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特表2024-502286二次電池電極用導電材プレ分散スラリーとその製造方法、及び導電材プレ分散スラリーを適用して製造された電極と前記電極を備えた二次電池
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  • 特表-二次電池電極用導電材プレ分散スラリーとその製造方法、及び導電材プレ分散スラリーを適用して製造された電極と前記電極を備えた二次電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-18
(54)【発明の名称】二次電池電極用導電材プレ分散スラリーとその製造方法、及び導電材プレ分散スラリーを適用して製造された電極と前記電極を備えた二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/04 20060101AFI20240111BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20240111BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
H01M4/04 A
H01M4/139
H01M4/62 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023538909
(86)(22)【出願日】2021-12-09
(85)【翻訳文提出日】2023-06-21
(86)【国際出願番号】 KR2021018682
(87)【国際公開番号】W WO2022139272
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】10-2020-0181127
(32)【優先日】2020-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515068085
【氏名又は名称】ドンジン セミケム カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】DONGJIN SEMICHEM CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健次郎
(72)【発明者】
【氏名】キム ヒョンチョル
(72)【発明者】
【氏名】ホ チョル
(72)【発明者】
【氏名】ヤン フィチャン
(72)【発明者】
【氏名】イ ジュチョル
(72)【発明者】
【氏名】ハン ジュギョン
(72)【発明者】
【氏名】アン ウヒョン
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA07
5H050AA08
5H050AA12
5H050AA19
5H050BA08
5H050BA15
5H050DA10
5H050DA18
5H050EA08
5H050EA09
5H050EA10
5H050EA22
5H050EA23
5H050GA10
5H050GA26
5H050HA01
5H050HA05
5H050HA15
(57)【要約】
導電材の分散性が向上した二次電池電極用導電材プレ分散スラリーとその製造方法、及び導電材プレ分散スラリーを適用して製造された電極と前記電極を備えた二次電池が提供される。開示された二次電池電極用導電材プレ分散スラリーは、導電材;前記導電材を分散させるための分散剤;及び前記導電材及び分散剤と混合される溶媒を含み、前記分散剤はセルロース系化合物及びビニル系またはアクリル系化合物を含み、前記分散剤における前記セルロース系化合物と前記ビニル系またはアクリル系化合物との重量比は、25:1~1:25程度である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池電極用導電材プレ分散スラリーであって、
導電材;前記導電材を分散させるための分散剤;及び前記導電材及び分散剤と混合される溶媒を含み、
前記分散剤は、セルロース系化合物及びビニル系またはアクリル系化合物を含み、前記分散剤における前記セルロース系化合物と前記ビニル系またはアクリル系化合物との重量比は、25:1~1:25である、二次電池電極用導電材プレ分散スラリー。
【請求項2】
前記セルロース系化合物の重量平均分子量(weight-average molecular weight;Mw)は450,000g/mol以下である、請求項1に記載の二次電池電極用導電材プレ分散スラリー。
【請求項3】
前記セルロース系化合物のエステル化度(degree of esterification;DE)は0.6~1.0である、請求項1に記載の二次電池電極用導電材プレ分散スラリー。
【請求項4】
前記セルロース系化合物は、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ベンジルセルロース、トリチルセルロース、シアノエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、アミノエチルセルロース、ニトロセルロース、セルロースエーテル、及びカルボキシメチルセルロースナトリウム塩からなる群から選択される1種以上である、請求項1に記載の二次電池電極用導電材プレ分散スラリー。
【請求項5】
前記ビニル系化合物の重量平均分子量(Mw)は6,000~80,000g/molであり、前記アクリル系化合物の重量平均分子量(Mw)は8,000~150,000g/molである、請求項1に記載の二次電池電極用導電材プレ分散スラリー。
【請求項6】
前記ビニル系またはアクリル系化合物は、前記導電材の周囲を包み込むように設けられる、請求項1に記載の二次電池電極用導電材プレ分散スラリー。
【請求項7】
前記ビニル系化合物は、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルクロリド、ポリビニルフルオリド、及びポリビニルアセテートからなる群から選択される1種以上であり、前記アクリル系化合物は、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、及びポリアクリロニトリルからなる群から選択される1種以上である、請求項1に記載の二次電池電極用導電材プレ分散スラリー。
【請求項8】
前記導電材は、黒鉛、カーボンブラック、グラフェン、及びカーボンナノチューブ(CNT)からなる群から選択される1種以上である、請求項1に記載の二次電池電極用導電材プレ分散スラリー。
【請求項9】
前記カーボンナノチューブ(CNT)は、多層カーボンナノチューブ(Multi-walled carbon nanotube;MWCNT)である、請求項8に記載の二次電池電極用導電材プレ分散スラリー。
