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特表2024-502253胃がんの防止及び早期検出のためのバイオマーカーシグネチャー
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-18
(54)【発明の名称】胃がんの防止及び早期検出のためのバイオマーカーシグネチャー
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/53 20060101AFI20240111BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20240111BHJP
   C12Q 1/6851 20180101ALI20240111BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20240111BHJP
   C12Q 1/6886 20180101ALN20240111BHJP
【FI】
G01N33/53 P
G01N33/53 M
G01N33/574 A
C12Q1/6851 Z
C12Q1/686 Z
C12Q1/6886 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537677
(86)(22)【出願日】2021-12-21
(85)【翻訳文提出日】2023-08-18
(86)【国際出願番号】 EP2021087155
(87)【国際公開番号】W WO2022136472
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】20306649.3
(32)【優先日】2020-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508029653
【氏名又は名称】アンスティテュ・パストゥール
(71)【出願人】
【識別番号】505211271
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・ドゥ・ヴェルサイユ・サン-クァンタン・アン・イヴェリーヌ
(71)【出願人】
【識別番号】507139834
【氏名又は名称】アシスタンス ピュブリック-オピト ドゥ パリ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】エリエッテ・カミーユ・トアティ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァレリ・ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】ドミニク・ラマルク
(72)【発明者】
【氏名】クェンティン・ジャイ・ジャネット
(72)【発明者】
【氏名】ティボー・デューシュ
(72)【発明者】
【氏名】マリエッテ・マトンド
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA19
4B063QQ03
4B063QQ53
4B063QQ59
4B063QR08
4B063QR42
4B063QR56
4B063QR62
4B063QS25
4B063QS34
4B063QX02
(57)【要約】
本発明は、ヒト患者が、前記患者を胃がん状態の危険性がある状態にする病変を有し、かつ/又はこれと関連するさらなる医学的検査を必要とするのかどうかを決定するin vitro方法であって、選択されるバイオマーカーが、IL-8及びmtDNAレベルの集まりからならないことを条件として、PGK1、CFP、IGFALS、KRT19、SPRR1A、CPA4、CA2、SERPINA5、MAN2A1、KIF20B、SPEN、JUP、KRT6C、CDSN、KPRP、F13A1、SAA1(SAA2)、LBP、DSP、KRT2、KRT14、ARG1、S100A12、ATAD3B、MAN1A1、HAL、DCD、C7、HP、LEP、IL-8、IL-17、TNFアルファ、USF1、USF2、SELE、MSLN、EGFR、STAT3、及びmtDNAのレベルの中から選択される少なくとも2つのバイオマーカーのレベルが決定される場合に、血液又は血漿の生物学的試料をスクリーニングする工程を含む方法に関する。方法は、ヒト患者が、非萎縮性胃炎(NAG)、又は萎縮性胃炎/前新生物(AG/P)、又は胃がん(GC)を有する危険性について評価するための方法でもよく、これらの危険性又はこれらの状態の存在を識別するための方法でもよい。特定の態様では、方法は、別個の、同時又は並行工程として、ピロリ菌感染を検出する工程を含みうる。本発明はまた、このような方法を実行するのに適したキット、或いはヒト患者が、前記患者を胃がん状態の危険性がある状態にする病変を有し、かつ/若しくはこれと関連するさらなる医学的検査を必要とするのかどうかを決定するか、又は前胃がん状態若しくは胃がん状態を予後診断又は診断するためのマーカーのセット及びその使用にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト患者が、前記患者を胃がん状態の危険性がある状態にする病変を有し、かつ/又はこれと関連するさらなる医学的検査を必要とするのかどうかを決定するin vitro方法であって、胃がん状態に発展し易い状態を患い易いか、又は前胃がん状態を患い易いか、又は胃がん状態を患い易いヒト患者からあらかじめ採取された血液又は血漿の生物学的試料のスクリーニングを含み、
a.選択されるバイオマーカーが、IL-8及びmtDNAレベルの集まりからならないことを条件として、PGK1、CFP、IGFALS、KRT19、SPRR1A、CPA4、CA2、SERPINA5、MAN2A1、KIF20B、SPEN、JUP、KRT6C、CDSN、KPRP、F13A1、SAA1(SAA2)、LBP、DSP、KRT2、KRT14、ARG1、S100A12、ATAD3B、MAN1A1、HAL、DCD、C7、HP、LEP、IL-8、IL-17、TNFアルファ、USF1、USF2、SELE、MSLN、及びmtDNAレベルの中から選択される少なくとも2つのバイオマーカーのレベルを決定する工程、任意選択で、選択されるバイオマーカーが、IL-8及びmtDNAレベルの集まりからならないことを条件として、PGK1、CFP、IGFALS、KRT19、SPRR1A、CPA4、CA2、SERPINA5、MAN2A1、KIF20B、SPEN、JUP、KRT6C、CDSN、KPRP、F13A1、SAA1(SAA2)、LBP、DSP、KRT2、KRT14、ARG1、S100A12、ATAD3B、MAN1A1、HAL、DCD、C7、HP、LEP、IL-8、IL-17、TNFアルファ、USF1、USF2、SELE、MSLN、EGFR、STAT3、及びmtDNAレベルの中から選択される少なくとも2つのバイオマーカーのレベルを決定する工程;
b.工程a.で決定されたレベルを、対照と比較する工程;並びに
c.工程a.及び工程b.で決定及び比較された少なくとも2つのバイオマーカーのレベルが、それらの対照レベルから逸脱する場合、ヒト患者は、前記患者を胃がん状態の危険性がある状態にする病変を有し、かつ/又はこれと関連するさらなる医学的検査、とりわけ、臨床的調査を必要とすることが結論される工程
を含む方法。
【請求項2】
工程a.が、IL-8タンパク質及びmtDNAレベルである2つのバイオマーカーを包含し、PGK1、CFP、IGFALS、KRT19、SPRR1A、CPA4、CA2、SERPINA5、MAN2A1、KIF20B、SPEN、JUP、KRT6C、CDSN、KPRP、F13A1、SAA1(SAA2)、LBP、DSP、KRT2、KRT14、ARG1、S100A12、ATAD3B、MAN1A1、HAL、DCD、C7、HP、LEP、IL-17、TNFアルファ、USF1、USF2、SELE、及びMSLNの中から選択される1つ又は複数のバイオマーカーと更に組み合わされた、任意選択で、IL-8タンパク質及びmtDNAレベルである2つのバイオマーカーを包含し、PGK1、CFP、IGFALS、KRT19、SPRR1A、CPA4、CA2、SERPINA5、MAN2A1、KIF20B、SPEN、JUP、KRT6C、CDSN、KPRP、F13A1、SAA1(SAA2)、LBP、DSP、KRT2、KRT14、ARG1、S100A12、ATAD3B、MAN1A1、HAL、DCD、C7、HP、LEP、IL-17、TNFアルファ、USF1、USF2、SELE、EGFR、STAT3、及びMSLNの中から選択される1つ又は複数のバイオマーカーと更に組み合わされた、少なくとも3つのバイオマーカーのレベルを決定する工程からなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程a.が、PGK1、CFP、IGFALS、KRT19、SPRR1A、CPA4、CA2、SERPINA5、MAN2A1、KIF20B、SPEN、JUP、KRT6C、CDSN、KPRP、F13A1、SAA1(SAA2)、LBP、DSP、KRT2、KRT14、ARG1、S100A12、ATAD3B、MAN1A1、HAL、DCD、C7、HP、LEP、IL-8、IL-17、TNFアルファ、USF1、USF2、SELE、MSLN、及びmtDNAレベルの中から選択される2つのバイオマーカー、並びにEGFR及びSTAT3の中から選択される少なくとも1つのさらなるバイオマーカーを含む、少なくとも3つのバイオマーカーのレベルを決定する工程からなる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
工程a.が、PGK1、CFP、IGFALS、KRT19、SPRR1A、CPA4、CA2、SERPINA5、MAN2A1、KIF20B、SPEN、JUP、KRT6C、CDSN、KPRP、F13A1、SAA1(SAA2)、LBP、DSP、KRT2、KRT14、ARG1、S100A12、ATAD3B、MAN1A1、HAL、DCD、C7、HP、LEP、IL-8、IL-17、TNFアルファ、USF1、USF2、SELE、MSLN、EGFR、STAT3、及びmtDNAレベルの中から選択される少なくとも3つのバイオマーカーのレベルを決定する工程からなる、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程a.が、IGFALS、KRT19、CPA4、CA2、MAN2A1、KIF20B、JUP、F13A1、LBP、KRT14、ARG1、S100A12、ATAD3B、DCD、HP、LEP、IL-8、IL-17、TNFアルファ、USF1、USF2、SELE、MSLN、EGFR、及びSTAT3の中から選択される、少なくとも2つ、好ましくは2つ~6つの間のバイオマーカーのレベルを決定する工程からなる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
ヒト患者が、非萎縮性胃炎(NAG)、又は萎縮性胃炎/前新生物(AG/P)、又は胃がん(GC)を有する危険性について評価するための方法である、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ヒト患者が、萎縮性胃炎/前新生物(AG/P)を有する危険性について評価するための方法、特に、被験患者における萎縮性胃炎/前新生物(AG/P)状態を予後診断又は診断するための方法である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程a.が、IGFALS、KRT19、CA2、MAN2A1、KIF20B、JUP、LBP、S100A12、ATAD3B、DCD、HP、LEP、IL-8、IL-17、USF1、USF2、SELE、MSLN、及びEGFRの中から選択される、少なくとも2つ、好ましくは2つ~6つの間のバイオマーカーのレベルを決定する工程からなり、特に、IGFALS、KRT19、HP、LEP、MSLN、及びEGFRのレベルを決定する工程にある、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ヒト患者が、萎縮性胃炎/前新生物(AG/P)を有する危険性について、少なくとも80%の感度及び/又は少なくとも80%の特異度、特に各々少なくとも80%の感度及び特異度で評価するための方法である、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
ヒト患者が、胃がん(GC)を有する危険性について評価するための方法、特に、被験患者における胃がん(GC)状態を予後診断又は診断するための方法である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
工程a.が、IGFALS、KRT19、CA2、MAN2A1、KIF20B、JUP、LBP、ARG1、S100A12、ATAD3B、DCD、HP、LEP、IL-8、IL-17、TNFアルファ、USF1、USF2、MSLN、EGFR、及びSTAT3の中から選択される、少なくとも2つ、好ましくは2つ~6つの間のバイオマーカーのレベルを決定する工程からなり、特に、ARG1、LEP、IL-17、TNFアルファ、SELE、及びMSLNのレベルを決定する工程にある、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ヒト患者が、胃がん(GC)を有する危険性について、少なくとも75%の感度及び/又は少なくとも90%の特異度、特に各々少なくとも90%の感度及び特異度で評価するための方法である、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
被験患者における、非萎縮性胃炎(NAG)状態、萎縮性胃炎/前新生物(AG/P)状態、胃がん(GC)状態、又は健常状態の存在を識別するための方法、特に、これらの状態のうちの1つを予後診断又は診断するための方法である、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
胃がん状態に発展し易い状態を患い易いか、若しくは前胃がん状態を患い易いか、若しくは胃がん状態を患い易い患者の健康状態、又はヒト患者を胃がん状態の危険性がある状態にする病変を有する前記患者の健康状態をモニタリング又は診断するための方法であって、請求項1に規定の工程b.で設定された比較及び/又は請求項1に規定の工程c.で観察された逸脱が発展を示す場合に、被験患者の健康状態について結論づけるように、時間経過にわたり少なくとも1回反復され、特に、胃がんを有すると診断され、任意選択で胃がんについて処置された患者の健康状態をモニタリング又は診断するための方法である、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
別個の、同時又は並行工程として、特に、ピロリ菌感染に特異的な抗原の検出を介して、又はDNAの増幅及びその後における前記DNAの検出、若しくは被験患者からあらかじめ採取された生物学的試料中のピロリ菌特異的IgA抗体及びピロリ菌特異的IgG抗体の存在の検出を伴うアッセイを介して、又は被験患者に対して実施される13C尿素呼気検査を介して、ピロリ菌感染を検出する工程を含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
血液試料が、胃発癌を有すると診断された患者、任意選択で、この状態についての処置下にある患者、並びに/又は、進行中であるか、処置されているか、若しくは処置されていないピロリ菌感染を有する患者、並びに/又は根絶されたか、若しくはそうでないピロリ菌感染の既往症を有する患者、並びに/又は胃痛及び/若しくは胃がんの家族歴を有する個体に由来する、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
血漿中バイオマーカーのレベルが、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)検査、又は質量分析、又は定量的ポリメラーゼ連鎖反応(q-PCR)、又はLuminexアッセイにより決定され、実行される場合、mtDNAのレベルが、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(q-PCR)により決定される、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか一項に規定の方法を実行するのに適したキットであって、
- 異なる抗原特異性を有する少なくとも2種類の抗体であって、各種類の抗体が、PGK1、CFP、IGFALS、KRT19、SPRR1A、CPA4、CA2、SERPINA5、MAN2A1、KIF20B、SPEN、JUP、KRT6C、CDSN、KPRP、F13A1、SAA1(SAA2)、LBP、DSP、KRT2、KRT14、ARG1、S100A12、ATAD3B、MAN1A1、HAL、DCD、C7、HP、LEP、IL-8、IL-17、TNFアルファ、USF1、USF2、SELE、EGFR、STAT3、及びMSLNタンパク質の中から選択されるタンパク質に特異的である少なくとも2種類の抗体、又はPGK1、CFP、IGFALS、KRT19、SPRR1A、CPA4、CA2、SERPINA5、MAN2A1、KIF20B、SPEN、JUP、KRT6C、CDSN、KPRP、F13A1、SAA1(SAA2)、LBP、DSP、KRT2、KRT14、ARG1、S100A12、ATAD3B、MAN1A1、HAL、DCD、C7、HP、LEP、IL-8、IL-17、TNFアルファ、USF1、USF2、SELE、EGFR、STAT3、及びMSLNタンパク質に対して異なる抗原特異性を有するいくつかの抗体の組合せ、及び任意選択で、CagA抗原等のピロリ菌抗原に特異的である少なくとも1つの抗体、及び任意選択で、以下の試薬のうちの1つ又は複数:
- ビオチニル化抗体等の二次抗体、又は上記で列挙された特異的抗体とその(それらの)標的との複合体を明らかにする試薬、
- 任意選択で、抗体をビーズへと接合させるためのアミンカップリングキットを任意選択で伴う、色分けビーズ、及び/又は磁性若しくは非磁性ビーズ、及び/又はカルボキシル化ビーズ等のビーズ、
- 任意選択で、ビオチニル化抗体を明らかにするフィコエリトリン(PE)コンジュゲートストレプトアビジン、
- 任意選択で、緩衝液、
- 任意選択で、アッセイプレート、並びに
- 任意選択で、使用のための指示、及び結果の解釈のための予測値を提供する通知
を含むキット。
【請求項19】
請求項1から17のいずれか一項に規定の方法を実行するのに適したキットであって、
- mtDNAとのハイブリダイゼーションに特異的である特異的オリゴヌクレオチドプライマーの少なくとも1つの対、並びに/又は
- それぞれ、PGK1、CFP、IGFALS、KRT19、SPRR1A、CPA4、CA2、SERPINA5、MAN2A1、KIF20B、SPEN、JUP、KRT6C、CDSN、KPRP、F13A1、SAA1(SAA2)、LBP、DSP、KRT2、KRT14、ARG1、S100A12、ATAD3B、MAN1A1、HAL、DCD、C7、HP、LEP、IL-8、IL-17、TNFアルファ、USF1、USF2、SELE、EGFR、STAT3、及びMSLNタンパク質のうちの2つ以上をコードするDNA領域とのハイブリダイゼーションに特異的である特異的オリゴヌクレオチドプライマーの少なくとも2つの対、及び任意選択で、ピロリ菌の核酸配列とのハイブリダイゼーションに特異的である特異的オリゴヌクレオチドプライマー若しくは核酸分子の少なくとも1つの対、及び任意選択で、以下の試薬のうちの1つ又は複数:
- ヌクレオチド(例えば、dATP、dCTP、dGTP、dUTP)、
- DNAポリメラーゼ、特に、Taq DNA Polymerase等の熱安定性DNAポリメラーゼ、
- 核酸を染色するための少なくとも1つの色素、特に、リアルタイムPCR装置内で検出可能な色素、
- 任意選択で、緩衝液、
- 任意選択で、プライマーのそれらの標的とのハイブリダイゼーションに必要な試薬、
- 任意選択で、参照色素、並びに
- 使用のための指示、及び結果の解釈のための予測値を提供する通知
を含むキット。
【請求項20】
請求項1から17のいずれか一項に規定の方法を実行するのに適したキットであって、
- 異なる抗原特異性を有する少なくとも2種類の抗体であって、各種類の抗体が、PGK1、CFP、IGFALS、KRT19、SPRR1A、CPA4、CA2、SERPINA5、MAN2A1、KIF20B、SPEN、JUP、KRT6C、CDSN、KPRP、F13A1、SAA1(SAA2)、LBP、DSP、KRT2、KRT14、ARG1、S100A12、ATAD3B、MAN1A1、HAL、DCD、C7、HP、LEP、IL-8、IL-17、TNFアルファ、USF1、USF2、SELE、EGFR、STAT3、及びMSLNタンパク質の中から選択されるタンパク質に特異的である少なくとも2種類の抗体、又はPGK1、CFP、IGFALS、KRT19、SPRR1A、CPA4、CA2、SERPINA5、MAN2A1、KIF20B、SPEN、JUP、KRT6C、CDSN、KPRP、F13A1、SAA1(SAA2)、LBP、DSP、KRT2、KRT14、ARG1、S100A12、ATAD3B、MAN1A1、HAL、DCD、C7、HP、LEP、IL-8、IL-17、TNFアルファ、USF1、USF2、SELE、EGFR、STAT3、MSLNタンパク質に対して異なる抗原特異性を有するいくつかの抗体の組合せ、及び任意選択で、CagA抗原等のピロリ菌抗原に特異的である少なくとも1つの抗体、及び任意選択で、以下の試薬のうちの1つ又は複数:
- ビオチニル化抗体等の二次抗体、又は上記で列挙された特異的抗体とその(それらの)標的との複合体を明らかにする試薬、
- 任意選択で、抗体をビーズへと接合させるためのアミンカップリングキットを任意選択で伴う、色分けビーズ、及び/又は磁性若しくは非磁性ビーズ、及び/又はカルボキシル化ビーズ等のビーズ、
- 任意選択で、ビオチニル化抗体を明らかにするフィコエリトリン(PE)コンジュゲートストレプトアビジン、
- 任意選択で、緩衝液、
- 任意選択で、アッセイプレート、及び
- 任意選択で、使用のための指示、及び結果の解釈のための予測値を提供する通知

並びに
- mtDNAとのハイブリダイゼーションに特異的である特異的オリゴヌクレオチドプライマーの少なくとも1つの対、並びに/又は
- それぞれ、PGK1、CFP、IGFALS、KRT19、SPRR1A、CPA4、CA2、SERPINA5、MAN2A1、KIF20B、SPEN、JUP、KRT6C、CDSN、KPRP、F13A1、SAA1(SAA2)、LBP、DSP、KRT2、KRT14、ARG1、S100A12、ATAD3B、MAN1A1、HAL、DCD、C7、HP、LEP、IL-8、IL-17、TNFアルファ、USF1、USF2、SELE、EGFR、STAT3、及びMSLNタンパク質のうちの2つ以上をコードするDNA領域とのハイブリダイゼーションに特異的である特異的オリゴヌクレオチドプライマーの少なくとも2つの対、及び任意選択で、ピロリ菌の核酸配列とのハイブリダイゼーションに特異的である特異的オリゴヌクレオチドプライマー若しくは核酸分子の少なくとも1つの対、及び任意選択で、以下の試薬のうちの1つ又は複数:
- ヌクレオチド(例えば、dATP、dCTP、dGTP、dUTP)、
- DNAポリメラーゼ、特に、Taq DNA Polymerase等の熱安定性DNAポリメラーゼ、
- 核酸を染色するための少なくとも1つの色素、特に、リアルタイムPCR装置内で検出可能な色素、
- 任意選択で、少なくとも1つの緩衝液、
- 任意選択で、プライマーのそれらの標的とのハイブリダイゼーションに必要な試薬、
- 任意選択で、参照色素
を含むキット。
【請求項21】
請求項1から17のいずれか一項に規定の方法を実行するのに適した、PGK1、CFP、IGFALS、KRT19、SPRR1A、CPA4、CA2、SERPINA5、MAN2A1、KIF20B、SPEN、JUP、KRT6C、CDSN、KPRP、F13A1、SAA1(SAA2)、LBP、DSP、KRT2、KRT14、ARG1、S100A12、ATAD3B、MAN1A1、HAL、DCD、C7、HP、LEP、IL-8、IL-17、TNFアルファ、USF1、USF2、SELE、EGFR、STAT3、及びMSLNタンパク質の中から選択されるタンパク質に特異的である少なくとも2つの抗体、並びに任意選択で、mtDNAとのハイブリダイゼーションに特異的である特異的オリゴヌクレオチドプライマー若しくは核酸分子の少なくとも1つの対を含むか若しくはこれらからなるマーカーのセット、又はそれぞれ、PGK1、CFP、IGFALS、KRT19、SPRR1A、CPA4、CA2、SERPINA5、MAN2A1、KIF20B、SPEN、JUP、KRT6C、CDSN、KPRP、F13A1、SAA1(SAA2)、LBP、DSP、KRT2、KRT14、ARG1、S100A12、ATAD3B、MAN1A1、HAL、DCD、C7、HP、LEP、IL-8、IL-17、TNFアルファ、USF1、USF2、SELE、EGFR、STAT3、及びMSLNタンパク質のうちの2つ以上をコードするDNA領域とのハイブリダイゼーションに特異的である特異的オリゴヌクレオチドプライマーの少なくとも2つの対、並びに任意選択で、mtDNAとのハイブリダイゼーションに特異的である特異的オリゴヌクレオチドプライマー若しくは核酸分子の少なくとも1つの対を含むか若しくはこれらからなるマーカーのセット。
【請求項22】
胃がん状態に発展し易い状態を患い易いか、又は前胃がん状態を患い易いか、又は胃がん状態を患い易いヒト患者からあらかじめ採取された血液又は血漿の生物学的試料のスクリーニング、とりわけ、胃がん状態に発展し易い状態を患い易いか、又は前胃がん状態を患い易いか、又は胃がん状態を患い易いヒト患者から採取された生物学的血液又は血漿試料中の、請求項18から21のいずれか一項に規定の少なくとも2つのマーカーのレベルを測定することにより、ヒト患者が、前記患者を胃がん状態の危険性がある状態にする病変を有し、かつ/若しくはこれと関連するさらなる医学的検査を必要とするのかどうかを決定するか、又は前胃がん状態若しくは胃がん状態を予後診断若しくは診断するための、請求項18から21のいずれか一項に記載のキット又はマーカーのセットの使用。
【請求項23】
ヒト患者が、前記患者を胃がん状態の危険性がある状態にする病変を有し、かつ/又はこれと関連するさらなる医学的検査を必要とするのかどうかについて探索するための、コンピュータにより実行される方法であって、
a.選択されるバイオマーカーが、IL-8及びmtDNAレベルの集まりからならないことを条件として、PGK1、CFP、IGFALS、KRT19、SPRR1A、CPA4、CA2、SERPINA5、MAN2A1、KIF20B、SPEN、JUP、KRT6C、CDSN、KPRP、F13A1、SAA1(SAA2)、LBP、DSP、KRT2、KRT14、ARG1、S100A12、ATAD3B、MAN1A1、HAL、DCD、C7、HP、LEP、IL-8、IL-17、TNFアルファ、USF1、USF2、SELE、MSLN、EGFR、STAT3、及びmtDNAレベルの中から選択される少なくとも2つのバイオマーカーのレベルを受信するか、又はそれらの決定が請求項1から11のいずれか一項において規定される少なくとも2つのバイオマーカーの任意のレベルを受信し、特に、少なくとも2つのバイオマーカーのレベルが、このようなレベルを測定するためのin vitro方法、又はそれに適合されたデバイスを介して測定される工程、並びに
b.工程a.で決定されたレベルを、それを対照と比較することにより処理する工程、並びに
c.特に、工程b.で比較された少なくとも2つのバイオマーカーのレベルが、それらの対照から逸脱する場合に、所定の判定規則、とりわけ、探索されるバイオマーカーと関連して決定される感度及び/又は特異度と関連する判定規則を介して、工程a.で受信されたレベルが、これらのレベルがとりわけ工程a.で規定されたレベルを測定するためのin vitro方法を介して測定されたヒト患者は、前記患者を胃がん状態の危険性がある状態にする病変を有し、かつ/又はこれと関連するさらなる医学的検査、とりわけ、臨床的調査を必要とすることとするのかどうかを決定する工程
を含む方法。
【請求項24】
請求項23に記載の方法、とりわけ、請求項23に記載の方法の工程b.及び/若しくはc.を実行するための手段を含むか、又は請求項23に記載の方法を実施するように適合された/構成されたプロセッサー、とりわけ、請求項23に記載の方法の工程b.及び/若しくはc.を実施するように適合された/構成されたプロセッサーを含む、データ処理装置。
【請求項25】
- 請求項23に規定の工程a.で規定された少なくとも2つのバイオマーカーのレベルを受信する入力インターフェース、
- 少なくともコンピュータプログラムの命令を保存するためのメモリであって、コンピュータ又はプロセッサーによりプログラムが実行されると、コンピュータに、請求項23に記載の方法を実行させる命令を含むメモリ、任意選択で、対照データ及び判定規則を保存するためのメモリ、
- 前述の命令を読み取り、請求項23に記載の方法を実行するために、メモリへとアクセスするプロセッサー、
- 少なくとも、請求項23に規定の工程a.で規定された少なくとも2つのバイオマーカーのレベルが、これらのバイオマーカーレベルが測定されたヒト患者は、前記患者を胃がん状態の危険性がある状態にする病変を有し、かつ/又はこれと関連するさらなる医学的検査、とりわけ、臨床的調査を必要とすることとするのかどうかの決定をもたらす出力インターフェース
を含む、請求項24に記載のデータ処理装置。
【請求項26】
コンピュータ又はプロセッサーによりプログラムが実行されると、コンピュータに、請求項23に記載の方法を実行させる命令を含むコンピュータプログラム。
【請求項27】
とりわけ、コンピュータ又はプロセッサーによりコンピュータプログラムが実行されると請求項23に記載の方法を実装する、請求項26に記載のコンピュータプログラムをその上に保存したコンピュータ可読媒体、特に、非一過性コンピュータ可読記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、好ましくは、個体、とりわけ、ヒトから収集された生物学的試料から得られた血漿中バイオマーカーについての探索に基づくin vitro検査方法の分野に関し、特に、胃がん状態若しくは前胃がん状態の予後診断若しくは診断過程、又はこれらを患い易い患者のモニタリングへと適用されうる方法に関する。胃がん状態又は前胃がん状態とは、胃がん、又は胃がんへと発展しうる状態、すなわち、無症状性の段階から、症状性の段階への、異なる段階に従い、正規の胃がん転帰に先行しうる状態を意味する。本発明は、胃がんの早期検出が求められる文脈においてなされる。したがって、本発明はまた、本発明の方法を実施するためのキット、マーカーのセット、及びそれらの使用にも関する。本明細書で記載されるバイオマーカーの使用は、さらなる臨床的調査が実行されるべきであるのかどうかを決定するか、又は危険性について査定するか、又は危険性若しくは疾患を最終的に診断し、予後不良を回避するために、早期の診断を必要とする疾患の治癒を支援することを可能としうる。
【背景技術】
【0002】
導入
