(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-18
(54)【発明の名称】携帯用非常脱出装置
(51)【国際特許分類】
A62B 1/08 20060101AFI20240111BHJP
【FI】
A62B1/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023565123
(86)(22)【出願日】2021-12-09
(85)【翻訳文提出日】2023-07-05
(86)【国際出願番号】 KR2021018590
(87)【国際公開番号】W WO2022154269
(87)【国際公開日】2022-07-21
(31)【優先権主張番号】10-2021-0006359
(32)【優先日】2021-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0006360
(32)【優先日】2021-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516202394
【氏名又は名称】リール テック カンパニー, リミテッド
【氏名又は名称原語表記】REEL TECH CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】519, Haegwang-ro, Haeryong-myeon, Suncheon-si, Jeollanam-do, Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】519025910
【氏名又は名称】シン, ジョン-フン
【氏名又は名称原語表記】SHIN, Jeong-Hoon
【住所又は居所原語表記】104-1005, 36, Wangji 3-gil, Suncheon-si, Jeollanam-do 57930, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】シン、ジョンフン
【テーマコード(参考)】
2E184
【Fターム(参考)】
2E184AA01
2E184BB23
2E184BC06
(57)【要約】
本発明は、ケースと、前記ケースの内部に回転可能に取り付けられ、ワイヤが巻き取られているドラムと、前記ドラムに連結された減速ギアと、前記減速ギアに回転軸が連結されたDCモータと、ユーザが着用する安全ベルトと、を備えた携帯用非常脱出装置であって、前記DCモータのパワー入力端子の両端の間には下降速度を決定する制動抵抗部が連結され、前記制動抵抗部は抵抗値を調節可能であり、前記制動抵抗部に連結され、ユーザの体重に応じて前記制動抵抗部の抵抗値を変化させることで体重に関係なく下降速度を一定に維持する等速制御部が備えられている携帯用非常脱出装置を開示する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、前記ケースの内部に回転可能に取り付けられ、ワイヤが巻き取られているドラムと、前記ドラムに連結された減速ギアと、前記減速ギアに回転軸が連結されたDCモータと、ユーザが着用する安全ベルトと、を備えた携帯用非常脱出装置であって、
前記DCモータのパワー入力端子の両端の間には下降速度を決定する制動抵抗部が連結されており、
前記制動抵抗部は抵抗値を調節可能であり、
前記制動抵抗部に連結され、ユーザの体重に応じて前記制動抵抗部の抵抗値を変化させることで体重に関係なく下降速度を一定に維持する等速制御部が備えられている、携帯用非常脱出装置。
【請求項2】
前記等速制御部は、
ユーザの体重に応じて少なくとも一部の部品が物理的に移動するかまたは変形されて前記制動抵抗部の抵抗値を変化させる、請求項1に記載の携帯用非常脱出装置。
【請求項3】
前記等速制御部は、
前記ケースの内部一側に配置されたバネを通じて前記ドラムの軸または前記ワイヤが接触するガイドロールの機械的変形をユーザの体重別に異なるように感知し、前記制動抵抗部の抵抗値を変化させる、請求項2に記載の携帯用非常脱出装置。
【請求項4】
前記等速制御部は、
下降時に前記DCモータのパワー入力端子の両端の間で発生する電気の電圧及び電流の少なくともいずれか一つをユーザの体重別に異なるように感知し、前記制動抵抗部の抵抗値を変化させる、請求項1に記載の携帯用非常脱出装置。
【請求項5】
前記等速制御部は、
下降時に前記DCモータ、前記ドラム、前記減速ギア及びガイドロールの中から選択されたいずれか一つの回転量をユーザの体重別に異なるように感知し、前記制動抵抗部の抵抗値を変化させる、請求項1に記載の携帯用非常脱出装置。
【請求項6】
前記等速制御部は、
ユーザが自分の体重が属する範囲を選択可能なレンジ選択用ディップスイッチを備える、請求項1に記載の携帯用非常脱出装置。
【請求項7】
前記制動抵抗部にはスイッチング素子が連結され、
前記等速制御部は、前記スイッチング素子を用いてパルス制御を行い、前記DCモータのパワー入力端子の両端の間の抵抗値を変化させる、請求項1に記載の携帯用非常脱出装置。
【請求項8】
前記制動抵抗部は、
複数の抵抗素子が並列または直列に連結されて構成される、請求項1に記載の携帯用非常脱出装置。
【請求項9】
前記制動抵抗部は、可変抵抗器から構成されて下降速度を増速または減速させる、請求項1に記載の携帯用非常脱出装置。
【請求項10】
前記制動抵抗部は、複数のLEDまたはモータから構成される、請求項1に記載の携帯用非常脱出装置。
【請求項11】
前記DCモータのパワー入力端子の両端を短絡させることでブレーキ機能が提供される、請求項1に記載の携帯用非常脱出装置。
