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特表2024-502292高エネルギー密度を有する電池のための、電解質で充填された単位質量当たりの負荷が高い電極を製造するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-18
(54)【発明の名称】高エネルギー密度を有する電池のための、電解質で充填された単位質量当たりの負荷が高い電極を製造するための方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/139 20100101AFI20240111BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20240111BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20240111BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20240111BHJP
   H01M 4/485 20100101ALI20240111BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20240111BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20240111BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20240111BHJP
   H01M 4/42 20060101ALI20240111BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20240111BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20240111BHJP
【FI】
H01M4/139
H01M4/58
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/485
H01M4/48
H01M4/38 Z
H01M4/587
H01M4/42
H01M4/62 Z
H01M4/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023538992
(86)(22)【出願日】2021-12-23
(85)【翻訳文提出日】2023-06-23
(86)【国際出願番号】 FR2021052450
(87)【国際公開番号】W WO2022136810
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】2014133
(32)【優先日】2020-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521186029
【氏名又は名称】ソルヴィオニック
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】リン,ロンイン
(72)【発明者】
【氏名】ファルガイラ,アナイス
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050BA15
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA02
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA10
5H050CA11
5H050CB01
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050DA10
5H050DA11
5H050DA13
5H050EA08
5H050EA11
5H050EA22
5H050EA23
5H050EA24
5H050EA28
5H050GA03
5H050GA10
5H050GA22
5H050HA01
5H050HA02
(57)【要約】
本発明は、高エネルギー密度を有する電池を製造するための方法に関する。より詳細には、本発明は、高負荷エネルギー密度金属イオン系電池を有する電極を製造するための改善された方法に関する。この方法は、塩、溶媒、結合剤及び活物質を混合して機械的に安定なペーストを生成することによって、電解質充填型固体電極を製造することを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質組成物によって分離された2つの集電体と、セパレータと、
a.前記2つの集電体に物理的かつ電気的に接触する2つの電極(アノード、カソード)、又は
b.集電体とのみそれぞれ接触しているカソードであって、第2の集電体が前記セパレータと接触している、カソード
のいずれかとを含む、高エネルギー密度電池のための電解質充填型の単位質量当たりの電荷が高い電極を製造するための方法であって、
i.金属塩を溶媒と混合することによって、前記電解質を含む混合物Aを調製するステップと、
ii.前記混合物Aを活物質と混合してペーストを得るステップと、
結合剤がステップa)又はb)において添加され、
iii.所定の厚さを有する前記電極を形成するステップ
とを含む、方法。
【請求項2】
前記金属塩が、(i)リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム及び亜鉛から選択されるカチオンと、(ii)ヘキサフルオロホスフェート(PF6)、テトラフルオロボレート(BF4)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(TFSI)、ビス(フルオロスルホニル)イミド(FSI)、ジシアナミド(DCA)、4,5-ジシアノ-2-(トリフルオロメチル)イミダゾリド(TDI)、フルオロスルホニル-(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(FTFSI)、(ジフルオロエタンスルホニル)イミド(DFTFSI)、ビス(オキサラト)ボレート(BOB)、ジフルオロ(オキサラト)ボレート(DFOB)から選択されるアニオンとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記溶媒が、非プロトン性有機溶媒、プロトン性有機溶媒又はそれらの混合物から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記非プロトン性有機溶媒が、イオン液体、炭酸プロピレン、グライム、溶液中の水性系において濃縮された塩から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記イオン液体が、(i)アルキルイミダゾリウムから選択されるか、又はアルキルピロリジニウム、モルホリニウム、ピリジニウム、ピペリジニウム、ホスホニウム、アンモニウムをベースとするカチオンと、(ii)ヘキサフルオロホスフェート(PF6)、テトラフルオロボレート(BF4)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(TFSI)、ビス(フルオロスルホニル)イミド(FSI)、ジシアナミド(DCA)、4,5-ジシアノ-2-(トリフルオロメチル)イミダゾリド(TDI)、フルオロスルホニル-(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(FTFSI)、(ジフルオロエタンスルホニル)イミド(DFTFSI)、ビス(オキサラト)ボレート(BOB)、ジフルオロ(オキサラト)ボレート(DFOB)から選択されるアニオンとを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記結合剤が、スチレンブタジエンラテックスコポリマー(SBR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニリデン-co-ヘキサフルオロプロピレン(PVdF-HFP)、ポリフッ化ビニリデン-co-トリクロロエチレン、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン-co-酢酸ビニル、ポリエチレンオキシド、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、シアノエチルプルラン、シアノエチルポリビニルアルコール、シアノエチルセルロース、シアノエチルサッカロース、プルラン及びカルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)又はそれらの少なくとも2つの組合せ、並びにポリマー及びそれらの誘導体及び/又は複合材料、例えば導電性/カルボキシルポリマーを含有するポリアニリン(PANI)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ポリスチレンスルホネート(PEDOT:PSS)複合材料、ポリアニリン-ポリアクリルポリマー複合材料(PANI:PAA)、ポリピロール-カルボキシメチルセルロースPPy/CMC、ヒドロゲル系ポリマー、例えば(2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸-co-アクリロニトリル)(PMAPS)、イオン液体ポリマーから選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記カソードのための前記材料が、
a.Liイオン電池について、リン酸鉄リチウム、(LiFePO)、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物、(LiNiMnCo)、ドープリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物、(LiNiMnCo)、リチウムコバルト酸化物(LiCoO)、ドープリチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物(LiNiO)、ドープリチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物(LiMn)、ドープリチウムマンガン酸化物、リチウムバナジウム酸化物、ドープリチウムバナジウム酸化物、リチウム混合金属酸化物(LMNO)、混合遷移金属酸化物、混合遷移金属、ドープリチウム遷移金属酸化物、リン酸バナジウムリチウム、リン酸マンガンリチウム、リン酸コバルトリチウム、混合リチウム及び金属リン酸塩、金属硫化物、並びにそれらの組合せから選択されるリチウム挿入化合物、
