(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-18
(54)【発明の名称】抗-4-1BB抗体およびPD-1タンパク質またはその断片を含む二重特異的エピトープ結合タンパク質およびその用途
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20240111BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240111BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20240111BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240111BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20240111BHJP
C07K 14/705 20060101ALI20240111BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240111BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240111BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240111BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240111BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240111BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20240111BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20240111BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240111BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
C12N15/13
C12N15/12
C07K19/00
C07K16/28
C07K14/705
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
C12P21/02 C
A61K39/395 N
A61P35/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023541864
(86)(22)【出願日】2022-01-11
(85)【翻訳文提出日】2023-07-10
(86)【国際出願番号】 IB2022000009
(87)【国際公開番号】W WO2022149050
(87)【国際公開日】2022-07-14
(32)【優先日】2021-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519001408
【氏名又は名称】ユーティレックス カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】クォン、ビョンエス.
(72)【発明者】
【氏名】リー、ハンナ
(72)【発明者】
【氏名】パク、ジンソン
(72)【発明者】
【氏名】ハン、スンヒ
(72)【発明者】
【氏名】ソン、ヒョンテ
(72)【発明者】
【氏名】イム、スンウ
(72)【発明者】
【氏名】パク、ヒョクジュン
(72)【発明者】
【氏名】ユ、ウンヘ
(72)【発明者】
【氏名】パク、スンミン
(72)【発明者】
【氏名】オー、ヨンジ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG20
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA05
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA87X
4B065AA94Y
4B065AB01
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4B065BA02
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4B065CA25
4B065CA44
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG01
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA42
4H045DA50
4H045DA76
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、抗-4-1BB作用剤(agonist)抗体およびPD-L1に高親和性で結合するPD-1タンパク質またはその断片を含む二重特異的エピトープ結合タンパク質を提供する。二重特異的エピトープ結合タンパク質は、PD-L1を発現する腫瘍細胞とともに、4-1BB上方調節されたT細胞、特に、エフェクターCD8+T細胞と結合する、4-1BBおよびPD-L1に同時に独立して結合する。このような相互作用は、マウスモデルでPD-1/PD-L1-媒介された抑制シグナル伝達を遮断し、4-1BB-媒介された同時刺激シグナル伝達を活性化することで、抗-腫瘍エフェクターCD8+T細胞の細胞毒性活性の強力な活性化を誘導する。このような二重特異的エピトープ結合タンパク質は、それぞれの成分単独に比べて遥かに強力な腫瘍溶解(oncolytic)効果を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(VH)、(VL)、(X)、(VH)n、(VL)n、(X)n、(VH)n-Y、(VL)n-Y、(VH-VL)n-Y、(VL-VH)n-Y、(X)n-Y、Y-(VH)m、Y-(VL)m、Y-(VH-VL)m、Y-(VL-VH)m、および/またはY-(X)mの組み合わせを含む二重特異的エピトープ結合タンパク質であって、
前記VHおよびVLは、4-1BBに結合する抗体またはその抗原-結合断片の可変重鎖領域および可変軽鎖領域のそれぞれを指称し、
Xは、PD-L1に結合するPD-1タンパク質またはその断片であり、
Yは、CL、CH1、CH2、およびCH3からなる群より選択される1つ以上のドメインを含む重鎖不変領域または軽鎖不変領域の断片を指称し、
nおよびmは、それぞれ1~5の整数である、二重特異的エピトープ結合タンパク質。
【請求項2】
(VH)、(VL)、(VH)n-Y、(VL)n-Y、(VH-VL)n-Y、(VL-VH)n-Y、(X)n-Y、Y-(VH)m、Y-(VL)m、Y-(VH-VL)m、Y-(VL-VH)m、および/またはY-(X)mは、存在する場合、N-末端からC-末端への任意の順に示され得る、請求項1に記載の二重特異的エピトープ結合タンパク質。
【請求項3】
An-A’n’-B-Cm-C’m’の構造を有する二重特異的エピトープ結合タンパク質であって、
ここで:
A、A’、C、C’:VH、VL、VH-VL、VL-VHまたはXであり、
B:Yであり、
VH、VL、X、Y、n、およびmは、前記定義されたとおりであり、それぞれのVH、VL、X、Yは、直接的に、あるいはリンカーおよび/またはヒンジによって連結され、
n’およびm’は、独立して、1~5の整数である、請求項1に記載の二重特異的エピトープ結合タンパク質。
【請求項4】
An-B-Cmの構造を有する二重特異的エピトープ結合タンパク質であって、
ここで:
AまたはC:VH-VL、VL-VHまたはXであり、
B:Yであり、
VH、VL、X、Y、n、およびmは、前記定義されたとおりであり、それぞれのVH、VL、X、Yは、直接的に、あるいはリンカーおよび/またはヒンジによって連結される、請求項1に記載の二重特異的エピトープ結合タンパク質。
【請求項5】
CH1ドメインは、(VH-VL)n、(VL-VH)n、または(X)nに直接的に、あるいはヒンジおよび/またはリンカーによってC-末端に連結され、CH2/CH3ドメインは、(VH-VL)m、(VL-VH)m、(X)mに直接的に、あるいはヒンジおよび/またはリンカーによってN-末端に連結され、前記VH、VL、X、n、およびmは、前記定義されたとおりである、請求項1に記載の二重特異的エピトープ結合タンパク質。
【請求項6】
前記二重特異的エピトープ結合タンパク質は、
-CH2に直接的に、あるいはリンカーおよび/またはヒンジを通じて連結されたVH-VL、VL-VH、X、および/またはVH-CH1を含み、独立して、CH3は、VH-VL、VL-VHまたはXに直接的に、あるいはリンカーおよび/またはヒンジを通じて連結された、重鎖および
-直接的に、あるいはリンカーおよび/またはヒンジを通じてCLに連結されたVLを含む軽鎖を含み、
前記VH、VL、およびXは、前記定義されたとおりであり、それぞれのVH、VL、X、CH1、CH2、CH3、およびCLは、直接的に、あるいはリンカーおよび/またはヒンジによって連結される、請求項1に記載の二重特異的エピトープ結合タンパク質。
【請求項7】
(VHおよびVL、如何なる順でも)n-Yおよび/またはY-(X)mを含む二重特異的エピトープ結合タンパク質であって、
前記Yは、独立してCH2またはCH3ドメインであり、VH、およびVLおよびCH2および/またはCH3、あるいはCH2および/またはCH3およびXは、直接的に、あるいはヒンジおよび/またはリンカーを通じて連結され;
VH、VL、X、n、およびmは、前記定義されたとおりである、請求項1に記載の二重特異的エピトープ結合タンパク質。
【請求項8】
(X)m-Yおよび/またはY-(VHおよびVL、如何なる順でも)nを含む二重特異的エピトープ結合タンパク質であって、
前記Yは、独立してCH2またはCH3ドメインであり、VH、およびVLおよびCH2および/またはCH3、あるいはCH2および/またはCH3およびXは、直接的に、あるいはヒンジおよび/またはリンカーを通じて連結され;
VH、VL、X、n、およびmは、前記定義されたとおりである、請求項1に記載の二重特異的エピトープ結合タンパク質。
【請求項9】
前記4-1BB-結合抗体またはその抗原-結合断片は、SEQ ID NO:23のVHを含む、請求項1に記載の二重特異的エピトープ結合タンパク質。
【請求項10】
前記4-1BB-結合抗体またはその抗原-結合断片は、SEQ ID NO:25のVLを含む、請求項1に記載の二重特異的エピトープ結合タンパク質。
【請求項11】
前記4-1BB-結合抗体またはその抗原-結合断片は、SEQ ID NO:23のVHおよびSEQ ID NO:25のVLを含む、請求項1に記載の二重特異的エピトープ結合タンパク質。
【請求項12】
前記PD-1タンパク質またはその断片は、SEQ ID NO:27の配列を含む、請求項1に記載の二重特異的エピトープ結合タンパク質。
【請求項13】
前記4-1BB-結合抗体またはその抗原-結合断片は、SEQ ID NO:23のVHおよびSEQ ID NO:25のVLを含み、前記PD-1タンパク質またはその断片は、SEQ ID NO:27の配列を含む、請求項1に記載の二重特異的エピトープ結合タンパク質。
【請求項14】
前記二重特異的エピトープ結合タンパク質は、SEQ ID NO:1~10および14からなる群より選択される配列を有するか、または前記二重特異的エピトープ結合タンパク質は、SEQ ID NO:1~10および14からなる群より選択される配列を有する二重特異的エピトープ結合タンパク質と少なくとも80%配列同一性を有し、4-1BBおよびPD-L1に対する二重特異的結合親和性を有する、請求項1に記載の二重特異的エピトープ結合タンパク質。
【請求項15】
前記二重特異的エピトープ結合タンパク質は、SEQ ID NO:1~10および14からなる群より選択される配列を有する、請求項1に記載の二重特異的エピトープ結合タンパク質。
【請求項16】
前記二重特異的エピトープ結合タンパク質は、SEQ ID NO:1~10および14からなる群より選択される配列を有する二重特異的エピトープ結合タンパク質と少なくとも80%配列同一性を有し、4-1BBおよびPD-L1に対する二重特異的結合親和性を有する、請求項1に記載の二重特異的エピトープ結合タンパク質。
【請求項17】
前記二重特異的エピトープ結合タンパク質は、SEQ ID NO:3の配列を有する、請求項1に記載の二重特異的エピトープ結合タンパク質。
【請求項18】
前記二重特異的エピトープ結合タンパク質は、SEQ ID NO:3の配列を有する二重特異的エピトープ結合タンパク質と少なくとも80%配列同一性を有し、4-1BBおよびPD-L1に対する二重特異的結合親和性を有する、請求項1に記載の二重特異的エピトープ結合タンパク質。
【請求項19】
シグナルペプチドをさらに含む、請求項1に記載の二重特異的エピトープ結合タンパク質。
【請求項20】
前記シグナルペプチドは、12~40個のアミノ酸を含むN-末端シグナルペプチドである、請求項19に記載の二重特異的エピトープ結合タンパク質。
【請求項21】
前記PD-1タンパク質またはその断片は、親和性成熟した、請求項1に記載の二重特異的エピトープ結合タンパク質。
【請求項22】
請求項1に記載の二重特異的エピトープ結合タンパク質をコードする、核酸分子。
【請求項23】
請求項22に記載の核酸分子を含む、組換えベクター。
【請求項24】
請求項22に記載の核酸分子を含む、細胞。
【請求項25】
二重特異的エピトープ結合タンパク質の生産方法であって、
前記方法は、二重特異的エピトープ結合タンパク質を生産するに十分な条件下で培養培地で請求項22に記載の細胞を培養するステップ;および細胞および/または培養培地から二重特異的エピトープ結合タンパク質を回収するステップを含む、方法。
【請求項26】
請求項1に記載の二重特異的エピトープ結合タンパク質および薬学的に許容される担体を含む、薬学組成物。
【請求項27】
これを必要とする対象体でがんを治療する方法であって、
前記方法は、有効量の請求項1に記載の二重特異的エピトープ結合タンパク質を含むか、伝達する組成物を対象体に投与するステップを含む、方法。
【請求項28】
前記対象体は、がんを有する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記対象体は、がんの発病する危険がある、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記がんは、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、大腸がん、子宮内膜がん、食道がん、ファローピウス管がん、胆嚢がん、胃腸がん、頭頸部がん、血液がん、咽頭がん、肝がん、肺がん、リンパ腫、黒色腫、中皮腫、卵巣がん、原発性腹膜がん、唾液腺がん、肉腫、胃がん、甲状腺がん、膵臓がん、腎臓細胞がん腫、膠芽腫、前立腺がん、およびそれらの組み合わせを含む、請求項27に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年1月11日に出願された米国仮出願第63/135,812号の優先権を主張し、その全体内容が本願に引用されて含まれる。
【0002】
配列リストに対する参照
37 CFR §1.52(e)(5)によって、本明細書は、「540469WO_ST25.txt」という名称の.txtファイルにて電子的に提出された配列リストを参照する。.txtファイルは、2022年1月10日に生成され、サイズが120,095バイトである。配列リストの全体内容が本願に引用されて含まれ、本出願の開示内容の必須な部分を形成する。
【0003】
本発明の技術分野
本発明は、抗-4-1BB作用剤(agonist)抗体およびPD-L1に高親和性で結合するPD-1タンパク質またはその断片を含む二重特異的エピトープ結合タンパク質を提供する。二重特異的エピトープ結合タンパク質は、PD-L1を発現する腫瘍細胞とともに、4-1BB上方調節されたT細胞、特に、エフェクターCD8+T細胞と結合する、4-1BBおよびPD-L1に同時に独立して結合する。このような相互作用は、マウスモデルでPD-1/PD-L1-媒介された抑制シグナル伝達を遮断し、4-1BB-媒介された同時刺激シグナル伝達を活性化することで、抗-腫瘍エフェクターCD8+T細胞の細胞毒性活性の強力な活性化を誘導する。このような二重特異的エピトープ結合タンパク質は、それぞれの成分単独に比べて遥かに強力な腫瘍溶解(oncolytic)効果を有する。
【背景技術】
【0004】
がんは、依然として世界の主要な死亡原因のうち1つである。最近の統計によれば、世界人口の13%が、がんで死亡する。国際がん研究機関(IARC:International Agency for Research on Cancer)の推定によると、2020年に世界中で1,930万件の新たながん症例が発生して1,000万人が、がんで死亡した。2030年までに、全世界的に人口増加と高齢化および喫煙、不健康な食事および身体不活動のような危険要素に対する露出によって新たながん症例が2,170万件であり、がんによる死亡が1,300万人に増えるものと予想される。また、がん治療による痛みと医療費によって、がん患者とその家族の両方の生活の質を低下している。よって、増加し続いているがん危機に対処するために、医療専門家が使用できる武器庫を拡張しなければならない重要な必要性が残っている。
【0005】
4-1BBは、免疫反応でT細胞と抗原提示細胞の表面に発現される同時刺激分子の一種であって、細胞膜タンパク質である腫瘍壊死因子(TNF:tumor necrosis factor)受容体群の一種と知られている。4-1BBの発現は、抗原-またはマイトジェン-誘導活性化後、CD4+およびCD8+T細胞の表面で速く誘導される。4-1BBは、55kDaの同種二量体であり、マウスのT細胞株、胸腺細胞、成熟したT細胞のような様々な部位で発現し、ConA、フィトヘマグルチニン(PHA:phytohemagglutinin)、イノマイシン、抗-CD3抗体または分子などによって活性化されることと知られている。また、4-1BBの一部は、細胞内部に存在してタンパク質キナーゼの一種であるp561と結合し、したがって、これは、4-1BBを通じて細胞外シグナルが細胞内に伝達されるものと推論されることができる。
【0006】
予定された細胞死滅タンパク質1(PD-1:Programmed cell death protein 1)は、様々ながん、例えば、悪性黒色腫、非-小細胞肺がん、および腎臓細胞がん腫の治療でがん免疫療法に対する優れた標的タンパク質である免疫チェックポイント受容体である。PD-1は、T細胞の表面上に存在する受容体であり、免疫グロブリンスーパーファミリーに属する。PD-1が予定された死滅リガンド1(PD-L1:programmed death ligand 1)または予定された死滅リガンド2(PD-L2)に結合する場合、PD-1と関連するシグナル伝達が活性化され、T細胞増殖、インターフェロンガンマおよびインターロイキン2生成、およびT細胞受容体シグナル伝達が抑制され、T細胞活性化が抑制される。様々な種類のがん細胞がPD-L1を発現してT細胞の機能を喪失させることと知られており、これは、がん細胞が免疫係の攻撃を回避する機序として作用する。
【0007】
4-1BB/4-1BBL(4-1BBリガンド)は刺激シグナルを提供する一方、PD-1/PD-L1はTリンパ球に抑制シグナルを提供する。4-1BBに対する様々な形態の作用剤またはPD-L1に対する遮断剤は、主にCD8+T細胞を調節するのに強力な抗-腫瘍活性を示す。よって、4-1BBの作用剤とPD-L1遮断剤とを結合してシナジーまたは付加的な抗-腫瘍効果が達成されることができる。
【0008】
このような技術的背景下で、本出願の発明者らは、治療候補物質の全サイズを考慮して、抗体とタンパク質の様々な組み合わせを試験し、最上の抗-腫瘍活性を示す二重特異的エピトープ結合タンパク質を選択することで、本発明を開発した。
【発明の概要】
【0009】
4-1BB/4-1BBLは、刺激シグナルを提供する一方、PD-1/PD-L1は、Tリンパ球に抑制シグナルを提供する。4-1BBに対する様々な形態の作用剤またはPD-L1に対する遮断剤は、主にCD8+T細胞を調節するのに強力な抗-腫瘍活性を示す。よって、本発明者らは、4-1BBの作用剤とPD-L1遮断剤とを結合してシナジーまたは付加的な抗-腫瘍効果が達成されることができると推測する。
【0010】
このような点に鑑みて、本出願の発明者らは、治療候補物質の全サイズを考慮して、抗体とタンパク質の様々な組み合わせを試験し、最上の抗-腫瘍活性を示す二重特異的エピトープ結合タンパク質を選択することで、本発明を開発した。
