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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-18
(54)【発明の名称】処理カートリッジ
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/10 20060101AFI20240111BHJP
   G01N 1/00 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
G01N1/10 V
G01N1/00 101G
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537679
(86)(22)【出願日】2021-11-30
(85)【翻訳文提出日】2023-08-08
(86)【国際出願番号】 EP2021083512
(87)【国際公開番号】W WO2022135848
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】20201413
(32)【優先日】2020-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NO
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】316003988
【氏名又は名称】スピンチップ・ディグノスティックス・アーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】セバスチャン・ステンマルク
(72)【発明者】
【氏名】スティグ・モートン・ボルチ
(72)【発明者】
【氏名】トルゲイル・ハムスンド
(72)【発明者】
【氏名】エリック・エル・マイヤー
(72)【発明者】
【氏名】ロルフ・ヤーレン
(72)【発明者】
【氏名】ホーヴァル・クリスチャンセン
(72)【発明者】
【氏名】オド・マルティン・スタール
(72)【発明者】
【氏名】スティーヴン・ヒル
(72)【発明者】
【氏名】ディドリク・パウス
(72)【発明者】
【氏名】オレ-アンドレアス・カヴリ
【テーマコード(参考)】
2G052
【Fターム(参考)】
2G052AA29
2G052BA17
2G052BA19
2G052DA08
2G052DA09
2G052DA12
2G052DA22
2G052DA27
2G052ED17
2G052GA29
(57)【要約】
本発明は、主カートリッジ部(2)と作動カートリッジ部(3)とを備える処理カートリッジ(1)を提供し、主カートリッジ部(2)は液体貯蔵室(4)、液体容器(5)、容器穿孔要素(6)および弾性容器保持要素(9)を備えており、作動カートリッジ部(3)は主カートリッジ部(2)とドッキングするように構成され、ドッキング中に液体容器(5)と相互作用するように構成された作動部材(10)を備えており、液体容器、穿孔要素(6)および容器保持要素(9)は液体貯蔵室(4)内に配置され、液体容器は、適切な処理液で満たされ、穿孔可能な分配側(16)を特徴とし、容器穿孔要素は、分配側に面しており、液体容器(5)は、容器保持要素によって第1の位置に保持され、分配側は、容器穿孔要素から分離されており、作動部材(10)は、作動カートリッジ部のドッキング中に液体容器を第1の位置から第2の位置に移動させるように構成され、第2の位置では、分配側(16)が容器穿孔要素によって穿孔される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主カートリッジ部(2)と作動カートリッジ部(3)とを備える処理カートリッジ(1)であって、前記主カートリッジ部(2)は、液体貯蔵室(4)、液体容器(5)、容器穿孔要素(6)、および弾性容器保持要素(9)を備えており、
- 前記作動カートリッジ部(3)は、前記主カートリッジ部(2)とドッキングするように構成され、ドッキング中に前記液体容器(5)と相互作用するように構成された作動部材(10)を備えており、
- 前記液体容器、前記穿孔要素(6)および前記容器保持要素(9)は、前記液体貯蔵室(4)内に配置され、前記液体容器は、適切な処理液で満たされ、穿孔可能な分配側(16)を特徴とし、前記容器穿孔要素は、前記分配側に面しており、
- 前記液体容器(5)は、前記容器保持要素によって第1の位置に保持され、前記分配側は、前記容器穿孔要素から分離されており、
- 前記作動部材(10)は、前記作動カートリッジ部のドッキング中に前記液体容器を前記第1の位置から第2の位置に移動させるように構成され、前記第2の位置では、前記分配側(16)が前記容器穿孔要素によって穿孔される、
処理カートリッジ(1)。
【請求項2】
前記作動カートリッジ部(3)が、前記主カートリッジ部(2)に枢動可能に接続された第1の端部(13)を備え、これにより、前記作動カートリッジ部(3)が、前記液体容器が前記容器保持要素によって前記第1の位置に保持される非ドッキング位置と、前記作動カートリッジ部(3)が前記主カートリッジ部にドッキングされ、前記液体容器が前記第2の位置にあるドッキング位置との間で枢動できる、請求項1に記載の処理カートリッジ(1)。
【請求項3】
前記容器保持要素が、前記液体容器に作用して前記第1の位置に保持する弾性力を提供するように構成されている、請求項1または2に記載の処理カートリッジ(1)。
【請求項4】
前記容器保持要素が、前記液体容器(5)と接触する弾性アーム(9)を備えている、請求項1から3のいずれか一項に記載の処理カートリッジ(1)。
【請求項5】
前記作動部材が、ドッキング中に前記液体貯蔵室(4)に入るように構成され、前記液体容器(5)が凹部(11)を備え、前記作動部材(10)が、ドッキング中に前記液体貯蔵室(4)に入るときに前記凹部の縁部(11a)と相互作用するように構成されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の処理カートリッジ(1)。
【請求項6】
サンプルコレクタ(15)を備え、前記サンプルコレクタは、前記作動カートリッジ部(3)が前記主カートリッジ部から分離されているとき、または前記非ドッキング位置にあるときに、サンプルを収集するためにアクセスできるように配置されている。請求項1から5のいずれか一項に記載の処理カートリッジ(1)。
【請求項7】
前記サンプルコレクタ(15)が前記作動カートリッジ部(3)に配置されており、これにより、前記作動カートリッジ部(3)が前記主カートリッジ部(2)にドッキングされているとき、または前記ドッキング位置にあるときに、前記サンプルコレクタが前記主カートリッジ部(2)のサンプル受容空洞(17)に収容される、請求項6に記載の処理カートリッジ(1)。