b.Naイオン電池及びKイオン電池について、
i.金属酸化物、
ii.層状NaMOX、
iii.一次元トンネル酸化物、
iv.フッ化物、
v.硫酸塩、
vi.リン酸塩、
vii.ピロリン酸塩、
viii.フルオロリン酸塩、
ix.混合リン酸塩、
x.ヘキサシアノメタレート、
xi.重要な金属を含まないカソード、
xii.プルシアンホワイト類似体
c.Znイオン電池及びMgイオン電池について、
i.遷移金属酸化物、MxV2O5(M=Na、Ca、Zn、Mg、Ag、Li等)、
ii.バナジン酸塩、
iii.層状及びトンネル型バナジウム系化合物、
iv.プルシアンブルーに類似したポリアニオン材料、
v.金属ジスルフィド、
vi.NASICON化合物
vii.AxMM0(XO(AはLi、Na、Mg、Zn等、MはMn、Ti、Fe等、XはP、Si、S等)、
viii.有機材料、例えばキノン
d.Mgイオン電池について、層状硫化物/セレン化物
e.Caイオン電池について、
i.3Dトンネル構造、例えばCaMnスピネル、
ii.シェブレル相、例えばCaMo(X=S、Se、Te)、
iii.層状遷移金属酸化物、
iv.プルシアンブルー類似体
から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記アノードのための前記材料が、
a.Liイオン電池について、
i.リチウム含有チタン複合酸化物(LTO)、
ii.金属(Me)、例えばSi、Sn、Li、Zn、Mg、Cd、Ce、Ni及びFe、
iii.グラファイト、天然グラファイト、人造グラファイト、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)及び炭素(軟質炭素、硬質炭素、カーボンナノファイバー及びカーボンナノチューブを含む)の粒子を含むグラフェン、
iv.シリコン(Si)、シリコン/グラファイト複合材料、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、チタン(Ti)、鉄(Fe)、及びカドミウム(Cd)のシリコンの組合せ、
v.Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Zn、Al又はCdと他の元素との金属間合金又は化合物であって、化学量論的又は非化学量論的である、合金又は化合物、
vi.Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Zn、Al、Fe、Ni、Co、Ti、Mn又はCdの酸化物、炭化物、窒化物、硫化物、リン化物、セレン化物及びテルル化物、並びにそれらの混合物又は複合材料、
vii.金属(Me)の酸化物(MeOx)、
viii.並びに金属(Me)と炭素との複合材料、
ix.MXene材料、[MXC、式中、X=2、3、4]。
b.Naイオン電池及びKイオン電池について、
i.酸化物、硫化物、セレン化物、リン化物及びMOF系材料並びに炭素系材料。
ii.前記炭素系材料は、膨張化グラファイト、Nドープ膨張化グラファイト、カーボンブラック、非晶質炭素、炭素微小球、硬質炭素、メソ-強力軟質炭素、カーボンナノチューブ、グラフェンナノシート、窒素ドープCNT、Nドープグラフェン発泡体、Nドープ多孔質ナノファイバー、微孔性炭素及び立方体形状多孔質炭素を含む。
iii.前記酸化物は、MnO-ナノフラワー、NiOナノシート、多孔質SnO、多孔質SnOナノチューブ、多孔質3D Fe-C、多孔質CuO-RGO、極小窒素ドープMnO-CNT、CuSマイクロフラワー、SnS-RGO、Co-PANI、ZnS-RGO、NiS-RGO、Co-PANI、MoS-C、窒素でドープされた導電性WS2-カーボンナノシート、SbSe-RGOナノロッド、MoSe-炭素繊維、Snマルチシェルナノ構造、Sn-Cナノスフェア、Se、CoPナノ粒子、炭素布上のFePナノロッドマトリックス、MoP-C、CUP-C、中空NiO/Niグラフェン、窒素でドープされたシェル-イエローで構造化されたCoSe/Cを含む
iv.Na金属
c.Mgイオン及びZnイオン電池について、グラファイト、ポリナノ結晶グラファイト、膨張化グラファイト、硬質炭素/カーボンブラック、硬質-軟質複合カーボン、硬質炭素微小球、活性炭素、多層Fドープグラフェン、窒素ドープ炭素微小球、階層的に多孔質なNドープ炭素、リン及び酸素デュアルドープグラフェン、窒素及び酸素ドープカーボンナノファイバー、タイヤゴム由来硬質炭素、多孔質カーボンナノファイバー紙、多結晶軟質炭素、窒素ドープ天然カーボンナノファイバー、窒素/酸素ダブルドープ硬質炭素、KTi並びにKTi
d.Znイオン電池について、
i.亜鉛金属、亜鉛合金
ii.グラファイト及び炭素質材料
e.Caイオン電池について、
i.カルシウム-金属合金
ii.スズ金属
iii.グラファイト及び炭素質材料
から選択される活物質である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ステップb)において、前記混合の前に導電性材料が添加される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記電解質が添加剤を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記導電性材料が、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カナルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック又はサーマルブラックからなるカーボンブラック、グラファイト、例えば天然グラファイト若しくは人造グラファイト及びそれらの混合物、又はそれらのうちの少なくとも2つの組合せ、導電性繊維、例えば炭素繊維又は金属繊維を含む導電性材料、金属粉末、例えばフルオロカーボン、アルミニウム又はニッケル粉末、導電性金属単結晶フィラメント、例えば酸化亜鉛又はチタン酸カリウム、二酸化チタン、ポリフェニレン誘導体
から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記電極を形成するステップc)が、以下の技術:ペースト圧延技術、ペーストのための3D印刷技術、押出技術及びジェットミリング技術から選択される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
電解質:活物質の質量百分率が、[15:85]の範囲内、好ましくは[30:75]の範囲内、又は更により好ましくは[40:60]の範囲内に含まれる、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の方法を実施するための装置。
【請求項15】
請求項1~13のいずれか一項に記載の方法によって得られる、高エネルギー密度電池のための電解質充填型の単位質量当たりの電荷が高い電極。
【請求項16】
請求項1~13のいずれか一項に記載の方法に従って製造された少なくとも1つの電解質充填型電極と、セパレータと、2つの集電体とを備える高エネルギー密度電池であって、
a.前記電池が2つの電極を含む場合、前記集電体がそれぞれ前記電極(すなわち、カソード、アノード)に接続され、前記電極が、
i.請求項1~13のいずれか一項に記載の方法に従って製造されたアノード電極、及びカソード電極、若しくは
ii.請求項1~13のいずれか一項に記載の方法に従って製造されたカソード電極、及びアノード電極、若しくは
iii.両方とも請求項1~13のいずれか一項に記載の方法に従って製造されたカソード電極及びアノード電極からなるか、又は
b.前記電池がカソード電極のみを含む場合、前記集電体が、それぞれ前記カソード及び前記セパレータに接続され、前記カソード電極が、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法に従って製造される、
高エネルギー密度電池。
【請求項17】
前記カソード電解質が前記アノード電解質と異なることを特徴とする、請求項16に記載の高エネルギー密度電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高エネルギー密度電気化学電池を製造するための方法に関する。本発明は、より詳細には、金属イオン系の高エネルギー密度電池のための、単位質量当たりの電荷が高い電極を製造するための改善された方法に関する。この方法は、塩、溶媒、結合剤及び活物質を混合してペーストを生成することによる、固体の電解質充填型電極の製造を含む。
【0002】
電気化学電池における電荷蓄積は、電池を充電するときに負極(アノード材料の還元及び電解質成分の酸化)及び正極(カソード材料の酸化及び電解質成分の還元)で同時に起こるファラデー反応に基づく。これらの酸化還元反応により、外部の電気エネルギーが化学エネルギーに変換されて電池が充電される。外部電源からの電子はアノードに向かって移動し、外部回路の反対側では、電子はカソードから除去される。逆に、電池は、化学エネルギーを電気エネルギーに変換して外部電気システムに電力を供給することによって放電される。カソードの活物質は、一般に、重要な金属、例えばニッケル、コバルト及びリチウムからなる金属系酸化物である。電池製造ラインにおいて重要な役割を果たす他の典型的な金属は、アルミニウム、マンガン、銅、マグネシウム及び鉄である。アノードのための活物質は、一般に、グラファイトを含有し、炭素質材料、金属酸化物又は金属、例えばリチウム及びナトリウムと共に高いシリコン含有量及び低いシリコン含有量を有する複合材料である。電解質は、アノードとカソードとの間のイオンの輸送において重要な役割を果たす。加えて、電極の厚さが増加する場合、又は例えばイオン液体(有機系電解質よりもわずかに粘性が高い)が使用される場合、密に巻かれた電池デバイス内に電解質を充填することは困難である。この電解質を充填するステップは、一般に、電気化学セルの組立後に行われ、時間がかかる場合がある。充填時間は電解質の粘度と共に増加する。
【0003】
現在の電解質技術は、可燃性であり高い蒸気圧を有する溶媒を使用する。これにより、温度が変動する場合又は高温の場合に、装置内に高圧が蓄積される。
【0004】
従来技術は、電気化学電池を製造するための様々な方法を記載している。例えば、米国特許第10,276,856号は、溶媒蒸発ステップを含む方法を記載している。
【0005】
対照的に、欧州特許第3,444,869号は、リチウム二次電池のための電極の乾式製造方法であって、
(S1)導電性材料と電極活物質を乾式混合するステップと、
(S2)ステップ(S1)で得られた生成物を結合剤と乾式混合して電極合剤粉末を得るステップと、
(S3)電極合剤粉末を集電体の少なくとも一面に塗布するステップ
からなるステップを含む、方法を記載している。
【0006】
