(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-18
(54)【発明の名称】遺伝子治療において交流電場を使用するための方法及び組成物
(51)【国際特許分類】
C12N 15/87 20060101AFI20240111BHJP
C12N 15/113 20100101ALI20240111BHJP
A61K 35/761 20150101ALI20240111BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20240111BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20240111BHJP
A61P 1/18 20060101ALI20240111BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20240111BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240111BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20240111BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240111BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240111BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240111BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240111BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240111BHJP
A61K 49/00 20060101ALI20240111BHJP
C12N 15/861 20060101ALN20240111BHJP
C12N 15/864 20060101ALN20240111BHJP
C12N 15/869 20060101ALN20240111BHJP
C12N 15/86 20060101ALN20240111BHJP
C12N 5/10 20060101ALN20240111BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20240111BHJP
【FI】
C12N15/87 Z
C12N15/113 Z
A61K35/761
A61K35/76
A61P1/04
A61P1/18
A61P1/16
A61P11/00
A61P15/00
A61P25/00
A61P43/00 105
A61P35/00
A61K45/00
A61K48/00
A61K49/00
C12N15/861 Z
C12N15/864 100Z
C12N15/869 Z
C12N15/86 Z
C12N5/10
C12N15/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023539028
(86)(22)【出願日】2021-12-22
(85)【翻訳文提出日】2023-08-22
(86)【国際出願番号】 IB2021062198
(87)【国際公開番号】W WO2022137171
(87)【国際公開日】2022-06-30
(32)【優先日】2020-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519275847
【氏名又は名称】ノボキュア ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】タリ・ボロシン-セラ
(72)【発明者】
【氏名】リラチ・アヴィグドル
(72)【発明者】
【氏名】ヤーラ・ポラト
(72)【発明者】
【氏名】ヘレナ・マブラト
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA93X
4B065AB01
4B065BA02
4B065BA03
4B065BA30
4B065CA44
4B065CA46
4C084AA13
4C084AA19
4C084MA52
4C084MA55
4C084MA56
4C084MA59
4C084MA66
4C084NA10
4C084ZA011
4C084ZA021
4C084ZA591
4C084ZA661
4C084ZA751
4C084ZA811
4C084ZB211
4C084ZB261
4C085HH20
4C085KA40
4C085KB99
4C085LL05
4C085LL09
4C085LL12
4C085LL13
4C085LL18
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BC83
4C087CA08
4C087CA12
4C087MA02
4C087MA52
4C087MA55
4C087MA56
4C087MA59
4C087MA66
4C087NA10
4C087ZA01
4C087ZA02
4C087ZA59
4C087ZA66
4C087ZA75
4C087ZA81
4C087ZB21
4C087ZB26
(57)【要約】
細胞の細胞膜を越えるベクター、治療、検出可能物(detectable)又はこれらの組合せを輸送する方法のための組成物が開示される。ベクター、治療、検出可能物又はこれらの組合せを単独又は交流電場を印加することとの組合せで使用して腫瘍又はがん細胞を検出する及び/又は処置する方法も開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞に一定期間交流電場を印加する工程であって、交流電場の印加が細胞膜の透過性を増加させる工程;及び
細胞にベクターを導入する工程であって、細胞膜の透過性の増加がベクターが細胞膜を越えられるようにする工程
を含む、細胞の細胞膜を越えてベクターを輸送するための方法。
【請求項2】
ベクターが、目的の配列をコードすることができる核酸配列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
目的の配列が、選択可能マーカー又は治療剤である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ベクターが、2つの目的の配列を含み、一方の目的の配列が選択可能マーカーをコードすることができ、第2の目的の配列が治療剤をコードすることができる、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
治療剤が、cDNA、DNA、mRNA、マイクロRNA、shRNA、siRNA、リボザイム、ガイドRNA分子(gRNA)、RNA誘導型エンドヌクレアーゼタンパク質又はCas9タンパク質又はCpf1タンパク質CRISPR-Casである、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
選択可能マーカーが、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)、チミジンキナーゼ、ネオマイシン、ネオマイシン類似物G418、ハイドロマイシン、ピューロマイシン、緑色蛍光タンパク質(GFP)、ハイグロマイシン耐性(Hyg)、ネオマイシン耐性(Neo)又はβ-ガラクトシダーゼ(β-gal)である、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項7】
ベクターが、プラスミド、コスミド、ファージミド又はウイルスベクターである、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ベクターがウイルスベクターである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ウイルスベクターが、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルス又はヘルペスウイルスである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
細胞が、がん又は腫瘍細胞である、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
がん細胞が、神経膠芽腫細胞、子宮肉腫細胞、乳腺癌細胞、膵臓がん細胞、非小細胞肺がん、肝細胞、胃がん細胞、脳がん細胞である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
交流電場が、250kHzから350kHzの間の周波数で印加される、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
交流電場が、50から190kHzの間の周波数で印加される、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
交流電場が、210から400kHzの間の周波数で印加される、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
交流電場が、少なくとも1V/cm RMSの場の強度を有する、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
交流電場が、50から190kHzの間の周波数を有する、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
交流電場が、210から400kHzの間の周波数を有する、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
交流電場が、少なくとも1V/cm RMSの場の強度を有する、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
交流電場が、1から4V/cm RMSの間の場の強度を有する、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
ベクターを導入する工程が所与の時期に開始し、交流電場を印加する工程が所与の時期の少なくとも12時間後に終了する、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
交流電場を印加する工程が、所与の時期の少なくとも1時間前に開始する、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
がん細胞が神経膠芽腫細胞を含み、交流電場が250kHzから350kHzの間である周波数を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項23】
がん細胞が、子宮肉腫細胞を含み、交流電場が125kHzから175kHzの間である周波数を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項24】
がん細胞が、乳腺癌細胞を含み、交流電場が75kHzから175kHzの間である周波数を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項25】
ベクターが腫瘍内に、頭蓋内に、脳室内に、くも膜下腔内に、硬膜外に、硬膜内に、血管内に、静脈内に(標的化若しくは非標的化)、動脈内に、筋肉内に、皮下に、腹腔内に、経口で、鼻腔内に、腫瘍内注射(例えば、手術若しくは生検の際のコンピューター断層撮影ガイド下)を介して又は吸入を介して、導入される、請求項1から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
ベクターが細胞に標的化又は非標的化様式で導入される、請求項1から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
ベクターが1回、2回、3回又はそれ以上導入される、請求項1から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
ベクターが医薬組成物中で提供される、請求項1から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
医薬組成物が化学療法剤を更に含む、請求項1から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
ベクターが1つ又は複数の標的化成分を更に含む、請求項1から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
1つ又は複数の標的化成分が細胞に特異的である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
1つ又は複数の標的化成分がペプチド、抗体、抗体断片又は治療剤である、請求項30又は31に記載の方法。
【請求項33】
第1の交流電場を第1の周波数で細胞に第1の期間について印加する工程であって、第1の交流電場の第1の周波数での細胞への第1の期間の印加が細胞の細胞膜の透過性を増加させる工程;細胞にベクターを導入する工程であって、細胞膜の透過性の増加がベクターが細胞膜を越えられるようにする工程;及び第2の交流電場を第2の周波数で細胞に第2の期間について印加する工程であって、第2の周波数が第1の周波数とは異なり、第2の周波数での第2の交流電場が細胞の生存率を低下させる工程を含む、細胞の生存率を低下させる方法。
【請求項34】
細胞における交流電流の電流密度及び/又は電力損失密度が変化する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
細胞ががん又は腫瘍細胞である、請求項33または34に記載の方法。
【請求項36】
第2の交流電場が腫瘍治療電場である、請求項33から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
がん細胞が、神経膠芽腫細胞、子宮肉腫細胞、乳腺癌細胞、膵臓がん細胞、非小細胞肺がん、肝細胞、胃がん細胞又は脳がん細胞である、請求項33から36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
がん細胞が神経膠芽腫細胞を含み、第1の周波数が250kHzから350kHzの間であり、第2の周波数が150kHzから250kHzの間である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
がん細胞が、子宮肉腫細胞を含み、第1の周波数が125kHzから175kHzの間であり、第2の周波数が75kHzから125kHzの間である、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
