(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-18
(54)【発明の名称】骨粒子を掻き取って収集する外科用ツール
(51)【国際特許分類】
A61B 17/16 20060101AFI20240111BHJP
【FI】
A61B17/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023538939
(86)(22)【出願日】2022-01-04
(85)【翻訳文提出日】2023-06-23
(86)【国際出願番号】 IB2022050041
(87)【国際公開番号】W WO2022149060
(87)【国際公開日】2022-07-14
(31)【優先権主張番号】102021000000329
(32)【優先日】2021-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522107968
【氏名又は名称】メタ テクノロジーズ エス.アール.エル.
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】コッラード サヴェリオ パルミジャーニ
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160LL03
4C160LL21
(57)【要約】
骨粒子を掻き取り収集するための外科用ツール(10)であって、
- ハンドグリップ(21)を備えたハンドル(20)と、
- ハンドグリップ(21)に近接する基端および自由な先端を有する収集室(25)と、
- 収集室(25)内に少なくとも部分的に配置された軸部(30)と、
- 軸部(30)の前端(32)に固定されたブレード(40)であって、軸部(30)から半径方向に突出し、その先端近傍において収集室(25)の軸方向外側に配置されているブレード(40)および、
- ブレード(40)の後面(42)と収集室(25)の先端との間に配置されたスペーサ(50)であって、ブレード(40)によって掻き取られた骨粒子を収集室(25)に導くための通過口(500)を画定し、少なくともその周方向の一部において、ブレード(40)の後面(42)を、収集室(25)の先端から所定のゼロではない軸方向の距離に維持するスペーサとを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨粒子を掻き取り収集するための外科用ツール(10)であって、
- ハンドグリップ(21)を備えるハンドル(20)と、
- 前記ハンドグリップ(21)に近接する基端および自由な先端を有する収集室(25)と、
- 該収集室(25)内に少なくとも部分的に配置された軸部(30)と、
- 該軸部(30)の前端(32)に固定されたブレード(40)であって、前記軸部(30)から半径方向に突出し、前記先端近傍において前記収集室(25)の軸方向外側に配置されているブレード(40)と、
- 該ブレード(40)の後面(42)と前記収集室(25)の前記先端との間に配置されたスペーサ(50)であって、前記ブレード(40)によって掻き取られた骨粒子を前記収集室(25)に導くための通過口(500)を画定し、少なくともその周方向の一部において、前記ブレード(40)の後面(42)を、前記収集室(25)の前記先端から所定のゼロではない軸方向の距離に維持するスペーサとを備える外科用ツール(10)。
【請求項2】
前記スペーサ(50)が、前記ブレード(40)に堅固に固定され、前記ブレード(40)に面し、それに接触する1つの第1の面(51)と、前記収集室(25)の前記先端に面し、接触部(520)によって前記先端に接触することを意図した第2の面(52)とを備える請求項1に記載の外科用ツール(10)。
【請求項3】
前記スペーサ(50)が、
- 前記軸部(30)と同軸の中心孔(53)と、
- 前記第2の面(52)の前記接触部(520)を画定するように構成され、前記接触部(520)が前記収集室(25)の前記先端に接触するように構成された円形部分(54)および、前記収集室(25)の前記先端から半径方向に離れるように構成された凹部(55)を備える非対称な外周とを備える環状形状を有し、
前記通過口(500)が、軸方向には、前記ブレード(40)の掻き取りエッジ(410)の一部と、前記収集室(25)の前記先端の周方向部分とにより、周方向には、前記スペーサ(50)の前記凹部(55)によって画定されている請求項1または請求項2に記載の外科用ツール(10)。
