(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-18
(54)【発明の名称】アバロパラチドを用いた長骨骨折の治療
(51)【国際特許分類】
A61K 38/29 20060101AFI20240111BHJP
A61P 19/00 20060101ALI20240111BHJP
A61P 19/08 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
A61K38/29
A61P19/00
A61P19/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023540685
(86)(22)【出願日】2022-01-04
(85)【翻訳文提出日】2023-07-20
(86)【国際出願番号】 IB2022050048
(87)【国際公開番号】W WO2022149066
(87)【国際公開日】2022-07-14
(32)【優先日】2021-01-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】513073898
【氏名又は名称】ラジウス ヘルス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【氏名又は名称】細田 芳徳
(74)【代理人】
【識別番号】100187850
【氏名又は名称】細田 芳弘
(72)【発明者】
【氏名】マンスタット,ベアテ クララ マリア
(72)【発明者】
【氏名】ミトラック,ブルース
【テーマコード(参考)】
4C084
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084BA44
4C084DB32
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZA961
4C084ZA962
(57)【要約】
長骨骨折のための外科的介入と組み合わせた治療有効量のアバロパラチドの毎日投与を含む、長骨骨折治癒を速める方法が本明細書において提供される。毎日投与は、長骨骨折のための外科的介入の前、その際またはその後に開始され、長骨骨折治癒を速める。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長骨骨折治癒を速めることを必要とする被験体において長骨骨折治癒を速める方法であって、長骨骨折のための外科的介入の後に、被験体に治療有効量のアバロパラチドを投与する工程を含む、方法。
【請求項2】
長骨骨折が脛骨骨折である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
骨折治癒、仮骨形成または両方が、骨折治癒を評価するためのCTスキャン、骨密度、仮骨形成の3D体積、ダイナミックステレオX線(DSX)による骨折部位硬さおよびmRUST X線撮影評価の少なくとも1つにより6、12または24週に確認される、前記請求項いずれか記載の方法。
【請求項4】
癒合が、6週、12週または24週での13より大きい脛骨骨折についての改変X線撮影癒合スコア(mRUST)により決定される場合に速められる、前記請求項いずれか記載の方法。
【請求項5】
骨の質が、12週もしくは24週または両方での骨密度スキャン(qCT)により確認される、前記請求項いずれか記載の方法。
【請求項6】
骨折修復の軟骨段階が、循環レベルのコラーゲンX(「CXM」)の検出により確認される、前記請求項いずれか記載の方法。
【請求項7】
骨折部位硬化が6週または12週に達成される、前記請求項いずれか記載の方法。
【請求項8】
治療有効量のアバロパラチドを投与することにより、骨再吸収(bone resorption)マーカーを上昇することなく、骨形成マーカーが上昇される、前記請求項いずれか一項記載の方法。
【請求項9】
外科的介入が:内固定、外固定、骨髄内釘固定、骨移植、プロテーゼまたはそれらの組み合わせから選択される、前記請求項いずれか一項記載の方法。
【請求項10】
外科的介入が骨髄内(IM)ロッドの植え込みである、前記請求項いずれか一項記載の方法。
【請求項11】
投与が約20~約100μgのアバロパラチドの毎日の皮下投与である、前記請求項いずれか一項記載の方法。
【請求項12】
投与が80μgのアバロパラチドの毎日の皮下投与である、請求項11記載の方法。
【請求項13】
投与が約100~約400μgのアバロパラチドの毎日の経皮投与である、前記請求項いずれか一項記載の方法。
【請求項14】
投与が300μgのアバロパラチドの毎日の経皮投与である、請求項13記載の方法。
