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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-19
(54)【発明の名称】膜式CO2分離プロセス
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/22 20060101AFI20240112BHJP
   B01D 69/02 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
B01D53/22
B01D69/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022568787
(86)(22)【出願日】2021-05-12
(85)【翻訳文提出日】2023-01-05
(86)【国際出願番号】 US2021032020
(87)【国際公開番号】W WO2021231591
(87)【国際公開日】2021-11-18
(31)【優先権主張番号】63/025,699
(32)【優先日】2020-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/315,902
(32)【優先日】2021-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515116526
【氏名又は名称】メンブレン テクノロジー アンド リサーチ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】MEMBRANE TECHNOLOGY AND RESEARCH, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベイカー, リチャード
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA41
4D006JA53Z
4D006KA02
4D006KA03
4D006KA64
4D006KA71
4D006KB30
4D006KD30
4D006KE07R
4D006KE08R
4D006KE12R
4D006KE13R
4D006KE16R
4D006MA07
4D006MB04
4D006MC45
4D006MC54
4D006MC81
4D006PA02
4D006PB19
4D006PB63
4D006PB64
4D006PB65
4D006PC80
(57)【要約】
【解決手段】本明細書には、煙道ガスからCOを分離するための膜プロセスが記載されている。例示的なプロセスは、COおよびHOに対して透過性の膜を横切って煙道ガスを含む流体の流れを通過させ、煙道ガスよりも少ないCOを有する膜の供給側から処理済みガスを回収し、COとHOからなる膜の透過側から透過物を除去することを含む。好適には、透過物は大気圧未満の新空圧で回収される。その後、透過物は冷却され、透過物からHOの少なくとも一部が除去され、より少量のHOが除去され、COに富む透過物が形成される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
煙道ガスからCOを分離するための膜プロセスであって、
COおよびHOに対して透過性の膜を横切って煙道ガスを含む流体流を通過させる工程であって;
処理済ガスを前記膜の供給側から回収する工程であって、前記処理済ガスは前記煙道ガスより少ないCOを有し;
0.1から0.4barの間の減圧下で前記膜の透過側から透過物を回収する工程であって、前記透過物はCOおよびHOを含み;および
前記透過物からHOの少なくとも一部を除去し、より少量のHO枯渇CO富化透過物を形成するために、前記透過物を冷却する工程であって、少なくとも大気圧までガス圧を上昇させるために真空ポンプを用いること;
を含む、煙道ガスからCOを分離するための膜プロセス。
【請求項2】
前記膜を横切った前記流体流が、その飽和濃度の少なくとも70%の水を含む、請求項1に記載の膜プロセス。
【請求項3】
前記膜を横切った前記流体流と前記冷却されたHO枯渇CO富化透過物との間の前記温度差が少なくとも40℃である、請求項1または2に記載の膜プロセス。
【請求項4】
さらに前記膜を横切った前記流体流が前記煙道ガスおよび前記水を含むように、前記膜を前記流体流が横切る前に前記煙道ガスに前記HOを添加することを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の膜プロセス。
【請求項5】
前記煙道ガスへのHOの添加が、前記煙道ガスを含む前記流体流が前記膜を通過する前に、直接接触冷却器を使用して前記煙道ガスにHOを添加することを含む、請求項4に記載の膜プロセス。
【請求項6】
前記直接接触冷却器が、前記煙道ガスの温度を調整する、請求項5に記載の膜プロセス。
【請求項7】
さらに前記煙道ガスを含む前記流体流が前記膜を横切る前に、0.8から1.5barの圧力にすることを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の膜プロセス。
【請求項8】
さらに前記煙道ガスを含む前記流体流が前記膜を横切る前に、前記流体流を50℃より高い温度にすることを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の膜プロセス。
【請求項9】
さらに前記煙道ガスを含む前記流体流が前記膜を横切る前に、約50℃から約80℃の範囲の温度にすることを含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の膜プロセス。
【請求項10】
さらに前記煙道ガスを含む前記流体流が、10mol%を超える水蒸気を含むようにすることを含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の膜プロセス。
【請求項11】
前記煙道ガスを含む前記流体流をその飽和水濃度の70%より多くすることを含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の膜プロセス。
