(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-18
(54)【発明の名称】短鎖フラクトオリゴ糖および未加工デンプンに基づく美容上の方法および組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/73 20060101AFI20240111BHJP
A61Q 17/00 20060101ALI20240111BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240111BHJP
A61K 8/9789 20170101ALI20240111BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20240111BHJP
A61K 31/702 20060101ALI20240111BHJP
A61K 31/718 20060101ALI20240111BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240111BHJP
A61P 17/04 20060101ALI20240111BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20240111BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20240111BHJP
A61K 36/31 20060101ALI20240111BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20240111BHJP
A61Q 5/02 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
A61K8/73
A61Q17/00
A61Q19/00
A61K8/9789
A61Q5/00
A61K31/702
A61K31/718
A61P17/00 101
A61P17/00
A61P17/04
A61P31/04
A61P17/02
A61K36/31
A61Q17/04
A61Q5/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023541883
(86)(22)【出願日】2022-01-12
(85)【翻訳文提出日】2023-08-07
(86)【国際出願番号】 EP2022050566
(87)【国際公開番号】W WO2022152762
(87)【国際公開日】2022-07-21
(32)【優先日】2021-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(32)【優先日】2021-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523261540
【氏名又は名称】ベギン,メイジ
(71)【出願人】
【識別番号】523261551
【氏名又は名称】テレオス スターチ アンド スイートナーズ ヨーロップ
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ル ブルゴ,シンディ
(72)【発明者】
【氏名】メツガー,ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】ムニエ,クレア
(72)【発明者】
【氏名】エスワイ,ペリーヌ
【テーマコード(参考)】
4C083
4C086
4C088
【Fターム(参考)】
4C083AA082
4C083AA111
4C083AA112
4C083AA122
4C083AB212
4C083AC072
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC352
4C083AC792
4C083AD211
4C083AD212
4C083AD241
4C083AD242
4C083AD352
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4C083EE06
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4C083EE17
4C086AA01
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4C086MA02
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4C086ZA89
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4C088AB15
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4C088ZA89
4C088ZA90
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4C088ZB35
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1種の短鎖フラクトオリゴ糖および少なくとも1種の未加工デンプンの塗布を含む、皮膚細菌叢の均衡を保つための美容上の方法に関する。また本発明は、美容上許容される担体中に、少なくとも1種の短鎖フラクトオリゴ糖および少なくとも1種の未加工デンプンを含む美容用組成物に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚細菌叢の均衡を保つための美容上の方法であって、皮膚、皮膚付属器、および/または粘膜の全てまたは一部に、美容上許容される担体中に少なくとも1種のフラクトオリゴ糖短鎖および少なくとも1種の未加工デンプンを含む美容用組成物を塗布するステップを含む、方法。
【請求項2】
皮膚の外観および/または皮膚の快適さを改善するための、請求項1に記載の美容上の方法。
【請求項3】
前記皮膚の外観および/または皮膚の快適さを改善することが、発赤、つっぱり感、皮膚のくすみ、およびそう痒からなる群から選択される少なくとも1つの皮膚の不快感を低減することを含む、請求項2に記載の美容上の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1種のフラクトオリゴ糖が、テンサイに由来する、請求項1~3のいずれか1項に記載の美容上の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1種の短鎖フラクトオリゴ糖が、
重合度が3に等しい、1-ケストースまたはGF2とも呼ばれる、1つのグルコース単位および2つのフルクトース単位を含むフラクトオリゴ糖;
重合度が4に等しい、ニストースまたはGF3とも呼ばれる、1つのグルコース単位および3つのフルクトース単位を含むフラクトオリゴ糖;ならびに
重合度が5に等しい、1-β-フルクトフラノシルニストースまたはGF4とも呼ばれる、1つのグルコース単位および4つのフルクトース単位を含むフラクトオリゴ糖
の混合物である、請求項1~4のいずれか1項に記載の美容上の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1種の未加工デンプンが、未加工コーンスターチである、請求項1~5のいずれか1項に記載の美容上の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1種の未加工デンプンが、前記組成物の総重量に対して0.5~20重量%の範囲の量で前記美容用組成物に含まれている、請求項1~6のいずれか1項に記載の美容上の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1種の短鎖フラクトオリゴ糖が、前記美容用組成物の総重量に対して少なくとも0.5重量%の量で前記美容用組成物に含まれている、請求項1~7のいずれか1項に記載の美容上の方法。
【請求項9】
皮膚細菌叢の均衡を保つための、美容上許容される担体中に少なくとも1種の短鎖フラクトオリゴ糖および少なくとも1種の未加工デンプンを含む美容用組成物の使用。
【請求項10】
