(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-18
(54)【発明の名称】小分子RNAバイオマーカーの同定方法及びエキソソームを含む循環細胞外小胞の機能評価方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/686 20180101AFI20240111BHJP
C12Q 1/6851 20180101ALI20240111BHJP
C12Q 1/06 20060101ALI20240111BHJP
C12Q 1/6834 20180101ALI20240111BHJP
C12Q 1/34 20060101ALI20240111BHJP
C12N 15/113 20100101ALI20240111BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240111BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20240111BHJP
A61K 9/72 20060101ALI20240111BHJP
A61K 31/573 20060101ALI20240111BHJP
A61K 38/21 20060101ALI20240111BHJP
A61K 31/343 20060101ALI20240111BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20240111BHJP
G01N 33/543 20060101ALI20240111BHJP
G01N 33/569 20060101ALI20240111BHJP
C12N 15/115 20100101ALN20240111BHJP
C12N 5/10 20060101ALN20240111BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20240111BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20240111BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20240111BHJP
C07K 14/725 20060101ALN20240111BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20240111BHJP
C07K 19/00 20060101ALN20240111BHJP
【FI】
C12Q1/686 Z ZNA
C12Q1/6851 Z
C12Q1/06
C12Q1/6834 Z
C12Q1/34
C12N15/113 Z
A61K45/00
A61P31/14
A61K9/72
A61K31/573
A61K38/21
A61K31/343
G01N33/53 D
G01N33/53 M
G01N33/543 511A
G01N33/569 Z
C12N15/115 Z
C12N5/10
C12N15/12
C12N15/13
C12N15/62 Z
C07K14/725
C07K16/28
C07K19/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023539074
(86)(22)【出願日】2021-12-23
(85)【翻訳文提出日】2023-08-23
(86)【国際出願番号】 US2021065060
(87)【国際公開番号】W WO2022140662
(87)【国際公開日】2022-06-30
(32)【優先日】2020-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523235127
【氏名又は名称】ハッケンサック メリディアン ヘルス センター フォー ディスカバリー アンド イノベーション
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100156982
【氏名又は名称】秋澤 慈
(72)【発明者】
【氏名】ミッチェル メーガン イルヴェット
(72)【発明者】
【氏名】ラウディッグ オリヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】カマリ-モガダム マスード
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
4C076
4C084
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
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4B063QA13
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4H045CA40
4H045DA50
4H045DA75
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】
【課題】小分子RNAバイオマーカーの同定方法及びエキソソームを含む循環細胞外小胞の機能評価方法を提供する。
【解決手段】次世代シーケンシングによる低存在量の小RNAカーゴのハイスループット解析用に設計された、AnTibody of CHoice and Enzymatic Release(EV-CATCHER)による細胞外小胞の捕捉の精製方法、および、重症ウイルス感染症の発症リスクのin vitro評価および重症ウイルス感染症の治療を行うために、生物学的サンプルから生物学的粒子または細胞の精製集団を調製する際の当該方法の使用、ならびに、重症コロナウイルス感染症のリスクを有する患者における回復期血漿療法の治療効果を増強するため、および重症コロナウイルス感染症の患者を治療するために当該方法の使用が記載されている。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象からの生物学的サンプルから精製された生物学的粒子集団を調製する方法、および前記精製された生物学的粒子集団のカーゴを評価するための方法であって、
a)
(1)生物学的粒子を含む生物学的サンプルを得ることと、
(2)前記対象からの生物学的粒子を含む前記生物学的サンプルを、1つ以上の生物学的粒子表面抗原に向けられた結合剤と接触させ、ここで、前記結合剤は核酸に連結され、前記核酸は固体支持体上に固定化されることとによって、
精製された生物学的粒子集団を調製することと、
b)前記結合剤によって結合された前記生物学的粒子を前記生物学的サンプルから分離することと、
c)前記結合剤に結合した前記生物学的粒子を放出することと、
d)前記結合した生物学的粒子を前記結合剤から溶出し、遊離精製された生物学的粒子の集団を形成することと、
e)前記精製された生物学的粒子集団の、タンパク質、DNA、RNA、または脂質を含むカーゴおよび表面分子を評価することとを含む、前記方法。
【請求項2】
カーゴおよび表面分子を評価する工程(e)は、
(i)質量分析によって前記生物学的粒子の表面に特異的なタンパク質及び/または脂質を同定すること、または
(ii)質量分析によってタンパク質及び/または脂質カーゴを同定すること、または
(iii)シークエンシングまたは定量PCRによりDNA分子を同定すること、または
(iv)前記精製された生物学的粒子集団からRNAを抽出し、前記精製された生物学的粒子集団により封入されたマイクロRNA(miRNA)を含む低分子非コードRNAの発現を同定および定量すること、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
生物学的粒子のプールされた異種集団の開始を提供するために、初期の限外濾過または超遠心分離工程を含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記生物学的サンプルが、体液を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記体液が、全血、血清、血漿、脳脊髄液(CSF)、リンパ液、尿、便、汗、涙液、乳頭吸引液、もしくは精液または分泌された生物学的液体を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記体液が、循環体液または分泌される体液である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記循環体液が、全血、血清、血漿、脳脊髄液(CSF)またはリンパ液である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
1つ以上の生物学的粒子表面抗原に結合する前記結合剤が、抗体、抗体結合断片、またはアプタマーである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記アプタマーが、核酸またはポリペプチドである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記生物学的粒子表面抗原が、CD9、CD63、CD81、CD37、CD82、Alix、ACE-2、Tim4、PLAP、アディポネクチン、FABP4、カベオリン-1、サイトケラチン、EPCAM、E-カドヘリン、P63、または異種細胞表面ポリペプチドのうちの1つ以上を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記核酸が、DNA、RNAまたはそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記核酸が、DNAを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記DNAが、1つ以上のリボ核酸ヌクレオチドを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記1つ以上のリボ核酸ヌクレオチドがウラシルである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記DNAが制限酵素認識部位を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記核酸が、エンドヌクレアーゼまたはRNAse(RNase-H)によって分解され得るDNA/RNA二本鎖である、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記核酸が、非天然ヌクレオチドを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記核酸が、前記核酸の第1末端上の結合部位および前記核酸の第2末端上の結合部位をさらに含み、前記核酸の第1末端上の結合部位および前記核酸の第2末端上の前記結合部位が異なる、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記核酸の前記第1末端上の前記結合部位が、アビジン、ストレプトアビジンまたはカルボキシル結合部分である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記結合部位が、ビオチンである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記核酸の前記第2末端上の前記結合部位が、アミン部位である、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記アミン部位が、アジドである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
1つ以上の生物学的粒子表面抗原に対する前記結合剤が、ジベンゾシクロオクチイン(DBCO)分子、2-IT(2-イミノチオラン)、MBS(3-マレイミド安息香酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル)SPDP(N-スクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート)、SATA(N-スクシンイミジルS-アセチルチオアセテート)、SMCC(スクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート)、Sulfo-SMCC、またはそれらの誘導体、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記固体支持体が、ウェルプレート、ポリマー、または表面である、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記単離された生物学的粒子を放出することは、
(i)前記核酸を酵素的に切断すること、または
(ii)前記核酸の第1鎖または第2鎖に相補的な核酸、および前記抗体を前記支持体から遊離させる鎖置換活性を有する酵素を用いて、鎖置換によって、前記支持体に結合された前記核酸の前記第2鎖から前記抗体に結合された前記核酸の前記第1鎖を置換すること、または
(iii)前記抗体に結合した前記DNAの領域に相補的なオリゴヌクレオチドを用いたポリメラーゼ連鎖反応によって、前記抗体に結合した前記DNA鎖を損傷することなく、前記抗体を前記プラットフォームから放出できるように、アニールしたDNA鎖を分離することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記酵素的切断が、ウラシルグリコシラーゼによって行われる、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記酵素的切断が、制限酵素によって行われる、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記酵素的切断が、エンドヌクレアーゼまたはRNAseによって行われる、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
鎖置換活性を有する前記酵素が、DNAポリメラーゼ、トポイソメラーゼまたはヘリカーゼである、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
次世代シーケンシングによって、前記1つ以上の生物学的粒子に封入されたmiRNAを含む前記1つ以上の低分子非コードRNAを同定することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項31】
前記単離された生物学的粒子が、健康な対象または疾病に罹患している対象に由来する、請求項1記載の方法。
【請求項32】
前記疾患が、ウイルス感染、がん、胎盤異常、運動誘発性筋肉損傷、心不全、アルツハイマー病、肝硬変、ウイルスおよび細菌感染、腎疾患、損傷後の骨リモデリング、創傷治癒またはCOPDおよび灰白質を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記ウイルス感染が重症コロナウイルス感染である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記重症コロナウイルス感染が、SARS-CoV-1、MERSまたはSARS-CoV-2によるものである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記重症コロナウイルス感染が、SARS-CoV-2によるものである、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
SARS-CoV-2による重症コロナウイルス感染症に罹患した対象由来の単離かつ定量された前記miRNAが、hsa-miR-146a、hsa-miR-126-3p、hsa-miR-15a、hsa-miR-424、hsa-miR-151-3p、hsa-miR-126-5p、hsa-miR-627-5p、hsa-miR-145、hsa-miR-205、hsa-miR-200c、hsa-miR-550-5p、およびhsa-miR-629のうちの1つ以上を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項37】
重症SARSCoV-2疾患のmiRNAマーカーには、hsa-miR-146a、hsa-miR126-3pまたはその両方が含まれる、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
対象の重症コロナウイルス感染症の発症リスクをin vitroで評価し、治療する方法であって、
a.
(1)前記対象からの生物学的粒子を含む生物学的サンプルを得ることと、
(2)前記対象からの生物学的粒子を含む前記生物学的サンプルを、1つ以上の生物学的粒子表面抗原に対する結合剤と接触させ、ここで、前記結合剤は核酸に連結され、前記核酸は固体支持体上に固定化されることとによって、
精製された生物学的粒子集団を調製することと、
b.前記結合剤によって結合された前記生物学的粒子を前記生物学的サンプルから分離することと、
c.前記結合剤に結合した前記生物学的粒子を放出することと、
d.前記結合した生物学的粒子を前記結合剤から溶出し、遊離精製された生物学的粒子の集団を形成することと、
(i)前記精製された生物学的粒子の集団からRNAを抽出することと、
(ii)前記精製されたエキソソーム集団により封入された1つ以上のマイクロRNA(miRNA)を含む低分子非コードRNAの発現を同定および定量することと、
(iii)前記精製された生物学的粒子のカーゴプロフィールを、(1)前記コロナウイルスに感染していない対照対象、(2)前記コロナウイルスに感染して軽症になった対照対象、および(3)コロナウイルスに感染して重症になった対照対象のカーゴプロファイルと比較することとによって、
e.精製された生物学的粒子の集団のカーゴを評価することにより、前記精製された生物学的粒子のカーゴプロファイルを決定することと、
(f)前記患者が重症ウイルス感染症にかかるリスクを判定することであって、前記精製された生物学的粒子についての前記低分子非コードRNAまたはタンパク質のカーゴプロファイルは、重症疾患を発症したコロナウイルスに感染した前記対照対象からの前記カーゴプロファイルよりも約1.5倍低いか、または約1.5倍高くなることと、
(g)前記重症ウイルス感染のリスクがある患者に適した治療を実施することとを含む、前記方法。
【請求項39】
生物学的粒子のプールされた異種集団を提供するために、初期の限外濾過または超遠心分離工程を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記生物学的サンプルが、体液を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記体液が、全血、血清、血漿、脳脊髄液(CSF)、リンパ液、尿、便、汗、涙液、乳頭吸引液、精液または分泌された生物学的液体を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記体液が、循環体液または分泌される体液である、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記循環体液が、全血、血清、血漿、CSFまたはリンパ液である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記重症コロナウイルス感染が、SARS-CoV-1、MERSまたはSARS-CoV-2によるものである、請求項38に記載の方法。
【請求項45】
前記重症コロナウイルス感染が、SARS-CoV-2によるものである、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
SARS-Cov-2に感染した前記対象のmiRNAの集団は、対照と比較した場合、hsa-miR-146a、hsa-miR-126-3p、hsa-miR-15a、hsa-miR-424、hsa-miR-151-3p、hsa-miR-126-5p、hsa-miR-627-5p、hsa-miR-145、hsa-miR-205、hsa-miR-200c、hsa-miR-550-5p、またはhsa-miR-629うち1つ以上を含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
SARS-CoV-2により引き起こされる重症疾患のmiRNAマーカーは、対照と比較した場合、hsa-miR-146a、hsa-miR126-3p、またはhsa-miR-146aおよびhsa-miR126-3pの両方を含む、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
1つ以上の生物学的粒子表面抗原に結合する前記結合剤が、抗体、抗体断片、またはアプタマーである、請求項38に記載の方法。
【請求項49】
前記エクソソーム表面抗原が、CD9、CD63、CD81、CD37、CD82、Alix、ACE-2、Tim4、PLAP、アディポネクチン、FABP4、カベオリン-1、サイトケラチン、EPCAM、E-カドヘリン、P63、または異種細胞表面ポリペプチドのうちの1つ以上を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項50】
前記核酸は、1つ以上のリボ核酸ヌクレオチドを含むDNAを含み、前記リボ核酸ヌクレオチドはウラシルである、請求項38に記載の方法。
【請求項51】
前記単離された生物学的粒子を放出することは、
(i)前記核酸を酵素的に切断すること、または
(ii)前記核酸の第1鎖または第2鎖に相補的な核酸、および前記抗体を前記支持体から遊離させる鎖置換活性を有する酵素を用いて、鎖置換によって、前記支持体に結合された前記核酸の前記第2鎖から前記抗体に結合された前記核酸の前記第1鎖を置換すること、または
(iii)前記抗体に結合した前記DNAの領域に相補的なオリゴヌクレオチドを用いたポリメラーゼ連鎖反応によって、前記抗体に結合した前記DNA鎖を損傷することなく、前記抗体を前記プラットフォームから放出できるように、前記アニールしたDNA鎖を分離することを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項52】
前記酵素的切断が、ウラシルグリコシラーゼによって行われる、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記酵素的切断が、制限酵素によって行われる、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
前記酵素的切断が、エンドヌクレアーゼまたはRNAseによって行われる、請求項51に記載の方法。
【請求項55】
鎖置換活性を有する前記酵素が、DNAポリメラーゼ、トポイソメラーゼまたはヘリカーゼである、請求項51に記載の方法。
【請求項56】
前記精製された生物学的粒子の集団によって封入された1つ以上のマイクロRNA(miRNA)を含む低分子非コードRNAの同定および定量化は、次世代シーケンシングによって行われる、請求項38に記載の方法。
【請求項57】
前記重症ウイルス感染症のリスクがある患者に適切な前記治療法は、支持療法、抗ウイルス剤、免疫調節剤の1つ以上を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項58】
(a)前記支持療法には、液体の静脈内投与、酸素補給、またはネブライザーによる蒸気の吸入が含まれ、または
(b)前記抗ウイルス剤が、ウイルスの侵入を阻害するか、ウイルス量を減少させるか、またはその両方を行い、または
(c)前記抗ウイルス剤は、アシクロビル、ガンシドビル、ホスカルネット;リバビリン;アマンタジン、アジドデオキシチミジン(ジドブジン)、ネビラピン、テトラヒドロイミダゾベンゾジアゼピノン(TIBO)化合物;エファビレンツ;レムデシビル、ロピナビル/リトナビル、ウミフェノビル、ファビピラビル、イベルメクチン、およびデラビルジンから選択され、または
(d)前記免疫調節剤が、グルココルチコイド、または組み換えインターフェロンであり、または
(e)前記免疫調節剤がグルココルチコイドであり、前記グルココルチコイドがコルチコステロイドである、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記グルココルチコイドは、プレドニゾン、デキサメタゾン、アザチオプリン、ミコフェノール酸、ミコフェノール酸モフェチル、またはそれらの組み合わせを含む、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
重症コロナウイルス感染症のリスクのある患者を治療するための回復期血漿療法の治療効果を増強する方法であって、
a)回復期対象の回復期血清から、
(1)前記コロナウイルスに対する高いIgG力価を有する回復期血清を、前記回復期対象から得ることと、
(2)前記回復期血清を、1つ以上の生物学的粒子表面抗原に向けられた結合剤と接触させ、ここで、前記結合剤は核酸に連結され、前記核酸は固体支持体上に固定化されることにより、前記精製された生物学的粒子集団を調製することと、
b)前記結合剤によって結合された前記生物学的粒子を前記生物学的サンプルから分離することと、
c)前記結合剤に結合した前記生物学的粒子を放出することと、
d)前記結合した生物学的粒子を前記結合剤から溶出し、遊離精製された生物学的粒子の集団を形成することと、
e)前記コロナウイルスについての前記精製された生物学的粒子集団の中和力価をin vitroで測定することと、
f)高い中和力価の生物学的粒子および高い中和力価のIgGを含む前記回復期血清を前記対象に投与することと、を含む、前記方法。
【請求項61】
生物学的粒子のプールされた異種集団を提供するために、初期の限外濾過または超遠心分離工程を含む、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記生物学的サンプルが、体液を含む、請求項60に記載の方法。
【請求項63】
前記体液が、全血、血清、血漿、脳脊髄液(CSF)、リンパ液、尿、便、汗、涙液、乳頭吸引液、精液または分泌された生物学的液体を含む、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記体液が、循環体液である、請求項62に記載の方法。
【請求項65】
前記循環体液が、全血、血清、血漿、脳脊髄液(CSF)またはリンパ液である、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
1つ以上の生物学的粒子表面抗原に結合する前記結合剤が、抗体、抗体断片、またはアプタマーである、請求項60に記載の方法。
【請求項67】
前記生物学的粒子表面抗原が、CD9、CD63、CD81、CD37、CD82、Alix、ACE-2、Tim4、PLAP、アディポネクチン、FABP4、カベオリン-1、サイトケラチン、EPCAM、E-カドヘリン、P63、または異種細胞表面ポリペプチドのうちの1つ以上を含む、請求項60に記載の方法。
【請求項68】
前記核酸は、リボ核酸ヌクレオチドを含むDNAを含み、前記リボ核酸ヌクレオチドは、ウラシルであるか、または前記DNAは制限酵素認識部位を含む、請求項60に記載の方法。
【請求項69】
前記単離された生物学的粒子を放出することは、
(i)前記核酸を酵素的に切断すること、または
(ii)前記核酸の第1鎖または第2鎖に相補的な核酸、および前記抗体を前記支持体から遊離させる鎖置換活性を有する酵素を用いて、鎖置換によって、前記支持体に結合された前記核酸の前記第2鎖から前記抗体に結合された前記核酸の前記第1鎖を置換すること、または
(iii)前記抗体に結合した前記DNAの領域に相補的なオリゴヌクレオチドを用いたポリメラーゼ連鎖反応によって、前記抗体に結合した前記DNA鎖を損傷することなく、前記抗体を前記プラットフォームから放出できるように、前記アニールしたDNA鎖を分離することを含む、請求項60に記載の方法。
【請求項70】
前記酵素的切断が、ウラシルグリコシラーゼによって行われる、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記酵素的切断が、制限酵素によって行われる、請求項69に記載の方法。
【請求項72】
前記酵素的切断が、エンドヌクレアーゼまたはRNAseによって行われる、請求項69に記載の方法。
【請求項73】
鎖置換活性を有する前記酵素が、DNAポリメラーゼ、トポイソメラーゼまたはヘリカーゼである、請求項69に記載の方法。
【請求項74】
前記重症コロナウイルス感染が、SARS-CoV-1、MERSまたはSARS-CoV-2によるものである、請求項60に記載の方法。
【請求項75】
前記重症コロナウイルス感染が、SARS-CoV-2によるものである、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記高IgG力価を有する前記回復期血清に由来する前記中和精製された生物学的粒子集団が、ACE2-レセプターを含む、請求項60に記載の方法。
【請求項77】
SARS-CoV-2ウイルスに対する前記精製された生物学的粒子集団の中和力価を測定することは、in vitroでコロナウイルスに感染した哺乳動物細胞を、高いIgG力価を有する前記回復期血清由来の前記単離精製された生物学的粒子の希釈系列でインキュベートすることと、陰性対照(前記回復期血清由来の前記精製された生物学的粒子を含まない感染細胞)と比較してウイルス粒子産生を測定することとをさらに含む、請求項60に記載の方法。
【請求項78】
前記ウイルス粒子産生は、陰性対照と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%減少する、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
(a)前記中和精製された生物学的粒子を含む前記回復期血清は、回復期血漿療法のみを用いた治療と比較して、回復期血漿療法の有効性を少なくとも約2倍に向上させることができ、または
(b)前記中和精製された生物学的粒子により、免疫系にウイルス抗原を提示できる、請求項60に記載の方法。
【請求項80】
重症コロナウイルス感染を有する対象を治療する方法であって、
(1)生物学的粒子を含む前記生物学的サンプルを得ることと、
(2)前記対象からの生物学的粒子を含む前記生物学的サンプルを、1つ以上の生物学的粒子表面抗原に対する結合剤と接触させ、ここで、前記結合剤は核酸に連結され、前記核酸は固体支持体上に固定化されることと、
(3)前記結合剤によって結合された前記生物学的粒子を前記生物学的サンプルから分離することと、
(4)前記結合剤に結合した前記生物学的粒子を放出することと、
(5)前記結合した生物学的粒子を前記結合剤から溶出し、遊離精製された生物学的粒子の集団を形成することと、
(6)前記精製された生物学的粒子集団の中和力価をin vitroで測定することとによって、
(a)前記対象の生物学的サンプルから精製された生物学的粒子集団の中和力価を決定することと、
(b)前記対象からの前記精製された生物学的粒子集団の中和力価が、in vitroでのウイルス粒子産生を減少させるには不十分である場合に、前記精製された生物学的粒子を中和することを含む回復期血漿療法を受ける前記対象を選択することと、
(i)回復期対象から、高い抗コロナウイルスIgG力価を含む回復期血清を得ることと、
(ii)前記回復期血清を、1つ以上の生物学的粒子表面抗原に向けられた結合剤と接触させることと、
(iii)前記結合剤によって結合された前記生物学的粒子を前記生物学的サンプルから分離することと、
(iv)前記結合剤に結合した前記生物学的粒子を放出することと、
(v)前記精製された生物学的粒子集団の中和力価をin vitroで測定することとによって、
(c)回復期対象の回復期血漿から、精製された生物学的粒子集団を調製することと、
(d)SARS-CoV-2ウイルスについて回復期血清から精製された生物学的粒子集団の中和力価をin vitroで測定することと、
(e)前記対象に、前記中和精製された生物学的粒子を単独投与するか、または前記中和精製された生物学的粒子を含む高IgG力価の回復期血清を投与することとを含む、方法。
【請求項81】
生物学的粒子のプールされた異種集団を提供するために、初期の限外濾過または超遠心分離工程を含む、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記生物学的サンプルが、体液を含む、請求項80に記載の方法。
【請求項83】
前記体液が、全血、血清、血漿、脳脊髄液(CSF)、リンパ液、尿、便、汗、涙液、乳頭吸引液、精液または分泌された生物学的液体を含む、請求項82に記載の方法。
【請求項84】
前記体液が、循環体液を含む、請求項82に記載の方法。
【請求項85】
前記循環体液が、全血、血清、血漿、CSFまたはリンパ液である、請求項82に記載の方法。
【請求項86】
1つ以上の生物学的粒子表面抗原に結合する前記結合剤が、抗体、抗体断片、またはアプタマーである、請求項80に記載の方法。
【請求項87】
前記生物学的粒子表面抗原が、CD9、CD63、CD81、CD37、CD82、Alix、ACE-2、Tim4、PLAP、アディポネクチン、FABP4、カベオリン-1、サイトケラチン、EPCAM、E-カドヘリン、P63、または異種細胞表面ポリペプチドのうちの1つ以上を含む、請求項80に記載の方法。
【請求項88】
前記単離された生物学的粒子を放出することは、
(i)前記核酸またはDNA/RNAハイブリッドを酵素的に切断すること、または
(ii)前記核酸の第1鎖または第2鎖に相補的な核酸、および前記抗体を前記支持体から遊離させる鎖置換活性を有する酵素を用いて、鎖置換によって、前記支持体に結合された前記核酸の前記第2鎖から前記抗体に結合された前記核酸の前記第1鎖を置換すること、または
(iii)前記抗体に結合した前記DNAの領域に相補的なオリゴヌクレオチドを用いたポリメラーゼ連鎖反応によって、前記抗体に結合した前記DNA鎖を損傷することなく、前記抗体を前記プラットフォームから放出できるように、アニールしたDNA鎖を分離することを含む、請求項80に記載の方法。
【請求項89】
前記核酸がリボ核酸ヌクレオチドを含むDNAを含み、前記リボ核酸ヌクレオチドがウラシルであり、前記酵素的切断がウラシルグリコシラーゼによって行われる、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
前記酵素的切断が、制限酵素によって行われる、請求項88に記載の方法。
【請求項91】
前記酵素的切断が、エンドヌクレアーゼまたはRNAseによって行われる、請求項88に記載の方法。
【請求項92】
鎖置換活性を有する前記酵素が、DNAポリメラーゼ、トポイソメラーゼまたはヘリカーゼである、請求項88に記載の方法。
【請求項93】
前記重症コロナウイルス感染が、SARS-CoV-1、MERSまたはSARS-CoV-2によるものである、請求項80に記載の方法。
【請求項94】
前記重症コロナウイルス感染が、SARS-CoV-2によるものである、請求項93に記載の方法。
【請求項95】
