(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-18
(54)【発明の名称】電解スタックのための電力変換システム
(51)【国際特許分類】
C25B 15/023 20210101AFI20240111BHJP
C25B 1/042 20210101ALI20240111BHJP
H01M 8/249 20160101ALI20240111BHJP
H01M 8/04858 20160101ALI20240111BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20240111BHJP
H01M 8/12 20160101ALN20240111BHJP
【FI】
C25B15/023
C25B1/042
H01M8/249
H01M8/04858
H01M8/10 101
H01M8/12 101
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023541899
(86)(22)【出願日】2022-01-10
(85)【翻訳文提出日】2023-09-08
(86)【国際出願番号】 EP2022050339
(87)【国際公開番号】W WO2022152651
(87)【国際公開日】2022-07-21
(32)【優先日】2021-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521441755
【氏名又は名称】ダインエレクトロ エーピーエス
【住所又は居所原語表記】Syvvejen 10,Hal 3 4130 Viby Sjaelland Denmark
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】イェンセン セーレン ホイゴー
(72)【発明者】
【氏名】シャルツ エーリク
(72)【発明者】
【氏名】ニールセン スティー モンク
【テーマコード(参考)】
4K021
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021BB03
4K021BC05
4K021CA05
4K021CA06
4K021CA07
4K021CA12
4K021CA15
4K021DB56
4K021DC03
5H126BB03
5H126BB05
5H126BB06
5H127AA02
5H127AA04
5H127AA07
5H127DC89
(57)【要約】
本発明は、複数の電解セルスタックユニットのための電力変換システムに関し、電力変換システムは複数のDC/DC変換モジュールの並列配列を備え、各DC/DC変換モジュールが、単一の電解セルスタックユニットに電力を供給するように構成されており、各DC/DC変換モジュールが、積分ジュール熱発生を電解セルスタックユニット内の積分反応熱消費と一致させることによって部分負荷における近熱中性動作が可能にされるように、電解セルスタックユニットに電流、電力および/もしくは電圧の所定の変動を供給することができ、ならびに/または各DC/DC変換モジュールが、前記電解セルスタックユニットに供給される電流を反転させ、前記電解セルスタックユニットを燃料電池モードで行わせることができる。電力変換システムは、容易にされかつ安価な配電、長い寿命、および電解セルスタックの動作中の改善された熱管理を可能にする。さらなる態様において、発明は、前記電力変換システムを備える配電システムおよび電解プラント、ならびに関連する方法に関する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電解セルスタックユニットのための電力変換システムであって、
複数のDC/DC変換モジュールの並列配列を備え、
各DC/DC変換モジュールが、単一の電解セルスタックユニットに電力を供給するように構成されており、
各DC/DC変換モジュールが、積分ジュール熱発生を前記電解セルスタックユニット内の積分反応熱消費と一致させることによって部分負荷における近熱中性動作が可能にされるように、前記電解セルスタックユニットに電流、電力および/もしくは電圧の所定の変動を供給することができ、ならびに/または
各DC/DC変換モジュールが、前記電解セルスタックユニットに供給される前記電流を反転させ、前記電解セルスタックユニットを燃料電池モードで行わせることができる、電力変換システム。
【請求項2】
前記DC/DC変換モジュールの1つまたは一部のみが、電流、電力および/もしくは電圧の前記所定の変動、または電流反転を同時に適用する、請求項1に記載の電力変換システム。
【請求項3】
各DC/DC変換モジュールが、電流、電力および/もしくは電圧の前記所定の変動の一部に対してまたは全体の間のいずれかに、前記電解セルスタックユニットに供給される前記電流を反転させ、その結果、前記電解セルスタックユニットの燃料電池動作を生じるように構成された1つまたは複数の電子スイッチをさらに備える、請求項1または2に記載の電力変換システム。
【請求項4】
電流、電力および/もしくは電圧の前記所定の変動または前記電流反転が、周期的であり、好ましくは10mHz~20kHz未満の範囲の周波数を有するならびに/または好ましくは正弦波形状および/もしくは方形波形状の変動プロフィルを含む、請求項1から3までのいずれか一項に記載の電力変換システム。
【請求項5】
前記DC/DC変換モジュールのそれぞれに接続されかつ前記電流反転または電流、電力および/もしくは電圧の前記所定の変動を前記DC/DC変換モジュールにおいて交互形式で調整するように構成された制御ユニットをさらに備える、請求項1から4までのいずれか一項に記載の電力変換システム。
【請求項6】
前記制御ユニットが、前記電流反転または前記所定の変動の間に、共通のDCリンク電流、電力および/または電圧がほぼ一定のままであるように、1つまたは複数のDC/DC変換モジュールにおいて前記電流反転または電流、電力および/もしくは電圧の前記所定の変動を調整するように構成されている、請求項5に記載の電力変換システム。
【請求項7】
電解セルスタックユニットに関連した物理的情報を取得するように構成されたセンサと、前記取得されたセンサデータの測定値に基づいて前記電流反転または電流、電力および/もしくは電圧の前記変動を制御するように構成されたPID(比例-積分-微分)コントローラとをさらに備える、請求項1から6までのいずれか一項に記載の電力変換システム。
【請求項8】
単一の電解セルスタックユニットに適用される各電流反転または電流、電力および/もしくは電圧の各変動の持続時間が、1μs~1000sの範囲である、請求項1から7までのいずれか一項に記載の電力変換システム。
【請求項9】
【数1】
であり、ここで、n
cがDC/DC変換モジュールの総数を表し、n
eが電解セルスタックユニットの総数を表し、T
pが電解セルスタックユニットのパワーオン時間を表し、xが1以上の整数であり、T
bが前記DC/DC変換モジュールのうちの1つによって適用された前記電流反転または電流、電力および/もしくは電圧の所定の変動の持続時間を表す、請求項1から8までのいずれか一項に記載の電力変換システム。
【請求項10】
複数の電解セルスタックユニットのための配電システムであって、
変圧器、
1つまたは複数の整流器および
入力フィルタ
を備える共通のバスと、
前記共通のバスに接続された請求項1から9までのいずれか一項に記載の電力変換システムとを備える、配電システム。
【請求項11】
請求項10に記載の配電システムと、複数の電解セルスタックユニットとを備える電解パワープラント。
【請求項12】
前記1つまたは複数の電解セルスタックユニットがそれぞれ、固体酸化物電解/燃料電池(SOEC/SOFC)、溶融炭酸塩電解/燃料電池(MCEC/MCFC)、高温および圧力アルカリ性電解/燃料電池、ならびにセラミック電解質プロトン伝導性電解/燃料電池(PCEC/PCFC)のうちの1つまたは複数のスタックを含む、請求項11に記載の電解パワープラント。
【請求項13】
前記電解パワープラントが、1MW以上の合計電気入力電力を有する、請求項11または12に記載の電解パワープラント。
