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特表2024-502373薄膜蒸発機および移送混合物の製造方法
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  • 特表-薄膜蒸発機および移送混合物の製造方法 図1
  • 特表-薄膜蒸発機および移送混合物の製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-18
(54)【発明の名称】薄膜蒸発機および移送混合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 1/22 20060101AFI20240111BHJP
【FI】
B01D1/22 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023541875
(86)(22)【出願日】2022-01-12
(85)【翻訳文提出日】2023-09-08
(86)【国際出願番号】 EP2022050473
(87)【国際公開番号】W WO2022152711
(87)【国際公開日】2022-07-21
(31)【優先権主張番号】102021100475.6
(32)【優先日】2021-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】317018192
【氏名又は名称】リスト テクノロジー アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110003476
【氏名又は名称】弁理士法人瑛彩知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュタイナー, マヌエル
(72)【発明者】
【氏名】クンケル, ローランド
(72)【発明者】
【氏名】ウィッテ, ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ギュンター, ユーディット アンドレア ミシェル
【テーマコード(参考)】
4D076
【Fターム(参考)】
4D076AA24
4D076BA13
4D076CB04
4D076CD06
4D076FA04
4D076FA24
4D076FA33
(57)【要約】
本発明は、直接溶解法に従い移送混合物を製造するための薄膜蒸発機(D)であって、供給部(1)と、ハウジング(4)と、出口部(2)とを備え、供給部(1)がセルロース、水、および機能性液体からなる出発材料をハウジング(4)内に導入し、ハウジング(4)内に位置する蒸発機シャフト(5)が、ハウジング(4)の加熱された内部にわたって、出発材料を回転式に掻き取り、生成物が加熱され、水の一部が蒸発して、供給流と共に出口部(2)に流れる移送混合物を生じさせ、出口部(2)の貫流能力が、供給流よりも大きい、薄膜蒸発機(D)、に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直接溶解法に従い移送混合物を製造するための薄膜蒸発機(D)であって、供給部(1)と、ハウジング(4)と、出口部(2)とを備え、前記供給部(1)がセルロース、水および機能性流体からなる出発材料を前記ハウジング(4)内に導入し、前記ハウジング(4)内に位置する蒸発機シャフト(5)が、前記ハウジング(4)の加熱された内部にわたって、前記出発材料を回転式に掻き取り、前記出発材料が加熱され、水の一部が蒸発して、供給流と共に前記出口部(2)に流れる前記移送混合物を形成する、薄膜蒸発機(D)において、
前記出口部(2)の貫流能力が、前記供給流よりも大きいこと、を特徴とする薄膜蒸発機(D)。
【請求項2】
前記出口部(2)が、後続の処理器(6)に開口すること、を特徴とする、請求項1に記載の薄膜蒸発機(D)。
【請求項3】
前記出口部は後続の移送器に開口し、前記移送器の前記貫流能力は、前記供給流よりも大きいこと、を特徴とする、請求項1または2に記載の薄膜蒸発機(D)。
【請求項4】
前記移送器は、前記薄膜蒸発機(D)と前記後続の処理器(6)との間に位置すること、を特徴とする請求項3に記載の薄膜蒸発機(D)。
【請求項5】
前記後続の処理器(6)が、前記移送混合物を成形溶液へさらに処理する処理器であること、を特徴とする、請求項2~4のいずれか一項に記載の薄膜蒸発機(D)。
【請求項6】
前記後続の処理器(6)および前記ハウジング(4)が共通のガス空間(7)を形成すること、を特徴とする、請求項2~5のいずれか一項に記載の薄膜蒸発機(D)。
