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特表2024-502330トリペプチドを含む酵母抽出物およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-18
(54)【発明の名称】トリペプチドを含む酵母抽出物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12P 21/00 20060101AFI20240111BHJP
   C12N 1/16 20060101ALN20240111BHJP
【FI】
C12P21/00 G
C12N1/16 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023540047
(86)(22)【出願日】2021-12-23
(85)【翻訳文提出日】2023-06-29
(86)【国際出願番号】 KR2021019679
(87)【国際公開番号】W WO2022145868
(87)【国際公開日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】10-2020-0188450
(32)【優先日】2020-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500578515
【氏名又は名称】サムヤン コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジンハ
(72)【発明者】
【氏名】クォン,スンギュ
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ウンス
(72)【発明者】
【氏名】パク,ブス
(72)【発明者】
【氏名】アン,シンヘ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B064AG01
4B064CE08
4B064DA01
4B064DA10
4B065AA73X
4B065AC14
4B065BD16
4B065CA24
4B065CA41
4B065CA44
(57)【要約】
本発明は、トリペプチドを含む酵母菌体を利用して、トリペプチド含有量が高く、乾燥質量含量が高い酵母エキス、およびその調製方法に関する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グルタチオンを含有する酵母の菌体または菌体の懸濁液を温度60~90℃の水で抽出して溶媒抽出物を得る工程を含む、固形分含量を基準にして0.5~20重量%のグルタチオンを含有する酵母抽出物の製造方法。
【請求項2】
前記溶媒抽出物を得る工程は、グルタチオンを含有する酵母の菌体を温度60~90℃の水で抽出して得られた1次抽出物と、前記1次抽出物から回収された菌体をタンパク質分解酵素で処理して水で抽出して得られた2次抽出物を得る工程を含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記製造方法は、溶媒抽出物を乾燥して乾燥物を得る工程を追加的に含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記酵母抽出物の乾燥物収率は、20重量%~65重量%である、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記溶媒抽出物を得る工程で、水で抽出する時間は10分~120分である、請求項3に記載の製造方法。
【請求項6】
前記菌体懸濁液の菌体濃度は、600nmで測定された光学密度(OD)値が50~500である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
前記酵母は、カンジダ・ユチリス(Candida utilis)である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
前記タンパク質分解酵素は、エンドプロテアーゼ、またはエンドプロテアーゼとエキソプロテアーゼの混合酵素である、請求項2に記載の製造方法。
【請求項9】
前記タンパク質分解酵素の処理量は、0.5~5μl/mlである、請求項2に記載の製造方法。
【請求項10】
グルタチオンを含有する酵母の菌体または菌体の懸濁液を温度60~90℃の水を用いた溶媒抽出物を含み、固形分含量を基準にして0.5~20重量%のグルタチオンを含む酵母抽出物。
【請求項11】
前記溶媒抽出物は、タンパク質分解酵素で処理された酵母の菌体または菌体の懸濁液を水で抽出したものである、請求項10に記載の酵母抽出物。
【請求項12】
