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特表2024-502265生物力学的データの生成と解析用の方法及びシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-18
(54)【発明の名称】生物力学的データの生成と解析用の方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/11 20060101AFI20240111BHJP
【FI】
A61B5/11 230
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537933
(86)(22)【出願日】2021-12-21
(85)【翻訳文提出日】2023-08-16
(86)【国際出願番号】 CA2021051866
(87)【国際公開番号】W WO2022133601
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】63/129,543
(32)【優先日】2020-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523214546
【氏名又は名称】ビーテミア インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブルックシャウ,マーカス
(72)【発明者】
【氏名】ゾソ,ナサニエル
(72)【発明者】
【氏名】ベダード,ステファン
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038VA04
4C038VA11
4C038VB14
4C038VB24
4C038VC20
(57)【要約】
ユーザから収集された生物力学的データからこのユーザの生理学的評価を生成するシステムと方法。この方法は、
上記ユーザの生物力学的データを取得する工程と、
上記取得された生物力学的データを使用して、上記ユーザの軌道データを生成する工程と、
重要生物力学的特徴のセットに従って、上記軌道データを関心変数データに分類する工程と、
所定の受け入れ基準に適合しない関心変数データを拒否する工程と、
上記拒否されていない関心変数データの重要特徴を抽出する工程と、
1)抽出された重要特徴、2)ユーザプロファイル共変量データ及び3)関心変数データに基づいて、現累積リスクデータを計算する工程と、
上記現累積リスクデータを使用して、上記ユーザの上記生理学的評価を生成する工程とを、含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザから収集された生物力学的データから前記ユーザの生理学的評価を生成する方法であって、前記方法は、
前記ユーザの生物力学的データを取得する工程と、
前記取得された生物力学的データを使用して、前記ユーザの軌道データを生成する工程と、
重要生物力学的特徴のセットに従って、前記軌道データを関心変数データに分類する工程と、
所定の受け入れ基準に適合しない関心変数データを拒否する工程と、
前記拒否されていない関心変数データの重要特徴を抽出する工程と、
前記抽出された重要特徴、ユーザプロファイル共変量データ及び前記関心変数データに基づいて、現累積リスクデータを計算する工程と、
前記現累積リスクデータを使用して、前記ユーザの前記生理学的評価を生成する工程とを含む、方法。
【請求項2】
前記軌道データを個別セグメントへとソートし、ラベル付けする工程と、
個々のフレームの数を減らし、ノイズを除去するよう、軌道データの前記個別セグメントをフィルタリングする工程とを更に含み、
重要生物力学的特徴のセットに従って、前記軌道データを関心変数データに分類する前記工程は、前記フィルタ処理後の軌道データの個別セグメントについて実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ユーザに提示するために前記ユーザの前記評価に関する前記リスクデータをフォーマット化、簡素化する工程を更に含む、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
生物力学的に導出された情報を前記ユーザの前記評価に追加する工程を更に含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記重要生物力学的特徴は、参照データベース及び転帰データベースからのキュレート済みデータのインデックス付きの組み合わせを形成することによって得られ、
前記参照データベースは、重要生物力学的測定値及び関連する生理学的決定因子を含み、査読済み学術出版物を使用して構築され、