【請求項7】
前記後続の処理器(6)および前記ハウジング(4)および移送器が、さらなる共通のガス空間を形成すること、を特徴とする、請求項2~6のいずれか一項に記載の薄膜蒸発機(D)。
【請求項8】
前記機能性液体が、N-メチルモルホリン-N-オキシド(NMMO)またはイオン性液体であること、を特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の薄膜蒸発機(D)。
【請求項9】
供給部(1)、ハウジング(4)および出口部(2)を含む直接溶解法によって、移送混合物を製造する方法であって、前記供給部(1)がセルロース、水および機能性液体からなる出発物質を前記ハウジング(4)内に導入し、前記ハウジング(4)内に位置する蒸発機シャフト(5)が出発物質を前記ハウジング(4)の内部にわたって回転的に掻き取り、出発物質を加熱し、水の一部が蒸発して移送混合物を形成し、移送混合物が供給流と共に前記出口部(2)に流れる、方法において、
前記出口部(2)の貫流能力が、前記供給流よりも大きいこと、を特徴とする方法。
【請求項10】
前記移送混合物が後続の移送器を通過し、前記移送器の前記貫流能力が、前記供給流よりも大きいこと、を特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記移送混合物が後続の処理器(6)に送られること、を特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記移送混合物が最初に移送器を通過し、次いで前記後続の処理器(6)に入ること、を特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記後続の処理器(6)が、前記移送混合物を成形溶液へとさらに処理すること、を特徴とする、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
N-メチルモルホリン-N-オキシド(NMMO)またはイオン性液体が、前記機能性液体として、前記出発物質に添加されること、を特徴とする、請求項9~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
NMMOが前記機能性液体として使用される場合、前記移送混合物は、
最大xH2O=-0.235xCell+0.235
最小xH2O=-0.59xCell+0.2047
の一般的な組成で、
前記供給流として前記出口(2)部に供給されること、特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
NMMOが前記機能性流体として使用される場合、前記移送混合物は、
最大xH2O=0.2864x Cell-0.6786xCell+0.2288
最小xH2O=0.2864x Cell-0.6786xCell+0.2188
の好ましい組成で前記供給流として前記出口部(2)へ供給されること、を特徴とする、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分に記載の移送混合物を製造するための薄膜蒸発機、および、請求項9に記載の移送混合物を製造するための方法、に関する。
【背景技術】
【0002】
そのような薄膜蒸発機(英:thin film evaporator)は既に知られており、様々な形態および設計で使用されている。例えば、特許文献1は、アミンオキシドプロセス(英:amine oxide process)によってセルロース系フィルム、繊維および他の成形品を製造するためのシステムを開示している。ここで、好ましくは、2つの異なるパルパ(英:pulper)を有する2つの混合装置が使用される。これらの混合装置を用いて、セルロースパルプは最初に、解繊または粉砕され、ポンプは乾燥セルロースパルプの10質量%以下の乾燥パルプ密度を有する水性アミンオキシド溶液中のセルロースパルプの第1の懸濁液を、装置にポンプで送り込み、装置は、懸濁液が濃縮パルプ懸濁液に変換されるまで、存在する水の量を減少させ、装置から、濃縮パルプ懸濁液が別の装置に移され、生成された濃縮パルプ懸濁液はセルロースの成形可能な溶液に変換される。
【0003】
その際、装置と別の装置との間に、吐出ポンプが設けられる。両方の装置を薄膜蒸発機(英g:thin film evaporator)として設計することができる。しかしながら、液体蓄積の様式の濃縮パルプ懸濁液の蓄積が、装置と別の装置との間で必要とされ、そのために、吐出ポンプが動作することができる。