【請求項15】
アバロパラチドが、少なくとも2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、6ヶ月、12ヶ月または18ヶ月間、毎日投与される、前記請求項いずれか記載の方法。
【請求項16】
アバロパラチドが3ヶ月間、毎日投与される、請求項15記載の方法。
【請求項17】
外科的介入の前に被験体に治療有効量のアバロパラチドを投与することにより前治療する工程をさらに含む、前記請求項いずれか記載の方法。
【請求項18】
長骨骨折治癒を速めることを必要とする被験体において長骨骨折治癒を速める方法であって、長骨骨折のための外科的介入後に、被験体に治療有効量のアバロパラチドを3ヶ月間毎日投与する工程を含む、方法。
【請求項19】
投与が80μgのアバロパラチドの毎日の皮下投与である、請求項18記載の方法。
【請求項20】
投与が300μgのアバロパラチドの毎日の経皮投与である、請求項18記載の方法。
【請求項21】
被験体が骨折についての高いリスクを有する、前記請求項いずれか記載の方法。
【請求項22】
高いリスクが、喫煙、糖尿病、血管疾患またはそれらの組み合わせに起因する、請求項21記載の方法。
【請求項23】
治癒時間が、アバロパラチド療法を受けていない被験体と比較して、少なくとも25%だけ減少される、前記請求項いずれか記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2021年1月5日に出願された米国仮特許出願第63/134,027号に対する優先権を主張し、その内容は、その全体において参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
米国において、毎年約1500万件の骨折が起こり、500,000件超のものが脛骨および腓骨を含む。(Praemer, American Academy of Orthopaedic Surgeons, 1st ed., 1992)。骨折治癒における合併症、例えば遷延治癒(delayed union)または偽関節は、通常の一般の損傷の10%~20%で起こると推定される。糖尿病および加齢などの共存症(co-morbidity)は、遷延治癒の割合を有意に増加し得る。遅延治癒(delayed healing)および偽関節は、一般人よりも軍人にとってさらにより大きな問題である。戦闘中に持続する開放脛骨骨折についての損傷の1年後に50%ほど高い偽関節の割合が報告されている。孤立性III型開放脛骨骨折を有する米国兵士についてわずか22%の任務に復帰する割合が報告されており、これは一般市民の集団における同様の重症度の損傷についての職場復帰率の半分未満である。任務に復帰できない兵士にとって、整形外科的な損傷は、最大量の永続的な不能を引き起こした。これらの損傷は重大な感情的および精神医学的な障害も引き起こし、いつか文民の仕事を再開するのは高エネルギー四肢外傷(high-energy extremity trauma)を持続する兵士の半数未満である。(Doukas, J. Bone Joint Surg. Am. 2013 Jan 16;95(2): 138-45)。長骨骨折治癒を速めるまたは高める薬剤についてまだ対処されていない必要性がある。
【発明の概要】
【0003】
発明の簡単な概要
本明細書において、アバロパラチドの毎日投与を含む、長骨骨折を有する被験体を治療する方法が提供される。投与は外科的介入に続き得る。投与はまた、外科治療の前のアバロパラチドでの前治療を含み得る。代替的に、いくつかの態様において、アバロパラチドは、偽関節のための外科的介入を回避するために投与され得る。
【0004】
一局面において、長骨骨折の治癒を速めるかまたは高める必要のある被験体において、長骨骨折の治癒を速めるかまたは高める方法が提供される。該方法は、長骨骨折のための外科的介入後に被験体に治療有効量のアバロパラチドを投与する工程を含む。いくつかの態様において、投与は、外科的介入の2週後に開始される。さらに、いくつかの態様において、投与は3ヶ月間の毎日投与である。
【0005】
いくつかの態様において、長骨骨折は脛骨骨折である。他において、長骨骨折は、大腿骨、上腕骨、橈骨、尺骨、腓骨、中足、指節骨、中手または鎖骨の骨折である。いくつかの態様において、複数の外傷の場合と同様に、複数の長骨骨折がある。
【0006】
