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特表2024-502285アルキレート製造のための石油精製および石油化学製造プロセスの乾性炭化水素ガスからの軽質オレフィンの回収
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  • 特表-アルキレート製造のための石油精製および石油化学製造プロセスの乾性炭化水素ガスからの軽質オレフィンの回収 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-18
(54)【発明の名称】アルキレート製造のための石油精製および石油化学製造プロセスの乾性炭化水素ガスからの軽質オレフィンの回収
(51)【国際特許分類】
   C07C 2/58 20060101AFI20240111BHJP
   C07C 9/16 20060101ALI20240111BHJP
   C07B 61/00 20060101ALI20240111BHJP
   B01D 53/14 20060101ALI20240111BHJP
   B01D 53/18 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
C07C2/58
C07C9/16
C07B61/00 300
B01D53/14 210
B01D53/18 130
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023538865
(86)(22)【出願日】2021-12-17
(85)【翻訳文提出日】2023-08-22
(86)【国際出願番号】 US2021064062
(87)【国際公開番号】W WO2022140184
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】17/130,260
(32)【優先日】2020-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508364749
【氏名又は名称】ケロッグ ブラウン アンド ルート エルエルシー
【住所又は居所原語表記】601 Jefferson Street Houston TX 77002(US)
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】クリシュナイア ゴータム
(72)【発明者】
【氏名】ヒーズリー ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】ウェブ ジョン ルイス
(72)【発明者】
【氏名】ピライ ラーフル ラダキシュナ
(72)【発明者】
【氏名】バルマ ビジェンデル ケー.
(72)【発明者】
【氏名】ダガル ナリンダー シン
【テーマコード(参考)】
4D020
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4D020AA03
4D020AA04
4D020AA08
4D020BA01
4D020BA08
4D020BA15
4D020BA16
4D020BA19
4D020BB03
4D020BB04
4D020BC01
4D020CB08
4D020CC01
4D020CC02
4D020CD10
4H006AA02
4H006AC21
4H006BB11
4H006BD35
4H006BD52
4H039CA10
4H039CF10
(57)【要約】
オレフィン含有流を処理する方法およびシステムが開示されている。開示された方法およびシステムは、流動接触分解(FCC)器、コークス器、水蒸気分解器などの、石油精製または石油化学プロセスにおけるオフガス流の処理に特に好適である。該流れは、吸収塔で処理されて、より軽質の流れ成分が排除され、また、エチレンおよび/またはプロピレンが溶媒に吸収される。溶媒は、典型的にはイソブタンである。吸収塔からの富化溶媒流は、アルキル化反応器へ供給される。該反応器は、溶解されたオレフィンをイソブタン溶媒と反応させてアルキレート生成物を生成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィン含有流を処理する方法であって、
前記オレフィン含有流は、
エチレンおよびプロピレンからなる群から選択される1つまたは複数のオレフィンと、
水素(H)、一酸化炭素(CO)およびメタンからなる群から選択される1つまたは複数の軽質成分と、
を含み、