前記転帰データベースは、関連付けられた重要生物力学的測定値及び関連する統計的に確立された転帰を含み、ユーザ監視及び実験を使用して構築される、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ユーザの前記生物力学的データは、前記ユーザに配置された生物力学的センサから取得される、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記生物力学的センサは、前記ユーザにより装着される下半身装具デバイスに配置された慣性センサ及び角度センサを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記生物力学的センサは、前記ユーザの股関節、膝関節、骨盤領域、大腿部及び足部に対応する位置に配置される、請求項6又は請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記軌道データは、身体セグメントの三次元加速度データ、関節からの角度データ及び床反力データからなる群から選択される、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ユーザから収集された生物力学的データから前記ユーザの生理学的評価を生成するシステムであって、前記システムは、
関連するユーザの身体セグメントの運動学を観察するように構成された生物力学的センサと、
前記複数の生物力学的センサと通信するプロセッサであって、内部に命令を記憶した関連するメモリを含み、前記命令は、前記プロセッサで実行されると、
前記複数の生物力学的センサから、前記ユーザの生物力学的データを受信する工程と、
前記取得された生物力学的データを使用して、前記ユーザの軌道データを生成する工程と、
重要生物力学的特徴のセットに従って、前記軌道データを関心変数データに分類する工程と、
所定の受け入れ基準に適合しない関心変数データを拒否する工程と、
前記拒否されていない関心変数データの重要特徴を抽出する工程と、
前記抽出された重要特徴、ユーザプロファイル共変量データ及び前記関心変数データに基づいて、現累積リスクデータを計算する工程と、
前記現累積リスクデータを使用して、前記ユーザの前記生理学的評価を生成する工程とを実行するプロセッサとを含む、システム。
【請求項11】
前記メモリは、内部に記憶された更なる命令を含み、前記命令は、前記プロセッサで実行されると、
前記軌道データを個別セグメントへとソートし、ラベル付けする工程と、
個々のフレームの数を減らし、ノイズを除去するよう、軌道データの前記個別セグメントをフィルタリングする工程とを更に実行し、
重要生物力学的特徴のセットに従って、前記軌道データを関心変数データに分類する前記工程は、前記フィルタ処理後の軌道データの個別セグメントについて実行される、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記メモリは、内部に記憶された更なる命令を含み、前記命令は、前記プロセッサで実行されると、
前記ユーザに提示するために前記ユーザの前記評価に関する前記リスクデータをフォーマット化、簡素化する工程を更に実行する、請求項10又は請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記メモリは、内部に記憶された更なる命令を含み、前記命令は、前記プロセッサで実行されると、
生物力学的に導出された情報を前記ユーザの前記評価に追加する工程を更に実行する、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
査読済み学術出版物からの、重要生物力学的測定値及び関連する生理学的決定因子を含む参照データベースと、
ユーザ監視及び実験からの、関連付けられた重要生物力学的測定値及び関連する統計的に確立された転帰を含む、転帰データベースとを更に含み、
前記重要生物力学的特徴は、前記参照データベース及び前記転帰データベースからのキュレート済みデータのインデックス付きの組み合わせを形成することによって得られる、請求項10から請求項13のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項15】
前記生物力学的センサは、前記ユーザにより装着される下半身装具デバイスに配置された慣性センサ及び角度センサを含む、請求項10から請求項14のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項16】
前記ユーザに装着されるよう構成された下半身装具デバイスも更に含み、
前記生物力学的センサは、前記下半身装具デバイスに配置された慣性センサ及び角度センサを含む、請求項10から請求項14のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項17】
