(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-18
(54)【発明の名称】電気絶縁性コーティング用粉末
(51)【国際特許分類】
C09D 177/00 20060101AFI20240111BHJP
C09D 5/03 20060101ALI20240111BHJP
C09D 163/00 20060101ALI20240111BHJP
C08G 59/14 20060101ALI20240111BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20240111BHJP
C08L 77/00 20060101ALI20240111BHJP
H01B 3/30 20060101ALI20240111BHJP
H01B 3/40 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
C09D177/00
C09D5/03
C09D163/00
C08G59/14
C08L63/00 A
C08L77/00
H01B3/30 C
H01B3/40
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023538958
(86)(22)【出願日】2021-12-21
(85)【翻訳文提出日】2023-08-18
(86)【国際出願番号】 FR2021052411
(87)【国際公開番号】W WO2022136789
(87)【国際公開日】2022-06-30
(32)【優先日】2020-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】カレーラス, サンティアゴ
(72)【発明者】
【氏名】ローズ, ジャン-イヴ
【テーマコード(参考)】
4J002
4J036
4J038
5G305
【Fターム(参考)】
4J002CD002
4J002CL001
4J002GQ01
4J002HA09
4J036AD08
4J036CC01
4J036FB13
4J036KA05
4J038DB001
4J038DH001
4J038KA08
4J038MA02
4J038NA21
4J038PC02
5G305AA02
5G305AB01
5G305AB15
5G305AB40
5G305CA15
5G305CA20
(57)【要約】
本発明は、表面上に電気絶縁性コーティングを製造するための、少なくとも1つのポリアミドと少なくとも1つのエポキシ樹脂とを含む粉末の使用に関する。本発明はまた、そのような粉末を溶融することによって得ることができるコーティングで少なくとも部分的に覆われた電気伝送部品に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面の電気絶縁性コーティングを製造するための、少なくとも1つのポリアミドと少なくとも1つのエポキシ樹脂とを含む粉末の使用。
【請求項2】
粉末が、少なくとも1つのポリアミド及び少なくとも1つのエポキシ樹脂の総重量に対して、50~99.5重量%の少なくとも1つのポリアミド及び0.5~50重量%の少なくとも1つのエポキシ樹脂、好ましくは80~99重量%の少なくとも1つのポリアミド及び1~20重量%の少なくとも1つのエポキシ樹脂、さらにより優先的には95~99重量%の少なくとも1つのポリアミド及び1~5重量%の少なくとも1つのエポキシ樹脂を含む、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
エポキシ樹脂がスルホンアミドエポキシ樹脂である、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
ポリアミドが、ホモポリアミド、コポリアミド、及び/又はポリアミドブロック及びポリエーテルブロックを有する共重合体である、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
ポリアミドが、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6、ポリアミド10、ポリアミド6.10、ポリアミド6.12、ポリアミド6.14、ポリアミド6.18、ポリアミド10.10、ポリアミド10.12、ポリアミド10.14、PA 10.X/Y(式中、Xは10又は12であり、Yは11、12又は14である)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され、好ましくはポリアミドがポリアミド11である、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
粉末が、10~200μm、好ましくは20~100μm、より優先的には30~60μmの体積中位径Dv50を有するポリアミド粒子を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
粉末が、1~20μm、好ましくは2~10μm、より優先的には3~5μmの体積中位径Dv50を有するエポキシ樹脂粒子を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
粉末が、顔料又は染料、クレータ防止剤又は展着剤、還元剤、抗酸化剤、補強充填剤、UV安定剤、流動化剤及び腐食阻害剤からなる群から選択される1つ又は複数の添加剤も、好ましくは粉末の総重量に対して0~30重量%、より好ましくは0~10重量%、より優先的には0~5重量%の量で含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
電気絶縁性コーティングが、50~500μm、好ましくは80~200μmの厚さを有するフィルムである、請求項1~8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
表面が金属表面、好ましくは電気伝送部品の表面、より優先的にはバスバーの表面である、請求項1~9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
少なくとも1つのポリアミド及び少なくとも1つのエポキシ樹脂を含む粉末を溶融することによって得ることができるコーティングで少なくとも部分的に覆われた電気伝送部品。
【請求項12】
バスバーである、請求項11に記載の電気伝送部品。
【請求項13】
粉末が、請求項2~8のいずれか一項に記載のものである、請求項11又は12に記載の電気伝送部品。
【請求項14】
コーティングが、50~500μm、好ましくは80~200μmの厚さを有するフィルムである、請求項11~13のいずれか一項に記載の電気伝送部品。