【0011】
本発明の目的は、優れた抗-腫瘍活性を示す二重特異的エピトープ結合タンパク質を提供することである。
【0012】
このような目的を達成するために、本発明は、(VH)、(VL)、(X)、(VH)n、(VL)n、(X)n、(VH)n-Y、(VL)n-Y、(VH-VL)n-Y、(VL-VH)n-Y、(X)n-Y、Y-(VH)m、Y-(VL)m、Y-(VH-VL)m、Y-(VL-VH)m、および/またはY-(X)mの組み合わせを含む二重特異的エピトープ結合タンパク質を提供する。本発明において、ドメインは単一ポリペプチドにあってよいか、「重鎖」および「軽鎖」は別個のポリペプチドにあってよい。
【0013】
前記において、VH、VL、および/またはXは、直接的に、あるいはN-末端側面またはC-末端側面のヒンジおよび/またはリンカーを通じてYに連結される。
【0014】
前記において、VHおよびVLは、4-1BBに結合する抗体またはその抗原-結合断片の可変重鎖領域および可変軽鎖領域をそれぞれ指称する。
【0015】
前記において、Xは、変形されたまたは操作された、親和性成熟した、および/または突然変異されたPD-1タンパク質またはその断片を含み、PD-L1に結合するPD-1タンパク質またはその断片である。
【0016】
前記において、Yは、重鎖不変領域または軽鎖不変領域の断片を指称する。重鎖不変領域の断片は、3つの不変領域ドメインCH1、CH2およびCH3、およびその断片のうち1つ以上を含むことができる。軽鎖不変領域の断片は、不変領域ドメインCLまたはその断片を含むことができる。本発明の実施形態において、Yは、CH2またはCH3ドメインを含む断片である。本発明の実施形態において、Yは、CH1を含む断片である。本発明の実施形態において、Yは、CLドメインを含む断片である。
【0017】
前記において、nおよびmは、それぞれ独立して、1、2、3、4、または5のすべての整数を含む、1~5の整数である。
【0018】
本発明の二重特異的エピトープ結合タンパク質は、N-末端シグナルペプチドを含むことができる。本発明において使用されてよいシグナルペプチドは、一般的に長さが12~40、15~35、または16~30アミノ酸であり、細胞がタンパク質を、一般的に細胞膜に転位するように促進する機能をする。本発明において使用するためのシグナルペプチドの具体的な配列は、特に制限されず、例えば、任意の公知のシグナルペプチド配列を含むことができる。適合したN-末端シグナルペプチドの非-制限的な例は、次の配列を有する:MEWSWVFLVTLLNGIQC(SEQ ID NO:29)。あまり好ましくはないが、シグナルペプチドがC-末端に位置できることもまた可能である。
【0019】
本発明の二重特異的エピトープ結合タンパク質の例は、SEQ ID NO:1~10および14(S01-S10)である。好ましい実施形態において、本発明の二重特異的エピトープ結合タンパク質は、SEQ ID NO:3(S03)の配列を有する。
【0020】
それらの確認された例示的な二重特異的エピトープ結合タンパク質と関連して、二重特異的結合が保存される限り、配列の変異が許容されるものと理解される。よって、本発明の配列は、少なくとも約30~40%の全配列同一性、好ましくは、少なくとも約50%、60%、70%、80%または85%以上の配列同一性、より好ましくは、少なくとも約90%、95%、96%、97%、98%、または99%以上の配列同一性を有する4-1BBおよびPD-L1に対する二重特異的結合親和性を保有する。
【0021】
いくつかの実施形態において、本発明の二重特異的エピトープ結合タンパク質は、ヒト化された抗体である。
【0022】
いくつかの実施形態において、本発明の二重特異的エピトープ結合タンパク質を発現するポリヌクレオチド、ポリヌクレオチドを含むベクター、および本発明のポリヌクレオチドまたはベクターを含む細胞である。
【0023】
次を含む薬学組成物が本願に提供される:二重特異的エピトープ結合タンパク質、本願に記述された核酸分子のうち任意の1つ、本願に記述された組換えベクターのうち任意の1つ、または本願に記述された細胞のうち任意の1つ;および薬学的に許容される担体。
【0024】
本願に記述された薬学組成物のうち任意の1つを含むキットが本願に提供される。
【0025】
二重特異的エピトープ結合タンパク質の生産方法が本願において提供され、前記方法は、次のステップを含む:二重特異的エピトープ結合タンパク質を生成するに十分な条件下で培養培地において本願に記述された細胞のうち任意の1つを培養するステップ;および細胞および/または培養培地から二重特異的エピトープ結合タンパク質を回収するステップ。
【0026】
これを必要とする対象体の治療方法が本願において提供され、前記方法は、次のステップを含む:本願に記述された二重特異的エピトープ結合タンパク質のうち任意の1つ、本願に記述された核酸分子のうち任意の1つ、本願に記述された組換えベクターのうち任意の1つ、または本願に記述された細胞のうち任意の1つを含むか伝達する組成物を対象体に投与して、疾患または状態を治療するステップ。いくつかの実施形態において、対象体は、がんを有するか、またはがんの発病する危険がある。いくつかの実施形態において、がんは、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、大腸がん、子宮内膜がん、食道がん、ファローピウス管がん、胆嚢がん、胃腸がん、頭頸部がん、血液がん、咽頭がん、肝がん、肺がん、リンパ腫、黒色腫、中皮腫、卵巣がん、原発性腹膜がん、唾液腺がん、肉腫、胃がん、甲状腺がん、膵臓がん、腎臓細胞がん腫、膠芽腫、前立腺がん、およびそれらの組み合わせを含む。
【0027】
前記目的は、本発明の特定様態を強調する。本発明の追加的な目的、様態および実施形態は、本発明の次の詳細な説明で確認される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
以下の詳細な説明とともに以下の図面を参照すると、本発明とそれに伴う多くの利点は、それがより一層理解できることによって容易に得られるだろう。
【
図1】T細胞エンゲージャーおよびチェックポイント抑制剤の二重機能に対する二重特異的エピトープ結合タンパク質の作用方式を図示する。
【
図2】実施例1に記述された二重特異的エピトープ結合タンパク質S01~S11に対する設計を図示する。
【
図3】非-還元および還元条件下で二重特異的エピトープ結合タンパク質S01~S11に対するSDS-PAGE分析(実施例2参照)の結果を図示する。
【
図4】二重特異的エピトープ結合タンパク質S01~S11に対するサイズ-排除クロマトグラフィー(size-exclusion chromatography)(実施例3参照)の結果を図示する。
【
図5A】PD-L1に対するヒトPD1-Fc結合に対する表面プラズモン共鳴分析の結果を図示する。
【
図5B】PD-L1に対するSO3結合に対する表面プラズモン共鳴分析の結果を図示する。(実施例4参照)
【
図6A】実施例5において、単一抗原結合ELISAに対する分析方法を図示する。
【
図6B】4-1BBに結合する二重特異的エピトープ結合タンパク質S01~S11の結果を図示する。
【
図6C】PD-L1に結合する二重特異的エピトープ結合タンパク質S01~S11の結果を図示する。
【
図6D】二重特異的エピトープ結合タンパク質S03およびnull変異体S12(4-1BB null)およびS13(PD-L1 null)の二重特異的抗体設計を図示する。
【
図6E】4-1BBに結合する二重特異的エピトープ結合タンパク質S03、およびnull変異体S12およびS13の結果を図示する。
【
図6F】PD-L1に結合する二重特異的エピトープ結合タンパク質S03、およびnull変異体S12およびS13の結果を図示する。
【
図7A】実施例6の二重抗原結合ELISAに対する分析方法を図示する。
【
図7B】二重特異的エピトープ結合タンパク質S01~S11に対する二重抗原結合ELISAの結果を図示する。
【
図7C】二重特異的エピトープ結合タンパク質S03、null変異体S12(4-1BB null)およびS13(PD-L1 null)に対する二重抗原結合ELISAの結果を図示する。
【
図8】実施例7の細胞結合分析結果を図示する。具体的に、
図8は、分析に使用される様々な細胞株で4-1BBおよびPD-L1の発現レベルを図示する。
【
図9A】(MDA-MB-231-Luc)はPD-L1陽性細胞株を有する二重特異的エピトープ結合タンパク質変異体に対するFACS分析結果を図示する。
【
図9B】(FaDu)はPD-L1陽性細胞株を有する二重特異的エピトープ結合タンパク質変異体に対するFACS分析結果を図示する。
【
図9C】4-1BB陽性細胞株を有する二重特異的エピトープ結合タンパク質変異体に対するFACS分析結果を図示する。
【
図9D】(MCF-7)はPD-L1および4-1BB陰性細胞株を有する二重特異的エピトープ結合タンパク質変異体に対するFACS分析結果を図示する。(実施例7参照)
【
図10】二重特異的エピトープ結合タンパク質S01~S11について実施例8における4-1BB生物分析結果を図示する。
【
図11A】実施例9に記述された4-1BB/PD-1組合生物分析を図示する。
【
図11B】抗-4-1BB抗体(94kvt-操作されたIgG1、SEQ ID NO:14および21)、抗-PD-1抗体(ペムブロリズマブ、MSD)、抗-PD-L1抗体(アテゾリズマブ、Roche)、およびeuPD-1 Fc(SEQ ID NO:22)、および抗-4-1BB抗体とeuPD-1 Fcの特定組み合わせと比較して二重特異的エピトープ結合タンパク質S03に対する4-1BB/PD-1組合生物分析の結果を図示する。
【
図12A】PD-L1およびPD-L2に対するヒトPD1-Fcの結合を試験するELISA分析結果を図示する。
【
図12B】PD-L1に対する二重特異的エピトープ結合タンパク質S03、抗-PD-L1抗体、および抗-PD-L2抗体の結合を試験するELISA分析結果を図示する。
【
図12C】PD-L2に対する二重特異的エピトープ結合タンパク質S03、抗-PD-L1抗体、および抗-PD-L2抗体の結合を試験するELISA分析結果を図示する。(実施例10参照)
【
図13】実施例11の細胞毒性分析結果を図示する。
【
図14】実施例12のIFN-γ分析結果を図示する。
【
図15A】4-1BB陽性細胞株に対する実施例13の抗体-依存的細胞細胞毒性分析結果を図示する。
【
図15B】PD-L1陽性細胞株に対する実施例13の抗体-依存的細胞細胞毒性分析結果を図示する。
【
図16】実施例14の補体-依存的細胞毒性分析結果を図示する。
【
図17A】実施例15に記述されたようにh4-1BBノック-イン(knock-in)マウスを使用したS03、S05およびS07のインビボ効能に対する分析を示す。
【
図17B】腫瘍サイズと関連してh4-1BBノック-インマウスを使用したS03、S05およびS07のインビボ効能研究結果を図示する。
【
図18A】実施例16に記述されたように腫瘍サイズと関連してh4-1BBノック-インマウスを使用したS03のインビボ効能研究結果を図示する。
【
図18B】血液内T細胞集団に対するh4-1BBノック-インマウスを使用したS03のインビボ効能研究結果を図示する。
【
図19】実施例17に記述されたように腫瘍サイズについてh4-1BBおよびhPD-1二重ノック-インマウスを使用したS03のインビボ効能研究結果を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0029】
別に定義されない限り、本願において使用されたすべての技術および科学用語は、本発明の属する技術分野(例えば、酵素学、生化学、細胞生物学、分子生物学および医療科学分野)の当業者によって一般的に理解されるものと同一の意味を有する。一般的に、本願で使用される命名法は、当業界によく知られており、一般的に使用される。
【0030】
本願に記述されたものと類似するか同等なすべての方法および材料は、本発明の実施または試験に使用されることができ、適合した方法および材料は本願に記述されている。本願に言及されたすべての刊行物、特許出願、特許およびその他の参考文献は、その全体内容が引用されて含まれる。衝突する場合、定義を含む本明細書が優先する。また、材料、方法、および例は、例示であるだけであって、別に明示されない限り、制限しようとする意図ではない。
【0031】
本発明は、(VH)、(VL)、(X)、(VH)n、(VL)n、(X)n、(VH)n-Y、(VL)n-Y、(VH-VL)n-Y、(VL-VH)n-Y、(X)n-Y、Y-(VH)m、Y-(VL)m、Y-(VH-VL)m、Y-(VL-VH)m、および/またはY-(X)mの組み合わせを含む二重特異的エピトープ結合タンパク質を提供する。本発明において、ドメインは、単一ポリペプチドにあってよいか、「重鎖」および「軽鎖」は別個のポリペプチドにあってよい。
【0032】
前記において、VH、VL、および/またはXは、直接的に、あるいはN-末端側面またはC-末端側面のヒンジおよび/またはリンカーを通じてYに連結される。例えば、VH、VL、および/またはXは、直接的に、あるいはヒンジまたはリンカーを通じてCH2に連結され、独立して、CH3は、直接的に、あるいはヒンジまたはリンカーを通じてVH、VL、および/またはXに連結される。
【0033】
前記において、VHおよびVLは、4-1BBに結合する抗体またはその抗原-結合断片の可変重鎖領域および可変軽鎖領域のそれぞれを指称する。
【0034】
前記において、Xは、変形されたまたは操作された、親和性成熟した、および/または突然変異されたPD-1タンパク質またはその断片を含み、PD-L1に結合するPD-1タンパク質またはその断片である。
【0035】
前記において、Yは、重鎖不変領域または軽鎖不変領域の断片を指称する。重鎖不変領域の断片は、3つの不変領域ドメインCH1、CH2およびCH3、およびその断片のうち1つ以上を含むことができる。軽鎖不変領域の断片は、不変領域ドメインCLを含むことができる。本発明の実施形態において、Yは、CH2またはCH3ドメインを含む断片である。本発明の実施形態において、Yは、CH1を含む断片である。本発明の実施形態において、Yは、CLドメインを含む断片である。
【0036】
本発明の実施形態において、Yは、ヒトIgG抗体から誘導される。
【0037】
3つの不変領域ドメインCH1、CH2およびCH3、およびその断片と関連して、CH1、CH2、およびCH3ドメインを含むIgG1(SEQ ID NO:32)、IgG2(SEQ ID NO:34)、IgG3(SEQ ID NO:35)、およびIgG4(SEQ ID NO:36)のそれぞれに対する重鎖不変領域は、当業界によく知られている。本発明において、3つの不変領域ドメインCH1、CH2およびCH3、およびその断片のうち1つ以上が使用されることができる。そのために、Y(1つ以上の不変領域ドメインCH1、CH2およびCH3、およびその断片を含む)は、任意のSEQ ID NO:32、34、35または36、あるいは少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%以上の配列同一性を有する配列から誘導されることができる。好ましい実施形態において、Y(1つ以上の不変領域ドメインCH1、CH2およびCH3、およびその断片を含む)は、SEQ ID NO:32の配列またはSEQ ID NO:32と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%以上の配列同一性である配列を有するIgG1重鎖不変領域から誘導され、ここで、前記変異体は、付加、欠失、および/または置換を含む。変形された重鎖不変領域の例は、本発明において使用するための不変領域ドメインCH1、CH2およびCH3、およびその断片のうち1つ以上が誘導され得るSEQ ID NO:33である。
【0038】
不変領域CL、およびその断片と関連して、免疫グロブリンカッパ(SEQ ID NO:37)、免疫グロブリンラムダ1(SEQ ID NO:38)、および免疫グロブリンラムダ2(SEQ ID NO:39)に対する軽鎖不変領域が当業界によく知られている。そのために、Yは、任意のSEQ ID NO:37~39または少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%以上の配列同一性を有する配列から誘導されることができる。好ましい実施形態において、Yは、SEQ ID NO:37の配列またはSEQ ID NO:37と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%以上の配列同一性である配列を有する免疫グロブリンカッパ軽鎖不変領域から誘導され、ここで、前記変異体は、付加、欠失、および/または置換を含む。
【0039】
前記において、nおよびmは、それぞれ独立して、1、2、3、4、または5のすべての整数を含む、1~5の整数である。
【0040】
(VH)、(VL)、(VH)n-Y、(VL)n-Y、(VH-VL)n-Y、(VL-VH)n-Y、(X)n-Y、Y-(VH)m、Y-(VL)m、Y-(VH-VL)m、Y-(VL-VH)m、および/またはY-(X)mの領域は、存在する場合、N-末端からC-末端の任意の順に示され得る。また、(VH)、(VL)、(VH)n-Y、(VL)n-Y、(VH-VL)n-Y、(VL-VH)n-Y、(X)n-Y、Y-(VH)m、Y-(VL)m、Y-(VH-VL)m、Y-(VL-VH)m、および/またはY-(X)mの多数のコピーが存在する場合、これらは、他の領域に対して任意の順で存在することができ、類似した種類の領域に直接隣接する必要はない。
【0041】
本発明の実施形態において、二重特異的エピトープ結合タンパク質は、An-A’n’-B-Cm-C’m’の構造を有し、
ここで:
A、A’、C、C’:VH、VL、VH-VL、VL-VHまたはX
B:Y
VH、VL、X、Y、n、およびmは、前記定義されたとおりであり、それぞれのVH、VL、X、Yは、直接的に、あるいはリンカーおよび/またはヒンジで連結される。値’n’およびm’は、独立して、1、2、3、4、または5のすべての整数を含む1~5の整数である。
【0042】
本発明の実施形態において、二重特異的エピトープ結合タンパク質は、An-B-Cmの構造を有し、
ここで:
AまたはC:VH-VL、VL-VHまたはX
B:Y
VH、VL、X、Y、n、およびmは、前記定義されたとおりであり、それぞれのVH、VL、X、Yは、直接的に、あるいはリンカーおよび/またはヒンジで連結される。
【0043】
本発明の実施形態において、CH1ドメインは、直接的に、あるいはリンカーおよび/またはヒンジで(VH-VL)n、(VL-VH)n、または(X)nにC-末端に連結され、CH2/CH3ドメインは、直接的に、あるいはリンカーおよび/またはヒンジで(VH-VL)m、(VL-VH)m、(X)mにN-末端に連結される。また、このような実施形態において、CH1ドメインは、直接的に、あるいはリンカーおよび/またはヒンジでCH2/CH3ドメインに連結される。前記において、VH、VL、X、n、およびmは、前記定義されたとおりである。
【0044】
本発明はまた、二重特異的エピトープ結合タンパク質が別個のポリペプチド上にそれぞれ重鎖および軽鎖を有する実施形態を含む。このような実施形態において、重鎖は、直接的に、あるいはリンカーおよび/またはヒンジを通じてCH2に連結されたVH-VL、VL-VH、X、および/またはVH-CH1を含み、独立して、CH3は、直接的に、あるいはリンカーおよび/またはヒンジを通じてVH-VL、VL-VHまたはXに連結される。このような実施形態において、軽鎖は、直接的に、あるいはリンカーおよび/またはヒンジでCLに連結されたVLを含む。VH、VL、およびXは、前記定義されたとおりであり、それぞれのVH、VL、X、CH1、CH2、CH3、およびCLは、直接的に、あるいはリンカーおよび/またはヒンジを通じて連結される。このような実施形態の例として、S09およびS10(
図2参照)が参照され、ここで、前記S09は、SEQ ID NO:9の重鎖およびSEQ ID NO:14の軽鎖を有し、S10は、SEQ ID NO:10の重鎖およびSEQ ID NO:14の軽鎖を有する。
【0045】
二重特異的エピトープ結合タンパク質がscFv形態であることが好ましい。
【0046】
本発明の例示的な実施形態において、(VHおよびVL、如何なる順でも)n-Yおよび/またはY-(X)mを含む二重特異的エピトープ結合タンパク質が提供され、
ここで:
Yは、独立してCH2またはCH3ドメインであり;
