(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-18
(54)【発明の名称】シリカ含有タイヤトレッドにおける弾性率の回復
(51)【国際特許分類】
C08L 7/00 20060101AFI20240111BHJP
C08L 9/00 20060101ALI20240111BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20240111BHJP
C08K 5/54 20060101ALI20240111BHJP
C08K 3/06 20060101ALI20240111BHJP
C08K 5/00 20060101ALI20240111BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20240111BHJP
B60C 11/00 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
C08L7/00
C08L9/00
C08K3/36
C08K5/54
C08K3/06
C08K5/00
B60C1/00 A
B60C11/00 D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023539088
(86)(22)【出願日】2021-12-29
(85)【翻訳文提出日】2023-07-15
(86)【国際出願番号】 US2021073152
(87)【国際公開番号】W WO2022147447
(87)【国際公開日】2022-07-07
(32)【優先日】2020-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515168916
【氏名又は名称】ブリヂストン アメリカズ タイヤ オペレーションズ、 エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミラー,セス エム.
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA02
3D131BA02
3D131BA04
3D131BA05
3D131BA07
3D131BA08
3D131BA12
3D131BA20
3D131BB03
3D131BC02
3D131BC33
4J002AC011
4J002AC031
4J002AC061
4J002AC081
4J002DA047
4J002DJ016
4J002ER028
4J002EV278
4J002FD016
4J002FD147
4J002FD158
4J002GN01
(57)【要約】
【解決手段】 ゴム成分と、シリカ及び第2の充填剤を含む補強充填剤と、を含有する、大型車両タイヤトレッド。第1及び第2の加硫促進剤は、タイヤトレッドにおいて、硫黄及びシランカップリング剤とともに使用され、タイヤトレッドの300%弾性率は、8MPa以上である。タイヤトレッド組成物中のシランカップリング剤、硫黄、及び総補強充填剤含有量は、1:0.4:0.4~1:1.4:1.4の比の範囲で存在する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム組成物から形成された大型車両タイヤトレッドであって、前記ゴム組成物が、ゴム成分と、ゴム100重量部当たり、
a.シリカを含む補強充填剤であって、前記シリカが、30phr未満で存在する、補強充填剤と、
b.シランカップリング剤と、
c.0.5~2.5phrの硫黄と、
d.0.5phr以上の第1の加硫促進剤と、
e.任意選択的に、第2の加硫促進剤と、を含み、
前記ゴム組成物中の前記シランカップリング剤対前記硫黄対総促進剤含有量の比が、1:0.6:0.6~1:1.4:1.4の範囲内にあり、
前記タイヤトレッドの300%伸長時の弾性率が、8MPa以上である、大型車両タイヤトレッド。
【請求項2】
前記補強充填剤が、28phr以下のシリカを含む、請求項1に記載の大型車両タイヤトレッド。
【請求項3】
前記硫黄が、1~2phrで存在し、前記シランカップリング剤が、0.8~4.5phrで存在する、請求項1に記載の大型車両タイヤトレッド。
【請求項4】
前記第1の加硫促進剤が、スルフェンアミドであり、前記硫黄対前記スルホンアミドの比が、1:0.65~1:1.2である、請求項1に記載の大型車両タイヤトレッド。
【請求項5】
前記第2の加硫促進剤が、0.35phr以上の量で存在する、請求項1に記載の大型車両タイヤトレッド。
【請求項6】
前記第1の加硫促進剤及び前記第2の加硫促進剤が、1:1~4:1の比で存在する、請求項1に記載の大型車両タイヤトレッド。
【請求項7】
前記シランカップリング剤対前記硫黄の比が、0.75:1~3:1である、請求項1に記載の大型車両タイヤトレッド。
【請求項8】
前記補強充填剤が、カーボンブラックを更に含み、前記補強充填剤が、1:1~12.5:1の前記シリカ対前記カーボンブラックの比を含む、請求項1に記載の大型車両タイヤトレッド。
【請求項9】
前記補強充填剤が、1~35phrのカーボンブラックを含む、請求項8に記載の大型車両タイヤトレッド。
【請求項10】
前記第1の加硫促進剤及び前記第2の加硫促進剤の総含有量が、1.5~2.5phrの範囲内にある、請求項1に記載の大型車両タイヤトレッド。
【請求項11】