【請求項15】
電気伝送部品の表面をコーティングする方法であって、
任意に、表面にマスクを適用する工程、
表面を請求項1~8のいずれか一項に記載の粉末と接触させる工程、
粉末を溶融する工程
を含む方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法であって、表面を粉末と接触させる工程が、
粉末を帯電させる工程、
帯電した粉末を表面上に噴霧する工程、
粉末コーティングされた表面を、ポリアミドの融点より高くエポキシ樹脂の融点より高い温度まで、好ましくはポリアミドの融点より少なくとも30℃高くエポキシ樹脂の融点より高い温度まで加熱する工程
を含む方法。
【請求項17】
少なくとも1つのポリアミド及び少なくとも1つのエポキシ樹脂を含む粉末で表面をコーティングすることを含む、表面の電気絶縁性コーティングを製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気絶縁性コーティングの形成に使用される粉末に関し、また、そのようなコーティングで被覆された電気伝送部品に関する。
【背景技術】
【0002】
電力及び蓄電市場は、人口増加、発展途上国の工業化、及び最近では電気自動車の増加により、年々非常に著しい成長を経験している。
【0003】
例えばバスバーなどの特定の数の構成要素は、電気的に絶縁されなければならない。エポキシ樹脂粉末は、電気絶縁性コーティングの形成に広く使用されている。しかしながら、そのような粉末の使用には欠点がある。実際、これらの粉末は可撓性が低く、コーティングを劣化させることなく、コーティング後に複雑な形状の部品を機械加工することが困難になる。さらに、これらのエポキシ樹脂粉末から得られるコーティングは、通常、かなりの厚さを有し、これは、コーティングされた物体の断熱をもたらし、したがって、熱の放出を制限する。これは、過熱の問題を引き起こす可能性がある。
【0004】
文献、欧州特許第0368543号は、基質、特にバスバーの表面をコーティングする方法を記載しており、基質は、加熱された基質と接触するとゲル化するマスキング組成物によってマスクされ、次いで、樹脂粉末が、基質表面のマスクされていない部分に堆積される。粉末の樹脂は、熱可塑性樹脂、例えばポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、可塑化ポリ塩化ビニル樹脂若しくはポリオレフィン樹脂、又は熱硬化性樹脂、例えばエポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ-ポリエステルハイブリッド樹脂若しくはアクリル樹脂であり得る。
【0005】
文献、国際公開第2011/092444号及び国際公開第2020/084252号は、それぞれ、ポリアミド及びポリプロピレングリコールを含むコーティング粉末、並びに160℃以下の融点を有するコポリアミドを含むコーティング粉末に関する。これらの文献はいずれも電気絶縁特性について言及していない。
【0006】
文献、国際公開第2020/242272号は、500μmを超える厚さの絶縁及び放熱プラスチック部品によって囲まれ、高い熱伝導率を有する樹脂及び充填剤を含むバスバーに関する。エポキシ樹脂を含むプライマー又は接着層の層が、プラスチック部品とバスバーとの間に存在してもよい。
【0007】
良好な電気絶縁特性及び良好な機械的特性を有し、低い断熱性を有し得る表面上のコーティングの形成を可能にする粉末を提供することが実際に必要とされている。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、第一に、表面の電気絶縁性コーティングを製造するための、少なくとも1つのポリアミドと少なくとも1つのエポキシ樹脂とを含む粉末の使用に関する。
【0009】
実施形態において、粉末は、少なくとも1つのポリアミド及び少なくとも1つのエポキシ樹脂の総重量に対して、50~99.5重量%の少なくとも1つのポリアミド及び0.5~50重量%の少なくとも1つのエポキシ樹脂、好ましくは80~99重量%の少なくとも1つのポリアミド及び1~20重量%の少なくとも1つのエポキシ樹脂、さらにより優先的には95~99重量%の少なくとも1つのポリアミド及び1~5重量%の少なくとも1つのエポキシ樹脂を含む。
【0010】
実施形態において、エポキシ樹脂は、スルホンアミドエポキシ樹脂である。
【0011】
実施形態において、ポリアミドは、ホモポリアミド、コポリアミド、及び/又はポリアミドブロック及びポリエーテルブロックを有する共重合体である。
【0012】
実施形態において、ポリアミドは、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6、ポリアミド10、ポリアミド6.10、ポリアミド6.12、ポリアミド6.14、ポリアミド6.18、ポリアミド10.10、ポリアミド10.12、ポリアミド10.14、PA 10.X/Y(式中、Xは10又は12であり、Yは11、12又は14である)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され、好ましくはポリアミドがポリアミド11である。
【0013】
実施形態において、粉末は、10~200μm、好ましくは20~100μm、より優先的には30~60μmの体積中位径Dv50を有するポリアミド粒子を含む。
【0014】
実施形態において、粉末は、1~20μm、好ましくは2~10μm、より優先的には3~5μmの体積中位径Dv50を有するエポキシ樹脂粒子を含む。
【0015】
実施形態において、粉末は、顔料又は染料、クレータ防止剤又は展着剤、還元剤、抗酸化剤、補強充填剤、UV安定剤、流動化剤及び腐食阻害剤からなる群から選択される1つ又は複数の添加剤も、好ましくは粉末の総重量に対して0~30重量%、より好ましくは0~10重量%、より優先的には0~5重量%の量で含む。
【0016】
実施形態において、電気絶縁性コーティングは、50~500μm、好ましくは80~200μmの厚さを有するフィルムである。
【0017】
実施形態において、表面は、金属表面、好ましくは電気伝送部品の表面、より優先的にはバスバーの表面である。
【0018】
本発明はまた、少なくとも1つのポリアミド及び少なくとも1つのエポキシ樹脂を含む粉末を溶融することによって得ることができるコーティングで少なくとも部分的に覆われた電気伝送部品に関する。
【0019】
実施形態において、電気伝送部品はバスバーである。
【0020】
実施形態において、粉末は上記の通りである。
【0021】
実施形態において、電気伝送部品のコーティングは、50~500μm、好ましくは80~200μmの厚さを有するフィルムである。
【0022】
