒔いた非特異的Gch1 siRNA又は特異的Gch1 siRNAで処置したsEND.1マウス内皮細胞の代表的顕微鏡写真。内皮管長及び分岐の定量化を、Angiosysソフトウェアを使用して実施し、フィールドごとにマイクロメートルで表した;(d)in vitro内皮管形成及び分岐。特異的Gch1 siRNAで処置したsEND.1でのGch1発現の減少は、非特異的Gch1 siRNAで処置したsEND.1と比べて内皮細胞増殖及び管形成の顕著な減少を引き起こし、この減少はセピアプテリンの補充により救済することができる(*P<0.05 n=群当たり6);(e)セピアプテリン(1μM)の存在下又は非存在下、非特異的Gch1 siRNA又は特異的Gch1 siRNAで処置したsEND.1細胞でのBH4のレベル(*P<0.05 n=群当たり6);(f)ウェスタンブロット分析は、非特異的(NS)siRNAと比べて、細胞GTPCHタンパク質がGCH1特異的siRNAへの曝露に続いてHutMECにおいて大幅に減少していたことを示す。得られたバンドの正体は、siRNA GCH1(負の対照として)で又は非特異的siRNA(正の対照として)で処置されたHUVEC由来の対照ライセートを使用して確かめた;(g)GCH1特異的siRNAは、検出可能なレベルの細胞ビオプテリン及びBH4のBH2+Bに対する比(BH4/全ビオプテリン比)を有意に減少させた(*P<0.05 n=群当たり4);(h)セピアプテリン(1μM)の存在下又は非存在下、増殖因子減少マトリゲルに蒔いた非特異的GCH1 siRNA又は特異的GCH1 siRNAで処置したHutMECの代表的顕微鏡写真。内皮管長及び分岐の定量化を、Angiosysソフトウェアを使用することにより実施し、フィールドごとにマイクロメートルで表した;(i)in vitro内皮管形成及び分岐。ヒト子宮内皮細胞でのGCH1発現の減少は、内皮細胞増殖及び管形成の有意な減少を引き起こしたが、この減少はセピアプテリン(1μM)の補充により救済することができる(*P<0.05 n=群当たり4)。
【
図3】妊娠マウスにおける内皮細胞特異的Gch1ノックアウトの効果を示す図である。妊娠は、未交尾野生型メスマウス及びGch1
fl/flTie2creメスマウス(生後10~16週齢)を野生型オスマウスと交配させることにより達成した。組織は、妊娠期間E18.5日目に実験のために、又は非妊娠マウスから回収し収集した。(a~d)非妊娠マウス並びに妊娠(E18.5日妊娠期間)野生型(すなわち、Gch1
fl/fl)及びGch1
fl/flTie2creマウスの大動脈、子宮動脈及び血漿中のビオプテリンのレベルをHPLCにより測定した。BH4及び全ビオプテリンレベルは、非妊娠と妊娠マウスの両方で野生型マウスと比べて、Gch1
fl/flTie2creマウスでは有意に減少していた。非妊娠マウスでは、野生型とGch1
fl/flTie2creマウスの間に血漿BH4に有意差はなかった。妊娠マウスでは、血漿BH4レベルは、野生型とGch1
fl/flTie2creマウスの両方で有意に減少していたが、Gch1
fl/flTie2creマウスのほうが程度が大きく、BH4/(BH2+B)比はGch1
fl/flTie2creマウスでは有意に減少していた。それぞれの場合でのオープン(白色)バーはBH4のレベルであり、灰色の充填バーは全ビオプテリン(すなわち、BH4+BH2+B)である(*P<0.05 n=群当たり7~10動物);(e)収縮期血圧は、妊娠前及び妊娠中に野生型(Gch1
fl/fl)及びGch1
fl/flTie2creマウスにおいて非侵襲性テールカフプレチスモグラフィーにより測定した。(†P<0.05 遺伝子型を比較する;*P<0.05 基準血圧を比較する;n=群当たり7~10動物);(f)妊娠中に増加した母体体重増加は、野生型マウスと比べてGch1
fl/flTie2creマウスでは減少した。*P<0.05 n=群当たり7~10動物);(g及びh)野生型とGch1
fl/flTie2creマウスの間の同腹仔当たりの(産仔数)又は分娩日;(i~k)野生型及びGch1
fl/flTie2cre母体由来の胎仔は、妊娠期間のE18.5日に収集し体重を量った(*P<0.05 n=群当たり10~13同腹仔由来の72~85仔);(l及びm)野生型及びGch1
fl/flTie2cre母体由来の子孫体重は、誕生時に決定された。体重は動物の同腹当たりで平均された(*P<0.05 n=群当たり7~10同腹仔由来の51~75仔)。
【
図4】妊娠中の血管機能に対する内皮細胞BH4欠損の効果を示す図である。両遺伝子型の妊娠E18.5日目の非妊娠(NP)及び妊娠(P)マウス由来の単離された子宮動脈(UA)の血管機能をワイヤーミオグラフィーを使用して決定した。(a)100mmHgでの長さ-張力関係により決定される子宮動脈の直径は、両遺伝子型由来の妊娠UAで有意に増加していた。KCL応答(45mM)に応じた血管収縮は、両遺伝子型由来の妊娠UAで有意に増加していた(*P<0.05 n=群当たり6~8動物);(b)非妊娠及び妊娠野生型及びGch1
fl/flTie2creマウス由来の子宮動脈での壁応力。壁応力(媒体面積につきU46619に対する血管収縮;mN/mm
2)は、非妊娠野生型と非妊娠Gch1
fl/flTie2creマウスの間で類似していた。妊娠子宮動脈では、野生型とGch1
fl/flTie2creマウスの両方で壁応力は有意に減少していたが、Gch1
fl/flTie2creマウスのほうが程度は少なかった(*P<0.05 n=群当たり6~8動物);(c)両遺伝子型由来の非妊娠及び妊娠マウスでのU46619に応じてのパーセンテージ収縮(*P<0.05 n=群当たり6~8動物);(d)非選択的NOS阻害剤、L-NAMEの存在又は非存在下での妊娠子宮動脈でのU46619に応じてのパーセンテージ収縮(*P<0.05 n=群当たり6~8動物);(e)L-NAMEの存在又は非存在下でのアセチルコリン(Ach)に対する内皮依存性血管拡張(*P<0.05 妊娠WT対照対妊娠WT+L-NAME;n=群当たり6~8動物);(f)一酸化窒素ドナー、ニトロプルシドナトリウム(SNP)に応じての内皮非依存性血管拡張(*P<0.05 n=群当たり6~8動物);(g及びh)U46619に応じてのEC50及び最大収縮;(i及びj)アセチルコリン(Ach)に応じてのEC50及び最大弛緩;(k及びi)両遺伝子型由来の非妊娠及び妊娠でのNOS由来血管拡張剤、プロスタサイクリン、及び内皮由来過分極因子(EDHF)の寄与。Achに対する内皮依存性血管拡張は、非妊娠野生型及びGch1
fl/flTie2creマウス並びに妊娠野生型及びGch1
fl/flTie2creマウスにおいて、シクロオキシゲナーゼ阻害剤であるインドメタシン(10μM)単独、又はインドメタシンと一酸化窒素合成酵素阻害剤であるL-NAME(100μM)、又はインドメタシンとL-NAMEと内皮由来過分極因子ブロッカー(アパミン及びカリブドトキシン)の存在下で決定した。(m)両遺伝子型由来の非妊娠及び妊娠でのNOS由来血管拡張剤、プロスタサイクリン及びEDHF(すなわち、組合せアパミン感受性成分(SKca)及びカリブドトキシン感受性成分(IKca及びBKca))のパーセンテージ寄与(*P<0.05 n=群当たり5~6動物)。
【
図5】妊娠中の子宮動脈及びらせん動脈での胎盤サイズ及び血管リモデリングに対する内皮細胞BH4欠損の効果を示す図である。血管モデリングは、非妊娠及び妊娠野生型及びGch1
fl/flTie2creマウス由来の子宮動脈(100mmHgで固定された灌流)及び胎盤の包埋切片で分析した。(a)妊娠E18.5日目の野生型(左側)及びGch1
fl/flTie2creマウス(右側)由来の臍帯動脈及び静脈循環の胎盤ギプスの代表的画像;(b)妊娠E18.5日目の野生型及びGch1
fl/flTie2creマウス(右側)由来の臍帯動脈及び静脈循環の胎盤ギプスの代表的マイクロコンピュータトモグラフィー(uCT)画像(スーペリアビュー);(c)野生型及びGch1
fl/flTie2cre母体由来の胎盤は妊娠E18.5日目に収集し体重を量った(*P<0.05 n=群当たり6~8);(f)子宮動脈のα平滑筋アクチン(α-SMA)染色の代表的画像が示されている。白色矢印は内弾性板を示し、黒色矢印は外弾性板を示す。(g)非妊娠(NP)及び妊娠(P)野生型及びGch1
fl/flTie2creマウス由来の子宮動脈切片での血管リモデリング及び中膜肥厚。血管リモデリングは、内腔面積、中膜面積、血管平滑筋(VSM)面積の定量化(α-SMA免疫染色により)、VSMの内腔+中膜に対する比、及び中膜の内腔に対する比により評価した。定量化はImage Pro Plusソフトウェアを使用することにより実施した(*P<0.05 n=群当たり5~6動物)。(h)野生型及びGch1
fl/flTie2creマウス由来のマウス胎盤の脱落膜中の代表的ならせん動脈のH&E及びα-SMA染色。(i)内腔面積の定量化及びらせん動脈のパーセンテージ中膜平滑筋細胞は、α-SMA免疫染色及びImage Pro Plusソフトウェアにより定量化した(*P<0.05 n=群当たり5動物)。
【
図6】セピアプテリン(BH4の機能的等価物)及び5-MTHFの補充により、内皮細胞BH4欠損の妊娠マウスでの妊娠誘発高血圧及び胎児発育遅延が救済されることを示す図である。Gch1
fl/flTie2cre及び野生型マウスは、時限交配前の3日間、及びそれに続く妊娠期間中ずっと、経口BH4(200mg/kg/day、固形飼料に補充される)、又は5-MTHF(15mg/kg/day)と一緒に経口BH4(200mg/kg/day)又は対照食で処置した。(a~c)妊娠E18.5日目にBH4単独又は5-MTHFと一緒のBH4又は対照で処置した野生型及びGch1
fl/flTie2creマウス由来の血漿中のBH4、BH2、及びBH4/(BH2+B)(BH4/全ビオプテリン比)のHPLC分析(*P<0.05 n=群当たり5~7動物)。(d~f)妊娠前及び妊娠中にBH4単独又は5-MTHFと一緒のBH4又は対照食で処置された野生型及びGch1
fl/flTie2creマウスでの収縮期血圧は、非侵襲性テールカフにより測定された(*P<0.05 n=群当たり5~7動物)。(g~i)妊娠E18.5日目に決定された胎仔及び胎盤質量(*P<0.05 n=群当たり5~7同腹由来の32~43胎仔)。(j~l)BH4単独又はBH4+5-MTHF又は対照食で処置された野生型及びGch1
fl/flTie2creマウス由来の子宮動脈での血管機能は、ワイヤーミオグラフにより評価された。(j)BH4及び5-MTHFで又はなしで処置された野生型及びGch1
fl/flTie2creマウスでのU46619に応じた血管収縮。(k)Achに応じた内皮依存性血管収縮は、Gch1
fl/flTie2creマウスにおいて5-MTHFと一緒のBH4の補充により救済された。(l)SNPに応じた内皮非依存性血管収縮は群間で類似していた。P<0.05(*)野生型対照対Gch1
fl/flTie2creマウス対照、(#)Gch1
fl/flTie2cre対照対BH4+5-MTHFで処置されたGch1
fl/flTie2creマウス;n=群当たり4~6動物)。
【
図7】正常血圧(NT)又は妊娠高血圧腎症(PE)妊娠の女性での血漿バイオマーカーを示す図である。(a及びb)血漿抗血管新生マーカーである可溶性エンドグリン(sENG)及び可溶性fms-様チロシンキナーゼ-1(sFlt-1)は、分娩後5日目に酵素結合免疫吸着アッセイにより測定した(n=群当たり107)。産後5日目のsENG及びsFlt-1のレベルは、妊娠最終日よりも低いが、妊娠レベルと密接に関連しており、依然として妊娠レベルを表している(Yuら、Hypertension 2016;68:749-59参照)。(c、d及びe)BH4、全ビオプテリン、及びBH4/(BH2+B)(BH4/全ビオプテリン比)のレベルは、ベースライン(妊娠3カ月後)及び妊娠後期に、妊娠高血圧腎症を有する女性由来の血漿において(n=38)及び正常血圧対照(n=24)においてHPLCにより測定した。黒色記号はNTを示し、青色記号はPEを示す。*は、PE対NT、又は妊娠後期対妊娠初期ではp<0.05を示す。
【
図8】妊娠Tie2creマウス子宮動脈及び胎盤での内皮細胞特異的loxPが導入された対立遺伝子切除を示す図である。Tie2creマウスは、loxPが導入されたTdTomatoレポーターマウスと交配させた。メスTie2cre/TdTomatoマウスはWTオスマウスと時限交配を受けた。子宮動脈及び胎盤組織は、蛍光顕微鏡観察のために妊娠のE18.5日目に回収した。赤色Tdt蛍光は、それぞれ(a)子宮動脈及び(b)脱落膜らせん動脈(*)において内皮細胞を目立たせている。核はDAPIで青色に染色されている。
【
図9】妊娠中の野生型及びGch1
fl/flTie2creマウスでの肝臓及び尿ビオプテリンレベルを示す図である。(a~e)非妊娠及び妊娠終了時の両方で、野生型(WT)及びGch1
fl/flTie2creマウスから得られた肝臓組織ホモジネートにおいて、BH4、BH2、B(全ビオプテリン)のレベルをHPLCにより測定した。全ビオプテリン(BH4+BH2+B)及びBH4/(BH2+B)比を計算した(n=群当たり6動物)。(f~g)非妊娠及び妊娠終了時の両方で、野生型(WT)及びGch1
fl/flTie2creマウス由来の尿試料中でビオプテリンの濃度をHPLCにより測定した。全ビオプテリン(BH4+BH2+B)及びBH4/(BH2+B)比を計算した(n=群当たり6動物)。(*)は、WT対Gch1
fl/flTie2cre、又は妊娠対非妊娠ではp<0.05を示す(n=群当たり6動物)。
【
図10】妊娠中の野生型及びGch1
fl/flTie2creマウスでの尿中タンパク質及び血漿タンパク質並びに肝臓酵素レベルを示す図である。(a~c)非妊娠及び妊娠終了時の両方で、野生型(WT)及びGch1
fl/flTie2creマウスから得られた尿中で、クレアチニン及び全タンパク質のレベルを臨床化学アナライザーにより測定した。尿タンパク質/クレアチニン比を計算した(n=群当たり6動物)。(d~g)非妊娠及び妊娠終了時の両方で、野生型(WT)及びGch1
fl/flTie2creマウスから得られた血漿中で、アラニントランスアミナーゼ(ALT)、アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)、クレアチニン及びアルブミンのレベルを臨床化学アナライザーにより測定した(n=群当たり6動物)。
【
図11】妊娠中の野生型及びGch1
fl/flTie2creマウスでの尿ビオプテリン/クレアチニン比及び血漿ビオプテリン/尿ビオプテリン比を示す図である。(a~e)非妊娠及び妊娠終了時の両方で、野生型(WT)及びGch1
fl/flTie2creマウスから得られた尿BH4/クレアチニン比、BH2/クレアチニン比、B/クレアチニン比、全ビオプテリン/クレアチニン比(n=群当たり6動物)。*は、WT対Gch1
fl/flTie2cre、又は妊娠対非妊娠ではp<0.05を示す。(f~g)非妊娠及び妊娠終了時の両方で、野生型(WT)及びGch1
fl/flTie2creマウスから得られた血漿BH4/尿BH4比及び血漿全ビオプテリン対尿全ビオプテリン比(n=群当たり6動物)。(*)は、WT対Gch1
fl/flTie2cre、又は妊娠対非妊娠ではp<0.05を示す。
【
図12】Gch1
fl/flTie2creマウスでの腎臓組織像を示す図である。腎臓は、妊娠野生型(WT)及びGch1
fl/flTie2creマウスから回収し、組織像のために固定し処理した。切片は、過ヨウ素酸シッフ(PAS)、ヘマトキシリン-エオジン(H&E)又はマッソントリクローム染色で染色した。寸法及び面積はImage Jを使用して測定した。(a)WT及びGch1
fl/flTie2cre由来の腎臓矢状断断面の肉眼画像。(b~f)腎臓長、幅、総面積並びに皮質及び髄質面積の組織学的測定値。(g)WT及びGch1
fl/flTie2creマウス由来の腎糸球体の組織学的画像(×40拡大率、バー=30μm)。(h及びi)複数の糸球体からの糸球体面積及びボーマン隙面積の定量化(n=群当たり6~7動物)。
【
図13】妊娠最終日中の自由に動く野生型及びGch1
fl/flTie2creマウスでの循環器及び行動活性を示す図である。血圧及び心拍数の24時間遠隔測定記録を、遠隔測定システムを用いて意識のあるマウスで実施した。1分間の時間間隔での平均動脈血圧及び心拍数は、0000時~次の日の1200時までの24時間連続してプロットした。(a~e)妊娠E17.5~18.5日の間の平均動脈圧、収縮期圧、拡張期圧、心拍数、及び活性計数の24時間記録が示されている。陰領域は照明のスイッチを切る暗期を表す(2000時~次の日の0800時)。
【
図14】野生型及びGch1
fl/flTie2creマウスでの妊娠中の遠隔測定血圧を示す図である。野生型(WT)若しくはGch1
fl/flTie2creマウスのメスマウス又はWTオスマウス(遺伝的に適合する同腹仔を生み出すため)、並びに血圧遠隔測定により妊娠中血圧を測定した。(a~c)平均動脈圧、収縮期圧、及び拡張期圧を妊娠期間中測定した。Gch1
fl/flTie2creマウスメスマウスと交配させたGch1
fl/flTie2creマウスでの妊娠のE18.5日目の収縮期と平均血圧の両方は、野生型同腹仔対照よりも有意に高かった(それぞれn=5及びn=7)。(†)は、p<0.05対WTを示す;(*)は、p<0.05対ベースライン血圧を示す。(d~e)Gch1
fl/flTie2cre又はWTメスマウスについての妊娠期間を通しての心拍数及び活性(それぞれn=5及びn=7)。
【
図15】ベースライン血圧について一致させた野生型及びGch1
fl/flTie2creマウスでの妊娠中の血圧変化を示す図である。野生型(WT)若しくはGch1
fl/flTie2creのメスマウスは、Gch1
fl/flTie2cre又はWTオスマウスと交配させ(遺伝的に適合する同腹仔を生み出すため)、妊娠期間中3日毎にテールカフプレチスモグラフィーにより血圧を測定した。(a)WT又はGch1
fl/flTie2creメスマウス(それぞれn=5及びn=6)について初期妊娠(e2.5)と後期妊娠(e18.5)の間の血圧の平均変化、(b)ベースラインでの等しい血圧を保証するコホートから選択されたWT又はGch1
fl/flTie2creメスマウス(それぞれn=5及びn=6)について妊娠期間を通しての血圧プロファイル。このベースライン共変動調整後でも、妊娠中のBPの増加は、WTマウスと比べてGch1
fl/flTie2creマウスのほうが依然としてはるかに大きいままであった。(*)は、p<0.05対WTを示す; †は、p<0.05対ベースライン血圧を示す。
【
図16】妊娠中の内皮細胞にGch1のヘテロ接合欠損を有するマウス(すなわち、Gch1
fl/+Tie2creマウス)でのビオプテリンレベルを示す図である。内皮細胞にGch1のヘテロ接合欠損を有するマウス(すなわち、Gch1
fl/+Tie2creマウス)を、Gch1
fl/flTie2creマウスをWT(すなわち、Gch1
+/+)マウスと交配させることにより生み出した。メスGch1
fl/+Tie2creマウスをWTオスマウスと交配させた。(a)ゲノムPCRは、Gch1
fl/+(WT)とGch1
fl/+Tie2creマウスの両方でGch1floxed及びWT対立遺伝子の存在を示している。(b~u)妊娠終了時に野生型(WT)及びGch1
fl/+Tie2creから得た組織ホモジネートにおいて、BH4、BH2、B(全ビオプテリン)のレベルをHPLCにより測定した。全ビオプテリン(BH4+BH2+B)及びBH4/(BH2+B)比を計算した。大動脈(b~f)、肺(g~k)、肝臓(l~p)及び妊娠子宮動脈(q~u)でのビオプテリンレベルが示されている。(*)は、p<0.05対WTを示す。
【
図17】内皮細胞にGch1のヘテロ接合欠損を有する妊娠マウス(すなわち、Gch1
fl/+Tie2creマウス)での血圧及び胎児発育を示す図である。(a及びb)ベースラインでの血圧及び心拍数(妊娠前)(n=群当たり6~8動物)。(c及びd)妊娠前及び妊娠中の血圧及び心拍数(妊娠前)(n=群当たり6~8動物)。(e)野生型とGch1
fl/+Tie2creマウスの間で産仔数(胎仔の数)に違いはなかった(n=群当たり6~8動物)。(f~h)妊娠日18.5の胎仔は、野生型メスと比べて妊娠Gch1