前記方法は、
前記オレフィン含有流を吸収塔へ提供することと、
オレフィン富化溶媒流を提供するために、前記吸収塔内で前記オレフィン含有流をアルキル化前駆体である溶媒と接触させて、前記1つまたは複数のオレフィンの少なくとも一部を前記溶媒に吸収することによって、前記1つまたは複数のオレフィンを前記1つまたは複数の軽質成分から分離することと、
前記オレフィン富化溶媒流をアルキル化反応器へ提供することと、
前記アルキル化反応器内で前記1つまたは複数のオレフィンを前記溶媒と反応させてアルキレートを生成することと、
を含む、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記溶媒は、イソブタンである、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、
前記オレフィン含有流は、流動接触分解(FCC)プロセスからのオフガスである、方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、
前記オレフィン含有流は、二酸化炭素、水および硫化水素からなる群から選択される1つまたは複数の不純物をさらに含み、
前記方法は、前記1つまたは複数の不純物を除去するために、前記オレフィン含有流を前処理することをさらに含む、方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法であって、
前記前処理することは、アミンを用いて前記オレフィン含有流を洗浄することを含む、方法。
【請求項6】
請求項4に記載の方法であって、
前記前処理することは、前記オレフィン含有流を苛性物質と接触させることを含む、方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって、
前記アルキル化反応器内で前記1つまたは複数のオレフィンを前記溶媒と反応させてアルキレートを生成することは、
前記1つまたは複数のオレフィンを二量体化して二量体を形成することと、
前記二量体を前記溶媒と反応させて前記アルキレートを生成することと、
を含む、方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、
前記アルキル化反応器は、固体酸アルキル化触媒を有する固定触媒床を備える、方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法であって、
前記アルキル化反応器内で前記1つまたは複数のオレフィンを前記溶媒と反応させてアルキレートを生成することは、前記アルキレートを含むアルキル化反応器流出物流を生成することを含む、方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であって、
前記アルキル化反応器流出物流を1つまたは複数の分離塔へ提供することと、
前記1つまたは複数の分離塔からリーン溶媒を回収することと、
前記1つまたは複数の分離塔から富化アルキレート生成物を回収することと、
をさらに含む、方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、
前記リーン溶媒の少なくとも一部を、前記吸収塔へ再循環することをさらに含む、方法。
【請求項12】
請求項10に記載の方法であって、
前記リーン溶媒の少なくとも一部を、前記アルキル化反応器へ再循環することをさらに含む、方法。
【請求項13】
オレフィン含有流を処理するシステムであって、
前記オレフィン含有流は、
エチレンおよびプロピレンからなる群から選択される1つまたは複数のオレフィンと、
水素(H)、一酸化炭素(CO)およびメタンからなる群から選択される1つまたは複数の軽質成分と、
を含み、
前記システムは、吸収塔と、アルキル化反応器と、を備え、
前記吸収塔は、オレフィン富化溶媒流を提供するために、前記オレフィン含有流をアルキル化前駆体である溶媒と接触させて、前記1つまたは複数のオレフィンの少なくとも一部を前記溶媒に吸収することによって、前記1つまたは複数のオレフィンを前記1つまたは複数の軽質成分から分離するように構成され、
前記アルキル化反応器は、前記オレフィン富化溶媒流を受け取り、前記1つまたは複数のオレフィンを前記溶媒と反応させてアルキレートを生成するように構成されている、システム。
【請求項14】
請求項13に記載のシステムであって、
前記溶媒は、イソブタンである、システム。
【請求項15】
請求項13に記載のシステムであって、
前記オレフィン含有流は、流動接触分解(FCC)プロセスからのオフガスである、システム。