本発明はまた、電気伝送部品の表面をコーティングする方法であって、
-任意に、表面にマスクを適用する工程、
-表面を上記に記載の粉末と接触させる工程、
-粉末を溶融する工程
を含む方法に関する。
【0023】
実施形態において、表面を粉末と接触させる工程は、
-粉末を帯電させる工程、
-帯電した粉末を表面上に噴霧する工程、
-粉末コーティングされた表面を、ポリアミドの融点より高くエポキシ樹脂の融点より高い温度まで、好ましくはポリアミドの融点より少なくとも30℃高くエポキシ樹脂の融点より高い温度まで加熱する工程
を含む。
【0024】
本発明は、上記の必要性を満たすことを可能にする。より詳細には、表面コーティングの製造に使用することができ、前記表面の改善された電気絶縁を可能にすると同時に、比較的低い断熱を維持することができ、したがってコーティングされた物体の過熱のリスクを低減することができる粉末を提供する。さらに、本発明による粉末を用いて得られたコーティングは、以下の利点を有することができる:非常に良好な耐衝撃性を有する;低温(例えば、0℃)で延性である;良好な可撓性を有し、コーティングされた部品の(変形、切断などによる)容易な機械加工を可能にする;金属表面への良好な接着性を有する。
【0025】
これは、少なくとも1つのポリアミドと少なくとも1つのエポキシ樹脂との組み合わせを使用することによって達成される。この組み合わせは、厚さが小さくても非常に良好な電気絶縁性を有するコーティングを得ることを可能にする。コーティングの厚さが小さいことは、断熱性を制限するという利点を有し、したがって、特にバスバーなどの電気伝送部品に関して、コーティングによって覆われた部品の過熱のリスクを有する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、以下の説明において、非限定的に、より詳細に説明される。
【0027】
別途指示がない限り、全てのパーセンテージ及び割合は質量パーセンテージ及び割合である。
【0028】
第1の態様によれば、本発明は、表面の電気絶縁性コーティングを製造するための粉末の使用に関する。
【0029】
「電気絶縁性コーティング」という用語は、コーティングが30kV/mm以上の絶縁耐力を有することを意味するように意図されている。コーティングの絶縁耐力は、規格IEC 60243-1に従って測定することができる。
【0030】
コーティング粉末
本発明による粉末は、少なくとも1つのポリアミド及び少なくとも1つのエポキシ樹脂を含む。
【0031】
ポリアミドは、ホモポリアミド及び/又はコポリアミドであり得る。それは、ポリアミドのみからなってもよく、又は例えばポリエーテルブロック、ポリエステルブロック、ポリシロキサンブロック、例えばポリジメチルシロキサン(又はPDMS)ブロック、ポリオレフィンブロック、ポリカーボネートブロック、及びそれらの混合物から選択される別の種類の1つ又は複数のブロックを含んでもよい。
【0032】
一実施形態によれば、ポリアミドは脂肪族及び直鎖である。
【0033】
1つの好ましい実施形態によれば、ポリアミドは半結晶性ポリアミドである。「半結晶性ポリアミド」という用語は、以下を有するポリアミドを意味することが意図される:
-規格ISO 11357-3:2013に従って、DSC(示差走査熱量測定)において20K/分の速度で冷却する工程の間に決定された結晶化温度(Ct);
-規格ISO 11357-3:2013に従って、DSCにおいて20K/分の速度で加熱する工程の間に決定された融点(Mp);及び
-規格ISO 11357-3:2013に従って、DSCにおいて20K/分の速度で加熱する工程の間に決定される融解エンタルピー(ΔHf)であって、5J/gより大きく、好ましくは10J/gより大きく、例えば20J/gより大きく、一般に200J/g未満、好ましくは150J/g未満である融解エンタルピー。
【0034】
好ましくは、本発明によるポリアミドは、脂肪族及び直鎖の半結晶性ポリアミドである。
【0035】
「ポリアミド」という用語は、以下から選択される1つ又は複数のモノマーの少なくとも1つの重合生成物を含むポリマーを意味することが意図される:
-アミノ酸又はアミノカルボン酸タイプ、好ましくはα、ω-アミノカルボン酸のモノマー;
-主環上に3~18個の炭素原子を含み、置換されていてもよいラクタム型のモノマー;
-2~36個の炭素原子、好ましくは4~18個の炭素原子を含む脂肪族ジアミンと、4~36個の炭素原子、好ましくは4~18個の炭素原子を含むカルボン二酸との間の反応から得られる「ジアミン.二酸」タイプのモノマー;及び
-アミノ酸型のモノマーとラクタム型のモノマーとの間の混合物の場合、異なる炭素数を含有するモノマーとのそれらの混合物。
【0036】
ポリアミドの本明細書における「モノマー」という用語は、「繰り返し単位」を意味すると解釈されるべきである。ポリアミド(PA)の繰り返し単位が、二酸とジアミンとの組み合わせからなる場合が特にそうであるからである。これは、ジアミンと二酸との組み合わせ、すなわちジアミン.二酸のペア(等モル量)であり、モノマーに対応すると考えられる。これは、個々に、二酸又はジアミンは構造単位にすぎず、単独では重合するのに十分ではないという事実によって説明される。
【0037】
ポリアミドがホモポリアミドである場合、単一モノマーの重合生成物を含む。ポリアミドがコポリアミドである場合、少なくとも2つの異なるモノマーの重合生成物を含む。上記の様々なタイプのモノマーから形成されたコポリアミドの例として、少なくとも2つのα,ω-アミノカルボン酸又は2つのラクタム又は1つのラクタムと1つのα,ω-アミノカルボン酸との縮合から生じるコポリアミドを挙げることができる。また、少なくとも1つのα,ω-アミノカルボン酸(又はラクタム)、少なくとも1つのジアミン及び少なくとも1つのジカルボン酸の縮合から生じるコポリアミドも挙げることができる。脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸との縮合から生じるコポリアミド、及び先行するもの以外の脂肪族ジアミン及び先行するもの以外の脂肪族二酸から選択される少なくとも1つの他のモノマーも挙げられ得る。
【0038】
アミノ酸型のモノマー:
α,ω-アミノ酸の例としては、アミノカプロン酸、7-アミノヘプタン酸、11-アミノウンデカン酸、N-ヘプチル-11-アミノウンデカン酸及び12-アミノドデカン酸などの4~18個の炭素原子を含むものが挙げられ得る。
【0039】
ラクタム型のモノマー:
ラクタムの例としては、主環に3~18個の炭素原子を含み、置換されていてもよいものが挙げられる。例えば、β,β-ジメチルプロピオラクタム、α,α-ジメチルプロピオラクタム、アミロラクタム、カプロラクタム(ラクタム6としても知られる)、カプリラクタム(ラクタム8としても知られる)、オナントラクタム及びラウリルラクタム(ラクタム12としても知られる)を挙げることができる。