(i)前記対象から精製された生物学的粒子集団の中和力価と、(ii)コロナウイルスに対する高いIgG力価を有する回復期血清からの精製された生物学的粒子集団の中和力価とを測定する方法は、
前記コロナウイルスに感染した哺乳動物細胞を、(i)前記対象由来の単離精製された生物学的粒子、および(ii)高IgG力価を有する回復期血清由来の単離精製された生物学的粒子、の希釈系列でin vitroでインキュベートすることと、
ウイルス粒子産生を陰性対照(感染細胞単独)と比較することと、を含む、請求項80に記載の方法。
【請求項96】
精製された生物学的粒子の中和集団がACE2-レセプターを含む、請求項95に記載の方法。
【請求項97】
対象からの生物学的サンプルから精製された細胞集団を調製する方法であって、
(1)細胞を含む前記対象から生物学的サンプルを取得することと、
(2)細胞を含む前記対象からの前記生物学的サンプルを、1つ以上の細胞表面抗原に向けられた結合剤と接触させ、ここで、前記結合剤は核酸に連結され、前記核酸は固体支持体上に固定化されることとによって、
a)精製された細胞の集団を調製することと、
b)前記結合剤によって結合された前記細胞を前記生物学的サンプルから分離することと、
c)前記結合剤に結合した前記細胞を放出することと、
d)結合した細胞を前記結合剤から溶離して、精製された細胞の集団を形成することと、を含む、前記方法。
【請求項98】
細胞のプールされた異種集団の開始を提供するために、初期の限外濾過または超遠心分離工程を含む、請求項97に記載の方法。
【請求項99】
前記生物学的サンプルは、in vivoまたはin vitroで調製される、請求項97に記載の方法。
【請求項100】
前記生物学的サンプルが、体液を含む、請求項97に記載の方法。
【請求項101】
前記体液が、全血、血清、血漿、脳脊髄液(CSF)、リンパ液、尿、便、汗、涙液、乳頭吸引液、精液または分泌された生物学的液体を含む、請求項100に記載の方法。
【請求項102】
前記体液が、循環体液または分泌される体液である、請求項100に記載の方法。
【請求項103】
前記循環体液が、全血、血清、血漿、脳脊髄液(CSF)またはリンパ液である、請求項102に記載の方法。
【請求項104】
前記1つ以上の細胞表面抗原が、CD4、CD8、CD9、CD46、CD63、CD81、CD37、CD82、CD138、CD151、ALix、ACE-2、Tim4、PLAP、アディポネクチン、FABP4、カベオリン-1、サイトケラチン、EPCAM、E-カドヘリン、P63、または異種細胞表面ポリペプチドを含む、請求項97に記載の方法。
【請求項105】
前記異種細胞表面ポリペプチドは、キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T細胞)によって発現される、請求項104に記載の方法。
【請求項106】
1つ以上の細胞表面抗原に結合する前記結合剤が、抗体、抗体結合断片、またはアプタマーである、請求項97に記載の方法。
【請求項107】
前記アプタマーが、核酸またはポリペプチドである、請求項106に記載の方法。
【請求項108】
前記核酸が、DNA、RNAまたはそれらの組み合わせを含む、請求項97に記載の方法。
【請求項109】
前記核酸が、DNAを含む、請求項108に記載の方法。
【請求項110】
前記DNAが、1つ以上のリボ核酸ヌクレオチドを含む、請求項109に記載の方法。
【請求項111】
前記1つ以上のリボ核酸ヌクレオチドがウラシルである、請求項110に記載の方法。
【請求項112】
前記DNAが制限酵素認識部位を含む、請求項109に記載の方法。
【請求項113】
前記核酸が、エンドヌクレアーゼまたはRNAse(RNase-H)によって分解され得るDNA/RNA二本鎖である、請求項108に記載の方法。
【請求項114】
前記核酸が、非天然ヌクレオチドを含む、請求項97に記載の方法。
【請求項115】
前記核酸が、前記核酸の第1末端上の結合部位および前記核酸の第2末端上の結合部位をさらに含み、前記核酸の第1末端上の結合部位および前記核酸の第2末端上の結合部位が異なる、請求項97に記載の方法。
【請求項116】
前記核酸の前記第1末端上の前記結合部位が、アビジン、ストレプトアビジンまたはカルボキシル結合部分である、請求項115に記載の方法。
【請求項117】
前記結合部位が、ビオチンである、請求項116に記載の方法。
【請求項118】
前記核酸の前記第2末端上の前記結合部位が、アミン部位である、請求項115に記載の方法。
【請求項119】
前記アミン部位が、アジドである、請求項118に記載の方法。
【請求項120】
1つ以上の細胞表面抗原に対する前記結合剤が、ジベンゾシクロオクチイン(DBCO)分子、2-IT(2-イミノチオラン)、MBS(3-マレイミド安息香酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル)SPDP(N-スクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート)、SATA(N-スクシンイミジルS-アセチルチオアセテート)、SMCC(スクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート)、Sulfo-SMCC、またはそれらの誘導体、請求項97に記載の方法。
【請求項121】
前記固体支持体が、ウェルプレート、ポリマー、または表面である、請求項97に記載の方法。
【請求項122】
前記単離された細胞を放出することは、
(i)前記核酸を酵素的に切断すること、または
(ii)前記核酸の第1鎖または第2鎖に相補的な核酸、および前記抗体を前記支持体から遊離させる鎖置換活性を有する酵素を用いて、鎖置換によって、前記支持体に結合された前記核酸の前記第2鎖から前記抗体に結合された前記核酸の前記第1鎖を置換すること、または
(iii)前記抗体に結合した前記DNAの領域に相補的なオリゴヌクレオチドを用いたポリメラーゼ連鎖反応によって、前記抗体に結合した前記DNA鎖を損傷することなく、前記抗体を前記プラットフォームから放出できるように、アニールしたDNA鎖を分離することを含む、請求項97に記載の方法。
【請求項123】
前記酵素的切断が、ウラシルグリコシラーゼによって行われる、請求項122に記載の方法。
【請求項124】
前記酵素的切断が、制限酵素によって行われる、請求項122に記載の方法。
【請求項125】
前記酵素的切断が、エンドヌクレアーゼまたはRNAseによって行われる、請求項122に記載の方法。
【請求項126】
鎖置換活性を有する前記酵素が、DNAポリメラーゼ、トポイソメラーゼまたはヘリカーゼである、請求項122に記載の方法。
【請求項127】
精製された細胞の集団は、非真核細胞、真核細胞、またはそれらの組み合わせを含む、請求項97に記載の方法。
【請求項128】
前記真核細胞が、ヒト、マウス、ラット、イヌ、非ヒト霊長類またはネコ科動物である、請求項127に記載の方法。
【請求項129】
前記精製された細胞の集団が、健康な対象または疾病に罹患している対象に由来する、請求項97に記載の方法。
【請求項130】
前記疾患が、がん、ウイルス感染、胎盤異常、炎症および他の病理を含む、請求項129に記載の方法。
【請求項131】
前記細胞が、内皮細胞、上皮細胞、T細胞、線維芽細胞、脂肪細胞、神経細胞、腫瘍細胞、血液細胞、または心臓細胞である、請求項97に記載の方法。
【請求項132】
前記細胞の集団が、
(a)非真核種および真核種、または
(b)健康な正常組織、または疾患組織、または
(c)マウスのオルソトピック/異種移植片/PDX臓器、または
(d)血液、または
(e)組織培養から誘導されている、請求項97に記載の方法。
【請求項133】
前記ウイルス感染が重症コロナウイルス感染である、請求項130に記載の方法。
【請求項134】
前記重症コロナウイルス感染が、SARS-CoV-1、MERSまたはSARS-CoV-2によるものである、請求項132に記載の方法。
【請求項135】
前記重症コロナウイルス感染が、SARS-CoV-2によるものである、請求項133に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年12月24日に出願された「Method for Small-RNA Biomarker Identification and Functional evaluation of Circulating Extracellular Vesicles Comprising Exosomes」と題された米国仮特許出願第63/130,545号に基づく優先権を主張し、前記出願の全内容は、その全体が参照により本明細書中に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願は、ASCIIフォーマットで電子提出された配列表を含んでおり、その全体が参照により本明細書中に組み込まれる。2021年12月22日に作成された前記ASCIIコピーのファイル名は、129642-00420_SL.txtであり、ファイルサイズは21,261バイトである。
【0003】
本開示は、循環細胞外小胞の単離方法及び精製方法に関する。
【背景技術】
【0004】
感染症、炎症、がん、その他の生理学的及び病理学的過程において細胞から放出される核酸は、ヒトの血液中に循環しており、疾患の強力なバイオマーカーとなる可能性がある[1,2]。例えば、がんの治療効果及び残存病変の有無を評価するために、循環細胞フリーゲノム腫瘍DNA変異を検出する技術が有望視されている[3-6]。大分子一本鎖RNA転写産物は循環中に分解されるが、小分子RNA、特にマイクロRNA(miRNA;塩基長約22nt)はそのまま残り、病的プロセスを反映するために検出し、測定することができる。miRNAは、特定のmRNA標的の活性を調節するマスター転写調節因子であり、正常過程及び病的過程の広い範囲において、重要な役割を果たしている[7-12]。循環miRNAの検出には大きな進歩があったが、多様な細胞や組織から得られる循環miRNAの大きなプールの中で、これらの分子が占める割合が低いため、より高い検出感度と特異性が要求され、疾患に関連するmiRNAバイオマーカーの発見は依然として難題であった。この問題に対処するため、現在では血液、血清、血漿から精製された全RNAではなく、細胞外小胞にカプセル化されたmiRNAカーゴの分析に焦点が当てられている[13-15]。細胞外小胞は、ほとんどの種類の細胞から微小環境と循環系に活発に放出され、標的細胞の取り込みを介した細胞間コミュニケーションに関与することが知られており、小胞が輸送するmiRNAは受容細胞の再プログラミングに関与している[16-20]。
【0005】
脂質二分子層を持つ細胞外小胞(EV)は、そのユニークなサイズ範囲(直径30~150nm)及び生合成の両者によって区別される[21]。CD9、CD63、CD81、CD37、CD82は活発に分泌され、膜結合型テトラスパニンに特異的に濃縮されており、抗体精製の標的とすることができる[21、22]。細胞外小胞は分泌の過程において、由来となる細胞から表面分子(タンパク質、脂質など)も獲得しており、抗体ベースの精製をより選択的に行うことができる[23-25]。細胞外小胞精製のためのマイクロ流体ベースのシステム開発において、ここ数年で大きな進歩が見られたが、商業的な市場にはほとんど到達していないため、生物流体からの細胞外小胞の精製と評価のための実験室ベースの技術が、依然としてゴールドスタンダードとなっている。これまで、循環細胞外小胞を精製する4つの主要なアプローチが開発されており、その多くは大量の細胞外小胞の選択による平均化されたバイオマーカーの評価を提供するものである[26-28]。細胞外小胞を精製する3つの古典的アプローチは、超遠心分離、沈殿、及びサイズ排除を利用したものである[26-29]。これらの方法では、純粋な細胞外小胞調製物が得られるが(沈殿ベースの方法には注意点がある)、いずれも様々な組織や細胞タイプから循環中に放出される細胞外小胞のサブ集団が混在するため、その後の解析を混乱させる。第4の方法は、モノクローナル抗体でコーティングした磁気ビーズを用いて、細胞外小胞の表面バイオマーカーを選択することにより、細胞外小胞を免疫精製する方法である[25、30、31]。ストレプトアビジン磁気ビーズは、カスタマイズ可能なビオチン化抗体ベースの選択を可能にする可能性があるが、このカスタマイズの最適化は依然として困難であり、磁気ビーズの品質(表面ポリマー)及びデザイン(ストレプトアビジンコーティング)に大きく依存する。一般に、市販されている抗体ベースの精製アッセイのほとんどは、既知の細胞外小胞表面マーカー(CD63、CD81、CD9など)の認識にのみ依存する静的なシステムであり、細胞特異的な細胞外小胞の異なるサブ集団をカスタマイズして選択及び評価を行うことはできない。これらの確立されたアッセイ法は、細胞外小胞の強固な選択を可能にするが、細胞特異的な表面マーカーを生体流体から選択できる、カスタマイズ可能な抗体選択アッセイは、循環疾患バイオマーカーの同定に、より有望である[32]。最後に、下流のin vitro解析のために、選択した細胞外小胞をそのまま放出できるような抗体ベースの方法が構築されることはほとんどない。最近のイムノアフィニティーに基づく細胞外小胞分離アッセイ(exo-PLA)は、細胞外小胞結合抗体と磁性ビーズとの間に酵素分解可能なDNAリンカーを使用し、無傷の細胞外小胞の放出を可能にすることで、これらの問題の多くを解決した[31]。しかし本発明者らの初期評価では、このアプローチで使用される磁気ビーズは、低存在量のmiRNAカーゴの検出を著しく制限する程度まで、低分子RNAを非特異的に結合させる可能性があることが示された。
【0006】
細胞外小胞は、バイオマーカーの貴重な供給源であるだけでなく、複数の生物学的プロセス、特に免疫系において重要な役割を果たしている[33-38]。最近の研究では、細胞外小胞が免疫系への抗原提示に関与し[37、38]、ウイルス感染時の免疫防御を仲介している可能性が示唆されている[33、34]。よく研究されているウイルス(HIV、EBV、エボラ出血熱)に対する免疫において、細胞外小胞が果たすメカニズム的役割は、以前に評価されている[39-41]。しかし、SARS-CoV-2感染に対する潜在的な影響を評価した研究はほとんどない。本発明者らの医療ネットワーク(Hackensack Meridian Health)は、SARS-CoV-2パンデミックの米国内の震源地に位置しており、ニュージャージー州のCovid-19患者の半数近くが本発明者らの病院に入院していた。これにより、Covid-19患者の血清サンプルを入手することができ、臨床検体に本発明者らの新しい細胞外小胞精製アッセイ法を適用する原理実証試験にそれを使用することができた。
【発明の概要】
【0007】
記載された発明は、エキソソーム及び/または細胞外小胞を精製する方法、Extracellular Vesicle Capture by AniTbody of CHoice and Enzymatic Release(EV-CATCHER)アッセイを提供する。カスタマイズ可能な循環細胞外小胞の選択と放出のための、このアッセイの段階的デザインと評価について述べる。EV-CATCHERアッセイと、高感度small-RNA cDNAライブラリー調製プロトコール[14、42]を組み合わせ、高スループットsmall-RNA配列決定のために、Covid-19患者の血清から循環細胞外小胞を精製し、入院患者間で疾患の重症度に関連する発現量の異なるmiRNAを同定することにより、その適用性を実証した。さらに、EV-CATCHERで精製され、放出された細胞外小胞の完全性を評価したところ、超遠心機で精製した細胞外小胞を用いて予想外に同定されたCovid-19回復者の血清からの回復期細胞外小胞の中和活性が確認された。
【0008】
一態様によれば、本開示は、被験体からの生物学的サンプルから精製された生物学的粒子の集団を調製する方法、及び前記精製された生物学的粒子の集団のカーゴを評価するための方法であって、a)(1)生物学的粒子を含む生物学的サンプルを取得し、(2)1または複数の生物学的粒子表面剤に対する結合剤であって、核酸に結合し、前記核酸が固体担体の表面に固定された前記結合剤と、生物学的粒子を含む前記被験者からの前記生物学的サンプルを接触させることにより、前記精製された生物学的粒子の集団を調製し、b)結合剤によって結合された前記生物学的粒子を前記生物学的サンプルから単離し、c)前記結合剤に結合された前記生物学的粒子を放出し、d)前記結合剤から前記生物学的粒子を溶出し、遊離の精製された生物学的粒子の集団を形成し、e)前記精製された生物学的粒子の集団の、タンパク質、DNA、RNAまたはタンパク質を含むカーゴ及び表面分子を評価する、前記方法を提供する。
【0009】
いくつかの実施形態によれば、ステップ(e)カーゴ及び表面分子を評価することは、(i)質量分析によって生物学的粒子の表面に特異的なタンパク質を同定すること、または(ii)質量分析によってタンパク質カーゴを同定すること、または(iii)配列決定または定量的PCRによってDNA分子を同定すること、または(iv)前記精製された生物学的粒子の集団からRNAを抽出し、精製された生物学的粒子の集団によってカプセル化されたマイクロRNA(miRNA)を含む低分子ノンコーディングRNAの発現を同定及び定量することのうち、1または複数をさらに含んでいる。
【0010】
いくつかの実施形態によれば、この方法は、生物学的粒子の開始時のプールされた不均一集団を提供するための最初の限外濾過または超遠心分離ステップを含んでいる。いくつかの実施形態によれば、生物学的サンプルは体液を含む。いくつかの実施形態によれば、体液は、全血、血清、血漿、脳脊髄液(CSF)、リンパ液、尿、便、汗、涙、乳頭吸引液、または精液、あるいは分泌された生物学的液体を含む。いくつかの実施形態によれば、体液は循環体液または分泌体液である。いくつかの実施形態によれば、循環体液は、全血、血清、血漿、脳脊髄液(CSF)またはリンパである。
【0011】
いくつかの実施形態によれば、1または複数の生物学的粒子表面抗原に結合する結合剤は、抗体、抗体結合フラグメントまたはアプタマーである。いくつかの実施形態によれば、アプタマーは核酸またはポリペプチドである。いくつかの実施形態によれば、生物学的粒子表面抗原は、CD9、CD63、CD81、CD37、CD82、Alix、ACE-2、Tim4、PLAP、アディポネクチン、FABP4、カベオリン-1、サイトケラチン、EPCAM、E-カドヘリン、P63、異種細胞表面ポリペプチド及び/または生物学的粒子によって受け継がれる他の細胞表面マーカーのうち1または複数を含んでいる。いくつかの実施形態によれば、核酸はDNA、RNA、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態によれば、核酸はDNAを含む。いくつかの実施形態によれば、DNAは、1または複数のリボ核酸ヌクレオチドを含んでいる。いくつかの実施形態によれば、1または複数のリボ核酸ヌクレオチドはウラシルである。いくつかの実施形態によれば、DNAは制限酵素認識部位を含んでいる。いくつかの実施形態によれば、核酸は非天然型ヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態によれば、核酸は、核酸の第1末端上の結合部位及び核酸の第2末端上の結合部位をさらに含み、核酸の第1末端上の結合部位及び核酸の第2末端上の結合部位は異なる。いくつかの実施形態によれば、核酸の第1末端上の結合部位は、アビジン、ストレプトアビジンまたはカルボキシル結合部位である。いくつかの実施形態によれば、結合部位はビオチンである。いくつかの実施形態によれば、核酸の第2末端上の結合部位はアミン部分である。いくつかの実施形態によれば、アミン部分はアジドである。いくつかの実施形態によれば、1または複数の生物学的粒子表面抗原に対する結合剤は、ジベンゾシクロオクチン(DBCO)分子、2-IT(2-イミノチオラン)、MBS(3-マレイミド安息香酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル)SPDP(N-スクシンイミジル 3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート)、SATA(N-スクシンイミジル S-アセチルチオアセテート)、SMCC(スクシンイミジル 4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート)、Sulfo-SMCC、またはそれらの誘導体を含む。いくつかの実施形態によれば、固体担体はウェルプレート、ポリマー、または表面である。いくつかの実施形態によれば、単離された生物学的粒子を放出することは、(i)核酸を酵素的に分解すること、または(ii)核酸の第1及び第2の鎖と相補的な核酸と、鎖置換活性を有し担体から抗体を放出する酵素とを用いた鎖置換により、抗体に連結した核酸の第1の鎖を、担体に連結した核酸の第2の鎖から置換すること、または(iii)抗体に結合したDNAの領域に相補的なオリゴヌクレオチドを用いたポリメラーゼ連鎖反応によって、抗体に結合したDNA鎖を損傷することなく、アニールしたDNA鎖を単離してプラットフォームから抗体を放出すること、を含む。いくつかの実施形態によれば、酵素的切断はウラシルグリコシラーゼを用いるものである。いくつかの実施形態によれば、酵素的切断は制限酵素を用いるものである。いくつかの実施形態によれば、鎖置換活性を有する酵素はDNAポリメラーゼ、トポイソメラーゼ、またはヘリカーゼである。いくつかの実施形態によれば、本方法は、次世代シーケンシングにより、1または複数の生物学的粒子にカプセル化されたmiRNAを含む1以上の低分子ノンコーティングRNAを同定することを含んでいる。いくつかの実施形態によれば、単離された生物学的粒子は、健常な被験体または疾患に罹患している被験体に由来する。いくつかの実施形態によれば、疾患は、ウイルス感染、がん、胎盤形成異常、運動誘発性筋損傷、心不全、アルツハイマー病、肝硬変、ウイルス及び細菌感染、腎疾患、損傷後の骨リモデリング、創傷治癒またはCOPD及び喘息を含む。いくつかの実施形態によれば、ウイルス感染は重症コロナウイルス感染である。いくつかの実施形態によれば、重症コロナウイルス感染は、SARS-CoV-1、MERS、またはSARS-CoV-2に起因する。いくつかの実施形態によれば、重症コロナウイルス感染は、SARS-CoV-2に起因するものである。いくつかの実施形態によれば、SARS-CoV-2による重症コロナウイルス感染に罹患した被験体由来の、単離され定量されたmiRNAは、hsa-miR-146a、hsa-miR-126-3p、hsa-miR-15a、hsa-miR-424、hsa-miR-151-3p、hsa-miR-126-5p、hsa-miR-627-5p、hsa-miR-145、hsa-miR-205、hsa-miR-200c、hsa-miR-550-5p、及びhsa-miR-629のうちの1以上を含んでいる。いくつかの実施形態によれば、重症SARSCoV-2疾患のmiRNAマーカーは、hsa-miR-146a、hsa-miR126-3p、またはその両者を含んでいる。
【0012】
別の態様によれば、本開示は、被験体が重症コロナウイルス感染を発症するリスクをインビトロで評価するための方法、及び重症コロナウイルス感染を処置するための方法であって、a.(1)被験体から生物学的粒子を含む生物学的サンプルを取得し、(2)1または複数の生物学的粒子表面剤に対する結合剤であって、核酸に結合し、前記核酸が固体担体の表面に固定された前記結合剤と、生物学的粒子を含む前記被験者からの前記生物学的サンプルを接触させることにより、前記精製された生物学的粒子の集団を調製し、b.結合剤によって結合された前記生物学的粒子を前記生物学的サンプルから単離し、c.前記結合剤に結合された前記生物学的粒子を放出し、d.前記結合剤から前記生物学的粒子を溶出し、遊離の精製された生物学的粒子の集団を形成し、e.(i)前記精製された生物学的粒子の集団からRNAを抽出し、(ii)エキソソームの精製された集団によってカプセル化された、1または複数のマイクロRNA(miRNA)を含む低分子ノンコーディングRNAの発現を同定及び定量し、(iii)(1)コロナウイルス非感染の対照被験体、(2)コロナウイルスに感染し、軽度疾患を発症した対照被験体、及び(3)コロナウイルスに感染し、重度疾患を発症した対照被験体のカーゴプロファイルに前記精製された生物学的粒子のカーゴプロファイルを比較することにより、前記精製された生物学的粒子の集団のカーゴを評価することにより、前記精製された生物学的粒子のカーゴプロファイルを決定し、(f)精製された生物学的粒子の低分子ノンコーディングRNAまたはタンパク質のカーゴプロファイルが、重症疾患を発症したコロナウイルスに感染している対照被験体からのカーゴプロファイルよりも約1.5倍低く、または1.5倍高い場合について、重症ウイルス感染に対する患者のリスクを決定し、(g)重篤なウイルス感染のリスクを有する患者に適切な療法を実施する前記方法が提供される。
【0013】
いくつかの実施形態によれば、この方法は、生物学的粒子の開始時のプールされた不均一な集団を提供するための最初の限外濾過または超遠心分離ステップを含んでいる。いくつかの実施形態によれば、生物学的サンプルは体液を含む。いくつかの実施形態によれば、体液は、全血、血清、血漿、脳脊髄液(CSF)、リンパ液、尿、便、汗、涙、乳頭吸引液、または精液、あるいは分泌された生物学的液体を含む。いくつかの実施形態によれば、体液は循環体液または分泌体液である。いくつかの実施形態によれば、循環体液は、全血、血清、血漿、CSFまたはリンパである。いくつかの実施形態によれば、重症コロナウイルス感染は、SARS-CoV-1、MERS、またはSARS-CoV-2に起因する。いくつかの実施形態によれば、重症コロナウイルス感染は、SARS-CoV-2に起因するものである。いくつかの実施形態によれば、SARS-Cov-2に感染した患者のmiRNAは、対照と比較した場合、hsa-miR-146a、hsa-miR-126-3p、hsa-miR-15a、hsa-miR-424、hsa-miR-151-3p、hsa-miR-126-5p、hsa-miR-627-5p、hsa-miR-145、hsa-miR-205、hsa-miR-200c、hsa-miR-550-5p、及びhsa-miR-629の1または複数を含んでいる。いくつかの実施形態によれば、SARS-CoV-2による重症疾患のmiRNAマーカーは、対照と比較した場合、hsa-miR-146a、hsa-miR126-3p、またはその両者を含んでいる。いくつかの実施形態によれば、1または複数の生物学的粒子表面抗原に対する結合剤は、抗体、抗体フラグメントまたはアプタマーである。いくつかの実施形態によれば、エキソソーム表面抗原は、CD9、CD63、CD81、CD37、CD82、Alix、ACE-2、Tim4、PLAP、及び/または生物学的粒子によって受け継がれる他の細胞表面マーカーのうちの1または複数を含んでいる。いくつかの実施形態によれば、核酸は、1または複数のリボ核酸ヌクレオチドを含むDNAからなり、リボ核酸ヌクレオチドはウラシルである。いくつかの実施形態によれば、単離された生物学的粒子を放出することは、(i)核酸を酵素的に切断すること、または(ii)核酸の第1鎖または第2鎖に相補的な核酸と鎖置換活性を有する酵素を用いて鎖置換することにより、支持体に連結された核酸の第2鎖から抗体に連結された核酸の第1鎖を置換し、抗体を支持体から遊離させること、または、(iii)抗体に結合したDNAの領域に相補的なオリゴヌクレオチドを用いたポリメラーゼ連鎖反応によって、抗体に結合したDNA鎖を損傷することなく抗体を支持体から遊離させるために、アニールしたDNA鎖を分離することを含んでいる。いくつかの実施形態によれば、酵素的切断はウラシルグリコシラーゼを用いるものである。いくつかの実施形態によれば、酵素的切断は制限酵素を用いるものである。いくつかの実施形態によれば、鎖置換活性を有する酵素はDNAポリメラーゼ、トポイソメラーゼ、またはヘリカーゼである。いくつかの実施形態によれば、精製された生物学的粒子の集団によってカプセル化された1または複数のマイクロRNA(miRNA)を含む低分子ノンコーディングRNAの同定及び定量は、次世代シーケンシングによって行われる。いくつかの実施形態によれば、重症ウイルス感染のリスクがある患者に対する適切な療法は、支持療法、抗ウイルス剤、免疫調節剤のうち1または複数を含んでいる。いくつかの実施形態によれば、(a)支持療法は、輸液の静脈内投与、補助酸素投与、またはネブライザーによる蒸気の吸入からなり、または(b)抗ウイルス剤は、ウイルス侵入を阻害し、ウイルス量を減少させ、またはその両方を阻害し、または(c)抗ウイルス剤は、アシクロビル、ガンシドビル、ホスカルネット、リバビリン、アマンタジン、アジドデオキシチミジン(ジドブジン)、ネビラピン、テトラヒドロイミダゾベンゾジアゼピノン(TIBO)化合物、エファビレンツ、レムデシビル、ロピナビル/リトナビル、ウミフェノビル、ファビピラビル、イベルメクチン、及びデラビルジンから選択され、または(d)免疫調節剤はグルココルチコイド、または組換えインターフェロンであり、または(e)免疫調節剤は、グルココルチコイドであり、グルココルチコイドはコルチコステロイドである。いくつかの実施形態によれば、グルココルチコイドは、プレドニゾン、デキサメタゾン、アザチオプリン、ミコフェノール酸、ミコフェノール酸モフェチル、またはそれらの組み合わせを含む。
【0014】
別の態様によれば、本開示は、重篤なコロナウイルスまたは他のウイルス感染のリスクを有する患者を治療するための回復期血漿療法の治療効果を増強するための方法であって、a)(1)回復期の被験体から、コロナウイルスに対する高いIgG力価を含む回復期の血清を取得し、(2)1または複数の生物学的粒子表面剤に対する結合剤であって、核酸に結合し、前記核酸が固体担体の表面に固定された前記結合剤と、生物学的粒子を含む前記被験者からの前記生物学的サンプルを接触させることにより、前記精製された生物学的粒子の集団を調製し、b)結合剤によって結合された生物学的粒子を生物学的サンプルから単離し、c)前記結合剤に結合された前記生物学的粒子を放出し、d)前記結合剤から生物学的粒子を溶出し、遊離の精製された生物学的粒子の集団を形成し、e)コロナウイルスに対する精製生物学的粒子の集団の中和力価をインビトロで測定し、f)高力価の中和生物学的粒子及び高力価の中和IgGを含む回復血清を被験体に投与することを含む前記方法を提供する。
【0015】
いくつかの実施形態によれば、この方法は、生物学的粒子の開始時のプールされた不均一集団を提供するための最初の限外濾過または超遠心分離ステップを含んでいる。いくつかの実施形態によれば、生物学的サンプルは体液を含む。いくつかの実施形態によれば、体液は、全血、血清、血漿、脳脊髄液(CSF)、リンパ液、尿、便、汗、涙、乳頭吸引液、または精液、あるいは分泌された生物学的液体を含む。いくつかの実施形態によれば、体液は循環体液である。いくつかの実施形態によれば、循環体液は、全血、血清、血漿、脳脊髄液(CSF)またはリンパである。
【0016】
いくつかの実施形態によれば、1または複数の生物学的粒子表面抗原に結合する結合剤は、抗体、抗体結合フラグメントまたはアプタマーである。いくつかの実施形態によれば、生物学的粒子表面抗原は、CD9、CD63、CD81、CD37、CD82、Alix、ACE-2、Tim4、PLAP、アディポネクチン、FABP4、カベオリン-1、サイトケラチン、EPCAM、E-カドヘリン、P63、異種細胞表面ポリペプチド及び/または生物学的粒子によって受け継がれる他の細胞表面マーカーのうち1または複数を含む。いくつかの実施形態によれば、核酸はリボ核酸ヌクレオチドを含むDNAを含み、リボ核酸ヌクレオチドはウラシルであるか、または、DNAは制限酵素認識部位を含んでいる。いくつかの実施形態によれば、単離された生物学的粒子を放出することは、(i)核酸を酵素的に切断すること、または(ii)核酸の第1鎖または第2鎖に相補的な核酸と鎖置換活性を有する酵素を用いて鎖置換することにより、支持体に連結された核酸の第2鎖から抗体に連結された核酸の第1鎖を置換し、抗体を支持体から遊離させること、または、(iii)抗体に結合したDNAの領域に相補的なオリゴヌクレオチドを用いたポリメラーゼ連鎖反応によって、抗体に結合したDNA鎖を損傷することなく抗体を支持体から遊離させるために、アニールしたDNA鎖を分離することを含んでいる。いくつかの実施形態によれば、酵素的切断はウラシルグリコシラーゼを用いるものである。いくつかの実施形態によれば、酵素的切断は制限酵素を用いるものである。いくつかの実施形態によれば、鎖置換活性を有する酵素はDNAポリメラーゼ、トポイソメラーゼ、またはヘリカーゼである。いくつかの実施形態によれば、重症コロナウイルス感染は、SARS-CoV-1、MERS、またはSARS-CoV-2に起因する。いくつかの実施形態によれば、重症コロナウイルス感染は、SARS-CoV-2に起因するものである。いくつかの実施形態によれば、高いIgG力価を有する回復期血清由来の中和精製生物学的粒子集団は、ACE2-レセプターを含んでいる。いくつかの実施形態によれば、SARS-CoV-2ウイルスに対する精製された生物学的粒子集団の中和力価を測定することは、インビトロでコロナウイルスに感染した哺乳動物細胞を、高いIgG力価を有する回復期血清由来の単離された精製生物学的粒子の希釈系列でインキュベートすること、及び陰性対照(回復期血清由来の精製生物学的粒子を含まない感染細胞)と比較してウイルス粒子産生を測定することをさらに含んでいる。いくつかの実施形態によれば、ウイルス粒子産生は、陰性対照と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%減少している。いくつかの実施形態によれば、中和精製生物学的粒子を含む回復期血清は、回復期血漿療法単独による治療と比較して、回復期血漿療法の有効性を少なくとも約2倍高める可能性があり、または(b)中和精製生物学的粒子は、免疫系へのウイルス抗原の提示を可能にする。
【0017】
別の態様によれば、本開示は、重篤なコロナウイルス感染を有する被験体を処置する方法であって、a)(1)生物学的粒子を含む生物学的サンプルを取得し、(2)1または複数の生物学的粒子表面剤に対する結合剤であって、核酸に結合し、前記核酸が固体担体の表面に固定された前記結合剤と、生物学的粒子を含む前記被験者からの前記生物学的サンプルを接触させ、(3)結合剤によって結合された前記生物学的粒子を前記生物学的サンプルから単離し、(4)前記結合剤(2)に結合された前記生物学的粒子を放出し、(5)前記結合剤から前記生物学的粒子を溶出し、遊離の精製された生物学的粒子の集団を形成し、(6)精製された生物学的粒子の集団の中和力価をin vitroで測定することにより、被験体の生物学的サンプルから精製された生物学的粒子の集団の中和力価を決定し、b)被験体から精製された精製生物学的粒子の集団の中和力価が、in vitroでのウイルス粒子産生を減少させるには不十分である場合に、精製された生物学的粒子を中和することを含む回復期血漿療法を被験者に受けさせることを選択し、c)(i)回復期の被験体から、高い抗コロナウイルスIgG力価を含む回復期の血清を取得し、(ii)回復期の血清を、1つ以上の生物学的粒子表面抗原に指向性を有する結合剤と接触させ、(iii)結合剤により結合された生物学的粒子を生物学的試料から単離し、(iv)結合剤に結合された生物学的粒子を放出し、(v)結合された生物学的粒子を結合剤から溶出し、遊離の精製生物学的粒子の集団を形成することにより、回復期の被験体の回復期血漿から精製された生物学的粒子の集団を調製し、d)回復期血清から精製された生物学的粒子集団のSARS-CoV-2ウイルスに対する中和力価をin vitroで測定し、(e)中和精製生物学的粒子単独または中和精製生物学的粒子を含むIgG力価の高い回復期血清を被験体に投与することを含む前記方法を提供する。