【請求項12】
前記ケースには、前記DCモータのパワー入力端子の両端が短絡された第1状態から前記DCモータのパワー入力端子の両端が前記制動抵抗部と連結される第2状態に切り換えて下降運動を開始するスタートスイッチが取り付けられている、請求項11に記載の携帯用非常脱出装置。
【請求項13】
前記スタートスイッチは、オン/オフボタン、レバーまたは安全ピンが取り付けられた紐形態で構成される、請求項12に記載の携帯用非常脱出装置。
【請求項14】
前記ケースは建物の一側に固定され、前記ドラムから繰り出される前記ワイヤの端部に前記安全ベルトが連結されている、請求項12に記載の携帯用非常脱出装置。
【請求項15】
前記ワイヤは、長さ区間の一部または全体が不燃コーティングまたは保護チューブで被覆されている、請求項12に記載の携帯用非常脱出装置。
【請求項16】
前記ドラムは、少なくとも二つが前記ケース内に直列または並列で配置され、使用時に前記ケースの外部に少なくとも二本のワイヤが繰り出されながら下降する、請求項11に記載の携帯用非常脱出装置。
【請求項17】
前記安全ベルトは、
ユーザの腕部位が通される輪状であり、二人のユーザが同時に使用できるように前記ケースに二本が取り付けられている、請求項16に記載の携帯用非常脱出装置。
【請求項18】
二個以上の前記ドラムから繰り出される前記ワイヤは、一個のカラビナに連結されている、請求項17に記載の携帯用非常脱出装置。
【請求項19】
それぞれのドラムの周辺に固定され、前記ワイヤが繰り出される位置を一定に維持するローラまたはリング状のガイド部材をさらに含む、請求項17に記載の携帯用非常脱出装置。
【請求項20】
前記ワイヤの端部には、建物に固定された棒状の支持物に係止するか、または、前記ワイヤを建物の柱に巻いた状態で前記ワイヤに係止するカラビナが連結されている、請求項1に記載の携帯用非常脱出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年1月15日付け出願の韓国特許出願第10-2021-0006359号及び韓国特許出願第10-2021-0006360号に基づく優先権を主張し、当該出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に組み込まれる。
【0002】
本発明は、携帯用非常脱出装置に関し、より詳しくは、高層ビルの火災のような非常事態が発生したとき、ユーザが建物の窓などからワイヤを用いて地上に下降して安全に脱出できるように補助する携帯用非常脱出装置に関する。
【背景技術】
【0003】
一般に、高層マンションや高層ビルなどのような建物に火災のような非常事態が発生した場合は、消防用避難はしごを用いて待避するか、または、地上にエアーマットを設置した後、エアーマット上に飛び降りる非常脱出が行われる。
しかし、避難はしごを用いる脱出は、避難はしごを設置するために広い空間を必要とする場所的制限があり、避難はしごが到達できない高層ビルの場合は無用の長物になるという短所がある。
また、エアーマットは、設置の際、多くの人力と広い空間が求められる制限があり、高層ビルの場合、脱出者の不安な心理のため脱出時間が遅延され、また、風などによってエアーマット上に正確に飛び降り難いという問題がある。
【0004】
これにより、ケースの内部に回転可能に取り付けられ、ワイヤが巻き取られているドラムと、前記ドラムと連結された状態で非常脱出時にドラムの回転速度を減速させる減速ギアと、前記ワイヤの終端に連結されて高層ビルの柱に係止固定されるフックと、前記ケースの下端に連結されてユーザの身体を結束する安全ベルトと、からなる非常脱出装置が提案されている。
上記のようにワイヤを用いる非常脱出装置は、火災が発生したとき、迅速に窓から下降して非常脱出することができるという利点がある。しかし、減速ギアのみを用いて落下速度を減速するため、落下速度が一定ではなく、ユーザが不安を抱くだけでなく、安定的に非常脱出装置を使用できないなどの問題が発生する。
【0005】
代案として、特許文献1では、速度調節部の流量制御弁を用いて脱出者の体重に応じて恒速で下降し、必要に応じて下降速度を加減して移動可能な超高層ビル非常脱出装置を提案している。
特許文献1の超高層ビル非常脱出装置では、ワイヤドラム部が回転する速度を流量調節を通じて調節するため、第1ピストンシリンダと第2ピストンシリンダとの間に流量調節のための流量制御弁が取り付けられている。第1ピストンシリンダ及び第2ピストンシリンダ内の流体の移動量が多くなれば、第1ピストンシリンダ及び第2ピストンシリンダの体積変化が大きくなり、ワイヤドラム部の回転速度が速まって脱出者の下降速度が速くなる。
しかし、上記のように流体を用いて下降速度を制御する方式は、装置の体積及び重量が大きく、複雑であるため、使用がややこしいという短所があり、流体の移送ラインやピストンシリンダが高温に晒されて流体が漏れる場合は、誤動作するかまたは作動不能の状態になるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国公開特許第2018-0119180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みて創案されたものであり、下降時にDCモータの制動抵抗を用いて制動を行い、ユーザの体重に応じて下降速度を自動で制御することで、体重に関係なく一定の速度で安全に下降できる携帯用非常脱出装置を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、ユーザが下降直前に姿勢を整えた状態で安定的に下降を開始できる機能を備えた携帯用非常脱出装置を提供することを他の目的とする。