【請求項16】
請求項13に記載のシステムであって、
前記吸収塔の上流にアミン洗浄器をさらに備え、
前記アミン洗浄器は、二酸化炭素および硫化水素からなる群から選択される1つまたは複数の不純物を、前記オレフィン含有流から除去するように構成されている、システム。
【請求項17】
請求項13に記載のシステムであって、
前記吸収塔の上流に苛性接触用容器をさらに備え、
前記苛性接触用容器は、前記オレフィン含有流を苛性物質と接触させて、二酸化炭素および硫化水素からなる群から選択される1つまたは複数の不純物を、前記オレフィン含有流から除去するように構成されている、システム。
【請求項18】
請求項13に記載のシステムであって、
前記アルキル化反応器は、固体酸アルキル化触媒を有する固定触媒床を備える、システム。
【請求項19】
請求項13に記載のシステムであって、
前記アルキル化反応器は、前記アルキレートを含むアルキル化反応器流出物流を、1つまたは複数の分離塔へ提供するように構成され、
前記1つまたは複数の分離塔は、前記アルキル化反応器流出物流を、リーン溶媒流と富化アルキレート生成物流とに分離するように構成されている、システム。
【請求項20】
請求項19に記載のシステムであって、
前記システムは、前記リーン溶媒流を、前記吸収塔および前記アルキル化反応器のうちの1つまたは複数へ再循環するように構成されている、システム。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
本出願は、石油精製および石油化学製造プロセスから軽質オレフィンを回収するための、より具体的には、アルキル化反応用供給物流に軽質オレフィンを吸収するための、方法およびシステムに関する。
【0002】
[序論]
石油化学および石油精製作業は、高沸点かつ高分子量の炭化水素を、より軽質、より低沸点、かつ、より高価値の様々な製品に変換する(すなわち、「分解する」)プロセスを伴うことが多い。例えば、流動接触分解(FCC)は、重質石油成分を高付加価値燃料へ変換するために、製油所で広く用いられている。FCCおよび他の分解プロセスによって、軽質ガスから重油までの多様な製品が作り出される。多様なFCC製品をそれらの沸点範囲に基づいて分離するために製油所内の工程およびプロセスが用いられ、石油ナフサ、ガソリン、軽油、灯油、ジェット燃料、燃料油などの製品が製造される。
【0003】
FCC装置からの最も軽質な成分を含む流れ(stream)は、オフガスとよばれる。オフガス流は、典型的には、一酸化炭素、二酸化炭素および硫化水素などの不純物とともに、エタン、エチレン、メタンおよび水素を含む。オフガス流は価値が低いと考えられているが、これは、唯一価値のある成分がエチレンであって、オフガス流からエチレンを分離することは一般的に費用がかさむからである。それゆえ、石油精製業者は、典型的には、オフガス流を燃料ガスシステムへ送り、それによって、オフガス流を燃焼して製油所内プロセス用の熱を生成することで、オフガス流からいくらかの価値を回収し得るようにしている。しかしながら、オフガス流に含まれるエチレンは、燃料ガスとして燃焼されるよりも、より高次の目的のために用いられると有益であろう。
【0004】
[概要]
本明細書に開示されているのは、オレフィン含有流を処理する方法である。オレフィン含有流は、エチレンおよびプロピレンからなる群から選択される1つまたは複数のオレフィンと、水素(H2)、一酸化炭素(CO)およびメタンからなる群から選択される1つまたは複数の軽質成分と、を含む。該方法は、オレフィン含有流を吸収塔へ提供することと、オレフィン富化(olefin-enriched)溶媒流を提供するために、吸収塔内でオレフィン含有流をアルキル化前駆体である溶媒と接触させて、1つまたは複数のオレフィンの少なくとも一部を溶媒に吸収することによって、1つまたは複数のオレフィンを1つまたは複数の軽質成分から分離することと、オレフィン富化溶媒流をアルキル化反応器へ提供することと、アルキル化反応器内で1つまたは複数のオレフィンを溶媒と反応させてアルキレートを生成することと、を含む。いくつかの実施形態によれば、溶媒は、イソブタンである。いくつかの実施形態によれば、オレフィン含有流は、流動接触分解(FCC)プロセスからのオフガスである。いくつかの実施形態によれば、オレフィン含有流は、二酸化炭素、水および硫化水素からなる群から選択される1つまたは複数の不純物をさらに含み、上記方法は、1つまたは複数の不純物を除去するために、オレフィン含有流を前処理することをさらに含む。