fl/+Tie2cre由来は有意に小さかった。(*)は、p<0.05対WTを示す;n=群当たり6~8動物。
【
図18】妊娠中の野生型及びGch1
fl/flTie2creマウス由来の臓器質量を示す図である。臓器質量:非妊娠及び妊娠(E18.5日妊娠)野生型及びGch1
fl/flTie2creマウス由来の(a)心臓、(b)肺、(c)肝臓、(d)腎臓及び(e)脾臓。(*)は、p<0.05を示す;n=群当たり6動物。
【
図19】妊娠中の母体Gch1欠損の研究のための適合する同腹仔を生み出すための育種戦略を示す図である。(a)オスGch1
fl/flTie2creマウスと交配したメスWT(すなわち、Gch1
fl/fl)、又はオスWTマウスと交配したメスGch1
fl/flTie2creつがいの図式。両つがいは、1対1比でWT又はGch1
fl/flTie2cre子孫で構成された同じ同腹仔を産し、重要な違いは、遺伝的に適合する子孫がWT母体に又はGch1
fl/flTie2cre母体に生まれることである。(b)野生型オス又はGch1
fl/flTie2creオスと交配させた野生型メスでの、妊娠前及び妊娠中に非侵襲性テールカフにより測定される収縮期血圧(n=群当たり7~10動物)。(c及びd)Gch1
fl/flTie2cre母体由来の胎仔及び胎盤質量は、胎仔遺伝子型に従って決定した。野生型胎仔とGch1
fl/flTie2cre母体由来のGch1
fl/flTie2cre胎仔の間には胎仔及び胎盤質量に差はなかった。(e)出産時野生型とGch1
fl/flTie2cre母体の間には産仔数に差はなかった。(f)野生型及びGch1
fl/flTie2cre母体由来の生存仔が出産時に収集され測定された。
【
図20】野生型及びGch1
fl/flTie2cre母体由来のオス及びメス胎仔の胎仔及び胎盤質量を示す図である。(a)Y染色体を検出するZfyプライマーを使用して、野生型及びGch1
fl/flTie2cre母体由来の胎仔の性別の代表の遺伝子型を同定した。(b及びc)野生型及びGch1
fl/flTie2cre母体由来の胎仔及び胎盤質量を妊娠E18.5日目に収集し、胎仔の遺伝子型及び性別に従って質量を量った。妊娠Gch1
fl/flTie2cre母体由来のオス及びメス胎仔は、野生型母体と比べて有意に小さかった。胎仔質量の減少にオス-メス差はなかった。(*)は、P<0.05を示し;n=4WT母体及びn=4Gch1
fl/flTie2cre母体由来の25オス及び22メス。
【
図21】妊娠E18.5日目の野生型及びGch1
fl/flTie2creマウス由来の子宮動脈での他動壁張力曲線を示す図である。妊娠野生型及びGch1
fl/flTie2creマウス由来の子宮動脈を解体し、2mmの切片をカルシムなしKHBバッファー中でワイヤーミオグラフ上にマウントした。他動張力は、野生型対照と比べてGch1
fl/flTie2creマウス由来の子宮動脈で有意に増加しており、これらの脈管での内向きリモデリング又は変更されたコンプライアンスを示している。(*)は、P<0.05対WTを示し;n=群当たり5~6動物。
【
図22】妊娠E18.5日目の非妊娠及び妊娠野生型及びGch1
fl/flTie2creマウス由来の大動脈の血管運動機能を示す図である。野生型(WT)又はGch1
fl/flTie2creのメスマウスを、Gch1
fl/flTie2cre又はWTオスマウスと交配させ、遺伝的に適合する同腹仔を生んだ。両遺伝子型のE18.5での非妊娠(NP)及び妊娠(P)マウス由来の単離された子宮動脈(UA)の血管機能はワイヤーミオグラフィーを使用して決定した。(a)KCL応答に応じての絶対収縮(mN)。(b)両遺伝子型由来の非妊娠及び妊娠マウスでのフェニレフリンに応じてのパーセンテージ収縮。(c及びd)L-NAMEの存在又は非存在下でのアセチルコリン(Ach)に対する内皮依存性血管拡張。(e)一酸化窒素ドナーであるニトロプルシドナトリウム(SNP)に応じた内皮非依存性血管拡張。(f及びg)フェニレフリン(PE)に応じてのEC
50及び最大収縮。(h及びi)アセチルコリン(Ach)に応じてのEC
50及び最大弛緩。(*)は、p<0.05妊娠Gch1
fl/flTie2cre対妊娠WTを示し;(#)は、p<0.05非妊娠マウス対妊娠マウスを示す(n=群当たり6動物)。
【
図23】妊娠E18.5日目の妊娠野生型及びGch1
fl/flTie2cre子宮動脈でのプロスタサイクリン、eNOS-由来血管拡張剤、及びEDHFの寄与を示す図である。妊娠WT(a)及びGch1
fl/flTie2creマウス(b)由来の子宮動脈の等尺性張力研究をワイヤーミオグラフを使用して調べた。アセチルコリン(ACh)に対する内皮依存性血管拡張は、シクロオキシゲナーゼ阻害剤であるインドメタシン(10μM)単独、又はインドメタシンと一酸化窒素合成酵素阻害剤であるL-NAME(100μM)、又はインドメタシンとL-NAMEとEDHFブロッカー(アパミン及びカリブドトキシン)の存在下で決定した。(c)アパミン感受性成分(SKca)、カリブドトキシン感受性成分(IKca及びBKca)及びアパミンとカリブドトキシン感受性成分の組合せ(すなわち、EDHF)のパーセンテージ寄与。(*)は、P<0.05を示す、n=群当たり5動物。
【
図24】妊娠中セピアプテリン(BH4の機能的等価物)及び5-MTHFで処置した妊娠野生型及びGch1
fl/flTie2creから単離した子宮動脈でのBH4測定値を示す図である。妊娠Gch1
fl/flTie2cre及び野生型マウスを、時限交配前の3日間、及びそれに続く妊娠期間中ずっと経口BH4(200mg/kg/日)補充、又は5-MTHF(15mg/kg/日)と一緒に経口BH4(200mg/kg/日)又は対照食で処置した。子宮動脈は妊娠E18.5日目に回収した。(a~e)妊娠E18.5日目にBH4単独又は5-MTHFと一緒のBH4又は対照で処置された野生型及びGch1
fl/flTie2creマウスから得た子宮動脈において、BH4、BH2、B(全ビオプテリン)のレベルをHPLCにより測定した。(*)P<0.05、n=群当たり5~7動物。
【
図25】妊娠E18.5日目の野生型及びGch1
fl/flTie2creマウスでの胎盤GTPCH及びBH4測定値を示す図である。(a)野生型(WT)及びGch1
fl/flTie2creマウス由来の胎盤中のGTPCHタンパク質を示す代表的免疫ブロット。ウェスタンブロット対照はsEND細胞(マウス内皮細胞株)を含む。(b)HPLCにより測定した胎盤BH4及び全ビオプテリンは、WT同腹仔と比べてGch1
fl/flTie2creマウス由来の胎盤で有意に減少していた。(*)はP<0.05を示す、n=群当たり5~7動物;それぞれの動物について胎仔遺伝子型が未知の2~3の胎盤をBH4測定のために選択した。
【
図26】5-MTHFの補充は内皮細胞BH4欠損の妊娠マウスでの妊娠誘発高血圧を救済するが葉酸は救済しないことを示す図である。Gch1
fl/flTie2cre(四角形)及び野生型(円形)マウスを、時限交配前の3日間及びそれに続く妊娠期間中ずっと、経口葉酸(15mg/kg/日、固形飼料中に補充する)又は経口5-MTHF(15mg/kg/日)又は対照食で処置した。(a~c)妊娠前及び妊娠中に葉酸単独(n=群当たり3動物)又は5-MTHF(n=群当たり5~7動物)又は対照食(n=群当たり5動物)で処置した野生型及びGch1
fl/flTie2creマウスでの収縮期血圧を、非侵襲性テールカフにより測定した。(*)はP<0.05野生型対照対Gch1
fl/flTie2creマウス対照を示す;(#)は、P<0.05非妊娠Gch1
fl/flTie2creマウス対妊娠Gch1
fl/flTie2creマウスを示す。
【
図27】マウス内皮細胞(sEnd.1)におけるBH4レベルに対する5-MTHF補充の効果を示す図である。sEnd.1細胞をMTX(1μm)単独又は5-MTHF(10μm)単独又はMTX+5-MTHFに37℃で16時間曝露し、細胞内ビオプテリンレベルをHPLCにより定量化した(*、p<0.05対照対MTXを比較する、#、p<0.05MTX対MTX+5-MTHFを比較する、すべての実験でn=6)。
【
図28】マウス内皮細胞での葉酸補充の効果を示す図である。sEnd.1細胞をMTX(1μm)単独又は葉酸(10μm)単独又はMTX+葉酸に37℃で16時間曝露し、細胞内ビオプテリンレベルをHPLCにより定量化した(*、p<0.05対照対MTXを比較する、すべての実験でn=3)。
【
図29】マウス内皮細胞株でのGTPCH及びeNOSタンパク質発現に対する5-MTHF補充の効果を示す。sEnd.1細胞をMTX(1μm)単独又は5-MTHF(10μm)単独又はMTX+5-MTHFに37℃で16時間曝露し、細胞内ビオプテリンレベルをHPLCにより定量化した。(A)対応する定量的データを備えた代表的免疫ブロット。(B)は、MTX単独、5-MTHF単独又は5-MTHF+MTXで処置した内皮細胞でのGTPCHタンパク質を示す。ベータチューブリン(ローディング対照)についての対応する免疫ブロット(*、p < 0.05、n=群当たり6)。
【
図30】マウス内皮細胞でのアスコルビン酸補充の効果を示す図である。sEnd.1細胞をMTX(1μm)単独又はアスコルビン酸(10μm)単独又はMTX+5-MTHFに37℃で16時間曝露し、細胞内ビオプテリンレベルをHPLCにより定量化した。(*、p<0.05、n=群当たり3~6)。
【
図31】HPLCを使用してのDHF、THF、及び5-MTHF測定を示す図である。sEnd.1細胞をMTX(1μm)単独又は5-MTHF(10μm)単独又はMTX+5-MTHFに37℃で16時間曝露し、細胞内DHF、THF、及び5-MTHFレベルをHPLCにより定量化した。(*、p<0.05、MTX対MTX+5-MTHFを比較する、すべての実験でn=6)。
【
図32】マウス内皮細胞でのROS産生に対する5-MTHF補充の効果を示す図である。ジヒドロエチジン(DHE)高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により検出されるスーパーオキシド及び他の活性酸素種(ROS)産生。それぞれ2-ヒドロキシエチジウム(2-HE)及びエチジウムにより測定されるスーパーオキシド及び他のROS産生。sEnd.1細胞をMTX(1μm)単独又は5-MTHF(10μm)単独又はMTX+5-MTHFに37℃で16時間曝露し、2-HE及びエチジウムレベルをHPLCにより定量化した。(*、p<0.05、すべての実験でn=6)。
【
図33】マウス内皮細胞でのROS産生に対する葉酸補充の効果を示す図である。ジヒドロエチジン(DHE)高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により検出されるスーパーオキシド及び他の活性酸素種(ROS)産生。それぞれ2-ヒドロキシエチジウム(2-HE)及びエチジウムにより測定されるスーパーオキシド及び他のROS産生。sEnd.1細胞をMTX(1μm)単独又は葉酸(10μm)単独又はMTX+5-MTHFに37℃で16時間曝露し、2-HE及びエチジウムレベルをHPLCにより定量化した。(*、p<0.05、すべての実験でn=3)。
【
図34】マウス内皮細胞でのNOS活性に対する5-MTHF補充の効果を示す図である。14Cシトルリンへの14Cアルギニンの転換を内皮型一酸化窒素合成酵素活性(eNOS)の尺度として使用した。sEnd.1細胞をメトトレキサート(MTX;1μm)単独又は5-MTHF(10μm)単独又はMTX+5-MTHFに37℃で16時間曝露し、14Cシトルリンへの14Cアルギニンの転換をHPLCにより定量化した。(*、p<0.05、すべての実験でn=6)。
【
図35】ヒト内皮細胞でのセピアプテリン(BH4の機能的前駆体)補充の効果を示す図である。HUVECSをメトトレキサート(MTX;1μm)単独又はセピアプテリン(1μm)単独又はMTX+セピアプテリンに37℃で16時間曝露し、細胞内ビオプテリンレベルをHPLCにより定量化した。(*、p<0.05対照対MTXを比較する、#、p<0.05 MTX対MTX+5-MTHFを比較する、すべての実験でn=6)。
【
図36】アルコフォリン(Arcofolin)(5-MTHF)補充はヒト内皮細胞においてBH4レベルを増加することを示す図である。HUVECSをMTX(1μm)単独又は5-MTHF(10μm)単独又はMTX+5-MTHFに37℃で16時間曝露し、細胞内BH4及び酸化ビオプテリン(BH2及びビオプテリン)を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により決定した。(*、p<0.05対照対MTXを比較する、#、p<0.05 MTX対MTX+5-MTHFを比較する、すべての実験でn=6)。
【
図37】ヒト内皮細胞でのROS産生に対する5-MTHF補充の効果を示す図である。ジヒドロエチジン(DHE)高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により検出されるスーパーオキシド及び他の活性酸素種(ROS)産生。それぞれ2-ヒドロキシエチジウム(2-HE)及びエチジウムにより測定されるスーパーオキシド及び他のROS産生。HUVECSをMTX(1μm)単独又は5-MTHF(10μm)単独又はMTX+5-MTHFに37℃で16時間曝露し、2-HE及びエチジウムレベルをHPLCにより定量化した。(*、p<0.05、すべての実験でn=6)。
【
図38】ヒト内皮細胞でのROS産生に対する5-MTHF補充の効果のさらなるデータを示す図である。ジヒドロエチジン(DHE)高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により検出されるスーパーオキシド及び他の活性酸素種(ROS)産生。それぞれ2-ヒドロキシエチジウム(2-HE)及びエチジウムにより測定されるスーパーオキシド及び他のROS産生。HUVECSをMTX(1μm)単独又は5-MTHF(10μm)単独又はMTX+5-MTHFに37℃で16時間曝露し、2-HE及びエチジウムレベルをHPLCにより定量化した。(*、p<0.05、すべての実験でn=6)。
【
図39】内皮細胞BH4欠損の妊娠マウスでの妊娠誘発高血圧に対する妊娠10.5日目(妊娠中期)の5-MTHFの補充の効果を示す図である。Gch1
fl/flTie2cre及び野生型マウスを、妊娠10.5日目に経口5-MTHF(15mg/kg/日)又は対照食で処置した。妊娠前及び妊娠中に野生型(WT)及びGch1
fl/flTie2creマウスにおいて収縮期血圧を非侵襲性テールカフにより測定した。グラフは、群当たりn=3~6動物からの平均血圧を示し、妊娠期間ずっと示される時点で測定した(*P<0.05 遺伝子型を比較する;# P<0.05 ベースライン血圧を比較する)。
【
図40】妊娠10.5日目(妊娠中期)の5-MTHFの補充が内皮細胞BH4欠損の妊娠マウスにおいて妊娠誘発高血圧及び胎児発育遅延を救済することを示す図である。(A)妊娠前及び妊娠中に野生型(WT)及びGch1
fl/flTie2creマウスにおいて収縮期血圧を非侵襲性テールカフにより測定し、それぞれのデータ点はベース時点(妊娠前)又はE18.5(妊娠18.5日目)でのそれぞれの動物からの平均血圧を示す。(*P<0.05 遺伝子型を比較する;# P<0.05 ベースライン血圧を比較する;n=群当たり3~6動物)。(B)は、5-MTHF又は対照食での処置に続く野生型(WT)及びGch1
fl/flTie2creマウスにおける産仔数(生まれた仔の数)、胎仔体重及び胎盤質量を示す。
【
図41】妊娠16.5日目(妊娠後期)の5-MTHFの補充が内皮細胞BH4欠損の妊娠マウスにおいて妊娠誘発高血圧を救済することを示す図である。Gch1
fl/flTie2cre及び野生型マウスを、妊娠16.5日目に経口5-MTHF(15mg/kg/日)又は対照食で処置した。妊娠前及び妊娠中に野生型(WT)及びGch1
fl/flTie2creマウスにおいて収縮期血圧を非侵襲性テールカフにより測定した。(* P<0.05 遺伝子型を比較する;# P<0.05 ベースライン血圧を比較する;n=群当たり6~7動物)。
【発明を実施するための形態】
【0063】
本発明は、ここで、本明細書の上で定義される態様及び実施形態の特定の一般的特徴を参照して記載される。いかなるセクションのいかなる特徴でも、他のいかなるセクションの他のいかなる特徴と組み合わせてもよく、いかなる態様又は実施形態といかなる実行可能な組合せでも組み合わせてもよい。
【0064】
用語「1つの(a)」又は「1つの(an)」実体とは、1つ又は複数のその実体であることに注目すべきである。したがって、用語「1つの(a)(又は「1つの(an)」)」、「1つ又は複数の」、及び「少なくとも1つの」は本明細書では互換的に使用することができる。
【0065】
本明細書で使用される場合、用語「処置する」又は「処置」とは、治療処置と予防対策又は防止対策の両方のことであり、その場合、目的は望ましくない生理的変化又は傷害を予防する又は減速する(小さくする)ことである。有益な又は所望の臨床結果は、検出可能であれ検出不能であれ、症状の緩和、疾患の程度の衰退、疾患の安定化した(すなわち、悪化しない)状態、疾患進行の遅延又は減速、疾患状態の寛解又は緩和、及び軽快(部分的であれ全体的であれ)を含むがこれらに限定されない。「処置」は、処置を受けない場合の予測される生存と比べた生存の延長を意味することもできる。処置を必要とする者はすでに状態若しくは障害のある者並びに状態若しくは障害を有する傾向のある者又は状態若しくは障害を予防するべき者を含む。
【0066】
「対象」又は「個体」又は「動物」又は「患者」又は「哺乳動物」とは、任意の対象、特に、対象が「健康な対象」と定義される場合以外は、診断、予後、又は治療が望ましい哺乳動物対象を意味する。哺乳動物対象は、ヒト、飼育動物、家畜、例えば、イヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、ウマ、ウシ、乳牛、等を含む。用語「対象」は更に以下で定義される。
【0067】
還元型葉酸
本発明は、還元型葉酸単独で、又は任意選択でBH4、その前駆体若しくは機能的等価物と組み合わせると、低BH4バイオアベイラビリティーと関連する障害を処置することができるという発見に基づいている。
【0068】
本明細書で使用される用語「葉酸」とは、プテロアート基に基づく化合物のことであり、この基はペプチド結合を通じてグルタミン酸に連結されている。本明細書で使用される葉酸の好ましい代表は、葉酸骨格、すなわち、それぞれプテロイル-グルタミン酸N-[4-[[(2-アミノ-1,4-ジヒドロ-4-オキソ-6-プテリジニル)メチル]アミノ]ベンゾイル]-L-グルタミン酸、及びその誘導体に基づいている。適切には、還元型葉酸は、ジヒドロ葉酸(DHF);5-ホルミルテトラヒドロ葉酸(5-FTHF);テトラヒドロ葉酸(THF);5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸(5,10-CH2-THF);5,10-メテニルテトラヒドロ葉酸(5,10-CH-THF);10-ホルミルテトラヒドロ葉酸(10-FTHF);若しくは5-メチルテトラヒドロ葉酸(5-MTHF)又は薬学的に許容されるその塩若しくはそのポリグルタミン酸から選択してもよい。好ましい実施形態では、葉酸は、例えば、5-メチル-(6S)-テトラヒドロ葉酸、5,10-メテニル-(6R)-テトラヒドロ葉酸又は5-ホルミル-(6S)-テトラヒドロ葉酸などのその天然の立体異性体形である。
【0069】
適切には、還元型葉酸は、5,10-CH-THF;5-FTHF;10-FTHF、及び5-MTHF又は薬学的に許容されるその塩から選択してもよい。
【0070】
一実施形態では、還元型葉酸は5-MTHF又は薬学的に許容されるその塩である。一実施形態では、還元型葉酸は5-MTHFである。
【0071】
一実施形態では、還元型葉酸はその天然の立体異性体形である。一実施形態では、還元型葉酸は5-メチル-(6S)-テトラヒドロ葉酸である。
【0072】
本明細書で使用される5-MTHFとは、5-メチルテトラヒドロ葉酸のことであり、別名レボメ葉酸、L-5-MTHF、L-メチル葉酸、L-5-メチルテトラヒドロ葉酸、(6S)-5-メチルテトラヒドロ葉酸、又は(6S)-5-MTHFとして知られる。