【0009】
また、本発明は、下降途中にユーザが必要に応じて下降速度を自在に調節できる構造を備えた携帯用非常脱出装置を提供することをさらに他の目的とする。
【0010】
また、本発明は、下降途中でワイヤによってユーザの身体が回転することを防止する構造を備えた携帯用非常脱出装置を提供することをさらに他の目的とする。
【0011】
また、本発明は、高荷重を支持できるように改善された構造を備えた携帯用非常脱出装置を提供することをさらに他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するため、本発明の一態様は、ケースと、前記ケースの内部に回転可能に取り付けられ、ワイヤが巻き取られているドラムと、前記ドラムに連結された減速ギアと、前記減速ギアに回転軸が連結されたDCモータと、ユーザが着用する安全ベルトと、を備えた携帯用非常脱出装置であって、前記DCモータのパワー入力端子の両端の間には下降速度を決定する制動抵抗部が連結され、前記制動抵抗部は抵抗値を調節可能であり、前記制動抵抗部に連結され、ユーザの体重に応じて前記制動抵抗部の抵抗値を変化させることで体重に関係なく下降速度を一定に維持する等速制御部が備えられていることを特徴とする。
【0013】
前記等速制御部は、ユーザの体重に応じて少なくとも一部の部品が物理的に移動するかまたは変形されて前記制動抵抗部の抵抗値を変化させ得る。
代案としては、前記等速制御部は、前記ケースの内部一側に配置されたバネを通じて前記ドラムの軸または前記ワイヤが接触するガイドロールの機械的変形をユーザの体重別に異なるように感知し、前記制動抵抗部の抵抗値を変化させ得る。
他の代案としては、前記等速制御部は、下降時に前記DCモータのパワー入力端子の両端の間で発生する電気の電圧及び電流の少なくともいずれか一つをユーザの体重別に異なるように感知し、前記制動抵抗部の抵抗値を変化させ得る。
さらに他の代案としては、前記等速制御部は、下降時に前記DCモータ、前記ドラム、前記減速ギア及びガイドロールの中から選択されたいずれか一つの回転量をユーザの体重別に異なるように感知し、前記制動抵抗部の抵抗値を変化させ得る。
さらに他の代案としては、前記等速制御部は、ユーザが自分の体重が属する範囲を選択可能なレンジ選択用ディップスイッチを備え得る。
【0014】
前記等速制御部は、前記制動抵抗部に加えられる電圧に対してPWM(Pulse Width Modulation、パルス幅変調)制御を行い得る。
前記制動抵抗部は、複数の抵抗素子が並列または直列に連結されて構成され得る。
前記制動抵抗部は、可変抵抗器から構成され得る。
前記制動抵抗部は、複数のLEDまたはモータから構成され得る。
前記DCモータのパワー入力端子の両端を短絡させることでブレーキ機能が提供され得る。
前記ケースには、前記DCモータのパワー入力端子の両端が短絡された第1状態から前記DCモータのパワー入力端子の両端が前記制動抵抗部と連結される第2状態に切り換えて下降運動を開始するスタートスイッチが取り付けられ得る。
前記スタートスイッチは、オン/オフボタン、レバーまたは安全ピンが取り付けられた紐形態で構成され得る。
【0015】
前記ケースは建物の一側に固定され、前記ドラムから繰り出される前記ワイヤの端部に前記安全ベルトが連結され得る。
前記ワイヤは、長さ区間の一部または全体が不燃コーティングまたは保護チューブで被覆され得る。
前記ドラムは、少なくとも二つが前記ケース内に直列または並列で配置され、使用時に前記ケースの外部に少なくとも二本のワイヤが繰り出されながら下降し得る。
前記安全ベルトは、ユーザの腕部位が通される輪状であり、二人のユーザが同時に使用できるように前記ケースに二個が取り付けられ得る。
二個以上の前記ドラムから繰り出される前記ワイヤは、一個のカラビナ(karabiner)に連結され得る。
付加的には、それぞれのドラムの周辺に固定され、前記ワイヤが繰り出される位置を一定に維持するローラまたはリング状のガイド部材をさらに含み得る。
前記ワイヤの端部には、前記建物に固定された棒状の支持物に係止するか、または、前記ワイヤを建物の柱に巻いた状態で前記ワイヤに係止するカラビナが連結され得る。
【発明の効果】
【0016】
本発明による携帯用非常脱出装置は、次のような効果を奏する。
【0017】
第一、下降の際、DCモータの制動抵抗を用いて制動を行い、ユーザの体重に応じて下降速度を自動で制御することで、体重に関係なく一定の速度で安全に下降することができる。
【0018】
第二、下降の直前に、体重を乗せて建物に固定されたワイヤを張り伸ばすとともに、足で建物の欄干などを踏んで安定的に姿勢を整えた後、簡便なボタン操作などでワイヤがスムーズに繰り出されながら下降することができる。したがって、ワイヤに衝撃荷重を加えないため、ワイヤの損傷を防止し、安全事故を予防することができる。
【0019】
第三、下降の直前はワイヤをぴんと引っ張ってもワイヤが繰り出されないため、ユーザが下降するための姿勢または心構えを十分にしてから下降を始めることができる。
【0020】
第四、高層ビルで火災が発生したとき、一分一秒を争う緊急な状況であるにも一人ずつ待機しながら順番に脱出する従来の緩降機とは異なり、複数のユーザが各々の携帯用非常脱出装置を使用して個別的且つ迅速に脱出することができる。
【0021】
第五、ケースから二本以上のワイヤが同時に繰り出されるように構成される場合、下降の最中にユーザの身体が回転することを防止することができる。
