(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-18
(54)【発明の名称】使用済み充電式リチウム電池から材料を回収するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
C22B 23/02 20060101AFI20240111BHJP
C22B 26/12 20060101ALI20240111BHJP
C22B 7/00 20060101ALI20240111BHJP
C22B 5/12 20060101ALI20240111BHJP
C22B 5/10 20060101ALI20240111BHJP
C22B 1/00 20060101ALI20240111BHJP
C22B 1/02 20060101ALI20240111BHJP
H01M 10/54 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
C22B23/02
C22B26/12
C22B7/00 C
C22B5/12
C22B5/10
C22B1/00 601
C22B1/02
H01M10/54
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023538759
(86)(22)【出願日】2021-12-21
(85)【翻訳文提出日】2023-08-21
(86)【国際出願番号】 US2021064720
(87)【国際公開番号】W WO2022140461
(87)【国際公開日】2022-06-30
(32)【優先日】2020-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510192916
【氏名又は名称】テスラ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゾウ,フェン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,チュアンミン
(72)【発明者】
【氏名】パゼリン,ウラジミール
(72)【発明者】
【氏名】カーペンター,アレックス
【テーマコード(参考)】
4K001
5H031
【Fターム(参考)】
4K001AA07
4K001AA19
4K001AA34
4K001BA22
4K001CA02
4K001CA05
4K001CA11
4K001DA05
4K001DA06
4K001DA09
4K001HA01
4K001HA09
4K001HA11
5H031BB01
5H031BB02
5H031BB09
5H031HH06
5H031RR02
(57)【要約】
エネルギー貯蔵装置(例えば、使用済み充電式リチウム電池、特にニッケル系材料又はニッケル及びコバルト含有カソード材料を使用する電池)から有価物を回収する方法について説明する。特に、提案された方法は、蒸気冶金としても知られるカルボニル技術を用いて、新しいリチウム電池のための活性カソード材料を作製するための原料として再利用することができる純粋な材料を再生する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギー貯蔵装置の電極から材料を回収するプロセスであって、
還元された混合物を形成するように電極活物質混合物を還元するステップであって、前記電極活物質混合物は、ニッケル酸化物、コバルト酸化物、並びにリチウム塩、リチウム酸化物及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるリチウム材料を含む、ステップと、
前記還元された混合物に対して第1のカルボニル化及びその後の第1の分解を実施して、ニッケル金属を含むニッケル生成物を単離し、第1のカルボニル化材料を形成するステップと、
前記第1のカルボニル化材料に対して第2の分解を実施して、コバルト金属を含むコバルト生成物を単離し、残渣材料を形成するステップと、
を含む、プロセス。
【請求項2】
前記還元するステップは、前記電極活物質混合物を、水素、炭素質材料、炭化水素材料、それらの部分的に改質された生成物、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される化合物と反応させることを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
還元が約300~1200℃の温度で行われる、請求項1~2のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項4】
前記第1のカルボニル化は、前記還元された混合物を、一酸化炭素、一酸化窒素、水素、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるガスと反応させることを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記第1のカルボニル化は約40~120℃の温度で行われる、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記第1のカルボニル化は約15~2000PSIGの圧力で行われる、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記第1のカルボニル化の後かつ前記第1の分解の前に前記還元された混合物を蒸留し、それによって前記還元された混合物から鉄カルボニルを含む鉄生成物を除去するステップを更に含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
添加剤を前記還元された混合物と混合するステップを更に含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記添加剤は、硫黄材料、テルル材料、Cl
2、LiCl、NaCl、KCl、CaCl
2、MgCl
2、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
前記添加剤は、前記還元された混合物の約1~10重量%で前記還元された混合物と混合される、請求項8~9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記第2の分解の前に前記第1のカルボニル化材料に対して昇華を実施するステップを更に含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記第2の分解の前に前記第1のカルボニル化材料に対して第2のカルボニル化を実施するステップを更に含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記第2のカルボニル化は、前記還元された混合物を一酸化炭素を含むガスと反応させることを含む、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
前記第2のカルボニル化は約40~120℃の温度で行われる、請求項12~13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
前記第2のカルボニル化は約800~2500PSIGの圧力で行われる、請求項12~14のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項16】
前記第2のカルボニル化の後かつ前記第2の分解の前に、第1の脱カルボキシル化材料に対して蒸留を実施するステップを更に含む、請求項12~15のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか一項に記載のプロセスであって、
水溶液中でエネルギー貯蔵装置を放電させるステップと、
前記放電されたエネルギー貯蔵装置を解体して前記電極材料を分離するステップと、
前記電極材料を脱構造化して前記活物質混合物を形成するステップと、
を更に含む、プロセス。
【請求項18】
前記水溶液は、少なくとも約1000mS/mの導電率を有する、請求項17に記載のプロセス。
【請求項19】
前記水溶液は、Na
2SO
4、NaCl、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される塩を含む生理食塩水である、請求項17~18のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項20】
脱構造化が、最大約5mmの平均粒径を有する粒子を含む活物質混合物を形成する、請求項17~19のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項21】
前記脱構造化された電極材料を洗浄すること及び、前記活物質混合物を集電体材料から分離するステップを更に含む、請求項17~20のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項22】
洗浄が、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される有機溶媒を塗布することを含む、請求項21に記載のプロセス。
【請求項23】
前記エネルギー貯蔵装置は使用済みリチウムイオン電池である、請求項17~22のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項24】
リチウム生成物を単離するために浸出抽出を行うステップを更に含む、請求項1~23のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項25】