美容上許容される担体中に少なくとも1種の短鎖フラクトオリゴ糖および少なくとも1種の未加工デンプンを含む美容用組成物であって、前記少なくとも1種の短鎖フラクトオリゴ糖が、
重合度が3に等しい、1-ケストースまたはGF2とも呼ばれる、1つのグルコース単位および2つのフルクトース単位を含むフラクトオリゴ糖;
重合度が4に等しい、ニストースまたはGF3とも呼ばれる、1つのグルコース単位および3つのフルクトース単位を含むフラクトオリゴ糖;ならびに
重合度が5に等しい、1-β-フルクトフラノシルニストースまたはGF4とも呼ばれる、1つのグルコース単位および4つのフルクトース単位を含むフラクトオリゴ糖
の混合物
である、美容用組成物。
【請求項11】
前記少なくとも1種の未加工デンプンが、未加工コーンスターチである、請求項10に記載の美容用組成物。
【請求項12】
前記少なくとも1種の未加工デンプンが、前記美容用組成物の総重量に対して0.5~20重量%の範囲の量で含まれている、請求項10または11に記載の美容用組成物。
【請求項13】
前記少なくとも1種の未加工デンプンが、前記美容用組成物の総重量に対して5~20重量%超の範囲の量で含まれている、請求項10~12のいずれか1項に記載の美容用組成物。
【請求項14】
前記少なくとも1種の短鎖フラクトオリゴ糖が、前記組成物の総重量に対して少なくとも0.5重量%の量で含まれている、請求項10~13のいずれか1項に記載の美容用組成物。
【請求項15】
前記美容用組成物が、ダーマコスメティック製品、髪用製品、インティメイト衛生製品、創傷被覆材および/または創傷治癒剤の形態にある、請求項10~14のいずれか1項に記載の美容用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧品の分野にある。より具体的には、本発明は、皮膚細菌叢の均衡を維持する分野にある。
【背景技術】
【0002】
皮膚は、ヒトの身体の最も大きな臓器を表す複雑および動的な生態系である。物理的な障壁に加え、皮膚細菌叢は、病原体と競合し、免疫系の細胞および成分と密接に情報伝達することにより、保護および生体障壁をもたらす。よって、皮膚性細菌叢は、健常な皮膚の維持に必須の作用因子であると考えられ得る(1)。皮膚細菌叢は、皮膚で一般に見出され、片利共生であると考えられる常在微生物を含み、このことは、それらが宿主にとって全般的に無害であり、何らかの利益を提供する可能性が最も高いことを意味する(2、3)。皮膚細菌叢の常在種は、アクネ菌(Cutibacterium acnes)とも呼ばれるアクネ菌(プロピオニバクテリウム・アクネス:Propionibacterium acnes)のようなプロピオン酸菌、表皮ブドウ球菌(スタフィロコッカス・エピデルミデス:Staphylococcus epidermidis)のようなコアグラーゼ陰性ブドウ球菌、ならびにコリネバクテリウム、小球菌、およびアシネトバクター(Acinebacter)のような他の種である。表皮ブドウ球菌は、「正常」と記載され得る皮膚細菌叢の一部である共生細菌であり、感染症および他の環境による攻撃からヒトの皮膚を保護するように作用する(4)。アクネ菌は、ニキビの皮膚病態に結びついており、多くの皮膚病態に関連している(5、6)。また皮膚細菌叢は、一過性細菌も含み、その最も一般的な種は黄色ブドウ球菌、大腸菌、および緑膿菌である(4、7)。黄色ブドウ球菌は、皮膚のコロニー過剰形成における重要な病原体として同定されており、ヒト皮膚疾患の発症に関わる(2)。皮膚細菌叢の組成および存在量は、身体の部分によって、個体間で、経時的に広く異なり、非常に動的で著しく変動する細菌群集をもたらす(8、9)。
【0003】
ヒトの皮膚細菌叢は、近年、皮膚科学および美容の分野で興味の中心となっている。皮膚細菌叢を理解することおよびその繊細な均衡を維持する方法は、健常な皮膚およびその外観に寄与する機構の理解において重要なステップである。皮膚細菌叢の組成の不均衡は、ディスバイオシス(dysbioses)とも呼ばれ、いくつかの皮膚病態、たとえばにきび、湿疹、またはアレルギー、および非病理学的病態、たとえば敏感肌、皮膚炎、または乾燥肌に関連する。
【0004】
結果として、細菌叢の均衡を保存または修復する手法の開発は、皮膚の健康を促進するための新規標的を表す。よって、皮膚の細菌叢の均衡を保つための単純および有効な方法が必要とされている。
【0005】
この文脈において、本出願人は、少なくとも1種の短鎖フラクトオリゴ糖を含む美容用組成物の美容上の使用が、有益な生物を刺激し、有益でない生物を制限することにより、選択的に皮膚細菌叢の均衡を保つことを可能にすることを実証した。この美容上の使用は、皮膚、付属器および/または粘膜の外観および/または快適さを改善することを可能にする。
【発明の概要】
【0006】
よって、本発明は、皮膚細菌叢の均衡を保つための美容上の方法であって、皮膚、皮膚付属器、および/または粘膜の全てまたは一部に、美容上許容される担体の中に少なくとも1種の短鎖フラクトオリゴ糖および少なくとも1種の未加工デンプンを含む美容用組成物を塗布するステップを含む、方法に関する。
【0007】
一実施形態では、本発明に係る美容上の方法は、皮膚の外観および/または皮膚の快適さを改善するためのものである。
【0008】
本発明の一実施形態では、外観および/または皮膚の快適さを改善することは、発赤、つっぱり感、皮膚のくすみ、およびそう痒からなる群から選択される少なくとも1つの皮膚の不快感を低減することを含む。
【0009】
一実施形態では、少なくとも1種のフラクトオリゴ糖は、テンサイに由来する。
【0010】
一実施形態では、少なくとも1種の短鎖フラクトオリゴ糖は、
重合度が3に等しい、1-ケストースまたはGF2とも呼ばれる、1つのグルコース単位および2つのフルクトース単位を含むフラクトオリゴ糖;
重合度が4に等しい、ニストースまたはGF3とも呼ばれる、1つのグルコース単位および3つのフルクトース単位を含むフラクトオリゴ糖;ならびに
重合度が5に等しい、1-β-フルクトフラノシルニストースまたはGF4とも呼ばれる、1つのグルコース単位および4つのフルクトース単位を含むフラクトオリゴ糖
の混合物である。
【0011】
一実施形態では、少なくとも1種の未加工デンプンは、少なくとも1種の未加工コーンスターチである。
【0012】
一実施形態では、少なくとも1種の未加工デンプンは、美容用組成物の総重量に対して0.5~20重量%の範囲の量で美容用組成物に含まれており、および/または少なくとも1種の短鎖フラクトオリゴ糖は、美容用組成物の総重量に対して少なくとも0.5重量%の量で美容用組成物に含まれている。
【0013】
本発明の一実施形態では、皮膚細菌叢の均衡を保つことは、表皮ブドウ球菌(スタフィロコッカス・エピデルミデス:Staphylococcus epidermidis)の発達および/または増殖を促進すること、ならびに/またはアクネ菌(Cutibacterium acnes)および黄色ブドウ球菌のうちの少なくとも1つの生物の発達および/もしくは増殖を制限することを含む。
【0014】
一実施形態では、本発明に係る美容上の方法は、ディスバイオシス事象の後に行われる。
【0015】
また本発明は、皮膚細菌叢の均衡を保つために、美容上許容される担体中に、少なくとも1種の短鎖フラクトオリゴ糖および少なくとも1種の未加工デンプンを含む美容用組成物の使用に関する。
【0016】
また本発明は、美容上許容される担体中に、少なくとも1種の短鎖フラクトオリゴ糖および少なくとも1種の未加工デンプンを含む美容用組成物であって、前記少なくとも1種の短鎖フラクトオリゴ糖が、
重合度が3に等しい、1-ケストースまたはGF2とも呼ばれる、1つのグルコース単位および2つのフルクトース単位を含むフラクトオリゴ糖;
重合度が4に等しい、ニストースまたはGF3とも呼ばれる、1つのグルコース単位および3つのフルクトース単位を含むフラクトオリゴ糖;ならびに
重合度が5に等しい、1-β-フルクトフラノシルニストースまたはGF4とも呼ばれる、1つのグルコース単位および4つのフルクトース単位を含むフラクトオリゴ糖
の混合物
である、美容用組成物に関する。
【0017】
一実施形態では、少なくとも1種の未加工デンプンは、未加工コーンスターチである。
【0018】
