(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-18
(54)【発明の名称】培養肉産業用の多能性幹細胞凝集体及びそれから得られる微小組織
(51)【国際特許分類】
C12N 5/0735 20100101AFI20240111BHJP
A23L 13/00 20160101ALI20240111BHJP
【FI】
C12N5/0735
A23L13/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023541885
(86)(22)【出願日】2022-01-10
(85)【翻訳文提出日】2023-09-11
(86)【国際出願番号】 IL2022050033
(87)【国際公開番号】W WO2022149142
(87)【国際公開日】2022-07-14
(32)【優先日】2021-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】523261610
【氏名又は名称】スーパーミート ザ エッセンス オブ ミート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サヴィール、イド
(72)【発明者】
【氏名】ヘイルヴィー、トメル
(72)【発明者】
【氏名】レヴィー ペレッツ、ユヴァル
【テーマコード(参考)】
4B042
4B065
【Fターム(参考)】
4B042AD36
4B042AK14
4B042AK20
4B042AP30
4B065AA90X
4B065AC17
4B065BA30
4B065BB34
4B065BC01
4B065BC41
4B065CA41
(57)【要約】
プライミングされた細胞、多能性幹細胞凝集体及びそれらから生産される微小組織、並びに食用製品を生産するためのそれらの使用。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多能性幹細胞凝集体(pluripotent stem cell aggregates)を生産する方法であって、
(a)マトリックス接着(matrix adherence)の条件下で成長させた非ヒト多能性幹細胞の非ヒト多能性幹細胞株を準備すること、
(b)前記マトリックス接着の前記非ヒト幹細胞株を徐々に取り除いて、前記非ヒト多能性幹細胞を含む凝集体を得ること、ここで、前記凝集体の前記非ヒト多能性幹細胞は、60回を超える継代にわたって未分化にして12時間以下の倍加時間を示し、分化誘導時に筋肉、脂肪及び結合組織に分化することが可能であり、胚様体(EB)と比較して減少した、COL6A2、CD44、COL6A1、ANXA1、ANXA2及びS100A11からなる群から選択される接着分子の発現によって決定されるように、前記EBよりも低い細胞間接着(cell to cell adhesion)を示す、
を含み、
工程(a)及び工程(b)は成長因子(growth factor)の存在下で行われる、方法。
【請求項2】
1又は複数の細胞型を含む微小組織(microtissue)を生産する方法であって、
(a)非ヒト多能性幹細胞を含む凝集体を、マトリックス接着なしで懸濁液中で形成すること、ここで、前記凝集体の前記非ヒト多能性幹細胞は、60回を超える継代にわたって未分化にして12時間以下の倍加時間を示し、分化誘導時に筋肉、脂肪及び結合組織に分化することが可能であり、成長因子の存在下で成長し、胚様体(EB)と比較して減少した、COL6A2、CD44、COL6A1、ANXA1、ANXA2及びS100A11からなる群から選択される接着分子の発現によって決定されるように、前記EBよりも低い細胞間接着を示す、
(b)前記凝集体をバイオリアクタに移して、成長因子の非存在下でマトリックス接着なしで懸濁液中で成長させることにより微小組織を生産すること、
を含む、方法。
【請求項3】
1又は複数の細胞型を含む微小組織を生産する方法であって、
(a)非ヒト多能性幹細胞を含む凝集体を含む懸濁培養物を準備すること、ここで、前記凝集体の前記非ヒト多能性幹細胞は、60回を超える継代にわたって未分化にして12時間以下の倍加時間を示し、分化誘導時に筋肉、脂肪及び結合組織に分化することが可能であり、成長因子の存在下で成長し、胚様体(EB)と比較して減少した、COL6A2、CD44、COL6A1、ANXA1、ANXA2及びS100A11からなる群から選択される接着分子の発現によって決定されるように、前記EBよりも低い細胞間接着を示す、
(b)前記凝集体をバイオリアクタに移して、成長因子の非存在下でマトリックス接着なしで懸濁液中で成長させることにより微小組織を生産すること、
を含む、方法。
【請求項4】
1又は複数の目的の細胞型を含む微小組織を生産する方法であって、
(a)請求項2に記載の微小組織を生産すること、
(b)前記微小組織を懸濁液中で分化条件に供し、それにより、1又は複数の目的の細胞型を含む前記微小組織を生産すること、
を含む、方法。
【請求項5】
示された数値は、前記非ヒト多能性幹細胞としての型及び発達段階の細胞成長のための最適条件下で与えられる、請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記非ヒト幹細胞が胚性幹細胞である、請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記胚性幹細胞が胚性幹細胞株のものである、請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記非ヒト多能性幹細胞が、家畜多能性幹細胞のものである、請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記非ヒト多能性幹細胞が、トリ(avian)多能性幹細胞、ウシ多能性幹細胞、ブタ多能性幹細胞、ヤギ多能性幹細胞、ヒツジ多能性幹細胞、エビ多能性幹細胞、及び魚多能性幹細胞からなる群から選択される、請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記トリ多能性幹細胞が、ニワトリ(chicken)多能性幹細胞及びアヒル(duck)多能性幹細胞からなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記トリ多能性幹細胞がニワトリ多能性幹細胞である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記微小組織が直径30~500μmである、請求項2~請求項11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記凝集体が80~120μmの平均直径を示す、請求項1~請求項12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記凝集体の前記非ヒト多能性幹細胞がアルカリホスファターゼ発現を示す、請求項1~請求項13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記凝集体の前記非ヒト多能性幹細胞がテロメラーゼ遺伝子発現を示す、請求項1~請求項14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記凝集体の前記非ヒト多能性幹細胞が、SSEA4-、LIN28+、ENS-1+、NANOG+、OCT4+、及びTRA-I-60+である、請求項1~請求項15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記凝集体又は前記微小組織が、天然の肉製品(native meat product)の官能特性(organoleptic properties)を示す、請求項1~請求項13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記1又は複数の細胞型が、筋肉細胞、脂肪細胞及び結合組織細胞からなる群から選択される、請求項2~請求項17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記1又は複数の細胞型が脂肪細胞及び筋肉細胞を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記マトリックス接着が、フィーダー細胞、及び天然又は合成マトリックス分子から選択される、請求項1~請求項18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記マトリックス分子がゼラチンを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記成長因子が、IGF-1、IL6、sIL6 Rα、hLIF及び幹細胞因子(SCF)からなる群から選択される、請求項1~請求項20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記成長因子が、IGF-1、IL6、sIL6 Rα、hLIF及び幹細胞因子(SCF)を含む、請求項1~請求項21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記方法の各工程が、前記非ヒト多能性幹細胞以外の動物成分を欠いている、請求項1~請求項23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記凝集体が、細胞運動性及び遊走に関連する遺伝子の発現レベルを除いて、前記凝集体が由来する幹細胞株の遺伝子発現とほぼ同じ遺伝子発現を示す、請求項1~請求項23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記微小組織がNANOG-OCT4-LIN28-、SSEA3+である、請求項2~請求項25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
脂肪細胞運命に対してプライミングすることによって細胞を生産する方法であって、筋肉細胞及び増殖表現型を保持しながら脂肪細胞運命を有する幹細胞を得るのに十分な時間、100μMを超えない濃度の脂肪酸の存在下で多能性(pluripotent)又は複能性(multipotent)幹細胞を培養することを含む方法。
【請求項28】
懸濁液中で行われる、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記培養が2~5週間の期間にわたる、請求項27~請求項28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記複能性幹細胞が成体幹細胞である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記成体幹細胞が中胚葉系である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記中胚葉系幹細胞が間葉系幹細胞である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記複能性幹細胞が、多能性幹細胞のエクスビボ成熟によって得られたものである、請求項27に記載の方法。
【請求項34】
前記エクスビボ成熟が、成長因子の非存在下で懸濁液中で行われる、請求項27~請求項33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記多能性及び/又は複能性幹細胞が、凝集体状態にあり、任意には(optionally)30μm~500μmの凝集体状態にある、請求項27~請求項34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記幹細胞が非ヒトである、請求項27~請求項35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記非ヒト幹細胞が家畜のものである、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記非ヒト幹細胞が、トリ(avian)幹細胞、ウシ幹細胞、ブタ幹細胞、ヤギ幹細胞、ヒツジ幹細胞、エビ幹細胞、及び魚幹細胞からなる群から選択される、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記トリ幹細胞が、ニワトリ(chicken)幹細胞及びアヒル(duck)幹細胞からなる群から選択される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
請求項27~請求項39のいずれか一項に記載の方法によって得ることが可能な細胞。
【請求項41】
脂肪細胞への分化を可能にするのに十分な時間、100μMを超える濃度の脂肪酸の存在下で請求項40に記載の細胞を培養することを含む、細胞を生産する方法。
【請求項42】
前記脂肪細胞運命を有する前記幹細胞を前記培養することが、5~10日間行われる、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
請求項41~請求項42のいずれか一項に記載の方法によって得ることが可能な細胞。
【請求項44】
請求項2~請求項42のいずれか一項に記載の方法によって得ることが可能な微小組織。
【請求項45】
1又は複数の細胞型を含む微小組織であって、前記微小組織が直径30~500μmであり、前記微小組織の細胞がNANOG-OCT4-LIN28-、SSEA3+である、微小組織。
【請求項46】
天然の肉製品の官能特性を示す、請求項45に記載の微小組織。
【請求項47】
前記1又は複数の細胞型が脂肪細胞及び筋肉細胞を含む、請求項45~請求項46のいずれか一項に記載の微小組織。
【請求項48】
請求項1~請求項26のいずれか一項に記載の方法によって得ることが可能な多能性幹細胞凝集体。
【請求項49】
非ヒト多能性幹細胞を含む多能性幹細胞凝集体であって、前記凝集体の前記非ヒト多能性幹細胞が、60回を超える継代にわたって未分化にして12時間以下の倍加時間を示し、分化誘導時に筋肉、脂肪及び結合組織に分化することができ、胚様体(EB)と比較して減少した、COL6A2、CD44、COL6A1、ANXA1、ANXA2及びS100A11からなる群から選択される接着分子の発現によって決定されるように、前記EBよりも低い細胞間接着を示す、多能性幹細胞凝集体。
【請求項50】
請求項49に記載の多能性幹細胞凝集体であって、以下:
(i)80~120μmの平均直径;
(ii)前記凝集物の前記非ヒト多能性幹細胞は、アルカリホスファターゼ発現を示す;
(iii)前記凝集体の前記非ヒト多能性幹細胞は、テロメラーゼ遺伝子発現を示す;
(iv)前記凝集物の前記非ヒト多能性幹細胞は、SSEA4-、LIN28+、ENS-1+、NANOG+、OCT4+、及びTRA-I-60+である;
(v)天然の肉製品の官能特性を示す;
(vi)前記凝集体は、細胞運動性及び遊走に関連する遺伝子の発現レベルを除いて、前記凝集体が由来する幹細胞株の遺伝子発現とほぼ同じ遺伝子発現を示す、
のうちの少なくとも1つをさらに示す、多能性幹細胞凝集体。
【請求項51】
前記非ヒト多能性幹細胞が、トリ(avian)多能性幹細胞、ウシ多能性幹細胞、ブタ多能性幹細胞、ヤギ多能性幹細胞、ヒツジ多能性幹細胞、エビ多能性幹細胞、及び魚多能性幹細胞からなる群から選択される、請求項49又は請求項50に記載の多能性幹細胞凝集体。
【請求項52】
前記トリ多能性幹細胞が、ニワトリ(chicken)多能性幹細胞及びアヒル(duck)多能性幹細胞からなる群から選択される、請求項51に記載の多能性幹細胞凝集体。
【請求項53】
前記トリ多能性幹細胞がニワトリ多能性幹細胞である、請求項52に記載の多能性幹細胞凝集体。
【請求項54】
請求項40若しくは請求項43に記載の細胞又は請求項44~請求項53に記載の微小組織若しくは凝集体を含む食品。
【請求項55】
請求項40若しくは請求項43に記載の細胞又は請求項44~請求項53に記載の微小組織若しくは凝集体を、ヒト摂取用の食用組成物と組み合わせることを含む、食品を生産する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願]
本出願は、2021年1月20日に出願された米国仮特許出願第63/139,374号、2021年1月10日に出願された米国仮特許出願第63/135,677号、及び2021年10月18日に出願された米国仮特許出願第63/256,679号の優先権の利益を主張し、これらの各々は、その全体が参照により組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、培養肉産業(cultured meat industry)用の多能性幹細胞凝集体(pluripotent stem cell aggregates)及びそれから得られる微小組織(microtissues)に関する。
【0003】
培養された肉又は一般にクリーンミート(clean meat)と呼ばれる肉の生産を成功させるためには、3つの主要な考慮事項、すなわち、i.細胞の起源、ii.培養条件、及びiii.スケーラビリティに直面する必要がある。
【0004】
i.細胞の起源:胚性幹細胞(ESC)は、それらの発見以降、その自己再生能力及び実質的に任意の細胞型に分化する能力のために、常に科学者に着想を与えてきた(6)。幹細胞研究の大きな進歩は、多くの科学的及び医学的用途におけるそのような細胞の利用を可能にし、必要な培養条件の最適化に関する貴重なデータを提供した(7)。ESCは、初期胚(例えば哺乳動物胚盤胞又はトリ第X期胚)に由来し、自発的な分化が妨げられている限り、無期限に培養される(8)。この特徴は、市場の需要を満たすために必要な大量の細胞のために、培養肉産業にとって特に魅力的である。成長期に続いて、ESCを特定の系統に分化させて(9)、最終製品中の特定の動物組織の所望の味及びテクスチャを再現することができる。上記の多くは、主に学術的及び医学的目的のために適用されているが、培養肉産業は、急速な倍加時間を伴う自己再生及び分化能などの幹細胞特性を有する新しい供給源及び細胞株型を開発することに依然として多くの資源を投資している。精肉用途に使用される別の細胞型は、成体組織からの初代細胞及び始原細胞である。これらの細胞は依然としていくらかの自己再生能力を維持しているが、それらの効力はある程度特定の系統に限定される(10)。
【0005】
ii.培養条件
培養細胞は通常、栄養化合物(例えば、塩、脂肪酸、アミノ酸、糖、成長因子)及び動物由来の血清(13)を含有する緩衝培地中でインビトロで成長させる。インビトロ細胞培養のためのほとんどの利用可能な培地は、元々小規模用途のために最適化されており(14)、したがって、金銭的コスト、動物成分に対する消費者の感受性、及び高密度細胞集団を支持する培地の能力などの他の変数は無視された。
【0006】
iii.スケーラビリティ
すべてではないにしてもほとんどの細胞が、高密度の大量培養に適合する必要がある。そのような培養を達成するための現在受け入れられている方法論は、監視されているバイオリアクタ内の懸濁培養物を絶えず撹拌しながら使用し、細胞が2Dでマイクロキャリア上の接着細胞として凝集体として成長することを促進することによるものである(15)。しかしながら、このプロセスの最も困難な部分は、組織様構造を生産するために、共培養の有無にかかわらず、細胞の分化又は成熟をスケールアップすることであろう。
