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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-18
(54)【発明の名称】フルオロポリマー組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 27/18 20060101AFI20240111BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20240111BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240111BHJP
   F16L 11/06 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
C08L27/18
C08K3/04
C08K3/013
F16L11/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023541819
(86)(22)【出願日】2022-01-11
(85)【翻訳文提出日】2023-08-31
(86)【国際出願番号】 EP2022050374
(87)【国際公開番号】W WO2022148875
(87)【国際公開日】2022-07-14
(31)【優先権主張番号】21150844.5
(32)【優先日】2021-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513092877
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ イタリー エス.ピー.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】コライアンナ, パスクア
(72)【発明者】
【氏名】ベサーナ, ジャンバッティスタ
(72)【発明者】
【氏名】カニル, ジョルジョ
(72)【発明者】
【氏名】ジラルディ, ルイージ
【テーマコード(参考)】
3H111
4J002
【Fターム(参考)】
3H111AA02
3H111BA15
3H111CB02
3H111DA08
3H111DA11
3H111DB11
3H111EA03
3H111EA04
3H111EA05
4J002BD151
4J002CL062
4J002DA026
4J002FD012
4J002FD016
4J002GN00
4J002GT00
(57)【要約】
本発明は、特定の熱加工可能なテトラフルオロエチレンコポリマーと、特定量の黒鉛粒子とを含有するフルオロポリマー組成物、成形された物品を製造するためのこの後者の使用、並びに熱交換器用の構成要素、例えば流体、例えば排煙脱硫ユニット内のガス流の冷却及び/又は加熱に使用される導管などの、それから成形された物品に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルオロポリマー組成物[組成物(C)]であって、
(i)主要量の少なくとも1種の溶融加工可能なパーフッ素化テトラフルオロエチレンコポリマー[ポリマー(F)]であって、
- 温度372℃、ピストン荷重5kgでASTM D1238に従って決定した場合にメルトフローレート(MFR)が2.0g/10分超10g/10分未満であり、
- ASTM D3418に従って決定した融点が300℃未満である、
ポリマー(F)と;
(ii)前記組成物(C)の総重量に対して6.0~13.0重量%の、D90%で表される4.0μmを超え60.0μm未満である平均粒径を有する黒鉛粒子[粒子(G)]と;
を含むフルオロポリマー組成物[組成物(C)]。
【請求項2】
ポリマー(F)が、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)に由来する繰り返し単位と、任意選択的な少なくとも1種のCF=CFORパーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)(式中、Rは、C~Cパーフルオロアルキルである)に由来する繰り返し単位とを含むTFEコポリマーからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物(C)。
【請求項3】
前記ポリマー(F)が、少なくとも1種のCF=CFORパーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)(式中、Rは、C~Cパーフルオロアルキルである)に由来する繰り返し単位を含み、任意選択的に少なくとも1種のC~Cパーフルオロオレフィンに由来する繰り返し単位を更に含むTFEコポリマーからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物(C)。
【請求項4】
ポリマー(F)が:
(a)3~13重量%、好ましくは4~12重量%の、パーフルオロメチルビニルエーテルに由来する繰り返し単位と;
(b)0~6重量%の、パーフルオロメチルビニルエーテルとは異なり、且つ上で詳述したパーフルオロアルキルビニルエーテル及び上で詳述したパーフルオロオキシアルキルビニルエーテルからなる群から選択される、1種又は2種以上のフッ素化コモノマーに由来する;好ましくは、パーフルオロエチルビニルエーテル及び/又はパーフルオロプロピルビニルエーテルに由来する、繰り返し単位と;
