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特表2024-502309中枢神経系障害を治療するための経口用固形カンナビノイド油組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-18
(54)【発明の名称】中枢神経系障害を治療するための経口用固形カンナビノイド油組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/05 20060101AFI20240111BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20240111BHJP
   A61P 25/08 20060101ALI20240111BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240111BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20240111BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20240111BHJP
   A61K 9/58 20060101ALI20240111BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20240111BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20240111BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20240111BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20240111BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20240111BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240111BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
A61K31/05
A61P1/04
A61P25/08
A61P29/00
A61P25/22
A61P25/18
A61K9/58
A61K9/16
A61K47/38
A61P25/04
A61P25/16
A61P25/28
A61P25/00
A61P25/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023539145
(86)(22)【出願日】2021-12-23
(85)【翻訳文提出日】2023-06-26
(86)【国際出願番号】 EP2021087505
(87)【国際公開番号】W WO2022148672
(87)【国際公開日】2022-07-14
(31)【優先権主張番号】63/135,198
(32)【優先日】2021-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590002013
【氏名又は名称】ソシエテ・デ・プロデュイ・ネスレ・エス・アー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【弁理士】
【氏名又は名称】戸津 洋介
(72)【発明者】
【氏名】シャー, サイド, エム
【テーマコード(参考)】
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA31
4C076AA36
4C076AA53
4C076AA94
4C076BB01
4C076CC01
4C076CC04
4C076CC16
4C076DD47
4C076EE06J
4C076EE06K
4C076EE09J
4C076EE09K
4C076EE10J
4C076EE10K
4C076EE11J
4C076EE11K
4C076EE12J
4C076EE12K
4C076EE31A
4C076EE32A
4C076EE32K
4C076EE42K
4C076EE48J
4C076EE48K
4C076EE52
4C076FF03
4C076FF05
4C076FF25
4C076FF27
4C076FF31
4C076FF63
4C076GG17
4C206AA01
4C206AA02
4C206CA19
4C206KA01
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA28
4C206MA55
4C206MA57
4C206MA61
4C206MA72
4C206NA03
4C206NA06
4C206NA12
4C206ZA02
4C206ZA06
4C206ZA08
4C206ZA12
4C206ZA16
4C206ZA18
4C206ZA68
4C206ZB11
(57)【要約】
カンナビノイド油組成物は、中枢神経系障害を治療するために使用され得る。組成物の例は、微結晶セルロースに結合した有効量のカンナビノイド油を有する固形コアと、固形コア上の腸溶性コーティングとを含む、複数の個々の粒子を含む、経口用マルチパーティキュレート製剤である。経口用マルチパーティキュレート製剤を含む組成物であって、前記経口用マルチパーティキュレート製剤が、複数の個々の粒子を含み、前記個々の粒子が、(a)微結晶性セルロースに結合した有効量のカンナビノイド油を含む固形コアと、(b)前記固形コア上の腸溶性コーティングと、を含む、組成物。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
経口用マルチパーティキュレート製剤を含む組成物であって、
前記経口用マルチパーティキュレート製剤が、複数の個々の粒子を含み、前記個々の粒子が、
(a)微結晶性セルロースに結合した有効量のカンナビノイド油を含む固形コアと、
