(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-18
(54)【発明の名称】微粒子フィルタ
(51)【国際特許分類】
F01N 3/023 20060101AFI20240111BHJP
B01D 39/20 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
F01N3/023 Z
B01D39/20 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023538769
(86)(22)【出願日】2021-12-01
(85)【翻訳文提出日】2023-08-16
(86)【国際出願番号】 US2021061330
(87)【国際公開番号】W WO2022140024
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2020/139020
(32)【優先日】2020-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505470786
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】チャン,チア ディ
(72)【発明者】
【氏名】シェン,トン
(72)【発明者】
【氏名】リー,チヤン
(72)【発明者】
【氏名】ソン,ウェン チー
(72)【発明者】
【氏名】パウル,トビアス
(72)【発明者】
【氏名】カルヴェイ,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】ヒュンネケス,エドガー フィクトール
(72)【発明者】
【氏名】タン,ウェイヨン
【テーマコード(参考)】
3G190
4D019
【Fターム(参考)】
3G190AA02
3G190AA07
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3G190DA50
4D019AA01
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4D019BD01
4D019CA01
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4D019CB09
(57)【要約】
本発明は、微粒子フィルタから微粒子を除去することと、微粒子を除去した後に微粒子フィルタの入口チャネルに模擬灰を導入することとを含む、使用済み微粒子フィルタを処理する方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用済み微粒子フィルタの処理方法であって、
微粒子フィルタから微粒子を除去することと、
前記微粒子を除去した後、前記微粒子フィルタの入口チャネルに模擬灰を導入することと
を含む方法。
【請求項2】
前記微粒子フィルタを、内燃機関によって発生する排気微粒子を除去するために使用する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
使用済み微粒子フィルタが、次のうち少なくとも1つ:前記微粒子フィルタの最新の処理からの特定の期間、前記微粒子フィルタを有する車両の特定の走行マイル距離、前記微粒子フィルタの特定の期間における特定の再生頻度、前記微粒子フィルタを有する車両の特定の馬力、表示灯からの警告、センサからの信号、前記微粒子フィルタの特定の背圧、粒子状物質の特定の装填量、を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
微粒子を除去する工程に、前記微粒子フィルタの出口端及び/又は入口端に気体及び/又は液体流を適用することが含まれる、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
微粒子を除去する工程に、前記微粒子フィルタを約450℃~850℃までの温度にさらすことが含まれる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ガス流が、約1~15barの圧力及び/又は約100~10000L/分の流量で提供される、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
模擬灰を導入する工程に、模擬灰の固体微粒子及び/又は液体液滴及び/又は模擬灰の前駆体の流れを、前記微粒子フィルタの入口端を通して前記微粒子フィルタのチャネルに導入することが含まれる、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
模擬灰を導入する工程に、模擬灰を前記微粒子フィルタのチャネルに導入すること、及び任意に、微粒子フィルタをさらに熱処理することを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
模擬灰を導入する工程に、前駆体を前記微粒子フィルタのチャネルに導入することと、前駆体を模擬灰に変換するために前記微粒子フィルタをさらに処理することとが含まれる、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
固体粒子及び/又は液体液滴の流れが100~10000m
3/hで提供される、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記微粒子フィルタの1リットル当たり約0.05グラム以上の模擬灰が提供される、請求項7から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記固体粒子及び/又は液体液滴の流れが、吹き付け、吸引、噴霧、及び/又はコーティングを介して前記微粒子フィルタに導入される、請求項7から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記模擬灰が300℃以上の温度で存続できる多孔質構造を有する、請求項7から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記模擬灰及び/又はその前駆体が、約0.01ミクロン~約1000ミクロンの範囲の粒子径を有する、請求項7から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載の方法によって使用済み微粒子フィルタを処理するシステムであって、以下:
前記微粒子フィルタに蓄積した微粒子を除去するように構成されたガス及び/又は液体流アプリケータを有する洗浄ユニット、及び
前記微粒子を除去した後、前記微粒子フィルタのチャネルに模擬灰及び/又は前記模擬灰の前駆体を提供するように構成された導入ユニット
を含むシステム。
【請求項16】
前記微粒子フィルタを処理基準で評価するための検出ユニットをさらに含む、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記微粒子フィルタから微粒子を除去する工程及び/又は前記微粒子フィルタの入口チャネルに模擬灰を導入する工程が完了したと判定されたときに、前記洗浄ユニット及び/又は前記導入ユニットを停止させるように構成された制御ユニットをさらに含む、請求項15又は16に記載のシステム。
【請求項18】
微粒子フィルタの製造方法であって、以下:
ハニカム構造を含む微粒子フィルタを提供することと、
前記ハニカム構造の入口チャネルに模擬灰を導入することと、
前記ハニカム構造の前記入口チャネルから前記模擬灰及び/又は微粒子の少なくとも一部を除去すること、及び
前記ハニカム構造の前記入口チャネルに模擬灰を再び導入することと、
を含む方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法で微粒子フィルタを製造するシステムであって、以下:
前記微粒子フィルタに使用されるハニカム構造の入口チャネルの内側表面に模擬灰及び/又は微粒子を提供するように構成された導入ユニット、及び
前記ハニカム構造の前記入口チャネルから前記模擬灰及び/又は微粒子を除去するように構成されたガス及び/又は液体流アプリケータを有する洗浄ユニット
を含むシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般に、エンジン排気ガスを含むがこれに限定されない源からの粒子状物質を浄化するための微粒子フィルタに関するものであり、より具体的には、微粒子フィルタの製造中及び/又はメンテナンス中に微粒子フィルタを処理するための方法及びシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
