(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-18
(54)【発明の名称】核酸を検出するための方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6844 20180101AFI20240111BHJP
C12Q 1/6876 20180101ALI20240111BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20240111BHJP
【FI】
C12Q1/6844 Z
C12Q1/6876 Z ZNA
C12N15/09 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023565125
(86)(22)【出願日】2022-01-05
(85)【翻訳文提出日】2023-08-29
(86)【国際出願番号】 US2022011241
(87)【国際公開番号】W WO2022150336
(87)【国際公開日】2022-07-14
(32)【優先日】2021-01-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523256225
【氏名又は名称】マーチ・セラピューティクス,インコーポレーテッド
(71)【出願人】
【識別番号】523256236
【氏名又は名称】ディーエックスラボ,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100157923
【氏名又は名称】鶴喰 寿孝
(72)【発明者】
【氏名】ファルザードファード,ファヒム
(72)【発明者】
【氏名】ワッシー,アスママウ
(72)【発明者】
【氏名】カング,ジョン・ソク
(72)【発明者】
【氏名】スーク,ホ-ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ヴォデナル,ケイラ
(72)【発明者】
【氏名】リウ,ジャスティン
(72)【発明者】
【氏名】ミン,ジャンホン
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA19
4B063QQ03
4B063QQ06
4B063QQ10
4B063QR08
4B063QR39
4B063QR40
4B063QR62
4B063QR66
4B063QS26
4B063QS36
(57)【要約】
本発明は、等温核酸増幅を使用した、生物学的または環境学的試料中におけるウイルスまたは細菌などの生物の、迅速、低費用、臨床現場の検出のための方法、キット、および関連組成物を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料または前記試料を含む器具を、緩衝剤、RNase阻害剤、および非イオン性界面活性剤を含む溶解緩衝液と接触させて、溶解試料を生成することによって、生体試料を化学的溶解に供するステップと、
前記溶解試料を、
生物の核酸である第1の標的核酸に向けられた、4~6個のオリゴヌクレオチドプライマーの第1の組、ヒト対象の核酸である第2の標的核酸に向けられた、4~6個のオリゴヌクレオチドプライマーの第2の組、
増幅された標的核酸の独立検出に適切な少なくとも2つの異なる試薬、
デオキシリボヌクレオチド三リン酸(dNTP)の混合物、マグネシウムイオン供給源、任意選択の逆転写酵素、およびDNAポリメラーゼまたは二重特異性逆転写酵素/DNAポリメラーゼ、
を含む反応混合物中で行う等温核酸増幅反応に供するステップと
増幅された標的核酸の検出のための前記少なくとも2つの異なる試薬のそれぞれからのシグナルを検出することによって、前記反応混合物中の増幅された標的核酸を検出するステップとを含み、
少なくとも2つの異なるシグナルの検出が前記試料中の前記生物の存在を示す、
ヒト対象の生体試料中において生物を検出する方法。
【請求項2】
前記等温核酸増幅が、ループ媒介等温核酸増幅反応(LAMP)またはRT-LAMP反応である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
増幅された標的核酸の独立検出に適切な前記少なくとも2つの異なる試薬が、クエンチャー-フルオロフォア二重鎖領域を含有するように適応させた少なくとも1つの検出プライマー組を含み、前記検出プライマー組が、前記第1または第2の標的核酸のどちらかに向けられている、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2の標的核酸が、ヒト細胞中で構成的に発現されるヒト遺伝子のポリヌクレオチドであり、任意選択でRNase Pまたはベータ-アクチンのDNAまたはRNAである、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記増幅された標的核酸の検出のための前記1つまたは複数の試薬が、Chai Green(商標)、SYBR Green IおよびII、SYBR Safe、SYBR Gold、Eva Green、臭化エチジウム、オキサゾール黄色系シアニン色素(たとえば、YOYO-1、DiYO-1、TOTO-1、DiTO-1、TOTO-3)、Pico Green、SYTO 9、SYTO 13、SYTO 16、SYTO 60、SYTO 62、SYTO 64、SYTO 82、Boxto、Miami Green、Miami Yellow、およびMiami Orangeからなる群から任意選択で選択される蛍光DNA挿入色素を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記反応混合物が、RNase阻害剤、血清アルブミン、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)およびその塩などの還元剤、ならびにウラシル-DNAグリコシラーゼ(UDG)のうちの1つまたは複数をさらに含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記反応混合物を凍結乾燥させ、本方法は、前記反応混合物を一定体積の水溶液中で再構成するステップをさらに含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記凍結乾燥した反応混合物が、デキストラン、マンニトール、ソルビトール、マルトデキストリン、トレハロース、ラクトース、および/またはラクチトールのうちの1つまたは複数をさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記等温核酸増幅反応が、63℃、64℃、65℃、66℃、67℃、68℃、69℃、70℃、71℃、または72℃の一定温度で起こる、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
10~45分間の一定期間以内で行う、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記等温核酸増幅反応を行う前に、1つまたは複数の追加のステップをさらに含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法であって、前記1つまたは複数の追加のステップが、同時の限外濾過および濃縮を含んで清澄化した試料を生成する清澄化ステップ、および/または熱処理のうちの1つまたは複数を含む、方法。
【請求項12】
前記清澄化ステップが、約10,000~100,000×g、または10,000~20,000×g、または14,000~15,000×gの速度で5~20分間の遠心分離を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記清澄化ステップが、約1kDa~300kDa、好ましくは3kDa~200kDa、最も好ましくは100kDa~200kDaの分子量カットオフ(MWCO)を有する膜を含むフィルターを通した限外濾過を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記RNase阻害剤がポリビニルスルホン酸(PVSA)である、請求項11から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記非イオン性界面活性剤が、ポリエチレングリコールp-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-フェニルエーテル、ポリオキシエチレン(20)モノラウリン酸ソルビタン、およびn-ドデシル-β-D-マルトシドなどのマルトシドから選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記熱処理が、前記試料を約95℃まで、30秒間~10分間、好ましくは30秒間~5分間、最も好ましくは1分間~3分間の一定期間の間加熱するステップを含む、請求項11から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記標的核酸が、ウイルス、細菌、真菌、または寄生生物から選択される生物の、1つまたは複数のRNAまたはDNA分子を含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記標的核酸がウイルスのものである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ウイルスが、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)、中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)、および重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ウイルスがSARS-Cov-2である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
オリゴヌクレオチドプライマーの前記第1の組が、配列番号1~6(セット1)、配列番号7~12(セット2)、配列番号7、9、11、13~15(セット3)、および配列番号7~12、16、17(セット4)、または、セット1の配列番号1~4、セット2の配列番号7~10、セット3の配列番号7、13、9、および14、もしくはセット4の配列番号7~10ならびに配列番号16および17によって同定される、セット1、セット2、セット3、およびセット4からなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記生体試料が上気道試料であり、任意選択で、前記上気道試料が、上咽頭(NP)スワブ、口咽頭(OP)スワブ、鼻腔スワブ、鼻腔吸引液、または鼻腔洗浄液から得られ、さらに任意選択で、鼻腔スワブが前鼻腔スワブまたは中鼻甲介鼻腔スワブである、請求項19から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
ヒト対象から得られた上気道試料中においてSARS-CoV-2ウイルスを検出する方法であって、前記試料を逆転写およびループ媒介等温核酸増幅反応(RT-LAMP)に供して、配列番号1~6(セット1)、配列番号7~12(セット2)、配列番号7、9、11、13~15(セット3)、および配列番号7~12、16、17(セット4)によって同定される、セット1、セット2、セット3、およびセット4からなる群から選択される、オリゴヌクレオチドプライマーの第1の組を利用してSARS-CoV-2ウイルスの第1の標的核酸を増幅するステップと、前記増幅された第1の標的核酸を検出するステップとを含み、前記増幅された第1の標的核酸の検出が、前記生体試料中における前記SARS-CoV-2ウイルスの存在を示す、方法。
【請求項24】
前記RT-LAMP反応が、オリゴヌクレオチドプライマーの前記第1の組と、前記ヒト対象の核酸である第2の標的核酸に向けられたオリゴヌクレオチドプライマーの第2の組とを含む反応混合物中で行われ、任意選択で、前記第2の標的核酸がベータ-アクチンRNA分子のポリヌクレオチドである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記反応混合物が、クエンチャー-フルオロフォア二重鎖領域を含有するように適応させた検出プライマー組をさらに含み、前記検出プライマー組が、前記第1または第2の標的核酸のどちらかに向けられている、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記反応混合物が、前記検出プライマー中のフルオロフォアとは異なる波長で蛍光シグナルを発する蛍光DNA挿入色素をさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記反応混合物が、デオキシリボヌクレオチド三リン酸(dNTP)の混合物、マグネシウムイオン供給源、逆転写酵素、DNAポリメラーゼまたは二重特異性逆転写酵素/DNAポリメラーゼ、およびRNase阻害剤、血清アルブミン、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)およびその塩などの還元剤、ならびに熱不安定性ウラシル-DNAグリコシラーゼ(UDG)のうちの1つまたは複数をさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記反応混合物を凍結乾燥させ、本方法は、前記反応混合物を一定体積の水溶液中で再構成するステップをさらに含み、任意選択で、前記凍結乾燥した反応混合物が、デキストラン、マンニトール、ソルビトール、マルトデキストリン、トレハロース、ラクトース、および/またはラクチトールのうちの1つまたは複数を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
SARS-CoV-2ウイルスの検出のためのキットであって、
試料の溶出および溶解のための第1の試薬の組を含む第1の容器と、
逆転写およびループ媒介等温核酸増幅反応(RT-LAMP)を行うための第2の試薬の組を含む第2の容器と
を含み、
前記第2の試薬の組が、配列番号1~6(セット1)、配列番号7~12(セット2)、配列番号7、9、11、13~15(セット3)、および配列番号7~12、16、17(セット4)によって同定される、セット1、セット2、セット3、およびセット4からなる群から選択される、SARS-CoV-2ウイルスの第1の標的核酸に向けられたオリゴヌクレオチドプライマーの第1の組と、ヒト対象の第2の標的核酸に向けられたオリゴヌクレオチドプライマーの第2の組とを含み、任意選択で、前記第2の標的核酸がベータ-アクチンRNA分子のポリヌクレオチドである、
キット。
【請求項30】
前記第1の試薬の組がRNase阻害剤をそれぞれ含む、請求項29に記載のキット。
【請求項31】
前記第2の試薬の組が、RNase阻害剤、dUTPを含むデオキシリボヌクレオチド三リン酸(dNTP)、マグネシウムイオン供給源、逆転写酵素、およびDNAポリメラーゼをさらに含む、請求項29または30に記載のキット。
【請求項32】
前記第2の試薬の組が、蛍光DNA挿入剤およびクエンチャー-フルオロフォア二重鎖領域を含有するように適応させた検出プライマー組をさらに含み、前記検出プライマー組が、前記第1または第2の標的核酸のどちらかに向けられている、請求項29から31のいずれか一項に記載のキット。
【請求項33】
前記第2の試薬の組が、RNase阻害剤、血清アルブミン、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)およびその塩などの還元剤、ならびに熱不安定性ウラシル-DNAグリコシラーゼ(UDG)のうちの1つまたは複数をさらに含む、請求項29から32のいずれか一項に記載のキット。
【請求項34】
前記第2の試薬の組が凍結乾燥されている、請求項29から33のいずれか一項に記載のキット。
【請求項35】
前記第2の試薬の組が、デキストラン、マンニトール、ソルビトール、マルトデキストリン、トレハロース、ラクトース、および/またはラクチトールのうちの1つまたは複数をさらに含む、請求項34に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[01]本開示は、病原体関連核酸を生物学的または環境学的試料中で直接、迅速検出するための方法およびキットに関する。
関連出願
[02]本出願は、その内容全体が、その全体で本明細書中に参照により組み込まれている、2021年1月5日に出願の米国仮出願第63/199,515号の優先権の利益を米国特許法第119条(e)の下、主張するものである。
配列表の参照による組込み
[03]2021年12月28日に作成された、4,096バイトのサイズである、「057930-501001WO_Sequence_Listing.txt」という名称の配列表テキストファイルの内容は、その全体で本明細書中に参照により組み込まれている。
【背景技術】
【0002】
[04]2019年に、重症急性呼吸器症候群-CoV-2 s(SARS-CoV-2)と命名された新型コロナウイルスが、全世界的な流行病を引き起こしているコロナウイルス疾患2019(COVID-19)と命名された重篤な急性呼吸器感染症の原因物質として同定された。対象中におけるウイルスの存在は、SARS-CoV-2ウイルスのRNAゲノムの検出によって決定される。COVID-19の大流行と十分に闘って社会を再開するために、良好な性能特徴(たとえば感度および特異性)を有し、自宅を含む任意の低設備設定において操作することができる迅速な臨床現場(POC)SARS-CoV-2試験が必要である。
【0003】
