(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-18
(54)【発明の名称】自転車の速度を検出する方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
B62J 45/00 20200101AFI20240111BHJP
B62J 45/412 20200101ALI20240111BHJP
B62J 45/423 20200101ALI20240111BHJP
B60T 8/171 20060101ALI20240111BHJP
B60T 8/66 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
B62J45/00
B62J45/412
B62J45/423
B60T8/171 Z
B60T8/66 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537921
(86)(22)【出願日】2021-12-17
(85)【翻訳文提出日】2023-07-27
(86)【国際出願番号】 EP2021086410
(87)【国際公開番号】W WO2022136148
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】102020000031865
(32)【優先日】2020-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522243484
【氏名又は名称】ライカム・ドライブライン・ソチエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ
【氏名又は名称原語表記】RAICAM DRIVELINE S.R.L.
(74)【代理人】
【識別番号】110003007
【氏名又は名称】弁理士法人謝国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】サルビアン、マシュー
(72)【発明者】
【氏名】ストルーヴ、ベンジャミン チェットウッド
(72)【発明者】
【氏名】カネストラリ、アンドリュー
【テーマコード(参考)】
3D246
【Fターム(参考)】
3D246AA11
3D246BA02
3D246DA01
3D246GB01
3D246HA44A
3D246HA64A
3D246HA67B
3D246HA87C
3D246HC13
3D246KA13
(57)【要約】
前輪にABSシステムを備えた自転車の速度を検出する方法であって、該方法では、後輪減速度が所定の許容限界の値よりも低ければ、自転車速度は後輪速度と識別され、または、フロント ブレーキ サーキット圧が所定の低圧許容限界よりも低ければ、自転車速度は前輪速度と識別され、または、自転車速度は、最終既知速度と推定減速度に基づいた推定速度である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪にABSシステムを備えた自転車の速度を検出する方法であって、
a) 前輪上の第1回転速度センサから前輪速度を取得し;
b) 後輪上の第2回転速度センサから後輪速度を取得し;
c) フロント ブレーキ油圧サーキット内の圧力トランスデューサーからフロント ブレーキ サーキット圧を取得し;そして
d) 後輪減速度を計算し;
e) 前記後輪減速度が所定の許容限界値よりも低ければ、自転車速度は、後輪速度によって識別され、または
f) 前記フロント ブレーキ サーキット圧が所定の低圧許容限界よりも低ければ、自転車速度は、前輪速度によって識別され、または
g) 自転車速度は、以下:
i) 前輪速度をメモリバッファに保存し;
ii) 該メモリバッファが満たされたときに、前輪平均速度及び前輪減速度を計算し;
iii) 該前輪減速度の値が所定の減速度許容限界内であれば、自転車速度を最後に計算された前輪平均速度の値として推定し、前記前輪平均速度及び前輪減速度の値を保存し;
iv) 該前輪減速度の値が所定の減速度許容限界を超えると、自転車速度を、保存された前輪平均速度の値と保存された前輪減速度の値との差に、該前輪平均速度及び前輪減速度の値が保存されてからの経過時間を乗じたものとして推定する
サブステップに従って計算される推定速度である、
ステップを含む、方法。
【請求項2】