いくつかの実施形態によれば、該前処理することは、アミンを用いてオレフィン含有流を洗浄することを含む。いくつかの実施形態によれば、該前処理することは、オレフィン含有流を苛性物質と接触させることを含む。いくつかの実施形態によれば、アルキル化反応器内で1つまたは複数のオレフィンを溶媒と反応させてアルキレートを生成することは、1つまたは複数のオレフィンを二量体化して二量体を形成することと、二量体を溶媒と反応させてアルキレートを生成することと、を含む。いくつかの実施形態によれば、アルキル化反応器は、固体酸アルキル化触媒を有する固定触媒床を備える。いくつかの実施形態によれば、アルキル化反応器内で1つまたは複数のオレフィンを溶媒と反応させてアルキレートを生成することは、アルキレートを含むアルキル化反応器流出物流を生成することを含む。いくつかの実施形態によれば、上記方法は、アルキル化反応器流出物流を1つまたは複数の分離塔へ提供することと、1つまたは複数の分離塔からリーン溶媒を回収することと、1つまたは複数の分離塔から富化アルキレート生成物を回収することと、をさらに含む。いくつかの実施形態によれば、上記方法は、リーン溶媒の少なくとも一部を、吸収塔へ再循環することをさらに含む。いくつかの実施形態によれば、上記方法は、リーン溶媒の少なくとも一部を、アルキル化反応器へ再循環することをさらに含む。
【0005】
また、本明細書に開示されているのは、オレフィン含有流を処理するシステムである。オレフィン含有流は、エチレンおよびプロピレンからなる群から選択される1つまたは複数のオレフィンと、水素(H2)、一酸化炭素(CO)およびメタンからなる群から選択される1つまたは複数の軽質成分と、を含む。該システムは、吸収塔と、アルキル化反応器と、を備える。吸収塔は、オレフィン富化溶媒流を提供するために、オレフィン含有流をアルキル化前駆体である溶媒と接触させて、1つまたは複数のオレフィンの少なくとも一部を溶媒に吸収することによって、1つまたは複数のオレフィンを1つまたは複数の軽質成分から分離するように構成されている。アルキル化反応器は、オレフィン富化溶媒流を受け取り、1つまたは複数のオレフィンを溶媒と反応させてアルキレートを生成するように構成されている。いくつかの実施形態によれば、溶媒は、イソブタンである。いくつかの実施形態によれば、オレフィン含有流は、流動接触分解(FCC)プロセスからのオフガスである。いくつかの実施形態によれば、上記システムは、吸収塔の上流にアミン洗浄器をさらに備え、アミン洗浄器は、二酸化炭素および硫化水素からなる群から選択される1つまたは複数の不純物を、オレフィン含有流から除去するように構成されている。いくつかの実施形態によれば、上記システムは、吸収塔の上流に苛性接触用容器をさらに備え、苛性接触用容器は、オレフィン含有流を苛性物質と接触させて、二酸化炭素および硫化水素からなる群から選択される1つまたは複数の不純物を、オレフィン含有流から除去するように構成されている。いくつかの実施形態によれば、アルキル化反応器は、固体酸アルキル化触媒を有する固定触媒床を備える。いくつかの実施形態によれば、アルキル化反応器は、アルキレートを含むアルキル化反応器流出物流を、1つまたは複数の分離塔へ提供するように構成され、1つまたは複数の分離塔は、アルキル化反応器流出物流を、リーン溶媒流と富化アルキレート生成物流とに分離するように構成されている。いくつかの実施形態によれば、上記システムは、リーン溶媒流を、吸収塔およびアルキル化反応器のうちの1つまたは複数へ再循環するように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】オレフィン含有流を処理するためのシステムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[詳細な説明]
本開示は、石油精製/石油化学プロセスのオフガス流から、C2および/またはC3オレフィン(すなわち、エチレンおよび/またはプロピレン)を吸収するための方法およびシステムを提供する。一般的には、C2+炭化水素(少量のC4/C5を含む)は吸収されるが、C1および水素は排除される。開示された方法およびシステムは、主に、FCCオフガスを処理するという文脈で説明される。しかしながら、本方法および本システムは、コークス器、エチレンおよびプロピレン回収装置、水蒸気分解器など、他のプロセスによって生成されたオフガス(および他のC2/C3オレフィン含有流)を処理するために用いられ得ることが理解されるべきである。一般的には、本方法および本システムは、いかなるエチレンおよび/またはプロピレン含有流についても用いることができる。