【請求項14】
複数の電解セルスタックユニットに電力を分配する方法であって、
変圧器、1つまたは複数の整流器および入力フィルタを備える共通のバスを、パワーグリッドと、並列に配置された複数のDC/DC変換モジュールとの間に結合することと、
各DC/DC変換モジュールを別個の電解セルスタックユニットに接続することと、
積分ジュール熱発生を、前記電解セルスタックユニット内の積分反応熱消費と一致させることによって、部分負荷における近熱中性動作が可能になるように、電流、電力および/もしくは電圧の所定の変動でDC/DC変換モジュールを介して前記電解セルスタックユニットの1つもしくは一部に電圧を独立して供給することと、ならびに/または
前記電解セルスタックユニットの燃料電池動作を行うために、DC/DC変換モジュールを介して、前記複数の電解セルスタックユニットの1つまたは一部に供給される前記電流を独立して反転させることとを含む、方法。
【請求項15】
複数の電解セルスタックユニットに電力を分配する方法であって、
1つまたは複数の電解セルユニットに関連した物理的データを取得することと、前記取得された物理的データの測定値に基づいて電流反転ならびに/または電流、電力および/もしくは電圧の所定の変動を制御することとのステップとをさらに含み、前記物理的データが、好ましくはインピーダンス、さらに好ましくはラプラス変換インピーダンスを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容易かつ安価の配電、および電解セルスタックの動作中の改善された熱管理および/または電解セルスタックの延長された寿命を可能にする、複数の電解セルスタックユニットのための電力変換システムに関する。
【0002】
さらなる態様において、本発明は、前記電力変換システムを含む、配電システムおよび電解プラント、ならびに関連する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
電気エネルギーを化学エネルギーに変換する固有の能力により、電解システムは、一般的に、再生可能エネルギー経済のための主要な技術であると考えられている。しかしながら、多数の電解セルスタックを含む大型の電解プラント(例えば、MW規模の電力で動作する)の有効な動作は、複数の課題を有する。
【0004】
有効な熱管理は、これらの課題のうちの1つを表す。例えば、一般的に600~900℃の温度で動作する高温電解セル(例えば、固体酸化物電解セル(SOEC)など)は、吸熱電解反応を維持するために熱がセルに供給されることを必要とする。熱供給は、入口ガスを予熱することによって、または代替的に、電解セルスタックを、熱中性電位Etnにおいて動作させることによって達成され得る。熱中性電位は、SRU(電解セルおよび相互接続から成る単一反復ユニット)電圧を表し、ここで、ジュール熱(すなわち、SRUにおける内部抵抗を通流する電流によって生じる熱)は、電解反応によって必要とされる熱に合致し、これにより、外部から入力されるまたは外部へ出力されるエネルギーは最小限に抑えられ得、電解効率が高められ得る。しかしながら、典型的な温度および大気圧におけるガス組成の下で働くSOECシステム(例えば、蒸気および/またはCO2電解槽を含む)において、Etnにおける単一反復ユニットの動作は、一般的に、SRUにおける高い電極過電圧および/または電極における電気化学的に活性の部位における不純物の吸着による過剰な劣化を生じる。SRU電圧をEtnよりも増大させること(したがって、電解電流密度をさらに増大させること)は、劣化をさらに加速させ、変換効率を低下させ、過剰なジュール熱を放散させるための熱制御の必要性を増大させる。他方、高温電解セルスタックが、OCVとEtnとの間のSRU電圧で動作させられるならば、スタック内のガスは、一般的に、入口から出口に向かって冷却される。ガス入口からガス出口までの温度は、スイープガスによってスタック内の温度低下を制限するための広範囲の努力にもかかわらず、著しく低下し得る。温度低下により、内部抵抗が増大し、これは、ひいてはスタック出口における絶対電流密度を減少させ、スタックにおける不均一な電流分布を生じる。電源から一定の電流を引き出す(ひいては一定の電圧動作を生じる)ことによって電解スタックを動作させることは、したがって、電解スタックにわたる比較的大きな温度降下を生じ得る。代替的に、SRU電圧および電流を動的に変化させる場合、スタックにおける温度分布も、反応の変化およびジュール熱生成により、次第に変化し得る。結果的に生じる不均一な熱分布は、熱機械応力を生じ、これは、スタックにおける様々な層の間の(典型的にはスタックと双極相互接続板との間の)境界面における接触損失につながり得る。
【0005】
C.Graves他、Nature Materials 2015,14,239-244は、単一蒸気電解セルと関連して、電流を周期的に反転させることによって電解と燃料電池動作との間の逆サイクルが、より安定した槽電圧およびセルの寿命の延長につながることを開示している。しかしながら、その有利な効果は、外部加熱される近等温エンクロージャに取り付けられた単一セルの試験において観察された。より大きなスタックの動的な動作は、著しくより大きな温度変化を生じ、これは、熱応力による高い分解率を誘発する可能性があり、その有利な効果を目立たなくさせる(「Solid oxide electrolysis for grid balancing」、Final Report for Energinet.dk,project no.2013-1-12013,Fig.27,Pp.35)。
【0006】
上記の問題を考慮して、WO2020/201485A1は、少なくとも1つのパワーエレクトロニクスユニットによって電解セルに1つまたは複数の電圧変化を提供することによって1つまたは複数の電解セルを動作させることを提案しており、電圧変化は、部分負荷における近熱中性動作が、積分ジュール熱発生を前記セル内の積分反応熱消費と一致させることによって可能にされるように、構成されている。前記方法は、低コスト電解システムの提供を可能にし、これは、同時に、迅速応答動的動作、改善された電解効率、延長した寿命および高い不純物耐性を可能にする。
【0007】
しかしながら、これらの条件下でMWスケールプラントにおける複数の電解スタックの効率的かつ安定した動作を可能にする電源構成は、開示されていない。
【0008】
概して、電解動作のために必要とされる電気的なDC電力の供給は、2つの段階、すなわち、(疑似)DC電圧への電源AC電圧の変換、および選択的に直流的に絶縁されてよいDC-DC変換器による所望のDC負荷電圧レベルへの後者の電圧の適応を含む。これらの2つの段階の間、ローパスフィルタ(一般的にインダクタおよびコンデンサから成るLCフィルタ)が一般的に挿入され、DC入力電圧におけるリップルを減じ、AC電源電流を平滑化し、電磁妨害から発生する雑音を減衰させる。対応する電解スタックに電力を供給するための一般的なアプローチが
図1Aに示されており、この場合、DC/DC変換段階は、負荷、すなわち電解スタックに並列に結合されている。このような構成は、例えば、B.Yodwong他、Electronics 2020,9,912に開示された三相インターリーブバックコンバータなどの、位相シフト制御を使用する同じ負荷に接続された変換器も含んでよい。
【0009】
しかしながら、フィルタ段階、特に、使用されるコンデンサは、実質的に電源システムのコストおよび複雑さに寄与し、しばしば長期動作の間に故障する傾向があるので、フィルタ段階におけるコンデンサの必要性を省略するための努力がなされてきた。このために、EP2963761A1は、
図1BによるAC-DC電力変換ユニット構成を提案しており、この場合、電解スタックおよび電力変換器は直列に結合されており、これにより、同じ電流が、電解スタックの入力を通って電力変換器へ流れ、一連の負荷および変換器への入力電力は、AC-DC整流器の出力によって提供される。この構成において、負荷における電圧リップルは、有利には、能動的フィルタとして動作する変換器によって除去されるが、積分ジュール熱発生を電解スタック内の積分反応熱消費と一致させることによって部分負荷における有効な動的な近熱中性動作には適していない。
