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特表2024-502259平面基材の処理方法、殊に予備分離方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-18
(54)【発明の名称】平面基材の処理方法、殊に予備分離方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 33/03 20060101AFI20240111BHJP
   C03B 33/033 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
C03B33/03
C03B33/033
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537699
(86)(22)【出願日】2021-11-04
(85)【翻訳文提出日】2023-06-20
(86)【国際出願番号】 EP2021080593
(87)【国際公開番号】W WO2022135779
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】102020134451.1
(32)【優先日】2020-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504299782
【氏名又は名称】ショット アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SCHOTT AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr. 10, 55122 Mainz, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】フォルカー プラッパー
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル クルーゲ
(72)【発明者】
【氏名】クアト ナッターマン
【テーマコード(参考)】
4G015
【Fターム(参考)】
4G015FA03
4G015FA04
4G015FA06
4G015FB02
4G015FC01
4G015FC05
4G015FC10
(57)【要約】
本発明は、平面基材、殊にガラス基材の処理方法、殊に予備分離方法であって、前記基材を基材支持体上に載置し、且つ作用領域の範囲において、前記基材支持体の方向に作用する力をかけるが、補整領域の範囲においては、前記基材支持体の方向に作用する力をかけず、且つ有利には、前記作用領域の範囲において、前記基材支持体の方向に作用する力を前記基材にかけている間に、前記基材の予備分離を行う、前記方法、並びに平面基材を載置するための基材支持体、前記基材支持体上に載置された基材を処理するための処理装置、および方法に従って製造可能な基材に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面基材(100)、殊にガラス基材の処理方法、殊に予備分離方法であって、
前記基材(100)を基材支持体(500)上に載置し、且つ
作用領域(200)の範囲において前記基材(100)に、殊に前記基材を前記作用領域(200)の範囲において前記基材支持体に近付けるように、前記基材支持体(500)の方向に作用する力をかけ、且つ、
補整領域(300)の範囲において前記基材(100)に、殊に前記基材が前記補整領域(300)の範囲において一時的な変形を形成できるように、前記基材支持体(500)の方向に作用する力をかけず、且つ
有利には、前記作用領域(200)の範囲において前記基材(100)に、前記基材支持体(500)の方向に作用する力をかけている間に、前記基材の処理、殊に予備分離を行う、
前記方法。
【請求項2】
前記基材(100)が、有用面(120)の範囲において100μm未満、好ましくは70μm未満、特に好ましくは50μm未満、または40μm未満である厚さを有し、且つ/または
前記基材(100)が、不用面(140)の範囲において前記有用面の範囲における厚さよりも大きな厚さを有し、殊に少なくとも2倍、少なくとも3倍、または少なくとも5倍大きな厚さを有し、
前記不用面(140)は、有利には、基材端部に沿って延在する基材縁領域、特に好ましくはそれぞれ基材端部に沿って延在する2つの対向する基材縁領域を含み、その間に前記有用面(120)が存在し、1つまたは2つの対向する前記基材縁領域は有利には耳部として形成されており、
前記不用面(140)は、有利にはそれぞれ、それに対して垂直に延在する端部に沿って延在する1つまたは2つのさらなる基材縁領域を含む、
請求項1に記載の基材の処理方法。
【請求項3】
前記基材が、殊に100mmを上回る、好ましくは300mmを上回る、特に好ましくは500mmを上回る、または600mmを上回る、または700mmを上回る長さを有し、前記の長さは殊に耳部に沿って延在し、且つ/または
前記基材が、殊に100mmを上回る、好ましくは300mmを上回る、特に好ましくは500mmを上回る、または600mmを上回る、または700mmを上回る幅を有し、前記の幅は殊に耳部に対して垂直に延在し、且つ/または
前記基材が、殊に0.01m2を上回る、好ましくは0.1m2を上回る、特に好ましくは0.25m2を上回る面積を有する、
請求項1または2に記載の基材の処理方法。
【請求項4】
前記基材支持体の方向に作用する力が前記基材にかけられる前記作用領域(200)が、前記基材の面積の80%未満、好ましくは前記基材の面積の60%未満、特に好ましくは前記基材の面積の40%未満であり、且つ/または
前記基材支持体の方向に作用する力が前記基材にかけられない前記補整領域(300)が、前記基材の面積の20%を上回り、好ましくは前記基材の面積の40%を上回り、特に好ましくは前記基材の面積の60%を上回り、且つ/または
