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特表2024-502255導波路ベースのディスプレイにおけるアイグロー抑制
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-18
(54)【発明の名称】導波路ベースのディスプレイにおけるアイグロー抑制
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/02 20060101AFI20240111BHJP
   G02B 5/18 20060101ALI20240111BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20240111BHJP
   G02B 1/11 20150101ALI20240111BHJP
   G02B 5/22 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
G02B5/18
G02B5/30
G02B1/11
G02B5/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537680
(86)(22)【出願日】2021-12-20
(85)【翻訳文提出日】2023-08-18
(86)【国際出願番号】 US2021073035
(87)【国際公開番号】W WO2022140763
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】63/129,270
(32)【優先日】2020-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/128,645
(32)【優先日】2020-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509325972
【氏名又は名称】ディジレンズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アラステア・ジョン・グラント
(72)【発明者】
【氏名】リチャード・イー・ベルグストロム・ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】ロジャー・アレン・コンリー・スミス
(72)【発明者】
【氏名】ミシェル・コーエン・カレンズ
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス・シャーウッド
(72)【発明者】
【氏名】ニマ・シャムズ
(72)【発明者】
【氏名】ミラン・モンシロ・ポポヴィッチ
【テーマコード(参考)】
2H148
2H149
2H199
2H249
2K009
【Fターム(参考)】
2H148CA19
2H148CA24
2H149AA01
2H149AB02
2H149BA03
2H149BA22
2H149BA29
2H149DA02
2H149EA02
2H149FA21Y
2H149FC02
2H149FC09
2H149FD03
2H199CA12
2H199CA50
2H199CA54
2H199CA55
2H199CA63
2H199CA68
2H199CA69
2H199CA96
2H249AA04
2H249AA08
2H249AA43
2H249AA60
2H249AA62
2H249AA64
2H249AA65
2K009AA02
2K009BB11
(57)【要約】
導波路システムにおいてアイグローを抑制するための方法および装置が本明細書に開示される。方法および装置のいくつか実施形態は、画像変調光の光源と;眼に面する表面、および外界に面する外面を有する導波路と;光を前記導波路内の全反射内部経路に結合するための入力カプラと;ビーム拡大を提供し、前記導波路からアイボックスに向かう光を抽出するための少なくとも1つの格子と;変調深さおよび格子ピッチを含むポリマー格子構造と、を含む。前記変調深さは前記ポリマー格子構造の少なくとも一部分にわたって前記格子ピッチよりも大きい。有利には、前記ポリマー格子構造は、外界から前記導波路に入る光、または前記導波路内で生成された迷光を、前記外面を通して屈折される光路から離れるように外界に回折させるように構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導波路ディスプレイであって、
画像変調光の光源と、
眼に面する表面、および外界に面する外面を有する導波路と、
前記光を前記導波路内の全反射内部経路に結合するための入力カプラと、
ビーム拡大を提供し、前記導波路からアイボックスに向かう光を抽出するための少なくとも1つの格子と、
変調深さおよび格子ピッチを含むポリマー格子構造であって、前記変調深さは、前記ポリマー格子構造の少なくとも一部分にわたって前記格子ピッチよりも大きい、ポリマー格子構造と、
を含み、
前記ポリマー格子構造は、前記外界から前記導波路に入る光、または前記導波路内で生成された迷光を、前記外面を通して屈折される光路から離れるように前記外界へと回折させるように構成され、
前記ポリマー格子構造は、前記導波路内の画像変調光の伝搬、および前記アイボックスに向かう前記画像変調光の抽出を実質的に阻害せず、
前記導波路内で生成された前記迷光は、格子材料から散乱された光と、ゼロ次回折画像変調光と、前記導波路から前記アイボックスに向かって抽出されない光路に沿って伝搬する画像変調光と、からなる群から選択された少なくとも1つを含む、導波路ディスプレイ。
【請求項2】
前記ポリマー格子構造は、隣接ポリマー領域間のバックフィル材料を更に含み、前記バックフィル材料は、前記ポリマー領域の屈折率よりも高いかまたは低い屈折率を有する、請求項1に記載の導波路ディスプレイ。
【請求項3】
前記バックフィル材料は、前記ポリマー格子構造の隣接部分間の空間の底部における空間を占め、前記バックフィル材料の上面の上から前記変調深さまでの空間は空気が占める、請求項2に記載の導波路ディスプレイ。
【請求項4】
前記バックフィル材料は等方性材料を含む、請求項2に記載の導波路ディスプレイ。
【請求項5】
等方性バックフィル材料は複屈折材料を含む、請求項4に記載の導波路ディスプレイ。
【請求項6】
前記複屈折材料は液晶材料を含む、請求項5に記載の導波路ディスプレイ。
【請求項7】
前記ポリマー格子構造の変調深さは、可視光の波長よりも大きい、請求項1に記載の導波路ディスプレイ。
【請求項8】
前記格子ピッチは、前記ポリマー格子構造の回折機構の間隔であり、前記変調深さは、前記ポリマー格子構造の深さである、請求項1に記載の導波路ディスプレイ。
【請求項9】
前記ポリマー格子構造の前記格子ピッチは0.35μm~1μmであり、前記ポリマー格子構造の前記変調深さは1μm~10μmである、請求項1に記載の導波路ディスプレイ。
【請求項10】
前記ポリマー格子構造の前記変調深さと前記格子ピッチの間隔との比は、1:1~10:1の範囲内にある、請求項1に記載の導波路ディスプレイ。
【請求項11】
前記ポリマー格子構造は、多重化格子として構成される、請求項1に記載の導波路ディスプレイ。
【請求項12】
前記ポリマー格子構造の一部分は、前記導波路からの光を出力結合するように構成される、請求項1に記載の導波路ディスプレイ。
【請求項13】
前記ポリマー格子構造の一部分はビーム拡大器として構成される、請求項1に記載の導波路ディスプレイ。
【請求項14】
前記ポリマー格子構造の一部分は、前記光源から前記導波路内の全反射内部経路に入る画像変調光を結合するように構成される、請求項1に記載の導波路ディスプレイ。
【請求項15】
前記ポリマー格子構造の前記変調深さは、定義されたバランスのS偏光およびP偏光を高効率で入力結合するように構成される、請求項1に記載の導波路ディスプレイ。
【請求項16】
前記ポリマー格子構造は、交互のポリマー領域およびエアギャップ領域を更に含み、前記ポリマー領域と前記エアギャップ領域との間の屈折率差は、1.4~1.9の範囲にある、請求項1に記載の導波路ディスプレイ。
【請求項17】
前記ポリマー領域と前記複屈折材料との間の屈折率差は0.01~0.2である、請求項5に記載の導波路ディスプレイ。
【請求項18】
前記ポリマー格子構造は、2次元格子構造または3次元格子構造を含む、請求項1に記載の導波路ディスプレイ。
【請求項19】
前記ポリマー格子構造は、
ポリマー回折機構と、
隣接するポリマー回折機構間の複屈折材料であって、前記複屈折材料は、前記ポリマー回折機構よりも高い屈折率を有する、複屈折材料と、
を含む、請求項1に記載の導波路ディスプレイ。
【請求項20】
前記入力カプラは格子またはプリズムである、請求項1に記載の導波路ディスプレイ。
【請求項21】
前記ポリマー格子構造の前記変調深さは、空間的に変動する偏光依存回折効率特性を提供するように前記導波路にわたって変動する、請求項1に記載の導波路ディスプレイ。
【請求項22】
前記ポリマー格子構造の前記変調深さは、空間的に変動する角度依存回折効率特性を提供するように前記導波路にわたって変動する、請求項1に記載の導波路ディスプレイ。
【請求項23】
空間、角度または偏光回折効率特性のうちの少なくとも1つは、前記ポリマー格子構造を、特定の屈折率または複屈折の光学材料でバックフィルすることによって提供され得る、請求項1に記載の導波路ディスプレイ。
【請求項24】
前記ポリマー格子構造は、ブラッグ格子またはラマン・ナス格子として構成される、請求項1に記載の導波路ディスプレイ。
【請求項25】
前記ポリマー格子構造は、前記導波路の前記外面および/または前記導波路の前記眼に面する表面に形成され、前記入力カプラ、および/またはビーム拡大を提供し、前記導波路から光を抽出するための前記少なくとも1つの格子と少なくとも部分的に重なる、請求項1に記載の導波路ディスプレイ。
【請求項26】
前記ポリマー格子構造は、ブラッグ格子を含む領域、ラマン・ナス格子を含む領域、および格子のない領域を含み、
前記領域は、前記入力カプラ、およびビーム拡大を提供し、光を抽出するための前記少なくとも1つの格子を、少なくとも部分的に覆う、請求項1に記載の導波路ディスプレイ。
【請求項27】
前記ポリマー格子構造の格子を含まない領域に重なる光制御層を更に含む、請求項26に記載の導波路ディスプレイ。
【請求項28】
前記光制御層は、偏光回転、偏光選択的吸収、偏光選択的透過、偏光選択的回折、角度選択的透過、角度選択的吸収、反射防止、および定義されたスペクトル帯域幅内での透過からなる群から選択された少なくとも1つを提供する、請求項27に記載の導波路ディスプレイ。
【請求項29】
前記ポリマー格子構造は、傾斜角が連続的にまたは区分的ステップにおいて変動するロールKベクトル格子を含む、請求項1に記載の導波路ディスプレイ。
【請求項30】
前記ポリマー格子構造は、空間的に変動するピッチを有する格子を含む、請求項1に記載の導波路ディスプレイ。
【請求項31】
前記外界から前記導波路に入る前記光は、外部光源によって提供され、前記導波路の前記外面および/または前記眼に面する表面を通って前記導波路に入る、請求項1に記載の導波路ディスプレイ。
【請求項32】
前記外界から前記導波路に入る前記光は、前記ディスプレイの視認者の解剖学的表面からの反射を含む、請求項1に記載の導波路ディスプレイ。
【請求項33】
前記導波路は2つの基板を含み、前記ポリマー格子構造は、前記2つの基板間に挟持されるか、またはいずれかの基板の外面上に配置される、請求項1に記載の導波路ディスプレイ。
【請求項34】
前記ポリマー格子構造は、少なくとも1つの種類のポリマーおよび少なくとも1つの他の材料の複合体である、請求項1に記載の導波路ディスプレイ。
【請求項35】
前記ポリマー格子構造は、ポリマーおよび少なくとも1つの他の材料の複合体であり、前記ポリマーは、前記ポリマー格子構造の形成後に除去される、請求項1に記載の導波路ディスプレイ。
【請求項36】
前記少なくとも1つの他の材料はナノ粒子を含む、請求項34に記載の導波路ディスプレイ。
【請求項37】
前記少なくとも1つの他の材料は機能化ナノ粒子を含む、請求項1に記載の導波路ディスプレイ。
【請求項38】
前記ポリマー格子構造は光学材料でコーティングされる、請求項1に記載の導波路ディスプレイ。
【請求項39】
前記ポリマー格子構造は、反射性光学材料でコーティングされる、請求項1に記載の導波路ディスプレイ。
【請求項40】
前記ポリマー格子構造に施されるコーティングは、最大2.5の有効屈折率を提供する、請求項1に記載の導波路ディスプレイ。
【請求項41】
前記ポリマー格子構造は第1の材料でコーティングされ、前記コーティングされた格子は、前記第1の材料の屈折率よりも高い屈折率の第2の材料でバックフィルされる、請求項1に記載の導波路ディスプレイ。
【請求項42】
前記ポリマー格子構造は第1の材料でコーティングされ、前記コーティングされた格子は、前記第1の材料の屈折率よりも低い屈折率の第2の材料でバックフィルされる、請求項1に記載の導波路ディスプレイ。
【請求項43】
前記ポリマー格子構造は、前記導波路の前記外面上に配置された第1の格子構造と、前記導波路の前記眼に面する表面上に配置された第2の格子構造とを含む、請求項1に記載の導波路ディスプレイ。
【請求項44】
前記第1の格子構造および前記第2の格子構造は異なる格子周期を有する、請求項43に記載の導波路ディスプレイ。
【請求項45】
導波路ディスプレイからアイグローを低減させるための方法であって、
画像変調光の光源と、導波路と、入力カプラと、ビーム拡大を提供し、前記導波路からアイボックスに向かう光を抽出するための少なくとも1つの格子とを提供するステップであって、前記導波路は、眼に面する表面と、外界に面する外面とを含む、ステップと、
変調深さおよび格子ピッチを含むポリマー格子構造を提供するステップであって、前記変調深さは、前記ポリマー格子構造の少なくとも一部分にわたって前記格子ピッチよりも大きい、ステップと、
画像変調光を前記導波路内の全内部反射経路に方向付け、前記光をビーム拡大し、これを前記アイボックスに向けて抽出するステップと、
前記導波路内を伝搬する光を、前記ポリマー格子構造を用いて、前記外面を通して屈折される光路から離れるように前記外界に方向付けるステップと、
前記外界から前記導波路に入る光、または前記導波路内で生成された迷光を、ポリマー格子構造を用いて、前記外面を通して屈折される光路から離れるように回折させるステップと、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照出願
本出願は、2020年12月21日に出願された米国仮特許出願第63/128,645号、および2020年12月22日に出願された米国仮特許出願第63/129,270号の優先権を主張し、これらの出願の開示は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、一般的に、導波路システムにおけるアイグローの抑制に関する。
【背景技術】
【0003】
導波路は、波を閉じ込め、誘導する(すなわち、波が伝搬し得る空間領域を制限する)能力を伴う構造と称され得る。1つのサブクラスは、電磁波、典型的には、可視スペクトルにおける電磁波を誘導し得る構造である、光導波路を含む。導波路構造は、多数の異なるメカニズムを使用して波の伝搬経路を制御するように設計され得る。例えば、平面導波路は、回折格子を利用し、入射光を回折させ、導波路構造内に結合するように設計され得、それによって、入力結合された光は、全内部反射(TIR)を介して平面構造内で進行し続けることができる。
【0004】
導波路の製造は、導波路内のホログラフィック光学要素の記録を可能にする材料システムの使用を含むことができる。そのような材料の1つのクラスは、光重合性モノマーと、液晶とを含有する混合物である、ポリマー分散液晶(PDLC)混合物を含む。そのような混合物の更なるサブクラスは、ホログラフィックポリマー分散液晶(HPDLC)混合物を含む。体積位相格子等のホログラフィック光学要素は、2つの相互にコヒーレントなレーザビームを用いて材料を照射することによって、そのような液体混合物において記録され得る。記録プロセスの間、モノマーは重合し、混合物は、光重合誘起相分離を受け、クリアなポリマーの領域が点在する、液晶微小液滴が密集する領域を作成する。交互の液晶が豊富な領域および液晶が空乏した領域は、格子の縞面を形成する。一般的に切替可能ブラッグ格子(SBG)と称される、結果として生じる格子は、通常、体積またはブラッグ格子に関連付けられる全ての特性を有するが、回折効率(所望の方向に回折される入射光の割合)の連続範囲にわたって格子を電気的に調整する能力と結びついた、はるかに高い屈折率変調範囲を有する。回折効率の連続範囲は、非回折(クリア)から100%に近い効率の回折に及ぶことができる。