[05]現在、SARS-CoV-2の拡大を検出およびモニタリングするための多数の診断的試験が開発されている。しかし、米国では、疾病管理センター(Center for Disease Control、CDC)に認定されたほとんどのSARS-CoV-2リアルタイム逆転写PCR(RT-qPCR)診断的試験は、研究室においてのみ有効に行うことができ、およそ4~6時間の応答時間を有し、輸送要件が原因で結果は試料採取から24時間よりも後まで遅延する場合がある。現在の技術で高感度の検出を達成するために、ウイルスRNAを試料から抽出および精製しなければならず、このことは、これらの方法を真にPOCの応用に不適切にしている。さらに、RT-qPCRに依存する方法は、熱サイクラーおよび比較的高価な試薬、ならびに高レベルの技術的専門知識を必要とし、これは低設備設定およびPOCにおいて利用可能でない場合があり、したがって、これらの試験の広範な使用が妨げられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
[06]したがって、拡張性があり、手頃な料金であり、使用が容易なPOC試験が、依然として、COVID-19に対して闘うための差し迫った必要性を有する。本発明はこの必要性に取り組む。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[07]本発明は、対象、好ましくはヒト対象の生体試料中において生物を検出するための、方法および関連組成物およびキットを提供する。実施形態では、本方法は、試料または試料を含む器具を、緩衝剤、RNase阻害剤、および非イオン性界面活性剤を含む溶解緩衝液と接触させて、溶解試料を生成することによって、生体試料を化学的溶解に供するステップと、溶解試料を、(i)生物の核酸である第1の標的核酸に向けられた、4~6個のオリゴヌクレオチドプライマーの第1の組、(ii)ヒト対象の核酸である第2の標的核酸に向けられた、4~6個のオリゴヌクレオチドプライマーの第2の組、(iii)増幅された標的核酸の独立検出に適切な少なくとも2つの異なる試薬、(iv)デオキシリボヌクレオチド三リン酸(dNTP)の混合物、(v)マグネシウムイオン供給源、(vi)任意選択の逆転写酵素、および(vii)DNAポリメラーゼまたは二重特異性逆転写酵素/DNAポリメラーゼを含む反応混合物中で行う等温核酸増幅反応に供するステップと、増幅された標的核酸の検出のための少なくとも2つの異なる試薬のそれぞれからのシグナルを検出することによって、反応混合物中の増幅された標的核酸を検出するステップとを含み、少なくとも2つの異なるシグナルの検出が試料中の生物の存在を示す。実施形態では、少なくとも2つの異なるシグナルの検出は、5~30分間の一定期間以内に起こる。
【0006】
[08]本発明のコンテキストにおいて、用語「溶解試料」とは、試料、またはアプリケーターもしくはスワブなどの試料を含有する採取器具を、化学的溶解のための試薬を含む緩衝液と接触させることによって得られた、溶解試料をいう。
【0007】
[09]実施形態では、等温核酸増幅は、ループ媒介等温核酸増幅反応(LAMP)またはRT-LAMP反応である。
【0008】
[10]実施形態では、増幅された標的核酸の独立検出に適切な少なくとも2つの異なる試薬は、クエンチャー-フルオロフォア二重鎖領域を含有するように適応させた少なくとも1つの検出プライマー組を含み、検出プライマー組は、第1または第2の標的核酸のどちらかに向けられている。実施形態では、増幅された標的核酸の独立検出に適切な少なくとも2つの異なる試薬は、それぞれクエンチャー-フルオロフォア二重鎖領域を含有するように適応させた2組の検出プライマーを含み、それぞれのフルオロフォアは、異なる波長のシグナルを発し、それぞれの検出プライマー組は、異なる標的核酸に向けられている。
【0009】
[11]実施形態では、第2の標的核酸は、ヒト細胞中で構成的に発現されるヒト遺伝子のポリヌクレオチドである。実施形態では、ヒト遺伝子は、アクチン遺伝子、ユビキチン遺伝子、または他の適切なハウスキーピング遺伝子から選択される。実施形態では、ポリヌクレオチドは、RNase Pまたはベータ-アクチンのDNAまたはRNAである。
【0010】
[12]実施形態では、増幅された標的核酸の検出のための1つまたは複数の試薬は、Chai Green(商標)、SYBR Green IおよびII、SYBR Safe、SYBR Gold、Eva Green、臭化エチジウム、オキサゾール黄色系シアニン色素(たとえば、YOYO-1、DiYO-1、TOTO-1、DiTO-1、TOTO-3)、Pico Green、SYTO 9、SYTO 13、SYTO 16、SYTO 60、SYTO 62、SYTO 64、SYTO 82、Boxto、Miami Green、Miami Yellow、およびMiami Orangeからなる群から任意選択で選択される蛍光DNA挿入色素を含む。
【0011】
[13]実施形態では、反応混合物は、RNase阻害剤、血清アルブミン(たとえばウシ血清アルブミン「BSA」)、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)およびその塩、たとえばTCEP-HClなどの還元剤、ならびに熱不安定性ウラシル-DNAグリコシラーゼ(UDG)のうちの1つまたは複数をさらに含む。
【0012】
[14]実施形態では、反応混合物を凍結乾燥させる。実施形態では、本方法は、反応混合物を一定体積の水溶液中で再構成するステップをさらに含む。実施形態では、凍結乾燥した反応混合物を再構成するために利用する水溶液は、本明細書中に記載の溶解試料を含む。実施形態では、反応混合物は、デキストラン、マンニトール、ソルビトール、マルトデキストリン、トレハロース、ラクトース、および/またはラクチトールのうちの1つまたは複数をさらに含む。実施形態では、反応混合物は、トレハロース、ラクトース、および/またはラクチトールのうちの1つまたは複数を含む。
【0013】
[15]実施形態では、等温核酸増幅反応は、60~75℃、または約60~72℃、または好ましくは63~69℃、または約64~69℃の範囲の温度から選択される一定温度で起こる。たとえば、核酸増幅は、60℃、61℃、62℃、63℃、64℃、65℃、66℃、67℃、68℃、69℃、70℃、71℃、または72℃の温度で起こる。
【0014】
[16]実施形態では、本方法は、10~30分間の一定期間以内で行う。
【0015】
[17]実施形態では、本方法は、等温核酸増幅反応を行う前に1つまたは複数の追加のステップをさらに含み、1つまたは複数の追加のステップは、同時の限外濾過および濃縮を含んで清澄化した試料を生成する清澄化ステップ、化学的溶解ステップ、ならびに/または熱処理のうちの1つまたは複数を含む。実施形態では、本方法は化学的溶解ステップを含む。
【0016】
[18]実施形態では、清澄化ステップは、約10,000~100,000×g、または10,000~20,000×g、または14,000~15,000×gの速度で5~20分間の遠心分離を含む。
【0017】
[19]実施形態では、清澄化ステップは、約1kDa~300kDa、好ましくは3kDa~200kDa、最も好ましくは100kDa~200kDaの分子量カットオフ(MWCO)を有する膜を含むフィルターを通した限外濾過を含む。
【0018】
[20]実施形態では、化学的溶解は、試料を溶解緩衝液と接触させるステップを含み、任意選択で、溶解緩衝液は、RNase阻害剤、任意選択でポリビニルスルホン酸(PVSA)を含む。
【0019】
[21]実施形態では、溶解緩衝液は、非イオン性界面活性剤、塩酸グアニジン、およびチオシアン酸グアニジンから選択される溶解試薬を含む。実施形態では、溶解試薬は非イオン性界面活性剤である。実施形態では、非イオン性界面活性剤は、ポリエチレングリコールp-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-フェニルエーテル(Triton(商標)X-100)もしくは同様のTriton(商標)洗剤、またはポリオキシエチレン(20)モノラウリン酸ソルビタン(Tween(商標)20)もしくはTween80などの同様のTween(商標)洗剤等のポリソルベート型非イオン性界面活性剤、またはn-ドデシル-β-D-マルトシドなどのマルトシドから選択される。
【0020】
[22]実施形態では、熱処理は、試料を約95℃まで、30秒間~10分間、好ましくは30秒間~5分間、最も好ましくは1分間~3分間の一定期間の間加熱するステップを含む。
【0021】
[23]実施形態では、標的核酸は、ウイルス、細菌、真菌、または寄生生物から選択される生物の、1つまたは複数のRNAまたはDNA分子を含む。
【0022】
[24]実施形態では、標的核酸はウイルスのものである。
【0023】
[25]実施形態では、ウイルスは、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)、中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)、および重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)から選択される。
【0024】
[26]実施形態では、ウイルスはSARS-Cov-2である。
【0025】
[27]実施形態では、オリゴヌクレオチドプライマーの第1の組は、配列番号1~6(セット1)、配列番号7~12(セット2)、配列番号7、9、11、13~15(セット3)、および配列番号7~12、16、17(セット4)によって同定される、セット1、セット2、セット3、およびセット4からなる群から選択される。ウイルスがSARS-Cov-2である本方法の実施形態では、4~6個のオリゴヌクレオチドプライマーの組は、表1に記載の配列識別子によって同定される、セット1、セット2、セット3、およびセット4からなる群(ループFおよびループBのプライマーは非存在)、すなわち、セット1の配列番号1~4、セット2の配列番号7~10、セット3の配列番号7、13、9、および14、またはセット4の配列番号7~10ならびに配列番号16および17から選択される。実施形態では、4~6個のオリゴヌクレオチドプライマーの組は、SARS-CoV-2ウイルスRNAの遺伝子Nまたは遺伝子Mとハイブリダイズする。
【0026】
[28]実施形態では、生体試料は上気道試料であり、任意選択で、上気道試料は、上咽頭(NP)スワブ、口咽頭(OP)スワブ、鼻腔スワブ、鼻腔吸引液、または鼻腔洗浄液から得られ、さらに任意選択で、鼻腔スワブは前鼻腔スワブまたは中鼻甲介鼻腔スワブである。
【0027】
[29]ヒト対象から得られた上気道試料中においてSARS-CoV-2ウイルスを検出する方法であって、試料を逆転写およびループ媒介等温核酸増幅反応(RT-LAMP)に供して、配列番号1~6(セット1)、配列番号7~12(セット2)、配列番号7、9、11、13~15(セット3)、および配列番号7~12、16、17(セット4)によって同定される、セット1、セット2、セット3、およびセット4からなる群から選択される、オリゴヌクレオチドプライマーの第1の組を利用してSARS-CoV-2ウイルスの第1の標的核酸を増幅するステップと、増幅された第1の標的核酸を検出するステップとを含み、増幅された第1の標的核酸の検出が、生体試料中におけるSARS-CoV-2ウイルスの存在を示す、方法も提供する。
【0028】
[30]実施形態では、RT-LAMP反応は、オリゴヌクレオチドプライマーの第1の組と、ヒト対象の核酸である第2の標的核酸に向けられたオリゴヌクレオチドプライマーの第2の組とを含む反応混合物中で行われ、任意選択で、第2の標的核酸は、ベータ-アクチンまたはRNase PのRNAまたはDNAである。
【0029】
[31]実施形態では、反応混合物は、クエンチャー-フルオロフォア二重鎖領域を含有するように適応させた検出プライマー組をさらに含み、検出プライマー組は、第1または第2の標的核酸のどちらかに向けられている。
【0030】
[32]実施形態では、反応混合物は、検出プライマー中のフルオロフォアとは異なる波長で蛍光シグナルを発する蛍光DNA挿入色素をさらに含む。
【0031】
[33]実施形態では、反応混合物は、デオキシリボヌクレオチド三リン酸(dNTP)の混合物、マグネシウムイオン供給源、逆転写酵素、DNAポリメラーゼまたは二重特異性逆転写酵素/DNAポリメラーゼ、およびRNase阻害剤、血清アルブミン、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)およびその塩、たとえばTCEP-HClなどの還元剤、ならびに熱不安定性ウラシル-DNAグリコシラーゼ(UDG)のうちの1つまたは複数をさらに含む。
【0032】
[34]実施形態では、反応混合物を凍結乾燥させ、本方法は、反応混合物を一定体積の水溶液中で再構成するステップをさらに含む。実施形態では、水溶液は、本明細書中に記載の溶解試料を含み、任意選択で、凍結乾燥した反応混合物は、デキストラン、マンニトール、ソルビトール、マルトデキストリン、トレハロース、ラクトース、および/またはラクチトールのうちの1つまたは複数を含む。実施形態では、凍結乾燥した反応混合物は、トレハロース、ラクトース、および/またはラクチトールのうちの1つまたは複数を含む。
【0033】
[35](i)試料の溶出および溶解のための第1の試薬の組を含む第1の容器と、(ii)逆転写およびループ媒介等温核酸増幅反応(RT-LAMP)を行うための第2の試薬の組を含む第2の容器とを含む、SARS-CoV-2ウイルスの検出のためのキットも提供する。実施形態では、第2の試薬の組は、配列番号1~6(セット1)、配列番号7~12(セット2)、配列番号7、9、11、13~15(セット3)、および配列番号7~12、16、17(セット4)によって同定される、セット1、セット2、セット3、およびセット4からなる群から選択される、SARS-CoV-2ウイルスの第1の標的核酸に向けられたオリゴヌクレオチドプライマーの第1の組と、ヒト対象の第2の標的核酸に向けられたオリゴヌクレオチドプライマーの第2の組とを含む。実施形態では、第2の標的核酸は、ヒト細胞中で構成的に発現されるヒト遺伝子のポリヌクレオチドである。実施形態では、ヒト遺伝子は、アクチン遺伝子、ユビキチン遺伝子、または他の適切なハウスキーピング遺伝子から選択される。実施形態では、ポリヌクレオチドは、RNase Pまたはベータ-アクチンのDNAまたはRNA分子である。実施形態では、第1の試薬の組は、RNase阻害剤および化学的溶解試薬を含む。実施形態では、第2の試薬の組は、dUTPを含むデオキシリボヌクレオチド三リン酸(dNTP)、マグネシウムイオン供給源(たとえばMgCl2またはMgSO4)、逆転写酵素、およびDNAポリメラーゼをさらに含む。実施形態では、第2の試薬の組は、蛍光DNA挿入剤およびクエンチャー-フルオロフォア二重鎖領域を含有するように適応させた検出プライマー組をさらに含み、検出プライマー組は、第1または第2の標的核酸のどちらかに向けられている。実施形態では、第2の試薬の組は、それぞれクエンチャー-フルオロフォア二重鎖領域を含有するように適応させた2組の検出プライマーを含み、それぞれのフルオロフォアは、異なる波長のシグナルを発し、それぞれの検出プライマー組は、異なる標的核酸に向けられている。実施形態では、第2の試薬の組は、RNase阻害剤、血清アルブミン、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィンおよびその塩、たとえばTCEP-HClなどの還元剤、ならびに熱不安定性ウラシル-DNAグリコシラーゼ(UDG)のうちの1つまたは複数を含む。実施形態では、第2の試薬の組を凍結乾燥させる。実施形態では、第2の試薬の組は、デキストラン、マンニトール、ソルビトール、マルトデキストリン、トレハロース、ラクトース、および/またはラクチトールのうちの1つまたは複数をさらに含む。実施形態では、第2の試薬の組は、トレハロース、ラクトース、および/またはラクチトールのうちの1つまたは複数をさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1A】[36]
図1A~C:(A)試験プライマーセットi~viii(プライマーセット1を矢印によって示す)、(B)プライマーセットix~xvi(プライマーセット2を矢印によって示す)、および(C)プライマーセット3、のRT-LAMP増幅プロファイルを示す線プロットである。y軸は、相対的蛍光単位として測定した、増幅された生成物を示し、x軸は、0~120の1分間サイクルの数を示す。プライマーセット1、2、および3のCq値はそれぞれ42、37、および35であった。Cq値は、最大半減高さに到達するまでに必要な時間である。
【
図1B】
図1A~C:(A)試験プライマーセットi~viii(プライマーセット1を矢印によって示す)、(B)プライマーセットix~xvi(プライマーセット2を矢印によって示す)、および(C)プライマーセット3、のRT-LAMP増幅プロファイルを示す線プロットである。y軸は、相対的蛍光単位として測定した、増幅された生成物を示し、x軸は、0~120の1分間サイクルの数を示す。プライマーセット1、2、および3のCq値はそれぞれ42、37、および35であった。Cq値は、最大半減高さに到達するまでに必要な時間である。
【
図1C】
図1A~C:(A)試験プライマーセットi~viii(プライマーセット1を矢印によって示す)、(B)プライマーセットix~xvi(プライマーセット2を矢印によって示す)、および(C)プライマーセット3、のRT-LAMP増幅プロファイルを示す線プロットである。y軸は、相対的蛍光単位として測定した、増幅された生成物を示し、x軸は、0~120の1分間サイクルの数を示す。プライマーセット1、2、および3のCq値はそれぞれ42、37、および35であった。Cq値は、最大半減高さに到達するまでに必要な時間である。