【請求項10】
前記多層カーボンナノチューブ(MWCNT)は4~12nmの直径を有する、請求項9に記載の二次電池電極用導電材プレ分散スラリー。
【請求項11】
前記カーボンナノチューブ(CNT)と前記分散剤との重量比(CNT:分散剤)は、1:0.2~1:1.5である、請求項8に記載の二次電池電極用導電材プレ分散スラリー。
【請求項12】
前記導電材プレ分散スラリーにおける前記カーボンナノチューブ(CNT)の含有量は、0重量%超過、6重量%以下である、請求項8に記載の二次電池電極用導電材プレ分散スラリー。
【請求項13】
前記導電材プレ分散スラリーは、25℃の温度及び50s-1のせん断率(shear rate)の条件で、3,000cP以下の粘度を有する、請求項1に記載の二次電池電極用導電材プレ分散スラリー。
【請求項14】
前記導電材プレ分散スラリーのD50粒度(particle size)は0.1μmより小さい、請求項1に記載の二次電池電極用導電材プレ分散スラリー。
【請求項15】
前記溶媒は水を含む、請求項1に記載の二次電池電極用導電材プレ分散スラリー。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載された導電材プレ分散スラリーを適用して製造された二次電池用電極。
【請求項17】
請求項16に記載された電極を備える二次電池。
【請求項18】
二次電池電極用導電材プレ分散スラリーの製造方法であって、
導電材であるCNT、分散剤及び溶媒を含むが、前記分散剤はセルロース系化合物及びビニル系またはアクリル系化合物を含み、前記分散剤における前記セルロース系化合物と前記ビニル系またはアクリル系化合物との重量比は25:1~1:25である混合溶液を調製するステップ;及び
前記混合溶液を200バール以上の作動圧力を有する高圧分散機を用いて高圧分散するステップを含む、
二次電池電極用導電材プレ分散スラリーの製造方法。
【請求項19】
前記混合溶液を調製するステップは、
前記セルロース系化合物を含むセルロース系化合物溶液、及び前記ビニル系またはアクリル系化合物を含むビニル系またはアクリル系化合物溶液をそれぞれ調製するステップ;
前記セルロース系化合物溶液、前記ビニル系またはアクリル系化合物溶液、及び前記CNTを含む一次混合液を調製するステップ;及び
前記一次混合液を撹拌するステップを含む、請求項18に記載の二次電池電極用導電材プレ分散スラリーの製造方法。
【請求項20】
前記高圧分散は、500~2,500バールの作動圧力で3~10回行う、請求項18に記載の二次電池電極用導電材プレ分散スラリーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極用材料とそれを適用した電池及びそれらの製造方法に関し、より詳しくは、二次電池電極用導電材プレ分散スラリーとその製造方法、及び前記導電材プレ分散スラリーを適用して製造された電極と前記電極を備えた二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池(secondary battery)は1990年代に登場して以来、地道な研究と共に発展を遂げ続けている。二次電池の主要な構成要素である正極/負極活物質、電解質、分離膜のみならず、それらの特性を補完及び向上させる役割を果たす補助要素に関する研究及び開発も同時に行われてきている。
【0003】
導電材は正極と負極の両方に含まれ、活物質-活物質或いは活物質-集電体の間の電子の移動特性を改善するために使用する物質である。導電材は主に炭素(carbon)系物質を中心に開発されている。導電材プレ分散スラリーは導電材を溶媒に分散させた溶液であって、後続するステップにおいて、活物質及びバインダー(binder)と共に電極用スラリーを構成する材料となる。
【0004】
近年、二次電池の適用分野が電気自動車やESS(energy storage system)などの中大型電池分野に拡大するにつれて、導電材の重要性が増しつつある。二次電池の理論容量を高めるためには、正極或いは負極の活物質量を増加させる必要がある。ところが、同じ電極において活物質の量が増加すると、導電材の量は減少する。したがって、少量でも優れた性能を示すことができる導電材が求められる。これに関連して、CNT(carbon nanotube)が新しい導電材の材料として注目を集めている。CNTは、ナノサイズの直径を有する円筒型構造であり、炭素原子がらせん状に配列され、sp結合構造を有する。このようなCNTは、優れた電気的特性、強度、復元性、熱伝導性など、様々な側面で優れた物性を示すことができる。二次電池電極用導電材として、CNTは従来の粉末形態の炭素物質に比べて、エネルギー密度の増加と寿命の向上が可能であり、バッテリーのサイズも小さくできると期待される。特に、これらの利点は、高容量、急速充電などが求められる電気自動車用バッテリーにおいてより有利に作用することができる。
【0005】
しかし、前述したような様々な利点にもかかわらず、CNTは溶解性と分散性が低いため、実際に導電材として適用するには困難な面がある。特に、CNT同士の強いファンデルワールス(Van-der Waals)引力によって、溶液中でCNTは凝集体(agglomerate)または束(bundle)の形態で存在する。CNTを適用した導電材の開発においては、CNTを効果的に分散させられる技術が求められ、特に、CNTの損傷を最小限に抑えながら、適切にまたは容易に分散させられる方法が求められる。CNTを溶媒中で分散させるためにCNTの表面を酸で処理する場合、CNTの表面に欠陥(defect)が発生して、電気伝導度などの物性が劣化する可能性がある。一方、CNTを分散させるために界面活性剤を用いる場合、CNTの含有量が増加するにつれ、使用する界面活性剤の量も増加するため、界面活性剤によって溶液の粘度が増加し、電気伝導度などの物性が低下するという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が達成しようとする技術的課題は、CNTを適用した導電材材料を開発するにあたり、CNTの損傷を防止または最小化しながらCNTを効果的に分散させられる技術及び方法を提供することにある。
【0007】
また、本発明が達成しようとする技術的課題は、CNT(導電材)の分散特性が向上した二次電池電極用導電材プレ分散スラリー及びその製造方法を提供することにある。
【0008】
また、本発明が達成しようとする技術的課題は、CNT(導電材)の含有量が比較的高いながらも、比較的低い粘度を有し、比較的簡単な工程で容易に製造できる二次電池電極用導電材プレ分散スラリー及びその製造方法を提供することにある。
【0009】
また、本発明が達成しようとする技術的課題は、前記した導電材プレ分散スラリーを適用して製造された電極、及びそのような電極を適用した二次電池を提供することにある。