【0073】
適切には、還元型葉酸は、還元型葉酸の薬学的に許容される塩でもよい。適切な薬学的に許容される塩は、薬学分野の当業者には公知である。適切な薬学的に許容される塩は、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、又はアンモニウム塩でもよい。5-MTHFの適切なカルシウム塩はMetafolin(登録商標)である。適切なナトリウム塩はArcofolin(登録商標)である。
【0074】
BH4、その前駆体、又は機能的等価物
本発明は、還元型葉酸を使用してBH4をBH2への酸化から保護することができるという発見に基づいている。還元型葉酸単独を、又はBH4、その前駆体、若しくは機能的等価物と組み合わせて提供すると、in vivo BH4レベルを上げ、低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害を処置することができる。
【0075】
本明細書で使用される「BH4」とは、テトラヒドロビオプテリンのことであり、別名サプロプテリンとして知られる。
【0076】
適切には、BH4、又はその前駆体若しくは機能的等価物は、薬学的に許容される塩として提供してもよい。適切な薬学的に許容される塩は、薬学分野の当業者には公知である。BH4に関して適切な薬学的に許容される塩は、BH4の無機又は有機酸を有する塩を含みうる。適切なBH4塩は、酢酸、クエン酸、シュウ酸、酒石酸、フマル酸、及びマンデル酸のBH4塩を含む。BH4の適切な塩化物塩は、サプロプテリン二塩酸塩(BH4*2HCL)、別名Kuvan(登録商標)又はBiopten(登録商標)として知られる。
【0077】
本明細書で使用される「前駆体」とは、1つ又は複数の代謝反応により特定の化学物質に転換されうる任意の化合物のことである。適切には、BH4前駆体は、1つ又は複数の代謝反応、適切には1つ又は複数の酵素反応によりBH4に転換されうる任意の化合物を含んでよい。適切には、BH4前駆体は、プテリン代謝経路内にある任意の化合物を含んでよい。適切には、BH4前駆体は、BH4生合成経路内にある任意の化合物を含んでよい。適切には、BH4前駆体は、例えば、GTP;NH2TP;PTP;オキソ-PH4;7,8-BH2;HO-BH4;q-BH2、L-アルギニン及び/又はL-シトルリンを含んでよい。
【0078】
本明細書で使用される「機能的等価物」とは、特定の化学物質がin vivoで実行するのと同じ機能が可能である、又は実際に実行する任意の化合物のことである。適切には、BH4機能的等価物は、水酸化酵素又は合成酵素に対する補因子として、適切には、一酸化窒素合成酵素に対する補因子として又は適切には芳香族アミノ酸水酸化酵素に対する補因子として、適切には、例えば、フェニルアラニン4-水酸化酵素、チロシン3-水酸化酵素、及びトリプトファン5-水酸化酵素などの、ビオプテリン依存性芳香族アミノ酸水酸化酵素に対する補因子として機能することができる任意の化合物を含んでよい。適切には、BH4の機能的等価物は、例えば、ネオプテリン、セピアプテリン、ビオプテリン、及びプリマプテリンを含んでもよい。
【0079】
適切には、機能的等価物は、BH4の前駆体でもよい。
【0080】
一実施形態では、BH4、その前駆体、又は機能的等価物はセピアプテリンを含む。一実施形態では、BH4、その前駆体、又は機能的等価物はセピアプテリンとして提供される。
【0081】
低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害
本発明は、低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害の予防又は処置に基づいている。
【0082】
低バイオアベイラビリティーとは、健康な対象と比べた場合、低レベルのBH4を意味する。適切には、低レベルのBH4は、健康な対象と比べた場合、任意の組織又は細胞型にあってもよい。適切には、低レベルのBH4は、健康な対象と比べた場合、内皮細胞にあってもよい。したがって、適切には、低BH4バイオアベイラビリティーとは、BH4バイオアベイラビリティーの減少、適切には、低レベルのBH4のことである。
【0083】
一実施形態では、低BH4バイオアベイラビリティーは、全身性低BH4バイオアベイラビリティー、又は局所的低BH4バイオアベイラビリティーを含む。適切には、局所的低BH4バイオアベイラビリティーは、組織レベル又は細胞レベルでのBH4の減少、例えば、特定の組織又は細胞での低組織BH4バイオアベイラビリティー又は低細胞BH4バイオアベイラビリティーを含んでもよい。一実施形態では、低BH4バイオアベイラビリティーは、低内皮BH4バイオアベイラビリティーを含んでもよい。適切には、低BH4バイオアベイラビリティーは、BH4欠損から生じてもよい。適切には、低BH4バイオアベイラビリティーは、遺伝的BH4欠損から生じてもよい。代わりに又は更に、低BH4バイオアベイラビリティーは、生化学的要因、例えば、細胞中への損なわれたBH4輸送若しくはBH4取込み、又は、例えば、BH4の増加した酸化若しくは還元から生じてもよい。
【0084】
一実施形態では、障害は、BH4欠損(テトラヒドロビオプテリン欠損)それ自体、又はBH4欠損に関連する障害でもよい。適切には、「低BH4バイオアベイラビリティー」への本明細書でのいかなる言及も、等しく「BH4欠損」を指していてもよい。適切には、欠損それ自体、又は低バイオアベイラビリティーは、類似する若しくは同じ原因、又は原因の組合せから生じることがある。
【0085】
適切には、低BH4バイオアベイラビリティーは、損なわれたBH4合成から生じることがある。適切には、損なわれたBH4合成は、適切には、プテリン生合成経路内で、適切には、BH4生合成経路内で、損なわれた酵素活性により引き起こされることがある。適切には、損なわれたBH4合成は、プテリン生合成経路内の1つ又は複数の損なわれた酵素により引き起こされることがある。適切には、損なわれたBH4合成は、BH4生合成経路内の1つ又は複数の損なわれた酵素により引き起こされることもある。BH4欠損は、酵素ジヒドロビオプテリン還元酵素(DHPR)の欠損により引き起こされることもあり、この還元酵素活性は、キノノイド-ジヒドロビオプテリンを元のそのテトラヒドロビオプテリン型に補充するのに必要とされる。
【0086】
適切には、したがって、低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害は、損なわれたBH4合成に関連する障害と実質的に同じでよい。適切には、したがって、低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害は、プテリン生合成経路内の1つ又は複数の損なわれた酵素に関連する障害と実質的に同じでよい。適切には、したがって、低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害は、BH4生合成経路内の1つ又は複数の損なわれた酵素に関連する障害と実質的に同じでもよい。
【0087】
適切には、本発明は、プテリン生合成経路内の1つ又は複数の酵素の損なわれた活性により引き起こされる低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害の予防又は処置を目的とする。適切には、本発明は、BH4生合成経路内の1つ又は複数の酵素の損なわれた活性により引き起こされる低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害の予防又は処置も目的とする。適切には、本発明は、プテリン生合成経路内の1つ又は複数の酵素の損なわれた活性により引き起こされる低BH4バイオアベイラビリティーの予防又は処置を目的とする。適切には、本発明は、BH4生合成経路内の1つ又は複数の酵素の損なわれた活性により引き起こされる低BH4バイオアベイラビリティーの予防又は処置も目的とする。適切には、本発明は、プテリン生合成経路内の1つ又は複数の酵素の損なわれた活性により引き起こされる障害の予防又は処置を目的とする。適切には、本発明は、BH4生合成経路内の1つ又は複数の酵素の損なわれた活性により引き起こされる障害の予防又は処置を目的とする。
【0088】
プテリン又はBH4生合成経路内の酵素は、GTPシクロヒドロラーゼI(GTPCH)、6-ピルボイル-テトラヒドロプテリン合成酵素(PTPS)、セピアプテリン還元酵素(SP)、カルボニル還元酵素(CR)、アルドケト還元酵素(AKR)、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)、ジヒドロプテリジン還元酵素(DHPR)、プテリン-4a-カルビノールアミン脱水酵素(PCD)、及び内皮NOS(eNOS)を含む。
【0089】
適切には、本発明は、GTPシクロヒドロラーゼI(GTPCH)、6-ピルボイル-テトラヒドロプテリン合成酵素(PTPS)、セピアプテリン還元酵素(SP)、カルボニル還元酵素(CR)、アルドケト還元酵素(AKR)、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)、ジヒドロプテリジン還元酵素(DHPR)、プテリン-4a-カルビノールアミン脱水酵素(PCD)、及び内皮NOS(eNOS)のうちの1つ又は複数の損なわれた活性により引き起こされるプテリン又はBH4欠損に関連する障害の予防又は処置を目的とする。
【0090】
適切には、本発明は、GTPシクロヒドロラーゼI(GTPCH)、6-ピルボイル-テトラヒドロプテリン合成酵素(PTPS)、セピアプテリン還元酵素(SP)、カルボニル還元酵素(CR)、アルドケト還元酵素(AKR)、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)、ジヒドロプテリジン還元酵素(DHPR)、プテリン-4a-カルビノールアミン脱水酵素(PCD)、及び内皮NOS(eNOS)のうちの1つ又は複数の損なわれた活性により引き起こされるプテリン又はBH4欠損の予防又は処置を目的とする。適切には、本発明は、GTPシクロヒドロラーゼI(GTPCH)、6-ピルボイル-テトラヒドロプテリン合成酵素(PTPS)、セピアプテリン還元酵素(SP)、カルボニル還元酵素(CR)、アルドケト還元酵素(AKR)、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)、ジヒドロプテリジン還元酵素(DHPR)、プテリン-4a-カルビノールアミン脱水酵素(PCD)、及び内皮NOS(eNOS)のうちの1つ又は複数の損なわれた活性により引き起こされる障害の予防又は処置を目的とする。
【0091】
プテリン又はBH4生合成経路での酵素の1つ又は複数の損なわれた活性により引き起こされる障害は、BH4欠損症(テトラヒドロビオプテリン欠損症)、GTPシクロヒドロラーゼ欠損症、ドパ反応性ジストニア、6-ピルボイル-テトラヒドロプテリン合成酵素欠損症、セピアプテリン還元酵素欠損症、ジヒドロ葉酸還元酵素欠損症、ジヒドロプテリジン還元酵素欠損症、及びプテリン-4a-カルビノールアミン脱水酵素欠損症を含む。適切には、したがって、本発明はこれらの障害のいずれかの予防又は処置を目的とする。
【0092】
一実施形態では、本発明は、GTPシクロヒドロラーゼI(GTPCH)の損なわれた活性、適切には、GTPシクロヒドロラーゼ欠損により引き起こされる低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害の予防又は処置を目的とする。一実施形態では、本発明は、GTPシクロヒドロラーゼI(GTPCH)の損なわれた活性、適切には、GTPシクロヒドロラーゼ欠損により引き起こされる低BH4バイオアベイラビリティーの予防又は処置を目的とする。一実施形態では、本発明は、GTPシクロヒドロラーゼI(GTPCH)の損なわれた活性、適切には、GTPシクロヒドロラーゼ欠損により引き起こされる障害の予防又は処置を目的とする。
【0093】
一実施形態では、本発明は、GTPシクロヒドロラーゼ欠損の予防又は処置を目的とする。
【0094】
適切には、低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害は、補因子としてのBH4に依存する酵素に関連する障害も含むことがある。適切には、したがって、低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害は、ビオプテリン依存性酵素に関連する障害と実質的に同じであってよい。
【0095】
適切には、低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害は、ビオプテリン依存性酵素に関連する障害を含みうる。適切には、本発明は、1つ又は複数のビオプテリン依存性酵素の損なわれた活性に関連する障害の予防又は処置を目的とする。
【0096】
適切には、低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害は、ビオプテリン依存性水酸化酵素又は合成酵素に関連する障害を含んでよい。適切なビオプテリン依存性水酸化酵素又は合成酵素は、フェニルアラニン水酸化酵素、チロシン水酸化酵素、トリプトファン水酸化酵素1、トリプトファン水酸化酵素2、及び一酸化窒素合成酵素から選択してもよい。
【0097】
適切には、低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害は、フェニルアラニン水酸化酵素、チロシン水酸化酵素、トリプトファン水酸化酵素1若しくは2、又は一酸化窒素合成酵素の損なわれた活性に関連する又はこの損なわれた活性により引き起こされる障害から選択してもよい。
【0098】
適切には、フェニルアラニン水酸化酵素の損なわれた活性に関連する又はこの損なわれた活性により引き起こされる障害は、フェニルケトン尿症(PKU)、肝硬変、及び脂肪肝を含む。
【0099】
適切には、チロシン水酸化酵素の損なわれた活性に関連する又はこの損なわれた活性により引き起こされる障害は、チロシン水酸化酵素欠損症、瀬川ジストニア、パーキンソン病、乳児性パーキンソニズム、ドパ反応性ジストニア、精神分裂病、アルツハイマー病、双極性障害、自閉症、ADHD、及びうつを含む。
【0100】
適切には、トリプトファン水酸化酵素1又は2の損なわれた活性に関連する又はこの損なわれた活性により引き起こされる障害は、骨粗鬆症、高血圧、ADHD、総合失調症、自閉症、うつ、双極性障害、人格障害を含む。
【0101】
適切には、一酸化窒素合成酵素の損なわれた活性に関連する又はこの損なわれた活性により引き起こされる障害は、神経型一酸化窒素合成酵素(nNOS又はNOS1)、内皮NOS(eNOS又はNOS3)、又は誘導型NOS(iNOS又はNOS2)の損なわれた活性に関連する又はこの損なわれた活性により引き起こされる障害を含みうる。適切には、一酸化窒素合成酵素の損なわれた活性に関連する又はこの損なわれた活性により引き起こされる障害は、うつ、双極性障害、脳卒中、パーキンソン病、アルツハイマー病、筋委縮性側索硬化症、糖尿病、心筋肥大、心筋症、高血圧、アテローム性動脈硬化、虚血再灌流、妊娠誘発高血圧、胎盤機能不全、胎児発育遅延、及び妊娠高血圧腎症を含みうる。
【0102】
一実施形態では、本発明は、フェニルアラニン-4水酸化酵素(PAH)の損なわれた活性により引き起こされる低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害、適切には、フェニルケトン尿症(PKU)の予防又は処置を目的とする。一実施形態では、本発明は、フェニルアラニン-4水酸化酵素(PAH)の損なわれた活性により引き起こされる障害、適切には、フェニルケトン尿症(PKU)の予防又は処置を目的とする。
【0103】
一実施形態では、本発明は、内皮型一酸化窒素合成酵素の損なわれた活性により引き起こされる低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害、適切には、妊娠高血圧腎症の予防又は処置を目的とする。一実施形態では、本発明は、内皮型一酸化窒素合成酵素の損なわれた活性により引き起こされる障害、適切には、妊娠高血圧腎症の予防又は処置を目的とする。
【0104】
適切には、上記ビオプテリン依存性酵素のいずれかの損なわれた活性は低BH4バイオアベイラビリティーにより引き起こされる。適切には、したがって、損なわれた活性はBH4媒介損なわれた活性でもよい。適切には、上記障害又は疾患のいずれかは低BH4バイオアベイラビリティーにより引き起こされる。適切には、したがって、疾患又は障害は、低BH4バイオアベイラビリティーに関連するか又はこれに由来してもよい。適切には、低BH4バイオアベイラビリティーはそれ自体がBH4欠損により引き起こされうる。
【0105】
適切には、本発明は、低BH4バイオアベイラビリティーに関連する心臓疾患若しくは障害、肝臓疾患若しくは障害、神経疾患若しくは障害、又は血管疾患若しくは障害の予防又は処置を目的としてもよい。
【0106】
低BH4バイオアベイラビリティーに関連する適切な心臓疾患は、糖尿病、心筋肥大、心筋症、及び虚血再灌流を含む。
【0107】
低BH4バイオアベイラビリティーに関連する適切な肝臓疾患は、フェニルケトン尿症、肝硬変、及び脂肪肝などの代謝障害を含む。
【0108】
低BH4バイオアベイラビリティーに関連する適切な神経疾患は、自閉症、ADHD、パーキンソン病、神経障害、筋委縮性側索硬化症、ジストニア、うつ、アルツハイマー病、及び精神分裂病、双極性障害、人格障害などの精神状態を含む。
【0109】
低BH4バイオアベイラビリティーに関連する適切な血管疾患は、高血圧、アテローム性動脈硬化、脳卒中、妊娠誘発高血圧、胎盤機能不全、胎児発育遅延、及び妊娠高血圧腎症を含む。
【0110】
適切には、本発明は、妊娠関連障害の予防又は処置を目的としてもよい。適切には、本発明は、低BH4バイオアベイラビリティーに関連する妊娠関連障害の予防又は処置を目的としてもよい。
【0111】
一実施形態では、低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害は血管疾患である。一実施形態では、低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害は内皮障害である。一実施形態では、低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害は、妊娠関連血管疾患である。一実施形態では、低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害は、妊娠関連内皮障害である。
【0112】
一好ましい実施形態では、低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害は妊娠高血圧腎症であり、それゆえに、本発明は、妊娠高血圧腎症の処置又は予防を目的とする。
【0113】
一実施形態では、低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害は、再発性障害でもよい。一実施形態では、妊娠高血圧腎症は再発性の場合がある。適切には、再発性妊娠高血圧腎症は、前妊娠中以前に妊娠高血圧腎症を経験したことにある女性で起こる。
【0114】
予防又は処置
本発明は、低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害の予防又は処置における、任意選択でBH4、その前駆体、又は機能的等価物と組み合わせた還元型葉酸の使用に関する。
【0115】
上述のように、「処置」とは、適切には、検出可能であれ検出不能であれ、症状の緩和、疾患の程度の衰退、疾患の安定化した(すなわち、悪化しない)状態、疾患進行の遅延又は減速、疾患状態の寛解又は緩和、及び軽快(部分的であれ全体的であれ)のいずれかのことを指しうる。
【0116】
「予防」とは、更に、疾患、又は疾患の症状を回避する工程のことを指しうる。
【0117】