【0004】
この目的のために、装置は容器の下端に切り取られた延長部を有し、この延長部は、濃縮パルプ懸濁液が収容される対応する収容空間に開口する。さらに、濃縮パルプ懸濁液を撹拌するために、ロータを備えた撹拌機を設けることができ、この収容空間内で放射能レベル測定が可能であることが、教示されている。この収容空間はまた、容器を排気するため、及び、水蒸気を取り出すため、に設けられた開口部を有する。これの欠点は、収容空間において、材料の蓄積が放電領域で起こり、アミンオキシドの分解につながり、ひいては爆発の危険性を増大させる可能性があること、である。これはより多くの水が予定外に蒸発する場合に起こり得て、その結果、懸濁液はこれはより多くの水が予定外に蒸発する場合に起こり得て、その結果、懸濁液は、薄膜反応器に共通する高い加熱温度がアミンオキシドの爆発的な分解を誘発する程度まで、濃縮する。
【0005】
また、別の装置が真空下で水蒸発を行うことも開示されている。
【0006】
さらに、特許文献2は、薄膜蒸発機を開示しており、この薄膜蒸発機において、出発混合物は圧力構築ポンプによって薄膜蒸発機内に圧送され、プロセスの終わりに、別のポンプによって、溶液として再び圧送され、このポンプは、真空操作に因って、圧力構築性のまたは圧力遮断性の吐出要素を用いて、例えば、典型的には直接接続されたギアポンプを用いて、または、間接的に、典型的にはスクリューのような吐出要素を介して、のみ実行され得る。
【0007】
また、特許文献3には、リヨセル紡糸溶液(英:lyocell spinning solution)の製造のための薄膜蒸発機が開示されており、薄膜蒸発機のシャフト上の搬送要素は、急速な生成物輸送のために、急勾配にされており、過熱の危険性を低減し、その結果、高温であっても発熱反応を低減する。薄膜蒸発機は端部でスクリューに合流し、このスクリューは紡糸溶液をパイプを通して紡糸口金に圧送するポンプを供給する。この解決策は、紡糸溶液がポンプの前でせき止められる場合にのみ、実施可能であり、その理由は、そうでなければ、圧力構築ポンプの動作および真空での薄膜蒸発機の動作が不可能であるからである。急勾配の搬送要素はこのように爆発の危険性を低減するが、この方法の欠点は、ポンプの前に蓄積される紡糸溶液が予定外の過熱の場合に爆発の危険性を依然として残すことである。
【0008】
特許文献4は、薄膜蒸発機を示し、これ蒸発機は、生成物を混合および排出するための薄膜蒸発機の出口領域にロータを開示している。滞留時間を延ばす上述の動作モードは、円錐形の出口領域に生成物の蓄積をもたらし、それは円筒形の装置部分の高さまで部分的に蓄積する。薄膜蒸発機の、開示された生成物排出特性にもかかわらず、生成物の蓄積が生じる。紡糸溶液を生成するのに必要な滞留時間は、通常、上述の方法によって、薄膜蒸発機に関して生成される。生成物の蓄積により、生成物の過熱による爆発の危険性が高くなる。
【0009】
薄膜蒸発機は主に、例えば特許文献5に記載されているように、蒸発機シャフトの垂直方向にづけて設計されているが、例えば特許文献6に記載されているように、蒸発機シャフトの水平方向に方向づけて設計することもできる。
【0010】
また、当業者は、大型の工業用薄膜蒸発機の限られた寸法を知っており、その最大の加熱ジャケットエリアは、通常約50m2である。アミンオキシドの過熱を回避するために、加熱ジャケットの温度は、薄膜蒸発機の排出側で大幅に低下するが、この原因は、生成物が、粘度の増加に起因してすでに摩擦によってそこで強く加熱されているからである。加熱ジャケット温度を低下させる目的は、この機械的エネルギー入力を補償することである。その結果、出力側で熱が放散され、紡糸溶液の過熱が防止される。一方では、これは、上述のように限られた範囲でしか利用できない加熱ジャケット表面の全てが、熱エネルギー入力のために使用できるわけではない、という欠点を有する。さらなる欠点は、エネルギーコストの増加をもたらすことであり、その原因は、第1に、加熱ジャケット表面を介して入力される一般的に安価な熱エネルギーの入力の代わりに、一般に高価な電気機械エネルギーの入力が、薄膜反応器の回転蒸発機シャフトのエネルギー散逸を介して、起こるからであり、第2に、冷却が熱損失を伴うからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第06/33302号
【特許文献2】国際公開第2008/086550号
【特許文献3】国際公開第2008/154668A1号
【特許文献4】独国特許出願公開第10 2012 103 749号明細書