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、前記で指摘した課題に制限されず、指摘されていない別の課題は、以下の記載によって当業者に明確に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の課題を達成するための本発明の実施例によれば、二次電池電極用導電材プレ分散スラリーであって、導電材;前記導電材を分散させるための分散剤;及び前記導電材及び分散剤と混合される溶媒を含み、前記分散剤は、セルロース系化合物及びビニル系またはアクリル系化合物を含み、前記分散剤における前記セルロース系化合物と前記ビニル系またはアクリル系化合物との重量比は、25:1~1:25である、二次電池電極用導電材プレ分散スラリーが提供される。
【0012】
前記セルロース系化合物の重量平均分子量(weight-average molecular weight)(Mw)は、約450,000g/mol以下であり得る。
【0013】
前記セルロース系化合物のエステル化度(degree of esterification;DE)は、約0.6~1.0程度であり得る。
【0014】
前記セルロース系化合物は、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ベンジルセルロース、トリチルセルロース、シアノエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、アミノエチルセルロース、ニトロセルロース、セルロースエーテル、及びカルボキシメチルセルロースナトリウム塩からなる群から選択される1種以上であり得る。
【0015】
前記ビニル系化合物の重量平均分子量(Mw)は6,000~80,000g/mol程度であり得るし、前記アクリル系化合物の重量平均分子量(Mw)は約8,000~150,000g/mol程度であり得る。
【0016】
前記ビニル系またはアクリル系化合物は、前記導電材の周囲を包み込むように設けられ得る。
【0017】
前記ビニル系化合物は、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルクロリド、ポリビニルフルオリド、及びポリビニルアセテートからなる群から選択される1種以上であり得るし、前記アクリル系化合物は、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、及びポリアクリロニトリルからなる群から選択される1種以上であり得る。
【0018】
前記導電材は、黒鉛、カーボンブラック、グラフェン、及びカーボンナノチューブ(CNT)からなる群から選択される1種以上であり得る。
【0019】
前記カーボンナノチューブ(CNT)は、多層カーボンナノチューブ(Multi-walled carbon nanotube;MWCNT)であり得る。
【0020】
前記多層カーボンナノチューブ(MWCNT)は、約4~12nmの直径を有し得る。
【0021】
前記カーボンナノチューブ(CNT)と前記分散剤との重量比(CNT:分散剤)は、約1:0.2~1:1.5程度であり得る。
【0022】
前記導電材プレ分散スラリーにおける前記カーボンナノチューブ(CNT)の含有量は、約0重量%超過、6重量%以下であり得る。
【0023】
前記導電材プレ分散スラリーは、25℃の温度及び50s-1のせん断率(shear rate)の条件で、約3,000cP以下の粘度を有し得る。
【0024】
前記導電材プレ分散スラリーのD50粒度(particle size)は、約0.1μmより小さい場合がある。
【0025】
前記溶媒は水を含み得る。
【0026】
本発明の他の実施例によれば、前述した導電材プレ分散スラリーを適用して製造された二次電池用電極が提供される。
【0027】
本発明の他の実施例によれば、前述した電極を備える二次電池が提供される。
【0028】
本発明の他の実施例によれば、二次電池電極用導電材プレ分散スラリーの製造方法であって、導電材であるCNT、分散剤及び溶媒を含むが、前記分散剤はセルロース系化合物及びビニル系またはアクリル系化合物を含み、前記分散剤における前記セルロース系化合物と前記ビニル系またはアクリル系化合物との重量比は25:1~1:25である混合溶液を調製するステップ;及び前記混合溶液を200バール以上の作動圧力を有する高圧分散機を用いて高圧分散するステップを含む二次電池電極用導電材プレ分散スラリーの製造方法が提供される。
【0029】
前記混合溶液を調製するステップは、前記セルロース系化合物を含むセルロース系化合物溶液、及び前記ビニル系またはアクリル系化合物を含むビニル系またはアクリル系化合物溶液をそれぞれ調製するステップ;前記セルロース系化合物溶液、前記ビニル系またはアクリル系化合物溶液、及び前記CNTを含む一次混合液を調製するステップ;及び前記一次混合液を撹拌するステップを含み得る。
【0030】
前記高圧分散は、約500~2,500バールの作動圧力で約3~10回行うことができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明の実施例によれば、カーボンナノチューブ(CNT)を適用した導電材材料を開発するにあたり、CNTの損傷を防止または最小化しながらCNTを効果的に分散させられる技術及び方法を具現化することができる。このような実施例によれば、CNT(導電材)の分散特性が向上した二次電池電極用導電材プレ分散スラリーを具現化することができる。特に、CNT(導電材)の含有量が比較的高いながらも、比較的低い粘度を有し、比較的簡単な工程で容易に製造できる二次電池電極用導電材プレ分散スラリーを具現化することができる。
【0032】
前記導電材プレ分散スラリーを適用して優れた性能を有する電極を製造することができ、前記電極を適用した二次電池を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の一実施例に係る二次電池電極用導電材プレ分散スラリー(conductive material pre-dispersed slurry)の構成を説明するための図である。
【0034】
図2】本発明の一実施例に係る二次電池電極用導電材プレ分散スラリーに適用可能なセルロース系化合物のうち、CMC(carboxymethyl cellulose)の化学式を示す図である。
【0035】
図3】本発明の一実施例に係る二次電池電極用導電材プレ分散スラリーに適用可能なビニル系化合物のうち、PVP(polyvinylpyrrolidone)の化学式を示す図である。
【0036】
図4】本発明の一実施例に係る二次電池電極用導電材プレ分散スラリーに適用可能なCNT(carbon nanotube)を示す斜視図である。