胃がん(GC)は、全世界で、毎年、約100万人の死亡者をもたらす、主要な公衆衛生問題を、依然として表す。GCは、依然として、がん関連死亡の、3番目に多い原因であり、診断数が4番目に多いがんである(1)。GCの発症率は、過去30年間に、全世界で、減退が観察されたが、新たな症例数は、人口の増大及び老化のために、2030年まで、せいぜい、一定を維持するか、又は増大し始めている。近年、低所得国及び高所得国のいずれにおいても、新たなGC症例、及び通例とは異なるGC症例の増大が、50歳以下の、主に、男性において報告されている(2)。これらのデータは、GC発症率の増大の予測をもたらし、このがんが、依然として、全地球的な規模で、公衆衛生についての、重要な難題であることを強調する。GCは、大部分が、予後不良と関連し、全体的な5年生存率は、15%であり、これにより、その早期検出の重要性を強調する。GCは、前新生物(腸上皮化生及び異形成)を介して、がん病変へと発展する、慢性炎症の発生により始まる、多段階過程から生じる(3)。GC症例のうちの90%の一因となる、主要な危険性因子は、世界人口のうちの半分に影響を及ぼす、ピロリ菌(Helicobacter pylori)感染である。
【0003】
胃がんは、進行期に診断されると、予後不良をもたらすが、早期に診断されると、治癒可能な疾患でありうる。しかしながら、GCは、その早期において、無症状性であるか、又は非特異的症状だけを引き起こすことが多い。重度の症状が生じる時点までに、がんは、進行期に到達し、また、転移していることも多い。したがって、胃腺癌と関連する、罹患率及び死亡率を低減するために、早期GCバイオマーカーの特徴付け及び検証が、依然として必要とされている。
【0004】
前がん状態が、早期において、最良の場合には、前新生物の発生の前に検出される場合、GCは防止されうることが重要である(4)。GCを防止するために、ピロリ菌(H.pylori)感染の根絶が提起されている。しかし、危険性低減の大きさは、前新生物過程における、根絶のタイミングに依存するので、ピロリ菌感染の根絶は、十分ではない(5)。現在のところ、GCの診断は、通例、全身麻酔下で実施される、胃内視鏡によりなされる場合に限られる。重要なこととして、GCが、存在する場合、生検を伴うこの技法が、正確な診断を伴う一方、新生物性病変の場合、アッセイされるために回収される試料は、病変が存在しない消化管の領域から採取されうるので、新生物性病変が、この侵襲的技法により、常に検出されうるとは限らないということを考察されるべきである。この技法はまた、極めて侵襲性でもあり、全身麻酔を要求する。
【0005】
更に、残念ながら、GC診断の全体的負担を低減する、大スケールの適用に適するスクリーニング戦略も利用可能ではない。血液ベースのバイオマーカーとしての非侵襲的方法の開発は、GCの危険性がある患者の早期検出及び予防のための診断ツールに対する強力な寄与としてだけでなく、また、疾患の再発/転帰を予測し、抗がん治療をモニタリングし、したがって、GC患者の生存を向上するための診断ツールに対する強力な寄与としても、極めて重要である。
【0006】
本発明者らは、3つの相補性手法:i)ピロリ菌感染、炎症、及び腫瘍発生に対する宿主応答における、それらの役割に従い選択される、関連性因子の血漿中レベルについての、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)による定量、ii)オンコロジー経路関連因子(84のタンパク質)についての、Proteome Profiler ELISAベースの解析、及びiii)質量分析(MS)ベースのプロテオミクスによる、血漿タンパク質の大スケールスクリーニングを使用して、GCカスケードの多様な段階において、患者に由来する血漿試料に対して、バイオマーカー候補物質を同定した。これらのデータは、健常対象と、患者、とりわけ、前新生物段階及びがん段階にある患者とを区別することを可能とする、バイオマーカー候補物質及びシグネチャーのリストの提示をもたらした。これらのバイオマーカーシグネチャーについての特徴付けは、簡単な血液採取により、GCの危険性がある患者の、早期かつ簡易な検出だけでなく、また、それらの臨床追跡の個別化も可能とする診断検査を開発する道を開く。
【0007】
興味深いことに、本発明者らによる発見は、併せて(いわゆる「シグネチャー」内で)使用された場合に、多様な段階にある前胃がん状態、若しくは胃がん状態を予測するか、又はこれらを、同時的に予測する、強力、かつ、信頼できる能力をもたらしうる(すなわち、患者の健康状態及び/又は疾患段階を識別する能力をもたらしうる)、バイオマーカーのセットを決定することを可能とした。前胃がん状態又は胃がん状態は、本明細書で規定される段階、とりわけ、AG/P段階、及び/又はGC段階により同定されうる。このようなツールは、患者、とりわけ、無症状性患者のモニタリングにおいて、特に、関連しうる。
【0008】
本明細書で詳述される通り、前胃がん状態は、発癌過程の一部でありうるため、場合によって、本明細書を通して規定される通り、前胃がん状態の存在は、胃がん状態(GC段階)の出現に先行しうるので、本明細書は、「前胃がん状態」を包含する状態としての「胃がん状態」を指す場合があることが注目される。
【0009】
したがって、本発明は、本明細書で記載される実験に依拠し、上述の問題のうちのいずれか1つ又は全てに取り組むことを目的とする、新規の手段及びツール、すなわち、ヒト患者が、前記患者を胃がん状態の危険性がある状態にする病変(本明細書で論じられる、胃発癌過程の最終段階)、すなわち、言い換えると、前記患者を胃がん状態を発症する危険性があるか又は有する危険性がある状態にする病変を有するのかどうかの決定を可能とし、胃がん状態の早期検出であって、特定の実施形態に従い、患者における、前胃がん状態又は胃がん状態の存在についての、適切な正確度(accuracy)による診断を含む早期検出を、最終的に可能とする、簡易であり、信頼でき、かつ、効率的であるバイオマーカーの提供を提起する。本発明は、特に、実施者が、求められる状態との関連で、患者に対して、さらなる医学的検査又は臨床的調査を実施することの妥当性の決定を可能とすることを目的とする。本発明が患者から採取された試料のうちの、血液又は血漿に対して実行されうることは、目覚ましい利点である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】WO2015/049372
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Corre及びPiazulo,J.、Dig.Dis、2012、13:2~9
【非特許文献2】Delacour,H.ら、「LaCourbe ROC(receiver operating characteristic):principes et principales applications en biologie clinique」、Annales de biologie clinique、2005、63(2):145~54
【非特許文献3】von Wurmb-Schwarkら、2002、Forensic Science International、126:34~39
【非特許文献4】Fernandesら、2014、Cancer Epidemiol Biomarkers Re、23:2430~38
【非特許文献5】Fanら、2009、J Cancer Res Clin Oncol、135、983~989
【非特許文献6】Chatre及びRichetti、2013、J of Cell Sciences、126:914~926
【非特許文献7】Grahamら、1987、Lancet、1:1174~1177
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、ヒト患者が、前記患者を胃がん状態の危険性がある状態にする病変を有し、かつ/又はこれと関連するさらなる医学的検査を必要とするのかどうかを決定するin vitro方法であって、胃がん状態に発展し易い状態を患い易いか、又は前胃がん状態を患い易いか、又は胃がん状態を患い易いヒト患者からあらかじめ採取された血液又は血漿の生物学的試料のスクリーニングを含み、
a.選択されるバイオマーカーが、IL-8及びmtDNAレベルの集まりからならないことを条件として、PGK1、CFP、IGFALS、KRT19、SPRR1A、CPA4、CA2、SERPINA5、MAN2A1、KIF20B、SPEN、JUP、KRT6C、CDSN、KPRP、F13A1、SAA1(SAA2)、LBP、DSP、KRT2、KRT14、ARG1、S100A12、ATAD3B、MAN1A1、HAL、DCD、C7、HP、LEP、IL-8、IL-17、TNFアルファ、USF1、USF2、SELE、MSLN、及びmtDNAレベルの中から選択される少なくとも2つのバイオマーカーのレベルを決定する工程、任意選択で、選択されるバイオマーカーが、IL-8及びmtDNAレベルの集まりからならないことを条件として、PGK1、CFP、IGFALS、KRT19、SPRR1A、CPA4、CA2、SERPINA5、MAN2A1、KIF20B、SPEN、JUP、KRT6C、CDSN、KPRP、F13A1、SAA1(SAA2)、LBP、DSP、KRT2、KRT14、ARG1、S100A12、ATAD3B、MAN1A1、HAL、DCD、C7、HP、LEP、IL-8、IL-17、TNFアルファ、USF1、USF2、SELE、MSLN、EGFR、STAT3、及びmtDNAレベルの中から選択される少なくとも2つのバイオマーカーのレベルを決定する工程;
b.工程a.で決定されたレベルを、対照と比較する工程;並びに
c.工程a.及び工程b.で決定及び比較された少なくとも2つのバイオマーカーのレベルが、それらの対照レベルから逸脱する場合、ヒト患者は、前記患者を胃がん状態の危険性がある状態にする病変を有し、かつ/又はさらなる医学的検査、とりわけ、臨床的調査が適応とされることが結論される工程
を含む方法に関する。
【0013】
例えば、特定の実施形態では、2つのバイオマーカーが、アッセイされる場合、前記2つのバイオマーカーのレベルが、それぞれ、それらの対照レベルから逸脱すれば、ヒト患者は、前記患者を胃がん状態の危険性がある状態にする病変を有することが結論づけられる。
【0014】
別の特定の実施形態に従い、3つのバイオマーカーが、アッセイされる場合、前記3つのバイオマーカーの中の、少なくとも2つのバイオマーカーのレベルが、それぞれ、それらの対照レベルから逸脱すれば、ヒト患者は、前記患者を胃がん状態の危険性がある状態にする病変を有することが結論づけられる。
【0015】
特定の実施形態に従い、本発明は、ヒト患者が、前記患者を胃がん状態の危険性がある状態にする病変を有し、かつ/又はこれと関連するさらなる医学的検査を必要とするのかどうかを決定するin vitro方法であって、胃がん状態に発展し易い状態を患い易いか、又は前胃がん状態を患い易いか、又は胃がん状態を患い易いヒト患者からあらかじめ採取された血液又は血漿の生物学的試料のスクリーニングを含み、
a.選択されるバイオマーカーが、IL-8及びmtDNAレベルの集まりからならないことを条件として、PGK1、CFP、IGFALS、KRT19、SPRR1A、CPA4、CA2、SERPINA5、MAN2A1、KIF20B、SPEN、JUP、KRT6C、CDSN、KPRP、F13A1、SAA1(SAA2)、LBP、DSP、KRT2、KRT14、ARG1、S100A12、ATAD3B、MAN1A1、HAL、DCD、C7、HP、LEP、IL-8、IL-17、TNFアルファ、USF1、USF2、SELE、MSLN、EGFR、STAT3、及びmtDNAのレベルの中から選択される少なくとも2つのバイオマーカーのレベルを決定する工程;
b.工程a.で決定されたレベルを、対照と比較する工程;並びに
c.工程a.及び工程b.で決定及び比較された少なくとも2つのバイオマーカーのレベルが、それらの対照レベルから逸脱する場合、ヒト患者は、前記患者を胃がん状態の危険性がある状態にする病変を有し、かつ/又はさらなる医学的検査、とりわけ、臨床的調査が適応とされることが結論される工程
を含む方法に関する。
【0016】
例えば、特定の実施形態では、2つのバイオマーカーが、アッセイされる場合、前記2つのバイオマーカーのレベルが、それぞれ、それらの対照レベルから逸脱すれば、ヒト患者は、前記患者を胃がん状態の危険性がある状態にする病変を有することが結論づけられる。
【0017】
別の特定の実施形態に従い、3つのバイオマーカーが、アッセイされる場合、前記3つのバイオマーカーの中の、少なくとも2つのバイオマーカーのレベルが、それぞれ、それらの対照レベルから逸脱すれば、ヒト患者は、前記患者を胃がん状態の危険性がある状態にする病変を有することが結論づけられる。
【0018】
本明細書で開示される方法においてアッセイされるバイオマーカーの数は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、又は39でありうる。
【0019】
特定の実施形態に従い、本明細書で開示される方法においてアッセイされるバイオマーカーの数は、2~6の間であり、特に、2(選択されるバイオマーカーが、IL-8及びmtDNAレベルの集まりからならないことを条件として)、3、4、5、又は6である。
【0020】
特定の実施形態に従い、本明細書で言及されるバイオマーカーのリストは、選択されるバイオマーカーが、IL-8及びmtDNAレベルの集まりからならないことを条件として、PGK1、CFP、IGFALS、KRT19、SPRR1A、CPA4、CA2、SERPINA5、MAN2A1、KIF20B、SPEN、JUP、KRT6C、CDSN、KPRP、F13A1、SAA1(SAA2)、LBP、DSP、KRT2、KRT14、ARG1、S100A12、ATAD3B、MAN1A1、HAL、DCD、C7、HP、LEP、IL-8、IL-17、TNFアルファ、USF1、USF2、SELE、MSLN、EGFR、STAT3、及びmtDNAレベルである。
【0021】
「選択されるバイオマーカーが、IL-8及びmtDNAレベルの集まりからならないことを条件として」という表現では、「~からならない」という表現の使用を介して、本発明の方法の文脈におけるレベル決定(工程a.)のために、2つのバイオマーカーだけが選択される場合に、これらのマーカーが、一緒にしてIL-8及びmtDNAレベルとすることができない(すなわち、本明細書で記載される、少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの存在を伴わない)ことを言明することが意図される。本明細書の文脈では、このようなマーカーである、IL-8レベル及びmtDNAレベルは、本明細書で記載される、1つ又は複数のさらなるバイオマーカーと併せて、更に組み合わされて使用されうるが、本明細書で記載される方法は、IL-8レベル及びmtDNAレベルを併せた、これらの2つのバイオマーカーだけの使用を包含しない。代替的に、表現は、「選択される2つのバイオマーカーが、IL-8及びmtDNAレベルの集まりからならないことを条件として」と書かれる場合もある。
【0022】
したがって、本出願を通して適用可能である、別の代替的な表現に従い、条件は、「選択されるバイオマーカーは、IL-8レベル及びmtDNAレベルとの、厳密な関連からならないことを条件として」と書かれる場合もあり、この場合、「IL-8レベル及びmtDNAレベルとの、厳密な関連」により、本明細書で規定される方法において使用されるか、又は本明細書で規定される、キット内若しくはマーカーのセット(若しくはバイオマーカー)内に存在する場合に、これらの具体的に列挙されたバイオマーカーは、PGK1、CFP、IGFALS、KRT19、SPRR1A、CPA4、CA2、SERPINA5、MAN2A1、KIF20B、SPEN、JUP、KRT6C、CDSN、KPRP、F13A1、SAA1(SAA2)、LBP、DSP、KRT2、KRT14、ARG1、S100A12、ATAD3B、MAN1A1、HAL、DCD、C7、HP、LEP、IL-17、TNFアルファ、USF1、USF2、SELE、EGFR、STAT3、及びMSLNのリストにおいて選択される、少なくとも1つのさらなるマーカー(又はバイオマーカー)と、必然的に関連することが意図される。
【0023】
本明細書では、SAA1(SAA2)とは、バイオマーカーであるSAA1若しくはバイオマーカーであるSAA2、又はこれらの両方を意味する。これらのタンパク質は、同じファミリーに関し、緊密な配列相同性を有する。したがって、SAA1及びSAA2は、互いに置換される場合もあり、共時的に見出される場合もある。したがって、本明細書における、SAA1(SAA2)という表現は、文脈から非関与性でない限りにおいて、任意の出現において、「SAA1」又は「SAA2」又は「SAA1又はSAA2」又は「SAA1及びSAA2」で置換されうる。
【0024】
本明細書では、「マーカー」及び「バイオマーカー」という用語は、互換的に使用される(同義語)ことに留意されたい。
【0025】
特定の実施形態に従い、使用されるバイオマーカーが、とりわけ、判定を下すための、開示される閾値に関して、本明細書の、開示される任意の態様において、更に記載される、このような結論を可能とする場合、本発明のin vitro方法は、逆に、ヒト患者が、健常状態にあるのかどうか、すなわち、本文脈では、ヒト患者が、前記患者を胃がん状態の危険性がある状態にする病変を有さず、かつ/又はこれと関連するさらなる医学的検査を必要としないのかどうかを決定することを可能とする。このような方法は、工程c.において、工程a.及び工程b.で決定及び比較された少なくとも2つのバイオマーカーのレベルが、それらの対照レベルから逸脱する場合に、ヒト患者は、前記患者を胃がん状態の危険性がある状態にする病変を有さず、かつ/又はさらなる医学的検査、とりわけ、臨床的調査を必要としないことが結論づけられる、上記で記載された工程と同じ工程を含む。
【0026】
特定の実施形態に従い、本発明は、ヒト患者が、前記患者を胃がん状態の危険性がある状態にする病変を有し、かつ/又はこれと関連するさらなる医学的検査を必要とするのかどうかを決定するin vitro方法であって、胃がん状態に発展し易い状態を患い易いか、又は前胃がん状態を患い易いか、又は胃がん状態を患い易いヒト患者からあらかじめ採取された血液又は血漿の生物学的試料のスクリーニングを含み、
a.PGK1、CFP、IGFALS、KRT19、SPRR1A、CPA4、CA2、SERPINA5、MAN2A1、KIF20B、SPEN、JUP、KRT6C、CDSN、KPRP、F13A1、SAA1(SAA2)、LBP、DSP、KRT2、KRT14、ARG1、S100A12、ATAD3B、MAN1A1、HAL、DCD、C7、HP、LEP、IL-17、TNFアルファ、USF1、USF2、SELE、EGFR、STAT3、及びMSLNの中から選択された、少なくとも2つのバイオマーカーのレベルを決定する工程;
b.工程a.で決定されたレベルを、対照と比較する工程;並びに
c.工程a.及び工程b.で決定及び比較された少なくとも2つのバイオマーカーのレベルが、それらの対照レベルから逸脱する場合、ヒト患者は、前記患者を胃がん状態の危険性がある状態にする病変を有し、かつ/又はこれと関連するさらなる医学的検査、とりわけ、臨床的調査を必要とすることが結論される工程
を含む方法に関する。
【0027】
より特定の実施形態では、方法は、工程a.において、選択されるバイオマーカーのうちの1つが、IL-8又はmtDNAのレベルにより置きかえられる場合、PGK1、CFP、IGFALS、KRT19、SPRR1A、CPA4、CA2、SERPINA5、MAN2A1、KIF20B、SPEN、JUP、KRT6C、CDSN、KPRP、F13A1、SAA1(SAA2)、LBP、DSP、KRT2、KRT14、ARG1、S100A12、ATAD3B、MAN1A1、HAL、DCD、C7、HP、LEP、IL-17、TNFアルファ、USF1、USF2、SELE、EGFR、STAT3、及びMSLNの中の、少なくとも2つのバイオマーカーのレベルの決定を含む。
【0028】
「前記患者を胃がん状態の危険性がある状態にする病変」とは、その重篤度が、本出願の対象である、胃発癌過程内の段階に応じて、段階的に増大しつつある、上記で規定された任意の病変、及び本明細書で規定される任意の病変を意味する。例えば、病変は、早くも、前胃がん段階(本明細書では、「前胃がん状態」として解される)において存在しうる。例えば、非萎縮性胃炎(本明細書では、NAGと略記される)段階にある病変は、酸化分子種の高度の産生と関連する、胃粘膜の慢性炎症の病変でありうる。萎縮性胃炎(AG)段階にある病変は、胃腺の喪失でありうる。前新生物(P)段階にある病変は、腸細胞表現型、又は腺の不規則な特異的構造を獲得する、胃上皮細胞の変化を包含しうる。胃がん段階にある例示的病変については、本明細書の後出で提示される。
【0029】
「前記患者を胃がん状態の危険性がある状態にする病変」における、「胃がん状態の危険性がある」により、代替的に、「前記患者を胃がん状態を発症する危険性があるか又は有する危険性がある状態にする病変」が言い表され、工程c.において設定された条件が満たされた、アッセイされる患者は、胃がんを発症する危険性があるか、又は任意の段階において状態の反転がみられうる場合であってもなお、重症度(前胃がん状態として診断されうる)を増大させるいくつかの段階を包含する、進行中の胃発癌過程にある危険性があることが意図される。
【0030】
特定の実施形態に従い、「少なくとも2つのバイオマーカーのレベルの、それらのそれぞれの対照レベルからの逸脱」により、本明細書で、更に詳述される通り、対照(対照は、変化が、変化の有意性、とりわけ、統計学的有意性を決定する分野における一般的な慣行に従い、有意であると見なされる限りにおいて、健常状態又は別の十分に規定された状態についての基準でありうる)に照らして、統計学的に有意である逸脱が意図される。実際に、本出願で明らかにされる通り、本発明者らは、本発明のバイオマーカーの変動が、被験患者を胃がん状態の危険性がある状態にし、かつ/又はこれと関連するさらなる医学的検査を必要とする病変の存在と関連することを決定しうるであろう。したがって、特定の態様では、本発明は、その後の探索が、アッセイされる患者に対して、進行中の胃発癌過程の存在の危険性との関連において求められることが、適切であるのかどうかについての、最初の認識について探索する。
【0031】
特定の実施形態に従い、適応とされうる、さらなる医学的検査は、研究責任医師が、外来状況又は入院状況において、患者と直接相対する、臨床調査研究として規定される、さらなる臨床的調査に対応する。この規定は、多様な血液検査、例えば、貧血について点検する全血算(CBC)の実施等、さらなるin vitro検査の実施を含みうるが、また、ヒト由来の素材が、第3者を介して得られ、研究責任医師が、患者と直接相対しない研究にも及ぶ。したがって、「さらなる臨床的調査」の非限定例は、胃カメラによる光学的検査、腹部のコンピュータ断層撮影(又はCT)走査、組織学的検査のための生検等、胃発癌過程の存在を確認又は除外することを目的とする、他の探索法を包含し、これらのうちの後者は、病変、存在する場合、がんの種類、及び/又は発癌過程において到達した段階の正確な診断を可能とする。
【0032】
胃病変が疑われる場合、さらなる臨床的調査は、そうでなければ、低頻度で行われている、胃カメラによる光学的検査のスケジューリングの数及び/又は頻度を増大させることを包含しうる。
【0033】
「バイオマーカーレベルの、対照レベルに照らした逸脱」の決定は、この目的に適する、任意の手段によりなされうる。特に、「逸脱」を決定するために、工程a.で、1つの特定のバイオマーカーについて決定されたレベルが、対照個体において測定されるか、又は対照個体についてプールされた値から得られる対照値等の対照値として提示される、参照値(すなわち、カットオフ値)に照らして、上昇するのか、低下するのかが評価されうる。このような決定の特定の例は、本明細書のTable 2(表4)に示される。別の実施形態に従い、変化の方向、及び/又は、例えば、比として、若しくは倍数において表される、変化の絶対値に応じて、かつ、必要とされる場合、検討される解析状態(胃がん状態又は前胃がん状態)について公知である、変化の方向との比較により、例えば、本明細書のTable 7(表9)に示される通り、上記の工程c.における、判定規則のセットに基づき、患者が、前記患者を胃がん状態の危険性がある状態にし、かつ/又はこれと関連するさらなる医学的検査を必要とする病変を有するのかどうかに関して結論づけることができる。実際に、本明細書で示される通り、相対値である測定値をもたらす、非ターゲティング型質量分析実験等の実験もやはり、疾患段階間におけるバイオマーカーレベルの変動(比として表されうる)である、統計学的に有意な情報を、相対的な形でもたらしうる。逆に、測定はまた、例が、本明細書の実験節で示される、非ターゲティング型質量分析実験を使用する場合に必要とされる、相対値間の変動の比較ではなく、互いと比較されうる絶対値をもたらす、定量的(ターゲティング型)質量分析測定を使用しても実行されうる。本発明は、本明細書で規定される通り、アッセイされるパラメータについての逸脱が、絶対参照値に照らして決定されるか、又は別個の疾患段階若しくは健康状態の間でプールされた値の変動間の比較を使用して決定される、いかなる場合においても実行されうる。このような変動は、比として表されうる。例は、本明細書の実験節において提示される。
【0034】
特定の実施形態に従い、上記で規定された工程a.は、IL-8タンパク質レベル及びmtDNAレベルである2つのバイオマーカーを包含し、PGK1、CFP、IGFALS、KRT19、SPRR1A、CPA4、CA2、SERPINA5、MAN2A1、KIF20B、SPEN、JUP、KRT6C、CDSN、KPRP、F13A1、SAA1(SAA2)、LBP、DSP、KRT2、KRT14、ARG1、S100A12、ATAD3B、MAN1A1、HAL、DCD、C7、HP、LEP、IL-17、TNFアルファ、USF1、USF2、SELE、及びMSLNの中から選択された、1つ又は複数のバイオマーカーと更に組み合わされた、少なくとも3つのバイオマーカーのレベルを決定する工程からなり、任意選択で、IL-8タンパク質レベル及びmtDNAレベルである2つのバイオマーカーを包含し、PGK1、CFP、IGFALS、KRT19、SPRR1A、CPA4、CA2、SERPINA5、MAN2A1、KIF20B、SPEN、JUP、KRT6C、CDSN、KPRP、F13A1、SAA1(SAA2)、LBP、DSP、KRT2、KRT14、ARG1、S100A12、ATAD3B、MAN1A1、HAL、DCD、C7、HP、LEP、IL-17、TNFアルファ、USF1、USF2、SELE、EGFR、STAT3、及びMSLNの中から選択される1つ又は複数のバイオマーカーと更に組み合わされた、少なくとも3つのバイオマーカーのレベルを決定する工程からなる。
【0035】
特定の実施形態に従い、工程a.は:
- CFP、IGFALS、KRT19、SPRR1A、CPA4、CA2、SERPINA5、MAN2A1、KIF20B、SPEN、JUP、KRT6C、CDSN、KPRP、F13A1、SAA1(SAA2)、LBP、DSP、KRT2、KRT14、ARG1、S100A12、ATAD3B、MAN1A1、HAL、DCD、C7、HP、LEP、IL-8、IL-17、TNFアルファ、USF1、USF2、SELE、MSLN、及びmtDNAのレベルの中から選択される1つ又は複数のバイオマーカーと更に組み合わされた、PGK1のレベル;
- PGK1、IGFALS、KRT19、SPRR1A、CPA4、CA2、SERPINA5、MAN2A1、KIF20B、SPEN、JUP、KRT6C、CDSN、KPRP、F13A1、SAA1(SAA2)、LBP、DSP、KRT2、KRT14、ARG1、S100A12、ATAD3B、MAN1A1、HAL、DCD、C7、HP、LEP、IL-8、IL-17、TNFアルファ、USF1、USF2、SELE、MSLN、及びmtDNAのレベルの中から選択される1つ又は複数のバイオマーカーと更に組み合わされた、CFPのレベル;
- PGK1、CFP、KRT19、SPRR1A、CPA4、CA2、SERPINA5、MAN2A1、KIF20B、SPEN、JUP、KRT6C、CDSN、KPRP、F13A1、SAA1(SAA2)、LBP、DSP、KRT2、KRT14、ARG1、S100A12、ATAD3B、MAN1A1、HAL、DCD、C7、HP、LEP、IL-8、IL-17、TNFアルファ、USF1、USF2、SELE、MSLN、及びmtDNAのレベルの中から選択される1つ又は複数のバイオマーカーと更に組み合わされた、IGFALSのレベル;
- PGK1、CFP、IGFALS、SPRR1A、CPA4、CA2、SERPINA5、MAN2A1、KIF20B、SPEN、JUP、KRT6C、CDSN、KPRP、F13A1、SAA1(SAA2)、LBP、DSP、KRT2、KRT14、ARG1、S100A12、ATAD3B、MAN1A1、HAL、DCD、C7、HP、LEP、IL-8、IL-17、TNFアルファ、USF1、USF2、SELE、MSLN、及びmtDNAのレベルの中から選択される1つ又は複数のバイオマーカーと更に組み合わされた、KRT19のレベル;
- PGK1、CFP、IGFALS、KRT19、CPA4、CA2、SERPINA5、MAN2A1、KIF20B、SPEN、JUP、KRT6C、CDSN、KPRP、F13A1、SAA1(SAA2)、LBP、DSP、KRT2、KRT14、ARG1、S100A12、ATAD3B、MAN1A1、HAL、DCD、C7、HP、LEP、IL-8、IL-17、TNFアルファ、USF1、USF2、SELE、MSLN、及びmtDNAのレベルの中から選択される1つ又は複数のバイオマーカーと更に組み合わされた、SPRR1Aのレベル;
- PGK1、CFP、IGFALS、KRT19、SPRR1A、CA2、SERPINA5、MAN2A1、KIF20B、SPEN、JUP、KRT6C、CDSN、KPRP、F13A1、SAA1(SAA2)、LBP、DSP、KRT2、KRT14、ARG1、S100A12、ATAD3B、MAN1A1、HAL、DCD、C7、HP、LEP、IL-8、IL-17、TNFアルファ、USF1、USF2、SELE、MSLN、及びmtDNAのレベルの中から選択される1つ又は複数のバイオマーカーと更に組み合わされた、CPA4のレベル;
- PGK1、CFP、IGFALS、KRT19、SPRR1A、CPA4、SERPINA5、MAN2A1、KIF20B、SPEN、JUP、KRT6C、CDSN、KPRP、F13A1、SAA1(SAA2)、LBP、DSP、KRT2、KRT14、ARG1、S100A12、ATAD3B、MAN1A1、HAL、DCD、C7、HP、LEP、IL-8、IL-17、TNFアルファ、USF1、USF2、SELE、MSLN、及びmtDNAのレベルの中から選択される1つ又は複数のバイオマーカーと更に組み合わされた、CA2のレベル;
- PGK1、CFP、IGFALS、KRT19、SPRR1A、CPA4、CA2、MAN2A1、KIF20B、SPEN、JUP、KRT6C、CDSN、KPRP、F13A1、SAA1(SAA2)、LBP、DSP、KRT2、KRT14、ARG1、S100A12、ATAD3B、MAN1A1、HAL、DCD、C7、HP、LEP、IL-8、IL-17、TNFアルファ、USF1、USF2、SELE、MSLN、及びmtDNAのレベルの中から選択される1つ又は複数のバイオマーカーと更に組み合わされた、SERPINA5のレベル;