【0040】
「ジアミン.二酸」型のモノマー:
ジカルボン酸の例として、4~36個の炭素原子を有する酸が挙げられ得る。例えば、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、スベリン酸、イソフタル酸、ブタン二酸、1,4-シクロヘキシルジカルボン酸、テレフタル酸、スルホイソフタル酸のナトリウム又はリチウム塩、二量体化脂肪酸(これらの二量体化脂肪酸は、少なくとも98重量%のダイマー含有量を有し、好ましくは水素化されている)、ドデカン二酸HOOC-(CH2)10-COOH、及びテトラデカン二酸、好ましくはアジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、スベリン酸、ブタン二酸、二量体化脂肪酸(これらの二量体化脂肪酸は、少なくとも98重量%のダイマー含有量を有し、好ましくは水素化されている)、ドデカン二酸HOOC-(CH2)10-COOH、及びテトラデカン二酸が挙げられ得る。
【0041】
用語「脂肪酸ダイマー」又は「二量体化脂肪酸」は、より具体的には、脂肪酸の二量体化反応の生成物(一般に18個の炭素原子を含有し、多くの場合オレイン酸及び/又はリノール酸の混合物を含有する)を意味すると理解される。好ましくは、0~15重量%のC18単酸、60%~99重量%のC36二酸、及び0.2%~35重量%の三酸又はポリ酸(C54以上)を含む混合物である。
【0042】
ジアミンの例としては、2~36個の原子、好ましくは4~18個の原子を有する脂肪族ジアミンが挙げられる。例として、ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン(「Pip」と略す)、アミノエチレンピペラジン、テトラメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、1,5-ジアミノヘキサン、2,2,4-トリメチル-1,6-ジアミノヘキサン、ポリオールジアミン、イソホロンジアミン(IPD)、メチルペンタメチレンジアミン(MPMD)、ビス(アミノシクロヘキシル)メタン(BACM)、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン(BMACM)、メタキシリレンジアミン、ビス(p-アミノシクロヘキシル)メタン、好ましくはヘキサメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、1,5-ジアミノヘキサン、2,2,4-トリメチル-1,6-ジアミノヘキサン、及びポリオールジアミンが挙げられ得る。
【0043】
「ジアミン.二酸」として、より具体的には、1,6-ヘキサメチレンジアミンと6~36個の炭素原子を有するジカルボン酸との縮合から生じるもの、及び1,10-デカメチレンジアミンと6~36個の炭素原子を有する二酸との縮合から生じるものが挙げられ得る。
【0044】
「ジアミン.二酸」型のモノマーの例として、モノマー:6.6、6.10、6.11、6.12、6.14及び6.18が特に挙げられ得る。デカンジアミンとC6~C36二酸との縮合から生じるモノマー、特にモノマー:10.10、10.12、10.14及び10.18が挙げられ得る。数字表記X.Yにおいて、Xは、従来と同様に、ジアミン残基に由来する炭素原子の数を表し、Yは、二酸残基に由来する炭素原子の数を表す。
【0045】
ポリアミドは、好ましくは、以下のモノマー:4.6、5.6、5.9、5.10、5.12、5.13、5.14、5.16、5.18、5.36、6、6.6、6.9、6.10、6.12、6.13、6.14、6.16、6.18、6.36、9、10.6、10.9、10.10、10.12、10.13、10.14、10.16、10.18、10.36、11、12、12.6、12.9、12.10、12.12、12.13、12.14、12.16、12.18、12.36、及びそれらの混合物の少なくとも1つを含む。
【0046】
本発明による粉末のポリアミドは、ポリアミドブロック(より熱可塑性の挙動を有する剛性又は硬質ブロック)及び軟質ブロック(又はより弾性的な挙動を有する可撓性ブロック)との共重合体であり得る。「軟質ブロック」とは、ガラス転移温度(Tg)が0°C以下のブロックを意味する。ガラス転移温度は、規格ISO 11357-2プラスチック-示差走査熱量測定(DSC)パート2に従って、示差走査熱量測定によって決定され得る。
【0047】
ブロック共重合体のポリアミドブロックは、上記のようなポリアミド(ホモポリアミド及び/又はコポリアミド)であり得る。
【0048】
本発明による共重合体の軟質ブロックは、特に、ポリエーテル(PE)ブロック、ポリエステルブロック、ポリシロキサンブロック、例えばポリジメチルシロキサン(又はPDMS)ブロック、ポリオレフィンブロック、ポリカーボネートブロック、及びそれらの混合物から選択することができる。可能な軟質ブロックは、例えば、仏国特許出願第2941700号の32ページ3行目から33ページ8行目、34ページ16行目から37ページ13行目、及び38ページ6行目から23行目に記載されている。
【0049】
好ましくは、軟質ブロックは、ポリエーテルブロック、ポリエステルブロック、及びそれらの組み合わせから選択される。
【0050】
特に有利には、軟質ブロックはポリエーテルブロックである。本発明による共重合体は、ポリアミドブロック及びポリエーテルブロック(又はPEBA)を含有する共重合体である。
【0051】
PEBAは、反応性末端基を含むポリアミドブロックと反応性末端基を含むポリエーテルブロックとの重縮合、特に、以下の重縮合から生じる:
1)ジアミン鎖末端を含むポリアミドブロックと、ジジカルボキシル鎖末端を含むポリオキシアルキレンブロック;
2)ジカルボキシル鎖末端を含むポリアミドブロックと、ジアミン鎖末端を含むポリオキシアルキレンブロック(例えば、ポリエーテルジオールとして知られる脂肪族α,ω-ジヒドロキシル化ポリオキシアルキレンブロックのシアノエチル化及び水素化によって得られる);
3)ジカルボキシル鎖末端を含むポリアミドブロックと、ポリエーテルジオール(得られる生成物は、この特定の場合、ポリエーテルエステルアミドである)。
【0052】
ジカルボキシル鎖末端を有するポリアミドブロックは、例えば、鎖制限ジカルボン酸の存在下でのポリアミド前駆体の縮合に由来する。ジアミン鎖末端を有するポリアミドブロックは、例えば、鎖制限ジアミンの存在下でのポリアミド前駆体の縮合に由来する。
【0053】
ポリエーテルブロックは、アルキレンオキシド単位からなる。
