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特表2024-502312フレキシブルな基板を備えた画像光ガイド
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-18
(54)【発明の名称】フレキシブルな基板を備えた画像光ガイド
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/02 20060101AFI20240111BHJP
   G02B 5/18 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
G02B5/18
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023539154
(86)(22)【出願日】2022-01-07
(85)【翻訳文提出日】2023-07-19
(86)【国際出願番号】 US2022011675
(87)【国際公開番号】W WO2022150630
(87)【国際公開日】2022-07-14
(31)【優先権主張番号】63/134,646
(32)【優先日】2021-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516201548
【氏名又は名称】ビュージックス コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】Vuzix Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】110003340
【氏名又は名称】弁理士法人湧泉特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュルツ, ロバート, ジェイ.
【テーマコード(参考)】
2H199
2H249
【Fターム(参考)】
2H199CA03
2H199CA24
2H199CA27
2H199CA50
2H199CA66
2H199CA67
2H199CA84
2H199CA86
2H199CA92
2H249AA12
2H249AA36
2H249AA43
2H249AA45
2H249AA50
2H249AA60
2H249AA62
2H249AA65
(57)【要約】
バーチャル像を伝送するための画像光ガイドは、導波路と、画像担持光ビームを導波路内に導くように動作可能なインカップリング回折光学要素と、画像担持光ビームを導波路からアイボックスに導くように動作可能なアウトカップリング回折光学要素とを含む。導波路は、その1つまたは複数の点の周りで撓むように構成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バーチャル像を伝送するための画像光ガイドであって、
第1表面と前記第1表面の反対側の第2表面とを有する導波路と、
前記導波路に沿って形成され、画像担持光ビームを前記導波路内に向けるように動作可能なインカップリング回折光学要素と、
前記導波路に沿って形成され、前記画像担持光ビームを前記導波路からアイボックスに向けるように動作可能なアウトカップリング回折光学要素と、
を備え、前記導波路は、第1部分と第2部分を備え、前記第2部分は、前記第1部分に対して撓むように動作可能である、画像光ガイド。
【請求項2】
光学モジュールが前記導波路の周縁の50パーセント未満を取り囲む、請求項1に記載の画像光ガイド。
【請求項3】
前記導波路の前記第1表面に結合された第1ポリマー層をさらに備え、前記インカップリング回折光学要素および前記アウトカップリング回折光学要素のうちの少なくとも1つが、前記第1ポリマー層に配置されている、請求項1に記載の画像光ガイド。
【請求項4】
前記導波路の前記第2部分は、前記導波路の前記第1部分に対して20度の角度で撓むように動作可能であり、前記第1ポリマー層は、前記導波路から剥離することなく撓むように動作可能である、請求項3に記載の画像光ガイド。
【請求項5】
前記第1表面上に配置される接着プロモータをさらに備え、前記第1ポリマー層が前記接着プロモータに接着される、請求項4に記載の画像光ガイド。
【請求項6】
前記導波路がアルカリ化合物を含み、前記導波路の前記第2部分が、前記導波路の前記第1部分に対して少なくとも1度から20度まで撓むように動作可能である、請求項1に記載の画像光ガイド。
【請求項7】
前記導波路が第1導波路であり、前記第1導波路に第2導波路が結合され、前記第1導波路と前記第2導波路との間に空隙が配置されている、請求項1に記載の画像光ガイド。
【請求項8】
前記第1導波路と前記第2導波路との間に配置された低デュロメータ材料をさらに備え、前記低デュロメータ材料は、前記空隙を少なくとも部分的に画成し、前記第1導波路および前記第2導波路とともに撓むように動作可能である、請求項7に記載の画像光ガイド。
【請求項9】
前記アウトカップリング回折光学要素が回折フィーチャの複数のセクションを備え、前記回折フィーチャの各セクション間に間隙が配置されている、請求項1に記載の画像光ガイド。
【請求項10】
前記第1導波路の第1部分と前記第2導波路の第1部分のうちの少なくとも1つは、画像担持光ソースを含む光学モジュール内に少なくとも部分的に配置され、前記第1部分が、第1ファスナーおよび第2ファスナーにより前記光学モジュールに連結されている、請求項7に記載の画像光ガイド。
【請求項11】
前記第1ファスナーと前記第2ファスナーとの間で前記第1導波路または前記第2導波路に結合されたプレートをさらに備え、前記プレートは、前記第1導波路の前記第1部分及び/又は前記第2導波路の前記第1部分に剛性を与えるように動作可能である、請求項10に記載の画像光ガイド。
【請求項12】
さらに、前記第1導波路と前記第2導波路の前記第2部分の周りに位置する硬質コーティングを備え、前記硬質コーティングは、前記第2部分の撓みを禁じるように動作可能であり、
さらに、前記第1部分と前記第2部分との間に位置する前記第1導波路および前記第2導波路の第3部分を備え、前記第3部分は曲がるように動作可能である。請求項10に記載の画像光ガイド。