【0007】
ニワトリの肉は筋肉/脂肪率に対するタンパク質の割合が高く栄養価が高いと考えられ、鶏肉は地球上で最も消費されている生物であるため(16)、培養鶏肉細胞(cultured chicken cells)の場合は特に魅力的である。これらの理由から、その生産のためのクリーンで持続可能な代替品が最も望ましい。本明細書で使用される場合、「培養肉」は「精肉」と交換可能である。
【0008】
胚発生の分野における胚発生研究のための重要なモデルであるが、トリ胚性幹細胞の場合は、他のモデルと比較してはるかに注目されないようであった(例えば、マウス/ヒトESC)。トリESCは、第X-XIII期の胚盤から得ることができる(17)。これらの胚盤葉細胞は、テロメラーゼ活性及び胚性マーカー(例えば、アルカリホスファターゼ、SSEA1、Nanog、Oct4)の発現を含む幹細胞のすべての特徴を示す(18)。しかしながら、トリ胚盤葉細胞への容易なアクセスは、培養中に自己再生するそれらの能力と共に、動物ワクチン産業におけるそれらの適用へと導いた(20)。培養肉産業と同様に、培養でのワクチン生産も、高密度集団での細胞の培養を必要とする。最近、いくつかの研究により、アヒル及びニワトリ起源のトリESC細胞を懸濁液ベースの大容量培養条件に適合させる能力が実証された(21)。
【発明の概要】
【0009】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、多能性幹細胞凝集体を生産する方法であって、
(a)マトリックス接着(matrix adherence)の条件下で成長させた非ヒト多能性幹細胞の非ヒト多能性幹細胞株を準備すること、
(b)マトリックス接着の非ヒト幹細胞株を徐々に取り除いて、非ヒト多能性幹細胞を含む凝集体を得ること、ここで、凝集体の非ヒト多能性幹細胞は、60回を超える継代にわたって未分化にして12時間以下の倍加時間を示し、分化誘導時に筋肉、脂肪及び結合組織に分化することが可能であり、胚様体(EB)と比較して減少した、COL6A2、CD44、COL6A1、ANXA1、ANXA2及びS100A11からなる群から選択される接着分子の発現によって決定されるように、前記EBよりも低い細胞間接着を示す、を含み、
工程(a)及び工程(b)は成長因子(growth factor)の存在下で行われる、方法が提供される。
【0010】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、1又は複数の細胞型を含む微小組織を生産する方法であって、
(a)非ヒト多能性幹細胞を含む凝集体を、マトリックス接着なしで懸濁液中で形成すること、ここで、凝集体の非ヒト多能性幹細胞が、60回を超える継代にわたって未分化にして12時間以下の倍加時間を示し、分化誘導時に筋肉、脂肪及び結合組織に分化することが可能であり、成長因子の存在下で成長し、胚様体(EB)と比較して減少した、COL6A2、CD44、COL6A1、ANXA1、ANXA2及びS100A11からなる群から選択される接着分子の発現によって決定されるように、上記EBよりも低い細胞間接着を示す、
(b)凝集体をバイオリアクタに移して、成長因子の非存在下でマトリックス接着なしで懸濁液中で成長させることにより微小組織を生産すること、
を含む方法が提供される。
【0011】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、1又は複数の目的の細胞型を含む微小組織を生産する方法であって、
(a)本明細書に記載の微小組織を生産すること、
(b)微小組織を懸濁液中で分化条件に供し、それにより、1又は複数の目的の細胞型を含む微小組織を生産すること、
を含む、方法が提供される。
【0012】
本発明のいくつかの実施形態によれば、示された数値は、非ヒト多能性幹細胞としての型及び発達段階の細胞成長のための最適条件下で与えられる。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態によれば、非ヒト幹細胞は胚性幹細胞である。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態によれば、胚性幹細胞は、胚性幹細胞株のものである。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態によれば、非ヒト多能性幹細胞は、家畜多能性幹細胞のものである。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態によれば、非ヒト多能性幹細胞は、トリ(avian)多能性幹細胞、ウシ多能性幹細胞、ブタ多能性幹細胞、ヤギ多能性幹細胞、ヒツジ多能性幹細胞、エビ多能性幹細胞及び魚多能性幹細胞からなる群から選択される。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態によれば、トリ多能性幹細胞は、ニワトリ(chicken)多能性幹細胞及びアヒル(duck)多能性幹細胞からなる群から選択される。
【0018】
本発明のいくつかの実施形態によれば、トリ多能性幹細胞は、ニワトリ多能性幹細胞である。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態によれば、微小組織は直径30~500μmである。
【0020】
本発明のいくつかの実施形態によれば、微小組織は直径30~500μmである。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態によれば、凝集体の非ヒト多能性幹細胞は、80~120μmの平均直径を示す。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態によれば、凝集体の非ヒト多能性幹細胞は、アルカリホスファターゼ発現を示す。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態によれば、凝集体の非ヒト多能性幹細胞は、テロメラーゼ遺伝子発現を示す。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態によれば、凝集体の非ヒト多能性幹細胞は、SSEA4-、LIN28+、ENS-1+、NANOG+、OCT4+、及びTRA-I-60+である。
【0025】
本発明のいくつかの実施形態によれば、凝集体又は微小組織は、天然の肉製品(native meat product)の官能特性(organoleptic properties)を示す。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態によれば、複数の組織型のうちの1つは、筋肉細胞、脂肪細胞及び結合組織細胞からなる群から選択される
【0027】
本発明のいくつかの実施形態によれば、マトリックス接着は、フィーダー細胞、及び天然又は合成マトリックス分子から選択される。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態によれば、マトリックス分子は、ゼラチンを含む。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態によれば、成長因子は、IGF-1、IL6、sIL6 Rα、hLIF及び幹細胞因子(SCF)からなる群から選択される。
【0030】
本発明のいくつかの実施形態によれば、成長因子は、IGF-1、IL6、sIL6 Rα、hLIF及び幹細胞因子(SCF)を含む。
【0031】
本発明のいくつかの実施形態によれば、方法の各工程は、非ヒト多能性幹細胞以外の動物成分を欠いている。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態によれば、凝集体は、細胞運動性及び遊走に関連する遺伝子の発現レベルを除いて、それらが由来する幹細胞株の遺伝子発現とほぼ同じ遺伝子発現を示す。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態によれば、微小組織はNANOG-OCT4-LIN28-、SSEA3+である。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、本明細書中に記載される方法によって得ることが可能な微小組織が提供される。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、本明細書中に記載される方法によって得ることが可能な多能性幹細胞凝集体が提供される。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、1又は複数の細胞型を含む微小組織が提供され、その微小組織は、直径30~500μmであり、微小組織の細胞は、NANOG-OCT4-LIN28-、SSEA3+である。
【0037】
本発明のいくつかの実施形態によれば、微小組織は、天然の肉製品(native meat product)の官能特性(organoleptic properties)を示す。
【0038】
本発明のいくつかの実施形態によれば、1又は複数の細胞型は脂肪細胞及び筋肉細胞を含む。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、非ヒト多能性幹細胞を含む多能性幹細胞凝集体であって、凝集体の非ヒト多能性幹細胞は、60回を超える継代にわたって未分化にして12時間以下の倍加時間を示し、分化誘導時に筋肉、脂肪及び結合組織に分化することが可能であり、胚様体(EB)と比較して減少した、COL6A2、CD44、COL6A1、ANXA1、ANXA2及びS100A11からなる群から選択される接着分子の発現によって決定されるように、上記EBよりも低い細胞間接着を示す、多能性幹細胞凝集体が提供される。
【0040】
本発明のいくつかの実施形態によれば、多能性幹細胞凝集体は、以下:
(i)80~120μmの平均直径;
(ii)凝集物の非ヒト多能性幹細胞は、アルカリホスファターゼ発現を示す;
(iii)凝集体の非ヒト多能性幹細胞は、テロメラーゼ遺伝子発現を示す;
(iv)凝集物の非ヒト多能性幹細胞は、SSEA4-、LIN28+、ENS-1+、NANOG+、OCT4+、及びTRA-I-60+である;
(v)天然の肉製品の官能特性を示す;
(vi)凝集体は、細胞運動性及び遊走に関連する遺伝子の発現レベルを除いて、それらが由来する幹細胞株の遺伝子発現とほぼ同じ遺伝子発現を示す、
のうちの少なくとも1つをさらに示す。
【0041】
本発明のいくつかの実施形態によれば、非ヒト多能性幹細胞は、トリ(avian)多能性幹細胞、ウシ多能性幹細胞、ブタ多能性幹細胞、ヤギ多能性幹細胞、ヒツジ多能性幹細胞、エビ多能性幹細胞及び魚多能性幹細胞からなる群から選択される。
【0042】
本発明のいくつかの実施形態によれば、トリ多能性幹細胞は、ニワトリ(chicken)多能性幹細胞及びアヒル(duck)多能性幹細胞からなる群から選択される。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態によれば、トリ多能性幹細胞は、ニワトリ多能性幹細胞である。
【0044】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、本明細書中に記載される微小組織又は凝集体を含む食品が提供される。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、食品を生産する方法であって、本明細書中に記載される微小組織又は凝集体をヒト摂取用の食用組成物と組み合わせることを含む方法が提供される。
【0046】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、脂肪細胞への分化を可能にするために十分な時間にわたって、100μMを超える濃度の脂肪酸の存在下で増殖表現型を保持しながら、脂肪細胞運命を有する幹細胞を培養することを含む、細胞を生産する方法が提供される。
【0047】
本発明のいくつかの実施形態によれば、脂肪細胞運命を有する幹細胞を培養することは、5~10日間行われる。
【0048】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、本明細書中に記載される方法によって得ることが可能な細胞が提供される。
【0049】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、本明細書中に記載される方法によって得ることが可能な微小組織が提供される。
【0050】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、本明細書中に記載される方法によって得ることが可能な多能性幹細胞凝集体が提供される。
【0051】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、本明細書中に記載される細胞又は本明細書中に記載される微小組織若しくは凝集体を含む食品が提供される。
【0052】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、食品を生産する方法であって、本明細書中に記載される請求項の細胞又は微小組織若しくは凝集体をヒト摂取用の食用組成物と組み合わせることを含む方法が提供される。
【0053】
他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び/又は科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載の方法及び材料と類似又は同等の方法及び材料を本発明の実施形態の実施又は試験に使用することができるが、例示的な方法及び/又は材料を以下に記載する。矛盾する場合、定義を含む特許明細書が制御する。さらに、材料、方法、及び実施例は例示にすぎず、必ずしも限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【
図1A】cESCの単離。a.フィーダー細胞層生成細胞塊にプレーティングした単離されたcESC。b.フィーダー細胞で成長させた典型的な樹立幹細胞コロニー。c.フィーダー層を添加せずにプレーティングしたcESCの形態d.増殖細胞における典型的な幹細胞の高い核/細胞質比。e.フィーダーフリー培養皿上でのcESCのコロニーの増殖。
【
図1B】cESCの単離。a.フィーダー細胞層生成細胞塊にプレーティングした単離されたcESC。b.フィーダー細胞で成長させた典型的な樹立幹細胞コロニー。c.フィーダー層を添加せずにプレーティングしたcESCの形態d.増殖細胞における典型的な幹細胞の高い核/細胞質比。e.フィーダーフリー培養皿上でのcESCのコロニーの増殖。
【
図1C】cESCの単離。a.フィーダー細胞層生成細胞塊にプレーティングした単離されたcESC。b.フィーダー細胞で成長させた典型的な樹立幹細胞コロニー。c.フィーダー層を添加せずにプレーティングしたcESCの形態d.増殖細胞における典型的な幹細胞の高い核/細胞質比。e.フィーダーフリー培養皿上でのcESCのコロニーの増殖。
【
図1D】cESCの単離。a.フィーダー細胞層生成細胞塊にプレーティングした単離されたcESC。b.フィーダー細胞で成長させた典型的な樹立幹細胞コロニー。c.フィーダー層を添加せずにプレーティングしたcESCの形態d.増殖細胞における典型的な幹細胞の高い核/細胞質比。e.フィーダーフリー培養皿上でのcESCのコロニーの増殖。
【
図1E】cESCの単離。a.フィーダー細胞層生成細胞塊にプレーティングした単離されたcESC。b.フィーダー細胞で成長させた典型的な樹立幹細胞コロニー。c.フィーダー層を添加せずにプレーティングしたcESCの形態d.増殖細胞における典型的な幹細胞の高い核/細胞質比。e.フィーダーフリー培養皿上でのcESCのコロニーの増殖。
【
図2A】懸濁液中での成長に対するcESCの適合:a.懸濁液に移動したcESCコロニーのEB形態。b.懸濁液に適合したcESCの単一細胞形態。c-e.懸濁液に適合したcESCの初期段階の凝集体。f.懸濁液に適合した凝集体の成熟細胞凝集体。
【
図2B】懸濁液中での成長に対するcESCの適合:a.懸濁液に移動したcESCコロニーのEB形態。b.懸濁液に適合したcESCの単一細胞形態。c-e.懸濁液に適合したcESCの初期段階の凝集体。f.懸濁液に適合した凝集体の成熟細胞凝集体。
【
図2C】懸濁液中での成長に対するcESCの適合:a.懸濁液に移動したcESCコロニーのEB形態。b.懸濁液に適合したcESCの単一細胞形態。c-e.懸濁液に適合したcESCの初期段階の凝集体。f.懸濁液に適合した凝集体の成熟細胞凝集体。
【
図2D】懸濁液中での成長に対するcESCの適合:a.懸濁液に移動したcESCコロニーのEB形態。b.懸濁液に適合したcESCの単一細胞形態。c-e.懸濁液に適合したcESCの初期段階の凝集体。f.懸濁液に適合した凝集体の成熟細胞凝集体。
【
図2E】懸濁液中での成長に対するcESCの適合:a.懸濁液に移動したcESCコロニーのEB形態。b.懸濁液に適合したcESCの単一細胞形態。c-e.懸濁液に適合したcESCの初期段階の凝集体。f.懸濁液に適合した凝集体の成熟細胞凝集体。
【
図2F】懸濁液中での成長に対するcESCの適合:a.懸濁液に移動したcESCコロニーのEB形態。b.懸濁液に適合したcESCの単一細胞形態。c-e.懸濁液に適合したcESCの初期段階の凝集体。f.懸濁液に適合した凝集体の成熟細胞凝集体。
【
図3】懸濁液中で成長する凝集体細胞の倍加時間。グラフは、凝集体懸濁成長の3つの別々の実験を示す。平均倍加時間を75~120時間の実行について計算した。計算された倍加時間は10~12時間の範囲であり、平均倍加時間は11.9時間/サイクルであった。
【
図4】凝集体細胞における幹細胞マーカーの発現。免疫蛍光染色により、幹細胞マーカーOct4、Nanog、in28、Tra-1-60及びENS-1(ニワトリ幹細胞マーカー)の高くて全体的な発現が明らかになった。表面マーカーSSEA 3/4は陰性であることが分かった。
【
図5A】凝集体の自己再生:a.凝集体はアルカリホスファターゼに対して陽性に染色する。b.AP陽性凝集体の高倍率c.凝集体の3つの集団におけるテロメラーゼ活性の代表例。
【
図5B】凝集体の自己再生:a.凝集体はアルカリホスファターゼに対して陽性に染色する。b.AP陽性凝集体の高倍率c.凝集体の3つの集団におけるテロメラーゼ活性の代表例。
【
図5C】凝集体の自己再生:a.凝集体はアルカリホスファターゼに対して陽性に染色する。b.AP陽性凝集体の高倍率c.凝集体の3つの集団におけるテロメラーゼ活性の代表例。
【
図6】ニワトリcESと比較した凝集体試料における代表的な癌遺伝子及び腫瘍抑制遺伝子の発現レベル。分析は、凝集体がcESと比較して癌遺伝子の発現レベルを保持していることを実証した。腫瘍抑制因子は、ニワトリESと比較して変化していないか、又は上昇していた。