(c)繰り返し単位(a)、(b)及び(c)のパーセント割合の合計が100重量%に等しいような量にある、テトラフルオロエチレンに由来する繰り返し単位と;
から本質的になるテトラフルオロエチレン/パーフルオロメチルビニルエーテルコポリマーである、請求項3に記載の組成物(C)。
【請求項5】
前記ポリマー(F)が;
(a)0.5~10重量%の、パーフルオロメチルビニルエーテルに由来する繰り返し単位と;
(b)0.2~4.5重量%の、パーフルオロメチルビニルエーテルとは異なり、且つ上で詳述したパーフルオロアルキルビニルエーテル及び上で詳述したパーフルオロオキシアルキルビニルエーテルからなる群から選択される1種又は2種以上のフッ素化コモノマーに由来する;好ましくは、パーフルオロエチルビニルエーテル及び/又はパーフルオロプロピルビニルエーテルに由来する、最も好ましくはパーフルオロプロピルビニルエーテルに由来する繰り返し単位と;
(c)0~6重量%の、少なくとも1種のC~Cパーフルオロオレフィンに由来する、好ましくはヘキサフルオロプロピレンに由来する繰り返し単位と;
(d)繰り返し単位(a)、(b)、(c)及び(d)のパーセント割合の合計が100重量%に等しいような量にある、テトラフルオロエチレンに由来する繰り返し単位と;
から本質的になるTFEコポリマーである、請求項3に記載の組成物(C)。
【請求項6】
前記ポリマー(F)が、TFEと、パーフルオロメチルビニルエーテル(MVE)と、パーフルオロプロピルビニルエーテル(PVE)とに由来する繰り返し単位から本質的になるテトラフルオロエチレン(TFE)コポリマーであり、より具体的には、
(a)2.0~8.0重量%のMVEに由来する繰り返し単位と;
(b)0.2~4.0重量%のPVEに由来する繰り返し単位と;
(c)繰り返し単位(a)、(b)、及び(c)のパーセント割合の合計が100重量%に等しいような量にある、テトラフルオロエチレンに由来する繰り返し単位と;
から本質的になるコポリマーである、請求項5に記載の組成物(C)。
【請求項7】
前記ポリマー(F)が、372℃、ピストン荷重5kgでASTM D1238に従って決定した場合に、2.1g/10分超、好ましくは2.3g/10分超;及び/又は好ましくは9.5g/10分未満、より好ましくは9.0g/10分未満のMFRを有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物(C)。
【請求項8】
90%として表される前記粒子(G)が、8μm超、好ましくは10μm超、より好ましくは少なくとも12μmである;及び/又はD90%として表される前記平均粒径が、最大60μm、好ましくは最大55μm、より好ましくは最大50μmである、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物(C)。
【請求項9】
前記粒子(G)の重量パーセントが、前記組成物(C)の総重量を基準として少なくとも6.2重量%、好ましくは少なくとも6.5重量%、より好ましくは少なくとも7.0重量%、最も好ましくは少なくとも7.5重量%である、及び/又は前記粒子(G)の重量パーセントが、前記組成物(C)の総重量を基準として最大12.8重量%、好ましくは最大12.5重量%、より好ましくは最大12.0重量%、最も好ましくは最大11.8重量%である、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記ポリマー(F)と前記粒子(G)とを溶融混合する工程を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物(C)の製造方法。
【請求項11】
粉末形態のポリマー(F)が、固体状態での事前の乾式混合で粒子(G)と混合され、そのように得られた混合物が前記溶融混合の工程を更に受ける、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物(C)を含む少なくとも1つの構成要素を含む成形された物品であって、好ましくは、前記成形された物品又は前記成形された物品の前記構成要素が前記組成物(C)から本質的になる、又は前記組成物(C)から成形される、成形された物品。
【請求項13】
熱交換器用の構成要素である、好ましくはパイプ、チューブ、導管、ライナー、コネクタ、及び治具からなる群から選択される構成要素である、請求項12に記載の成形された物品。
【請求項14】
流体を輸送するための、前記流体の冷却及び/又は加熱を目的とした導管であり、好ましくは排煙脱硫ユニット内のガス流を冷却するための導管である、請求項13に記載の成形された物品。
【請求項15】
請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物(C)を、圧縮成形、押出成形、射出成形、又は他の溶融加工技術のいずれかによって、好ましくは押出によって加工することを含む、請求項12~14のいずれか一項に記載の成形された物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年1月11日出願の欧州特許出願第21150844.5号に基づく優先権を主張するものであり、この出願の全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、特定の熱加工可能なテトラフルオロエチレンコポリマーと、特定量の黒鉛粒子とを含有するフルオロポリマー組成物、成形された物品を製造するためのこの後者の使用、並びに熱交換器用の構成要素、例えば流体、例えば排煙脱硫ユニット内のガス流の冷却及び/又は加熱に使用される導管などの、それから成形された物品に関する。