ステップd)、e)、f)、及びg)が、自転車速度が後輪速度である第1状態、自転車速度が推定速度である第2状態、及び自転車速度が前輪速度である第3状態を有する有限状態マシンによって実行され、
前記フロント ブレーキ サーキット圧が高圧許容限界よりも高く、かつ前輪速度と後輪速度との差が所定の高デルタ車輪速度の許容限界よりも大きいときに、前記第1状態から前記第2状態への移行が発生し;
前記フロント ブレーキ サーキット圧が所定の低圧許容限界よりも低いときに、前記第2状態から前記第3状態への移行が発生し;
前記フロント ブレーキ サーキット圧が所定の高圧許容限界よりも高いときに、前記第3状態から前記第2状態への移行が発生し;
推定速度と後輪速度との差が所定の低デルタ車輪速度の許容限界よりも小さいときに、前記第2状態から前記第1状態への移行が発生し;
前記フロント ブレーキ サーキット圧が所定の低圧許容限界よりも低く、かつ前輪速度と後輪速度との差が所定の高デルタ車輪速度の許容限界よりも大きいときに、前記第1状態から前記第3状態への移行が発生し;
前輪速度と後輪速度との差が所定の低デルタ車輪速度の許容限界よりも小さいときに、前記第3状態から前記第1状態への移行が発生する、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記高圧許容限界が、それを超えると前輪がスリップまたはロックしているとみなされる圧力許容限界値である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記低圧許容限界が、それ未満であると前輪が自由に回転しているとみなされる圧力許容限界値である、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記高デルタ車輪速度の許容限界が、それを超えると1つの車輪がスリップしているとみなされるデルタ車輪速度の許容限界値である、請求項2~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記低デルタ車輪速度の許容限界が、それ未満であると両方の車輪が同じ速度で回転しているとみなされるデルタ車輪速度の許容限界値である、請求項2~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
検出された自転車速度が、前輪速度、後輪速度、及び推定速度のうちの1つに対応する古い値から、該前輪速度、後輪速度、及び推定速度のうちの異なる1つに対応する、異なる新しい値に変化すれば、その間に自転車速度が前記古い値から前記新しい値に徐々に変化しながら計算される移行検出時間間隔が提供される、前記いずれかの請求項に記載の方法。
【請求項8】
検出された自転車速度は、前記古い値から前記新しい値に変化するときに、最後に検出された値が保存され、移行速度値は、
移行速度値 = 新しい値 ― (保存された値 / (経過時間)
n)
(式中、経過時間:前記古い値から変化した以降の期間;n<1)
のように計算される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前輪にABSシステムを備えた自転車の速度を検出するシステムであって、
前輪速度の検出に適した第1回転速度センサ;
後輪速度の検出に適した第2回転速度センサ;
フロント ブレーキ油圧サーキット内のフロント ブレーキ サーキット圧の
検出に適した圧力トランスデューサー;及び
前記第1回転速度センサ、第2回転速度センサ、及び圧力トランスデューサー
に動作可能に結合され、前記いずれかの請求項に記載の自転車速度を検出する方法を実行するために構成された電子制御ユニット
を含む、システム。
【請求項10】
前記電子制御ユニットが、前記第1回転速度センサ及びメモリバッファに動作可能に結合され、
前輪速度を前記メモリバッファに保存し;
該メモリバッファが満たされたときに、前輪平均速度及び前輪減速度を計算し;
該前輪減速度の値が所定の減速度許容限界内であれば、自転車速度を最後に計算された前輪平均速度の値として推定し、
前記前輪平均速度及び前輪減速度の値を前記メモリバッファに保存し;
該前輪減速度の値が所定の減速度許容限界を超えると、自転車速度を、保存された前輪平均速度の値と保存された前輪減速度の値との差に、該前輪平均速度及び前輪減速度の値が保存されてからの経過時間を乗じたものとして推定する