更に、電池のエネルギー密度を向上させるためには、電極の厚さを最適化する必要がある。この種の従来技術の電極を製造するための方法は、例えば米国特許第10,361,460号に記載されているように、電極の厚さを制御するための支持体を必要とする。
【0007】
加えて、電極を製造するための現在の技術は、可燃性であり高い蒸気圧を有する溶媒を使用する。これは、高温乾燥プロセスを必要とする。厚さが増加すると、溶媒の蒸発速度は、電極のひび割れのリスクを誘発する制限パラメータになる。
【0008】
これらの理由により、従来技術の方法は、工業規模での製造に適合しない。
【0009】
工業レベルに適用可能な高エネルギー密度電池を製造するための方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0010】
本発明の発明者らは、高エネルギー密度電池のための電極を作製するための新しい方法を実施した。この方法は、高エネルギー密度電池のための、電解質充填型の単位質量当たりの電荷が高い電極を、以下のステップによって製造することからなる。
【0011】
a)金属塩を溶媒と混合することによって、当該電解質を含む混合物Aを調製するステップ、
b)当該混合物Aを活物質と混合してペーストを得るステップ、
結合剤がステップa)又はb)の1つにおいて添加され、
c)所定の厚さを有する当該電極を形成するステップ。
【0012】
本発明はまた、当該方法を実施するための装置、並びに当該方法によって得られる電解質充填型の単位質量当たりの電荷が高い電極、及び当該電極を含む高エネルギー密度電池に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、革新的な方法を使用して製造された、電解質充填型の単位質量当たりの電荷が高い電極を含む新しいタイプの高エネルギー密度電池を提案する。この方法により、電極の厚さを制御することが可能となり、2つのパラメータが相関するため、電池のエネルギー密度を増加させることが可能となる。実際、電極が厚いほど、電池はより多くのエネルギーを含有する。
【0014】
本発明による方法は、いくつかの利点を有する。
【0015】
第1に、電極は、所望の厚さを得るために支持体を必要とせずに製造される。電極の厚さは、電極の材料が機械的強度を有するペーストの粘稠度を有するという事実に基づいて、方法の間に制御される。従来技術の製造方法では、ペーストは、電池製造ラインにおいて、「ロールツーロール」タイプの組立のために供給される前に集電体上にコーティングされなければならない。本発明において、機械的に安定で電解質充填型電極は、支持体なしで直接カレンダ加工することができ、「ロールツーロール」電池の組立ラインにおいて容易に実施することができる。
【0016】
第2に、電極成分を電解質と混練して、活物質と電解質との間の結合を最適化することが可能となるペーストを形成する。この立体配座により、電極材料の表面と電解質イオンとの間で密接に接触すること及び即時に近接することが可能となる。一般に、従来の電極の厚さは、電極の挙動が不安定になり集電体への接着性が低くなるためだけでなく、不均一性によって反応速度が不十分となり、厚膜内のイオン/電子拡散経路が長く曲がりくねるため、100μmに制限される。本発明により、電池の電力が最適化されるように、電極/電解質界面の直列抵抗を減少させることと、電極粒子への電解質の反応速度及び接近可能性を増加させることの両方が可能となる。電解質と電極材料の混合物は、乾式電極製造のための従来技術の方法と比較して、電解質イオンを活物質粒子の表面付近に直接もたらすことによって反応速度を改善し、電極塊中の電解質の拡散に必要な時間を短縮する。拡散時間を短縮し、電極の全体積にわたる電解質分布の均一性を高めることによって、送達される電力を改善することができる。
【0017】
第3に、この方法により、新世代の高エネルギー密度電池を製造することが可能となる。
【0018】
したがって、電解質充填型電極の原理を使用して、電池の必要性に応じて異なるタイプの成分、例えば溶媒、塩、結合剤及び活物質を組み合わせることによって、広範囲の製品を製造することができる。
【0019】
第4に、本方法は、全体として、従来技術の方法と比較してステップ数が少なく簡略化される(溶媒蒸発がなく、支持体を必要としない)。
【0020】
第5に、本方法は、ペーストを最適化しペーストを使用してコーティングする、面倒なステップを排除する。従来技術の方法では、電極ペーストは、良好な相互作用面を得るために、また所望の多孔性へのカレンダ加工を得るために、それらのレオロジー特性の観点から最適化されなければならない。このような最適化は、各々異なるタイプの活物質、電極成分及び方法媒体(水性又は有機溶媒)に対して行われなければならない。更に、亀裂を最小限に抑えるために、乾燥ステップの間に電極内の毛細管現象の差異を吸収しなければならない。ペーストの製造は重要であり、その粘度及び沈降に対するその抵抗を制御することが必要であり、これらは両方とも電極の物理的及び電気化学的特性に悪影響を及ぼす可能性がある。ペーストの粘度は、コーティングプロセスに直接影響する。流れが速すぎる材料は、コーティングの間に分散する傾向があり、均一でないコーティング層をもたらし、一方、粘性が高すぎる材料はコーティングで乾燥させるのに時間がより長くかかり、真空下の圧力で効率を低下させる可能性がある。
【0021】
ペーストの粘度は、固体材料と溶媒との間の比に依存する。環境保護のためには、固形分を最大にし、溶媒含量を減らすことが重要である。ペーストを製造するための方法には、1)有機溶媒、例えば危険な化学物質であるN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を使用する方法と、2)溶媒として水を使用するが、電極材料の安定性のためにペーストのpHを調整するための多大な労力を必要とする方法との2つがある。ペーストの粘度は、温度を変化させることによって調整することもできる。本発明では、混合媒体中の溶媒は電解質であり、したがって、有機溶媒が存在しないという事実により方法を室温で行うことができるため、ペーストの粘度、pH又は温度の値を最適化する必要はない。
【0022】
電池の容量を更に改善するために、電解質に添加剤を添加することが可能である。
【0023】
加えて、本発明による電極を含む高エネルギー密度電池の製造は、電解質が既に電極中にあるという事実により、工業レベルで有利である。したがって、電池の組立後に電解質を添加するステップが回避される。
【0024】
上記の利点に基づいて、本方法は非常に用途が広く、工業レベルで容易に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】電解質充填型電極材料のためのペーストを製造するための方法のステップa及びbの図。
図2】電解質充填型電極の所望の厚さでペーストを製造するための方法のステップcの図。
図3】本発明による電解質充填型電極を製造するための方法の概略図。
図4】ボタン電池の異なる層の図。(1)は集電体(1A)及び電解質充填型カソード(1B)を表し、(2)は集電体(2A)及び電解質充填型アノード(2B)を表し、Aは集電体を表し、Bは電解質充填型電極を表す。(3)はセパレータを表す。
図5】40℃でのLi/Liに対する2.5V~4.0Vの0.05CのCレートでの半電池(LFP//Li金属)の充電/放電プロファイルを示すグラフ。電解質充填型LFPカソードは、本発明の方法を使用して製造された。
図6】20℃でのLi/Liに対する2.0V~5.0VのC/20(0.05C)のCレートでの2つの電池(LMNO//グラファイト)の充電/放電プロファイルを示すグラフ。電解質充填型の107μm及び173μmの厚さのLMNOカソードは、本発明の方法を使用して製造され、アノードは市販のものである。
図7】20℃でのLi/Liと比較した、2.0V~5.0VのC/20(0.05C)及びC/10(0.1C)のCレートでの電池(LMNO//グラファイト)充電/放電プロファイルを示すグラフ。電解質充填型の厚さ132μmのLMNOカソードは、本発明の方法を使用して製造され、アノードは市販のものである。
図8】20℃でのLi/Liと比較した、2.0V~5.0VのC/20(0.05C)及びC/10(0.1C)のCレートでの電池(LMNO//グラファイト)充電/放電プロファイルを示すグラフ。電解質充填型の厚さ179μmのLMNOカソードは、本発明の方法を使用して製造され、アノードは市販のものである。
図9】20℃でのLi/Liと比較した、2.0V~5.0VのC/20(0.05C)のCレートでの電池(LMNO//グラファイト)充電/放電プロファイルを示すグラフ。電解質充填型LMNOカソードは、本発明の方法を使用して製造され、アノードは市販のものである。
図10】20℃でのLi/Liと比較した、2.0V~5.0VのC/20(0.05C)のCレートでの2つの電池(LMNO//グラファイト)の充電/放電プロファイルを示すグラフ。2つの異なる電解質で充填されたLMNOカソードは、本発明の方法を使用して製造された。アノードは市販のものである。
図11】サイクル前後の、(A)従来技術の方法によって製造されたLMNOカソードを用いた場合、及び(B)本発明の方法によって製造されたカソードを用いた場合の、20℃での1MHz~10mHzのインピーダンス分光法。アノードは市販のものである。
図12】20℃でのLi/Liに対する2.0V~5.0VのC/20(0.05C)及びC/10(0.1C)のCレートでの2つの電池(LMNO//グラファイト)の充電/放電プロファイルを示すグラフ。電解質充填型LMNOカソードの1つは、本発明の方法を使用して製造され、第2のものは従来技術の方法に従って製造された。
図13】20℃でのLi/Liに対する3.0V~4.2VのC/20(0.05C)及びC/10(0.1C)のCレートでの半電池(NMC811//LiM)の充電/放電プロファイルを示すグラフ。カソードは、本発明による方法によって製造された。
図14】20℃でのLi/Liに対する0.01V~1VのC/20(0.05C)でサイクルされた半電池(グラファイト//LiM)の充電/放電プロファイルを示すグラフ。電解質充填型の厚さ49.5μm及び96.5μmのアノードは、本発明の方法を使用して製造された。
図15】Li/Liに対する0.01V~1VのC/20(0.05C)のCレートでの半電池(シリコン-グラファイト//LiM)の充電/放電プロファイルを示すグラフ。電解質充填型の厚さ67.5μm及び79.5μmのアノードは、本発明の方法を使用して製造された。
図16】本発明による方法及び従来技術の方法に従って配合された異なる電極材料について得られたクーロン効率を比較するグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0026】