粒子状物質(PM)の成分には、微細な固体又は液体、例えば粉塵、フライアッシュ、すす、煙、エアロゾル、ヒューム、ミスト、凝縮した蒸気が含まれ、大気中に長時間浮遊することがある。粒子状物質は、様々な固定源及び移動源に由来し、直接排出される(一次PM源)、又はガス状排出物の変換により大気中で形成される(二次PM源)。
【0003】
一次的なPM源は、人間活動と自然活動の両方に由来する。PM源の大部分は、様々な人間活動から生じる。この種の活動には、農作業、工業プロセス、木材及び化石燃料の燃焼、建設及び解体活動、そして道路粉塵の大気中への取り込みが含まれる。自然(非人為的又は生物起源)源もPM問題全体に寄与している。これには、風で飛ばされた粉塵及び山火事が含まれる。
【0004】
二次PM源は、PMを形成する、又は形成を助ける大気汚染物質を大気中に直接放出する。よってこれらの汚染物質は、PM形成の前駆物質とみなされる。これらの二次汚染物質には、SOx、NOx、VOC及びアンモニアが含まれる。PM前駆物質の排出を低減する制御対策は、周囲のPMレベルに有益な影響を与える傾向がある。
【0005】
例えば、内燃機関の排出物は、固体、液体及び気体の3相で構成されている。固体と液体を合わせたものは、微粒子、粒子状物質(PM)、全粒子状物質(TPM)と呼ばれ、そして主に乾燥炭素(すす)、無機酸化物、例えば硫酸塩、又は有機液体が含まれる。
【0006】
微粒子フィルタは、限定するものではないが、内燃機関、例えばリーンバーンエンジン、ディーゼルエンジン、天然ガスエンジン、ガソリンエンジン、発電所、焼却炉、又は発電設備によって生じる粒子状物質を除去するために使用されることが知られている。当技術分野において、微粒子フィルタがフロースルーフィルタ、ウォールフローフィルタ(WFF)等の形態のうちの1つを取り得ることも知られている。一般的に既知の種類の微粒子フィルタはディーゼル微粒子フィルタ(DPF)であり、ディーゼル微粒子フィルタは、ディーゼル微粒子を物理的に捕らえ、大気への微粒子の放出を防止する。ディーゼル微粒子フィルタの材料は、優れた濾過効率と、機械的及び熱的耐久性を示すものが開発されている。ディーゼル微粒子フィルタは、ディーゼル微粒子排出を制御するための最も効果的な技術となっている。
【0007】
これらの装置における微粒子堆積の機序により、フィルタは、元素状炭素(すす)及び関連する黒煙排出を含むディーゼル微粒子の固体画分を制御するのに最も効果的である。フィルタは、PM排出物、例えば有機画分(OF)及び硫酸塩微粒子の非固体画分を制御するのに、限定的な効果を有するか、又は全く効果がない。PMの総排出量を制御するために、DPFシステムには、有機画分を対象とする追加的な機能性成分(典型的には酸化触媒)が組み込まれる可能性があり、その一方で、硫酸塩微粒子を制御するために超低硫黄燃料が必要となる場合がある。
【0008】
「ディーゼル微粒子トラップ」という用語は、特に古い文献では「ディーゼル微粒子フィルタ」の同義語として使われることがある。「トラップ」という用語は、より広範なクラスの微粒子分離装置を網羅する。
【0009】
粒子状酸化触媒(POC)は部分フィルタと呼ばれることもあり、これもまたディーゼル微粒子を捕らえることができるが、ディーゼル微粒子フィルタよりも全体的な効率がはるかに低いことが指摘される。一般的な設計では、POCは流れの一部からしか微粒子を捕らえられない。しかし、一部のフィルタ媒体の場合、その区別があまり明確でない場合があり、その装置は、POCか、又は(深)微粒子フィルタのいずれかに分類できる。
【0010】
ディーゼル微粒子の嵩密度は低く、コンパクト化の程度によって、典型的には0.1g/cm3未満であるため、ディーゼル微粒子フィルタはかなりの量のすすをすぐに蓄積することがある。旧世代の大型エンジンからは、1日あたり相当量のすすが回収される場合がある。回収された微粒子は最終的に、フィルタ内の排気ガスの圧力低下を過度に引き起こし、エンジン動作に悪影響を及ぼすこととなろう。従ってディーゼル微粒子フィルタシステムには、フィルタから微粒子を除去し、すすの回収能力を回復させる方法を提供する必要がある。この微粒子の除去は、フィルタ再生として知られ、フィルタの通常運転中に連続的に行うか、又はあらかじめ決められた量のすすが蓄積された後に定期的に行うことができる。ディーゼル微粒子フィルタの熱再生が典型的には用いられており、回収された微粒子は酸素及び/又は二酸化窒素によって酸化され、ガス状生成物(主に二酸化炭素)になる。
【0011】
微粒子を十分な割合で確実に酸化させるためには、フィルタが十分な温度で作動しなければならない。フィルタシステムの中には、排気ガスの流れそのものが熱源となるものもある。受動的フィルタと呼ばれるこの種類のフィルタシステムでは、エンジンの通常運転中にフィルタが連続的に再生される。受動的フィルタは通常、何らかの形態で触媒を組み込んでおり、すすの酸化温度を、車両の運転中に排気ガスが到達できるレベルまで低下させる。信頼性の高い再生を促進するために必要となり得る別のアプローチには、フィルタ温度を上昇させるための多くの能動的戦略(エンジン管理、排気系での燃料燃焼、電気ヒーター等)がある。能動的フィルタ又は擬似能動的フィルタとして知られるこのような装置の再生は、通常、車両の制御システムによって決定され、定期的に実行される。
【0012】
代替として、使い捨てのフィルタカートリッジを使用し、すすが溜まったら新しいカートリッジに交換する戦略もある。この種の微粒子フィルタは、一部の産業保健環境において使用されている。
【0013】
ガソリン微粒子フィルタ(GPF)は排出の後処理技術であり、ディーゼル微粒子フィルタ(DPF)と類似して、ガソリンエンジン、特にガソリン直噴エンジン(GDI)からの微粒子排出を制御するために開発されている。この技術はガソリン微粒子フィルタ(PPF)とも呼ばれ、ドイツの一部の文献では、オットー微粒子フィルタ(ドイツ語でOttopartikelfilter)、略称OPFと呼ばれている。
【0014】
GPFは、欧州及び中国で採用されているガソリン乗用車及び小型商用車の微粒子数(PN)排出規制を満たすため、両国で使用されることが予想される。Euro6規制では、GDI車両に対してディーゼル車と同等のPN(PMも含む)規制値を設定している。中国のPN規制はGDIに限らず、あらゆるガソリン車両に適用されている。
【0015】
PFI車両は欧州のPN/PM排出規制の対象外ではあるが、一部のポート燃料噴射(PFI)エンジンにGPFが採用される場合がある。
【0016】
初期のGPFは、TWC触媒の下流に配置されたコーティングされていないGPFが含まれるものがほとんどであった。技術の成熟に伴い、GPFは三元触媒でコーティングされるようになった。この触媒コーティングされたGPFの構成は、4元触媒(FWC)と呼ばれることもある。
【0017】
GPF及びDPFの技術は密接に関連しているが、フィルタの構成、動作、制御戦略には多くの違いがあり、これは、ガソリンエンジンとディーゼルエンジンの運転条件の違い、及び微粒子排出率及び組成の違いに起因している。
【0018】
フィルタを長期間使用すると、フィルタのチャネルに粒子状物質が蓄積し、フィルタの寿命が短くなり、圧力低下が増加し、エンジンの燃費が悪くなる。よって微粒子フィルタは、チャネルに蓄積した微粒子を除去するため定期的に洗浄することが求められる。現在、粒子状物質の清掃は所定のメンテナンス間隔で行われるか、又はフィルタ内の圧力低下が異常に高くなって故障状態になった場合に行われることがほとんどである。例えば、米国EPAが大型のハイウェイ車両のために定めた最小の微粒子洗浄間隔は、走行距離150,000マイルである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0019】
一側面において、使用済み微粒子フィルタを処理するための方法が開示され、この方法は、微粒子フィルタから微粒子を除去することと、微粒子を除去した後、微粒子フィルタの入口チャネルに模擬灰を導入することとを含む。
【0020】
この方法は、限定するものではないが、内燃機関、例えばリーンバーンエンジン、ディーゼルエンジン、天然ガスエンジン、ガソリンエンジン、発電所、焼却炉等を含む源からの粒子状物質を除去することを目的とする、市販のフィルタの実質的にほとんどの種類に有用である。
【0021】
フィルタは、当該技術分野で既知のように、ハニカムウォールフローフィルタ、巻かれた又は充填繊維フィルタ、開放セルフォーム、焼結金属フィルタ、キャンドルフィルタ等として形成することができる。フィルタは、ハウジングに含有されたフィルタリングモノリスを含む缶入りフィルタ、又はフィルタリングモノリスを含むが、例えば排出処理システムに組み込まれるまでフィルタリングモノリスを保護するためのハウジングを含まない非缶入りフィルタとすることができる。
【0022】