【請求項12】
前記膜が、前記プロセスの動作条件で測定された、2より大きいHO/CO選択性を有する、請求項1~11のいずれか1項に記載の膜プロセス。
【請求項13】
前記膜が、前記プロセスの動作条件で測定された、10より大きいCO/N選択性を有する、請求項1~12のいずれか1項に記載の膜プロセス。
【請求項14】
前記膜プロセスが、前記煙道ガスのCOの少なくとも50%を除去する、請求項1~13のいずれか1項に記載の膜プロセス。
【請求項15】
前記膜プロセスが、前記煙道ガスのCOの50%から80%を除去する、請求項1~14のいずれか1項に記載の膜プロセス。
【請求項16】
前記透過物を冷却する工程が、前記透過物を5℃から30℃までの範囲内の温度に冷却する工程を含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の膜プロセス。
【請求項17】
前記水枯渇透過物が、35%を超えるCO濃度を有する、請求項1~16のいずれか1項に記載の膜プロセス。
【請求項18】
煙道ガスからCOを分離するためのシステムであって、
前記煙道ガスを含む流体流が膜を通過できるように、前記煙道ガス源に流体的に接続されるように構成された膜であって、前記膜を通過する前記流体流からCOおよびHOを分離して、処理済の流体および透過物の別々の流れを形成するように構成された膜;および
前記透過物を受け取るために前記膜に流体的に接続された濃縮器であって、前記透過物のHOを濃縮し、濃縮したHOおよびHO枯渇透過物の個別の流れを形成するように構成される前記濃縮器、とを含むシステム。
【請求項19】
前記煙道ガスが前記膜を通過する前に前記煙道ガスにHOを添加するように構成された前処理ユニットをさらに備える、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記前処理ユニットは、直接接触冷却器を含む、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
さらに前記濃縮器から前記HO枯渇透過物を吸引するように構成された真空ポンプを備える、請求項18または19に記載のシステム。
【請求項22】
煙道ガス排出流からCOを分離するための膜プロセスであって、
(i)前記煙道ガスの圧力を0.8から1.5barに、かつ温度を50℃より高くし、10mol%を超える水蒸気を含むようにする工程;
(ii)工程(i)からの前記煙道ガスが、水およびCOに対する透過性の膜を横切る工程であって、前記膜は、前記プロセスの動作条件で測定したHO/CO選択性が2より大きく、かつCO/N選択性が10より大きく;
(iii)工程(ii)の前記膜の供給側から、前記ガス中のCO含有量の少なくとも50%が除去された枯渇処理済煙道ガス流を回収する工程;
(iv)工程(ii)の前記膜の透過側から、0.1から0.4barの圧力で、COおよびHOに富む透過ガスを除去する工程;
(v)工程(iv)からの前記透過ガスを5~30℃の温度に冷却して、前記ガス中のHO含有量の一部を凝縮させ、前記透過ガスのHO濃度を低下させて、水枯渇透過ガスを生成する工程;
(vi)前記水枯渇透過ガス流から前記濃縮水を分離する工程;および
(vii)真空ポンプを用いて、工程(v)からの前記水枯渇透過ガスを大気圧以上にする工程、とを含む膜プロセス。
【請求項23】
前記膜プロセスが、前記膜供給流のCO含有量の50~80%を除去する、請求項22に記載の膜プロセス。
【請求項24】
前記膜ユニットへの前記供給ガスが50~80℃の間の温度を有する、請求項22に記載の膜プロセス。
【請求項25】
前記膜供給ガスの水蒸気量が、前記ガスの水飽和濃度の70~100%である、請求項22に記載の膜プロセス。
【請求項26】
工程(i)において、前記膜供給ガス流の前記温度および水濃度を調整するために、直接接触冷却器が使用される、請求項22に記載の膜プロセス。
【請求項27】
前記煙道ガス排気流が、石炭発電所、天然ガス発電所、天然ガスボイラー、セメント工場、製鉄所または石油精製所によって生成される、請求項22に記載の膜プロセス。
【請求項28】
工程(i)の前記供給ガスおよび工程(iv)のCOおよびHOに富む透過ガスの前記水濃度の差が、少なくとも2倍である、請求項22に記載の膜プロセス。
【請求項29】
工程(ii)において前記膜を横切った前記煙道ガスと工程(iv)において冷却された前記透過ガスとの前記温度差が40℃より大きい、請求項22に記載の膜プロセス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素含有燃料の燃焼によって生じる排出ガスから二酸化炭素(CO)を分離することに関する。煙道ガス中にも存在する水蒸気の共透過を利用してCO分離能を高める新規な膜プロセス設計を開示する。
【背景技術】
【0002】
産業用ガス排出流からの二酸化炭素の回収は、近年非常に高い関心事である。これらのガス流は、石炭および天然ガス発電所のみならず、製鉄所、セメントや石油化学工場および石油精製所によって生成される。これらのガス流は、まとめて煙道ガスと呼ばれることが多い。煙道ガス中のCO濃度は、4から25%程度である。世界中の多くの政府機関が、このCOを分離および濃縮して95%を超えるCOを生成し、地下深くに圧縮して隔離することを目的とした研究を後援している。
【0003】
これらの分離プロセスには、膜が検討されている。分離を行うためには多段階の膜プロセスが必要であり、膜プロセスと最終処理工程(例えば、極低温濃縮)との組み合わせがしばしば提案される。このプロセスの鍵となる工程は、最初の膜分離工程であり、この工程では、排出ガス流のCO含有量の50~90%が濃縮流に分離され、COは最初の煙道ガスの濃度の3から5倍に濃縮される。最初の工程は、通常全プロセスの中で最も規模が大きく、コストが高い作業である。この最初の工程の例を用いて本発明を説明するが、本プロセスは第2工程または他の分離工程にも適用することができる。
【0004】