前記溶媒抽出物は、グルタチオンを含有する酵母の菌体を温度60~90℃の水を用いた1次抽出物と、前記1次抽出物から回収された菌体をタンパク質分解酵素で処理して水で抽出した2次抽出物を含む、請求項11に記載の酵母抽出物。
【請求項13】
前記タンパク質分解酵素は、エンドプロテアーゼ、またはエンドプロテアーゼとエキソプロテアーゼの混合酵素である、請求項11に記載の酵母抽出物。
【請求項14】
前記タンパク質分解酵素の処理量は、0.5~5μl/mlである、請求項11に記載の酵母抽出物。
【請求項15】
前記酵母は、カンジダ・ユチリス(Candida utilis)である、請求項10に記載の酵母抽出物。
【請求項16】
前記酵素抽出物は、溶媒抽出物を乾燥した乾燥物である、請求項10に記載の酵母抽出物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリペプチドを含有する酵母菌体を用いて、高い含量のトリペプチドおよび高い乾燥物含量を有する酵母抽出物、およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
グルタチオン(L-γ-glutamyl-L-cysteinylglycine、GSH)は、細胞内存在する生理活性物質であって、グルタミン酸(glutamate)、システイン(cystein)、およびグリシン(glycine)の3つのアミノ酸から構成されたトリペプチド形態である。体内では還元型グルタチオン(GSH)と酸化型グルタチオン(GSSG)の二つの形態で存在する。グルタチオンは、動物、植物、および微生物の細胞内で0.1~10mMの濃度で存在し、細胞の総非タンパク質性活成分の90%以上を占めている。グルタチオンの多様な機能は、農業分野だけでなく、酵素学、輸送、薬物学、治療、毒物学、内分泌学、および微生物学を含む多くの医学分野で重要である。
【0003】
グルタチオンは主に微生物を用いた発酵または酵素合成工程で生産可能であり、現在高い生産単価によって酵素合成工程はまだ商用化されていない反面、産業的に微生物を培養して菌体から抽出する方法が広く用いられている。グルタチオン生産のための微生物菌株は、細胞内に高い含量のグルタチオンを含有し食品生産に安全な微生物と認識される酵母が広く用いられており、特にSaccharomyces属菌株とCandida属菌株が代表的である。この酵母種の野生型菌株の場合、グルタチオン濃度が細胞乾燥重量の0.1-1%程度で既に非常に高く、低価の培地で高密度細胞培養および速い成長が可能であるという長所は、酵母を用いた発酵的生産が競争力を有するようにする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の一例は、高い含量のトリペプチドを有するトリペプチド抽出物、例えばグルタチオン抽出物、およびその製造方法に関するものである。
【0005】
本発明の追加一例は、トリペプチドの含量を維持しながら、高い乾燥物含量を有する酵母抽出物、およびその製造方法に関するものである。
【0006】
本発明の追加一例は、高い含量のトリペプチドおよび高い乾燥物含量を有する酵母抽出物を用いた食品、食品添加剤、飲料、飲料添加剤、健康機能性食品、または薬剤を提供するためのものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一例は、高い含量のトリペプチドを含む酵母菌体から得られるトリペプチド抽出物、例えばグルタチオン抽出物およびその製造方法に関するものである。
【0008】
本発明の追加一例は、グルタチオンを含有する酵母の菌体または菌体の懸濁液を、温度60~90℃の水を用いて抽出して得られた溶媒抽出物を含み、グルタチオンを含有する酵母抽出物に関するものであって、好ましくは、固形分含量を基準にしてグルタチオン含量が0.5~20重量%のグルタチオンを含有するものである。
【0009】
本発明の追加一例は、グルタチオンを含有する酵母の菌体または菌体の懸濁液を温度60~90℃の水を用いて抽出して得られた溶媒抽出物を得る工程を含むグルタチオンを含有する酵母抽出物の製造方法に関するものであって、好ましくは、固形分含量を基準にしてグルタチオン含量が0.5~20重量%のグルタチオンを含有するものである。
【0010】
また他の一例で、前記溶媒抽出物は、酵母の菌体をタンパク質分解酵素で処理して水で抽出するものであってもよく、詳しくは、グルタチオンを含有する酵母の菌体を60~90℃の熱水で抽出して得られた1次抽出物と、前記1次抽出物から回収された酵母の菌体をタンパク質分解酵素で処理した後に、水で抽出して得られた2次抽出物を含むものであってもよい。
【0011】