前記浸出抽出は、
前記残渣材料を水溶液に溶解してスラリーを形成することと、
前記スラリーに対して固液分離を行って、固体残渣からリチウムに富む溶液を単離することと、
前記リチウムに富む溶液に対して単離プロセスを行って前記リチウム生成物を形成することと、
を含む、請求項24に記載のプロセス。
【請求項26】
前記水溶液は酸を含む、請求項25に記載のプロセス。
【請求項27】
前記リチウム生成物は、水酸化リチウム、炭酸リチウム、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項25~26のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
2020年12月23日に出願された米国特許仮出願第63/130,196号など、本出願と共に出願された出願データシート又は依頼届において外国又は国内の優先権主張が特定されている全ての出願は、37 CFR 1.57、並びに規則4.18及び20.6の下で参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、使用済み充電式リチウム電池、特にニッケル系カソードを有する電池から有価物を回収する方法に関する。特に、提供される方法は、新しい充電式リチウム電池用の活性カソード材料の製造において原料として再利用することができる本質的に純粋な材料の再生に関する。
【背景技術】
【0003】
充電式リチウム電池は、商品化されて以来、様々な装置や機器にエネルギー貯蔵構成要素として使用されている。これらには、携帯電話、ポータブルコンピュータ、無線電動工具、ハイブリッド自動車及び純電気自動車などが含まれる。近年、特に電気自動車(EV)の急速な市場成長に伴い、高出力の充電式リチウム電池の需要が飛躍的に増大している。
【0004】
充電式リチウム電池の主要な構成要素には、アノード、カソード、及び電解質が含まれる。充放電サイクル中、リチウムイオンは、電解質を介してアノード活物質とカソード活物質との間を行き来する。その限られた比容量、高い製造コスト、並びにリチウム、ニッケル、及びコバルトを含む高価な原料の使用に起因して、カソード活物質は通常、充電式リチウム電池における最も高価な構成要素である。近年、ニッケルに富む高容量のカソード材料は、EV市場向けの電池で市場シェアを拡大している。この傾向は今後10年間続くと予想される。EV市場の予想される驚異的な成長、従って上記のカソード材料の巨大な需要を考慮すると、充電式リチウム電池の生産は、特に不安定な地政学的状況において、重要な元素(例えば、Ni、Co、及びLi)の世界的な供給不足によって将来制限される可能性がある。従って、使用済み充電式リチウム電池をリサイクルしてこれらの重要な元素の一部又は全てを回収することは、原材料の需要を軽減し、電気自動車産業のサプライチェーンを保護するのに役立ち得る。更に、使用済み充電式リチウム電池は環境を害し、火災の危険性があると考えられており、大規模なEV市場を維持するためにリサイクル及び再処理されることが重要である。
【0005】
充電式リチウム電池のリサイクル及び再生のほとんどの研究開発は、酸浸出技術に焦点を当ててきた。一般に、プロセスにはいくつかの主要なステップ、すなわち、(a)使用済み電池を放電させるステップと、(b)電池を解体し、電池構成要素を分離するステップと、(c)酸浸出を用いて所望の金属を浸出させ、これらを湿式製錬アプローチで分離するステップと、(d)これらの金属を使用して、従来の既存の工業的方法、すなわち前駆体を生成するための金属の共沈殿及び最終カソード材料を得るためのリチウム化合物との焼成によってカソード材料を再生するステップと、が含まれる。典型的には、このような酸プロセスでは、ステップ(c)で金属を浸出させるために、硫酸と他の化学物質(例えば、Na2SO5及びNa2SO3など)が塗布される。その後、溶媒抽出プロセスを使用して、ジ-2-エチルヘキシルリン酸(「P204」)及び2-エチルヘキシルリン酸モノ-2-エチルヘキシルエステル(「P507」)などの有機抽出剤で異なる金属を分離することができる。しかし、これは、大量の液体流出物が生成される複雑なプロセスであり、環境への影響を最小限に抑えるために流出物を処理しなければならない。このプロセスでは、金属分離のための無溶媒抽出ステップを実行することができるが、そのような無溶媒プロセスは、典型的には、同じ組成を有する使用済み電池にのみ用いることができ、金属分離ステップは精製ステップとしても見なされるため、溶媒抽出なしで再生されたカソード材料の純度は大幅に低くなる。
【0006】
更に、上述の酸浸出プロセスを使用して使用済み電池から回収される有価金属は、硫酸ニッケル及び硫酸コバルトなどの金属塩の形態でなければならないので、前駆体を作製するための共沈殿プロセスは、通常、カソード材料の再生に用いられる。そのような共沈殿プロセスは、典型的には、濾過プロセスで固体部分を除去した後にかなりの量のNa2SO4含有溶液を生成する。溶液はNa2SO4を含有するので、収集された溶液は反応系で再利用することができず、従って流出物として処理しなければならない。更に、前駆体材料の所望の物理的特性を提供するのを補助するために、通常はアンモニアがキレート剤として反応系に添加される。従って、流出物は、塩(硫酸ナトリウムなど)の他に、アンモニア、アンモニウム、溶解した重金属、小さな固体粒子なども含むことができる。全世界で規制により義務付けられているように、この流出物は、環境に排出可能となるか又は反応システムにリサイクル可能となる前に、アンモニア及び硫酸ナトリウムを除去する処理を経なければならない。このような流出物処理は、膨大な量のエネルギー消費を伴い、費用がかかる。更に、硫酸ナトリウムは一般に、産業上の用途及び需要が限られているため、流出物の処理後の固形廃棄物と見なされ、付加価値がほとんど又は全くない。
【0007】
従って、充電式リチウム電池をリサイクルするための酸浸出及び湿式製錬プロセスの現行の方式は、大量の液体流出物自体を生成するだけでなく、プロセスにおいてより多くの液体流出物を生成する従来のカソード材料製造技術を用いる要因ともなる。これは、EV電池のライフサイクルにおいて大きな環境フットプリントを作り出す。
【0008】
流出物が生成されないようにすることで環境への影響及びコストを最小限に抑えることを試みる、充電式リチウム電池カソード材料を製造するためのいくつかの環境に配慮したプロセスが知られているが、そのようなプロセスは通常、出発材料として金属粉末形態のニッケル及びコバルトを必要とする。しかしながら、使用済みリチウムからのニッケル及びコバルトの大部分は、金属粉末形態ではない。
【0009】
重要な元素を回収するためのより環境に配慮した費用効果の高いプロセスを提供することができる、使用済み電池(例えば、使用済み充電式リチウム電池)からのカソード材料元素のリサイクルのためのプロセスを提供することが有利であろう。
【発明の概要】
【0010】
本開示と従来技術を超えて達成される利点とを要約する目的で、本開示の特定の目的及び利点が本明細書に記載される。そのような目的又は利点の全てが、任意の特定の実施形態において達成され得るわけではない。従って、例えば、当業者は、本発明が、本明細書で教示又は示唆され得るような他の目的又は利点を必ずしも達成することなく、本明細書で教示されるような1つの又は複数の利点を達成又は最適化するように具体化又は実施され得ることを理解するであろう。
【0011】
これらの実施形態は全て、本明細書に開示される発明の範囲内にあることが意図されている。これら及び他の実施形態は、添付の図面を参照して好ましい実施形態の以下の詳細な説明から当業者に容易に明らかになり、本発明は開示された任意の特定の好ましい実施形態に限定されない。
【0012】
このように、第1の態様では、使用済み充電式リチウム電池、特にニッケル系カソード材料並びにニッケル及びコバルト含有カソード材料を使用した電池から有価物を回収して純粋な材料へと再生させるプロセスが開示される。再生された材料は、新しい充電式リチウム電池用のカソード材料の製造における無流出物プロセスに適しているが、これに限定されない。
【0013】
特に、本プロセスの一実施形態は、好ましくは以下の主要なステップ、すなわち、
使用済み充電式リチウム電池を水溶液(例えば、生理食塩水)中で放電させるステップと、
電池を解体し、電池構成要素を分離するステップと、
収集された電極を破砕し、電極材料を他の構成要素から分離するステップと、収集されたカソード電極材料をアノード電極材料と共に還元するステップと、カルボニル技術を使用して有価ニッケル及びコバルトを回収するステップと、
任意選択的に、収集された電極材料が鉄を含む場合にカルボニル蒸留ステップを実施するステップと、
ニッケル、鉄(存在する場合)及びコバルトを除去した後、残りの電極材料から水又は酸浸出法によって有価リチウムを回収することと、
を含む。
【0014】
従って、本開示は、使用済み充電式リチウム電池から有価元素を回収して、新しい充電式リチウム電池用のカソード材料の再生産における無流出物プロセスに適した形態へと再生させるプロセスを提供する。
【0015】
しかしながら、本開示のプロセスから回収された元素の使用及び用途は、新しい充電式リチウム電池用のカソード材料の製造に限定されず、これらは他の用途にも使用できることに留意されたい。
【0016】