【請求項4】
前記収集室(25)の前記先端が平坦であり、段差または溝を有しない請求項1に記載の外科用ツール(10)。
【請求項5】
前記収集室(25)が、単一の曲率を有する湾曲線に沿う湾曲した長手方向の延長部分を有し、前記通過口(500)が、前記収集室(25)の前記先端の外周領域に配置されている請求項1に記載の外科用ツール(10)。
【請求項6】
前記軸部(30)が、弾性変形可能である請求項1または請求項5に記載の外科用ツール(10)。
【請求項7】
前記軸部(30)が、弾性変形可能に細長い請求項1に記載の外科用ツール(10)。
【請求項8】
前記収集室(25)と前記軸部(30)とが、前記スペーサ(50)の前記第2の面(52)が、前記収集室(25)の前記先端に接触し、前記収集室が、前記スペーサ(50)によって画定される前記通過口(500)によってのみ外部からアクセス可能である前記収集室(25)の収集位置と、前記スペーサ(50)の前記第2の面(52)が、前記収集室(25)の前記先端よりも先端側にあり、前記収集室から解放される排出位置との間において、相互にスライド移動可能である請求項2に記載の外科用ツール(10)。
【請求項9】
前記軸部(30)と前記収集室(25)とを少なくともその前記収集位置において、一時的にロックするように構成されたロック要素(60)を備える請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の外科用ツール(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔顎顔面整形外科、形成外科、歯周外科、およびインプラント外科における骨組織の再建および再生除去技術、並びに骨形成技術に関する。
【0002】
より具体的には、本発明は、このような組織再生技術に使用することができる骨粒子、すなわち骨粒子または骨片/骨フレークを掻き取って収集するための外科用ツールに関する。
【背景技術】
【0003】
過去には、組織生物学的な再生ニーズに適した大きさの顆粒または粒子を得ることを目的として、骨格構造の様々な領域から骨材料を採取するためのツールが開発されてきた。
【0004】
これらのツールは、自家骨採取技術を高め、骨欠損を埋めるため、または骨格構造を増加させるために骨ポケットに挿入されるように適応した骨顆粒を得ることによって、採取された骨材料を処理することを可能にした。
【0005】
近年、骨を削ることによって粒子(骨片または削りカス)を除去し、収集するためのツールが市場に導入され、採取方法が改良されている。このツールは、前端に削り刃を有するハンドルと、除去した材料を収集するための収集室とを備える。
【0006】
これらの装置の中には、同じ出願人によるイタリア特許第1335975号に開示された装置も含まれている。
【0007】
当該分野において認識されるニーズは、骨片の掻き取りおよび収集において、このような装置をますます効果的かつ快適なものにすること、ならびに、このような装置をより簡単かつ安価に製造し、医療スタッフが費用を節約することができるようにすることである。
【0008】
本発明の目的は、先行技術のそのようなニーズを、簡単で合理的で費用対効果の高い解決策によって解決することである。
【0009】
これらの目的は、独立請求項に記載された本発明の特徴によって達成される。従属請求項は、本発明の好ましいおよび/または特に有利な態様を概説する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、特に、骨粒子を掻き取り収集するための外科用ツールであって、
- ハンドグリップを備えるハンドルと、
- ハンドグリップに近接する基端および自由な先端を有する収集室と、
- 収集室内に少なくとも部分的に配置された軸部と、
- 軸部の前端に固定されたブレードであって、軸部から半径方向に突出し、その先端近傍において収集室の軸方向外側に配置されているブレードと、
- ブレードの後面と収集室の先端との間に配置されたスペーサであって、ブレードによって掻き取られた骨粒子を収集室に導くための通過口を画定し、少なくともその周方向の一部において、ブレードの後面を、収集室の先端から所定のゼロでない軸方向の距離に維持するスペーサとを備える外科用ツールである。