【
図7A】凝集体細胞の脂肪蓄積細胞への分化(A)a.未分化凝集体の初期培養。b.分化培地を添加する前の培養3日間の凝集体の成熟凝集体。c.脂肪分化培地で処理した4日後の凝集体細胞の形態の変化。d.分化培地処理の4日後の単一凝集体細胞。細胞の細胞質内の液滴の蓄積を実証する。(B)分化した凝集体における脂肪滴蓄積の検証。a.分化した凝集体は、BODIPY染色について陽性に染色された(脂肪蓄積の証拠)。b.分化した脂肪蓄積細胞の高倍率。
【
図7B】凝集体細胞の脂肪蓄積細胞への分化(A)a.未分化凝集体の初期培養。b.分化培地を添加する前の培養3日間の凝集体の成熟凝集体。c.脂肪分化培地で処理した4日後の凝集体細胞の形態の変化。d.分化培地処理の4日後の単一凝集体細胞。細胞の細胞質内の液滴の蓄積を実証する。(B)分化した凝集体における脂肪滴蓄積の検証。a.分化した凝集体は、BODIPY染色について陽性に染色された(脂肪蓄積の証拠)。b.分化した脂肪蓄積細胞の高倍率。
【
図8】凝集体の線維芽細胞への分化。処置後、凝集体がプレート表面に付着し(左上)、続いて凝集体が崩壊し(右上)、単層上皮線維芽細胞が採用された。
【
図9】凝集体の律動的な収縮は、筋肉分化を受ける。収縮は1.5~2秒に1回起こる。
【
図10】血清非含有限定培地中での微小組織の培養。細胞を様々な培養条件に適合させる能力の代表的な例。提示されたクローンを、Ex-Cell(登録商標)(Merck)化学的に定義された加水分解物を補充したGRO-I(登録商標)(Merck)培地中で培養及び増殖させた。
【
図11】微小組織における幹細胞マーカー及びECMマーカーの発現を示す。Oct4、Nanog及びLin28は、分化プロセスのために失われる。しかし、細胞はSSEA3の発現を獲得した(上のパネル)。さらに、微小組織におけるECM及びコラーゲンファミリーメンバーの発現増強は、Col2A1及びCol9a2、並びにECMマーカーであるラミニン及びHSPGの高存在に対して陽性であることが見出される。
【
図12A】微小組織の定義された領域内の筋肉分化。a.懸濁成長におけるナイーブ凝集体。b.凝集体の分化条件への移行は、再現可能な方法で細胞突出の出現をもたらす。c&d.筋肉分化の開始(MyHC染色によって示される)e.微小組織のいくつかの位置における筋肉分化領域の形成。
【
図12B】微小組織の定義された領域内の筋肉分化。a.懸濁成長におけるナイーブ凝集体。b.凝集体の分化条件への移行は、再現可能な方法で細胞突出の出現をもたらす。c&d.筋肉分化の開始(MyHC染色によって示される)e.微小組織のいくつかの位置における筋肉分化領域の形成。
【
図12C】微小組織の定義された領域内の筋肉分化。a.懸濁成長におけるナイーブ凝集体。b.凝集体の分化条件への移行は、再現可能な方法で細胞突出の出現をもたらす。c&d.筋肉分化の開始(MyHC染色によって示される)e.微小組織のいくつかの位置における筋肉分化領域の形成。
【
図12D】微小組織の定義された領域内の筋肉分化。a.懸濁成長におけるナイーブ凝集体。b.凝集体の分化条件への移行は、再現可能な方法で細胞突出の出現をもたらす。c&d.筋肉分化の開始(MyHC染色によって示される)e.微小組織のいくつかの位置における筋肉分化領域の形成。
【
図12E】微小組織の定義された領域内の筋肉分化。a.懸濁成長におけるナイーブ凝集体。b.凝集体の分化条件への移行は、再現可能な方法で細胞突出の出現をもたらす。c&d.筋肉分化の開始(MyHC染色によって示される)e.微小組織のいくつかの位置における筋肉分化領域の形成。
【
図13A】懸濁液中で培養したトリ幹細胞微小組織における筋肉前駆体マーカーの発現。
【
図13B】懸濁液中で培養したトリ幹細胞微小組織における筋肉前駆体マーカーの発現。
【
図14A】A.懸濁浮遊凝集体培養物中の微小組織の形成。突出部は、MyHC(ミオシン重鎖)の発現が上昇した凝集体から出現し、明確な筋肉の同一性を示す。B.接着状態で微小組織から分化した筋肉線維の成熟。C.Bのより高い倍率。
【
図14B】A.懸濁浮遊凝集体培養物中の微小組織の形成。突出部は、MyHC(ミオシン重鎖)の発現が上昇した凝集体から出現し、明確な筋肉の同一性を示す。B.接着状態で微小組織から分化した筋肉線維の成熟。C.Bのより高い倍率。
【
図14C】A.懸濁浮遊凝集体培養物中の微小組織の形成。突出部は、MyHC(ミオシン重鎖)の発現が上昇した凝集体から出現し、明確な筋肉の同一性を示す。B.接着状態で微小組織から分化した筋肉線維の成熟。C.Bのより高い倍率。
【
図15A】A.微小組織の成熟筋肉細胞への分化。(a)~(c):トロポニン-Tの発現は、心筋細胞系統への関与を示す。B:接着条件への細胞の移行は、筋肉線維の成熟及び伸長を促進する。
【
図15B】A.微小組織の成熟筋肉細胞への分化。(a)~(c):トロポニン-Tの発現は、心筋細胞系統への関与を示す。B:接着条件への細胞の移行は、筋肉線維の成熟及び伸長を促進する。
【
図16】高用量のオレイン酸(上のパネル)並びにオレイン酸とリノール酸の併用処理(下のパネル)への曝露後の、分化した微小組織内の脂肪細胞への脂肪滴の大規模な蓄積。
【
図17A】脂肪細胞及び筋肉細胞の相互に排他的な集団への微小組織の分化。(a)トロポニン-T染色は、微小組織周辺部における筋肉細胞への分化を強調し、一方、bodipy染色は、微小組織コア内の脂肪蓄積細胞集団の形成を実証する。2つの集団は相互に排他的である。(b)パネルaにおける正方形領域の倍率。
【
図17B】脂肪細胞及び筋肉細胞の相互に排他的な集団への微小組織の分化。(a)トロポニン-T染色は、微小組織周辺部における筋肉細胞への分化を強調し、一方、bodipy染色は、微小組織コア内の脂肪蓄積細胞集団の形成を実証する。2つの集団は相互に排他的である。(b)パネルaにおける正方形領域の倍率。
【
図18A】微小組織の別個の脂肪細胞集団及び筋肉細胞集団への並行分化:(a)微小組織集団内の筋肉細胞骨格筋の典型的な配置(ファロイジン染色)。(b)筋肉線維の核染色は、微小組織細胞による多核線維の形成を強調する。(c)脂肪蓄積細胞(脂肪細胞)微小組織集団の典型的な配置(ファロイジン染色)(d).脂質染色(BODIPY)成長は、分化している微小組織内の脂肪蓄積を強調する。(e)同じ培養物内での微小組織細胞の脂肪及び筋肉への並行分化は、脂肪及び筋肉細胞が相互に排他的な集団に由来することを強調する。
【
図18B】微小組織の別個の脂肪細胞集団及び筋肉細胞集団への並行分化:(a)微小組織集団内の筋肉細胞骨格筋の典型的な配置(ファロイジン染色)。(b)筋肉線維の核染色は、微小組織細胞による多核線維の形成を強調する。(c)脂肪蓄積細胞(脂肪細胞)微小組織集団の典型的な配置(ファロイジン染色)(d).脂質染色(BODIPY)成長は、分化している微小組織内の脂肪蓄積を強調する。(e)同じ培養物内での微小組織細胞の脂肪及び筋肉への並行分化は、脂肪及び筋肉細胞が相互に排他的な集団に由来することを強調する。
【
図18C】微小組織の別個の脂肪細胞集団及び筋肉細胞集団への並行分化:(a)微小組織集団内の筋肉細胞骨格筋の典型的な配置(ファロイジン染色)。(b)筋肉線維の核染色は、微小組織細胞による多核線維の形成を強調する。(c)脂肪蓄積細胞(脂肪細胞)微小組織集団の典型的な配置(ファロイジン染色)(d).脂質染色(BODIPY)成長は、分化している微小組織内の脂肪蓄積を強調する。(e)同じ培養物内での微小組織細胞の脂肪及び筋肉への並行分化は、脂肪及び筋肉細胞が相互に排他的な集団に由来することを強調する。
【
図18D】微小組織の別個の脂肪細胞集団及び筋肉細胞集団への並行分化:(a)微小組織集団内の筋肉細胞骨格筋の典型的な配置(ファロイジン染色)。(b)筋肉線維の核染色は、微小組織細胞による多核線維の形成を強調する。(c)脂肪蓄積細胞(脂肪細胞)微小組織集団の典型的な配置(ファロイジン染色)(d).脂質染色(BODIPY)成長は、分化している微小組織内の脂肪蓄積を強調する。(e)同じ培養物内での微小組織細胞の脂肪及び筋肉への並行分化は、脂肪及び筋肉細胞が相互に排他的な集団に由来することを強調する。
【
図18E】微小組織の別個の脂肪細胞集団及び筋肉細胞集団への並行分化:(a)微小組織集団内の筋肉細胞骨格筋の典型的な配置(ファロイジン染色)。(b)筋肉線維の核染色は、微小組織細胞による多核線維の形成を強調する。(c)脂肪蓄積細胞(脂肪細胞)微小組織集団の典型的な配置(ファロイジン染色)(d).脂質染色(BODIPY)成長は、分化している微小組織内の脂肪蓄積を強調する。(e)同じ培養物内での微小組織細胞の脂肪及び筋肉への並行分化は、脂肪及び筋肉細胞が相互に排他的な集団に由来することを強調する。
【
図19】本発明のいくつかの実施形態によるプロセスの概略図を示す。本発明の実施形態はまた、プロセスの一部、例えば1-7、8b-9a、9b-a、8b、9bなどを指す。
【発明を実施するための形態】
【0055】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、培養肉産業のための微小組織を生産する方法に関する。
【0056】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用において、以下の説明に記載されるか又は実施例によって例示される詳細に必ずしも限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態が可能であり、又は様々な方法で実施又は実行することができる。
【0057】
胚性幹細胞(ESC)及びニワトリESCの自己再生能力は、特に、培養肉産業に非常に適用可能である。
【0058】
新規なプラットフォームは、最適な肉生産のために設計されている。プラットフォームは、無尽蔵の非遺伝子組換え(GMO)生産源である肉及び食品産業のための強力な工業製造ツールとして役立つことを良好に位置付けるいくつかの独自の特徴を提供する。細胞は、100継代にわたって天然に不死であり、安定した一貫した成長及び特徴を保持することが示されている。これにより、動物細胞バンクを補充する必要がなくなり、動物を生産プロセスから完全に除去する。プラットフォームは、ゼノフリー因子の添加に基づいており、細胞自体以外の動物成分を完全に欠いている。プラットフォームは、本質的に高度に増殖性であり、費用効率が高く歩留まりの高い製造プロセスを可能にする連続生産プロセスを支援する。
【0059】
効率的な生産プラットフォーム-凝集体及び微小組織株は、迅速な自己再生能力を示し、8時間もの速さの倍加時間に達することができた。これらの培養物中の細胞密度は10^8細胞/mlを超える。これらの株は、制御可能な様式で脂肪、筋肉及び結合組織細胞の不均一な組成物を発現する天然の微小組織構造を形成する成熟プロセスを支持する高い可塑性を保持する。業界標準試験は、栄養組成と、培養され従来通りに生産された鶏肉のプロファイルとの間の高い類似性を示した。プラットフォームは、原材料を生産するか、又は従来通りに生産された肉に匹敵する官能特性を有する製品を構成するために使用することができる。業界標準アッセイ並びに複数の試食パネルは、風味プロファイル及び消費者体験に関して、従来通りに生産された鶏肉と高い類似性を示す。
【0060】
したがって、本発明の一態様によれば、多能性幹細胞凝集体を生産する方法であって、
(a)マトリックス接着の条件下で成長させた非ヒト多能性幹細胞の非ヒト多能性幹細胞株を準備すること、
(b)マトリックス接着の非ヒト幹細胞株を徐々に取り除いて、非ヒト多能性幹細胞を含む凝集体を得ること、ここで、凝集体の非ヒト多能性幹細胞は、60回を超える継代にわたって未分化にして12時間以下の倍加時間を示し、分化誘導時に筋肉、脂肪及び結合組織に分化することが可能であり、胚様体(EB)と比較して減少した、COL6A2、CD44、COL6A1、ANXA1、ANXA2及びS100A11からなる群から選択される接着分子の発現によって決定されるように、上記EBよりも低い細胞間接着(cell to cell adhesion)を示す、
を含み、
工程(a)及び工程(b)が成長因子(growth factor)の存在下で行われる、方法が提供される。
【0061】
本明細書中で使用される場合、「多能性(pluripotent)幹細胞」とは、3つすべての胚性胚葉、すなわち、外胚葉、内胚葉及び中胚葉に分化し得るか、又は未分化状態のままであり得る非ヒト細胞のことを指す。多能性幹細胞には、胚性幹細胞(ESC)及び誘導多能性幹細胞(iPS)が含まれる。
【0062】
「胚性幹細胞」という語句は、3つすべての胚性胚葉(すなわち、内胚葉、外胚葉及び中胚葉)の細胞に分化することができるか、又は未分化状態のままであることができる胚性細胞を指す。「胚性幹細胞」という語句は、妊娠後に形成された胚組織(例えば、胚盤胞)から胚の着床前に得られる細胞(すなわち、着床前胚盤胞)、着床後/原腸形成前段階の胚盤胞から得られる拡大胚盤胞細胞(EBC)(国際公開第2006/040763号参照)、妊娠中のいつでも胎児の生殖組織から得られる胚性生殖(EG)細胞、及び単為生殖によって刺激される未受精卵に由来する細胞(単為生殖)を含み得る。
【0063】
トリ胚性幹細胞の主な供給源は、未インキュベートの受精卵(0日目)である。この段階で、胚は、停止状態でロックされた60~100Kの多能性細胞からなる。雌鶏が異なる日に産卵されていたいくつかの卵の孵化を同期させることを可能にするために、停止段階が重要である。これらの細胞のインビトロでの増殖は、39°Cでのインキュベーション時に起こる(例えば、Pokharel,N et al.Poult Sci.2017 Dec 1;96(12):4399-4408.doi:10.3382/ps/pex242.PMID:29053871)。
【0064】
誘導多能性幹細胞(iPS;胚様幹細胞)は、多能性を付与された(すなわち、3つの胚性生殖細胞層、すなわち内胚葉、外胚葉及び中胚葉に分化することができる)成体体細胞の脱分化によって得られる細胞である。本発明のいくつかの実施形態によれば、そのような細胞は、分化した組織(例えば、皮膚などの体細胞組織)から得られ、胚性幹細胞の特徴を獲得するために細胞を再プログラムする遺伝子操作によって脱分化を受ける。本発明のいくつかの実施形態によれば、誘導多能性幹細胞は、体性幹細胞においてOct-4、Sox2、Kfl4及びc-Mycの発現を誘導することによって形成される。
【0065】
本明細書で使用される場合、「凝集体」は、接着分子(例えばECM)の分泌を介して互いに結合している増殖性、非分化性、すなわち多能性細胞の群を指す。サイズは、30~1000mm、例えば50-500um、例えば30~100um、100~500um、100~400um、200~500um、300~400um、100~200um、50~200um、500~1000um、700~1000umであり得る。本明細書全体を通してサイズが示されている場合、サイズは、凝集体又は微小組織の集団における平均サイズを指すことが理解されよう。
【0066】
マーカー:Oct4+、Lin28+、SSEA1+、SSEA4-、ENS1+、Tra-1-60+.nanog+.特定の実施形態によれば、マーカーは、Oct4+、Lin28+、SSEA4-、ENS1+、Tra-1-60+.Nanog+である。
【0067】
特定の実施形態によれば、凝集体は、成長因子(例えば、IGF1、SCF、IL6、IL6Rα、LIF hLIF、それらの組み合わせ、又はそれに加えて若しくはその代わりに、IWR1、FGF2など)又はRho(例えば、Y27632)MEK、GSK3、FGFR3、N2B27-3の阻害剤などのシグナル伝達阻害剤、又は以下にさらに例示するようなものの存在下で成長させる。
【0068】
特定の実施形態によれば、凝集体における細胞の約90%~100%は多能性幹細胞である。
【0069】
言及されるように、細胞は、非ヒト多能性幹細胞である。
【0070】
特定の実施形態によれば、非ヒト多能性幹細胞は、家畜多能性幹細胞のものである。
【0071】
特定の実施形態によれば、非ヒト多能性幹細胞は、トリ多能性幹細胞、ウシ多能性幹細胞、ブタ多能性幹細胞、ヤギ多能性幹細胞、ヒツジ多能性幹細胞、エビ多能性幹細胞及び魚多能性幹細胞からなる群から選択される。
【0072】
本明細書で使用される場合、「トリ(avian)」という用語は、限定するものではないが、ニワトリ、七面鳥、アヒル、ガチョウ、ウズラ、キジ、オウム、フィンチ、タカ、カラス、並びにダチョウ、エミュー及びヒクイドリなどの走禽類などの生物などの分類学的Class Ayesの生物の任意の種、亜種又は種類を指す。この用語には、種々の公知のGallus gallus(ニワトリ)の系統、例えば、White Leghorn、Brown Leghorn、Barred-Rock、Sussex、New Hampshire、Rhode Island、Australorp、Cornish、Minorca、Amrox、California Gray、Italian Partidge-coloured、並びに七面鳥、キジ、ウズラ、アヒル、雌鶏、ホロホロチョウ、スクーブ、ダチョウ及び市販量で一般的に飼育されている他の家禽の系統が含まれる。
【0073】
特定の実施形態では、トリ細胞はニワトリ細胞である。
【0074】
1つの例において、細胞は、トリ胚由来幹細胞株EB14(ニワトリ)又はEB66(アヒル)に由来する(国際公開第2005042728号)。
【0075】
一実施形態によれば、方法全体の細胞は非遺伝子組換えである。
【0076】
一実施形態では、多能性幹細胞は幹細胞株である。
【0077】
多能性幹細胞は、自然に接着性であり、したがって、二次元培養(2D)とも呼ばれる細胞接着の条件下で成長する。
【0078】
特定の実施形態によれば、2D培養物は、二次元マトリックス(フィーダー層を含まない)上又はフィーダー細胞上での成長に関する。
【0079】
したがって、多能性幹細胞は、培地の存在下で、細胞外マトリックス(例えば、ゼラチン、フィブロネクチン、MatrigelRTM又はラミニン)などの固体表面上で成長(増殖)させることができる。
【0080】
特定の実施形態によれば、表面はゼラチンである。
【0081】
特定の実施形態によれば、細胞は、フィーダー層上で成長する。
【0082】
特定の実施形態によれば、フィーダー細胞は、マウス胚性線維芽細胞(MEFS)である。
【0083】
特定の実施形態によれば、細胞は、因子、及び任意には(optionally)血清(例えば、ウシ胎児血清、ウマ血清及び/又はマス由来の魚血清)又は血清代替物(例えば、酵母又は植物加水分解物、例えば、大豆)の存在下で培養される。他の因子、例えば、ピルビン酸Na、亜セレン酸Na、アミノ酸、2-メルカプトエタノールがこの段階に含まれ得る。細胞を増殖させ、24~72時間毎に継代する。
【0084】
特定の実施形態によれば、成長因子は、IGF-1、IL6、sIL6 Rα、hLIF及び幹細胞因子(SCF)からなる群から選択される。
【0085】
特定の実施形態によれば、成長因子は、IGF-1、IL6、sIL6 Rα、hLIF及び幹細胞因子(SCF)を含む。
【0086】