- PGK1、CFP、IGFALS、KRT19、SPRR1A、CPA4、CA2、SERPINA5、KIF20B、SPEN、JUP、KRT6C、CDSN、KPRP、F13A1、SAA1(SAA2)、LBP、DSP、KRT2、KRT14、ARG1、S100A12、ATAD3B、MAN1A1、HAL、DCD、C7、HP、LEP、IL-8、IL-17、TNFアルファ、USF1、USF2、SELE、MSLN、及びmtDNAのレベルの中から選択される1つ又は複数のバイオマーカーと更に組み合わされた、MAN2A1のレベル;
- PGK1、CFP、IGFALS、KRT19、SPRR1A、CPA4、CA2、SERPINA5、MAN2A1、SPEN、JUP、KRT6C、CDSN、KPRP、F13A1、SAA1(SAA2)、LBP、DSP、KRT2、KRT14、ARG1、S100A12、ATAD3B、MAN1A1、HAL、DCD、C7、HP、LEP、IL-8、IL-17、TNFアルファ、USF1、USF2、SELE、MSLN、及びmtDNAのレベルの中から選択される1つ又は複数のバイオマーカーと更に組み合わされた、KIF20Bのレベル;
- PGK1、CFP、IGFALS、KRT19、SPRR1A、CPA4、CA2、SERPINA5、MAN2A1、KIF20B、JUP、KRT6C、CDSN、KPRP、F13A1、SAA1(SAA2)、LBP、DSP、KRT2、KRT14、ARG1、S100A12、ATAD3B、MAN1A1、HAL、DCD、C7、HP、LEP、IL-8、IL-17、TNFアルファ、USF1、USF2、SELE、MSLN、及びmtDNAのレベルの中から選択される1つ又は複数のバイオマーカーと更に組み合わされた、SPENのレベル;
- PGK1、CFP、IGFALS、KRT19、SPRR1A、CPA4、CA2、SERPINA5、MAN2A1、KIF20B、SPEN、KRT6C、CDSN、KPRP、F13A1、SAA1(SAA2)、LBP、DSP、KRT2、KRT14、ARG1、S100A12、ATAD3B、MAN1A1、HAL、DCD、C7、HP、LEP、IL-8、IL-17、TNFアルファ、USF1、USF2、SELE、MSLN、及びmtDNAのレベルの中から選択される1つ又は複数のバイオマーカーと更に組み合わされた、JUPのレベル;
- PGK1、CFP、IGFALS、KRT19、SPRR1A、CPA4、CA2、SERPINA5、MAN2A1、KIF20B、SPEN、JUP、CDSN、KPRP、F13A1、SAA1(SAA2)、LBP、DSP、KRT2、KRT14、ARG1、S100A12、ATAD3B、MAN1A1、HAL、DCD、C7、HP、LEP、IL-8、IL-17、TNFアルファ、USF1、USF2、SELE、MSLN、及びmtDNAのレベルの中から選択される1つ又は複数のバイオマーカーと更に組み合わされた、KRT6Cのレベル;
- PGK1、CFP、IGFALS、KRT19、SPRR1A、CPA4、CA2、SERPINA5、MAN2A1、KIF20B、SPEN、JUP、KRT6C、KPRP、F13A1、SAA1(SAA2)、LBP、DSP、KRT2、KRT14、ARG1、S100A12、ATAD3B、MAN1A1、HAL、DCD、C7、HP、LEP、IL-8、IL-17、TNFアルファ、USF1、USF2、SELE、MSLN、及びmtDNAのレベルの中から選択される1つ又は複数のバイオマーカーと更に組み合わされた、CDSNのレベル;
- PGK1、CFP、IGFALS、KRT19、SPRR1A、CPA4、CA2、SERPINA5、MAN2A1、KIF20B、SPEN、JUP、KRT6C、CDSN、F13A1、SAA1(SAA2)、LBP、DSP、KRT2、KRT14、ARG1、S100A12、ATAD3B、MAN1A1、HAL、DCD、C7、HP、LEP、IL-8、IL-17、TNFアルファ、USF1、USF2、SELE、MSLN、及びmtDNAのレベルの中から選択される1つ又は複数のバイオマーカーと更に組み合わされた、KPRPのレベル;
- PGK1、CFP、IGFALS、KRT19、SPRR1A、CPA4、CA2、SERPINA5、MAN2A1、KIF20B、SPEN、JUP、KRT6C、CDSN、KPRP、SAA1(SAA2)、LBP、DSP、KRT2、KRT14、ARG1、S100A12、ATAD3B、MAN1A1、HAL、DCD、C7、HP、LEP、IL-8、IL-17、TNFアルファ、USF1、USF2、SELE、MSLN、及びmtDNAのレベルの中から選択される1つ又は複数のバイオマーカーと更に組み合わされた、F13A1のレベル;
- PGK1、CFP、IGFALS、KRT19、SPRR1A、CPA4、CA2、SERPINA5、MAN2A1、KIF20B、SPEN、JUP、KRT6C、CDSN、KPRP、F13A1、LBP、DSP、KRT2、KRT14、ARG1、S100A12、ATAD3B、MAN1A1、HAL、DCD、C7、HP、LEP、IL-8、IL-17、TNFアルファ、USF1、USF2、SELE、MSLN、及びmtDNAのレベルの中から選択される1つ又は複数のバイオマーカーと更に組み合わされた、SAA1(SAA2)のレベル(本段落の文脈では、SAA1(SAA2)とは、「SAA1」又は「SAA2」を意味する(しかし、この場合、リストから漏れる、SAA1又はSAA2のそれぞれである、他のバイオマーカーも追加されるか、又は、本段落の文脈では、SAA1(SAA2)とは、「SAA1及びSAA2」を意味する場合がある));
- PGK1、CFP、IGFALS、KRT19、SPRR1A、CPA4、CA2、SERPINA5、MAN2A1、KIF20B、SPEN、JUP、KRT6C、CDSN、KPRP、F13A1、SAA1(SAA2)、DSP、KRT2、KRT14、ARG1、S100A12、ATAD3B、MAN1A1、HAL、DCD、C7、HP、LEP、IL-8、IL-17、TNFアルファ、USF1、USF2、SELE、MSLN、及びmtDNAのレベルの中から選択される1つ又は複数のバイオマーカーと更に組み合わされた、LBPのレベル;
- PGK1、CFP、IGFALS、KRT19、SPRR1A、CPA4、CA2、SERPINA5、MAN2A1、KIF20B、SPEN、JUP、KRT6C、CDSN、KPRP、F13A1、SAA1(SAA2)、LBP、KRT2、KRT14、ARG1、S100A12、ATAD3B、MAN1A1、HAL、DCD、C7、HP、LEP、IL-8、IL-17、TNFアルファ、USF1、USF2、SELE、MSLN、及びmtDNAのレベルの中から選択される1つ又は複数のバイオマーカーと更に組み合わされた、DSPのレベル;
- PGK1、CFP、IGFALS、KRT19、SPRR1A、CPA4、CA2、SERPINA5、MAN2A1、KIF20B、SPEN、JUP、KRT6C、CDSN、KPRP、F13A1、SAA1(SAA2)、LBP、DSP、KRT14、ARG1、S100A12、ATAD3B、MAN1A1、HAL、DCD、C7、HP、LEP、IL-8、IL-17、TNFアルファ、USF1、USF2、SELE、MSLN、及びmtDNAのレベルの中から選択される1つ又は複数のバイオマーカーと更に組み合わされた、KRT2のレベル;
- PGK1、CFP、IGFALS、KRT19、SPRR1A、CPA4、CA2、SERPINA5、MAN2A1、KIF20B、SPEN、JUP、KRT6C、CDSN、KPRP、F13A1、SAA1(SAA2)、LBP、DSP、KRT2、ARG1、S100A12、ATAD3B、MAN1A1、HAL、DCD、C7、HP、LEP、IL-8、IL-17、TNFアルファ、USF1、USF2、SELE、MSLN、及びmtDNAのレベルの中から選択される1つ又は複数のバイオマーカーと更に組み合わされた、KRT14のレベル;
- PGK1、CFP、IGFALS、KRT19、SPRR1A、CPA4、CA2、SERPINA5、MAN2A1、KIF20B、SPEN、JUP、KRT6C、CDSN、KPRP、F13A1、SAA1(SAA2)、LBP、DSP、KRT2、KRT14、S100A12、ATAD3B、MAN1A1、HAL、DCD、C7、HP、LEP、IL-8、IL-17、TNFアルファ、USF1、USF2、SELE、MSLN、及びmtDNAのレベルの中から選択される1つ又は複数のバイオマーカーと更に組み合わされた、ARG1のレベル;
- PGK1、CFP、IGFALS、KRT19、SPRR1A、CPA4、CA2、SERPINA5、MAN2A1、KIF20B、SPEN、JUP、KRT6C、CDSN、KPRP、F13A1、SAA1(SAA2)、LBP、DSP、KRT2、KRT14、ARG1、ATAD3B、MAN1A1、HAL、DCD、C7、HP、LEP、IL-8、IL-17、TNFアルファ、USF1、USF2、SELE、MSLN、及びmtDNAのレベルの中から選択される1つ又は複数のバイオマーカーと更に組み合わされた、S100A12のレベル;
- PGK1、CFP、IGFALS、KRT19、SPRR1A、CPA4、CA2、SERPINA5、MAN2A1、KIF20B、SPEN、JUP、KRT6C、CDSN、KPRP、F13A1、SAA1(SAA2)、LBP、DSP、KRT2、KRT14、ARG1、S100A12、MAN1A1、HAL、DCD、C7、HP、LEP、IL-8、IL-17、TNFアルファ、USF1、USF2、SELE、MSLN、及びmtDNAのレベルの中から選択される1つ又は複数のバイオマーカーと更に組み合わされた、ATAD3Bのレベル;
- PGK1、CFP、IGFALS、KRT19、SPRR1A、CPA4、CA2、SERPINA5、MAN2A1、KIF20B、SPEN、JUP、KRT6C、CDSN、KPRP、F13A1、SAA1(SAA2)、LBP、DSP、KRT2、KRT14、ARG1、S100A12、ATAD3B、HAL、DCD、C7、HP、LEP、IL-8、IL-17、TNFアルファ、USF1、USF2、SELE、MSLN、及びmtDNAのレベルの中から選択される1つ又は複数のバイオマーカーと更に組み合わされた、MAN1A1のレベル;
- PGK1、CFP、IGFALS、KRT19、SPRR1A、CPA4、CA2、SERPINA5、MAN2A1、KIF20B、SPEN、JUP、KRT6C、CDSN、KPRP、F13A1、SAA1(SAA2)、LBP、DSP、KRT2、KRT14、ARG1、S100A12、ATAD3B、MAN1A1、DCD、C7、HP、LEP、IL-8、IL-17、TNFアルファ、USF1、USF2、SELE、MSLN、及びmtDNAのレベルの中から選択される1つ又は複数のバイオマーカーと更に組み合わされた、HALのレベル;
- PGK1、CFP、IGFALS、KRT19、SPRR1A、CPA4、CA2、SERPINA5、MAN2A1、KIF20B、SPEN、JUP、KRT6C、CDSN、KPRP、F13A1、SAA1(SAA2)、LBP、DSP、KRT2、KRT14、ARG1、S100A12、ATAD3B、MAN1A1、HAL、C7、HP、LEP、IL-8、IL-17、TNFアルファ、USF1、USF2、SELE、MSLN、及びmtDNAのレベルの中から選択される1つ又は複数のバイオマーカーと更に組み合わされた、DCDのレベル;
- PGK1、CFP、IGFALS、KRT19、SPRR1A、CPA4、CA2、SERPINA5、MAN2A1、KIF20B、SPEN、JUP、KRT6C、CDSN、KPRP、F13A1、SAA1(SAA2)、LBP、DSP、KRT2、KRT14、ARG1、S100A12、ATAD3B、MAN1A1、HAL、DCD、HP、LEP、IL-8、IL-17、TNFアルファ、USF1、USF2、SELE、MSLN、及びmtDNAのレベルの中から選択される1つ又は複数のバイオマーカーと更に組み合わされた、C7のレベル;
- PGK1、CFP、IGFALS、KRT19、SPRR1A、CPA4、CA2、SERPINA5、MAN2A1、KIF20B、SPEN、JUP、KRT6C、CDSN、KPRP、F13A1、SAA1(SAA2)、LBP、DSP、KRT2、KRT14、ARG1、S100A12、ATAD3B、MAN1A1、HAL、DCD、C7、LEP、IL-8、IL-17、TNFアルファ、USF1、USF2、SELE、MSLN、及びmtDNAのレベルの中から選択される1つ又は複数のバイオマーカーと更に組み合わされた、HPのレベル;
- PGK1、CFP、IGFALS、KRT19、SPRR1A、CPA4、CA2、SERPINA5、MAN2A1、KIF20B、SPEN、JUP、KRT6C、CDSN、KPRP、F13A1、SAA1(SAA2)、LBP、DSP、KRT2、KRT14、ARG1、S100A12、ATAD3B、MAN1A1、HAL、DCD、C7、HP、IL-8、IL-17、TNFアルファ、USF1、USF2、SELE、MSLN、及びmtDNAのレベルの中から選択される1つ又は複数のバイオマーカーと更に組み合わされた、LEPのレベル;
- PGK1、CFP、IGFALS、KRT19、SPRR1A、CPA4、CA2、SERPINA5、MAN2A1、KIF20B、SPEN、JUP、KRT6C、CDSN、KPRP、F13A1、SAA1(SAA2)、LBP、DSP、KRT2、KRT14、ARG1、S100A12、ATAD3B、MAN1A1、HAL、DCD、C7、HP、LEP、IL-17、TNFアルファ、USF1、USF2、SELE、及びMSLNの中から選択される1つ又は複数のバイオマーカーと更に組み合わされた、IL-8のレベル;
- PGK1、CFP、IGFALS、KRT19、SPRR1A、CPA4、CA2、SERPINA5、MAN2A1、KIF20B、SPEN、JUP、KRT6C、CDSN、KPRP、F13A1、SAA1(SAA2)、LBP、DSP、KRT2、KRT14、ARG1、S100A12、ATAD3B、MAN1A1、HAL、DCD、C7、HP、LEP、IL-8TNF-アルファ、USF1、USF2、SELE、MSLN、及びmtDNAのレベルの中から選択される1つ又は複数のバイオマーカーと更に組み合わされた、IL-17のレベル;
- PGK1、CFP、IGFALS、KRT19、SPRR1A、CPA4、CA2、SERPINA5、MAN2A1、KIF20B、SPEN、JUP、KRT6C、CDSN、KPRP、F13A1、SAA1(SAA2)、LBP、DSP、KRT2、KRT14、ARG1、S100A12、ATAD3B、MAN1A1、HAL、DCD、C7、HP、LEP、IL-8、IL-17、USF1、USF2、SELE、MSLN、及びmtDNAのレベルの中から選択される1つ又は複数のバイオマーカーと更に組み合わされた、TNFアルファのレベル;
- PGK1、CFP、IGFALS、KRT19、SPRR1A、CPA4、CA2、SERPINA5、MAN2A1、KIF20B、SPEN、JUP、KRT6C、CDSN、KPRP、F13A1、SAA1(SAA2)、LBP、DSP、KRT2、KRT14、ARG1、S100A12、ATAD3B、MAN1A1、HAL、DCD、C7、HP、LEP、IL-8、IL-17、TNFアルファ、USF2、SELE、MSLN、及びmtDNAのレベルの中から選択される1つ又は複数のバイオマーカーと更に組み合わされた、USF1のレベル;
- PGK1、CFP、IGFALS、KRT19、SPRR1A、CPA4、CA2、SERPINA5、MAN2A1、KIF20B、SPEN、JUP、KRT6C、CDSN、KPRP、F13A1、SAA1(SAA2)、LBP、DSP、KRT2、KRT14、ARG1、S100A12、ATAD3B、MAN1A1、HAL、DCD、C7、HP、LEP、IL-8、IL-17、TNFアルファ、USF1、SELE、MSLN、及びmtDNAのレベルの中から選択される1つ又は複数のバイオマーカーと更に組み合わされた、USF2のレベル;
- PGK1、CFP、IGFALS、KRT19、SPRR1A、CPA4、CA2、SERPINA5、MAN2A1、KIF20B、SPEN、JUP、KRT6C、CDSN、KPRP、F13A1、SAA1(SAA2)、LBP、DSP、KRT2、KRT14、ARG1、S100A12、ATAD3B、MAN1A1、HAL、DCD、C7、HP、LEP、IL-8、IL-17、TNFアルファ、USF1、USF2、MSLN、及びmtDNAのレベルの中から選択される1つ又は複数のバイオマーカーと更に組み合わされた、SELEのレベル;
- PGK1、CFP、IGFALS、KRT19、SPRR1A、CPA4、CA2、SERPINA5、MAN2A1、KIF20B、SPEN、JUP、KRT6C、CDSN、KPRP、F13A1、SAA1(SAA2)、LBP、DSP、KRT2、KRT14、ARG1、S100A12、ATAD3B、MAN1A1、HAL、DCD、C7、HP、LEP、IL-8、IL-17、TNFアルファ、USF1、USF2、SELE、及びmtDNAのレベルの中から選択される1つ又は複数のバイオマーカーと更に組み合わされた、MSLNのレベル;
- PGK1、CFP、IGFALS、KRT19、SPRR1A、CPA4、CA2、SERPINA5、MAN2A1、KIF20B、SPEN、JUP、KRT6C、CDSN、KPRP、F13A1、SAA1(SAA2)、LBP、DSP、KRT2、KRT14、ARG1、S100A12、ATAD3B、MAN1A1、HAL、DCD、C7、HP、LEP、IL-17、TNFアルファ、USF1、USF2、SELE、及びMSLNの中から選択される1つ又は複数のバイオマーカーと更に組み合わされた、mtDNAのレベル;
- PGK1、CFP、IGFALS、KRT19、SPRR1A、CPA4、CA2、SERPINA5、MAN2A1、KIF20B、SPEN、JUP、KRT6C、CDSN、KPRP、F13A1、SAA1(SAA2)、LBP、DSP、KRT2、KRT14、ARG1、S100A12、ATAD3B、MAN1A1、HAL、DCD、C7、HP、LEP、IL-17、TNFアルファ、USF1、USF2、MSLN、及びSELEの中から選択される1つ又は複数のバイオマーカーと更に組み合わされた、IL-8レベル及びmtDNAレベルのレベル
を決定することを包含しうる。
【0036】
特定の実施形態に従い、バイオマーカーである、EGFR及びSTAT3は、IL-8レベル及びmtDNAレベルが、併せて決定される場合、少なくとも1つの、さらなるバイオマーカーのレベルもまた、決定されることを条件として、上記でリストの、1つ又は複数のバイオマーカーへと追加される。
【0037】
特定の実施形態に従い、「1つ又は複数の」とは、合計3つ、4つ、5つ、又は6つのバイオマーカーを意味する、すなわち、「複数」とは、2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つのバイオマーカーを意味する。
【0038】
特定の態様では、本発明は、選択されるバイオマーカーが、IL-8レベル及びmtDNAレベルとの、厳密な関連からなる実施形態を包含しない。
【0039】
特定の実施形態に従い、アッセイされるバイオマーカーは、Table 4(表6)、Table 5(表7)、Table 6(表8)、Table 7(表9)、Table 8(表10)、Table 9(表11)、Table 10(表12)、Table 11(表13)、若しくはTable 12(表14)、及び/又は図9、11、13、若しくは15のうちのいずれかに描示された組合せにおいて示される通りである。
【0040】
特定の実施形態に従い、アッセイされるバイオマーカーは、S100A12、KIF20B、ARG1、DSP1、又はHALの中から選択される少なくとも1つのバイオマーカーを包含する。S100A12は、胃がん危険性の評価に関与性であることが示されており、KIF20B、ARG1、DSP1、及びHALは、AG/P段階の評価に関与性であることが示されている。選択される場合、これらのマーカーのうちの1つ又は複数は、本明細書で記載されるバイオマーカーの任意の組合せにおいて関連しうる。
【0041】
特定の実施形態に従い、本発明の方法の工程a.は、PGK1、CFP、IGFALS、KRT19、SPRR1A、CPA4、CA2、SERPINA5、MAN2A1、KIF20B、SPEN、JUP、KRT6C、CDSN、KPRP、F13A1、SAA1(SAA2)、LBP、DSP、KRT2、KRT14、ARG1、S100A12、ATAD3B、MAN1A1、HAL、DCD、C7、HP、LEP、IL-8、IL-17、TNFアルファ、USF1、USF2、SELE、MSLN、及びmtDNAのレベルの中から選択された、少なくとも2つのバイオマーカーのレベルを、任意選択で、EGFR及びSTAT3の中から選択された、少なくとも1つのさらなるバイオマーカーと共に決定する工程からなる。特定の実施形態では、本発明の方法の工程a.は、少なくとも2つのバイオマーカーが、PGK1、CFP、IGFALS、KRT19、SPRR1A、CPA4、CA2、SERPINA5、MAN2A1、KIF20B、SPEN、JUP、KRT6C、CDSN、KPRP、F13A1、SAA1(SAA2)、LBP、DSP、KRT2、KRT14、ARG1、S100A12、ATAD3B、MAN1A1、HAL、DCD、C7、HP、LEP、IL-8、IL-17、TNFアルファ、USF1、USF2、SELE、MSLN、及びmtDNAのレベルの中から選択され、任意選択で、第3のバイオマーカーが、EGFR及びSTAT3の中から選択される場合に、少なくとも3つのバイオマーカーのレベルを決定する工程からなる。
【0042】
特定の実施形態に従い、本発明の方法の工程a.は、PGK1、CFP、IGFALS、KRT19、SPRR1A、CPA4、CA2、SERPINA5、MAN2A1、KIF20B、SPEN、JUP、KRT6C、CDSN、KPRP、F13A1、SAA1(SAA2)、LBP、DSP、KRT2、KRT14、ARG1、S100A12、ATAD3B、MAN1A1、HAL、DCD、C7、HP、LEP、IL-8、IL-17、TNFアルファ、USF1、USF2、SELE、MSLN、及びmtDNAのレベルの中から選択される2つのバイオマーカー、並びにEGFR及びSTAT3の中から選択される少なくとも1つのさらなるバイオマーカーを含む、少なくとも3つのバイオマーカーのレベルを決定する工程からなる。
【0043】
特定の実施形態に従い、本発明の方法の工程a.は、PGK1、CFP、IGFALS、KRT19、SPRR1A、CPA4、CA2、SERPINA5、MAN2A1、KIF20B、SPEN、JUP、KRT6C、CDSN、KPRP、F13A1、SAA1(SAA2)、LBP、DSP、KRT2、KRT14、ARG1、S100A12、ATAD3B、MAN1A1、HAL、DCD、C7、HP、LEP、IL-8、IL-17、TNFアルファ、USF1、USF2、SELE、MSLN、EGFR、STAT3、及びmtDNAのレベルの中から選択される少なくとも3つのバイオマーカーのレベルを決定する工程からなる。
【0044】
特定の実施形態に従い、本発明の方法の工程a.は、IGFALS、KRT19、CPA4、CA2、MAN2A1、KIF20B、JUP、F13A1、LBP、KRT14、ARG1、S100A12、ATAD3B、DCD、HP、LEP、IL-8、IL-17、TNFアルファ、USF1、USF2、SELE、MSLN、EGFR、及びSTAT3の中から選択される、少なくとも2つ、好ましくは2つ~6つの間のバイオマーカーのレベルを決定する工程からなる。
【0045】
特定の実施形態に従い、本発明の方法の工程a.は、例えば、図13及びTable 12(表14)に示される通り、IGFALS、KRT19、CA2、MAN2A1、KIF20B、JUP、LBP、ARG1、S100A12、ATAD3B、DCD、HP、LEP、IL-8、IL-17、TNFアルファ、USF1、USF2、SELE、MSLN、EGFR、及びSTAT3の中から選択される、少なくとも2つ、好ましくは2つ~6つの間のバイオマーカー(ELISA実験を介して決定されるバイオマーカー)のレベルを決定する工程からなる。
【0046】
特定の実施形態に従い、本発明の方法の工程a.は、IGFALS、KRT19、CA2、MAN2A1、JUP、ARG1、S100A12、HP、LEP、IL-17、TNFアルファ、USF2、SELE、MSLN、及びEGFRの中から選択される、少なくとも2つ、好ましくは2つ~6つの間のバイオマーカーのレベルを決定する工程からなる。
【0047】
特定の実施形態に従い、少なくとも2つのバイオマーカーのレベルの、別個の疾患段階/健康状態の間でプールされた値の変動:例えば、Table 7(表9)の間の比較を使用して決定されるそれぞれの、対応する基準のレベルからの逸脱は、比(倍数変化へと変換されうる;本記載を参照されたい)として表される、別個の疾患段階/健康状態の間のタンパク質レベルの変動を示す。タンパク質であるDCDについて、健常プールと、前新生物患者プールとの間における、log2による比の平均変化が、0.76であることが観察され、これは、2.54×10-2のp値と関連することが見出されていることが見られうる。これは、この比の変化(変化の方向、及び、変化のおよその大きさ)が、タンパク質であるDCDのレベルの、健常患者に照らした逸脱が存在することを結論づけるのに有意であると見なされることを意味する。同様に、タンパク質であるLEPについて、健常プールと、前新生物患者プールとの間における、log2による比の平均変化が、-0.64であることが観察され、これは、5.91×10-2のp値と関連することが見出されていることが見られうる。これは、この比の変化(変化の方向、及び、変化のおよその大きさ)が、タンパク質であるLEPのレベルの、健常患者に照らした逸脱が存在することを結論づけるのに有意であると見なされることを意味する。DCD及びLEPの両方のタンパク質レベルが、アッセイされ、いずれのパラメータも、参照値として収集された健常患者のプールの平均値に照らした、上記で示された、変化の方向、及び、変化のおよその大きさにおける逸脱を示す状況では、前記2つのバイオマーカーのレベルは、それぞれ、それらの対照レベルから逸脱し、観察された変動が、胃前新生物の危険性を指し示すという意味において、試料が採取された患者は、胃がん状態の危険性があると結論づけられうると言われる場合がある。この例は、Table 7(表9)から引き出されうる教示:このような推論は、描示される全てのバイオマーカー、及びアッセイされる全ての状態についてなされうるという教示を例示するのに提示される。Table 8(表10)はまた、前新生物及びGCを予測するシグネチャーにおいて同定されたバイオマーカーの血漿中レベルについての値も、被験状態について、健常であることが決定された個体の試料から収集されうる基準値と、たやすく比較されうる、当業者のための例示的参照として提示する。
【0048】
特定の実施形態に従い、本記載の任意の部分において適用可能であり、医学統計学の分野における常套的な慣行に沿う値であるP値は、値が、0.05を下回る(P値<0.05)、場合によって、当業者により察知される通り、0.05以下である場合に統計学的に有意な検定を規定すると考えられる。
【0049】
特定の実施形態に従い、アッセイされる各バイオマーカーは、アッセイされる状態又はいくつかの状態の中における、1つの状態について、それが、0.5を上回る場合に、有意な予測力を指し示し、最大で、1と等しい場合に、完全な予測を指し示す、AUC値と関連づけられうる判定規則に含まれうる。特定の実施形態に従い、アッセイされるバイオマーカーは、アッセイされる状態について、少なくとも0.5、好ましくは、少なくとも0.6、又は少なくとも0.65、又は少なくとも0.7、又は少なくとも0.75、又は少なくとも0.8、又は少なくとも0.85、又は少なくとも0.9、又は少なくとも0.95のAUC値、特に、1のAUC値と関連することが決定されうる検査をもたらす。当業者には、AUC値を計算する手段が公知であり、本記載では、完全な指針が提示される。いくつかのマーカーの組合せについてもやはり、AUC値は、第1の、多項ロジスティック回帰モデルの推定(例示的な、非限定的プロトコールについては、実験節を参照されたい)のに続く、推定された多項ロジスティック回帰モデル(本記載における多項ロジスティック回帰モデルを参照されたい)に基づく、判定規則の決定を使用して計算されうる。加えて、モデルが、全ての疾患段階に、どのくらいよく適合するのかを決定することを可能とする統計学的解析は、残差逸脱度基準により使用される。例示的指針について、実験節が参照される。
【0050】
特定の実施形態に従い、とりわけ、本明細書で記載されるin vitro方法に、本明細書で記載される、1つ又は複数のカットオフ値に照らした検査に帰せられうる、特異度パラメータ及び感度パラメータを伴う場合に、本明細書で記載されるin vitro方法は、胃がん状態又は前胃がん状態を予後診断又は診断するための方法であると言われうるが、必ずしもそうではない。本明細書では、特異度パラメータ及び感度パラメータと関連する、可能な判定転帰の例が提示される(例えば、単一のパラメータ若しくは二重測定について、Table 2(表4)にまとめられたデータ、又は二重測定若しくは三重測定について、Table 4(表6)若しくはTable 5(表7)に示されたELISA結果である。特異度及び感度は、判定のために使用されるカットオフ値に応じて変動する場合があり、ROC曲線を使用する、最適化された形で規定されうる)。
【0051】
「胃がん状態若しくは前胃がん状態を患い易いか、又は胃がん状態に発展し易い状態を患い易いヒト患者」は、例えば、実施者に、胃がんの病因が、存在しうるか、又は存在するようになりうることを指し示す、身体的手がかり、家族歴、又は愁訴のために、胃がんの発症についての危険性因子を提示する患者を包含しうる。また、それは、ピロリ菌感染について、あらかじめ根絶された、胃食道逆流を伴う患者、慢性胃痛を伴う患者のほか、ピロリ菌血清陽性対象、又はピロリ菌血清陰性対象も含む。この規定はまた、処置下にある場合であれ、そうでない場合であれ、胃がん状態に発展し易い状態を有するか、又は胃がん状態が告知された個体であって、モニタリングされるべき個体も包含する。本発明の方法の実施のために適格である、特定の患者群は、胃炎と関連する慢性炎症を伴う患者群、又は胃食道逆流を伴う患者、慢性胃痛を伴う患者のほか、ピロリ菌血清陽性対象である。上記で言及された通り、「胃がん状態を患い易いか、又は胃がん状態に発展し易い状態を患い易い患者」は、逆にまた、感染根絶の成功のために、採取時及び/又は検査時において、ピロリ菌陰性でもありうる。上記における規定はまた、慢性萎縮性胃炎、又は臨床追跡を必要とする、他の胃病変について、既に診断された患者も含む。しかし、本発明は、血液中又は血漿中のバイオマーカーレベルの決定に基づき、容易に、かつ、警告的臨床徴候を伴わずに、分子的疾患段階等、胃がんの早期検出を目的としているので、この規定はまた、胃がんと一般に関連する、任意の臨床手がかりに照らして、完全に無症状性である患者も包含する。
【0052】