一態様では、エネルギー貯蔵装置電極から材料を回収するプロセスが記載される。プロセスは、電極活物質混合物を還元して還元された混合物を形成することであって、電極活物質混合物は、ニッケル酸化物、コバルト酸化物、並びにリチウム塩、リチウム酸化物及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるリチウム材料を含む、ことと、還元された混合物に対して第1のカルボニル化及びその後の第1の分解を実施して、ニッケル金属を含むニッケル生成物を単離し、第1のカルボニル化材料を形成することと、第1のカルボニル化材料に対して第2の分解を実施して、コバルト金属を含むコバルト生成物を単離し、残渣材料を形成することと、を含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、還元することは、電極活物質混合物を、水素、炭素質材料、炭化水素材料、それらの部分的に改質された生成物、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される化合物と反応させることを含む。いくつかの実施形態では、還元は、約300~1200℃の温度で行われる。いくつかの実施形態では、第1のカルボニル化は、還元された混合物を、一酸化炭素、一酸化窒素、水素、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるガスと反応させることを含む。いくつかの実施形態では、第1のカルボニル化は、約40~120℃の温度で行われる。いくつかの実施形態では、第1のカルボニル化は、約15~2000PSIGの圧力で行われる。
【0018】
いくつかの実施形態では、プロセスは、第1のカルボニル化の後かつ第1の分解の前に還元された混合物を蒸留し、それによって還元された混合物から鉄カルボニルを含む鉄生成物を除去することを更に含む。いくつかの実施形態では、プロセスは、添加剤を還元された混合物と混合することを更に含む。いくつかの実施形態では、添加剤は、硫黄材料、テルル材料、Cl2、LiCl、NaCl、KCl、CaCl2、MgCl2、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、添加剤は、還元された混合物の約1~10重量%で還元された混合物と混合される。
【0019】
いくつかの実施形態では、プロセスは、第2の分解の前に第1のカルボニル化材料に対して昇華を実施することを更に含む。いくつかの実施形態では、プロセスは、第2の分解の前に第1のカルボニル化材料に対して第2のカルボニル化を実施することを更に含む。いくつかの実施形態では、第2のカルボニル化は、還元された混合物を一酸化炭素を含むガスと反応させることを含む。いくつかの実施形態では、第2のカルボニル化は、約40~120℃の温度で行われる。いくつかの実施形態では、第2のカルボニル化は、約800~2500PSIGの圧力で行われる。いくつかの実施形態では、プロセスは、第2のカルボニル化の後かつ第2の分解の前に、第1の脱カルボキシル化材料に対して蒸留を実施することを更に含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、プロセスは、水溶液中でエネルギー貯蔵装置を放電させることと、放電されたエネルギー貯蔵装置を解体して電極材料を分離することと、電極材料を脱構造化して活物質混合物を形成することと、を更に含む。いくつかの実施形態では、水溶液は、少なくとも約1000mS/mの導電率を有する。いくつかの実施形態では、水溶液は、Na2SO4、NaCl、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される塩を含む生理食塩水である。いくつかの実施形態では、脱構造化が、最大約5mmの平均粒径を有する粒子を含む活物質混合物を形成する。いくつかの実施形態では、プロセスは、脱構造化された電極材料を洗浄すること及び、活物質混合物を集電体材料から分離することを更に含む。いくつかの実施形態では、洗浄が、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される有機溶媒を塗布することを含む。いくつかの実施形態では、エネルギー貯蔵装置は、使用済みリチウムイオン電池である。
【0021】
いくつかの実施形態では、プロセスは、リチウム生成物を単離するために浸出抽出を行うことを更に含む。いくつかの実施形態では、浸出抽出は、残渣材料を水溶液に溶解してスラリーを形成することと、スラリーに対して固液分離を行って、固体残渣からリチウムに富む溶液を単離することと、リチウムに富む溶液に対して単離プロセスを行ってリチウム生成物を形成することと、を含む。いくつかの実施形態では、水溶液は酸を含む。いくつかの実施形態では、リチウム生成物は、水酸化リチウム、炭酸リチウム、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】一実施形態による、使用済み電池から元素を回収するための一般的なプロセスステップを示すブロック図である。
【0023】
【
図2】一実施形態による、カルボニル精製プロセスステップを示すブロック図である。
【0024】
【
図3】一実施形態による、浸出抽出プロセスステップを示すブロック図である。
【0025】
【
図4】一実施形態による、使用済み電池から元素を回収するための特定のプロセスステップを示すブロック図である。
【0026】
【
図5A】経過時間に対する排気ガスのNi(CO)
4の濃度のプロットを示す熱重量分析装置(TGA)の結果である。
【0027】
【
図5B】経過時間に対する排気ガスのNi(CO)
4の正規化された重量のプロットを示す熱重量分析装置(TGA)の結果である。
【0028】
【
図6】様々な水素化プロセス条件下での時間に対する全ての抽出可能な金属の収率を示す熱重量分析装置(TGA)の結果である。
【0029】
【
図7】いくつかの実施形態による、還元温度の関数としての重量減少プロファイルを示すプロットである。
【0030】
【
図8A】いくつかの実施形態による、還元前のブラックマス材料の粉末X線回折(XRD)プロファイルを示す。
【0031】
【
図8B】いくつかの実施形態による、還元後のブラックマス材料の粉末X線回折(XRD)プロファイルを示す。
【0032】
【
図9A】いくつかの実施形態による、本開示のプロセスから収集されたニッケル粉末の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【0033】
【
図9B】いくつかの実施形態による、本開示のプロセスから収集されたニッケル粉末の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【0034】
【
図9C】いくつかの実施形態による、本開示のプロセスから収集されたニッケル粉末の粉末X線回折(XRD)データからの定性的な検索/一致結果を示す図である。主相は、面心立方晶ニッケル(Fm-3m)と一致する回折ピークを示す。副相は、六方晶ニッケル(P6
3/mmc)と一致する回折ピークを示す。
【0035】
【
図10A】いくつかの実施形態による、本開示のプロセスから収集されたニッケル粉末の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【0036】
【
図10B】いくつかの実施形態による、本開示のプロセスから収集されたニッケル粉末の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【0037】
【
図10C】いくつかの実施形態による、本開示のプロセスから収集されたニッケル粉末の粉末X線回折(XRD)データからの定性的な検索/一致結果を示す図である。
【0038】
【
図11A】いくつかの実施形態による、ブラックマスの写真画像である。
【0039】
【
図11B】いくつかの実施形態による、還元された材料の写真画像である。
【0040】
【
図11C】いくつかの実施形態による、精製されたニッケル粉末の写真画像である。
【0041】
【
図12】いくつかの実施形態による、本開示のプロセスに曝露された場合の経時的な対照材料及び添加剤材料の重量パーセントを示すグラフである。
【0042】
本発明の他の実施形態は、本出願を通して提供される。
【発明を実施するための形態】
【0043】
リサイクルプロセスのエネルギー貯蔵装置(例えば、リチウムイオン電池及び使用済みリチウムイオン電池)、それらの電極及び中間体(例えば、ブラックマス、微粉)から元素及び化合物を回収するためのプロセスの様々な実施形態が本明細書で提供される。本開示の化学プロセスは、酸抽出プロセス、従来の無溶媒プロセス及び従来の流出物を生成しないプロセスなどの従来のリサイクルプロセスの環境的制限及び費用効果的な制限を克服するのに役立ち得る。いくつかの実施形態では、プロセスは、湿潤材料で実施されても乾燥材料で実施されてもよい。いくつかの実施形態では、このプロセスは、カルボニル処理によって金属(例えば、ニッケルコバルト、及び/又は鉄)含有粉末を濃縮するために使用され得る。
【0044】
プロセスの一部として、本開示は、使用済みリチウム電池から有価元素を回収するための、蒸気冶金(vapometallurgical)精製としても知られるカルボニル精製方法を含む。この精製技術は、純粋な又は不純なニッケル金属が50~60℃の温度で大気圧で一酸化炭素と接触すると、ガス状化合物ニッケルテトラカルボニルが形成される化学反応に基づいている。反応を以下に示す:
Ni(s)+4CO(g)→Ni(CO)4(g)
【0045】