本発明は、グルタチオンを含有する酵母を用いたグルタチオン抽出およびこれから製造されたグルタチオン抽出物に関するものであって、熱水抽出法を用いて高い収率で酵母抽出物を製造し、選択的に熱水抽出と共にタンパク質分解酵素処理を行ってさらに高い収率で抽出物を得ることができ、高いタンパク質含量を有する酵母抽出物を製造して、食品および健康機能性製品などの様々な応用分野に多様に活用可能である。
【0012】
酵母抽出物の場合、核酸および調味素材への適用などに関心を持って生産することによって、本発明は酵母菌体の熱処理と酵素処理の効果的抽出を通じてトリペプチド(トリペプチド(グルタチオン)含有酵母抽出物を製造する方法を提供しようとする。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、グルタチオンを含有する酵母を用いたグルタチオン抽出、およびこれから製造されたグルタチオン抽出物に関するものであって、熱水抽出法を用いて高い収率で抽出物を製造し、さらに熱水抽出と共に酵素処理を行って60%以上の乾燥物収率で抽出物を得ることができ、食品および健康機能性製品など様々な応用分野に多様に活用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一例によって90℃の熱水を用いた抽出時、時間経過によるトリペプチド(グルタチオン)含量パターンを示す。
図2】本発明の一例によって80℃の熱水を用いた抽出時、時間経過によるトリペプチド(グルタチオン)含量パターンを示す。
図3】本発明の一例によって70℃の熱水を用いた抽出時、時間経過によるトリペプチド(グルタチオン)含量パターンを示す。
図4】本発明の一例によって65℃の熱水を用いた抽出時、時間経過によるトリペプチド(グルタチオン)含量パターンを示す。
図5】本発明の一例によって60℃の熱水を用いた抽出時、時間経過によるトリペプチド(グルタチオン)含量パターンを示す。
図6】本発明の一例によってProteaseの種類および濃度による抽出乾燥物の収率(w/w%)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明をさらに詳しく説明する。
本発明の一例は、グルタチオンを含有する酵母の菌体または菌体の懸濁液を温度60~90℃の熱水で抽出する溶媒抽出物を含むグルタチオンを含有する酵母抽出物に関するものである。
【0016】
本発明の追加一例は、グルタチオンを含有する酵母の菌体または菌体の懸濁液を温度60~90℃の熱水で抽出する溶媒抽出物を得る工程を含むグルタチオン抽出物、またはグルタチオンを含有する酵母抽出物に関するものである。
【0017】
前記酵母抽出物は、固形分含量を基準にして、グルタチオン含量が、0.5~20重量%、1~20重量%、1.5~20重量%、2.0~20重量%、2.5~20重量%、3.0~20重量%、3.5~20重量%、4.0~20重量%、4.5~20重量%、0.5~18重量%、1~18重量%、1.5~18重量%、2.0~18重量%、2.5~18重量%、3.0~18重量%、3.5~18重量%、4.0~18重量%、0.5~16重量%、1~16重量%、1.5~16重量%、2.0~16重量%、2.5~16重量%、3.0~16重量%、3.5~16重量%、4.0~16重量%、4.5~16重量%、0.5~15重量%、1~15重量%、1.5~15重量%、2.0~15重量%、2.5~15重量%、3.0~15重量%、3.5~15重量%、4.0~15重量%、0.5~14重量%、1~14重量%、1.5~14重量%、2.0~14重量%、2.5~14重量%、3.0~14重量%、3.5~14重量%、4.0~14重量%、または4.5~14重量%のグルタチオンを含有することができる。本発明による酵母抽出物は、トリペプチド、例えばグルタチオン生性能を有して酵母菌体内にグルタチオンを含有する酵母を抽出原料として使用して、高い含量と収率でグルタチオンを抽出して、グルタチオン含量の高い酵母抽出物を製造することができる。
【0018】
前記酵母抽出物は、溶媒抽出物自体、または濃縮物の液状であるか、または乾燥工程を追加的に行って得られた乾燥物であってもよい。濃縮および乾燥工程は特に制限されないが、ペプチドおよびタンパク質などを含むので、低温処理が好ましく、例えば熱風乾燥または凍結乾燥などを含む。
【0019】
前記酵母抽出物を製造する抽出原料は、グルタチオンを含有する酵母であってもよく、詳しくは、酵母菌体または菌体の懸濁液であってもよい。前記酵母はSaccharomyces属菌株(例えば、Saccharomyces cerevisiae)、Candida属菌株(例えば、Candida utilis)、およびPachia属菌株からなる群より選択された1種以上であってもよく、摂取可能性を考慮して食用可能な酵母を選択することが好ましく、さらに好ましくは、Candida utilisであってもよい。