フィルタは、典型的には、多孔質基材で形成される。多孔質基材はセラミック材料、例えば、コージェライト、シリコンカーバイド、シリコンニトリド、ジルコニア、ムライト、スポジュメン、アルミナ-シリカ-マグネシア、ジルコニウムシリケート、及び/又はアルミニウムチタネート、典型的にはコージェライト、シリコンカーバイド、又は当該技術分野で既知の任意の材料を含んでよい。フィルタは、有利には、耐火性材料、例えばコージェライト、シリコンカーバイド又はアルミニウムチタネートを含む。
【0023】
この方法は、使用済みフィルタ、すなわち、そのフィルタリング機能を実行する際に使用されたフィルタを処理するのに有用である。例えば、この方法は、次の処理条件のうち少なくとも1つを満足する使用済みフィルタを処理するために有用となり得る:微粒子フィルタの最新の処理からの特定の期間、微粒子フィルタを有する車両の特定の走行マイル距離、微粒子フィルタの特定の期間における再生頻度、微粒子フィルタを有する車両の馬力、表示灯からの警告、センサからの信号、微粒子フィルタの特定の背圧、粒子状物質の特定の装填量等。例えば、本方法は、より厳しい又はより強制的な規制を満たすために使用済みフィルタを処理するのに有用である。
【0024】
この方法において、微粒子を除去する工程には、好ましくは、気体及び/又は液体の流れを、微粒子フィルタの出口端及び/又は入口端に適用することが含まれる。
【0025】
1つ以上の実施形態において、ガス流は、約1~15barの圧力及び/又は約100~10000L/分の流量で提供される。
【0026】
1つ以上の実施形態において、ガス流は、酸素、又は窒素、又はCO2、又は希ガスを含むが、これらに限定されない。
【0027】
1つ以上の実施形態において、ガス流は、蒸気を含む。
【0028】
1つ以上の実施形態において、液体流は、約0~15barの圧力、及び/又は約0~10000L/分の流量で提供される。この方法において、微粒子を除去する工程には、好ましくは、微粒子フィルタを約450℃~850℃までの温度にさらすことが含まれる。
【0029】
この方法において、模擬灰を導入する工程には、好ましくは、模擬灰の固体微粒子及び/又は液体液滴及び/又は模擬灰の前駆体の流れを、微粒子フィルタの入口端を通して微粒子フィルタのチャネルに導入することが含まれる。有利には、固体微粒子及び/又は液体液滴の流れは、100~10000m3/hで提供される。有利には、固体微粒子及び/又は液体液滴の流れは、吹き付け、吸い込み、噴霧及び/又はコーティング等を介して微粒子フィルタに導入される。
【0030】
この方法において、模擬灰を導入する工程には、好ましくは、模擬灰を微粒子フィルタのチャネルに導入すること、及び任意に、微粒子フィルタをさらに処理することが含まれる。一実施形態では、そのような処理は、微粒子フィルタを熱条件、例えば300℃以上、より好ましくは350℃以上、及び最も好ましくは400℃以上にさらすことを含む。
【0031】
この方法において、模擬灰を導入する工程には、好ましくは、前駆体を微粒子フィルタのチャネルに導入することと、前駆体を模擬灰に変換するために微粒子フィルタをさらに処理することとが含まれる。一実施形態では、このような処理は、微粒子フィルタを熱条件、例えば300℃以上、より好ましくは350℃以上、及び最も好ましくは400℃以上にさらすことを含む。
【0032】
この方法において、模擬灰及び/又は前駆体は、有利には、微粒子フィルタの体積1リットルあたり約0.05グラム以上の量で提供される。
【0033】
この方法において、模擬灰は、300℃以上でも存続する多孔質構造を有する。
【0034】
この方法において、模擬灰は、排ガス又は排煙ガス又はフィードガス中の微粒子及び他の成分(例えば炭化水素、CO、窒素酸化物、O2、N2、CO2、H2O等)による熱、圧力、物理的又は化学的処理による著しい分解に耐性を有する耐火性材料の少なくとも1つを含む。
【0035】
この方法において、模擬灰は、そのまま、及び/又は前駆体から微粒子フィルタに導入することができる。
【0036】
一実施形態では、前駆体は、模擬灰を生成する化学反応に少なくとも関与する材料である。
【0037】
一実施形態では、前駆体は、模擬灰を生成する物理的変化に少なくとも関与する材料である。
【0038】
一実施形態では、前駆体は、処理条件下で模擬灰を生成する材料である。処理条件は、加熱又は冷却の温度、光、例えば光(photo)、マイクロ波、放射線、電場、磁場、電磁場、超音波、圧力、機械的強度を含むが、これらに限定されない。
【0039】
一実施形態では、このような処理は、微粒子フィルタを熱条件、例えば300℃以上、より好ましくは350℃以上、及び最も好ましくは400℃以上にさらすことを含む。
【0040】
いくつかの実施形態において、模擬灰及び/又は前駆体は、以下の1つ以上を含むが、これらに限定されない:酸素含有化合物又は酸素の化合物、例えば無機酸化物化合物、金属酸化物、非金属酸化物、複合酸化物、混合酸化物、塩、硫酸塩、ホスフェート、カーボネート、シリケート、分子篩、水酸化物、有機金属類等。
【0041】
いくつかの実施形態において、模擬灰及び/又は前駆体は、酸化アルミニウム、アルミネート、酸化亜鉛、亜鉛カーボネート、カルシウムオキシド、カルシウムカーボネート、セリウムジルコニウム(混合)オキシド、ジルコニウムオキシド、セリウムオキシド、シリカ、チタニア、シリコンチタニウム(混合)オキシド、セリア以外の希土類金属酸化物、酸化マグネシウム、酸化バリウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、酸化ハフニウム、酸化マンガン、酸化鉄、バナジウムオキシド、酸化ニオブ、酸化クロム、モリブデンオキシド、タングステンオキシド、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化銅、アンチモンオキシド、アルカリ金属オキシド、アルカリ土類金属オキシド、遷移金属オキシド、主族金属酸化物、分子篩、シリケートゼオライト、アルミノシリケートゼオライト、非ゼオライト分子篩を含む。
【0042】
いくつかの実施形態では、模擬灰及び/又は前駆体は天然源からであり、これは石灰、テフラ、耐火性粘土、耐火粘土又はセラミックスを含むが、これらに限定されない。
【0043】
いくつかの実施形態において、模擬灰及び/又は前駆体は、天然源の処理又は加工から得られる。
【0044】
いくつかの実施形態において、模擬灰及び/又は前駆体は、シリコンカーバイド及び炭素(グラファイト)を含むが、これらに限定されない。
【0045】
いくつかの実施形態において、模擬灰及び/又は前駆体は、炭化物、窒化物、二元化合物、例えばタングステンカーバイド、ボロンニトリド、ハフニウムカーバイド、三元化合物、例えばタンタルハフニウムカーバイド等を含むが、これらに限定されない。
【0046】
いくつかの実施形態において、模擬灰及び/又は前駆体は、白金族金属及び貴金属、例えばルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、金(Au)、銅(Cu)、銀(Ag)、レニウム(Re)及び水銀(Hg)を含むが、これらに限定されない。
【0047】
有利には、模擬灰及び/又はその前駆体は、好ましくは、約0.01ミクロン~約1000ミクロンの範囲、及び好ましくは約0.1ミクロン~約100ミクロン、及び最も好ましくは約0.2ミクロン~約50ミクロンの微粒子径を有する。
【0048】
別の側面では、上記に開示した方法によって使用済み微粒子フィルタを処理するためのシステムを開示する。すなわち、上記の側面の各特徴は、次をさらに含むこの側面と自由に組み合わせてよい:微粒子フィルタに蓄積した微粒子を除去するように構成されたガス及び/又は液体流アプリケータを有する洗浄ユニット、及び微粒子を除去した後、微粒子フィルタのチャネルに模擬灰及び/又は模擬灰の前駆体を提供するように構成された導入ユニット。
【0049】
このシステムにおいて、処理基準に基づいて微粒子フィルタを評価するための検出ユニットが有利には含まれる。例えば、処理基準は、例として、次のうち少なくとも1つとして選択することができる:微粒子フィルタの最新の処理からの特定の期間、微粒子フィルタを有する車両の特定の走行マイル距離、微粒子フィルタの特定の期間における再生頻度、微粒子フィルタを有する車両の馬力、表示灯からの警告、微粒子フィルタの特定の背圧。
【0050】
本システムにおいては、微粒子フィルタから微粒子を除去する工程が完了したと判定されたときに、洗浄ユニットを停止させる制御手段が有利には含まれる。例えば、フィルタをパージするプロセスにおいて、フィルタから吹き出す微粒子が肉眼で観察されないときに洗浄ユニットが止められる。又は、フィルタをパージするプロセスにおいて、回収袋に微粒子がもはや回収されなくなったときに、洗浄ユニットが止められる。又は、特定の期間において、回収袋の質量が閾値未満、例えば0.1~1g増加したときに、洗浄ユニットが止められる。又は、特定の期間において、フィルタ部分全体又はフィルタの一部の背圧が閾値未満、例えば0.1mbar~1mbarに増加したときに、洗浄ユニットが止められる。又は、一連の標準的な手順、例えば最初にほぐし処理、そして次にガス流処理が完了した後に、洗浄ユニットが止められる。
