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特表2024-502336がんを治療するための医薬組成物、その製造方法及び使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-18
(54)【発明の名称】がんを治療するための医薬組成物、その製造方法及び使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/10 20060101AFI20240111BHJP
   A61K 31/22 20060101ALI20240111BHJP
   A61K 31/12 20060101ALI20240111BHJP
   A61K 31/045 20060101ALI20240111BHJP
   A61K 31/19 20060101ALI20240111BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240111BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240111BHJP
   A61P 7/10 20060101ALI20240111BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20240111BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240111BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20240111BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240111BHJP
   A61P 19/06 20060101ALI20240111BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20240111BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20240111BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240111BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20240111BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240111BHJP
   A61P 11/02 20060101ALI20240111BHJP
   A61P 11/04 20060101ALI20240111BHJP
   A61P 13/08 20060101ALI20240111BHJP
   A61P 13/10 20060101ALI20240111BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20240111BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20240111BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20240111BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20240111BHJP
   A61P 25/02 20060101ALI20240111BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240111BHJP
   A61P 27/16 20060101ALI20240111BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240111BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20240111BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
A61K31/10
A61K31/22
A61K31/12
A61K31/045
A61K31/19
A61P35/00
A61P25/00
A61P7/10
A61P9/12
A61P3/10
A61P9/00
A61P17/00
A61P19/06
A61P1/02
A61P1/04
A61P1/16
A61P1/18
A61P11/00
A61P11/02
A61P11/04
A61P13/08
A61P13/10
A61P13/12
A61P15/00
A61P21/00
A61P19/08
A61P25/02
A61P27/02
A61P27/16
A61P35/02
A61P35/04
A61P43/00 105
A61P43/00 121
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023540688
(86)(22)【出願日】2021-12-31
(85)【翻訳文提出日】2023-08-04
(86)【国際出願番号】 CN2021143696
(87)【国際公開番号】W WO2022143984
(87)【国際公開日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】202011618811.X
(32)【優先日】2020-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523246857
【氏名又は名称】▲とん▼ 亜琴
【氏名又は名称原語表記】DENG, Yaqin
【住所又は居所原語表記】9-2-20, Group 10, Xiongjia Street, Baita District Liaoyang City, Liaoning 111000, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】▲とん▼ 亜琴
【テーマコード(参考)】
4C206
【Fターム(参考)】
4C206AA01
4C206AA02
4C206CA03
4C206CB12
4C206DA02
4C206DB04
4C206DB43
4C206JA19
4C206MA02
4C206MA03
4C206MA04
4C206MA33
4C206MA36
4C206MA72
4C206MA83
4C206MA86
4C206NA05
4C206NA14
4C206ZA01
4C206ZA02
4C206ZA20
4C206ZA33
4C206ZA34
4C206ZA36
4C206ZA42
4C206ZA51
4C206ZA59
4C206ZA66
4C206ZA67
4C206ZA75
4C206ZA81
4C206ZA83
4C206ZA89
4C206ZA94
4C206ZA96
4C206ZB21
4C206ZB26
4C206ZB27
4C206ZC31
4C206ZC35
4C206ZC75
(57)【要約】
がんを治療するための医薬組成物、その製造方法及び使用。この医薬組成物は、ジメチルスルホキシドと、エステル類、ケトン類及びアルコール類化合物とからなるか又はそれらを含む。この医薬組成物は、がんの予防及び治療に対して大きな価値を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
がんを治療又は予防するための医薬組成物であって、
前記医薬組成は、エステル類化合物及びジメチルスルホキシドからなり、
好ましくは、前記エステル類化合物は、C2-8の低級エステル、好ましくはC2-4の低級エステル、より好ましくは酢酸エチルであり、
好ましくは、前記医薬組成物は、酢酸エチル及びジメチルスルホキシドからなる、医薬組成物。
【請求項2】
前記酢酸エチルと、前記ジメチルスルホキシドとの体積比は、1:1-1:200であり、
好ましくは、前記酢酸エチルと、前記ジメチルスルホキシドとの体積比は、1:100-1:200であり、
好ましくは、前記酢酸エチルと、前記ジメチルスルホキシドとの体積比は、1:75-1:150であり、
好ましくは、前記酢酸エチルと、前記ジメチルスルホキシドとの体積比は、1:75-1:150であり、
好ましくは、前記酢酸エチルと、前記ジメチルスルホキシドとの体積比は、1:100であり、
好ましくは、前記酢酸エチル及び前記ジメチルスルホキシドのそれぞれ、又は両者の混合物は、水で希釈された後、動物及びヒトの疾患を治療又は予防するための投与形態としてそのまま経口投与、注射、スプレーなどに適用可能であり、
好ましくは、前記医薬組成物は、4.55v/v%の乳酸をさらに含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