(b)前記固形コア上の腸溶性コーティングと、を含む、組成物。
【請求項2】
前記個々の粒子が、球状で0.5mm~1.7mmの平均直径を有しており、対象の十二指腸で前記個々の粒子に前記カンナビノイド油の大部分を放出させる腸溶性コーティング材料と崩壊剤との組み合わせを更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記個々の粒子が、球状で1.8~3mmの平均直径を有しており、前記製剤が、前記カンナビノイド油を対象の腸全体にわたって少なくとも6時間放出するように構成されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記カンナビノイド油が、微結晶セルロースの繊維ネットワーク内に保持されることによって微結晶セルロースに結合している、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
微結晶セルロースに結合した前記カンナビノイド油が、実質的に乾燥している、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記カンナビノイド油とMCCとの比が、0.5:1~1.5:1である、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記個々の粒子が、10%w/w~50%w/wのカンナビノイド油、40%w/w~75%w/wの微結晶セルロース、2%w/w~10%w/wのメチルセルロース、及び2%w/w~35%w/wの腸溶性コーティングを更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記カンナビノイド油が、CBD油を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
請求項1~8に記載の特徴の任意の組み合わせを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
微結晶セルロースとカンナビノイド油とを一緒に湿式造粒することで、前記カンナビノイド油が前記微結晶セルロースに結合した固形マトリックスを形成することと、
前記固形マトリックスを少なくとも1種の医薬品添加物と組み合わせて経口用医薬製剤を形成することと、
を含む、方法。
【請求項11】
湿式造粒が、高剪断ミキサ内で、室温より高い温度で10分間~20分間行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記経口用医薬製剤が、0.5mm~3mmの平均直径を有する複数の個々の球状粒子を含む、マルチパーティキュレート製剤である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記カンナビノイド油が、微結晶セルロースの繊維ネットワーク内に保持されることによって微結晶セルロースに結合する、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
微結晶セルロースに結合した前記カンナビノイド油が、実質的に乾燥している、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記カンナビノイド油とMCCとの比が、0.5:1~1.5:1である、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記経口用医薬製剤が、10%w/w~50%w/wのカンナビノイド油、40%w/w~75%w/wの微結晶セルロース、2%w/w~10%w/wのメチルセルロース、及び2%w/w~35%w/wの腸溶性コーティングを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記カンナビノイド油が、CBD油を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
請求項11~17に記載の特徴の任意の組み合わせを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項19】
有効量の請求項1に記載の組成物を、中枢神経系障害を有する対象に投与することによって、中枢神経系障害を治療することを含む、方法。
【請求項20】
前記個々の粒子が、球状で0.5mm~1.7mmの平均直径を有しており、対象の十二指腸で前記個々の粒子に前記カンナビノイド油の大部分を放出させる腸溶性コーティング材料と崩壊剤との組み合わせを更に含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記個々の粒子が、球状で1.8~3mmの平均直径を有しており、前記製剤が、前記カンナビノイド油を腸全体にわたって少なくとも6時間放出するように構成されている、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記カンナビノイド油が、微結晶セルロースの繊維ネットワーク内に保持されることによって微結晶セルロースに結合している、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
微結晶セルロースに結合した前記カンナビノイド油が、実質的に乾燥している、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記カンナビノイド油とMCCとの比が、0.5:1~1.5:1である、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記個々の粒子が、10%w/w~50%w/wのカンナビノイド油、40%w/w~75%w/wの微結晶セルロース、2%w/w~10%w/wのメチルセルロース、及び2%w/w~35%w/wの腸溶性コーティングを更に含む、請求項19に記載の方法。
【請求項26】
前記カンナビノイド油が、CBD油を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項27】