前記作用領域(200)が少なくとも、前記不用面(140)の一部、殊に縁領域の一部、殊に耳部の一部、並びに有用面(120)の一部を含み、且つ/または
前記作用領域(200)が、殊に前記基材の長さに沿って延在する、殊に耳部に沿って延在する帯状に形成され、その帯は好ましくは前記基材の幅の50%未満、特に好ましくは前記基材の幅の40%未満、または前記基材の幅の30%未満である幅を有する、
請求項1から3までのいずれか1項に記載の基材の処理方法。
【請求項5】
前記作用領域(200)の範囲において前記基材支持体の方向に作用する力が、殊に前記基材支持体における開口部または前記基材支持体の開気孔を用いて、前記基材支持体に向けられた基材表面に負圧を適用することによって引き起こされ、且つ/または
前記作用領域(200)の範囲において前記基材支持体の方向に作用する力が、前記基材および/または前記基材支持体の静電気帯電によって引き起こされ、且つ/または
前記作用領域(200)の範囲において前記基材支持体の方向に作用する力が、前記基材を前記基材支持体に機械的に押し付けるかまたは引きつけることによって引き起こされる、
請求項1から4までのいずれか1項に記載の基材の処理方法。
【請求項6】
前記作用領域(200)の範囲において前記基材支持体の方向に作用する力を前記基材にかけている間、
前記基材支持体(500)と前記基材(100)との間の最大間隔が、前記作用領域の範囲において5mm未満、有利には3mm未満、特に好ましくは1mm未満であり、且つ/または
前記基材における最大引張応力が、50MPa未満、有利には30MPa未満、特に好ましくは20MPa未満であり、且つ/または
前記基材内の作用領域(200)の範囲における最大引張応力が、33MPa未満、有利には20MPa未満、特に好ましくは15MPa未満である、
請求項1から5までのいずれか1項に記載の基材の処理方法。
【請求項7】
前記基材(100)の処理、殊に予備分離を、所定の分離線(400)に沿って行い、該分離線は少なくとも部分的に、有利には大部分が、前記作用領域(200)内に延在し、
前記所定の分離線(400)は有利には、前記基材の長さに沿って延在し、殊に耳部に沿って延在して、殊に前記分離線が不用面を有用面から分離し、且つ/または
前記基材の処理、殊に予備分離は、レーザー光線を前記作用領域の範囲において前記基材に導入することを含み、
殊に前記所定の分離線に沿って隣り合って互いに間隔をあけた傷が前記基材に導入され、
前記傷は有利にはフィラメント状の傷として形成され、且つ特に好ましくは超短パルスレーザーのパルスレーザー光線を用いて生成され、且つ/または
前記基材の処理、殊に予備分離は、前記作用領域の範囲において前記基材に傷を導入することを含み、前記傷は有利には所定の分離線に沿って延在し、且つ特に好ましくはスクライビングホイールまたは針を用いて生成される、
請求項1から6までのいずれか1項に記載の基材の処理方法。
【請求項8】
前記基材支持体の方向に作用する力が前記基材にかけられる前記作用領域(200)が、第1の耳部に沿って帯状に形成され、且つ基材の予備分離が行われる所定の分離線は前記耳部の隣に延在し、殊に前記基材の長さ全体に沿って延在して、前記分離線に沿って前記耳部を分離除去することができ、
且つ有利には、前記第1の耳部の1つに対向する第2の耳部に沿って帯状に形成される第2の作用領域(200)が備えられ、且つ前記第2の耳部の隣に延在する、殊に前記基材の長さ全体に沿って延在する第2の所定の分離線を備えて、前記分離線に沿って前記第2の耳部を分離除去することができ、
且つ有利には、それぞれ耳部に対して垂直に延在する縁領域に沿って帯状に形成される第3の作用領域(200)および場合により第4の作用領域(200)を備え、且つそれぞれ前記基材端部の隣に延在する第3の所定の分離線および場合により第4の所定の分離線を備えて、前記分離線に沿ってそれぞれの縁領域を分離除去することができる、
請求項1から7までのいずれか1項に記載の基材の処理方法。
【請求項9】
力を作用させることを、複数の作用領域(200)内で時間的に順次行い、且つ
有利には、力を作用させることを特定の作用領域(200)内で行う間、所属する分離線(400)に沿って予備分離を行い、且つ
有利には、力を作用させることを、複数の作用領域(200)の作用領域の複数の群内で同時に行い、且つ作用領域の群の間で時間的に順次行う、
請求項1から8までのいずれか1項に記載の基材の処理方法。
【請求項10】
殊に予備分離のために備えられた処理ステーションにおいて、単数または複数の準備された分離線(400)に沿って前記基材を予備分離した後に、殊に分離のために備えられた処理ステーションにおいて、単数または複数の準備された分離線(400)に沿って前記基材を分離し、
有利には、分離の間、前記基材支持体の方向に作用する力を前記基材にかけ、その力は殊に前記有用面の範囲において作用する、
請求項1から9までのいずれか1項に記載の基材の処理方法。
【請求項11】
殊に予備分離のために備えられた処理ステーションにおいて、単数または複数の準備された分離線(400)に沿って前記基材を予備分離する前に、殊に取り付けのために備えられた処理ステーションにおいて、前記基材を前記基材支持体上に取り付け、
有利には、取り付けの間、前記基材支持体の方向に作用する力を前記基材にかけ、その力は殊に前記有用面の範囲において、および前記不用面の範囲において作用し、殊に、まず前記有用面の範囲において作用し、その後、前記不用面の範囲において作用して、前記基材を内側から外側へと基材支持体上に取り付ける、
請求項1から10までのいずれか1項に記載の基材の処理方法。
【請求項12】
処理ステーション、殊に取り付けのために備えられた処理ステーション、予備分離のために備えられた処理ステーション、および/または分離のために備えられた処理ステーションが、空間的に互いに離れて構成され、殊に処理装置において空間的に隣り合って配置されており、且つ