【請求項8】
前記主カートリッジ部(2)は、ドッキング中に前記作動カートリッジ部(3)の対応する凹部(19)またはガイドリブとそれぞれ相互作用するように構成された少なくとも1つのガイドリブ(18)または凹部を特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の処理カートリッジ(1)。
【請求項9】
前記ガイドリブ(18)は、前記凹部(19)に挿入するための先細の縁部(20)を特徴とする、請求項8に記載の処理カートリッジ(1)。
【請求項10】
前記主カートリッジ部(2)または前記作動カートリッジ部(3)が、両側に配置されたロック凹部(23a、23b)を有するロックリブ(21)を特徴とし、対応する作動カートリッジ部(3)または主カートリッジ部(2)が、2つの対向する弾性フック(24a、24b)を特徴とし、各フック(24)が、前記ロックリブ上のそれぞれのロック凹部(23a、23b)と相互作用するように構成されており、前記ロックリブ(21)が、ドッキング中に前記弾性フック(24)の間に挿入されるように構成された先細の縁部(25)を有する、請求項1から9のいずれか一項に記載の処理カートリッジ(1)。
【請求項11】
前記容器穿孔要素(6)が、基部部分(25)と、少なくとも1つの側面部分(26)と、前記基部部分の遠位側の鋭い部分(27)と、前記側面部分(26)に配置され、前記基部部分(25)と前記鋭い部分(27)との間に延在する少なくとも1つの凹部(28)とを含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の処理カートリッジ(1)。
【請求項12】
前記容器穿孔要素および容器ホルダ要素が、単一のユニット(42)の一部を構成する、請求項1から11のいずれか一項に記載の処理カートリッジ(1)。
【請求項13】
前記液体貯蔵室(4)が、側壁(37)とノブ(22)を特徴とする基部表面(43)とを備え、前記単一のユニットが、前記ノブと前記側壁との間に前記単一のユニットの一部を配置することによって、前記液体貯蔵室(4)内に固定される、請求項12に記載の処理カートリッジ(1)。
【請求項14】
前記作動カートリッジ部(3)が、枢動接続によって前記主カートリッジ部(2)に接続されており、
- 前記作動カートリッジ部(3)または前記主カートリッジ部(2)が、2つの対向するピンチアーム(30a、30b)と、前記ピンチアームの間に配置された弾性アーム(29)とを備える第1の端部(13)を特徴とし、前記ピンチアームの各々が、枢動ノブ(31a、31b)を特徴とし、前記枢動ノブが、互いに反対側に配置されており、
- 対応する主カートリッジ部(2)または作動カートリッジ部(3)が、前記2つのピンチアーム(30a、30b)の間に挿入するためのコネクタハブ(32)を特徴とし、前記コネクタハブ(32)が、前記枢動ノブを収容するためのボア(33)を備え、レバー(29)と相互作用するための外周を有し、
前記外周の第1の部分(S1)が、前記外周の第2の部分(S2)よりも前記ボアの中心線までの距離(R2)が短く、前記外周の第1の部分と第2の部分とが、前記ボアの前記中心線(C)までの距離が増加する前記外周の第3の部分(S3)によって接続されており、前記外周の前記第3の部分が、前記弾性アームが前記第3の部分と相互作用するときに、前記主カートリッジ部に対する前記作動カートリッジ部の回転運動が規定の抵抗に直面するように配置される、
請求項1から13のいずれか一項に記載の処理カートリッジ(1)。
【請求項15】
前記作動カートリッジ部(3)が、枢動接続によって前記主カートリッジ部(2)に接続されており、
- 前記作動カートリッジ部(3)または前記主カートリッジ部(2)が、2つの対向するピンチアーム(30a、30b)を備える第1の端部(13)を特徴とし、前記ピンチアームの各々が枢動ノブ(31a、31b)を特徴とし、前記枢動ノブが互いに反対側に配置されており、
- 対応する主カートリッジ部(2)または作動カートリッジ部が、前記2つのピンチアーム(31a、31b)の間に挿入するためのコネクタハブ(32)を特徴とし、前記コネクタハブ(32)が、前記枢動ノブを収容するためのボア(33)を含み、前記ボアが、円形の内壁を有する中間部(34a)と、前記中間部の両側に配置された第1の部分(34b)および第2の部分(34c)とによって画定され、前記第1の部分および第2の部分の各々が、前記ボア(33)と前記コネクタハブ(32)の外周との間に延在する凹部(35)を含み、
- 前記枢動ノブ(31a、31b)の各々が、前記円形内壁と協働するように構成された2つの対向する第1の部分(K1)と、2つの対向する第2の部分(K2)とを備える外周を有し、前記第2の部分(K2)間の距離が、前記第1の部分(K1)間の最大距離よりも短く、各凹部(35)が、前記第1の部分(K1)間の前記最大距離よりも小さく、前記第2の部分(K2)間の最大距離よりも大きい幅を有する、
請求項1から14のいずれか一項に記載の処理カートリッジ(1)。
【請求項16】
処理カートリッジにサンプルを導入する方法であって、前記処理カートリッジ(1)が、主カートリッジ部(2)、作動カートリッジ部(3)およびサンプルコレクタ(15)を備え、前記主カートリッジ部(2)が、液体貯蔵室(4)と、液体容器(5)と、容器穿孔要素(6)と、弾性容器保持要素(9)とを備え、前記作動カートリッジ部(3)が、前記主カートリッジ部(2)とドッキングするように構成され、第1の端部(13)および作動部材(10)を備え、前記第1の端部(13)が、前記主カートリッジ部(2)に枢動可能に接続され、前記作動部材(10)が、ドッキング中に前記液体容器(5)と相互作用するように構成されており、
前記液体容器(5)、前記穿孔要素(6)および前記容器保持要素(9)が、前記液体貯蔵室(4)内に配置され、前記液体容器が、適切な処理液で満たされ、穿孔可能な分配側(16)を特徴とし、前記容器穿孔要素が前記分配側に面しており、
前記作動カートリッジ部が、前記液体容器(5)が前記容器保持要素(9)によって第1の位置に保持される非ドッキング位置に配置され得、前記第1の位置では、前記分配側が前記容器穿孔要素から分離され、前記サンプルコレクタがサンプルの収集に利用可能になり、前記方法が、
- 前記作動カートリッジ部を前記非ドッキング位置に保持するステップと、
- 前記サンプルコレクタ(15)でサンプルを収集するステップと、