【0005】
上記で説明したもの等の導波路光学系は、幅広いディスプレイおよびセンサ用途について検討され得る。多くの用途では、複数の光学機能をエンコードする1つ以上の格子層を含有する導波路は、様々な導波路アーキテクチャおよび材料システムを用いて実現することができ、拡張現実(AR)および仮想現実(VR)のためのニアアイ(near-eye)ディスプレイ、道路輸送、航空、および軍事用途のためのコンパクトヘッドアップディスプレイ(HUD)およびヘルメットマウントディスプレイまたはヘッドマウントディスプレイ(HMD)、ならびに生体認証およびレーザレーダ(LIDAR)用途のためのセンサにおける新たな革新を可能にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2021/0063634号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2018/0284440号明細書
【特許文献3】国際公開第2022/015878号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
様々な実施形態は、導波路ディスプレイであって、画像変調光の光源と、眼に面する表面および外界に面する外面を有する導波路と、前記光を前記導波路内の全反射内部経路に結合するための入力カプラと、ビーム拡大を提供し、前記導波路からアイボックスに向かう光を抽出するための少なくとも1つの格子と、変調深さおよび格子ピッチを含むポリマー格子構造とを含む、導波路ディスプレイを対象とする。前記変調深さは前記ポリマー格子構造の少なくとも一部分にわたって前記格子ピッチよりも大きい。前記ポリマー格子構造は、前記外界から前記導波路に入る光、または前記導波路内で生成された迷光を、前記外面を通して屈折される光路から離れるように外界へと回折させるように構成される。前記ポリマー格子構造は、前記導波路内の画像変調光の伝搬、および前記アイボックスに向かう前記画像変調光の抽出を実質的に阻害しない。前記導波路内で生成された前記迷光は、格子材料から散乱された光と、ゼロ次回折画像変調光と、前記導波路から前記アイボックスに向かって抽出されない光路に沿って伝搬する画像変調光と、からなる群から選択された少なくとも1つを含む。
【0008】
様々な実施形態において、ポリマー格子構造は、隣接ポリマー領域間のバックフィル材料を更に含む。バックフィル材料は、ポリマー領域の屈折率よりも高いかまたは低い屈折率を有することができる。
【0009】
更なる様々な実施形態において、バックフィル材料は、ポリマー格子構造の隣接部分間の空間の底部における空間を占め、バックフィル材料の上面の上から変調深さまでの空間は空気が占める。
【0010】
更なる様々な実施形態において、バックフィル材料は等方性材料を含む。
【0011】
更なる様々な実施形態において、等方性バックフィル材料は複屈折材料を含む。
【0012】
更なる様々な実施形態において、複屈折材料は液晶材料を含む。
【0013】
更なる様々な実施形態において、ポリマー格子構造の変調深さは、可視光の波長よりも大きい。
【0014】
更なる様々な実施形態において、格子ピッチは、ポリマー格子構造の回折機構の間隔であり、変調深さは、ポリマー格子構造の深さである。
【0015】
更なる様々な実施形態において、ポリマー格子構造の格子ピッチは0.35μm~1μmであり、ポリマー格子構造の変調深さは1μm~10μmである。
【0016】
更なる様々な実施形態において、ポリマー格子構造の変調深さと格子ピッチの間隔との比は、1:1~10:1の範囲内にある。
【0017】
更なる様々な実施形態において、ポリマー格子構造は多重化格子として構成される。
【0018】
更なる様々な実施形態において、ポリマー格子構造の一部分は、導波路からの光を出力結合するように構成される。
【0019】
更なる様々な実施形態において、ポリマー格子構造の一部分はビーム拡大器として構成される。
【0020】
更なる様々な実施形態において、ポリマー格子構造の一部分は、光源から導波路内の全反射内部経路に入る画像変調光を結合するように構成される。
【0021】
更なる様々な実施形態において、ポリマー格子構造の変調深さは、定義されたバランスのS偏光およびP偏光を高効率で入力結合するように構成される。
【0022】
更なる様々な実施形態において、ポリマー格子構造は、交互のポリマー領域およびエアギャップ領域を更に含み、ポリマー領域とエアギャップ領域との間の屈折率差は、1.4~1.9の範囲にある。
【0023】
更なる様々な実施形態において、ポリマー領域と複屈折材料との間の屈折率差は0.01~0.2である。
【0024】
更なる様々な実施形態において、ポリマー格子構造は、2次元格子構造または3次元格子構造を含む。
【0025】
更なる様々な実施形態において、ポリマー格子構造は、ポリマー回折機構と、隣接するポリマー回折機構間の複屈折材料であって、ポリマー回折機構よりも高い屈折率を有する、複屈折材料と、を含む。
【0026】
更なる様々な実施形態において、入力カプラは格子またはプリズムである。
【0027】
更なる様々な実施形態において、ポリマー格子構造の変調深さは、空間的に変動する偏光依存回折効率特性を提供するように導波路にわたって変動する。
【0028】
更なる様々な実施形態において、ポリマー格子構造の変調深さは、空間的に変動する角度依存回折効率特性を提供するように導波路にわたって変動する。
【0029】
更なる様々な実施形態において、空間、角度または偏光回折効率特性のうちの少なくとも1つは、ポリマー格子構造を、特定の屈折率または複屈折性の光学材料でバックフィルすることによって提供され得る。
【0030】
更なる様々な実施形態において、ポリマー格子構造は、ブラッグ格子またはラマン・ナス格子として構成される。
【0031】
更なる様々な実施形態において、ポリマー格子構造は、導波路の外面および/または導波路の眼に面する表面に形成され、入力カプラ、および/またはビーム拡大を提供し、導波路から光を抽出するための少なくとも1つの格子と少なくとも部分的に重なる。
【0032】
更なる様々な実施形態において、ポリマー格子構造は、ブラッグ格子を含む領域、ラマン・ナス格子を含む領域、および格子のない領域を含む。領域は、入力カプラ、およびビーム拡大を提供し、光を抽出するための少なくとも1つの格子を少なくとも部分的に覆う。
【0033】
更なる様々な実施形態において、導波路ディスプレイは、ポリマー格子構造の格子を含まない領域に重なる光制御層を更に含む。
【0034】
更なる様々な実施形態において、光制御層は、偏光回転、偏光選択的吸収、偏光選択的透過、偏光選択的回折、角度選択的透過、角度選択的吸収、反射防止、および定義されたスペクトル帯域幅内での透過からなる群から選択された少なくとも1つを提供する。
【0035】
更なる様々な実施形態において、ポリマー格子構造は、傾斜角が連続的にまたは区分的ステップにおいて変動する、ロールKベクトル格子を含む。
【0036】
更なる様々な実施形態において、ポリマー格子構造は、空間的に変動するピッチを有する格子を含む。
【0037】
更なる様々な実施形態において、外界から導波路に入る光は、外部光源によって提供され、導波路の外面および/または眼に面する表面を通って導波路に入る。
【0038】
更なる様々な実施形態において、外界から導波路に入る光は、ディスプレイの視認者の解剖学的表面からの反射を含む。
【0039】
更なる様々な実施形態において、導波路は2つの基板を含み、ポリマー格子構造は、2つの基板間に挟持されるか、またはいずれかの基板の外面上に配置される。
【0040】
更なる様々な実施形態において、ポリマー格子構造は、少なくとも1つの種類のポリマーおよび少なくとも1つの他の材料の複合体である。
【0041】
更なる様々な実施形態において、ポリマー格子構造は、ポリマーおよび少なくとも1つの他の材料の複合体であり、ポリマーは、ポリマー格子構造の形成後に除去される。
【0042】
更なる様々な実施形態において、少なくとも1つの他の材料はナノ粒子を含む。
【0043】
更なる様々な実施形態において、少なくとも1つの他の材料は機能化ナノ粒子を含む。
【0044】
更なる様々な実施形態において、ポリマー格子構造は光学材料でコーティングされる。
【0045】
更なる様々な実施形態において、ポリマー格子構造は反射性光学材料でコーティングされる。
【0046】
更なる様々な実施形態において、ポリマー格子構造に施されるコーティングは、最大2.5の有効屈折率を提供する。
【0047】
更なる様々な実施形態において、ポリマー格子構造は第1の材料でコーティングされ、コーティングされた格子は、第1の材料の屈折率よりも高い屈折率の第2の材料でバックフィルされる。
【0048】
更なる様々な実施形態において、ポリマー格子構造は第1の材料でコーティングされ、コーティングされた格子は、第1の材料の屈折率よりも低い屈折率の第2の材料でバックフィルされる。
【0049】
更なる様々な実施形態において、ポリマー格子構造は、導波路の外面上に配置された第1の格子構造と、導波路の眼に面する表面上に配置された第2の格子構造とを含む。
【0050】
更なる様々な実施形態において、第1の格子構造および第2の格子構造は異なる格子周期を有する。
【0051】
様々な実施形態は、導波路ディスプレイからアイグローを低減させるための方法であって、
画像変調光の光源と、導波路と、入力カプラと、ビーム拡大を提供し、導波路からアイボックスに向かう光を抽出するための少なくとも1つの格子とを提供するステップであって、ここで、導波路は、眼に面する表面および外界に面する外面を含む、ステップと、
変調深さおよび格子ピッチを含むポリマー格子構造を提供するステップであって、ここで、変調深さは、ポリマー格子構造の少なくとも一部分にわたって格子ピッチよりも大きい、ステップと、
画像変調光を導波路内の全内部反射経路に方向付け、光をビーム拡大し、これをアイボックスに向けて抽出するステップと、
導波路内を伝搬する光を、ポリマー格子構造を用いて、外面を通して屈折される光路から離れるように外界に方向付けるステップと、
外界から導波路に入る光、または導波路内で生成された迷光を、ポリマー格子構造を用いて、外面を通して屈折される光路から離れるように回折させるステップと、
を含む、方法を更に対象とする。
【0052】
様々な実施形態は、導波路ベースのディスプレイデバイスであって、
・入力結合光学要素および出力結合光学要素を含む導波路であって、入力結合光学要素は、画像変調光を入力結合するように構成され、出力結合光学要素は、画像変調光をユーザに向けて出力結合するように構成され、導波路は、外面と、外面の反対側の内面とを含み、内面は外面よりもユーザに近い、導波路と、
・ユーザの反対側の導波路の外面の上の、部分的遮光層と、
を備え、
・部分的遮光層は、導波路の外面を出るアイグロー光が導波路の外面の外の環境に入ることを防ぐように構成される、
導波路ベースのディスプレイデバイスを更に対象とする。
【0053】
様々な実施形態において、アイグロー光は、ユーザから離れるように外面の外に方向付けられた光を含む。
【0054】
更なる様々な実施形態において、アイグロー光は出力結合光学要素、入力結合光学要素、および/または内面によって反射される光である。
【0055】
更なる様々な実施形態において、導波路は、入力結合された光が、内面と外面との間で全内部反射(TIR)するように方向付けられるようにする。
【0056】
更なる様々な実施形態において、部分的遮光層は、可視光スペクトルの一部分における光を吸収する。
【0057】
更なる様々な実施形態において、部分的遮光層は、狭帯域染料吸収剤層を含む。
【0058】
更なる様々な実施形態において、狭帯域染料吸収剤層は、透明マトリックス内に懸濁された光吸収染料を含む。
【0059】
更に様々な実施形態において、部分的遮光層は、メタ材料吸収層を含む。
【0060】
更なる様々な実施形態において、メタ材料収剤層は、メタ材料内に形成された吸収剤を含む。
【0061】
更なる様々な実施形態において、部分的遮光層は、可視光スペクトルの一部分における光をユーザに向けて偏向させる。
【0062】
更なる様々な実施形態において、部分的遮光層は、誘電体またはダイクロイック反射体を含む。
【0063】
更なる様々な実施形態において、部分的遮光層は、可視光スペクトルの一部分における光を非可視放射に変換する。
【0064】
更に様々な実施形態において、部分的遮光層は、量子ドットまたは蛍光体を含む。
【0065】
更なる様々な実施形態において、部分的遮光層は、可視光スペクトルの一部分における光を、環境に入らない経路内に回折させる。
【0066】
更なる様々な実施形態において、部分的遮光層は、反射性または透過性回折構造を含む。
【0067】
更なる様々な実施形態において、部分的遮光層は、反射性格子層を含む。
【0068】
更なる様々な実施形態において、反射性格子層は、光を光吸収要素に方向付けるように構成される。
【0069】
更なる様々な実施形態において、反射性格子層は、2つの導波路基板間に配置される。
【0070】
更なる様々な実施形態において、反射性格子層は、ホログラフィック記録格子を含む。
【0071】
更なる様々な実施形態において、部分的遮光層は、複数の重複回折構造を含み、各構造は、アイグロー光の特有の角度の帯域幅を回折させ、これを光吸収要素上に回折させるように構成される。
【0072】
更なる様々な実施形態において、部分的遮光層は、複数の多重回折構造を含み、各多重回折構造は、アイグロー光の特有の角度の帯域幅を光吸収剤上に回折させるように構成される。
【0073】
更なる様々な実施形態において、部分的遮光層は、導波路上に直接コーティングされる。
【0074】
更なる様々な実施形態において、部分的遮光層は、導波路上に配設された基板上にコーティングされる。
【0075】
更なる様々な実施形態において、基板と導波路との間に間隙を形成するように、基板と導波路との間にスペーサが配置される。
【0076】
更なる様々な実施形態において、間隙はエアギャップである。
【0077】
更なる様々な実施形態において、基板は保護層を含む。
【0078】
更なる様々な実施形態において、ディスプレイデバイスは、導波路の下に配置された別の導波路を更に含む。
【0079】
更なる様々な実施形態において、ディスプレイデバイスは、導波路と他の導波路との間に間隙を形成するように、導波路と他の導波路との間に配設されたスペーサを更に含む。
【0080】
更なる様々な実施形態において、間隙はエアギャップを含む。
【0081】
更なる様々な実施形態において、ディスプレイデバイスは、別の部分的遮光層を更に含み、ここで、他の導波路は、導波路と異なる光の波長を表示するように構成され、ここで、部分的遮光層は、導波路が表示するように構成される光の波長に対応する光の波長を遮断するように構成され、ここで、他の部分的遮光層は、他の導波路が表示するように構成される光の波長に対応する光の波長を遮断するように構成される。
【0082】
更なる様々な実施形態において、他の導波路は、導波路と異なる光の波長を表示するように構成され、ここで、部分的遮光層は、導波路および他の導波路の光の波長に対応する光の波長を遮断するように構成される。
【0083】
更なる様々な実施形態において、導波路は第1の導波路であり、ディスプレイデバイスは、第2の導波路および第3の導波路を更に含む。
【0084】
更なる様々な実施形態において、第1の導波路、第2の導波路および第3の導波路は各々、光の異なる波長を表示するように構成される。
【0085】