しかしながら、ニッケルカルボニルが約220℃(例えば、約220~250℃、約400~500℃、約220~900℃)を超えて加熱されると、その分解が起こり、ニッケル金属及び一酸化炭素が生じる。
Ni(CO)4(g)→Ni(s)+4CO(g)
(式中、「g」及び「s」は、それぞれ「気体」及び「固体」を表す。)
【0046】
充電式リチウム電池を含む材料の中で、かつ本開示の処理条件下で、金属元素(例えば、ニッケル、コバルト及び/又は鉄金属)はカルボニル化合物を形成することができ、異なる金属から形成されたカルボニル化合物は異なる形成特性及び異なる揮発特性を有する。従って、このカルボニル精製法は、電極から形成された混合物から金属(例えば、ニッケル、コバルト及び鉄)を抽出し、個々の金属を互いから分離して個々の高純度金属を形成するために使用することができる。いくつかの実施形態では、特別に設計された分解器を用いて、精製されたニッケル元素及びコバルト元素を、対応するカルボニルの分解中にそれらの粉末形態又は固体形態で回収することができる。いくつかの実施形態では、分解器の操作又は条件を変更することにより、回収する粉末の形態及び種類を異ならせることが可能となる。
【0047】
本開示の全プロセスは、好ましくは以下の主要なステップ、すなわち、使用済み充電式リチウム電池を水溶液中で放電させるステップと、電池を解体し、電池構成要素を分離するステップと、収集されたカソード電極材料をアノード電極材料と共に還元するステップと、カルボニル技術及びリチウムを用いて、水浸出法により有価ニッケル及びコバルトを回収するステップと、を含む。例えば、
図1は、一実施形態による、使用済み電池から元素を回収するためのプロセス100を示す。プロセス100は、使用済み電池の放電102から始まる。いくつかの実施形態では、放電は水溶液(例えば、生理食塩水)中で行われてもよい。その後、放電された電池は、様々な電池構成要素を電極材料から分離するために解体される(104)。例えば、電極(アノード及びカソードなど)を分離して、電極材料(電極膜など)を電極箔から単離してもよい。次いで、電極材料を脱構造化(破砕及び/又はサイズ縮小など)して(106)、脱構造化された電極材料を収集する。いくつかの実施形態では、カソード電極材料及びアノード電極材料は、脱構造化され、一緒に収集される。脱構造化された電極材料に対してカルボニル精製プロセス108を実施して、ニッケル及びコバルトを回収し(110)、浸出抽出(例えば、水浸出法又は酸浸出)112を実施して、リチウムを回収する(114)。
【0048】
いくつかの実施形態では、回収されたニッケル及びコバルトは、それらの金属形態(例えば粉末)である。いくつかの実施形態では、回収されたリチウムは、水酸化物形態又は炭酸塩形態である。そのような水酸化物材料、炭酸塩材料及び/又は金属材料は、流出物を生成しない本開示のプロセスを使用してリチウム電池カソード材料を製造するための原料として直接使用され得る。いくつかの実施形態では、そのような回収された金属は、粉末冶金などの他の産業にも使用することができる。
【0049】
上述のように、使用済み充電式リチウム電池は、短絡又は電池爆発の潜在的なリスクを軽減するために、水溶液(例えば、生理食塩水)によって放電されることが好ましい。いくつかの実施形態では、溶液は、約、少なくとも、又は少なくとも約800mS/m、1000mS/m、1500mS/m、2000mS/m、2500mS/m、3000mS/m、3500mS/m、4000mS/m、45000mS/m、5000mS/m、6000mS/m、8000mS/mもしくは10000mS/m、あるいはそれらの間の任意の値の範囲の導電率を有する水溶液であり得る。いくつかの実施形態では、水溶液は、Na2SO4、NaCl又はそれらの組み合わせを含む。
【0050】
放電後、使用済み充電式リチウム電池は、ハウジングを取り外すために機械的に解体される。ハウジングを取り外した後、電極を(破砕するか又は細断するなど)脱構造化して、粒子を形成する。いくつかの実施形態では、脱構造化された粒子は、約、最大、又は最大約0.1mm、0.5mm、0.8mm、1mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、8mmもしくは10mm、あるいはそれらの間の任意の範囲の値の平均粒径を有する。いくつかの実施形態では、溶媒(例えば、有機溶媒)を使用して、脱構造化された粒子を洗浄することができる。いくつかの実施形態では、洗浄は、電極活物質を集電体から取り外し、電極バインダー材料(例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF))を除去するのに役立つ。いくつかの実施形態では、溶媒は、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、又はそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、濾過プロセスを用いて、溶媒を脱構造化された電極材料(すなわち、電極活物質及び集電体)から分離することができる。溶媒は、バインダー除去後に、溶媒の蒸発によって再使用することができる。いくつかの実施形態では、次いで、集電体材料、結合剤及び/又は電池電解質を除去して電極活物質混合物を形成するためのスクリーニング操作を用いて、電極活物質(すなわち、アノード活物質及びカソード活物質(例えば、遷移金属酸化物))の混合物を得る。電極活物質混合物は、リチウム塩、遷移金属酸化物(例えば、ニッケル、コバルト及びリチウム酸化物)、炭素材料(例えば、グラファイト、活性炭)並びに他の有機不純物及び/又は無機不純物を含み得る。
【0051】
電極活物質混合物が得られた後に、カルボニルプロセスを実施して、ニッケル及びコバルトをそれらの金属形態で回収する。例えば、
図2は、電極活物質混合物から金属ニッケル及びコバルトを回収するためのカルボニル精製プロセス200を示す。電極活物質混合物を還元し(202)、続いて第1のカルボニル化204を行う。回収されたニッケル金属を得る(208)ために、第1のカルボニル化材料に対して分解206が実施され、追加の回収されたニッケル金属を得る(208)ために、第1のカルボニル化204及び分解206が繰り返されてもよい。いくつかの実施形態では、第1のカルボニル化204の後かつ分解206の前に任意選択の蒸留205を行って、鉄材料(例えば、鉄カルボニル)からニッケル材料(例えば、ニッケルカルボニル)を分離する(209)。原材料がFe又はかなりの量のFeを含む場合、任意選択の蒸留205を実施してもよい。いくつかの実施形態では、原材料がFeを含まない(又は実質的に含まない)か、無視できる量のFeを含むか、又は極めて少ない量のFeを含む場合、任意選択の蒸留205は行われない。単離された鉄材料209を分解して、回収された鉄金属を得ることができる。回収されたニッケル金属が存在しない残りの第1のカルボニル化材料に対して、第2のカルボニル化210が実施される。回収されたコバルト金属を得る(216)ために、第2のカルボニル化材料に対して蒸留212及びこれに続く分解214が実施され、追加の回収されたコバルト金属を得る(216)ために、第2のカルボニル化210、蒸留212及び分解214が繰り返されてもよい。残渣材料218が、カルボニル精製プロセス200の実行後に残り、リチウム及び炭素材料(例えば、グラファイト、活性炭)を含む。
【0052】
いくつかの実施形態では、電極活物質混合物の還元は、水素、炭素質材料、炭化水素材料(例えば、コークス、ピッチ、又はそれらの組み合わせ)、その部分的に改質されたガス状形態、及びそれらの組み合わせを使用して行われる。いくつかの実施形態では、還元は還元雰囲気中で行われる。いくつかの実施形態では、還元雰囲気は水素ガスを含む。いくつかの実施形態では、電極活物質混合物(例えば、活性炭及びグラファイト)中に残っている炭素含有材料は、還元剤として利用される。いくつかの実施形態では、還元プロセスは、炭素含有材料が還元プロセス中に消費されないか、実質的に消費されないか、又は完全に消費されないように、穏やかな条件下で行われる。
【0053】
いくつかの実施形態では、還元は、約、少なくとも、又は少なくとも約200℃、250℃、300℃、350℃、400℃、450℃、500℃、550℃、600℃、650℃、700℃、800℃、900℃、1000℃、1100℃、1200℃、1300℃、1500℃もしくは1800℃、あるいはそれらの間の任意の範囲の値の温度で行われる。例えば、いくつかの実施形態では、還元温度の範囲は、300~1200℃、450~600℃、又は500~1000℃の間である。いくつかの実施形態では、還元中の雰囲気は、窒素、水素、一酸化炭素、又はそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、還元雰囲気は、窒素及び水素、又は一酸化炭素及び水素を含有する。
【0054】
還元反応の例示的な機構は以下の通りである。
4LiNiO2+3C→2Li2O+3CO2+4Ni、
4LiCoO2+3C→2Li2O+3CO2+4Co
及び/又は
2LiNiO2+3H2→Li2O+3H2O+2Ni、
2LiCoO2+3H2→Li2O+3H2O+2Co
及び/又は
2LiNiO2+3CO→Li2O+3CO2+2Ni、
2LiCoO2+3CO→Li2O+3CO2+2Co
及び/又は
2Li(M)O2+3H2→Li2O+3H2O+2M