本発明のいくつかの実施形態によれば、細胞が3~5継代に達すると、それらは、物質接着(例えば、フィーダー層)が徐々に取り除かれ、安定なフィーダーフリーのクローンを選択するために数継代にわたって成長する。いくつかの実施形態によれば、因子はこの段階で依然として存在する。
【0087】
特に、フィーダー層の回収段階の後、細胞は、線維性細胞によって拘束されないので、大きな有核細胞で構成されるよりコンパクトでない幹細胞コロニーを形成する傾向がある(
図1c-e)。特定の実施形態によれば、この段階で、細胞は、サイクルあたり約24時間の予想倍加時間を示す。この段階は、「非ヒト幹細胞株からマトリックス接着を徐々に取り除く」とも呼ばれる。
【0088】
本明細書で使用される場合、「徐々に取り除く」とは、(GFからではなく)マトリックス接着からの枯渇を指す。
【0089】
これを行うために、細胞は、接着細胞としてではなく、懸濁中で成長するように徐々に適合される。
【0090】
本明細書中で使用される場合、表現「懸濁培養物」は、多能性幹細胞が表面に接着するのではなく培地に懸濁される培養物を示す。
【0091】
したがって、本発明の培養物は、多能性幹細胞が、細胞外マトリックスの成分、ガラスマイクロキャリア又はビーズなどの外部基質に接着することなく増殖することができる「マトリックス接着を欠いている」ものである。
【0092】
いくつかの実施形態によれば、細胞は接着表面から徐々に移され(例えば、接着マトリックスを含むもの、例えば、ゼラチン、ラミニン、フィブロネクチン、ポリ-L-リジン)、わずかな振とうが課され(例えば、50~100rpm)、任意には(optionally)凝集体の機械的解離が行われる。振とうは、継代毎に徐々に増加させてもよい。特定の実施形態によれば、約2~3ヶ月の期間にわたる連続的な選択によって、細胞は、他の接着分子を発現しながら異なる接着分子をダウンレギュレーションするように促され、胚様体の構造とは対照的に、凝集体を構成する各細胞の明確な定義を伴って、3Dの緩いラズベリー様凝集体の形成を経時的に可能にする。この段階で、細胞は非常に安定になり、倍加時間は、トリ胚性幹細胞の場合のように、1サイクル当たり10~20時間、例えば18~20時間、10~12時間、12~14時間、12~16時間、10~16時間、12~18時間に短縮される。
【0093】
特定の実施形態によれば、凝集体は、細胞株を形成する凝集体のものである。したがって、懸濁液中での成長への細胞の適合に続いて、細胞は、撹拌バイオリアクタ環境などで再現可能な方法で急速な成長を継続するように適合され、細胞が工業的スケールアップに適した能力を確保する。このために、凝集体の完全性及び幹細胞特性を維持しながら、任意には(optionally)撹拌バイオリアクタ内で高速撹拌(先端速度200~400rpm)しながら、高い増殖速度で凝集体細胞として成長する細胞株の生成についてクローンを試験する。最適化のこのプロセスに続いて、本発明のいくつかの実施形態によれば、すべての好ましい特性を有するいくつかの細胞株が生産され、これらの細胞は「SMCMC」と命名される。これらの細胞は、所望の形態、分化能、及び1サイクルあたり10~12時間の倍加時間を示し、いくつかの成長条件は1サイクルあたり8時間を示す(
図3)。
【0094】
細胞株を形成するそのような凝集体は、細胞バンクに保存することができる。
【0095】
本発明の一態様によれば、多能性幹細胞凝集体が提供される。
【0096】
特定の実施形態によれば、凝集体は、本明細書に記載の方法によって得ることが可能である。
【0097】
特定の実施形態によれば、凝集体は、80~120μmの平均直径を示す。
【0098】
特定の実施形態によれば、凝集体の非ヒト多能性幹細胞は、アルカリホスファターゼ発現を示す。
【0099】
特定の実施形態によれば、凝集体の非ヒト多能性幹細胞は、テロメラーゼ遺伝子発現を示す。
【0100】
特定の実施形態によれば、凝集体の非ヒト多能性幹細胞は、SSEA4-、LIN28+、ENS-1+、NANOG+、OCT4+、及びTRA-I-60+であり、例えばRNAレベルで決定される。
【0101】
特定の実施形態によれば、凝集体の本ヒト多能性幹細胞は、発癌性形質転換を示さない。
【0102】
本発明の一態様によれば、非ヒト多能性幹細胞を含む多能性幹細胞凝集体であって、凝集体の非ヒト多能性幹細胞が、60回を超える継代にわたって未分化にして12時間以下の倍加時間を示し、分化誘導時に筋肉、脂肪及び結合組織に分化することができ、胚様体(EB)と比較して減少した、COL6A2、CD44、COL6A1、ANXA1、ANXA2及びS100A11からなる群から選択される接着分子の発現によって決定されるように、上記EBよりも低い細胞間接着を示す、多能性幹細胞凝集体が提供される。
【0103】
特定の実施形態によれば、多能性幹細胞凝集体は、以下:
(i)80~120μmの平均直径;
(ii)凝集物の非ヒト多能性幹細胞は、アルカリホスファターゼ発現を示す;
(iii)凝集体の非ヒト多能性幹細胞は、テロメラーゼ遺伝子発現を示す;
(iv)凝集物の非ヒト多能性幹細胞は、SSEA4-、LIN28+、ENS-1+、NANOG+、OCT4+、及びTRA-I-60+である;
(v)天然の肉製品の官能特性を示す;
(vi)凝集体は、細胞運動性及び遊走に関連する遺伝子の発現レベルを除いて、それらが由来する幹細胞株の遺伝子発現とほぼ同じ遺伝子発現を示す、
のうちの少なくとも1つをさらに示す。
【0104】
特定の実施形態によれば、凝集体は、i+iiI+ii+iii、i-iv、i-v、i-vi、ii-iii、ii-iv、ii-v、ii-vi、iii-iv、iii-v、iii-vi、iv-v、iv-vi、v-viの組み合わせを示す。
【0105】
特定の実施形態によれば、非ヒト多能性幹細胞は、トリ多能性幹細胞、ウシ多能性幹細胞、ブタ多能性幹細胞、ヤギ多能性幹細胞、ヒツジ多能性幹細胞、エビ多能性幹細胞及び魚多能性幹細胞からなる群から選択される。
【0106】
特定の実施形態によれば、トリ多能性幹細胞は、ニワトリ多能性幹細胞及びアヒル多能性幹細胞からなる群から選択される。
【0107】
特定の実施形態によれば、トリ多能性幹細胞は、ニワトリ多能性幹細胞である。
【0108】
本発明のいくつかの実施形態による例示的な凝集体を
図4~
図6に示す(トリ、例えばニワトリ)。
【0109】
特定の実施形態によれば、凝集体は、例えば、RNAレベル(実施例のセクションを参照のこと)又はタンパク質レベル(例えば、免疫染色)で決定されるように、細胞運動性及び遊走に関連する遺伝子の発現レベルを除いて、それらが由来する幹細胞株の遺伝子発現とほぼ同じ遺伝子発現を示す。
【0110】
特定の実施形態によれば、凝集体及び微小組織の細胞は、正常な核型を維持する。
【0111】
特定の実施形態によれば、上記は
図19の工程1~7をカバーする。特定の実施形態によれば、これらの工程は、血清の存在下で行われるが、上述のように、血清は、血清代替物又は酵母若しくは植物加水分解物などの他の代替物で置き換えることができる。
【0112】
培養肉生産は、細胞を培養するために使用される培地に特に重点を置く。組織培養培地は、伝統的に他の目的(例えば、研究、医薬品、臨床生産など)のために設計されており、したがって培養肉生産の観点からいくつかの警告を伴う。培養培地のコストは、一般に、培養肉生産にとって最大の経済的負担である。さらに、利用可能なほとんどの培養培地は、ウシ胎児(又は他の動物由来)血清(FCS)を含有する。FCSの使用は、バッチ間の変動性が高く、(化学組成に関して)定義されていないという固有の欠点を有する。さらに、培養肉生産におけるそのような材料の使用は、それが生産される問題のある方法のために、一般の受け入れを遠ざける可能性が最も高い。これらの障害を克服するために、本発明者らは、(本明細書で以下にさらに記載されるように)凝集体及び微小組織を、微小組織の品質、安全性、及び固有の特徴を損なうことなく、無血清培地中で成長するように適合させることに着手した。
【0113】
【0114】
これを達成するために、(以下にさらに記載されるように)微小組織又は(振とう条件下で)形成された後の凝集体は、無血清培地中で成長するように適合される。
【0115】
無血清培地への適合は、無血清培地を使用したフラスコ内でのさらなる増殖(
図19、段階7b)、次いで撹拌バイオリアクタへの移行(
図19、段階8b)、又は無血清培地を使用したバイオリアクタ内での直接播種(
図19、段階8b)のいずれかによって、振とうフラスコ(
図19、段階7b)内で凝集体としてES細胞を増殖させた後に行われる。無血清培地への適合は、高度に増殖性の凝集体集団を収集し、それらを無血清培地に導入することによって行われる(
図19、段階7b)。無血清培地中の血清、例えばFBSの割合を経時的に減少させることによって、徐々に適合させる(例えば、完全に回収されるまで、5%~2.5%~1%)。ほとんどの場合、徐々に適合させる期間は2~4週間である。大規模生産のために無血清(SF)培養物を生成する別の可能性は、凝集体を無血清培地に直接移すことである。この手順では、生存し、変化した環境に迅速に適合する能力を有する細胞が収集される。そのようなプロセスの長さは約2週間である。本発明のいくつかの実施形態によれば、いずれの可能性も、将来の使用のための細胞バンクの生成によって結論付けられる(
図19の工程8a)。
【0116】
したがって、以下に示すように、約14日間、細胞を血清の非存在下で新しい培地に適合させ、その結果、元の12時間の倍加時間が回復し、高レベルの細胞生存率を保持する(
図10)。同様に、本発明者らはまた、酵母、植物ペプトン及び加水分解物を補充した基礎培地の他の組み合わせで成長するように細胞を適合させることができた。無血清培地への細胞の適合に首尾よく使用された混合物の中で、本発明者らは、Ex-Cell溶解物が補充されたDMEM(高グルコース)、Ex-Cell溶解物が補充されたDMEM/F12、Ex-Cell溶解物が補充されたDMEM(低グルコース)、KERRYグループによって製造された大豆及び酵母溶解物の組み合わせが補充されたDMEM(高グルコース)を特定することができた。このプロセスで試験に成功した溶解物は、以下のようなこれらの4つの生成物の全部又は一部の組み合わせのいずれかであった:Hypep 1510(ID:S-2048780、Item:U1-5X99023)、SHEFF-VAX PLUS ACF(ID S-2048778、U1-5X00484.K1G)、SHEFF-VAX PF ACF(ID:S-2048777、U1-5X01143.K1G)、SHEFF-VAX PLUS PF ACF VP(ID:S-2048776、U1-5X01090)。本発明者らはまた、日常的に使用されている基礎培地(DMEM HG/LG、DMEM/F12、RPMI 1640)と、FUJIFILM-IRVINE Scientificによって製造された大豆及び酵母加水分解酵素との組み合わせ(限外濾過大豆加水分解物#IR-96857E;限外濾過酵母加水分解物# IR-96863E)に、微小組織を首尾よく適合させた。さらにまた、DIFCOのSelect Soytone(#15ABP196)、Bactoの酵母抽出物(#15ABP197)、BBLのPhytoneペプトン(#15ABP195)、BBLの酵母抽出物(#15ABP202)、Bacto Malt Extract(15ABP201)及びBacto TC yeastolate(#15ABP163)の様々な組み合わせを補充した基礎培地(DMEM HG/LG、DMEM/F12、RPMI 1640)で成長するように微小組織を適合させた。この目的のために、酵母由来溶解物を1つ又はいくつかの植物由来溶解物と組み合わせた。全ての実験において、培地にエタノールアミン(20ng/L)、インスリン(100ug/L)、セレン(50ng/L)及びトランスフェリン(55ug/L)も補充した。培地にはまた、1X MEM NEAA(Biological industries,01-340-1B)、2mMのL-アラニン/L-グルタミン(Biological industries-03-022-1B)及び1mMのピルビン酸ナトリウム(Biological industries)も補充された。本明細書に提示される結果は、培養培地中の血清への置換として大豆及び植物加水分解物を補充した基礎培地に基づく複数の組み合わせを適合させる微小組織の能力を強調している。
【0117】
本発明の実施形態を実施するためにすべての工程が必要であるわけではないことが理解されよう。したがって、例えば、凝集体は、細胞バンク又は商業ベンダーから提供され、以下に記載されるように食品産業にさらに使用され得る。
【0118】
したがって、生産にかかわらず、凝集体は、それ自体食品生産に使用することができ、又は微小組織を生成するためのさらなる開発プロセスにさらに供することができる。
【0119】
したがって、本発明の一態様によれば、1又は複数の細胞型を含む微小組織を生産する方法であって、
(a)非ヒト多能性幹細胞を含む凝集体を、マトリックス接着なしで懸濁液中で形成すること、ここで、凝集体の非ヒト多能性幹細胞は、60回を超える継代にわたって未分化にして12時間以下の倍加時間を示し、分化誘導時に筋肉、脂肪及び結合組織に分化することが可能であり、成長因子の存在下で成長し、胚様体(EB)と比較して減少した、COL6A2、CD44、COL6A1、ANXA1、ANXA2及びS100A11からなる群から選択される接着分子の発現によって決定されるように、上記EBよりも低い細胞間接着を示す、
(b)凝集体をバイオリアクタに移して、成長因子の非存在下でマトリックス接着なしで懸濁液中で成長させることにより微小組織を生産すること、
を含む方法が提供される。
【0120】
代替の態様によれば、1又は複数の細胞型を含む微小組織を生産する方法であって、
(a)非ヒト多能性幹細胞を含む凝集体を含む懸濁培養物を準備すること、ここで、凝集体の非ヒト多能性幹細胞は、60回を超える継代にわたって未分化にして12時間以下の倍加時間を示し、分化誘導時に筋肉、脂肪及び結合組織に分化することが可能であり、成長因子の存在下で成長し、胚様体(EB)と比較して減少した、COL6A2、CD44、COL6A1、ANXA1、ANXA2及びS100A11からなる群から選択される接着分子の発現によって決定されるように、上記EBよりも低い細胞間接着を示す、
(b)凝集体をバイオリアクタに移して、成長因子の非存在下でマトリックス接着なしで懸濁液中で成長させることにより微小組織を生産すること、
を含む方法が提供される。
【0121】
この段階で、凝集体は、例えば上記のように、成長因子の非存在下でバイオリアクタに移される。
【0122】
本明細書で使用される場合、バイオリアクタは、細胞培養の状況で細胞、凝集体又は組織を成長させるように設計された容器、装置又はシステムを指す。このようなバイオリアクタは、Popovic et al.BIOTECHNOLOGY-Bioreactoes and Cultivation Systems for Cell and Tissue Culture-M.K.Popovic,Ralf Portner Encyclopedia of Life Support Systems(EOLSS)並びにさらに本明細書の以下及び以下の実施例のセクションに記載されている。
【0123】
生産のための培養装置の選択は、スケールに基づく。大規模生産には、専用の装置を使用することが好ましい。連続細胞培養システムは、Furey(2000)Genetic Eng.News 20:10に概説されている。本教示に従って使用することができる適切なバイオリアクタには、Sartorius Biostat STR、Sartorius Biostat BDCU、Thermo Fisher HyPerforma DynaDrive S.U.B.、Eppendorf Bioflo 510が含まれるが、これらに限定されない。
【0124】
このようなシステムは、食品産業で使用される場合、微小組織の生産にも使用することができる。
【0125】
本明細書中で使用されるとき、用語「微小組織」とは、成長因子の非存在下で成長させられる中胚葉系細胞のことを指し、又はシグナル伝達阻害剤は、完全に分化していないか、若しくは最終的に分化している。
【0126】
本明細書で使用される場合、「成長因子の非存在下」とは、例えば
図19の工程7の細胞凝集体と比較して、特定のマーカーを含む中胚葉系特性、及び結合組織タンパク質の発現上昇を得ながら、細胞に重要な多能性マーカーを失わせる成長因子を(存在する場合は血清中のものの上に)添加しない成熟培地を指す。それらの初期分化段階及びバイオリアクタにおける特異的培養条件のために、これらの微小組織は依然として迅速かつ広範囲に増殖し、少なくとも150回の集団倍加にわたって増殖することができる。
【0127】
特定の実施形態によれば、バイオリアクタにおける成長は、バイオリアクタ内での撹拌及び0.85m/秒の最適先端速度で0.25~1.70m/秒の範囲の先端速度でのガス処理などのバイオリアクタ実行パラメータの規定された設定点によって制御される。これらのパラメータは、ひいては微小組織のサイズを制御する。微小組織の大きさは、単一の微小組織において複数の細胞型を分化させる能力にとって重要である。
【0128】
特定の実施形態によれば、微小組織は、本明細書において上記で記載されるように、無血清培地において成長する。
【0129】
他の実施形態によれば、微小組織は血清の存在下で成長する。
【0130】
この成熟工程(
図19の工程8)は、150回を超える継代などの長期間継続することができる。
【0131】
本明細書で使用される場合、「成熟」は、多能性幹細胞が中胚葉系統の拘束を開始することを可能にするGF(すなわち、「無因子」とも呼ばれる成長因子の非存在)の回収を含む工程を指す。
【0132】
様々な成熟プロトコルを使用することができ、いくつかは以下の実施例セクションに例示されている。例えば、無因子培地(DMEM(HG)/10~20%FBS、10U/1U、ペニシリン/ストレプトマイシン、2mMグルタミン)中の監視撹拌バイオリアクタ中の懸濁液中のbESCの成熟;又は無因子培地(DMEM(HG)/10~20%FBS、10U/1U、ペニシリン/ストレプトマイシン、2mMグルタミン)で行った撹拌バイオリアクタ中の懸濁液中のpESCの成熟。
【0133】
成長因子の存在を含まない工程は、例えば、7日間から12ヶ月まで続くことができ、その間に細胞を増殖させ、採取し、保存し、又は特定の目的の細胞(例えば、筋肉、脂肪又はそれらの組み合わせ)にさらに分化させることができる。
【0134】
このように、微小組織が提供される。
【0135】
したがって、本発明の一態様によれば、1又は複数の細胞型を含む微小組織が提供され、その微小組織は、直径30~500μmであり、微小組織の細胞(約90%)は、NANOG-OCT4-LIN28-、SSEA3+である。
【0136】
本発明のいくつかの実施形態によれば、微小組織は、天然の肉製品の官能特性を示す
【0137】
本発明のいくつかの実施形態によれば、1又は複数の細胞型は脂肪細胞及び筋肉細胞を含む。
【0138】
特異的分化プロトコルに供されない場合、微小組織は、完全に分化していない微小組織であり、多能性ではない。