【0054】
ポリエーテルブロックは、特に、PEG(ポリエチレングリコール)ブロック、すなわちエチレンオキシド単位からなるブロック、及び/又はPPG(プロピレングリコール)ブロック、すなわちプロピレンオキシド単位からなるブロック、及び/又はPO3G(ポリトリメチレングリコール)ブロック、すなわちポリトリメチレングリコールエーテル単位からなるブロック、及び/又はPTMG(ポリテトラメチレングリコール)ブロック、すなわちポリテトラヒドロフランとしても知られるテトラメチレングリコール単位からなるブロックであり得る。共重合体は、その鎖中にいくつかのタイプのポリエーテルを含んでもよく、コポリエーテルは、ブロック又はランダム形態である可能性がある。
【0055】
例えばビスフェノールAなどのビスフェノール類のオキシエチル化によって得られるブロックを使用することもできる。後者の生成物は、特に文献、欧州特許第613919号に記載されている。
【0056】
ポリエーテルブロックは、エトキシル化第一級アミンからなっていてもよい。エトキシル化第一級アミンの例として、式:
[化1]
の生成物を挙げることができ、式中、m及びnは1~20の整数であり、xは8~18の整数である。これらの製品は、例えば、CECAからNoramox(登録商標)の商標名で、及びClariantからGenamin(登録商標)の商標名で市販されている。
【0057】
軟質ポリエーテルブロックは、NH2鎖末端を有するポリオキシアルキレンブロックを含んでもよく、そのようなブロックは、ポリエーテルジオールと呼ばれるα,ω-ジヒドロキシル化脂肪族ポリオキシアルキレンブロックのシアノアセチル化によって得ることができる。より具体的には、Jeffamine又はElastamine市販品を使用することができる(例えば、Huntsmanからの市販品であるJeffamine(登録商標)D400、D2000、ED2003又はXTJ 542は、文献、日本国特許第2004/346274号、日本国特許第2004/352794号及び欧州特許第1 482 011号にも記載されている)。
【0058】
ポリエーテルジオールブロックは、非修飾の形態で使用され、カルボキシル末端基を有する剛性ブロックと共縮合されるか、又はアミノ化されてポリエーテルジアミンに変換され、カルボキシル末端基を有する剛性ブロックと縮合される。
【0059】
PAブロックとPEブロックとの間にエステル結合を有するPEBA共重合体の二段階調製のための一般的な方法は公知であり、例えば、文献仏国特許第2846332号に記載されている。PAブロックとPEブロックとの間にアミド結合を有するPEBA共重合体を調製するための一般的な方法は公知であり、例えば欧州特許第1482011号に記載されている。ポリアミドブロック及びランダムに分配された単位を有するポリエーテルブロックを含有するポリマーを調製するために、ポリエーテルブロックをポリアミド前駆体及び二酸鎖リミッタと混合することもできる(一段階プロセス)。
【0060】
言うまでもなく、本発明の本明細書におけるPEBAという名称は、Arkemaから販売されているPebax(登録商標)製品、Evonik(登録商標)から販売されているVestamid(登録商標)製品及びEMSから販売されているGrilamid(登録商標)製品だけでなく、Sanyoから販売されているPelestat(登録商標)タイプPEBA製品又は他の供給業者からの任意の他のPEBAにも関連する。
【0061】
本発明は、単一のポリアミドブロック及び単一の軟質ブロックを含む共重合体だけでなく、本明細書に記載のブロックから選択される3つ、4つ(又はそれ以上)の異なるブロックを含む共重合体も包含するが、ただし、これらのブロックは少なくとも1つのポリアミドブロック及び1つの軟質ブロックを含むものとする。
【0062】
例えば、共重合体は、3つの異なる種類のブロックを含むセグメント化ブロック共重合体(又は「トリブロック」共重合体)であってもよく、これは上記のブロックのいくつかの縮合から生じる。前記トリブロックは、例えば、ポリアミドブロック、ポリエステルブロック及びポリエーテルブロックを含む共重合体、又はポリアミドブロック及び2つの異なるポリエーテルブロック、例えばPEGブロック及びPTMGブロックを含む共重合体であり得る。
【0063】
有利には、本発明で使用されるポリアミドは、以下のポリアミドである(又はポリアミドブロックを含む):PA 6、PA 10、PA 11、PA 12、PA 5.4、PA 5.9、PA 5.10、PA 5.12、PA 5.13、PA 5.14、PA 5.16、PA 5.18、PA 5.36、PA 6.4、PA 6.9、PA 6.10、PA 6.12、PA 6.13、PA 6.14、PA 6.16、PA 6.18、PA 6.36、PA 10.4、PA 10.9、PA 10.10、PA 10.12、PA 10.13、PA 10.14、PA 10.16、PA 10.18、PA 10.36、PA 12.4、PA 12.9、PA 12.10、PA 12.12、PA 12.13、PA 12.14、PA 12.16、PA 12.18、PA12.36、PA 6.6/6、PA 6.6/ 6.10/11/12、PA 10.10/11、PA 10.10/12、PA 10.10/14、PA 10.12/11、PA 10.12/12、PA 10.12/14、又はそれらの混合物若しくは共重合体。PA X表記において、Xは、アミノ酸残基又はラクタム残基に由来する炭素原子の数を表す。PA X/Y、PA X/Y/Zなどの表記は、X、Y、Zなどが上記のホモポリアミド単位を表すコポリアミドに関する。
【0064】
好ましくは、本発明によるポリアミドは、PA 11、PA 12、PA 6、PA 6.X1、PA 10、PA 10.X2、PA 10.X3/Y又はそれらの組み合わせから選択される。好ましくは、上記のリストから、X1は10、12、14又は18から選択される。好ましくは、上記のリストから、X2は10、12又は14から選択される。好ましくは、上記のリストから、X3は10又は12から選択される。好ましくは、上記のリストから、Yは11、12又は14から選択される。
【0065】
有利には、粉末のポリアミドは、1つ(又は複数)のホモポリアミドである。
【0066】
特に好ましくは、ポリアミドはポリアミド11である。
【0067】
ポリアミドは、有利には、0.5~1.5(g/100g)-1、好ましくは0.8~1.0(g/100g)-1の範囲の固有粘度を有することができる。固有粘度は、ウベローデ管を用いて測定される。測定は、m-クレゾール中0.5%(m/m)の濃度で75mgの試料について20℃で行う。固有粘度は、(g/100g)-1で表され、以下の式に従って計算される。