更なる様々な実施形態において、部分的遮光層は、第1の部分的遮光層であり、ディスプレイデバイスは、第2の部分的遮光層および第3の部分的遮光層を更に含み、ここで、第1の部分的遮光層は、第1の導波路が表示するように構成される光の波長に対応する光の波長を遮断するように構成され、ここで、第2の部分的遮光層は、第2の導波路が表示するように構成される光の波長に対応する光の波長を遮断するように構成され、ここで、第3の部分的遮光層は、第3の導波路が表示するように構成される光の波長に対応する光の波長を遮断するように構成される。
【0086】
更なる様々な実施形態において、第2の導波路は第1の導波路と第2の導波路との間に配設される。
【0087】
更なる様々な実施形態において、第2の部分的遮光層は、第2の導波路の上面上に形成される。
【0088】
更なる様々な実施形態において、第2の部分的遮光層は、第1の導波路の上に配設される基板上に形成される。
【0089】
更なる様々な実施形態において、ディスプレイデバイスは、基板と第1の導波路との間にエアギャップを形成するように、基板と第1の導波路との間に配設されたスペーサを更に含む。
【0090】
更なる様々な実施形態において、基板は保護層を含む。
【0091】
更なる様々な実施形態において、部分的遮光層は、出力結合光学要素と重なるが、入力結合光学要素とは重ならない。
【0092】
更に、様々な実施形態は、拡張現実または複合現実(mixed reality)の頭部装着ディスプレイデバイスであって、本開示全体を通じて説明されるディスプレイデバイスと、入力結合光学要素に向けて画像含有光を投影するように構成されたプロジェクタとを含む、拡張現実または複合現実の頭部装着ディスプレイデバイスを対象とする。
【0093】
更なる様々な実施形態において、部分的遮光層は、液晶ポリマーまたはコレステリック液晶を含む。
【0094】
更なる様々な実施形態において、部分的遮光層は、外部結合光学要素と平行な主kベクトルと位置合わせされた直線偏光子を含む。
【0095】
更なる様々な実施形態において、部分的遮光層は、光が位相スクランブラによって導波路に戻るよう方向づけられ、出力結合光学要素によってユーザに向かって出力結合された画像光と位相が不一致となるようにする、位相スクランブラを含む。
【0096】
更なる様々な実施形態において、部分的遮光層は、マイクロルーバ膜を含む。
【0097】
更に、様々な実施形態は、アイグロー光を抑制する方法であって、前記方法は、
・以下のものを提供するステップと、:
○画像変調光の光源
○ユーザの眼に近接した内側反射面と、内側反射面の上方に配置された外側反射面と、を有する導波路であって、前記導波路は、入力結合光学要素および出力結合光学要素を支持する、導波路、および
○外側反射面の上方の部分的遮光層
・画像変調光の光源からの画像変調光を導波路に結合するステップと、
・出力結合光学要素を用いて、視認のための画像変調光を、導波路からユーザに向けて抽出するステップと、
・部分的遮光層を用いて、オフブラッグ画像変調光を、外面を介してアイグロー光として導波路を出ないように遮断するステップと、
を含む、方法を対象とする。
【0098】
様々な実施形態において、オフブラッグ画像変調光を遮断するステップは、オフブラッグ画像変調光を吸収するステップを含む。
【0099】
更なる様々な実施形態において、オフブラッグ画像変調光を遮断するステップは、オフブラッグ画像変調光をユーザに向けて偏向させるステップを含む。
【0100】
更なる様々な実施形態において、オフブラッグ画像変調光を遮断するステップは、オフブラッグ画像変調光を非可視放射に変換するステップを含む。
【0101】
更なる様々な実施形態において、オフブラッグ画像変調光を遮断するステップは、オフブラッグ画像変調光を環境に入らない経路内に回折させるステップを含む。
【0102】
更なる様々な実施形態において、方法は、回折されたオフブラッグ画像変調光を吸収するステップを更に含む。
【0103】
更なる様々な実施形態において、方法は、回折されたオフブラッグ画像変調光を減衰させるステップを更に含む。
【0104】
本発明の例示的実施形態として提示され、本発明の範囲の完全な列挙として解釈されるべきではない以下の図を参照して、説明はより完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0105】
図1A】本発明の実施形態による、オフブラッグ相互作用の産物としてのアイグロー現象を概念的に示す。
図1B】本発明の実施形態による、フレネル反射の産物としてのアイグロー現象を概念的に示す。
図2】本発明の実施形態による、アイグロー抑制層として回折要素を組み込む導波路ディスプレイを示す。
図3A】本発明の実施形態による、アイグロー抑制層中に回折要素を組み込む導波路ディスプレイを示す。
図3B】本発明の実施形態による、透過回折要素を含むアイグロー抑制層の例を示す。
図3C】本発明の実施形態による、反射回折要素を含むアイグロー抑制層の例を示す。
図4】本発明の実施形態による、アイグロー抑制構造として反射格子を組み込む導波路ディスプレイを概略的に示す。
図5】本発明の実施形態による、アイグロー抑制のための表面レリーフ格子を実装する導波路ディスプレイを示す。
図6】本発明の実施形態による、アイグローを抑制するために分離した基板上に配設された反射格子を示す。
図7】本発明の実施形態による、ダイクロイック反射体コーティングを含む導波路ディスプレイを示す。
図8】本発明の実施形態による、3つの異なる導波路を含む導波路ベースのディスプレイの構成を示す。
図9】本発明の実施形態による、3つの異なる導波路を含む導波路ベースのディスプレイの構成を示す。
図10】本発明の実施形態による、3つの異なる導波路を含む導波路ベースのディスプレイの構成を示す。
図11A】本発明の実施形態による、ダイクロイックフィルタを含む導波路ベースのディスプレイの断面図を示す。
図11B図11Aに示した導波路ベースのディスプレイの概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0106】
実施形態を説明する目的のために、光学設計および視覚ディスプレイの当業者に既知の光学技術のいくつかの周知の特徴は、本発明の基本的原理を不明瞭にしないために、省略または簡略化されている。別様に記載されない限り、光線またはビーム方向に関連する用語「軸上」は、本発明に関連して説明される光学コンポーネントの表面に対して法線方向の軸に平行な伝搬を指す。以下の説明では、光(light)、光線(ray)、ビーム(beam)、および方向(direction)という用語は、同義的に、かつ相互に関連付けて用いられ、直線軌道に沿った電磁放射の伝搬の方向を示し得る。光(light)および照明(illumination)という用語は、電磁スペクトルの可視および赤外線帯域に関連して使用されてもよい。以下の説明の一部は、光学設計の当業者によって一般的に採用される専門用語を使用して提示されることになる。本明細書において用いられるとき、格子という用語は、いくつかの実施形態では、格子のセットから構成される格子を包含してもよい。例証目的のために、図面は、別様に述べられない限り、縮尺通りに描かれないことを理解されたい。
【0107】
導波路ベースのディスプレイにおいて、光は、ユーザに向かうように、およびユーザから離れるようにも回折され得る。アイグロー(eye glow)は、ディスプレイ導波路の前面(例えば、眼から最も離れた導波路面)から生じる望ましくない光や、眼の反射面、導波路反射面、および格子の表面から(漏れ、迷光回折、散乱および他の効果に起因して)発生する望ましくない光を含む場合がある。回折されて離れる光は、一般的に「アイグロー」と呼ばれ、セキュリティ、プライバシおよび社会的受容可能性の義務を提起する。「アイグロー」は、ディスプレイからの光の漏れによって生じる、ユーザの眼がアイディスプレイを通じて輝くかまたは光るように見える現象を指す場合があり、これにより、一部の人にとっては不快となり得る美的特徴を生じさせる。ファッションの意味における社会的受容可能性に関する懸念事項に加えて、アイグローは、アイグローに十分な明瞭性が存在する場合、ユーザを見ている視認者が、ユーザのみに向け意図された投影画像を見ることができる場合があるという異なる課題を提示し得る。したがって、アイグローは、多くのユーザにとって、重大なセキュリティ懸念事項を課し得る。これらに限定されるものではないが、フレネル反射およびオフブラッグ回折を含む、ニアアイディスプレイにおけるアイグローの多くの発生源が存在する。これは、全ての回折導波路ソリューション(表面レリーフ格子、ボリュームブラッグ格子等)およびシースルーを利用する場合がある光コンバイナ法にとって課題となり得る。望ましくないアイグロー光を遮断することに加えて、導波路は、観察者が現実世界を依然として見ることを可能にする高い透過性を維持することができる。更に、アイコンタクトの必要性は、アイグロー光を遮断しながらも高度に透明な導波路を推進する。アイグロー光の抑制は、全ての導波路および光コンバイナ拡張現実または複合現実ウェアラブルデバイスにとって選択的光遮断技法であり得る。アイグロー抑制は、自動車ヘッドアップディスプレイまたは航空に応用されたヘッドアップディスプレイ等の導波路ベースのヘッドアップディスプレイにも適用され得る。
【0108】
導波路ディスプレイからアイグローを消去するとき、アイボックス内への画像光伝搬を最大にするように導波路格子を構成することと、導波路の前面を通して屈折され得る経路から離れるように任意の迷光を方向付けすることとのバランスをとることが有利である。ここで、迷光は、回折効率、ならびに格子材料および格子不完全性により生じるヘイズに起因した、アイボックス内に回折されない任意の画像光を含むことができる。導波路の外面から出る迷光は、アイグローに寄与し得る。多くの場合、迷光の少なくともいくらかは、導波路の内面(ニアアイ面)を介して導波路から出得る。内面からの光は、ユーザの顔から散乱する場合があり、これにより、これが導波路の前面を通って屈折される場合、ある程度のアイグローをもたらされる場合がある。迷光がアイグローとして出るために、迷光は臨界角よりも小さい角度で導波路の外面にぶつかり得る。多くの場合、そのような光がとる光路は、アイボックスに向かって伝搬する画像光に対する偏光回転を有し得る。多くの実施形態において、アイグロー光は、格子領域の周りで高集光を有する場合があり、その中では、複数のビーム格子相互作用の結果として、例えば折り曲げ格子および二重相互作用格子の場合のように、望ましくない光抽出が生じ得る。
【0109】
開示されるアイグロー抑制システムは、アイボックスに向かう画像光の伝搬を支援しながら、または乱さないようにしながら、迷光を前面から逸らすことが可能であるという観点で利点を提供することができる1つ以上のポリマー格子構造を含むことができる。多くの実施形態において、ポリマー格子構造は、変調深さおよび格子ピッチを有するブラッグ格子として構成することができ、ここで、変調深さは、ポリマー格子構造の少なくとも一部分にわたって格子ピッチよりも大きい。いくつかの実施形態では、ポリマー格子構造は、ラマン・ナス回折レジームにおいて作用するラマン・ナス格子として構成され得る。ラマン・ナス格子は、ポリマー格子構造の少なくとも一部分にわたって、格子ピッチ未満の変調深さを有することができる。ポリマー格子構造の変調深さは、定義されたバランスのS偏光およびP偏光を高効率で入力結合させるように構成することができる。
【0110】
多くの実施形態において、ポリマー格子構造は、導波路の指定された部分にわたるブラッグ格子の特性、および導波路の他の部分にわたるラマン・ナス格子の特性を有することができる。多くの実施形態において、ポリマー格子構造は、アイグロー抑制のために、完全にブラッグレジーム内で、または完全にラマン・ナスレジーム内で機能的に動作することができる。高回折効率および偏光選択性が有利である場合、ブラッグ格子を用いることができる。ブラッグ格子は、折り曲げ格子領域に重なる場合があり、折り曲げ格子領域は多くの場合、偏光回転に関連付けられる。ラマン・ナス格子は、例えば、導波路の縁部の周りに配設された吸収体または他の種類の光トラッピング機構に向けて迷光を方向付けるために、大きな角度における動作が有益である場合に有利であり得る。
【0111】
本明細書に記載の導波路アーキテクチャは、用途に応じて適宜別個にまたは併せて用いられ得る多岐にわたる異なる方法を用いてアイグローを軽減または抑制することができる。ここで図面を参照すると、アイグローの問題をより良好に示すために、本発明の実施形態による導波路ディスプレイにおけるアイグローの発生源を示す図が図1Aに概念的に示されている。導波路100は、2つの基板111、112間に挟持された1つ以上のホログラフィック格子を含む格子層110を含む。
【0112】
導波路100のエリア120は、導波路ディスプレイの意図される動作を示す。多くの実施形態において、ホログラフィック格子は、導波路ディスプレイの眼の側に向けてブラッグ回折下でビームを回折させるように設計される。示されているように、導波路100内でTIR経路を進行するビーム122は、格子層110内の格子との相互作用時に、ホログラフィック格子に対し所定の角度θ2で導波路100の眼の側に向かって回折され、視認者の眼113まで通過する。いくつかの実施形態では、光は、眼の側に向かって、および眼の側から離れる方にも回折され得る。回折されて離れる光は、一般的に「アイグロー」と呼ばれ、セキュリティ、プライバシおよび社会的受容可能性の義務を提起する。導波路100のエリア130は、多くの導波路ディスプレイにおけるアイグローの実質的な発生源であるオフブラッグ相互作用を示す。入射ビーム132は、格子層110の格子とのオフブラッグ相互作用に起因して弱く回折され、これにより、ビーム132の一部分が、所定の角度θ1でアイグロービーム134として回折され、このアイグロービーム134は導波路100の眼の側の反対側(または環境側、すなわち出力側の反対側)まで通過する。このアイグロービームは、外側の観察者から見ると、アイグローとして見え得る。「眼の側」は、本明細書において、意図される屈折方向を論じるために用いられるが、オフブラッグ相互作用が、眼の上に装着されるように設計されていない光学系に対し課題を課す可能性があり、したがって本明細書に記載のアーキテクチャは、類似の課題を被る任意の光学系に容易に適用され得ることは容易に理解され得る。例えば、センサにおいて、オフブラッグ光路は、センサの信号対雑音比を低減し得る迷光路を結果として生じ得る。アイグローは、赤外線導波路についても課題となり得る。例えば、アイトラッカにおけるオフブラッグ経路により、検出可能な赤外線放射が結果として生じ得る。
【0113】
アイグロー現象および意図される動作は、導波路100の別個の位置において生じるものとして示されているが、アイグロー現象および意図される動作は、実際には、デバイスのアーキテクチャに依拠して、導波路ディスプレイ全体にわたって同時に生じ得ることを理解されたい。更に、図1Aにはアイグローに対する重大な寄与要因が示されているが、他の要因もアイグローに寄与し得ることが企図される。例えば、導波路ディスプレイの眼の側にある表面界面でのフレネル反射の結果としてアイグローが生じる可能性もある。場合によっては、ユーザの眼の表面において発生する場合がある散乱、または導波路に入り、導波路から回折されて出る太陽光照明もアイグローに寄与し得る。
【0114】
本発明の実施形態によるアイグローを発生させる反射の例が図1Bに概念的に示されている。示されているように、ユーザの眼に向けて回折されたビームは、表面界面において後方に反射される部分を有する可能性があり、これはフレネル反射を表す。反射ビーム140aは導波路を通って進行し、導波路の環境側でアイグロービームとして出る場合がある。反射ビーム140bは、格子層110によって生成される場合もある。図1Aおよび図1Bは、一般的な光線経路および相互作用を示し、導波光学系の性質を完全には示さない場合があることに注意されたい。例えば、非法線方向の角度で導波路を出入りする光線は、導波路表面での角度における屈折変化を結果として生じる可能性がある。アイグローの異なる発生源のこの理解を用いて、異なる提案されるアイグロー抑制構造が以下で更に詳細に説明される。
【0115】
[アイグロー抑制構造]