がん細胞が、乳腺癌細胞を含み、第1の周波数が75kHzから175kHzの間であり、第2の周波数が100kHzから300kHzの間である、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
ベクターを導入する工程が所与の時期に開始し、第1の交流電場を印加する工程が所与の時期の少なくとも12時間後に終了する、請求項33から40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
第1の交流電場を印加する工程が、所与の時期の少なくとも1時間前に開始する、請求項33から40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
第2の期間が、第2の交流電場が第2の周波数でがん細胞に印加される際に複数の連続しない間欠期を含み、複数の連続しない間欠期が合計で少なくとも1週間になる、請求項33から42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
がん細胞が生存している対象の身体に存在しており、第1の交流電場が第1の交流電場を対象の身体に印加することによってがん細胞に印加され、第2の交流電場が第2の交流電場を対象の身体に印加することによってがん細胞に印加され、導入する工程がベクターを対象に投与する工程を含む、請求項33から43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
第1の交流電場が、少なくとも1V/cm RMSの場の強度を有する、請求項33から44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
腫瘍又はがん細胞に一定期間第1の交流電場を第1の周波数で印加する工程であって、第1の交流電場の印加が腫瘍又はがん細胞膜の透過性を増加させる工程;
腫瘍又はがん細胞にベクターを導入する工程であって、腫瘍又はがん細胞膜の透過性の増加がベクターが腫瘍又はがん細胞膜を越えられるようにし、
ベクターが治療剤をコードすることができる核酸配列を含み、ベクターが腫瘍又はがん細胞膜を越えると、ベクターは治療剤をコードしており、治療剤の存在が腫瘍又はがん細胞の生存率を低下させる工程を含む、
腫瘍又はがん細胞の生存率を低下させる方法。
【請求項47】
第2の交流電場を第2の周波数で投与する工程を更に含む、請求項49に記載の方法。
【請求項48】
第2の交流電場が腫瘍治療電場である、請求項49~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
腫瘍又はがん細胞に一定期間第1の交流電場を第1の周波数で印加する工程であって、第1の交流電場の印加が腫瘍又はがん細胞膜の透過性を増加させる工程;
腫瘍又はがん細胞にベクターを導入する工程であって、腫瘍又はがん細胞膜の透過性の増加がベクターが腫瘍又はがん細胞膜を越えられるようにし、
ベクターが選択可能マーカーをコードすることができる核酸配列を含み、ベクターが腫瘍又はがん細胞膜を越えると、ベクターは選択可能マーカーをコードしている工程、及び
選択可能マーカーを検出する工程であって、選択可能マーカーの存在が腫瘍又はがん細胞の存在を示す工程
を含む腫瘍又はがん細胞の検出方法。
【請求項50】
腫瘍又はがん細胞を処置する工程を更に含む、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
第2の交流電場を第2の周波数で投与する工程を更に含む、請求項49又は50に記載の方法。
【請求項52】
第2の交流電場が腫瘍治療電場である、請求項49から51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
がん細胞が、神経膠芽腫細胞、子宮肉腫細胞、乳腺癌細胞、膵臓がん細胞、非小細胞肺がん、肝細胞、胃がん細胞、脳がん細胞である、請求項49から52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
がん細胞が神経膠芽腫細胞を含み、第1の周波数が250kHzから350kHzの間である、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
がん細胞が子宮肉腫細胞を含み、第1の周波数が125kHzから175kHzの間であり、第2の周波数が75kHzから125kHzの間である、請求項53に記載の方法。
【請求項56】
がん細胞が乳腺癌細胞を含み、第1の周波数が75kHzから175kHzの間である、請求項53に記載の方法。
【請求項57】
ベクターを導入する工程が所与の時期に開始し、第1の交流電場を印加する工程が所与の時期の少なくとも12時間後に終了する、請求項49から56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
第1の交流電場を印加する工程が、所与の時期の少なくとも1時間前に開始する、請求項49から57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
がん細胞が生存している対象の身体に存在しており、第1の交流電場が第1の交流電場を対象の身体に印加することによってがん細胞に印加され、第2の交流電場が第2の交流電場を対象の身体に印加することによってがん細胞に印加され、導入する工程がベクターを対象に投与する工程を含む、請求項49から58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
第1の交流電場が、少なくとも1V/cm RMSの場の強度を有する、請求項49から59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
治療剤を投与する工程を更に含む、請求項49から60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
腫瘍又はがん細胞に一定期間第1の交流電場を第1の周波数で印加する工程であって、交流電場の印加が腫瘍又はがん細胞膜の透過性を増加させる工程;
腫瘍又はがん細胞にベクターを導入する工程であって、腫瘍又はがん細胞膜の透過性の増加がベクターが腫瘍又はがん細胞膜を越えられるようにし、
ベクターが治療剤及び選択可能マーカーをコードすることができる核酸配列を含み、ベクターが細胞に進入すると、ベクターは治療剤及び選択可能マーカーをコードしている工程、並びに
選択可能マーカーを検出する工程であって、選択可能マーカーの存在が腫瘍又はがん細胞の存在を示し、ベクターによってコードされる治療剤が腫瘍又はがん細胞のアポトーシスを誘導する工程
を含む腫瘍又はがん細胞の検出及び処置方法。
【請求項63】
第2の交流電場を第2の周波数で投与する工程を更に含む、請求項62に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる2020年12月24日出願、米国仮特許出願第63/130,449号の優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
細胞が有糸分裂している際に細胞が特定の周波数範囲の交流電場(AEF)に曝露された場合、AEFが有糸分裂プロセスを妨害し、アポトーシスを生じ得ることが以前示された。それぞれその全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,016,725号及び第7,565,205号に記載されたとおり、この現象は、腫瘍(例えば、神経膠芽腫、中皮腫等)を処置するために良好に使用されている。腫瘍処置の文脈では、これらの交流電場は、「TTFields」(又は「腫瘍治療電場」)と称される。TTFields治療が腫瘍を処置するために大変適している1つの理由は、TTFieldsが有糸分裂の際に分裂している細胞を選択的に破壊し、分裂していない細胞に影響を有さないと考えられることである。腫瘍細胞が患者の身体の他の細胞よりも頻繁に分裂することから、対象にTTFieldsを印加することは他の細胞を害さないまま腫瘍細胞を選択的に攻撃する。その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第9,750,934号に記載されたとおり、同じ現象が細菌を破壊するために有用であることも成功裏に示された。ここで再び、このアプローチが細菌を破壊するために十分適することの理由の1つは、細菌細胞がヒトの身体における他の細胞よりも急速に分裂することである。
【0003】
交流電場は、細胞膜の透過性を増加させることも示されている。ウイルス遺伝子治療に多数の研究が行われ、多数の進行中の臨床試験は、がんに対するウイルスに基づく治療と共に実施された。現在、がん患者において用いられている効率的で特異的なウイルス治療はない。対象においてがんを処置するために、細胞への治療の送達を補助するような交流電場の使用の組合せが必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7,016,725号
【特許文献2】米国特許第7,565,205号
【特許文献3】米国特許第9,750,934号
【特許文献4】米国特許第4,868,116号
【特許文献5】米国特許第4,980,286号
【特許文献6】PCT出願WO 90/02806
【特許文献7】PCT出願WO 89/07136
【特許文献8】米国特許第6,261,834号
【特許文献9】PCT/US19/40479
【非特許文献】
【0005】
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【非特許文献2】Laimins, L.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. 78: 993 (1981)
【非特許文献3】Lusky, M.L.ら、Mol. Cell Bio. 3: 1108 (1983)
【非特許文献4】Banerji, J.L.ら、Cell 33: 729 (1983)
【非特許文献5】Osborne, T.F.ら、Mol. Cell Bio. 4: 1293 (1984)
【非特許文献6】Southern P. and Berg, P., J. Molec. Appl. Genet. 1: 327 (1982)
【非特許文献7】Mulligan, R.C. and Berg, P. Science 209: 1422 (1980)
【非特許文献8】Sugden, B.ら、Mol. Cell. Biol. 5: 410~413 (1985)
【非特許文献9】Verma, I.M., Retroviral vectors for gene transfer. In Microbiology, Amer. Soc. for Microbiology, pp. 229~232, Washington, (1985)
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【非特許文献33】Sethら、Mol. Cell. Biol., 4:1528~1533 (1984)
【非特許文献34】Vargaら、J. Virology 65:6061~6070 (1991)
【非特許文献35】Wickhamら、Cell 73:309~319 (1993)
【非特許文献36】Remington: The Science and Practice of Pharmacy (19th ed.) ed. A.R. Gennaro、Mack Publishing Company、Easton、PA 1995
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ウイルスに基づく治療、又は正常な組織からのがん細胞のセラグノスティク描写(theragnostic delineation)のためのタンパク質を過発現させるウイルスをTTFieldsと組み合わせることは、健康な組織又は循環細胞と比較してがん細胞において特異的であり得る上に増強され得る。
【0007】
健康な細胞と比較した、がん細胞におけるウイルス量でのTTFields印加の効果における差異は、ウイルス遺伝子治療及び/又は、正常な組織からがん細胞を描写するための検出可能マーカーを保有するウイルスが、健康な細胞においてではなく、がん細胞において特異的で増強された効果を可能にするためにTTFieldsとの組合せで使用され得ることを示している。
【0008】
健康な細胞でのウイルス量を減少させながら、がん細胞でのウイルス量を増強することは、ウイルス遺伝子治療を用いる処置に影響を与えることができ、検出可能マーカーを発現させるベクターを感染させたがん組織又は転移性細胞を可視化するためのより良いツールも提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
細胞に一定期間交流電場を印加する工程であって、交流電場の印加が細胞膜の透過性を増加させる工程;及び細胞に組成物を導入する工程であって、細胞膜の透過性の増加が組成物が細胞膜を越えられるようにする工程を含む、細胞の細胞膜を越えて組成物を輸送するための方法が開示される。一部の態様では、組成物は、ベクター、治療、検出可能な標識、又はこれらの組合せであり得る。
【0010】
細胞に一定期間交流電場を印加する工程であって、交流電場の印加が細胞膜の透過性を増加させる工程;及び細胞にベクターを導入する工程であって、細胞膜の透過性の増加がベクターが細胞膜を越えられるようにする工程を含む、細胞の細胞膜を越えてベクターを輸送するための方法が開示される。
【0011】
第1の交流電場を第1の周波数で細胞に第1の期間について印加する工程であって、第1の交流電場の第1の周波数での細胞への第1の期間の印加が細胞の細胞膜の透過性を増加させる工程;細胞に組成物を導入する工程であって、細胞膜の透過性の増加が組成物が細胞膜を越えられるようにする工程;及び第2の交流電場を第2の周波数で細胞に第2の期間について印加する工程であって、第2の周波数が第1の周波数とは異なり、第2の周波数での第2の交流電場が細胞の生存率を低下させる工程を含む、細胞の生存率を低下させる方法が開示される。一部の態様では、組成物は、ベクター、治療、検出可能な標識又はこれらの組合せであり得る。一部の態様では、細胞は腫瘍又はがん細胞である。
【0012】
細胞に一定期間第1の交流電場を第1の周波数で印加する工程であって、第1の交流電場の印加が細胞膜の透過性を増加させる工程;細胞にベクターを導入する工程であって、細胞膜の透過性の増加がベクターが細胞膜を越えられるようにし、ベクターが治療剤をコードすることができる核酸配列を含み、ベクターが細胞膜を越えると、ベクターは治療剤をコードしており、治療剤の存在が細胞の生存率を低下させる工程を含む、細胞の生存率を低下させる方法が開示される。一部の態様では、細胞は腫瘍又はがん細胞である。
【0013】