【0018】
いくつかの実施形態によれば、この方法は、生物学的粒子の開始時のプールされた不均一集団を提供するための最初の限外濾過または超遠心分離ステップを含んでいる。いくつかの実施形態によれば、生物学的サンプルは体液からなる。いくつかの実施形態によれば、体液は、全血、血清、血漿、脳脊髄液(CSF)、リンパ液、尿、便、汗、涙、乳頭吸引液、または精液、あるいは分泌された生物学的液体からなる。いくつかの実施形態によれば、体液は循環体液または分泌体液である。いくつかの実施形態によれば、循環体液は、全血、血清、血漿、CSFまたはリンパである。
【0019】
いくつかの実施形態によれば、1または複数の生物学的粒子表面抗原に結合する結合剤は、抗体、抗体結合フラグメントまたはアプタマーである。いくつかの実施形態によれば、アプタマーは核酸またはポリペプチドである。いくつかの実施形態によれば、生物学的粒子表面抗原は、CD9、CD63、CD81、CD37、CD82、Alix、ACE-2、Tim4、PLAP、アディポネクチン、FABP4、カベオリン-1、サイトケラチン、EPCAM、E-カドヘリン、P63、異種細胞表面ポリペプチド及び/または生物学的粒子によって受け継がれる他の細胞表面マーカーのうち1または複数を含んでいる。いくつかの実施形態によれば、単離された生物学的粒子を放出することは、(i)核酸を酵素的に切断すること、または(ii)核酸の第1鎖または第2鎖に相補的な核酸と鎖置換活性を有する酵素を用いて鎖置換することにより、支持体に連結された核酸の第2鎖から抗体に連結された核酸の第1鎖を置換し、抗体を支持体から遊離させること、または、(iii)抗体に結合したDNAの領域に相補的なオリゴヌクレオチドを用いたポリメラーゼ連鎖反応によって、抗体に結合したDNA鎖を損傷することなく抗体を支持体から遊離させるために、アニールしたDNA鎖を分離することを含んでいる。いくつかの実施形態によれば、核酸は、1または複数のリボ核酸ヌクレオチドを含むDNAからなり、リボ核酸ヌクレオチドはウラシル、制限部位配列またはRNAとDNA分子の二重鎖であり、酵素的切断はウラシル糖転移酵素、DNaseまたはRNaseによって行われる。いくつかの実施形態によれば、酵素的切断は制限酵素を用いるものである。いくつかの実施形態によれば、鎖置換活性を有する酵素はDNAポリメラーゼ、トポイソメラーゼ、またはヘリカーゼである。いくつかの実施形態によれば、重症コロナウイルス感染は、SARS-CoV-1、MERS、またはSARS-CoV-2に起因する。いくつかの実施形態によれば、重症コロナウイルス感染は、SARS-CoV-2に起因するものである。
【0020】
いくつかの実施形態によれば、コロナウイルスに対する、(i)被験体から精製された生物学的粒子集団の中和力価、及び(ii)高いIgG力価を有する回復期血清由来の精製された生物学的粒子集団の中和力価を測定することは、in vitroでコロナウイルスに感染した哺乳動物細胞を、(i)被験体由来の単離精製された生物学的粒子、及び(ii)高IgG力価を有する回復期血清由来の単離された精製生物学的粒子の希釈系列でインキュベートし、陰性対照(感染細胞単独)と比較したウイルス粒子産生を比較することを含んでいる。いくつかの実施形態によれば、精製された生物学的粒子の中和集団は、ACE2-レセプターを含んでいる。
【0021】
別の態様によれば、本開示は、被験体からの生物学的試料から精製細胞の集団を調製する方法であって、以下を含む前記方法を提供する。
【0022】
a)以下により、精製された細胞集団を調製し、
【0023】
(1)細胞を含む被験体から才物学的サンプルを取得し、
【0024】
(2)1または複数の細胞表面抗原に対する結合剤であって、核酸に結合し、前記核酸が固体担体の表面に固定された前記結合剤と、生物学的粒子を含む前記被験者からの前記生物学的サンプルを接触させる。
【0025】
b)結合剤によって結合された前記細胞を前記生物学的サンプルから単離し、
【0026】
c)前記結合剤に結合された前記細胞を放出し、
【0027】
d)前記結合剤から結合された細胞を溶出し、精製された細胞集団を形成する。
【0028】
いくつかの実施形態によれば、この方法は、細胞の開始時のプールされた不均一な集団を提供するための最初の限外濾過または超遠心分離ステップを含んでいる。
【0029】
いくつかの実施形態によれば、生物学的サンプルはin vivoまたはin vitroで調製される。
【0030】
いくつかの実施形態によれば、生物学的サンプルは体液を含む。いくつかの実施形態によれば、体液は、全血、血清、血漿、脳脊髄液(CSF)、リンパ液、尿、便、汗、涙、乳頭吸引液、または精液、あるいは分泌された生物学的液体を含む。いくつかの実施形態によれば、体液は循環体液または分泌体液である。いくつかの実施形態によれば、循環体液は、全血、血清、血漿、脳脊髄液(CSF)またはリンパである。
【0031】
いくつかの実施形態によれば、1または複数の細胞表面抗原は、CD4、CD8、CD9、CD46、CD63、CD81、CD37、CD82、CD138、CD151、ALix、ACE-2、Tim4、PLAP、アディポネクチン、FABP4、カベオリン-1、サイトケラチン、EPCAM、E-カドヘリン、P63、異種細胞表面ポリペプチドを含む。
【0032】
いくつかの実施形態によれば、異種細胞表面ポリペプチドはキメラ抗原受容体T細胞(CAR-T細胞)によって発現されるものである。
【0033】
いくつかの実施形態によれば、1つ以上の細胞表面抗原に結合する結合剤は、抗体、抗体結合フラグメントまたはアプタマーである。いくつかの実施形態によれば、アプタマーは核酸またはポリペプチドである。
【0034】
いくつかの実施形態によれば、核酸は、DNA、RNA、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態によれば、核酸はDNAを含む。いくつかの実施形態によれば、DNAは、1または複数のリボ核酸ヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態によれば、1または複数のリボ核酸ヌクレオチドは、ウラシルである。いくつかの実施形態によれば、DNAは、制限酵素認識部位を含む。いくつかの実施形態によれば、核酸は、エンドヌクレアーゼまたはRNAse(RNase-H)によって分解可能なDNA/RNA二重鎖である。いくつかの実施形態によれば、核酸は非天然ヌクレオチドを含む。
【0035】
いくつかの実施形態によれば、核酸は、核酸の第1末端上の結合部位及び核酸の第2末端上の結合部位をさらに含み、核酸の第1末端上の結合部位及び核酸の第2末端上の結合部位は異なる。
【0036】
いくつかの実施形態によれば、核酸の第1末端上の結合部位は、アビジン、ストレプトアビジンまたはカルボキシル結合部位である。いくつかの実施形態によれば、結合部位はビオチンである。いくつかの実施形態によれば、核酸の第2末端上の結合部位はアミン部分である。いくつかの実施形態によれば、アミン部分はアジドである。
【0037】
いくつかの実施形態によれば、1または複数の細胞表面抗原に対する結合剤は、ジベンゾシクロオクチン(DBCO)分子、2-IT(2-イミノチオラン)、MBS(3-マレイミド安息香酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル)SPDP(N-スクシンイミジル 3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート)、SATA(N-スクシンイミジル S-アセチルチオアセテート)、SMCC(スクシンイミジル 4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート)、Sulfo-SMCC、またはそれらの誘導体を含む。
【0038】
いくつかの実施形態によれば、固体担体はウェルプレート、ポリマー、または表面である。
【0039】
いくつかの実施形態によれば、単離された細胞を放出することは、
【0040】
(i)核酸を酵素的に切断すること、または
【0041】
(ii)核酸の第1鎖または第2鎖に相補的な核酸と鎖置換活性を有する酵素を用いて鎖置換することにより、支持体に連結された核酸の第2鎖から抗体に連結された核酸の第1鎖を置換し、抗体を支持体から遊離させること、または、
【0042】
(iii)抗体に結合したDNAの領域に相補的なオリゴヌクレオチドを用いたポリメラーゼ連鎖反応によって、抗体に結合したDNA鎖を損傷することなく抗体を支持体から遊離させるために、アニールしたDNA鎖を分離することを含んでいる。
【0043】
いくつかの実施形態によれば、酵素的切断はウラシルグリコシラーゼを用いるものである。いくつかの実施形態によれば、酵素的切断は制限酵素を用いるものである。いくつかの実施形態によれば、酵素的切断はエンドヌクレアーゼまたはRNaseを用いるものである。いくつかの実施形態によれば、鎖置換活性を有する酵素はDNAポリメラーゼ、トポイソメラーゼ、またはヘリカーゼである。
【0044】
いくつかの実施形態によれば、細胞の集団は、非真核生物種及び真核生物種、または健康な正常組織又は疾患組織、またはマウス同所性/異種移植/PDX臓器、または血液、または組織培養物に由来する。
【0045】
いくつかの実施形態によれば、真核細胞はヒト、マウス、ラット、イヌ、非ヒト霊長類、またはネコである。
【0046】
いくつかの実施形態によれば、精製された細胞の集団は、健常な被験体又は疾患に罹患している被験体に由来する。いくつかの実施形態によれば、疾患は、がん、ウイルス感染、胎盤異常、炎症及び他の病態からなる。
【0047】
いくつかの実施形態によれば、細胞は内皮細胞、上皮細胞、T細胞、線維芽細胞、脂肪細胞、神経細胞、腫瘍細胞、血液細胞、または心臓細胞である。
【0048】
いくつかの実施形態によれば、細胞集団は、(a)非真核生物種及び真核生物種、または(b)健常正常組織または疾患組織、または(c)マウス同所性/異種移植/PDX臓器、または(d)血液、または(e)組織培養に由来する。
【0049】
いくつかの実施形態によれば、ウイルス感染は重症コロナウイルス感染である。いくつかの実施形態によれば、重症コロナウイルス感染は、SARS-CoV-1、MERS、またはSARS-CoV-2によるものである。いくつかの実施形態によれば、重症コロナウイルス感染は、SARS-CoV-2によるものである。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】small-RNAシークエンシングとmiRNAバイオマーカーの同定に先立ち、循環細胞外小胞を特異的に免疫捕捉及び放出するための、カスタマイズ可能な低バックグラウンド、高親和性アッセイである、EV-CATCHERアッセイ(Extracellular Vesicle Capture by AnTibody of CHoice and Enzymatic Release)の概略図である。
【
図2】Aは、生物流体から細胞外小胞を精製するために設計されたEV-CATCHERアッセイの概略図であり、分解可能なdsDNA-リンカー(ウラシル化5’-アジドオリゴヌクレオチドと相補的なウラシル化3’-ビオチンオリゴヌクレオチドとのアニーリング)とDBCO活性化抗体及びストレプトアビジンコートプラットフォームとの結合に依存している。Bは、一本鎖オリゴヌクレオチド及び二本鎖(ds)ハイブリダイズDNAリンカーのアクリルアミドゲル移動を示す。一本鎖(ss)ビオチン標識DNA(レーン2)、ssDNAアジド(レーン3)、dsDNAリンカー(レーン4)、UNG消化dsDNAリンカー(レーン5)を15%非変性PAGEゲル上で分離した。Cは、モノクローナルヒト抗CD63抗体(Ab)の活性化とdsDNA-リンカー結合を示す。プロテインラダー(レーンa)、1μgネイティブ抗CD63 Ab(レーンb)、1μgDBCO活性化抗CD63抗体に結合したdsDNA-リンカー(dsDNA-リンカーの量を増加させて使用)(レーンc-e)、UNGで消化したdsDNA-リンカー-Ab(500ng-1μg)(レーンf)の移動を伴うクマシー染色非変性PAGEゲル(12%)の代表画像。実験は繰り返し行い、ChemiDoc MPイメージャーで画像化した。配列番号1及び2をそれぞれ、出現順に開示する。
【
図3A】ストレプトアビジンでコートした磁気ビーズとウェルへの非特異的低分子RNA結合を評価するアッセイ法を示す。サンプル収集の実験手順の概略図(上)。1ngのath-miR-159a RNAオリゴヌクレオチドを含む1xPBS溶液をウェルまたはビーズとインキュベートし、洗浄液#1、洗浄液#2、洗浄液#3、最終溶出を含む4つの異なるサンプルを集めた。左の2つのグラフは、コントロールのath-miR-159a RNA(1ng;黒色のバー)、洗浄液#1、#2、#3(灰色のバー)、及び最終溶出液(白色のバー)を用いて、ウェル(左上のグラフ)及びビーズ(左下のグラフ)、RNase-A処理なしで得られたRT-qPCR定量を示す。右の2つのグラフは、ウェルとビーズを最初にRNase-Aで処理し、同じ方法で採取したサンプルを用いて得られたRT-qPCR定量値を示す。
【
図3B】MCF-7の細胞外小胞非特異的結合を評価するアッセイを示す図である。実験的収集手順を概略図(上)に示す。2つのグラフは、全細胞外小胞コントロール(10μg、黒色バー)、細胞外小胞+RNase-A(濃い灰色のバー)から抽出した全RNAを用いたhsa-miR-21(左)及びhsa-miR-200c(右)のRT-qPCR定量を表す、Dynabeads(商標)(磁気ビーズ)インキュベーション及び除去後の細胞外小胞+RNase-A(薄い灰色のバー)、ウェルとのインキュベーション及び除去後の細胞外小胞+RNase-A(白色のバー)。すべてのqPCR実験は各サンプルについて3回実行された。データはテクニカルレプリケート(ath-miR-159aと10μgMCF-7コントロールの減算処理)で、ΔΔCtとして表される。
【
図4A】抗Alix抗体、抗CD63抗体、抗CD9抗体、及び抗CD81抗体を用いた、ウェスタンブロットによる細胞外小胞表面マーカーの評価を示す。精製前の総タンパク質インプットを減少させた、MCF-7組織培養培地由来のCD63
+細胞外小胞のEV-CATCHER精製。左と中央のウェスタンブロットでは、EV-CATCHER精製前に3μg(レーン1)、2.75μg(レーン2)、2.5μg(レーン3)、2.25μg(レーン4)、2μg(レーン5)、1.75μg(レーン6)、1.5μg(レーン7)の総タンパク質を使用した。
【
図4B】抗Alix抗体、抗CD63抗体、抗CD9抗体、及び抗CD81抗体を用いた、ウェスタンブロットによる細胞外小胞表面マーカーの評価を示す。精製前の総タンパク質インプットを減少させた、ヒト血漿由来のCD63
+細胞外小胞のEV-CATCHER精製。左と中央のウェスタンブロットでは、EV-CATCHER精製前に3μg(レーン1)、2.75μg(レーン2)、2.5μg(レーン3)、2.25μg(レーン4)、2μg(レーン5)、1.75μg(レーン6)、1.5μg(レーン7)の総タンパク質を使用した。
【
図4C】抗Alix抗体、抗CD63抗体、抗CD9抗体、及び抗CD81抗体を用いた、ウェスタンブロットによる細胞外小胞表面マーカーの評価を示す。EV-CATCHERは、血清サンプル由来のCD63
+細胞外小胞精製にも使用され、4つの異なる表面タンパク質抗体によって検証された。
【
図4D】MCF-7細胞外小胞ストック(左、MCF-7ストック)及びMCF-7細胞外小胞ストック(MCF-7)、ヒト血漿(Plasma)及びヒト血清(Serum)から精製したCD63細胞外小胞の透過型電子顕微鏡(TEM)像である。TEM像の直接倍率は20,000倍、スケールバーは200nmである。
【
図4E】MCF-7細胞培養培地(左のグラフ)、ヒト血漿(中央のグラフ)、ヒト血清(右のグラフ)から精製したCD63細胞外小胞について、ナノ粒子追跡(TS400マイクロ流体カートリッジを装備したSpectradyne nCS1)によって特徴付けられた代表的な粒度分布を示す。直径<65nm及び通過時間>80μsに対してピークフィルタリングを行った。65~150nmで検出された粒子の濃度を表す。
【
図5A】ヒト血清中で上位に発現された循環miRNAの次世代シーケンシング及びヒートマップ表示を示す。ヒートマップには、発現した上位49個のmiRNAと、ヒト血清から抽出した総RNAの量を減少させた場合(6ng、3ng、及び1.5ng、二度繰り返し)におけるそれらの検出可能性が含まれる。
【
図5B】マウスRAWS264.7細胞外小胞から抽出した全RNA(最初の2列)、市販の全ヒト血漿(3列目と4列目)、及び市販の同一の全ヒト血漿から超遠心分離により取得した細胞外小胞(5列目と6列目)の間のmiRNA発現の違いを表示したヒートマップ表示である。新しい(Repeats#1)3’バーコードアダプター及び古い(Repeats#2)3’バーコードアダプターを用いて、重複ライブラリーを得た。
【
図5C】ヒト血漿にスパイクされたマウス細胞外小胞のEV-CATCHER特異的捕捉を示す。ヒートマップは、マウスRAWS264.7細胞外小胞とヒト血漿の間のmiRNA発現の違いを表しており、ヒト血漿とマウスRAWS264.7細胞外小胞の間で差次的に発現したmiRNAのトップ58(カラム1及び2)及びマウス特異的転写物のトップ50(カラム5及び6)を含む。ヒト血漿(100μl)中にスパイクしたマウスRAWS細胞外小胞(1μg)を、マウス特異的抗CD63抗体を保有するEV-CATCHERアッセイを用いて血漿から精製した(カラム2及び3)。新しい(Repeats#1)3’バーコードアダプター及び古い(Repeats#2)3’バーコードアダプターを用いて重複ライブラリーを得た。データはRプラットフォームの専用Bioconductorパッケージを使って解析し、ヒートマップは‘NMF’パッケージ(ヒートマップ関数)を用いて作成した。
【
図6A】EV-CATCHERにより精製された細胞外小胞から同定された10種類の発現差のあるmiRNA(緑色の四角、hsa-miR-146a、hsa-miR-126-3p、hsa-miR-424、hsa-miR-151-3p、hsa-miR-126-5p、hsa-miR-627-5p、hsa-miR-145、hsa-miR-205、および hsa-miR-200c)及び軽症および重症のCovid-19入院患者の全血清から同定された2種類の発現量に差があるmiRNA(オレンジ色の四角、hsa-miR-550-5p、hsa-miR-629*)による、次世代低分子RNAシーケンスによる個々のボックスプロット解析を示す。血清から精製された細胞外小胞は、抗CD63、抗CD9、抗CD81抗体の組み合わせを使用するEV-CATCHERにより取得された。
【
図6B】軽症のCovid-19入院患者(n=13)及び重症のCovid-19入院患者(n=17)の血清エキソソーム及び/または細胞外小胞から同定された発現量の異なる上位10個のmiRNAを、全miRNAリードと比較してボックスプロットしたmiRNAリード表示を示す。
【
図6C】軽症患者及び重症患者から精製したエキソソーム及び/または細胞外小胞から抽出したRNAを用いて調製した2つの低分子RNAライブラリー間の、miRNA統合シグネチャー(血清エキソソーム及び/または細胞外小胞で同定された上位10個のmiRNAを含む)のボックスプロット表示を示す(ライブラリー#3は軽症7例、重症8例を含み、ライブラリー#4は軽症6例、重症9例を含む)。
【
図6D】EV-CATCHERで精製した細胞外小胞から抽出したRNAと、軽症患者と重症患者の全血清から抽出したRNAの間の統合的miRNAシグネチャー(10個のmiRNA)のボックスプロット表示を示す。
【
図6E】EV-CATCHERで精製した細胞外小胞から抽出したRNAを用いて、小分子RNA配列決定によって軽症と重症のCovid-19入院患者間で同定された発現量の異なる上位4つのmiRNAのRT-qPCR検証結果をボックスプロットで示したものである。データはΔΔCtとして表され、各サンプルについてテクニカルトリプリケートが行われた。発現の差は、シーケンシングの結果についてはDESeq2(R/Bioconductorパッケージ)を用いて、miRNAスコアとqPCRの結果についてはt検定を用いて評価した。
【
図7A】SARS-CoV-2スパイクタンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)を抗原とする免疫グロブリン(IgG)の存在について定量した6つの回復期血清サンプルを示す。3つの高IgG力価血清サンプル(左)及び3つのIgG力価が定量レベル以下(BLQ)の血清サンプルをELISAで定量した。高IgG力価は10,000倍希釈で残存する活性で推定され、BLQ IgG血清サンプルはSARS-CoV-2のスパイク蛋白に対する検出可能なIgGを含まなかった。
【
図7B】高IgG(レーン1-3)及びBLQ IgG(レーン4-6)血清サンプルからEV-CATCHERアッセイを用いて、抗Alix抗体、抗CD63抗体、抗CD9抗体、抗CD81抗体(Abcam)を用いたCD63精製細胞外小胞のウェスタンブロット分析である。
【
図7C】EV-CATCHERアッセイを用いて回復期血清から単離した高IgG(CDI-001、
図7B-レーン1)及びBLQ IgG(CDI-004、
図7B-レーン6)の代表的な透過型電子顕微鏡(TEM)像を示す。直接倍率は20,000倍、スケールバーは200nmである。
【
図7D】6名のドナーのEV-CATCHERにより精製された細胞外小胞を用い、TS400マイクロ流体カートリッジを備えたSpectradyne nCS1装置を用いて評価されたナノ粒子サイズ分布を示す。
【
図7E】超遠心分離によって高純度の回復期血清細胞外小胞を得るために用いた実験手順の概略図である。
【
図7F】全血清または精製細胞外小胞で処理したVero E6細胞を用いたSARS-CoV-2感染のin vitro評価を示す。健康なVero E6細胞コントロール(バー1、ウイルスなし)に、mNG SARS-CoV-2(バー2、ウイルス)、高IgG(バー3)及びBLQ IgG(バー4)を用いた超遠心分離細胞外小胞(細胞外小胞コントロール)、SARS-CoV-2と高IgG全血清(バー5、7及び9)またはBLQ IgG全血清(バー11、13及び15)、mNG SARS-CoV-2と高IgG血清のCD63
+細胞外小胞(バー6、8及び10)またはBLQ IgG血清のCD63+細胞外小胞(バー12、14及び16)、UNG消化バッファー(バー17)及びUNG消化バッファーとmNG SARS-CoV-2(バー18)を72時間反応させた。統計解析は一元配置分散分析(one-way ANOVA)を用い、Bonferroni post hoc補正を行った。すべての結果は平均値±SEM(n=3)で示され、****=p<0.0001 vs ウイルスである。
【
図7G】mNeonGreen SARS-CoV-2レポーターウイルスを感染させたVero E6細胞の蛍光イメージングを示す。Hoechst 33342とmNeonGreenは、蛍光Celigo Cell Imagingを用いて可視化した。代表的な蛍光画像は、健康なVero E6細胞(ウイルスなしのコントロール)、mNG SARS-CoV-2と高IgG全血清(高IgG血清)、mNG SARS-CoV-2と高IgG血清から精製したCD63+細胞外小胞(細胞外小胞(高IgG血清)、患者番号CDI-001)、mNG SARS-CoV-2(ウイルスコントロール)、BLQ IgG全血清を用いたmNG SARS-CoV-2(BLQ IgG血清、患者番号CDI-004)、BLQ血清から精製したCD63+細胞外小胞を用いたmNG SARS-CoV-2(細胞外小胞(BLQ血清))。画像のスケールバーは500μMであった。
【
図8】small-RNA次世代シーケンシングによって同定された、ヒト血清中の発現循環small-RNA上位117個のヒートマップ表現である(カラム1及び2)。低分子RNAシーケンシングは、全血清中でインキュベートしたDynabeads(商標)磁気ビーズ(カラム3及び4)、全血清中でインキュベートしUNGで処理した磁気ビーズ(カラム5及び6)、全血清中でインキュベートしたCD63抗体と共有結合させた磁気ビーズ(カラム7及び8)、超遠心分離で得た細胞外小胞(カラム9及び10)から抽出したRNAに対して行った。実験はすべて二度繰り返した。
【
図9】AとBは、総タンパク質及びACE-2を示すように染色した、COVID-19回復期血清(左、高IgG力価回復期血清、RBD IgG>10,000;右、BLQ回復期血清)からのエキソソーム抽出物のSDS PAGE分析を示す。Bは、回復期血清((左、高IgG力価回復期血清、RBD IgG>10,000;右、BLQ回復期血清)の総タンパク質に対して正規化されたACE-2タンパク質発現量のグラフであり、高IgG力価の個体からの回復期血漿におけるACE-2の有意な増加を示している。
【発明を実施するための形態】
【0051】
定義
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈上明らかにそうでないことが指示されない限り、複数の参照を含む。従って、例えば、「ペプチド」への言及は、当業者に公知の1つ以上のペプチド及びその等価物などへの言及である。
【0052】
急性呼吸窮迫症候群(ARDS)は、非心原性肺水腫、肺炎、低酸素血症、肺コンプライアンスの低下を特徴とする。ARDSの発症機序はいまだ解明されておらず、ゴールドスタンダードとなる診断テストは存在しない。ARDSのBerlin定義(Ranieri,VM et al.J.Am.Med.Assoc.(2012)307(23):2526-33)は、以下に示す基準と定義を提示している。
【0053】
【0054】
本明細書で使用される「アンジオテンシン変換酵素2」または「ACE2」という用語は、1型膜内在性糖タンパク質[Tipnis,SR et al.J.Biol.Chem.(2000)275(43):33238-43を引用するTikellils,C. and Thomas MC.Intl J.Peptides(2012)256294]であり、レニン-アンジオテンシン系(RAS)の構成因子である殆どの組織において発現し、活性であり、体内の水分量を調節することにより血圧をコントロールする。ACE2の発現が最も高いのは、腎臓、内皮、肺、心臓である[Donoghue,M.et al.Cir.Res.(2000)87(5):E1-E9、Tipnis,SR et al.J.Biol.Chem.(2000)275(43):33238-43を引用する上記文献]。
【0055】
本明細書で使用される「投与する」という用語は、治療薬と組み合わせて使用される場合、治療薬を標的器官、組織または細胞に直接投与または適用すること、または治療薬を被験体に投与することを意味し、それによって治療薬は、それが標的とされる器官、組織、細胞または被験体に正の影響を与える。したがって、本明細書で使用される場合、「投与する」という用語は、例えばエキソソーム及び/または細胞外小胞を含む組成物とともに使用される場合、組成物を標的臓器、組織または細胞内または細胞上に提供すること;または治療薬が標的臓器、組織または細胞に到達するように組成物を患者に提供することを含み得るが、これらに限定されない。「投与」は、非経口的に、例えば、静脈内投与もしくは注入技術、吸入もしくは気腹によって、または他の既知の技術と組み合わせたこのような方法によって達成され得る。
【0056】
本明細書で使用される「Alix」という用語は、輸送に必要なエンドソームソーティング複合体(ESCRT)の付属タンパク質を指す。Alixが細胞外小胞(EV)生合成中のmiRNAのパッケージングに関与することを示す証拠がある[Iavello,A.et al.Int.J.Mol.Med.(2016)37(4):958-66]。
【0057】
本明細書で使用される「アンジオテンシン変換酵素2レセプター」または「ACE2レセプター」という用語は、SARSCoV-2が広範なヒト細胞に感染するための入口となるタンパク質を指す。
【0058】
本明細書で使用される「動物」、「患者」、及び「被験体」という用語には、ヒト、ならびに野生動物、家畜動物、及び農場動物などのヒト以外の脊椎動物が含まれるが、これらに限定されない。「動物」、「患者」、及び「被験体」という用語は、ヒトを含むがこれらに限定されない哺乳類を指す場合がある。
【0059】
本明細書で使用される「抗体」という用語は、抗原の抗原決定基の特徴と相補的な内部表面形状及び電荷分布を有する三次元結合空間を有するポリペプチド鎖の折り畳みから形成される、少なくとも1つの結合ドメインからなるポリペプチドまたはポリペプチド群を指す。
【0060】
全抗体分子の基本的な構造単位は、4本のポリペプチド鎖からなり、2本の同一の軽鎖(L鎖)(それぞれ約220個のアミノ酸を含む)と2本の同一の重鎖(H鎖)(それぞれ通常約440個のアミノ酸を含む)である。2本の重鎖と2本の軽鎖は、非共有結合と共有結合(ジスルフィド結合)の組み合わせによって結合している。分子は2つの同じ部分からなり、それぞれが軽鎖のN末端領域と重鎖のN末端領域からなる同一の抗原結合部位を持つ。通常、軽鎖と重鎖の両方が協力して抗原結合面を形成する。ヒト抗体はκとλの2種類の軽鎖を示すが、免疫グロブリンの個々の分子は通常どちらか一方のみである。
【0061】
抗体は、オリゴクローナル抗体、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、CDRグラフト抗体、多重特異性抗体、二重特異性抗体、触媒抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体、抗イディオタイプ抗体、可溶性または結合形態で標識可能な抗体、ならびにそれらのフラグメント、バリアント、誘導体であり、単独でまたは公知の技術によって提供される他のアミノ酸配列と組み合わせて使用することができる。モノクローナル抗体(mAbs)は、免疫したドナーのマウス脾臓細胞をマウス骨髄腫細胞株と融合させ、選択培地で増殖する確立されたマウスハイブリドーマクローンを得ることにより作製することができる。ハイブリドーマ細胞は、抗体を分泌するB細胞と骨髄腫細胞とのin vitro融合によって生じる不死化ハイブリッド細胞である。In vitro免疫とは、培養中の抗原特異的B細胞を一次的に活性化することを指し、マウスモノクローナル抗体を産生するもう一つの確立された手段である。末梢血リンパ球からの免疫グロブリン重鎖(VH)及び軽鎖(Vκ及びVλ)可変遺伝子の多様なライブラリーも、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅によって増幅することができる。重鎖可変ドメインと軽鎖可変ドメインがポリペプチドスペーサーで連結された単一ポリペプチド鎖(単一鎖FvまたはscFv)をコードする遺伝子は、PCRを用いて重鎖V遺伝子と軽鎖V遺伝子をランダムに結合させることで作製できる。その後、コンビナトリアルライブラリーをクローニングし、ファージ先端のマイナーコートタンパク質と融合させることにより、糸状バクテリオファージの表面に発現させることができる。誘導選択法は、ヒト免疫グロブリンV遺伝子とネズミ免疫グロブリンV遺伝子のシャッフリングに基づいている。この方法は、(i)ヒトλ軽鎖のレパートリーを、目的の抗原と反応するマウスモノクローナル抗体の重鎖可変領域(VH)ドメインとシャッフルし、(ii)その抗原でハーフヒトFabを選択し、(iii)選択されたλ軽鎖遺伝子を、ヒト重鎖のライブラリーの「ドッキングドメイン」として2回目のシャッフルで使用し、ヒト軽鎖遺伝子を持つクローンFab断片を単離する、(v)遺伝子を含む哺乳動物細胞発現ベクターでマウス骨髄腫細胞をエレクトロポレーションによりトランスフェクトし;そして(vi)抗原と反応性のFabのV遺伝子を完全なIgG1、λ抗体分子としてマウス骨髄腫で発現させる。抗体はいかなる生物種由来であってもよい。抗体という用語には、本発明の抗体の結合フラグメントも含まれる。フラグメントの例としては、Fv、Fab、Fab’、一本鎖抗体(svFC)、二量体可変領域(Diabody)、ジスルフィド安定化可変領域(dsFv)が挙げられる。構造的ドメイン及び機能的ドメインは、ヌクレオチド及び/またはアミノ酸配列データを公開配列データベースまたは専有配列データベースと比較することにより同定することができる。例えば、構造及び/または機能が既知の他のタンパク質において生じる配列モチーフまたは予測されるタンパク質コンフォメーションドメインを同定するために、コンピュータによる比較方法を使用することができる。既知の三次元構造に折り畳まれるタンパク質配列を同定する方法は知られている。例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Bowie et al.Science 253:164(1991)を参照。
【0062】
本明細書において使用される「抗原」という用語は、免疫反応を引き起こす任意の物質を指す。
【0063】
本明細書において使用される「抗原結合部位」という用語は、抗体の各アームの先端にあり、抗原と物理的に接触し、非共有結合的に結合する部位を指す。抗原結合部位の抗原特異性は、その形状と存在するアミノ酸によって決定される。
【0064】
本明細書において使用される「抗原決定基」または「エピトープ」という用語は、所与の抗体または抗原レセプターの抗原結合部位に接触する抗原分子の部分を指す。
【0065】
本明細書において使用される「アプタマー」という用語は、高い親和性と特異性で標的分子に非共有的に結合できる三次元形状に折り畳まれた一本鎖合成オリゴヌクレオチドを指す。一次配列よりもむしろ、アプタマーの結合はその三次構造によって決定される。ターゲットの認識と結合には、疎水性相互作用、塩基のスタッキング、インターカレーションと同様に、3次元的な形状依存的な相互作用が関与する。
【0066】
本明細書において使用される「結合」という用語及びその他の文法形式は、化学物質間の持続的な引力を意味する。結合特異性には、特定のパートナーに結合することと、他の分子に結合しないことの両方が含まれる。機能的に重要な結合は、低親和性から高親和性までの範囲で起こる可能性があり、設計要素は望ましくない相互作用を抑制する可能性がある。翻訳後修飾もまた、相互作用の化学的性質や構造を変化させることがある。「プロミスキャス結合」には、構造的可塑性の程度が関与している可能性があり、その結果、異なる残基のサブセットが異なるパートナーとの結合に重要になるのかもしれない。「相対的結合特異性」とは、生化学的システムにおいて、分子がその標的やパートナーと異なる相互作用をすることで、個々の標的やパートナーの同一性に応じて、それらに異なる影響を付与する特性である。