請求項20~26に記載の特徴の任意の組み合わせを含む、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、カンナビノイド油製剤の分野に関し、より具体的には、中枢神経系障害を治療するためのカンナビノイド油製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
カンナビノイドは、体内のカンナビノイド受容体に作用する化合物の一種である。カンナビノイド受容体は、身体のエンドカンナビノイド系の一部であり、このエンドカンナビノイド系は、カンナビノイド受容体と、エンドカンナビノイドと呼ばれる内因性カンナビノイドと、エンドカンナビノイドを合成するために使用される化学物質と、で構成される。エンドカンナビノイドは、神経伝達物質である。
【0003】
カンナビノイドは、治療効果が数十年にわたって研究されており、いくつかは薬物として承認されている。EPIDIOLEX(登録商標)は、特定の形態のてんかんを治療するためのカンナビジオール「CBD」を含有する経口溶液である。SATIVEX(登録商標)は、多発性硬化症患者の疼痛を治療するためのCBD及びテトラヒドロカンナビノール「THC」を含有するエアロゾルスプレーである。MARINOL(登録商標)は、ドロナビノールと呼ばれる合成THCを含有し、化学療法に伴う嘔吐及び体重減少に関連するAIDS関連食欲不振を治療するために使用される。
【0004】
カンナビノイド受容体のCB1及びCB2は胃腸管に位置することから、カンナビノイドは胃腸障害の症状を治療するために使用することができると報告されている。例えば、Gyderes及びZadoriによる「Role of Cannabinoids in Gastrointestinal Mucosal Defense and Inflammation」、Current Neuropharmacology,Vol.14,pgs.935-951(2016)では、数多くの研究が、クローン病及び潰瘍性大腸炎をはじめとする炎症性腸疾患に対する、カンナビノイドの治療効果を報告している。
【0005】
CBDが不安、統合失調症、物質使用障害、及びてんかんの症状に対する有効な治療であり得ることも、ヒト治験を通して報告されている。Larsen及びShahinas、「Dosage,Efficacy and Safety of Cannabidiol Administration in Adults:A Systemic Review of Human Trials」、J Clin Med Res,Vol.12,Iss.3,pgs.129-141(2020)を参照されたい。
【0006】
しかし、カンナビノイドの場合、治療効果を有するには、カンナビノイドが全身に吸収され、その後血液脳関門を通過する必要があることから、最も便利な経路である経口投与による中枢神経系障害の治療には特殊な課題がある。
【0007】
[発明の概要]
CBDが血液脳関門を通過して脳内のCB1受容体に到達するように、CBDの全身取り込みのためにカンナビノイドを投与することには、3つの主要な問題がある。Zouら、「Cannabinoid Receptors and the Endocannabinoid System:Signaling and Function in the Central Nervous System」、Int.J.Mol.Sci.,Vol.19,833(2018)を参照されたい。第1の問題は、従来のカンナビノイド製剤は胃のCB2受容体を標的とする場合があり、これが胃腸刺激を引き起こすことが可能性があることである。
【0008】
第2の問題は、CBDなどのカンナビノイドは半減期が短いことである。Millerら、「A Systematic Review on the Pharmacokinetics of Cannabidiol in Humans」、Pharmacokinetics of Cannabidiol in Humans,Vol.9,Article 1365(2018)によると、CBDの平均半減期は以下の通りである:エアロゾル投与は1.1時間~2.4時間、単回経口投与は1.09時間~1.97時間、経口脂質カプセル投与は2.95時間及び3.21時間、口腔粘膜スプレーは1.44時間及び10.86時間である。これらのデータは、概して、経口投与の有効性の持続時間を制限し得る短い半減期を示している。
【0009】
第3の問題は、CBDなどのカンナビノイドが胃の低pHで急速に分解することである。通常の胃通過時間は1~2時間である。科学報告書は、CBDの胃環境への生じ得る曝露中の高レベルのCBD分解を示している。Merrickら、「Identification of Psychoactive Degradants of Cannabidiol in Simulated Gastric and Physiological Fluid」、Cannabis and Cannabinoid Research,Vol.1.1,pgs.102-112(2016)を参照されたい。
【0010】
上記の問題の1つ以上は、微結晶セルロースとカンナビノイド油との固形マトリックスを含む経口用医薬製剤を使用して解決される。
【0011】
このような組成物の例としては、複数の個々の粒子を含む経口用マルチパーティキュレート製剤が挙げられる。個々の粒子は、微結晶セルロースに結合した有効量のカンナビノイド油を含む固形コアと、固形コア上の腸溶性コーティングとを有する。組成物は、以下の追加の特徴のうちの1つ以上を更に含んでもよい。
【0012】
個々の粒子は、球状で0.5mm~1.7mmの平均直径を有し得、より速い作用開始のため、並びにより高い濃度のため、更に小腸での吸収のために、胃及び幽門弁を素早く通過した後、対象の十二指腸で個々の粒子にカンナビノイド油の大部分を放出させる、腸溶性コーティング材料と崩壊剤との組み合わせを更に含み得る。
【0013】
個々の粒子は、球状で0.5~1.7mmの平均直径を有し得、空腸でカンナビノイド油の大部分を放出するように構成され得る。