【0011】
この解決策によって、収集室(すなわち、それを画定するカニューレ)が特別な加工や適合を必要とせず、簡単かつ迅速に作ることができるので、外科用ツールの構造、例えば、その通過口、およびその機能性は、既知の外科用ツールに比べて特に改善される。
【0012】
例えば、収集室の先端は、平坦で段差や切り欠きがないものとすることができ、より速く、より安く、より正確に製造することができる。
【0013】
有利には、スペーサは、ブレードに堅固に固定することができ、ブレードに面し、それに接触する第1の面と、収集室の先端に面し、接触部によって先端に接触することを意図した第2の面とを備える。
【0014】
この解決策により、スペーサとブレード(すなわち、それを支持する軸部)との間の結合は、簡単で建設的に合理的かつ効率的な方法で行うことができる。
【0015】
本発明の一態様によれば、スペーサは、軸部と同軸の中心孔と、第2の面の接触部を画定するように構成され、接触部が収集室の先端に接触するように構成された円形部分および、収集室の先端から半径方向に離れるように構成された凹部を備える非対称の外周とを備える環状形状を有していてもよく、通過口は、軸方向には、ブレードの掻き取りエッジの一部と、収集室の先端の周方向部分とにより、周方向には、スペーサの凹部によって画定されている。
【0016】
この解決策により、スペーサは、その主要な機能を可能な限り最良の方法で果たすように形成され、同時に、大規模生産に適した成形技術を使用して迅速かつ容易に製造することができる。
【0017】
有利には、収集室は、単一の曲率を有する湾曲線に沿う湾曲した長手方向の延長部分を有することができ、通過口は、収集室の先端の外周領域に配置されている。
【0018】
これにより、外科用ツールは、骨を削る動作を容易にするため、特に特定の使用状況において、より効果的であり、削られた骨から分離された骨片の収集において効率的であり、また骨片の採取を担当する者が快適に使用できるようになる。
【0019】
本発明の有利な態様によれば、軸部は、弾性変形可能であり得る。
【0020】
代替的にまたは追加的に、軸部は弾性的に伸長可能、すなわち細長くすることができる。
【0021】
この解決策により、軸部の弾性反応は、骨片に対するブレードの(衝撃的な)切断作用を改善し、骨からの骨片の剥離と収集室への収集を改善し、同時に、削られた骨片の剥離によって生じる副作用(裂傷、痛み、または外傷など)を低減するようになっている。
【0022】
好ましくは、収集室と軸部とが、スペーサの第2の面が、収集室の先端に接触し、収集室が、スペーサによって画定された通過口によってのみアクセス可能である収集室の収集位置と、スペーサの第2の面が、収集室の先端から先端側にあり、収集室から解放される排出位置との間において、相互にスライド移動可能とされる。
【0023】
この解決策により、骨片の収集および排出を、スタッフにとって容易かつ安全に行うことが可能となる。
【0024】
有利には、外科用ツールは、軸部と収集室とを少なくともその収集位置において、一時的にロックするように構成されたロック要素を備えることができる。
【0025】
この解決策により、軸部および収集室が収集位置にある外科用ツールが操作構成にあるとき、収集室が誤って開くことが防止され、したがって、収集された骨材料の損失または汚染の危険性を排除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本発明の更なる特徴および利点は、添付の図面を用いて非限定的な例として提供される以下の説明を読んだ後に、より明らかになるであろう。
【0027】
【
図1】本発明による外科用ツールの第1の実施形態の、収集位置にある縦断面図である。
【
図2】排出位置にある、
図1の外科用ツールの縦断面図である。
【
図3】収集位置にある、本発明による外科用ツールの第2の実施形態の縦断面図である。
【
図4】排出位置にある、
図3の外科用ツールの縦断面図である。
【
図5】本発明による外科用ツールのスペーサ要素の正面(後)図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
これらの図を特に参照すると、骨粒子、すなわち骨の削りかすまたは骨片/骨フレークを、例えば、手動で掻き集めるための外科用ツールは、全般に符号10により参照される。
【0029】