【0139】
本明細書中で使用される場合、「完全に分化していない微小組織」は、中胚葉系統複能性細胞、すなわち、異なるタイプの中胚葉系組織に発達する能力を有する細胞を含む細胞の凝集体を指す。微小組織のサイズは、RNAレベル(例えば、実施例のセクションを参照)で決定した場合、30~1000μm、例えば50~300uM(マーカー:Pax3+,Pax7+,MyoD+,SSEA4+,SSEA1-,oct4-)であり得る。特定の実施形態によれば、工程7の凝集体は、
図19の工程8b-9bの微小組織よりも小さい。
【0140】
そのような微小組織は、食品産業自体に組み込まれ得るか、又は分化プロセスにさらに供され得る。
【0141】
したがって、本発明の実施形態を非限定的に説明する
図19の工程8bによってカバーされるこの段階で、完全に分化していない微小組織を採取することができる。
【0142】
あるいは、これらの微小組織をさらに分化に供することもできる。
【0143】
したがって、本発明の一態様によれば、1又は複数の目的の細胞型を含む微小組織を生産する方法であって、
(a)(完全に分化していない)微小組織を生産することと、
(b)微小組織を懸濁液中で分化条件に供し、それにより、1又は複数の目的の細胞型を含む微小組織を生産することと、を含む、方法が提供される。
【0144】
分化のための具体的なプロトコルは、以下の実施例のセクション、並びに参照によりその全体が組み込まれる国際公開第2018/189738号に提供されている。
【0145】
特定の実施形態によれば、分化した微小組織は、NANOG-OCT4-LIN28-、SSEA3+である。
【0146】
したがって、「分化した微小組織」とは、成熟筋肉(トロポニンT+、ミオシン+)、脂肪細胞(oil-red及びBodipy染色陽性)及びコラーゲン分泌細胞(COL9+COL1A+、COL2A+)に分化した細胞からなる細胞の凝集体を指す。サイズは30~5000μmであり得る。例えば、例示的な実施形態として
図16~
図18A-Eを参照されたい。
【0147】
特定の実施形態によれば、微小組織は直径30~500μmである。
【0148】
上述のように、成熟した微小組織又は凝集体は、当技術分野で周知の分化プロトコルを使用して分化の対象とすることができる。
【0149】
あるいは、微小組織又は凝集体の分化プロトコルは、複数段階のプロセスであり得る。
【0150】
したがって、本発明の一態様によれば、脂肪細胞運命に対する細胞プライミングの方法であって、筋肉細胞及び増殖表現型を保持しながら脂肪細胞運命を有する幹細胞を得るのに十分な時間、100μMを超えない濃度の脂肪酸の存在下で多能性(pluripotent)又は複能性(multipotent)幹細胞を培養することを含む方法が提供される。
【0151】
本明細書中で使用される場合、「脂肪細胞運命」とは、「前脂肪細胞」を指し、最終分化の前に脂肪生成運命への関与を採用した間葉系幹細胞を指す。前脂肪細胞は、Sca-1、Cd-90、cd29を発現する傾向がある。前脂肪細胞はまた、線維芽細胞形態をとり、通常は核の周囲でBODIPY染色に対する陽性反応を示す。
【0152】
本明細書で使用される場合、「プライミング」は、低用量(例えば、100uM未満、例えば30~50uM、30~80uM、10~90uM)のFA(例えば、オレイン酸、パルミチン酸)又はその前駆体の存在下で培養して細胞を脂肪細胞系統に導くことによって行われる脂肪細胞運命を達成することを指す。
【0153】
低レベル、すなわち100uM未満、例えば30~50uM、30~80uM、10~90uMの脂肪酸の存在下では、
図9bに見られるように、細胞は筋肉表現型を獲得する。しかしながら、レベルを増加させること、すなわち、100uM以上にすることは、細胞を脂肪細胞に向かわせるであろう。
【0154】
「プライミング」工程:プライミング工程は、低用量の異なる脂肪酸の存在下で、(例えば、トリ)幹細胞を成長に調整することを含む。このプロセスにおいて、本発明者らは、特定の又はいくつかの脂肪酸を、100uMを超えない最終濃度(例えば、10~100uM又は10~50uM)で細胞の培地に添加する。
【0155】
分化工程:細胞を脂肪生成分化にプライミングした後、最終分化が続く。細胞の分化は、FAのレベルを、例えば100uM又は100uM超、例えば500uMまで、例えば最大14日間、例えば1~7日間、1~10日間、5~10日間上昇させることを含む。
【0156】
特定の実施形態によれば、複能性幹細胞は成体幹細胞である。
【0157】
特定の実施形態によれば、成体幹細胞は中胚葉系である。
【0158】
特定の実施形態によれば、中胚葉系幹細胞は間葉系幹細胞である。
【0159】
特定の実施形態によれば、プライミング及び/又は分化は、懸濁液中で行われる。
【0160】
特定の実施形態によれば、プライミングのための培養は、2~5週間の期間である。
【0161】
特定の実施形態によれば、上記で記載されるとおり、複能性幹細胞は、多能性幹細胞のエクスビボ成熟によって得られたものである。
【0162】
特定の実施形態によれば、エクスビボ成熟は、成長因子の非存在下で懸濁液中で行われる。
【0163】
特定の実施形態によれば、多能性及び/又は複能性幹細胞は、の凝集体状態にあり、任意には(optionally)30μm~500μmの凝集体状態にある。
【0164】
細胞をプライミングすると、それらを最終分化に供することができる。
【0165】
したがって、脂肪細胞への分化を可能にするために十分な時間にわたって、100μMを超える濃度の脂肪酸の存在下で増殖表現型を保持しながら、脂肪細胞運命を有する幹細胞を培養することを含む、細胞分化方法が提供される。
【0166】
プライミング及び分化プロトコルを組み合わせると、脂肪細胞と筋肉細胞の両方を含む微小組織の形成をもたらし得る。各工程の長さに応じて、筋肉細胞と脂肪細胞との相対比に関して組成物を制御することができる。プロセスがプライミング工程で終了する場合、組成物はより筋肉様である。
【0167】
特定の実施形態によれば、凝集体又は微小組織のいずれも、天然の肉製品の官能特性を示す。
【0168】
本明細書で使用される場合、「官能特性(organoleptic properties)」という用語は、味、テクスチャ、視覚、匂い、又は触覚を含む感覚を介して消費者が経験する食品の態様を指す。
【0169】
例えば、脂肪細胞は、調理又はグリルしたときに肉の味及び/又はテクスチャ(例えば、牛肉又は鶏肉)を有する非肉食品を与えるために使用され得る。
【0170】
筋肉細胞又は心筋細胞を使用して、肉のテクスチャ並びに肉の味(例えば、苦味/金属感)を非肉食品に与えることができる。
【0171】
赤血球は、肉の色(例えば、牛肉)だけでなく、焼き肉(例えば、牛肉又は鶏肉)の味を有する非肉食品を与えることができる。
【0172】
肝細胞は、肉の味を豊富にするだけでなく、肉の色(例えば、牛肉)を有する非肉食品を与えることができる。
【0173】
用語「肉」は、食品(例えば、牛肉、豚肉、家禽、魚、並びに以下に提供される追加の例)として食べる任意の動物フラッシュ(flash)を包含することを意味する。
【0174】
この場合、官能特性は肉のものである。例えば、味について言及する場合、官能特性は、旨味であり得る。
【0175】
本明細書で使用される場合、「栄養特性」は、それを摂取する対象にとって価値のある肉の組成物を指す。
【0176】
例えば、筋肉組織は、タンパク質が非常に多く、必須アミノ酸のすべてを含み、ほとんどの場合、亜鉛、ビタミンB12、セレン、リン、ナイアシン、ビタミンB6、コリン、リボフラビン及び鉄の良好な供給源である。いくつかの形態の肉はビタミンKも多い。筋肉組織は炭水化物が非常に少なく、食物繊維を含まない。タンパク質、ビタミン、及びミネラルは、ほぼあらゆる肉供給源から入手可能であり、一般に一貫している。
【0177】
肉の脂肪含有量は、動物の種及び品種、動物がどのように飼育されたか(何を給餌したかを含む)、身体の解剖学的部分、並びに肉切り及び調理の方法に応じて大きく異なり得る。シカなどの野生動物は、典型的には家畜よりも痩せているため、脂肪含有量を気にする人は、鹿肉などの狩猟肉を選ぶ。肉中の筋肉線維と共に存在する脂肪沈着物は、調理されたときに肉を軟化させ、タンパク質及び脂肪分子が相互作用することを可能にする熱によって開始される化学変化によって風味を改善する。脂肪は、肉と一緒に調理されると、肉をよりジューシーに見せる。しかしながら、脂肪の栄養寄与は、タンパク質とは対照的に、主にカロリーである。脂肪含有量が増加するにつれて、肉の栄養への寄与は減少する。加えて、肉の周りには脂肪に関連するコレステロールが存在する。コレステロールは、肉に見られる飽和脂肪の種類に関連する脂質である。
【0178】
以下の表Aは、いくつかのタイプの肉の栄養含有量を比較する(110gr当たり)。各種類の肉は、ほぼ同じ含有量のタンパク質及び炭水化物を有するが、脂肪含有量の範囲は非常に広い。
【0179】
【0180】
他の主要な栄養成分及びそれらの供給源を以下に提示する。
ビタミンB12は、主に魚、肉、家禽及び乳製品に見られる。
ビタミンDは、脂っこい魚、卵及び乳製品に見られる。
ドコサヘキサエン酸(DHA)は、脂肪魚に見られる必須オメガ-3脂肪である。
ヘム鉄は、主に肉、特に赤肉に見られる。
亜鉛は、主に動物性タンパク質源、例えば牛肉、豚肉及びラム肉に見られる。
【0181】
したがって、栄養特性の改善/強化は、本明細書に列挙されるようなタンパク質、カロリー、脂肪、ビタミン、ミネラルのいずれかであり得る。
【0182】
本明細書で使用される場合、「強化(enhancement)」、「増加(increase)」、「増強(augmentation)」は、凝集体若しくは微小組織を含まないか、又は一部が等価量の凝集体若しくは微小組織で置換されている同じ食品と比較して、官能特性又は栄養特性の少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、200%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%又は1000%(例えば、体重又はスコアによる)の添加を指す。
【0183】
したがって、本明細書に記載の微小組織又は凝集体を含む食品(「食糧」とも呼ばれる)が提供される。食品は、肉及び/又は非肉部分を含んでもよい。
【0184】
追加的又は代替的に、食品を生産する方法であって、本明細書中に記載される微小組織又は凝集体を、肉及び/又は非肉部分などのヒト摂取用の食用組成物と組み合わせることを含む方法が提供される。
【0185】
特定の実施形態によれば、非肉は、植物起源物質(複数可)である。
【0186】
特定の実施形態によれば、非肉は、非植物起源物質(例えば、鉱物、合成物質(複数可))である。
【0187】
特定の実施形態によれば、非肉は、植物起源物質(複数可)及び非植物起源物質(複数可)からなる群から選択される。
【0188】
特定の実施形態によれば、食糧は、ベジタリアンの食糧である。
【0189】
特定の実施形態によれば、食糧は、ビーガン食糧である。
【0190】
特定の実施形態によれば、食糧は肉代替物を含むか、又は一般に肉代替物(植物ベース)として消費される。
【0191】
特定の実施形態によれば、ハイブリッド食糧は、体液、例えば唾液、血清、血漿、粘液、尿、糞便、涙、乳などを含まない。
【0192】
以下、「食糧」という用語は、食品価値を有する任意の物質を指す。この用語はさらに、加工前、工程内及び加工後の食品の原料、食品又はその一部(例えば、シュニッツェルなどの食用物品のコーティング)、副生成物(複数可)及び最終生成物(例えば、ソーセージ、挽肉、シュニッツェルなど)を指す。本発明では、3つのファミリーの食糧:植物起源の食糧及びその物質、並びに凝集体及び微小組織、並びに食糧が提供される。
【0193】
本発明の一実施形態によれば、食糧は、ヒト若しくは非ヒト対象によって消費される最終製造品(製品)、又は食品を調製するプロセスにおいて食品産業によって消費される凝集体及び微小組織である。
【0194】
肉代替物の例:本発明のいくつかの実施形態に従って企図される天然、伝統的及び商業的に製造されたもの:
Alpro及びProvamel(両方とも植物乳範囲で通常知られている)もまた、異なる野菜肉代替物を提供する;
Beanfeast;
Beyond Meat;
Boca Burger;
伝統的な中東の豆のフリッターであるファラーフェル(Falafel)(四旬節の間、肉の代替品として古代コプトによって作られたと考えられている);
フィストゥリナ・ヘパティカ(Fistulina hepatica)(肝臓茸として知られている一般的なキノコ);
がんもどき:ベジバーガーに似た伝統的な日本の豆腐ベースの料理;
Gardein;
Gardenburger;
グラモーガン・ソーセージ;
Goshen Alimentos;
Green Slice vegetarian(有機及び大豆非含有のホットドッグ及びデリスライス);
インポッシブル・フーズ(Impossible Foods);
ジャックフルーツ(調理すると果肉がプルドポークに似たテクスチャを有する果実);
高野豆腐(精菜料理に共通する、調製すると肉に似た味とテクスチャを有する凍結乾燥された豆腐);
マスタケ(Laetiporus)(森の鶏肉も呼ばれるキノコ);
葉タンパク質濃縮物;
LightLife;
Linda McCartney Foods;
ハタケシメジ(Lyophyllum decastes)(フライドチキンキノコとして知られるキノコ);
肉増量剤(Meat extenders);
ミートレス(Meatless);
モックダック(Mock duck);
Morningstar Farms;
Muscolo di grano(Wheat's muscle)(イタリア料理のレシピに従って調製されたセイタン(seitan));
ナットロースト(Nut roast);
オンチョーム(Oncom);
パニール(Paneer)(例えばパニール・ティッカなどの料理に使われる);
クォーン(Quorn);
大豆タンパク質;
大豆パルプ(ベジバーガーパテ及びコロッケに使用);
テンペ(Tempeh);
テクスチャード植物タンパク質(Textured vegetable protein);
豆腐(アジアでは肉の代替品として伝統的に見られていないが、西半球ではその目的のために広く使用されている):
トーファーキー(Tofurkey);
Tofurky;
Turtle Island Foods;
ベジタリアンベーコン;
ベジタリアンホットドッグ;
ベジバーガー;
ベジチキンパテ;
ベジチキンカツ、パン粉焼き(シュニッツェル);
ベジチキンフランクフルト(ホットドッグ);
Viana(ドイツ最大のビーガンフード製造業者の1つであり、様々なベジバーガー、コロッケ、ソーセージ、挽肉モック肉、最大でビーガンドナー、ビーガンジャイロ、サンドイッチ用のデリスライスを提供している);
小麦グルテン。
【0195】
上記の例はいずれも、必ずしも特定のベンダーに関連付けられていない独立した実施形態である。
【0196】
食品は、食品又は飼料(動物飼料)を指すことが理解されよう。
【0197】
食品を製造するプロセスは、上昇、混練、押出成形、成形、整形、調理、浸漬、煮沸、焼成、焼成、フライ、及びそれらの任意の組み合わせのいずれかを含んでもよい。
【0198】
栄養を、それを必要とする対象に提供する方法も提供される。本方法は、本明細書に記載の食糧を対象に提供することを含む。
【0199】
特定の実施形態によれば、対象は栄養不足のリスクがある。
【0200】
特定の実施形態によれば、対照は、健康な対照(例えば、栄養/吸収に関連する疾患に罹患していない)である。
【0201】
特定の実施形態によれば、示された数値は、非ヒト多能性幹細胞としての型及び発達段階の細胞成長のための最適条件下で与えられることが理解されるであろう。
【0202】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、±10%を指す。
【0203】
用語「含有する(comprises)」、「含有する(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(having)」及びそれらの活用形は、「含むが限定されない(including but not limited to)」を意味する。
【0204】
用語「からなる(consisting of)」は、「含み、かつ限定される(including and limited to)」を意味する。
【0205】
「本質的に、~からなる(consisting essentially of)」という用語は、組成物、方法又は構造が追加の成分、工程及び/又は部分を含み得るが、追加の成分、工程及び/又は部分が特許請求される組成物、方法又は構造の基本的かつ新規な特徴を実質的に変化させない場合に限ることを意味する。
【0206】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈上他に明確に指示されない限り、複数の言及を含む。例えば、「化合物(a compound)」又は「少なくとも1つの化合物(at least one compound)」という用語は、それらの混合物を含む複数の化合物を含み得る。
【0207】
本出願を通して、本発明の様々な実施形態は、範囲形式で提示され得る。範囲形式での説明は、単に便宜及び簡潔さのためのものであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈されるべきではないことを理解されたい。したがって、範囲の説明は、すべての可能な部分範囲並びにその範囲内の個々の数値を具体的に開示したと見なされるべきである。例えば、1~6などの範囲の説明は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの部分範囲、並びにその範囲内の個々の数、例えば1、2、3、4、5、及び6を具体的に開示していると見なされるべきである。これは、範囲の幅に関係なく適用される。
【0208】
本明細書において数値範囲が示されるときはいつでも、示された範囲内の任意の引用された数字(分数又は整数)を含むことを意味する。第1の指示数と第2の指示数との「間の範囲(ranging/ranges between)」及び第1の指示数「から」第2の指示数「までの範囲(ranging/ranges from...to)」という語句は、本明細書では互換的に使用され、第1の指示数及び第2の指示数並びにそれらの間のすべての分数及び整数を含むことを意味する。
【0209】
本明細書で使用される場合、「方法」という用語は、所与のタスクを達成するための様式、手段、技術及び手順、例えば限定されないが、化学、薬理学、生物学、生化学及び医学の分野の当業者に公知であるか、又は当業者によって公知の様式、手段、技術及び手順から容易に開発される様式、手段、技術及び手順を指す。
【0210】