【0051】
上記発明は、使用済み微粒子フィルタの本発明者による処理における驚くべき発見から生まれたものである。当技術分野では日常的に、ディーゼル微粒子フィルタは運転後に処理され、フィルタのチャネルに蓄積した粒子状物質を除去して、エンジンシステム内の不利に高い背圧を緩和させる。微粒子数(PN)濾過効率の低下は粒子状物質の除去処理後にしばしば起こるため、微粒子フィルタは、微粒子数(PN)の排出に関するますます厳しくなる基準に合格できないおそれがある。この不具合を回避するため、本発明者らが多くの方法を試みた結果、微粒子を除去し且つさらに模擬灰を入口チャネルに導入したDPFが、灰洗浄のみを行ったDPF、又は何も処理を行っていない新規DPF、又は模擬灰を装填した新規DPFよりも良好なPN除去効率を示すことが、偶然にも発見された。
【0052】
上記発見に基づき、開示するさらに別の側面は微粒子フィルタの製造方法であり、この方法は、ハニカム構造を含む微粒子フィルタを提供することと、微粒子フィルタが処理基準を満たすまでハニカム構造の入口チャネルに模擬灰を導入することと、ハニカム構造の入口チャネルから模擬灰及び/又は微粒子の少なくとも一部を除去し、再びハニカム構造の入口チャネルに模擬灰を導入することとを含む。
【0053】
上記方法において、処理基準は、例えば、次のうち少なくとも1つとして選択することができる:微粒子フィルタの特定の期間における特定の再生頻度、微粒子フィルタを有する車両の特定の馬力、表示灯からの警告、微粒子フィルタの特定の背圧。
【0054】
上記の方法において、微粒子フィルタの処理は、模擬灰を導入して使用済みの微粒子フィルタの或る症状を表し、その後微粒子を除去して再度模擬灰を導入することにより行う。例えば、フィルタは、模擬灰の特定の装填量、例えば約0.1g/L~100g/L、及び好ましくは約0.5g/L~約50g/L、及びより好ましくは約1g/L~約10g/Lで処理してよい。有利には、フィルタは、背圧が流量1020m3/hr(CMH)で測定されることを考慮して、微粒子フィルタの特定の背圧、例えば約0.1Mbar~約100Mbar、及び好ましくは約1Mbar~約50Mbar、及びより好ましくは約5Mbar~25Mbarが示されるまで処理してよい。或いは、フィルタは、粒子状物質の特定の濾過効率又は粒子数、例えば80%以上、及び好ましくは85%以上、及びより好ましくは90%以上、及びより好ましくは95%以上が示されるまで処理してよい。
【0055】
さらなる側面において、上記に開示した方法を用いて微粒子フィルタを製造するためのシステムを開示する。すなわち、さらに別の側面の各特徴は、次をさらに含むこのさらなる側面と自由に組み合わせてよい:微粒子フィルタに使用されるハニカム構造の入口チャネルの表面に模擬灰及び/又は微粒子を提供するように構成された導入ユニット、及びハニカム構造の入口チャネルから模擬灰及び/又は微粒子を除去するように構成されたガス及び/又は液体流アプリケータを有する洗浄ユニット。
【0056】
本開示で定義する各側面は、反対のことが明確に示されない限り、任意の他の側面又は側面と組み合わせてよい。特に、好ましい又は有利であると示された任意の特徴は、反対のことが明確に示されない限り、好ましい又は有利であると示された任意の他の特徴又は機能と組み合わせてよい。
【0057】
以下の非限定的な図面及び図を参照し、記載を行う。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【
図1】
図1は、例示的な微粒子フィルタの透視図である。
【
図3】
図3は、微粒子フィルタのチャネルに蓄積した微粒子を除去する工程を示す図である。
【
図4】
図4は、微粒子を除去する工程の後に、微粒子フィルタのチャネル内に、又は新しい微粒子フィルタのチャネル内に、模擬灰を導入する工程を示す図である。
【
図5】
図5は、微粒子フィルタのチャネルに蓄積した微粒子を除去するためのガス流アプリケータを備えた例示的な洗浄ユニットの模式図である。
【
図6】
図6は、微粒子を除去する工程の後に、微粒子フィルタのチャネル内に模擬灰を供給するための模擬灰アプリケータを有する導入ユニットの概略図である。
【
図7】
図7は、微粒子フィルタを評価するための例示的な検出システムの模式図である。
【
図8】
図8は、フィルタのWHTC試験サイクルにおける比較結果を示すプロットである。
【
図9】
図9は、フィルタのWHSC試験サイクルにおける比較結果を示すプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0059】
本発明のいくつかの例示的な実施態様を記載する前に、本発明は、以下の記載に示される構造又はプロセス工程の詳細に限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施態様が可能であり、且つ様々な方法で実践する又は行うことができる。
【0060】
本明細書で使用される用語に関して、以下の定義が提供される。
【0061】
特許請求の範囲を含む本明細書全体を通して、「1つを含む」又は「含む」という用語は、特に指定しない限り、「少なくとも1つを含む」という用語と同義であると理解すべきであり、「間」は限界値を含むものと理解すべきである。
【0062】
「a」、「an」及び「the」という用語は、記事の文法的対象の1つ以上(すなわち、少なくとも1つ)を指すために使用される。
【0063】
「及び/又は」という用語には、「及び」、「又は」、そしてこの用語に関連する要素の他のあらゆる可能な組み合わせの意味が含まれる。
【0064】
すべてのパーセンテージ及び比は、特に明記されていない限り、質量で言及される。
【0065】
本明細書で使用する、「触媒」又は「触媒物質」又は「触媒材料」という用語は、反応を促進する物質又は物質の混合物を指す。
【0066】
当該技術分野で既知であるように、微粒子フィルタは、例として、内燃機関、例えばリーンバーンエンジン、ディーゼルエンジン、天然ガスエンジン、ガソリンエンジン、発電所、焼却炉等を含む任意の源により生成される排気から、微粒子、粒子又は粒子状物質を除去するのに使用することができる。
【0067】
図1は、従来のハニカムウォールフローフィルタの形態のフィルタのモノリスを示している。実際の製造又は操作の過程では、フィルタには通常、モノリスを保護し保持するためのハウジングがさらに含まれる。図示するフィルタは、その間に長手方向を規定する第1の端部及び第2の端部を有する。使用時には、2つの端部のうちの一方、例えば第1の端部11は、排気ガス13のための入口端として構成され、そして他の第2の端部12は、処理ガス14のための出口端として構成されるであろう。
【0068】
さらに
図2を参照すると、フィルタは、長手方向に延びる壁17によって規定された複数のチャネルを有する。ここで入口チャネル15と呼ばれるチャネルの第1のセットは、第1の端部11で開いており、そして第2の端部12で例えばシーラント材料で閉じられている。ここで出口チャネル16と呼ばれるチャネルの第2のセットは、第2の端部12で開いており、第1の端部11で同じくシーラント材料で閉じられている。この構造により、モノリスの両端には市松模様が形成され、取り込まれた粒子状物質を伴った排気ガス13が入口チャネル15に入り、そして多孔質壁17を通って処理ガス14として出口チャネル16に流れていく。第1の端部11から入口チャネル15に入った排気ガス13は、モノリス10を離れるときには必ずチャネル壁17を通って拡散する。これにより、粒子状物質が排気ガスから濾過され、そして入口チャネル15の内側面に蓄積する。
【0069】
好ましくは、長手方向に直交する平面内で、フィルタは、1平方インチ当たり100~500、好ましくは200~400のチャネルを有する。チャネルは、長方形、正方形、円形、楕円形、三角形、六角形、又は他の多角形である断面を有することができ、又はチャネルは、用途に好適な他の幾何学的形状を有する。
【0070】
1つ以上の実施形態では、入口チャネル15の数は出口チャネル16の数と等しく、そして各チャネルは同じ形及び大きさで構成され、そしてチャネルはすべて、モノリス全体にわたって均一に分布する。
【0071】
代替の実施形態では、入口チャネル15の数は出口チャネル16の数とは異なり、そして各チャネルは、異なる及び/又は同じ形及び大きさで構成されるものとすることができ、そしてチャネルの少なくとも一部は、モノリス全体にわたって非均一に分布する。
【0072】