腫瘍又はがん細胞に一定期間第1の交流電場を第1の周波数で印加する工程であって、第1の交流電場の印加が腫瘍又はがん細胞膜の透過性を増加させる工程;腫瘍又はがん細胞にベクターを導入する工程であって、腫瘍又はがん細胞膜の透過性の増加がベクターが腫瘍又はがん細胞膜を越えられるようにし、ベクターが選択可能マーカーをコードすることができる核酸配列を含み、ベクターが腫瘍又はがん細胞膜を越えると、ベクターは選択可能マーカーをコードしている工程、及び選択可能マーカーを検出する工程であって、選択可能マーカーの存在が腫瘍又はがん細胞の存在を示す工程を含む、腫瘍又はがん細胞の検出方法が開示される。
【0014】
腫瘍又はがん細胞に一定期間第1の交流電場を第1の周波数で印加する工程であって、交流電場の印加が腫瘍又はがん細胞膜の透過性を増加させる工程;腫瘍又はがん細胞にベクターを導入する工程であって、腫瘍又はがん細胞膜の透過性の増加がベクターが腫瘍又はがん細胞膜を越えられるようにし、ベクターが治療剤及び選択可能マーカーをコードすることができる核酸配列を含み、ベクターが細胞に進入すると、ベクターは治療剤及び選択可能マーカーをコードしている工程、並びに選択可能マーカーを検出する工程であって、選択可能マーカーの存在が腫瘍又はがん細胞の存在を示し、ベクターによってコードされる治療剤が腫瘍又はがん細胞のアポトーシスを誘導する工程を含む、腫瘍又はがん細胞の検出及び処置方法が開示される。
【0015】
開示される方法及び組成物の追加的有利点は、続く記載に一部記載され、一部は記載から理解される又は開示される方法及び組成物の実行によって得ることができる。開示される方法及び組成物の有利点は、添付の特許請求の範囲に特に示される要素及び組合せの手段によって理解され、達成される。前述の概要及び続く詳細な記載の両方は例示であり、説明のためのみであり、特許請求される本発明の限定ではないことは理解される。
【0016】
本明細書に組み込まれ、その一部を構成する添付の図は、開示される方法及び組成物のいくつかの実施形態を例示し、開示される方法及び組成物の原理を記載と共に説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】PR8ウイルスに感染したA549細胞への24時間TTFields印加のウイルス感染及び増殖の際の効果を示す図である。
【
図2】PR8ウイルスに感染したA549細胞への48時間TTFields印加のウイルス感染及び増殖の際の効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
開示される方法及び組成物は、本明細書に含まれる具体的な実施形態及び実施例の続く詳細な記載、並びに図面及びそれらに先行する及び続く記載の参照によって更に容易に理解される。
【0019】
開示される方法及び組成物が、他に別段の規定のない限り、具体的な合成方法、具体的な分析技術又は特定の試薬に、それらが変更する場合があることから限定されないことは理解される。本明細書において使用される用語は、具体的な実施形態を記載するのみの目的のためであり、限定することを意図しないことも理解される。
【0020】
本開示の方法及び組成物のために使用され得る、それと併せて使用され得る、その調製において使用され得る又はその産生物である材料、組成物及び成分が開示される。これら及び他の材料は本明細書において開示され、これらの材料の組合せ、サブセット、相互作用、群等が開示される場合に、これらの化合物それぞれの種々の個々の及び集合的な組合せ及び並べ替えの具体的な言及が明確に開示されない場合があるが、それぞれが具体的に検討され、本明細書に記載されることは理解される。それにより、分子A、B及びCのクラスが分子D、E及びFのクラスと共に開示され、分子A~Dの組合せの例が開示される場合に、それぞれが個々に列挙されていなくても、それぞれは個々に及び集合的に検討される。それによりこの例では、組合せA~E、A~F、B~D、B~E、B~F、C~D、C~E及びC~Fのそれぞれは、具体的に検討され、A、B及びC; D、E、及びF;並びに組合せ例A~Dの開示から開示されると見なされるべきである。同様にこれらの任意のサブセット又は組合せも具体的に検討され、開示される。それにより例えばA~E、B~F、及びC~Eのサブグループは、具体的に検討されA、B及びC; D、E及びF;並びに組合せ例A~Dの開示から開示されると見なされるべきである。この概念は、これだけに限らないが、開示される組成物を作製する及び使用する方法における工程を含む本出願のすべての態様に適用される。それにより、実施され得る種々の追加的工程がある場合、これらの追加的工程それぞれが開示された方法の任意の具体的な実施形態又は実施形態の組合せと共に実施され得る、及びそのような組合せのそれぞれが具体的に検討され、開示されたと見なされるべきであることは理解される。
【0021】
A.定義
開示される方法及び組成物は、それらが変化する場合があることから、記載される特定の方法、プロトコール及び試薬に限定されないことは理解される。本明細書において使用される用語が特定の実施形態を記載するのみの目的のためであり、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を限定することを意図しないことも理解される。
【0022】
本明細書において及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈上明確に示されていない限り複数の参照物も含むことは注目されるべきである。それにより、例えば「ベクター(a vector)」に言及することは、単一の又は複数のそのようなベクターを含み、「ベクター(the vector)」に言及することは1つ又は複数のベクター及び当業者に周知のその等価物に言及することである等。
【0023】
本明細書において使用される場合「標的部位」は、対象又は患者内にある又は存在する特定の部位又は位置である。例えば「標的部位」は、これだけに限らないが、細胞(例えば、がん細胞)、細胞の集団、器官、組織又は腫瘍を指し得る。したがって、句「標的細胞」は、標的部位を指して使用されてよく、ここで標的部位は細胞である。一部の態様では、標的部位であり得る器官として、これだけに限らないが、肺、脳、膵臓、腹部器官(例えば、胃、腸)、卵巣、乳房、子宮、前立腺、膀胱、肝臓、結腸又は腎臓が挙げられる。一部の態様では、標的部位又は標的細胞であり得る細胞又は細胞の集団として、これだけに限らないが、肺細胞、脳細胞、膵臓細胞、腹部の細胞、卵巣細胞、肝細胞、結腸細胞又は腎細胞が挙げられる。一部の態様では、「標的部位」は、腫瘍標的部位であり得る。一部の態様では、「標的部位」は、ウイルス感染細胞であり得る。一部の態様では、「標的細胞」はがんであり得る。一部の態様では、「標的細胞」はウイルス感染細胞であり得る。
【0024】
「腫瘍標的部位」は、1つ若しくは複数のがん細胞を含む若しくはそれに隣接する、1つ若しくは複数の腫瘍細胞を以前含んだ、又は1つ若しくは複数の腫瘍細胞を含むと疑われる対象又は患者内にある又は存在する部位又は位置である。例えば、腫瘍標的部位は、転移する傾向がある対象又は患者内にある又は存在する部位又は位置を指し得る。追加的に標的部位又は腫瘍標的部位は、対象又は患者内にある又は存在する原発腫瘍の切除の部位又は位置を指し得る。追加的に標的部位又は腫瘍標的部位は、対象又は患者内にある又は存在する原発腫瘍の切除に隣接する部位又は位置を指し得る。
【0025】
本明細書において使用される場合、1つ又は複数の「交流電場」は、対象、対象から得られた試料又は対象若しくは患者内の特定の位置(例えば、細胞等の標的部位)に送達される非常に低い強度の方向性(directional)中間周波数交流電場を指す。一部の態様では、交流電場は、単一方向性又は複数方向性であってよい。一部の態様では、交流電場は、標的部位内に垂直場を発生させる2対のトランスデューサーアレイを通じて送達され得る。例えばOptune(商標)システム(交流電場送達システム)について、1対の電極は標的部位の左及び右(LR)に配置され、他方の対の電極は標的部位の前側及び後側(AP)に配置されるこれらの2方向(すなわち、LR及びAP)で場を循環させることは、最大範囲の細胞方向を標的化することを確実にする。
【0026】
本明細書において使用される場合、腫瘍標的部位に印加される「交流電場」は、「腫瘍治療電場」又は「TTField」と称され得る。TTFieldsは、分裂中期の際に正確な微小管アセンブリを妨害し、分裂終期、細胞質分裂又は続く静止期に細胞を最終的に破壊することから、抗有糸分裂がん処置様式として確立されている。TTFieldsは、固形腫瘍を標的化し、TTFieldsの教示についてその全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,565,205号に記載されている。
【0027】
in-vivo及びin-vitro研究は、TTFields治療の有効性は、電場の強度が増加するにつれて増加することを示している。したがって、標的部位又は標的細胞における強度を増加させるために対象のアレイ配置を最適化することは、Optuneシステムのための標準的技法である。アレイ配置の最適化は、「経験則」(例えば、できるだけ標的部位又は標的細胞の近くで対象にアレイを置くこと)、患者の身体の形状、標的部位の大きさ及び/又は標的部位若しくは細胞位置を表す測定によって実施され得る。インプットとして使用される測定値は、画像データ由来であってよい。画像データは、例えば、単一光子放射断層撮影(SPECT)画像データ、X-線コンピューター断層撮影(X線CT)データ、磁気共鳴画像法(MRI)データ、ポジトロン断層撮影(PET)データ、光学機器(例えば、写真用カメラ、電荷結合素子(CCD)カメラ、赤外線カメラ等)によって取り込まれ得るデータ等の任意の種類の映像データを含むことが意図される。ある特定の実行では、画像データは、3Dスキャナー(例えば、点群データ)から得られた又はそれによって生成された3Dデータを含み得る。最適化は、アレイの位置の関数として電場が標的部位又は標的細胞内でどのように分布しているかの理解に依存する場合があり、一部の態様では、さまざまな患者の頭部内での電気的特性の分布における多様性を考慮する。
【0028】
用語「対象」は、投与の標的、例えば動物を指す。それにより、開示される方法の対象は、哺乳動物等の脊椎動物であってよい。例えば対象は、ヒトであり得る。用語は、特定の年齢又は性別を意味しない。対象は、「個体」又は「患者」と互換的に使用され得る。例えば、投与の対象は、交流電場のレシピエントを意味する場合がある。
【0029】
「処置」によって、感染(例えば、ウイルス性)若しくは疾患(例えば、がん)を有する、又は感染若しくは疾患を発症する易罹患性が増加しているヒト又は他の哺乳動物(例えば、動物モデル)等の対象に、疾患若しくは感染の影響を予防する若しくはその悪化を遅らせる、又は感染若しくは疾患の影響を部分的に若しくは完全に元に戻すために、交流電場及びベクター等の治療を投与する又は印加することが意味される。例えば、がんを有する対象を処置することは、対象の細胞に治療を送達することを含み得る。
【0030】
「予防」によって、対象が感染又は疾患を発症する機会を最小化又は減少させることが意味される。
【0031】
本明細書において使用される場合、用語「投与する」及び「投与」は、標的部位又は対象に抗ウイルス剤又は抗がん治療薬等の治療を提供するための任意の方法を指す。そのような方法は、当業者に十分周知であり、これだけに限らないが:経口投与、経皮投与、吸入による投与、鼻腔投与、局所投与、腟内投与、点眼、耳内投与、脳内投与、直腸投与、舌下投与、頬側投与、並びに静脈内投与、動脈内投与、筋肉内投与及び皮下投与等の注射剤を含む非経口投与が挙げられる。投与は、継続的又は断続的であってよい。種々の態様では、調製物は治療的に投与されてよい;すなわち、存在している疾患又は状態を処置するために投与される。更に種々の態様では、調製物は予防的に投与;すなわち、疾患又は状態の予防のために投与されてよい。一態様では、当業者は対象を処置するために投与の有効な用量、有効なスケジュール又は有効な経路を決定できる。一部の態様では、投与することは曝露すること又は印加することを含む。したがって、一部の態様では、標的部位若しくは対象を交流電場(alternating electrical field)に曝露すること、又は標的部位若しくは対象に交流電場を印加することは、標的部位又は対象に交流電場を投与することを意味する。
【0032】
「任意選択」又は「任意選択で」は、続いて記載される事象、環境又は材料が、生じる又は存在する場合としない場合があり、記載が事象、環境又は材料が生じる又は存在する場合及びそれが生じない又は存在しない場合を含むことを意味する。
【0033】
範囲は、本明細書において「約」ある特定の値から及び/又は「約」別の特定の値として表される場合がある。そのような範囲が表される場合、ある特定の値から及び/又は他の特定の値までの範囲が、文脈上特に明記されていない限り、同様に具体的に検討され、開示されたと見なされる。同様に、先行する「約」の使用によって値がおよそとして表される場合、文脈上特に明記されていない限り、開示されると見なされるべきである別の具体的に検討される実施形態を特定の値が形成することは理解される。範囲の各端点は、文脈上特に明記されていない限り、他方の端点との関連において及び他方の端点とは独立に、の両方で重要であることは更に理解される。最終的に、明確に開示された範囲内のすべての個々の値及びそれに含まれる値の部分的な範囲も、文脈上特に明記されていない限り、具体的に検討され、開示されていると見なされるべきであることは理解されるべきである。特定の場合においてこれらの実施形態の一部又はすべてが明確に開示されているかどうかに関わらず、前述のことは適用される。
【0034】
他に定義されない限り、本明細書で使用するすべての技術的及び科学的用語は、開示される方法及び組成物が属する分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似の又は等価の任意の方法及び材料は、本方法及び組成物の実行又は検査において使用され得るが、特に有用な方法、デバイス及び材料が記載される。本明細書において引用される刊行物及びそれらが引用する材料は、本明細書に参照により具体的に組み込まれる。本明細書の記載は、先行する発明を理由に本発明が、そのような開示に先行する権利がないことの承認として解釈されない。いかなる参考文献も先行技術を構成すると承認されない。参考文献の考察はそれらの著者が主張することを述べており、出願人は引用された文献の正確性及び妥当性を検証する権利を保持している。多数の刊行物が本明細書において参照されているが、これらの文献のいずれかが当技術分野における共通の一般的知識の一部を形成することの承認をそのような参考文献が構成しないことは明白に理解される。
【0035】
本明細書の記載及び特許請求の範囲の全体を通じて、語「含む(comprise)」及び「含んでいる(comprising)」及び「含む(comprises)」等の語の変化形は、「これだけに限らないが含む」を意味し、例えば他の添加物、成分、整数又は工程を除外することを意図しない。特に、1つ若しくは複数の工程又は操作を含んでいるとして述べられている方法において、各工程が列挙されているものを含む(工程が「から構成される(consisting of)」等の限定する用語を含まない限り)ことが具体的に検討され、各工程が工程において列挙されていない、例えば他の添加物、成分、整数又は工程を除外することを意図しないことを意味する。