【0067】
本明細書において使用される「結合剤」という用語は、化学物質または抗原などの他の物質に結合できる物質を指す。
【0068】
本明細書において使用される「生分解性」及び「生物学的分解性」という用語は、可溶性種に浸食され、または生理学的条件下で、それ自体、被験体に対して非毒性(生体適合性)であり、被験体によって代謝、除去、または排泄されることが可能な、より小さい単位または化学種に分解される材料を指す。
【0069】
本明細書において使用される「生物学的粒子」という用語は、生物に由来する微細な部分、断片、または量(粒子)を指す。生物学的粒子には、限定されないが、エキソソーム、細胞外小胞、ウイルス粒子、細菌粒子、または表面膜からなる他の分泌粒子が含まれる。
【0070】
本明細書において使用される「バイオマーカー」(または「バイオシグネチャー」)という用語は、ペプチド、タンパク質、核酸、抗体、遺伝子、代謝産物、または生物学的状態の指標として使用されるその他の物質を指す。それは、正常な生物学的プロセス、病原性プロセス、または治療的介入に対する薬理学的反応の細胞または分子指標として客観的に測定され、評価される特性である。本明細書において使用される「指標」という用語は、時間の関数として相対的な変化を明らかにする可能性のある、一連の観察事実から導き出されるあらゆる物質、数、または比率、あるいは、目視可能な、またはその存在もしくは存在の証拠となるシグナル、徴候、印、メモ、または症状を指す。提案されたバイオマーカーが有効であることが確認されると、そのバイオマーカーは、疾病リスク、個体における疾病の存在の診断、または個体における疾病の治療法の調整(例えば、薬物治療または投与レジメンの選択)に使用することができる。
【0071】
本明細書において使用される「カーゴ」という用語は、積荷または運搬されるものを指す。エキソソーム及び/または細胞外小胞に関して、カーゴという用語は、エキソソーム及び/または細胞外小胞に封入された物質を指す。化合物または物質は、例えば、核酸(例えば、ヌクレオチド、DNA、RNA)、ポリペプチド、脂質、タンパク質、または代謝産物、あるいはエキソソーム及び/または細胞外小胞に内包され得る他の物質であってもよい。エキソソーム及び/または細胞外小胞に関して、本明細書において使用される「カーゴプロファイル」という用語は、エキソソーム及び/または細胞外小胞の集団を特徴付けるカーゴ成分(例えば、核酸(例えば、ヌクレオチド、DNA、RNA)、ポリペプチド、脂質、タンパク質、または代謝産物)の存在量の測定を指す。
【0072】
本明細書において使用される「CD9」という用語は、結晶構造が逆円錐状の分子形状を示すテトラスパニンタンパク質ファミリーのメンバーであり、結晶脂質層に膜湾曲を生じさせる。(Umeda,R.et al.Nature Communic.(2020)11:article 1606)。
【0073】
本明細書において使用される「CD37」という用語は、免疫細胞にのみ発現するテトラスパニンタンパク質ファミリーのメンバーを指す。(Zuidscherwoude,M.et al.Scientific Reports(2015)5:12201)。
【0074】
本明細書において使用される「CD63」という用語は、テトラスパニンタンパク質ファミリーのメンバーを指し、そのC末端ドメインはアダプタータンパク質(AP)複合体のいくつかのサブユニットと相互作用し、このテトラスパニンの輸送をクラスリン依存性経路に連結する(Rous,BA et al.Mol.Biol.Cell(2002)13(3):1071-82を引用するAndreu,Z.& Yanez-Mo,M.)。細胞内相互作用タンパク質の中で、CD63は二重PDZドメイン含有タンパク質であるシンテニン-1に直接結合することが示された(同上、Latysheva,N.et al.Mol.Cell Biol.(2006)26(20):7707-18を引用している)。シンテニン-1については、エキソソーム生合成における主要な役割が報告されている(同上、Baietti,MF et al.Nat.Cell Biol.(2012)14(7):677-85)。
【0075】
本明細書で使用する「CD81」という用語は、4つの膜貫通(TM)らせんが逆ティピー状に配置された結晶構造を示すテトラスパニンタンパク質ファミリーのメンバーを指し、このタンパク質は膜内領域に中央ポケットを形成し、中央空洞でコレステロールと結合すると思われる。(Zimmerman,B.et al.Cell(2016)167:1041-51)。発生過程において、CD81は、リンパ球B細胞の必須共刺激分子であり、CD81のパートナーとしてよく知られているCD19の分泌経路に沿った輸送を制御している。(Shoham,T.et al.J.Imunol.(2003)171:4062-72)。CD9及びCD81は、いくつかの細胞間融合プロセスを制御することが示されている。(Charrin,S.et al.J.Cell Science(2014)127:3641-48)。
【0076】
本明細書において使用される「CD82」という用語は、EVへのタンパク質選別の制御及び抗原提示細胞による抗原提示に関与しているテトラスパニンタンパク質ファミリーのメンバーを指す。(Andreu,Z.and Yanez-Mo,M.Front.Immunol.(2014)doi.org/10.3389/fimmu.2014.00442)。
【0077】
本明細書において使用される「クリックケミストリー」という用語は、効率的な試薬条件を用いて結合させることができ、良性溶媒または溶媒中で行うことができ、蒸発、抽出、蒸留などの簡便な方法で除去または抽出できる試薬を用いて化合物を製造する化学合成法を指す。エポキシド及びアジリジンの求核的開環反応、ヒドラゾン及び複素環形成などの非アルドール型カルボニル反応、エポキシドの酸化的形成及びマイケル付加などの炭素-炭素多重結合への付加反応、環化付加反応など、これらの基準を満たすいくつかのタイプの反応が同定されている。クリックケミストリーの代表的な例として、アジドとアルキンをカップリングさせてトリアゾールを形成させる下記式Iの反応がある。銅触媒を用いたアジド-アルキン環化付加反応(CuAAC)は、無触媒の1,3-双極性環化付加反応に比べて10
7~10
8倍という圧倒的な反応速度の加速を特徴とする。広い温度範囲で成功し、水性条件やpH4~12の範囲に影響されず、幅広い官能基を許容する。純粋な生成物は、クロマトグラフィーまたは再結晶を必要とせず、簡単な濾過や抽出によって単離することができる。
【化1】
【0078】
銅を使わないクリックケミストリーの代表例は、式IIに示すような、ジベンゾシクロ-オクチル(DBCO)タグを付けたDNA分子を、銅を使わない環化付加反応によってアジド官能基化表面に結合させる反応である。
【0079】
【化2】
[Eeftens,JM,et al.BMC Biophys.(2015)8:9]。
【0080】
本明細書において使用される「クリック可能な官能基」という用語は、生成物を形成するためにクリックケミストリーで使用することができる官能基を指す。いくつかの実施形態によれば、クリック可能な官能基は、アジドまたはアルキンである。
【0081】
本明細書において使用される「コンジュゲート」という用語は、2つ以上の化学化合物の結合または連結によって形成される化合物を指す。
【0082】
本明細書において使用される「接触」という用語及びその様々な文法形式は、接触している状態、または至近距離にあり、もしくは局所的に近接している状態を指す。
【0083】
本明細書において使用される「回復期血清」という用語は、感染症から回復した個体から得られ、その疾患の原因となった感染因子に対する抗体を含む血液血清を指す。「回復期血清」及び「回復期血漿」という用語は、互換的に使用することができる。
【0084】
本明細書において使用される「コロナウイルス」又は「CoV」(CoVs、複数形)という用語は、呼吸器疾患、腸疾患、肝疾患及び神経疾患を引き起こす、多種多様な動物に感染し得る一本鎖RNAウイルスの大きなファミリーを指す[Weiss,SR,Leibowitz,IL,Coronavirus pathogenesis.Adv.Virus Res.(2011)81:85-164を引用するYin,Y.,Wunderink,RG,Respirology(2018)23(2):130-37]。ヒトコロナウイルスは、過去には比較的無害な呼吸器病原体と考えられていたが、現在では呼吸器感染症における重要な病原体として世界的に注目されている。既知の最大のRNAウイルスであるCoVは、さらにα-、β-、γ-、δ-グループの4つの属に分けられ、βグループはさらにA、B、C、Dのサブグループから構成されている。[Xia,S.et al.Sci.Adv.(2019)5:eaav4580]。
【0085】
CoVは、26,000塩基から37,000塩基の非分節型ポジティブセンス一本鎖RNAでエンベロープされており、これはRNAウイルスの中で最も大きなゲノムである[Weiss,SR et al.Microbiol.Mol.Biol.Rev.(2005)69(4):635-64を引用するYang,Y.et al.,J.Autoimmunity(2020)doi.org/10.1016/j.jaut.2020.102434]。ウイルスRNAは、構造タンパク質、及び構造遺伝子の中に散在する遺伝子をコードしており、その一部はウイルスの病原性において重要な役割を果たす[Fehr,AR,Perlman,S.Methods Mol.Biol.(2015)1282:1-23を引用するYang,Y.et al.,J.Autoimmunity(2020)doi.org/10.1016/j.jaut.2020.102434、Zhao,L.et al.Cell Host Microbe(2012)11(6):607-16]。スパイクタンパク質(S)は、受容体との結合とそれに続く宿主細胞へのウイルス侵入を担っており、S1とS2のサブユニットから構成されている。膜タンパク質(M)とエンベロープタンパク質(E)は、ウイルスの組み立てに重要な役割を果たす;Eタンパク質は病原性に必要である[DeDiego,ML,et al.J.Virol.(2007)81(4):1701-13を引用する上記文献、Nieto-Torres,JL et al.PLoS Pathog.(2014)10(5):e1004077]。ヌクレオカプシド(N)タンパク質には2つのドメインがあり、どちらも異なるメカニズムでウイルスRNAゲノムと結合することができ、RNA合成とカプセル化されたゲノムのビリオンへのパッケージングに必要である。[Fehr,AR,Perlman,S.Methods Mol.Biol.(2015)1282:1-23を引用するYang,Y.et al.,J.Autoimmunity(2020)doi.org/10.1016/j.jaut.2020.102434.、Song,Z.et al.Viruses(2019)11(1):59、Chang,CK et al.J.Biomed.Sci.(2006)13(1):59-72、Hurst,KR,et al.,J.Virol.(2009)83(14):7221-34]。Nタンパク質はまた、インターフェロンのアンタゴニストであり、RNA干渉(RNAi)のウイルスコード化抑制因子(VSR)でもあり、ウイルスの複製に利益をもたらす[Cui,L.et al.J.Virol.(2015)89(17):9029-43を引用する上記文献]。
【0086】
2019年12月までに、6種のコロナウイルスがヒトに感染し、疾病を引き起こすことが確認されている。その中で、αグループのH-CoV-229EとHCoV-NL63、βサブグループAのHCoV-OC43とHCoV-HKU1による感染は軽症であることが多く、ほとんどが感冒症状を引き起こす[Su,S.et al.Trends Microbiol.(2016)24:490-502を引用するXu,X.et al.J.Nuclear Medicine & Molec.Imaging(2020)doi.org/10.1007/s00259-020-04735-9]。他の2種、βサブグループBの重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)とβサブグループCの中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)は病原性が異なり、致命的な病気を引き起こしている[同上、Cui,J.et al.Nat.Rev.Microbiol.(2019)17:181-92を引用]。重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)は、ヒトに感染するコロナウイルスの7番目のメンバーである[Zhu,N.et al.N.Engl.J.Med.(2020)382:727-33]。CoVの宿主細胞への侵入は、ウイルススパイク(S)タンパク質と細胞レセプターとの結合、及び宿主細胞のプロテアーゼによるSタンパク質のプライミングに依存し、このプライミングはS1/S2及びS2’部位でのSタンパク質の切断を含み、S2サブユニットにより駆動されるプロセスであるウイルス膜及び細胞膜の融合を生じる。[Hoffmann,M.et al.Cell(2020)181(2):271-80]。アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)とジペプチジルペプチダーゼ4(DPP4)は、それぞれSARS-CoVとMERS-CoVの宿主受容体として知られている[Kuhn,JH,et al.Cell Mol.Life Sci.(2004)61(21):2738-43を引用するYang,Y.et al.,J.Autoimmunity(2020)doi.org/10.1016/j.jaut.2020.102434;Raj,VS,et al.Nature(2013)495(7440):251-54]。SARSCoV-2は宿主細胞への侵入にSARS-CoVレセプターACE2を使用し、Sタンパク質のプライミングにセリンプロテアーゼTMPRSS2を使用する。[Hoffman,M.et al.Cell(2020)181(2):271-80]。SARS-CoV-2が侵入するメカニズムの一つは、SARS-CoV-2の表面にあるスパイクタンパク質がACE2レセプターに結合し、2つの切断部位で切断され(「プライミング」)、ウイルスと宿主の膜融合を可能にする構造変化を起こすことである。[Shrimp,JH et al.ACS Pharmacol.Trans.Sci.(2020)3(5):997-1007]。
【0087】
本明細書において使用される場合、「由来する」という用語は、起源から何かを受け取り、入手し、または改変するためのあらゆる方法を指す。
【0088】
本明細書において使用される「DNAライブラリー」という用語は、研究者がさらなる研究のために興味のあるDNA断片を同定し、単離することができるように、ベクターにクローン化されたDNA断片のコレクションを指す。
【0089】
本明細書において使用される「ドメイン」という用語は、特徴的な三次構造と機能を有するタンパク質の領域、及び直鎖ペプチド鎖を折り畳むことによって形成される三次構造を構成するタンパク質の三次元サブユニットのいずれかを指す。
【0090】
本明細書において使用される用語「カプセル化」という用語は、カプセル(一部分を包む膜状の包みを意味する)に封入されていることを指す。
【0091】
本明細書において使用される「輸送に必要なエンドソームソーティング複合体」(ESCRT)という用語は、多胞体(MVB)及び管腔内小胞(ILV)の生合成に関与する成分を指す。ESCRTは、酵母から哺乳類まで保存されている4つの複合体(ESCRT-0、-I、-II、-III)と関連タンパク質(VPS4、VTA1、ALIX)にアセンブルする約20種類のタンパク質から構成される(Henne,W.M.,et al.(2011).Dev.Cell 21,77-91を引用するColombo,M.et al.J.Cell Science(2013)126:5553-65;Henne et al.,2011;Roxrud,I.et al.(2010).ESCRT & Co.Biol.Cell 102,293-318)。ESCRT-0複合体はエンドソーム膜のユビキチン化タンパク質を認識し隔離する。一方、ESCRT-I及び-II複合体は、隔離されたカーゴを持つ芽への膜変形を担うようであり、ESCRT-III成分はその後、小胞の脱離を促進する(同上、Hurley,J.H.and Hanson,P.I.(2010).Nat.Rev.Mol.Cell Biol.11,556-566;Wollert,T.et al.Nature(2009)458:172-77を引用)。ESCRT-0は、肝細胞増殖因子制御チロシンキナーゼダブストレート(HRS)タンパク質からなり、モノユビキチン化されたカーゴタンパク質を認識し、シグナル伝達アダプター分子(STAM)、Eps15、クラスリンと複合体を形成する。HRSはESCRT-I複合体のTSG101をリクルートし、ESCRT-IはESCRT-IIまたはESCRTアクセサリータンパク質であるALIXを介して、ESCRT-IIIのリクルートに関与する。最後に、ESCRT機構の解離と再利用には、様々な細胞活動に関連するATPアーゼ(AAA-ATPアーゼ)Vps4との相互作用が必要であり、Vps4は、ESCRT-IIIをさらなる選択事象のためにMVB膜から放出する。ESCRT-IIがILVの生合成に直接的な役割を持つのか、あるいはその機能が特定のカーゴに限定されているのかは不明である(Bowers,K.et al.(2006)J.Biol.Chem.281,5094-5105;Malerod,L.et al.Traffic 8,1617-1629を引用する上記文献)。
【0092】
4つのESCRT複合体に属するESCRTサブユニットの同時枯渇は、MVBの形成を完全には損なわないことから、ILVの形成、ひいてはエキソソーム及び/または細胞外小胞の形成において、他の機序が作用する可能性があることが示されている(Stuffers,S.et al.(2009)Traffic 10,925-937を引用する上記文献)。これらの経路の一つは、スフィンゴミエリンをセラミドに加水分解するII型スフィンゴミエリナーゼを必要とする(Trajkovic,K.et al.(2008)Science 319,1244-1247を引用する上記文献)。異なるESCRT成分の枯渇は、MVBの形成や、エキソソーム及び/または細胞外小胞に関連するプロテオリピドタンパク質(PLP)の分泌の明確な減少にはつながらないが、siRNAによる中性スフィンゴミエリナーゼ発現のサイレンシングや、GW4869という薬剤によるその活性の抑制は、エキソソーム及び/または細胞外小胞の形成と放出を減少させる。しかしながら、このようなセラミドへの依存性が、エキソソームや細胞外小胞を産生する他の細胞型や付加的な荷物に一般化できるかどうかは、まだ明らかにされていない。メラノーマ細胞におけるII型スフィンゴミエリナーゼの枯渇は、MVBの生合成を損なわない(van Niel,G.et al.(2011)Dev.Cell 21,708-721を引用する上記文献)、エキソソーム及び/または細胞外小胞分泌を阻害しないが、これらの細胞では、メラノソームタンパク質PMELの内腔ドメインのESCRT非依存的なソーティングにテトラスパニンCD63が必要である(van Niel et al.,(2011)Dev.Cell 21,708-721)。さらに、テトラスパニンに富むドメインは、エキソソームや細胞外小胞の形成を可能にするソーティングマシーナリーとして機能することが提唱されている(Perez-Hernandez,D.et al.J.Biol.Chem.(2013)288,11649-11661)。
【0093】
エキソソーム及び/または細胞外小胞形成のESCRT非依存的メカニズムに関する証拠があるにもかかわらず、様々な細胞型からの精製エキソソーム及び/または細胞外小胞のプロテオーム解析により、ESCRT成分(TSG101、ALIX)及びユビキチン化タンパク質が同定されている(同、Buschow,S.et al.,(2005)Blood Cells Mol.Dis.35,398-403;Thery,C.et al.,(2006).Curr.Protoc.Cell Biol.Chapter 3,Unit 3.22)。また、ESCRT-0成分であるHRSは、樹状細胞(DC)によるエキソソーム及び/または細胞外小胞の形成及び/または分泌に必要であり、それによって抗原提示能力に影響を与える可能性があることも報告されている(同上、Tamai,K.et al.,(2010)Biochem.Biophys.Res.Commun.399,384-390を引用)。一般にエキソソーム及び/または細胞外小胞分泌の運命にある網状赤血球のトランスフェリン受容体(TfR)は、ユビキチン化されてはいないが、MVB選別のためにALIXと相互作用する(同上、Geminard,C.et al.,(2004).Traffic 5,181-193を引用)。ALIXがエキソソーム及び/または細胞外小胞の生合成と、コアタンパク質に共有結合したシンデカン(硫酸化グリコサミノグリカン(GAG)、ヘパラン硫酸(HS)またはHSとコンドロイチン硫酸(CS)の両方からなる細胞表面ヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)の主要ファミリー)のエキソソームソーティングに関与することも示された-Park,PW.Methods Cell Biol.(2018)143:317-33)、シンテニンとの相互作用を介している(Baietti,MF et al.,(2012).Nat.Cell Biol.14,677-685を引用するColombo,M.et al.J.Cell Science(2013)126:5553-65)。ESCRT-0の2つの構成要素(HRS、STAM1)、ESCRT-Iの1つ(TSG101)、及び遅効性構成要素(VPS4B)の遺伝子をサイレンシングすると、エキソソーム及び/または細胞外小胞分泌に一貫した変化が誘導された。[Colombo,M.et al.J.Cell Sci.(2013)126:5553-65]。
【0094】
本明細書で使用される「エキソソーム及び/または細胞外小胞」という用語は、すべての細胞によって生成される、直径約40~160nm(平均~100nm)のサイズ範囲のエンドソーム起源の細胞外二分子膜結合小胞であって、活発に分泌されるものを指す。
【0095】
生合成:エキソソーム及び/または細胞外小胞は、細胞膜の二重の侵入と、細胞内小胞(ILV)を含む細胞内多胞体(MVB)の形成を伴うプロセスで生成される。ILVは、MVBの細胞膜への融合とエキソサイトーシスにより、最終的に直径40~160nmのエキソソーム及び/または細胞外小胞として分泌される。細胞膜の最初の侵入は、細胞表面タンパク質と細胞外環境に関連する可溶性タンパク質を含むカップ状の構造を形成する。これにより、初期選別エンドソーム(ESE)が新たに形成され、場合によっては既存のESEと直接結合することもある。トランスゴルジ網と小胞体も、ESEの形成とその内容に寄与することがある(Kalluri,R.J.Clin.Invest.(2016)126:1208-15を引用するKalluri,R.,LeBleu,VS.Science(2020)367(6478):eaau6977、van Neil,G.et al.Nat.Rev.Mol.Cell Biol.(2018)19:213-28、McAndrews,KM,Kalluri,R.Mol.Cancer(2019)18:52、Mathieu,M.et al.Nat.Cell Biol.(2019)21:9-17、Willms,E.et al.Front.Immunol.(2018)9:738、Hessvik,NP,Llorente,A.Cell Mol Life Sci.(2018)75:193-208)。ESEは後期選別エンドソーム(LSE)に成熟し、最終的には多胞エンドソームとも呼ばれるMVBを生成する。MVBは、エンドソーム限界膜の内側への侵入(すなわち、細胞膜の二重侵入)によって形成される。この過程で、複数のILV(将来のエキソソーム及び/または細胞外小胞)を含むMVBが形成される。MVBは、リソソームまたはオートファゴソームと融合して分解され、または細胞膜と融合して、含まれるILVをエキソソーム及び/または細胞外小胞として放出することができる[Kahler,C.,Kalluri,R.J.Mol.Med.(2013)91:431037を引用する上記文献]。
【0096】
異質性:細胞外小胞の異質性は、その粒径、内容物、レシピエント細胞への機能的影響、及び細胞起源を反映していると考えられている。それは、分泌される間に、その起源細胞から表面タンパク質を獲得する。それは天然に、細胞間でmRNA、miRNA及びタンパク質を輸送する。
【0097】
バイオマーカー:その膜にはテトラスパニンであるCD9、CD37、CD63、CD81及びCD82が特異的に濃縮されている、ということで全体的に意見が一致している。
【0098】
役割:細胞外小胞は、健康状態及び疾患における近距離及び長距離の細胞間伝達の媒介物質であり、細胞生物学の様々な側面に影響を与える。
【0099】
本明細書で使用される「細胞外小胞(EV)」という用語は、細胞間伝達の一形態としてDNA、RNA及びタンパク質を含めた積荷を細胞間で輸送し得る、細胞から放出されたナノサイズの膜結合型小胞を指す。微小小胞(MV)、エキソソーム、オンコソーム及びアポトーシス小体を含めた種々のEVタイプは、それらの生合成または放出経路に基づいて特徴付けられている。微小小胞は、形質膜から直接発生し、粒径が100ナノメートル(nm)~1マイクロメートル(μm)であり、細胞質積荷を含有する(Heijnen,HF et al.Blood(1999)94:3791-99を引用しているZaborowski,MP et al.BioScience(2015)65(8):783-97)。別のEVサブタイプであるエキソソームは、多胞体と形質膜との間での融合によって形成されるが、この融合によって多胞体は、40~160nmの範囲の直径を有したより小さな小胞(エキソソーム)を放出する(El Andaloussi,S.et al.Nature Reviews Drug Discovery(2013)12:347-57、Cocucci,E.and Meldolesi J.Trends in Cell Biology(2015)25:364-72を引用する上記文献)。死滅しつつある細胞は、特定条件下でエキソソームまたはMVよりも豊富に存在し得る、かつ生体液間で内容物が異なり得る、小胞状のアポトーシス小体(50nm~2μm)を放出する(Thery,C.et al.J.Immunology(2001)1666:7309-18、El Andaloussi,S.et al.Nature Reviews Drug Discovery(2013)12:347-57を引用する上記文献)。膜突出は、オンコソーム(1~10μm)と称される大きなEVも発生させ得るが、これは主に、形質転換されていない対応物とは異なる悪性細胞によって産生される(Di Vizio,D.et al.Am.J.Pathol.(2012)181:1573-84、Morello,M.et al.Cell Cycle(2013)12:3526-36を引用する上記文献)。
【0100】
本明細書で使用される「阻害剤」という用語は、量もしくはプロセスの速度を減少させる、プロセスを完全に停止させる、またはその作用もしくは機能を減少させる、制限するもしくは阻止する分子を指す。酵素阻害剤は、酵素に結合してそれによって酵素活性を低下させる分子である。阻害剤は、その特異性及び力価によって評価され得る。阻害には、物質の量、速度、作用機能またはプロセスの少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%の減少または低下が含まれ得る。
【0101】
「単離された」という用語は、本明細書において、(1)天然の存在環境で通常みられるように付随または相互作用する成分を実質的または本質的に含まない、材料、例えば、限定はされないが、核酸、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質を指して使用される。「実質的に含まない」または「本質的に含まない」という用語は、本明細書において、約95%超、96%超、97%超、98%超、99%超または100%超が含んでいないことを指して使用される。単離された材料は、天然環境にある当該材料と一緒にはみられない材料を、任意選択的に含む;あるいは(2)材料がその天然の環境にある場合、当該材料は合成的に(非天然に)、意図的な人間の介入によって組成物に変えられている、及び/またはその環境でみられる材料に元来存在していない細胞の中のある場所(例えば、ゲノム、または細胞内の細胞小器官)に置かれている。合成材料を得るための改変は、天然の状態にあるかまたはそこから取り出された材料に対して実施され得る。
【0102】
本明細書で使用される「Fab断片」という用語は、酵素パパインによるIgGの切断によって生産された、Fc領域を有さず抗体の単一の抗原結合アームで構成された抗体断片を指す。それは、完全軽鎖と、重鎖のアミノ末端側可変領域及び第1定常領域とが鎖間ジスルフィド結合によって結び付けられたものを含有する。
【0103】
本明細書で使用される「F(ab’)2断片という用語は、ペプシンによるIgGの切断によって生産された、Fc領域を有さず2つの繋げられた抗原結合アーム(Fab断片)で構成された抗体断片を指す。
【0104】
本明細書で使用される「断片」または「ペプチド断片」という用語は、より大きなペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質に由来する、そこから切り離された、または切断された、小さな部分であって、より大きなペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質の所望の生物学的活性を保持している、当該部分を指す。抗体結合断片(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、及び一本鎖(sc)抗体)は、組換えDNA技術によって、または完全抗体の酵素的もしくは化学的切断によって生産され得る。
【0105】
本明細書で使用される「異種」という用語は、無関係な、または類似していない要素または部分で構成されていること;変化していること;種々雑多なものからなること;異なる種類のものである;構造、質などが異なるまたは全く異なることを指す。
【0106】
本明細書で使用される「高処理量スクリーニング」または「HTS」という用語は、自動装置を使用して数千~数百万個の試料をモデル生物、細胞、経路または分子のレベルでの生物学的活性について高速検査することを指す。
【0107】
本明細書で使用される「同種」という用語は、同じ特徴、構造、質などを有すること;本質的に類似していること;同じ性質を有すること;類似するまたは同一の要素または部分で構成されていること;一様であることを指す。
【0108】
本明細書において、「免疫応答」及び「免疫介在性の」という用語は、これらの反応の結末が対象にとって有益なものであるか有害なものであるかにかかわらず、外来または自己抗原のいずれかに対する対象の免疫系の任意の機能発現を指して互換的に使用される。
【0109】
本明細書で使用される「免疫調節性」という用語は、例えばケモカイン、サイトカイン、及び免疫応答の他の介在物質を発現することによって、免疫応答を直接的または間接的に増大または減少させることができる、物質または薬剤を指す。
【0110】
本明細書で使用される「吸入」という用語は、投薬された蒸気を呼吸によって吸い込む行為を指す。
【0111】
本明細書で使用される「吸入送達装置」という用語は、液体または乾燥粉末エアゾール製剤から小さな液滴またはエアゾールを生成し、例えば液体、懸濁液、粉末などの中に含まれている薬物の肺内投与を成し遂げるべく口からの投与のために使用される、装置/機械または部品を指す。
【0112】
本明細書で使用される「結び合わせる」という用語は、あるものを別のものと繋げる、結合させる、または連結することを意味する。これらの用語の各々は互換的に使用される。
【0113】
本明細書で使用される「長鎖ノンコーディングRNA」(「lncRNA」)という用語は、200ヌクレオチドよりも長いがタンパク質をコードしない、転写されるRNA分子のクラスを指す。LncRNAは、複雑な構造に折りたたまれ得、タンパク質、DNA及び他のRNAと相互作用して活性、多タンパク質複合体のDNA標的またはパートナーを調節し得る。lncRNAとmiRNAとのクロストークは、遺伝子発現の転写後調節を働かせる複雑なネットワークを作り出す。例えば、lncRNAは、miRNA結合部位を内包し得、miRNAを他の転写産物から隔離する分子デコイまたはスポンジとして働き得る。標的mRNAとの結合をめぐるlncRNAとmiRNAとの間での競合が報告されており、これは、遺伝子発現の抑制解除をもたらす(Yoon,JH et al.Semin.Cell Dev.Bio.(2014)34:9-14を引用しているZampetaki,A.et al.Front.Physiol.(2018)doi.org/10.3389/fphys.2018.01201、Ballantyne,MD et al.Clin.Pharmacol.Ther.(2016)99:494-501)。最終的にlncRNAは、埋め込まれたmiRNA配列を含有し、miRNAの供給源としての役割を果たす(Piccoli,MT et al.Cir.Res.(2017)121:575-83を引用する上記文献)。
【0114】
本明細書で使用される「メッセンジャーRNA」(「mRNA」)という用語は、タンパク質翻訳において機能するものであるコーディングRNAを指す。
【0115】
本明細書で使用される「マイクロRNA」(または「miRNA」)という用語は、小さな18~28ヌクレオチドの長さのノンコーディングRNA分子のクラスを指す。それらの主な役割はタンパク質発現の転写後調節にある。
【0116】
本明細書で使用される場合、「中和」という用語、及び他のその文法形式は、例えば宿主細胞にウイルス粒子が結合及び進入するのを阻害することであってこれによってウイルス複製サイクルが効果的に阻害されることによる、ウイルスの感染性の阻害を指して、使用される。本明細書で使用される「中和力価」という用語は、中和を生じさせるのに必要な、生体試料に由来する物質の最小量または濃度を指す。
【0117】
本明細書で使用される「次世代シーケンシング」、「NGS」、「超並列シーケンシング」または「ディープシーケンシング」という用語は、個体の全ゲノムのヌクレオチド配列を自動プロセスで一度に決定するために用いられる高処理量の方法を表す。まず、患者の試料から、断片化、精製、及びDNA試料の増幅によって、DNAライブラリーを調製する。その後、個々の断片を、固体表面または小ビーズへの結合によって物理的に単離する。これらの断片の各々の配列は、合成による配列決定などの技術によって同時に解明される。結果として得られた配列データは、コンピュータによって「標準参照」ゲノムに対してアライメントされる。