前記基材支持体は可動式に構成されることができ、且つ前記方法の間に1つの処理ステーションから隣の処理ステーションに移動される、
請求項1から11までのいずれか1項に記載の基材の処理方法。
【請求項13】
平面基材を殊に請求項1から12までのいずれか1項に記載の方法で処理するために前記平面基材を載置するための基材支持体であって、
前記基材支持体(500)は、載置された基材に、作用領域内で前記基材支持体の方向に作用する力をかけるための手段を有し、前記手段は好ましくは、載置された基材に負圧を印加するための前記基材支持体における開口部として、または前記基材支持体の開気孔として構成され、
有利には、前記基材支持体(500)は、載置された基材と共に移動できるように可動式に構成される、
前記基材支持体。
【請求項14】
前記基材支持体(500)が、力を印加するための手段が配置されている作用範囲を含み、前記作用範囲は前記基材支持体の面積の80%未満、好ましくは前記基材支持体の面積の60%未満、特に好ましくは前記基材支持体の面積の40%未満であり、且つ/または
前記基材支持体(500)が、力を印加するための手段が配置されていない補整範囲を含み、前記補整範囲は前記基材支持体の面積の20%を上回り、好ましくは前記基材支持体の面積の40%を上回り、特に好ましくは前記基材支持体の面積の60%を上回り、且つ/または
前記作用範囲は、殊に前記基材支持体の幅の50%未満、特に好ましくは前記基材支持体の幅の40%未満、または前記基材支持体の幅の30%未満である幅を有する帯状に形成され、且つ/または
有利には、前記基材支持体は、特に好ましくは第1の作用範囲に対して平行に延在する第2の作用範囲を含み、および有利には、前記基材支持体は、特に好ましくは前記第1の作用範囲もしくは第2の作用範囲に対して垂直に延在する第3の作用範囲および場合により第4の作用範囲をさらに含む、
請求項13に記載の基材支持体。
【請求項15】
基材支持体(500)上に載置された平面基材(100)、殊にガラス基材を処理、殊に予備分離および/または分離するための処理装置であって、
前記基材支持体上に載置された平面基材を所定の分離線に沿って予備分離するための、予備分離するために備えられた処理ステーションであって、有利には、前記基材支持体上に載置された基材に作用領域内で前記基材支持体の方向に作用する力をかけるために力を引き起こすための手段を含む、前記予備分離するために備えられた処理ステーション、
有利にはさらに、前記基材支持体上に載置された平面基材を予備分離後に、準備された分離線に沿って分離するための、分離するために備えられた処理ステーションであって、有利には、前記基材支持体上に載置された基材に、前記基材支持体の方向に作用する力をかけるために力を引き起こすための手段を含み、前記の力は殊に前記基材の有用面の範囲において作用する、前記分離するために備えられた処理ステーション、
有利にはさらに、前記基材支持体上に載置された平面基材を予備分離前に前記基材支持体に取り付けるための、取り付けのために備えられた処理ステーションであって、有利には、前記基材支持体上に載置された基材に、前記基材支持体の方向に作用する力をかけるために力を引き起こすための手段を含み、前記の力は殊に前記基材の有用面の範囲において、および不用面の範囲において作用して、前記基材を内側から外側へと前記基材支持体上に取り付ける、前記取り付けのために備えられた処理ステーション、および
有利にはさらに、基材支持体を、載置された基材と共に1つの処理ステーションから隣の処理ステーションへと移動するための基材支持体コンベア
を含む、前記装置。
【請求項16】
基材、有利にはガラス基材、殊に請求項1から13までのいずれか1項に記載の方法によって製造可能または製造された基材、有利にはガラス基材であって、
100μm未満、好ましくは70μm未満、特に好ましくは50μm未満、または40μm未満である厚さ、および
0.01m2を上回る、好ましくは0.1m2を上回る、特に好ましくは0.25m2を上回る面積、および
予備分離によって生成された準備された分離線、殊にレーザー、スクライビングホイールまたは針を用いて生成された準備された分離線を分離することによって製造された少なくとも1つの基材端部
を有する、前記基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は平面基材、殊にガラス基材の処理方法、殊に予備分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス基材を分離するために、種々の方法、例えばいわゆるレーザーフィラメンテーションが公知である。その際、第1の段階において超短パルスレーザーを用いて、所定の分離線に沿って定義された材料の弱化部が材料中に導入される(予備加工もしくは予備分離)。次いで、第2の段階において、前記基材は生成された予備傷に沿って分離され(分割工程)、ここで材料の分離は例えば機械的に誘導される引張応力が引き金となり得る。ガラス基材を分離するための他の方法は、スクライビングおよびブレーキングである。その際、第1の段階において所定の分離線に沿って、スクライビングホイール、ダイヤモンド針または類似の工具を用いて材料に傷を入れ(予備分離)、そして第2の段階において分離線に沿って分離する(分割工程)。
【0003】
しかしながら殊にこの方法を薄いガラス(例えば<100μm)に使用する場合、問題が起きることがある。これは、殊に製造に起因する耳部を有する薄いガラスはその熱間成形工程後に状態の「凍結」からもたらされる固有の応力を負うことに由来し得る。殊に薄い基材およびより厚い耳部領域における冷却速度による違いが、冷却された状態において応力の構築をもたらす。これは、ガラス基材の順安定変形として現れるので、平面の処理テーブル上に置くと波を投じる(平坦性)。