ガス分離膜のプロセスを簡単な形で図1(a)に示す。供給ガスが供給側の膜を横切って流れることで、ガスの一部は膜を透過する。膜の供給側から透過側の成分への流れは、膜を横切る各成分の分圧駆動力の差に比例する。膜の供給側の分圧は、nio(モル濃度nio、圧力p)であり、膜の透過側の分圧は、nil(モル濃度nil、圧力p)である。したがって、分圧駆動力は次の式で与えられる。
【0005】
【数1】
【0006】
そして、成分の透過率(J)は、次の式によって分圧駆動力と連結される。
【0007】
【数2】
【0008】
ここで、Piは、成分iの膜透過率と呼ばれる比例定数であり、lは膜の厚さである。2つの成分iとjを区別する膜の性能は、膜の選択性(αi/j)、すなわち成分iとjの透過率の比を含むいくつかの要素の関数であり、
【0009】
【数3】
【0010】
次のような膜を横切る圧力比と同様であり:
【0011】
【数4】
【0012】
膜の供給側のより高い透過性の成分のモル濃度nioである。
【0013】
これらの効果を説明する例として、図1(b)に示す分離が考えられる。この例では、供給物が膜を左から右に横切る際に、透過ガスCOのごく少量のみが供給物から除去される。つまり、膜の透過側のCO濃度は、どこもほぼ同じである。上記のように、膜透過は、膜の透過側の分圧が供給物よりも小さい場合にのみ発生する。
【0014】
【数5】
【0015】
この不等式は、次のように変換できる:
【0016】
【数6】
となり、これは、透過成分(CO)の濃縮が圧力比(供給圧力/透過圧力)よりも常に小さいことを示している。また、透過成分(CO)の濃度は次の式より大きくならない:
【0017】
【数7】
【0018】
図1(b)の例では、これは膜の選択性に関係なく、nilが50%COを超えることはないことを意味する(nio=10% COおよび
【0019】
【数8】
【0020】
)。この結果はいくつかの意味を有する。まず、透過物の少なくとも半分は低速成分(N)でなければならず、特定量の供給物を処理するために必要な膜面積を決定するのは低速成分の透過である。また、膜の選択性が高くなると、同じ量のCOを透過するために必要な膜面積が増加する。選択性が無限大の場合、低速成分は透過しないため、必要な膜面積は無限大になる。
【0021】
式(5)で与えられる最大透過濃度
【0022】
【数9】
【0023】
が100%未満であれば、膜プロセスは圧力比制限範囲内に十分あるとみなされる。この領域では、一般に圧力比の影響が顕著である。さらに、膜の選択性が圧力比より大きい場合、その差はさらに大きくなり、膜の選択性が圧力比の2から3倍より大きくなれば、さらに大きくなる。圧力比とその膜分離への影響については、Huang, et al., Journal of Membrane Science, 463, 33 (2014)で詳しく説明されている。
【0024】
図1(b)に戻り、膜のCO/N選択性が25である場合の具体例を考える。この場合、膜の選択性は圧力比の5倍であり、膜は圧力比によって制限される。この例では、供給物(1)、残留物(2)および透過物(3)の組成は次のとおりである。
【0025】
【表1】
【0026】
同じ膜を使用してよく似た分離を考えるが、今回は10%の水を含む供給物である。上記と同様に、膜はCO/N選択性が25であり、さらにHO/CO選択性が3である。水が最も透過性の高い成分であり、次にCO、Nが続く。この膜によって行われた分離は、次のような組成を有する。
【0027】
【表2】
【0028】
供給物中の水はCOよりもさらに速く透過するため、膜の透過側に水を透過させることで透過側のCOを希釈し、膜を通るCO輸送の駆動力を増加させることができる。同じ量のCOを透過するのに必要な膜面積は、乾燥供給量の60%にまで減少する。0.2barの透過物(3)は、COの濃度がわずかに低く、Nの濃度がはるかに低くなっているが、水の濃度は高くなっている。脱水プロセスで水を除去すると、残った透過物のCO濃度は52.9%となり、表1の結果よりもはるかに良好な分離が得られる。供給ガスに水を加え、透過物から水を除去することで、COは式5で表される制限を回避できる。
【0029】
本特許は、本結果を認識した我々が、煙道ガスからCOを分離するための新しいタイプの膜分離プロセスに応用した成果を示している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0030】
本明細書では、煙道ガスからCOを分離するための膜プロセスについて説明する。例示的なプロセスは、COおよびHOに対して透過性の膜を横切って煙道ガスを含む流体の流れを通過させ、煙道ガスよりも少ないCOを有する膜の供給側から処理ガスを回収し、COとHOを含む膜の透過物側から透過物を回収することを含む。透過物は冷却され、透過物から少なくとも一部のHOが除去され、より少量のHO枯渇、CO富化透過物透過物が形成される。
【0031】
一つの実施形態において、煙道ガスからCOを分離する膜プロセスは、煙道ガスを含む流体流を、COとHOを透過する膜に通すことを含む。処理されたガスは、膜の供給側から回収される。処理されたガスは、煙道ガスよりもCOが少ない。透過物は、0.1から0.4barの亜大気圧で膜の透過側から回収される。透過物はCOとHOを含む。透過物を冷却し、透過物からHOの少なくとも一部を除去し、HO枯渇、CO富化透過物が形成される。真空ポンプを使用して、ガス圧を少なくとも大気圧程度まで上昇させる。
【0032】
特定の実施形態では、膜を通過する流体流は、その飽和濃度の少なくとも70%の水を含む。
【0033】
1つ以上の実施形態において、膜を通過する流体流と冷却されたHO枯渇CO富化透過物との間の温度差は、少なくとも40℃である。
【0034】
例示的な実施形態では、膜を通過する流体流が煙道ガスおよび水を含むように、膜を通過する流体流を通過させる前に、HOが煙道ガスに加えられる。いくつかの実施形態において、前記煙道ガスにHOを添加することは、煙道ガスを含む流体流を膜に通過させる前に、直接接触冷却器を使用して煙道ガスにHOを添加することを含む。場合によっては、直接接触冷却器が煙道ガスの温度を調整する。
【0035】