適切には、任意選択でBH4、その前駆体、又は機能的等価物と組み合わせた還元型葉酸は、対象でのBH4レベルを正常化する又は回復する。適切には、任意選択でBH4、その前駆体、又は機能的等価物と組み合わせた還元型葉酸は、対象でのBH4レベルを増加する。一実施形態では、BH4レベルは内皮細胞で測定される。適切には、任意選択でBH4、その前駆体、又は機能的等価物と組み合わせた還元型葉酸は、対象の内皮細胞でのBH4レベルを正常化する又は回復する。適切には、任意選択でBH4、その前駆体、又は機能的等価物と組み合わせた還元型葉酸は、対象の内皮細胞でのBH4レベルを増加する。
【0118】
適切には、任意選択でBH4、その前駆体、又は機能的等価物と組み合わせた還元型葉酸は、対象でのBH4の酸化を減少する又は予防する。適切には、したがって、還元型葉酸は酸化によるBH4の消失を防ぐ。適切には、これと組み合わせてBH4を添加すれば、対象でのBH4レベルを更に直接増加する可能性がある。適切には、還元型葉酸は他の機序によりBH4のレベルを増やす可能性もある。適切には、還元型葉酸は、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)と相互作用してこの酵素のレベル、安定性又は活性を増やすこともある。適切には、DHFRの活性の増加は、元のBH4へのBH2の還元を増加する。適切には、これは、DHFRとの直接的相互作用、又は間接的相互作用でもよい。適切には、還元型葉酸は、メトトレキサートなどのDHFR阻害剤の効果を遮断しうる。適切には、還元型葉酸は、GTPシクロヒドロラーゼI(GTPCH)発現又は活性、適切には内皮GTPCH発現又は活性を増加するように作用しうる。
【0119】
適切には、還元型葉酸は、細胞還元力を増やす他の細胞内レドックス効果を有しうる。適切には、細胞還元力の増加は、グルタチオン、NADPH又はペルオキシレドキシンに関連する細胞還元剤又はシステムなどの細胞還元剤又はシステムのレベルの増加を含んでよい。適切には、還元型葉酸は、活性酸素種(ROS)又は活性窒素種(RNS)の作用を除去する又は阻害してもよい。適切には、したがって、還元型葉酸は、直接的に又は細胞還元剤又はシステムに対する効果を介して、標的分子に対するROS又はRNSの生物学的効果を減少する又は改変してもよい。適切には、還元型葉酸は、一酸化窒素合成酵素発現又は活性、適切には、内皮型一酸化窒素合成酵素発現又は活性を増やすように作用しうる。適切には、還元型葉酸は、活性酸素種を減らす、適切には、内皮細胞での活性酸素種を減らすように作用しうる。
【0120】
適切には、任意選択でBH4、その前駆体、又は機能的等価物と組み合わせた還元型葉酸は、対象において健康なBH4レベルを維持する又は回復することにより低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害を予防する又は処置する。
【0121】
適切には、任意選択でBH4、その前駆体、又は機能的等価物と組み合わせた還元型葉酸は、対象においてBH4のレベルを増加することにより、適切には、対象でのBH4のレベルを健康なBH4レベルまで増やすことにより、低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害を予防する又は処置する。
【0122】
適切には、健康なBH4レベルとは、参照健康対象でのBH4のレベルを意味する。
【0123】
適切には、任意選択でBH4、その前駆体、又は機能的等価物と組み合わせた還元型葉酸は、BH4の酸化を減少する又は妨げることにより、適切には、BH2へのBH4の酸化を減少する又は妨げることにより、対象でのBH4のレベルを増加する。
【0124】
適切には、したがって、任意選択でBH4、その前駆体、又は機能的等価物と組み合わせた還元型葉酸は、BH4の酸化を減少する又は妨げることにより低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害を予防する又は処置する。
【0125】
適切には、任意選択でBH4、その前駆体、又は機能的等価物と組み合わせた還元型葉酸は、対象においてBH4レベルを500%まで、適切には400%まで、適切には300%まで、適切には200%まで、適切には100%まで、50%、適切には45%、適切には40%、適切には35%、適切には30%、適切には25%増加することができる。
【0126】
適切には、任意選択でBH4、その前駆体、又は機能的等価物と組み合わせた還元型葉酸は、対象においてBH4の酸化状態を500%まで、適切には400%まで、適切には300%まで、適切には200%まで、適切には100%まで、適切には50%まで、適切には25%まで改善することができる。適切には、「対象でのBH4の酸化状態」とは、対象中のBH2又はビオプテリン若しくはプテリンの他の酸化型と比べたBH4のレベルを意味する。
【0127】
適切には、任意選択でBH4、その前駆体、又は機能的等価物と組み合わせた還元型葉酸は、BH4対BH2の比を14倍まで、適切には12倍まで、適切には10倍まで、適切に8倍まで、適切には6倍まで、適切には4倍まで、適切には2倍まで増やすことができる。適切には、任意選択でBH4、その前駆体、又は機能的等価物と組み合わせた還元型葉酸は、BH4対BH2の比を1.0~1.5まで増やすことができる。
【0128】
適切には、増加は対照と比べられる。適切な対照は、任意選択でBH4と組み合わせた還元型葉酸でのいかなる処置も受けたことがない同じ状態又は疾患を有する対象での適切な測定値、例えば、低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害を有し、任意選択でBH4と組み合わせた還元型葉酸でのいかなる処置も受けたことがない対象のBH4レベルである。
【0129】
唯一のAPI
本発明の一部の態様では、低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害は、還元型葉酸でのみ予防される又は処置されてもよい。本発明者らは、還元型葉酸を単独で提供すると、BH4それ自体又はその前駆体若しくは機能的等価物を提供しなくても低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害を処置する又は予防できることを発見した。
【0130】
適切には、還元型葉酸は唯一の有効活性成分(API)であってよい。適切には、還元型葉酸は単独で使用してもよい。適切には、還元型葉酸は他のいかなる有効活性成分と組み合わせて使用しなくてもよい。適切には、対象は、低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害の処置又は予防のために還元型葉酸のみを提供してもよい。適切には、対象は、低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害に関して還元型葉酸でのみ処置してもよい。適切には、低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害を処置する又は予防する工程に関して対象に提供する又は投与してよい他の有効活性成分はない。適切には、低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害に関して、対象を処置するために使用してよい他の有効活性成分はない。
【0131】
本明細書で使用される「有効活性成分」は、ヒト身体において薬理効果を与える任意の物質を意味することが意図されている。この用語は、賦形剤などのヒト身体において薬理効果のない不活性物質を含まない。そのような賦形剤は以下に定義されている。
【0132】
適切には、したがって、唯一の有効活性成分としての還元型葉酸の使用に言及している本発明の態様は、賦形剤の使用を含んでよい。適切には、賦形剤は、還元型葉酸と一緒に含まれてよい。適切には、そのような場合、還元型葉酸は組成物中に含まれ、組成物は賦形剤を含んでよい。適切には、したがって、本発明は、1つ又は複数の有効活性成分、及び1つ又は複数の賦形剤を含む組成物を用いての処置又は予防を含んでよく、有効活性成分は還元型葉酸からなる。適切には、組成物は医薬組成物でよい。
【0133】
本発明の第3の態様の一実施形態では、低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害の予防又は処置で使用するための、1つ又は複数の有効活性成分、及び1つ又は複数の賦形剤を含む組成物であって、有効活性成分は還元型葉酸からなる、組成物が提供される。
【0134】
併用療法
本発明の一部の態様では、還元型葉酸は他の有効活性成分と組み合わせて使用してもよい。例えば、還元型葉酸は、以下に記載されるBH4、その前駆体、又は機能的等価物と組み合わせて使用してよいが、還元型葉酸は、他の有効活性成分と組み合わせてもよい。
【0135】
適切には、その他の有効活性成分は、低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害に対して有益な効果を有する他のいかなる医薬成分でも含みうる。適切には、他の有効活性成分は、さらなる還元型葉酸及び/又はさらなるBH4前駆体又はその機能的等価物を含んでよい。適切な他の有効活性成分は、ビタミンC及び/若しくはビタミンB12などのビタミン;並びに/又はL-DOPA若しくはカルビドパなどの神経伝達物質前駆体;並びに/又は5-ヒドロキシトリプトファン;並びに/又はアルギニン及び/若しくはシトルリンを含んでもよい。
【0136】
しかし、適切には、その他の有効活性成分はアスピリン、又はハーブ抽出物を含まない。適切には、還元型葉酸は、アスピリン、又はハーブ抽出物と組み合わせた投与を目的としない。
【0137】
適切には、還元型葉酸は、サリチル酸塩と組み合わせた投与を目的としないことがある。適切には、したがって、還元型葉酸は、サリチル酸塩と組み合わせないことがある。
【0138】
本明細書で使用される「サリチル酸塩」とは、サリチル酸に由来する任意の薬物を意味する。適切には、そのような薬物はNSAIDである。サリチル酸塩の例は、アスピリン、ジフルニサル、サリチル酸、及びサルサラートを含む。
【0139】
適切には、還元型葉酸は、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)と組み合わせた投与を目的としないことがある。適切には、したがって、還元型葉酸は、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)と組み合わせないことがある。
【0140】
本明細書で使用される「非ステロイド系抗炎症薬」(NSAID)とは、炎症及び/又は疼痛を軽減するが、ステロイドではない任意の薬物を意味する。適切には、NSAIDは、シクロオキシゲナーゼ酵素、適切には、COX1及び/又はCOX2の活性を阻害する任意の薬物を含んでよい。NSAIDの例は、アスピリン、ジフルニサル、サリチル酸、サルサラート、イブプロフェン、デクスイブプロフェン、ナプロキセン、フェノプロフェン、ケトプロフェン、デクスケトプロフェン、フルルビプロフェン、オキサプロジン、ロキソプロフェン、インドメタシン、トルメチン、スリンダク、エトドラク、ケトロラク、ジクロフェナク、アセクロフェナク、ブロムフェナク、ナブメトン、ピロキシカム、メロキシカム、テノキシカム、ドロキシカム、ロルノキシカム、イソキシカム、フェニルブタゾン、メフェナム酸、メクロフェナム酸、フルフェナム酸、トルフェナム酸、セレコキシブ、ロフェコキシブ、バルデコキシブ、パレコキシブ、ルミラコキシブ、エトリコキシブ、フィロコキシブ、ニメスリド、クロニキシン、及びリコフェリンを含む。
【0141】
本明細書で使用される「ハーブ抽出物」とは、溶剤を使用して、植物又は植物の任意の部分の成分を選び出す又は取り除いた後に得られる任意の化合物又はその混合物を意味する。ハーブ抽出物は、乾燥、液体又は半流動形態でもよい。ハーブ抽出物は、任意の漢方薬を含む。適切には、還元型葉酸は、漢方抽出物又は漢方薬と組み合わせての投与を目的としないことがある。ハーブ抽出物の例は、クインス抽出物、エウリュアレ抽出物、カワラナデシコ抽出物、スイカズラ抽出物、ドクダミ抽出物、シトロン抽出物、ハス抽出物、小ガランガル抽出物、キク抽出物、ミント抽出物、エンジュ抽出物、ツルアズキ抽出物、コムギ抽出物、及びノアザミ抽出物を含む。
【0142】
本発明の一部の態様では、低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害は、BH4、その前駆体、又は機能的等価物と組み合わせた還元型葉酸で予防する又は処置しうる。還元型葉酸と一緒にBH4、その前駆体、又は機能的等価物を添加すると、BH4のバイオアベイラビリティーを直接増やすのを助けることがある。適切には、これは、低BH4レベルを有する、又はBH4が欠如している対象を処置するのに特に有用であることがある。
【0143】
適切には、還元型葉酸及びBH4、その前駆体、又は機能的等価物は、処置で使用するためには唯一の有効活性成分でありうる。適切には、還元型葉酸及びBH4、その前駆体、又は機能的等価物は、他のいかなる有効活性成分と組み合わせずに使用しうる。適切には、対象に、低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害の処置又は予防のために還元型葉酸及びBH4、その前駆体、又は機能的等価物だけを提供してよい。適切には、低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害を処置する又は予防する工程に関して対象に他の有効活性成分を提供しない又は投与しなくてよい。適切には、低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害に関して対象を処置するのに他の有効活性成分を使用しなくてよい。
【0144】
適切には、したがって、唯一の有効活性成分として還元型葉酸及びBH4、その前駆体、又は機能的等価物の使用に言及する本発明の態様は、それでも賦形剤の使用を含んでよい。適切には、賦形剤は、還元型葉酸及びBH4、その前駆体、又は機能的等価物と一緒に含まれうる。適切には、そのような場合、還元型葉酸、BH4、その前駆体、又は機能的等価物は組成物中に含まれ、組成物は賦形剤を含んでよい。適切には、したがって、本発明は、1つ又は複数の有効活性成分、及び1つ又は複数の賦形剤を含む組成物を用いた処置又は予防を含んでよく、有効活性成分は還元型葉酸及びBH4、その前駆体、又は機能的等価物からなる。
【0145】
本発明の第3の態様の一実施形態では、低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害の予防又は処置で使用するために、1つ又は複数の有効活性成分、及び1つ又は複数の賦形剤を含む組成物であって、有効活性成分は還元型葉酸及びBH4、その前駆体、又は機能的等価物からなる、組成物が提供される。
【0146】
還元型葉酸とBH4、その前駆体、又は機能的等価物の組合せは、いかなる適切なやり方でも投与しうる。適切には、還元型葉酸とBH4、その前駆体、又は機能的等価物は、対象に同時に、又は逐次的にいかなる順番でも投与しうる。
【0147】
適切には、逐次投与は、第1の有効活性成分を投与する工程、続いて、適切には時間的間隔の後、第2の有効活性成分を投与する工程を含む。
【0148】
適切には、還元型葉酸とBH4、その前駆体、又は機能的等価物が逐次的に投与される場合、還元型葉酸が第1の有効活性成分であってよく、BH4、その前駆体、又は機能的等価物が第2の有効活性成分であってよい。代わりに、BH4、その前駆体、又は機能的等価物が第1の有効活性成分であってよく、還元型葉酸が第2の有効活性成分であってよい。
【0149】
適切には、逐次投与は、第1の有効活性成分と第2の有効活性成分を投与する間に時間の間隔を含んでよい。適切には、時間の間隔は、数秒、数分、数日、又は数週でもよい。適切には、時間の間隔は、例えば、30秒間、1分間、2分間、5分間、10分間、20分間、30分間、1時間、2時間、4時間、8時間、24時間、48時間、4日間、7日間、10日間、14日間でもよい。
【0150】
適切には、時間の間隔は、両APIが重なっている期間にその治療効果を発揮することができるように選択される。
【0151】
適切には、還元型葉酸及びBH4、その前駆体、又は機能的等価物は単一の組成物に一緒に処方してよい。代わりに、還元型葉酸及びBH4、その前駆体、又は機能的等価物は2つの別個の組成物に処方してよい。
【0152】
適切には、逐次投与では、還元型葉酸及びBH4、その前駆体、又は機能的等価物は2つの別個の組成物、適切には、第1の組成物と第2の組成物に処方される。適切には、第1の組成物は第1の有効活性成分を含み、第2の組成物は第2の有効活性成分を含む。
【0153】
適切には、同時投与では、還元型葉酸及びBH4、その前駆体、若しくは機能的等価物は単一の組成物に処方してよい、又は2つの別個の組成物に、適切には、一緒に投与される2つの別個の組成物に処方してよい。
【0154】
適切には、第1及び第2の組成物は異なる製剤を含んでよい。医薬組成物に適した製剤は本明細書に別の場所に記載されている。
【0155】
一実施形態では、還元型葉酸及びBH4、その前駆体、又は機能的等価物は単一組成物で同時に投与される。
【0156】
適切には、有効活性成分又は有効活性成分を含む組成物は、適切な投与経路を経て対象に投与される。適切な投与経路は以下に記載されている。適切には、第1及び第2の有効活性成分又は有効活性成分を含む第1及び第2の組成物は、異なる経路により投与してよい。
【0157】
例えば、第1の有効活性成分又はその組成物は静脈内に投与してもよく、第2の有効活性成分又はその組成物は経口的に投与してもよい。
【0158】
一実施形態では、還元型葉酸及びBH4、その前駆体、又は機能的等価物は、同じ投与経路により単一組成物で同時に投与される。一実施形態では、還元型葉酸及びBH4、その前駆体、又は機能的等価物は、経口投与により単一組成物で同時に投与される。
【0159】
医薬組成物
本発明の態様で使用される還元型葉酸、及び任意選択でBH4、又はその前駆体、若しくは機能的等価物は、対象への投与のために1つ又は複数の組成物に処方してよい。適切には、組成物は医薬組成物である。
【0160】
適切には、本発明に従って使用するための「組成物」又は「有効活性成分」への本明細書でのいかなる言及も、医薬組成物、適切には、本発明に従って使用するための有効活性成分を含む医薬組成物を指してもよい。
【0161】
適切には、医薬組成物は、1つ又は複数の有効活性成分(API)並びに1つ又は複数の賦形剤、希釈剤及び/又は担体を含む。適切には、本発明で使用するための医薬組成物は、還元型葉酸及び、任意選択で、BH4又はその前駆体、又は機能的等価物、並びに1つ又は複数の賦形剤、希釈剤及び/又は担体を含んでよい。
【0162】
本発明の第11の態様に従えば、還元型葉酸及びBH4、その前駆体、又は機能的等価物を含む医薬組成物が提供される。
【0163】
適切には、医薬組成物は、1つ又は複数の賦形剤、希釈剤及び/又は担体を更に含みうる。賦形剤は、例えば、濃度を調整する;安定性を増強する;微生物増殖を制限する;組成物の乾燥、流動、若しくは他の製造特徴を改善する;バイオアベイラビリティーを増強する;又はAPIの吸収を減速する若しくは迅速化するために添加してよい。
【0164】
適切には、本発明で使用するための医薬組成物は、還元型葉酸及び、任意選択で、BH4又はその前駆体、又は機能的等価物からなる1つ又は複数の有効活性成分、並びに1つ又は複数のさらなる賦形剤、希釈剤及び/又は担体を含んでよい。一実施形態では、本発明で使用するための医薬組成物は、唯一の有効活性成分並びに1つ又は複数の賦形剤、希釈剤及び/又は担体を含んでよく、唯一の有効活性成分は還元型葉酸である。
【0165】
適切には、上に記載されるように、還元型葉酸及びBH4又はその前駆体、又は機能的等価物という有効活性成分は、2つの異なる医薬組成物に含まれてもよい。適切には、第1の医薬組成物は第1の有効活性成分を含み、第2の医薬組成物は第2の有効活性成分を含む。適切には、第1の医薬組成物は還元型葉酸を含んでよく、第2の医薬組成物はBH4若しくはその前駆体、若しくは機能的等価物を含んでよく、又はその逆も同様である。適切には、第1の医薬組成物は還元型葉酸という唯一の有効活性成分を含んでよく、第2の医薬組成物はBH4若しくはその前駆体、若しくは機能的等価物という唯一の有効活性成分を含んでよく、又はその逆も同様である。
【0166】