【0022】
第六、二本以上のワイヤによって高荷重を支えることができるため、非常脱出の際、子供と両親が各々の安全ベルトを用いて同時に下降することができる。
【0023】
第七、非常脱出装置を戦時の落下作戦に使用する場合は、ユーザの身体が回転しないためバランスを取ることができ、また、重い軍装及び戦闘装備などを安定的に支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の望ましい実施形態による携帯用非常脱出装置の外観を示した斜視図である。
【
図2】
図1のカバーを取り外して内部構成を示した斜視図である。
【
図4】
図1の下降スタートスイッチの変形形態を示した斜視図である。
【
図5】本発明の一実施形態による安全取っ手が取り付けられた携帯用非常脱出装置の外観を示した斜視図である。
【
図6】本発明の一実施形態によるワイヤに安全ベルトが連結された一例を示した斜視図である。
【
図7】携帯用非常脱出装置を設置した一例を示した斜視図である。
【
図8】携帯用非常脱出装置を設置した一例を示した斜視図である。
【
図9】DCモータの制動及び停止のための構成を概略的に示した結線図である。
【
図10】本発明の望ましい実施形態による携帯用非常脱出装置の使用の一例を示した斜視図である。
【
図11】本発明の他の実施形態による携帯用非常脱出装置の外観を示した斜視図である。
【
図12】
図11のカバーを取り外して内部構成を示した斜視図である。
【
図14】
図13においてローラ状のガイド部材が付け加えられた一例を示した部分拡大正面図である。
【
図15】本発明のさらに他の実施形態による携帯用非常脱出装置の外観を示した斜視図である。
【
図16】
図15のカバーを取り外して内部構成を示した斜視図である。
【
図17】DCモータの制動及び停止のための構成を概略的に示した結線図である。
【
図18】等速制御部がPWM制御を行う構成の一例を示した回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は本発明の望ましい一実施形態による携帯用非常脱出装置の外観を示した斜視図であり、
図2は
図1のカバーを取り外して内部構成を示した斜視図であり、
図3は
図2の正面図である。
【0026】
図1~
図3を参照すると、本発明の望ましい一実施形態による携帯用非常脱出装置は、所定形状のケース100と、ケース100の内部に回転可能に取り付けられ、ワイヤ103が巻き取されているドラム101と、ドラム101と連結され、非常脱出時にドラム101の回転速度を減速する減速ギア109と、減速ギア109に回転軸が連結されているDCモータ102と、DCモータ102に連結されている制動抵抗部106と、体重に関係なく下降速度を一定に維持する等速制御部(
図9の115を参照)と、ケース100の下端に連結されてユーザの上体を固定する安全ベルト104と、ワイヤ103の端部に連結され、高層ビルに固定された所定の支持構造物に係止固定されるフック105と、を含む。
【0027】
ドラム101は、ケース100内に備えられ、脱出者の下降とともにワイヤ103が引っ張られる力によって受動的に回転する。ドラム101の回転軸の両端はケース100内で支持され、ユーザの荷重が減速ギア109の一側に偏ることを防止することが望ましい。
【0028】
ワイヤ103としては、通常のロープ型ワイヤを含めて多様な素材の紐が採用され得る。さらに、ワイヤ103は、長さ区間の一部または全体が不燃コーティングまたは保護チューブで被覆されて火災時の耐燃性を確保できる。また、ワイヤ103は、少なくとも一部にLED、ELワイヤなどのような発光部材(図示せず)が備えられて、火災時、曇り日、または夜間などに下降の様子を識別するための視認性を確保できる。
【0029】
減速ギア109は、脱出者の下降速度を所定のギア比で減少させて回転軸に伝達する。減速ギア109は公知の多様なギアアセンブリによって構成され得る。
DCモータ102は、外力によって回転軸が回転して制動力を発生させる。DCモータ102は外部電源によって能動的に回転するものではなく、脱出者の下降(自由落下運動)によって発生する、ワイヤ103が引っ張られる力によってドラム101と一緒に回転軸が受動的に回転する。
【0030】
制動抵抗部106は、DCモータ102のパワー入力端子の両端の間に連結されて下降速度を決定する。非常脱出の際、脱出者の体重に応じた抵抗値を有するように制動抵抗部106を制御すると、体重に関係なく下降速度が一定に維持されながら下降することができる。また、DCモータ102のパワー入力端子の両端を直接接触して短絡(short)させることでブレーキ機能を提供できる。ここで、パワー入力端子の両端は別途の短絡スイッチ(
図17の107を参照)と電気的に接続されて使用され、短絡スイッチ107をターンオンするとDCモータ102が短絡されてブレーキ作用をする。短絡スイッチ107はケース100の外部に露出して設置される。
【0031】
DCモータ102の発電によって発生する制動力は制動抵抗部106の抵抗値に応じて変化する。すなわち、DCモータ102に連結される制動抵抗部106の抵抗値が相対的に大きいと、制動抵抗部106においてジュール熱で消費されるエネルギーが大きくてDCモータ102の制動力が弱いため、下降速度は速くなる。一方、制動抵抗部106の抵抗値が相対的に小さいと、ジュール熱で消費されるエネルギーが小さくてDCモータ102の制動力が大きいため、下降速度が遅くなる。抵抗値が0である場合は短絡状態であるため、制動力が大きく、実質的に下降は停止される。