【0004】
例えばレーザーフィラメンテーションまたはスクライビングを用いた加工のために十分な平坦性を達成するために、ガラス基材を伸張して下地の上に平らに引き伸ばすことができる。しかしながら、この変形によって、さらなる応力が発生し、それは出発材料によっては加工された分離線の強度を上回り且つこれが制御されずに破壊するほどの高さになることがある。これは例えば、固定を解除した際に生じることがあり、その際、材料中の応力が再分散し、且つその際、引張応力が加工された分離線に当たる。
【0005】
制御されない破壊は場合により製造されるべき基材の破損をみちびくことがある。このような破壊は例えば、支配的な応力(1.主応力)が破壊強度を上回るが、導入された予備傷からは幾何学的に異なる方向に向いている場合に制御されずに生じることがある。それによって、制御されない破壊が最終的な製品の範囲にも生じることがある。
【0006】
上述の問題は殊に、ガラス基材のサイズが大きくなると共に決定的になり、なぜなら、熱間成形工程による変形を平らに引き伸ばす際に発生する応力が大きくなるからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明は、平面基材の処理方法、殊に予備分離方法であって、先述の問題を回避し、殊により薄いガラス基材の予備分離を可能にし、その際、前記基材は予備分離された分離線に沿って一緒に保持されており、殊にそのような分離線に沿って制御されずに割れない、前記方法を示すという課題に基づく。前記の処理、殊に予備分離は、好ましくは基材中で内部引張応力が支配的であり且つ/または耳部の範囲が存在し、且つ/または前記基材が比較的大きな面積を有する場合にも可能にされるべきである。本発明の課題のさらなる態様は、かかる方法を実施するための装置、および場合により適した装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題を解決するために、本発明は平面基材、殊にガラス基材の処理方法、殊に予備分離方法であって、前記基材を基材支持体上に載置し、作用領域の範囲において、殊に前記基材を前記作用領域の範囲において前記基材支持体に近付けるように、前記基材支持体の方向に作用する力をかけ、且つ補整領域の範囲において、殊に前記基材が前記補整領域の範囲において一時的な変形を形成できるように、前記基材支持体の方向に作用する力をかけない、前記方法を開示する。
【0009】
基材を殊に作用領域の範囲において伸張するが、補整領域の範囲においては伸張しないことによって、局所的にガラス基材の平坦性が高められるので、例えばレーザーフィラメンテーション、スクライビングまたは他の処理形態を用いた加工が可能になる。同時にその際、基材中に生じる応力が小さく保たれ、殊に全面的に伸張された、つまり全体が平らに引き伸ばされた基材の場合よりも小さく保たれ得る。これは、変形のために必要とされるエネルギーが明らかに小さく、従って変形によって生じる追加的な応力も小さいことに基づく。
【0010】
原則的に、局所的に限定される作用領域は基材の任意の位置に備えられることができ、且つ前記作用領域は殊に、基材が処理され且つ/または局所的に高められた平坦性が生じる位置からは外れることもできる。
【0011】
例えば、材料を小さな作用領域においてのみ除去して、殊に加工されるべき領域からできるだけ離れて除去して固定できる。レーザーを用いた処理の場合、しかし一般にも、これによって達成される加工領域における平坦性は場合により、レーザーを用いて焦点位置でガラスシートを加工するためには不十分であることがある。
【0012】
従って、レーザーを用いた処理の場合、しかし一般にも、ガラスシートが加工領域内または加工領域の周りの十分に小さな範囲において、それがこの領域において基材支持体上で十分に平坦に載るように伸張されることも提案できる。
【0013】
平面基材を処理する方法、殊に予備分離する方法は、有利にはさらに、作用領域の範囲において基材支持体の方法に作用する力を前記基材にかけている間に、例えばレーザーフィラメンテーション、スクライビングまたは一般に任意の種類の予備分離を用いて、基材を処理、殊に予備分離することを含む。
【0014】
本発明による方法は、薄く且つ大面積の基材のために特に適しており、ここで前記基材は有用面および不用面(例えば耳部)を有し得る。前記基材は有利には脆性で壊れやすい材料、殊に固有の材料応力を有する材料、例えばガラス、ガラス状材料、セラミックまたはガラスセラミックを含むか、またはそのような材料からなる。
【0015】
有利には、前記基材は有用面の範囲において100μm未満、好ましくは70μm未満、特に好ましくは50μm未満、または40μm未満である厚さを有する。
【0016】
有利には、前記基材は不用面の範囲において、有用面の範囲における厚さよりも大きな厚さ、殊に少なくとも2倍、少なくとも3倍、または少なくとも5倍大きな厚さを有する。
【0017】
不用面は有利には基材端部に沿って延在する基材縁領域、特に好ましくはそれぞれ基材端部に沿って延在する2つの対向する基材縁領域を含み、その間に有用面が存在し、1つまたは2つの対向する基材縁領域は例えば耳部として形成され得る。
【0018】
不用面はさらに、それに対してそれぞれ垂直な端部に沿って延在する1つまたは2つのさらなる基材縁領域を含むことができ、例えば四角い基材の場合、それぞれの端部に沿って分離されるべき縁領域が備えられている。
【0019】
基材は有利には100mmを上回る、好ましくは300mmを上回る、特に好ましくは500mmを上回る、または600mmを上回る、または700mmを上回る長さを有する。前記の長さは殊に、耳部に沿って延在する寸法と理解されるべきである。
【0020】