適切には、第1及び第2の医薬組成物は異なる製剤を含んでよい。適切には、製剤は、有効活性成分の有効性を最大にするために、そこに含まれる有効活性成分に合わせて調整される。
【0167】
適切には、最適医薬製剤は、投与経路及び所望の投薬量に応じて当業者が決定することができる。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences、第18版(1990年、Mack Publ. Co, Easton Pa. 18042) pp 1435 1712を参照されたい。
【0168】
適切な賦形剤、担体又は希釈剤は、例えば、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、香料、被覆材、保存剤、着色剤、増粘剤、抗菌剤、抗酸化剤、若しくは潤滑剤、又はその組合せを含んでよい。
【0169】
結合剤の非限定的例は、トラガントガム、アカシア、デンプン、ゼラチン、並びにジカルボン酸、アルキレングリコール、ポリアルキレングリコール及び/又は脂肪族ヒドロキシルカルボン酸のホモポリエステル又はコポリエステル;ジカルボン酸、アルキレンジアミン、及び/又は脂肪族アミノカルボン酸のホモポリアミド又はコポリアミド;対応するポリエステル-ポリアミドコポリマー、ポリ無水物、ポリオルトエステル、ポリホスファゼン及びポリカーボネートなどの生分解性ポリマーを含む。生分解性ポリマーは、直鎖状、分岐状又は架橋していてもよい。特定の例は、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、及びポリ-d,l-ラクチド/グリコライドである。ポリマーの他の例は、ポリオキサアルキレン(ポリオキサエチレン、ポリオキサプロピレン)及びその混合ポリマー、ポリアクリルアミド及びヒドロキシルアルキル化ポリアクリルアミド、ポリマレイン酸及びそのエステル又はアミド、ポリアクリル酸及びそのエステル又はアミド、ポリビニルアルコール及びそのエステル又はエーテル、ポリビニルイミダゾール、ポリビニルピロリドン、及びキトサンのような天然ポリマーなどの水溶性ポリマーである。例示的崩壊剤は、ポリビニルピロリドン(PVP、例えば、POVIDONEの名で売られている)、架橋型ポビドン(CPVP、例えば、CROSPOVIDONEの名で売られている)、架橋型カルボキシメチルセルロースナトリウム(NaCMC、例えば、AC-DI-SOLの名で売られている)、他の変性セルロース、及び加工デンプンを含む。
【0170】
例示的抗酸化剤は、アスコルビン酸、アスコルビン酸パルミテート及びアスコルビン酸ステアレートなどのアスコルビン酸の脂肪酸エステル、並びにアスコルビン酸ナトリウム、カルシウム、又はカリウムなどのアスコルビン酸の塩を含む。ベータカロチン、アルファ-トコフェロールなどの非酸性抗酸化剤も使用しうる。
【0171】
潤滑剤の非限定的例は、天然又は合成オイル、脂肪、ワックス、又はステアリン酸マグネシウムなどの脂肪酸塩を含む。
【0172】
例示的界面活性剤は、アニオン性、アニオン性、両性又は中性が可能である。界面活性剤の非限定的例は、レシチン、リン脂質、オクチル硫酸塩、デシル硫酸塩、ドデシル硫酸塩、テトラデシル硫酸塩、ヘキサデシル硫酸塩及びオクタデシル硫酸塩、オレイン酸ナトリウム又はカプリン酸ナトリウム、1-アシルアミノエタン-2-スルホン酸、例えば、1-オクタノイルアミノエタン-2-スルホン酸、1-デカノイルアミノエタン-2-スルホン酸、1-ドデカノイルアミノエタン-2-スルホン酸、1-テトラデカノイルアミノエタン-2-スルホン酸、1-ヘキサデカノイルアミノエタン-2-スルホン酸、及び1-オクタデカノイルアミノエタン-2-スルホン酸、並びに、タウロコール酸及びタウロデオキシコール酸、胆汁酸及びその塩、例えば、コール酸、デオキシコール酸及びグリココール酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム又はラウリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、セシル硫酸ナトリウム、硫酸化ヒマシ油及びジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、コカミドプロピルベタイン及びラウリルベタイン、脂肪アルコール、コレステロール、モノ若しくはジステアリン酸グリセロール、モノ又はジオレイン酸グリセロール及びモノ又はジパルミチン酸グリセロール、並びにポリオキシエチレンステアレートを含む。
【0173】
保存剤の非限定的例は、メチル又はプロピルパラベン、ソルビン酸、クロロブタノール、フェノール及びチメロサールを含む。
【0174】
一実施形態では、還元型葉酸及びBH4、その前駆体、又は機能的等価物を含む医薬組成物は、以下の賦形剤、希釈剤及び/又は担体:無水リン酸水素カルシウム、クロスポビドン、及びステアリルフマレートを含む。
【0175】
適切には、医薬組成物は、固体又は液体として処方してよい。適切には、医薬組成物は、ピル、カプセル、錠剤又は粉末から選択される固体として処方される。一実施形態では、医薬組成物は錠剤として処方される。適切には、固体製剤は水溶性である。
【0176】
適切には、医薬組成物は、いかなる適切な経路によっても対象に投与しうる。適切な投与経路は、経口、非経口、吸入により又は局所的でもよい。
【0177】
適切には、本明細書で使用される用語非経口は、例えば、静脈内、動脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、直腸、又は膣内投与を含む。
【0178】
一実施形態では、本発明の組成物は経口的に投与される。一実施形態では、本発明の組成物は、経口的に投与される錠剤の形態で含まれる。
【0179】
適切には、本発明で使用するための有効活性成分又は本発明で使用するための有効活性成分を含む組成物は、薬学的有効量で対象に投与しうる。適切には、薬学的有効量は、治療効果を達成するのに十分な有効活性成分又はそれぞれの有効活性成分の量である。適切には、薬学的有効量は、低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害を寛解するのに十分な有効活性成分又はそれぞれの有効活性成分の量でよい。適切には、薬学的有効量は、対象においてBH4レベルの増加を達成するのに効果的な有効活性成分又はそれぞれの有効活性成分の量でよい。
【0180】
適切には、本発明で使用するための有効活性成分の単回用量は薬学的有効量を含む。
【0181】
本発明で使用するための有効活性成分の適切な用量は、当業者が決定することができる。
【0182】
しかし、BH4、その前駆体、又は機能的等価物についての適切な量は、例えば、1日当たり1~約20mg/体重1kg、適切には1日当たり10mg/kg~約20mg/ kgでよい。適切には、1日の用量は、1日当たり1mg/kg、2g/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、7mg/kg、8mg/kg、9mg/kg、10mg/kg、11mg/kg、12mg/kg、13mg/kg、14mg/kg、15mg/kg、16g/kg、17mg/kg、18mg/kg、19mg/kg、20mg/kgでよい。適切には、そのような用量は、BH4、その前駆体、又は機能的等価物を含む医薬組成物で使用しうる。適切には、そのような用量は、BH4、その前駆体、又は機能的等価物を含み、還元型葉酸などの1つ又は複数の追加の活性成分を更に含む医薬組成物で使用しうる。
【0183】
還元型葉酸の適切な用量は、1日当たり1mg~50mg、適切には2mg~30mg、適切には、3mg~25mg、適切には4mg~20mg、適切には5mg~15mgでよい。適切には、そのような用量は、還元型葉酸を含む医薬組成物で使用しうる。適切には、そのような用量は、還元型葉酸を含み、BH4、その前駆体、又は機能的等価物などの1つ又は複数の追加の活性成分を更に含む医薬組成物で使用しうる。
【0184】
本発明の有効活性成分又は本発明に従った組成物の適切な用量は、レシピエントの性別、年齢、健康状態、身長、食事、及び体重、任意の併用療法、並びに望まれる効果の性質に依存する。最も好ましい投薬量は、不要な実験をすることなく、当業者により理解され決定可能であるように、個々の対象に合わせて調整することができる。これは、典型的には標準用量の調整、例えば、患者の体重が少ない場合は、用量の低減を含む。
【0185】
適切には、本発明の有効活性成分又は本発明の有効活性成分を含む組成物は、複数用量で又は単回用量で投与してよい。適切には、複数用量は適切な間隔で投与してよい。適切には、投与計画は、最適な望ましい応答(例えば、治療又は予防応答)を与えるように調整してもよい。
【0186】
対象
本発明は、対象において低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害の予防又は処置での使用を目的とする。
【0187】
適切には、対象は哺乳動物である。適切には、対象はヒトである。適切には、対象は成人でも小児でもよい。適切には、対象は男性でも女性でもよい。障害が妊娠関連障害である一部の実施形態では、対象は女性である。そのような実施形態では、対象は妊娠女性である。
【0188】
適切には、本発明の態様は、低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害の予防又は処置を必要とする対象において、その予防又は処置を目的としてよい。
【0189】
それを必要とする対象は、低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害を有すると診断されている対象、又は低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害を有すると疑われている対象でもよい。適切な障害は本明細書の他の場所で定義されている。
【0190】
低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害を有すると診断されている対象は、診断検査を受けていてもよい。適切には、対象は、低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害の1つ又は複数のマーカー、例えば、更に下に記載されている減少したBH4レベルについて検査を受けていてもよい。適切には、対象は、本発明の第10の態様に従って検査を受けていてもよい。代わりに、又は更に、対象は、本明細書の他の場所に記載されているプテリン生合成経路中の1つ若しくは複数の酵素、又は本明細書の他の場所に記載されている1つ若しくは複数のビオプテリン依存性酵素の減少した活性について検査を受けていてもよい。
【0191】
一実施形態では、対象は、妊娠高血圧腎症を有すると診断されている。適切には、対象は、高血圧、血小板減少症、及び/又はタンパク尿について検査することにより妊娠高血圧腎症を有すると診断されていてもよい。
【0192】
適切には、障害を有すると診断されている、又は障害を有することが知られている対象は、本明細書では「患者」として知られてよい。
【0193】
低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害を有すると疑われている対象は、低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害の1つ又は複数の症状を示しうる。症状は、頭痛、一時的な低い筋緊張、知的障害、気分変動、落ち込んだ気分、自殺念慮、精神病、感情の爆発、不眠症、幻覚、視力喪失、妄想、記憶喪失、錯乱、言語障害、硬直を含む運動障害、ジストニア又は振戦、嚥下困難、呑酸、吐気、嘔吐、疼痛、体重増加、浮腫、発作、行動障害、発達に関する進行性障害、体温管理不能、活動過剰、アミノ酸レベルの障害を含む代謝異常、循環障害、小頭症、低出生体重、高血圧、血小板減少、肝機能障害、腎機能障害、腫れ、皮下出血、息切れ、タンパク尿を含みうる。一実施形態では、対象はこれらの症状のうちの1つ又は複数を有する。
【0194】
低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害を有すると疑われている対象は、低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害の1つ又は複数のマーカーを有しうる。低BH4バイオアベイラビリティーに関連する適切なマーカーは:
(i)低レベルのBH4;
(ii)BH4のBH2に対する低い比;
(iii)BH4の全ビオプテリンに対する低い比;
(iv)低レベルの還元型葉酸:
(v)酸化された葉酸と比べて低いレベルの還元型葉酸;
(vi)減少した前腕血流応答;
(vii)減少した血流依存性血管拡張;
(viii)増加した循環sICAM、P-セレクチン、フォン・ヴィルブランド因子、又はミクロアルブミン尿;
(ix)低レベルの神経伝達物質(例えば、セロトニン、ドーパミン、又はその代謝物);
(x)増加したレベルのフェニルアラニン又は関連する代謝物;及び/又は
(xi)sFlt-1のPIGFに対する高い比
(xii)例えば、ホモシステインメチルトランスフェラーゼの欠損若しくはビタミンB12の欠乏に起因する葉酸代謝障害
(xiii)高い血漿ホモシステインレベル(任意選択で、ビタミンB12又は葉酸欠乏に起因する)
(xiv)高いメチルマロン酸レベル(任意選択で、ビタミンB12欠乏に起因する)
を含む。
【0195】
適切には、「低い」、「高い」、「増加した」、又「減少した」などの相対語は、参照対象で測定された場合、同じマーカーに対して相対的である。
【0196】
一実施形態では、対象はこれらのマーカーのうちの1つ又は複数を有する。一実施形態では、対象は上記症状のうちの1つ若しくは複数及び/又はマーカーのうちの1つ若しくは複数を有する。
【0197】
一実施形態では、対象は、頭痛、視覚障害、呑酸、肋骨の下の疼痛、吐気又は嘔吐、高血圧、血小板減少、肝機能障害、腎機能障害、腫れ、皮下出血、息切れ、胸やけ、肋骨の下の疼痛、過度の体重増加、浮腫の突然の増加、及びタンパク尿から選択される妊娠高血圧腎症の1つ又は複数の症状を示すことがある。
【0198】
適切には、高血圧は、少なくとも2回の別々の機会での≧140mmHg収縮期又は≧90mmHg弛緩期の血圧として定義しうる。
【0199】
適切には、血小板減少は、血小板数<100,000/血液1マイクロリットルとして定義しうる。
【0200】
適切には、タンパク尿は、24時間尿試料中≧0.3グラム(300mg)若しくはそれよりも多いタンパク質、又はSPOT尿タンパク質対クレアチニン比≧0.3、又は尿計量棒読み1+又はそれよりも大きいとして定義しうる。
【0201】
一実施形態では、妊娠高血圧腎症を有すると疑われる対象は、高いsFlt-1/PIGF比を有しうる。適切には、高いsFlt-1/PIGF比は、38よりも高いと定義してよい。適切には、妊娠初期(34週間まででよい)に85よりも高い、又は妊娠後期(34週間後でよい)の110よりも高いsFlt-1/PIGF比は、妊娠高血圧腎症を有する高リスクを示す。
【0202】
一実施形態では、対象は、高血圧、タンパク尿及び/又は血小板減少を有する妊娠女性である。一実施形態では、対象は妊娠高血圧腎症を有すると疑われている。
【0203】
本発明の種々の態様及び実施形態では、対象は参照対象と比較される。適切には、参照対象は健康な対象、適切には、低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害を持たない対象である。適切には、参照対象は対象と同等である。適切には、参照対象は、性別、年齢、体重、及び民族性の点で対象と同等であるべきである。
【0204】
投与計画
適切には、本発明の有効活性成分又は本発明の有効活性成分を含む組成物は、定義された投与計画に従って投与してよい。
【0205】
適切には、本発明の有効活性成分又はその組成物は、例えば、1日複数回、毎日、2日毎に、4日毎に、週1回、10日毎に1回、又は2週間毎に1回投与してよい。一実施形態では、本発明の有効活性成分又は本発明の有効活性成分を含む組成物は、毎日1回又は2回投与される。
【0206】
適切には、還元型葉酸又は還元型葉酸を含む医薬組成物は、1日につき1回又は2回投与される。適切には、BH4、その前駆体、若しくは機能的等価物、又はBH4、その前駆体、若しくは機能的等価物を含む医薬組成物は、1日につき1回又は2回投与される。
【0207】
本発明の有効活性成分又は本発明の有効活性成分を含む組成物は、限定された治療可能時間域中に投与しうる。
【0208】
適切には、治療可能時間域は、低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害の予防又は処置に役立つように選択される。適切には、治療可能時間域は、プレ障害、障害中、又はポスト障害でもよい。適切には、したがって、本発明の有効活性成分又は本発明の有効活性成分を含む組成物は、低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害に先立って、低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害中に、又は低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害後に投与してもよい。適切には、治療可能時間域は、(計画)妊娠前、又は関連する障害の初期、中期若しくは後期段階でもよい。適切には、したがって、本発明の有効活性成分又は本発明の有効活性成分を含む組成物は、(計画)妊娠前、又は低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害の初期、中期若しくは後期段階に投与してもよい。
【0209】
適切には、低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害が妊娠関連障害である場合、本発明の有効活性成分又は本発明の有効活性成分を含む組成物は、妊娠前、妊娠中、又は妊娠後に投与してもよい。適切には、妊娠中、本発明の有効活性成分又は本発明の有効活性成分を含む組成物は、妊娠の最初(0~13週間)の、第2(14~26週間)の、又は第3(27~40週間)の3カ月間中に投与してもよい。
【0210】
適切には、妊娠関連障害の予防では、本発明の有効活性成分又は本発明の有効活性成分を含む組成物は、妊娠前又は妊娠中に投与される。
【0211】
適切には、妊娠関連障害の処置では、本発明の有効活性成分又は本発明の有効活性成分を含む組成物は、妊娠中又は妊娠後に投与される。
【0212】
適切には、一部の場合、本発明の有効活性成分又は本発明の有効活性成分を含む組成物は、妊娠関連障害の回復を加速する及び/又はこの長期の合併症を予防するために妊娠後に投与される。適切には、そのような障害は分娩後障害と名付けてよい。
【0213】
一実施形態では、妊娠高血圧腎症の処置では、適切には、本発明の有効活性成分又は本発明の有効活性成分を含む組成物は、状態が生じたときに投与される。典型的には、これは、妊娠後期に、適切には、妊娠の20週目後、適切には、妊娠の22週目後、適切には、妊娠の24週目後、適切には、第3の3カ月間中でもよい。しかし、妊娠高血圧腎症は産後に発症することもある。適切には、本発明の有効活性成分又は本発明の有効活性成分を含む組成物は、産後に、適切には産後6週間までに投与してよい。
【0214】
処置から利益を得る可能性のある対象を選択する方法
本発明の一部の態様では、対象は、低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害を有する可能性のある対象を選択できるように、低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害の1つ又は複数のマーカーについて検査を受けていてよい。次に、これらの対象は、還元型葉酸及び任意選択でBH4又はその前駆体又は機能的等価物を用いて処置することができる。更に又は代わりに、対象は、低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害を有する可能性のある対象を選択できるように、低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害の1つ又は複数の症状について検査を受けてよい。次に、これらの対象は、還元型葉酸及び任意選択でBH4又はその前駆体若しくは機能的等価物を用いて処置することができる。