前記ゴム成分が、40~100質量部の天然ゴム又はポリイソプレンゴム及び5~50質量部のポリブタジエンゴム又はポリスチレン-ブタジエンゴムを含む、請求項1に記載の大型車両タイヤトレッド。
【請求項12】
ゴム組成物から形成された大型車両タイヤトレッドであって、前記ゴム組成物が、ゴム成分を含み、前記ゴム成分が、50~90phrの天然ゴム又はポリイソプレンゴムと、5~50phrのジエンエラストマーと、ゴム100重量部当たり、
a.30~50phrのシリカを含む補強充填剤と、
b.2~4phrのシランカップリング剤と、
c.1~2.5phrの硫黄と、
d.1phr以上の第1の加硫促進剤と、
e.第2の加硫促進剤と、を含み、
前記ゴム組成物中の前記シランカップリング剤対前記硫黄対総促進剤含有量の比が、1:0.4:0.4~1:0.8:0.8の範囲内にあり、
前記タイヤトレッドの300%伸長時の弾性率が、8MPa以上である、大型車両タイヤトレッド。
【請求項13】
前記第1の加硫促進剤及び前記第2の加硫促進剤が、1.2:1~2.5:1の比で存在する、請求項12に記載の大型車両タイヤトレッド。
【請求項14】
前記一次促進剤が、スルフェンアミドであり、前記スルフェンアミドが、1~1.5phrで存在し、前記硫黄対前記スルフェンアミドの比が、1:0.6~1:0.9である、請求項12に記載の大型車両タイヤトレッド。
【請求項15】
前記硫黄が、1.5~2phrで存在し、前記シランカップリング剤が、2.8~3.8phrで存在し、前記第1の加硫促進剤及び前記第2の加硫促進剤の総含有量が、1.5~2.5phrの範囲内にある、請求項12に記載の大型車両タイヤトレッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シリカ含有量を有する大型車両タイヤトレッドに関し、特に、シリカ充填剤を含まないタイヤトレッドに匹敵する選択的弾性率特性を有する大型車両タイヤトレッドに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤトレッドの性能及び摩耗特性の改善は、耐摩耗性の増加が性能、転がり抵抗、及び耐熱性を減少させる可能性があるため、多くの場合、それらの間で妥協するものとなる。組成物の原料は、タイヤの特性上の潜在的な影響に関して選択される。大型車両タイヤトレッドに関して、補強充填剤の選択は、カーボンブラックに焦点を当てており、あまり頻繁ではないが、シリカが、所望の性能特性のために利用されている。シリカは、タイヤトレッドの性能特性に影響を与え得るカーボンブラックの使用と比較して、ゴム硬化反応を遅らせることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
改善された組み合わせの摩耗性能及び転がり抵抗を有する大型車両タイヤトレッドを提供するゴム組成物が必要とされている。本発明は、非シリカトレッド組成物の同様の性能特性を有するシリカ含有大型車両タイヤトレッドを提供する材料の組み合わせを用いる。
【0004】
第1の態様では、ゴム組成物から形成された大型車両タイヤトレッドであって、ゴム組成物が、ゴム成分と、ゴム100重量部当たり、30phr未満のシリカを有する補強充填剤と、シランカップリング剤と、0.5~2.5phrの硫黄と、0.5phr以上の第1の加硫促進剤と、任意選択的に、第2の加硫促進剤と、を有し、シランカップリング剤対硫黄対総促進剤含有量の比が、1:0.6:0.6~1:1.4:1.4の範囲内にあり、タイヤトレッドはタイヤトレッドの300%伸長時の弾性率が8MPa以上を有する、大型車両タイヤトレッドが開示される。
【0005】
態様1の一例では、補強充填剤は、28phr以下のシリカ、例えば、1~28phrのシリカを含む。
【0006】
態様1の別の例では、シランカップリング剤対全硫黄(例えば、遊離硫黄)の比は、1:0.6よりも大きく、全硫黄対総促進剤含有量の比は、1:0.9~1:1.3、又は1:0.95~1:1.25、又は1:1よりも大きい。
【0007】
態様1の別の例では、硫黄は、1~2phrで存在し、シランカップリング剤は、0.5~4.5phr、0.6~4phr、0.7~3phr、又は0.8~2.5phrで存在する。
【0008】
態様1の別の例では、一次促進剤は、スルフェンアミドであり、硫黄対スルフェンアミドの比は、1:0.65~1:1.2である。
【0009】
態様1の別の例では、第2の加硫促進剤は、0.35phr以上の量で存在する。
【0010】
態様1の別の例では、第1の加硫促進剤及び第2の加硫促進剤は、1:1~4:1の比で存在する。
【0011】
態様1の別の例では、シランカップリング剤対硫黄の比は、0.75:1~3:1である。
【0012】
態様1の別の例では、補強充填剤は、カーボンブラックを更に含み、補強充填剤は、1:1~12.5:1のシリカ対カーボンブラックの比を有する。
【0013】
態様1の別の例では、補強充填剤は、1~35phrのカーボンブラックを含む。
【0014】
態様1の別の例では、第1の加硫促進剤及び第2の加硫促進剤の総含有量は、1.5~2.5phrの範囲内にある。
【0015】
態様1の別の例では、ゴム成分は、40~100質量部の天然ゴム又はポリイソプレンゴムを含む。
【0016】
態様1の別の例では、ゴム成分は、ジエンエラストマー、例えば、ポリブタジエンゴム又はポリスチレン-ブタジエンゴムを更に含有する。
