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特表2024-502352キャリアガス供給部を備えるフィルムチャンバおよびリークテスト方法
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  • 特表-キャリアガス供給部を備えるフィルムチャンバおよびリークテスト方法 図1
  • 特表-キャリアガス供給部を備えるフィルムチャンバおよびリークテスト方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-18
(54)【発明の名称】キャリアガス供給部を備えるフィルムチャンバおよびリークテスト方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/22 20060101AFI20240111BHJP
【FI】
G01M3/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023541307
(86)(22)【出願日】2021-12-30
(85)【翻訳文提出日】2023-09-04
(86)【国際出願番号】 EP2021087829
(87)【国際公開番号】W WO2022148701
(87)【国際公開日】2022-07-14
(31)【優先権主張番号】102021100147.1
(32)【優先日】2021-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500469855
【氏名又は名称】インフィコン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Inficon GmbH
【住所又は居所原語表記】Bonner Strasse 498, D-50968 Koeln, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100220489
【弁理士】
【氏名又は名称】笹沼 崇
(74)【代理人】
【識別番号】100225026
【弁理士】
【氏名又は名称】古後 亜紀
(74)【代理人】
【識別番号】100230248
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 圭二
(72)【発明者】
【氏名】ヴェツィヒ・ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ライスマン・マクシミリアン
(72)【発明者】
【氏名】グレンツ・ヨーゼフ
(72)【発明者】
【氏名】ファン・トリースト・ヘンドリク
【テーマコード(参考)】
2G067
【Fターム(参考)】
2G067AA44
2G067CC04
2G067DD02
(57)【要約】
【課題】試験流体の入った被検体をキャリアガス方式でリークテストするために改良されたフィルムチャンバ、およびこれを用いた方法を提供する。
【解決手段】試験流体の入った被検体の密封性試験に用いられるフィルムチャンバ10は、真空ポンプ32とガス検出器36に接続される少なくとも1つの真空ポート20と、フィルムチャンバ空間を形成する少なくとも1つの可撓性の壁部14と、前記壁部14を外側から取り囲み、フィルムチャンバ空間を密閉するフレーム12と、を備える。真空ポート20と、キャリアガス供給用の少なくとも1つのガス入口22、30とは、該ガス入口から流入したキャリアガスが、フィルムチャンバ空間内を壁部14に沿って径方向に、真空ポート20へと流れるように、一方がフレーム12に対して中央に位置する領域に配置されて、フレーム12によって取り囲まれており、他方が外側のフレームの領域に配置されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験流体の入った被検体のリークテストに用いられるフィルムチャンバ(10)であって、
真空ポンプ(32)及びガス検出器(36)に接続可能な少なくとも1つの真空ポート(20)と、
フィルムチャンバ空間を形成する少なくとも1つの可撓性の壁部(14)と、
前記可撓性の壁部(14)を外側から取り囲み、前記フィルムチャンバ空間を閉鎖するフレーム(12)とを備え、
前記少なくとも1つの真空ポート(20)が、前記フレーム(12)に対して中央に位置する領域に配置されて、径方向の外周を前記フレーム(12)によって取り囲まれており、