いくつかの態様において、速められたまたは高められた治癒は、骨折治癒のためのCTスキャン、骨密度(bone mineral density)、仮骨形成の3D体積、ダイナミックステレオX線(Dynamic Stereo X-Ray)(DSX)による骨折部位硬化および脛骨骨折についての改変X線撮影癒合スコア(modified Radiographic Union Score for Tibial Fractures)(mRUST)評価の少なくとも1つにより6、12または24週に確認される骨折治癒、仮骨形成または両方により証明される。いくつかの態様において、癒合は、6週、12週または24週に>13よりも大きいmRUSTにより決定される場合に速められる。いくつかの態様において、骨の質は、12週もしくは24週または両方で、骨密度スキャン(qCT)により確認される。いくつかの態様において、骨折修復の軟骨段階は、循環レベルのコラーゲンX(「CXM」)の検出により確認される。いくつかの態様において、骨折部位硬化は、6週または12週に達成される。
【0007】
いくつかの態様において、治療有効量のアバロパラチドを投与することは、骨再吸収マーカーを上昇することなく、骨形成マーカーを上昇させる。
【0008】
いくつかの態様において、外科的介入は、内固定、外固定、骨髄内釘固定、骨移植、プロテーゼまたはそれらの組み合わせから選択される。いくつかの態様において、外科的介入は、骨髄内(IM)ロッドの植え込みである。
【0009】
いくつかの態様において、投与は、約20~約100μgのアバロパラチドの毎日の皮下投与である。いくつかの態様において、投与は、80μgのアバロパラチドの毎日の皮下投与である。
【0010】
いくつかの態様において、投与は、約100~約400μgのアバロパラチドの毎日の経皮投与である。いくつかの態様において、投与は、300μgのアバロパラチドの毎日の経皮投与である。
【0011】
いくつかの態様において、アバロパラチドは、少なくとも2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、6ヶ月、12ヶ月または18ヶ月間、毎日投与される。いくつかの態様において、アバロパラチドは3ヶ月間毎日投与される。
【0012】
いくつかの態様において、該方法はさらに、外科的介入前に治療有効量のアバロパラチドを被験体に投与することによる前治療を含む。
【0013】
いくつかの局面において、長骨骨折治癒を速めること、促進することまたは高めることを必要とする被験体において、長骨骨折治癒を速める、促進するまたは高める方法が提供される。該方法は、長骨骨折のための外科的介入後、3ヶ月間毎日治療有効量のアバロパラチドを被験体に投与する工程を含む。いくつかの態様において、投与は80μgのアバロパラチドの毎日の皮下投与である。いくつかの態様において、投与は300μgのアバロパラチドの毎日の経皮投与である。
【0014】
上記方法のいずれかのいくつかの態様において、被験体は、骨折についての高いリスクを有する。いくつかの態様において、高いリスクは、喫煙、糖尿病、血管疾患またはそれらの組み合わせに起因する。
【0015】
いくつかの態様において、治癒時間は、アバロパラチド療法を受けていない被験体と比較して、少なくとも25%だけ減少される。いくつかの態様において、治癒時間は、アバロパラチドの投与なしの治癒と比較して、2週、6週、2ヶ月またはさらに6ヶ月だけ短縮される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
発明の詳細な説明
偽関節骨折の定義の周りに単一のコンセンサスはないが、米国食品医薬品局(FDA)ガイドラインは、治療前の骨の治癒のX線撮影の証拠がない9ヶ月を示唆する。偽関節骨折は、治癒を促進するために外科的介入を必要とする可能性が97倍まで高い。アバロパラチドを投与することにより、長骨骨折を有する被験体の治癒速度を速める方法が本明細書において提供される。
【0017】
アバロパラチドは現在、骨折についての高いリスクを有する骨粗鬆症を有する閉経後の女性の治療について承認される。前臨床試験により、内部固定大腿骨骨折を有するラットにおいて骨折治癒の向上が示された。(Lanske, et al. “Abaloparatide, a PTH receptor agonist with homology to PTHrP, enhances callus bridging and biomechanical properties in rats with femoral fracture,” J Orthop Res. 2019 Apr;37(4):812-820)。テリパラチドに対するアバロパラチドの効力を比較する最近の臨床試験により、骨粗鬆症の治療においてより大きな骨密度増加およびより少ない高カルシウム血症が示された。(Sleeman, Am J Health Syst Pharm 76, 130-135 (2019);Miller, JAMA 316, 722-733 (2016))。