(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-18
(54)【発明の名称】胃内滞留型薬物送達系
(51)【国際特許分類】
A61K 9/46 20060101AFI20240111BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20240111BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20240111BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20240111BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20240111BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20240111BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20240111BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20240111BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20240111BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20240111BHJP
【FI】
A61K9/46
A61K47/36
A61K47/38
A61K47/02
A61K9/48
A61K9/20
A61K9/14
A61K9/16
A61K9/10
A61K47/34
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023541887
(86)(22)【出願日】2022-01-12
(85)【翻訳文提出日】2023-08-31
(86)【国際出願番号】 EP2022050524
(87)【国際公開番号】W WO2022152741
(87)【国際公開日】2022-07-21
(31)【優先権主張番号】202141001582
(32)【優先日】2021-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519454822
【氏名又は名称】デュポン・ニュートリション・ユーエスエイ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】ビナイ・ミューリー
(72)【発明者】
【氏名】ラットゥナーカル・パララプ
(72)【発明者】
【氏名】アトゥール・アショック・クマール・ロヘイド
【テーマコード(参考)】
4C076
【Fターム(参考)】
4C076AA16
4C076AA22
4C076AA29
4C076AA31
4C076AA53
4C076DD25V
4C076EE31
4C076EE32
4C076EE36
4C076FF31
4C076FF68
(57)【要約】
ラフト形成特性を有する医薬又は栄養補助組成物は、
(a)アルギン酸ナトリウム、
(b)コロイド状微結晶セルロース、
(c)重炭酸塩、及び
(d)炭酸塩を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラフト形成特性を有する医薬又は栄養補助組成物であって、
(a)アルギン酸ナトリウム、
(b)コロイド状微結晶セルロース、
(c)重炭酸塩、及び
(d)炭酸塩を含む、組成物。
【請求項2】
前記アルギン酸ナトリウムは、Brookfield2番スピンドルを用いたBrookfield RV型粘度計によって測定して、20℃で、1重量%の水溶液として、3~10mPa.sの範囲の粘度を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記アルギン酸ナトリウムは、≧50%、好ましくは65~75%のグルロン酸含有量を有する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
アルギン酸ナトリウムの濃度は、前記組成物中の固形分の乾燥重量を基準に25~50%の範囲内である、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記コロイド状微結晶セルロースは、カルボキシメチルセルロース又はグアーガムと共に共処理されるものである、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記共処理されたコロイド状微結晶セルロースは、微結晶セルロース対カルボキシメチルセルロースの比を85:15~90:10の範囲で有する、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