【特許文献5】国際公開第1994/006530号
【特許文献6】国際公開第2020249705号
【特許文献7】国際公開第2013/156489号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、従来技術の欠点を克服することである。特に、セルロース-水機能性液体混合物から水を蒸発させるための、薄膜蒸発機および方法が記載され、それらは、熱エネルギーでより多くの水を蒸発させることができ、アミンオキシドプロセスの場合、より安全に操作することができる蒸発機。ここで、薄膜反応器は、紡糸溶液ではなく、移送混合物を生成するためのものである。これは、薄膜反応器中の生成物が常に十分に高い含水量を有し、したがって過熱および結果として生じる潜在的な爆発リスクを防止する、という利点を有する。さらに、装置は、薄膜反応器内での生成物の蓄積を防止するように、設計されており、その結果、蓄積された生成物中のエネルギー散逸から過剰なエネルギー入力が生じ得ない。このようにして、加熱ジャケットの温度を低下させる必要性が排除され、その結果、加熱ジャケット領域全体が、低コストの熱エネルギー入力に利用可能となり、高コストに関連する電気機械エネルギー入力を最小限に抑えることができる。別の利点は、これが、撹拌機シャフトに対するより低い機械的負荷をもたらし、その結果、撹拌機シャフトはより費用効果的に実装され得ること、である。これは、紡糸溶液の製造のための薄膜蒸発機の使用と比較して、より低いエネルギーコストおよび好ましい構造で、薄膜蒸発機の加熱ジャケットエリア当たりの最大水蒸発量を増加させる。
【0013】
この課題は、過熱が爆発の危険性を増大させる、機能性液体としてアミンオキシドを有する紡糸溶液の製造や、過熱が爆発の危険性を意味せず、過乾燥による品質の低下をもたらし得る、機能性液体としてイオン性液体を有する紡糸溶液の製造に、限定されない。
【0014】
移送混合物は、まだ紡糸溶液ではなく、部分的に溶解した、及び、溶解していない、セルロース、水、および機能性溶液の、混合物であるので、依然として圧縮に敏感であり得て、圧力は、混合物の脱水、および/または、もはや溶解することができないセルロース凝集体、をもたらす。
【0015】
本発明の課題は、課題の定義において言及された全ての事実を考慮に入れた薄膜蒸発機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1または9に記載の特徴は、課題の解決につながる。
【0017】
有利な実施形態は従属請求項に記載されている。
【0018】
本発明による薄膜蒸発機は、直接溶解法による移送混合物の製造に使用される。
【0019】
従って、薄膜蒸発機は、供給部と、ハウジングと、出口とを有する。供給部は、セルロース、水および機能性液体からなる出発材料を、ハウジング内に導入する。従って、回転蒸発機シャフトがハウジング内に配置されている。出発材料は、蒸発機シャフトによって、ハウジングの加熱された内部にわたって掻き取られる(スイープされる)。これにより、出発材料が加熱され、水の一部が蒸発して移送混合物が形成され、この移送混合物は供給流と共に出口に流れる。したがって、出口は、移送混合物の供給流が遅滞なく出口を通過するように、設計されている。これに関連して、出口は、貫流能力がその寸法によって決定および/または制限される開口部、とすることができる。開口幅は、可変、すなわち開閉可能、であってもよい。
【0020】
それによって、出口の貫流能力は、供給流よりも大きい。これにより、貫流容量は、全供給時の流量として、定義される。さらに、全供給は、最大化設定パラメータではなく、出口または移送デバイスの現在の設定パラメータでの、全容量での流量として定義される。
【0021】
したがって、貫通流能力という用語は、例えば、移送器が最大量のより多くの材料を供給された場合に、既存の設定パラメータを用いて、より多くを伝達するのであろうことを、機能的に説明するという目的を有する。それによって、有効動作モード、例えば、ポンプの最大調整可能速度での最大流量ではなく、上記のポンプの有効設定速度での最大流量、が説明される。
【0022】
同様に、供給流よりも大きい貫流能力、すなわち、単純な開口部の場合、流入するすべての材料が、十分に大きい開口部を通って直ちに重量測定的に落下することを表す。
【0023】
本発明による薄膜蒸発機の利点は、出発材料から移送混合物までの組成に起因して、潜在的に危険な又は生成物を損傷するような、温度に達することができないことである。
【0024】