【0020】
前記抽出原料として酵母菌体を懸濁液を使用する場合、菌体濃度は600nmで測定された光学密度(OD)値が50~500、50~450、50~400、50~350、100~500、100~450、100~400、100~350、150~500、150~450、150~400、または150~350であってもよい。または、前記菌体濃度は、乾燥菌体重量(DCW)を基準にして、40~200g/L、または40~160g/Lであってもよい。前記菌体懸濁液は、菌体を水に懸濁して製造されたものであってもよく、具体的に、菌体培養液から菌体を回収して水に懸濁して製造されるものであってもよい。
【0021】
前記溶媒抽出物は、60~90℃の水を用いて抽出したものであり、エタノールを抽出溶媒として使用する場合、食品または医薬として使用される酵母抽出物は、エタノールを除去する工程が必須的であるので、産業的適用の限界があり、生産性も低いという問題点がある。本発明で水を抽出溶媒として使用して酵母抽出物を直ちに摂取可能であり、単純に乾燥することによって抽出溶媒を容易に除去することができて、産業的適用に長所を有する。
【0022】
前記酵母抽出物の抽出温度は、60~90℃の水を使用して調節することができ、例えば、60~90℃、62~90℃、64~90℃、60~98℃、62~80℃、64~80℃、60~75℃、62~75℃、64~75℃、または65~75℃範囲であってもよいが、これに限定されない。
【0023】
本発明の追加的な一例で、グルタチオンを含有する酵母の菌体または菌体の懸濁液を温度60~90℃の水を用いて抽出する溶媒抽出物を得る工程は、タンパク質分解酵素(protease)で菌体を処理して水で抽出することで得られたものであってもよい。
【0024】
具体的に、前記溶媒抽出物は、グルタチオンを含有する酵母の菌体を60~90℃の水で抽出して得られた1次抽出物と、前記1次抽出物から回収された菌体をタンパク質分解酵素で処理して水で抽出することで得られた2次抽出物を含むものであってもよい。さらに詳しくは、グルタチオンを含有する酵母の菌体を60~90℃の水で抽出して得られた1次抽出物から得られた上澄み液と、前記1次抽出物から回収された菌体をタンパク質分解酵素で処理して60~90℃温度の水で抽出することで得られた2次抽出物の上澄み液を混合したものであってもよい。
【0025】
前記タンパク質分解酵素は、ペプチド結合を切断する活性を有している限り特に限定されないが、エンドプロテアーゼ、エキソプロテアーゼまたはこれらの混合酵素または前記二つの活性を全て有する複合活性酵素を使用することができ、好ましくは、エンドプロテアーゼ、またはエンドプロテアーゼおよびエキソプロテアーゼの混合酵素であってもよい。エキソプロテアーゼアミノ末端に作用するアミノ末端加水分解酵素とカルボキシ末端に作用するカルボキシ末端加水分解酵素を含み、エンドプロテアーゼは、活性中心のアミノ酸種類によって、セリンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、アスパラギンプロテアーゼ、およびメタロプロテアーゼを全て含む。
【0026】
本発明のタンパク質加水分解酵素は、食品用材料のタンパク質を加水分解する酵素を意味する。好ましくは、タンパク質加水分解酵素は、MULTIFECT、Alcalase、Protamex、Neutrase、Esperase、Flavourzyme、およびFungal proteaseからなる群より選択されたものであってもよい。Alcalaseは、セリン類型のエンドプロテアーゼであり、MULTIFECTはメタロプロテアーゼである。本発明のエンドペプチダーゼ(endopeptidase)およびエキソペプチダーゼ(exopeptidase)複合活性酵素は、エンドペプチダーゼとエキソペプチダーゼ活性を同時に示すペプチダーゼ(peptidase)を意味する。好ましくは、Alcalase、Flavourzyme、およびFungalproteaseからなる群より選択されたものであってもよく、さらに好ましくは、Alcalase、またはFlavourzymeであってもよい。
【0027】
本発明で水を用いた菌体の溶媒抽出を行った後に菌株内有用成分の追加的な抽出のためにタンパク質分解酵素で処理して追加抽出を行って酵母抽出物の乾燥物の収率を高める長所がある。前記酵母抽出物の乾燥物収率は、抽出溶媒である水で溶出される水溶性成分で主にタンパク質およびペプチドを含む。本明細書で、酵母抽出物は、溶媒抽出物を含むので、酵母菌体から溶出されて水に溶解される水溶性物質、例えばタンパク質、ペプチドなどを含む。よって、本発明による酵母抽出物は、タンパク質およびペプチド含量が、固形分基準で酵母抽出物100%を基準にして、40重量%以上、50重量%以上、60重量%以上を含むことができ、上限として95重量%以下、90重量%以下、85重量%以下、80重量%以下、75重量%以下、または70重量%以下に含むことができる。