発明の詳細な説明
本発明の第1の目的は、電解質組成物によって分離された2つの集電体と、セパレータと、
(i)当該2つの集電体と物理的及び電気的に接触している2つの電極(アノード、カソード)、又は
(ii)1つの集電体のみと接触するカソードであって、第2の集電体が当該セパレータと接触している、カソード
のいずれかとを含む、高エネルギー密度電池のための電解質充填型の単位質量当たりの電荷が高い電極を製造するための方法であって、
(iii)
a)金属塩を溶媒と混合することによって、当該電解質を含む混合物Aを調製するステップ、
b)当該混合物Aを活物質と混合してペーストを得るステップ、
結合剤がステップa)又はb)の1つに添加され
c)所定の厚さを有する当該電極を形成するステップ。
【0027】
電池は、上述したように、特に電解質で充填された(又は本発明の意味において等価である、含浸された)電極の性質により、高エネルギー密度を有する。
【0028】
好ましい一実施形態では、金属塩は、(i)リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム及び亜鉛から選択されるカチオンと、(ii)ヘキサフルオロホスフェート(PF6)、テトラフルオロボレート(BF4)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(TFSI)、ビス(フルオロスルホニル)イミド(FSI)、ジシアナミド(DCA)、4,5-ジシアノ-2-(トリフルオロメチル)イミダゾリド(TDI)、フルオロスルホニル-(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(FTFSI)、(ジフルオロエタンスルホニル)イミド(DFTFSI)、ビス(オキサラト)ボレート(BOB)、ジフルオロ(オキサラト)ボレート(DFOB)から選択されるアニオンとを含む。
【0029】
一般に、本発明によるLiイオン電池は、100~265Wh/kg又は250~670Wh/Lのエネルギー密度を提供することができる。本発明によるナトリウムイオン電池は、約90Wh/kg又は約270Wh/Lを提供することができる。
【0030】
この方法は、金属塩、例えばLi又はNaを含有する塩を溶媒及び任意選択で結合剤と混合して混合物Aを得ることによって電解質を製造するステップa)を含む。
【0031】
本明細書で使用される場合、「電解質」又は「電解質組成物」は、金属塩と溶媒との混合物を意味する。
【0032】
好ましい一実施形態では、溶媒は、非プロトン性有機溶媒、プロトン性有機溶媒又はそれらの混合物から選択される。非プロトン性溶媒は、イオン液体、炭酸プロピレン、グライム、溶液中の水性系において濃縮された塩から選択されてもよい。
【0033】
好ましい一実施形態では、溶媒はイオン液体である。
【0034】
本明細書で使用される場合、「イオン液体」(IL)は、100℃未満の温度の溶融塩を指す。
【0035】
溶媒がイオン液体である場合、溶媒は、(i)アルキルイミダゾリウムから選択されるか、又はアルキルピロリジニウム、モルホリニウム、ピリジニウム、ピペリジニウム、ホスホニウム、アンモニウムをベースとするカチオンと、(ii)ヘキサフルオロホスフェート(PF6)、テトラフルオロボレート(BF4)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(TFSI)、ビス(フルオロスルホニル)イミド(FSI)、ジシアナミド(DCA)、4,5-ジシアノ-2-(トリフルオロメチル)イミダゾリド(TDI)、フルオロスルホニル-(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(FTFSI)、(ジフルオロエタンスルホニル)イミド(DFTFSI)、ビス(オキサラト)ボレート(BOB)、ジフルオロ(オキサラト)ボレート(DFOB)から選択されるアニオンとを含む。
【0036】
好ましい一実施形態では、選択されたイオン液体は高品質である[純度99.9%、HO≦5ppm、ハロゲン化物≦1ppm、リチウム、ナトリウム及びカリウム≦10ppm、含窒素有機化合物≦10ppm、ハーゼン色数試験20~10]。
【0037】
結合剤は、スチレンブタジエンラテックスコポリマー(SBR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニリデン-co-ヘキサフルオロプロピレン(PVdF-HFP)、ポリフッ化ビニリデン-co-トリクロロエチレン、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン-co-酢酸ビニル、ポリエチレンオキシド、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、シアノエチルプルラン、シアノエチルポリビニルアルコール、シアノエチルセルロース、シアノエチルサッカロース、プルラン及びカルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)又はそれらの少なくとも2つの組合せ、並びにポリマー及びそれらの誘導体及び/又は複合材料、例えば導電性/カルボキシルポリマーを含有するポリアニリン(PANI)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ポリスチレンスルホネート(PEDOT:PSS)複合材料、ポリアニリン-ポリアクリルポリマー複合材料(PANI:PAA)、ポリピロール-カルボキシメチルセルロースPPy/CMC、ヒドロゲル系ポリマー、例えば(2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸-co-アクリロニトリル)(PMAPS)、イオン液体ポリマーから選択することができる。
【0038】
結合剤として使用することができるイオン液体ポリマーの例は、ヘキサフルオロホスフェート(PF6)、テトラフルオロボレート(BF4)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(TFSI)、ビス(フルオロスルホニル)イミド(FSI)、ジシアナミド(DCA)、4,5-ジシアノ-2-(トリフルオロメチル)イミダゾリド(TDI)、フルオロスルホニル-(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(FTFSI)及び(ジフルオロエタンスルホニル)(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(DFTFSI)、ビス(オキサラト)ボレート(BOB)、ジフルオロ(オキサラト)ボレート(DFOB)から選択されるアニオンと共にポリ(ジアリルジメチルアンモニウム)から形成される、化合物である。
【0039】
この方法は、ステップa)で得られた混合物Aを活物質と混合して、電極、すなわち電解質充填型電極の材料であるペーストを得ることからなるステップb)を含む。
【0040】
加えて、結合剤は、ステップa)又はステップb)において、交換可能に添加される。
【0041】
本発明による電池において、電解質充填型電極は、カソード又はアノード、あるいはその両方であることができる。電解質は、同じ電池セル内で使用されなければならないカソード及びアノードの両方において異なっていても同一であってもよい。
【0042】
カソードが本発明による電極である場合、当該カソードのための活物質は、以下を含有する材料である。
【0043】
a.Liイオン電池について、リン酸鉄リチウム、(LiFePO)、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物、(LiNiMnCo)、ドープリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物、(LiNiMnCo)、リチウムコバルト酸化物(LiCoO)、ドープリチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物(LiNiO)、ドープリチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物(LiMn)、ドープリチウムマンガン酸化物、リチウムバナジウム酸化物、ドープリチウムバナジウム酸化物、リチウム混合金属酸化物(LMNO)、混合遷移金属酸化物、混合遷移金属、ドープリチウム遷移金属酸化物、リン酸バナジウムリチウム、リン酸マンガンリチウム、リン酸コバルトリチウム、混合リチウム及び金属リン酸塩、金属硫化物、並びにそれらの組合せから選択されるリチウム挿入化合物、
b.Naイオン電池及びKイオン電池について、
i 金属酸化物、例えばVO、V、H、b-MnO
ii 層状NaMOX、例えばNa0.71 CoO、Na0.7 MnO、b-NaMnO、Na1.1V3O7.9、NaRuO、Na/3[Ni1/3Mn/3]O、Na0.67Co0.5Mn0.5O、Na0.66Li0.18Mn0.71Ni0.21Co0.08O+x、
iii 1Dトンネル酸化物、例えば、Na0.44 MnO、Na0.66[Mn0.66Ti0.34]O、Na0.61[Mn0.27Fe0.34Ti0.39]O
iv フッ化物、例えばFeO0.7F1.3及びNaFeF
v 硫酸塩、例えばNaFe(SO及びEldfellite NaFe(SO
vi リン酸塩NaFePO及びFePO、Na(PO,Na(PO,Na(PO)3@C@rGO、Na(PO/C、NaVOPO
vii ピロリン酸塩、例えばNaCoP、NaFeP及びNa3.12Fe2.44(P
viii フルオロリン酸塩、例えばNaVPO4F、Na(PO、Na3V2O2(PO4)2F@RuO2、Na3(VO-xPOF1+2x、Na3.5V2(PO
ix 混合リン酸塩、例えば、Na(P(PO)、NaMnPOCO
x ヘキサシアノメテート、例えばMnHCMn PBA、Na1.32 Mn[Fe(CN)]0.83.3.5HO、NaxCo[Fe(CN)]0.90・2.9HO、
xi 重要な金属を含まないカソード、例えばNa、Na、SSDC、CCl/CMK、PTCDA-PI、ポリ(アントラキノニルイミド)及び官能化グラファイト、
xii プルシアンホワイト類似体
c.Znイオン電池及びMgイオン電池について、
i 遷移金属酸化物、MxV2O5(M=Na、Ca、Zn、Mg、Ag、Li等)、
ii バナジン酸塩、
iii 層状及びトンネル型バナジウム系化合物、
iv プルシアンブルーに類似したポリアニオン材料、
v 金属ジスルフィド、
vi NASICON型化合物、
vii AxMM0(XO4)3(AはLi、Na、Mg、Zn等、MはMn、Ti、Fe等、XはP、Si、S等)、