【0017】
態様1の別の例では、タイヤトレッドは、トラックタイヤトレッド又はバスタイヤトレッドである。
【0018】
第2の態様では、ゴム組成物から形成された大型車両タイヤトレッドであって、ゴム組成物が、ゴム成分を含み、ゴム成分が、50~90phrの天然ゴム又はポリイソプレンゴムと、10~50phrのジエンエラストマーと、ゴム100重量部当たり、30~50phrのシリカ、2~4phrのシランカップリング剤、1~2.5phrの硫黄、1phr以上の第1の加硫促進剤及び第2の加硫促進剤を含む、補強充填剤と、を含有し、組成物中のシランカップリング剤対硫黄対総促進剤含有量の比が、1:0.4:0.4~1:0.8:0.8の範囲内にあり、タイヤトレッドの300%伸長時の弾性率が、8MPa以上である、大型車両タイヤトレッドが存在する。
【0019】
態様2の一例では、補強充填剤は、35phr以下のカーボンブラックを含有する。
【0020】
態様2の別の例では、第1の加硫促進剤及び第2の加硫促進剤は、1.2:1~2.5:1の比で存在する。
【0021】
態様2の別の例では、一次促進剤は、スルフェンアミドであり、硫黄対スルフェンアミドの比は、1:0.6~1:0.9である。
【0022】
態様2の別の例では、スルフェンアミドは、1~1.5phrで存在する。
【0023】
態様2の別の例では、硫黄は、1.5~2phrで存在し、シランカップリング剤は、2.8~3.8phrで存在する。
【0024】
態様2の別の例では、第1の加硫促進剤及び第2の加硫促進剤の総含有量は、1.5~2.5phrの範囲内にある。
【0025】
上記態様のうちのいずれか1つ(又はこれらの態様の例)は、単独で、又は上で考察される態様の例のうちの任意の1つ以上と組み合わせて提供され得、例えば、第1の態様は、単独で、又は上で考察される第1の態様の例のうちのいずれか1つ以上の例と組み合わせて提供され得、第2の態様は、単独で、又は上で考察される第2の態様の例のうちのいずれか1つ以上の例と組み合わせて提供され得る、などである。
【0026】
更なる特徴及び利点は、以下の「発明を実施するための形態」に記載され、ある程度において、当業者はこの説明から容易に明らかであるか、又は、以下の「発明を実施するための形態」、「特許請求の範囲」を含む、本明細書に説明される実施形態を実施することにより認識するであろう。前述の一般的な説明及び以下の「発明を実施するための形態」はいずれも、例示的であるにすぎず、「特許請求の範囲」の性質及び特徴を理解するための概要又はフレームワークを提供することを意図していることを理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本明細書に記載される用語は、実施形態を説明するためだけのものであり、全体として本発明を限定すると解釈すべきではない。
【0028】
本明細書では、5~25(又は5から25)などの範囲が与えられた場合、この範囲は、好ましくは、少なくとも5又は5より大きいことを意味し、これとは別個に、独立して、好ましくは、25以下であることを意味する。一例では、このような範囲は、独立して、少なくとも5、これとは別個にかつ独立して、25以下を規定する。
【0029】
本明細書で使用される「実質的な(substantial)」、「実質的に(substantially)」という用語、及びそれらの変形形態は、説明された特徴が値又は説明と等しいか等しいことに言及することが意図されている。例えば、「実質的に平面状の」表面は、平面状であるか、又はほぼ平面状である表面を意味することが意図されている。更に、「実質的に」及び「約」という用語は、本明細書では、任意の定量的な比較、値、測定、又は他の表現に起因し得る固有の不確実性の程度を表すために利用され得ることに留意されたい。これらの用語はまた、本明細書において、問題の対象物の基本的機能の変化をもたらすことなく、記述された基準から定量的表現が変化し得る程度を表すためにも利用される。
【0030】
本開示は、大型車両タイヤ用のタイヤトレッドに関する。タイヤトレッドは、路面に接触するトレッド部分であり得るか、又は、例えば、クラウン内のベルト領域に隣接して表面接触トレッドの直下に配置されたアンダートレッド部分であり得る。タイヤトレッドは、大型車両用タイヤにおける使用に好適である。大型車両としては、限定されるものではないが、トラック(例えば、トラクタ-トレーラセミトラック)、トラクタ、農業機器、トレーラ、バス、航空機、オフロード車両(例えば、アースムーバ、ダンプトラック)などが挙げられる。1つ以上の実施形態では、大型車両用のタイヤトレッドは、乗用車(例えば、普通乗用車、バン、オートバイ)及び従来の軽量車両を含まず、これらに好適でないか、又はこれらとともに使用することが意図されていない。
【0031】