【0010】
米国特許出願公開第2017/0005357(A1)号は、反転可能な固体酸化物燃料電池スタックのためのグリッドタイ配電システムを開示しており、このシステムは、燃料電池システムに電力を提供するまたは燃料電池システムから電力を引き出すために双方向AC-DC変換器を組み込んでいるが、上記の問題には言及していない。
【0011】
上記のことを考慮して、多数の電解スタックを含む大規模な電解プラントの高速応答動的動作を同時に可能にし、かつ長い寿命を有する、単純かつ安価な電源を提供する必要性が依然として存在する。
【0012】
WO2018/033948A1は、電解セルスタックと、スタックに一定の電流を供給する電源と、生成された電圧が、前に設定された目標電圧を達成するためにセルスタックの温度を制御するように構成された温度制御機構とを備える水素製造システムを開示している。しかしながら、WO2018/033948A1は、複数のDC/DC変換器モジュールの並列の配列を開示または示唆していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、本明細書に定義された特許請求の範囲の主題によってこれらの目的を解決する。本発明のさらなる利点は、以下のセクションにおいてさらに詳細に説明される。
【課題を解決するための手段】
【0014】
概して、本発明は、複数の電解セルスタックユニットのための電力変換器システムに関し、電力変換器システムは複数のDC/DC変換モジュールの並列の配列を備え、各DC/DC変換モジュールは、単一の電解セルスタックユニットに電力を供給するように構成されており、各DC/DC変換モジュールは、電流、電力および/もしくは電圧の所定の変動を前記電解セルスタックユニットに供給することができ、これにより、部分負荷における近熱中性動作が、積分ジュール熱発生を、前記電解セルスタックユニット内の積分反応熱消費と一致させることによって可能にされ、ならびに/または各DC/DC変換モジュールが、前記電解セルスタックユニットに供給される電流を反転させることができ、前記電解セルスタックユニットを燃料電池モードにおいて行わせる。
【0015】
さらなる実施形態において、本発明は、変圧器、1つまたは複数の整流器および選択的な入力フィルタを備える共通のバスと、共通のバスに接続された前述の電力変換システムとを備える、複数の電解セルスタックユニットのための配電システムを提供する。
【0016】
別の実施形態において、本発明は、前述の配電システムと、複数の電解セルスタックユニットとを備える電解パワープラントに関する。
【0017】
別の実施形態において、本発明は、複数の電解セルスタックユニットに電力を分配する方法に関し、方法は、変圧器、1つまたは複数の整流器および入力フィルタを備える共通のバスを、パワーグリッドと、並列に配置された複数のDC/DC変換モジュールとの間に結合することと、各DC/DC変換モジュールを別個の電解セルスタックユニットに接続することと、電解セルスタックユニットの1つまたは一部に、DC/DC変換モジュールを介して、電流、電力および/もしくは電圧の所定の変動を独立して供給することであって、これにより、部分負荷における近熱中性動作が、積分ジュール熱発生を、電解セルスタックユニット内の積分反応熱消費と一致させることによって可能にされる、供給することと、ならびに/または、DC/DC変換器を介して複数の電解セルスタックの1つもしくは一部に供給される電流を独立して反転させ、前記電解セルスタックユニットを燃料電池モードにおいて行わせることとを含む。
【0018】
有利には、本発明は、DC/DC変換器を複数の負荷(すなわち、電解スタック)に接続し、一定のDCリンク電圧および同時に電解スタックの近熱中性動作および/または高い劣化抵抗を提供するためのこれらの複数の負荷の間の負荷シフト調整を可能にすることによって、大規模電解プラントのための効率的で、安価かつ有効な電力管理を可能にする。
【0019】
1つまたは複数の電解セルを動作させるためのシステムおよび関連する方法の好ましい実施形態、ならびに本発明のその他の態様は、以下の説明および特許請求の範囲に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】(A)負荷、すなわち、電解スタックに並列に結合された、AC/DC変換段階およびDC/DC変換段階を備える従来の配電システムを示す図である。(B)電解スタックと電力変換器とが直列に結合されている、従来の配電システムを示す図である。
【
図2】変圧器、整流器、入力フィルタ、モジュールおよび電解製品のための貯蔵タンクのシステムの概略を示す図である。
【
図3】それぞれのユニットがN個の変換器およびN個の電解スタックから成るN個のユニットから成る単一のモジュールを示すシステム図である。
【
図4】75個の直列接続されたセルから成る1つのスタックのための等価電気回路モデルを示す図である。
【
図5】テブナンモデルに基づく電解スタックの特徴を示す図であり、最大電流、電圧および電力が、星印によって示されている。
【
図6】熱平衡のための5%、35%、65%および95%定格出力における電流を示す図であり、計算がH
2O電解のために行われ、すなわち、K=-0.3V毎セルである。
【
図7】熱平衡のための5%、35%、65%および95%公称出力におけるセル電圧を示す図であり、計算がH
2O電解のために行われ、すなわち、K=-0.3V毎セルである。
【
図8】「a」および「b」インターバルのためのジュールおよび反応熱を示す図であり、計算がCO
2電解のために行われ、すなわち、K=-0.5V毎セルである。
【
図9】上の列は、それぞれ2つ(一番左)、3つ、4つ、5つおよび6つ(一番右)のユニットのための中間(連続した線)および平均(破線)モジュール電流を示し、次の列は、単位流を示す図である。縦の黒い点線は、期間を示す。図面は、時間の燃料電池モード20%において動作するユニットのために示されている。
【
図10】N=5ユニットのための異なるデューティサイクルにおける5つのユニットのためのユニットおよびモジュールにおける電流を示す図であり、IEb=-0.5IEaである。
【
図11】異なるデューティサイクルにおけるN=5ユニットのための最大、平均および最小モジュラス電流を示す図である。
【
図12】LTSpiceシミュレーションモデルを示す図である。
【
図13】デューティサイクル0.75(上)、0.80(中)および0.85(下)のためのDCリンクコンデンサ電圧(グレー曲線)、LCフィルタインダクタを通る電流(上側の黒い曲線)および1つの変換器への入力電流(下側の黒い曲線)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明のより完全な理解のために、その例示的な実施形態の以下の説明がここで参照される。
【0022】
電力変換システム
第1の実施形態において、本発明は、複数の電解セルスタックユニットのための電力変換システムに関し、複数のDC/DC変換モジュールの並列の配列を備え、各DC/DC変換モジュールは、単一の電解セルスタックユニットに電力を供給するように構成されており、各DC/DC変換モジュールは、電流、電力および/もしくは電圧の所定の変動を前記電解セルスタックユニットに供給することができ、これにより、部分負荷における近熱中性動作が、積分ジュール熱発生を、電解セルスタックユニット内の積分反応熱消費と一致させることによって可能にされ、ならびに/または各DC/DC変換モジュールが、前記電解セルスタックユニットに供給される電流を反転させることができ、前記電解セルスタックユニットを燃料電池モードにおいて行わせる。
【0023】
この文脈において、「複数」とは、複数のDC/DC変換モジュールを指す。DC/DC変換モジュールの特定の数は、特に限定されず、好ましくは、電力が供給される電解セルスタックユニットの数に対応する。一般的に、変換モジュールの数は、2~100、例えば、3~50に及ぶ。
【0024】