フィルタは、当該技術分野で既知であるように、任意の材料で形成することができる。例えばフィルタは、ディーゼル排気から粒子状物質の相当量を除去することができるので、以下に記載するようにセラミックウォールフローフィルタである。フィルタは、有利には耐火性材料、例えばコージェライト又はシリコンカーバイド又はアルミニウムチタネートで構成される。
【0073】
1つ以上の実施形態において、フィルタのチャネルは、機能性材料層又は触媒組成物でコーティングされてもよい。機能性材料層は、フィルタの多孔質壁の入口チャネル15の内側表面、出口チャネル16の内側表面、又はその両方にコーティングされてもよい。
【0074】
誤解を避けるために、本明細書では、セラミックウォールフローフィルタを使用して本発明を説明するが、セラミックウォールフローフィルタが好ましいものの、かかる例示は非限定的であり、そして本発明はセラミックウォールフローフィルタに限定されるものではない。
【0075】
チャネルの内側面に沿って堆積した触媒組成物は、蓄積した粒子状物質の燃焼を促進することにより、フィルタの再生を支援する。蓄積した粒子状物質の燃焼は、排気系内の許容可能な背圧を回復させる。これらのプロセスは、受動的又は能動的な再生プロセスのいずれであってもよい。どちらのプロセスも、酸化剤、例えばO2又はNO2を利用して粒子状物質を燃焼させる。
【0076】
1つ以上の実施形態において、フィルタは触媒でコーティングされ、NOx転化を促進する。1つ以上の実施形態において、フィルタは触媒でコーティングされ、CO酸化、炭化水素貯蔵、炭化水素酸化、NOx貯蔵、NO酸化、及び燃料ライトオフの少なくとも1つの機能を有する。
【0077】
1つ以上の実施形態において、触媒組成物は、フィルタの壁内及び/又は壁上に位置する。
【0078】
1つ以上の実施形態において、少なくとも約5体積%の触媒組成物がフィルタの壁内に位置し、好ましくは少なくとも約10体積%の触媒組成物がフィルタの壁内に位置し、より好ましくは少なくとも約20体積%の触媒組成物がフィルタの壁内に位置する。
【0079】
1つ以上の実施形態において、フィルタは、モノリスの入口チャネルの内側表面にコーティングされている。他の実施形態では、フィルタは、モノリスの出口チャネルにコーティングされている。さらに他の実施形態では、フィルタは、モノリスの入口チャネルと出口チャネルの両方から、少なくとも触媒組成物でコーティングされている。
【0080】
1つ以上の実施形態において、触媒組成物は、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、オスミウム、イリジウム、及び/又は金(Pt、Pd、Ru、Rh、Os、Ir、及び/又はAu)等を含む。すすの燃焼を促進するのに有効な他の触媒成分には、バナジウム、タングステン、銀、レニウム、セリア、鉄、マンガン、ニッケル、銅(V、W、Ag、Re、Ce、Fe、Mn、Ni、Cu)及びこれらの組み合わせが含まれる。これらの触媒成分は、単独で、又は支持材料上に使用することができる。
【0081】
1つ以上の実施形態において、フィルタは、平均孔径を有する多孔質壁と、平均微粒子径を有する触媒コーティングとを含み、フィルタ平均孔径と触媒平均微粒子径分布との比は0.5~50の範囲であり、及び/又はフィルタ平均孔径と触媒平均微粒子径分布との比は0.25~30の範囲である。
【0082】
酸化触媒の使用に加えて、ディーゼル微粒子フィルタを使用し、ディーゼル排気処理システムにおける高い粒子状物質の低減を達成する。ディーゼル排気から粒子状物質を除去する既知のフィルタ構造には、ハニカムウォールフローフィルタ、巻かれた又は充填繊維フィルタ、開放セルフォーム、焼結金属フィルタ等が含まれる。しかし、以下に記載するセラミックウォールフローフィルタが最も注目される。このフィルタは、ディーゼル排気から粒子状物質の90%以上を除去することができる。
【0083】
典型的なセラミックウォールフローフィルタ基材は、耐火性材料、例えばコージェライト又はシリコンカーバイドから構成される。ウォールフロー基材は、ディーゼルエンジン排気ガスから粒子状物質を濾過するのに特に有用である。一般的な構造は多通路ハニカム構造であり、ハニカム構造の入口側と出口側の交互の通路の端部が塞がれている。この構造では、両端とも市松模様になる。入口側の軸方向端で塞がれた通路は、出口側の軸方向端で開いている。これにより、粒子状物質を取り込んだ排気ガスが、開いた入口通路に入り、多孔質の内壁を流れ、そして開いた出口側の軸方向端を有するチャネルを通って出ることができる。これにより、粒子状物質が基材の内壁上に濾過される。ガス圧により、排気ガスは多孔質構造壁を通って上流の軸方向端で閉じられ且つ下流の軸方向端で開いているチャネルに押し出される。フィルタは、排気から微粒子を除去するための物理的構造体である。蓄積した微粒子は、フィルタからエンジンへの背圧を増加させる。よって、蓄積した微粒子は連続的又は定期的に燃焼させてフィルタから取り除き、許容可能な背圧を維持する必要がある。残念ながら、炭素すす微粒子は、酸素が豊富な(リーン)排気条件下で燃焼させるのに500℃を超える温度を必要とする。この温度はディーゼル排気ガス中に通常存在する温度よりも高い。
【0084】
ウォールフロー基材の内壁に沿って堆積した触媒組成物は、蓄積した粒子状物質の燃焼を促進することにより、フィルタ基材の再生を支援する。蓄積した粒子状物質の燃焼は、排気系内の許容可能な背圧を回復させる。これらのプロセスは、受動的又は能動的な再生プロセスのいずれであってもよい。どちらのプロセスも、酸化剤、例えばO2又はNO2を利用して粒子状物質を燃焼させる。
【0085】
受動的な再生プロセスは、ディーゼル排気系の通常の動作範囲内の温度で粒子状物質を燃焼させる。好ましくは、再生プロセスで使用される酸化剤はNO2であり、その理由は、酸化剤としてO2が機能する場合に必要な温度よりもはるかに低い温度で、すすの画分が燃焼するからである。O2は大気から容易に入手できる一方で、NO2は、排気流中のNOを酸化する上流の酸化触媒を使用して能動的に生成することができる。
【0086】
触媒組成物が存在し、酸化剤としてNO2を使用する準備があるにもかかわらず、蓄積した粒子状物質を取り除き、そしてフィルタ内の許容可能な背圧を回復するためには、能動的な再生プロセスが一般的に必要である。粒子状物質のすす画分は、酸素が豊富な(リーン)条件下で燃焼するために500℃を超える温度を一般に必要とし、これはディーゼル排気に通常存在する温度よりも高い温度である。能動的な再生プロセスは、通常は、エンジン管理を変更してフィルタ前の温度を最大約550℃~約850℃まで上昇させることにより、開始する。運転モードによっては、再生中の冷却が十分でない場合(低速/低負荷又はアイドル運転モード)、フィルタ内で高い発熱が発生することがある。このような発熱はフィルタ内で850℃以上になることがある。
【0087】
1つ以上の実施形態において、すすフィルタは触媒でコーティングされ、すすの燃焼を促進し、そしてそれによってフィルタ再生を促進する。1つ以上の実施形態において、すすフィルタは触媒でコーティングされ、NOx転化を促進する。1つ以上の実施形態において、すすフィルタは触媒でコーティングされ、CO酸化、炭化水素貯蔵、炭化水素酸化、NOx貯蔵、NO酸化、及び燃料ライトオフの少なくとも1つの機能を有する。
【0088】
1つ以上の実施形態において、触媒すすフィルタ(CSF)は、ディーゼル酸化触媒の下流に配置される。
【0089】
1つ以上の実施形態において、触媒すすフィルタは、長手方向に延びる壁によって境界付けられた複数の長手方向に延びる通路を有する。具体的な実施形態では、入口通路は、開いた入口端と閉じた出口端とを有し、そして出口通路は、閉じた入口端と開いた出口端とを有する。1つ以上の実施形態において、すすフィルタは、約40%~約70%の壁孔率を有するウォールフローモノリスを含む。1つ以上の実施形態において、すすフィルタは、約5ミクロン~約30ミクロンの平均孔径を有するウォールフローモノリスを含む。
【0090】
1つ以上の実施形態において、触媒すすフィルタは、すすフィルタの壁内又は壁上に少なくとも触媒組成物を含む。1つ以上の実施形態において、触媒組成物は、例えば、すすフィルタの壁内又は壁上に触媒ウォッシュコートとしてコーティングされている。
【0091】
1つ以上の実施形態において、すすフィルタは、ウォールフローモノリスの壁を透過する少なくとも触媒でコーティングされている。他の実施形態では、すすフィルタは、ウォールフローモノリスの壁に少なくとも触媒でコーティングされている。さらに他の実施形態では、すすフィルタは、ウォールフローモノリスの壁に、壁を透過する少なくとも触媒でコーティングされている。
【0092】
1つ以上の実施形態において、すすフィルタは、ウォールフローモノリスの入口通路からコーティングされている。他の実施形態では、すすフィルタは、ウォールフローモノリスの出口通路からコーティングされている。さらに他の実施形態では、すすフィルタは、ウォールフローモノリスの入口通路と出口通路の両方から、少なくとも触媒組成物でコーティングされている。