前記生物力学的センサは、前記ユーザの股関節、膝関節、骨盤領域、大腿部及び足部に対応する位置に配置されるように構成された、請求項10から請求項16のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項18】
前記軌道データは、身体セグメントの三次元加速度データ、関節からの角度データ及び床反力データからなる群から選択される、請求項10から請求項17のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2020年12月22日に出願された米国仮特許出願第63/129、543号の利益を主張し、同特許を、参照により、本明細書で援用する。
【0002】
本開示は、生物力学的データの生成と解析用の方法及びシステムに関する。
【発明の概要】
【0003】
本開示は、ユーザから収集された生物力学的データからユーザの生理学的評価を生成する方法を提供し、上記方法は、
【0004】
上記ユーザの生物力学的データを取得する工程と、
【0005】
上記取得された生物力学的データを使用して、ユーザの軌道データを生成する工程と、
【0006】
重要生物力学的特徴のセットに従って、上記軌道データを関心変数データに分類する工程と、
【0007】
所定の受け入れ基準に適合しない関心変数データを拒否する工程と、
【0008】
拒否されていない関心変数データの重要特徴を抽出する工程と、
【0009】
上記抽出された重要特徴、ユーザプロファイル共変量データ及び関心変数データに基づいて、現累積リスクデータを計算する工程と、
【0010】
上記現累積リスクデータを使用して、上記ユーザの生理学的評価を生成する工程とを、含む。
【0011】
開示の方法は、
【0012】
上記軌道データを個別セグメントへとソートし、ラベル付けする工程と、
【0013】
個々のフレームの数を減らし、ノイズを除去するよう、軌道データの個別セグメントをフィルタリングする工程とを更に含められ、
【0014】
重要生物力学的特徴のセットに従って、上記軌道データを関心変数データに分類する工程は、上記フィルタ処理後の軌道データの個別セグメントについて実行される。
【0015】
開示の方法は、ユーザに提示するためにユーザの評価に関するリスクデータをフォーマット化、簡素化する工程、且つ/又は生物力学的に導出された情報をユーザの評価に追加する工程も、更に含むことができる。
【0016】
ユーザの生物力学的データは、ユーザに配置された生物力学的センサから取得可能であり、ユーザが装着する下半身装具デバイスに配置された慣性センサ及び角度センサの形態であり得る。生物力学的センサは、例えば、ユーザの股関節、膝関節、骨盤領域、大腿部及び足部に対応する位置に配置することができる。
【0017】
本開示は、ユーザから収集された生物力学的データからユーザの生理学的評価を生成するシステムも更に提供しており、上記システムは、
【0018】
関連するユーザの身体セグメントの運動学を観察するように構成された生物力学的センサと、
【0019】
上記複数の生物力学的センサと通信するプロセッサであって、内部に命令を記憶した関連するメモリを含み、上記命令は、プロセッサで実行されると、
【0020】
複数の生物力学的センサから、ユーザの生物力学的データを受信する工程と、
【0021】
上記取得された生物力学的データを使用して、ユーザの軌道データを生成する工程と、
【0022】
重要生物力学的特徴のセットに従って、上記軌道データを関心変数データに分類する工程と、
【0023】
所定の受け入れ基準に適合しない関心変数データを拒否する工程と、
【0024】
拒否されていない関心変数データの重要特徴を抽出する工程と、
【0025】
上記抽出された重要特徴、ユーザプロファイル共変量データ及び関心変数データに基づいて、現累積リスクデータを計算する工程と、
【0026】
上記現累積リスクデータを使用して、上記ユーザの生理学的評価を生成する工程とを実行するプロセッサとを、含む。
【0027】
上記メモリは、内部に記憶された更なる命令を含むことが可能であり、上記命令は、プロセッサで実行されると、
【0028】
上記軌道データを個別セグメントへとソートし、ラベル付けする工程と、
【0029】
個々のフレームの数を減らし、ノイズを除去するよう、軌道データの上記個別セグメントをフィルタリングする工程とを更に実行し、
【0030】
重要生物力学的特徴のセットに従って、上記軌道データを関心変数データに分類する工程は、上記フィルタ処理後の軌道データの個別セグメントについて実行される。
【0031】
さらに、上記メモリは、内部に記憶された更なる命令を含むことが可能であり、上記命令は、プロセッサで実行されると、ユーザに提示するためにユーザの評価に関するリスクデータをフォーマット化、簡素化する工程、且つ/又は生物力学的に導出された情報をユーザの評価に追加する工程も、更に実行する。
【0032】
開示のシステムは、
【0033】