【0032】
例えば、制動抵抗部106の抵抗値が100Ω程度と比較的に小さい場合は、DCモータ102で発生する制動力が大きいため、DCモータ102の回転軸に連結されたドラム101がゆっくり回転してワイヤ103が繰り出される速度が遅くなり、下降は緩やかに行われる。反対に、制動抵抗部106の抵抗値が200Ω、300Ω、400Ωなどと徐々に増加するように調節される場合は、DCモータ102で発生する制動力が徐々に弱くなり、下降は次第に速く行われる。上記のように制動抵抗部106の抵抗値は下降速度を決定するため、ユーザ(脱出者)に安全感を与えるように、ユーザの体重に応じた抵抗値に制御される。
【0033】
DCモータ102のパワー入力端子の両端には、
図9に示したように選択的にブレーキ(短絡状態)を作動させるためのスタートスイッチ112、113が連結され、また、スタートスイッチ112、113に対して並列に連結されるように、パワー入力端子の両端の間には下降速度を調節するため異なる抵抗値を有する複数の抵抗素子が並列または直列に連結されて構成された制動抵抗部106と、制動抵抗部106の抵抗値を変化させて下降速度を一定に維持する等速制御部115とが連結される。
【0034】
代案としては、制動抵抗部106は、通常の回転式または摺動式可変抵抗器(ボリューム)から構成され得る。この場合、可変抵抗器のレバーを移動して下降速度を増速または減速させ得る。このとき、前記可変抵抗器のレバーには所定のバネが結合されて弾性復元力が提供し得る。可変抵抗器を調節して必要に応じて下降速度を増速または減速させる機能は、軍隊の訓練または戦時の落下作戦などに有用に使用可能である。
【0035】
他の代案としては、制動抵抗部106は、複数のLEDまたはモータから構成され得る。その他に、制動抵抗部106は、全体抵抗値を調節可能な多様な電気/電子部品(または機器)から構成されてもよい。
【0036】
等速制御部115は、ユーザの体重に応じて少なくとも一部の部品が物理的に移動するかまたは変形されて制動抵抗部106の抵抗値を変化させる。望ましくは、等速制御部115は、ケース100の内部の一側に配置されたバネまたは板バネ(図示せず)を通じてドラム101の軸またはワイヤ103が接触する所定のガイドロール(図示せず)の機械的変形をユーザの体重別に異なるように感知し、制動抵抗部106の抵抗値を変化させる。具体的には、等速制御部115は、ユーザの体重が、例えば100kgである場合、体重に応じてドラム101の軸やガイドロールの軸が第1変位だけ機械的に変形されたとき、それに連動して前記バネが第1長さだけ物理的に移動するかまたは変形され、制動抵抗部106の抵抗値を例えば100Ωに自動設定する。これにより、DCモータ102では比較的大きい制動力が発生し、ワイヤ103がゆっくり繰り出されながらユーザが下降する。一方、等速制御部115は、ユーザの体重が、例えば50kgである場合、体重に応じてドラム101の軸やガイドロールの軸が第2変位だけ機械的に変形され、それに連動して前記バネが第2長さだけ物理的に移動するかまたは変形され、制動抵抗部106の抵抗値を例えば400Ωに自動設定する。これにより、DCモータ102では比較的小さい制動力が発生するため、100kgの場合に比べてワイヤ103が相対的に速く繰り出されながらユーザが下降する。このように等速制御部115がユーザの体重別に相異なる制動力が発生するように制御することで、ユーザの体重に関係なく誰でも一定の速度で下降できる。このような等速制御部115の速度制御機能がないと、ユーザの体重100kgの場合が50kgの場合に比べて顕著に大きい回転力(トルク)をDCモータ102の回転軸に加えながら著しく速い速度で下降することになる。
【0037】
代案としては、等速制御部115は、下降時にDCモータ102のパワー入力端子の両端の間に発生する電気の電圧及び電流の少なくともいずれか一つをユーザの体重別に異なるように感知し、制動抵抗部106の抵抗値を変化させ得る。そのため、等速制御部115は通常の電流感知センサまたは電圧感知センサを含み得る。例えばユーザが成人である場合は子供に比べて体重が重く、DCモータ102のパワー入力端子の両端の間に相対的に高い電力の電気が発生するため、等速制御部115は発生する電気の電圧及び電流の少なくともいずれか一つを感知することで、DCモータ102の発電量をユーザの体重別に異なるように感知し、制動抵抗部106の抵抗値を変化させる。制動抵抗部106の抵抗値を変化させてユーザの体重に関係なく下降速度を一定に維持する過程は上述した方式と同様である。
【0038】
他の代案としては、等速制御部115は、下降時にDCモータ、ドラム、減速ギア及びガイドロールの中から選択されたいずれか一つの回転量をユーザの体重別に異なるように感知し、前記制動抵抗部の抵抗値を変化させ得る。制動抵抗部106の抵抗値を変化させてユーザの体重に関係なく下降速度を一定に維持する過程は上述した方式と同様である。
【0039】
さらに他の代案としては、等速制御部115は、ユーザが自分の体重が属する範囲を選択可能にするレンジ選択用ディップスイッチを備え得る。この場合、前記レンジ選択用ディップスイッチは、例えば「成人用」と「子供用」に区分されてもよく、「10~30kg」、「31~60kg」、「61~90kg」、「91~120kg」のように所定の体重範囲別に区分されてもよい。制動抵抗部106の抵抗値を変化させてユーザの体重に関係なく下降速度を一定に維持する過程は上述した方式と同様である。
【0040】
より望ましくは、等速制御部115は、制動抵抗部106に連結された所定のスイッチング素子(