一実施形態では、少なくとも1種の未加工デンプンは、美容用組成物の総重量に対して0.5~20重量%の範囲または5~20重量%超の量で含まれている。一実施形態では、少なくとも1種の短鎖フラクトオリゴ糖は、美容用組成物の総重量に対して少なくとも0.5重量%の量で含まれている。
【0019】
一実施形態では、美容用組成物は、ダーマコスメティック、髪用製品、インティメイト衛生製品、創傷被覆材および/または創傷治癒剤の形態にある。
【0020】
定義
本発明では、以下の用語は以下の意味を有する。
【0021】
「皮膚、皮膚付属器、および/または粘膜の外観および/または快適さを改善すること」は、皮膚不快感と呼ばれる、皮膚、皮膚付属器、および/または粘膜の少なくとも1つの不快感の数、度合い、発生、および/または強度を低減またはさらには排除することを意味する。皮膚の不快感は、特に、発赤、つっぱり感、乾燥肌、敏感肌、そう痒、皮膚炎および皮膚のくすみからなる群から選択され得る。
【0022】
用語「デンプン」は、D-グルコース分子の鎖から構成される多糖であって、グルコース単位が、約95%がα-1,4結合で結合し、約5%がα-1,6-グルコース結合で結合している、多糖を表す。デンプンのこの2つの構成要素のホモポリマーは、アミロース(α-1,4結合により連結されたグルコース単位の直鎖からもたらされる)およびアミロペクチン(アミロース型の直鎖状フラグメントがα-1,6結合により連結された分枝状構造を有する)であり;アミロペクチンの存在により、デンプンは部分的に分岐している。
【0023】
用語「未加工デンプン」は、植物からの抽出後にいかなる修飾も受けていないデンプンを表す。
【0024】
用語「XとYとの間」は、XとYとの間の値の範囲を表し、末端XおよびYは、上記範囲に含まれている。
【0025】
用語「約」名目上の値は、本発明において、上記名目上の値の±10%の間、好ましくは上記名目上の値の±5%、特には上記名目上の値の±1%の間の区間を意味する。
【0026】
「皮膚細菌叢の均衡を保つこと」は、皮膚細菌叢の均衡を維持、保存、および/または修復する作用を意味する。皮膚細菌叢の均衡を保つことは、皮膚、皮膚付属器、および/もしくは粘膜に有益であると考えられる少なくとも1つの生物の発達および/もしくは増殖を促進すること、ならびに/または皮膚、皮膚付属器、および/もしくは粘膜に有益ではないと考えられる少なくとも1つの生物の発達および/もしくは増殖を制限すること、ならびに/または皮膚、皮膚付属器、および/もしくは粘膜の表面上の生物の多様性を回復することを含む。一部の実施形態では、皮膚細菌叢の均衡を保つことは、表皮ブドウ球菌(スタフィロコッカス・エピデルミデス:Staphylococcus epidermidis)の発達および/もしくは増殖を促進すること、ならびに/またはアクネ菌(Cutibacterium acnes)および黄色ブドウ球菌のうちの少なくとも1つの発達および/もしくは増殖を制限することを含む。特定の実施形態では、皮膚細菌叢の均衡を保つことは、表皮ブドウ球菌(スタフィロコッカス・エピデルミデス:Staphylococcus epidermidis)の発達および/もしくは増殖を促進すること、ならびにアクネ菌(Cutibacterium acnes)および黄色ブドウ球菌の発達および/もしくは増殖を制限することを含む。
【0027】
用語「ディスバイオシス事象」または「ディスバイオシス」は、皮膚、皮膚付属器、および/もしくは粘膜に有益ではないと考えられる少なくとも1つの生物の増殖および/もしくは発達、または皮膚、皮膚付属器、および/もしくは粘膜に有益であると考えられる少なくとも1つの生物の低減および/もしくは消滅のいずれかにより、皮膚細菌叢の均衡が変更される事象を表す。ディスバイオシスは、多く不快感および皮膚病態の原因であり得る。ディスバイオシス事象では、皮膚、皮膚付属器、および/または粘膜の免疫応答は改変されることがあり、特定の病原性細菌種が、さらに発達することがある。
【0028】
ディスバイオシス事象では、にきび、乾癬、化膿性汗腺炎、またはベルヌーイ病、およびアトピー性皮膚炎などの皮膚病態からもたらされる事象について言及され得る。一部の実施形態では、ディスバイオシス事象は、にきびであり、細菌叢の不均衡は、アクネ菌(プロピオニバクテリウム・アクネス:Propionibacterium acnes)の菌株の発達を含む。一部の実施形態では、ディスバイオシス事象は、乾癬であり、細菌叢の不均衡は、皮膚に有益ではないと考えられる細菌の増殖を含む。一部の実施形態では、ディスバイオシス事象は、化膿性汗腺炎またはベルヌーイ病であり、細菌叢の不均衡は、細菌の増殖および正常な細菌叢よりも高い細菌の多様性を含む。一部の実施形態では、ディスバイオシス事象は、アトピー性皮膚炎であり、細菌叢の不均衡は、黄色ブドウ球菌の増殖および正常な細菌叢よりも低い細菌の多様性を含む。
【0029】
一部の実施形態では、ディスバイオシス事象は、虚弱な皮膚、皮膚炎、そう痒、発赤、つっぱり感、および/または乾燥肌の発生である。好ましくは、敏感肌、皮膚炎、そう痒、発赤、つっぱり感、および/または皮膚の乾燥の発生は、病的ではないか、または皮膚病態に関連しない。
【0030】
用語「フラクトオリゴ糖」または「FOS」は、β-1,2結合により結合したD-フルクトースから構成される10の最大重合度を有し、末端の1つにグルコースの分子を含み得る、オリゴマーを表す。FOSは、フルクタンの一部である。これらは、タマネギ、チコリ、アーティチョーク、ニンニク、バナナ、アスパラガス、およびビートの根などの多くの植物に自然に存在する。またこれらは、2つの異なるプロセス:特異的エンドイヌリナーゼによるチコリのイヌリンの部分加水分解により(イヌリンは、1端でグルコースがα1-β2で結合しているβ-2,1で結合したフルクトースの直鎖状ポリマーである)、または酵素による合成により、工業的に産生され得る。
【0031】
「短鎖フラクトオリゴ糖」または「scFOS」は、2~4個のフルクトース分子からなり、オリゴ糖の末端の1つでグルコース分子を含むフラクトオリゴ糖を意味する。一実施形態では、短鎖フラクトオリゴ糖は、テンサイ、コムギ、オオムギ、ライムギ、トウ、アスパラガス、バナナ、アーティチョーク、ニンニク、および/またはタマネギに由来する。一実施形態では、フラクトオリゴ糖は、テンサイに由来する。好ましくは、これらは、Actilight(登録商標)またはFOSbeauty(登録商標)の商標名で販売されているフラクトオリゴ糖である。
【0032】
「GF2」、「GF3」、および「GF4」は、それぞれ1-ケストース、ニストース、および1-β-フルクトフラノシルニストースに与えられた名称を表す。最初の文字Gは、グルコースの単位に対応し、文字Fは、フルクトースの単位に対応する。
【0033】
用語「皮膚細菌叢」または「皮膚性細菌叢」は、皮膚、皮膚付属器、および/または粘膜の表面に存在するフローラを構成する、多くの場合共生生物であるが場合により病原体である日和見性微生物、腐生生物(saprobiont)の群集を示す。好ましくは、皮膚細菌叢は、皮膚および/または皮膚付属器の表面に存在する細菌叢である。一実施形態では、皮膚細菌叢は、皮膚の表面に存在する細菌叢である。別の実施形態では、皮膚細菌叢は、皮膚付属器の表面に存在する細菌叢である。最終的な実施形態では、皮膚細菌叢は、粘膜の表面に存在する細菌叢である。好ましくは、皮膚細菌叢は、ヒトの皮膚細菌叢である。
【0034】
用語「皮膚付属器」は、外胚葉から生じ、高い比率の角質化を特徴とする外皮産物である。一実施形態では、皮膚付属器は、髪、体毛、および/または爪である。好ましくは、皮膚付属器は髪である。
【0035】
用語「美容上許容される担体」は、美容用組成物の製造、保存、および/または投与を可能にするいずれかの補助剤または賦形剤を表す。好ましくは、これは、皮膚、付属器および/または粘膜と適合可能であり、好ましい色、香り、および感触を有し、美容用組成物の使用により消費者を失望させ得る許容されない不快感(特にひりひり感、つっぱり感、または発赤)を全くもたらさない媒体である。
【0036】
詳細な説明
美容上の方法
本方法は、皮膚細菌叢の均衡を保つための美容上の方法に関する。特に、皮膚細菌叢の均衡を保つことは、外観および/または皮膚の快適さを改善する。