VH、およびVL、およびCH2および/またはCH3、あるいはCH2および/またはCH3およびXは、直接的に、あるいはヒンジおよび/またはリンカーで連結され;
VHおよびVLは、4-1BBに結合する抗体またはその抗原-結合断片の可変重鎖領域および可変軽鎖領域のそれぞれを指称し;
Xは、変形されたまたは操作された、親和性成熟した、および/または突然変異されたPD-1タンパク質またはその断片を含み、PD-L1に結合するPD-1タンパク質またはその断片であり;
nおよびmは、それぞれ1、2、3、4、または5のすべての整数を含む、1~5の整数である。
【0047】
このような実施形態の特定例は、N-末端からC-末端に記載された(VL-VH)n-CH2-CH3-(X)mで配列されたscFvである。VL、VH、X、n、およびmは、前記定義されたとおりである。このような例の実施形態において、VLおよびVHは、リンカーによって連結され、VHおよびCH2は、リンカーによって連結され、CH3および(X)mは、リンカーによって連結され/されるか、またはCH2およびCH3は、リンカーによって連結される。このような実施形態において、リンカーのうち1つ以上は、ヒンジが後に続けられるか、または後に続く。代替的に、前述した連結のうち1つ以上は、直接連結されるか、またはヒンジによって連結されることができる。
【0048】
本発明のまた他の例示的な実施形態は、(X)m-Yおよび/またはY-(VHおよびVL、如何なる順でも)nを含む二重特異的エピトープ結合タンパク質であり、
ここで:
Yは、独立してCH2またはCH3ドメインであり;
VH、およびVL、およびCH2および/またはCH3、あるいはCH2および/またはCH3およびXは、直接的に、あるいはヒンジおよび/またはリンカーを通じて連結され;
VHおよびVLは、4-1BBに結合する抗体またはその抗原-結合断片の可変重鎖領域および可変軽鎖領域のそれぞれを指称し;
Xは、変形されたまたは操作された、親和性成熟した、および/または突然変異されたPD-1タンパク質またはその断片を含み、PD-L1に結合するPD-1タンパク質またはその断片であり;
nおよびmは、それぞれ1、2、3、4、または5のすべての整数を含む1~5の整数である。
【0049】
この実施形態の特定例は、N-末端からC-末端に記載された(X)m-CH2-CH3-(VH-VL)nで配列されたscFvである。VL、VH、X、n、およびmは、前記定義されたとおりである。このような例の実施形態において、(X)mおよびCH2は、リンカーによって連結され、CH3およびVHは、リンカーによって連結され、VHおよびVLは、リンカーによって連結され/されるか、またはCH2およびCH3はリンカーによって連結される。このような実施形態において、リンカーのうち1つ以上は、ヒンジが後に続けられるか、またはヒンジが後に続ける。代替的に、前述した連結のうち1つ以上は、直接的であってよいか、ヒンジによるものであってよい。
【0050】
本発明の実施形態において、nおよびmのそれぞれは、個別的に整数1、2、3、4、または5から選択され、このような整数値を有するnおよびmの任意の組み合わせが存在することができる。多数のVH、VL、および/またはXが存在する場合(すなわち、nおよび/またはmは、1より大きい値である)、これは、直接的に連結されることができるか、またはコピーがヒンジおよび/またはリンカー配列によって分離されることができる。好ましい実施形態において、多重コピーは、リンカー配列によって分離される。
【0051】
本発明による(VHおよびVL、如何なる順でも)n-Yおよび/またはY-(X)mを含む二重特異的エピトープ結合タンパク質は、二重特異的治療剤の第1のアーム(arm)であり、第2のアームであって、同一の(VHおよびVL、如何なる順でも)n-Yおよび/またはY-(X)mを含む二重特異的エピトープ結合タンパク質を有して対を形成する。対の第1のアームが(X)m-Yおよび/またはY-(VHおよびVL、如何なる順でも)nである場合、二重特異的エピトープ結合タンパク質の第2のアームが同一の(X)m-Yおよび/またはY-(VHおよびVL、如何なる順でも)nを含む場合も同様である。すなわち、本発明の二重特異的エピトープ結合タンパク質を構成する生成された抗体は、対の他のアームと一つのアームで同一の配列を有さなければならない。
【0052】
VH、およびVLおよびCH2および/またはCH3、あるいはCH2および/またはCH3およびXは、直接的に、あるいはヒンジおよび/またはリンカーを通じて連結されることができる。システイン残基は、ヒンジおよび/またはリンカーを通じた連結のために連結部品に含まれることができる。システイン残基が二硫化結合を形成する間、VHおよびVLおよびCH2および/またはCH3、あるいはCH2および/またはCH3およびXは、直接的に、あるいはヒンジおよび/またはリンカーを通じて連結されることができる。
【0053】
治療候補物質の全サイズと抗体とタンパク質の様々な組み合わせを考慮すると、抗4-1BB抗体断片とPD-1に高親和性で結合する可溶性PD-1の組み合わせを通じて最高の抗-腫瘍活性が示された。
【0054】
本発明の実施形態において、VH領域は、SEQ ID NO:23を含む。本発明の実施形態において、VL領域は、SEQ ID NO:25を含む。本発明の実施形態において、抗-4-1BBは、抗体断片はSEQ ID NO:23を含むVH領域およびSEQ ID NO:25を含むVL領域を有する。
【0055】
本発明の実施形態において、抗-4-1BB抗体断片は、scFv形態である。
【0056】
本発明の実施形態において、SEQ ID NO:23をコードする核酸は、SEQ ID NO:24の配列である。本発明の実施形態において、SEQ ID NO:25をコードする核酸は、SEQ ID NO:26の配列である。
【0057】
SEQ ID NO: 23:
QVQLVQSGAEVKKPGASVKLSCKASGYTFSSYWMHWVRQAPGQGLEWIGEINPGNGHTNYNEKFKSRVTMTRDTSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARSFKTARAFAYWGQGTLVTVSS
【0058】
SEQ ID NO: 24:
caggtccagctggtgcagagcggcgccgaagtgaaaaaacctggggcaagtgtcaagctgtcctgtaaggccagcggttataccttctcctcatattggatgcactgggtgaggcaagcccctggacaagggctggaatggatcggtgaaattaatcccggaaatggccatacaaactacaatgaaaaattcaaaagtcgagtgaccatgacacgggacacatccacttccactgcatacatggagctttcgagtctgcgctccgaggatacagctgtctattactgcgcacgcagttttaaaactgccagagcctttgcctactggggtcagggaaccctggtcaccgttagcagc
【0059】
SEQ ID NO: 25:
DIVMTQSPAFLSVTPGEKVTITCRASQTISDYLHWYQQKPDQAPKLLIKYASQSISGIPSRFSGSGSGTDFTFTISSLEAEDAATYYCQDGHSWPPTFGQGTKLEIK
【0060】
SEQ ID NO: 26:
gacattgtgatgacacagtcccctgctttcctgagcgttacacccggcgaaaaggtgactatcacatgcagggctagtcagaccatctcagactaccttcattggtatcaacagaagccagaccaggctcctaagttgctgataaagtacgcctcccaatccatttccggcattccttcccgtttttccggctccggctccggcaccgactttacgttcaccatctcttctttggaggctgaagacgcagctacctattactgtcaggatggtcacagctggccaccaactttcgggcaaggcaccaagctggagatcaaa
【0061】
PD-1タンパク質または断片は、PD-L1に結合する限り、親和性成熟とともに/なしに使用されることができる。よって、PD-1タンパク質またはその断片は、天然PD-1またはその断片であってよい。代替的に、PD-1タンパク質またはその断片は変形されるか操作されることができ、親和性成熟され/されるか突然変異されることができる。分子的に進化されたPD-1を得るために、先にPD-1とPD-L1との間の3D複合体が使用され、主要寄与PD-1アミノ酸が選択され、選択されたアミノ酸で無作為突然変異が構成され、スクリーニングのために酵母表面ディスプレイが使用された。親和性成熟したPD-1をeuPD-1と指称した。少なくとも約30~40%全配列同一性、好ましくは、少なくとも約50%、60%、70%、80%、または85%以上の配列同一性、より好ましくは、少なくとも約90%、95%、96%、97%、98%、または99%以上の配列同一性を有する、PD-1タンパク質またはその断片の突然変異と関連して、PD-1タンパク質またはその断片は、PD-L1に対する特異的結合親和性を保有する。
【0062】
本発明の実施形態において、euPD-1は、SEQ ID NO:27の配列を含むことができる。前述の説明と一貫して、PD-1タンパク質またはその断片は、SEQ ID NO:27に対して少なくとも約30~40%全配列同一性を有することができ、好ましくは、SEQ ID NO:27に対して少なくとも約50%、60%、70%、80%、または85%以上の配列同一性を有することができ、より好ましくは、SEQ ID NO:27に対して少なくとも約90%、95%、96%、97%、98%、または99%以上の配列同一性を有することができ、ここで、前記PD-1タンパク質またはその断片は、PD-L1に対する特異的結合親和性を保有する。
【0063】
本発明の実施形態において、SEQ ID NO:27をコードする核酸は、SEQ ID NO:28の配列である。
【0064】
SEQ ID NO: 27:
FLESPDRPWNAPTFSPALLLVAEGDNATFTCSFSNASESFHVVWHRESPSGQTDTLAAFPEDRSQPGQDHRFRVTRLPNGRDFHMSVVRAQRNDSGTYVCGVISLAPKIQIKESLRAELRVTERRAEVPTAHPSPSPRPAGQFQTLVVG
【0065】
SEQ ID NO: 28:
tttctcgaatcaccggacagaccctggaatgcgcccacattctcaccagcacttttgctggtagcagagggcgataatgctacattcacgtgttccttcagtaatgcaagcgagtcatttcatgtggtttggcatcgagagtcacctagtgggcagactgatacacttgccgcattcccggaagatcgctcccagccaggtcaggatcaccggttcagggtaacccgactgccgaatgggcgcgatttccatatgagcgttgtccgggcgcaacggaacgatagtggaacatacgtgtgtggcgtaatatccctcgctcccaaaatacaaataaaggagtctctgagagcagagctgagagtgacagaacgacgggcggaagttcccacggctcatccgtcaccaagtccgcgccccgcaggccaatttcaaacgctcgtcgtaggc
【0066】
本発明の二重特異的エピトープ結合タンパク質は、シグナルペプチド、例えば、N-末端シグナルペプチドを含むことができる。本発明において使用され得るシグナルペプチドは、一般的に長さが12~40、15~35、または16~30アミノ酸であり、細胞にしてタンパク質を、一般的に細胞膜に転位するように促進する機能をする。本発明において我らのためのシグナルペプチドの具体的な配列は特に制限されず、例えば、任意の知られたシグナルペプチド配列を含むことができる。適合したN-末端シグナルペプチドの非-制限的な例は、次の配列を有する:MEWSWVFLVTLLNGIQC(SEQ ID NO:29)。あまり好ましくはないが、シグナルペプチドがC-末端に位置し得ることもまた可能である。
【0067】
本発明の二重特異的エピトープ結合タンパク質の例は、SEQ ID NO:1~10および14(S01~S10)である。好ましい実施形態において、本発明の二重特異的エピトープ結合タンパク質は、SEQ ID NO:3の配列(S03)を有する。
【0068】
このような確認された例示的な二重特異的エピトープ結合タンパク質と関連して、二重特異的結合が保存される限り、配列の変異が許容されるものと理解される。よって、4-1BBとPD-L1に対する二重特異的結合親和性を保有する本発明の配列は、少なくとも約30~40%の全配列同一性、好ましくは、少なくとも約50%、60%、70%、80%、または85%以上の配列同一性、より好ましくは、少なくとも約90%、95%、96%、97%、98%、または99%以上の配列同一性を有する。
【0069】
細胞結合および二重抗原分析を通じて、S03(SEQ ID NO:3)が2つの標的に同時に独立して結合することを確認した。
【0070】
4-1BB生物分析の結果、生物学的に関連したMOA-基盤分析は、S03による強力なPD-L1-依存性T細胞活性化を示した。
【0071】
4-1BBノック-インマウスモデルでヒトPD-L1-発現腫瘍細胞に対して試験したとき、S03は、各成分単独およびS05またはS07のような他の候補に比べて遥かに強力な腫瘍溶解効果を示した。
【0072】
また、S03が注入される場合、末梢血液でT細胞、特に、エフェクターCD8+T細胞が増加して、その結果、腫瘍のサイズが減少した。S03は、CD8+T細胞浸潤を促進して2つの異なる標的である4-1BBおよびPD-L1に同時に結合することで腫瘍部位でその場でT細胞を活性化する有望な抗-腫瘍剤である。
【0073】
その結果、S03は、抗-4-1BB抗体およびeuPD-1を含む二重特異的エピトープ結合タンパク質であり、次の特性を示す:
1.Fc操作を通じた減少したADCCおよびCDC活性;
2.天然PD-1より強力な結合親和性;
3.インビトロ前臨床研究でPD-L1-良性腫瘍-指示的T-細胞反応を選択的に活性化して強化する。
4.対照群抗体に比べて腫瘍除去にさらによい効果。
【0074】
「二重特異的(Bispecific)」または「二重特異的(dual specific)」は、標的に特異的に結合して2つの異なる標的の活性を調節することができる結合タンパク質の特性であり、製造は、抗体または各標的に特異的に結合するタンパク質によって遂行されるか、またはその断片、およびこれに結合する各抗原に対して1価である2つの別個の抗原-結合がん(がん:2つの標的に対する特異性)を保有する。特に、本発明の二重特異的エピトープ結合タンパク質は、4-1BBおよびPD-L1の特異的結合または4-1BBおよびPD-L1に対する特異的親和性を有することに関する。
【0075】
本願で使用されたように、用語「抗体」は、4-1BBに特異的に結合する抗-4-1BB抗体を指称する。本発明の範疇は、4-1BBに特異的に結合する完全な抗体形態だけでなく、抗体分子の抗原-結合断片もまた含む。
【0076】
用語「PD-1タンパク質」は、PD-1タンパク質またはPD-L1に結合する断片を含む。本発明の範疇は、PD-L1に特異的に結合する完全な組換えタンパク質形態だけでなく、組換えタンパク質分子のPD-1-結合断片もまた含む。また、前記言及したように、PD-1タンパク質または断片は、これがPD-L1に結合する限り、親和性成熟とともに/親和性成熟なしに使用されることができる。よって、PD-1タンパク質またはその断片は、天然PD-1またはその断片であってよい。代替的に、PD-1タンパク質またはその断片は、前記説明と一致するように変形または操作された、親和性成熟した、および/または突然変異されることができる。
【0077】
完全な抗体は、2つの全長軽鎖および2つの全長重鎖を有する構造を有し、それぞれの軽鎖は、二硫化結合によって重鎖に連結される。
【0078】
本願で使用されたように、用語「重鎖」は、抗原に特異性を付与する十分な可変領域配列を有するアミノ酸配列を含む可変領域ドメインVH、および3つの不変領域ドメインCH1、CH2およびCH3を含む全長重鎖、およびその断片を指称する。また、本願で使用されたように、用語「軽鎖」は、抗原に特異性を付与する十分な可変領域配列を有するアミノ酸配列を含む可変領域ドメインVL、および不変領域ドメインCLを含む全長軽鎖、およびその断片を指称する。
【0079】
全体(whole)抗体は、IgA、IgD、IgE、IgMおよびIgGの下位類型または変異体を含み、特に、IgGは、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を含む。重鎖不変領域は、ガンマ(γ)、ミュー(μ)、アルファ(α)、デルタ(δ)およびエプシロン(ε)類型および下位部類ガンマ1(γ1)、ガンマ2(γ2)、ガンマ3(γ3)、ガンマ4(γ4)、アルファ1(α1)およびアルファ2(α2)を有する。軽鎖の不変領域は、カッパ(κ)およびラムダ(λ)類型を含む。
【0080】
抗体の抗原-結合断片または抗体断片は、抗原-結合機能を有する断片を指称し、Fab、F(ab’)、F(ab’)2、Fvなどを含む。抗体断片のうちから、Fabは、軽鎖および重鎖の可変領域、軽鎖の不変領域および重鎖の第1の不変領域(CH1)を有する構造を有し、1つの抗原-結合部位を有する。Fab’は、重鎖CH1ドメインのC-末端に1つ以上のシステイン残基を含むヒンジ-領域を有するという点でFabと異なる。F(ab’)2断片は、Fab’のヒンジ領域におけるシステイン残基が二硫化結合を形成するとき形成される。
【0081】
Fvは、重鎖可変領域および軽鎖可変領域のみを有する最小抗体断片に相当する。二重-鎖Fv(2-鎖Fv)においては、重鎖可変領域と軽鎖可変領域が非-共有結合で連結されており、単一-鎖Fv(scFv)においては、重鎖可変領域と軽鎖可変領域がペプチドリンカーを通じて共有結合で連結されるか、またはC-末端から直接的に連結されて二重鎖Fvのような二量体と同じ構造を形成する。このような抗体断片は、タンパク質分解酵素によって製造されることができるか(例えば、パパインで完全な抗体を制限分解してFabを生成し、ペプシンで分解すればF(ab’)2を生成する)、遺伝子組換え技術によって製造されることができる。
【0082】
「Fv」断片は、完全な抗体認識および結合部位を含む抗体断片である。このような領域は、1つの重鎖可変ドメインと1つの軽鎖可変ドメインが連結された二量体である。
【0083】
「Fab」断片は、軽鎖の可変および不変ドメインおよび重鎖の可変および第1の不変ドメイン(CH1)を含む。F(ab’)2抗体断片は、一般的にFab’断片のC-末端に存在するヒンジ領域でシステインによって共有連結された一対のFab’断片を含む。
【0084】
「単一鎖Fv(scFv)」抗体断片は、抗体のVHおよびVLドメインを含む単一ポリペプチド鎖で構成された作製物である。scFvが抗原結合のために所望の構造を形成するようにするポリペプチドリンカーは、VHドメインとVLドメインとの間に追加で含まれることができる。
【0085】
本発明において、「ヒンジ」は特に制限されず、当業界によく知られている。ヒンジは、二硫化結合によってこれら2つの鎖を連結する、IgGおよびIgA免疫グロブリンクラスの重鎖中央部分にある柔軟なアミノ酸ストレッチを指称する。これは、システインとプロリンアミノ酸が豊かで、アミノ酸配列が非常に多様であり、任意の他の免疫グロブリン領域と類似していない。ヒンジ領域は長さが多様であってよく、一般的に10~50個のアミノ酸残基範囲である。文献[Adlersberg JB、Ric Clin Lab.Jul-Sep 1976;6(3):191-205]のレビューを参照する。例として、EPKSCDKTHTCPPCP(SEQ ID NO:30)およびDKTHTCPPCP(SEQ ID NO:31)のヒンジ配列に対する言及が行われる。
【0086】
ヒンジがリンカー配列を後に続けるようにすることが、本発明において特に有利である。リンカー配列の前にヒンジが来てもよい。
【0087】
本発明の抗体は、モノクロナル抗体、多重特異的抗体、ヒト抗体、ヒト化された抗体、キメラ抗体、scFvs、Fab断片s、F(ab’)2断片、二硫化-連結されたFv(sdFv)および抗-イディオタイプ(idiotypic)(抗-Id)抗体、または抗体のエピトープ-結合断片、などを含むが、これに制限されない。
【0088】