【0014】
個々の粒子は、球状で0.5~1.7mmの平均直径を有し得、回腸でカンナビノイド油の大部分を放出するように構成され得る。
【0015】
個々の粒子は、球状で1.8~3mmの平均直径を有し得、製剤は、カンナビノイド油を腸全体にわたって少なくとも6時間放出するように構成され得る。
【0016】
カンナビノイド油は、微結晶セルロースの繊維ネットワーク内に保持されることによって微結晶セルロースに結合し得る。
【0017】
微結晶セルロースに結合したカンナビノイド油は、実質的に乾燥していてもよい。
【0018】
カンナビノイド油とMCCとの比は、0.5:1~1.5:1であり得る。
【0019】
個々の粒子は、10%w/w~50%w/wのカンナビノイド油、40%w/w~75%w/wの微結晶セルロース、2%w/w~10%w/wのメチルセルロース、及び2%w/w~35%w/wの腸溶性コーティングを更に含み得る。
【0020】
カンナビノイド油は、CBD油を含み得る。
【0021】
組成物は、これらの特徴の任意の組み合わせを含み得る。
【0022】
加工方法の例としては、微結晶セルロースとカンナビノイド油とを一緒に湿式造粒することで、カンナビノイド油がMCCに結合している固形マトリックスを形成すること、及び固形マトリックスを少なくとも1種の医薬品添加物と組み合わせて、経口用医薬製剤を形成することが挙げられる。方法は、以下の追加の特徴のうちの1つ以上を更に含んでもよい。
【0023】
湿式造粒は、高剪断ミキサで、室温より高い温度で10分間~20分間行うことができる。
【0024】
経口用医薬製剤は、0.5mm~3mmの平均直径を有する複数の個々の球状粒子を含む、マルチパーティキュレート製剤であり得る。
【0025】
カンナビノイド油は、微結晶セルロースの繊維ネットワーク内に保持されることによって微結晶セルロースに結合し得る。
【0026】
微結晶セルロースに結合したカンナビノイド油は、実質的に乾燥していてもよい。
【0027】
カンナビノイド油とMCCとの比は、0.5:1~1.5:1であり得る。
【0028】
経口用医薬製剤は、10%w/w~50%w/wのカンナビノイド油、40%w/w~75%w/wの微結晶セルロース、2%w/w~10%w/wのメチルセルロース、及び2%w/w~35%w/wの腸溶性コーティングを含み得る。
【0029】
カンナビノイド油は、CBD油を含み得る。
【0030】
この方法は、これらの特徴の任意の組み合わせを更に含み得る。
【0031】
治療方法の例としては、有効量の上記の組成物を、CNS障害を有する対象に投与することによって、CNS障害を治療することが挙げられる。方法は、以下の追加の特徴のうちの1つ以上を更に含んでもよい。
【0032】
個々の粒子は、球状で0.5mm~1.7mmの平均直径を有し得、より速い脳への送達をより高い脳内最大濃度で必要とするCNS障害の治療のために、対象の十二指腸で個々の粒子にカンナビノイド油の大部分を放出させる、腸溶性コーティング材料と崩壊剤との組み合わせを、更に含み得る。
【0033】
個々の粒子は、球状で0.5~1.7mmの平均直径を有し得、てんかん、多発性硬化症、ハンチントン病、アルツハイマー病、及び認知症などの治療のために、空腸でカンナビノイド油の大部分を放出するように構成され得る。
【0034】
個々の粒子は、球状で1.8~3mmの平均直径を有し得、製剤は、カンナビノイド油を腸全体にわたって少なくとも6時間放出するように構成され得る。
【0035】
カンナビノイド油は、微結晶セルロースの繊維ネットワーク内に保持されることによって微結晶セルロースに結合し得る。
【0036】
微結晶セルロースに結合したカンナビノイド油は、実質的に乾燥していてもよい。
【0037】
カンナビノイド油とMCCとの比は、0.5:1~1.5:1であり得る。
【0038】
個々の粒子は、10%w/w~50%w/wのカンナビノイド油、40%w/w~75%w/wの微結晶セルロース、2%w/w~10%w/wのメチルセルロース、及び2%w/w~35%w/wの腸溶性コーティングを更に含み得る。
【0039】
カンナビノイド油は、CBD油を含み得る。
【0040】
この方法は、これらの特徴の任意の組み合わせを更に含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】胃、小腸、及び結腸を含む、ヒトの下部胃腸管の概略図である。
図2】MCCとCBD油との湿式造粒から形成された固形マトリックスの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本明細書に記載されるカンナビノイド組成物は、多様なヒト又は動物体の病気を治療するために使用することができるが、いくつかの例は、とりわけ、てんかん、疼痛、脳性麻痺、ベル麻痺、運動ニューロン病、神経線維腫症、多発性硬化症、パーキンソン病、坐骨神経痛、アルツハイマー病、不安、抑鬱、ADHD、及び双極性障害に関連するものなどの中枢神経系障害の症状の治療に特に有利である。このような組成物の例は、活性物質があまり劣化せずに脳内のエンドカンナビノイド受容体の特定の部位を長時間標的とすることで、上記の問題の1つ以上の症状を緩和又は低減するように製剤化されている。
【0043】
胃腸管10の関係部分は、ここで、概して図1の図を参照することによって説明される。対象が経口製剤を摂取すると、この製剤は消化が行われる胃12に移動する。製剤が腸溶性コーティングされている場合、腸溶性コーティングは胃の約1~3のpHでは溶解しないことから、その内容物は胃に放出されない。
【0044】