また、出発物質も移送混合物も、完全な溶液の状態にはされない。これは、出発材料の必須のセルロース系固体成分の全てが、機能性液体中に完全に溶解され、その結果、均一な成形可能な塊が存在する場合である。
【0025】
完全な溶液の状態が発生する前のこの状態は、移送混合物の状態として、定義される。懸濁液とは対照的に、セルロースは移送混合物中に、部分的に溶解される。
【0026】
これにより、出発材料は、供給材料から出口への、移動混合物となる。
【0027】
出口は後続の処理器(処理ユニット)に開口し、この処理器は好ましくは紡糸溶液への移送混合物の安全な移送にとって、薄膜蒸発機よりも、適している。ここで、このような処理器は、特許文献7に記載されているように、混合混練機であり得て、この混練機は、良好な高粘度混合特性およびシャフトを介して入力される有効な機械的エネルギーのおかげで、その速度を迅速に設定することができ、また、速やかに再びゼロに低減することができ、高い精度および信頼性で温度を調節することができ、原則として、冷却または熱放散を回避する。したがって、増大したエネルギー効率およびプロセス信頼性は、移送混合物を生成する方法工程だけでなく、適切な後続の処理器と組み合わせて、出発材料の紡糸溶液への移送全体にも、適用される。
【0028】
さらなる薄膜蒸発機は、上記の欠点を受け入れる処理器として考えることもでき、薄膜蒸発機の全体的な設計は、移送混合物を達成するように適合させることができ、さらなる薄膜蒸発機は、そのさらなる全体的な設計によって、例えば、そのワイパーブレードの全長、角度など、によって、移送混合物の処理に、適合させることができる。それによって、後続の処理器は、処理器がさらに移送混合物を成形溶液に処理することができるように、特徴づけられている。次いで、成形溶液を、例えば、紡糸のために使用することができる。
【0029】
さらに、後続の処理器の処理チャンバおよびハウジングの処理空間が、共通のガス空間を形成することが、企図され得る。これに関連して、共通のガス空間は、ハウジングおよび後続の処理器が互いに圧力平衡状態にあることを意味しており、その結果、真空の同じ圧力比率が、ガス空間内で、10~100mbaraの典型的な圧力範囲、好ましくは20~75mbaraの圧力範囲、となる。それによって、等圧比は、圧力範囲内でガス空間を横切る圧力勾配も含む。
【0030】
さらに、出口は後続の移送器に開口し、移送要素の貫流能力は、供給流よりも大きいことが、可能である。移送器は、パイプ、導管、スクリュー、またはポンプであってもよい。それは、相応して大きな貫通流能力を提供すること、を必要とする。例えば、パイプの場合、これは、適切な大きさの断面および/または勾配を提供すること、であり得る。最終的に、当業者が必要とされる貫流能力をどのように達成するかは問題ではない。スクリューまたはポンプの場合、貫流能力は、適切に大きく設計されなければならない。例えばスクリューの場合、これは、対応する回転数によって達成することができる。
【0031】
それに関して、移送器は、通常、薄膜蒸発機と後続の処理器との間に配置されている。したがって、それは、紡糸のための成形溶液を移送するために使用されるのではなく、移送混合物を薄膜蒸発機から後続の処理器に移送するために使用され、この後続の処理器は移送混合物を紡糸可能な溶液に変換する。ここでの利点は、移送器の設計が連続プロセスを可能にすることである。
【0032】
後続の処理器及びハウジング及び移送器は、さらなる共通ガス空間を形成することができる。したがって、ハウジングから後続の処理器への移送混合物の交換は、例えば、異なる圧力比によってではなく、例えば、重力によって、または、スクリューもしくはポンプによって機械的に、行われる。
【0033】
特定の組成物では、溶液は、機能性液体水およびセルロースから、形成される。N-メチルモルホリン-N-オキシド(NMMO:N-Methylmorpholine-N-Oxide)またはイオン溶液は、機能性液体とみなすことができる。その際、例えばリヨセル紡糸溶液とみなすことができる溶液が、セルロース含有量および水含有量などの、どのパラメータにおいて形成されるかは、機能性液体の選択に依存する。
【0034】