- 前記作動部材(10)が前記液体容器を前記第1の位置から前記分配側(16)が前記容器穿孔要素によって穿孔される第2の位置に移動させるドッキング位置まで前記作動カートリッジ部(3)を旋回させるステップと、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理カートリッジの分野に関し、より詳細には、サンプル分析用の処理カートリッジと、サンプルを提供し処理カートリッジ内に処理液を放出するためのアセンブリとに関する。
【背景技術】
【0002】
遠心分離は、細胞、粒子、沈殿物の沈降を促進するため、また密度の異なる液体や細胞を分離するための手段として、長い間、化学および生化学のプロトコルに不可欠な部分であった。さらに、処理カートリッジまたはチップ内に配置されたマイクロ流体回路内で化学反応やアッセイを実行するために遠心分離を使用することはよく知られた技術である。例えば、Tang et al.、「A review of biomedical centrifugal microfluidic platforms」、Micromachines、2016年7月26日を参照されたい。
【0003】
処理カートリッジを使用するほとんどの分析システムでは、マイクロ流体回路にかかる遠心力の方向は一定であり、コンパクトディスク(CD)プレーヤーと同様であり、マイクロ流体回路がCD型のチップまたはカートリッジに配置されている遠心分離機がよく使用される。このような分析システム用の典型的な遠心分離機は、例えば、特開2018-163169号および米国特許出願公開第2018/0003732A1号に開示されている。
【0004】
他の分析システムは、例えば米国特許第4814282号、WO2011/081531A1、およびWO2019/091650A1に開示されているように、可変遠心力を提供できる二軸遠心分離機を利用している。二軸遠心分離機は、マイクロ流体回路で処理を実行するより柔軟で高速な手段を提供し得る。
【0005】
処理カートリッジの一般的な動作上の特徴は、再現可能かつ安全な方法でサンプルをマイクロ流体回路に導入することである。さらに、処理カートリッジのマイクロ流体回路内のサンプルおよび/または種々の反応物を溶解、希釈、洗浄および/または移送するために、処理液がしばしば必要とされる。
【0006】
EP2881743A1は、挿入型サンプルカートリッジを介してサンプルがカートリッジに導入される処理カートリッジを開示している。サンプルカートリッジは、挿入中に処理カートリッジ内の液体容器を移動させる部材を特徴とする。この動作により、サンプルの導入と同時に液体容器内の液体が放出される。
【0007】
米国特許出願公開第2011/0117665A1号は、使用前にカートリッジ内の液体容器を動かないように保つための枢動可能に接続されたアームを特徴とする処理カートリッジを開示している。アームは、使用中に枢動してカートリッジの残りの部分から遠ざかり、サンプルコレクタにアクセスして液体容器を解放する。サンプリング後、アームはカートリッジに向かって旋回して戻り、同時に液体容器をスパイクに向かって押して液体を放出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2018-163169号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2018/0003732A1号明細書
【特許文献3】米国特許第4814282号明細書
【特許文献4】国際公開第2011/081531A1号パンフレット
【特許文献5】国際公開第2019/091650A1号パンフレット
【特許文献6】欧州特許出願公開第2881743A1号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2011/0117665A1号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Tang et al.、「A review of biomedical centrifugal microfluidic platforms」、Micromachines、2016年7月26日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、処理液の貯留および放出を改良した方法で行うことができる処理カートリッジを提供することにある。本発明のさらなる目的は、使用中のサンプリングおよび取り扱いを改善する処理カートリッジである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、添付の特許請求の範囲および以下の事項によって規定される。
【0012】
第1の態様では、本発明は、主カートリッジ部と作動カートリッジ部とを備える処理カートリッジを提供し、主カートリッジ部は、液体貯蔵室、液体容器、容器穿孔要素、および弾性容器保持要素を備えており、
- 作動カートリッジ部は、主カートリッジ部とドッキングするように構成され、ドッキング中に液体容器と相互作用するように構成された作動部材を備えており、
- 液体容器、穿孔要素および容器保持要素は、液体貯蔵室内に配置され、液体容器は、適切な処理液で満たされ、穿孔可能な分配側を特徴とし、容器穿孔要素は、分配側に面しており、
- 液体容器は、容器保持要素によって第1の位置に保持され、分配側は、容器穿孔要素から分離されており、
- 作動部材は、作動カートリッジ部のドッキング中に液体容器を第1の位置から第2の位置に移動させるように構成され、第2の位置では、分配側が容器穿孔要素によって穿孔される。
【0013】
分配側は、アルミニウムおよび/またはプラスチック箔などの任意の適切な穿孔可能な流体密封性材料で構成することができる。分配側は、穿孔可能なシールカバーまたは穿孔可能なシール箔と呼ばれることもある。
【0014】
換言すれば、分配側は、容器穿孔要素に面している。
【0015】
作動部材は、液体容器との直接的または間接的な相互作用によって液体容器を移動させるように構成されてもよい。液体容器の動きは、弾性容器保持要素からの力に打ち勝つ。液体容器の移動中に、処理流体が液体貯蔵室内に放出され得るように、分配側が容器穿孔要素に向かって押される。
【0016】
処理カートリッジの一実施形態では、作動カートリッジ部が、主カートリッジ部に枢動可能に接続された第1の端部を備えてもよく、これにより、作動カートリッジ部が、液体容器が容器保持要素によって第1の位置に保持される非ドッキング位置と、作動カートリッジ部が主カートリッジ部にドッキングされ、液体容器が第2の位置にあるドッキング位置との間で枢動できる。
【0017】