【請求項13】
フレキシブルな画像光ガイドを製造する方法であって、
第1表面と前記第1表面の反対側の第2表面とを有する基板を提供する工程と、
前記基板にイオン拡散法を施す工程と、
前記導波路の前記第1表面を第1ポリマー材料でコーティングする工程と、
前記第1ポリマーコーティングに、インカップリング回折光学要素とアウトカップリング回折光学要素のうちの少なくとも1つを成形する工程と、
を備え、前記基板は、第1部分と第2部分とを備え、前記第2部分が前記第1部分に対して撓むように動作可能である、方法。
【請求項14】
前記イオン拡散法の後に、前記基板に熱処理を施す工程をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記イオン拡散法が、前記基板を第1温度範囲で第1溶融塩浴に浸漬することを含み、それによって前記導波路の前記第1、第2表面の材料が圧縮される、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像光ガイドに関し、特に、フレキシブル基板材料と、この基板材料の耐屈曲性および耐損傷性を可能にする保護ポリマーコーティングと、を用いた画像光ガイドに関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッドマウントディスプレイ(HMD)およびバーチャル像ニアアイディスプレイシステムは、軍事、商業、産業、消防、娯楽など、さまざまな用途向けに開発されている。これらの多くの用途において、使用者の視野内にある実世界の画像と視覚的に重ね合わせることができるバーチャル像を形成することは、価値がある。バーチャル像を視者の瞳孔に向け、上記重ね合わせ機能を可能にするために、光学画像光ガイドは、狭い空間内において画像担持光を視者に伝送する。
【0003】
従来の画像光ガイド構成は、ニアアイディスプレイ光学システムの体積、重量、および全体コストを大幅に低減させているが、特に安全面においてさらなる改善が必要である。バーチャル像ニアアイディスプレイシステムがより小さくなるにつれて、使用量は劇的に増加すると予想され、操作者が危険な状況に巻き込まれる可能性が高まる。そのため、目の安全が大きな懸念事項となる。画像光ガイドにおけるガラス基板の剛性は安定性のために好ましいが、そのような基板は脆くてフレキシブル性に欠ける可能性がある。本開示は、フレキシブル導波路を有するバーチャルニアアイディスプレイシステムを提供する。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、視者の頭部に隣接してディスプレイ装置を支持する光学モジュールを含むウェアラブルディスプレイ装置を提供する。第1の例示的な実施形態では、光学モジュール内に設けられたプロジェクタが、画像担持光の角度的に関連付けられたビームを生成する。このビームは光路に沿って投射される。画像光ガイドは、画像担持光ビームの光路において光学モジュールの前部と連結される。画像光ガイドは、透明な光学材料により形成された導波路と、導波路に形成され画像担持光ビームを導波路内へと向けるために配置されたインカップリング回折光学要素と、画像担持光ビームを導波路外へ向けるために配置されたアウトカップリング回折光学要素とを含む。アウトカップリング回折光学要素は、画像担持光ビームを少なくとも一次元で拡大し視者のアイボックス内にバーチャル像を形成するために配置されている。
【0005】
例示的な実施形態では、導波路は、熱化学処理されたフレキシブルな材料で形成され、光学モジュールから突出している。光学モジュールに連結されていないフレキシブル基板の突出部分は、その長手方向に沿って0度から20度以上曲がるように動作可能である。一実施形態では、導波路システムは、損傷を防ぎ導波路の破片の封じ込めを高めるための保護層を含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
添付の図面は明細書の一部として組み込まれる。ここに開示された図面は、現在開示されている主題の実施形態を示し、本開示の選択された原理および教示を示している。
しかしながら、図面は、現在開示されている主題のすべての可能な実施を示すものではなく、いかなる方法でも本開示の範囲を制限することを意図するものではない。
【0007】
図1】ニアアイディスプレイシステムの画像光ガイドの概略斜視図である。
【0008】
図2】本開示の主題の例示的な実施形態による右目用ニアアイディスプレイシステムの上面図である。
【0009】
図3】本開示の主題の例示的な実施形態による左目用ニアアイディスプレイシステムの上面図である。
【0010】
図4図2のニアアイディスプレイシステムの正面図である。
【0011】
図5図2のニアアイディスプレイシステムの斜視図であり、電子モジュールを省略して示す。
【0012】
図6A図5のニアアイディスプレイシステムの上面図である。
【0013】
図6B図6Aのニアアイディスプレイシステムの上面図であり、導波路が撓んだ状態を示す。
【0014】
図6C図6Aのニアアイディスプレイシステムの上面図であり、導波路が撓んだ状態を示す。
【0015】
図7A】本開示の主題の例示的な実施形態による画像光ガイドの簡略化された断面を示す概略図である。
【0016】
図7B】保護層を含む図7Aの画像光ガイドの簡略化された断面を示す概略図である。
【0017】
図8A】本開示の主題の例示的な実施形態による積層型導波路システムの簡略化された断面を示す概略図である。
【0018】
図8B図8Aの積層型導波路システムの一部の簡略化された断面を示す概略図である。
【0019】
図8C】本開示の主題の例示的な実施形態によるニアアイディスプレイの簡略化された断面を示す概略図である。
【0020】
図8D図8Cのニアアイディスプレイの簡略化された断面を示す概略図であり、積層型導波路システムが撓んだ状態を示す。
【0021】
図9A】基板に固定された表面レリーフ格子の簡略化された断面を示す概略図である。
【0022】
図9B】撓んだ基板に固定された表面レリーフ格子の簡略化された断面を示す概略図である。
【0023】
図10】本開示の主題の例示的な実施形態による表面レリーフ格子の簡略化された断面を示す概略図である。