いくつかの実施形態では、上記機構に示されるリチウム混合金属二酸化物(すなわち、2Li(M)O2)中の「M」は、金属元素を含む。いくつかの実施形態では、金属元素は、Ni、Co、Fe、Mn、Al、Zr、Ca、又はそれらの組み合わせを含む。例えば、いくつかの実施形態では、Mは、少なくともNi、Co及び/又はFeを含む。いくつかの実施形態では、Mは、独立して含む各金属元素Mの約、少なくとも、又は少なくとも約0.1mol%、0.5mol%、1mol%、5mol%、10mol%、20mol%、30mol%、40mol%、50mol%、60mol%、70mol%、80mol%、90mol%、95mol%もしくは100mol%、あるいはそれらの間の任意の値の範囲を含む。例えば、いくつかの実施形態では、2Li(M)O2は、Li(NixMnyCoz)O2、Li(Nix)O2、又はLi(NixMnzAlz)であってもよく、x、y、及びzは、Mに存在する各金属元素の異なるモル%を表す。そのような実施形態では、還元ステップは、+3価から0価までのニッケル及びコバルトの化学反応を含む。いくつかの実施形態では、リチウム混合金属二酸化物の還元から得られるものは、個々の金属(例えば、「M」;例えば、ニッケル、鉄及び/又はコバルト)、金属合金、及び/又は個々の金属もしくは金属合金(例えば、ニッケル、コバルト、鉄、マンガン、アルミニウム、ジルコニウム及び/又はカルシウム)の金属酸化物相を含み得る。いくつかの実施形態では、還元条件は、金属形態で生成されるニッケル及びコバルトの量を最大にするように構成される。
【0055】
還元完了後、還元された混合物を不活性条件下(例えば、ヘリウム、窒素、及び/又はアルゴンガス)でカルボニル化反応器(例えば、第1又は第2のカルボニル化反応器)に移す。いくつかの実施形態では、第1及び第2のカルボニル化反応器は、同じ又は異なる反応器である。いくつかの実施形態では、還元された混合物は、約、最大、又は最大約20℃、25℃、30℃、40℃、50℃、55℃、60℃、70℃もしくは80℃、あるいはそれらの間の任意の範囲の値の温度に維持される。第1のカルボニル化プロセスは、一酸化炭素ガスを還元された混合物に通過させてガス状ニッケルカルボニルを生成することによって行われる。いくつかの実施形態では、第1のカルボニル化は、約、少なくとも、又は少なくとも約14PSIG、15PSIG、20PSIG、50PSIG、100PSIG、150PSIG、200PSIG、250PSIG、300PSIG、400PSIG、500PSIG、600PSIG、700PSIG、800PSIG、900PSIG、1000PSIG、1100PSIG、1200PSIG、1300PSIG、1500PSIG、1800PSIG、2000PSIG、2200PSIG、2500PSIG、3000PSIG、3500PSIG、もしくは4000PSIG、あるいはそれらの間の任意の範囲の値の圧力で行われる。いくつかの実施形態では、第1のカルボニル化は、約、最大、又は最大約20℃、30℃、40℃、50℃、60℃、70℃、80℃、90℃、100℃、120℃、140℃、150℃、180℃もしくは200℃、あるいはそれらの間の任意の範囲の値の温度で行われる。いくつかの実施形態では、第1のカルボニル化は、800~2000PSIGの圧力及び80~150℃の温度で行われる。
【0056】
第1のカルボニル化ステップが完了した時点で、ニッケル、鉄及びコバルトは、部分的に、実質的に又は完全に二成分金属カルボニルに変換されている。ニッケルカルボニル及び鉄カルボニルは、存在する場合、それらのガス状形態であり、カルボニル化容器内の残りの固体混合物から除去される。しかしながら、このプロセスで形成されたコバルトカルボニルCo2(CO)8は、そのような条件下での揮発性が低いため、固体形態である。分離されたニッケルカルボニル及び/又は鉄カルボニルは、分解チャンバ内で加熱及び分解されて、純粋な金属ニッケル及び/又は鉄と一酸化炭素とを形成することができる。いくつかの実施形態では、十分な量の鉄カルボニルが存在する場合、Ni(CO)4及びFe(CO)5を分解前に(例えば、蒸留によって)分離することができる。いくつかの実施形態では、ニッケルカルボニルを加熱して、約、少なくとも、又は少なくとも約200℃、220℃、250℃、300℃、350℃、400℃、450℃、500℃、600℃、700℃、800℃、900℃、1000℃もしくは1200℃、あるいはそれらの間の任意の範囲の値の温度でニッケル金属を形成する。いくつかの実施形態では、鉄カルボニルを加熱して、約、少なくとも、又は少なくとも約200℃、220℃、250℃、300℃、350℃、400℃、450℃、500℃、600℃、700℃、800℃、900℃、1000℃もしくは1200℃、あるいはそれらの間の任意の範囲の値の温度で鉄金属を形成する。
【0057】
ニッケル分及び鉄分がカルボニル化によって除去された後に、コバルトカルボニル(すなわち、Co2(CO)8)は、第2のカルボニル化プロセスで揮発性金属カルボニルに変換される。いくつかの実施形態では、第2のカルボニル化は、約、少なくとも、又は少なくとも約14PSIG、15PSIG、20PSIG、50PSIG、100PSIG、150PSIG、200PSIG、250PSIG、300PSIG、400PSIG、500PSIG、600PSIG、700PSIG、800PSIG、900PSIG、1000PSIG、1100PSIG、1200PSIG、1300PSIG、1500PSIG、1800PSIG、2000PSIG、2200PSIG、2500PSIG、3000PSIG、3500PSIG、もしくは4000PSIG、あるいはそれらの間の任意の範囲の値の圧力で行われる。いくつかの実施形態では、第2のカルボニル化は、約、最大、又は最大約20℃、30℃、40℃、50℃、60℃、70℃、80℃、90℃、100℃、120℃、140℃、150℃、180℃もしくは200℃、あるいはそれらの間の任意の範囲の値の温度で行われる。例えば、いくつかの実施形態では、第2のカルボニル化は、約2500PSIG及び約40~120℃(例えば、90℃)で行われる。
【0058】
いくつかの実施形態では、第2のカルボニル化プロセスは、以下の第1の方法によって実行されてもよい。1)一酸化窒素と一酸化炭素とのガス状混合物を残りの第1のカルボニル化混合物に導入し、Co2(CO)8を以下に示す化学反応によって揮発性かつ分解性のコバルトニトロシルトリカルボニルに変換する。
Co2(CO)8+NO→CoNO(CO)3+CO
【0059】
いくつかの実施形態では、第2のカルボニル化プロセスは、以下の第2の方法によって実行されてもよい。2)H2と一酸化炭素(すなわち、合成ガス)との気体混合物1:1(v/v)を反応器に導入することができる。約、少なくとも、又は少なくとも約14PSIG、15PSIG、20PSIG、50PSIG、100PSIG、150PSIG、200PSIG、250PSIG、300PSIG、400PSIG、500PSIG、600PSIG、700PSIG、800PSIG、900PSIG、1000PSIG、1100PSIG、1200PSIG、1300PSIG、1500PSIG、1800PSIG、2000PSIG、2200PSIG、2500PSIGもしくは3000PSIG、あるいはそれらの間の任意の値の範囲の圧力で、合成ガス、コバルト金属、コバルト塩、及びCo2(CO)8が反応して、コバルトテトラカルボニルヒドリド(すなわち、HCo(CO)4)を形成する。このコバルトテトラカルボニルヒドリド化合物は、高い揮発性を示し、一酸化炭素の非存在下でコバルト金属に容易に分解する。
【0060】
蒸留により、揮発性コバルトカルボニル(例えば、コバルトニトロシルトリカルボニル及び/又はコバルトテトラカルボニルヒドリド)を固体混合物から分離することができる。いくつかの実施形態では、第2のカルボニル化プロセスを回避又は省略してもよく、代わりにCo2(CO)8を穏やかな真空下での昇華によって第1のカルボニル化残基から分離する。いくつかの実施形態では、第2のカルボニル化はCo2(CO)8の形成に有利であり、生成されたコバルトカルボニルは、約、少なくとも、又は少なくとも約50重量%、60重量%、70重量%、80重量%、90重量%、92重量%、95重量%、98重量%もしくは99重量%、あるいはそれらの間の任意の値の範囲のCo2(CO)8を含む。
【0061】
単離されたコバルトカルボニル(例えば、Co2(CO)8、CoNO(CO)3、及び/又はHCo(CO)4)は、純粋な金属コバルト及び気体混合物(例えば、NO及び/又はCO)に分解され得る。いくつかの実施形態では、分解中のオフガスをフロントプロセス流にリサイクルすることができる。いくつかの実施形態では、カルボニルプロセス(例えば、第1及び第2のカルボニル化)を、閉ループ条件下(すなわち、一酸化炭素及び一酸化窒素などの導入されたガスが、気体流出物又は液体流出物を生成することなく、プロセス中に収集されて再使用される)で実施してもよい。いくつかの実施形態では、コバルトカルボニルを加熱して、約、少なくとも、又は少なくとも約200℃、220℃、250℃、300℃、350℃、400℃、450℃、500℃、600℃、700℃、800℃、900℃、1000℃もしくは1200℃、あるいはそれらの間の任意の範囲の値の温度でコバルト金属を形成する。
【0062】