がんを治療又は予防するための医薬組成物であって、
前記医薬組成物は、ケトン類化合物及びジメチルスルホキシドからなり、
好ましくは、前記ケトン類化合物は、アルカノン、好ましくはC3-6のアルカノン、より好ましくはアセトンであり、
好ましくは、前記医薬組成物は、アセトン及びジメチルスルホキシドからなる、医薬組成物。
【請求項4】
前記アセトンと、前記ジメチルスルホキシドとの体積比は、1:1-1:200であり、
好ましくは、前記アセトンと、前記ジメチルスルホキシドとの体積比は、1:100-1:200であり、
好ましくは、前記アセトンと、前記ジメチルスルホキシドとの体積比は、1:75-1:150であり、
好ましくは、前記アセトン及び前記ジメチルスルホキシドのそれぞれ、又は両者の混合物は、水で希釈された後、動物及びヒトの疾患を治療又は予防するための投与形態としてそのまま経口投与、注射、スプレーなどに適用可能であり、
好ましくは、前記医薬組成物は、4.55v/v%の乳酸をさらに含む、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
がんを治療又は予防するための医薬組成物であって、
前記医薬組成物は、アルコール類化合物及びジメチルスルホキシドからなり、
好ましくは、前記アルコール類化合物は、C1-6のアルカノール、好ましくはC1-4のアルカノール、より好ましくはエタノールであり、
好ましくは、前記医薬組成物は、エタノール及びジメチルスルホキシドからなる、医薬組成物。
【請求項6】
前記エタノールと、前記ジメチルスルホキシドとの体積比は、1:1-1:200であり、
好ましくは、前記エタノールと、前記ジメチルスルホキシドとの体積比は、1:100-1:200であり、
好ましくは、前記エタノールと、前記ジメチルスルホキシドとの体積比は、1:75-1:150であり、
好ましくは、前記エタノール及び前記ジメチルスルホキシドのそれぞれ、又は両者の混合物は、水で希釈された後、動物及びヒトの疾患を治療又は予防するための投与形態としてそのまま経口投与、注射、スプレーなどに適用可能であり、
好ましくは、前記医薬組成物は、4.55v/v%の乳酸をさらに含む、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
がん、がんの合併症、脳浮腫、糖尿病、高血圧、心・脳血管疾患、紅斑性狼瘡、胸水、腹水及び痛風などの様々な疾患を予防及び/又は治療するための薬物の製造における、請求項1から6のいずれか1項に記載の医薬組成物の使用。
【請求項8】
前記医薬組成物の投与経路は、経口投与、静脈内点滴、静脈注射、経皮投与などの様々な投与経路を含むが、これらに限定されない。請求項7に記載の使用。
【請求項9】
前記がんは、神経膠腫、星状細胞腫、脳又は中枢神経系がん、末梢神経系がん、例えば黒色腫、B細胞がん、多発性骨髄腫、乳がん、肺がん、気管支がん、結腸直腸がん、前立腺がん、膵臓がん、胃がん、卵巣がん、膀胱がん、食道がん、子宮頸がん、子宮がん、又は子宮内膜がん、口腔がん、咽頭がん、肝臓がん、腎臓がん、精巣がん、胆道がん、小腸がん、虫垂がん、唾液腺がん、甲状腺がん、副腎がん、骨肉腫、軟骨肉腫、血液がん、腺がん、炎症性筋線維芽細胞性腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST)、結腸がん、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)、軟部肉腫、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、扁平上皮がん、基底細胞がん、腺がん、汗腺がん、皮脂腺がん、乳頭がん、乳頭状腺がん、髄様がん、気管支がん、腎細胞がん、肝臓がん、胆管がん、絨毛がん、精上皮腫、胎児性がん、ウィルムス腫瘍、膀胱がん、上皮がん、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫瘍、血管芽腫、聴神経腫瘍、希突起膠腫、髄膜腫、神経芽腫、網膜芽腫、濾胞性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、肝細胞がん、甲状腺がん、胃がん、頭頸部がん、小細胞がん、特発性骨髄化生、好酸球増加症、慢性好酸球性白血病、神経内分泌がん、カルチノイド腫瘍、及びそれらの転移性、浸潤性病変を含むが、これらに限定されない、請求項7又は8に記載の使用。
【請求項10】