【
図2A】[37]
図2A~B:プライマーセット1(A)およびプライマーセット3(B)について、他の呼吸器ウイルスに対するRT-LAMP SARS-CoV-2プライマーの交差反応性を示す図である。それぞれの反応を4つの複製組で行った。初期増幅(パネルAのサイクル15~25およびパネルBのサイクル25~35)を示す、それぞれのパネル中の4本の線は、SARS-CoV-2の増幅プロファイルを表す。y軸は、相対的蛍光単位として測定した、増幅された生成物を示し、x軸は、0~90の1分間サイクルの数を示す。プライマーセット1および3のそれぞれは、SARS-CoV-2に対する特異的増幅を実証し、SARS-CoV-2試料を他の呼吸器ウイルスから識別することを可能にした。
【
図2B】
図2A~B:プライマーセット1(A)およびプライマーセット3(B)について、他の呼吸器ウイルスに対するRT-LAMP SARS-CoV-2プライマーの交差反応性を示す図である。それぞれの反応を4つの複製組で行った。初期増幅(パネルAのサイクル15~25およびパネルBのサイクル25~35)を示す、それぞれのパネル中の4本の線は、SARS-CoV-2の増幅プロファイルを表す。y軸は、相対的蛍光単位として測定した、増幅された生成物を示し、x軸は、0~90の1分間サイクルの数を示す。プライマーセット1および3のそれぞれは、SARS-CoV-2に対する特異的増幅を実証し、SARS-CoV-2試料を他の呼吸器ウイルスから識別することを可能にした。
【
図3】[38]
図3:溶解ステップを用いたRT-LAMPによる、不活性化SARS-CoV-2ウイルス粒子の検出限界(LOD)を示す図である。唾液およびRiboGuard(商標)を含有する通常生理食塩水に50個(左のひげプロット、淡色)または100個(右のひげプロット、より濃い色)のビリオン/1マイクロリットルの不活性化SARS-CoV-2ビリオンのいずれかを添加し、その後、試料をQuickExtract(商標)緩衝液(3分間、95℃)中に溶解させた。溶解試料はRT-LAMP反応において鋳型として使用した。
【
図4】[39]
図4:遠心濾過が、RT-LAMPを用いたSARS-CoV-2の検出の感度の増加を可能にすることを示す図である。プロットは、生理食塩水試料中に添加した10個(左のひげプロット、淡色)または20個(右のひげプロット、濃い色)のビリオン/1マイクロリットルの不活性化SARS-CoV-2ビリオンのいずれか(n=3、s.t.d)を用いた、濾過あり(右の箱)または濾過なし(左の箱)のRT-LAMPの性能を示す。唾液およびリボヌクレアーゼ阻害剤(RiboGuard(商標))を含有する通常の生理食塩水に様々な濃度の不活性化SARS-Cov-2ビリオンを添加し、その後、試料をQuickExtract緩衝液中の熱処理(3分間、95C)によって溶解させた。溶解試料はRT-LAMP反応において鋳型として使用した。
【
図5】[40]
図5:遠心濾過ステップなしのアッセイ(それぞれの対の右のバー)と比較した、遠心濾過ステップを行ったアッセイ(それぞれの対の左のバー)についてのCt時間(分)を示す、RT-LAMPによる不活性化SARS-CoV-2ウイルス粒子の検出限界(LOD)を示す図である。唾液およびリボヌクレアーゼ阻害剤(RiboGuard(商標))を含有する通常の生理食塩水に、1個のコピー/μl、5個のコピー/μl、および20個のコピー/μlに対応する濃度の不活性化SARS-CoV-2ビリオンを添加した。鋳型なしの対照(NTC)を陰性対照として使用した。エラーバーは、4つの複製組の標準偏差を示す。これらの結果は、濾過ステップをプロトコル内に組み入れることによってLoD=1個のコピー/μlを達成できることを示す。
【
図6】[41]
図6:緩衝液チューブ(A)、滅菌スワブ(B)、ならびにホールピペット(C1)およびチューブアセンブリ(C2)を含有する試験パウチ(C)を含む試験キットの代表的な構成要素を示す図である。
【
図7A】[42]
図7A~D:鼻腔スワブ試料ありまたはなしの、陰性および陽性試料の増幅曲線を示す図である。A、鼻腔スワブ試料なしでは、1個のウイルスコピー/μLの試験において見られる速いFAMチャネル増幅(T
d<26分)は、SARS-CoV-2ウイルスの存在を表す。遅いFAMチャネル増幅(T
d>26分)は偽の増幅を示し、無視される。B、鼻腔スワブ試料なしでは、1個のウイルスコピー/μLの試験において見られる速いHEXチャネル増幅(T
d<26分)は、SARS-CoV-2ウイルスの存在を表す。遅いHEXチャネル増幅(T
d>26分)は偽の増幅を示し、無視される。26分以内にFAMおよびHEXチャネル増幅の両方の非存在は、試料中のウイルスの非存在を示す。C、鼻腔スワブ試料ありでは、速いFAMチャネル増幅(T
d<26分)は、ベータアクチンおよび/またはSARS-CoV-2ウイルスの全体的な存在を表す。D、鼻腔スワブ試料ありでは、1個のウイルスコピー/μLの試験において見られる速いHEXチャネル増幅(T
d<26分)は、SARS-CoV-2ウイルスの存在を表す。速いFAMチャネル増幅(T
d<26分)およびHEXチャネル増幅が遅いまたはないことは、検出可能なSARS-CoV-2ウイルスがない鼻腔スワブ試料を示す。T
d:本発明者らの試験アルゴリズムによって、試験を「陽性」または「陰性」と呼ぶ判断が下される時点、FAM:ピーク吸収波長495nmおよびピーク発光波長520nmを有するフルオロフォア、HEX:ピーク吸収波長535nmおよびピーク発光波長556nmを有するフルオロフォア。
【
図7B】
図7A~D:鼻腔スワブ試料ありまたはなしの、陰性および陽性試料の増幅曲線を示す図である。A、鼻腔スワブ試料なしでは、1個のウイルスコピー/μLの試験において見られる速いFAMチャネル増幅(T
d<26分)は、SARS-CoV-2ウイルスの存在を表す。遅いFAMチャネル増幅(T
d>26分)は偽の増幅を示し、無視される。B、鼻腔スワブ試料なしでは、1個のウイルスコピー/μLの試験において見られる速いHEXチャネル増幅(T
d<26分)は、SARS-CoV-2ウイルスの存在を表す。遅いHEXチャネル増幅(T
d>26分)は偽の増幅を示し、無視される。26分以内にFAMおよびHEXチャネル増幅の両方の非存在は、試料中のウイルスの非存在を示す。C、鼻腔スワブ試料ありでは、速いFAMチャネル増幅(T
d<26分)は、ベータアクチンおよび/またはSARS-CoV-2ウイルスの全体的な存在を表す。D、鼻腔スワブ試料ありでは、1個のウイルスコピー/μLの試験において見られる速いHEXチャネル増幅(T
d<26分)は、SARS-CoV-2ウイルスの存在を表す。速いFAMチャネル増幅(T
d<26分)およびHEXチャネル増幅が遅いまたはないことは、検出可能なSARS-CoV-2ウイルスがない鼻腔スワブ試料を示す。T
d:本発明者らの試験アルゴリズムによって、試験を「陽性」または「陰性」と呼ぶ判断が下される時点、FAM:ピーク吸収波長495nmおよびピーク発光波長520nmを有するフルオロフォア、HEX:ピーク吸収波長535nmおよびピーク発光波長556nmを有するフルオロフォア。
【
図7C】
図7A~D:鼻腔スワブ試料ありまたはなしの、陰性および陽性試料の増幅曲線を示す図である。A、鼻腔スワブ試料なしでは、1個のウイルスコピー/μLの試験において見られる速いFAMチャネル増幅(T
d<26分)は、SARS-CoV-2ウイルスの存在を表す。遅いFAMチャネル増幅(T
d>26分)は偽の増幅を示し、無視される。B、鼻腔スワブ試料なしでは、1個のウイルスコピー/μLの試験において見られる速いHEXチャネル増幅(T
d<26分)は、SARS-CoV-2ウイルスの存在を表す。遅いHEXチャネル増幅(T
d>26分)は偽の増幅を示し、無視される。26分以内にFAMおよびHEXチャネル増幅の両方の非存在は、試料中のウイルスの非存在を示す。C、鼻腔スワブ試料ありでは、速いFAMチャネル増幅(T
d<26分)は、ベータアクチンおよび/またはSARS-CoV-2ウイルスの全体的な存在を表す。D、鼻腔スワブ試料ありでは、1個のウイルスコピー/μLの試験において見られる速いHEXチャネル増幅(T
d<26分)は、SARS-CoV-2ウイルスの存在を表す。速いFAMチャネル増幅(T
d<26分)およびHEXチャネル増幅が遅いまたはないことは、検出可能なSARS-CoV-2ウイルスがない鼻腔スワブ試料を示す。T
d:本発明者らの試験アルゴリズムによって、試験を「陽性」または「陰性」と呼ぶ判断が下される時点、FAM:ピーク吸収波長495nmおよびピーク発光波長520nmを有するフルオロフォア、HEX:ピーク吸収波長535nmおよびピーク発光波長556nmを有するフルオロフォア。
【
図7D】
図7A~D:鼻腔スワブ試料ありまたはなしの、陰性および陽性試料の増幅曲線を示す図である。A、鼻腔スワブ試料なしでは、1個のウイルスコピー/μLの試験において見られる速いFAMチャネル増幅(T
d<26分)は、SARS-CoV-2ウイルスの存在を表す。遅いFAMチャネル増幅(T
d>26分)は偽の増幅を示し、無視される。B、鼻腔スワブ試料なしでは、1個のウイルスコピー/μLの試験において見られる速いHEXチャネル増幅(T
d<26分)は、SARS-CoV-2ウイルスの存在を表す。遅いHEXチャネル増幅(T
d>26分)は偽の増幅を示し、無視される。26分以内にFAMおよびHEXチャネル増幅の両方の非存在は、試料中のウイルスの非存在を示す。C、鼻腔スワブ試料ありでは、速いFAMチャネル増幅(T
d<26分)は、ベータアクチンおよび/またはSARS-CoV-2ウイルスの全体的な存在を表す。D、鼻腔スワブ試料ありでは、1個のウイルスコピー/μLの試験において見られる速いHEXチャネル増幅(T
d<26分)は、SARS-CoV-2ウイルスの存在を表す。速いFAMチャネル増幅(T
d<26分)およびHEXチャネル増幅が遅いまたはないことは、検出可能なSARS-CoV-2ウイルスがない鼻腔スワブ試料を示す。T
d:本発明者らの試験アルゴリズムによって、試験を「陽性」または「陰性」と呼ぶ判断が下される時点、FAM:ピーク吸収波長495nmおよびピーク発光波長520nmを有するフルオロフォア、HEX:ピーク吸収波長535nmおよびピーク発光波長556nmを有するフルオロフォア。
【
図8】[43]
図8:検出限界(LOD)研究を示す図である。範囲発見実験を、1500、3000、および6000個のウイルスコピー/スワブについて行った。1500個のコピー/スワブの試料で1つ、および3000個のコピー/スワブの試料で1つが、HEXチャネルT
d>26分を有し、これは、本発明者らの試験アルゴリズムによって「陰性」と呼ばれる。23個のうち22個の複製組が本発明者らの試験アルゴリズムによって「陽性」と正しく呼ばれた後に、3000個のコピー/スワブがLODであると決定された(>95%、閾値は米国食品医薬品局によって設定)。T
d:本発明者らの試験アルゴリズムによって、試験を「陽性」または「陰性」と呼ぶ判断が下される時点、FAMおよびHEXは上記
図7の凡例中に定義した通りである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
[44]本開示は、等温核酸増幅反応および生物の核酸、たとえば生物の特定のRNAまたはDNA分子に向けられた少なくとも1組のオリゴヌクレオチドプライマーを使用した、病原体、たとえば、ウイルス、細菌、または他の病原体などの生物の、生物学的または環境学的試料中での直接の迅速検出に適した方法および関連組成物を提供する。さらに、本方法は、蛍光発生DNA挿入色素などの検出可能なDNA挿入剤と、標的配列の増幅の際に蛍光などの検出可能なシグナルを生じる1組または複数組の検出プライマーとの組合せを使用した、単一の反応混合物中の2つ以上の増幅された核酸標的の同時検出を提供する。本明細書に記載する本方法の実施形態では、本方法は、生物の核酸の検出、およびアクチンRNAまたは類似の遍在的に発現されるヒトRNAなどのヒト核酸の同時検出を提供する。
【0036】
[45]本明細書に記載する方法は、ループ媒介等温核酸増幅反応(LAMP)、高性能LAMP(HP-LAMP)、逆転写ループ媒介等温増幅(RT-LAMP)などの等温核酸増幅反応、および以下に記載の他の同様の反応、ならびに適切なオリゴヌクレオチドプライマーを使用した、1つまたは複数の標的核酸の、オリゴヌクレオチドに導かれた増幅を含む。このコンテキストにおいて、「プライマー」とは、その配列または配列の特定の部分が標的核酸と相補的であり、したがってワトソン-クリック塩基対合を介してそれとハイブリダイズする、短い、通常は約15~60個のヌクレオチドの長さ(または約15~25個のヌクレオチドの長さ)の、一本鎖RNAまたはDNA配列をいう。たとえば、LAMP反応のコンテキストにおいて、順方向内部プライマー(FIP)および逆方向内部プライマー(BIP)のプライマーは、標的核酸に対して相補的でない架橋領域を含有することが理解されよう。本明細書に記載する方法のコンテキストにおいて、標的核酸「に向けられた」プライマーとは、標的核酸の配列に対して相補的なものであり、「プライマーセット」とは、増幅されている標的核酸配列の逆末端での互いに向かうDNAの伸長を指示することを標的とした、一対のプライマーをいう。
【0037】
[46]「検出プライマー」とは、標的核酸の増幅産物を検出するために有用な検出可能なシグナルを生じるプライマーをいう。好ましい実施形態では、検出プライマーは、鎖分離の際に蛍光シグナルを発し、それによって、プライマーによって標的とされる核酸の増幅産物の検出を可能にする、クエンチャー-フルオロフォア二重鎖領域を含有するように適応させたLAMPまたはRT-LAMPプライマーからなる。これらの修飾されたプライマーは「DARQ」プライマー(「クエンチングの開放による増幅の検出(Detection of Amplification by Releasing of Quenching)」)と呼ばれ、Tanner NAら、Biotechniques(2012)53:81~89中に記載されている。手短に述べると、DARQプライマーセットは、一方が長く他方が短い、一対のオリゴヌクレオチドプライマーからなる。長い方のプライマーは約30~60個のヌクレオチドの長さであり、短い方のプライマーは約15~30個のヌクレオチドの長さである。短い方のプライマーは長い方のプライマーに対して完全に相補的であり、短い方のプライマーに対して相補的でない、長い方のプライマーの一部分は、標的核酸、たとえばDNAまたはRNAの一部分に対して相補的である。それぞれのDARQプライマーは、オリゴヌクレオチド配列の逆末端上で、フルオロフォアまたはクエンチャーのいずれかで修飾されている(たとえば、長い方のプライマーでは5’末端にフルオロフォア、短い方のプライマーでは3’末端にクエンチャー)。この立体配置は、プライマーが二重ヘリックスとして一緒に塩基対合されている場合に、フルオロフォアおよびクエンチャーを互いに近接させて保つ。この立体配置では、クエンチャーは、フルオロフォアが検出可能なシグナルを発することを妨げる。LAMPまたはRT-LAMP増幅が起こるにつれて、長い方のDARQプライマーが増幅産物内に取り込まれ、短い方のDARQプライマーが長い方のプライマーから追放されてフルオロフォアをクエンチャーから離し、フルオロフォアが検出可能なシグナルを発することが可能となる。実施形態では、本方法において、DARQプライマーは、それが対となっているプライマーセット、たとえば表1中に記載のプライマーセット4の増幅の成功を特異的に同定するために使用する。
【0038】
[47]本明細書に記載する本方法の実施形態では、たとえば2つの異なる標的核酸の増幅を検出するために、複数の検出プライマー組を使用し得る。そのような実施形態に従って、それぞれの異なる検出プライマー組は、それぞれの増幅された標的核酸の独立検出を提供するために、同じアッセイ中の任意のその他の検出プライマー組の波長とは異なる波長で、比色または蛍光シグナルなどのシグナルを発する。一部の実施形態では、1組または複数組の蛍光検出プライマーが存在する場合、それぞれの独立シグナルの同時検出が達成されるように、それぞれは、反応中に含まれる任意の蛍光発生DNA挿入色素によって発せられる波長とも異なる波長のシグナルを発する。複数の増幅された標的核酸の同時検出は、たとえば構成的に発現されたヒト遺伝子の検出によって、アッセイの忠実度のための内部対照を含む選択肢を有利に提供する。たとえば、十分な量のヒト細胞物質が、試験する生体試料中に採取されていたことを確実にするために、ヒトRNAを標的とする第2のプライマーセットが含まれ得る。実施形態では、第2のプライマーセットは、ヒト「ハウスキーピング」遺伝子、またはヒト細胞中において比較的高い存在量で構成的に発現される他のヒト遺伝子のRNAを標的とする。これにより、採取したすべての生体試料が病原体の試験および診断のために十分な遺伝物質を含有することが確実となり、たとえば生体試料の過小採取から生じる偽陰性結果を減らす役割を果たす。
【0039】
[48]有利なことに、本明細書中に記載する方法は、シリカマトリックスを用いた固相抽出などの標準の核酸精製ステップ、またはフェノール-クロロホルム抽出もしくは冷アルコール沈降のステップの必要なしに実施することができる。その代わりに、生体試料から得られた細胞の化学的溶解に次いで、たとえば、スワブなどの採取器具の先端を、試料の溶出および溶解のための緩衝液中に入れて、本明細書中に記載の溶解試料を生成することによって、等温核酸増幅反応を行うことができる。実施形態では、溶出および溶解緩衝液は、界面活性剤、好ましくは、Triton(商標)X-100もしくは同様のTriton(商標)洗剤、またはTween20もしくはTween80などのTween(商標)洗剤、またはn-ドデシル-β-D-マルトシドなどのマルトシド等の非イオン性界面活性剤;緩衝剤、たとえば、トリス、CAPS、HEPES、MOPS、PIPES、TAPS、TE、TES、またはトリシン;RNase阻害剤、たとえばポリビニルスルホン酸(PVSA)を含む。一部の実施形態では、本方法は、等温核酸増幅の前に、同時の限外濾過および濃縮を含んで清澄化した試料を生成する清澄化ステップを含む。