基材は有利には100mmを上回る、好ましくは300mmを上回る、特に好ましくは500mmを上回る、または600mmを上回る、または700mmを上回る幅を有する。前記の幅は殊に、耳部に対して垂直に延在する寸法と理解されるべきである。
【0021】
全体として基材は0.01m2を上回る、0.1m2を上回る、または0.25m2を上回る面積を有し得る。
【0022】
既に説明されたとおり、本発明の範囲において基材は全面的ではなく局所的にのみ力をかけられる。基材が基材支持体の方向に作用する力をかけられる作用領域は殊に、基材の面積の80%未満、好ましくは基材の面積の60%未満、特に好ましくは基材の面積の40%未満である。
【0023】
基材が基材支持体の方向に作用する力をかけられない補整領域は殊に、基材の面積の20%を上回り、好ましくは基材の面積の40%を上回り、特に好ましくは基材の面積の60%を上回る。
【0024】
殊にレーザーを用いた処理の場合、しかし一般にも、処理範囲において、処理範囲の近傍で、または処理範囲の周りでも基材に力をかけることが提案される。この場合、しかし一般にも、加工されるべき領域の周りの幅の横方向の形態は、材料に特異的に存在する応力から経験的に特定され得るかまたは特定可能であることができる。これらは、熱間成形工程および材料に応じて非常に異なることになる。
【0025】
例えば、力が作用する作用領域は、少なくとも不用面の一部、殊に縁領域の一部、殊に耳部の一部、並びに基材の有用面の一部を含むことが意図され得る。
【0026】
有利には、作用領域は、殊に基材の長さに沿って延在する、殊に耳部に沿って延在する帯状に形成されることができ、その帯は好ましくは基材の幅の50%未満、特に好ましくは基材の幅の40%未満、または基材の幅の30%未満である幅を有する。
【0027】
本発明の例示的な実施態様において、作用領域は例えば内側のみ、または外側のみに存在することもでき、または種々の切断部(400)での組み合わせも提供され得る。
【0028】
例えばガラスシートの局所的な固定を引き起こす、本発明による作用領域の範囲において基材支持体の方向に作用する力は、種々の機構、例えば真空、静電気または機械によって生成され得るが、他の形態の力の生成も考慮される。
【0029】
作用領域の範囲において基材支持体の方向に作用する力は、例えば、殊に基材支持体における開口部または基材支持体の開気孔を用いて、基材支持体に向けられた基材表面に負圧を適用することによって引き起こされ得る。押さえ器具によって上から基材に力を印加することもできる。さらに、電圧源(例えば充電システム、イオン化システム)によって力を引き起こすこともできる。
【0030】
作用領域の範囲において基材支持体の方向に作用する力は、基材および/または基材支持体の静電気帯電によっても引き起こされ得る。
【0031】
作用領域の範囲において基材支持体の方向に作用する力は、さらに、基材を基材支持体に機械的に押し付けるかまたは引きつけることによっても引き起こされ得る。
【0032】
従って一般に、作用領域の範囲において基材にかけられる基材支持体の方向に作用する力は、物理的な意味で殊に面積に関する力(「圧力」または「面積力」)であることができる。
【0033】
作用領域の範囲においてどのように力が引き起こされるかには関わらず、基材の平坦性は、殊に作用領域の範囲おいて高められ得るが、しかし原則的に作用領域の外側でも高められ得る。同時に、作用領域を局所的に制限することによって、基材中に生じる応力を小さく保ち、殊に全体が伸張された基材の場合よりも小さく保つことができる。
【0034】
作用領域の範囲において基材支持体の方向に作用する力を基材にかけている間、基材支持体と基材との間の最大間隔は、作用領域において5mm未満、有利には3mm未満、特に好ましくは1mm未満であることができる。
【0035】
そのように生成される状態は、双安定と称され得る。例示的に挙げられた数値は局所的にのみ与えられ得る。さらに、前記間隔は場合により材料の厚さおよび/または材料の初期応力に依存し得る。一例において、挙げられた数値は例えば100μm未満、殊に70μm未満、または50μm未満の厚さを有する基材の場合に与えられ得る。一例において、前記数値は、外部からのさらなる影響なく、台の平面上で4mmを上回る隆起部を点状に有する基材の場合にもたらされ得る。
【0036】
さらに、作用領域の範囲において基材支持体の方向に作用する力を基材にかけている間、殊に作用領域並びに補整領域を含めて、基材における最大引張応力は、50MPa未満、有利には30MPa未満、特に好ましくは20MPa未満であることができる。
【0037】
さらに、作用領域の範囲において力を基材にかけている間、基材内の作用領域の範囲における最大引張応力は33MPa未満、有利には20MPa未満、特に好ましくは15MPa未満であることができる。
【0038】
先述の引張応力に比して、一例においては全面的に平坦に引き延ばされた基材の場合、縁領域において100MPaまで、またはその範囲の引張応力が形成されることがある。
【0039】
先述のMPaでの値は、例えばシミュレーションを用いて特定可能であることができる。領域的な伸張によって、応力がより強く端部に移動できる。
【0040】
既に説明されたとおり、本発明による平面基材の処理方法、殊に予備分離方法は有利には、作用領域の範囲において基材に力をかけている間に基材を処理すること、殊に予備分離することも含む。
【0041】
基材の処理、殊に予備分離は有利には所定の分離線に沿って行われ、該分離線は少なくとも部分的に、しかし大部分でも、作用領域内に延在し得る。
【0042】
所定の分離線は有利には基材の長さに沿って、殊に耳部に沿って延在し、前記分離線は殊に不用面を有用面から分離して、不用面を分離除去でき、且つ有用面から最終製品としてのガラス基材を作製することができる。
【0043】
原則的に分離線は直線状に延在することも、曲がって延在することもでき、且つ/または交差する複数の分離線が備えられることもできる。殊に交差する分離線の場合、連続した加工が意図され得る。