【0037】
本発明に係る美容上の方法は、少なくとも1種の短鎖フラクトオリゴ糖を、皮膚、皮膚付属器、および/または粘膜に塗布するステップを含む。特に、少なくとも1種の短鎖フラクトオリゴ糖は、美容上許容される担体をさらに含む美容用組成物に含まれている。
【0038】
本発明に係る美容上の方法は、本組成物が塗布される皮膚、皮膚付属器、および/または粘膜の審美および/または快適さを改善することを可能にする。これは、特に、発赤、つっぱり感、皮膚のくすみ、および/またはそう痒など不快感の低減を可能にし得る。得られる効果は、皮膚、付属器、および/または粘膜の表面上のみであり、単に美容上および非治療的である。よって、本発明に係る美容上の方法は、病態の症状を処置または低減することを可能にせず、単に、皮膚細菌叢の均衡を維持、保存、および/または修復することを支援することにより皮膚、皮膚付属器、および/または粘膜の外観および/または快適さを改善することを可能にする点で、非治療的方法である。
【0039】
好ましくは、塗布は、皮膚および/もしくは皮膚付属器への塗布、または局所的な塗布である。
【0040】
美容用組成物の塗布は、当該分野で公知のいずれかの適切な方法により行われ得る。塗布は、フォーム、フロックチップまたはノンフロックチップ、フェルト、ブラシ、コーム、筆、織組織または不織組織などのアプリケーターにより行われ得る。あるいは、本発明に係る方法の実施において美容用組成物は、アプリケーターを用いず、特に1本以上の指を用いて塗布され得る。
【0041】
塗布は、任意の期間および任意の適切な頻度で実行され得る。塗布の期間および/または頻度は、特に、美容用組成物を提供する前の、関係する皮膚、皮膚付属器、および/もしくは粘膜の領域、関係する皮膚、付属器、および/もしくは粘膜の表面、皮膚、付属器、および/もしくは粘膜の外観、ならびに/または皮膚細菌叢の状態、特にその不均衡により適合させてもよい。
【0042】
美容用組成物は、皮膚細菌叢を維持、修復、および/または均衡を保つために十分な任意の時間の間塗布され得る。美容用組成物は、皮膚、皮膚付属器、および/または粘膜の外観および/または快適さを改善するために十分な任意の期間塗布され得る。よって、塗布は、1日~6カ月間、2日~1カ月間、特には7日~21日間、行われ得る。
【0043】
本発明に係る方法における美容用組成物の塗布の頻度は、皮膚細菌叢を維持、回復、および/または均衡を保つために十分な任意の頻度であり得る。本発明に係る方法における美容用組成物の塗布の頻度は、皮膚、皮膚付属器(skun appendages)、および/または粘膜の外観および/または快適さを改善するために十分な任意の頻度であり得る。よって、塗布は、たとえば、1日3回、1日2回、1日1回、2日毎に1回、または1週間に1回実行され得る。
【0044】
一部の実施形態では、本発明の方法における塗布は、たとえば発赤、つっぱり感、乾燥肌、敏感肌、そう痒、皮膚炎および皮膚のくすみからなる群から選択される少なくとも1つの兆候の出現後の、単回の塗布であり得る。
【0045】
本発明に係る方法では、美容用組成物の塗布は、1日の任意の時間に行うことができる。一実施形態では、塗布は、午前中に行われる。一実施形態では、塗布は、就寝前の夜に行われる。
【0046】
さらに本発明は、皮膚細菌叢の均衡を保つように意図されている美容用組成物中の少なくとも1種の短鎖フラクトオリゴ糖の有効量の使用に関する。
【0047】
本発明のさらなる目的は、皮膚細菌叢の均衡を保つため、美容上許容される担体に少なくとも1種の短鎖フラクトオリゴ糖を含む美容用組成物の使用である。
【0048】
美容用組成物
また本発明は、少なくとも1種の短鎖フラクトオリゴ糖および少なくとも1種の美容上許容される担体を含む美容用組成物に関する。
【0049】
少なくとも1種の短鎖フラクトオリゴ糖は、任意の適切な量で本発明に係る美容用組成物に含まれ得る。特に、これは、皮膚細菌叢の均衡の回復、維持、および/または保存を支援することにより皮膚の外観および/または快適さを改善するために有効な量で美容用組成物に含まれ得る。
【0050】
一実施形態では、少なくとも1種の短鎖フラクトオリゴ糖は、美容用組成物の総体積に対して0.1~50重量%の範囲の量で美容用組成物に含まれている。一実施形態では、少なくとも1種の短鎖フラクトオリゴ糖は、美容用組成物の総体積に対して1~5重量%の範囲の量で美容用組成物に含まれている。一実施形態では、少なくとも1種の短鎖フラクトオリゴ糖は、美容用組成物の総体積に対して5~50重量%、好ましくは5~20重量%、特には5~15重量%の範囲の量で美容用組成物に含まれている。一実施形態では、少なくとも1種の短鎖フラクトオリゴ糖は、美容用組成物の総体積に対して厳密に2.5重量%未満の量で美容用組成物に含まれている。一実施形態では、少なくとも1種の短鎖フラクトオリゴ糖は、美容用組成物の総体積に対して厳密に2.5重量%超の量で美容用組成物に含まれている。一実施形態では、少なくとも1種の短鎖フラクトオリゴ糖は、美容用組成物の総体積に対して約5重量%の量で美容用組成物に含まれている。
【0051】
一実施形態では、少なくとも1種の短鎖フラクトオリゴ糖は、美容用組成物の総重量に対して少なくとも0.5重量%の量で美容用組成物に含まれている。一実施形態では、少なくとも1種の短鎖フラクトオリゴ糖は、美容用組成物の総重量に対して0.5~5重量%の量で美容用組成物に含まれている。一実施形態では、少なくとも1種の短鎖フラクトオリゴ糖は、美容用組成物の総重量に対して約0.5重量%の量で美容用組成物に含まれている。
【0052】
好ましい実施形態では、少なくとも1種の短鎖フラクトオリゴ糖は、美容用組成物の総重量に対して約1重量%の量で美容用組成物に含まれている。
【0053】
一実施形態では、少なくとも1種の短鎖フラクトオリゴ糖は、美容用組成物の総重量に対して約2.5重量%の量で美容用組成物に含まれている。
【0054】
一実施形態では、少なくとも1種の短鎖フラクトオリゴ糖は、美容用組成物の総重量に対して約5.0重量%の量で美容用組成物に含まれている。
【0055】
一実施形態では、少なくとも1種の短鎖フラクトオリゴ糖は、少なくとも2種、好ましくは少なくとも3種の短鎖フラクトオリゴ糖の混合物である。
【0056】
一実施形態では、少なくとも1種の短鎖フラクトオリゴ糖は、
重合度が3に等しい、1-ケストースまたはGF2とも呼ばれる、1つのグルコース単位および2つのフルクトース単位を含むフラクトオリゴ糖;
重合度が4に等しい、ニストースまたはGF3とも呼ばれる、1つのグルコース単位および3つのフルクトース単位を含むフラクトオリゴ糖;ならびに
重合度が5に等しい、1-β-フルクトフラノシルニストースまたはGF4とも呼ばれる、1つのグルコース単位および4つのフルクトース単位を含むフラクトオリゴ糖
の混合物である。
【0057】
好ましい特徴では、フラクトオリゴ糖GF2、GF3、およびGF4のフルクトース単位は、β(2-1)結合により共に結合しており、グルコース単位は、α1-β2結合によりフルクトース単位に結合している。
【0058】
一実施形態では、少なくとも1種の短鎖フラクトオリゴ糖は、好ましくはスクロース上のβ-フルクトフラノシダーゼを伴う酵素反応により得られる。好適な特徴では、上記スクロースは、テンサイに由来する。スクロース分子の酵素による反応の終了時に得られる産物は、スクロース、グルコース、および短鎖フラクトオリゴ糖の混合物である。好適には、この産物は、クロマトグラフィーにより精製される。
【0059】
一実施形態では、少なくとも1種の短鎖フラクトオリゴ糖は、は、30~45%のGF2、40~60%のGF3、5~15%のGF4、ならびに1~10%の単糖および二糖(グルコースおよびスクロース)、好ましくは35~40%のGF2、40~55%のGF3、7~12%のGF4、ならびに3~8%の単糖および二糖(グルコースおよびスクロース)、より好ましくは約37%のGF2、約53%のGF3、約10%のGF4、ならびに7%未満の単糖および二糖(グルコースおよびスクロース)を含み、このパーセンテージは、フラクトオリゴ糖の混合物の総重量に対する重量により表されている。
【0060】