【0040】
[49]本明細書中で使用する用語「検出すること」および「検出」とは、定量的および/または定性的な決定を含む。この用語は、純粋に観念的なステップを排除し、その代わりに、試料中における生物(たとえばSARS-CoV-2)の存在を決定するための1つまたは複数の研究室アッセイの使用をいうことを意図する。そのような方法としては、たとえば試料中の増幅された標的核酸の量を含む、試料中の、核酸、たとえばRNAもしくはDNAの量、またはタンパク質、ペプチド、もしくはポリペプチドの量などの分析物の量を決定するためのコンピュータ支援ステップを挙げ得る。
【0041】
[50]一部の実施形態では、試料中の標的核酸の検出は指定した検出限界(LOD)を有する。本明細書に記載する方法のコンテキストにおいて、LODとは、反復測定の95%以上において検出することができる標的核酸の最も低い濃度である。一般的に認められている標準に従って、LODは、ゲノムRNAもしくはDNAのコピー数/マイクロリットルの輸送培地、または具体的な実施形態では、ウイルスゲノムRNAのコピー数/マイクロリットルの輸送培地(コピー数/μL)の単位で記載し得る。臨床応用には、LODは、好ましくは、0.1~10個のコピー/μLもしくは約0.1~1個のコピー/μL(または約100~10,000もしくは100~1,000個のコピー/ミリリットル)の範囲である。本明細書に記載する一部の実施形態では、LODは、単位体積あたり、または反応あたりのゲノムRNAまたはウイルス粒子のコピー数として定義し得る。一部の態様では、LODは、「ゲノム当量」に関して記載してよく、これは、すべての遺伝子が存在することを保証するために精製試料中に存在する必要がある、DNAの量として定義される。他の実施形態では、LODは、核酸に基づく増幅試験(NAAT)で検出可能な単位(NDU)/ミリリットルの試料に関して定義し得る。一部の実施形態では、NDUは、約10~2000、50~500、または100~300NDU/mlの試料である。他の実施形態では、NDU/mLは、約600~1800、または1800NDU/mLより高い。SARS-CoV-2のものなどの小さい大きさのウイルスゲノムでは、LODおよびNDUは本質的に等しい。
【0042】
[51]特定の実施形態では、本明細書に記載する方法は、約90%~約100%、好ましくは約95%~約100%、最も好ましくは少なくとも約97%の感度を有する。本明細書中で使用する「感度」とは、核酸検出方法によって陽性として同定された陽性対照試料(すなわち、特定の標的核酸を含有することが知られている試料)の数として定義する(たとえば、30個のうち29個の陽性対照試料が核酸検出方法によって陽性として同定される場合、前記検出方法は97%の感度を有する)。
【0043】
[52]実施形態では、本明細書中に記載する方法は、約90%~約100%、好ましくは約95%~約100%、最も好ましくは少なくとも約99%の特異性を有する。本明細書中で使用する用語「特異性」とは、核酸検出方法によって陰性として同定された陰性対照試料(すなわち、特定の標的核酸を含有しないことが知られている試料)の数として定義する(たとえば、30個のうち29個の陰性対照試料が核酸検出方法によって陰性として同定される場合、前記検出方法は97%の特異性を有する)。したがって、特異性は、試料中における非特異的な増幅の非存在の測度である。
【0044】
[53]本明細書に記載する方法に従って使用する試料は、遺伝物質を含有する任意の試料、たとえば、DNAもしくはRNAまたは両方を含有する任意の試料であることができる。
【0045】
[54]実施形態では、試料は環境学的試料である。特定の態様では、環境学的試料としては、それだけには限定されないが、固形表面、液体、および一定体積の空気から採取した粒子が挙げられる。
【0046】
[55]他の実施形態では、試料は生体試料である。本明細書中で使用する用語「生体試料」とは、組織の生検試料、または浸出液、胃洗浄液、唾液、血清、血漿、粘液、血液、もしくは尿試料などの他の生体試料、または対象から採取した経口スワブ、頬スワブ、鼻腔スワブ、咽頭スワブ、口咽頭スワブ、中鼻甲介スワブ、もしくは上咽頭スワブなどのスワブを含む、試料をいい得る。一部の実施形態では、試料は、組織試料、たとえば、肺組織試料、胃もしくは胃粘膜組織試料、または、血清もしくは血漿試料を含む血液試料である。特定の態様では、生体試料としては、それだけには限定されないが、対象から得られた唾液、粘液、血液、または血清が挙げられる。具体的な態様では、生体試料は上気道試料である。実施形態では、上気道試料は、上咽頭(NP)スワブ、口咽頭(OP)スワブ、鼻腔スワブ、鼻腔吸引液、または鼻腔洗浄液から得られる。実施形態では、鼻腔スワブは前鼻腔スワブまたは中鼻甲介鼻腔スワブである。
【0047】
[56]用語「等温核酸増幅反応」とは、一定温度で起こる任意の核酸増幅技法をいう。したがって、一連の交互する温度ステップまたはサイクルを用いて反応を実施する他の核酸増幅技術(たとえばポリメラーゼ連鎖反応またはPCR)とは対照的に、等温核酸増幅は一定温度で実施し、熱サイクラーを必要としない。実施形態では、等温核酸増幅反応は、40~100℃、50~72℃、55~65℃、または55~70℃、または60~72℃の範囲の温度から選択され得る一定温度で起こる。具体的な実施形態では、等温核酸増幅反応は、60℃、61℃、62℃、63℃、64℃、65℃、66℃、67℃、68℃、69℃、70℃、71℃、または72℃の一定温度で起こる。一実施形態では、等温核酸増幅反応は、65または67℃の一定温度で起こる。
【0048】
[57]実施形態では、等温核酸増幅反応は、ループ媒介等温核酸増幅反応(LAMP)、高性能LAMP(HP-LAMP)、逆転写ループ媒介等温増幅(RT-LAMP)、ミスマッチ耐性RT-LAMP、ワンポットRT-LAMP、統合RT-LAMPおよびCRISPR-Cas12方法、SHERLOCK(特異的高感度酵素レポーターアンロッキング)、STOP(ワンポットにおけるSHERLOCK試験)、COVID-19のための等温LAMPに基づく方法(iLACO(isothermal LAMP based method for COVID-19))、およびPenn-RAMPであり得る。実施形態では、等温核酸増幅反応は、全ゲノム増幅(WGA)、鎖置換増幅(SDA)、ニッキング酵素増幅反応(NEAR)、ヘリカーゼ依存性増幅(HDA)、リコンビナーゼポリメラーゼ増幅(RPA)、核酸配列に基づく増幅(NASBA)、または転写媒介増幅(TMA)であり得る。
【0049】
[58]実施形態では、等温核酸増幅はループ媒介等温核酸増幅反応(LAMP)である。具体的な態様では、標的核酸はRNAであり、LAMPは逆転写(RT-LAMP)をさらに含む。一実施形態では、RT-LAMPまたはLAMP反応は、65または67℃の一定温度で起こる。
【0050】
[59]特定の実施形態では、RT-LAMPまたはLAMPは、少なくとも1つの4~6個のオリゴヌクレオチドプライマーの組を含む反応混合物中で起こる。実施形態では、オリゴヌクレオチドプライマーの組は、表1に記載のプライマーの組から選択される。実施形態では、オリゴヌクレオチドプライマーの組は、ループFおよび/またはループBプライマーを含まない組以外の、表1に記載のプライマー組から選択され、それによって4つのプライマーの組が提供される。実施形態では、少なくとも1つの4~6個のオリゴヌクレオチドプライマーの組は、生物の標的核酸とハイブリダイズする。実施形態では、反応混合物は、ベータ-アクチンまたはヒト細胞中で構成的に発現される同様のヒト遺伝子などの標的ヒト核酸とハイブリダイズする、少なくとも1つの追加の4~6個のオリゴヌクレオチドプライマーの組をさらに含む。適切なヒト核酸標的に対して向けられたRT-LAMPおよびLAMPプライマーセットは当分野で知られており、たとえば、ZhangおよびTanner(2020)によって記載されているベータアクチンプライマーセットである。本明細書に記載する本方法の実施形態では、4~6個のオリゴヌクレオチドのRT-LAMPまたはLAMPプライマーの組のうちの少なくとも1つを、同じ核酸を標的とするDARQプライマーセットと対にする。一部の実施形態では、RT-LAMPまたはLAMPプライマーセットのそれぞれは、それ自身のDARQプライマーセットと対になっており、単一の反応混合物中の2つ以上の増幅産物の同時検出を可能にするために、それぞれのユニークなDARQプライマーセットは、異なる波長で蛍光シグナルを発するように適応されている。
【0051】
[60]実施形態では、少なくとも1つの4~6個のオリゴヌクレオチドプライマーの組は、それだけには限定されないが、遺伝子N(Sars-Cov-2ヌクレオプラスミドをコード化する)、遺伝子M(Sars-Cov-2膜タンパク質をコード化する)、遺伝子E(Sars-Cov-2エンベロープタンパク質をコード化する)、遺伝子S(Sars-Cov-2スパイクタンパク質をコード化する)、ORF1ab(orf1abポリタンパク質をコード化する)、Orf3a(アクセサリータンパク質をコード化する)、Orf6a(アクセサリータンパク質をコード化する)、Orf7a(アクセサリータンパク質をコード化する)、Orf7b(アクセサリータンパク質をコード化する)、Orf8(アクセサリータンパク質をコード)、およびOrf10(アクセサリータンパク質をコード化する)を含む、SARS-CoV-2ウイルスRNAの特異的遺伝子とハイブリダイズする。特定の実施形態では、少なくとも1つの4~6個のオリゴヌクレオチドプライマーの組は、SARS-CoV-2ウイルスRNAの遺伝子Nまたは遺伝子Mとハイブリダイズする。特定の実施形態では、少なくとも1つの4~6個のオリゴヌクレオチドプライマーの組は、配列番号1~6(セット1)、配列番号7~12(セット2)、配列番号7、9、11、13~15(セット3)、および配列番号7~12、16、17(セット4)によって同定される、セット1、セット2、セット3およびセット4からなる群から選択される。セット1、2、3、および4からのオリゴヌクレオチドプライマーの配列を以下の表1に示す。
【0052】
【0053】
【表1-2】
[61]実施形態では、RT-LAMPまたはLAMPは、生物の標的核酸に向けられた4~6個のオリゴヌクレオチドプライマーの組と、ヒト核酸、たとえば、ヒトアクチンRNA、たとえばベータアクチンなどの、すべてのヒト細胞中において一貫して発現されるヒトRNAに向けられた4~6個のオリゴヌクレオチドプライマーの第2の組とを含む、反応混合物中で起こる。
【0054】
[62]特定の実施形態では、RT-LAMPまたはLAMP反応は、1つまたは複数の増幅された標的核酸の検出のための1つまたは複数の試薬を含む、閉じた容器中の反応混合物中で起こる。実施形態では、1つまたは複数の増幅された標的核酸の検出のための1つまたは複数の試薬は、1つまたは複数の蛍光DNA指示薬を含む。用語「指示薬」とは、検出可能なシグナルを生じる分子をいい、それだけには限定されないが、蛍光、可視色、化学発光、および放射活性が挙げられる。
【0055】
[63]一部の態様では、1つまたは複数の蛍光DNA指示薬としては、それだけには限定されないが、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、ローダミンX(ROX)、6-カルボキシフルオレセイン(FAM)、SYTO 9、SYTO 82、SYTO 16、SYTO 13、SYTO 64、Boxto、Miami Green、Miami Yellow、Miami Orange、YOPRO 1、SYTO 62、TOPRO 3、SYTO 60、Chai Green(商標)、EvaGreen、POPO 3、NG-DCS 1、SYBR Green I、SYBR Green II、BOBO 3、TOTO 3、Pico 488、TOTO 1、およびSYTO 24が挙げられる。
【0056】
[64]実施形態では、1つまたは複数の蛍光DNA指示薬は、蛍光DNA挿入色素、たとえば、SYBR greenもしくはChai Green(商標)、またはSYBR Green IおよびIIなどの同様の色素、SYBR Safe、SYBR Gold、Eva Green、臭化エチジウム、オキサゾール黄色系シアニン色素(たとえば、YOYO-1、DiYO-1、TOTO-1、DiTO-1、TOTO-3)、Pico Green、SYTO 9、SYTO 13、SYTO 16、SYTO 60、SYTO 62、SYTO 64、SYTO 82、Boxto、Miami Green、Miami Yellow、あるいはMiami Orangeから選択される。
【0057】
[65]特定の態様では、増幅された標的核酸の検出は、経時的に試料中で増加した蛍光シグナルを含む。
【0058】
[66]実施形態では、1つまたは複数の増幅された標的核酸の検出のための1つまたは複数の試薬は、比色指示薬などの非蛍光DNA指示薬を含む。特定の態様では、比色指示薬としては、マラカイトグリーン、カルセイン、およびヒドロキシナフトールブルーのうちの1つまたは複数を挙げ得る。
【0059】
[67]実施形態では、2つ以上の異なる標的核酸の増幅産物を反応混合物中で同時に検出し得るように、それぞれのプライマーセットのオリゴヌクレオチドプライマーを異なる比色または蛍光指示薬で標識し得る。
【0060】
[68]実施形態では、反応混合物は、pH感受性比色指示薬をさらに含み得る。用語「pH感受性指示薬」とは、等温核酸増幅の進行に伴った反応混合物のpHの低下に応答して、色の可視変化(たとえば赤色から黄色)を生じる分子をいう。特定の態様では、1つまたは複数のpH感受性比色指示薬としては、それだけには限定されないが、フェノールレッド、クレゾールレッド、ニュートラルレッド、ブロモクレゾールパープル、およびm-クレゾールパープルが挙げられる。
【0061】
[69]RT-LAMPまたはLAMP反応混合物は、逆転写酵素、DNAポリメラーゼ、および二重特異性逆転写酵素/DNAポリメラーゼ酵素から選択される1つまたは複数の酵素をさらに含む。典型的には、逆転写酵素は約37℃~約42℃で活性である。一部の実施形態では、逆転写酵素は熱安定性逆転写酵素である。熱安定性逆転写酵素とは、一般的に高温下でその触媒活性の一部または全部を保持する逆転写酵素をいう。典型的には、熱安定性逆転写酵素は50℃以上で活性である。一部の実施形態では、逆転写酵素は野生型酵素である。一部の実施形態では、逆転写酵素は、1つまたは複数の単一点突然変異を含む。他の実施形態では、逆転写酵素は切断されている。一部の実施形態では、逆転写酵素はRNase H-突然変異体である。
【0062】
[70]例示的な逆転写酵素としては、それだけには限定されないが、M-MLV逆転写酵素、AMV逆転写酵素、FeLV逆転写酵素、ExcellScript熱安定性M-MuLV逆転写酵素、RapiDxFire(商標)熱安定性逆転写酵素、RocketScript(商標)熱安定性逆転写酵素、Superscript II逆転写酵素、Superscript III逆転写酵素、Superscript IV逆転写酵素、Protoscript(登録商標)II逆転写酵素、Maxima H minus逆転写酵素、WarmStart(登録商標)RTx逆転写酵素が挙げられる。様々な逆転写酵素が様々な特徴を有しており、一部のものが他のものよりも特定の応用に適している。下流の応用、標的RNAの長さ、複雑なRNA二次構造の存在、および酵素のRNase H活性のレベルはすべて、正しい逆転写酵素を選択する際の考慮事項である。
【0063】
[71]一部の実施形態では、DNAポリメラーゼは熱安定性DNAポリメラーゼである。熱安定性DNAポリメラーゼは当分野において一般的に使用されており、DNA鋳型上での伸長反応を触媒することができる。一部の実施形態では、熱安定性DNAポリメラーゼは、Taqポリメラーゼ、Tthポリメラーゼ、およびZ05ポリメラーゼを含む。一部の実施形態では、熱安定性DNAポリメラーゼは野生型酵素である。他の実施形態では、熱安定性DNAポリメラーゼは、1つまたは複数の単一点突然変異を含む。一部の実施形態では、熱安定性DNAポリメラーゼは5’-3’エキソヌクレアーゼ活性を有さない。他の実施形態では、熱安定性DNAポリメラーゼは5’-3’エキソヌクレアーゼ活性を有し、exo+Taq DNAポリメラーゼと呼ばれる。
【0064】
[72]一部の実施形態では、DNAポリメラーゼは鎖置換ポリメラーゼである。鎖置換ポリメラーゼは、熱サイクリング、または反応の温度を周期的な様式で50℃~70℃に調節する必要なしに、DNA鋳型上での伸長反応を触媒する。その代わりに、鎖置換ポリメラーゼは、一定温度で鋳型DNA鎖に沿って移動するにつれて、相補的DNA鎖を除去し、それを新しく合成された鎖で置き換えることができる。実施形態では、DNAポリメラーゼは、鎖置換ポリメラーゼおよび熱安定性ポリメラーゼの両方である。適切な例としては、BstポリメラーゼおよびPhi-29ポリメラーゼが挙げられる。
【0065】
[73]一部の実施形態では、RT-LAMPまたはLAMP反応混合物は、dATP、dCTP、dGTP、dTTP、およびdUTPの混合物であり得るデオキシリボヌクレオチド三リン酸(dNTP)をさらに含む。追加の実施形態では、RT-LAMPまたはLAMP反応混合物は、マグネシウムイオン供給源をさらに含む。実施形態では、マグネシウムイオン供給源は、MgCl2およびMgSO4のうちの一方または両方である。また、塩化カリウム(KCl)、塩化カルシウム(CaCl)、および硫酸アンモニウム[(NH4)2SO4]などの1つまたは複数の追加の塩も反応混合物中に存在し得る。また、塩は、任意選択で、必要に応じて溶出/溶解緩衝液中にも含ませることができる。