いくつかの実施形態では、カルボニル化反応の実現された速度及び/又は抽出効率を、添加剤の使用によって高めてもよい。いくつかの実施形態では、還元ステップ、カルボニル化(例えば、第1及び/又は第2のカルボニル化)ステップ、あるいはそれらの組み合わせの直前又は最中に添加剤を導入することができる。いくつかの実施形態では、添加剤は、元素化合物、塩、分子化合物、又はそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、分子化合物は、カルコゲニド(例えば、硫黄又はテルル材料)、Cl2、あるいはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、塩は、塩化物塩である。いくつかの実施形態では、塩化物塩を供給材料に添加することができる。いくつかの実施形態では、添加剤は、供給材料重量の約、少なくとも、又は少なくとも約0.05重量%、0.1重量%、0.5重量%、1重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、6重量%、7重量%、8重量%、9重量%、10重量%、12重量%もしくは15重量%の割合で供給材料に添加される。いくつかの実施形態では、塩化物塩は、LiCl、NaCl、KCl、CaCl2、MgCl2、又はそれらの組み合わせを含む。理論に束縛されるものではないが、これらの塩は、高温及び水素圧でのHClのその場形成による還元を促進することができ、HClは、既存の酸化物よりも還元が容易であり得る金属ハロゲン化物と反応することができる。更に、理論に束縛されるものではないが、カルボニル化中に、カルコゲニド(例えば、硫黄又はテルル)が有効な触媒として機能し得る。
【0063】
ニッケル、鉄及び/又はコバルトの除去後は、浸出抽出によって抽出すべきリチウム(例えば、LiO
2、LiOH及び/又はLiOH
*(H
2O)の形態)並びに炭素材料(例えば、グラファイト、活性炭)を含む残渣材料が残っている。例えば、
図3は、残渣材料からリチウムを回収するための浸出抽出プロセス300を示す。残渣材料を溶解して(302)スラリーを形成し、固液分離304を行って未溶解の固体残渣306をリチウムに富む溶液308から単離する。リチウムに富む溶液308に対して蒸発、結晶化及び/又は沈殿310を行って、リチウム生成物312を単離する。
【0064】
いくつかの実施形態では、水及び/又は弱酸を残渣材料に導入して残渣材料を溶解し、スラリーを形成し、残渣材料のリチウム分を液体に溶解する。いくつかの実施形態では、固液分離は、溶解空気浮選ユニット又は分離タンク内で行われてもよい。いくつかの実施形態では、残留アノード材料(例えば、グラファイト)がスラリーの上部に浮遊する場合があり、スキミングによって単離される。いくつかの実施形態では、残留集電体材料(例えば、Cu及びAl)がスラリーの底部に沈殿する場合があり、収集される。いくつかの実施形態では、リチウム生成物は、水酸化リチウム、炭酸リチウム、又はそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、収集されたリチウム含有溶液の蒸発/結晶化によって、水酸化リチウムが得られる。いくつかの実施形態では、収集されたリチウム含有溶液に二酸化炭素及び/又は炭酸塩を導入することによる沈殿プロセスによって、炭酸リチウムが生成される。
【0065】
図4は、使用済み電池からニッケル元素、コバルト元素、及びリチウム元素を回収するための特定のプロセス400の一例を最初から最後まで示す。使用済みリチウム電池を提供し(402)、放電させ(404)、解体し(406)、ハウジングを取り外す(408)。電極材料を破砕し(410)、破砕された電極材料にN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を加え(412)、混合し(414)、スラリーを形成する。スラリーに対して固液分離416を実施し、これを繰り返してもよい。分離された固体材料を乾燥させ(418)、NMP溶媒を戻し(420)、混合ステップ414で再使用し、乾燥させた固体材料をスクリーニングし(422)、電極活物質からAl、Cuなどの集電体材料424を分離する。この例における電極活物質は、Feを含まないか、又は無視できる、かつ/もしくは最小限の量のFeを含む。電極活物質は、炭素源(C)及び/又は水素源(H
2)426と組み合わされ、還元428が行われる。還元された材料を一酸化炭素(CO)430と組み合わせ、第1のカルボニル化432を行い、続いて分解434を行い、ニッケル(Ni)金属434を生成する。電極活物質原材料はFeを含まないか、又は無視できる/最小限のFeを含んでいたので、分解434の前にFeカルボニルからNiカルボニルを分離するために蒸留する必要はなかった。分解された一酸化炭素438は、第1のカルボニル化432で再利用することができる。残りの第1のカルボニル化材料を一酸化窒素(NO)及び/又は一酸化炭素(CO)440と組み合わせ、第2のカルボニル化442を行い、続いて蒸留444及び蒸留蒸気の分解446を行い、コバルト(Co)金属448を生成する。分解された一酸化窒素及び/又は一酸化炭素449は、第2のカルボニル化442で再利用することができる。蒸留444から残った残渣材料を水(H
2O)450と組み合わせて混合し(452)、スラリーを形成し、スラリーに対して固液分離454を行い、未溶解の固体残渣456をリチウムに富む溶液から除去する。リチウムに富む溶液に対して気化及び/又は結晶化458を実施し、リチウム生成物460を生成する。
【実施例】
【0066】
プロセス、材料及び/又は得られた生成物を含む本開示の例示的な実施形態を、以下の実施例に記載する。
一般的な方法及び機器
【0067】
全ての操作を、標準的な実験室処理技術を用いて行った。還元された材料は、窒素充填グローブボックス内で、又は標準的な不活性取り扱い技術を用いて取り扱われた。利用されたガス(例えば、H2、CO、Ar、N2)は全て、高純度、同等又はそれ以上であった。
【0068】
密封管銅線源、垂直ゴニオメータ、及び0/90°マウントのLYNXEYE XE-T検出器を備えたBruker D8 Advance粉末X線回折計で粉末X線回折分析を行った。相分析を、Bruker Diffrac EVAソフトウェア又はCrystal impact Match!Softwareを使用して行った。走査型電子顕微鏡検査を、JEOL JSM-IT500HR/LA顕微鏡で行った。粒径分析を、ASTM認証試験ふるいを使用して、又は湿式測定セル及び乾式測定セルを備えたMalvern Panalytical Mastersizer 3000でのレーザ回折によって行った。元素分析を、Agilentシリーズ5900分光計で誘導結合プラズマ発光分光法(ICP-OES)を使用して行った。材料の表面積を、Brunauer-Emmett-Teller(BET)表面分析法を使用したガス吸着によって測定した。測定は、Micrometrics Tristar II Plus 3030表面積及び多孔度分析装置を使用して行った。
還元炉の説明
【0069】
還元試験を、直径100mmの石英管及び水素ガス供給源(Across International STF 1200シリーズ)を備えた単一ゾーンの静圧管炉で行った。このシステムは、酸素又は水の不在下で還元固体を取り扱うことができるように、カスタム構成されたグローブボックス内に設置される。ブラックマスをアルミナ坩堝に入れ、指定のランプ速度で指定の温度にした。水素ガスを指定の流量で管に流し、試料の温度を指定の滞留時間にわたって維持した。還元後、材料を周囲温度(18~25℃)まで冷却し、次いで、不活性雰囲気下で収集し、その後の使用又は分析のために貯蔵した。
カルボニル化ユニットの説明
【0070】
カルボニル化試験を、500℃で5000PSIの容器MAWP評価で構成された特注のオートクレーブ(Parr Instruments Companyシリーズ4540水平/垂直反応器;600mL)で行った。ユニットは、固体撹拌/流動化用に設計されたフットレススターラ、アルゴン、一酸化炭素又は代替ガス送達用のガスマニホールドと、プロセス監視及びデータ収集用のHMIとを備えている。カスタムユニットは、マスフローコントローラ及び背圧調整器を使用して、バッチ式、定圧式、又は連続ガスフラッシングで動作させることができる。空気及び水分を排除するために、固体粉末又はスラリー(50~500g)をアルゴンフラッシュ下で反応器に導入した。次いで、反応器を密封し、不活性雰囲気下、20~25℃で1時間圧力試験した。次いで、反応器を目標温度(典型的には100~150℃)にし、安定化させた(0.5~1時間)。次いで、一酸化炭素ガスを反応器に導入した。反応器を定圧モードで運転して、メイクアップガスを供給した。指定された反応時間の後、反応器への一酸化炭素の供給を遮断した。次いで、ニードル制御バルブ及び圧力調整器を使用して、カルボニルガスを粉末分解器システムに送った。
【0071】
・粉末分解器システムの説明
粉末分解器システムは、粉末収集ビンと直列に接続された2つのホットウォール分解器を構成する。ユニットは、金属カルボニル蒸気(Ni、Co又はFe)の流れを垂直下方に注入することによって機能する。カルボニル流は、純粋であってもよく、又は1つ以上のキャリアガス(例えば、CO、N2、Ar)もしくは添加剤(例えば、NH3、O2など)と混合されてもよい。この蒸気流は、ノズルから垂直に配向された加熱シリンダ(直径1インチ×18インチ)に入る。シリンダの外側は、抵抗加熱され、ガラス繊維によって絶縁される。加熱部分の温度は、熱電対によって監視される。システムは、500℃までの安定温度に達するケーブルである。ノズルを出る蒸気流が加熱部分を通過するのに伴って、金属カルボニルが解離して金属粉末及び一酸化炭素を生成した。金属粉末を、加熱部分の下に位置する収集ビン内に単離した。粉末形態は、ノズル速度、キャリアガス組成及び分解器温度を制御することによって変化させることができる。
【0072】