【0037】
図5】本発明の一実施例に係る二次電池電極用導電材プレ分散スラリーの製造方法を説明するためのフロー図である。
【0038】
図6図5の導電材プレ分散スラリーの製造方法に適用可能な工程ステップを説明するためのフロー図である。
【0039】
図7】本発明の一実施例に係るものであって、二次電池電極用導電材プレ分散スラリーを適用して製造された電極を備える二次電池を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施例を詳しく説明する。
【0041】
以下で説明する本発明の実施例は、当該技術分野における通常の知識を有する者に本発明をより明確に説明するために提供されるものであり、本発明の範囲が下記の実施例によって限定されるものではなく、下記の実施例は種々の異なる形態に変形することができる。
【0042】
本明細書で使用される用語は、特定の実施例を説明するために使用され、本発明を制限するためのものではない。本明細書で使用される単数形の用語は、文脈上他の場合を明確に指すものではない限り、複数形を含み得る。また、本明細書で使用される「含む。(comprise)」及び/または「含む(comprising)」という用語は、言及された形状、ステップ、数字、動作、部材、要素、及び/またはこれらのグループの存在を特定するものであり、一つ以上の他の形状、ステップ、数字、動作、部材、要素、及び/またはこれらのグループの存在または付加を除外するものではない。また、本明細書で使用される「連結」という用語は、ある部材が直接連結されていることを意味するだけでなく、部材同士の間に他の部材がさらに介在して間接的に連結されていることまで含む概念である。
【0043】
併せて、本願の明細書において、ある部材が他の部材「上に」位置しているというとき、これは、ある部材が他の部材に接している場合のみならず、二つの部材の間に別の部材が存在する場合も含む。本明細書で使用される「及び/または」という用語は、列挙された該当項目のうちのいずれか一つ及び一つ以上の全ての組み合わせを含む。また、本願の明細書で使用される程度の用語「約」、「実質的に」などは、固有の製造及び物質の許容誤差を考慮し、その数値や程度の範疇またはそれに近い意味で使用され、本願の理解を助けるために提供された正確な数値或いは絶対的な数値が言及された開示の内容を侵害者が不当に利用することを防ぐために使用される。
【0044】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施例について詳しく説明する。添付の図面に示された領域や部分のサイズや厚さは、明細書の明確性及び説明の便宜のためにやや誇張されている可能性がある。発明の概要全体にわたって、同じ参照番号は同じ構成要素を示す。
【0045】
図1は、本発明の一実施例に係る二次電池電極用導電材プレ分散スラリー(conductive material pre-dispersed slurry)の構成を説明するための図である。
【0046】
図1を参照すると、本発明の実施例に係る二次電池電極用導電材プレ分散スラリーは、導電材10と前記導電材10を分散させるための分散剤20、そして、前記導電材10及び分散剤20と混合されて流動性を提供する溶媒30を含み得る。導電材10は、黒鉛、カーボンブラック(Carbon Black)、グラフェン、カーボンナノチューブ(CNT、carbon nanotube)からなる群から選択される1種以上であり得るし、具体的には、CNTであるか或いはCNTを含み得る。導電材10は多数のCNTからなり得る。分散剤20は、セルロース系化合物及びビニル系またはアクリル系化合物を含み得る。分散剤20におけるセルロース系化合物とビニル系またはアクリル系化合物との重量比は、約25:1~1:25程度であり得る。具体的には、本発明の一実施例によれば、前記セルロース系化合物と前記ビニル系化合物との重量比は、25:1~1:25であり得るし、本発明の他の実施例によれば、前記セルロース系化合物と前記アクリル系化合物との重量比は、25:1~1:25であり得る。溶媒30は、例えば、水(water)であり得る。
【0047】
導電材10としてCNTを使用する場合、分散剤20としてセルロース系化合物とビニル系またはアクリル系化合物を混合して使用し、それらの重量比を25:1~1:25程度に調節することによって、CNTの分散特性をかなり改善することができ、導電材プレ分散スラリーにおけるCNTの粒度を大きく下げることができる。
【0048】
このとき、前記セルロース系化合物の重量平均分子量(weight-average molecular weight;Mw)は、約450,000g/mol以下であり得る。具体的には、120,000g/mol以下であり得る。例えば、本発明の実施例では、重量平均分子量(Mw)が約50,000~120,000g/mol程度であるセルロース系化合物または重量平均分子量(Mw)が約120,000~450,000g/mol程度であるセルロース系化合物を使用することができる。従来の二次電池電極用スラリーにおいてセルロース系化合物はバインダー(binder)として使用することができるが、この場合、その分子量は1,500,000g/mol程度と、本発明の実施例で使用するセルロース系化合物とかなり差がある。本発明の実施例のように、重量平均分子量(Mw)が約450,000g/mol以下のセルロース系化合物を使用すると、導電材プレ分散スラリーの粘度を下げることができ、CNTの分散性を容易に向上させることができる。特に、セルロース系化合物の重量平均分子量(Mw)が約120,000g/mol以下であるとき、導電材プレ分散スラリーを含む電極用スラリーのコーティング性がさらに向上し、電極形成がさらに容易になり得る。
【0049】
また、本発明の実施例で使用する前記セルロース系化合物のエステル化度(degree of esterification;DE)は、約0.6~1.0程度であり得る。セルロース系化合物の一つであるCMC(carboxymethyl cellulose)では、一つのモノマー(monomer)に三つのOR基が存在するが(図2の化学式参照)、セルロース系化合物のエステル化度(degree of esterification;DE)は、セルロース(cellulose)のモノマーを基準として、ヒドロキシ基(-OH)がエステル基(ester group)に置換された程度(すなわち、置換度)を表す。セルロース系化合物のエステル化度(DE)は、0~3(すなわち、図2のOR基の数に対応する)の範囲を有し得る。本実施例で使用するセルロース系化合物の一つであるCMC(carboxymethyl cellulose)のエステル化度(DE)は、約0.6~1.0程度、または約0.7~0.9程度であり得る。CMCのエステル化度(DE)が大きくなるほど、CMCの親水性が増加する可能性がある。エステル化度(DE)が0.6未満である場合、水和度(degree of hydration)が低すぎて水とよく混合しない可能性がある。エステル化度(DE)が1.0を超える場合、CNTの分散性が低下する可能性がある。