コロイド状微結晶セルロースの濃度は、前記組成物中の固形分の乾燥重量を基準に8~20%の範囲内である、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記重炭酸塩は重炭酸ナトリウムである、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記重炭酸塩の濃度は、前記組成物中の固形分の乾燥重量を基準に15~30%の範囲内である、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記炭酸塩は炭酸カルシウムである、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記炭酸塩の濃度は、前記組成物中の固形分の乾燥重量を基準に8~20%である、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
分子量100,000~7,000,000ダルトンのポリエチレンオキシドを更に含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
ポリエチレンオキシドの濃度は、前記組成物中の固形分の乾燥重量を基準に1~10%の範囲内である、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
ヒドロキシプロピルメチルセルロースを更に含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
ヒドロキシプロピルメチルセルロースの濃度は、前記組成物中の固形分の乾燥重量を基準に1.5~10%である、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
水性懸濁液、又はカプセル、錠剤、粉末、若しくは粒剤、好ましくは水性懸濁液又は咀しゃく錠剤の形態である、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
医薬又は栄養補助活性成分を更に含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
医薬又は栄養補助活性成分の持続的な又は標的化された放出の提供に使用するための、請求項1~17のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルギン酸ナトリウム及び微結晶セルロースを含む、ラフト形成特性を備える組成物に関する。本組成物は、胃食道疾患の治療に、また、活性成分の調節された放出を提供する胃内滞留型薬物送達系として、有用であり得る。
【背景技術】
【0002】
胃食道逆流性疾患は、全世界における不快感の主な源であり、制酸剤、H2受容体拮抗剤、及びプロトンポンプ阻害剤、並びに、摂取して胃液中の酸に曝露されると胃内容物の上を浮遊するラフトを形成する、アルギン酸塩及び重炭酸塩/炭酸塩を含有する抗逆流組成物により医学的に治療されてきた。ラフトは、胃内容物が食道に流れ込むのを防ぎ、その結果、食道粘膜を炎症から保護する。アルギン酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、及び炭酸カルシウムを含む既知のラフト形成抗逆流組成物としては、Gaviscon(登録商標)及びGaviscon(登録商標)Advanceが挙げられ、どちらもReckitt Benckiser Healthcareから入手可能である。
【0003】
浮遊性組成物は、その長期の胃中滞留時間のために持続放出性薬物送達系としても提案されてきており、これらは活性成分を胃腸環境へと緩慢に放出し、活性成分のバイオアベイラビリティを改善し、投薬頻度を減少させる。様々な浮遊性の薬物送達の選択肢の概要は、S.Sharma et al.,International Journal of Research in Pharmaceutical and Biomedical Sciences 2(3),Jul-Sep 2011,pp.954-958で見出される。1つの選択肢は、アルギン酸ナトリウム又は別のゲル形成親水コロイド及び重炭酸塩又は炭酸塩を含むゲル形成溶液である。胃液に接触すると、閉じ込められた二酸化炭素の泡を含有する粘性のゲルが形成され、胃内容物の上を浮遊する。
【0004】
長期の胃中滞留時間及び良好な弾性を確保するために、胃に形成されたラフトに有利な特性を付与する組成物を提供することが重要である。したがって、本発明の目的は、改善されたラフト強度及び/又はラフト弾性を示す、ゲル形成剤としてアルギン酸ナトリウムを含む胃内滞留型薬物送達系を提供することである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