骨折治癒におけるテリパラチドの効力を評価するためのいくつかの試験が行われたが(Shi, et al., Effectiveness of Teriparatide on Fracture Healing: A Systemic Review and Meta-Analysis, PLOS ONE, 2016: e0168691;Roberts et al. Anabolic Strategies to Augment Bone Fracture Healing. Curr Osteoporos Rep. 2018;16(3):289-298)、実施例1において本明細書の以下に記載された試験は、骨折治癒におけるアバロパラチドの効力を試験する最初の臨床試験である。脛骨骨折における比較的高い程度の断片内移動(interfragmentary motion) (IFM)のために、これらの長骨損傷は、軟骨内骨化を通じて優先的に治癒し、ここで軟骨中間物は、二次的な骨形成を駆動する。任意の特定の理論に拘束されることを望まず、アバロパラチドは、軟骨細胞および骨芽細胞の両方で高度に発現されるPTH1 G共役タンパク質受容体に結合し、そのために骨折修復の軟骨内および膜内段階の両方に影響を及ぼすので、アバロパラチドは、ヒトにおけるこれらの骨折の治療に有効であり得たと考えられる。
【0018】
実施例1は、二重盲検無作為化骨折治癒試験を示し、ここで骨髄内ロッドにより治療された脛骨骨折を有する患者は、アバロパラチド療法対プラセボ療法に無作為化される。脛骨についての改変X線撮影癒合スコア(mRUST)の骨折皮質スコアリングシステムは、0.74~0.89の級内相関係数(ICC)が報告される、脛骨骨幹骨折における仮骨形成および癒合に向かうX線撮影進行の等級付けについて検証されるので、試験の主要な長骨骨折として脛骨骨折治癒が選択された。(Mitchell et al., J Orthop Trauma. 2019 Jun;33(6):301-307;Fiset, et al., J Bone Joint Surg Am. 2018 Nov 7;100(21): 1871-1878;Litrenta et al., 2015 Nov;29(11):516-20)。さらに、骨折バイオマーカーアッセイを使用して、早期の骨の治癒(Working et al., Journal of Orthopaedic Research, 13 June 2020;Coghlan et al., Sci Transl Med 2017 Dec 6;9:419)、ならびに進歩した動的画像化(Tashman, S, Journal of Biomechanical Engineering. 2003 Apr;125(2):238-245)および修復の質の生体力学的評価を示し得る。本開示に従って、アバロパラチドが機械論的に働いて、骨折治癒の軟骨内段階を向上することが推測されるように、循環レベルのコラーゲンX(「CXM」)の検出による骨折修復の軟骨段階を測定する新規の血清系のバイオマーカーも使用される。実施例1試験における脛骨治癒の測定(CXMバイオマーカー、動的画像化、生体力学)は、アバロパラチドの投与後の骨折治癒の速度の有意味な変化を検出すると考えられる。
【0019】
被験体に治療有効量のアバロパラチドを投与する工程を含む、長骨骨折治癒を高めることまたは速めることを必要とする被験体において、長骨骨折治癒を高めるまたは速める方法が本明細書において提供される。いくつかの態様において、投与は、外科的介入に、例えば長骨骨折のための外科的介入の2週間後に続く。いくつかの態様において、アバロパラチドの投与は、外科的介入の必要性を防ぐために使用され得る。いくつかの態様において、アバロパラチドの投与は、外科的介入の前またはその間に開始され得る。長骨骨折は脛骨の骨折であり得る。代替的にまたは付加的に、例えば外傷の場合、長骨骨折は、鎖骨、上腕骨、橈骨、尺骨、中手、指節骨、大腿骨、腓骨および/または中足の1つ以上の骨折であり得る。
【0020】
本明細書で使用する場合、用語「速めること(accelerating)」、「速める(accelerate)」、「高めること(enhancing)」、「高められる(enhanced)」、「高める(enhance)」等は、アバロパラチドの投与なしの治癒と比較して、長骨骨折治癒の質、価値または程度を強化すること、速めることまたは増幅することをいう。
【0021】