本発明の様々な実施形態によるアイグローを抑制するためのアーキテクチャは、アイグロービームを反射させ、および/または方向付けなおすことによってアイグローの原因を軽減することを試みる。アイグロー抑制構造は、同じディスプレイシステムにおいて複数回導入される可能性があり、その特定の構造は特定のシステムに基づき得る。例えば、(例えば異なる波長および/または角度帯域について)複数の異なる導波路を用いるシステムにおいて、全体システムの内に複数のアイグロー抑制構造が含まれ得る。多数の実施形態において、複数の導波路からのアイグロービームを軽減する単一のアイグロー抑制構造が含まれ得る。望ましくないアイグロー光を遮断することに加えて、導波路は、ユーザが現実世界を見ることを可能にする高い透過性を有する。このため、アイグロー光を同時に遮断しながら、高度に透明な導波路が有利である。アイグロー光を抑制することは、全ての導波路および光コンバイナAR/XRウェアラブルにとって選択的な遮光技法となり得る。
【0116】
多くの実施形態において、導波路ディスプレイ内のアイグローの大きな部分を抑制するために、少なくとも1つの反射格子等の回折要素が実装され得る。多層化導波路ディスプレイシステムにおいて、そのような反射格子のうちの少なくとも1つを有する格子層は、導波路層ごとに実装され得る。反射格子は、多くの異なる方式で実装され得る。いくつかの実施形態では、反射格子は、二次導波路内の格子層においてホログラフィック格子として実装される。この二次反射導波路は、ベース導波路に隣接して配設され得る。そのような構成において、2つの導波路の基板は、その内部で光が伝搬することができる単一のTIR構造を提供するように屈折率を整合され得る。いくつかの実施形態において、反射導波路およびベース導波路は、間にエアギャップを有して構成され得る。多数の実施形態において、反射格子は、環境側に面し、ベース導波路の格子層の反対側の基板に隣接して配設された格子層において実装される。そのような場合、導波路ディスプレイは、2つの格子層を交互にさしはさんだ3つの基板層を含み、単一のTIR構造を形成することができる。反射格子は、表面レリーフ格子としても実装され得る。例えば、表面反射格子は、導波路の環境側の表面上に実装され得る。
【0117】
上記で説明したように、多層化導波路ディスプレイにおける各導波路層は、アイグローを抑制するための反射格子または反射格子層を含むことができる。用途に応じて、反射格子は、所定の波長および/または角度帯域を反射するように構成され得る。例えば、三層化RGB導波路ディスプレイシステムにおいて、R層、G層およびB層の各々は、層に対応するスペクトル波長帯域を反射するように構成されたそれぞれの反射格子または反射格子層を用いて実装され得る(すなわち、赤色光を反射するように設計された反射格子は、導波路ディスプレイのR層のために実装され得る)。いくつかの実施形態において、反射格子は多重化され得る。多数の実施形態において、反射格子は、導波路ディスプレイのすくい角に一致する格子ベクトルを用いて記録または形成することができる。
【0118】
反射格子に加えて、またはその代わりに、フィルタを利用してアイグローを抑制することができる。例えば、導波路の環境側の表面に、ダイクロイック反射体または誘電体ミラー(例えば誘電体反射体)を施し、実施することができる。上記で説明した構成に類似して、多層化導波路ディスプレイシステムは、導波路層ごとにダイクロイック反射体を含むことができ、ここで、各ダイクロイック反射体は、個々の導波路層に対応する特定の波長および/または角度帯域を反射するように構成される。多くの実施形態において、導波路ディスプレイは追加の保護層を含む。そのような場合、実施のために望ましいダイクロイック反射体のうちの1つを、保護層上に組み込むことができる。
【0119】
アイグローを抑制するための別の方法は、量子ドットの使用を含み、その構造は、第1の波長の光を吸収し、第2の波長の光を発することができる。多くの実施形態において、量子ドットは、導波路の環境側に隣接した基板内に組み込まれることができる。量子ドットは、組み込まれる特定の導波路層に対応する光の特定の波長を吸収するように構成され得る。例えば、赤色光源に対応するある特定の赤色の波長を吸収するように構成された量子ドットは、赤色導波路層の基板に組み込むことができる。量子ドットは、所定の波長帯域(例えば赤外線)までシフトされた光を発し、アイグローの抑制を可能にするように更に構成することができる。
【0120】
容易に理解され得るように、アイグローを抑制するためのいくつかの方法および構造は、本発明の様々な実施形態に従って適宜実施され得る。実施される特定の構成は、用途に依拠し得る。多くの場合、利用される方法および構造の選択は、これらに限定されるものではないが、シースルー透過、抑制性能、コスト等を含むいくつかの要因のバランスを含み得る。更に、上述したように、眼の側の界面と相互作用する光線は、フレネル反射に起因して反射され、結果としてアイグローをもたらす可能性がある。多くの実施形態において、フレネル反射に起因したアイグロー光線は、導波路の眼の側の表面上の反射防止コーティングを用いて大部分が(または完全に)軽減され得る。次に、光学的構造、アイグロー抑制構造および関連する実施方法および応用方法が以下で論じられる。
【0121】
[光導波路および格子構造]
導波路に記録された光学的構造は、これらに限定されるものではないが、回折格子等の多くの異なる種類の光学要素を含むことができる。格子は、これらに限定されるものではないが、光を結合し、光を方向付け、光の透過を防ぐことを含む、様々な光学的機能を行うように実装され得る。多くの実施形態において、格子は、導波路の外面に存在する表面レリーフ格子である。他の実施形態において、実装される格子は、周期的屈折率変調を有する構造であるブラッグ格子である(体積型格子とも呼ばれる)。ブラッグ格子は、多岐にわたる異なる方法を用いて製造され得る。1つのプロセスは、ホログラフィックフォトポリマー材料を干渉露光して周期的構造を形成することを含む。ブラッグ格子は高い効率を有することができ、僅かな光のみがより高い次数に回折される。回折されたゼロ次数の光の相対量は、格子の屈折率変調、すなわち、大きな瞳孔にわたって光を抽出するための損失の大きい導波路格子を作製するのに用いることができる特性を制御することによって変動させることができる。
【0122】
ホログラフィック導波路デバイスにおいて用いられるブラッグ格子の1つのクラスは、切替可能ブラッグ格子(SBG)である。SBGは、まず、基板間に光重合性モノマーおよび液晶材料の混合物の薄膜を配置することによって製造され得る。基板は、ガラスおよびプラスチック等の様々な種類の材料から作製され得る。多くの場合、基板は平行構成にある。他の実施形態において、基板は楔形を形成する。一方または両方の基板が、膜にわたって電界を印加するための、通常透明な酸化スズ膜である電極を支持することができる。SBGにおける格子構造は、空間的に周期的な強度変調を有する干渉露光を用いて、光重合誘起相分離を通じて液体材料(多くの場合、シロップと呼ばれる)において記録されることができる。これらに限定されるものではないが、照射強度、混合物内の材料の成分体積分率、および露光温度の制御等の要因により、結果として得られる格子モルフォロジおよび性能が決定され得る。容易に理解され得るように、所与の用途の特定の要件に依拠して多岐にわたる材料および混合物が用いられ得る。多くの実施形態において、HPDLC材料が用いられる。記録プロセス中、モノマーが重合し、混合物は相分離を受ける。LC分子は、凝集し、光学波長のスケールでポリマーネットワーク内に周期的に分散した離散液滴または合体液滴を形成する。交互の液晶が豊富な領域および液晶が空乏した領域は、格子の縞面を形成し、これは、液滴中のLC分子の配向秩序からもたらされる強力な光学偏光を伴うブラッグ回折を生成することができる。
【0123】
結果として生じる体積位相格子は、非常に高い回折効率を呈することができ、これは、膜にわたって印加される電場の大きさによって制御され得る。電場が透明電極を介して格子に印加されると、LC液滴の自然な配向は、変化し、縞の屈折率変調を低下させ、ホログラム回折効率を非常に低いレベルに低下させ得る。典型的には、電極は、印加される電場が基板に垂直になるように構成される。多数の実施形態において、電極は、酸化インジウムスズ(ITO)から製造される。電場が印加されないオフ状態では、液晶の異常軸は、一般に、縞に対して法線方向に整列する。格子は、したがって、P偏光に関して高い屈折率変調および高い回折効率を呈する。電場がHPDLCに印加されると、格子は、オン状態に切り替わり、液晶分子の異常軸は、印加された電場に平行に、したがって、基板に垂直に整列する。オン状態では、格子は、S偏光およびP偏光の両方に関して、より低い屈折率変調およびより低い回折効率を呈する。したがって、格子領域は、もはや光を回折させない。各格子領域は、例えば、HPDLCデバイスの機能によるピクセルマトリックス等の多数の格子要素に分割され得る。典型的には、1つの基板表面上の電極は、均一かつ連続的である一方、対向する基板表面上の電極は、多数の選択的に切替可能格子要素に従ってパターン化される。
【0124】
典型的には、SBG要素は、30マイクロ秒でクリアに切り替えられ、オンに切り替えるための緩和時間は、より長い。デバイスの回折効率は、連続範囲にわたって、印加される電圧を用いて調節され得る。多くの場合に、デバイスは、電圧が印加されないと、100%に近い効率を呈し、十分に高い電圧が印加されると、本質的にゼロ効率を呈する。ある特定の種類のHPDLCデバイスでは、LC配向を制御するために磁場が用いられ得る。いくつかのHPDLC用途では、ポリマーからのLC材料の相分離は、認識可能な液滴構造がもたらされない程度まで達成され得る。SBGはまた、パッシブ格子として用いられ得る。このモードでは、その主要な利益は、一意に特有の屈折率変調である。SBGは、自由空間用途のための透過または反射格子を提供するために用いられ得る。SBGは、HPDLCが導波路コアまたは導波路に近接するエバネッセント結合層のいずれかを形成する導波路デバイスとして実装され得る。HPDLCセルを形成するために用いられる基板は、全内部反射(TIR)光誘導構造を提供する。切替可能格子がTIR条件を超える角度において光を回折させると、光は、SBGから出て結合され得る。
【0125】
いくつかの実施形態では、LCは、排出ブラッグ格子(EBG)を提供するために、SBGから抽出または排出され得る。EBGは、表面レリーフ格子(SRG)構造の深さ(表面エッチングおよびSRGを製作するために一般的に使用される他の従来のプロセスを使用して実際に達成可能なものよりもはるかに大きい)により、ブラッグ格子と非常に類似した特性を有するSRGとして特徴付けられ得る。LCは、これらに限定されるものではないが、イソプロピルアルコールおよび溶媒でのフラッシングを含む様々な異なる方法を使用して抽出され得る。多くの実施形態では、SBGの透明基板のうちの1つは除去され、LCは抽出される。更なる実施形態では、除去された基板は交換される。SRGは、より高い屈折率の材料またはより低い屈折率の材料で少なくとも部分的にバックフィルされ得る。そのような格子は、様々な導波路用途に合わせるために、効率、角度/スペクトル応答、偏光、および他の特性を適合させるためのスコープを提供する。EBGおよびEBGを製造するための方法の例は、「Evacuating Bragg Gratings and Methods of Manufacturing」と題する2020年8月28日に出願された特許文献1において論じられ、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0126】
本発明の様々な実施形態による導波路は、特定の目的および機能のために設計された様々な格子構成を含むことができる。多くの実施形態では、導波路は、コリメーティング光学系の射出瞳を効果的に拡大することによって、レンズサイズを小さくしながらアイボックスサイズを保持することが可能な格子構成を実装するように設計される。射出瞳は、仮想口径として定義することができ、前記仮想口径を通過する光線のみがユーザの眼に入ることができる。いくつかの実施形態では、導波路は、光源に光学的に結合された入力格子と、第1の方向のビーム拡大を提供するための折り曲げ格子と、典型的には第1の方向に直交する第2の方向にビーム拡大を提供し、アイボックスに向かうビーム抽出を提供するための出力格子と、を含む。容易に理解され得るように、格子構成実装導波路アーキテクチャは、所与の用途の特定の要件に依拠し得る。いくつかの実施形態では、格子構成は、複数の折り曲げ格子を含む。いくつかの実施形態では、格子構成は、入力格子と、ビーム拡大およびビーム抽出を同時に実行するための第2の格子とを含む。第2の格子は、視野の異なる部分を伝播するために、別個の重なっている格子層に配列されるか、または単一の格子層に多重化される、異なる処方の格子を含むことができる。更に、様々な種類の格子および導波路アーキテクチャも利用され得る。
【0127】
いくつかの実施形態では、各層内の格子は、異なるスペクトルおよび/または角度応答を有するように設計されている。例えば、多くの実施形態では、異なる格子層にわたる異なる格子は、スペクトル帯域幅を増加させるために重ねられるか、または多重化されている。いくつかの実施形態では、フルカラー導波路は、各々が異なるスペクトル帯域(赤色、緑色、および青色)で動作するように設計された3つの格子層を用いて実装されている。他の実施形態では、フルカラー導波路は、2つの格子層、赤色-緑色格子層および緑色-青色格子層を用いて実装されている。容易に理解され得るように、そのような技術は、導波路の角度帯域幅動作を増加させるために同様に実装され得る。異なる格子層にわたる格子の多重化に加えて、単一の格子層内で複数の格子が多重化されることができ、すなわち、複数の格子は、同じ体積内に重ね合わせられることができる。いくつかの実施形態では、導波路は、同じ体積内で多重化された2つ以上の格子処方を有する少なくとも1つの格子層を含む。更なる実施形態では、導波路は、2つの格子層を含み、各層は、同じ体積内で多重化された2つの格子処方を有する。同じ体積内で2つ以上の格子処方を多重化することは、様々な製作技術を用いて達成され得る。多数の実施形態において、多重化マスタ格子は、多重化格子を形成するために露光構成とともに利用される。多くの実施形態では、多重化格子は、2つ以上の露光の構成を有する光学記録材料層を順次露光することによって製作され、ここで、各構成は、格子処方を形成するように設計されている。いくつかの実施形態では、多重化格子は、2つ以上の露光の構成の間で交互に光学記録材料層を露光することによって製作され、ここで、各構成は格子処方を形成するように設計されている。容易に理解され得るように、当技術分野で周知のものを含む様々な技術は、多重化格子を製作するために必要に応じて用いることができる。
【0128】
多くの実施形態では、導波路は、角度多重化格子、色多重化格子、折り曲げ格子、二重相互作用格子、ロールKベクトル格子、交差折り曲げ格子、モザイク格子、チャープ格子、空間的に変化する屈折率変調を備えた格子、空間的に変化する格子の厚さを有する格子、空間的に変化する平均屈折率を有する格子、空間的に変化する屈折率変調テンソルを備えた格子、および空間的に変化する平均屈折率テンソルを有する格子のうちの少なくとも1つを組み込むことができる。いくつかの実施形態では、導波路は、半波長板、4分の1波長板、反射防止コーティング、ビーム分割層、アライメント層、グレア低減のためのフォトクロミックバック層、およびグレア低減のためのルーバー膜、のうちの少なくとも1つを組み込むことができる。いくつかの実施形態では、導波路は、異なる偏光のために別個の光路を提供する格子を支持することができる。様々な実施形態では、導波路は、異なるスペクトル帯域幅のために別個の光路を提供する格子を支持することができる。多数の実施形態において、格子は、HPDLC格子、HPDLCに記録された切替格子(そのような切替可能ブラッグ格子)、ホログラフィックフォトポリマーに記録されたブラッグ格子、または表面レリーフ格子であり得る。多くの実施形態では、導波路は単色帯域で動作する。いくつかの実施形態では、導波路は、緑色帯域で動作する。いくつかの実施形態では、赤色、緑色、および青色(RGB)等の異なるスペクトル帯域で動作する導波路層は、3層導波路構造を提供するために積層され得る。更なる実施形態では、層は、導波路層間のエアギャップとともに積層される。様々な実施形態では、導波路層は、2導波路層ソリューションを提供するために、青色-緑色および緑色-赤色等のより広い帯域で動作する。他の実施形態では、格子は、格子層の数を減らすために色多重化される。様々な種類の格子が実装され得る。いくつかの実施形態では、各層の少なくとも1つの格子は、切替可能格子である。