重鎖不変領域は、ガンマ(γ)、ミュー(μ)、アルファ(α)、デルタ(δ)またはエプシロン(ε)のうち任意の1つのイソ型より選択されることができる。例えば、不変領域は、ガンマ1(IgG1)、ガンマ2(IgG2)、ガンマ3(IgG3)またはガンマ4(IgG4)である。軽鎖不変領域は、カッパまたはラムダ類型であってよい。
【0089】
モノクロナル抗体は、抗体の実質的に均質な集団から修得された抗体を指称する。すなわち、これは、抗体のうち少量で存在することができる天然的な突然変異を除いては同一のものを意味する。モノクロナル抗体は特異性が高いため、単一抗原部位に対して誘導される。一般的に異なる結晶基(エピトープ)に対して異なる抗体を含む既存の(ポリクロナル)抗体とは異なり、各モノクロナル抗体は、抗原の単一結晶基に対して指示される。
【0090】
用語「エピトープ」は、抗体が特異的に結合することができるタンパク質結晶基を指称する。エピトープは、一般的にアミノ酸または糖側鎖のような化学的活性表面分子群で構成され、一般的に特定三次元構造的特性と特定電荷特性を有している。
【0091】
「ヒト化された」形態の非-ヒト(例えば、マウス)抗体は、非-ヒト免疫グロブリンに由来した最小配列を含むキメラ抗体である。大部分の場合、ヒト化された抗体は、レシピエントの超可変領域の残基が所望の特異性、親和性および能力を保持するマウス、レット、ウサギ、または非-ヒト霊長類のような非-ヒト種の超可変領域(供与者抗体)の残基に代替されたヒト免疫グロブリン(受容体抗体)である。
【0092】
用語「ヒト抗体」は、相補性決定領域および構造的領域を含んで抗体を構成する全アミノ酸配列がヒト免疫グロブリンで構成された、ヒト免疫グロブリンに由来した分子を指称する。
【0093】
キメラ抗体(免疫グロブリン)および所望の生物学的活性を示す抗体の断片である、化学抗体は、重鎖および/または軽鎖の一部が特定種に由来するか、または特定抗体部類または下位部類に属する抗体の相応する配列と同一または相同である一方、残りの鎖は、他の種に由来するか他の抗体部類または下位部類に属する抗体の相応する配列と同一または相同である。
【0094】
本願で使用された抗体の「可変領域」は、相補性決定領域(CDR;すなわち、CDR1、CDR2およびCDR3)およびフレームワーク領域(FR)のアミノ酸配列を含む抗体分子の軽鎖および重鎖部分を指称する。VHは、重鎖の可変ドメインを指称する。VLは、軽鎖の可変ドメインを指称する。
【0095】
用語「相補性決定領域(CDR)」は、抗原結合に必要な実体である抗体可変ドメインのアミノ酸残基を指称する。それぞれの可変ドメインは、典型的にCDR1、CDR2およびCDR3と確認された3つのCDR領域を有する。
【0096】
「フレームワーク領域(FR)」は、CDR残基以外の可変ドメイン残基である。各可変ドメインは、一般的に4個のFRを有する:FR1、FR2、FR3およびFR4。
【0097】
scFvは、抗体のVHおよびVLドメインを含む単一ポリペプチド鎖からなる作製物である抗体断片である。これは、scFvが抗原結合のために所望の構造を形成することができるようにVHドメインとVLドメインとの間にポリペプチドリンカーをさらに含むことができる。
【0098】
本発明の特に好ましい実施形態において、二重特異的エピトープ結合タンパク質は、単一ポリペプチドである。
【0099】
リンカーは、ペプチドリンカーであってよく、引用されたようにそれぞれの整数値を含んで約10~25aa、約10~20aa、または約12~19aaの長さを有してよい。例えば、グリシンおよび/またはセリンのような親水性アミノ酸が含まれてよいが、これに制限されるものではない。
【0100】
特に、リンカーは、例えば(GS)n、(GGS)n、(GSGGS)nまたは(GnS)m(nおよびmはそれぞれ1~10である、すなわち、nおよびmは、独立して任意の1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10であってよい)を含むことができるが、リンカーは、例えば(GnS)m(nおよびmはそれぞれ1~10である、すなわち、nおよびmは、独立して任意の1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10であってよい)と言える。特定参照が(G4S)3(SEQ ID NO:15)または(G4S)2(SEQ ID NO:16)リンカーに対して与えられる。リンカーはまた218リンカー(SEQ ID NO:17)または218Sリンカー(SEQ ID NO:18)の1つ以上のコピーであってよい。もちろん、本発明において、また前述したリンカーの組み合わせが考慮される。
【0101】
実施形態において、本発明は、二重特異的エピトープ結合タンパク質をコードする核酸に関する。二重特異的エピトープ結合タンパク質は、核酸を単離して組換えで生産されることができる。すなわち、二重特異的エピトープ結合タンパク質をコードする核酸、二重特異的エピトープ結合タンパク質をコードする核酸を含むベクター、および核酸および/またはベクターを含む細胞が本発明に含まれる。
【0102】
「核酸」は、DNA(gDNAおよびcDNA)およびRNA分子を包括的に含むものと解析され、核酸の基本構成単位であるヌクレオチドは、天然ヌクレオチドだけでなく糖または塩基部位が変形された類似体も含むものと解析される。本発明の重鎖および軽鎖可変領域をコードする核酸の配列は、変形されることができる。このような変形は、ヌクレオチドの付加、欠失または非-保存的または保存的置換を含む。
【0103】
DNAは、既存の分子生物学的技術を使用して容易に単離されるか、合成されることができ、核酸は、単離されて複製可能なベクターに挿入されて追加クローニング(DNA増幅)または追加発現が可能である。これに基づいて、本発明は、他の様態の核酸を含む組換え発現ベクターに関する。
【0104】
本願で使用されたように、用語「ベクター」は、宿主細胞で標的遺伝子を発現させる手段として、プラスミドベクター、コスミドベクター、バクテリオファージベクター、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、アデノ-関連ウイルスベクターなどを含む。ベクターの成分は、一般的に非制限的にシグナル配列、複製基点、1つ以上の抗生剤耐性マーカー遺伝子、エンハンサー要素、プロモーターおよび転写終結配列のうち1つ以上を含む。二重特異的エピトープ結合タンパク質をコードする核酸は、プロモーター、転写終結配列などと作動可能に連結される。
【0105】
用語「作動可能に連結された」は、核酸発現調節配列(例えば、プロモーター、シグナル配列または転写モジュレーター結合部位のアレイ)とまた他の核酸配列との間の機能的連結を指称し、これで調節配列はまた他の核酸配列の転写および/または翻訳を調節する。
【0106】
原核細胞が宿主である場合、これは、一般的に転写を伝播できる強力なプロモーター(例えば、tacプロモーター、lacプロモーター、lacUV5プロモーター、lppプロモーター、pLλプロモーター、pRλプロモーター、rac5プロモーター、ampプロモーター、recAプロモーター、SP6プロモーター、trpプロモーターおよびT7プロモーターなど)、翻訳開始のためのリボソーム結合部位、および転写/翻訳終結配列を含む。また、例えば、真核細胞が宿主として使用される場合、哺乳類細胞のゲノムに由来したプロモーター(例えば、メタロチオネインプロモーター、β-アクチンプロモーター、ヒトヘモグロビンプロモーターおよびヒト筋肉クレアチンプロモーター)または哺乳類ウイルスに由来したプロモーター(例えば、アデノウイルス後期プロモーター、ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター、SV40プロモーター、巨大細胞ウイルス(CMV:cytomegalovirus)プロモーター、HSV tkプロモーター、マウス乳房腫瘍ウイルス(MMTV:mouse mammary tumor virus)プロモーター、HIV LTRプロモーター、モロニーウイルスのプロモーター、エプスタイン-バールウイルス(EBV:Epstein-Barr virus)のプロモーターおよびラウス肉腫ウイルス(RSV:rous sarcoma virus)のプロモーター)が使用されることができ、一般的に転写終結配列としてポリアデニル化配列が含まれる。
【0107】
状況によって、ベクターは、これから発現された二重特異的エピトープ結合タンパク質の精製を容易にするために他の配列と融合されることができる。融合される配列は、例えば、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(Pharmacia、米国素材)、マルトース結合タンパク質(NEB、米国素材)、FLAG(IBI、米国素材)、6x His(ヘキサヒスチジン;Qiagen、米国素材)などを含む。
【0108】
ベクターは、選択マーカーとして当業界で一般的に使用される抗生剤耐性遺伝子を含む。例えば、これらは、アンピシリン、ゲンタマイシン、カルベニシリン、クロラムフェニコール、ストレプトマイシン、カナマイシン、ジェネティシン、ネオマイシンおよびテトラサイクリンに耐性がある遺伝子である。
【0109】
また他の様態で、本発明は、組換え発現ベクターでトランスフェクションされた宿主細胞に関する。本発明の二重特異的エピトープ結合タンパク質を生産するために使用される宿主細胞は、非制限的に原核細胞、酵母または高等真核細胞であってよい。
【0110】
大腸菌(Escherichia coli)、バチルスサブチルス(Bacillus subtilus)およびバチルスチューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)を含むバチルス属菌株、ストレプトマイセス(Streptomyces)、シュードモナス(Pseudomonas)(例えば、シュードモナスプチダ(Pseudomonas putida))、プロテウスミラビリス(Proteus mirabilis)およびスタフィロコッカス(Staphylococcus)(例えば、スタフィロコッカスカルノーサス(Staphylocus carnosus))のような原核宿主細胞が使用されることができる。
【0111】
しかし、動物細胞が最も関心があり、有用な宿主細胞株の例は、MDA-MB-231、MCF-7、FaDu、Jurkat、MC38、COS-7、BHK、CHO、CHOK1、DXB-11、DG-44、CHO/-DHFR、CV1、COS-7、HEK293、BHK、TM4、VERO、HELA、MDCK、BRL 3A、W138、Hep G2、SK-Hep、MMT、TRI、MRC 5、FS4、3T3、RIN、A549、PC12、K562、PER.C6、SP2/0、NS-0、U20S、またはHT1080であってよいが、これに制限されない。
【0112】
また他の様態で、本発明は、次のステップを含む、二重特異的エピトープ結合タンパク質の製造方法に関する:宿主細胞を培養して二重特異的エピトープ結合タンパク質を生成するステップ;および生成された二重特異的エピトープ結合タンパク質を単離および精製するステップ。
【0113】
宿主細胞は、様々な培地で培養されることができる。培養培地として市販される培地が制限なく使用されることができる。当業者に公知の他のすべての必須補充剤は、適切な濃度で含まれることができる。温度、pHなどのような培養条件は、発現のために選択された宿主細胞に既に使用され、当業者にとって自明であるはずである。
【0114】
二重特異的エピトープ結合タンパク質の回収のために、遠心分離または限外濾過を通じて不純物が除去されることができ、結果物は、親和性クロマトグラフィーと同じ方法を使用して精製されることができる。アニオンまたはカチオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーなどのような他の追加的な精製技術が使用されることができる。
【0115】
また他の様態において、本発明は、二重特異的エピトープ結合タンパク質を含む、腫瘍またはがんの予防または治療のための組成物に関する。
【0116】
用語「予防」は、画期的な症例の絶対的な除去を要求しない。よって、用語「予防」は、本発明による組成物の投与によって疾病の臨床症状を抑制するか、または進行を遅延させる任意の作用を指称し、用語「治療」は、疾病の臨床症状の発達を抑制するか、または臨床症状の緩和または除去を指称する。
【0117】
本発明の組成物に含まれる薬学的に許容される担体は、剤形で通常的に使用され、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、澱粉、アラビアガム、リン酸カルシウム、アルジネート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微細結晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、シロップ、メチルセルロース、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、滑石、ステアリン酸マグネシウム、鉱油などを含むが、これに制限されない。本発明の組成物は、前記成分の外に、潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤などをさらに含むことができる。
【0118】
本発明の薬学組成物は、経口でまたは非経口で投与されることができ、非経口投与の場合、静脈内注入、皮下注入、筋肉内注入、腹腔内注入、内皮投与、局所投与、鼻腔内投与、肺内投与および直腸投与を通じて投与されることができる。
【0119】
タンパク質またはペプチドは、経口投与時に消化されるため、経口組成物は活性剤をコートするか、または胃で分解から保護するように剤形化されなければならない。また、薬学組成物は、活性物質を標的細胞に輸送できる任意の装置によって投与されることができる。
【0120】
本発明による組成物の適切な投与量は、剤形化方法、投与方式、患者の年齢、体重、性別、医学的状態、飲食、投与時間、投与経路、排泄率および反応敏感度のような因子によって変わる。熟練した医師は、所望の治療または予防に効果的な投与量を容易に決定して処方することができる。例えば、本発明の薬学組成物の一日投与量は、0.0001~100mg/kgであり、ここで、前記「kg」は、対象体の体重を指称する。一日投与量の下限は、0.0001、0.0005、0.001、0.005、0.01、0.05、0.1、0.5、1、2.5、5、7.5、10、12.5、15、17.5、20、22.5、25、27.5、30、32.5、35、37.5、および40mg/kgであってよい。一日投与量の上限は、100、97.5、95、92.5、90、87.5、85、82.5、80、77.5、75、72.5、70、67.5、65、62.5、60、57.5、55、52.5、50、47.5、45、42.5、および40mg/kgであってよい。また前述したことより選択される下限および上限によって限定された任意の範囲、および下限として言及された値が上限で作用できる範囲(例えば、0.01~10mg/kgの範囲が本発明によって含まれる)および上限として言及された値が下限として作用することができる範囲(例えば、45~75mg/kgの範囲が本発明によって含まれる)が本発明によって含まれる。本願で使用されたように、用語「薬学的に有効な用量」は、がんを予防または治療するに十分な用量を指称する。
【0121】
本発明の薬学組成物は、薬学的に許容される担体および/または賦形剤を使用して剤形化して単位用量で製造されることができるか、または本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できる方法によって多回-容量容器に内在化して製造されることができる。この場合、剤形はオイルまたは水性媒質、懸濁液またはエマルジョン中の溶液の形態であってよいか、抽出物、粉末、坐剤、顆粒、錠剤またはカプセル剤の形態であってよい。分散剤または安定化剤が追加で含まれることができる。
【0122】
いくつかの実施形態において、二重特異的エピトープ結合タンパク質、単一-鎖キメラポリペプチド、または本願に記述された核酸作製物がこれを必要とする対象体を治療するのに使用されることができる。
【0123】
いくつかの実施形態において、二重特異的エピトープ結合タンパク質、単一-鎖キメラポリペプチドおよび薬学的に許容される担体を含む薬学組成物は、疾患または病態で診断された対象体に投与されることができる。
【0124】
いくつかの実施形態において、対象体は、がんを有するか、またはがんの発病する危険がある。
【0125】
いくつかの実施形態において、薬学組成物は、イオン化放射線、化学療法剤、治療抗体およびチェックポイント抑制剤を含むが、これに制限されない1つ以上の追加の抗-腫瘍療法とともに投与されることができる。
【0126】
がんは、身体の非正常的な細胞が統制されない成長を特徴とする広範囲な疾患群を指称することができる。調節されない細胞分裂と成長は周辺組織を侵す悪性腫瘍の形成を招き、リンパ係や血流を介し身体の離れた部位に転移することもある。がんまたはがん組織は腫瘍を含み得る。
【0127】
この開示内容の方法による治療に適合したがんは、非制限的に膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、大腸がん、子宮内膜がん、食道がん、ファローピウス管がん、胆嚢がん、胃腸がん、頭頸部がん、血液がん、咽頭がん、肝がん、肺がん、リンパ腫、黒色腫、中皮腫、卵巣がん、原発性腹膜がん、唾液腺がん、肉腫、胃がん、甲状腺がん、膵臓がん、および前立腺がんを含むことができる。いくつかの実施形態において、この開示内容の方法による治療のためのがんは、非制限的にがん腫、リンパ種(例えば、ホジキンおよび非ホジキンリンパ腫)、芽細胞腫、肉腫および白血病を含むことができる。いくつかの実施形態において、がんは、扁平上皮がん、小細胞肺がん、非-小細胞肺がん、肺線がん腫、肺の扁平上皮がん、腹膜がん、肝細胞がん腫、胃がん、膵臓がん、神経膠腫、子宮頸がん、卵巣がん、肝がん、膀胱がん、肝細胞がん腫、乳がん、大腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜または子宮がん腫、唾液がん腫、腎臓がん、前立腺がん、外陰がん、甲状腺がん、肝臓がん、白血病およびその他のリンパ増殖性障害、および様々な類型の頭頸部がんを含むことができる。
【0128】
本願に記述された任意の二重特異的エピトープ結合タンパク質、単一-鎖キメラポリペプチド、任意の細胞、または任意の核酸のうち少なくとも1つを含む組成物(例えば、薬学組成物)がまた本願に提供される。いくつかの実施形態において、組成物は、本願に記述された任意の二重特異的エピトープ結合タンパク質単一-鎖キメラポリペプチドのうち少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態において、組成物は、任意の免疫細胞(例えば、本願に記述された任意の免疫細胞、例えば、本願に記述された任意の方法を使用して生産された任意の免疫細胞)を含む。
【0129】
いくつかの実施形態において、薬学組成物は、異なる投与経路(例えば、静脈内、皮下)用で剤形化される。いくつかの実施形態において、薬学組成物は、薬学的に許容される担体(例えば、リン酸塩緩衝された塩水)を含むことができる。
【0130】
薬学組成物の単一または多重投与は、例えば、対象によって要求されて許容される投与量および頻度によってこれを必要とする対象体に提供されることができる。剤形は、状態、疾患、または症状を効果的に治療、予防、または改善するに十分な量の活性剤を提供しなければならない。
【0131】
本願に記述された任意の二重特異的エピトープ結合タンパク質、単一-鎖キメラポリペプチド、組成物、核酸、または細胞(例えば、免疫細胞)を含むキットがまた本願で提供される。いくつかの実施形態において、キットは、本願に記述された任意の方法を遂行するための指針を含むことができる。いくつかの実施形態において、キットは、任意の本願に記述された薬学組成物の少なくとも1つの用量を含むことができる。
【0132】
定義:
約:用語「約」は、本願で値に関して使用されるとき、言及された値と関連して類似する値を指称する。一般的に、文脈に精通する当業者であれば、その文脈において「約」によって含まれる適切な程度の変動の程度を理解するであろう。例えば、いくつかの実施形態において、用語「薬」は、言及された値の25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、またはその以下以内である値の範囲を含むことができる。
【0133】