【0008】
開示された方法およびシステムは、C2および/またはC3オレフィンを供給物流内に吸収することを含み、当該供給物流は、その後、アルキレート生成物を生成するためにアルキル化反応器へ提供される。アルキレートは、製油所で製造される最もクリーンなガソリン混合流であって、高オクタン価、低蒸気圧かつ低毒性であることから、理想的でクリーンな燃料成分である。アルキレートは、オクタン価を、すなわちガソリンのアンチノック性を向上するために、何十年もガソリンに混合されてきた。加えて、ガソリンの製法および物性についての州政府および連邦政府の厳格な規制によって、アルキレートは、ガソリンプールの最重要かつ高価値のブレンドストックの1つとなっている。開示された方法およびシステムは、オフガス流中のC2および/またはC3オレフィンを製油所の燃料ガスシステムへ送るのではなく、該オレフィンを高価値のアルキレート生成物に変換することによって、オフガス流の処理価値を実質的に向上させることを提供する。
【0009】
図1は、流れからC2/C3オレフィンを吸収し、該C2/C3オレフィンをアルキル化反応用供給物流の一部として提供するためのシステム100を示す。図示されたシステム100において、オレフィン含有流は、ライン102を介してシステムへ提供される。図示されたシステムにおいて、オレフィン含有流は、例えばFCC装置からのオフガス流である。上述したように、そのようなオフガス流は、一酸化炭素、二酸化炭素および硫化水素などの不純物とともに、エチレンおよび/またはプロピレン、エタン、メタン、ならびに、水素を含んでもよい。典型的なオフガス流は、例えば、約120psigの圧力を有してもよい。
【0010】
図示されたシステム100において、オフガス流は、該オフガス流のいくつかの成分を液化するために、圧縮器104で加圧される。例えば、オフガス流は、約180psigから約250psigの圧力に加圧されてもよい。圧縮器104の吐出圧は、以下に説明されるように、オフガス流が、前処理区域106を通過して、約135psigの圧力で動作する吸収/脱メタン塔(A/D塔)108へ進入可能となるように、設定され得る。1つの実施形態によれば、圧縮器104の吐出圧は、約230psigに設定され得る。
【0011】
圧縮された流れ110は、前処理区域106ヘ提供されてもよい。前処理区域106の目的は、該流れから様々な不純物を除去し、該流れを下流のA/D塔108に適した状態にすることである。いくつかの実施形態によれば、前処理区域106は、多量の二酸化炭素(CO)および/またはHSを除去するためのアミンシステムと、最終的にCO/HSを除去するための苛性洗浄と、および/または、水分を除去するための乾燥器と、を備えてもよい。そのような装置およびプロセスは、当業者に周知である。例えば、アミン洗浄システムは、圧縮されたオレフィン含有流を、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、メチルジエタノールアミンまたはジグリコールアミンなどのアミンと接触させて、オレフィン含有流からCOおよび/またはHSを吸収することを含んでもよい。典型的なアミンガス処理プロセスは、付属装置とともに、吸収器ユニットと再生器ユニットとを備える。吸収器において、下向流のアミン溶液は、上向流のオレフィン含有流からHSおよびCOを吸収して、スイートニングされた(sweetened)オレフィン含有流(すなわち、HSおよびCOを含まないオレフィン含有流)を生成物として生成し、また、吸収された酸性ガス(HSおよびCO)に富む(rich)アミン溶液を生成する。生じた「リッチ(rich)」アミンは、その後、再生器(再沸器を備えるストリッパ)へ導かれて、吸収器で再利用するために再循環される、再生アミン、すなわち「リーン(lean)」アミンを生成する。再生器からのストリッピングされた(stripped)オーバーヘッドガス流は、濃縮されたHSおよびCOであって、酸性ガス処理へと導かれてもよい。アミン洗浄に続いて、オレフィン含有流は、さらなるスイートニングのために、容器内で苛性剤と接触されてもよい。オレフィン含有流は、分子篩材料で構成される吸着剤床と接触されることによって乾燥されてもよい。図示された実施形態では、苛性物質は、水酸化ナトリウム、または、当技術分野において周知の他の苛性物質であって、ライン112を介して前処理区域106へ提供される。酸性ガス、使用済み苛性剤、および水は、それぞれ、ライン114、116、および118を介して前処理区域106から排出される。具体的な実施とオフガス流の成分に応じて、様々に異なる前処理プロセスが行われてオフガス流を浄化してもよいことが理解されるべきである。いくつかの実施形態によれば、前処理されたオフガス流は、A/D塔108へ提供される前に冷却されてもよい。例えば、圧縮されたオフガス流は、約35°Fまで冷却されてもよい。