ように構成された速度推定器モジュールを含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記電子制御ユニットが、前記第1回転速度センサ、第2回転速度センサ、圧力トランスデューサー、及び速度推定器モジュールに動作可能に結合され、かつ請求項2~6のいずれかに記載の方法による速度選択状態マシンを実行するために構成された速度選択状態マシン モジュールを含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記電子制御ユニットが、前記第1回転速度センサ、第2回転速度センサ、及び速度推定器モジュールに動作可能に結合され、かつ該第1回転速度センサ、第2回転速度センサ、及び速度推定器モジュールからの出力データのうちの1つを前記速度選択状態マシン モジュールから受信した制御信号に従って選択的に出力するように構成された速度選択スイッチ モジュールをさらに含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記電子制御ユニットが、検出された自転車速度が、前記前輪速度、後輪速度、及び推定速度のうちの1つに対応する古い値から、該前輪速度、後輪速度及び推定速度のうちの異なる1つに対応する、異なる新しい値に変化するときに、最後に検出された速度値を保存し、移行速度値を
移行速度値 = 新しい値 ― (保存された値 / (経過時間)
n)
(式中、経過時間:前記古い値から変化した以降の期間;n<1)
のように計算するように構成された断絶補正モジュールをさらに含む、請求項9~12のいずれかに記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動自転車の分野に関し、より具体的には、前輪にABSシステムを備えた自転車の速度を検出する方法及びシステムに関する。特に、本発明の目的は、ABSシステム内で使用される制御システムの一部である自転車動作オブザーバである。
【背景】
【0002】
このソフトウェアベースの構成要素の目的は、(例えば、いずれかの車輪がロックまたは横滑りしている場合)個々の測定された車輪速度が信頼できるかどうかに関係なく、リアルタイムの自転車速度を計算することである。このようにして、危険な状況でもABSシステムを継続的に制御することが可能である。
【0003】
周知のように、ABSシステムを備えた自転車においてライダーがブレーキをかける際には、制御輪がロックしているか否かを把握する必要がある。これをするのは、ブレーキをかけた車輪速度と自転車速度を比較することによってのみ可能である。
【0004】
しかし、自転車の車輪の一方または他方または両方がロックまたはスリップしている場合には、利用可能なデータから自転車速度の最もよく推定することが要求される。例えば、前輪にABSシステムが取り付けられた自転車では、(前輪上の回転速度センサからの)前輪速度、(後輪上の回転速度センサからの)後輪速度、(フロント ブレーキ油圧サーキットにある圧力トランスデューサーからの)フロント ブレー キサーキット圧のデータが利用可能である。
【0005】
ブレーキのない通常の状況下では、後輪速度が自転車速度の最も信頼できるデータ源であると想定することができる。しかし、自転車の減速が大きい場合は、一方または他方、または両方の車輪速度が信頼できない可能性があることを考慮する必要がある。自転車が強く減速しているにもかかわらず、フロント ブレーキ サーキットに圧力がかかっていない場合は、リア ブレーキが作動していて、また、後輪が横滑りしたりロックしたりする危険性があると想定することができる。従って、自転車速度データの最も信頼できる供給源として前輪速度を考慮すべきである。逆に、自転車が減速し、フロント ブレーキ サーキットが加圧されると、前輪がスリップしたりロックしたりする危険性がある。残念ながら、リア ブレーキ サーキット内の圧力を測定する方法がないため、後輪速度が信頼できると想定することはできない。
【0006】
従って、本発明の目的は、これらの状況下で、自転車の速度を効果的、信頼性の高い、かつ簡単な方法で推定することである。
【0007】
このような目的は、請求項1に記載の自転車速度を検出する方法及び請求項9に記載の自転車速度を検出するシステムによって達成される。従属請求項は、本発明による方法及びシステムの好ましい実施形態に関する。
【概要】
【0008】
本発明の一般的な実施形態によれば、前記方法は、前輪にABSシステムを備えた自転車の速度を検出する。該方法は、次のステップを含む:
【0009】
前輪上の第1回転速度センサから前輪速度を取得し;
【0010】
後輪上の第2回転速度センサから後輪速度を取得し;
【0011】
フロント ブレーキ油圧サーキット内の圧力トランスデューサーからフロント ブレーキ サーキット圧を取得し;そして
【0012】
後輪減速度を計算する。
【0013】
前記後輪減速度が所定の許容限界値よりも低ければ、自転車速度は、後輪速度によって識別される。
【0014】
後輪減速度が所定の許容限界よりも高ければ、前記方法は、以下の更なるステップを含む:
【0015】
前記フロント ブレーキ サーキット圧が所定の低圧許容限界よりも低ければ、自転車速度は、前輪速度によって識別される。
【0016】
前記フロント ブレーキ サーキット圧が所定の低圧許容限界よりも高ければ、自転車速度は、以下のサブステップに従って計算される推定速度である:
【0017】
前輪速度をメモリバッファに保存し;
【0018】
該メモリバッファが満たされたときに、前輪平均速度及び前輪減速度を計算し;
【0019】
前輪減速度の値が所定の減速度許容限界内であれば、自転車速度を最後に計算された前輪平均速度の値として推定し、前輪平均速度及び前輪減速度の値を保存し;
【0020】
該前輪減速度の値が所定の減速度許容限界を超えると、自転車速度は、保存された前輪平均速度の値と保存された前輪減速度の値との差に、該前輪平均速度及び前輪減速度の値が保存されてからの経過時間を乗じたものとして推定する。
【0021】
本発明の一態様によれば、少なくともいくつかの方法ステップは、自転車速度が後輪速度である第1状態、自転車速度が推定速度である第2状態、及び自転車速度が前輪速度である第3状態を有する有限状態マシンによって実行される。該有限状態マシンにおいて、
【0022】
前記フロント ブレーキ サーキット圧が高圧許容限界よりも高く、かつ前輪速度と後輪速度との差が所定の高デルタ車輪速度の許容限界よりも大きいときに、前記第1状態から前記第2状態への移行が発生し;
【0023】
前記フロント ブレーキ サーキット圧が所定の低圧許容限界よりも低いときに、前記第2状態から前記第3状態への移行が発生し;
【0024】
前記フロント ブレーキ サーキット圧が所定の高圧許容限界よりも高いときに、前記第3状態から前記第2状態への移行が発生し;
【0025】
推定速度と後輪速度との差が所定の低デルタ車輪速度の許容限界よりも小さいときに、前記第2状態から前記第1状態への移行が発生し;
【0026】
前記フロント ブレーキ サーキット圧が所定の低圧許容限界よりも低く、かつ前輪速度と後輪速度との差が所定の高デルタ車輪速度の許容限界よりも大きいときに、前記第1状態から前記第3状態への移行が発生し;
【0027】
前輪速度と後輪速度との差が所定の低デルタ車輪速度の許容限界よりも小さいときに、前記第3状態から前記第1状態への移行が発生する。
【0028】
一実施形態では、前記高圧許容限界は、それを超えると前輪がスリップまたはロックしているとみなされる圧力許容限界値である。
【0029】
一実施形態では、前記低圧許容限界は、それ未満であると前輪が自由に回転しているとみなされる圧力許容限界値である。
【0030】
一実施形態では、前記高デルタ車輪速度の許容限界は、それを超えると1つの車輪がスリップしているとみなされるデルタ車輪速度の許容限界値である。
【0031】
一実施形態では、前記低デルタ車輪速度の許容限界は、それ未満であると両方の車輪が同じ速度で回転しているとみなされるデルタ車輪速度の許容限界値である。
【0032】
本発明の更なる態様によれば、検出された自転車速度が、前輪速度、後輪速度、及び推定速度のうちの1つに対応する古い値から、該前輪速度、後輪速度、及び推定速度のうちの異なる1つに対応する、異なる新しい値に変化すれば、その間に自転車速度が前記古い値から前記新しい値に徐々に変化しながら計算される移行検出時間間隔が提供される。
【0033】
一実施形態では、検出された自転車速度が、前記古い値から前記新しい値に変化するときに、最後に検出された値が保存され、移行速度値は、次のように計算される:
移行速度値 = 新しい値 ― (保存された値 / (経過時間)n)
式中、経過時間:前記古い値から変化した以降の期間;n<1。
【0034】
前輪にABSシステムを備えた自転車の速度を検出するシステムも開示される。一般的な実施形態によれば、該システムは、以下を含む:
【0035】
前輪速度の検出に適した第1回転速度センサ;
【0036】
後輪速度の検出に適した第2回転速度センサ;
【0037】
フロント ブレーキ油圧サーキット内のフロント ブレーキ サーキット圧の検出に適した圧力トランスデューサー;及び
【0038】
前記第1回転速度センサ、第2回転速度センサ、及び圧力トランスデューサーに動作可能に結合された電子制御ユニット。
【0039】
前記電子制御ユニットは、上記開示された自転車速度を検出する方法を実行するために構成される。
【0040】
本発明の一態様によれば、前記電子制御ユニットは、前記第1回転速度センサ及びメモリバッファに動作可能に結合され、以下の指示に従って自転車速度を推定するように構成された速度推定器モジュールを含む:
【0041】
前輪速度を前記メモリバッファに保存すること;
【0042】
該メモリバッファが満たされたときに、前輪平均速度及び前輪減速度を計算すること;
【0043】
該前輪減速度の値が所定の減速度許容限界内であれば、自転車速度を最後に計算された前輪平均速度の値として推定し、
【0044】
前記前輪平均速度及び前輪減速度の値を前記メモリバッファに保存すること;
【0045】
該前輪減速度の値が所定の減速度許容限界を超えると、自転車速度を、保存された前輪平均速度の値と保存された前輪減速度の値との差に、該前輪平均速度及び前輪減速度の値が保存されてからの経過時間を乗じたものとして推定すること。
【0046】
一実施形態によれば、前記電子制御ユニットは、前記第1回転速度センサ、第2回転速度センサ、圧力トランスデューサー、及び速度推定器モジュールに動作可能に結合された速度選択状態マシン モジュールを含む。該速度選択状態マシン モジュールは、上記開示された速度選択状態マシンを実行するために構成される。
【0047】
一実施形態によれば、前記電子制御ユニットは、前記第1回転速度センサ、第2回転速度センサ、及び速度推定器モジュールに動作可能に結合された速度選択スイッチ モジュールをさらに含む。該速度選択スイッチ モジュールは、該第1回転速度センサ、第2回転速度センサ、及び速度推定器モジュールからの出力データのうちの1つを前記速度選択状態マシン モジュールから受信した制御信号に従って選択的に出力するように構成される。
【0048】
本発明の一態様によれば、前記電子制御ユニットは、検出された自転車速度が、前記前輪速度、後輪速度、及び推定速度のうちの1つに対応する古い値から、該前輪速度、後輪速度及び推定速度のうちの異なる1つに対応する、異なる新しい値に変化するときに、最後に検出された速度値を保存し、移行速度値を次のように計算するように構成される断絶補正モジュールをさらに含む:
移行速度値 = 新しい値 ― (保存された値 / (経過時間)n)
式中、経過時間:前記古い値から変化した以降の期間;n<1。
【0049】
上記例示的な態様の簡単な概要は、本開示の基本を理解するために役立つ。本概要は、企図される全ての態様の広範なものではなく、本開示の全ての態様の重要なまたは決定的な要素を特定することも、その一部または全ての態様の範囲を描写することも意図していない。その唯一の目的は、以下開示のより詳細な説明への前置きとして、1つ以上の態様を簡略化した形で提示することである。これを達成するために、本開示の1つ以上の態様は、請求項に記載されまた例示された特徴を含む。
【図面の簡単な説明】
【0050】
本明細書に組み込まれ、その一部を構成する添付図面は、本開示の1つまたは複数の例示的な態様を示し、詳細な説明とともに、それらの原理及び実行を説明するのに役立つ。
【0051】
図1は、本発明の一般的な実施形態による自転車速度を検出する方法のフローチャートである。
【0052】
図2は、自転車速度を検出するシステムを表す図である。
【0053】
図3は、前輪減速度が所定の許容限界内に留まるときの速度推定器モジュールの挙動を示す時間対速度の図である。
【0054】
図4は、前輪減速度が所定の許容限界を突然に超えたときの速度推定器モジュールの挙動を示す時間対速度の図である。
【0055】
図5は、本発明による有限状態マシンにおける各状態移行を可能にするために満たされるべき論理的条件を示す表である。
【0056】
図6は、断絶補正モジュールの挙動を示す時間対速度の図である。
【0057】
本発明の好ましい実施形態の詳細な説明は、前記の添付図面を参照して以下に開示される。