【0068】
固有粘度=ln(ts/t0)x1/C、C=m/p×100、式中、tsは溶液の流動時間、t0は溶媒の流動時間、mは粘度が決定された試料の質量、pは溶媒の質量である。この測定は、測定温度が25℃ではなく20℃であるという事実を除いて、規格ISO 307に対応する。
【0069】
好ましくは、粉末のポリアミド粒子の体積中位径Dv50は、10~200μm、より優先的には20~100μm、さらにより優先的には30~60μmである。例えば、組成物のポリアミド粒子のDv50は、10~20μm;又は20~30μm;又は30~40μm;又は40~50μm;又は50~60μm;又は60~80μm;又は80~100μm;又は100~120μm;又は120~150μm;又は150~200μmであり得る。
【0070】
Dv50は、累積粒径分布の50百分位(体積)における粒径に対応する。これは、規格ISO 9276-パート1~6に従って決定することができる。
【0071】
エポキシ樹脂は、好ましくは、電気伝送部品の金属表面に接着することを可能にする、1分子当たり平均で少なくとも1つの1,2-エポキシ基を含有する化合物又は化合物の混合物を示す。
【0072】
典型的には、1,2-エポキシ基は、グリシジルエーテル、グリシジルエステル又はグリシジルアミン中に存在する(-CH2CHOCH2)単位であり得る。
【0073】
エポキシ樹脂は、有利にはスルホンアミドエポキシ樹脂である。
【0074】
スルホンアミドエポキシ樹脂は、スルホンアミド化合物とエポキシ化合物とを反応させることにより得ることができる。スルホンアミド化合物は、例えば、ハロゲン化又は非ハロゲン化ベンゼンモノスルホンアミド誘導体、例えばベンゼンスルホンアミド、ニトロベンゼンスルホンアミド、オルト-、メタ-又はパラ-トルエンスルホンアミド、アミノアルキルベンゼンスルホンアミド、ナフタレン又はキシレンスルホンアミドから選択することができる。
【0075】
本発明では、任意の他のエポキシ樹脂も使用することができる。ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエステル、ノボラック樹脂グリシジルエーテル、ノボラッククレゾールエポキシ樹脂、ノボラックフェノールエポキシ樹脂、ノボラックアルキルフェノールエポキシ樹脂、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールADジグリシジルエーテル、プロピレングリコールやペンタエリスリトールなどのポリオールのジグリシジルエーテル、脂肪族又は芳香族カルボン酸とエピクロロヒドリンとの反応により得られるエポキシ樹脂、脂肪族又は芳香族アミンとエピクロロヒドリンとの反応により得られるエポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ核を含むエポキシ樹脂が挙げられ得る。
【0076】
上記エポキシ樹脂は、単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。
【0077】
有利には、粉末のエポキシ樹脂粒子の体積中位径Dv50は、1~20μm、より優先的には2~10μm、さらにより優先的には3~5μmである。実施形態において、エポキシ樹脂粒子のDv50は、1~2μm、又は2~3μm、又は3~4μm、又は4~5μm、又は5~6μm、又は6~8μm、又は8~10μm、又は10~12μm、又は12~15μm、又は15~20μmである。粒子のDv50は、上記のようにして測定することができる。
【0078】
好ましくは、粉末は、ポリアミド及びエポキシ樹脂の総重量に対して、50~99.5重量%のポリアミド及び0.5~50重量%のエポキシ樹脂、好ましくは80~99重量%のポリアミド及び1~20重量%のエポキシ樹脂、さらにより優先的には95~99重量%のポリアミド及び1~5重量%のエポキシ樹脂を含む。そのような量は、粉末から形成されたコーティングの機械的特性、特に可撓性を改善することを可能にする。特に、粉末は、ポリアミド及びエポキシ樹脂の総重量に対して、50~60%、又は60~70%、又は70~80%、又は80~85%、又は85~90%、又は90~91%、又は91~92%、又は92~93%、又は93~94%、又は94~95%、又は95~96%、又は96~97%、又は97~98%、又は98~99%、又は99~99.5%(重量)のポリアミドを含んでもよい。
【0079】
有利には、粉末は、粉末の総重量に対して、55~99重量%のポリアミド及び0.5~44重量%のエポキシ樹脂、より好ましくは75~98重量%のポリアミド及び2~20重量%のエポキシ樹脂、より好ましくは90~97重量%のポリアミド及び2.5~6重量%のエポキシ樹脂を含む。
【0080】
本発明による粉末はまた、顔料及び染料、クレータ防止剤及び展着剤、還元剤、抗酸化剤、補強充填剤、UV安定剤、流動化剤、腐食阻害剤、及びそれらの混合物からなる群から選択される1つ又は複数の添加剤を含んでもよい。これらの添加剤は、好ましくは、粉末の総質量に対して、0~30%、より好ましくは0~20%、より優先的には0~10%、さらにより優先的には0~5%、例えば0~2%、又は2~5%、又は5%~10%、又は10%~15%、又は15%~20%、又は20%~25%、又は25%~30%の質量量で存在する。
【0081】
補強充填剤は、ポリアミド及びエポキシ樹脂に基づく粉末を調製するのに適した任意のタイプのものであってもよい。しかしながら、充填剤は、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マンガン、ケイ酸カリウム、ケイ酸アルミニウム、ドロマイト、炭酸マグネシウム、石英、窒化ホウ素、カオリン、ウォラストナイト、二酸化チタン、ガラスビーズ、マイカ、カーボンブラック、石英、マイカ及び亜塩素酸塩の混合物、フェルドスパー、並びにカーボンナノチューブ及びシリカなどの分散ナノメートル充填剤からなる群から選択されることが好ましい。充填剤としては、炭酸カルシウムが特に好ましい。
【0082】
顔料は、当業者に知られている任意のタイプのものであり得る。好ましくは、顔料は、二酸化チタン、カーボンブラック、酸化コバルト、チタン酸ニッケル、二硫化モリブデン、アルミニウムフレーク、酸化鉄、酸化亜鉛、フタロシアニン及びアントラキノン誘導体などの有機顔料、並びにリン酸亜鉛からなる群から選択される。
【0083】
染料は、当業者に知られている任意のタイプのものであり得る。好ましくは、本発明による染料は、アゾ染料、アントラキノン染料、インジゴ系染料、トリアリールメタン染料、塩素染料及びポリメチン染料からなる群から選択される。
【0084】