本開示において、用語「下」および「上」は、使用形態における外科用ツール10の位置を指して使用され、「下」は、削られるべき骨に面することを意味し、「上」は、削られるべき骨と反対側の部分に面することを意味する。
【0030】
さらに、本明細書では、ツールを保持する手に対する外科用ツール10の位置を指して、「前」または「先端」および「後」または「基端」という用語が使用されており、「前」または「先端」は使用者の手のひらから最も遠い位置にあることを意味し、「後」または「基端」は使用者の手のひらに最も近い位置にあることを意味している。
【0031】
外科用ツール10は、操作者によって(後部において)把持することができるハンドル20を備える。
【0032】
ハンドル20は、長手軸Aを備える細長い本体を有する。
【0033】
例えば、ハンドル20の対向する軸方向の両端は、開口している。
【0034】
ハンドル20は、後部において、操作者の片手によって保持されるように適合されたハンドグリップ21を構成し、反対側の先端は自由端である。
【0035】
ハンドグリップ21の基端は、ハンドル20の基端を画定する。
【0036】
ハンドル20はまた、カニューレ22を含んでおり、このカニューレは、前部においてハンドグリップ21に取り付けられている。
【0037】
カニューレ22は、ハンドグリップ21を軸方向に(前方向に)延長する。
【0038】
ハンドグリップ21の先端は、ハンドル20の先端を画定する。
【0039】
カニューレ22は、特に、ハンドグリップ21の先端に、例えばスナップ嵌めまたはねじ込みまたは溶接などによって固定された基端と、反対側の自由な先端とを有する。
【0040】
カニューレ22は、例えば、その長手方向全体にわたって一定の(長手軸Aに直交する)横断面を有する。
【0041】
例えば、カニューレ22は、実質的に円筒形である内室220を有する(用語「円筒形」は、その横断面が、示された好ましい実施例のように円形であっても、他の任意の形状であってもよいことを意味する)。
【0042】
カニューレ22の内室220は、例えばカニューレ22の内室220と同じ形状およびサイズを有するハンドグリップ21の内腔210から後方方向に軸方向に延長されている。
【0043】
実際には、ハンドル20は、ハンドグリップ21の内腔210とカニューレ22の内室220が接合することによって形成される軸方向空洞を有する中空の構造を全体として画定する。
【0044】
図示の例では、カニューレ22とハンドグリップ21は2つの別個の本体で作られているが、これらを単一の本体として作成することができることを除外するものではない。
【0045】
図1および
図2に示す第1の実施形態では、カニューレ22は、カニューレそれ自体の基端に近接し(そしてその後部で終わる)、直線状(同軸)の長手軸を有する直線部と、カニューレ22の先端に近接する(そこからゼロではない距離にある)、(例えば円周の弧に従って)曲がった長手軸を有する曲線部とを備える。
【0046】
そのような第1の実施形態では、カニューレ22はまた、カニューレ自体の先端に近接し(そしてその前部で終端する)、前記直線部の長手軸に対して、実質的に20°と40°との間、例えば27°に等しい角度で、(上部で)傾けられた直線状(同軸)の長手軸を有するさらなる直線部を有する。
【0047】
実際には、カニューレ22の曲線部は、直線部とさらなる直線部との間に軸方向に介在している。
【0048】
例えば、カニューレ22の曲率は、カニューレ22の先端の上部で湾曲するように、すなわち、上部内弧面(upper intrados)および下部外弧面(lower extrados)を有する
【0049】
図3および
図4に示す第2の実施形態では、カニューレ22は、(完全に)直線状の長手軸を有する。
【0050】
カニューレ22の先端、すなわちハンドル20の先端は、(完全に)平坦である(また、段差または溝を有しない)。
【0051】
カニューレ22は、その先端近傍に画定される収集室25を内部に画定する。
【0052】
特に、カニューレ22の先端は、収集室25の先端と一致している。
【0053】
収集室25は、カニューレ22の内室220の先端によって内部に画定され、すなわち、それは、カニューレ22(の周壁)によって周囲に画定され、前部ではカニューレ22自体の先端によって画定される。
【0054】
収集室25は、以下により詳しく説明されるように、可変の容積を有し、例えば、先端に対して(軸方向に)移動可能である基端を有する。