【0129】
上記で論じられたような光学構造を組み込んだ導波路は、これらに限定されるものではないが、導波路ディスプレイを含む様々な異なる用途で実装され得る。様々な実施形態では、導波路ディスプレイは、25mmより大きいアイレリーフを伴う10mmより大きいアイボックスで実装される。いくつかの実施形態では、導波路ディスプレイは、2.0mm~5.0mmの厚さを有する導波路を含む。多くの実施形態では、導波路ディスプレイは、少なくとも50°の対角線の画像視野を提供することができる。更なる実施形態では、導波路ディスプレイは、少なくとも70°の対角線の画像視野を提供することができる。導波路ディスプレイは、多くの異なる種類の画面(picture)生成ユニット(PGU)を採用することができる。いくつかの実施形態では、PGUは、シリコン上液晶(LCoS)パネルまたは微小電気機械システム(MEMS)パネル等の反射性または透過性の空間光変調器であり得る。多数の実施形態では、PGUは、有機発光ダイオード(OLED)パネル等の発光型デバイスであり得る。いくつかの実施形態では、OLEDディスプレイは、4000ニットより大きい輝度および4k×4k画素の解像度を有することができる。いくつかの実施形態では、導波路は、輝度4000ニットのOLEDディスプレイを用いて、400ニットより大きい画像輝度が提供され得るように、10%より大きい光学効率を有することができる。P回折格子(すなわち、P偏光について高効率を有する格子)を実装する導波路は、典型的には、5%~6.2%の導波路効率を有する。P回折格子またはS回折格子は、OLEDパネル等の非偏光源からの光の半分を浪費するおそれがあるため、多くの実施形態は、導波路の効率を最大2倍まで増加させることを可能にするために、S回折格子およびP回折格子の両方を提供することが可能な導波路を対象とする。いくつかの実施形態では、S回折格子およびP回折格子は、別個の重なっている格子層において実装される。代替的に、単一の格子は、ある特定の条件下で、p偏光およびs偏光の両方について高効率を提供することができる。いくつかの実施形態では、導波路は、格子厚さの適切に選択された値(典型的には、2μm~5μmの範囲)について、ある特定の波長および角度範囲にわたって高いS回折効率およびP回折効率を可能にするために、上述したようなHPDLC格子からLCを抽出することによって生成されたブラッグ様格子を含む。導波路ベースのディスプレイデバイスの例は、「Waveguide Display」と題する2018年3月30日に出願された特許文献2において論じられ、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0130】
[保護層を組み込んだ導波路]
導波路および導波路ディスプレイは、本発明の様々な実施形態による保護層を含むことができる。多くの実施形態において、導波路または導波路ディスプレイは、少なくとも1つの保護層を組み込む。更なる実施形態において、導波路または導波路ディスプレイは、デバイスの各側に1つずつ、2つの保護層を組み込む。上記のセクションにおいて論じたように、導波路および導波路ディスプレイは、その空気界面を通じてTIR導光構造をもたらす透明基板で構築され得る。これらの場合、保護層は、基板の空気界面に対する妨害が最小限となるように実施し、組み込むことができる。いくつかの実施形態では、保護層は、その材料特性および/または導波路基板上への堆積方法により、これらに限定されるものではないが、表面リップル、擦傷、および表面形状を完全な平面性(または他の所望の表面形状)から逸脱させる他の不均一性等の、基板における表面欠陥を補償する。保護層は、様々な厚み、形状およびサイズで実装され得る。例えば、より厚い保護層は、より耐久性の高い導波路を要する用途に利用され得る。多くの実施形態において、保護層は、組み込まれる導波路に類似のサイズおよび形状にされる。湾曲した導波路の場合、保護層も湾曲し得る。更なる実施形態において、保護層は、導波路に類似した曲率で湾曲する。本発明の様々な実施形態による保護層は、様々な材料から作製され得る。容易に理解され得るように、これらに限定されるものではないが、厚み、形状および材料組成を含む保護層の性質は、所与の用途の特定の要件に基づいて選択され得る。例えば、保護層は、様々な用途で構造的支持を提供するように実装され得る。そのような場合、保護層は、これらに限定されるものではないが、プラスチックおよび他のポリマー等の頑丈な材料から作製され得る。用途に依拠して、保護層は、ガラス、シリカ、ソーダ石灰ガラス、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン、ポリエチレンおよび他のプラスチック/ポリマーからも作製され得る。
【0131】
いくつかの実施形態では、保護層は、導波路の基板と保護層との間にエアギャップを提供し、維持するためにスペーサを用いて組み込むことができる。そのようなスペーサは、上記のセクションにおいて説明したものに類似して実装され得る。例えば、スペーサおよびアセトンの懸濁液が、導波路の外面に噴霧され得る。多くの場合に、懸濁液を均一に噴霧することが望ましい。アセトンはスペーサを残して蒸発することができる。保護層(縁部に糊/接着剤/封止剤/等を塗布しておいた)は、次に、スペーサと接触するように配置および真空化(vacuumed down)され得る。いくつかの用途では、スペーサは少量動く場合があるが、ファンデルワールス力に起因して概ね適所に留まる。スペーサは、これらに限定されるものではないが、プラスチック(例えば、ジビニルベンゼン)、シリカおよび導電性材料を含む多岐にわたる材料のうちの任意のものから作製され得る。いくつかの実施形態において、スペーサの材料は、その屈折率が導波路セル内の光の伝播に実質的に影響を及ぼさないように選択される。スペーサは、これらに限定されるものではないが、ロッドおよび球を含む任意の適切な形状をとることができる。加えて、任意の適切なサイズのスペーサが利用され得る。例えば、多くの例において、スペーサのサイズは、1μm~30μmの範囲をとる。容易に理解され得るように、利用されるスペーサの形状およびサイズは、所与の用途の特定の要件に依拠し得る。いくつかの場合、保護層は、有利には、導波路から更に離れて配設され得る。そのような実施形態において、より大きなサイズのスペーサが利用され得る。
【0132】
保護層の組み込みは、単一導波路および多層化導波路を含む、異なる導波路構成で実施され得る。例えば、多層化導波路は、外面の各々の付近に1つずつ配設された、2つの保護層を組み込むことができる。導波路のための環境分離および構造支持を提供することに加えて、保護層は、多岐にわたる他の用途のためにも実装され得る。多くの実施形態において、保護層は調光および/または暗化を可能にする。保護層は、フォトクロミックまたはサーモクロミック機能のための材料を組み込むことができる。保護層は、制御可能な調光および/または暗化を可能にするように構成することもできる。いくつかの実施形態において、保護層は、エレクトロクロミック機能を実装する。保護層は、これらに限定されるものではないが、反射防止コーティングおよび吸収フィルタを含む他の膜のための表面も提供することができる。そのような膜は、外側からの光を見ることを回避するために実装され得る。多くの場合において、そのような膜は、導波路上に直接配置することができず、これは、必要とされる高温プロセスまたは一般的な導波性に対する妨害に起因し得る。多数の実施形態では、保護層は光パワーを提供する。更なる実施形態において、保護層は、可変の調整可能な光パワーを提供する。そのような焦点調整可能レンズは、流体レンズまたはSBGを用いて実装され得る。いくつかの用途において、画面生成ユニットが実装され、導波路の用途および設計に依拠して、保護層が入力ビームを屈折させて位置の誤差をもたらす場合があるため、PGUと導波路との間の遮蔽されていない光路を必要とする場合がある。多くの場合に、入射ビームは、導波基板に対しある角度の光線を含む。これらの影響は、入射光線角度が増大するにつれ悪化する。屈折されない入射ビームの場合であっても、保護層において用いられる材料が、ビームの偏光に影響を及ぼし、散乱を生じさせる可能性があるため、依然として潜在的課題が存在する。そのような実施形態において、それに応じて、保護層は、光路に対する保護層の干渉を防ぐように設計および成形されることができる。
【0133】
[アイグロー抑制]
A.回折要素
アイグロー抑制は、回折要素を含み得る部分的遮光層において実装され得る。回折要素は、反射格子であり得る。多くの実施形態において、少なくとも1つの反射格子が、アイグローを抑制するために導波路ディスプレイシステム内で実装および利用される。反射格子は、そうでなければ漏れ出るアイグロービームを導波路内に反射して戻すために導波路ディスプレイの環境に導入され得る。多くの実施形態において、この反射は、関連する出力結合光の角度と一致する角度で生じ、視認者の観点からの任意の歪みおよびゴースト像を防ぐ。本発明の実施形態による、アイグロー抑制構造として反射格子を組み込む導波路ディスプレイが図2に概念的に示されている。示されているように、システムは、光の入力結合、伝搬および出力結合を提供するための格子層210を含む導波路200を含む。例示的な実施形態において、システムは、少なくとも1つの反射格子を備えた格子層240を有する第2の導波路230を含む。反射格子層240は、上述した格子に類似した2つの基板間に挟持された1つ以上のホログラフィック格子を含んでもよい。そのような構成において、導波路200および230の基板は屈折率を整合され、その内部で光が伝搬することができる単一のTIR構造を形成する。エリア250に示されたような第1の導波路200についての意図される動作モードにおいて、2つの導波路200、230内のTIR経路を進行するビーム252は、格子層210内の格子によって視認者に向かって出力結合され得る(254)。
【0134】
対照的に、エリア260は、アイグローを引き起こし得るオフブラッグ相互作用の例を示す。この例は制限的ではなく、アイグローの他の発生源が存在し、図1Aおよび図1Bとの関連で上記で説明されている。示されているように、光線264は、光線262に由来する、格子層210内の格子とのオフブラッグ相互作用の結果である。光線264は導波路200を通過し、格子層210内の反射格子に入射し、ここで、光線264の一部分は、第2の導波路230内に回折される。光吸収層270は光線264を吸収することができる。光吸収層270は、回折要素によって回折されたアイグロー光を吸収し、任意の外側の光が光吸収層270に向けて回折されることを防ぐことができる。光吸収層270は、眼鏡の側面搭載プロジェクタまたは吸収フレームを有するユーザのテンプルに向けて;ユーザの鼻に向けて;トップダウンプロジェクタシステムに搭載のプロジェクタに向けて上方に;導波路を保持するフレームの縁部に向けて:および吸収要素を有する他の特定の位置に向けて等、導波路ディスプレイ通じて多くの場所に配置され得る。第2の導波路230は、ポリカーボネートまたはガラスから作製された薄い基板を含むことができる。薄い基板は、所望の波長での少量(例えば、約5%の着色)の吸収染料をドーピングされ得る。いくつかの実施形態では、TIRを通じて、アイグロー光は、全ての光を効果的に吸収する、第2の導波路230を通る長い経路を有することができる。環境光は、第2の導波路230を通る短い経路を有する場合があるが、導波路230の透過中、変化しないままである場合がある。多くの実施形態において、アイグロー光線の僅かな部分は、反射格子層240の僅かな誤差または物理的制限に起因して通過せず、導波路230を通り続け、アイグローとして現れる。しかしながら、これらの光線は、典型的な軽減されていないアイグロー光線よりも大幅に弱い。
【0135】
図2は、アイグロー抑制のための反射格子を実装する導波路ディスプレイの特定の構成を示すが、所与の用途の特定の要件に応じて適宜、多くの他の構成が実装され得る。例えば、図2の実施形態において、反射格子を含む導波路は、ベース導波路と同じサイズおよび形状である。他の実施形態において、反射格子を含む導波路は、ベース導波路よりも小さく、ベース導波路内の格子の所定の部分を覆う。加えて、反射導波路は、ベース導波路に接触するように配置される必要がない。多数の実施形態において、反射導波路とベース導波路との間に間隙が存在する。多くの実施形態において、間隙は空気で充填されているが、これらに限定されるものではないが、本発明の実施形態の特定の用途の要件に対し適宜、屈折率整合材料等の任意の材料を充填され得る。本発明の実施形態によるエアギャップを有する反射格子アイグロー抑制構造が図3Aに示される。示されているように、反射格子240を含む導波路230は、スペーサビーズ320の使用を通じて、エアギャップによりベース導波路200から分離されている。そのような実施形態において、主要光光線のTIR経路は、ベース導波路310に閉じ込められる。
【0136】
いくつかの実施形態では、反射格子240は、透過回折を通じて導波路内に光を入力結合することができる透過回折要素であってもよい。図3Bは、本発明の実施形態による、透過回折要素としての回折要素の例を示す。示されているように、透過回折要素240aは、内側に向かう光352を、透過回折を通じて導波路内に入力結合する。入力結合された光354は、導波路を通って全内部反射で進行する。いくつかの実施形態では、反射格子240は、反射回折を通じて導波路内に光を入力結合することができる反射回折要素であってもよい。図3Cは、本発明の実施形態による、反射回折要素としての回折要素の例を示す。示されているように、反射回折要素240bは、内側に向かう光352を反射回折を通じて導波路内に入力結合する。入力結合された光354は、導波路を通じて全内部反射で進行する。
【0137】
いくつかの実施形態では、反射格子240はポリマー格子構造であってもよい。ポリマー格子構造は、アイグローに寄与する導波路領域および光路に応じて多くの異なる方式で構成され得る。主要導波路領域および光路は、光線追跡技法を用いて決定され得る。多くの実施形態において、ポリマー格子構造は、ビーム拡大を提供し、導波路から光を抽出するための格子および入力カプラのうちの少なくとも1つと少なくとも部分的に重なるように構成され得る。反射格子240は、(図2および図3A図3Cに示されているように)導波路の外面、および(以下に説明するように)導波路の眼に面する表面のうちの少なくとも1つに形成され得る。
【0138】
いくつかの実施形態では、反射格子240は、反射格子240が導波路200の格子層210の一部分として形成されるよう、導波路200の基板間にも形成され得る。いくつかの実施形態では、反射格子240の一部分は、光源からの画像変調光を導波路200内の全反射内部経路に結合するための入力カプラとして用いられ得る。いくつかの実施形態では、反射格子240の一部分は、導波路200からの光を出力結合するように構成された出力カプラとして用いられ得る。いくつかの実施形態では、反射格子240の一部分は、ビーム拡大器として構成された折り曲げ格子として用いられ得る。いくつかの実施形態では、入力カプラは、格子またはプリズムであり得る。
【0139】
図4は、本発明の実施形態による、アイグロー抑制構造として反射格子を組み込む導波路ディスプレイを概略的に示す。図4は、図2に類似して機能する、図2からの多くの同一ラベルを付けられた要素を含む。図2からの説明は、図4の導波路ディスプレイに適用可能であり、この説明は詳細に繰り返されない。示されているように、導波路200は、上部格子240と底部格子241との間に位置し得る。いくつかの実施形態では、上部格子240および底部格子241は、異なる格子周期を有し得る。上部格子240および底部格子241に入射するアイグローに寄与する光線は、異なる発生源に由来する場合があり、異なる導波路光線経路を辿った場合があり、このため上部格子240および底部格子241は、これらをアイグロー経路から逸らすための異なる回折処方を含み得る。いくつかの実施形態では、上部格子240および底部格子241は、それらの周期の観点において異なる場合があるのみならず異なる格子変調も含む場合がある、異なる処方を含み得る。例えば、底部格子241は、底部格子241の法線に対し比較的小さな角度にあるその上面を介して導波路に入る入射光(例えば、外部光源において生じる)を、光吸収体270aに向かってはるかに大きな角度に回折させるための処方を含み得る。