好ましい実施形態では、少なくとも1種の短鎖フラクトオリゴ糖は、TEREOS(登録商標)社によりACTILIGHT(登録商標)の商標名で販売されている製品である。より好ましくは、少なくとも1種の短鎖フラクトオリゴ糖は、TEREOS(登録商標)社によりACTILIGHT(登録商標)950P、ACTILIGHT(登録商標)950S、またはACTILIGHT(登録商標)951Sの商標名で販売されている製品である。第2の好ましい実施形態では、少なくとも1種の短鎖フラクトオリゴ糖は、TEREOS(登録商標)社によりFOSbeauty(登録商標)の商標名で販売されている製品である。
【0061】
本発明に係る美容用組成物は、局所塗布で通常使用されるいずれかの形態、特に含水アルコール形態、油中水または水中油型または多重エマルジョン、油状のゲル、液体、ペースト状もしくは固体の無水生成物、または小球の存在下での分散剤の形態であり得る。これら組成物は、通常の方法により調製される。
【0062】
美容用組成物は、想定され得る全てのガレノス製剤の形態にあり得る。本組成物は、水性、アルコール性、水性-アルコール性、または油状の液剤、ローションまたはセラム型の分散剤、懸濁剤、マイクロカプセルまたはマイクロ粒子;イオン性型および/または非イオン性型の小胞分散剤、水性、油状ローション、またはセラムの形態;フォーム、固体製剤、たとえばスティック;加圧下での噴霧剤をも含むエアロゾル用の組成物、ゲル、またはパッチの形態をとり得る。
【0063】
本組成物は、事実上流体であり得、白色または色の付いたクリーム、軟膏、ミルク、またはペーストの外観を有し得る。これは、任意選択で、エアロゾルの形態で皮膚、その付属器、および/または粘膜に塗布され得る。
【0064】
本発明に係る美容用組成物は、特にダーマコスメティック製品、髪用製品、インティメイト衛生製品、創傷被覆材および/または創傷治癒剤の形態であり得る。一実施形態では、本発明に係る美容用組成物は、ダーマコスメティック製品、髪用製品、インティメイト衛生製品、および/または創傷被覆材の形態にある。一実施形態では、本発明に係る美容用組成物は、ダーマコスメティック製品、髪用製品、および/またはインティメイト衛生製品の形態にある。
【0065】
本発明に係る組成物は、顔、または身体のためのクレンジング、保護またはケア組成物(たとえばデイクリーム、ナイトクリーム、メイキャップリムーバークリーム、身体保護またはケア剤、たとえば保湿剤または日焼け止め、皮膚ケア用のローション、ゲル、またはフォーム)の形態であり得る。
【0066】
本発明に係る組成物は、シャンプー、特に固形シャンプー、コンディショナー、カラーリング製品、ヘアマスク、またはスタイリング製品などの髪用製品の形態であり得る。
【0067】
一実施形態では、本発明に係る組成物は、保湿剤、日焼け止め、および固形シャンプーからなる群から選択される。
【0068】
本組成物がエマルジョンである場合、脂肪相の割合は、本組成物の総重量に対して5~80重量%、好ましくは5~50重量%の範囲にあり得る。エマルジョンの形態の本組成物に使用される油、ワックス、乳化剤、および共乳化剤は、化粧品の分野で従来より使用されるものから選択される。
【0069】
公知のように、本発明に係る美容用組成物はまた、化粧品および皮膚科学の分野の通常の補助剤、たとえば親水性または脂溶性ゲル化剤、親水性または脂溶性活性剤、保存剤、抗酸化剤、溶媒、香料、充填剤、フィルター、色素、キレート剤、臭い吸収剤、および着色剤を含み得る。これら様々な補助剤の量は、企図される分野で従来より使用される量であり、たとえば、本組成物の総重量の0.01%~20%である。これら補助剤は、それらの性質に応じて、脂肪相、水相、脂質ビヒクル、および/またはナノ粒子内へ導入され得る。
【0070】
本発明の組成物において、少なくとも1種の短鎖フラクトオリゴ糖を、外観および皮膚の快適さにとって有益な少なくとも1種のさらなる生成物、特に皮膚性細菌叢の均衡を回復、維持、および/または保存することに寄与する少なくとも1種のさらなる生成物と会合させて使用することが可能である。特定の実施形態では、外観および/または皮膚の快適さにとって有益な少なくとも1種のさらなる生成物は、プロバイオティクス、難消化性デキストリン、および他のプレバイオティクスファイバーからなる群から選択される。
【0071】
よって、本発明に係る美容用組成物は、少なくとも1種の短鎖フラクトオリゴ糖と組み合わせて、少なくとも1種の未加工デンプンを含み得る。
【0072】
少なくとも1種の未加工デンプンは、任意の適切な量で本発明に係る美容用組成物に存在し得る。少なくとも1種の未加工デンプンは、本組成物全体の重量に対して0.5~20重量%、特に本組成物の総重量に対して4.5~15重量%の範囲の量で本発明に係る美容用組成物に存在し得る。本発明に係る組成物がクリームの形態である場合、少なくとも1種の未加工デンプンは、好ましくは本組成物の総重量に対して1~10重量%の範囲の量で存在する。特定の実施形態では、少なくとも1種の未加工デンプンは、本組成物の総重量に対して4.5重量%、5重量%、または7重量%の量で存在する。本発明に係る組成物が固体の形態である場合、少なくとも1種の未加工デンプンは、好ましくは本組成物の総重量に対して10~15重量%の範囲の量で存在する。特定の実施形態では、少なくとも1種の未加工デンプンは、本組成物の総重量に対して10重量%または15重量%の範囲の量で存在する。
【0073】
一実施形態では、本発明に係る美容用組成物は、
本組成物の総重量に対し少なくとも0.5重量%、特には0.5~5重量%の少なくとも1種の短鎖フラクトオリゴ糖、および
本組成物の総重量に対し0.5~20重量%、特には4.5~15重量%の、少なくとも1種の未加工デンプン、好ましくは少なくとも1種の未加工コーンスターチ
を含む。
【0074】
よって本出願はまた、少なくとも1種の未加工デンプンを含む美容用組成物に関する。好ましくは、未加工デンプンは、トウモロコシ、タピオカ、コムギ、オオムギ、ジャガイモ、またはバナナから選択されるデンプンの供給源に由来する。好ましくは、未加工デンプンは、未加工コーンスターチである。より好ましくは、未加工デンプンは、TEREOS(登録商標)社により商標名Meritena(登録商標)の下販売されている製品であり、さらにより好ましくは、これは、TEREOS(登録商標)社によりMeritena(登録商標)100の商標名で販売されている製品である。本出願人らは、実際に、本発明に係る美容用組成物に未加工デンプンを含めることが、美容用組成物の感覚的および物理的特性を保存またはさらには改善することを可能にすることを実証した。特に、本発明に係る美容用組成物における少なくとも1種の短鎖フラクトオリゴ糖と少なくとも1種の未加工デンプンの組み合わせは、特に、保湿剤、日焼け止め、および/または固形シャンプーの形態の美容用組成物を得ることを可能にし、この物理的および感覚的特性は、当該組み合わせを含まない組成物の特性と比較して改善されており、皮膚の外観および/または快適さを改善することを可能にする。
【0075】
特定の実施形態では、少なくとも1種の短鎖フラクトオリゴ糖は、皮膚細菌叢の均衡の回復、維持、および/または保存に寄与する美容用組成物の唯一の化合物であり、特に少なくとも1種の短鎖フラクトオリゴ糖は、皮膚の外観および/または快適さを改善する美容用組成物の唯一の化合物である。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【
図1】
図1は、0時間、8時間、および24時間での様々な量のscFOSの存在下での表皮ブドウ球菌の増殖を示すグラフである。
【
図2】
図2は、0時間、8時間、および24時間での様々な量のscFOSの存在下でのアクネ菌の増殖を示すグラフである。
【
図3】
図3は、0時間、8時間、および24時間での様々な量のscFOSの存在下での黄色ブドウ球菌の増殖を示すグラフである。
【
図4】
図4は、0時間、8時間、および24時間でのアクネ菌と競合する場合の様々な量のscFOSの存在下での表皮ブドウ球菌の増殖を示すグラフである。
【
図5】
図5は、0時間、8時間、および24時間での表皮ブドウ球菌と競合する場合の様々な量のscFOSの存在下でのアクネ菌の増殖を示すグラフである。
【
図6】