クレータ防止剤及び/又は展着剤は、当業者に知られている任意の種類のものであり得る。好ましくは、クレータ防止剤及び/又は展着剤は、ポリアクリレート誘導体からなる群から選択される。
【0085】
UV安定剤は、当業者に知られている任意のタイプのものであり得る。好ましくは、UV安定剤は、レゾルシノール誘導体、ベンゾトリアゾール、フェニルトリアジン及びサリチレートからなる群から選択される。
【0086】
抗酸化剤は、当業者に知られている任意のタイプのものであり得る。好ましくは、抗酸化剤は、ヨウ化カリウムと組み合わせたヨウ化銅、フェノール誘導体及びヒンダードアミンからなる群から選択される。
【0087】
流動化剤は、当業者に知られている任意のタイプのものであり得る。好ましくは、流動化剤は、アルミナ及びシリカからなる群から選択される。
【0088】
腐食阻害剤は、当業者に知られている任意のタイプのものであり得る。好ましくは、腐食阻害剤は、ホスホシリケート及びボロシリケートからなる群から選択される。
【0089】
実施形態において、本発明による粉末は、ポリアミド及びエポキシ樹脂、並びに任意に、上記の1つ又は複数の添加剤から本質的になるか、又はこれらからなる。
【0090】
本発明による粉末は、その様々な構成成分、特にポリアミド及びエポキシ樹脂並びに任意に添加剤を粉末形態で乾式混合することによって調製することができる。混合は、1つの工程で行ってもよいし(全ての構成成分が同時に混合物に添加される)、いくつかの工程で行ってもよい(最初にいくつかの構成成分のプレミックスが作製され、続いて他の構成成分が添加される)。
【0091】
表面をコーティングするための使用
本発明によれば、上述の粉末は、表面の電気絶縁性コーティングに使用される。表面は、全体的に又は部分的にコーティングされていてもよい。
【0092】
有利には、コーティングは、上述の粉末を溶融することによって得られるフィルムである。好ましくは、フィルムは、50~500μm、より優先的には80~200μm、さらにより優先的には100~150μmの厚さを有する。実施形態において、フィルムは、50~80μm、又は80~100μm、又は100~150μm、又は150~200μm、又は200~250μm、又は250~300μm、又は300~350μm、又は350~400μm、又は400~450μm、又は450~500 μmの厚さを有する。
【0093】
コーティングは、規格IEC 60243-1に従って測定して、40kV/mm以上、好ましくは50kV/mm以上、さらにより好ましくは60kV/mm以上の絶縁耐力を有し得る。
【0094】
表面は金属表面であることが好ましい。「金属表面」という用語は、1つ又は複数の金属を含む、から本質的になる、又はからなる表面を意味する。
【0095】
金属表面は任意の種類であり得る。好ましくは、金属表面は、銅又は銅合金部品及びアルミニウム又はアルミニウム合金部品からなる群から選択される部品、並びにそのような金属を含む部品の表面である。
【0096】
表面、好ましくは金属表面(例えば、銅、銅合金、アルミニウム又はアルミニウム合金でできている)は、当業者に周知であり、好ましくは粗脱脂、アルカリ脱脂、ブラッシング、ショットブラスト又はサンドブラスト、微脱脂、ホットリンス、リン酸塩脱脂、鉄/亜鉛/トリカチオンリン酸塩処理、クロメート処理、コールドリンス及びクロミックリンスからなる群から選択される1つ又は複数の表面処理を受けることができた。したがって、粉末は、処理済み又は未処理の金属表面をコーティングするために使用され得る。
【0097】
特に、コーティングされた表面は、バスバー又は電気ケーブル又はワイヤなどの電気伝送部品の表面であってもよい。好ましくは、表面はバスバーの表面である。電気伝送部品は、コーティングによって全体を覆うことができるが、好ましくは電気絶縁性コーティングによって部分的に覆われる。
【0098】
電気伝送部品、特にバスバーは、有利には、銅、銅合金、アルミニウム及び/又はアルミニウム合金を含み、さらにより有利には、銅、銅合金、アルミニウム及び/又はアルミニウム合金で作られる。
【0099】
本発明はまた、上述の粉末を使用して表面をコーティングすることを含む、表面の電気絶縁性コーティングを製造する方法に関する。コーティング及び表面は、上述の通りであり得る。好ましくは、表面をコーティングする工程は、表面を粉末と接触させ、粉末を溶融させることを含む。
【0100】
本発明の主題はまた、上記の粉末を溶融することによって得ることのできるコーティング又は上記の粉末を溶融することによって得られるコーティングで少なくとも部分的に覆われた電気伝送部品である。コーティング粉末、コーティング及び電気伝送部品に関して上述したことは、本発明のこの態様にも同じ方法で適用することができる。
【0101】
特に好ましくは、電気伝送部品はバスバーである。
【0102】
電気絶縁性コーティングを有する電気伝送部品は、電池、例えば電気自動車の電池に使用することができる。
【0103】
本発明はまた、電気伝送部品の表面をコーティングする方法であって、
-表面を上記に記載の粉末と接触させる工程;
-粉末を溶融する工程;を含む方法に関する。
【0104】
表面を粉末と接触させる前に、コーティングプロセスは、特に電気伝送部品がコーティングによって部分的にのみ覆われなければならない場合に、表面にマスクを適用する工程を含んでもよい。マスクの適用は、コーティングされる部品の特定の部分のみを選択的にコーティングすることを可能にする。次いで、粉末を、コーティングされる表面のマスクされていない部品と接触させる。
【0105】
粉末は、当業者に周知の多数のコーティング技術に従って、表面上に塗布されてもよく、又は表面と接触して配置されてもよい。好ましくは、本発明によるコーティングは、流動床における浸漬、静電噴霧及び熱間ダスティングからなる群から選択される方法によって行われる。
【0106】
さらにより好ましくは、コーティングは静電噴霧によって製造される。静電噴霧プロセスの使用は、このプロセスを流動床浸漬プロセスよりも低い温度で実施することができ、それによってコーティングされる部品及び/又はマスクの劣化のリスクを低減することを可能にするので有利である。次いで、表面を粉末と接触させる工程は、
-粉末を帯電させる工程;
-帯電した粉末を表面上に噴霧する工程;
-粉末コーティングされた表面を、ポリアミドの融点より高くエポキシ樹脂の融点より高い温度まで加熱する工程;を含んでもよい。
【0107】
静電噴霧によるコーティングは、特に常温で、静電的に帯電した粉末粒子を表面に堆積させることからなる。粉末は、噴霧装置のノズルを通過する間に静電的に帯電されてもよい。次いで、このように帯電された粉末組成物を、ゼロ電位に接続されたコーティングされる表面を含む対象物に噴霧することができる。次いで、コーティングされた物体を、組成物の溶融を可能にする温度のオーブンに入れることができる。