キャリアガス供給用の少なくとも1つのガス入口(22,30)が、外周の前記フレームの領域に配置され、該ガス入口から流入する前記キャリアガスが、前記フィルムチャンバ空間内を前記可撓性の壁部(14)に沿って、径方向の外側から内側に、前記真空ポート(20)へと流れるように構成されていることを特徴とする、フィルムチャンバ(10)。
【請求項2】
試験流体の入った被検体のリークテストに用いられるフィルムチャンバ(10)であって、
真空ポンプ(32)及びガス検出器(36)に接続可能な少なくとも1つの真空ポート(20)と、
フィルムチャンバ空間を形成する少なくとも1つの可撓性の壁部(14)と、
前記可撓性の壁部(14)を外側から取り囲み前記フィルムチャンバ空間を閉鎖するフレーム(12)とを備え、
キャリアガス供給用の少なくとも1つのガス入口(22,30)が、前記フレーム(12)に対して中央に位置する領域に配置されて、径方向の外周を前記フレーム(12)によって取り囲まれており、
前記少なくとも1つの真空ポート(20)が、外周の前記フレームの領域に配置されており、前記ガス入口(22、30)から流入する前記キャリアガスが、前記フィルムチャンバ空間内を前記可撓性の壁部(14)に沿って、径方向の内側から外側に、前記真空ポート(20)へと流れるように構成されていることを特徴とする、フィルムチャンバ(10)。
【請求項3】
請求項1または2に記載のフィルムチャンバ(10)において、前記フレーム(12)が、前記可撓性の壁部(14)の周りに環状に延びるように構成され、前記可撓性の壁部(14)を縁取っていることを特徴とする、フィルムチャンバ(10)。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のフィルムチャンバ(10)において、前記フィルムチャンバ空間は、前記フレーム(12)の領域における周方向のガスコンダクタンス値が、前記ガス入口(22,30)から前記真空ポート(20)への径方向のガスコンダクタンス値よりも高いことを特徴とする、フィルムチャンバ(10)。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のフィルムチャンバ(10)において、前記真空ポート(20)または前記ガス入口が、前記フレーム(12)に対し、同心状に配置されていることを特徴とする、フィルムチャンバ(10)。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のフィルムチャンバ(10)において、該フィルムチャンバの壁が全体が可撓性に構成され、前記フレームに挟持されていることを特徴とする、フィルムチャンバ(10)。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のフィルムチャンバ(10)において、前記ガス入口(22,30)または前記真空ポート(20)が、前記フレーム(12)または前記フレーム(12)の近傍に形成されていることを特徴とする、フィルムチャンバ(10)。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載のフィルムチャンバ(10)において、前記フレーム(12)が複数の、好ましくは2つの、ガス入口(22,30)または真空ポート(20)を有することを特徴とする、フィルムチャンバ(10)。
【請求項9】
請求項8に記載のフィルムチャンバ(10)において、前記ガス入口(22,30)同士または真空ポート(20)同士が、前記フレーム(12)の周に沿って互いに等間隔で一様に分布して配置されていることを特徴とする、フィルムチャンバ(10)。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載のフィルムチャンバ(10)において、2つの真空ポート(20)またはガス入口(22,30)が、前記フィルムチャンバ空間の互いに反対側に形成されていることを特徴とする、フィルムチャンバ(10)。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載のフィルムチャンバ(10)において、前記フレーム(12)が、前記フィルムチャンバ空間に接して互いに向かい合った2つの内側フレーム内表面(13)を有し、前記2つのフィルム(14)が、前記フィルムチャンバ空間に接して向かい合った内側フィルム表面(15)を有し、前記内側フレーム表面(13)間の距離(d)が、該フィルムチャンバ(10)に試験体が収容されていない場合の排気状態における、前記内側フィルム表面(15)間の距離よりも大きいことを特徴とする、フィルムチャンバ(10)。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載のフィルムチャンバ(10)において、前記可撓性の壁部(14)が、試験流体および/またはキャリアガスを吸収しない材料、特には、シリコーン、ブチルゴムまたはEPDMからなることを特徴とする、フィルムチャンバ(10)。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載のフィルムチャンバを用いて、試験流体の入った被検体のリークテストを実施する方法であって、