【詳細な説明】
【0058】
本明細書では、ABSシステムを備えた自転車の速度を検出するシステム及び方法に関連して例示的な態様を説明する。当業者であれば、以下の説明は単なる例示であり、いかなる意味でも限定することを意図したものではないことを理解するであろう。他の態様は、本開示の恩恵を受ける当業者であれば容易に想到するであろう。次に、添付図面に示される例示的な態様の実行について詳細に参照する。
【0059】
図1は、自転車速度を検出する方法の一般的な実施形態を開示する。
【0060】
前記方法は、以下を入力データとして自転車速度を推定するリアルタイム計算モデルによって実行してもよい:
【0061】
フロント ブレーキ キャリパー サーキット内で測定された油圧データ10;
【0062】
前輪速度データ20;及び
【0063】
後輪速度データ30。
【0064】
前記圧力のデータは、フロント ブレーキ油圧サーキット内の圧力トランスデューサー12から取得することができる。
【0065】
前輪速度データ20は、前輪上の第1回転速度センサ22から取得することができる。
【0066】
後輪速度データ30は、後輪上の第2回転速度センサ32から取得することができる。
【0067】
開始点100として、自転車速度は、後輪速度に対応する。
【0068】
ステップ102では、後輪減速度を算出する。
【0069】
ステップ104では、後輪減速度を所定の許容限界値と比較する。
【0070】
該後輪減速度が所定の許容限界値よりも低ければ、自転車速度は、後輪速度によって識別される。
【0071】
該後輪減速度が所定の許容限界値よりも高ければ、ステップ106において、前輪ブレーキ サーキット内に圧力があるかどうかがチェックされる。
【0072】
フロント ブレーキ サーキット圧が所定の低圧許容限界よりも低ければ、自転車速度は、前輪速度によって識別される(ステップ108)。
【0073】
フロント ブレーキ サーキット圧が所定の低圧許容限界よりも高ければ、自転車速度は、
図2を参照して以下に説明されるに従って計算される推定速度である(ステップ110)。
【0074】
図2は、自転車速度を検出するための、本発明の例示的な実施形態によるシステム200のブロック図を開示する。
【0075】
前記システム200は、前輪速度を検出するのに適した第1回転速度センサ22、後輪速度を検出するのに適した第2回転速度センサ32、フロント ブレーキ油圧サーキット内のフロント ブレーキ サーキット圧を検出するのに適した圧力トランスデューサー12、及び前記第1回転速度センサ22、第2回転速度センサ32及び圧力トランスデューサー12に動作可能に結合された電子制御ユニット40を含む。
【0076】
図2に開示される電子制御ユニット40は、ロー パス フィルタ42と44、速度推定器モジュール46、速度選択状態マシン モジュール48、速度選択スイッチ50、及び断絶補正モジュール52を含む。
【0077】
次に、電子制御ユニット40のこれらの構成要素について詳細に説明する。
【0078】
ロー パス フィルタ42と44は、計算誤差を引き起こし得る信号上のスパイクを回避するために、生の速度データをフィルタリングする計算ブロックである。これらの機能は、ABS制御システムの応答性を損なわないように、遅延時間をできるだけ短くするように設計されている。該目的に使用できる複数のフィルタ技術が利用可能である。例えば、移動平均フィルタを実行することができる。
【0079】
速度推定器モジュール46は、自転車速度を推定する計算ブロックからなる。いくつかの例では、これは、速度推定器の結果が速度選択スイッチ モジュール50を介してABS制御システムに転用されていないときでも、常にその計算を実行している。
【0080】
前記計算は、測定された前輪速度の測定値をその入力データとして取り、該速度データポイントをメモリバッファにロードする。メモリ バッファが満たされたときに、前記アルゴリズムは、全ての値の平均(車輪平均速度)を計算し、バッファ内の最高値と最低値の差(これを、バッファを満たすための所要時間で割ると、車輪減速度が求められる)も計算する。
【0081】
前記減速度値が特定の許容限界内であれば、速度推定器モジュールは、最後に計算された車輪平均速度の値を出力し、前記車輪平均速度及び減速度の値は、メモリに保存される。
【0082】