【0118】
本明細書で使用される「ノンコーディングRNA」(「ncRNA」)という用語は、DNAから転写されるがタンパク質には翻訳されない機能性RNA分子を指す。それらは、ハウスキーピング及び調節性ノンコーディングRNAに分類される。ハウスキーピングncRNAとしては、リボソームRNA(リボソームのRNA成分であるrRNA)、転移RNA(アミノ酸をmRNAに整合させるためのアダプターとして機能するものであるtRNA)、核内低分子RNA(mRNAスプライシングなどのRNAプロセシングにおいて機能するものであるsnRNA)、及び核小体低分子RNA(他のRNAの化学修飾を誘導することにおいて機能するものであるsnoRNA)が挙げられる。調節性ノンコーディングRNAは、短鎖ncRNA(200nt未満)及び長鎖ncRNA(200ntを上回る)に分割される。200nt未満の短鎖ノンコーディングRNAはマイクロRNA(miRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)及びpiwi結合RNA(piRNA)、ならびに長鎖ノンコーディングRNA(200ntを上回る)を含む。[Losko,M.et al.Mediators of Inflammation(2016)1-12.10.1155/2016/5365209]。
【0119】
本明細書で使用される「核酸」という用語は、一本鎖または二本鎖形態のいずれかであるデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドポリマーを指し、特に限定されない限り、天然に存在しているヌクレオチド(例えばペプチド核酸)と同様の様式で一本鎖核酸にハイブリダイズするという点において天然ヌクレオチドの必須の性質を有している既知の類縁体を包含する。
【0120】
本明細書で使用される「ヌクレオチド」という用語は、窒素含有塩基(DNAではアデニン、グアニン、チミンまたはシトシン;RNAではアデニン、グアニン、ウラシルまたはシトシン)、リン酸基及び糖(DNAではデオキシリボース;RNAではリボース)からなる分子を指す。
【0121】
本明細書で使用される「粒子」という用語は、極めて小さな構成物質、例えばナノ粒子を指す。
【0122】
本明細書で使用される「PDZドメイン」という用語は、標的タンパク質のC末端側にある短いアミノ酸モチーフをしばしば認識する、豊富なタンパク質相互作用モチーフを指す。それらは、複数の生物学的プロセス、例えば、輸送、イオンチャネルシグナル伝達及び他のシグナル伝達系を調節することに関係があるとされている。(Lee,H-J & Zheng,JJ.Cell Communication & Signaling(2010)8:article 8参照)。
【0123】
本明細書で使用される「ペプチド模倣体」という用語は、天然の親ペプチドの生物学的作用(複数可)を模倣する(模擬するという意味)またはそれに拮抗する(中和または相殺するという意味)ことができる小さなタンパク質様鎖または非ペプチド性構造要素を指す。
【0124】
「胎盤性アルカリホスファターゼ」または「PLAP」という用語は、正常では始原生殖細胞及び合胞体栄養細胞によって産生される酵素を指し、その発現の検出は、生殖細胞腫瘍の診断に役立つ。正常なヒト成人及び胎児筋肉組織ではPLAP免疫反応性が認められる。この免疫反応性は、軟部組織腫瘍における筋原性分化の度合いに関係しているようであり、骨格筋分化を有する細胞においてより頻繁に発現し、筋線維芽細胞の特徴を有する細胞において最も発現が少ない。(Goldsmith,JD,et al.Am J.Surgical Pathol(2002)26(12):1627-33)。
【0125】
本明細書で使用される「血漿」という用語は、循環血の流体(非細胞性)部分、及びリンパの流体部分を指す。
【0126】
「ポリマー」という用語は、多くの小単位の繰り返しで構成される大分子または巨大分子を指す。「モノマー」という用語は、他の分子に化学的に結合してポリマーを形成し得る分子を指す。本明細書で使用される「コポリマー」という用語は、1種類よりも多いモノマーから得られるポリマーを指す。
【0127】
「ポリペプチド」及び「タンパク質」という用語は、本明細書において、その最も広い意味で、小単位アミノ酸、アミノ酸類縁体またはペプチド模倣体の配列を指して使用される。小単位は、特に記されている場合を除き、ペプチド結合によって繋げられる。これらの用語は、天然に存在するアミノ酸ポリマーに対してだけでなく、1つ以上のアミノ酸残基が、天然に存在する対応するアミノ酸の人工化学類縁体になっているアミノ酸ポリマーに対しても、適用される。当該用語は、グリコシル化、脂質結合、硫酸化、グルタミン酸残基のガンマカルボキシル化、ヒドロキシル化、及びADPリボシル化を含むがこれらに限定されない修飾も包含する。よく知られているように、そして上記にあるように、ポリペプチドが完全に線状でない場合があることは理解されよう。例えば、ポリペプチドはユビキチン化の結果として分岐状になり得、またはそれは、天然のプロセシングによるものであろうと、天然に起こらない人為的操作によってもたらされる事象によるものであろうと、一般的に翻訳後事象の結果として、分岐を有するもしくは有さない環状になり得る。環状、分岐状、及び分岐環状ポリペプチドは、完全に合成方法によって合成され得る。
【0128】
本明細書で使用される「精製」という用語、及びその様々な文法形式は、外来の、外生の、または厭わしい要素から分離するまたは遊離させるプロセスを指す。組成物は、それにもかかわらず、生体系または合成中にそれに会合していることがある物質から実質的に分離されているという点では実質的に純粋である。本明細書で使用される場合、「実質的に純粋な」という用語は、分析的プロトコールによって決定される少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも99%の純度を指す。そのようなプロトコールには、例えば、フローサイトメトリー、電気泳動、低分子RNAシーケンシング、定量的PCR、ナノ粒子追跡、電子顕微鏡、質量分析、ウェスタンブロッティング、ELISA、及び様々な代謝アッセイが含まれるが、これらに限定されない。
【0129】
「定量的PCR」(または「qPCR」)という用語は、「リアルタイムPCR」または「定量的リアルタイムPCR」とも呼称されるが、標的DNA配列の増幅を反応物中のそのDNA種の濃度の定量と結合させる、ポリメラーゼ連鎖反応に基づく技術を指す。
【0130】
本明細書で使用される「受容体結合ドメイン」または「RBD」という用語は、ウイルスタンパク質を宿主細胞受容体に結合させてそれによって宿主細胞への進入及び感染を獲得するウイルスタンパク質上のドメインを指す。SARS-CoV-2のRBDは、Sタンパク質の残基331~524に対応する。[Tai,W.et al.Cellular & Molecular Immunol.(2020)17:613-20]。
【0131】
レニンアンジオテンシン系(RAS)は、腎及び心血管機能の中心的調節因子である。古典的には、それは、アンジオテンシン変換酵素(ACE)、その産物、アンジオテンシン(Ang)II、及びAng IIの受容体、アンジオテンシン1型(AT1)及びアンジオテンシン2型(AT2)受容体からなる。RASはさらに、Ang IIからAng-(1~7)を生成するモノカルボキシペプチダーゼ、ACE2を含む。アンジオテンシン-(1~7)はGタンパク質結合受容体Masの内因性リガンドであり、したがって、MasはAng-(1~7)の生物学的作用を媒介する[Santos,RA et al.Proc.Nat.Acad.Sci.USA(2003)100:8258-63を引用しているSingh,N.et al.Am J.Physiol.Heart Circ.Hysiol.(2015)309(10):H1697-H1707]。Ang IIは、心血管系において高血圧性、酸化促進性、肥大性及び線維化促進性の作用を生じさせる。Ang-(1~7)は、血管拡張性、降圧性、肥大抑制性、抗線維化性及び抗血栓性の作用を減少させることによってACE/AngII経路に逆調節作用を誘発する[Ferreira,AJ,et al.Hypertension(2010)55:207-13、Jusuf,D.et al.Eur.J.Pharmacol.(2008)585:303-12を引用する上記文献]。
【0132】
本明細書で使用される「制限酵素」という用語は、核酸分子中の短い配列を認識してその配列またはその近傍において核酸分子を切断し、その結果として二本鎖または一本鎖切断部をもたらす、細菌によって産生された酵素を指す。本明細書で使用される「制限酵素認識部位」または「制限部位」という用語は、各制限酵素によって認識される、DNAの塩基対の短い特定の配列である。
【0133】
本明細書で使用される「血清」という用語は、フィブリン血餅及び血球を除去した後に得られる血液の流体部分を指す。
【0134】
本明細書で使用される「静止系」という用語は、ある時点での出力がその時点における入力にのみ依存している、フィードバック系がない系を指す。それは、任意の時点において出力がデータの過去及び未来の値に依存している「動的系」とは区別される。
【0135】
本明細書で使用される「鎖置換」という用語は、DNA相同組換え及びDNAミスマッチ修復における反応を指す。それは、二本鎖DNA中の鎖の1つが別のほぼ同一な鎖に置き換えられる反応である。DNA鎖置換には、「侵入」、「既存」及び「基質」鎖と命名される3本の一本鎖が関与する。基本的にはそれは、基質鎖上での侵入鎖と既存鎖との間での交換反応である。二本鎖核酸分子は、鎖置換活性(例えば弛緩活性)を有する酵素、例えばトポイソメラーゼまたはヘリカーゼ、及び二本鎖核酸中の既存鎖に対して相補的である侵入鎖によって、2つの別個な一本鎖核酸鎖に部分的または完全に分離される。酵素は二本鎖核酸を弛緩させて、二本鎖核酸の分離された鎖の1つに相補侵入鎖がハイブリダイズすることを可能にし、それによって、既存二本鎖核酸鎖とそれに整合する基質鎖とが再アニーリングして元の二本鎖DNA分子になるのを阻止する。置き換えられ既存一本鎖DNAは、その後、既存鎖が完全に侵入鎖に置き換わるまで分岐点移動を受ける。(Broadwater,Jr.,DWB,Kim,HD,Biophys.J.(2016)110(7):1476-84)。記載され、及び特許請求されているアッセイは、DNA置換を含むが、このDNA置換では、抗体に結合しているDNA鎖において、二本鎖DNAの二重鎖の末端に小さなオリゴヌクレオチドがハイブリダイズ及びオーバーハングし、DNAポリメラーゼ反応が初期DNA鎖(抗体に連結された鎖と、ビオチンを介して足場に連結された鎖)を分離させ、そのようにして、独特なDNA鎖を有する独特な抗体が、エキソソームの様々な表面マーカーを標的とする様々な抗体の群から特異的に引き離され得る。
【0136】
本明細書で使用される「テトラスパニン」という用語は、主に膜タンパク質組織化物質として機能する保存された構造を有する、膜をまたいで存在するタンパク質を指す。タンパク質のテトラスパニンファミリーのメンバーは、4つの膜貫通ドメインを有するが、これらは、小さな(EC1)及び大きな(EC2)細胞外ループを作り出すのに寄与している[Abe,M.et al.Cancer Lett.(2008)266:163-70を引用しているTermini,CM,Gillette,JM,Front.Cell Dev.Biol.(2017)5:34)。大きな細胞外ループは、保存されたCys-Cys-Glyアミノ酸モチーフ(CCGモチーフ)、及び他の2つの保存されたシステイン残基を含有する。テトラスパニンファミリーの多くのメンバーは、翻訳後修飾も含有する。
【0137】
本明細書で使用される「治療剤」という用語は、治療効果をもたらす薬物、分子、核酸、タンパク質、代謝産物、細胞、組成物または他の物質を指す。本明細書で使用される「活性」という用語は、意図した治療効果を担っている、記載される本発明の組成物の原料、成分または構成物質を指す。「治療剤」及び「活性薬剤」という用語は本明細書において互換的に使用される。
【0138】
本明細書で使用される「治療構成要素」という用語は、集団のある百分率において特定の疾患徴候の進行を排除、軽減または防止する治療的に有効な投薬量(すなわち、投与の用量及び頻度)を指す。一般的に用いられている治療構成要素の一例は、集団の50%において特定の疾患徴候に対して治療的に有効である特定の投薬量での用量を表すED50である。
【0139】
活性薬剤の「治療量」、「有効な量」または「治療的有効量」という用語は、意図した治療利益をもたらすのに十分な量を指して互換的に使用される。但し、投薬量レベルは、患者の年齢、体重、性別、病状、病態の重症度、投与経路、及び採用される特定の活性薬剤を含めた様々な因子に基づく。それゆえに投薬計画は実に様々であり得るが、標準的な方法を用いて医師によって慣例的に判断され得る。加えて、「治療量」及び「治療的有効量」という用語は、記載される本発明の組成物の予防的または防止的な量を含む。記載される本発明の予防的または防止的な用途において、医薬組成物または医薬は、疾患、障害または病態の生化学的、組織学的及び/または行動的症候、その合併症、ならびに疾患、障害または病態の進展の間に呈する中間的な病理学的表現型を含めた疾患、障害または病態のリスクを排除もしくは低減する、その重症度を低減する、またはその発症を遅らせるのに十分な量で、疾患、障害または病態に罹患しやすいかあるいはそのリスクを有する患者に投与される。一般的には、最大用量、すなわち、いくつかの医学的判断に従って最も高い安全用量を用いることが好ましい。「用量」及び「投薬量」という用語は本明細書において互換的に使用される。
【0140】
本明細書で使用される「治療効果」という用語は、結果が望ましく有益であると判断される、治療の結果を指す。治療効果には、直接的または間接的に、疾患徴候の阻止、軽減または排除が含まれ得る。治療効果にはまた、直接的または間接的に、疾患徴候の進行の阻止軽減または排除も含まれ得る。
【0141】
本明細書に記載される任意の治療薬剤に関して、治療的有効量は、最初は、in vitroでの試験及び/または動物モデルにおいて予め決定され得る。治療的有効用量はまた、ヒトデータからも決定され得る。適用される用量は、投与される化合物の相対的な生物学的利用率及び力価に基づいて調整され得る。上記方法及び他のよく知られた方法に基づいて最大限の有効性をもたらすように用量を調整することは、当業者の能力の範囲内である。
【0142】
治療有効性を決定するための一般的原理は、参照により本明細書に援用されるGoodman and GilmanのThe Pharmacological Basis of Therapeutics,10th Edition,McGraw-Hill(New York)(2001)の第1章の中に見つかり得るが、以下に要約される。
【0143】
薬物動態原理は、許容されない有害作用を最小限に抑えながら所望の度合いの治療有効性を得るべく投薬計画を改変するための基準を提供する。薬物の血漿中濃度が測定され得、治療適用枠に関係付けられ得る状況では、投薬量改変のためのさらなる指針が得られ得る。
【0144】
大抵の臨床現場では、薬物は、治療適用枠に関連付けて薬物の定常状態濃度を維持するために、一連の反復用量で、または連続輸注として投与される。選定された定常状態または目標濃度(「維持用量」)を維持するためには、薬物投与の速度を、投入速度が損失速度と等しくなるように調整する。臨床医が血漿における薬物の所望の濃度を選択し、特定患者におけるその薬物のクリアランス及び生物学的利用率を知っている場合、適切な用量及び投薬間隔が算出され得る。但し、生細胞療法はこの概念を破る。なぜなら、それは分裂するものであり、自家細胞療法の場合には身体における永久的存在さえ獲得し得るからである。したがって、最初に投与されたものは、レシピエントの中に存在しているものとの相関性が時の経過とともにほとんどなくなり得る。
【0145】
本明細書で使用される「TCID50」または「50%組織培養感染量」という用語は、細胞が培養された表面にウイルス流体の希釈溶液を播種した場合に細胞の50%が感染する濃度を指す。
【0146】
本明細書で使用される「T細胞免疫グロブリン・ムチンドメイン含有4」または「Tim-4」という用語は、抗原提示細胞上に選択的に発現するがT細胞上には発現せず、T細胞増殖を調節し得る、ホスファチジルセリン受容体を指す。(Liu,W.et al.Front.Immunol.(2020)doi.org/10.3389/fimmu.2020.00537)。
【0147】
本明細書で使用される「力価」という用語は、血中の抗体の濃度などの生体試料中の物質の濃度及び強さの尺度である。力価は、検出可能な効果をなおも可能とする最高希釈倍率によって推定される。例えば、1:100が陽性検査結果を与え、より高い希釈倍率が陰性である場合、力価は100である。
【0148】
本明細書で使用される「治療する」、「治療された」または「治療すること」という用語は、望ましくない生理学的状態、障害または疾患を防止もしくは減速させること、または有益な、もしくは望ましい臨床結果を得ることを目的とする、治療処置及び/または予防的もしくは防止的手段の両方を指す。本開示の目的に関して、有益な、または望ましい臨床結果としては、症候の緩和;病態、障害または疾患の程度の軽減;病態、障害または疾患の状態の安定化(つまり、悪化させないこと);病態、障害または疾患の発症の遅延、または進行の減速;病態、障害または疾患状態の改善;及び検出可能あるいは検出不可能な(部分的あるいは完全な)寛解、または病態、障害もしくは疾患の向上もしくは改善が挙げられるが、これらに限定されない。治療には、許容されない副作用を伴うことなく臨床的に重要な応答を誘発することが含まれる。治療にはまた、治療を受けていない場合に予想される生存期間と比較して生存期間を延ばすことが含まれる。
【0149】
本明細書で使用される「ウイルス負荷」という用語は、生物中、典型的には血流中の、通常はミリリットルあたりのウイルス粒子で示されるウイルスの量の測定結果を指す。
【0150】
方法
一態様によれば、本開示は、被験者の重症ウイルス感染症の発症リスクをin vitroで評価し、治療するための方法を提供し、該方法は、
【0151】
a)カーゴを含む精製生物学的粒子の集団を調製することであって、該調製することは、
【0152】
(1)被験者から生物学的粒子を含む生体サンプルを取得すること、
【0153】
(2)被験者からの生物学的粒子を含む生体サンプルを、1つ以上の生物学的粒子の表面抗原に対する結合剤と接触させることであって、結合剤が核酸に結合され、核酸が固体支持体に固定化される、該接触させること、による上記調製することと、
【0154】
b)結合剤によって結合された生物学的粒子を生体サンプルから単離することと、
【0155】
c)結合剤に結合した生物学的粒子を放出することと、
【0156】
(d)結合した生物学的粒子を結合剤から溶離し、遊離の精製生物学的粒子の集団を形成することと、
【0157】
(e)精製生物学的粒子の集団のカーゴを評価することと、
【0158】
(f)精製生物学的粒子の集団のカーゴプロファイルに基づいて、患者の重症ウイルス感染症のリスクを決定することと、
【0159】
(g)重症ウイルス感染症のリスクがある患者に適切な治療を実施することとを含む。
【0160】
いくつかの実施形態によれば、カーゴは、カプセル化されたmiRNA及び/もしくは低分子非コードRNA、カプセル化されたポリペプチド、カプセル化されたDNA、表面ポリペプチド、または表面脂質のうちの1つ以上を含む。いくつかの実施形態によれば、カーゴの評価は、例えば、(i)精製生物学的粒子によってカプセル化された1つ以上のmiRNAまたは低分子非コードRNA、精製生物学的粒子によってカプセル化されたポリペプチド、精製生物学的粒子の表面におけるポリペプチド、精製生物学的粒子によってカプセル化されたDNA、及び精製生物学的粒子の脂質の発現を測定することにより、カーゴを同定及び定量することを含む。いくつかの実施形態によれば、カーゴの評価は、精製生物学的粒子のカーゴプロファイルを決定することと、被験者からの精製生物学的粒子のカーゴプロファイルを対照被験者である、(1)コロナウイルスに感染しない人、(2)コロナウイルスに感染して軽症化した人、及び(3)コロナウイルスに感染して重症化した人からのカーゴプロファイルと比較することとを含む。いくつかの実施形態によれば、カーゴの評価は、
【0161】
(i)精製生物学的粒子の集団からRNAを抽出することと、
【0162】
(ii)精製生物学的粒子の集団によってカプセル化されたマイクロRNA(miRNA)を含む1つ以上の低分子非コードRNAの発現を同定及び定量することと、
【0163】
(iii)同定及び定量されたmiRNAを含む低分子非コードRNAの発現を、対照被験者である、i)ウイルスに感染しない人、ii)ウイルスに感染して(PCRによって確認)、軽症化した人(入院したが、人工呼吸器を必要としないことを意味する)、及びiii)ウイルスに感染して(PCRによって確認)、重症した人(急性呼吸窮迫症候群(ARDS、ベルリンの分類基準に従う)を示し、人工呼吸器を必要とすることを意味する)からの同定及び定量されたmiRNAを含む低分子非コードRNAと比較することとを含む。
【0164】
いくつかの実施形態によれば、精製生物学的粒子のカーゴプロファイルは、精製生物学的粒子からのmiRNAを含む、同定及び定量された、低分子非コードRNAを含む。いくつかの実施形態によれば、被験者からの精製生物学的粒子からのカーゴプロファイルを対照被験者である、i)ウイルスに感染しない人、ii)ウイルスに感染して(PCRによって確認)、軽症化した人(入院したが、人工呼吸器を必要としないことを意味する)、及びiii)ウイルスに感染して(PCRによって確認)、重症した人(急性呼吸窮迫症候群(ARDS、ベルリンの分類基準に従う)を示し、人工呼吸器を必要とすることを意味する)からのカーゴプロファイルと比較する。
【0165】
いくつかの実施形態によれば、精製生物学的粒子の集団のカーゴを評価することにより、精製生物学的粒子のカーゴプロファイルを決定することは、(i)精製生物学的粒子の集団からRNAを抽出すること、(ii)精製エキソソームの集団によってカプセル化された1つ以上のマイクロRNA(miRNA)を含む低分子非コードRNAの発現を同定及び定量すること、及び(iii)精製生物学的粒子のカーゴプロファイルを対照被験者である、(1)コロナウイルスに感染しない人、(2)コロナウイルスに感染して軽症化した人、及び(3)コロナウイルスに感染して重症化した人からのカーゴプロファイルと比較することによって実現される。
【0166】
いくつかの実施形態によれば、該方法は、プールされた異種の生物学的粒子の集団を提供するための、最初の限外濾過ステップ、超遠心分離ステップ、またはその両方を含む。
【0167】
いくつかの実施形態によれば、重症ウイルス感染症は、コロナウイルス感染症である。いくつかの実施形態によれば、コロナウイルス感染症は、SARS-CoV-1感染症である。いくつかの実施形態によれば、コロナウイルス感染症は、MERSCoV感染症である。いくつかの実施形態によれば、コロナウイルス感染症は、SARS-CoV-2ウイルス感染症である。
【0168】
いくつかの実施形態によれば、生体サンプルは、体液を含む。体液は、例えば、血液、尿、精子(精液)、膣分泌物、脳脊髄液(CSF)、滑液、胸膜液(胸腔洗浄)、心嚢液、腹水、羊水、唾液、鼻水、耳漏、胃液、母乳、ふん便、汗、涙、乳頭吸引液、または他の分泌された体液を含むが、それらに限定されない。いくつかの実施形態によれば、体液は、血液(全血、血清、もしくは血漿)、CSF、またはリンパ液などの循環/分泌体液である。いくつかの実施形態によれば、生体サンプルは、生体組織(例えば、病変組織)を含む。
【0169】
いくつかの実施形態によれば、該方法は、ハイスループットアッセイであり、それは、一度に複数のサンプルの精製を可能にし、即ち、24、96、384ウェルプレート形式または他のマルチウォール形式と互換性がある。いくつかの実施形態によれば、特定のバイオマーカー(複数可)を含む生物学的粒子が選択される生体液は、再利用可能であり、例えば、それ以降のラウンドでは、生体液に悪影響を与えることなく、他のバイオマーカーの選択、miRNAを含む低分子非コードRNAの選択、RNA、DNA、タンパク質、脂質、またはそれらの組み合わせの単離などを行う。
【0170】
いくつかの実施形態によれば、結合剤は、核酸(例えば、DNA、RNA、もしくはそれらの組み合わせ)、ポリペプチド(例えば、抗体、抗体フラグメント、アプタマーポリペプチド、もしくはそれらの組み合わせ)、または生分解性ポリマーを含む。
【0171】
いくつかの実施形態によれば、結合剤は、固体支持体に直接固定化される。いくつかの実施形態によれば、結合剤は、固体支持体に間接的に固定化される。いくつかのかかる実施形態では、結合剤は、核酸に結合され、固体支持体に固定化される。いくつかの実施形態によれば、核酸は、クリック化学によって固体支持体に固定化される。
【0172】
いくつかの実施形態によれば、結合剤は、生物学的粒子抗原に特異的な抗体である。いくつかの実施形態によれば、生物学的粒子抗原は、CD9、CD63、CD81、CD37、CD82、Alix、ACE-2、Tim4、PLAP、及び/または生物学的粒子によって受け継がれる他の細胞表面マーカーのうちの1つ以上を含む。このように、精製プロセスは、ウイルスに感染したもの、癌細胞由来のもの、器官由来のものなど、必要に応じて生物学的粒子の特定の集団を選択し、それらの内容物を走査するように調整することができる。いくつかの実施形態によれば、該方法は、少量のバイオマーカーを検出するために生物学的粒子の亜集団を濃縮するための追加の細胞特異的抗体を含む。いくつかの実施形態によれば、該方法は、本明細書でテストしたものよりも大量の生体液物質の入力を含む。いくつかの実施形態によれば、該方法は、qPCR検知閾値を向上させるための準備ステップを含む。いくつかの実施形態によれば、該方法は、少量のバイオマーカーを検出するために生物学的粒子の亜集団を濃縮するための追加の細胞特異的抗体、より大量の生体液物質の入力、及びqPCR検知閾値を向上させるための準備ステップを含む。
【0173】
いくつかの実施形態によれば、生物学的粒子抗原に特異的な抗体は、ジベンゾシクロオクチル(DBCO)エステル、2-IT(2-イミノチオラン)、MBS(3-マレイミド安息香酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル)、SPDP(N-スクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート)、SATA(N-スクシンイミジルS-アセチルチオアセテート)、SMCC(スクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート)、スルホ-SMCC、またはそれらの誘導体で活性化される。いくつかの実施形態によれば、生物学的粒子抗原に特異的な抗体は、ジベンゾシクロオクチル(DBCO)エステルで活性化される。いくつかの実施形態によれば、DBCO修飾抗体は、クリック化学によってDNAリンカーに結合される。いくつかの実施形態によれば、抗体-DNAリンカーコンジュゲートは、ストレプトアビジンでコーティングされたウェルプレートに結合される。いくつかの実施形態によれば、ウェルプレートは、RNAse Aで前処理される。
【0174】
いくつかの実施形態によれば、単離/分離ステップは、洗浄を含み、そのため、結合剤に結合した生物学的粒子から生体サンプル内の未結合物質を分離する。いくつかの実施形態によれば、結合剤に結合した生物学的粒子は、固体支持体から酵素的に放出される。いくつかの実施形態によれば、その放出は、1つ以上の結合剤と固体支持体との間の結合を酵素的に切断することを含む。いくつかの実施形態によれば、精製生物学的粒子の集団は、結合剤に結合した核酸の酵素的切断によって放出される。いくつかの実施形態によれば、核酸は、DNAである。いくつかの実施形態によれば、DNAは、1つ以上のリボ核酸ヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態によれば、1つ以上のリボ核酸ヌクレオチドは、ウラシル、制限部位配列、またはRNA/DNA二本鎖である。いくつかの実施形態によれば、RNA鎖とDNA鎖が二本鎖になる場合、該酵素は、リボ核酸ヌクレオチドもしくは特定の制限部位配列、または特定のRNA鎖もしくはDNA鎖で核酸を特異的に切断する。いくつかの実施形態によれば、リボ核酸ヌクレオチドは、ウラシルヌクレオチドである。いくつかの実施形態によれば、核酸をウラシルヌクレオチドで切断する酵素は、ウラシルグリコシラーゼである。いくつかの実施形態によれば、特定の核酸配列で切断する酵素は、制限酵素である。いくつかの実施形態によれば、RNA/DNA二重鎖を特異的に切断する酵素は、制限エンドヌクレアーゼまたはRNase-Hである。
【0175】
いくつかの実施形態によれば、精製生物学的粒子の集団は、鎖置換によって放出される。いくつかの実施形態によれば、核酸の第1既存鎖は、核酸の第1鎖または第2鎖に対する相補的な侵入鎖、及び鎖置換活性を含む酵素により、核酸の第2基質鎖から分離される。いくつかの実施形態によれば、鎖置換活性を含む酵素は、DNAポリメラーゼ、トポイソメラーゼ、またはヘリカーゼである。いくつかの実施形態によれば、抗体に結合したDNA鎖を損傷することなくプラットフォームから抗体を放出できるように、抗体に結合したDNA領域に相補的なオリゴヌクレオチドを使用したポリメラーゼ連鎖反応を使用して、アニーリングされたDNA鎖を分離する。
【0176】
いくつかの実施形態によれば、生物学的粒子は、結合剤から溶離される。例えば、生物学的粒子は、精製生物学的粒子の集団を放出できるように、結合した結合剤-生物学的粒子複合体を結合剤に特異的な遊離リガンドと接触させることによって溶離することができる。
【0177】
いくつかの実施形態によれば、精製生物学的粒子の集団は、生物学的粒子の表面タンパク質バイオマーカーを含む。いくつかの実施形態によれば、生物学的粒子の表面タンパク質バイオマーカーは、1つ以上のテトラスパニン(例えば、CD9、CD63、CD81、CD37、CD82)、Alix、ACE-2、Tim4、PLAP、及び/または生物学的粒子によって受け継がれる他の細胞表面マーカーを含む。いくつかの実施形態によれば、精製生物学的粒子集団の純度は、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%である。いくつかの実施形態によれば、精製生物学的粒子の集団は、同種である。
【0178】
いくつかの実施形態によれば、マイクロRNA(miRNA)を低分子非コードRNAまたは精製生物学的粒子にカプセル化されたDNAを含むRNA種を単離、同定、及び定量することができる。いくつかの実施形態によれば、miRNAを含む低分子非コードRNA、またはDNAは、次世代シーケンシングによって単離、同定、定量し、ヒートマップで表示することができる。簡潔に、次世代シークエンシングは、自動プロセスで一度に個人の全ゲノムのヌクレオチド配列を決定するために使用されるハイスループットな方法である。シーケンシングによって同定されたmiRNAを含む低分子非コードRNA、またはDNAは、統計分析後に生成されたデータ値が色(「ヒートマップ」)として表されるマップまたは図の形式でデータの表現を使用して表示される。
【0179】
いくつかの実施形態によれば、単離された生物学的粒子のmiRNA内容物を含む低分子非コードRNAを、次世代シークエンシング及びヒートマップ生成によって対照被験者(即ち、ウイルスに感染しない正常な健康な被験者、ウイルスに感染して軽症化した対照被験者、ウイルスに感染して重症化した対照被験者である)と比較する。いくつかの実施形態によれば、血清生物学的粒子からの全RNAを使用して、SARS-CoV2患者の軽症サンプル群と重症サンプル群の間で10個のmiRNAが差次的に発現され、それらは、hsa-miR-146a、hsa-miR-126-3p、hsa-miR-424、hsa-miR-151-3p、hsa-miR-126-5p、hsa-miR-627-5p、hsa-miR-145、hsa-miR-205、及びhsa-miR-200cである。いくつかの実施形態によれば、全血清からの全RNAを使用する重症COVID感染症のmiRNAマーカーは、hsa-miR-550-5p、もしくはhsa-miR-629、またはその両方を含む。
【0180】
いくつかの実施形態によれば、患者の重症ウイルス感染症のリスクを決定できるように、カーゴプロファイルの変化倍数の差(約0.75(減少)から約1.5(増加)までの範囲)は、統計的に評価され、p値<0.05に基づいて同定される。いくつかの実施形態によれば、精製生物学的粒子の低分子非コードRNAまたはタンパク質のカーゴプロファイルは、コロナウイルスに感染して重症化した対照被験者からのカーゴプロファイルよりも約1.5倍低いまたは1.5倍高い。
【0181】
いくつかの実施形態によれば、その療法は、液体の静脈内投与、酸素補給、ネブライザーによる蒸気投与などの支持療法を含む。いくつかの実施形態によれば、その療法は、抗ウイルス剤、免疫調節剤、またはその両方を含む医薬組成物を含む。
【0182】
いくつかの実施形態によれば、抗ウイルス剤は、ウイルスの侵入を阻害するか、ウイルス量を減少させるか、その両方を行う。いくつかの実施形態によれば、抗ウイルス剤は、アシクロビル、ガンシクロビル、ホスカネット、リバビリン、アマンタジン、アジドデオキシチミジン/ジドブジン)、ネビラピン、テトラヒドロイミダゾベンゾジアゼピノン(TIBO)化合物、エファビレンツ、レムデシビル、ロピナビル/リトナビル、ウミフェノビル、ファビピラビル、イベルメクチン、及びデラビルジンから選択される。
【0183】
いくつかの実施形態によれば、免疫調節剤は、グルココルチコイドまたは遺伝子組み換えインターフェロンである。いくつかの実施形態によれば、グルココルチコイドは、プレドニゾン、デキサメタゾン、アザチオプリン、ミコフェノール酸、ミコフェノール酸モフェチル、またはそれらの組み合わせなどのコルチコステロイドである。
【0184】
別の態様によれば、本開示は、重症SARSCoV-2感染症(COVID)のリスクがある患者における回復期血漿療法の治療効果を高めるための方法を提供し、該方法は、
【0185】
a)回復期の被験者の回復期血漿から精製生物学的粒子集団を調製することであって、該調製することは、
【0186】
(1)回復期の被験者から高い抗SARSCoV-2 IgG力価を含む回復期血清を取得すること、
【0187】
(2)回復期血清を1つ以上の生物学的粒子の表面抗原に対する結合剤と接触させることであって、結合剤が核酸に結合され、核酸が固体支持体に固定化される、該接触させること、による上記調製することと、
【0188】
b)結合剤によって結合された生物学的粒子を生体サンプルから単離することと、