【0140】
上部格子240および/または底部格子241はポリマー格子構造であり得る。例示的な実施形態において、システムは、底部格子241を収容する導波路230aを含む。底部格子241は、上述した格子に類似した2つの基板間に挟持された1つ以上のホログラフィック格子を含むことができる。導波路200および231の基板は屈折率を整合され得、その内部で光が伝搬することができる単一のTIR構造を形成する。
【0141】
光吸収層270aは光線265を吸収することができる。光吸収層270aは、回折要素によって回折されたアイグロー光265を吸収し、任意の外側の光が光吸収層270aに向けて回折されることを防ぐことができる。光吸収層270aは、眼鏡の側面搭載プロジェクタまたは吸収フレームを有するユーザのテンプルに向けて;ユーザの鼻に向けて;トップダウンプロジェクタシステムに搭載のプロジェクタに向けて上方に;導波路を保持するフレームの縁部に向けて:および吸収要素を有する他の特定の位置に向けて等、導波路ディスプレイを通じて多くの場所に配置され得る。導波路231は、ポリカーボネートまたはガラスから作製された薄い基板を含むことができる。薄い基板は、所望の波長での少量(例えば、約5%の着色)の吸収染料をドーピングされ得る。いくつかの実施形態では、TIRを通じて、アイグロー光は、全ての光を効果的に吸収する、導波路231を通る長い経路を有することができる。
【0142】
いくつかの実施形態では、上部格子240および底部格子241は、ブラッグ格子およびラマン・ナス格子の組み合わせであり得る。いくつかの実施形態では、上部格子240および/または底部格子241は、いくつかの領域においてブラッグ格子を含み、他の領域において、ラマン・ナス格子を含み得る。導波路内のビーム-格子相互作用の性質に依拠して、入力、折り曲げおよび格子の各々は、ブラッグ格子またはラマン・ナス格子と重なる領域を有し得る。多くの実施形態において、上部格子240および/または底部格子241にわたって2つの種類の格子が点在し得る。例えば、導波路200内の折り曲げ格子は、折り曲げ格子のいくつかの領域において、ブラッグ格子と重なり、他の領域において、ラマン・ナス格子と重なり得る。主要撮像格子(例えば、入力格子、折り曲げ格子および出力格子)のうちの任意のものは、ブラッグ格子領域、ラマン・ナス格子領域、および格子を含まない領域から選択された少なくとも1つによって、少なくとも部分的に覆われ得る。例えば、上部格子240および/または底部格子241は、ブラッグ格子領域、ラマン・ナス格子領域および/または格子を含まない領域を含むことができ、その各々が、複雑な光線経路および格子相互作用に起因して、折り曲げ格子の一部分と重なり得る。格子を含まない領域は、以下に説明する種類のアイグロー抑制層を支持するため、光管理において役割を果たし得る。
【0143】
図4は、上部格子240および底部格子241の両方を示すが、上部格子240のみ(図2に示す)または底部格子241のみ(図示せず)を含む実施形態も開示される。いくつかの実施形態では、上部格子240および/または底部格子241は、アイボックスに向けて画像光を伝播させるのに用いられる導波路200から上部格子240および/または底部格子241を分離する空気を含むことができる別個の基板上に形成され得る。この例は、図3Aに関連して論じられる。
【0144】
多くの実施形態において、上部格子240および/または底部格子241は、ブラッグ格子を含む領域、ラマン・ナス格子を含む領域、または格子を含まない領域を含み得る。3種類の領域のうちの任意のものは、入力格子、折り曲げ格子および出力格子のうちの少なくとも1つを、少なくとも部分的に覆うことができる。多くの実施形態において、光制御コーティングが、上部格子240および/または底部格子241の、格子を含まない領域に施され得る。多くの異なる種類の光制御コーティングを用いてアイグロー管理を支援することができる。いくつかの実施形態では、光制御コーティングは、偏光回転、偏光選択的吸収、偏光選択的透過、偏光選択的回折、角度選択的透過、角度選択的吸収、反射防止、および/または定義されたスペクトル帯域幅内での透過の群から選択された少なくとも1つの光学的機能を提供する。いくつかの実施形態では、光制御コーティングは、上記の例の光学的機能の空間的変動を提供することができる。
【0145】
多くの実施形態において、上部格子240および/または底部格子241は、連続変動傾斜角または区分的変動傾斜角に基づいたロールKベクトル格子を含むことができる。多くの実施形態において、上部格子240および/または底部格子241は、空間的に変動するピッチを有する格子を含むことができる。多くの実施形態において上部格子240および/または底部格子241は、多重化格子として構成され得る。
【0146】
多くの実施形態において、外界から導波路200に入る光265は、導波路200の上面(例えば、導波路の外界側)、または導波路200の底面(例えば、眼に面する表面)を介して導波路200に入る太陽光または室内照明を含むことができる。潜在的にアイグローを引き起こす光265の他の光源は、車のヘッドライトおよびレーザ源を含み得る。多くの実施形態において、外部光源からの光は、導波路を通って伝播した後に、ディスプレイの視認者の眼から反射することができる。多くの実施形態において、眼の表面等の解剖学的表面から反射された画像光は、アイグローに寄与し得る。いくつかの実施形態では、外界から導波路200に入る光は、外部光源によって提供され、導波路の外面および/または眼に面する表面を通って導波路200に入り、これがアイグローに寄与し得る。
【0147】
いくつかの実施形態では、上部格子240および/または底部格子241はホログラフィック反射格子であり得る。ホログラフィック反射格子は、ブラッグ格子であり得、上記で論じたようにホログラフィック露光を通じて製造され得る。いくつかの実施形態では、ホログラフィック反射格子はEBGであり得、上記で論じたプロセスにおいて製造され得る。EBGは、変調深さおよび格子ピッチを含むポリマー格子構造を含むことができるブラッグ格子であり得るディープSRGを生成する際に有用であり得、ここで、変調深さは、ポリマー格子構造の少なくとも一部分にわたって格子ピッチよりも大きい。いくつかの実施形態では、EBGは、ラマン・ナス回折レジームにおいて作用するラマン・ナス格子として構成され得る。ラマン・ナス格子は、ポリマー格子構造の少なくとも一部分にわたって格子ピッチ未満の変調深さを有することができる。EBGは、ラマン・ナスレジームにおいて作用するように構成された、排出周期格子であり得、領域内の格子ピッチよりも小さい変調深さを有し得る。そのような格子は厳密にブラッグレジーム内にない。製造プロセスを制御することによって、EBGは、ブラッグレジームにおいて作用する領域、ラマン・ナスレジームにおいて作用する領域、および/または格子を有しない領域を含む格子の製造において有用であり得る。
【0148】
多くの実施形態において、ポリマー格子構造変調深さは、上記でその全体が参照により本明細書に組み込まれた特許文献1において論じられる原理に従って空間的に変動する偏光依存回折効率特性を提供するために、上部格子240および/または底部格子241にわたって変動し得る。多くの実施形態において、空間的に変動する角度依存回折効率特性または空間的に変動する偏光依存回折効率特性を提供するために、ポリマー格子構造変調深さは、上部格子240および/または底部格子241にわたって変動し得る。上部格子240および/または底部格子241がEBGを組み込むとき、EBGの空間、角度または偏光回折効率特性のうちの少なくとも1つは、特定の屈折率および/または複屈折の光学材料でEBGをバックフィルすることによって調整することができる。いくつかの実施形態では、バックフィル材料は、複屈折材料等の等方性材料であり得る。バックフィル材料は、ポリマー格子構造の隣接部分間の空間の底部における空間を占有することができ、バックフィル材料の上面の上から変調深さまでの空間は空気が占有する。
【0149】
いくつかの実施形態では、ポリマー格子構造の変調深さと格子ピッチの間隔との比は、1:1~10:1の範囲内にある。いくつかの実施形態では、ポリマー格子構造の格子ピッチは0.35μm~1μmであり、ポリマー格子構造の変調深さは1μm~10μmである。格子ピッチは、ポリマー格子構造の回折機構の間隔であり得、変調深さは、ポリマー格子構造の深さであり得る。ポリマー格子構造は、可視光の波長よりも大きい変調深さを有することができる。
【0150】
多くの実施形態において、上部格子240および/または底部格子241は、複合構造を含むポリマー格子構造を含むことができる。複合構造は、少なくとも1つの種類のポリマーと、少なくとも1つの別の材料とを含むことができる。多くの実施形態において、ポリマー格子構造は、ポリマーおよび少なくとも1つの他の材料の複合体であり得、ここで、ポリマーは、格子の形成後に除去される。多くの実施形態において、少なくとも1つの他の材料はナノ粒子であり得る。多くの実施形態において、ナノ粒子は機能化ナノ粒子であり得る。ナノ粒子を含む格子は、「Nanoparticle-Based Holographic Photopolymer Materials and Related Applications」と題する2021年7月14日に出願された特許文献3に記載され、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0151】
いくつかの実施形態では、上部格子240および/または底部格子241は、2次元格子構造または3次元格子構造を含むことができる。2次元格子構造は、2Dフォトニック結晶であり得る。2D格子の例は、基部が面上にある回折円柱のアレイであり得る。3次元格子構造は、3Dフォトニック結晶であり得る。3D格子は、回折点状領域を含み得る。
【0152】
多くの実施形態において、上部格子240および/または底部格子241は、光学材料でコーティングされ得る。多くの実施形態において、上部格子240および/または底部格子241は、反射性光学材料でコーティングされ得る。多くの実施形態において、上部格子240および/または底部格子241は、最大で2.5の有効屈折率を有するコーティングを施され得る。多くの実施形態において、上部格子240および/または底部格子241は、第1の材料でコーティングされ得、コーティングされた格子は、第1の材料の屈折率よりも高い屈折率の第2の材料でバックフィルされ得る。多くの実施形態において、上部格子240および/または底部格子241は、第1の材料でコーティングされ得、コーティングされた格子は、第1の材料の屈折率よりも低い屈折率の第2の材料でバックフィルされ得る。
【0153】
いくつかの実施形態において、上部格子240および/または底部格子241は、ポリマー回折機構と、隣接ポリマー回折機構間の複屈折材料とを含み、複屈折材料は、ポリマー回折機構よりも高い屈折率を有する。いくつかの実施形態では、ポリマー回折機構と複屈折材料との間の屈折率差は0.01~0.2である。いくつかの実施形態では、上部格子240および/または底部格子241は、交互のポリマー領域およびエアギャップ領域を含み、ポリマー領域とエアギャップ領域との間の屈折率差は、1.4~1.9の範囲にある。いくつかの実施形態では、複屈折材料は液晶材料である。
【0154】
多くの実施形態において、導波路ディスプレイからアイグローを低減するための方法は、
a)画像変調光の光源と、導波路と、入力カプラと、ビーム拡大を提供し、導波路からアイボックスに向かう光を抽出するための少なくとも1つの格子と、を提供するステップ、
b)ポリマー格子構造の少なくとも一部分にわたって格子ピッチよりも大きい変調深さを有するポリマー格子構造を提供するステップ、
c)画像変調光を導波路における全内部反射経路に方向付け、光をビーム拡大し、これをアイボックスに向けて抽出するステップ、
d)導波路内を伝搬する光を、ポリマー格子構造を用いて、外面を通して屈折される光路から離れるように方向付けるステップ、および
e)外界から導波路に入る光、または導波路内で生成された迷光を、ポリマー格子構造を用いて、外面を通して屈折される光路から離れるように回折させるステップ、
を含むことができる。
【0155】
ホログラフィック反射格子に加えて、同様の効果を達成するために他の種類の構造が利用されてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、反射格子240は表面レリーフ反射格子であり得る。
【0156】
いくつかの実施形態では、反射格子240は、導波路の眼の側と反対側の表面上に直接エッチングされ得る。本発明の実施形態による、アイグロー抑制のために表面レリーフ格子を実装する導波路ディスプレイが図5に概念的に示されている。導波路400は、格子層410と、導波路400の環境側の表面に配設された表面レリーフ反射格子420とを含む。導波路ディスプレイの意図される動作を示す領域430において、導波路400内のTIR経路内の光線432は、格子層410内の出力格子によって回折され、眼の側に出力される。オフブラッグ相互作用を示すエリア440において、光線442の一部分は、アイグロー光線444として導波路400の環境側に向けて回折される。アイグロー光線444は、表面レリーフ反射格子420によって反射され、光線446として眼の側に向かって戻され得る。多くの実施形態において、光線446は、対応する正常の出力光線に平行である。ここでもまた、光線446の一部分は、フレネル反射に起因して反射され、表面レリーフ反射格子に向かって戻され得るが、次に、レリーフ反射格子420によって少なくとも部分的に反射され得る(図示せず)。光線は、反射格子420を通過するものとして示されているが、多数の実施形態において、これは生じない。しかしながら、不完全性および/または物理的限界に起因して、これはどうしても(regardless)生じ得る。いくつかの実施形態では、表面レリーフ反射格子420は、メタ表面によって提供され得る。メタ表面は、ナノメートルスケールのピッチ回折機構の使用の結果生じる、より大きな度合いの波面位相および振幅制御を可能にする。ブラッグ格子等の従来の回折光学要素は、ミクロンスケールピッチ、すなわち、可視帯域波長の大きな割合である回折機構ピッチの回折機構を有する。
【0157】
表面レリーフ反射格子の利点は、ディスプレイシステムに対し大きな体積を加えないことである。しかしながら、多数の実施形態において、図2に関連して説明した反射格子240は、類似の結果を伴って、導波路に隣接した非常に薄い基板上に配置され得る。いくつかの実施形態では、基板は、基板と導波路との間に間隙が存在するように配設され得る。間隙は、(これらに限定されるものではないが)空気を含む任意の材料で充填され得る。
【0158】
本発明の実施形態による、アイグローを抑制するために別個の基板上に配設された反射格子が図6に概念的に示されている。示されているように、反射格子510を有する導波路500は、スペーサビーズ530を用いて、ベース導波路200と分離されている。例示的な実施形態において、反射格子510は、ディスプレイの環境側に面する導波路500の表面上に配設される。他の実施形態において、反射格子510は、ベース導波路200に面する表面上に配設され得る。
【0159】
図2図6には特定の反射導波路アイグロー抑制構造が示されているが、本発明の実施形態の特定の用途の要件に対し適宜、反射導波路光学系の任意の数および/または配置が用いられ得る。更に、任意の数の異なる種類の格子がアイグロー光線を抑制するために加えられ得る。例えば、表面レリーフ格子の代わりに排出ブラッグ格子が用いられてもよい。更に、非格子構造がアイグローを抑制するために用いられ得る。これらの構造は以下で更に詳細に説明される。