【0024】
図11A】本開示の主題の別の例示的な実施形態による表面レリーフ格子の簡略化された断面を示す概略図である。
【0025】
図11B図11Aの表面レリーフ格子の簡略化された断面を示す概略図であり、撓んだ状態を示す。
【詳細な説明】
【0026】
本発明は、明示的に指定されている場合を除いて、様々な代替の配置および工程順序を想定し得ることを理解されたい。また、図面に示され明細書に記載された特定のアセンブリおよびシステムは、本明細書で定義される本発明の概念の単なる例示的な実施形態であることも理解されたい。したがって、開示された実施形態に関連する特定の寸法、方向、または他の物理的特性は、特に明記しない限り、限定的であると見なされるべきではない。また、本明細書に記載の様々な実施形態における同様の要素は、同様の参照番号で参照されている。
【0027】
本明細書において、「第1」、「第2」などの用語は、特に指定のない限り、必ずしも順序、や優先関係を示すのではなく、単にある要素または要素の集合を別の要素または要素の集合からより明確に区別するために使用される。
【0028】
本明細書において、「視者」、「操作者」、「観察者」、および「ユーザー(使用者)」という用語は均等であると見なされ、画像光ガイドを有する装置を介して像を見る人またはシステムを指す。
【0029】
本明細書で使用される「集合(セット;set)」という用語は、要素または部材の集合の概念が初等数学で広く理解されているように、空でない集合を指す。「部分集合」という用語は、特に明記しない限り、空でない適切な部分集合、すなわち、1つまたは複数の要素を有する、より大きな集合の部分集合を指す。集合Sの場合、部分集合は完全な集合Sを含み得る。しかしながら、集合Sの「適切な部分集合」は、集合Sに厳密に含まれ、集合Sの少なくとも1つの要素を除外する。
【0030】
本明細書で使用される場合、光学の文脈における「結合された(coupled)」、「カプラー(結合器;coupler)」または「結合する(coupling)」という用語は、ある光学媒体またはデバイスから別の光学媒体またはデバイスに光を伝送させるような結合を指す。
【0031】
本明細書で用いられる「例示的」なる用語は、「例」を意味するものであり、好ましい又は理想的な実施例を示唆するものではない。
【0032】
本明細書で使用される場合、「ビーム拡大」とは、1以上の方向の出射瞳拡大を提供するための、光学的要素との複数回遭遇によるビームの複製を意味する。同様に「ビーム又はビームの一部を拡大する」とは、1以上の方向の出射瞳拡大を提供するために、光学的要素との複数回遭遇によりビームを複製することを意味する。
【0033】
HMDは、軍事、商業、産業、消防、エンターテイメントなど、さまざまな用途向けに開発されている。HMDは、HMDユーザーの視野内にある現実世界の像に視覚的に重ね合わせることができるバーチャルカラー像を形成するように動作可能である。平面導波路とも呼ばれる光学的に透明な平行平板導波路は、多色または単色のプロジェクターシステムによって生成された画像担持光を HMDユーザーに伝送する。平面導波路は、画像担持光を狭い空間に伝送して、画像をHMDユーザーの瞳孔に向け、HMDユーザーの視野内にある現実世界の像にバーチャル像を重ね合わせることができる。
【0034】
このような従来の画像光ガイドでは、多色または単色の画像ソースからの、コリメートされ相対的角度的にエンコードされた光ビームが、インカップリング回折光学要素等の入力結合光学要素により、光学的に透明な平面導波路内へと光学的に結合される。この入力結合光学要素は、平行平板の平面導波路の表面に設けられるか形成され、あるいはこの導波路内部に配置される。このような回折光学要素は、回折格子またはホログラフィック光学素子として形成することができるが、これらに限定されない。例えば、回折格子は表面レリーフ格子として形成することができる。回折されたカラー画像担持光は、平面導波路に沿って伝播した後、アウトカップリング回折光学要素などの同様の出力光学要素により、平面導波路の外に向けられる。この出力光学要素は、アイボックスEの1以上の次元に沿って瞳拡大を提供するように構成されている。さらに、バーチャル像の1以上の次元の瞳拡大を提供するために、回転格子とも呼ばれる回折格子などの1つ以上の中間光学要素を、導波路に沿って入力光学要素と出力光学要素の間に光学的に配置してもよい。平行平板の平面導波路から出力される画像担持光は、視者に拡大したアイボックスを提供する。
【0035】
HMD等の光学システムは、バーチャル像を提供することができる。実像を形成する方法とは対照的に、バーチャル像はディスプレイ面上に形成されない。つまり、ディスプレイ面がバーチャル像の知覚位置に配置されたと仮定した場合、その面に画像は形成されない。バーチャル像表示には、拡張現実表示にとって固有の多くの利点がある。たとえば、バーチャル像の見かけのサイズは、ディスプレイ面のサイズや位置によって制限されない。さらに、バーチャル像のソースオブジェクトは小さくすることができる。たとえば、拡大鏡はオブジェクトのバーチャル像を提供する。実像を投影するシステムと比較して、ある程度離れて見えるバーチャル像を形成することにより、より現実的な視体験を提供することができる。バーチャル像を提供することにより、実像を投影するときに必要なスクリーンのアーティファクトの補償が不要となる。
【0036】