図18の115dを参照)を用いてPWM(Pulse Width Modulation、パルス幅変調)制御を行い、ユーザの体重に関係なく下降速度を一定に維持し得る。PWM制御を行う場合、ユーザの体重別に制動抵抗部106に加えられる電圧に対するパルス幅のデューティ比(duty ratio)を変化させることで、制動抵抗部106の抵抗値を変化させることと実質的に同一な効果を奏し得る。前記パルス制御はPWM方式に限定されず、公知の多様なパルス変調方式または電気信号制御方法を採用して行い得る。以下では、PWM方式でパルス制御を行う例を中心にして等速制御部115の構成を詳しく説明する。
【0041】
具体的には、
図18に示したように、等速制御部115は、SMPS(Switching Mode Power Supply)レギュレータ115a、電圧検出部115b、PWM制御マイクロコンピュータ115c、スイッチング素子115d、シャント抵抗(shunt resistor)115e、及びB接点リレー115fを含む。
【0042】
SMPSレギュレータ115aは、DCモータ102で発生した起電力をスイッチング制御してPWM制御マイクロコンピュータ115c及びB接点リレー115fを駆動するための定電圧を出力する。
【0043】
電圧検出部115bは、DCモータ102で発生した起電力の電圧を検出してPWM制御マイクロコンピュータ115cに伝達する。
【0044】
PWM制御マイクロコンピュータ115cは、電圧検出部115bによって検出された電圧値からユーザの体重を感知し、それに基づいてPWM制御を行い、DCモータ102の両端に実質的に連結される制動抵抗部106の抵抗値を変化させる。このとき、PWM制御マイクロコンピュータ115cは、制動抵抗部106に連結されたFET(Field Effect Transistor、電界効果トランジスタ)のようなスイッチング素子115dを駆動してパルス幅のデューティ比を制御する。ここで、前記FETは多様な公知の半導体スイッチング素子で代替され得る。
【0045】
B接点リレー115fは、SMPSレギュレータ115a、PWM制御マイクロコンピュータ115c及びスイッチング素子115dのうちの少なくともいずれか一つに故障が発生したときにも、DCモータ102の両端に制動抵抗部106を連結することで、制動不能による墜落事故の発生を防止する安全装置の役割を果たす。すなわち、B接点リレー115fは、普段(制御信号の入力がないとき)はオン状態であり、制御信号が入力されればターンオフされるスイッチ構造(normally closed)を有するため、SMPSレギュレータ115a、PWM制御マイクロコンピュータ115c及びFETのうちの少なくともいずれか一つが故障しても、オン状態に切り換えられてDCモータ102の両端に制動抵抗部106を連結させる。
【0046】
PWM制御マイクロコンピュータ115cは、PWM制御を行う正常な動作時にはB接点リレー115fに制御信号を入力し、B接点リレー115fの接点が離れているオフ状態にする。また、PWM制御マイクロコンピュータ115cは、スイッチング素子115dであるFETのソース端子とシャント抵抗115eとの間に連結され(
図18の116を参照)、スイッチング素子115dに流れる電流を測定する。PWM制御マイクロコンピュータ115cは、電流値を測定してスイッチング素子115dの故障如何を検出し、電流が流れないかまたは短絡状態である場合は正常なPWM制御ができないため、B接点リレー115fを接点が連結されたオン状態に切り換え、DCモータ102の両端に制動抵抗部106を連結させる。そのため、B接点リレー115fは、スイッチング素子115d及びシャント抵抗115eには並列に連結され、制動抵抗部106には直列に連結される。
【0047】
スタートスイッチ112、113は、スイッチング動作によってDCモータ102のパワー入力端子の両端が短絡された第1状態からDCモータ102のパワー入力端子の両端が制動抵抗部106と連結される第2状態に切り換えられて下降運動を開始する。必要であれば、ユーザは下降の最中にスタートスイッチ112、113を操作して所望の地点で停止することも可能である。
【0048】
スタートスイッチ112、113は、ケース100の内部まで所定の長さのケーブルが延長されたボタン形態で構成される。代案として、スタートスイッチ112、113は、
図4に示したようなケース100に挿入された所定の安全ピン(図示せず)が端部に連結された紐形態で構成され得る。この際、前記安全ピンは、短絡スイッチ107と連動するように構成され得る。他の代案として、スタートスイッチ112、113は、レバー形態、ダイヤル形態、または延長ケーブル無しにケース100の外面に取り付けられたオン/オフボタンの形態で構成されてもよい。
【0049】
安全ベルト104は、ユーザの腕部位が通される輪状で構成される。安全ベルト104は、ユーザの両わき部分に着用されることが望ましい。
【0050】
安全ベルト104は、ユーザの両腕を前記安全ベルト104に通した状態で胸の前で両側の安全ベルト104を所定のファスナーを通じて互いに連結するかまたは着脱してもよい。
【0051】
使用の際、ユーザが手で掴んでぶら下がるように、
図5に示したように安全ベルト104の一側には輪状の安全取っ手が取り付けられ得る。また、使用の際、ケース100が建物の一側に固定される場合、
図6に示したようにドラム101から繰り出されるワイヤ103の端部(下端)に安全ベルト104が連結され得る。
【0052】