驚くべきことに、コロイド状微結晶セルロースをアルギン酸ナトリウム組成物に添加することで、胃中条件を模倣するインビトロ試験に供した時に、ラフトの厚さ、強度、及び/又は弾性の点で強化されたラフト特性が得られることが判明した。
【0006】
したがって、本発明は、ラフト形成特性を有する医薬又は栄養補助組成物であって、
(a)アルギン酸ナトリウム、
(b)コロイド状微結晶セルロース、
(c)重炭酸塩、及び
(d)炭酸塩を含む、組成物に関する。
【0007】
別の態様では、本発明は、医薬又は栄養補助活性成分の持続的な又は標的化された放出の提供に使用するための、成分(a)~(d)を含む組成物に関する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】模擬胃液中で本発明の組成物から形成されたラフトのゲル強度を測定するために用いられる、TA-XT2装置の概略図である。
【
図2】
図2A-Bは、ラフト弾性を判定するための実験構成を示し、
図2Aはラフトの形成を示し、
図2Bはラフトが混合に供されるタンブルミキサーを示す。
【
図3】本発明の組成物を調製するためのプロセスの工程を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
定義
本明細書の文脈において、用語「ラフト形成特性」とは、胃酸と接触した時胃内容物の上に浮遊する障壁層を作る本発明の組成物の能力を意味することが意図される。
【0010】
用語「ラフト強度」は、
図1に示す装置を用いて、模擬胃液中に形成されたラフトを貫いてプローブを引き上げるのに必要な単位gの力として決定される。
【0011】
用語「ラフト弾性」は、実験構成において物理的運動に供された時、例えばタンブルミキサーの中で活発な運動に供された時(
図2Bを参照)に、ラフトが破断するまでの抵抗を意味することが意図される。ラフト弾性は、一般的にはラフト強度を増加させると改善する。
【0012】
用語「コロイド状微結晶セルロース」(以下、コロイド状MCC又はcMCC)は、摩擦に供されたMCCであって、MCC粒子のD50が、粒径分析器中で静的光散乱によって測定して約0.1~10マイクロメートルであり、小粒子は光を大角度で散乱させ、大粒子は光を小角度で散乱させる、MCCを意味することが意図される。cMCC試料によって生成された散乱パターンは記録され、ミー散乱理論を適用することによって粒径の分布を計算することができる。
【0013】
粒径分布に関して使用される用語「D50」は、試料の体積の50%がそれより小さく、試料の体積の50%がそれよりも大きい粒子の直径を意味する。
【0014】
用語「浮遊」は、ラフトが胃液の上を浮遊する能力を指すために用いられる。完全な浮遊は、全ての不溶性物質が胃液の表面まで浮上した時に達成され、組成物を胃液に添加してから約1分間以内に生じた時にすぐ評価される。
【0015】
実質的に1つの塊のラフトを試験胃液から除去することが可能である場合、組成物から形成されるラフトは「凝集性である」と示される。
【0016】
実施形態
アルギン酸ナトリウムは、本発明の組成物にゲル形成剤として含まれる。
【0017】
アルギン酸塩は、組成及び配列が広範に変化する(1→4)結合したβ-D-マンヌロン酸(M)残基及びα-L-グルロン酸(G)残基の線状二元コポリマーのファミリーである。アルギン酸塩の系列構造(sequential structure)に対する研究は、幅広く異なる組成の多くの画分、すなわち、いくつかの主な画分を挙げるとグルロン酸及びマンヌロン酸のホモポリマー分子(双方のモノマーのほぼ等しい割合が多数のMG又はGM二量体残基を含有する)を明らかにする。したがって、アルギン酸塩は、それぞれMブロック及びGブロックと呼ばれるM及びGのホモポリマー領域から構成され、交互構造の領域、MGブロック又はGMブロックが点在する、真のブロックコポリマーである。
【0018】
市販のアルギン酸塩は、主に、ラミナリア・ヒペルボレア(Laminaria hyperborea)、マクロシスチス・ピリフェラ(Macrocystis pyrifera)、ラミナリア・ディギタータ(Laminaria digitata)、アスコフィラム・ノドサム(Ascophyllum nodosum)、ラミナリア・ジャポニカ(Laminaria japonica)、エクロニア・マキシマ(Eclonia maxima)、レッソニア・ニグレセンス(Lessonia nigrescens)、及びダービリア・アンタルティカ(Durvillea Antarctica)から選択される海藻種から産生される。工業環境では、通常、アルギン酸塩生成物の仕様書に記載の粘度及びpHに加えて、定義された条件下でのゲル強度を測定して、Mブロック/Gブロック比を推定する。
【0019】