【0012】
図示された実施形態において、前処理されたオフガス流は、ライン120を介してA/D塔108へ提供される。ライン120における前処理されたオフガス流は、エチレンおよび/またはプロピレンと、他の成分と、を含んでもよい。他の成分とは、水素(H)、一酸化炭素(CO)、メタン、エタン、プロパン、n-および/またはi-ブタン、ブテン、ペンテン、ペンタンなどである。ライン120における前処理されたオフガス流の具体的な組成は、原流(すなわち、流れ102)の組成と、圧縮器104および前処理区域106などの上流装置の動作パラメータと、によって異なるであろう。理想的には、ライン120における前処理されたオフガス流は、オレフィン(すなわち、エチレンおよび/またはプロピレン)に富むことが望ましい。
【0013】
A/D塔108は、2つの目的を担う吸収塔である。2つの目的とは、1)オフガス流から、H、COおよびメタンなどのより軽質な成分を排除する一方で、オレフィン(すなわち、エチレンおよび/またはプロピレン)を溶媒中に吸収すること、2)アルキル化反応に特に好適な供給物流として、該オレフィンをアルキル化反応器へ提供すること、である。上述したように、より重質な成分(C2+パラフィンなど)も吸収されるであろう。A/D塔では、前処理されたオフガス流は、下流のアルキル化反応器における反応剤でもある溶媒と接触される。換言すれば、溶媒は、それ自体がアルキル化前駆体である。いくつかの実施形態によれば、溶媒はイソブタンであるが、イソペンタンなど他の化合物とすることも可能であろう。システム100では、リーンイソブタンは、ライン122を介してA/D塔108へ提供される。該イソブタンは、前処理されたオフガスとA/D塔において接触して、オフガスからのオレフィンとより重質な成分とに富む、富化(enriched)溶媒流124を生成するが、この富化溶媒流124は、以下に説明されるように、アルキル化反応器128へ提供される。H、COなど、吸収されないより軽質な成分は、ライン126を介してA/D塔から排出されて、圧力スイング吸着(PSA)などの、さらなる処理がなされてもよい。
【0014】
いくつかの実施形態によれば、A/D塔108は、(複数の)オレフィンをイソブタン溶媒と接触させるために、圧力で動作する単一の塔で構成されてもよい。オレフィンの吸収を向上するために様々に異なり得るパラメータには、トレイ(tray)の有無、トレイの数、動作温度および動作圧力の範囲、ならびに、溶媒とオレフィンとの比率が含まれる。いくつかの実施形態によれば、A/D塔は、溶媒対供給物比が2.45wt/wtである約20段の理論段(従来のトレイまたは同量の充填物(packing)とし得る。)を有する。いくつかの実施形態によれば、溶媒は、オーバーヘッド凝縮器を用いて冷却され、還流として塔の頂部へ供給され得る。いくつかの実施形態によれば、例えば、温度プロファイルは、最上段で約-30°Fとし、最下段で約0°Fとし得る。いくつかの実施形態によれば、前処理されたオフガス供給物は、約0.80の蒸気分率で塔の底部に入り得る。A/D塔は、再沸器を備えてもよいし、備えなくてもよい。いくつかの実施形態によれば、正味の液状底部流124は、アルキル化反応器ヘ送られる前に、供給物/流出物熱交換器および/または溶媒/流出物熱交換器(不図示)へ送られて、該流れを(例えば、約60°Cの温度まで)加熱してもよい。いくつかの実施形態によれば、オーバーヘッド流は、部分的に凝縮されて、還流ドラム(不図示)へ送られ得る。凝縮されない物質は、正味のオーバーヘッド蒸気流126として該ドラムから排出されてもよく、また、さらなる浄化のためにPSA装置へ送られることも可能である。当該流れは、大半がエチレンよりも軽質な分子である。いくつかの実施形態によれば、目標は、A/D塔108からおよそ90%のエチレンを回収することである。
【0015】