前記医薬組成物の作用標的は、細胞膜に付着するアルデヒド類化合物であり、アルコール、エステル、ケトン、酸類などの化合物と、アルデヒド類化合物との反応により細胞膜に付着するアルデヒド類化合物又はアルデヒドタンパク質をアンカーするとともに、腫瘍細胞の周囲環境を変えて腫瘍細胞の増殖及び浸潤又は凝集を抑制することにより、腫瘍の成長を抑制する、請求項7又は8に記載の使用。
【請求項11】
がんを治療又は予防するための方法であって、
前記方法は、必要をとするヒトに、請求項1から6のいずれか1項に記載の医薬組成物を投与することを含み、
好ましくは、前記がんは、神経膠腫、星状細胞腫、脳又は中枢神経系がん、末梢神経系がん、例えば黒色腫、B細胞がん、多発性骨髄腫、乳がん、肺がん、気管支がん、結腸直腸がん、前立腺がん、膵臓がん、胃がん、卵巣がん、膀胱がん、食道がん、子宮頸がん、子宮がん、又は子宮内膜がん、口腔がん、咽頭がん、肝臓がん、腎臓がん、精巣がん、胆道がん、小腸がん、虫垂がん、唾液腺がん、甲状腺がん、副腎がん、骨肉腫、軟骨肉腫、血液がん、腺がん、炎症性筋線維芽細胞性腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST)、結腸がん、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)、軟部肉腫、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、扁平上皮がん、基底細胞がん、腺がん、汗腺がん、皮脂腺がん、乳頭がん、乳頭状腺がん、髄様がん、気管支がん、腎細胞がん、肝臓がん、胆管がん、絨毛がん、精上皮腫、胎児性がん、ウィルムス腫瘍、膀胱がん、上皮がん、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫瘍、血管芽腫、聴神経腫瘍、希突起膠腫、髄膜腫、神経芽腫、網膜芽腫、濾胞性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、肝細胞がん、甲状腺がん、胃がん、頭頸部がん、小細胞がん、特発性骨髄化生、好酸球増加症、慢性好酸球性白血病、神経内分泌がん、カルチノイド腫瘍、及びそれらの転移性、浸潤性病変を含むが、これらに限定されない、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬技術分野に関し、具体的には、がんを治療するための医薬組成物、その製造方法及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
世界の医学界は、がん、即ち、悪性腫瘍の治療に対してほぼ途方に暮れている。従来の治療法は、主に手術、放射線療法、化学療法であり、ごく少ない患者は、病気の早期に外科的切除により治癒の目的を達成する可能性がある。放射線治療の治癒効果は低く、既存の化学療法薬の効果も限られており、寿命を短く維持又は延長することしかできない。現在臨床で使用されている化学療法薬は、毒性が強く、効果も低いため、悪性腫瘍を効果的に治療することはできない。1990年代後半から標的療法や免疫療法が登場し、一定の効果はあるものの、薬剤耐性遺伝子の出現が治療効果の向上を妨げている。
【0003】
そのため、悪性腫瘍を治療するために、効果が顕著で、毒性や副作用が少なく、安定性が良好な薬物が緊急に必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
従来技術に存在する問題を解決するために、本発明は、がんを治療又は予防するための医薬組成物、その製造方法及び使用を提供する。この医薬組成物は、ジメチルスルホキシド及びエステル類化合物からなる。本発明の医薬組成物は、がんの予防及び治療に対して大きな価値を有する。
【0005】
本発明は、以下の技術的手段により実現される。
【0006】
一態様では、本発明は、がんを治療又は予防するための医薬組成物を提供する。この医薬組成物は、エステル類化合物及びジメチルスルホキシドからなり、
好ましくは、前記エステル類化合物は、C2-8の低級エステル、好ましくはC2-4の低級エステル、より好ましくは酢酸エチルであり、
好ましくは、前記医薬組成物は、酢酸エチル及びジメチルスルホキシドからなる。
【0007】
好ましくは、前記酢酸エチルと、前記ジメチルスルホキシドとの体積比は、1:1-1:200であり、
好ましくは、前記酢酸エチルと、前記ジメチルスルホキシドとの体積比は、1:100-1:200である。