長骨骨折の種類(例えば横、斜め、らせんまたは粉砕)ならびに破壊または細片の重症度および数に応じて、使用され得るいくつかの外科的介入がある。それらは一般的に3つのカテゴリー:内固定、外固定および骨髄内釘固定にグループ分けされる。内固定について、骨折した骨の整列を生成および維持するために、金属ピン、プレート、ねじ等が骨に配置される。外固定について、金属ピンまたはねじが骨折の部位の上および下の骨に配置され、次いでこれは骨の外側のバーまたは網目に連結される。骨髄内釘固定において、骨の中心に金属ロッドが挿入され、骨を整列してかつ安定に維持する。回復時間は完全に治癒するために4~6ヶ月であり得るか、または骨折ならびに患者の年齢および健康状態に応じて9ヶ月以上かかり得る。いくつかの態様において、ヒト被験体は骨粗鬆症を有さない。
【0022】
いくつかの態様において、アバロパラチドは、80μgのアバロパラチドを毎日送達する皮下注射、例えば現在承認されるTYMLOSアバロパラド注射生成物のためのデバイスおよび製剤を介して送達される。いくつかの態様において、該デバイスおよび製剤は、2010年9月28日に発行された米国特許第7,803,770号;2012年4月3日に発行された同8,148,333号;および2014年6月10日に発行されたUS 8,748,382号に開示され、それらの全ては、それらの全体において参照により明白に援用される。
【0023】
いくつかの態様において、アバロパラチドは経皮的に送達される。いくつかの態様において、経皮デバイスは、2017年4月13日に公開された国際特許出願公開WO2017/062922;2017年10月26日に公開されたWO2017/184355;2017年4月13日に公開されたWO2017/062727;2017年10月26日に公開されたWO2017/184355;2019年4月24日に公開されたWO2019/077519;および2020年9月30日に公開されたW02020/17443に開示されるデバイス、アプリケーターおよび/または製剤であり、それらの全ては、それらの全体において参照により明白に援用される。これらの経皮デバイスは、単回使用アプリケーターまたは複数回使用され得る適用により展開され得る。いくつかの態様において、アバロパラチド製剤は、亜鉛塩(例えばZnC12)を含む。いくつかの態様において、経皮デバイスは、約300μgのアバロパラチドを送達する経皮パッチであり、該経皮パッチは毎日投与される。
【0024】
いくつかの態様において、アバロパラチドで治療される被験体における治癒時間は、同じ年齢群で同様の外科的処置を受け、同じ型の骨折を有する治療されない被験体における治癒時間と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%または少なくとも50%だけ減少する。いくつかの態様において、アバロパラチドで治療する被験体における治癒時間は、同じ年齢群で、同様の外科的処置を受け、同じ型の骨折を有する治療されない被験体における治癒時間と比較して、少なくとも2週、4週、6週、8週、3ヶ月、6ヶ月、1年または18ヶ月だけ減少する。いくつかの態様において、アバロパラチドで治療される被験体における骨折治癒時間の減少の程度は、治療されない被験体と比較して、被験体の年齢に相関する。例えば、骨折治癒時間の最も高い減少は、アバロパラチドで治療される最も高齢の被験体において観察され得る。ある態様において、骨折治癒時間のパーセンテージ減少は、より高齢の被験体においてより高い。いくつかの態様において、より高齢の被験体における治癒時間のパーセンテージ減少は、同じ型の骨折を有するより若年の被験体における治癒時間のパーセンテージ減少と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%または少なくとも50%だけ高い。
【0025】
一般的に、骨折治癒の3つの段階:血腫の形成または炎症性段階、軟骨および線維性仮骨の形成がある修復段階ならびに仮骨が中実の骨で置き換えられる再構築段階がある。
【0026】
いくつかの態様において、仮骨形成は、6週、12週または24週に達成される。いくつかの態様において、骨折治癒は、6週または12週に達成される。いくつかの態様において、骨折治癒は6ヶ月に達成される。いくつかの態様において、偽関節の割合または機会は25%未満である。いくつかの態様において、偽関節の機会または割合は10%未満である。いくつかの態様において、偽関節の機会または割合は5%未満である。
【0027】
骨折治癒および仮骨形成は、CTスキャン、骨密度および/または仮骨形成の3D体積により確認され得る。骨折治癒および仮骨形成は、ダイナミックステレオX線(DSX)による6週、12週および/または24週での骨折部位硬さにより確認され得る。骨折治癒は、骨折治癒を評価するためのmRUST X線撮影評価により確認され得る。ある態様において、mRUSTスコアは13より高い。