viii 有機材料、例えばキノン
d.Mgイオン電池について、層状硫化物/セレン化物
e.Caイオン電池について、
i 3Dトンネル構造、例えばCaMnスピネル、
ii シェブレル相、例えばCaMo(X=S、Se、Te)、
iii 層状遷移金属酸化物、及び
iv プルシアンブルー類似体。
【0044】
v プルシアンホワイト類似体
アノードが本発明による電極である場合、当該アノードのための活物質は、
a.Liイオン電池について、
i リチウム含有チタン複合酸化物(LTO)、
ii 金属(Me)、例えばSi、Sn、Li、Zn、Mg、Cd、Ce、Ni及びFe、
iii グラファイト、天然グラファイト、人造グラファイト、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)及び炭素(軟質炭素、硬質炭素、カーボンナノファイバー及びカーボンナノチューブを含む)の粒子を含むグラフェン、
iv シリコン(Si)、シリコン/グラファイト複合材料、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、チタン(Ti)、鉄(Fe)、及びカドミウム(Cd)のシリコンの組合せ、
v Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Zn、Al又はCdと他の元素との金属間合金又は化合物であって、化学量論的又は非化学量論的である、合金又は化合物、
vi Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Zn、Al、Fe、Ni、Co、Ti、Mn又はCdの酸化物、炭化物、窒化物、硫化物、リン化物、セレン化物及びテルル化物、並びにそれらの混合物又は複合材料、
vii 金属(Me)の酸化物(MeOx)、
viii 並びに金属(Me)と炭素との複合材料、
ix MXene材料、[MXC、式中、X=2、3、4]。
【0045】
b.Naイオン電池及びKイオン電池について、
i 酸化物、硫化物、セレン化物、リン化物及びMOF系材料並びに炭素系材料。
【0046】
ii 炭素系材料は、膨張化グラファイト、Nドープ膨張化グラファイト、カーボンブラック、非晶質炭素、炭素微小球、硬質炭素、メソ-強力軟質炭素、カーボンナノチューブ、グラフェンナノシート、窒素ドープCNT、Nドープグラフェン発泡体、Nドープ多孔質ナノファイバー、微孔性炭素及び立方体形状多孔質炭素を含む。
【0047】
iii 酸化物は、MnOナノフラワー、NiOナノシート、多孔質SnO、多孔質SnOナノチューブ、3D多孔質Fe-C、多孔質CuO-RGO、極小窒素ドープMnO-CNT、CuSマイクロフラワー、SnS-RGO、Co-PANI、ZnS-RGO、NiS-RGO、Co-PANI、MoS-C、窒素でドープされた導電性WS2-カーボンナノシート、SbSe-RGOナノロッド、MoSe-炭素繊維、Snマルチシェルを有するナノ構造、Sn-Cナノスフェア、Se、CoPナノ粒子、炭素布上のFePナノロッドのマトリックス、MoP-C、CUP-C、中空NiO/Niグラフェン、窒素でドープされたシェル-イエローで構造化されたCoSe/Cを含む
iv Na金属
c.Mgイオン及びZnイオン電池について、グラファイト、ポリナノ結晶グラファイト、膨張化グラファイト、硬質炭素/カーボンブラック、硬質-軟質複合カーボン、硬質炭素微小球、活性炭素、多層Fドープグラフェン、窒素ドープ炭素微小球、階層的に多孔質なNドープ炭素、リン及び酸素デュアルドープグラフェン、窒素及び酸素ドープカーボンナノファイバー、タイヤゴム由来硬質炭素、多孔質カーボンナノファイバー紙、多結晶軟質炭素、窒素ドープ天然カーボンナノファイバー、窒素/酸素ダブルドープ硬質炭素、KTi並びにKTi
【0048】
d.Znイオン電池について、
i 亜鉛金属、亜鉛合金
ii グラファイト及び炭素質材料
e.Caイオン電池について、
i カルシウム-金属合金
ii スズ金属
iii グラファイト及び炭素質材料
から選択される。
【0049】
本発明の特定の一実施形態において、導電性材料は、方法のステップb)において混合物A及び活物質と混合される。
【0050】
本発明の有利な実施形態では、電解質は添加剤、例えばLiTDIを含む。この添加剤は、電池の容量を改善する。
【0051】
導電性材料は、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、ブラックトゥトンネル、ファーネスブラック、ランプブラック又はサーマルブラックからなるカーボンブラック、グラファイト、例えば天然グラファイト若しくは人造グラファイト及びそれらの混合物、又はこれらのうちの少なくとも2つの組合せ、導電性繊維、例えば炭素繊維又は金属繊維を含む導電性材料、金属粉末、例えばフルオロカーボン、アルミニウム又はニッケル粉末、導電性金属単結晶フィラメント、例えば酸化亜鉛又はチタン酸カリウム、二酸化チタン、ポリフェニレン誘導体
から選択してもよい。
【0052】
次に、ステップb)で得られたペーストを機械的に処理して電極を形成する。
【0053】
ステップc)において電極を形成する方法は、当業者に知られている全ての技術から選択することができる。好ましくは、これはペースト圧延技術、ペーストのための3D印刷技術、押出技術及びジェットミリング技術から選択される。電極の形成はまた、ペーストを乾燥させるステップを含んでもよい。これは、(80℃のオーブン又は真空オーブン内で)直接乾燥させることによって、又は相対湿度が0.5%未満の乾燥部分で電極を製造することによって行うことができる。このような条件は、例えば、無水部分又はアルゴン雰囲気中で得ることができる。アルゴン雰囲気中では、含水量は一般に5ppm未満であり、酸素含量は一般に1ppm未満である。
【0054】
好ましい一実施形態では、電解質:乾燥電極材料の質量百分率は、比[15:85]内であり、好ましくは比[30:75]であり、更に好ましくは比[40:60]である。この比を最適化することにより、電池の容量を最適化し、機械的に安定なペーストを得ることが可能となる。一例として、100gの電解質充填型電極について、電極は、15gの電解質及び85gの乾燥電極材料(LFP+C65+PTFE)を含む。この比の最適化は、過剰な電解質を有しない機械的に安定な電解質充填型電極を得るための方法の間の、電極材料中の電解質の吸収に基づくことができる。別の最適化の方法は、直列抵抗及び電気化学的性能を測定することを含む。
【0055】
本発明による電極の製造により、例えば自動車、航空、宇宙、携帯ツール、ロボットのための、電極の表面電荷、エネルギー密度及び電池の安全性を改善することが可能となる。本発明の方法によって製造された電極を含む電池は、溶媒及び活物質の性質の選択に応じて、イオンゲルベースの感覚センサ(圧力/変形センサ、二重層電気トランジスタ等)、可撓性スクリーン及び可撓性アクチュエータ、携帯デバイスにも適用することができる。
【0056】
本発明の第2の目的は、上記で定義された方法を実施するための装置に関する。
【0057】
本発明による電極を作製するように意図された当該装置は、
-金属塩、溶媒、結合剤及び活物質を室温で混合することから得られるペーストを作製するための手段と
-当該ペーストの機械的処理から当該電極を形成する手段とを含み、
電解質と接触可能な金属部分が防食被覆により保護されていることを特徴とする。
【0058】
実際、電解質は腐食性である可能性があり、装置の損傷を回避するために保護層を塗布する必要があることに留意されたい。この表面処理は、耐腐食性を有する金属(例えば、タンタル、アルミニウム又は銅)を使用する金属コーティングからなるか、又はポリマータイプのコーティングを適用することによるものであってもよい。
【0059】
本発明の第3の目的は、上記で定義された方法によって得られる高エネルギー密度電池のための電解質充填型の単位質量当たりの電荷が高い電極に関する。
【0060】
本発明の第4の目的は、上述の方法に従って製造された少なくとも1つの電解質充填型電極と、セパレータと、2つの集電体とを備える高エネルギー密度電池であって、
(i)当該電池が2つの電極を含む場合、当該集電体がそれぞれ当該電極(すなわち、カソード、アノード)に接続され、当該電極が、
a.上で定義された方法に従って製造されたアノード電極、及びカソード電極、若しくは
b.上で定義した方法に従って製造されたカソード電極、及びアノード電極、若しくは
c.両方とも上で定義した方法に従って製造されたカソード電極及びアノード電極からなるか、若しくは
(ii)当該電池がカソード電極のみを含む場合、当該集電体が、それぞれ当該カソード及びセパレータに接続され、当該カソード電極が、上で定義された方法に従って製造される、
高エネルギー密度電池に関する。
【0061】
したがって、そのような電池は、本発明による方法に従って製造された電解質充填型カソード及び電解質充填型アノードの両方、又は本発明による方法に従って製造された電解質充填型カソード、及びアノード、又は本発明による方法に従って製造された電解質充填型アノード、及びカソード、又は本発明による方法に従って製造された電解質充填型カソードのみを含むことができる(アノードフリー電池)。本発明による方法に従って製造されない電極は、市販のタイプであってもなくてもよい。
【0062】
セパレータは、以下により構成されてもよい。
【0063】
-半結晶性ポリオレフィン、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、高密度ポリエチレン(HDPE)、PE-PP、PS-PP、ポリエチレンテレフタレート-ポリプロピレン(PET-PP)混合物、ポリ(フッ化ビニリデン(PVDF))、ポリアクリロニトリル(PAN)である微孔性ポリマー膜、ポリオキシメチレン、ポリ(4-メチル-1-ペンテン)、不織布マット、例えばセルロース、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリ(フッ化ビニリデン-co-ヘキサフルオロプロピレン)(PVDF-HFP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエステル。他のタイプのポリマーは、ポリオレフィン系材料それ自体、及びそれらの混合物、例えばポリエチレン-ポリプロピレンである。グラフト化ポリマー、例えば、シロキサンにグラフト化されたポリエチレンのセパレータ、ポリ(メチルメタクリレート)にグラフト化された微孔質、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)ナノファイバーメッシュ、ポリトリフェニルアミン変性セパレータ(PTPAn)。ポリマー電解質、例えばイオン液体ポリマー電解質。
【0064】