【0050】
前記セルロース系化合物は、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ベンジルセルロース、トリチルセルロース、シアノエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、アミノエチルセルロース、ニトロセルロース、セルロースエーテル、及びカルボキシメチルセルロースナトリウム塩からなる群から選択される1種以上であり得る。
【0051】
図2は、本発明の一実施例に係る二次電池電極用導電材プレ分散スラリーに適用可能なセルロース系化合物の一つであるCMCの化学式を示す図である。図2のCMCは、ナトリウムカルボキシメチルセルロース(sodium carboxymethyl cellulose)(すなわち、Na CMC)である。
【0052】
図2を参照すると、CMCのグルコース環(glucose ring)部分は、疎水性でCNTの表面と結合することができ、カルボン酸塩(carboxylate)部分は、親水性で水と結合することでCNTを水に分散させる役割を果たすことができる。CMCは、CNTと水(溶媒)中で整列(align)されている構造を形成することができるが、このとき、疎水性部分の結合が重要な役割を果たすことができる。また、CMCのエクアトリアル(equatorial、赤道)方向の-OH基(すなわち、エクアトリアルヒドロキシ基(equatorial hydroxyl group))が他のCMCのグルコース環(glucose ring)と水素結合しながらパッキング(packing)される形態を表すことができる。このようなCMCは、剛直(rigid)な特性を利用してCNTの分散安定剤としての役割を果たすことができる。
【0053】
前述したように、本発明の実施例におけるCMCの重量平均分子量(Mw)は、約450,000g/mol以下であり得る。重量平均分子量(Mw)が約450,000g/mol以下のCMCを使用すると、導電材プレ分散スラリーの粘度を下げることができ、CNTの分散性を容易に向上させることができる。また、本発明の実施例におけるCMCのエステル化度(DE)は、約0.6~1.0程度であり得る。CMCにおいてセロロースのモノマーを基準として、ヒドロキシ基がエステル基(ester group)に置換された程度(すなわち、置換度)は、約0.6~1.0程度であり得る。この場合、CMCは溶媒(水)とよく混合しながらもCNTの分散性を容易に向上させることができる。
【0054】
図1で説明したように、本発明の実施例では、分散剤20としてCMCと共にビニル系またはアクリル系化合物を追加で使用することができる。ビニル系またはアクリル系化合物は、導電材の周囲を包み込むように設けられ得る。本発明の実施例で使用する前記ビニル系化合物の重量平均分子量(Mw)は、6,000~80,000g/molであり得るし、前記アクリル系化合物の重量平均分子量(Mw)は、8,000~150,000g/molであり得る。さらに具体的には、ビニル系化合物の一つであるPVP(ポリビニルピロリドン、polyvinylpyrrolidone)の重量平均分子量(Mw)は、約6,000~80,000g/mol程度であり得る。より具体的には、前記PVPの重量平均分子量(Mw)は、約6,000~15,000g/mol程度であり得る。前記PVPは、CNTの周囲を包み込むように設けられ得る。言い換えれば、前記PVPは、CNTに吸着されてCNTを包み込むように(すなわち、ラッピング(wrapping)するように)設けられ得る。PVPはCNTに吸着されてCNTを包み込むことによって、CNTを溶媒(ex、水)に分散させる役割を果たすことができる。PVPでCNTを適切にラッピング(wrapping)するためには、適切な長さを有するPVPを使用する必要がある。また、CNTの種類によってそれに適したPVPの種類(分子量)が変わり得る。PVPの重量平均分子量(Mw)が6,000g/mol未満である場合、ラッピング(wrapping)自体がうまく行かなくなる可能性があり、導電材プレ分散スラリーの粘度が高くなり、CNTの分散性は低下する可能性がある。PVPの重量平均分子量(Mw)が80,000g/molを超える場合、導電材プレ分散スラリーの粘度が増加し、CNTの分散性は低下する可能性がある。したがって、本発明の実施例におけるPVPの重量平均分子量(Mw)は、約6,000~80,000g/mol程度であることが好ましい場合がある。このようなPVPを使用することによって、CNTをよりよく分散させることができ、流れ性を改善して低粘度の導電材プレ分散スラリーを製造することができる。
【0055】
前記ビニル系化合物は、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルクロリド、ポリビニルフルオリド、及びポリビニルアセテートからなる群から選択される1種以上であり得る。
【0056】
前記アクリル系化合物は、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、及びポリアクリロニトリルからなる群から選択される1種以上であり得る。
【0057】
図3は、本発明の一実施例に係る二次電池電極用導電材プレ分散スラリーに適用可能なPVPの化学式を示す図である。
【0058】
図3を参照すると、PVPのピロリドン基(pyrrolidone group)は親水性であり得るし、その下のアルキル基(alkyl group)は疎水性であり得る。前記アルキル基は線形構造へとフレキシブルに変化し得るし、CNTを包み込む(wrapping)性質を有し得る。PVPの重量平均分子量(Mw)が6,000g/mol未満であると、アルキル基の線形構造が短くなるため、CNTのラッピング(wrapping)自体がうまく行かなくなる可能性があり、その結果、導電材プレ分散スラリーの粘度が高くなり、CNTの分散性は低下する可能性がある。PVPの重量平均分子量(Mw)が80,000g/molを超えると、分子量が過度に大きくなり、導電材プレ分散スラリーの粘度が増加し、CNTの分散性は低下する可能性がある。したがって、前述したように、本発明の実施例におけるPVPの重量平均分子量(Mw)は、約6,000~80,000g/mol程度であることが好ましい場合がある。PVPの具体的な種類として、k12、k15、k30、k90などがあり得るし、その中でk15、k30に該当するPVPを本発明の実施例に適用することができる。
【0059】