図6は、0時間、8時間、および24時間での黄色ブドウ球菌と競合する場合の様々な量のscFOSの存在下での表皮ブドウ球菌の増殖を示すグラフである。
【
図7】
図7は、0時間、8時間、および24時間での表皮ブドウ球菌と競合する場合の様々な量のscFOSの存在下での黄色ブドウ球菌の増殖を示すグラフである。
【
図8】
図8は、本発明に係る保湿クリームの粘度を反映するクリームを破断するために印加される力(Pa)、および変形(%)を示すグラフである。ヒストグラムは、変形に対応し、曲線は、粘性力に対応する。
【
図9】
図9は、25℃、100s
-1で広げる間の本発明に係る保湿クリームのmPaでの粘度を示すグラフである。
【
図10】
図10は、本発明に係る保湿クリームのグラムでの硬さおよび粘着性を示すヒストグラムである。
【
図11】
図11は、本発明に係る日焼け止めクリームの粘度を反映するクリームを破断するために印加される力(Pa)、および変形(%)を示すグラフである。このヒストグラムは、変形に対応し、曲線は、粘性力に対応する。
【
図12】
図12は、25℃、100s
-1で広げる間の本発明に係る日焼け止めのmPaでの粘度を示すグラフである。
【
図13】
図13は、異なる量の短鎖フラクトオリゴ糖での、105℃で48時間後の本発明に係る固形シャンプーの湿潤性の値(%)を示すヒストグラムである。参照物(Ref)は、短鎖フラクトオリゴ糖を含まない。
【
図14】
図14は、異なる量の短鎖フラクトオリゴ糖での、38℃で250回転/分での10分間の撹拌後の本発明に係る固形シャンプーを溶解するための試験の結果を示すヒストグラムである。参照物(Ref)は、短鎖フラクトオリゴ糖を含まない。
【発明を実施するための形態】
【0077】
実施例
本発明は、限定することなく本発明を示す以下の実施例を読むことにより良好に理解されるであろう。
【0078】
実施例1:異なる細菌株に及ぼすscFOS-ACTILIGHT(登録商標)の効果の試験
本試験は、ヒトの皮膚細菌叢を代表する3つの細菌株(表皮ブドウ球菌(Staphyloccocus epidermidis)、アクネ菌(Cutibacterium acnes)、および黄色ブドウ球菌)のin vitroでの増殖および競合活性に及ぼす短鎖フラクトオリゴ糖(scFOS、Actilight(登録商標)P95、Beghin-Meiji)の効果を評価した。
【0079】
材料および方法
細菌株
表皮ブドウ球菌(スタフィロコッカス・エピデルミデス:Staphylococcus epidermidis)(ATCC(登録商標)12228)および黄色ブドウ球菌(ATCC(登録商標)6538)は、アメリカン・タイプカルチャーコレクション(American Type Culture. Collection、ATCC)から獲得し、アクネ菌(Cutibacterium acnes)(CCUG 1794T)は、ヨーテボリ大学のカルチャーコレクション(Culture Collection University of Gothenburg:CCGU)から獲得した。細菌株は、凍結乾燥した形態で提供され、これを各細胞バンクの指示に従って再活性化した。簡潔に述べると、ペレット全体を、0.5mlの適切な増殖培地(ブドウ球菌株ではトリプティックソイブロス(TSB)およびアクネ菌ではTSB+5%のヒツジの脱線維素血(BTSB))によって再浮遊させた。再水和した後、得られた浮遊液を、菌株に特異的な増殖培地を含む無菌のチューブに播種し、混合した後、適切な条件(すなわちブドウ球菌株では好気性条件下、37℃で24時間およびアクネ菌では嫌気性条件、37℃で48時間)下でインキュベートした。24時間後に、ブドウ球菌株浮遊液を、ブドウ球菌用の選択的なマンニトール塩寒天プレート上で画線培養し、48時間のインキュベーションの後、アクネ菌浮遊液を、選好性細菌用の寒天プレート上で画線培養した。適切な条件下での24時間および48時間のインキュベーションの後、無菌の播種ループで採取した各細菌株の単一のコロニーを、TSBおよびBTSBの液体培地中に播種した。3つの細菌株が、中期の対数増殖期に達した(ブドウ球菌株では24時間およびアクネ菌では48時間)後、接種菌液に存在するコロニー形成単位/ml(CFU/mL)での細菌の濃度(細菌量)を、デンシトメトリー、次に細菌の段階希釈物の寒天へのプレーティングの後のCFU計測を行うことにより、決定した。未処置の細菌株の摂取菌液は、処置の一貫性を確保するために各実験の前に調製した。
【0080】
Actilight(登録商標)の調製
Actilight(登録商標)は、Rossi et al., 2005 (10)に従って調製した。簡潔に述べると、実験を行う液体培地に応じて、scFOSの重量を計測し、TSBおよび最小培地(滅菌水において0.9%のNaClおよび0.003%のトリプシンリン酸塩のブロス(TPB)1)の両方に20(w/v)%の濃度で溶解した。scFOSを完全に溶解した後、培地の滅菌を、オートクレーブにより行った(121℃で20分間)。
【0081】
scFOSの静菌活性および殺菌活性
細菌株の増殖を阻害し、および/またはそれらを殺滅するsFOSの特性を、最小発育阻止濃度(MIC)および最小殺菌濃度(MBC)の定義に関して標準的なプロトコルを用いて評価した。MICは、細菌の視認可能な増殖を阻止する作用物質の最小濃度として定義されており、MBCは、一定期間(通常8時間および24時間)にわたり細菌を殺滅するために必要な抗細菌剤の最小濃度である。簡潔に述べると、10×106個のCFU/mLの各細菌株を、液体ブロス培地(黄色ブドウ球菌および表皮ブドウ球菌ではTSB、ならびにアクネ菌ではBTSB)において漸増濃度(0から15(w/v)%まで)のscFOSに、好気性条件下で絶えず振とうしながら37℃で24時間曝露した。細菌株の増殖に及ぼす異なる濃度のscFOSの影響を、スプレッドプレート法を用いて経過観察した。接種菌液のアリコートを、0、8、および24時間目に回収し、段階希釈し、特異的な寒天プレート(ブドウ球菌株ではマンニトール塩寒天プレートおよびアクネ菌では血液寒天)に播種した。24時間後(黄色ブドウ球菌および表皮ブドウ球菌)ならびに48時間後(アクネ菌)に、スプレッドプレート上に形成された視認可能なコロニーを計測した。適切な希釈倍率により補正後、細菌増殖を、対照(t=0時間)からの倍数変化として計算した。
【0082】
細菌株の増殖動態に及ぼすscFOSの影響
それらの増殖を支援するためのエネルギー源としてscFOSを使用する、試験される細菌株の特性を、最小液体培地における異なる濃度のscFOSにそれらを曝露することにより調査した。簡潔に述べると、遠心分離および徹底的な洗浄を行い、次にそれらを播種した増殖培地を除去した後、3種の細菌(10×106個のCFU/mL)を、最小培地において漸増濃度(0から15%まで)のscFOSに、嫌気性条件下にて絶えず振とうさせながら曝露した。上述されるように、細菌株の増殖に及ぼす異なる濃度のscDOSの影響を、スプレッドプレート法を用いて評価した。接種菌液のアリコートを、8時間および24時間目に回収し、段階希釈し、特異的な寒天プレート(ブドウ球菌株ではマンニトール塩寒天プレートおよびアクネ菌では血液寒天)に播種した。嫌気性条件下にて37℃で48時間経過した後、異なるスプレッドプレート上に形成されたコロニーを計測した。適切な希釈倍率により補正後、試験した3つの細菌株の細菌増殖を、最初の接種菌液の細菌量(t=0時間)に対する変化の倍率として計算した。
【0083】
scFOSに関する細菌株間の競合
エネルギー供給源としてのscFOSに関して競合する細菌株の特性を、表皮ブドウ球菌とアクネ菌および表皮ブドウ球菌と黄色ブドウ球菌の比較を通して評価した。これらの競合は、最小培地において異なる濃度のscFOS(0~5%)で行った。競合の発展は、選択的な手段および差次的なコロニー計測に基づき、スプレッドプレート法で評価した。簡潔に述べると、遠心分離および十分な洗浄を行い、増殖培地を除去した後、各競合株10×106CFU/mLを、最小培地(無菌水において0.9%のNaCl+0.003%のTPB)において漸増濃度(0から5%まで)のscFOSに、絶えず撹拌しながら好気性条件下にて37℃で48時間曝露した。接種菌液のアリコートを、0時間目(最初の細菌量)、4時間目、8時間目、24時間目、および48時間目に採取し、段階希釈し、特異的な寒天プレートに播種した。表皮ブドウ球菌と黄色ブドウ球菌との競合では、播種は、マンニトール食塩フェノールレッド寒天(mannitol phenol red salt agar:MSARP)上で行った。