容器保持要素は、液体容器を第1の位置に保持し、作動部材が液体容器を第2の位置に移動させることができる任意の適切な弾性要素を含んでいてもよい。容器保持要素は、液体容器に作用して液体容器を第1の位置に保持する弾性力を提供するように構成されてもよい。液体容器の第1の位置からの移動は、液体容器に作用する弾性力に打ち勝たなければならない。容器保持要素は、液体容器が第2の位置に向かって移動するときに、液体容器から離れるように偏向するように構成されてもよい。
【0018】
容器保持要素は、液体容器と接触する少なくとも1つの弾性アームを含むことができる。弾性アームは、弾性レバーとも呼ばれ得る。
【0019】
弾性アームまたはレバーは、液体容器の縁部に接触して配置され、作動部材が液体容器を第2の位置に移動させるときに縁部から離れるように偏向されるように配置され得る。液体容器の縁部と接触しているアーム/レバーの部分は、液体容器が作動部材によって移動される方向に対して傾斜していてもよい。傾斜面は、液体容器の滑らかで均一な動きを可能にする。弾性アーム/レバーは、対向する第1および第2の側面を有する屈曲部を備えていてもよく、第1の側面は液体容器と接触し、液体容器が第2の位置に向かって移動するときに第2の側面に向かって押される。
【0020】
処理カートリッジの一実施形態では、作動部材は、ドッキング中に液体貯蔵室に入るように構成される。
【0021】
処理カートリッジの一実施形態では、主カートリッジ部は、カートリッジ基部と上部カバーとを備えていてもよい。
【0022】
処理カートリッジの一実施形態では、液体貯蔵室は、側壁と基部表面とを備える。側壁および基部表面は、カートリッジ基部に配置されてもよい。液体貯蔵室は、上面によってさらに画定され得る。上面は、上部カバーによって提供されてもよい。
【0023】
処理カートリッジの一実施形態では、液体容器は凹部を備えてもよい。作動部材は、ドッキング中に液体貯蔵室に入るときに凹部の縁部と相互作用するように構成されてもよい。凹部は、作動部材が液体容器を容器穿孔要素に向かって押すまたは移動させることができる縁部と、液体容器の横方向の動きを制限するために作動部材と相互作用することができる少なくとも1つの側部表面とを備えていてもよい。制限される横方向の動きは、液体容器が押されるか移動する平面に対して、および/または液体貯蔵室の基部表面に対してであってもよい。凹部の側部表面は、液体容器が基部表面から横方向に移動するのを作動部材が防止できるように構成されてもよい。
【0024】
作動部材は、フィン状、すなわち作動フィンであってもよい。液体容器と相互作用する作動部材の一部は、凹部の縁部との滑らかで均一な相互作用を得るために、丸い周縁を有していてもよい。
【0025】
作動部材を液体容器の凹部と相互作用させることにより、液体容器が穿孔要素に向かって安定して移動し、作動部材に対する液体容器の横方向の移動が防止される。
【0026】
一実施形態では、処理カートリッジはサンプルコレクタを備えることができ、サンプルコレクタは、作動カートリッジ部分が主カートリッジ部分から分離されているとき、または非ドッキング位置にあるときに、サンプルを収集するためにアクセスできるように配置されている。
【0027】
サンプルコレクタは、被験者または物体から固体、半固体、粘液、または液体サンプルを得るのに適した任意の要素であってもよい。サンプルコレクタは、半固体/粘液サンプルを収集するための、全血またはスワブなどの液体サンプルを収集するための毛細管のチューブであってもよい。
【0028】
処理カートリッジの一実施形態では、サンプルコレクタは、作動カートリッジ部が主カートリッジ部でドッキングされている場合、またはドッキング位置にある場合に、サンプルコレクタが主カートリッジ部のサンプル受容空洞に収容されるように、作動カートリッジ部に配置されてもよい。
【0029】
作動カートリッジ部は、長手方向部であってもよい。
【0030】
処理カートリッジの一実施形態では、作動カートリッジ部は、サンプルコレクタが配置される第2の端部を含んでいてもよい。
【0031】
処理カートリッジの一実施形態では、主カートリッジ部は、ドッキング中の作動カートリッジ部においてそれぞれ対応する少なくとも1つの凹部またはガイドリブと相互作用するように構成された少なくとも1つのガイドリブまたは凹部を特徴としてもよい。ガイドリブは、凹部に挿入するための先細の縁部を特徴としてもよい。
【0032】
ガイドリブ/凹部は、主カートリッジ部の周辺部に配置され、対応する凹部/ガイドリブは、ドッキング中に主カートリッジ部に面する作動カートリッジ部の側面に配置することができる。
【0033】
処理カートリッジの一実施形態では、主カートリッジ部または作動カートリッジ部が、両側に配置されたロック凹部を有するロックリブを特徴としてもよく、対応する作動カートリッジ部または主カートリッジ部が、2つの対向する弾性フックを含んでいてもよく、各フックが、ロックリブ上のそれぞれのロック凹部と相互作用するように構成されており、ロックリブが、ドッキング中に弾性フックの間に挿入されるように構成された先細の縁部を有する。
【0034】
ロックリブが間に挿入される2つの対向するフックを有するという解決策は、等しく安全なロックを提供する単一のフックの使用と比較して、フックのより小さな撓みを可能にする。より小さな偏向により、より均一で滑らかなロック動作が保証される。ただし、別の実施形態では、ロックリブは、単一のフックとの相互作用のための単一の凹部を特徴とする場合があり、例えばロックリブの端部に単一の凹部を配置することができる。
【0035】
処理カートリッジの一実施形態では、容器穿孔要素は、基部部分、少なくとも1つの側面部分、および基部部分の遠位の鋭い部分を含んでいてもよい。例えば、スパイクのような鋭い部分は、液体容器の分配側に向かって配置することができる。
【0036】
処理カートリッジの一実施形態では、容器穿孔要素は、側面部分に配置された少なくとも1つの凹部を含むことができる。凹部は、基部部分と鋭い部分との間に延在してもよい。
【0037】
処理カートリッジの一実施形態では、容器穿孔要素および容器ホルダ要素は、単一のユニットの一部を構成する。
【0038】
処理カートリッジの一実施形態では、液体貯蔵室は、側壁とノブを特徴とする基部表面とを含み、単一のユニットは、ノブと側壁との間に配置された単一のユニットの部分を有することによって、液体貯蔵室で固定される。
【0039】
処理カートリッジの一実施形態では、作動カートリッジ部が、枢動接続によって主カートリッジ部に接続されていてもよく、
- 作動カートリッジ部または主カートリッジ部が、2つの対向するピンチアームと、ピンチアームの間に配置された弾性アームとを備える第1の端部を特徴とし、ピンチアームの各々が、枢動ノブを特徴としており、枢動ノブが、互いに反対側に配置されており(すなわち、互いに面しており)、