アルギン酸塩は、少なくとも50%のグルロン酸残基(G)、より好ましくは65~75%のGを含むアルギン酸ナトリウムであることが好ましい。こうしたアルギン酸塩は、二価カチオン、例えばCa2+を含む強力なゲルを形成することが判明している。G含有量が65~75%のアルギン酸塩は、L.ヒペルボレア(L.hyperborea)から抽出され得る。
【0020】
アルギン酸ナトリウムは、好ましくは、Brookfield2番スピンドルを用いたBrookfield RV型粘度計によって測定して、20℃で、1重量%の水溶液として、3~10mPa.sの範囲の粘度などの低い粘度を有するものである。
【0021】
本発明の組成物に含まれるべき特に好ましいアルギン酸ナトリウムは、PROTANAL(登録商標)LFR 5/60であり、これは、65~75%のG含有量と、Brookfield2番スピンドルを用いたBrookfield RV型粘度計によって測定して、20℃で、1重量%の水溶液として、3.5~7mPa.sの粘度と、を有する。
【0022】
アルギン酸ナトリウムは、組成物中の固形分の乾燥重量を基準に25~50%の濃度で存在し得る。
【0023】
微結晶セルロース(MCC)は、有機及び無機汚染物質を実質的に含まない、白色、無臭、無味で、比較的自由に流動する結晶性粉末である。それは、繊維質の植物材料からパルプとして得られるアルファセルロースを、典型的には鉱酸を用いて加水分解することによって製造される、精製され、部分的に解重合されたセルロースである。それは、セルロース原線維の非晶質領域(又は準結晶領域)を除去することによって得られる、主として結晶性凝集体からなる結晶性の高い粒子状セルロースである。MCCは、食品、栄養補助食品、医薬品及び化粧品などの様々な用途に使用される。
【0024】
コロイド状MCCを調製するために好適な出発原料としては、例えば、さらし亜硫酸パルプ及び硫酸塩パルプ、トウモロコシの皮、バガス、わら、綿、綿リンター、亜麻、大麻、ラミー、発酵セルロースなどの木材パルプが挙げられる。微結晶セルロースは、セルロース源、好ましくは繊維状植物材料由来のパルプ形態のアルファセルロースを、鉱酸、好ましくは塩酸で処理することによって製造することができる。酸はセルロースポリマー鎖のあまり秩序化されていない領域を選択的に攻撃し、それによって、微結晶セルロースを構成する微結晶凝集体を形成する結晶部位を露出させ、遊離させる。次に、これらを反応混合物から分離し、洗浄して、分解した副生成物を除去する。一般に40~75パーセントの水分を含有する、得られた湿塊は、当該技術分野において、加水分解セルロース、加水分解セルロースウェットケーキ、レベルオフDPセルロース、微結晶セルロースウェットケーキ、又は単なるウェットケーキを含む、いくつかの名称で呼ばれる。好ましくは、凝集MCCは酸加水分解され、水中で25~60重量%である。
【0025】
ウェットケーキを乾燥させ、水を除去して得られる生成物の微結晶セルロースは、白色、無臭、無味で、比較的自由流動する粉末であり、水、有機溶媒、希アルカリ及び酸に不溶性である。微結晶セルロース及びその製造の説明については、米国特許第2,978,446号明細書を参照されたい。
【0026】
本発明の目的のために、コロイド状MCCは、加水分解されたMCC凝集微結晶を、一般に「ウェットケーキ」として知られる高固形分水性混合物の形態で、凝集セルロース微結晶をより微細に分割された微結晶粒子に実質的に細分する摩砕プロセス、例えば押出に供するによって調製することができる。角質化を防ぐために、保護親水コロイドを、摩砕の前、摩砕の間、又は摩砕の後であるが、乾燥の前に添加してもよい。保護親水コロイドは完全に又は部分的に、より小さいサイズの粒子間の水素結合又は他の引力を遮断して、容易に分散可能な粉末を提供する。コロイド状MCCは、通常、分散した固体をほとんど又は全く沈降させずに安定な懸濁液を形成する。カルボキシメチルセルロースは、これらの目的のために使用される一般的な親水コロイドであり(例えば、米国特許第3,539,365号明細書(Durandら)を参照されたい)、コロイド状MCC生成物は、例えば、DuPontからAVICELの商標で販売されている。本発明の組成物に含めるのに特に好ましいコロイド状MCCは、MCC対CMCの比が85:15~90:10の範囲のCMC共摩耗型MCC(MCC co-attrited with CMC)(例えばAVICEL(登録商標)RC-591)、及び、MCCがグアーガムと共処理されているAVICEL(登録商標)CE15である。後者のMCC生成物は、咀しゃく錠剤の配合に特に好適である。
【0027】
本発明の組成物においては、コロイド状MCCは、安定化剤及び懸濁化剤として作用する。
【0028】
コロイド状MCCは、組成物中の固形分の乾燥重量を基準に8~20%の濃度で存在し得る。
【0029】