再び図1を参照すると、本発明の実施例において導電材10として使用されるCNTは、二次電池の正極または負極で活物質の導電性を補完し、電子が移動できる経路(path)を形成する物質であり得る。CNTは、線形の炭素体であって、粉末よりもはるかに長い距離で活物質-活物質または活物質-集電体を連結し、ネットワーク(network)構造を形成することも容易になり得る。
【0060】
本発明の実施例において使用するCNTは、多層カーボンナノチューブ(Multi-walled carbon nanotube;MWCNT)であり得る。単層カーボンナノチューブ(single-walled carbon nanotube;SWCNT)の場合、MWCNTより電気的性能は良いが、高含有量のCNT分散液の製造が難しく、製造コスト(価格)も高いという欠点がある。MWCNTの場合、CNTの直径が小さいものは数nmから大きいものは数十nmに達する。直径が約12nmを超えると、BET比表面積が低くて分散には容易であるかもしれないが、電気伝導度が減少してしまい、二次電池内で導電材の役割をうまく果たすことができない可能性がある。本発明に適用されるCNTは、MWCNTの中でも薄く長さが長いため、SWCNTに近い品質とMWCNTの価格上の利点を同時に有する。
【0061】
図4は、本発明の一実施例に係る二次電池電極用導電材プレ分散スラリーに適用可能なCNTを示す斜視図である。
【0062】
図4を参照すると、本発明の実施例に係る導電材プレ分散スラリーに適用可能なCNTはMWCNTであり得る。MWCNTは3~10個の壁(wall)を有し得るし、4~12nmの直径を有し得る。MWCNTの長さは約50~200μm程度であり得る。MWCNTのBET(Brunauer-Emmett-Teller)比表面積は約300m/g以上であり得る。MWCNTのBET比表面積は約300~500m/g程度であり得る。使用されるMWCNTは約300m/g以上の大きなBET比表面積を有するので、伝導性の向上に有利であり得る。一方、MWCNTの嵩密度(bulk density)は約0.042g/ml程度であり得るし、純度(purity)は約96.96%程度であり得る。
【0063】
12nm以下のMWCNTの場合、比較的大きな比表面積などの物理的特性によって、溶媒30中で分散することが容易でない可能性がある。そこで、本発明の実施例では、分散剤20としてCMCとPVPを併用し、それらの使用割合を適切に選択し、同時にそれらの物理的特性を適切に選択することによって、MWCNTの分散特性を大きく改善することができる。PVPがMWCNTを適切にラッピング(wrapping)して、CMCが分散液の相安定性を維持する。したがって、本発明の実施例によれば、MWCNTを使用しても低い粘度を有し、小さい粒度特性を有する導電材プレ分散スラリーを製造することができる。
【0064】
本発明の実施例に係る導電材プレ分散スラリーにおいて、分散剤としてCMCとPVPを混合して使用し、それらの重量比(CMC:PVP)を25:1~1:25程度に調節する場合、CNTの分散特性を著しく改善することができ、CNTの粒度を大きく下げることができる。
【0065】
CNTに対する分散剤の含有量も分散及び粘度特性に影響を与える可能性がある。これに関連して、本発明の実施例に係る導電材プレ分散スラリーにおける前記CNTと前記分散剤との重量比(CNT:分散剤)は、約1:0.2~1:1.5程度であるか、約1:0.5~1:1程度であり得る。言い換えれば、前記CNTに対する前記分散剤(すなわち、CMC+PVP)は、約20~150%程度含まれるか、約50~100%程度含まれ得る。これらの条件を満たすとき、CNTの分散特性を改善し、スラリーの粘度を調節するのに有利であり得る。前記CNTに対する前記分散剤(すなわち、CMC+PVP)の割合が20%未満であると、CNTの分散性が悪くなる可能性があり、150%を超えると、スラリーの粘度が望ましくない水準に高くなる可能性があり、電気伝導性が低下する可能性がある。
【0066】
また、本発明の実施例に係る導電材プレ分散スラリーにおける前記CNTの含有量は、約6重量%以下であり得る。すなわち、前記導電材プレ分散スラリーの総重量における前記CNTの含有量は、約0重量%超過、6重量%以下であり得る。例えば、前記CNTの含有量は約1~6重量%程度であり得る。前記CNTの含有量が6重量%を超えると、スラリーの粘度が望ましくない水準まで高くなる可能性があり、電気伝導性が低下する可能性がある。少量のCNTを使用しながらもCNTの分散性を高めて、優れた性能を有する電極を製造することができる。しかし、CNTの含有量は前述したことに限定されず、場合によって、変わり得る。
【0067】
前記導電材プレ分散スラリーは、25℃の温度及び50s-1のせん断率(shear rate)の条件で、約3,000cP以下の粘度を有し得る。前記導電材プレ分散スラリーの粘度は、約2,000cP以下または約1,000cP以下であり得る。CNTの含有量が6重量%程度で高含有量であっても、導電材プレ分散スラリーは、約3,000cP以下または約1,000cP以下の低粘度を有するように製造することができる。
【0068】
また、前記導電材プレ分散スラリーの粒度(particle size)を測定すると、D50粒度は約0.1μmより小さい場合がある。D50値が約0.1μmよりも小さい程度にCNTを均等によく分散させることができる。このようにCNTの分散性が良好でスラリーの粒度が小さい場合、スラリーを用いて製造される電極の性能に優れる可能性がある。また、少量のCNTでも優れた電極特性を具現化することが可能であり得る。
【0069】
図5は、本発明の一実施例に係る二次電池電極用導電材プレ分散スラリーの製造方法を説明するためのフロー図である。
【0070】
図5を参照すると、本発明の実施例に係る二次電池電極用導電材プレ分散スラリーの製造方法は、導電材、分散剤及び溶媒を備える混合溶液を調製するステップ(S10)、及び前記混合溶液を、高圧分散機を用いて高圧分散するステップ(S20)を含み得る。S10ステップにおける前記導電材はCNTを備え得るし、前記分散剤はCMC及びPVPを備え得る。また、前記分散剤におけるCMCとPVPとの重量比(CMC:PVP)は、約25:1~1:25程度であり得る。S20ステップにおける前記高圧分散機の作動圧力は、約200バール以上であり得る。例えば、前記高圧分散機の作動圧力は、約200~3,000バール程度であり得る。前記高圧分散機を用いた高圧分散は、例えば、約500~2,500バールの作動圧力で約3~10回(pass)または約4~8回(pass)だけ行うことができる。本発明の実施例によれば、前記高圧分散の回数を約5回以内に行うことが可能になり得る。したがって、高含有量のCNTを含みながらも低粘度を有する導電材プレ分散スラリーを比較的簡単かつ短い工程で容易に製造することができる。