【0036】
B.ベクター
目的の配列をコードすることができる核酸配列を含むベクターが開示される。本開示の方法は、本明細書に記載の1つ又は複数のベクターの投与を含み得る。
【0037】
一部の態様では、本明細書において開示される方法における使用のためのベクターは、発現ベクターであり得る。用語「発現ベクター」は、細胞による発現のために好適な形態にある遺伝子構築物(例えば、転写調節エレメントに連結されている)を含有する任意のベクター、(例えば、プラスミド、コスミド、ファージミド、ファージ、ウイルス)を含む。
【0038】
本明細書において開示される方法における使用のためのベクターは、非ウイルスベクター又はウイルスベクターであり得る。一部の態様では、ベクターはウイルスベクターであり得る。例えば、ウイルスベクターは、アデノ随伴ウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルス又はヘルペスウイルスであり得る。一部の態様では、ベクターは、DNAベースのベクター(例えば、プラスミド、コスミド、ファージミド)等の非ウイルスベクターであり得る。
【0039】
1.ウイルス及び非ウイルスベクター
本開示のベクターをin vitro又はin vivoのいずれかで送達するために使用され得る多数のベクター及び方法がある。これらの方法及び組成物は、大きく2つのクラスに分けられる:ウイルスに基づく送達システム及びウイルスに基づかない送達システム。例えば、目的の配列をコードすることができる核酸は、細胞の細胞膜を越えて送達され得、方法は:細胞に一定期間交流電場を印加する工程であって、交流電場の印加が細胞膜の透過性を増加させる工程;及び細胞にベクターを導入する工程であって、細胞膜の透過性の増加がベクターが細胞膜を越えられるようにする工程を含む。そのようなベクターは、プラスミド、ウイルスベクター、ウイルス核酸、ファージ核酸、ファージ、コスミド又はカチオン性リポソームの形態であり得る。ある特定の場合では、方法は、大きなDNA分子と共に特異的に機能するように改変され得る。更にこれらの方法は、担体の標的化特徴を使用することによって、ある特定の疾患及び細胞集団を標的にするために使用され得る。
【0040】
発現ベクターは、細胞に遺伝子若しくは遺伝子断片を送達するために使用される(例えば、プラスミド)、又は遺伝子若しくは遺伝子断片を送達するための総合的戦略の一部としての、例えば、組換えレトロウイルス若しくはアデノウイルスの一部としての任意のヌクレオチド構築物であってよい(Ramら、Cancer Res. 53:83~88, (1993))。例えば、がん治療薬等の目的の配列をコードすることができる核酸配列を含む発現ベクターが本明細書において開示される。
【0041】
一部の態様では、本開示のベクターは調節エレメントを含む。発現ベクターに存在する「調節エレメント」は、転写及び翻訳を実行するために宿主細胞のタンパク質と相互作用するベクターの非翻訳領域--エンハンサー、プロモーター、5’及び3’非翻訳領域--である。そのようなエレメントは、それらの強さ及び特異性において変動する場合がある。利用されるベクター系及び宿主に応じて、構成的及び誘導性プロモーターを含む、任意の数の好適な転写及び翻訳エレメントが使用され得る。例えば、細菌系でのクローニングの場合、pBLUESCRIPTファージミド(Stratagene社、La Jolla、Calif.)又はpSPORT1プラスミド(Gibco BRL社、Gaithersburg、Md.)のハイブリッドlacZプロモーター等の誘導性プロモーター等が使用され得る。目的の配列をコードする配列の複数のコピーを含有する細胞株を生成する必要がある場合、SV40又はEBVに基づくベクターは、適切な選択可能マーカーと共に有利に使用され得る。
【0042】
「エンハンサー」は、転写開始部位から固定されていない距離で機能し、転写単位の5’ (Laimins, L.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. 78: 993 (1981))又は3’ (Lusky, M.L.ら、Mol. Cell Bio. 3: 1108 (1983))のいずれであってもよいDNAの配列を一般に指す。更に、エンハンサーは、イントロンの中(Banerji, J.L.ら、Cell 33: 729 (1983))及びコード配列それ自体の中(Osborne, T.F.ら、Mol. Cell Bio. 4: 1293 (1984))にあってもよい。それらは、通常長さ10から300bpの間であり、それらはcisで機能する。エンハンサーは、近くのプロモーターからの転写を増加させるように機能する。エンハンサーは、転写の制御を媒介する応答エレメントもしばしば含有する。プロモーターは、転写の制御を媒介する応答エレメントも含有し得る。エンハンサーは、遺伝子の発現の制御をしばしば決定する。いまや多数のエンハンサー配列が、哺乳動物遺伝子(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α-フェトプロテイン及びインスリン)から周知であるが、一般的な発現のために典型的には、真核細胞ウイルス由来のエンハンサーを使用する。好ましい例は、複製開始点の後期側のSV40エンハンサー(bp 100~270)、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、複製開始点の後期側のポリオーマエンハンサー及びアデノウイルスエンハンサーである。
【0043】
プロモーター又はエンハンサーは、それらの機能を引き起こす光又は特定の化学的事象のいずれかによって特異的に活性化され得る。系は、テトラサイクリン及びデキサメタゾン等の試薬によって制御され得る。ガンマ線照射等の照射又はアルキル化化学療法薬への曝露によってウイルスベクター遺伝子発現を増強する方法もある。
【0044】
一部の態様では、プロモーター又はエンハンサー領域は、本発明のポリヌクレオチドの発現を最大化するように構成的プロモーター又はエンハンサーとして作用し得る。ある特定の構築物では、プロモーター又はエンハンサー領域では、特定の時期に特定の種類の細胞においてのみ発現される場合でも、すべての真核細胞型において活性である。
【0045】
真核宿主細胞(酵母、真菌、昆虫、植物、動物、ヒト又は有核細胞)での本開示の方法における使用のための発現ベクターは、mRNA発現に影響を与え得る転写の終結のために必要な配列も含有し得る。これらの領域は、組織因子タンパク質をコードするmRNAの未翻訳部分中のポリアデニル化セグメントとして転写される。3’非翻訳領域は、転写終結部位も含む。転写単位がポリアデニル化領域も含有することは好ましい。この領域の1つの利点は、転写された単位がmRNAのようにプロセスされ、輸送される可能性をそれが増加させることである。発現構築物中のポリアデニル化シグナルの同定及び使用は、十分確立されている。相同性ポリアデニル化シグナルが導入遺伝子構築物において使用されることは好ましい。ある特定の転写単位では、ポリアデニル化領域はSV40初期ポリアデニル化シグナル由来であり、約400塩基からなる。
【0046】
本開示の方法における使用のための発現ベクターは、マーカー産生物をコードする核酸配列を含み得る。このマーカー産生物は、遺伝子が細胞に送達されたかどうかを決定するために使用され得、送達されると発現される。マーカー遺伝子として、これだけに限らないが、β-ガラクトシダーゼをコードする大腸菌(E. coli)lacZ遺伝子及び緑色蛍光タンパク質をコードする遺伝子が挙げられる。
【0047】
一部の実施形態では、マーカーは選択可能マーカーであってよい。哺乳動物細胞のための好適な選択可能マーカーの例は、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)、チミジンキナーゼ、ネオマイシン、ネオマイシン類似物G418、ハイドロマイシン(hydromycin)及びピューロマイシンである。in vitroでの使用のために、本明細書に記載の方法を使用した後のベクターを含む細胞は単離され得る。そのような選択可能マーカーが、哺乳動物宿主細胞に良好に移行された場合、形質転換された哺乳動物宿主細胞は、選択圧下に置かれても生存できる。選択方法に2つの広く使用される明確に区別される分類がある。第1の分類は、細胞の代謝及び、補充培地から独立的に増殖する能力を欠失している変異体細胞株の使用に基づく。2つの例は、CHO DHFR-細胞及びマウスLTK-細胞である。これらの細胞は、チミジン又はヒポキサンチン等の栄養素の添加無しで増殖する能力を欠いている。これらの細胞が完全なヌクレオチド合成経路のために必要なある特定の遺伝子を欠いていることから、それらは、欠損しているヌクレオチドが補充培地中に供給されなければ生存できない。培地に補充することの代替案は、インタクトなDHFR又はTK遺伝子をそれぞれの遺伝子を欠いているに細胞導入し、それによりそれらの増殖要求を変更することである。DHFR又はTK遺伝子で形質転換されなかった個々の細胞は、非補充培地中で生存できない。
【0048】
本明細書において開示される組成物及び方法と共に使用され得る選択の別の種類は、任意の細胞型において使用される選択スキームを指し、変異体細胞株の使用を必要としない優性選択である。これらのスキームは、宿主細胞の増殖を停止させる薬物を典型的には使用する。新規遺伝子を有するこれらの細胞は、薬物耐性を伝達するタンパク質を発現し、選択を生き延びる。そのような優性選択の例は、薬物ネオマイシン(Southern P. and Berg, P., J. Molec. Appl. Genet. 1: 327 (1982))、ミコフェノール酸(Mulligan, R.C. and Berg, P. Science 209: 1422 (1980))又はハイグロマイシン(Sugden, B.ら、Mol. Cell. Biol. 5: 410~413 (1985))を使用する。3つの例は、それぞれ適切な薬物G418若しくはネオマイシン(ジェネテシン)、xgpt (ミコフェノール酸)又はハイグロマイシンへの耐性を伝達する細菌遺伝子を真核調節下で使用する。他にはネオマイシン類似物G418及びピューロマイシン(puramycin)が挙げられる。
【0049】
本明細書において使用される場合、プラスミド又はウイルスベクターは、目的の配列(例えば、1つ又は複数の目的のタンパク質又はペプチド)をコードすることができる核酸配列等の核酸配列を分解することなく細胞に輸送する薬剤であり、それが送達された細胞において遺伝子の発現をもたらすプロモーターを含む。一部の実施形態では、ベクターは、ウイルスベクターである。ウイルスベクターは、例えば、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、ポリオウイルス、レンチウイルス(AIDSウイルス)、ニューロン栄養性(neuronal trophic)ウイルス、シンドビス及び、HIV骨格を有するウイルスが挙げられる他のRNAウイルスである。ベクターとしての使用のためにこれらのウイルスを好適にする特性を共有する任意のウイルスファミリーは同様に好ましい。レトロウイルスとして、マウスモロニー(Maloney)白血病ウイルス、MMLV、及びベクターとしてのMMLVの望ましい特性を発現するレトロウイルスが挙げられる。レトロウイルスベクターは、他のウイルスベクターよりもより大きな遺伝子ペイロード、すなわち導入遺伝子又はマーカー遺伝子を保有することができ、この理由から一般に使用されるベクターである。しかし、それらは非増殖細胞においては同様には有用ではない。アデノウイルスベクターは、比較的安定であり、それを使って作業しやすく、高い力価を有し、エアロゾル製剤中で送達されてよく、非分裂細胞に感染できる。ポックスウイルスベクターは、大きく、遺伝子を挿入するためのいくつかの部位を有し、それらは熱安定性であり、室温で保存できる。好ましい実施形態は、ウイルス抗原によって誘発された宿主生物の免疫応答を抑制するように操作されたウイルスベクターである。この種類の好ましいベクターは、インターロイキン8又は10についてのコード領域を保有する。
【0050】
ウイルスベクターは、細胞に遺伝子を導入する化学的又は物理的方法よりも高い処理能力(すなわち、遺伝子を導入する能力)を有し得る。典型的には、ウイルスベクターは、複製及びキャプシド形成のために必要な非構造初期遺伝子、構造後期遺伝子、RNAポリメラーゼIII転写物、末端逆位配列並びにウイルスゲノムの転写及び複製を調節するためのプロモーターを含有する。ベクターとして操作された場合、ウイルスは、典型的には1つ又は複数の初期遺伝子が除去され、遺伝子又は遺伝子/プロモーターカセットが除去されたウイルスDNAの代わりにウイルスゲノムに挿入される。この種類の構築物は、約8kbまでの外来遺伝子材料を保有できる。除去された初期遺伝子の必要な機能は、トランスで初期遺伝子の遺伝子産生物を発現するように操作された細胞株によって典型的には補充される。
【0051】
レトロウイルスベクターは、その全体が参照により本明細書に組み込まれるVerma, I.M., Retroviral vectors for gene transfer. In Microbiology, Amer. Soc. for Microbiology, pp. 229~232, Washington, (1985)に一般に記載されている。遺伝子治療のためにレトロウイルス ベクターを使用するための方法の例は、米国特許第4,868,116号及び第4,980,286号; PCT出願WO 90/02806及びWO 89/07136;並びにMulligan, (Science 260:926~932 (1993))に記載されており;その教示は、遺伝子治療のためにレトロウイルスベクターを使用するための方法の教示についてその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0052】
レトロウイルスは、本質的に、核酸カーゴにパッケージングされているパッケージである。核酸カーゴは、複製された娘分子がパッケージコート内に効率的にパッケージングされることを確実にするパッケージングシグナルを、それと共に保有する。パッケージングシグナルに加えて、複製及び複製されたウイルスのパッケージングのためにシスで必要とされる多数の分子がある。典型的にはレトロウイルスゲノムは、タンパク質コートの作製に関与するgag、pol及びenv遺伝子を含有する。gag、pol及びenv遺伝子は、標的細胞に移行される外来DNAによって典型的には置き換えられる。レトロウイルスベクターは、典型的にはパッケージングコートへの組込みのためのパッケージングシグナル、gag転写単位の開始を伝達する配列、逆転写のtRNAプライマーに結合するためのプライマー結合部位を含む逆転写のために必要なエレメント、DNA合成の際にRNA鎖の切り替えを誘導する末端反復配列、DNA合成の第2の鎖の合成のためのプライミング部位として作用するプリンリッチ配列5'から3' LTR、及び宿主ゲノムに挿入するようにDNA状態のレトロウイルスの挿入を可能にするLTRの末端付近の特異的配列を含む。この量の核酸は、各転写物のサイズに応じて1つから多数までの遺伝子の送達のために十分である。挿入物中の他の遺伝子と共に正の又は負のいずれかの選択可能マーカーを含むことは好ましい。