【0044】
基材の処理、殊に予備分離は有利には、殊に作用領域の範囲において、レーザー光線を基材に導入することを含む。その際、殊に所定の分離線に沿って隣り合って互いに間隔をあけた傷が基材に導入されることができ、前記傷は有利にはフィラメント状の傷として形成され、且つ特に好ましくは超短パルスレーザーのパルスレーザー光線を用いて生成される。
【0045】
基材の処理、殊に予備分離は、一般にあらゆる種類の予備傷を基材に、殊に作用領域の範囲において導入することを含み得る。その際、殊に所定の分離線に沿って傷を基材に導入することができ、その傷は例えばレーザーを用いて、スクライビングホイールを用いて、針(例えばダイヤモンド針)または基材を処理するための他の工具を用いて行われ得る。
【0046】
基材支持体の方向に作用する力が基材にかけられる作用領域は、殊に第1の耳部に沿って帯状に形成されることができ、且つ基材の予備分離が行われる所定の分離線はその耳部の隣に延在し、殊に基材の長さ全体に沿って延在して、前記分離線に沿って耳部を分離除去することができる。
【0047】
本発明による方法の利点は、全体の応力が低いままであり、従って基材の予備傷がガラス端部上でも生じ得ることである。それに対し、実験は、全面的な固定の場合、予備傷はガラス端部上までは導入され得ないことが多く、制御されない劈開を起こさないためには十分な間隔が必要であることを示した。これについての原因は、大きな空間波長の支配的な変形(ドーム、ボウル、鞍)を平らに引き伸ばすことによって発生する引張応力が基材端部では、多くの場合、予備傷の破壊強度を上回るほど高いことである。
【0048】
さらなる構成において、プロセスに応じて特定の領域を局所的に伸張し且つ/または平らに固定できる種々の組み合わせ可能な作用領域も備えられ得る。
【0049】
有利には例えば、第1の耳部の1つに対向する第2の耳部に沿って帯状に形成される第2の作用領域を備えることができ、且つ第2の耳部の隣に延在する、殊に基材の長さ全体に沿って延在する第2の所定の分離線を備えて、前記分離線に沿って第2の耳部を分離除去することができる。
【0050】
さらに、例えばそれぞれ耳部に対して垂直に延在する縁領域に沿って帯状に形成される第3の作用領域および場合により第4の作用領域を備えることもでき、且つそれぞれ基材端部の隣に延在する第3の所定の分離線および場合により第4の所定の分離線を備えて、前記分離線に沿ってそれぞれの縁領域を分離除去することができる。
【0051】
複数の作用領域の場合、力を作用させることを、複数の作用領域内で時間的に順次行うことができる。特定の作用領域内で力を作用させる間、有利には、所属する、つまり殊にこの作用領域を通じて延在する分離線に沿って予備分離が実施される。さらに、力を作用させることを、複数の作用領域の作用領域の複数の群内で同時に行い、且つ作用領域の群の間で時間的に順次行うことが意図され得る。例えば、前記領域を「重ねる」、つまり例えば複数が同時に活性であるように(例えば第1の領域および第2の領域、その後に第3の領域および第4の領域)、時間的に連続して活性化できることが意図され得る。
【0052】
平面基材の処理方法、殊に予備分離方法はさらに、予備分離に後続する分離段階も含み得る。前記法法は例えば、複数の処理ステーションを有する処理装置において行うことができ、ここで、1つの処理ステーションは予備分離のために備えられ、且つさらなる処理ステーションは分離のために備えられている。
【0053】
殊に、単数または複数の準備された分離線に沿って基材を予備分離した後(例えば予備分離のために備えられた処理ステーションにおいて行われる)、単数または複数の準備された分離線に沿って基材の分離を行うことができる(例えば分離のために備えられた処理ステーションにおいて行われる)。
【0054】
分離の間も、有利には、基材支持体の方向に作用する力を基材にかけることができ、これは殊に有用面の範囲において作用し得る。
【0055】
単数または複数の準備された分離線に沿って基材を予備分離する前(例えば予備分離のために備えられた処理ステーションにおいて行われる)にさらに、基材を基材支持体上に取り付けることができる(殊に取り付けのために備えられた処理ステーションにおいて行われる)。
【0056】
取り付けの間にも、基材支持体の方向に作用する力を基材にかけることができ、その力は例えば有用面の範囲において、および不用面の範囲においても作用することができ、ここで前記の力は殊にまず有用面の範囲において作用し、その後、不用面の範囲において作用して、基材を内側から外側へと基材支持体上に取り付ける。
【0057】
種々の処理ステーションが空間的に互いに離れて構成されることができ、例えば処理装置において空間的に隣り合って配置され得る。
【0058】
基材支持体は殊に、可動式に構成されることができ、且つ例えば前記方法の間に1つの処理ステーションから隣の処理ステーションに移動できる。基材支持体は例えば装置内で可動であることができる。基材支持体を搬送可能に、例えばステーションまたは装置の間で(例えばローラートラック、ロボットおよび/または無人搬送システムによって)搬送され得るように構成することもできる。
【0059】
本発明はさらに、殊に上述の方法で基材を処理するために平面基材を載置するための基材支持体に関する。
【0060】
前記基材支持体は、載置された基材に、作用領域内で基材支持体の方向に作用する力をかけるための手段を有する。前記手段は例えば、基材支持体上に載置された基材に負圧を印加するための基材支持体における開口部として、または基材支持体の開気孔として構成される。
【0061】
基材支持体における開口部の場合、これは例えば直径0.5mm~12mm、有利には1mm~6mmを有し得る。前記開口部は例えば円筒状または疑似円筒状のチャネルとして構成され得る。開気孔の場合、これは粉末冶金プロセスから生じ得る。