図1の斜視図は、画像光ガイドを示す。この画像光ガイド20は、アイボックス74を2つの次元で拡大するように、すなわち意図する画像のx軸およびy軸の両方に沿って拡大するように、構成されている。第2の次元のビーム拡大を実現するために、回折格子ベクトルk0を有するインカップリング回折光学要素IDOは、画像担持光WGの一部を、格子ベクトルklを有する中間光学要素TOに向けて回折するように、方向付けられている。中間光学要素TOは画像担持光WGの一部を反射モードでアウトカップリング回折光学要素ODOに向けて回折するように方向付けられている。画像担持光WGの一部のみが、中間回折光学要素TOとの複数回の遭遇の度に回折され、これにより、アウトカップリング回折光学要素ODOに向かう画像担持光WGの角度的に関連するビームの複製を介して、アイボックスEを横方向に拡大する。中間光学要素TOは代わりに、米国特許出願公開2021/0215941A1に開示されているような反射鏡アレイを含んでいてもよい。この公報の内容は引用することにより本明細書に組み込まれる。中間光学要素TOは、画像担持光WGをアウトカップリング回折光学要素ODOに向けて方向転換させる。アウトカップリング回折光学要素ODOでは、画像担持光WOとして平面導波路22から出射する前に、画像担持光WGの角度的に関連するビームの複製を介して、アイボックスEの縦方向に第2の次元で拡大する。格子ベクトルk0、k1、k2 などの格子ベクトルは、回折光学要素の回折フィーチャ(例えば、溝、線、または罫線)と直交する方向に延び、回折光学要素 IDO、TO、ODOの周期ないしはピッチd(つまり、溝間の中心距離)の逆数の大きさを有している。インカップリング回折光学要素IDOと中間格子TOとアウトカップリング回折光学要素ODOは異なる周期又はピッチdを有していてもよい。
【0037】
図1に示すように、インカップリング回折光学要素IDOは入射する画像担持光WIを受ける。この画像担持光WIは、画像ソース25により生成された画像内の個々のピクセルまたは均等の箇所に対応する角度的に関連付けられたビームの集合を含む。画像ソース25は、バーチャル像を生成するための角度的にエンコードされたビームの全範囲を生成するように動作可能であり、集光光学系を備えた実際のディスプレイ、ビームの角度をより直接的に設定するためのビームスキャナー、又はスキャナーと一緒に用いられる一次元の実際のディスプレイとすることができるが、これらに限定されない。画像光ガイド20は、画像担持光WGを中間回折格子TOとアウトカップリング回折光学要素ODOの両方で異なる方向に複数回遭遇させることによって、アイボックスの二つの次元において拡大された角度的に関連するビームの集合を出射する。平面導波路22の所与の配向において、中間光学要素TOはy軸方向に出射瞳拡大を提供し、アウトカップリング回折光学要素ODOはx軸方向に同様の出射瞳拡大を提供する。インカップリング回折光学要素IDO、アウトカップリング回折光学要素ODO 、中間光学要素TOの反射率特性とそれぞれの周期dは、それぞれの格子ベクトルの配向を伴って、2つの次元での出射瞳拡大を提供する。この際、画像光ガイド20から画像担持光WOとして出射される画像担持光WIの角度的に関連するビーム間の意図された関係は維持される。
【0038】
画像光ガイド20に入射する画像担持光WIは、インカップリング回折光学要素IDOによって、角度的に関連するビームの異なる集合にエンコードされるが、画像を再構成するために必要な情報は、インカップリング回折光学要素IDO の系統的な効果によって維持される。インカップリング回折光学要素IDOとアウトカップリング回折光学要素ODOの間の中間位置にある中間光学要素TOは、通常、画像担持光WGのエンコードに重大な変化を引き起こさないように配置される。アウトカップリング回折光学要素ODOは通常、インカップリング回折光学要素IDOに対してシンメトリック(対称)に構成されている。例えば、同じ周期の回折フィーチャを含む。同様に、中間光学要素TOの周期もまた、典型的には、インカップリング回折光学要素IDOとアウトカップリング回折光学要素ODOの共通の周期と一致する。図1に示すように、中間光学要素TOの格子ベクトルk1は他の格子ベクトルK0,K2(全ての格子ベクトルは方向付けされていないものとする)に対して45度に向けられているように示されている。しかし、一実施形態では、中間光学要素TOの格子ベクトルk1を、インカップリング回折光学要素IDOの格子ベクトルk0とアウトカップリング回折光学要素ODOの格子ベクトルk2に対して60度に向けてもよい。この場合、画像担持光WGは120度回転される。中間光学要素TOの格子ベクトルk1を、インカップリング回折光学要素IDOの格子ベクトルk0とアウトカップリング回折光学要素ODOの格子ベクトルk2に対して60度に向けることにより、格子ベクトルk0と格子ベクトルK1も、互いに60度の角度で配置される。中間光学要素TOとインカップリング回折光学要素IDOおよびアウトカップリング回折光学要素ODOの共通ピッチによる格子ベクトルの大きさに基づいて、3つの格子ベクトルk0、k1、k2は正三角形を形成し、合計するとゼロの大きさになる。これにより、色分散などの望ましくない収差が誘導される可能性のある非対称効果を回避する。
【0039】
平面導波路22内に回折された画像担持光WIは、インカップリング光学要素が格子、ホログラム、プリズム、ミラー、または他の機構のいずれを用いても、インカップリング光学要素により効果的にエンコードされる。入力で生じる光の反射、屈折、及び/又は回折は、視者に提示されるバーチャル像を再形成するために、出力によって対応するデコードをする必要がある。インカップリング回折光学要素IDOとアウトカップリング回折光学要素ODOの間の光学的中間位置に配置された中間光学要素TOは、通常、エンコードされた光に変化を引き起こさないように設計および配向される。アウトカップリング回折光学要素ODOは、画像担持光WGを、アイボックス74を満たすように、拡大された角度的に関連するビームの元の形態または所望の形態にデコードする。広い意味において、回転光学要素TOとインカップリング回折光学要素IDOとアウトカップリング回折光学要素ODOの間で何らかの対称性(シンメトリック)が維持されているか否か、または、画像担持光WIの角度的に関連付けられたビームのエンコードに平面導波路22に沿って変化が生じているか否かに拘わらず、中間光学要素TOとインカップリング回折光学要素IDOとアウトカップリング回折光学要素ODOは、意図したバーチャル像を生成するために、平面導波路22から出力される画像担持光WOが画像担持光WIの元のまたは所望の形態を保持するように、関連付けられる。
【0040】