「胃がん状態」により、医学的慣行に従い従来的に診断される胃がんが意図される。それは、噴門がん(上部胃がん)、及び非噴門がん(中部胃がん及び遠位部胃がん)の両方を含む。「胃がん」は、びまん性胃腺癌、腸胃腺癌、及びMALTリンパ腫を包含しうる。MALTリンパ腫(又はMALToma)は、胃粘膜関連リンパ組織(MALT)に関するリンパ腫の形態である。MALTリンパ腫は、ピロリ菌の存在から生じる慢性炎症と、高頻度で(しかし、全ての症例においてではない)関連するか、又はピロリ菌の存在と連関する。胃腺癌は、胃粘膜の腺上皮に由来する、悪性上皮腫瘍である。胃腺癌は、GCの大部分を表す、すなわち、診断されたGCのうちの90%を超えるGCは、腺癌である。胃腺癌の2つの型:腸型又はびまん型は、組織学的区別に基づく。異なる段階は、患者のがんの広がりについて記載する、公知の分類システム、例えば、「TNM Classification of Malignant Tumours」による病期分類システムを使用して、GCと関連づけられうる。この種の分類を使用して、例えば、病期0、I、II、III、又はIVを区別することができる。病期0において、胃がんは、胃粘膜の内膜に限定され、極めて早期に見出された場合、化学療法又は放射線処置を必要とせずに、手術により処置可能でありうる。病期I及びIIにおいて、疾患は、胃粘膜の深層に浸潤し、場合によって、化学療法及び/又は放射線処置を随伴する、手術により処置されうる。病期IIIにおいて、疾患は、近傍の他の組織、及び遠隔のリンパ節に浸潤している場合がある。病期IVにおいて、疾患は、近傍組織及びより遠隔のリンパ節へと拡散しているか、又は他の臓器へと転移している。そうでないことが指し示されない限りにおいて、又は文脈によりそうでないことが指示されない限りにおいて、本記載では、胃がんは、一般に、「GC」と略記される。
【0053】
ピロリ菌感染に誘導されることが多いが、常にそうであるわけではない、腸型のGCは、一連の前駆体病変を介して発症する。したがって、「前胃がん状態」により、Corre及びPiazulo,J.、Dig.Dis、2012、13:2~9において記載されている通り、酸化分子種の、高度の産生と関連する、胃粘膜の慢性炎症に対応する、非萎縮性胃炎(本明細書では、NAGと略記される)、又は萎縮性胃炎(AG)~前新生物(P)の範囲の事象が意図される。AGは、胃腺の喪失に対応する、前がん性カスケードの、最初の認識可能な段階である。前新生物は、胃がん段階に入る前の、腸上皮化生(IM)及び異形成を包含する。IM及び異形成は、前新生物性病変として認識される。IMは、腸細胞表現型を獲得する、胃上皮細胞の変化に対応する。IMは、悪性腫瘍の素因となる状態である。異形成はまた、分泌腺の、不規則な特異的構造を伴う、非侵襲性新生物としても言及される。
【0054】
上述の通り、ピロリ菌感染は、GCについての主要な危険性因子であるので、「胃がん状態に発展し易い状態」は、例えば、患者におけるピロリ菌感染を包含する。
【0055】
特定の態様に従い、本発明は、この趣旨で、胃がんの直前における、すなわち、被験患者のコホートを参照することにより、本明細書ではまた、AG/Pとも称される、萎縮性胃炎(AG)~前新生物(P)の段階又は状態における、本記載に従う危険性、とりわけ、ヒト患者が有する、胃がん状態を発症する危険性、又はヒト患者が有する、胃がん状態を有する危険性の評価について、より正確に探索する、特に、被験個体に影響を及ぼす、前胃がん状態についての予後診断法又は診断法について探索する。
【0056】
したがって、本発明はまた、ヒト患者が、萎縮性胃炎/前新生物(AG/P)を有する危険性について評価するための方法でもあり、特に、被験患者における萎縮性胃炎/前新生物(AG/P)状態を予後診断又は診断するための方法に関する。
【0057】
具体的な実施形態では、転帰が許容する場合、本発明は、被験患者における萎縮性胃炎/前新生物(AG/P)状態を予後診断又は診断するための方法である。
【0058】
特定の実施形態では、本発明は、転帰が許容する場合、ヒト患者が、非萎縮性胃炎(NAG)、又は萎縮性胃炎/前新生物(AG/P)、又は胃がん(GC)を有する危険性について評価するための方法であり、特に、本発明は、被験患者における、非萎縮性胃炎(NAG)、萎縮性胃炎/前新生物(AG/P)、胃がん(GC)、又は健常状態の存在を識別するための方法、特に、とりわけ、これらの状態のうちの1つ又は他の状態を、同時に予後診断又は診断するための方法である方法に関する。
【0059】
本明細書で記載される方法は、患者についての生物学的パラメータの検出又はモニタリングに基づき、かつ/又はこのような患者の健康状態についての情報の提供を可能とする。感度/感度値が、なされる検査と関連しうる場合、本発明の方法は、求められる状態についての診断を可能とする方法であると規定されうる。
【0060】
したがって、本明細書で記載される探索法は、少なくとも、試料が、本明細書で記載される方法に従いアッセイされる患者における、前胃がん状態の存在の危険性を、非統計学的規定に従い決定すること、又はこの発症若しくは危険性の可能性を決定することを可能とする。異なる実施形態に従い、関与性が、さらなる検査又は臨床的調査に依拠せず、収集された値の、関与性の対照値との比較が、直接的な結果としての、前胃がん状態の存在又は非存在について結論づけることを可能とする場合、前記決定は、患者における、前胃がん状態の予後診断又は診断に達する。当技術分野における一般的な慣行に従い、このような判定と関連する感度/感度値は、当技術分野における、一般的な知見に従い、とりわけ、本明細書の後出において論じられる、ROC曲線の使用により最適化され、保持される、閾値の選出しと符合する。
【0061】
特定の実施形態に従い、本発明の方法は、胃がん状態若しくは前胃がん状態を患うか、又は胃がん状態に発展し易い状態を患うヒト患者から採取された血液試料に対して実行される。
【0062】
特定の実施形態では、本発明は、血漿中バイオマーカーの測定に基づく。したがって、生物学的試料は、血液試料の場合もあり、血漿試料の場合もあり、血清試料の場合もある。
【0063】
タンパク質バイオマーカーが求められる場合、本発明は、ヒト対象から既に得られた、生物学的血漿試料に基づき実行されるので有利である。この試料は、上記で規定された通り、胃がん状態を患い易いか、又は前胃がん状態若しくは胃がん状態に発展し易い状態を患い易い個体から、分離(回収、採取)されうる。個体は、胃がん、又は胃がん(前新生物性状態又は前胃がん状態)をもたらしうる病変について、既に診断されている場合もあり、そうでない場合もあり、これらの個体は、任意選択で、手術及び/又は化学療法及び/又は放射線処置等の処置下に置かれている場合もある。
【0064】
血漿試料とは、血液試料のうちの、血液が含有する、細胞及びタンパク質を運ぶ液体部分である。血清とは、凝血因子を伴わない血漿であることが注目される。特定の実施形態に従い、関与性の場合、本発明はまた、血清試料である試料に対しても実行されうる。
【0065】
本発明は、個体の血漿中に見出されるタンパク質レベルの測定に焦点を絞るが、特定の実施形態に従い、ミトコンドリアDNA(本明細書では、「mtDNA」と略記される)レベルもまた測定されうる。これは、血液中に見出される白血球のmtDNA(細胞を含有しない血漿試料中のmtDNAであるが)について検査することによりなされるので好都合である。しかし、mtDNAは、循環血液中に見出されるので、検討されるmtDNAのレベルはまた、「血漿中」バイオマーカーであると言われる場合もある。mtDNAのレベルが測定される、好ましい実施形態に従い、mtDNAのレベルは、循環血液中mtDNAについて検査することにより決定され、特に、白血球のmtDNAについて検査することにより決定される。
【0066】
特定の実施形態に従い、被験個体から採取された生物学的試料は、血液試料である。より特定の実施形態に従い、このような血液試料は、全DNAが調製及び精製される白血球を分離するように、あらかじめ処理される。次いで、回収された、白血球の全DNA調製物に対して、mtDNAのレベルの測定が、必要な場合、分離された白血球を含有した、同じ試料の血漿中に見出される、他の血漿中バイオマーカーの測定と並行して実施されうる。
【0067】
本発明は、より特定すると、上記の工程a.で規定された通りに、任意選択で、本記載で開示される、任意の実施形態において記載される条件を伴い、少なくとも、PGK1、CFP、IGFALS、KRT19、SPRR1A、CPA4、CA2、SERPINA5、MAN2A1、KIF20B、SPEN、JUP、KRT6C、CDSN、KPRP、F13A1、SAA1(SAA2)、LBP、DSP、KRT2、KRT14、ARG1、S100A12、ATAD3B、MAN1A1、HAL、DCD、C7、HP、LEP、IL-8、IL-17、TNFアルファ、USF1、USF2、SELE、EGFR、STAT3、及びMSLNタンパク質のレベルの中から選択される少なくとも2つのバイオマーカーのレベルの測定に基づく。
【0068】
これらのマーカーは、タンパク質であるので、被験個体から得られた試料に基づき、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)検査、又は、代替的に、質量分析により測定されると好都合でありうる。別の実施形態に従い、これらのマーカーは、文献における、当業者に入手可能な指針に従い、Luminex実験を介しても測定されうる。
【0069】
これらのタンパク質のうちの一部は、質量分析(MS)ベースのプロテオミクスによる、血漿タンパク質の大スケールスクリーニングを介して、本発明の目的で、適切な標的であることが決定された。特定の実施形態では、本明細書のTable 6(表8)又は図11に示されたタンパク質の組合せは、実験節に示されるプロトコールを使用して決定される、良好な予測AUC値であって、被験個体における、NAG段階、若しくはAG/P段階、若しくはGC段階、又はNAG状態、若しくはAG/P状態、若しくはGC状態の存在下にあることの危険性を識別するための予測AUC値と関連する、目的の、少なくとも2つの血漿中バイオマーカーの組合せ、特に、目的の、3つの血漿中バイオマーカーの組合せである。血漿中バイオマーカーの組合せは、図9における、mtDNAレベルを含む、いわゆる「ELISA」バイオマーカーに照らして提供される。一部のバイオマーカーは、ELISAを介して確認されており、有望なバイオマーカーは、本明細書で概括される(Table 8~12(表10~14)を参照されたい)。
【0070】
血漿中のタンパク質レベルは、非限定例として述べると、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)(Engvall E及びPerlman P、1971、Immunochemistry、8:871~874)を介する等、当技術分野で公知の方法を使用して測定されうる。血漿中タンパク質の例は、本明細書の実験節に提示される(例えば、選択された、異なるバイオマーカー候補物質の血漿中レベルは、Duo Set RD system社又はMyBioSource社から市販されているELISAアッセイを介して査定されうる。インターロイキン8(IL-8)(参照番号:DY208);インターロイキン17(IL-17)(参照番号:DY317);腫瘍壊死因子α(TNF-α)(参照番号:DY210);メソテリン(MSLN)(参照番号:DY3265);E-セレクチン(SELE)(参照番号:DY724);ハプトグロビン(HP)(参照番号:DY8465);レプチン(LEP)(参照番号:DY398);並びに上流刺激因子1及び上流刺激因子2(USF1;参照番号:MBS9342772、及びUSF2;参照番号:MBS9321077;MyBioSource社))。当業者は、試料中の、所望のタンパク質レベルを測定するための、適正なELISA試薬を、たやすく決定及び検索しうる。
【0071】
Luminexアッセイは、マイクロプレートフォーマットにおける、ビーズベースのシンプレックスイムノアッセイシステム、又はマルチプレックスイムノアッセイシステムである。マルチプレックス形態において、Luminexアッセイは、単一の試料中で、多くの標的、例えば、最大で、500の標的を、同時に検出する一方、ビーズへとカップリングされた、標的の捕捉を可能とする薬剤は、異なる種類、すなわち、所望の標的に特異的な抗体、リガンド、及び核酸を含むタンパク質でありうる(単一のアッセイ内において)。Luminexアッセイにおいて使用されうるビーズは、異なるスペクトルアドレス(いわゆる「色コード」)、例えば、比が異なる、2つのフルオロフォアを伴う、内在的標識化ビーズを有しうる。ビーズはまた、磁性ビーズの場合もあり、非磁性ビーズの場合もある。Luminexアッセイでは、解析される試料は、抗体等の解析物特異的捕捉剤で、あらかじめコーティングされているか、又はコーティングされる、色コード化された、磁性ビーズ又は非磁性ビーズの混合物へと添加される。例えば、薬剤が、抗体である場合、目的の解析物に特異的な、ビオチニル化検出抗体が添加され、抗体が、目的の解析物に結合された後で、抗体-抗原サンドイッチを形成する。ビオチニル化検出抗体に結合するように、フィコエリトリン(PE)コンジュゲートストレプトアビジンも添加されうる。次いで、ビーズが、デュアルレーザーフローベースの検出計器上で読み取られる、すなわち、1つのレーザーが、ビーズを分類し、検出される解析物を決定する。第2のレーザーは、結合された解析物の量と正比例する、PE由来シグナルの大きさを決定する。磁気ビーズがまた、磁気ビーズを、単層内に保持するのにも使用される一方、例えば、発光ダイオード(LED)により発光したスペクトル的に別個の2つの光が、ビーズを照らし出す。1つの光が、検出される解析物を識別し、第2の光が、PE由来シグナルの大きさを決定する。Luminexは、ハイスループット実験を可能とし、上記で言明された、複数の標的の濃度の変化を探索する場合に強力である。Luminex実験を実行するためのキットは、捕捉抗体等、使用される捕捉剤へとコンジュゲートされるか、又はコンジュゲートされうる捕捉ビーズを包含しうる。ビーズは、色分けビーズの場合もあり、かつ/又は磁性若しくは非磁性ビーズの場合もあり、かつ/又はカルボキシル化ビーズの場合もある。キットは、ビーズが、カルボキシル化ビーズである場合、抗体等の捕捉剤を、ビーズへと接合させるためのアミンカップリングキットを含みうる。キットは、検出(二次)抗体としてのビオチニル化抗体を含む場合もあり、かつ/又はビオチニル化抗体を明らかにするフィコエリトリン(PE)コンジュゲートストレプトアビジンを含む場合もある。このようなアッセイは、少数を挙げれば、BioRad社、ThermoFischerScientific社、Luminex社、又はR&D Systems社等の製造元により提供される指示書及びガイドライン、並びに文献において詳述されている、当技術分野における常套的な知見に従い実行されうる。
【0072】
タンパク質バイオマーカーの「レベルを測定する」方式は、これを測定するために使用される技法に依存しうる。ELISA試験が使用される場合、タンパク質バイオマーカーのレベルは、当技術分野で一般的な慣行を使用して、濃度(定量値)として与えられると好都合でありうる。質量分析が使用される場合、アッセイされた血漿試料中の、タンパク質バイオマーカーのレベルは、絶対値(ターゲティングされた質量分析実験)を表すのであれ、比較のために使用される群に照らした変動を決定することを可能とする相対値(非ターゲティング型質量分析実験)を表すのであれ、任意値に変換されると好都合でありうる。具体的に述べると、実際の物理的測定に基づき、「任意値」を得るために、本明細書の実験節において示される通り、ビオチニル化検出抗体のカクテルと共に混合され、ストレプトアビジン-西洋ワサビペルオキシダーゼにより明らかにされる、血漿試料と共にインキュベートされた、ニトロセルロース膜上に存在する捕捉抗体からなるアレイによる、プロテオミクス解析を使用することが可能である。結果として、アッセイ試料中のタンパク質の存在について得られた値は、強度値としての評価が可能であり、この後者の値は、情報の統計学的処理のために、更に使用されうる。健常個体を含む個体の別個の群について得られた強度値との比較は、当業者の権限で、たやすく、かつ、十分に達成可能である。別の実施形態に従い、タンパク質バイオマーカーの「レベルの測定」は、例えば、例えば、同じ技法に基づき、患者から共時的に回収された、血漿及び白血球に由来する、タンパク質レベル及びmtDNAレベルの両方の測定を可能とする、TaqManタンパク質アッセイを介する、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(q-PCR)を使用しうる。TaqManタンパク質アッセイは、リアルタイムPCR及び抗体を使用して、試料タンパク質の定量を、常套的に可能とする。
【0073】
本発明の方法に従い、工程a.に従い、少なくとも2つのバイオマーカーのレベルの測定がなされたら、かつ、本記載に従い、特に、胃がん状態又は前胃がん状態を予後診断又は診断することから、危険性について評価することを可能とするために、工程a.で決定され、得られたレベルは、既に論じられた通り、対照と「比較」される。「対照」の同義語は、典型的に、同じアッセイについて得られるが、被験状態について、健常であることが公知であるか、又は、特に決定された状態を有する、個体又は個体のプールについて得られる、いわゆる「基準」値でありうる(Table 7(表9)を参照されたい)。しかし、当業者は、必要とされる場合、該当する被験状態についての、当技術分野における文献を検討することにより、このような対照値をたやすく決定し、また、その目的のために、とりわけ、周知のROC曲線法を使用して、被験コホート、被験患者に、正確に依拠して、このような「対照」値を調整し、その最適化もなしうることは、言明するに値する。実験節は、この点に関して、さらなる指針を提示する。本発明の方法についての、特定の実施形態では、例えば、生物学的試料を、時間経過にわたる、複数の時点において検査することにより、患者の健康がモニタリングされる場合、対照は、内部対照でありうる。
【0074】
特定の実施形態に従い、「対照」値はまた、判定を下すことを可能とする、「閾値」、すなわち、「正常」であると見なされる値としても規定されうる。このような閾値は、一般に、健常である決定された対象について決定される。例は、Table 2(表4)において提示される。健常対象について決定された正常閾値は、文献で見出される値、すなわち、健常状況を表すことが既知である値の場合もあり、健常対象に由来する、1つの生物学的試料についてアッセイすることにより見出される値の場合もあり、代替的に、いくつかの別個の健常対象に由来する、いくつかの生物学的試料についてアッセイすることにより見出され、次いで、結果として得られる正常閾値が、アッセイされた全ての健常対象の生物学的試料のレベル値の数学的平均値として決定される値の場合もあり、代替的に、いくつかの別個の健常対象に由来する生物学的試料のプールについてアッセイすることにより見出される値の場合もある。「健常対象」により、胃障害の症状を有さない対象、又は正常表現型に対応する、胃生検を伴う胃カメラ検査について言及された患者が意図される。特定の実施形態に従い、「対照」値とは、本発明の分野において、当業者により、この目的で、一般に認められた基準により、健常であることが決定されている、健常個体(又はその群;上記を参照されたい)において見出される値である。ピロリ菌血清学が陰性である健常ボランティア、及び/又は本発明で問題となる疾患又は状態についての疑いがない無症状性個体の対照群は、このような規定の中に包含される。逆に、かつ、別の実施形態に従い、値を規定するための対照群は、最もよく知られた標準物質により、医療分野において、健常であると考えられる個体について設定される。
【0075】
閾値の例は、本明細書の実験節において、例えば、因子である、IL-8、IL-17、及びTNFアルファが、ng/mL単位の判定規則と共に、下される判定についての、特定の値の感度及び特異度を伴う場合に見出されうる。例はまた、因子である、USF1及びUSF2についても、ROC曲線解析により決定されるAUC値についてのさらなる規定と共に提示されるが、ROC曲線の決定については、当業者により公知である。図3及び4はまた、ROC曲線の決定の例も提示する。ROC曲線は、「バイオマーカー量が、カットオフ値であるxを上回る(又は、構成に応じて、xを下回るか、又はx以上であるか、又はx以下である)場合、患者は、H又はNAG又はAG/P又はGC(必要に応じて選び出す)である」等の判定規則に基づき実行される実験により得られるデータを加工することにより得られる、偽陽性率(FPR)の関数としての真陽性率(TPR)の導出を表す。これは、実行される実験の複数性により可能とされ、当業者が、判定を下すことを目的として、必要に応じて、適切な「対照」値、「正常」値、「カットオフ」値、「閾値」を決定することを、たやすく可能とする。更に、パラメータであるAUC、すなわち、パラメータである「曲線下面積」は、判定規則の、全体的な診断正確度を概括するための、有効な方式である。AUCは、0~1の値を取り、ここで、0の値は、完全に不正確な判定規則を指し示し、1の値は、完全に正確な判定規則を反映する。AUCが、0.5を下回る場合、判定規則が、ランダムな判定を上回らないので、無用であることを意味する。AUCは、当業者により公知であり、文献(Delacour,H.ら、「LaCourbe ROC(receiver operating characteristic):principes et principales applications en biologie clinique」、Annales de biologie clinique、2005、63(2):145~54)においても公知である規則を使用して計算されうる。
【0076】
これにより、当業者は、全ての状況下において、TPRと、FPRとのすりあわせを使用して、関与性である場合、「最適のカットオフ値」、すなわち、特許請求される発明の文脈では、対照値をたやすく決定しうる。
【0077】
当業者はまた、「対照」値を規定するか、測定値又は実験値の、「正常」状況(又は参照群について、別の「既知の」状態)に照らした変化の「倍」数(又は「比」)を検討するか、又は変化の方向が、既知の変化に照らして同一であるのか、異なるのかを、単純に検討することにより、必要とされる場合、値のプール(Table 7(表9)を参照されたい)の参照により個体において測定されるバイオマーカーレベルの変化の方向について単純に解析することも想定しうることが注目される。「倍」数とは、変化の表現、特に、正常値を、特に、「正常閾値」とし、被験値を、被験試料についての値として、所与の量が、正常値から、被験値へと、どのくらい変化するのかについて記載する数を意味する。例えば、30の正常値及び60の被験値は、2倍の変化、又は、一般用語では、2倍の増大に対応する。逆に、60の正常値及び30の被験値は、0.5倍の変化、又は、一般用語では、0.5倍の増大に対応し、また、「マイナス」2倍の増大(数の前の「マイナス」記号により、負の項で表される)とも称される。したがって、倍数変化は、被験値の、正常値に対する比に対応する。言い換えると、倍数変化は、被験値の、正常値に対する比の決定から生じる。
【0078】
Table 7(表9)は、いくつかの比較スキームに従う、アッセイ試料間の変動プロファイルを示す。健常試料との比較を行う場合、解析されるパラメータに照らして、この表に描示され、log2(変化の比)で表される変化は、「対照値」への参照と同一な規則として使用される場合があり、比/変化は、特異値の、対照値との比較によりもたらされる情報と同じ情報を保有する。log2値は、式:2xを使用して、対応する倍数変化値へと変換されうる。いくつかのパラメータの組合せの規定は、第1のレベルでは、(例えば、)健常患者を罹患患者から区別することを可能とし、他のレベルでは、罹患患者が、発癌カスケードに沿った、特定の患者類型に関するのかどうかを吟味しうる。Table 7(表9)に示される、全ての点から点への変動は、本発明の一部であり、それらが指し示す、変化の方向、及びそれらが表す倍数/比の桁数について言及されうる。これらの変動は、患者が、発癌カスケードに沿った、特定の群に関するのかどうかを同定するための一覧表を提示しうる。
【0079】
特定の実施形態に従い、本発明の方法は、
- PGK1及びCFPのタンパク質レベル、又は
- KIF20B及びSPENのタンパク質レベル、又は
- JUP及びKRT6Cのタンパク質レベル、又は
- JUP及びCDSNのタンパク質レベル、又は
- JUP及びKPRPのタンパク質レベル、又は
- F13A1及びSAA1(SAA2)のタンパク質レベル、又は
- KRT19及びLBPのタンパク質レベル、又は
- DSP及びKPRPのタンパク質レベル、又は
- DSP及びCDSNのタンパク質レベル、又は
- KRT2及びCDSNのタンパク質レベル
であるバイオマーカーについてのアッセイにより実行される。
【0080】
これらのバイオマーカーは、本記載に従う危険性についての評価、又は本明細書のTable 6(表8)において描示される通り、被験個体におけるAG/P状態の存在についての予後診断及び診断のために、優れたAUC値により、互いと関連して、関与性であることが示されている。
【0081】
別の実施形態に従い、図12の検討に沿って、本発明の方法は、単独であるか、又はPGK1、CFP、IGFALS、KRT19、SPRR1A、CPA4、CA2、SERPINA5、MAN2A1、JUP、KRT6C、CDSN、KPRP、F13A1、SAA1(SAA2)、LBP、DSP、KRT2、KRT14、ARG1、S100A12、ATAD3B、MAN1A1、HAL、DCD、及びC7のタンパク質レベルの中から選択される少なくとも別のバイオマーカーと更に組み合わされた、少なくともKIF20B及びSPENのタンパク質レベルを含む、アッセイされるバイオマーカーを伴い、特に、この場合、アッセイされるバイオマーカーは、KRT19、ARG1、DSP1、及びHALのタンパク質レベルの中から選択される少なくとも別のタンパク質バイオマーカーと更に組み合わされた、少なくともKIF20B及びSPENのタンパク質レベルを含む。
【0082】
実際に、KIF20Bと、SPENとの組合せは、AG/P又はGCについての良好な予測をもたらすことが、付属の実験結果において示されている。
【0083】
特定の実施形態に従い、本発明の方法は、
- KIF20B、SPEN、及びKRT19のタンパク質レベル、又は
- KIF20B、SPEN、及びARG1のタンパク質レベル、又は
- KIF20B、SPEN、及びDSPのタンパク質レベル、又は
- KIF20B、SPEN、及びHALのタンパク質レベル、又は
- KIF20B、SPEN、及びC7のタンパク質レベル、又は
- KIF20B、SPEN、及びJUPのタンパク質レベル、又は
- KIF20B、SPEN、及びCPA4のタンパク質レベル、又は
- KIF20B、SPEN、及びSPRR1Aのタンパク質レベル、又は
- KIF20B、SPEN、及びMAN2A1のタンパク質レベル、又は
- KIF20B、SPEN、及びKRT14のタンパク質レベル
であるバイオマーカーについてのアッセイにより実行される。
【0084】
これらのバイオマーカーは、本明細書のTable 6(表8)に描示される通り、本記載に従う危険性の評価、特に、被験個体におけるAG/P状態の存在についての予後診断及び診断のための、少なくとも3つのバイオマーカーの関連において関与性であることが、優れたAUC値により示されている。更に、かつ、さらなる利点として述べると、これらのバイオマーカーには、図11Bにおいて示される通り、NAG状態、AG/P状態、及びGC状態である全ての病態のそれぞれを同時に予測するために最適の残差逸脱度を伴う。
【0085】
別の実施形態に従い、図12の検討に沿って、本発明は、mtDNAのレベル、MSLN、HP、SELE、及びTNFアルファのタンパク質レベルの中から選択される少なくとも1つの別のバイオマーカーのレベルを決定する工程を更に含む、本明細書で記載される、任意の実施形態に従う方法に関する。
【0086】
これらのマーカーは、患者におけるAG/P状態を予後診断又は診断するために、適切であることが、実際に示されている。
【0087】
mtDNAレベルに関して述べると、これは、循環血液中mtDNAを検査することにより、特に、患者から既に回収された試料の白血球のmtDNAを検査することにより、たやすく決定されうる。mtDNAのレベルが、別のバイオマーカーのタンパク質レベルと共に測定される場合、これらのいずれもが、必要な場合、DNAの測定が実行されるのか、タンパク質レベルの測定が実行されるのかに応じて示差的に加工される、被験個体から回収された、固有の試料に基づき測定されると有利である。
【0088】
より正確に述べると、mtDNAの決定に関して、「mtDNAのレベル」が、
- 基準mtDNAレベル又は「正常」mtDNAレベルに照らした、mtDNAの「定量」値を表し、特に、mtDNAのコピー数、特に、mtDNAの絶対コピー数等、アッセイ試料中のmtDNAの量を表すこと、とりわけ、これを定量することを目的とする値であるか、又は
- 特に、決定される量が、核DNA(nDNA)量若しくはこれもまた前記生物学的試料中に存在する別の適切な参照に照らして、又は正規化遺伝子若しくはnDNAに関するDNA配列に照らして正規化される場合に、被験生物学的試料中のmtDNAの相対量を表す
ことが観察されうる。
【0089】
したがって、特定の実施形態では、試料中のmtDNAの「絶対」量を決定せずに、別のパラメータの参照により、この量について査定することにより、mtDNAのレベルを決定することが可能である。
【0090】
したがって、「mtDNAのレベル」を得るために、生物学的試料からの核酸の定量を可能とする技法が使用されうる。このような技法は、試料中に存在する核酸、すなわち、本発明の文脈内にあるmtDNAの平均濃度(又は量)の決定を可能とする(1)核酸についての分光光度解析、及びそれらのさらなる定量、並びに(2)核酸に結合し、結合されると、選択的に蛍光発光する、色素の蛍光強度の測定を使用する定量のほか、(3)これもまた、検出及び定量される前記核酸に結合された蛍光色素の検出に依拠する、リアルタイムPCR法等、特異的核酸増幅の後における定量を含む、いくつかの方法が、このような濃度(又は量)を確立するのに使用されうる。定量されるmtDNAの、核酸解析についての技術分野で一般的な知見に従う、あらかじめの単離が要求されうることが好ましい。
【0091】
特に、mtDNAのレベルは、常套的に公知のプロトコールを使用する、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(q-PCR)を使用して決定されうる。ミトコンドリア12s RNA遺伝子に特異的なプライマーが使用されうるが、当業者は、この技法に関する、当技術分野の文献で入手可能な指針に従い、このような技法を実施するために、ミトコンドリアゲノムの、他の遺伝子又は配列を、適切に選び出すことができる。PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)は、DNAを増幅するための、一般的な方法である。少量のDNA、DNA鋳型、特異的オリゴヌクレオチドプライマーの少なくとも1つの対、ヌクレオチド(dATP、dCTP、dGTP、dUTP)を増幅するために、適切な緩衝液及び熱安定性DNAポリメラーゼが要求される。1つ又は複数の特異的産物について、発生速度が測定されることを可能とする、要求波長で励起された後に、フルオロフォアの蛍光を測定するためのセンサーを含有する、サーマルサイクラー内の、この混合物のうちの1つの試薬へと、フルオロフォアによりマーキングされた物質が、一般に添加される。リアルタイムPCR(q-PCR)は、一般に、これらの試料中の、特定のDNA配列の存在及び/又は存在度を決定するように、試料中のDNAの検出及び定量へと適用される。測定は、リアルタイムにおける増幅産物の定量を可能とする、各増幅サイクルの後でなされる。