明確にするために別個の実施形態の文脈で説明されている本発明の特定の特徴は、単一の実施形態において組み合わせて提供されてもよいことが理解される。逆に、簡潔にするために単一の実施形態の文脈で記載されている本発明の様々な特徴はまた、別個に、又は任意の適切な部分的組み合わせで、又は本発明の任意の他の記載された実施形態で適切であるように提供されてもよい。様々な実施形態の文脈で説明される特定の特徴は、実施形態がそれらの要素なしでは動作不能でない限り、それらの実施形態の本質的な特徴と見なされるべきではない。
【0211】
上記で描写され、以下の特許請求の範囲のセクションで特許請求される本発明の様々な実施形態及び態様は、以下の実施例において実験的裏付けを見出す。
【実施例】
【0212】
ここで、上記の説明と共に本発明のいくつかの実施形態を非限定的に示す以下の実施例を参照する。
【0213】
一般に、本明細書で使用される命名法及び本発明で利用される実験室手順には、分子、生化学、微生物学及び組換えDNA技術が含まれる。そのような技術は文献で十分に説明されている。例えば、「Molecular Cloning:A laboratory Manual」Sambrook et al.,(1989);「Current Protocols in Molecular Biology」Volumes I-III Ausubel,R.M.,ed.(1994);Ausubel et al.,「Current Protocols in Molecular Biology」,John Wiley and Sons,Baltimore,Maryland(1989);Perbal,「A Practical Guide to Molecular Cloning」,John Wiley&Sons,New York(1988);Watson et al.,「Recombinant DNA」,Scientific American Books,New York;Birren et al.(eds)「Genome Analysis:A Laboratory Manual Series」,Vols.1-4,Cold Spring Harbor Laboratory Press,New York(1998);米国特許第4,666,828号;同第4,683,202号;同第4,801,531号;同第5,192,659号及び同第5,272,057号に記載されている方法;「Cell Biology:A Laboratory Handbook」,Volumes I-III Cellis,J.E.,ed.(1994);「Culture of Animal Cells-A Manual of Basic Technique」by Freshney,Wiley-Liss,N.Y.(1994),Third Edition;「Current Protocols in Immunology」Volumes I-III Coligan J.E.,ed.(1994);Stites et al.(eds),「Basic and Clinical Immunology」(8th Edition),Appleton&Lange,Norwalk,CT(1994);Mishell and Shiigi(eds),「Selected Methods in Cellular Immunology」,W.H.Freeman and Co.,New York(1980)を参照;利用可能なイムノアッセイは、特許文献及び科学文献に広く記載されており、例えば、米国特許第3,791,932号;同第3,839,153号;同第3,850,752号;同第3,850,578号;同第3,853,987号;同第3,867,517号;同第3,879,262号;同第3,901,654号;同第3,935,074号;同第3,984,533号;同第3,996,345号;同第4,034,074号;同第4,098,876号;同第4,879,219号;同第5,011,771号及び同第5,281,521;「Oligonucleotide Synthesis」Gait,M.J.,ed.(1984);「Nucleic Acid Hybridization」Hames,B.D.,and Higgins S.J.,eds.(1985);「Transcription and Translation」Hames,B.D.,and Higgins S.J.,eds.(1984);「Animal Cell Culture」Freshney,R.I.,ed.(1986);「Immobilized Cells and Enzymes」IRL Press,(1986);「A Practical Guide to Molecular Cloning」Perbal,B.,(1984)及び「Methods in Enzymology」Vol.1-317,Academic Press;「PCR Protocols:A Guide To Methods And Applications」,Academic Press,San Diego,CA(1990);Marshak et al.,「Strategies for Protein Purification and Characterization-A Laboratory Course Manual」CSHL Press(1996)を参照;これらはすべて、本明細書に完全に記載されているかのように参照により組み込まれる。他の一般的な参考文献がこの文書全体にわたって提供される。その中の手順は当技術分野で周知であると考えられ、読者の便宜のために提供される。その中に含まれるすべての情報は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0214】
(材料及び方法)
[ニワトリ胚性幹細胞(cESC)の単離]
新たに産卵したニワトリ(ガルス)の卵からのcESCの単離を、以前に公開されたプロトコル(26)に従って行った。簡単に説明すると、卵黄を分離するために、消毒された受精卵の殻を慎重に取り出した。卵黄を1500mm皿に入れ、胚を直接上に置いた。滅菌3M紙の小さな穿孔リングを胚に直接配置して、胚を切り離せるようにした。回収した胚を、液体表面に対して垂直にリングを入れるように注意して、胚がそれ自体剥離するのを防ぐことによって、冷PBSに浸漬した。過剰な卵黄を、胚を穏やかに振とうすることによって除去した。清浄化された胚を、ES培地(下記)を含む新鮮な皿に入れた。収集した胚を、ゼラチン及びMEFs-2胚/ウェルでコーティングした6ウェルプレートのウェルにプレーティングした。胚を10% CO2下、39℃でインキュベートした。培地を24時間毎に交換した。卵は段階X(0日目)にあった。
【0215】
ES培地組成:DMEM/F-12、10%ウシ胎児血清、1×MEM非必須アミノ酸濃縮物、1mMピルビン酸ナトリウム、10U/1Uペニシリン/ストレプトマイシン、2mMグルタミン、15uMβ-メルカプトエタノール、5ng/mL IGF1、1ng/mL SCF、1ng/mL IL6、1ng/mL sIL6 Rα、20ng/mL(1,000U/mL)hLIF。
【0216】
[懸濁における成長への適合及びスケールアップ]
懸濁液中での成長へのcESCの適合には、ゼラチン被覆プレート上に播種したMEFS上での幹細胞の増殖、又はゼラチン被覆プレート上への直接細胞播種による幹細胞の増殖が含まれた。2~3回の継代の後、存在する場合はフィーダー層を徐々に除去した。cESCのフィーダーフリー集団の確立後、細胞を非処理培養プレートに移し、75RPMのオービタルシェーカー上に置いた。凝集体の毎日の機械的破壊を伴う数回の継代の後(30~90継代)、細胞は、30~300ミクロンのサイズを有する、凝集体あたり10~5000個の細胞の緩い凝集体を形成し始めた。次いで、凝集体を、50mlのES培地を補充した125mlフラスコに移した。数回(3~5)の継代後、細胞をより大きなフラスコ(最大2L)に移し、2~6X10
6/mlの濃度に到達させた。次に、いくつかのクローンを撹拌バイオリアクター設定で試験して、凝集体の完全性及び幹細胞特性を維持しながら、高い増殖速度を有する細胞株を得た。数回の継代後、選択されたクローンは、所望の形態、分化能を示し、1サイクルあたり8~12時間の倍加時間に達した。この時点で(
図19の工程7に続いて)、細胞が微小組織を形成し、灌流条件下の無因子培地中で約100~300百万細胞/mlの集団密度に達することを可能にする、Sartorius、Eppendorf、Solaris、Thermofisher、New Brunswickm、又はApplikonによる無因子培地(AMBR 250及びBiostat A/B/B-DCU(それぞれ2L、5L/10L))を含む撹拌バイオリアクタに細胞を接種する準備ができた。無因子培地組成:DMEM 10%ウシ胎児血清、10U/1U、ペニシリン/ストレプトマイシン、2mMグルタミン。
【0217】
[ウシESC(bESC)の単離、懸濁液への適合及び分化]
(ウシESCの単離(Bogliotti et al 2018による))
受精したウシ胚を12ウェルプレート中のフィーダー層(ガンマ線照射MEFS)上に置き、20ng/mlのFGF2及び2.5uMのIWR1を補充したCTFR-bESC培地(カスタムメイドmTESR*)に接着させ、増殖させた。細胞を、TrypLE(12563011;Gibco)を使用して48時間毎に継代し、10uMのrho-キナーゼ阻害剤Y-27632の存在下でMEFSに再置床した。5継代後、Y-27632の使用が枯渇した。この段階で、MEF依存性bESCの細胞バンクにおいて細胞を凍結保存した。懸濁成長への適合は以下のように行った。MEF依存性bESCを、Y-27632の添加の有無にかかわらず、20ng/mlのFGF2及び2.5uMのIWR1を補充したCTFR-bESC又はmTESR培地のいずれかのMEF非含有6ウェルプレートに移した。穏やかに撹拌しながら(75RPM)、37C/5%CO2のシェーカーインキュベーターに細胞プレートを入れた。ウェル表面への細胞の付着を抑制するために、細胞を24時間毎に穏やかに手動でピペッティングした。3~5回の継代の後、穏やかに撹拌しながら(75 RPM)、37C/5%CO2で14日間、シェーカーインキュベーター中の10mMプレートに細胞を移した。培地を48時間毎に補充した。14日後、細胞を、20ng/mlのFGF2及び2.5uMのIWR1を補充した総体積30mlのmTESRの125mlシェーカーフラスコに移した。これらの条件に適合した細胞を、懸濁液適合bESCの細胞バンクにおいて凍結保存した。凝集体の選択は、フラスコ内に30~500umの凝集体を残して48時間ごとに培地を補充することによって行った。バルク集団と分化集団の増殖工程は、以下のように行われた:体積Flaskを最大14日間、徐々に増加させた後(2Lフラスコでは0.5Lまで)、バイオリアクタでの成熟のために細胞を移した。無因子培地(DMEM(HG)/10~20%FBS、10U/1U、ペニシリン/ストレプトマイシン、2mMグルタミン)中の監視撹拌バイオリアクタ中の懸濁液におけるbESCの増殖。筋肉分化について:採取前の7~21日間、FGF2/50uMヒドロコルチゾン/5%ウマ血清/Gsk阻害剤CHIR99021(brown et al.2014,Adhikari et al.,2019,lian et al 2013参照)の補充の有無にかかわらず、5~50uM OA/LAを添加した大型バイオリアクタにおける細胞の成長。脂肪分化について:採取前の4~7日間、200~400uMのOA/LAを添加した大型バイオリアクタでの細胞の成長。
【0218】
(ブタESCの単離(Burrell et al.,2019による))
【0219】
受精ブタ胚を12ウェルプレートのフィーダー層(ガンマ線照射MEFS)上に置き、N2B27-3i培地(1:1の比率のDMEM/F12/Neurobasal培地(21103049;Gibco)、0.5×N2(17502048;Thermo Fisher)、0.5 XB27(17504044;Thermo Fisher)、1,000U/mLヒト白血病抑制因子(hLIF、L5283;Sigma))、3iカクテル[30mM CHIR99021(GSK3阻害剤)、40mM PD0325901(MEK阻害剤)、10mM PD173074(FGFR3阻害剤)]、0.1mM b-メルカプトエタノール(M3148;Sigma)を補充した0.5×GlutaMAX(35050-061;Gibco)、1×MEM非必須アミノ酸(MEM NEAA、11140050;Gibco)、0.01%ウシ血清アルブミン(BSA)(A7906;Sigma)中で接着させ、増殖させた。
【0220】
TrypLE(12563011;Gibco)を使用して48時間毎に継代し、10uMのrho-キナーゼ阻害剤Y-27632の存在下でMEFS上に複製した細胞を、5継代後にY-27632の使用を枯渇させた(他の因子はmTESR培地に含まれる)。
【0221】
この段階で、MEF依存性fESCの細胞バンクにおいて細胞を凍結保存した。(懸濁成長へのpESCの適合を以下のように行った:)MEF依存性pESCを、Y-27632の添加の有無にかかわらず、mTESR培地(85850;STEMCELL Technologies)中のMEF非含有6ウェルプレートに移した。穏やかに撹拌しながら(75RPM)、37C/5%CO2のシェーカーインキュベーターにプレートを入れた。ウェル表面への細胞の付着を抑制するために、細胞を24時間毎に穏やかに手動でピペッティングした。3~5回の継代の後、穏やかに撹拌しながら(75 RPM)、37C/5%CO2で14日間、シェーカーインキュベーター中の10mMプレートに細胞を移した。培地を48時間毎に補充した。14日後、細胞を125mlシェーカーフラスコに総体積30mlのmTESRで移した。懸濁条件に適合した細胞を、懸濁液適合pESCの細胞バンクにおいて凍結保存した。凝集体成長のための選択を、フラスコ内に大きな凝集体を残して48時間毎に培地を補充することによって行った。
【0222】
(バルクpESC集団及び分化した集団の増殖を以下のように行った:)
体積Flaskを最大14日間、徐々に増加させた後(2Lフラスコでは0.5Lまで)、バイオリアクタでの成熟のために細胞を移した。撹拌バイオリアクタ中の懸濁液におけるpESCの増殖を、無因子培地(DMEM(HG)/10~20%FBS、10U/1U、ペニシリン/ストレプトマイシン、2mMグルタミン)中で行った。筋肉分化について:採取前の7~14日間、(FGF2/50uMヒドロコルチゾン/5%ウマ血清)(brown et al.2014,Adhikari et al.,2019参照)の補充の有無にかかわらず、5~50uM OA/LAを添加した大型バイオリアクタにおける細胞の成長。脂肪分化について:採取前のさらに4~7日間、200~400uMのOA/LAを添加した大型バイオリアクタでの細胞の成長。
【0223】
(サメ、マグロ、サケ、ニシン、イワシESCの単離(Hong et al.,1996による):)
インビトロで、6~8時間後に受精胚を収集し(胞胚)、単一細胞懸濁液にトリプシン処理した。細胞懸濁液を、20mM HEPES(pH7.4)、10U/1U、ペニシリン/ストレプトマイシン、2mMグルタミン、1mMピルビン酸Na、2nM亜セレン酸Na、1mM非必須アミノ酸、50pM 2-メルカプトエタノール、10ng/ml bFGF、10ng/mlヒト組換えLIF、15%ウシ胎児血清及びマス由来の魚血清(FS、1%)を補充したESM培地(DMEM(HG)中のゼラチン被覆6ウェルディッシュに入れた。細胞を増殖させ、48~72時間毎に継代した。この段階で、細胞はfESCの細胞バンクの生成に使用される。(懸濁成長への適合は以下のように行った:)fESCを、Y-27632の添加の有無にかかわらず、ESM1培地中のコーティングされていない6ウェルプレートに移した(mTESRは、製造業者によって報告される他の因子を既に含む)。穏やかに撹拌しながら(75RPM)、37C/5%CO2のシェーカーインキュベーターに細胞プレートを入れた。ウェル表面への細胞の付着を抑制するために、細胞を24時間毎に穏やかに手動でピペッティングした。3~5回の継代の後、穏やかに撹拌しながら(75 RPM)、37C/5%CO2で14日間、シェーカーインキュベーター中の10mMプレートに細胞を移した。培地を48時間毎に補充した。14日後、細胞を125mlシェーカーフラスコに総体積30mlのmTESRで移した。懸濁成長に適合した細胞を、懸濁液適合fESCの細胞バンクにおいて凍結保存した。
【0224】
48時間毎に培地を補充することによって行われる凝集体の選択は、上記のようにフラスコ内に大きな凝集体を残す。(バルク集団及び分化した集団の増殖を以下のように行った:)体積Flaskを最大14日間、徐々に増加させた後(2Lフラスコでは0.5Lまで)、バイオリアクタでの成熟のために細胞を調製する。fESCの増殖は、無因子(DMEM(HG)/10~20%FBS、10U/1U、ペニシリン/ストレプトマイシン、2mMグルタミン)中の懸濁撹拌バイオリアクタで行われる。筋肉分化について:採取の7~14日間、FGF2/50uMヒドロコルチゾン/5%ウマ血清(brown et al.2014,Adhikari et al.,2019参照)の補充の有無にかかわらず、5~50uMのOA/LAを添加した大型バイオリアクタにおける細胞の成長。脂肪分化について:採取前の4~7日間、200~400uMのOA/LAを添加した大型バイオリアクタでの細胞の成長。
【0225】
[マーカー発現の検出]
凝集体を15mlバイアルに収集し、遠心分離(800G/5分)によって沈殿させた。沈殿後、細胞をPBS X 1で2回洗浄した。細胞を4% PFA中で20分間固定し、PBSX1中で2回洗浄した。固定後、細胞の膜をPBSX1/0.01% Triton X-100)中で15分間透過処理した。pbsX 1/5%ヤギ血清中で細胞を1時間インキュベートすることによってエピトープブロッキングを行った。ブロッキング後、抗体(Ab)を細胞に添加し、試料を4Cで一晩インキュベートし、ゆっくり振とうした。ABを細胞から2回洗浄し、二次蛍光ABを添加した。細胞を二次ABと共にさらに2時間インキュベートし、顕微鏡観察の前に3回洗浄した。
【0226】
【0227】
[テロメラーゼ活性アッセイ]
テロメラーゼ活性を、TRAPeze(登録商標)Telomerase Detection Kit(S7700 Merck)を製造者のプロトコルに従って使用して凝集体において検出した。手短に言えば、凝集体を単離し、Chaps溶解緩衝液に懸濁した。溶解物をTS(テロメラーゼ基質)マスターミックスに添加し、37℃で30分間インキュベートした。次の工程では、特定の因子のためのキットを使用してPCR増幅に試料を採取した。テロメラーゼ活性をPCR産物のゲル電気泳動によって検出し、加熱した試料(95℃)を陰性対照として用いた。キット(abcam#ab83369)によって提供される陽性対照試料。
【0228】
[アルカリホスファターゼアッセイ]
凝集体中のアルカリホスファターゼの検出を、Alkaline Phosphatase Assay Kit(abcam#ab83369)を製造者のプロトコルに従って使用して行った。凝集体のRNAをHyLabsによって抽出し、RNA配列決定をWeizmann Instituteによって行った。
【0229】
[RNA Seq.]