【0008】
好ましくは、前記酢酸エチルと、前記ジメチルスルホキシドとの体積比は、1:75-1:150である。
【0009】
好ましくは、前記酢酸エチルと、前記ジメチルスルホキシドとの体積比は、1:100である。
【0010】
好ましくは、前記酢酸エチル及び前記ジメチルスルホキシドのそれぞれ、又は両者の混合物は、水で希釈された後、動物及びヒトの疾患を治療又は予防するための投与形態としてそのまま経口投与、注射、スプレーなどに適用可能である。
【0011】
好ましくは、前記医薬組成物は、4.55v/v%の乳酸をさらに含む。
【0012】
本発明は、がんを治療又は予防するための医薬組成物をさらに提供する。この医薬組成物は、ケトン類化合物及びジメチルスルホキシドからなり、
好ましくは、前記ケトン類化合物は、アルカノン、好ましくはC3-6のアルカノン、より好ましくはアセトンであり、
好ましくは、前記医薬組成物は、アセトン及びジメチルスルホキシドからなり、
好ましくは、前記アセトンと、前記ジメチルスルホキシドとの体積比は、1:1-1:200であり、
好ましくは、前記アセトンと、前記ジメチルスルホキシドとの体積比は、1:100-1:200であり、
好ましくは、前記アセトンと、前記ジメチルスルホキシドとの体積比は、1:75-1:150であり、
好ましくは、前記アセトン及び前記ジメチルスルホキシドのそれぞれ、又は両者の混合物は、水で希釈された後、動物及びヒトの疾患を治療又は予防するための投与形態としてそのまま経口投与、注射、スプレーなどに適用可能である。
【0013】
好ましくは、前記医薬組成物は、4.55v/v%の乳酸をさらに含む。
【0014】
さらに、本発明は、がんを治療又は予防するための医薬組成物を提供する。この医薬組成物は、アルコール類化合物及びジメチルスルホキシドからなり、
好ましくは、前記アルコール類化合物は、C1-6のアルカノール、好ましくはC1-4のアルカノール、より好ましくはエタノールであり、
好ましくは、前記医薬組成物は、エタノール及びジメチルスルホキシドからなり、
好ましくは、前記エタノールと、前記ジメチルスルホキシドとの体積比は、1:1-1:200であり、
好ましくは、前記エタノールと、前記ジメチルスルホキシドとの体積比は、1:100-1:200であり、
好ましくは、前記エタノールと、前記ジメチルスルホキシドとの体積比は、1:75-1:150であり、
好ましくは、前記エタノール及び前記ジメチルスルホキシドのそれぞれ、又は両者の混合物は、水で希釈された後、動物及びヒトの疾患を治療又は予防するための投与形態としてそのまま経口投与、注射、スプレーなどに適用可能である。
【0015】
好ましくは、前記医薬組成物は、4.55v/v%の乳酸をさらに含む。
【0016】
別の態様では、本発明は、がん、がんの合併症、脳浮腫、糖尿病、高血圧、心・脳血管疾患、紅斑性狼瘡、胸水、腹水及び痛風などの様々な疾患を予防及び/又は治療するための薬物の製造における、前記医薬組成物の使用を提供する。
【0017】
好ましくは、前記医薬組成物の投与経路は、経口投与、静脈内点滴、静脈注射、経皮投与などの様々な投与経路を含むが、これらに限定されない。
【0018】
好ましくは、前記がんは、神経膠腫、星状細胞腫、脳又は中枢神経系がん、末梢神経系がん、例えば黒色腫、B細胞がん、多発性骨髄腫、乳がん、肺がん、気管支がん、結腸直腸がん、前立腺がん、膵臓がん、胃がん、卵巣がん、膀胱がん、食道がん、子宮頸がん、子宮がん、又は子宮内膜がん、口腔がん、咽頭がん、肝臓がん、腎臓がん、精巣がん、胆道がん、小腸がん、虫垂がん、唾液腺がん、甲状腺がん、副腎がん、骨肉腫、軟骨肉腫、血液がん、腺がん、炎症性筋線維芽細胞性腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST)、結腸がん、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)、軟部肉腫、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、扁平上皮がん、基底細胞がん、腺がん、汗腺がん、皮脂腺がん、乳頭がん、乳頭状腺がん、髄様がん、気管支がん、腎細胞がん、肝臓がん、胆管がん、絨毛がん、精上皮腫、胎児性がん、ウィルムス腫瘍、膀胱がん、上皮がん、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫瘍、血管芽腫、聴神経腫瘍、希突起膠腫、髄膜腫、神経芽腫、網膜芽腫、濾胞性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、肝細胞がん、甲状腺がん、胃がん、頭頸部がん、小細胞がん、特発性骨髄化生、好酸球増加症、慢性好酸球性白血病、神経内分泌がん、カルチノイド腫瘍、及びそれらの転移性、浸潤性病変を含むが、これらに限定されない。本発明の医薬組成物は、糖尿病、心・脳血管疾患、紅斑性狼瘡、胸水、腹水及び痛風の治療にも適用される。