投与:本願で使用されたように、用語「投与」は、典型的に組成物や組成物に含まれた製剤の伝達を達成するために対象体またはシステムに組成物を投与することを指称する。当業者は、適切な状況で対象体、例えば、ヒトに投与するために使用されることができる様々な経路を認識するであろう。例えば、いくつかの実施形態において、投与は、経眼、経口、非経口、局所などであってよい。いくつかの特定の実施形態において、投与は、気管支(例えば、気管支点滴による)、頬側、経皮(例えば、真皮、皮内(intradermal)、皮間(interdermal)、経皮などの1つ以上の局所部位であってよいか、これを含むことができる)、経腸、動脈内、皮内、胃内、髄内、筋肉内、鼻腔内、腹腔内 、髄腔内、静脈内、脳室内、特定の臓器内(例えば、肝内)、粘膜、鼻腔、経口、直腸、皮下、舌下、局所、気管(例えば、気管内点滴によって)、膣、硝子体などであってよい。いくつかの実施形態において、投与は、単一用量のみを含むことができる。いくつかの実施形態において、投与は、固定された数の用量の適用を伴い得る。いくつかの実施形態において、投与は、断続的(例えば、時間で隔てられた複数の用量)および/または定期的(例えば、共通の時間期間で隔てられた個々の用量)投与である投与を含むことができる。いくつかの実施形態において、投与は、少なくとも選択された時間期間の間の持続的投与(例えば、灌流)を含むことができる。
【0134】
親和性:当業界で知られているように「親和性」は、特定のリガンドがそのパートナーと結合する強さの尺度である。親和性は、様々の方法で測定することができる。いくつかの実施形態において、親和性は定量的アッセイによって測定される。このようないくつかの実施形態において、結合パートナー濃度は、生理学的条件を模倣するためにリガンド濃度を超過して固定され得る。代替的または追加的に、いくつかの実施形態において、結合パートナー濃度および/またはリガンド濃度が変わることがある。このようないくつかの実施形態において、親和性は、比較可能な条件(例えば、濃度)で基準と比較されることができる。
【0135】
抗体製剤:本願で使用されたように、用語「抗体製剤」は、特定の抗原に特異的に結合する製剤を指称する。いくつかの実施形態において、この用語は、特異的結合を付与するのに十分な免疫グロブリン構造要素を含む任意のポリペプチドまたはポリペプチド複合体を含む。例示的な抗体製剤は、モノクロナル抗体、ポリクロナル抗体、およびその断片を含むが、これに制限されない。いくつかの実施形態において、抗体製剤は、当業界に公知のようにヒト化、霊長類化、キメラなどの1つ以上の配列要素を含むことができる。多くの実施形態において、用語「抗体製剤」は、代替的提示における抗体の構造的および機能的特徴を利用するための、当業界に公知または開発された作製物または形式のうち1つ以上を指称するために使用される。例えば、実施形態において、本発明に従って使用される抗体製剤は、非制限的に完全なIgA、IgG、IgE、またはIgM抗体;二重-または多重-特異的抗体(例えば、Zybodies(登録商標)、など);抗体断片、例えば、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、Fd’断片、Fd断片、および単離されたCDRまたはそのセット、単一鎖Fv;ポリペプチド-Fc融合;単一ドメイン抗体(例えば、サメ単 一ドメイン抗体、例えば、IgNARまたはその断片);カメロイド抗体;遮蔽抗体(例えば、Probodies(登録商標));小型モジュール型免疫薬剤(「SMIPsTM」:Small Modular ImmunoPharmaceuticals);単一鎖またはタンデムダイアボディ(TandAb(登録商標));VHH;Anticalins(登録商標);Nanobodies(登録商標)ミニボディ;BiTE(登録商標);アンキリン反復タンパク質またはDARPINs(登録商標);Avimers(登録商標);DART;TCR-類似抗体;、Adnectins(登録商標);Affilins(登録商標);Trans-bodies(登録商標);Affibodies(登録商標);TrimerX(登録商標);マイクロタンパク質;Fynomers(登録商標)、Centyrins(登録商標);およびKALBITOR(登録商標)より選択される形式である。いくつかの実施形態において、抗体製剤は、天然に生成される場合に有する共有変形(例えば、グリカンの付着)を欠いていてもよい。いくつかの実施形態において、抗体製剤は、共有変形(例えば、グリカンの付着、ペイロード[例えば、検出可能な部分、治療部分、触媒部分など]、またはその他のペンダント基[例えば、ポリ-エチレングリコールなど]を含むことができる。多くの実施形態において、抗体製剤は、アミノ酸配列が相補性決定領域(CDR)として当業者によって認識される1つ以上の構造的要素を含むポリペプチドであるか、またはそれを含む;いくつかの実施形態において抗体製剤は、アミノ酸配列が参照抗体において見出されるものと実質的に同一である少なくとも1つのCDR(例えば、少なくとも1つの重鎖CDRおよび/または少なくとも1つの軽鎖CDR)を含むポリペプチドであるか、またはこれを含む。いくつかの実施形態において、含まれるCDRは、参照CDRと比較して、配列が同一であるか、または1~5個のアミノ酸置換を含むという点において、参照CDRと実質的に同一である。いくつかの実施形態において、含まれるCDRは、参照CDRと少なくとも80%、81%、82%、83%、84% 85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を示すという点で、参照CDRと実質的に同一である。いくつかの実施形態において、含まれるCDRは、参照CDRと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%配列同一性を示すという点で、参照CDRと実質的に同一である。いくつかの実施形態において、含まれるCDRは、参照CDRと比較して、含まれるCDR内の少なくとも1つのアミノ酸が、欠失、付加または置換されるが、含まれるCDRが参照CDRとは異なり、同一のアミノ酸配列を有するという点で、参照CDRと実質的に同一である。いくつかの実施形態において、含まれるCDRは、参照CDRと比較して含まれるCDRの1~5個のアミノ酸が欠失、付加、または置換されるが、含まれるCDRが参照CDRとは異なり、同一のアミノ酸配列を有するという点で、参照CDRと実質的に同一である。いくつかの実施形態において、含まれるCDRは、含まれるCDR内の少なくとも1つのアミノ酸が、参照CDRと比較して置換されるが、含まれるCDRが参照CDRとは異なり、同一のアミノ酸配列を有するという点で、参照CDRと実質的に同一である。いくつかの実施形態において、含まれるCDRは、含まれるCDR内の1~5個のアミノ酸が、参照CDRと比較して欠失、付加、または置換されるが、含まれるCDRが参照CDRとは異なり、同一のアミノ酸配列を有するという点で、参照CDRと実質的に同一である。いくつかの実施形態において、抗体製剤は、アミノ酸配列が免疫グロブリン可変ドメインとして当業者によって認識される構造的要素を含むポリペプチドであるか、またはこれを含む。いくつかの実施形態において、抗体製剤は、免疫グロブリン-結合ドメインと相同であるまたは大部分が相同である結合ドメインを有するポリペプチドタンパク質である。いくつかの実施形態において、抗体製剤は、キメラ抗原受容体(CAR:chimeric antigen receptor)の少なくとも一部であるか、またはこれを含む。
【0136】
抗原:本願で使用されたように、用語「抗原」は、抗体製剤に結合する製剤を指称する。いくつかの実施形態において、抗原は抗体製剤に結合し、有機体における特定の生理学的反応を誘導してもよく、または誘導しなくてもよい。一般的に、抗原は、例えば、小分子、核酸、ポリペプチド、炭水化物、脂質、ポリマー(生物学的ポリマー[例えば、核酸および/またはアミノ酸ポリマー]および生物学的ポリマー以外のポリマー[例えば、核酸またはアミノ酸ポリマー以外のポリマー])などのような任意の化学的実体であってよいか、またはそれらを含むことができる。いくつかの実施形態において、抗原は、ポリペプチドであるか、またはそれらを含む。いくつかの実施形態において、抗原は、グリカンであるか、またはそれらを含む。当業者は、一般的に、抗原が、単離または純粋な形態で提供されてもよく、または代替的に、粗形態で提供されてもよいことを理解するであろう(例えば、他の物質とともに、例えば、細胞抽出物のような抽出物でまたは抗原-含有供給源の他の相対的に粗い調製で)。いくつかの特定の実施形態において、抗原は、細胞の状況で存在する(例えば、抗原は、細胞の表面上で発現されるか、または細胞で発現される)。いくつかの実施形態において、抗原は、組換え抗原である。
【0137】
抗原結合ドメイン:本願に使用されたように、標的部分または実体に特異的に結合する抗体製剤またはその一部を指称する。典型的に、抗原結合ドメインとその標的との間の相互作用は、非-共有的である。いくつかの実施形態において、標的部分または実体は、例えば、炭水化物、脂質、核酸、金属、ポリペプチド、または小分子を含む、任意の化学的クラスであってよい。いくつかの実施形態において、抗原結合ドメインは、ポリペプチド(またはその複合体)またはそれを含んでよい。いくつかの実施形態において、抗原結合ドメインは、融合ポリペプチドの一部である。
【0138】
~と関連する:2つの事象または実体は、1つの存在、レベルおよび/または形態が他方の存在、レベルおよび/または形態と相関関係にある場合、その用語が本願で使用されたように互い「関連」する。例えば、特定実体(例えば、ポリペプチド、遺伝的特徴、代謝産物、微生物など)は、その存在、レベルおよび/または形態が、疾患、障害、または病態の発病率および/またはそれに対する感受性と相関する場合(例えば、関連人口集団全体にわたって)、特定疾患、障害、または病態と関連すると見なされる。いくつかの実施形態において、2つ以上の実体は、互いに物理的に近接しており/いるか保持されるように直接または間接的に相互作用する場合、互いに物理的に「関連」している。いくつかの実施形態において、互いに物理的に関連する2つ以上の実体は互いに共有的に連結している;いくつかの実施形態において、互いに物理的に関連する2つ以上の実体は、互いに共有的に連結していないが、例えば、水素結合、ファンデルワールス相互作用、疎水性相互作用、磁性、およびそれらの組み合わせにより、非-共有的に関連している。
【0139】
結合:本願で使用されたように、用語「結合」は、一般的に2つ以上の実体の間またはそれらの間の非-共有結合を指称するものと理解されるであろう。「直接」結合は、実体または部分の間の物理的接触を含む;間接結合は、1つ以上の中間実体との物理的接触を通じた物理的相互作用を含む。2つ以上の実体間の結合は、一般的に相互作用する実体または部分が個別的に研究される場合、またはさらに複雑なシステムの文脈(例えば、担体実体および/または生物学的システムまたは細胞と共有的に、もしくは他の形で結合されている間)を含み、任意の様々な文脈で評価されることができる。
【0140】
がん:用語「がん」、「悪性」、「新生物」、「腫瘍」および「がん腫」は、本願で相対的に非正常的であり、調節されずに/されないか、自律的な成長を示し、細胞増殖制御の顕著な喪失を特徴とする非正常的な成長表現型を示す細胞を指称する。いくつかの実施形態において、腫瘍は、前がん性(例えば、良性)、悪性、前-転移性、転移性および/または非-転移性である細胞であってよいか、これを含むことができる。この開示内容は、その教示が特に関連され得る特定のがんを具体的に識別する。いくつかの実施形態において、関連がんは固形腫瘍を特徴とすることができる。いくつかの実施形態において、関連がんは血液腫瘍を特徴とすることができる。一般的に、当業界に公知の様々な類型のがんの例は、例えば、白血病、リンパ腫(ホジキンおよび非ホジキン)、骨髄腫および骨髄増殖性障害を含む血液がん;肉腫、黒色腫、腺腫、固形組織のがん腫、口腔、咽喉、咽頭、および肺の扁平上皮がん、肝がん、泌尿生殖器がん、例えば、前立腺がん、子宮頸がん、膀胱がん、子宮がん、および子宮内膜がんおよび腎臓細胞がん腫、骨がん、膵臓がん、皮膚がん、皮膚または眼球内黒色腫、内分泌系がん、甲状腺がん、副甲状線がん、頭頸部がん、乳がん、胃腸がんおよび神経系がん、良性病変、例えば、乳頭種などを含む。
【0141】
化学療法剤:本願で使用された用語「化学療法剤」は、1つ以上のアポトーシス促進剤、細胞増殖抑制剤および/または細胞毒性剤を指称する当業界で理解される意味を有し、例えば、好ましくない細胞増殖と関連する1つ以上の疾病、障害または病態を治療するのに使用および/または推奨される製剤を具体的に含む。多くの実施形態において、化学療法剤は、がん治療に有用である。いくつかの実施形態において、化学療法剤は、1つ以上のアルキル化剤(例えば、二機能性アルキル化剤、例えば、シクロホスファミド(Cyclophosphamide)、メクロレタミン(Mechlorethamine)、クロラムブシル(Chlorambucil)、およびメルファラン(Melphalan)および一機能性アルキル化剤、例えば、ダカルバジン(Dacarbazine)、ニトロソウレア(Nitrosoureas)、テモゾロミド(Temozolomide))、1つ以上のアントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(Daunorubicin)、ドキソルビシン(Doxorubicin)、エピルビシン(Epirubicin)、イダルビシン(Idarubicin)、およびミトキサントロン(Mitoxantrone))、バルルビシン(Valrubicin)1つ以上の細胞骨格破壊剤(例えば、微小管標的化剤、例えば、タキサン(taxane)、マイタンシン(maytansine)およびそれらの類似体、具体的な例は、パクリタキセル(Paclitaxel)、ドセタキセル(Docetaxel)、アブラキサン(Arabaxane)、およびタキソテール(Taxotere)を含む)、1つ以上のエポチロン(epothilone)、1つ以上のヒストンデアセチラーゼ抑制剤(HDAC)、1つ以上のトポイソメラーゼ抑制剤(例えば、トポイソメラーゼIおよび/またはトポイソメラーゼIIの抑制剤)、1つ以上のキナーゼ抑制剤、1つ以上のヌクレオチド類似体またはヌクレオチド前球体類似体、1つ以上のペプチド抗生剤、1つ以上の白金-基盤製剤、1つ以上のレチノイド、1つ以上のビンカアルカロイド、および/または1つ以上の次のうち1つ以上の類似体(すなわち、関連抗-増殖活性を共有する)であってよいか、またはこれを含むことができる。いくつかの特定の実施形態において、化学療法剤は、1つ以上のアクチノマイシン(Actinomycin)、オール-トランスレチノイン酸(All-trans retinoic acid)、アウリスタチン(Auiristatin)、アザシチジン(Azacitidine)、アザチオプリン(Azathioprine)、ブレオマイシン(Bleomycin)、ボルテゾミブ(Bortezomib)、カルボプラチン(Carboplatin)、カペシタビン(Capecitabine)、シスプラチン(Cisplatin)、クロラムブシル(Chlorambucil)、シクロホスファミド(Cyclophosphamide)、クルクミン(Curcumin)、シタラビン(Cytarabine)、ダウノルビシン(Daunorubicin)、ドセタキセル(Docetaxel)、ドキシフルリジン(Doxifluridine)、ドキソルビシン(Doxorubicin)、エピルビシン(Epirubicin)、エポチロン(Epothilone)、エトポシド(Etoposide)、フルオロウラシル(Fluorouracil)、ゲムシタビン(Gemcitabine)、ヒドロキシウレア(Hydroxyurea)、イダルビシン(Idarubicin)、イマチニブ(Imatinib)、イリノテカン(Irinotecan)、マイタンシン(Maytansine)および/またはそれらの類似体(例えば、DM1)メクロレタミン(Mechlorethamine)、メルカプトプリン(Mercaptopurine)、メトトレキサート(Methotrexate)、ミトキサントロン(Mitoxantrone)、マイタンシノイド(Maytansinoid)、オキサリプラチン(Oxaliplatin)、パクリタキセル(Paclitaxel)、ペメトレキセド(Pemetrexed)、テニポシド(Teniposide)、チオグアニン(Tioguanine)、トポテカン(Topotecan)、バルルビシン(Valrubicin)、ビンブラスチン(Vinblastine)、ビンクリスチン(Vincristine)、ビンデシン(Vindesine)、ビノレルビン(Vinorelbine)、およびそれらの組み合わせであってよいか、またはこれを含むことができる。いくつかの実施形態において、化学療法剤は、抗体-薬物接合体の文脈で利用されることができる。いくつかの実施形態において、化学療法剤は、次からなる群より選択される抗体-薬物接合体で見出されるものである:hLL1-ドキソルビシン(doxorubicin)、hRS7-SN-38、hMN-14-SN-38、hLL2-SN-38、hA20-SN-38、hPAM4-SN-38、hLL1-SN-38、hRS7-Pro-2-P-Dox、hMN-14-Pro-2-P-Dox、hLL2-Pro-2-P-Dox、hA20-Pro-2-P-Dox、hPAM4-Pro-2-P-Dox、hLL1-Pro-2-P-Dox、P4/D10-ドキソルビシン(doxorubicin)、ゲムツズマブオゾガマイシン(gemtuzumab ozogamicin)、ブレンツキシマブベドチン(brentuximab vedotin)、トラスツズマブエムタンシン(trastuzumab emtansine)、イノツズマブオゾガマイシン(inotuzumab ozogamicin)、グレンバツムマブベドチン(glembatumomab vedotin)、SAR3419、SAR566658、BIIB015、BT062、SGN-75、SGN-CD19A、AMG-172、AMG-595、BAY-94-9343、ASG-5ME、ASG-22ME、ASG-16M8F、MDX-1203、MLN-0264、抗-PSMA ADC、RG-7450、RG-7458、RG-7593、RG-7596、RG-7598、RG-7599、RG-7600、RG-7636、ABT-414、IMGN-853、IMGN-529、ボルセツズマブマホドチン(vorsetuzumab mafodotin)、およびロルボツズマブメルタンシン(lorvotuzumab mertansine)。
【0142】
操作された:一般的に、用語「操作された」は、人の手によって操作された様態を指称する。例えば、ポリペプチドは、ポリペプチド配列が人の手によって操作されるとき、「操作された」ものと見なされる。例えば、本発明のいくつかの実施形態において、操作されたポリペプチドは、人の手によって参照ポリペプチド配列で導入された1つ以上のアミノ酸突然変異、欠失および/または挿入を含む配列を含む。いくつかの実施形態において、操作されたポリペプチドは、人の手によって1つ以上の追加ポリペプチドに融合(すなわち、共有結合)されてインビボで天然に発生しない融合ポリペプチドを形成したポリペプチドを含む。類似するように、細胞や有機体は、遺伝情報が変更されるように操作された場合、「操作された」ものと見なされる(例えば、以前に存在しなかった新たな遺伝物質が、例えば、形質転換、交配、体細胞ハイブリダイゼーション、トランスフェクション、形質導入、またはその他の機序によって導入されるか、または以前から存在した遺伝物質が、例えば、置換もしくは欠失突然変異、または交配プロトコルによって変更されるか、または除去される)。一般的な慣行であり、当業者によって理解されるように、操作されたポリペプチドまたは細胞の誘導体および/または子孫は、たとえ実際操作が以前個体で遂行されたにもかかわらず、一般的に依然として「操作された」と称される。
【0143】
薬学組成物:本願で使用されたように、用語「薬学組成物」は、活性剤が1つ以上の薬剤学籍に許容される担体とともに剤形化される組成物を指称する。いくつかの実施形態において、組成物は、ヒトまたは動物対象体に投与するのに適合した。いくつかの実施形態において、活性剤は、関連集団に投与されるとき、所定の治療効果を達成する統計的に有意な確率を示す治療療法で投与するのに適切な単位投与量で存在する。
【0144】