【0053】
大部分のレトロウイルスベクターでは複製機構及びパッケージングタンパク質が除去されている(gag、pol及びenv)ことから、ベクターは、それらをパッケージング細胞株中に配置することによって典型的には生成される。パッケージング細胞株は、複製及びパッケージング機構を含有するが、いかなるパッケージングシグナルも欠いているレトロウイルスを用いてトランスフェクト又は形質転換された細胞株である。目的の配列を保有するベクターがこれらの細胞株にトランスフェクトされると、目的の配列を含有するベクターは複製され、ヘルパー細胞によってシスで提供される機構によって新たなレトロウイルス粒子にパッケージングされる。機構のためのゲノムは、それらが必要なシグナルを欠いていることからパッケージングされない。
【0054】
複製欠損アデノウイルスの構築は記載されている(Berknerら、J. Virology 61:1213~1220 (1987); Massieら、Mol. Cell. Biol. 6:2872~2883 (1986); Haj-Ahmadら、J. Virology 57:267~274 (1986); Davidsonら、 J. Virology 61:1226~1239 (1987); Zhang “Generation and identification of recombinant adenovirus by liposome-mediated transfection and PCR analysis” BioTechniques 15:868~872 (1993))。ベクターとしてのこれらのウイルスの使用の利点は、それらが最初に感染した細胞内では複製できるが、新たな感染性ウイルス粒子を形成することができないことから、他の細胞型に伝播できる範囲が限定されていることである。組換えアデノウイルスは、気道上皮、肝細胞、血管内皮、CNS実質及び多数の他の組織部位への直接in vivo送達後に高効率の遺伝子移行を達成することが示されている(Morsy, J. Clin. Invest. 92:1580~1586 (1993); Kirshenbaum, J. Clin. Invest. 92:381~387 (1993); Roessler, J. Clin. Invest. 92:1085~1092 (1993); Moullier, Nature Genetics 4:154~159 (1993); La Salle, Science 259:988~990 (1993); Gomez-Foix, J. Biol. Chem. 267:25129~25134 (1992); Rich, Human Gene Therapy 4:461~476 (1993); Zabner, Nature Genetics 6:75~83 (1994); Guzman, Circulation Research 73:1201~1207 (1993); Bout, Human Gene Therapy 5:3~10 (1994); Zabner, Cell 75:207~216 (1993); Caillaud, Eur. J. Neuroscience 5:1287~1291 (1993);及びRagot, J. Gen. Virology 74:501~507 (1993))、この教示は遺伝子治療のためにレトロウイルスベクターを使用する方法の教示についてその全体が参照により本明細書に組み込まれる。組換えアデノウイルスは、野生型又は複製欠損アデノウイルスと同じ様式で、特定の細胞表面受容体に結合し、その後、ウイルスが受容体媒介エンドサイトーシスによって内部移行されることによって遺伝子形質導入を達成する(Chardonnet and Dales, Virology 40:462~477 (1970); Brown and Burlingham, J. Virology 12:386~396 (1973); Svensson and Persson, J. Virology 55:442~449 (1985); Sethら、J. Virol. 51:650~655 (1984); Sethら、Mol. Cell. Biol., 4:1528~1533 (1984); Vargaら、J. Virology 65:6061~6070 (1991); Wickhamら、Cell 73:309~319 (1993))。
【0055】
本開示の方法における使用のためのウイルスベクターは、E1遺伝子が除去されており、これらのビリオン(virons)はヒト293細胞株等の細胞株において生成されるアデノウイルスに基づくものであってよい。任意選択で、E1及びE3遺伝子の両方がアデノウイルスゲノムから除去される。
【0056】
本発明のポリヌクレオチドを細胞に導入するために使用され得る、本開示の方法における使用のための別の種類のウイルスベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)に基づく。この欠損パルボウイルスは、多くの細胞型に感染でき、ヒトに非病原性であることから、好ましいベクターである。AAV型ベクターは約4から5kbを輸送でき、野生型AAVは第19染色体に安定に挿入することが周知である。この部位特異的組み込み特性を有するベクターは、好ましい。この種類のベクターの特に好ましい実施形態は、Avigen社、San Francisco、CAによって産生されたP4.1 Cベクターであり、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ遺伝子、HSV-tk又は、緑色蛍光タンパク質、GFPをコードする遺伝子等のマーカー遺伝子を含有し得る。
【0057】
本開示の方法における使用のためのAAVウイルスの別の種類では、AAVは、異種性遺伝子に作動可能に連結し、細胞特異的発現を方向付けるプロモーターを含有する少なくとも1つのカセットに隣接する1対の末端逆位配列(ITR)を含有する。この文脈において異種性は、AAV又はB19パルボウイルスの生得ではない任意のヌクレオチド配列又は遺伝子を指す。典型的にはAAV及びB19コード領域は除去されており、安全な無細胞毒性のベクターがもたらされる。AAV ITR又はその改変は、感染力及び部位特異的組み込みを付与するが、細胞傷害性及びプロモーター方向付け細胞特異的発現を付与しない。米国特許第6,261,834号は、AAVベクターに関する材料についてその全体が参照により組み込まれる。
【0058】
他の有用な系として、例えば、複製型及び宿主限定非複製型ワクシニアウイルスベクターが挙げられる。加えて、本開示の核酸配列は、非核酸ベースの系で標的細胞に送達され得る。例えば、本開示のポリヌクレオチドは、電気穿孔法を通じて、又はリポフェクションを通じて、又はリン酸カルシウム沈殿を通じて送達され得る。選択される送達機構は、標的化される細胞の種類及び送達が、例えばin vivo又はin vitroで生じるかどうかに一部依存する。
【0059】
一部の態様では、本開示の方法における使用のためのベクターは、標的化成分を更に含み得る。一部の態様では、ベクターは、標的化成分をコードすることができる核酸配列を含み得る。任意の1つ又は複数周知の標的化成分が使用され得る。例えば、標的化成分は、がん細胞等の特定の細胞型にベクターを方向付けることができる。一部の態様では、1つ又は複数の標的化成分は、これだけに限らないが、核酸配列、ペプチド、抗体、抗体断片又は治療剤であってよい。
【0060】
2.目的の核酸配列及び配列
本開示の方法における使用のための本開示のベクターは、核酸配列を含む。一部の態様では、核酸配列は、目的の配列をコードすることができる。
【0061】
一部の態様では、核酸配列は目的の遺伝子である。用語「目的の遺伝子」は、それが導入される細胞に部分的に又は完全に異種性、すなわち外来性である核酸配列(例えば、治療用遺伝子)を意味し得る。
【0062】
用語「目的の遺伝子」は、それが導入される細胞の内在性遺伝子に部分的に又は完全に相補的である核酸配列も意味し得る。一部の態様では、用語「目的の遺伝子」は、完全な遺伝子配列を含まない。
【0063】
一部の態様では、核酸配列は、治療特性自体を有する核酸配列であり得る。例えば核酸配列は、マイクロRNA、shRNA又はsiRNAであってよく、ここでマイクロRNA、shRNA又はsiRNAは治療剤である。
【0064】
一部の態様では、本明細書において開示される方法における使用のための本開示のベクター中の核酸配列は、選択された核酸の最適な発現のために必要である場合がある1つ又は複数の転写制御配列及び、イントロン等の任意の他の核酸も含み得る。
【0065】
一部の態様では、本明細書において開示される方法における使用のための本開示のベクター中の目的の核酸配列又は遺伝子は、目的の配列をコードすることができる。「目的の配列」は、核酸配列から発現されるペプチド又はポリペプチド配列(例えば、治療用タンパク質)を意味する。
【0066】
一部の態様では、目的の配列は、選択可能マーカー、検出可能マーカー又は治療剤である。一部の態様では、本開示のベクターは、目的の配列をコードすることができる核酸配列又は治療薬それ自体である核酸配列とは別に選択可能マーカー又は検出可能マーカーを含む。
【0067】
上記のとおり、ベクターを考察する場合、好適な選択可能マーカーの例は、これだけに限らないが、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)、チミジンキナーゼ、ネオマイシン、ネオマイシン類似物G418、ハイドロマイシン、ピューロマイシン、ハイグロマイシン耐性、ネオマイシン耐性又はβ-ガラクトシダーゼ(β-gal)であり得る。選択可能マーカーは、ベクター骨格中に存在してよい、又は目的の配列であってよい。
【0068】
検出可能マーカーは、検出可能マーカーを発現させるベクターの位置を追跡又は可視化する目的のために使用され得る。例示的検出可能マーカーとして、これだけに限らないが:緑色蛍光タンパク質(GFP)、青色蛍光タンパク質、シアン蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質及び種々のそれらの誘導体等の種々の蛍光実体;(これだけに限らないが) dsRed、eqFP611、Dronpa、タグRFPs、KFP、EosFP、Dendra、IrisFP等の他の蛍光タンパク質;これだけに限らないが、量子ドット及び他の蛍光色素が挙げられる当技術分野において周知の他の同様の分子;並びにこれらの任意の誘導体又は組合せが挙げられる。検出可能マーカーは、ベクター骨格中に存在してよい、又は目的の配列であってよい。一部の態様では、検出可能マーカーは、選択可能マーカーであってもよい。
【0069】
一部の態様では、治療剤は、これだけに限らないが、cDNA、DNA、mRNA、マイクロRNA、shRNA、siRNA、リボザイム、ガイドRNA分子(gRNA)、RNA誘導型エンドヌクレアーゼタンパク質又はCas9タンパク質又はCpf1タンパク質CRISPR-Casであり得る。一部の態様では、治療剤は、化学療法剤、抗ウイルス剤、抗菌剤、免疫抑制薬又は免疫活性化因子であってよい。
【0070】
一部の態様では、化学療法剤は、これだけに限らないが、アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗悪性腫瘍性抗生物質剤及び有糸分裂阻害剤であってよい。
【0071】
さらなる態様では、抗悪性腫瘍性抗生物質剤は、ドキソルビシン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、エピルビシン、イダルビシン、プリカマイシン、マイトマイシン、ペントスタチン及びバルルビシン、又は薬学的に許容されるその塩から選択される。
【0072】
さらなる態様では、代謝拮抗剤は、ゲムシタビン、5-フルオロウラシル、カペシタビン、ヒドロキシ尿素、メルカプトプリン、ペメトレキセド、フルダラビン、ネララビン、クラドリビン、クロファラビン、シタラビン、デシタビン、プララトレキサート、フロクスウリジン、メトトレキサート、及びチオグアニン、又は薬学的に許容されるその塩から選択される。
【0073】
さらなる態様では、アルキル化剤は、カルボプラチン、シスプラチン、シクロホスファミド、クロラムブシル、メルファラン、カルムスチン、ブスルファン、ロムスチン、ダカルバジン、オキサリプラチン、イホスファミド、メクロレタミン、テモゾロミド、チオテパ、ベンダムスチン及びストレプトゾシン又は薬学的に許容されるその塩から選択される。
【0074】
さらなる態様では、有糸分裂阻害剤は、イリノテカン、トポテカン、ルビテカン、カバジタキセル、ドセタキセル、パクリタキセル、エトポシド(etopside)、ビンクリスチン、イクサベピロン、ビノレルビン、ビンブラスチン及びテニポシド又は薬学的に許容されるその塩から選択される。
【0075】
一部の態様では、本開示のベクターは、2つの核酸配列を含むことができ、ここで一方の核酸配列は目的の配列をコードすることができ、ここで目的の配列は選択可能又は検出可能マーカーであり、第2の核酸配列は目的の配列をコードすることができ、ここで目的の配列は治療剤である。それにより一部の態様では、本開示のベクターは、2つの目的の配列を含むことができ、ここで一方の目的の配列は選択可能又は検出可能マーカーであり、第2の目的の配列は治療剤である。
【0076】
一部の態様では、本開示のベクターは、2つの核酸配列を含むことができ、ここで一方の核酸配列は目的の配列をコードすることができ、ここで目的の配列は選択可能又は検出可能マーカーであり、第2の核酸配列は治療剤である。したがって、一部の態様では2つの核酸配列のうちの1つは治療剤をコードしていないが、代わりに核酸配列が治療剤である。
【0077】
3.医薬組成物及び送達
本明細書に記載の1つ又は複数のベクターを含む医薬組成物が本明細書において開示される。一部の態様では、本明細書に記載のベクターは、医薬組成物中で提供され得る。例えば、本明細書に記載のベクターは、薬学的に許容される担体と共に製剤化され得る。
【0078】