前記被検体を前記フィルムチャンバ(10)内に導入するステップと、
前記真空ポート(20)に接続された真空ポンプによって前記フィルムチャンバ(10)を排気するステップと、
前記ガス入口(22,30)から前記フィルムチャンバ(10)にキャリアガスを供給するステップと、
前記被検体のリーク箇所から漏洩した試験流体と前記キャリアガスからなるガス混合物を前記真空ポート(20)から吸引し、吸引された前記ガス混合物をガス検出器(36)に供給するステップと、
前記ガス検出器(36)によって前記ガス混合物を試験流体の有無について分析するステップとを備え、
前記ガス入口(22,30)から流入した前記キャリアガスが、前記フィルムチャンバ空間内を前記可撓性の壁部(14)に沿って、径方向の外側から内側に、または外側から内側に、前記真空ポート(20)へと流れることを特徴とする、方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法において、前記ガス入口(22,30)から前記フィルムチャンバ空間内に流入後、あるいは、前記真空ポート(20)から前記フィルムチャンバ空間外に流出前の前記キャリアガスが、周方向のガスコンダクタンス値が前記真空ポート(20)または前記ガス入口(22,30)に向かう径方向のガスコンダクタンス値よりも高い状態で流れることを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験流体(試験ガスまたは試験液)の入った被検体のリークテストに用いられるフィルムチャンバに関する。
【背景技術】
【0002】
フィルムチャンバは、例えば、食品包装などの被検体の気密性をガスでテストするための試験チャンバとして用いられる。このとき、被検体は、試験ガスが充填されてフィルムチャンバ内に配置される。次いで、フィルムチャンバが閉鎖されて、排気が行われ、被検体からフィルムチャンバ内に漏洩する試験ガスが、ガス検出器で検出される。試験ガスの検出に代わる方法では、フィルムチャンバ内の全圧増分が計測される。これによれば、被検体から漏洩する試験ガスの種類によらず、被検体のリークが検知される。
【0003】
剛体の試験チャンバを用い、該試験チャンバ内に試験ガスとは異なるキャリアガスを連続流に流通させることにより、被検体から漏洩した試験ガスをキャリアガスと共に検出器へと供給する方法が知られている。このようなキャリアガス方式は、例えば特許文献1に記載されている。
【0004】
例えば特許文献2に記載されているように、可撓性の壁又は壁部を有する試験チャンバ、いわゆる、フィルムチャンバにおいて、キャリアガスを使用する方法も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許第1522838号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第102014224799号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特に可撓性の試験チャンバ壁を備えるフィルムチャンバの場合には、チャンバを排気した状態で、フィルムチャンバの壁が被検体にへばりつくと、一様なキャリアガス流を生じさせることがむずかしい。フィルム表面に分布するキャリアガス流が一様ではないと、フィルムチャンバ内における被検体又はリーク箇所の位置次第でリークレート信号が変化することになる。
【0007】
本発明は、試験流体の入った被検体のリークテストをキャリアガス方式で行うために改良されたフィルムチャンバ、およびこれを用いた方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかるフィルムチャンバの一構成は、請求項1により定義される。
【0009】