査読済み学術出版物からの、重要生物力学的測定値及び関連する生理学的決定因子を含む参照データベースと、
【0034】
ユーザ監視及び実験からの、関連付けられた重要生物力学的測定値及び関連する統計的に確立された転帰を含む、転帰データベースとを更に含んでもよく。
【0035】
上記重要生物力学的特徴は、参照データベース及び転帰データベースからのキュレート済みデータのインデックス付きの組み合わせを形成することによって得られる:
【0036】
上記生物力学的センサは、ユーザが装着する下半身装具デバイスに配置された慣性センサ及び角度センサを含んでもよく、さらに、上記システムは、ユーザが装着するように構成された下半身装具デバイスも含められ、上記生物力学的センサは、下半身装具デバイスに配置された慣性センサ及び角度センサを含む。生物力学的センサは、例えば、ユーザの股関節、膝関節、骨盤領域、大腿部及び足部に対応する位置に配置することができる。
【背景技術】
【0037】
生物力学的な観察から、様々な病変が明らかとなるが、専門的な検査機器が必要であること、さらには、日常生活の中で時間をかけて個別に観察することができないことにより、この種の診断検査の使用には限界がある。既存の技術(歩数カウンタ、スマートデバイス上のフィットネスアプリ等)では、時間をかけて個別に観察することができるものの、複数の身体セグメントを追跡するのに十分なセンサを備えていないことにより、使用が大まかな測定(歩数)に限られ、ユーザの生物力学を捉えることができず、したがって、ユーザのウェルビーイングを正確に生理学的評価することが不可能である。運動障害(例えば、パーキンソン病、多発性硬化症、運動失調症等)及び歩行症状を伴う他の疾患(例えば、進行した膝関節、又は股関節の変形性関節症、筋疾患、加齢に伴う筋力低下等)の生物力学的症状を追跡することで、一般的な健康状態及び病気の進行に関する重要な詳細を明らかにして、場合によっては、将来の転倒リスクを予測することも可能である。
【0038】
したがって、ユーザの状態を生理学的に評価するために家庭及び地域環境で継続的に使用できる、重要な生物力学的詳細(例えば、足踏みの位置とタイミング、関節の動き、姿勢)を精確に取り込むことができる、生物力学的データの生成と解析用の方法及びシステムが、必要とされる。
【0039】
これから、以下の添付の図面を参照することで、本開示の実施形態について、ほんの一例として説明する。
【0040】
異なる図面で使用される類似の参照は、類似の構成要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】本開示の例示的実施形態に係る生物力学的データの生成と解析用のシステムの概略図である。
図2】本開示の例示的実施形態に係る、関連付けられた生物力学的決定因子及び生理学的決定因子を決定するプロセスを示す流れ図である。
図3】本開示の例示的実施形態に係る、個人の生理学的決定因子に基づく解析を通知するための生物力学的データの生成と解析用のプロセスの流れ図である。
図4】本開示の例示的実施形態に係る、個人の生物力学的データに基づいて、個人の生理学的評価を作成するプロセスの流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
全般に、本開示の非限定的な例示的実施形態は、生物力学的データの生成と解析から生理学的測定値を生成する機能を備える方法及びシステムを提供する。
【0043】
図1を参照すると、生物力学的データを生成し、解析するシステム100は、1つ以上のプロセッサ12であって、内部に命令を記憶した関連するメモリ14を含み、この命令は、1つ以上のプロセッサ12で実行されると、以下で更に詳述するプロセス200、300及び400の工程を実行する1つ以上のプロセッサと、有線、無線、又はこれら双方の組み合わせであり得る、通信リンク18を通じて、複数の生物力学的センサ20、並びに、参照データベース102、転帰データベース104及びリスクデータベース106と通信する、入力/出力(I/O)インターフェイス16とを、含む。生物力学的センサ20、例えば、慣性センサ及び角度センサは、機械的情報と生物力学的情報を提供するために、関連するユーザの身体セグメントの運動学を観察するように構成されている。
【0044】
生物力学的センサ20は、装具デバイス上で提供可能であり、同センサの例は、2021年12月18日付けで出願された「LOAD DISTRIBUTION DEVICE FOR IMPROVING THE MOBILITY OF THE CENTER OF MASS OF A USER DURING COMPLEX MOTIONS」と題する国際特許出願PCT/CA2021/051846号で開示されている。開示の装具デバイスにおいて、生物力学的センサは、ユーザの骨盤サポートベルト、大腿部支持要素、股関節アクチュエータ、膝関節アクチュエータ及び足部に配置されている。