【0028】
これらの態様のいずれかにおいて、治療有効量は、臨床試験において示されるように、ヒトにおいて有効であると臨床的に明らかにされる。用語「臨床効力」、「臨床的に有効」等は、US食品医薬品局(FDA)または任意の海外の同等物、例えば欧州医薬品庁により実行される臨床試験において示される効力をいう。
【0029】
長骨骨折の治癒を必要とする被験体における長骨骨折治癒の方法も提供され、該方法は、被験体に治療有効量のアバロパラチドを投与する工程を含み、偽関節のために外科的介入は必要とされない。
【0030】
特許請求される方法をより良く説明するために実施例が提供され、本明細書に提供され、特許請求される方法の範囲を限定するようには解釈されない。特定のものが言及される程度まで、実施例は例示を目的とし、開示の限定を意図しない。依然として本開示の範囲内にありながら、本明細書に記載される手順において多くの変形がなされ得ることが理解される。かかる変形が本開示の範囲に含まれることが本発明者らの意図である。
【実施例】
【0031】
実施例
実施例1:脛骨骨折治癒を速めるためのアバロパラチド療法
これは、脛骨骨折治癒を速めることを目的とした、アバロパラチドを用いた最初の臨床的介入である。この試験は、骨髄内(IM)ロッドで治療された脛骨骨折の二重盲検無作為化2アーム試験である。外科治療の後、患者は、2つの群:プラセボで治療する脛骨骨折およびアバロパラチドで治療する脛骨骨折に無作為化される。1アーム当たり30名の被験体、合計60名の被験体がある。この試験の持続時間は、1患者当たり24週で60名の患者について約3年であると予想される。
【0032】
プラセボまたはアバロパラチド療法は、手術の2週間後に開始され、80ugの用量で連続して3ヶ月間の毎日投与が継続される。全ての群は、プラセボまたはアバロパラチドの注射ペンのいずれかを受け、ペンの外観は同一である。被験体が一般的な副作用(頭痛またはめまい)を経験する場合、彼らは2週間、毎日注射用量を40ugに減らし、次いで完全な80ug用量を再開する。試験の完了に薬物の完全用量が追加される。
【0033】
患者は、2、6、12、18および24週目にまたは癒合が達成されるかもしくは変形癒合が診断されるまで(6ヶ月)、治癒の追跡評価に戻る。この試験の主要終点は、>13のmRUSTスコアまでの時間である。二次的治癒評価は、血清系コラーゲンXバイオマーカー(「CXM」)、進歩した動的画像化および定量的CTスキャン、ならびに標準化された患者が報告する結果を含む。
【0034】
8個の小さな(1mm)タンタルビーズ(4個は骨折の近位および4個は骨折の遠位)は、十分に画定された放射線不透過性ランドマークを提供するための外科治療の時間に、参加者の脛骨に植え込まれる。これは、研究者が高速二方向X線撮影を使用して、完全な3D運動学的分析を行うことを可能にする。
【0035】
含む基準
患者は:男性または女性であり;18歳以上であり;損傷前に最少の社会での歩行(community ambulator)を有し;開放または閉鎖の骨幹脛骨骨折(AO/OTA型42)を有し;開放骨折は、有意な骨膜損傷を有さずにGustilo-Anderson型1、2または3Aでなければならず;片側脛骨骨幹骨折についての外科的治療を受けるように予定され;骨髄内(IM)ロッド(広げられる/広げられない、施錠/解放)での計画された内脛骨固定を有する。
【0036】
排除基準
高カルシウム血症または副甲状腺機能亢進症;パジェット病または任意の他の骨疾患;骨癌;血中の高アルカリホスファターゼレベル;1年以内の骨折;残存脛骨インプラント;移動性または下肢の機能を有意に阻害する同時損傷または他の骨折;多発外傷のためのさらなる骨折;重大な創傷感染;有意な放射線曝露歴(例えば癌治療のため);ウルフ-パーキンソン-ホワイト症候群;失神の原因的な経歴を伴う慢性の十分に確立された、医学的に支持された高血圧を有する/有した;試験の期間にわたり妊娠しているかまたは妊娠する予定のある女性および授乳中の女性;BMI > 35を有する;人生で最大の間(2年)、以前にアバロパラチドを受けたかまたは試験の経過にわたり人生の最大量を超える患者は試験から排除する。
【0037】
CTスキャン(12、24週)
外科治療の後、12週のCTスキャンを得て、骨/骨折外形、植え込まれたマーカー位置および初期の仮骨形成を決定する。24週CTは、治癒の最終定量的評価としても取得される。治癒の定量的評価に加えて、骨密度(BMD)および仮骨形成の3D体積を定量化する。密度較正のためのスキャンの間に、骨密度較正模型を足の下に配置する。
【0038】