前記減速度値が前記許容限界を超えると、前記モジュールの出力は、以前に保存された車輪平均速度の値から以前に保存された車輪減速度の値を差し引いて、それらの値が保存されてからの経過時間を乗じたものに等しい。
【0083】
従って、前記速度推定器モジュールの挙動は、次のように要約することができる:
【0084】
前記車輪減速度が所定の限界内であれば、車輪がロックまたは横滑りしていないと想定することができる。前記モジュールの出力は、平均車輪速度に等しい。これを
図3に図示する。
【0085】
前記車輪減速度が所定の許容限界を超えると、車輪は、ロックまたは横滑りにより速度が突然に変化したと想定することができる。前記モジュールの出力は、自転車がロックまたは横滑りが発生する前と同じ速度で減速し続けると仮定して計算される。これを
図4に図示する。
【0086】
状態マシン モジュール48は、次の入力データに基づいて利用可能な自転車速度ソース間で選択するために使用される決定プロセスを実行する:
【0087】
フィルタリングされた前輪速度;
【0088】
フィルタリングされた後輪速度;
【0089】
推定速度;
【0090】
フロント ブレーキ圧;及び
【0091】
参照定数
【0092】
前記速度選択状態マシンは、次の3つの状態を有する:
【0093】
第1状態:後輪速度が選択される。前記速度選択状態マシン モジュール48の出力は、速度選択スイッチ モジュール50に後輪速度を選択すべきであることを示す。
【0094】
第2状態:推定速度が選択される。前記速度選択状態マシン モジュール48の出力は、速度選択スイッチ モジュール50に推定速度を選択すべきであることを示す。
【0095】
第3状態:前輪速度が選択される。前記速度選択状態マシン モジュール48の出力は、速度選択スイッチ モジュール50に前輪速度を選択すべきであることを示す。
【0096】
これらの状態間の論理的フローは、
図2中の付番された矢印で示される一連の移行によって制御される。各論理的状態が現実になるときに、前記移行が発生する。
【0097】
そのために、ABSシステム開発のキャリブレーション段階において、固定されたパラメータ値のリストを前記システムにプログラムしなければならない。これらのパラメータは、次のとおりである:
【0098】
高キャリパー圧の許容限界:それを超えると前輪がスリップまたはロックする危険性があり得る圧力許容限界の値。
【0099】
低キャリパー圧の許容限界:それ未満であると前輪が自由に回転しているとみなされる圧力許容限界の値。
【0100】
高デルタ車輪速度の許容限界:それを超えると1つの車輪がスリップしているとみなされるデルタ車輪速度の許容限界値。
【0101】
低デルタ車輪速度の許容限界:それ未満であると両方の車輪が同じ速度で回転しているとみなされるデルタ車輪速度の許容限界値。
【0102】
各移行が発生できるために満たされなければならない論理的条件は、次のとおりである(移行番号は、
図2中の注釈を参照)。これらの論理的条件は、
図5の表に説明されている。
【0103】
前記フロント ブレーキ サーキット圧が前記高キャリパー圧の許容限界よりも高く、かつ前記前輪速度と後輪速度の差が前記高デルタ車輪速度の許容限界よりも大きいときに、前記第1状態から前記第2状態への移行(1)が発生し;
【0104】
前記フロント ブレーキ サーキット圧が前記低キャリパー圧の許容限界よりも低いときに、前記第2状態から前記第3状態への移行(2)が発生し;
【0105】
前記フロント ブレーキ サーキット圧が前記高キャリパー圧の許容限界よりも高いときに、前記第3状態から前記第2状態への移行(3)が発生し;
【0106】
前記推定速度と後輪速度との差が前記低デルタ車輪速度の許容限界よりも小さいときに、前記第2状態から前記第1状態への移行(4)が発生し;
【0107】
前記フロント ブレーキ サーキット圧が前記低キャリパー圧の許容限界よりも低く、かつ前記前輪速度と後輪速度との差が前記高デルタ車輪速度の許容限界よりも大きいときに、前記第1状態から前記第3状態への移行(5)が発生し;
【0108】
前記前輪速度と後輪速度との差が前記低デルタ車輪速度の許容限界よりも小さいときに、前記第3状態から前記第1状態への移行(6)が発生する。
【0109】
前記速度選択スイッチ モジュール50は、そのインプットから、後輪速度データのロー パス フィルタ44のアウトプットに、前輪速度データのロー パス フィルタ42のアウトプットに、及び速度推定器モジュール46のアウトプットに、動作可能に接続される。前記速度選択スイッチ モジュール50は、速度選択状態マシン モジュール48からスイッチ選択要求信号を受信するための制御インプットを有する。