移送混合物は、以下のような利点を有する、つまり、薄膜蒸発機中の生成物が常に十分に高い含水量を有し、したがって著しい過熱が防止され、機能性液体としてのNMMOの場合、それに起因する潜在的爆発リスクが防止され、したがって、薄膜蒸発機の排出側に向かう加熱温度を低下させる又は有意に低下させる必要はなく、しかしながら、生成物温度が平衡温度に相当する実質的な過熱を回避する際には、少なくとも20℃、好ましくは50℃、理想的には70℃の、熱エネルギー入力に必要な温度差、すなわち加熱温度と生成物温度との間の差、が常に存在する、という利点を有する。別の利点は、このことが、より低い粘度により、薄膜蒸発機の蒸発機シャフトに対するより低い機械的応力をもたらし、その結果、薄膜蒸発機をより安価に製造することができることである。これにより、薄膜蒸発機の加熱面あたりの最大蒸発水量が増加すると同時に、エネルギーコストが低減され、構造がより有利になる。このより有利な構造は、例えば、従来の薄膜蒸発機をより大きくすることができ、したがって、以前に可能であったよりもより多くの材料を処理することができるという事実から、もたらされる。したがって、加熱面あたりの水の蒸発量が大きいことと、設計が大きいこととの両方が、生産ラインあたりの生産能力を増加させる。
【0035】
出発物質中の機能性流体がNMMOである場合、移送混合物の物質特性は、
最大xH2O=-0.235xCell+0.235
最小xH2O=-0.59xCell+0.2047
の一般的な組成で達成される。
【0036】
さらにより好ましくは、移送混合物は、
最大xH2O=0.2864x Cell-0.6786xCell+0.2288
最小xH2O=0.2864x Cell-0.6786xCell+0.2188
の好ましい組成に適用される。
【0037】
一般的な組成において、移送混合物の排出は既に有利であるが、その理由は十分な水が蒸発し、その結果、移送混合物が形成され、その後の処理器における溶液へのさらなる処理を比較的短いプロセス時間で行うことができるからである。移送混合物の好ましい組成では、水の最大量が既に完全な溶液に近い。一方、水の最小量は、この完全な溶液に対してより大きく離れている。このようにして、さらなる処理を短いプロセス時間で実現することができ、同時に、薄膜蒸発機内の材料の過乾燥の危険性をさらに低減することができる。しかしながら、どちらの場合でも、移送混合物は、溶液に関連するより複雑な処理から除外され、その結果、本発明による薄膜蒸発機は、上述の好ましい動作特性で動作することができる。
【0038】
移送混合物の製造方法が並行して開示される。従って、製造方法は、供給部、ハウジングおよび出口を有する薄膜蒸発機において直接溶解法によって進行する。供給部はセルロース、水および機能性液体の出発材料をハウジング内に導入する。ハウジング内に配置された蒸発機シャフトは出発材料をハウジングの内部にわたって回転的に掻き取り、出発材料は熱くなり、水の一部が蒸発して移送混合物を形成する。移送混合物は供給流と共に出口に流れる。本発明に従い、出口の貫流能力は、供給流よりも大きい。上に示した貫流能力の定義はここでも適用される。
【0039】
それに関して、供給流は、1単位時間当たりの移送混合物の定義可能な量であり、これは、出発材料の単位時間当たりの量が供給部を通ってハウジングに入り、蒸発機シャフトが出発材料を加熱し、水を蒸発させるときに、計算することができる。蒸発機シャフトによる処理期間にわたる熱エネルギー入力を考慮すると、従って蒸発した水の量を差し引くと、供給流を計算することができ、出口を最初から特定の貫通流能力で設計することができ、または調節可能な貫通流能力を、例えば拡大され得る出口によって設定することができ、その結果、ハウジングまたは出口からの、移送混合物の遅延のない排出が可能であり得て、したがって連続プロセスがもたらされ得る。
【0040】
本方法では、例えば、移送混合物を後続の処理器に移送することができる。後続の処理器とは、混合混練機またはさらなる薄膜蒸発機などの、既に記載された処理器のうちの1つであり得る。これに関して、後続の処理器は、移送混合物を成形溶液にさらに処理する。
【0041】
出発物質用の機能液体としては、N-メチルモルホリン-N-オキシド(NMMO)やイオン溶液を、機能液として、添加することができる。それらは、適切な条件下でセルロースを溶解するために使用される。
【0042】
さらに、別の実施形態では、移送混合物は後続の移送器を通過してもよく、移送器の貫流能力は供給流よりも大きい。移送器は、例えば、パイプ、導管、スクリューまたはポンプであり得る。それは、相応して大きな貫流能力を提供することを必要とする。これは、パイプまたは例えば導管の場合、適切に大きな断面および/または傾斜を設けることによって、行うことができる。最終的に、当業者が必要とされる貫流能力をどのように達成するかは問題ではない。スクリューまたはポンプの場合、貫流能力も適切に大きく設計されなければならない。例えばスクリューの場合、これは、対応する回転数によって、達成することができる。