大型車両タイヤトレッドは、ゴム組成物から作製される。タイヤトレッド組成物は、例えば、1つ、2つ以上のゴム化合物を含有するゴム成分を有する。合成ゴム及び天然ゴムの両方が、タイヤトレッドのゴム組成物内で用いられ得る。エラストマーとも称され得るこれらのゴムとしては、限定されるものではないが、天然又は合成ポリ(イソプレン)(天然ポリイソプレンが好ましい)、並びにポリブタジエン及び少なくとも1つのモノオレフィンモノマーとの共役ジエンモノマーのコポリマーを含むエラストマージエンポリマーが挙げられる。合成ポリイソプレンとしては、例えば、合成シス-1,4ポリイソプレンが挙げられる。例示的なポリブタジエンゴムは、エラストマー系であり、約1~3パーセントの1,2-ビニル含有量及び96~98パーセントのシス-1,4含有量を有する。別の例示的なポリブタジエンゴムは、低いシス-1,4含有量(例えば、95又は90パーセント未満)を有する。最大12パーセントの1,2-含有量を有する他のブタジエンゴムもまた、他の成分のレベルにおいて適切に調整することに好適であり得、そのため、実質的にいずれの高ビニル、エラストマーポリブタジエンも用いることができる。コポリマーは、共役ジエン、例えば、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン-(イソプレン)、2,3-ジメチル-1,2-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエンなど、及び前述のジエンの混合物などから誘導され得る。好ましい共役ジエンは、1,3-ブタジエンである。
【0032】
モノオレフィンモノマーに関して、それらは、ビニル芳香族モノマー、例えば、スチレン、アルファ-メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルピリジンなど、及び前述のものの混合物などを含む。コポリマーは、コポリマーの総重量に基づいて、最大50重量パーセントまでのモノオレフィンを含有し得る。好ましいコポリマーは、共役ジエン、特に、ブタジエン、及びビニル芳香族炭化水素、特に、スチレン(例えば、ポリスチレン-ブタジエンゴム)のコポリマーである。
【0033】
上で説明された共役ジエンのコポリマー及びそれらの調製方法は、ゴム及びポリマーの技術分野において周知である。ポリマー及びコポリマーの多くは、市販されている。本発明の実施は、上記に含まれるか又は除外される任意の特定のゴムに限定されないことが理解されるものとする。
【0034】
1つ以上の実施形態では、大型車両タイヤトレッドは、天然ゴム又はポリイソプレンゴムを含有するゴム成分を含むことができる。一例では、天然ゴム、合成ポリイソプレンゴム、又はこれらの組み合わせは、ゴム成分中に、ゴム成分の40~100、50~90、60~85、若しくは65~80質量部、又は全エラストマー100重量部当たりの重量部(phr)、及び任意選択的に、1つ以上の他のエラストマーの量で存在する。別の例では、大型車両タイヤトレッドのゴム成分は、ゴム成分の50~90phr又は質量部の量の天然ゴム、及び任意選択的に、1つ以上の非天然ゴムエラストマー(例えば、ジエンエラストマー)を含む。別の例では、大型車両タイヤトレッドのゴム成分は、天然ゴム、合成ポリイソプレンゴム、又はこれらの組み合わせの第1の成分と、ジエンエラストマーの第2の成分と、を含む。ジエンエラストマー又は複数のジエンエラストマーの組み合わせは、大型車両タイヤトレッドのゴム成分中に、ゴム成分の5~50、10~45、15~40、又は20~35phr又は質量部の量で存在することができる。
【0035】
大型車両タイヤトレッドは、1つ以上の補強充填剤又は補強充填剤の配合物を含む。1つ以上の実施形態では、大型車両タイヤトレッドは、30~80phr、35~65phr、又は40、45、50、55、若しくは60phrの量の総補強充填剤含有量を有する組成物から作製される。タイヤトレッド組成物中の補強充填剤含有量は、2つ以上の補強充填剤、例えば、少なくとも2つの充填剤、例えば、第1の補強充填剤及び第2の補強充填剤を含むことができ、補強充填剤のうちの1つは、シリカである。第1の補強充填剤及び第2の補強充填剤は、互いに異なり得る。第1の補強充填剤(例えば、シリカ)は、1~60phr、5~50phr、10~40phr、15~30phrの範囲内、又は20、若しくは25phrの量で存在し得る。第2の補強充填剤(例えば、カーボンブラック)は、1~50phr、5~40phr、10~30phrの範囲内、又は15、20、若しくは25phrの量で存在し得る。
【0036】
カーボンブラック及び/又はシリカの表面は、特定のタイプのポリマーとの親和性を改善するために、任意選択的に処理又は改質され得る。そのような表面処理及び改質は、当業者には周知である。
【0037】
また、鉱物充填剤、例えば、粘土、タルク、アルミニウム水和物、水酸化アルミニウム、及び雲母を含むが、これらに限定されない、追加の充填剤が利用され得る。前述の追加の充填剤は、任意選択であり、1phr~40phrの変動する量で利用することができる。
【0038】
1つ以上の実施形態では、補強充填剤は、1つ以上の好適なカーボンブラックを含むことができる。好適なカーボンブラックは、任意の従来のカーボンブラック、例えば、HAF、ISAF、及びSAFタイプのカーボンブラックである。カーボンブラックの更なる例としては、N115、N134、N234、N299、N330、N339、N343、N347、及びN375タイプのカーボンブラックが挙げられる。カーボンブラック充填剤は、例えば、70~150m2/gの範囲内の窒素比表面積N2SAを有する。別の例では、カーボンブラック補強充填剤は、例えば、60~140ml/100gのジブチルフタレート吸収量を有する。上記特性のうちの1つ以上、例えば、記された特性のうちの全て又はそれらの様々な組み合わせを有する補強充填剤が選択され得る。補強充填剤中に存在するとき、カーボンブラックは、1~50、5~45、10~40、又は15~35phrの量である。