・実施例1:リサイクルされた電池とブラックマス
ブラックマスは、リチウムイオン電池パック(2170セル、NMCカソード)から生成された。電池を放電させ、細断し、洗浄した。洗浄中、中間材料をサイズ分類して「ブラックマス」又は「微粉」を生成した。これらの処理ステップの効果は、主に、電池ケーシング、電解質、セパレータフィルム、及び集電体(すなわち、銅及びアルミニウム)を含まないスラリー又は流動性粉末(乾燥している場合)を得ることである。従って、この「ブラックマス」は、リチウム、カソード(例えば、リチウム金属酸化物)、及びアノード(例えば、グラファイト及び活性炭)から構成され、更なる濃縮に必要な粗残渣を構成する。
【0073】
この材料の代表的な物理的特性及び化学的特性を、光学顕微鏡法、BET表面積、ICP-OES及びタップ密度によって明らかにし、表1に示す。
【表1】
【0074】
ブラックマス(すなわち、微粉)の小規模試料を水素化し、次いで、高圧/高温操作が可能な熱重量分析装置(TA Instruments HP75)でカルボニル化した。これにより、ユニットは小型の還元炉及びカルボニル化反応器として機能することができる。ブラックマス又は鉱物学的中間体の試料(50~100mg)を坩堝に入れ、次いで反応室に密封した。次いで、材料を、それぞれ水素ガス及び一酸化炭素ガスを使用して、特定の一連の還元条件及びカルボニル化条件に供した。ガス圧及び流量は、機器統合制御を使用して制御される。水素化条件は、0~90mL/分の流量で20~1000℃で0~1000PSIG H2の範囲であり得る。カルボニル化条件は、20~200℃の温度で0~1000PSIGの範囲であり得る。ユニット動作中、機器に装備された磁気浮遊天秤は、質量の変化、従って金属抽出効率の測定及び計算を可能にする。装置の排気をサンプリングラインに接続して、流出ガスのガス組成を質量分析計で監視できるようにした。これは、金属カルボニル(例えば、Ni(CO)4及びFe(CO)5)の検出及び定量のためにHidden Analyticalリアルタイムガス分析装置(RTGA)シリーズHPR-20を使用して行った。
【0075】
・実施例2(対照):ニッケル粉末の逐次水素化/カルボニル化
熱重量分析装置(TGA)試験を、対照としての市販のニッケル粉末(Valeグレード123)及びブラックマスについて行った。ニッケル粉末(Vale123、10μm D
50)をセラミック(アルミナ)坩堝に入れ、機器内に置き、密封した。試料を窒素パージ(100mL/分)下、(50℃)で5分間平衡化させた。次いで、粉末を水素雰囲気(50PSIG、90mL/分のH
2;10mL/分のN
2)下、800℃で4時間還元した。次いで、試料を100℃に冷却し、窒素を5分間流し、次いで、一酸化炭素(800PSIG又は150PSIG、90mL/分のCO;10mL/分のN
2)の雰囲気下で150℃に加熱した。この間、熱重量分析装置(TGA)を使用して試料中の重量損失(気化したニッケルに対応)を監視した。同時に、リアルタイムガス分析装置を使用してTGA装置の排気を監視して、Ni(CO)
4の発生が質量損失と同時に起こったことを確認した。
図5A及び
図5Bに示すTGAプロット(それぞれ濃度及び正規化された重量)から、Ni(CO)
4の発生が試料の質量損失と同時であることが確認され、そのため、試料の元素組成に由来する予想される重量損失から収率を計算した。表2は、ニッケル粉末の制御に関するカルボニル化の結果をまとめたものである。
【表2】
【0076】
・実施例3:ブラックマスの逐次水素化/カルボニル化
実施例1に記載の使用済みリチウムイオン電池のバルク処理から得られたブラックマス(すなわち、微粉)を空気中で150℃で4時間乾燥させて水分を除去し、不均一な黒色の流動性粉末を得た。平均して、材料は83重量%(+/-7重量%)が140メッシュ未満(<106μm)であった。光学顕微鏡法及びSEM画像化により、過大材料が主に残留アルミニウム導体及び銅導体であることが確認された。この材料を様々な条件下で一連の逐次水素化/カルボニル化実験に供し、これらの実験の結果を表3及び
図6に示す。T=0は、逐次水素化/カルボニル化実験のカルボニル化部分の開始として定義される。全ての抽出可能な金属の収率を、原材料中のNi及びFeの平均含有量(重量%)に基づいて算出した。算出された最大46重量%の抽出効率は、小規模試験で実現された。
【表3】
【0077】
・実施例4:乾燥マスの管状炉還元
実施例1の使用済みリチウムイオン電池の処理から得られた乾燥ブラックマス(すなわち、微粉)を、マッフル炉内で空気中で150℃で4~12時間予備乾燥して、バルク洗浄及び脱水からの残留水分を除去した。平均して、ブラックマス中の水分含有量は約40重量%である。次いで、材料を様々な温度下で還元に供した。表4は反応条件及び収率を示す。表4にまとめた還元実験では、指定量のブラックマス試料をアルミナ坩堝(坩堝あたり約25g)に入れ、管状炉に入れた。炉のランプ速度、目標温度、及び滞留時間をプログラムし、運転を開始した。較正されたロータメータを使用してガス流を調整した。指定された滞留時間の終了時に、炉をオフにし、室温まで冷却した。室温に達したら、プロセスガスの供給を停止し、試料を不活性雰囲気下で除去した。
【表4】
【0078】
図7に、様々な滞留時間(すなわち、4時間又は8時間)での還元温度の関数としての重量損失プロファイルをまとめる。
図8A及び
図8Bは、それぞれ還元(450℃、4時間)の前後の項目12の粉末X線回折(XRD)プロファイルを示し、カソード材料の完全な還元及び還元された金属の形成が確認される。
【0079】
・実施例5:湿潤マスの管状炉還元
実施例1の使用済みリチウムイオン電池の処理から得られた湿潤ブラックマス(すなわち、微粉)を、予備乾燥ステップなしで直接還元した。表5に還元条件及び質量損失をまとめる。これらの実験では、湿潤ブラックマスを予備電池処理ステップから直接収集し、アルミナ坩堝(約25g/坩堝)に入れ、管状炉に入れた。炉のランプ速度、目標温度、及び滞留時間をプログラムし、運転を開始した。較正されたロータメータを使用してガス流を調整した。指定された滞留時間の終了時に、炉をオフにし、室温まで冷却した。室温に達したら、プロセスガスの供給を停止し、試料を不活性雰囲気下で除去した。
【表5】
【0080】
・実施例6:カルボニル化及び粉末生成
実施例4の項目14、16又は17に従って得られた還元された乾燥ブラックマス(70g)をアルゴンフラッシュ下でカルボニル化反応器に充填した。反応器を密封し、水平モードにし、アルゴン下で282PSIGで1時間圧力試験を行った。次いで、反応器をアルゴン下で150℃に加熱し、反応器の温度を安定させた。反応器内のアルゴンを0PSIGまで抜き、次いで、一酸化炭素で1000PSIGの圧力まで再加圧した。材料を13時間反応させた。その後、Ni(CO)4に富む一酸化炭素蒸気を粉末分解器に通すことによって、反応器にゆっくり通気した。この運転のために、粉末分解器の壁温度を約350℃に維持した。通気後、反応器及び分解器に、一酸化炭素を1時間、アルゴンを10分間、次いで空気を流した。分解器及び反応器を開け、得られた粉末:ニッケル金属及び残渣を収集した。
【0081】
更に、実施例5の項目21又は22に従って得られた、還元された湿潤ブラックマス(57g)を、アルゴンフラッシュ下でカルボニル化反応器に充填した。反応器を密封し、水平モードにし、アルゴン下で200PSIGで1時間圧力試験を行った。次いで、反応器をアルゴン下で150℃に加熱し、反応器の温度を安定させた。反応器内のアルゴンを0PSIGまで抜き、次いで、一酸化炭素で800PSIGの圧力まで再加圧した。材料を13時間反応させた。その後、Ni(CO)4に富む一酸化炭素蒸気を粉末分解器に通すことによって、反応器にゆっくり通気した。この運転のために、粉末分解器の壁温度を約350℃に維持した。通気後、反応器及び分解器に、一酸化炭素を1時間、アルゴンを10分間、次いで空気を流した。分解器及び反応器を開け、得られた粉末:ニッケル金属及び残渣を収集した。
【0082】
表6は、乾燥ブラックマス(すなわち、項目23)のカルボニル化及び湿潤ブラックマス(すなわち、項目24)のカルボニル化の反応条件及び収率を示す。
【表6】
1)還元された試料のICP-OES分析によって求められたニッケル及び鉄の重量%。抽出性能は、以下のように定義される。(実際の質量損失)/(理論上の質量損失)
*100。
2)理論上の質量損失は、出発材料中のニッケル及び鉄の含有量の合計であり、出発質量並びにICP-OES分析によって測定されたNi及びFeの重量%値から計算される。
3)粉末分解器トラップに捕捉されなかったナノニッケル粉末の生成のため、金属粉末の質量は低かった。
【0083】
表7は、光学顕微鏡法、BET表面積、ICP-OESによって特徴付けられる乾燥ブラックマス(すなわち、項目23)カルボニル化材料及び湿潤ブラックマス(すなわち、項目24)カルボニル化材料の物理的特性及び化学的特性を示す。
【表7】
【0084】
図9A及び
図9Bは、項目23(乾燥)から収集されたニッケル粉末の走査型電子顕微鏡(SEM)画像であり、粉末はフィラメント状形態を示す。
図9Cは、項目23(乾燥)から収集されたニッケル粉末のXRDデータからの定性的検索/一致結果を示し、これは、ニッケルの2つの相を示している:主相は、面心立方晶ニッケル(Fm-3m)と一致する回折ピークを示す。副相は、六方晶ニッケル(P6
3/mmc)と一致する回折ピークを示す。
【0085】
図10A及び
図10Bは、項目24(湿潤)から収集されたニッケル粉末の走査型電子顕微鏡(SEM)画像であり、粉末は針状形態を示す。