- 対応する主カートリッジ部または作動カートリッジ部が、2つのピンチアームの間に挿入するためのコネクタハブを特徴とし、コネクタハブが、枢動ノブを収容するためのボアを備え、弾性アームと相互作用するための外周を有し、
外周の第1の部分が、外周の第2の部分よりもボアの中心線までの距離が短く、外周の第1の部分と第2の部分とが、ボアの中心線までの距離が増加する外周の第3の部分によって接続されており、外周の第3の部分が、弾性アームが第3の部分と相互作用するときに、作動カートリッジ部の動きが規定の抵抗に直面するように配置される。
【0040】
換言すれば、作動カートリッジ部の動きは、作動カートリッジ部の枢動運動のために、弾性アームが第3の部分と相互作用するとき、規定された抵抗に直面する。規定された抵抗は、均等で可変的または制御可能な抵抗であってもよい。
【0041】
換言すれば、外周の第3の部分は、第1の部分の距離に等しい距離から第2の部分の距離まで増加するボアの中心線までの距離を有する。
【0042】
ボアは、枢動ノブを収容するように配置された内側の円形の周囲を有していてもよい。枢動ノブには外周があり、そのうちの少なくとも2つの対向部がボアの内側の円形の周囲と協力する。2つの対向部は、放射状または湾曲した部分であってもよい。ボアに収容されると、両方の枢動ノブに共通する中心線がボアの中心線と一致する。対向部は、両方の枢動ノブの共通の中心線がボアの中心線と一致することを保証し得る。
【0043】
処理カートリッジの一実施形態では、作動カートリッジ部が、枢動接続によって主カートリッジ部に接続されていてもよく、
- 作動カートリッジ部または主カートリッジ部が、2つの対向するピンチアームを備える第1の端部を特徴とし、ピンチアームの各々が枢動ノブを特徴とし、枢動ノブが互いに反対側に配置されており、
- 対応する主カートリッジ部または作動カートリッジ部が、2つのピンチアームの間に挿入するためのコネクタハブを特徴とし、コネクタハブが、枢動ノブを収容するためのボアを含み、ボアが、円形の内壁を有する中間部と、中間部の両側に配置された第1の部分および第2の部分とによって画定され、第1の部分および第2の部分の各々が、ボアとコネクタハブの外周との間に延在する凹部を含み、
- 枢動ノブの各々が、円形内壁と協働するように構成された2つの対向する第1の部分と、2つの対向する第2の部分とを備える外周を有し、第2の部分間の距離が、第1の部分間の最大距離よりも短く、各凹部が、第1の部分間の最大距離よりも小さく、第2の部分間の最大距離よりも大きい幅を有する。
【0044】
枢動ノブおよび凹部は、第1の部分の1つがそれぞれの凹部に面した状態で枢動ノブの各々が向けられている場合、ピンチアームの最小限の撓みで、ピンチアームの間にコネクタハブを挿入できるように寸法化されて構成されている。
【0045】
第1の部分は放射状または湾曲した部分であってもよく、第2の部分は平行な直線部であってもよい。
【0046】
処理カートリッジの一実施形態では、主カートリッジ部は、マイクロ流体回路を含んでいてもよく、マイクロ流体回路は、サンプル受容空洞および液体貯蔵室に接続されてもよい。
【0047】
処理カートリッジの一実施形態では、主カートリッジ部および作動カートリッジ部は、作動カートリッジ部がドッキング位置にあるときにディスク型の本体を画定することができる。
【0048】
第2の態様では、本発明は、主カートリッジ部と作動カートリッジ部とを含む処理カートリッジを提供し、主カートリッジ部は、液体貯蔵室、液体容器、および容器穿孔要素を含み、
- 作動カートリッジ部は、主カートリッジ部とドッキングするように構成され、ドッキング中に液体容器と相互作用するように構成された作動部材を備え、
- 液体容器および穿孔要素は、液体貯蔵室内に配置され、液体容器は、適切な処理液で満たされ、穿孔可能な分配側を特徴とし、容器穿孔要素は、分配側に面しており、
- 液体容器はドッキング前に第1の位置にあり、分配側は容器穿孔要素から分離されており、
- 作動部材は、作動カートリッジ部のドッキング中に液体容器を第1の位置から第2の位置に移動させるように構成され、第2の位置では、分配側が容器穿孔要素によって穿孔される。
【0049】
本発明の第2の態様は、第1の態様の実施形態の特徴のいずれかを含んでいてもよい。
【0050】
第3の態様では、本発明は、主カートリッジ部と作動カートリッジ部を含む処理カートリッジを提供し、主カートリッジ部は、液体貯蔵室、液体容器、容器保持要素、および容器穿孔要素を備えており、
- 作動カートリッジ部は、主カートリッジ部とドッキングするように構成され、ドッキング中に液体容器と相互作用するように構成された作動部材を備えており、
- 液体容器および穿孔要素は、液体貯蔵室内に配置され、液体容器は、適切な処理液で満たされ、穿孔可能な分配側を特徴とし、容器穿孔要素は、分配側に面しており、
- 液体容器は、容器保持要素によって第1の位置に保持され、分配側は、容器穿孔要素から分離されており、
- 作動部材は、作動カートリッジ部のドッキング中に液体容器を第1の位置から第2の位置に移動させるように構成され、第2の位置では、分配側が容器穿孔要素によって穿孔される。
【0051】
本発明の第3の態様は、第1の態様の実施形態の特徴のいずれかを含むことができる。
【0052】
第1、第2および第3の態様の作動部材は、液体容器との直接的または間接的な相互作用によって液体容器を移動させるように構成することができる。
【0053】
第4の態様では、本発明は、処理カートリッジにサンプルを導入する方法を提供し、処理カートリッジが、主カートリッジ部、作動カートリッジ部およびサンプルコレクタを備え、主カートリッジ部が、液体貯蔵室と、液体容器と、容器穿孔要素と、弾性容器保持要素とを備え、
作動カートリッジ部が、主カートリッジ部とドッキングするように構成され、第1の端部および作動部材を備え、第1の端部が、主カートリッジ部に枢動可能に接続され、作動部材が、ドッキング中に液体容器と相互作用するように構成されており、
液体容器および穿孔要素が、液体貯蔵室内に配置され、液体容器が、適切な処理液で満たされ、穿孔可能な分配側を特徴とし、容器穿孔要素が分配側に面しており、
作動カートリッジ部が、液体容器が容器保持要素によって第1の位置に保持される非ドッキング位置に配置されていてもよく、第1の位置では、分配側が容器穿孔要素から分離され、サンプルコレクタがサンプルの収集に利用可能になり、方法が、
- 作動カートリッジ部を非ドッキング位置に保持するステップと、
- サンプルコレクタでサンプルを収集するステップと、
- 作動部材が液体容器を第1の位置から分配側が容器穿孔要素によって穿孔される第2の位置に移動させるドッキング位置まで作動カートリッジ部を旋回させるステップと、
を含む。
【0054】