【0093】
1つ以上の実施形態において、触媒すすフィルタは、1つ以上の触媒材料を含む。触媒材料は、壁の入口側の中又は上にだけ、出口側の中又は上にだけ、入口側と出口側との両方に存在する、又は壁自体が触媒材料の全て、又は一部からなる場合がある。
【0094】
1つ以上の実施形態において、触媒すすフィルタには、入口及び/又は出口壁の中又は上に、触媒材料の1つ以上の層及び触媒材料の1つ以上の層の組合せを使用することが含まれる。
【0095】
1つ以上の実施形態において、触媒すすフィルタは、二酸化窒素で粒子状物質を燃焼させるのに有効であり、且つフィルタを出るNO対NO2の比を最適化するのに有効である。
【0096】
1つ以上の実施形態において、CSF組成物は、少なくともPGM、例えば白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、オスミウム、イリジウム、及び/又は金(Pt、Pd、Ru、Rh、Os、Ir、及び/又はAu)を含む。すすの燃焼を促進するのに有効な他の触媒成分には、バナジウム、タングステン、銀、レニウム、セリア、鉄、マンガン、ニッケル、銅(V、W、Ag、Re、Ce、Fe、Mn、Ni、Cu)及びこれらの組み合わせが含まれる。これらの触媒成分は、単独で、又は支持材料上に使用することができる。具体的な実施形態において、本明細書に開示するCSF組成物は、CSF触媒の体積に対するPGM元素の総質量として計算して、約0.5g/ft3~約250g/ft3の総PGM担持量を含むか、又は本明細書に開示するCSF組成物は、乾燥CSF組成物の質量に対して約0.01質量%~約10質量%の総PGM担持量を含む。
【0097】
具体的な実施形態において、本明細書に開示するCSF組成物は、白金(Pt)成分を含みパラジウム(Pd)を含まない。他の具体的な実施形態では、本明細書に開示するCSF組成物は、パラジウム(Pd)成分を含み白金(Pt)を含まない。さらに他の具体的な実施形態では、本明細書に開示するCSF組成物は、白金成分及びパラジウム成分の両方を含む。
【0098】
1つ以上の実施形態において、CSF組成物は、例えば、乾燥CSF組成物の質量に対して約0.002質量%~約8質量%の白金成分を含んでよい。CSF組成物は、例えば、CSF触媒の体積に対して約0.1~約167g/ft3の白金成分を含んでよい。CSF組成物は、例えば、乾燥CSF組成物の質量に対して約0.002質量%~約8質量%のパラジウム成分を含んでよい。CSF組成物は、例えば、CSF触媒の体積に対して約0.1~約167g/ft3のパラジウム成分を含んでよい。
【0099】
1つ以上の実施形態において、Pt/Pd質量比は、約20:1~約1:20である。いくつかの実施形態では、Pt/Pd質量比は、約10:1~約1:5である。いくつかの実施形態では、Pt/Pd質量比は、約3:1~約1:3である。
【0100】
1つ以上の実施形態において、開示するCSF組成物の白金成分及びパラジウム成分の両方は、支持材料上に支持される(ここで、白金成分及びパラジウム成分が支持される支持材料は、同一又は異なるものとすることができる)。
【0101】
1つ以上の具体的な実施形態において、本明細書に開示するCSF組成物に有用な金属酸化物支持体は、ドープしたアルミナ材料、例えばSiでドープしたアルミナ材料(1~10%のSiO2-Al2O3を含むがこれに限定されない)、ドープしたチタニア材料、例えばSiでドープしたチタニア材料(1~15%のSiO2-TiO2を含むがこれに限定されない)、又はドープしたジルコニア材料、例えばSiでドープしたZrO2(5~30%のSiO2-ZrO2を含むがこれに限定されない)、高表面積金属酸化物支持体、例えばアルミナ又はチタニア支持材料であり、典型的には約50m2/g~約400m2/g、好ましくは約60m2/g~約350m2/g、より好ましくは約90m2/g~約250m2/gの全表面積(total surface area)(BET)を示す。1つ以上の具体的な実施形態において、支持材料は、約0.3~約1.5cm3/gの範囲の全細孔容積(total pore volume)(BET)を有する。1つ以上の具体的な実施形態において、活性アルミナは、約2~約50nmの範囲の平均細孔径(mean pore diameter)(BET)を有する。
【0102】
1つ以上の実施形態において、CSF触媒組成物は、炭化水素貯蔵成分又は炭化水素吸着成分を含んでよい。例えば、CSF触媒の底部層又は頂部層は、分子篩又はゼオライト、又はセリア含有分子篩、又はセリア含有金属酸化物から選択される炭化水素貯蔵成分又は炭化水素吸着成分をさらに含む。炭化水素貯蔵成分又は炭化水素吸着成分は、H+形態として添加することができる。炭化水素貯蔵成分又は炭化水素吸着成分は、PGM(例えば白金、パラジウム、ロジウム等)、銅、鉄、セリウム、ジルコニウム、バリウム、マンガン、マグネシウム、コバルト、ニッケル、希土類金属酸化物、卑金属酸化物等から選択される1つ以上の触媒活性金属をさらに含んでよい。
【0103】
1つ以上の実施形態において、SCR反応を促進する触媒を含有する触媒すすフィルタは、排気流の微粒子成分の除去、及び排気流のNOx成分のN2への転化という2つの機能に有効である。具体的な実施形態において、NOx還元を達成できる触媒すすフィルタは、SCR触媒組成物で堆積させる。
【0104】
触媒すすフィルタで考慮すべき追加の側面は、適切なSCR触媒組成物の選択である。第1に、触媒組成物は、フィルタ再生の特徴である高温に長時間さらされた後でもSCR触媒活性を維持するように、熱耐久性がなければならない。第2に、SCR触媒組成物は、好ましくは、車両が動作する可変の温度範囲に適応できるように、十分に広い動作温度範囲を有する。300℃未満の温度は、例えば、低負荷の条件、又は始動時に、典型的に生じる。触媒すすフィルタは、高い比活性と高い熱水安定性とを併せ持つべきである。
【0105】
1つ以上の実施形態において、SCR反応を促進する触媒を含む触媒すすフィルタは、排気流の微粒子成分の除去、及び排気流のNOx成分のN2への転化という2つの機能に有効である。具体的な実施形態において、NOx還元を達成できる触媒すすフィルタは、SCR触媒組成物で堆積させる。
【0106】
1つ以上の実施形態において、CSFを通過するNOxの転化は、エンジン動作条件下で、システムNOx転化の約10%~約100%の範囲、好ましくは約20%~約100%の範囲、より好ましくは約25%~約100%の範囲である。
【0107】
1つ以上の実施形態において、CSFは、少なくともゼオライト成分と、銅及び鉄の一方又は両方から選択される卑金属成分とを含む。
【0108】
いくつかの好ましい実施形態において、SCR触媒組成物は、Si、Al、O、及び任意にHからなるゼオライト材料の骨格構造の95~100質量%、好ましくは98~100質量%、より好ましくは99~100質量%を含み、骨格構造において、SiのAlに対するモル比(モルSiO2:Al2O3として計算)は、好ましくは2:1~50:1の範囲、より好ましくは2:1~45:1の範囲、より好ましくは10:1~19:1の範囲、より好ましくは14:1~18:1の範囲である。
【0109】
具体的な実施形態において、CSFは、Cuと、CHA、AEI、BEA、MFI、FAU、MOR、AFX及びLTAから好ましくは選択されるがこれらに限定されない骨格型を有するゼオライトとを含む。1つの具体的な実施形態において、CSFは、Cuと、CHA構造を有するゼオライトとを含む。他の1つの具体的な実施形態において、CSFは、Cuと、AEI構造を有するゼオライトとを含む。
【0110】
他の具体的な実施形態では、CSFは、Feと、CHA、AEI、BEA、MFI、FAU、MOR、AFX及びLTAから好ましくは選択されるがこれらに限定されない骨格型を有するゼオライトとを含む。1つの具体的な実施形態において、CSFは、Feと、BEA構造を有するゼオライトとを含む。他の1つの具体的な実施形態では、CSFは、Feと、CHA構造を有するゼオライトとを含む。
【0111】
CSFの1つ以上の具体的な実施形態により使用されるゼオライト組成物には、CHA又はAEI構造を有するゼオライトが含まれる。例示的なCHA又はAEIゼオライトは、約8を超えるシリカ対アルミナモル比(SAR)を有する。好ましい実施形態では、CHAについてのシリカ対アルミナモル比(SAR)は約10~約35である。別の好ましい実施形態では、AEIについてのシリカ対アルミナモル比(SAR)は、約14~約19である。
【0112】