【0028】
前記酵素処理工程で、適した酵素量は0.5~5μl/mlであってもよいが、これに限定されない。
【0029】
本発明による酵母抽出物の製造方法において、酵母抽出物の乾燥物収率は20重量%~65重量%、具体的に30~45重量%であってもよい。
【0030】
本発明による酵母抽出物の製造方法または溶媒抽出物において、水で抽出する工程は、3分~240分、3分~220分、3分~210分、3分~200分、5分~240分、5分~220分、5分~210分、5分~200分、7分~240分、7分~220分、7分~210分、7分~200分、9分~240分、9分~220分、9分~210分、9分~200分、9分~190分、9分~180分、9分~170分、9分~160分、9分~150分、9分~140分、9分~130分、または9分~125分であってもよく、例えば10分~120分であってもよい。
【0031】
本発明による酵母抽出物の製造方法または溶媒抽出物において、酵母抽出物はタンパク質およびペプチドなどを多量に含むので、水で抽出する時間と抽出温度は、好ましくは高温で抽出する場合には抽出時間を短時間と設定し、比較的低温で抽出する場合には長時間と設定して抽出収率を最大に確保することができる。例えば、80~90℃の水を使用して抽出する場合、比較的短時間である60分以下と設定することができ、例えば3分~60分、または5分~30分で行うことができる。または、85℃以下の温度条件、例えば60~85℃、60~80℃または60~75℃の抽出温度で抽出を行う場合、7分~240分、9分~240分、または10分~240分などで前記温度条件を適切に選択して行うことができる。
【0032】
本発明による酵母抽出物の製造方法または溶媒抽出物において、抽出液量によって抽出時間を適切に調節して行うことができ、例えば抽出液量10~1000ml抽出時、約25分内外、1000~2000ml抽出時、約35分で抽出することができ、これに限定される意図ではない。
【0033】
本発明による酵母抽出物の製造方法または溶媒抽出物において、抽出過程で抽出液を攪拌または混合しながら行うことができ、例えばMagnetic Stirrerを使用して100~1000rpmで溶液がよく混合されるように攪拌しながら抽出を行うことができる。
【0034】
本発明は、グルタチオンを含有する酵母を用いたグルタチオン抽出およびこれから製造されたグルタチオン抽出物に関するものであって、熱水抽出法を用いて20重量%以上、22重量%以上、または25重量%以上、例えば20重量%~45重量%の収率で抽出物を製造することができる。さらに、熱水抽出と共に酵素処理を行って、42重量%以上、45重量%、60重量%以上の高収率で抽出物を得ることができ、65%以上の高いタンパク質含量を有する酵母抽出物を製造して、食品および健康機能性製品など様々な応用分野に多様に活用可能である。
【実施例
【0035】
下記実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明が下記実施例で限定される意図ではない。
【0036】
実施例1: グルタチオン生成微生物の準備
1-1: 菌株準備
グルタチオンを生産する微生物を探索するために、全国の伝統市場で販売するマッコリ、麹、伝統醤類などを購入して試料として使用した。試料1gを0.85%のNaCl 10mLに懸濁し、懸濁液100μLをYPD(Yeast extract 10g/L、Peptone 20g/L、Dextrose 20g/L、pH6.5~6.8)寒天プレート(agar plate)に塗抹した後、30℃で2日間固体培養を実施した。固体培地で育ったコロニーの中から形状と大きさがそれぞれ異なるものを選別して150個の単一コロニーを分離した後、YPD broth(yeast extract 10g/L、Peptone 20g/L、Dextrose 20g/L)を用いて、Test tubeで30℃で24時間振とう培養して菌株培養物を得た。
前記菌株培養物に対して600nmで吸光度を測定して菌体濃度を測定し、その結果からcell OD値を測定した。前記測定された吸光度(cell O.D)は17.8であった。
【0037】
1-2: グルタチオン含量分析