【0189】
c)(b)における結合剤に結合した生物学的粒子を放出することと、
【0190】
(d)結合した生物学的粒子を結合剤から溶離し、遊離の精製生物学的粒子の集団を形成することと、
【0191】
(e)SARS-CoV-2ウイルスに対する精製エキソソーム集団の中和力価をin vitroで測定することと
【0192】
(f)高力価中和生物学的粒子を含む回復期血清を患者に投与することとを含む。
【0193】
いくつかの実施形態によれば、該方法は、プールされた異種の生物学的粒子の集団を提供するための、最初の限外濾過ステップ、最初の超遠心分離ステップ、またはその両方を含む。
【0194】
いくつかの実施形態によれば、回復期血清サンプルは、正常な健康な対照被験者(重症ウイルス感染の症状または他の証拠がない被験者、例えば、SARS-CoV-2に感染しない対照被験者を意味する)、SARS-CoV-2に感染して(PCRなどによって確認)、軽症化して回復した被験者、SARS-CoV-2に感染して(PCRなどによって確認)、重症化して回復した被験者に由来する。いくつかの実施形態によれば、回復期血清サンプルは、SARS-CoV-2スパイクタンパク質の受容体結合タンパク質(RBD)に対する抗体の高力価を有する。いくつかの実施形態によれば、SARS-CoV-2スパイクタンパク質の受容体結合タンパク質(RBD)に対する抗体の力価は、少なくとも回復期血清の1:10,000希釈で検出可能である。いくつかの実施形態によれば、回復期血清サンプルは、SARS-CoV-2スパイクタンパク質の受容体結合タンパク質(RBD)に対する抗体の低力価を有する。いくつかの実施形態によれば、SARS-CoV-2スパイクタンパク質の受容体結合タンパク質(RBD)に対する抗体の低力価を含む血清は、回復期血清の1:10,000希釈未満から定量限界未満までの範囲に及ぶ。
【0195】
いくつかの実施形態によれば、生体サンプルは、体液を含む。体液は、例えば、血液、尿、精子(精液)、膣分泌物、脳脊髄液(CSF)、滑液、胸膜液(胸腔洗浄)、心嚢液、腹水、羊水、唾液、鼻水、耳漏、胃液、母乳、ふん便、汗、涙、乳頭吸引液、または他の分泌された体液を含むが、それらに限定されない。いくつかの実施形態によれば、体液は、血液(全血、血清、もしくは血漿)、CSF、またはリンパ液などの循環/分泌体液である。いくつかの実施形態によれば、生体サンプルは、生体組織(例えば、病変組織)を含む。
【0196】
いくつかの実施形態によれば、特定のバイオマーカー(複数可)を含む生物学的粒子が選択される生体液は、再利用可能であり、例えば、それ以降のラウンドでは、生体液に悪影響を与えることなく、他のバイオマーカーの選択、miRNAを含む低分子非コードRNAの選択、RNA、DNA、タンパク質、脂質、またはそれらの組み合わせの単離などを行う。
【0197】
いくつかの実施形態によれば、結合剤は、核酸(例えば、DNA、RNA、もしくはそれらの組み合わせ)、ポリペプチド(例えば、抗体、抗体フラグメント、アプタマーポリペプチド、もしくはそれらの組み合わせ)、または生分解性ポリマーを含む。
【0198】
いくつかの実施形態によれば、結合剤は、固体支持体に直接固定化される。いくつかの実施形態によれば、結合剤は、固体支持体に間接的に固定化される。いくつかのかかる実施形態では、結合剤は、核酸に結合され、固体支持体に固定化される。いくつかの実施形態によれば、核酸は、クリック化学によって固体支持体に固定化される。いくつかの実施形態によれば、結合剤は、生物学的粒子抗原に特異的な抗体である。いくつかの実施形態によれば、生物学的粒子抗原は、CD9、CD63、CD81、CD37、CD82、Alix、ACE-2、Tim4、PLAP、及び/または生物学的粒子によって受け継がれる他の細胞表面マーカーのうちの1つ以上を含む。いくつかの実施形態によれば、該方法は、少量のバイオマーカーを検出するために生物学的粒子の亜集団を濃縮するための追加の細胞特異的抗体を含む。いくつかの実施形態によれば、該方法は、本明細書でテストしたものよりも大量の生体液物質の入力を含む。いくつかの実施形態によれば、該方法は、qPCR検知閾値を向上させるための準備ステップを含む。いくつかの実施形態によれば、該方法は、少量のバイオマーカーを検出するために生物学的粒子の亜集団を濃縮するための追加の細胞特異的抗体、より大量の生体液物質の入力、及びqPCR検知閾値を向上させるための準備ステップを含む。
【0199】
いくつかの実施形態によれば、生物学的粒子抗原に特異的な抗体は、ジベンゾシクロオクチル(DBCO)エステル、ジベンゾシクロオクチン(DBCO)分子、2-IT(2-イミノチオラン)、MBS(3-マレイミド安息香酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル)、SPDP(N-スクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート)、SATA(N-スクシンイミジルS-アセチルチオアセテート)、SMCC(スクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート)、スルホ-SMCC、またはそれらの誘導体で活性化される。いくつかの実施形態によれば、生物学的粒子抗原に特異的な抗体は、ジベンゾシクロオクチル(DBCO)エステルで活性化される。いくつかの実施形態によれば、DBCO修飾抗体は、クリック化学によってDNAリンカーに結合される。いくつかの実施形態によれば、抗体-DNAリンカーコンジュゲートは、ストレプトアビジンでコーティングされたウェルプレートに結合される。いくつかの実施形態によれば、ウェルプレートは、RNAse Aで前処理される。
【0200】
いくつかの実施形態によれば、単離/分離ステップは、洗浄を含み、そのため、結合剤に結合した生物学的粒子から未結合物質を分離する。
【0201】
いくつかの実施形態によれば、精製生物学的粒子の集団は、固体支持体から酵素的に放出される。いくつかの実施形態によれば、その放出は、1つ以上の結合剤と固体支持体との間の結合を酵素的に切断することを含む。いくつかの実施形態によれば、精製生物学的粒子の集団は、結合剤に結合した核酸の酵素的切断によって放出される。いくつかの実施形態によれば、核酸は、DNAである。いくつかの実施形態によれば、DNAは、1つ以上のリボ核酸ヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態によれば、1つ以上のリボ核酸ヌクレオチドは、ウラシル、制限部位配列、またはRNA/DNA二本鎖である。いくつかの実施形態によれば、RNA鎖とDNA鎖が二本鎖になる場合、該酵素は、リボ核酸ヌクレオチドもしくは特定の制限部位配列、または特定のRNA鎖もしくはDNA鎖で核酸を特異的に切断する。いくつかの実施形態によれば、リボ核酸ヌクレオチドは、ウラシルヌクレオチドである。いくつかの実施形態によれば、核酸をウラシルヌクレオチドで切断する酵素は、ウラシルグリコシラーゼである。いくつかの実施形態によれば、特定の核酸配列で切断する酵素は、制限酵素である。いくつかの実施形態によれば、RNA/DNA二重鎖を特異的に切断する酵素は、制限エンドヌクレアーゼまたはRNase-Hである。
【0202】
いくつかの実施形態によれば、精製生物学的粒子の集団は、鎖置換によって放出される。いくつかの実施形態によれば、核酸の第1既存鎖は、核酸の第1鎖または第2鎖に対する相補的な侵入鎖、及び鎖置換活性を含む酵素により、核酸の第2基質鎖から分離される。いくつかの実施形態によれば、鎖置換活性を含む酵素は、DNAポリメラーゼ、トポイソメラーゼ、またはヘリカーゼである。いくつかの実施形態によれば、抗体に結合したDNA鎖を損傷することなくプラットフォームから抗体を放出できるように、抗体に結合したDNA領域に相補的なオリゴヌクレオチドを使用したポリメラーゼ連鎖反応を使用して、アニーリングされたDNA鎖を分離する。
【0203】
いくつかの実施形態によれば、生物学的粒子は、結合剤から溶離される。例えば、生物学的粒子は、精製生物学的粒子の集団を形成するできるように、結合した結合剤-生物学的粒子複合体を結合剤に特異的な遊離リガンドと接触させることによって溶離される。
【0204】
いくつかの実施形態によれば、精製生物学的粒子の集団は、エキソソーム表面タンパク質バイオマーカーを含む。いくつかの実施形態によれば、生物学的粒子の表面タンパク質バイオマーカーは、テトラスパニン(例えば、CD9、CD63、CD81、CD37、CD82)、Alix、ACE-2、Tim4、PLAP、及び/または生物学的粒子によって受け継がれる他の細胞表面マーカーのうちの1つ以上を含む。いくつかの実施形態によれば、精製エキソソームの集団の純度は、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%である。いくつかの実施形態によれば、精製生物学的粒子の集団は、同種である。
【0205】
いくつかの実施形態によれば、その中和は、回復期血清由来の単離された精製生物学的粒子をSARS-CoV-2に感染した細胞株とin vitroでインキュベートすることにより、in vitroで決定される。ウイルスの感染性を妨げる物質の存在及び大きさは、適切な期間、例えば、12時間、24時間、36時間及び/または72時間後のウイルス粒子の生成を測定することによって決定される。いくつかの実施形態によれば、ネオングリーンのSARSCoV-2レポーターウイルスに感染した細胞を計数し、陰性対照(回復期の精製生物学的粒子を含まない感染細胞)と比較することができる。いくつかの実施形態によれば、蛍光によって定量できるウイルス粒子の生成は、陰性対照と比較した場合、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%減少する。いくつかの実施形態によれば、ACE2レセプターを含む回復期EVの中和活性は、SARS-CoV-2ウイルスの中和に役割を果たす。いくつかの実施形態によれば、生物学的粒子は、ウイルスタンパク質を表面に保持しながら感染細胞からウイルスタンパク質を除去することに効果的であり得、従って、免疫系への抗原の提示を可能にする。
【0206】
いくつかの実施形態によれば、中和精製生物学的粒子を含む回復期血清は、回復期血漿療法単独による治療と比較した場合、回復期血漿療法の有効性を約1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、及び約10倍高めることができる。
【0207】
いくつかの実施形態によれば、重度SARSCoV-2感染症に苦しむ患者は、付加療法で治療され得る。いくつかの実施形態によれば、付加療法は、液体の静脈内投与、酸素補給、ネブライザーによる蒸気投与などの支持療法を含む。
【0208】
いくつかの実施形態によれば、付加療法は、抗ウイルス剤、免疫調節剤、またはその両方を含む医薬組成物を含む。いくつかの実施形態によれば、抗ウイルス剤は、ウイルスの侵入を阻害するか、ウイルス量を減少させるか、その両方を行う。いくつかの実施形態によれば、抗ウイルス剤は、アシクロビル、ガンシクロビル、ホスカネット、リバビリン、アマンタジン、アジドデオキシチミジン(ジドブジン)、ネビラピン、テトラヒドロイミダゾベンゾジアゼピノン(TIBO)化合物、エファビレンツ、レムデシビル、ロピナビル/リトナビル、ウミフェノビル、ファビピラビル、イベルメクチン、及びデラビルジンから選択される。
【0209】
いくつかの実施形態によれば、免疫調節剤は、グルココルチコイドまたは遺伝子組み換えインターフェロンである。いくつかの実施形態によれば、グルココルチコイドは、コルチコステロイドであり、例えば、プレドニゾン、デキサメタゾン、アザチオプリン、ミコフェノール酸、ミコフェノール酸モフェチル、またはそれらの組み合わせである。
【0210】
別の態様によれば、本開示は、重症コロナウイルス感染症の患者を治療する方法を更に提供し、該方法は、
【0211】
(a)in vitroで被験者からの精製生物学的粒子の集団の中和力価を決定することであって、該決定することは、
【0212】
(1)生物学的粒子を含む生体サンプルを被験者から取得すること、
【0213】
(2)被験者からの細胞外小胞を含む生体サンプルを、1つ以上の生物学的粒子の表面抗原に対する結合剤と接触させることであって、結合剤が核酸に結合され、核酸が固体支持体に固定化される、該接触させること、
【0214】
(3)結合剤によって結合された生物学的粒子を洗浄によって生体サンプルから単離すること、
【0215】
(4)上記(3)における結合剤に結合した生物学的粒子を放出すること、
【0216】
(5)結合した生物学的粒子を結合剤から溶離し、遊離の精製生物学的粒子の集団を形成すること、
【0217】
(6)精製生物学的粒子の集団の中和力価をin vitroで決定すること、による上記中和力価を決定することと、
【0218】
(b)被験者からの精製生物学的粒子の集団の中和力価がin vitroでウイルス感染を中和するには不十分である場合、ACE2レセプターを含む精製生物学的粒子を中和することを含む回復期血漿療法を受ける被験者を選択することと、
【0219】
(c)回復期の被験者の回復期血漿から精製生物学的粒子の集団を調製することであって、該調製することは、
【0220】
(i)回復期の被験者から高い抗SARSCoV-2 IgG力価を含む回復期血清を取得すること、
【0221】
(ii)回復期血清を、1つ以上の生物学的粒子の表面抗原に対する結合剤と接触させること、
【0222】
(iii)結合剤によって結合された生物学的粒子を洗浄によって生体サンプルから単離すること、
【0223】
(iv)上記(b)における結合剤に結合した生物学的粒子を放出すること、
【0224】
(v)結合した生物学的粒子を結合剤から溶離し、遊離の精製生物学的粒子の集団を形成すること、による上記調製することと、
【0225】
(d)SARS-CoV-2ウイルスに対するステップ(v)における精製生物学的粒子の集団の中和力価をin vitroで測定することと、
【0226】
(e)ステップ(d)における中和精製生物学的粒子または中和生物学的粒子を含む回復期血清を被験者に投与することとを含む。
【0227】
いくつかの実施形態によれば、該方法は、プールされた異種の生物学的粒子の集団を提供するための、最初の限外濾過ステップ、最初の超遠心分離ステップ、またはその両方を含む。
【0228】
いくつかの実施形態によれば、生体サンプルは、体液を含む。体液は、例えば、血液、尿、精子(精液)、膣分泌物、脳脊髄液(CSF)、滑液、胸膜液(胸腔洗浄)、心嚢液、腹水、羊水、唾液、鼻水、耳漏、胃液、母乳、ふん便、汗、涙、乳頭吸引液、または他の分泌された体液を含むが、それらに限定されない。いくつかの実施形態によれば、体液は、血液(全血、血清、もしくは血漿)、CSF、またはリンパ液などの循環/分泌体液である。いくつかの実施形態によれば、生体サンプルは、生体組織(例えば、病変組織)を含む。
【0229】
いくつかの実施形態によれば、特定のバイオマーカー(複数可)を含む生物学的粒子が選択される生体液は、再利用可能であり、例えば、それ以降のラウンドでは、生体液に悪影響を与えることなく、他のバイオマーカーの選択、miRNAを含む低分子非コードRNAの選択、RNA、DNA、タンパク質、脂質、またはそれらの組み合わせの単離などを行う。
【0230】
いくつかの実施形態によれば、結合剤は、核酸(例えば、DNA、RNA、もしくはそれらの組み合わせ)、ポリペプチド(例えば、抗体、抗体フラグメント、アプタマーポリペプチド、もしくはそれらの組み合わせ)、または生分解性ポリマーを含む。
【0231】
いくつかの実施形態によれば、結合剤は、固体支持体に直接固定化される。いくつかの実施形態によれば、結合剤は、固体支持体に間接的に固定化される。いくつかのかかる実施形態では、結合剤は、核酸に結合され、固体支持体に固定化される。いくつかの実施形態によれば、核酸は、クリック化学によって固体支持体に固定化される。いくつかの実施形態によれば、結合剤は、生物学的粒子抗原に特異的な抗体である。いくつかの実施形態によれば、生物学的粒子抗原は、CD9、CD63、CD81、CD37、CD82、Alix、ACE-2、Tim4、PLAP、及び/または生物学的粒子によって受け継がれる他の細胞表面マーカーのうちの1つ以上である。
【0232】
いくつかの実施形態によれば、生物学的粒子抗原に特異的な抗体は、ジベンゾシクロオクチル(DBCO)エステル、ジベンゾシクロオクチン(DBCO)分子、2-IT(2-イミノチオラン)、MBS(3-マレイミド安息香酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル)、SPDP(N-スクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート)、SATA(N-スクシンイミジルS-アセチルチオアセテート)、SMCC(スクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート)、スルホ-SMCC、またはそれらの誘導体で活性化される。いくつかの実施形態によれば、生物学的粒子抗原に特異的な抗体は、ジベンゾシクロオクチル(DBCO)エステルで活性化される。いくつかの実施形態によれば、DBCO修飾抗体は、クリック化学によってDNAリンカーに結合される。いくつかの実施形態によれば、抗体-DNAリンカーコンジュゲートは、ストレプトアビジンでコーティングされたウェルプレートに結合される。いくつかの実施形態によれば、ウェルプレートは、RNAse Aで前処理される。
【0233】
いくつかの実施形態によれば、単離/分離ステップは、洗浄を含み、そのため、結合剤に結合した生物学的粒子から生体サンプル内の未結合物質を分離する。
【0234】
いくつかの実施形態によれば、精製生物学的粒子の集団は、固体支持体から酵素的に放出される。いくつかの実施形態によれば、その放出は、1つ以上の結合剤と固体支持体との間の結合を酵素的に切断することを含む。いくつかの実施形態によれば、精製生物学的粒子の集団は、結合剤に結合した核酸の酵素的切断によって放出される。いくつかの実施形態によれば、核酸は、DNAである。いくつかの実施形態によれば、DNAは、1つ以上のリボ核酸ヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態によれば、1つ以上のリボ核酸ヌクレオチドは、ウラシル、制限部位配列、またはRNA/DNA二本鎖である。いくつかの実施形態によれば、該酵素は、リボ核酸ヌクレオチドで核酸を特異的に切断する。いくつかの実施形態によれば、リボ核酸ヌクレオチドは、ウラシルヌクレオチドである。いくつかの実施形態によれば、核酸をウラシルヌクレオチドで切断する酵素は、ウラシルグリコシラーゼである。いくつかの実施形態によれば、特定の核酸配列で切断する酵素は、制限酵素である。いくつかの実施形態によれば、RNA/DNA二重鎖を特異的に切断する酵素は、制限エンドヌクレアーゼまたはRNase-Hである。
【0235】
いくつかの実施形態によれば、精製生物学的粒子の集団は、鎖置換によって放出される。いくつかの実施形態によれば、核酸の第1既存鎖は、核酸の第1鎖または第2鎖に対する相補的な侵入鎖、及び鎖置換活性を含む酵素により、核酸の第2基質鎖から分離される。いくつかの実施形態によれば、鎖置換活性を含む酵素は、DNAポリメラーゼ、トポイソメラーゼ、またはヘリカーゼである。いくつかの実施形態によれば、抗体に結合したDNA鎖を損傷することなくプラットフォームから抗体を放出できるように、抗体に結合したDNA領域に相補的なオリゴヌクレオチドを使用したポリメラーゼ連鎖反応を使用して、アニーリングされたDNA鎖を分離する。
【0236】
いくつかの実施形態によれば、生物学的粒子は、結合剤から溶離される。例えば、生物学的粒子は、精製生物学的粒子の集団を形成するできるように、結合した結合剤-生物学的粒子複合体を結合剤に特異的な遊離リガンドと接触させることによって溶離することができる。
【0237】
いくつかの実施形態によれば、精製生物学的粒子の集団は、生物学的粒子の表面タンパク質バイオマーカーを含む。いくつかの実施形態によれば、生物学的粒子の表面タンパク質バイオマーカーは、テトラスパニン(例えば、CD9、CD63、CD81、CD37、CD82)、Alix、ACE-2、Tim4、PLAP、及び/または生物学的粒子によって受け継がれる他の細胞表面マーカーのうちの1つ以上を含む。いくつかの実施形態によれば、精製生物学的粒子集団の純度は、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%である。いくつかの実施形態によれば、精製生物学的粒子の集団は、同種である。
【0238】
いくつかの実施形態によれば、その中和は、回復期血清由来の単離された精製生物学的粒子をSARS-CoV-2に感染した細胞とin vitroでインキュベートすることにより、in vitroで決定される。ウイルスの感染性を妨げる物質の存在及び大きさは、適切な期間、例えば、12時間、24時間、36時間及び72時間後のウイルス粒子の生成を測定することによって決定される。いくつかの実施形態によれば、ネオングリーンのSARSCoV-2レポーターウイルスに感染した細胞を計数し、陰性対照(回復期の精製生物学的粒子を含まない感染細胞)と比較することができる。いくつかの実施形態によれば、中和と見なされるには、蛍光によって定量できるウイルス粒子の生成は、陰性対照と比較した場合、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%減少する。いくつかの実施形態によれば、ACE2レセプターを含む回復期EVの中和活性は、SARS-CoV-2ウイルスの中和に役割を果たす。いくつかの実施形態によれば、生物学的粒子は、ウイルスタンパク質を表面に保持しながら感染細胞からウイルスタンパク質を除去することに効果的であり得、従って、免疫系への抗原の提示を可能にする。
【0239】
いくつかの実施形態によれば、回復期血清サンプルは、正常な健康な対照被験者(重症ウイルス感染の症状または他の証拠がない被験者、例えば、SARS-CoV-2に感染しない対照被験者を意味する)、SARS-CoV-2に感染して軽症化して回復した被験者、SARS-CoV-2に感染して重症化して回復した被験者に由来する。
【0240】
いくつかの実施形態によれば、回復期血清サンプルは、SARS-CoV-2スパイクタンパク質の受容体結合タンパク質(RBD)に対する抗体の高力価を有する。いくつかの実施形態によれば、SARS-CoV-2スパイクタンパク質の受容体結合タンパク質(RBD)に対する抗体の力価は、少なくとも回復期血清の1:10,000希釈で検出可能である。いくつかの実施形態によれば、回復期血清サンプルは、SARS-CoV-2スパイクタンパク質の受容体結合タンパク質(RBD)に対する抗体の低力価を有する。いくつかの実施形態によれば、SARS-CoV-2スパイクタンパク質の受容体結合タンパク質(RBD)に対する抗体の低力価を含む血清の力価は、1:10,000希釈未満から定量限界未満までの範囲に及ぶ。
【0241】
いくつかの実施形態によれば、本開示は、被験者からの生体サンプルから精製細胞の集団を調製する方法を提供し、該方法は、
【0242】
a)精製細胞の集団を調製することであって、該調製することは、
【0243】
(1)細胞を含む生体サンプルを被験者から取得すること、
【0244】
(2)細胞を含む被験者からの生体サンプルを、1つ以上の細胞表面抗原に対する結合剤と接触させることであって、結合剤がリンカーによって核酸に結合され、核酸が固体支持体に固定化される、該接触させること、による上記調製することと、
【0245】
b)結合剤によって結合された細胞を生体サンプルから単離することと、
【0246】
c)結合剤に結合した細胞を放出することと、
【0247】
d)結合した細胞を結合剤から溶離し、精製細胞の集団を形成することとを含む。
【0248】
いくつかの実施形態によれば、細胞の集団は、非真核生物種及び真核生物種(例えば、ヒト、マウス、ラット、サルなど)、健康な正常組織(例えば、血液、組織など)の細胞(内皮細胞、上皮細胞、T細胞・線維芽細胞、脂肪細胞、神経細胞、及び特定の腫瘍細胞の亜集団を含むが、それらに限定されない)に由来する。いくつかの実施形態によれば、細胞は、ヒト患者の正常組織及び病変組織、マウスの同所性/異種移植片/PDX臓器、血液、または組織培養に由来することができ、例えば、新しいクローンを同定する場合、フローサイトメトリーにかけるには感度が高すぎる固有の細胞、または濃縮する必要がある細胞を精製する場合などで、固有の表面マーカーをターゲットとするEV-CATCHERを使用して精製することができる。
【0249】
いくつかの実施形態によれば、該方法は、最初のプールされた異種の細胞の集団を提供するための、最初の限外濾過ステップまたは超遠心分離ステップを含む。いくつかの実施形態によれば、生体サンプルは、in vivoまたはin vitroで調製される。
【0250】
いくつかの実施形態によれば、生体サンプルは、体液を含む。いくつかの実施形態によれば、体液は、全血、血清、血漿、脳脊髄液(CSF)、リンパ液、尿、ふん便、汗、涙、乳頭吸引液、もしくは精液、または分泌された生体液を含む。いくつかの実施形態によれば、体液は、循環/分泌体液である。いくつかの実施形態によれば、循環体液は、全血、血清、血漿、脳脊髄液(CSF)、またはリンパ液である。
【0251】
いくつかの実施形態によれば、該方法は、ハイスループットアッセイであり、それは、一度に複数のサンプルの精製を可能にし、即ち、24、96、384ウェルプレート形式または他のマルチウォール形式と互換性がある。いくつかの実施形態によれば、特定のバイオマーカー(複数可)を含む細胞が選択される生体液は、再利用可能であり、例えば、それ以降のラウンドでは、生体液に悪影響を与えることなく、他のバイオマーカーの選択、miRNAを含む低分子非コードRNAの選択、RNA、DNA、タンパク質、脂質、またはそれらの組み合わせの単離などを行う。
【0252】
いくつかの実施形態によれば、結合剤は、細胞の表面抗原に特異的な抗体である。いくつかの実施形態によれば、細胞の表面抗原は、CD4、CD8、CD9、CD46、CD63、CD81、CD37、CD82、CD138、CD151、ALix、ACE-2、Tim4、PLAP、アディポネクチン、FABP4、カベオリン-1、サイトケラチン、EPCAM、E-カドヘリン、P63、異種細胞表面ポリペプチド及び/または他の細胞の表面マーカーのうちの1つ以上を含む。このような抗体の市販供給源の例としては、CD4(Cell Signaling Technologies #27520)、CD8(Cell Signaling Technologies #81575)、CD46(Abcam #ab271871)、CD138(Abcam#ab242394)、CD151(Abcam #ab27406)、アディポネクチン(Abcam #ab227051)、及びEPCAM(Cell Signaling Technology #46403)が挙げられるが、それらに限定されない。このように、精製プロセスは、ウイルスに感染したもの、癌細胞由来のもの、器官由来のものなど、必要に応じて細胞の特定の集団を選択し、それらの内容物を走査するように調整することができる。いくつかの実施形態によれば、該方法は、少量のバイオマーカーを検出するために細胞の亜集団を濃縮するための追加の細胞特異的抗体を含む。いくつかの実施形態によれば、該方法は、本明細書でテストしたものよりも大量の生体液物質の入力を含む。いくつかの実施形態によれば、該方法は、qPCR検知閾値を向上させるための準備ステップを含む。いくつかの実施形態によれば、該方法は、少量のバイオマーカーを検出するために細胞の亜集団を濃縮するための追加の細胞特異的抗体、より大量の生体液物質の入力、及びqPCR検知閾値を向上させるための準備ステップを含む。
【0253】
いくつかの実施形態によれば、精製細胞の集団の純度は、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%である。いくつかの実施形態によれば、精製細胞の集団は、同種である。
【0254】
いくつかの実施形態によれば、異種の細胞の表面ポリペプチドは、キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T細胞)によって発現される。
【0255】
いくつかの実施形態によれば、1つ以上の細胞表面抗原に結合する結合剤は、抗体、抗体結合フラグメント、またはアプタマーである。いくつかの実施形態によれば、アプタマーは、核酸またはポリペプチドである。いくつかの実施形態によれば、核酸は、DNA、RNA、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態によれば、核酸は、DNAを含む。いくつかの実施形態によれば、DNAは、1つ以上のリボ核酸ヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態によれば、1つ以上のリボ核酸ヌクレオチドは、ウラシルである。いくつかの実施形態によれば、DNAは、制限酵素認識部位を含む。いくつかの実施形態によれば、核酸は、エンドヌクレアーゼまたはRNAse(RNase-H)によって分解され得るDNA/RNA二重鎖である。いくつかの実施形態によれば、核酸は、非天然ヌクレオチドを含む。
【0256】
いくつかの実施形態によれば、核酸は、核酸の第1末端に結合部分を含み、核酸の第2末端に結合部分を含み、ここで、核酸の第1末端の結合部分と核酸の第2末端の結合部分は異なる。いくつかの実施形態によれば、核酸の第1末端における結合部分は、アビジン、ストレプトアビジン、またはカルボキシル結合部分である。いくつかの実施形態によれば、結合部分は、ビオチンである。いくつかの実施形態によれば、核酸の第2末端における結合部分は、アミン部分である。いくつかの実施形態によれば、アミン部分は、アジドである。
【0257】
いくつかの実施形態によれば、1つ以上の細胞の表面抗原に対する結合剤は、ジベンゾシクロオクチン(DBCO)分子、2-IT(2-イミノチオラン)、MBS(3-マレイミド安息香酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル)、SPDP(N-スクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート)、SATA(N-スクシンイミジルS-アセチルチオアセテート)、SMCC(スクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート)、スルホ-SMCC、またはそれらの誘導体を含む。いくつかの実施形態によれば、DBCO修飾抗体は、クリック化学によってDNAリンカーに結合される。いくつかの実施形態によれば、抗体-DNAリンカーコンジュゲートは、ストレプトアビジンでコーティングされたウェルプレートに結合される。いくつかの実施形態によれば、ウェルプレートは、RNAse Aで前処理される。
【0258】
いくつかの実施形態によれば、単離/分離ステップは、洗浄を含み、そのため、結合剤に結合した細胞から生体サンプル内の未結合物質を分離する。いくつかの実施形態によれば、結合剤に結合した細胞は、固体支持体から酵素的に放出される。いくつかの実施形態によれば、その放出は、1つ以上の結合剤と固体支持体との間の結合を酵素的に切断することを含む。いくつかの実施形態によれば、精製細胞の集団は、結合剤に結合した核酸の酵素的切断によって放出される。いくつかの実施形態によれば、核酸は、DNAである。いくつかの実施形態によれば、DNAは、1つ以上のリボ核酸ヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態によれば、1つ以上のリボ核酸ヌクレオチドは、ウラシル、制限部位配列、またはRNA/DNA二本鎖である。いくつかの実施形態によれば、RNA鎖とDNA鎖が二本鎖になる場合、該酵素は、リボ核酸ヌクレオチドもしくは特定の制限部位配列、または特定のRNA鎖もしくはDNA鎖で核酸を特異的に切断する。いくつかの実施形態によれば、リボ核酸ヌクレオチドは、ウラシルヌクレオチドである。いくつかの実施形態によれば、核酸をウラシルヌクレオチドで切断する酵素は、ウラシルグリコシラーゼである。いくつかの実施形態によれば、特定の核酸配列を切断する酵素は、制限酵素である。いくつかの実施形態によれば、RNA/DNA二重鎖を特異的に切断する酵素は、制限エンドヌクレアーゼまたはRNase-Hである。
【0259】
いくつかの実施形態によれば、精製細胞の集団は、鎖置換によって放出される。いくつかの実施形態によれば、核酸の第1既存鎖は、核酸の第1鎖または第2鎖に対する相補的な侵入鎖、及び鎖置換活性を含む酵素により、核酸の第2基質鎖から分離される。いくつかの実施形態によれば、鎖置換活性を含む酵素は、DNAポリメラーゼ、トポイソメラーゼ、またはヘリカーゼである。いくつかの実施形態によれば、抗体に結合したDNA鎖を損傷することなくプラットフォームから抗体を放出できるように、抗体に結合したDNA領域に相補的なオリゴヌクレオチドを使用したポリメラーゼ連鎖反応を使用して、アニーリングされたDNA鎖を分離する。
【0260】
いくつかの実施形態によれば、結合剤は、固体支持体に直接固定化される。いくつかの実施形態によれば、結合剤は、固体支持体に間接的に固定化される。いくつかのかかる実施形態では、結合剤は、核酸に結合され、固体支持体に固定化される。いくつかの実施形態によれば、核酸は、クリック化学によって固体支持体に固定化される。いくつかの実施形態によれば、固体支持体は、ウェルプレート、ポリマー、または表面である。
【0261】
いくつかの実施形態によれば、単離された細胞の放出は、
【0262】
(i)核酸を酵素的に切断すること、または
【0263】
(ii)核酸の第1鎖または第2鎖に相補的な核酸、及び支持体から抗体を放出するための鎖置換活性を有する酵素による鎖置換により、抗体に結合した核酸の第1鎖を、支持体に結合した核酸の第2鎖から置換すること、または
【0264】
(iii)抗体に結合したDNAの領域に相補的なオリゴヌクレオチドを使用するポリメラーゼ連鎖反応により、抗体に結合したDNA鎖を損傷することなく、アニーリングされたDNA鎖を分離して、プラットフォームから抗体を放出することを含む。
【0265】
いくつかの実施形態によれば、酵素的切断は、ウラシルグリコシラーゼによって行われる。いくつかの実施形態によれば、酵素的切断は、制限酵素を使用して行われる。いくつかの実施形態によれば、酵素的切断は、エンドヌクレアーゼまたはRNAseを使用して行われる。
【0266】
いくつかの実施形態によれば、鎖置換活性を有する酵素は、DNAポリメラーゼ、トポイソメラーゼ、またはヘリカーゼである。
【0267】
いくつかの実施形態によれば、精製細胞の集団は、非真核細胞、真核細胞、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態によれば、真核細胞は、ヒト、マウス、ラット、イヌ、ヒト以外の霊長類、ネコ科の細胞である。いくつかの実施形態によれば、精製細胞の集団は、健康な被験者または疾患に罹患する被験者に由来する。いくつかの実施形態によれば、その疾患は、癌、ウイルス感染、胎盤異常、炎症、及び他の病状を含む。いくつかの実施形態によれば、細胞は、内皮細胞、上皮細胞、T細胞、線維芽細胞、脂肪細胞、神経細胞、腫瘍細胞、血液細胞、または心臓細胞である。