富化溶媒流124は、1つまたは複数のアルキル化反応器128へ提供される。上述したように、富化溶媒流は、エチレンおよび/またはプロピレン、ならびに、より重質な成分で富化されている。溶媒は、典型的にはイソブタンであって、イソブタンは、溶媒として、また、アルキル化反応における反応剤としての両機能を果たす。アルキル化反応器は、吸収されたオレフィンおよびイソブタンをアルキレートへ変換する。米国特許第9,079,815号は、エチレンおよびイソブタンをアルキレートへ変換する例を開示している。いくつかの実施形態によれば、アルキル化反応器は、固体酸アルキル化技術を用いて、オレフィンおよびイソブタンをアルキレートへ変換する。特に好適なアルキル化反応器の技術は、KBR社の商標名K-SAATのアルキル化技術(KBR社、テキサス州ヒューストン)である。このアルキル化プロセスは、典型的には非貴金属担持ゼオライト材料である、固定床触媒を用いる。好適な触媒の例は、KBR社の商標名ExSact触媒(KBR社、テキサス州ヒューストン)である。エチレンをアルキレートに変換する場合には、まず、エチレン2分子が二量化して、すなわち互いに反応して、ブチレンを形成する。ブチレンは、その後イソブタンと反応して、アルキレートであるイソオクタンを形成する。システムにおけるイソブタンの量は、以下に説明されるように、反応平衡が生成物に向かうように制御可能である。
【0016】
(複数の)アルキル化反応器128へ提供された反応剤(すなわち、オレフィンおよびイソブタン)の化学量論量は、流れ124の成分分析に基づいて制御される。例えば、いくつかの実施形態によれば、イソブタン対プロピレンは約10:1のモル比であって、イソブタン対エチレンは約5:1のモル比であることが望ましい。それゆえ、アルキル化反応器128における適正な化学量論量を維持するために、供給物流の組成は測定可能であって、また、システムにおけるイソブタンの量は(以下においてより詳細に説明されるように)調整可能である。
【0017】
(複数の)アルキル化反応器128からの流出物流130は、例えば、残部が主にイソブタンである、約10%から12%のアルキレート生成物を含んでもよい。反応器流出物流130は、図1にガスプラント132として集合的に示される、さらなる浄化プロセスへ提供されてもよい。ガスプラント132は、例えば、1つまたは複数の分離塔を備えてもよい。いくつかの実施形態によれば、ガスプラントは、リーンイソブタンを回収して、当該リーンイソブタンを(または当該リーンイソブタンの一部を)ライン122を介してA/D塔へ再循環するように構成された、分離塔を有する。いくつかの実施形態によれば、回収されたリーンイソブタンの一部は、ライン134を介して(複数の)アルキル化反応器へ再循環されてもよい。いくつかの実施形態によれば、n-ブタンは、当該分離塔の側流として取り出されてもよい。ガスプラントは、例えば、他の成分を分離するための他の分離塔を有してもよい。他の成分とは、エタン、プロパン、および、その他のオフガス生成物などである。
【0018】
上述したように、回収されたリーン溶媒(イソブタン)の一部は、ライン134を介してアルキル化反応器128へ再循環されてもよい。これはいくつかの理由で有益である。第一に、いくつかの実施形態によれば、A/D塔108へ可能な限り少量のイソブタンを再循環することが望ましいが、これはなぜなら、多量のイソブタンを使用するには、より大型の塔が必要となり、かつ、より多くのエネルギーを使用するからである。また、上述したように、アルキル化反応器へ提供されるイソブタンの量を制御することで、アルキル化反応の平衡を制御することが可能である。ゆえに、イソブタン再循環流134は、アルキル化反応を制御するための手段を提供する。
【0019】
図1に示すように、調整用(make-up)イソブタンは、様々な箇所でシステム100に提供され得る。例えば、調整用イソブタンは、ライン136を介してA/D塔108へ提供されてもよい。いくつかの実施形態によれば、調整用イソブタンは、前処理されたオフガスがA/D塔108へ入る前に、(ライン138を介して)ライン120において、前処理されたオフガスと混合されてもよい。例えば、該混合物がA/D塔へ提供される前に、スタティックミキサやバブラなどを用いて、前処理されたオフガスを調整用イソブタンと予め接触させることも可能であろう。調整用イソブタンは、ライン140を介してアルキル化反応器128へ、および/または、ライン142を介してガスプラント132の構成要素へ、直接的に追加されてもよい。
【0020】
本発明の特定の実施形態が示されて説明されてきたが、上述の議論は、本発明を、これら実施形態に限定することを意図するものではないと理解されるべきである。本発明の思想および範囲を逸脱することなく、様々な変更および修正がなされ得ることは、当業者には明らかであろう。それゆえ、本発明は、特許請求の範囲に定義される本発明の思想および範囲に含まれ得る代替物、修正物および均等物を包含することを意図する。
図1
【国際調査報告】