前記菌株培養液を遠心分離して上澄み液を除去し、蒸留水で1回洗浄して菌体を回収した。回収した菌体に40~70%エタノールを投入し、fine mixerを使用して10~30分間細胞内グルタチオンを抽出した。前記抽出溶液を遠心分離後、上澄み液を取って0.5M potassium phosphate pH8.0バッファーに溶解させた10mM DTNB(5,5’-Dithiobis-(2-Nitrobenzoic Acid))と40℃で20分間反応して412nmで吸光度を測定してグルタチオン含量を確認し、前記グルタチオン含量(GSH mg/L)を測定した。グルタチオン分析に主に使用されるDTNBは、Ellman’s reagentと知られており、チオール(thiol)化合物を検出するために考案された試薬である。DTNBとGSHの反応で黄色の2-nitro-5-benzoic acidとGSSGが生成され、412nmでOD値を測定することによってGSHの濃度を計算することができる。前記測定されたグルタチオン含量は112mg/Lであった。
【0038】
1-3: 菌体乾燥重量(g)当りグルタチオン含量測定
前記菌株培養液を遠心分離して上澄み液を除去し、蒸留水で1回洗浄して菌体を回収した。前記回収された菌体に対して吸光度を測定し、吸光度による乾燥菌体濃度を計算した。具体的に、菌体乾燥重量(g)は前記培養液を遠心分離後に上澄み液を除去して菌体のみ回収し、回収した菌体を0.9%NaClで洗浄し、蒸留水で希釈して吸光度0.1~1の間になるようにサンプルを準備した。前記希釈した菌体試料に対して600nmで吸光度を測定し、吸光度による乾燥菌体重量を計算した。前記吸光度を測定した後に、前記菌体を0.2μmのろ過紙で減圧下でろ過した。菌体がろ過されたろ過紙は60℃で12時間以上乾燥し、シリカゲルが入っているデシケーターで6時間以上放置した後、重量を測定した。空のろ過紙と菌体がろ過されたろ過紙の重量差を計算して乾燥菌体量を確認した。したがって、吸光度値による乾燥菌体濃度(g/L)を確認することができた。
前記吸光度測定後菌体に対して前記実施例1-2と実質的に同様な方法でグルタチオンを抽出し、前記抽出溶液を遠心分離後、上澄み液を取ってグルタチオン生成量(g/L)を測定した。測定されたグルタチオン生成量を前記計算された乾燥菌体濃度(g/L)で割った後に100をかけて、乾燥菌体重量(g)当りGSH%を計算した。前記菌体乾燥重量(g)当りグルタチオン含量を測定して乾燥菌体重量(g)当りGSH含量(%)をGSH(%)/g-cellで示す。前記菌株は、グルタチオン収率(生産量、GSH(%)/g-cellが1.6%を有する。
【0039】
1-4: アルコール分解酵素(ADH)活性分析
ADH活性は、ADH Activity Assay Kit(Abcam)を使用して分析した。具体的に、温度30℃、YPD培地で24~48時間培養した後、cellが1*106CFU/mlになるように回収した。蒸留水で回収したcellを洗浄した後、ADH assay bufferを添加し、bead beaterを使用して細胞壁を破砕した。反応液組成は、ADH assay buffer 82μl、Developer 8μl、Isopropanol 10μlにサンプルまたはNADH標準物質を濃度別に50μl混合した。37℃で3分間反応後、450nmで実験区(A0)と対照区吸光度を測定した。37℃で30分間追加反応後、450nmで吸光度の変化を測定した後に単位時間当り生成されたNADH濃度を計算した。
したがって、前記菌株は、菌体OD値が高いながらもグルタチオン生産量が高いSYC-PR20菌株であり、これは受託番号KCCM12777Pを有するCandida utilis SYC-PR20である。前記菌株は、グルタチオン収率1.6%、ADH activity 0.26mU/mlで優れた特性を有し、配列番号1の18S rDNA配列を有する。
【0040】
1-5: 菌体獲得
種培養液で、前記菌株培養物3mlを測量して、YPD培地50mlが入っている三角フラスコに全て接種した。前記30℃で48時間振盪培養し、培養液1mlをサンプリングして12,000rpmで5分間遠心分離した。前記上澄み液の培地成分を除去し、同量の蒸留水で菌体を洗浄し、12,000rpmで5分間遠心分離して菌体を獲得した。
【0041】
実施例2:抽出温度によるグルタチオン抽出
2-1: 抽出試料
菌体内に存在するトリペプチド(グルタチオン)の回収のための方法で菌体に蒸留水を添加し懸濁して一定濃度の菌体濃度に調節し、多様な抽出温度条件で抽出を行って、トリペプチド(グルタチオン)の最適抽出条件を確認しようとした。
グルタチオン生産菌株は、実施例1で得られたCandida utilis SYC-PR20を使用し、実施例1と同様な方法で菌体を獲得し、蒸留水に懸濁してOD600値が100になるように合わせて菌体希釈液を製造した。前記菌体希釈液を熱水抽出のための試料として使用した。
【0042】
2-2: グルタチオン抽出
前記準備された蒸留水に懸濁してOD600値が100になるように合わせて菌体希釈液を抽出試料として使用して、90℃、80℃、70℃、65℃、または60℃温度を有する5つの温度条件の熱水を用いてグルタチオン抽出を行った。