【0110】
前記状態マシン モジュール48からの出力に応じて、正しい速度値が自転車動作オブザーバシステム200の出力に渡される。
【0111】
前記断絶補正モジュール52は、前記速度選択スイッチ モジュール50のアウトプット及び前記速度選択状態マシン48のアウトプットに動作可能に接続される。従って、前記スイッチ選択要求信号も前記断絶補正モジュール52によって受信される。
【0112】
前記断絶補正モジュール52の機能は、速度選択スイッチが入力ソース間で変化するときに、速度値が突然に連続しないことを回避することである。
【0113】
前記断絶検出モジュール52が、前記状態マシンからのスイッチ選択要求の値が変化したことを検出したときに、前記速度選択スイッチ モジュールから最後に検出された値がメモリに保存される。
【0114】
後続の計算ステップにおいて、次の出力値が計算される:
出力値 = 新しい速度データ ― (保存されたデータ / (経過時間)n)
式中、経過時間:前記スイッチ選択要求が変化した以降の期間;n<1。
【0115】
前記モジュールの挙動として、選択されたデータ ソース間で断絶が発生すれば、切り替えが発生した後に出力データが平滑化され、該出力データは、新しいデータ ソースからの値になる傾向がある。新しいデータ ソースになる傾向が発生する割合は、羃乗nの値に依存する。前記断絶補正ブロックの挙動を
図6に図示する。
【0116】
上記の説明から理解できるように、前記推定速度は、慣性センサを使用せずに数学的に計算される。両方の車輪速度が信頼できない場合(例えば、後輪速度が信頼できるかどうかが不明であり、かつある参考値を超える圧力がフロント ブレーキ キャリパーに加えられたため、前輪も横滑りしている可能性がある)、推定速度が使用される。
【0117】
有利なことに、慣性センサを使用せずに自転車速度を推定し、上に列挙した入力データから導き出された最も信頼性の高いものから得られる最終に計算された速度を取得することが可能である。
【0118】
提案された計算方法は、潜在的に低い計算能力を必要とし、アルゴリズム全体を前記のバックグラウンドで実行できると同時に、正確で信頼性の高い結果を与えることができる。
【0119】
留意されたいこととして、本開示で使用される「モジュール」という用語は、例えば特定用途向け集積サーキット(ASIC)やFPGA等のハードウェアを使用して実行される、あるいはマイクロプロセッサシステムと、(実行中に)マイクロプロセッサシステムを専用装置に変換するモジュールの機能を実行するための命令セット等のハードウェアとソフトウェアの組み合わせとして実行される現実世界の装置、構成要素、または構成要素の配置を指す。モジュールは、ある機能がハードウェアのみによって促進され、他の機能がハードウェアとソフトウェアの組み合わせによって促進される、この2つの組み合わせとして実行することもできる。特定の実行形態では、モジュールの少なくとも一部、場合によっては全てが、コンピュータシステムのプロセッサ上で実行され得る。従って、各モジュールは、様々な適切な構成で実現することができ、本明細書で例示される特定の実行に限定されるべきではない。
【0120】
本明細書で開示される様々な態様は、例示として本明細書で参照される既知のモジュールの現在及び将来に知られる等価物を包含する。さらに、態様及び応用例を図示して説明してきたが、本開示の恩恵を受ける当業者には明らかであるように、本明細書に開示された発明の概念から逸脱することなく、上記よりもさらに多くの改変が可能である。
【0121】
例えば、ここで自転車に関して開示されたが、本発明の概念が他種の乗り物、例えば、前輪のみにABSを備えた他の二輪車(例えば、スクーターやオートバイ)、または単一の油圧サーキットを介して単一車軸上のブレーキにABSが適用され、かつ別の車軸の車輪の平均速度もシステムへの入力データとして使用される他の乗り物に拡大できることは明らかである。
【0122】
さらに、明確にするために、本開示は、前輪にABSシステムを備えた自転車について言及したが、本開示の恩恵を受ける当業者には明らかであるように、本発明の概念が後輪にABSシステムが取り付けられた自転車または他の乗り物にも応用することができる。
【国際調査報告】