【0045】
図2を参照すると、本開示の例示的実施形態に従って、1つ以上のプロセッサ12(図1を参照)によって実行される、重要生物力学的測定値と生理学的決定因子200とを関連付けるプロセスの流れ図が示されている。プロセス200の工程は、ブロック202~206で示されている。
【0046】
プロセス200は、ブロック202で開始し、重要生物力学的測定値(例えば、ステップ長、股関節の軌道、活動分類等)及びこれらに関連する生理学的決定因子(例えば、疲労、転倒、すくみ足関連疾患症状の進行等)に関する参照データベース102にアクセスする。参照データベース102は、査読済み学術出版物を基礎として管理されている。
【0047】
同様に、ブロック204で、重要生物力学的測定値と統計的に確立された転帰とを関連付ける転帰データベース104にアクセスする。転帰データベース104は、ユーザの監視と実験を通じて構築される。例えば、転帰データベース104は、ユーザの各脚間のステップ長の共分散を認知症患者間の疾患進行へと、さらには、ステップ幅の分散を高齢者の転倒へといった具合で、関連付けることができる。
【0048】
最後に、ブロック206において、重要生物力学的特徴(例えば、時空間歩行変数、姿勢の傾き等)、関連する分類基準(例えば、ステップ長の非対称性のカットオフ値が20%以下であること、時空間計算用の連続歩行周期が10歩以上であること等)、リスクの生理学的決定因子のモデル(例えば、年齢が65歳以上、かつ膝伸筋の非対称性が10%以上あると転倒確率が上昇すること、多発性硬化症の診断がつくと、ステップ幅のばらつきが歩行障害の進行の指標となる可能性が下がること等)、並びに既知の共変量のリスト(例えば、年齢、性別、疾患の診断、個人的な活動の相対的な頻度と種類、経時にわたる活動レベルの変化の検出、痙縮、筋力、バランス及び定期機能検査のスコア、認知障害の有無、事故又は疾患の診断からの経過時間、身長、体重、ボディマス指数)を含む順序付けされたセットを、参照データベース102及び転帰データベース104から取り出されたキュレート済みデータのインデックス付きの組み合わせとして構築する。
【0049】
図3を参照すると、本開示の例示的実施形態に従って、1つ以上のプロセッサ12(図1を参照)によって実行される、個人の生理学的決定因子に基づく解析を通知する生物力学的データを生成するプロセス300の流れ図が示されている。プロセス300の工程は、ブロック302~312で示されている。
【0050】
プロセス300はブロック302で開始し、例えば、2017年1月25日付けで出願された「Gait Profiler System and Method」と題する国際特許出願WO2018/137016A1号で開示される等の歩行プロファイラ、並びに、生物力学的センサ20から取得された機械的情報と生物力学的情報を使用して、ユーザの関節及び/又は身体セグメントの軌道データを決定する。
【0051】
ブロック304で、軌道データ(例えば、身体セグメントの三次元加速度データ及び/又は関節からの角度データ)をソートし、個別セグメントにラベル付けしてから、個々のフレーム数を減らして、ノイズを除去するために、その結果のフィルタ処理を行う。軌道データは、関節角度、関節角度の1次変化率、2次変化率又は3次変化率、胴体、骨盤、大腿部、すね部又は足部の前後方向の加速度、内外側方向の加速度、あるいは上下方向の加速度を、含められる。例えば、股関節位置の3次変化率(つまり、躍度)は、内側(又は、外側)の靭帯が不安定な人物の姿勢の傾きの変化を検出する上で良好なインジケータとなるが、この人物には膝関節のこわばりがあり、痙縮によって膝関節可動域が減少していることにより、膝角度の変化を使用できる状況もある)。代替実施形態において、床反力のデータも使用可能である。
【0052】
次に、ブロック306において、図2のブロック206からの順序付けされたセットの重要生物力学的特徴に従って、フィルタ処理され、ソートされ、ラベル付けされたデータを関心変数データへと分類する。関心変数データは、特定の時間、姿勢、及び/又は活動に関連する処理済みの生物力学的データである(例えば、好みの速度での歩行中に両脚支持を使用した歩行周期の平均割合)。これらのデータは、重要生物力学的特徴(例えば、両脚支持時間)と関連付けられており、例えば、一定期間、又は特定の活動(例えば、歩行、ジョギング、ランニング、移動活動、障害物回避、体重負荷活動、運動活動及び下半身を伴う他の活動)中の膝関節、股関節又は足関節の可動域、姿勢及び体位の変化、並びに、足の位置の時間的特性及び空間的特性(例えば、ステップ時間、遊脚期時間、ストライド時間、立脚時間、片脚支持時間、両脚支持時間、ステップ長、ストライド長、ステップ幅、歩行率、歩行速度、ストライド速度)を、含められる。
【0053】