このようなイオン液体ポリマーの例は、ヘキサフルオロホスフェート(PF6)、テトラフルオロボレート(BF4)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(TFSI)、ビス(フルオロスルホニル)イミド(FSI)、ジシアナミド(DCA)、4,5-ジシアノ-2-(トリフルオロメチル)イミダゾリド(TDI)、フルオロスルホニル-(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(FTFSI)及び(ジフルオロエタンスルホニル)(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(DFTFSI)、ビス(オキサラト)ボレート(BOB)、ジフルオロ(オキサラト)ボレート(DFOB)から選択されるアニオンと共にポリ(ジアリルジメチルアンモニウム)から形成される、化合物である。
【0065】
-イオン液体も有する(又は有しない)イオン液体ポリマー、ポリエチレンオキシド(PEO)と混合されたポリマー/コポリマー電解質、ポリマーとイオン液体電解質との任意の他の組合せ、又はイオン液体とイオン液体ポリマーとの組合せ。
【0066】
-重合性イオン液体、
-無機複合セパレータ、例えば、ポリマーマトリックス(PVDF-HFP、PTFE)中の金属酸化物粉末(TiO、ZrO、LiAlO、Al、MgO、CaCO)、PET上のAlO(OH)/ポリビニルアルコール(PVA)、セラミックセパレータ、例えばポリマー又はポリマー及び/若しくはイオン液体の組合せと混合されたアルミナ又はセラミック粒子、表面被覆ポリマー、例えば微孔性膜上のゲル状ポリマーフィルム(PEO、PVDF-HFP)、微孔性膜にゲルポリマー電解質、例えばイオン液体系電解質を含浸させること、ガラス繊維、導電性ガラスセパレータ。セパレータはまた、固体電解質、例えば固体セラミック電解質及び固体ポリマー電解質を含んでもよい。
【0067】
集電体は、電極と外部回路との間の導電体として、並びに電極材料のコーティングのための支持体として機能する。この場合、電解質充填型電極は、集電体がなくても機械的に安定である。集電体は、異なるテクスチャ、例えばメッシュ、発泡体、フィルム、マイクログリッドを有してもよく、多孔質であってもよく、様々な形状を有してもよく、二次元、三次元であってもよい。導電性多孔質層は、金属発泡体、金属メッシュ又はスクリーン、穿孔シートベースの構造体、金属繊維マット、金属ナノワイヤマット、導電性ポリマーナノファイバーマット、導電性ポリマー発泡体、ポリマー被覆導電性繊維発泡体、炭素発泡体、グラファイト発泡体、カーボンエアロゲル、カーボンゼロックスゲル、グラフェン発泡体、酸化グラフェン発泡体、還元酸化グラフェン発泡体、炭素繊維発泡体、グラファイト繊維発泡体、剥離グラファイト発泡体、又はそれらの組合せから選択されてもよい。集電体はまた、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、白金、銅、炭素、ニッケル、チタン又は銀で表面処理されたステンレス鋼、及びアルミニウム-カドミウム合金のうちのいずれか1つの要素、又はこれらのうちの少なくとも2つの組合せを含んでもよい。
【実施例
【0068】
実施例1 電解質充填型電極の製造
図1及び図3を参照すると、第1のステップIは、機械的混練ブレード(3)を備えた容器(1)内に、電解質を液体/ゲル配合物(2)、結合剤(4)、活性電極材料及び導電性材料(5)と共に周囲温度で注入することからなる。このブレード(3)は、揮発性有機成分(VOC)を有する溶媒なしで、容器(1)に注入された成分を確実に混合及び混練する(ステップII)。室温で実施されるこのステップIIの終わりに得られる生成物は、炭素ペースト(6)である。
【0069】
図2及び図3を参照すると、炭素ペースト(6)は、電極及び電解質の組合せを構成する(ステップIV)ペーストテープ(11)を製造するように、3つのローラ(7)、(8)、(9)を備えるカレンダ加工機(10)において室温で処理される(ステップIII)。電解質/電極比の最適化を考慮して、デバイスが活物質の容量に関して十分に活用された材料で充填されることを確実にして、電荷蓄積に寄与しない材料又は電解質を更に過剰とすることなく、異なる厚さでデバイスのエネルギー密度を効果的に増加させる、実用的な電極処理方法。
【0070】
最適化プロセスは、既知の電極質量に必要な電解質質量を決定することによって開始する。最適化プロセスは、機械的に安定なペーストを得るための電解質の最小量を決定し、続いて物理的及び電気化学的性能に基づいてさらなる最適化を行うことからなる。
【0071】
電極を製造するステップは、
-電解質中に分散された規定量の結合剤を導入するステップと、
-活物質及び導電性材料に対して最適化された質量百分率の電解質を導入するステップと、
-電極材料を電解質と共に折り畳む及び/又は混練する(例えば、ミキサー)ステップと、
-ペーストを、電解質を含有する電極材料として使用される準備ができているペーストに加工するステップと、
-電解質含浸電極材料を高温(60~100℃)で真空下で乾燥させるステップと
を含む。温度は、熱安定性に関して、電解質のタイプ、その成分に厳密に依存する。この方法が0.5%未満の相対湿度を有する乾燥室内で行われる場合、乾燥は必要ではない。
【0072】
電極をディスク(1B及び2B)に切断し、集電体(1A及び2A)上に配置し、カソード(1B)とアノード(2B)との間にセパレータ(3)を有するボタン電池(図4)に組み立てる。
【0073】
こうして、電極を電池に使用する準備が整う。製造条件は、乾燥室及び適用のための使用、若しくは5ppm未満の含水量及び1ppm未満の酸素含量を有するアルゴン環境を必要とするか、又は乾燥ステップを含まなければならない。
【0074】
注意:集電体の厚さを考慮せずに電極に関するデータを測定する。
【0075】
実施例2 ボタン電池の製造
リチウム系ボタン半電池及びボタン電池(CR2032)を、1ppm未満のO及びHOのアルゴン雰囲気下でグローブボックス内で組み立てる。電極を、活性粉末材料、電解質としてリチウム塩又はナトリウム塩を含有するイオン液体又はイオン液体系の配合物(SOLVIONIC SAからの5ppm未満の水)、及び結合剤としてのポリテトラフルオロエチレン(Fuel Cell Earth,Massachusetts)を室温で混合及び混練することによって作製した。イオン液体で充填された電極(カソード及びアノード)を、10~1000μm、好ましくは30μm~1000μm、好ましくは100~1000μm、好ましくは200~700μm、更により好ましくは100~500μm又は30~700μm、非常に好ましくは10~500μmの最適化された厚さを有する直径13mmのディスクに切断し、集電体(アルミニウム及び銅)上に積層又はカレンダ加工する。
【0076】
電極を、異なる材料で作製することができる25~180μmのセパレータによって分離する。次に、電気化学的特性評価の前に、ボタン電池をボタン電池圧着器具によって密封した。
【0077】
電気化学インピーダンス分光法(EIS)及び定電流サイクリング測定を、VMP3(BioLogic)ポテンショスタット及びコンピュータ化マルチチャネル電池サイクラー(Arbin Inc)を使用して行った。EISは、約80kHz~約10mHzの周波数で約5mVのRMS正弦波を印加することによって、0VのDCバイアスで2電極セルで行った。定電流サイクリングは、異なる活物質に特有の最大及び最小カットオフ電圧で異なる定電流でセルを充電及び放電することによって得られる。
【0078】
実施例3 電解質充填型カソードの製造
それぞれ活物質、導電性材料及び結合剤として47.02重量%のLiFePO+C65+PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、並びに電解質として52.98重量%のLiTFSI:PYR14FSI(モル比1:9)。
【0079】
アルミニウム集電体=25μm
まず、0.1gのPTFEを1.127gの電解質[LiTFSI:PYR14FSI(1:9モル)]に添加し、次に、この混合物を0.80gのLiFePOと0.1gのC65との粉末状混合物に添加する。次に、得られた混合物を混練し、機械的に安定な電解質充填型電極を形成する。
【0080】
電解質充填型カソード材料を、所望の表面密度を得るために、各々2つの30μmのアルミニウムシートの間で異なる連続制御された厚さ(例えば、400μm-300μm-250μm-200μm等)で、カレンダ加工機を使用してカレンダ加工する。各厚さについて、13mmの電極ディスクを切断し、次に、集電体上に配置する。カソードを形成する。
【0081】
このカソードの重量は40.75mgであり、LiFePOの装填量は15.33mgである。カソード材料に対する電解質の重量百分率は52.98%である。
【0082】
実施例4 異なる厚さの電極を含む2つの電池の容量の比較
表1及び図5は、本発明による方法に従って製造された電極を含有する2つの電池の特性を示す。この実施例は、電極の厚さが増加するにつれて電池の表面容量が改善することを示す。実施例3に従って電池を製造した。
【0083】
【表1】
【0084】
図5は、電極の厚さが126μmから140μmに増加するとき、放電容量が156.84mAh/gから159.91mAh/gに増加することを示す。この増加の比率は、電解質の組成並びに試験条件、例えば圧力、温度を最適化することによって改善することができる。この実施例では、より厚い電極(140μm)を含有するセルのヒステリシスは、より薄い電極(126μm)を含有するセルよりも小さい。ヒステリシスは重要であり、これによりセルの効率を測定することが可能となる。この実施例は、厚さを増加させることによりヒステリシスが減少し、したがって改善されることを示す。ヒステリシスの減少は、クーロン効率測定において十分に観察され、96.22から97%となる。
【0085】
実施例5 リチウムニッケルマンガン酸化物(LMNO)カソード中にホスホニウム中のイオン液体を含有する電解質充填型電極
それぞれ活物質、導電性材料及び結合剤として61.92重量%のLMNO+C65+PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、電解質として38.08重量%のP1113FSI中1mol/LのLiFSI。
【0086】
アルミニウム集電体=19μm
まず、0.079gのPTFEを0.616gの電解質[P1113FSI中1mol/LのLiFSI]に添加し、次に、この混合物を0.842gのLMNOと0.081gのC65との粉末状混合物に添加する。次に、得られた混合物を混練し、電解質を添加して全ての粒子を湿らせ(+0.230g)、機械的に安定な電解質充填型電極を形成する。