製剤は、胃12から幽門弁14を通過して、小腸18の上部の(第1の)部分である十二指腸16に入る。十二指腸16でのpHは、約4~約6である。製剤は、十二指腸16を出て、pHが約5.5~約6.5である空腸20に入る。空腸20の後、製剤は、pHが約6.5~約7.4である回腸22に入る。盲腸及び結腸24、すなわち大腸は、回腸22の向こうにある。盲腸でのpHは、約5.7まで低下するが、約7のpHまで徐々に上昇する。胃腸管の様々な部分のpHは、LalezariによってAnnals of Gastroenterology,Vol.25,pgs.1-5(2012)に、EvansらによってGut,Vol.29,pgs.1035-41(1988)に、及びDressmanらによってPharmaceutical Research,Vol.7(7),pgs.756-761(1990)に報告されている。
【0045】
組成物のいくつかの例は、食物が体内でのカンナビノイドの取り込みを増強又は阻害する程度に、食物の影響を最小限に抑えるように設計されている。
【0046】
組成物の例としては、カンナビノイド油及び微結晶セルロース(「MCC」)を含む固形マトリックスが挙げられる。固形マトリックスは、少なくともこれら2つの成分の固形形態での組み合わせであり、この組み合わせでは、カンナビノイド油成分はMCCによって取り込まれMCCの繊維ネットワーク内に保持されている。固形マトリックスは、カンナビノイド油とMCCとが一緒に造粒される、湿式造粒プロセスによって生成され得る。湿式造粒プロセスは、可能な例の中でもとりわけ、高剪断造粒、乳鉢及び乳棒、並びに流動床造粒などの従来の医薬品用の機械的な湿式造粒技術を使用して行われ得る。
【0047】
造粒プロセス中、MCCは、カンナビノイド油と固形マトリックスを形成する。MCC繊維ネットワークは、カンナビノイド油が結合する多孔質足場を形成する。湿式造粒から得られた固形マトリックスは、固形でマイクロメートル及びミリメートルのサイズの顆粒から構成されており、実質的に乾燥しており、又は油っぽいテクスチャーではない。実質的に乾燥していることにより、顆粒は粉末テクスチャーを有する。固形マトリックスの一例を図2に示す。
【0048】
MCCとカンナビノイド油とを組み合わせて、このような固形マトリックスを形成することができるという事実は、驚くべきことである。MCCは、水を吸収する親水性ポリマーであることが知られているが、カンナビノイド油は実質的に水不溶性であることから、MCCがカンナビノイド油を非常に良好に吸収するとは予想されない。
【0049】
MCCが比較的大量のカンナビノイド油を保持することができることは、驚くべきことである。ある特定の例では、MCCとカンナビノイド油との比は、1:4~4:1又は0.5:1~1.5:1である。特定の例では、固形マトリックスにおけるカンナビノイド油とMCCとの比は、約1:1である。このユニークで新たに発見された特性により、かかる製剤におけるカンナビノイド油の高用量充填が可能になる。
【0050】
MCCは、固形経口製剤において崩壊剤として広く使用されている従来の医薬品添加物である。しかしながら、本組成物の例では、MCCは、放出制御ポリマーとして機能し、カンナビノイド油からのカンナビノイドの持続放出を提供する。MCCは、一箇所で用量の全部を迅速に放出するのではなく、カンナビノイド油を胃腸管に徐々に放出することができる。したがって、MCCは、用量放出の影響を克服するのに役立ち得る。
【0051】
カンナビノイド油は、油担体に溶解した少なくとも1種のカンナビノイドから構成されている。ある特定の例では、カンナビノイド油は、植物油、ゴマ油、ココナツ油などの製薬上許容される中鎖トリグリセリド油に、実質的に純粋なカンナビノイドを溶解することによって調製される。他の例では、カンナビノイド油は、CBD油、カンナビス油、ヘンプ抽出物、ヘンプ油などの、カンナビス植物から得られた植物抽出物である。そのような植物抽出物は市販されていることから、植物抽出物のカンナビノイド油を作製する方法は、詳細には記述しない。
【0052】
テトラヒドロカンナビノール(「THC」)、カンナビジオール(「CBD」)、テトラヒドロカンナビノール酸(「THCA」)、カンナビジオール酸(「CBDA」)、カンナビノール(「CBN」)、カンナビゲロール(「CBG」)、カンナビクロメン(「CBC」)、カンナビシクロール(「CBL」)、カンナビバリン(「CBV」)、テトラヒドロカンナビバリン(「THCV」)、カンナビジバリン(「CBDV」)、カンナビクロメバリン(「CBCV」)、カンナビゲロバリン(「CBGV」)、カンナビゲロールモノメチルエーテル(「CBGM」)、カンナビエルソイン(「CBE」)、及びカンナビシトラン(「CBT」)のうちの1種以上をはじめとした、カンナビノイド化合物油が含み得る多くのカンナビノイド化合物がある。
【0053】
治療を受ける対象において向精神効果をもたらすことが望ましくない場合、主にCBD、CBG、及び/又はCBCのカンナビノイド油を使用することができる。特定の例では、CBD油が、カンナビノイド油として使用される。CBD油において主なカンナビノイドはCBDであるが、CBD油はまた、より少量の1種以上の他のカンナビノイドも含有し得る。
【0054】
固形マトリックスのいくつかの例は、セルロース系、デンプン系、及び/又はポビドン系材料などの、ヒドロゲル形成ポリマーを更に含み得る。「セルロース系」、「デンプン系」のバインダー、及び「ポビドン系」のバインダーには、セルロース、デンプン、及びポビドンの誘導体が含まれることを理解されたい。水と混合すると、これらの材料は膨潤して親水性ヒドロゲルマトリックスを形成する。セルロース系ヒドロゲル形成材料の例としては、例えば、メチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む、メチルセルロース系ポリマーが挙げられる。固形マトリックス中でヒドロゲル形成ポリマーを使用することは、胃腸管中の固形マトリックスからの、カンナビノイド油由来のカンナビノイドの放出速度を調節するのに有用であり得る。
【0055】
固形マトリックスは、医薬品添加物と組み合わせて、粉末、顆粒、丸剤(錠剤、カプセル、カプレット)、マルチパーティキュレート、及びサッシェなどの、経口摂取可能な固形医薬製剤を形成し得る。このような添加物は、製薬上許容される充填剤、安定剤、バインダー、界面活性剤、加工助剤、及び/又は崩壊剤を含み得る。単なる例として、これらの機能を発揮するための材料の例が提供される。