【背景技術】
【0003】
テトラフルオロエチレン-パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)コポリマー(PFA)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(FEP)、及びテトラフルオロエチレン-エチレンコポリマー(ETFE)などの熱溶融性フルオロポリマーは、特にその優れた耐熱性、耐薬品性、非粘着性、及びその他の性質のため、化学処理産業における化学的流体輸送ラインの保持治具やチューブ材料として使用されている。
【0004】
プラスチックはほとんどの金属よりも熱伝導性が低いため、熱溶融性フルオロポリマーは熱伝導効率が相対的に不十分であると考えられている。しかしながら、金属は、多くの溶媒や液体(海洋用途では海水を含む)に対する耐食性が低く、重すぎるという欠点を抱えている。新品の金属製熱交換器は、金属表面がきれいである限り正常に機能する。実際の産業環境では、腐食、エッチング、及び微粒子などの要因が金属表面を被覆する。この現象により金属表面の伝導率が低下し、もはや新しい金属製熱交換器は当初の定格熱効率を有さない。その結果、時間が経つと目標温度が達成されなくなり、温度制御が不十分になる。
【0005】
これらの使用分野の典型的な例は、SOガス排出を軽減するために排煙脱硫(FGD)ユニットが使用される大規模な石炭火力発電プラントの運転によって提供される。これは、1980年代初頭から多くの国が採用した環境規制を順守している。FGDユニットは飽和温度で動作するため、排煙を冷却及び再加熱するための熱交換器システムが必要とされる。熱交換器は酸の露点未満の管壁温度で運転されるため、耐腐食性が必要とされる。これらの排煙の組成には、SO/SO、HCl、及びHFが含まれる。このような強い化学物質の影響は、濡れた熱交換器の表面に蓄積する粉塵及びスラリーの堆積物の存在によって大きくなる。これらの堆積物は凝集しやすく、そのため冷却酸の形成に伴ってそれらは堆積物の下に集中する可能性がある。
【0006】
プラスチック、より具体的には熱溶融性フルオロポリマーは、このような過酷な条件下、及び他の多くの分野において、合理的に許容できる熱伝達能力を実現するために改変できる条件で、金属に代わる価値のある代替品を提供することができる。
【0007】
したがって、熱溶融性フルオロポリマーの優れた特性である非常に高い使用温度;可能な限り広い耐薬品性;使用中の優れた耐クリープ性及び機械的特性、優れた表面平滑性;並びに粘着防止性を維持しながらも、熱伝導性を改善する熱交換器用プラスチック構造材料が絶えず必要とされている。
【0008】
米国特許第8618203号明細書は、フルオロポリマーの微粉末を層状充填剤と混合することによって得られる、半導体分野での使用に適した、熱伝導性及びバリア特性を有する熱溶融性フルオロポリマー組成物に関し;例示された実施形態では、2~3μmの平均サイズを有する合成又は天然の黒鉛が、10~20重量%の量で、307℃の融点、1.9g/10分のメルトフローレートを有するPFAと組み合わされている。それにもかかわらず、そのようなコンパウンドは、それに含まれる黒鉛の量が多く、ホストであるフルオロポリマーマトリックスの融点が高くメルトフローレートが低いため、加工性と機械的性能が若干不足している。
【発明の概要】
【0009】
出願人は、今回、特定の熱加工可能なテトラフルオロエチレンコポリマーと特定の量の特定の黒鉛粒子との組み合わせが、上述した要件を満たすのに特に効果的なポリマーコンパウンドを得るのに特に有利であり、したがって上述した要件を全て満たす材料を供給するのに特に有利であることを見出した。
【0010】
本発明は、更に、
(i)主要量の少なくとも1種の溶融加工可能なパーフッ素化テトラフルオロエチレンコポリマー[ポリマー(F)]であって、
- 温度372℃、ピストン荷重5kgでASTM D1238に従って決定した場合にメルトフローレートが2.0g/10分超10g/10分未満であり、
- ASTM D3418に従って決定した融点が300℃未満である、
ポリマー(F)と;
(ii)組成物(C)の総重量に対して6~13重量%の、D90%で表される4.0μmを超え60.0μm未満である平均粒径を有する黒鉛粒子[粒子(G)]と;
を含むフルオロポリマー組成物[組成物(C)]に関する。
【0011】
出願人は、驚くべきことに、特定のメルトフローレートと融点とを有する熱加工可能なテトラフルオロエチレンコポリマーと、特定の量の特定の黒鉛粉末との前記組み合わせの存在により、組成物(C)が使用中の優れた耐クリープ性及び機械的特性、優れた表面平滑性、並びに非粘着性を維持しながらも、改善された熱伝導性を備えているため、特に化学処理業界における熱交換装置の構成要素の製造に最適な材料となることを見出した。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本組成物(C)は、上で詳述した1種又は2種以上の溶融加工可能なテトラフルオロエチレンコポリマー、より特別にはテトラフルオロエチレン(TFE)コポリマーと1種以上のパーフッ素化コモノマー[コモノマー(F)]とから形成されたポリマーを含み得る。本発明の目的のためには、「溶融加工可能な」ポリマーは、従来型の溶融押出、射出、又はコーティング手段によって加工できる(即ち、如何なる形状であっても成形された物品へと加工される)ポリマーを指す。これは、一般には、加工温度でのポリマーの溶融粘度が10Pa×s以下、好ましくは10~10Pa×s以下であることを必要とする。