特定の実施形態では、プロセスは、さらに煙道ガスを含む流体流を0.8から1.5barの圧力にしてから、流体流を膜に通過させることを含む。
【0036】
1つ以上の実施形態では、プロセスは、さらに膜を流体流が通過する前に、煙道ガスを含む流体流が50℃を超える温度にすることを含む。例示的な実施形態は、プロセスは、さらに膜を横切って流体流を通過させる前に、煙道ガスを含む流体流を約50℃から約80℃の範囲の温度にすることを含む。
【0037】
いくつかの実施形態では、プロセスは、煙道ガスを含む流体流を10mol%より大きい水蒸気を有するようにすることを含む。
【0038】
1つ以上の実施形態では、プロセスは、煙道ガスを含む流体流を、その飽和水濃度の70%を超える濃度にすることを含む。
【0039】
プロセスの例示的な実施形態において、膜は、プロセスの動作条件で測定された2より大きいHO/CO選択性、例えば、プロセスの動作条件で測定された10より大きいCO/N選択性を有している。
【0040】
1つ以上の実施形態において、膜プロセスは、煙道ガスのCOの少なくとも50%、例えば、煙道ガスのCOの約50%から約80%を除去する。
【0041】
特定の実施形態において、前記透過物の冷却は、透過物を約5℃以上、約30℃以下の範囲の温度に冷却することを含む。
【0042】
例示的な実施形態において、水枯渇透過物は、35%を超えるCO濃度を有する。
【0043】
別の態様において、煙道ガスからCOを分離するシステムは、煙道ガスを含む流体流が膜を通過できるように、煙道ガス源に流体的に接続されるように構成された膜を備える。当該膜は、膜を通過する流体流からCOとHOを分離し、処理された流体および透過物の別々の流れを形成するように構成される。濃縮器は、透過物を受け取るために膜に流体的に接続される。濃縮器は、透過液のHOを濃縮し、濃縮したHOとHO枯渇の別々の流れを形成するように構成される。
【0044】
例示的な実施形態において、システムは、煙道ガスが膜を通過する前に煙道ガスにHOを添加するように構成された前処理ユニットを備える。当該前処理ユニットは、直接接触冷却器を含むことができる。
【0045】
特定の実施形態において、システムは、濃縮器からHO枯渇透過物を引き出すように構成された真空ポンプをさらに備える。
【0046】
別の態様において、煙道ガス排気流からCOを分離するための膜プロセスは、(i)煙道ガスの圧力を0.8から1.5barに、かつ温度を50℃より高くし、10mol%を超える水蒸気を含有することを含む工程;(ii)工程(i)からの煙道ガスを、水およびCOに対する透過性の膜を横切る工程であって、前記膜は、プロセスの動作条件で測定したHO/CO選択性が2より大きく、かつCO/N選択性が10より大きいこと;(iii)工程(ii)の膜の供給側から、ガス中のCO含有量の少なくとも50%が除去された枯渇処理煙道ガス流を回収する工程;(iv)工程(ii)の膜の透過側から、0.1から0.4barの圧力で、COおよびHOに富む透過ガスを除去する工程;(v)工程(iv)からの透過ガスを5~30℃の温度に冷却して、ガス中のHO含有量の一部を凝縮させ、透過ガスのHO濃度を低下させて、水枯渇透過ガスを生成する工程;(vi)水枯渇透過ガス流から濃縮水を分離する工程;および、(vii)真空ポンプを用いて、工程(v)からの水枯渇透過ガスを大気圧以上にする工程、を含む。
【0047】
特定の例示的な実施形態において、膜プロセスは、膜供給流のCO含有量の50~80%を除去する。
【0048】
1つ以上の実施形態において、膜ユニットへの供給ガスは、50~80℃の間の温度を有する。
【0049】
膜プロセスのいくつかの実施形態において、膜供給ガスの水蒸気含有量は、ガスの水飽和濃度の70~100%である。
【0050】
特定の実施形態において、工程(i)で膜供給ガス流の温度および水濃度を調整するために直接接触冷却器が使用される。
【0051】
膜プロセスの例示的な実施形態において、煙道ガス排気流は、石炭発電所、天然ガス発電所、天然ガスボイラー、セメント工場、製鉄所または石油精製所によって生成される。
【0052】
1つ以上の実施形態において、(i)の供給ガスと(iv)のCOおよびHOに富む透過ガスの水濃度は、少なくとも係数2だけ異なる。
【0053】
1つの実施形態において、(ii)で膜を通過する煙道ガスと(iv)で冷却された透過ガスとの間の温度差は30℃を超える。
【0054】
他の態様および特徴は、以下において明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
図1A図1Aは、先行技術の膜分離プロセスの一般的なブロック図である。
図1B図1Bは、図1Aと同様のブロック図であり、1.0barで10%のCOと90%のNを含む供給ガスに対して使用される先行技術の膜分離プロセスを示す。
図2図2は、本発明のプロセスで利用される単位動作の単純なブロック図である。
図3図3は、本発明のプロセスの特定の例を示す図である。
図4図4は、分離前の膜供給ガス中の水濃度を上げることの利点を示すプロットである。
図5図5は、CO回収率がシステム性能に及ぼす影響を示すプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0056】
以降の内容では、ガス中の成分の濃度は、特に明記が無い限りモル濃度である。また、すべてのプロセス圧力は絶対barである。
【0057】
煙道ガスからのCOの分離に適用される本発明の分離プロセスを、図2のブロック図に簡単な形で示す。この図は、本発明のプロセスを4つの工程として示している。
【0058】
前処理工程
【0059】
前処理:プロセス(201)への流入ガスは、4~25%のCOを含むCO含有煙道ガスである。ガスは通常、大気圧に近い圧力で煙突に排出されるが、ガス送風機を使用してガス圧を1~1.1barに上げることができる。多くの場合、ガスは既に比較的高濃度の水を含んでおり、本発明のプロセスによってガスをそのまま処理することが可能である。しかし、適切な温度の水をガスに噴霧する直接接触式水噴霧塔を通してガスを送ることによって、ガスを制御された温度および水蒸気含有量にすることが必要な場合がある。そのような装置は、煙道ガス中に存在しうる微粒子および他の汚染物質を除去するというさらなる利点を有する。熱交換器、送風機等を含むその他のデバイスを使用して、ガスを必要な温度、圧力、および湿度を含むようにすることもできる。