【0056】
充填剤の例としては、二塩基性リン酸カルシウム、固形マトリックスの外側の粒外MCC、ラクトース、スクロース、及び/又は別の製薬上許容される充填剤が挙げられる。
【0057】
バインダーの例としては、メチルセルロース、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及び/又は別の製薬上許容されるバインダーなどのセルロース系水溶性ポリマーが挙げられる。このような場合、バインダーは粒外であり、このことは、それが固形マトリックスの外側にあることを意味する。
【0058】
加工助剤としては、加工中の材料の流動性を改善するための製薬上許容される加工助剤が挙げられる。加工助剤の例としては、コロイド状二酸化ケイ素、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン、及び/又は別の製薬上許容される加工助剤が挙げられる。
【0059】
崩壊剤の例としては、クロスカルメロースナトリウム、ポリビニルピロリドン(クロスポビドン)デンプングリコール酸ナトリウム、及び/又は別の製薬上許容される加工助剤が挙げられる。
【0060】
製剤が錠剤などである場合、例えば、圧縮などの従来の錠剤化技術を使用することによって、固形マトリックスを所望の添加物と組み合わせて、錠剤を形成し得る。
【0061】
ある特定の例では、製剤は、経口用マルチパーティキュレート製剤である。マルチパーティキュレート製剤では、好ましくは球状である複数の個々の粒子が存在し、消化の胃相に関係なく幽門弁を通り抜けるようにサイズ決めされている。各粒子の直径は、好ましくは約0.1mm~約3mm、約1mm~約2.5mm、約0.1~約2mm、0.5mm~1.5mm、0.5mm~1.7mm、1.8mm~2.1mm、1.8mm~3mm、0.5mm~2.1mm、0.5mm~3mm、又は約2mm未満の範囲である。この直径の粒子は、幽門弁が弛緩したときに幽門弁を通過し、このことは、単一単位のカプセルであれば胃に留まらないことを意味する。典型的には、かなりの数の粒子が、摂取後約30分以内に胃を通過している。このようなマルチパーティキュレート製剤は、食物の影響を最小限に抑えるのに役立ち得る。
【0062】
組成物を作製する方法の例としては、微結晶セルロースとカンナビノイド油とを一緒に湿式造粒することで、カンナビノイド油がMCCに結合した固形マトリックスを形成することが挙げられる。固形マトリックスを少なくとも1種の医薬品添加物と組み合わせて、経口用医薬製剤を形成する。
【0063】
従来の多くのタイプの湿式造粒に関して、固形マトリックスの形成は、場合により、カンナビノイド油をMCCの繊維ネットワーク内に結合させるために、機械的エネルギーを高める必要があり得る。ある特定の例では、湿式造粒ステップは、固形マトリックスを実質的に乾燥した油っぽくないテクスチャーのものにするのに十分な時間、高温で高剪断ミキサにて行われる。高温は、例えば、室温より少し高い温度、すなわち26℃~50℃であり得る。時間は、例えば、10分~20分、又は約15分であり得る。
【0064】
個々の球状粒子は、押出球形化プロセスによって調製され得る。コアは、固形マトリックス及びコア添加物を湿潤塊に湿式造粒することと、湿潤塊を押出して押出物を形成することと、押出物を複数のコア片に切断することと、コア片を球形にすることと、によって調製され得る。次いで、球形化されたコア片を流動床乾燥機などの乾燥機で乾燥させて、水の大部分を除去する。次いで、乾燥させた球形化されたコアを、必要に応じて、別々のサイズの別個のコアにふるい分けする。
【0065】
いくつかの例では、製剤は、腸溶性コーティングを含めることによって、胃でのカンナビノイド油のカンナビノイドの放出を実質的に防止するように製剤化される。
【0066】
表1は、いくつかの市販の腸溶性コーティング材料及びそれらが溶解するpHの例を列挙している。可能な腸溶性コーティング材料のリストは、これらにのみ限定されない。他の腸溶性コーティング材料の例としては、例えば、他のメタクリル酸コポリマー、セルロースアセテートフタレート、ポリビニルアセテートフタレート、及びNutrateric(登録商標)(Colorcon,Inc)などのエチルセルロース/アルギン酸ナトリウムコーティングが挙げられる。
【0067】
【表1】
【0068】
製剤のいくつかの例では、カンナビノイド油からのカンナビノイドの放出は製剤が胃腸管の特定の部分に送達されるまで遅延するが、製剤が送達され、腸溶性コーティングが溶解すると、MCCマトリックスは、カンナビノイド油のカンナビノイドを持続的に放出する。
【0069】
ある特定の例では、マルチパーティキュレート製剤の個々の粒子は、10%w/w~50%w/wのカンナビノイド油、40%w/w~75%w/wの微結晶セルロース、2%w/w~10%w/wのバインダー、例えば、メチルセルロースなど、及び2%w/w~35%w/wの腸溶性コーティングを含む。
【0070】
体内のカンナビノイド放出プロファイルは、エンドカンナビノイド受容体を標的として胃腸管の特定部位でカンナビノイド油のカンナビノイドを放出するように製剤化することによって、異なる中枢神経系障害を治療するよう調整することができる。
【0071】
カンナビノイドのより速い全身効果を達成するために、製剤が胃及び幽門弁を約0~約2時間の過程で通過した後に、カンナビノイドが実質的に十二指腸で放出されるように、製剤が製剤化されてもよい。これにより、カンナビノイドが十二指腸に局所的に送達され、十二指腸に位置するエンドカンナビノイド受容体に結合する。好ましくは、カンナビノイドの20%以下が胃で放出され、カンナビノイドの20%以下が、回腸及び結腸を含む腸の後の部分で放出される。カンナビノイド油からのカンナビノイドの十二指腸への効果的な放出を得るために、製剤は崩壊剤を含み得る。使用される場合、崩壊剤の量は、製剤の約1%w/w~20%w/wであり得る。崩壊剤の使用は、全ての例において必須というわけではない。このような組成物において、粒子の平均直径は、例えば、0.5~1.7mmであってもよい。このような組成物は、例えば、急性症状を治療するために、又はカンナビノイドの短い半減期が有害でない場合に、有用となり得る。