【0013】
好ましくは、本発明のポリマー(F)は、半結晶性である。本発明のためには、用語「半結晶性」は、ASTM D 3418に従って、示差走査熱量測定法(DSC)によって10℃/分の加熱速度で測定した場合に1J/g超の融解熱を有するポリマーを意味することが意図されている。好ましくは、本発明の半結晶性ポリマー(F)は、少なくとも15J/g、より好ましくは少なくとも25J/g、最も好ましくは少なくとも35J/gの融解熱を有する。
【0014】
前述したように、前記溶融加工可能なテトラフルオロエチレンコポリマー[ポリマー(F)]は、ASTM D3418に従って示差走査熱量測定(DSC)によって測定した場合に、300℃未満の融点を有する。
【0015】
300℃未満の融点を有するポリマー(F)のみが、本発明の組成物の有利な特徴を有する配合物を効果的に与える。
【0016】
最大298℃、好ましくは最大297℃の融点を有するポリマー(F)が好ましい。融点の下限に関しては、ポリマー(F)は、粒子(G)と混ぜ合わせたときに特に熱交換用途でのこれらの材料の使用に特に必要な高い熱定格を有する組成物(C)を与えるように選択される。
【0017】
ポリマー(F)は、有利には0.5重量%超、好ましくは2.0重量%超、より好ましくは少なくとも2.5重量%のコモノマー(F)を含む。
【0018】
上に詳述したポリマー(F)は、有利には最大20重量%、好ましくは最大15重量%、より好ましくは最大13重量%のコモノマー(F)を含む。
【0019】
良好な結果は、少なくとも0.7重量%及び最大13重量%のコモノマー(F)を含むポリマー(F)を用いて得られている。
【0020】
好適なコモノマー(F)としては、特に:
- C~Cパーフルオロオレフィン、例えば、ヘキサフルオロプロペン(HFP)、ヘキサフルオロイソブテン;
- CF=CFORパーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)(式中、Rは、C~Cパーフルオロアルキル、例えば、-CF、-C、又は-Cである);
- CF=CFOXパーフルオロオキシアルキルビニルエーテル(式中、Xは、1個以上のエーテル基を有するC~C12パーフルオロアルキルである);及び
- パーフルオロジオキソール;
を挙げることができる。
【0021】
好ましくは、前記コモノマー(F)は、以下のコモノマー:
- 式CF=CFORf1(式中、Rf1は、-CF、-C及び-C)のPAVE、即ち、
- パーフルオロメチルビニルエーテル(式CF=CFOCFのMVE)、パーフルオロエチルビニルエーテル(式CF=CFOCのEVE)、パーフルオロプロピルビニルエーテル(式CF=CFOCのPVE)、及びそれらの混合物;
- 一般式CF=CFOCFORf2(式中、Rf2は、直鎖又は分岐C~Cパーフルオロアルキル基、環状C~Cパーフルオロアルキル基、直鎖又は分岐C~Cパーフルオロオキシアルキル基であり;好ましくは、Rf2は、-CFCF(MOVE1)、-CFCFOCF(MOVE2)、又は-CF(MOVE3)である)のパーフルオロメトキシビニルエーテル(MOVE);及び
- 以下の式:
【化1】
(式中、X及びXは、互いに等しいか又は異なり、F及びCFから、好ましくはFから選択される)を有するパーフルオロジオキソール;
から選択される。
【0022】
本発明の第1実施形態によると、ポリマー(F)は、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)及び任意選択的に、上で定義した、少なくとも1種のパーフルオロアルキルビニルエーテルに由来する繰り返し単位を含む、TFEコポリマーからなる群から選択される。
【0023】
この実施形態による好ましいポリマー(F)は、上で定義した少なくとも1種のパーフルオロアルキルビニルエーテルの3~15重量%、及び任意選択的に、0.5~3重量%の範囲の量にある、テトラフルオロエチレン(TFE)及びヘキサフルオロプロピレン(HFP)に由来する繰り返し単位を含む(好ましくは、実質的にそれらの繰り返し単位からなる)TFEコポリマーの中から選択される。
【0024】
表現「から本質的になる」は、これがポリマーの本質的な特性を変更することなく、前記ポリマー中に少量含まれていることがある、末端鎖、欠陥、不規則性及びモノマー転位を考慮に入れるべくポリマーの構成成分を定義するために本発明の文脈の中で使用される。
【0025】
そのようなポリマー(F)についての記述は、特に1977年6月14日出願の米国特許第4029868号明細書(DUPONT)、1997年10月14日出願の米国特許第5677404号明細書(DUPONT)、1997年12月30日出願の米国特許第5703185号明細書(DUPONT)及び1997年11月18日出願の米国特許第5688885号明細書(DUPONT)の中に見出すことができる。
【0026】