【0084】
表皮ブドウ球菌とアクネ菌の競合では、差次的なコロニー計測の戦略を適用した。簡潔に述べると、異なる時間に回収した同じアリコートを、MSARPおよび血液寒天プレートに播種した。アクネ菌のCFU/mLの数を、血液寒天のコロニー数から、表皮ブドウ球菌に特異的なMSARPプレートから得たコロニー数を減算することにより計算した。
【0085】
適切な希釈倍率により補正後、競合する細菌株の増殖を、最初の接種菌液の細菌量(t=0h)に対する変動係数として計算した。
【0086】
統計解析
全ての統計解析は、OriginLabソフトウェアを用いて行った。処置間の統計上有意差が存在するかどうかを判定するために、t検定解析を行った。全てのデータを、3つの独立した実験の平均値±標準偏差(SD)として示す。グループ間の差異は、p<0.05で有意であるとみなされた。
【0087】
結果
細菌の増殖および生存に及ぼすscFOSの影響
それらの増殖に及ぼすプレバイオティクスとしてのsFOSの潜在的な効果を試験する前に、表皮ブドウ球菌、アクネ菌、および黄色ブドウ球菌の増殖および生存に及ぼすそれらの影響を試験した。これらの実験は、各細菌株に特異的な細菌増殖培地(黄色ブドウ球菌および表皮ブドウ球菌ではTSB、ならびにアクネ菌ではBTSB)で行った。
【0088】
表1に示されるように、最初の細菌量と比較して有意な増殖が全ての試験した濃度のscFOSで明らかとなったため、表皮ブドウ球菌、アクネ菌、および黄色ブドウ球菌に対するscFOSの静菌効果または殺菌効果は観察されなかった。同じ濃度で8時間~24時間の間での表皮ブドウ球菌および黄色ブドウ球菌集団の減少が、おそらくは栄養素の進行性の枯渇により観察され、細菌の生存を制限した。アクネ菌および黄色ブドウ球菌の増殖の有意な低下が、最も高いscFOSの濃度(10および15%のscFOS)で観察された。
【0089】
【0090】
細菌株に及ぼすscFOSのプレバイオティクス活性
最小培地において、細菌増殖は、scFOSの非存在下(0%)では有意に制限され、細菌増殖がscFOSの代謝に直接依存していることを確かにした。
図1に示されるように、表皮ブドウ球菌は、エネルギー供給源としてscFOSを利用することができた。実際に、その細菌量は、8時間後に0.5から5%scFOSで有意に増大し、1および5%scFOSの存在下で最大24時間まで増加する傾向があった。しかしながら、scFOSの濃度が高くなるにつれて(10および15%)、対照(0%scFOS)と比較してその増殖に負の影響を及ぼした。
【0091】
表皮ブドウ球菌とは異なり、黄色ブドウ球菌およびアクネ菌は、これら細菌株の増殖が、試験される濃度および時間とは無関係に、scFOSの非存在下での増殖より常に有意に低かったため、エネルギー供給源としてscFOSを利用できなかった。しかしながら、黄色ブドウ球菌集団は、依然としてこれら条件下で増加できたが、アクネ菌集団の増殖は完全に停止した。8時間から24時間までの2つの細菌集団の有意な減少が、おそらく最小培地において利用できる数種の栄養素の進行的な枯渇により観察され、これにより細菌の死滅がもたらされた(
図1)。
【0092】
最小培地におけるscFOSに関する細菌株の競合
最小培地における表皮ブドウ球菌およびアクネ菌の間のscFOSの競合は、前の節で観察された結果を確認するものであった。実際に、アクネ菌集団の増殖に及ぼすscFOSの正の効果は8時間目で実証されなかったが、scFOSの存在は、最大5%までのFOSで試験した全ての用量で表皮ブドウ球菌の増殖を刺激した(
図2)。これは、8時間目で表皮ブドウ球菌/アクネ菌の正の増殖比をもたらし、1%のFOSの用量で最大値に達した(表2)。
【0093】
【0094】
表皮ブドウ球菌および黄色ブドウ球菌の間の競合は、以前に試験した競合の結果と同様の結果を特徴とし、黄色ブドウ球菌の増殖に正の効果を及ぼさなかったが、表皮ブドウ球菌の増殖は、最小培地において8時間の培養の後0.5~2.5%の間の用量のscFOSの添加により刺激された(
図3)。黄色ブドウ球菌の増殖に対する表皮ブドウ球菌の増殖の計算された比率は、黄色ブドウ球菌の増殖を犠牲にして表皮ブドウ球菌がscFOSを使用して増殖する能力を確認し、最も著しい刺激は、最低用量のscFOS(0.5%)で観察された(表2)。
【0095】
実施例2:本発明に係る保湿クリームの組成
【0096】
本発明に係る保湿クリームの組成を、表3に記載する。この組成の3つの代替物を、未加工コーンスターチ、コムギデンプン、またはポテトデンプンを組み込んだかどうかに応じて調製した。
【0097】
【0098】
このパーセンテージは、本組成物の重量に対する重量パーセンテージに対応する。
【0099】
表3に係る組成物を、以下のプロセスにより調製した:
相A、B、およびCの重量計測する
相Aを連続して撹拌しながら85℃に最大45分間加熱する
相Bを75℃に加熱する
相C、次に相Bを、撹拌を維持しながら相Aにゆっくりと組み込む
エマルジョンが安定するまで撹拌する。
【0100】
つやのあるテクスチャーの白色のクリームを得た。
【0101】
実施例3:本発明に係る日焼け止めの組成
本発明に係る日焼け止めの組成を表4に記載する。
【0102】
【0103】
このパーセンテージは、本組成物の重量に対する重量パーセンテージに対応する。
【0104】
表4に係る組成物は、以下のプロセスにより調製した:
相A、B、およびCの重量計測する
相Aを85℃に加熱する
相Bを75~80℃に加熱する
相C、次に相Bを、撹拌を維持しながら相Aにゆっくりと組み込む
エマルジョンが安定するまで撹拌する。
【0105】
実施例4:本発明に係る固形シャンプーの組成
本発明に係る固形シャンプーを、表5に記載する。
【0106】
【0107】
このパーセンテージは、本組成物の重量に対する重量パーセンテージに対応する。
【0108】
表5に係る組成物を、以下のプロセスにより調製した:
相Bの重量を計測し、65℃に加熱する
スパチュラを用いてボールの中で水および界面活性剤(ココイルイセチオン酸ナトリウム)を穏やかに混合する
生地が滑らかになると未加工コーンスターチを添加する
ペーストが均質となると相Bを添加する
生地が滑らかになるまで混合した後、型に注ぐ
型(mould)の中で1日間バーを乾燥させ、その後2日間型の外で室温にて乾燥させる。
【0109】
実施例5:本発明に係る組成物の特徴付け
A-官能特徴付け
【0110】
本発明に係る組成物の官能特徴付けを、7~8人のグループにより行った。
【0111】
本発明に係る保湿クリームの官能特徴付け
評価される保湿クリームの組成は、表3の保湿クリームの組成に対応しており、Actilight(登録商標)950 Pの量を0.5%から5%まで変化させた。
【0112】
表6は、本発明に係る保湿クリームの特徴をまとめている。記載の値は、全ての人の平均値である。参照組成物は、5%のコーンスターチを含む他の全ての成分を含むが、Actilight(登録商標)950 Pを含まない組成物である。
【0113】
【0114】
本発明に係る日焼け止めの官能特徴付け
評価される日焼け止めの組成は、表4の日焼け止めの組成に対応しており、ここでActilight(登録商標)950 Pの量を、0.5%から5%まで変化させた。
【0115】
表7は、本発明に係る日焼け止めクリームの特徴をまとめている。記載の値は、全ての人の平均値である。参照組成物は、Actilight(登録商標)950 Pを含まないが、他の全ての成分を含む組成物である。
【0116】
【0117】
本発明に係る日焼け止めクリームは、短鎖フラクトオリゴ糖を含まない日焼け止めクリームよりも緻密である。
【0118】
本発明に係る固形シャンプーの官能特徴付け
表8は、本発明に係る固形シャンプーの特徴をまとめている。本発明に係る固形シャンプーは、5重量%の短鎖フラクトオリゴ糖、およびコーンスターチを含む。参照組成物は、Actilight(登録商標)950 Pを含まないが、他の全ての成分を含む組成物である。第2の参照物は、市販の固形シャンプー組成物である。