【0092】
リアルタイムPCRは、リアルタイムPCR装置を使用することにより実施され、各サイクルの後で、蛍光のレベルは、検出器により測定される。使用される色素は、一般に、PCRを介して増幅されるDNAに結合される場合に限り蛍光発光し、蛍光の増大は、各増幅サイクルにおける、増幅産物の存在の増大に対応して検出される。
【0093】
リアルタイムPCRは、核酸を、相対定量により定量するのに使用される場合もあり、絶対定量により定量するのに使用される場合もある。絶対定量は、検量線を使用する、DNA標準物質との比較により、標的DNA分子の正確な数をもたらす。この方法により、胃前新生物又は新生物の存在について疑われるにおける患者におけるmtDNAコピー数を決定し、この数を、健常対象において規定されたmtDNAコピー数と比較することが可能である。(参考文献:von Wurmb-Schwarkら、2002、Forensic Science International、126:34~39;Fernandesら、2014、Cancer Epidemiol Biomarkers Re、23:2430~38)。相対定量は、量が決定される標的配列と、「ハウスキーピング配列」との倍数差の決定を可能とする。
【0094】
mtDNAのコピー数を表す、特異的標的DNA配列の存在を定量するために、そのほぼ一定の発現速度について選択される、「正規化配列」又は「ハウスキーピング配列」と呼ばれる、別のDNA配列との関連で、その相対レベルを表すことが、実際に好都合である。ハウスキーピング配列は、通常、構成的遺伝子発現を含意する、基本的細胞生存と関連する機能に関与する遺伝子内に、通例見出される。これは、選択された正規化剤の増幅の存在に対する、目的の配列の増幅の存在を表す比の提示を可能とする。この方法は、被験試料中の、その絶対量を、実際に知ることにより、目的の配列の増幅の相対的存在について査定する値を得ることを可能とする。
【0095】
一般に使用される正規化配列は、後続するタンパク質をコードする遺伝子内に見出される配列である。非限定的リストとして述べると、チューブリン、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、アルブミン、シクロフィリン、リボソームRNAの配列が使用されうる。
【0096】
リアルタイムPCRは、蛍光を測定することにより、増幅過程内の任意の時点における所望の産物の定量を可能とする。測定値は、閾値サイクル(CT)値(CT;目的の配列の蛍光が検出されるPCRサイクル;CT値が低値であるほど、標的配列は夥多となる)を使用して表される。標的配列の存在を定量するために、正規化配列が使用される場合、相対遺伝子発現について解析するために使用される、ΔΔCT法等の正規化手順が使用されうる。
【0097】
より具体的な実施形態に従い、「mtDNAのレベル」は、選択された正規化剤である遺伝子又はnDNAの配列への参照を介して、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(q-PCR)による決定が可能であり、mtDNAのレベルは、参照刊行物である、Fanら、2009、J Cancer Res Clin Oncol、135、983~989;及び/又はChatre及びRichetti、2013、J of Cell Sciences、126:914~926において記載されている通り、式:2ΔCt[式中、ΔCt=CtnDNA-CtmtDNA]に従い計算される。この計算法により、mtDNAのレベルは、nDNAの平均Ctと、mtDNAの平均CtとのΔCt(ΔCT=CtnDNA-CtmtDNA)を、2ΔCtとして使用して計算されうる。増幅のために使用されるプライマーは、特に、上述の参照刊行物において指し示される通り、この技法についての技術分野における一般的な知見に従い、当業者により選び出されうる。
【0098】
mtDNAのレベルを決定するためのプロトコールの例は、
- 核酸、とりわけ、細胞のミトコンドリア核酸へのアクセスをもたらすように、生物学的試料を調製する工程;
- 調製された試料を、mtDNAをターゲティングするオリゴヌクレオチドプライマーと接触させる工程;
- 増幅サイクルを実施する工程;
- 正規化剤である、nDNAの増幅を同時に行う工程;
- mtDNA、及び正規化剤である、nDNAを定量的に検出する工程;
- 選択された正規化剤である、nDNAの配列に照らして、mtDNAのレベルを決定する工程であって、mtDNAのレベルが、2ΔCt[式中、ΔCt=CtnDNA-CtmtDNA]についての式に従い計算される工程を包含しうる。
【0099】
とりわけ、白血球に由来する、mtDNAの測定に関する、更に詳細は、本明細書の実験節において入手可能であり、参照により本明細書に組み込まれる、WO2015/049372では、包括的な基本原則もまた見出されうる。
【0100】
本明細書の実験節において示される通り、実験条件下における、mtDNAレベルの、6.3を上回る上昇は、AG/Pを伴う患者を、66.6%の感度、及び65%の特異度(0.7089のAUC値)で予測することを可能とした。
【0101】
本明細書の実験節において示される通り、TNFアルファのタンパク質レベルは、TNFアルファ濃度の上昇が、アッセイ試料が、非健常患者に由来することについて、極めて高感度及び極めて高特異度(0.7954のAUC値)で評価するために重要であるという、「非健常」の判定規則に照らして関与性であった。
【0102】
本明細書の実験節において示される通り、MSLNのタンパク質レベルは、特に、MSLNの濃度の大きな上昇が、AG/Pを伴う患者の同定に重要である(0.7433のAUC値)という、2つの判定規則に照らして関与性であった。
【0103】
本明細書の実験節において示される通り、HPのタンパク質レベルは、GCを伴う患者の同定(0.6622のAUC値)に照らして関与性であった。
【0104】
本明細書の実験節において示される通り、SELEのタンパク質レベルは、SELE濃度の上昇が、アッセイ試料が、非健常患者に由来することについて、最良のAUC値である0.7565で評価するために重要であるという、「非健常」の判定規則に照らして関与性であった。
【0105】
本明細書の実験節において示される通り、血漿中タンパク質であるHPのレベルは、血漿中タンパク質であるHPの濃度の、1.7倍の上昇が、GC試料中で見出されうるために関与性であった。
【0106】
特定の実施形態に従い、本発明の方法は、本記載に従い、危険性について評価するための方法、特に、被験患者における、非萎縮性胃炎(NAG)状態を予後診断又は診断する方法である。
【0107】
特定の実施形態に従い、本発明の方法は、本記載に従い、危険性について評価するための方法、特に、被験患者における萎縮性胃炎/前新生物(AG/P)状態を予後診断又は診断する方法である。本実施形態に従い、本発明の方法は、ヒト患者が、萎縮性胃炎/前新生物(AG/P)を有する危険性について評価するための方法であり、特に、方法は、被験患者における、萎縮性胃炎/前新生物(AG/P)状態を予後診断又は診断するための方法である。
【0108】
萎縮性胃炎/前新生物(AG/P)についての評価が求められる、より具体的な実施形態に従い、本発明の方法の工程a.は、IGFALS、KRT19、CA2、MAN2A1、KIF20B、JUP、LBP、S100A12、ATAD3B、DCD、HP、LEP、IL-8、IL-17、USF1、USF2、SELE、MSLN、及びEGFRの中から選択される、少なくとも2つ、好ましくは2つ~6つの間のバイオマーカーのレベルを決定する工程からなり、特に、IGFALS、KRT19、HP、LEP、MSLN、及びEGFRのレベルを決定する工程にある。
【0109】
選択されるバイオマーカーは、2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つのバイオマーカーでありうる。
【0110】
萎縮性胃炎/前新生物(AG/P)についての評価が求められ、2つ~6つの間のバイオマーカーが使用される、複数の実施形態に従い、これらの具体的な実施形態には、得られた最良のAUC値に基づき選択された、AG/Pを予測するための、2つ~6つのバイオマーカーの、最良の組合せを列挙する、Table 10(表12)に開示された組合せのうちのいずれか1つにおいて記載される、バイオマーカーの選択が包含される。AG/Pについて、記載された対応するシグネチャーに従い、4つのバイオマーカーが、使用されるとすぐに、AUCは、0.82であり、感度は、92%である。
【0111】
萎縮性胃炎/前新生物(AG/P)についての評価が求められ、6つのバイオマーカーが使用される、より具体的な実施形態に従い、これらの具体的な実施形態には、AG/Pを予測するための、6つのバイオマーカーの、最良の組合せを列挙する:これらの組合せの全ては、90%~96%の間の感度、及び71%~79%の間の特異度により、≧0.8のAUCに対応する、Table 9(表11)に開示された組合せのうちのいずれか1つにおいて記載される、バイオマーカーの選択が包含される。
【0112】
本明細書で記載される、他の任意の実施形態、とりわけ、上記で記載された、複数の実施形態と組み合わされる場合があり、萎縮性胃炎/前新生物(AG/P)についての評価が求められる、特定の実施形態に従い、ヒト患者が、萎縮性胃炎/前新生物(AG/P)を有する危険性について評価するための方法である、本発明の方法は、少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の感度、及び/又は少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の特異度、特に、各々が、少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の感度及び特異度を伴う。
【0113】
特定の実施形態に従い、本発明の方法は、本記載に従い、危険性について評価するための方法、特に、被験患者における胃がん(GC)状態を予後診断又は診断する方法である。
【0114】
胃がん(GC)状態についての評価が求められる、より具体的な実施形態に従い、本発明の方法の工程a.は、IGFALS、KRT19、CA2、MAN2A1、KIF20B、JUP、LBP、ARG1、S100A12、ATAD3B、DCD、HP、LEP、IL-8、IL-17、TNFアルファ、USF1、USF2、MSLN、EGFR、及びSTAT3の中から選択される、少なくとも2つ、好ましくは2つ~6つの間のバイオマーカーのレベルを決定する工程からなり、特に、ARG1、LEP、IL-17、TNFアルファ、SELE、及びMSLNのレベルを決定する工程にある。
【0115】
選択されるバイオマーカーは、2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つのバイオマーカーでありうる。
【0116】
胃がん(GC)状態についての評価が求められ、2つ~6つの間のバイオマーカーが使用される、複数の実施形態に従い、これらの具体的な実施形態には、得られた最良のAUC値に基づき選択された、GC(がん病変)を予測するための、2つ~6つのバイオマーカーの、最良の組合せを列挙する、Table 10(表12)に開示された組合せのうちのいずれか1つにおいて記載される、バイオマーカーの選択が包含される。GCについて、6つのバイオマーカーのうちの多数が、感度の改善を可能とするが、1つのタンパク質(すなわち、IL-17)だけについては、特異度も既に優れている(95%)。
【0117】
胃がん(GC)状態についての評価が求められ、6つのバイオマーカーが使用される、より具体的な実施形態に従い、これらの具体的な実施形態には、GCを予測するための、6つのバイオマーカーの、最良の組合せを列挙する:これらの組合せの全ては、87%~94%の間の感度、及び71%~79%の間の特異度により、≧0.9のAUCに対応する、Table 11(表13)に開示された組合せのうちのいずれか1つにおいて記載される、バイオマーカーの選択が包含される。
【0118】
本明細書で記載される、他の任意の実施形態、とりわけ、上記で記載された、複数の実施形態と組み合わされる場合があり、胃がん(GC)状態についての評価が求められる、特定の実施形態に従い、ヒト患者が、萎縮性胃炎/前新生物(AG/P)を有する危険性について評価するための方法である、本発明の方法は、少なくとも80%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の感度、及び/又は少なくとも80%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の特異度、特に、各々が、少なくとも80%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の感度及び特異度を伴う。
【0119】
萎縮性胃炎/前新生物(AG/P)状態、又は胃がん(GC)状態についての評価が求められる場合であるのか、又は一般的な場合であるのかを措くとして、感度及び特異度は、バイオマーカーの選択に随伴し、本明細書で提示される、さらなる指針を伴う、当技術分野において規定の慣行により、たやすく決定されうる。AUC値を計算する手段は、当業者に公知であり、本文の上記で想起されている。同様に、判定のために使用されるカットオフ値に応じて変動するので、判定のために使用される、前記カットオフ値に従い選択されうる、特異度及び感度は、これもまた、本文の上記で想起された、ROC曲線を使用する、最適化された形における規定が可能であり、本明細書の実験節でなされる。したがって、当業者は、所望される、適切なレベルの感度及び特異度に到達するために、使用されるバイオマーカーをたやすく調整しうる。
【0120】
胃がん(GC)状態についての評価が求められる、他の実施形態に従い、CA2、KIF20B、ARG1、DCD、LEP、IL-17、TNFアルファ、及びMSLNの中から選択される少なくとも1つのバイオマーカーであるバイオマーカーは、有望であることが決定されている(Table 3(表5))ので、この目的のためのシグネチャーに含まれうる。
【0121】
萎縮性胃炎/前新生物(AG/P)についての評価が求められる、他の実施形態に従い、IGFALS、KRT19、CA2、MAN2A1、LBP、LEP、SELE、MSLN、及びEGFRの中から選択される少なくとも1つのバイオマーカーであるバイオマーカーは、有望であることが決定されている(Table 3(表5))ので、この目的のためのシグネチャーに含まれうる。
【0122】
特定の実施形態に従い、本発明の方法は、ヒト患者が、非萎縮性胃炎(NAG)、又は萎縮性胃炎/前新生物(AG/P)、又は胃がん(GC)を有する危険性について評価するための方法である。
【0123】
特定の実施形態に従い、本発明の方法は、本記載に従い、危険性について評価するための方法、特に、被験患者における、非萎縮性胃炎(NAG)状態、又は萎縮性胃炎/前新生物(AG/P)状態を予後診断又は診断する方法である。
【0124】
特定の実施形態に従い、本発明の方法は、本記載に従い、危険性について評価するための方法、特に、被験患者における非萎縮性胃炎(NAG)状態又は胃がん(GC)状態を予後診断又は診断する方法である。
【0125】
特定の実施形態に従い、本発明の方法は、本記載に従い、危険性について評価するための方法、特に、被験患者における、非萎縮性胃炎(NAG)状態、又は胃がん(GC)状態を予後診断又は診断する方法である。
【0126】
萎縮性胃炎/前新生物(AG/P)又は胃がん(GC)状態についての評価が求められる、複数の実施形態に従い、CA2、LEP、及びMSLNの中から選択される少なくとも1つのバイオマーカーであるバイオマーカーは、いずれの状態についても有望であることが決定されている(Table 3(表5))ので、これらの状態の間の識別の文脈における目的を含む、この目的のためのシグネチャーに含まれうる。
【0127】
特定の実施形態に従い、本発明の方法は、本記載に従い、危険性について評価するための方法、特に、被験患者における、非萎縮性胃炎(NAG)状態、又は萎縮性胃炎/前新生物(AG/P)状態、又は胃がん(GC)状態を予後診断又は診断する方法である、すなわち、これらの状態の間の識別を可能とする。これらの別個の臨床状況の間の差違は、「正常」状況に照らして観察された変化の値、すなわち、方向(増大又は減少)及び変化の幅(倍数)に応じて生じる。
【0128】
特定の実施形態に従い、かつ、図12の検討に沿って、本発明の方法は、LEP及びS100A12のタンパク質レベル、並びに/又はIL-17のタンパク質レベル、並びに/又はLEP、S100A12、及びIL-17のタンパク質レベルの中から選択される少なくとも1つの別のタンパク質バイオマーカーのレベルを決定する工程を更に含む。
【0129】
LEP及びS100A12のタンパク質レベルは、患者におけるGC状態を予後診断又は診断するために、適切であることが、実際に示されている。したがって、本明細書で開示される、全ての可能な組合せに従い、シグネチャーへと追加される、このようなバイオマーカーは、試料がアッセイされる個体が、GCを有しうるのか、そうでないのかについての、さらなる判断基準として用いられうる。
【0130】
逆に、IL-17のタンパク質レベルは、健常個体を検出し、これにより、胃がん状態又は前胃がん状態(Table 4(表6)を参照されたい)を除外するために適切であることが示されている。結果として、本明細書で開示される、全ての可能な組合せに従い、シグネチャーへと追加される、このようなバイオマーカーは、試料がアッセイされる個体が、健常でありうるのか、そうでないのかについての、さらなる判断基準として用いられうる。
【0131】
このような測定は、本発明に従うバイオマーカーのシグネチャーにより得られた結果を補強又は破棄する一助となりうる。
【0132】
ある態様に従い、一連の工程として、
i)アッセイされるバイオマーカーが、単独であるか、又は少なくとも1つの別の、本明細書で記載されるバイオマーカーと更に組み合わされた、少なくともKIF20B及びSPENのタンパク質レベルを含み、特に、アッセイされるバイオマーカーが、KRT19、ARG1、DSP1、及びHALのタンパク質レベル、並びに/又はmtDNA、MSLN、HP、SEL、及びTNFアルファのタンパク質レベルの中から選択される少なくとも1つの別の(又は複数の別の)タンパク質バイオマーカーと更に組み合わされた、少なくともKIF20B及びSPENのタンパク質レベルを含み;これらのマーカーが、アッセイされる患者における、AG/P段階(図12を参照されたい)の存在の危険性についての評価に照らして関与性である、本明細書で開示される方法の実施;並びに
ii)アッセイされるバイオマーカーが、アッセイされる患者が、実際に、健常である(図12を参照されたい)と考えられるのかどうかを裏付けるか、又は再確認するための、IL-17である、本明細書で開示される方法の実施;並びに
iii)アッセイされるバイオマーカーが、少なくともLEP又はS100A12のタンパク質レベルを含み;これらのマーカーが、アッセイされる患者における、胃がん(図12を参照されたい)の存在の危険性についての評価に照らして関与性であり;このような尺度が、アッセイされる患者が、実際に、胃がんを有する危険性があると考えられるのかどうかを裏付けるか、又は再確認するのに使用されうる、本明細書で開示される方法の実施
を包含し、
特に、工程ii)及び工程iii)が、順に実行されうるか、又はこれらの工程のうちの1つだけが実行されるか、又は工程i)若しくは工程ii)若しくは工程iii)のうちの1つだけが実行される
方法もまた開示される。
【0133】
ある実施形態に従い、本発明の方法は、本記載に従い、危険性について評価するための方法、特に、被験患者における、特に、被験患者における、非萎縮性胃炎(NAG)、萎縮性胃炎/前新生物(AG/P)、胃がん状態、胃がん(GC)、又は健常状態を識別するための方法である、非萎縮性胃炎(NAG)又は萎縮性胃炎/前新生物(AG/P)、胃がん状態又は胃がん(GC)を予後診断又は診断する方法である。
【0134】
特定の実施形態に従い、本発明の方法は、胃がん状態に発展し易い状態を患い易いか、若しくは前胃がん状態を患い易いか、若しくは胃がん状態を患い易い患者の健康状態、又はヒト患者を胃がん状態の危険性がある状態にする病変を有する前記患者の健康状態をモニタリング又は診断するための方法であって、本明細書で論じられる工程b.で設定された比較(「対照」との比較)及び/又は本明細書で論じられる工程c.で観察された逸脱が発展を示す場合に、被験患者の健康状態について結論づけるように、時間経過にわたり少なくとも1回反復され、特に、胃がんを有すると診断され、任意選択で胃がんについて処置された患者の健康状態をモニタリング又は診断するための方法である。
【0135】
ある実施形態に従い、方法は、必要に応じて反復される、すなわち、その状態についての処置下にある場合もあり、そうでない場合もある患者の健康状態の発展をモニタリングすることが必要とされる限りにおいて、反復される。
【0136】
本発明の方法は、本記載に従い、危険性について評価する、特に、胃がん状態又は前胃がん状態を予後診断又は診断するための方法である、すなわち、可能な場合に、診断する(特に、本明細書で記載される通り、かつ、一般的な知見に従い、当業者によりたやすく決定されうる、特異度値及び感度値により)ための方法、又は要求される場合にはいつでも、さらなる手がかりとの関連において、危険性を予後診断する/予測するための方法である。実際に、検査結果に従い、臨床像について十分に評価するために、個体のさらなる検査が推奨されうる。
【0137】
したがって、本発明の方法は、個体の生物学的パラメータの状態を決定することを可能とし、可能な場合、生物学的試料が検査される個体が、胃がん状態又は前胃がん状態を患う危険性を提示しうることを統計学的に決定する。特に、前胃がん状態、とりわけ、AG/P状態の存在は、被験個体において、胃発癌が存在する危険性を伴う。こうして、さらなる臨床的調査が指示されうる。特定の実施形態に従い、予後診断又は診断は、本明細書で記載される通り、さらなる臨床的調査の実施を要求する。
【0138】
特定の実施形態に従い、さらなる臨床的調査により進むことが要求されるか、又は指示されると結論づけることは、被験生物学的試料が採取された患者の健康状態についての結論に対応する。
【0139】
したがって、「健康状態について結論づけること」及び/又は「さらなる臨床的調査を進めること」はまた、緊密な治療モニタリング手順への、前記患者の登録も包含する、すなわち、前記患者は、時間経過にわたる、患者の状態又は健康状態の、定期的なモニタリングを含む、治療追跡、及び、任意選択で、その健康状態に関する、さらなる臨床的調査を伴うことが推奨されるか、又はこれらに直接組み込まれる。正確には、被験個体が、胃病変を患い易いことの、任意の決定はまた、さらなる臨床的調査の実施も示唆する。胃発癌の危険性の存在を早期に検出すること、すなわち、AG/P状態(又は、代替的に、AG/P段階)に対応する段階等の段階における、胃病変の存在の危険性の検出は、本明細書で詳述される通り、適切な公衆衛生上の目標である。
【0140】
「さらなる臨床的調査」の非限定例は、胃カメラによる光学的検査、腹部のコンピュータ断層撮影(又はCT)走査、組織学的検査のための生検、多様な血液検査、例えば、貧血について点検する全血算(CBC)等、胃発癌過程の存在を確認又は除外することを目的とする、他の探索方法を包含する。
【0141】
胃病変が疑われる場合、「健康状態について結論づけること」及び/又は「さらなる臨床的調査を進めること」は、そうでなければ、低頻度で行われている、胃カメラによる光学的検査のスケジューリングの数及び/又は頻度を増大させることを包含しうる。
【0142】
胃病変が疑われる場合、かつ、さらなる臨床的調査の後、可能な場合、胃発癌過程に入ったことが疑われる領域を、手術により除去する結論に至ることもまた可能である。場合によって、切除は、内視鏡により実行されうる(消化器内視鏡的粘膜切除術(EMR)は、早期がん及び前がん性増殖を、消化管内膜から除去する手順である)。
【0143】
図16は、シグネチャーである、SIG-AGP及びSIG-GC(図15に記載されている)のそれぞれによる、前新生物病変及びGC病変の検出に基づく診断検査の使用についての、可能な手順/スキームを描示する(本明細書の図16についてのキャプションを参照されたい)。本発明の診断検査は、提起される手順の、異なるレベルにおいて使用され、反復されうることが見られうる。したがって、本発明の方法は、図16に記載される通り、初期診断プロトコールにおいて使用される場合もあり、かつ/又は追跡プロトコールにおいて使用される場合もある。
【0144】
特定の実施形態では、本発明の方法はまた、別個の、同時又は並行工程として、特に、ピロリ菌感染に特異的な抗原の検出を介して、又はDNAの増幅、及びその後における前記DNAの検出、若しくは被験患者から採取された、生物学的試料中の、ピロリ菌特異的IgA抗体及びピロリ菌特異的IgG抗体の存在の検出を伴うアッセイを介して、又は被験患者に対して実施される13C尿素呼気検査を介して、ピロリ菌感染を検出する工程も含む。
【0145】
この場合、ピロリ菌の検出は、関与性である場合は、どのような場合であれ、ピロリ菌感染に特異的な抗原の検出工程を実行することにより、関与性である場合における、患者から採取された生物学的試料の画分(アリコート)、特に、血漿試料、又は血液試料のうちの血清画分に対して実施されうる。ピロリ菌感染者は、容易に検出可能でありうる、特異的IgA抗体及びIgG抗体を有する。加えて、CagA抗原の存在についての探索もまた、ピロリ菌の存在を確認する。ピロリ菌を検出するための、別の方法は、ヒト医療において、広く使用されている、高感度を伴う非侵襲性検査である、13C尿素呼気検査(Grahamら、1987、Lancet、1:1174~1177)である。この呼気検査は、ピロリ菌関連ウレアーゼ活性の間接的な測定を可能とする。ピロリ菌の存在はまた、ピロリ菌抗原の存在を指し示すイムノアッセイにより、又は、特に、文献中で当業者に入手可能なピロリ菌遺伝子配列に特異的なプライマーを使用する、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を介する、ピロリ菌DNAの増幅、及び増幅されたDNAの検出により、糞便中においても検出されうる。
【0146】
mtDNAレベル及びピロリ菌の検出のいずれもが、併せて探索される場合、被験個体から得られる生物学的試料は、一方では、血液試料の細胞画分、特に、アッセイされるmtDNAを含有する、単核細胞又は白血球を精製するように調製される場合もあり、血液試料でありうる。他方では、ピロリ菌感染の検出を可能とする血清を回収するように調製される場合もある。
【0147】
特定の実施形態では、被験生物学的試料、とりわけ、血漿試料は、胃発癌を有すると診断され、この状態についての処置下にあるか、若しくはそうでない患者、並びに/又は進行中であるか、処置されているか、若しくは処置されていないピロリ菌感染を有する患者、並びに/又は既往の処置若しくは進行中の処置により根絶されたか、若しくはそうでないピロリ菌感染の既往症を有する患者、並びに/又は胃痛及び/若しくは胃がんの家族歴を有する個体から得られる。
【0148】
本記載で詳述される通り、本明細書で記載される、全ての実施形態に適用可能である、特定の実施形態に従い、血漿中バイオマーカーのレベルは、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)検査、又は質量分析、又は定量的ポリメラーゼ連鎖反応(q-PCR)、又はLuminexアッセイにより決定され、実行される場合、mtDNAのレベルは、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(q-PCR)により決定される。
【0149】
本発明の別の目的は、タンパク質レベル又は抗原の検出が想定される場合に、本明細書で規定される方法を実行するのに適したキット、又は本明細書で規定される方法を実行するためのキットであって、
- 異なる抗原特異性を有する少なくとも2種類の抗体であって、各種類の抗体が、PGK1、CFP、IGFALS、KRT19、SPRR1A、CPA4、CA2、SERPINA5、MAN2A1、KIF20B、SPEN、JUP、KRT6C、CDSN、KPRP、F13A1、SAA1(SAA2)、LBP、DSP、KRT2、KRT14、ARG1、S100A12、ATAD3B、MAN1A1、HAL、DCD、C7、HP、LEP、IL-8、IL-17、TNFアルファ、USF1、USF2、SELE、EGFR、STAT3、及びMSLNタンパク質の中から選択されるタンパク質に特異的である少なくとも2種類の抗体、又はPGK1、CFP、IGFALS、KRT19、SPRR1A、CPA4、CA2、SERPINA5、MAN2A1、KIF20B、SPEN、JUP、KRT6C、CDSN、KPRP、F13A1、SAA1(SAA2)、LBP、DSP、KRT2、KRT14、ARG1、S100A12、ATAD3B、MAN1A1、HAL、DCD、C7、HP、LEP、IL-8、IL-17、TNFアルファ、USF1、USF2、SELE、EGFR、STAT3、及びMSLNタンパク質に対して異なる抗原特異性を有するいくつかの抗体の組合せ、及び任意選択で、CagA抗原等のピロリ菌抗原に特異的である少なくとも1つの抗体、及び任意選択で、以下の試薬のうちの1つ又は複数:
- ビオチニル化抗体等の二次抗体、又は上記で列挙された特異的抗体とその(それらの)標的との複合体を明らかにする試薬、
- 任意選択で、緩衝液、
- 任意選択で、抗体をビーズへと接合させるためのアミンカップリングキットを任意選択で伴う、色分けビーズ、及び/又は磁性若しくは非磁性ビーズ、及び/又はカルボキシル化ビーズ等のビーズ、
- 任意選択で、ビオチニル化抗体を明らかにするフィコエリトリン(PE)コンジュゲートストレプトアビジン、
- 任意選択で、アッセイプレート、並びに
- 任意選択で、使用のための指示、及び結果の解釈のための予測値を提供する通知
を含むキットを提供することである。
【0150】
本発明の別の目的は、核酸の検出が想定される場合に、本明細書で規定される方法を実行するのに適したキット、又は本明細書で規定される方法を実行するためのキットであって、
- mtDNAとのハイブリダイゼーションに特異的である特異的オリゴヌクレオチドプライマー又は核酸分子の少なくとも1つの対、並びに/又は
- それぞれ、PGK1、CFP、IGFALS、KRT19、SPRR1A、CPA4、CA2、SERPINA5、MAN2A1、KIF20B、SPEN、JUP、KRT6C、CDSN、KPRP、F13A1、SAA1(SAA2)、LBP、DSP、KRT2、KRT14、ARG1、S100A12、ATAD3B、MAN1A1、HAL、DCD、C7、HP、LEP、IL-8、IL-17、TNFアルファ、USF1、USF2、SELE、EGFR、STAT3、及びMSLNタンパク質のうちの2つ以上をコードするDNA領域とのハイブリダイゼーションに特異的である特異的オリゴヌクレオチドプライマー又は核酸分子の少なくとも2つの対、及び任意選択で、ピロリ菌の核酸配列とのハイブリダイゼーションに特異的である特異的オリゴヌクレオチドプライマー若しくは核酸分子の少なくとも1つの対、及び任意選択で、以下の試薬のうちの1つ又は複数:
- ヌクレオチド(例えば、dATP、dCTP、dGTP、dUTP)、
- DNAポリメラーゼ、特に、Taq DNA Polymerase等の熱安定性DNAポリメラーゼ、
- 核酸を染色するための少なくとも1つの色素、特に、リアルタイムPCR装置内で検出可能な色素、
- 任意選択で、緩衝液、
- 任意選択で、プライマーのそれらの標的とのハイブリダイゼーションに必要な試薬、
- 任意選択で、参照色素、並びに
- 使用のための指示、及び結果の解釈のための予測値を提供する通知
を含むキットを提供することである。
【0151】
本発明の別の目的は、タンパク質レベル、抗原、及び核酸検出の組合せが想定される場合に、それらの全ての可能な組合せに従い、本明細書で規定される方法を実行するのに適したキット、又は本明細書で規定される方法を実行するためのキットであって、
- 異なる抗原特異性を有する少なくとも2種類の抗体であって、各種類の抗体が、PGK1、CFP、IGFALS、KRT19、SPRR1A、CPA4、CA2、SERPINA5、MAN2A1、KIF20B、SPEN、JUP、KRT6C、CDSN、KPRP、F13A1、SAA1(SAA2)、LBP、DSP、KRT2、KRT14、ARG1、S100A12、ATAD3B、MAN1A1、HAL、DCD、C7、HP、LEP、IL-8、IL-17、TNFアルファ、USF1、USF2、SELE、EGFR、STAT3、及びMSLNタンパク質の中から選択されるタンパク質に特異的である少なくとも2種類の抗体、又はPGK1、CFP、IGFALS、KRT19、SPRR1A、CPA4、CA2、SERPINA5、MAN2A1、KIF20B、SPEN、JUP、KRT6C、CDSN、KPRP、F13A1、SAA1(SAA2)、LBP、DSP、KRT2、KRT14、ARG1、S100A12、ATAD3B、MAN1A1、HAL、DCD、C7、HP、LEP、IL-8、IL-17、TNFアルファ、USF1、USF2、SELE、EGFR、STAT3、及びMSLNタンパク質に対して異なる抗原特異性を有するいくつかの抗体の組合せ、及び任意選択で、CagA抗原等のピロリ菌抗原に特異的である少なくとも1つの抗体、及び任意選択で、以下の試薬のうちの1つ又は複数:
- ビオチニル化抗体等の二次抗体、又は上記で列挙された特異的抗体とその(それらの)標的との複合体を明らかにする試薬、
- 任意選択で、緩衝液、
- 任意選択で、抗体をビーズへと接合させるためのアミンカップリングキットを任意選択で伴う、色分けビーズ、及び/又は磁性若しくは非磁性ビーズ、及び/又はカルボキシル化ビーズ等のビーズ、
- 任意選択で、ビオチニル化抗体を明らかにするフィコエリトリン(PE)コンジュゲートストレプトアビジン、
- 任意選択で、アッセイプレート、及び
- 任意選択で、使用のための指示、及び結果の解釈のための予測値を提供する通知

並びに
- mtDNAとのハイブリダイゼーションに特異的である特異的オリゴヌクレオチドプライマーの少なくとも1つの対、並びに/又は
- それぞれ、PGK1、CFP、IGFALS、KRT19、SPRR1A、CPA4、CA2、SERPINA5、MAN2A1、KIF20B、SPEN、JUP、KRT6C、CDSN、KPRP、F13A1、SAA1(SAA2)、LBP、DSP、KRT2、KRT14、ARG1、S100A12、ATAD3B、MAN1A1、HAL、DCD、C7、HP、LEP、IL-8、IL-17、TNFアルファ、USF1、USF2、SELE、EGFR、STAT3、及びMSLNタンパク質のうちの2つ以上をコードするDNA領域とのハイブリダイゼーションに特異的である特異的オリゴヌクレオチドプライマーの少なくとも2つの対、及び任意選択で、ピロリ菌の核酸配列とのハイブリダイゼーションに特異的である特異的オリゴヌクレオチドプライマー又は核酸分子の少なくとも1つの対、及び任意選択で、以下の試薬のうちの1つ又は複数:
- ヌクレオチド(例えば、dATP、dCTP、dGTP、dUTP)、
- DNAポリメラーゼ、特に、Taq DNA Polymerase等の熱安定性DNAポリメラーゼ、
- 核酸を染色するための少なくとも1つの色素、特に、リアルタイムPCR装置内で検出可能な色素、
- 任意選択で、少なくとも1つの緩衝液、
- 任意選択で、プライマーのそれらの標的とのハイブリダイゼーションに必要な試薬、
- 任意選択で、参照色素
を含むキットを提供することである。
【0152】
本発明の別の目的は、本明細書で規定される、本発明の方法を実行するのに適したキットであって、上記で記載されたキットについて言及された、薬剤の一部の組合せ、又は全ての薬剤を含むキット、すなわち、酵素免疫測定アッセイ(ELISA)によるタンパク質の検出、若しくはいわゆるTaqManタンパク質アッセイ(qPCRベース)の実施のための、全ての試薬若しくは一部の試薬、及び/又は関与性である場合、アッセイを実施するのに必要な陽性対照及び陰性対照もまた含む、これらのタンパク質の定量を可能とする特異的抗体、並びに、任意選択で、ピロリ菌抗原に特異的である、少なくとも1つのマーカーのほか、核酸の測定が必須である(mtDNAのレベルについて、又はピロリ菌DNA若しくはピロリ菌RNAの存在の決定のために)場合における、血液試料からの、白血球及び血漿の分離を可能とする、チューブ及び/又は手段、並びに白血球から、DNAを単離し、関与性の遺伝子としての、mtDNA遺伝子及びnDNA遺伝子、又は関与性の遺伝子若しくはRNAとしての、ピロリ菌の遺伝子若しくはRNAに特異的であるプライマーの結合を含む、mtDNAの検出及び定量の両方を実施するのに必要な試薬を含み、また、qPCR反応のために必要とされる、Taq DNAポリメラーゼ、デオキシヌクレオチドミックス、緩衝液、及び色素、又は、別の実施形態に従い、Luminexアッセイを実行するための、全ての薬剤及び/若しくは試薬も含むキットを、実際に提供することである。
【0153】
本発明の別の目的は、本明細書の、任意の実施形態において規定された方法を実行するのに適するか、又は本明細書の、任意の実施形態において規定された方法を実行するための、PGK1、CFP、IGFALS、KRT19、SPRR1A、CPA4、CA2、SERPINA5、MAN2A1、KIF20B、SPEN、JUP、KRT6C、CDSN、KPRP、F13A1、SAA1(SAA2)、LBP、DSP、KRT2、KRT14、ARG1、S100A12、ATAD3B、MAN1A1、HAL、DCD、C7、HP、LEP、IL-8、IL-17、TNFアルファ、USF1、USF2、SELE、EGFR、STAT3、及びMSLNタンパク質の中から選択されるタンパク質に特異的である少なくとも2つの抗体、並びに任意選択で、mtDNAとのハイブリダイゼーションに特異的である特異的オリゴヌクレオチドプライマー又は核酸分子の少なくとも1つの対を含むか若しくはこれらからなるマーカーのセット、又はそれぞれ、PGK1、CFP、IGFALS、KRT19、SPRR1A、CPA4、CA2、SERPINA5、MAN2A1、KIF20B、SPEN、JUP、KRT6C、CDSN、KPRP、F13A1、SAA1(SAA2)、LBP、DSP、KRT2、KRT14、ARG1、S100A12、ATAD3B、MAN1A1、HAL、DCD、C7、HP、LEP、IL-8、IL-17、TNFアルファ、USF1、USF2、SELE、EGFR、STAT3、及びMSLNタンパク質のうちの2つ以上をコードするDNA領域とのハイブリダイゼーションに特異的である特異的オリゴヌクレオチドプライマーの少なくとも2つの対、並びに任意選択で、mtDNAとのハイブリダイゼーションに特異的である特異的オリゴヌクレオチドプライマーの少なくとも1つの対を含むか若しくはこれらからなるマーカーのセットである。
【0154】
本発明はまた、胃がん状態に発展し易い状態を患い易いか、又は前胃がん状態を患い易いか、又は胃がん状態を患い易いヒト患者からあらかじめ採取された血液又は血漿の生物学的試料のスクリーニング、とりわけ、胃がん状態に発展し易い状態を患い易いか、又は前胃がん状態を患い易いか、又は胃がん状態を患い易いヒト患者から採取された生物学的血液又は血漿試料中の、本明細書の任意の実施形態において規定された少なくとも2つのマーカーのレベルを測定することにより、ヒト患者が、前記患者を胃がん状態の危険性がある状態にする病変を有し、かつ/若しくはこれと関連するさらなる医学的検査を必要とするのかどうかを決定するか、又はヒト患者が、胃がん状態を発症する危険性、若しくはヒト患者が、これを有する危険性について評価し、特に、前胃がん状態若しくは胃がん状態を予後診断若しくは診断するための、本発明に従う本明細書で規定されるキット又はマーカーのセットの使用にも関する。
【0155】
特定の実施形態では、本発明は、胃がん状態若しくは胃がん状態を患い易いか、又は前胃がん状態若しくは胃がん状態に発展し易い状態を患い易いヒト患者からあらかじめ採取された血液又は血漿の生物学的試料のスクリーニング、とりわけ、胃がん状態若しくは胃がん状態を患い易いか、又は前胃がん状態若しくは胃がん状態に発展し易い状態を患い易いヒト患者から採取された生物学的血液又は血漿試料中の、本明細書の任意の実施形態において規定された少なくとも2つのマーカーのレベルを測定することにより、胃がん状態又は前胃がん状態を予後診断又は診断するための、本明細書で規定されるキット又はマーカーのセットの使用に関する。
【0156】
本開示に従い、本発明に従う本明細書で規定されるキット又はマーカーのセットの使用は、本明細書で詳述されるパラメータについて探索し、かつ/又は被験個体における前記パラメータを、任意のさらなる探索の前における、中間的な生物学的パラメータとしてモニタリングする使用である。
【0157】
本発明はまた、本明細書で開示される、特に、本発明を実施するのに適したキットについて記載される場合における、本明細書で記載される、本発明の方法の実施に適するキット、又はこれを目的とするキットの製造のための任意の態様において記載される、薬剤、成分、又は試薬の使用にも関する。本発明の方法を実施するための、使用のための指示書若しくは指針、及び/又は適切なキットを得るための、使用のための指示書若しくは指針が提供されると、有利でありうる。
【0158】
別の態様に従い、本明細書の、任意の実施形態で記載される、本発明の方法は、少なくとも部分的に、コンピュータにより実装されうることが理解されるものとする。特に、本明細書の、任意の実施形態において記載される、本発明の方法の工程b.及びc.は、本明細書の、任意の実施形態において記載される、少なくとも2つのバイオマーカーのレベルに対応するデータが出力として提供される。コンピュータにより実装されうる。別の特定の実施形態に従い、コンピュータはまた、本明細書で記載される、バイオマーカーのレベルについての、任意の実施形態に従い、コンピュータ及びレベル測定デバイスをインターフェースする、適切な手段を介して、工程a.で収集されたデータ、すなわち、選択されるバイオマーカーが、IL-8及びmtDNAレベルの集まりからならないことを条件として、PGK1、CFP、IGFALS、KRT19、SPRR1A、CPA4、CA2、SERPINA5、MAN2A1、KIF20B、SPEN、JUP、KRT6C、CDSN、KPRP、F13A1、SAA1(SAA2)、LBP、DSP、KRT2、KRT14、ARG1、S100A12、ATAD3B、MAN1A1、HAL、DCD、C7、HP、LEP、IL-8、IL-17、TNFアルファ、USF1、USF2、SELE、MSLN、EGFR、STAT3、及びmtDNAのレベルの中から選択された、少なくとも2つのバイオマーカーのレベルのコレクションのin vitroにおける収集も駆動しうる。
【0159】
コンピュータが、本明細書の、任意の実施形態において記載される、本発明の方法の工程b.及びc.を実装しうる可能性に沿って、本発明はまた、ヒト患者が、前記患者を胃がん状態の危険性がある状態にする病変を有し、かつ/又はこれと関連するさらなる医学的検査を必要とするのかどうかについて探索するための、コンピュータにより実行される方法であって、
a.選択されるバイオマーカーが、IL-8及びmtDNAレベルの集まりからならないことを条件として、PGK1、CFP、IGFALS、KRT19、SPRR1A、CPA4、CA2、SERPINA5、MAN2A1、KIF20B、SPEN、JUP、KRT6C、CDSN、KPRP、F13A1、SAA1(SAA2)、LBP、DSP、KRT2、KRT14、ARG1、S100A12、ATAD3B、MAN1A1、HAL、DCD、C7、HP、LEP、IL-8、IL-17、TNFアルファ、USF1、USF2、SELE、MSLN、EGFR、STAT3、及びmtDNAのレベルの中から選択される少なくとも2つのバイオマーカーのレベルを受信するか、又はそれらの決定が本明細書で記載される任意の実施形態において規定される少なくとも2つのバイオマーカーの任意のレベルを受信し、特に、少なくとも2つのバイオマーカーのレベルが、このようなレベルを測定するためのin vitro方法、又はそれに適合されたデバイスを介して測定される工程、並びに
b.工程a.で決定されたレベルを、それを対照と比較することにより処理する工程、並びに
c.特に、工程b.で比較された少なくとも2つのバイオマーカーのレベルが、それらの対照から逸脱する場合に、所定の判定規則、とりわけ、探索されるバイオマーカーと関連して決定される感度及び/又は特異度と関連する判定規則を介して、工程a.で受信されたレベルが、これらのレベルがとりわけ工程a.で規定されたレベルを測定するためのin vitro方法を介して測定されたヒト患者は、前記患者を胃がん状態の危険性がある状態にする病変を有し、かつ/又はこれと関連するさらなる医学的検査、とりわけ、臨床的調査を必要とすることとするのかどうかを決定する工程
を含む方法にも関する。
【0160】
工程c.の決定は、本開示で開示される、任意の規則に従い、実施のために選択されたバイオマーカーに従い実行されうる。例えば、本明細書におけるTable 2(表4)は、関与性の判定規則についての、例示的リストを提示する。判定規則はまた、実行される検査について許容可能であることが決定された、感度値及び特異度値について決定されるカットオフ値からも導出されうる。本記載は、感度値、特異度値、及びAUC値と関連するバイオマーカーリストの全ての例に依拠しうる。当業者は、本開示で記載される、任意のデータに基づき、論じられた工程c.を組み込むコンピュータにより実行される方法を、たやすく実施しうる。本明細書で論じられる、コンピュータにより実行される方法は、特に、本記載の特許請求の範囲、又は任意の実施形態で規定される、ヒト患者が、前記患者を胃がん状態の危険性がある状態にする病変を有し、かつ/又はこれと関連するさらなる医学的検査を必要とするのかどうかを決定するin vitro方法の文脈では、本明細書で記載される、任意の実施形態のために実施されうることが理解されるものとする。
【0161】
本発明はまた、上記で論じられた、コンピュータにより実行される方法、とりわけ、前記方法の工程b.及び/若しくはc.を実行するための手段を含むか、又は前記方法を実施するように適合された(又はこのように構成された)プロセッサー、とりわけ、前記方法の工程b.及び/若しくはc.を実施するように適合された(又はこのように構成された)プロセッサーを含むデータ処理装置にも関する。
【0162】
特定の実施形態に従い、このようなデータ処理装置は、
- 上記で論じられた、コンピュータにより実行される方法の工程a.で規定された、少なくとも2つのバイオマーカー(又は本記載において記載されたバイオマーカーの任意の組合せ)のレベルを受信する入力インターフェース、
- 少なくともコンピュータプログラムの命令を保存するためのメモリであって、コンピュータ又はプロセッサーによりプログラムが実行されると、コンピュータに、上記で論じられた、コンピュータにより実行される方法を実行させる命令を含むメモリ、任意選択で、対照データ及び判定規則を保存するためのメモリ、
- 前述の命令を読み取り、上記で論じられた、コンピュータにより実行される方法を実行するために、メモリへとアクセスするプロセッサー、
- 少なくとも、上記で論じられた、コンピュータにより実行される方法の工程a.で規定された、少なくとも2つのバイオマーカー(又は本記載において記載されたバイオマーカーの任意の組合せ)のレベルが、これらのバイオマーカーレベルが測定されたヒト患者は、前記患者を胃がん状態の危険性がある状態にする病変を有し、かつ/又はこれと関連するさらなる医学的検査、とりわけ、臨床的調査を必要とすることとするのかどうかの決定をもたらす出力インターフェースを含む。
【0163】
本発明はまた、コンピュータ又はプロセッサーによりプログラムが実行されると、コンピュータに、上記で論じられた、コンピュータにより実行される方法を実行させる命令を含む、コンピュータプログラム(又はコンピュータ製品)にも関する。
【0164】
本発明はまた、とりわけ、コンピュータ又はプロセッサーによりコンピュータプログラム(又はコンピュータ製品)が実行されると、上記で論じられたコンピュータにより実行される方法を実装する、上記で論じられたコンピュータプログラム(又はコンピュータ製品)をその上に保存したコンピュータ可読媒体、特に、非一過性コンピュータ可読記録媒体にも関する。
【0165】
本発明は、特に、患者でありうる個体から、あらかじめ得られた生物学的試料に対して実行される、非侵襲的検査のための基盤である。非侵襲的検査とは、本発明の方法が、特に、in vitro方法であることを意味する。前記方法は、その実施のために、医療従事者の存在を必要としない。本発明に従い、胃発癌の早期検出、特に、胃発癌過程に関与するか、又はこの過程の基礎において、例えば、本明細書で記載される、AG/P段階又はAG/P状態において関与する胃病変の存在の早期検出のために、いくつかのバイオマーカーが提起される。本発明は、とりわけ、予防目的に適するが、また、1)患う状態のための、進行中の処置下にある個体、若しくはこの下にない個体における、胃発癌過程の進行のモニタリングのために、かつ/又は2)前新生物性状態の、新生物性状態へのシフトのモニタリングのために、かつ/又は3)治癒の後に、疾患の再発についてスクリーニングするための追跡としても適する。この目的で、本発明の方法は、単純に、患者の生理学的パラメータの検出及び/又はモニタリングに依拠する。
【0166】
本発明の方法は、化学療法処置及び/又は放射線処置等の処置下にある患者に対して、処置効率、疾患段階、及び疾患の発症についての指標として使用されうる。
【0167】
本明細書で使用される、「~を含むこと(including)」又は「~を含有すること」と同義である、「~を含むこと(comprising)」という用語が、オープンエンドの用語であり、さらなる、列挙されていない要素、成分、又は方法工程を除外しないのに対し、「~からなること」は、明示的に列挙されていない、任意のさらなる要素、工程、又は成分を除外する、閉じた用語である。
【0168】
「~から本質的になること」という用語は、これらのさらなる要素、工程、又は成分が、本出願の基本的、かつ、新規の特性に、実質的な影響を及ぼさない限りにおいて、さらなる、列挙されていない要素、工程、又は成分を除外しない、部分的に開かれた用語である。
【0169】
よって、「~を含むこと」(又は「~を含む」)という用語は、「~からなること」(「~からなる」)という用語のほか、「~から本質的になること」(「~から本質的になる」)という用語を含む。したがって、本出願では、「~を含むこと」という用語(又は「~を含む」)は、より特定すると、「~からなること」(「~からなる」)という用語、及び「~から本質的になること」(「~から本質的になる」)という用語を包含する用語として意図される。
【0170】
本出願の読者の一助とする試みにおいて、本記載は、多様な段落又は節に分けられる。これらの分離は、ある段落又は節の内容を、別の段落又は節の内容から切り離すものとして考えられるべきである。逆に、本記載は、想定されうる、多様な節、段落、及び文の全ての組合せを包含する。
【0171】
本明細書に引用される、全ての参考文献の関与性の開示の各々は、参照により具体的に組み込まれる。
【0172】
本明細書の上記で記載された特色、及び本発明の他の特色は、本発明者らにより行われた実験を、本記載で提示される特色及び規定と相補的に例示する、例及び図面を読めば明らかであろう。以下の例は、例示を目的として提示される。しかし、例は、記載される発明に対して、限定的ではない。
【図面の簡単な説明】
【0173】
図1】コホートの全ての試料に対して測定された、候補物質バイオマーカーの血漿中レベル。A)循環白血球から単離されたDNAに対するqPCRにより測定されたmtDNA;方法節で記載される通り市販のELISAアッセイを使用して測定されたC) IL-8、E) TNF-α、G) IL-17、I) USF1、及びK) USF2。決定されたカットオフ値に従う、患者の異なる群、H、NAG、AG/P、GCにおける候補バイオマーカーの血漿中レベルの分布: B) mtDNA、D) IL-8、F) TNF-α、H) IL-17、J) USF1、L) USF2。
図2】コホートの全ての試料に対して測定された、候補物質バイオマーカーの血漿中レベル。方法節で記載される通り市販のELISAアッセイを使用して測定されたA) LEP、C) HP、E) SELE、G) MSLN。決定されたカットオフ値に従う、患者の異なる群、H、NAG、AG/P、GCにおける候補バイオマーカーの血漿中レベルの分布: B) LEP、D) HP、F) SELE、H) MSLN。
図3】ROC曲線解析(偽陽性率(FPR)の関数における真陽性率(TPR))及びAUC値により決定される、バイオマーカー候補物質の診断正確度を示す図である。ROC曲線は、「バイオマーカー量が、xを上回る(又は、構成に応じて、xを下回るか、又はx以上であるか、又はx以下である)場合、患者は、H又はNAG又はAG/P又はGCである」という判定規則[規則中、xは、カットオフ値である]を使用して得た。最適のカットオフ値及びAUC基準を、各プロットの左上に提示する。最適のカットオフ値は、TPRとFPRとのすりあわせを使用して決定した。図3に対応する表を、下記に示す:
【表1】
図4】ROC曲線解析(偽陽性率(FPR)の関数における真陽性率(TPR))及びAUC値により決定される、バイオマーカー候補物質の診断正確度を示す図である。ROC曲線は、「バイオマーカー量が、xを下回る(又は、構成に応じて、xを上回るか、又はx以上であるか、又はx以下である)場合、患者は、H又はNAG又はAG/P又はGCである」という判定規則[規則中、xは、カットオフ値である]を使用して得た。最適のカットオフ値及びAUC基準を、各プロットの左上に提示する。最適のカットオフ値は、TPRとFPRとのすりあわせを使用して決定した。図4に対応する表を、下記に示す:
【表2】
図5】Proteome Profilerアレイ(STRING解析:https://string-db.org/)により同定されたバイオマーカー候補物質間の機能的関連ネットワーク、及びこれらと関連する細胞機能を示す図である。公知の相互作用:データベースからキュレートされた相互作用(グレー線);実験的に決定された相互作用(--------)予測された相互作用:共発現(・・・・・・・・・)、その他の相互作用:テキストマイニング(黒実線)である。
図6】相関行列解析、階層的クラスター化解析、並びにPLS-DA解析及びスパースPLS-DA解析を示す図である。A)対応のある相関行列は、これらの試料中において測定された、全ての完全な強度値対を使用して計算された、各試料対間のピアソン相関係数を表す。B)方法節に指し示される通りに行われた、階層的クラスター分析である。C)部分最小二乗法-判別分析(PLS-DA)を使用して、4つの患者群(H、NAG、AG/P、GC)の間のプロテオミクス上の差違について探索した。PLS-DAプロットは、健常患者と、他の病態との、良好な分離を提示した。D)スパースPLS-DA法は85の潜在的バイオマーカーのセットを選択し、H対象とGC患者とを明確に区別するを可能とするが、NAG患者とAG/P患者とを分けることができなかった。
図7】MSにより同定された、関連性が最も大きなバイオマーカー候補物質の平均強度レベルからの逸脱を表示するヒートマップを示す図である。大半の因子について、共通のプロファイルは、主に、NAG及びAG/Pについて観察され、別個のプロファイルは、他の群と比較して、GCを特徴付ける。本図は、色における情報を包含する:有色の図面は、出願時に、特許庁へと提出されたものであり、信頼されうる。
図8】ELISAアッセイにより測定された候補物質バイオマーカーについての、解析及び予測を示す図である。A)健常(H)、非萎縮性胃炎(NAG)、前新生物(AG/P)、及びがん(GC)の患者各群に対する2つの変数の全ての組合せについての、AUC値の再分配である。B)2つの変数について、最良のAUC基準をもたらすモデルにおいて、1つの候補物質が出現する回数である。
図9】全ての病態を同時に予測する、その能力を測定する、モデルの残差逸脱度を示す図である。2つのバイオマーカーの10の最良の組合せであり、IL-17及びLEPの組合せのH及び患者を予測する能力を強調する(上図)。3つのバイオマーカーの10の最良の組合せは、Hを、患者、主にGCから分ける、TNF-α、IL-17、及びLEPの集まりを示す(下図)。 図9に示された、対応する、2つのバイオマーカーの、10の最良の組合せ、及び3つのバイオマーカーの、10の最良の組合せを、下記に再掲する:2つのバイオマーカーの、10の最良の組合せ(残差逸脱度の点における)(上図) 1)IL-17及びLEP:151.23 2)TNF-α及びIL-17:154.25 3)IL-17及びUSF2:162.58 4)性別及びIL-17:176.26 5)IL-17及びMSLN:190.51 6)mtDNA及びIL-17:191.22 7)Hp状態及びIL-17:191.22 8)IL-17及びUSF1:196.64 9)IL-8及びIL-17:198.49 10)IL-17及びHP:198.813つのバイオマーカーの、10の最良の組合せ(残差逸脱度の点における)(下図) 1)TNF-α、IL-17、及びLEP:124.88 2)IL-17、USF2、及びLEP:135.12 3)mtDNA、IL-17、及びLEP:135.28 4)IL-17、HP、及びLEP:139.20 5)性別、TNF-α、及びIL-17:140.53 6)TNF-α、IL-17、及びUSF2:141.95 7)性別、IL-17、及びUSF2:142.34 8)IL-17、MSLN、及びLEP:142.98 9)TNF-α、IL-17、及びMSLN:143.40 10)mtDNA、TNF-α、及びIL-17:143.54本図及び上記における、「性別」及び「Hp状態」に対する言及は、患者の性別であれ、Hp状態であれ、実行された実験の経過において調べられたという事実、すなわち、本明細書で提示される規定に従う、各疾患段階の、各検出時において、ピロリ菌感染に照らして陽性であることが既知である患者が、発症した場合があるという事実を指すことが注目される。
図10】モデル推定の結果を示す図である。A)非萎縮性胃炎(NAG)群、前新生物(AG/P)群、及びがん(GC)群に関する2つの変数及び3つの変数についてのAUC基準の分布である。B)最良のAUC基準をもたらすモデルにおいて、バイオマーカー候補物質が出現する回数である。
図11】全ての病態を同時に予測する、その能力を測定する、モデルの残差逸脱度を示す図である。2つのバイオマーカーの10の最良の組合せであり、KIF20BのARG1又はCPA4との組合せのGCを予測する能力を強調する(上図)。3つのバイオマーカーの10の最良の組合せは、集まり:KRT19、KIF20B、及びSPENによる、全ての群についての完全な分類を示す(下図)。 図11に示された、対応する、2つのバイオマーカーの10の最良の組合せ、及び3つのバイオマーカーの10の最良の組合せを、下記に再掲する:2つのバイオマーカーの、10の最良の組合せ(残差逸脱度の点における)(上図) 1)ARG1及びKIF20B:21.86 2)KIF20B及びCPA4:21.95 3)DSP及びKIF20B:25.06 4)SPRR1A及びS100A12:25.17 5)S100A12及びCPA4:25.36 6)MAN1A1及びSPRR1A:25.55 7)ARG1及びS100A12:25.61 8)S100A12及びMAN2A1:25.87 9)KRT19及びS100A12:25.95 10)CFP及びCDSN:26.043つのバイオマーカーの10の最良の組合せ(残差逸脱度の点における)(下図) 1)KRT19、KIF20B、及びSPEN:0.47 2)ARG1、KIF20B、及びSPEN:2.37 3)DSP、KIF20B、及びSPEN:2.38 4)HAL、KIF20B、及びSPEN:3.50 5)C7、KIF20B、及びSPEN:5.09 6)JUP、KIF20B、及びSPEN:5.79 7)KIF20B、SPEN、及びCPA4:6.01 8)SPRR1A、KIF20B、及びSPEN:6.24 9)MAN2A1、KIF20B、及びSPEN:6.68 10)KRT14、KIF20B、及びSPEN:8.49
図12】GC過程の異なる段階を同定するための、最も完全な予測をもたらす、バイオマーカーシグネチャーを示す図である。表示の通り、IL-17は、健常者と、患者とを区別することを可能とする。患者の中で、KIF20B、SPENの、KRT19、ARG1、DSP1、又はHalとの組合せは、前新生物(AG/P)の良好な予測をもたらす。前新生物の予測のために観察された対応するAUC値に従い、他の候補物質の中で検討されるべき候補物質もまた、斜字体で示される。加えて、LEP及びS100A12は、GCの良好な予測に適切である。
図13】ELISAにより確認されたバイオマーカー候補物質の血漿中レベルを示す図である。MS又はProteome Profilerにより、まず初めに同定され、市販のELISAにより確認されるか、又はELISAにより直接測定された、バイオマーカー候補物質の血漿中レベルを表すバイオリンプロットである。定量は、コホートの全ての試料に対して実施した。p<0.05について有意である、マン-ホイットニー検定を使用する、統計学的解析である。この図は、バイオマーカーである、EGFR及びSTAT3についてのELISA結果を含む。
図14】STRINGによる、バイオマーカー候補物質間に存在する、機能的ネットワークのグラフ表示を示す図である。確認された22のタンパク質の中で、14及び2は、機能的に結びついており、2つのタンパク質も、機能的に結びついている。加えて、一部のタンパク質は、STAT3-EGFR-LEP-IL-8;MSLN-LBP;及びUSF1-USF2として、物理的複合体の一部である(https:// string-db.org)。
図15】A.胃前新生物(SIG-AGP)及びB.胃がん(SIG-GC)を予測するための、最良のバイオマーカーシグネチャーを示す図である。AUCは、SIG-AGP及びSIG-GCのいずれについても、シグネチャーの長さと共に増大する。AUCは、SIG-GCについての感度、及びSIG-AGPについての特異度の増大と関連する。