非常脱出の際、ワイヤ103の端部に連結されたカラビナ形態のフック105は柱側に係止して固定し、安全ベルト104はユーザの上体、すなわち、わきに通して結束する。具体的には、
図7に示したようにカラビナ形態のフック105を建物のベランダやテラスなどに設置された棒状支持物1に係止するか、または、
図8に示したようにワイヤ103を建物の柱または前記棒状支持物1に巻いた状態でワイヤ103に係止して結束する。
【0053】
高層ビルの火災のような非常状況が発生したとき、ユーザ(脱出者)は
図10に示したようにカラビナ形態のフック105を建物の柱またはベランダやテラスなどに設置された棒状支持物1に係止して結束し、体重を乗せて建物に固定されたワイヤを張り伸ばすとともに、足で建物の欄干などを踏んで下降するための姿勢を整える。
【0054】
その後、望ましくは、スタートスイッチ112、113のボタンを押すかまたは紐を引っ張るなどの方式で操作すると、DCモータ102のパワー入力端子の両端が短絡された第1状態からDCモータ102のパワー入力端子の両端が制動抵抗部106と連結される第2状態に切り換えられる。これにより、DCモータ102で発生する制動力が弱くなって、ワイヤがスムーズに繰り出されながら下降できる。したがって、ワイヤに衝撃荷重を加えないため、ワイヤが切れるなどの安全事故を防止することができる。
【0055】
下降速度は等速制御部115によってユーザの体重に関係なく一定に維持される。等速制御部115は、ユーザの体重に応じて少なくとも一部の部品が物理的に移動または変形されるか、下降時にDCモータ102のパワー入力端子の両端の間で発生する発電量を体重別に異なるように感知するか、ユーザが設定したレンジ選択用ディップスイッチの体重範囲の設定値に従うか、またはPWM制御を行うことで制動抵抗部106の抵抗値を変化させる。例えば、相対的に体重の重い成人が使用する場合は、制動抵抗部106の抵抗値を適正値に低めて下降速度を減少させ、相対的に体重の軽い子供が使用する場合は、制動抵抗部106の抵抗値を適正値に高めて下降速度を増加させることで体重に関係なく一定の下降速度を常に維持することができる。
【0056】
ユーザが地面に近づき所望の位置で停止しようとする場合は、スタートスイッチ112、113を操作してDCモータ102のパワー入力端子の両端を短絡させると、DCモータ102で発生する強い制動力によってドラム101の回転が抑制されてワイヤ103が繰り出されなくなり、下降が停止する。
【0057】
図11は本発明の他の実施形態による携帯用非常脱出装置の外観を示した斜視図であり、
図12は
図11のカバーを取り外して内部構成を示した斜視図であり、
図13は
図12の正面図である。
【0058】
図11~
図13を参照すると、本発明の望ましい一実施形態による携帯用非常脱出装置は、所定形状のケース100と、ケース100の内部に回転可能に取り付けられ、ワイヤ103が巻き取られている少なくとも二個のドラム101と、各々のドラム101に連結されて非常脱出時にドラム101の回転速度を減速する減速ギア109と、各々の減速ギア109に回転軸が連結されているDCモータ102と、DCモータ102に連結されている制動抵抗部106と、各々のワイヤ103の終端に連結されて高層ビルに固定された所定の支持構造物に係止固定されるフック105と、ケース100の下端に連結されてユーザの上体を固定する安全ベルト104と、を含む。
【0059】
ドラム101は、少なくとも二つがケース100内に直列または並列の形態で配置される。以下では、二個のドラム101がケース100内に直列で配置された実施形態を中心にして発明の構成を説明する。ドラム101は、ユーザの下降とともにワイヤ103が引っ張られる力によって受動的に回転する。各々のドラム101の回転軸の両端は、ケース100内で支持され、ユーザの荷重が減速ギア109の一側に偏ることを防止することが望ましい。
【0060】
ワイヤ103としては、通常のロープ型ワイヤを含めて多様な素材の紐が採用され得る。さらに、ワイヤ103は、長さ区間の一部または全体が不燃コーティングまたは保護チューブで被覆されて火災時の耐燃性を確保する。また、ワイヤ103は、少なくとも一部にLED、ELワイヤなどのような発光部材(図示せず)が備えられて、火災時、曇り日、または夜間などに下降の様子を識別するための視認性を確保できる。
【0061】
図14に示したように、各々のドラム101の周辺には一対のローラからなるガイド部材110が所定のブラケット111を通じてケース100に固定され、ワイヤ103が繰り出される位置を一定に維持することが望ましい。代案としては、ガイド部材110は単一のローラやワイヤ103が通過するリング状のガイド部材110で代替され得る。このような構成によると、二個のドラム101から各々繰り出されるワイヤ103の位置が相異なっても、ドラム101の長さ方向を基準にして常に所定の地点(望ましくは、中間地点)から繰り出される効果が得られるため、脱出者がぶら下がったとき、バランスが崩れる現象を防止することができる。
【0062】
図15及び
図16に示したように、二個のドラム101から各々繰り出されるワイヤ103は、一つのカラビナに連結されてもよい。
【0063】
減速ギア109は、脱出者の下降速度を所定のギア比で減少させて回転軸に伝達する。減速ギア109は公知の多様なギアアセンブリによって構成され得る。
【0064】
DCモータ102は、外力によって回転軸が回転して制動力を発生させる。DCモータ102は外部電源によって能動的に回転するものではなく、脱出者の下降(自由落下運動)によって発生する、ワイヤ103が引っ張られる力によってドラム101と一緒に回転軸が受動的に回転する。