【0160】
B.反射要素
いくつかの実施形態では、アイグロー抑制は、反射要素を含み得る部分的遮光層において実装され得る。反射要素は、これらに限定されるものではないが、ある特定の波長帯域を正確に選択的に通過させる一方で他のものを反射することができる、ダイクロイック反射体およびダイクロイックミラー等のフィルタの使用を含むことができる。アイグロー光を反射してユーザに戻すために、誘電体反射コーティングが施され得る。反射コーティングは、照明波長の周りの狭いノッチフィルタとして設計され得、特定の波長のみを効果的に反射する一方で、全ての他の可視波長を透過し、導波路が高い透過性を有して略透明に見えるようにする。反射コーティングは、設計された波長のためのミラーとして作用することができ、反射コーティング層に入射する角度に等しい角度で光を反射する。しかしながら、反射光は、出力格子によって回折される所望の画像と重ね合わされるとき、ユーザに対するゴースト像を生成する場合がある。いくつかの実施形態では、ダイクロイックフィルタ等のフィルタは、角度依存の反射または透過効率性を有するように設計され得る。そのようなフィルタは、多層化構造であり得る。フィルタは、偏光感応効率を有して設計され得る。スペクトル、角度、偏光フィルタ特性のうちの1つ以上の使用は、アイグローの抑制の最適化に役立つことができる。いくつかの実施形態では、アイグロー抑制は、ユーザの視野の周辺部における残余アイグローに対し、ユーザの視野の中心部分におけるより高い度合いのアイグロー抑制のバランスをとることができる。
【0161】
コーティングは、様々な場所において施され得る。例えば、コーティングは、各導波路に個々に施され得、これにより、ゴーストが見えるようになる前に、より大きな角度ずれを可能にし得る。コーティングは、前面保護カバーにも施され得る。ユーザからの距離が離れるほど、所望の画像とゴースト像との間により大きなずれが生じることが観測されている。いくつかの実施形態では、前面保護カバーは、導波路から離れて配置され得、このため、僅かにより多くの光路を提供する。追加の経路長を用いて、レーザビームスキャナ(LBS)プロジェクタにおけるニュートンリング縞等のアーチファクトのコヒーレンスを低減することができる。有利には、反射は、眼の側の「信号」画像に対し整列され得る。いくつかの実施形態では、アイグロー反射の画像対信号画像の分解能のスケールであり得る位置ずれは最小であり得、位置ずれが実際に生じる場合、これにより、点像分布関数の広がりがもたらされる可能性があり、このため、画像の鮮明度(sharpness)の損失がもたらされるか、または反射角度誤差がより大きい場合、ゴースト像が生じることになる。アイグロー反射のコヒーレンスは、特に、レーザビームスキャナ(LBS)を用いたレーザ照明ソリューションの場合に検討され得る。いくつかの実施形態では、導波路の眼でない側における位相スクランブラにより、フレネル反射が、信号光と位相不一致になり得、これにより、LBSプロジェクタの場合に見られ得るニュートンリング縞アーチファクトを低減することができる。「アイグロー抑制」スペクトルノッチ反射フィルタの適用により、LBSからのニュートンリング縞の強度が増大し得る。ここで、LBSニュートンリングは、信号ビームおよび眼でない側の反射の干渉によって生じる。いくつかの実施形態では、眼でない側の反射防止コーティングが含まれ、アイグローおよびLBSニュートンリング縞の両方の低減をもたらすことができる。
【0162】
いくつかの実施形態では、保護カバーはプラスチックであり得る。この場合、反射性コーティングが保護カバーに施されるとき、コーティング中の熱特性の制限は最小限になり得る。例えば、格子が感熱材料を用いて作製された場合、低温コーティング(例えば、50℃~60℃)が有益であり得る。保護カバーがガラスから作製される実施形態では、高温コーティングが用いられ得る。反射性コーティングは、1つの波長帯について保護カバーの一方の側に施され得(例えば、緑色反射性ノッチ)、別の反射性コーティングは、異なる波長帯でコーティングされた他方の側に施され得る(例えば、赤色/青色ノッチ)。波長帯の任意の組み合わせが用いられ得ることが理解される(例えば、R、G、Bノッチの任意の他の組み合わせ)。反射性コーティングは、シースルーAR、UV保護、勾配吸収または調光コーティング、耐擦傷性またはハードコートコーティングと組み合わせられ得る。
【0163】
反射したアイグロー光および所望の画像からの角度オフセットを減らすために、反射性層が平坦であり、導波路に積層されることが有利であり得る。いくつかの実施形態では、材料は、層間に平坦性を提供することができる(例えば、厚み調整シム、スペーサビーズ等)。反射性層は、導波路または導波路スタックに積層され得る。いくつかの実施形態では、反射性層は、ノッチがLEDのスペクトル内にあるときに特にLEDアイグローを低減するレーザのために設計された狭いノッチ反射体であり得る。
【0164】
構造に依拠して、反射性層は、反射される特定の帯域(または帯域のセット)を除く広範にわたる色を通すか、またはそれぞれ所与の波長未満のもしくは所与の波長よりも高い全ての波長を反射するハイパスもしくはローパスフィルタとして作用することができる。いくつかの実施形態では、誘電体材料の交互の薄い層は、コーティングされ、所望のフィルタを形成する。本明細書で説明するように、ダイクロイック反射体または誘電体ミラーは、基礎をなす動作原理は異なるが、反射格子に関して上記で説明したものと類似した結果をもたらす方式でアイグロー光線を反射するために、導波路に施され得る。
【0165】
導波路600は、環境側に面する表面にダイクロイック反射体610を含む。導波路600は、図2に関して論じた格子層210と同じ格子層602を含むことができる。ダイクロイック反射体610は、導波路600に対応する光の所定の波長帯域を反射するように設計され得る。例えば、R、GおよびBについて3つの層を有する多層化導波路ディスプレイにおいて、所与の導波路層のためのダイクロイック反射体610は、そこにおいて所与の導波路層が動作するように意図される光を反射するように設計され得る(例えば、赤色導波路のためのダイクロイック反射体は、光源からの赤色光に対応する波長帯を反射するように設計され得る)。表面レリーフ格子に類似して、ダイクロイック反射体610は、そうでなければ漏れ出し、視認者に向かって戻りアイグローとして現れる光線の少なくとも一部分を反射することができる。図2図6に関して上記で説明したのと同様に、意図される光線はエリア620に示されるのに対し、オフブラッグ相互作用およびそれらの抑制によって生成されるアイグロー光線はエリア630に示される。ここでもまた、意図される光線およびアイグロー光線は別個に示されるが、これらの光線は導波路全体にわたって同時に生じることが容易に理解される。
【0166】
ダイクロイック反射体を用いるとき、導波路ディスプレイを通じて視認者の眼に通すことが可能な環境光のパーセンテージは減少され得る。したがって、アイグロー光線は反射されて眼へと戻るが、同様の波長帯に対応する外界からの光も、視認者の眼に到達することを防がれ得る。これは、ユーザが外界を可能な限りクリアに見ることが可能であることが望ましい場合がある拡張現実システムにおいて問題を引き起こし得る。これに対処するために、ダイクロイック反射体構造が、導波路において用いられる波長帯(例えば、特定の導波路について選択される色)を選択的に反射することができるノッチフィルタとして設計され得る。例えば、可視スペクトルの残りの部分(例えば、440nm~640nm)が影響を受けないままにしながらアイグローを抑制するために、狭帯域は、638nm、520nmおよび455nm(それぞれ標準的なディスプレイの赤、緑および青)の周辺で選択され得る。容易に理解され得るように、選択される帯域は、光源の波長帯に対応することができる。
【0167】
更に、ダイクロイック反射体は、多くの場合、導波路の構造および/または任意の反射防止コーティングに依拠して導波路に変形を引き起こし得る高温で施される。これを回避するために、より低温のダイクロイック反射体を施すプロセスが用いられ得る。多数の実施形態において、ダイクロイック反射体は、導波路の保護層に含まれ得る。
【0168】
ダイクロイック反射体(または実際には、導波路)は、全体システムの需要に応じて、複数の反復で施されてもよく、または単一回で施されてもよい。例えば、上記で説明したように、R、GおよびBの各々について3つの異なる導波路が用いられるRGBディスプレイにおいて、ダイクロイック反射体(または反射格子/反射導波路)は、3つの異なる導波路間に、または導波路スタックの環境側に点在し得る。
【0169】
本発明の実施形態による、ダイクロイック反射体を施す例示的な構成が図8図10に示されている。図8は、本発明の実施形態による、3つの異なる導波路を含む導波路ベースのディスプレイの例を示す。第1の導波路600aは、赤色等の第1の色を表示するように構成され得、第2の導波路600bは、緑色等の第2の色を表示するように構成され得、第3の導波路600cは、青色等の第3の色を表示するように構成され得る。導波路600a、600b、600cの各々は、図2に関して説明される導波路200の特徴を含むことができる。図7に関連して説明したダイクロイック反射体610は、第1の導波路600aの上部に適用され得る。スペーサ700は、隣接する導波路間に施され得る。隣接する導波路間の間隙は、空気等の様々な材料で充填され得る。
【0170】
図9は、本発明の実施形態による、3つの異なる導波路を含む導波路ベースのディスプレイの例を示す。この構成は、図8のデバイスと同じ特徴のうちの多くを含む。この説明は応用可能であり、したがって、説明は繰り返されない。ダイクロイック反射体610bは第2の導波路600bの上部に適用され得、ダイクロイック反射体610cは第3の導波路600cの上部に適用され得る。ダイクロイック反射体610aも、第1の導波路600aの上部にあり得る。この構成において、ダイクロイックフィルタ610a、610b、610cは、特定の導波路600a、600b、600cに対し適合させられ得る。
【0171】
図10は、本発明の実施形態による、3つの異なる導波路を含む導波路ベースのディスプレイの例を示す。この構成は、図8および図9に関連して説明したのと同じ特徴の多くを含む。これらの説明は応用可能であり、したがって、これらの説明は繰り返されない。第2の導波路600bのダイクロイックフィルタ610bは除去された。代わりに、別個の基板900に配置されたダイクロイックフィルタ910が、第1の導波路600aの上に配置され得る。別個の基板900は保護層であり得る。別個の基板900上のダイクロイックフィルタ910は、第2の導波路600bに対応することができる。例えば、第2の導波路600bは緑色導波路であり得、ダイクロイック反射体910は、緑色に対応し、保護層900に施され得る。
【0172】
図11Aは、本発明の実施形態による、ダイクロイックフィルタを含む導波路ベースのディスプレイの断面図を示す。図11Bは、図11Bの導波路ベースのディスプレイの概略平面図である。導波路600は、入力結合光学要素1006および出力結合光学要素1004を含む。ダイクロイックフィルタ1004は、出力結合光学要素1004と重なる。いくつかの実施形態では、ダイクロイックフィルタ1004は、入力結合光学要素1006と重ならない場合がある。
【0173】
容易に理解され得るように、任意の数のダイクロイック反射体(または反射格子/反射導波路)が、本発明の実施形態の特定の用途の要件に対し適宜用いられ得る。例えば、設計の要件に応じて、3つの導波路のスタックについて、2つのダイクロイック反射体のみが用いられ得る。更に、本発明の実施形態の特定の用途の要件に対し、適宜、アイグロー抑制構造の任意の混合が用いられ得ることが理解される。アイグロー抑制構造は、必ずしも光を反射する必要がない。代替的なアイグロー抑制構造が以下に説明される。
【0174】
C.吸収および変換層
アイグロー抑制層は、可視光スペクトルの一部分において光を吸収し得る光吸収層を含むことができる。光吸収層は、透明マトリックス内に懸濁された光吸収染料を含むことができる狭帯域染料吸収体層であり得る。吸収のための染料は、吸収される波長において極端に狭い場合がある。任意の不要な波長が吸収されることにより、導波路は、より低い透過を有し、外界を調光し、暗く見えることになる。染料吸収層の場所は変動し得る。染料吸収体層は、複数の導波路を用いて一色のFOVを誘導する場合、保護カバー上に配置され得る。各導波路が一色のみを誘導している場合、染料は、導波路スタックの前面において保護カバーに施され得る。染料は角度不感性であり得、アイグロー光の広範にわたる入射角をカバーし得る。可視光領域の例示的な染料は、Yamada Chemical Co., Ltd(日本)によって製造されている。高吸収効率、狭いスペクトル吸収帯域幅および熱安定性は、重要な選択基準であり得る。吸収体性能を改善するための1つの可能な手法は、不活性有機ポリマー化合物または無機化合物であり得る透明マトリックス内での染料の希釈を伴う。結果として得られる吸収体は、狭帯域吸収および高い帯域外透過性を与えることができる。多層構成は、2つ以上の波長の吸収を可能にすることができる。
【0175】
いくつかの実施形態では、光吸収層は、メタ材料吸収層であり得る。メタ材料吸収体は、極度に狭いスペクトル帯域幅で作成され得る。吸収は、そのような狭帯域吸収を有するとき、角度ずれに対し高感度であり得る。メタ材料吸収層は、複数の導波路を通じて色を共有しない場合、各導波路上に個々に配置され得る。メタ材料吸収層は、導波路において色を共有する場合、上部導波路の上方の保護カバー上に配置され得る。
【0176】
論じたアイグロー抑制ソリューションの多くは、1つ以上の種類のナノ構造でパターニングされた表面を含み得るメタ表面を用いて実施され得る。メタ表面は、波長または角度の一方または両方の機能として、光吸収、ビーム偏向および偏光のために構成され得る。上記の機能のうちの2つ以上が単一のメタ表面に統合され得る。メタ表面は、導波路表面、眼の表面および散乱面からの鏡面反射によって寄与されるアイグロー抑制に対する完全なソリューションまたは部分的なソリューションを提供することができる。
【0177】
アイグロー抑制構造は、量子ドットまたは蛍光体等の波長変化要素を含むことができる。量子ドットは、第1の波長の光を吸収し、第2の波長の光を発することができるナノスケール半導体である。量子ドットは、アイグロー光線を抑制するために、導波路の基板に導入されるか、または導波路光学系の損失側に施され得る。例えば、特定の波長のアイグロー光線を吸収し、非可視波長の光(例えば、赤外線)を発する量子ドットは、アイグロー光線が可視アイグロー光線を生成することを抑制することができる。アイグロー光線は、導波路から依然として漏れ出す場合があるが、これらのアイグロー光線は非可視範囲に変えることができる。多くの実施形態において、紫外光の生物学的に有害な特性に起因して、赤外線帯域およびより低い帯域が望ましい。しかしながら、導波路光学系の使用に依拠して、光を紫外線帯域またはより高い帯域に変換することが受容可能であり得る。
【0178】
利用可能な量子ドットに応じて、より高い周波数の光(例えば、青色光)を赤外線帯域にシフトさせることは困難であり得る。この状況において、一連の異なる量子ドットを用いて、光波長を段階的にシフトさせることができ、および/または量子ドットを、本明細書に記載の代替的なアイグロー抑制構造のうちの1つ以上も利用する導波路光学系に組み込むことができる。表示目的で導波路光学系において用いられる波長の数に応じて、量子ドットの異なるセットを適用し、異なる波長のうちのいくつかまたは全てを軽減することができる。
【0179】
容易に理解され得るように、量子ドットは、上記のアイグロー抑制構造のうちの任意のものまたは全てを含むシステムに組み込まれ得る。実際に、特定のアイグロー抑制構造が上記で論じた図において示されているが、本明細書に記載のアイグロー抑制構造を組み込む任意の数の異なるアーキテクチャが用いられ得る。
【0180】
D.同期化を含む実施形態