この実施形態内での最良の結果は、4~12重量%の範囲の量にあるテトラフルオロエチレン(TFE)及びヘキサフルオロプロピレン(HFP)並びに0.5~3重量%の量にあるパーフルオロ(エチルビニルエーテル)又はパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)のいずれかに由来する繰り返し単位を含む(好ましくは、本質的にそれらの繰り返し単位からなる)TFEコポリマーを用いて得られている。
【0027】
本発明の第2の好ましい実施形態によると、ポリマー(F)は、上で定義した少なくとも1種のパーフルオロアルキルビニルエーテルに由来する繰り返し単位を含み任意選択的には上で詳述した少なくとも1種のC~Cパーフルオロオレフィンに由来する繰り返し単位を更に含むTFEコポリマーからなる群から選択される。
【0028】
この第2の実施形態内での良好な結果は、上で特定した1種又は2種以上のパーフルオロアルキルビニルエーテルに由来する繰り返し単位を含むTFEコポリマーを用いた場合に得られている。特に良好な結果は、パーフルオロアルキルビニルエーテルがMVE、EVE、PVE及びそれらの混合物からなる群から選択されるTFEコポリマーを用いて達成されている。
【0029】
加工性の目的のためには、前記コモノマー(F)がパーフルオロメチルビニルエーテル(MVE)を含むポリマー(F)が、本発明の組成物において優れた結果をもたらすことが見出された。
【0030】
本発明の第2の実施形態の好ましい第1の変形形態によると、ポリマー(F)は、有利には、
(a)3~13重量%、好ましくは4~12重量%の、パーフルオロメチルビニルエーテルに由来する繰り返し単位と;
(b)0~6重量%の、パーフルオロメチルビニルエーテルとは異なり、且つ上で詳述したパーフルオロアルキルビニルエーテル及び上で詳述したパーフルオロオキシアルキルビニルエーテルからなる群から選択される、1種又は2種以上のフッ素化コモノマーに由来する;好ましくは、パーフルオロエチルビニルエーテル及び/又はパーフルオロプロピルビニルエーテルに由来する、繰り返し単位と;
(c)繰り返し単位(a)、(b)及び(c)のパーセント割合の合計が100重量%に等しいような量にある、テトラフルオロエチレンに由来する繰り返し単位と;
から本質的になるTFE/PMVEコポリマーである。
【0031】
前記TFE/PMVEコポリマーは、通常、ASTM D3418に従って決定される、少なくとも265℃、好ましくは少なくとも270℃、且つ通常最高298℃、好ましくは最高295℃の融点を有する。
【0032】
この第1の変形形態のTFE/MVEコポリマーは、TFE及びMVEに由来する繰り返し単位から本質的になるコポリマーであってよく、好ましくは:
- 3.7~8.0重量%の、パーフルオロメチルビニルエーテル(MVE)に由来する繰り返し単位と;
- 92.0~96.3重量%の、テトラフルオロエチレン(TFE)に由来する繰り返し単位と;
から本質的なるコポリマーであってよい。
【0033】
本発明のこの第2の実施形態の好ましい第2の変形形態によると、ポリマー(F)は有利には:
(a)0.5~10重量%の、パーフルオロメチルビニルエーテルに由来する繰り返し単位と;
(b)0.2~4.5重量%の、パーフルオロメチルビニルエーテルとは異なり、且つ上で詳述したパーフルオロアルキルビニルエーテル及び上で詳述したパーフルオロオキシアルキルビニルエーテルからなる群から選択される1種又は2種以上のフッ素化コモノマーに由来する;好ましくは、パーフルオロエチルビニルエーテル及び/又はパーフルオロプロピルビニルエーテルに由来する、最も好ましくはパーフルオロプロピルビニルエーテルに由来する繰り返し単位と;
(c)0~6重量%の、少なくとも1種のC~Cパーフルオロオレフィンに由来する、好ましくはヘキサフルオロプロピレンに由来する繰り返し単位と;
(d)繰り返し単位(a)、(b)、(c)及び(d)のパーセント割合の合計が100重量%に等しいような量にある、テトラフルオロエチレンに由来する繰り返し単位と;
から本質的になるTFEコポリマーである。
【0034】
前記変形形態内では、ポリマー(F)は、有利には、TFEと、MVEと、PVEとに由来する繰り返し単位から本質的になるTFEコポリマーであり、より具体的には、
(a)2.0~8.0重量%の、パーフルオロメチルビニルエーテルに由来する繰り返し単位と;
(b)0.2~4.0重量%のパーフルオロプロピルビニルエーテルに由来する繰り返し単位と;
(c)繰り返し単位(a)、(b)及び(c)のパーセント割合の合計が100重量%に等しいような量にある、テトラフルオロエチレンに由来する繰り返し単位と;
から本質的になるコポリマーである。
【0035】
ポリマー(F)中のコモノマー(F)としてのMVEとPVEとの組み合わせは、本発明の組成物で達成される目標の熱的性能及び機械的性能を実現するのに特に有益である。
【0036】
前記TFE/MVE/PVEコポリマーは、通常、ASTM D3418に従って決定される少なくとも265℃、好ましくは少なくとも270℃、且つ通常最高298℃、好ましくは最高295℃の融点を有する。270~290℃の融点を有するTFE/MVE/PVEのコポリマーが特に有利であることが見出された。
【0037】