ブロック308において、特定関心変数に関連する生理学的決定因子に基づいて、期待される大きさ、形状又は経時的傾向に適合しないデータを拒否するよう、所定の受け入れ基準に従って、得られた関心変数データを検証する。所定の受け入れ基準は、特定の関心変数を意味のあるものとして受け入れるためのカットオフ要件である(例えば、連続した月にわたって、歩行の両脚支持期の統計的に有意な前月比での増加が検出され、平均増加率が歩行周期の1%を超え、さらに、ユーザがバランス/運動障害のリスク基準を満たす、且つ/又はバランス/運動障害と診断された場合、両脚支持時間の増加にフラグを立てる)。
【0054】
ブロック310において、受け入れられた関心変数を含む生物力学的データの各セグメントを処理、セグメント化して、重要特徴のみを抽出する。関心変数(例えば、両脚支持時間)に関連する生物力学的特徴である重要特徴は、例えば、午前中の歩行時のステップ長の平均的非対称性、日中の座位から立位への動作における姿勢の傾きの変化、関節間協調の測定値としての一対の角度データ(例えば、股関節の角度と膝関節の角度、左膝関節の角度と右膝関節の角度)、関心変数データの統計的処理(例えば、歩行速度の平均とばらつき、歩行中のストライドにわたる膝関節と股関節との間の平均対応係数)、ステップ幅、ストライド長及びステップ時間における平均値、標準偏差、分散、最大値と最小値及び変動係数、ステップ特徴の対称性、関節可動域及び右脚と左脚との間の歩行期(遊脚、片脚支持、両脚支持)、矢状面における、歩行運動の遊脚期、又は立脚期にわたる膝関節、股関節又は足関節の可動域の平均変化量及びピーク変化量、特定の活動、又は活動の一部中の姿勢の平均変化量、あるいは変動係数(例えば、椅子立ち上がりの体重受容部中の腰の角度、歩行の立脚期中の爪先の角度及び膝関節外反/外反、スクワットの深さ、椅子立ち上がり中の支持台上の重心可動域の平均値及びピーク値)、歩行期パラメータ(例えば、片脚支持時間、両脚支持時間、総立脚時間、遊脚期時間、立脚/遊脚比、前述のパラメータの対称性)、特定姿勢におけるセグメント及び/又は関節角度に基づく関節力の推定値(例えば、座位から立位への推進期における大腿部の加速度又は膝関節の角加速度、歩行の爪先離地期中の股関節の角加速度)、関節安定性の推定値(例えば、歩行の体重受容期中の膝屈曲角度の変化率、立脚の荷重応答期中の足関節底屈のばらつき)を、含められる。
【0055】
最後に、ブロック312において、受け入れられた関心変数データをアーカイブし、メモリ14へと保存する。
【0056】
図4を参照すると、本開示の例示的実施形態に従って、1つ以上のプロセッサ12(図1を参照)によって実行される、生物力学的データ400に基づいて、個人の生理学的評価を作成するプロセスの流れ図が示されている。プロセス400の工程は、ブロック402~410で示されている。
【0057】
プロセス400は、ブロック402において、ユーザプロファイル共変量データにアクセスすることで開始し、このデータは、緩和的、又は強化するように、生物力学的特徴及びリスクデータと関連する情報であり(例えば、多発性硬化症と診断された人物の場合、文献に基づけば、両脚支持時間の増加は歩行とバランスの低下に伴うことが予想され、一方、ある個人が若く(50歳未満)、かつ運動障害又はバランス障害と診断されていない場合、両脚支持時間の変化は、概ねそれほど重要ではないはずである)、さらに、ブロック404における年齢と疾患状態、図3のブロック312からの関心変数データも、含められる。
【0058】
次に、ブロック406において、ブロック402からの共変量データ及びブロック404からの関心変数データとを使用して、抽出された重要特徴に基づいて、現リスク及び累積リスクを計算することで、文脈的根拠を得る(例えば、昨年にわたる歩行中の膝関節可動域角度の対称性の傾向、今朝の平均歩行速度等)。現リスク及び累積リスクのデータは、過去のリスク評価のリスクデータベース106(過去の時間枠中の「現リスクデータ」)から形成され、通常、一カ月及び一年の時間枠にわたって検証され(例えば、毎月測定される歩行中の両脚支持時間、及び前月比、前年比の両脚支持時間の傾向)、例えば、姿勢の傾きと対称性の改善に起因する24時間にわたる椅子移動の転倒リスクの減少、膝の筋力低下と転倒リスクの上昇を示すステップ対称性の前年からの低下、歩行及び移動活動中の姿勢の傾きの減少、及び/又は椅子立ち上がり中の支持台上の重心の可動域、及び/又は、ステップ幅、ステップ長、又は対称性の分散に起因する24時間にわたる転倒リスクの変化、午前と午後の期間の間の時空間歩行パラメータの分散に基づく疲労推定値、顕著な疲労、動きやすさ(動作の量と質)、ユーザの活動レベル(活動の量と種類)、顕著な疾患の進行(例えば、痙縮の測定値としての特定活動中の関節角度可動域)、並びに、動きやすさの状態と能力の変化の測定値としての、足部の位置の分散、あるいは歩行速度の低下、もしくは特定運動課題(例えば、階段の使用、早歩き、小回り)の低下に関する傾向、文献に基づくピアグループの期待値に対する、年齢、性別、身長、体重、ボディマス指数、疾患状態及び活動レベル等の重要指標に基づく健康状態の変化の測定値としての、歩行と動作の質の測定値における短期と長期の傾向を、含められる。