【0060】
この工程(203)において、CO、N含有煙道ガスは、後に続く分離工程に適した組成、温度および圧力にされる。煙道ガス混合物は、既にいくらかの水を含んでいる可能性もあるが、追加の水(202)を加えて、必要な水蒸気、COおよびN組成を増加させることができる。この操作から出るガスは、通常、その飽和水の70~100%の間である。
【0061】
例示的な実施形態において、処理された煙道ガス(204)は、いくつかの要件を満たす。まず、ガスの温度は、膜透過物(207)中の水蒸気の有用な画分を冷却によって除去できるように、続く濃縮工程(208)よりも少なくとも30℃、好ましくは40℃高くなる。原理的には、濃縮工程(208)は任意の低温で実施することができるが、経済的に実施可能であるためには、煙道ガスからのCOの分離は低コストのプロセスでなければならない。利用可能な冷却は、通常、蒸発冷却プラントによって提供され、生成される冷却水は通常15℃未満にならない。これは、膜ユニット(204)への前処理ガスが冷却された透過ガス(210)よりも30~40℃高い場合、前処理ガスの最低温度(~20℃)は約50℃から60℃であることを意味している。
【0062】
前処理されたガスの上限温度は、ガスを加熱および加湿するためのエネルギーを供給するコスト、および高温での利用可能な膜(205)の安定性によって設定される。一般的に、処理済み煙道ガス温度の上限は90℃であり、より好ましくは70~80℃である。
【0063】
前処理された煙道ガスの水含有量は、透過物濃縮工程に供給される水蒸気リッチなガスにおいて高濃度を生成するために高くなければならない。前処理ガス(204)は、少なくとも10%の水蒸気、より好ましくは少なくとも15%の水蒸気、最も好ましくは少なくとも25重量%の水を含むべきである。50から90℃の間のガス流でこれらの水蒸気濃度を達成するということは、前処理された煙道ガスの圧力が2barを超えることはできず、通常は1.5bar未満になることを意味する。また、ガスはその飽和値の少なくとも70%、好ましくは80%または90%に近い飽和値であることが好ましい。
【0064】
膜分離工程
【0065】
前処理された煙道ガス(204)は、水蒸気およびCOに対して透過性があり、N、O、およびArに対して比較的不透過性の膜が取り付けられた膜分離工程(205)に通される。多くの高分子膜は、これらの特性を備えているが、最も適した膜は、商品名Pebax(登録商標)で販売されているポリアミドポリエーテルブロック共重合体のファミリーなどの極性ゴム材料でできている。Membrane Technology and Research社製のPolaris膜も使用することができる。このタイプの用途に現在使用されている膜のほとんどは、これらのタイプのポリマーを多層複合膜に加工したものである。膜の選択層を0.1~0.5μmのオーダーで非常に薄くすることにより、30℃で1000~2000gpu(1gpu=1×10-6cm(STP)/cm・秒・cmHg)のCO透過率を持つ膜を製造することが可能である。これらの膜の透過率は、50~80℃の温度で2倍以上に増加する。25~30℃の温度では、煙道ガスで運転される良質のCO分離膜は、25~50の範囲のCO/N選択性を持つ。より高い温度で作動される場合、透過率は増加するが、CO/N選択性は20~30の範囲に低下する可能性がある。水は小さく凝縮しやすい分子であるため、ほとんどすべての膜を通過する水の透過率は高く、COよりも大幅に高くなる。典型的な水/CO選択性は、本発明のプロセスに必要な高含水量、高供給ガス温度下で2~10の範囲である。
【0066】
有効な分離を得るためには、高透過率、高選択性の膜が必要であるが、上記の理由により、膜を横切る圧力比が少なくとも5以上であることも必要である。最大圧力は1.5から2.0barのため、我々のプロセスの膜全体に圧力差を生じさせるには、膜の透過側の圧力を0.3から0.4bar未満にする必要がある。大規模な産業プラントの最低の実用的な圧力は、0.1から0.2barの範囲である。したがって、膜の透過側での好ましい動作範囲は0.1から0.4barである。
【0067】
濃縮および分離工程
【0068】
我々のプロセスの透過側で低圧を発生させる最も簡単な方法は、真空ポンプを使用することである。しかし、そのようなポンプは高価であり、大量のエネルギーを消費する。この問題は、我々の発明により、ガスが真空ポンプ(211)に送られる前に冷却および濃縮ステップ(208)を使用することによって克服される。ガス(207)の含水量の多くを冷却および濃縮することで、真空ポンプに送られるガス(210)の体積が大幅に減少する。
【0069】
膜供給ガスが上記の組成および温度要件を満たす場合、膜システムは、40~70%の水を含む50~90℃の温度の透過ガスを生成する。このガスを約20℃まで冷却すると、0.1から0.4barの減圧下であっても、ガス内の水蒸気の大部分が濃縮し、液体の水として除去される。このとき、真空ポンプに送られる残留水中に含まれるCOやNの量は非常に少なくなるため、必要な真空ポンプ(211)のサイズも小さくなる。さらに重要なことは、水蒸気の濃縮と除去により、透過ガス中のCOが濃縮されることである。ガスのCO含有量は、膜分離工程(205)で1回、水蒸気濃縮工程(208)で再度濃縮される。
【0070】
真空工程
【0071】
図2のプロセスの最終工程は、真空工程(212)であり、CO、Nおよび残留水蒸気が大気圧以上に圧縮されて排出されるか、または他のプロセスに送られる。必要に応じて、真空ポンプの後に最終冷却工程を使用して、残留水を除去することができる。
【実施例
【0072】
以下の我々の発明を説明するために使用される計算例では、表3に示される透過特性を使用する。しかしながら、これらの透過性および選択性の値が本発明の範囲を限定することを意味するものではない。本発明が必要とするのは、少なくとも10のCO/N選択性であり、最大50以上の選択性が可能であると認識している。また、約2を超えるHO/CO選択性を必要とするが、最大10以上の選択性も可能であることを認識されている。