1つ以上の具体的な実施形態において、銅及び鉄から選択される卑金属成分は、金属の酸化物として計算し、且つ酸化物にゼオライトベースの触媒組成物を加えた合計質量に対して、約0.2質量%を超える含有量を有する。好ましい具体的な実施形態では、卑金属成分は、約0.2質量%~約8質量%、好ましくは約2質量%~約6質量%の含有量を有する。
【0113】
CSFのための他の有用な組成物には、非ゼオライトの分子篩が含まれる。例えば、シリコアルミノホスフェート、例えばSAPO-34、SAPO-44及びSAPO-18を1つ以上の実施形態によって使用してよいが、これらに限定されない。
【0114】
1つ以上の実施形態において、CSFは、バナジウムオキシド及びモリブデンオキシドから選択される少なくとも1つの無機金属酸化物材料を含む。他の実施形態では、CSFは、バナジウムオキシドとチタニウムオキシドとの混合酸化物を含む。或る特定の他の実施形態において、CSFは、バナジウムオキシド、シリコンオキシド及びチタニウムオキシドの混合酸化物を含む。或る特定の他の実施形態において、CSFは、バナジウムオキシド、タングステンオキシド及びチタニウムオキシドの混合酸化物を含む。或る特定の他の実施形態において、CSFは、バナジウムオキシド、アンチモンオキシド及びチタニウムオキシドの混合酸化物を含む。
【0115】
1つ以上の実施形態において、CSF触媒組成物は、約1ミクロン~約10ミクロンの微粒子径分布D50を有する。1つ以上の実施形態において、CSF触媒組成物は、約2ミクロン~約30ミクロンの微粒子径分布D90を有する。
【0116】
1つ以上の実施形態において、CSF触媒組成物は、約50~約700m2/gの範囲の全表面積(BET)を有する。1つ以上の実施形態において、CSF触媒組成物は、約0.3~約1.5cm3/gの範囲の全細孔容積(BET)を有する。1つ以上の実施形態において、CSF触媒組成物は、約2~約50nmの範囲の平均細孔径(BET)を有する。
【0117】
1つ以上の実施形態において、CSFは、平均孔径を有する多孔質フィルタ壁と、平均微粒子径を有する触媒コーティングとを含み、フィルタ平均孔径と触媒平均微粒子径分布D50との比は0.5~50ミクロンの範囲であり、及び/又はフィルタ平均孔径と触媒平均微粒子径分布D90との比は0.25~30ミクロンの範囲である。
【0118】
「D90」及び「D50」は、その通常の意味を有し、累積粒子径分布において、小さい粒径側からの累積体積が90%及び50%に達した時点を指す。D90は、それぞれ粒子径分布を測定して決定した値である。粒子径分布は、レーザー回折式粒子径分布分析器を用いて測定する。
【0119】
1つ以上の実施形態では、CSFは、少なくとも触媒で、約0.05~約3.0g/in3、好ましくは約0.1~約2.5g/in3のウォッシュコート担持量(乾燥ゲイン)でコーティングされている。
【0120】
次に、本発明の一実施形態による使用済み微粒子フィルタの処理方法及びシステムについて、
図3~
図6を参照しながら記載する。
【0121】
一実施形態によれば、本方法は、使用済みフィルタ、すなわち、特定の処理基準を満たすように濾過機能を果たす上で非常に多く使用されたフィルタを処理するのに有用である。処理基準は、例えば、次のうち少なくとも1つとして選択可能である:微粒子フィルタの最新の処理からの特定の期間、微粒子フィルタを有する車両の特定の走行マイル距離、微粒子フィルタの特定の期間における再生の頻度、微粒子フィルタを有する車両の馬力、表示灯からの警告、微粒子フィルタの特定の背圧。
【0122】
フィルタがいずれの基準も満たさないと評価された場合は、処理の必要はない。一方で、フィルタが処理基準の少なくとも1つを満たすと評価された場合、次の工程として、微粒子フィルタに蓄積した微粒子を除去するという次の工程を実施する。
【0123】
現在、異なるフィルタ洗浄方法が確立されており、例えば加圧空気ベースの洗浄手順及び洗浄ベースの手順である。洗浄手順は、熱処理と組み合わせることができる。
【0124】
加圧空気ベースの洗浄手順は、典型的には、加圧空気及び任意でCO2を含む空気を伴い、洗浄時間は約20分~約30分、圧力は約3bar~約8bar、CO2は0%~8%である。
【0125】
逆流式圧縮空気洗浄は、現在、ディーゼル微粒子フィルタの灰を洗浄及び除去する最も一般的な方法である。この方法にはいくつかの変形があるが、基本的な洗浄方法は、流れを出口側からフィルタに通し(逆流)、フィルタから吹き出された灰を好適な粉塵回収システムで回収することを伴う。様々な市販の洗浄システムが存在し、これは高圧の空気、例えばエアナイフを局所的に適用するか、又は低圧で大量の流れをフィルタ断面全体に流すものである。圧縮空気洗浄の前に、フィルタを炉に入れて加熱し、任意の残留すすを酸化させてもよい。
【0126】
追加的に、そしてやや一般的ではないが、水又は他の洗浄剤をフィルタに流して灰を除去する湿式洗浄が洗浄方法には含まれる。湿式洗浄は、一般的に工場の再製造センターで行われ、洗浄液に適合する好適な設計のフィルタ基材、マット及びハウジングが必要である。
【0127】
高度な洗浄技術が他にも提案されているが、いずれもまだ市場に出ていないか、又は主流とはなっていない。
【0128】
図3は、微粒子フィルタのチャネルに蓄積した微粒子を除去するための例示的な工程を示す概略図である。図示のように、フィルタ10は、ガス流52が出口端の出口チャネル16に吹き込み、入口チャネル15に蓄積した粒子状物質20が出口端から吹き出されるように配置される。
【0129】
一例として、ガス流は、約1~15barの圧力及び/又は約100~10000L/分の流量で供給される。
【0130】
有利には、ガス流が出口チャネルに吹き込まれる前に、微粒子フィルタの入口端にガス流を適用して微粒子フィルタの内側表面の微粒子をほぐすことが、工程にはさらに含まれる。チャネルに蓄積した微粒子をほぐすための当該技術分野で知られている他の手段を、代替的に又は組み合わせて使用することができる。微粒子をほぐした後、微粒子フィルタの出口端にガス流を適用して、微粒子を微粒子フィルタから除去する。微粒子をほぐす工程は省略可能であることが理解されよう。
【0131】
有利には、微粒子を除去する工程には、微粒子フィルタを約450℃~850℃までの温度にさらすことがさらに含まれる。この工程は、ディーゼル排気中に通常存在する温度よりも高い温度を有する酸素が豊富な条件下で、微粒子物質のすす画分を燃焼させることを目的としている。このプロセスは、通常は、エンジン管理を変更してフィルタ前の温度を最大約550℃~約650℃まで上昇させることにより開始する能動的再生プロセスとして当技術分野で既知である。運転モードによっては、エンジンが十分に冷却されていない場合(低速、低負荷又はアイドル運転モード)、フィルタ内で高い発熱が発生することがある。このような発熱はフィルタ内で800℃以上になることがある。
【0132】
微粒子フィルタのチャネルに蓄積した微粒子を除去する工程は、例えば、PURItech灰クリーナー、PURIcleaning M/C E1で実施することができる。洗浄ユニットの実施形態の1つの原理を
図5に示す。洗浄ユニットは、ガス流52を提供するガス流アプリケータ51を含む。任意に、アプリケータ51から延びるようにエジェクタ53が構成され、ガス流52を排出する。エジェクタ53は、フィルタの端部を覆う構成を有し、又は、フィルタ端部の全領域に沿って移動して各チャネルにガス流を適用できるように構成される。ホルダ54は、洗浄の過程において、微粒子フィルタを洗浄ユニット内に固定するために設けられる。任意に、微粒子フィルタから排出される微粒子を回収するための灰出口55及び灰回収器56を設けることができる。
【0133】
洗浄の工程を行う際には、フィルタをホルダー上の洗浄ユニットに逆さまに(出口端を上に)挿入する。ガス流は、エジェクターからフィルタに入り、フィルタを通して適用される。一実施形態では、エジェクターはチャネル(複数可)からチャネル(複数可)へ、端部全体が覆われるまで移動する。その後、フィルタの入口側を上にして反転させ、フィルタの入口チャネルにガス流を適用する。この洗浄工程を数回、例えば、フィルタの入口端を上にする2回と出口端を上にする2回を含有する合計4回繰り返す。ガス流は、例えば、圧力8Bar及び/又は流量1000L/分と設定することができる。
【0134】
有利には、洗浄ユニットは、例えばフィルタの清浄度を判定し、ガス流の吹き出しを停止させることができる制御手段を含む。例えば、フィルタをパージするプロセスにおいて、フィルタから吹き出す微粒子が肉眼で観察されないときに洗浄ユニットが止められる。又は、フィルタをパージするプロセスにおいて、回収袋に微粒子がもはや回収されなくなったときに、洗浄ユニットが止められる。又は、特定の期間において、回収袋の質量が閾値未満、例えば0.1~1g増加したときに、洗浄ユニットが止められる。又は、特定の期間において、フィルタ部分全体又はフィルタの一部の背圧が閾値未満、例えば元の背圧の0%~5%に増加したときに、洗浄ユニットが止められる。又は、一連の標準的な手順、例えば最初に微粒子ほぐし処理、そして次にガス流処理が完了した後に、洗浄ユニットが止められる。