【0059】
ブロック408で、プロセス400は、生物力学的データに基づいて、ユーザの生理学的評価を生成する。ブロック406からの現リスク及び累積リスクのデータを使用して、ユーザに提示するためのリスクデータをフォーマット化、簡素化し(例えば、単一の転倒リスク評価を表示し、表示された数値データの有効数字の数をトリミングする)、さらに、生物力学的に導出された情報/グラフを追加して(例えば、歩数と活動回数、経時にわたる歩数の変化)、ユーザ評価を作成する。
【0060】
適宜、ブロック410において、ブロック406で特定された選択済みの現リスク及び累積リスク(例えば、転倒リスクの上昇)に基づいて、アラームを生成してもよい。
【0061】
第1のサンプル実施形態において、ユーザのステップ長とステップ時間の共分散は、生理学的決定因子「転倒リスク」に対する関心変数となるはずである。2メートル、又は10歩行周期より短い歩行期間の場合は、無視する。重要生物力学的測定値の参照データベース102に基づけば、こうした関心変数の重要共変量は、ばらつきの現傾向、時刻、活動時間(疲労)、疾患の状態及び年齢となるはずである。図4のブロック408で生成されるユーザの評価であれば、ステップ長及びステップ時間の共分散に基づく転倒リスクの評価、並びにバランスに関連する測定値(例えば、姿勢の傾き及び前方歩行中の左から右への股関節加速度の変化率)が含まれるはずである。
【0062】
第2のサンプル実施形態において、膝装具に関節測定デバイスを装着したユーザに関する運動学データは、図3のブロック302における入力データ(例えば、膝関節の角度、角速度、及び角加速度、並びに活動にわたるステップ時間と歩数)を提供することができる。非歩行期間及び10歩行周期より短い歩行期間は、無視する。歩行中の膝関節可動域角度の変化(各歩行期間、午前の平均値、夜間の平均値及び1日の平均値)であれば、「膝痙縮の変化」の生理学的決定因子に対する関心変数となるはずである。図2のブロック202の参照データに基づくと、歩行中の平均膝関節可動域角度の過去の測定値、歩行量、疾患状態、年齢及び地域の天候であれば、関心変数の重要な共変量となるであろう。図4のブロック408で生成されるユーザの評価には、1日、1週間、及び1ヶ月の期間にわたる歩行中の平均膝関節可動域角度の変化に基づく痙縮変化の評価、並びに活動レベルに関連する測定値(総歩数、経時にわたる歩数の変化)及び痙縮変化の顕著な影響(膝関節可動域角度の変化と活動レベルとの関係)が含まれるはずである。
【0063】
第3のサンプル実施形態において、肘装具に関節測定デバイスを装着したユーザに関する運動学データは、図3のブロック302における入力データ(例えば、肘関節の角度、角速度、及び角加速度、並びに最大関節角度と最小関節角度のタイミング、安静期間のタイミング)を提供することができる。データは繰り返しフォーマット化され、この繰り返しの中で、関節エクササイズ動作の4つの構成要素(伸長性タスク、等尺性/安静タスク、短縮性タスク、等尺性/安静タスク)へとフォーマットされる。屈伸運動の静的負荷、又は動的負荷の総経過時間を使用すれば、緊張持続時間が計算される。エクササイズ期間外の関節運動を除去する。安静期間、反復回数の状況及びテンポについて、ユーザフィードバック(音声/触覚/視覚)を提供できる。エクササイズテンポの一貫性、安静期間、反復の角度可動域、反復回数及び緊張持続時間が、エクササイズの品質の生理学的決定因子に対する関心変数となるはずである。図2のブロック202の参照データに基づくと、カフェインの使用、疲労(現測定期間中、並びに1日を通じた関節運動量)、及び現ルーチンへの適応レベル(個人に関する過去のデータによって近似)が、関心変数に関する共変量である。図4のブロック408で生成されるユーザの評価であれば、エクササイズテンポ、筋肉の緊張持続時間、反復回数及び安静期間に基づくエクササイズの品質の評価、並びに、個々の品質メトリックから計算される総合的な品質メトリックが含まれるであろう。
【0064】
本明細書で開示されている生物力学的データの生成と解析処理は、上肢の動き、並びに他の種類のリスク因子の判定でも使用できることを理解されたい。
【0065】
これまで、特定の非限定的例示的実施形態及びその例示によって、本開示を説明してきたが、当業者であれば、本開示の範囲から逸脱することなく、本特定の実施形態に変更が適用され得ることが明らかであることについて、理解されたい。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】