【0066】
[74]特定の実施形態では、RT-LAMPまたはLAMPは、60℃、61℃、62℃、63℃、64℃、65℃、66℃、67℃、68、または69℃の一定温度で、生物の標的核酸に向けられた少なくとも1つの4~6個のオリゴヌクレオチドプライマーの組と、任意選択で、ベータアクチンなどの標的ヒト核酸に向けられた4~6個のオリゴヌクレオチドプライマーの第2の組、dUTPを含むデオキシリボヌクレオチド三リン酸(dNTP)、マグネシウムイオン供給源(たとえばMgCl2またはMgSO4)、少なくとも1組のDARQプライマーおよび蛍光DNA挿入剤を含み得る増幅された標的核酸の検出のための1つまたは複数の試薬、ならびに、逆転写酵素、DNAポリメラーゼ、および二重特異性逆転写酵素/DNAポリメラーゼ酵素から選択される1つまたは複数の酵素とを含む、反応混合物中で起こる。反応混合物はまた、RNase阻害剤、血清アルブミン、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)およびその塩、たとえばTCEP-HClなどの還元剤、熱不安定性ウラシル-DNAグリコシラーゼ(UDG)、緩衝剤、(NH4)2SO4およびKClなどの塩、ならびに非イオン性界面活性剤のうちの1つまたは複数も含有し得る。実施形態では、非イオン性界面活性剤は、Triton(商標)X-100もしくは同様のTriton(商標)洗剤、またはTween20もしくはTween80などのTween(商標)洗剤、またはn-ドデシル-β-D-マルトシドなどのマルトシドから選択され得る。実施形態では、反応混合物を凍結乾燥させ、デキストラン、マンニトール、ソルビトール、マルトデキストリン、トレハロース、ラクトース、および/またはラクチトールのうちの1つまたは複数をさらに含有し得る。実施形態では、凍結乾燥した反応混合物は、トレハロース、ラクトース、および/またはラクチトールを含む。
【0067】
[75]本明細書中で使用する用語「標的核酸」とは、本明細書中に記載する等温核酸増幅反応による増幅の標的である生物の核酸、または生物の核酸の一部(たとえば遺伝子)をいう。特定の態様では、標的核酸は、生物の1つまたは複数のRNAまたはDNA分子を含む。他の態様では、標的核酸は、生物の1つまたは複数の遺伝子を含む。本明細書中で使用する用語「生物」としては、それだけには限定されないが、細菌、ウイルス、真菌、藻類、原虫、およびプリオン遺伝子を含む微生物、ならびに寄生生物などの生物が挙げられ、これには、それだけには限定されないが、特定の種類の蠕虫(たとえば、鈎虫、白癬)、植物、および昆虫の幼虫が挙げられる。
【0068】
[76]特定の実施形態では、標的核酸は、ウイルス、細菌、真菌、または寄生生物から選択される生物の、1つまたは複数のRNAまたはDNA分子を含む。具体的な実施形態では、生物はウイルスである。特定の事例では、ウイルスとしては、それだけには限定されないが、ライノウイルス、アデノウイルス、インフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、エンテロウイルスD68、C型肝炎ウイルス(HCV)、西ナイルウイルス、ジカウイルス、シンドビスウイルス(SINV)、デングウイルス、エボラウイルス、マールブルグウイルス、クリミア-コンゴ出血熱(CCHF)オルソナイロウイルス(CCHFV)、黄熱ウイルス、リフトバレー熱ウイルス(RVFV)、オムスク出血熱ウイルス(OHFV)、キャサヌール森林病ウイルス(KFDV)、フニンウイルス、マチュポウイルス、サビアウイルス、グアナリトウイルス、ガリッサウイルス、イレシャウイルス、ラッサ熱ウイルス、ヒトコロナウイルス(HCoV)-HKU-1、HCoV-NL63、HCoV-OC43、およびHCoV-229E、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-Cov)、中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)、ならびに重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)が挙げられる。特定の実施形態では、ウイルスは、SARS-Cov、MERS-CoV、およびSARS-CoV-2から選択される。具体的な実施形態では、ウイルスはSARS-CoV-2である。
【0069】
[77]本明細書中で使用する「対象」とは、生物(たとえばSARS-CoV-2などの微生物)に感染した、または感染が疑われる、または感染のリスクがある、任意の哺乳動物をいう。本開示の方法は、ヒト対象に適用可能として全般的に記載されているが、本方法は他の哺乳動物対象に適用し得る。したがって、特定の実施形態では、本明細書中に記載する方法は、任意の哺乳動物、たとえば、ヒト、霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヤギ、ラクダ、ヒツジ、またはブタを含み得る「対象」に対して行い得る。具体的な実施形態では、対象または必要としている対象は、ヒト乳児、小児、青年、または成人などのヒトである。
【0070】
[78]実施形態では、本方法は、1つまたは複数のRNase阻害剤を、RT-LAMPまたはLAMP反応混合物に加えるステップをさらに含む。実施形態では、本方法が化学的溶解ステップを含む場合、RNase阻害剤が任意選択で溶解緩衝液中に存在する。一部の実施形態では、RNase阻害剤を、清澄化ステップを行う前および任意の熱処理ステップの前に試料に加える。用語「阻害剤」とは、標的分子の発現、量、または活性の直接または間接的な変更、干渉、低下、下方制御、遮断、抑止、または分解を生じる薬剤(たとえば化学分子または生体分子)をいい、変更、干渉、低下、下方制御、遮断、抑止、または分解は、統計的、生物学的、または臨床的に有意である。用語「RNase阻害剤」とは、通常はRNA分子を断片化させるために機能するRNase酵素の活性を遮断、不活性化、低下、または最小限にし得る薬剤をいう。RNase阻害剤は、試料中のRNase汚染物質を阻害および制御するために、本明細書中に記載する方法におけるものなどのRNAの酵素操作における予防策として一般的に使用する。一部の実施形態では、RNase阻害剤は、約60℃~約100℃、好ましくは約65℃~約95℃、最も好ましくは約95℃の高温で活性であり続ける。
【0071】
[79]本明細書に記載するアッセイ方法において使用し得る例示的なRNase阻害剤としては、それだけには限定されないが、ブタ肝臓RNase阻害剤、ヒト胎盤RNase阻害剤、ネズミRNase阻害剤、ラット肺RNase阻害剤、およびラット肝臓RNase阻害剤が挙げられる。例示的なRNase阻害剤としては、それだけには限定されないが、Riboprotect Hu、RiboGuard(商標)、RNasin(商標)もしくはRNasin(商標)Plus、Ribolock、RiboShield、RNaseOUT(商標)、またはSuperase In(商標)が挙げられる。実施形態では、RNase阻害剤の最終濃度は約0.01U/μl~2.0U/μl、好ましくは約0.5U/μl~約2.0U/μlである。一部の実施形態では、RNase阻害剤はポリビニルスルホン酸(PVSA)である。
【0072】
[80]特定の実施形態では、本明細書に記載する方法は、増幅された標的核酸の迅速検出を可能にする。本明細書中で使用する用語「迅速検出」とは、等温核酸増幅反応が、標的核酸を、当分野で知られている1つまたは複数の手順によって定量的および/または定性的に検出されるように(たとえば蛍光および/または比色検出)、約1分間~約60分間、好ましくは約5分間~約45分間、または約5分間~30分間、またはより好ましくは約10分間~約30分間、または約10分間~約26分間、または約15分間~約30分間の期間以内に十分に増幅することを示す。好ましくは、本明細書に記載する方法によれば、等温核酸増幅反応は、標的核酸が検出されるように5~26分間の期間以内に十分に増幅する。
【0073】
[81]したがって、特定の実施形態では、本方法は、約5~30分間、または約10~30分間、または約10~約26分間、または10~20分間、または約15~約30分間、または約15分間~20分間の以内の期間に、増幅された標的核酸の迅速検出を可能にする。追加の実施形態では、本明細書中に記載する方法を行うために必要な総時間は、約5分間~約60分間、または約25分間~約60分間、または約30分間~約60分間である。
【0074】
[82]一部の実施形態では、本明細書に記載する方法は、等温核酸増幅反応の前に行う1つまたは複数の追加のステップさらに含み得る。1つまたは複数の追加のステップとしては、同時の限外濾過および濃縮を含む清澄化ステップ、化学的溶解、ならびに熱処理のうちの1つまたは複数を挙げ得る。
【0075】
[83]本明細書中で使用する用語「化学的溶解」とは、生物からの遺伝物質(たとえばRNAまたはDNA)の放出を容易にするために、前記生物の細胞膜(またはウイルスの外部タンパク質コート)を透過処理するプロセスをいう。適切な溶解剤の例としては、それだけには限定されないが、様々な細胞種、たとえば、グラム陽性または陰性細菌、植物、酵母、哺乳動物の溶解に使用される溶解酵素などの生物活性試薬、たとえば、リゾチーム、アクロモペプチダーゼ、リゾスタフィン、ラビアーゼ、キタラーゼ、リチカーゼ、および様々な他の市販の溶解酵素が挙げられる。実施形態では、溶解試薬は、非イオン性界面活性剤、塩酸グアニジン(GuHCl)、およびチオシアン酸グアニジン(GuSCN)から選択される。実施形態では、溶解試薬は非イオン性界面活性剤である。実施形態では、非イオン性界面活性剤は、Triton(商標)X-100もしくは同様のTriton(商標)洗剤、またはTween20もしくはTween80などのTween(商標)洗剤、またはn-ドデシル-β-D-マルトシドなどのマルトシドから選択される。
【0076】
[84]試料中に存在する生物の透過処理を容易にするために、他の溶解剤を、追加でまたは代替として試料に加えることができる。たとえば、界面活性剤に基づく溶解溶液は、生物を溶解するために使用することができる。溶解溶液としては、たとえば、サルコシルおよびドデシル硫酸ナトリウム(SDS)等のイオン性界面活性剤、またはTriton(商標)X-100もしくは他の同様のTriton(商標)洗剤、またはTween20もしくはTween80などのTween(商標)洗剤、またはn-ドデシル-β-D-マルトシドなどのマルトシド等の非イオン性界面活性剤を挙げることができる。より一般的には、化学的溶解剤としては、それだけには限定されないが、有機溶媒、キレート化剤、洗剤、界面活性剤、およびカオトロピック剤を挙げることができる。
【0077】
[85]一実施形態では、化学的溶解は、試料を、非イオン性界面活性剤、塩酸グアニジン(GuHCl)、およびチオシアン酸グアニジン(GuSCN)から選択される溶解試薬と、緩衝溶液中で接触させるステップを含む。実施形態では、溶解試薬は非イオン性界面活性剤である。実施形態では、非イオン性界面活性剤は、Triton(商標)X-100もしくは同様のTriton(商標)洗剤、またはTween20もしくはTween80などのTween(商標)洗剤、またはn-ドデシル-β-D-マルトシドなどのマルトシドから選択される。実施形態では、緩衝溶液はドデシル硫酸ナトリウム(SDS)をさらに含む。
【0078】
[86]実施形態では、生物は、非化学的透過処理方法によって透過処理することができる。使用することができる例示的な非化学的透過処理方法としては、それだけには限定されないが、電気穿孔などの物理的溶解技法、機械的透過処理方法(たとえば、試料の組織構造を機械的に破壊するための、ホモジナイザーおよび粉砕ボールを使用したビーズ打ち)、音波透過処理(たとえば超音波処理)、ならびに生物の熱透過処理を誘導するための加熱などの熱溶解技法が挙げられる。
【0079】
[87]実施形態では、培地、溶液、または透過処理溶液は、1つまたは複数のプロテアーゼを含有し得る。一部の実施形態では、ヒストンタンパク質を分解することができるプロテアーゼで処理した生体試料は、断片化されたゲノムDNAの生成をもたらす場合がある。
【0080】
[88]本明細書中で使用する用語「熱処理」とは、試料の温度の増加をもたらす熱源を前記試料に施用するプロセスをいう。特定の実施形態では、熱処理は、約20℃~約50℃、好ましくは約20℃~約40℃、最も好ましくは約30℃~約40℃の、試料の温度の増加をもたらす。特定の実施形態では、試料を熱処理に供するステップは、試料を、約80℃~約100℃、好ましくは約90℃~約98℃、最も好ましくは約95℃の温度まで、約30秒間~約10分間、好ましくは約30秒間~約5分間、最も好ましくは約1分間~約3分間の一定期間の間、加熱するステップを含む。具体的な実施形態では、試料を熱処理に供するステップは、試料を95℃まで3分間加熱するステップを含む。
【0081】
[89]実施形態では、本方法は、等温核酸増幅反応の前に行う、同時の限外濾過および濃縮を含んで清澄化した試料を生成する清澄化ステップを含み得る。本明細書中で使用する用語「清澄化」とは、細胞タンパク質および脂質、細胞細片、ならびに試料からの他の汚染粒子を除去するが、検出する分析物は除去せずに、「清澄化した」試料を生じるプロセスをいう。特定の実施形態では、試料の清澄化は、試料の濾過、限外濾過、遠心分離、超遠心分離、および超音波処理を含む1つまたは複数のステップを含む。ステップは同時または別々であり得る。用語「同時」とは、同じ時に起こる2つ以上のステップ(たとえば清澄化ステップ)をいう。
【0082】
[90]用語「限外濾過」とは、圧力または濃度勾配などの力が、半透膜を通した分離をもたらす、様々な膜濾過装置をいう。限外濾過膜は、使用する膜の分子量カットオフ(MWCO)によって定義される。例示的な限外濾過ユニットとしては、それだけには限定されないが、AmiconまたはMillipore限外濾過ユニットが挙げられる。特定の態様では、フィルターは、コポリマースチレンフィルターおよびブタジエンフィルターからなる群から選択される。具体的な実施形態では、膜はセルロース膜である。特定の実施形態では、膜は、約1kDa~約300kDa、好ましくは約3kDa~約200kDa、最も好ましくは約100kDa~約200kDaの分子量カットオフ(MWCO)を有する。
【0083】
[91]実施形態では、清澄化ステップは、分析物、たとえばウイルスRNAまたはウイルス粒子がフィルターを通過することを許可しない一方で、他の分子および不純物が通過する膜を有するフィルターを通した、試料の遠心分離を含む。一部の実施形態では、遠心分離は、約10,000×g~150,000×g、10,000~100,000×g、10,000~20,000×g、または14,000~15,000×gの速度で、約5分間~30分間、好ましくは10分間~20分間、最も好ましくは約20分間の一定期間行う。具体的な実施形態では、遠心分離は、10,000~20,000×gの速度で20分間行う。
【0084】
[92]特定の実施形態では、試料の同時の限外濾過および濃縮の終わりまでに、フィルター中に残る清澄化した試料の体積は、約1μl~約25μl、好ましくは5μl~約20μl、最も好ましくは約10μl~約15μlである。特定の態様では、同時の限外濾過および濃縮ステップは、試料の体積を約90%~約99%、より好ましくは約95%~約98%、最も好ましくは約97%~約98%低下させる。具体的な実施形態では、同時の限外濾過および濃縮ステップは、試料の体積を約500μl~約15~20μl低下させる。
【0085】
[93]一部の実施形態では、清澄化ステップは、化学的溶解および/または熱処理を行う前に行う。試料を化学的溶解に供するステップおよび試料を熱処理に供するステップからなる群から選択される1つまたは複数の追加のステップを行う前に清澄化ステップを行うことが、本明細書中に記載する方法の一部の実施形態について感度の著しい改善をもたらしたことが、予想外に見出された。特定の態様では、試料を化学的溶解に供するステップおよび試料を熱処理に供するステップからなる群から選択される1つまたは複数の追加のステップを行う前に清澄化ステップを行うことは、本方法を清澄化ステップなしで実施した場合、または清澄化ステップを、試料を化学的溶解に供するステップおよび試料を熱処理に供するステップからなる群から選択される1つまたは複数の追加のステップを行った後に行った場合と比較して、記載した方法のLODを約2倍~約20倍、好ましくは約4倍~約10倍低下させた。
【0086】
[94]特定の実施形態では、本方法は、等温核酸増幅反応を実施する前に、清澄化した試料を2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の部分に分けるステップをさらに含み得る。一部の態様では、本方法は、清澄化した試料の2、3、4、5、6、7、8、9、および/または10番目の部分を等温核酸増幅反応に供して標的核酸を増幅させるステップと、増幅された標的核酸を検出するステップとをさらに含む。特定の実施形態では、異なる標的核酸は、清澄化した試料のそれぞれの部分中で増幅される。他の実施形態では、同じ標的核酸を、清澄化した試料中の少なくとも2つの部分で増幅させる。したがって、一部の実施形態では、本方法は、清澄化した試料の第2の部分を等温核酸増幅反応に供して標的核酸を増幅させるステップと、増幅された標的核酸を検出するステップとをさらに含む。特定の態様では、試料の第1の部分中で増幅された標的核酸および試料の第2の部分中で増幅された標的核酸は同じである。他の態様では、試料の第1の部分中で増幅された標的核酸および試料の第2の部分中で増幅された標的核酸は異なる。さらに他の実施形態では、本方法は、清澄化した試料の第3の部分を等温核酸増幅反応に供して第3の標的核酸を増幅させるステップと、増幅された標的核酸を検出するステップとをさらに含む。