本発明の組成物のための使用に好適なMFA及びPFAは、HYFLON(登録商標)PFA P及びMシリーズ並びにHYFLON(登録商標)MFA及びHYLON(登録商標)という商品名で、Solvay Specialty Polymers Italy S.p.A.から商業的に入手可能である。
【0038】
前述したように、前記溶融加工可能なテトラフルオロエチレンコポリマー[ポリマー(F)]は、372℃、ピストン荷重5kgでASTM D1238に従って決定した場合に、2.0g/10分超10g/10分未満のMFRを有する。
【0039】
以下に例示される機能する実施形態及び機能しない実施形態から明らかになるように、そのような範囲のメルトフローレートは、使用される基本分野のための加工性及び機械的特性要件に適合しつつも、熱伝導性能を最適化するために必要とされるであろう。
【0040】
好ましくは、ポリマー(F)は、372℃、ピストン荷重5kgでASTM D1238に従って決定した場合に、2.1g/10分超、好ましくは2.3g/10分超;及び/又は好ましくは9.5g/10分未満、より好ましくは9.0g/10分未満のMFRを有する。
【0041】
ポリマー(F)が、372℃、ピストン荷重5kgでASTM D1238に従って決定した場合に4.0~8.0g/10分のMFRを有するように選択された場合に、特定の本発明の組成物で非常に優れた結果が得られた。
【0042】
上述のように、ポリマー(F)は、組成物(C)の主成分である。組成物(C)中のポリマー(F)の重量パーセントは、通常、組成物(C)の総重量を基準として、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも55重量%、より好ましくは少なくとも60重量%である。組成物(C)におけるポリマー(F)の重量パーセントは、通常、組成物(C)の総重量を基準として、最大94.0重量%、好ましくは最大93.5重量%、更に好ましくは最大93.0重量%であることが更に理解される。
【0043】
組成物(C)が、組成物(C)の総重量を基準として80~94重量%、好ましくは84~94重量%の量でポリマー(F)を含む場合に優れた結果が得られた。
【0044】
前述したように、組成物(C)は、組成物(C)の総重量に対して6.0~13.0重量の黒鉛粒子[粒子(G)]を含み、前記粒子は上で詳述した平均粒径を有する。
【0045】
そのような黒鉛は、天然であっても合成であってもよい。層間でイオンを交換することによって、又は有機物を挿入することによって修飾された黒鉛層間化合物も、本発明との関係において使用することができる。
【0046】
前述したように、D90%として表される黒鉛粒子の平均粒径は、8μm超、好ましくは10μm超、より好ましくは少なくとも12μmである;及び/又は平均粒径は最大60μm、好ましくは最大55μm、より好ましくは最大50μmである。
【0047】
90%は、その値未満の直径を有する粒子(G)の割合が体積の90%に等しい直径の値である。D90%は、有利には、任意の適切な粒度分布測定方法によって決定され;好ましい方法はレーザー回折である。
【0048】
粒子(G)の平均粒径のそのような範囲の選択は、黒鉛が組成物(C)に期待される有益な特性をもたらすのに有効であることを一面から保証するために重要である;更に、10μmを超えるサイズにより、超微粉末のあらゆる煩雑さ(更には安全性、健康、及び環境への懸念)なしに、混錬機で粒子(G)を容易に取り扱うことができる。
【0049】
組成物(C)中の粒子(G)の重量パーセントは、組成物(C)の総重量を基準として通常少なくとも6.2重量%、好ましくは少なくとも6.5重量%、より好ましくは少なくとも7.0重量%、最も好ましくは少なくとも7.5重量%である。それに加えて、粒子(G)の重量パーセントは、組成物(C)の総重量を基準として、通常最大12.8重量%、好ましくは最大12.5重量%、より好ましくは最大12.0重量%、最も好ましくは最大11.8重量%である。
【0050】
組成物(C)の総重量を基準として8.2~10.5重量%の量で粒子(G)が使用される場合に、優れた結果が得られた。
【0051】
組成物(C)は、粒子(G)とは異なる特に強化充填剤などの追加の成分を更に含んでいてもよい。本発明の組成物(C)に場合により使用されるのに好適である強化充填剤[充填剤(F)]は、当業者には周知である。
【0052】
その形態を考慮に入れると、組成物(C)の充填剤(F)は、一般に、繊維充填剤及び微粒子充填剤からなる群から選択することができる。
【0053】
典型的には、充填剤(F)は、無機充填剤(タルク、マイカ、カオリン、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウム等)、ガラス繊維、炭素繊維、合成ポリマー繊維、アラミド繊維、アルミニウム繊維、チタン繊維、マグネシウム繊維、炭化ホウ素繊維、ロックウール繊維、鋼繊維、ウォラストナイト、無機ウィスカーからなる群から選択される。更により好ましくは、充填剤は、マイカ、カオリン、ケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無機ウィスカー、ガラス繊維及びウォラストナイトから選択される。
【0054】
組成物(C)中で有利に使用できる繊維充填剤の特定のクラスは、ウィスカー、即ちAl、SiC、BC、Fe及びNi等の様々な原材料から製造された単結晶繊維からなる。
【0055】