【0215】
適切には、対象は第10の態様の方法により検査してよい。
【0216】
適切には、1つ又は複数のマーカー及び/又は症状を有すると判定される対象は、BH4欠損と関連する障害を有すると診断されうる。適切には、したがって、本発明は、対象を低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害を有すると診断し、適切には、本明細書で言及される検査の工程を含む方法を更に提供しうる。更に、又は代わりに、1つ又は複数のマーカー及び/又は症状を有すると判定される対象は、適切には、本発明に従って、還元型葉酸及び任意選択でBH4又はその前駆体又は機能的等価物を用いての処置のために選択してよい。適切には、したがって、本発明は、適切には、本明細書に記載される検査方法によって、低BH4バイオアベイラビリティーを有すると診断されている又は低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害のマーカーを有する若しくは低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害の症状を示していることで選択された対象を処置する方法を更に提供しうる。
【0217】
適切には、低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害の1つ又は複数の症状は上に定義されている。
【0218】
適切には、低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害の1つ又は複数のマーカーは、以下の:
(i)低レベルのBH4;
(ii)BH4のBH2に対する低い比;
(iii)BH4の全ビオプテリンに対する低い比;
(iv)低レベルの還元型葉酸:
(v)酸化された葉酸と比べて低いレベルの還元型葉酸;
(vi)減少した前腕血流応答;
(vii)減少した血流依存性血管拡張;
(viii)増加した循環sICAM、p-セレクチン、フォン・ヴィルブランド因子、又はミクロアルブミン尿;
(ix)低レベルの神経伝達物質(例えば、セロトニン、ドーパミン、又はその代謝物);及び/又は
(x)増加したレベルのフェニルアラニン又は関連する代謝物;
(xi)sFlt-1のPIGFに対する高い比
(xii)例えば、ホモシステインメチルトランスフェラーゼの欠損若しくはビタミンB12の欠乏に起因する葉酸代謝障害
(xiii)高い血漿ホモシステインレベル(任意選択で、ビタミンB12又は葉酸欠乏に起因する)
(xiv)高いメチルマロン酸レベル(任意選択で、ビタミンB12欠乏に起因する)
のうちのいずれかを含みうる。
【0219】
適切には、「低い」、「減少した」、「高い」又は「増加した」は、健康な対象で測定した参照レベルと比べた場合、同じマーカーに対して比べることを意味する。
【0220】
適切には、対象を検査する工程は、(a)対象における上記マーカーのいずれかの任意の組合せでのレベルを決定する工程、及び(b)健康な対象由来の同じマーカーの参照レベルと比べる工程を含んでよい。適切には、対象を検査する工程は、(a)対象が何か症状を有するかどうかを判定する工程を含みうる。適切には、これは、任意のマーカーのレベルを決定する工程に追加する又はこの工程の代案でもよい。
【0221】
一実施形態では、対象を検査する工程は、(a)対象のBH4レベルを決定する工程、及び(b)決定されたBH4レベルを健康な対象由来の参照BH4レベルと比べる工程を含む。
【0222】
適切には、対象においてマーカーのいずれかのレベルを決定する工程は、(i)対象から適切な試料を得る、及び(ii)試料中の選択されたマーカーのうちの1つ又は複数のレベルを測定する工程を含んでよい。
【0223】
一実施形態では、対象のBH4レベルを決定する工程は、(i)対象から適切な試料を得る工程、及び(ii)試料中のBH4のレベルを測定する工程を含んでよい。したがって、工程(a)は適切には、対象由来の試料中のBH4レベルを決定する工程を含んでよい。
【0224】
適切な試料は、組織試料、血液試料、血清試料、脳脊髄液試料でよい。適切には、試料は血液である。適切には、試料は、内皮などの組織、心臓組織、肝臓組織、脳組織由来である。
【0225】
一実施形態では、BH4レベルは内皮細胞で測定可能である。
【0226】
一実施形態では、BH4レベルは、対象内の特定の細胞又は組織に由来する血液内に見出される微小胞で測定可能である。一実施形態では、BH4レベルは、血液内に見出される胎盤微小胞で測定可能である。適切には、そのような実施形態では、BH4レベルは、内皮細胞、心細胞、免疫細胞、肝細胞、神経細胞、又はがん細胞由来の微小胞で測定可能である。
【0227】
一実施形態では、BH4レベルは、妊娠している対象由来の微小胞で、適切には、胎盤微小胞で測定可能である。適切には、そのような実施形態では、対象は、BH4バイオアベイラビリティーの妊娠関連減少を有すると疑われる。適切には、そのような実施形態では、対象は、妊娠高血圧腎症を有すると疑われる。
【0228】
一実施形態では、BH4レベルは、組織で、適切には組織の細胞で測定可能である。適切には、そのような実施形態では、対象は、BH4バイオアベイラビリティーの非妊娠関連減少を有すると疑われる。適切には、BH4レベルが心臓組織で測定される場合、対象は、低BH4バイオアベイラビリティーに関連する心臓疾患を有すると疑われる。適切には、BH4レベルが脳組織で測定される場合、対象は、低BH4バイオアベイラビリティーに関連する神経疾患を有すると疑われる。適切には、BH4レベルが肝臓組織で測定される場合、対象は、低BH4バイオアベイラビリティーに関連する肝臓疾患を有すると疑われる。
【0229】
適切には、方法は、対象由来の試料を処理する工程を更に含んでよい。適切には、対象中の1つ又は複数のマーカーのレベルを決定する工程は、したがって、(i)対象から適切な試料を得る工程;(ii)試料を処理する工程;及び(iii)試料中の1つ又は複数のマーカーのレベルを測定する工程を含んでよい。
【0230】
適切には、一実施形態では、試料を処理する工程は、血液試料から胎盤の又は他の微小胞を単離する工程を含んでよい。適切には、そのような実施形態では、対象のBH4レベルを決定する工程は、したがって、(i)対象から血液試料を得る工程;(ii)血液試料から胎盤微小胞を単離する工程;及び(iii)胎盤の又は他の微小胞中のBH4のレベルを測定する工程を含んでよい。
【0231】
適切には、胎盤の又は他の微小胞は、遠心分離又は濾過などの任意の適切な分離手段により血液から単離してよい。
【0232】
適切には、試料中の化学マーカーのレベルを測定する工程は、公知の技法に従って試料上で免疫アッセイ、HPLC又は質量分析を実施する工程を含む。例えば、BH4のレベル、BH4のBH2に対する比、BH4の全ビオプテリンに対する比、還元型葉酸のレベル、酸化された葉酸と比べた還元型葉酸のレベル、sICAM、P-セレクチン、フォン・ヴィルブランド因子、若しくは微量アルブミン尿のレベル、神経伝達物質レベル、sFlt-1/PlGFの比、フェニルアラニンのレベル、メチルテトラヒドロ葉酸還元酵素の多形性(C677T)のレベル、ビタミンB12のレベル、血漿ホモシステインのレベル、及び/又はメチルマロン酸のレベルを測定する工程は、免疫アッセイ、HPLC又は質量分析を使用して実施しうる。適切には、前記マーカーの大半は、組織、血液又は血清試料で測定しうる。
【0233】
適切には、血液流応答又は血管拡張のレベルを測定する工程は、超音波により実施しうる。
【0234】
適切には、健康な対象と比べて減少した又は低BH4レベルは、健康な対象のレベルと比べた場合、少なくとも20%のBH4のレベルの減少を含む。適切には、健康な対象と比べて減少したBH4レベルは、健康な対象のレベルと比べた場合、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%のBH4のレベルの減少を含む。
【0235】
一実施形態では、BH4レベルは内皮細胞で測定され、したがって、適切には、健康な対象と比べた低BH4レベルは、健康な対象でのBH4の内皮細胞レベルと比べた場合、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%の内皮細胞BH4のレベルの減少を含む。
【0236】
適切には、高いsFlt-1/PlGF比は、38よりも高い比を含む。適切には、高いsFlt-1/PlGF比は、妊娠初期の対象での85よりも高い比を含みうる。適切には、高いsFlt-1/PlGF比は、妊娠後期の対象での110よりも高い比を含みうる。
【0237】
本発明のさらなる態様では、還元型葉酸及び任意選択でBH4、その前駆体又は機能的等価物を用いた処置から利益を得る可能性のある対象を選択する方法であって、対象の還元型葉酸レベルを決定する工程、還元型葉酸レベルを健康な対象の参照還元型葉酸レベルと比較する工程、及び対象が参照レベルと比べて低い還元型葉酸レベルを示す場合は処置にむけて対象を選択する工程を含む方法を提供しうる。
【0238】
一実施形態では、方法は、選択された対象に処置を提供する工程を更に含む。一実施形態では、処置は、還元型葉酸及び任意選択でBH4、その前駆体又は機能的等価物を含む。
【0239】
適切には、上記方法工程又は特徴のいずれでも、対象の1つ又は複数のマーカーのレベルを決定し比較するために適切に修正したうえで、上に収載されるマーカーのうちの1つ又は複数のレベルを決定する工程を含む方法に適用しうる。一例では、「BH4レベル」は「還元型葉酸レベル」で置き換えられ、「低BH4バイオアベイラビリティー」は「低還元型葉酸バイオアベイラビリティー」又は「還元型葉酸欠損」で置き換えられる。
【0240】
適切には、上記方法工程又は特徴のいずれでも、上に収載されるマーカーのうちの1つ又は複数のレベルを決定する工程及び/又は対象が上に収載される症状のいずれかを有するかどうかを判定する工程を含む方法に適用しうる。
【0241】
更に、又は代わりに、低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害の1つ又は複数のマーカーについて対象を検査する工程は、BH4の合成に関与している1つ若しくは複数の酵素の損なわれた活性、又は1つ若しくは複数のビオプテリン依存性酵素の損なわれた活性について対象を検査する工程を含んでよい。
【0242】
本発明のさらなる態様によれば、還元型葉酸及び任意選択でBH4、その前駆体又は機能的等価物を用いた処置から利益を得る可能性のある対象を選択する方法であって、対象のプテリン生合成経路中の1つ又は複数の酵素の活性を決定する工程、酵素又はそれぞれの酵素の活性を健康な対象の1つ又は複数の参照酵素の活性と比較する工程、及び患者が参照酵素と比べて酵素のうちの1つ又は複数の損なわれた活性を示す場合、処置にむけて対象を選択する工程を含む方法が提供される。
【0243】
適切には、プテリン生合成経路は、BH4生合成経路であってよい。
【0244】
適切には、それぞれの参照酵素は、検査を受ける対象由来であるが健康な対象中に存在する酵素と同じ酵素である。
【0245】
適切には、方法は、対象のBH4レベルを決定する工程及びBH4レベルを健康な対象の参照BH4レベルと比較する工程を更に含んでよい。適切には、方法は、対象が健康な対象の参照酵素と比べてプテリン生合成経路中の酵素のうちの1つ又は複数の損なわれた活性及び/又は健康な対象での参照レベルと比べて減少したBH4レベルを示す場合には、処置のために対象を選択する工程を更に含んでよい。適切には、酵素のうちの1つ又は複数の損なわれた活性は、適切には酵素活性アッセイ中の、酵素の生成物の減少したレベル、又は酵素による減少した基質消化により検出される。適切には、したがって、方法は、対象におけるプテリン生合成経路での1つ又は複数の酵素の基質消化又は生成物の産生を判定する工程を含んでよい。適切には、したがって、方法は、酵素活性アッセイを使用して、対象においてプテリン生合成経路での1つ又は複数の酵素の生成物の産生を判定する工程を含んでよい。
【0246】
BH4生合成経路での1つ又は複数の酵素は本明細書の他の場所で定義されている。適切には、方法は、GTPシクロヒドロラーゼI(GTPCH)、6-ピルボイル-テトラヒドロプテリン合成酵素(PTPS)、セピアプテリン還元酵素(SP)、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)、ジヒドロプテリジン還元酵素(DHPR)、プテリン-4a-カルビノールアミン脱水酵素(PCD)、及び内皮NOS(eNOS)から選択される1つ又は複数の酵素の活性を決定する工程を含んでよい。
【0247】
酵素の活性を決定するための方法は当技術分野では周知であり、種々のアッセイを含みうる。適切には、そのようなアッセイは、検査する酵素を基質と一緒に一定期間インキュベートして、基質の生成物への転換を起こさせる工程を含み、次に基質の消化又は生成物の産生を測定すればよい。生成物のレベルは、例えば、HPLC又は質量分析を使用して測定しうる。
【0248】
適切には、GTPCHについての酵素活性アッセイは、蛍光HPLCによるネオプテリンの定量化を可能にする脱リン酸化工程を用いての、GTPからのジヒドロネオプテリン三リン酸の産生の測定を含んでよい。適切には、DHFRについての酵素活性アッセイは、電気化学検出を備えたHPLCにより、ジヒドロ葉酸からのテトラヒドロ葉酸の産生の定量化を含んでよい。
【0249】
適切には、本発明では、酵素生成物の産生が測定される。適切には、測定されている生成物はプテリンである。適切には、プテリン生合成経路での1つ又は複数の酵素の活性を決定する工程は、したがって、酵素活性アッセイでの酵素又はそれぞれの酵素により生成されるプテリン生成物のレベルを測定する工程を含む。適切には、プテリンは、検査されている酵素により生成される関連プテリンである。適切には、参照酵素と比べて、検査されている酵素由来の予想される生成物の減少したレベルは、検査されている酵素が損なわれていることを示す。適切には、参照酵素と比べて、検査されている酵素由来のプテリン生成物の減少したレベルは、検査されている酵素が損なわれていることを示す。
【0250】
一実施形態では、方法は、対象のGTPシクロヒドロラーゼI(GTPCH)活性を決定する工程、適切には、GTPシクロヒドロラーゼI(GTPCH)活性を健康な対象の参照GTPシクロヒドロラーゼI(GTPCH)活性と比較する工程を含んでよい。一実施形態では、方法は、対象が損なわれたGTPシクロヒドロラーゼI(GTPCH)活性を示す場合は、処置のために対象を選択する工程を更に含む。適切には、損なわれたGTPシクロヒドロラーゼI(GTPCH)活性は、生成物7,8-ジヒドロネオプテリン三リン酸(DHNTP)の減少したレベルにより検出される、適切には上記の酵素活性アッセイを使用して測定してよい。
【0251】
適切には、プテリン生合成経路中の酵素の損なわれた活性は、健康な対象での同じ酵素の活性と比べた場合、少なくとも20%の酵素の活性の減少を含む。適切には、プテリン生合成経路中の酵素の損なわれた活性は、健康な対象での同じ酵素の活性と比べた場合、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%の酵素の活性の減少を含む。
【0252】
キット
本発明は、本明細書に記載される低BH4バイオアベイラビリティーの予防又は処置のための治療法を形成するために使用しうる2つの有効活性成分を含むキットを更に提供する。
【0253】
キットは、少なくとも還元型葉酸及び、任意選択で、BH4、又はその前駆体若しくは機能的等価物を含む。適切には、還元型葉酸及び/又はBH4、若しくはその前駆体若しくは機能的等価物は適切な容器に貯蔵しうる。適切には、容器は、例えば、アンプル、バッグ、ビン、注射器、バイアル、又はブリスタパックでもよい。適切には、それぞれの容器は、例えば、1用量又は用量の適切な分割を含有する。
【0254】
適切には、ブリスタパックは、錠剤を含有してよい。適切には、それぞれの錠剤は、例えば、1用量又は用量の適切な分割を含有するように処方される。
【0255】
適切には、キットは使用説明書を更に含んでよい。適切には、説明書は、使用者に対象のための正しい投薬量を知らせてよい。そのようなキットは、適切には、関連する有効活性成分が低BH4バイオアベイラビリティーに関連する障害に罹っている、又は罹りやすい対象を処置するのに有用であることを示すラベル又は添付文書を有する。
【0256】
適切には、キットは1つ又は複数の賦形剤、希釈剤又は担体を更に含んでよい。適切には、賦形剤、希釈剤又は担体は、還元型葉酸及び/又はBH4、若しくはその前駆体若しくは機能的等価物と混合することを目的としてよい。適切には、説明書は使用者に、賦形剤を還元型葉酸及び/又はBH4、若しくはその前駆体若しくは機能的等価物と混合する方法を知らせてよい。
【0257】
適切には、キットは、還元型葉酸及び/又はBH4、若しくはその前駆体若しくは機能的等価物を投与するための備品を含んでよい。例えば、キットは、注射器を含んでよい。適切には、説明書は、使用者に還元型葉酸及び/又はBH4、若しくはその前駆体若しくは機能的等価物を対象に投与する方法を知らせてよい。
【0258】
In vitro使用
本発明は、還元型葉酸が、より有用ではない形態のBH2へのBH4の望ましくない酸化を予防できるという発見に基づいている。これは、実験室内でのin vitroでの使用も有する。第13の態様は、本発明のそのようなin vitro使用を定義している。
【0259】
適切には、還元型葉酸は、BH4、又はその前駆体若しくは機能的等価物の酸化を予防するのに使用しうる。適切には、還元型葉酸は、BH4、又はその前駆体若しくは機能的等価物を保存するのに使用しうる。
【0260】
適切には、そのような実施形態では、還元型葉酸は、その天然の又は非天然の立体異性体でもよい。
【0261】
適切には、還元型葉酸は、BH4、又はその前駆体若しくは機能的等価物を含むいかなる実験室方法にも、適切には、BH4又はその前駆体、若しくは機能的等価物が還元状態のままであることを必要とするいかなる実験室方法にも添加してもよい。
【0262】
適切には、したがって、還元型葉酸は、実験室方法中又は貯蔵中に生体試料中のBH4を安定化するために添加してよい。適切には、実験室方法中、BH4は、必須の基質又は補因子でもよい。適切な実験室方法は、酵素アッセイなどのアッセイを含んでよい。適切には、BH4が必須の補因子であるそのような酵素アッセイは、トリプトファン水酸化酵素、フェニルアラニン水酸化酵素、チロシン水酸化酵素、一酸化窒素合成酵素、及びエーテル脂質酸化酵素を含むアッセイを含んでよい。
【0263】
適切には、還元型葉酸は、貯蔵中のBH4、又はその前駆体、若しくは機能的等価物の酸化を予防するために、適切には、BH4、又はその前駆体、若しくは機能的等価物を保存するために添加してよい。適切には、本発明は、BH4、又はその前駆体、若しくは機能的等価物を保存するために、保存剤としての還元型葉酸の使用を含む。適切には、したがって、還元型葉酸は、BH4、又はその前駆体、若しくは機能的等価物を含有する容器に添加してよい。適切には、したがって、還元型葉酸は、BH4、又はその前駆体、若しくは機能的等価物を含有する容器に保存剤として添加してよい。
【0264】
本発明のさらなる態様では、BH4、又はその前駆体、若しくは機能的等価物、及び還元型葉酸である保存剤を含む容器が提供される。
【0265】
適切には、実験室方法では又は容器では、還元型葉酸は、BH4、又はその前駆体、若しくは機能的等価物の酸化を予防するのに適切な濃度で存在する。適切には、還元型葉酸は、BH4と比べて大体等モル濃度で存在する。適切には、したがって、実験室方法では又は容器では、還元型葉酸は、実験室方法に存在する又は容器に存在するBH4と比べておよそ1対1比で存在する。
【実施例】
【0266】
1.方法:
1.1.臨床コホート