図10Cは、項目24(湿潤)から収集されたニッケル粉末のXRDデータからの定性的検索/一致結果を示し、これは、単相を示している:主相は、面心立方晶ニッケル(Fm-3m)と一致する回折ピークを示す。
【0086】
図11A~
図11Cは、それぞれ、プロセスから単離されたブラックマス、還元された材料、及び精製されたニッケル粉末の写真画像である。
【0087】
・実施例7:硫黄添加剤
実施例1に記載の使用済みリチウムイオン電池のバルク処理から得られたブラックマス(1.28kg)を空気中で150℃で4時間乾燥させて水分を除去し、不均一な黒色の流動性粉末(0.75kg、41.3%質量損失)を得た。この材料のICP-OES分析は、この材料が約26重量%のニッケル含有量を有することを示した。材料をふるい分けして、過大(140メッシュ)材料を除去した。過大材料は、バルク加工中に欠落したアルミニウム及び銅電極裏打ち材で主に構成されていた。過少材料を、2つの方法:追加の処理又は追加の添加剤を含まない対照プロセス、並びに硫黄添加剤を含み、遊星ミル粉砕シーケンスを使用して混合する添加剤プロセスのうちの1つでカルボニル濃縮プロセスに供した。
【0088】
対照プロセスに続いて、乾式ふるい分けした対照材料の試料(約50mg)をTGA-MSに入れた。次いで、材料を逐次水素化(50PSI及び450℃で5時間)及びカルボニル化(800PSI及び150℃で19時間)に供して、対照最終生成物(すなわち、「PRM TRMB3 Dry U106」)を生成した。転化率(ニッケルの抽出からの理論上の重量損失)は、対照最終生成物中の<20重量%であることが分かった。
【0089】
添加剤プロセスに続いて、乾式ふるい分けした材料の試料(98g)を1重量%の硫黄(0.98g)と組み合わせ、セラミックジャー及び媒体(アルミナ)を含む高強度遊星ミルに入れた。材料を300rpmで10分間粉砕した。得られた材料を収集し、試料(約50mg)をTGA-MSに入れた。次いで、材料を逐次水素化(50PSI及び450℃で5時間)及びカルボニル化(800PSI及び150℃で19時間)に供して、添加剤最終生成物(すなわち、「PRM TRMB3 Dry+1重量%のS」)を形成した。転化率(ニッケルの抽出からの理論上の重量損失)は、>90重量%であることが分かった。
【0090】
図12は、還元ステップ及びカルボニル化ステップ中の経時的な対照材料及び添加剤材料の重量パーセントを示し、硫黄添加剤がニッケルの転化及び抽出を改善することを示す。
【0091】
特定の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、本開示の範囲を限定することは意図していない。実際、本明細書に記載の新規な方法及びシステムは、様々な他の形態で具体化され得る。また、本開示の要旨を逸脱しない範囲で、システムや方法の種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。添付の特許請求の範囲及びそれらの均等物は、本開示の範囲及び精神に含まれるような形態又は修正を包含することを意図している。
【0092】
特定の態様、実施形態、又は例に関連して記載された特徴、材料、特性、又はグループは、それと互換性がない限り、このセクション又は本明細書の他の箇所に記載された任意の他の態様、実施形態、又は例に適用可能であると理解されるべきである。本明細書(添付の特許請求の範囲、要約、及び図面を含む)に開示された特徴の全て、及び/又はそのように開示された任意の方法もしくはプロセスのステップの全ては、そのような特徴及び/又はステップの少なくともいくつかが相互に排他的である組み合わせを除いて、任意の組み合わせで組み合わせることができる。保護は、任意の前述の実施形態の詳細に限定されない。保護は、本明細書(添付の特許請求の範囲、要約、及び図面を含む)に開示された特徴の任意の新規なもの、もしくは任意の新規な組み合わせ、又はそのように開示された任意の方法もしくはプロセスのステップの任意の新規なもの、もしくは任意の新規な組み合わせに及ぶ。
【0093】
更に、別個の実施態様の文脈で本開示に記載されている特定の特徴は、単一の実施態様において組み合わせて実施することもできる。逆に、単一の実施態様の文脈で説明されている様々な特徴は、複数の実施態様において別々に、又は任意の適切な部分組み合わせで実施することもできる。更に、特徴は特定の組み合わせで作用するものとして上述され得るが、特許請求される組み合わせからの1つ以上の特徴は、場合によっては、組み合わせから削除することができ、組み合わせは、部分組み合わせ又は部分組み合わせの変形として特許請求され得る。
【0094】
更に、動作は、特定の順序で図面に示され、又は本明細書に記載され得るが、そのような動作は、望ましい結果を達成するために、示された特定の順序で、又は連続した順序で実行される必要はなく、又は全ての動作が実行される必要はない。図示又は説明されていない他の動作は、例示的な方法及びプロセスに組み込むことができる。例えば、記載された動作のいずれかの前、後、同時に、又は間に、1つ以上の追加の動作を実行することができる。更に、動作は、他の実施態様では並べ替えられるか又は順序を変更されてもよい。いくつかの実施形態では、図示及び/又は開示されたプロセスで行われる実際のステップは、図に示されたものとは異なり得ることが当業者には理解されよう。実施形態に応じて、上述したステップのうちの特定のステップを削除してもよく、他のステップを追加してもよい。更に、上記で開示された特定の実施形態の特徴及び属性は、追加の実施形態を形成するために異なる方法で組み合わせることができ、その全てが本開示の範囲内に入る。また、上記の実施態様における様々なシステム構成要素の分離は、全ての実施態様においてそのような分離を必要とすると理解されるべきではなく、記載された構成要素及びシステムは、一般に、単一の製品に一緒に統合されるか、又は複数の製品にパッケージ化され得ることを理解されたい。例えば、本明細書に記載のエネルギー貯蔵システムの構成要素のいずれかは、エネルギー貯蔵システムを形成するために、別個に提供されてもよく、又は(例えば、一緒に包装されるか、又は一緒に取り付けられるなど)一体化されてもよい。
【0095】
本開示の目的のために、特定の態様、利点、及び新規な特徴が本明細書に記載されている。必ずしもそのような利点の全てが、任意の特定の実施形態に従って達成され得るわけではない。従って、例えば、当業者は、本開示が、本明細書で教示又は示唆され得るような他の利点を必ずしも達成することなく、本明細書で教示されるような1つの又は複数の利点を達成するように具体化又は実施され得ることを理解するであろう。
【0096】
「できる(can)」、「し得る(could)」、「場合がある(might)」、又は「てもよい(may)」などの条件付き言語は、特に明記しない限り、又は使用される文脈内で他の意味で理解されない限り、一般に、特定の実施形態が特定の特徴、要素、及び/又はステップを含むが、他の実施形態は含まないことを伝えることを意図している。従って、そのような条件付き言語は、一般に、特徴、要素、及び/又はステップが1つ又は複数の実施形態に何らかの形で必要とされること、又は1つ又は複数の実施形態が、ユーザ入力又はプロンプトの有無にかかわらず、これらの特徴、要素、及び/又はステップが任意の特定の実施形態に含まれるか、又は実行されるべきかを決定するための論理を必然的に含むことを意味するものではない。
【0097】
句「X、Y及びZのうちの少なくとも1つ、」などの接続詞は、特に明記しない限り、項目、用語などがX、Y、又はZのいずれかであり得ることを伝えるために一般に使用される文脈で理解される。従って、そのような接続詞は、一般に、特定の実施形態がXの少なくとも1つ、Yの少なくとも1つ、及びZの少なくとも1つの存在を必要とすることを意味することを意図していない。
【0098】
本明細書で使用される「およそ(approximately)」、「約(about)」、「一般に(generally)」、及び「実質的に(substantially)」などの本明細書で使用される程度の言語は、依然として所望の機能を実行するか、又は所望の結果を達成する、記載された値、量、又は特性に近い値、量、又は特性を表す。
【0099】
本開示の範囲は、このセクション又は本明細書の他の場所における実施形態の特定の開示によって限定されることを意図するものではなく、このセクション又は本明細書の他の場所に提示されるように、又は将来提示されるように、特許請求の範囲によって定義され得る。特許請求の範囲の文言は、特許請求の範囲で使用される文言に基づいて広く解釈されるべきであり、本明細書に記載された例又は出願の審査中に限定されず、例は非排他的であると解釈されるべきである。
【0100】
特定の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、本開示の範囲を限定することは意図していない。実際、本明細書に記載の新規な方法及びシステムは、様々な他の形態で具体化され得る。また、本開示の要旨を逸脱しない範囲で、システムや方法の種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。添付の特許請求の範囲及びそれらの均等物は、本開示の範囲及び精神に含まれるような形態又は修正を包含することを意図している。従って、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲を参照することによってのみ定義される。
【国際調査報告】