本方法の一実施形態では、主カートリッジ部はサンプル空洞を備え、作動カートリッジ部がドッキング位置に枢動されると、サンプルコレクタがサンプル空洞内に導入される。
【0055】
処理カートリッジの一実施形態では、主カートリッジ部の内部容積は、サンプルの処理のための、例えばサンプルを分析するためのマイクロ流体回路を含む。
【0056】
「処理カートリッジ」という用語は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)や合成化学反応など、さまざまなタイプの化学反応を行うだけでなく、カートリッジに導入された適切なサンプルに対して分析、アッセイなどを実行するのに適した内部流体回路を備えるチップ/カートリッジを意味することが意図される。
【0057】
次に、本発明の実施形態を、単なる例として、以下の図面を参照してより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0058】
図1】本発明による例示的な処理カートリッジの斜視図である。
図2図1の処理カートリッジの上部箔を取り外した斜視図である。
図3図1の処理カートリッジの分解図である。
図4】サンプラアームが非ドッキング位置にある、図1の処理カートリッジの側面斜視図である。
図5】サンプラアームがドッキング位置にある、図1の処理カートリッジの斜視側面図である。
図6a図1の処理カートリッジの詳細な側面図である。
図6b図1の処理カートリッジの詳細な側面図である。
図6c図1の処理カートリッジの詳細な側面図である。
図7図1の処理カートリッジの側面図である。
図8図7の処理カートリッジの断面図である。
図9】本発明による処理カートリッジで使用するためのスパイクおよび弾性アームを特徴とするユニットの斜視図である。
図10】本発明による処理カートリッジで使用するための液体容器の斜視図および分解図である。
図11】本発明による処理カートリッジで使用するためのサンプラアームの斜視図である。
図12】サンプラアームを除いた図1の処理カートリッジの側面斜視図である。
図13】本発明による処理カートリッジ用の枢動カップリングの詳細を示す図である。
図14図13の枢動カップリングの詳細を示す図である。
図15図13の枢動カップリングの詳細を示す図である。
図16a図13の枢動カップリングの詳細を示す図である。
図16b図13の枢動カップリングの詳細を示す図である。
図16c図13の枢動カップリングの詳細を示す図である。
図17a】本発明による処理カートリッジのロック機構の詳細を示す図である。
図17b】本発明による処理カートリッジのロック機構の詳細を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
本発明の目的は、バックグラウンドの部に記載されているように、遠心分離機ベースの分析システムで使用するのに適した処理カートリッジを提供することである。
【0060】
本発明による例示的な処理カートリッジを図1および図2に示す。
【0061】
処理カートリッジ1は、主カートリッジ部2とサンプラアーム3(すなわち、作動カートリッジ部)とを備えている。
【0062】
主カートリッジ部2は、内部流体またはマイクロ流体回路7を特徴とする。例示の目的のために、例示的な流体回路7が図1図3のカートリッジに示されている。処理カートリッジの流体回路は、サンプルを処理するために設計されている場合があり、例えば、全血サンプルでさまざまなタイプの分析アッセイを実行したり、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)や合成化学反応を含むさまざまな化学反応を処理したりするために設計することもできる。処理カートリッジは、例えば、マイクロチャネルおよびさまざまな液体のナノL量、μL量、mL量の取り扱い、処理および輸送のための様々な空洞を含んでいてもよい。さらに、カートリッジは、光学的に透明または半透明であってもよい。これにより、カートリッジ全体で液体の輸送、色の発達、分離などを研究することができる。サンプルは、液体、半固体または固体、通常は全血、血漿、血清、尿、粘液、組織または便のサンプルであってもよい。半固体および固体サンプルは、流体回路で処理する前に流動化される。また、カートリッジは、1つまたは複数の試薬を含んでいてもよい。本発明に従って処理カートリッジで使用することができる例示的な流体回路は、例えば、その内容が参照により本明細書に組み込まれる、WO2011/081530A1に開示されている。さらに、このような流体回路および適切な流体回路で実施することができる種々の方法が、PCT/EP2015/063811、PCT/EP2015/063817およびPCT/EP2015/063824に開示されている。
【0063】
図1では、主カートリッジ部2は、カートリッジ基部2aと、カートリッジ基部2aの流体回路7の片側を閉じる上部カバー2bとを含む。上部カバー2bは、例えば、硬いプラスチックフィルムの層であってもよい。明確にするために、流体回路7と上部カバー2bとは、残りの図4図17において除外されている。
【0064】
処理カートリッジを構成する主要部分を示すために、処理カートリッジ1の分解図を図3に示す。処理カートリッジとそのさまざまな有利な特徴の機能は、図4図17を参照して説明される。
【0065】
上述したように、処理カートリッジは、主カートリッジ部2とサンプラアーム3とから構成されている。
【0066】
主カートリッジ部2は、液体貯蔵室4、液体容器5、スパイク6(すなわち、容器穿孔要素)、および弾性アーム9(すなわち、弾性容器保持要素)を特徴とする。
【0067】
サンプラアーム3は、主カートリッジ部に枢動可能に接続された第1の端部13を有する。サンプラアーム3の第2の端部14は、サンプルを収集するための毛細管15(すなわち、サンプルコレクタ)を特徴とする。サンプラアーム3は、主カートリッジ部2とドッキングするように構成されている。作動フィン10(すなわち、作動部材)は、サンプラアーム3に配置され、主カートリッジ部2とサンプラアーム3とのドッキング中に液体貯蔵室4に入るように構成されている。
【0068】
液体容器5、スパイク6、および弾性アーム9は、液体貯蔵室4に配置されている。液体容器5は、適切な処理液で満たされ、穿孔可能な分配側16を特徴とする(図10を参照されたい)。処理液は、例えば、実施される分析のタイプおよび/または分析されるサンプルのタイプに応じて、任意の適切な緩衝液および/溶媒であってもよい。分配側16は、少なくとも穿孔可能な液体タイト箔16aを含む部を特徴とする。例えば、液体タイト箔16aは、アルミニウム、適切なポリマー材料、またはそれらの任意の組み合わせから作製され得る。