具体的に、抗温水槽を用いて抽出温度を調節し、抽出液量を100mLにして抽出を行い、前記抽出過程でMagnetic Stirrerを使用して100~1000rpmで溶液がよく混合されるように攪拌した。前記抽出過程で、5分または10分間隔で試料を採取して抽出液に含まれているグルタチオン含量を、DTNB発色法で定量した。
前記抽出溶液を遠心分離後、上澄み液を取って0.5M potassium phosphate pH8.0バッファーに溶解させた10mM DTNB(5,5’-Dithiobis-(2-Nitrobenzoic Acid))と40℃で20分間反応して412nmで吸光度を測定してグルタチオン含量を確認し、前記グルタチオン含量(GSH mg/L)を測定した。グルタチオン分析に主に使用されるDTNBはEllman’s reagentと知られており、チオール(thiol)化合物を検出するために考案された試薬である。DTNBとGSHの反応で黄色の2-nitro-5-benzoic acidとGSSGが生成され、412nmでOD値を測定することによってGSHの濃度を計算することができる。GSSGはglutathione reductaseによってGSHに還元されて再びDTNBと反応するrecycling systemを成すようになる。熱水温度による抽出液に含まれているグルタチオン含量分析結果を、図1図5にそれぞれ示した。前記図1図5に記載された熱水温度によるグルタチオン最大抽出含量と最大抽出含量に到達する時間を下記表1に記載した。
【0043】
【表1】
【0044】
上記表1および図1図5の抽出結果によれば、80℃および90℃の抽出温度で最大GSH含量に到達する抽出時間は約5分であり、抽出時間が経過するほどグルタチオン含量が多少減少した。したがって、高温および短時間でグルタチオンを抽出することが好ましいのを確認した。また、抽出温度が低くなるほど最大GSH含量に到達する抽出時間は増加する傾向であり、60℃以下の温度ではグルタチオン最大抽出含量が次第に減少した。
したがって、グルタチオン最大抽出含量と最大抽出含量に到達する時間を考慮し、産業的に適用時温度上昇による費用、高温で短時間抽出時温度調節の容易性などを考慮して、抽出温度は70℃が好ましいことを確認した。抽出温度が70℃である条件で、抽出時間が10分以上経過される時点でグルタチオンの最大抽出含量を示し、20分まではほとんど一定の抽出含量を示した。
【0045】
実施例3: 菌体濃度による乾燥物収率測定
本実施例では、抽出に使用された試料の菌体濃度による酵母抽出物の乾燥物含量、乾燥物収率、およびGSH含量を測定して、最適抽出条件を確立しようとした。
具体的に、実施例2-1で製造した抽出試料の準備過程で、菌体を蒸留水に懸濁してOD600値が100~500になるように合わせて、相異なる菌体濃度を有する6つの菌体希釈液を製造した(表2)。
前記準備された菌体希釈液を用いて、70℃温度の熱水を用いて実施例2-2と実質的に同様な方法でグルタチオンを抽出し、得られた抽出液からPASTEを除去して粗抽出液を得て粗抽出液の体積を測定して表2に示した。前記粗抽出液を凍結乾燥して粗抽出物の乾燥粉末を製造し、前記粗抽出液10ml speed vacを凍結乾燥した後、得られた乾燥粉末の重量を測定して乾燥物重量(g/L)として下記表2に示した。前記乾燥物重量に回収液量をかけて粗抽出液の乾燥物の総乾燥物重量(g)として表2に示した。前記得られた総乾燥物重量(g)を下記数式1に代入して乾燥物収率を得て、下記表2にw/w%で表した。下記数式1中、ODは、波長600nmで測定されたOptical densityとして菌体濃度を意味する。
【0046】
[数式1]
乾燥物収率=総乾燥物重量(g)/(OD*0.4)*100
【0047】
【表2】
【0048】
上記表2に示したように、OD600が500である条件では酵母抽出物の乾燥物収率が23.92%(w/w)であり、菌体濃度OD600値が250である条件で酵母抽出物の乾燥物収率が最も高いのを確認することができた。よって、総乾燥物含量およびGSH含量%は、菌体濃度が高まるほど高まるので菌体濃度(OD)値が高まるほど有利であるが、但し菌体OD値が増加するほど回収液量が減少して乾燥物収率が減少するので、乾燥物収率を共に考慮して適切な菌体濃度を調節することが好ましい。よって、前記実験結果乾燥物収率とGSH含量を考慮して、OD値が50~500で抽出を行うことができ、好ましくは100~400であってもよい。
【0049】
実施例4: タンパク質分解酵素を用いたグルタチオン抽出