2011年~2015年にオックスフォード大学病院NHS Foundation Trustの管理下の妊娠女性は、以前記載された通りに1~3、臨床研究に参加するよう請われた。母親と幼児は、ISSHPガイドラインに従って定義された正常血圧妊娠、妊娠誘発高血圧及び妊娠高血圧腎症から募集された。血液試料は誕生時に収集された。母親は全員が、母子のカルテにアクセスする許可を含む、書面による同意書並びにその子供たちの参加に対する同意を提出した。既存の高血圧を含む、出生前の慢性心血管病状を有する母親と同じく、16歳未満の母親は研究から除外された1。倫理審査による承認は、South Central Berkshire Research Ethics Committee ref. 11/SC/0006, clinicaltrials.gov ref. NCT01888770により承諾された2,3。
【0267】
1.2 HUVEC単離、HutMECS培養及びマトリゲルアッセイ
臍帯は誕生時に収集され、研究組織バンク内の標準操作手続きに従って、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を単離し液体窒素中に保存した(Oxford Cardiovascular Tissue Bioresource;ethical approval 09/H0606/68、07/H0606/148及び11/SC/0230)。本研究の目的のため、HUVECは、出産年齢及び妊娠期間が適合した、正常血圧妊娠及び妊娠高血圧腎症を併発した妊娠から特定した。HUVEC及びヒト子宮微小血管内皮細胞(HutMECs;Cat C-12295、Promocell社)は、推奨される通りにバレットキット(Cat CC-3162、Lonza社)を用いてEBM2(内皮基本培地)で培養した。すべての細胞培養物は、37℃、加湿5%CO2中で維持した。一次HUVEC及びHutMEC細胞は、それぞれ継代1~3及び継代4~6の間で入手し、すべての実験で使用した。sEnd.1内皮細胞は、グルタミン(2mmol/リットル)、ペニシリン(100ユニット/ml)、及びストレプトマイシン(0.1mg/ml)を補充したダルベッコ変法イーグル培地(Invitrogen社)で増殖させた。
【0268】
内皮細胞の管形成能を評価するため、96ウェルプレートに50μlの増殖因子減少マトリゲル(BD Biosciences社、UK)を平らに被覆した。内皮細胞は、ウェル当たり細胞1×104個の密度で蒔いた。プレートは、顕微鏡撮影前に37℃で16時間インキュベートした。それぞれの試料は3通り再現し、それぞれのウェルの画像は、Nikon Eclipse TE2000-U顕微鏡(Nikon Ltd社、London、UK)を使用して×4の拡大率で撮影した。マトリゲルアッセイから得られた画像は、顕微鏡の明視野照明を制御する取得ソフトウェア(Simple PCI version 6.6.0.0;Hamamatsu Corporation社、Sewickley、PA)を使用して平均輝度について調整した。画像はTIFFファイルとして保存し、管形成はAngioSys 1.0(TCS Cell Works社、UK)を使用して分析した。画像閾値は、単色像の強度値に基づいて調整し、次に、それぞれの画像は、1ピクセル幅まで縮小するよう細線化した。それぞれの管の上に線を引き、それぞれの分岐点に点を付けた。線の全長はピクセルで定量化し(その後マイクロメートルに変換した)、分岐点の総数は記録した。
【0269】
1.3 RNA干渉によるGCH1ノックダウン
GCH1特異的ON-TARGETplus SMARTpool siRNAはDharmacon Thermo Scientific社から購入した。トランスフェクション24時間前、細胞を6ウェルプレートに播種した。次に、細胞を、GCH1特異的siRNA(100nmol/リットル)、GAPDH陽性(100nmol/リットル)又は非特異的プール二重鎖陰性対照siRNA(100nmol/リットル)でトランスフェクトした。細胞は、72時間培養し、標準プロトコルを使用して細胞において、GTPCH特異的抗体(S.Gross、Cornell University New Yorkより寄贈)を使用するウェスタンブロッティングによるGTPCHタンパク質発現の分析により遺伝子サイレンシングを検出した。
【0270】
1.4 胎盤細胞外小胞の単離
合胞体栄養細胞由来細胞外小胞(STBEV)は、以前記載された通りに4、修正二重ローブ胎盤灌流システム及び分画遠心法を使用して調製した。手短に言えば、胎盤を3時間灌流し、母体側灌流液を収集し、1500×gで4℃、10分間で2度直ちに遠心分離して(Beckman Coulter Avanti J-20XP centrifuge及びBeckman Coulter JS-5.3 swing out rotor)赤血球及び大きな細胞デブリを取り除いた。上澄みは150000gで3時間遠心分離して、マイクロ-及びナノ小胞を収集した。ナノ粒子トラッキング分析及びフローサイトメトリーを以前記載された通りに使用して、試料中の粒子の胎盤起源及びサイズ分布を確かめた5。収集後、STBEVは濾過したリン酸緩衝食塩水(PBS)に希釈し(4.9mgタンパク質/ml)、血管実験で更に使用するまで凍結した(-80℃)。
【0271】
1.5 母体血液試料分析
血漿循環血管新生促進及び抗血管新生因子は市販の酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を用いて定量化した。試料、標準、及び対照はすべて2通りに蒔いた。それぞれのウェルの光学密度は、FLUOstar Omegaマイクロプレートリーダー(BMG Labtech、KBioScience社、USA)を使用して450nmで測定した。データはOmega Data Analysisソフトウェアを使用して分析した。それぞれの標準、対照、及び試料についての2通りの読みは平均し、平均ゼロ標準光学密度を減算した。標準曲線は、4パラメータロジスティック曲線近似を作成することにより作った。sFlt-1についての変動係数は4.5%でSDは1.9%であり、sEngでは変動係数は4.1%でSDは1.6%であった。
【0272】
1.6 内皮細胞-標的Gch1ノックアウトマウスの生成
本発明者らは、内皮細胞特異的BH4欠損の新規マウスモデルであるGch1fl/flTie2creマウスを作製した。GTPCHの活性部位をコードする、Gch1のエキソン2及び3は、胚性幹細胞での相同組換え後にGch1fl/flマウスを生み出すのに使用されるターゲティング構築物においてloxP部位に隣接していた。これらのマウスは、Tie2creトランスジェニックマウスと交配されて、Gch1が特に内皮細胞で欠失しているGch1fl/flTie2creマウスを生み出し、内皮細胞BH4欠損マウスを作成した6。マウスは、12時間明/暗周期及び制御温度(20~22℃)の換気された檻に収容され、通常食と水を自由に与えられた。メスGch1fl/flTie2creマウス及びそのGch1fl/fl同腹仔(その後は野生型と呼ばれる)は、10~16週ですべての実験のために使用された。すべての研究は、英国内務省動物(科学的手続き)法1986(HMSO、London、United Kingdom)に従って実行された。マウスは、耳生検から調製したDNAを使用してポリメラーゼ連鎖反応により遺伝子型を同定した。Gch1fl/fl遺伝子型同定では、以下のプライマー;Gch1fl/fl-Fw 5'-GTC CTT GGT CTC AGT AAA CTT GCC AGG-3'、Gch1fl/fl -Rv 5'-GCC CAG CCA AGG ATA GAT GCA G-3'を使用してPCRを実施した。Gch1 loxPが導入された対立遺伝子は1030bpを示した。Tie2cre遺伝子型同定では、以下のプライマー:Tie2cre Fw 5'-GCA TAA CCA GTG AAA CAG CAT TGC TG-3'、Tie2cre Rv 5'-GGA CAT GTT CAG GGA TCG CCA GGC G-3'を使用してPCRを実施した。Tie2cre対立遺伝子は280bp断片として増幅された。
【0273】
1.7 時限交配(timed mating)
妊娠は、未交尾メスGch1fl/flTie2cre又はGch1fl/fl(野生型)メス(生後10~16週齢)をGch1fl/flオスと交配させることにより達成した。妊娠日を評価するため、膣栓は翌朝に検査し、妊娠0.5日だと(E0.5)見なした。塞がれたGch1fl/flTie2cre及び野生型マウスの体重は、妊娠を通じてずっと(E0、E2.5、E5.5、E7.5、E10.5、E12.5、E15.5、E16.5、E17.5及びE18.5)決定された。非妊娠及び妊娠(E18.5に)Gch1fl/flTie2cre及び野生型メス由来の尿試料を収集し、生化学的分析のために-80℃で保存した。別段述べられなければ、すべての組織は、妊娠前(時限交配前)又は妊娠E18.5日目(妊娠後期、正常な出産の2日前)で実験用に回収され収集された。
【0274】
1.8 BH4及びビオプテリン測定
血漿及び子宮動脈中のBH4及び酸化ビオプテリン(BH2及びビオプテリン)は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により決定し、続いて、確立したプロトコルに従って、それぞれ電気化学検出及び蛍光検出した7,8。手短に言えば、試料は、氷冷再懸濁バッファー(50mMのリン酸緩衝生理食塩水、1mMのジチオエリトリトール、1mMのEDTA、pH7.4)に凍結融解した。13,200rpmで、4℃、10分間の遠心分離後、上澄みは取り除き、氷冷酸性沈殿バッファー(1Mのリン酸、2Mのトリクロロ酢酸、1mMのジチオエリトリトール)を添加した。13,200rpmで、4℃、10分間の遠心分離に続いて、上澄みは取り除きHPLC装置内に注入した。BH4及び酸化ビオプテリンの定量化は、外部標準との比較により得られ、BCAタンパク質アッセイにより決定されタンパク質濃度に正規化された。
【0275】
1.9 血管機能研究
非妊娠及び妊娠(E18.5)Gch1fl/flTie2creと野生型同腹仔の両方の子宮動脈及び大動脈での血管運動機能を、ワイヤーミオグラフ(MultiMyogrph 610M、Danish Myo Technology社、Denmark)での等尺性張力研究を使用して調べた6。手短に言えば、マウスは、吸入イソフルランの過剰摂取により選別され、血管輪は子宮角又は胸部大動脈から単離された。次に、子宮動脈の2mmリング(メインループ)又は大動脈リングを、5mlの氷冷クレブスヘンゼライトバッファー(KHB[mmol/lで]:NaCl 120、KCl 4.7、MgSO4 1.2、KH2PO4 1.2、CaCl2 2.5、NaHCO3 25、グルコース5.5)を含有し、95%のO2/5%のCO2を気体で供給されたワイヤーミオグラフにマウントした。血管を30分間平衡化させた後、最適な張力(100mmHgに相当する)をセットした。濃度応答収縮曲線を、それぞれU46619(トロンボキサンA2受容体アゴニスト)及びフェニレフリンの累積的半ログ濃度を使用して確立した。血管は新鮮なKHBで3回洗浄し、20分間平衡化し、その後、子宮動脈ではU46619又は大動脈ではフェニレフリンを用いて最大張力のおおよそ80~90%まで予め収縮させた。アセチルコリンを使用して、内皮依存性血管拡張を漸増累積濃度で刺激した。応答は、予め収縮させた張力のパーセンテージとして表した。最後に、NOドナーニトロプルシドナトリウム(SNP)を使用して、L-NAMEの存在下で内皮非依存性平滑筋弛緩を調べた。薬理学的薬物はすべて、用量応答曲線を決定する前に少なくとも20分間プレインキュベートした。L-NAMEは100μMで、アパミンは50nMで、カリブドトキシンは100nMで、インドメタシンは10μMで使用した。薬物はすべてSigma Chemical Companyから購入した。
【0276】
1.10 テールカフプレチスモグラフィーによる血圧測定
収縮期血圧及び心拍数は、意識のあるマウスでコピュータ化テールカフシステム(Visitech社、USA)を使用して決定した6。実験は8am~12amで実施した。動物テールは円筒形ラテックステールカフの中を通し、動きを減らすためにテープで留めた。マウス当たり20の読みを採取し、そのうちの最初の5つの読みは廃棄した。残りの15の読みを使用してそれぞれのマウスの平均収縮期血圧及び心拍数を計算した。
【0277】
1.11 埋め込み式テレメトリーによる血圧測定
非妊娠メスGch1fl/flTie2cre及びGch1fl/fl(野生型)マウス(生後8~10週齢)は、以前記載された通りに、テレメーター(PAC10ラジオテレメーター; DSI、Transoma Medical Inc.社)の胸部大動脈移植を受けた。手短に言えば、テレメーターカテーテルを左頸動脈に植込み、テレメーター本体は、前及び後方足から等距離の皮下ポケットに入れた。次に、傷は4.0バイクリルで閉じた。手術後に、マウスは、動き回れるまで37℃で回復室に留め、続いて回復キャビネットに移し28℃で更に4時間留めた。ホームケージ(テレメトリー受信機の上に設置した)での14日間の回復後、テレメーターは磁気によって活性化され、ベースライン平均動脈圧(MAP)は連続して5日間記録した(サンプリングは1分毎に10秒間隔で)。妊娠は、メスGch1fl/flTie2cre又はGch1fl/fl(野生型)メスをGch1fl/flオスと交配させることにより達成した。妊娠日を評価するため、膣栓は翌朝に検査し、妊娠0.5日だと(E0.5)見なした。MAPは、妊娠E18.5日まで妊娠中はずっと連続して記録した。
【0278】
1.12 eNOSによるNO合成の分析
eNOSによるNO合成は、以前記載された通りに、N-モノメチル-L-アルギニン(1mM、Sigma社)の存在又は非存在下で、14C L-アルギニンのシトルリンへの転換により評価した9。手短に言えば、HUVESを、14C L-アルギニン(2μlの50μCi/mL)を含有する200μのクレブス-HEPESバッファー中37℃で4時間インキュベートした。試料は、オンラインシンチレーション検出を備えたSCX 300陽イオン交換HPLCカラム(Sigma社)に流した。バックグラウンドシグナルは、細胞なしの14C L-アルギニン単独を有する試料から補正した。
【0279】
1.13 マイクロCTイメージング
胎盤はSkyScan 1172マイクロ-CT(Bruker社)を使用して画像化した。胎盤は、密封試料ホルダーに1.5%アガロースにマウントした。X線像は、電位45kv及び電流218μAで作成し、フィルターは用いなかった。スキャニング解像度は、ピクセル当たり2.5μMに設定した。虚像スタックはNReconソフトウェア(Bruker社)を使用して作成した。画像スタックはピクセル当たり10μMの解像度まで画像を縮小した。3次元再構成はAMIRAソフトウェア(バージョン5.5.0)を使用して作成した。
【0280】
1.14 組織学及び免疫染色
妊娠E18.5日の野生型及びGch1fl/flTie2creマウス由来の胎盤及び子宮動脈を、100mmHgでの灌流固定に続いて回収した。パラフィン包埋胎盤及び子宮動脈は、H&E及びα平滑筋アクチン用の免疫組織化学(Sigma社)で製造業者の説明書に従って染色した。
【0281】
1.15 統計分析
データは平均±SEMとして提示されている。正規性は、ダゴスティーノ・ピアソンオムニバス正規性検定を使用してテストした。群は、ノンパラメトリックデータではマン・ホイットニーU検定を、パラメトリックデータでは対応のないスチューデントt-検定を使用して比較した。複数の群を比較する場合、データは、パラメトリックデータではニューマン・コイルス事後検定を用いた分散分析(ANOVA)により又はノンパラメトリックデータではダンズ事後検定を用いたクラスカル・ウォリス検定により分析した。2つよりも多い独立変数が存在する場合、テューキー多重比較検定を用いた二元配置分散分析を使用した。対象内に繰り返し測定値が存在した場合、反復測定(RM)分散分析が使用された。P<0.05の値は統計的に有意だと見なした。
【0282】
1.16 HPLCによるスーパーオキシド産生の定量化
以前記載された通りに、2-ヒドロキシエチジウム形成のHPLCによる測定を使用して、スーパーオキシド産生を定量化した。手短に言えば、細胞をPBSで3回洗浄し、L-NAME(100μm)の存在又は非存在下、クレブスHepesバッファーでインキュベートした。30分後、ジヒドロエチジウム(25μm)を添加し、次に、細胞は37℃で更に20分間インキュベートした。その後、細胞は削ることにより回収し、遠心分離し、氷冷メタノールに溶解した。分析のためにオートサンプラーにローディングする前に塩酸(100mm)を添加した(1対1 v/v)。試料はすべて暗いチューブに保存し、常に光から保護した。エチジウム、オキシエチジウム、及びジヒドロエチジウムの分離は、ODS3逆相カラム(250mm、4.5mm; Hichrom社)を備えた勾配HPLCシステム(Jasco社)を使用して実施し、510nm(励起)及び595nm(発光)に設定した蛍光検出器を使用して定量化した。直線勾配は、移動相A(0.1% TFA(v/v))から移動相B(アセトニトリル中0.1% TFA(v/v))に23分かけて適用した(30%アセトニトリルから50%アセトニトリル)。
【0283】
1.17 免疫沈降及びウェスタンブロッティング
適切な処置を用いての細胞の曝露に続いて、細胞は、プロテアーゼ阻害剤の混合物(Roche Applied Science社)を含む放射性免疫沈降アッセイ溶解バッファー(20mm Tris-HCl、150mm NaCl、20mm N-エチルマレイミド、1mm Na2EDTA、1mm EGTA、1% Triton(v/v)、0.1% SDS(w/v)、0.1デオキシコール酸ナトリウム、pH 7.4)に懸濁し、液体窒素中で凍結融解を3サイクル受けさせた。ウェスタンブロッティングは、ウサギ抗マウスGTPCH抗体(Prof Steve Grossより寄贈)、抗eNOS(BD Transduction Laboratories社)、及び抗GAPDH(Sigma社)抗体のいずれかを用いた標準技法を使用して実行した。
【0284】
2. 結果
2.1 妊娠での妊娠高血圧腎症又は高血圧は減少した内皮細胞GTPCH及びBH4レベル、損なわれたNOS活性並びに損なわれた内皮管形成と関連している
内皮GCH1及びBH4が妊娠高血圧腎症では、又は高血圧を併発した妊娠では変化しているかどうかを調べるため、本発明者らは、正常血圧妊娠の母親と比べて、妊娠高血圧腎症(PE)及び/又は高血圧を併発した妊娠を有する女性から出産時に得た一次ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)及び血漿でのBH4レベルを測定した。研究患者の臨床特徴はTable 1(表1)に示されている。
【0285】
【0286】
妊娠高血圧腎症及び/又は高血圧を有する母体のほうが血圧は高く、産後5日目では可溶性エンドグリンとsFlt1の両方のレベルが上昇していた。正常血圧妊娠由来の内皮細胞と比べて、妊娠高血圧腎症/高血圧妊娠由来のHUVECでは、BH4、GTPCHタンパク質及びeNOS活性のレベルが有意に減少していることを本発明者らは見出した(
図1a~d)。更に、内皮細胞増殖のマーカーである、内皮細胞管形成は高血圧/妊娠高血圧腎症妊娠由来のHUVECでは減少していた(
図1e~g)。これらの内皮細胞異常のBH4への依存性を調べると、BH4前駆体であるセピアプテリンとのインキュベーションにより高血圧/妊娠高血圧腎症妊娠由来のHUVECではBH4レベルとNOS活性の両方が正常化して、BH4レベル及びNOS活性はもはや群間で違いはなくなった(
図1d及びe)。更に、セピアプテリンは高血圧/妊娠高血圧腎症妊娠由来のHUVECでの管形成を回復させた(
図1e~g)。高血圧/妊娠高血圧腎症妊娠由来の内皮細胞でのBH4の減少したレベルと対照的に、循環血漿BH4レベル及び全ビオプテリンは、対照と比べて高血圧/妊娠高血圧腎症を有する母体では有意に高く(
図7c~e)、減少したBH4/BH2比と関連しており、より大きな全身的なBH4酸化を示していた。更に、正常と高血圧/妊娠高血圧腎症女性の両方で血漿BH4レベルは、妊娠初期と比べて妊娠後期では有意に減少していた(
図7)。ヒト胎盤循環でのBH4の関連性を更に調べるため、eNOSのレベルを含む、胎盤血管機能の重要な様態での変更を反映することが以前実証されているモデル系である、高血圧/妊娠高血圧腎症を有する又は有さない女性から得られた灌流された胎盤から単離された胎盤細胞外小胞でのBH4のレベルを本発明者らは調べた。高血圧/妊娠高血圧腎症妊娠由来の胎盤の灌流由来の胎盤細胞外小胞でのBH4含量は、健康な妊娠由来の胎盤細胞外小胞でのBH4含量よりも有意に低いことを本発明者らは見出した(