【0087】
[95]特定の態様では、試料の第1の部分中で増幅された標的核酸および試料の第3の部分中で増幅された標的核酸は同じである。他の態様では、試料の第1の部分中で増幅された標的核酸および試料の第3の部分中で増幅された標的核酸は異なる。追加の態様では、試料の第2の部分中で増幅された標的核酸および試料の第3の部分中で増幅された標的核酸は同じである。他の態様では、試料の第2の部分中で増幅された標的核酸および試料の第3の部分中で増幅された標的核酸は異なる。さらなる態様では、試料の第1の部分中で増幅された標的核酸および試料の第2および第3の部分中で増幅された標的核酸は同じである。追加の態様では、試料の第1の部分中で増幅された標的核酸および試料の第2および第3の部分中で増幅された標的核酸は異なる。
キット
[96]本開示はまた、試料中の生物の検出のためのキットも提供する。実施形態では、本開示は、SARS-CoV-2ウイルスの検出のためのキットを提供する。実施形態では、キットは、試料の溶出および溶解のための緩衝液を含み、任意選択で、SARS-CoV-2ウイルスの通過を許可しない膜を有するフィルターを含む遠心フィルターアセンブリを収容する第1の容器と、配列番号1~6(セット1)、配列番号7~12(セット2)、配列番号7、13、9、14、11、および15(セット3)、または配列番号7~12ならびに配列番号16および17(セット4)によって同定されるプライマーセットのうちの任意の1つから選択される4~6個の凍結乾燥したオリゴヌクレオチドプライマーの組を含む第2の容器と、逆転写およびループ媒介等温核酸増幅反応(RT-LAMP)を行うための試薬とを含む。実施形態では、膜は、約1kDa~約300kDa、好ましくは約3kDa~約200kDa、より好ましくは約100kDa~約200kDaの分子量カットオフ(MWCO)を有する。実施形態では、RT-LAMPを行うための試薬は、デオキシリボヌクレオチド三リン酸(dNTP)、増幅された標的核酸の検出のための1つまたは複数の試薬、逆転写酵素、およびDNAポリメラーゼを含む。実施形態では、RT-LAMPを行うための試薬のうちの1つまたは複数を凍結乾燥させる。実施形態では、凍結乾燥試薬は、dNTPおよび緩衝液を含む。実施形態では、キットは、RNase阻害剤、陽性対照試料、陰性対照試料、および増幅された標的核酸の検出のための1つまたは複数の蛍光または比色指示薬のうちの1つまたは複数をさらに含む。
【0088】
[97]特定の態様では、フィルターは、コポリマースチレンフィルターおよびブタジエンフィルターからなる群から選択される。具体的な実施形態では、膜はセルロース膜である。特定の実施形態では、膜は、約1kDa~約300kDa、好ましくは約3kDa~約200kDa、最も好ましくは約100kDa~約200kDaの分子量カットオフ(MWCO)を有する。他の態様では、膜は、約0.001~約0.1ミクロン、好ましくは約0.001~約0.004ミクロン、最も好ましくは0.001~約0.002ミクロンの孔径を有する。
【0089】
[98]一部の実施形態では、キットは、1つまたは複数の陽性対照試料および陰性対照試料をさらに含む。他の実施形態では、キットは、増幅された標的核酸の検出のための1つまたは複数の蛍光または比色指示薬をさらに含む。
【0090】
[99]特定の実施形態では、キットは、緩衝剤、(NH4)2SO4およびKClなどの塩、デオキシリボヌクレオチド三リン酸(dNTP)の混合物、増幅された標的核酸の検出のための1つまたは複数の試薬、塩化マグネシウム(MgCl2)または硫酸マグネシウム(MgSO4)などのマグネシウムイオン供給源、逆転写酵素、ならびにDNAポリメラーゼを含む、RT-LAMPを行うための試薬をさらに含む。一部の実施形態では、RT-LAMPを行うための試薬のうちの1つまたは複数を凍結乾燥させる。用語「凍結乾燥した」とは、貯蔵寿命を延長する、または材料を輸送用により都合よくするために、腐敗しやすい材料(たとえば酵素)を保存するために典型的に使用される、水除去プロセスをいう。凍結乾燥は、材料を凍結し、その後、減圧し、熱を加えて、材料中の凍結水を昇華させることによって機能する。これは、ほとんどの慣用方法による、熱を使用して水を蒸発させる脱水とは対照的である。
【0091】
[100]実施形態では、凍結乾燥試薬は、界面活性剤、緩衝剤、(NH4)2SO4およびKClなどの塩、塩化マグネシウム(MgCl2)または硫酸マグネシウム(MgSO4)などのマグネシウムイオン供給源、逆転写酵素、DNAポリメラーゼ、dNTPの混合物、好ましくは4~6個のRT-LAMPまたはLAMPプライマーとDARQプライマーセットとを含む、標的核酸配列の増幅のための少なくとも1つのプライマーセット、ならびに蛍光DNA挿入色素を含む。
【0092】
[101]実施形態では、界面活性剤は、Triton(商標)X-100もしくは同様のTriton(商標)洗剤、またはTween20もしくはTween80などのTween(商標)洗剤、またはn-ドデシル-β-D-マルトシドなどのマルトシド等の非イオン性界面活性剤である。
【0093】
[102]実施形態では、緩衝剤は、トリス、CAPS、HEPES、MOPS、PIPES、TAPS、TE、TES、またはトリシンである。実施形態では、RNase阻害剤はポリビニルスルホン酸(PVSA)である。
【0094】
[103]実施形態では、硫酸マグネシウムは、再構成した溶液中において2~20mMまたは4~10mMの濃度を提供するために適切な量で存在する。
【0095】
[104]実施形態では、逆転写酵素は低下したRNase H活性を有する。
【0096】
[105]実施形態では、DNAポリメラーゼは熱安定性DNAポリメラーゼである。実施形態では、DNAポリメラーゼは、ゲオバチルス・ボガジシ(Geobacillus bogazici)DNAポリメラーゼ、Bst DNAポリメラーゼ、またはTaq DNAポリメラーゼから選択される。
【0097】
[106]実施形態では、dNTPの混合物は、再構成した溶液中においてそれぞれ独立して約0.28~7mMまたは0.7~2.8mMの範囲で存在する、dATP、dCTP、dGTP、dTTP、およびdUTPを含む。
【0098】
[107]実施形態では、少なくとも1つのプライマーセットは、表1に記載のプライマーセットである。実施形態では、凍結乾燥試薬は、ヒトアクチンなどの対照配列の増幅のための第2のプライマーセットを含む。好ましくは、反応混合物は少なくとも1つのDARQプライマーセットを含む。
【0099】
[108]実施形態では、蛍光DNA挿入色素は、SYBR greenもしくはChai Green(商標)、またはSYBR Green IおよびIIなどの同様の色素、SYBR Safe、SYBR Gold、Eva Green、臭化エチジウム、オキサゾール黄色系シアニン色素(たとえば、YOYO-1、DiYO-1、TOTO-1、DiTO-1、TOTO-3)、Pico Green、SYTO 9、SYTO 13、SYTO 16、SYTO 60、SYTO 62、SYTO 64、SYTO 82、Boxto、Miami Green、Miami Yellow、Miami Orangeである。
【0100】
[109]実施形態では、凍結乾燥試薬は、ウシ血清アルブミン(BSA)、ウシ胎児血清、またはヒト血清アルブミンなどの血清アルブミンのうちの1つまたは複数、たとえば再構成した溶液中において1mg/mlまでの血清アルブミン;トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)およびその塩、たとえばTCEP-HClなどの還元剤、たとえば再構成した溶液中において4mMまで;トレハロース、ラクトース、およびラクチトールのうちの1つまたは複数、再構成した溶液中において約5~50%w/v、または約10~45%w/v、または10~20%w/v;熱不安定性ウラシル-DNAグリコシラーゼ(UDG);ならびにRiboprotect Hu(Blirt)、RiboGuard(商標)(Lucigen)、RNasin(商標)、またはRNasin(商標)Plus(Promega)、RNaseOUT(商標)、Superase In(商標)、RiboLock(Thermo Scientific)、RiboShield(PCR Biosystems)などのRNase阻害剤をさらに含む。実施形態では、凍結乾燥試薬はまた、デキストラン、マンニトール、ソルビトール、および/またはマルトデキストリンのうちの1つまたは複数も含み得る。
【0101】
[110]一実施形態では、キットは、採取チューブ(A)、滅菌スワブ(B)、および試験パウチ(C)を含む。試験パウチは、ホールピペット(C1)およびチューブアセンブリ(C2)を含有する。採取チューブ(A)は、試料の溶出および溶解のための緩衝液を含有する。実施形態では、緩衝液は、界面活性剤、好ましくは、Triton(商標)X-100もしくは同様のTriton(商標)洗剤、またはTween20もしくはTween80などのTween(商標)洗剤、またはn-ドデシル-β-D-マルトシドなどのマルトシド等の非イオン性界面活性剤、;緩衝剤、たとえば、トリス、CAPS、HEPES、MOPS、PIPES、TAPS、TE、TES、またはトリシン;RNase阻害剤、たとえばポリビニルスルホン酸(PVSA);およびヌクレアーゼを含まない水を含む。チューブアセンブリ(C2)は、RT-LAMPを行うための試薬の凍結乾燥混合物、およびRT-LAMP反応中に試験管内の溶液を混合するために使用するステンレス鋼ボールベアリングなどの磁気ビーズを含有する。たとえば、試薬は、トリス緩衝液などの適切な緩衝液;Triton(商標)X-100もしくは同様のTriton(商標)洗剤、またはTween20もしくはTween80などのTween(商標)洗剤、またはn-ドデシル-β-D-マルトシドなどのマルトシド等の非イオン性界面活性剤;(NH4)2SO4およびKClなどの塩、再構成した溶液中において2~20mMまたは4~10mMの濃度を提供するための硫酸マグネシウム;たとえば再構成した溶液中においてそれぞれ独立して約0.28~7mMまたは0.7~2.8mMの範囲で存在する、dATP、dCTP、dGTP、dTTP、およびdUTPを含む、デオキシヌクレオチド(dNTP)の混合物;本明細書中に記載するプライマーセットなどの、標的配列、たとえば標的ウイルス配列の増幅のための少なくとも1つのプライマーセット;任意選択の、ヒトベータ-アクチンなどの対照配列の増幅のための第2のプライマーセット;1組または複数組の検出プライマー;増幅されたDNAの検出に適した色素、たとえば蛍光DNA挿入色素、たとえば、SYBR greenもしくはChai Green(商標)、またはSYBR Green IおよびIIなどの同様の色素、SYBR Safe、SYBR Gold、Eva Green、臭化エチジウム、オキサゾール黄色系シアニン色素(たとえば、YOYO-1、DiYO-1、TOTO-1、DiTO-1、TOTO-3)、Pico Green、SYTO 9、SYTO 13、SYTO 16、SYTO 60、SYTO 62、SYTO 64、SYTO 82、Boxto、Miami Green、Miami Yellow、Miami Orange;DNAポリメラーゼ、好ましくは熱安定性DNAポリメラーゼ、たとえば、ゲオバチルス・ボガジシDNAポリメラーゼ、Bst DNAポリメラーゼ(たとえばBST 2.0)、またはTaq DNAポリメラーゼ;ならびに逆転写酵素、好ましくは低下したRNase H活性を有するものを含み得る。また、追加の試薬、たとえば、ウシ血清アルブミン(BSA)、ウシ胎児血清、またはヒト血清アルブミンなどの血清アルブミンのうちの1つまたは複数、たとえば再構成した溶液中において1mg/mlまでの血清アルブミン;TCEPなどの還元剤、たとえば再構成した溶液中において4mMまで;トレハロース、ラクトース、およびラクチトールのうちの1つまたは複数、再構成した溶液中において約5~50%w/v、または約10~45%w/v、または10~20%w/v;熱不安定性UDG;ならびにRiboprotect Hu(Blirt)、RiboGuard(商標)(Lucigen)、RNasin(商標)、またはRNasin(商標)Plus(Promega)、RNaseOUT(商標)、Superase In(商標)、RiboLock(Thermo Scientific)、RiboShield(PCR Biosystems)などのRNase阻害剤も、存在し得る。実施形態では、凍結乾燥試薬はまた、デキストラン、マンニトール、ソルビトール、および/またはマルトデキストリンのうちの1つまたは複数も含み得る。
【0102】
[111]一部の実施形態では、本発明は、試料を、同時の限外濾過および濃縮を含んで清澄化した試料を生成する清澄化ステップに供するステップと、続いて、清澄化した試料の第1の部分を第1の等温核酸増幅反応に供して生物の第1の標的核酸を増幅させるステップと、増幅された標的核酸を検出するステップとを含み、増幅された標的核酸の検出が試料中の生物の存在を示す、試料中の生物を検出するための方法を提供する。
【0103】
[112]一実施形態では、本方法は、20~120分間、好ましくは20~90分間、最も好ましくは20~40分間の一定期間以内で行う。特定の実施形態では、本方法は、5~45分間、好ましくは10~30分間、最も好ましくは15~20分間の一定期間以内に行う。
【0104】
[113]一実施形態では、本方法は、清澄化した試料の第2の部分を第2の等温核酸増幅反応に供して第2の標的核酸を増幅させるステップと、増幅された標的核酸を検出するステップとをさらに含む。一実施形態では、第1および第2の標的核酸は同じまたは異なる。一実施形態では、2つの異なるプライマーセットを使用して、第1および第2の標的核酸を増幅させる。
【0105】
[114]一実施形態では、本方法は、等温核酸増幅反応を行う前に、試料を化学的溶解に供するステップおよび試料を熱処理に供するステップからなる群から選択される1つまたは複数の追加のステップをさらに含む。
【0106】
[115]一実施形態では、試料を化学的溶解に供するステップは、試料を、非イオン性界面活性剤、塩酸グアニジン、およびチオシアン酸グアニジンから選択される溶解試薬と接触させるステップを含む。
【0107】
[116]一実施形態では、試料を熱処理に供するステップは、試料を約95℃まで、30秒間~10分間、好ましくは30秒間~5分間、最も好ましくは1分間~3分間の一定期間の間加熱するステップを含む。一実施形態では、試料を熱処理に供するステップは、試料を95℃まで3分間加熱するステップを含む。
【0108】
[117]一実施形態では、清澄化ステップを行う前にRNase阻害剤を試料に加える。
【0109】
[118]一実施形態では、清澄化ステップは、遠心分離を含む方法によって行う。一実施形態では、清澄化ステップは、約1kDa~300kDa、好ましくは3kDa~200kDa、最も好ましくは100kDa~200kDaの分子量カットオフ(MWCO)を有する膜を含むフィルターを通した限外濾過を含む方法によって行う。一実施形態では、フィルターは、コポリマースチレンフィルターおよびブタジエンフィルターから選択される。一実施形態では、膜はセルロース膜である。一実施形態では、遠心分離は約14,000~15,000×gの速度で約10~20分間行う。
【0110】
[119]前述の方法のうちの任意のものの一実施形態では、等温核酸増幅はループ媒介等温核酸増幅反応(LAMP)である。一実施形態では、標的核酸はRNAであり、LAMPは逆転写(RT-LAMP)をさらに含む。一実施形態では、RT-LAMPまたはLAMPは、65または67℃の一定温度で、6個のオリゴヌクレオチドプライマーの組、デオキシリボヌクレオチド三リン酸(dNTP)、マグネシウムイオン供給源(たとえばMgCl2またはMgSO4)、増幅された標的核酸の検出のための1つまたは複数の試薬、ならびに逆転写酵素、DNAポリメラーゼ、および二重特異性逆転写酵素/DNAポリメラーゼ酵素から選択される1つまたは複数の酵素を含む反応混合物中で起こる。
【0111】
[120]一実施形態では、増幅された標的核酸の検出のための1つまたは複数の試薬は、1つまたは複数の蛍光DNA指示分子を含む。一実施形態では、1つまたは複数の蛍光DNA指示分子は、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、ローダミンX(ROX)、6-カルボキシフルオレセイン(FAM)、SYTO 9、SYTO 82、SYTO 16、SYTO 13、SYTO 64、Boxto、Miami Green、Miami Yellow、Miami Orange、YOPRO 1、SYTO 62、TOPRO 3、SYTO 60、EvaGreen、Chai Green(商標)、POPO 3、NG-DCS 1、SYBR Green I、SYBR Green II、BOBO 3、TOTO 3、Pico 488、TOTO 1、およびSYTO 24からなる群から選択される。一実施形態では、増幅された標的核酸の検出は、一定期間にわたる試料中の蛍光シグナルの増加を検出することを含む。一実施形態では、増幅された核酸の検出のための1つまたは複数の試薬は、マラカイトグリーン、カルセイン、およびヒドロキシナフトールブルーからなる群から選択される1つまたは複数の比色指示薬を含む。一実施形態では、増幅された核酸の検出のための1つまたは複数の試薬は、フェノールレッド、クレゾールレッド、ニュートラルレッド、ブロモクレゾールパープル、およびm-クレゾールパープルからなる群から選択されるpH感受性比色指示薬を含む。