【0073】
【表3】
【0074】
実施例1.図3のプロセスでは、供給ガスの温度を変化させる。
【0075】
この実施例は、図3に示される膜分離システムを異なる温度で動作させることにより、我々の発明の利点を説明するものである。この例では、膜ユニット(309)に入り処理された煙道ガス供給物(301)は、50~80℃の範囲となる。報告されたすべての計算において、ガスは供給温度および圧力1.0barにおいて水蒸気で飽和している。しかし、工業プラントでは、ガスは完全に飽和していない可能性があり、70~100%の相対湿度となり得る。計算を簡単にするために、透過率と選択性に対する温度の影響を無視し、すべての計算で表3に示す透過率数を使用する。
【0076】
表4は80℃の膜供給ガス温度での結果を示し、表5は40℃の供給温度での結果を示す。いずれの例でも、濃縮工程の温度は20℃に設定されている。したがって、膜供給(301)および濃縮工程(304)との間の温度差は、表4では60℃であり、表5では20℃である。いずれの実施例においても、乾燥ベースの煙道ガス供給ガス(312)は、10%CO、90%Nの組成であり、5,100(標準)m/hの流速を有する。このガスには、1トン/hのCOが含まれる。膜モジュールに送られる前に、ガスは必要な温度にされ、前処理ユニット(313)において水で飽和される。80℃では、ガス(301)は47.4%の水を含み、40℃では、ガス(301)は7.4%の水を含む。いずれの例において、膜ユニット(309)は、このガスのCO含有量の80%を透過流(303)に除去するために必要な膜面積を有する。このプロセスの重要な流れの特性を表4および表5に示す。
【0077】
【表4】
【0078】
【表5】
【0079】
これらの2つの表を比較すると、膜特性および膜を横切る圧力が同じであっても、80℃で水飽和ガスを用いてプロセスを作動させると、40℃でプロセスを作動させるよりもはるかに良い結果が得られることが明らかである。80℃では、80%のCOを除去するために必要な膜面積は、40℃の場合よりも40%少なくなる。この利点は、供透過水による透過側の希釈効果の結果である。膜を透過した水は、透過ガス中のCOを希釈する。この希釈により、膜を通過するCO分圧駆動力が増加し、CO流量が増加する。その結果、膜供給ガス(301)から80%のCOを除去するために必要な膜面積(310)が減少する。また、このプロセスでは消費電力も34%削減され、冷却と濃縮の後、共透過水のほとんどが除去される。この利点は、CO濃度の増加と、透過濃縮器(304)を出て真空ポンプ(311)に向かうガスの体積の減少によって引き起こされる。最後に、プロセス(306)を出るガスは、26.3%に対して39%と大幅に高いCO濃度を有している。
【0080】
図4は、追加の計算結果をグラフ形式で示しており、上記のこれらの重要なプロセスの利点が、30~80℃の膜供給ガス温度範囲にわたって示され、全体の80%のCOが流れに捕捉される(306)。約50℃未満の作動温度では、供給物(301)と濃縮ガス(304)との間の温度差はわずか30℃であるため、煙道ガス流に水を添加する利点は小さい。これは、ガス中の水量が10%未満であるため、透過物(303)の水の濃度があまり高くなく、水を除去するために20℃まで濃縮しても効果が低いためである。80℃のような高い温度では、温度差が60℃であるため、供給ガスの含水量は約20~50%の範囲と著しく高くなり、水の透過側希釈効果はより大きくなる。通常、温度差は少なくとも40℃ある必要がある。このプロセスにおいて、膜への供給ガスは、少なくとも15%の水、最も好ましくは少なくとも25%の水を含むことで、プロセスの価値を高めるのに十分大きな利点を達成することができる。これは最も好ましい作動範囲である。
【0081】
プロセス性能の有効な改善をもたらすために、膜の供給側に比較的高い濃度の水を有する必要があることは、プロセスが供給側で低圧および透過側での真空操作に限定される理由も説明する。供給圧力1barかつ80℃において、供給ガス中の水の最大濃度は47%であり、2barかつ80℃において、水の含有量はわずか24%であり、3barではわずか約16%である。
【0082】
実施例2.80℃において飽和供給ガスで図3のプロセスを行い、プロセスのCO回収率を変化させる。
【0083】
図3に示されるプロセスにおける回収率は、膜面積を変化させることにより変えることができる。表6は、CO回収率が30~90%に変化させた80℃の煙道ガス供給に対するこの効果を示している。図5は、これらと同じ結果をグラフにしたものである。これらの結果から、回収率が低下するにつれて、COが1トンあたりに使用される消費電力と膜面積の両方が減少することを示している。また、最終透過物(306)中の乾燥ベースのCO濃度も、回収率が減少するにつれて増加する。これにより、CO濃度を95%より高くするための透過物の下流処理が容易になる。しかしながら、本技術のユーザーは、環境へのCOの影響を減らす必要があるため、プラント建設者は、高いCO回収率を得ようとする。また、プロセス導入にかかる費用は回収率に関係なくほぼ同じであるため、これも高い回収率であることが望ましい。つまり、回収率とプロセスコストの間には、トレードオフが存在する。このプロセスの最適な範囲は、回収率50~80%の範囲である。80%を超えると、面積と消費電力が急激に増加するため、我々のプロセスは可能であるものの好ましくはない。
【0084】
【表6】
【0085】
実施例3.本発明のプロセスを石炭発電所の煙道ガスに適用した。
【0086】
現代の石炭発電所からの煙道ガスは、通常、約12%のCO、18%のHO、ならびに70%のN、O、およびArを含む。このガスは通常、排煙脱硫装置によって処理され、それらの露点より数度高い温度、一般的に56~58℃で排出される。表7は、図3のプロセスを使用してこのガスを処理するための試算を示している。ガス(301)は58℃であるため、運転温度は我々のプロセスにとって好ましい温度の下限値である。ただし、前処理なしでそのまま使用した場合、供給ガスには18%のHOが含まれているため、透過物には40%を超える水が含まれている。透過物(303)が20℃に冷却されると、水含有量の80%より多くが凝縮され、必要な真空ポンプのサイズが大幅に小型化され、冷却後のガス(304)のCO濃度が42.1%COにまで濃縮される。最終的に任意の(20℃)濃縮器(308)を使用してガス(306)を生成すると、COの濃度は46.6%に上昇する。