図1H)。
【0287】
2.2 Gch1のノックダウンは内皮細胞でのGTPCHタンパク質及びBH4レベルを減少させ内皮管形成を損なう
次に、Gch1及びBH4によるeNOS調節についてのモデル系として広く研究されてきたマウスsEND.1内皮細胞株でのGch1のsiRNAノックダウンを使用して内皮細胞管形成でのGch1及びBH4の因果的役割を本発明者らは調べた。Gch1特異的siRNAは、非特異的siRNA対照と比べて、GTPCHタンパク質レベルを実質的に減少させ(
図2a)、細胞内BH4レベルは対応して約90%減少することを本発明者らは見出した(
図2b)。酸化されたビオプテリン種と比べたBH4の比(BH4:BH2+B)も、Gch1特異的siRNAで処置した細胞では有意に減少していた(
図2b)。HUVECでの以前の所見と一致して、Gch1ノックダウンは内皮細胞管形成を損ない(
図2c~e)、プテリンサルベージ経路を経ての細胞内BH4合成をもたらすセピアプテリンとのインキュベーションは、BH4レベルを増やし管形成を完全に回復させた(
図2c~e)。したがって、Gch1は培養内皮細胞では正常なBH4生合成、eNOS活性及び管形成に必要とされ、妊娠高血圧腎症妊娠由来の内皮細胞で観察される内皮細胞GTPCH及びBH4の減少が妊娠高血圧腎症の発病で因果的役割を果たし得るという考えを支持している。これらの所見とヒト母体内皮細胞の関連性を更に調べるため、本発明者らはまた、一次ヒト子宮微小血管内皮細胞(HUtMEC)においてGCH1をノックダウンした。GCH1ノックダウンは、HUtMECにおいてGTPCH発現及びBH4レベルを実質的に減少させ(
図2f及びg)、管形成アッセイでの内皮細胞増殖を有意に減少させた(
図2h及びi)。まとめると、これらの所見は、内皮細胞GCH1及びBH4は内皮細胞増殖及び管形成を調節すること、減少した内皮細胞BH4は妊娠高血圧腎症の特徴であり、内皮細胞NOS活性の消失と関連していることを示している。
【0288】
2.3 内皮細胞特異的Gch1欠失はメスGch1
fl/flTie2creマウスにおいて妊娠誘発高血圧及び胎児発育遅延を引き起こす
妊娠中の子宮胎盤血管適合及び血圧調節における母体内皮細胞BH4の特異的な役割を調べるため、次に、GTPシクロヒドロラーゼ1をコードするGch1を内皮特異的欠失しているメスマウスでの妊娠応答を本発明者らは調べた。妊娠18.5日目の、tdTomatoレポーターマウスと交配させたTie2creマウス由来の組織切片の蛍光イメージングを使用して、loxPが導入された対立遺伝子(floxed allele)の内皮細胞特異的削除が、子宮動脈において及び胎盤脱落膜のらせん動脈において確認されたが、他の脱落膜細胞では確認されなかった(
図8)。非妊娠マウスでは、Gch1
fl/flTie2creマウス由来の大動脈及び子宮動脈でのBH4及び全ビオプテリンレベルは、野生型マウスのBH4及び全ビオプテリンレベルと比べて有意に低く(
図3a及びb)、BH4の血漿レベルは遺伝子型間で違いはなく(
図3c)、内皮細胞BH4合成は健康な非妊娠メスマウスでは循環ビオプテリンレベルに対する主要な寄与因子ではないことを示している。妊娠マウスでは、大動脈及び子宮動脈でのBH4及び全ビオプテリンレベルは、同じ遺伝子型由来の非妊娠マウスに匹敵していた(
図3a及びb)。しかし、BH4及び全ビオプテリンの血漿レベルは妊娠マウスでは、野生型とGch1
fl/flTie2creマウスの両方で有意に減少しており、Gch1
fl/flTie2creマウスのほうが減少の程度は大きかった(
図3c)。更に、血漿中のBH4:BH2+B(全ビオプテリン)比は、非妊娠Gch1
fl/flTie2creマウス又は妊娠野生型マウスと比べて妊娠Gch1
fl/flTie2creマウスでは有意に減少しており(
図3d)、妊娠中の内皮細胞特異的BH4欠損が酸化のせいでBH4のさらなる減少をもたらし、BH2及びBを形成することを示している。妊娠での血漿ビオプテリンの減少は肝臓ビオプテリン(循環ビオプテリンの主要な供給源だと見なされる)のいかなる違いとも関連はなかったが、尿ビオプテリンの著しい増加と関連しており、ビオプテリンの腎排泄は妊娠では増加することを示唆している(
図9及び
図10)。しかし、尿ビオプテリンの妊娠関連増加はGch1
fl/flTie2creマウスでは大きくなく、Gch1
fl/flTie2creマウスでの血漿クレアチニンでも腎臓組織学でも何の変化もなく、内皮細胞Gch1及びBH4欠失は腎機能の変化を通じて効果を発揮しないことを示している(
図11及び
図12)。
【0289】
次に、妊娠中の血圧調節における母体内皮細胞BH4生合成の必要条件を本発明者らは決定した。本発明者らは最初に、妊娠マウスでのテールカフプレチスモグラフィーを使用した。以前報告されたように(17)、非妊娠野生型同腹仔と比べてメス非妊娠Gch1
fl/flTie2creマウスでは収縮期血圧はわずかに高かった(約5mmHg)(
図3e)。しかし、妊娠E15.5日までに、非妊娠Gch1
fl/flTie2creマウスの収縮期血圧と比べて、妊娠Gch1
fl/flTie2creマウスでは収縮期血圧は基本レベルよりも有意に増加し、妊娠E18.5日では更に上昇した(
図3e)。これとは対照的に、妊娠中野生型マウスでは血圧の有意な変化は見られなかった(
図3e)。本発明者らは、妊娠前に埋め込まれた埋め込み式テレメーターを使用して血圧変化を更に評価した。Gch1
fl/flTie2creマウスでの妊娠中の血圧の漸進的増加は、主に増加した収縮期血圧により駆動され、Gch1
fl/flTie2creマウスでの弛緩期血圧は妊娠終了時に有意に増加しただけであることを本発明者らは観察した(
図13及び
図14)。Gch1
fl/flTie2creマウスでのベースライン血圧のわずかな増加の潜在的な効果に取り組むため、本発明者らは先ず、ベースライン血圧について一致していたGch1
fl/flTie2cre及び野生型マウスでの追加のコホートを分析した。野生型マウスの対になったコホートと同一である妊娠前血圧を有するGch1
fl/flTie2creマウスでは、妊娠中の血圧の増加は有意に増加し(23+/-5mmHg)、野生型のコホートは妊娠中に血圧の増加を示さなかった(
図14)。次に、単一Gch1の消失が内皮細胞BH4欠損を引き起こすのに十分かどうか、及びそうである場合は、血圧への効果を調べるため、Gch1対立遺伝子の1つだけが内皮細胞特異的に欠失しているマウス、すなわち、Gch1
fl/+Tie2creマウスのコホートを生み出した。Gch1
fl/+Tie2creマウスの大動脈及び肺でのBH4レベルは、野生型マウスと比べておおよそ50%減少し、Gch1
fl/flTie2creマウスで観察されたBH4の約80%減少より少ないことを本発明者らは見出した(
図16)。肝臓でのBH4のレベルは、Gch1
fl/+Tie2creマウスでは変化はなかった。妊娠Gch1
fl/+Tie2creマウスでは、BH4レベルは子宮動脈では約80%減少していた(
図16)。Gch1
fl/+Tie2creマウスでの血圧測定は、ベースライン(妊娠前)血圧に差がないことを明らかにしたが、正常なベースライン血圧、及び内皮細胞BH4欠損の減少したレベルにもかかわらず、妊娠後期中の血圧の有意な増加がGch1
fl/+Tie2creマウスでまだ観察された(
図17)。
【0290】
これらのデータは、Gch1
fl/flTie2creマウスでは、内皮細胞BH4欠損により誘発される妊娠に対する高血圧応答は用量依存性であるが、ベースライン血圧のわずかな増加に依存してはいないことを示している。胎盤及び胎仔成長に関する母体内皮細胞BH4の重要性を判定するため、Gch1
fl/flTie2cre及び野生型マウスの体重増加を、妊娠前に及び妊娠中ずっと測定した。妊娠前体重はGch1
fl/flTie2creマウスと野生型同腹仔の間で類似していた。しかし、妊娠E12.5日以降の母体体重増加は、野生型マウス同腹仔と比べてGch1
fl/flTie2creマウスでは有意に減少しており(
図3f)、この違いは心臓、肝臓、肺、腎臓又は脾臓の臓器質量における違いにより引き起こされたものではなかった(
図18)。妊娠E18.5日目又は出産時、Gch1
fl/flTie2creと野生型マウスの間に同腹当たりの仔の数に有意差はなかった(
図3g)。分娩の開始はGch1
fl/flTie2creと野生型マウスの間で匹敵していた(
図3h)。妊娠高血圧腎症は胎盤及び胎児発育遅延に関連するので、妊娠18.5日目の胎盤サイズ及び胎仔体重に対する母体内皮細胞BH4欠損の効果を本発明者らは評価した。胎仔と胎盤の両方が、野生型メスと比べて妊娠Gch1
fl/flTie2creメス由来のほうが有意に小さい(胎仔と胎盤の両方で約10%)ことを本発明者らは見出した(
図3i及びj)。妊娠Gch1
fl/flTie2creマウス由来の胎仔の頭-尻長は対応して減少していた(
図3k)。E18.5での胎仔サイズの減少と足並みを揃えて、Gch1
fl/flTie2creメス由来の正期産に生まれた仔の平均体重は野生型マウス由来の仔の平均体重よりも有意に低かった(
図3l及びm)。母体内皮細胞BH4生合成の役割を胎仔BH4の役割と区別するため、野生型メスをGch1
fl/flTie2creオスと交配させ、Gch1
fl/flTie2creメスを野生型オスと交配させて、野生型とGch1
fl/flTie2cre仔が均等な割合の適合する同腹仔を有する妊娠メスマウスを生み出した(育種戦略については、
図19参照)。Gch1
fl/flTie2creメスだけが妊娠中に進行性高血圧を発症し、Gch1
fl/flTie2creオスと交配させた野生型メスマウスは妊娠中正常な血圧であった(
図19)。同様に、胎仔サイズの減少は母体Gch1
fl/flTie2cre遺伝子型だけに依存していた。更に、Gch1
fl/flTie2creマウス由来のオスとメス胎仔の間で胎仔体重の減少に差はなかった(
図20)。WTオスマウスと交配させてWT及びGch1
fl/+Tie2cre胎仔だけ(すなわち、内皮細胞Gch1のホモ接合欠失を有する胎仔はいない)の同腹仔を生み出す妊娠Gch1
fl/+Tie2creマウスにおける胎仔成長に対する母体内皮細胞でのGch1のヘテロ接合消失の効果も本発明者らは評価した。妊娠Gch1
fl/+Tie2creマウスに生まれた仔は、WTマウスに生まれた仔よりも有意に小さかった(
図17)。これらの所見は、胎仔ではなく母体内皮細胞BH4の欠如が妊娠誘発高血圧を引き起こし、減少する胎仔成長の原因であることを示している。
【0291】
2.4 内皮細胞BH4は妊娠での機能的及び構造的子宮胎盤リモデリングに必要である
次に、非妊娠マウス由来の、及びE18.5での妊娠マウス由来の子宮動脈(UA)での血管機能に対する内皮細胞BH4欠損の効果を、ワイヤーミオグラフィーを使用して調べた。妊娠野生型及びGch1
fl/flTie2creマウス由来の子宮動脈により発生される最大張力は両方とも、非妊娠マウスと比べて有意に増加していた(
図4a)が、壁応力(血管壁に対する張力)は妊娠では減少しており、子宮動脈内皮機能の妊娠関連変化を反映している(
図4b)。しかし、妊娠Gch1
fl/flTie2creマウス由来の子宮動脈の長さ-張力関係はWTマウスと比べて有意に変化していた(
図21)。更に、U46619に対する血管収縮応答は、野生型マウスの子宮動脈では、一酸化窒素阻害剤であるL-NAMEの存在下で増加した(非妊娠子宮動脈で観察されるレベルまで)が、Gch1
fl/flTie2creマウスでは変化はなく(
図4c及びd)、野生型子宮動脈での収縮筋応答のeNOS由来調節は妊娠Gch1
fl/flTie2creマウスには存在しないことを示している。
【0292】
アセチルコリン(ACh)に対する内皮依存性血管拡張は、Gch1
fl/flTie2cre子宮動脈では減少し(
図4E)、EC50は対応して増加しており、直接NOドナーである、ニトロプルシドナトリウムSNPに対する内皮非依存性血管拡張に差はなかった(
図4e~j)。対応する差は、フェニレフリンに対する大動脈の収縮筋応答、及びAchに対する弛緩応答で観察された(
図22)。野生型子宮動脈とは対照的に、NOS阻害剤であるL-NAMEはGch1
fl/flTie2cre子宮動脈ではAch血管弛緩を有意に阻害せず(
図4g及びh)、妊娠中Gch1
fl/flTie2cre子宮動脈ではeNOS媒介血管拡張機能が消失しているさらなる証拠を加える。
【0293】
妊娠中のGch1
fl/flTie2cre子宮動脈での代替の血管拡張機序を調べるため、次に本発明者らは、L-NAME、インドメタシン(プロスタサイクリン産生の阻害剤)、アパミン(小コンダクタンスCa2+活性化K+チャネルの阻害剤)及びカリブドトキシン(中間及び大コンダクタンスCa2+活性化K+チャネルの阻害剤)の阻害効果を比較した。インドメタシンの添加は、妊娠又は非妊娠野生型及びGch1
fl/flTie2creマウス由来の子宮動脈での内皮依存性血管拡張に及ぼす効果は最小であった(
図4k及びl)。これとは対照的に、アパミン及びカリブドトキシンの添加は、子宮動脈での内皮依存性血管拡張を完全に阻害した。子宮動脈における血管拡張応答の相対的貢献の組織的定量化により、妊娠Gch1
fl/flTie2creマウスでのL-NAME阻害効果の著しい消失及びアパミン/カリブドトキシン阻害効果の有意な増加が明らかにされた(
図4m及び
図23)。まとめると、これらの所見は、eNOS由来血管拡張機能が妊娠Gch1
fl/flTie2creマウス由来の子宮動脈では失われており、Ca2+活性化K+チャネルが代替の内皮由来血管拡張機能を提供していることを示している。妊娠での構造的血管リモデリングに対する内皮細胞BH4欠損の効果を判定するため、本発明者らは、野生型及びGch1
fl/flTie2creマウス由来の子宮動脈及び胎盤らせん動脈を比較した。妊娠日E18.5日目のGch1
fl/flTie2cre妊娠由来の胎盤質量及び胎盤サイズは、野生型妊娠メス由来の胎盤質量及び胎盤サイズと比べて有意に減少していた(
図5a~e)。子宮動脈では、妊娠が、非妊娠マウスと比べて野生型とGch1
fl/flTie2creマウスの両方の子宮動脈での中膜域(medial area)、内腔径及び内腔面積の予想された顕著な増加を引き起こし(
図5f及びg)、妊娠中の子宮血流の増加を反映している。しかし、これらの変化は、Gch1
fl/flTie2creマウスの子宮動脈では有意に損なわれており(
図5f及びg)、内腔面積の増加は小さく、中膜域及び血管平滑筋アクチン免疫染色の面積は増加し、並びに中膜の内腔に対する比(media to lumen ratio)は有意に増加していた。更に、本発明者らは、Gch1
fl/flTie2creマウス由来の胎盤での脱落膜らせん動脈は、内腔面積の減少により、及び筋性動脈化の増加により示され、VSMCアルファアクチンについての免疫組織化学により明らかにされるように、野生型マウスで観察されるリモデリングを受けることができないことを見出した(
図5h及びi)。これらの知見は、選択的内皮細胞BH4欠損が、子宮導管動脈と胎盤抵抗血管の両方で妊娠に対する母体生理応答での損なわれた血管リモデリングを引き起こすこと実証している。
【0294】
2.5 BH4の補充はGch1
fl/flTie2creマウスでは妊娠誘発高血圧及び胎仔発育遅延を予防できないが、還元型葉酸、5-MTHFにより救済される
本発明者らは、妊娠での内皮細胞BH4欠損がもたらす結果はBH4補充により予防される可能性があり、これはトランスレーショナルな治療可能性を持ちうると推論した。本発明者らは、Gch1
fl/flTie2creと野生型マウスの両方を、時限交配前の3日間及びその後の妊娠中ずっと、経口BH4補充により処置した。経口BH4補充は、血漿BH4レベルを増やしたが、確立した血管疾患を有する患者において本発明者らが以前観察したように
10、酸化種であるジヒドロビオプテリン(BH2)の類似する又ははるかに大きな増加に関連しており、BH4/BH2+B(全ビオプテリン)比は対応して減少したことを本発明者らは見出した(
図6a~c及び
図24)。Gch1
fl/flTie2creマウスでの経口BH4補充は、血圧に対しても胎仔発育遅延に対しても有益な効果はなかった(
図6d~i)。
【0295】
酵素ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)は、ジヒドロ葉酸を完全に還元された葉酸、テトラヒドロ葉酸にまで還元し、酸化されたBH2を還元してBH4を再生させることもできる。したがって、本発明者らは、完全に還元された葉酸、5-メチル-テトラヒドロ葉酸(5-MTHF)を同時投与すれば血管BH4レベルを増強する可能性があると仮定した(18)。妊娠マウスをBH4と5-MTHFを用いて処置すると、Gch1
fl/flTie2creマウスではBH4レベルが著しく回復し、BH2の有意な上昇はなく、未処置のGch1
fl/flTie2creマウスで観察された血圧の増加及び胎児発育遅延が予防された(
図6d~i)。更に、BH4+5-MTHFの併用により、Gch1
fl/flTie2creマウスではU46619に対する収縮応答とAChに対する弛緩応答の両方が著しく正常化され、応答を野生型動物で観察される応答に復させることを本発明者らは見出した(
図6j~l)。
【0296】
更に、5-MTHF単独で処置しても治療効果があった。5-MTHF単独での処置により、Gch1
fl/flTie2creマウスの収縮期血圧は、野生型マウスの正常な血圧まで著しくほとんど瞬時に下がった(
図26c参照)。更に、一般サプリメントの葉酸は収縮期血圧に対して有益な効果はなく、実際には血圧は妊娠の間対照に類似する増え方をすることを本発明者らは見出した(
図26a及び26b参照)。内皮細胞では、葉酸とのインキュベーションはBH4レベルに対し何の効果もなく(
図28)、高血圧を有する妊娠由来のHUVECでの(
図36)又はジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)の阻害剤であるメトトレキサートとのインキュベーション後の細胞での(
図27)5-MTHFによる内皮細胞BH4レベルの増加又は回復とは対照的であった。実際、葉酸は、内皮細胞による活性酸素種(ROS)の発生を増やし(
図33)、5-MTHFは内皮細胞ROS産生を減らした(
図37及び
図38)。5-MTHFは、L-アルギニンからL-シトルリンへの転換により測定される、内皮細胞での内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS)の活性を増やしたが、葉酸は増やさなかった。この活性はeNOS阻害剤であるL-NAMEにより阻害された(
図34)。これらの所見は、本発明者らにより発見され本明細書で実証された治療効果が、「葉酸」効果(メチル化プロセス、ホモシステイン、等に対する葉酸の周知の古典的効果)ではなく、酸化形態(すなわち、葉酸)ではなく葉酸の化学的還元形態(すなわち、5-MTHF)に依存している新たな効果であることを示している。
【0297】
本発明者らは、妊娠前ではなく、妊娠中に5-MTHF処置が開始されると、妊娠Gch1
fl/flTie2creマウスで血圧を下げる5-MTHF処置の能力を更に調べた。それぞれ妊娠中期及び後期に相当する時点を表す、時限交配後10.5又は16.5日目に開始して、妊娠の残りの間ずっと、本発明者らは、Gch1
fl/flTie2creと野生型マウスの両方を経口5-MTHFで処置した。経口5-MTHF処置は、10.5日目に開始した場合、Gch1
fl/flTie2creマウスでの高血圧を正常化し(
図39及び
図40)、胎仔発育遅延を有意に改善することを本発明者らは見出した(
図40)。5-MTHFは、16.5日目に開始した場合もGch1
fl/flTie2creマウスで高血圧を正常化した(
図41)。両方の場合において、5-MTHF処置に続く血圧の減少が、処置開始の2日以内に速やかに観察された。これらの研究は、5-MTHFが妊娠Gch1
fl/flTie2creマウスで高血圧の発症を予防できるだけでなく、妊娠中にすでに発症している高血圧を処置できることも示している。
【0298】
【配列表】
【国際調査報告】