一部の態様では、医薬組成物は治療剤を含み得る。一部の態様では、医薬組成物は治療剤及び本明細書に記載の1つ又は複数のベクターを含み得る。例えば、本明細書に記載の1つ又は複数のベクター及び、化学療法剤等の治療薬を含む医薬組成物が本明細書において開示される。一部の態様では、化学療法剤は、これだけに限らないが、抗がん薬、細胞障害性薬物、疼痛管理薬、シュードモナス菌体外毒素A、非放射性同位元素(例えば、ホウ素中性子捕獲療法のためのホウ素10)及び/又は光増感剤(例えば、フォトフリン、フォスカン(foscan)、5-アミノレブリン酸、モノ-L-アスパルチルクロリンe6、フタロシアニン、メタテトラ(ヒドロキシフェニル)ポルフィリン、テキサフィリン(texaphyrin)、エチルエチオプルプリンスズ)であってよい。一部の態様では、化学療法剤は、これだけに限らないが、アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗悪性腫瘍性抗生物質剤、有糸分裂阻害剤、チェックポイント阻害剤及びキナーゼ阻害剤であってよい。目的の配列の例として上に列挙されたいずれの治療剤も医薬組成物の一部としてベクターとは別に提供されてもよい。
【0079】
薬学的に許容される担体等の担体を更に含む本明細書に記載される1つ又は複数のベクターを含む組成物が本明細書において開示される。例えば、本明細書において開示されるベクター及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物が開示される。
【0080】
例えば、本明細書に記載のベクターを含む医薬組成物は、薬学的に許容される担体を含み得る。「薬学的に許容される」によって、活性成分のいかなる分解も最小化しかつ対象におけるいかなる有害な副作用も最小化するように選択される、当業者に周知である材料又は担体が意味される。担体の例として、ジミリストイルホスファチジル(DMPC)、リン酸緩衝生理食塩水又は多胞性リポソームが挙げられる。例えば、PG:PC:コレステロール:ペプチド又はPC:ペプチドは、本発明において担体として使用され得る。他の好適な薬学的に許容される担体及びそれらの配合物は、Remington: The Science and Practice of Pharmacy (19th ed.) ed. A.R. Gennaro、Mack Publishing Company、Easton、PA 1995に記載されている。典型的には、適切な量の薬学的に許容される塩は、配合物において配合物を等張にするために使用される。薬学的に許容される担体の他の例として、これだけに限らないが、生理食塩水、リンゲル溶液及びブドウ糖溶液が挙げられる。溶液のpHは、約5から約8又は約7から約7.5であり得る。さらなる担体として、組成物を含有する固形疎水性ポリマーの半透性マトリックス等の徐放調製物が挙げられ、そのマトリックスは、成型品の形態、例えば、フィルム、ステント(血管再建術手順の際に血管に埋入される)、リポソーム又は微小粒子の形態である。ある特定の担体が、例えば投与の経路及び投与されるベクターの濃度に応じて更に好ましい場合があることは当業者に明らかである。最も典型的にはこれらは、滅菌水、生理食塩水及び生理学的pHの緩衝液等の溶液が挙げられる、ヒトへの薬物の投与のための標準的担体である。
【0081】
医薬組成物は、本発明のポリペプチド、ペプチド、核酸、ベクターの意図する活性が損なわれない限り、担体、増粘剤、希釈剤、緩衝液、保存剤等も含み得る。医薬組成物は、抗菌剤、抗炎症剤、麻酔剤等の1つ又は複数の活性成分も(本発明の組成物に加えて)含み得る。医薬組成物は、局所又は全身性処置が望ましいかどうか、及び処置される領域に応じて多数の方法で投与され得る。
【0082】
非経口投与の調製物として、滅菌水性又は非水性溶液、懸濁剤及び乳剤が挙げられる。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油等の植物油及びオレイン酸エチル等の注射可能な有機エステルである。水性担体として、生理食塩水及び緩衝媒体を含む、水、アルコール性/水性溶液、乳剤又は懸濁剤が挙げられる。非経口ビヒクルとして、塩化ナトリウム溶液、リンゲルブドウ糖、ブドウ糖及び塩化ナトリウム、乳酸リンゲル又は固定油が挙げられる。静脈内ビヒクルとして、補充液及び栄養補充薬、電解質補充薬(リンゲルブドウ糖に基づくもの等)等が挙げられる。例えば抗菌剤、抗酸化剤、キレート薬剤及び不活性ガス等の保存剤及び他の添加物も存在してよい。
【0083】
最適な投与のための配合物として、軟膏、ローション剤、クリーム剤、ゲル剤、滴下剤、座薬、スプレー剤、液剤及び粉剤が挙げられる。従来の医薬用担体、水性の、粉末の又は油性の基材、増粘剤等が必要である又は望ましい場合がある。
【0084】
経口投与のための組成物として、粉剤若しくは顆粒剤、水若しくは非水性媒体中の懸濁剤若しくは溶液、カプセル、サシェ(sachet)又は錠剤が挙げられる。増粘剤、香味剤、希釈剤、乳化剤、分散補助剤(dispersing aid)又は結合剤は望ましい場合がある。一部の組成物は、塩酸、臭化水素酸、過塩素酸、硝酸、チオシアン酸、硫酸及びリン酸等の無機酸、並びにギ酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸及びフマル酸等の有機酸との反応によって、又は水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム等の無機塩基並びにモノ-、ジ-、トリアルキル及びアリールアミン及び置換エタノールアミン等の有機塩基との反応によって形成された薬学的に許容される酸又は塩付加塩として投与される可能性もある。
【0085】
本明細書に記載される方法において、本明細書において開示されるベクター又は医薬組成物の対象への送達(又は投与又は導入)は、種々の機序を介してであってよい。
【0086】
本開示の方法は、細胞にベクターを導入する工程を含む。一部の態様では、標的部位にベクターを導入することを含む方法。一部の態様では、方法は対象にベクターを導入することを含む。それにより、対象は、本開示のベクターについての標的部位である細胞を含む。一部の態様では、細胞にベクターを導入することを含む、すべての開示される方法は、対象にベクターを導入することも含む。
【0087】
C.交流電場
本明細書において開示される方法は、交流電場を含む。一部の態様では、本明細書において開示される方法において使用される交流電場は、腫瘍治療電場である。一部の態様では、交流電場は、交流電場が印加される細胞又は状態の種類に応じて変動し得る。一部の態様では、交流電場は、対象の身体に置かれた1つ又は複数の電極を通じて印加され得る。一部の態様では、2対以上の電極がある場合もある。例えば、アレイは、患者の全面/背面及び側面に置かれてよく、本明細書において開示されるシステム及び方法を用いて使用され得る。一部の態様では、2対の電極が使用される場合、交流電場は対の電極の間で交流であってよい。例えば、第1の対の電極は対象の前面及び背面に置かれてよく、第2の対の電極は対象のいずれかの側面に置かれてよく、次いで交流電場は印加されてよく、前面及び背面の電極の間に、次いで側面から側面の電極の間で交替してよい。
【0088】
一部の態様では、交流電場の周波数は、50kHzから1MHzの間である。一部の態様では、交流電場の周波数は、100から500kHzの間である。交流電場の周波数は、これだけに限らないが50から500kHzの間、100から500kHzの間、25kHzから1MHzの間、50から190kHzの間、25から190kHzの間、180から220kHzの間又は210から400kHzの間であり得る。一部の態様では、交流電場の周波数は、50kHz、100kHz、150kHz、200kHz、250kHz、300kHz、350kHz、400kHz、450kHz、500kHz、600kHz、700kHz、800kHz、900kHz、1MHz又はこれらの間の任意の周波数での電場であり得る。一部の態様では、交流電場の周波数は、約200kHzから約400kHz、約250kHzから約350kHzであり、約300kHzであり得る。
【0089】
一部の態様では、交流電場の場の強度は1から4V/cm RMSであり得る。一部の態様では、さまざまな場の強度が使用され得る(例えば、0.1から10V/cmの間)。一部の態様では、場の強度は1.75V/cm RMSであり得る。一部の実施形態では、場の強度は少なくとも1V/cm RMSである。他の実施形態では、例えば、2つ以上の周波数を同時に組み合わせて、及び/又は2つ以上の周波数を異なる時期に印加して、場の強度の組合せが印加される。
【0090】
一部の態様では、交流電場は、0.5時間から72時間の範囲のさまざまな間隔で印加され得る。一部の態様では、さまざまな持続時間が使用され得る(例えば、0.5時間から14日間の間)。一部の態様では、交流電場の印加は、定期的に反復され得る。例えば、交流電場は、2時間の持続時間で毎日印加され得る。
【0091】
一部の態様では、曝露は、少なくとも6時間、少なくとも12時間、少なくとも24時間、少なくとも36時間、少なくとも48時間又は少なくとも72時間又はそれ以上持続し得る。
【0092】
本開示の方法は、1つ又は複数の交流電場を細胞に又は対象に印加することを含む。一部の態様では、交流電場は、標的部位又は腫瘍標的部位に印加される。交流電場を細胞に印加する場合、これは、細胞を含む対象に交流電場を印加することをしばしば指し得る。したがって、対象の標的部位に交流電場を印加することは、細胞に交流電場を印加することを生じる。
【0093】
D.輸送方法
細胞に一定期間交流電場を印加する工程であって、交流電場の印加が細胞膜の透過性を増加させる工程;及び細胞に組成物を導入する工程であって、細胞膜の透過性の増加が組成物が細胞膜を越えられるようにする工程を含む、細胞の細胞膜を越えて組成物を輸送するための方法が開示される。一部の態様では、組成物は、ベクターである、ベクターを含む、又はベクターを含む医薬組成物である。
【0094】
一部の態様では、本明細書において開示されるいずれのベクター又は医薬組成物も細胞の細胞膜を越えて組成物(例えば、ベクター)を輸送するための本開示の方法において使用され得る。
【0095】
細胞に一定期間交流電場を印加する工程であって、交流電場の印加が細胞膜の透過性を増加させる工程;及び細胞にベクターを導入する工程であって、細胞膜の透過性の増加がベクターが細胞膜を越えられるようにする工程を含む、細胞の細胞膜を越えてベクターを輸送するための方法が開示される。
【0096】
細胞に一定期間交流電場を印加する工程であって、交流電場の印加が細胞膜の透過性を増加させる工程;及び細胞にベクターを導入する工程であって、細胞膜の透過性の増加がベクターが細胞膜を越えられるようにする工程を含む、細胞の細胞膜を越えるベクターの輸送を改善するための方法も開示される。
【0097】
一部の態様では、細胞は標的細胞である。一部の態様では、細胞はがん又は腫瘍細胞である。一部の態様では、細胞はがん又は腫瘍細胞ではない。一部の態様では、細胞はウイルス感染細胞である。一部の態様では、がん細胞は、これだけに限らないが、神経膠芽腫細胞、子宮肉腫細胞、乳腺癌細胞、膵臓がん細胞、非小細胞肺がん、肝細胞、胃がん細胞、脳がん細胞であり得る。一部の態様では、細胞は、遺伝子治療の必要がある任意の細胞であり得る。例えば、特定のタンパク質が欠損している細胞は、交流電場によって標的化されてよく、それによりベクターは、欠損タンパク質を細胞に送達するために使用され得る。一部の態様では、細胞は、ウイルス感染細胞であってよく、ここで細胞は、これだけに限らないが、インフルエンザウイルス、アデノウイルス、コロナウイルス及びレンチウイルスから選択されるウイルスを感染される。
【0098】
一部の態様では、細胞の細胞膜を越えて組成物又はベクターを輸送するための方法は、細胞に一定期間交流電場を印加することを一部含む。一部の態様では、交流電場は、ベクターをがん細胞だけに導入するために使用され得る。一部の態様では、交流電場は、約200kHzの周波数で印加され得る。一部の態様では、交流電場は、50から190kHzの間の周波数で印加され得る。一部の態様では、交流電場は、210から400kHzの間の周波数で印加され得る。一部の態様では、交流電場は、250から350kHzの間の周波数で印加され得る。一部の態様では、交流電場は、少なくとも1V/cm RMSの場の強度を有する。一部の態様では、交流電場は、50から1MHzの間の周波数を有する。一部の態様では、交流電場は、50から190kHzの間の周波数を有する。一部の態様では、交流電場は、210から400kHzの間の周波数を有する。一部の態様では、交流電場は、250から350kHzの間の周波数を有する。一部の態様では、交流電場は、少なくとも1V/cm RMSの場の強度を有する。一部の態様では、交流電場は、1から4V/cm RMSの間の場の強度を有する。
【0099】
一部の態様では、組成物又はベクターを導入する工程は、所与の時期に開始し、交流電場を印加する工程は、所与の時期の少なくとも12時間後に終了する。一部の態様では、交流電場を印加する工程は、所与の時期の少なくとも1時間前に開始する。一部の態様では、交流電場を印加する工程は、所与の時期の少なくとも1からおよそ24時間前に開始する。
【0100】
一部の態様では、交流電場を印加すること、及び組成物又はベクターを導入することは同時に生じる。一部の態様では、交流電場を印加すること、及び組成物又はベクターを導入することは連続して生じる。一部の態様では、交流電場を印加することは、組成物又はベクターを導入することの前に生じる。
【0101】
一部の態様では、細胞はがん細胞であり、ここでがん細胞は神経膠芽腫細胞を含み、交流電場は250kHzから350kHzの間である周波数を有する。
【0102】
一部の態様では、細胞はがん細胞であり、ここでがん細胞は子宮肉腫細胞を含み、交流電場は125kHzから175kHzの間である周波数を有する。
【0103】
一部の態様では、細胞はがん細胞であり、ここでがん細胞は乳腺癌細胞を含み、交流電場は75kHzから175kHzの間である周波数を有する。
【0104】
一部の態様では、組成物又はベクターは、腫瘍内に、頭蓋内に、脳室内に、くも膜下腔内に、硬膜外に、硬膜内に、血管内に、静脈内に(標的化若しくは非標的化)、動脈内に、筋肉内に、皮下に、腹腔内に、経口で、鼻腔内に、腫瘍内注射(例えば、手術若しくは生検の際のコンピューター断層撮影ガイド下)を介して又は吸入を介して、導入される。
【0105】
一部の態様では、組成物又はベクターは、細胞に標的化された又は標的化されていない様式で導入される。
【0106】
一部の態様では、組成物又はベクターは、1回、2回、3回又はそれ以上導入される。投与の間の時間は、数時間、数日、数週間又は数年であってよい。
【0107】
一部の態様では、組成物又はベクターは、目的の配列をコードすることができる核酸配列を含む。一部の態様では、目的の配列は、選択可能マーカー、検出可能マーカー又は治療剤である。一部の態様では、ベクターは核酸配列を含み、ここで核酸配列は治療剤である。例えば、核酸配列は、マイクロRNA、shRNA又はsiRNAであってよく、ここでマイクロRNA、shRNA又はsiRNAは治療剤である。
【0108】