【0071】
S10ステップ、すなわち、前記混合溶液を調製するステップは、図6に示すような細部のステップ(S11~S13)から構成され得る。
【0072】
図6を参照すると、前記混合溶液を調製するステップ(図5のS10)は、前記セルロース系化合物を含むセルロース系化合物溶液、及び前記ビニル系またはアクリル系化合物を含むビニル系またはアクリル系化合物溶液をそれぞれ調製するステップ(S11)、前記セルロース系化合物溶液、前記ビニル系またはアクリル系化合物溶液及び前記CNTを含む一次混合液を調製するステップ(S12)、及び前記一次混合液を撹拌するステップ(S13)を含み得る。S12ステップにおいて、前記セルロース系化合物溶液及び前記ビニル系またはアクリル系化合物溶液とCNT及び追加の溶媒(ex、蒸留水)を混合して前記一次混合液を製造することができる。S13ステップにおいて、前記一次混合液を約3,000~10,000rpm程度の速度で約10分~1時間程撹拌することができる。しかし、ここに開示された具体的な工程条件は例示的なものであり、場合によって、変わり得る。前記一次混合液を撹拌することによって、図5のS10ステップの混合溶液を製造することができる。前記混合溶液はCNT分散溶液と言える。
【0073】
図5のS20ステップで前記混合溶液を高圧分散することによって、実施例に係る導電材プレ分散スラリーを製造することができる。前記導電材プレ分散スラリーの構成、特性などは、図1図4を参照して説明したものと同様であり得る。前記導電材プレ分散スラリーにおける前記CMCの重量平均分子量(Mw)は、約450,000g/mol以下であり得るし、前記CMCのエステル化度(DE)は約0.6~1.0程度であり得る。前記導電材プレ分散スラリーにおける前記PVPの重量平均分子量(Mw)は、約6,000~80,000g/mol程度であり得る。前記導電材プレ分散スラリーにおいて、前記CNTはMWCNTであり得るし、このとき、前記MWCNTは約4~12nm程度の直径を有し得る。前記MWCNTの長さは約50~200μm程度であり得るし、前記MWCNTのBET比表面積は約300m/g以上であり得る。前記導電材プレ分散スラリーにおける前記CNTと前記分散剤との重量比(CNT:分散剤)は、約1:0.2~1:1.5程度であり得る。前記導電材プレ分散スラリーにおける前記CNTの含有量は約6重量%以下であり得る。前記導電材プレ分散スラリーは、25℃の温度及び50s-1のせん断率の条件で、約3,000cP以下の粘度を有し得る。また、前記導電材プレ分散スラリーのD50粒度は、約0.1μmより小さい場合がある。その他にも、前記導電材プレ分散スラリーの具体的な構成及び特性は、図1図4を参照して説明したことと同様であり得る。
【0074】
<実験方法>
【0075】
本発明の実施例に係る導電材プレ分散スラリーを下記の方法で製造し、その特性を評価した。
【0076】
(1)フラスコに溶媒(蒸留水)950gを入れてPVP50gを加えた後、常温で2時間撹拌し5重量%のPVP溶液(水溶液)を製造する。
【0077】
(2)フラスコに溶媒(蒸留水)950gを入れてCMC50gを加えた後、常温で2時間撹拌し5重量%のCMC溶液(水溶液)を製造する。
【0078】
(3)ビーカーに前記PVP溶液、前記CMC溶液、CNT及び追加の溶媒(蒸留水)を入れ、ホモミキサー(homomixer)を用いて6,000rpmで30分間撹拌し、400gのCNT分散溶液(すなわち、混合溶液)を製造する。前記CNT分散溶液(混合溶液)において、CNTは5重量%、CMCは0.12~3.63重量%、PVPは0.12~3.63重量%、溶媒(蒸留水)は86.0~94.25重量%とした。
【0079】
(4)前記CNT分散溶液(混合溶液)を高圧分散機(マイクロノックス社、MN400BF)を用いて1,300バールで5~12回(pass)、高圧分散工程を行い、3重量%のCNTを含有する導電材プレ分散スラリーを製造する。
【0080】
前記のように製造された導電材プレ分散スラリーについて、HR-2 Viscometer(粘度計)(TA Instruments社)を用いて25℃の温度、50s-1のせん断率、Φ40mmのプレート(plate)の条件で粘度を測定した。また、前記のように製造された導電材プレ分散スラリーを0.0004重量%まで希釈した後、粒度分析器(Malvern社)を用いてD50粒度を測定した。
【0081】
前記のように製造された導電材プレ分散スラリーについて、ブラダー(Blader)を用いてPETフィルムに7~8μmでコーティングし、シート抵抗測定器MCP-T610(三菱化学社)を用いてシート抵抗を測定した。
【0082】
前記のような方法を適用して製造された実施例及び比較例によるサンプルの具体的な配合条件及び評価結果は、下記の表1及び表2の通りである。また、表2の備考欄において、AはCMCを表し、BはPVP、PVA、PAA、PAMを表す。下記の表1で使用したCMCはCMC1であり、前記CMC1の重量平均分子量(Mw)は50,000~120,000g/molである。表1で使用したPVPの重量平均分子量(Mw)は6,000~80,000g/mol、PVAの重量平均分子量(Mw)は6,000~40,000g/mol、PAAの重量平均分子量(Mw)は8,000~120,000g/mol、そして、PAMの重量平均分子量(Mw)は10,000~150,000g/molである。
【0083】
【表1】
【0084】
【表2】
【0085】
表1及び表2において実施例1~実施例11、比較例1、2を参照すると、分散剤成分A(CMC)と分散剤成分B(PVP)の比率による粘度結果から分散剤成分A(CMC)対比での分散剤成分B(PVP)の比率が約25:1~1:25程度になったとき、他の比率に比べて粘度がはるかに低いことを確認することができる。その中でも、19:1~1:19の範囲内にあるとき、最も低いことがわかる。実施例12~実施例17及び比較例3~比較例5を参照すると、PVP(B)をPVA(B)、PAA(B)、PAM(B)に代替した場合も、19:1~1:19の範囲内で粘度が低い結果を見せ、範囲を外れた場合は粘度と粒度が上昇した。前記PAA、PVA及びPAMをCMCと共に使用した場合も、優れた結果を確認することができるが、同じ高圧分散パス(Pass)数である場合、粘度及び粒度D50でPVPのほうがより優れていることを確認することができる。
【0086】
【表3】
【0087】
【表4】
【0088】
表3及び表4において分散剤比率は、CNT対比での分散剤(すなわち、CMC+PVP)の比率(%)を意味する。実施例2と実施例18~実施例25を参照すると、分散剤の比率がCNTに対して約20~150%または約50~100%であるとき、低い粘度数値を示すことが分かる。また、0.1以下の低いD50粒度(μm)を有することを確認した。導電材プレ分散スラリーにおいて、CNT、分散剤成分A(CMC)、分散剤成分B(PVP)及び溶媒の好ましい比率(または最適の比率)が存在し得る。