【0019】
本発明の医薬組成物の作用標的は、細胞膜に付着するアルデヒド類化合物であり、アルコール、エステル、ケトン、酸類などの化合物と、アルデヒド類化合物との反応により細胞膜に付着するアルデヒド類化合物又はアルデヒドタンパク質をアンカーするとともに、腫瘍細胞の周囲環境を変えて腫瘍細胞の増殖及び浸潤又は凝集を抑制することにより、腫瘍の成長を抑制する。
【0020】
本発明の医薬組成物は、広域スペクトル抗がん薬であり、臨床的には、経験豊富な医師が、患者の状態や症状の段階に応じて、異なる用量の薬を単独で、交互に、又は組み合わせて投与することが、より良い治療効果をもたらす。
【0021】
本発明の医薬組成物は、従来技術と比較して以下の優位性を有する。
(1)本発明では、溶媒を直接混合するため、操作が簡単である。動物実験では、各組成物には、それぞれ割合で乳酸4.55%を加えることにより、腫瘍を制御する効果がより優れており、様々ながんの治療に適用される。
【0022】
(2)本発明の医薬組成物は、高精度の腫瘍抑制剤であり、悪性腫瘍細胞のみに対して作用し、正常な組織細胞を損傷することなく、正常な組織細胞に対する殺傷及び抑制を回避することができ、悪性腫瘍細胞の増殖及び正常組織細胞へ浸潤のみを抑制する。
【0023】
(3)本発明の医薬組成物で使用される溶媒の物理的又は化学的指標は明確で、制御されやすく、専門家と患者にとって薬物動態と毒性の明確な判断は容易である。
【0024】
(4)本発明の医薬組成物は、国内外で市販されているがん治療薬と比較して、毒性は無視できるほど低く、副作用もなく、正確かつ正常な用量を投与すれば人体に害を及ぼすことはない。
【0025】
(5)本発明の医薬組成物は、従来の抗腫瘍薬と異なり、固形腫瘍の成長を抑制すると同時に、他の組織における腫瘍細胞や結節の二次成長(いわゆる腫瘍転移)も効果的に抑制できる。
【0026】
(6)本発明の医薬組成物は、膜貫通抵抗を効果的に低下させ、細胞膜の透過性を高め、生体の組織細胞がグルコース、塩、水などをタイムリーかつ効果的に利用できるようにし、患者の体力を増強できる。
【0027】
(7)本発明の医薬組成物は、腫瘍細胞外膜タンパク質に対する変性作用及び環境影響により、腫瘍細胞の大量増殖を抑制し、腫瘍細胞の正常組織細胞への浸潤を抑制することを実現する。薬物により腫瘍細胞の増殖速度が正常組織細胞よりも遅くなり、正常組織細胞への浸潤が停止すると、腫瘍体積が徐々に小さくなるか又は一定に維持される。
【0028】
本発明は、特定の方法、実験又は試薬に限定されない。これは、変化しないからである。本明細書で提供される論述及び実施例は、特定の実施形態を説明するためのものに過ぎず、本発明の範囲を制限するものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲にのみ限定される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の医薬組成物の腫瘍抑制率である。
図2】腫瘍解剖学画像を示し、上から下へ順に溶媒対照群、5-フルオロウラシル群、テモゾロミド群、及び高、中、低用量群の実験結果である。
図3】投与期間の腫瘍体積の変化傾向を示す。
図4】投与期間の体重変化傾向を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下の実施例では、実験材料の由来は、以下の通りである。
ジメチルスルホキシド:(≧99.5%)、国薬集団化学試剤有限公司、バッチ番号:20181010
エタノール:(≧95.0%)、国薬集団化学試剤有限公司、バッチ番号:20200810
アセトン:(≧99.5%)、国薬集団化学試剤有限公司、バッチ番号:20140221
酢酸エチル:(≧99.5%)、国薬集団化学試剤有限公司、バッチ番号:20161026
【0031】
実施例1:本発明の医薬組成物
処方:ジメチルスルホキシド200mL、酢酸エチル1mL;