実際には、電解システムは、一般的に、完全に等温でも、完全に断熱でもない条件において動作する。「近熱中性動作」という用語は、本明細書において使用される場合、積分ジュール熱発生と積分反応熱消費(両方とも3600秒よりも長い期間にわたって積分される)との差の絶対値が、積分熱消費の絶対値もしくは積分熱発生の絶対値、またはその両方よりも低い、電解動作を指す。
【0025】
好ましい実施形態において、「近熱中性動作」とは、電熱平衡動作として理解され、この電熱平衡動作は、所要の反応熱を平衡させるために電熱(ジュール熱)を使用し、過剰な空気流の熱容量が電解セルおよびスタックにおける温度変化を制限するために使用される従来の熱平衡動作とは区別され得る。本発明の副次的効果として、スタックを通じて熱い空気を吹き付ける必要性が減じられる。加えて、不純物耐性を改善することができ、これは、ガス精製の必要性を減じる。両副次的効果は、システムの全体的コストを実質的に減じる。
【0026】
「部分負荷」という表現は、電解スタックが、その最大出力の100%未満、例えば、99.9%以下、好ましくは、0.1%以上で動作する条件を指す。
【0027】
「変動」という用語は、本明細書において使用される場合、所定のインターバルにおいて再発する周期的な変動の形態において適用され得る、セル電流、電力および/または電圧の所定の変動を指す。機械的な張力を減じるという観点から、各変動の持続時間、すなわち、電流、電力および/または電圧の通常動作値からの逸脱の持続時間は、好ましくは、1μs~1000sの範囲、さらに好ましくは、1μs~100sの範囲に設定される。対応して電解システムを動作させることにより、各変動の持続時間は、流体(例えば、ガス)ならびにセルおよびスタックにおける温度変化が無視できる程度に短い。このように、スタックにおける弱い境界面における機械的張力の蓄積を回避することができ、反転可能動作によって可能にされる延長された寿命を達成することを可能にする。さらなる好ましい実施形態において、変動の周波数は、10mHz~100kHzの範囲である。10mHz~20kHz未満の範囲の周波数がさらに好ましいが、20mHz~10kHzの周波数が特に好ましい。特に、本発明は、位相シフト制御を使用する変換器とは異なる。なぜならば、位相シフト制御が、同じ負荷に接続されており、それらの時間シフトが、スイッチング周波数(通常は20kHzよりも高い)によって制限されるからである。
【0028】
変動の形状は、特に制限されない。しかしながら、正弦波形状および/または方形波形状の変動プロフィルを含む変動が好ましい。対称的、特に非対称的な方形波形状の変動が一般的に最も有効かつ実用的であるが、SRUにおける浮遊インダクタンスおよび渦電流を最小限にするために、滑らかな正弦波形状の変動が好ましい場合がある。ピーク電圧を最小限にし、誘導現象に関連した誤動作条件を回避するために、正弦波形状の変動と方形波形状の変動との組合せが好ましい場合もある。
【0029】
原則として、部分負荷における近熱中性動作を可能にするために、電流、電力および/または電圧のうちのいずれかが変調されてよい。しかしながら、実用性の観点から、電圧の所定の変動が特に好ましい。この文脈において、電圧変動の範囲は、一般的に、0.2V~2.0V、特に好ましくは0.5V~1.9Vである。
【0030】
しかしながら、代替的な好ましい実施形態において、スタック内の温度を制御するための高められた能力により、電流制御は電圧制御モードよりも好ましい場合がある。例えば、スタックの出口において温度が僅かに上昇する場合、前記領域における領域別抵抗を減少させる。電圧制御モードにおいて、前記領域における減少した抵抗は、より高い蒸気変換率、ひいては、増大したネルンスト電圧を示唆する。その結果、電解モードにおけるスタック動作中、電解反応からの熱消費は減少するが、電解モードにおけるスタック動作中、熱発生は増大し、これは、熱発生の正味増大につながる。電解および燃料電池電圧の設定に応じて、ジュール熱発生は増減し得る。しかしながら、これは、スタック出口領域における熱発生が増大しやすいことを意味し、これは、熱暴走に関するリスクを生じる可能性がある。電流制御の場合、状況は異なる。なぜならば、スタック出口領域における僅かな温度上昇が、前記領域における領域別抵抗の減少を生じるからである。電流制御モードにおいて動作するとき、正味反応熱は、抵抗の減少によって影響されない。しかしながら、ジュール熱発生は減少し、これにより、僅かな温度上昇は、熱発生の減少によって相殺される。したがって、制御された温度での安定した動作が容易に保証され得る。
【0031】
別の実施形態において、電力制御される動作が好ましい。さらに別の好ましい実施形態において、電流、電力または電圧制御される動作のハイブリッドが好ましい場合がある。
【0032】
本発明によれば、並列配列で存在する複数のDC/DC変換モジュールのそれぞれを単一の電解セルスタックユニットに接続することによって、各電解セルスタックユニットの動的な近熱中性動作は、別々に制御されるのみならず、電解セルスタックユニット間で有効に調整され得る。複数の負荷(すなわち、電解セルスタックユニット)間のシフトを調整することによって、ひいては、各電解セルスタックの近熱中性動作およびそれに関連した利点を依然として維持しながら、電源システムの寿命を潜在的に制限する高価な(大きな)フィルタコンデンサの必要性なしに、一定の滑らかなDCリンク電圧を得ることが有利には可能である。したがって、全ての電解セルスタックユニットが、最適な性能において動作させられ得る。
【0033】
概して、劣化減少、より安定したセル電圧およびセルの延長した寿命につながる、例えば副反応化合物の酸化状態を増大させる(酸化)または酸化状態を減少させる(還元)ことによって、セルの電極に吸着、沈殿またはさもなければ形成された前記副反応化合物の蒸発、脱着または溶解を行うように構成されていることが好ましい場合がある。それらの形成が可逆性である限りそれらに限定されないが、これらの副反応化合物は、望ましくない中間体であり得るかまたは反応物における不純物(例えば、アルカリ土類金属によって形成された水酸化物、炭化水素、硫黄ベース化合物、ホルムアルデヒド、ギ酸アンモニア、ハロゲン化化合物)または電解セル材料(例えば、ガラス部品からのSiベース不純物)から生じ得る。
【0034】
副反応化合物の脱着または溶解による劣化の特に効率的な減少は、前記電解セルスタックユニットの燃料電池動作を行うために電解セルスタックユニットに供給される電流を反転させることによって達成され得る。本発明によれば、電流反転は、上記で定義された所定の変動から独立して、すなわち電流、電力および電圧の変調の代わりに、またはそれに加えて(例えば、電圧および/もしくは電力の所定の変動の一部の間または全体の間のいずれか)行われてよい。したがって、電流反転を含む電流の「所定の変動」は、可逆反応によって形成されかつ電解性能の劣化の原因となる望ましくない中間体、不純物またはその他の化合物の溶解もしくは脱着を行う限り、必ずしも近熱中性動作に向けられる必要はない。
【0035】
望ましくない中間体、不純物またはその他の化合物の脱着の一例として、H2OおよびCO2電解において観察されるNi/YSZ電極のNi表面からの硫黄およびSiO2の脱着が言及され得る。CO2の高温電解において、周期的な電流反転は、反応部位における炭素の脱着も可能にし、したがって、有利には、より迅速なCO2還元にもつながる。しかしながら、有利な効果はこれらの特定の種に限定されるのではなく、原則的に、電解セルの性能を妨げ得る全ての可逆副反応機構にまで拡張される。
【0036】
特に、DC/DC変換モジュールは、好ましくは、10mHz~100kHz、より好ましくは10mHz~20kHz未満の範囲の好ましい周波数で周期的に電流反転を適用するように構成されているが、20mHz~10kHzの周波数が特に好ましい。上記の電流、電力および/または電圧の所定の変動と同様に、電流反転の持続時間は、1μs~1000s、さらに好ましくは1μs~100sの範囲に設定される。この文脈において、電流変調は、例えば、正弦波形状および/または方形波形状の電流変動プロフィルを含んでよい。
【0037】