【0069】
スパイク6は、液体容器5の分配側に面するように配置されている。この実施形態では、図9を参照すると、スパイク6は、基部部分25と、側面部分26と、基部部分の遠位にある鋭い部分27とを含む。側面部分26は、基部部分25と鋭い部分27との間に延在する凹部28を特徴とすることができる。分配側がスパイク6によって穿孔されると、場合によっては、分配側のアルミニウムまたはポリマー箔がスパイクに対して密封され、液体が所望のように自由に放出されないようにすることができる。このような場合、凹部28は、側面部分26に対する箔の潜在的なシーリングを破壊することによって、液体のより再現性のある放出を提供する。
【0070】
スパイク6と液体貯蔵室4内の弾性アーム9とを固定する簡単な方法を得るために、スパイク6と弾性アーム9とは、接続部39によって相互接続されており、すなわち、単一の要素またはユニットの部分を形成する(図9を参照されたい)。液体貯蔵室4は、側壁37とノブ22を有する基部表面43とを特徴とする(例えば、図3を参照されたい)。スパイク6および弾性アーム9は、ノブ22と側壁37との間に接続部39を配置することによって、液体貯蔵室4内で固定される。
【0071】
使用中、サンプラアームは、図4図15、および図16に示すように、最初に非ドッキング位置に配置される。非ドッキング位置では、液体容器5は、分配側16がスパイク6から分離されるように、弾性アーム9によって第1の位置に保持される。毛細管15は、サンプラアームが非ドッキング位置にあるときにサンプルの収集にアクセスできる。例えば、サンプルは、患者からの全血サンプルであってもよい。このようにして、液体容器が固定されている間にサンプルが収集され、スパイクに向かって移動するのを防ぐことができる。弾性アーム9の付勢力により、サンプル収集中に処理カートリッジが鋭い動きにさらされている場合でも、液体容器が所定の位置に保持される。少量の液体の早期放出は、その後のサンプル分析に影響を与える可能性があるため、後者の効果は非常に有利である。したがって、サンプリング中の液体容器の安全な位置決めにより、分析結果のエラーの可能性のある原因が除去される。
【0072】
サンプリング中の主カートリッジ部に対するサンプラアームの意図しない動きを避けるために、サンプラアームは、非ドッキング位置からのサンプラアームの動きに対する抵抗を提供する枢動カップリングによって主カートリッジ部に接続されている。枢動カップリングは、サンプラアーム3の第1の端部13に2つの対向するピンチアーム30a、30b、およびピンチアーム30a、30bの間に配置された弾性アーム29を持つことによって得られる(図11図16を参照されたい)。枢動ノブ31a、31bを特徴とするピンチアーム、および枢動ノブの各々は、互いに反対側に配置されている。主カートリッジ部2は、サンプラアーム3の2つのピンチアーム30a、30bの間に挿入するためのコネクタハブ32を特徴とする。コネクタハブ32は、枢動ノブ31a、31bに対応するためのボア33を含み、弾性アーム29との相互作用のための外周を有する。外周の第1の部分S1は、外周の第2の部分S2よりもボア33の中心線Cまでの距離R1が短い。第1および第2の部分は、距離、すなわちR1からR2までからボアの中心線Cまでの距離が増加している外周の第3の部分S3によって相互接続されている。
【0073】
非ドッキング位置からのサンプラアームの移動中、弾性アーム29は、外周の第3の部分と相互作用するときに、動きに対する規定された抵抗を発揮する。
【0074】
枢動カップリングの横方向の剛性を高めるために、ボア33は、円形の内壁を持つ中央の部34aと、中央の部の反対側に配置された第1の部分34bおよび第2の部分34cとによって規定される。第1の部分および第2の部分の各々は、ボア33とコネクタハブ32の外周との間に延在する凹部35を含む。各枢動ノブ31a、31bは、円形の内壁と協働するように構成された2つの対向する放射状部K1と2つの対向する平行部K2とを含む外周を有し、平行部K2間の距離は、放射状部K1間の最大距離よりも短く、各凹部3は、放射状部K1間の最大距離よりも小さく、平行部K2間の最大距離よりも大きい幅を有する。枢動ノブ31a、31b、凹部35の寸法は、放射状部K1の1つがそれぞれの凹部35に面した状態で枢動ノブ31a、31bの各々が向けられている場合、ピンチアームの最小偏向により、ピンチアーム30a、30bの間にコネクタハブ32を挿入することができるように構成されている。凹部35を介してコネクタハブ32に接続中のピンチアームの最小の撓みにより、ピンチアームの剛性が増加する可能性があり、枢動カップリングの横方向の剛性が最適化される。
【0075】
他の実施形態では、主カートリッジ部は、上記の2つの対向するピンチアームを特徴としてもよいが、上記コネクタハブは、サンプラアームの第1の端部に配置される。
【0076】
毛細管15によってサンプルが収集された後、サンプラアームは、非ドッキング位置からドッキング位置に枢動され(図5および図6cを参照されたい)、毛細管15は、サンプル空洞17に導入される。サンプル空洞17は、主カートリッジ部の流体回路7に接続されたサンプル入口38を含む。
【0077】
サンプラアーム3がドッキング位置にある場合、液体容器は第2の位置にある。第2の位置では、液体容器の分配側16が穿孔され、液体が液体貯蔵室4内に放出され得る。液体貯蔵室4は、液体容器から放出された後に処理液を移送させることができる液体出口36を含む。
【0078】
ドッキング位置に向かう移動中に(図6bおよび図7を参照されたい)、作動フィン10が液体貯蔵室4に入り、液体容器5と接触する。図示された実施形態では、作動フィン10は、液体容器5の側面に配置された凹部11の縁部11aと相互作用する(図10を参照されたい)。例えば、液体容器の上部部ではなく、凹部11と相互作用することによって、作動フィン10は、スパイク6に向かって液体容器の動きを導き、安定させるのに役立つ。したがって、スパイク6に向かう方向性の動きに対する液体容器5の小さな横方向の動きが回避または制限される。そのような横方向の動きは、それ以外の場合は液体容器5の滑らかで均一な動きを防ぐことができ、液体容器が詰まっているか、分配側の不十分なまたは広すぎる穿孔を引き起こす可能性がある。液体容器5の横方向の動きを制限することのさらなる重要な利点は、液体容器5が第1の位置から第2の位置への移動中に上部カバー2bに押し出されるのを防ぐことである。上部カバー2bは、例えば、熱または適切な接着剤によってカートリッジ基部2aに積層される。上部カバー2bとカートリッジ基部2aとの間の積層は、流体回路7を形成するカートリッジ基部2aの壁の上部に弱い点がある可能性がある。したがって、液体容器5が上部カバー2bに押し出されるのを防ぐことにより、カートリッジ基部2aの一部からの上部カバー2bの偶発的な剥離を回避する。適切な凹部の代替設計が想定され、全ては縁部11aを含み、これにより、作動フィン10は、液体容器5をスパイク6に押し込んだり移動させたりすることができ、そして、作動フィン10と相互作用する少なくとも1つの側部表面11bが横方向の動きを制限する。側部表面11bは、作動フィンが液体容器の横方向の動きが基部表面43から離れることを防ぐように構成されている。