文字「R」は、目がアイボックスEにある視者に見えるバーチャル像の向きを表している。図示のように、表されたバーチャル像における文字「R」の向きは、画像担持光WIによってエンコードされた文字「R」の向きと一致する。xy平面に対する、入射した画像担持光WIのz軸周りの回転または角度方向の変化は、アウトカップリング回折光学要素(ODO)からの出射光の回転または角度方向についての対応するシンメトリックな変化を引き起こす。画像の向きの観点から、中間光学要素TOは一種の光学リレーとして機能し、1つの軸 (例えばy軸)に沿って出射瞳の拡大を提供する。アウトカップリング回折光学要素ODOは、画像担持光WIによってエンコードされたバーチャル像の元の向きを維持しながら、別の軸(例えばx軸)に沿って出射瞳をさらに拡大する。一実施形態では、中間光学要素TOが回折格子の場合、中間光学要素TOは、傾斜した格子または正方形の格子であり、ありいは、それらの代わりにブレーズド格子であってもよく、平面導波路22の前面12または後面15に配置される。
【0041】
以下では、光路構成要素、間隔、および制約は、図2に示される観察者の右目34Rを参照しながら説明される。図3に示すように、匹敵する(並列的な)構成要素と、構成要素の位置の対応する変更を伴って、同じ特性および制約を選択的に左目にも適用することができる。さらに、本開示のある実施形態は、光路構成要素を左目と右目に同時に提供することを考慮している。したがって、HMDには、単眼の光学イメージング装置と両眼のイメージング装置の両方が含まれる。
【0042】
図2に示すように、一実施形態では、ニアアイディスプレイシステム12は、電子モジュール14と、電子モジュール14に電気的に接続され連結された光学モジュール16と、光学モジュール16に結合された平面導波路18と、を含む。一実施形態では、マウント54は、平面導波路18を光学モジュール16に機械的に固定するように構成されている。光学モジュール16は、平面導波路18を介して画像担持光を目34Rに伝送するように動作可能である。一実施形態では、光学モジュール16はプロジェクタを含み、このプロジェクタは、角度的にエンコードされた画像担持光ビームの全範囲を生成するように動作可能である。一実施形態では、プロジェクタは、赤、緑および青の波長範囲の画像担持光を、デジタル光変調器/マイクロミラーアレイ(「DLP」)またはシリコン上の液晶(「LCOS」)のディスプレイにパルス出力するように動作可能なカラーフィールドシーケンシャルプロジェクタシステムである。
【0043】
一実施形態では、ニアアイディスプレイシステム12は一体に組み込まれたカメラ70を収容する。カメラ70は、図4図5に示すように、カメラフラッシュ及び/又は光源71を含んでもよい。
【0044】
図4図5に示すように、平面導波路18は、そのx軸に沿って1.5:1以上の比率で導波路マウント54から突出している。導波路マウント54は平面導波路18の周縁の50%未満を連結する。この実施形態では、平面導波路18の大部分が眼34Rの前にサスペンド(吊持)されている。一実施形態では、光学モジュール16は電子モジュール14から取り外すことができる。
【0045】
ここで図6Aを参照すると、一実施形態では、平面導波路18は、物理的ストレス要因の影響を受けていないとき、0度(0°)の撓み角を有する。換言すれば、静止状態(rest state)では、平面導波路18は、x軸、y軸、またはz軸の周りにいかなる湾曲も含まない。静止状態の配向では、平面導波路18は長手軸40を含む。
【0046】
以下にさらに説明するように、平面導波路18は、基板システムを形成する1以上の可撓性材料を含む1以上の基板から構築することができる。平面導波路18の基板システムは、ポリマーコーティング、処理されたガラス、ポリエステルフィルムなどの材料を含むことができるが、これらに限定されない。このようなフィルムには、引張弾性において、Melinex(登録商標)339、Coming(登録商標)Willow Glass Substrates、PLEXIGLAS(登録商標)Optical 0Z024と同等またはそれを超えるクラスの材料が含まれる。ここで図6A図6B図6Cを参照すると、基板、ポリマーコーティング層、処理されたガラス層、接着剤堆積などを含むこれらの基板材料の特性により、平面導波路18は破損する前にx軸に沿ってz軸方向に曲げることが可能である。一実施形態では、平面導波路18は、壊れる前にy軸に沿って撓むことができる。さらに別の実施形態では、平面導波路18は、壊れる前にz軸に沿って撓むことができる。さらに別の実施形態では、平面導波路18は、2つ以上の軸に沿って撓むことができる。例えば、平面導波路18は、(例えば、複数の方向にねじることにより)ある回転角を有する曲げを形成することができる。
【0047】
図7Aを参照すると、一実施形態では、平面導波路18は基板Sを含む。基板Sは、熱化学処理を経て強化されたアルカリ含有ガラス材料化合物を含む。熱化学処理では、ガラス材料化合物の融点よりも低い温度範囲での溶融塩浴に基板Sを浸漬し、この過程でイオン交換が生じる。溶融塩浴中に、ナトリウムイオンが基板Sから拡散し、カリウムイオンと置換される。このイオン交換により、基板Sのガラス材料化合物の表面圧縮が生じ、破砕現象の可能性が低減される。次いで、基板Sの圧縮されたガラス材料化合物は、表面硬度をさらに高めるために、溶融塩を収容した浸漬タンク(加熱された鋼製のタンク)内にさらに1回以上吊り下げる。
【0048】
図7Aは、ほぼ平行な表面13、15を有する基板Sを含む平面導波路18の簡略化された断面を示す概略図である。一実施形態では、コーティング28が基板表面15に配置されている。一実施形態では、表面15は、使用中に着用者の目34R、34L(図2図3参照)のうちの1つの近位に配置され、表面13は、表面15の反対側に配置される。別の実施形態では、コーティング28は基板表面13に配置される。さらに別の実施形態では、コーティング28は、基板Sの両面13、15に配置される。一実施形態では、インカップリング回折光学要素IDO及び/又はアウトカップリング回折光学要素ODOは基板コーティング28に配置される。
【0049】