【0268】
いくつかの実施形態によれば、ウイルス感染は、重症コロナウイルス感染症である。いくつかの実施形態によれば、重症コロナウイルス感染症は、SARS-CoV-1、MERS、またはSARS-CoV-2によるものである。いくつかの実施形態によれば、重症コロナウイルス感染症は、SARS-CoV-2によるものである。
【0269】
いくつかの実施形態によれば、細胞の集団は、(a)非真核生物種及び真核生物種、(b)健康な正常組織もしくは病変組織、(c)マウスの同所性/異種移植片/PDX臓器、(d)血液、または、(e)組織培養に由来する。
【0270】
医薬製剤
本明細書で使用される「医薬組成物」という用語は、標的の病気もしくは疾患を予防し、強度を低下させ、治癒し、または他の方法で治療するために使用される組成物を指す。一般に、医薬組成物は、活性薬剤と、薬学的に許容される担体とを含む。
【0271】
本明細書で使用される「担体」という用語は、生物に重大な刺激を引き起こさず、記載された発明の組成物の活性化合物の生物学的活性及び特性を無効にしない材料を指す。担体は、治療を受ける哺乳動物への投与に適したものにするために、十分に高い純度であり、十分に低い毒性を持つ必要がある。担体は、不活性であり得るし、薬学的利点、美容上の利点、またはその両方を有し得る。「賦形剤」、「担体」、または「ビヒクル」という用語は、本明細書に記載の薬学的に許容される組成物の製剤化及び投与に適した担体物質を指し、それらは、互換的に使用することができる。本明細書で有用な担体及びビヒクルは、非毒性であり、他の成分と相互作用しない、該技術分野で知られている任意のそのような物質を含む。担体は、液体でも固体でもよく、活性薬剤及び所与の組成物の他の成分と組み合わせた場合に所望の嵩、粘稠度などを提供するように、計画された投与方法を念頭に置いて選択される。
【0272】
「薬学的に許容される担体」というフレーズは、該技術分野で認識される。それは、本発明の単離されたEVが安定して生物学的に利用可能な状態を保つ、医薬品の投与に従来使用可能な任意の実質的に非毒性の担体を意味するために使用される。薬学的に許容される担体は、治療される哺乳動物への投与に適できるように、十分に高純度であり、十分に毒性が低い必要がある。更に、活性薬剤の安定性と生物学的利用能を維持する必要がある。薬学的に許容される担体は、液体でも固体でもよく、活性薬剤及び所与の組成物の他の成分と組み合わせた場合に所望の嵩、粘稠度などを提供するように、計画された投与方法を念頭に置いて選択される。担体の例としては、対象薬剤を1つの器官または体の一部から別の器官または体の一部に運ぶまたは輸送することに関与する、液体または固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒またはカプセル化物質が挙げられる。各担体は、配合物の他の成分と適合し、患者に有害ではないという意味で「許容可能」でなければならない。薬学的に許容される担体として機能できる物質の例としては、糖(例えば、ラクトース、グルコース及びスクロース)、澱粉(例えば、トウモロコシ澱粉及びジャガイモ澱粉)、セルロース及びその誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース及び酢酸セルロース)、粉末トラガカント、モルト、ゼラチン、タルク、賦形剤(例えば、ココアバター及び坐薬ワックス)、油(例えば、ピーナッツ油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油及び大豆油)、グリコール(例えば、プロピレングリコール)、ポリオール(例えば、グリセリン、ソルビトール、マンニトール及びポリエチレングリコール)、エステル(例えば、オレイン酸エチル及びラウリン酸エチル)、寒天、緩衝剤(例えば、水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム)、アルギン酸、発熱物質を含まない水、等張食塩水、リンガー溶液、エチルアルコール、リン酸緩衝液、及び医薬配合物に使用される他の非毒性適合物質が挙げられる。適切な医薬担体は、E.W.Martinによる「Remington’s Pharmaceutical Sciences」に記載され、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される担体は、発熱物質を含まない滅菌水である。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される担体は、乳酸リンゲル液であり、乳酸加リンゲル液としても知られている。
【0273】
湿潤剤、乳化剤及び潤滑剤、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウム、並びに着色剤、離型剤、被覆剤、甘味剤、香味剤及び芳香剤、保存剤及び酸化防止剤も組成物中に存在することができる
【0274】
薬学的に許容される酸化防止剤の例としては、水溶性酸化防止剤(例えば、アスコルビン酸、塩酸システイン、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム及び亜硫酸ナトリウムなど)、油溶性酸化防止剤(例えば、アスコルビン酸パルミテート、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル及びアルファ-トコフェロールなど)、金属キレート剤、(例えば、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸など)が挙げられる。
【0275】
具体的な投与方法は、適応症によって異なる。特定の投与経路及び用法の選択は、最適な臨床反応を得るために、臨床医に知られている方法に従って臨床医によって調整または滴定されるべきである。投与される活性薬剤の量は、意図された治療の利益を提供するのに十分な量である。投与される用量は、治療対象の特徴、例えば、治療される特定の哺乳動物またはヒト、年齢、体重、健康状態、併用療法の種類(もしあれば)、及び治療の頻度に依存し、当業者(例えば、臨床医)によって容易に決定することができる。
【0276】
本明細書で使用される「非経口」という用語及び他の文法的形式は、口または消化管以外の体内で生じる物質の投与を指す。例えば、本明細書で使用される「非経口」という用語は、例えば、皮下(即ち、皮膚の下への注射)、筋肉内(即ち、筋肉への注射)、静脈内(即ち、静脈への注射)、くも膜下腔内(即ち、脊髄周囲もしくは脳のクモ膜下腔への注射)を含む、注射(即ち、注射による投与)、または点滴技術による体内への導入を指す。
【0277】
いくつかの実施形態では、本開示による組成物は、数回投与され、または担当医師の判断で必要に応じて投与される。そのような一実施形態では、組成物は、1回目の点滴日に投与され、必要に応じて、2回目の点滴日、3回目の点滴日、4回目の点滴日、5回目の点滴日、6回目の点滴日、7回目の点滴日、8回目の点滴日、9回目の点滴日、及び10回目の点滴日などに投与される。
【0278】
カテーテルを通じて注入される場合、本開示の生物学的粒子の治療効果は、カテーテルを通過する際にその効力を維持する医薬組成物に依存する。
【0279】
いくつかの実施形態では、本開示の方法は、乾燥粉末、懸濁液、または溶液から選択される形態で医薬組成物をエアロゾル化することを含む。いくつかの実施形態によれば、組成物は、溶液である。いくつかの実施形態によれば、組成物は、懸濁液である。いくつかの実施形態によれば、組成物は、乾燥粉末である。吸入による投与の場合、本開示によって使用するための組成物は、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の適切なガスなどの適切な噴射剤を使用して、加圧パックまたはネブライザーからエアロゾルスプレーの形態で都合よく送達することができる。加圧エアロゾルの場合、計量された量を送達するための弁を提供することによって用量単位を決定することができる。吸入具または吸入器で使用するための、例えば、ゼラチンのカプセル及びカートリッジは、化合物と乳糖または澱粉などの適切な粉末基剤との粉末混合物を含有して製剤化することができる。いくつかの実施形態によれば、吸入送達装置は、ネブライザー、定量吸入器、または乾燥粉末吸入器(DPI)である。いくつかの実施形態によれば、呼吸に適した粒子のサイズは、包括的で約1~10ミクロンの範囲である。いくつかの実施形態によれば、経鼻投与(吸入)用の粒子のサイズは、包括的で10~500μMの範囲である。
【0280】
いくつかの実施形態によれば、本開示の医薬組成物は、記載された中和精製生物学的粒子以外の1つ以上の治療薬を含む。例えば、いくつかの実施形態によれば、付加療法は、抗ウイルス剤、免疫調節剤、またはその両方を含む医薬組成物を含み得る。いくつかの実施形態によれば、抗ウイルス剤は、ウイルスの侵入を阻害するか、ウイルス量を減少させるか、その両方を行う。いくつかの実施形態によれば、抗ウイルス剤は、アシクロビル、ガンシクロビル、ホスカネット、リバビリン、アマンタジン、アジドデオキシチミジン/ジドブジン)、ネビラピン、テトラヒドロイミダゾベンゾジアゼピノン(TIBO)化合物、エファビレンツ、レムデシビル、ロピナビル/リトナビル、ウミフェノビル、ファビピラビル、イベルメクチン、及びデラビルジンから選択される。いくつかの実施形態によれば、免疫調節剤は、グルココルチコイドまたは遺伝子組み換えインターフェロンである。いくつかの実施形態によれば、グルココルチコイドは、プレドニゾン、デキサメタゾン、アザチオプリン、ミコフェノール酸、ミコフェノール酸モフェチル、及びそれらの組み合わせから選択されるコルチコステロイドである。
【0281】
前述の実施形態によれば、医薬組成物は、限られた期間、または、例えば、状態が改善もしくは治癒するまでの長期間にわたる維持療法として、一度投与され得る。限定された期間は、1週間、2週間、3週間、4週間、及びエンドポイントを含むそのような値の間の任意の期間を含む最大1年間である。いくつかの実施形態によれば、医薬組成物は、約1日間、約3日間、約1週間、約10日間、約2週間、約18日間、約3週間、またはエンドポイントを含むそれらの値のいずれかの任意の範囲で投与され得る。
【0282】
前述の実施形態によれば、組成物または医薬組成物は、1日1回、1日2回、1日3回、1日4回、またはそれ以上投与され得る。
【0283】
値の範囲が提供される場合、文脈上明らかに別段の指示がない限り、その範囲の上限と下限との間の、下限の単位の10分の1までの各中間値、及びその記載の範囲内の他の記載される値または中間値が本発明の範囲内に含まれることを理解されたい。それらの小さい範囲の上限及び下限は、記載される範囲に具体的に排除される限界がない限り、その小さい範囲に独立に含めることができ、また本発明の範囲に含まれる。記載される範囲が、一方または両方の限界を含む場合は、それらの含まれる限界の一方または両方を排除する範囲も、本発明に含まれる。
【0284】
特段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての科学技術用語は、本発明が属する分野の一般的な技術者が通常理解する意味と同じ意味を有する。本明細書で説明される方法及び材料と同様または等価のあらゆる方法及び材料も、本発明の実施または試験に使用することができるが、好ましい方法及び材料がこれから説明される。本明細書で言及される全ての出版物は、その出版物が引用される方法及び/または材料を開示及び説明するために、参照により本明細書に組み込まれる。
【0285】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される単数形「a」、「及び」、及び「the」は、文脈上明らかに別段の指示がない限り、複数の言及を含むことに留意されたい。本明細書に記載の出版物は、本出願の出願日より前の開示についてのみ提供され、それぞれはその全体が参照により組み込まれる。本明細書のいかなる引用も、本発明が先行発明のおかげでそのような出版物に先行する権利がないことを認めるものとして解釈されるべきではない。更に、提示する出版物の日付は、実際の出版日と異なることがあり、それは個別に確認する必要がある。
【実施例】
【0286】
以下の実施例は、本発明をどのように製造し、使用するかについての完全な開示及び説明を当業者に提供するために提示されており、本発明者らがその発明とみなすものの範囲を限定することを意図するものではなく、また、以下の実験が実施されたすべてまたは唯一の実験であることを示すことを意図したものでもない。使用された数値(例えば、量、温度など)の正確性を確保するために努力がなされてきたが、いくつかの実験誤差及び偏差を考慮すべきである。
【0287】
材料及び方法
実験検体及び臨床検体
ヒトMCF-7及びマウスRAWS264.7エキソソームは、System Biosciencesから購入した(カタログ番号:それぞれEXOP-100A-1及びEXOP-165A-1)。タンパク質滴定実験用のMCF-7エキソソームは超遠心分離によって得られた。簡単に説明すると、約80%コンフルエントなMCF-7細胞から得られた60mlの組織培養培地(10%エキソソーム枯渇FBS(Gibco、#A2720801)及び1%PenStrep(Gibco、#15140122)を補充したDMEM(Gibco、#10566016)を含む)を、収集前に48時間リフレッシュした。細胞、死細胞及び細胞破片を、それぞれ500xgで5分間、2,000xgで10分間、続いて10,000xgで30分間遠心分離することによって除去した。Optima XE-90超遠心分離機(Beckman Coulter)中の10mlのUltraclearチューブ(Beckman Coulter、#344059)中で、超遠心分離を4℃、100,000xgで2時間実施した。ペレットを1xPBS(Gibco、#10010023)で洗浄し、次に、2回目の超遠心分離を4℃、100,000xgで2時間行い、最終的なエキソソームペレットを50μlの1xPBS中に再懸濁した。HMHネットワークによって、IRB#Pro2018-1022に基づいて、ハッケンサック大学医療センター(Hackensack University Medical Center、HUMC)においてSARS-CoV-2感染患者(最初のサンプルセット)の血清検体を採取した。血清サンプルをバイオリポジトリ(BioR)で処理し、500μlのアリコートとして-80℃で保存した。内部提案書(提案番号BioRCOV4)を提出し、承認を得た上で、人工呼吸器を必要としない患者から13個の血清サンプルと、人工呼吸器を使用している中等度から重度のARDS患者から17個のサンプルとを採取し、全血清とEV-CATCHERエキソソーム精製の両方にRNA抽出を行った。Michele Donato博士(IRB#Pro2020-0375/0378)が率いる回復期血漿研究に登録された、最近回復したCovid-19患者から、元の回復期血清検体(2番目のサンプルセット)を採取した。残存サンプルを匿名化した後、HMH BioRに移送し、Covid-19研究審査委員会による審査と承認を経て、Center for Discovery and Innovation(CDI)に提供した(提案書COVID-19#102)。提供したサンプルを、1,000μlのアリコートとして-80℃で保存した。SARS-CoV-2スパイクタンパク質の受容体結合ドメイン(Receptor Binding Domain、RBD)を抗原として使用し、高IgG血清力価と低IgG血清力価を同定するために開発及び最適化した酵素結合免疫吸着検定法(Enzyme-linked immunosorbent assay、ELISA)を最初に実施した。次に、血清サンプルを高IgG(力価>10,000)または低IgG(力価が定量下限(Limit of Quantification、BLQ)未満)のいずれかに層別した。EV-CATCHERアッセイを使用して、高IgG回復期個体からの3つの血清サンプルとBLQ IgG回復期個体からの3つの血清サンプルにCD63精製を行い、それらのエキソソーム含有量の中和能について評価した。エキソソーム全体を評価するために、2つのサンプル(1つの高及び1つのBLQ)を超遠心分離した。
【0288】
選択した抗体による細胞外小胞捕捉及び酵素放出(EV-CATCHER)アッセイ
Lof et al.(2017)によって記載された放出プロトコールを以下のように更に最適化及び修正した。Lof et al.(2017)から改変された、5’-アジド(5’Az-AAAAACGAUUCGAGAACGUGACUGCCAUGCCAGCUCGUACUAU CGAA(配列番号1))及び3’-ビオチン(5’Bio-CGAUAGUACGAGCUGGCAUGGCAGUCACGUUCUCGAA UCGUUUU(配列番号2))のHPLC精製ウラシル化オリゴヌクレオチド(Integrative DNA Technology)を250ng/μlの濃度でRNaseフリー水中に再懸濁した。等モル量(1:1比)の各オリゴを1xRNAアニーリング緩衝液(60mM KCl、6mM HEPES(pH7.5)、0.2mM MgCl2)でアニーリング(90℃で2分間、90~42℃で40分間、42℃で120分間)した後、15%非変性ポリアクリルアミド(PAGE)ゲル(0.5xTBE(ThermoFisher、#15581044)、450ボルトで90分間)上で分離した。二本鎖(double stranded、ds)DNAリンカーをSYBR(登録商標)Gold(商標)色素(ThermoFisher、#S11494)を使用して青色ライトボックス上で可視化し、切り出し、ゲルブレーカーチューブ(IST Engineering,#3388-100)中で遠心力を利用して破砕し、400mM NaCl中に再懸濁し、4℃及び1,100RPMに設定したサーモミキサー上で一晩(O/N)振盪した。溶液を濾過し、QIAEX(登録商標)IIゲル抽出キット(Qiagen、#20021)を製造業者の指示に従って使用して、dsDNAリンカーを精製した。精製したdsDNAリンカーをNanoDrop 2000で評価し、250ng/μlに希釈した。エキソソームプルに使用した抗体(1mg/ml)(抗CD63(Abcam、#ab59479;RRID:AB_940915)、抗CD81(Abcam、#ab233692)、及び抗CD9(Abcam、#ab263023))を、新しく調製した4mM DBCO-S-S-NHSエステル(Sigma Aldrich、#761532)5μlを使用して活性化し、暗所で室温(RT)で30分間インキュベートし、2.5μlの1M Tris-Cl(pH8.0)を暗所で室温で5分間添加することによって反応を停止させた。DBCO活性化抗体を、予め平衡化したZeba脱塩カラム(ThermoFisher、#89882)上で1分間インキュベートし、1,500xgで2分間遠心分離することにより脱塩した。タンパク質A280を使用してNanodrop 2000機器で抗体を定量し、50μgの活性化抗体と25μgの精製DNAリンカーをローテーター上で4℃でO/N結合させることによって抗体-dsDNA(Ab-dsDNA)ストック溶液を調製した。Ab-dsDNA結合の検証をPAGEによって実施し、そこで、Ab-dsDNA(1μg)産物を非変性及び非還元条件下で泳動し、続いてCoomassie(Bio-Rad#1610786)染色を行ってAb-dsDNA移動の変化を視覚化した。翌日、Ab-dsDNAコンジュゲートをストレプトアビジン被覆96ウェルプレート(Pierce、#15120)に結合させた。単一の抗CD63抗体(1μg)または抗CD63、抗CD81、及び抗CD9の組み合わせ(各抗体1μg)(リンカー結合)のいずれかを100μlの1×PBS中の単一ウェルに添加した。Ab-dsDNAコンジュゲートを有するストレプトアビジン被覆96ウェルプレートをプレートシェーカー上に4℃、300RPMで8時間置いて、プレートへの結合を可能にした。溶液を注意深く除去し、冷1xPBS溶液でウェルを3回洗浄した後、RNase-A(12.5μg/ml)で処理したサンプル(100μl)を添加した。microAMP光学接着フィルム(Applied Biosystems、#4311971)を使用してプレートを密封し、シェーカー上に300RPM、4℃で一晩置いた。サンプルを注意深く取り出し、ウェルを冷1xPBSで3回洗浄し、1xPBS(1xUNG緩衝液(200mM Tris-Cl(pH8.0)、10mM EDTA及び100mM NaCl、1単位の酵素を含む)中の新たに調製したウラシルグリコシラーゼ(UNG)酵素(ThermoFisher,#EN0362)100μlを各ウェルに添加した。dsDNAリンカーのUNG消化のために、プレートをシェーカー上で300RPM、37℃で2時間インキュベートし、更なる特性評価と下流分析のためにこの溶液中でエキソソームを回収した。
【0289】
RNA抽出
miRNeasy血清/血漿キット(Qiagen、# 217184)を製造業者の指示に従って使用して、全血清、全血漿、及び単離したエキソソームに対して全RNA抽出を行い、全RNA収量を向上させるためにいくつかの変更を加えた。簡単に説明すると、QIAzolを100μlの全血漿、血清、またはエキソソーム溶液に添加し、ボルテックスして室温で5分間インキュベートし、その後クロロホルムを各サンプルに添加した。サンプルを再度ボルテックスし、室温で5分間インキュベートした。サンプルを12,000xg、4℃で15分間遠心分離し、各サンプルの上層水相を注意深く除去し、新しいシリコン処理チューブに移し、そこに100%エタノールを添加した。カラム精製の前に、サンプルを氷上で40分間インキュベートした。次に、透明な上相を供給されたRNeasy minEluteカラムに2回通し、RPE(膜結合RNAを洗浄し、エタノールを含む微量塩を除去するための洗浄緩衝液;Qiagen)及び氷冷した80%エタノールで洗浄した。カラムを回転させて残留エタノールを除去し、全RNAを50μlのRNaseフリー水で溶出した。次にサンプルを、小分子RNA配列決定の場合は10μlまで、定量リアルタイムPCR(RT-qPCR)の場合は20μlまでスピードバキュームした。cDNA小分子RNAライブラリーの調製及び次世代シークエンシングのために、3ngのサイズプライマー(1.5ng~19nt及び1.5ng~24nt;[42])を各RNA抽出物にスパイクした。RT-qPCR実験では、1pgのath-miR-159a(IDT、rUrUrUGGArUrUGAAGGGAGCrUCrUA(配列番号3))をQIAzolに添加し、MCF-7及び臨床検体(軽度対重度のCovid-19サンプル)からRNAを抽出し、その後RNA分離及びカラム精製を行い、外因性の技術的正規化対照として使用した。
【0290】
ウェスタンブロット分析
ウェスタンブロット分析を実施して、精製したエキソソーム画分からのエキソソーム表面タンパク質バイオマーカーの存在を評価した。精製したエキソソームを355mM β-メルカプトエタノールを含有する1xLaemmli緩衝液(Bio-Rad、#161-0747)で溶解及び変性させ、95℃で5分間加熱した。変性した溶解物をパルス遠心分離し、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)によって4~12%ポリアクリルアミドプレキャストmini-PROTEAN TGXゲル(Bio-Rad、#4561086)上で分離した。5μlのPrecision Plus Protein(商標)Dual Xtra Prestained Protein Standard(Bio-Rad、#1610377)をロードし、ゲル配向及び分離したタンパク質の分子量の測定に使用した。サンプルをロードし、ゲルを1xTris/グリシン/SDS緩衝液(Bio-Rad、#1610732)中で100V及び400mAで90分間泳動した(Power Pac 300、Bio-Rad)。SDS-PAGEを行った後、セミドライ電気転写システム(TransBlot Turbo(商標)v1.02、Bio-Rad)を使用して、25Vで30分間、タンパク質を0.2μmのポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride、PVDF)膜(Bio-Rad、#1704156)に転写した。Chemi-Doc(商標)MP(Bio-Rad)システムで提供された無染色ブロットプロトコールを使用して膜を視覚化し、タンパク質転移を評価し、EveryBlot(商標)ブロッキング緩衝液(Bio-Rad、#12010020)中で膜を30分間ブロックすることによって非特異的結合を防止した。膜を、Alix(Life Technologies、#MA183977)及びCD63(Abcam、#ab59479)を標的とするTBS-T(1xTBS、pH6.8、0.1%Tween(登録商標)20)希釈抗マウス一次抗体(1:1000)、またはCD81(Abcam、#ab233692)及びCD9(Abcam、#ab263023)を標的とするTBS-T希釈抗ウサギ一次抗体(1:1000)とともに4℃で一晩インキュベートした。膜をTBS-Tで洗浄し(3×5分)、その後、抗マウスまたは抗ウサギIgG西洋ワサビペルオキシダーゼ結合二次抗体(1:10000)のいずれかで、室温で穏やかに撹拌しながら1時間インキュベートした。膜をTBS-T(3×5分)で洗浄し、その後、SuperSignal(商標)West Femto Maximum Sensitivity Substrate(Pierce、#34095)を使用してタンパク質を検出し、Chemi-Doc MP(Bio-Rad)イメージングシステムでImageLab 4.0ソフトウェアを使用してタンパク質バンドを視覚化した。
【0291】
透過電子顕微鏡法
精製したエキソソームの透過電子顕微鏡法(Transmission electron microscopy、TEM)を、Charles River Laboratories(Pathology Associates(PAI)、Durham NC)によって実施した。簡単に説明すると、精製したエキソソームを、リン酸緩衝液中の2%グルタルアルデヒド(Electron Microscopy Services、#6536-05)を使用して固定し、4℃で保存した。300メッシュのホルムバールでコーティングされたグリッドを、20μlの固定したエキソソーム懸濁液上で約2分間反転させ、乾燥させた。次に、グリッドを40μlの2%酢酸ウラニル水溶液上で約1分間反転させ、乾燥させた。サンプルを、加速電圧80kVで動作するJEOL JEM-1400+透過型電子顕微鏡(JEOL Ltd.、Tokyo、Japan)で画像化した。AMT 16 MPデジタルカメラシステム(Advanced Microscopy Techniques Corp.、Woburn、MA)を用いて高解像度のTIFF画像を取得して保存した。
【0292】
ナノ粒子追跡
Spectradyne nCS1機器を使用して精製したエキソソームのサイズ及び粒子濃度を評価した。簡単に説明すると、2μlの精製したエキソソームをTS400マイクロ流体カートリッジ(Spectradyne、#TS400)にロードし、これにより、65~400nmの粒子の分析が可能となった。装填されたカートリッジを、0.2μmの濾過済み緩衝液(1%Tween(登録商標)20を含む1xPBS)を使用して機器中でプライミングし、粒子取得を実施した。取得した統計ファイルを、Spectradyne Viewerソフトウェアを使用して粒子濃度及びサイズ分布について分析し、ピークフィルタリングされたCSDグラフを作成した。
【0293】
エキソソーム小分子RNA cDNAライブラリーの調製
Loudig et al.(2017)によって記載されたcDNAライブラリー調製プロトコールを使用してエキソソームからの小分子RNA配列決定を実施し、RNA量が定量化できない場合はエキソソーム精製のための修正を加えた。本発明者らの研究室で行われた滴定実験は、わずか5ngのエキソソームでロバストな小分子RNAプロファイルが得られることを示した(
図5A)。Covid-19血清から個別に精製したエキソソームについては、200μlの血清から精製したエキソソームから回収した全RNAを使用して、小分子RNA cDNAライブラリーの調製を実施した(各血清サンプル用に2つのウェルを用意し(ウェルあたり100μl)、RNA抽出のためにプルをプールした)。簡単に説明すると、9.5μlの全RNA、8.5μlのマスターミックス、及び1μlの50μMアデニル化バーコード付き3’アダプター(Integrated DNA Technologies、特注)を組み合わせることにより、15(Covid-19ライブラリー)~18(最適化実験)のライゲーションを個別にセットアップした。0.0052nM キャリブレーターカクテル(40μlの10xRNAリガーゼ-2緩衝液、120μlの50%DMSO、及び[42]からの10μlのキャリブレーターカクテル)を使用してマスターミックスを調製した。反応物を90℃で1分間加熱し、氷上で2分間インキュベートし、1μl(1/10希釈)の切断型K227Q T4 RNAリガーゼ2(New England Biolabs、#M0351L)を各反応物に添加し、次に冷蔵室で氷上で一晩インキュベートした。翌日、ライゲーションを90℃で1分間加熱不活性化し、1.2μlのGlycoblue(商標)ミックス(26μlの5M NaCl(ThermoFisher、#AM9579)中の1μlのGlycoblue(商標)共沈剤(15mg/ml、ThermoFisher、#AM9516))を添加することによって個別に沈殿させ、63μlの100%エタノールを各チューブに添加した。反応物を合わせ、氷上で1時間沈殿させ、14,000RPM、4℃で1時間遠心分離した。ペレットを乾燥させ、20μlのヌクレアーゼフリー水及び20μlの変性PAAゲルローディング溶液に再懸濁し、15%尿素-PAGEゲル上で分離した。サイズマーカーRNAオリゴヌクレオチド(IDT)をゲル切除のガイドとして使用した。ゲル片をゲルブレーカーチューブ(IST Engineering、#3388-100)を使用して粉砕し、サーモミキサー上で400mM NaCl中で4℃、1,100RPMで一晩インキュベートした。翌日、溶液を濾過し、氷上で100%エタノール中で1時間沈殿させた。4℃、14,000RPMで1時間遠心分離することによってRNAペレットを得た。5’アダプターを再懸濁したペレットに添加し、T4 RNAリガーゼ1(New England Biolabs、#M0204L)を37℃で1時間添加した。サイズ選択のガイドとして、連結した生成物を、5’連結サイズマーカーの存在下で12%尿素-PAGEゲル上で分離した。ゲルをゲルブレーカーチューブ中で回転させ、その後、破砕したゲルを1μlの100μM 3’PCRプライマーを含む300mM NaCl溶液中に再懸濁し、サーモミキサー上で1,100RPM、4℃で一晩インキュベートした。続いて、溶液を濾過し、100%エタノールで沈殿させ、氷上で1時間インキュベートし、4℃、14,000RPMで1時間遠心分離することによってペレット化した。RNAペレットを、0.75μlのSuperScript(登録商標)III逆転写酵素(ThermoFisher、#18080-093)による逆転写のためにヌクレアーゼフリー水(3μlの5x第一鎖緩衝液、1.5μlの0.1M DTT、及び4.2μlのdNTP Mix(それぞれ2mM、ThermoFisher、#R0241))に再懸濁し、50℃で30分間インキュベートした。逆転写を95℃で1分間不活性化した後、95μlのヌクレアーゼフリー水を添加した。パイロットPCR反応をセットアップした(10μlの10xPCR緩衝液、10μlのdNTP Mix(それぞれ2mM)、10μlのcDNA、67μlのヌクレアーゼフリー水、0.5μlの3’PCRプライマー、0.5μlの5’PCRプライマー、及び2μlのTitanium(登録商標)Taq DNAポリメラーゼ(Clontech Laboratories、#639208))。2.5%アガロースゲルでの分析及び最適なPCR増幅サイクルの同定のために、サイクル10、12、14、16、18、20、及び22で12μlのアリコートを回収した。次に6つのPCR反応をセットアップし、最適な増幅サイクル数で実行し、一部(10μl)を2.5%アガロースゲルで評価した。残りの溶液を合わせ、沈殿させ、サイズマーカーを除去するためにPmeIで消化し、2.5%ゲル上で分離した。100ntのPCRライブラリー産物を切り出し、QIAquickゲル抽出キット(Qiagen、#28704)で精製し、Qubit(登録商標)dsDNA HSアッセイキット(ThermoFisher、#Q32854)を使用して定量した。次に、cDNAライブラリーをHiSeq2500シーケンシングシステム(Illumina、#SY-401-2501)で配列決定し(シングルリード50サイクル)し、その後、生の配列決定データを含むFASTQファイルを、アダプタートリミング及びhg-19ゲノムへの小分子RNAアラインメントのために処理した。リードカウントを総カウントに対して正規化し、統計分析を行った(以下を参照)。
【0294】
定量PCR実験
TaqMan(登録商標)microRNA逆転写キット、TaqMan(登録商標)microRNAマスターミックスPCRキット、及び個々のTaqMan(登録商標)microRNAアッセイを製造業者の指示(ThermoFisher)に従って使用して、定量PCR(qPCR)実験を実施した。Dynabeads(登録商標)及びストレプトアビジン被覆96ウェルプレートへの非特異的エキソソーム結合の評価には、ath-miR-159a RNAオリゴ(Integrated DNA Technologies)を使用した。Covid-19感染血清検体から精製したエキソソームのRNA抽出中に1ピコグラムのath-miR-159aも添加し、技術的正規化対照として使用した。最適化実験では、MCF-7エキソソームから抽出したRNAを使用してhsa-miR-21(ThermoFisher、#000397)及びhsa-miR-200c(ThermoFisher、#000505)を定量した。Covid-19血清検体からのエキソソームRNAの配列決定によって同定された差次的発現miRNAの検証には、hsa-miR-126-3p(#002228)、hsa-miR-146a(#002163)、hsa-miR-126-5p(#000451)、hsa-miR-205(#000509)に対するTaqMan(登録商標)miRNAプライマーアッセイを使用した。これらのqPCR反応では、100μlの血清からのCD63/CD81/CD9エキソソーム精製を組み合わせたものから抽出したRNAの10%(20μl中2μl)を使用して逆転写をセットアップした。個々の転写物の定量化では、RT反応の1/3(5μl)を使用して3つの個々のqPCR実験をセットアップした。Step-One-Plus機器で、製造者の推奨するストレプトアビジン被覆96ウェルプレート及びカバーを用いて定量PCR測定を実施した。以下に説明するように、定量データを統計分析のためにExcelシートに転送した。例示的なmiRNA配列を以下の表2に列挙する。