【0087】
【表7】
【0088】
発電所によっては、70~100℃の範囲の低品位の熱を利用できる場合がある。この熱を利用できる場合、膜によって処理されるガスの温度と水飽和濃度を高めるために使用することができる。例えば供給ガス中の水濃度を25%HOに上げることによって、58から65℃に温度を数度上げるだけで、表8のデータが示すように、プロセスが改善される。
【0089】
【表8】
【0090】
プロセス(302)からの残留物の流れは、煙突に排出することができる。最終透過物(306)は、50%のCOを含有し、例えば、セメント工場における様々な藻類またはCO処理用途のような用途を見出すことができる。より一般的には、吸収、膜、または極低温プロセスによってさらに濃縮するためにガスを送り、98%より多くのCOを生成して、隔離または高められた石油回収プロセスで使用することができる。
【0091】
実施例4.本発明のプロセスは、天然ガスボイラー排気または排気ガスの一部をリサイクルする天然ガス発電所に適用される。
【0092】
高温蒸気の生成に使用される天然ガスプラントのボイラーからの排気は、典型的には非常に高温であり、多くの場合、約150℃であり、約8%のCO、16%のHO、4%のOおよび72%のNという典型的な組成を有している。ガスの露点は約56℃であるが、直接接触式冷却器でHOと接触させて冷却すると、150℃から冷却したときのガスの飽和点は62℃になる。この温度では、ガス中に20.9%のHOが含まれている。図3の設計を用いた我々の膜プロセスの性能を表9に示す。
【0093】
【表9】
【0094】
実施例5.連続濃縮系を用いた図3のプロセス
【0095】
本発明のプロセスを説明するために表7から9に報告された計算例では、ユニット(314)として表される1段の濃縮器が図3に示されている。このような単純なシステムを使用することもできるが、大規模なシステムでは、必要な冷却水の量を減らすために、複数の濃縮器を直列に使用することができる。例えば、25℃の冷却水を使用する第1の濃縮器を使用して透過ガスを30℃にし、20℃の冷却水を使用する第2の濃縮器を使用してガスを25℃にし、次に15℃の冷水を使用する最終濃縮器を使用してガスを20℃にし、必要に応じて冷蔵水を使用してガスを5~10℃のさらに低い温度にすることができる。これらのシステムを使用すると、真空ポンプを通過するガスの量が減少するため、ユニット(311)の消費電力が減少する。しかし、この利点は、冷水を供給するコストと相殺する必要がある。連続冷却工程を使用することで、必要な冷却水を供給するコストが削減される。
【0096】
本開示またはその好ましい実施形態の要素を紹介する場合、冠詞「a」、「an」、「the」および「said」は、1つ以上の要素が存在することを意味することを意図している。用語「含む(comprising)」、「含む(including)」および「有する」は、包括的であることを意図しており、列挙された要素以外の追加の要素が存在し得ることを意味する。
【0097】
上記を考慮すると、本開示のいくつかの目的が達成され、他の有利な結果が得られることがわかるであろう。
【0098】
本開示の範囲から逸脱することなく、上記の製品および方法において様々な変更を加えることができるため、上記の説明に含まれるすべての事項は、限定的な意味ではなく、例示として解釈されるべきであることが意図されている。

図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2023-01-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
煙道ガスからCOを分離するための膜プロセスであって、
COおよびHOに対して透過性の膜を横切って煙道ガスを含む流体流を通過させる工程であって、前記膜を横切った前記流体流が、その飽和濃度の少なくとも70%の水を含み;
処理済ガスを前記膜の供給側から回収する工程であって、前記処理済ガスは前記煙道ガスより少ないCOを有し;
0.1から0.4barの間の減圧下で前記膜の透過側から透過物を回収する工程であって、前記透過物はCOおよびHOを含み;および
前記透過物からHOの少なくとも一部を除去し、より少量のHO枯渇CO富化透過物を形成するために、前記透過物を冷却する工程であって、少なくとも大気圧までガス圧を上昇させるために真空ポンプを用いること;
を含み、前記膜を横切った前記流体流と前記冷却されたHO枯渇CO富化透過物との間の温度差は、少なくとも30℃である、煙道ガスからCOを分離するための膜プロセス。
【請求項2】
前記膜を横切った前記流体流が、その飽和濃度の少なくとも80%の水を含む、請求項1に記載の膜プロセス。
【請求項3】
前記膜を横切った前記流体流と前記冷却されたHO枯渇CO富化透過物との間の前記温度差が少なくとも40℃である、請求項1または2に記載の膜プロセス。
【請求項4】
さらに前記膜を横切った前記流体流が前記煙道ガスおよび前記水を含むように、前記膜を前記流体流が横切る前に前記煙道ガスに前記HOを添加することを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の膜プロセス。
【請求項5】
前記煙道ガスへのHOの添加が、前記煙道ガスを含む前記流体流が前記膜を通過する前に、直接接触冷却器を使用して前記煙道ガスにHOを添加することを含む、請求項4に記載の膜プロセス。
【請求項6】
前記直接接触冷却器が、前記煙道ガスの温度を調整する、請求項5に記載の膜プロセス。
【請求項7】
さらに前記煙道ガスを含む前記流体流が前記膜を横切る前に、0.8から1.5barの圧力にすることを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の膜プロセス。