代替的な実施形態において、一定かつ滑らかなDCリンク電圧を得るために、複数の負荷(すなわち、電解セルスタックユニット)の間のシフトが適切に調整されるならば、ランダムな周波数または所定の範囲の周波数で電流反転を適用することも可能である。
【0038】
好ましい実施形態において、各DC/DC変換モジュールは、したがって、電解セルスタックユニットに供給される電流を反転させるように構成された1つまたは複数の電子スイッチをさらに含んでよい。適切な電子スイッチは、電力変換器において有用な、当業者に既知の電子または電気機械スイッチから選択されてよい。有利には、このプロセスは、電極微細構造への損傷を減じおよび/またはセルの電極に吸着、沈殿もしくはさもなければ形成された副反応化合物の脱着もしくは溶解をもたらし得る。さらに、電流が反転させられる時間の部分の間、依然としてセル内に存在する積分電気化学反応からの全ての生成物が、反応物に再び変換されるわけではない。したがって、従来の(DC電圧)動作とは反対に、流体(例えば、ガス)組成を変化させる必要がない。短い時間だけ逆の電流動作(スタックがソースとして作用する)を可能にすることによって、一定のDCリンク電圧動作が保証され得る。負荷調整なしでは、短い時間だけソースのように作用するスタックを取り扱うためにエネルギー貯蔵装置、例えば、電池またはスーパーキャパシタを追加する必要があり、必然的に、増大したコストおよび複雑性を生じる。
【0039】
必要な過電圧および電流によるジュール熱は、燃料電池および電解モードの両方において正である。高温電解において、Etnより低い動作電圧における近熱中性動作が、最適な性能のために望ましい。OCVとEtnとの間の動作電圧のために、近熱中性動作は、電解プロセスの間に熱付加を必要とする。このようなシステムにおいて、熱付加は、さらに、相互接続/セル境界面における引張応力を減じるために必要であり、このことは、潜在的に層間剥離および接触の損失、不十分な性能および劣化につながる。従来、熱は、例えば、加熱されたスイープガスまたは能動的加熱装置の使用によって供給される。対照的に、本発明において、ジュール熱は、DC/DC変換モジュールを介して電解スタックに電流、電力および/または電圧のうちの1つまたは複数の変動を供給することによって反応熱(および周囲への熱損失)と平衡させられる。したがって、電解スタックユニットは、外部加熱源を必要とすることなく近熱中性的に動作させられ得る。
【0040】
本発明による電力変換システムは、必ずしも直流動作の間のジュール熱発生よりも高い反応熱消費によって生じるわけではない熱損失と相殺するために使用されてよいことが強調される。例えば、熱は、絶縁材料を通じてまたは熱交換器において周囲へ損失され得る。この場合、アイドリング/スタンバイ動作中のエネルギー消費が最小限に抑えられ得る。なぜならば、ガス流(および熱交換器における関連する熱損失)が、周囲への熱損失と相殺するためにAC/DC動作を代わりに使用しながらスタックを所定の温度に維持するために制限されるからである。これにより、個々のスタックまたはモジュール、特に補助機器のメンテナンスが、スタック動作を最小限に妨害しつつ、簡略化および加速化され得る。それに限定されないが、このような動作方法は、補助機器の故障が実際の燃料電池モジュールの故障よりも実質的に重要である傾向がある用途において(例えば、マイクロ熱電併給(マイクロCHP)システムなどの小さなモジュールにおいて(E.R.Nielsen他,Fuel Cells 2009,19,340-345参照))特に有利である。
【0041】
電力変換システムの好ましい実施形態において、DC/DC変換モジュールの1つまたは一部のみは、電流、電力および/または電圧の所定の変動を同時に供給する。
【0042】
特に好ましくは、電力変換システムは、さらに、DC/DC変換モジュールのそれぞれに接続されかつDC/DC変換モジュールにおける電流、電力および/または電圧の所定の変動を交互形式で調整するように構成された制御ユニットを含む。これにより、所定の変動の適用は、DC/DC変換モジュールの1つまたはサブセットの間で循環する(以下では「デューティサイクル」とも呼ばれる)。
【0043】
さらなる好ましい実施形態において、制御ユニットは、所定の変動の間、共通のDCリンク電圧がほぼ一定のままであるように、1つまたは複数のDC/DC変換モジュールにおける所定の変動を調整するように構成されてよい。これは、それぞれの個々のモジュールまたはモジュールのサブセットのための電流、電力および/または電圧の変動の振幅、持続時間および/または周波数、ならびにモジュールまたはモジュールのサブセットの間のデューティサイクル分布を適切に調節することによって達成されてよい。制御ユニットは、複数の電子スイッチおよび同期化手段(例えば、分散クロック信号)を含んでよい。
【0044】
電流、電力および/または電圧の所望の変動を提供するための手段は、既知の構成要素から当業者によって選択されてよい。本発明による好ましい実施形態において、電力変換システムは、所定の電圧変動を提供するために、選択的にモータコントローラとの組合せにおいて、パルス幅変調(PWM)回路を含む。このような構成要素は、並列配列における独立した動作が依然として可能であるならば、個々のDC/DC変換モジュールまたは共通の回路に統合されてよい。
【0045】
別の好ましい実施形態において、本発明による電力変換システムは、さらに、電解セルユニットに関連した物理的データを取得するように構成された1つまたは複数のセンサと、取得されたセンサデータの測定値に基づいて電流、電力および/または電圧の変動を制御するように構成されたPID(比例-積分-微分)コントローラとを備える。PIDコントローラは、所望のデータ設定点と測定されたセンサデータとの間の差としてエラー値を連続的に計算するように構成されてよく、電力変換モジュールが、比例、積分および微分項に基づいて電流、電力および/または電圧の変動の修正を適用することを可能にする。センサデータのための標的パラメータは、例えば、温度(例えば、電解セルもしくはスタックへまたは電解セルもしくはスタックから送られる流体(ガスまたは液体)の入口および出口温度、あるいはセル区画における直接的な温度測定による)、ガス圧、ガス濃度、インピーダンス、抵抗および電流を含んでよい。
【0046】
さらなる好ましい実施形態において、PIDコントローラは、電解セルスタックまたはユニットの動的な電流/電圧応答に基づいて電流、電力および/または電圧の変動を制御するように構成されてよい。
【0047】
特に好ましい実施形態において、電力変換システムは、個々の電解セル、スタックまたはユニットの健康、温度および性能についての情報を提供するために、センサとして、(例えば、電流パルス法または電圧パルス法によって)電解セル、スタックまたはユニットの周波数領域インピーダンススペクトルを測定するように構成されたラプラス変換インピーダンス分光計を含み、これは、次いで、選択的に、電流(電流反転を含む)、電力および/または電圧の変動を制御するためにPID装置へ送られてよい。
【0048】
一定のモジュラー電流を達成するために、電力変換システムは、好ましくは、以下の数式(数式1)を満たす。
【0049】
【数1】
ここで、n
cはDC/DC変換モジュール総数を表し、n
eは電解セルスタックユニットの総数を表し、T
pは電解セルスタックユニットのパワーオン時間を表し、xは1以上の整数であり、T
bはDC/DC変換モジュールのうちの1つによって適用される所定の変動の持続時間を表す。
【0050】
【数2】
の逆数値は、電解スタックユニットのデューティサイクル、すなわち、全ての電解スタックユニットの合計動作期間に関する単一のDC/DC変換モジュールによって供給される変動の持続時間に対応する。これらの要求を満たすために、所定のデューティサイクルに基づいて最適な数の電解スタックユニットが選択され得るか、代替的に、デューティサイクルは、例えば、利用可能な電解スタックユニットの数に応じて調節され得る。
【0051】
「電解セルスタックユニット」という表現は、本明細書において使用される場合、1つの電解セルスタックまたは複数の電解セルスタックのアセンブリを指す。当業者に知られるように、後者は、所望の性能に応じて直列および/または並列に接続されてよい。