【0108】
粉末噴霧装置は、任意の種類であり得る。好ましくは、ノズルはマイナス極性又はプラス極性の約10~約100kVの高電位にされる。好ましくは、粉末噴霧装置は、コロナ効果及び/又は摩擦帯電によって粉末を帯電させる静電銃である。
【0109】
好ましくは、噴霧装置内の粉末流量は、10~200g/分、より好ましくは50~120g/分である。
【0110】
好ましくは、粉末の静電印加の温度は15℃~25℃である。
【0111】
好ましくは、オーブン内の表面の滞留時間は3~15分である。
【0112】
有利には、表面加熱温度は、180~300℃、好ましくは200~250℃であってもよい。
【0113】
粉末コーティング表面の加熱温度は、好ましくは、ポリアミドの融点及びエポキシ樹脂の融点よりも少なくとも30℃高くてもよく、より好ましくは、ポリアミドの融点及びエポキシ樹脂の融点よりも30~60℃高くてもよい。
【0114】
次いで、表面を例えば常温まで冷却してもよい。
【0115】
マスクを使用した場合、マスクを除去することができる。
【0116】
あるいは、コーティングは、流動床において浸漬することによって行うことができる。したがって、表面を粉末と接触させる工程は、
-ポリアミドの融点より高く、エポキシ樹脂の融点より高い温度まで表面を加熱する工程;
-粉末を含む流動床において表面を浸漬する工程;を含んでもよい。
【0117】
コーティングされる表面は、本発明による粉末の溶融を可能にする温度に予熱される。次いで、表面を、本発明による粉末を含む流動床に浸漬する。粉末は、表面と接触すると溶融し、その上にコーティングを形成する。次いで、コーティングされた表面は、好ましくは、例えば周囲空気中で冷却される。次いで、存在する場合、マスクを除去することができる。
【0118】
好ましくは、組成物の流動化のための流動化空気は、低温で清浄であり、油を含まない。
【0119】
好ましくは、表面加熱温度は180~450℃、好ましくは250~350℃である。
【0120】
より好ましくは、表面の加熱は、ポリアミドの融点及びエポキシ樹脂の融点より少なくとも30℃高い温度で、より好ましくは、ポリアミドの融点及びエポキシ樹脂の融点より30~120℃高い温度で行われる。
【0121】
好ましくは、流動床における表面の浸漬の持続時間は、1~10秒、より優先的には3~7秒である。流動床における表面の浸漬は、1回又は複数回(各浸漬は、好ましくは1~10秒、より好ましくは3~7秒の持続時間を有する)行われてもよい。
【0122】
他の実施形態では、コーティングは熱間ダスティングによって行われる。次いで、表面を粉末と接触させる工程は、
-ポリアミドの融点より高く、エポキシ樹脂の融点より高い温度まで表面を加熱する工程;
-粉末を表面上に噴霧する工程;を含む。
【0123】
表面加熱温度は、流動床に浸漬することによるコーティングに関して上述した通りであり得る。特に、ポリアミドの融点及びエポキシ樹脂の融点より少なくとも30℃高いことが好ましく、ポリアミドの融点及びエポキシ樹脂の融点より30~120℃高いことがより好ましい。
【0124】
次いで、表面を例えば室温まで冷却してもよい。マスクを使用した場合、マスクを除去することができる。噴霧された粉末は、静電的に帯電してもしなくてもよい。
【0125】
表面をコーティングするための粉末の使用に関して上述した特性(特に、電気伝送部品及びコーティング膜の厚さの説明に関して)は、コーティングプロセスに同様に適用することができる。
【実施例】
【0126】
以下の実施例は、本発明を限定することなく説明する。
【0127】
以下の粉末を使用してコーティングを形成した。それらは、以下の表に指定される量(質量パーセンテージとして示される)の成分を乾式混合することによって調製された:
【0128】
粉末1、2及び3に使用されるスルホンアミドエポキシ樹脂は、Nylon ColoursによりSR9樹脂(p-トルエンスルホンアミド-エポキシ縮合ポリマー)の名称で販売されている。
【0129】
これらの粉末は、規格ISO 9276-パート1~6に従ってDv50を測定することによって特徴付けられた。
【0130】
これらの粉末を用いて、以下に記載するように、表面が処理された、又は未処理の銅又はアルミニウムバスバー上に異なるコーティングを生成した。
コーティング番号1:コーティングされる表面を洗浄し、ショットブラストした;次いで、静電噴霧によって粉末番号1を表面に塗布し、バスバーをオーブン内で220℃で後溶融し、続いて空冷した。コーティングの平均厚さは130μmである。
コーティング番号2:コーティングされる表面を洗浄し、ショットブラストし、次いで、300℃に予熱した;次いで、流動床において浸漬することによって粉末番号2を表面に塗布し、バスバーを空冷した。コーティングの平均厚さは340μmである。
コーティング番号3:コーティングされる表面を洗浄し、ショットブラストし、次いで、結合プライマーを表面に適用した;次いで、静電噴霧によって粉末番号3を表面に塗布し、次いで、バスバーをオーブン内で220℃で後溶融し、続いて空冷した。コーティングの平均厚さは125μmである。
コーティング番号4:結合プライマーを塗布する工程とは別に、手順を2回繰り返したこと以外は、コーティング番号3と同様にして、粉末番号3を静電噴霧により表面に塗布した。コーティングの平均厚さは250μmである。
【0131】
コーティング番号1、2、3及び4の絶縁耐力は、規格IEC 60243-1に従って測定した。
【0132】
さらに、以下のコーティングの絶縁耐力を、対応する粉末の入手可能な技術情報から推定した:
コーティング番号5:AkzoNobelによって商品名Interpon 100 AG114QFで販売されているエポキシ樹脂粉末で得られた、厚さ250μmのコーティング。
コーティング番号6:3Mによって商品名Scotchcast(登録商標)262 Redで販売されているエポキシ樹脂粉末で得られた、厚さ300μmのコーティング。
コーティング番号7:AkzoNobelによって商品名Resicoat EL 201で販売されているエポキシ樹脂粉末で得られた、厚さ250μmのコーティング。
【0133】
【0134】
所与のコーティング厚さについて、粉末番号1は、ポリアミド11のみを含む試験された他の粉末よりも良好な電気絶縁特性を有するコーティングを得ることを可能にすることが分かる。粉末番号1で得られたコーティングはまた、エポキシ樹脂のみを含む粉末から調製されたコーティングよりも電気的に絶縁性である。
【0135】
さらに、粉末番号1は、比較的薄いコーティングで良好な電気絶縁特性を得ることを可能にする。
【国際調査報告】