【0055】
外科用ツール10は、軸部30をさらに備え、この軸部は、少なくとも部分的に、ハンドル20、すなわちハンドグリップ21および/またはカニューレ22の内側に収容される。
【0056】
軸部30は、長手軸Bに沿った細長い本体によって画定され、ハンドル20の内側(すなわち、ハンドグリップ21および/またはカニューレ22の内側)に軸方向に挿入される。
【0057】
軸部30は、例えば、ハンドル20の、すなわちハンドグリップ21の基(開放)端から突出する後端31と、ハンドルの、すなわちカニューレ22の先端の近くに配置された反対側の前端32とを有する。
【0058】
軸部30は、その前端32を備える少なくとも1つの前端トラクト(front end tract)からなり、この前端トラクトは、十分な半径方向のクリアランスを有して、収集室25内に収容されるよう適合されている。
【0059】
収集室25は、実際には、カニューレ22(その内壁)と軸部30(その前端トラクトの外壁)との間に介在するカニューレ22の内室220の半径方向部分によって画定される。
【0060】
軸部30は、さらに、拡張した後方トラクト(rear tract)を有し、この後方トラクトは、ハンドル20の(ハンドグリップ21の)後部において外部に画定され、後端31を備えるグリップ部(ここでも)で後部において終端している。
【0061】
軸部30のグリップ部は、例えば、ユーザが把持しやすいように人間工学的に形成されている。
【0062】
軸部30の拡張した後方トラクトは、ハンドグリップ21の内腔210(および/またはカニューレ22の内室220の少なくとも1つの軸方向トラクト)内に正確に半径方向に受容される。
【0063】
軸部30の前端トラクトには、シャッタ円板33があり、このシャッタ円板は、カニューレ22の内室220内に正確に収容され、(後部で)収集室25を閉塞するようになっている。
【0064】
実際には、収集室25は、カニューレ22(の内壁)によって周囲/半径方向に、また軸部30のシャッタ円板33によって後部で画定され、一方、カニューレ22の(すなわちハンドル20の)先端において前部で開放されている。
【0065】
軸部30、例えば少なくともまたはその前端トラクト(シャッタ円板33を除く)のみは、弾性的に柔軟(弾力的)であり、すなわち、塑性変形することなく、曲げ変形し、独立して、その変形していない構成に弾性的に戻るように構成される。
【0066】
例えば、軸部30、すなわちその前端トラクト(シャッタ円板33を除く)のみが、1500MPa以上4500MPa以下、好ましくは2600MPa以下の曲げ剛性(曲げ弾性率)を有する。
【0067】
ここでも、軸部30、例えば、少なくともまたはその前端トラクト(シャッタ円板33を除く)のみは、弾性的に延伸可能(好ましくは伸長可能)であり、すなわち、塑性変形されることなく引張変形し、独立して、その変形していない構成に弾性的に戻るように構成される。
【0068】
例えば、軸部30、すなわちその前端トラクト(シャッタ円板33を除く)のみが、ヤング率とも呼ばれる弾性(引張)率を2000MPa以上5000MPa以下、好ましくは3000MPaとする。
【0069】
軸部30(好ましくは一体型)は、例えばプラスチック材料で作られている。
【0070】
外科用ツール10は、例えば骨粒子、または骨片/骨フレークの形態の骨粒子を掻き取るように構成されたブレード40をさらに備える。
【0071】
ブレード40は、軸部30によって、その前端31の近傍で支持されている。
【0072】
ブレード40は、それが受ける削り取り動作中に共振しないような剛性(高い、すなわち骨の剛性よりも大きい)を有する。
【0073】
ブレード40は、一般に金属製であり、好ましくはステンレス鋼製である。
【0074】
例えば、ブレード40は、軸部30の前端32に、好ましくは分離されずに取り付けられる。
【0075】
ブレード40は、ハンドル20(すなわち、そのカニューレ22)の外側に配置される。
【0076】
実際には、ブレード40は、ハンドル20の(カニューレ22の)先端の前部に配置される。
【0077】
ブレード40は、例えば、収集室25の幅と実質的に同じ幅を有する半径方向トラクト(radial tract)によって、軸部30から半径方向に突出する。
【0078】