【0039】
補強充填剤は、例えば、任意選択的に、カーボンブラックなどの非シリカ充填剤と組み合わせたシリカを含む。シリカは、任意の従来の好適なシリカであり得る。好適なシリカの例としては、沈降又は焼成シリカ、湿式シリカ(水和ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウムなどが挙げられる。これらの中でも、沈降非晶質湿式法水和シリカが好ましい。シリカは、例えば、500m2/g以下、又は50~400、若しくは100~200m2/gの範囲内のBET表面積及び比CTAB表面積を有し得る。使用され得る市販のシリカのうちのいくつかとしては、PPG Industries(Pittsburgh,Pa.)によって生産されている、HiSil190、HiSil210、HiSil215、HiSil233、HiSil243などが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの有用な商用グレードの異なるシリカも、DeGussa Corporation(例えば、VN2、VN3)、Rhone Poulenc(例えば、Zeosil 1165 MP0)、及びJ.M.Huber Corporationから入手可能である。一例では、シリカは、1~30phr、2~28phr、5~25phr、10~20phr、又は15phrの量で、任意選択的に、別の非シリカ補強充填剤と組み合わせて、補強充填剤中に存在する。別の例では、シリカは、30~50phr、30~45phr、又は35~40phrの量で、任意選択的に、別の非シリカ補強充填剤と組み合わせて、補強充填剤中に存在する。
【0040】
1つ以上の実施形態では、補強充填剤の配合物は、選択された重量パーセント又はphr比で大型車両タイヤトレッド組成物中に存在することができ、例えば、第1の補強充填剤(例えば、シリカ)は、9:1~0.25:1、4:1~0.5:1、3:1~1.5:1又は1:1の範囲内にある第2の補強充填剤(例えば、カーボンブラック)に対するphr比で存在することができる。
【0041】
大型車両タイヤトレッドは、シリカ又はいくつかの他のタイプの無機粒子が補強充填剤として使用されるとき、カップリング剤、例えば、シランを含むことができる。かかる実施形態では、シランカップリング剤は、充填剤(例えば、シリカ)のエラストマーへの結合を補助するのに役立ち得る。好適なシランカップリング剤の例としては、限定されるものではないが、官能性ポリスルフィドシラン、オルガノスルフィドポリスルフィド、及びオルガノアルコキシメルカプトシラン、ビス(トリアルコキシシリルオルガノ)ポリスルフィドシラン、及びチオカルボキシレート官能性シランが挙げられる。ゴム組成物中のカップリング剤の量は、組成物中のシリカの重量に基づくことができ、シリカの約0.1重量%~約20重量%、シリカの約1重量%~約15重量%、又は代替的に、シリカの約1重量%~約10重量%であり得る。別の例では、カップリング剤は、ゴム組成物中に、0.1~5phr、0.3~4.5phr、0.5~4phr、0.5~3.6phr、0.8~3phr、又は1、1.5、2、2.2、若しくは2.5phrの範囲内で存在することができる。
【0042】
促進剤は、加硫に必要な時間及び/又は温度を制御し、加硫物の特性を改善させるために使用される。ゴム組成物がシリカを含有するとき、シリカの表面化学構造は、硬化反応と相互作用することができる。非大型車両ゴム組成物における促進剤の使用は、充填剤としてカーボンブラックのみを有するゴム組成物に匹敵する硬化速度を提供するために、シリカが生じ得る相互作用を減少させるように使用することができる。大型車両トレッド組成物に関して、促進剤の使用は、あまり有効でないことが見出されており、静的弾性率は、全てカーボンブラック充填剤を含有する同じゴム組成物と比較して最大50パーセント低くあり得る。促進剤と組み合わせるシランカップリング剤充填の約20パーセントの比で硫黄(例えば、遊離硫黄)を添加すると、シリカ補強充填剤の代わりにカーボンブラックを含有する同じ組成物と比較して、シリカ含有大型車両トレッド組成物の静的弾性率を実質的に維持することができることが見出された。
【0043】
ゴム組成物は、硫黄加硫剤、例えば、元素硫黄又は遊離硫黄の存在を含むことができる。硫黄剤は、0.5~4phr、0.8~3phr、1~2.5phr、1.2~2.2phrの範囲、又は1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、若しくは2.1phrの量で使用される。1つ以上の実施形態では、ゴム組成物中に存在する硫黄加硫剤の量は、シランカップリング剤の含有量に関する。例えば、シランカップリング剤対硫黄加硫剤の比は、0.75:1~3:1、0.8:1~2.75:1、0.85:1~2.5:1、0.9:1~2:1、1:1.4~1:0.6、又は2.1:1.65、2.1:1.35、2:1.5、1:1.3、3:1.7、若しくは3.5:2の範囲内にある。
【0044】