処方:ジメチルスルホキシド180mL、酢酸エチル1mL;
処方:ジメチルスルホキシド160mL、酢酸エチル1mL;
処方:ジメチルスルホキシド140mL、酢酸エチル1mL;
処方:ジメチルスルホキシド120mL、酢酸エチル1mL;
処方:ジメチルスルホキシド100mL、酢酸エチル1mL;
処方:ジメチルスルホキシド80mL、酢酸エチル1mL;
処方:ジメチルスルホキシド60mL、酢酸エチル1mL;
処方:ジメチルスルホキシド40mL、酢酸エチル1mL;
処方:ジメチルスルホキシド20mL、酢酸エチル1mL;
処方:ジメチルスルホキシド1mL、酢酸エチル1mL。
【0032】
実施例2:本発明の医薬組成物
処方:ジメチルスルホキシド200mL、アセトン1mL;
処方:ジメチルスルホキシド180mL、アセトン1mL;
処方:ジメチルスルホキシド160mL、アセトン1mL;
処方:ジメチルスルホキシド140mL、アセトン1mL;
処方:ジメチルスルホキシド120mL、アセトン1mL;
処方:ジメチルスルホキシド100mL、アセトン1mL;
処方:ジメチルスルホキシド80mL、アセトン1mL;
処方:ジメチルスルホキシド60mL、アセトン1mL;
処方:ジメチルスルホキシド40mL、アセトン1mL;
処方:ジメチルスルホキシド20mL、アセトン1mL;
処方:ジメチルスルホキシド1mL、アセトン1mL。
【0033】
実施例3:本発明の医薬組成物
処方:ジメチルスルホキシド200mL、エタノール1mL;
処方:ジメチルスルホキシド180mL、エタノール1mL;
処方:ジメチルスルホキシド160mL、エタノール1mL;
処方:ジメチルスルホキシド140mL、エタノール1mL;
処方:ジメチルスルホキシド120mL、エタノール1mL;
処方:ジメチルスルホキシド100mL、エタノール1mL;
処方:ジメチルスルホキシド80mL、エタノール1mL;
処方:ジメチルスルホキシド60mL、エタノール1mL;
処方:ジメチルスルホキシド40mL、エタノール1mL;
処方:ジメチルスルホキシド20mL、エタノール1mL;
処方:ジメチルスルホキシド1mL、エタノール1mL。
【0034】
実施例4:本発明の医薬組成物のがん治療作用
1、主要な機器及び設備
実験室で一般的にされる解剖器具、生物顕微鏡、動物重量天秤、分析天びん、水浴、ピペット、ボルテックスミキサー、生物学的安全キャビネット、細胞インキュベーターなど。
【0035】
2、試薬
消毒剤、注射用生理食塩水、医療用アルコールなど。
3、陽性薬
3.1陽性対照品1
名称:フルオロウラシル注射液
製造業者:上海旭東海普薬業有限公司
バッチ番号:FA181206
包装:ガラスアンプル
仕様:10mL:0.25g
性状:無色透明液体
保存条件:15~25℃遮光保存(冷凍しないでください)
有効期間:2020年12月12日まで
【0036】
3.2陽性対照品2
名称:注射用テモゾロミド
製造業者:江蘇恒瑞医薬股分有限公司
バッチ番号:190711AM
包装:西林瓶
仕様:100mg/本
性状:白色凍結乾燥塊状物
保存条件:密閉保存(2~8℃)
有効期間:2021年07月10日まで
【0037】
4、実験動物
動物種・系統:BALB/C-nu/nuマウス
動物グレード:SPFグレード
性別と数:雌、42匹
試験開始時の動物週齢:6週齢
試験開始時の動物体重:18±2g
動物由来:維通利華実験動物技術有限公司
【0038】
5、検疫
試験要求に応じて実験動物を受入、検疫した。5日間適応観察した。観察期間において、目、耳、鼻、口腔、皮毛、腹部、外陰、肛囲、四肢、爪、肉趾、歩き方、行為、排泄、摂食、飲水を観察して記録した。実験は、検疫が正常なマウスを使用して行った。
【0039】
6、群分け
実験では、検疫に合格したマウスを選択し、腫瘍を接種した後、ランダムに群分けし、異なるケージに入れて標識し、それぞれ飼育した。
【0040】
7、飼育条件
青島海洋生物医薬研究院股分有限公司の実験動物使用ライセンス番号:
SYXK(魯)2015 0011
実験室温度:20~25℃、湿度:40~70%、換気回数:10~20回/時間、光照射:明期と暗期が12時間ずつ、飼育密度:<5匹/ケージ。飼育環境は「中華人民共和国国家標準-実験動物」の関連基準に厳密に従った。
【0041】
8、腫瘍細胞株の情報