薬学的に許容される担体:前記与えられた例に追加して、本願で使用されたように、用語「薬学的に許容される担体」は、一般的に薬学的に許容される物質、組成物または担体、例えば、液体または固体充填剤、安定化剤、分散剤、懸濁剤、希釈剤、賦形剤、増粘剤、溶媒またはカプセル化物質、意図された機能を遂行することができるように患者内に、または患者に本発明内で有用な化合物を運搬するか、または輸送するのに関与する当業界で認める意味を有する。典型的に、このような作製物は、ある器官または身体の一部から他の器官または身体の一部へ運搬されるか、または輸送される。各担体は、本発明内で有用な化合物を含む、剤形の他の成分と両立することができ、患者に害を及ぼさないという意味で「許容」されなければならない。本願で使用されたように、「薬学的に許容される担体」は、また本発明内で有用な化合物の活性と両立可能で患者に生理学的に許容される任意のおよびすべてのコート、抗菌剤および抗真菌剤、および吸収遅延剤などを含む。用語「薬学的に許容される担体」は、本発明内で有用な化合物の薬学的に許容される塩をさらに含むことができる。本発明の実施に使用される薬学組成物に含まれることができる他の追加成分は、例えば、文献[Remington’s Pharmaceutical Sciences(Genaro、Ed.、Mack Publishing Co.、1985、Easton、Pa.)]に記述されており、これは、本願に引用されて含まれる。「薬学的に許容される担体」は、一般的に組成物の他の成分と相容性であり、レシピエントに有害でなく、生物学的または別に好ましくないものではない薬学組成物の製造に有用である。「薬学的に許容される担体」は、1つ以上の担体を含む。実施形態は、局所、眼球、非経口、静脈内、腹腔内、筋肉内、舌下、鼻腔または経口投与のための担体を含む。「薬学的に許容される担体」は、また水性分散液および注射または分散液のための滅菌粉末製造用製剤を含む。
【0145】
薬学的に許容される塩:本願で使用されたように、用語「薬学的に許容される塩」は、一般的に当業界で認める意味を有し、親化合物が存在する酸または塩基部分をその塩形態に転換させることで変形された本願に提供された化合物の誘導体を指称する。薬学的に許容される塩の例は、非制限的にアミンのような塩基残基のミネラルまたは有機酸塩;カルボン酸のような酸性残基のアルカリまたは有機塩;などを含む。本願に提供された化合物の薬学的に許容される塩は、例えば、無毒性無機酸または有機酸から形成された親化合物の通常の無毒性塩を含む。本願に提供された化合物の薬学的に許容される塩は、通常の化学的方法によって塩基性または酸性部分を含む親化合物から合成されることができる。一般的に、このような塩は、このような化合物の遊離酸または塩基形態を水または有機溶媒、あるいは2つの混合物で化学量論的量の適切な塩基または酸と組み合わせることで製造されることができ;一般的にエーテル、エチルアセテート、エタノール、イソプロパンオルまたはアセトニトリルのような非水性媒質が使用されることができる。適合した塩のリストは、文献[Remington’s Pharmaceutical Sciences、17thed.、Mack Publishing Company、Easton、Pa.、1985、p.1418]および文献[Journal of Pharmaceutical Science、66、2(1977)]で確認され、これらのそれぞれは、その全体内容が本願に引用されて含まれる。
【0146】
賦形剤:本願で使用されたように、用語「賦形剤」は、一般的に当業界で認める意味を有し、薬学組成物の製造で有用な生理学的に両立可能な添加剤を指称する。薬学的に許容される担体および賦形剤の例は、例えば、文献[Remington Pharmaceutical Science、16thEd]で確認することができる。
【0147】
ポリペプチド:本願で使用されたように、用語「ポリペプチド」は、一般的に少なくとも3つのアミノ酸のポリマーの当業界で認める意味を有する。当業者は、用語「ポリペプチド」が本願に引用された完全な配列を有するポリペプチドを含むだけでなく、このような完全なポリペプチドの機能的な断片(すなわち、1つ以上の活性を保持する断片)を示すポリペプチドを含むように十分に一般的に意図されるということを理解するであろう。さらに、当業者は、タンパク質配列が一般的に活性を破壊することなく、一部置換を許容するということを理解する。よって、活性を保持し、少なくとも約30~40%の全配列同一性、しばしば少なくとも約50%、60%、70%、80%、または85%以上を共有し、さらに一般的に1つ以上の高度に保存された領域で遥かに高い同一性の少なくとも1つの領域、しばしば少なくとも約90%、95%、96%、97%、98%または99%以上を含み、一般的に少なくとも3~4個およびしばしば最大20個以上のアミノ酸を含む任意のポリペプチドは、同一の部類のまた他のポリペプチドとともに、本願で使用される関連用語「ポリペプチド」に含まれる。ポリペプチドは、L-アミノ酸、D-アミノ酸、または両方ともを含むことができ、当業界に公知の任意の様々なアミノ酸変形または類似体を含むことができる。有用な変形は、例えば、末端アセチル化、アミド化、メチル化などを含む。いくつかの実施形態において、タンパク質は、天然アミノ酸、非-天然アミノ酸、合成アミノ酸、およびそれらの組み合わせを含むことができる。用語「ペプチド」は、一般的に約100個未満のアミノ酸、約50個未満のアミノ酸、20個未満のアミノ酸、または10個未満のアミノ酸長さを有するポリペプチドを指称するために使用される。いくつかの実施形態において、タンパク質は、抗体製剤、抗体断片、その生物学的活性部分、および/またはその特徴部分である。
【0148】
組換え:本願で使用されたように、宿主細胞内にトランスフェクトされた組換え発現ベクターを使用して発現されたポリペプチドのような組換え手段によって、設計、操作、調製、発現、生成、製造および/または単離されたポリペプチド;組換え、コンビナトリアルヒトポリペプチドライブラリーから単離されたポリペプチド;形質転換されたか、または別にポリペプチドまたはその1つ以上の成分、部分、要素、またはドメインをコードして/するか発現を指示する遺伝子または遺伝子あるいは遺伝子成分を発現するように操作された動物(例えば、マウス、ウサギ、ヒツジ、魚類など)から単離されたポリペプチド;および/または選択された核酸配列要素を互いにスプライシングまたはライゲーションし、選択された配列要素を化学的に合成し/するか、ポリペプチドまたはその1つ以上の成分、部分、要素、またはドメインをコードし/するか発現を指示する核酸を別に生成することを伴う任意の他の手段によって、製造、発現、生成または単離されたポリペプチドを指称することと意図される。いくつかの実施形態において、このような選択された配列要素のうち1つ以上は、天然から発見される。いくつかの実施形態において、このような選択された配列要素のうち1つ以上は、インシリコ(in silico)で設計される。いくつかの実施形態において、1つ以上のこのような選択された配列要素は、例えば、関心供給源有機体(例えば、ヒト、マウスなどのこと)の生殖系列のような天然または合成供給源から公知の配列要素の突然変異誘発(例えば、インビボまたはインビトロ)から発生する。
【0149】
特異的結合:本願で使用されたように、用語「特異的結合」は、結合が生じる環境で、可能な結合パートナーを区別する能力を指称する。他の潜在的な標的が存在するときに1つの特定の標的と相互作用する結合剤は、それが相互作用する標的に「特異的に結合」すると言う。いくつかの実施形態において、特異的結合は、結合剤とそのパートナーとの間の関連程度を検出するか、または測定することによって評価され;いくつかの実施形態において、特異的結合は、結合剤-パートナー複合体の解離の程度を検出するか、または測定することによって評価され;いくつかの実施形態において、特異的結合は、そのパートナーと別の実体との間の代替的な相互作用を競合する結合剤の能力を検出するか測定することによって評価される。いくつかの実施形態において、特異的結合は、濃度範囲にわたってそのような検出または測定を遂行することによって評価される。
【0150】
対象体:本願で使用されたように、用語「対象体」は、有機体、典型的に哺乳類(例えば、ヒト、いくつかの実施形態においては出生前ヒト形態を含む)を指称する。いくつかの実施形態において、対象体は、関連疾病、障害または病態を患っている 。いくつかの実施形態において、対象体は、疾病、障害または病態に脆弱である。いくつかの実施形態において、対象体は、疾患、障害または病態の1つ以上の症状または特徴を示す。いくつかの実施形態において、対象体は、疾病、障害または病態の如何なる症状または特徴も示さない 。いくつかの実施形態において、対象体は、疾病、障害または病態に対する感受性または危険の特徴である1つ以上の特徴を有する人である。いくつかの実施形態において、対象体は患者である。いくつかの実施形態において、対象体は、診断および/または療法が投与され/されるか投与された個体である。
【0151】
治療剤:本願で使用されたように、語句「治療剤」は、一般的に有機体に投与されるときに所望の薬理学的効果を誘導する任意の製剤を指称する。いくつかの実施形態において、製剤が適切な集団にわたって統計的に有意な効果を示す場合、製剤は治療剤と見なされる。いくつかの実施形態において、適切な集団は、モデル有機体の集団であってよい。いくつかの実施形態において、適切な集団は、特定の年齢群、性別、遺伝的背景、既存の臨床状態などのような様々な基準によって定義され得る。いくつかの実施形態において、治療剤は、疾病、障害、および/または病態の1つ以上の症状または特徴を緩和、改善、軽減、抑制、予防、発病遅延、重症度減少、および/または発病率減少に使用されることができる物質である。いくつかの実施形態において、「治療剤」は、ヒトに投与するために販売され得る前に、政府機関によって承認されたか、または承認を受けなければならない製剤である。いくつかの実施形態において、「治療剤」は、ヒトに投与するために医学的処方が必要な製剤である。
【0152】
治療有効量:本願で使用されたように、用語「治療有効量」は、疾病、障害および/または病態を治療するために、治療的投与療法によって疾病、障害および/または病態を患う、またはそれに感受性を有する集団に投与される際に、十分な量を意味する。いくつかの実施形態において、治療有効量は、疾患、障害、および/または病態の1つ以上の症状の発病率および/または重症度を減少させ、その1つ以上の特徴を安定化させ/させるか、発病を遅延させる量である。当業者は、「治療有効量」という用語が、実際に、特定の個人において達成された成功した治療を必要としないことを理解するであろう。むしろ、治療有効量は、このような治療を必要とする患者に投与したときに、かなりの数の対象体に特定の所望の薬理学的反応を提供する量であってよい。例えば、いくつかの実施形態において、用語「治療有効量」は、本発明の療法の文脈において、これを必要とする個体に投与される際に、前記個体で発生するがん-支持過程を遮断、安定化、減弱、もしくは反転する量を指称するか、または前記個体でがん-抑制過程を向上、または増加させる量を指称する。がん治療の文脈において、「治療有効量」は、がんと診断された個体に投与された場合に、個体におけるがんのさらなる発達を予防、安定化、抑制、または減少する量である。本願に記述された組成物の特に好ましい「治療有効量」は、(治療的治療で)膵臓がん腫のような悪性腫瘍の発病を逆転させるか、または悪性腫瘍の寛解を達成するか、または延長するのに役立つ。個体にがんを治療するために投与される治療有効量は、寛解を促進するか、または転移を抑制するために投与される治療学的有効量と同じまたは異なってよい。ほとんどのがん治療法と同様に、本願に記述された治療方法は、がんに対する「治療」として解析されるか、またはこれに制限されるか、あるいは別に制限されてはならない;むしろ、治療方法は、がんを「治療」するための、すなわち、がんを有する個体の健康に好ましいか、または有益な変化をもたらすための、記述された組成物の使用に関する。このような利点は、腫瘍学分野の熟練した医療提供者によって認められ、非制限的に患者状態の安定化、腫瘍サイズの減少(腫瘍退縮)、生命機能の改善(例えば、がん性組織または臓器の機能改善)、追加転移の減少または抑制、日和見感染の減少、生存率の増加、疼痛の減少、運動機能の改善、認知機能の改善、気力の改善(活力、倦怠感の減少)、幸福感の改善、正常な食欲の回復、健康的な体重増加の回復、並びにそれらの組み合わせを含む。これに加えて、個体の特定の腫瘍の退縮(例えば、本願に記述された治療の結果として)は、また膵臓線がん腫のような腫瘍の部位からがん細胞の試料を採取することで評価されることができ(例えば、治療の過程にわたって)、代謝およびシグナル伝達マーカーのレベルについてがん細胞を試験して、がん細胞の状態をモニタリングし、分子レベルで、がん細胞が不十分に悪性表現型へ退縮するかを確認する。例えば、本発明の方法を用いて誘導された腫瘍退縮は、前記議論された血管新生促進マーカーのうち任意のものの減少、本願に記述された抗-血管新生マーカーの増加、代謝経路、細胞間シグナル伝達経路、またはがんと診断された個体で非正常的な活性を示す細胞内シグナル伝達経路の正常化(すなわち、がんを患っていない正常な個体において見出される状態への変更)の発見によって示される。当業者は、いくつかの実施形態において、治療有効量が単回用量で剤形化および/または投与され得ることを理解するであろう。いくつかの実施形態において、治療有効量は、例えば、投与療法の一部として、複数の用量で剤形化および/または投与されることができる。
【0153】
変異体:分子、例えば、核酸、タンパク質、または小分子の文脈で本願に使用されたように、用語「変異体」は、基準分子とかなりの構造的同一性を示すが、例えば、参照実体と比較して1つ以上の化学的部分の存在若しくは不在、又はそのレベルにおいて基準分子と構造的に異なる分子を指称する。いくつかの実施形態において、変異体はまた、その基準分子と機能的に異なる。一般的に、特定の分子が基準分子の「変異体」と適切に見なされるか否かは、基準分子との構造的同一性程度に基づく。当業者によって理解するであろうが、任意の生物学的または化学的な基準分子は、特定の特徴的な構造要素を有する。定義によれば、変異体は、1つ以上のこのような特徴的な構造要素を共有するが、基準分子と少なくとも一側面で異なる別個の分子である。いくつかの例を挙げると、ポリペプチドは、線形または三次元空間において互いに対して指定された位置を有し/有するか、特定の構造的モチーフおよび/または生物学的機能に寄与する複数のアミノ酸で構成された特徴的な配列要素を有してよい;核酸は、線形または三次元空間において互いに対して指定された位置を有する複数のヌクレオチド残基で構成された特徴的な配列要素を有してよい。いくつかの実施形態において、変異体ポリペプチドまたは核酸は、アミノ酸またはヌクレオチド配列の1つ以上の違いの結果として、参照ポリペプチドまたは核酸と異なってよい。いくつかの実施形態において、変異体ポリペプチドまたは少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、または99%である参照ポリペプチドまたは核酸との全配列同一性を示す。いくつかの実施形態において、変異体ポリペプチドまたは核酸は、参照ポリペプチドまたは核酸と少なくとも1つの特徴的な配列要素を共有しない。いくつかの実施形態において、参照ポリペプチドまたは核酸は、1つ以上の生物学的活性を有する。いくつかの実施形態において、変異体ポリペプチドまたは核酸は、参照ポリペプチドまたは核酸の生物学的活性のうちの1つ以上を共有する。
【0154】
ベクター:本願で使用されたように、そしてさらに前記開示内容に使用されたように、連結されたまた他の核酸を輸送することができる核酸分子を指称する。ベクターの1つの類型は、追加DNAセグメントがライゲーションされ得る環状二本鎖DNAループを指す「プラスミド」である。別の類型のベクターは、ウイルスベクターであり、ここで追加DNAセグメントは、ウイルスゲノムにライゲーションされ得る。特定のベクターは、それらが導入された宿主細胞で自律複製することができる(例えば、バクテリア複製基点を有するバクテリアベクターおよびエピソーム哺乳類ベクター)。他のベクター(例えば、非-エピソーム哺乳類ベクター)は、宿主細胞内への導入時に宿主細胞のゲノム内に組み込むことができ、それによって宿主ゲノムとともに複製される。また、特定のベクターは、作動可能に連結された遺伝子の発現を指示することができる。このようなベクターは、本願において「発現ベクター」と称される。標準技術は、組換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、並びに組織培養および形質転換(例えば、エレクトロポレーション、リポフェクション)に使用され得る。酵素反応および精製技術は、メーカーの仕様に従って、または当業界で一般的に達成されるように、または本願に記載したように遂行され得る。前述の技術および手順は、一般的に、当業界によく知られた通常の方法によって遂行されることができ、本明細書の全体にわたって引用されて議論される様々な一般的およびより具体的な参考文献に記載されるように、遂行されることができる。例えば、文献[Sambrook et al.、Molecular Cloning:A Laboratory Manual 2nd ed.、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.(1989))]を参照し、これは、任意の目的のために本願に引用されて含まれる。
【0155】
本明細書の文脈において、本願に言及されたすべての刊行物、特許出願、特許およびその他の参考文献は、別に表示されない限り、完全に説明されたように、すべての目的のためにその全体の内容が本願に引用されて明示的に含まれ、その全体が本開示内容の一部として見なされなければならない。
【0156】
別に定義されない限り、本願で使用されるすべての技術および科学用語は、本開示内容の属する技術分野における通常の知識を有する者によって一般的に理解されるものと同一の意味を有する。衝突する場合、定義を含む本明細書が優先する。
【0157】
本発明に対する前記記載された説明は、当業者がこれを製造および使用できるように製造および使用する方式および過程を提供し、このような、可能にすることは、特に本来の説明の一部を構成する添付の特許請求の範囲の主題に対して提供される。
【0158】
本願で使用されたように、語句「~からなる群より選択される」、「~より選択される」などは、特定物質の混合物を含む。
【0159】
数値的限界または範囲が本願に明示された場合、終点が含まれる。また、数値限界または範囲内のすべての値および下位範囲は、明示的に作成されたように具体的に含まれる。
【0160】
上記の説明は、当業者が本発明を作って、使用できるようにするために提供され、特定適用およびその要求事項の文脈で提供される。好ましい実施形態に対する様々な修正は、当業者にとって容易に明白であり、本願に定義された一般的な原理は、本発明の思想および範囲を外れず、他の実施形態および適用に適用されることができる。よって、本発明は、提示された実施形態に制限されるものと意図されず、本願に開示された原理および特徴と一致する最も広い範囲が付与されなければならない。
【0161】
下記特定の実施形態に拘束されず、本発明は、下記によって例示される:
(1)(VH)、(VL)、(X)、(VH)n、(VL)n、(X)n、(VH)n-Y、(VL)n-Y、(VH-VL)n-Y、(VL-VH)n-Y、(X)n-Y、Y-(VH)m、Y-(VL)m、Y-(VH-VL)m、Y-(VL-VH)m、および/またはY-(X)mの組み合わせを含む二重特異的エピトープ結合タンパク質、
ここで、前記VHおよびVLは、4-1BBに結合する抗体またはその抗原-結合断片の可変重鎖領域および可変軽鎖領域のそれぞれを指称し、
Xは、PD-L1に結合するPD-1タンパク質またはその断片であり、
Yは、CL、CH1、CH2、およびCH3からなる群より選択される1つ以上のドメインを含む重鎖不変領域または軽鎖不変領域の断片を指称し、
nおよびmは、それぞれ1~5の整数である。
【0162】
(2)(1)において、(VH)、(VL)、(VH)n-Y、(VL)n-Y、(VH-VL)n-Y、(VL-VH)n-Y、(X)n-Y、Y-(VH)m、Y-(VL)m、Y-(VH-VL)m、Y-(VL-VH)m、および/またはY-(X)mは、存在する場合、N-末端からC-末端へ任意の順に示され得る、二重特異的エピトープ結合タンパク質。
【0163】
(3)(1)または(2)において、(VH)、(VL)、(VH)n-Y、(VL)n-Y、(VH-VL)n-Y、(VL-VH)n-Y、(X)n-Y、Y-(VH)m、Y-(VL)m、Y-(VH-VL)m、Y-(VL-VH)m、および/またはY-(X)mの多重コピーが存在する場合、これらは、他の領域に対して任意の順で存在することができ、類似する種類の領域に直接接する必要がない、二重特異的エピトープ結合タンパク質。
【0164】
(4)(1)~(3)のいずれか1つにおいて、二重特異的エピトープ結合タンパク質がscFv形態である、二重特異的エピトープ結合タンパク質。
【0165】