例えば、基板コーティング28は、入射する画像担持光WIを透過するように動作可能な透明ポリマー材料を含む。表面接着力は、ポリマー成膜が基板表面13、15と反応し、適切な表面エネルギーを有する最大数のアクセス可能なサイトを提示するときに、最大化される。基板コーティング28と基板Sとの間の接着を促進するために、基板Sは接着プロモータ(接着促進剤;接着促進手段)32で処理してもよい。この接着促進プロモータ32は、疎水性シランベースの層(単層または置換複層)、UV露光、熱処理、またはその他の全体をカバーする方法を含むが、これらに限定されない。
【0050】
ここで図6B図6Cを参照すると、基板S、基板コーティング28、および追加の処理層(もしあるとしたら)は、導波路18の基板システムを形成する。この基板システムは、例えばx軸に沿って(すなわちz方向に)撓むように動作可能であり、層間剥離することなく、0~20度(0°~20°)の撓み弧形状44をなす。例えば、図6Cに示すように、導波路18は、層間剥離することなく、x軸に沿って約20度(20°)の撓み弧形状44になるまで曲げられる。別の実施形態では、導波路18の基板システムが層間剥離なく軸に沿って撓む許容範囲は、最大約10度(10°)としてもよい。さらに別の実施形態では、導波路18の基板システムが層間剥離なく軸に沿って撓む許容範囲は、0度から5度(0°~5°)であってもよい。別の実施形態では、導波路18の基板システムが層間剥離なく軸に沿って撓む許容範囲は、0度から15度(0°~15°)であってもよい。一実施形態では、導波路18は、捩ったり複数の方向に沿って力を加えたりすることにより、層間剥離なく複数の軸に沿って撓む範囲を含むことができる。この撓み範囲において、導波路18は各軸に沿って、0度から20度(0°~20°)の範囲で撓む。
【0051】
基板コーティング28または追加の処理層が破損なく撓む許容範囲は、20度(20°)を超えてもよい。「許容可能な撓み」および「撓み弧形状」は、導波路18が破損または層間剥離なしに撓んだ後に撓んでいない姿勢に戻るように動作可能な、導波路18の基板システムの撓み量を意味する。
【0052】
一実施形態では、1つまたは複数の保護層を基板Sに提供してもよいし、複数の基板間に提供してもよい(図8Aを参照)。すなわち、一実施形態では、基板Sに1つ以上の保護層が付与された導波路18は、上述した撓み範囲を有する。別の実施形態では、平面導波路50の積層されたセットは、上述したような1つまたは複数の軸に沿った撓み範囲を有する。
【0053】
図7A図7Bに示すように、インカップリング回折光学要素IDOは、基板Sの内側の平行表面15に配置された透過型回折格子とすることができる。しかしながら、インカップリング回折光学要素IDOは、その代わりに、体積ホログラムまたは他のホログラフィック回折素子であってもよく、または画像担持光WIを導波路18内へと入力結合するように動作可能な他のタイプの回折光学要素であってもよい。インカップリング回折光学要素IDOは、基板Sの外側の平行平面13または内側の平行平面15に配置することができ、画像担持光WIが基板Sに近づく方向との組み合わせで透過型または反射型とすることができる。
【0054】
バーチャルディスプレイシステムの一部として使用される場合、インカップリング回折光学要素IDOは、実画像ソースからの画像担持光WIを平面導波路18の基板S内に結合する。実画像または画像次元は、最初に、角度的に関連する重なり合うビームのアレイに変換される。この変換において、インカップリング回折光学要素IDOに提示するために、画像内のさまざまなピクセル位置がエンコードされる。画像担持光WIはインカップリング回折光学要素IDOによって回折され、これにより画像担持光WIの少なくとも一部が、画像担持光WGとして平面導波路18内に方向転換され、さらに全内部反射 「TIR」により平面導波路18に沿って伝播する。TIRにより設定された境界に合わせて、角度的に関連するビームはより凝縮された範囲で回折されるが、画像担持光WGは、画像情報をエンコードされた形態で維持する。アウトカップリング回折光学要素ODOは、エンコードされた画像担持光WGを受け取り、画像担持光WGの少なくとも一部を、画像担持光WOとして平面導波路18の外へと観察者の目の意図された位置に向かって回折する。一般に、アウトカップリング回折光学要素ODOは、出力される画像担持光WOの角度的に関連したビーム間において画像担持光WIの元の角度関係を復元するために、インカップリング回折光学要素IDOと対称的(シンメトリック)に設計される。しかし、バーチャル像が見えるアイボックスE内で角度的に関連するビーム間の1方向の重なりを増やすために、アウトカップリング回折光学要素ODOは、画像担持光WGに複数回遭遇し、各遭遇の度に画像担持光WGの一部のみを回折するように構成されている。伝播方向におけるアウトカップリング光学要素の長さに沿った複数回の遭遇は、画像担持光ビームが重なり合うアイボックスの1方向を拡大する効果をもたらす。拡大されたアイボックスEは、バーチャル像を見る視者の目の位置に対する感度を低下させる。
【0055】
アウトカップリング回折光学要素ODOは、基板Sの内側の面15に配置された透過型回折格子として示されている。しかしながら、インカップリング回折光学要素IDOと同様に、アウトカップリング回折光学要素ODOは、基板Sの外側の面13もしくは内側の面15、あるいはその両方に配置することができ、画像担持光WGが基板Sから出射する方向との組み合わせで透過型または反射型とすることができる。
【0056】
図7Bは、厚さが0.1mm、または実施形態に従って変化する空隙72(air gap)を示す。空隙72は、TIRが基板S内で効率的に進行することを可能にする。空隙72は、外側の面13と内側の面15の両方に沿って基板S及び/又はコーティング28と接する(境界を形成する)。一実施形態では、空隙72は、空気と同じ屈折率を有する透明な材料であってもよい。透明材料としては、シリカ、シリカナノロッド、有機ポリマーなどからなるメソポーラスのエアロゲルが挙げられるが、これらに限定されない。別の実施形態では、図8Bに示されるように、空隙72は、導波路18のアセンブリとともに曲げられるように動作可能な、低収縮、低デュロメータ(低硬度)の材料73によって維持される空気またはガス状流体を含む。
【0057】