ブレード40は、例えば下方を向いた、鋭利な(半径方向の)掻き取りエッジ410を備えるキャップ41を備える。
【0079】
掻き取りエッジ410(全体的に)は、周方向に長手方向に延びる延伸部を有する。
【0080】
掻き取りエッジ410は、ブレード40の(使用時の)自由なエッジであり、すなわち、ハンドル20から(軸方向または半径方向に)突出しているか、さもなければ、それまたは外科用ツール10の他の要素と接触しておらず、好ましくはハンドル20に対して下方を向いている。
【0081】
図1および
図2に示す実施形態では、掻き取りエッジ410は、カニューレ22が想定する曲率の外弧面から半径方向外側に配置される。
【0082】
ブレード40は、後方に(すなわち、ハンドル20および/またはカニューレ22の先端に向かって)向いた、実質的に平坦な後面(または掻き取り面)42を含んでいる。
【0083】
後面42は、軸部30の長手軸B、または少なくともブレード40が取り付けられるその基端に近接するそのトラクトに実質的に直交している。
【0084】
ブレード40は、キャップ41から(それと一体に)、例えばその後面42から、その軸が後面42に直交するように導出される、例えば円筒形または角柱形の締結タン(fastening tang)43をさらに備えている。
【0085】
締結タン43は、例えば軸部30の前端に、移動の可能性なくその上にしっかりと係止されたまま、強固に固定されるように構成されている。
【0086】
例えば、軸部30は、軸部30の前端に嵌め込まれて例えば圧着によってその上に締結される後端と、締結タン43に嵌め込まれて例えば圧着によってその上に締結される前端とを有する締結管34を含む。
【0087】
外科用ツール10は、スペーサ50をさらに備え、このスペーサ50は、ブレード40の後面42と収集室25の(すなわちカニューレ22の)先端との間に介在されるように構成されている。
【0088】
スペーサ50は、ブレード40およびカニューレ22から(および/または収集室25から)分離された本体に作られている。
【0089】
好ましくは、これに限定されないが、スペーサ50は、軸部30(および/またはブレード40)にしっかりと固定されている。
【0090】
図示の例では、スペーサ50は、例えば、(締結管34および/または軸部30の端部を介在させて)締結タン43に嵌め込まれて、ブレード40に堅固に締結されている。
【0091】
スペーサ50は、全体的には、収集室25の先端を部分的に閉塞するようになっており、ブレード40によって掻き取られた骨粒子を収集室25に導くための下部通過口500を残す(開いた状態のみ)ようになっている。
【0092】
このような通過口500は、スペーサ50の少なくとも下部周方向トラクトについて、ブレード40の後面42の下部(掻き取りエッジ410を備える)を収集室25の先端(の下部)から距離を保つことによって得られる。
【0093】
スペーサ50は、ブレード40に面し、その後面42に接触する第1の(前)面51と、収集室25(およびカニューレ22)の先端に面する反対側の第2の面52とを備え、そのうちの上部周方向接触部520(その周方向全周よりも小さい)がそれに接触するように意図される。
【0094】
実際には、接触部520は、後者を(上部で)閉じることによって、収集室25の先端に接触するように構成される(以下により詳細に説明される)。
【0095】
スペーサ50は、基本的に襟のような形状をしている。
【0096】
好ましくは、スペーサ50は、
図5に概略的に示すように、ブレード40の軸部および/または締結タン43と同軸の中心孔53と、第2の面52の前述の接触部520を後部で画定するように構成された上部円形部分54を備える非対称な外周とからなる環状形状を有する。
【0097】
スペーサ50の外周は、さらに、円形部分54の半径方向寸法よりも小さい半径方向寸法を有する(下部)凹部55を備え、これは、(円形部分54に画定された接触部520が収集室25の先端自体に接触するとき)収集室25の先端から半径方向に離れるように構成されている。
【0098】
通過口500は、実際には、
- 軸方向において、前部では、ブレード40の掻き取りエッジ410の(下)部分によって、後部では、収集室25の先端の周方向の(下)部分(ブレード40の掻き取りエッジ410に面し、そこからゼロではない距離で)によって、および
-スペーサ50の凹部55によって、円周方向に、画定されている。