(5)(1)~(4)のいずれか1つにおいて、前記二重特異的エピトープ結合タンパク質がAn-A’n’-B-Cm-C’m’の構造を有する二重特異的エピトープ結合タンパク質であって、
ここで:
A、A’、C、C’:VH、VL、VH-VL、VL-VHまたはX
B:Y
VH、VL、X、Y、n、およびmは、前記定義されたとおりであり、それぞれのVH、VL、X、Yは、直接的に、あるいはリンカーおよび/またはヒンジによって連結され、
n’およびm’は、独立して、1~5の整数である、二重特異的エピトープ結合タンパク質。
【0166】
(6)(1)~(4)のいずれか1つにおいて、前記二重特異的エピトープ結合タンパク質がAn-B-Cmの構造を有する二重特異的エピトープ結合タンパク質であって、
ここで:
AまたはC:VH-VL、VL-VHまたはX
B:Y
VH、VL、X、Y、n、およびmは、前記定義されたとおりであり、それぞれのVH、VL、X、Yは、直接的に、あるいはリンカーおよび/またはヒンジによって連結される、二重特異的エピトープ結合タンパク質。
【0167】
(7)(1)~(4)のいずれか1つにおいて、CH1ドメインが(VH-VL)n、(VL-VH)n、または(X)nに直接的に、あるいはヒンジおよび/またはリンカーによってC-末端に連結され、CH2/CH3ドメインが(VH-VL)m、(VL-VH)m、(X)mに直接的に、あるいはヒンジおよび/またはリンカーによってN-末端に連結され、前記VH、VL、X、n、およびmが前記定義されたとおりである、二重特異的エピトープ結合タンパク質。
【0168】
(8)(7)において、CH1ドメインがCH2/CH3ドメインに直接的に、あるいはヒンジおよび/またはリンカーによって連結される、二重特異的エピトープ結合タンパク質。
【0169】
(9)(1)~(3)のいずれか1つにおいて、前記二重特異的エピトープ結合タンパク質が次を含む、二重特異的エピトープ結合タンパク質
-CH2に直接的に、あるいはリンカーおよび/またはヒンジを通じて連結されたVH-VL、VL-VH、X、および/またはVH-CH1を含み、独立して、CH3は、VH-VL、VL-VHまたはXに直接的に、あるいはリンカーおよび/またはヒンジを通じて連結された、重鎖および
-リンカーおよび/またはヒンジを通じてCLに連結されたVLを含む軽鎖
ここで、前記VH、VL、およびXは、前記定義されたとおりであり、それぞれのVH、VL、X、CH1、CH2、CH3、およびCLは、直接的に、あるいはリンカーおよび/またはヒンジによって連結される。
【0170】
(10)(1)~(4)のいずれか1つにおいて、(VHおよびVL、如何なる順でも)n-Yおよび/またはY-(X)mを含む二重特異的エピトープ結合タンパク質であって、
ここで、前記Yは、独立してCH2またはCH3ドメインで、VH、およびVLおよびCH2および/またはCH3、あるいはCH2および/またはCH3およびXは、直接的に、あるいはヒンジおよび/またはリンカーを通じて連結され;
VH、VL、X、n、およびmは、前記定義されたところのような二重特異的エピトープ結合タンパク質。
【0171】
(11)(1)~(4)および(10)のいずれか1つにおいて、二重特異的エピトープ結合タンパク質がN-末端からC-末端に記載された(VL-VH)n-CH2-CH3-(X)mのように配列されたscFvである、二重特異的エピトープ結合タンパク質。
【0172】
(12)(11)において、VLおよびVH、VHおよびCH2、CH3および(X)m、および/またはCH2およびCH3が直接的に、あるいはリンカーおよび/またはヒンジによって連結された、二重特異的エピトープ結合タンパク質。
【0173】
(13)(1)~(4)のいずれか1つにおいて、(X)m-Yおよび/またはY-(VHおよびVL、如何なる順でも)nを含む二重特異的エピトープ結合タンパク質であって、
ここで、前記Yは、独立してCH2またはCH3ドメインであり、VH、およびVLおよびCH2および/またはCH3、あるいはCH2および/またはCH3およびXは、直接的に、あるいはヒンジおよび/またはリンカーを通じて連結され;
VH、VL、X、n、およびmは、前記定義されたとおりである、二重特異的エピトープ結合タンパク質。
【0174】
(14)(13)において、二重特異的エピトープ結合タンパク質がN-末端からC-末端に記載された(X)m-CH2-CH3-(VH-VL)nのように配列されたscFvである、二重特異的エピトープ結合タンパク質。
【0175】
(15)(14)において、(X)mおよびCH2、CH3およびVH、およびVHおよびVL、および/またはCH2およびCH3が直接的に、あるいはリンカーおよび/またはヒンジによって連結された、二重特異的エピトープ結合タンパク質。
【0176】
(16)(1)~(15)のいずれか1つにおいて、それぞれのnおよびmが個別的に1、2、3、4、または5の整数から選択されてこのような整数値を有するnおよびmの任意の組み合わせが存在することができる、二重特異的エピトープ結合タンパク質。
【0177】
(17)(1)~(16)のいずれか1つにおいて、多重VH、VL、および/またはXが存在する場合(すなわち、nおよび/またはmが1超えの値である場合)コピーが直接的に連結されるか、ヒンジおよび/またはリンカー配列によって分離される、二重特異的エピトープ結合タンパク質。
【0178】
(18)(17)において、コピーがリンカー配列によって分離される、二重特異的エピトープ結合タンパク質。
【0179】
(19)(5)~(18)のいずれか1つにおいて、リンカーが約10~25個のアミノ酸残基、10~20個のアミノ酸残基、または12~19個のアミノ酸残基を含む、二重特異的エピトープ結合タンパク質。
【0180】
(20)(5)~(19)のいずれか1つにおいて、リンカーが(GS)n、(GGS)n、(GSGGS)nまたは(GnS)m(nおよびmは、それぞれ1~10である))、218リンカー、または218Sリンカーより選択される少なくとも1つである、二重特異的エピトープ結合タンパク質。
【0181】
(21)(5)~(20)のいずれか1つにおいて、リンカーが(G4S)3リンカー、(G4S)2リンカー、218リンカー、または218Sリンカーである、二重特異的エピトープ結合タンパク質。
【0182】
(22)(1)~(21)のいずれか1つにおいて、4-1BB-結合抗体またはその抗原-結合断片がSEQ ID NO:23のVHを含む、二重特異的エピトープ結合タンパク質。
【0183】
(23)(1)~(22)のいずれか1つにおいて、4-1BB-結合抗体またはその抗原-結合断片がSEQ ID NO:25のVLを含む、二重特異的エピトープ結合タンパク質。
【0184】
(24)(1)~(21)のいずれか1つにおいて、4-1BB-結合抗体またはその抗原-結合断片がSEQ ID NO:23のVHおよびSEQ ID NO:25のVLを含む、二重特異的エピトープ結合タンパク質。
【0185】
(25)(1)~(24)のいずれか1つにおいて、PD-1タンパク質またはその断片がSEQ ID NO:27の配列を含む、二重特異的エピトープ結合タンパク質。
【0186】
(26)(1)~(21)のいずれか1つにおいて、4-1BB-結合抗体またはその抗原-結合断片がSEQ ID NO:23のVHおよびSEQ ID NO:25のVLを含み、PD-1タンパク質またはその断片がSEQ ID NO:27の配列を含む、二重特異的エピトープ結合タンパク質。
【0187】
(27)(1)~(26)のいずれか1つにおいて、前記二重特異的エピトープ結合タンパク質がSEQ ID NO:1~10および14からなる群より選択される配列を有するか、前記二重特異的エピトープ結合タンパク質がSEQ ID NO:1~10および14からなる群より選択される配列を有する二重特異的エピトープ結合タンパク質と少なくとも80%配列同一性を有し、4-1BBおよびPD-L1に対する二重特異的結合親和性を有する、二重特異的エピトープ結合タンパク質。
【0188】
(28)(1)~(26)のいずれか1つにおいて、前記二重特異的エピトープ結合タンパク質がSEQ ID NO:1~10および14からなる群より選択される配列を有する、二重特異的エピトープ結合タンパク質。
【0189】
(29)(1)~(26)のいずれか1つにおいて、前記二重特異的エピトープ結合タンパク質がSEQ ID NO:1~10および14からなる群より選択される配列を有する二重特異的エピトープ結合タンパク質と少なくとも80%配列同一性を有し、4-1BBおよびPD-L1に対する二重特異的結合親和性を有する、二重特異的エピトープ結合タンパク質。
【0190】
(30)(1)~(26)のいずれか1つにおいて、前記二重特異的エピトープ結合タンパク質がSEQ ID NO:3の配列を有する、二重特異的エピトープ結合タンパク質。
【0191】
(31)(1)~(26)のいずれか1つにおいて、前記二重特異的エピトープ結合タンパク質がSEQ ID NO:3の配列を有する二重特異的エピトープ結合タンパク質と少なくとも80%配列同一性を有し、4-1BBおよびPD-L1に対する二重特異的結合親和性を有する、二重特異的エピトープ結合タンパク質。
【0192】
(32)(1)~(31)のいずれか1つにおいて、シグナルペプチドをさらに含む、二重特異的エピトープ結合タンパク質。
【0193】
(33)(32)において、前記シグナルペプチドが12~40個のアミノ酸を含むN-末端シグナルペプチドである、二重特異的エピトープ結合タンパク質。
【0194】
(34)(5)~(33)のいずれか1つにおいて、ヒンジがSEQ ID NO:30またはSEQ ID NO:31の配列を有する、二重特異的エピトープ結合タンパク質。
【0195】
(35)(5)~(34)のいずれか1つにおいて、ヒンジがSEQ ID NO:31の配列を有する、二重特異的エピトープ結合タンパク質。
【0196】
(36)(1)~(35)のいずれか1つにおいて、PD-1タンパク質またはその断片が親和性成熟した、二重特異的エピトープ結合タンパク質。
【0197】
(37)(1)~(36)のいずれか1つの二重特異的エピトープ結合タンパク質対として、対の両メンバーともが同一である、二重特異的エピトープ結合タンパク質対。
【0198】
(38)(1)~(36)のいずれか1つの二重特異的エピトープ結合タンパク質をコードする核酸分子。
【0199】
(39)(38)の核酸分子を含む組換えベクター。
【0200】
(40)(38)の核酸分子または(28)の組換えベクターを含む細胞。
【0201】
(41)二重特異的エピトープ結合タンパク質の生産方法であって、前記方法は、二重特異的エピトープ結合タンパク質を生産するに十分な条件下で培養培地で(40)の細胞を培養するステップ;および細胞および/または培養培地から二重特異的エピトープ結合タンパク質を回収するステップを含む、方法。
【0202】
(42)(1)~(36)のいずれか1つの二重特異的エピトープ結合タンパク質、(38)の核酸、(39)の組換えベクター、または(40)の細胞および薬学的に許容される担体を含む、薬学組成物。
【0203】
(43)(42)の医薬学組成物を含むキット。
【0204】
(44)これを必要とする対象体でがんを治療する方法であって、前記方法は、(1)~(36)の二重特異的エピトープ結合タンパク質、(37)の核酸、(38)の組換えベクター、または(40)の細胞の有効量を含むか、伝達する組成物を対象体に投与するステップを含む、方法。
【0205】
(45)(44)において、対象体が、がんを有する、方法。
【0206】
(46)(44)において、対象体が、がんの発病する危険がある、方法。
【0207】
(47)(44)~(46)のいずれか1つにおいて、がんが膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、大腸がん、子宮内膜がん、食道がん、ファローピウス管がん、胆嚢がん、胃腸がん、頭頸部がん、血液がん、咽頭がん、肝がん、肺がん、リンパ腫、黒色腫、中皮腫、卵巣がん、原発性腹膜がん、唾液腺がん、肉腫、胃がん、甲状腺がん、膵臓がん、腎臓細胞がん腫、膠芽腫、前立腺がん、およびそれらの組み合わせを含む、方法。
【0208】
(48)これを必要とする対象体でがんを予防する方法であって、前記方法は、(1)~(36)の二重特異的エピトープ結合タンパク質、(38)の核酸、(39)の組換えベクター、または(40)の細胞の有効量を含むか、伝達する組成物を対象体に投与するステップを含む、方法。
【0209】
(49)(48)において、対象体が、がんを有する、方法。
【0210】
(50)(48)において、対象体が、がんの発病する危険がある、方法。
【0211】
(51)(48)~(50)のいずれか1つにおいて、がんが膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、大腸がん、子宮内膜がん、食道がん、ファローピウス管がん、胆嚢がん、胃腸がん、頭頸部がん、血液がん、咽頭がん、肝がん、肺がん、リンパ腫、黒色腫、中皮腫、卵巣がん、原発性腹膜がん、唾液腺がん、肉腫、胃がん、甲状腺がん、膵臓がん、腎臓細胞がん腫、膠芽腫、前立腺がん、およびそれらの組み合わせを含む、方法。
【0212】
(52)(48)~(51)のいずれか1つにおいて、予防が、がんの臨床的症状の発病を抑制する、方法。
【0213】
(53)(48)~(51)のいずれか1つにおいて、予防が、がんと関連する臨床的症状の緩和である、方法。
【0214】
(54)(47)~(50)のいずれか1つにおいて、予防が、がんと関連する臨床的症状の除去である、方法。
【0215】
本発明を一般的に説明したが、特定具体的な実施例を参照して追加理解を得ることができ、これは、単に例示の目的で本願に提供され、他に明示されない限り、制限しようとする意図ではない。
【実施例】
【0216】
本開示内容は、特許請求の範囲に記述された開示内容の範囲を制限しない下記実施例で追加的に説明される。
【0217】
実施例1:二重特異的抗体(BsAB)設計および生産
抗-4-1BB抗体の場合、94kvtクローンを使用し(国際公開WO2018-127787号に記述されたEU101、その全体内容が本願に引用されて含まれる)、抗-PD-L1タンパク質の場合、親和性成熟したPD-1タンパク質(euPD-1、米国特許第17/469,549号に記述されたEU131、その全体内容が本願に引用されて含まれる)を使用した。配列を変更して計10個の(S01~S10)抗-4-1BB抗体×euPD-1変異体(本願において、「二重特異的エピトープ結合タンパク質変異体」と称される)を設計(SEQ ID NO:1~10、14;それぞれ二重特異的エピトープ結合タンパク質S01-S10および94kvt軽鎖)して、(G
4S)
3、(G
4S)
2、および218または218S(SEQ ID NO:15~18)を各部分を連結するためのリンカーとして使用した。94kvtの場合、scFv形態を使用した。操作されたIgG1のヒンジおよびFc部分をeuPD-1と連結するために使用した。Fcの場合、点突然変異(L234A、L235A、K322A、D356E、L358M)を導入してADCCおよびCDCを減少させた。(
図2)
【0218】
また、S11(SEQ ID NO:11)抗体を抗体のC-末端にscFv形態で市販許可された抗-PD-L1抗体(アテゾリズマブ、Genentech)を付着して対照群として使用するように開発した。(
図2)
【0219】
生成された二重特異的抗体の発現をExpi293F発現システム(Invitrogen)またはExpiCHO発現システム(ThermoFisher scientific)を使用して遂行した。AktaPure(cytiva)機器、タンパク質Aコラム(Hitrap MabSelectSure、cytiva、Cat.no.11003495)および脱塩コラム(Hiprep 26/10 Desalting、Cytiva Cat.no.17508702)を使用して精製を遂行した。
【0220】
実施例2:二重特異的エピトープ結合タンパク質変異体のSDS-PAGE分析
SDS-PAGE分析を還元および非-還元条件下に二重特異的エピトープ結合タンパク質変異体を分析するために遂行した。還元条件は、サンプル還元剤(Thermo、Cat.No.NP0009)とともにLDSサンプル緩衝液(Invitrogen、Cat.No.NP0007)に1μgの二重特異的エピトープ結合タンパク質変異体を添加するものである。続いて95℃で3分間煮込みを遂行した。非-還元条件の場合、ただLDSサンプル緩衝液のみを添加して使用した。TGXステイン-フリーゲル(Mini-PROTEAN TGX stain-free gel)上に生成されたサンプルをゲルにローディングした後、1x Tris/グリシン/SDS緩衝液(Bio-rad、Cat.No.1610732)中で125Vで30分間ランニングさせた。Chemidoc(Bio-rad)を使用して結果を分析して
図3に図示した。
【0221】
実施例3:二重特異的エピトープ結合タンパク質変異体のサイズ-排除クロマトグラフィー分析
HPLC機器(Agilent Technologies、1260InfinityII LCシステム)およびサイズ排除コラム(Tosoh、TSKgel G3000 SWXL、7.8×300mm、Part No.0008541、コラムNo.004E04320E)を使用して二重特異的エピトープ結合タンパク質変異体をまたSEC分析に適用した。ゲル濾過標準(Bio-rad、Cat no.1511901)を対照群として使用した。結果を
図4に図示した。
【0222】
実施例4:二重特異的エピトープ結合タンパク質変異体の親和性分析
二重特異的エピトープ結合タンパク質変異体の親和性を分析するために、表面プラズモン共鳴(SPR)を使用した。
【0223】
4-1BBに対する親和性
4-1BB親和性決定のために、5μg/mlで希釈された二重特異的エピトープ結合タンパク質変異体をhuman capture(Cytiva、Cat.No.BR-1008-39)を利用してCM5チップ(Cytiva、BR-1005-30)に固定した。4-1BB抗原(abclon)を100、50、25、12.5、6.25、および3.125nMの濃度で注入し、結合時間を150秒に設定し、解離時間を240秒に設定した。Biacore T200(cytiva)を分析装備として使用した。表1は、4-1BB親和性評価の結果である:
【表1】
【0224】
PD-L1に対する親和性
PD-L1親和性決定のために、10μg/mlで希釈された二重特異的エピトープ結合タンパク質変異体をhuman captureを利用してCM5チップに固定した。PD-L1抗原(SinoBiologics、Cat.No.10084-H08H)を100、50、25、12.5、6.25、および3.125nMの濃度で注入し、後続手続きは、4-1BB親和性分析手続きと同一であった。表2は、PD-L1親和性評価の結果である:
【表2】
【0225】
天然PD-1とS03との間のPD-L1に対する結合差、およびマウスPD-1およびヒトPD-L1の結合を比較するために、ヒトPD-1-Fc(SinoBiologics)およびマウスPD-1 Fc(SinoBiologics、Cat No.50124-M02H)を15μg/mlで希釈してhuman captureとともにCM5チップに固定した。PD-L1抗原を200、100、50、25、12.5、6.25、および3.125nMの濃度で注入し、後続手続きは、4-1BB親和性分析手続きと同一であった。結果をヒト天然PD1-Fcの場合、
図5aに図示し、S03の場合、
図5bに図示した。S03は、天然PD-1より約93倍さらに強力にPD-L1に結合するものと確認された。また、ヒトPD-L1に対するマウスPD-1の親和性は確認されなかった(表3参照)。
【0226】
【0227】
実施例5:単一抗原結合ELISA
二重特異的エピトープ結合タンパク質変異体が各標的抗原に結合するかを確認するために、単一抗原結合ELISAを遂行した。分析方法を
図6aに図示のとおり遂行した。
【0228】
4-1BB結合を確認するために、96-ウェル免疫プレートを4℃で1μg/mlの4-1BB抗原(abclon)で終夜コートし、150μlの1x分析緩衝液(BioLegend)を1時間の間処理して、非-特異的結合を遮断した。二重特異的エピトープ結合タンパク質変異体を3nMで4倍ずつ4個の箇所に対して希釈した後、ウェル当たり100μlを2時間の間処理した。次に、HRP-接合された抗-ヒトIgG、Fcγ抗体(Jackson Immunoresearch、Cat.No.10-035-008)を2000倍希釈して各ウェルに100μlずつ添加して1時間の間インキュベーションした。TMBで発色させた後、硫酸を使用して反応を停止させた。TMB処理後工程を除いた全工程で洗浄緩衝液を使用して3回洗浄し、コート工程を除いたすべての工程を室温で進行した。(