図16】SIG-AGP及びSIG-GCシグネチャーそれぞれによる、前新生物病変及びGC病変の検出に基づく診断検査の使用の概略を示す図である。使用について、3つの異なるレベル:1)GCの危険性がある患者のスクリーニング;2)初期段階において、GCの発生を検出する、前新生物の存在の追跡;3)手術の後における及び化学療法時/化学療法後における、がんの再発を防止するためのGC患者の追跡、を提起することができる。概略図のレジェンドは以下の通りである:1.患者又は患者のプールから採取された生物学的試料、例えば、血液又は血漿試料を、例えば、本明細書で記載されるSIG-AGP若しくはSIG-GCシグネチャー又は本明細書で記載されるマーカーの他の任意の組合せに対して検査する工程;2.1.の検査が陰性である場合、さらなる措置は、想定されないものとする工程;3.1.の検査が、AG/Pの危険性について陽性(SIG-AGP陽性)である場合、更に、5.へと進む工程;4.1.の検査が、GCの危険性について陽性(SIG-GC陽性)である場合、更に、5.へと進む工程;5.アッセイ試料が採取された患者に対して、さらなる臨床的調査、例えば、内視鏡手順を実行する工程;6.工程5.が、5.のさらなる臨床的調査を介して、前新生物の存在又は危険性を結論づける場合、更に、患者追跡手順としての8.へと進む工程;7.工程5.が、5.のさらなる臨床的調査を介して、胃がんの存在又は危険性を結論づける場合、更に9.へと進む工程;8.追跡患者から採取された生物学的試料、例えば、血液又は血漿試料の、例えば、本明細書で記載されるSIG-AGP若しくはSIG-GCシグネチャー又は本明細書で記載されるマーカーの他の任意の組合せに対する、新たな検査工程/さらなる検査工程であって、本概略図の工程1.から始まる検査の新たなラウンドの開始でありうる、新たな検査工程/さらなる検査工程;9.実施者の差配下にあるデータに従う、追跡患者の処置及び/又は手術等、さらなる医学的措置工程10.追跡患者から採取された生物学的試料、例えば、血液又は血漿試料の、例えば、本明細書で記載されるSIG-AGP若しくはSIG-GCシグネチャー又は本明細書で記載されるマーカーの他の任意の組合せに対する、新たな検査工程/さらなる検査工程であって、患者追跡手順を構成し、本概略図の工程1.から始まる検査の新たなラウンドの開始でありうる、新たな検査工程/さらなる検査工程。
【発明を実施するための形態】
【実施例
【0174】
方法
研究集団
被験コホートを、Table 1(表3)に記載する。被験コホートは、Institut Pasteurの臨床的調査・生物医学研究支援ユニット(ICAReB)において募集された、48例の健常(H)無症状性ボランティアを含む。市販の酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)(Serion ELISA Classic)を使用して、各H試料を、それらのピロリ菌陰性血清学について確認した。26例の非萎縮性胃炎(NAG)患者、38例の萎縮性胃炎/前新生物(AG/P)患者、及び68例の胃がん(GC)患者を、コホートに組み入れた。NAG及びAG/P患者は、D.Lamarque教授を責任者とする、肝臓・消化器科(AP-HP、A.Pare hospital、Boulogne-Billancourt)において診断された。GC患者は、AP-HP、HEGP、Parisの、J.Taieb教授を責任者とする、肝臓・消化器科及び消化器腫瘍科において診断された。全ての患者は、抗がん処置下になく、先立つ、少なくとも2週間にわたり、抗生物質、ビスマス化合物、プロトンポンプ阻害剤、及び非ステロイド系抗炎症薬で処置されていない成人であった。診断は、内視鏡検査、及び胃生検についての組織病理学解析に基づいた。全ての患者は、説明を受け、同意文書にシグネチャーするように求められた。研究は、Institut Pasteurトランスレーショナルリサーチセンター(プロトコール参照番号:2013-29)により承認された。
【0175】
【表3】
【0176】
臨床試料の回収及び組織学的解析
各患者について、10mlの血液を回収し、胃組織検体を分離した。胃生検は、幽門洞及び胃体部の両方から、胃内視鏡検査時に回収した。生検は、ホルマリン内に浸漬し、組織学解析及び胃病変の診断のための、ヘマトキシリン-エオシン(H&E)染色について処理した。ピロリ菌の存在は、ギムザ染色及び血清学により確認した。コホートに組み入れる前に、血清学検査により、ICAReBプラットフォームによる健常ボランティアに由来する血液試料のピロリ菌陰性状態を検証した。
【0177】
循環ミトコンドリアDNA(mtDNA)及び定量
末梢血(10ml)を、各患者から採取し、Pancoll勾配により、Leucosep(登録商標)チューブ上で、白血球を分離した。DNAは、Qiamp DNAキット(Qiagen社)を使用して、分離された白血球から調製し、mtDNA定量のために検査されるまで、-80℃で凍結させた。並行して、血漿画分も分離し、使用するまで、-20℃で凍結させた。mtDNAレベルは、12SリボソームRNA遺伝子及び核コード18SリボソームRNA遺伝子を、内在性参照として使用して、既に記載されている(6)通り、StepOne(商標)PlusリアルタイムPCRシステム及びFastStart Universal SYBR Green Master(Applied Biosystems社)を使用する、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(q-PCR)により、循環白血球から単離されたDNAに対して測定した。相対mtDNAのレベルは、既に報告されている(7)通りに、nDNAの平均Ctと、mtDNAの平均CtとのデルタCt(ΔCt)(ΔCt=CtnDNA-CtmtDNA)を、2ΔCtとして使用して計算した。
【0178】
異なるバイオマーカー候補物質の、血漿中レベルの定量
選択された、異なるバイオマーカー候補物質:インターロイキン8(IL-8)(参照番号:DY208);インターロイキン17(IL-17)(参照番号:DY317);腫瘍壊死因子α(TNF-α)(参照番号:DY210);メソテリン(MSLN)(参照番号:DY3265);E-セレクチン(SELE)(参照番号:DY724);ハプトグロビン(HP)(参照番号:DY8465);レプチン(LEP)(参照番号:DY398);並びに上流刺激因子1及び上流刺激因子2(USF1;参照番号:MBS9342772、及びUSF2;参照番号:MBS9321077;MyBioSource社)の血漿中レベルは、Duo Set RD system社から市販されているELISAアッセイを使用して査定した。
【0179】
オンコロジー経路と関連する因子の血漿中レベルは、それぞれ、Human XL Oncologyアレイ(参照番号:ARY029;R&D systems社)を使用する、プロテオミクスプロファイラー解析によりスクリーニングした。このアレイは、ビオチニル化検出抗体のカクテルと共に混合された血漿試料と共にインキュベートされたニトロセルロース膜上に存在する、選択された抗体の捕捉おいて構成され、供給元の推奨に従い、ストレプトアビジン-西洋ワサビペルオキシダーゼにより明らかにされる。各経路について、健常(H)対象もまた含む、NAG群、AG/P群、及びGC群である、各患者群を表す、2例ずつの試料について解析した。
【0180】
質量分析(MS)ベースのプロテオミクスによる、血漿中バイオマーカー候補物質の、大スケールスクリーニング
血漿試料
本パイロット研究では、H患者、NAG患者、AG/P患者、及びGC患者を含む、n=10試料ずつである、4つの群について検討した。各群の代表的血漿試料は、AP-HP病院からの、同じコホート内で選択し、全てのプロジェクトのために使用した。
【0181】
MARS Hu-14による免疫枯渇
製造元プロトコールに従い、MARS Hu-14(5188-6560:Agilent社)を使用して、血漿試料を枯渇させた。略述すると、300μgの全タンパク質を、緩衝液Aで希釈し、0.22μmで濾過した。各試料を、スピンカラムへとロードし、100g/1分/室温で遠心分離した。5分間にわたるインキュベーション時間の後、100g/2.5分/室温における遠心分離を介して、枯渇しなかったタンパク質を、400μLずつ、2ラウンドにわたる緩衝液Aにより溶出させた。3つの濾液を組み合わせ、40%(vol:vol)のTCAにより、一晩にわたり、更に沈殿させた。試料を、アセトンにより、2回にわたり洗浄し、空気乾燥させてから、溶液中消化にかけた。
【0182】
溶液中消化
枯渇した試料を、100μLの8M尿素/100mM NH4HCO3変性緩衝液により再懸濁させ、5mM TCEP(646547:Sigma社、StLouis、Missouri、USA)により、15分間にわたり還元するのに続き、20mMのヨードアセトアミド(I114:Sigma社、StLouis、Missouri、USA)による、暗所内、30分間にわたるアルキル化にかけた。タンパク質を、0.5μgのrLys-C(V1671:Promega社、Madison、Wisconsin、USA)により、37℃/3時間にわたり消化し、次いで、0.5μgのSequencing Grade Modified Trypsin(V5111-Promega社、Madison、Wisconsin、USA)による、37℃/一晩にわたる、その後の消化のために、9倍に希釈した。4%ギ酸(FA)により、消化を停止させ、逆相C18 Stage-Tips法により、ペプチドを脱塩させた(8)。80%アセトニトリル(ACN)/0.1%FAにより、ペプチドを溶出させた。最後に、試料を、真空遠心分離機内で乾燥させ、2%ACN/0.1%FAと共に再懸濁させた。全ての試料について、Biognosys社により推奨される通りに、iRTペプチドをスパイクした。
【0183】
スペクトルライブラリーのためのペプチド画分化
40例の血漿試料から構成された「プール」試料を、データ非依存取得(DIA)法のためのスペクトルライブラリーを得るための専用試料とした。既往のプロトコールにより、「プール」試料を、枯渇させ、消化し、(8)(9)に記載されている通りに、ポリ(スチレン-ジビニルベンゼン)逆相スルホネート(SDB-RPS)Stage-Tips法を使用して、ペプチド画分化を行った。略述すると、3枚のSDB-RPS Emporeディスクを、P200チップ上にスタッキングし、以下の通りに、7つの系列溶出液:溶出液1(60mMのギ酸アンモニウム(AmF)/20%のACN/0.5%のFA)、溶出液2(80mM AmF/30%のACN/0.5%のFA)、溶出液3(95mM AmF/40%のACN/0.5%のFA)、溶出液4(110mM AmF/50%のACN/0.5%のFA)、溶出液5(130mM AmF/60%のACN/0.5%のFA)、溶出液6(150mM AmF/70%のACN/0.5%のFA)、及び溶出液7(80%のACN/5%水酸化アンモニウム)を適用した。全ての画分を乾燥させ、注射の前に、2%のACN/0.1%のFAと共に再懸濁させた。全ての画分のために、Biognosys社により推奨される通りに、iRTペプチドをスパイクした。
【0184】
質量分析
スペクトルライブラリーのためのデータ依存取得(DDA):統合型カラムオーブン(PRSO-V1:Sonation GmbH社、Biberach、Germany)を使用して、ナノクロマトグラフィーシステム(Proxeon EASY-nLC 1200:Thermo Fisher Scientific社、Waltham、Massachusetts、USA)を、Q Exactive(商標)HF質量分析計(Thermo Fisher Scientific社)へと、オンラインでカップリングした。各試料について、100%の溶媒A(H2O、0.1%のFA)中の平衡化工程の後、1μgのペプチドを、44cmの自社製C18カラム(粒子を1.9μmとし、小孔サイズを100Åとする、ReproSil-Pur Basic C18:Dr.Maisch GmbH社、Ammerbuch-Entringen、Germany)へと注入した。ペプチドを、250nL/分の流量で、132分間にわたる、5分間にわたる、2~7%の溶媒B(80%のACN、0.1%のFA)、70分間にわたる、7~23%の溶媒B、30分間にわたる、23~45%の溶媒B、及び5分間にわたる、45~95%の溶媒Bである、多段階勾配により溶出させた。カラム温度は、60℃に設定した。データ依存上位10位法を、分解能を60,000とするサーベイスキャン(300~1700m/z)、及び分解能を15,000とするMS/MSスキャン(固定第1質量:100m/z)と共に使用する、Xcaliburソフトウェアを使用して、質量スペクトルを獲得した。AGCの目標値、並びにサーベイスキャン及びMS/MSスキャンのための最大注射時間は、それぞれ、3.0×106、100ミリ秒、及び1.0×105、45ミリ秒へと設定した。単離域は、1.6m/zへと設定し、正規化衝突エネルギーは、HCDフラグメンテーションのために、28へと固定した。本発明者らは、4.4×104の強度閾値に対して、2.0×103の最小AGC目標値を使用した。割り当てられなかった前駆体イオンの電荷状態のほか、1、7、8、及び>8の帯電状態は、棄却し、ペプチドマッチを無効化した。同位体の除外を可能とし、選択されたイオンを、45秒間にわたり、ダイナミックエクスクロージョンにかけた。
【0185】
血漿試料のためのデータ非依存取得(DIA):質量スペクトルは、オンラインで、Q Exactive(商標)HF質量分析計へとカップリングされた、同じナノクロマトグラフシステムを使用して、XCaliburソフトウェアにより、データ非依存取得モードで収集した。各試料について、100%の溶媒A(H2O、0.1%のFA)中の平衡化工程の後、1μgのペプチドを、50cmの自社製C18カラム(粒子を1.9μmとし、小孔サイズを100Åとする、ReproSil-Pur Basic C18:Dr.Maisch GmbH社、Ammerbuch-Entringen、Germany)へと注入した。ペプチドを、スペクトルライブラリーと同じ、多段階勾配により溶出させた。各サイクルは、以下の通りに構築した:1回のMSフルスキャンの分解能を、60000(走査範囲:349~1214m/zの間)とし、AGCを、3.0×106に設定し、最大注射時間は、60ミリ秒に設定した。全てのMS1に、MS1範囲を対象とする、25m/zの単離域36を後続させた。自動最大注入時間によるAGC目標値を、2.0×105とし、NCEは、28へと設定した。全ての収集は、ポジティブモード及びプロファイルモードで行った。
【0186】
タンパク質の同定及び定量のためのデータ処理
スペクトルライブラリーの構築:生データは、検索エンジンであるAndromeda(11)を使用する、MaxQuant software version 1.5.0.30(10)を使用して解析した。Human SwissProtデータベース(December 4, 2018現在の登録項目数:20,203)に対して、MS/MSスペクトルを検索した。[variable modification](メチオニンの酸化及びN末端アセチル化)及び[fixed modification](システインのカルバミドメチル化)を、検索のために設定し、[missed cleavage]が最大2つであるトリプシンを、検索のために選び出した。最小ペプチド長は、7アミノ酸へと設定し、ペプチド及びタンパク質の同定のための偽発見率(FDR)は、0.01へと設定した。主要な検索ペプチドの許容誤差は、4.5ppmへと設定し、MS/MSマッチ許容誤差については、20ppmへと設定した。コフラグメンテーションイベントを同定するために、第2ペプチドを可能とした。
【0187】
DIA法のためのデータ解析:Spectronaut X(v.13.2.190705.43655;Biognosys AG社)を使用して、DIA実験について解析した。MS1レベル及びMS2レベルにおける[mass tolerance]を、[dynamic]として援用した。XIC RT Extraction Windowは、[correction factor]を1として、[dynamic]へと設定した。[calibration]方式は、非線形iRTキャリブレーションを伴う、[automatic]へと設定し、[precision iRT]を有効とした。[mutated]法及び[dynamic limit]を使用して、[decoy]を生成した。P値の推定は、カーネル密度推定量を使用して実施した。[proteotypicity filter]を伴わずに、[interference correction]を有効とした。[major grouping]は、[protein group id]により行い、[minor grouping]は、[stripped sequence]により行った。[major group quantity]は、平均値ペプチド量とした。最小値を1とし、最大値を3として、[major group top N]を有効とした。[minor group quantity]は、平均値前駆体量とした。最小値を1とし、最大値を3として、[minor group top N]を有効とした。[quantity MSLevel]は、[MS2]とし、[quantity type]は、[area under the curve]とした。[Q value]を、[data filtering]に使用した。[cross run normalization]は、[row selection]を、[Q value sparse]とし、[normalization strategy]を、[local normalization]として有効とした。デフォルトの標識化型は、[profiling strategy]及び[unify peptide peaks strategy]を有効としない、無標識であった。[protein inference]ワークフローは、[automatic]へと設定した。
【0188】
質量分析によるプロテオミクスデータは、PRIDEパートナーリポジトリー(12)を介して、ProteomeXchange Consortiumへと寄託される。
【0189】
統計学的解析
患者の各群について、各バイオマーカー候補物質についての血漿中レベルを、まず、マン-ホイットニー検定を使用して、統計学的に解析した。P<0.05である場合に、結果を、有意であると考えた。
【0190】
偽陽性率(FPR)、真陽性率(TPR)、ROC曲線、及び曲線下面積(AUC)の決定
潜在的バイオマーカー、又はバイオマーカーの組合せについて、判定規則を推定して、疾患の段階(健常、胃炎、前新生物、又はがん)を予測することができる。したがって、偽陽性率(FPR)及び真陽性率(TPR)は、この判定規則から、
FPR=N/W
TPR=M/C
[式中、N=判定の予測が不正確になされた患者の数(例えば、がんが予測された、非がん患者の数);W=実際の判定と一致しない患者の数(例えば、非がん患者の数);M=判定の予測が正確になされた患者の数(例えば、がんが予測された、がん患者の数);C=実際の判定と一致する患者の数(例えば、がんを伴う患者の数)である]
により推定される。
【0191】
単一の潜在的バイオマーカーを使用する場合、疾患の段階は、潜在的バイオマーカーの濃度についての閾値を使用して予測することができる。こうして、FPR及びTPRは、各閾値について計算される(Table 2(表4))。閾値を変動させることにより、受信者動作特性(ROC)曲線は、x軸上のFPR、及びy軸上のTPRにより決定される(図3及び4)。ROC曲線下面積は、AUCの基準である。AUC=0.5である場合、バイオマーカーは、患者のランダムな選択を上回ることができない(選び出される閾値がどのような値であれ)ので、判定規則は、予測力を有さない。AUC>0.5である場合、判定規則は、患者のランダムな選択を上回る(少なくとも、選び出された1つの閾値について)。AUCが、1に近づくほど、判定規則は、良好となる(理想的な判定規則について、AUC=1となる)。同様に、FPR及びTPRを推定し、AUC値もまたもたらすように、潜在的バイオマーカーの組合せについて、診断モデルを推定して、各段階の疾患を予測する(Table 4(表6))。
【0192】
ROC曲線に関する例示的文献:Delacour,H.ら、「LaCourbe ROC(receiver operating characteristic):principes et principales applications en biologie clinique」、Annales de biologie clinique、2005、63(2):145~54である。
【0193】
多変量データ解析及び潜在的バイオマーカーの選択
相関行列及び階層的クラスター化:対応のある相関解析及び階層的クラスター化を実施して、血漿試料間の類似性を強調した。相関行列は、これらの試料中で測定された、全ての完全な強度値対を使用して計算される、各試料対間のピアソン相関係数を表す。階層的クラスター分析は、強度のlog2変換、Rのimp4pパッケージのimpute.slsa関数による、欠測値のインピュテーション、及び条件内で試料中央値中心化法を使用する正規化の後に、Rのpvclustパッケージのpvclust関数により、Ward法及び相関ベースの距離尺度を伴う、マルチスケールブートストラップリサンプリング(1000回のブートストラップ反復)を介して行った。
【0194】
部分最小二乗法-判別分析(PLS-DA)及びスパースPLS-DA:PLS-DAを使用して、4つの患者群(H、NAG、AG/P、GC)の間のプロテオミクス上の差違について探索した。mixOmics Rパッケージを使用して、PLS-DA及びスパースPLS-DAを実行した。
【0195】
2つ又は3つの潜在的バイオマーカーの組合せを使用する、予測及び診断検査
測定された強度(質量分析)又は量(ELISAデータ)から、患者群を予測することを可能とする、2つ又は3つの潜在的バイオマーカーの組合せを同定するために、k個のバイオマーカーの組合せについての、以下の多項ロジスティック回帰モデル:
【0196】
【数1】
【0197】
[式中、
・kは、モデルで使用されるバイオマーカーの数である。
・viは、バイオマーカーiについて測定される相対強度値である。viは、このタンパク質について健常患者において測定された濃度値又は強度値の平均により除された、胃炎試料中、前新生物試料中、又はがん試料中で測定された濃度又は強度に対応する]
を使用した。
【0198】
このモデルによる推定を、モデルが、観察された段階の疾患に、どのくらい良好に適合するのかについて査定する、適合度統計量である、残差逸脱度基準を使用して査定した(Table 4(表6))。モデルのパラメータである、ai、bi、及びciを推定したら、以下の数式:
【0199】
【数2】
【0200】
により、患者が、各段階の疾患に罹患した確率を計算することが可能である。
【0201】
これらの4つの確率の中で最高の確率は、患者の最も蓋然性の大きな状態を決定する。この予測状態を、患者の実際の状態と比較して、各段階の疾患についてのAUC基準を決定した(Table 4(表6))。したがって、推定されたモデルを使用して、患者の疾患状態を診断することができる。
【0202】
結果
発癌過程におけるそれらの公知の役割に従い選択された、バイオマーカー候補物質
・mtDNA
mtDNAの変異及びmtDNA含量の変動の両方が、異なる種類の腫瘍において報告されている。メキシコ人患者のコホートに対して実施された既往の研究において、本発明者らは、カットオフ値を、8.23(OR:3.93)として、GC試料を、H試料から差別化する、GC患者の循環白血球mtDNA中の、高mtDNAレベル(mtDNA>20)について報告した(6)。これらのデータは、モロッコの患者コホート(ACIP 10-2015:F. Maachiによる共同研究、Institut Pasteur Morocco)に対して実施されたmtDNA定量と同様であった。本研究では、平均mtDNAのレベルは、NAG患者、AG/P患者、及びGCがん患者のそれぞれにおいて、H対象と比較して、1.25(P=0.04);1.8(P=0.0006)、及び1.3(P=0.003)倍の高値である(図1A)。mtDNA値に従う、試料の分布についての解析は、健常群における32%と比較して、AG/P試料のうちの89%において、mtDNA>5が観察されることを示す。より正確に述べると、>6.3のmtDNAは、66.6%の感度、及び65%の特異度により、前新生物(AG/P)を伴う患者の予測をもたらす(Table 2(表4))。mtDNAデータについての受信者動作特性(ROC)曲線は、AG/P試料について、0.7089の曲線下面積(AUC)値を報告する(図3)。
【0203】
・炎症性因子である、IL-8、IL-17、及びTNFα
GCは、炎症駆動性疾患である。IL-8、IL-17、及びTNFα等の炎症性メディエーターのレベルの変動は、胃前/新生物(AG/P)の存在に特異的ではないが、それらの変動は、胃における悪性過程が始まるか、又は進行中である患者を同定する一助となりうる。メキシコ人コホートについての、本発明者らの既往の研究では、mtDNAの測定と組み合わされた、IL-8の高血漿レベルは、GC患者の検出の向上を可能とした(6)。方法節で指し示される通り、IL-8、IL-17、及びTNFαの血漿中レベルを、本AP-HPコホートの全ての試料に対する、市販のELISAアッセイにより査定した。図1Cで報告される通り、平均IL-8値は、胃病変の段階と共に増大し、NAG試料、AG/P試料、及びGC試料において、H試料と比較して、それぞれ、2(P=0.0098)、1.6、及び3(P<0.0001)倍の高値である。GC患者における、わずか39%と比較して、H試料のうちの94%が、≦40ng/mlのIL-8を示したことは重要である。加えて、>40ng/mlのIL-8は、AG/P試料及びGC試料のうちの33%及び61%において観察される(図1D)。「非健常」の判定規則に従う、カットオフ値の計算は、>17.7pg/mlのIL-8が、73.2%の感度、及び72.3%の特異度により、非健常試料に対応することを指し示す(Table 2(表4))。加えて、>29.4pg/mlのIL-8は、それぞれ、74.6%及び72.9%の感度及び特異度により、がん(GC)を伴う患者を予測することを可能とする(Table 2(表4))。
【0204】
興味深いことに、IL-17は、曖昧さを伴わずに、H対象と、NAG病変、AG/P病変、又はGC病変を伴う患者との区別をもたらした。NAG試料、AG/P試料、及びGC試料の100パーセントは、>20pg/mlのIL-17血漿中レベルを示した。これに対し、≦20pg/mlのIL-17は、H試料の100%において観察される(図1G及び1H)。より正確に述べると、「非健常」の判定規則に従う、カットオフ値の計算は、IL-17>41pg/mlが、100%の感度及び特異度により、非健常試料に対応することを指し示す(Table 2(表4))。IL-17の、良好なバイオマーカー特性はまた、「バイオマーカー量が、xを上回る(又は、構成に応じて、xを下回るか、又はx以上であるか、又はx以下である)場合、患者は、H又はNAG又はAG/P又はGCである」という判定規則[規則中、xは、カットオフ値である]を使用する、ROC曲線解析によっても指し示され、NAG試料、AG/P試料、及びGC試料のそれぞれについて、0.75、0.72、及び0.67のAUC値である(図3)。健常(H)試料については、「バイオマーカー量が、xを下回る(又は、構成に応じて、xを上回るか、又はx以上であるか、又はx以下である)場合、患者は、H又はNAG又はAG/P又はGCである」という判定規則を使用して、1のAUCが観察される(図4)。
【0205】
TNF-αの遺伝子多型は、既に、GCの危険性の増大と関連している(13)。TNF-αの血漿中レベルの測定は、NAG試料、AG/P試料、及びGC試料において、健常対象と比較して1.6倍、1.4倍、及び1.6倍の高値を示した。IL-17と同様に、H対象のうちの26%と比較して、NAG試料、AG/P試料、及びGC試料のうちの100%、87%、及び93%において、>80pg/mlのTNF-αが観察される(図1E及び1F)。より正確に述べると、「非健常」の判定規則に従う、カットオフ値の計算は、>74pg/mlのTNF-αが、それぞれ、98.8%及び72.3%である、感度及び特異度の両方により、非健常(H)試料に対応することを指し示す(Table 2(表4))。したがって、「バイオマーカー量が、xを下回る(又は、構成に応じて、xを上回るか、又はx以上であるか、又はx以下である)場合、患者は、H又はNAG又はAG/P又はGCである」という判定規則[規則中、xは、カットオフ値である]を使用して、0.7954のAUC値が得られる(図4)。
【0206】
・上流刺激因子である、USF1及びUSF2
USF1及びUSF2は、免疫応答、細胞増殖、及びゲノム安定性の維持としての、重要な細胞的機能と関連する、いくつかの遺伝子の調節に関与する、多面的転写因子である(14)。これらの因子は、腫瘍抑制因子として、既に提起されている(15)。本発明者らの研究チームによる近年の研究は、GC患者に由来する胃生検中の、USF1の枯渇が、予後の増悪と関連することを報告した(16)。したがって、USF1は、GCの危険性がある患者を同定する、潜在的なバイオマーカー候補物質でありうるであろう。
【0207】
本研究では、USF1の血漿中レベルは、GC患者において、H対象と比較して、3.6倍の高値であり(P=0.0002)、GC試料及びH試料のうちの36%及び0%が、それぞれ、>300pg/mlのUSF1を伴う(図1I及び1J)。この場合、「バイオマーカー量が、カットオフ値であるxを上回る(又は、構成に応じて、xを下回るか、又はx以上であるか、又はx以下である)場合、患者は、H又はNAG又はAG/P又はGCである」という判定規則に従う、ROC曲線解析により決定されたAUC値は、GCについて、0.774である(図3)。USF2を測定することにより得られたデータは、試料間で、血漿中レベルの有意差を示さなかった。しかし、健常個体についての、わずか51%と比較して、NAG試料、AG/P試料、及びGC試料のうちの89%、76%、及び77%が、それぞれ、>10pg/mlのUSF2を示した(図1K及び1L)。
【0208】
・ハプトグロビン
血漿中で、ハプトグロビン(HP)は、遊離ヘモグロビンに結合する。HPの高血清中レベルは、非小細胞肺がんにおいて報告される通り、腫瘍の進行及び予後不良と関連する(17)。血清中HPはまた、結腸直腸がん(CRC)の肝転移を予測する、新規の分子バイオマーカーとしても提起されている(18)。近年、血清中HPのグリコシル化異常が、GCと関連づけられている(19)。本研究では、HPの平均血漿中レベルは、GC試料中で、Hと比較して高値であり(1.7倍;P=0.0006)(図2C)、H対象についての7%と比較して、GC患者のうちの44%が、>1.5g/lのHPレベルを示す(図2D)。
【0209】
Proteome Profiler解析により同定されたバイオマーカー候補物質
バイオマーカー候補物質はまた、方法節で記載される通り、選択されたHuman XL オンコロジー経路タンパク質(84のがん関連タンパク質)の相対レベルの並行的決定を可能とする、膜ベースの抗体アレイにおいて構成される、Proteome Profiler解析によっても探索した。AG/P試料及びGC試料における、それらの血漿中レベルの、H試料と比較した有意の変動に従い、レプチン(LEP)、E-セレクチン(SELE)、及びメソテリン(MSLN)を含む、3つの候補物質を、オンコロジー経路アレイから選択した。次いで、方法節で指し示される通り、市販の特異的ELISAアッセイを使用して、これらを、コホートに由来する、全ての試料に対して定量した。
【0210】
・レプチン