本発明の組成物は、組成物が胃内容物の上を浮遊するように、胃酸と接触すると十分な量の二酸化炭素を生成する量の重炭酸塩及び炭酸塩を更に含む。重炭酸塩は、好ましくは、組成物中の固形分の乾燥重量を基準に15~30%、より好ましくは18~25%の濃度で存在する。重炭酸塩は、重炭酸カリウム又は重炭酸ナトリウム、好ましくは重炭酸ナトリウムから選択され得る。
【0030】
炭酸塩は、好ましくは、組成物中の固形分の乾燥重量を基準に8~20%の濃度で存在する。炭酸塩は、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、又は炭酸アルミニウム、好ましくは炭酸カルシウムから選択され得る。カルシウムイオンは、胃酸中に放出され、アルギン酸ナトリウムと相互作用して非水溶性のアルギン酸カルシウムを形成することにより、ラフトの形成及びラフト強度の増加に寄与する。
【0031】
驚くべきことに、本組成物のラフト特性は、高分子量(100,000~7,000,000ダルトン)のポリエチレンオキシドを添加することによって改質され得ることが判明した。アルギン酸ナトリウム、及びCMCと共処理されたコロイド状MCCを含む高分子量のポリエチレンオキシドを本発明の組成物に添加することにより、ラフト強度及び弾性の増加がもたらされる(下記の実施例2を参照)。高分子量のポリエチレンオキシドはまた、コロイド状MCC及び非水溶性活性成分などの、組成物中の非水溶性成分のための懸濁化剤として作用する。本発明の目的に好適なポリエチレンオキシドの例は、DuPontから入手可能なPOLYOX(商標)Sentryである。ポリエチレンオキシドは、組成物中の固形分の乾燥重量を基準に1~10%の濃度で存在し得る。
【0032】
本発明の組成物のラフト特性は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を添加することによっても改質することができる。HPMCは、水性組成物中で増粘剤として用いられ、その粘度を増加させるセルロースエーテルである。粘度の増加は、水中のHPMCの分子量及び濃度に依存する。HPMCは、組成物中で非水溶性成分のための懸濁化剤としても作用することができる。好適なHPMCの例は、METHOCEL(商標)Kグレード、特に、ASTM2363-79(2006年再承認)に従い、ウベローデ粘度計中で20℃の水中2%溶液として測定して、メトキシル置換が19.0~24.4%、ヒドロキシプロポキシル置換が7.0~12.0%、及び粘度が75,000~140,000mPa.sのHPMCである、METHOCEL(商標)K100Mである。METHOCEL(商標)KグレードのHPMCは、DuPontから市販されている。HPMCは、組成物中の固形分の乾燥重量を基準に1.5~10%の濃度で存在し得る。
【0033】
本発明の組成物は、このように胃食道逆流性疾患の治療を提供するため、或いは、胃内滞留型薬物送達系(GRDDS)として、医薬又は栄養補助活性成分の持続的な又は標的化された放出を提供するため、のいずれかに用いられ得る。GRDDSは、好適には、水性懸濁液、又はカプセル、錠剤、粉末、若しくは粒剤の形態、好ましくは水性懸濁液又は咀しゃく錠剤の形態であり得る。GRDDSとして好ましく投与され得る活性成分の例は、クルクミンなどの栄養補助食品、ビタミンD若しくは葉酸塩などのビタミン、プレバイオティクス若しくはプロバイオティクス、及びマグネシウム、亜鉛、若しくは鉄などのミネラル類、又は、メトホルミン塩酸塩などの抗糖尿病剤、エリスロマイシン、セファロスポリン、ミノサイクリン、アモキシシリン、及びシプロフロキサシンなどの抗生物質、アセトアミノフェン、イブプロフェン、ケトプロフェン、インドメタシン、又はナプロキセンなどの鎮痛剤及び抗炎症剤、水酸化アルミニウム及び水酸化マグネシウムなどの制酸剤、ラニチジン、シメチジン、及びファモチジンなどのH2受容体拮抗剤、マレイン酸クロルフェニラミン、塩酸ジフェンヒドラミン、及び塩酸トリプロリジンなどの抗ヒスタミン剤、サリチル酸、アスピリン、チオペンタール、セコバルビタール、及びアンチピリンなどの酸性薬物及び非常に弱塩基性の薬物から選択される活性薬剤成分などである。
【0034】
本発明の組成物は、
図3に概略図で記載される通りに、第1の容器中で、水並びに任意選択的に水溶性成分及び/又は活性成分の中に重炭酸塩及び炭酸塩を分散させ、混合しながらアルギン酸ナトリウムを添加する工程と、
第2の容器中で、水の中にコロイド状MCCを分散させてこれを活性化させる工程と、
第1の容器からの重炭酸塩、炭酸塩、及びアルギン酸ナトリウムの分散体を、第2の容器からのコロイド状MCCの分散体に添加する工程と、
任意選択的に、防腐剤及び香料を添加し、水で容積を満たす工程と、によって調製することができる。
【0035】
錠剤などの剤形を作製するためには、必要な成分を好適なタンブラーミキサー中でブレンドし、錠剤を所望のサイズに圧縮する。