【0099】
通過口500の軸方向の幅は、実質的に、スペーサ50の(円形部分54、すなわちその接触部520の)軸方向の厚さに等しい。
【0100】
通過口500の周方向の幅は、凹部55の(角度)幅と実質的に等しい。
【0101】
前述の代替として、スペーサが、ゼロでない所定の周方向距離で相互に配置され、それらが取り囲む軸部30(および/または締結タン43および/または締結管34)の部分の直径よりも小さい2つの反対側の周方向端部を有する円弧状で設けられていてもよく、ここで、通過口500は、ブレード40の掻き取りエッジ410の下部(前部)と、掻き取りエッジ410に面する収集室25の先端の周方向部分(後方)とによって軸方向に、またスペーサ50の周方向端部によって周方向にも画定される。
【0102】
スペーサ50は、その第2の面52から軸方向に突出する内側タン56をさらに備え、この内側タンは、少なくとも部分的に(すなわち好ましくは上部のみ)、締結タン43および/または締結管34および/または軸部30の(上部)部分を取り囲むように構成される。
【0103】
内側タン56の最大半径方向寸法は、スペーサ50の第2の面52が(その接触部520によって)収集室25自体の先端と接触しているときに、収集室25の内部で(十分大きな半径方向のクリアランスをもって)そこに挿入されるように、収集室25の内径よりも(かなり)小さいものである。
【0104】
内側タン56は、例えば、自由な後端から第2の面52に結合する後端まで増加する半径方向の厚さを有し、ガイドランプを画定する。
【0105】
例えば、スペーサ50は、実質的に剛性(非変形性)であり、例えば、プラスチックまたは金属製である。
【0106】
好ましくは、収集室25、すなわちハンドル20、および軸部30は、軸方向のスライドにおいて、交互に以下の間で相互に移動可能である:
- 収集室25の収集位置であって、スペーサ50の第2の面52が収集室25の先端に(その接触部520で)接触しており、収集室25がスペーサ50によって画定された通過口500を通してのみアクセス可能(すなわち、外部に開放)である位置と
- 排出位置であって、スペーサ50の第2の面52(およびその接触部520も)が、これを解放することによって収集室25の先端から遠ざかり、すなわちそれを軸方向に(その自由端で)開き、すなわち収集室25および軸部30が収集位置にあるときのその開口面積に対して増加する位置。
【0107】
好ましくは、軸部30は、プリズムタイプの接続によって、ハンドル20内で摺動可能に移動可能である(すなわち、軸方向の回転の可能性がない)。
【0108】
上述のように、収集室25は可変容積を有し、すなわち、軸部30および収集室25が収集位置にあるときに最大容積を有し、軸部30および収集室25が排出位置にあるときに最小容積を有している。
【0109】
実際には、軸部30および収集室25が収集位置にあるとき、シャッタ円板33は、収集室25の先端から最大のゼロでない距離、例えばカニューレ22の内径よりも大きい(2倍または3倍の場合もある)距離に置かれていて、軸部30および収集室25が排出位置にあるとき、シャッタ円板33は、収集室25の先端から最小距離(最大距離より小さい距離)に配置され、例えばそのような最小距離は実質的にゼロであるか、またはいかなる場合でもカニューレ22の内径よりも小さい。
【0110】
実際には、(収集室25の基端を画定する)シャッタ円板33は、軸部30および収集室25が収集位置から排出位置に移動させられたときに、収集室に収集された骨片を排出するためのプランジャとして機能するようになっており、骨片を、それらが排出される収集室25の先端(ブレード40によって作動する閉鎖から解放された)に向かって押し戻す作用を作動させるようになっている。
【0111】
軸部30および収集室25がその排出位置から収集位置にもたらされるとき、スペーサ50の内側タン56は、特に
図1および2に示す実施形態では、スペーサ50をその正しい位置に持っていくためのガイドランプ(収集室の先端に対して這い上がる)として働き、この時スペーサ50の第2の面52は、通過口500だけを開いたまま収集室25の先端と(その接触部520で)接触している。
【0112】
外科用ツール10は、ロック要素60をさらに備え、このロック要素は、軸部30と収集室25とを少なくともそれらの収集位置で一時的および/または取り外し可能に相互にロックするように構成されている。