【0052】
各セルスタックを形成する電解セルは、特に制限されないが、発明は、120℃超、例えば、200℃~1100℃、または650℃~1000℃などにおいて動作するように構成されたような、高温電解セルにとって最も有効である。その好ましい例は、固体酸化物電解/燃料電池(SOEC/SOFC)、溶融炭酸塩電解/燃料電池(MCEC/MCFC)、高温および圧力アルカリ性電解/燃料電池、およびセラミック電解質プロトン伝導性電解/燃料電池(PCEC/PCFC)を含むが、これらに限定されない。
【0053】
反応物材料は、特に制限されない。好ましい実施形態において、スタックおよびスタックユニットを形成する電解セルは、H2O、CO2の電解、またはH2OおよびCO2の共電解を行う。
【0054】
電解セルのための材料および構築技術に関連する詳細は、当業者によく知られており、本明細書では説明しない。
【0055】
「電解セル」という用語は、本明細書において使用される場合、例えば、可逆固体酸化物燃料電池(RSOFC)などの可逆燃料電池も含むことが理解されるであろう。このような実施形態において、電力変換段階は双方向であることが好ましい。
【0056】
配電システム
第2の実施形態において、本発明は、複数の電解セルスタックユニットのための配電システムに関し、配電システムは、変圧器、1つまたは複数の整流器および選択的な入力フィルタを備える共通のバスと、共通のバスに接続された、第1の実施形態による電力変換システムとを備える。配電システムは、したがって、単一のACグリッドソースから電力変換システム、したがって、電解スタックユニットへの電圧の分配を可能にする。
【0057】
「接続される」という表現は、本明細書において使用される場合、電気的に接続されることを意味する。
【0058】
電解ユニットはDC電圧が供給される必要があるので、共通のバスの主な目的は、パワーグリッドからのAC電圧を(疑似)DC電圧に変換することである。
【0059】
特に、電圧は、1つまたは複数の整流器によって整流される前に変圧器によってスケールダウンされる。この目的のために、変圧器は、分配グリッド電圧および整流段階へ供給される電圧に応じて当業者によって適切に採用され得る。
【0060】
整流は、能動的または受動的整流器によって行われてよい。それに限定されないが、受動的整流器の例は、サイリスタベースおよびダイオードベース整流器を含み、能動的整流器の例は、ダイオード機能を備える能動的に制御されるスイッチング素子、例えば、双極接合トランジスタ(BJT)、金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)、絶縁ゲート双極トランジスタ(IGBT)およびシリコン制御整流器(SCR)を含む。能動的整流器は、一般的に、より小さな損失を許容するが、より高価でもある。双方向電流を可能にすることによって、能動的整流器は、エネルギーを再びグリッドへ送る能力も有するが、この機能は、電解プラントのために必ずしも必要ではない。これらの状況下で、安価な受動的整流器から1つまたは複数の整流器を選択することが好ましい場合がある。整流器は、例えば、一相または三相整流器(例えば、6パルスまたは12パルスダイオードブリッジ整流器)であってよい。
【0061】
一般的にインダクタおよび1つまたは複数のコンデンサ(すなわち、LCフィルタ)から成る選択的な入力フィルタは、電圧リップルの平滑化を可能にし、これは、通常、特定のエネルギー消費および電解スタックの信頼性を最適化するために重要である。有利には、本発明は、大きなコンデンサまたは入力フィルタとしてのコンデンサを全く必要としない。なぜならば、リップル効果が、一定のDCリンク電圧を保証するために負荷の間のスイッチングを調整することによって最小限に抑えられるからである。実装されるならば、整流段階と電力変換システムとの間に挿入される合計キャパシタンスは、好ましくは、5000μF未満、より好ましくは1000μF未満、特に好ましくは500μF未満である。
【0062】
配電システムは、コンピュータ端子に結合されてよい回路ブレーカセンサおよびマスターコントローラ装置(プロセッサおよびシステムメモリを有するマイクロプロセッサを含む)を含むさらなるサブシステムを備えてよい。これらのサブシステムは、共通バスにおいてまたは接続されたDC/DC電力変換システムにおいて適切に実装されてよい。
【0063】
電解パワープラント
第3の実施形態において、本発明は、第2の実施形態による配電システムと、複数の電解セルスタックユニットとを備える電解パワープラントに関する。
【0064】
上記で言及したように、電解セルスタックユニットはそれぞれ、好ましくは、固体酸化物電解/燃料電池(SOEC/SOFC)、溶融炭酸塩電解/燃料電池(MCEC/MCFC)、高温および圧力アルカリ性電解/燃料電池、ならびにセラミック電解質プロトン伝導性電解/燃料電池(PCEC/PCFC)のうちの1つまたは複数のスタックを備える。
【0065】
好ましい実施形態において、電解パワープラントは、1MW以上の合計電気入力電力を有する。もちろん、選択されるACグリッド電圧が負荷のために適切であることが保証されなければならない。例えば、10kVネットワークが、1MWの負荷のために十分である。
【0066】
配電のための方法
第4の実施形態において、本発明は、複数の電解セルスタックユニットに電力を分配する方法に関し、方法は、変圧器、1つまたは複数の整流器および入力フィルタを備える共通のバスを、パワーグリッドと、並列に配置された複数のDC/DC変換モジュールとの間に結合すること、各DC/DC変換モジュールを別個の電解セルスタックユニットに接続すること、積分ジュール熱発生を、電解セルスタックユニット内の積分反応熱消費と一致させることによって、部分負荷における近熱中性動作が可能にされるように、DC/DC変換モジュールを介して複数の電解セルスタックユニットの1つまたは一部に、電流、電力および/もしくは電圧の所定の変動を独立して供給すること、ならびに/または、DC/DC変換モジュールを介して複数の電解セルスタックユニットの1つまたは一部に供給される電流を独立して反転させ、前記電解セルスタックユニットを燃料電池モードで動作させることを含む。
【0067】
好ましくは、DC/DC変換モジュールの1つまたは一部のみが、電流、電力および/または電圧の所定の変動を同時に適用する。
【0068】
本明細書において使用される「一部」という用語は、1よりも大きくかつ複数の電解スタックユニットにおけるユニットの総数よりも小さい数を指す。好ましい実施形態において、電解スタックユニットの総数に対する、電流反転が適用される電解スタックユニット(すなわち、燃料電池モードにおけるスタックユニット)の比または電流、電力および/もしくは電圧の所定の変動が適用される電解スタックユニットの比がそれぞれ、1~45%の範囲、より好ましくは1~40%の範囲である。
【0069】
好ましい実施形態において、複数の電解セルスタックユニットの1つまたは一部には、DC/DC変換モジュールを介して電流の所定の変動が独立して供給されるかまたは複数の電解セルスタックユニットの1つまたは一部に供給される電流が反転される。この動作モードは、スタック温度の改善された制御を可能にする。例えば、スタック出口領域における僅かな温度上昇の場合、正味反応熱は、結果として生じる抵抗の減少によって影響されない。しかしながら、ジュール熱発生が減少し、これにより、僅かな温度上昇は、熱発生の減少によって相殺される。したがって、電流制御モードは、制御された温度での特に安定した動作を可能にする。
【0070】
代替的な実施形態において、一定かつ滑らかなDCリンク電圧を得るために複数の負荷(すなわち、電解セルスタックユニット)の間のシフトと組み合わせて、ランダムなまたは所定の範囲の周波数において電流反転を適用することも可能である。
【0071】