細胞由来及び培養条件:U-87MGヒト脳星状膠芽腫細胞は、中国科学院上海生命科学研究院の細胞資源センターに由来し、使用される培地は、1%ペニシリン-硫酸ストレプトマイシン二重抗体混合液(100×)及び10%ウシ胎児血清(澳洲源)を含むMEM培地であり、培養条件は、5%CO、37℃であり、本センターで凍結保存された。
【0042】
9、細胞の蘇生と継代
液体窒素でU-87MG細胞株を蘇生させ、10%FBS(ウシ胎児血清)、100U/mlペニシリン及び100μg/mlストレプトマイシンを含む培地に入れ、37℃、5%COの細胞インキュベートで培養した。2日ごとに継代させた
【0043】
10、腫瘍接種
4回継代した後、0.05%トリプシン-EDTAで消化して細胞を収集し、顕微鏡下で細胞数を計数し、培地で5×10个/ml細胞懸濁液に再懸濁し、通常通りに消毒した後、0.2ml/匹で小鼠の右前肢腋窩部皮下に接種し、無菌で取り出して重量を測り、質量体積比1:4の塩化ナトリウム注射液を加えて希釈して粉砕し、通常通りに消毒した後、0.2ml/匹で小鼠の右前肢腋窩部皮下に接種し、2回連続して継代させた。その間、マウスを正常に飼育し、マウスの状態及び腫瘍状況を毎週観察して記録した。
【0044】
腫瘍担持マウスの腫瘍体積が約1200mmに達した後、同じ方法で腫瘍を粉砕、移植、モデル構築し、腫瘍を接種した後、マウスの体重を測り、ランダムにマウスを選んで7匹/群で6群に分けた。腫瘍が定着した後、投与し始め、1日目(D1)とした。
【0045】
11、動物群分け及び投与量
ランダム群分け法により、体重に応じて動物を7/匹で6群に分けた。各群の動物に対する投与量を下表に示す。
【0046】
【0047】
12、臨床観察
12.1一般臨床観察
観察動物:全ての動物
観察頻度及び時間:実験期間では、毎回投与の前に観察し、その後、投与して観察及び記録した。観察内容は、腫瘍の増殖状況、動物の精神状態、飲食状況などを含むが、これらに限定されない。
【0048】
12.2体重
検出動物:全ての動物
検出時間:群分け(即ち、最初の投与前)(D1);その後、毎回投与の前及び安楽死の前に動物の体重を測定して記録した。
【0049】
動物が予期せず死亡したときに、体重を測定して記録し、関連記録をした。
【0050】
12.3腫瘍重量に応じて治療効果を評価した。
実験終了後、予期せず死亡した動物及び安楽死させた生存動物に対して腫瘍組織を剥離し、腫瘍重量を測定し、各群の腫瘍重量の差分を計算して腫瘍抑制率IRTWを計算する必要がある。計算式:
IRTW(%)=(Wモデル群-W投与群)/Wモデル群×100%
【0051】
13、写真記録
動物を安楽死させた後、腫瘍組織を剥離して撮影した。
【0052】
14、データ収集と統計分析
測定又は観察されたデータの結果は、適切なシートに手書きするか、コンピュータによって直接収集する必要がある。このデータを生データとして分析、処理、レポートを行う。結果は、平均数と標準偏差(Mean±SD)として示される。両群間の比較は、t検定により行い、結果の分析では、統計的有意性と生物学的有意性の両方が考慮される。
【0053】
15、結果
15.1一般臨床観察
高用量群について、日に2回投与し、投与量合計が13.5ml/kgに達した後、3日目に高用量群では、2匹のマウスは死亡し、残りのマウスは丸く縮み、口角や鼻などからの粘液の分泌がなく、目が閉じ、手感で確認した体表面温度が低下し、活動せず、摂食しなかった。その後、高用量群に対する投与量を6.75ml/kgまで減少させた結果、実験終了まで再びマウスの死亡がなかった。他の各群のマウスは、状態が良好であった。
【0054】
15.2腫瘍抑制率の統計
腫瘍抑制率の統計結果を図1及び表2に示す。
【0055】
【表2】
【0056】
図2は、腫瘍解剖学画像であり、上から下へ順に溶媒対照群、5-フルオロウラシル群、テモゾロミド群、及び高、中、低用量群を示す。図3は、投与期間における腫瘍体積の変化傾向を示す。図4は、投与期間における体重変化傾向を示す。
【0057】
実験データから分かるように、投与量を調整した後の7日目に、腫瘍体積に顕著な違いが現れ、11-15日間投与した後、高中低用量群の腫瘍抑制率は用量依存性があった。最後に解剖検査した結果、高用量群の腫瘍抑制率は46.4%であった。投与期間では、5-フルオロウラシル群が投与の後期に体重が低下した以外、マウスの体重は、いずれも正常な成長状態であった。これは、マウスが薬物に適応した後、摂食や消化などの活動に明らかな影響を与えないことを示している。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】