【0113】
ロック要素60は、軸部30と収集室25を収集位置と排出位置で選択的に相互にロックするように構成されていてもよいことは排除されない。
【0114】
ロック要素60は、例えば、軸部30の後端31に(回転可能に)付随するハープン(harpoon)からなり、このハープンは、軸部30の(後端31に)作られた座部の係合位置とその解除位置との間で移動可能である。
【0115】
軸部30および収集室25がその収集位置にあるとき、座部はハンドル20の外側(後部)に配置され、ロック要素60によって係合可能または係合解除可能である。
【0116】
ロック要素60が係合位置にあるとき(および軸部30と収集室25がその収集位置にあるとき)、ロック要素60は、軸部30と収集室25の間のあらゆるスライド移動を防止する(ハンドル20の後端に対して付勢する)。
【0117】
ロック要素60が係合位置にあるとき、ロック要素60は、軸部30と収集室25との間のスライド移動を可能にし、それらが排出位置に到達することを可能にする。
【0118】
以上を踏まえて、外科用ツール10の動作は以下の通りである。
【0119】
軸部30および収集室25がそれらの収集位置にある外科用ツール10は、骨粒子(骨片または削りカスの形態)を得るために使用され、それらが属する骨からいったん分離されたそれらを収集室25内に収集するように構成される。
【0120】
この操作を行うには、外科用ツール10のハンドグリップ21を持ち、ブレード40の掻き取りエッジ410を骨の外面に接触するように導けば十分である。
【0121】
図1および
図2に示す実施形態に図示されるように、外科用ツール10は湾曲したカニューレ22を有するので、ハンドグリップ21と骨との間の相対位置は、掻き取り領域への到達および掻き取り操作自体をさらに容易にする。
【0122】
骨粒子を掻き取るためには、ブレードの掻き取りエッジ410を掻き取るべき骨の表面に接触させた状態で、ブレード40からハンドグリップ21に向かう方向においてブレード40の後面42に直交する方向、すなわち後方(直線)方向に掻き取ることで十分である。
【0123】
ブレード40によって生成された骨粒子は、(ブレード自体の後面42から)スペーサ50によって画定された通過口500を介して収集室25に押し込まれる。
【0124】
この掻き取り動作の間、さらに、軸部30は、(骨によって及ぼされるコンストレイント反応によって)曲げのストレスを受け、(軸部30の曲げ弾性とは対照的に)上方に曲がる(このような曲げは、しかしながら、例えば、カニューレ22の内壁が内側タン56に対して及ぼすフィードバックによって制限される)。
【0125】
代替的にまたは追加的に、そのような掻き取り動作の間、軸部30は(骨によって及ぼされる拘束反応によって)引張応力を受け、(軸部自体の軸方向の弾性とは対照的に)軸方向に伸びる(スペーサ50の第2の面52を収集室25の先端から剥離する傾向にある)。
【0126】
骨の拘束反応が、操作者による引張作用および/または軸部30による弾性反応(屈曲および/または軸方向)によって克服されると、骨粒子は、(ブレード40の掻き取りエッジ410による)例えば剪断作用によって骨から分離し、それが貯蔵されている収集室25に入るようにさせられる。
【0127】
実際には、軸部30の曲げおよび/または軸方向の弾性は、(ブレード40の)掻き取りエッジ410が掻き取られた骨からの骨粒子の剥離を促進することを可能にする衝撃的な剪断力を生じさせるようになっていることが確認されている。
【0128】
所望の量の骨粒子が、例えば、数回の連続した掻き取り動作によって-上述したように-収集されると、操作者は、収集した骨粒子を収集室25に、例えば適切な収集容器に排出してもよい。
【0129】
そのためには、軸部30および収集室25を排出位置に持っていき、収集された骨粒子を、ブレード40から外れた収集室25の先端部を通過させれば十分である。
【0130】
このようにして考え出された本発明は、いくつかの修正および変形が可能であり、すべてが本発明の概念の範囲内にある。
【0131】
さらに、すべての細部は、他の技術的に同等の要素で置き換えることができる。
【0132】
実際には、使用される材料、および付随する形状やサイズは、以下の請求項の保護範囲から逸脱することなく、要件に応じて何でも可能である。
【国際調査報告】