【0062】
一般に、力を印加するための手段は、有利には力を局所的に印加することを確実にするように構成され得る。例えば伸張システム(例えば真空もしくは真空システム)の構造を局所的に十分に良好に構成できることが意図され得る。その際、好ましくは他の領域へのクロストークは排除されるかまたは大幅に回避される。真空の場合、これは場合により開口部の小さな直径によって促進され得る。
【0063】
基材支持体は原則的に種々の材料を含むかまたはそれらからなることができ、例えばプラスチックまたはセラミックを含むかまたはそれらからなることができる。
【0064】
基材支持体は有利には、載置された基材と共に、殊に1つの処理ステーションから隣の処理ステーションに、および/または装置間を移動できるように可動式または搬送可能に構成される。
【0065】
例示的な実施態様において、基材支持体は、力を印加するための手段が配置されている作用範囲および/または力を印加するための手段が配置されていない補整範囲を含み、ここで前記作用範囲は基材支持体の面積の80%未満、好ましくは基材支持体の面積の60%未満、特に基材支持体の面積の40%未満であり、前記補整範囲は基材支持体の面積の20%を上回り、好ましくは基材支持体の面積の40%を上回り、特に好ましくは基材支持体の面積の60%を上回る。
【0066】
前記作用範囲は基材支持体の面積の70%未満、または基材支持体の面積の30%未満であってもよい。
【0067】
前記作用範囲は例えば、殊に基材支持体の幅の50%未満、特に好ましくは基材支持体の幅の40%未満、または基材支持体の幅の30%未満である幅を有する帯状に形成されることができる。基材支持体はさらに有利には、特に好ましくは第1の作用範囲に対して平行に延在する第2の作用範囲、およびさらに有利には、特に好ましくは第1の作用範囲および第2の作用範囲に対して垂直に延在する第3の作用範囲および場合により第4の作用範囲をさらに含むことができる。
【0068】
帯状に形成された作用範囲は、基材支持体の幅の70%未満である幅を有することもできる。
【0069】
本発明はさらに、基材支持体上に載置された平面基材、殊にガラス基材を処理、殊に予備分離および/または分離するための処理装置に関する。
【0070】
前記処理装置は、基材支持体上に載置された平面基材を所定の分離線に沿って予備分離するための、例えば所定の分離線に沿って隣り合って互いに間隔をあけられた傷を基材に導入するための超短パルスレーザー、または例えば分離線に沿って基材を傷付けるためのスクライビングホイールまたは例えば針を含む、予備分離するために備えられた処理ステーションを含む。
【0071】
予備分離のために備えられた処理ステーションは有利には、基材支持体上に載置された基材に作用領域内で基材支持体の方向に作用する力をかけるために力を引き起こすための手段を含み、ここで前記手段は、例えば基材支持体における開口部または基材支持体の開気孔に負圧を適用するための負圧源として構成され、または例えば押さえ器具として、または例えば電圧源として構成される。
【0072】
さらに、処理装置は有利には、基材支持体上に載置された平面基材を予備分離後に、準備された分離線に沿って分離するための、分離するために備えられた処理ステーションを含む。
【0073】
分離のために備えられた処理ステーションも、有利には、基材支持体上に載置された基材に、基材支持体の方向に作用する力をかけるために力を引き起こすための手段を含み、ここで前記の力は殊に基材の有用面の範囲において作用し、前記手段は殊に、基材支持体における開口部または基材支持体の開気孔に負圧を適用するための負圧源として構成され、または例えば押さえ器具として、または例えば電圧源として構成される。
【0074】
さらに、処理装置は有利には、基材支持体上に載置された平面基材を予備分離前に基材支持体に取り付けるための、取り付けのために備えられた処理ステーションを含む。
【0075】
取り付けのために備えられた処理ステーションも、有利には、基材支持体上に載置された基材に、基材支持体の方向に作用する力をかけるために力を引き起こすための手段を含み、ここで前記の力は殊に基材の有用面の範囲において、および基材の不用面の範囲において作用して、基材を内側から外側へと前記基材支持体上に取り付け、前記手段は殊に、基材支持体における開口部または基材支持体の開気孔に負圧を適用するための負圧源として構成され、または例えば押さえ器具として、または例えば電圧源として構成される。
【0076】
基材支持体は装置内で処理ステーションから処理ステーションへと受け渡され得る。従って、処理装置は有利には、基材支持体を載置された基材と共に1つの処理ステーションから隣の処理ステーションへと移動するための基材支持体コンベアを含む。
【0077】
原則的に、各々の処理ステーションは、相応の作用領域内で力を引き起こすための負圧源、押さえ器具、および/または電圧源を有することができる。基材支持体の搬送の間には力が印加されないことが意図され得る。
【0078】
他方で、基材支持体の移動の間もしくは搬送の間に力が保持されるままであることも意図され得る。例えば基材支持体は、例えば基材支持体の受け渡しの間にも負圧が存在するように負圧源を含む。この場合、例えば基材は複数の処理ステーションにわたって固定されたままであることができる。従って、原則的に伸張技術を、搬送の間、つまり例えば2つの処理ステーションの間を移行する間にも保持したままであることができる。
【0079】
最後に、本発明は基材、殊に上述の方法で製造可能かまたは製造された基材にも関する。前記基材は有利には脆性で壊れやすい材料、殊に固有の材料応力を有する材料、例えばガラス、ガラス状材料、セラミックまたはガラスセラミックを含むか、またはそのような材料からなる。
【0080】