好ましい実施形態において、本発明による方法は、電解セルユニットに関連した物理的データを取得することと、例えば、PID(比例-積分-微分)コントローラと組み合わされた1つまたは複数のセンサ(温度センサ、ラムダセンサなど)を使用することによって、取得された物理的データの測定に基づいて電流反転ならびに/または電流、電力および/もしくは電圧の所定の変動を制御することとを含む。
【0072】
有利には本方法への単純な統合を許容しかつ動的な電流/電圧応答に基づく有効な制御を可能にするさらなる好ましい実施形態において、方法は、電流反転または電流、電力および/もしくは電圧の変動を制御するために次いで選択的にPID装置へ供給され得る、個々の電解セル、スタックまたはユニットの健康、温度および性能についての情報を提供するために、ラプラス変換インピーダンス分光分析を介して(例えば、電流パルス法または電圧パルス法によって)電解セル、スタックまたはユニットの周波数領域インピーダンススペクトルを測定することを含む。周波数領域インピーダンスを決定するための適切な方法は、例えば、米国特許出願公開第2003/0065461(A1)号に開示されている。特徴のうちの少なくとも幾つかが相互に排他的である組合せを除き、第1から第4までの実施形態の好ましい特徴があらゆる組合せにおいて自由に組み合わされてよいことが理解されるであろう。
【0073】
例
以下では、本発明の例示的な実施形態および関連する考察がさらに詳細に説明される。しかしながら、本発明がそれに限定されないことが理解されよう。
【0074】
スタック特性
本発明による例示的な電解プラントが、
図2に示されており、
図2は、並列配列における複数のモジュール(モジュールの数=M)への変圧器、整流器および入力フィルタを含む共通のバスの接続を示しており、各モジュールは、単一のユニットまたはユニットの組合せから成り、各ユニットは、電力変換システムおよび電力変換システムに接続された電解スタックユニットから成る。モジュールの総数Mは、2つの直列接続された電解スタックが使用されているか否か、および合計所望電力に依存する。合計モジュール電流は、以下の数式による個々のモジュールの合計によって与えられる。
【0075】
【0076】
各モジュールにおける各ユニットは、好ましくは、各電解スタックにおける電流が電圧および/または電力の所定の変動により変化し得るとしても、各モジュールへの電流が一定であるように調整される。モジュールの数は、所望の合計電力が達成されるように単に追加することができる。
【0077】
各スタックを知的に制御することによって、小さなフィルタコンデンサの使用が可能にされ得る。これに関して、それぞれの燃料電池スタックが燃料電池モードで動作しかつ電解モードにおいて動作するスタックを部分的に供給することができるように、複数の電解スタックユニットの1つまたは一部において電流を反転させることが特に好ましい。この実施形態との組合せにおいて、変換器が双方向であることが好ましい。このような目的のための適切な変換器は、共通のバックブーストタイプのものであってよい。一方向電圧が、電解スタックにおける電圧よりも常に高いことを保証することによって、これらの変換器タイプは、ちょうど
図3に示したように使用することができる。図において、例示的な変換器は、2つのスイッチQ1およびQ2、2つのダイオードD
1およびD
2、入力コンデンサC
inならびにインダクタLから成る。電解モード(バックモード)は、Q1により切り替えられ、燃料電池モード(ブーストモード)はQ2により切り替えられる。
【0078】
図3における図は、
図2に含まれたモジュールのうちの1つとして理解されるべきである。1つのモジュールはN個のユニットから成り、ユニット自体は、N個の変換器およびN個の電解スタックから成る。与えられたモジュールの電流i
Mmは、個々のユニットの合計によって与えられ、すなわち
【0079】
【0080】
以下の考察のために、75個の直列に接続されたセルから成る電解スタックが、出発点として考えられる。
【0081】
簡略化のために、スタックは、
図4に見ることができる、内部電圧源E
stackおよび内部インピーダンスZ
stackから成る単純なテブナン等価としてモデル化される。電流(I
stack)が一定の負荷下で変化しないとすると、インピーダンスは、3つの抵抗器の合計に等価の単一の抵抗器として考えることができ、すなわち、
R
stack=R
S+R
1+R
2=0.7Ω (数式4)
である。
【0082】
スタックの電圧Vstackおよび電力Pstackは、この場合、
Vstack=Estack+Rstack・Istack (数式5)
Pstack=Vstack・Istack (数式6)
【0083】
上記の数式5および6を使用して、
図5に示したように、スタックの電圧および電力特性を計算することができる。電流が負であり得ることが分かる。その状況において、スタックは燃料電池モードで動作する。この例において、最大電力P
stack,nom=7.8kWがV
stack=120VおよびI
stack=65Aにおいて達成される。
【0084】
熱平衡
スタックは、直列に接続されたセルから成るので、セル電流Iは、スタック電流と等しい。すなわち、
I=Istack
である。
【0085】
スタックにおける熱発展は、ジュール熱PJおよび反応熱PRから成り、これは、
【0086】
【0087】
【0088】
セル当たりのクーロン特定熱応答は、CO2電解の場合にK=-0.5Vであり、H2O電解の場合にK=-0.3Vである。スタックはncells=75の直列接続されたセルから成るので、Kstack=-37.5VおよびKstack=-22.5Vがそれぞれ2つの状態に当てはまる。システムが熱平衡になるために、ジュール熱および反応熱の合計は、ゼロに等しくなければならない。この条件を満たす電流は、Itlvとして指定される。したがって、以下の計算が当てはまる。
【0089】
【0090】
熱平衡のためのセル電圧Vtlvは、
【0091】
【0092】
セルラーレベルにおける熱平衡の電力レベルは、これにより、
【0093】
【0094】
スタックレベルにスケールアップすると、熱平衡のためのスタック電力は、
【0095】
【0096】
熱平衡のためのスタック効果は、したがって、最大スタック電力よりも59.82%(K=-0.3)および22.7%(K=-0.5)小さい。
【0097】
最大電力伝送燃料電池条件
スタックが燃料電池として機能する場合、最大電力伝送のための電力Imeoは以下のように計算される:
【0098】
【0099】
セル電圧Vmeoは次いで、
【0100】
【0101】
電気入力電力
スタックにおける温度を制御するために、システムが、Ta秒だけ電解モードで動作させられ、Tb秒だけ電解モード/燃料電池モードにおいて動作させられると仮定すると、以下の数式が当てはまる:
【0102】
【0103】
ここで、それぞれ、T[s]は期間であり、f[Hz]は方形波形状の信号の周波数である。2つのモードのためのデューティサイクルDaおよびDbは、
【0104】
【0105】
単一のスタックの電気平均電力は、次いで、
【0106】
【0107】
ここで、Vstack_aおよびIaはそれぞれ時間インターバル「a」におけるスタック電圧および電流を表し、Vstack_bおよびIbは時間インターバル「b」におけるスタック電圧および電流を表す。
【0108】
電力平衡
スタックにおける熱発展は、前に言及したように、ジュール熱PJおよび反応熱PRから成る。「a」および「b」インターバルへの分割により、以下の表現に到達する。
PJ=PJ,a+PJ,b (数式18)
PR=PR,a+PR,b (数式19)
【0109】
個々の貢献は、
【0110】
【0111】
【0112】
【0113】
【0114】
システムが熱平衡になるために、ジュール熱および反応熱の合計は、再びゼロに等しくなければならない。したがって、
【0115】
【0116】
方程式系の解
スタック効果および熱平衡のための2つの方程式は、原則的に、2つの可能な解を提供する。しかしながら、正のIa電流のための解のみが望ましいので、1つの解オプションは以下にとどまる。
【0117】
【0118】
【0119】
シミュレーション結果
与えられたデューティサイクルのために、上記の数式19および20を解くことができる。