LEPは、消化性ペプチドホルモンとしてのその役割のために、特に対象となる候補物質である。LEPは、炎症性サイトカインの誘導因子である。その調節異常は、消化器悪性腫瘍を含む、多種多様な悪性腫瘍において報告されている。CRCでは、その発現は、正常粘膜から、高悪性度の異形成を伴う腺癌へと、段階的に増大する(20)。レプチンの高血清中レベルは、胃腸上皮化生及びGCの危険性の増大と関連する(21、22)。本研究では、LEPの平均血漿中レベルは、AG/P試料中では、H試料及びGC試料と比較して、3倍の高値である(P<0.0001)。加えて、H群における、わずか7%と比較して、AG/P試料のうちの85%が、>6ng/mlのLEPレベルを示す(図2A及び2B)。LEPは、AG/Pについて、0.705のAUC値を決定したROC曲線によってもまた裏付けられる通り、前新生物を伴う患者に由来する試料を同定するための、良好な候補物質(図3)である。カットオフの計算は、>7.1ng/mlのLEPが、前新生物(AG/P)を伴う患者に対応することを、75%の感度、及び86.2%の特異度により指し示す(Table 2(表4))。加えて、<4.1ng/mlのLEPは、82.3%の感度、及び72.3%の特異度により、GC患者の予測ももたらす。更に、<2ng/mlという低値のLEPは、100%の感度、及び94.9%の特異度により、H試料ではないにせよ、GC試料に対応する(Table 2(表4))。
【0211】
・E-セレクチン/CD62E
セレクチンは、糖タンパク質である。E-セレクチン(SELE)は、内皮細胞上、NFκB媒介性転写調節下において発現される。その発現は、炎症時における白血球の蓄積を制御するのに、極めて重要である。SELEの血漿中レベルは、NAG段階に入るとすぐに上昇し(健常と対比したP<0.0001)(図2E)、健常試料中の24%と比較して、NAG試料、AG/P試料、及びGC試料のうちの85%、78%、及び84%は、SELEレベルが、>8ng/mlである(図2F)。カットオフ値の計算は、>7.1ng/mlのSELEが、89.3%の感度、及び76.3%の特異度により、非健常試料に対応することを示す(Table 2(表4))。図3に指し示される通り、「バイオマーカー量が、xを上回る(又は、構成に応じて、xを下回るか、又はx以上であるか、又はx以下である)場合、患者は、H又はNAG又はAG/P又はGCである」という判定規則[規則中、xは、カットオフ値である]を使用すると、ROC曲線解析により、GC試料について、最良のAUC値は、0.7565である。
【0212】
・メソテリン
メソテリン(MSLN)は、細胞接着に関与しうる。MSLNは、いくつかのヒト腫瘍において、過剰発現することが、既に報告されている(23)。本発明者らによる研究では、MSLNの平均血漿中レベルは、AG/P試料中において、2倍高値であり(Hと対比したP<0.0001)(図2G)、H群における28%と比較して、試料のうちの90%が、MSLN>10ng/mlである。ROC曲線解析もまた、MSLNが、0.7433のAUCにより、AG/Pを伴う患者を同定する、有益なバイオマーカー候補物質であると考えられうることを指し示す(図3)。MSNLを、>8.3ng/mlとする場合、健常群内に試料は存在せず、>10.8ng/mlのMSLNは、84.2%の感度及び63.1%の特異度により、AG/P患者の予測をもたらす(Table 2(表4))。
【0213】
【表4】
【0214】
図5で報告される通り、選択された、これらの全てのバイオマーカー候補物質の関連機能についての解析は、併せて、炎症性応答と関連する、SELE、HP、IL-8(CXCL-8)、IL-17、及びTNFαの間のつながりを示す。LEPと同様に、これらは、膵炎についての診断査定及び予後診断査定におけるバイオマーカーとして、既に示唆されている(24)。また、HP、SELE、及びTNFαとも結びついたLEPは、USF1及びUSF2のように、シグナル伝達と関連する。興味深いことに、MSLNは、LEP、HP、IL-8(CXCL-8)、IL-17、及びTNFαと同様に、卵巣がんについてのタンパク質バイオマーカーとして、既に言及されている(25)。
【0215】
・質量分析(MS)ベースのプロテオミクスによる、血漿タンパク質の大スケールスクリーニングを介して同定された、バイオマーカー候補物質
候補物質バイオマーカーの大規模パネルを得、GCの危険性がある患者の、可能な限り早期の検出を向上させることを可能とするシグネチャープロファイルを規定するために、Institut Pasteurにおける、UTechS MSBioプラットフォームにより、パイロットのハイスループットプロテオミクス研究が展開された。この研究は、群1つ当たりの代表的試料10例を伴う、同じ4つの群である、H、NAG、AG/P、及びGCを含んだ。血漿試料の調製及びMS解析は、方法節で記載される通りに実施した。
【0216】
血漿枯渇の後、スペクトルライブラリー及びDIA収集についてのデータ解析、異なる群間の比較は、合計224の、示差的に夥多なタンパク質の同定をもたらした。NAG群、AG/P群、及びGC群に由来する試料を、H試料と比較したところ、114、88、及び136のタンパク質は、それぞれ、有意の変動を示し、それらの一部は、一般に、比較の中で示差的であると見出された。相関行列解析及び階層的クラスター化解析(方法節を参照されたい)に従い、がん(又は健常)患者についての、血漿プロテオームの定量は、一般に、それらの間で、良好に相関するが、他の病態に罹患した患者とは、それほど良好に相関しなかった(図6A及び6B)。前新生物(AG/P)患者及びNAG患者についての、血漿プロテオームの定量は、一般に、併せて、良好に相関するが、GC患者及びH対象とは、それほど良好に相関しないと考えられる。部分最小二乗法-判別分析(PLS-DA)及びスパースPLS-DAを使用して、4つの群の試料(H、NAG、AG/P、GC)の間のプロテオミクス上の差違について探索した。PLS-DAプロットは、H対象と、他の病態との、良好な分別を提示した(図6C)。しかし、PLS-DAプロットが、NAG、AG/Pと、GCとを、明確に分けられないことは、これら3つの病態の血漿プロテオームが、近接し、H個体と異なることを指し示す。
【0217】
群分けの一因となるタンパク質のサブセットを選択するために、スパースPLS-DAを使用した。この方法は、欠測値を伴わずに、49の潜在的バイオマーカーのセットを選択し、これは、健常個体と、がん患者とを明確に区別することを可能とするが、これらの候補物質のうちの一部の、平均強度レベルからの逸脱を提示する図7において報告されたヒートマップによってもまた指し示される通り、前新生物(AG/P)を患う患者と、胃炎(NAG)を患う患者とを分けることができない(図6D)。関与性が最も大きな候補物質の中で、Table 3(表5)に列挙された、5つ:IGFBP3、IGFALS、KIF20B、DCD、MAN2A1は、AG/P患者を予測することを可能とし、6つ:ATAD3B、DCD、S100A12、TFRC、IGHG1、CSTAは、GC患者についての候補物質である。
【0218】
【表5-1】
【0219】
【表5-2】
【0220】
【表5-3】
【0221】
2つ又は3つの潜在的バイオマーカーの組合せを使用する、予測及び診断検査
・ELISA及びProteome Profilerにより同定された候補物質
同じ解析を、ELISA及びProteome Profilerアレイにより同定された候補物質について実施した。2つのバイオマーカー候補物質の組合せについて、各病態に特異的な、推定ROC曲線及びAUCを、図8Aにおいて報告する。上記と同様に、各病態について、最良のAUC基準をもたらすモデルにおいて、タンパク質が出現する回数(図8B)、及びモデルの残差逸脱度(図9A及び9B)を査定することが可能である。これらの候補物質について、2つ又は3つのマーカーの組合せは、AUC=1をもたらさないので、胃炎、前新生物、又はがんを完全に予測することは、困難であると考えられる。しかし、LEP及びmtDNAの組合せは、前新生物の予測をもたらし(AUC=0.761)、IL-17と組合せたLEP(AUC=0.8705)の場合、がんの予測をもたらす。更に、Table 4(表6)で報告される通り、HP、USF2、SELE、IL-8、又はUSF1と組合せたLEPは、前新生物の予測を可能とし(0.61≦AUC≦0.70)、mtDNA、SELE、IL-8、又はUSF1と組合せたLEPは、GCを予測しうる(0.74≦AUC≦0.78)ほか、mtDNA(AUC=0.76)又はTNFα(AUC=0.75)と組み合わされたIL-17も、GCを予測しうる。3つのバイオマーカー候補物質の組合せについて検討すると、LEPは、常に、前新生物を予測する5つの組合せの中に見出され、5つのうち、4つにおいて、mtDNAと関連する(0.69≦AUC≦0.73)。3つのバイオマーカーの、8つの最良の組合せについての、GCを予測するためのAUC値は、良好であり、0.84~0.87の間に含まれる。それらの全てについて、IL-17及びLEPが存在する。IL-17及びLEPは、mtDNA、HP、SELE、MSLN、IL-8、USF1、又はUSF2と組合せられる(Table 5(表7))。
【0222】
【表6-1】
【0223】
【表6-2】
【0224】
【表7】
【0225】
・質量分析により同定された候補物質
Table 3(表5)で列挙された、MS解析により同定された候補物質の中の、2又は3つのバイオマーカーの組合せを使用する、多項ロジスティック回帰モデルが推定された。2つの手法を使用して、モデル推定の結果を評価した。第1の手法は、推定されたモデルを使用して、バイオマーカーの組合せから、病態を予測し、各病態に特異的なROC曲線及びAUC値を推定することである(図10A)。次に、各病態について、モデルにおいてタンパク質が出現する回数を査定し、最良のAUC基準をもたらすことが可能である(図10B)。第2の手法は、誤差の推定モデル化に対応する、モデルの残差逸脱度を計算することであり、モデルが、全ての病態を、同時に予測する能力を測定することを可能とする(図11A及び11B)。
【0226】
本発明者らの結果から、2つのバイオマーカーだけを使用して前新生物及び胃炎を完全に予測することが困難であると考えられる(これらの病態について、AUC=1を達成するバイオマーカーの組合せは存在しない)のに対し、がんを患う患者は、Table 6(表8)で報告される通り、KRT14、CFP、ARG1、SA10012、ATAD3B、KIF20B、SPEN、SERPINA5、DSP、CPA4、KRT19、JUP、KRT2、CDSN、MAN1A1、MAN2A1、SPRR1A、HAL、DCDを含む、2つのバイオマーカーの、30の組合せ(図10B)を使用して、完全に予測することができる。S100A12が、GCを予測するために、2つの変数により検出される30の組合せの中で、最もしばしば選択される候補物質であることは重要である。加えて、胃炎(NAG)患者は、PGK1、CFP、IGFALS、KRT19、CPA4、CA2、SERPINA5、MAN2A1を含む、2つのバイオマーカーの、10の組合せを使用して予測が可能であり(0.8≦AUC≦0.85)、その中に、PGK1、CFP、KIF20B、SPEN、JUP、KRT6C、CDSN、KPRP、F13A1、SAA1、LBP、DSP(Table 6(表8))を含む、2つのバイオマーカーの、10の組合せは、前新生物(AG/P)を伴う患者を予測することを可能とする。3つのバイオマーカーを使用すると、全ての病態を、完全に予測することができる。極めて興味深いことに、最小の残差逸脱度をもたらす3つのバイオマーカーの組合せ:KRT19、KIF20B、及びSPEN;ARG1、KIF20B、及びSPEN;DSP、KIF20B、及びSPENは、NAG、AG/P、及びGCについて、全ての病態の完全な予測(AUC=1)をもたらす。KRT19、KIF20B、及びSPENはがんバイオマーカーとして、特別の適合性を有する。ケラチン19(KRT19)は、異なる種類のがんにおいて、重要な役割を果たし、予後診断マーカーとして用いられる(26)(27)。キネシンファミリーメンバー20B(KIF20B)は、細胞増殖及びアポトーシスに対するその影響のために、がんの発生を促進しうる。肝細胞癌における例として述べると、その高度の発現は、進行期の腫瘍及び予後不良と関連する(28)。加えて、Msx2相互作用タンパク質(SPEN)は、新規の腫瘍抑制因子として示唆されており、Notch経路を調節する(29)。Table 3(表5)に指し示される通り、KIF20B、及びSPENは、JUP、SERPINA5、及びF13A1と同様に、がん関連血漿タンパク質の中にある。
【0227】
【表8-1】
【0228】
【表8-2】
【0229】
【表9-1】
【0230】
【表9-2】
【0231】
ELISAによる、MSデータの確認
MS解析により同定されたバイオマーカー候補物質が、前新生物(AG/P)又はGCを予測する能力を確認するために、さらなる研究を実行した。本明細書で列挙されるタンパク質の中で、少なくとも11のタンパク質の血漿レベルを、タンパク質名もまた言及されたTable 3(表5)において指し示される通り、コホートの全ての試料に対するELISAにより定量した。
【0232】
図13で報告される通り、有意差は、H群と比較した、AG/P群及びGC群の両方について、既に測定されたLEPもまた含む、ARG1、JUP、MAN2A1、LBP、及びIGFALSの血漿中レベルについて観察される。DCDの血漿中レベルは、AG/Pにおいて、H及びGCと比較して、有意に低値である。加えて、ATAD3B、HP、及びCA2のレベルは、GC試料とH試料との間で、有意差を示した(図13)。ROC解析は、LEP(AUC=0.685)、ARG1(AUC=0.63)、及びHP(AUC=0.629)について、前新生物(AG/P)を予測する、>0.6のAUC、並びにARG1(AUC=0.712)について、GCを予測する、>0.7のAUCをもたらした(Table 3(表5))。
【0233】
これらの候補物質の中で、ARG1は、プロリン及びポリアミドへと更に代謝される、アルギニンの、オルニチン及び尿素への転換を触媒する、尿素サイクルの鍵となるエレメントであり、コラーゲン合成及び生体エネルギー経路を駆動する。ARG1はまた、がんに対する免疫応答のモジュレーションにも関与し、GCの腫瘍微小環境内における、レベルの上昇が報告されている(30)。本発明者らによる研究では、ARG1は、72%の感度(Sens)及び54%の特異度(Spec)で、AG/Pを予測することが可能である一方、GCの場合では、感度は49%であるが、特異度は93%である。
【0234】
STRING解析(図14)に従い、γ-カテニンとしてもまた公知のJUPにより、機能的なつながりが指し示される。JUPは、接着斑として、細胞間結合に関与し、密着結合にも関与する。JUPは、細胞骨格再構成に関与する。その喪失は、GC悪性腫瘍及び予後不良と、緊密に相関する(31)。本実施例において、本発明者らは、NAG試料、AG/P試料、及びGC試料のいずれにおいても、JUPの血漿中レベルの全体的な増大を観察したが、GCを予測するためのAUCは、0.5にとどまり、感度(27%)及び特異度(73%)も低かった。
【0235】
JUPと機能的に結びついて(図14)、HPは、遊離ヘモグロビンに結合する。近年、血清中HPのグリコシル化異常が、GCと関連づけられている(9)。本研究では、>1.5g/lのHPが、H対象のうちの7%と比較して、GC患者のうちの44%について観察される。しかし、GCを予測するためのAUCは0.567にとどまり、69%の特異度及び44%の感度であった。
【0236】
LBPは、LEPと、機能的に結びついている(図14)。LBPは、様々な細菌LPSに結合する糖タンパク質であり、自然免疫応答において、役割を果たす。本発明者らは、NAG段階からGC段階の、LBPの血漿中レベルの有意な増大を観察した(図13)。LBPは、AG/P及びGCのそれぞれを予測する、0.5及び0.562のAUCを示す。H試料のうちの100%において、LBPは、≦250ng/mlであるのに対し、AG/P試料及びGC試料のうちの、それぞれ、73%及び79%において、LBPは、>250ng/mlであることに注意されたい。
【0237】
DCDは、異なる機能を有するいくつかのペプチドに切断され得る。その最もよく知られた役割は、抗ミトコンドリア宿主防御タンパク質としての役割である。DCD発現の調節異常は、GCを含む、多様ながんにおいて報告されている(32)。AG/P及びGCを予測するために、DCDについて決定されたAUC値は、それぞれ、0.597及び0.581であり、AG/Pについての感度:88%;特異度:31%であり、GCについての感度:22%;特異度94%である。
【0238】
ATAD3Bは、幹細胞内のミトコンドリアネットワーク構成において、役割を果たし、がん細胞内で再発現されることが示されている(33)。ATAD3Bの血漿中レベルは、GC試料中で、健常試料と比較して高値であり(図13)、GCについてのAUCは、0.583である。
【0239】
CA2は、プロトン共役型ペプチド吸収時における、十二指腸上部絨毛状上皮内の、pH調節に寄与する。消化管間葉系腫瘍では、CA2の過剰発現が報告されている(34)。GC患者に由来する血漿中では、H対象と比較して、高レベルのCA2が観察される(図13)が、AUCは、0.583にとどまる。
【0240】
これらもまた定量された、他の2つのバイオマーカー候補物質は、MAN2A1及びIGFALSである。MAN2A1は、GC患者の血清中で、異なる種類が報告されている、グリカンの生合成に関与する(35)。MAN2A1は、AG/P及びGCの両方について、≦0.5のAUCと関連する。最後の1つである、IGFALSは、インスリン増殖因子(IGF)に結合する血清タンパク質である。IGFALSは、肝がんにおける悪性進行についてのマーカーとして、既に示唆されている(36)。MAN2A1と同様に、IGFALSは、AG/P及びGCの両方を予測する、0.5のAUCと関連する。
【0241】
これらの候補物質に加えて、本発明者らはまた、本発明者らのパネル内に、IL-8、TNFα、USF1、及びUSF2について上記で言及された通り、炎症及びがんにおける、それらの公知の役割のために、強力なバイオマーカーに対応し易い因子も組み入れた。Table 3(表5)でもまた列挙された、STAT3及びEGFRは、コホートの全ての試料に対するELISAにより測定された、これらのさらなる候補物質のうちの2つである。
【0242】
STAT3は、インターロイキン、LEP、及び他の増殖因子に対する細胞応答と関連する、鍵となる転写因子である(図14)。STAT3が、GCにおいて上方調節されることが既に報告されていることは重要である(37)。STAT3のリン酸化は、LEPシグナル伝達経路に参与し、肥満の主要な危険性因子である、LEP耐性に寄与する(38)。本実施例において、本発明者らは、GC患者において、STAT3の血漿中レベルが、高値であることを観察した(図13)。H試料及びNAG試料の、それぞれ、全て及び89%が、≦250ng/mlのSTAT3レベルを示すのに対し、GC試料の大半(59%)において、STAT3は、>5ng/mlであり、AUC値は、0.672である(感度:62.8%;特異度:71.6%)。
【0243】
第2のバイオマーカーは、細胞増殖及び腫瘍発生において、極めて重要な役割を果たす、EGFRである。EGFRは、胃腫瘍のうちの27~64%において過剰発現され、GC患者における転帰増悪の指標として提起されている(39)。EGFRレベルの上昇は、AG/P試料と比較した、GC試料中で観察され(図13)、AUCは、AG/P及びGCのそれぞれについて、0.5及び0.472にとどまる。
【0244】
2つ~6つのバイオマーカー候補物質の組合せを使用する、予測及び診断検査
本データ並びにバイオマーカー発見についての文献は、がん患者の早期検出を向上させるように、単一の候補物質ではなく、バイオマーカーパネルの組合せの重要性について論じる。実際、本発明者らの結果から、GCを予測するための単一の候補物質についての、最良のAUC値は、IL-17(感度:50.5%、特異度:95.6%)及びIL-8(感度:63%、特異度:82%)のそれぞれについて、0.731及び0.725であるので、単一のバイオマーカーを使用して、前新生物及び/又はがんを完全に予測することは、困難であると考えられる。前新生物の場合、LEPは、最良のAUC値:0.685(感度:94.2%、特異度:42.8%)をもたらす。前新生物病変又はがん病変の存在の検出を向上するために、血漿中レベルが、コホートの全ての試料に対してELISAにより測定された候補物質の中の、最大で6つのバイオマーカーの組合せを使用する、多項ロジスティック回帰モデルが推定された。
【0245】
これらのデータに基づき、2つの手法を使用して、モデル推定の結果を評価した。第1の手法は、推定されたモデルを使用して、バイオマーカーの組合せから、病態を予測し、各病態に特異的なROC曲線及びAUC値を推定することである。次に、各病態について、最良のAUC基準をもたらすモデルにおいてタンパク質が出現する回数を査定することが可能である。第2の手法は、誤差の推定モデル化に対応する、モデルの残差逸脱度を計算することであり、モデルが、全ての病態を、同時に予測する能力を測定することを可能とする。
【0246】
これらのモデルを使用して、本発明者らは、AUC値、感度値、及び特異度値に従い、胃前新生物の存在(SIG-AGP)及びがん病変の存在(SIG-GC)を予測するのに、最大で6つのバイオマーカーを含む、2つの最良のシグネチャーを同定することが可能であった。
【0247】
いわゆる「SIG-AGP」シグネチャーは、0.852のAUC値、91.4%の感度、及び79%の特異度で、前新生物を予測する、MSLN、HP、LEP、KRT19、IGFALS、EGFRの組合せに対応する(図15A)。
【0248】
いわゆる「SIG-GC」シグネチャーは、0.928のAUC値、92.9%の感度、及び92.7%の特異度で、GCを予測する、IL-17、ARG1、LEP、MSLN、TNFα、SELEを含む(図15B)。
【0249】
LEP及びMSLNは、いずれにおいても見出される。各バイオマーカーについての、血漿中レベルの中央値、最小値、及び最大値を、Table 8(表10)に報告する。
【0250】
これらの2つのシグネチャーの予測特性が、バイオマーカーの数と共に増大することは重要である。いずれのシグネチャーについても、AUCは、タンパク質が1つの場合から、タンパク質が6つの場合へと増大するほか、SIG-AG/Pについての特異度、及びSIG-GCについての感度も増大する。SIG-AGPに関しては、94%の感度が、単一のバイオマーカーとしてのLEPにより、既に観察されているが、特異度は、42.8%にとどまる。同様に、SIG-GCの場合、単一のバイオマーカーである、IL-17により、最高の特異度(95.6%)が得られている。
【0251】
完全さのために、Table 9(表11)は、AG/Pを予測するための、6つのバイオマーカーの、最良の組合せのリストについて報告する。これらの組合せは、90%~96%の間の感度、及び71%~79%の間の特異度で、≧0.8のAUCに対応する。
【0252】
加えて、Table 10(表12)で報告される通り、5つのバイオマーカー:MSNL、LEP、KRT19、MAN2A1、IGFALSの組合せは、前新生物を、SIG-AGPより高値の感度(94.1%)及び73.7%の特異度により予測しうる。
【0253】
加えて、GCを予測するために、優れたスコアはまた、組合せ:TNFα、IL-17、MSLN、LEP、KIF20B、ARG1(AUC:0.928;感度93%、特異度92.7%)についても観察されており、SIG-GCの場合と比較して、SELEは、KIF20Bで置きかえられる。GCについての最良の特異度(95.6%)は、単一のバイオマーカーである、IL-17だけにより、既に得られているが、AUC及び感度がより低い(0.731及び50.6%)ことに注意されたい。
【0254】
完全さのために、Table 11(表13)は、GCを予測するための、6つのバイオマーカーの、最良の組合せのリストについて報告する。これらの組合せは、87%~94%の間の感度、及び88%~94%の間の特異度で、≧0.9のAUCに対応する。
【0255】
【表10】
【0256】
【表11-1】
【0257】
【表11-2】
【0258】
【表12】
【0259】
【表13-1】
【0260】
【表13-2】
【0261】
【表13-3】
【0262】
【表13-4】
【0263】
SIG-AGP又はSIG-GCを構成する、10のバイオマーカーに加えて、9つのさらなる候補物質、すなわち、CA2、MAN2A1、ATAD3B、S100A12、USF2、JUP、CPA4、KRT14、及びF13A1はまた、CA2、MAN2A1、ATAD3B、S100A12、USF2、JUPについてのELISAデータ、又はCPA4、KRT14、及びF13A1についての質量分析データを検討して、前新生物又はGCを予測するための、10の最良のAUCをもたらす、4つ~6つのバイオマーカーの組合せにおいても見出されるので、これらもまた有望である。これについての概要を、下記のTable 12(表14)に提示する。
【0264】
【表14】
【0265】
結論
結論として述べると、本発明者らの解析は、Table 3(表5)に記載された、40のバイオマーカー候補物質の短いリストパネルであって、患者が、胃炎、胃前新生物病変、又はがん病変に罹患しているのかどうかを予測することを可能とするリストパネルへと、本発明者らを導いた。ある候補物質は、他の候補物質より良好な予測結果をもたらす。ELISA解析からのデータが、第1のレベルにおいて、IL-17が、健常対象と、患者とを、良好な信頼性により区別することを可能としうることを示すことは重要である。患者群の中で、最も目覚ましい結果は、IL-17と組み合わされたLEPが、GCを、高度の信頼性レベルで予測することが可能であり、HP又はMSLNと関連付けられるLEPが、前新生物(AG/P)の検出をもたらすことを指し示す。LEPは、本研究において開発された、3つの手法により検証されており、IL-17、SELE、MSLN、及びHPが、これらのうちの2つにより検証されたことは重要である。
【0266】
加えて、実行されたMSベースの解析に従い、KIF20BとSPENとの組合せは、AG/P又はGCについての良好な予測をもたらしうるであろう。図12にまとめられた通り、これらの、KRT19及びS100A12との組合せは、GCを、完全に予測すると考えられる。これらの有望な解析は、本発明者らが、バイオマーカーの組合せに基づき、胃病変の存在を予測する、数学的モデルを、提起することを可能とし、非限定的に、かつ、特定の実施形態では、胃前新生物及びがん病変の存在を検出する、第1のバイオマーカーシグネチャーであって、IL-17、LEP、HP、MSLN、KIF20B、SPEN、KRT19、及びS100A12を含むバイオマーカーシグネチャーをもたらす。KIF20B、SPEN、KRT19、及びS100A12は、群1つ当たりの試料10例を含む、MSプロテオミクス研究により同定されたが、コホートの全ての血漿試料に対するELISAアッセイによる更なる探索は、Table 6(表8)に列挙された、KIF20B及びSPENとの組合せにおいて見出された、他の潜在的候補物質と同様に、バイオマーカーとしてのそれらの正確度を確認する一助となるであろう。
【0267】
別の態様に従い、初期にMSにより同定されたタンパク質の中で、それらのうちの12についてのELISAにより測定された血漿中レベルは、MSデータを確認し、GCカスケードの異なる段階における胃病変の検出のための、潜在的バイオマーカーとしての、それらの検討をもたらした。これもまたELISAにより定量された既に選択された10の候補物質に加えた、これらの12のタンパク質は、本発明者らを、特定の実施形態では、それぞれ、前新生物病変及びGC病変の存在を予測する、2つのシグネチャーである、SIG-AGP及びSIG-GCに対応する、6つのバイオマーカーの最良の組合せを規定するように導いた。SIG-AGP及びSIG-GCに含まれる、10の候補物質であって、MSLN、HP、KRT19、TNFα、IL-17、LEP、ARG1、KIF20Bを含む候補物質の大半が、初期に収集されたデータを確認したことは強調されるべきである。SIG-GCの予測スコアは、優れている。SIG-AGPの場合、AUC、感度、及び特異度は、SIG-GCにより得られたAUC、感度、及び特異度より若干低いが、なお、極めて良好である。SIG-AGPについて観察された、最低の特異度(79%)は、萎縮性胃炎(AG)、腸上皮化生(IM)、及び異形成(D)を含む、この試料群の異種性(heterogeneity)に起因しうる。この患者群の中で、異なる全ての病変間の関連:AG、AG+IM、AG+IM+Dが見出された。これらの病変についての良好な予測は、がん病変の発生の直前に先行する、IMのDへの転換の間の期間が短いために、極めて重要である。内視鏡により同定することが、最も困難である病変もまた、これらの前新生物病変である。
【0268】
結論として述べると、この態様に従い、3つの異なる手法を使用して、2つのバイオマーカーシグネチャーである、SIG-AGP及びSIG-GCが同定され、確認された。これらのシグネチャーは、簡単な血液採取に基づき、胃前新生物及びがん病変の存在を予測するための重要なツールを構成し、GC患者の検出/防止を向上する、非侵襲性診断検査の、将来における開発のための道を開く。図16に例示される通り、この検査は、患者を、陽性結果の場合に、内視鏡等、さらなる臨床的調査へと駆動する前における、最初のスクリーニングのために提起されるだけでなく、また、前新生物を伴うことが既に検出された患者の追跡のほか、抗がん処置下にある患者の再発/寛解を追跡するためにも有用でありうる。
【0269】
展望
NAG病変、AG/P病変、及びGC病変の存在を予測することを可能とするバイオマーカーシグネチャーの特徴付けは、GC発症の危険性がある個体の早期検出及び防止のための、非侵襲性の予後診断/診断ツールの、将来における開発のための道を開く。この診断検査は、胃前新生物及びがん病変の存在を予測することを可能とするバイオマーカーシグネチャーを構成する、異なる因子の測定を組み合わせて、特定の実施形態に従い、血漿試料に対して実施される、特定の実施形態に従い、ELISAアッセイに基づきうる。別の実施形態に従い、このような診断検査は、Luminexアッセイ等の技術を使用して行われうる。このシグネチャーを構成する各因子の血漿中レベルの同時的測定、及び対応する所定のカットオフ値とのその比較は、前新生物病変又はがん病変の存在又は非存在を指し示す。簡単な血液採取に基づく、この重要なツールは、GCの危険性がある患者の、最初のスクリーニングを可能とし、これらの患者を、さらなる臨床的調査へと駆動する。加えて、この診断ツールはまた、疾患の再発/転帰を予測し、患者の個別化処置及び追跡をモニタリングするのにも極めて有用である。
【0270】
参考文献
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図2-1】
図2-2】
図3-1】
図3-2】
図4-1】
図4-2】
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図7
図8A
図8B
図9
図10A
図10B-1】
図10B-2】
図11
図12
図13-1】
図13-2】
図13-3】
図13-4】
図14
図15
図16
【国際調査報告】