所定の実施形態によると、充填剤(F)は、繊維充填剤からなる群から選択することができる。繊維充填剤の中ではガラス繊維が好ましく、ガラス繊維の非限定的な例としては、その全内容が参照により本明細書に組み込まれるAdditives for Plastics Handbook,2nd edition,John Murphyの5.2.3章、43~48頁に記載されている、特にチョップドストランドのA、E、C、D、S及びRガラス繊維が挙げられる。組成物(C)において有用なガラス繊維充填剤は、円形横断面又は非円形横断面を有し得る。
【0056】
本発明の所定の実施形態では、充填剤(F)は、ウォラストナイト充填剤及びガラス繊維充填剤からなる群から選択される。
【0057】
存在する場合、組成物(C)中の充填剤(F)の重量パーセントは、通常、組成物(C)の総重量を基準として、少なくとも0.1重量%、好ましくは少なくとも0.5重量%、より好ましくは少なくとも1重量%、最も好ましくは少なくとも2重量%である。充填剤(F)の重量パーセントは、通常、組成物(C)の総重量を基準として最大30重量%、好ましくは最大20重量%、最も好ましくは最大15重量%である。
【0058】
それにもかかわらず、好ましい組成物(C)は、ポリマー(F)と粒子(G)の組み合わせに追加の充填剤(F)が添加されていないものである。
【0059】
組成物(C)は、1種以上の顔料、特に二酸化チタン(TiO)、二硫化亜鉛(ZnS)、酸化亜鉛(ZnO)、及び硫酸バリウム(BaSO)からなる群から選択され得る白色(while)顔料を含んでいてもよく、或いは含まなくてもよい。
【0060】
組成物(C)は、安定化添加剤、特に離型剤、可塑剤、潤滑剤、熱安定剤、光安定剤、及び酸化防止剤等の追加の成分を任意選択的に含むことができる。
【0061】
組成物(C)の製造方法
本発明は、更に、上で詳述した組成物(C)の製造方法[方法(M)]に関する。
【0062】
本発明の方法(M)は、ポリマー(F)と粒子(G)とを溶融混合する工程を含む。
【0063】
溶融混合プロセスは、典型的には、ポリマー(F)をその溶融温度より上に加熱することによって行われ、それにより粒子(G)が混合されるポリマー(F)の溶融物が形成される。
【0064】
方法(M)の結果は組成物(C)である。組成物(C)に関連して上述した全ての特徴は、方法(M)の対応する特徴である。
【0065】
方法(M)におけるブレンドは、溶融混合装置内で行うことができる。溶融混合によってポリマー組成物を調製する当業者に公知の任意の溶融混合装置を使用することができる。好適な溶融混合装置は、例えば、ニーダー、バンバリー(Banbury)ミキサー、一軸押出機、及び二軸押出機である。好ましくは、所望の成分を全て押出機に、押出機の供給口又は溶融物のいずれかに投与するための手段を備えた押出機が使用される。方法(M)では、組成物(C)を形成するための構成成分が溶融混合装置に供給され、その装置内で溶融混合される。構成成分は、ドライブレンドとしても知られている粉末混合物若しくは顆粒ミキサーとして同時に供給又は個別に供給され得る。この後者の場合、添加順序は特に限定されず、ポリマー(F)が通常第1の成分として供給される一方で、粒子(G)及び該当する場合には他の全ての成分が同時に又はその後に供給されることが理解される。
【0066】
それにもかかわらず、粉末形態のポリマー(F)は、好ましくは固体状態での事前の乾式混合で、例えば高強度ミキサーで粒子(G)と混合され、そのように得られた混合物が上に示した溶融混合の工程を更に受けることが通常理解される。
【0067】
方法(M)が溶融混合によるブレンドを含む場合、この方法は、組成物(C)を固体として形成するための溶融混合物の冷却からなる工程も含み得る。
【0068】
方法(M)の結果として、組成物(C)は、有利には、ペレットの形態で、又は有利には粉末の形態で供給され得る。
【0069】
代替形態として、方法(M)は、粉末又はペレット以外の成形された三次元パーツの形態で組成物(C)を供給することができる。更に、組成物(C)は、更なる処理のためにその溶融形態で直接供給されてもよい。
【0070】
成形された物品
本発明の一態様は、上で詳述した組成物(C)を含む少なくとも1つの成分を含む成形された物品も提供し、これは、耐薬品性、耐熱性、加工性、表面特性などのフッ素系材料の全ての有利な特性を保持しながらも、従来技術のパーツ及び物品に比べて様々な利点、特に増加した熱伝導性を提供する。好ましくは、成形された物品又は成形された物品の一部は、上で詳述した組成物(C)から本質的になる。言い換えると、助剤組成物(C)から成形される。
【0071】
特定の実施形態では、成形された物品は、パイプ、チューブ、導管、ライナー、コネクタ、治具などの熱交換器用の構成要素である。特に、成形された物品は、流体を輸送するための導管としての使用に適したパイプから選択することができ、より具体的には、流体、例えば排煙脱硫ユニット内のガス流を冷却及び/又は加熱することを目的としている。
【0072】
物品の製造方法
上で詳述した物品は、特に圧縮成形、押出成形、射出成形、又は他の溶融加工技術を含む標準技術により、上で詳述した組成物(C)を加工して製造され得る。
【0073】
それにもかかわらず、上で詳述した物品の製造方法は、上で詳述した組成物(C)を押出成形する工程を通常含むことが一般に理解される。
【0074】
好ましい実施形態は、上で詳述した組成物(C)を押出成形することによりパイプを製造する方法である。