【0087】
電解質充填型カソード材料を、所望の表面密度を得るために、各々2つの30μmのアルミニウムシートの間で異なる連続制御された厚さ(例えば、400μm-300μm-250μm-200μm等)で、カレンダ加工機を使用してカレンダ加工する。各厚さについて、13mmの電極ディスクを切断し、次に集電体上に堆積させる。カソードを形成する。
【0088】
【表2】
【0089】
表2のカソードのうちの1つは、重量が52.2mgであり、LMNO装填量が27.18mgであり、173μmの厚さを有する。カソード材料に対する電解質の重量百分率は38.08%である。
【0090】
表3は、LMNOをベースとし、以下の電解質:P1113FSI中1mol/LのLiFSIを含むLiイオン電池について20℃で得られた特性を共にまとめたものである。
【0091】
【表3】
【0092】
図6は、CからC/20レベルでの107μmから173μmへの電極の厚さの増加に伴う、67.45mAh/gから83.32mAh/gへの放電容量の増加を示す。
【0093】
実施例6 イオン液体を含有する電解質充填型リチウムニッケル-マンガン酸化物(LMNO)電極及び市販のグラファイト(アノード)
それぞれ活物質、導電性材料及び結合剤として61.48重量%のLMNO+C65+PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、電解質として38.52重量%のPYR13FSI中1mol/LのLiFSI+0.05mol/LのLiTDI。アルミニウム集電体=19μm
まず、0.080gのPTFEを0.627gの電解質[PYR13FSI中1mol/LのLiFSI+0.05mol/LのLiTDI]に添加する。次に、この混合物を、0.84gのLMNOと0.081gのC65との粉末状混合物に添加する。次に、得られた混合物を混練し、機械的に安定な電解質充填型電極を形成する。
【0094】
電解質充填型カソード材料を、所望の表面密度を得るために、各々2つの30μmのアルミニウムシートの間で異なる連続制御された厚さ(例えば、350μm-300μm-200μm等)で、カレンダ加工機を使用してカレンダ加工する。各厚さについて、13mmの電極ディスクを切断し、次に集電体上に堆積させる。カソードを形成する。
【0095】
【表4】
【0096】
表4のカソードのうちの1つは、重量が52.2mgであり、LMNO装填量が26.96mgであり、厚さが179μmである。カソード材料に対する電解質の重量百分率は38.52%である。
【0097】
表5は、LMNOをベースとし、以下の電解質:PYR13FSI中1mol/LのLiFSI+0.05mol/LのLiTDIを含むLiイオン電池について20℃で得られた特性を共にまとめたものである。
【0098】
【表5】
【0099】
図7及び図8は、LMNOの表面密度が高い電極を、電極がひび割れ/分裂することなく製造することができることを示す。ひび割れの問題は、従来技術の方法で遭遇する大きな困難であったため、この結果は本発明の大きな利点である。
【0100】
C/20におけるこの実施例では、より厚い電極(179μm)を用いて製造されたセル(図8)のヒステリシスは、より薄い厚さ(132μm)を有するセル(図7)のヒステリシスよりも大きくはない。ヒステリシスは、セルの効率を測定する際に重要である。この実施例は、厚さを増加させることによりヒステリシスが改善(低減)されることを示す。この改善は、表6に引用される効率によって強化され、179μmの電極は、132μmの電極の93.98%の効率と比較して、95.75%の効率を有する。これらの結果は、0.05Cで179μmの電極(2.60mAh/cmの表面容量)で、エネルギー密度の改善を示す。
【0101】
図8において、C/20からC/10への充電速度の増加(20時間から10時間への充電及び放電)、容量の損失が観察され、128.4から123.5mAh/gに変化した。この容量の損失は、132μmの厚さと比較して179μmの厚さでより小さい(図7)。本発明の方法による電極の厚さの増加は、セルのヒステリシスを改善し、したがってサイクルのクーロン効率を改善することができる。
【0102】
図7図8との比較。C/20とC/10との間の容量の差は、最大厚さではそれほど大きくはなく、より大きい厚さで充電及び放電速度が増加すると容量はより小さくなる。
【0103】
実施例7 LiTDIを含まないイオン液体を含有する電解質充填型LMNO電極(比較例)
それぞれ活物質、導電性材料及び結合剤として60.63重量%のLMNO+C65+PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、電解質として39.37重量%のPYR13FSI中1mol/LのLiFSI。
【0104】
アルミニウム集電体=19μm
まず、0.081gのPTFEを0.65gの電解質[PYR13FSI中1mol/LのLiFSI]に添加する。次に、この混合物を、0.84gのLMNOと0.08gのC65との粉末状混合物に添加する。次に、得られた混合物を混練し、機械的に安定な電解質充填型電極を形成する。
【0105】
電解質充填型カソード材料を、所望の表面密度を得るために、各々2つの30μmのアルミニウムシートの間で異なる連続制御された厚さ(例えば、350μm-300μm-200μm等)で、カレンダ加工機を使用してカレンダ加工する。各厚さについて、13mmの電極ディスクを切断し、次に、集電体上に配置する。カソードを形成する。
【0106】
カソードのうちの1つは、重量が34.1mgであり、LMNO装填量が17.35mgであり、厚さが113μmである。カソード材料に対する電解質の重量百分率は38.52%である。
【0107】
表6は、LMNOをベースとし、以下の電解質:PYR13FSI中1mol/LのLiFSIを含むLiイオン電池について20℃で得られた特性を共にまとめたものである。
【0108】
【表6】
【0109】
充電/放電特性を図9に示す。
【0110】
この実施例は、セルをサイクルすることができることを示す。107.5mAh/gの容量がC/20で得られ、クーロン効率は92.14%であった。先の実施例のセルのクーロン効率及びそれらの放電容量は、電解質が添加剤を含有しないこの実施例と比較してより有利である。
【0111】
添加剤(LiTDI)を用いた場合と用いない場合との比較。
【0112】
【表7】
【0113】
0.05Cでの2つのピルの充電/放電特性を図10に示す。
【0114】
LiTDIを用いて製造した電極と用いずに製造した電極との間の比較では、LiTDIを含む電極を用いたセルの表面容量は、LiTDIを用いないセルと比較して、活物質質量の20%の増加に対して50%を超えて改善された。
【0115】
実施例8 市販の電極と本発明の方法に従って製造された電極との比較。
【0116】
それぞれ活物質、導電性材料及び結合剤として61.36重量%のLMNO+C65+PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、電解質として38.64重量%のPYR13FSI中1mol/LのLiFSI+0.05mol/LのLiTDI。
【0117】
アルミニウム集電体=19μm
まず、0.080gのPTFEを0.632gの電解質[PYR13FSI中1mol/LのLiFSI+0.05mol/LのLiTDI]に添加する。次に、この混合物を、0.844gのLMNOと0.08gのC65との粉末状混合物に添加する。次に、得られた混合物を混練し、機械的に安定な電解質充填型電極を形成する。
【0118】
電解質充填型カソード材料を、所望の表面密度を得るために、各々2つの30μmのアルミニウムシートの間で異なる連続制御された厚さ(例えば、200μm-150μm等)で、カレンダ加工機を使用してカレンダ加工する。各厚さについて、13mmの電極ディスクを切断し、次に、集電体上に配置する。カソードを形成する。
【0119】
カソードのうちの1つは、重量が18.4mgであり、LMNO装填量が9.49mgであり、厚さが56μmである。カソード材料に対する電解質の重量百分率は38.64%である。
【0120】
表8は、LMNOをベースとし、以下の電解質:PYR13FSI中1mol/LのLiFSI+0.05mol/LのLiTDIを含むLiイオン電池について20℃で得られた特性を共にまとめたものである。市販のカソードと本発明の方法に従って製造されたカソードとを比較する。
【0121】
【表8】
【0122】
本発明の方法で製造した電極(カソード)を、市販の電極(従来技術の方法で製造)と比較した。
【0123】
これらの実施例のアノードは、従来技術で知られている方法を用いて全セル構成で製造されたグラファイト電極である。
【0124】
図11は、従来技術の方法からのカソードを用いて製造されたセル及び本発明の方法によって製造されたセルのインピーダンス分光法によって測定された抵抗が、それぞれサイクル前に4.13Ω・cm及び4.30Ω・cmであることを示す。サイクル前の抵抗は同程度の大きさであるが、プロファイルは異なる。図11-A(サイクル前)では、6kHzから122Hzまで、プロファイルは、拡散現象、特に乾燥電極の厚さにおける電解質の拡散(ワールブルク)に対応する45°の角度に従う。対照的に、この現象は、図11-B(サイクル前)では観察されなかった。これは、本発明の方法を用いると、電解質による電極の良好な濡れ性があることを示す。サイクル後のこれら2つの図(A及びB)のプロファイルは、同じ傾向をたどる。
【0125】
図12は、本発明の方法で製造されたLMNOカソードから構成されるセルと、従来技術の方法で製造されたLMNOカソードから構成されるセルとの間の充電/放電サイクルの比較を示す。グラファイトアノードは、従来技術を用いて製造する。セルを、20℃でC/20(0.05C)及びC/10(0.01C)でサイクルする。
【0126】
電解質は、PYR13FSI中の1mol/LのLiFSI+0.05mol/LのLiTDIである。
【0127】
5%の活物質の質量の増加が、2つの電極間で観察される(9.03mgから9.49mg)。本発明の方法は、活物質の質量のわずか5%の差で、表面容量の16%の増加(0.74mAh/cmから0.86mAh/cm)を可能にする。これらの16%の増加は放電容量に影響を与え、C/20で10%増加する。実際に、これらの電極に対応する放電容量値に関して、10%の増加が観察され(109.27mAh/gから120.21mAh/g)、本発明によって製造された電極は、Li+/Liと比較して、セルが5Vから2Vに放電されるときに最も高い放電容量を有する。この観察は、本発明の方法を用いると充電及び放電における容量が改善し、より多くの電荷を貯蔵することが可能となることを示す。