一部の態様では、選択可能マーカー又は検出可能マーカーは、これだけに限らないが、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)、チミジンキナーゼ、ネオマイシン、ネオマイシン類似物G418、ハイドロマイシン、ピューロマイシン、ハイグロマイシン耐性、ネオマイシン耐性、β-ガラクトシダーゼ(β-gal)、蛍光タンパク質(例えば、緑色、青色、赤色蛍光タンパク質)であり得る。
【0109】
一部の態様では、本開示の組成物又はベクターは、2つの核酸配列を含むことができ、ここで一方の核酸配列は目的の配列をコードすることができ、ここで目的の配列は選択可能又は検出可能マーカーであり、第2の核酸配列は目的の配列をコードすることができ、ここで目的の配列は治療剤である。それにより一部の態様では、本開示の組成物又はベクターは、2つの目的の配列を含むことができ、ここで一方の目的の配列は選択可能又は検出可能マーカーであり、第2の目的の配列は治療剤である。
【0110】
一部の態様では、本開示の組成物又はベクターは、2つの核酸配列を含むことができ、ここで一方の核酸配列は目的の配列をコードすることができ、目的の配列は選択可能又は検出可能マーカーであり、第2の核酸配列は治療剤である。したがって、一部の態様では2つの核酸配列のうちの1つは治療剤をコードしていないが、代わりに核酸配列が治療剤である。
【0111】
一部の態様では、ベクターはプラスミド、コスミド、ファージミド又はウイルスベクターである。一部の態様では、ベクターはウイルスベクターである。例えばウイルスベクターは、これだけに限らないが、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルス又はヘルペスウイルスであり得る。一部の態様では、ベクターは本明細書に記載のベクターのいずれかであり得る。
【0112】
一部の態様では、組成物又はベクターは医薬組成物中で提供される。一部の態様では、医薬組成物は、本明細書において開示される医薬組成物の1つ又は複数であり得る。一部の態様では、医薬組成物は化学療法剤等の治療剤を更に含み得る。
【0113】
一部の態様では、組成物又はベクターは、標的化成分を更に含み得る。一部の態様では、ベクターは標的化成分をコードすることができる核酸配列を含み得る。周知の標的化成分の任意の1つ又は複数が使用され得る。例えば、標的化成分は、がん細胞等の特定の細胞型に組成物又はベクターを方向付け得る。一部の態様では、1つ又は複数の標的化成分は、これだけに限らないが、核酸配列、ペプチド、抗体、抗体断片又は治療剤であり得る。
【0114】
一部の態様では、2019年7月3日出願PCT/US19/40479の方法は、本明細書において開示される方法において使用され得る。例えば、2019年7月3日出願PCT/US19/40479は、同書の教示について参照により本明細書に組み込まれ、細胞の細胞膜を越えて物質を送達する方法及びプロセスを記載している。例えば、2019年7月3出願PCT/US19/40479は、細胞に一定期間交流電場を印加する工程であって、交流電場の印加が細胞膜の透過性を増加させる工程;及び細胞近傍に物質を導入する工程であって、細胞膜の透過性の増加が物質が細胞膜を越えられるようにする工程を含む、方法及びプロセスを記載している。
【0115】
一部の態様では、組成物は、in vivo又はin vitroで細胞膜を越えて輸送され得る。一部の態様では、組成物は細胞を含む対象に投与されてよく、対象の内側に入ると、組成物は、交流電場の印加との組み合わせで細胞膜を越えて輸送され得る。一部の態様では、組成物は細胞培養中及び交流電場の印加で1つ又は複数の細胞に投与され得る。一部の態様では、組成物が交流電場の印加との組合せで細胞膜を越えて輸送されると、細胞は対象に導入又は再導入され得る。
【0116】
E.処置方法
細胞にベクターを輸送する上記方法は、それを必要とする対象を処置するために使用され得る。一部の態様では、交流電場の使用は、細胞膜を越える組成物又はベクターの輸送を可能にする、又は増加させ、細胞の内側に入ると、組成物又はベクターはそれを必要とする対象に治療を、それにより処置を提供できる。
【0117】
本開示の処置方法は、in vivo又はin vitroでの交流電場の印加を含み得る。それにより一部の態様では、細胞に交流電場を印加することは、細胞を含む対象に交流電場を印加することを含む。一部の態様では、細胞に交流電場を印加することは、培養中の細胞に交流電場を印加することを含み、次に細胞は処置される対象に導入され得る。一部の態様では、組成物が交流電場の印加との組合せで細胞膜を越えて輸送されると、細胞は対象に導入又は再導入され得る。
【0118】
一部の態様では、追加的治療又は治療レジメン(例えば、化学療法又は放射線治療)は、組成物(例えば、ベクター)が対象の細胞に輸送される前に、同時に又は後に対象に投与され得る。
【0119】
1.ベクターを用いた処置
細胞に一定期間交流電場を印加する工程であって、交流電場の印加が細胞膜の透過性を増加させる工程;及び細胞に組成物を導入する工程であって、細胞膜の透過性の増加が組成物が細胞膜を越えられるようにし、細胞の内側に入ると、組成物が対象に治療効果を提供する工程を含む、それを必要とする対象を処置するための方法が開示される。一部の態様では、組成物はベクター又はベクターを含む医薬組成物である。
【0120】
一部の態様では、本明細書において開示されるベクター又は医薬組成物のいずれも、細胞の細胞膜を越えてベクターを輸送するための本開示の方法において使用され得る。
【0121】
細胞に一定期間交流電場を印加する工程であって、交流電場の印加が細胞膜の透過性を増加させる工程;及び細胞にベクターを導入する工程であって、細胞膜の透過性の増加がベクターが細胞膜を越えられるようにし、細胞の内側に入ると、ベクターが対象に治療効果を提供する工程を含む、それを必要とする対象を処置するための方法が開示される。
【0122】
一部の態様では、それを必要とする対象は、治療薬を保有するベクターを用いて処置され得る任意の診断された医学的状態を有する対象であり得る。例えば、遺伝子治療から利益を得る対象は、それを必要とする対象である。一部の態様では、1つ又は複数の遺伝子がノックアウト又はノックダウンされる必要がある対象は、それを必要とする対象である。一部の態様では、対象はがんを有すると診断された対象であり得る。一部の態様では、対象は自己免疫障害を有すると診断された対象であり得る。一部の態様では、対象はタンパク質欠乏症を有すると診断された対象であり得る。
【0123】
一部の態様では、治療剤は、これだけに限らないが、cDNA、DNA、mRNA、マイクロRNA、shRNA、siRNA、リボザイム、ガイドRNA分子(gRNA)、RNA誘導型エンドヌクレアーゼタンパク質又はCas9タンパク質又はCpf1タンパク質CRISPR-Casであり得る。一部の態様では、治療剤は、化学療法剤、抗ウイルス剤、抗菌剤、免疫抑制薬又は免疫活性化因子であり得る。
【0124】
一部の態様では、治療剤は、対象が欠損している場合がある特定のタンパク質である。一部の態様では、治療剤はCRISPR-Cas9システムの1つ又は複数の要素であってよい。例えば一部の態様では、治療剤は、切断される特定の遺伝子を標的にするgRNA、又はgRNA標的部位で切断するエンドヌクレアーゼであり得る。一例では、ベクターは、PD-1を標的化するgRNAを含み得る。T細胞でのPD-1発現を低下させる、又は除去するためにCRISPRを使用することは、がん細胞の更に良好な死滅を可能にできる。一部の態様では、T細胞でのPD-1は、がん細胞上のPD-L1に結合し、細胞が健康な細胞であることをT細胞にシグナル伝達し、それによりT細胞はがん細胞を死滅させない。PD-1を標的化するgRNAを含むベクターを導入するために本開示の方法を使用することは、PD-1遺伝子を切断するプロセスを補助し、発現を低下させ、それによりPD-L1を発現するがん細胞のより多い死滅をもたらす。
【0125】
一部の態様では、追加的治療又は治療レジメン(例えば、化学療法又は放射線治療)は、組成物(例えば、ベクター)が対象の細胞に輸送される前に、同時に又は後に対象に投与され得る。
【0126】
2.ベクターに加えて第2の交流電場を用いた処置
第1の交流電場を第1の周波数で細胞に第1の期間について印加する工程であって、第1の交流電場の第1の周波数での細胞への第1の期間の印加が細胞の細胞膜の透過性を増加させる工程;細胞にベクターを導入する工程であって、細胞の細胞膜の透過性の増加がベクターが細胞膜を越えられるようにし、ベクターが治療剤をコードすることができる核酸配列を含む工程;及び第2の交流電場を第2の周波数で細胞に第2の期間について印加する工程であって、第2の周波数が第1の周波数とは異なる工程を含む、それを必要とする対象を処置するための方法が開示される。
【0127】
一部の態様では、細胞はウイルス感染細胞であってよい。一部の態様では、ベクターは治療剤である、又は治療剤をコードすることができる核酸配列を含む。例えば、ベクターは、抗ウイルス剤又は免疫モジュレーターをコードすることができる核酸配列を含み得る。
【0128】
一部の態様では、第2の交流電場は、ウイルス複製及び/又は感染を予防する。したがって処置は、ベクター、並びにウイルス複製及び/又は感染を予防する交流電場によって提供される治療剤の二重処置である。
【0129】
一部の態様では、第1の交流電場と第2の交流電場とは異なる。第1の及び第2の交流電場は、本明細書において開示されるものの1つ又は複数であってよい。一部の態様では、第1の若しくは第2の交流電場又は両方は、50kHzから1MHzの間の周波数を有してよい。交流電場は、細胞型に基づいて変動し得る。例えば第1の交流電場は、250kHzから350kHzの間の第1の周波数を有してよく、第2の交流電場は150kHzから250kHzの間の周波数を有してよい;第1の交流電場は、125kHzから175kHzの間の第1の周波数を有してよく、第2の交流電場は75kHzから125kHzの間の周波数を有してよい;又は第1の交流電場は、75kHzから175kHzの間の第1の周波数を有してよく、第2の交流電場は100kHzから300kHzの間の周波数を有してよい。一部の態様では、交流電場は少なくとも1V/cm RMSの場の強度を有する。一部の態様では、交流電場は1から4V/cm RMSの間の場の強度を有する。
【0130】
一部の態様では、第2の期間は、その間に細胞に第2の交流電場が第2の周波数で印加される複数の非連続的な間欠期を含み、複数の非連続的な間欠期は合計で少なくとも1週間加えられる。
【0131】
一部の態様では、第1の交流電場及び第2の交流電場は、両方ともin vivoで発生してよい。一部の態様では、第1の交流電場及び第2の交流電場は両方ともin vitroで発生してよい。一部の態様では、第1の交流電場はin vitroで発生し、第2の交流電場はin vivoで発生する。一部の態様では、組成物が交流電場の印加との組合せで細胞膜を越えて輸送されると、細胞は対象に導入又は再導入され得る。
【0132】
一部の態様では、追加的治療又は治療レジメン(例えば、化学療法又は放射線治療)は、組成物(例えば、ベクター)が対象の細胞に輸送される前に、同時に又は後に対象に投与され得る。
【0133】
F.細胞を死滅させる方法
細胞にベクターを輸送する上記方法は、細胞を死滅させるために使用され得る。一部の態様では、交流電場の使用は、細胞膜を越えたベクターの輸送を可能にする、又は増加させ、細胞の内側に入ると、ベクターは治療を提供でき、治療は細胞死を生じる。
【0134】
細胞にベクターを輸送する上記方法は、細胞のアポトーシスを誘導するために使用され得る。一部の態様では、交流電場の使用は、細胞膜を越えたベクターの輸送を可能にする、又は増加させ、細胞の内側に入ると、ベクターは治療を提供でき、治療は細胞のアポトーシスを生じる。
【0135】
一部の態様では、追加的治療又は治療レジメン(例えば、化学療法又は放射線治療)は、組成物(例えば、ベクター)が対象の細胞に輸送される前に、同時に又は後に対象に投与され得る。
【0136】
1.ベクター治療を用いて細胞の生存率を低下させること
細胞に一定期間第1の交流電場を第1の周波数で印加する工程であって、第1の交流電場の印加が細胞膜の透過性を増加させる工程;細胞にベクターを導入する工程であって、細胞膜の透過性の増加がベクターが細胞膜を越えられるようにし、ベクターが治療剤をコードすることができる核酸配列を含み、ベクターが細胞膜を越えると、ベクターは治療剤をコードしており、治療剤の存在が細胞の生存率を低下させる工程を含む、細胞の生存率を低下させる方法が開示される。一部の態様では、細胞は腫瘍又はがん細胞である。一部の態様では、がん細胞は神経膠芽腫細胞、子宮肉腫細胞、乳腺癌細胞、膵臓がん細胞、非小細胞肺がん、肝細胞、胃がん細胞、脳がん細胞である。
【0137】
一部の態様では、治療剤はアポトーシス促進性因子であり得る。一部の態様では、治療薬は、これだけに限らないが、サイトカイン、p53、自殺遺伝子(例えば、シトシンデアミナーゼ/5-フルオロシトシン及び単純ヘルペスウイルス/ガンシクロビル)又は周知のアポトーシス遺伝子の活性化因子であり得る。
【0138】
一部の態様では、交流電場は、細胞にベクターを輸送するために記載されたもののいずれであってもよい。
【0139】
一部の態様では、細胞は腫瘍又はがん細胞である。一部の態様では、がん細胞は神経膠芽腫細胞、子宮肉腫細胞、乳腺癌細胞、膵臓がん細胞、非小細胞肺がん、肝細胞、胃がん細胞、脳がん細胞である。
【0140】
一部の態様では、ベクターを導入する工程は所与の時期に開始し、ここで交流電場を印加する工程は所与の時期の少なくとも12時間後に終了する。一部の態様では、交流電場を印加する工程は、所与の時期の少なくとも1時間前に開始する。一部の態様では、交流電場を印加する工程は、所与の時期の少なくとも1からおよそ24時間前に開始する。
【0141】
一部の態様では、追加的治療又は治療レジメン(例えば、化学療法又は放射線治療)は、組成物(例えば、ベクター)が対象の細胞に輸送される前に、同時に又は後に対象に投与され得る。
【0142】
2.ベクター治療に加えて第2の交流電場を用いて細胞の生存率を低下させること
一部の態様では、細胞の生存率を低下させる本開示の方法は、第2の交流電場を第2の周波数で投与することを更に含み得る。
【0143】
第1の交流電場を第1の周波数で細胞に第1の期間について印加する工程であって、第1の交流電場の第1の周波数での細胞への第1の期間の印加ががん細胞の細胞膜の透過性を増加させる工程;細胞にベクターを導入する工程であって、細胞の細胞膜の透過性の増加がベクターが細胞膜を越えられるようにする工程;及び第2の交流電場を第2の周波数で細胞に第2の期間について印加する工程であって、第2の周波数が第1の周波数とは異なり、第2の周波数での第2の交流電場が細胞の生存率を低下させる工程を含む、細胞の生存率を低下させる方法が開示される。
【0144】