上記で挙げたように、硫黄加硫剤は、1つ以上の促進剤又は加硫促進剤と組み合わせて使用される。一実施形態では、単一の加硫促進剤系を使用することができ、かかる場合、第1の加硫促進剤又は一次加硫促進剤を含む。一次加硫促進剤は、例えば、0.3~2.5phr、0.5~2phr、0.8~1.8phrの範囲、又は0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、若しくは1.7phrの総量で使用される。1つ以上の実施形態では、ゴム組成物中に存在する一次加硫促進剤は、硫黄加硫剤の含有量に関する。例えば、一次加硫促進剤対硫黄加硫剤の比は、1:0.6~1:1.2、1:0.7~1:1.1、又は1:0.8~1:1の範囲内にある。一次加硫促進剤は、任意の好適なタイプの加硫促進剤、例えば、アミン、ジスルフィド、グアニジン(DPG)、チオ尿素、チウラム、スルフェンアミド、ジチオカルバメート、キサンテート、及びスルフェンアミドであり得る。一次促進剤はまた、ベンゾチアゾール系促進剤などのチアゾールであり得る。例示的なベンゾチアゾール系加硫促進剤としては、N-シクロへキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(N-cyclohexyl-2-benzothiazole sulfenamide、CBS)、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(N-tert-butyl-2-benzothiazole sulfenamide、TBBS)、4-オキシジエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(4-oxydiethylene-2-benzothiazole sulfenamide、OBTS)、N,N’-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルホンアミド(N,N’-dicyclohexyll-2-benzothiazole sulfonamide、OCBS)、2-メルカプトベンゾチアゾール(2-mercaptobenzothiazole、MBT)、及びジベンゾチアゾールジスルフィド(MBTS)が挙げられ得る。
【0045】
別の実施形態では、一次加硫促進剤と第2又は二次加硫促進剤との組み合わせは、二次加硫促進剤が、一次加硫促進剤と比較して等しいか又はより少ない量で使用される状態で使用され得る。二次加硫促進剤は、例えば、0.1~1.5phr、0.2~1.2phr、0.3~1.1phrの範囲、又は0.4、0.5、0.6、0.7、0.9、若しくは1phrの総量で使用される。1つ以上の実施形態では、ゴム組成物中に存在する二次加硫促進剤は、一次加硫促進剤の含有量に関する。例えば、一次加硫促進剤対二次加硫促進剤の比は、1:1~4:1、1.5:1~3.5:1、又は2:1~3:1の範囲内にある。二次加硫促進剤は、任意の好適なタイプの促進剤、例えば、一次加硫促進剤について上記で記したものであり得る。1つ以上の実施形態では、二次加硫促進剤は、グアニジン化合物、例えば、ジフェニルグアニジン(DPG)など、チウラム加硫促進剤、カルバミン酸加硫促進剤などであり得る。
【0046】
ゴム組成物中の任意の遊離硫黄を除く加硫促進剤(例えば、一次及び二次加硫促進剤)の総量は、0.8~5phr、1~4phr、1.2~3phrの範囲、又は1.4、1.5、1.6、1.8、2、2.2、2.4、2.5、2.6、若しくは2.8phrの範囲の量であり得る。加硫促進剤の総量は、ゴム組成物中のシランカップリング剤及び硫黄(存在する遊離硫黄)の量に対して表すことができる。例えば、シランカップリング剤対硫黄対総加硫促進剤含有量の比は、1:0.4:0.4~1:1.4:1.4、1:0.6:0.6~1:1.2:1.2、又は1:0.8:0.8~1:1:1の範囲内にある。
【0047】
本明細書に開示される特定の実施形態のゴム組成物中で用いられ得る他の原料は、当業者に周知であり、油(加工用及び伸展用)、ワックス、加工助剤、粘着付与樹脂、補強樹脂、しゃく解剤、並びに1つ以上の追加のゴムが挙げられる。
【0048】
芳香族、ナフテン系、及び低PCA油を含むが、これらに限定されない、様々な種類の加工油及び伸展油が利用され得る。1つ以上の実施形態では、本明細書に開示されるゴム組成物及び方法において使用される油(加工油及び伸展油)の総量は、1~70phr、2~60phr、又は3~50phrの範囲である。
【0049】
各種抗酸化剤は当業者には周知であり、特定の実施形態のゴム組成物に利用され得、この例としては、フェノール系抗酸化剤、アミンフェノール系抗酸化剤、ヒドロキノン抗酸化剤、アルキルジアミン抗酸化剤、及びN-フェニル-N’-イソプロピルーp-フェニレンジアミン(N-phenyl-N’-isopropyl-p-phenylenediamine、IPPD)又はN-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-フェニレンジアミン(6PPD)などのアミン化合物抗酸化剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。特定の実施形態では、1つ又は2つ以上のタイプが利用され得、使用される酸化防止剤の総量は、0.1~6phrである。
【0050】