【0072】
別の例では、マルチパーティキュレート製剤は、カンナビノイド油からのカンナビノイドのより長い持続放出を提供し得る。そのような製剤は、カンナビノイドの短い半減期を克服するのに役立つ。この例では、個々の粒子が腸を通過し、胃の内容物が幽門弁を徐々に通過して小腸に入るときに、胃腸管を通って粒子のある程度の連続的な流入がある。粒子が小腸を通過するのにかかる推定時間は約3~約6時間であり、これは、十二指腸を通過するための約1時間、及び空腸を通過するための約1.5時間に回腸を通過するための約2時間を含む。小腸を通過した後、粒子が大腸(結腸)を通過するのにかかる時間は、約4時間~約72時間である。したがって、そのような組成物は、カンナビノイドが、経口投与後少なくとも12時間、中枢神経系に全身効果を提供することを可能にする。
【0073】
この持続放出は、約1.8~3mmの平均直径を有する粒子を使用して達成することができる。より大きな平均直径により、製剤からのカンナビノイドのより遅く、より持続的な放出を確保する。
【0074】
マルチパーティキュレート製剤の場合、腸溶性コーティングが各コア上に適用され得る。丸剤製剤の場合、腸溶性コーティングが丸剤上に適用され得る。腸溶性コーティングは、製剤の約2%w/w~約35%w/w、又は製剤の約3.5%w/w~約50%w/wであり得る。
【0075】
腸溶性コーティング材料の特定の例は、メタクリル酸/エチルアクリレートコポリマーを含む、メタクリル酸系コポリマーなどのメタクリル酸系材料であり、その例は、KOLLICOAT(登録商標)MAE30DPである。これらの材料は、腸溶性コーティング溶液を形成するため、可塑剤などの他の材料と組み合わせられ得る。
【0076】
腸溶性コーティング溶液の例は、約5%w/w~約35%w/wの水、0.5%w/w~約5%w/wの可塑剤、約0.05%w/w~約5%w/wの流動化助剤、及び約2%w/w~約35%w/wのメタクリル酸コポリマーを含み得る。可塑剤の例は、クエン酸トリエチルであり、流動化助剤の例は、PLASACRYL(登録商標)T20(Emerson Resources,Inc.)である。PLASACRYL(登録商標)T20は、粘着防止剤及び可塑剤のエマルジョンであり、水、モノステアリン酸グリセリル、クエン酸トリエチル、及びポリソルベート80を含有する。
【0077】
腸溶性コーティングは、スプレーコーティング、流動床コーティングなどの任意の従来の腸溶性コーティング技術によって、製剤に適用され得る。
【0078】
ある特定の例は、コア上、及びコアと腸溶性コーティングとの間にサブコーティングを含み得る。サブコーティングは、個々の腸溶性コーティングされた粒子の約3.5%w/w~約40%w/wであり得る。サブコーティングは、ゼラチン、又はヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの製薬上許容されるコーティング形成材料で作製され得る。サブコーティングは、スプレーコーティング、及び流動床コーティングなどの任意の従来の医薬コーティング技術によって、製剤に適用され得る。
【0079】
組成物は、多様な類型の中枢神経系障害を治療するために使用され得る。製剤は、治療される障害の類型に応じて異なり得る。
【0080】
空腸における標的放出が望ましい場合、組成物は、カンナビノイドの大部分、又は少なくとも約50%~約75%が小腸、特に空腸で放出されるように、胃及び結腸に放出されるカンナビノイドの量を最小限に抑えるように製剤化され得る。好ましくは、カンナビノイドの20%以下が胃に放出され、カンナビノイドの20%以下が結腸に放出される。また、カンナビノイドは、好ましくは、空腸で局所的にカンナビノイドを送達するために、製剤が幽門弁を通過した後、約2~約4時間にわたって徐々に放出される。このような組成物では、粒子の平均直径は、例えば、0.5mm~1.7mmであり得る。
【0081】
回腸における標的放出が望ましい場合、製剤は、製剤が胃及び幽門弁を約4~約6時間の過程で通過した後に、カンナビノイドが実質的に回腸で放出されるように、製剤化される。これにより、カンナビノイドを回腸に局所的に送達する。好ましくは、カンナビノイドの50%~75%が回腸で放出される。好ましくは、粒子が回腸のpHに達した後に、カンナビノイドの70%超が放出される。カンナビノイド油からのカンナビノイドの回腸への効果的な放出を得ること。このような組成物では、粒子の平均直径は、例えば、0.5~1.7mmであり得る。
【0082】
治療方法全般は、有効量の医薬製剤を、中枢神経系障害を有する対象に経口投与することを含む。製剤は、上記の特徴のいずれかを含み得る。中枢神経系障害の例としては、てんかん、疼痛、脳性麻痺、ベル麻痺、運動ニューロン病、神経線維腫症、多発性硬化症、パーキンソン病、坐骨神経痛、アルツハイマー病、不安、抑鬱、ADHD、及び双極性障害が挙げられるが、これらに限定されない。
【0083】
製剤は、有効量のカンナビノイド油を含む。有効量は、体内で疾患又は病状に作用するのに十分な量である。カンナビノイド油の有効量は、例えば、0.01~5,000mg、0.01~1,000mg、0.01~500mg、0.01~200mg、0.01~100mg、0.01~50mg、0.01~25mg、0.01~10mg、又は0.01~5mgであり得る。有効量はまた、これらの範囲外にも同様に変更され得る。mg単位の重量は、多くの場合、kg単位の対象の体重に対して調整されるので、これらの例示的な用量はまた、1日当たり体重1kg当たりのmg(mg/kg)の単位で記述することができる。
【0084】
実際には、有効量は、年齢、体重、身長、病状の重症度をはじめとする対象に紐付けられる多数の因子、投与技術、及び他の因子に応じて異なり得る。対象に投与される有効量は、医療従事者であれば関連する状況を考慮して決定し得る。