本発明にかかるフィルムチャンバは、真空ポンプ及びガス検出器に接続されて当該フィルムチャンバの内部からガスを吸引するための真空ポートを備える。前記フィルムチャンバは、フィルムチャンバ空間を形成する少なくとも1つの可撓性の壁部を備える。具体的には、前記フィルムチャンバの少なくとも1つの壁全体が可撓性を有する設計としてもよい。好ましくは、フィルムチャンバの壁が全て可撓性である。この場合、フィルムチャンバは、互いに突き合わされた2つの可撓性のフィルムにより形成されたものであってもよい。前記可撓性の壁部の外側を取り囲むフレームが、フィルムチャンバ空間を閉鎖するために設けられている。このフレームは、前記フィルム同士を挟持し、これらを互いに圧接させるものであってもよい。具体的には、各フィルム壁がそれぞれ独自のフレームを具備し、フィルム壁のフレーム同士を互いに気密的に圧接することで、フィルムチャンバ空間を閉鎖するという構成も想定できる。
【0010】
本発明の具体的構成として、前記真空ポートは、前記フレームに対して中央に配置され、外周がフレームによって取り囲まれる一方、キャリアガスを前記フィルムチャンバ空間へと供給する少なくとも1つのガス入口は、外周のフレームの領域に配置されており、当該ガス入口を通って流入したキャリアガスが、フィルムチャンバ空間内を可撓性の壁部に沿って外側から内側へ、真空ポートまで流れるように構成されている。これにより、前記フィルムチャンバ空間内の前記可撓性の壁部の領域における流れを一様なものにすることができる。リークテスト中における前記フィルムチャンバ空間は小さく、フィルムチャンバが排気される際には、可撓性の壁部の表面に沿って分布している。
【0011】
「フレームに対して中央に配置され、外周がフレームによって取り囲まれている」とは、例えば図1のように、フィルムチャンバの平面視において、真空ポートがフレームから全方向でほぼ等距離で離間しているとともに、フレームが真空ポートを環状に取り囲んでいることを意味する(ただし、フレーム自体が円環形状である必要はない)。例えば、真空ポートは、フィルムチャンバの平面視において、フレームの幾何学的中心若しくは重心、又はその付近に位置していてもよい。
【0012】
本発明の第2の形態では、真空ポートとガス入口が、運動学的に反転した位置に置き換えられている。つまり、ガス入口は、フレームに対して中央に配置されており、外周をフレームによって取り囲まれる一方、少なくとも1つの真空ポートは、外周のフレームの領域に配置され、ガス入口から流入したキャリアガスがフィルムチャンバ空間内を、可撓性の壁部に沿って内側から外側へ、前記少なくとも1つの真空ポートまで流れるように構成されている。
【0013】
試験流体は、試験ガスおよび/または試験液であってもよく、ガスと液体との混合物であってもよい。
【0014】
本発明において、前記ガス入口からフィルムチャンバ内に流入した後のキャリアガス、あるいは、前記真空ポートからフィルムチャンバ外に流出する前のキャリアガスは、周方向のコンダクタンス値が前記真空ポートへの径方向のコンダクタンス値よりも高い状態で流れることが好ましい。これにより、本発明の第1の構成では、ガスはフィルムチャンバ内に流入した後、まずフィルムチャンバ壁の外縁部に沿って外方の周方向に広がってから、フィルムチャンバ壁間を真空ポートに向かって径方向の外側から内側へ流れることができる。本発明の第2の構成でのガスは、前記フィルムチャンバ壁間を少なくとも1つの前記真空ポートに向かって径方向に内側から外方に流れてから、当該フィルムチャンバ壁の外縁部に沿って外周の周回方向に広がった後、フィルムチャンバ外に流出する。
【0015】
どちらの構成においても、周方向にわたって一様に分布し、径方向に真空ポートに向かうガス流が発生する。具体的には、この目的のために、フィルムチャンバ空間に接して互いに対向するフレームの内表面間の距離dは、被検体が収容されていない場合、あるいは、収容された被検体が前記フィルム同士を引き離していない領域での、排気状態におけるフィルムチャンバの内側フィルム表面間の距離dよりも大きいものとされ得る。これにより、前記ガス入口からキャリアガスが流入すると、距離dが大きく設定されているため、ガスはまずフレームに沿って周方向に分散し、次いで互いに吸い寄せられたフィルム層間を、真空ポートに向かって径方向に外側から内側へ流れる。
【0016】
本発明の一実施形態では、複数のガス入口または真空ポートが、フレームの周に沿って分布している。具体的には、フィルムチャンバは、前記真空ポートが周方向の環状のフレームに対し同心状に構成された放射対称(軸対称)の構成に設計されてもよい。これにより、一様に分布したキャリアガスを、フィルムチャンバ内で、フィルムの表面に沿って径方向の外側から内側へと流すことが可能になる。
【0017】
フィルムチャンバが互いに突きき合わされる2つのフィルムチャンバ壁を備える場合、これら2つの壁のそれぞれに、前記フレームに対して中央に、同心状に配置された真空ポートまたはガス入口が設けてもよい。