【0112】
[121]前述の方法のうちの任意のものの一実施形態では、試料中の標的核酸の検出は、1~100個のコピー、好ましくは1~5個のコピーの標的核酸/マイクロリットル(μl)の検出限界(LOD)を有する。一実施形態では、試料中の標的核酸の検出は、1個のコピーの標的核酸/マイクロリットル(μl)の検出限界(LOD)を有する。一実施形態では、本方法は、約90%~約100%、好ましくは約95%~約100%、最も好ましくは少なくとも約97%の感度を有する。一実施形態では、本方法は、約90%~約100%、好ましくは約95%~約100%、最も好ましくは少なくとも約99%の特異性を有する。
【0113】
[122]前述の方法のうちの任意のものの一実施形態では、標的核酸は、ウイルス、細菌、真菌、または寄生生物から選択される生物の、1つまたは複数のRNAまたはDNA分子を含む。一実施形態では、標的核酸はウイルスのものである。実施形態では、ウイルスは、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)、中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)、および重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)から選択される。実施形態では、ウイルスはSARS-Cov-2である。
【0114】
[123]ウイルスがSARS-CoV-2である方法の一実施形態では、4~6個のオリゴヌクレオチドプライマーの組は、表1に記載の配列識別子によって同定される、セット1、セット2、セット3、およびセット4からなる群(ループFおよびループBのプライマーは非存在)、すなわち、セット1の配列番号1~4、セット2の配列番号7~10、セット3の配列番号7、13、9、および14、またはセット4の配列番号7~10ならびに配列番号16および17から選択される。実施形態では、オリゴヌクレオチドプライマーの組は、SARS-CoV-2ウイルスRNAの遺伝子Nまたは遺伝子Mとハイブリダイズする。ウイルスがSARS-CoV-2である方法の一実施形態では、オリゴヌクレオチドプライマーの組は、表1に記載の配列識別子、すなわち、配列番号1~6(セット1)、配列番号7~12(セット2)、配列番号7、13、9、14、11、および15(セット3)、または配列番号7~12ならびに配列番号16および17(セット4)によって同定される、セット1、セット2、セット3、およびセット4からなる群から選択される。実施形態では、オリゴヌクレオチドプライマーの組は、SARS-CoV-2ウイルスRNAの遺伝子Nまたは遺伝子Mとハイブリダイズする。
【0115】
[124]ウイルスがSARS-Cov-2である方法の一実施形態では、オリゴヌクレオチドプライマーの組は、表1、配列番号7~12ならびに配列番号16および17において同定されるセット4である。
【0116】
[125]前述の方法のうちの任意のものの一実施形態では、試料は、生体試料または環境学的試料である。実施形態では、生体試料は、唾液、粘液、血液、または血清を含む。実施形態では、環境学的試料は、固形表面、液体、または一定体積の空気から採取した粒子を含む。実施形態では、生体試料は上気道試料である。実施形態では、上気道試料は、上咽頭(NP)スワブ、口咽頭(OP)スワブ、鼻腔スワブ、鼻腔吸引液、または鼻腔洗浄液から得られ、さらに任意選択で、鼻腔スワブは前鼻腔スワブまたは中鼻甲介鼻腔スワブである。
【0117】
[126]本開示は、試料を、同時の限外濾過および濃縮を含んで清澄化した試料を生成する清澄化ステップに供するステップと、続いて、清澄化した試料の第1の部分を第1の逆転写およびループ媒介等温核酸増幅反応(RT-LAMP)に供して、遺伝子Mおよび遺伝子Nから選択されるSARS-CoV-2ウイルスの第1の標的核酸を増幅させるステップと、増幅された標的核酸を検出するステップとを含み、増幅された標的核酸の検出が、生体試料中におけるSARS-CoV-2ウイルスの存在を示す、対象から得られた生体試料中においてSARS-CoV-2ウイルスを検出する方法を提供する。実施形態では、生体試料は、ヒト対象の唾液または粘液試料である。実施形態では、本方法は、清澄化した試料の第2の部分を第2の等温核酸増幅反応に供して第2の標的核酸を増幅させるステップと、増幅された第2の標的核酸を検出するステップとをさらに含む。実施形態では、第1および第2の標的核酸は同じまたは異なる。実施形態では、2つの異なるプライマーセットを使用して、第1および第2の標的核酸を増幅させる。実施形態では、RT-LAMP反応は、65℃または67℃の一定温度で、6個のオリゴヌクレオチドプライマーの組、デオキシリボヌクレオチド三リン酸(dNTP)、マグネシウムイオン供給源(たとえばMgCl2またはMgSO4)、増幅された標的核酸を検出するための1つまたは複数の試薬、逆転写酵素、およびDNAポリメラーゼを含む反応混合物中で起こる。実施形態では、本方法は、上述のように、等温核酸増幅を行う前に1つまたは複数の追加のステップをさらに含む。
【0118】
[127]実施形態では、4または6個のオリゴヌクレオチドプライマーの組は、SARS-CoV-2ウイルスRNAの遺伝子Nまたは遺伝子Mとハイブリダイズする。実施形態では、4または6個のオリゴヌクレオチドプライマーの組は、配列番号1~6(セット1)、配列番号7~12(セット2)、配列番号7、13、9、14、11、および15(セット3)、ならびに配列番号7~12および配列番号16および17(セット4)によって同定される、セット1、セット2、セット3、およびセット4からなる群から選択される。実施形態では、組中のそれぞれのプライマーを1つまたは複数の比色指示薬で標識する。実施形態では、増幅された標的核酸の検出のための1つまたは複数の試薬は、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、ローダミンX(ROX)、ヘキサクロロフルオレセイン(HEX)、6-カルボキシフルオレセイン(FAM)、SYTO 9、SYTO 82、SYTO 16、SYTO 13、SYTO 64、Boxto、Miami Green、Miami Yellow、Miami Orange、YOPRO 1、SYTO 62、TOPRO 3、SYTO 60、Chai Green(商標)、EvaGreen、POPO 3、NG-DCS 1、SYBR Green I、SYBR Green II、BOBO 3、TOTO 3、Pico 488、TOTO 1、およびSYTO 24からなる群から選択される1つまたは複数の蛍光DNA指示薬を含む。
【0119】
[128]特定の実施形態では、本開示は、i)生体試料をRNase阻害剤で処理するステップと、ii)生体試料を、同時の限外濾過および濃縮を含んで清澄化した試料を生成する清澄化に供するステップと、iii)清澄化した試料の第1の部分を、試料を溶解緩衝液で処理するステップを含む化学的溶解、続いて、試料を95℃まで3分間加熱するステップを含む熱処理に供するステップと、iv)溶解試料を、逆転写およびループ媒介等温核酸増幅反応(RT-LAMP)に供して、SARS-CoV-2ウイルスRNAのNおよびM遺伝子からなる群から選択される第1の標的核酸を増幅させるステップであって、RT-LAMPが、65℃または67℃の一定温度で、4または6個のオリゴヌクレオチドプライマーの組、デオキシリボヌクレオチド三リン酸(dNTP)、マグネシウムイオン供給源(たとえばMgCl2またはMgSO4)、増幅された標的核酸を検出するための1つまたは複数の試薬、逆転写酵素、およびDNAポリメラーゼを含む反応混合物中で起こる、ステップと、v)1つまたは複数の蛍光または比色指示薬を使用して、増幅された標的核酸を検出するステップであって、等温核酸増幅反応は増幅された存在する標的核酸の検出を約10~約20分以内に可能とし、増幅された標的核酸の検出が、生体試料中におけるSARS-CoV-2の存在を示す、ステップとを含む、対象から得られた生体試料中におけるSARS-CoV-2の迅速検出のための方法を提供する。
【0120】
[129]一部の実施形態では、SARS-CoV-2の迅速検出のための方法は、清澄化した試料の第2の部分を第2の等温核酸増幅反応に供して第2の標的核酸を増幅させるステップと、増幅された第2の標的核酸を検出するステップとをさらに含み得る。他の実施形態では、SARS-CoV-2の迅速検出のための方法は、清澄化した試料の第3の部分を第3の等温核酸増幅反応に供して第3の標的核酸を増幅させるステップと、増幅された第3の標的核酸を検出するステップとをさらに含み得る。
【0121】
[130]追加の実施形態では、本開示は、試料を、同時の限外濾過および濃縮を含んで清澄化した試料を生成する清澄化ステップに供するステップと、続いて、清澄化した試料の第1の部分を逆転写およびループ媒介等温核酸増幅反応(RT-LAMP)に供して、SARS-CoV-2ウイルスRNAのNおよびM遺伝子からなる群から選択される標的核酸を増幅させるステップと、増幅された標的核酸を検出するステップとを含み、増幅された標的核酸の検出が、生体試料中におけるSARS-CoV-2の存在を示す、対象から得られた生体試料中においてSARS-CoV-2を検出するための方法を提供する。
【0122】
[131]本明細書に記載する方法のうちの任意のものの実施形態に従って、4または6個のオリゴヌクレオチドプライマーの組は、配列番号1~6(セット1)、配列番号7~12(セット2)、配列番号7、13、9、14、11、および15(セット3)、ならびに配列番号7~12、16、および17(セット4)によって同定される、セット1、セット2、セット3、およびセット4からなる群から選択される。実施形態では、本方法は、清澄化した試料の第2の部分を第2の等温核酸増幅反応に供して第2の標的核酸を増幅させるステップと、増幅された第2の標的核酸を検出するステップとをさらに含む。実施形態では、第1および第2の等温核酸増幅反応は、セット1、セット2、セット3、およびセット4からなる群から選択される異なるプライマーの組を用いて行う。
【0123】
[132]さらなる実施形態は、本発明をその主要な態様のうちの一部において例示するが、いかなる様式でもその範囲を限定することを意図しない、以下の実施例から明らかとなるであろう。
【実施例】
【0124】
実施例1:プライマー設計。
【0125】
[133]プライマー設計は、LAMPおよびRT-LAMPアッセイの重大な態様であり、アッセイの感度および特異性、ならびにアッセイの頑健性および速度に重要である。プライマー設計は、LAMPおよびRT-LAMPアッセイの感度および特異性に影響を与える最も大きな要因の1つである。1つのチューブ中に6個のプライマーが非常に高濃度で存在することは、非特異的な増幅の危険性の増加を意味し、これは注意深いプライマー設計および推定上のプライマーセットのスクリーニングによって排除しなければならない。LAMPプライマー設計を支援するために限定的なソフトウェアの選択肢が存在するが、これらのプログラムは単独では頑強なプライマー設計をもたらさない。特に臨床アッセイのための、適切なプライマーの組に到達するために、多くの様々なプライマーセットを経験的に試験し、最良の性能のプライマーを同定することが必要である。ここでは、オープンリーディングフレーム1a、1b、M、およびNを含むSARS-CoV-2のRNAゲノム全体にわたる様々な標的遺伝子に対して、16個の異なるRT-LAMPプライマーセットを設計および試験した。合成SARS-CoV-2全ゲノムRNAを使用してプライマーセットを系統的に試験した。プライマーセットの、その対応する標的領域を増幅させる能力を、サイクル閾値(「Ct」)値を増幅速度の指標として使用して評価した。Ct値は、増幅された核酸産物の検出可能なシグナルがバックグラウンドよりも有意に高い、最初のサイクル数を表す。典型的には、これは蛍光シグナルである。また、他の呼吸器ウイルスを反応における鋳型DNAとして使用した非特異的な増幅の量を評価することによって、プライマーセットを、感度および標的核酸に対するその特異性の指標であるその検出限界(LOD)を決定するためにも評価した。本発明者らは、上位の性能のプライマーセットを、少なくとも10個のコピーの合成SARS-CoV-2 RNA/マイクロリットルを検出することができるものとして同定した。上位の性能のプライマーセットを、増幅速度を増加させ、交差反応性を低下させるために当該セットの1つまたは複数のプライマーを再設計することによって、さらに最適化した。上位の性能のプライマーセットをセット1、2、および3と命名し、上記表1中に記載する。
【0126】
[134]
図1A~
図1Bは、経験的に試験した16個の異なるプライマーセットの代表的な増幅プロファイルを示す。パネルAおよびBでは、矢印はそれぞれ上位の性能のプライマーセット1および2を示す。
図1Cは、プライマーセット2の最適化によって設計したプライマーセット3の増幅プロファイルを示す。反応は、65℃で1時間、合成SARS-CoV-2全ゲノムRNAを鋳型として、約100個のコピー/マイクロリットルの最終濃度で使用して行った。蛍光DNA挿入色素を使用して増幅されたDNAを検出した。
【0127】
[135]SARS-CoV-2に対するRT-LAMPプライマーの特異性を、呼吸器ウイルスのパネルに対して試験することによって特徴づけた。これらは、インフルエンザA H1N1(A/NY/02/09)、パラインフルエンザ4A型、パラインフルエンザ4B型、ライノウイルス(1A)、アデノウイルス3型、インフルエンザA H1(A/ニューカレドニア/20/99)、呼吸器合胞体ウイルスA、パラインフルエンザ1型、コロナウイルスNL63、肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)(M129)、インフルエンザA H3(A/ブリズベン/10/07)、呼吸器合胞体ウイルスB(CH93(18)-18)、コロナウイルスOC43、コロナウイルスHKU-1、インフルエンザB(B/フロリダ/02/06)、パラインフルエンザ3型、ヒトメタニューモウイルス(ペルー6-2003)、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)(フィラデルフィア)、パラインフルエンザ2型、コロナウイルス229E、ヒトボカウイルス肺炎クラミジア(Chlamydophila pneumoniae)(CWL-029)を含んでいた。
図2A~
図2Bに示すように、プライマーセット1および3はそれぞれ、SARS-CoV-2に対する特異的増幅を実証し、他の呼吸器ウイルスに対する交差反応性はわずかであった。
【0128】
実施例2:RT-LAMPによる不活性化SARS-Cov-2ウイルス粒子の検出限界(LoD)。
【0129】
[136]本発明者らは、唾液試料中におけるRNaseの存在により、標的RNAの増幅の成功のためにはRNase阻害剤の使用を要すると最初に決定した。本発明者らは、RNase阻害剤の添加が、疑似唾液試料中、1時間まで、室温で、RNAを完全に保存することができると決定した。疑似唾液は、様々な濃度の不活性化SARS-Cov-2ビリオンを添加した、唾液およびRNase阻害剤を含有する通常生理食塩水からなる。RT-LAMP試薬に直接加えた、RNase阻害剤を含有する疑似唾液を使用した直接アッセイは、100個のコピーのRNAまたはウイルス粒子/マイクロリットルを使用して、合成RNAまたは不活性化SARS-CoV-2ウイルス粒子のいずれかを、LOD95%で検出することができた。LOD95%は、試験の95%がアッセイによって正確に検出される、単位体積あたり(または反応あたり)のゲノムRNA(またはウイルス粒子)のコピー数として定義される。試料の凍結または熱処理は回避した。RNA鋳型を単回使用のチューブ内に分取し(たとえば1000個のコピー/μl)、使用時まで-80℃に保った。RT-LAMP試薬は、適切な緩衝液、たとえば生理食塩水、上述のプライマーセット1、2、または3から選択されるオリゴヌクレオチドプライマーの組、デオキシリボヌクレオチド三リン酸(dNTP)、マグネシウムイオン供給源(たとえばMgCl2またはMgSO4)、DNA挿入色素(たとえばChai Green(商標)またはEva Green(商標))、逆転写酵素、およびDNAポリメラーゼを含んでいた。
【0130】
[137]それぞれのRT-LAMP反応は、RT-LAMP試薬、および事前に決定した量のウイルス粒子(50または100個のビリオン/マイクロリットルのどちらか)を含有する約1%の疑似唾液試料を含有していた。反応を65℃で1時間インキュベートした。シグナルをFITCチャネルにおいてモニタリングして、挿入DNA色素の取り込みを介して増幅された生成物を検出した。陽性試料について、Cqまでの時間は15~25分間であった。Cqは、最大半減シグナルに到達するために必要な時間である。陰性試料中におけるシグナルは60分後に現れたが、時折、シグナルは30分後に生じた。結果を以下の表2および
図3中に要約する。これらの結果は、このプロトコルのLoD95%が約100個のコピー/ulであることを示す。アッセイは、ウイルス量=50個のコピー/ulで、陽性試料の75%を依然として正しく検出することができる。
【0131】
【表2】
唾液試料採取:
[138]RNase阻害剤を唾液試料に、採取後にできるだけ早く加えるべきである。唾液試料は、RNase阻害剤を添加した生理食塩水、水、またはウイルス移動培地中に採取することができる。RT-LAMP反応の前、試料は、4℃で保存してよく、室温で1時間まで安定であるが、理想的には、試料採取からRT-LAMPアッセイまでの時間は最小限にするべきである。
【0132】
実施例3:溶解ステップの追加でLODが改善