【0089】
追加の実施例及び比較例によるサンプルの配合条件及び評価結果は、下記の表5~表12の通りである。表5及び表6で使用したCMCはCMC1であり、前記CMC1の重量平均分子量(Mw)は50,000~120,000g/molである。表7及び表8で使用したCMCは、CMC1とエステル化度のみが異なるCMCを使用した。表9及び表10で使用したCMCはCMC2~CMC4であり、前記CMC2の重量平均分子量(Mw)は200,000~450,000g/molであり、CMC3の重量平均分子量(Mw)は700,000~1,000,000g/mol、CMC4の重量平均分子量(Mw)は1,500,000~2,300,000g/molである。
【0090】
【表5】
【0091】
【表6】
【0092】
【表7】
【0093】
【表8】
【0094】
【表9】
【0095】
【表10】
【0096】
【表11】
【0097】
【表12】
【0098】
表5及び表6の実施例26及び実施例27を参照すると、CNTの含有量が6wt%である場合、粘度3,000cPとD50粒度0.1μmを満足するが、CNTの含有量が7wt%である場合、粘度と粒度が大きく上昇することがわかる。
【0099】
表7及び表8の実施例28を参照すると、エステル化度が1.0~1.5であるCMCを使用したとき、粘度と粒度が高く測定されたことがわかる。表9及び表10の実施例29~実施例31を参照すると、CMCの分子量に応じるCNT分散液の結果を見ることができる。使用するCMCの重量平均分子量(Mw)が所定レベルを超えて増加する場合、D50粒度値が過度に増加するという問題が生じる可能性がある。
【0100】
表11及び表12の実施例32~実施例34を参照すると、CNTの直径に応じる分散液の結果を確認することができる。CNTの直径が4nmよりも小さい場合、粘度と粒度が非常に大きく上昇してしまい、高含有量のCNT分散液の製造が困難である。一方、CNTの直径が12nmよりも大きい場合、粘度の低い分散液を製造するには容易であるが、シート抵抗成分が大きく上がってしまい、二次電池の導電材としての役割を果たせない可能性もあることが確認される。
【0101】
以上で説明したような実施例に係る導電材プレ分散スラリーを所定の活物質及びバインダー(binder)などと混合して電極用スラリーを製造することができ、前記電極用スラリーを所定の基板上に塗布し、これに対する乾燥工程やアニーリング工程などを行って二次電池用電極(電極フィルム)を形成することができる。また、このような電極を適用した二次電池を製造することができる。
【0102】
図7は、本発明の一実施例に係るものであって、二次電池電極用導電材プレ分散スラリーを適用して製造された電極を備える二次電池を示す断面図である。
【0103】
図7を参照すると、本実施例に係る二次電池は、互いに離隔された正極(cathode)100と負極(anode)200、及びそれらの間にイオン移動のために備えられた電解質(electrolyte)150を含み得る。正極100と負極200との間には、それらを物理的に分離させながら電解質150の移動、あるいは、電解質150を介したイオンの移動は許容する分離膜(separator)170をさらに備え得る。場合によっては、分離膜170は備えられない場合もある。
【0104】
正極100は、所定の正極用電極材を含み得る。正極100は、正極活物質(cathode active material)と、第1バインダー(binder)及び第1導電材を含み得る。前記正極活物質と、第1バインダー及び第1導電材は、一つの正極活物質層を構成し得る。正極100は、前記正極活物質層に接合された正極集電体(cathode current collector)を備え得る。この場合、前記正極活物質層は、前記正極集電体と電解質150との間に配置され得る。
【0105】
負極200は、所定の負極用電極材を含み得る。負極200は、負極活物質(anode active material)と、第2バインダー及び第2導電材を含み得る。前記負極活物質と、第2バインダー及び第2導電材は、一つの負極活物質層を構成し得る。負極200は、前記負極活物質層に接合された負極集電体(anode current collector)を備え得る。この場合、前記負極活物質層は、前記負極集電体と電解質150との間に配置され得る。
【0106】
正極100及び負極200のうち少なくとも一方は、本発明の実施例に係る導電材プレ分散スラリーを適用して製造することができる。例えば、正極100及び負極200のうち少なくとも負極200は、本発明の実施例に係る導電材プレ分散スラリーを適用して製造することができる。本実施例に係る二次電池は、例えば、リチウム二次電池であり得るが、他の電池でもあり得る。
【0107】
以上で説明したように、本発明の実施例によれば、CNTを適用した導電材材料を開発するにあたり、CNTの損傷を防止/最小化しながらCNTを効果的に分散させられる技術/方法を具現化することができる。このような実施例によれば、CNT(導電材)の分散特性が向上した二次電池電極用導電材プレ分散スラリーを具現化することができる。特に、CNT(導電材)の含有量が比較的高いながらも、比較的低い粘度を有し、比較的簡単な工程で容易に製造できる二次電池電極用導電材プレ分散スラリーを具現化することができる。前記導電材プレ分散スラリーを適用して優れた性能を有する電極を製造でき、前記した電極を適用した二次電池を製造することができる。
【0108】
本明細書では、本発明の好ましい実施例について開示し、特定の用語を使用したものの、これは単に本発明の技術内容を容易に説明し、発明の理解を助けるための一般的な意味で使用されたものであって、本発明の範囲を限定しようとするものではない。ここに開示された実施例の他にも、本発明の技術的思想に基づいた他の変形例を実施することが可能であるということは、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者には明らかなことであろう。例えば、当該技術分野における通常の知識を有する者であれば、図1図7を参照して説明した実施例に係る二次電池電極用導電材プレ分散スラリーとその製造方法、及び導電材プレ分散スラリーを適用して製造された電極と前記電極を備えた二次電池は、多様に変形できることがわかるだろう。したがって、発明の範囲は、説明された実施例によって定められるべきではなく、特許請求の範囲に記載された技術的思想によって定められるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】