【0075】
参照により本明細書に援用される任意の特許、特許出願、及び刊行物の開示が、ある用語を不明確にし得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【0076】
ここで、本発明を以下の実施例に関連してより詳細に記載するが、その目的は単に例示することであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例
【0077】
原料
参考例1、2、及び3は、溶融加工可能なテトラフルオロエチレンコポリマー粉末、別名ポリマー(F)粉末であり、これは、約100nmの寸法及び約38重量%の乾燥含量を有する一次粒子を含むラテックスをもたらす乳化重合によって得た。これをその後HNOの添加によって凝固し、続いて高温(例えば約220℃)で乾燥した。使用した各ポリマー(F)の粉末の具体的な特徴を以下にまとめる。
【0078】
参考材料1は、TFE/MVE/PVE(重量%):92.4/6.6/1.0のモノマー組成、2.5g/10分(372℃/5kg)のMFR、及び285℃の融点(T)を有する、テトラフルオロエチレン(TFE)と、パーフルオロメチルビニルエーテル(MVE)と、パーフルオロプロピルビニルエーテル(PVA)との熱可塑性コポリマーである。
【0079】
参考材料2は、TFE/MVE/PVE(重量%):93.7/5.3/1.0のモノマー組成、7.0g/10分(372℃/5kg)のMFR、及び289.4℃のTを有する、テトラフルオロエチレン(TFE)と、パーフルオロメチルビニルエーテル(MVE)と、パーフルオロプロピルビニルエーテル(PVA)との熱可塑性コポリマーである。
【0080】
参考材料3:2は、TFE/MVE/PVE(重量%):92.9/6.1/1.0のモノマー組成、12.3g/10分のMFR、及び287.0℃のTを有する、テトラフルオロエチレン(TFE)と、パーフルオロメチルビニルエーテル(MVE)と、パーフルオロプロピルビニルエーテル(PVA)との熱可塑性コポリマーである。
【0081】
実施例で使用した黒鉛は、狭い仕様と一貫した品質を保証する制御された黒鉛化プロセスからの商業的供給元から入手した。
【0082】
黒鉛Aは約12μmのD90%値を有する。
【0083】
黒鉛Bは約44μmのD90%値を有する。
【0084】
黒鉛Cは約150μmのD90%値を有する。
【0085】
基本配合手順
参考例1、2、又は3の粉末を、以下の表で指定される組成が得られる重量比で黒鉛と水冷ターボミキサー中で3分混合し、粉末混合物を得た。そのようにして得られた混合物をブラベンダーコニカル二軸押出機でペレット化した。温度プロファイルは、ポリマーの溶融粘度及び融点並びに黒鉛含有量に応じて、溶融温度が360~365℃の範囲になるように設定した。
【0086】
参考材料2のペレット化。参考例2の粉末を同じブラベンダーコニカル二軸押出機でペレット化し、溶融温度が370~375℃の範囲になるように温度プロファイルを設定した。
【0087】
プラークの成形
ペレットの形態で製造されたコンパウンドに対して、厚さ約1.5mm(表3に記載の機械的試験用)又は熱伝導率評価用の約3mmのプラークを製造するために、垂直プレスで360℃で溶融圧縮成形を行った。
【0088】
黒鉛含有量は、窒素の流れの中で750℃まで加熱し、残留重量を測定することによって、TGA(ASTM E1131)により決定した。
【0089】
ペレット化されたコンパウンド(又はペレット化された参考材料)の溶融温度は、DSCにより決定した。
【0090】
熱伝導率の決定
熱伝導率(K)は、ISO22007-2規格に規定されている通り、プラークから打ち抜かれた試験片又は押出パイプから得られた試験片のいずれかについて、ホットディスク法によって決定し、W/(m×K)で表した。
【0091】
【表1】
【0092】
機械的特性(引張特性)の決定
23℃及び200℃での成形プラークのオフセット(即ち1%の歪み)における引張降伏応力の値(YS1%)を、ASTM D3307に従って測定した。これはMPaで表されている。
【0093】
成形プラークのクリープ試験は、ASTM D2990に従って、200℃で3MPaの静荷重下で1000時間行った。その結果、残留変形(歪み%)が決定され、以下の表に記載されている。
【0094】
【表2】
【0095】
パイプの押出のための基本方法
参考材料2のペレットを直径45mmの押出機で押し出し、約4のドローダウン比で直径25mmのパイプを製造した。温度プロファイルは、ホッパー付近の325℃からダイの350℃まで設定した。参考例2のパイプは滑らかで透明であった。
【0096】
以下の表に詳述される、実施例による組成物をパイプ押出前に90℃で8時間乾燥した。パイプは、上の参考例2で説明したものと同じ処理条件を使用して得た。このようにして得たパイプは滑らかで黒色であった。
【0097】
パイプ上の表面粗さ(Ra)の決定方法:
パイプの表面平滑度は、ISO4287に従って、0.08μm又は0.8μmのいずれかのカットオフを使用して測定した。評価されたプロファイルの算術平均偏差(Ra)(単位μm、括弧内に標準偏差)の結果を以下の表に詳しく示す。Raの低い値は、注意深く選択された充填剤の選択及び量による平滑性への悪影響はごくわずかしかなく、本発明の組成物から滑らかなパイプが得られることをよく示している。
【0098】
【表3】
【国際調査報告】