骨折バイオマーカーおよび代謝安全性パネルのための静脈穿刺(0、2、6、12、18、24週)
血液(10mL)を最初およびそれぞれの追跡訪問の際に収集する(0/ベースライン、2、6、12、18および24週)。5滴の血液を、収集シリンジまたはチューブから903 Protein Saver Cardに移し、3mLを、Vail Health Hospital Labのために取り分け、代謝パネルおよび骨特異的アルカリホスファターゼ(BSALP)レベルを実施する。これらは、高カルシウム血症ならびに増加したALPおよびBSALPレベルの薬物に関連のあるリスクのために有害作用が起こらないことを確実にするための予防安全性スクリーニングである。さらなる血液を、遠心分離によりさらに処理して、上清/血清を収集する。血清を凍結バイアルに移し、データ、試料体積および脱同定した患者の指標で標識し、次いで-80Cに置く。バイオマーカーデータは、全試験を完了するまで保管し、次いで検証されたELISA系バイオアッセイを使用する定量化のために送る。
【0039】
患者が報告した結果(PRO)評価(0、2、6、12、18、24週)
カスタマイズされた電子質問票を集め、いくつかの標準PROスケールを捕捉する。PROスコアを計算して、安全なMySQLデータベースに保存する。PROは、BPI、SFMA、VR-12、PHQ-9およびPSQ-18を含む。骨折質問票は最初の静脈穿刺の際にも与えられる。
【0040】
ダイナミックステレオX線(DSX)画像化(6、12、24週)
DSXは、骨折断片の間の移動の動的な三次元評価を提供する。実験室は、18カメラ3Dビデオ-モーション分析システム、二重ベルト装備トレッドミル、4フォースプレートおよびDSX画像化システム(全て時間同期)を備える。x線発生器は、250画像/sまでの速度で1msパルスを生じ得、低線量ぼけなし画像を提供する。画像検出は、14ビットダイナミックレンジを有する、30フレーム/sで3072x3072ピクセル解像度(または60フレーム/sで1536x1536ピクセル)の能力のある43cmフラットパネル検出器(FPD's)により提供される。以前の動的試験は、低解像度(512x512ピクセル)画像増強機を使用して、同様の骨に植え込まれたマーカーを追跡するために70μmよりも良好な精度を達成した。1/3~l/6のサイズのピクセルを用いて、本発明者らは、25~50μmの範囲の精度を達成することを期待する。非荷重ベアリングから荷重ベアリングへの移行およびトレッドミルの進行(1m/s、許容される場合)のそれぞれの3回の試行についてデータを収集する。植え込まれたマーカーの3D座標は、放射線立体写真測量技術を使用して、二方向画像から決定され、25Hz 4次、ゼロラグButterworthローパスフィルターを使用して平坦にされる。マーカーに基づく座標と解剖学的な軸の間の変換は、高解像度CTスキャンから決定される。近位断片に対する遠位脛骨断片の回転は、矢状、冠状および横の面の順序で、身体の固定された軸を使用して計算される。変位は、近位断片の遠位端および遠位断片の近位端の重心(CTにより同定)の間で測定され、近位断片に固定された座標システムにおいて表される。脛骨断片の間のピーク軸方向、せん断移動および回転/角変位を決定して、進行サイクルにわたり平均する。骨折部位硬さは、遠位脛骨にかかる正味の力(Visual 3D;C-Motionを使用した逆ダイナミクスにより決定)を、それぞれの面の骨折の角変位および線形変位で割ることにより推定される。
【0041】
活動モニタリング(毎日)
参加者は、一日当たりの彼らの平均歩行を記録し、それぞれのその後の訪問(6、12および24週)時に彼らの一日の移動記録を提供する。
【0042】
mRUST X線撮影
改変RUST (mRUST)X線撮影評価は、骨折治癒を評価するために使用される。DSXシステムA/Pおよび側方X線撮影をくみあわせたものを使用して、DSX動的試験の前に取得する。より長い曝露(動的画像化についての1msと比較して8ms)を使用して診断品質の画像を提供する。mRUSTは、APおよび側方X線撮影上のそれぞれの皮質を、1=仮骨なし、2=仮骨あり、3=仮骨の架橋、4=再構築、骨折は見られない、として採点する。改変RUSTスコアはこれらの合計であるので、4~16の値を有する。1~3個の皮質を架橋するための時間は、少なくとも2名の盲目調査者によるmRUST X線撮影から決定される。
【0043】
この試験についての主要な終点は>13のmRUSTスコアまでの時間であり、二次的治癒評価(CTスキャン、DSX画像化および患者が報告する結果を含む)は、プラセボ群のものよりも良好に治療群を採点する。
【国際調査報告】