図6b)
【0229】
PD-L1結合を確認するために、96-ウェル免疫プレートを4℃で1μg/mlのPD-L1抗原(SinoBiologics)で終夜コートし、150μlの1x分析緩衝液(BioLegend)を1時間の間添加して非-特異的結合を遮断した。二重特異的エピトープ結合タンパク質変異体を300nMで10倍ずつ4個の箇所に対して希釈した後、ウェル当たり100μlを2時間の間処理した。以後の別の手続きは、4-1BB結合ELISAのものと同一であった(
図6c)。
【0230】
また、各抗原結合部位による特異的結合可否を確認するために、i)4-1BBに対する結合を防止するために、S03の抗-4-1BB抗体をヒト生殖系列抗体(DP47)に置換してS12(SEQ ID NO:12)を製作し、ii)PD-L1に対する結合を防止するために、S03のeuPD-1を点突然変異させ、これをeuPD-1nに置換してS13(SEQ ID NO:13)を製作し、4-1BBおよびPD-L1に対する単一抗原結合ELISAを遂行した。(
図6d)
【0231】
4-1BB結合の場合、S03、S12、S13を0.5μg/mlで2倍ずつ希釈して計11箇所を確認した。抗-4-1BB抗体がないS12は、4-1BBに結合することができず、S03とS13は、4-1BBに用量依存的に結合することを確認した。(
図6e)
【0232】
PD-L1結合の場合、S03、S12およびS13を100μg/mlで4倍ずつ希釈して計11箇所を確認した。PD-L1に結合することができないように点突然変異されたS13は、PD-L1に結合しない一方、S03およびS12は、PD-L1に用量依存的に結合することに注目した。(
図6f)
【0233】
実施例6:二重抗原結合ELISA
二重特異的エピトープ結合タンパク質変異体が抗原4-1BBおよびPD-L1両方に結合するということを確認するために、二重結合分析を遂行した。
【0234】
分析方法は、
図7aに図示されたように遂行した。要約すると、96-ウェル免疫プレートに1μg/mlのPD-L1抗原(SinoBiologics)を4℃で終夜コートし、150μlの1x分析緩衝液(BioLegend)を1時間の間処理して非-特異的結合を遮断した。二重特異的エピトープ結合タンパク質変異体を10nMから5倍ずつ4箇所に対して希釈して遂行し、ウェル当たり100μlを2時間の間処理し、0.1μg/ml濃度の100μlのビオチン化された4-1BB抗原(SinoBiologics、Cat.No.10041-H08H-B)を各ウェルに添加して1時間の間インキュベーションした。次に、アビジン-HRP(BioLegend、Cat No.79004)を1/1000で希釈して、各ウェルに100μlずつ添加して30分間処理した後、TMBで発色させた後、硫酸を使用して反応を停止させた。TMB添加後工程を除いたすべての工程で洗浄緩衝液を使用して3回洗浄し、コート工程を除いたすべての工程は室温で進行した。(
図7b)
【0235】
S03、S12およびS13に対する二重抗原ELISAもまた各抗原結合部分による特異的結合を確認するために、100μg/mlで5倍ずつ12箇所に対して希釈して遂行した。抗-4-1BB抗体がないS12とPD-L1に対する結合を行えないという点突然変異されたS13は二重抗原結合を見せず、S03が用量依存的に結合することが分かる。(
図7c)
【0236】
実施例7:細胞結合分析
PD-L1陽性細胞株であるMDA-MB-231-Luc(ヒト乳がん細胞、JCRB、JCRB1559)、FaDu(ヒト扁平上皮がん細胞、ATCC、HTB-43)、4-1BB陽性細胞株である4-1BB Jurkat(自体製作)、およびPD-L1および4-1BB陰性細胞株であるMCF-7(ヒト乳がん細胞)を分析のために使用した。
図8は、それぞれの細胞株で4-1BBおよびPD-L1の発現レベルを示す。これは、2次抗体によって背景シグナルがほとんどないことと決定された。
【0237】
各細胞株から2×105個細胞に50、5、0.5、および0.05nMの最終濃度で二重特異的エピトープ結合タンパク質変異体を処理し、続いて4℃で20分間インキュベーションした。次に、FACS洗浄緩衝液を使用して1回洗浄を遂行し、1μl/チューブの抗-hFC-488の2次抗体(Jackson ImmunoResearch)を20分間処理した。2回洗浄した後、FACS(FACSCelesta、BD)を使用して分析を遂行した。
【0238】
FACS分析結果、二重特異的エピトープ結合タンパク質変異体は、PD-L1(
図9a~9b)および4-1BB陽性細胞株(
図9c)に用量依存的に結合することが明かされた。また、4-1BBとPD-L1をすべて発現しない細胞には結合しなかった(
図9d)。
【0239】
実施例8:4-1BB生物分析
4-1BB活性効果を検証するために、4-1BBエフェクター細胞が活性化されれば、ルシフェラーゼが発現するという原理によって4-1BB生物分析(Promega、J2332)を遂行した。
【0240】
生物検定およびルシフェラーゼ分析をメーカーのプロトコルによって遂行した。PD-L1を発現するMDA-MB-231細胞を96-ウェル白色プレート(Costar)に分注した。37℃ CO
2インキュベーターで終夜インキュベーションした後、二重特異的エピトープ結合タンパク質変異体および4-1BBエフェクター細胞を処理した。抗体100ng/mlから2倍ずつ希釈して4箇所に対して遂行した。4-1BBエフェクター細胞で処理した後、37℃ CO
2インキュベーターで6時間の間インキュベーションして、ルミノメーター(Floroskan Ascent FL、Thermo)を使用して発光強度を測定した。結果は
図10に示されている。
【0241】
実施例9:4-1BB/PD-1組合生物分析
PD-1およびPD-L1に対するエフェクター細胞の結合が遮断され、4-1BBが活性化されるとき、ルシフェラーゼが発現されるという原理によってPD-1とPD-L1の結合抑制効果と4-1BB活性の効果を検証するために、4-1BB/PD-1組合生物分析(Promega、CS1978I10)を遂行した。(
図11a)
【0242】
生物分析およびルシフェラーゼ分析をメーカーのプロトコルによって遂行した。PD-L1を発現するPD-L1 aAPC/CHO-K1細胞を96-ウェル白色プレートに分注した。これを37℃ CO2インキュベーターで終夜培養して抗体およびエフェクター細胞を処理した。S03、抗-4-1BB抗体(94kvt-操作されたIgG1、SEQ ID NO:14および21)、抗-PD-1抗体(ペムブロリズマブ、MSD)、抗-PD-L1抗体(アテゾリズマブ、Roche)、およびeuPD-1 Fc(SEQ ID NO:22)を使用した。147nMで3倍ずつ7箇所で希釈して遂行した。処理のために4-1BBエフェクター細胞を添加し、37℃ CO2インキュベーターで6時間の間インキュベーションし、ルミノメーター(Floroskan Ascent FL、Thermo)を使用して発光強度を測定した。
【0243】
実験結果(
図11b)、PD-L1発現細胞およびエフェクター細胞に結合することができるS03によって発光が強く検出されることを確認した。
【0244】
実施例10:PD-L1またはPD-L2に対する親和性
PD-1は、PD-L1とPD-L2のすべてに結合することと知られている。S03は、PD-1の親和性成熟した形態であるeuPD-1を含む。PD-L1およびPD-L2に対するS03の結合をELISAと確認した。
【0245】
96-ウェル免疫プレートを2μg/mlのヒトPD-1-Fc(SinoBiologics、Cat.No.10377-H02H)でウェル当たり100μlを4℃で終夜コートし、150μlの1x分析緩衝液(BioLegend)を1時間の間処理して非-特異的結合を遮断した。ビオチン化されたPD-L1(SinoBiologics、Cat.No.10084-H08H-B)およびビオチン化されたPD-L2(SinoBiologics、Cat.No.10292-H08H-B)を1μg/mlから3倍ずつ5箇所希釈してウェル当たり100μlを1時間の間処理した。以後、アビジン-HRP(BioLegend、Cat No.79004)を1/1000で希釈して、ウェル当たり100ulずつ30分間添加した後、TMBで発色させた後、硫酸で反応を停止させた。TMB処理後に工程を除いたすべての工程で洗浄緩衝液を使用して3回洗浄し、抗体コート工程を除いたすべての工程は、室温で進行した。
【0246】
また、S03、抗PD-L1抗体(Roche)、および抗PD-L2抗体(SinoBiologics、Cat.No.10292-R018)を0.1μg/mlで4倍ずつ4箇所希釈し、96-ウェル免疫プレートにウェル当たり100μlを添加した後4℃で終夜コートした。次に、非-特異的結合を遮断するために1時間の間処理のために150μlの1x分析緩衝液を処理した。ビオチン化されたPD-L1およびビオチン化されたPD-L2 100μlを各ウェルに0.1μl/mlの濃度で1時間の間処理した。以後の別の手続きは、ヒトPD-1-Fc ELISAと同一であった。
【0247】
実験結果、ヒトPD-1-Fcは、PD-L1とPD-L2のすべてに結合するが(
図12a)、対照群として使用した抗-PD-L1抗体は、PD-L1にのみ結合することと示され、抗-PD-L2抗体は、PD-L2にのみ結合することと示された。試験物質S03は、PD-L1にのみ結合された。(
図12b~c)
【0248】
実施例11:細胞毒性分析
S03の標的細胞に対するT細胞媒介細胞毒性効果を確認するために、細胞毒性分析を遂行した。ヒト末梢血液単核細胞からパン(pan)T陰性選択(Miltenyi Biotec、Cat.No.130-096-535)によって分離されたT細胞を4日間抗-CD3抗体(OKT3、Bio X Cell)でコートされたプレートで活性化させた。T細胞および抗体処理の一日前に、PD-L1陽性細胞株MDA-MB-231-GFP(自体製作)を4×104細胞/ウェルに分注した。抗-4-1BB抗体(94kvt-操作されたIgG1)、抗-PD-1抗体(ペムブロリズマブ、MSD)およびS03を1.667nMで3倍ずつ4箇所希釈して遂行した。活性化されたT細胞を収穫した後、腫瘍細胞と1:1割合で処理した。GFPシグナルは生きている細胞分析システム(Incucyte、Sartorius)を使用して117時間の間1時間の間隔で測定した。
【0249】
実験結果は、1.667nMに対するデータであって、対照群として使用した抗-4-1BB抗体および抗-PD-L1抗体に比べてS03によるT細胞-媒介された細胞毒性効果に優れるものと確認された。(
図13)
【0250】
実施例12:IFN-γ分析
T細胞で生成されるIFN-γのレベルを細胞毒性分析(実施例11)で得た上澄液を使用して測定した。IFN-γ ELISAキット(BioLegend、Cat.No.430101)をメーカーのプロトコルによって使用し、要約すると、捕獲抗体で終夜コートされたプレートに1x分析緩衝液(BioLegend)150μlを1時間処理した。標準品の場合、500pg/mlから2倍ずつ7箇所希釈して使用し、上澄液は、50倍希釈して各ウェルに100μlずつ2時間の間処理した。検出抗体100μlを1時間の間処理した後、アビジン-HRP(BioLegend、Cat No.79004)を1/1000で希釈して各ウェルに100μlずつ30分間処理した。TMBで発色させた後、硫酸を使用して反応を停止させた。TMB処理後工程を除いたすべての工程で洗浄緩衝液を使用して3回洗浄し、抗体コート工程を除いたすべての工程は、室温で進行した。
【0251】
実験結果、抗体処理濃度によってT細胞によるIFN-γ生産が増加することを観察することができる。(
図14)
【0252】
実施例13:抗体-依存的細胞細胞毒性分析
二重特異的エピトープ結合タンパク質変異体に対してIgG1-Fc操作を使用して抗体-依存的細胞毒性(ADCC)および補体-依存的細胞毒性(CDC)を減少させた。ADCC減少有無を確認するために、S03を使用してADCC生物分析(Promega、Cat.No.G701A)を遂行した。
【0253】
S03の抗-4-1BB抗体結合によるADCCを確認するために、白色96-ウェルプレート(Costar)に4-1BB陽性細胞株(4-1BB NF-kB HEK293)を分注して終夜培養した。。翌日、抗-4-1BB抗体である、S03(操作されたIgG1、L234A、L235A、K322A、D356E、L358M)、94kvt-IgG1(SEQ ID NO:14および20)、および94kvt-操作されたIgG1(L234A、L235A、K322A)を294nMから3倍ずつ8箇所希釈して遂行した。ADCCエフェクター細胞を添加して37℃のインキュベーターで6時間の間インキュベーションした。以後、Bio-Gloルシフェラーゼ基質を添加してルミノメーター(Glo-max、Promega)を使用して発光強度を測定した。陽性対照群として使用された94kvt-IgG1はADCCを誘導する一方、陰性対照群である94kvt-操作されたIgG1とS03はADCCを誘導しないことを観察することができる。(
図15a)
【0254】
S03のeuPD-1によるADCCを確認するために、PD-L1陽性細胞株(MDA-MB-231)を白色96-ウェルプレート(Costar)に分注して終夜培養した。翌日、抗-PD-L1抗体である、S03とアベルマブ(Avelumab)(Pfizer、IgG1)とアテゾリズマブ(Atezolizumab)(Roche、操作されたIgG1、N297A)を5.88nMから6箇所に対して4倍ずつ希釈した。ADCCエフェクター細胞を添加して37℃のインキュベーターで6時間の間インキュベーションした。以後、Bio-Gloルシフェラーゼ基質を添加してルミノメーター(Glo-max、Promega)を使用して発光強度を測定した。陽性対照群として使用されたアベルマブ(Avelumab)は、ADCCを誘導するものと認められるが、陰性対照群であるアテゾリズマブ(Atezolizumab)とS03は、ADCCを誘導しないことを観察することができる。(
図15b)
【0255】
実施例14:補体-依存的細胞毒性分析
C1q ELISAを遂行してCDCがS03に使用された操作されたIgG1によって減少したことを確認した。
【0256】
96-ウェル免疫プレート(NUNC)を75nMのS03、アベルマブ(Avelumab)、アテゾリズマブ(Atezolizumab)を1xコート緩衝液(BioLegend)を使用して4℃で終夜コートした後、1x分析緩衝液(BioLegend)150μlを1時間の間添加して非-特異的結合を遮断した。ビオチン化キット(Abcam、Cat.No.Ab201795)を使用してビオチン化されたC1q(comp Tech、Cat.No.A099)タンパク質を2μg/mlから2倍ずつ7箇所希釈して、ウェル当たり100μlで2時間の間処理した。次に、アビジン-HRP(BioLegend、Cat No.79004)を1/1000で希釈して、各ウェルに100μlずつ添加して1時間の間処理した後、TMBで発色させた後、硫酸を使用して反応を停止させた。TMB処理後工程を除いたすべての工程で洗浄緩衝液を使用して3回洗浄し、抗体コート工程を除いたすべての工程は室温で進行した。陽性対照群として使用したアベルマブ(Avelumab)はC1qに結合するが、S03と陰性対照群であるアテゾリズマブ(Atezolizumab)はC1qに結合しないことを観察することができる。(
図16)
【0257】
実施例15:インビボ効能研究1-4-1BB KI
S03の効能を検証するために、h4-1BBノック-インマウス(背景:C57BL/6、Biocytogen)を使用してインビボ研究を遂行した。
【0258】
PD-L1を発現するMC38細胞を
図17aに図示されたように腫瘍細胞として使用し、個体当たり5×10
5腫瘍細胞を皮下に投与した。投与1週間後、腫瘍のサイズを測定して類似する平均(100mm
3以内)と標準偏差を基準に投与群を分けた。各群に対して5匹のマウスを使用した。
【0259】
S03、S05およびS07を静脈内に注入した。賦形剤DPBS(Gibco)を陰性対照群として使用した。抗体用量を2mg/kgおよび5mg/kgに設定した。投与は100μlで遂行し、3日間隔で5回投与した。また腫瘍サイズも3日間隔で測定し、最後の投与後2日まで腫瘍サイズを測定した。
【0260】
腫瘍サイズ観察の結果、
図17bに図示されたとおり、陰性対照群に比べてS03、S05、S07のいずれも腫瘍成長を抑制することを確認し、その中S03の腫瘍減少効果に最も優れることが分かる。また、試験された抗体に対して用量-依存的反応が観察された。
【0261】
実施例16:インビボ効能研究2-4-1BB KI
S03の効能を検証するために、h4-1BBノック-インマウス(背景:C57BL/6、Biocytogen)を使用してインビボ研究を遂行した。試験方法は
図17aと同一である。
【0262】
S03、抗-4-1BB抗体(94kvt-操作されたIgG1)、および抗-PD-L1抗体(アテゾリズマブ)を静脈内に注入した。賦形剤DPBS(Gibco)を陰性対照群として使用した。抗体用量をS03を基準に5mg/kg(5.88μM)に設定し、5.88μMの抗-4-1BB抗体および抗-PD-L1抗体をまた投与した。投与は、100μlで遂行し、3日間隔で5回投与した。また、腫瘍サイズも3日間隔で測定し、最後の投与後2日まで腫瘍サイズを測定した。また実験終了当日に血液を採取して、血液内ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ(alanine aminotransferase))、AST(アスパテートアミノトランスフェラーゼ(aspartate aminotransferase))、BUN(血清尿素窒素(blood urea nitrogen))の濃度を生化学的分析機を使用して確認して毒性を確認した。
【0263】
腫瘍サイズの観察結果、
図18aに図示されたように、陰性対照群に比べてS03、抗-4-1BB抗体、および抗-PD-L1抗体のいずれも腫瘍成長を抑制することを確認し、そのうち、S03の腫瘍-減少効果(約98%減少)に最も優れることが分かる。
【0264】
図18bに示されたように、血液内T細胞集団を分析した結果、血液内CD4+T細胞およびCD8
+T細胞がS03によって増加し、CD8+T細胞でエフェクターT細胞の増加が観察された。
【0265】
表4に示されたように、肝毒性指数分析結果、投与群の4種指標のいずれも正常範囲(ALT:17~77U/L、AST:54~298U/L、BUN:8~33mg/dL)以内であり、実験条件では肝に肝毒性がないものと確認された。
【表4】
【0266】
実施例17:インビボ効能研究3-h4-1BB/hPD-1 DKI
S03の効能を検証するために、h4-1BBおよびhPD-1二重ノック-インマウス(背景:C57BL/6、Biocytogen)を使用してインビボ研究を遂行した。
【0267】
PD-L1を発現するMC38細胞を
図17aに示したように腫瘍細胞として使用し、個体当たり5×10
5腫瘍細胞を皮下に投与した。投与1週間後、腫瘍のサイズを測定し、類似した平均(約100mm
3)と標準偏差を基準に投与群を分けた。各群で6匹のマウスを使用した。
【0268】
抗体S03、抗-4-1BB抗体(94kvt-操作されたIgG1)、および抗-PD-L1抗体(アテゾリズマブ)を静脈内に注入した。賦形剤DPBS(Gibco)を陰性対照群として使用した。抗体用量は、S03基準に5mg/kg(5.88μM)に設定し、5.88μMの抗-4-1BB抗体および抗-PD-L1抗体も投与した。投与は、100μlで遂行し、3日間隔で5回投与した。腫瘍サイズも3日間隔で測定し、最後の投与後に2日まで腫瘍サイズを測定した。
【0269】
腫瘍サイズを観察した結果、
図19に図示したように、陰性対照群の投与に比べてS03、抗-4-1BB抗体、抗-PD-L1抗体のすべてで腫瘍成長が抑制されることを確認した(約73%減少)。
【0270】
すべてのデータは、平均SEM、一元ANOVA統計検定でグラフで表示される。すべての統計は、動物当たりまたはサンプル当たりの平均データを使用して計算した。
【0271】
以上、本発明の内容の具体的な部分について説明した。このような具体的な説明は、当業者において好ましい実施形態に過ぎず、本発明の範囲がこれに限定されるものではないことは自明である。よって、本発明の実質的な範囲は、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義されるものと意図される。
【配列表】
【国際調査報告】