更に本明細書に開示されるのは、ゴム組成物の調製方法である。ゴム組成物は、概して、(上記で開示されるように)ゴム組成物の原料を、当該技術分野において既知の方法、例えば、これらの原料をバンバリーミキサー又はロール機で混練するなど、ともに混合することによって形成できる。これらの方法は、一般に、少なくとも1回の非生産用マスターバッチ混合段階と、最終生産用混合段階と、を含む。非生産用マスターバッチ段階という用語は、当業者に既知であり、一般に、加硫剤又は加硫促進剤を添加しない混合段階であると理解されている。本明細書に開示される組成物及び方法の特定の実施形態では、2回以上の非生産用マスターバッチ混合段階が使用され得る。用語、最終生産用混合段階という用語も当業者に既知であり、一般に、ゴム組成物中に加硫剤及び加硫促進剤を添加する混合段階であると理解されている。
【0051】
本明細書に開示される実施形態によるゴム組成物を調製するための方法の特定の実施形態では、非生産用マスターバッチ混合段階は、約130℃~約200℃の温度で行われ得る。特定の実施形態では、最終生産用混合段階を、ゴム組成物の望まれない前硬化を避けるため、加硫温度を下回る温度で実施してよい。したがって、生産用混合段階の温度は、約120℃を超えてはならず、典型的には、約40℃~約120℃、又は約60℃~約110℃、及び、特に、約75℃~約100℃である。
【0052】
本明細書に開示される特定の実施形態については、原料のリストは、ゴム組成物を形成するように混合される原料を含むと理解されるべきである。本明細書に開示される他の実施形態について(すなわち、硬化が施されたゴム組成物)、原料のリストには、硬化されたゴム組成物中に存在する原料が含まれると理解されるべきである。
【0053】
以前に考察したように、本明細書に開示される特定の実施形態は、本明細書に別途開示されるような第2の実施形態のゴム組成物を含む、すなわち、少なくとも1つのゴム、シリカ(例えば、30phrを上回る)、シランカップリング剤、0.5~2.5phrの硫黄、及び1つ以上の加硫促進剤を含む、タイヤ及びタイヤトレッドを含み、シランカップリング剤対硫黄対総促進剤含有量の比は、1:0.6:0.6~1:1.4:1.4の範囲内にある。より具体的には、本開示は、本明細書に別途開示されるような実施形態のゴム組成物を含むタイヤと、本明細書に別途開示されるような実施形態のゴム組成物を含むタイヤトレッドを備えるタイヤと、本明細書に別途開示されるような実施形態のゴム組成物を含むタイヤトレッドと、を含む。概して、本明細書に開示される実施形態のゴム組成物が、タイヤ、タイヤトレッド、又は他の構成要素において利用されるとき、これらの組成物は、標準的なゴムシェイピング、成形、及び硬化技術を含む、一般的なタイヤ製造技術によって、タイヤ構成要素へと加工される。トレッドを含むが、これらに限定されない、様々なゴムタイヤ構成要素のうち任意のものが作製され得る。典型的に、タイヤ構成要素の加硫は、加硫性組成物を成形型内で加熱することによって達成され、例えば、これは、約140℃~約180℃に加熱され得る。硬化又は架橋されたゴム組成物は、加硫物と称され得、加硫物は、概して、熱硬化性の三次元ポリマー網状組織を含有する。加工助剤及び充填材などの他の成分は、加硫化した網状組織全体に均一に分散され得る。特定の実施形態では、本明細書に開示されるゴム組成物を含有する空気入りタイヤは、参照することにより本明細書に組み込まれる、米国特許第5,866,171号、同第5,876,527号、同第5,931,211号、及び同第5,971,046号に考察されるように製造することができる。
【0054】
本発明の実施を実証するために、以下の実施例を調製し、試験した。しかしながら、これらの実施例は、本発明の範囲を制限するものとしてみなされるべきではない。本開示の実施形態の趣旨及び範囲を逸脱することなく、これらの具体的な実施例に対する多くの変更が可能である。より具体的には、以下の実施例において利用された特定のゴム、充填剤、及び他の原料(例えば、硬化剤パッケージ原料及び促進剤)は、発明を実施するための形態における開示に一致する他のかかる原料を代わりに利用することができるため、限定するものと解釈されるべきではない。換言すれば、以下の実施例における特定のゴム、充填剤、及び他の原料、並びにそれらの量及びそれらの相対量は、発明を実施するための形態の含有量より一般的な含有量が適用されると理解されるべきである。
【0055】
実施例1
以下の表1は、シリカ、シランカップリング剤、硫黄、及び加硫促進剤の様々な充填で組成物特性を判定するために作製された試料トレッドゴム組成物の成分を列挙する。組成物Aは、組成物B~Fと比較して、カーボンブラック充填剤のみを含有し、シリカを含有しない参照組成物である。組成物B~Fは、一定量のカーボンブラック及びシリカの両方を含有する。全ての充填量は、ゴム100部当たりの部(phr)として列挙される。全ての調合された最終試料ストックをシート状にし、続いて、145℃で33分間硬化させた。
【0056】
【0057】
以下の表2は、表1の試料トレッドゴム組成物(組成物A~F)の硬化後の特性(例えば、引張)を列挙する。Ebという略語は、破断点における伸長に対して使用され、Tbは、破断点における応力に対して使用され、これらの測定値は、タイヤトレッドに組み込まれたときに特に問題とされる、ゴム組成物の引き裂き耐性の指標を提供する。M50及びM300という略語は、50%及び300%伸長時の引張応力又は引張弾性率に対して使用される。E’という略語は、ゴム組成物の硬度の尺度を提供する動的貯蔵弾性率に対して使用される。
【0058】
【0059】