前記基材は100μm未満、好ましくは70μm未満、特に好ましくは50μm未満、または40μm未満である厚さ、および0.01m2を上回る、好ましくは0.1m2を上回る、特に好ましくは0.25m2を上回る面積を有する。
【0081】
さらに前記基材は、予備分離によって生成された準備された分離線、殊にレーザー、スクライビングホイールまたは針を用いて生成された準備された分離線の予備分離を分離することによって製造された少なくとも1つの基材端部を有する。レーザーを用いて生成された分離線の場合、基材は、基材の少なくとも1つの端部に沿って隣り合って配置されている、互いに間隔をあけられたフィラメント状の傷を有することができる。
【0082】
本発明を以下でいくつかの図面を用いてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0083】
図1図1はガラス基材の上面図を示す。
図2図2は基材支持体上のガラス基材の側面の断面図を示す。
図3図3は作用範囲および準備された分離線を有するガラス基材の上面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0084】
図1は、有用面120並びに不用面140を有する基材100の上面図を示す。不用面140はそれぞれ基材100の端部に沿って延在する、2つの対向する基材縁領域を含み、その間に有用面120が存在する。基材の2つの対向する縁領域はこの場合、基材100の対向する耳部として形成される。
【0085】
図2は、この例においては薄ガラスとして形成される基材100の側面の断面図を示す。基材100は有用面120の範囲において例えば100μm未満である厚さを有する。ただし、この例においては2つの対向する耳部を含む不用面140の範囲において、基材はより大きな厚さを有する。
【0086】
基材100を処理するために、殊に予備分離するために、これを基材支持体500上に載置する。薄い平面状のガラス基材を規定どおりに単離する、つまり2つの対向する耳部を分離除去することが望ましいことが多い。例えば製造に際して有用面120の範囲とより厚い不用面140の範囲とにおける基材100の異なる冷却速度から生じ得る基材100における固有の内部応力に基づき、基材100は基材支持体500上で平らに載っているのではなく、基材支持体に対して局所的に異なる間隔を有する。
【0087】
これに対抗するために、例えば平面状の真空システムによって、基材支持体500の方向に作用する力を基材100上に全面的に引き起こして、加工のために十分な平坦性を達成することが、たしかに原則的には可能である。ただしこれは、基材100においてさらなる応力が発生し、それが安全な加工、殊に基材100の制御された予備分離を困難にするかまたは阻止するという欠点を有する。
【0088】
図3は基材100の上面図を示し、ここで基材100は局所的に限定された作用領域200の範囲(点線で区切られた範囲)において、下にある基材支持体500の方向に作用する力をかけられる。殊に基材100の中央を含む補整領域300の範囲において、基材100は基材支持体500の方向に作用する力をかけられない。
【0089】
基材100の処理、殊に予備分離は、所定の分離線400に沿って行われ、前記分離線は示された例においてはそれぞれ作用領域200の1つを通じて延在するかまたはこの作用領域200に大部分または全体的に存在する。示される例において、一方では2つの対抗する作用領域200が備えられ、それは長さLに沿って帯状に延在し且つ部分的に有用面120の範囲並びに部分的に不用面140の範囲を含む。他方ではそれに対して垂直に延在する2つの作用領域200も備えられる。
【0090】
作用領域200内で力が作用している間に、それぞれの分離線400に沿った予備分離を行うことができる。異なる領域の加工は、同時または連続して行うことができる。
【0091】
意外なことに、分離線400における、もしくは分離線400の周りの十分に小さな作用領域200において、基材100を、それが作用領域200において十分に平坦に基材支持体500上に置くように基材支持体500に近付けることによって、分離線400に沿った基材の十分な平坦性を良好に達成できることが判明した。
【0092】
しかしながら原則的に、拘束条件に応じて、所属する分離線400とは異なる位置にある作用領域200も備えられ得る。例えば、加工されるべき領域からできるだけ離れた小さな領域においてのみ基材を固定することも考えられる。しかしながらこれは、基材の固有の内部応力および特性に応じて、加工されるべき領域において、加工のために、例えばガラスシートを焦点位置でレーザーを用いて加工するために、十分な平坦性が達成されないことをみちびくことがある。従って、そのような場合、作用領域200の近くまたはその内部の分離線400が有利である。
【0093】
基材100の例示的な実施態様は、厚さ100μm未満、殊に70μm未満、例えば40μm、または40μm未満を有する薄いガラスに関する。作用領域200は例えば、分離線(加工領域)の周りで少なくとも10mm、有利には少なくとも20mm、例えば30mm(±15mm)、または30mmを上回る幅を有し得る。分離線400は例えば、ガラス端部(耳部)に対して50mmの間隔で延在でき、且つ例えばUKPレーザーによって穿孔を用いて形成され得る。本発明は有利な方式で、分離線400がガラス端部まで達する場合であっても、予備傷が制御されずに割れることなく、基材を伸張し、加工し、且つ再度緩和することを可能にする。比較例においては、同じ設定の場合に全面的な伸張で(つまり基材が全面的に平坦に固定される場合)、緩和の際に全ての基材が制御されずに破壊された。本発明は多くの基材のために、例えば脆くて壊れやすい材料、殊に固有の材料応力を有する材料、例えばガラス基材またはガラス状基材、例えば工業用および光学用ガラス、またはセラミックまたはガラスセラミックのために適している。
図1
図2
図3
【国際調査報告】