【0135】
微粒子フィルタに蓄積した微粒子を除去する工程の完了後、微粒子フィルタのチャネル内に模擬灰及び/又は模擬灰の前駆体を供給する工程で、フィルタをさらに処理する。
図4は、微粒子フィルタのチャネル内に模擬灰を導入する例示的な工程を示す概略図である。図示のように、ガス流31を適用することによって、模擬灰30及び/又は模擬灰の前駆体は、微粒子フィルタ10の入口チャネル15に吹き込まれる。
【0136】
一実施形態では、模擬灰を導入する工程には、模擬灰を微粒子フィルタのチャネルに導入した後、微粒子フィルタをさらに処理することが含まれる。一実施形態では、このような処理は、微粒子フィルタを熱条件、例えば300℃以上、より好ましくは350℃以上、及び最も好ましくは400℃以上にさらすことを含む。
【0137】
一実施形態では、模擬灰を導入する工程には、前駆体を微粒子フィルタのチャネルに導入し、前駆体を模擬灰に変換するために微粒子フィルタをさらに処理することが含まれる。一実施形態では、このような処理は、微粒子フィルタを熱条件、例えば300℃以上、より好ましくは350℃以上、及び最も好ましくは400℃以上にさらすことを含む。
【0138】
一実施形態では、固体微粒子及び/又は液体液滴の流れは、100~10000m3/hで提供される。
【0139】
一実施形態では、模擬灰は、微粒子フィルタの体積1リットル当たり約0.05グラム以上で提供される。
【0140】
一実施形態では、固体微粒子及び/又は液体液滴の流れは、吹き付け、吸い込み、噴霧及び/又はコーティングを介して微粒子フィルタに導入される。
【0141】
この方法において、模擬灰及び/又は前駆体は、好ましくは、以下の1つ以上を含む:酸化アルミニウム、酸化亜鉛、亜鉛カーボネート、カルシウムオキシド、カルシウムカーボネート、セリウムジルコニウムオキシド、ジルコニウムオキシド、セリウムオキシド及び水和アルミナ、より好ましくは以下の1つ以上を含む:酸化亜鉛、亜鉛カーボネート、カルシウムオキシド、カルシウムカーボネート及びジルコニウムオキシド。有利には、模擬灰は、300℃以上でも存続する多孔質構造を有する。有利には、模擬灰及び/又はその前駆体は、好ましくは、約0.01ミクロン~約1000ミクロンの範囲、及び好ましくは約0.1ミクロン~約100ミクロン、及び最も好ましくは約0.2ミクロン~約50ミクロンの微粒子径を有する。
【0142】
微粒子フィルタのチャネル内に模擬灰及び/又は前駆体を供給する工程は、例えば
図5に示す導入ユニットによって実施することができる。導入ユニットの原理を
図6に示す。図示のように、洗浄ユニットには、ガス流を提供するガス流アプリケータ61が含まれる。洗浄ユニットには、模擬灰及び/又は前駆体30を提供するための模擬灰源62がさらに含まれる。ガス流アプリケータ61のパイプと模擬灰源62のパイプは、エジェクタ64から流出する模擬灰/前駆体63の流れが十分な流速で形成されるように接合される。導入ユニットには、フィルタ10を保持するためのホルダ65が設けられている。フィルタは、入口端をエジェクタ64に対向させてホルダ65に保持され、模擬灰が入口チャネルに吹き込むことができるようになっている。さらに、出口66及び灰回収器67がホルダ65の下に設けられ、フィルタの出口端から漏れる可能性のある粒子状物質及び模擬灰を回収する。
【0143】
有利には、導入ユニットは、例えば、微粒子フィルタの入口チャネルへの模擬灰の導入完了を判定することができる制御手段をさらに含む。
【0144】
本発明によるいくつかの実施形態における方法及びシステムの利点のいくつかは、
図7~9に示すように比較実験によって説明される。
【0145】
比較実験を行うために、
図7のように検出システムを特別に設計した。このシステムには、エンジン71、ディーゼル酸化触媒(DOC)72及び粒子状物質計測器(カウンター)73が含まれる。DOCとカウンターの間には、検出用のフィルタ10が配置されている。さらに、エンジン71からの排気75の流れに燃料76を噴射するための燃料噴霧インジェクタ74がDOC72の前に設置されている。このシステムでは、DOCは市販のディーゼル酸化触媒であり、寸法は12インチ×12インチ×6インチ、PGM担持量は50g/ft
3、前方区域長2インチで1:2、20g/ft
3、後方区域長4インチで10:1、そして微粒子カウンタはAVL489であった。
【0146】
この検出システムは、とりわけPN除去効率を含むいくつかの側面でディーゼルエンジンの性能を評価するのに世界的に認められているWHTCサイクル及びWHSCサイクルで、実際の作業環境を模擬してフィルタを試験するものである。WHTCサイクル及びWHSCサイクルの詳細は、例えば中国国内規則GB17691-2018(Limits and measurement methods for emissions from diesel fueled heavy-duty vehicles(China VI))で定義されている。評価結果に対するすすの影響が最小限であることを確実とするために、検出システムには、DOC72の前に、排気75の流れに燃料76を噴射して被検査フィルタ内のすすを洗浄するための燃料噴霧インジェクタ74が含まれる。
【実施例】
【0147】
実施例1:
Ibiden SD084SiC基材上に3g/ft
3(Pt:Pd=1:0)PGMを含有するコーティングを伴った、市販のディーゼル微粒子フィルタ(DPF)を選択した。DPFの大きさは10.5インチ×10.5インチ×7.5インチであった。DPFは230,000kmの走行で使用され、そのチャネルに相当量の粒子状物質が蓄積した。そこで、DPFを
図7の検出装置ですす洗浄し、次いで
図5の洗浄装置で灰洗浄した後、
図7の検出装置で試験した。上述のすす洗浄プロセスでは、DOC72の前に燃料インジェクタ74を介して燃料を噴射した。DOC72は、燃料を酸化させて発熱を生じさせた。位置10のDPFは、空間速度(SV)≧60、000/hで、DPF入口とDPF出口の両方で600℃以上に1時間以上維持した。上記の灰洗浄プロセスは、PURItech灰クリーナー、PURIcleaning M/C E1を用いて実施した。上記の灰洗浄プロセスは、以下の工程で行った:1)サンプル検査、2)オーブンでの熱処理(主要パラメータ:>=500℃、最大8時間、酸素含有雰囲気)、3)ガス流洗浄(主要パラメータ:ガス流を適用して出口端を上にし、次いでガス流を適用して内側端を上にしてフィルタを反転させる、少なくとも4回繰り返し、圧縮空気を吹き付けた、圧力8bar、流量≧1000L/分)。上記の灰洗浄プロセスの完了は、背圧の変化及びフィルタの質量の変化がないことによって判定した。WHSCでの試験結果を
図8の実施例1として記録し、WHTCでの試験結果を
図9の実施例1として記録した。
【0148】
実施例2:
さらに
図6に示す導入ユニットでDPFに模擬灰を装填し、
図7の検出システムで試験を行った。WHSCでの試験結果は
図8の実施例2として、WHTCでの試験結果は
図9の実施例2として記録した。この工程では、DPFに1.25g/Lの模擬灰を装填した。空気流量は1000m
3/h、少なくとも15秒に設定した。
【0149】
実施例3:
どのエンジンにも使われていない新規の市販のDPFを選択した。つまり、新規DPFのチャネルには、粒子状物質が蓄積していなかった。この新規DPFに、
図6に示す導入ユニットで模擬灰を装填し、
図7の検出装置で試験した。WHSCでの試験結果は
図8の実施例3として記録し、WHTCでの試験結果は
図9の実施例3として記録した。
【0150】
図8に示すように、フィルタを本発明による方法で処理した実施例2は、WHSCサイクルにおいて、3つの実施例の中で最もPN放出量が少なく、PN除去効率が最も優れていた。
【0151】
一方で、
図9は、この発明方法による方法でフィルタを処理した実施例2が、WHTCサイクルにおいて、3つの実施例の中で最もPN放出量が少なく、PN除去効率が最も優れていたことを示している。
【0152】
結論として、粒子状物質を除去した後、模擬灰を装填した使用済みDPFは、灰洗浄のみを行った使用済みDPF、何も処理しない新品DPF、模擬灰を装填した新品DPFよりも、PN除去効率が高いことがわかった。
【0153】
本発明の好ましい実施形態を本明細書で詳細に説明したが、本発明の範囲又は添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、それに変形を加えることができることは、当業者には理解されよう。疑念を避けるために、本明細書で引用された全ての文書の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【国際調査報告】