【0085】
有効量は、経験的証拠から決定又は予測し得る。具体的な用量は、多数の因子に従って様々であり得、最初に実験に基づいて決定することもできる。
【0086】
製剤を、単回用量として投与してもよく、投与レジメンの一部として投与してもよい。投与レジメンでは、治療有効量は、所望の治療反応をもたらすのに投与するための、調節可能な用量である。
【0087】
複数回用量を所定の時間間隔で投与してもよく、後続の用量を状況に応じて相対的に低減又は増加してもよい。
【0088】
製剤は、CNS障害を治療するために必要に応じて散発的に投与されてもよく、又はCNS障害を治療するための長期レジメンの一部として投与されてもよい。治療対象は、ヒトであっても動物であってもよい。
【0089】
本開示が胃腸障害の治療に言及する場合、「治療」、「治療する」、又は「治療」という用語の任意の他の変形が、CNS障害の予防、管理、及び実質的な症状緩和を包含することを理解されたい。
【実施例
【0090】
以下の実施例は、組成物のある特定の例の態様を例示するために提供される。可能な実施例の範囲は、これらの実施例の詳細に限定されない。
【0091】
実施例1:MCC及びCBD油の湿式造粒
MCC及びCBD油の固形マトリックスは、約2mLのCBD油を約2グラムのMCC(MCC102)と2分間機械的に湿式造粒することによって調製された。CBD油は、SUNMED ORGANIC INGREDIENTS(商標)により製造され、有機中鎖トリグリセリド油、ヘンプ抽出物、有機香味剤、及び植物由来テルペンを含有し、総カンナビノイド(CBD、CBG、CBC、CBN、及びCBD-V)が500mg超であった。得られた湿式造粒物は、実質的に乾燥した粉末の外観を有しており、油っぽいテクスチャーを有していなかった。これは、MCCが親水性ポリマーである場合であっても、CBD油がMCC足場に結合することが可能であることを立証するものである。図2は、湿式造粒物の写真である。
【0092】
実施例2:例示的な製剤の調製
球状コアは、50kgの微結晶セルロース、5kgのメチルセルロース、及び50kgのCBD油を水とブレンドして、湿潤塊を形成することによって調製される。湿潤塊を高剪断造粒機で造粒し、次いで押出及び球形化する。球形化された湿潤コアを流動床乾燥機で乾燥させて、未コーティングの乾燥したコアを形成する。乾燥温度は、約16℃である。未コーティングの乾燥したコアの直径は、球形化前に押出物を適切なサイズの片に切断することにより選択することによって設定される。
【0093】
腸溶性コーティングは、KOLLICOAT(登録商標)MAE30DP、PLASACRYL(登録商標)T20、クエン酸トリエチル、及び水の20%w/w溶液を31kg使用して、未コーティングの乾燥したコアに適用される。KOLLICOAT(登録商標)MAE30DPの乾燥固形分重量は、約5kgである。クエン酸トリエチルの乾燥固形分重量は、約0.3kgである。PLASACRYL(登録商標)T20の乾燥固形分重量は約0.5kgである。腸溶性コーティングされたコアは、約40℃で乾燥される。腸溶性コーティングは、コアに約10%w/wの重量増加をもたらす。
【0094】
必要に応じて、未コーティングの乾燥したコアは、任意に、約15%の酸骨ゼラチン及び85%のUSP水を含有する、37kgのサブコーティング溶液でサブコーティングされ、乾燥され得る。サブコーティングは、コアに約10%w/wの重量増加をもたらす。
【0095】
必要に応じて、任意による仕上げコートを腸溶性コート上に適用してもよい。仕上げコートは、約10%w/wのヒドロキシプロピルメチルセルロース及び90%の水を含有する、26kgの仕上げコート溶液である。仕上げコーティングされた粒子を、約40℃で乾燥させる。仕上げコートは、腸溶性コーティングされたコアに約2%w/wの重量増加をもたらす。
【0096】
仕上げた粒子は、所望のサイズのゼラチンカプセルに充填される。
【0097】
実施例3:例示的な製剤化
空腸における標的放出に有用であり得る組成物では、マルチパーティキュレートのカプセルは、200mgのCBD油、200mgのMCC、20mgのメチルセルロース(バインダー)、20mgのゼラチン(サブコート)、22mgの腸溶性コートを含む。粒子径は、約1.5mmである。
【0098】
十二指腸における標的放出に有用であり得る組成物では、マルチパーティキュレートのカプセルは、200mgのCBD油、200mgのMCC、20mgのメチルセルロース、50mgのクロスカルメロースナトリウム(崩壊剤)、20mgのゼラチン(サブコート)、及び22mgの腸溶性コートを含む。粒子径は、約1.5mmである。
【0099】
回腸における標的放出に有用であり得る組成物では、マルチパーティキュレートのカプセルは、200mgのCBD油、200mgのMCC、20mgのメチルセルロース(バインダー)、20mgのゼラチン(サブコート)、22mgの腸溶性コートを含む。粒子径は、約1.5mmである。
【0100】
腸全体にわたってカンナビノイドを放出するための持続放出組成物では、マルチパーティキュレートのカプセルは、200mgのCBD油、200mgのMCC、20mgのメチルセルロース(バインダー)、20mgのゼラチン(サブコート)、22mgの腸溶性コートを含む。粒子径は、約2mmである。
【0101】
本開示では、例示的な実施形態を説明しているが、組成物及び方法の全ての可能な実施形態を説明しているわけではない。特定の特徴が特定の実施例の文脈で開示される場合、その特徴はまた、他の実施例と組み合わせて、及び/又は他の実施例の文脈において、可能な範囲で使用することができる。組成物及び方法は、多くの異なる形態で具現化することができ、本明細書に記載の実施例のみに限定されるものとして解釈されるべきではない。
【0102】
組成物及び方法は、例示的な実施形態に関連して説明される詳細に限定されるものではない。特許請求されるものの範囲から逸脱することなく、作製され得る組成物及び為され得る方法の多くの変形及び修正が存在する。
図1
図2
【国際調査報告】