図8Aに示すように、空隙72は、導波路積層体50の基板S1、S2の間に存在してもよい。一実施形態では、導波路積層体50は2つ以上の導波路18を含む。 一実施形態では、図8Bに示すように、空隙72は、システムの周囲(周縁部)に配置された低収縮、低デュロメータ材料73によって維持され、基板S1、S2の独立した動きを提供するように動作可能である。一実施形態では、低デュロメータ材料73は、基板S1、S2間への環境汚染物質の侵入に対する基板S1、S2の周囲のシールとして機能することができる。
【0058】
ここで図7Bを参照すると、第1保護層68と第2保護層70が、基板コーティング28と空隙72を覆って基板Sと結合してもよい。一実施形態では、保護層68、70は完全に透明なポリマーを含み、導波路18の機能に大きな影響を与えることなく、像担持光WI、WOが基板Sに出入りできるようにする。
【0059】
基板Sに衝撃が加わったとき、または基板Sに過剰な応力が加わったとき、保護層68、70は、基板Sの起こり得る破砕作用の封じ込めを高めるように機能する。例えば、ポリマー層68、70は、基板Sからの破砕のデブリ(破片)の一部を少なくとも部分的に封じ込めるように機能する。図8Aに示すように、第1保護層68と第2保護層70は、平面導波路の積層セット50の導波路18のそれぞれの外面を囲むことができる。一実施形態では、同じまたは異なる基板を有する3つ以上の平面導波路18を積み重ねて上記のように保護することができる。
【0060】
回折格子として形成された回折光学要素では、格子の深さを増やすと回折効率が向上する。しかし、アウトカップリング回折格子の回折効率が高くなると、回折格子の外側領域から出射される画像担持光WOが減少する可能性がある。さらに、複数の入力格子を含む実施形態では、導波路内で光ビームの混合、つまりクロストークが発生する。これらの問題を補償するために、図8Aに示す実施例では、それぞれ基板S1、S2を有する2つの平面導波路18が、当業者に知られている接合プロセスによって互いに積層され得る。
【0061】
平面導波路基板SIの上側の平行平面の表面15aは基板コーティング28でコーティングされている。同様に、平面導波路基板S2の上側の平行平面の表面15は基板コーティング28でコーティングされる。一実施形態では、第1、第2の基板S1、S2のインカップリング回折フィーチャは、異なる方法で画像担持光WIに作用する。例えば、基板S1、S2のインカップリング回折フィーチャは、画像担持光WIの特定のスペクトルのみをそれぞれの基板S1、S2内に回折し、TIRを介して、それぞれのアウトカップリング回折光学要素ODOへと伝播させる。
【0062】
図8Cに示すように、一実施形態では、ニアアイディスプレイシステム12は、光学モジュールハウジング100に取り付けられた積層導波路システム126を含む。積層導波路システム126は、インカップリング回折光学要素ID01とアウトカップリング回折光学要素OD01を有する第1基板S1と、インカップリング回折光学要素ID02とアウトカップリング回折光学要素OD02を有する第2基板S2とを含む。一実施形態では、基板S1、S2の一方または両方が中間光学要素を含む。プロジェクタ110はハウジング100内に配置されており、角度的にエンコードされた画像担持光を出射するように動作可能である。
【0063】
一実施形態では、積層導波路システム126は、遠位側の導波路ファスナー106と近位側の導波路ファスナー104により、ハウジング100内に固定されている。プレート112は、ハウジング100内において第2基板S2に隣接して配置され、ハウジング100内に配置された導波路システム126に構造的剛性を与えるように動作可能である。プレート112は、積層導波路システム126が曲げられた時にプロジェクタ110への損傷を軽減するように動作可能である。一実施形態では、追加のプレート114、116が第1基板S1およびプロジェクタ100に隣接して配置され。積層導波路システム126に追加の構造的支持を提供するように動作可能である。一実施形態では、プレート112、114、116は、ハウジング100内に位置する積層導波路システム126の部分に剛性を与えるために用いられる。一実施形態では、プレート112、114、116は、積層導波路システム126に機械的に固定される。
【0064】
品質テストおよびユーザーの取扱いパターンでは、積層導波路システム126の最も一般的な破損点が、ハウジング100との接続点から1センチメートル未満で発生することを示している。一実施形態では、積層型導波路システム126は、弾性撓み部分128と、ほぼ剛性の部分140を含む。図8Dに示すように、撓み部分128は、積層導波路システム126に例えばz軸方向に力が加えられたときに曲がるように動作可能な弾性領域を作っている。一実施形態では、撓み部分128は、応力下で及び/又は基板S1、S2が屈曲点(例えば20度)を超えて曲がる応力下で、故障するように機械的にプログラムしてもよい。
【0065】
破損を低減し、ほぼ剛性の部分140の寸法安定性を維持するために、耐摩耗性硬質コーティング130を第1、第2の基板S1、S2に塗布することができる。一実施形態では、硬質コーティング130は、基板S1、S2の先端部を取り囲むようにして、剛性部分140の第1、第2の基板S1,S2を包む。硬質コーティング130は、Allyics、ポリメチルペンテン、ポリカーボネートなど、任意の数の硬質で透明なポリマーから構成することができる。一実施形態では、硬質コーティング130を図8Aに示す保護層68、70の上に塗布することができる。
【0066】
積層型導波路システム126の構造的完全性をさらに促進するために、第1基板S1と第2基板S2は、ガスケット73、接着剤のビード、または他の低デュロメータ材料により分離されていてもよい。この材料は、空隙72のためのスペースを確保し易くするように動作可能であり、これにより、曲げられた時に第1、第2の基板S1、S2のx軸に沿う独立した動きを可能にする。一実施形態では、曲げられた時の硬質コーティング130への損傷を回避するために、基板撓みチャネル136は、硬質コーティング130の内壁に割れ目(cleft)を提供する。これにより、曲げられた時に平面導波路基板S1と平面導波路基板S2が独立して変位する。
【0067】