【0018】
少なくともフィルムチャンバ空間側において、前記可撓性の壁部が、試験流体および/またはキャリアガスを吸収しない材料を含むか、又は当該材料のみからなることが好ましい。この材料は、例えばシリコーン、ブチルゴム、EPDM(エチレンプロピレンジエンモノマー)ゴム等であってもよい。
【0019】
前記フィルムチャンバ壁又は前記可撓性の壁部の内側に、例えば薄いネットやメッシュ等の形で、構造上高いガスコンダクタンス率を有する材料の層をさらに設け、互いに吸い寄せられた壁の間で、外周のフレームから真空ポートへ、又は内側のガス入口から外周のフレームへのガス流を促してもよい。これに代えて又はこれに加えて、少なくとも1つの前記壁又は可撓性の壁部の、フィルムチャンバ空間側の表面に、粗面化、非平滑化などの加工を施し、かつ/または、多数の突起および/または窪みを設けることにより、一定量のガスコンダクタンス値を付加してもよい。
【0020】
本発明にかかる方法は、請求項13の構成により定義される。これによれば、まずフィルムチャンバ内に被検体を導入した後、該フィルムチャンバを閉鎖し、真空ポートに接続された真空ポンプによって前フィルムチャンバが排気される。フィルムチャンバ空間が縮小した排気状態において、ガス入口からキャリアガスをフィルムチャンバに供給する。被検体にリーク箇所がある場合、被検体の内部からフィルムチャンバへと試験流体が漏洩してキャリアガスと混ざり合う。こうして生じたキャリアガスと試験流体とのガス混合物を真空ポンプにより真空ポートから吸引し、該真空ポートに同じく接続されたガス検出器にガス混合物を供給して分析する。ガス入口から流入したキャリアガスは、フィルムチャンバ空間内を可撓性の壁部に沿って外側から内側に流れ、真空ポートに供給される(第1の構成)か、あるいは、可撓性の壁部に沿って内側から外側に流れ、真空ポートに供給される(第2の構成)。これにより、前記可撓性の壁部に沿って一様に分布したキャリアガス流が発生する。
【0021】
以下では、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第1の実施形態の概略図である。
図2】第2の実施形態の概略図である。
図3】第3の実施形態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
最初の2つの実施形態のフィルムチャンバ10は、円環状の外周フレーム12を備える。第3の実施形態では、環状(ループ状)の外周フレーム12ではあるものの、その形は円環状ではなく、角が丸みを帯びた略直方体状となっている。その他の環状の幾何学的形状のフレーム12を採用してもよい。
【0024】
フレーム12は、相補的な形状の2つの部分からなるものであってもよく、各フレーム部12a、12bはそれぞれフィルムチャンバ壁14を支持している。図2に示すように、2つのフレーム部12a,12bは、これも円環状に形成された2つのシール16、18を介して、気密状態で互いに連結されている。
【0025】
2つのフィルム14は、それぞれ、2つのフレーム部12a,12bのうちの一方に挟持されており、少なくとも一方のフィルム14には、外周のフレーム12に対して同心状に、中央部に配置された真空ポート20が設けられている。フレーム12は、キャリアガスを当該フレーム12からフィルムチャンバの内部へと供給するためのガス入口22を有し、図1の実施形態では、ガス入口22、30が設けられている。図2の実施形態および図3の実施形態では、キャリアガスの2つのガス入口22,30が、フレーム12の互いに反対の位置に形成されている。図1では、ガス入口22に、弁V1,V2を介してフラッシングガス源およびキャリアガス源が接続されている。前記フレーム12は、さらに、別のガスポート24を有している。2つのシール16,18間に形成された間隙26は、このガスポート24に接続された真空ポンプ28により、ガスポート24を介して排気することができる。図1の実施形態では、ガスポート24に弁V3を介して真空ポンプ28が接続されている。
【0026】
2つのフレーム部12a,12bは、それぞれ内側フレーム表面13を有しており、該内側フレーム表面13は、片側ではフィルムチャンバ空間に隣接し、互いに対面している。2つのフレーム部12a、12bの内側フレーム表面13は、互いに距離dだけ離間して配置されている。前記フレーム12を閉じて、フィルムチャンバを閉鎖した状態でも、さらには、フィルムチャンバを排気した状態でも、この距離dは変わらない。
【0027】