RNAを、アウトソースサービス(Hylabs)、Sequencing INCPM mRNA-seqを使用して細胞ペレットから抽出した。簡潔には、全RNAを断片化し、続いて逆転写及び第2鎖cDNA合成を行った。二本鎖cDNAを末端修復、塩基付加、アダプターライゲーション及びPCR増幅に供してライブラリを作製した。ライブラリは、Qubit及びTapeStationによって評価した。配列決定ライブラリをバーコードで構築して、Illumina NextSeq High出力75サイクルのハーフレーンで12試料の多重化を可能にし、試料あたり約2000万のシングルエンド82bpリードを得た。バイオインフォマティクス:ポリA/Tストレッチ及びIlluminaアダプタを、cutadaptを使用してリードからトリミングし、30bpより短い得られたリードを破棄した。Ensemblからダウンロードされた遺伝子注釈が供給されたSTARを使用して(End To Endオプション及びutFilterMismatchNoverLmaxを0.04に設定した)、リードをG.gallus参照ゲノムGRCg6aにマッピングした。上記のgtfを使用して、htseq-countを使用して各遺伝子の発現レベルを定量した。示差的に発現された遺伝子は、betaPrior、cooksCutoff、及び独立フィルタリングパラメータをFalseに設定したDESeq2を使用して特定された。Benjamini及びHochbergの手順を使用して、複数の試験のために生のP値を調整した。パイプラインはsnakemakeを使って実行した。
【0230】
[無因子条件での増殖(
図19の工程8bの一般的な説明)]
肉生産に望ましい形質を有する微小組織への多能性凝集体の増殖及び成熟のために、撹拌バイオリアクタ環境において凝集体を無因子培地に移した。これらの条件下で、形成中の微小組織は、コラーゲンファミリーからのメンバーの発現(Col9a2、Col9、Col2a)及びECM因子の発現(HSPG、CSPG、ラミニン)を蓄積しながら、多能性マーカーの発現(OCT4、Nanog、Lin28)を減少させた。培養ニワトリ原料の生産のために、細胞を採取し、遠心分離し、PBSで3回洗浄した。次いで、使用するまで-20Cで微小組織を保存した。
【0231】
[微小組織の脂肪蓄積細胞への分化(
図19の工程9aの一般的説明)]
誘導されたトリグリセリド合成及び脂肪滴蓄積による脂肪細胞分化を達成するために、微小組織細胞をオレイン酸処理に供した。オレイン酸を70%エタノールに溶解するか、又は脂肪酸を含まないBSAにコンジュゲートした。溶解又は共役オレイン酸を、100uM超から500μMまでの最終濃度(好ましくは315μM)まで無因子培地に添加した。採取前に3~6日間、血清を用いて微小組織を成長させた。
【0232】
[微小組織の筋肉細胞への分化(
図19の工程9bの一般的説明)]
筋肉細胞分化のために、少なくとも14日間、20~50μMのオレイン酸/リノール酸(又は両方の組み合わせ)の存在下で微小組織を成長させた。培地を72~96時間毎に交換した。
【0233】
[微小組織の無血清培地への適合(
図19の工程7~9の一般的説明)]
無血清培地における成長に対する微小組織の適合を2つの並行した方法で行った:
【0234】
直接選択:凝集した細胞を500K~1M細胞/mlの濃度で無血清培地に直接入れた。培地を72時間毎に補充した。培地を補充するたびに単一細胞を培養物から除去した。
【0235】
徐々に適合させる:凝集した細胞を、10% FCSを補充したDMEMを含有する培地中に、無血清培地と1:1の比で混合した10%血清培地(例えば、血清250ml/無血清250ml)と共に、無血清培地を1:1の比で入れた。その後数週間で、血清含有培地は、無血清培地からの完全な脱落に達するまで、培養の7日後に50%減少した。7日後、混合物中の血清培地の一部を毎週半分ずつ減少させた(例えば、血清125ml/無血清375ml)。本発明者らは、細胞が無血清培地に完全に適合するまで、血清培地を徐々に半分ずつ減少させた)。
【0236】
GRO-I/EX-CELLシステムを使用する実験のために、培地を製造者の説明書に従って調製した。他のすべての実験では、溶解物を1gr/Lの濃度で培地に溶解した。全ての実験において、培地にエタノールアミン(20ng/L)、インスリン(100ug/L)、セレン(50ng/L)及びトランスフェリン(55ug/L)も補充した。培地には1×MEMNEAA(Biological industries,01-340-1B)も補充した。
【0237】
2mMのL-アラニン/L-グルタミン(Biological industries-03-022-1B)及び1mMのピルビン酸ナトリウム(Biological industries)。
【0238】
血清を置換するために、酵母/大豆溶解物の異なる組み合わせを使用した。これらの実験で使用した溶解物は、以下のいずれかであった:
【0239】
KERRYの:Hypep 1510(ID:S-2048780,Item:U1-5X99023)、SHEFF-VAX PLUS ACF(ID S-2048778,U1-5X00484.K1G)、SHEFF-VAX PF ACF(ID:S-2048777,U1-5X01143.K1G)、SHEFF-VAX PLUS PF ACF VP(ID:S-2048776,U1-5X01090).
【0240】
DIFCO:DIFCOのSelect Soytone(#15ABP196)、Bactoの酵母抽出物(#15ABP197)、BBLのPhytoneペプトン(#15ABP195)、BBLの酵母抽出物(#15ABP202)、Bacto Malt Extract(15ABP201)及びBacto TC yeastolate(#15ABP163)
【0241】
DIFCOのSelect Soytone(#15ABP196)、Bactoの酵母抽出物(#15ABP197)、BBLのPhytoneペプトン(#15ABP195)、BBLの酵母抽出物(#15ABP202)、Bacto Malt Extract(15ABP201)及びBacto TC yeastolate(#15ABP163)
【0242】
IRVINE Scientific(限外濾過大豆加水分解物#IR-96857E;限外濾過酵母加水分解物# IR-96863E)
【0243】
[脂肪酸組成]
アウトソースサービス(HUJI)を使用して、細胞の脂肪酸組成を分析した。
VOC分析-アウトソースサービス(HUJI)を使用して揮発性有機化合物分析を実施した。
栄養価分析は、アウトソースサービス(Bactochem)を使用して行った。
【0244】
<実施例1>
[cESCの回収及び増殖]
目的は、良好な官能特性及び栄養特性を有する異なる細胞型に分化する能力を保持しながら、完全懸濁液中で長期の複製及び成長が可能な幹細胞由来細胞株を確立すること、並びに大規模生産を支援することを可能にする様々な工学的関連属性を支援することであった。胚性幹細胞(ESC)は、無限の複製能力及び系統的可塑性を保持するので、目的は、さらなる選択、適合及び分化プロセスが行われる初期のcESCを得るために、公開されている単離プロトコル(26)に従ってニワトリ胚性幹細胞(cESC)に由来する細胞株を確立することであった。
【0245】
cESCの単離は、いくつかの修正を加えたAubel&Pain,2013のプロトコルに基づいて行った(1)。初代培養物を、新たに産まれたニワトリの卵の第X段階の胚盤から胚盤葉を単離することによって得た。次いで、胚性細胞をフィーダー細胞上に播種し、コロニーが容易に見えるまで、幹細胞支持培地中、5% CO
2インキュベーター中、39℃で10日間培養した(
図1a)。
【0246】
コロニーを機械的解離によって少なくとも10継代にわたって継代した。細胞の同一性及び形態の安定性を示すクローンのみをさらに使用した(
図1b)。
【0247】
<実施例2>
[フィーダー除去]
cESCの単離に成功した後、細胞をフィーダー層から徐々に移し、安定なフィーダーを含まないクローンを選択するために数継代成長させた。特に、フィーダー層の脱落段階後、細胞は、線維性細胞によって閉じ込められていないため、大きな有核細胞で構成されたよりコンパクトでない幹細胞コロニーを形成する傾向があった(
図1c-e)。この段階で、細胞は、サイクルあたり約24時間の予想倍加時間を示した。
【0248】
<実施例3>
[懸濁への適合及びスケールアップ条件]
食品産業に必要なレベルまでプロセスをアップスケールさせることを可能にする方法で大量の細胞を成長させることができるようにするために、食品製造に有利な新しい特性を開発しながら自己再生及び分化能力を維持しながら完全懸濁液中で成長できる細胞株を確立することが必要であった。これを行うために、細胞を、接着細胞としてではなく、懸濁中で成長するように徐々に適合させた。ESCを懸濁条件に移動させると、ESCは自然に胚体(EB)を形成し、これは成長するにつれてよりコンパクトになり、したがって表面から内側細胞層への栄養素及びシグナルの流れを遮断し、球の外側から中心への変化する勾配条件を作り出す。これにより、細胞は分化し、増殖能を失う。したがって、目的は、完全懸濁液中での成長時にコンパクトなEBを形成せず(
図2aのEBを参照)、プロセスの根底にある所望の幹細胞特性を依然として保持する細胞を選択することであった。これを行うために、細胞を接着表面から徐々に移し、わずかな振とうを課した。再び、約2~3ヶ月の期間にわたる連続的な選択によって、細胞は、他の接着分子を発現しながら異なる接着分子をダウンレギュレーションするように促され、凝集体を構成する各細胞の明確な定義を伴って、3Dの緩いラズベリー様凝集体の形成を経時的に可能にした(
図2F)。この段階で、細胞は非常に安定になり、倍加時間は1サイクル当たり18~20時間に短縮された。
【0249】
懸濁液中での成長への細胞の適合に続いて、本発明者らは、撹拌されたバイオリアクタ環境で再生可能な方法で連続した急速な成長を支援して、細胞が工業的スケールアップに適した能力を確保するのに必要な成長条件を特定し、最適化することを目的とした。このために、凝集体の完全性及び幹細胞特性を維持しながら、撹拌バイオリアクタ内で高速撹拌(先端速度200~400rpm)しながら、高い増殖速度で凝集体細胞として成長する細胞株の生成についていくつかのクローンを試験した。最適化のこのプロセスに続いて、すべての好ましい特性を有するいくつかの細胞株が生産され、これらの細胞を「SMCMC」と命名した。これらの細胞は、所望の形態、分化能を示し、1サイクルあたり10~12時間の倍加時間に達し、いくつかの成長条件は1サイクルあたり8時間を示した(
図3)。
【0250】
<実施例4>
[凝集体細胞の特性評価-不死性]
凝集体の自己再生能力(
図19の段階7)を、十分に確立された4つの基準に従って試験した。
【0251】
A.多能性マーカー発現。NANOG、OCT4及びTRA-I-60などの標準的な幹細胞因子の発現を、特異的免疫蛍光抗体染色並びにSSEA4、LIN28及びENS-1などの他の主要な多能性マーカーを使用することによって決定した。凝集体は、SSEA4を除く全ての多能性マーカーについて陽性であることが見出され、全ての多能性幹細胞に共通する必須の自己再生因子の存在が確認された(
図4)。
【0252】
B.アルカリホスファターゼ活性。アルカリホスファターゼ染色は、凝集体において陽性であることが見出され、それらの増殖性を示した(
図5a~b)。
【0253】
C.細胞の各継代/希釈後に完全なコンフルエントに達する能力を有する長期継代(>60)も試験した。凝集体を少なくとも180継代にわたって連続的に成長させ、成長及びマーカーの発現の安定性を示した。
【0254】
D.テロメラーゼ活性。幹細胞は、染色体の完全性を維持することを可能にするテロメラーゼ遺伝子を独自に発現するので、テロメラーゼ活性の検出もまた、自己再生能力における重要な基準と考えられている。凝集体は、TRAPezeテロメラーゼ検出キットを使用してテロメラーゼ活性を示す(
図5c)。
【0255】
<実施例5>
[凝集体細胞の安定性の特性評価]
幹細胞は、多数の自己再生経路を自然に活性化し、ポジティブシグナル伝達又は分化誘導刺激遮断のいずれかによって適切な環境を奪われると、無期限に成長し得る。凝集体細胞は、多能性細胞の重要な特徴を示し、それらを自然な不死性及び自己再生能力を有する安定な幹細胞株としてマーキングする。しかしながら、これらの細胞は、食品生産のための大量の収量を提供するために確立されたので、本発明者らは、これらの細胞が確立プロセスに沿ったある時点で形質転換されていないことを検証しようとした。
【0256】
この問題に対処するために、重要な細胞周期及び代謝遺伝子に注目して、凝集体の転写プロファイルを初期接着性cESC株と比較するために、RNA配列分析を行った。比較詳細分析は、RNAの合成及びプロセシング、タンパク質の翻訳、結合及び活性、全ての重要な代謝及び細胞周期プロセスに関連する遺伝子の変化が比較的変化しないことを示した。さらに、初期幹細胞株と比較して、テロメラーゼ活性の差もDNA修復機構も観察されなかった。MYC、AKT、EGFR、ELK、KRAS及びCDX2などの古典的な癌遺伝子の発現レベルも分析し、発現レベルの変化は示さず、凝集体においてダウンレギュレートしているものもあった。腫瘍抑制遺伝子の発現レベルも分析した。p53、APC、BRCA、MSH2及びWT1などの遺伝子は、2つの細胞群間で同様の発現レベルを示した(
図6)。侵襲的挙動を見ると、細胞運動性及び遊走に関連する遺伝子の発現レベルの低下が観察された。
【0257】
全体として、本データは、凝集体が自己再生のための幹細胞調節遺伝子経路の活性化によって自然に不死化され、発癌性形質転換の明白な証拠はないことを示唆する。
【0258】
<実施例6>
[凝集体細胞株の分化能]
最後に、凝集体が食品産業にとって可能な価値を有する異なる細胞型に分化する能力を保持することを確認するために、中胚葉系統の細胞を生産することを目的としたいくつかの分化プロトコルを試験した。
【0259】
脂肪を合成及び貯蔵する凝集体の能力を試験するために、細胞に脂肪細胞分化培地を最大4日間補充した。細胞形態の急速な変化は、細胞が脂肪滴を増強された様式で徐々に蓄積し始めたので、培地組成の変化の12時間後という早期に検出することができた(
図7A)。BODIPY染色により、分化した凝集体内の脂肪滴の存在も確認された(
図7B)。
【0260】
線維芽細胞が結合組織の異なるタンパク質を分泌することができるので、線維芽細胞を形成する凝集体の能力も試験した。線維芽細胞支持因子を含む分化培地を用いて、凝集体の線維芽細胞への分化を行った。細胞に線維芽細胞培地を72時間補充し、その後、基礎成長培地を添加した。次の48時間以内に典型的な上皮形態が観察された(
図8)。細胞は、30回を超える継代にわたって維持され得、それらの形態を保持し得る。線維芽細胞はまた、線維芽細胞表現型を維持する能力を伴って凍結及び解凍することができる。
【0261】
最後に、筋肉細胞に分化する凝集体の能力も試験した。筋肉分化培地中で凝集体を72時間増殖させ、次いで、細胞を、基礎成長培地を補充した非撹拌環境に移した。次の3~8日の間に、凝集体がプレートに緩く付着し、サイズが成長し、律動的な収縮が観察された。筋肉の分化及び収縮は、完全に浮遊する凝集体においても達成することができ(
図9)、肉生産のためのスケーラブルなプロセスへのこれらの細胞の寄与を裏付けている。
【0262】
<実施例7>
[生産プロセス]
(限定されないが、例示されるトリ幹細胞としての
図19を参照のこと)