【0119】
【0120】
本発明に係る固形シャンプーは、それらの使用の間および使用後の感覚的な感覚の観点から特に好適な特性を実証した。特に、塗布中および塗布後のそれらの柔らかさ、およびそれらの泡立ち能が明確に記載された。
【0121】
B-物理的特徴付け
本発明に係る保湿クリームの物理的特徴付け
図8は、本発明に係る保湿剤のレオロジーを示す。本発明に係る保湿組成物は、短鎖フラクトオリゴ糖を含まない参照物よりも高い弾性(高い変形)を有する。さらに、本発明に係る組成物は、顕著に高い靱性を有する1%のActilight(登録商標)950 Pを含む組成物を除き、参照組成物と同じ桁の大きさの靱性を有する。
【0122】
図9は、本発明に係る保湿クリームの粘度の100s
-1で広げる間の粘度を示す。本発明に係る保湿クリームは、顕著に高い粘度を有する1%のActilight(登録商標)950 Pを含む組成物を除き、参照組成物の粘度と同じ桁の大きさの粘度を有する。
【0123】
また、本組成物の色に及ぼす短鎖フラクトオリゴ糖の組み込みの効果を測定した。表9は、本発明に係る保湿クリームおよび2つの参照クリーム:(このクリームは短鎖フラクトオリゴ糖を全く含まない)および市販の参照クリームのパラメータL*、a*、およびb*の値を提供する。
【0124】
パラメータL*、a*、およびb*は、周知の系のパラメータL*a*b*であり、
0(黒色)~100(参照の白色)までの値である透明性L*;
緑色→赤色の軸上の値を表すパラメータa*;および
青色→黄色の軸上の値を表すパラメータb*
である。
【0125】
【0126】
短鎖フラクトオリゴ糖の組み込みは、b*パラメータにわずかに影響し、クリームをわずかに黄色にした。しかしながら、本発明に係る保湿クリームは、市販の参照物よりも黄色が少ないままであった。
最後に、表10は、短鎖フラクトオリゴ糖を含まない参照クリームおよび市販の参照クリームと比較した、本発明に係る保湿クリームの硬さおよび粘着性の態様を示す。
【0127】
本発明に係る保湿クリームの硬さおよび粘着性は、短鎖フラクトオリゴ糖を含まない参照クリームおよび市販の参照クリームの両方である、参照クリームの硬さおよび粘着性と同じ桁の大きさである。
【0128】
結論として、短鎖フラクトオリゴ糖の本発明に係る保湿クリームへの組み込みは、クリームの物理的特性を変更しない。1%の量での短鎖フラクトオリゴ糖の組み込みは、さらに保湿剤の物理的特性を改善するように思われる。
【0129】
本発明に係る日焼け止めの物理的特徴付け
図11は、本発明に係る日焼け止めのレオロジーを示す。本発明に係る日焼け止め組成物は、短鎖フラクトオリゴ糖を含まない参照物よりも高い弾性(高い変形)を有する。さらに、本発明に係る組成物は、参照組成物と同じ大きさの桁の靱性を有する。
【0130】
図12は、本発明に係る日焼け止めクリームの100s
-1で広げる間の粘度を示す。本発明に係る日焼け止めクリームの粘度は、短鎖フラクトオリゴ糖の割合が最大2.5%となると徐々に増加する。
【0131】
同様に、日焼け止め組成物の色に及ぼす短鎖フラクトオリゴ糖の組み込みの効果を測定した。表10は、本発明に係る日焼け止めクリーム、および3つの参照日焼け止めクリーム:(このクリームは短鎖フラクトオリゴ糖を全く含まない)、および2つの市販の参照物の日焼け止めクリームのL*、a*、およびb*のパラメータの値を提供する。
【0132】
【0133】
短鎖フラクトオリゴ糖の包有は、日焼け止め組成物の色に有意に影響しない。
【0134】
結論として、日焼け止めへの短鎖フラクトオリゴ糖の包含は、それらの色に影響を与えることなく、それらの弾性およびそれらの粘度を増加させる。弾性および粘度は、このようなクリームにとって望ましい特性であり、多くの場合、キサンタンおよび/または合成ポリマーを添加することにより達成されるが、本発明のクリームではその必要がない。
【0135】
本発明に係る固形シャンプーの物理的特徴付け
図13は、本発明に係る固形シャンプーの%での湿潤性の値を表す。固形シャンプーの標的の湿潤の値は、10%~20%の湿潤の範囲である。よって、本発明に係る全ての固形シャンプーは、短鎖フラクトオリゴ糖の量に関わらず、湿潤の値の目標範囲内にある。
【0136】
図14は、本発明に係る固形シャンプーの溶解試験の結果を示す。固形シャンプーへの短鎖フラクトオリゴ糖の包含は、シャンプーの溶解をわずかに改善するように思われる。
【0137】
また、固形シャンプーの色に及ぼす短鎖フラクトオリゴ糖の組み込みの効果を測定した。表11は、本発明に係る固形シャンプー、ならびに3つの参照固形シャンプー:(この固形シャンプーは短鎖フラクトオリゴ糖を全く含まない)、およびに2つの市販の参照固形シャンプーAおよびBのパラメータL*、a*、およびb*の値を提供する。
【0138】
【0139】
短鎖フラクトオリゴ糖の包含は、固形シャンプーの色に有意な効果を有さない。
【0140】
結論として、本発明に係る固形シャンプーは、適切な湿潤の値を有し、溶解がわずかに改善しており、それらの色は、短鎖フラクトオリゴ糖を含まない固形シャンプーと比較して褪色しない。
【0141】
実施例6:未加工デンプンとscFOSの組み合わせの効果
この解析は、美容用製剤のテクスチャーの特性および感覚的な特性に及ぼす未加工コーンスターチ(Meritena(登録商標) 100、TEREOS(登録商標))と短鎖フラクトオリゴ糖(scFOS, Actilight(登録商標)P95、Beghin-Meiji)の組み合わせの効果を評価する。
【0142】
本発明に係る保湿クリーム組成物および比較組成物を、表12に記載する。
【0143】
【0144】
表12に係る組成物を、以下のプロセスにより調製した:
相A、B、およびCの重量を計測
相Aを85℃に加熱、
相Bを75℃に加熱
相C、次に相Bを、撹拌を維持しながら相Aへゆっくりと組み込む。
エマルジョンが安定するまで撹拌する。
【0145】
4%キサンタンの量は、同様のテクスチャーを有する製剤を比較するために(たとえば、5%キサンタンは粘性が高すぎる製剤をもたらす)、5%コーンスターチ(製剤Aおよび本発明に係る製剤)との比較のため、関連する量の増粘剤(製剤BおよびC)として保持された。
【0146】
組成物のレオロジー特徴付け
【0147】
表12に係る組成物のレオロジー特性を、表13に提示する。
【0148】
【0149】
増粘剤とsFOSの組み合わせは、広げる間の粘度を増大させた。実際に、本発明に係る組み合わせは、デンプンのみを含む組成物Aと比較して、広げる間高い粘度を有していた。同じことが、キサンタンとscFOSの組み合わせにも当てはまる。
【0150】
しかしながら、scFOSがデンプンと結合する場合、クリームの強度に影響を与えなかった。実際に、本発明に係る未加工デンプンとscFOSの組み合わせは、デンプンのみを含み組成物Aに対する粘度抵抗性を改変しなかった。
【0151】
組成物のテクスチャーの特徴付け
表12に係る組成物の25℃での稠度試験法(penetrometry)によるテクスチャーの特性を、表14に提示する。
【0152】
【0153】
未加工デンプンと組み合わせたscFOSの存在は、製剤の硬さを低下させ、反対の減少が、キサンタンとscFOSの組み合わせで観察された。
【0154】
組成物の官能特徴付け
表12に係る組成物の官能特徴付けを、5人のグループにより行った。
【0155】
表12に係る組成物の官能特徴付けを、表15に提示する。
【0156】
【0157】
デンプンとActilightの組み合わせを含む製剤は、提供されるその脂っぽくない感覚および良好なつやにより、デンプンのみを含む製剤と比較して、より評価された。
【0158】
Actilightの存在は、デンプンをベースとする製剤のテクスチャーの特徴を変更しないが、官能評価は、好適な改変を示した。
【0159】
コーンスターチおよびActilightに基づく製剤は、他の製剤よりも、特にキサンタンに基づく製剤と比較して良好であることが判明した。
【0160】
参考文献のリスト
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【国際調査報告】