【0079】
弾性アーム9は、液体容器5がスパイク6に向かって移動すると、液体容器の縁部から離れるように偏向されるように構成される。偏向は、弾性アームの弾性および/または塑性変形、またはさらには破壊さえもたらす可能性がある。例示的な処理カートリッジでは、弾性アームは、屈曲部40aと、対向する第1の側面40bと第2の側面40cとを特徴とし、第1の側面40bは、液体容器5と接触し、液体容器5が第2の位置に移動すると、第2の側面40cに向かって押圧される(図9を参照されたい)。第1の側面40bは、液体容器5の分配側の縁部41と接触する傾斜部分40dを有する。
【0080】
本発明による処理カートリッジ1は、サンプラアーム3のドッキング位置に向かっての移動中にサンプラアーム3の横方向の動きを制限するための特徴を含み得る。それは、ドッキング位置に向かって枢動運動の平面に垂直な方向にサンプラアーム3の動きを防ぐことである。この実施形態では、主カートリッジ部2はガイドフィン18で構成され、サンプラアームにはサンプラアームの枢動移動中にガイドフィンが導入されるガイド凹部19がある(図7および図8を参照されたい)。ガイドフィン18は、ガイド凹部に面する先細の縁部20を有し、そのため、サンプラアームがドッキング位置に向かって移動している間、滑らかな相互作用を確保しながら、ガイドフィンとガイド凹部との間の相互作用によって提供される横方向の制限が最適であり得る。サンプラアームの横方向の動きを制限または防止することにより、サンプリング手順の潜在的なエラーが最小限に抑えられる。このようなエラーは、サンプルの一部を早期に放出する、例えば毛細管15がサンプル空洞17に入る前にサンプルを放出する可能性があるサンプラアームの鋭い動きによって引き起こされる可能性がある。他の実施形態では、サンプラアーム3はガイドフィンを備え、ガイド凹部が主カートリッジ部2に配置される。
【0081】
ドッキング位置では、サンプラアーム3は、ロック機構によって主カートリッジ部2に接続される。例示的な処理カートリッジでは、主カートリッジ部2は、その両側に配置されたロック凹部23a、23bを有するロックリブ21を特徴とする(図17aおよび図17bを参照されたい)。ロックリブ21はガイドリブ18の継続であってもよい。サンプラアーム3は、2つの対向する弾性フック24a、24bを特徴とし、各フック24が、ロックリブのそれぞれのロック凹部23a、23bとの相互作用のために構成されている。ロックリブ21は、サンプラアーム3のドッキング中に弾性フック24の間に挿入するように構成された先細の縁部25を有する。ロックリブが挿入される2つの対向するフックを有するという解決策は、等しく安全なロックを提供するように設計されたロックリブの片側にある単一のフックの撓みと比較して、フック24a、24bの小さな偏向を可能にする。撓みが小さいほど、ロック中のサンプラアーム3の動きがより均一で滑らかになる。後者の効果は、サンプラアームの鋭い動きが回避または最小化されるという点で有利である。鋭い動きにより、例えば、処理カートリッジ1が遠心分離機ベースの分析システムに導入される前に、サンプル空洞17内へのサンプルの放出、または毛細管15の上部からのサンプルの放出など、サンプルの一部が時期尚早に放出される可能性がある。他の実施形態では、サンプラアーム3は、ロックリブを備えることができ、一方、2つの対向する弾性フックが主カートリッジ部2に配置される。
【0082】
例示的な処理カートリッジでは、液体容器は、弾性アーム9によって第1の位置に保持される。しかしながら、他の適切な弾性部材も想定されており、その部材が、好ましくは弾性力によって液体容器を第1の位置に保持でき、作動フィンが付勢力に抗して液体容器を第2の位置に向かって移動させることができる限り、任意の形状を有することができる。他の実施形態では、弾性アーム9または任意の他の適切な弾性部材は、液体容器5または液体貯蔵室4の一体部分として製造(例えば、成形)され得る。
【0083】
例示的な処理カートリッジでは、スパイク6は、カートリッジ基部2aとは別個に成形される。他の実施形態では、スパイク6は、液体貯蔵室4の一体部分として製造(例えば、成形)され得る。
【0084】
本明細書に図示され説明される例示的な処理カートリッジは、いくつかの非常に有利な特徴の組み合わせを含む。ただし、本発明の他の実施形態では、有利な処理カートリッジは、記載された特徴の任意の所望の組み合わせを含んでいてもよい。
【0085】
例示的な実施形態では、処理カートリッジの円周は略円形である。ただし、他の実施形態では、処理カートリッジの円周は、長方形、正方形、または楕円形などの任意の適切な形状を有していてもよい。
【符号の説明】
【0086】
1 処理カートリッジ
2 主カートリッジ部
2a カートリッジ基部
2b 上部カバー
3 サンプラアーム
4 液体貯蔵室
5 液体容器
6 スパイク
7 マイクロ流体回路
9 弾性アーム
10 作動フィン
11、28、35 凹部
11a 縁部
11b 側部表面
13 第1の端部
14 第2の端部
15 毛細管
16 分配側
16a 液体タイト箔
17 サンプル空洞
18 ガイドフィン、ガイドリブ
19 ガイド凹部
20 先細の縁部
21 ロックリブ
22 ノブ
23a、23b ロック凹部
24、24a、24b フック
25 基部部分
26 側面部分
27 鋭い部分
29 弾性アーム
30a、30b ピンチアーム
31a、31b 枢動ノブ
32 コネクタハブ
33 ボア
34a 中央の部
34b 第1の部分
34c 第2の部分
36 液体出口
37 側壁
38 サンプル入口
39 接続部
40a 屈曲部
40b 第1の側面
40c 第2の側面
40d 傾斜部分
C 中心線
K1 放射状部
K2 平行部
R1、R2 距離
S1 第1の部分
S2 第2の部分
S3 第3の部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b
図6c
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16a
図16b
図16c
【図
図17a
図17b
【国際調査報告】