【0036】
本発明を、以下の実施例でより詳細に説明する。
【実施例】
【0037】
方法
ラフトの弾性は、F.C.Hampson et al.,International Journal of Pharmaceutics 294,2005,pp.137-147に従い、200mlのガラス瓶の中で、水性懸濁液としての本発明の組成物を予め37℃で平衡に保った150mlの0.1M HClに添加することでラフト形成することにより、測定した。ラフトを30分間発生させ(
図2A)、続いて瓶に蓋をかぶせ、
図2Bに示すように胃の撹拌を模擬するために20rpmで回転するように設定されたタンブルミキサー(V-ブレンダーに連結した)に入れた。2、5、10、20、30、45、及び最大で60分間、又はラフトがこれ以上検出できなくなる時間まで、の合計撹拌期間の後に、ラフトの厚さ、凝集性、健全性を視覚的に評価した。視覚的評価のために、ラフトを、2つ以上の直径が少なくとも15mmの浮遊するゲルとして定義した。ラフトの弾性は、ラフトが観察された最終時点として定義した。
【0038】
ラフト強度は、F.C.Hampson(上記)に従い、250mlのガラスビーカーの中で、本発明の組成物を、37℃に維持した150mlの0.1M HClに添加することで測定した。各ラフトは、ラフト発生の全期間にわたりビーカー中で直立で保持されたL字型ステンレス鋼製ワイヤープローブの周りに形成された。30分間ラフトを発生させた後で、ビーカーをTA-XTテクスチャーアナライザー(Stable Micro Systems,UK)の台に置き、ワイヤープローブをテクスチャーアナライザーのアームに引っ掛けて、毎秒5mmの速度でラフトを垂直に貫いて引き上げた。ラフトを貫いてワイヤープローブを引き上げるのに必要な力(g)をテクスチャーアナライザーで記録した。TA-XT装置の概略図を
図1に示す。
【0039】
実施例1
アルギン酸ナトリウム及びコロイド状MCCの水性懸濁液
図3に概略を説明する通り、水性懸濁液を以下の成分から調製した。
【0040】
【0041】
上記の方法に従い試験すると、組成物は、以下のラフト特性を有することが判明した。
【0042】
【0043】
これらの結果を、類似した条件下での比較実施例A(市販の組成物(Gaviscon(登録商標)Advance))で得たラフト特性と比較した。比較実施例Aは以下の成分を含む。
【0044】
【0045】
上記の方法に従い試験すると、組成物は、以下のラフト特性を有することが判明した。
【0046】
【0047】
この結果から、コロイド状MCCを含有する実施例1の本発明の組成物は、ラフト強度及びラフトの厚さの点において比較実施例Aよりも優れているが、ラフトの弾性は比較実施例Aのほうがいくらか高いものと思われる。
【0048】
実施例2
アルギン酸ナトリウム、コロイド状MCC、及びポリエチレンオキシドの水性懸濁液
図3に概略を説明する通り、水性懸濁液を以下の成分から調製した。
【0049】
【0050】
上記の方法に従い試験すると、組成物は、以下のラフト特性を有することが判明した。
【0051】
【0052】
この結果から、コロイド状MCC及びポリエチレンオキシドの両方を含有する実施例2の本発明の組成物は、ラフト強度、ラフト弾性、及びラフト厚さの点において比較実施例Aよりも優れているものと思われる。
【0053】
実施例3
アルギン酸ナトリウム、コロイド状MCC、及び任意選択的にポリエチレンオキシドを含有する咀しゃく錠剤
以下の成分を含有する咀しゃく錠剤を調製した。
【0054】
【0055】
上記の方法に従い試験すると、この錠剤処方は、以下のラフト特性を有することが判明した。
【0056】
【0057】
Polyoxを含有する組成物では、観察されるラフト強度はより低かったが、迅速な浮遊、並びに良好なラフト厚さ及び重量とあわせて、懸濁液の安定性は良好であることが判明した。
【0058】
実施例4
アルギン酸ナトリウム及びメトホルミンHCl含有コロイド状MCCの水性懸濁液
図3に概略を説明する通り、水性懸濁液を以下の成分から調製した。
【0059】
【0060】
上記の方法に従い試験すると、実施例4の水性懸濁液は、以下のラフト特性を有することが判明した。
【0061】
【0062】
これらの結果を、類似した条件下での比較実施例B(メトホルミンHClを含有する市販の組成物(Gaviscon(登録商標)Advance))で得たラフト特性と比較した。比較実施例Bは以下の成分を含む。
【0063】
【0064】
上記の方法に従い試験すると、比較実施例Bの水性懸濁液は、以下のラフト特性を有することが判明した。
【0065】
【0066】
この結果から、コロイド状MCCを含有する実施例4の本発明の組成物は、ラフト強度及びラフト弾性の点において比較実施例Bよりも優れているものと思われる。
【国際調査報告】