【請求項8】
さらに前記煙道ガスを含む前記流体流が前記膜を横切る前に、前記流体流を50℃より高い温度にすることを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の膜プロセス。
【請求項9】
さらに前記煙道ガスを含む前記流体流が前記膜を横切る前に、50℃から80℃の範囲の温度にすることを含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の膜プロセス。
【請求項10】
さらに前記煙道ガスを含む前記流体流が、10mol%を超える水蒸気を含むようにすることを含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の膜プロセス。
【請求項11】
前記煙道ガスを含む前記流体流をその飽和水濃度の70%より多くすることを含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の膜プロセス。
【請求項12】
前記膜が、前記プロセスの動作条件で測定された、2より大きいHO/CO選択性を有する、請求項1~11のいずれか1項に記載の膜プロセス。
【請求項13】
前記膜が、前記プロセスの動作条件で測定された、10より大きいCO/N選択性を有する、請求項1~12のいずれか1項に記載の膜プロセス。
【請求項14】
前記膜プロセスが、前記煙道ガスのCOの少なくとも50%を除去する、請求項1~13のいずれか1項に記載の膜プロセス。
【請求項15】
前記膜プロセスが、前記煙道ガスのCOの50%から80%を除去する、請求項1~14のいずれか1項に記載の膜プロセス。
【請求項16】
前記透過物を冷却する工程が、前記透過物を5℃から30℃までの範囲内の温度に冷却する工程を含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の膜プロセス。
【請求項17】
前記水枯渇透過物が、35%を超えるCO濃度を有する、請求項1~16のいずれか1項に記載の膜プロセス。
【請求項18】
煙道ガスからCOを分離するためのシステムであって、
前記煙道ガスがその飽和濃度の少なくとも70%の水を含むように、前記煙道ガスが膜を通過する前に前記煙道ガスにHOを添加するように構成された前処理ユニットと;
前記煙道ガスを含む流体流が膜を通過できるように、前記煙道ガス源に流体的に接続されるように構成された膜であって、前記膜を通過する前記流体流からCOおよびHOを分離して、処理済の流体および透過物の別々の流れを形成するように構成された膜;および
前記透過物を受け取るために前記膜に流体的に接続された濃縮器であって、前記濃縮器は前記透過物のHOを濃縮し、濃縮したHOおよびHO枯渇透過物の個別の流れを形成するように構成され、前記膜を通過する前記流体流よりも少なくとも30℃低い温度まで冷却するように構成されている前記濃縮器、とを含むシステム。
【請求項19】
前記前処理ユニットは、前記煙道ガスがその飽和濃度の少なくとも80%の水を含むように、前記煙道ガスが前記膜を通過する前に前記煙道ガスにHOを添加するように構成される、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記前処理ユニットは、直接接触冷却器を含む、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
さらに前記濃縮器から前記HO枯渇透過物を吸引するように構成された真空ポンプを備える、請求項18または19に記載のシステム。
【請求項22】
煙道ガス排出流からCOを分離するための膜プロセスであって、
(i)前記煙道ガスの圧力を0.8から1.5barに、かつ温度を50℃より高くし、10mol%を超える水蒸気および前記ガスの水飽和濃度の70~100%を含むようにする工程;
(ii)工程(i)からの前記煙道ガスが、水およびCOに対する透過性の膜を横切る工程であって、前記膜は、前記プロセスの動作条件で測定したHO/CO選択性が2より大きく、かつCO/N選択性が10より大きく;
(iii)工程(ii)の前記膜の供給側から、前記ガス中のCO含有量の少なくとも50%が除去された枯渇処理済煙道ガス流を除去する工程;
(iv)工程(ii)の前記膜の透過側から、0.1から0.4barの圧力で、COおよびHOに富む透過ガスを除去する工程;
(v)工程(iv)からの前記透過ガスを5~30℃の温度に冷却して、前記ガス中のHO含有量の一部を凝縮させ、前記透過ガスのHO濃度を低下させて、水枯渇透過ガスを生成する工程であって、工程(ii)の前記膜を横切る前記煙道ガスと工程(iv)で冷却された前記透過ガスとの間の温度差が30℃を超えるものであり;
(vi)前記水枯渇透過ガス流から前記濃縮水を分離する工程;および
(vii)真空ポンプを用いて、工程(v)からの前記水枯渇透過ガスを大気圧以上にする工程、とを含む膜プロセス。
【請求項23】
前記膜プロセスが、前記膜供給流のCO含有量の50~80%を除去する、請求項22に記載の膜プロセス。
【請求項24】
前記膜ユニットへの前記供給ガスが50~80℃の間の温度を有する、請求項22に記載の膜プロセス。
【請求項25】
前記膜供給ガスの水蒸気量が、前記ガスの水飽和濃度の80~100%である、請求項22に記載の膜プロセス。
【請求項26】
工程(i)において、前記膜供給ガス流の前記温度および水濃度を調整するために、直接接触冷却器が使用される、請求項22に記載の膜プロセス。
【請求項27】
前記煙道ガス排気流が、石炭発電所、天然ガス発電所、天然ガスボイラー、セメント工場、製鉄所または石油精製所によって生成される、請求項22に記載の膜プロセス。
【請求項28】
工程(i)の前記供給ガスおよび工程(iv)のCOおよびHOに富む透過ガスの前記水濃度の差が、少なくとも2倍である、請求項22に記載の膜プロセス。
【請求項29】
工程(ii)において前記膜を横切った前記煙道ガスと工程(iv)において冷却された前記透過ガスとの前記温度差が40℃より大きい、請求項22に記載の膜プロセス。
【国際調査報告】