【0128】
実施例9 電解質充填型NMC811電極
それぞれ活物質、導電性材料及び結合剤として56.48重量%のNMC811+C45+PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、電解質として43.52重量%のPYR13FSI中1mol/LのLiFSI+5重量%のFEC。
【0129】
アルミニウム集電体=16μm
まず、0.0997gのPTFEを0.773gの電解質[PYR13FSI中1mol/LのLiFSI+5重量%のFEC]に添加する。次に、この混合物を、0.802gのNMC811と0.102gのC45との粉末状混合物に添加する。次に、得られた混合物を混練し、機械的に安定な電解質充填型電極を形成する。
【0130】
電解質充填型カソード材料を、所望の表面密度を得るために、各々2つの30μmのアルミニウムシートの間で異なる連続制御された厚さ(例えば、300μm-200μm等)で、カレンダ加工機を使用してカレンダ加工する。各厚さについて、13mmの電極ディスクを切断し、次に、集電体上に配置する。カソードを形成する。
【0131】
カソードのうちの1つは、重量が47.2mgであり、NMC811装填量が21.40mgであり、厚さが288μmである。カソード材料に対する電解質の重量百分率は43.34%である。
【0132】
表9は、NMC811をベースとし、以下の電解質:PYR13FSI中1mol/LのLiFSI+5重量%のFECを含むLiイオン電池について20℃で得られた特性をまとめたものである。
【0133】
【表9】
【0134】
この実施例は、NMC 811電極が、C/20において2.79mAh/cmの高い表面坪量で、電極のひび割れなしに(厚さ288μmまで)製造されたことを示す。市販の2mAh/cmの電極は、51μmの厚さを有する(集電体なし)。かなりの厚さにもかかわらず、クーロン効率は高く、セルがC/20でサイクルされたとき100%であり、より速いCレート、C/10では99.9%である。
【0135】
図13は、本発明の方法を使用して製造された電解質充填型NMC811カソード(PYR13FSI中1mol/LのLiFSI+5重量%のFEC)と、リチウム金属のアノードとを含むセルの、C/20(0.05C)及びC/10(0.01C)、20℃での充電/放電サイクルを示す。このセルがC/20でサイクルされたとき、100%のクーロン効率で、172.93mAh/g及び172.99mAh/gの比容量が充電及び放電について得られた。セルがC/10でサイクルされたとき、99.9%のクーロン効率で、159.3mAh/g及び159.2mAh/gであった。
【0136】
0.05C及び0.1CのCレートの効率は、本発明の方法に従って製造された電極についてより大きい。
【0137】
実施例10 電解質充填型グラファイト電極
それぞれ活物質、導電性材料及び結合剤として56.76重量%のグラファイト+C65+PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、電解質として43.24重量%のPYR13FSI中1mol/LのLiFSI。
【0138】
銅集電体=27.5μm
まず、0.05gのPTFEを0.763gの電解質[PYR13FSI中1mol/LのLiFSI]に添加し、次に、この混合物を0.901gのグラファイトと0.05gのC65との粉末状混合物に添加する。次に、得られた混合物を混練し、機械的に安定な電解質充填型電極を形成する。
【0139】
電解質充填型アノード材料を、所望の表面密度を得るために、各々2つの30μmのアルミニウムシートの間で異なる連続制御された厚さ(例えば、250μm-150μm等)で、カレンダ加工機を使用してカレンダ加工する。各厚さについて、13mmの電極ディスクを切断し、次に、集電体上に配置する。アノードを形成する。
【0140】
【表10】
【0141】
表11は、グラファイトをベースとし、以下の電解質:PYR13FSI中1mol/LのLiFSIを含むLiイオン電池について20℃で得られた特性をまとめたものである。
【0142】
【表11】
【0143】
図14は、本発明の方法を使用して製造された電解質充填型グラファイト電極、及びリチウム金属電極を各々含む2つのセルのC/20(0.05C)、20℃での充電/放電サイクルを示す。最も薄い電極を含むセルについては、このセルをC/20でサイクルされたときの充電及び放電について、342.11及び347.73mAh/gの比容量が得られた。最も厚い電極を含むものについては、セルがC/10でサイクルされたときの充電及び放電について、比容量は343.04mAh/g及び350.90mAh/gである。比容量は、電極の厚さが2倍になり、49.5μmから96.5μmになったとき、約350mAh/gの期待値で維持される。これらの厚さは、1.92及び3.37mAh/cmの表面容量に対応する。
【0144】
実施例11 電解質充填型グラファイトシリコン電極
それぞれ活物質、導電性材料及び結合剤として45.93重量%のシリコン-グラファイト+C65+PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、電解質として54.07重量%のEMIFSI中1mol/LのLiFSI+10重量%のFEC。
【0145】
銅集電体=27.5μm
まず、0.1gのPTFEを1.19gの電解質[EMIFSI中1mol/LのLiFSI+10重量%のFEC]に加える。次に、混合物を、(0.12gのシリコン及び0.683gのグラファイト)と0.108gのC65との粉末状混合物に添加する。次に、得られた混合物を混練し、機械的に安定な電解質充填型電極を形成する。
【0146】
電解質充填型アノード材料を、所望の表面密度を得るために、各々2つの30μmのアルミニウムシートの間で異なる連続制御された厚さ(例えば、200μm-150μm等)で、カレンダ加工機を使用してカレンダ加工する。各厚さについて、13mmの電極ディスクを切断し、次に銅集電体上に配置する。アノードを形成する。
【0147】
【表12】
【0148】
表13は、シリコン-グラファイトをベースとし、以下の電解質:EMIFSI中の1mol/LのLiFSI+10重量%のFECを含むLiイオン電池について20℃で得られた特性をまとめたものである。
【0149】
【表13】
【0150】
図15は、セルの充電/放電サイクルを示す。各セルは、C/20及び20℃で、2つの異なる厚さ(67.5μm及び79.5μm)を有する本発明の方法を使用して製造された電解質充填型シリコン-グラファイト電極(15%シリコン-85%グラファイト)と、リチウム金属電極とから構成される。これらの厚さは、1.27及び1.69mAh/cmの表面容量に対応する。カソードの厚さが67.5μmであるとき、充電及び放電について268.0及び324.2mAh/gの比容量が得られた。カソードの厚さが79.5μmであるとき、比容量は、299.4mAh/g及び362.0mAh/gである。
【0151】
実施例12 本発明の方法及び従来技術の方法に従って配合された様々な電極材料のクーロン効率の比較。
【0152】
比較を図16に示す。本発明の方法に従って作製された電極を含有するセルのクーロン効率は、各材料について、従来技術の方法に従って製造された電極を含有するセルのクーロン効率よりも高い。
【0153】
実施例13 ナトリウムイオン電池のためのNaFePO系電極
それぞれ活物質、導電性材料及び結合剤として56.48重量%のNaFePO+C65+PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、電解質として43.52重量%のNaFSI:PYR13FSI(モル比1:9)。
【0154】
アルミニウム集電体=19μm
まず、0.052gのPTFEを0.773gの電解質[NaFSI:PYR13FSI(1:9モル)]に添加する。次に、この混合物を、0.851gのNaFePOと0.100gのC65との粉末状混合物に添加する。次に、得られた混合物を混練し、機械的に安定な電解質充填型電極を形成する。
【0155】
電解質充填型カソード材料を、所望の表面密度を得るために、各々2つの30μmのアルミニウムシートの間で異なる連続制御された厚さ(例えば、400μm-300μm-200μm-150μm等)で、カレンダ加工機を使用してカレンダ加工する。各厚さについて、13mmの電極ディスクを切断し、次に、集電体上に配置する。カソードを形成する。
【0156】
【表14】
【0157】
表14のカソードのうちの1つは、重量が65.6mgであり、NaFePO装填量が26.93mgであり、201μmの厚さを有する。カソード材料に対する電解質の重量百分率は43.52%である。
【0158】
表15は、NaFePO4をベースとし、以下の電解質:NaFSI:PYR13FSI(1:9モル)を含むNaイオン電池の、25℃及び50℃で推定される特性をまとめたものである。
【0159】
【表15】
【0160】
実施例14 ナトリウムイオン電池のための硬質炭素系電極
それぞれ活物質、導電性材料及び結合剤として47.95重量%の硬質炭素+C65+PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、電解質として52.05重量%の0.7mol/LのNaTFSI:PYR14TFSI。
【0161】
銅集電体=27.5μm
まず、0.051gのPTFEを1.093gの電解質[0.7mol/LのNaTFSI:PYR14TFSI]に添加する。次に、この混合物を、0.904gのNaFePOと0.052gのC65との粉末状混合物に添加する。次に、得られた混合物を混練し、機械的に安定な電解質充填型電極を形成する。
【0162】
電解質充填型カソード材料を、所望の表面密度を得るために、各々2つの30μmのアルミニウムシートの間で、異なる連続制御された厚さ(例えば、350μm-250μm-200μm等)で、カレンダ加工機を使用してカレンダ加工する。各厚さについて、13mmの電極ディスクを切断し、次に銅集電体上に配置する。アノードを形成する。
【0163】
【表16】
【0164】
表16のカソードのうちの1つは、重量が34.18mgであり、硬質炭素装填量が14.72mgであり、160μmの厚さを有する。カソード材料に対する電解質の重量百分率は52.05%である。
【0165】
表17は、硬質炭素をベースとし、以下の電解質:0.7mol/LのNaTFSI:PYR14TFSIを含むNaイオン電池の、25℃、50℃及び90℃で推定される特性をまとめたものである。
【0166】
【表17】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【国際調査報告】