[139]不活性化SARS-CoV-2ウイルス粒子を使用してLODを改善させるためのアッセイのさらなる洗練において、本発明者らは、別の溶解ステップを加えることによって、LODを5~10倍(10~20個のビリオン/μl)低下させることができると決定した。最適な溶解は、RNase阻害剤(たとえばRiboGuard(商標))を含有する溶解緩衝液(たとえばQuickExtract(商標)DNA抽出緩衝液)を試料に加え、続いて、95℃で3分間の熱処理で起こると決定された。その後、溶解試料を、以前の実施例において記載したものと同じ試薬を含有していたRT-LAMP反応に直接加えた。結果を以下の表3および
図4中に要約する。これらの結果は、この改変されたプロトコルのLoD95%を約20個のコピー/ulまで改善させることができることを示す。プロトコルは、ウイルス量=10個のコピー/ulで、陽性試料の75%を依然として正しく検出することができる。
【0133】
【表3】
実施例4:遠心濾過ステップの追加でLODがさらに改善
[140]LAMP、RT-LAMP、RPAなどの等温DNA/RNA増幅方法が、研究室およびPOC設定の両方において、様々な種類の試料(血液、唾液、組織、環境学的試料など)中における様々な病原体の検出のために以前に使用されている(Shi,Liら、2011、PanekおよびFrac、2019、Silva,Paivaら、2019)。しかし、これらの方法による良好な感度を達成するためには、PCRに基づく手法と同様に、核酸(RNA/DNA)精製ステップが必要である(すなわち、シリカビーズまたはカラムに基づく精製、フェノール-クロロホルム抽出、エタノール沈殿など)。精製ステップはしばしば、研究室設定において訓練を受けた人員で行う必要があるため、POCアッセイはしばしば、操作の容易性のために感度を犠牲にする。
【0134】
[141]本RT-LAMPアッセイの感度をさらに増加させ、RT-qPCRアッセイ(分子診断学的アッセイの至適基準)と同等にするために、出発物質をさらに精製する必要があった。ほとんどの高感度の研究室アッセイでは、高感度を達成するために、RNA精製を、そのワークフロー中の重大なステップとして使用する。RNA精製は、細胞性不純物、ならびにRNAを分解し得るおよび/またはアッセイの酵素反応を阻害し得る阻害剤、たとえば、RT-LAMPおよびRT-qPCRアッセイにおける逆転写酵素およびDNAポリメラーゼ反応の除去を可能にする。しかし、シリカビーズおよびカラムまたはフェノール-クロロホルム抽出を使用した最先端のRNA精製プロトコルは、膨大な実践時間、専門知識、および高価な試薬を要する。これらのワークフローは研究室設定において訓練を受けた人員によって行う必要があり、拡大するまたはPOC設定において使用するためには困難な課題である。
【0135】
[142]これらの課題に取り組み、本発明者らのアッセイの感度を増加させるために、本発明者らは、標準のRNA抽出/精製ステップを、開始生体試料中の不純物と比較したビリオンの物理特性の差異を活用することによって、ウイルス粒子を捕捉するように設計された新しいステップで置き換えた。様々な戦略を試験した後、ウイルス粒子を有効に精製および濃縮するために、空気圧および遠心力による同時限外濾過を使用した(たとえば200MWCOのフィルターを使用した)方法に到達した。驚くべきことに、試料を化学的溶解および95℃の熱処理に供するステップの前に、同時の限外濾過および遠心分離のこのステップを行うことで、標準のRNA抽出ステップを必要とせずに、アッセイの感度が著しく改善された。この最適化されたアッセイは、1~5個のコピー/μlのLOD(95%)で行われ、これは、実施例3のアッセイと比較して約4~10倍の低下を印す。
図5はこれらの結果を例示し、遠心濾過がRT-LAMPを用いた高感度のSARS-CoV-2の検出を可能にすることを示す。
【0136】
実施例5:例示的臨床プロトコル
[143]実施例4に記載のアッセイを使用した臨床プロトコルの例示的な一実施形態では、デスクトップqPCR装置と適合性のある27個の8本チューブPCR条片に、上述のようにRT-LAMP試薬を満たす。それぞれのPCR条片は単一の患者試料のためを意図する。2つの異なるRT-LAMP反応を使用し、異なるプライマーセットをそれぞれ含有する。これは、臨床的使用のために高い信頼度の頑強な結果を提供することを意図する。したがって、それぞれの条片中の最初の4本のチューブは、それぞれのRT-LAMP反応について1つずつの、2つの陽性対照および2つの陰性対照を含有する。残りの4本のチューブは、患者試料用に確保されている2つのRT-LAMP反応のそれぞれの二つ組を含有し得る。実際には、行う必要があるステップが、患者の試料採取および前処理ステップ、続いて、患者試料を患者試料チューブのそれぞれ内に分取するステップだけとなるように、PCR条片は、所要のRT-LAMP試薬および対照をチューブに事前にロードして提供し得る。
【0137】
【表4】
試料採取および前処理
[144]試料は、採取スワブを、1mlの生理食塩水およびRNase阻害剤を含有する第1の採取チューブ内に浸漬することによって、生理食塩水中に採取する。その後、生理食塩水試料のアリコート、たとえば500μLを、第2の採取チューブ、たとえばAmiconまたはVivaspin遠心フィルターアセンブリ、100kDaのMWCO中に含有されるフィルターアセンブリ上に加える。試料およびフィルターアセンブリを含有する第2の採取チューブを、たとえば14,000×gまたは15,000×gで20分間、遠心分離に供する。遠心分離の後、約10~15μLの試料濃縮物がフィルターアセンブリ中に保持され、残りの流通液を廃棄する。試料濃縮物を、溶解緩衝液を含有する調製PCRチューブ内に、たとえば4μlの濃縮物を16μlの溶解緩衝液内に分取する。溶解緩衝液は、市販の緩衝液または標準の細胞溶解緩衝液、たとえば、50mMのトリスHCl、pH7.4などの適切なトリス緩衝液中に、1%のTriton-Xなどの界面活性剤および4Mの塩酸グアニジンを含有するものであり得る。また、他の同様のTriton(商標)洗剤、またはTween20もしくはTween80などのTween(商標)洗剤、またはn-ドデシル-β-D-マルトシドなどのマルトシドも使用し得る。同様に、トリスに加えて、他の適切な緩衝剤としては、CAPS、HEPES、MOPS、PIPES、TAPS、TE、TES、またはトリシンを挙げ得る。任意選択で、追加のRNase阻害剤を溶解緩衝液に加え得る。その後、試料を、たとえば熱サイクラーまたは熱ブロックを使用して、95℃で3分間の熱処理に供する。熱処理の直後に、試料のアリコート、たとえば5μLをRT-LAMP試薬に加える、または4℃で保存する。RT-LAMPを65℃で90サイクル(1分間/サイクル)行う。
【0138】
[145]プライマーセット1、2、または3を使用して、研究室設定下で、陽性はCq=10~30分間で増幅され、陰性はより後の時間、30分間より長くまたは50分間より長くのどちらかで増幅された。また、RT-LAMP反応を阻害する追加の物質を含有し得る患者試料も、さらなる時間を要し得る。たとえば、患者試料は、陽性試験には約30~50分間を要し得る一方で、陰性試験は90分間より長い時間でシグナルを生じるであろう。
【0139】
実施例6:鼻腔スワブ試料のための例示的なプロトコルおよびキット
[146]実施形態では、本開示は、鼻腔スワブからの試料の採取に適したキットを提供する。一実施形態では、キットは、反応チューブと、SARS-CoV-2 RNAの多重鎖の検出に必要な試薬およびベータ-アクチン(ActB)RNAなどの内部対照ヒトRNAを含む凍結乾燥試薬とを含む、チューブアセンブリを含有する。内部対照は、試料中の標的SARS-CoV-2 RNAの存在または非存在とは独立して、採取した鼻腔検体中におけるヒト細胞物質の存在を確認し、さらに、正しいアッセイの実行を管理する。
【0140】
[147]実施形態では、凍結乾燥試薬は、SARS-CoV-2 RNAの膜タンパク質(M)領域およびActB(ベータアクチン)RNAなどの内部対照ヒトRNAの逆転写およびDNA増幅のためのプライマーと、任意選択で、緩衝剤、非イオン性界面活性剤、ならびにKClおよび硫酸アンモニウムなどの塩のうちの1つまたは複数とを含む。実施形態では、凍結乾燥試薬は、逆転写酵素、DNAポリメラーゼ、および/またはRNase阻害剤をさらに含む。実施形態では、プライマーは、SARS-CoV-2 RNAのM領域に向けられた4~6個のプライマーの組、およびDARQプライマーなどの少なくとも1つの検出プライマーを含む。実施形態では、プライマーは、表1に記載のプライマーセット4を含む。実施形態では、凍結乾燥試薬は、蛍光発生DNA挿入色素、たとえば、SYBR greenもしくはChai Green(商標)、またはSYBR Green IおよびIIなどの同様の色素、SYBR Safe、SYBR Gold、Eva Green、臭化エチジウム、オキサゾール黄色系シアニン色素(たとえば、YOYO-1、DiYO-1、TOTO-1、DiTO-1、TOTO-3)、Pico Green、SYTO 9、SYTO 13、SYTO 16、SYTO 60、SYTO 62、SYTO 64、SYTO 82、Boxto、Miami Green、Miami Yellow、あるいはMiami Orangeをさらに含んで、膜タンパク質(M)などのSARS-CoV-2 RNAの標的領域、および/またはヒトActB(ベータアクチン)RNAなどの内部対照RNAの逆転写およびDNA増幅が成功した際に蛍光シグナルを生じる。DARQプライマーおよび蛍光発生DNA挿入色素の両方を含む実施形態によれば、DARQおよびDNA挿入色素の蛍光波長は、両方のシグナルの同時検出が反応中で可能であるように、異なる。蛍光発生DNA挿入色素は、アッセイ中の試薬の完全性が損なわれていないことを確実にするための測度として役割を果たす。他の実施形態では、凍結乾燥試薬混合物は、緩衝剤、塩(たとえばKClおよび(NH4)2SO4)、ならびに非イオン性界面活性剤(たとえばTween20)をさらに含む。実施形態では、凍結乾燥試薬混合物は、RNase阻害剤、血清アルブミン(たとえばウシ血清アルブミン「BSA」)、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)およびその塩、たとえばTCEP-HClなどの還元剤、ならびに熱不安定性ウラシル-DNAグリコシラーゼ(UDG)のうちの1つまたは複数をさらに含む。
【0141】
[148]キットはまた、任意選択で、採取スワブ、試料の溶出および溶解のための緩衝液を含有する採取チューブ、ならびにホールピペットのうちの1つまたは複数もさらに含有し得る。一実施形態では、緩衝液は、洗剤、緩衝液、およびPVSAなどのRNase阻害剤、ならびにヌクレアーゼを含まない水を含む。例示的なキットを
図6に例示する。
【0142】
[149]以下に、試料の採取および処理のための例示的なワークフローを例示する。
【0143】
[150]前鼻腔(AN)スワブ試料採取:滅菌スワブを一方の鼻孔内に抵抗を感じるまで挿入し、鼻孔の側壁に約10秒間こすりつける。同じプロセスを他方の鼻孔で繰り返す(これは、自己採取または医療従事者の施行のどちらであることもできる)。
【0144】
[151]試料の溶出:スワブを緩衝液中で回転させることによって、たとえば30回回転させることによって、ANスワブ試料を溶出緩衝液中で溶出させる。
【0145】
[152]試料の移動:単回使用ホールピペットを使用して、75~200uL、たとえば約100uLの溶出試料を、RT-LAMPを行うための試薬の凍結乾燥混合物と、RT-LAMP反応中に試験管内の溶液を混合するために使用するステンレス鋼ボールベアリングとを含有するチューブアセンブリに移す。
【0146】
[153]RT-LAMP+シグナルの読み取り:試験管を、67℃で25~30分間の反応のために適切な機器内に挿入する。反応中、FAMおよびHEXチャネル中の蛍光シグナルを20秒ごとに一回測定する。
【0147】
実施例7:プライマーセット4の結果
[154]以下の実施例は、SARS-CoV-2 RNAの膜タンパク質(M)領域を第1の標的として、およびヒトベータアクチン(ActB)RNAを第2の標的として用いた、単一の反応混合物中における2つの異なる核酸標的の増幅および検出の成功を実証する。本技法では、DNA挿入色素、この事例ではChai Green(商標)と、DARQプライマーと呼ばれるプライマーの増幅した標的の検出のための、鎖分離の際に蛍光シグナルを発するクエンチャー-フルオロフォア二重鎖領域を含有するように適応させた検出プライマーとの両方を利用した。DNA挿入色素の蛍光シグナルの増加は、2つの異なる核酸標的のうちのどちらかまたは両方が増幅されたことを示す一方で、DARQプライマーは、SARS-CoV-2 RNAの膜タンパク質(M)領域などの2つの核酸標的のうちの一方が増幅された場合にのみ、シグナルを生じるように設計されている。これらの実験では、DARQプライマーおよびDNA挿入色素は、その蛍光シグナルを異なる波長で発し、2つのシグナルが別々に検出されることを可能にする。
【0148】
[155]鼻腔スワブ試料ありまたはなしの、陰性および陽性試料の増幅曲線を、
図7に示す。鼻腔スワブ試料なしでは、1個のウイルスコピー/μLの試験において見られる、速いFAMチャネル増幅(T
d<26分)は、SARS-CoV-2ウイルスの存在を表し、遅いFAMチャネル増幅(T
d>26分)は偽の増幅を示し、無視される(
図7A)。鼻腔スワブ試料なしでは、1個のウイルスコピー/μLの試験において見られる、速いHEXチャネル増幅(T
d<26分)は、SARS-CoV-2ウイルスの存在を表す一方で、遅いHEXチャネル増幅(T
d>26分)は偽の増幅を示し、無視される(
図7B)。鼻腔スワブ試料なしでは、26分以内のFAMチャネルシグナルおよびHEXチャネルシグナルの両方の非存在は、試料中のウイルスの非存在を示す。鼻腔スワブ試料ありでは、速いFAMチャネル増幅(T
d<26分)は、ベータアクチンおよび/またはSARS-CoV-2ウイルスの全体的な存在を表す(
図7C)。鼻腔スワブ試料ありでは、1個のウイルスコピー/μLの試験において見られる、速いHEXチャネル増幅(T
d<26分)は、SARS-CoV-2ウイルスの存在を表し、速いFAMチャネル増幅(T
d<26分)およびHEXチャネル増幅が遅いまたはないことは、検出可能なSARS-CoV-2ウイルスがない鼻腔スワブ試料を示す(
図7D)。
【0149】
[156]要約すると、HEXが、増幅されたウイルスを検出し、FAMが、ウイルスまたは内部対照であるベータ-アクチン(ActB)のどちらかである可能性がある増幅されたDNAを検出する場合、以下がアッセイ結果の解釈を記載する:
HEX+FAM+:ウイルスの存在を示す、
HEX-FAM+:ウイルスが存在しないことを示す、
HEX-FAM-:不確定、アッセイを再実行するべきである、および
HEX+FAM-:不確定、アッセイを再実行するべきである。
【0150】
[157]
図8に示す検出限界(LOD)研究は、アッセイのLODが3000個のウイルスコピー/スワブであることを示す。範囲発見実験を、1500、3000、および6000個のウイルスコピー/スワブについて行った。1500個のコピー/スワブの試料で1つ、および3000個のコピー/スワブの試料で1つが、HEXチャネルT
d>26分を有し、これは、本発明者らの試験アルゴリズムによって「陰性」と呼ばれる。23個のうち22個の複製組が本発明者らの試験アルゴリズムによって「陽性」と正しく呼ばれた後に、3000個のコピー/スワブがLODであると決定された(>95%、閾値は米国食品医薬品局によって設定)。
【0151】
[158]交差反応性。潜在的に交差反応性のある生物を用いて試験を実行した。それぞれの生物を表5に列挙した濃度で、陰性臨床的鼻腔マトリックス中で調製し、50μLをピペットで新しい未使用の鼻腔スワブ上に載せた。それぞれの生物を3回繰り返して試験した。どの生物も交差反応性があると判明しなかった。
【0152】
【0153】
【表5-2】
[159]妨害物質。それぞれの妨害物質について3つの陽性および3つの陰性の複製組を用いて試験を実行した。それぞれの物質を表6に列挙した濃度で、陰性臨床的鼻腔マトリックス中で調製し、50μLをピペットで新しい未使用の鼻腔スワブ上に載せた。陽性複製組を調製するために、不活性化SARS-CoV-2ウイルス粒子を、妨害物質含有陰性臨床的マトリックス中に添加し、50μLの添加した臨床的マトリックスをピペットで新しい未使用の鼻腔スワブ上に載せた。試験が無効な結果を返した場合、試験を新しい試験キットで繰り返した。試験が無効な結果を返し続けた場合、妨害物質を希釈し、試験プロセスを繰り返した。どの物質も試験した濃度で異常な結果を生じなかった。
【0154】
【表6】
均等物
[160]当業者は、日常的な実験以上のことを使用せずに、本明細書中に記載する本発明の具体的な実施形態の多くの均等物を理解する、または確認することができるであろう。そのような均等物は、以下の特許請求の範囲によって包含されることを意図する。
【0155】
[161]本明細書中で言及するすべての参考文献は、それぞれの個々の出版物または特許または特許出願が具体的かつ個々に、すべての目的のためにその全体で参照により組み込まれていると示されている場合と同程度に、その全体でかつすべての目的のために、本明細書中に参照により組み込まれている。
【0156】
[162]本発明は、本明細書中に記載の具体的な実施形態によって範囲が限定されるべきでない。実際、本明細書中に記載のものに加えて、本発明の様々な改変形態が、前述の説明および添付の図から当業者に明らかとなるであろう。そのような改変形態は、添付の特許請求の範囲の範囲内にあることを意図する。
【配列表】
【国際調査報告】