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【表2-5】
【表2-6】
【0295】
BSL-3組織培養及びSARS-CoV-2の中和
データ分析
配列決定データ分析では、Illumina HiSeq2500シーケンサーから取得した生のFASTQデータファイルを、アダプタートリミング、リードアラインメント、及びアノテーションを含めて、RNAworldサーバを使用して処理した。miRNAカウントを、データ分析のためにスプレッドシートにエクスポートした。以下に詳述するように、Rプラットフォームの専用Bioconductorパッケージを使用してmiRNAカウントの統計分析を実施した。「NMF」パッケージ(ヒートマップ関数)を使用して、ヒートマップを変換されたカウントから生成した。「DESeq2」と「edgeR」を使用して差次的発現を評価した。差次的発現モデルには、バッチバイアスを低減するためのバッチ変数(ライブラリー)が含まれていた。性別と年齢との相互作用を試験した[43]。miRNAの識別能力を最大化するために、各サンプルのスコア(「miRNAスコア」、[44])を計算し、これは、すべての有意にアップレギュレートされたmiRNAの標準化レベル(z値)と、すべての有意にダウンレギュレートされたmiRNAのz値の負の値を合計することによって集められた。定量PCR(qPCR)では、個々のmiRNAのCt値からath-miR-159a(外因性正規化対照)の閾値サイクル(Ct)値を差し引き、ΔΔCt比較法の値を計算した。ΔΔCt値のt検定またはマンホイットニーのU検定によってqPCRの差次的発現を評価した。回復期エキソソーム中和については、Graphpad Prism 8.0ソフトウェアを使用して統計分析を実施し、平均値±平均値の標準誤差(SEM)を使用してデータを評価した。すべてのin vitro実験は、技術的反復(3つの別々のウェル)及び生物学的反復(3つの別々の実験)の両方で構成された。ボンフェローニ事後検定による一元配置分散分析(One-way analysis of variance、ANOVA)を実施した。p値<0.05を統計的に有意であるとみなした。
【0296】
結果
ヒト生体液からエキソソームを精製するためのEV-CATCHERアッセイの開発
本発明者らは、生体液からエキソソームを特異的に精製するために、結合プラットフォームへの選択的抗体のカスタマイズ可能な結合を最適化するよう努めた。したがって、Lof et al.,2017(
図2A)によって記載された設計を使用して、本発明者らは、最初に、その後のアッセイのために最高量の二本鎖DNAリンカーを生成するための最適なハイブリダイゼーション条件を確立した(
図2B、レーン4)。dsDNAの純度を高め、DBCO活性化抗体に結合してプラットフォームへの結合を防止することができる一本鎖5’アジドオリゴヌクレオチドの発現を防ぐために、アニーリングしたdsDNA産物を非変性アクリルアミドゲル上で精製した。ウラシル-グリコシラーゼ(UNG)を使用して、酵素消化を通じてdsDNAリンカーの分解性の性質を検証した(
図2B、レーン5)。次に、dsDNAリンカーとDBCO活性化抗体との間の最適な比率を決定し、これを12%PAGEで評価した(
図2C、レーンc、d、及びeを比較)。ds-DNAリンカーの結合は抗体の移動パターンを変更し、これはUNGグリコシラーゼ処理及びdsDNAリンカーの消化により回復することができた(
図2C、レーンf)。これらの実験を異なる抗体で繰り返し、ds-DNAリンカーと抗体二本鎖の調製のための最適化条件を検証した。
【0297】
低非特異的核酸結合プラットフォームの同定
磁気ビーズは、カーゴの評価に先立ってエキソソームを単離するために広く使用されているが、本発明者らの研究室で行われた反復実験は、捕捉抗体の非存在下での高レベルの非特異的小分子RNA結合を示唆した(
図8)。したがって、本発明者らは、非磁性ストレプトアビジン被覆96ウェルプレート(ウェル、主にELISAアッセイに使用される)とDynabeads(商標)(磁性ビーズ)MyOne(商標)ストレプトアビジンT1ビーズ(ビーズ)を比較することにより、磁性ビーズの非特異的結合能力を調査しようとした。本発明者らは、2つのプラットフォーム(ビーズ対ウェル)の評価のための小分子RNAの供給源として、実験室(対照PCR実験)で汚染物質として検出されなかったシロイヌナズナ特異的miRNAであるath-miR-159a RNAオリゴヌクレオチドを使用することを選択した。高感度測定ツールとしてqPCRを使用することで、本発明者らは、1ngのath-miR-159a(14サイクルのCt、
図3A及び
図3B-すべてのグラフ中の黒いバーを参照)がウェル及びビーズへの非特異的結合の定量化に最適であると判断した。非特異的ath-159a RNA結合の評価では、ウェル(
図3A、左上)またはビーズ(
図3A、左下)から、その後の3回のPBS洗浄及びUNG消化後の1回の最終溶出を含む4つの画分を収集した。本発明者らのデータは、特に最終溶出(
図3Aの左上と左下、薄い灰色のバー)において、ウェルが最小量のath-miR-159a RNAを保持し、大量のath-miR-159a RNAが非特異的に結合してすべてのステップで放出されたが、特にビーズによる最終溶出中に放出されたことを示す。本発明者らは、ath-miR-159aとのインキュベーション前にウェル及びビーズをRNase-Aで処理すると(
図3A、右上と右下)、ath-159a RNAの非特異的結合及びビーズによる最終溶出におけるその高い発現がほとんど除去されることを見出した。この前処理は、溶出におけるRNase-A活性のキャリーオーバーを示唆しており、その後のすべての実験には適していない可能性があるが、磁気ビーズを使用する場合には必要と思われる。次に、本発明者らは、ウェル又はビーズのいずれかがエキソソームに非特異的に結合することもできるか否かを判定しようとした(
図3B)。MCF-7細胞からのエキソソームRNA抽出物中で以前に検出したhsa-miR-21(Ct=24)及びhsa-miR-200c(Ct=27)のqPCR評価を実施した。商業的に精製されたMCF-7エキソソームが超遠心分離によって得られることを考慮すると、エキソソームフリーhsa-miR-21及びhsa-miR-200cを予想したため、すべての反応をRNase-Aで前処理した。本発明者らのデータは、miRNAシグナルの約半分が残っていることを示しており、おそらくエキソソーム二重脂質層によるRNase-A活性からの保護を示唆している(
図3B、濃い灰色のバー)。RNase-Aで処理したエキソソーム溶液をウェル中で又はビーズとともにインキュベートした後に取り出し、その後、溶液中に残っているhsa-miR-21及びhsa-miR-200c RNAレベルを評価した。本発明者らのデータにより、ウェル上でエキソソーム溶液をインキュベートした後、両方のmiRNAが同じ検出可能なレベルを維持する一方、miRNAシグナルの大部分がインキュベーション及びビーズの除去後に失われたことが体系的に確認された(
図3B、薄い灰色のバー)。これらのデータは、磁気ビーズが小分子RNAとエキソソームの両方に非特異的に結合する能力を有することを示唆しており、これは、血清中でインキュベートしたビーズの小分子RNA配列決定を行うときに観察した非特異的RNAバックグラウンドに寄与する可能性がある(
図8)。したがって、その後のすべての実験では、評価したすべての生体液からのエキソソームの免疫精製のために、ストレプトアビジン被覆96ウェルプレートを選択した。
【0298】
生体液からのエキソソーム精製のためのEV-CATCHERアッセイの再現性及び感度
これらの原理証明実験では、EV-CATCHERアッセイで抗CD63抗体を使用して、3つの異なる生物学的供給源(ヒト細胞株(MCF-7)の組織培養培地、ヒト血漿、及びヒト血清)からのエキソソームの精製を評価した(
図4A~
図4E)。これらのエキソソーム精製を、総タンパク質インプット(NanoDrop分光光度計で定量化)が減少している状態で実施し、エキソソーム溶出におけるタンパク質発現のための抗Alix、-CD63、-CD9、及び-CD81抗体を使用して、ウェスタンブロッティングによってCD63プルダウンの再現性を評価した(
図4A~
図4C)。入手可能性が限られていたため、エキソソーム精製を単一容量の血清(100μl)を用いて実施した。透過型電子顕微鏡法(TEM、
図4D)を使用して、以前のエキソソーム評価(36)と一致するサイズ及び形態を有する無傷のEVの存在を明らかにした。最後に、Spectradyne nCS1ナノ粒子トラッカーを使用して、CD63
+精製及び放出されたエキソソームのサイズ分布を評価したところ、PBSでインキュベートしたウェルからのUNG消化Abリンカーと比較して、MCF-7細胞培地(3.30×10
10粒子/ml(n=20,058))、血漿(6.93×10
9粒子/ml(n=340,956))、及び血清(2.27×10
10粒子/ml(n=12,516))からのエキソソームについて65~150nmの範囲のサイズを有するナノ粒子が存在することが明らかになった(
図4E)。まとめると、これらの分析は、様々な生体液からエキソソームを精製するためのEV-CATCHERアッセイの均一な再現性を明らかにした。
【0299】
EV-CATCHERで精製したCD63
+エキソソームを使用した小分子RNA配列決定
磁気ビーズで精製したエキソソームから抽出した全RNAを使用した以前の小分子RNA配列決定実験(
図8)が高い小分子RNAバックグラウンドの存在を示したことを考慮して、本発明者らは同じ小分子RNA cDNAライブラリー調製プロトコルを用いてEV-CATCHERアッセイの特異性を評価しようとした[42]。最初の試験として、全血清から抽出した全RNAの量を減少させて、循環小分子RNAの検出に対するcDNAライブラリー調製プロトコールの適用性を検証した(
図5A)。反復実験により、少量の循環小分子RNAを使用した配列決定パイプラインの再現性が実証された。次に、超遠心分離したヒト血漿(全エキソソームの古典的な精製)及び全血漿から抽出したRNAからの小分子RNA配列決定データを比較し、特定のmiRNA発現の差異を特定し(
図5B)、これは、RNA抽出方法が発現量に影響を与えることを更に裏付けた[45]。対照の尺度として、マウスエキソソームとヒトエキソソームとの間に特定の小分子RNA発現差異が存在することを確認した(
図5B)。最後に、EV-CATCHERを使用して生体液からエキソソームの亜集団を特異的に選択できるか否かを明らかにしようとした。これらの実験では、ヒト血漿にマウスRAWS264.7エキソソームをスパイクすることを選択した。ヒトCD63との交差反応性を持たない抗マウスCD63抗体を使用してEV-CATCHERアッセイをカスタマイズし、ヒト血漿からマウスエキソソームの精製を実施した。精製したmiRNAカーゴの高感度評価では、cDNAライブラリー調製プロトコールを使用し、選択したエキソソームの小分子RNA含有量を配列決定した(
図5C)。これらの実験では、cDNAライブラリー調製プロトコールの固有変動性を強調するために、すべてのライブラリーを新しい(リピート#1、3年)と古い(リピート#2、6年)の3’バーコード付きアダプターを使用して複製した。
図5Cに見られるように、EV-CATCHERアッセイを使用してヒト血漿から捕捉したマウスCD63
+エキソソームからの小分子RNA発現データは、マウスRAWS264.7全エキソソームでのみ同定されたマウス特異的な小分子RNA配列(タグ)を含んでいた(
図5C、カラム2及び3)。また、ヒト全血漿中で差次的に検出されたmiRNA(マウスRAWS264.7エキソソームでは検出できない)が、マウスCD63
+精製エキソソーム内では検出できないことにも注目した。興味深いことに、RAWS264.7エキソソーム全体(エキソソームのプールを表す)とCD63
+精製エキソソームの間でmiRNA発現の差異が認められ、特定のmiRNAはマウスRAWS264.7細胞からのプールされたエキソソームでのみ検出可能であった。これらの次世代シーケンシング実験は、循環小分子RNAの再現性のある検出と、生体液からのエキソソーム亜集団の選択的捕捉に対するEV-CATCHERアッセイの特異性を実証している。
【0300】
軽症および重症のCovid-19患者の血清エキソソームのmiRNA分析
SARS-CoV-2パンデミックの米国初期の渦中に当研究所とその親病院ネットワークが位置することにより、差し迫った生物学的疑問を調査し、当ネットワーク内で治療を受けたCovid-19患者の血清サンプルにおけるmiRNAバイオマーカーを同定するためのEV-CATCHERアッセイの臨床的有用性をさらに調査するユニークな機会を与えてくれた。Covid-19感染症(患者の幅広い転帰と関連している)に関する重要な問題は、循環しているmiRNA発現の変化が重症化のリスクがある患者を早期に特定するのに役立つかどうかを評価することであった。そこで、軽症および重症のCovid-19患者の血清(我々のSARS-CoV-2感染血清サンプルセット)から循環エキソソームを精製し、次世代シーケンシングによりそのmiRNA発現量を評価する最初のパイロット試験を確立した。原理実証として、血清から循環エキソソームを偏りなく捕捉するために抗CD63、-CD81、-CD9抗体の組み合わせを使用することを選択した。EV-CATCHERアッセイの感度を測定するために、低値EV(EV-CATCHER)および全血清から抽出した総RNAを用いて、軽症患者および重症患者のmiRNA発現の違いを測定した。軽症患者は入院したが人工呼吸器は必要なかった(n=13)一方、重症患者は急性呼吸窮迫症候群(ARDS;ベルリン分類基準[46]に従って)を示し人工呼吸器を必要とした(n=17)、かつ両群ともSARS-CoV-2ウイルスの感染がPCR法で確認された。これらの患者から臨床データが得られた(表1)。バッチ効果を最小限に抑えるために、血清全体から抽出したRNA(30個のサンプル;2個のライブラリー)または血清エキソソーム(30個のサンプル;2個のライブラリー)から抽出したRNAから、各ライブラリーに軽度および重度のRNAサンプルを均等に配置した15個の独立したサンプルを用いて小RNA cDNAライブラリーを調製した。我々の発現分析では、血清エキソソーム由来の総RNAを用いて、軽症と重症のサンプル群の間で10個の差次的に発現されたmiRNAが同定され(
図6A;hsa-miR-146a(p-val=0.00041)、hsa-miR-126-3p(p-val=0.024)、hsa-miR-424、(p-val=0.00454))、hsa-miR-151-3p(p-val=0.012)、hsa-miR-126-5p(p-val=0.00017)、hsa-miR-627-5p(p-val=0.011)、hsa-miR-145(p-val=0.015)、hsa-miR-205(0.00049)、およびhsa-miR-200c(p-val=0.01)、また、全血清由来の総RNAを用いて、軽症と重症のサンプル群の間で差次的に発現されたmiRNAsが2つだけ同定された(
図6A;hsa-miR-550-5p(p-val=0.026)、hsa-miR-629*(p-val=0.0088))。
図6Bに示すように、2つの群間で差次的に発現された10個のエキソソームmiRNAは、存在量は少なかったが、再現性よく検出され得る。我々は、軽度および重度の患者の血清エキソソームにおいて差次的に発現された10個のmiRNAを使用して、統合的miRNAシグネチャを確立した(
図6C)。両方のエキソソーム小RNAライブラリー間のこのシグネチャの評価により、軽症と重症のサンプル群の間で観察される発現の違いが確認された(
図6C)。興味深いことに、血清エキソソームおよび全血清の両方についてこのmiRNA統合シグネチャを評価した場合(
図6D)、血清精製エキソソームにおいて、軽症と重症のサンプル群の間で有意な差があることが確認された(
図6D、p-val=2e-07)。驚くべきことに、全血清型(p-val=0.011)から、これらの10個のmiRNAは、2つの患者群間で個々に発現の差は見られなかった。最後に、血清エキソソーム中で同定された差次的に発現している上位4つのmiRNAを評価するために、金標準定量PCRアプローチを利用した(
図6E)。得られた発見の完全な技術的検証を可能にするために、血清エキソソームの精製に最初に使用した新規な抗CD63、-CD81及び-CD9抗体を活性化し、同じ30の全血清サンプル(軽症n=13、重症n=17)からEV-CATCHERを使用して新規なエキソソソソームを精製し、かつ総RNAを抽出した。TaqMan(登録商標)アッセイを用いて、hsa-miR-146a、hsa-miR-126-5p、hsa-miR-126-3p、hsa-miR-205の発現差を評価し、差次的に発現している上位2つのmiRNA(hsa-miR-146a(pval=0.0023)及びhsa-miR-1226-3p(0.036)の検証に成功した(
図6E、上の2つのボックスプロット)他の2つのmiRNAの検証の欠如について考えられる理由を評価するために、4つのmiRNA全てについて30個の検体のqPCRのCt値の平均を示した。Ct値が最も低い(最も発現している)miRNAのみが検証され得ることが観察され(
図6Eの上側のボックスプロット、Ct値を参照)、このことは、これらのmiRNA転写物がqPCR検出閾値を下回ったことを示唆し得る。全体として、我々のシークエンシング分析では、血清エキソソームには、EV-CATCHERアッセイを用いて捕捉され、qPCRで検証可能な低存在量の特異的miRNAが含まれていることを証明している。我々の分析では、軽症および重症のCovid-19患者からの血清エキソソーム間でmiRNA発現に差があることも示唆している。
【表3】
【0301】
EV-CATCHERで精製したエキソソームはin vitro分析のための機能的特性を維持する
以前のTEM分析では、EV-CATCHER精製後に放出されたエキソソームの大部分が無傷であることが示唆されたことを考慮し、EV-CATCHERを使用して生体流体から精製されたエキソソームがin vitro分析においてその生物学的特性を維持したかどうかを検討した。これらの概念実証実験のために、我々は第2のパイロット試験(回復期血清サンプルセット)を確立し、そこで、SARS-CoV-2感染から最近回復した6人の血清からCD63+循環エキソソームを精製した(HUMCの回復期血漿試験に登録し、SARS-CoV-2スパイクタンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)を抗原(IgG)とし、ELISAにより抗SARS-CoV-2を評価した)。
図7Aに示すように、血清サンプルのうち3つは、IgG力価の高い個体(High;血清の10,000倍希釈を超えると定義)から得られ、3つはIgGレベルが定量限界(BLQ;検出不能)を下回る個体の血清から得られた。EV-CATCHERアッセイを使用して、異なる血清サンプルからエキソソームを精製し、抗Alix、-CD9、-CD63、および-CD81抗体を使用するウェスタンブロット分析によってそれらの同一性を確認した(
図7B)。これらの実験により、高血清(
図7B、レーン1~3)とBLQ血清(
図7B、レーン4~6)との間のエキソソームの均一な精製が明らかになった。TEMを使用して、本発明者らは、高血清サンプルおよびBLQ血清サンプルの両方から精製したエキソソーム(
図7C)のサイズ、形態、および完全性を評価した。エキソソームのサイズ分布もナノ粒子追跡によって評価し(
図7D)、高濃度(平均濃度:1.99×10
10個/ml(n=20.481)とBLQ(1.55×10
10個/ml(n=20.449)の血清エキソソーム間で、同様のナノ粒子分布(65~150nm)を示した。我々は、mNeonGreen SARS-CoV-2レポーターウイルス(ウイルス複製により、測定可能な緑色蛍光タンパク質シグナルが産生される)の感染および増殖を、ACE-2レセプターを高レベルに保有するゴールドスタンダードVero E6(アフリカミドリザル腎臓)細胞を用いて行い[47]、それにより、異なる血清および精製された循環血清エキソソームの中和特性を評価する(
図7E)[48~50]。高いIgG力価を有する個体からの全回復期血清を用いてVeroE6細胞を処理すると、予想通り、SARS-CoV-2ウイルスの中和が生じたが(
図7E、高IgG)、BLQのIgG力価を有する個体からの全血清を使用した場合には観察されなかった(
図7E、BLQ IgG)。循環エキソソームの潜在的な中和特性を評価するために、本発明者らはまず、金標準の超遠心分離法(UC)によって高度に精製されたエキソソームを得た[35]。血清IgGのキャリーオーバーを防ぐために、連続した超遠心分離工程および洗浄を行い、これにより、初期の血清の約1~2×10
7倍の希釈につながると推定した(
図7E;1高い、1BLQ)。我々の実験により、高IgG力価血清サンプルに由来するUCエキソソームで前処理されたVero E6細胞は、全血清の処理で見られるのと同様のSARS-CoV-2ウイルスの中和効果(
図7E、第3列)をもたらすが、BLQ IgG力価血清サンプルに由来するUCエキソソソームで処理された細胞は、ウイルスに対する中和効果を示さないことが明らかになった((
図7E、第4列)。血清のUCから得られた非常に高い希釈度に基づき、我々のデータは、高IgG力価の血清からのUCエキソソームで観察された中和効果がエキソソーム媒介であり得ることを示唆している。したがって、EV-CATCHERアッセイによって精製および放出された血清エキソソームを用いて、これらの予想外の結果を確認しようと努めた。我々のデータは、高IgG力価血清から精製したエキソソーム(
図7E.サンプル1-3)が、高IgG力価血清からのUCエキソソームと同様の、SARS-CoV-2に対する中和活性を示すことを示したが、これはBLQ IgG血清では観察されなかった(
図7E.サンプル4-6)。これらの観察は、イメージングによる蛍光ウイルス粒子の検出によって検証された(
図7F)。これらの予想外のデータは、高IgG価を有する回復期血清から精製されたエキソソームの中和特性を示唆するが、作用機序の同定と確認はまだなされていないが、我々の分析は、EV-CATCHERアッセイを使用して精製されたエキソソームが同じ血清サンプルの1つから高度に精製されたUCエキソソームで観察されたものと同等であることを証明する。
【0302】
図9A、総タンパク質およびACE-2を示すために染色された、COVID19回復期血清(左、高IgG力価回復血清、RBD IgG>10,000;右、BLQ回復血清)由来のエキソソソーム抽出物のSDS PAGE分析を示す。
図9Bに、回復期血清(左、高IgG力価回復期血清、RBD IgG>10,000;右、BLQ回復期血清)についての総タンパク質に対して正規化されたACE-2タンパク質発現のグラフを示し、高IgG力価を有する個体からの回復期血漿におけるACE-2の有意な増加を示す。
【0303】
考察
本研究では、高感度でカスタマイズ可能な抗体ベースのエキソソーム精製手順であるEV-CATCHERを開発し、エキソソーム小RNAのカーゴをハイスループットで同定し、精製エキソソームを無傷で放出してその生物学的特性を評価した。
【0304】
循環miRNAバイオマーカーの同定における重要な問題は、周囲のmiRNAノイズが本質的に高いレベルであり、その結果、特に大型生物内の細胞集団からのmiRNA発現変化の検出において、生体流体中のそれらのシグナルが「減衰」してしまう[32]。循環エキソソームの評価は、特定の細胞からの区画化されたmiRNAカーゴを評価するための独特な機会を提供するが、現在の実験室ベースの技術には大きな注意点がある[25~31]。したがって、エキソソーム精製中のRNAバックグラウンド/ノイズを最小化する意図でEV-CATCHERアッセイを最適化し、磁気ビーズが本質的にRNAとエキソソームを非特異的に捕捉し、分析の妨げになると判断したため、ストレプトアビジンコーティングされた96ウェルプレートを結合プラットフォームとして使用するように選択した。最適化された小RNA cDNAライブラリー作製プロトコールを使用して、ヒト血漿にスパイクされた、選択的に精製されたCD63+マウスRAWS264.7エキソソームから抽出されたRNAをシーケンシングすることにより、EV-CATCHERの特異性を証明した。さらに、同じ生体流体(全血漿、血漿由来の超遠心分離エキソソーム、および抗体引き出しエキソソーム)からの異なる循環RNA画分の次世代シーケンシング分析により、miRNA発現の違いはRNA供給源および精製方法に基づいて体系的に同定できるという原理がさらに正当化された。これらのデータは、循環エキソソーム上に存在する細胞特異的表面タンパク質の捕捉に抗体選択を適合させることにより、ヒト疾患の病原性の評価にEV-CATCHERアッセイを使用する大きな可能性を実証する。
【0305】
本発明者らは、封入されたバイオマーカーを重点的に選択することにより、微調整された低存在度の小RNAが検出できることを提案した。我々の分析がこの原則を支持している理由は以下のとおり、CD63+/CD81+/CD9+精製エキソソームの小RNAシークエンシングにより、軽症および重症のCovid-19入院患者間で差次的に発現された10個のmiRNAを同定できるのに対し、全血清(第1の血清サンプルセット)を評価した場合には、これらのmiRNAのいずれもが個別に差次的発現として検出できなかった。興味深いことに、全血清のmiRNA発現シーケンシングデータを使用して、これらの10個のmiRNAを統合的なmiRNAシグネチャとして評価した場合、2つの患者群を区別できることがわかった(個々のpval>0.005)。これらの観察結果から、封入されたエキソソームからの固有のmiRNA発現の差は、全生体流体内で評価されると減衰することが示唆され、さらに、低発現で潜在的にロバストかつ臨床的に関連するmiRNAバイオマーカーを発見するために、特異的に精製されたエキソソームを重点的に評価する必要があることを実証している。qPCRが臨床アッセイにおけるRNA転写物の検出のゴールドスタンダードの1つであることを考慮すると、少量の血清サンプル(100μl)から精製された循環エキソソームから抽出された総RNAを扱う場合に、qPCRには大きな制限があることに注意することが重要である。例えば、qPCRの検証中、差次的に発現された上位2つのmiRNA(hsa-miR-146aおよびhsa-miR126-3p)は、2つの患者群(軽症対重症)の間で統計的有意性を保持する一方で、hsa-miR-205は、比較検出閾値~38ー39の増幅サイクルで有意性を失った。これらの評価では、低存在量のバイオマーカーの検出には、1、エキソソームサブ集団富化のためにより多くの細胞特異的抗体の使用、2、より大量の生体流体材料のインプット、および3、qPCR検出閾値を改善するための前増幅工程が必要であることが示唆される。
【0306】
疾患に関連する小RNA バイオマーカーを発見するために EV-CATCHERアッセイを開発したので、正確な分子分析のために無傷のエキソソームを確実に放出できるようにした。そのため、捕捉抗体と低非特異的小RNA結合プラットフォームとの間に、酵素分解性DNAリンカーを含めることにした。エキソソームの無傷放出を評価するために、TEMおよびナノ粒子追跡実験を用いて、サイズ特異的な無傷エキソソームサブ集団の富化を評価した。我々の実験が示唆するように、この無傷のエキソソームの酵素的放出は、in vivoでの分析を妨げることなく、in vitroのアッセイを用いてEV-CATCHER精製エキソソームの機能的特性を探索する機会にもなり得る。本アッセイの検証のための原理証明として、エキソソームの精製によく認められた選択抗体(抗CD63/CD81/CD9)のプールを使用したが、我々のデータでは、特異的モノクローナル抗体を用いてカスタマイズすることにより、生体流体中を循環する細胞特異的エキソソームの選択と分析に大きな可能性があることが示唆される。実際に、最近の研究では、臓器/組織特異的エキソソームは、モノクローナル抗体を使用して循環から精製することができ、次いでin vitro分析に使用できることが既に示されている[51~54]。エキソソーム捕捉の特異性を高めるために、最初の限外濾過または超遠心分離工程で、無傷のプールされたエキソソームを提供することができ、次いで、EV-CATCHERアッセイを使用して単一抗体を選択し、miRNAバイオマーカーおよび機能的特性を評価することができることを提案した。
【0307】
当研究機関とその親機関は、SARS-CoV-2パンデミックの米国初期の渦中に位置していたため、当機関の分子アッセイをCovid-19感染患者の血清の評価に利用できるかどうかを調べようとした。Covid-19血清検体の重症疾患層化のリスク予測バイオマーカーを評価する分子研究の欠如を考慮して、EV-CATCHERアッセイを原理実証として使用し、感染の重症度に関連する循環エキソソームmiRNA発現変化を検出できるかどうかを判断した(第1の血清サンプルセット)。小規模ではあるが、軽症に罹患したCovid-19(n=13)と、機械的人工呼吸を必要とする重症の入院患者(n=17)とのエキソソームmiRNA発現比較分析により、全血清では検出できなかった少なくとも2つのダウンレギュレーションされたmiRNA(miR-146aおよびmiR-126-3p)を検出し、qPCRで検証することができた。これらの分析により、EV-CATCHERアッセイの感度が検証されただけでなく、疾患の重症度に関連した推定予後バイオマーカーがCovid-19患者の血清エキソソームで検出できることも示唆された。興味深いことに、以前の研究では、これらのmiRNAはどちらも免疫および血管調節miRNAであり、炎症および血管傷害性事象に関連していることが示唆された[55~60]。例えば、Taganovらによる研究では、hsa-miR-146aが炎症に対する分子ブレーキであることが示唆されている[56]。hsa-miR-126の研究では、部分的にVEGFシグナル伝達[62]の活性化を介して血管新生[61]を調節する血管性miRNAであることが明らかになった。より正確には、ヒト内皮前駆細胞から分泌されたエキソソームは、hsa-miRNA-126(miR-126-3pおよびmiR-126-5pの両方)を損傷された肺胞に送達することによって、マウスのリポ多糖類誘発急性肺障害に有益であることが、研究によって証明された[63]。小規模ではあるが、hsa-miR-146aとhsa-miR-126-3pの両方が、人工呼吸器を使用している重症のCOVID-19入院患者において、軽症の入院患者と比較してダウンレギュレーションされている可能性があるという我々の観察は、報告されている抗炎症性および血管健康促進特性と一致している。これらの観察では、Covid-19の入院患者から採取した血清エキソソームをより大規模に評価することで、ロバストな予後循環型miRNAを同定できることが示唆され、これにより、回復期血漿療法が最も有効な患者を同定することで、臨床転帰を戦略的に改善するのに役立つ可能性がある。
【0308】
循環エキソソームは、ウイルス感染時の免疫応答に関与しており[64~68]、研究では、エキソソームは、ウイルス複製を阻害するタンパク質(例えば、HIVに対して[69])、またはBリンパ球増殖を誘導し得るタンパク質(例えば、エプスタイン-バーウイルス(EBV)感染細胞から放出されるエキソソーム[34])を保有し得ることを実証している。しかしながら、これまでSARS-CoV2のウイルス中和における循環エキソソームの潜在的な役割は評価されていない。最初の実験では、高IgG力価血清から連続的超遠心分離して得られた高純度のエキソソームは、in vitroでSARS-CoV-2感染に対する中和活性を示したが、IgG力価が定量レベル未満の血清から精製されたエキソソームは中和活性を示さなかった。本発明者らは、Covid-19の回復性エキソソームの中和特性(第2の血清サンプルセット)をin vitroで複製するために、EV-CATCHERアッセイを使用することにした。高IgG力価の血清からEV-CATCHERアッセイで捕捉・放出されたエキソソームを使用して、in vitroでこの中和活性を確認し、これは、IgG力価が定量レベル未満の血清からのエキソソームでは観察できなかった。本発明者らは、高度に特異的な精製アッセイを用いて(全ての回復期の血清からの)最小IgGキャリーオーバーの可能性を完全に除外できないかもしれないが、超遠心分離によって高度に精製された回復期のエキソソーム(希釈倍率が約1~2×107と推定される)は、全血清で観察されたものと類似したウイルス中和特性が示された。興味深いことに、最近の研究では、エキソソームは、10~12nmと推定されるサイズが循環エキソソーム内の区画化と適合するため、免疫グロブリンを輸送し得ることが実証された[35.36]。このようなエキソソームの特性は、エキソソームの中和と高い中和IgG力価の存在との間の強い関連性を説明できるかもしれないが、さらなる評価が必要である。しかしながら、ウイルス中和のさらなるメカニズムも提案されており、これは、回復期のエキソソームがウイルスの標的となる細胞に結合し、ウイルスの侵入を防ぐという間接的なクローキング戦略[65]、あるいはエキソソーム自体がウイルス受容体(すなわち、ACE2、SARS-CoV-2受容体)を保有し、ウイルス粒子をクローキングするという直接的なクローキング戦略[70]を含み得る。Covid-19の回復期エキソソームの正確な中和メカニズムについてさらなる評価が必要であるが、高IgG力価血清から単離されたエキソソームが抗SARS-CoV-2中和活性を有するという観察結果は、回復期血漿療法への増強としての精製エキソソームの可能性に重要な影響を及ぼす。
【0309】
要約すると、本発明者らの研究では、高感度の小RNA cDNAライブラリーの調製、低小RNAの背景、再現可能でカスタマイズ可能なエキソソーム選択アッセイ、EV-CATCHERを組み合わせることで、疾患に関連する低発現エキソソーム特異的循環バイオマーカーの同定に役立ち得ることが示された。また、このアッセイは、in vitroおよび場合によってはin vivoの両方で、異なるエキソソームサブ集団の生物学的特性を評価するための有用なツールを提供し得ることを提案する。このアッセイの96プレックス形式を考慮すると、循環エキソソームの精製および評価を容易に自動化することができ、単一の生体流体サンプルからエキソームサブ集団を連続的に分析できる大きな見通しが得られることが提案される。
【0310】
本開示では、その具体的な実施態様を参照して本発明を説明したが、本発明の真の趣旨と範囲を逸脱することなく様々な変更がなされたり、均等物と置き換えたりすることができることは当業者によって理解されるであろう。さらに、特定の状況、物質、物質の組成、プロセス、プロセスステップ、またはステップを本発明の目的である、趣旨及び範囲に適合させるために多くの改変がなされ得る。そのような修正はいずれも、本明細書に添付の請求の範囲内であることが意図される。
参考文献
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【配列表】
【国際調査報告】