それにより、一部の態様では第2の交流電場は腫瘍治療電場である。一部の態様では、第1の交流電場と第2の交流電場とは異なる。第1の及び第2の交流電場は、本明細書において開示されるものの1つ又は複数であってよい。一部の態様では、第1の若しくは第2の交流電場又は両方は、50kHzから1MHzの間の周波数を有してよい。例えば一部の態様では、がん細胞は神経膠芽腫細胞を含み、第1の交流電場は250kHzから350kHzの間の第1の周波数を有してよく、第2の交流電場は150kHzから250kHzの間の周波数を有してよい。一部の態様では、がん細胞は子宮肉腫細胞を含み、第1の交流電場は125kHzから175kHzの間の第1の周波数を有してよく、第2の交流電場は75kHzから125kHzの間の周波数を有してよい。一部の態様では、がん細胞は乳腺癌細胞を含み、第1の交流電場は75kHzから175kHzの間の第1の周波数を有してよく、第2の交流電場は100kHzから300kHzの間の周波数を有してよい。交流電場は、細胞型に基づいて変動し得る。
【0145】
一部の態様では、第1の交流電場は少なくとも1V/cm RMSの場の強度を有する。
【0146】
一部の態様では、第2の交流電場は処置である。一部の態様では、第2の交流電場は、がん細胞等の細胞を死滅させることができる。
【0147】
細胞内部にベクターを輸送する交流電場を使用することによって、細胞の生存率を低下させる本開示の方法は、更に効率的な応答(細胞の生存率の低下の増加又はアポトーシスの増加)のために交流電場の使用と組み合わされ得る。
【0148】
第1の交流電場を第1の周波数で細胞に第1の期間について印加する工程であって、第1の交流電場の第1の周波数での細胞への第1の期間の印加が細胞の細胞膜の透過性を増加させる工程;細胞にベクターを導入する工程であって、細胞膜の透過性の増加がベクターが細胞膜を越えられるようにする工程;及び
第2の交流電場を第2の周波数で細胞に第2の期間について印加する工程であって、第2の周波数が第1の周波数とは異なり、第2の周波数での第2の交流電場が細胞の生存率を低下させる工程を含む、細胞の生存率を低下させる方法が開示される。
【0149】
一部の態様では、細胞は腫瘍又はがん細胞である。一部の態様では、がん細胞は神経膠芽腫細胞、子宮肉腫細胞、乳腺癌細胞、膵臓がん細胞、非小細胞肺がん、肝細胞、胃がん細胞、脳がん細胞である。
【0150】
一部の態様では、第2の交流電場は腫瘍治療電場である。一部の態様では、第1の交流電場と第2の交流電場とは異なる。第1の及び第2の交流電場は、本明細書において開示されるものの1つ又は複数であってよい。一部の態様では、第1の若しくは第2の交流電場又は両方は、50kHzから1MHzの間の周波数を有してよい。交流電場は、細胞型に基づいて変動し得る。例えば、細胞型に関わらず第1の交流電場は250kHzから350kHzの間の第1の周波数を有してよく、第2の交流電場は150kHzから250kHzの周波数を有してよい;第1の交流電場は125kHzから175kHzの間の第1の周波数を有してよく、第2の交流電場は75kHzから125kHzの周波数を有してよい;又は第1の交流電場は75kHzから175kHzの間の第1の周波数を有してよく、第2の交流電場は100kHzから300kHzの周波数を有してよい。一部の態様では、交流電場は少なくとも1V/cm RMSの場の強度を有する。一部の態様では、交流電場は1から4V/cm RMSの間の場の強度を有する。
【0151】
一部の態様では、ベクターを導入する工程は、所与の時期に開始し、交流電場を印加する工程は、所与の時期の少なくとも12時間後に終了する。一部の態様では、交流電場を印加する工程は、所与の時期の少なくとも1時間前に開始する。一部の態様では、交流電場を印加する工程は、所与の時期の少なくとも1からおよそ24時間前に開始する。
【0152】
一部の態様では、第2の期間は、第2の交流電場が第2の周波数で細胞に印加される際に複数の連続しない間欠期を含み、複数の連続しない間欠期は合計で少なくとも1週間になる。
【0153】
一部の態様では、細胞は、生存している対象の身体にに存在しており、ここで第1の交流電場は、第1の交流電場を対象の身体に印加することによって細胞に印加され、第2の交流電場は、第2の交流電場を対象の身体に印加することによって細胞に印加され、ここで導入する工程はベクターを対象に投与する工程を含む。
【0154】
一部の態様では、追加的治療又は治療レジメン(例えば、化学療法又は放射線治療)は、組成物(例えば、ベクター)が対象の細胞に輸送される前に、同時に又は後に対象に投与され得る。
【0155】
G.検出方法
1.検出
細胞にベクターを輸送する上記方法は、細胞を検出するために使用され得る。一部の態様では、交流電場の使用は、細胞膜を越えるベクターの輸送を可能にする、又は増加させ、細胞の内側に入ると、ベクターは検出可能マーカーをコードでき、検出可能マーカーは細胞の検出を可能にする。
【0156】
特定の細胞型を有する1つ又は複数の細胞に一定期間交流電場を第1の周波数で印加する工程であって、第1の交流電場の印加が細胞膜の透過性を増加させる工程; 1つ又は複数の細胞にベクターを導入する工程であって、1つ又は複数の細胞膜の透過性の増加がベクターが1つ又は複数の細胞膜を越えられるようにし、ベクターが検出可能又は選択可能マーカーをコードすることができる核酸配列を含み、ベクターが1つ又は複数の細胞膜を越えると、ベクターは検出可能又は選択可能マーカーをコードしている工程;及び検出可能又は選択可能マーカーを検出する工程であって、検出可能又は選択可能マーカーの存在が1つ又は複数の特定の細胞の存在を示す工程を含む、特定の細胞型を検出する方法が開示される。
【0157】
一部の態様では、細胞は腫瘍又はがん細胞である。一部の態様では、がん細胞は神経膠芽腫細胞、子宮肉腫細胞、乳腺癌細胞、膵臓がん細胞、非小細胞肺がん、肝細胞、胃がん細胞、脳がん細胞である。
【0158】
一部の態様では、特定の細胞型は疾患細胞である。例えば、一部の態様では、特定の細胞型はがん細胞である。一部の態様では、疾患細胞は健康な細胞には存在しない特定の細胞表面マーカーを発現している細胞として同定され得る。それにより、一部の態様では、ベクターは特定の細胞型に標的化される。ベクターに標的化分子を加えることは、当技術分野において周知であり、例えば、特定のリガンドを標的化する分子は、ウイルス表面に組み込まれ得る、及び/又はウイルスエンベロープタンパク質を変更し得る。一部の態様では、がん特異的抗体(例えば、CD20抗体)は、ウイルスベクターに組み込まれてよく、それによりCD20抗体は、ベクターをCD20陽性細胞に方向付け、ウイルスが CD20陽性細胞を形質導入することを可能にする。ウイルスが細胞に進入すると、検出可能マーカーは検出され得、それにより細胞をCD20陽性細胞として同定する。
【0159】
一部の態様では、交流電場は、細胞へのベクターの輸送について記載されたもののいずれであってもよい。
【0160】
一部の態様では、ベクターを導入する工程は、所与の時期に開始し、交流電場を印加する工程は、所与の時期の少なくとも12時間後に終了する。一部の態様では、交流電場を印加する工程は、所与の時期の少なくとも1時間前に開始する。一部の態様では、交流電場を印加する工程は、所与の時期の少なくとも1からおよそ24時間前に開始する。
【0161】
2.検出及び処置
一部の態様では、特定の細胞型を検出する方法は、細胞を処置することを更に含み得る。一部の態様では、ベクターは治療剤を更に含む。一部の態様では、治療剤は、治療剤をコードすることができる核酸配列が活性化可能であり得ることに関して、「オン」であってよい。一部の態様では、特定の細胞型(例えば、がん細胞)が検出されると、次いで治療が投与され得る。それにより、治療は、ベクターの一部として、又は検出が確認され次第、別に投与されてよい。一部の態様では、治療を投与することは、ベクターが投与される任意の技術を使用して実施され得る。
【0162】
細胞に一定期間第1の交流電場を第1の周波数で印加する工程であって、交流電場の印加が細胞膜の透過性を増加させる工程;細胞にベクターを導入する工程であって、細胞膜の透過性の増加がベクターが細胞膜を越えられるようにし、ベクターが治療剤及び検出可能/選択可能マーカーをコードすることができる核酸配列を含み、ベクターが細胞に進入すると、ベクターは治療剤及び検出可能/選択可能マーカーをコードしている工程、並びに検出可能/選択可能マーカーを検出する工程であって、検出可能/選択可能マーカーの存在が処置の必要がある細胞の存在を示し、ベクターによってコードされる治療剤が細胞を処置する工程を含む、それを必要とする細胞の検出及び処置方法が開示される。一部の態様では、「細胞を処置」は、細胞のアポトーシスの誘導を意味し得る。
【0163】
一部の態様では、細胞は腫瘍又はがん細胞である。一部の態様では、がん細胞は神経膠芽腫細胞、子宮肉腫細胞、乳腺癌細胞、膵臓がん細胞、非小細胞肺がん、肝細胞、胃がん細胞、脳がん細胞である。
【0164】
一部の態様では、細胞を検出する本開示の方法は、第2の交流電場を第2の周波数で投与することを更に含み得る。それにより、一部の態様では、第2の交流電場は腫瘍治療電場である。一部の態様では、第1の交流電場と第2の交流電場とは異なる。一部の態様では、第1の若しくは第2の交流電場又は両方は、50kHzから1MHzの間の周波数を有してよい。第1の及び第2の交流電場は、本明細書において開示されるものの1つ又は複数であってよい。例えば一部の態様では、がん細胞は神経膠芽腫細胞を含み、第1の交流電場は250kHzから350kHzの間の第1の周波数を有してよく、第2の交流電場は150kHzから250kHzの間の周波数を有してよい。一部の態様では、がん細胞は子宮肉腫細胞を含み、第1の交流電場は125kHzから175kHzの間の第1の周波数を有してよく、第2の交流電場は75kHzから125kHzの間の周波数を有してよい。一部の態様では、がん細胞は乳腺癌細胞を含み、第1の交流電場は75kHzから175kHzの間の第1の周波数を有してよく、第2の交流電場は100kHzから300kHzの間の周波数を有してよい。交流電場は、細胞型に基づいて変動し得る。一部の態様では、交流電場は少なくとも1V/cm RMSの場の強度を有する。一部の態様では、交流電場は、1から4V/cm RMSの間の場の強度を有する。
【0165】
一部の態様では、第2の交流電場は処置である。一部の態様では、第2の交流電場はがん細胞等の細胞を死滅させることができる。
【0166】
一部の態様では、ベクターを導入する工程は、所与の時期に開始し、交流電場を印加する工程は、所与の時期の少なくとも12時間後に終了する。一部の態様では、交流電場を印加する工程は、所与の時期の少なくとも1時間前に開始する。一部の態様では、交流電場を印加する工程は、所与の時期の少なくとも1からおよそ24時間前に開始する。
【0167】
一部の態様では、細胞は生存している対象の身体に存在しており、第1の交流電場は第1の交流電場を対象の身体に印加することによって細胞に印加され、第2の交流電場は第2の交流電場を対象の身体に印加することによって細胞に印加され、導入する工程はベクターを対象に投与する工程を含む。
【0168】
一部の態様では、追加的治療又は治療レジメン(例えば、化学療法又は放射線治療)は、組成物(例えば、ベクター)が対象の細胞に輸送される前に、同時に又は後に対象に投与され得る。
【0169】
H.キット
上に記載される材料及び他の材料は、本開示の方法を実施する、又は実施を補助するための有用なキットとして任意の好適な組合せで併せて包装され得る。所与のキットにおけるキットの構成要素は、本開示の方法における合わせた使用のために設計され、適合される場合に有用である。例えば、画像化及び/又は処置のためのキットが開示される。一部の態様では、キットは、1つ又は複数の本開示のベクターを含み得る。キットは、交流電場を印加するための機器も含み得る。
【0170】
本明細書に記載される1つ又は複数のベクター及び交流電場を与えることができるデバイスを含む、キットが本明細書において開示される。例えば、本明細書に記載される1つ又は複数のベクター及びTTFieldsデバイス(例えば、Optune(登録商標)、Novocure Ltd.社)を含む、キットが本明細書において開示される。
【実施例】
【0171】
I.実施例
【0172】
細胞膜を越えてウイルスを輸送する能力をA549 (ATCC(登録商標) CCL-185(商標))を使用して研究し、インフルエンザ(PR8)を評価した。
【0173】
A549 (ATCC(登録商標) CCL-185(商標))及びインフルエンザ(PR8)を使用した。細胞を10%ウシ胎児血清(FBS) (Biological Industries社、04-007-1A)を補充したDMEM(Biological Industries社、01-055-1A)中で増殖させた。
【0174】
A549細胞をカバーガラス(直径22mm)に細胞1.5×105個/カバーガラスの密度で播種した。24時間培養後、細胞を2%FBSを補充した2ml DMEMを含むinovitroディッシュに移した。細胞にインフルエンザ(PR8)ウイルスを1%又は0.01%濃度で6時間かけて感染させた。感染後に、細胞をPBSで洗浄し、2% FBSを補充したDMEM中で更に18時間又は42時間維持した。TTFieldsを感染の際に及び増殖相でのいずれかで印加した。感染24時間又は48時間後、増殖培地を回収し、細胞をトリプシン処理し、再懸濁し、Scepter(商標) 2.0 Cell Counter (Merck, Millipore社)を使用して計数した。再懸濁後、細胞をPBSで洗浄した。上清及び沈殿を-80℃で凍結し、ウイルスゲノム抽出及びqRT-PCRのためにShebaに移した。
【0175】
TTFields (150kHz, 1.5V/cm RMS)をinovitro(商標)システム(Novocure Ltd社)を使用して以下の修正を用いて印加した: inovitroプレートをパラフィルムを用いて覆い、培地は細胞培養の際に置き換えなかった。
【0176】
1実験からのデータ。データは平均 ± SDとして表す。統計的有意性はスチューデントのt検定によって分析した。
【0177】
未処置培養物と比較して、0.01%ウイルスでの24時間のTTFields処置後では細胞数の減少傾向があり、1%ウイルスでは細胞数の有意な減少があった(
図1)。TTFields処置48時間後、0.01%においても1%ウイルスにおいても細胞数の有意な減少があった(
図2)。両方のウイルス濃度での24時間のTTFields処置後に、ウイルスコピー/細胞、RQ及びSNでは増加傾向があった(
図1)。48時間のTTFields処置後、両方のウイルス濃度でのSNのウイルスコピーにおいて、及び1%ウイルスでのウイルスコピー/細胞において有意な増加があった。加えて、0.01%ウイルスにおいてウイルスコピー/細胞に、及び両方の濃度でのRQにおいて増加傾向があった(
図2)。
【0178】
当業者は、日常的な実験を使用するだけで、本明細書に記載される方法及び組成物の具体的な実施形態についての多数の等価物を認識する又は確認することができる。そのような等価物は、以下の特許請求の範囲によって包含されることが意図される。