大量に増殖及び成長させることができ、食品製造に有利な特性を示すニワトリ幹細胞由来株の単離及び確立の成功に続いて、本発明者らは、明確に定義された不変のシードトレインを生産プロセスの第1段階に提供するための細胞バンクを作製した。次の課題は、凝集体プラットフォームを使用して、スケーラブルなプロセスで鶏肉風味を有する原料を生産することであった。
【0263】
このタスクのために、慎重な培地調整、機械的プロセス開発、及び定期的な感覚試験を行った。
【0264】
[シードトレイン拡張ステージ]
生産プロセスの第1工程は、細胞バンクからの凝集体の新しいバッチを解凍することを含む。次いで、これらの細胞を適切な濃度に迅速に増殖させて、凝集体が微小組織に変化し、増殖し続け、食品産業のニーズに合わせてその同一性を変化させる生産の下流バイオリアクタに供給する。
【0265】
[微小組織形成段階]
所望の鶏肉風味を達成するためには、いくつかの特質が存在しなければならない。これらには、脂肪量及び組成、異なるタンパク質の発現、並びに特定の糖の存在が含まれる。慎重な試食及び化学分析による成熟培地の操作により、本発明者らは、強化された香ばしい鶏肉風味を有する完全懸濁液中で成長した微小組織を得るためのプロセスを開発することに成功した。成熟培地は、成長因子を添加せず、細胞に重要な多能性マーカーを喪失させ、一方、特異的マーカーを含む中胚葉系特性及び結合組織タンパク質の発現上昇を得る。それらの初期同一セ及びバイオリアクタにおける特異的培養条件のために、これらの微小組織は依然として迅速かつ広範囲に増殖し、少なくとも150回の集団倍加にわたって増殖することができる。
【0266】
これらの特性の制御は、バイオリアクタ内での撹拌及び0.85m/秒の最適チップ速度で0.25~1.70m/秒の範囲のチップ速度でのガス処理など、バイオリアクタ実行パラメータの規定された設定点によって行われる。
【0267】
<実施例8>
[無血清培地中で成長するための凝集体及び微小組織の無血清培地微小組織中での成長への適合]
培養肉生産における重要な課題は、細胞を培養するために使用される培地に関する。組織培養培地は元々、他の目的(例えば、研究、医薬品、臨床生産など)のために設計されたものであり、したがって培養肉生産の観点からいくつかの警告を伴う。培養培地のコストは、一般に、培養肉生産にとって最大の経済的負担である。さらに、利用可能なほとんどの培養培地は、ウシ胎児(又は他の動物由来)血清(FCS)を含有する。FCSの使用は、バッチ間の変動性が高く、(化学組成に関して)定義されていないという固有の欠点を有する。さらに、培養肉生産におけるそのような材料の使用は、それが生産される問題のある方法のために、一般の受け入れを遠ざける可能性が最も高い。これらの障害を克服するために、本発明者らは、凝集体及び微小組織を、微小組織の品質、安全性、及び固有の特徴を損なうことなく、無血清培地中で成長するように適合させることに着手した。これを達成するために、微小組織を無血清培地のいくつかの組み合わせで成長するように適合させた。初期段階として、本発明者らは、SIGMA-Merck製の市販の無血清系GRO-I/EX-CELLに微小組織を適合させた。このシステムは、FCSの代替薬剤として化学的に定義された酵母/植物加水分解物(EX-CELL)を補充した基礎培地(GRO-I)での細胞成長に基づく。適合プロセスは、バイオリアクタへの播種の予備段階として(7b)、又は撹拌バイオリアクタへの細胞のまさに播種の際に(
図19、段階8B)、培養培地からの血清の完全な滴下によって、又は経時的に血清濃度を徐々に枯渇させることによって行われた。どちらの場合も、細胞((凝集体)又は微小組織)は、無血清培地(フラスコ及びバイオリアクター内)での成長を適合させることができた。約14日間、細胞を新しい培地に適合させ、元の12時間の倍加時間が回復し、高レベルの細胞生存率を保持した(
図10)。同様に、本発明者らはまた、酵母、植物ペプトン及び加水分解物を補充した基礎培地の他の組み合わせで成長するように細胞を適合させることができた。無血清培地への細胞の適合に首尾よく使用された混合物の中で、本発明者らは、Ex-Cell溶解物が補充されたDMEM(高グルコース)、Ex-Cell溶解物が補充されたDMEM/F12、Ex-Cell溶解物が補充されたDMEM(低グルコース)、KERRYグループによって製造された大豆及び酵母溶解物の組み合わせが補充されたDMEM(高グルコース)を特定することができた。このプロセスで試験に成功した溶解物は、これらの4つの生成物の全部又は一部の組み合わせのいずれかであった:Hypep 1510(ID:S-2048780、Item:U1-5X99023)、SHEFF-VAX PLUS ACF(ID S-2048778、U1-5X00484.K1G)、SHEFF-VAX PF ACF(ID:S-2048777、U1-5X01143.K1G)、SHEFF-VAX PLUS PF ACF VP(ID:S-2048776、U1-5X01090)。本発明者らはまた、日常的に使用されている基礎培地(DMEM HG/LG、DMEM/F12、RPMI 1640)と、FUJIFILM-IRVINE Scientificによって製造された大豆及び酵母加水分解酵素との組み合わせ(限外濾過大豆加水分解物#IR-96857E;限外濾過酵母加水分解物# IR-96863E)に、微小組織を首尾よく適合させた。さらにまた、DIFCOのSelect Soytone(#15ABP196)、Bactoの酵母抽出物(#15ABP197)、BBLのPhytoneペプトン(#15ABP195)、BBLの酵母抽出物(#15ABP202)、Bacto Malt Extract(15ABP201)及びBacto TC yeastolate(#15ABP163)の様々な組み合わせを補充した基礎培地(DMEM HG/LG、DMEM/F12、RPMI 1640)で成長するように細胞を適合させた。後者のプロセスの目的のために、酵母由来溶解物を1つ又はいくつかの植物由来溶解物と組み合わせた。全ての実験において、培地にエタノールアミン(20ng/L)、インスリン(100ug/L)、セレン(50ng/L)及びトランスフェリン(55ug/L)も補充した。培地にはまた、1X MEM NEAA(Biological industries,01-340-1B)、2mMのL-アラニン/L-グルタミン(Biological industries-03-022-1B)及び1mMのピルビン酸ナトリウム(Biological industries)も補充された。本明細書に提示される結果は、培養培地中の血清への置換として大豆及び植物加水分解物を補充した基礎培地に基づく複数の組み合わせを適合させる微小組織の能力を強調している。
【0268】
<実施例9>
[微小組織の分子特性評価]
微小組織形成段階(
図19の8b)の間、細胞は、NANOG、OCT4、LIN28などのそれらの多能性マーカーの一部を失うが、SSEA3は失わず(
図11)、各凝集体を取り囲み、微小組織を作り出す特定のニッチを形成する細胞外マトリックスタンパク質(ECM)の脂肪貯蔵及び分泌などのいくつかの中胚葉系特性を獲得する。これらのECMタンパク質はまた、それらの強化された鶏肉風味及び一緒に調理されたときに塊を形成する能力を発達させる微小組織に寄与する。
【0269】
微小組織細胞に由来する微小組織は、異なる中胚葉系特性を示す。これらには、ECMを構成し、組織発生中に細胞を組織化するフィブロネクチン、ラミニン及びコラーゲンのような構造タンパク質が含まれる。また、細胞は、胚中胚葉の形成及び維持の主要調節因子であるSNAI1を発現する。最後に、細胞はトリグリセリドを合成及び貯蔵する能力を有する。分子機能分析及びKEGG分析はまた、微小組織がWntカノニカル及び非カノニカル関連因子について濃縮されていることを明らかにした。Wntシグナル伝達は、遺伝子発現分析によって示唆されたように、間葉の同一性の獲得と密接に関連している。
【0270】
細胞培養物が肉消費の体験を再現する能力における1つの重要な因子は、これらの細胞のテクスチャ及び味に有意に寄与する特定の分子の発現に依存する。これらの局面に対する主な寄与は、細胞の膜に固定された又は細胞によって分泌されたECM分子の存在に起因する。実際、異なる筋肉組織のテクスチャ間の変動性の大部分は、その線維中のコラーゲン含有量の直接的な結果である(32)。コラーゲンスーパーファミリーは、多数の誘導体を有する28個のメンバーからなる。コラーゲンは原線維に付着し、他のECM及び機能的因子との相互作用を介して機械的支持並びに多数の生物学的活性の両方を提供する。特に、RNA-seq解析では、コラーゲン-ファミリーメンバー及びコラーゲン関連タンパク質、例えばCol2A、Col8A2及びCol9A2の上方制御が同定された。さらに、RNA seq分析は、さらなるECM及び細胞接着分子による有意な濃縮を明らかにした。コラーゲン及びプロテオグリカン相互作用、例えばHSPGS、及びCSPG、及びラミニン(これらはすべて微小組織において上方制御する)は、細胞のマトリックス組織化、構造、及び機能の基礎にあるので、この知見は特定の重要性を保持する。
【0271】
重要なECM因子の発現を確認するために、ECM関連抗体特異的スクリーニングを行った。スクリーニングの結果により、微小組織における別個のコラーゲン及び他のECM分子の濃縮が確認された(
図11は
図19の工程8bを例示する)。
【0272】
<実施例10>
[脂肪細胞及び筋肉細胞の増強のための微小組織の分化]
最終的な肉製品の正確なパラメータを制御するために、次の工程は、脂肪、筋肉、又は結合組織のいずれかへの分化の割合を指示及び調整することを可能にするプロセスを開発することであった。この目的のために、異なる濃度の脂肪酸の異なる組み合わせを有するいくつかの細胞株を培養することを含むプロセスが開発された。
【0273】
処理には、20um~300umのオレイン酸(OA)又はリノール酸(LA)のいずれか及びこれら2つの組み合わせを補充した分化培地を用いて細胞を成長させることが含まれた。所見は、50uM未満の脂肪酸(FA)濃度での長期成長が細胞の増殖を可能にすることを明らかにした。低濃度の脂肪酸(FA)中での微小組織の培養は、微小組織が96時間以内に高度に再現性のある様式で識別可能な突出を発達させる(
図12A-E)。さらなる分析により、筋肉分化の開始が、FAへの導入の4~7日後という早期に、MyHC抗体を使用する免疫染色による突出の出現前に起こることが明らかにされた(
図12A-E)。プライミングを受けた細胞は、成熟後、4~7日もの早期に筋肉分化の初期マーカーを発現し始めたが、細胞は依然として増殖性であるので、段階を数週間、例えば3週間に延長することができた。
図12A-E及び
図13A-Bは、段階9bから取られており、GFの添加で始まる筋肉分化の開始を示している。したがって、この段階が延長された場合、より多くの筋肉細胞が証拠となり(
図14A-C)、又は脂肪蓄積を増強するためにより高濃度のFAの添加が使用された。MyHC染色(
図12A-E)は筋肉分化を示す。微小組織突出上の筋肉前駆体の存在を確認するために、本発明者らはまた、筋肉前駆体マーカーPax7及びL4に対してABを使用して細胞を染色した。両方の場合において、突出内の細胞が陽性に染色された(
図13A-B)。低用量のFAの存在下で培養された微小組織のさらなる染色は、依然として懸濁成長条件にある間に、微小組織の上での筋肉成熟を確認することができた(MyHC染色、
図14A-C)。特に、微小組織上部の成熟収縮筋の存在は、FAの存在下で14日間成長する微小組織の同期収縮を記録することによって実証された(データは示さず)。さらに、微小組織内の筋肉前駆体が最終的に成熟筋肉に分化する能力を、懸濁状態及び接着状態の両方のトロポニン-T染色によって決定した(
図15A-B)。
【0274】
微小組織の異なる位置における筋肉前駆部位の出現に加えて。50~200uMのFA濃度は、筋肉分化が起こる領域を除いて、微小組織内の脂肪貯蔵を可能にする。より多量のFA(>200uM)で細胞を培養することは、微小組織の脂肪蓄積組織への全体的かつ最終的な分化をもたらし、最終的に培養物を増殖停止に至らせる。
【0275】
本発明者らは、低用量のオレイン酸若しくはリノール酸のいずれか又は組み合わせによる長期処理が筋肉分化を促進するだけでなく、同時に微小組織細胞の一部を駆動して脂肪を蓄積させることを見出した(
図19の工程9b)。微小組織は、脂質染色(Bodipy)と一緒にトロポニンT ABで二重染色され、脂肪系統又は筋肉系統のいずれかに分化した微小組織内の顕著な相互排他的集団を示した(
図16)。さらに、微小組織を接着性成長条件に移すと、成熟脂肪細胞及び成熟遅延筋肉線維の両方が分化した(
図17A-B参照)。2つの集団は、細胞骨格組織化に基づいて容易に区別することができる(
図18A-E)。脂肪蓄積のためのさらなる染色は、微小組織が脂肪組織及び筋肉組織の両方に並行して分化する能力を明確に示す(
図18A-E)。これらの特徴は、必要に応じて脂肪及びタンパク質の割合を変化させることによって原料の特徴を制御することを可能にするので、培養肉生産のための微小組織の分化プロセスを非常に好ましいものにする。
【0276】
<実施例11>
[微小組織の官能特性及び栄養特性]
調理中、食品の異なる成分間で異なる化学反応が起こる。これらの反応の最も重要で複雑な反応の1つはメイラード反応であり、アミノ酸が還元糖と反応して、深い肉のような風味及び芳香を担う新しい分子化合物を形成する。
【0277】
各肉が調理中に生成する風味送達及び独特の芳香を制御する別の主要な因子は、脂肪含有量及び組成である。
【0278】
培地組成物(無因子培地及びFAが補充された分化培地)は、微小組織内の所望の成分の形成を可能にし、アミノ酸組成分析並びにガスクロマトグラフィ質量分析による脂肪酸プロファイリングから視認可能な鶏肉風味の開発のための類似のアミノ酸及び脂肪酸プロファイルを生成する(表1-3)。
【0279】
製品の複数回の試食は、熟練の試食者及びシェフによって行われ、強化された味の良い鶏肉風味の試食体験が報告された。これを分析的に示すために、調理済み製品及び調理済み鶏胸肉に対して予備揮発性化合物(VOC)分析を行った。結果は、VOC放出の高度に並行したパターンを示し、2つの試料間で同様の芳香の発生を示した(
図19)。
【0280】
最後に、本発明者らは、製品の栄養価を検証したいと考えた。水分、炭水化物、タンパク質、脂肪、及びミネラルなどの食品のすべての主要成分について分析した。全ての値は、微小組織の全体的な栄養組成が鶏肉の栄養組成と非常に同等であることを示している(表3)。
【0281】
【0282】
【0283】
【0284】
本発明をその特定の実施形態と併せて説明してきたが、多くの代替、修正及び変形が当業者には明らかであることは明らかである。したがって、添付の特許請求の範囲の主旨及び広い範囲に含まれるすべてのそのような代替、修正及び変形を包含することが意図されている。
【0285】
本明細書中で言及されるすべての刊行物、特許及び特許出願は、あたかも各個々の刊行物、特許又は特許出願が参照により本明細書中に組み込まれることが言及されるときに具体的かつ個別に言及されたかのように、その全体が参照により本明細書中に組み込まれることが本出願人(ら)の意図である。さらに、本出願における任意の参考文献の引用又は特定は、そのような参考文献が本発明の先行技術として利用可能であることの承認として解釈されるべきではない。セクションの見出しが使用される限り、それらは必ずしも限定的であると解釈されるべきではない。さらに、本出願の任意の優先権書類(複数可)は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【国際調査報告】