【0065】
制動抵抗部106は、前記DCモータ102のパワー入力端子の両端の間に少なくとも一つが連結されて下降速度を決定する。したがって、非常脱出の際、制動抵抗によってユーザの体重に関係なく下降速度が一定に維持されながら下降することができる。また、DCモータ102のパワー入力端子の両端を直接接触して短絡させることでブレーキ機能を提供できる。ここで、パワー入力端子の両端は別途の短絡スイッチ(107)と電気的に接続されて使用され、短絡スイッチ(107)をターンオンするとDCモータ102が短絡されてブレーキ作用をする。短絡スイッチ(107)はケース100の外部に露出して設置される。
【0066】
DCモータ102の発電によって発生する制動力は制動抵抗部106の抵抗値に応じて変化する。すなわち、DCモータ102に連結される制動抵抗部106の抵抗値が相対的に大きいと、制動抵抗部106においてジュール熱で消費されるエネルギーが大きくてDCモータ102の制動力が弱いため、下降速度は速くなる。一方、制動抵抗部106の抵抗値が相対的に小さいと、ジュール熱で消費されるエネルギーが小さくてDCモータ102の制動力が大きいため、下降速度が遅くなる。抵抗値が0である場合は短絡状態であるため、制動力が大きく、下降は実質的に停止される。
【0067】
例えば、制動抵抗部106の抵抗値が100Ω程度と比較的に小さい場合は、DCモータ102で発生する制動力が大きいため、DCモータ102の回転軸に連結されたドラム101がゆっくり回転してワイヤ103が繰り出される速度が遅くなり、下降は緩やかに行われる。反対に、制動抵抗部106の抵抗値が200Ω、300Ω、400Ωなどと徐々に増加するように調節される場合は、DCモータ102で発生する制動力が徐々に弱くなり、下降は次第に速く行われる。上記のように制動抵抗部106の抵抗値は下降速度を決定するため、脱出者に安全感を与えるように、適切な抵抗値に設定されることが望ましい。
【0068】
図17に示したように、DCモータ102のパワー入力端子の両端には、選択的にブレーキ(短絡状態)を作動させるための短絡スイッチ(107)が連結され、また、短絡スイッチ(107)に対して並列に連結されるように、前記パワー入力端子の両端の間には制動抵抗部106に含まれた複数の抵抗のうちの特定の抵抗を選択して下降速度を調節する速度調節部108が連結され得る。速度調節部108は、押しボタン、ダイヤル、または回転レバーなど多様な形態で構成され得る。
図17には示されてないが、上述した実施形態と同様に、制動抵抗部106には、速度調節部108とは別にユーザの体重に関係なく下降速度を一定に維持する等速制御部115が連結される。
【0069】
安全ベルト104は、ユーザの腕部位が通される輪状であり、望ましくは、二人のユーザが同時に使用できるように前記ケースに二本が取り付けられる。このような安全ベルト104は、ユーザの両わきにX字形態または垂直形態で着用される。
【0070】
安全ベルト104は、ケース100に二本が取り付けられ、重ねて使用できるように二本の形状及び大きさを一致させて構成し得る。また、ユーザの両腕を前記安全ベルト104に通した状態で胸の前で両側の安全ベルト104を所定のファスナーを通じて互いに連結するかまたは着脱してもよい。
【0071】
使用の際、ケース100が建物の一側に固定される場合、ドラム101から繰り出されるワイヤ103の終端に安全ベルト104が連結され得る。また、使用の際、ユーザが手で掴んでぶら下がるように、安全ベルト104の一側には輪状の安全取っ手が取り付けられ得る。
【0072】
非常脱出の際、二本のワイヤ103の端部に連結されたカラビナ形態のフック105は柱側に係止して固定し、安全ベルト104はユーザ(脱出者)の上体、すなわち、わきに通して結束する。具体的には、各々のカラビナ形態のフックを建物のテラスなどに設置された棒状支持物に係止するか、または、ワイヤ103を建物の柱または前記棒状支持物に巻いた状態でワイヤ103に係止して結束する。ケース100に二本の安全ベルト104が取り付けられた場合は、子供と成人が同時に下降できる。
【0073】
上述したように、準備が整った状態でユーザが建物から足を離して脱出を試みると、DCモータ102の制動抵抗値に反比例する制動力によって二個のドラム101がゆっくり回転しながら二本のワイヤ103が繰り出されるため、脱出者は所定の下降速度で安全に下降することができる。
【0074】
ユーザが地面に近づき所望の位置で停止しようとする場合は、スタートスイッチ112、113を操作してDCモータ102のパワー入力端子の両端を短絡させることで、各々のDCモータ102で発生する強い制動力によってドラム101の回転が抑制されてワイヤ103が繰り出されなくなり、下降が停止する。
【0075】
以上のように、本発明を限定された実施形態と図面によって説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の属する技術分野で通常の知識を持つ者によって本発明の技術思想と特許請求の範囲の均等範囲内で多様な修正及び変形が可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明を適用する場合、高層ビルで火災が発生したとき、複数のユーザが各々の携帯用非常脱出装置を使用して個別的且つ迅速に脱出することができる。下降の際には、DCモータの制動抵抗を用いて制動を行い、ユーザの体重に応じて下降速度を自動で制御することで、体重に関係なく一定の速度で安全に下降することができる。
【国際調査報告】