本実施例では、タンパク質分解酵素(プロテアーゼ)で処理してグルタチオンの抽出含量を高め、酵母抽出物の乾燥収率を高めようとした。よって、熱水抽出を行う前段階で、菌体希釈液を酵素で処理して、酵素の効果を直接的に確認しようと抽出されて溶出されるGSH含量で測定指標を確認した。プロテアーゼを使用時、菌体分解が促進されて細胞内グルタチオンが急速に溶出され、溶出されたグルタチオンが時間経過によって分解されて含量が低まるようになる。したがって、時間経過および酵素量増加によるグルタチオン含量減少が大きい酵素を選定しようとした。
前記タンパク質分解酵素は、Novozyme社のAlcalase(商標名)とFlavourzyme(商標名)の2種とmultifect(商標名)およびpapainの2種を選択して総4種に対して実験を行った。Proteaseの一般的な特徴は、endo-type(Alcalase)とexo-type(papain)の二つとして作用し、二つが混合されたFlavourzymeがある。
具体的に、酵素処理および抽出のための試料は前記実施例2-1と同一方法で製造した。前記製造された菌体希釈液試料を1.5ml容量のE-Tubeに1ml反応体積で分注し、前記分注された菌体希釈液に前記4種酵素を反応体積に対比して0、1、2、5、10、および15μl/mlでそれぞれ添加して、温度50℃で120分間酵素反応を行いながら、30分、60分および120分で試料を採取して、実施例2-2と実質的に同様な方法でDTNB発色法でグルタチオンの含量を分析した。4つの酵素の酵素種類および使用量(μl/ml)によるGSH含量(μM)を下記表3に示す。
【0050】
【表3】
【0051】
タンパク質分解酵素(protease)4種でグルタチオン含有菌体を処理する場合、protease濃度変化によるGSH含量変化を確認しようとした。Alcalase、およびFlavourzymeが濃度によってGSH含量変化が測定されて細胞壁に作用することを間接的に確認した。反面、multifecは酵素濃度による変化がなく、papainはGSH発色法に影響を与えるため実験から除外し、GSH含量の有意な変化がある2種(Alcalase、Flavourzyme)を選定した。
【0052】
実施例5: タンパク質分解酵素および熱水抽出を用いたグルタチオン抽出
熱水を用いた菌体の溶媒抽出を行った後に菌株内有用成分の追加的な抽出のためにタンパク質分解酵素で処理して追加抽出を行って、酵母抽出物の乾燥物の収率を高めようとした。前記酵母抽出物の乾燥物収率は、抽出溶媒である水で溶出される水溶性成分で主にタンパク質およびペプチドを含む。
具体的に、酵素処理および抽出のための試料は、実施例2-1と同一方法で菌体を蒸留水に懸濁してOD600値が100になるように合わせて菌体希釈液試料100mLを製造した。前記製造された試料を30~35ml flacon tube3個にそれぞれ分注した。実施例2と実質的に同様な方法で、前記flacon tubeに分注された菌体希釈液を70℃温度条件で熱水を用いて25分間グルタチオンを抽出した。前記抽出液を遠心分離し上澄み液を回収して粗抽出液を製造した。
前記上澄み液を回収してから残った菌体ペースト(paste)に蒸留水90mLを添加した後に、Novozyme社のAlcalaseとFlavourzyme2種を酵素濃度1μl/ml(0.001%)、5μl/ml(0.005%)、および10μl/ml(0.01%)でそれぞれ処理し、温度50℃で120分間酵素反応を行った。
前記酵素反応生成液に対して70℃温度条件で熱水を用いて25分間グルタチオンを2次抽出した。前記2次抽出液を遠心分離し、上澄み液を回収して2次粗抽出液を製造した。
前記1次粗抽出液と2次粗抽出液を混合した抽出液試料に含まれているグルタチオン含量を実施例2-2と実質的に同様な方法でDTNB発色法で分析した。
また前記混合試料を凍結乾燥して粗抽出物の乾燥粉末を製造し、前記粗抽出液10ml speed vacを凍結乾燥した後に得られた乾燥粉末の重量を測定して乾燥物重量(g/L)を得て、前記乾燥物重量に回収液量をかけて粗抽出液乾燥物の総乾燥物重量(g)を計算した。前記得られた総乾燥物重量(g)を前記数式1に代入して乾燥物収率(w/w%)を得て下記表4にw/w%で表わした。また、Protease種類および濃度別抽出物の乾燥物収率を図6に示す。
【0053】
【表4】
【0054】
上記表4に示したように、タンパク質分解酵素で処理して2次熱水抽出物を製造する場合、グルタチオンの含量減少なく、酵母抽出物の乾燥物を高い収率で獲得可能であるという長所があり、タンパク質分解酵素としてはAlcalaseがさらに好ましい。前記実験範囲内では処理した酵素量が増加するほど酵母抽出物の乾燥物収率も増加した。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】