回折光学要素が、例えばコーティングまたはバッキング/プレートによって堅固に保持された基板の領域に配置されていない実施形態では、回折光学要素は、導波路/積層導波路システムが曲げられた時に損傷を受ける可能性がある。図9Aは、基板Sの平行平面の表面172のコーティング178に形成された傾斜した面レリーフ格子フィーチャ170のアレイを非撓みの状態で示す。格子フィーチャ170は、間隔eで表される距離だけ離間している。図9Bは基板Sのたわみを示している。この撓みにより光学格子の衝突点176で繊細な格子の微細構造の接触が生じ、それによって導波路システムの機能が損傷するリスクがある。
【0068】
図10に示すように、一実施形態では、基板Sのたわみを補償するために、格子フィーチャ170は拡張された格子フィーチャ間隔fを有する。
【0069】
図11Aに示すように、別の実施形態では、格子フィーチャ170は、格子ストリップ間隔hにより、個別の(不連続の)セクション(または格子ストリップ180)に分離されている。各格子ストリップ180は、多数の格子フィーチャ170を含む。各格子ストリップ180と基板表面172の限定された全表面接触により、コーティング178に必要な撓みが減少する。それによって、基板Sからコーティング178が剥離するリスクが減じられる。各格子ストリップ180は、格子ストリップ間隔hによって分離されている。格子ストリップ間隔hは、個々の格子ストリップ180を基板Sに接着することにより、またはマイクロレーザアブレーションで格子ストリップ180を分離することにより、達成することができるが、これらに限定はされない。図11Bは、コーティング178が撓んだ状態を示している。分離された格子ストリップ180の格子フィーチャ170は互いに接触していない。
【0070】
例示的な実施形態では、装着可能なディスプレイ装置は、観察者の頭部に隣接して光学モジュールを取り付けるように動作可能な電子モジュールと、光学モジュール内に配置され、画像担持光ビームを生成するように動作可能なプロジェクタと、光学モジュールに結合された導波路と、を含む。導波路は、透明な光学材料により形成され第1表面とその反対側の第2表面を有する基板と、画像担持光ビームを導波路内に方向付けるように動作可能なインカップリング光学要素と、導波路からの画像担持光ビームをアイボックス内に向けバーチャル像をアイボックス内に形成するように動作可能なアウトカップリング光学要素とを含む。バーチャル像は視者の視野内において離れた位置に現れる。導波路は第1端部と第2端部を含み、第1端部は光学モジュールに連結され、第2端部は第1端部に対して撓む(曲がる)ように動作可能である。
【0071】
一実施形態では、光学モジュールは導波路の周縁の50パーセント未満を取り囲む。
【0072】
一実施形態では、第1ポリマー層が導波路の第1表面に結合され、インカップリング回折光学要素およびアウトカップリング回折光学要素のうちの少なくとも1つが第1ポリマー層に配置されている。
【0073】
一実施形態では、導波路の第2端部は導波路の第1端部に対して20度の角度で変位することができ、第1ポリマー層は導波路から剥離することなく撓むことができる。
【0074】
一実施形態では、導波路は、導波路の第1表面上に接着プロモータをさらに含み、第1ポリマー層が接着プロモータに接着される。一実施形態では、導波路は、第1ポリマー層の上に配置された第2ポリマー層をさらに含み、第2ポリマー層は、シャーディングで生じた導波路の破片の少なくとも一部を封じ込めるように動作可能である。
【0075】
一実施形態では、導波路はアルカリ化合物を含み、導波路の第2端部は、導波路の第1端部に対して少なくとも0度から20度まで、破損することなく撓む(曲がる)ように動作可能である。
【0076】
一実施形態では、上記導波路は第1導波路であり、第2導波路が第1導波路に結合され、空隙が第1導波路と第2導波路との間に配置される。一実施形態では、低デュロメータ材料(低硬度材料)が第1導波路と第2導波路との間に配置され、低デュロメータ材料は空隙を少なくとも部分的に画成し、第1導波路および第2導波路とともに撓むように動作可能である。
【0077】
種々の実施形態が詳細に説明されているが、これらは例として提示されており、限定ではないことを理解されたい。開示された主題が、その範囲、精神、または本質的な特徴から逸脱することなく、他の特定の形態、変形、および修正で具体化され得ることは、当業者にとって自明なことである。したがって、上記の実施形態は、すべての点で例示的であり、限定的ではないとみなされるべきである。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって示され、その均等物の意味および範囲内にあるすべての変更は、そこに含まれることが意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図8D
図9A
図9B
図10
図11A
図11B
【手続補正書】
【提出日】2023-08-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項13
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項13】
フレキシブルな画像光ガイドを製造する方法であって、
第1表面と前記第1表面の反対側の第2表面とを有する基板を提供する工程と、
前記基板にイオン拡散法を施す工程と、
前記基板の前記第1表面を第1ポリマー材料でコーティングする工程と、
前記第1ポリマーコーティングに、インカップリング回折光学要素とアウトカップリング回折光学要素のうちの少なくとも1つを成形する工程と、
を備え、前記基板は、第1部分と第2部分とを備え、前記第2部分が前記第1部分に対して撓むように動作可能である、方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項15
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項15】
前記イオン拡散法が、前記基板を第1温度範囲で第1溶融塩浴に浸漬することを含み、それによって前記基板の前記第1、第2表面の材料が圧縮される、請求項13に記載の方法。
【国際調査報告】