【0043】
これに関して、移送器は、例えば、薄膜蒸発機と後続の処理器との間に、配置されている。したがって、それは、紡糸のための溶液を移送するために使用されるのではなく、移送混合物を薄膜蒸発機から後続の処理器に移送するために使用される。移送混合物は最初に、処理器において紡糸可能な溶液になる。ここでの利点は、移送器の設計が連続プロセスを可能にすることである。
【0044】
出発物質に添加される機能流体がNMMOである場合、移送混合物の一般的な物質特性は、
最大xH2O=-0.235xCell+0.235
最小xH2O=-0.59xCell+0.2047
の一般的な組成で達成される。
【0045】
さらにより好ましくは、移送混合物は、
最大xH2O=0.2864x Cell-0.6786xCell+0.2288
最小xH2O=0.2864x Cell-0.6786xCell+0.2188
の好ましい組成で適用される。
【0046】
一般的な組成および好ましい組成において、移送混合物は、プレ溶液状態にある。したがって、リヨセルの製造方法は薄膜蒸発機の最適な運転パラメータの下で行われること、リヨセルの比較的困難な材料状態は、例えば、薄膜蒸発機内で付着物が生じる場合または過乾燥もしくは分解が起こる場合に、回避されること、も達成されている。これらの問題のある物質状態は、後続の処理器において比較的容易に防止することができるが、それは後続の処理器が一般に、例えば、より低い回転速度およびより高いトルクのために設計されているからである。
【0047】
本発明のさらなる利点、特徴および詳細は、好ましい実施形態の以下の説明および図面から得られる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1図1は、本発明に従う薄膜蒸発機(D)の概略図を示す。
図2図2は、移送混合物の一般的な材料特性及び好ましい材料特性の概略的なグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0049】
図1は本発明に従う薄膜蒸発機Dを示しており、この薄膜蒸発機Dは、他方でハウジング4内に開口する供給部1を有する。供給部1を介して、セルロース、水および機能性液体からなる出発材料が、ハウジング4に入る。
【0050】
ハウジング4は、内部に蒸発機シャフト5を有する。蒸発機シャフト5は、駆動装置3によって回転される。回転する蒸発機シャフト5は、ハウジング4の加熱された内部にわたって出発材料を掻き取り、出発材料は加熱され、水の一部は蒸発し、供給流と共に出口部2へ流れる移送混合物を形成する。
【0051】
それに関して、蒸発機シャフト5が出発材料を輸送するか、または、処理の後の段階で、蒸発機シャフトに取り付けられたワイパーを介して供給部1から出口部2へ移送混合物を輸送するか、および/または、この処理が重量測定的に行われるかどうかは、重要ではない。
【0052】
出口部2の貫流能力は、ここでは供給流よりも大きくなるように設計される。
【0053】
ここで、出口部2は、後続の処理器6に開口している。これにより、出口部2は、一方の端部ではハウジング4の方向に向けられており、他方の端部では後続の処理器6の方向に向けられている。
【0054】
供給部1および出口部2を有するハウジング4、ならびに後続の処理器6は、共通のガス空間7を形成することが示されており、その結果、後続の処理器6への移送混合物の遅延のない移送が可能になる。
【0055】
図2は、移送混合物の一般的な組成および好ましい材料組成を図示するグラフを示しており、それに関して、一般的な組成aは、以下の、
最大xH2O=-0.235xCell+0.235
最小xH2O=-0.59xCell+0.2047
というパラメータを有するので、以下の、
最大xH2O=0.2864x Cell-0.6786xCell+0.2288
最小xH2O=0.2864x Cell-0.6786x+0.2188
というパラメータを有する好ましい組成bよりも、大きなマージンを示す。
【0056】
含水量が減少することにつれて、まず溶液Lの領域に達し、含水量がさらに減少することにつれて、結晶化Kに達する。
【符号の説明】
【0057】
1 供給部
2 出口部
3 駆動部
4 ハウジング
5 蒸発機シャフト
6 後続のプロセス器
7 ガス空間


A 移送混合物の一般的な材料組成
B 移送混合物の好ましい材料組成
K 結晶化
L 溶液
D 薄膜蒸発機

図1
図2
【国際調査報告】