両方のフィルム14は、それぞれ、前記フィルムチャンバ空間に面する側に、内側フィルム表面15を有する。図2に示す閉じた状態のフィルムチャンバでは、排気後の状態でも、排気前の状態でも、2つの内側フィルム表面15間が距離dだけ離間している。被検体がフィルム14の間に収容されて当該フィルム14に取り込められた際にのみ、フィルム14が変形し、その距離が被検体の領域で大きくなり得る。距離dは距離dよりも大きいので、特に前記真空ポンプの排気状態において、ガス入口22,30からフィルムチャンバ空間内に流入したキャリアガスは、まず2つのフレーム部12a,12b間で周方向に広がってから、全周から、径方向に、外側から内側へ、中央にある真空ポート20に向かって流れる。これにより、周方向にわたって一様に分布したキャリアガスのガス流が外側から内側へと発生する。
【0028】
図1に示すように、真空ポート20には真空ポンプ32が接続されている。図1の実施形態において、真空ポンプ32は、弁V4,V6を介して真空ポート20に接続されている。真空ポンプ32と真空ポート20とを接続するガス導通路34には、ガス検出器36が接続されており、これによってフィルムチャンバ10から排気されたガスを試験流体の有無について分析することができる。ここでのガス検出器36は、ガス導通路34と弁V7,V8を介してそれぞれ接続された2つの端部を有する検出ガス導通路38に接続されている。
【0029】
これにより、被検体を導入した後、真空ポンプ32を運転させながら弁V4,V6を開くことで、フィルムチャンバ空間の排気が可能となる。十分な真空に達すると、すぐに、弁V5を閉じることができ、弁V2を開いて、ガス入口22から前記フィルムチャンバ空間へと、絞りで調節されたキャリアガスの連続流が供給される。この連続流は、フローチャンバ空間内でフィルムチャンバ壁14の内側に沿って径方向の外側から内側へ、真空ポート20に向けて流れる。弁V6を閉じるとともに、弁V7,V8を開くと、前記フィルムチャンバ空間から吸引されたガス混合物が、開いた弁V4,V7を介してガス検出器36に供給され、最終的に開いた弁V8を介して真空ポンプ32に到達してそこから周辺の外気中へ散佚する。
【0030】
リークテストの完了後、弁V2を閉じて弁V1を開くことで、ガス入口22から前記フィルムチャンバ空間へとフラッシングガス流が供給されて当該フィルムチャンバ空間のフラッシングが行われ得る。ここで、弁V1を介した当該フラッシングガスの供給は、絞り調節が施されないか、あるいは、少なくとも、弁V2を開くことによる前記キャリアガスの供給よりも弱く絞り調節が施される。
【0031】
弁V3を開き、真空ポンプ28を運転させることにより、フレーム間における、2つのシール16,18間の間隙(リング状チャンバギャップとも呼称される)が排気される。これにより、2つのフレーム部12a,12bが互いに圧接するので、フィルムチャンバ12を閉鎖できる。
【0032】
好ましくは、前記キャリアガス流は、前記試験チャンバ壁間の空間内を、外縁の前記チャンバフレームから内側に向け、壁(フィルム)の中央にある真空ポートへと、放射対称状に流れる。これにより、被検体の任意の箇所で漏洩した漏洩ガスを、同じ感度及び同じレート(応答時間)で検出することが可能となる。
【0033】
ガス流の一様性は、前記フィルム空間に沿ったコンダクタンス値のほか、(前記チャンバリングから前記フィルム空間への各遷移部である)前記入口と前記フィルムの中央にある前記真空ポートとの圧力差に大きく影響される。
【0034】
このため、前記リング状チャンバギャップ内の圧力は一様であるのが望ましい。そのため、リング状チャンバギャップに沿った周方向における、キャリアガス入口22の位置から、リング状チャンバギャップにおいて、前記ガス入口22から最も離れた位置までのガスコンダクタンス値は、前記リング状チャンバギャップからフィルムチャンバ壁同士で形成された空間(フィルムチャンバ空間)に沿った各フィルムチャンバ壁の中央までの径方向のガスコンダクタンス値の10倍以上に設定する必要がある。
【0035】
本発明の第2の構成についての実施形態は、図1図3に示す実施形態に対し、真空ポートとガス入口とが置き換えられているという点を除いて基本的に合致している。
【符号の説明】
【0036】
22 キャリアガス入口
10 フィルムチャンバ
12 外周フレーム
12a、12b フレーム部
13 内側フレーム表面
14 フィルム(チャンバ壁)
15 内側フィルム表面
16、18 シール
20、28 真空ポート
22、30 ガス入口
32 真空ポンプ
34 ガス導通路
36 ガス検出器
図1
図2
図3
【国際調査報告】