多くの用途において、導波路ディスプレイが大きなアイボックスで動作することが望ましい。視認者にとって好都合であるが、これにより、ユーザの顔に当たる大量の使用されない光(例えば、ユーザの瞳孔に到達しない光)が生じる可能性がある。導波路ディスプレイの実装に応じて、この使用されない光は、外部の観察者にとってよく見える可能性がある。したがって、本発明の多くの実施形態は、アイボックスの作動サイズを保持しながら、ユーザの顔に入射する使用されない光の量を低減するためのソリューションを対象とする。
【0181】
多くの実施形態において、導波路ディスプレイは、使用されない光の量を低減するように出力結合された光を制御するための少なくとも1つの切替可能ブラッグ格子(SBG)を含む。通常、アイボックスサイズは、回折格子の使用を通じて入力結合光を多重化または複製することによって拡大され得る。切替可能ブラッグ格子が実装される場合、ディスプレイは、視認者の眼に到達する光のみが出力結合されるように光の伝搬を制御し、それによって、ユーザの顔に向けて放出される使用されない光の量を低減するように構成され得る。多くの実施形態において、ユーザの眼は通常、動作中静止していないため、そのような制御を達成するための必要な構成は動的に決定される。したがって、構成は、一旦決定されると動的に実装され得る。
【0182】
いくつかの実施形態では、高い明度(brightness)の光源により、小さなデューティサイクル(約1%)を必要な出力輝度(luminance)で用いることができる。この光源を用いて、吸収層を光源と同期させ、オンおよびオフに切り替えることができる。これは、光源がオンである間、アイグロー光を吸収することができるが、多くのサイクルにわたって平均化され、観察者には透明に見える。いくつかの実施形態では、吸収層は、SBG等の切替可能格子であり得る。切替可能格子は、回折アイグロー要素を含むことができる。これにより、可能性のある望ましくない光が、回折要素を通じてユーザに向かって戻るように回折される回数が低減する。切替可能格子は切替可能出力格子であり得る。切替可能出力格子は、切替波長板と多重化された格子スキームであり得る。多重化された格子の場合、出力光は、複数の格子から混合した後に偏光され得る。格子が時間において切り替えられる場合、各格子は高度に偏光された出力を生成し得る。いくつかの実施形態では、切替可能格子と同期された波長板を切り替えることにより、一方または両方の出力の偏光を、出力において直線偏光子と直交するように回転させることができ、これによりアイグロー光を遮断することができる。いくつかの実施形態では、直線偏光子を、切替可能格子から出力された光と直交するように切り替えることにより、出力に対する永久的な直線偏光子を有することなくアイグロー光を遮断することができる。いくつかの実施形態では、切替可能サブ波長格子(形態複屈折性の原理に基づく)は、アイグロー抑制を光源に同期させるために、波長固有の光学リターダを提供することができる。いくつかの実施形態では、格子ピッチは、光の波長よりはるかに短くなり得る。このため、ゼロ次および回折波のみが伝搬し、より高次の回折次数はエバネッセントであり得る。
【0183】
ユーザの眼に到達する光のみを出力結合するために必要な構成を決定することは、多岐にわたる方式で達成され得る。多くの実施形態において、導波路ディスプレイはアイトラッカを含む。アイトラッカは、多くの異なる方式で実装され得る。いくつかの実施形態では、導波路ベースのアイトラッカは、眼の位置および/または視線情報を決定するように実装される。アイトラッキングセンサからの情報を用いて、導波路ディスプレイは、コントローラを利用して、切替可能ブラッグ格子の状態の構成を、ユーザの眼に到達する光のみを出力結合するように実装することができる。いくつかの実施形態では、導波路から出て出力結合される光は、そうでなければ、導波路を通じて縁部まで伝搬し続けることになる。容易に理解され得るように、本発明の様々な実施形態による導波路ディスプレイは、使用されていない光が導波路の縁部から漏れ出ることを軽減するように設計され得る。例えば、縁部は、縁部に到達する任意の光を吸収することができる光吸収材料で覆われ得る。
【0184】
切替可能ブラッグ格子の実装において、導波路は、オン/オフ状態間で格子を切り替えるための電極として、どちらかの側にインジウムスズ酸化物(ITO)または屈折率整合ITO(IMITO)層等の透明電極を含むことができる。多くの実施形態において、導波路は、格子層の一方の側に第1のITO/IMITO層を含み、反対側に第2のITO/IMITO層を含む。第2の層は、選択的にアドレス指定可能な要素になるようにパターニングされ得る。これにより、切替可能ブラッグ格子の離散エリアの切替が可能になる。いくつかの実施形態では、選択的にアドレス指定可能な要素は、ライン/間隙アーチファクトを生じないように十分大きく、この結果として顕著な散乱および/または回折効果が生じ得る。容易に理解され得るように、様々な透明導電性酸化物層も利用され得る。
【0185】
これらの層を組み込むことにより、大きくなり得る、層による吸収損失が導波路設計において検討され得る。例えば、いくつかのITO層は、通過するごとに約0.25%の吸収損失に寄与し得る。導波路アーキテクチャに応じて、導波路に沿った総伝搬損失は大きくなり得る。例えば、出力結合された光の量を制御することは、出力格子の一部分を回折状態に切り替えることを含むことができる。切替部分は、視認者の眼の位置および/または視線情報に対応することができる。しかしながら、そのようなスキームの下で、光が導波路を通って伝搬する距離は変動する可能性があり、これは、ITO/IMITO層に起因した吸収損失を検討すると、結果として出力結合光における変動する損失をもたらし得る。切替の使用を通じて出力格子サイズおよび/または形状を変更することによって、光伝搬経路は、結果として、導波路内の異なる量のTIRバウンスをもたらし得る(例えば、いくつかの構成の結果として、ITO/IMITO層とより多い回数相互作用するより長い光路がもたらされ得る)。ITO/IMITOとより多く相互作用する光路の場合、光強度における総損失はより高くなり得、結果として、異なる構成間の不均一性がもたらされる。したがって、多くの実施形態は、これらの違いに対処するように設計された格子アーキテクチャおよび切替構成を対象とする。多くの実施形態において、導波路ディスプレイは、回折状態と非回折状態との間で切替可能な独立してアドレス指定可能なセクションを有する出力格子を含むように構成され得る。いくつかの実施形態では、導波路ディスプレイは、スクロール出力を提供するように構成され得る(例えば、出力画像は、順次スクロールされるセクションにおいて表示され得る)。そのような場合、ある特定の眼の位置/注視設定のための出力構成は、一様なプロファイルを有するように構成され得る。いくつかの実施形態では、切替は、視野一様性を保つために切替タイミングに関するフェザリング効果を含むことができる。
【0186】
E.反射防止コーティングを含む実施形態
アイグローは、いくつかの異なる効果によって生じ得る。これらの効果は、コリメートされた漏れおよび散乱された漏れに分割され得る。散乱された漏れは、ホログラム材料、導波路材料またはホログラフィックヘイズ(ホログラムにおいて記録されたヘイズ)によって生成され得る。散乱された漏れは、光を導波路から出て眼に向けて散乱させる場合がある。コリメートされた漏れ、例えば、導波路に結合された角度画像成分を保持する、光を発するアイグローが、低い回折効率で抽出され得る。これは、特に、オフブラッグである光の場合に当てはまり得る。そのようなアイグローは、表示される画像のうちの少なくともいくらかが外界から見られることを可能にする場合があり、これはプライバシおよびデータセキュリティ問題を提示し得る。ホログラフィック記録プロセスにおいて、不完全な相分離の結果として生じる迷光または散乱中心の結果としてゴースト格子が生じる場合、明白なオフブラッグ相互作用がゴースト格子から生じる場合があり、これは多重化格子内で現れる場合がある。
【0187】
この種類の格子は弱く記録され得、オフブラッグ格子から分離することが困難であり得る。効果は、導波路から出て誤った方向に回折する光をコリメートすることであり得る。フレネル反射の場合、格子面からユーザの眼に向けて回折される光は、導波路を出る場合がある。(眼の側の)導波路と空気との界面において、フレネル反射が生じ得る。この界面からの反射は、大部分がユーザ側で導波路から出る。しかしながら、次に、その光の僅かな部分が導波路の非ユーザ側の導波路/空気界面から反射して戻る場合がある。加えて、いくらかの光は、導波路/空気の眼の側の反射からの反射に続いて、格子と再度相互作用する。いくつかの実施形態では、フレネル反射は、導波路上のARコーティングにより緩和され得る。より高い屈折率のガラスを含む導波路は、より高いフレネル反射を有し得る。したがって、ARコーティングはアイグローを低減することができる。更に、ユーザの眼は、散乱および鏡面反射、最も一般的には2つの混合の形態をとることができる反射光に寄与し得る。ユーザの眼からの散乱または反射に対する寄与は、眼における表面または光学媒体のうちの任意のものにおいて生じる場合があり、プルキンエ反射を含み得る。ホログラムおよび導波路材料からの散乱光、ならびにホログラムに記録されたヘイズからの散乱光は、散乱中心の性質によって決まる指向性および等方性特性を有し得る。この光のうちのいくらかは、導波路外面を通ってまっすぐ進むことができる。他の出口経路は、ユーザの眼およびユーザに近い導波路の表面における反射を含むことができる。
【0188】
F.液晶層を含む実施形態
いくつかの実施形態では、液晶層は、アイグローを減少させるために導波路によって支持され得る。液晶層はコレステリック液晶層であり得る。液晶層は、高い回折効率を提供することができる狭帯域反射格子を提供することができる。液晶層は、製造が安価であり得る。液晶層は、複数の波長帯ノッチをカバーするために多層スタッキングで構成され得る(例えば、R/G/Bレーザ光源)。格子周期を制御するために、キラルドーパントが液晶層に添加されてもよい。
【0189】
いくつかの実施形態では、アイグロー制御層は導波路に含めることができる。アイグロー制御層は、反応性メソゲンとしても知られる液晶ポリマー(LCP)と呼ばれる重合性液晶を含むことができる。LCPは、LCの全ての一般的な特性を有することができるが、液体状態において存在するLC配向および複屈折特性が、材料がポリマーにおいて固化されているときに保持される固体材料を形成するように重合されることも可能である。UV配向を用いて、LCが液体状態にある間、LCディレクタを所望の方向に整列させることができる。LCPは、選択性色反射体、リタデーション(4分の1波、半波等)等の広範にわたる光学機能を可能にすることができる。LCPは、光開始剤および指向性UV光の存在下で互いに重合し、強固な2Dまたは3Dネットワークを形成する、反応性アクリレート末端基等の液晶モノマーを含むことができる。本開示全体にわたって論じられるように、LCPアイグロー制御層は、他のアイグロー制御層と併せて用いられ得る。例示的なLCP材料は、Merck KGaA(ドイツ)によって開発されている。いくつかの実施形態では、アイグロー制御層は、反射性コレステリック反応性メソゲンナノポスト構造を用いて調整可能な反射フィルタに基づき得る。反射波長は、印刷技法を用いて製造され得るナノポストのピッチに依拠することができる。ナノポストは、通常、1ミクロン~10ミクロンの範囲のピッチを有する10ミクロン~500nmの高さの機構のアレイとして形成され得る。
【0190】
G.導波路出力偏光設計を含む実施形態
出力アイグローの漏れは強力であり得るが、出力格子が単一の格子を用いて表され得る導波路ソリューションにおいて完全に偏光されない場合がある。いくつかの実施形態では、強く偏光されたアイグローの漏れは、導波路の前面に配置された直線偏光子(例えば、アナライザ)を用いて最小化することができるが、シースルー透過の犠牲を伴う。クロス多重化出力格子を有する出力格子(例えば、統合二軸拡張IDA設計)は、直線出力偏光状態を有しない場合があるが、そのような格子において、偏光は、構成要素である多重化(MUX)格子の各々のkベクトルに一致する。MUX出力格子が互いに対し90度にある場合、出力偏光は混合され得、このとき、直線アナライザはアイグローを部分的に削減する役割のみを果たす。いくつかの実施形態では、MUX出力格子は、1つの特定の方向において各格子のkベクトル成分を最小化し(例えば、kベクトルの垂直成分を最小化し)、反対方向における水平成分のみを残す。格子が(反対方向において)完全に整列されておらず、1つの方向が直交する方向よりも強力な出力偏光を有するように配列された場合であっても、直線アナライザの使用が依然として有益である。MUX出力構造kベクトルの大部分が反対方向にあるいくつかの実施形態では、直線アナライザは、アイグローの漏れを完全に遮断しない場合があるが、アイグローが直線アナライザによるシースルー透過における損失係数よりも大きい係数によって遮断され得る配向が得られ得る。いくつかの実施形態では、アイグロー偏光の配向は、異方性出力構成におけるkベクトルと強力に揃えられ得、異方性格子におけるkベクトルと直交し得る。
【0191】
いくつかの実施形態では、アイグローを低減させることができる調光層が、導波路の上面に施され得る。しかしながら、調光層は、光学シースルー透過も低減する場合がある。いくつかの実施形態では、調光層は、パッシブ調光層またはアクティブ調光層であり得る。アクティブ調光層は、エレクトロクロミックまたはフォトクロミック調光層であり得る。いくつかの実施形態では、アクティブ調光層は、プロジェクタ(例えば、画面生成ユニット)によって表示される画像コンテンツの輝度に一致および同期される時間的透過変動を提供することができる。
【0192】
いくつかの実施形態では、アイグローを低減させることができるマイクロルーバ膜が導波路の上面に施され得る。マイクロルーバ膜を用いて、本開示の全体を通じて説明される格子および薄膜コーティングソリューションの多くの有効角度帯域幅の限界にあり得る極端な角度においてアイグローを抑制することができる。マイクロルーバ膜は、偏光子と組み合わせることができる。例示的なマイクロルーバ膜は、3M Company(ミネソタ)によって製造された光制御膜である。
【0193】
[均等論]
上記の説明は、本発明の多くの特定の実施形態を含有するが、これらは、本発明の範囲の限定として解釈されるべきではなく、むしろ、その一実施形態の例として解釈されるべきである。したがって、本発明が、本発明の範囲および趣旨から逸脱することなく、具体的に記載された方法以外の方法で実施され得ることを理解されたい。このように、本発明の実施形態は、あらゆる点で例示的であり、限定的ではないと見なされるべきである。したがって、本発明の範囲は、示された実施形態によってではなく、添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物によって決定されるべきである。
【符号の説明】
【0194】
100 導波路
110 格子層
111 基板
112 基板
113 眼
120 エリア
122 ビーム
130 エリア
132 入射ビーム
134 アイグロービーム
140a 反射ビーム
140b 反射ビーム
200 導波路
210 格子層
230 導波路
230a 導波路
231 導波路
240 反射格子層、上部格子
240a 透過回折要素
240b 反射回折要素
241 底部格子
250 エリア
252 ビーム
260 エリア
262 光線
264 光線
265 光線、アイグロー光
270 光吸収層
270a 光吸収層
310 ベース導波路
320 スペーサビーズ
352 光
354 光
400 導波路
410 格子層
420 表面レリーフ反射格子
432 光線
440 エリア
442 光線
444 アイグロー光線
446 光線
500 導波路
510 反射格子
530 スペーサビーズ
600 導波路
600a 第1の導波路
600b 第2の導波路
600c 第3の導波路
602 格子層
610 ダイクロイック反射体
620 エリア
630 エリア
700 スペーサ
900 基板
1004 出力結合光学要素、ダイックロイックフィルタ
1006 入力結合光学要素
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
【国際調査報告】