組成物C、E、及びFは、シリカを含まない参照組成物Aに匹敵するM50及びM300弾性率を呈し、それゆえ、追加の促進剤を有する遊離硫黄の添加が、シリカ含有組成物(例えば、20~30phr)の弾性率をカーボンブラック組成物の弾性率近くに戻すことができることを示す。より具体的には、組成物C、E、及びFは、約1:0.8:0.8、約1:0.8:1及び約1:0.65:0.9のシランカップリング剤:遊離硫黄:総促進剤比を有した。組成物C、E、及びFは各々、組成物A以上のM50弾性率、並びにそれぞれ8MPaよりも大きく、組成物Aについて測定されたものの約24、約6、及び約25パーセント以内のM300弾性率を有した。
【0060】
以下の表3は、シリカ、シランカップリング剤、硫黄、及び加硫促進剤の様々な充填における組成物特性を判定するために作製された試料トレッドゴム組成物の成分を列挙する。組成物H~Mと比較して、組成物Gは、カーボンブラック充填剤のみを含有し、シリカを含有しない参照組成物である。組成物H~Mは、カーボンブラック及びシリカの両方を様々な比率、例えば、3:1~1:9で含有する。全ての充填量は、ゴム100部当たりの部(phr)として列挙される。全ての調合された最終試料ストックをシート状にし、続いて、145℃で33分間硬化させた。
【0061】
【0062】
以下の表4は、表3の試料トレッドゴム組成物(組成物G~M)の硬化後の特性(例えば、引張強度)を列挙する。
【0063】
【0064】
組成物H、J、L、及びMは、シリカを含まない参照組成物Gに匹敵するM50及びM300弾性率を呈し、それゆえ、追加の促進剤を有する遊離硫黄の添加が、シリカ含有組成物の弾性率をカーボンブラック組成物の弾性率近くに戻すことができることを示す。より具体的には、組成物H、J、L、及びMは、10~50phrのシリカ含有量を含有する組成物について、約1:1.3:1.3、約1:0.75:0.75、約1:0.6:0.6、及び約1:0.5:0.5のシランカップリング剤:遊離硫黄:総促進剤比を有した。組成物H、J、L、及びMは、組成物Gとほぼ等しいか又はそれより大きいM50弾性率、及び8.5MPaより大きく、組成物Gについて測定されたものの10~20パーセント以内のM300弾性率を有した。具体的には、組成物Hは、組成物Gと比較して、それぞれ、1%未満及び約3%未満のM300及びM50弾性率を呈した。組成物Jは、組成物Gと比較して、それぞれ、約10%及び約4%以内のM300及びM50弾性率を呈した。組成物Lは、組成物Gと比較して、それぞれ、約10%以内及び約2%超のM300及びM50弾性率を呈した。最後に、組成物Mは、組成物Gと比較して、それぞれ、約18%以内及び等しいM300及びM50弾性率を呈した。
【0065】
対照的に、組成物I及びKは、組成物Gと比較して8MPa未満及び25%以上低いM300を呈した。組成物I及びKは、同様に、組成物Gと比較してより低いM50弾性率を呈し、組成物Gに関して10%以上低かった。組成物I及びKは、約1:0.55:0.8、及び約1:0.35:0.65のシランカップリング剤:遊離硫黄:総促進剤比を有し、シランカップリング剤対硫黄比が、1:0.6を下回って低下するとき、総促進剤含有量が遊離硫黄よりも多い場合であっても、充填剤としてシリカをカーボンブラックと置き換えた同じ組成物と比較して、シリカ含有組成物において弾性率が望ましくなく低減されることを示す。
【0066】
組成物及び方法の様々な態様並びに実施形態を本明細書に開示してきたが、他の態様及び実施形態が、当業者には明らかであろう。本明細書で開示されている様々な態様及び実施形態は、例解目的であり、特許請求の範囲により示されている真の範囲及び趣旨を限定することを意図していない。
【手続補正書】
【提出日】2023-07-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム組成物から形成された大型車両タイヤトレッドであって、前記ゴム組成物が、ゴム成分と、ゴム100重量部当たり、
a.シリカを含む補強充填剤であって、前記シリカが、30phr未満で存在する、補強充填剤と、
b.シランカップリング剤と、
c.0.5~2.5phrの硫黄と、
d.0.5phr以上の第1の加硫促進剤と、
e.任意選択的に、第2の加硫促進剤と、を含み、
前記ゴム組成物中の前記シランカップリング剤対前記硫黄対総促進剤含有量の比が、1:0.6:0.6~1:1.4:1.4の範囲内にあり、
前記タイヤトレッドの300%伸長時の弾性率が、8MPa以上である、大型車両タイヤトレッド。
【請求項2】
前記硫黄が、1~2phrで存在し、前記シランカップリング剤が、0.8~4.5phrで存在し、前記補強充填剤が、28phr以下のシリカを含む、請求項1に記載の大型車両タイヤトレッド。
【請求項3】
前記第1の加硫促進剤が、スルフェンアミドであり、前記硫黄対前記スルフェンアミドの比が、1:0.65~1:1.2である、請求項1に記載の大型車両タイヤトレッド。
【請求項4】
前記第1の加硫促進剤及び前記第2の加硫促進剤が、1:1~4:1の比で存在し、前記シランカップリング剤対前記硫黄の比が、0.75:1~3:1である、請求項1に記載の大型車両タイヤトレッド。
【請求項5】
前記ゴム成分が、40~100質量部の天然ゴム又はポリイソプレンゴム及び5~50質量部のポリブタジエンゴム又はポリスチレン-ブタジエンゴムを含む、請求項1に記載の大型車両タイヤトレッド。
【国際調査報告】