図6は、それぞれ、熱平衡のための定格電力の5%、35%、65%および95%のデューティサイクルの関数として2つのモードにおける電流を示す。2つの電流の最大絶対値ならびに熱平衡のための公称電流値および最大電力伝送のための電流も図に提供されている。5%負荷の場合、I
bが負であることが分かる。デューティサイクルが大きいほど、I
aおよびI
bの両方は小さくなる。I
aおよびI
bの最大絶対値の場合D
a=60%において最小であることも分かる。残りの電力レベル(35%、55%および95%)の場合、I
bは低いデューティサイクルの場合に正であり、より高いデューティサイクルの場合に負である。
【0120】
図7は、同じ効果のためのセル電圧を示す。
図6および
図7の両方から、電力が大きくなるほど、熱平衡のための公称電流および電圧値が超過されないならば、デューティサイクルの選択のための余地は少なくなることが分かる。極めて大きなデューティサイクルの場合、約90%~95%が、「b」インターバルにおいて電流および電圧を「ブレーク」することも分かる。このことの理由は、時間インターバルが短いため、電力平衡を維持するために電流が必ず極めて大きく(ひいては電圧が極めて小さく)なければならないということである。
【0121】
図8は、熱平衡のための公称電力の35%の場合の2つのインターバルのためのジュール熱および反応熱を示す。デューティサイクルが大きいほど、システムが「a」インターバルにおいて吸収する反応の熱が大きいことが分かる。電力平衡が観察されるように十分な熱を供給することができるために、したがって、「b」インターバルにおける反応熱がD
a=40%付近で不から正になることが必要である。
【0122】
ユニットの数
要求明細書において言及したように、各電解スタックは、10Hz~100Hzの周波数で、ある程度の時間にわたって電解状態にあり、残りの時間にわたって燃料電池または電解状態になければならない。全体的なシステムを比較的単純かつ拡張可能にするために、各モジュールが他のモジュールから独立していることが望ましく、これにより、各モジュールは、短い期間にわたってDCリンクから一定の電流を引き出されなければならない(すなわち、diMm/dt=0)。これは、負の電流(燃料電池状態)が、N個のユニットの間で各モジュールにおいて内部で管理されなければならないことを意味する。
【0123】
図8は、モジュールを構成するユニットの数に応じて、モジュールの流れがどのようにみえるかの原理図を示す。図において、各ユニットからの電流は、電流が正であるかまたは負であるかにかかわらず同じ数値I
Eを有すると仮定される。これは、必ずしも実用において生じないが、単に原理を示すためである。実際の電流レベルは、デューティサイクルおよび2つのモードにおける変換器の効率に依存する。デューティサイクルは80%でもあり、これは、スタックが時間の20%は燃料電池モードで動作することを意味する。N=2ユニットの場合、電流は、2つのレベル、つまり2I
Eおよびゼロを有することが分かる。ユニットの数がN=3に増大されると、モジュール電流の最小レベルを、ゼロよりも大きい値に上昇させることができる。N=4ユニットの場合、最小レベルがさらに上昇させられ、最大レベルが対応して上昇させられる。N=5ユニットの場合、ユニットの数と、スタックが燃料電池モードで動作しなければならない時間の割合との間に完全な平衡が存在し、したがって、モジュールフローは、理想的に1つのレベルのみ、すなわち平均電流を有する。ユニットの数がN=6に増大されると、N=4の場合のように同じ2つのレベルが生じる。しかしながら、各ユニットが燃料電池モードから/燃料電池モードへ切り替わる時間を個々に選択することができ、これが、
図9に示したよりも大きな差を最大レベルと最小レベルとの間で達成することができる理由であることに言及すべきである。全てのユニットが、例えば同時に燃料電池モードで動作している場合、結果として生じるモジュール電流は負である。したがって、装置の間に適切なタイムラグが存在することが重要である。
【0124】
ユニットの最適な数N
optは、数式1によって得られる。例えば、スタックが時間の20%だけ燃料電池モードで動作するならば、ユニットの最適な数N
optは、5または全てのその整数倍であり、これも
図9に示されている。
【0125】
モジュール電流変動
ユニットの最適な数において(数式1参照)、各モジュールのための電流変動は存在しない。ユニットの最適な数を達成することができない場合にどのようなモジュール電流レベルになるかがここで試験される。各スタックは、時間のTa部分において値VaおよびIaを有し、残りの時間T-TaにおいてVaおよびIbを有する。変換器は、それぞれ電解および燃料電池モードにおいて効率ηelおよびηfcも有する。DCリンク電圧Vinは固定されている。これは、2つのインターバルにおいて以下の電流を有する各ユニットを生じる。
【0126】
【0127】
【0128】
システムは、N個のユニットから成り、ユニットは、ユニットの間にΔT=T/N秒で均一に時間シフトされている。
図9は、異なるデューティサイクルにおけるN=5のユニットの場合のユニットおよびモジュールにおける電流を示す。
【0129】
ここで、どれだけ多くのユニットが最大で存在するか、およびそれぞれ同時に電解および燃料電池モードにおいて動作するかを決定することができる。
【0130】
【0131】
【0132】
モジュール電流は、最大値(IM,max)および最小値(IM,min)から成る。
IM,max=Na,maxIEa+(N-Na,max)IEb (数式25)
IM,min=(N-Nb,max)IEa+Nb,maxIEb (数式26)
【0133】
モジュール電流における変動ΔIMは、最大値と最小値との差である。
ΔIM=IM,max-IM,min=(Na,max-(N-Nb,max))IEa+(N-Na,max-Nb,max)IEb (数式27)
【0134】
Na,maxおよびNb,maxのスタックがそれぞれ電解および燃料電池モードで動作するときの時間Ta,maxおよびTb,maxは、以下によって与えられる。
【0135】
【0136】
【0137】
これらの時間は、
図10にも示されている。モジュール電流の平均値は、
【0138】
【0139】
図11は、最大および最小モジュール電流が、それぞれが2kWの電力を消費するN=5のスタックを有するモジュールのデューティサイクルにどのように依存するかを示している。予想される通り平均電流はデューティサイクルから独立していることに留意されたい。
【0140】
検証
モジュール電流のために行われる計算を実証するために、
図12に示されたシステムのLTSpiceモデルが確立された。モデルは、変圧器からの(単純化された)一方向電圧に対応すべき150V入力電圧源を含み、LCフィルタおよびN=5変換器および電解スタックが続いている。シミュレーション時間を減じるために、変換器は、平均値モデルとして設計され、これは、変換器が、各スイッチ期間の間の移行イベントを考慮しないことを意味する。
図13は、3つの異なるデューティサイクル(0.75、0.80および0.85)の場合の、フィルタインダクタにおける電流、コンデンサ電圧および変換器のうちの1つへの入力電流を示す。モジュール電流のための最大値および最小値は
図11における値に対応することが分かる。しかしながら、コンデンサ電圧はD
a=0.75およびD
a=0.85の場合に変化するので偏差が存在し、これは、理論的計算において考慮されない。D
a=0.8の場合、この状況におけるユニットの数(N=5)は最適な数(N
opt=1/Db=1/0.2=5)と等しいので、実用的には、フィルタインダクタ電流または電圧のいずれかにおける変化は存在しない。
【0141】
したがって、上記結果は、本発明が、一定のDCリンク電圧を提供するためにこれらの複数の負荷の間の負荷シフト調整を可能にし、同時に、電解スタックを近熱中性レジームにおいて動的に動作させることによって、大規模電解プラントのための安価でかつ有効な電力管理を可能にする。
【0142】
上記開示が与えられると、多くのその他の特徴、修正および改善が当業者に明らかになるであろう。
【国際調査報告】